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1981-08-18 第94回国会 衆議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年八月十八日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左近四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有島 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    粕谷  茂君       亀井 善之君    川崎 二郎君       倉成  正君    田名部匡省君       竹中 修一君    宮崎 茂一君       角屋堅次郎君    渡部 行雄君       市川 雄一君    小沢 貞孝君       榊  利夫君    中路 雅弘君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  委員外出席者         内閣官房長官 瓦   力君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    加藤 圭朗君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         総理府人事局長 山地  進君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         行政管理庁長官         官房審議官   門田 英郎君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         大蔵省主計局給         与課長     水谷 文彦君         大蔵省主税局調         査課長     伊藤 博行君         国税庁直税部所         得税課長    入江 敏行君         食糧庁管理部長 田中 宏尚君         労働省労政局労         働法規課長   齋藤 邦彦君         自治省財政局財         政課長     持永 堯民君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ————————————— 六月六日  一、適用対象消滅等による法律の廃止及び行   政事務簡素合理化に伴う関係法律整理に   関する法律案内閣提出第六一号)  二、行政機関公文書公開に関する法律案(   中路雅弘君外一名提出衆法第三五号)  三、国の行政機関職員等に対する営利企業へ   の就職の制限等に関する法律案中路雅弘君   外一名提出衆法第三六号)  四、情報公開法案横山利秋君外六名提出、衆   法第三七号)  五、公文書公開法案鈴切康雄君外七名提出、   衆法第四五号)  六、行政機構並びにその運営に関する件  七、恩給及び法制一般に関する件  八、公務員制度及び給与に関する件  八、栄典に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  行政機構並びにその運営に関する件(行政改革  に関する第一次答申等)  公務員制度及び給与に関する件(人事院勧告)      ————◇—————
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議開きます。  行政機構並びにその運営に関する件及び公務員制度及び給与に関する件について調査を進めます。  まず、臨時行政調査会行政改革に関する第一次答申について、行政管理庁長官から説明を聴取いたします。中曽根行政管理庁長官
  3. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 去る七月十日、臨時行政調査会から内閣総理大臣に対して、行政改革に関する第一次答申提出されましたので、答申に至るまでの経緯、答申概要及び政府における対処方針につきまして御説明を申し上げます。  臨時行政調査会は、近年における内外の社会経済情勢の大きな変容に対処するため、行政制度及び行政運営全般について抜本的な改革の方途を提言することをその基本的任務としているものであります。  しかし、財政再建という見地から行財政の立て直しを図ることが現下の急務であるところから、去る三月十六日の同調査会第一回会合において内閣総理大臣から昭和五十七年度予算編成に向けて、歳出の削減政府機構簡素化行政減量化重点を置いた具体的改革案をこの夏までに提出願いたい旨の要請が行われ、調査会においてはこれを受けて、二十余回にわたる審議が行われたのであります。  まず、四月十七日の第五回調査会において、検討課題を概定するとともに、専門の事項調査審議させるため、部会が設置されました。これら部会においては、昼夜を分かたぬ精力的な審議が行われ、それぞれの検討結果を六月二十二日、調査会に対して報告するとともに、これを公表したのであります。  部会報告を受けた調査会は、これについてさらに全般的な検討を加えた上、意見を取りまとめ、冒頭に申し上げましたとおり、七月十日に行政改革に関する第一次答申として内閣総理大臣提出する運びとなった次第であります。  この間、調査会及び部会においては、各省庁から行政制度及び運営に関する全般的かつ具体的な説明を求めるとともに、各政党を初め経済団体労働団体地方団体等多くの団体との意見交換並びに福岡、名古屋、札幌等全国大都市での一日臨調の開催などを通じて、広く国民各界各層意見要望に耳を傾けつつ、幅広い調査審議が行われたのであります。  次に、このたびの答申概要について御説明申し上げます。  答申は、「行政改革理念課題」、「緊急に取り組むべき改革方策」及び「今後の検討方針」の三つの部分から構成されております。  まず、第一の「行政改革理念課題」においては、今後わが国が目指すべき方向として、国内的には「活力ある福祉社会実現」、対外的には「国際社会に対する貢献の増大」の二つを掲げ、さらに、これらの実現に向けての行政改革理念として、「変化への対応」、「簡素化効率化」及び「信頼性確保」を提示しております。  なお、今回の答申については、行財政改革への第一関門であり、行政体質改善し、しわが国社会経済の長期的な発達を可能にするための「本格的療法」へつないていくへいわば「緊急の外科手術」であるとの位置づけが示されております。  次に、第二の「緊急に取り組むべき改革方策」においては、支出削減収入確保に関する方策として、わが国財政をして赤字公債体質から脱却せしめ、新たな社会経済情勢への対応力を回復するため、昭和五十七年度予算編成に当たって新規増税を行わず、特例公債発行を減額することを基本方針として、一般行政経費補助金利子補給等特定財源租税特別措置等に関する一般的方策及び国民生活経済活動中央地方等行政各般にわたる支出削減に関する個別的改革方策が提示されております。  また、行政合理化効率化に関する方策として行政体質改善と、国民負担の軽減を図り、もって行政に対する信頼を回復するため、国の行政部門特殊法人及び地方公共団体における定数の縮減、給与等合理化機構事務事業見直し並びに許認可整理合理化に関する具体的改革案が提示されております。  さらに、第三の「今後の検討方針」においては、今回の第一次答申作成の経験を踏まえ、行政改革の基本的問題について今後も精力的に検討を続けることとされ、今後の重要検討課題として、行政課題変化行政役割り見直し行政機構行政運営改革、国と地方との機能分担及び地方行政改善並びに官業及び許認可保護助成等政策手段の再検討の四点が提示されているところであります。  一以上が答申概要であります。  なお、調査会の今後の審議予定について申し述べますと、先般、改めて四部会が設けられ、この九月から、行政組織及び基本的行政制度あり方を初め、保護助成規制監督行政あり方等行政改革基本的課題について、本格的な審議が進められることとなっております。  最後に、臨時行政調査会の第一次答申に関する政府対処方針について御説明申し上げます。  同答申の取り扱いにつきましては、答申直後の去る七月十七日の閣議において、行政合理化効率化を推進するとともに、財政再建に関する緊急な課題に対処するため、かねてからの基本方針に基づき、同答申を最大限に尊重し、速やかに所要施策を実施に移す旨の方針を決定したところであります。  具体的には、答申趣旨を極力昭和五十七年度予算要求に盛り込むとともに、法律改正を要するものについては、積極的に取り組むことといたしております。  このため、各省庁においては、閣議決定後直ちに具体的方策検討立案に着手し、予算関連事項については大蔵省と、行政合理化効率化に関する一般的事項については行政管理庁と協議しつつ、法律事項予算事項等の仕分けを行うこととされ、対処方針立案を進めてまいっているところであります。  政府としては、閣僚レベルにおける協議を含め、目下所要調整を急いでいるところであり、八月末までには、臨時行政調査会の第一次答申を受けた今後における行財政改革基本方針の成案を得て、閣議決定を行う運びといたしたいと考えております。  なお、行政改革は、臨時行政調査会の第一次答申に掲げられた緊急課題にとどまるべきものではありません。  同調査会においても、今後、各般の基本的問題について検討を進めることが予定されているところであります。  行政改革は、言うべくして実行困難な課題であります。しかし、わが国社会の活力ある発展の基盤を確かなものとするために避けて通ることのできない課題であると考えます。政府としては、当面する最重要の政策課題として、引き続きこれに取り組み、国民の期待する簡素にして効率的な政府実現に最善の努力を尽くす所存であります。
  4. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、去る七日の一般職職員給与改定に関する勧告につきまして、人事院から説明を聴取いたします。藤井人事院総裁
  5. 藤井貞夫

    藤井説明員 去る七日に本年度における給与に関する勧告国会及び内閣に対して提出をいたしました。機会をお与えいただきましたので、この際、給与勧告概略について、お手元に配付されでおると思いますが、「給与勧告の骨子」という資料がございます。これに従いまして、ごく概略を簡明に御説明を申し上げたいと存じます。  本年の官民較差は五・二三ということでございまして、五十三年から三年間は五%を切っておったわけでございますが、四年ぶりに本年度は五%を上回ることに相なったということでございます。ちなみにこの較差は、本年の仲裁裁定が五・三八%でございますが、これに比較をいたしまして、これを下回る結果に相なっておるわけでございます。  この較差配分につきましては、生計費の問題とか物価の問題あるいは公務員給与制度をめぐるいろいろな問題点等を踏まえまして、配分をいたすことに苦心をいたしたわけでございますが、その結果、俸給表改定に四・三五%、生活関連の諸手当に〇・六二%、その他はね返り、給与改定が行われますと当然に影響をしてまいるものがございますので、それの分に充てるものが〇・二六%ということに相なったわけでございます。  俸給表につきましては、本年は、例年と大体同様でございますが、上下とも大体同率の配分というふうに相なっております。ただ、世帯形成層なり中堅層というものにつきましては、民間比較いたしましても、やはりどうしてもやや不足ぎみという傾向もございますので、これにつきましては、特に重点的に配慮をするということに心がけたつもりでございますが、それと同時に、高位号俸については、抑制方向をさらに強化していくという措置をとっておる次第でございます。  指定職俸給表につきましては、これは民間会社の重役というものを対象に、大体参考にして比較をいたしておるわけでございますが、本年も調査をいたしました結果、出てまいりましたのは大体二五%程度開きが出てきております。ここ数年来こういう情勢でもございますので、推定職については抑制ぎみでずっと措置をいたしてまいりました結果、開きがかなり大きくなってまいっておりますが、しかし、これを急に一度にというわけにはとてもまいりません。一般職員俸給表の均衡の問題等もございますのでとうていそういうことを一時にというわけにはまいりませんので、一般並みに抑えるということに措置をいたした次第でございます。  俸給表重点になりましたが、その他につきましては、手当について、特に生活関連手当について措置を講ずることにいたしました。  その中で、特に申し上げたいと存じますのは、調整手当でございます。これはいわゆる都市手当に当たるものでございまして、物価その他が何としても大都市関係はかさむという実態がございますので、民間企業でも、大都市に勤務をする従業員に対しては、それなりの措置を講じておる実態がございます。これに応じて、現行制度調整手当を最高を八%といたしまして、あとは六%地域、三%地域、それから非支給地ということに分かれていままでやってきておるわけでございますが、その中で八%地域であります東京、大阪等につきましては、これも民間の大きな全国的な規模の会社対象に調べて、その傾向をずっと見てきておりますが、その結果、ここ数年来ずっと大体一〇%程度措置は講じておるという傾向が続いてきております。そういうこともございまするし、一面、各省庁人事当局者も、最近の情勢だと、一般Uターン現象とかそういうこともさりながら、大都会へはやはり来たがらないというような傾向もあって、何らかの措置を講じてもらいたいという熾烈な要望もございます。そういう点も踏まえまして、一挙にということにもまいりませんので、これは一%だけ引き上げまして、八%地域を九%にするということにいたしております。  それから、扶養手当通勤手当住居手当については、それぞれ民間動向を反映した措置を講じたいということでございます。  それから、筑波研究学園都市というのがございまして、現在筑波研究学園都市については、大体当初計画の官署の移転は終了いたしまして、最近は環境整備施設整備等重点を置いてやっておりまして、体裁もだんだん整ってきておるようでございます。当初、ここに計画的に移転をするということでございますので、そこにおります職員に対して移転を容易ならしめるというような趣旨で、移転手当の御設置を願ったわけでございまして、これについては、当初これが始まりました四十六年から十年間ぐらいたてば、大体これの存廃なりあり方についてめどがつくだろうというようなことで、本年の十二月十四日までにこれについての勧告をするということが人事院に義務づけられております。ところが、この移転が計画どおりまいりませんで、五年ばかりおくれた実態がございます。最近ようやく完了したということがございまして、この施設整備状況、その他環境整備状況等をよく考えてまいる必要もございますので、いましばらく情勢を見たい、推移をながめたいというふうに考えまして、今後五年間を区切りまして、それまでにこれについての手当勧告をする、それまでは現行手当をそのまま存続をするということにいたしたわけでございます。それから、特別給、いわゆる賞与でございますが、これにつきましても、ことし調べました結果は四・九八月分ということで結果が出てまいりました。小数二位以下は切り捨てるという従来の方式に従いまして、本年度も据え置かざるを得なかったということでございます。  以上は勧告内容でございますが、それに対応いたしまして、給与適正化合理化ということを一つ打ち出しております。これは従来もこの線でやってきたわけでございますが、臨調等でも指摘されたもののうち、人事院として今後ともその方向に向かって努力すべき点、またやろうと思えばできる点は特に強調をいたしまして、成績主義の一層の推進、年齢、地域等の観点からの給与配分適正化等について、努力目標を掲げて今後やっていこうという決意を表明をいたしております。  それから最後に、人事行政施策総合的検討については、昨年の報告におきまして、戦後三十年にわたる情勢変化に適応して公務員制度全般の根本的な再検討をすべき時期が来たのではないかということを申し上げた次第でございまして、本年度はそれの実行第一年度ということで、調査重点を置いて本格的に取り組んでおります。大体私たちの現在の考え方といたしましては、六十年に定年制動き出しますその時期を目標といたしまして、根本的な再検討の結果が出ましたものを実行に移すような段取りで施策を進めてまいりたいというふうに考えております。そのことについて、昨年の報告を受けて本年はどうするか、これから後はどういうふうな展望で物を考えていくのかということについて申し上げることにいたした次第でございます。  以上が本年の勧告概要でございます。ありがとうございました。     —————————————
  6. 江藤隆美

    江藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎二郎君。
  7. 川崎二郎

    川崎委員 ただいま人事院総裁から、給与勧告について概要説明がございました。私は、この公務員給与の問題、また人事院勧告の問題について若干御質問関係省庁皆さん方にさせていただきたいと思う次第でございます。  最初にお断りを申し上げたいと思いますけれども、私も国会議員になって初めての質問でございます。どうかわかりやすい御回答をいただきますようお願いを申し上げておきたいと思います。  まず人事院総裁に、ただいまいただきました概要について、特に御苦心された点、もしくはここに力を注いだというような点がございましたら、御説明を改めていただきたいと思います。
  8. 藤井貞夫

    藤井説明員 ことしの官民較差の率が五・二三%ということでございました。そこで、この配分をいたしまする際に、一番われわれといたしまして関心を持たなければならないと思いましたのは、第一は、やはり公務員内部のいろいろな事情、問題点課題というものに対してできるだけこたえるような措置を講じていかなければならぬという点がございます。  それから、これは法律でもございます生計費の問題とか消費者物価動向、それから何よりも民間のことしの春闘の配分傾向というようなものもつかんでまいらなければならぬというようなことで、それらの点をしさいに検討いたしました結果、何としてもやはり生活費中心になりますものは俸給でございますので、この俸給表改定重点を置くということにいたしました。なかんずく従来、ともすれば給与改定に当たって中堅層とかそれから結婚をする、奥さんをもらったというような、いわゆる世帯形成時と言っておりますが、これらの職員についてどうも、全体の配分状況との関連もございまして、十分なめんどう見がなされておらないという傾向がございまして、この点は端的に申して、給与民間比較をいたしますとどうしても中堅層が少し落ち込んでおるというような状況がございます。この階層が一番生活が楽でないという階層でございますので、そこに重点をなるべく置いてやっていくということに苦心を払った次第でございます。  その第三の点といたしましては、手当に関しましては、どうしても生活関連手当重点を置かざるを得ない。生活関連と申しますと、結局家族手当に当たります扶養手当それから通勤手当住居手当、こういうものにつきましては、それぞれ民間でも動きがございます。また、公務員の側でも、たとえば住宅については最近公務員宿舎の値上げがあったというような事態もございますので、それらをにらみ合わせまして配分をするということに心がけたのでございます。  それから、賞与の問題につきましては、これが一番多かったときは御承知のように五・二カ月分ということであったわけでございますが、その後二回にわたって引き下げがございまして、現在四・九カ月分ということに相なっております。これは民間実態をつぶさに調べて、その集計を出してどうすべきかということを検討いたしておるわけでございますが、調べました結果は四・九八カ月分ということでございまして、この数字自体小数二位については切り下げということで従来も参っておりますので、この方針に従いまして、据え置きということにいたしたという点が主なる点でございますが、総じてこの幅の中で一番生活関連ということを中心に考えるとすれば、俸給表改定、なかんずく中堅層世帯形成時に対する配慮、それから生活関連手当の重視、それらに重点を置きまして、できる限り実態に即するように、また公務員実態に合うように配慮をして勧告内容を決めた次第でございます。
  9. 川崎二郎

    川崎委員 いま人事院総裁から御苦心された点について特に御説明をいただきました。人事院の御苦労には深い敬意をあらわすものでございます。しかしながら、一方、いま行財政改革というものが大きな国民的な課題になってきております。今年度末において八十二兆円の赤字国債を抱える。そうした情勢の中において行政あり方というものがいま問われているわけでございます。第二次臨調もでき、そして新しい時代に対応した行政あり方というものが考えられ、また第一次答申もすでに出たところでございます。そうした背景の中において、一部の意見の中で、こうした財政危機状況にあるならば、やはりこうした大幅な人事院勧告、五・二三%という大幅な人事院勧告というものは少し遠慮すべきだったんじゃないかというような意見もあるわけでございます。その辺について人事院総裁として財政状況をどういうふうにお考えになったか、御意見をお伺いしたいと思います。
  10. 藤井貞夫

    藤井説明員 人事院といたしましても、これが政府機関でございますので、いろいろな諸情勢というものは頭に入れながら日常の業務をやっておりまするし、また、特に給与勧告というのは、公務員生活に一番大事な影響を持つ問題でございますので、あらゆる角度から検討しながらやっておるということは当然のことでございます。したがいまして、いま御指摘になりましたような国の現時における財政状況国債発行状況あるいは行政改革をめぐるいろいろな動き、そういうことについても慎重に推移を見守り、また積極的に行政等についての把握に努めておりまして、できる限りの配慮は加えておるつもりでございます。  ただ、人事院勧告というのは、諸先生方に申し上げるのもいかがかと思うくらい制度として確立していると思うのでございますが、やはり公務員については公務員の立場がございますので、それについて当然労働基本権制約がある、労働基本権制約があるから、それに代償的な役割りを果たさせるものとして人事院があるということでございます。したがいまして、その点はやはり人事院役割りとして当然堅持してまいらなければならない、そうでなければ法律の精神にも反するし、制度の仕組みにも合致することにならない、そういう基本線で従来もやってまいりました。  ことしの場合、また、過去ここ数年における非常な財政危機の状況のもとにおいて、それなりに頭に入れてはおりますが、人事院制度自体の任務、役割りという点から考えまして、民間における給与動向変化がございますれば、それに対応した措置というのは、やはり必要な限り講じざるを得ない、それが人事院の使命であるという一つの大きな責務がございますので、その責務は人事院として放置するわけにはまいらないという点から、本年度調査をいたしました結果、較差が出ましたので、その較差を埋めるということはひとつおやりいただかなければならぬということで勧告を申し上げたということでございます。全体の状況等は全然われわれは知ったことでないというような不遜な態度で事柄に当たっておるわけではございませんので、これは重々お察し願いたいと思います。
  11. 川崎二郎

    川崎委員 ただいま総裁から、財政事情も十分考慮したけれども、公務員労働基本権の代償として、人事院勧告官民較差の是正という面からやはり実施しなければならないという御答弁をいただいたわけでございます。  そこで、臨調の事務局にちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。  去る七月十日に出された第一次答申でございますけれども、国家公務員給与については、労働基本権制約社会経済情勢財政事情、国民世論の動向等が十分考慮されるべきであり、さしあたり本年度給与改定については、以上の点を踏まえ、適切な抑制措置が講ぜられるべきであるというような答申になっております。  ただ、いま人事院総裁から御答弁をいただいた内容と照らし合わせて考えますと、その十分考慮すべきというものの中に何か両立しがたいものが含まれているような感があるわけでございますけれども、そうした情勢も十分踏まえて、逆に臨調としては答申をされたというふうに理解をしているわけでございますけれども、その点について事務局の御答弁をいただきたいと思います。
  12. 佐々木晴夫

    ○佐々木説明員 お答えいたします。  いま先生から御指摘がありましたように、また先ほど中曽根行管長官から臨時行政調査会答申概要につきまして申し述べましたように、臨時行政調査会といたしましては、三月十六日以来大変精力的な検討を続けてまいったと思います。  この公務員給与の問題につきましても、まず部会段階でそれぞれの関係方面からいろいろと御意見を承り、また資料等も検討いたしました。その結果といたしまして、相当いろいろの議論が行われた結果といたしまして、いま先生から御指摘のありましたように、公務員給与あり方については、基本的な考え方といたしまして、労働基本権制約、それから社会経済情勢財政事情、国民世論の動向が十分考慮されるべきものであり、さしあたり本年度給与改定については、このような点を総合的に勘案して、適切な抑制措置が行われるべきである、そのような結論が出された次第でございます。
  13. 川崎二郎

    川崎委員 非常にわかりにくい答弁ですけれども、先へ進みたいと思います。  次に、大蔵省にちょっとお尋ねをしたいと思います。  今回、五・二三%という人事院勧告、それを実際に実施をしたとしたらどのぐらいの財源が必要になるのか。予算上では一%しか計上していない、差の四・二三%というものをどうして大蔵省は捻出をされるのか。たとえば補正予算を組まれるというようなお考えなのか、その辺について大蔵省の御答弁をいただきたいと思います。
  14. 水谷文彦

    ○水谷説明員 お答えをいたします。  最初に、勧告の実施に伴います所要額でございますけれども、一般会計ベースでお答えをさしていただきますが、一般会計のベースで全所要額が三千四百十億円でございます。それに対しまして、お話のございました給与改善費が一%で六百三十億計上いたしておりますので、差し引き二千七百八十億、大まかに申し上げれば二千八百億円の不足が生ずるわけでございます。  これに対します財源処置でございますけれども、いずれにしましても、五十六年度予算の執行状況は大変不確定要素が多いわけでございます。現段階では何とも申し上げられない、こういう状況でございます。  ただ、一般的に申し上げれば、大変厳しい財政事情というととは、もうこれは皆様方に御理解をいただいていることでございますし、個別に申し上げましても、たとえば五十五年度の税収は、御案内のように、予算に対しまして二千八百億円の減収になっております。したがって、五十六年度予算を考える場合には、ベースになります五十五年度のげたの部分が二千八百億円欠けているというような状況がございますし、また、通常不用等の問題もございますけれども、これは予算それ自体が大変締まった予算編成になっておりますので、そういった見込みも大変立ちがたい、一般的にこういった事情もございまして、非常に厳しい財政事情でございますので、こういった財政事情等踏まえまして、今後政府内で検討さしていただくということになるのではないかと考えます。
  15. 川崎二郎

    川崎委員 ただいま大蔵省から二千八百億ほどの財源不足になる、それの捻出方法については、まだ見通しが立っていないという御答弁を賜ったわけでございます。まことに厳しい財政事情下と言わざるを得ないかと思います。その中において何とか二千八百億という話でございますけれども、それだからこそこの勧告の実施ということになると、国民の十分な納得というものが得られなければならないかと思います。  そこで、私は国民の納得という点に目を移して質問を続けたいと思います。  まず第一に、農林省にお尋ねをさせていただきたいと思います。  御承知のように、さきに生産者米価が〇・四六%の値上げということで決着を見たわけでございます。米作農家の給料と言ってもいい米価が、第一番目には需給事情、そして第二番目には財政事情という理由により、昨年同様の算定方式なれば一一・七%は上がって当然であるというところをゼロ諮問という形で出された結果、最終的に政治決着として〇・四六が上がったということでございます。需給事情についてはよく理解をするも、のでございますけれども、もう一つ国の財政再建、増税なき五十七年度予算編成、したがってゼロシーリング、こういう枠組みの中での決定であったというふうに理解をしておるわけでございます。  ところで、農民の所得は抑えたけれども、役人の給料は、人事院勧告で定期昇給合わせて七・三九%も上がる、このようなことで、農林省御当局として、実際監督されている立場として、農民の納得というものを果たして得られるのかどうか、お考えをお聞きしたい。  また、視点を変えて考えてみますと、労働基本権制約の代償として人事院勧告制度がある。逆に、食管法は国民の食糧の確保国民経済の安定という立場からつくられ、そしてその食管法があるゆえに、米の自由売買を禁じて農民の所得を補償しなければならない、それで生産費及び所得補償方式により米価を算定する、米価を決定するということになっていると私は理解をしているものでございます。  それが八年ぶりに突然算定方式を変えて、ゼロ諮問というような形を行った。人事院がされているように、人事院同様に、一貫した算定方式、算定要素というものを用いて農林省当局がなぜ諮問をしなかったのか、全く理解に苦しむところでございます。どんな厳しい財政事情においても、人事院勧告というものを一〇〇%実施しなければならないというのがもしたてまえとするならば、食管法がある限り、米価もまた過去八年間使用してきた算定方式により出された一一・七%というものを十分尊重しなければならなかったのじゃないかというような逆論も出てくるわけでございます。そうした点について農林省の明快な御答弁を賜りたいと思います。
  16. 田中宏尚

    ○田中説明員 米の生産者価格につきましては、先生御承知のとおり、食管法で、生産費、物価その他の経済事情を参酌いたしまして、再生産を確保することを旨として定めるということになっているわけでございます。  それで、昭和三十五年以来そういう法律の規定に基づきまして、いわゆる生産費所得補償方式というものをとりまして、農業生産の安定的発展というものを図ってきているわけでございますけれども、この生産費所得補償方式と申しますのが、御承知のとおり、現実に支払われてはいない農家の家族の労働費というものを他産業並みの労賃で評価がえをするということに一つの基本があるわけでございます。この評価の仕方につきましては、過去もそのときどきの需給事情なりあるいは財政事情、こういうもので変遷を重ねてきているわけでございます。確かに農家にとりましては、労賃に匹敵する重みというものはあるわけでございますけれども、あくまでも政府管理下にあるとはいえ、米という物資についての価格、物についての価格でございまして、需給事情なりそのときの経済事情というものを無視して決まるわけにはまいらぬわけでございます。  いま先生からも御指摘ありましたように、昭和四十六、七年には現在と同じような需給事情下にございまして、今年度と同じような算定方式をとった次第でございます。今年度におきましても、生産調整という中で、潜在的あるいは基調としての過剰に加えまして、依然として過剰米の重圧というものが、現時点でまだ五百万トンの累積があるというような、物としての需給事情に加えまして、ゼロシーリングという、農林水産省全体として一定の枠内でどういう保護水準というものをそれぞれ行政分野においてつくっていくかという選択の中で決めさせていただいたわけでございます。  こういう生産調整という厳しい中で、農家の実質所得にかかわる米価がこういう形で決まったということでの農家のいろいろな心理的な問題もわからぬではございませんけれども、米という物の価格につきまして、そういう需給事情なりあるいは現下の厳しい財政事情、こういうものを反映して、諮問案では据え置きということでお願いし、それから政府・与党の折衝で〇・四六%の引き上げという決着を見ましたことは、それなりに適切であったというふうにわれわれは理解しておるわけでございます。
  17. 川崎二郎

    川崎委員 ただいま農林省から財政事情、ゼロシーリングなるものを特に重要視して今回〇・四六という決定を見た。これから農民の皆さん方をどういうふうに御説得なさるか、その辺はこれからの課題になっていくかと思います。  それでは勧告の中身とも関連して、人事院にもう一度お尋ねをさせていただきたいと思います。  今回の五・二三%という勧告改善率は、四年ぶりに五%を超えるものであり、これは国家公務員法第二十八条、義務づけ勧告となったわけでございます。この五・二三%という勧告率は、先ほども申し上げましたように、定期昇給を含めると七・三九%になるといわれております。一方、民間の今春闘の結果は、労働省の調査では七、七三%、日経連の調査では七・五八%である、ほぼ変わりがないという状況でございます。民間大手と同じようなベースアップというふうな水準となっているわけでございます。  資料によりますと、百人以上の企業を四万件余り調査をされた、これによって給与所得者の六割がカバーされているというようなことを聞いておるわけでございますけれども、先ほど申し上げた国民の納得という点から見ると、やはり小規模の零細企業も含めて、果たして民間の給料、一般の人たちがどのぐらい取っているのかということを見た方が適切ではないか、余りにも大企業偏重になり過ぎているのではないかという指摘があるわけです。この辺について、民間準拠という物の考え方、また百人以下の企業についての考え方を総裁からお聞かせ願いたいと思います。
  18. 藤井貞夫

    藤井説明員 官民較差を調べます場合に、民間企業の規模をどの程度にするかという点は、御指摘のように大変重要な問題でございます。従来からこれをめぐっては種々論議がずっと続けられてきております。これについては、いま先生が御指摘になりましたような議論も有力にございます。また別に、これに対立するという意味ではございませんが、国家公務員の場合は、その組織からいりても規模からいっても非常に大きいのだから、むしろ大企業ずばりそのものを対象にして調査して、それとの比較をすべきではないか、具体的に言えば、百人なんていうのは小さ過ぎる、むしろ千人以上の規模に限定して調査をすべきではないかというような議論もございます。  それぞれの立場からの御論議だろうと思いますけれども、われわれ人事院の考え方といたしましては、やはり民間企業の過半数を悉皆調査したと同じようなことで結果が出るような、そういう平均的なものを調べて、これと対応させるということが一番合理的ではないか、また、それはそれなりに、国民全般から言えば御納得がいただけるものではないかというようなことで、いろいろ論議を重ねた結果、三十九年から今日までずっと同じ方式を踏襲してまいっておるところでございます。  全体の給与水準はそういうことでございますが、もう一つ、われわれの方で官民較差比較いたしまする際に一番重要なのは、ただ単に平均給与をとるとかなにかということはやっておりませんので、その人のやっている仕事の内容、責任、地位、ポスト、その人の年齢それから経歴、経験年数というようなものを全部比較いたしまして、それに相応するものをそれぞれ対置をして比較するという方式をとっておるわけでございます。そういたしますと、よくわれわれも実際にも承っておりますし、また耳にもいたしまする小企業等もむしろ比較対象にすべきじゃないかということがございますけれども、これはやはり一つの感じとして、ベースの基準というもの、平均のベースというものを頭に置いていろいろお考えの上での発言であろうというふうに思っております。ただ、比較をいたしまするにつきましては、いま私が申しました対応の職種というものがありませんと十分な合理的な比較ができません。ところが小企業ということになりますと、そういうようなポスト、組織というものがむしろはっきりしていないものが中に多いわけであります。そういう点の実態を調べまするために、正式の較差のための調査ではございませんが、並行いたしましてそういう小さなところの企業実態についても実際の調べをやっております。やっておりますが、その結果は、余りに変わった結果はそれほどは出ないというのが実情でございまして、これは御承知でもございますように、中小企業ということになりますと、どうしてもポストというものがない、組織というものがない。したがって、上の方の責任者というものはなるほど給与は少ないという場合が多いですが、単なる係員の方々はいろいろなことを兼ねてやっていらっしゃるためにかえって人材をそこに持ってこなきやならぬ、処遇は十分にやらないといい人が集まらないということで非常に割り高になっておるという部面もございます。そういうこともございまして、経験上この程度が妥当ではないかということで実は三十九年からずっと踏襲してやってきておるということでございまして、この結果、民間企業の六〇%程度を全部調べておると同じような結果が出るということはまずまず合理的な制度として支持されるのではないか、私たちはそういうふうに考えておる次第でございます。
  19. 川崎二郎

    川崎委員 ただいま小企業についてなかなか対応の職場がないというような御指摘をいただきました。何とか含めるように、やはり国民の納得というものが中心でなければならないかと思いますので、一段と御苦労をお願いを申し上げたいと思います。  いま民間状況を見てみますと、年間約一万五千件の企業が倒産しているというのが現状でございます。人事院におかれまして昨年調査された、ことし調査された、もしくは四、五年前に調査された対象会社というものが果たしてこの中でどのくらい倒産されているのかをしっかりつかまれていますでしょうか。いま仕事、賃金が確保されている公務員の方は、倒産の危険がない、逆に民間の場合は一生懸命働かないと倒産をしてしまうというようなこと、そうした面で、実際問題、民間におけるリスク、そういったことを果たして給与面で反映ということを考えられているかどうか、御意見をお伺いしたいと思います。  よく物の本で、官民バランスのとれた人材配置が望ましい、この点について人事院としても十分配慮している、日本全体の人材のバランスという面で十分配慮をしているということを見るわけですけれども、大都会はともかく、地方における国家公務員地方公務員志望というものは激増しているのが現実の姿でございます。地方における中小企業というのは人材の確保に大変苦労している。現実に、私どもも民間公務員両方を受けた人がどちらへ入るかとよく具体的な例で見ているわけですけれども、間違いなく間違いなくと言うたら失礼かもしれませんけれども、九〇%以上が民間会社をほうって官公庁に入っていくというのが現状のように思います。安定性が非常にある、そして民間同様の給料が確保されているということになりますと、民間を去っていって人材のバランスの面でどんどん公務員志向がこれからもふえていってしまうのではないかという危惧感を持つわけでございますけれども、その点について人事院総裁に御答弁をお願いしたいと思います。
  20. 藤井貞夫

