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1981-04-07 第94回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月七日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 稻村左近四郎君 理事 染谷  誠君    理事 塚原 俊平君 理事 岩垂寿喜男君    理事 上田 卓三君 理事 鈴切 康雄君    理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       粕谷  茂君    川崎 二郎君       木野 晴夫君    笹山 登生君       田名部匡省君    竹中 修一君       東家 嘉幸君    宮崎 茂一君       上原 康助君    角屋堅次郎君       矢山 有作君    渡部 行雄君       市川 雄一君    小沢 貞孝君       中路 雅弘君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局総務         主幹      大出 峻郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房審         議官      関  栄次君         外務大臣官房外         務参事官    渡辺 幸治君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     澤田 和彦君         防衛庁防衛局計         画官      宝珠山 昇君         外務大臣官房審         議官      堂ノ脇光朗君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤  実君         大蔵省主計局主         計官      篠沢 恭助君         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部企画連絡課長 菱村 幸彦君         通商産業省通商         政策局北アジア         課長      林  昭彦君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ————————————— 委員の異動 四月二日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     野呂 恭一君   粕谷  茂君     久間 章生君 同日  辞任         補欠選任   久間 章生君     粕谷  茂君   野呂 恭一君     上草 義輝君     ————————————— 四月一日  非核三原則法制定に関する請願栗田翠君紹  介)(第二四二四号)  台湾残置私有財産補償に関する請願後藤田正  晴君紹介)(第二四二五号)  旧支那派遣軍の湘桂作戦期間戦務地甲区分に  改定に関する請願楢橋進紹介)(第二四二  六号)  在外財産補償法的措置に関する請願海部俊  樹君紹介)(第二四二七号)  同(中野四郎紹介)(第二四四五号)  同(渡海元三郎紹介)(第二五〇一号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願田中角  榮君紹介)(第二四二八号)  同(小澤潔紹介)(第二四四六号)  同(大石千八紹介)(第二四四七号)  同(木村俊夫紹介)(第二四四八号)  同(栗原祐幸紹介)(第二四四九号)  同(佐野嘉吉紹介)(第二四五〇号)  同(桜井新紹介)(第二四五一号)  同(田村元紹介)(第二四五二号)  同(西中清紹介)(第二四五三号)  同(野呂恭一紹介)(第二四五四号)  同(長谷川四郎紹介)(第二四五五号)  同(原田昇左右紹介)(第二四五六号)  同(柳沢伯夫君紹介)(第二四五七号)  同(渡辺紘三君紹介)(第二四五八号)  同(竹中修一紹介)(第二五〇二号)  同(竹本孫一紹介)(第二五〇三号)  同(和田一仁紹介)(第二五〇四号)  外地派遣軍属処遇改善に関する請願(愛野  興一郎紹介)(第二四二九号)  同(三原朝雄紹介)(第二四五九号)  同(山崎武三郎紹介)(第二四六〇号)  同(佐々木良作紹介)(第二五〇五号)  同(渡海元三郎紹介)(第二五〇六号)  同(松本十郎紹介)(第二五〇七号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願木野晴夫紹介)(  第二四六一号) 同月三日  戦後ソ連強制抑留者恩給加算改定に関する請  願(柳沢伯夫君紹介)(第二五八一号)  同(田邊誠紹介)(第二六〇八号)  戦後ソ連抑留中の強制労働に対する特別給付金  支給に関する請願柳沢伯夫君紹介)(第二五  八二号)  同(塩谷一夫紹介)(第二六〇九号)  同(田邊誠紹介)(第二六一〇号)  引揚者等に対する特別交付金支給に関する法  律の一部改正に関する請願柳沢伯夫君紹介)  (第二五八三号)  同(田邊誠紹介)(第二六一一号)  在外財産補償法的措置に関する請願(上村千  一郎紹介)(第二五八四号)  同(水平豊彦紹介)(第二六一二号)  同(山本幸雄紹介)(第二六一三号)  外地派遣軍属処遇改善に関する請願有馬  元治紹介)(第二五八五号)  同(佐藤文生紹介)(第二五八六号)  同(古井喜貴君紹介)(第二五八七号)  同(沢田広紹介)(第二六一六号)  同(宮崎茂一紹介)(第二六一七号)  同(横山利秋紹介)(第二六一八号)  同(川崎二郎紹介)(第二六七三号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願足立篤  郎君紹介)(第二六一四号)  同(小此木彦三郎紹介)(第二六五九号)  同(小渕恵三紹介)(第二六六〇号)  同(越智通雄紹介)(第二六六一号)  同(亀井善之紹介)(第二六六二号)  同(久保田円次紹介)(第二六六三号)  同(熊川次男紹介)(第二六六四号)  同(佐藤一郎紹介)(第二六六五号)  同(竹内勝彦紹介)(第二六六六号)  同(中島源太郎紹介)(第二六六七号)  同(中曽根康弘紹介)(第二六六八号)  同(中村靖紹介)(第二六六九号)  同(中山正暉紹介)(第二六七〇号)  同(羽田孜紹介)(第二六七一号)  同(福田赳夫紹介)(第二六七二号)  同(鍛冶清紹介)(第二七一四号)  旧国際電気通信株式会社社員期間のある者に  対する国家公務員等退職手当法施行令改正に関  する請願宮崎茂一紹介)(第二六一五号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願山崎拓紹介)(第  二六一九号)  同(谷垣專一君紹介)(第二七一五号)  台湾残置私有財産補償に関する請願藤本孝雄  君紹介)(第二六二〇号)  同外四件(山崎拓紹介)(第二六二一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第九号)      ————◇—————
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。伊東外務大臣。     —————————————  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 伊東正義

    伊東国務大臣 ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  改正の第一は、在外公館設置関係であります。今回新たに設置しようとするのは、大使館二館であります。その一方は、他の国に駐在するわが方大使をして兼轄させるものでありまして、大洋州のヴァヌアツに設置するものであります。同国は、昨年英仏両国共同統治下から独立したものであります。他方は、昨年四月に独立した旧英領南ローデシアのジンバブエに設置するものであります。これは、同国重要性にかんがみ実際に事務所を開設し、在外職員を駐在させる実館であります。  改正の第二は、現在ブラジルにある在マナオス領事館を総領事館に昇格させるものであります。  改正の第三は、これらの在外公館に勤務する在外職員在勤基本手当の額を定めるものであります。  改正の第四は、最近の為替相場の変動、物価上昇等を勘案して既設の在外公館に勤務する在外職員在勤基本手当の額を改定するものであります。  最後改正点は、研修員手当の額を改定するものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
  4. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 江藤隆美

    江藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
  6. 矢山有作

    矢山委員 まず第一にお伺いしたいのは、先般の訪米に際して、伊東外務大臣ヘイグ国務長官との間に会談が行われておりますが、その際の会談の中で、対ソ認識については完全に意見一致を見たのかどうか、まずお伺いいたします。
  7. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  先般私訪米しまして会いましたのは、レーガン大統領、ブッシュ副大統領ヘイグ国務長官ワインバーガー国防長官ブロック通商代表というような人に会ったわけでございますが、防衛の話が出ましたのは副大統領ヘイグ国務長官ワインバーガー国防長官というところで防衛の話をいろいろしたのでございますが、ヘイグ長官とは国際情勢認識ということにつきましていろいろ意見交換をいたしました。その際に、ヘイグ長官外交基本政策として述べましたことは、一つは、国内の経済再建の問題でございます。もう一つは、特に対ソの問題を頭に置いて話し合ったわけでございますが、ソ連との力のバランスが欠けるということの心配、対ソバランスというものを保たなければいかぬ、それを基本にしまして外交政策を組み立てるというような話があったわけでございます。  その際に、いろいろ意見交換をしたのでございますが、力のバランスということだけでなくて、私は首脳会談でございますとかSALTの交渉の問題、そういう話もいろいろしたわけでございまして、話し合いで平和を求めるという道も当然に開いておくべきだというようなことで、意見交換を実はいたしました。ただ、対ソ措置とかいう具体的な問題につきましては一々議論をしたわけでございませんが、八〇年代の国際情勢の厳しさというのは、ソ連軍備の充実あるいは第三世界に、特にアフガニスタンでございますが、東南アジアではベトナムの話もしましたが、いろいろな軍事介入なり支援があるというようなことで国際緊張が増しているんだというようなことを話し合いをしたわけでございます。
  8. 矢山有作

    矢山委員 時間に制約がありますから、もう少し簡単に要点だけ答えるようにしてください。  いろいろおっしゃいましたけれども、三月二十四日の夜、日米協会主催夕食会で演説されておりますね。それを私も読んでみたわけでありますが、それは大体要約して、対ソ認識という問題についてはこういうことになるんじゃないかと思うのです。  ソ連軍事力増大と戦略的に重要な第三世界への進出をまず挙げて、その上で、東西軍事バランス西側に不利に不均衡化しようとしておる、西側対ソ認識を共有し団結すべきである、米国国防力を増大させるため真剣な努力を払っていることを高く評価する、アジアにおいて最後のよりどころは米国の強力な軍事プレゼンスである、わが国西側一員として役割りを果たすと言っておられるわけですが、この文脈で見ると、対ソ認識において意見一致をされたんではないか。私はそういう前提に立ってこれからお伺いをしたいと思っておる。  そこで、まずお伺いしたいのは、対ソ認識において大体一致した西側の団結の必要を強調して、わが国西側一員としてその役割りを果たす、こういうことになりますと、一致した対ソ認識のもとに要求してくる米国防衛力増強要請にどうしても応ぜざるを得ないということになってくるのではないでしょうか。
  9. 伊東正義

    伊東国務大臣 防衛力のお話でございましたが、主としてワインバーガーさんと話をしたのでございますが、その中で、一般的に日本防衛力強化努力ということの期待表明があったことは確かでございます。そのとき私は、日本のいわゆる軍事的な問題につきましては、憲法その他で制約があるので、できないこと、できることははっきりしている、日本軍事力だけでなくて経済協力とか外交努力、そういうことでも広く総合安全保障ということで考えているというようなことを言いました。
  10. 矢山有作

    矢山委員 ところが、これまでアメリカレーガン政権関係者からは、かなり具体的な問題についてわが国軍事力強化を求めてきているわけですね。そこでこれまで言われておることは、平和憲法があるということも十分承知しておる、その上に立って防衛力増強を求めているのだ、こう言っているわけですね。また経済協力の問題についても、経済協力経済協力だ、防衛力増強してもらいたいのだ、こう言っているわけですよ。そうすると、平和憲法があるから、あるいは経済協力に対してわが国は力を入れていくのだから、防衛力増強は御勘弁願いたい、こう言ってもなかなか聞かれないのではないか。特に対ソ認識において一致して、西側一員としての役割り分担を果たす、こう言っている以上、やはり軍事力増強という問題で追い込まれていくのではないかと思うのですが、その辺の御判断はどうでしょうか。
  11. 伊東正義

    伊東国務大臣 アメリカに対しまして、日本ができることとできないことが法律でもうはっきりしているのだ、憲法個別自衛権しかないのだ、専守防衛だ、そういうことで、軍事的には自衛力増強ということから努力する、しかし、それ以外に軍事力期待をされてもそれはできない、これは総理もはっきり言っておられるわけでして、私も先方日本としては狭い意味軍事力ということだけでなくて、経済協力とか外交努力政治面でもまた努力をするのだというようなことを言ったわけでございます。
  12. 矢山有作

    矢山委員 いや、言われたのはよくわかるのです。ところが、平和憲法の存在も、軍事大国にならぬということも、専守防衛だということも、日本がそういう方針をとっているということも向こうは十分熟知しておるわけです。また経済協力には全力を挙げるのだと言っておることも承知しているわけです。その上で、なおかつ軍事力強化しろ、こういう要求なのです。そうすると、そういう制約の中でわが国が対応できる軍事力増強というのは一体どういう程度のものなのかということを、逆にこちらから明示していかなければならぬということにもなるのではないですか。そうすると、今後の日米首脳会談あるいは引き続いての防衛庁長官先方との会談においては、さらにそういった点をこちらの方から積極的に打ち出すということでないと、向こう要求を防ぎ切れぬのではないか、私はそう考えるのですが、どうでしょうか。
  13. 伊東正義

    伊東国務大臣 ワインバーガーさんと話しましたときにも、日本には五十一年にできた「防衛計画大綱」がある、まだその水準に達しておらぬわけでありますから、日本としては、閣議決定を見ました「防衛計画大綱」の整備ということに努力をするのだ、こういうことを私は言ったわけでございます。
  14. 矢山有作

    矢山委員 これは繰り返しになりますが、「防衛計画大綱」の問題が出てまいりましたので、これに関連をしてお伺いしたいのですが、それぞれの議会の場でのこれまでの論議をざっと見てみますと、「防衛計画大綱」の見直しを求められたのではないか、そういう意味質疑が繰り返されているわけですね。その点においては、具体的に「防衛計画大綱」の見直しということは出なかったとあなたは言っておられるわけですね。そのとおりですね。
  15. 伊東正義

    伊東国務大臣 そのとおりでございます。
  16. 矢山有作

    矢山委員 ところが、その会談の中で、ワインバーガー国防長官が、大綱制定当時に比べて、その後の国際情勢は大きく変化しているのではないか、こういう意味のことをあなたに言われたというのです。これは事実ですか。
  17. 伊東正義

    伊東国務大臣 ワインバーガーさんが国際情勢一般論をやりました中で、最近の国際情勢が厳しくなっているということを言ったことは確かでございます。
  18. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、そのときのやりとりというのを、私ども会談メモを見ておりませんので、新聞で見てみますと、こういうように言われておりますね。ワインバーガー国防長官が、米国はペルシャ湾やインド洋での防衛力増強に力を入れておる、友邦同盟諸国もそれぞれできるだけの防衛努力をしてほしい、こう言ったのに対して、あなたの方が、いまは「防衛計画大綱」に定められた水準を実現しようというのが日本方針である云々と言うておる。そのとおりおっしゃったのだと思うのです。ところが、それに引き続いてワインバーガー国防長官が、先ほど私が言った、大綱制定当時に比べて、その後国際情勢が大きく変わってきているのではないかと言ったということは、この文脈から見て、直截に防衛計画見直しをやりなさいと言わなかったにしても、防衛計画見直しを求めた発言だと私どもは理解しておるのですが、どうですか。
  19. 伊東正義

    伊東国務大臣 やりとりがありましたのはそのとおりでございますが、私がそのとき受けた感じでは、「防衛計画大綱」を見直せとか改定してくれという期待表明は全然なかったわけでございまして、いま言われるように、私は受け取らなかったし、またそういう話は、その前にも後にも実は一回も出たことはないわけでございますので、私はそういう意味にはとっておりません。
  20. 矢山有作

    矢山委員 私は先ほど言ったように、直接その話は露骨には出なかったとしても、いまの文脈から推して考えたら、「防衛計画大綱」の手直しを要求しておるのだなというふうに理解したわけです。  ところが、これに関連して、大村防衛庁長官が二月二十五日に衆議院安保特別委員会所信表明をされておるのです。そのときに言われておる要旨を言うと、大綱決定当時には予想されなかったような米海軍力の低下が起こっておる、こういう点を強調しながら、その中で、大綱防衛力水準は上限ではなくて下限である、こういうことを言われておる。そういう点から推察をし、さらに先ほどのあなたとワインバーガー国防長官やりとりから見て、私は「防衛計画大綱」の見直し要求する間接的な表現ではないかというふうに理解をするわけですが、そういうやりとりよりも、問題は、今後「防衛計画大綱」の見直しを求められたとき、あるいは見直しを迫られるような軍備増強を求められたとき、一体どう対処しますか。
  21. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは防衛庁長官からお答えするのが筋だとも思うのでございますが、予算委員会でも総理は、「防衛計画大綱」に達することをまず努力するので、その先のことをいま言う段階ではないし、そういう期待表明があっても、「防衛計画大綱」を達成しないうちに見直しということはないということをはっきり答えられているわけでございます。
  22. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、くどいようですが、将来においても「防衛計画大綱」の見直しはない、こういう判断をしてよろしいか、それとも将来のことはまだわからないとおっしゃるのか、どちらですか。
  23. 伊東正義

    伊東国務大臣 この間のワインバーガーさんとの話でも、そういう具体的なことは全然ございませんでしたし、私は総理が今度おいでになっても、そういう具体的なことはないというふうに確信をするのでございます。大綱につきまして、まだ達成もしてない段階で、これを見直してくれというような期待表明はないというふうに私は思っております。
  24. 矢山有作

    矢山委員 私は将来の問題を聞きたかったので、「防衛計画大綱」が達成をされたときには、また別に考えると言うのかどうかという意味を聞いたのです。
  25. 伊東正義

    伊東国務大臣 達成政府としては努力するわけでございまして、達成した後どうだというときは、それはそのときの政治情勢でございますとか国際情勢でございますとか、みんな総合的に判断して決める問題だと思いますので、いまここでどうするということをお答えするのは私は適当ではない、こう思っております。
  26. 矢山有作

    矢山委員 わかりました。  それじゃ次にお伺いしますが、わが国個別的自衛権の及ぶ地理的な範囲というのは、具体的にどういうふうに考えておいでになりますか。
  27. 伊東正義

