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渡部(行)
委員 大臣の何とかしたいというお気持ちは十分わかるわけです。ただ、問題は、戦前からずっと歴史的に見ましても、かつては相当の自給率があったわけです。総合自給率においても穀物自給率においても相当のものがあったのが、だんだん年を経るに従ってこの自給率が崩れてきておる。こういう実態は、
農林省がこれほどの陣容をもって一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、現実にはどんどんと後退させられておる。これはどこかに
一つ間違いがあるのではないだろうか、
日本農業のあり方に根本的な欠陥があるのではないだろうか、その欠陥について本当にみんなが真剣に掘り下げて、やはり衆知を集めてそれを直す必要があろうかと私は思うわけでございます。
そこで、「
昭和五十六年度において講じようとする
農業施策」、「八〇年代の農政の基本方向」、「農産物の需要と
生産の
長期見通し」というのが出ておりますが、これを読んでみましても、問題点のとらえ方が非常に問題になるのではないかと私は思うのです。
というのは、「
農業、食品産業と農村の当面する諸問題」という中で、大体六つの問題を
指摘しておられます。第一に、畜産物、油脂、果実、加工食品等の消費がどんどんふえてきて、食生活が多様化しておる。二番目に、米、麦等土地利用型
農業部門においては、地価が高騰しておるために
規模の拡大が思うように進まない。したがって、そこから
生産性の向上がおくれておる。そのために
農業と他産業間の
生産性格差の是正が進まない、こういう
指摘をしております。三番目に、施設園芸、養豚、養鶏など施設型
農業部門では相当の
規模拡大が進んで、中核
農家の
育成に希望が持てる。四番目が
農業の高齢化。五番目に、加工食品、外食による飲食費等の増大によって
日本の食生活が大分変わりつつある。そして六番目に、食糧の安全保障というものを取り上げて、その
重要性を訴えておるわけです。
〔愛野
委員長代理退席、塚原
委員長代理
着席〕
しかし、これがいま本当に
日本農業の当面する諸問題として
農業そのものを動かす重要な問題
提起だろうか。私はそういうふうには考えられないのであります。なぜならば、もっともっと重要なことが
農業の内部にひそんでいるのではないだろうか。それはまず第一に、食糧の
需給構造に対応する自給能力がない。つまり食糧安全保障の欠如が大きな
一つの問題である。二番目には、特に労働
生産性が低いこと。
飼料穀物を含む穀物及び牛肉等の
生産コストが諸
外国と比べて
余りにも高いという問題が
指摘されるのではないだろうか。第三点としては、一
農家当たり経営面積が諸
外国と比べて
余りにも狭小である。そのためにやはり
生産性がなかなか上がらないし、過剰投資がそこに行われざるを得ない、こういう土地所有の
一つの構造にも問題があるわけです。第四番目は、耕地面積当たり資本投下が過剰である。立花隆氏の書いた「農協巨大な挑戦」という本がありますが、これにもあるように、とてもじゃないが、アメリカの
農業と
日本の
農業を比べたのでは問題にならない。大体農地一ヘクタール当たりアメリカでは〇・六馬力の機械投入に対して、これはトラクターですが、
日本は四・六馬力、八倍にもなっておるわけでございます。こういうことを考えると、非常にむだな機械投資が行われておる、こういう問題が
一つは
指摘されておるわけです。そして五番目が、
農業者の老齢化。後継者の不足。大きな問題としては大体こういうことが言えるのではないだろうか。
それで、この問題を
一つ一つそれじゃどう解決していったらいいのかということになるわけでございますが、それにはいまのような農地のあり方、
農業経営のあり方ではどんなに補助金を使ってもどうすることもできないだろうと私は思います。大体
農林省は農地の流動化を促進すると言っておりますが、このことは大きな
農家をつくるということなんでしょうか。まずそこから私ははっきりさせなければならないと思うのです。なぜ農地の流動化を図らなければならないのかという点についてお伺いいたします。