    藤井説明員 民間の倒産の状況、その他についても資料は調査をして、それぞれ検討を加えておることはいたしております。これらにつきましては、後ほど給与局長から御答弁を申し上げたいと存じます。  いまその他の点について、人材確保のバランス等について基本的なお話がございましたので申し上げておきたいと存じますが、われわれといたしましても、むろん公務でございますから、そこにできるだけいい人材が来ていただきたいというのは当然なことでございましょう。ただしかし、それだからといって、われわれ自体も、公務に一番最上級の人ばかりでないと困るというような、そういう不遜な考え方は持っておりません。やはり民間公務員というものが両々相まって日本の生活あるいは経済発展、社会活動というものが斉一に行われていくということでございますので、それぞれやはり均衡のとれた人材配置というものがなされていかなければならぬということが基本であろうというふうに思っております。  ただ、民間の場合に景気、不景気というものがいやおうなくございます。ずっとそれをながめておりますると、何としても景気が悪くなれば民間の人を採る数というものが減りますので、したがって、相対的に言って公務員になりたいという志望者はふえます。これは過去の統計等を見ても一歴然とそういう点がわかるわけであります。ただ、それと反対に、民間の景気が好転をするということになりますと、また公務員に対する志望率というものが減るということも、これも統計上明らかになってきております。最近の状況を見ましても、石油ショック以後の民間で経済に大変な混乱がございました際には、それを契機として公務員の上級試験の志望者等も大変ふえて未曽有の競争率ということになったときもございましたが、その後民間の経済も落ちつくに従いまして、ここ数年はやはりずっと公務員の志望者は下降の状況で続いてきておるというようなことがございます。公務というのは日常のことを法律上もあるいは予算の執行上も継続的にやっていかなければならぬという一つの性格を持っておりまして、やはりそれなりにそれに従事する公務員というものは確保していかなければならぬということがございますので、毎年試験をして必要最小限度の人員を確保することをやっておりますが、しかし、それだからといって、われわれといたしましては、公務員の方にりっぱな人が来てくれればそれでいいのだというようなことは一切考えておりません。やはり世間並みのことはひとつ確保しながら、条件は保持しながら、その中でできるだけいい人に来てもらうという基本的な方針でもって任用制度の運用に当たっておるというのが現状でございます。
  21. 長橋進

    ○長橋説明員 倒産件数に関することでございますけれども、人事院といたしましては、民間の景況、失業状況、そういうものにつきまして重大な関心を持って見詰めてはおりますけれども、お尋ねの、毎年調査しております事業所につきまして、その後倒産したかどうか、そういう意味合いの追跡調査というものはいたしておりませんので、その調査結果というものは持ち合わせてございませんが、ちなみに、東京商工リサーチの調査によりますと、五十五年の倒産件数、これは負債総額が一千万以上でございますけれども、先生御指摘のように一万七千八百八十四件でございまして、これは昭和五十四年を上回るものの昭和五十二年を下回る状況であるというような状況は把握しております。その他国税庁の税務統計でございますとかあるいは全銀協の銀行取引停止処分、そういう資料を通じまして間接的にその後の状況について関心を持っておるということでございます。
  22. 川崎二郎

    川崎委員 ぜひ民間におけるリスクという面もとらえていただきたい。また正確な把握を、ほかの統計によるのではなくて、人事院独自の統計をお持ちいただくようにお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、公務員志望のことを少し申し上げたのですけれども、勤労者の生涯を通じての所得、いわゆる生涯給与という面で公務員の方が上回っているという指摘が各方面でなされており、またこれが逆に言えば、民間国民皆さん方から、公務員は非常にいいじゃないかと冷たいまなざしを受けているゆえんであると思います。人事院勧告は、給与についての官民較差是正という点にしか触れておりませんし、現実、担当が違うということになるのでございましょうけれども、やはり人事院としては退職手当、年金というものを含めて官民の均衡を図るという視点がどうしても必要だというふうに私は考えるものでございます。五十五年二月から三度にわたり退職手当法というものが提出され、前国会においても衆議院は通過したわけですけれども、現実問題として退職手当法はまだ成立を見ていないというのがいまの現状でございます。臨調の第一次答申でもこの点が特に指摘をされております。これについて人事院総裁のお考えをお伺いしたいと思います。
  23. 藤井貞夫

    藤井説明員 生涯給与の考え方は、私もこれは謙虚に受けとめて考えていくべき筋合いのことだろうというふうに思っております。これは機会がありますごとに、私自身もそういう線で申し上げておる事柄でございます。  また、いま臨調等の問題がございましたが、臨調においても五月の初旬でございましたが、一度総会に出てきて説明をしてもらいたいというお話がございましたので、私もいい機会だと思いましたから参りまして、給与をめぐる諸問題についていろいろお話を申し上げました。その際に、生涯給与論というものについても触れて申し上げましたが、われわれといたしましても、生涯給与という考え方自体はしかるべき考え方であって、それを真っ向からどうこうということは考えておりません。ただ、世間の論議の中で、一部でございましょうが、たとえば退職手当が多いから、あるいは年金が有利だから、毎月の給与についてそれなりの配慮をすべきではないかということについてはいかがかという疑問を私は従来から申し述べておるのであります。というのは、給与は毎月の労働に対する一つの報酬でございまするし、また生活の資になる事柄でございまして、それは民間においても最近では定着をいたしましたように、春闘というような場を中心にしてそれぞれの展開がなされておる。したがいまして、それに応じた調査をやって、較差が出ればその措置を講じていくというのがしかるべき措置ではないかということでやっておるわけでございまして、それと同様に、退職手当は退職手当としてどうなのか、また年金は年金としてどうなのかという対応のやり方というものは、当然やるべきではないかというふうに考えております。  それで、いま先生も御指摘になった退職手当は、そういうような一つの調査の結果出てまいりましたものについて政府として措置をされた、法案がまだ確定的に通っておりませんけれども、そういう方向で彫ろうと思います。これはやはり生涯給与に対する対策の一歩であるという考え方として私も受け取っております。また、もう一つの年金の問題にいたしましても、受給資格としての年齢の問題について、従来は五十五歳であったものを六十歳にだんだん近づけていく、そういうような配慮は、やはり生涯給与論、官民のそれぞれの制度対応という見地からしかるべき検討がなされ、対策が講ぜられておることではないかというふうに理解をいたしております。  したがって、そういう意味における生涯給与については、私といたしましても、当然配慮すべきでありまして、それぞれの給与、年金、手当ということについて、官民対応というものはしかるべき基準においてやっていくという方向は賛成でございますということを申し上げておる次第でございます。
  24. 川崎二郎

    川崎委員 ただいま総裁より、給与給与である、しかしながら年金、退職手当で上回っている面があるならば早急に是正をすべきであるという御意見であったように思います。  それでは、先ほど勧告概略の中にも触れておりましたけれども、指定職給与改善について五・二%の改善勧告しております。まあ実質は民間と二五%あるんだという話になっておるわけですけれども、指定職というのは、民間企業でたとえれば役員に相当する。またわれわれ国会議員初め特別職については、歳費や給与抑制がいま検討されておる時期でございます。民間企業においても経営が困難になるということになれば、まず役員の給与という面の抑制が当然考えられるわけでございます。現下の国の赤字の情勢ということから考えれば、指定職はむしろ率先して抑制をすべきではないかという論も当然出てくるかと思います。また比較をするならば赤字の民間企業というものの役員を比較対象にとってしかるべきではないかという論も出てまいるかと思います。この指定職給与問題について、総裁のお考えをもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  25. 藤井貞夫

    藤井説明員 指定職は具体的に申せば局長さん、次官さんの俸給ということになるわけでございます。これは御指摘もございましたように、従来から民間企業の役員の方との比較でもってその傾向を見まして措置をするということでやってきております。ここしばらくずっとこういう情勢でございますので、いま御指摘になりましたような線で抑制ぎみ措置をずっと続けてまいりました。その結果、二五%程度の差ができるということになったわけであります。これを調べておりますのは、一定の基準でもってやっておりますので、赤字のところも当然対象としては入っております。そういうことは申し上げておきたいと思いますが、その結果、差ができておるということではあるけれども、しかし、そうかといっていまのこういう情勢上、二五%一挙になんということはとてもできない、やはり自粛をしていかなければならぬというような配慮をいたしました結果、しかし、せめて一般並み程度のものはいかがであろうかということでお願いをいたしたということでございます。  これは、給与制度全般を取り扱っておりますわれわれの立場で申し上げますと、実は給与というのは一つの職責に応じてやっていく構成に相なっておるものでございますので、当然民間との対比もございますけれども、指定職俸給を決める場合におきましては、何といっても、やはり一般職の中のたとえば一等級、一等級から指定職に上がってまいりますので、それとの対応をどういうふうにやっていくかということを一番基本に据えて考えておるわけであります。そういうことでやりてまいりますと、そのうち指定職だけ抑えていくということになりますと、一等級から指定職になりました際に、かえって俸給が下がるということが出てこないとも限らない。これは給与制度として、そういうものは人事院としては勧告内容として取り組むわけにはまいりません。そういうような配慮がございますが、それと同時に、これも先生御承知のように昨年、一昨年引き続いて指定職については給与改善の実施時期を半年おくらせる措置で十月実施ということに相なりました。そういう措置が、政府としてもこれは別途の観点から講じられておるわけでございます。  ただ、そういう場合に、人事院としては、やはりいろいろ周囲に目を配っております一つの例として申し上げますと、まだ数はそれほど多くはございませんですけれども、実施時期をずらすということになって半年ということになりますと、実際に対応する一等級の人の手取りよりも年間の手取りで言えば指定職の方が少なくなるというような実例もぼつぼつ出かかっているという状況もございます。  もう一つは、指定職と一番上の総理大臣、国務大臣の間にいろいろな特別職が配置されております。裁判官、検察官等を初めいろいろな特別職の方々がその間にずっと配置されるわけです。その幅がだんだん狭まってまいりまして、その配置の状況が非常に窮屈になってまいっております。そういう点、将来の展望をいたします場合においては一つの大問題になりかねないというような感じも持っておるわけですが、まだ本年あたりはそこまでは行き詰まったことにはまいっておりませんが、それはそれといたしまして、指定職給与については、やはり一般情勢をよく勘案して、抑制方向という線を堅持して、本年の勧告の場合でも措置をいたしたりもりでございます。
  26. 川崎二郎

    川崎委員 ただいまの御答弁でございますけれども、東京都においては鈴木知事が給与の半額を返上されている。また私の田舎のことになりますけれども、財政再建中の団体は、ある一時は三役の給料が一般職の給料よりも下回るという現実の姿もあったようでございます。そうした点もぜひ人事院として御賢察をいただきたいと思います。  最後に、給与担当大臣たる中山総務長官にお尋ねをさせていただきます。  政府は従来から人事院勧告を尊重するという基本的なたてまえに立ってきた、また十年間これを完全に実施してきたところでございます。ただ、先ほどからの論議に出ておりますように、ことしは昨年までとは大きな違いがあるというふうに考えるものであります。もちろん公務員給与の適切な抑制に触れた臨調の第一次答申というものの存在でございます。またその答申に対して政府は七月十七日、答申を最大限に尊重をする旨の閣議決定を行っているのでございます。人事院勧告の基本的尊重といういままでのたてまえと、財政再建を増大の課題とする鈴木内閣の姿勢、臨調答申の最大限尊重の閣議決定、そうした要請、また厳しい財政下における国民の納得、ことしの給与改定問題に対処される給与担当大臣として、総務長官のお立場につきましては大変御苦心があろうというふうに感じておるわけでございますけれども、その辺について総務長官の御見解をお尋ねを申し上げたいと思います。
  27. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生ただいま御指摘のように、昭和四十七年以来公務員給与に関する人事院勧告というものが十年間完全実施という形で来たわけであります。その間日本の経済が非常に高度成長を遂げておった時代、また後半になって石油ショック等もございましたけれども、給与を決定する際国会が最高の意思決定機関でありますから、国会がお決めいただくわけでございますけれども、その際にも、やはり経済成長また民間の状態あるいはまた公務員の諸君が公務に精励するための基本的な生活の安定というものを踏まえた御意思の決定があったと私どもは考えております。  しかし昨年あたり、いわゆる人事院勧告を受けました政府公務員給与勧告をどうするかということで、財政事情が非常に悪いと言われた昨年、私ども給与関係閣僚は何回かの会議を重ね、財源の逼迫を強く主張する財務当局にもお願いを申し上げて、勧告の完全実施ということで昨年は十月の末に決定を見たようなことでございます。最終的には国会がお決めいただくわけでございますが、今年の財政事情というものは、先生御指摘のように、昨年よりもさらに厳しい情勢にあると私は給与担当の大臣としても認識をいたしております。そういう環境の中で、この安定してきた十年間のいわゆる労使の安定状況、これが日本の社会にはやはり大きな影響を与えていると考えております。私といたしましては、こういう厳しい情勢の中で、またいまもお話のあった臨調政府に対する意見が出ておりまして、政府はそれをできる限り尊重するということを閣議決定いたしておる、こういう中で、公務員の諸君が国民のために奉仕を一生懸命やれるような状況をつくることが給与担当大臣としても必要でございますが、厳しい情勢の中でできるだけ誠意を持って努力をし、国民全体がなるほどこれがやはりしっかりした姿であるというふうな御認識がいただけるような結論が出るように関係閣僚会議でも努力をしてまいりたい、このように考えております。
  28. 川崎二郎

    川崎委員 ただいま長官の御答弁ありましたように、これから人事院勧告の取り扱いについては、給与関係閣僚会議の場を通じてさまざまな角度から検討していくという御答弁でございましたけれども、その決定の時期については、総務長官として大体いつごろというふうに見込まれているか。九月の末より秋の行革臨時国会が始まります。そのときに関係法案が提出されるかどうか。総務長官から今後の見通しについて明らかにしていただければお答えをいただきたいと思います。
  29. 中山太郎

    ○中山国務大臣 勧告に関する給与関係閣僚会議がこれから引き続き開催をされると思いますけれども、いつごろその結論が出るかということは、現時点では申し上げるわけにはまいらないのでございます。臨時国会の召集も新聞紙上言われておりますけれども、まだ国会召集が国会の御意思として決まっておりません段階で、政府といたしましては、いつどのような形で法案の御審議をお願いできるかということは、現在のところお答えを申し上げる立場にない、そのように御理解をいただきたいと思います。
  30. 川崎二郎

    川崎委員 それではどうも御答弁ありがとうございました。  以上をもちまして私の質疑時間が終わるわけですけれども、最後に、公務員給与改定問題ということについて一言申し上げたいと思います。  単に今年度予算の追加財政需要という問題としてだけではなく、広くわが国の労働関係全般もしくは恩給や年金にもかかわってくる非常に幅広い影響を持つ問題であるということは言うまでもないわけでございます。厳正な官庁綱紀の保持、効率的な公務の運営、その確保という課題があると同時に、先ほどから審議の中で触れましたように、厳しい財政事情下、公務員給与改定国民の納得というものがまず中心にならなければならないと思います。ついては、国民に理解をいただく上において率先垂範というものをまずしていかなければならない。したがって、大臣そして国会議員、そして指定職給与問題。またもう一つは、先ほど人事院総裁からも御答弁いただきました生涯所得の官民較差の是正、こうした問題、特に退職手当、年金問題というものを明確に処理した上、総務長官を初め給与関係閣僚会議において慎重な検討をしていただいて決定をいただく、そんな手はずを踏んでいただきたいということを御要望申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  31. 江藤隆美

    江藤委員長 午後零時二十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後零時二十三分開議
  32. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  質疑を続行いたします。岩垂寿喜男君。
  33. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最初に人事院勧告について人事院にお尋ねをいたしたいと思います。  八月七日に五・二三%アップ、一万一千五百二十八円の給与改善勧告を行いました。暑い中を御苦労さまでございました。五・二三%という数字を私ちょっと伺ったときに、これは低いな、率直な感想でした。人事院民間賃金調査と労働省その他の春闘賃上げの結果の調査では、その方法が違いますから、その点について細かく申し上げるつもりはございませんが、にもかかわらず、たとえば労働省の調査では、ことしの春闘結果というのは七・六八%でした。昨年は六・七四%ですから、昨年と比べて〇・九四%の伸び。これは労働省の数字であります。それでは人事院勧告はどうかというと、ことしは五・二三%、昨年は四・六一%ですから、したがって〇・六二%しか伸びておりません。労働省の方は〇・九四%、人事院は〇・六二%。私は、ことしの春闘の結果では五・五%前後にはなるのではないだろうか、率直なところ思っておりましたし、一、二のマスコミもそういった報道をなさっておられました。ところがその観測は間違ったわけであります。これらの低い勧告に終わった要因というのはどんなところにあったのでしょうか、率直に伺ってみたいと思います。
  34. 藤井貞夫

    藤井説明員 それぞれの専門の筋々から見ますると、いま御指摘になりましたように、ことしの人事院勧告の率というのが意外に低いではないかというような見方というものは私はあり得ないのではないかという感じは持っております。ただ、われわれの方の調査は、専門家であります先生には申し上げるまでもなくよく御承知のとおりでありますが、形式的に申せば、民間の春闘の相場とか何とか、そういうものをわれわれの方で調査をするわけではございませんので、四月時点で官と民との実額を個別に比較をして、高いか高くないかということを突き合わせてその結果を出すというやり方をもやっておるわけでございますので、要するに、相場というものが直接に反映すべきものであるという結論にはならないのは当然でございます。  ただ、全体としての傾向というのは、やはりそれなりに意味があるわけでございまして、そういうことでは、普通の場合には、春闘のそういう相場と、それから人事院勧告較差というものが大体見合うと申しますか、そういう傾向をとることが多いことは、これは事実でございます。ことしの場合は、大手の春闘の結果のベースアップ率、労働省の関係、またその他の種々の統計が出ておりますが、春闘の初めのときはかなり上向いた結果が出るのではないかというような予測も確かにあったと思います。ところが実際に調査をやってまいりましたところによりますと、中小企業等をわれわれの調査ではむろん対象として調べておりまして、その結果等が織り込まれたことの集計の差がそこに出てまいったのではないかというふうに推測をいたしておりますけれども、このような結果が出てまいったということでございます。  先刻、概要説明でも申し上げましたように、これは仲裁裁定の率をも下回るということで、仲裁裁定よりも下回ったというのは過去に一回例があるだけでございます。二回目の率ということの結果が出たということでございます。この情勢の分析等については、これから資料に基づいてさらに深くいろいろ検討はしてまいるつもりでございますけれども、要するに、初め予測されたほどの伸びにならない。特に中小企業系統では、例年に比してやや非常に着実といいますかじみな結果が出てきた。その集積がこういう結果に相なったのではないかというふうに考えております。
  35. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま中小企業の伸びが十分でなかったとおっしゃいましたけれども、日経連の調査などによると均衡していますね。余り数字がかけ離れていません。だから、ちょっとその辺のところがよくわからないのですけれども、中小企業の賃上げ結果というのを私労働省に伺いましたら、まだ全国集計が終わってないと言うわけです。人事院はそれ持っていらっしゃいますか。中小企業というプロパーでは出せませんか。その点どうです、給与局長
  36. 長橋進

    ○長橋説明員 私ども手元に持っております資料といたしましては、春闘が一応終わった段階、時期における各調査機関発表による春闘賃上げの推移というかっこうで、その中に全国中小も含めたかっこうの数字というものは把握しております。それで申し上げますと、御指摘のように、中小につきましても、大体アップ率としましては七%台に乗っておるということでございます。額はともかくといたしまして、アップとしては七%台には乗っておるということでございます。ただ、五十一年からの傾向を見てまいりますと、千人以上の企業比較いたしまして、五十一年から五十五年まではアップ率でも千人以上を上回っておりますけれども、五十六年について見ますと、アップ率についても下回っておるということでございまして、やはり先ほど総裁から御答弁ございましたように、そういういろいろな意味の結果というものは反映されたのではないだろうかというふうに受けとめております。
  37. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 数字の問題ですから、そのやりとりをしても仕方がありませんが、いま申し上げたように、どうも中小も大手もことしの春闘の場合はそんなに開きがなかったという印象を私は率直に持っていますので、その点は強調しておきたいものだと思います。  そこで、伺いますが、公労委の仲裁裁定は定昇抜きで五・三%、人事院勧告はこれと比べてもかなり低いということをいま総裁が言われました。しかも、余り前例のないことだということも強調されました。漏れ承るところによるとというふうに言っては大変言葉が正確ではないのですが、公労委の仲裁の際に、民間準拠のとり方について委員会の中で議論があったということを聞いております。これはあったわけです。しかし、五・三%という数字の背景がさっき指摘をいたしました労働省の統計というものであったことは事実だと思うのですけれども、労働省、その点はどのようにお考えになっていらっしゃるか、伺っておきたい。
  38. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 お答えをいたします。  本年の公労委の仲裁裁定におきましては、「いわゆる賃上げ相場を形成するとみられる主要企業動向を事務局調査に基づき検討した結果、賃金引上げ率の平均は定期昇給分を含め七・六四%程度になるものと推定した。」それをもとにしましてといいますか、「公共企業体等の職員の賃金については、従来どおり民間賃金の動向を重視して決定することが妥当であると判断した。」こういうように仲裁裁定では書かれております。
  39. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま労働省から御答弁ありましたが、一部上場二百八十八社というところが一つのポイントになったわけです。これは否定すべくもないわけです。私はそれ以上立ち入って議論をしません、どっちが高いか低いかという議論に入っちゃいますから。そういう議論ではなしに、そうだとすると、人事院勧告について言えば、民間準拠というもののとり方がやはり少し問題になってきはしないだろうか、こう私は思うのです。その意味は、勧告の場合は、企業規模百人以上、事業所規模五十人以上が対象であります。だから、勧告には中小企業も入っている、このように理解してよろしゅうございますね。
  40. 長橋進

    ○長橋説明員 御指摘のとおり、調査対象事業所の中には中小企業も入ってございます。
  41. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先ほど川崎委員から言われましたけれども、事業所別、規模別のとり方についていろいろ意見がございました。中小企業にもっと基準を合わせる、ポイントを合わせるべきではないか。私はそれはいろいろ意見があろうと思いますけれども、いま指摘をいただいた意味は、中小企業も網羅して人事院勧告という結論が生まれてきているということだけは事実だろうと思うのであります。  そこで、お尋ねをしたいのですけれども、皆さん労働省といわず政府あるいは人事院といわず、たとえば国家公務員について言えば五十万人、まあ日本株式会社という名前は余りいい言葉じゃございませんけれども、そういう機能を持っているわけであります。だから、調査対象の規模を縮めなさい、低めなさいなどという議論ではなしに、私はむしろ五十万の労働者、これは他に比類のない大手企業ということになるわけですが、民調の比較事業所の規模というものをもうちょっと大きくするということが大事じゃないかというふうに思いますが、これはやりとりの議論、川崎さんの議論と私の議論になっちゃって、総裁が中をとってという議論になっちゃいますので、言っても意味がないのかもしれませんが、あえて強調しておきたいと思います。
  42. 藤井貞夫

    藤井説明員 先刻川崎委員の御質問に対してお答えをいたしましたとおりでございまして、この調査対象たる民間企業の規模のとり方についてはいろいろ議論があるわけでございます。その立論の背景その他については、それなりのしっかりとした理論、立場というものがあることだろうというふうに理解をいたしておるわけでございます。ただ、従来人事院調査によりますと、企業で百人、事業所規模で五十人ということで調査方法を確定をいたしましてから、三十九年以来ずっとその方式で来ておる。私は、それによって較差が出るわけですから、見方によっては、やはり一つの労働慣行として定着をしてきておるものではないかという考え方もいたしております。  しかし、それにもかかわらず、毎年のことでございますけれども両論に立脚する議論がございます。組合の諸君の方から言えば、やはり小さ過ぎる、少なくとも千人にすべきだというような議論がございますし、また一方では、国民感情その他から見れば、もっと規模を低くしていいんじゃないかという議論もあるわけでございます。それらを勘案した上で、私たちがいま考えてずっとまいっておりますように、現在のわれわれの調査対象になってまいりまする民間従業員というものは、全体の六割程度になるということでございまして、やはり代表率から言えば、ほぼ合理的なところではあるまいかという両方の立場から、私はいまのやり方というものは、やはり相当合理性のあるやり方ではないかというふうに確信をいたしております。
  43. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、ことしの春闘というのは比較的早く解決をした、だから春闘結果が勧告に反映することを大いに期待をいたしてまいりました。ところが実際に見ると、どうも逆になっているという印象ですね。  春闘の遡及の事業所は、ことしは二五・四%であります。これまでは二〇%前後でしたから、これは多い数字になります。それは八一春闘の妥結の早さが反映したものだというふうに考えることはできます。  ところで問題は、本較差の問題になるわけですが、本較差は四・〇六%で、これは低いですね。人事院調査した四月分の給与額とこの——瞬間風速という言葉を使いますが、四月分の給与というものには、第一には、春闘の賃上げ要求が妥結をして支払いが終わった部分、つまり新給与の部分ですね、それから二番目は、妥結はしたけれどもまだ精算が行われていない、三番目は、妥結もしていない、したがって精算もできない、三つの種類が率直に言ってあるわけでございます。第二の場合というのは、春闘遡及分という形で救われるわけですけれども、第一と第三はすべて本較差に入ってくるわけですね。そうでしょう。そうしますと、第一と第三というのは本較差に入っている。この第一と第三の場合、事業所比率というのはどんなことになっていますか、ちょっとお聞かせいただきたいと思うのです。
  44. 長橋進

    ○長橋説明員 いま御指摘のいわゆる春闘で妥結していない、そういうことで改善も支払いも行われていないという事業所につきましては、正確に数字は出しておりません。ただ私どもは、五十五年の労働省の調査等によりますと、この春闘、四月において改定された事業所というものが約八〇%あるというふうに聞いております。
  45. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 前にこれは角野さんだったと思うのですが、公式な形じゃないのですけれども、三対三対三ぐらいのバランスというふうなことをおっしゃったことがございますけれども、そういうふうに言えるとしても、結局私は、ことしの春闘の結果というのは、いまの妥結の状況ということから見ると、どうも反映が不十分ではないか。反映していないとは言いません。しかし、非常に反映が弱いのではないか、このように申し上げなければなりません。つまり私の言うところの第三の場合が多い。ということになりますと、勧告は昨年のベースで比較をして民調の比較になるわけですね。私は、民間調査の場合、春闘の賃上げが終わっているのかどうかということを厳格に言えばよく調べて、終わっているところで比べなければ、終わっていないところ、つまり昨年のレベルで比較をするというやり方自身は、正確さを反映する上から言えば問題があるのではないか。だから、四月という時期がございますから一概には言えませんが、やはり春闘が片づいているのかいないのかということで、いるところを対象にしないと、本当の意味の比較にはならないという点を強調して、その点はいかがお考えでしょうか。
  46. 長橋進

    ○長橋説明員 確かに正確な較差の算出という点から申し上げますと、いまお尋ねの第三の分野につきましては問題として残るわけでございますけれども、しかし、その分につきましては、それぞれ他の給与変動要因もいろいろございますから、それとあわせまして来年度の四月において手がたく精算されるというかっこうになるわけでございまして、現在の調査の技術、手法から申しますとやむを得ないのじゃないかというふうに考えております。
  47. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 手がたくというような言葉をお使いになるわけですけれども、とにかく一年おくれることは事実なんですね。私はこれだけは申し上げておきたいと思うのです。  そこで一時金の問題。これは両三年私は復元の措置国会の決議を含めて要請をいたしてまいりました。ことしもだめでした。先ほど総裁おっしゃいましたけれども、民間給与は四・九八カ月。四・九八カ月というのは四・九カ月に近いのか五に近いのかなんということは申し上げるまでもない。世の中では四捨五入という言葉がございますが、九捨十入というような言葉は余りないわけでございますから、その意味で言うと、私は一歩譲って五にするということが困難であったとしても——民間の場合では一時金というのはコンマ二まで決めていますよ、私の承知しているところ。たとえば夏は二・〇三カ月というようなぐあいにコンマ二けたまで見ています。ところが人事院はコンマ二けたは切る。こういうふうになるとすれば、やはり問題があるので、民間並みに、たとえば四・九八カ月であれば〇・〇八を切り捨てるのじゃなしに、支給率を四・九八カ月にするというのが自然だろうと私は思うのです。その辺はお考えになることはございませんか。あえて申しますと、〇・〇八を切り捨てることによって平均給与でどのくらい、まあ二十二万円ですけれども、デメリットになるのか、マイナスになるのか、その辺の数字も平均でいいですからちょっとお示しいただきたいと思うのです。
  48. 長橋進

    ○長橋説明員 現在比較ベースが約二十二万ということでございますので、〇・〇八ということになりますと約二万円弱ということになると思います。
  49. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いや、切り捨てるということがいかがなものかということですよ。
  50. 長橋進

    ○長橋説明員 確かに特別給比較方法につきましては、現在のベースから考えまして出た結果をそのまま反映させるべきじゃないかという意見もございます。しかし、特別給ということになりますと、民間におきましては、景況の変化を敏感に反映した種類の給与ということになるわけでございまして、公務員特別給になりますと、支給月数を法律で決めるということもございましょうし、やはりその性格から見まして手がたく取り組んでいくというのが適当じゃなかろうかということもございまして、小数点一けたの月分で二けた以下は切り捨ててきておるというのが現状でございます。四十年以降大変景気がよろしかった時分、毎年毎年伸びてまいりましたときには、そういうことで二けた以下は切り捨ててきたということでございますし、五十年代に入りまして伸びが鈍って、特別給の支給率が落ちてきた場合には、小数点二けた以下を切り上げることによって支給月分を維持してきたという関係がございまして、このやり方は一つの定着したやり方として、やはりそのまま維持することが適当ではなかろうかということでございまして、現在はそのとおりやっているという結果から、小数点二けた以下は切り捨てたということでございます。
  51. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私はいま給与そして特別給について二、三数字を挙げて指摘をいたしました。給与についても、別に私の勘といいましょうか、五・五が正しいなどということを申し上げるつもりはございません。ただ、中小企業が低目であったというデータが、これはいろいろな資料が出てくると思いますけれども、どうも私はぴんとこないという状況のもとでは、給与自身も少し抑制ぎみだ。それから一時金もいま申し上げましたように切り捨てがある。全体として見て、ことしの勧告というのは、こころもちという気持ちが人事院の中にあったかないかは別として、抑制ぎみであったというふうに私は考えますが、その点の人事院の見解を承っておきたいと思います。
  52. 藤井貞夫

    藤井説明員 累次申し上げておりますように、われわれ仕事をしてまいります際には、経済、社会の諸状況変化、その他の推移というものもしさいに資料をそろえて検討した上で結論を出すというやり方をずっと続けてまいっておるつもりでございます。しかし、その基本というのは、合理的なはっきりとした統計調査の結果を踏まえて結論を出すというやり方を堅持してまいってきておるわけでございます。  そういう意味で、ことしの場合も、従来の手法をそのまま踏襲して、厳密な資料の分析のもとに結論を出したわけでございまして、そこに抑制をするとかなんとかという気持ちは絶対に前提として持ってやったということではございません。あくまで厳密に厳正な資料の結果に基づいて御勧告を申し上げたということでございます。
  53. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 人事院勧告の中に、これは説明の文章でございますが、四番目に、   公務員給与あり方については、行政改革との関連において、いろいろな論議がなされているが、本院としては、既に広く認識されているように、公務員が勤労の対価によって生計を維持する者でありながら、一般の勤労者とは異なって労働基本権制約され、勤務条件の決定に直接参加できる立場にないことに十分な考慮が払われなければならないものと考える。公務員については、労働基本権制約の代償措置として人事院勧告制度があり、情勢適応の原則に基づいて公務員給与民間給与水準に追い付かせる趣旨のもとに これは例年は「均衡を図る」というふうになっていたと思うのですが、そこのところの文章は別にして、  行われる本院の給与に関する勧告がほとんど唯一の給与改善の手段となっているのであって、人事院勧告を通じて公務員給与を決定する現行の方式は、公務員給与民間給与と均衡した適正な水準のものとするための確立された制度として維持していくことが、公務員をして安定した労使関係の下、安んじて職務に専念させることとなり、公務の公正かつ能率的な運営に寄与するものであると考える。 という文章があえて入っております。また総裁の談話の中にもそういう意味のことが含まれております。これは労働基本権制約の代償措置としての勧告役割りをこのように理解され、そのように位置づけて、それゆえにこそ完全実施が行われるべきであるということを政府並びに国会人事院の立場として明らかにされたものだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  54. 藤井貞夫

    藤井説明員 その点については御質問のとおりに理解をいたしております。
  55. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 総務長官に少しお尋ねをしたいのですが、前の九十四国会定年制審議の際、これはたしか五月十四日だと思ったのですが、いまそこにおられるわが党の渡部委員から、後ほど触れられると思うのですけれども、その中に、人事院勧告に対する質問に対して総務長官は御答弁なさっていらっしゃいます。少し長くなりますけれども、非常に大事な言葉遣いでございますから、きちんと読みますので、よくお聞きをいただいて御答弁を煩わしたいと思います。  ○中山国務大臣 私は、昨年の総務長官就任以来、この公務員給与引き上げに関する人事院勧告というものはすでに十年定着をしておる、これを完全実施することによっていわゆる労働の基本権の代償機能というものが果たせるという考え方を実は貫いてまいっております。昨年も大変財政事情が厳しゅうございました。そこで、昨年度大蔵当局との交渉においても、なかなか一度や二度の交渉ではうんと言わない、関係閣僚会議だけでも数回開きまして、やっと完全実施をするというところにこぎつけたわけでございますが、今年も ことしのことですよ。  大変財政事情は厳しかろう、補助金のカット等もございますから厳しいということは私どもよく認識をしておりますけれども、私は粘り強く大蔵当局に交渉して完全実施を維持してまいりたい、このように考えております。 大変明快な御答弁であります。今日も変わっていませんね、たった三カ月前の話です。
  56. 中山太郎