    伊東国務大臣 ちょっと法律的な問題をまず条約局長から先に答弁します。
  28. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えいたします。  自衛権と申しますのは、御承知のように、国際法わが国が有する権利でございまして、特に、憲法上はわが国個別自衛権を有している、集団的自衛権は持たないけれども個別自衛権を有しているということでございます。  さてそこで、自衛権地理的範囲はどこまでかという御質問でございますが、これは自衛権の本来の性質、すなわち、わが国に対する急迫不正の侵害があった場合に、それを排除するために必要最小限度の実力を行使して、やむを得ない場合にそれを排除するということが自衛権内容でございまして、地理的範囲に関しましては、その自衛権からは何も出てこない。したがって、従来から御答弁申し上げておりますように、わが国自衛権の行使として敵からの武力攻撃に対応する際に、それが公海、公空に及びこともあり得るものである、しかし、その範囲というものは、地理的に限定できるものではないということをお答えしている次第でございます。
  29. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、地理的には限定するわけにはいかぬ、そのときの態様等によってその自衛権の及ぶ範囲というのは決まってくるんだと。そうすると、武力攻撃を受けたそのときの状況なり態様で、主観的に幾らでも拡大できるということになりますね。
  30. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま矢山委員もおっしゃいましたように、まさに敵の武力攻撃態様いかんによるわけでございまして、むしろ、その武力攻撃がどのように行われるかという客観情勢に応じてわが国自衛権が発動していくということでございますので、別にこちらの主観ではなく、武力攻撃いかんという客観的な事実、それはどうしてもなければならないものだと思います。
  31. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、この前、いつでしたか、私はこの間の新聞の報道で読んだのですが、防衛庁が、わが国自衛権の及ぶ地理的な範囲ということで、わが国周辺海域について考え方を出されておったと思うのですが、それとは全然関係ないということですか。これは防衛庁にも聞きたいのです。
  32. 澤田和彦

    澤田説明員 お答えいたします。  自衛権の及ぶ範囲につきましては、いま外務省局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、防衛庁が従来申し上げておりました、いわゆるわが国周辺海域ということは、これはわが国が外部から武力攻撃を受けました際に、わが国防衛に必要な限度におきまして、わが国海上交通の安全を確保するために必要な海上防衛力、こういうものを整備します際の一つの目安と申しますか、目標として考えている範囲でございます。
  33. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、もう少しお聞きしなければならぬのですが、外務大臣がこの間、三月三十日の衆議院の外務委員会ですか、まだ会議録ができておらぬので読めませんので、私は新聞の記事で読んだのですが、それによると、憲法で認められておる個別的自衛権範囲は、海上交通路約千海里、周辺海域数百海里を超えられないものではないと。つまりこれは、先ほど防衛庁から御説明があったように、周辺海域ということで一応考えておるのは、海上交通路が約千海里、周辺海域数百海里を考えておるということなんですね。ところが、それは法的に超えられないものではない、こう言っておられる。しかし、法律上は可能であっても、政府の政策判断として、防衛力整備目標を海上交通路約千海里、周辺海域数百海里に置いて、それに合わせて「防衛計画大綱」を策定しているんだ、そうおっしゃっていますね。そして閣議決定された「防衛計画大綱」が国民のコンセンサスであり、これを超える海域防衛の目標をつくるのは妥当ではないんだ、こう言っておられますね。そのとおりですか。
  34. 伊東正義

    伊東国務大臣 言葉の表現がそのとおりかどうかは別としまして、大体そういう意味のことを私は答弁したことがございます。
  35. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、私が一つお聞きしなければならぬのは、ただいま防衛庁の方から、周辺海域については大体この程度のものを設定しておるんだというお話がありましたね。この間も新聞記者会見で何か説明しておられたようですが、そういうことを前提にして、しかも、その周辺海域防衛ということに合わせて「防衛計画大綱」がつくられておるんだ、こういうことですね。だから、「防衛計画大綱」をこの際——アメリカ側から、たとえば防衛海域の拡大を求められたとしても応ずるわけにはいかぬ、こういうことになるのでしょう。外務大臣、どうですか。
  36. 伊東正義

    伊東国務大臣 私が述べましたのは、たしか防衛庁が四十六年か七年ころからだと思うのですが、千海里、周辺数百海里、こう言っておられる。その後に、「防衛計画大綱」というのは五十一年にできたわけでございますが、みんなそういうことを想定してできたわけでございますので、そういうことを前提にして装備の目標ができているわけでございますから、それを、「防衛計画大綱」をどんどん超えて足を伸ばしてやっていくというのは、私は、法律的には不可能とは言いませんけれども、政策的に考えまして、そういうものは妥当でないということをこの前答弁したわけでございます。
  37. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、ここで一つ問題が出てきますのは、この「防衛計画大綱」は、防衛庁が現在考えておる周辺海域での交通路防衛ということで立てておるんだ、だから、その海域の拡大を求められても、「防衛計画大綱」の範囲を踏み出すような海域防衛要求には応じられないんだ、こういうことになるわけですね。  ところが一方においては、個別自衛権の及ぶ範囲は、必要であるならば、武力攻撃態様や状況に応じて、領空、領海を超えて公空、公海にずっと拡大していくんだ、こうおっしゃっているのです。そうすると、「防衛計画大綱」というのは、一応周辺海域防衛ということで、防衛庁の考え方の中でつくられておる。ところが、実際に個別自衛権を発動する段階になると、それはそのときの武力攻撃態様や状況に応じて個別自衛権というのは行使するんだ。こうなってくると、私どもが今後考えなければならぬのは、「防衛計画大綱」の中で整備しようとする装備の能力それ自体についても関心を持たざるを得ない、こういうことになってくるわけです。  というのはなぜかというと、いわゆる防衛庁が想定しておる海域防衛ということで「防衛計画大綱」はつくっておるんだ、逆に言うなら、「防衛計画大綱」の範囲内で防衛庁はいわゆる周辺海域防衛範囲というものを一応想定しているんだ、これが前提にある。ところが、実際の武力攻撃を受けたときの態様、状況では、これは必要な範囲公空、公海に自衛権の行使が及んでいくんだ、こうなってくると、装備するその装備の能力について私たちは大きな関心を持たざるを得ない。  というのは、実際に発動するときには、「防衛計画大綱」で一応想定している海域を超えて必要ならどんどん出ていってしまう、こうなるのですから、私どもはそういう疑問を持たざるを得ないということになってくるのですが、この点どうなのでしょう。
  38. 澤田和彦

    澤田説明員 お答えいたします。  自衛権の行使の地理的な範囲につきましては、ただいま御答弁申し上げたとおりでございますが、「防衛計画大綱」に準拠いたしまして、防衛庁海上交通保護のための能力、防衛力を整備しております。これはいま先生がおっしゃいましたように、従来からたびたび御答弁申し上げておりますように、わが国から数百海里、航路帯を設定しますような場合にはおおむね一千海里程度ということを考えております。そしてこれは、先ほど申し上げましたように、従来かちわが国が必要と考えます海上防衛力の整備の目安、そういう範囲であれば、「防衛計画大綱」が達成されれば相当程度海上交通の保護が行えるであろうという一つの目安でございます。  したがいまして、いま先生が御指摘のように、わが国防衛上真にやむを得ないという場合に自衛権の及ぶ範囲とはおのずから性質を異にするわけでございますが、いま申し上げましたように、そういう範囲内で一応海上交通ができるということを目標にしておりますので、それを超えて、常時海上交通の安全が確保できるというようなことでは、現段階では能力的にそこまで至っていないわけでございます。
  39. 矢山有作

    矢山委員 いま「防衛計画大綱」に基づいて整備をされる防衛力というものが、一応その「防衛計画大綱」に基づいて整備される防衛力水準では、この程度の海域が防衛できるということでやっておられる。しかし、今後「防衛計画大綱」の中での整備なのだとは言いながら、実際の運用面においては、武力攻撃を受けたときの態様や状況に応じてまさに無制限と言われていいような状況なのですから、したがって、私どもは、装備をされていくその装備の能力について、内容について深い関心を持たざるを得ないということになるわけです。しかし、これはまた防衛問題をお聞きするときにもう少しはっきりしたお答えを聞きたいと思います。だからこの問題は残しておきます。  そこで、次にお伺いしたいのは、伊東外務大臣ワインバーガー国防長官との間で、具体的に要求があったのかないのかということは別にして、北西太平洋のグアム以西、フィリピン以北の海域防衛という問題がこの話の中で出てきた、こういうふうに聞いておるわけです。それは、外務大臣はいままでの答弁で、要求じゃないのだ、ただそういう話が出たから、これはそんなことはできぬと言っておかぬといけないと思って言った、こういうふうにいままで御答弁をなさってきておるのじゃないかと私どもは思っておるのですけれども、その話に出た北西太平洋のグアム以西、フィリピン以北の海域と、いま防衛庁が考えられておるわが国周辺海域防衛の能力の範囲として考えておるわが国周辺海域との関連はどうなりますか。
  40. 澤田和彦

    澤田説明員 お答えいたします。  いま先生がおっしゃいましたグアム以西、フィリピン以北でございますか、この表現につきましては、先般伊東外務大臣が訪米されました際に、ワインバーガー長官と会われまして、その会談の中でワインバーガー長官が、ソ連の海上軍事力といいますか、海軍力の増強を描写したわけでございます。その描写しました際に、いま御質問がございましたようなグアム以西、フィリピン以北という表現が用いられたと承知しております。したがいまして、わが国防衛との関連におきましては、これは、日本防衛に直接関連がありますわが国周辺海域におきまして、今後とも日本海上交通保護の能力を向上するように努力してほしいというような期待を間接的に表明したものにすぎないと考えているわけでございます。  これに対しまして、数百海里あるいはおおむね一千海里程度という範囲は、先ほどから御答弁申し上げておりますように、従来から防衛庁海上交通の保護のために……
  41. 矢山有作

    矢山委員 だから、防衛庁がこれまで言うておるその海域と、向こうが持ち出した海域とが一致するのかしないのかと聞いているんですよ。もう前置きはいいから。
  42. 澤田和彦

    澤田説明員 はい。これは御説明しましたような両者の性質でございますので、一致するとかしないとかという問題ではない、違うことを表現しているものと私ども考えております。
  43. 矢山有作

    矢山委員 違うことを表現したのなら、その海域は一緒じゃないということなんじゃないですか。それははっきり言ったらどうなんですか。
  44. 澤田和彦

    澤田説明員 違うと申し上げましたのは、アメリカ側がグアム以西、フィリピン以北という表現をしましたのは、アメリカの方から見ましてそういう——そちらの海域におきますソ連の潜水艦あるいは海軍力の増大というようなことを表現したものでありまして、わが国防衛の目標としております、航路帯を設ける場合おおむね一千海里程度というものとは違う概念であると思います。
  45. 矢山有作

    矢山委員 私は、向こう要求したとか要求せぬとか、そんなことを具体的に言いなさいと聞いているのじゃないんですよ。そのときに出た北西太平洋のグアム以西、フィリピン以北の海域と言われたそれと、防衛庁が考えておるのが一致しているのか一致してないのか。これは違うと言うんなら違うとはっきり言ってもらえばいいんですよ、持って回ったような言い方しないで。
  46. 澤田和彦

    澤田説明員 お答え申し上げます。  防衛庁といたしましては、先ほどから出ておりますアメリカ側が表現しましたグアム以西、フィリピン以北という範囲は、何と申しますか、地理的な意味で厳密な範囲指定して、ここでわが国の海上防衛の分担を求めたものではないと承知しております。したがいまして、わが国といたしましては、この表現によって表明されましたアメリカ期待といいますものは、現在わが国が「防衛計画大綱」に準拠して海上防衛力の整備を進めている際の念頭に置いておりますわが国周辺海域、これにつきましての防衛努力を一層向上してほしいという意味であると受け取っております。
  47. 矢山有作

    矢山委員 ちょっと注意してください。あなた、私はそんなことを聞いておらぬのよ。アメリカの言っておるのと、あなた方が考えてこれまで発表しておるのと食い違いがあるのかないのかと言っているんですよ。なぜそれがはっきり言えないのですか。時間食ってしようがない。
  48. 澤田和彦

    澤田説明員 お答えいたします。  これは先ほど申し上げましたように、地理的に厳密に言えば、わが国は航路帯を設けます場合におおむね一千海里程度と言っております。それで向こうはグアム以西と言っておりますから、グアム島は一千三百海里程度でございますから、そういう地理的な数字の長さで言えば違うわけでございます。しかし、私どもは、いま申し上げましたように……
  49. 矢山有作

    矢山委員 そこはいいんですよ。それを聞いているのじゃない。違うなら違うと言えばいい。
  50. 澤田和彦

    澤田説明員 地理的には、厳密な数字的には違う概念ですが、使われている意味が違いますので、わが国周辺海域日本は千海里、向こうはそうではないというようなはっきりした相違を言っておるものではないと考えております。
  51. 矢山有作

    矢山委員 あなた回りくどいことを言うね。私が聞いておるのは、簡単に、アメリカが示した海域と防衛庁が言っているのと食い違いがあるのかないのか、それだけ聞いているんですよ。そんな持って回ったような言い方をするから問題がはっきりしてこないのです。だから、あなたが違うと言うのなら、現在のわが国が「防衛計画大綱」で目指しておる防衛力範囲では、アメリカ要求には対応できないんだということなんでしょう、結論は。対応できるのですか。
  52. 澤田和彦

    澤田説明員 たびたび申し上げておりますように、グアム以西、フィリピン以北という表現は、私ども先ほどお答えいたしましたように、伊東外務大臣ワインバーガー長官との話の中で聞きましたので、これはアメリカ側が具体的にどういう範囲を厳格に指しているのか、つまり千三百海里というような厳格な意味を指しているのか、それともそうではなく、ただ漠然とグアム以西と言っているのか定かでございません。したがいまして、いま先生がおっしゃいますように、防衛との関連におきまして違うかという御質問でありますと、これは現在のところ、私どもこれを判断する材料を持っておりません。
  53. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、アメリカが指摘したのが「防衛計画大綱」で考えておる能力の範囲内に入るか入らぬか、北西太平洋のグアム以西、フィリピン以北の海域、こう言っておるのが、——これはやってくれやってくれないの話をしておるのではないですよ。こういうふうに言ったのが、「防衛計画大綱」で考えておる防衛力水準で対応できるのかできないのか。それはまだわからぬというわけですね。
  54. 澤田和彦

    澤田説明員 お答えいたします。  これは米国の意図がはっきりいたしませんので、もし具体的にグアムというような表現ではなく、千三百というような表現であれば、私どもの「防衛計画大綱」で考えておりますおおむね千海里程度というものとは違いますが、何度も申し上げておりますように、米国がはっきりそういう意味で言っているとは承知していないわけでございます。
  55. 矢山有作

    矢山委員 アメリカの言ったことをえらい気にするんだね。私はアメリカがどう言ったとかこう言ったとかということを一つも聞いてはいないのですよ。北西太平洋のグアム以西、フィリピン以北という海域が話の中に出てきた。それが防衛庁の考えておる防衛海域に合致するのかせぬのか、合致しないというなら、いまの「防衛計画大綱」による防衛力水準では対応できないのである、こういうことになるんでしょうということを聞いておるので、あなたと話をしておると全くこっちがいじいじしてくる。この問題はまた改めて聞きます。全くしようがないね、これでは。  次にお伺いしたいのは、これまでアメリカ側からいろいろ言われておりますね。防衛力の整備について言われておるのは、特に対潜水艦能力を強化しろとか、あるいは防空能力を強化しろとか、こういうことがいろいろ話題に出てきておる。先般のマンスフィールド大使からもそういう話が具体的に出ておるように聞いておるのですが、私どもは、わが国の「防衛計画大綱」というのは、大体陸海空三自衛隊が均衡のとれた形で増強を目指すというたてまえになっておると思うのです。そういうふうに理解しておる。そうなると、海空に重点を置いて防衛力増強をやれということになってくると、この「防衛計画大綱」のたてまえというのが崩れてくるんじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  56. 澤田和彦

    澤田説明員 お答えいたします。  「防衛計画大綱」は、いま先生がおっしゃいましたように、陸海空、後方、バランスのとれた防衛力の整備を定めているものでございます。したがいまして、もし仮に海空だけを重視して、陸はどうでもよいということであれば、これはおっしゃいますように、「防衛計画大綱」の言っておりますバランスは崩れるわけでございます。しかし、私どもは決してアメリカが言ったからといって海だけ、あるいは空だけを増強するというようなことはなく、わが国にとりまして必要最小限度防衛力ということで、陸海空三自衛隊、そして後方支援態勢等バランスのとれた防衛力の整備に今後とも心がけていくつもりでございます。
  57. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、こういうふうに理解していいですか。アメリカが何と言おうと、つまり海空重点に強化しろと言おうと、「防衛計画大綱」のたてまえというのは、陸海空三軍の均衡のとれた増強を目指しておるんだから、そのアメリカの要請に従うことはできない、あくまでも大綱のたてまえどおり、陸海空三軍の均衡のとれた強化を考えていくんだ、こういうことですね。
  58. 澤田和彦

    澤田説明員 お答えいたします。  基本的にはいま先生がおっしゃいましたとおりでございます。ただ、均衡といいますのは、そのときそのときの状況、陸海空の整備の進捗状況その他によって違いますので、厳密に毎毎陸海空、たとえば防衛予算上一定の比率、均等にやっていくというわけではございませんが、精神といたしましては、いま申し上げましたように、陸海空三自衛隊、そして正面と後方、バランスのとれたものを考えております。  そしてまた、私はアメリカ側がわが国防衛につきまして、防衛力向上の期待を表明していることは承知しておりますが、そこに若干海空にストレスといいますか、強調されているようにも感じられますけれども、決して陸上自衛隊が不必要であるというようなことをアメリカが言っているとは理解しておりません。
  59. 矢山有作

