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上田(卓)
委員 ソ連側も歯舞、色丹の二島返還は一たん認めたというのですか、そういう経過がありますだけに、私は、いま確かにソ連側は日ソ間には領土問題はないんだということを言っていることも事実でありますが、ソ連側の言い分だけを聞いてみますと、その後
状況が変わったんだ、特に日米安保条約、安保体制というもの、そしてだんだん米ソの
関係も悪くなる。一方的に悪くなっているのでなしに、いろいろ協調している
部分もあるわけですが、やはり
日本に
アメリカの軍事基地が存在しておるし、また
日本の
自衛隊が何もソ連を仮想敵国にしているわけではないにしても、ソ連側から見るならば、
アメリカと
日本が手を組んで、銃口はソ連の方に向いておるではないか、こういうような
状況の中で、北海道にも
自衛隊がある、こういうような
状況の中で、もしかいま領土を二島、あるいは四島にしても同じことでありますが、
日本に返した。そこへまた安保体制に基づいて北方領土に
アメリカの軍事基地なり
日本の
自衛隊が進出して、またその銃口がソ連の方を向く。相手が仲がいいときは、たとえば簡単な凶器になるものを相手が持っても、それは自分に被害がないと思うが、けんかをやって仲が悪いときに相手に渡したら、またそれで襲いかかられてもいかぬということで警戒することは当然のことではないか、私はこういうように思うのですね。そういう
意味で、米ソの
関係が非常に平和共存の
関係に雪解けになってもらうという
努力は最大限に続けなければならぬわけでございますが、同時に米ソの
関係がどうあろうとも、わが国の国益から
考えた場合、独自に日ソ間の雪解けというのですか、回復、修復を真剣に図っていく。そういう中で
日本が平和国家である、ソ連と一戦を交えたり、いわんや
アメリカと一緒になってソ連と一戦を交えるというような
考え方がないんだということが、そういう長いつき合いの中で、信頼
関係の中で、この領土問題も必ず解決する、そういう
努力を
日本側が続けることによって実現するのではないか、私はこういうように思っておるわけでございます。ところが、ややもすれば日ソ間の友好、修好というものは、ソ連側の方がちゃんとすればいつでもなるんだという形で、何もこちらが北方領土を返してほしいために卑屈になる必要はないにしても、こちらの方が何かいろいろ文句をつけているというのですか、そういうような向きがあるのではなかろうか、こういうように思っておるわけでございます。
私も何回かソ連へ行ってまいったわけでございますが、現在
日本の
国民の全部、九〇%以上とは言いませんが、私の選挙区の人でもそうですが、多くの人が、ソ連は信頼できないとか、いわゆるソ連に対する不信感というのはわりと強いことも事実であります。しかし、ソビエトへ行ってみますと、非常に親日家が多うございまして、かつてのそういう
日本の陸軍といいますか軍隊に出兵を受けていろいろな苦い経験も年配の方にはおありだと思うのですが、
日本人に対して、そんなに
日本人が好戦的で、またソビエトへ攻めてくるんだというような、そういう認識でないような、そういう
意味で
日本での反ソキャンペーンというのですか、あるいはソ連の脅威論というものについて、
日本の
国民の意識というものと、ソビエトの
国民の意識に相当ずれがあるのではなかろうか、こういうように私は思っておるわけでありまして、その点について、いままでのそういう
日本政府のかたくなな態度がかえって領土返還をむずかしくさしておるのではないか。いまのようなままであれば、もう二十年たっても三十年たっても返ってこないのではないか。返ってこないなら返ってくる
方法をもっと
日本自身が
考えないといかぬのではなかろうか、こういうように思っておるわけでございます。
確かに
日本は経済大国ということでありましょう。しかし、資源にしてもエネルギー源にしても、外国からの輸入に頼らなければならない。世界の国々の中で本当に一番貿易でやっていかなければ自給自足できない国は
日本ぐらいじゃないか。小さな国は別にしても、経済大国と言われている
日本が、足元の問題で大変弱い立場にあるわけでございまして、経済措置だと言ってみたところで、そんな偉そうなことを言えるわけではないので、逆にいろいろな面で経済措置を他の国からされたら、たちまちにして困るのがわが国の立場じゃないのかというように思ったりしているわけでございまして、ソビエトという国を特に
考えた場合に、
日本が経済措置をいろいろやってみてもへこたれるような国じゃないのです。そういう
意味では、恐らく六十数年前世界で初めての社会主義国家になったわけでありますが、その後列強からのいろいろな干渉とか経済的な封鎖も含めていろいろあったけれ
ども、やはり今日ずっとそれなりの力を持ち、
米国と並び称されるだけの超大国になっておるわけですから、若干農業問題も含めて、経済の問題でいろいろ困難な問題があるんじゃないかというようなことも報道されておりますけれ
ども、若干そういうことはあったとしても、もしあったとしても、ソ連の
国民はそれだけ耐える力を持っているというのですか、いままでそうであっただけに、変に
日本にシベリア開発について協力してもらわなければいかぬからどうのこうのというような形で、
向こうの方から頭を下げてくるような
状況はないように思います。当然こういうような重要な問題ですから、こちらも頭を下げられないというようなことで、いろいろな高度な政治的な解決というものも必要になってくるだろうと思いますが、同時に、
政府間だけじゃなしに、経済ベースあるいは民間ベースでいろいろな形の交流を図って、お互いの信頼を高めていくということが非常に私は大事ではないか、こういうように思います。
若干それに関連いたしましてお聞きいたしたいのでございますが、先般ソ連におきまして、共産党の第二十六回大会でしたかが終わったようでございますが、そのときにブレジネフ書記長の党大会での演説の親書というのですか、
アメリカそれからイギリス、西ドイツなど重立った諸国に書記長からの親書が出された、こういうように聞いておるわけでございます。しかし、
日本に対してはポリャンスキー
大使から口頭でこの覚書が届けられた、こういうように聞いておるわけでございますけれ
ども、ソ連の欧米に対する対応の仕方と、
日本に対する対応の仕方が違うのでありますが、この問題についてどのように大臣はお
考えですか。