    ○中山国務大臣 そのように御答弁を申し上げたことは、私もよく記憶をいたしております。今日変わってないかというお尋ねでございますが、私はそういうような御答弁を申し上げた基本的な考え方というものは変わっていない。というのは、安定した労使関係を維持するために、やはりこの公務員の方々の基本的な生活権というものを維持するということは、やはり国家にとって非常に大切なことなんです。この十年間の慣熟した慣行の中で、やはり日本の公務というものは非常にうまく運営されてきた、それに変わりないと私は思うのです。  ただ、今回臨時行政調査会答申が出まして、七月十七日の閣議内閣答申を尊重するということを決定したわけでございますから、私はこの内閣閣議決定というものを尊重しなければならない立場におるわけであります。そういう立場にありながら、できるだけ公務員の方々が国民のために奉仕をしていただけるように、また国民の側から見てなるほどと思われるような結果が出るように、誠意を持って努力をいたしたい、このように考えております。
  57. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 かなり後退をした感じを私は受けます。私の主観かもしれません。  問題は、総理府総務長官は給与担当大臣でございます。そこで伺いたいのですが、臨調というのは、確かに国会で設置法が決められて設置されています。しかし、はっきり申し上げておきたいのは、内閣総理大臣の諮問機関であります。しかも、その臨調の作業は総務長官がお答えになったこの時点ですでに続けられておりました。その基調にある議論というものが新聞報道などを通じて明らかになったときに御答弁をいただいた。確かに答申はその後でしょう。しかし、事柄は、経過から見るならば、そのことは御承知の上で御答弁をいただいた。  そこで伺いたいのは、憲法が保障する労働基本権の代償措置として、人事院勧告制度が公正中立に数字に基づいて、先ほど総裁からも言われた勧告が行われる、どっちを重視なさるんですか。その点、率直にお答えをいただきたいと思います。
  58. 中山太郎

    ○中山国務大臣 人事院勧告というものが労働基本権制約の代償機能をいたしておる、これは先生御指摘のとおりであります。従来、この完全実施をやるということで十年間やってきたわけであります。問題は財政事情がどうかということが一番の根幹にあるのではないか。やはり財政事情がよかった時代というのは、この完全実施にはとかくの問題がなかった。昨年、この財政事情が非常に厳しくなった時点で、いわゆる給与関係閣僚会議を数回開いて、財務当局と財源の捻出について激しいやりとりが行われなければこの結論が出なかった。昨年よりもさらに悪い事態に今日立ち至っていること、これはもう先生もよく御承知のとおりでございまして、こういう中で、いまお話のあった臨時行政調査会というものが政府に対して中間答申を行って、閣議でそれを尊重すると決定した、この時点は、私が先般国会で答弁をしていた事態の後の条件でございまして、その新しいいわゆる中間答申を尊重するという閣議決定が行われたその閣議には私も参加をしておるわけでありますから、その意味においては、やはり閣議の決定というものを尊重していく責任があろうか、このように考えております。
  59. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 あなたが給与担当大臣なんですから、いろいろ意見があったとしても、しかも公務員の諸君のいわば親分というか、そういうお立場であるわけですね。あなたが少しへなへなとしてしまったらどうなるんだろうかと、みんな見詰めておりますよ。私も同じです。  大事なことは、もちろん臨調が私は軽いなどと申し上げるつもりはございません。しかし、そのときどきにかわる内閣総理大臣の諮問機関であります。憲法は不変であります。しかも労働基本権代償措置という形になっているわけです。私は、願わくは、憲法の立場、つまり代償機能という人事院制度の立場、そのことにぜひ御配慮を賜りたい、このように思います。  ついでにお聞きしますけれども、少し古い話で恐縮ですが、昭和四十四年までは勧告の実施というものは値切られてきた。四十五年、初めて完全実施されてきて以降、それが定着してきた。この完全実施が決められたのは昭和四十四年の十一月十一日であります。先ほど総務長官がお答えになったのは、ちょっと一年のずれがございますが、その閣議で四十五年からは完全実施するという方針を決めたわけですけれども、その閣議の後に、当時の官房長官が、これは異例と言われるような談話を発表しておられます。いかなる困難があっても完全実施する、このように述べられております。これは人勧が労働基本権の代償措置である限り、いかなる困難があっても完全実施をしなければならないという当時の政府の姿勢を示したものだろうと私は思います。その点は今日も変わっていないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  60. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は、人事院勧告というものがどのような形で実施されるかということについて、私の立場で誠意を持って努力をいたしたい、これは変わっておりません。
  61. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 念のために、申しわけないのですが、昭和四十八年の全農林の警職法闘争事件に関する最高裁判決、これはもう私が言うまでもないと思うのですが、いわゆる逆転判決と言われる点で私どもも問題を感じますけれども、それはそれとして、最終判決でございます。憲法第二十八条に保障された労働基本権は、当然に公務員労働者に保障されるべきだと私は考えます。しかし、いま申し上げたように、全農林事件の最高裁判決というのを読みますと、こう書いてあります。   以上に説明したとおり、公務員の従事する職務には公共性がある一方、法律によりその主要な勤務条件が定められ、身分が保障されているほか、適切な代償措置が講じられているのであるから、国公法九八条五項がかかる公務員の争議行為およびそのあおり行為等を禁止するのは、勤労者をも含めた国民全体の共同利益の見地からするやむをえない制約というべきであって、憲法二八条に違反するものではないといわなければならない。こうなっている。これは全文です。  繰り返して言いますけれども、適切な代償措置が講じられているから憲法二十八条に違反するものではないと言っているのであります。労働基本権制限の合憲の理由に、代償措置が、しかも代償措置の履行が位置づけられているのであります。もし代償措置が伴われていないということになれば、公務員の諸君が争議行為をやってもしようがないということになっちゃうですよ。最高裁判決はそのことをパラドックスとして示しているのであります。この最高裁判決の立場というのは、政府は当然尊重していく、尊重どころか、これは当然のことだというふうにお考えになりますか、どうですか、念のために伺っておきたいと思うのです。
  62. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今後この勧告の扱いについてわれわれが給与関係閣僚会議で論議する場合には、このいわゆる論告文というものが十分一つの参考資料として論議の中に織り込まれるというふうに理解をいたしております。
  63. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 論告ではなしに判決ですから、明らかにしておきたいと思うのですが、総務長官は、この立場、つまり最高裁判決はこうなっていますよと、逆に言えば、もしその代償措置というものが不十分であった場合には、最高裁判決は逆の意味、つまり争議というものを禁止する、そのことは不可能だと私は思うのですが、最高裁判決の立場というのはいかなる場合でも明らかにしていただけますね。これは言うまでもないことであります。
  64. 中山太郎

    ○中山国務大臣 事実は事実として私は申すつもりでおります。
  65. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう一つ伺っておきたいのですが、私はことに一九七三年のILOに提出した政府意見というものを持っています。これは「結社の自由委員会に係属している日本関係事件に関する日本政府の総括意見」という文書です。その中のパートII「日本関係事件の背景をなす日本の公共部門における労働組合運動、労使関係の実情」というくだりの中に次の文章があります。「わが国においては公務員および公共企業体の職員はストライキを含む争議行為は禁止されている。しかし争議行為に見合う必要な代償措置は以下述べる通り完全である」と述べられているのであります。これはILOに対する日本政府の公式意見であります。完全というのは何ら欠けるところがないということであります。もし勧告を値切るというふうなことがあれば、それは完全とは言えません。ILOに対して完全であると報告をして、国内では不完全な実施だということであったとすれば、国際的な公約に違反することになりかねません。私、念のために申し上げておきますが、この政府の総括意見がございましたものですから、当時のILOのドライヤー委員会では、この問題に対する審議はやめた、完全であるというから、それじゃいいじゃないか、こうなった経過があるわけであります。そうしますと、国際的な約束、これは過去の経過を含めて当然日本政府は守ると断言できますね。どうも大変くどいようで恐縮ですが、念のために御答弁を煩わしたいと思います。
  66. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ILOに政府の送った書簡、これは現実のものでありますから、その問題も十分踏まえてわれわれは論議してまいりたい、このように考えております。
  67. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 人事院勧告関連して、先ほども米価の議論が行われました。米価の政治加算を値切ったから公務員給与も値切れという意見でございます。非常にもっともらしく聞こえるのです。ただ、私はここではっきりさせておかなければならぬのは、米価審議会の答申はゼロ答申なんですね。これは委員長、一番専門ですからおわかりのとおりですが、三者構成の審議会でゼロ答申なんです。結果的には、そのゼロ答申に対して政治加算を乗せのでしょう。だから私としては、米価を下げたから公務員給与を下げなさいという議論は連動してないと思うのです。その点は当然いろいろやりとりがあると私は思いますが、その点頭に置いていただきたい、これだけ申し上げておきたいと思うのです。  さて、人事院勧告の問題について質問をしてまいりました。最高裁判決がございます。国際的な公約である意見書がございます。代償措置は完全である。そして総理府総務長官のわずか三カ月前の明快な御答弁がございます。これを値切る方にクリアするということは、私は大変なことだと思うのです。判決、国際公約、よもやそういうことはなさらないと思いますが、せめて総務長官はその立場というものを給与関係閣僚会議の中できちんと主張していただきたい。そして、財政事情があるからという議論になってしまえば、人事院勧告制度が何のためにあるのか、私はあえて問わなければならない。確かに最近親方日の丸とか非能率の代名詞みたいな形でお役所仕事とか言われる面がございます。公務員が姿勢を正していくことは大前提でございましょう。しかし、公務員といえども人の親であり、家族を持ち、生活を営んでいる生活者であります。勤労者であります。それがその生活を十分に保障されないということになれば、私はそれは重大問題だろうと言わざるを得ません。公務員がその規律の正しさやあるいは不正などということにくみしないでりっぱな仕事をやってきたことの中に今日の日本の発展の一つの要素があるというふうにとらえることができるとすれば、何としても完全実施をやっていかなければならない、私はこのように思いますので、念のために総務長官にもうちょっと歯切れのいい御答弁をいただきたいと思います。
  68. 中山太郎

    ○中山国務大臣 歯切れは決して悪くございませんで、事実を先生には申し上げたいと思います。  私どもとしては、人事院勧告の持っている意味、またいままでの十年来の慣熟した慣習、その中でいまお話しのように安定した労使の関係、こういうものが日本の社会の安定度に非常に大きな寄与をしてきた。これはお話しのとおり私も全くそのような考えを持っておりますが、御案内のように、昨年来の財政事情の悪化、またことしは、特に臨調答申をできるだけ尊重するという閣議決定というものの中で、従来の考え方というものでどの程度十分に効果を上げ得るか、それについては誠意を持って努力をいたしたい、このように考えております。
  69. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 何遍言っても歯切れのいい五月に行われたような答弁はなさらないようなかっこうになっているので、後退だと私は言わざるを得ないので大変残念でございます。願わくは国会において御発言になり、議事録にきちんと載っているお言葉に対して、政治家として忠実であっていただきたい、このことを求めたいと思います。  ちょっと伺いますが、これはちょっと私よくわからないのですが、仲裁裁定ですね。あれはこの前の国会で案件を付して国会の議決を求められているわけでしょう。したがって、臨時国会で処理をしなければなりません。その場合に、たとえば少し値切るというふうなことをお考えになった場合、考えていないからというふうにおとりにならないで、手続論として教えていただきたいのですが、政府が出し直すということは法律的にも前例にもございませんね。
  70. 山地進

    ○山地説明員 私の知るところでは、出し直したという例はないと思います。
  71. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 法律的にもちょっとそれは問題が残るだろうと思います。そうすると、出したものを処理するというのは、与党である自民党が修正するということになるのですか、もしやるとすれば。やる、やらないの前提はこっちに置いておいて結構です。
  72. 山地進

    ○山地説明員 国会がお決めになるので、その主導権をどの党が持つかというのは国会の中のことで、私どもはちょっとわかりませんけれども、どの党かが修正を出して、国会でそれが議決されることになるのだろうと思います。
  73. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは与党がやらなければどこもやるところがないと思うのだが、自分の政府が自分で出したものを、国会がかわったら今度状況が変わったから、これは与党の方で修正をするのだというようなことは、議院内閣制というたてまえから見ても大変問題を残すだろうと思うので、よもやこんなことは自由民主党が幾ら数が多くても——きょうはここに三人くらいしかいませんけれども、まさかなさらないだろうと思うのですが、念のためにお尋ねしておきたいと思います。  人事院勧告の問題はその辺で一つの区切りをつけますが、願わくは私の先ほどからの要請をひとつ積極的に果たしていただきたい、このように思います。  せっかくの機会ですから外交、防衛問題についてお尋ねしたいと思います。  最初に、レーガン大統領が中性子爆弾の生産再開を決定いたしましたが、この決定に関係してアメリカの当局者が、同盟国にこれは連絡済みであるというふうに発言しておられます。総理が同盟関係と言われたわけですが、それはそれとして、日本政府に事前に何らかの連絡がございましたか。
  74. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 御承知のとおり、この中性子爆弾については、従来カーター政権のときにヨーロッパに配備するという決定を一たんし、その後一部のヨーロッパ諸国の反対によってその決定を覆したわけでございまして、一般的には、この中性子爆弾というのはすぐれてヨーロッパとの関係で考えるわけでございます。したがって、アメリカ側が言っております同盟国に対する通報というものは、ヨーロッパの諸国ということを念頭に置いておりまして、日本に対しては協議はもちろん、通報もないわけでございます。
  75. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ことし、鈴木総理は八月六日の広島における平和祈念式に御出席をされました。私はそのことについて率直に敬意を表したいと思います。同時に、そこで述べられた、これは新聞で拝見をしたのですが、あいさつにもごりっぱな内容があったというふうに率直に感想を申し上げたいと思います。あえて読んでみます。   我が国は、世界史上初めて核兵器による惨禍を被った唯一の原爆被爆国として、核戦争に対する限りない憤りと、このようなことを再び繰り返してはならないという固い決意の下に、非核三原則を堅持するとともに、核兵器の廃絶と平和の尊さを全世界に訴え続けてまいりました。   しかしながら、核兵器保有国は、依然として核兵器の製造、実験、配備競争を続けております。このような世界の情勢はまことに憂うべきものでありますが、他方で核兵器廃絶へ向けての国際世論が高まりつつあることは私たちの大きな希望と励ましであります。   私は、戦争と核兵器の脅威から人類を解放し、恒久の平和と人類共存の道をひらくため、たとえ前途にどのような困難があろうとも、更に一層の努力を傾けてまいることをお誓いいたしますとともに、 云々と、こうなっています。  中性子爆弾の製造決定というものがある意味で東西の核軍拡競争を激化させる非常に大きな要因になっていることだけは事実であります。現に米ソの関係の中にそのことがあらわれています。国連の調査によっても世界の核兵器の数は五万個以上だそうであります。その威力は広島原爆の百万個分に相当するという状況の中で、新たな種類の核兵器を製造するということが一体理屈としても許されるかどうか。こんなことはだれが考えたっておわかりがいただけると私は思うのであります。  その立場に立って、鈴木総理大臣が広島の慰霊碑の前で誓われたお言葉の筋道からいくならば、はっきりとアメリカに対して抗議の意思を表明すべきである。現にたとえば国連事務総長などもコメントを出されている。そういう立場から言うと、日本政府が何らの意思表示もなさらないということは何としても不思議でならない。日本政府はこの生産再開についてどのような御判断に立っておられるか、率直に承っておきたいと思います。
  76. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 まず最初に、引用されました広島での総理の演説、核の廃絶に向かって日本政府はたゆまない努力を続けていくというその決意に変わりはないわけでございます。  ただ、この中性子の問題は、ヨーロッパの諸国で、いま若干の引用がございましたけれども、アメリカの決定は、今回はアメリカの国内に配備するということであって、それに対してもちろん異議を唱えている国はございますけれども、あえて反対をしていない国もあるというのが現実でございます。私たちは、軍縮というのは、特定の兵器だけを取り出して考えるわけでなくて、やはりいろいろな核兵器というのがございます。その核兵器すべての体系が均衡がとれ、そして将来はそれが核の廃絶に向かっていくということを期待しているわけでございまして、今後とも政府として、核の軍備管理あるいは軍縮に向かって日本政府なりの努力を続けていく、その場は国連総会もございますし、あるいは軍縮委員会もある、こういう考えでございます。
  77. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 北米局長が御答弁をいただくのは、ちょっと日本政府を代表してといっても無理だろうと私は思います。しかし、いまのあなたの答弁は実は問題なんです。つまり核実験というものが続けられていれば、いかなる国の核実験であろうときちんと意思表示をする、そういう国民の世論と世界の平和を愛する世論が集まっていかなければとめどもなく広がっていくのが現実なんです。新型爆弾というものが開発をされる、それがまたチャンスになって新しい核軍拡競争の歯車が速く回っていくということが現実に示されていく。このこと自身に対して世界で唯一の被爆国として意思表示をするなどということは当然のことではないか。これさえもやらないということになれば、率直なところ、国連で何ぼいろいろなことを主張してみたところで、広島、長崎という犠牲を背負い、ビキニという経験を持ち、数十万のいまだに心と体に傷跡を残したまま生きとし生き続けている人々に対する日本政府の態度だろうか。少なくとも広島で総理大臣が言われた言葉となさっていることとの間にはかなりの距離がある。口先だけだ、あえて私は言わざるを得ないのであります。  防衛庁長官、率直に言って、国務大臣として、中性子爆弾の配備について遺憾だとはお考えになりませんか。新しい核軍拡競争の一つの引き金になっているという事実に対して、唯一の被爆国民の日本の国民を代表する政府の関係者として御答弁をいただきたいと思います。
  78. 大村襄治

    ○大村国務大臣 中性子爆弾につきましては、いろいろな報道が行われていることは承知しているわけでございます。ただ、防衛庁といたしましては、直接の通報を受けておりませんので、具体的なコメントをする段階ではございません。  ただ、国務大臣としてどういう見解を持っているかというお尋ねでございますが、これはいま外務省の政府委員が述べられたのでありますが、私も理想的には核兵器が地上から廃絶されるということが望ましいというふうに考えているわけでございますが、現実の国際社会において、これを具体的に実現していくに当たりましては、現実の国際関係の中で実現可能な措置を一つ一つ積み重ねていくことが肝要ではないか、基本的にはそういうふうに考えているわけでございます。
  79. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、大変遺憾でありますが防衛庁長官の見解に大変怒りを抑えることができません。核兵器を廃絶することが理想として望ましい、何ですか。廃絶をさせなければいけないのじゃないですか。こんなことを繰り返しておったら世界人類が絶滅をするということは世界じゅうの良識のある人たちが言っていますよ。同時に、その核兵器の廃絶を目指すためにはステップ・バイ・ステップ、一歩一歩の努力が必要だ、それはそのとおりですよ。そのステップは、新しく開発されたそういうものに対するきちんとした意思表示、国民の世論、これしかないじゃないですか。理想として望ましいなどというお言葉で、鈴木内閣の閣僚のお一人でございますから、御答弁は御答弁として承りますが、鈴木内閣の姿勢を私は問わざるを得ない。広島でごりっぱな演説をなさればなさるほど、そのたてまえと本音の距離というものを私は実感をせざるを得ません。  お願いをしたいのは——防衛庁長官にお願いするのは恐縮ですが、きょうここに官房長官も外務大臣もおられません。願わくは、時間がかかって結構です、ぜひ政府としてこの問題に対する遺憾の意を明らかにするための御努力を願いたい。このことをお願いできますでしょうか。
  80. 大村襄治

    ○大村国務大臣 ただいま岩垂委員から御要望のあった点を関係大臣に伝えまして検討さしていただきます。
  81. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実はそこの問題についてもっと触れたいのですが、しかし、いま大臣も防衛庁長官しかおられませんので、それ以上お尋ねしてもと思いますので、それはやめます。  防衛庁長官に重ねてお尋ねをいたしますが、ハワイの安保事務レベル協議あるいは防衛首脳会談で、日本の北東アジアにおいて寄与すべき役割りが協議され、その中でアメリカ側から、韓国に対する日本の経済援助と極東有事に際しての日本の協力に関するシナリオの作成が要請をされ、そして合意されたという新聞報道を拝見いたしました。私は、いま問題提起をしたその点について防衛庁長官の御答弁をいただきたいと思います。
  82. 大村襄治

    ○大村国務大臣 わが国は、従来からしばしば申し上げておりますとおり、憲法上集団的自衛権を行使することはできませんので、極東の平和と安定につきましても、政治、経済、社会、文化の各分野における積極的平和外交の展開に重点が置かれることとなるものと考えておるわけであります。  一方、米国は、極東の平和と安定のために軍事面を含め努力してきており、在日米軍もその一翼を担っておるわけでございますが、わが国としましては、このような任務をも有する在日米軍を、日米安保条約及びその関連取り決めに基づき、施設、区域の提供等の形でこれを支持することは、間接的ではあるが、極東の平和と安定に寄与することになるものと考えております。  六月に開かれましたハワイにおける日米安保事務レベル協議におきましても、一般的な形で極東の平和と安定のために日本として何ができるかということについて、右に述べましたような基本的な考え方が確認されたわけでございます。また、この会議では、在日米軍駐留経費の一部負担問題が従来に引き続き実務的に取り上げられた。また、「日米防衛協力のための指針」、いわゆるガイドラインに予定されている極東有事事態における米軍に対する便宜供与に関する研究作業を行うことにつきましても、若干の話し合いが行われたわけでございますが、いずれにいたしましても、特に米側から従来に比べまして新しい考え方が示されたというわけではないというふうに承知しているわけでございます。
  83. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 長官、あちこち歩くの大変ですから、ちょっとここにいてください。  いま御指摘をいただいた、新しい考え方がないというのはちょっと私も本当かなというふうに疑わざるを得ないのですが、極東有事のシナリオというのはどういうことを想定しているのですか。  率直に申し上げて、これはレーガン政権の同時多発報復戦略という戦略のもとでは、たとえば極東有事というものは、一種の実質的な集団安保というところにつながらざるを得ないような、そういうふうに私は危惧をするのです。これはマスコミや国民もそうだと思うのですけれども、そういうものとは違うのだという、だれもがわかるような一線をきちんと示していただきたい。  伝えられるところによると、この九月ごろからでも協議が始まるのじゃないだろうかとアメリカの当局者が言っておりましたね。その辺を含めて、極東有事とは何かということを、国民には全然明らかにされていないのです、ただ協議が始まるとおっしゃっただけで。推測をして新聞は書いているところもございますけれども、その点ぐっと具体的に言いますと、たとえばリエントリーなどということも含まれるのか、あるいは補給だとか輸送、救助、捜索、サルベージ、弾薬、燃料の事前貯蔵、軍需物資の緊急調達というようなことまで全部含んで議論をなさるつもりですか。その点はどうなんでしょうか。
  84. 塩田章

    ○塩田説明員 ただいまお尋ねの中で、ハワイの協議の際に極東有事についてのシナリオがアメリカから提示されて作成されたといいますか、合意したというふうに伝えられておるがというお尋ねでございましたが、事実はそうではございませんで、いまやっておりますガイドラインに基づく現在の研究というのは一段落をするわけでございますが、その一段落した後、今後どういう研究に入るかということについて、新しい研究に入ろうではないかという提案が、これはあったわけです。その場合に、アメリカ側はかねてからガイドラインの第三項に基づく研究をしたいという希望を持っております。これは今回の事務レベル協議以前からずっと言っておることでありますが、第三項と申しますのは、要するに日本以外の極東の地域での紛争の事態に対して、日本政府は米軍に何ができるかというテーマでございます。そういうことでございますから、私どももかねてから、次の段階としてそういうものが考えられるだろうということは想定しておったわけでございますが、アメリカ側からたまたまそういう話がありまして、それに入ろうではないかというごく概略的な合意といいますか、その話し合いはあったわけでございます。  ただ、具体的にどういう内容にするとかあるいはいつから始めるかとか、あるいはどういうスタッフでどういう形で進めていくかというようなことを今後、まずその中身に入る前に話し合いをしていきましょう、そういうことを話し合っておる段階でございまして、日本側としましても、これは防衛庁ではなくて、外務省が非常に絡んでくる問題でございます。そういうことも含めて、日本側として、まずどういうふうな進め方をするかということも考えなければいけませんし、向こう側からもいろいろな提案があるだろうと思います。したがいまして、たとえば九月ごろから云々という報道もあるじゃないかというようなことでございましたが、そういった九月ということを決めたこともございません。ただ、そういうようなことをやろうではないかという合意には達しております。
  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 やろうじゃないかというからには、一定のこれからの防衛庁の方針というものがおありだろうと思いますので、その点も触れていただきたいものだと思っております。
  86. 塩田章

    ○塩田説明員 いま申し上げましたように、いまからやろうとすることの中身について具体的な方針を持っておるわけではございませんが、恐らくガイドライン第三項に基づく事態についての研究ということが向こうから提案されると思うのです。それに対しましては、第三項の問題として取り上げることについては、まあいまからの話し合いによりますけれども、そういうことになるのではなかろうかという感触を持っておる段階でございまして、具体的にいま手続その他のことはやっておりますが、どういうシナリオになるということについての方針を持っておるわけではございません。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その極東有事研究の中には朝鮮半島は含まれていますか。
  88. 塩田章

    ○塩田説明員 御承知のように、ガイドライン三項は具体的な地域を示しておりませんので、「極東」のと、こういうことでございますから、極東の地域ならどこでも対象としてはなり得るわけでありますが、御指摘のような朝鮮半島も当然極東の中に含まれておるということでございます。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまのようなやりとりを前提にして、あさってから行われる日韓外相会談、報道によれば、それに引き続く事務レベルの協議というものがございます。その問題にしぼって少しお尋ねをしてまいりたいと思いますが、その前に、どうしても取り上げておかなければならぬことが一つございますので、時間をかけませんが、ちょっと防衛白書のことをお尋ねしておきたいと思うのです。これは実は私の党の中でも少し議論をしたものですから、どうしても申し上げなければならぬという意味でお尋ねするわけです。  八月十四日に防衛白書が発表になりました。敗戦記念日の前の日に発表するという気持ちも、どの辺にあるのか私はちょっと疑わざるを得ないのですが、防衛白書というのは、第一回のころから自衛隊の実態というものを国民に知らせるということが目的のポイントだったように私は思うのです。ところがことしの防衛白書というのはいろんな問題を含んでいます。  けさ、実は私は読売新聞の投書欄を見ました。私が言うと皆さん方に迫力がなければ困りますので、国民の声として新聞に載っていることを読んでみたいと思うのです。四十九歳の会社員、松隈さんという人です。   五十六年版防衛白書が発表された。その特徴は、ソ連の軍事力増大が西側諸国を脅かしており、わが国もその一員として、自国を守るために防衛力の増強を図るとともに、国民一人ひとりに国を守る愛国心の高揚を強く求めている点だ。自らの力で外敵から国を守るということも、国民が愛国心を持つことも、正しく必要なことではある。   しかし、白書の主張は、明らかにその範囲を超え、専守防衛が基本であるはずの軍事力が、米国の強力な要請により西側諸国の軍事戦略上の一端を担うという、積極的な姿勢を示している。米ソ対立の渦中に巻き込まれる危険性が一層増大することは明白だろう。   それを、国民の愛国心や自由主義社会を守るためという大義名分のもとに正当化しようとするのは、理論のすり替えではないだろうか。また、必要以上に危機感をあおり、愛国心をかき立てることは戦前の政府がとった方法に似ているように思う。   鈴木首相は、防衛問題を総合安保の観点からとらえるべきだと主張しているが、わが国としては、唯一の原爆被爆国としてむしろ堂々と世界平和を訴える外交政策を精力的に展開すべきである。平和は、軍事力の均衡のみで保たれるものではないと思う。ということ。私がそのことを全部認めるということではないのですが、そういう言葉があり、次に「気にかかる「国家体制」」ということで同じような記述がございます。もちろんその後には、一つだけ「現実に立ち時宜を得た主張」という投書もございます。  投書ですからマスコミ、各新聞社の気持ちを表明したものではございません。そこで、客観的だと思われる新聞社の社説。「「平和戦略」を具体的に示す時」という読売新聞の八月十六日。「守るに値する国なら、国民は強制されなくても守るはずだ。今の日本は、守るに値する国だと思うが、不可解なのは、国会や首相の統制下にある防衛庁が、それらを飛び越えて、愛国心の説教をしなければならないのか、ということである。白書は、防衛についての厳密な分析に徹すべきである。」  次に、朝日新聞、八月十五日。「「国を守る」とは何か」「「国を守る気概」を提唱したのは佐藤内閣だった。当時、それをうけて第一回防衛白書も愛国心に言及したが、それから十一年たった今日、防衛当局は、鈴木内閣の姿勢を先導するかのように「愛国心の発露」を国民に呼びかけている。その文脈は、守るべき対象として国民の上位に「国家体制」を据えているように読める。国民に自由を与え得る国家という表現には、主権在民の憲法の精神を逆転させる発想がうかがえる。防衛当局の行政報告がこのような主張を展開すること自体、政治の統制力を度外視したものだが、それを許した鈴木内閣の不見識もきびしく問われねばなるまい。」  次に、毎日新聞、八月十五日。「憲法改正して徴兵制へといった軍備増強を目指す強硬論は論外としても、レーガン政権の世界戦略に同調し、非核三原則を崩し、防衛力増強に突っ走るような進路選択が、いまの時点で平和の維持、確立に寄与するとは、とうてい思えない。十四日の防衛白書がしきりに危機を強調し、愛国心、国防教育の必要を説いているのを聞くと、“戦前”が始まったという感すらある。」ほかの新聞のも読まなければいけませんが、お許しをいただきたいと思います。  説教調で愛国心を強調する、そしていま新聞の論調にあったように、とにかく政府を引きずっていくような形で防衛庁の気持ちが突っ走っていく、これは客観的な評価であります。そしていまその問題についていろいろな意見があります。私は防衛白書という形で防衛庁がこういうものを述べる法律的な根拠を疑いたいのです。防衛庁設置法の第四条は「陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊(自衛隊法第二条第二項から第四項までに規定する陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊をいう。以下同じ。)を管理し、及び運営し、並びにこれに関する事務を行うことを任務とする。」とはっきり書いてあります。防衛庁いつ文部省になったんですか。文部省でさえ教科書の採択については非常に慎重な手続をいまわれわれの批判を受けながらやらざるを得ない、それを外そうとしていることはともかくとして。それを何か文部省を上回って愛国心を強調するというのは、一体防衛庁として所管事項とどのようにかかわりがあるのか伺わなければなりません。しかし、それよりもマスコミがこうやって指摘をしている愛国心の強調に関する世論について、防衛庁長官はどのようにお考えになっていらっしゃいますか、率直に御答弁をいただきたいと思います。
  90. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  ただいま防衛白書について、最近のマスコミの報道等を通じていろいろ御意見があったわけでございます。私もそういった報道があるということも承知しておりますし、また先生のお述べにならなかった愛国心を涵養することが適当であるという趣旨国民意見や、またそれに関連のある論説もなされていることも承知しているわけでございます。  そこで、そういった愛国心とかという問題について防衛庁はどういう立場にあるのかという点について御説明させていただきたいと思うわけでございます。  先生もよく御存じのとおり、防衛庁設置法におきましては、自衛隊は国の独立と安全を保つことを任務とするということが明記されているわけでございます。そして昭和三十二年に制定されました「国防の基本方針」におきましては、平和外交の推進、民生の安定、そして防衛力の整備並びに日米安保体制の堅持、四つの項目が政府の決定として行われておりまして、歴代政府はそれを遵守して今日に及んでいるところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、国民のみずからの手によってみずからの国を守るという気概を前提として、この自由で民主的な日本の国を守っていくということが防衛の仕事を進めていく上の一つの前提になっているということを考えているわけでございます。もとより教育は文部省の主管事項であることは承知しておるわけでございますが、私どもといたしましては、そういう前提になっている事柄につきまして、やはり関心を持っているということにつきまして、毎回の白書においても、その点は国防の基本方針との関連において述べているところでございますが、今回の白書におきましては、最近の世論調査等いろいろな資料との関連におきまして、またその点を記述いたしまして、国民の理解と協力を得たい、そういう趣旨に基づくものでございます。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 長官おっしゃったけれども、守るべきものは国民、国土と同時に国家体制であるという文章があるのです。国家体制というのは、「多様な価値観を有する国民にそれを実現するため、最大限の自由を与え得る国家体制である」というふうに書いてありますが、体制という議論になってまいりますと、これはいろいろな問題が含まれますよ。世に言う自由主義体制というのは主として資本主義陣営のことです。そこまで物は言いますまい、時間がないから。やがてこの問題はいろいろ議論をさせていただきますが、それを文部省を飛び越えて国民を説教するような形でやっていくというやり方が果たして妥当であるかどうか、これは私は妥当でないと思うのです。総理がどの辺の気持ちでおっしゃったのかわからぬけれども、つまり軍事力バランスだけではいけませんよ、もっと総合的な安保の視点を考えなさいよといった意味も、私はその辺にあるんじゃないだろうかと思うのです。だからぜひ反省を願いたいというふうに思うのです。そういう世論に対して謙虚であってほしい、このことを率直に申し上げます。  その次に申し上げたいのは、「わが国には、防衛力を持てば武力紛争に巻き込まれるおそれがある、非武装に徹底すれば他国が攻めてくることはないとする意見もある。しかし、この種の意見は、厳しい現実の世界をあまりに善意に、また主観的にみているのではなかろうか。わが国は憲法によって戦争を放棄したが、他国がわが国を侵略することがないとは断言できない。」云々とこう書いてある。言うまでもございませんが、わが党は非武装中立を考えております。それは憲法の初心に忠実でありたいという気持ちが根底にございます。もちろん今日の軍拡競争というものが、あるいは軍備、国防というものがどういうものをもたらすかという論争をするつもりはございません。しかし、問題は、防衛白書というのはお役所、つまり閣議決定を経た官庁の公文書であります。その中で、特定の政党のというふうにあえて言いますまい、一つの物の考え方を政府公文書で批判をするというのは少し思い上がってはいませんか。こうなってまいりますと、防衛白書はきわめてイデオロギッシュであると言わざるを得ません。言うまでもございませんが、行政府は、中立の立場を保ちながら、国会を基軸にしてバランスで運営をしていくものであります。ここではどうも行政府の中立性というものが一歩足を踏み出している、何の権限でこんなことをおっしゃるのだろうかと私たちは言わざるを得ません。こういう言葉遣いについても、それが防衛庁設置法の筋道であるということになれば、非武装中立を主張するやからは、防衛庁から見ると仮想敵でなくて敵にでもなってしまうのじゃないか。つまり体制に対して反対の立場、したがって好ましくない勢力だということになってしまうのです。これでは白書が持っている意味は、私どもがまさに批判をされ、お人よしで主観的でというふうに言われたことと同じであります。こういう記述は適切でない。  総論的に申し上げますならば、たとえばソ連の脅威でもそうです。いろいろ書いてある。いろいろ書いてあるが、ソ連の新聞に出ているバランスは間違っているというような記述も新聞にも出ていますが、何々と「みられている。」何々と「されている。」何々と「言われている。」という記述がやたらに多いのです、特に第一部に。全部で合計幾つあるか数えてごらんなさい。閣議了解を経た、国民に公表する行政庁の文書がきわめて無責任な基礎で、「されている。」あるいは「みられている。」そういう指摘をしている。たとえば朝鮮半島におけるいろいろな緊急の問題でもそうです。韓国側の新聞報道や何かだけ書いて、括弧して、朝鮮民主主義人民共和国はでっち上げだと言っている。日本政府は、南北朝鮮の自主的な、平和的な統一に対して、総理の施政方針の中でも、環境づくりに努力をするということを述べている。それが政府の立場です。それを余りにも露骨に、とにかくソ連の脅威というところへ持っていくために作文が行われている。そんなことならあえて申しますよ。私はその脅威を裏づけるデータを国民の前に出してほしい。統計もレポートも新聞報道も全部出せと言いたくなる。しかし、そうもいかぬでしょう。そういうことについて私たちは批判をせざるを得ない。幾ら世の中にどうのこうのという評価があるにしても、少し思い上がってはいませんか。  そういう意味で、ことしの防衛白書について、その記述だけでなしに、いろいろな意味で世論の批判を浴びていることに対して、防衛庁長官として、今後その批判に対して謙虚であってほしいと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。
  92. 大村襄治