    矢山委員 もうこれ以上防衛課長とやり合ってもしようがないわ。  次に質問を移しますが、この軍事力強化の問題ですが、ソ連軍事力強化に対応した軍事バランスの維持と、それからソ連の第三世界への進出に対する西側陣営の共同防衛のための結束強化と公平な役割り分担で一貫しておるというのがアメリカ基本方針だと思うのです。  ところで、これに同調する以上は、私は米ソの両超大国の軍拡競争は避けられぬ、こういうふうに思うのです。したがって、その中でわが国に対する防衛力強化の圧力も強まる一方だ、こういうふうに考えざるを得ません。強化しろという要求に対して、とても拒否できるというような姿勢を貫くことができるというふうには私は確信を持てないわけです。これまでのわが国防衛力増強の問題にしても、自主性だ、自主性だと言いながら、防衛力強化を格段にやっていくときには、常にアメリカの強力な要請というのが背景にあり、その強力な要請を背景にしながら、自主的にやります、こう言っておるわけですから、だから基本的には何も自主的なことはない、アメリカ要求に応じて軍備拡大をやっておる。これをやっていると際限のない話になりはしませんか。こちらが軍備強化する。向こう強化する。向こう強化したと聞けばこちらも強化する。大体際限のない話になっていくと思うのです。私はそういうような対ソ認識のもとに軍拡競争に走っていくというのが日本のとるべき通なのかどうか、それに大きな疑問を感ずるわけですが、いかがでしょう、外務大臣
  60. 伊東正義

    伊東国務大臣 私もアメリカに行ってヘイグさんにも話したのは、力のバランスということ、それはわからぬではないが、やはり話し合いによって平和ということを探っていくべきじゃないかということで、米ソが全面的に対決して核戦争のようなことになったら、もう世界の人類の終わりじゃないか、そういうことは避けるべきで、米ソに平和関係が維持されていくということが大切だということを話しまして、首脳会談でございますとかあるいはSALTの交渉の問題等、そういうことを話したわけでございます。  それで、いまの情勢から言いまして、力のバランスということで、そういう国際的な情勢のあることは確かでございますが、また一面、核の軍縮でございますとかあるいは軍縮の動きということも国連等であるわけでございますので、日本としましては、外国から侮られないだけの自衛力増強ということは、従来のとおり着実に、これは本当に日本としてどうするかということを自主的に考えていく必要があるというふうに私は考えておるわけでございます。
  61. 矢山有作

    矢山委員 私は外務大臣の御発言を聞いておって、自家撞着もいいところではないかと思うのです。あなたが、軍備の拡大は際限のない軍拡競争になる、それじゃいかぬのだということをお感じになって、そういうようなことをしない方がいい、やはり平和的に問題を解決しなければいけないんだということ、そしてそれには軍縮が大切なんだということをおっしゃるのなら、アメリカ軍備拡大要求に対して、私はこれを拒否していく、そのことが、どういう名目をつけようと、軍備拡大ということは相手に対して反作用を及ぼすのだ、相手も軍備拡大をやるのだ、相手が軍備拡大をやれば、またこの反作用がこちらに及んで軍備拡大になるのだということは必然なんですからね。だから、私はそれを阻止するためには、アメリカは軍術拡大をやるべきではないし、わが方もアメリカ要求に従って軍備の拡大はできぬのだというふうに、その立場を明白にすべきだと思うのです。それをやらないで、アメリカ軍備拡大の要求に応じて軍備を拡大しておいて、そしていや、平和を保つためには軍備拡大じゃいかぬのだと言っても、これはまさに自家撞着なので、私はおよそこれはおかしな話だと思います。しかし、それに対しての御答弁はよろしい、どうせこれは意見の食い違いになるのでしょうから。  そこで、時間の関係がありますから、次に質問を移していきたいと思います。  三月十八日に下院の外交委員会の証言で、ヘイグ国務長官だったと思いますが、大体こんなことを言っているのですね。軍事援助は、ソ連の脅威からエネルギーなど重要資源を守るため中東に重点を置く、二国間援助は、米国外交目的に沿ったものにする、国際援助機関については、米国の安全や経済に重要な諸国への援助増加を要求して、今後二国間援助に重点を移すのだと言っておるのですが、要するに、これは対外援助も対ソ戦略の一環だという位置づけで、友好国と非友好国とに分けて友好国への援助増額をやろう、こういう方針だろうと思うのですが、この対外援助の方針が示されましたか。示されたときにどういう対応をされましたか。
  62. 伊東正義

    伊東国務大臣 経済協力の話はヘイグさんとしました。それで経済協力というのは、東西関係というものを主として考えるということじゃなくて、南北関係を中心にして考えるべきじゃないかという議論を二人でしたわけでございます。ヘイグさんは何も東西関係、友好国と非友好国とを頭から分けてしまってやることを考えているわけじゃないということを言っておりました。また二国間、国際機関の問題は、外国と約束した分担は必ずこれは履行するということも言っておりまして、南北問題、東西問題、経済協力について意見交換をし議論したことはございます。
  63. 矢山有作

    矢山委員 私は、あなたが言われた対外援助というのは、南北問題の解決に重点を置くべきだという考え方は正しいと思うのですよ。それがアメリカの今度の援助方針というのは明らかに変わってきた、私はこういうふうに判断をしているわけです。つまり対外援助というものを、対ソ戦略という視点からすべて考えていこうとすることが今度のヘイグ国務長官の話の中でうかがえるし、また行政管理予算局の出した方針の中にもうかがい知ることができると思うのですよ。それは私はそうなると思う。なぜかというと、アメリカは対外援助について大幅削減をやるわけでしょう。大幅削減をやったその上で対外援助をやるというのなら、やはりヘイグ国務長官の言うように、自分にとって直接的な効果のあるところ、それは対ソ戦略上直接役立つところ、そこに重点を置くのだ、こういうふうになることはあたりまえの話なので、ヘイグ国務長官が何と言われようと、それは単なる言葉のあやであって、私はやはりアメリカの援助方針は大きく変わってきたという認識を持っておるのですが、そのアメリカの対外援助の方針に関連して、日本にどうしてもらいたいとか、直接的に要求という形ではなくても何か話がございましたか。
  64. 伊東正義

    伊東国務大臣 第一点の大幅削減ということは、これはないのでございまして、去年の実績よりことしの予算の方が若干ふえる。減ると先生がおっしゃったのは、実はカーターさんがことしの実績よりも来年はうんとふやそうという予算の要求を出したのですけれどもレーガン政権がそのうんとふえるということを削除したのでございまして、実績は去年よりもことしは若干ふえるというのがアメリカ経済協力予算でございます。その点は誤解ないようにしていただきたいのでございます。  議論しました中で、アメリカから何か経済協力についての要請があったかということでございますが、具体的な要請はございませんでした。
  65. 矢山有作

    矢山委員 私は、あなたが言われたように、南北問題の解決ということを焦点に置いてやってきた日本のこれまでの対外援助の方針というのは正しかったと思うのです。ところがこの姿勢が、一昨年のアフガニスタンへのソ連の侵入以来変わってきたんじゃないかというふうに考えておるのです。というのは、これまで出された外交青書をずっと読んでみたのですが、五十四年版の外交青書までにはなかった記述が五十五年版では出てきております。それを読んでみると、「また、パキスタン、トルコ、タイなどに対する援助の強化にみられるように、広い意味での安全保障を確保するとの見地から、現下の国際情勢を踏まえつつわが国独自の立場で援助の強化を図るよう心掛けている。」こういうふうになっている。この時点でアフガニスタンへのソ連軍侵入という事件に衝撃を受けたアメリカが、日本なんかにも働きかけて、紛争周辺国への援助だというようなことでそれに対応していった。そこで対外援助方針の転換が始まったのだろう、こういうふうに考えておるわけですが、アメリカの今後の要求というのは、日本対ソ戦略上西側一員だと言っておるのだから、そういう対ソ戦略上の位置づけで対外援助もやってほしいのだという要求が今後強まってくるのではなかろうかということを私は心配しておるわけであります。  そこで、私がお聞きしたいのは、オマーンやジャマイカヘの援助を計画しておるということが報道されておるのですが、これは事実でしょうか。
  66. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま二つ言われましたが、オマーンにつきましては昭和五十一年ごろから技術協力をやっております。あそこは主として石油を買っておる国でございますが、石油以外の鉱産物資源の賦存状態の調査をしたいということで、調査の技術協力をやっております。それから昨年からオマーンが民生安定のために特に農業開発をやりたいということで、あそこは水資源がなかなかありませんので、地下ダムができるかどうかということで、技術的な調査団を出して何回も実は調査をやっております。そういうことで、民生安定のための農業開発、約一千ヘクタールと言っておりますが、そういうことができるかどうかということで調査をやっておることは、そのとおりでございますが、その結果がまだまとまっておりませんので、それをどういうふうに扱うかということはまだ決めておりません。  それから、ジャマイカは一九七九年、二年前に輸銀で一千万ドルのパンクローンをやったことがございます。それから同年に、水害でございましたか、災害援助で五千万円かなんかの経済協力をやったことがございます。それでことし、あそこが経済的に非常に困っておる、民生安定のために関係国が集まってあそこに援助できるかどうか相談をしようということで、世銀が主宰をしまして会議をやりました。そのとき日本も商品借款で一千万ドルという意図表明を、まだ現実には出しておりませんけれども、したことはございます。これは世銀が主宰してやった会議でございます。
  67. 矢山有作

    矢山委員 いまのお話を聞いておると、まさに日本が自主的な判断で援助しておるんだというように聞こえるのですが、たとえばジャマイカについてまず申し上げますと、ジャマイカの問題については、私ども聞いておるのは、二月に訪米された大来政府代表にヘイグ国務長官が、カリブ海への関心をもっと持つようにというようなお話があったというふうに聞いているのです。これは実に上手な言い方ですけれども、私は、こういう言い方の中で、それなりにこのジャマイカに対する援助要請があったんではなかろうか、こういうふうに思うのです。  なぜかというと、このジャマイカは、御存じのように八〇年の十月の選挙で、社会主義化を進めておったマンリー政権ですね、これが倒れて、親米政策をとるシーガ政権が生まれたわけですね。そしてニカラグア、グレナダなど中南米諸国のキューバ寄りの姿勢を心配しておったレーガン政権が、ジャマイカを拠点にして巻き返しを図ろうというので、最近大幅な援助を始めておるわけです。しかも、御案内のように、エルサルバドルの問題と関連をして考えるときに、このジャマイカというのは、アメリカの戦略的な見地から非常に重要な地域だということになっておる。だから、日本に対しても援助してくれということになり、あるいは援助してくれと明白に言ったか言わぬかは知らぬが、援助を誘うような話があり、援助に踏み切ったんじゃなかろうかというふうに私は判断するわけです。そういう対ソ戦略上重要な、アメリカが拠点視しておるところへ援助をぶち込んでいくというやり方は、名前は民生安定だと言いながら、実態は民生安定に名をかりた軍事的な色彩を非常に帯びた援助だというふうに受け取らざるを得ないのです。  それから、オマーンにしてもそうですね。オマーンはいまどういう状況かというのは、これは御存じのとおりでしょう。アメリカが援助をやる、その見返りにあそこにアメリカの基地をつくろうとしているわけですね。それでオマーンは、米国からの援助の見返りとして、米軍に空港と軍事施設の使用を認めておる状況です。この間の報道によりますと、オマーンと米国との合同通信演習、これが計画されておるとか、すでにやっておるのかもしれませんが、そういうことが言われておるのです。これもアメリカが中東というものを対ソ戦略上の重要な拠点として考えておるからです。いまヘイグさんが、中東地域に対ソ戦略拠点をつくろうというので、中東安全保障体制というのですか、そういったものを構想しながら出かけておりますけれども、オマーンというのは、そういうアメリカ対ソ戦略上の拠点なんですよ。そこに対して援助をやるというのは、なるほど農業援助だとか何だとか、民生援助だということにはなるにしても、間接的にはオマーンやジャマイカの現政権を強化する、そしてアメリカの戦略拠点にしたいという要望に沿う、そういうことに結果的になるんじゃないですか。どうなんでしょう。
  68. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生おっしゃいますが、オーマンはもう昭和五十一年から経済技術協力をやっておるわけでございまして、ことしとか去年とか急に始まった問題では実はないのです。そういうことで、民生安定ということでやっておるわけでございますし、この間エチオピアにもわずかでございますが、実は援助をまたやったというようなことがございまして、民生安定とか福祉向上とか社会経済開発という目的を衆議院の外務委員会でも決議で決めておられることもございますので、なるべくそれに忠実にということで実はやっておるわけでございます。
  69. 矢山有作

    矢山委員 それは端的な軍事援助という形ではおやりにならぬだろうと思います。しかし、将来はわかりませんよ。やるというようなことになるかもわかりませんが、現在はまだおやりにならぬだろうと思うのです。だから、オマーンに対しては農業開発だ何だと言っておる。ジャマイカもずっと前からやっておるんだ、いろいろなことを言っておられるわけですが、しかし、現在の客観情勢から見るならば、そういう地点に援助の重点を移していくということは、やはりきわめて危険な方向じゃないかというふうに思います。特にこれから中東だとかあるいはカリブ海、極東地域、こういったところをアメリカは重要な地帯、紛争が起こる可能性のきわめて高い地域だ、こう言って対応策に忙しいときでしょう。そうすると、そういうアメリカと緊密な関係にある、アメリカのいわゆる戦略的な要請にこたえる特定の国々に対しての援助要請というものが次々出てくるのじゃないか、こういうふうに私は心配をするわけです。今後の援助のあり方を見ておればおのずから明らかになることですけれども、そういう心配が私はあります。したがって、そういうようなソ連を標的に置いたアメリカの戦略的な対外援助に巻き込まれないように全力を挙げていただきたいと思うのです。どうですか。
  70. 伊東正義

    伊東国務大臣 大体日本経済協力というのは、アジアが七割、アフリカ、中東、中南米一割ずつくらいの比率でずっとやっておるわけでございます。いま矢山さんから御要望ございましたが、日本としましては、南北問題がやはり世界の平和につながるのだということを重点にしまして経済協力を運営していくというやり方、また国際紛争を助長したり平和以外の軍事目的に使われるというようなところにはやらないというような方針で、極力自主的な判断でやってまいるつもりでございます。
  71. 矢山有作

    矢山委員 ぜひそういうふうに御期待をしておきます。南北問題の視点を忘れてアメリカの東西対決、米ソ対決という枠の中に取り込まれた対外援助というのは、およそ国際緊張を増大をさせても何ら事態を好転させるものではないというのはもう言うまでもないところです。  そこで、次に中東の問題に移ってちょっとお伺いをしたいのですが、レーガン政権がとっておる中東戦略は、中東危機の主要な原因はソ連の拡張主義にあるととらえて、西側諸国の生命線とも言えるペルシャ湾の油田地帯をソ連の脅威から守るためには、米国が確固とした政治的、軍事的な基礎を築く必要があるとして、御存じのように、サウジアラビアへのF15用の武器の売却、それからイスラエル、エジプト、トルコ、ヨルダン、パキスタン等のほかペルシャ湾諸国に対して最近総額六十億から七十億ドルに上る軍事援助を供与するという方針決定して、見返りに軍事基地を求めたりあるいは米軍の直接駐留を求めているというふうに私どもは承知をしております。また最近は、反政府勢力が望むならば、アフガニスタンへの武器援助に踏み切る明確な用意がある、こういう発言をレーガン大統領なりワインバーガー国防長官が言ったというふうに承知しておりますが、中東問題について積極的に話し合いが行われましたか。
  72. 伊東正義

    伊東国務大臣 中東問題について話をしました。中東の和平、それからPLOの問題、ヘイグさんと話をしたわけでございます。  それで中東の問題は、前に民族の問題、宗教の問題でいろいろ問題があったわけでございますが、イラン、イラクの紛争以来、同じ宗教の中でまた分裂するというようなことになる。アフガニスタンに対するソ連の侵入で、東西の影がその中でまた覆いかぶさってくるというような非常に複雑な状態になっておることは矢山さん御承知のとおりでございまして、私はワインバーガーさんにキャンプ・デービットで、平和ということ、これはわかる、それをまたもう一つ乗り越えて、もう一歩進めて包括的な、長期的な、永続的な和平ということを考えるべきじゃないかということで、日本の中東和平に対する考え方、パレスチナ人の自決の問題、PLOの処遇の問題、またイスラエルの承認の問題とか、PLOがパレスチナ人がというようなこといろいろ話したわけでございます。これはECと大体同じ考え、きのうキャリントン外相ともその問題も話したんですが、大体ECと日本の考えは同じでございますが、それに対しまして国務長官は、この間でございましたが、自分も中東へ行って和平というものをどうやったらいいかということをひとつ考えてみる、キャンプ・デービッド問題を進めることは当然であるが、それからどうするのだということをアメリカとしてもよく考えてみるんだ、アメリカの中東に対する総合的な政策ということについてはいましばらく待ってもらいたいというようなことで話し合いをしたことは確かでございます。
  73. 矢山有作

    矢山委員 いま指摘したような中東政策というのをどう考えるかという問題なんですが、ペルシャ湾岸諸国では、このようなアメリカの介入はソ連の介入を招く、また国内の反政府活動にも利用される、こういう考え方で非常に拒否反応が強いと言われているわけですね。それからまたアフガンヘの武器援助なんということは、いまそこでソ連政府軍対反政府勢力という図式でやっているわけですけれども、そこにアメリカが反政府勢力に武器援助をやるということをやったら、これは一気に東西対決ということになっていく可能性があるわけです。またパキスタンヘの軍事援助を強化する、軍事援助を主体で経済援助がちょびっとついておるようですが、そういうことをやれば、これは印パ関係というものに非常に響いてくるわけですよ。だから、そういうようにアメリカがすべてソ連を標的にして、ソ連を力で抑え込むのだ、そのためには軍事力増強もやるが、武器外交を徹底的に展開して、対外援助でいわゆる軍事的な支援に視点を置いてやっていくんだというような政策というのは、全く見当違いもはなはだしい。中東地域における紛争というのは何も東西対立が主たる要因ではないので、あなたがおっしゃったように、宗教問題だとか国内の経済不安や政治不安だとか、そういうことに問題があるわけでしょう。だから、そういうアメリカの姿勢というものは大変な間違いだ。だから私は、友好国と言う以上は、今後そういう点をアメリカに厳しく反省を求めるという姿勢があってしかるべきじゃないか、そのぐらいの厳しい姿勢でアメリカに対処していくということが必要なんじゃないか。  実は、きのうの新聞ですか、なるほどなと思って見たのですが、サウジアラビアのサウド外相が、サウジアラビアがソ連との対話を続けてきたということを明らかにして、まだ外交関係は樹立をしておらぬけれども外交関係樹立の用意があるという発言をしておるのですね。これこそまさにアメリカの介入を拒否する、同時にソ連の介入もお断りだという主張の端的なあらわれじゃないか。しかも、いまという時期が、ちょうどヘイグ国務長官が中東へ出かけて行って、サウジアラビアやイスラエルやその他四カ国か五カ国回って、そして対ソ戦略上の拠点を固めようというなら、中東の安全保障体制を何とか築き上げようとしておるその最中にこういうことをばっと出したということは、私はこれがやはり中東湾岸諸国の本当の気持ちじゃないか。彼らは一番米ソ両超大国の介入というものを警戒しておると思うのです。私は、そういう点を十分踏まえながら、今後アメリカの対外援助というものに対しては対処してほしいと思います。再度外務大臣の御所見を伺いたい。
  74. 伊東正義