    ○大村国務大臣 白書につきまして、いろいろ御意見を述べられたのでございますが、私ども、この白書を編さんするに当たりましては、防衛問題に関する国民の理解を深めることを念頭に置いておりますので、内外にわたる資料につきまして及ぶ限り客観的な材料を集めまして、これをそのまま記述することに努めたつもりでございます。「言われている。」とか何んとかという点につきましても、むしろ素直に書いたつもりでございます。この出所等につきましては、資料をその場に書いてある点もございますし、後に添付しておりますグラフ等の資料にも記載しているところでございます。したがいまして、私どもとしましては、これを国民の皆さんに押しつけるなどというおこがましい考えは毛頭持っておらないところでございます。  なお、防衛の問題につきまして、軍備を持たない方がいいという御意見もあるという点についての記述もあるわけでございますが、私ども、内外の情勢から見まして、そういった点は現実の問題として余り現実的でないというふうに思われる点もございますので、それを記述したまででございます。これを国民の皆さんに押しつけるとか、そういう点は毛頭考えておらないということを重ねて申し上げておくわけでございます。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 世論に対してどのように謙虚に受けとめるかということを答弁してください。
  94. 江藤隆美

    江藤委員長 補充答弁をお願いします。
  95. 大村襄治

    ○大村国務大臣 世論の点についてどういうふうにするかというお尋ねでございますが、世論もいろいろございますので、それぞれの世論について謙虚に受けとめて対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  96. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は防衛庁長官や総理大臣や自民党の主観を言っているのじゃないのです。それはそれで結構です。しかし、行政府という立場の文書、公文書の中でこういうことに触れることはいかがなものかと私は言っているのです。少なくとも閣議決定を経て公文書として位置を占めている、それが一つの特定の政党の批判という形、あるいはそれを支持する人たちに対する批判ということになっていけば、たどり着くところ、それこそ「多様な価値観を有する国民にそれを実現するため、最大限の自由を与え得る国家体制」と言えますか、逆に聞きたいのですよ。でも、防衛白書のことはまた後ほど機会を得て細かくやってまいりたいと私は思いますから、この辺でやめますが、どうか最後長官の言葉のように、いま日本の世論を代表するマスコミの論調というものに示されている代表的な意見そのものについて防衛庁は謙虚であっていただきたい、このことを私は申し上げ、来年からの防衛白書のつくり方などについても十分な配慮が行われるべきであるということを主張したいと思います。  さて、外務省、大変お待たせをいたしました。あさってから行われる日韓外相会談でございますが、党の方からの指示もございましたので、私自身の気持ちを含めて若干の質問をいたしてまいりたいと思います。  過ぐる日米首脳会談及び共同声明の日本の防衛と極東の平和と安全のための役割り分担という約束、そしてサミットの際行われた日米首脳会談を一つの契機として日韓関係が急速に動き出しています。あさって行われるわけでございます。私どもは、今度の日韓外相会談、実務者会議、日韓閣僚会議に引き続く日韓首脳会談という一連の動きがアメリカからの非常に強い要請も加わって加速しているということを含めて朝鮮半島に新しい緊急激化の状況をつくり出すのじゃないだろうか、南北朝鮮の平和的な自主的な統一というものを妨害する方向に危険な役割りを果たすのじゃないだろうかということを指摘せざるを得ません。そして党としてもその問題について意思表示をし、申し入れを行ってきたことは御存じのとおりであります。  そこで、その立場に立ちますが、さりとて、もうあさってから始まるわけでございますから、この機会に少し立ち入って、日韓会談に臨む日本政府のスタンスといいましょうか、原則的な立場というものについて質問をいたしたいと思います。  二月の米韓首脳会談で全斗煥大統領は、韓国は太平洋地域におけるアメリカと日本の防衛の前哨基地であると強調しました。またナショナル・プレス・クラブでも、韓国は米日の防護壁というふうに述べたと報道されています。およそ一国の大統領が、よその国を訪問して、おれの国は他国の防護壁だというようなことを位置づける御発言をなさったというのは少し異常だと言わざるを得ません。それ以上のことは申しませんけれども、その言葉の意味するものは、レーガン大統領と全斗換大統領の会談で、日本をはさみ込んで米日韓の体制というものを軍事的にも経済的にも強めていく、そういうねらいがあるのではないだろうかと私は想像せざるを得ません。  それはそれとして、日本政府は、この米韓首脳会談で述べられた全斗煥大統領の発言というものと認識を共有しておられるのかどうか、その点をお答えをいただきたいと思います。
  97. 木内昭胤

    ○木内説明員 韓国の軍隊の防衛努力と、それから韓国に駐留いたします米軍が、同半島における勢力の均衡に寄与しておるということは言えると思います。  先ほど御指摘の、全斗煥大統領がワシントンのナショナル・プレス・クラブで行いました、韓国が日あるいはアメリカの防波堤になっておるということは、同大統領の主観的な気持ちとしてはうなずけるものがあると思います。
  98. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 うなずけるものがあるということは、日本もそういう認識に立つというふうに理解してよろしゅうございますか。
  99. 木内昭胤

    ○木内説明員 共通の認識に立つというところまでは私は言えないと思います。
  100. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実は、きょう午前中に外相会談に臨むことを御協議願ったそうでございますから、ある意味では木内さんにそういうことをここへ来てお答え願うのは大変恐縮なのでございますけれども、あえて私申し上げたいのは、要するに、日米首脳会談のときに私は感じたことです。国際情勢の認識で一致をした、しかもそれはレーガン大統領の認識とそれの対応に対して日米の首脳が一致したというところから始まってしまいますと、だからこうではないか、だからこうではないかという形で、その後の対応策まで含めてどうも押しつけられる形、押しつけられると言って言葉が悪ければ、そこへ追い詰められていく。その結果としての軍備増強というものが日本に迫られてきたと私は思うのです。だから外相会談の場合も、情勢認識の一致というところから始まりましたというような議論になっていきますと、どうもやはり調子がおかしくなってきてしまうのではないかと思うので、大変失礼ながらあえてお尋ねをしたいのですが、朝鮮民主主義人民共和国に対して、それが脅威であるとかないとか、そういう議論が繰り返されたこともございます。伊東外務大臣は、南進はないと考えるというお立場でもございましたし、脅威とは認識していないという御見解がありましたが、日本政府は今日もその状況は変わっていないというふうに理解していらっしゃいますか。
  101. 木内昭胤

    ○木内説明員 伊東前外務大臣が見解を披瀝されましたとおり、大がかりな進攻というものは私どもないと考えております。
  102. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 脅威の問題は、これは防衛庁長官からお尋ねするかな。前国会での答弁と同じだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  103. 大村襄治

    ○大村国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国の軍事力増強についての見解は、前国会で申し上げたことと変わりはございません。
  104. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 したがって、脅威ではないという認識ですね。
  105. 大村襄治

    ○大村国務大臣 潜在的脅威と表現することは必ずしも国益に沿うておらない、こういうことを前国会で申し上げましたが、そのとおりであります。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  106. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 伊東前外相が全斗煥大統領の就任式で韓国を訪問されて、言葉の細かいやりとりは承知をしておりませんが、日本の外交の役割りとして南北朝鮮の対話の仲介に協力するという方針を述べられたやに承っています。伊東さんがどういうお考えでそのことをお述べになったか、私は知るよしもございませんが、私なりに申し上げますと、このままでは南北朝鮮の軍拡競争は激化する一方である、日本がこれに巻き込まれ、みずからを韓国の側に縛りつけるということになるとすれば、今後際限のない経済援助と軍事的な意味を持つ政治援助とでも言いましょうか、そういうものを余儀なくされる、そして新しい日韓癒着の時代が始まる、その結果として朝鮮半島の軍事緊張がより尖鋭化するということになれば、日本の軍事的な傾斜というものがますます深まらざるを得ないことになるし、アメリカと韓国と日本の運命共同体とも言うべき軍事同盟というところにまで、抜き差しならぬところへ行ってしまう、その道に足を踏み込むおそれなしとしないというふうにお考えになり、その将来を洞察されて、どこかでこの悪循環にストップをかけなければいかぬ、日本のイニシアチブで朝鮮半島の緊張緩和の一つの役割りを果たそうとなすったのではないだろうかと私が勝手に解釈をいたします。それは私の勝手な解釈で結構です。  しかし、その判断はともかくとして、伊東前外務大臣が述べられた南北対話の仲介という外交方針、これは総理の施政方針にもございます。外務大臣の重ねての御答弁や御発言もあるわけですが、南北朝鮮の対話の仲介ということを日本がとっていく、このことについても前大臣の方針を踏襲するものと理解してよろしゅうございますか。
  107. 木内昭胤

    ○木内説明員 全斗煥大統領自身も南北の対話促進についてはたびたび呼びかけておるわけでございまして、日本政府としましても、南北の緊張緩和につながる対話の実現には、側面的にも協力する方針は従前と変わりないわけでございます。
  108. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 具体的にどういう環境の促進をなさるのか、その点について伊東外務大臣はかつて具体的に述べられたことがございますが、アジア局長、外務省を代表してどんな努力をなさるおつもりか、御答弁をいただきたいと思います。
  109. 木内昭胤

    ○木内説明員 第一義的には、韓国の当局者とも話し合うわけでございまして、来る外相会談におきましても盧信永長官と園田大臣の話題の一つになるわけでございます。また、アメリカあるいは中国等関係諸国との外交協議に際しては絶えず話題になるわけでございまして、なかなか見通しは厳しいものがありますけれども、その努力は継続してまいるということでございます。
  110. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 鈴木総理が十四日に、対韓経済協力は慎重にと指示されまして、これは新聞報道で私拝見をいたしました。率直に言って、五年間で八十億ドルとか百億ドル、これは幾らになるのでしょうか、最大の場合は二兆四千億円でしょうか、これを日本が安全保障の代償として援助してほしい、あるいは日本はかつて朝鮮統治をしていた時代には二個師団の軍隊を置いていたのだから、それぐらいの経費と装備の援助ぐらいはやるのがあたりまえじゃないかという言葉が、私の耳にもあるいは目にも入ってまいります。こんなぐあいで韓国が日本に迫ってくるということになれば、これは率直なところ、えらいことになってしまいます。だから、恐らく総理もそういう御判断をして、一つの原則というものを出されたと思うのですが、経済協力の原則というものをきちんとしないと、私はいろいろ問題が出てくると思いますので、この点外務省としてあるいは政府としてどういう原則で対応をなさろうとなすっていらっしゃるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  111. 木内昭胤

    ○木内説明員 その国の経済社会開発と民生安定というのが経済協力の基本原則でございます。
  112. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その中には、今度の日韓外相会談の中で安全保障の観点というのは含まれているのですか。
  113. 木内昭胤

    ○木内説明員 安全保障の観点というものを含めることには困難があると承知いたしております。
  114. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その点をぜひはっきりしておいていただきたいと思います。援助については従来の政府方針を変更するものではない、従来のとおりだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  115. 木内昭胤

    ○木内説明員 従来の延長線上で対処してまいりたいと思っております。
  116. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その延長線上というのは、従来の方針を変えるつもりはないと、もうちょっと歯切れのいい御答弁をいただきたいのですが。延長線上で対処していきますというのではなく、従来と変わるつもりはない、そういうふうに理解してよろしゅうございます。
  117. 木内昭胤

    ○木内説明員 基本的にはおっしゃられるとおりでございます。
  118. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 人道上の考慮、いろいろあろうと思いますが、その点はいままでの援助の基本というものをきちんと原則として位置づけていただきたい、このように思います。  それに関連をいたしまして、去る国会で、三月三十日の衆議院外務委員会で経済協力のあり方に関する決議を全会一致で採択しています。これはもう御存じのとおりですが、その中で、紛争当事国に対する経済・技術協力については、紛争を助長するようなものはしない、軍事的施設、用途に充てられる経済・技術協力は行わない、この決議に対して伊東外務大臣から、決議を尊重して実現努力するという御答弁をいただいておりますが、そのとおりに守っていくということをあえて御答弁いただきたいと思います。
  119. 木内昭胤

    ○木内説明員 御指摘のとおりと存じます。
  120. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 昨日のソウルの夕刊各紙が報道している問題点がございまして、日韓外相会談は両国が互いの基本的立場を表明するだけに終わる公算が強いというような観測を韓国政府外交関係筋の話として述べています。特に、最大の争点となっている経済協力問題については、深刻な見解の差が克服される兆しはないという意味のことが書いてございますが、それはそれとして、お願いをしたいのは、韓国側は安保的次元の対韓経済協力拡大の必要性を強調して一実務レベルで事前に検討する性質のものではないというふうに言っておられますけれども、実務レベルでやっていく、政治的な決着というようなことは避けたいというふうに、この際ですから日本政府としてきちんとしておいていただきたいのです。援助にはいろいろな方法がございましょう。私もそれに対する賛成、反対の気持ちはございます。いろいろ意見はございますが、それはそれとして、やはりきちんと積み上げていく、その実績だけは尊重してほしいということを御答弁いただけますか。
  121. 木内昭胤

    ○木内説明員 実務者レベルの協議におきましては、技術的な側面あるいは事実関係等について詰めを行うということを目途といたしております。
  122. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは実は日本の時事通信社韓国訪問団が五月十五日にソウルの青瓦台で全斗煥大統領とインタビューをなさったときの記事の全文が載っておりまして、一々こういう新聞の記事を軸にして云々することは外務省としてあるいはしり込みなさるのかもしれませんが、この中で「韓半島の緊張、ソ連の東南アジアおよび太平洋地域への進出、」一云々ということがあって、「いまや日本も韓米間の共通した地域安保観を現実的に受け入れ、政策調整を考慮すべき時期に至ったと思う」中略いたしますが、「日本の海軍力強化と対空警戒の強化は、韓国軍と駐韓米軍の地域安保体制を補完するものになろう。」というふうにおっしゃっておられるわけでございます。しかし、集団安保ですから、日本の立場ではそういう考え方に立たないというふうにははっきり明言いただけると思うのです。この点はそういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  123. 木内昭胤

    ○木内説明員 その時事通信の記事は、恐らく全大統領の御意見をそのまま報道しておるものと存じますけれども、私どもにはそういう見解について何らの連絡もないわけでございます。
  124. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 結構です。  きょう午前中省内で御検討をなすった外相会談に臨む姿勢の中で、もし御報告が願える部分がございますればお述べいただきたいのですが、いかがでしょう。
  125. 木内昭胤

    ○木内説明員 先方の要請というものにはなかなか大きな期待が込められておるようでございますが、その点について園田外務大臣としては、先方の意見を率直に十分拝聴しようということに尽きるかと存じます。
  126. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これで最後にしますが、さっき申し上げたように、日米首脳会談以来日韓関係が急速に展開をしていることに対して多くの国民が不安を持っていると思います。私もその一人です。明後日の外相会談、引き続き九月の閣僚会議、そうして首脳会談のスケジュールが実は着々と進められている中で、いま私が申し上げたように、五年間で百億ドルという数字はともかくとしても、つまりその金額で言えば二兆四千億円もするような経済援助を韓国に提供する政治的な話し合いが進められようとしている。それは日本政府はきちんとなさっていただけると思うのですが、一方で朝鮮半島有事に備えた日米韓の共同作戦のシナリオが作成されようとしている。それを先取りするかのごとく自衛隊の対馬上陸作戦、つまり大演習が日本海における米韓合同海上演習に呼応して同じ時期に展開されているという状況が一方にございます。このような一連の動きが私は大変心配なんです。韓国練習艦隊の日本への寄港とか、きのうの報道によれば、韓国の陸軍士官学校の生徒さんが日本にやってくる、共同生活をやるというようなことが行われていく。こうした一連の動きが、実は金大中氏の無期懲役あるいは獄中での死に至る弾圧に象徴されるような、民主主義と人権の犠牲の上で活発になっていることを私は遺憾ながら主張せざるを得ないのであります。  韓国の経済や社会がこうした政治的な体制の中で、一体どういうことが安定という名に値するものになろうか、あるいは日本の経済援助が韓国の民生の安定にどれだけ役立つだろうかというふうなことを考えたときに、かつてアメリカが、たとえば中南米であるとかベトナムであるとかイランに行った安全保障的協力、援助というものが失敗をした歴史にちなんで明らかだと思います。  日本国民は、三十六年朝鮮民族を支配して、その心と体にはかり知れない屈辱と被害を及ぼしてきた立場を思い浮かべざるを得ません。そのことにこたえる道は、朝鮮民族の自主的な平和的な統一の環境整備するという、鈴木総理が施政方針の中でも述べられ、いまアジア局長が述べられたことと、それをさらに具体的に積極的に推し進めていくことだ、そして日本の自主外交の道筋を生かしていかなければいけないというふうに私は警鐘を乱打したいと思います。いやしくも韓国だけにてこ入れをして、それと癒着の関係を、これは軍事同盟という方向への動きを含めて強めていくということは、朝鮮民主主義人民共和国を敵視するということだけでなしに、私は、韓国の民衆にとっても果たして幸せであるだろうか、改めて問わざるを得ません。  そこで、私がいま申し上げたような主張というものを——これは国会で取り上げられた問題です。それがどれだけのものか別として、国民の世論の一つです。そういう気持ちで日韓の外相会談の中で、あるいは外務省レベルの実務者会談の中でもぜひ十分に明らかにしていただきたい。歴史の非常に大きな転換点に立っているという感じの中で、日韓関係がそういう形で進められていったら一体どんなことになるだろうかという危惧、懸念を私は持っておりますので、時間が少しオーバーいたしましたのでやめますが、ぜひそういう態度で臨んでいただきたい。局長の御答弁を煩わして終わりたいと思います。
  127. 木内昭胤

    ○木内説明員 御承知のとおり、韓国は私どもにとって大変貴重な隣国でございまして、岩垂委員御承知のとおり、昨年はマイナス五・七%成長という異例な事態に追い込まれました上に、日本の東北をも襲いました冷たい夏で大変な農作物の不作に見舞われた、そういう窮状というものは、やはり私どもとしては十分考えざるを得ないと思います。ただいま岩垂委員御指摘の点も十分体しまして、対処していきたいと思っております。
  128. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最後に一つだけ。いま窮状のことを言われました。窮状だから同情に値する援助だというストレートな気持ちがあるとすれば、金大中氏の生命に対する同情というものさえ私たちは無視することはできません。私は外相会談できちんとそれを主張してほしいと思うのです、原状回復を。そんなことも含めて、私はもう御答弁をいただきませんが、きちんと日本政府として意を体しながら会談に臨んでいただきたい。  以上で終わります。
  129. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 鈴切康雄君。
  130. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中曽根行管庁長官にお伺いいたします。  七月十日に第二臨調から第一次答申が出されました。先ほど御報告のあったとおりでありますが、わが党は、再三にわたって、国民の立場、とりわけ社会的に弱い立場にある人たちを守るために、負担がしわ寄せにならないよう強く要望してきたところでありますけれども、答申内容を見ますと、やはり福祉や教育等に厳しい内容となっていることはまことに残念であります。ともかくわずか四カ月間の短期間で答申をまとめました努力については、その労を多とし、評価することについてはやぶさかではございません。  先ほどの説明で、この答申をどのように受けとめ、今後の行政改革の中でこの答申をどう位置づけをしようとされているかは概略わかったわけでありますけれども、そこでお伺いしたいわけでありますが、当初七月十七日の閣議、これは「行政合理化効率化を推進するとともに、財政再建に関する緊急な課題に対処するため、かねてからの基本方針に基づき、同答申を最大限に尊重し、速やかに所要施策を実施に移す」と決定をされたということは報道されておるとおりであります。当初政府は、この閣議決定だけで事足れり、そして作業を進めていこうというような考え方であったわけでありますけれども、中曽根行政管理庁長官が、これを進めるについては鈴木行革の基本方針としての行政改革大綱がやはり必要であるということの御進言をされたというふうに聞いているわけでありますけれども、その行政改革大綱を進言されたという背景と、それからこの行政改革大綱がすでに大詰めに来ているというふうに報道はされているわけでございますが、これがいつ閣議決定されるのか、また行政改革大綱というものの中身はどういう形になって、何を目指そうとされているか、その点についてお伺いします。
  131. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 七月十日の第一次報告を受けまして十七日に閣議決定をいたしましたのは、先ほど御報告申し上げたとおりでございます。そしてこの閣議決定を受けまして、この答申内容を分析をし、検討を加え、各省庁とも相談を進めておりまして、そしてこれを一つのまとめたものにして、基本政策あるいは大綱というような形で具体的に実施に移すその政策をまとめようとしておるところでございます。いま各省庁で鋭意作業をしている最中でございまして、大体二十五日を目途にまとめたい、そう思っております。  内容につきましては、七月十日の第一次報告はかなり広範なものでもあります。したがいまして、一つには、行財政の再建に資するところ、たとえば来年度予算編成につきまして、すでに六月五日の閣議決定でいわゆる来年度予算の要求の枠をゼロ、そういうふうにしたわけでございますが、そのゼロを実行する上についてどういうふうな盛りつけをするかというようなところが七月十日の報告で盛られているわけであります。その七月の報告をもとにして各省庁はその盛りつけを実行していく。その中には法律の改正を要するものもございますし、あるいは閣議レベルで決定して、共通に各省庁実行するものもございますし、あるいは答申を受けて各省庁が単独に実行するものもございます。そういうようなものをそれぞれの項目別にまとめまして、そして一つのまとまったものとして二十五日に決定したい、このように考えておる次第でございます。
  132. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま御説明ありましたように、大綱についてはいろいろといま検討している段階であるというような話でありますけれども、行革関連法案の財政再建臨時特例法の一本化という問題で、伝えられるところによりますと、約四十本がらみの行政改革関連法案を一本化しようということで作業が進められているというように伺っております。その中に柱として、一つは、厚生年金等の国庫負担率の引き下げ、あるいはは四十人学級計画の抑制補助金地域特例の廃止、縮小、利子法定制の弾力化あるいは公的保険事務の国庫負担の停止、そういうことが大体この関連法案の臨時特例法への一本化という問題でまとめられているように聞いているわけでありますけれども、その他どういう問題があるか。行革大綱は、もうすでに八月二十五日ということになれば、当然かなり作業が進んでいるわけでありますけれども、内容は具体的にはどういうものでしょうか。
  133. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまお示しになったようなことは、七月十日の第一次報告に盛られている、勧告答申内容に盛られておることでございます。そのほか七月十日の答申の中には、公務員の定員削減のさらなる推進、あるいは地方公務員における同じような定員問題の処理、あるいは国家公務員あるいは地方公務員等々における給与問題の対処、あるいは特殊法人の管理の問題、こういうような問題も盛られておりまして、それらがすべて現在検討対象になっている。結論がどう出るかはまだ党とも相談しておりませんし、各省との話し合いが全部できたわけではございませんので、いま努力の過程にありますが、ともかく一応検討対象になっていると心得ております。
  134. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえば来年度予算を組むについて、ゼロシーリングでやるということになれば、補助金整理という問題が大きな問題になってくるわけです。これについてはどういうふうな考え方でまとめられようとしておられるのでしょうか。
  135. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 補助金整理につきましても、十日の答申の中では、項目を指定してその処理を要請しているものと、項目は指定しないが一括して各省同じようにやるべきものと指定しているものと二つございますが、その二つとも答申の線に沿っていま検討されておると思います。
  136. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一括処理方式では、行革関連法自体は取り上げずに、特例法の中に改正点だけを列挙するようなことになれば、個別の法案のように審議を十分に尽くすことはできないし、また法改正も暫定的なものと恒久的なものとを一緒に扱うということは、非常に立法技術的においてもむずかしいのじゃないかというような点があるのですが、その点についてはどうお考えですか。
  137. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いままで申し上げましたようなことをどういうような形でまとめ上げていくかということは、現在作業中でございまして、いまここで私が答弁をするほど熟してはおりませんので、差し控えさせていただきたいと思います。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十二年九月のいわゆる福田行革とかあるいは五十五年九月の五六行革にも同じような大綱が決定されたわけでありますけれども、そのときと今回の行革大綱との違いはどこに出てくるのでしょうか。たとえば行革の方向を打ち出すというのではなくして、個別の答申の具体化という問題がかなり織り込まれる、そのように判断していいのか、その点、前のいわゆる大綱と今回の大綱の違いはどういうふうにお考えでしょうか。
  139. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 福田行革のときの大綱、それから昨年私がつくりました大綱、今回のわれわれがいま作業しておる基本政策というようなものは、大体似ているところがあります。要するに、政策の方向を明示する、そして情勢、物によっては、ある程度個別的に表現が出てくるものもあり得る、そう思っております。
  140. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回臨時国会に出され、臨時国会で処理をしたいとしているもの、また臨時国会以降に持ち越されなければならない、まだ作業が煮詰まらないなというふうにお考えになっているもの、その点についてはどういうふうにお考えになっていましょうか。
  141. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 七月十日の答申の中にも、十二月までに決着するように検討するというふうに書かれているものもございまして、それらの仕分けは各省庁及び行管、大蔵、官房等がいま事務的に処理し、区分けしておるところでございます。
  142. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第二臨調は、第一次答申を行って直ちに次の作業に入るための部会の構成を決められたわけですね。それについては、来年の六月、七月ごろに第二次答申として基本的なものについて提言するというふうに土光さんが発表されたときに、中曽根長官は早期に答申を出すことについて必ずしも期待していないようなニュアンスの報道がなされたことがありますけれども、その真相はどういうことになりましょうか。  それから、すでに第一次答申が出されたわけでありますけれども、今回の臨時国会推移を見てからという政治的な配慮があるのか。来年度答申については、臨調の考え方について、それに即応して答申を出してもらうようにするのか。また最終的には五十八年の三月というその線については、やはり最終的な答申というのを期待しているのか。その点についてはどうお考えになっていましょうか。
  143. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは臨調当局、各委員の皆様方が会議を起こして決めていただく問題で、われわれが途中で口を差しはさむべき問題ではございません。ただ、土光さんの御意見を承ってみますと、来年次の答申を出したい、しかし、それに至るまでにおいても随時必要に応じて答申を出す、そういうお考えの模様でございまして、私は妥当なお考えであると心得ております。
  144. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法改正以外のものについては、具体的に行管庁としてはどう取り組んでいかれるのでしょうか。たとえば定員削減計画の見直しについては、具体的にはどのような構想を持っておられるのか。またいつごろまでにそれを処理されるおつもりなんでしょうか。
  145. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 七月十日の答申に対する内閣の決定は、この七月十日の報告を最大限に尊重して、速やかに実施に移す、そうわれわれは約束しておるのでございまして、その中に定員問題あるいは給与問題等に触れたところもございますが、これらにつきましても最大限に尊重して、速やかに実施に移す、そういう形でいま事務的に検討を加えておるところでございます。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一つ大きな問題としては、各省庁の配置転換の問題でありますけれども、昨年計画された配置転換に対して、どれだけの実績が上がったのか、内容について明らかにされたい。  それから、配置転換がスムーズにいかないということは、行政改革が進まないことにもつながりかねない問題でありますので、これらの問題を解決されるのにもつと柔軟な人事管理、運営がなされなければならないわけでありますけれども、いままでの反省点とこれからの取り組みについてはどうされましょうか。
  147. 佐倉尚

    ○佐倉説明員 お尋ねの実績でございますが、昭和五十五年度、これは初年度でございましたが、八十九人省庁間配置転換が実施されました。  御指摘のように、省庁間配置転換は、私ども鋭意これをスムーズに実現するように最大の努力を傾けてやっていく所存でございますけれども、いろいろ配置転換についての障害につきましては、各省間の連絡会議等を通じまして、各省庁間で鋭意相談しながらやっていくということが基本的な姿勢でございます。
  148. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十五年度実施の計画は二百五十四人であったわけでありますけれども、実際には実績が八十九人ですね。百人を割ってしまったということですけれども、このままでいきますと、では五十六年度目標は幾らとお立てになって、どういうふうに進めていかれるのか、実際には大変に反省がないわけです。こういうような状態では、配置転換の問題というのは非常に隘路にぶつかって、そして行政改革が思うように進まない一つの大きな問題になるのではないかというふうに感ずるのですが、その点については長官どういうふうにお考えですか。
  149. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 二百五十数名の目標に対して八十九名ということは、大変残念な数字で、まことに申しわけないとわれわれも大いに自責をしておるところであります。  どういう原因かと言われますと、いろいろな原因があると思いますが、たとえば第一次臨調のときに附帯決議等が行われまして、本人の意思に反する配転を行わない、そういうようなところから、やはり本人の意思を尊重するということで、なかなか本人が行きたがらないわけであります。やっぱり自分が育ってきた各省庁の古巣というものに愛惜を持っておりまして、年をとってからほかの省庁へ飛び込んでいくというのはよっぽど勇気を要する人生転換が行われるわけでありますから、それにふさわしいような環境整備なり誘導措置をやっておかなければなかなかできない。そういう点においてまだ不十分なところもあったように思います。  それから、そのために今回は研修を思い切ってしっかり長くやるようにしようとか、あるいは待遇等についても、本人に対してみじめな思いをさせないように、相手の省に対してもいろいろ考えてもらおう。といって、また待遇、格づけを上にしたりしますと、行った省の内部の官庁秩序を乱すというようなこともまた出てまいりますので、そういうようなことがありましたり、敦賀の発電所の事故の問題に絡んで誤解がありまして、そのために労働組合の皆さん方に大変御迷惑をおかけしたようなことがあったり、そういうようなことなどもありまして、思うように進まなかったのが現実でありまして、大いにこれから改革を加えてまいりたいと思っておる次第でございます。
  150. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第一次臨調に対する附帯決議、これが本人の意思にそぐわない配置転換云々ということでございますけれども、それはそれなりに、やはり本人の意思というものは十分に尊重されなければならないわけでありますが、今回の第二次臨調におきましては、配置転換という問題については、やはりそのままにしておくことができない重要な問題ではないだろうか。各企業においても、実際には社命一つで北海道へ行ったりあるいは沖繩へ行ったりという、そういうことがやられることはやはり企業の常識でございますから、そういう意味において、省庁間においての配置転換が非常にデッドロックに上がっているということについての反省ということは、この第二臨調を受けて、この問題については今後どのようにしていかれるのか。果たしていままでのような受け入れ機構あるいはそこで討議される機構でいいのかどうか、その点についてはどういうふうにお考えになりましょうか。
  151. 佐倉尚

    ○佐倉説明員 各省庁間の配置転換の問題でございます。やはりこの問題はじみちな努力の実績を積み重ねていくことが必要だと考えておりますが、五十五年度の実績、初年度として、いま先生御指摘のようないろいろな点があったわけでございますが、先ほどもちょっと述べましたが配置転換推進連絡会議、この場を通じまして、各省庁間の人材の使い方の情報交換あるいはその推進へ努力するために研修を行う、新しい職場になじむためにもやはりその研修をしていく、そういう一層の充実を図るということが必要だと考えております。こういうことを通じまして、着実に鋭意前進させてまいりたいというふうに考えております。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十六年にはどれくらいの目標をお立てになったのですか。連絡会議でじみちないろいろ作業というものが必要であるというわけでありますけれども、その連絡会議自体に実際に効果的な処理ができるかということになるとちょっと問題じゃないかという感じがするわけですが、その点については連絡会議を強化するとか、あるいはもう少し何らかの人数をふやしてあるいは機構を強化するというようなお考えはないんでしょうか。
  153. 佐倉尚

    ○佐倉説明員 五十六年度の配置転換の受け入れ可能数としましては、各省庁から希望数としまして総合計しますと二百八十人という数字があります。これは当然のことでございますけれども、各省庁受け入れるととが可能であるという数字の合計でございます。  先生御指摘の、連絡会議だけでは足りないんじゃないかという点につきましては、これはやはりそれぞれ個人の人事の問題もございますし、非常にきめ細かな配慮が必要なこともございまして、お話のありました、出す方の省庁と受け入れる側の省庁との間でも、当然そこの相談はきめ細かく行うということでございますが、先ほど申し上げましたように、連絡会議の場におきまして、それらの、こういう場合にはどうするといったような基準あるいはその方法等を大きく定めまして、それぞれの省庁間において一層努力していくということが必要であろうかと考えております。
  154. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公務員の定数とか給与等合理化については、積極的に踏み込んだ提言も示されてはおりますけれども、肝心な点については明確さが欠けているものになっております。  たとえば国家公務員合理化についてもっと合理化を進めなさいということでありますけれども、実際にそれじゃ定数の純減目標というものを設定するかということになると、これはまだ実際には設定されないままに来ておりますし、総定員法でもすでに枠外定員、すなわち沖繩が返還されたという問題もありますけれども、御存じのとおり国立学校の職員、これについても実際には枠外定員という形になっておりますけれども、その総定員法の設定という問題についてこのままでいいのかどうかという問題あるいは高級公務員の天下りの規制の強化とかあるいは特殊法人の役員数を半減させるなどの具体的な面に実は踏み込んでいないわけでありますが、政府としては、今後どのようにこの問題について対処されていくのでしょうか。
  155. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 定員管理の問題につきまして、公明党は非常に勇断をおふるいになった案をお持ちになっていることを私も拝見いたしまして、大いに感銘しておるところであります。特に特殊法人の役員を思い切って五〇%減らせという言葉がございまして、それらのことは今度の七月十日の報告にかなり影響を与えた項目であると覚えております。  ところで、総定員法との関係でございますが、御指摘のとおり、総定員法の枠外として、新しい医科大学とかあるいは国立大学、それから沖繩関係、これは枠外にしてございます。また事の性質上、枠外になっているのは、自衛官とかあるいは政治関係の特別職とかあるいはたしか現業職員もそうなっていると思います。これらはそれぞれの理由がございまして定員の外に置かれております。  当面の問題といたしましては、閣議で決定しあるいは法の改正等が必要あらばそれによって行われまして、純減を目的にして、必ずしも定員にいまさわるということは考えない。ともかく現実問題として純減を目指してネットに人員を減らしていく、そういう努力をして、その上に立って定員問題というものの取り扱いを考えたらいいんではないか。いま臨時行政調査会公務員制度全般検討を加えられて、いよいよ九月からその問題に触れられるところでございますから、それらの審議の模様等も見守りながら検討を加えていきたい、このように考えております。
  156. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総定員法に含まれぬのは、あるいは御存じのとおり復帰された沖繩の職員とかあるいは国立大学の職員あるいは医師、こういう方々でありまして、それらのものは総定員法に実は含まれていないわけでございますから、そういうものがなし崩し的になってくるということになると、ますます定員というものはふくれ上がっていくおそれがあるわけですから、そういう総定員法の枠というものをもう一度見直す必要があるんじゃないかということを私は申し上げているわけでありますが、そういう点についてはどうお考えでしょうか。
  157. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 鈴切さんが言わんとせられておるところは私もよく理解いたしまして、それも重大なる御提案であると思いまして検討を加えてまいりたいと思っております。
  158. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の第一次答申を見た限りにおいては、やはり国民生活に痛みを与えることはもはや不可避の状態であるというふうに考えられてきております。そこで、税負担の公平確保ということは、それだけに重要な要素になってくるわけでありますが、たとえば世間に言うところのトーゴーサンとかあるいはクロヨンというような税の捕捉率の不公平さをそのままにして、ただ単に受益者負担の原則に立って所得制限の強化を進めていくということになれば、さらに不公平税制が拡大されるおそれがあります。政府が税負担の公平確保という問題にメスを入れないとするならば、国民各層なかんずく九十何%の税を捕捉されている勤労者階級の不満を解消することにはならないと思いますけれども、税の負担の公平化と所得制限の関係をどういうふうにお考えになっておりましょうか。
  159. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 七月十日の報告には、税に関する特例措置に対する検討を加えるという点もございまして、税について触れないということはございません。また課税につきましては、これを施行する上におきまして、これをさらに正確を期して成績を上げていくということも、大蔵当局においてはいろいろお考えであるだろうと思います。ともかく税の公平ということは行革の前提をなしておることでございまして、その点についてはわれわれもさらに推進していきたいと思っております。  一方におきまして、所得制限問題あるいはいろいろな補助金やら交付金がカットされるというような場合における国民サイドのサービスの低下等々の問題につきましては、やはり税の問題とのバランスも考えつつわれわれは実行しなければならない、負担の公平ということは行革の非常に重要な前提である、このように必得ております。
  160. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、私が申し上げたいことは、不公平税制というものをそのままにしておいて、そして所得制限というものを強化するということになれば、これはますます不公平税制が拡大されるおそれがあるんだ。それで世間に言うトーゴーサンとかあるいはクロヨン、こういう税の捕捉率というものをそのままにしておいては、これは所得制限をした場合において、片一方においては非常に厳しく受けなければならないし、片一方においてはまあそれなりに逃げられるという方法もできてしまう。それであっては、みんながある程度痛みを分かち合うという中にあって、そういうような捕捉率の非常な不公平の問題というものをそのままにしておいてはいけないのじゃないか。また、それと所得制限というものは厳しい関連が出てくるから、だからそういう問題について政府としてはどういうふうにこれからやられるかということについて、これは大蔵省の方でしょうね、大蔵省いませんか。
  161. 入江敏行

    ○入江説明員 まず税務当局の方からお答えを申し上げます。  いま先生のお話にございましたように、所得制限というものが社会保障その他の給付の条件になっておりますときに、その所得の把握というものが公平でなければならないということはおっしゃるとおりだと思います。まあその問題を離れましても、税本来の考え方からいたしましても、税の公平ということは当然その生命でございまして、そのために日夜国税当局としては努力しておるわけでございます。  その対策といたしましては、主として二つ柱があろうかと思います。一つは、納税環境といいますか、誠実な申告納税者というものを育てるということでございます。もう一つは、適正な税務調査を徹底させるということだと思います。  第一の、誠実な申告者をふやしていくという問題につきましては、従来も努力しておりますけれども、今後とも税務知識の適正な普及あるいは適切な親身になっての税務相談とか税務指導を徹底させていくということが必要であろうかと思います。  ただ、その場合でも、やはり租税が適正に執行されているという信頼感がなければ、また納税者も適正な申告をする気にならないわけでございますので、税務調査を徹底させるということも必要だと思います。その場合に、御承知のとおりだんだんと経済が複雑になってきておりますし、取引も広域化してきておりますので、税務調査が非常にむずかしい段階になってきておることは事実でございますが、必要な定員を確保することに努力するとか、あるいは教育訓練というか研修を徹底いたしまして、資質の向上を図るとかいうことを通じて、適切な税務調査をするということも必要でありましょうし、また内部的にも合理化を図って、できるだけ調査事務量を確保していくということも必要だと思います。  いずれにいたしましても、ただ一つの要素で、このクロヨンとかトーゴーサンとか世の中で言われている問題、われわれは必ずしも世の中で言われているほどの較差があるとは思っておりませんけれども、そういう税の公平を確保するためのとんぷくみたいなものはないわけでございまして、いま申し上げたようないろいろな施策を総合的にじみちに進めていくことが必要かと考えております。
  162. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この問題をそのままにしておくということは、所得制限が非常に厳しく感ぜられる層とそうでないという層との、いわゆる不公平税制というものが拡大されるということだけは申し上げておきたいと思っております。  本題に入らなくちゃならないわけでありますが、臨調の第一次答申で、公務員給与改定について考慮すべきものとして、労働基本権制約社会経済情勢財政事情、国民世論の動向等を挙げるとともに、本年度給与改定については「適切な抑制措置を講ずる。」そのように言っておりますが、この答申人事院総裁はどう受けとめておられるのか、所感をお伺いいたします。
  163. 藤井貞夫

    藤井説明員 給与に関する臨調答申の問題でございますが、今回の臨調答申では、いま御指摘になりましたような表現でもって出されておるわけでございます。これに対しまして人事院といたしましては、人事院というのが法律で設けられました制度であることは申すまでもないことでございますが、その理由というのは、繰り返しいままでも論議されておりますように、公務員について労働基本権というものがいろいろなたてまえから制約を受けざるを得ないというような必要性がございます。それに対する代償機能として、やはり果たすべきことをやらせるというためには、中立機関としてなお人事院が必要であるというたてまえのもとに創設をされました。それが運用上、漸次慣熱をしたことになって今日まで来ておるということでございます。この人事院給与に関する勧告制度のたてまえは、私はやはり現行制度がございます限りはそのままで運用し、答申をしていくということがたてまえであろうかというふうに思っておるわけでございます。  先般もこういう席上で申し上げたかと思いますが、実は臨調においてもその審議の過程におきまして、人事院の本問題に対する基本的な姿勢その他をひとつ説明をしてもらいたいというお考えがございまして、それを受けて私が参りまして、るる制度の骨格その他について御説明を申し上げた次第でございます。その席上、私がどういう感想を持ったかということは、これは余分なことでございますので、申し上げることは省略をいたしますけれども、やはり人事院制度自体の趣旨というものは十分御理解がいただけたのではないかというふうな感触を持っておる次第でございます。この点は、やはり答申の本文にもございますように、労働基本権制約ということを第一の検討すべき、また考慮すべき重要な項目の一つとして掲げておるというところから見ても明らかではないかというふうに受け取っているわけでございます。  したがいまして、人事院といたしましては、いまの制度がある限りは従来の方針どおり、官民較差というものが出てまいりますれば、その較差はひとつ是正をしていただくということで勧告をすべきことが筋道であろうということで、本年も例年どおりの作業を重ねました結果、当月の七日の勧告ということに相なったことであるというふうに理解をいたしております。
  164. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院勧告の本来の趣旨に基づくならば、臨調答申が、以上の点を踏まえて善処するというぐらいならばまだしも理解できるわけでありますけれども、「以上の点を踏まえ、適切な抑制措置を講ずる。」というような内容になっているということは、これはもう人事院勧告そのものを否定することになりかねない重要な問題だ、私はそのように思っているわけであります。なかんずく人事院としては、現下の行政改革財政事情等についても十分認識した上でなお今回の勧告を出したわけであり、その間の人事院の考え方は、本年の報告文にも書いてあるわけであります。労働基本権の代償措置としての人事院の立場で今回の義務勧告をされたわけでありますが、その取り扱いは政府国会に今回ゆだねられたわけであります。現在その完全実施について賛否両論あるわけでありますが、人事院総裁としてはどのようなお考えであるか、お伺い申し上げます。
  165. 藤井貞夫

    藤井説明員 この点につきましては、従来基本的な人事院の態度として累次申し上げてまいっておりますように、人事院勧告制度趣旨からいって、勧告は最大限にと申しますか、完全に尊重していただきたい。それがわれわれの心からの念願である。しかも、この勧告の取り扱いについては、皆様方の御協力によりまして、いまや慣熟した制度になっているのではないだろうか。その点は時期をも含めて四十五年から、特に四月にさかのぼっては四十七年からずっと完全実施されておるという事実を踏まえまして、これは完全に実施されるべきものである、人事院としてはさように考えております。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総務長官、昨年の内閣委員会においてはあなたは「人事院勧告が出されました場合には、閣内におきましても完全実施をするように努力をすることをはっきり申し上げておきたいと思います。」そのように実に歯切れのよい答弁をされておるわけでありますけれども、このところへ来まして大分トーンがダウンしまして、八月七日の給与閣僚会議では微妙な発言に変わってきたと言われているわけであります。少なくとも公務員給与、すなわち公務員の元締めである総務長官が微妙な言葉に変わってくるということは与える影響が非常に大きいわけでありますが、給与閣僚会議において労働大臣並びに経企庁長官は、当然これは完全実施をすべきであるという発言をされたように承っておりますが、給与担当大臣としてはどういう御発言をされましたか、その点についてお伺いします。
  167. 中山太郎

    ○中山国務大臣 当日の私の発言をここでもう一回申し上げますと、ここ十年来人事院勧告を尊重する慣行が慣熟してきた結果、良好な労使関係が続いてきたところであり、私としてはこの良好な労使関係を維持してまいりたいと考えるが、他方、公務員給与の適切な抑制についても触れている臨時行政調査会の第一次答申を尊重するという閣議決定を行ったところであり、今回の人事院勧告の取り扱いについては慎重に対処していかなければならないと考えておる、このように申したわけでございます。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり給与担当大臣は、少なくとも完全実施をするという前向きな姿勢でこれからも閣僚会議に臨んでいただかないと、あなたの微妙な発言というものは、たとえば最大限に尊重するのと尊重するじゃ、最大限の方が優先されるようなニュアンスにとられても困るわけです。ですから、そういう意味において給与担当大臣としては、これからの閣僚会議においては、たくさんの公務員生活権を握っているんだ、生活を握っているんだという意味においてぜひ発言をしていただきたいというふうに私は思っております。  公務員給与に関して第一次答申は、「適切な抑制措置を講ずる。」というふうにありますけれども、その意味は実際にはちっともはっきりしないわけです。「適切な抑制措置」ということは、具体的にはどういうことが考えられるんでしょうかね。
  169. 中山太郎

    ○中山国務大臣 臨時行政調査会にお尋ねを願いたい、このように考えております。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃその「適切な抑制措置を講ずる。」ということは、不完全実施をやれということでしょうか。これはおわかりでしょう。——もしそれがわからなければ、完全実施をするとおっしゃってくださいよ。
  171. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ただいま給与関係閣僚会議を開催をいたしまして、そこでさらにこれから会議を重ねてまいる、こういうところでございますが、その会議の中身においてそのようなことはどのようなことか、これから論議を重ねていかなければならないと考えております。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ことしの勧告と同時に提出した報告書の中で、国家公務員の昇格や昇給等への成績主義の確立、勤務評定強化の指導徹底について、国民世論にも配慮した方針を明らかにしておりますが、こうした人事院方針は、国家公務員の人事管理等の弊害を打破することを示すものとして、私ども評価することにやぶさかではありませんけれども、いま一度ここに触れたのはどのような考えによるものか、また具体的な内容としてどのような項目を挙げてその成果を上げようとされているか。その点について人事院総裁から……。
  173. 藤井貞夫

    藤井説明員 給与制度中心といたします公務員制度の適正な運用、合理的な運用ということは、常にわれわれとしても大事なことだとして、その確保、推進に努力をしてまいっておるところでございます。  従来も、給与の問題に関しましては、たとえば民間給与あり方との対比の問題といたしまして、高年齢層の職員に対する昇給の関係の期間の延伸でありますとか、また昨年あたりからは一歩進めて昇給のストップをかけるというような措置も講じてまいっておるわけであります。さらに、高号俸関係では、民間給与配分の点をも参酌をいたしまして、上がります給与の間差額を抑えぎみにするというような措置もあわせて講じてきておるところでございます。  こういう点は、人事院が現在考えておって六十年度あたりを目途に出してまいりたいというふうに思っております長期施策の中においても、その重要な一環として、さらに検討を加えていく所存でございますが、いま御指摘になりました点につきましては、われわれはかように考えております。と申しますのは、今度の臨調答申でも成績主義の一層の推進とかいうようなことについては触れられておるわけでありまして、この点は人事院といたしましても、その趣旨については同感でございまして、従来もこれをさらに確立するために推進を図ってまいったところでございます。  しかし、これについては完全にそれがうまく行われているということは申し上げかねる実態もございます。とりわけて申しますと、成績主義の原則を給与に反映をせしめるということについては、現在制度的に明白なものが二つございます。一つは、昇給に当たって特別昇給制度というものがあるわけであります。これは特に勤務成績が良好である、著しく良好である者については、昇給期間の短縮をやってその労に報いるとともに、一般の模範にして、ひとつ全体として勤務能率が上がるようにやっていくという趣旨のものでございます。それからもう一点は、賞与配分に関しまして、その中に二本の柱を立てておりまして、いわゆる能率というものを主として加味をしてまいります、勤務の良好ということを特に目安といたしまして配分をしていくという手当を中に含んでおります。これに関しましては、能率が主でございますので、その点をもっと反映をさせるという意味の努力が必要ではないかというふうに考えております。従来も勤勉手当配分に当たりましては、そういう点をできる限りひとつ重視をしていくようにということで、指導方針を示しまして各省庁にお願いをいたしておるわけでございますが、結果を見ますと、必ずしもそれが端的に反映をしているとは申せない面もある。特に各省庁の実施の状況を見ますと、省庁によってアンバランスがかなりあるという点がございます。そこで、そういうような点については、さらに実態もよく調べまして、毎年の機会のあるごとに監査等でもって注意を指摘をして、もう少しというふうなことで改善の指導に当たっておるわけでございますけれども、これらの点についてはさらに目安をもう少し明確にいたしますとともに、各省でやり方にアンバランスのないようにできる限りそれを徹底をするということについて、なお制度的にもう少しきちっとやるやり方があるのかないのか、そういう点についてもあわせてひとつ積極的に取り組んでいこうではないかというようなことを考えておる次第でございます。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま各省庁で特昇については一五%の枠内でということでやっているようでありますけれども、これは各省庁でバランスが非常に崩れている、アンバランスになっておるわけでありますが、いまおっしゃったとおり、全員で持ち回りをしているようなところもあるし、あるいはまた勤務評定をしっかりやって、成績優秀な者に与えようという省庁もあるし、全員で持ち回りをしているということは、これはもう本当に勤務成績の面を反映したものでは実はないわけであります。なかんずく特昇というのは、本俸が一号上がるのに、一時的なものとならないで、将来にわたって効果があるわけですから、そういう意味において、明確に勤務成績の面を強く入れたということであるならば、各省庁はそういうような、言うならばなれ合い式なやり方というものを打破していかなければならない。そういうことについて人事院としては、これを今後どうお考えになっているのでしょうか。
  175. 長橋進

    ○長橋説明員 特別昇給問題につきましては、いま御指摘のように、各省庁の運用の実態を見ますと、二十年在職者について見ますと、あるいはどちらかと申しますと、均等的な持ち回り主義でやっているというところもございましょうし、さらには省庁によりましては、成績を反映をしたという結果になったところもございます。これは特別昇給制度の運用面につきまして、より一層の指導強化を図ってまいりたいというふうに考えておりますけれども、ただし、人事行政につきましての制度的な基準を預かる人事院といたしましても、制度上さらに工夫をする余地はないかどうかという観点からも、特別昇給制度問題について取り組んでまいりたいというふうに考えております。  たとえば特別昇給について申し上げますと、一号俸効果ということになっておりまして、これは生涯持って回る、効果も大変大きゅうございますので、きめ細かい弾力的な運用ができますように、勤務成績に応じたきめ細かい運用ができるような制度面の工夫もあるかないか、検討してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ともあれ、昭和四十四年までは完全実施が見送られて人事院勧告が無視されてきたという経緯があります。それまでの労使関係というものは陰湿な暗黒時代であったわけでありますが、それ以後完全実施されて、労使関係は曲がりなりにも信頼関係が改善され、それなりの成果があったと私どもは思っております。しかし、今回、もしかつての四十四年以前の状態に逆戻りということになれば、長期的に見れば大変大きな代価を支払うことになりかねないし、社会秩序の混乱を起こしかねない状態になると思います。これらの労使関係というものを正常に保つためにも人事院勧告を完全実施すべきである、私はそのように強く要望を申し上げておきたいと思っております。  あと一、二問でございますが、去る十五日、鈴木内閣の閣僚のほとんどが靖国神社に時を同じくして参拝をされました。これが公式参拝につながるという懸念と批判が国民の中にはあるようでありますが、政府としては、私人の立場で参拝することは問題はないと従前から言っております。五十五年十月二十八日に靖国問題に対する稲葉委員に対する答弁書の中で、政府は、「靖国神社への公式参拝とは公務員が公的な資格で参拝することを指し、国家護持とは、国が靖国神社の運営について、参与し、又は国費を支出することを意味することが多いと考えている。また、憲法上、これらの行為が問題となるのは、第二十条及び第八十九条との関係である。」という答弁をされております。  そこで、「公務員が公的な資格で参拝すること」ということは、具体的にどういうことを意味しているんでしょうか、法制局。
  177. 味村治

    ○味村説明員 おっしゃるように、稲葉議員に対する答弁書におきましてそのように答弁しているわけでございます。それで、公式参拝というのは、公務員が公的な資格で参拝することと申し上げているわけでございまして、これをもっと砕いて言えとおっしゃられてもなかなか言えないわけでございます。結局は、たとえば政府政府の行事といたしまして参拝するということを決定するというようなことでございますれば、それは公式参拝になるでございましょう。要するに、公的な資格で参拝するということが公式参拝であるというように考えておるわけでございます。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえば靖国神社の参拝について、これを閣議に諮ったとかあるいはまた申し合わせをしたとかいうことになれば、それは言うならば公式参拝であるということになりましょうか。
  179. 味村治

    ○味村説明員 先ほども申し上げましたように、政府の行事として参拝をするということを、たとえばおっしゃいますように閣議で決めたということになりますれば、それは公式参拝ということになると存じます。しかし、単に閣僚の方々が参拝をしようということを申し合わせたというだけでは、これは私人としての参拝を御一緒にしようということを申し合わせたのかもしれませんので、そのような場合に公式参拝になるということは断言できない次第でございます。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、たとえばもうすでに閣議が始まったという段階において申し合わせをしたというのと、それから閣議が始まる前においてみんなが集まったから申し合わせをしたのと、それから閣議が終わって、これで終わりだよと言ってから申し合わせをした、こういう内容ではおのずと違うわけでありますけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
  181. 味村治

    ○味村説明員 閣議のやり方につきましては、私ははっきりしたことを存じないわけでございますが、閣議というからには、国務大臣の合議体といたしまして、そこで何らかのことを決定するということがありまして、初めて閣議決定ということになろうかと存じます。したがいまして、閣議の前とか後とか、そういう時間的な問題というよりは、むしろ閣議として決定したかどうかということが問題であろうかと存じます。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 閣議で決定というまでにいかないで、了解とか申し合わせということがあると思うわけですが、閣議の中で了解とか申し合わせということについてはどうなんでしょうか。
  183. 味村治

    ○味村説明員 これは厳密に申し上げますと、私の所管ではないのでございますが、御承知のように、閣議決定というものと閣議了解というのがあるように聞いております。いずれも内閣としての意思決定であるというように存じます。しかし、申し合わせというのはないように存じますし、申し合わせというものは、その具体的な状況におきましてどのような効果を持つかということは、具体的な状況がございませんとちょっと何とも申し上げかねる次第でございます。
  184. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 では、私人としての立場であるか、公人としての公式参拝であるかという問題に対しては、かつて真田法制局長官のときに、たとえばということで具体例を挙げておられるわけでありますが、一つは首相の肩書きを記入しない、あるいは公用車を使わない、玉ぐし料を公費から出さない、閣議で申し合わせをしないということであったと記憶しておりますけれども、公式参拝に該当する具体的な条件というものを明確にしてください。
  185. 味村治

    ○味村説明員 先生おっしゃいましたのは、俗に靖国神社の参拝につきましての公私の区別をする基準の四条件と言われているものと存じますが、実は法制局といたしましては、そのような四条件として公私の区別の基準を申し上げたことはないのでございます。これは真田前長官も、たしか当委員会におきまして、そのような四条件を公私の区別を判別する基準として申し上げたことはないということは明確に申し上げている次第でございます。したがいまして、公式参拝か否かということを決定する基準は、あくまで先ほど申し上げましたように、公的な資格で参拝するかどうかということでございます。  まず、公的な資格で参拝すると見られる場合といたしましては、先ほど申し上げましたような政府の行事として行う、参拝するということを決定するとか、あるいは玉ぐし料を公費で出すとなれば、これは公的な資格でなかったという言いわけはまあ立たないであろうというふうに考えられるわけでございます。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 結局それじゃ閣議において閣議決定する、あるいは閣議で了解をする、それ以外は公的とかそれから私的だということの判別は全くつかない。だから、何をしてもそれは私人であると言えば私人というようにとられる。ただし、玉ぐし料を公の金から出したということであれば、これはいわゆる弁解はつかないであろう。これだけですか。
  187. 味村治

    ○味村説明員 どのような形で公式参拝が行われるかということは、実は公式参拝ということが行われた例がないわけでございますので、申し上げられないわけでございますが、私が先ほど申し上げましたのは、顕著な例として、そのような場合には公式参拝と認められるのじゃないかということを申し上げたわけでございまして、そのほかにあるのじゃないか、絶対ないのかとおっしゃられますと、まあ絶対ないとは申し上げかねるわけで、たとえば上司が部下の職員に対しまして靖国神社の参拝をしてこいというように職務命令を出すというようなことになりますれば、それはやはり公式参拝ということになろうかと存じます。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自民党の要請で新設が決まった追悼の日懇談会は、政府主催で天皇陛下をお迎えして毎年八月十五日に行われる戦没者追悼日のあり方を再検討するとしておりますが、政府の意図するところは何でありましょうか、また何を目指して検討を依頼されたのか、その点を明確に御答弁願います。これは瓦副長官ですか、総務長官ですか。
  189. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お尋ねは戦没者追悼の日の問題ですか。(鈴切委員「そうです」と呼ぶ)戦没者追悼の日は、ただいままで、戦後三十六年たった時点におきましても、政府が武道館で例年八月十五日に全国戦没者追悼の日の行事を行ってきたところでございます。しかし、戦後相当時間が経過をいたしまして、もう遺族の方々も孫の代になってきた。こういう時代になって、これからの戦没者追悼をすることについてどういう形が将来にわたっても適当なのか、そういう問題を改めて検討をする必要があるという判断に立ちまして、有識者による懇談会を開いて御意見を伺い、できれば来年の三月末までにその意見をもとに方針を立てさしていただきたい、このように実は考えておる次第でございます。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間になりましたので、これでやめます。
  191. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 渡部行雄君。
  192. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 最初に、人事院総裁にお伺いいたしますが、今後出されました人事院勧告の権威と申しますか、その重要性について御説明願いたいと思います。
  193. 藤井貞夫

    藤井説明員 公務員給与につきましては、いろいろ客観的な諸情勢というものが厳しさを増してきておるという事態がございますけれども、しかし、給与勧告の持つ意義と重要性というものは、これは制度が現存をいたしておる限り変わるべき筋合いのものではないというふうに考えております。したがいまして、本年の場合も、こういう情勢ではございますけれども、従来の方針を踏襲し、これに立脚をいたしまして、官民給与較差中心検討いたしました結果、較差が出てまいりましたので、この較差を埋めていただくということがぜひとも必要であろうということで勧告をお願いするということにいたしました。  その重要性等につきましては、従来の基本線と変わりがあるものとは考えておりません。
  194. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、人事院は、いまさら申し上げるまでもなく、これは国家公務員労働基本権の代償として与えられる勧告でございますから、当然憲法にもかかわり合う問題だと思います。したがって、この勧告というものは、そういう意味では絶対的な意味を持っていると私は思います。これは決して時の政府財政がどうのこうのによってその実施の度合いが変わるというようなことは許されないものである。仮にそれを変える場合には、その代償の基本となるべき労働基本権を返上しなければならない。そうでないと、憲法のたてまえが成り立たないと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  195. 藤井貞夫

    藤井説明員 御指摘のように、給与に関する人事院勧告というのは、公務員について労働基本権制約をされておりますことの代償機能として法律上認められている制度であるというふうに、これは基本的に理解をいたしております。この点は、先般も御議論が出ておりましたように、最高裁の判決においてもその趣旨がうたわれておりますし、また同様の取り扱いにつきましては、国際機関であります労働機関によりましても認められておることでありまして、そういうような背景がありますために、この制度というものは長年にわたってかなりいろいろ論議をされてまいりましたけれども、それらの集約として四十五年以来完全実施ということに相なった、特に四十七年からは四月にさかのぼっての完全実施ということが慣行として、これは内閣においても国会においても御尊重いただく結果、この慣行が確立をしたということであろうと理解をいたしております。
  196. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、いま総裁がだめ押しのように繰り返された内容でございますが、したがって、これは私は絶対的なものと考えていいと考えるわけですが、その点についてはどうでしょうか。
  197. 藤井貞夫

    藤井説明員 人事院のたてまえとしては、そういう基本線で従来もやってまいりましたし、との制度が現存する限りはそういうたてまえで今後も対処していくということには変わりはございません。
  198. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、この勧告のたてまえは絶対的なものであるといま確認いたしました。この内容について、若干触れてみたいと思いますが、先ほどもわが岩垂委員がちょっと触れましたように、労働者の春闘相場からすれば、今度出された五・二三%という勧告の幅は低いではないか、これは私もそう思います。  そしてもう一つは、先ほど総裁からも御答弁の中にありました、いまの企業との比較の問題で、今日の比較あり方が果たして正しいかどうかということについても問題がある。問題があるというか、そういう指摘をする人もいる。したがって、私はこの間の通常国会でも申し上げたように、国の行政機関というのは、私は日本における最大の企業であると思うのです。最大、最高の企業というか事業体である。つまり日本の全土に及ぶ、全国民に及ぶ仕事をしておるのが公務員でございます。したがって、これをわずか五十人以上ぐらいの事業所と比較するということは、余りにも私はひど過ぎるんじゃないだろうか、少なくとも当面千人以上の規模の企業あたりを指して対象とすべきだと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  199. 藤井貞夫

    藤井説明員 民間調査対象企業の規模の問題につきましては、いろいろ御説のように論議がございます。これについては、いま直接お話がございましたように、公務員の職場というものの持っている機能なり役割りなりというようなものから見て、これは最大規模の企業ではないのかというようなことから、少なくとも千人以上というようなものを対象にしてやるべきではないかという根強い一部の主張がございます。  一面、また別の角度から、公務員というのは、何といってもこれは税金でもって賄われているものなのだから、その点を忘れては困る、したがいまして、そういう比較的大規模というか、そういうところだけじゃなくて、もっと規模の小さい、いわゆる中小企業と言われるものまで対象にすべきじゃないか、その観点からいくと、現在ずっとやってきている企業規模百人、事業所規模五十人というのは、これはなお大き過ぎる、もっと規模を縮小して小さいものまで含めて見るべきではないかというような議論がございます。  それぞれの立場立場の御議論として、従来も耳を傾けてまいっておりましたし、またこちらもそれなりに検討は加えてきておったわけでございますが、しかし、いまやってまいっておりますこの規模でもって把握いたします対象民間企業の従事者というのが約六割程度になっておるという現実の姿を見ますと、まずこれはほどほどのところではないだろうか、過半数のものを代表していくということであれば、これはほどほどのところではあるまいかということで、この対象規模の企業についても一応一種の労働慣行として確立をしてずっと長きにわたって踏襲をしてまいっておる事柄でございます。特に、われわれといたしましては、六割ということに対して大変重要性を持っておりまして、過半数あたりはやはり代表すべきであるし、代表させることが合理的であろう、そういう事柄からいまの調査手法というものは合理的なものであるという考え方を持っておるわけでございます。  しかし、これは絶対にこれ以上のことは考えられないというほど不遜な気持ちでいるわけではございませんので、そういうような点はいろいろな情勢をにらみ合わせながら、今後も周辺の事情等も十分考慮しながらさらに検討は続けてまいる所存でございますが、現在では、いまやっておりますこのやり方というものが合理的で、定着をして今日まで来ている制度ではないかというふうに考えております。
  200. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それは国民の六割というのはわかりますが、しかし、これを企業別の総生産額対比でいけば相当比率が変わってくると私は思うのです。そういう千人規模以上の企業の総生産額というものを考えると、それだけでも過半数になるのではないか。  それからもう一つは、公務員の質の確保、優秀な人材の確保ということを考えると、すべて何でも民間並みにさえすればいいのだという理屈にはならないと思うのです。しかも、国の将来についてあるいは今日の国民の福祉全体についてあるいは教育の問題について、そういういろいろな問題についてりっぱなサービスを提供し、また将来についての誘導を行っていく担い手ということを考えるならば、相当優秀性というものがここに要請されると思うのです。  そういう観点からすれば、ただ比較さえすればいいという考え方、あるいは税金を納める立場から考えれば、もっと低いいわゆる個人企業まで含めたらどうかという意見が出されておるそうでございますが、私は、果たしてそれが国民の念願する立場だろうかと思うと、非常に疑問とせざるを得ないのでございます。というのは、国民が役所に要求するのは、役人に要求するのは親切なサービスであります。あなたの月給が高過ぎるなどとはいまだ聞いたことがありません。そういう税金からもらう給料に対する忠実な勤労こそが国民の期待するものだと思うのですよ。そういうふうに考えれば、ただ税金が高いから何でも安くすればいいなどという全く無責任な議論は排斥してしかるべきだと私は思うのです。その点についてはいかがでしょうか。
  201. 藤井貞夫