    伊東国務大臣 あの地域がいわゆる超大国の介入というものについて非常に神経質といいますか、非常に関心を持っていることはおっしゃるとおりでございます。でございますので、ソ連もアフガニスタンに入ったということで非常にあの地域が心配しているということも事実でございますので、両超大国がその地域に非常な影響力を持つということは、世界の平和にとって非常にまた大きな問題になるということも私はわかりますので、現実の問題は、リビア、シリアがソ連寄りであるとかいろいろなことを言われます。そうした現実を踏まえて物を考えなければならぬということはよくわかりますが、矢山さんおっしゃったような、なるべく紛争を小さくしていくという努力は、これは当然に考えなければならぬことでございますので、今後の経済協力の運営につきましても、そういうことを頭に置いて考えていく、あの地帯の平和ということを頭に置いて考えていくということはわれわれは当然考えなければならぬ、こう思っております。
  75. 矢山有作

    矢山委員 先ほど外務大臣もお触れになりましたが、中東問題解決の根底にあるのはパレスチナ問題の解決だ、こういうふうに私は考えておるわけです。それであるなら私はお伺いしたいのは、これが正しいそのままの報道かどうかということは後でお伺いしたいのですが、PLOの問題についてあなたヘイグ国務長官と話し合われたと言われた。その話し合われたときに、これは先ほども言ったように、会談メモがないから私は新聞の報道に準拠して言っているわけですが、そのときにあなたはこんなことをおっしゃったと言うんですが、アラファトPLO議長の来日を機会に、PLOがテロ活動をしないこと、イスラエルを承認することなどを説得したいという発言をなさったというんです。その上でさらにこう言われておるというんです。もう一遍繰り返しますと、PLOがテロ活動をしないこと、イスラエルを承認することなどを説得したいと言いながら、その一方でわざわざPLOをパレスチナ人の唯一の代表と認める意思はない、またPLO代表部に外交特権を与える意思はない、こういうふうに表明をされたというふうに伝えられておるんですが、これは事実としたら私はとんでもない話だと思うのですが、どうなんですか。
  76. 伊東正義

    伊東国務大臣 去年私はイスラエルの外務大臣と国連で会うたときは、イスラエルはいまのままでは孤立しますよ、パレスチナ人の自決権を認め、そしてPLOが平和の交渉のテーブルに着くということをイスラエルも認めなければ、イスラエルというものは孤立しますよということを、実はイスラエルの外相に去年言ったことがございます。そしてその場合には、パレスチナ人もイスラエルの生存権を認める、相互承認ということが大切だということを私はイスラエルの外相にも言ったわけでございます。  今度中東の話が出ましたときに、中東の和平の根本はパレスチナ人の自決権を認めることだ、そしてまたパレスチナ人がイスラエルの生存権も認めることだという話をしまして、それからPLOのことになったわけでございます。PLOに対しまして日本は唯一合法とは言っていないのです。ただ一つの代表だとは言っていない。有力なパレスチナ人の代表の団体だということは従来も言っておりますし、それは変わりないのですが、唯一だということは言っていない。唯一かどうかはパレスチナ人が決めることだと思っているわけでございます。  それから、PLOの事務所に外交特権は、外交特権というのは国とか政府に与えるわけでございますので、PLOはそういうものではございませんから与えていない、これは従来のままのことでございまして、政府として何も変わったことじゃないわけでございます。  そして、そのときにアメリカに対して言ったことは、イスラエルもパレスチナ人の自決権を認める、PLOの平和のテーブル参加を認めるということをやらなければいかぬし、アラファト議長が日本・パレスチナ友好議員連盟の招待で来られたら、私は会うつもりでおります、その際PLOの代表に、イスラエルの生存権を認めるということを私は言うつもりだし、またPLOが武力とかテロとか、そういうことで物事を解決するということではなくて、話し合いで平和裏に物事を解決するということも必要だということを言うつもりでございます、こういうことを私は言ったわけでございまして、いま先生言われたのは、一方のことだけ書いてありますけれども、イスラエルに対してもこういうことだ、アメリカもそう考えなければいかぬじゃないかということで話したわけでございますが、PLOとかパレスチナ人の自決権の問題につきましては、意見の相違があったことは確かでございます。
  77. 矢山有作

    矢山委員 レーガン政権は、現在のところでは結局イスラエルに同調してPLOの存在を認めない。つまりPLOの協議参加を拒否しているわけですが、これでは問題は解決しないので、中東問題を解決しようという意欲をせっかく持たれるのなら、いま一つ重要なのは、PLOを唯一の代表と認めるか認めぬか、それはパレスチナ人が決めることだとおっしゃったけれども、そういう言い方というのは、これまでもたびたび日本が国交のなかった国を承認するときに使われてきた言葉なので、むしろ現在は、PLOというものをパレスチナ人の代表と認めて、これに外交特権を積極的に与えていく、そのことの上に立って問題の解決に全力を挙げた方が中東和平の問題については数等に効果を上げるのじゃないか、こういうふうに私は思っておるのですが、現在はどうしてもそこまで踏み込めませんか。
  78. 伊東正義

    伊東国務大臣 唯一合法の唯一というところまでは、それから外交特権を与えるというところまでは、日本はまだ踏み切っておりません。  実は、ゆうべもキャリントン外相と話したのでございますが、中東和平についてはほとんど意見一致でございまして、いつまでも包括的、長期的な和平が来ないということになりますと、そこにいろいろな問題が起こるおそれがありますから、ECもひとつアメリカを説得することに大いに努力してもらいたい、日本もECと考えは一緒なのです。この間も話してきたし、今後もまたアメリカに対して説得の努力をするということをキャリントンさんとゆうべ話したところでございまして、日英同盟かと言ってキャリントンさんは笑っていましたけれども、中東和平の長期的、包括的な実現につきましては、いま言ったようにECも同じ意見でございますので、今後も協調しまして、早くそういうことが実現するように努力してまいりたいと思っております。
  79. 矢山有作

    矢山委員 時間がありませんので、もう一つ、具体的な問題としてお伺いしたいのですが、最近アフリカに対して、これはまた大変な問題に発展するおそれのあるようなことがアメリカによってたくらまれておると私は思うのですが、それに対してどうお考えになりますか。  アフリカ問題について話が出たか出ぬかは知りませんが、一つお伺いしたいのは、三月十九日、アメリカ議会に対してレーガン政権がアンゴラ反政府勢力への軍事援助禁止措置の撤回を求めたということなのです。こういうことをやると、アフリカ諸国がそういうレーガン政権の姿勢というのをとてもじゃないが承認をしないだろうし、まさにそういうことをやっていくということは、アメリカの軍事的なアンゴラ内戦に対する干渉になるし、介入になるし、さらにそのことが東西対決というものを非常に激化させていくおそれがあるのじゃないか、こういうふうに思っておるのですが、これを御承知ありませんか。もし御承知でありましたら、そういったようなアメリカの姿勢、これはアフリカ内戦を激化させていく上で非常に誤った姿勢だと私は思っておるのですが、どうでしょう。
  80. 村田良平

    ○村田政府委員 米国の中でそのような議論があるということは、私ども承知しております。現在、レーガン政権は南部アフリカの問題に関しましては、まだ政策を固めておらないようでございまして、まさにこの瞬間に担当の国務省の高官が南部アフリカの諸国を回っておるわけでございます。したがいまして、先々のアンゴラ政策につきましても、その国務次官補の帰国を待って検討を続けるというふうに承知をいたしております。
  81. 伊東正義

    伊東国務大臣 なお、ちょっとお答えしますが、この前のときはアフリカ問題をやる時間がなくて、実は触れませんでした。ただ、経済協力のときに、第三世界ソ連側に回してしまう、そういうやり方になるおそれが多分にある、やはり南北問題というものを考える場合には、第三世界というものにもみんな理解を持ってもらわなければ困るということで、アフリカに第三世界が多いのだということを話したことがございますが、いまのような具体的な問題につきましては、ナミビアの問題とかいろいろありますが、時間がなくてこの間触れなかったのでございます。
  82. 矢山有作

    矢山委員 これは外務省がどう対応されるのか知りませんが、遠いアフリカのことだから直接われわれにはかかわりはないから、アメリカのやるのを待っておろう、こういう姿勢かもしれませんけれども、そういう姿勢でなくて、あなたがおっしゃるように、こんなことをやると第三世界諸国をアメリカの敵に回してしまうという結果になるのははっきりしておると私は思うのです。それは、このことが報道された後の南部アフリカを中心としたアフリカ諸国の反応を見れば明らかなんですね。だから、この点は世界平和という立場から言うなら、外務省も、よそのことだというのでなしに、そういった誤った対外援助方針というのは、全体のアメリカ方針の中の一つですから、私は積極的にそういうことに対してやるべきじゃないというような意見は述べていいんじゃないかと思うのです。  そういうことを考えながら、実はこの間タンザニアのニエレレ大統領が見えましたね。あのときに記者会見で、ニエレレと一緒に来ておったサリムという外務大臣が言った言葉があるのです。これを新聞で見たのですが、どういうことを言っているかというと、キューバ兵がアンゴラに駐留しているのは、南アフリカがアメリカと協力してアンゴラの独立を妨げてきたためだ、アメリカが中東やアフリカに軍事基地を求めたりすることの方がよっぽど理解できないことだという発言があったというのです。こういうアメリカに対する見方もあるのだ、アフリカの第三世界諸国にすれば、そういう考え方。その他のアフリカ首脳の伝えられるこの問題に対する発言を見ても、私はその声を代表していると思っているのです。だから、ぜひそういった問題に対しては、私は積極的な対応をとっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  83. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまキューバとのお話が出ましたけれども、どっちが卵か鶏かという問題はありますけれども、第三世界を敵に回すというやり方、これはまずいということはよくわかりますので、アメリカに対しても、この間も海洋法の問題でアメリカがいろいろな意見を急に言い出すとか、そういうような問題は、大体第三世界を敵に回すようなことでまずいというようなことを私も言ったことがございますので、やはり言うべきことはアメリカに対しても忠告するということが本当の友人だと私は思います。
  84. 矢山有作

    矢山委員 これで最後にしたいと思いますが、近く首脳会談もあることですし、そういう場をとらえて、現在アメリカがとっておる対外援助のやり方について、いままで質疑を繰り返して、アメリカのやり方に対する相当な批判的な考え方もおありになると承知しましたので、ぜひその旨を十分表明をして、そういうような南北の解決を阻害するどころか東西対立を激化させるようなまずいやり方をやめるべきだという積極的な忠言というか忠告というか発言を私は期待したいと思います。  そこで、私はこれまで繰り返してきた論議を集約して私の考え方を申し上げまして質疑を終わりたいと思うのです。  それは、世界の不安定化の要因を、ソ連軍事力増強とその第三世界への進出ととらえ、それに対して力をもって、つまり軍事的に対応しようとすれば、それは際限のない軍拡競争に陥ります。その結果は、今日すでに見られておりますように、米ソ両超大国を初めとする各国の経済的な困難や第三世界の発展の阻害や東西対立、南北対立さらには南々対立の激化であり、世界の不安、動揺を招くのみであると考えます。そしてその行き着くところは全面戦争の危険であります。私どもが考えなければならぬのは、世界の不安定、緊張というものをソ連に収歛させるという対ソ認識が正しいのかどうかということです。  それについては、一つには第二次大戦の紛争の実態というものを検討してみる必要があると思います。私が読んだ書物の中に、それを検討したものがありますが、それによりますと、第二次大戦後の紛争は、ベルリンの封鎖とチェコ、ハンガリーの両紛争、現在のアフガニスタン紛争を除けばすべてが第三世界における紛争である。アフガニスタンにいたしましても、考えてみるとアフガニスタンが五〇年代以降経済的にも軍事的にも政治的にも明らかにソ連の影響力圏下にあったということを考えなければならぬと思うわけであります。  そこで、第二次大戦後の紛争というものは、植民地独立戦争が全体の約一七%、独立した後に国内の権力のあり方をめぐっての紛争、いわゆる内戦が全体の五四%、第三世界間の国境線をめぐっての紛争が約二九%、こういう状態で、いずれにせよそのすべてが第三世界における紛争であります。戦後に関して言うと、もはや武力紛争の舞台と当事者は完全に第三世界に移っておるのであります。その紛争の原因も第三世界の国々の経済的、政治的な不安、動揺がその根底にあります。これを取り除かぬ限りは、世界の不安定と動揺は私は解決されないと思います。世界の不安定、緊張の要因をすべてソ連に収歛して考え、これを力をもって抑えることが世界の不安、緊張をなくすると考えるのは、私は明らかに誤りであると思います。それは逆に不安と緊張を強め、紛争を多発させるのみであります。したがって、日本米国対ソ認識に同調し、その対ソ軍事対決に対して、軍事力増強とか米国対ソ戦略的な国への対外援助を強化するとかいうようなやり方で加担することは、世界の緊張激化に手をかすことであります。私はこれは絶対に避けるべきであると思うのです。いま必要なのは、米ソ間の信頼関係の回復を図って、力と力の対決を避けるために、平和憲法を持っておる日本が積極的な役割りを果たすべき重大なときだというふうに考えております。  私の考え方について、あるいは御異論のあるところもあるかもしれませんが、基本的には私はそうだと思いますので、今後アメリカ対ソ世界戦略の中にまるごと取り込まれて東西対立を激化させたり、南北問題の解決に障害を引き起こしたり、南々対立を激化させて、世界の不安、緊張を増大させるようなことは絶対になさらないようにということを希望いたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。
  85. 江藤隆美

    江藤委員長 鈴切康雄君。
  86. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣、当面する外交の政治課題について約一時間くらい御質問申し上げて、それからまた本会議が終わりましてから一時間くらいということでございます。  まずお聞きしたいことは、五月に入りますとレーガン大統領と鈴木総理との間におきまして首脳会談がすでに予定されているわけであります。過日、レーガン大統領が突如凶弾に倒れまして、大変に心配をしたわけでありますが、その後経過も非常に良好だというふうに伝えられております。そこで、鈴木総理の訪米は予定どおり行われるのか、アメリカの方からちょっとぐあいが悪いからといって何か変更してくれという話が外務省に来ているのかどうか、もし予定どおりに行かれるとするならば、鈴木総理に随行されるメンバーは、もちろん外務大臣もそうでしょうけれども、こちらの方はどういうメンバーで行かれると判断してよいのか、その点についてちょっとお伺いしましょう。
  87. 伊東正義

    伊東国務大臣 レーガン大統領の不幸な事件があった直後から、アメリカにあります大使館は向こう政府と、私は東京のマンスフィールドさんと連絡をとっているのでございますが、何か決まったら向こうから公式に連絡をよこすということは言っておりますけれども、いままでのところは、会談を延期してくれとかそういうことは一切何もございません。むしろ非公式には予定どおりではないかなという感触の連絡はございますが、まだ正式に延ばすとかそういうことは一切ございません。でございますので、私どもは予定どおり行われるというふうに思っているわけでございます。  それから、その場合にだれが随行で行くかということは、まだ一切そういう相談はいたしておりません。私は、いままでもずっと外務大臣が行っておりますし、この間も行ってきましたし、そういう場合は多分お供するだろうとは思っておりますが、まだ具体的にどういう範囲でだれということは決めておりません。
  88. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この間外務大臣アメリカに行かれまして、そして訪米中に日米の自動車摩擦の問題が最大の外交問題として持ち上がったわけでありますけれども、その処理の仕方を誤りますと、また保護貿易主義など大変に安易な誘発を招きかねないと私は思います。  そこで、日米の問題は日欧の問題にまで連動するという危険があるのではないだろうか。外務大臣は自動車問題はどのような解決の仕方が望ましいかということについてまず一点お聞きしておきます。  それからもう一つ。実は外務大臣が訪米をされるときに、自動車問題も出るだろう、あるいはまた防衛も出るだろう、こういう感じでお行きになったと思うわけでありますが、ほとんど防衛というのが影が薄れてしまって、もう全部と言っていいくらい自動車問題が出されたわけであります。自動車問題については内政的な政治問題、これを早く解決したいというレーガン政権としての考え方が強く働いた。また防衛問題はもっとじっくりと、世界戦略の問題であるがゆえに、これは総理大臣が来たときに話し合おうというアメリカの意図が働いたのではないだろうかという感じがしてならぬわけでありますが、それについて外務省として十分な情報を持ってアメリカに行かれたかどうか。私は外野席にいながら外務大臣が自動車問題のことで大変悪戦苦闘してがんばっておられる姿を見まして、少し情報の収集が足りなかったんじゃないだろうかという感じがしてならぬわけでありますが、その点についてはいかがでありましょうか。
  89. 伊東正義