    藤井説明員 公務員給与については、それぞれの立場立場から、いろいろ異なった御提言なり批判なりがございます。これは私から御紹介をするまでもなく、先生もよく御承知のことだと思うのであります。そこで、われわれといたしましては、やはりいま申されましたような公務の重要性、したがって、この公務の執行に当たる公務員については、それにふさわしい人材を確保しなければならないという観点を非常に重要なこととして考えておりますことは、無論のことであります。しかし一面、また別の角度では、公務員については、要するに倒産というものはないのだ、親方日の丸なのだというような考え方、基本的には税金でもって賄われるという批判もございます。また事実関係も現存する側面もあるわけであります。  そこで、公務員給与はいかに決めるべきかということについては、これはわが国のみならず世界の諸国でもいろいろ苦慮しておるわけであります。現在は大体先進の諸国におきましては、御承知のように、民間との均衡性とかあるいは匹敵性というようなことが原理としてとられまして、大体その線に沿って行われておるという現況でありまして、日本の人事院勧告のとっております基本原則もまたこれにマッチしておる。しかも、そのマッチの仕方は、非常に正確にマッチをしたたてまえで今日まできておるのではないかというふうに思っております。  ただ、その点で、公務の重要性ということは常々考えておりますけれども、人材配分という点を考えますと、公務員だけをよしとする、高しとするという考え方も、これは一方的でございまして、人材はやはり民間においても各所に配分されて、ともどもに手を握り合ってやっていくということが一つの理想的な形であろうと思うわけであります。そういう点から見ますと、公務員の場で、いままでの給与制度あり方のために人物が集まらないか、人材が確保できないかというと、そうではございません。これは国会等でもいろいろ御心配をいただきました結果、人事院勧告というものが完全実施をせられておるというような現実もございまして、そういうことから公務員にそれにふさわしい人を来ていただくということは、大体目的が達成せられておるのではないかというふうに考えております。公務員試験の競争率なんかにつきましても、無論民間の好況、不況ということの波に遭いまして若干の高低はございますけれども、そうかといって、いい人を採るのに不足する、大変困るというようなところにまでは決していっておりません。そのことは、やはり大体世間並みの給与その他の処遇が図られておるという結果ではないかというふうに考えておりまして、現在の制度はそれなりに十分効果を発揮しているのではないかというふうに考えております。
  202. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、先ほど来議論されておりました、いわゆる行革の第一次答申によって、この国家公務員給与に関しても注文がつけられたわけでございます。この注文をつけたのは七月十日でありまして、人事院勧告が出されたのが八月七日ですから、約一カ月前に出されたわけで、したがって、総裁やその他の人事院の方々は、この答申を十分精査し、検討し、考慮したと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  203. 藤井貞夫

    藤井説明員 もちろん諸般の情勢はすべてしさい漏らさず検討対象にいたしておりますし、特にいまの臨調というのは、法律でもってでき上がりました非常に重要な使命を担った調査会でございます。その審議の経過また答申内容等については、十分頭に入れて作業は進めたという前提を持っておることは申すまでもないことでございます。
  204. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、この答申は十分考慮に入れて、その上で決定した勧告である、こういうことを確認していいわけですね。
  205. 藤井貞夫

    藤井説明員 人事院の基本的な立場としては、これは貫くという線でやったつもりでございます。ただ、この勧告というのは、最終的には内閣並びに国会に対していたすことでございますので、最終的に御決定いただくのは、内閣とさらに最終的には国会でもって御審議の結果、結果が出るというふうに理解をいたします。
  206. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこは非常に重要なところなのですよ。後の方は私は要らないと思うのです。ただ、人事院総裁として自分はやるだけのことをやった、後のことは、それは内閣やその他で決めるのでしょうから、そこまでは総裁は何も答える必要はないわけで、だから、私はあなたの立場として、これが最善、最良の結論だという確信をここで述べてもらえばいいわけです。
  207. 藤井貞夫

    藤井説明員 人事院としては、制度のたてまえから申しまして、今度の勧告は最も合理的な最もしかるべき勧告であるという確信でもってお出しをしたわけでございます。
  208. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、今度は別な問題に移りますが、指定職の問題について、二五%の較差があると指摘されております。このことはどういうことを意味するか、その中身をちょっと御説明願いたいと思うのです。
  209. 長橋進

    ○長橋説明員 指定職給与決定につきましては、民間給与におきます役員の報酬を参考としながら、かつ行政俸給表(一)表の適用を受ける職員に対する給与改定の均衡、これを考慮していままで決めてきておるということでございます。  さらに、具体的に申し上げますと、指定職俸給表の適用を受ける職員のうち、いわゆる十一号俸の適用を受ける次官クラスにつきましては、民間給与におきます専任役員の第三位のその金額ということを比較しております。その金額と比較いたしました場合に、現行時点で二五・六%の差があるということでございます。  しかし、従来から指定職給与改定につきましては、そういった民間役員の報酬を参考にしつつ、しかし、やはり在職の他の職員に対する改善との均衡ということをあわせて考慮してまいったわけでございます。そういう観点から申しますと、現行で二五%差があるということではございますけれども、一般行政職員が五・二%の改善であるということもございますし、さらには現下の諸情勢を考えまして、相当大幅な改善をする必要があると思いますけれども、五。二%の改善にとどめたということが現状でございます。
  210. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私はそういうことを聞いているのじゃないのです。この指定職民間の役員というか、重役というか、それ以上の方々との間の較差がだんだんと開いてきているということは、逆に言うと、これだけ搾取が多くなっているということなんですよ。企業の搾取が多くなっている。したがって、一般の労働者の賃金はそれほど上がっていないのに、企業の役員報酬だけがどんどんどんどん上がっていく、こういうことを見落としてはならないということなんです。そうすれば、当然国は強制的な措置によって何とか均衡するように誘導しなくちゃならぬでしょう。もし公務員の方の指定職を上げることが困難であるならば、そっちの方を抑える手だてをしなくちゃならないんじゃないですか、何らかの方法で。そうしなければ、やがてはものすごく較差が広がっていってどうしようもなくなると思いますよ。この較差は将来どういうふうに是正しようと考えておられるのか、その点についてお伺いします。
  211. 長橋進

    ○長橋説明員 民間の役員の報酬については、私は特に申し上げる立場にございませんが、現在の比較方法から申しまして、これ以上較差が開いていった場合に一体どうするのかというお尋ねでございますけれども、やはり適正な改善というものはしていかなければならぬと思いますけれども、しかし、在職職員、他の職員との均衡ということも考えなければならぬということであろうかと思います。さらに、指定職の問題につきましては、民間が景況の変化によっていろいろ変動する報酬ということもございますし、公務員の場合について言いますと、法律でちゃんと決めておるということもございますので、参考にしつつ行政職員との均衡をとった改定をしていくということは、やはり基本原理として正しいのではないんだろうかというふうに考えております。
  212. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 もし指定職民間に準ずるような対比方式をとるならば、民間の報酬の変動があれば、その変動の何年かの平均をつかむとか何か方法があるべきでしょう。そういう方法をとらないで、ただ、民間は変動があって公務員は変動がないから急にそこまではいけないんだ、しかし、採来は是正すると言ったって、これは少しも納得できる回答にはなっていませんよ。釈明になっていませんよ。どうですか。
  213. 藤井貞夫

    藤井説明員 若干説明不足で誤解されている面もあるのではないかと思いますが、実は、先刻給与局長も申し上げておりますように、官民較差自体というものと指定職給与決定というものとは、較差内容ではございますけれども、これをやります方式というものは、一般のその他の俸給表のものとはやり方が若干違っておるわけでありまして、指定職については、そのポストの重要性その他から考えまして、民間の重役を対象にして比較をしている。毎年やっているわけです。それが現在のような状況がずっと続いてまいっておりますために、行政職その他の俸給表の適用を受ける一般公務員との対比というものについても、これは全然無視するわけにまいりません。そこで抑制ぎみ措置を講じてずっと来ておるわけです。ここ数年それが続いておるわけで、続いておるために、従来それほど民間の役員との間に較差がなかったのが、だんだんそれが積もり積もって、ことしの調査では二五%ぐらいにもなっておるということでございます。ただ、それについても、国民世論その他のこともございまして、上の者はやはり自粛すべきだということで、去年、おととしはこの実施が半年繰り下げられまして十月になったという経緯があるわけでございます。そういうことで、抑制をしておりました結果がこういうふうに出てまいっておるということを、まず率直に申し上げた次第でございます。  したがいまして、今後この較差がどういうふうになっていくかというような点につきましては、重大な関心を持ちながら対処をしてまいるということでございまして、財政再建期間というようないろいろな問題とのにらみ合わせもございますけれども、それらの点はやはり頭に入れながら、今後も慎重に検討していくという、その分析、検討の作業は大いに続けていかなければならぬという趣旨のことはあわせて申し上げておるつもりでございます。
  214. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 こういう民間の限りない、搾取を強化しようとする方向についての対策を何らか考えながら指定職との対比を考えていかないと、私は、永久にと言っていいくらい是正は困難じゃなかろうか、こういうふうに思います。ある企業が莫大な利潤を生んだならば、それは一つは税金に転化させていく、あるいはその役員報酬についてもある制約を加えていく、そういうことをしていかないと、働く方だけは一銭のごまかしもできないのですよ。賃金をもらう者、給料生活者というものは一銭の脱税もできない、そういう立場でやっているのですから、この点についてはもっともりと資本家の実態というものを把握して、そうして労働者に対する搾取を余りしない、労働者に還元する、そういう方向か、または国家、国民に還元していく、そういう政策誘導が必要じゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  215. 藤井貞夫

    藤井説明員 われわれの方は、民間実態を調べて、それに対応して公務員給与をどうすべきかということを考えておるのでございまして、民間企業あり方、その給与のやり方等については、これは容喙すべき筋合いのものではないというふうに考えております。
  216. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 もちろん、私はただいまの状態の中で直ちに介入せよと言っておるのではないので、そういう抑制できる、較差が余り開かないような措置が講じられてこそ、この比較というものを国民にも納得させることができるんじゃないか。そっちは構わないでおいて、こっちばかり比較してみたって、それは実際問題としてどうにもならないでしょう。どうにかなるのですか。あなたが公務員については一つの、何と言いますか決定権を持っているから、これでは安過ぎるとか、これでは高過ぎると言うことができるけれども、民間の方には全然手を伸ばすことすらできないわけですよ。ただ、それは一つの統計資料として採用するかしないかの問題だけであって、そういう手の届かない部門を放置しておいたのでは、私はいつまでたってもこの比較対象の問題は解決しないと思うのです。だから、今度は政策的に何らかの形でこの労使間の分配についても口を入れるということは考えていいんじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  217. 藤井貞夫

    藤井説明員 人事院としては、民間給与決定方式等に関与するというようなことは全然考えておりません。
  218. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 人事院に聞いたからあれだけれども、政府としてこれはだれか答えてもらえませんか。日本の政府としてそういう問題をどう考えているか。だれか大臣——大臣だからそのくらいのことは答えられるでしょう。
  219. 中山太郎

    ○中山国務大臣 事はやはり労働政策の基本に関する問題でございますので、所管の労働大臣に改めてひとつ御質問をお願いいたしたいと考えます。
  220. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それでは人事院総裁にもう一度聞きます。この問題はやめます。  行革の第一次答申というのが大分給与関係にまで触れておりますね。「国家公務員給与等合理化」のアの項ですが、「公務員給与の在り方については、労働基本権制約社会経済情勢財政事情、国民世論の動向等が十分考慮されるべきものと考える。差し当たり、本年度給与改定については、以上の点を踏まえ、適切な抑制措置を講ずる。」「適切な抑制措置を講ずる。」というこの「抑制」という文言は、これは内政干渉じゃないでしょうかね。私は越権行為だと思いますね。人事院というのは、独立した機能を持つものであり、他からとやかく言われないでこの給与の問題を処理するところであると信じておりますが、こういう行革という名のもとで、給与抑制するかしないかまで立ち入るということは許されるでしょうか。
  221. 藤井貞夫

    藤井説明員 これは臨時行政調査会の一つの使命がございまして、そこからいろいろなことを検討されて御意見を出されたのであろうというふうに考えております。その文言がどうで、どういうふうに理解するか、どういう意味であるかということについては、これは直接御関係のある方からの御答弁の方が間違いがなくていいと思います。  ただ、この点の人事院の受け取り方としては、先ほど先生の御質問にお答えを申し上げましたように、現行制度がある限りは、人事院としては、労働基本権制約の代償機能を果たしているのだというたてまえがございますので、そのたてまえを踏襲をして本年も勧告を出したということでございます。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  222. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、いよいよ勧告について、本当の実施責任者はだれなのですか。勧告は議長あてにも出ておるようですが、「国会及び内閣」ということになっておるようですが、実際の実施責任はどこにあるのですか。
  223. 中山太郎

    ○中山国務大臣 勧告の実施責任ということは、ちょっと私、理解しにくいところでございますけれども、勧告を受けた政府給与法の改正ということで法律案国会で御審議をいただくように提案をするというのは内閣にあると思います。それをお決めいただくのが国会である、このように理解をいたしております。
  224. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、結局内閣が法案を出して、それが通れば実施をする、こういうことになるわけですね。そうすると、総務長官役割りというのは、勧告を受けて立つ立場になると思うのですよ。そうした場合に、一方において内閣の一閣僚として責任があり、他方においては公務員給与、身分に関する一切の最高責任者としての立場があると思うのです。したがって、その二つの間に立って、忠ならんと欲すれば孝ならずというようなこういう問題をどう処理しようとされておるのか、そこが私は決め手じゃないかと思うのですよ。
  225. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生の御指摘のとおりでありまして、給与担当の閣僚といたしましては、公務員のいわゆる国民への奉仕をしてもらうための適切な給与というものを確保することが必要な立場にあるわけでございますが、一方、内閣の閣僚という国務大臣としては、適切な抑制をするべきだという臨調答申、これをできるだけ尊重するという閣議決定を行った内閣の閣僚でございますから、その面では閣議決定に対して責任を持たなければならぬ。両方の顔を持っているというお話でございます。  しかし、そこで何が一体国家に必要なのか。それは安定した労使の関係を維持するということが一番大切である。私はそういうことが実現できるように、昨年もそのような立場を貫いてまいりました。昨年も財政事情が大変悪かった。今年はさらに財政事情が悪いのに加えて、いわゆる臨調からの答申を尊重するという閣議決定が行われている。その中で公務員の諸君が安定して公務に精励し、国民もまた納税者として政府の態度は適切であったと言うような結果が出るように誠意を持って努力をしなければならない、このように考えております。
  226. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この人事院勧告という制度と、それから人事院勧告内閣が受けてこれを実施する責任との問題は、これは原則的な問題ですか、あるいは原則ではない付則的なものですか、その辺はどんなものでしょうか。
  227. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ちょっと先生のお尋ねの真意がわかりかねるわけでございますが、私は、先ほど人事院総裁が御答弁申し上げておりますように、人事院制度というものが現存している限りは、人事院はたてまえとしてこの勧告をする、こういうことで、それを受けた政府というものがこの勧告を受けて給与関係閣僚会議を開いて適切な処置を行うというのが一つの原則ではなかろうかと考えております。
  228. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 だから、これは原則問題であると私は思うのです。原則問題というのは、いわゆる給与、身分についての主務大臣はその原則を守る義務があると私は思っております。したがって、一方閣議決定があっても、閣議決定の中であなたはそういう立場で原則を守っていかなければならない。そうでなければ、何も主務大臣なんて要らないわけですよ。だから私が言いたいことは、閣議決定があったといっても、そのことを踏まえて、いわゆる第一次答申というものを踏まえて、先ほど総裁が言ったように、この勧告が出されているのです。だとすれば、この勧告にはもはや一言も入れる余地はないはずなんです。あとはただ完全実施するのみなんですよ。どんなことを弁解しようが、私はそれだけは残っていると思うのです。  そこで、主務大臣たるあなたは、その原則を守って、閣議の中で、もしこれを実施しなくてもいい、あるいは何カ月削減しよう、こういうことを主張する大臣があったら、この人事院勧告制度の本来の姿を説明して納得させる、その努力をすべきじゃないかと思うのです。そういう抵抗を本当にやってこそ、私は、国家公務員全体があなたに対して尊敬もするでしょうし、信頼もすると思うのですよ。ところがあなたが公務員の方に一方の足を踏み入れ、他方、閣議の方に踏み入れて、さあどっちを向いていいかわからないような態度をとったら、これは公務員はあなたから全く信頼感というものを失ってしまう。だから私は、そういう点で、第九十四通常国会においてこの問題に触れたときに、先ほど岩垂委員も触れられたが、あなたは完全実施すると、非常に歯切れがよく、しかも名答弁をなされました。私はあのときからあなたを非常に信頼しているし、党は違ってもなかなか誠意のある誠実な人だということで今日まで来ましたよ。ここであなたがふらついたら、私の信頼を裏切るだけならいいのですよ、国家公務員国民全体の信頼を裏切ることになると思うのです。一たん委員会で公式に答弁しておるわけですから、したがって、もう一度この辺の答弁について、変わりないなら変わりないと一言でいいですから、よろしくお願いします。
  229. 中山太郎

    ○中山国務大臣 何遍も申し上げますように、私は人事院制度が存在をする、そういう一つの制度が現存する中で勧告が出る、その勧告を受けて、この勧告をどのように実施するかということに総務長官としては努力をする、これはやはり原則だと思います。  ただ、そのような原則にありましても、ただし、昨年はことしのようにいわゆる臨調というものがなかったわけであります。そういうなかったときでも完全実施をすることには大変な苦労があった、その事実はひとつよく御記憶を願いたい。そういう中で私は努力をしてまいった。だから、今回はさらに悪い財政事情の中にあって、私は給与担当の大臣としては前向きな姿勢で努力をするということを談話で申し上げておるわけであります。しかし、そこには非常な昨年よりももっと厳しい条件があるということを閣僚としては認識をしながら努力をしたい、このように申しておるわけであります。
  230. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、つまり日本の財政事情が悪いということが一番の問題になっておるようですが、それ以上に大事なのは、私は行政は公正でなくちゃならない、こういうことだと思うのですよ。  それで、あなたも知っておられるとおり、退職手当の引き下げの法案審議のときには、これは民間準拠だと言って強引に押しつけてきました。そして今度の人事院勧告も同じように民間との較差を埋めるのだということでしょう。こういう同じ論法で来ておるわけですね。だとすれば、同じ答えが出なくちゃならないのです、別な答えを出してはだめなんですよ。同じ答えとなれば、当然これは完全実施という答えになるわけですから、そこはまあ十分御理解願えると思うのです。そのことを強く要請しておきます。  そこで、これからほかの閣僚からもいろいろな圧力がかかると思うのですよ。そういう圧力について断固はねのける決意をひとつ表明していただきたい。
  231. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は閣僚の圧力をはねのけるということじゃなしに、給与関係閣僚会議の閣僚の方々と十分御相談をして、国民の納得のいくような結論が出るように誠意を持って努力をいたしたい、これをお約束申し上げたいと思います。
  232. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは非常に抽象的ですが、国民の納得というのがどういう納得か、これは非常に議論のあるところでございますが、一応指摘しておきます。  次に、行政管理庁長官にお伺いいたしますが、今度の行革の本当のねらいは何でしょうか。
  233. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 簡素にして効率的な政府をつくって、国民的活力を回復することだと思います。
  234. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 非常に看板はいいですよ、看板はいいから、そこで今度の中身の方はどうかというととなんです。確かにむだを省くということに反対する人はおりません。しかし、そのむだが何かということがまだはっきりとしてないですね。とれこれはこういうむだがあるからこういうふうに直すんだ、そのむだが国民から見て本当にむだだとなれば、これは本当に支持されると思うのです。ところがむだが具体的に指摘されていないのです。非常に抽象的である。  そこで私は、そのむだを省いた場合、第一次答申を今度具体的に実施する段階ですから、実施をしたと仮定すれば、各省庁でどのくらいのいわゆる予算上の縮減措置がとれるでしょうか。それをひとつお聞きします。
  235. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 第一次報告はかなり広範なものが含まれておりまして、いま具体的に幾ら節約になるかということはお答えできない状態でございます。ただ、とりあえず来年度予算編成について、いわゆるゼロシーリングというものを設定いたしまして、来年度予算編成については一定の枠をつくりました。増加を防ぐように努力をいたしました。これが成功すれば、その部分は目に見えて節約された部分になるのではないかと思います。
  236. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 節約された部分はどこにいくのでしょうか、どういうふうに使われるのでしょうか。
  237. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは概算請求がいま各省から八月末に出まして、十二月にかけて予算編成が行われるわけでございますから、まだどこへいくかということは決定しておりません。
  238. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで防衛予算の問題になるわけですが、防衛予算というものは削減されないでしょう。
  239. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 第一次報告にもございますが、聖域はございません。防衛予算も同じように検討対象に入っております。
  240. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 いや文章上は聖域化しないということを書いてあります。しかし、新聞その他巷間伝わるところによると、いまアメリカから大分強く防衛力の増強が迫られている、それに日本はこたえなければならない。そこで、自民党の中にも防衛大綱の見直しをやれとかなんとかいう議論が最近出ているという報道もあります。そうなると、こういう情勢を踏まえて、あなたは昨年よりもことしの防衛予算が絶対に増加しないということが言われますか。
  241. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 概算要求に関する限りにおきましても七・五%、防衛予算につきましてはたしか枠が認められていると思います。
  242. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 七・五%そのものが減らされていないわけですよ。だから私は、これは言いかえると非常に巧みな行革じゃないか。つまりこれからどんどんと防衛予算はアメリカにこたえるためにふやさなければならない、そういう一つの問題を抱えておって、どうしてその防衛予算を捻出するか。その際に税金をふやしてつくれば、これは財界からお目玉をいただくからそうしないで、財界のふところには余り響かないようにしながらいまの予算の中でやりくりするには、他の省庁予算を減らして、これを何とか防衛費に充てていこう、こういう一つのねらいが隠されているように思われてならないのです。そうすれば、防衛予算が拡大していくと、財界は軍需産業の方でももうかるし、税金はいままでのまま抑えられているから、これまたもうかって笑いがとまらない、こういうことになっていくと思うのですが、実際にこの行革にはそういう軍事的なねらいがないと断言できますか。
  243. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ないと断言できます。
  244. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ないと断言するには、防衛庁もこれだけ予算を抑えた、そして全体としてのバランスがこういうふうにとれていますよというような結論を出す御自信がありますか。
  245. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 予算編成内閣でやることで、具体的な仕事は大蔵省が担当してやることでございますが、このシーリングの設定に際して、約六千二百億円だったと記憶しますが、ゼロをオーバーする枠を認めてございます。その中にはODAもございますし、あるいは年金や給与ベースの定昇分等々も入っておったと思います。全体のバランスを考え、また国際関係等もよく考慮しながら、そういう配慮のもとになされたのでございまして、防衛、国防的なそういうものをふやすためにほかのものをめたらやたら削って犠牲に供する、そういうような考えでつくったものでは絶対ございません。
  246. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 つまり予算編成権は、あなたには直接責任者としてはないかもしれないけれども、予算というものが行革の一つの具体的なあらわれだとするならば、その均衡についてはあなたも責任があると思うのですよ。その点はいかがでしょうか。
  247. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 閣議で決めますから、その閣議の一員として責任は持っておるものであります。
  248. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この問題はやがて明らかになる問題ですから、どうも軍事予算をとるために行革という非常にかっこうのいい看板を着て、その裏で実際は敵は本能寺にありで軍備拡張にどんどん持っていくんじゃないか、私はこういうふうに考えたわけでございます。そうでないことをお願いいたします。  さて、時間も参りましたから、そこでもう一つ。最近、不公平税制についてこの答申がなされておりますが、この不公平税制というのは具体的にどういうものを指しておりますか。
  249. 伊藤博行

    ○伊藤説明員 ただいま御質問の点でございますけれども、不公平税制というのは、制度面あるいは執行面を通じての不公平な税負担ということを意味しておろうかと思います。
  250. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 だから、具体的にはどういうことを指しているか、どれだということをその当局が知らないでどうして直すことができるのですか。
  251. 伊藤博行

    ○伊藤説明員 七月十日の答申の中で「税負担の公平確保」ということにつきましては、「制度面、執行面の改善に一層の努力を傾注する必要がある。」ということを述べられております。その中で、特に租税特別措置につきましては、昭和五十一年度以降積極的な整理合理化が図られてきたという評価をしながら、なお最近の厳しい財政状況にかんがみまして、適用期限の到来したもの、あるいは制度創設以来長期にわたるもの等々についての厳しい見直しをすべきであるというふうな指摘がなされております。私どもといたしましても、ここで指摘されておりますことを踏まえまして、順次検討していかなければならないというふうに考えております。
  252. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 どうも中身をはっきり言わなくて困りますね。時間がないので、これ以上質問できません。  そこで、それじゃ一つの資料として五大商社の利益の状況あるいはトヨタ、日産の利益がどうなっているか、その辺ちょっと説明してください。
  253. 伊藤博行

    ○伊藤説明員 有価証券報告書によります商事会社の利益状況でございますが、五十六年三月決算期でございます。伊藤忠商事が経常利益で百三十一億円、丸紅が百七十四億円、三井物産が三百五十五億円、三菱商事が四百十四億円、住友が二百九十四億円、日商岩井が百三十二億円というふうになっております。
  254. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 あとトヨタと日産がわからないでしょう。
  255. 伊藤博行

    ○伊藤説明員 有価証券報告書でございますが、これはトヨタにつきましては五十五年六月決算期でございます。経常利益は二千九百十五億、日産は五十六年三月期千六百六十億でございます。
  256. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、こういう莫大な利益を上げておるところは全然国民の前に明らかにされていないわけです。私は、こういうものについて本来なら所得制限法でも設けて、一定の所得以上は全部国庫に帰属するというようなことをしてもいいと思うのですけれども、きょうは大蔵省ですから、税制を改正してもっと累進課税を、たとえば個人の所得の場合は五千万円以上は九五%にするとか法人税ならば一億円以上はどうこうするとか、そういう税制を改正して累進課税を強化する気持ちはありませんか。
  257. 伊藤博行

    ○伊藤説明員 法人税の問題、それから個人所得税の問題、両方につきましてのお尋ねでございますが、まず法人税につきましては、五十六年度の税制改正をもちまして先生御案内のように税率を一律二%引き上げてございます。これによりまして住民税あるいは事業税等を含めました法人課税のいわゆる実効税率というものが五一・五五%ということで、主要諸外国と比べましても相応の水準に到達しておるというふうに考えております。  お尋ねの法人税につきまして累進税率を考えるべきではないかという御提言かと思いますけれども、主として次の二点からその導入につきましては問題があるんじゃないかというふうに考えております。  第一点は、累進税率の考え方の基礎にあります物の考えといいますか、あるいはそのベースの基本的な考え方、それは所得の再分配あるいは限界効用逓減という考え方が根っこにあろうかと思います。しかし、こういった考え方は個人所得税には適合いたしますけれども、法人税につきましてはその性格から必ずしも適したものではないんじゃなかろうか。  それからさらに、法人課税に累進税率を導入いたしました場合には、必然的に資本規模やあるいは所得の絶対額が大きくならざるを得ない企業に悪影響を及ぼす、あるいは企業分割を招くといったような予期せざる効果をもたらす可能性もあるといったような点から、適当ではないというふうに考えております。  それからいま一つ、個人所得税につきまして税率を上げたらどうかという御提言かと思いますけれども、現在のわが国の所得税の最高限界税率、これは御案内のように七五%でございます。住民税のそれは一八%、両者合わせますと九三%ということで、個人所得課税の最高税率は主要諸外国と比べまして最も高い水準になっておろうかと思います。そういった状況のもとでさらにこれを引き上げることが適当かどうか、相当慎重な検討が要るというふうな考えでおります。
  258. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、次に自治省にお伺いいたしますが、今度の臨調から出された第一次答申について、地方制度調査会が不満を述べておられるわけです。それは七月三十一日付で「地方行財政行政改革あり方についての意見」ということで出ておりますが、この三ページの(一)に、これは読むと時間がなくなりますし、知っておられると思いますが、「行政改革を行うに際しては、国・地方を通ずる行政の減量を図ることを基本とすべきであり、単なる国から地方への負担の転嫁は、行政改革理念に合致せず、また、地方財政の健全性の回復を妨げるものである。したがって、1社会保障制度及び国・地方を通ずる」云々とずっとあります。このことを読んでみますと、自治省は、これから一体地方制度調査会をたてまえとしてやるのか、対立すると思われる臨調の第一次答申をたてまえとしてやられるおつもりか、どっちを今後のたてまえにするお考えなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  259. 持永堯民

    ○持永説明員 お答え申し上げます。  いま御指摘がございましたように、地方制度調査会が七月三十一日に意見を出しておるわけでございます。ただ、この意見につきましては、臨調の先般の答申と必ずしも全面的に矛盾するというものではございませんで、臨調答申を具体化するに当たりましての考え方をいろいろ述べておる、こういうことでございます。したがいまして、自治省といたしましては、臨調答申を尊重することはもちろんでございますが、あわせて地方制度調査会の言っております趣旨にもかないますように、両方が調和するような形で具体的な施策が講じられていくということを期待しておるわけでございます。
  260. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 もう時間がありませんので、あとは防衛庁に最後にお伺いいたします。  防衛庁では、世界の軍事情勢を米ソの観点からばかり見ておられるようですが、地球全体を見ていまどこが一番危険度が高いか、そういう一つのランクづけをして、したがって、日本周辺においてはその危険度はどの程度か、こういうことをはっきりと出してこないと、何かソ連が非常に恐ろしくて、そのために日本はどんどんと軍備をしなくてはならぬといったような議論の仕方をしていったのでは、本来の防衛と今後の軍事科学の推移を見通した中での対策はできないと私は思うのですが、その点について防衛庁長官から、まずどこが一番危険なのか、そのランクをずっと危険な度合いから言っていただきたいと思います。
  261. 大村襄治

    ○大村国務大臣 防衛庁といたしましては、国際軍事情勢を分析するに当たりましては、グローバルな観点から客観的にこれを試みているわけでございまして、大別いたしまして、欧州、中東、極東、そういった点につきまして、具体的に武力紛争が発生する蓋然性があるとか、あるいはそれがさらに通常戦力の段階からもっと大きな段階に発展する可能性があるか、そういった点はいろいろ見方があるわけでございますが、その場合におきます諸情勢とか軍事バランス等によって異なる面もございますので、いま先生がお尋ねになりましたような、一概にここが一番で次が二番でその次が三番である、こういうようなことは申し上げかねるわけでございます。
  262. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間が参りましたので、この点については、この次の臨時国会でみっちりやりたいと思います。  ただ、ランクづけができないなどというととでは、本当の意味の科学的な分析がなされていないのじゃないか。もちろん情勢というのは常に変わり得る可能性を持っているわけですから、そういうことを対象にして考えたのでは何の対策もできないので、当面する問題はこれとこれとこれである、したがって、どこに危険の度合いの重点がかかっているのか、もし極東にかかっていないとするならば、そういう立場で日本の防衛というのも考えなくてはならないし、緊迫した情勢だとなれば、またそういう立場に対応するということが出てくるわけで、その説明なしに、ただソ連が大きくなって軍備が増大したから、それに均衡をとるためにというようなことだけでは、私は国民を納得させられないと思うのです。そういう点で、いまの答弁には不満を申し上げて終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  263. 江藤隆美

    江藤委員長 神田厚君。
  264. 神田厚

    ○神田委員 臨調答申人事院勧告質問の前に、防衛庁に対しまして二、三御質問を申し上げたいと思うのであります。  まず最初に、去る八月十日の四時五十分ごろ、陸上自衛隊の飛行機が宇都宮市兵庫塚町に墜落をしまして、隊員五名が死亡なさいました。まことに殉職された隊員の皆さんには心から弔意を表するものでありますが、この件につきまして防衛庁長官に御質問を申し上げたいと思うのであります。  事件は、八月十日に住宅を一戸全壊をさせて墜落をしたわけでありますけれども、この問題につきましては、宇都宮市がすでに防衛庁に対しまして四項目にわたる申し入れをしております。申し入れの趣旨は、被害者の補償に万全を期すこと、それから事故原因が解明されるまで、安全策が講じられるまでの同機種の飛行を禁止すること、それから同市での飛行訓練コースの見直しを行うこと、さらに飛行前の点検整備の強化をすること、この四項目の申し入れがなされているわけであります。  これに対しまして、防衛庁といたしましてはどういうふうな形で対処なさるのでありましょうか。
  265. 大村襄治

    ○大村国務大臣 八月十日の夕刻に、宇都宮飛行場の隣接地におきまして陸上自衛隊のヘリコプターによる事故が発生いたしまして、隊員五名の方が殉職され、また民家二尺周辺の農地等にも損害を及ぼし、また隣接の住宅地域国民の皆さんに非常に御心配をおかけしたことにつきましては、責任者としてまことに遺憾に存じておる次第でございます。  ただいま神田委員から、地元の宇都宮市等から申し出があった点のお尋ねがございましたが、私どもといたしましては、地元から要望のありました事故の再発防止のための万全の安全対策及び被害者に対する十分な補償につきましては、要望趣旨を十分踏んまえて、このような事故が二度と発生しないよう部内に趣旨の徹底を図ったところであります。それとともに、被害者の補償については誠意を持って当たることといたしております。
  266. 神田厚

    ○神田委員 特に問題は事故原因の究明でありますが、この点につきましては現在どういう形でなされておられるでありましょうか。
  267. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします前に、ただいま私ヘリコプターと申しましたが、LR1連絡偵察機でございますので、固定翼の飛行機でございますので訂正させていただきます。  安全対策につきましては、早速部内に調査委員会を設置しまして、資料を収集し、徹底的な究明に臨んでいるわけでございます。とりあえず同型機に対する特別点検を実施することにいたしまして、それが終了するまでは飛行機を飛行させない、こういう措置もあわせて講じているわけでございます。
  268. 神田厚

    ○神田委員 この機種はLR1型機の十一号というものでありますが、幸いに生存しました隊員等の話でも、墜落原因につきましては非常に不可解だというような要素もたくさんあるようでありまして、そういう意味では、この事故の徹底的な原因の究明というものは早急に行われなければならないというふうに思っております。民間人の死傷者がなかったことは幸いでありますけれども、しかしながら、事故の再発防止のためにはさらに十分な体制をとって対処していただきたいということを要請をしておきたいと思うのであります。  特に、宇都宮のあの飛行学校は、従来から民間の人たちとの関係が非常にうまくいっておりまして、そういう意味では、今後とも同飛行場を自衛隊としてはどうしても使っていかなければならない状態であるというふうに聞いております。そういう面も含めまして、特に近来住宅地ができてきておりますので、安全飛行に対しまして徹底をしてほしいということを強く要請をしておきたいと思うのであります。  同時に、現在次期練習機の選定の作業が大詰めを迎えているというような状況でもあるようでありますので、そのことに加えましても、この事故の原因の究明というのは、これは必ず避けて通れない非常に大事な問題でありますから、その辺のところも含んでひとつ対処をしていただきたいということを強く要請をしておきたいと思います。  さらに、この安全飛行の確立のために、自衛隊としては具体的にどういうふうなことを今後考えていくのか。宇都宮市から要請をされておりますような、飛行コースの見直しとかあるいは飛行前の点検整備の強化、こういう問題が言われておりますけれども、これらの問題についてはどういうふうにお考えでありましょうか。
  269. 石崎昭