    伊東国務大臣 私が参りますときにはワシントンから大河原大使も来ておりまして、アメリカの情報等については大使を通して聞いたわけでございます。自動車問題が内政問題として非常に大きな問題になっているということは承知もし、総理、また田中通産大臣とも会いまして、実はいろいろ打ち合わせをして参ったわけでございます。  向こうへ行きましての印象でございますが、防衛問題はヘイグさんと副大統領ワインバーガーさんと話しました。自動車問題についてはヘイグさんとブロックさんと大統領と話す、こういうことだったのでございますが、問題の本質といいますか、非常に重要な問題というのは、私はやはり防衛問題だというふうに認識をしております。これは一過性の問題じゃなくて、本当にずっと日米友好関係が続いていく限りこの問題はあるわけでございまして、これが基本的な問題だ、そう私は考えております。  防衛問題につきましてはいろいろな段階で話が出ましたが、具体的な話はほとんどなくて、一般論の話でございました。強いて具体的と言えば、在日米軍の駐留経費について、今後ともひとつ日本側の負担増ということを考えてもらいたいということの希望があったのが具体的と言えば具体的かもしれません。あとは一般的な話でございました。だからといって、私は総理が行かれたときに、防衛問題がさらに具体的な話が出るとは予想しないわけでございまして、防衛の問題については事務レベルの協議会が一つございます。それから大体これは総理の行かれた後だと思いますが、大村防衛庁長官ワインバーガーさんと恐らく会う機会があると思うのです。私は、ワインバーガーさんに具体的な問題等、中期業務見積もりでございますとか、そういう問題についてはひとつ大村防衛庁長官にいろいろな期待があれば話してもらいたいということを言ってきたわけでありまして、防衛問題は基本的な問題だ、総理のときも必ず出る、しかし、それはそう具体的じゃなくて、国際情勢認識の問題でございますとか、それに基づいた防衛というような一般論でなかろうかなと私は予想しておるところでございます。  それから、自動車の問題につきましては、これは大統領、ヘイグさん、ブロックさんのところで話が出まして、大体話し合いの合意ができましたことは、何としても自由貿易体制というものは守る必要がある。これは大統領も特に強調しておられました。それでヘイグさんも、自由貿易体制が崩れるような議会の保護貿易的な立法があるというようなことになると、これは必ずヨーロッパに波及する、そして自動車以外の商品にも波及するおそれがあるので、何としても両国で自由貿易を守るという原則を考えなければいかぬ、そういう前提に立ってひとつアメリカ日本ともっと話し合いをしていこうじゃないかということで、大統領からはアメリカの自動車産業の置かれた地位、議会の動き等いろいろ話があったわけでございまして、私はそれはよく認識するが、アメリカのタスクフォースの検討の結果もわからぬし、そういうことはひとつ日本に来てよく説明してもらいたいと言ったのでございますが、そのチームが来まして、きょうから実は日本側に説明をするということになっております。  もう一つは、鈴木総理が訪米されるときまでに、大体日米で自動車問題の大筋の話し合いがついていることを希望するということを大統領も直接私に言いましたし、総理も前々からそう言っておられますので、大筋は総理の訪米の前までに大体の見通しをつけろということで、日米両国で努力をし、話し合いをしようというようなことで別れてきたのでございますので、自由貿易体制は何としても守るということが大原則でございます。
  90. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま言われましたように、アメリカが自動車の輸入に対してドライブをかけるということ、これはまたアメリカの独禁法との関係が出てくるんじゃないか。これはアメリカの国内法ですからなかなかむずかしい問題がありますので、きょうはその内容について私は触れるつもりはございません。しかし、自由貿易ということを根本にしていくということになって、アメリカの自動車問題については外務大臣も十分にその事情については理解を示されたということでございますが、理解を示されるということになると、日本の国に来て、日本で規制するということも、これはまた問題が出てくるわけでありますから、当然業界に対する自主規制という形にならざるを得ないと思うわけであります。そういうようなニュアンスを持ってこられた外務大臣が訪米を終わって日本に帰られたわけでありますが、それに伴って、少なくとも業界の方はこの問題についてどういうような動きが出てきたか、あるいはまたこの日米摩擦問題について業界としてはどういう受けとめ方をしているか、その点について通産省だと思いますが、お願いいたします。
  91. 遠藤実

    ○遠藤説明員 通産省が来ておりませんので、かわってお答え申し上げます。  実は、昨日でございますが、アメリカレーガン大統領が自動車再建策につきまして発表いたしたということでございまして、それにはアメリカの先ほど発表いたしました経済再建計画が軌道に乗ることが大事だ、こういう認識でございます。先ほど外務大臣が御答弁申し上げましたように、日本側といたしましても、アメリカ側の窮状は理解するにしても、アメリカがどういうふうな対策をとるのか、それがわからなければ対応のしようがないわけでございます。したがって、日本といたしましては、業界も含めまして、アメリカがどのような措置を考えているのか、それを見てからもう少し対応を考える、こういう姿勢であると理解しております。
  92. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ぼくが言ったのは、実は、日本の業界がこの摩擦問題についてどういうふうに受けとめ、業界としてどういう動きがあるかということでございまして、アメリカの方の関係とはちょっと違うのでありますが、その点について。
  93. 遠藤実

    ○遠藤説明員 お答えいたします。  日本の自動車業界といたしましては、当然自由貿易の原則が最も大事なわけでございまして、したがって、いかなる事態になるにせよ、自由貿易の原則を踏み外さない、そのためにどういうふうな対応を考えるかということでございまして、具体的にはまだどういうことを考えるかというところまで至っていない。これはもともとアメリカの自動車業界みずからの経営の問題で現在の困難に逢着したというふうに日本の自動車業界としても考えているわけでございますから、それをしりぬぐいさせられるのはかなわない、こういう意識はあると思いますけれども、同時に、アメリカの市場は非常に長期にわたりまして重要な市場でございますから、そういったことも考えて対応しなければならないというふうに考えていると私どもは理解しております。
  94. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど外務大臣が言われましたけれども、自動車専門家のアメリカの通商代表団が七日から実務者協議を始めるということで来られているわけでありますが、これからの具体的な日程はどのようになりましょうか。またこの問題については、鈴木総理の訪米前に決着をつけた方が望ましいというようないまのお話でございましたけれども、ある程度の煮詰めがつきましたならば、その担当大臣である通産大臣は当然行かれると判断してよろしゅうございましょうか。
  95. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本の自動車工業会の受け方につきまして、いま参事官が申し上げましたが、私帰りましてすぐに総理大臣、通産大臣、大来君に向こうの様子を報告し、自工会会長の日産の石原社長に会いまして、逐一報告をいたしたわけでございます。石原さんはそれに対してどうこうという意見を言ってはおりませんで、今度向こうから説明に来るから、それを聞いて、どういうふうに考えるか方針を決めるのだというような話をしておったのでございます。きょうから向こうの代表が説明をするわけでございますが、大体三日間ぐらい政府間で説明質疑応答をやろうということを予定をいたしております。  その説明を聞いた後どうするかという日程につきましては、通産大臣が向こうへ行かれるのかどうかというようなことは、実はまだ相談はいたしておりません。説明が終わった後で政府部内で、通産大臣、大来代表その他と相談して日程を決めたいと思っているわけでございます。総理の訪米前までに大筋はということを言いましたのは、こういう問題が長引いて日米関係が非常にまずくなることがあってはいかぬと思うわけでありまして、ヘイグさんと話したときも、この自動車問題を過去においてあった繊維交渉のようなことにはお互いに絶対にしないようにしよう、自動車問題は自動車問題で片づける、これがほかの問題に——私は具体的にほかの商品を挙げたりして言ったのでございます。たとえば大きく言えば、防御問題とかほかの商品にまでこれが影響することがないようにしよう、向こうもそのとおりだというようなことを実は話してきたのでございまして、自動車問題は自動車問題で、何とか大筋は総理の行かれる前に大体の話し合いが終わることを本当に期待しているということでございます。
  96. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣向こうのことはよく事情もわかるということで、自粛的な、そういう形で業界の方々も受け取ると思うのですけれども、自粛といっても、やはり自由貿易の原則は競争条件というものが常になくてはならないわけでありまして、自粛、自粛ということでだんだんそれが慣行化されていくようなかっこうになりますと、これまた保護貿易主義の方に走ってしまうという問題が出てくると思います。アメリカとしても、当然努力をしてもらわなければならない問題も多々あるわけでありまして、そういう意味におきましては、きのうレーガン大統領が自動車の振興についての措置を発表されたということは、私も時にかなっていると思うわけでありますが、この自粛の問題について、やはりそんなにいつまでも自粛、自粛というわけにはいかないだろうと思いますが、外務大臣としてはどういうふうなお考えなんでしょうか。それともこれからどういうふうな方針でいかれようとしておるのでしょうか。
  97. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは説明を聞いた後、通産大臣が国内の自動車産業の主管をしておられるのでございますから、まず通産大臣がよく考える問題だと思うわけでございますが、外交の問題に関連してきますれば、大来君とか私とかがまた向こうとも話し合いをする、こういうことで政府としまして一本になって何とかうまく、こう考えておるわけでございます。アメリカの自動車産業がこういう状態になったのは、これは日本の自動車の輸出が原因じゃないわけでございます。それは向こうも認めている。私も主張してきたところでございまして、原因は別なところにあるわけでございますが、もしも何か手段をというような場合にも、緊急避難的な暫定的なということでなければしならぬだろう、私はそう思っております。  ただ、私は向こうに行きまして、いろいろな、たとえばやり方の問題でございますとか台数の問題でございますとか、いま先生がおっしゃった期限の問題でございますとか、こういうものには一切何も触れていない。行くときから、総理、通産大臣、大来君と相談しまして、そういう問題には一切触れないでこようということで話してまいりましたので、いま期間の問題を御質問になりましたが、私の考えを率直に言えば、緊急避難的な暫定的なものだろう、こういうふうに考えております。
  98. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨日、来日中のキャリントン英外務大臣と会われたわけでありますけれども、七月の先進国首脳会議、いわゆるオタワ・サミットでは、日欧の経済関係として対日貿易が取り上げられることは避けられない情勢であるというふうなことも何か発言をされたそうであります。さらにミソフ・フランス政府特別顧問も、EC諸国が対日貿易問題としてサミットで取り上げる公算が強い、そういうニュアンスの報道がなされているわけであります。  そこで、二、三点お伺いをしたいと思います。  この問題は、実は先月末に開かれたオランダでのEC諸国の首脳会議で、対日貿易については一応問題にしようということで合意された、そのように見ておられるのかどうか。  第二番目は、日欧貿易の中心は、自動車とかカラーテレビあるいは工作機械等の問題を意味しているのじゃないかというふうに思うわけでありますけれども、その点についてはどうお考えになっているか。  第三番目は、私はアメリカの自動車問題と連動してくるような感じがしてならないわけでありますけれども、恐らくアメリカとの問題において、日本がある程度譲歩したということで、この問題を取り上げた方がよいというふうな感じをECの方では持っているような感じがするのですが、その点についてはどうなのか。  それから、外務大臣としては、サミットで特定の国の貿易問題を取り上げるということは、西側友好のきずなに複雑な影を落とすからということで、恐らくそういうふうなお話はなされたんじゃないかと思いますけれども、もっと大乗的な見地から物を判断しなければならないという御発言をされたんじゃないかと思いますけれども、きのうのキャリントン外務大臣並びにフランスの特別顧問、これにお会いなさったときの状況についてお話し願いたい。
  99. 伊東正義

    伊東国務大臣 ミソフさんと会ったときは、サミットの話等は出ませんでした。むしろフランスのミソフさんは、日本に対して輸出をする問題あるいは産業協力の問題、日本研究所、研究センターをつくる問題というようなことでございまして、直接オタワのサミットの問題等は出なかったわけでございます。きのうキャリントンさんとお話をしましたときにこの話が出たことは確かでございます。  それでオタワ・サミットにECとして日本とヨーロッパの貿易関係を持ち出そうじゃないかということを決めましたのは、これはECの外相理事会でそういう話を決めたということでございます。首脳会議ではなくて外相理事会でございます。あれは二月の十七日でございましたか、外相理事会で自動車それから工作機械、カラーテレビ、ブラウン管、この四品目について監視制度をつくるということは決めたわけでございますので、貿易問題や何かを持ち出すとすれば、そういうような商品かなという感じはいたします。  そして、今度アメリカと何かあればECに連動、関連するかどうかという問題でございますが、これはアメリカとどういうことになりますか、まだ決まってはおりませんので、ここで断定的に申し上げるわけにはいかぬのでございますが、ECといいましても中はばらばら、やっている政策は違うことなんです。フランスはシェアの三%までしか日本の車の輸入を認めないというようなことをやっている、イタリアはたしか二千台でございましたか、イギリスは一〇%ぐらいということを業界で話し合っている、ベネルクス三国とかドイツは自由だというようなことでございまして、ECの中でも政策は違うわけでございますから、もろにECということになるか、ECの中のいま言った特別な国になるか、その辺のところは対策がどういうふうになるか、アメリカとの関係がどういうふうになるかということでまた政策も違ってくるだろうと私は思っております。  きのうキャリントンさんと話をしましたときに、オタワ・サミットに日本とECの貿易の問題を出すという話でございましたから、私は、これは自由貿易制度を守ろうとか保護貿易主義の台頭を抑えようとか、そういう貿易の大原則を話し合うことなら賛成だけれども日本とECというような、二国間の話をそういうところに出すことは賛成じゃない、もしそういうことが出れば、フランスは三%しか輸入を認めてないじゃないかとかイタリアはこうだとか、日本としてもこれは当然言う、そういうことになってくれば、サミットというものの性格からいって適当じゃないと私は思うというような日本側の意見をきのう言ったわけでございます。キャリントンさんはそれを、そうか、それじゃ出さないでおくとまでは言わぬわけでございますが、きのうはそういう問題で意見交換したということでございます。
  100. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その点はわかりました。  さて伊東外務大臣、先ほども論議がありましたけれどもワインバーガー国防長官との会談で、アメリカがグアム島以西、フィリピン以北のいわゆる北西太平洋地域での日本国の防衛分担を迫ってきたことに対して伊東外務大臣は、周辺海域数百海里、航路帯でおおむね一千海里の範囲を超えるものでないという趣旨を強調されたというわけでありますが、ワインバーガー国防長官がこのような発言をされた背景はどういうところにあるかということであり、また伊東外務大臣が同調しなかったということはどういう理由で同調をされなかったのでしょうか、その点について。
  101. 伊東正義

    伊東国務大臣 その話が出ましたのは、ワインバーガーさんがアメリカ防衛努力ということを一般論として説明をしたわけでございます。そのときにペルシャ湾とかインド洋の問題でございますとか東南アジアとかずっと言ってきた中に、北西太平洋ということでグアム島以西、それからフィリピン以北の海域におけるソ連の潜水艦の問題とか、そういうことの一般論としてずっと状況の説明がありまして、そして日本としてもできるだけの防衛力強化という努力をしてもらいたいということだったわけでございます。そのときに私は、具体的にグアム島以西、それからフィリピン以北という名前が出ましたので、これはそのまま黙って聞けば、防衛努力というようなことを言えば、その海面の防衛を引き受けたというような誤解を与えてはいかぬと思って、すぐに頭にきたものですから、一つは例の海域分担論の議論がよくあるわけでございます。海域分担論というのは、その海域は日本防衛分担をする、そこで日本の船舶だけではなくて外国の船舶も防衛するというようなことになりますと、これは個別自衛権から逸脱する問題になりますので、それが一つ頭にきて、そういう海域分担論であってはいかぬということで、それはできないのだということを言いますことと、もう一つは千海里、数百海里ということをよく防衛庁からも防衛の問題で言われ、そして海上自衛隊の装備の目標として、そういうところは頭に置いてやっているのだ、そのよりどころはまた「防衛計画大綱」にあるということでございますので、それ以上にこれは足を出していくということになれば、法律違反ということではございませんけれども、さっきの海域分担論は、これは憲法の考えから逸脱する、包括的な自衛権ということになりますので法律問題。もう一つの「防衛計画の大網」というものは閣議決定で決められている。千海里を千一海里となったら法律違反かというとそういうことじゃないのです、これは。そういうことじゃないのでございますが、政策として「防衛計画大綱」ということで整備目標を決めておりますので、それを越えた範囲までということになれば、これは「防衛計画大綱」から足を出すということになるということで、二つの理由でそれは日本としてはむずかしい、いまはできないことなんですということを私はすぐに向こうに言ったわけでございまして、黙っておれば、日本がそれを引き受けたとかいうような誤解を与えてはいかぬということで、私はすぐにそういう返事をしたわけでございます。
  102. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうすぐに反応を示されて、それについてはお引き受けするわけにいかないということは、言うならば、日本が考えている防衛大綱の千海里並びに周辺海域数百海里というのと、アメリカが考えている、要するにフィリピン以北、グアム島以西というのとはおのずと防衛範囲が違うということで、そこで伊東外務大臣は直ちに反論されたというふうに思うわけでありますけれども、その点についてまずお伺いしなければなりません。あなたはワインバーガー国防長官日本の立場というものをお話しされたわけでありますけれども、そのお話についてワインバーガーさんは了解されたのかどうか、あるいはまたこれからアメリカは、いまのアメリカの考えであるそのグアム島以西、フィリピン以北をぜひ日本防衛で守ってもらいたい、こういうふうなことをやはりこれから執拗に言われてくる問題であるかどうか、その点についてはどういう御感触をお打ちでしょうか。
  103. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま御説明したように、アメリカ防衛ということの一般論の中の説明として実は出てきたわけでございまして、その海域を日本防衛してもらいたいとか、そういう具体的な話ではなかったのです。ですから、その点は誤解のないようにお願いしたいのですが、私がそれに対してすぐ反論しましたのは、そういう一般論の中であっても、海域が出たということで、それに反論しないと、黙っていたんだから、それは承認したんだろうというような誤解を与えちゃいかぬ、こう思いまして、私は反論したわけでございます。それに対して向こうがさらに反論してどうということはございませんでした。そういうことはなく、一般論として話が出て、私はそれはいま言ったような理由でむずかしいんですよということを言ったに対して、向こうは何もそれについてどうこうということはなかったわけでございまして、恐らく総理が行かれても、そのことは一般論としての話は別でございますが、具体的にそこを防衛してもらいたいとかというふうなことは出ないと私は思っております。
  104. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは防衛庁の方にちょっとお聞きしなくちゃならぬかと思いますけれども、グアム島以西、フィリピン以北ということになりますと、現在の「防衛計画大綱」では果たしてこなし切れるかどうか。いわゆる日本の国としては、海上交通路千海里、周辺海域数百海里というところを線引きいたしますと、グアム島以西、フィリピン以北ということは、かなり区域が拡大されてくるように思えてならないわけであります。となりますと、それによって「防衛計画大綱」を変更しないでそういうことができるがどうか。またそれだけのものを要するに防衛するということになれば、遠いだけにかなり効率が悪くなる。しかも海域でございますから、当然対潜哨戒機であるP3Cあるいはまた潜水艦、護衛艦、これの増強というものを、もし引き受けた場合においては余儀なくされるんじゃないだろうかというふうに思うわけであります。そうなってまいりますと、現「防衛計画大綱」よりも約二、三〇%くらいはさらにその部分だけは装備を拡充しなくちゃならないというふうに考えられますけれども、その点についてはどういうふうに御判断でしょうか。
  105. 澤田和彦

    澤田説明員 お答えいたします。  いま先生おっしゃいましたとおり、グアム島以西、フィリピン以北という範囲、もし仮に純粋に地理的に線で引きますと、正確なパーセンテージはわかりませんが、いま先生がおっしゃいましたようなくらい、たとえば日本からおおむね一千海里程度というものよりは広い海域になると思います。ですから、いま仮に、先生の御質問がありましたように、文字どおり地理的な意味での海域というものを完全に海上防衛に当たろうといたしますと、いま現在、私ども防衛庁が従来から防衛大綱に従いまして航路帯を設ける場合には、おおむね日本から一千海里程度において海上交通の安全を確保しようということを目標として整備している範囲よりは大きくなるわけでございます。  しかし、私ども、果たして米国側がそこまで厳密な意味、地理的な意味で海域を広げて正確に言っているのかどうかということにつきましてははっきりいたしません。私どもはむしろそういう厳密な意味での地理的な、いま先生がおっしゃいましたように、従来から言っております海域の二〇%か三〇%広げろという意味で言っているのではなく、ただ漠然とグアム、フィリピンといいますのがアメリカにとりましてわかりのいい地名でございますので、そういう地名を例にとって向こうの海面を表現しているのではないかと考えておりますので、すぐにはいまおっしゃいましたように、「防衛計画大綱」の見直しにつながるような海域の拡大というようには理解していないわけでございます。
  106. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、現在アメリカとのいわゆるガイドライン、防衛指針ですが、それがいろいろと煮詰められているわけでありますけれども、そのガイドラインの内容というのは「防衛計画大綱」に基づいて、その範疇で言うならば煮詰められている。とするならば、当然千海里、そしてまた周辺海域数百海里ということは、それは既定の事実として、ガイドラインとしての防衛の分担というものが煮詰められているわけでしょうから、そういう意味におきますと、完全にグアム島以西、フィリピン以北ということになりますと、かなり大幅にガイドラインの枠を超える問題である、このように判断してよろしゅうございましょうか。
  107. 澤田和彦

    澤田説明員 ガイドラインに基づきますいわゆる日米共同作戦計画でございますが、この共同作戦計画の前提となりますガイドラインにおきましては、まず日本に対して武力攻撃がなされた場合に、日米が共同して海上交通保護のための作戦を実施するとされておりまして、これに基づきまして、日本周辺海域におきます海上交通の保護のための共同対処ということにつきまして、この研究では一般的に触れているわけでございます。したがって、この研究の前提には、いま先生が御指摘のように、当然現在の「防衛計画大綱」というものが念頭にございます。ですから、先ほど申し上げましたとおり、もしグアム島以西云々という意味が厳密な地理的な意味での拡大というものを意味するのであれば、これは「防衛計画大綱」で考えているものよりは広くなるわけでございますが、私どもはそのようには理解していないということを申し上げたわけでございます。
  108. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣、グアム島以西、フィリピン以北という問題は、いま日本の国が考えているところのいわゆるシーレーン千海里あるいはまた周辺海域数百海里、これよりもかなり幅が広くなるということの認識については、外務大臣もそれは当然御承知の上で反論されたわけであると思うわけでありますが、ちょうど千海里、周辺海域数百海里ということになると、日本の国の経済水域をそっくりと囲む、そういう言うならば日本防衛に必要な部分の水域である、私はそう思うのです。だから、その水域からさらに拡大されるということならば、それは日本の国を守るための言うならば水域ということでなくして、むしろ余分な部分を守るということになるわけでありますから、そうなると、これは私は集団自衛権という問題にまで発展していくおそれがある。必ずしも千海里かっきりということは必要ないと思うのです。あるいは数百海里かっきりという必要はないけれども、ちょうど経済水域というものを囲んでいくのは、言うならば千海里、数百海里の問題だと思うわけですから、それよりもたくさんアメリカの要請に基づいてフィリピン以北、そしてまたグアム以西というところまで日本の国が守りましょうということになると、その問題が必ず私は出てくると思うのです。日本の国を守るというならいいわけでありますけれども、ほかの国の艦船を守るということまで発展しかねない問題にまで入るから、集団自衛権の問題が出てくる。だから言うならば、外務大臣は直ちにそれを反論された、こういうふうに私は受け取っているわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  109. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほど申し上げましたように、私が言ったのは二つ理由があるわけです。海域分担論というのはよくある議論でございまして、海域分担論ということで考えれば、これは先生おっしゃったとおり集団自衛権ということになってくるわけでございまして、これは憲法の認めるところじゃございませんので、そういう法律論が一つ。もう一つは、千海里、数百海里、こう言われている航路帯の問題とか周辺海域の問題があります。これを超えてということになると、これは法律論じゃなくて、これは個別的自衛権の中でも可能なことでございますけれども日本の政策としては、先ほどお答えしましたように、「防衛計画大綱」ということの閣議決定でやっているわけでございまして、その範囲を超えるものはやはり政策判断としてまずい。法律上の問題と二つのことが頭にありまして、私はそれはむずかしいのだということを言ったわけでございます。二つ実は理由がございます。
  110. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、政策判断でそういうふうなことをしないというのか、あるいはまた現在日本の国が憲法上許される範囲として選択できるのは千海里、数百海里だ、そういう考え方が先行されてお断りになったのか。もしあなたが言うように、防衛大綱がそれじゃこれから変更されれば、まだ限りなく海域というものはこれからも広がる、そのように判断していいでしょうか。
  111. 伊東正義

    伊東国務大臣 自衛権というものを法律解釈すれば、千海里までは自衛権だけれども、千十海里になったら自衛権でないというようなことじゃないと思うのです。ただし、日本はそれをどこまで装備の目標としてやるかという政策判断の場合に、さっきからお答えしていますように、防衛庁は航路帯千海里、その周辺海域は数百海里、こういうことで「防衛計画大綱」というものの整備をやっておられるわけでございますので、私はそういう政策判断で、これはむずかしいですよと言ったことと、もう一つは海域分担論の話になりますと、これは何も千海里とか数百海里ということよりも、海域分担という考え方、そこで外国の艦船も船舶も守るのだということになってきますと、これはまた憲法の集団自衛権に触れる問題でございますし、これは海域分担論かなということも頭に出てきましたし、もう一うは「防衛計画大綱」の政策判断の問題、二つが実はありまして、私がこれはむずかしいというくとを言ったわけでございます。
  112. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 塩田防衛局長が明らかにしたところによりますと、アメリカがシーレーン防衛について、いわゆる中東石油をめぐる海上輸送の安全確保については、東南アジアあるいはその海域の安全航行については日本が一番利益しているのじゃないかということを理由にして、日本の国にいわゆる応分の分担を要求してきているということが報道されておりますけれども、協力の具体的な内容というのはどういうものでしょうか。
  113. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 塩田防衛局長の答弁の内容それ自身については、私正確に覚えておりませんけれどもアメリカ側からシーレーンの確保について、日本に対して具体的にどういうふうにしてくれとか、こうしてくれという具体的な要請はございません。
  114. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、アメリカからは全然そういうふうなことは言ってこない。たとえば各国共同の資金や物質的な協力等についても一切そういう問題についてはアメリカは言ってこない、こういうことですか。そうすると、防衛局長がたしか自民党の国防部会とかそういうところで話をしたということは全くでたらめだ、こういうことですか。
  115. 伊東正義

    伊東国務大臣 去年のイラン・イラク紛争の当時、よく共同パトロールでございますとかいろいろなことが言われたわけでございますが、アメリカから一切そういうことについての費用分担とかいうことの要請、期待表明というものはなかったのでございます。
  116. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカから伝えられる防衛力増強期待の中で、予算の伸び率より防衛力の中身を充実してほしいという声があるわけでありますけれども、着実かつ顕著という言葉はどちらを指しているんでしょうかね。言うならば、防衛力増強というのは、予算の伸び率かあるいは防衛力の中身か、それのどちらを着実かつ顕著と——両方とも言っておるというように判断しておるのでしょうか、どちらでしょうか。
  117. 伊東正義

    伊東国務大臣 着実にして顕著という日本語から言えば、予算のことも考えられるし、中身でぱっと見てああ顕著だなというようにわかるように、両方私はあるんじゃないか、こう思うのでございます。
  118. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本防衛の盲点というのは、後方支援活動の弱体化あるいは抗堪性問題があると言われております。防衛庁としては、この問題をどうとらえ、またこの問題にどうやって力を入れようとされているんでしょうか。正面装備については防衛庁がかなり力を入れているようでありますけれども、支援活動とかあるいは抗堪性という問題が日本の場合はもう弱体化だというふうに非常に強く言われているわけでありますが、これはどういうふうに防衛庁はお考えなんでしょうか。
  119. 澤田和彦

    澤田説明員 防衛力の現状について見ますと、まだ正面装備を初めといたしまして、全般的に「防衛計画大綱」に定めます防衛力水準というものに達していない。そのほか装備の近代化もまだ不十分であるという状態にございます。またいま先生が御指摘されましたように、後方支援態勢、これは指揮、通信でございますとか輸送、補給というようないろいろな面を含みますが、この後方支援態勢につきましても非常に不十分であるということは事実でございます。今後の防衛力整備に当たりましては、私どもまず「防衛計画大綱」に基づきまして、装備の更新あるいは充実ということに努めてまいりますが、それとともに、全体としてバランスのとれた質の高い防衛力を整備するためには、いまお話しのございました後方支援態勢というものについても十分配慮していく必要があるということを認識しております。
  120. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 後方支援態勢とかあるいは抗堪性の弱体化という問題について具体的にどういうことが挙げられるんでしょうか。そしてまたそれに対して五十七年度にはどうされようというお考えなんでしょうか。
  121. 澤田和彦

    澤田説明員 まず抗堪性でございますが、これは先生よく御承知のとおりと思いますが、現在自衛隊の主としまして航空基地あるいはレーダーサイト等につきましての抗堪性が十分ではございません。それからまたそれ以外の後方支援態勢ということにつきましても、指揮、通信能力でありますとか、いろいろな部品その他の整備、補給関係、こういうような後方支援態勢全般について必ずしも十分でない状態にございます。それで昭和五十七年度の防衛庁の業務計画ないしは防衛予算につきましては、防衛庁といたしましてきょう時点ではまだ検討を行っていない、これから夏に向かって検討を開始する段階にございますので、内容につきまして具体的に申し上げられる段階にはまだないわけでございますが、考え方といたしましては、正面装備のみならず、いまお話の出ました抗堪性、それから後方支援態勢につきまして、その充実整備に鋭意努力してまいりたいと防衛庁として考えているわけでございます。
  122. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五六中業というのは、五十八年度から六十二年度を対象とした防衛力整備の五カ年計画になるわけでありますけれども、五十八年度に見直しをされるとする、言うならば五六中業ですけれども、その中でどういうものをこれから見直しをしていかなければならないか。またこれからどのような日程と作業が必要であるかという点については、どういうようにお考えでしょうか。
  123. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 五十五年から五十九年までを対象といたしました中期業務見積もりに続きます五十八年から六十二年までの中期業務見積もりの作業はようやく始まっただけでございまして、先生の御質問の内容にまでお答えできるようになりますのは、これからおよそ一年かけて作業を行った後になるわけでございます。この一年間の作業の日程はどうかということになりますと、これから関係機関と打ち合わせをしながら詰めていく問題でございまして、現有申し上げられる状況にございません。  それから、どういう点を重視していくかということにつきましては、閣議決定されております「防衛計画大綱」にのっとって整備を進めるという点については変わりませんので、大綱に示されておりますように、正面、それから先ほど来御質問のございました後方支援態勢では指揮、通信、それから教育、訓練、こういうものが全部大綱に書かれているわけですが、これらとの均衡ということに配慮しながら、計画大綱に定められております防衛力水準達成すべく計画をつくってまいりたいというふうに考えて進めているところでございます。
  124. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五六中業についてはようやっとここで作業に入ったばかりであるというようにおっしゃったわけでありますが、この五六中業の作業はどういうところで検討され、どういうふうにこれから進めていくというお考えになりましょうか。
  125. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 まず防衛庁内の作業といたしましては、陸海空の幕僚監部、統合幕僚会議事務局、それから関係付属機関などがございます。特に技術研究開発などがございますけれども、これらの機関で恐らく半年ぐらいをかけまして並行的な検討を進めることになると思います。その後、内局段階で恐らく半年ぐらいをかけまして調整をして防衛庁案をつくるということになるのではないかと過去の例からは考えております。しかし、このとおりに進められるかどうかについては、なお先ほど申し上げましたように、ようやく始めた段階でございますので、明確にできません。  以上でございます。
  126. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五六中業は五十八年度から六十二年度を対象ということになりますと、少なくとも五十七年の七月ごろまでにはすべての作業ができませんと、五十八年度から見直し、そして五十八年から予算というわけにはいかないわけでしょうから、そういう一つの枠組みの中で五六中業は見直しされる、こういうふうに判断してよろしゅうございましょうか。
  127. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 中期業務見積もりは、防衛庁の「防衛諸計画の作成等に関する訓令」に基づくものでございますが、これは五十六年度に作成いたしますものは、二年後以降の五カ年間の業務計画などの参考に供するわけでございます。  御指摘のように、五十八年度予算の概算要求を行うに際しまして、業務計画はまた参考にされるわけでございますが、その要求が五十七年の八月末でございますので、それまでに五十八年から六十二年を対象期間といたします中期業務見積もりができていることが必要といいますか望ましいと考えます。したがいまして、現在の防衛諸計画訓令の中では、五十六年度内につくるようにというのが基本的な姿勢でございます。しかし、実際には御指摘のように、概算要求までなだれ込むというのが過去の例でございます。
  128. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官は、五六中業を達成しても果たして「防衛計画大綱」までに到達するかどうか非常に疑わしいということはしょっちゅう言われているわけでありますけれども、そうなった場合に、五六中業というものは「防衛計画大綱」の水準のどこら辺まで満たされるのでしょうか。その点が一つと、満たされないとするならば、どういうところが満たされないのでしょうか。
  129. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 五十八年以降の計画は、これから作業いたすわけでございますので、どの点がというのは、いまの段階では大変お答えしにくいわけでございますが、大綱水準にどうかということでございますと、現在すでに達成されていると思われるものもかなりあるわけでございます。中でも最も達成度が低いと思われますのが海上自衛隊の作戦用航空機、それから航空自衛隊の作戦用航空機だと思います。これが向こう五カ年間の計画でどのように達成できるか、あるいは達成できないのかという点については、もうしばらく時間をいただきませんとお答えできないわけでございます。
  130. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまのお話によりますと、防衛大綱のいわゆる水準に——五六中業というのはこれから検討されるにしても、いまお話にありましたように、海上のいわゆる作戦航空機ですか、あるいはまた航空自衛隊のいわゆる航空機、その部分が非常にむずかしい、そこのところはどうなるかわからないということであって、ほとんどそれ以外は達成できる、こういうふうに見てよろしゅうございましょうか。
  131. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 それ以外の点について完全に達成できるかと言われましても、いまの段階で明確には申し上げにくいわけでございますが、かなりな程度まで達成したいという願望は強く持っておりますけれども、果たしてそのようになるかという点については、いま何ともお答えいたしかねるわけでございます。
  132. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 話は変わります。  対中プラントの輸出についての中止の問題は、石油化学案件といわゆる宝山製鉄案件との二つに分かれておりますが、劉興華副総経理と関係各社との話し合いの状況はどういうふうになっていましょうか。
  133. 林昭彦

    ○林説明員 中国のプラントの輸入契約の窓口になっております中国技術輸入総公司の劉興華副総経理が二月二十四日に日本に来られまして、約三週間滞在して、石化それから宝山関係日本の契約当事者と話し合いをされたわけでございます。  私ども日本側の契約者から聞いているところでは、宝山関係、これは中止は二期でございますけれども、二期の契約者との話と石化の方の契約者の話とは非常に違っておりまして、宝山二期につきましては中国側は中止をしたい、したがって契約を終結するけれども、合理的な補償をするというふうな申し出がございまして、日本側の当事者といたしましても、この補償がどうなるかというのは今後の大きな問題でございますけれども、終結の方はいたし方なかろうということで基本的な方向は合意をされております。それから石化の方でございますけれども、これはすでに工程が相当進んでおるということもございまして、中国側は転売するという方向で契約を修正したいという申し出だったわけでございますが、日本側は転売というのはとても不可能でありますし、また工程も非常に進んでおるので、これはそのまま引き取っていただきたい、これが中国にとっても一番損失を少なくするゆえんではないかというようなことで、話し合いは平行線のまま終わったというふうに聞いております。
  134. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 八日に中国側の周延南輸出入管理委員会の副主任が訪日をするというふうに伝えられております。言うならば、今回谷牧副総理が来日をする前のいわゆる下準備として来られるということだと思いますけれども、そういうことによって中国側の考え方というものの原案といいますか、それは大体わかるというふうに判断してよろしゅうございましょうか。  それからもう一つは、周建南輸出入管理委員会の副主任はどういう日程で、どういうふうな形で日本に滞在される予定なのでしょうか。
  135. 林昭彦