    ○石崎説明員 今後どう対応するかでございますが、大臣が先ほど申し上げましたとおり、事故後、即刻必要な通達を出したりしまして安全対策について注意の喚起をいたしまして、とりあえず同型機については徹底的な特別点検を行う、それからそれ以外の陸上自衛隊の保有するすべての航空機についても順次点検を行うということで、安全性の確認について欠けるところのないようにいたしております。  そのほか、航空機そのものの安全の点検以外に、乗員の安全意識の高揚、それからいままで操縦その他について守るべき準則のさらなる徹底、そういうことをやっておるわけでございます。  宇都宮市からも要望がありました飛行訓練のコースの見直しとかいう問題につきましては、今後陸上自衛隊の航空訓練を安全を確保しながら円滑にやっていきたいということを前提に、できるものについては十分な見直しをしまして改善を図りたいと思います。  ただ、宇都宮の航空学校の分校というのは、航空教育にとっては大変必要なまた大事な場所で、訓練空域その他でいろいろ好条件を備えているものですから、安全の確保に十分注意しながら訓練は続行したい、かように思っております。
  270. 神田厚

    ○神田委員 それではこれに関連しまして、このごろ自衛隊の訓練機がかなり事故を起こしているというふうなことでありますが、昨年に比べましても件数にしましても相当ふえている状況であります。こういう点については、特に防衛庁として、陸上に限らず訓練している航空機の墜落事故等について特別な対策を立てる考えがあるのかどうか、その辺はどういうふうに対応なさるおつもりでありましょうか。
  271. 石崎昭

    ○石崎説明員 御指摘のように、去年と比べてみますと、ことしは実はまことに残念なことなんですが、傾向として事故の数がふえております。最近の航空機の事故は、昭和五十二年度に年間十七件あった、これがピークでございましたが、それ以後は次第に減りまして、一けた以内におさまって、その後一生懸命に努力をしておったわけでありますが、ことしは去年の年間七件の事故に比べますと、すでに今回の事故までに四件というようなことで、去年に比べて相対的にふえておるということで大変憂慮をしているところでございます。  なぜ、ことしになってから去年に比べて相対的に事故が増加傾向にあるかという原因については、個々の事故がみんなそれぞれ千差万別の要素を持っておりますので、全体の傾向として、去年からことしにかけて何か事故を増加させるような一つの傾向のようなものがあるかどうかについては、これは判断するのが非常にむずかしいところでありまして、個々の事件がみんなそれぞれ違った要素の事故であるということで、相対的にふえているという傾向をどういうふうに説明するかとなるとなかなかむずかしいので、苦慮しているところでございます。  いずれにしましても、先ほど来申し上げておりますような安全対策をさらに徹底、努力をしまして、こういう憂うべき傾向を何とか食いとめたいと思っておる次第でございます。
  272. 神田厚

    ○神田委員 それでは関連しまして、防衛白書に関して御質問申し上げますが、五十六年度の防衛白書が出されました。その中で特に、最近のソ連の著しい軍事力の増強、これがわが国の平和と安全にとって潜在的な脅威であるとの前提に立ちまして、国民合意に基づく自主的な防衛努力と西側陣営との連帯とによってわが国の安全を図っていくことを強調しておりますが、これらの一連の分析は、わが党といたしましては妥当だというふうに考えております。しかしながら、わが国の平和確保にとって非常に重要な柱であります平和戦略の進め方について、その方向性が具体的に一つも示されてない、これは防衛白書のあり方として非常に問題があるというふうに考えておりますが、その点はどういうふうにお考えでありましょうか。
  273. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  今回の白書を作成するに当たりましては、「国防の基本方針」にのっとりまして国の安全保障を全うするためには、国際的な協調を図りながら軍事、非軍事にわたるあらゆる施策が総合的かつ整合的に推進されなければならないという観点から、各種の防衛施策について触れているわけでございます。  わが国は、戦後一貫して平和外交の推進を国是としてきており、今後ともこれを堅持していく決意でございますが、防衛白書という性格上、一般的な外交政策については具体的に触れるまでには至っておらない次第でございます。
  274. 神田厚

    ○神田委員 同時に、当面の重要課題であります米国からの防衛努力の要請に対してわが国がどういうふうにこたえていくかという、それらについても具体策が不明確であります。この辺はわれわれとしましては、防衛努力の要請に対して防衛庁はどういうふうに具体的に対応していくのかという問題については、これをはっきり具体的に明示をしておいた方がいいというふうに考えるのですが、その点はどうでありますか。
  275. 大村襄治

    ○大村国務大臣 今回の白書におきましては、日米防衛協力の意義、米国の対日防衛努力期待の背景、これに対するわが国の基本的な考え方、最近の日米防衛協議の概要等についてわかりやすく記述するよう努めたところであります。  防衛庁といたしましては、米国からのわが国の防衛努力に関する期待及び意見については、十分念頭に置きながら、憲法及び基本的な防衛政策に従い、できるだけ早く「防衛計画の大綱」の水準を達成すべくできるだけの努力を払っていく所存であります。また、この過程において、五六中業が作成された場合など、機会あるごとに米側と密接に対話、協議を行い、相互理解を深めてまいりたいと考えているわけであります。
  276. 神田厚

    ○神田委員 さらに、わが国の防衛政策上の懸案であります防衛大綱の見直し、防衛予算財政との関係、自衛隊の欠陥是正等の明確な方向性が示されていないということに対しまして、私どもはこれは大変問題があるというふうに思っております。特に防衛大綱の見直しの問題については、多くの関係機関におきまして、防衛大綱を見直すべきだという意見も大変強く出てきているわけでありますが、防衛庁長官といたしまして、防衛大綱の見直しの問題についてはどういうふうにお考えでありますか。
  277. 大村襄治

    ○大村国務大臣 「防衛計画の大綱」についてでありますが、防衛庁といたしましては、現在この大綱に従って防衛力の整備に努めているところでありますが、現在の防衛力の状態は、この大綱に定める水準とまだかなりの隔たりがございます。したがって、私どもといたしましては、現下の厳しい国際情勢にもかんがみ、なるべく早くこの水準を達成することにいたしたいと考えておるのでございまして、いま直ちにこの大綱を見直すことは考えておらない次第でございます。
  278. 神田厚

    ○神田委員 答弁によりますと、いま直ちに大綱を見直すことは考えていない、こういうことでありますけれども、そうしますと、どういう時点かでこの大綱を見直すというふうなお考えをお持ちであるということでありますね。
  279. 大村襄治

    ○大村国務大臣 大綱の今後の問題につきましては、これまでも国会においてお尋ねがございまして、私どもは今後見直すことがあるとすれば、国際情勢変化、国内諸情勢動向、大綱の達成状況等を勘案することとなろうということをしばしば申し上げているわけでございます。現在は水準達成に全力を傾注しているところでございますので、将来の見直しの時期等については、現段階では何とも申し上げかねる次第でございます。
  280. 神田厚

    ○神田委員 それでは今回の防衛白書が指摘をしている最近のソ連の著しい軍事力の増強というのは、国際情勢変化ということにはならないわけでありますか。私どもは、やはり防衛白書がこれだけ力点を置いて、さらにアメリカやあるいは西側諸国がこういう軍事情勢変化があるという中で日本に対応を迫っているという状況を考えますと、ソ連の軍事力の著しい増強というのは、防衛大綱をつくりました時点から考えれば、明らかに国際情勢変化があるというふうに考えておりますが、その点はどうでありますか。
  281. 大村襄治

    ○大村国務大臣 最近におけるソ連の軍事力の増強ぶり、またアフガニスタンへの進攻以降の第三世界への行動等は、東西間の軍事バランスに大きな影響を与えつつある点は事実であると考えているわけでございます。ただ、大綱の問題になりますと、先ほど私が申し上げましたように、国際情勢変化だけでどうこうするというわけにもまいらないわけでございまして、世論の動向あるいは達成の状況、そういった点もあわせて検討しなければならない問題であると考えているわけでございます。また、これまでの情勢変化からしまして、今後どういうふうに動いていくか、そういった点も慎重に検討しなければならないものと考えているわけでございます。  そういった点も考えあわせまして、先ほども申し上げておりますように、当面の問題としましては、大綱の水準を達成することを基本的な考え方として防衛力の整備に取り組んでまいりたい、かように考えている次第でございます。
  282. 神田厚

    ○神田委員 いまの御答弁ですと、国際情勢変化しているということはお認めになっておりますね。国際情勢変化しているということは認めている。しかしながら、国際情勢変化だけでは大綱の見直しにならないということを新たにつけ加えているわけであります。防衛大綱の見直しの中で論議をされてきた一番の問題は、国際情勢変化をしているか変化をしていないかという問題であったわけであります。したがいまして、防衛庁長官が国際情勢変化をしているということをお認めになっているのであれば、当然防衛大綱見直しあるいはこの防衛大綱を見直すための検討というものを始めなければならないというふうに考えておりますが、その点はいかがでありますか。
  283. 大村襄治

    ○大村国務大臣 先ほど国際情勢が最近変化をしていると申し上げたわけでございますが、変化をしていることは事実でございますが、変化程度の問題もございますし、また今後の動向もあるわけでございます。そういった点を慎重に検討すると同時に、他の要件も十分念頭に置いて対処しなければならない、そのように私は考えているわけでございます。
  284. 神田厚

    ○神田委員 ちょっときょうは時間がありませんから、この問題、また臨時国会の中で詳しくやらしてもらいますが、要するに、いま与党を初め防衛の問題で心配をしている人たちは、「防衛計画の大綱」の見直し問題を手をつけなければならないというふうなことになってきているわけであります。それはそれで、防衛庁長官も中途半端な答え方ではなくて、やはりそういうことについての少し突っ込んだ考え方を示していただかなければならないわけでありますが、本日変化はしているということをはっきりお認めになった。変化はしているけれども変化程度だということでありますが、そんなこと言いましたら、これは詭弁でありますから、そういうことではなくて、変化をしているということを認めたということは、やはり「防衛計画の大綱」の見直しに一歩近づけたというふうに私どもは理解をしているわけでありますが、そういう点ではもう一度御答弁どうでございますか。
  285. 大村襄治

    ○大村国務大臣 国際情勢変化しているかしてないかにつきましては、先ほどお答えしましたように、変化しているということは申し上げたわけでございます。ただ、大綱の見直しとの関連におきましては、まだいろいろ検討しなければならない点があるわけでございまして、現在までに変化しているからといって直ちに見直しということにつながるかどうか、その辺にもなお分析、検討の必要があろうかと思うわけでございます。  また、その他の要件につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、そういった点を慎重に検討いたしているわけでございますが、現在の大綱の水準がまだ現状と非常に隔たりが多い。これを一刻も早く達成することによってかなり防衛力の改善が行われる見通しを持っておりますので、その点につきまして、現在のところ全力を挙げて取り組みたいという考え方を持っているわけでございます。
  286. 神田厚

    ○神田委員 分析、検討するとかということを言いながら、結局は防衛大綱の現在の水準を達成するんだということで、どうもよくわかりません。短い時間でよくわかりませんから、後でまたゆっくりやらしてもらいます。  先ほどちょっと質問をしたかったのでありますが、次期練習機の選定が開始をされているわけでありますが、これはいつごろその選定の作業が終わるのでありましょうか。長官、いかがでありますか。
  287. 塩田章

    ○塩田説明員 突然のお尋ねでございますので、よくあれですが、陸上自衛隊につきましては、次期練習機の選定ということは私は聞いておりません。もし先生おっしゃいますのが航空自衛隊のことであれば、MTXをいま現在研究開発中でございまして、実用機には至っておりませんけれども、航空自衛隊の練習体系につきましては、そちらの方に切りかえる案を持っております。恐らくその方ではないかと思いますけれども、そういう状況でございます。
  288. 神田厚

    ○神田委員 時期的にはいつごろですか。
  289. 塩田章

    ○塩田説明員 ちょっといま何年か覚えておりませんけれども、ここ二、三年のうちだったと思いますが、開発を終わる予定でいま研究をしております。
  290. 神田厚

    ○神田委員 航空自衛隊の方と関係がありますが、現在具体的に選定に入っている陸上自衛隊の練習機の問題がありますね。それはどうなんですか。
  291. 塩田章

    ○塩田説明員 いま、二、三年のうちではないかと申し上げましたが、まだ研究開発の段階で、実用段階までにはかなりまだ時間がかかるようでございます。航空自衛隊のいまのMTXが開発されまして、これが実用に供されました場合には、現在の練習機の初等機から、ジェットでありますが、高等のジェット練習機に至る過程を、いま中間に二機種入れておりますけれども、それを一機種でやってしまいたい、非常に短縮を図って訓練効果を上げたいというふうに考えておるものでございまして、いま鋭意研究開発中ということでございます。
  292. 神田厚

    ○神田委員 それでは時間の関係で防衛庁関係、これで終わります。どうぞ退席なさって結構であります。  続きまして、大変時間がおくれましたが、臨調答申につきまして中曽根長官の方に御質問を申し上げたいと思います。  臨調答申が出されまして、われわれはこの答申につきまして党の方で談話を発表しております。具体的には、この中間答申は大筋においてこれを評価をするということでございます。また、部会報告に比べまして、補助金削減の問題やあるいは教科書無償給付制度の問題や不公平税制の是正の問題や全体のバランスが部会報告よりも前進をしているというふうな形での評価もしているところでございます。  ただ、問題点といたしまして、その臨調報告が出された段階では、私どもは特に国保や児童扶養手当地方肩がわり、それから高額医療費自己負担限度の引き上げ、公的年金の国庫負担率の引き下げ、児童手当の所得制限強化、老齢年金の支給開始年齢の引き上げ、住宅金融公庫の貸付金利の見直し公務員の実質削減計画の見送り、地方出先機関の現業を除く廃止の見送り、租税特別措置見直しの具体性の欠如、これらについては問題があるという態度をとらしていただいております。  そういう中で、現在、関係機関におきまして行革法案の政府大綱づくりの作業が進められておりますけれども、大体骨子としては六項目ぐらいの形でこれが大筋大綱に組み入れられるというようなことでありますが、これらの作業の見通し、ちょっと先ほどお伺いしましたが、それと、これをどういうふうな形で処置をするのか。長官としましては、国会の方の決めることではありますけれども、特別委員会の設置というような形でこれをするのか、臨時国会に臨む態度を含めて御説明いただきたいと思います。
  293. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 七月十日の第一次答申を受けまして、十七日に閣議決定を行いました。それは最大限に尊重して速やかに実施に移すという趣旨であります。それに基づきまして、すでに六月五日に各省庁に対して、五十七年度予算はゼロシーリングを指示して作業をさせておりまして、この十日の答申内容は、各省が五十七年度予算について編成をする盛りつけの内容になるわけであります。そういうことで、一面においては各省に努力を要請しつつ、一面においては内閣全体としての整合性を持たなければなりませんので、答申内容をよく分析、検討を加えながら、いま一応二十五日を目途に基本方針を決定すべく調整しておるところでございます。  内容につきましては、七月十日答申の大きなものをほとんど網羅できるようにいま努力させておりまして、財政再建に貢献する部分、補助金の問題も入りますし、公務員制度あるいは特殊法人あり方あるいは地方関係、そういう点について、重要な問題について方針をつくりたい、そう考えております。
  294. 神田厚

    ○神田委員 したがいまして、こういうものについて、これは国会審議にゆだねるわけでありますけれども、長官としましては、これらのあり方につきまして、どういうふうな形でこの臨時国会にこれを出していきたいか、形としては、たとえば特別委員会みたいなものをお考えになっているのかどうか。それはいろいろ国会との関係がありますけれども、主務者としまして、どういうふうなお考えをお持ちでありますか。
  295. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その基本方針を今度は法律化いたしまして、もし臨時国会が開かれた場合には、できるだけこれを集約した法律の形にして提出したい。また国会審議は各党でいろいろお話し願うことでございますが、審議も同じように、できるだけ集中して審議できるような形で能率的にやっていただいたらありがたい、そう思っておる次第です。
  296. 神田厚

    ○神田委員 それから、答申の後、やはり残っている問題がたくさんありまして、先ほどの長官説明でもこれがはっきりしているわけであります。たとえば特殊法人整理あるいは中央地方の事務配分見直し、こういうものを中心として地方自治財源の確立を中心とした地方分権確立の具体的措置、こういうものがまだ手をつけられてないわけでありますが、これらの問題については、今後の検討方針として、どういうふうなスケジュールでこれをまたこなしていこうというふうにお考えですか。
  297. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中央並びに地方機構問題あるいは制度問題等々残された重要問題につきましては、臨調内部において四部会の新しい部会編成が行われまして、その部会に対するおのおのの部会長や補佐の任命まで大体決まりまして、九月一日からいよいよ作業を開始することになっております。  次の答申をいつごろ目指すかということでございますが、必要に応じて随時答申をしていただく、同時にいま土光さんがお考えになっているのは、大体来年の春と夏の間くらいに次の答申を出すべく努力されておるということを伺っております。最終的には五十八年の三月が最終でありますが、できるだけ重大な、脊梁山脈みたいなのに当たるところは来年でやっていただいて、あとは必要な残務整理的なことや監視あるいは監督してこれを推進していくとか、あるいはさらに次の行政の軌道設定みたいな問題について検討なさる必要があるのかなというような程度のことを考えておる次第であります。
  298. 神田厚

    ○神田委員 この行政改革の問題では、私ども民社党は、これを率先して推進をしてきた立場をとっているわけであります。しかしながら、現在政府が予定をし、各省庁で詰められている問題を見ますと、必ずしも全面的にこれに賛成をしていくというものばかりではないわけでありまして、そういう点から、われわれは法案が出てきた段階で、その一つ一つの法案について賛否の態度をはっきりさせていく、あるいはそれの是正を求めていく、こういうふうなことを基本的な方針としております。したがいまして、集中審議の形をとるのかあるいは個々に審議をするのかということについては、まだ党の態度としてははっきりしてはおりませんけれども、いずれにしましても、国民が本当に望む形での行政改革が、本当にその実効が上げられるような形で法案が出されますことを私どもは期待をしております。  それで、最後長官にお尋ねいたします。  この臨調答申の中でも、公務員給与抑制の問題が明確に出されております。一方、本日人事院勧告の問題についても国会に出されたわけでありますが、中曽根長官といたしましては、この臨調を主導した立場もありまして、いわゆる人事院勧告につきましていろいろ複雑なお気持ちかと思うのでありますが、どういうふうにお考えでありましょうか。
  299. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 人事院勧告も尊重さるべきものと規定してありますし、また臨調答申、第一次報告も最大限に尊重すると閣議でも決定し、法律でも尊重すべく規定されておるところであります。いろいろ諸般の情勢等も考えてみますと、最終的には政府及び国会でこれを決める、その前に、案としては、政府及び自民党で決断をする、そういう性質のものではないか。つまりいろいろ諸般の情勢を全部考えながら政治的決断を行う、そういう場面ではないかというように思います。私といたしましては、臨調答申の線に沿いまして、国民の期待にこたえるように努力したいと思っております。
  300. 神田厚

    ○神田委員 ただいまの御答弁を聞いておりますと、やはり臨調答申給与抑制という面で長官としての気持ちがあるようでありますが、やはりこの人事院勧告の問題は、労働基本権制約をされている公務員にとりましては、その代償措置として制度化されているものでありますから、政府勧告の完全実施の義務を負うというふうにわれわれは考えておりまして、長官の御答弁ではありますけれども、もし長官がそういう形で臨調答申の線に沿って公務員給与抑制に賛成をするという態度をとっているならば、われわれとしましては、この点につきまして非常に遺憾であるというふうに考えております。しかしながら、この点につきましては、先ほど御答弁をいただきましたから、今度は中山総務長官藤井総裁にこの点についての質問を移していきたいと思います。長官、どうも御苦労さまでありました。  それでは最初に中山総務長官に——ただいま中曽根行管長官からああいう形での答弁がありましたが、長官といたしましてはどういうふうにお考えでありますか。
  301. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は給与担当大臣として、就任以来、公務員生活安定ということ、また公務を忠実に尽くしてもらうということを中心に、昨年の人事院勧告におきましても、完全実施という一つのパターンを——過去十年間、慣熟した労使の関係でございますから、安定した労使の信頼関係というものを維持することが、やはり日本の政治全般の上では大変貴重な問題である、そういうことで、実は一つの既定の方針というものを立ててやりましたけれども、昨年はそう言いながら、非常に財政事情がむずかしいという中で、実は十月二十八日まで給与関係閣僚会議が行われた。十月二十八日に完全実施ということになったわけでありますが、御案内のように昨年も、いわゆる計上された予算以外に相当な財源を財務当局から引き出すという作業があったわけであります。今年はさらに財政事情が悪いという中で、私はこの慣熟した労使の関係というものをできる限り維持するように努力をいたしたい、そのように考えておりますけれども、この第二臨調政府に対する答申、それに対する閣議の決定というものも踏まえながら、私は、やはり国民のための政治でありますから、国民が納得し、また私の立場も誠意が尽くせるような形でできるだけの努力をいたしたい、このように考えております。
  302. 神田厚

    ○神田委員 人事院総裁はどういうふうなお考えでありますか。特に中曽根長官がああいうふうな形で発言をされていきましたけれども、それも含めてひとつお考えをお聞きしたい。
  303. 藤井貞夫

    藤井説明員 人事院給与勧告制度的な役割りとか意味などについては、累次論議が重ねられてきており、私も機会があるごとに申し述べておることでございますから、詳細な繰り返しは避けたいと思いますけれども、この勧告制度というのは、やはりいまお述べになっておりますように、公務員労働基本権制約の代償機能であるという性格を非常に強く持っておるといいますか、このやり方が現行制度で認められております公務員の待遇改善の唯一の方途であるという認識ははっきりと持っております。したがいまして、給与をめぐるいろいろな論議あるいは批判、または国における財政状況、それらの点においても、私は私なりにつぶさに検討し、また理解もいたしておりますけれども、それはそれとしながらも、なお公務員に関する人事院勧告制度の意味というものを考えますれば、現行制度があります限りは、従来の方針は踏襲して、これは曲げるべきではない、筋を通すのが人事院の使命であるというふうに考えて、本年も例年どおりのぺースで国会並びに内閣に対して御勧告を申し上げたということでございます。
  304. 神田厚

    ○神田委員 臨調を主宰した中曽根長官の方からは、明確に、抑制を基調として答申をされたものを自分は尊重するというふうな形で言われたわけでありますが、しかし、給与担当大臣であります中山総務長官並びにこの勧告をつくりました藤井総裁におきましては、やはり長年の慣行の中で慣熟した制度であるこの勧告については、完全実施を基本としてこれをやるべきだ、こういうふうなことで意見が分かれているようであります。  ただ、中山長官につきましては、前に八月七日の長官の談話では、誠意を持って対処をしてまいる所存であります、こういうふうに述べていたわけであります。ところが新聞報道によりますと、給与関係閣僚会議におきまして長官は、勧告の取り扱いは慎重に対処すると発言の内容を変えているわけでありますけれども、この点につきまして多くの関係者は、どういうふうな形で変わってしまったのだろうかということで心配もしているわけでありますが、この点はどういうふうに御説明いただけますか。
  305. 中山太郎

    ○中山国務大臣 八月七日の総務長官談話につきましては、給与担当大臣としての私の心構えを実は申し上げておるのであります。給与関係閣僚会議においては、関係各閣僚がお集まりになっていろいろ意見が出ております。そういう中で担当大臣とし、また片や内閣の一員として、やはり公務員給与の問題についての意見を闘わす、そういうことで今回の答申というものもございますので、慎重にこれは対処することが必要であるという見解を述べたわけであります。
  306. 神田厚

    ○神田委員 ちょっと後退しているというふうな形で私ども心配するわけでありますが、先ほど中曽根長官政府と自民党の政治判断によってこれを取り扱う、この問題は一つの政治判断だ、こういうことを言われましたが、この点につきましては、給与担当の大臣といたしまして、そういう形でこの問題が取り扱われること、人事院総裁としてこういう形でこの問題が取り扱われることについてはどういうふうにお考えになりますか。
  307. 藤井貞夫

    藤井説明員 人事院の立場といたしましては、人事院給与勧告制度のたてまえに立ちまして従来どおりのぺースで調査をし、またその調査の結果を積み重ねまして勧告をお願いをいたしております。勧告制度は、これはとりもなおさず国会内閣に対して出すものでございまして、これの取り扱いをめぐりましては従来いろいろ論議があり、また経過を経てきておるわけでございますけれども、これが慣熟した制度として確立をいたしましてからすでに十年を経過しております。五月実施の勧告で、これは時期も同時に完全実施に決定したということまで含めますと、十二回にわたって完全実施ということが行われてきておるわけでございます。この事実はわれわれあくまで踏まえて、人事院勧告役割りとのにらみ合わせのもとで同じようなベースで勧告いたしておりますので、人事院の立場といたしましては、慣熟した制度の取り扱いと同様に、最大限と申しますか完全実施の方向に向かって、これが実現いたしますように切に期待をしておるということを申し上げざるを得ないわけでございます。
  308. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は給与担当閣僚としてどのように考えるかというお尋ねでございますけれども、私が席を連ねている鈴木内閣の政治姿勢というものは、これからの困難な新しい時代を迎えるに当たっての現在の行政機構、その肥満体というものを改革することによって国民の負担を軽くして国民への十分な奉仕を行う、こういうことが一つの大きな内閣の政治生命をかけた課題であるということを総理が言っておられるわけでありまして、それを受けていわゆる臨時行政調査会というものが国会の御承認のもとに設置され、その答申を尊重するということが閣議決定されているという時点から考えますと、私どもとしては、政府と自民党が政治的に決断をして行うという先ほどの中曽根長官の御発言というものは、やはりこれからの日本のためにいかなることをなすべきかということが政府及び自民党によって決断をされるということではなかろうか、そのように考えております。
  309. 神田厚

    ○神田委員 何かちょっと質問に対して適切な答弁でないようでありますが、これは大変むずかしい話であります。しかし、私はやはり政治判断だというそういう発言をあえてされているということは、すべて政治判断でないものはないわけでありますけれども、特に今回こういう臨調答申があって財政が非常に大変だという中でのあの長官の発言は、要するに、臨調答申給与抑制するということについての決断を言ったものだというふうにとりまして、非常にその点は憂慮をするわけであります。少なくとも人事院総裁なり総務長官はちょっとトーンが違いますけれども、そういう関係者の皆さんの公務員に対するいままでのいろんな経緯を踏まえた形のものがもう少し尊重されていかなければならないというふうに考えておりまして、そういう点では中曽根長官の発言については大変問題があるというふうに指摘をしておきたいと思います。  さらに、時間がなくなりましたので、今回の勧告の特徴の一つに成績主義の導入というものがうたわれております。成績主義の導入を今回の勧告で特に強調したねらいというのは一体どこにあるのか。さらに、従来の信賞制度が十分に機能しなかった理由というのは一体どのあたりにあるのか。私はやはり公務員国民の皆さんに信頼を受けて、しかも働いている公務員自身も信賞必罰の制度によりまして快適な職場の勤務ができるというふうなことが一番いいのでありますが、そういう点につきまして、いささかいろいろな問題でいままで問題があったというふうに考えておりますが、この二つの問題につきましてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  310. 藤井貞夫

    藤井説明員 今回の勧告と同時に出しました報告におきまして、いま御指摘になりましたように、成績主義の原則、あるいはなお見方を変えれば信賞必罰主義の徹底、そういう面を意識的に打ち出しております。実はこの点につきましては、公務員制度のみならずおよそ人事管理を進めてまいりますための基本的な一つのたてまえであろうと思っております。成績主義を厳守していく、あるいはちゃんとりっぱに働いている人には、それに対して適切な報い方をしていく、これによって職場の空気というものをきちっとしたものに固めていく、振興していくということは大変大事なことでございます。  特に公務員というのは、法律の執行なり予算の執行に当たり一般民間企業とまた違った特殊な重要性を持っている仕事でございますので、この仕事をやります公務員というものについては、常に厳正な服務のもとに仕事をしてまいらなければならぬという義務がございます。そういう面から、人事院といたしましても、われわれの権限の範囲内においてその方向に向かっての努力は従来も続けてきておるわけでございますが、その中で給与制度の運用につきましても配慮をやってきております。  その中で、特に柱となっておりますのは、特別昇給の制度とそれから特別給の中の勤勉手当の運用ということに関する成績率の導入をきちっとやるという、簡単に申しますとこの二点でございます。これらの点については日ごろ督励を加えてやっておりますけれども、遺憾ながらまだ十分でないということは率直に認めざるを得ない。特に各省においていろいろお考えもあるかと思いますが、ばらつきがあるというような点があることは、これは事実問題として厳存するわけでございますので、その点については人事院としても制度的に考えることは考えてまいります。さらに各省庁の権限に属することについては指導の徹底を期するという方向努力をさらに積極的にやりたい、そういう意味のことを申し上げたのでございます。
  311. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので、ちょっと中山長官に。  蒸し返すようであれでありますが、先ほど中曽根長官が言われたことに対しまして、中山長官は同調しているというふうなことではないのでしょうね。
  312. 中山太郎

    ○中山国務大臣 中曽根長官のお考えは中曽根長官のお考え。私は、給与担当大臣としてかねて申し上げているとおり、この慣熟した労使の関係というものをできる限り維持してまいるように誠意を持って努力いたしたい。このように考えております。
  313. 神田厚

    ○神田委員 少し明確になりました。  それでは信賞必罰の問題で、信賞必罰制を明確にするということは、違法行為参加者には今後厳しい態度で臨むというふうなことを含んでいるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  314. 藤井貞夫

    藤井説明員 これは人事院にもむろん責任がございますが、総理府といたしまして実行面において総括的な調整をやるという立場から総理府が第一義的にはおやりになることでございますので、関連して後ほどお話があろうかと思いますが、この点につきましては、厳正な服務の徹底ということは従来からも非常に心してやってきております。しかしながら、その点についてまだまだ十分徹底しないうらみがある。そのためにいろいろ新聞等で論議されるような問題が起きてきておる。これは大部分は一生懸命やっておると思います。それは確信しております。ただ、一人でもそういう者が出ますと、全体の官職の信用失墜になるということがございますので、これは厳に慎んで、各省庁とも督励をしながら厳正にやる努力をさらに強化したいということを考えておる次第でございます。
  315. 神田厚

    ○神田委員 それでは最後になりましたが、いまずっとお話し申し上げましたように、ここに来て、もちろんいろいろ財政再建その他大事なことはわかっておりますけれども、長い間の慣行でずっと守ってきました公務員制度の問題は、やはり完全実施をするということを基本にしなければならないわけでありますから、特に中山総務長官に対しまして、いろいろむずかしいこれからの動きになるでありましょうけれども、完全実施のために最大限の努力をお願いしたいということを申し上げまして終わらせていただきます。
  316. 江藤隆美

  317. 中路雅弘

    中路委員 時間の中で榊委員と分担をして臨調答申問題と人勧問題を質問させていただきたいと思います。  その前に、私一言最初にさきの閣僚の靖国神社の参拝問題についてお伺いしたいのですが、今回は外遊中の亀岡農水大臣を除きまして全閣僚が靖国神社に参拝をされました。鈴木内閣のもとで昨年に続いて行われた靖国神社の集団参拝ですが、これが実質的な公式参拝であるということを各紙、櫻内自民党幹事長等も述べておられますが、東京新聞でも幹事長の談話として、すでに鈴木首相を初め閣僚も靖国神社に参拝し、私人とはいいながらみずからの肩書きをつけて記載している、これは公式参拝そのものだと述べ、公式参拝か私的参拝かどうかということは解釈の違いで、実態はすでに公式参拝になっていると強調したというふうに報道しています。各省庁の事務官に私調べていただきまして、当日の閣僚の表をつくってみたのですが、それで見ますと、公用車を使用しない、公務員を随行しない、そして肩書きを記帳しなかったのは園田外務大臣、それから河本経済企画庁長官、鯨岡環境長官、そしてちょっとわからないところがあるのですが、田中通産大臣ぐらいじゃないかと思うのです。大部分が肩書きも公職のをつけて参拝をされているわけです。  閣僚のこうした事実上の公式参拝が政教分離などを定めた憲法に違反することは明白ですが、上智大学の教授で元内閣法制局の参事官をやっておりました佐藤功氏は、著書の中でこう述べているのです。こうした参拝が機械的に慣例となるということを考えれば、むしろそれによって神社が国政と結びつく印象を与えるというところから憲法二十条の趣旨に反するということ、昨年もそうですが、ことしもそうですが、こういうことが繰り返されて慣例になっていけば、それは当然やはり憲法二十条にも触れる公式参拝に当たるんだということを述べておられるわけですね。  私はそういう点で、鈴木内閣の総理、閣僚らのこうした靖国の参拝について、違憲の疑いは否定できないという統一見解を出しておられるわけですから、憲法の尊重、擁護義務を課せられた閣僚として、疑わしきは行わずという見地から、靖国神社への事実上のこうした参拝はすべきじゃないと考えるわけですが、長官、いかがですか。
  318. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私も、自分のいとことか中学の同級生たちが戦死をいたしまして、靖国神社に祭られておる、こういうことで、閣僚になる前からあの近所を通るたびにあすこへお参りをする、そうして霊を慰めるということが私の一つのパターンになっておりまして、閣僚中といえども同じパターンでやっております。閣僚をやめましても同じパターンを繰り返すと思っております。特に申し合わせをして行っておるということではございませんし、あくまで私人としての参拝でございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  319. 中路雅弘