    ○林説明員 最初に、周建南副主任の日程でございますけれども、明日来られまして月曜日まで滞在されるというふうに聞いております。  それから、周建南副主任の来日の目的でございますけれども、この前、四月二日から五日まで、日本側の民間の契約当事者を中心にいたしまして訪中をして話し合いをしたわけでございますが、一応このときに中国側からは、従来中止ということで転売という要請をしておりました石化のプラントについては、契約どおり引き取るということが日本側に伝えられておりまして、そういうことが前提で周到主任が来日されるというふうに理解しております。どの程度具体的な提案があるかということについては、私ども現時点でははっきりわかりませんけれども日本側からは従来から中国に対しまして、そういう具体的な提案を中国側から提示してほしいということをたびたび申し上げておるわけでございますので、そういう中国側の考え方というのが今回の周到主任の訪日で聞けるのではないかというふうに期待をしておるわけでございます。
  136. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、周建南輸出入管理委員会の副主任がこちらに来られて——確かに三、四日の両日北京で行われた日中プラント問題に関する日本側民間交渉団とのいろいろな話が出ておるわけでありますが、その中にあって、全体の石化を復活するためには八千億円もかかり、外資が二千億円、内資部分が六千億円という膨大な金額等が伝えられておるわけであります。今回その方が来られますと、中国としてはこれからどういう取り組みをするかという問題についてはかなり鮮明な期待が持てる。しかし、それは決して輸出入管理委員会の副主任程度で問題が解決するわけではなくして、また言うならば、中国に感触を持って帰られて、最終的には谷牧副総理の来日という一つの経過をたどると私は思うのです。それについて、四月の中旬ごろには来たい、谷牧さんはそうおっしゃっておったわけでありますけれども、とてもとてもそういう状態にはならぬだろう、少なくとも五月に入り込むような気がしてならぬわけでありますが、こういう日程を組むということが一つの手順になっていくとするならば、やはり四月にはなかなかむずかしい問題ではないかというふうに思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  137. 林昭彦

    ○林説明員 周副主任がどういう具体的な案を持って日本に来るかということ、それが日本側として、いままでの民間の話し合い、それから日本側のいろいろな事情等もございますので、そういうこととの関連でまた次の手順というものが出てくるというふうに理解しておりまして、いまの段階で私ども中国側の具体的な提案というのを必ずしも把握しておるわけではございませんので、谷牧副総理の来日時期等については、何とも判断しかねるということでございます。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣政府としてこの問題は、いずれにしても民間契約でございますから、民間における話し合いというものを第一義的にすることは当然だと思うのです。しかし、伝えられるところによりますと、石化の問題もかなりまた復活をしてくるという状況の中にあらて、必ずしも民間だけではどうにも手がつけられないという問題も出てくるでしょう。そういう場合、政府としてもある程度この問題については関心をお示しになっておられると私は思うのですが、いかがでしょうか。
  139. 伊東正義

    伊東国務大臣 先般土光さんが中国へ行かれましたときに、私、行かれる前にもお帰りになりましてからも会ったわけでございますが、いま鈴切さんおっしゃるように、これは日本では民間が向こう政府相手にやったことでございますので、まず民間で詰めるだけ詰めてもらいたい、何でも政府がというような考え方ではだめですよ、ぎりぎり詰めてもらって、こういう問題がどうしても解決しないといって残る問題が出てきた場合に、これは政府がどうするかということをよく相談をしますということを言ったわけでございまして、いまいろいろその過程にあるわけでございます。私は常にこの問題で日中間の平和友好協力関係に傷が残らぬようにということは外務大臣として考えるべきことでございますということを答弁しているわけでございまして、ぎりぎり問題が残った段階で、関係大臣が集まりまして、政府としてこれをどうするかというような相談をする必要があるというふうに思っております。
  140. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨日、日中共同石油プロジェクトによって渤海湾にかなり良質な油田が開発されたという報道がなされておりますが、その内容は大体どんなものでしょうか。またこの行き詰まっていたプラントの輸出についても、今回の新しい油田の開発でかなり経済交流の道が開けるのではないかと私は期待しているのですが、その点について知っている情報をひとつお教え願いたいと思います。
  141. 林昭彦

    ○林説明員 渤海湾の石油開発につきましては、新聞報道のとおり、共同開発事業といたしまして初めての試掘井が、従来、層が三層あるのではないかということで見きわめをつけて行ったわけでございますが、一番下の層につきましてフローテストをしたところ出油したということでございます。API四十度ぐらいの非常に良質のものであるということはわかっておりますが、まだ井戸を一本しか掘っておりませんので、これがどのような広がりを持ったものかという点については今後の試掘、あるいは他の層の状況等は今後のテストというものを待たないとはっきりはわからないということでございます。  それから、これの今後のプラント問題等についての影響でございますが、この段階でそういうことを云々するのはちょっと早いのではないかと思いますけれども、いずれにしても、今回のプラント建設中止問題というのは、中国側の内資不足とともに、もう一つは予定どおり石油が産出されてこないということに原因があったわけでもございますので、万一非常に今後の中国の石油開発というものが進んだということを考えますと、いい影響があるというふうに了解しております。
  142. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これまた話が違いますが、高島事務次官が三日鈴木総理を訪ねて、緊張を続けるポーランド情勢について報告をしたというふうに伝えられております。ソ連のポーランドへの軍事介入が前段階にまで来たきわめて危険な状態であるというようなことについて鈴木総理に御報告されたというわけでありますけれども政府としてそのような判断をしたというのはどういう背景なんでしょうか。どれくらいの緊張状態でしょうか。
  143. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇説明員 お答えいたします。  高島事務次官は四月三日の記者会見でその話を記者団にされたわけでございますが、その際、高島事務次官が判断の材料とされたのは二つございまして、一つは三月十七日から東ヨーロッパで行われておりましたところのワルソー軍の演習が延長されまして依然として続いているという状況、またポーランドをめぐります軍事警戒体制が昨年の十二月以来高められておりますけれども、それが依然として続いているという状況が一つでございます。  それからもう一つは、ソ連の党機関紙でございますプラウダがポーランドの共産党、すなわち統一労働者党のやり方につきまして初めて批判を始めた、そういうことからポーランドをめぐる情勢が緊張しているという判断を下したものでございます。
  144. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 非常に緊迫しているということでありますけれども、もしソ連が介入したという事態になった場合に、わが国としてどういう措置をとるかということについては、これはまた非常に重要な問題だと思います。そこで、昨日実は伊東外務大臣とキャリントン英国外務大臣による日英定期協議で、ポーランドの問題についてもECとしては非常に重大な問題だけに話が出たわけでしょう。それについていろいろ話をされた中において、少なくともポーランドに軍事介入をするということになれば、これは重大な問題であるという認識をされたと私は思うわけであります。そのときに、もうすでにソ連がアフガニスタンに侵攻したときに、それぞれの対ソ措置をとったわけでありますが、そのアフガニスタンの対ソ措置よりもさらに厳しい対ソ措置をとらなければならないということ、これは恐らくそういう話をされてきたのじゃないかと思いますけれども、日英外相定期協議の中で、この問題についではどういう具体的な内容を持って対ソ措置をしようというふうにお話し合いをされたのか。これはなぜ私が聞くかというと、実は危険だ危険だと言っておっても、制裁措置というものは時間が過ぎてしまったら余り効果がないものであって、どうしてもかなり早急に事をしなければならない問題でありますから、こういう問題については当然アメリカ日本、ECという形になるでしょう。それについてはどういう土俵でお話しになられるのか、あるいはオタワ・サミット等で、もし軍事介入が、さらにこういう状態が続くということであれば、それも主題としてはかなり大きな問題として取り上げられるのじゃないかと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  145. 伊東正義

    伊東国務大臣 きのうイギリスの外相と話しましたときに、イギリスの外相は、いま堂ノ脇審議官が言いましたように、ソ連のポーランド介入の危険性といいますか可能性というものを非常に重要視していたのでございまして、近くあるんじゃないかというような感じにとれる発言をしておったのでございます。そしてもしもそういう事態になれば、デタントというものはもう壊滅する、いまマドリードで欧州の安全保障協力会議をやっているけれども、ああいうものも一切飛んでしまう、軍縮というような問題も言うべくして実際は行えなくなるというような非常な危機、世界にとりまして非常に冷たい冷戦状態のようなことになるんじゃないかということで非常に憂慮しておったということは事実でございます。そしてイギリスの外相の方からアフガニスタンに対してのときよりももっと厳しい対ソ措置というものをとる必要があるんじゃないかという話が出たことは事実でございます。私はアフガニスタンのときも、これは第三世界に入ったのでございまして、アフガニスタンのときは軽くてポーランドのときは重いというのはおかしいじゃないかということで、実はいろいろ議論したのでございますが、ポーランドに対する英米人の感触といいますか、あるいはポーランドのヨーロッパにおける地位とかいろいろ言って、厳しい措置を考えなければいかぬということを主張しておったわけでございます。そのときに、アフガニスタンで対ソ措置をやったときには若干足並みの乱れがあったということで——足並みの乱れということではなくて、各国によってそれぞれ国の事情がありますから若干違うことはあるとしても、対ソ措置を考える場合は、大筋はやはり一緒にしなければいかぬじゃないかということで、これは意見一致を見たのでございます。  それではどういう相談をということはなかなかむずかしい問題でございまして、日本はNATOとは何も連絡は持ってないわけでございます。日米安保ということでアメリカとだけでございまして、NATOの協議というものには加わるわけにはいかぬということを言いまして、イランのときにECと協議したことがあります。あるいはECの議長国と協議することも考えられるし、あるいはアメリカで、アメリカとまた二、三の国がワシントンで集まって、そこで日本の大使館と相談するとかいろいろな考え方があるわけでございますが、事前に十分に打ち合わせてやる、歩調を一にするというようなことをきのう話したわけでございます。  サミットのことをお話しになりましたが、サミットというと七月の末でございます。ここの議題は大体は経済問題でございましたが、去年からアフガニスタンの軍事介入によって政治問題を取り上げたわけでございます。今度どういう問題が取り上げられるか議題はまだ決まっておりませんが、首脳が集まられれば、経済問題だけでなくて政治問題も話し合われるということは当然じゃないかというふうに思っておりますが、その内容等につきましては、サミットの方はまだ一切決まっておりませんし、対ソ措置内容を具体的に一つ一つ、これはどうだこれはどうだというような議論はきのうはしておりません。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 本会議前の約束の時間が来ておりますので、もう一問だけちょっと。  結局、ポーランドに介入ということになれば、日本ソ連に対する制裁措置という形になるわけでありますけれども日本の場合においては、軍事的な面においてこれをどうするということはなかなかむずかしい点があるわけですが、基本的には外交、経済、こういうことに具体的な措置がしぼられるというふうに私は見てとっているわけなんですが、その点についてはいかがでしょうか。
  147. 伊東正義

    伊東国務大臣 恐らく、もしそういうことがあるとすれば、いまおっしゃったような分野だろうと私も思っております。
  148. 江藤隆美

    江藤委員長 午後四時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三十一分休憩      ————◇—————     午後四時四十四分開議
  149. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  150. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 休憩前の問題でございますけれども、実はソ連軍事介入の問題の中にあって、先ほど対ソの措置については軍事的な面はちょっと日本の場合にはできない、外交かあるいは経済かということが対象になってくるということについては外務大臣もお話しになったとおりであります。そこで、アフガンよりも強い措置をということであるわけでありますけれども、アフガンへのソ連軍事介入のときに日本としてとった措置、その措置の具体的な問題は何であったか、そしてそれよりもさらに強い措置ということになってくるとどういう措置があるのか、その点についてはいかがでございましょうか。
  151. 伊東正義

    伊東国務大臣 厳しい措置と言いましたのは日本の方じゃなくて、イギリス側がそういうことを言ったわけでございます。内容等を一つ一つ協議したということじゃ全然ないので、そういう一般論でございました。  日本がアフガンにソ連が入りましたときにとりました措置は、一つは人的なハイレベルの政治家の交流でございますとかいうことはしばらく見合わせようということで続けておるわけでございます。それからあのとき問題になりましたモスクワのオリンピックに参加するかどうかという問題、これは一過性と言えば一過性のことでございますが、こういう問題につきましては、日本は、ドイツもそうでございましたしアジアの国々、多くの国々がそうでございました、参加をしないということをやったわけでございます。そして経済的な問題としましては、公的な信用供与の問題につきましては、既契約、継続しているものは別でございますが、新規の公的な信用供与につきましてはケース・バイ・ケースで慎重にひとつ考えようじゃないかということで、その後もたとえば森林の開発とかあるいはエネルギーの問題でございますとか前向きに考えたものもございますが、ケース・バイ・ケースで考えようということをやりました。それから高度の技術を要するようなものにつきましては、ココムの統一的な見解で、ココムの規制というものに従おうということをやったわけでございまして、大体いま申し上げましたようなことをいわゆる対ソ措置としてやったということでございます。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、この問題については各国々の足並みが大変にばらついておったということもあるわけでございますけれども、今回ポーランドにもしそういうことが行われることになりますれば、これはかなり強い措置という問題も考えられるのじゃないかと私は思うのですが、たとえて言うなら駐ソ大使召還とか、あるいは外交関係の縮小とか、あるいは先ほどおっしゃいました対ソ輸出の信用供与の中止とか、そういうような問題等も強い措置の中には含まれると思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  153. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは、具体的な問題につきましては、まだこれからの相談とかそういうことがあるのかもしれませんので、いまここでこういう問題こういう問題と言ってお答えするには適当じゃないと私は思います。またそういう問題について、いま申し上げた以上のものについて外国と、西側のたとえばECと具体的に相談しているとかそういうことはまだございません。
  154. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは次に入ります。  実は五十五年十月二十八日の自衛隊の海外派兵並びに日米安保条約に対する答弁吾の中で、政府が交戦権について述べられているところがございます。答弁書の第三項の5では「交戦権とは、戦いを交える権利という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称」である旨を述べられております。ところが、この交戦権という問題につきましても、実はいろいろの学説がありまして、国家の戦争ないし戦争等を行う権利、そのようにする者、あるいは交戦権とは、国家が戦争を行う権利であるとともに、国家が交戦者として有する権利である、こういう学説等もあることは御承知だと思うわけでありますが、答弁書のようないわゆる「交戦権とは、戦いを交える権利という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称」であるというその考え方は、これからも変わらないということでしょうか。
  155. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 ただいま御引用になりました答弁書における政府の考え方は、今後も変わりません。
  156. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は交戦権の行使と自衛権の行使、これは非常にわかりにくいのですね。この点についてどこがどう違うのか、具体的に御説明願いたいと思います。
  157. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 憲法九条二項の解釈といたしまして、いわゆる従来戦争当事国が戦争遂行に必要な行為として認められてまいりました交戦国として有する国際法上の権利の総称という意味における交戦権は、わが国は九条二項によって明瞭に否認されているところである。ただし、わが憲法の解釈として、他方、外部からの急迫不正の武力攻撃に際して、他に適切有効な手段がない場合、必要最小限度の実力を行使することは、憲法の上でも当然に認められているところである、こういうふうに申し上げてきたところであります。  しからば、その違いということでございますが、一言で言いますと、交戦権というのは、これは二十八年七月十八日の衆議院の外務委員会におきまして佐藤法制局長官が答弁しております言葉を引いて申し上げれば、「戦争の場合には、相手をやっつける限界というものは、相当幅広く認められているのじゃないか、不必要というと語弊がありますが、多少合理的な範囲を越えても追いかけて行って殲滅させるというようなことも合法と見られる、」それからまた、同じように二十九年五月二十五日に、やはり参議院の内閣委員会で佐藤法制局長官が答弁しておりますが、交戦権を持つということになりますと、敵が攻めてきた場合、ずっと敵を追い詰めていって、そうして将来の禍根を絶つために、もう本国までも全部やっつけてしまうというようなことが許されるであろう、しかし、わが国の場合は、そういうことは許されない。あるいはまたそれに似たような説明がいろいろされておりますけれどもわが国憲法で認められております自衛権の行使として、必要な最小限度範囲内においてやりますところの自衛行動のための権利と申しますか、そういうものは、いま申し上げたような交戦権というような非常に幅広いものではない、こういうことが両者の本質的な迷いとして言い得るのではないかと思います。
  158. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府が考えております交戦権の解釈は、「戦いを交える権利という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称であって、」具体的にそこで言われていることは「相手国兵力の殺傷及び破壊、相手国の領土の占領、そこにおける占領行政、中立国船舶の臨検、敵性船舶のだ補筆を行うことを含むものであると解している。」こういうふうに答弁されているわけでありますけれども、これは非常に少ない具体例でございますね。ですから、もっとたくさん具体例というものはあるはずでありますけれども、その点についてちょっと御説明願いたい。
  159. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  具体例と申しましても、先ほども法制局長官から御答弁がございましたように、国際法上交戦国が持っている権利の全部を言うわけでございまして、過去におきます戦時国際法上交戦国が有しておるというものすべてを言うわけでございます。したがいまして、いま鈴切委員がおっしゃいました相手国兵力の殺傷、破壊あるいは相手国領土の占領、そこにおける占領行政、中立国船舶の臨検、敵性船舶の拿捕ないしは相手国の沿岸を封鎖するというようなことも交戦権の一態様であると申し上げられると思います。
  160. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり海上封鎖なんかもその一つの例になりますね。  それからもう一つは、捕虜をつかまえる権利とかそういうものも戦時国際法上やはり当然認められる権利である、そのように解していいですか。
  161. 伊達宗起