    中路委員 中山総務長官はハイヤーで行かれて、公務員は随行しておられないという返事ですが、やはり肩書きは総務長官ということで記載をされているわけですね。こうした肩書きを記載して、事実上ほとんどの大臣が公用車を使い、秘書官を随行して、しかも同じ日に行かれる、これは先ほどの佐藤教授も言っていますように、私は事実上公式参拝になるのではないかと考えるわけです。  また、秘書や閣僚の宗教も一応調べてみたのですが、これは交詢社の「日本紳士録」に出ています宗教で見ましたら、判明した十一名のうち全員が浄土真宗とか真言宗とかの仏教ですね。神社の参拝ということもありますけれども。田中通産大臣などは、昨年はこう言っておられるのですね。憲法二十条を読んでみたまえ、参拝するかしないか、オール・オア・ナッシングだと述べて、閣僚の参拝が信仰の自由、政教分離を規定した憲法に抵触するとの懸念を示して参拝せずと。ことしは参拝されているのですね。新聞の報道ですと、同通産相の変化は、昨年参拝しなかったことで私邸などに右翼が押しかけて、家族や周囲に迷惑をかけたため云々ということが報道されているのですが、こうしたことが事実だとすれば、みずからの思想や信条、信仰も捨てて、暴力的な脅迫でまたそういうことが行われるということになれば、私はなおゆゆしい問題だと思うのですね。この問題は改めて論議しますけれども、やはり憲法を遵守するという立場から、疑わしきは行わずという見地に立てば、こうした参拝はやめるべきだということをもう一度繰り返し主張しておきたいと思います。  時間が限られていますので、総務長官の方は私の質問のときは結構ですから。  行革の問題で総論的な形で中曽根長官にお尋ねしたいのです。  引用はしませんけれども、財界、経団連などがこれまでこうした行政改革についていろいろ提言や発言をされているのを読んでみました。たとえば経団連の「行政改革推進に関する意見」七七年の七月、あるいは経団連の「財政再建と今後の財政運営に関する意見」八〇年の十月、それから、行革推進五人委員会の「行政改革の基本方向緊急課題」八一年の四月ですね。さらに財界の提言機関である産業計画懇課会のことし二月の「財政再建のための提案」あるいは「驚くべき行政の現状と改革の方途」、こうしたものを読んでみますと、大体共通した提言がこの中にあります。  七月十日に第一次答申が出されましたが、私は、この行政改革国民的な世論の原点になった問題、これはやはり行政の不正や腐敗あるいは行政の経費の浪費、こうしたものを削減して行政の民主化、効率のある行政をやっていくというのがこの行政改革の原点になった課題だと思うわけですけれども、こうした財界の提言を読んでみますと、共通しているのは、やはり軍事部門やあるいは海外協力、エネルギー対策、こうしたところは事実上聖域、そして一方で福祉や医療、教育、農業、中小企業保護など、国民生活の広範な分野にわたって切り捨てるということが中身になっていまして、今度のこの答申が、そういう点ではこの財界の行財政改革要求にこたえたものだというふうに思わざるを得ないわけです。  カウントの仕方はいろいろあると思いますが、事項別に見ますと、当面の改革方策として約百七十項目ぐらい出ています。その七割以上がこうした国民生活関連分野に集中しているわけですが、私はその点で、本当に国民本位の行政改革と言えるのかどうか、端的に言えば、財界本位の行政改革とも言えるのではないかというふうに思うのですが、長官のお考えはいかがですか。
  320. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 行革の基本点に関する見解において、あなたと全く見解を異にいたしております。
  321. 中路雅弘

    中路委員 この原点が同じ立場だということになれば、たとえば原点になったのは、一連の航空機疑獄やこうした公団、特殊法人等の、あるいは各省庁の相次いだ不正、乱脈事件、こうしたこともその一つだったと思うのですが、やはりこの背景にあるいろいろの天下り問題あるいは大企業の献金問題、各省庁特殊法人の人的なつながり、癒着、こうしたこともいままで広く指摘されてきたわけですから、ここにメスを入れるということが行政改革の一つの重要な問題ではないか、この点で今度の答申は致命的な欠陥を持っていると私は思うのです。  しかも、土光会長が先日は、ロッキード事件の現在刑事被告人である田中角榮氏に答申の実施への協力を要請に行くと書いておる。こうしたことも大変不見識じゃないか。鉄建公団の事件当時の川島総裁が今度臨調の参与にもなっておられる。後で若干人事のことは、資料でお配りしていますからお話をしますけれども……。  原点が同感だとおっしゃいましたけれども、この汚職、腐敗、不正、こうしたものにメスを入れない、原点のところにやはり問題があるのではないかと思うのですが、いまの点もう一度いかがですか。こうした点にやはりメスを入れなければ、行政改革の本当の国民の声にこたえられないじゃないですか。
  322. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 行政改革は、税金を納めて働いている国民の皆様方の御期待にこたえて、そして正義と公平感が満足せられるような政府をつくり行政を執行してもらう、そういう原点に立って、公平に全国民的立場に立って行われておるのでありまして、その点に関してはあなたとは見解を異にいたしております。  それから、臨時行政調査会の委員の皆さんあるいは参与の皆さん等は、全国民的見地から見識の高いりっぱな方々をお選びしたものでありまして、一部の先入観を持ってお選びしたようなものではございません。
  323. 中路雅弘

    中路委員 その委員の皆さんの経歴やその他いろいろ調査をしてみましたけれども、これは後でお話をしますが、私は、国民にこれがどういう大きな負担を与えるかということで、一例できょうは地方自治体の問題についてお話をしたいのですが、この点でも非常に際立っていると思うのですね。答申には「地方の自主性の尊重」ということがうたわれています。この項でうたわれているのは、「地方公共団体の自主性を尊重し、国、地方を通ずる財政資金の効率的使用を図る観点から、補助金の統合・メニュー化を推進する。」ということで、これだけにしかすぎないのですけれども、御存じのように、地方自治体関係者は、行政経費の浪費削減効果の非常に大きい事務、権限、財源の民主的な再配分という課題をいままで繰り返し要望されてきたわけですが、こうした問題には全くこたえられていない。そればかりか国民健康保険や児童扶養手当の一部を都道府県に肩がわりさせる問題あるいは老人医療の問題についてもそうですが、公共事業についても地域特例のかさ上げ、こうしたものを引き下げるということで、五十五年度実績で見ますと、報道ですと大蔵省は来年度五千百億の三分の一の千七百億円のカットということが言われています。  資料でお配りしましたけれども、私の地元であります神奈川県から、先日私たちの要請で、県の財政当局が、臨時行政調査会の中間答申がそのまま実施された場合、本県への影響はどうかということを五十六年度ベースで推計した報告をいただきました。もう一つ兵庫県からも、県の財政課資料ということで、第二次臨時行政調査会第一次答申に伴う県財政への影響という資料を先日いただきました。  詳しい点は省略しますけれども、神奈川県の場合、歳入の面でどれだけの減があるか、影響があるか。たとえば、先ほどお話ししました国庫補助金については、省庁ごとに総枠を設定し、いろいろ積算の条件を立てて計算をしていますけれども、一〇%カットの場合、歳入の面では、合計県分で九十七億、神奈川県下の市町村分で三百二十五億の減。歳出で見ますと、国民健康保険について給付費の一部を県が負担する場合、たとえば肩がわり率五%と見まして百億、児童扶養手当、特別児童扶養手当の一部県負担への切りかえ、切りかえ率二〇%としまして十九億、また義務教育費国庫負担金の算定につき国並み給与水準を適用しますと三十億、それからいまお話ししました地域特例の補助負担率のかさ上げの引き下げ、これは神奈川で言いますと、首都圏近郊整備地帯の財政特別法とか公害防止事業の財特法、こうした点が含まれますけれども、合計しますと、歳出で県分百五十億、市町村分で七十七億。合計しました神奈川県の影響額は県段階で二百五十億、市町村段階で四百億、合わせて六百五十億の新しい負担がかかる。これはそのまま実施された場合ですね。そういうことで、先日も長洲県知事が私たちと懇談した場合に、こういう形で実施されると、地方財政はまさに破綻の寸前になるということも話しておられました。  兵庫県の資料、これも県の財政課の資料ですけれども、これも合計しますと、県の財政負担増が百十二億から百三十三億に上るという試算結果が出ています、中身は省略しますけれども。その他私たちのところに来ている新潟県、沖繩県の資料がいろいろありますけれども、地方自治体について大変な財政負担が強いられる。事実上肩がわりなんですね。  こうした点でまずお聞きしたいのですが、臨調でこの答申を出されたわけですけれども、答申を完全実施した場合に、こうした地方への負担転嫁がどれぐらいになるのか、おおよその試算というのは全国的にされているのですか、まずお聞きしたいと思います。いかがですか。
  324. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 七月十日の答申を受けまして、最大限に尊重してその実施を図る、そういうふうに閣議決定をいたしましたが、いま鋭意その実施の方法、内容等について各省と詰めをやり、また党との調整を行っている最中で、その全貌はまだ確定しておりません。したがいまして、幾ら幾らというような数字を出すことはきわめて困難であります。  それから、行革につきまして、国民の皆様に御支援をいただこうと思って標語の募集をいたしましたら、一等当選になったのは「行革は国も地方も待ったなし」というのでありまして、私らもかねがね言っておりました、官も民も中央も地方も四方一両損で耐え忍ぼう、ただし公平にやろう、そういうことは国民の皆さんも御理解いただいているのではないかと思います。いま地方の問題をいろいろお挙げになりましたけれども、地方にもそういう痛みはある程度分けていただかなければなりません。官も民もひとしく分担し合ってこの危機を乗り切ろうというのであります。  ただ問題は、いまも福祉政策の話がありましたが、いわゆる美濃部都政というものを私これで思い出したわけです。あの美濃部都政というものは、福祉的にはかなり前進した面もございます。評価すべき面もございましたが、ややもすれば過剰福祉という面にかなり陥って、そのために東京都は破産寸前まで行きまして、鈴木知事が出てきてようやく挽回して再建に入ったという状況であります。そういう情勢を見ますと、税金を納めている人たちのことを考えれば、やはり過剰福祉というものは慎まなければなりませんので、福祉にいたしましても、効率的な、実質的な、本当に困っている人に一〇〇%福祉が当たるようなやり方でやらなければ間違いである、そういうふうに思います。  そういう意味において、日本の諸政策をここで総点検して見直すときに来ておるのでありまして、それをいま鋭意実施中であるというふうにお考えいただきたいと思うのであります。
  325. 中路雅弘

    中路委員 余分なこともしゃべられたのですけれども、この中で、真に援助、救済を必要とする人には福祉が必要だということを言っているのですね。私は臨調の事務局の皆さんに説明を求めたのですが、そのレクの際に、この答申の中で言う真に援助、救済を必要とするというのは、生活保護世帯を指しているのだという説明なんです。だから、政府がいまここで言っている福祉というのが、臨調の言うように、現在の生活保護世帯を目指すのだということになれば、これは憲法で、国民は福祉とこうした社会保障を享受する権利ということもうたわれていますけれども、こうしたことにも全く反する行為でありまして、公平ではないですね。  先ほど言いましたように、広範な国民にサービスの切り捨て、地方自治体に対する負担増を迫っていますけれども、痛みを分けるというのではなくて、いわゆる聖域が設けられてある。エネルギー対策、海外協力、総合安保関係の路線の推進に必要な分野、こうした異常突出をしているところがすでに来年度予算の概算要求の中身を見ても前提になっているわけですし、大企業の不公正な税制の是正についても全く触れられていない。こうした問題は改めて論議しますけれども、決して公平ではなくて、最初にお話ししましたように、国民本位というよりも、まさに財界本位の、財界の提言をこの中に全部盛り込んだという内容になっているところに私は大きい問題があると思います。  もう一問お尋ねしますけれども、報道されているところによりますと、今度の答申実行のために、西ドイツの財政構造改善法をまねて、四十本余りですかある法改正を、さっきも集中化してというお話がありましたけれども、一括して処理しようとされているわけです。こうした一括の処理方式というのは、国会審議権を制限するものでもあると思いますし、私たちは、臨調答申の中身からいって、こうした今度の答申を法案にして出すこと自体に反対ですけれども、特に一括処理方式というような形で出されるということは、国会審議あり方からいってもやるべきではないというふうに考えますが、いかがですか。
  326. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は政党間の話し合いの帰趨を待ってわれわれも処理してまいりたいと思います。
  327. 中路雅弘

    中路委員 限られていますから、最初の問題に触れますけれども、今度の臨調の委員九名、顧問六名、専門委員二十名、参与四十九名、合計八十四名の第二臨調の関係の皆さんの現職と略歴を一応わかる範囲で、調べられる範囲で全部調べてみました。非常に特徴的なのは、その六割以上が財界、大企業のいわば代表、そして政府関係者で占められています。国民の各階層意見を十分反映させていくという点から見れば、この布陣は大変問題だ。そのままでやられれば、第一次答申もそうですが、第二次、第三次答申を見るまでもなく、どうした中身の答申が出されるかということは大変はっきりしているのではないかと思うのです。たとえば防衛庁調達本部の軍需関係の契約高上位十社のうち九社までの代表がこの中に入っています。あるいは元大本営参謀とか初代の統幕議長とか元の国防会議事務局長とか、あるいはアメリカのフルブライト資金をもらって留学して帰ってこられた人たち、こうした点で私は真に国民のいろいろな意見、各層の意見を反映していくという点では、専門委員等は検討してまた任命できるわけですから、臨調の布陣、この構成のあり方についても十分検討をもう一度していただきたいということを特にお願いしたいと思います。  そして、特にきょうここで私が最後にお願いしたいのは、臨調審議がなかなか国民の目の前に出てこない。先日、毎日新聞ですか、議事録が新聞に出ましたけれども、答申自身が「今後の検討方針」の中で、「行政国民とのかかわり方の基本前提として、行政への信頼性を高めることが重要であり、行政情報の公開及び管理、監察・監査機、能(オンブズマンを含む。)等について制度的な検討を進める必要がある。」ということを言っているわけですから、私は、配付された資料がすぐ回収されるとかいうやり方ではなくて、「今後の検討方針」が事実であるとすれば、本当なら臨調の資料及び答申までの会議会議録、いろいろ新聞にもすでに出ていますけれども、こうしたことは当然公表すべきだ、公開すべきだと思います。その点で臨調運営に関する政令等も見ましたけれども、こうした点が政令でも明記されていないですね。この面の答申を尊重されるというならば、臨調運営に関する政令も改めて、できるだけ公開原則を明記すべきだと考えるわけですが、いかがですか。
  328. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 できるだけ内容国民の皆様方にお知らせして、御理解をいただくことは大事なことであると思います。しかし、臨調は性格的に見て痛みを分け合う場所を決めるところでございますから、そういう一面性を考えますと、プレッシャーグループが相当ありまして、それがすぐ反作用を起こしてくるわけであります。そういう面からいたしましても、臨調の委員や専門委員の討議の内容は、ある程度までは外へ出さないでおいて、そして自由に公正な議論が行われるような保証を行うことが必要であります。現在でもそういう鋭敏な反応が起こって困っているような状態もあるわけであります。そういう面を考えまして、ある程度の制限と申しますか、公表をおくらせるというようなことはあり得ると思います。しかし、どういう議論が行われたか、どういう結果になったかという総括的な報告は、そのたびごとに新聞記者の皆様方にも記者会見をして公表して、誠意ある、責任ある態度を示しておるのでありまして、こういうやり方が能率的なやり方ではないかと思います。
  329. 中路雅弘

    中路委員 榊委員の質問がありますので、これで終わりますが、特に私は委員に配付された資料もすぐ後回収されているわけなので、こうした資料については公開をしていただくということも最後にもう一度強く要請をしておきたいと思います。
  330. 江藤隆美

    江藤委員長 榊利夫君。
  331. 榊利夫

    ○榊委員 最後になりましたけれども、二、三質問させていただきます。最初に中山長官、お願いします。  人事院勧告の五・二三%の公務員給与引き上げは、定期昇給分を含めましても、御存じのように五十五年度消費者物価上昇率七・八%に比べれば及びません。しかも、それについても行革絡みで抑制動きがあるわけでありますが、もしそういうふうになりますと、百二十万の国家公務員、八十万の政府関係機関職員、十四万の特殊法人職員あるいは三百万の地方公務員、その家族、これらの方々の生活にも重大な影響が出てくることになります。さらに二百八十万の恩給受給者、それから千四百八十万の年金受給権者、これにも生活上に影響が出てくることになります。これを合わせますと、単純計算ですけれども二千二百七十万人という大変な数になります。そういう点では、給与制約あるいは抑制といったものは購買力の低下ということにもつながるわけでありまして、商工業にも打撃になる。  そういう点でお尋ねしたいのでありますが、担当大臣といたしまして、この勧告の五・二三%の給与引き上げ、これについては値切ったり延ばしたり、そういうふうにしないで誠実に実行する覚悟だと私は思いますけれども、その点についてのしかとした御回答をひとついただきたいと思います。
  332. 中山太郎

    ○中山国務大臣 給与関係閣僚会議におきましては、誠意を持って努力をいたしたいと考えております。
  333. 榊利夫

    ○榊委員 つまり値切ったり引き延ばしたりそういう努力はしない、こういうことは確約いただけますね。
  334. 中山太郎

    ○中山国務大臣 値切るというようなことを私が申し上げる立場にはないと思います。
  335. 榊利夫

    ○榊委員 この問題につきましては、夕刊によりますと、元閣僚からも実施論が出ているし、与党内にもいろいろ両論あるようでございますけれども、それくらい私は重要な問題だと思います。言うまでもなく、公務員には全体の奉仕者としてやはりいい仕事をどんどんやってもらわなければなりません。それには給与も妥当でなければならない。仕事はしろ、給与財政事情や行革絡みでがまんしろということでは通用しないわけであります。そういうふうになりますならば、たとえば使用者側、つまり政府財政手腕が逆に問われることになると思うのであります。民間でも真っ当な企業の場合、世間並みの給与が出せないと、やはり経営手腕を問われることになるわけであります。株主総会で出処進退にかかわってくるわけであります。そういう点では、やはり政府としては、この問題は非常に大きな責任を持たされておりますし、担当大臣としては、その責任感というものは当然おありだと私は思うのでありますけれども、その問題での御認識、自己認識と申しますか、あえて一言質問させていただきたいと思うのです。
  336. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私個人の自己認識と申しますよりも、鈴木内閣の閣僚といたしましては、内閣の政治生命をかけた行政改革という課題がございます。それに対して政府は全力を挙げて行動いたしておりますし、また、国会のいわゆる決定によって、第二次臨時行政調査会の設置が行われ、その答申政府が尊重するということが閣議決定で行われているということは、先生御認識のとおりでございますから、その中で閣僚として国民の納得するように行動しなければならない、このように考えております。
  337. 榊利夫

    ○榊委員 私は、政治生命というものは、いわゆる行革あるいは鈴木内閣が掲げているこの臨調答申実行、それに沿っての行革ということで言うというよりも、私いまお尋ねしたいのは、担当大臣として、むしろこの人事院勧告実現する、実行するということに政治生命をかけていただきたいと思うのです。それくらい重みのある問題だ、こう思うのです。  この制度は、御承知のように公務員労働基本権剥奪の代償措置でありまして、この給与改善手段といたしましては、ほとんど唯一であります。ですから、もしもこの人勧が守られないということになりますと、仮定でありますけれども、代償機能が果たされないことになるわけでありますから、人事院の存在理由を問われることになると私は思うのです。人事院総裁そのものもそのあたりは相当深刻な問題として考えられていると私は思いますよ。もしそういうことになりますと、政府としては、争議権など労働基本権を今度は公務員労働者に返さなくちゃいけない、こういう二者択一を迫られるということだろうと思うのであります。つまりどちらの道を選ぶか。これはやはり本日ずっとこれまでたてまえとしてはというととは議論されておりますけれども、たてまえと本音じゃなくて、この原理原則、人事院勧告を尊重して実行する、このことを貫かなければ、そういう人事院という一つの政府機関の存在理由あるいはこの制度自体の根本的な存在理由まで問われてくることになる。その点についてはどういう道を選ばれようとされるのか、ひとつ御答弁いただきたいのです。
  338. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生は仮定の問題としていろいろお話しでございますが、給与関係閣僚会議におきましては、私どもとして誠意を持って努力をしたいと考えております。
  339. 榊利夫

    ○榊委員 いや、その努力の問題だけじゃなくて、つまり勧告を守られない、代償機能が果たせなくなった、そうした場合、労働基本権を返すか、それくらいの腹をお持ちか、こういうことです。
  340. 中山太郎

    ○中山国務大臣 まだ給与関係閣僚会議がこれからさらに論議を重ねる段階で、先生のお尋ねの点については御答弁申し上げることは控えさせていただきたいと思います。
  341. 榊利夫

    ○榊委員 一言だけ。つまりそれくらいの重大問題だから、担当大臣としてはひとつ政治生命をかけるくらいの気持ちで御努力を願いたいということを申し上げて、次の問題に移りたいと思うのであります。  人事院総裁ですが、今回の勧告では原資配分が上厚下薄になっていると思うのです。主として特権的ないわゆる高級官僚に適用される指定職ですね、局長クラス以上ということになりますか、この指定職改定は五・二%です。ところが他の平均は五・〇%、つまり〇・二%上回っているのです。この点では私は、原資の配分では官民対応の原則と合わせて、逆に、上厚下薄ではなくて上薄下厚の配分を目指すべきではないか、こう思うのですけれども、いかがでございましょう。
  342. 藤井貞夫

    藤井説明員 ことしの配分は、特に民間実態等もよく調べましたところ、大体上下同率的な配分ということになっております。その傾向を踏まえながら、公務員公務員内部の事情がいろいろございますので、そういう点を配慮しながら配分に努めたということでございますが、その中で、いままでも累次申し上げておりますように、世帯形成時の職員、それから中堅の職員の関係、これは従来からいろいろな事情もございまして、どうも冷遇と言っては言葉が十分ではございませんですが、それにふさわしい処遇ということで果たせなかった面が残されておるわけであります。そういうことで、ここしばらくの間はずっと中堅層重点を置いた配分をやってきております。したがって、今回の場合もそういう意味で、一般の率よりも上回った配分をやっておることはすでに御承知のとおりであろうと思うのであります。ただ、そういう意味から申しまして、私は、全体的に今度の配分は上薄下厚とかなんとかというようなことではなくて、大体均衡がとれた同率配分的なもの、その中で特に世帯形成層と中堅層には重点を置いたという配分に相なっておると思います。  指定職の問題は、これは配分の原資の面からいいますれば、御承知のように数が非常に少ないですから、原資の関係で影響するところはきわめて少ないわけですが、こちらの関係は、民間の役員との比較をいたしまして、従来非常に抑えぎみに来たものですから、幅が非常に開いた、それらについてやはり若干の取り戻しをやるということをしなきゃならぬが、そうかといって、ことしの状況ですから目立ったことはとうていできないということで、せいぜいということでいろいろ考えた結果、五・二ということに相なったわけでございまして、われわれの気持ちといたしまして、上厚下薄、そういったことは毛頭考えておりません。
  343. 榊利夫

    ○榊委員 上厚下薄は考えていないということですが、しかし〇・二%の差があることは事実なんで、これはことしでなく来年度へ向けて、やはりそういう上厚下薄は目指さない、そういうことでひとつ御努力をお願いしたいと思うのであります。  次に、これはちょっと一言だけ答弁いただければいいのですが、いわゆる「成績主義の一層の推進」ですけれども、これは第二臨調答申そのままだと思うのですが、実は、あっちこっちの企業成績主義の名のもとに三六協定さえ無視してお互いの間の競争をあおる、そしていがみ合いが起こる、職場が余り明るくなくなる、暗くなる、そういうところも間々あるわけでありますね。「成績主義の一層の推進」がそういうものになってはならないと思うのでありますけれども、総裁としてはいかがお考えでございましょう。
  344. 藤井貞夫

    藤井説明員 運用に関しましては、そういうことは万々ないように配慮しながらやってまいりたいと思っております。
  345. 榊利夫

    ○榊委員 それでは次の問題に移ります。  行政機構の態度の問題といたしまして、戦域核と中性子爆弾の問題で態度をお聞きしたいのでありますが、アメリカの国防総省が三日、戦域核配備の調査対象に日本が含まれている、こういう言明がありました。どういう説明をこれについて受けておられますか。
  346. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 私たちが聞いているのは、国防総省の広報担当の次官補代理かと思いますが、その人が中性子爆弾について、一般的に言って中性子爆弾の配備先は欧州に限らず極東その他にもあるんだ、こういうことを言っているわけで、戦域核について極東を対象にしているということを国防総省が従来言明していることはないわけです。ただ、ロング太平洋艦隊司令長官が、太平洋においても戦域核その他について調査をする必要がある、こういう言明はしております。
  347. 榊利夫

    ○榊委員 その程度説明は受けられたということですか。
  348. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 後者のロング長官の発言についてはもう公知の事実でございまして、特にそれについて外務省に説明があったということではございません。
  349. 榊利夫

    ○榊委員 七月十五日の安保特で淺尾さんは、戦域核のアジア配備については説明を受けておるという答弁をされておるのでしょう。いまのことじゃないのですか。
  350. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 いまの御質問が戦域核のアジア配備について説明を受けているかということでございましたので、いまのような答弁をしたわけでございますが、私が先般の委員会で答弁したのは、戦域核の問題については、すぐれてヨーロッパの問題でございますけれども、ヨーロッパの問題にとどまらず、世界、ひいてはアジアの平和と安定にも関するということで、アメリカもそういう点は留意している、同時に日本としても、戦域核の交渉が今後進展した場合には、この問題がアジアの安定にも関係があるということで、日本側の関心をアメリカ側に何回か表明している、こういうことでございます。
  351. 榊利夫

    ○榊委員 淺尾さんはけさ、社会党の方の質問でしたかね、中性子爆弾のことでは通報がないという御答弁でしたけれども、もしそれが事実だとすれば、アメリカ国防総省は十一日、中性子爆弾の生産、貯蔵についての米政府決定は日本に通告済みだ、こういうふうに伝えられているわけでありますが、それがうそだということになるのですね。しかも米政府は、中性子爆弾を配備、使用することは、欧州戦域のほか中東、極東でもあり得る、こう言っておる。非常に重大で、かつ危険きわまる発言であります。私はむしろそういうことについては抗議すべきだと思うのだけれども、せめて事実関係はどうだったのかということは問い合わせしてもらいたいと思うのです。
  352. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 最初の点については、先ほど私が答弁申し上げたとおり、国防総省の広報担当次官補が中性子爆弾について質問に答えておりますが、その中で、主要国については通報したということでございます。主要国というのは、午前中の質疑についても御答弁申し上げたように、従来の中性子爆弾の歴史から見て、これは欧州に対しての通報でございまして、日本に対しては通報はないということでございます。
  353. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、日本にも通告済みだと言っていて、テレビや新聞でもそう伝えられているのですから、つまり海の向こうでうそを言っていることになるわけですよ。海の向こうでうそを言ってもらっちゃ困るということは言ってもらいたいですね。
  354. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 その点は私も同様でございまして、今度大使館にそういうことはなかったなということを言ったところが、それは間違いだという返事が来ております。
  355. 榊利夫

    ○榊委員 それでは間違いだったということで次に行きます。  いずれにしましても、わが国は唯一の被爆国であります。戦域核にいたしましても、中性子爆弾にいたしましても、非核三原則が国是でありますから、もしもそれらについて日本配備の申し入れとか、たとえばそういうものがあるとすれば、日本政府としてはノーしか言えないと思います。そういう点については、念のためにお尋ねいたしますけれども、ノーとしか言いようがないですよね。
  356. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 中性子爆弾及び戦域核の問題については、アメリカ側が、前者についてはアメリカ国内で生産と貯蔵を開始するということを言っているわけで、その配備先についてはまだ決定していないわけでございます。  それから、戦域核については、先ほど御答弁申し上げたように、主としてヨーロッパを対象にして、これからソ連との交渉に入っていくということでございますが、仮にわが国に対して中性子爆弾及び戦域核を配備しようということになれば、当然事前協議の対象になる。事前協議の対象になった場合に、核についてはノーである、こういうのが政府の立場でございます。
  357. 榊利夫

    ○榊委員 時間がありませんので、最後に移ります。  防衛庁長官、防衛白書について二点お尋ねしたいのですが、この白書というのは一体どういう性格のものなんでしょう。これは閣議了解は得ておられるのでしょうか。
  358. 大村襄治

    ○大村国務大臣 白書の性格についてお尋ねがございました。防衛問題につきまして国民の理解を得るために、必要な事項を記載したものであるというふうに考えております。  また、今回の白書を発表する前に、国防会議懇談会に御説明して御了承も得、また同日の閣議報告はいたしております。
  359. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、閣議に配ったということであって、これは了解を得た文書ですか。
  360. 大村襄治

    ○大村国務大臣 これこれの次第で今回発表することになりましたという報告をしたわけでございます。
  361. 榊利夫

    ○榊委員 閣議報告した、それだけですね。つまり披露したということです。閣議了解じゃないじゃないですか。閣議了解を得た文書ではない、こう理解していいですね。
  362. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします。  正式な了解事項ではございませんが、報告事項、ほかにもたくさんございます。各省の白書につきましても同様な手続が行われている。いわゆる経済白書、企画庁の方も、同じ日に同様にされております。
  363. 榊利夫

    ○榊委員 これも新聞では閣議了解と報道されましたけれども、そうじゃなくて閣議報告閣議了解文書ではない、こういう確認だろうと思います。  それではお尋ねいたしますけれども、その防衛庁の責任でつくられた今度の文書は、国民に向かって非常に説教が目立っているのですね。それが一つ。  それよりも重大な問題は、私はやはり現下の情勢では米ソ対立のどちらにもつかないで、日本の平和と安全、独立を守り抜くべきだと思うのでありますけれども、白書を見ますと、レーガン政権のわが国への期待は大きい、こういうように述べて、特に欧州、中東、極東の三地域は軍事的に相互に連関しておる、アジアにおける日本の義務とか、なし得る限りの防衛力の整備、こういう強調がありまして、これはレーガン政権の期待に従っていわゆる同時多発戦略に従うという態度表明なのか、こういう疑惑があるのですけれども、その点どうなんでしょう。
  364. 大村襄治

    ○大村国務大臣 今回の白書におきましては、世界の主な地域につきまして、軍事情勢についての記述がなされている点は御指摘のとおりでございます。私ども客観的な資料に基づきましてその点を記述したものと考えているわけでございます。そして、そういったソ連の一貫した軍事能力の増強につきましては、今回の会談におきましても、米国とわが国との間にそう認識の相違はなかったというふうに理解いたしているわけでございます。
  365. 榊利夫

    ○榊委員 いや、私の質問は、つまり同時多発戦略に従うという態度表明ではあるのかないのかという質問なのです。
  366. 大村襄治

    ○大村国務大臣 同時多発云々という点でございますが、ソ連の軍事能力が高まりましたので、世界の各地域において行動をする能力は持ってきているということが言えると思うのでございますが、それに対してどう対応するか、そういった点までこの白書におきましては言ってないわけでございます。ただ、米側としましては、そういった情勢があるから、従来の一カ二分の一戦略というようなことではなく、ソ連の脅威に全地球的規模で対抗する戦略をとる必要があるということを先方の背景として述べておる、こういう事実はあるわけでございます。
  367. 榊利夫

    ○榊委員 どうもあれですが、日本の政府のことを尋ねているんで、アメリカのことは尋ねているんじゃないのですよ。  最後、もう一つお尋ねしますけれども、時間があれなんで……。  日本国民が守るべきは、憲法でうたった国民主権、民族主権、安全だというように私たち考えるのですけれども、白書によりますと、守るべきものだといって、最大限の自由を与える国家体制だ、こういうふうに述べているわけでありますけれども、結局これでいきますと、いわゆるいまの政治体制の防衛ということになるのですよ。これはかつて徳川幕府が幕藩体制を守れと民、百姓を動員する、要求する、戦前、戦中に国体を護持せよと言って国民にそれを要求する、それと同じなんですよ。いいですか、体制というのは、主権者である国民がつくり選ぶものなんです。これはもう民主主義の大原理なんです。憲法前文で「國政は、國民の厳粛な信託によるもの」と明言しています。だから、それがこの憲法の主権在民の大原理でありまして、政府が、これは政党じゃありません、政府が、体制を守れというふうに説教するというのは、これはやっぱり民主主義のイロハと違うのですね。  それで、つまり憲法の主権在民の原理について防衛庁長官はどういう御認識をお持ちか、ちょっと聞いておきたいと思います。
  368. 大村襄治

    ○大村国務大臣 主権在民という点につきましては、私もそのように考えているわけでございます。ただ、現在のわが国は、民主主義の体制が確立されている点は申すまでもないところでございます。この民主主義体制のもとに、日本の国民はその多様な価値観に基づく多彩な活動の自由を保障されているわけでございまして、大多数の国民は、このような日本を大切に思う気持ちを持っていると考えておりますので、戦前のような状態と全く実態を異にするわけでございます。私どもは、あくまでそういった事柄を前提として、防衛に関する国民の理解を得たいと思って白書を編さんいたしたわけでございまして、決して押しつけるとかそういうおこがましい考えは毛頭持っておらないわけでございます。
  369. 榊利夫

    ○榊委員 時間が参りましたので、これ以上続けるのをはばかりますけれども、一言だけ。  行管庁の方いらっしゃいますか。中曽根さんお帰りかな。——帰りましたね。行管庁、だれもいない。いなければしようがないです。聞くつもりだったのだけれども、時間が過ぎました。  それでは以上で終わります。
  370. 江藤隆美

    江藤委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十四分散会