    伊達政府委員 そのとおりでございます。
  162. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、たしか三月十九日の参議院予算委員会で、わが国防衛政策の基本となっている専守防衛政策に関して、自衛隊が相手国領域に先制攻撃をしかけることは許されない。これは当然だと思うのですが、有事の際、急迫不正の侵害があり、たとえば誘導弾などの攻撃にさらされた場合、他に方法がなければ、相手国の誘導弾基地をたたくことは法理上は自衛権範囲に含まれるということになっていますね。  そこで、お伺いをしなければならないわけでありますけれども、まず先ほど交戦権を認めておる具体的な例の中で、自衛権の行使においてこれだけは認められないというものが具体的にあったら御指摘を願いたいと思うのです。
  163. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 典型的なものとしては、自衛権の行使として認められないものは、占領地行政を行う権利というものが典型的なものだろうと思います。
  164. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、ここにありますように、有事の際、急迫不正の侵害があり、たとえば誘導弾などで攻撃された場合、他に方法がなければ、相手国の誘導弾基地をたたくことは、法理上は自衛権範囲に含まれるというまでなっているということなんですが、そうなりますと、ミサイルで日本に現実に攻撃があったとしますね。そうした場合に、相手方の基地をたたく方法としてはいろいろな方法があると思うのです。もちろんこちらの方でF15で相手方の基地をたたくとか、あるいはまた自衛艦で相手方の基地をたたくとか、あるいはまた空挺部隊が行って相手方の基地をたたくとか、いろいろな方法があるわけでありますけれども、それはいわゆる自衛権範囲として当然認められる権利ですか。
  165. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 御指摘の例はちょっと交戦権の問題とレベルが違う問題じゃないかと思います。先ほども御引用になりましたけれども、交戦権の中には、当然のことながら害敵手段として相手方の兵力なり武器を攻撃するというか、それをやっつける権利は入っておるわけであります。  ただいま御引用の例というのは、そういう害敵手段の一つとしていろいろな手段があるわけですが、そのときに相手方のミサイルの基地まで出かけていってあるいは攻撃ができるか、こういう問題だろうと思いますが、それはむしろ自衛権の行使の要件として、本来そこまでできるかどうかという問題であって、交戦権の問題との関連においては余り問題にならないことではないかと私は理解をいたしております。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 交戦権と言ったのではなくて自衛権の行使、その中にあっていま言うようなことができるかどうかという問題に問題があるんじゃないかと思うのですがね。
  167. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 失礼しました。最初、交戦権のお話がございましたので、それとの関連というように誤解いたしました。  ただいまのような問題は、自衛権の行使として、私どもとしてかねて申し上げていますように、自衛のため必要最小限度の実力行使ができる、こういうふうに申し上げているわけで、それが具体的な場合に応じてどこまでできるかということは、いろいろな状況によりますから、一概にその可否を論ずることはできないと言わざるを得ないわけでございます。  ただ、御指摘のような例については、昭和三十一年二月二十九日の例の有名な政府統一見解でございますが、衆議院の内閣委員会で、わが国に対する攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、すなわち、たとえば誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である、そういう趣旨の統一見解が出ておりますので、その考え方は今日でも変わりがないというふうに申し上げられると思います。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまその問題が出されたわけでありますけれども、座して死すよりも、やむを得ない場合においては相手の基地を攻撃することもあり得る、これは自衛権範囲であるということになってまいりますと、具体的に地対地のミサイルを撃ち込まれた、相手方の基地をそれではどうやって破壊し、そしてこちらの自衛の行使という形をとるかということになれば、いま私が申し上げた以外に何かございましょうか。
  169. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 実はその問題はかつて国会で論議されまして、当時の防衛庁政府委員が答弁しておりますけれども、私はそれをいまここで説明するだけの軍事的能力がございませんので、大変申しわけありませんが、答弁は差し控えさせていただきます。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 答弁を差し控えさせていただくと言うけれども、実際F15で相手方の基地をたたく、あるいは艦砲射撃で相手方の基地をたたく、こういう具体的な例、あるいは空挺部隊とか、そういう以外にそれでは相手方の基地をたたく方法はあるかということになると、なかなかないだろうと私は思う。そうしますと、そういうものまでが自衛権の行使の範疇に入り得るかどうか。あなたの方のこの中におきまして、「いわゆる海外派兵とは、一般的にいえば、武力行使の目的をもつて武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することである」というふうに言われているわけですが、そういうふうなことまで果たしてできるかということになると、大変私は疑問が出てくるのです。それでは自衛権の行使のいわゆる範囲というのはどこまでになるのですか。
  171. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 これもたびたび申し上げておりますけれども、一般的にはいわゆる海外派兵はできないということになっております。ただし、先ほど来引用しております三十一年の統一見解によれば、一言で言えば、ぎりぎりの場合には敵の基地を攻撃することもできるだろう、こういうことを言っておるわけです。したがって、一般的にどこまでも自衛権の行使の範囲ということで伸びていくことはあり得ないと思います。非常に極限された条件のもとにおいてのみ三十一年の統一見解は出ているものと私どもは理解しております。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、緊急といいますか、座して死すよりも、やむを得ない場合は相手方を攻撃するという中にあっては、いま私が言ったような問題まで含まれて自衛権の行使としては許される、こういうお考えですか。
  173. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 三十一年の統一見解はまさにそういう考え方だと思います。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、たとえば相手方が侵略をしてくる、これを排除する、恐らく水際までというわけにはいかないでしょう。水際まで排除したということだけではなかなか問題があるでしょうから、当然相手方を排除したその続きで相手方のところに自衛隊が入り込んで、占領行政までしないけれども、一時的にでも占領した、こういうことは実際にはないケースではないと思うのですよ。そういうのまでは許されましょうか。
  175. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 先ほども申し上げましたように、自衛権の行使の限界ということについて、具体的ないろいろの場合をお挙げになって御質問でございますが、私一つ一つについて十分にお答えはいたしかねますけれども、しかし、三十一年の統一見解というものは非常に厳しい条件のもとにおいて許されることでありまして、いま御指摘になりました相手国まで行って占領までできるかどうかと言われると、ちょっとここで断定的には申し上げられませんけれども、なかなかむずかしいんじゃないかという気はいたしますが、そういう具体的な場合を想定して考えたことがいままでございませんので、どうも断定的な御答弁はいたしかねます。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま御存じのとおり有事有事という問題が言われているわけですから、概念的なことばかりお話申し上げてもとても国民にはわかる問題じゃないわけです。ですから、有事という以上は、有事を想定して、敵の侵略を排除した。排除しただけではまた相手方が来るに決まっているのですから、水際のところで、私ども自衛権の行使はここまでですからと言って一切やらないことにはならぬだろう。そうした場合に、ある程度相手方の攻撃をとめるためには、場合によっては向こうのところまで入っていかなくてはならぬ、そういう事態だって起きないとも限らないわけですよ。そうした場合、占領行政などは交戦権がなければとても認められない、私もよくわかるのですけれども、一時的にも相手方を食いとめるために相手方のところに行く、あるいは自衛艦が向こうの領海の中に入って艦砲射撃をする、こういうことまで緊急の場合には自衛権範囲内として認められるというような解釈に、私はどうしても聞こえてならぬのですが、その点はいかがでしょうか。
  177. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 たびたび同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、要するに三十一年の統一見解の限度においてはできると言わざるを得ないと思います。どうも具体的な例を通じてここでお答えすることは、どういう場合が想定されるのか、私には十分な知識がございませんので、その点は答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、海外派兵という問題ももう少し枠が広がっていくような感じがしてならぬのですよ。F15が相手方の基地をたたくことも、狭義に考えれば、やはり相手方の主権を攻撃するわけでしょう。そうすると、これは武力行使に基づいてやるわけですから、海外派兵と言えないわけはないと思うのですが、その点はどうでしょう。
  179. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 三十一年の統一見解も、実は海外派兵の問題と関連して出てきたわけで、海外派兵というのは一般的にはできないという中において、さらにああいう条件のもとにおいてはぎりぎりのところを自衛権の行使の範囲内であるということで許されるのではないかということをお答えした経緯がございます。したがいまして、一般的にそれをどんどん広めていって、通常言われるような海外派兵というものができるというようなところまで広めて三十一年の統一見解を理解するのは間違いだと思います。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この問題はちょっとまた問題が出てきたようでございますけれども、参議院の予算委員会で、中立国の船舶の拿捕とか臨検とか捜査等ができるのだというような趣旨の御答弁をされたのですが、その真意といいますか、そういうふうなことはどういうことでしょうかね。
  181. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 これは三月十一日の参議院の予算委員会で源田議員の御質問に対して私が答弁いたしましたそのことであろうかと思います。あのときの私の答弁でございますけれども、結論から言えば、従前の政府解釈の範囲内で御答弁申し上げたつもりでありますが、まず「わが国は、自衛権の行使に当たってはわが国防衛するため必要最小限度の実力を行使することは当然に認められているわけでありまして、その行使は交戦権の行使とは別のものである」ということを申し上げた上で、「仮にわが国武力攻撃を加えている国の軍隊の武器を第三国の船が輸送をしている、外国の船舶が輸送をしている、それを臨検することができるかという点でございますが、」「一般論として申し上げるならば、ある国がわが国に対して現に武力攻撃を加えているわけでございますから、その国のために働いているその船舶に対して臨検等の必要な措置をとることは、自衛権の行使として認められる限度内のものであればそれはできるのではないかというふうに私どもは考えております。」というものでございます。したがいまして、あくまでも自衛権の行使として認められる限度内のものであるという前提があるわけで、従来の政府解釈を変更して申し上げたつもりはございません。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういう形の敵国に内通するような船があった場合には臨検ができるというわけでありますけれども、臨検した結果、その船舶にいわゆる戦時禁制品があった場合、そのときの措置はどういうふうにされましょうか。
  183. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  旧来の戦時国際法でございますと、それは没収、それから船体も捕獲審検にかけまして没収というようなことになったものだと思いますけれども、ただいまのように、交戦権の行使としての、交戦国の権利としてのものとは考えられず、自衛権の行使としての一つ態様でございますので、その間におきましてどのような手続が正当なものであるかということについては、国際法は定めたものはございません。ただし、あくまでも自衛の範囲内においてどうしてもその船舶を拿捕しあるいはその戦時禁制品というものを没収することが必要であるということが立証されますれば、それをやることも必ずしも自衛権に関する法理の上から言いまして不法であるということは言えないと思います。これはまた状況によると思います。
  184. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういう場合に、敵性の貨物は没収するあるいはまた船舶を拿捕する、こういうことはそのときそのときの状況によって自衛権の行使として認められる問題だろうということですけれども、そういう禁制品を持っているときに、その船舶を撃沈破壊をすること、これはいわゆる自衛権の行使としてもまた認められる問題でしょうか。
  185. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御設問の例でございますと、臨検をしたというときに戦時禁制品が発見されたということでございますから、恐らく停船命令には従い、また臨検も先方が受諾したものだろうと思います。そのようなときに戦時禁制品を発見した場合には、戦時禁制品を没収すればないしはその船体を押さえれば、それで本来の自衛の趣旨達成されているわけでございますから、それを撃沈するとかいうようなことはやはり行き過ぎであり、自衛権の法理上正当化されるものではないのではないかと思います。ただし、これは一概に論ずるわけにいきませんので、その際に、没収しようとしたら相手が抵抗をしたとか、そういうようなときはまた別問題だと思います。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その中立国の船舶の臨検を行うについては、日本の国が防衛大綱で一応決めている海域、すなわちシーレーン一千海里、それから周辺海域数百海里というふうなところに限定されるのか、あるいはまた公海上であって海域の制限はそういう状態になればもう一切ないんだ、このようにお考えなんでしょうか、その点はいかがでしょうか。
  187. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  そのような自衛権を行使できます状況と申しますのは、申すまでもなく日本が、わが国武力攻撃を受けている場合でございますので、当然のことながらわが国周辺のあたりがもっぱら問題になり、ただいま御設問の例でございますと、戦時禁制品を積んでいる中立第三国の船舶ということになりますと、それがいずれか日本国を攻撃している国へ向けて武器の補給を行っているというようなことでございましょうから、いずれにしても日本近辺においてそのような状況が起こるのではないかと思われます。ただ、地理的範囲がどうかということになりますと、日本が攻撃を受けている、それに対してその攻撃を排除するためにどうしても自衛権上必要であるということであるならば、その範囲は、理論の問題といたしまして数百海里ないしは千海里と申しますか、いま「防衛計画大綱」で海上自衛隊が整備目標としてやっているその範囲、これも大変漠然としたものでございますけれども、その範囲に限られるものではないであろう。これは理論の問題でございまして、能力の問題はまた別でございます。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は大変に時間が制約されておりますので、法案の方のあれも少し質問しなくちゃなりませんから、三点ばかり質問させていただきます。  不健康地に勤務する職員の定員増の計画を六カ年間で考えておられるようでありますけれども、行政改革において非常に厳しい状況にあると思います。外務省としては、しかし、決して内政的な面でなくして、対外的な問題等の処理という意味においては、案外と職員の増員をしなければならないような場所もあるんじゃないかと思いますけれども、それに対してどのようにお考えになっておられるか。  このところ在外公館において勤務をしている方々の態度が余りよくないということが頻繁に言われているわけでありますけれども、これに対して外務省としてはそれをほっておくわけにはいかない。遠く離れた日本の国から日本人が行くのに対して不親切であるなんということは全くけしからぬ話でありますけれども、そういう点についてはどういうふうに指導をされようとしておられるのか。  それから二番目は、在勤手当は今回の改正によって増額されたけれども、一般商社あるいは関係者との比較はどうなっているのか。特に六号以下の手当は現地において住宅費、生活費、果たして十分であるかどうかということは、大変にこれは問題があろうかと思いますが、その点についてはどうなんでしょうか。  三番目は、在外公館に勤務する年限は非常に短いわけであります。二年か三年でどんどんと転勤になってしまうという問題があります。しかし、やはり在外公館に勤務している人たちは対外的な信用という問題を考えたときに二、三年で転勤というのは余りにもひどいじゃないか。またそれでは本当に身の入る、言うならば対外的な問題を処理することはできない、そういう声があるんですが、私の時間の許す限りどうぞ御答弁を願いたいと思います。
  189. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  最初の御質問は、定員の問題であったかと思います。いま御質問のすべてのことにつきまして、一般的に昨年の内閣委員会で与野党一致で御決議をいただきました。また内閣委員の方が在外を視察していただきまして、貴重な御示唆をいただきました。それらを踏まえまして、私ども昨年度の予算編成に当たってはできるだけの努力を払ったつもりでございます。いま御質問の点は、そのような努力がどういうふうに具体的にあらわれているかということの関連でのお尋ねかと思いますけれども、定員につきましては、五十六年度予算において百十五名の増員を得ております。ただし、削減がございますのでいわゆる純増ベースで見ますと八十名ということになっております。これは私どもとしては、私どもが抱えている最小限の目標ということから言いますと、決して十分満足できるものではございませんけれども、現在の厳しい定員事情の中で財政当局、行政管理当局が相当な配慮をしてくださったということは評価をしておりますので、これは息の長い問題として五十七年以下降引き続き努力をしていきたい、こう考えておる次第でございます。  それから、在外公館職員の態度のことについて御指摘をいただきました。私どもは、在外公館における特に領事事務でございますが、その他いろいろな用務を持って在外公館を訪問される方も多いわけで、こういう方についての応接態度あるいは現地事情についての十分な御説明等に遺憾なきように、昔から機会をとらえてはいろいろ教育、指導をしているつもりでございます。いま不親切ではないかという御指摘がございました。最近もちょっとそういう新聞投書がございましたが、早速調べてみましたら、これは事実無根でございまして、ああいう投書はフェアでないという現地日本人会からの声がまたすぐはね返ってきたのでございます。あの部分については事実に相当しないわけでございますけれども、これは公館職員、それ以上に現地職員も含めまして、窓口の応接態度が非常に誤解を招きやすいこともございますので、この点については繰り返しその辺の教育、指導を続けていきたい。百人中九十九人が誠意を持って全力を払ってやりましても、一名そういう者が出まして、それが全体のように思われては非常に遺憾であるということで、心していきたいと思っております。  それから、在勤期間の点の御指摘でございます。これは私どもつとに、短い勤務では十分勤務が果たせないということで、実は定員の状況との関連がございまして、定員が不足している間はどうしても次の任地へすぐ回さなければならないというやや自転車操業的な人事をやってまいりましたので、過去においては二年あるいは二年を若干超える程度でございましたけれども、近年非常に努力した結果、最近では平均いたしまして大体二年七カ月というところまで来ているわけでございますが、三年ローテーションというのを一つの制度として打ち立てたい。特に瘴癘地に三年在勤するためには、諸外国が行っておりますような健康管理休暇とかその他の医療施設等々を一層完備する必要が別途あるわけですけれども、そういうものと相まちまして、目標といたしましてはなるべく早い時期に、全部とはいかないかもしれませんけれども、原則三年という方向に持っていき、さらに専門家につきましては四年、あるいは同じ任地に再度赴任せしめるというようなことで、御指摘のような任地における人脈づくりとか相手国に食い込むというようなことに一層の改善を図りたいと思っております。  それからもう一つは、在外の職員のうち特に六号俸以下の職員の手当が不十分じゃないかという御指摘でございました。この点は、在外給与法の第五条の規定に従いまして在勤基本手当を定めているわけでございます。この在外給与法によりますと、「在外職員在外公館において勤務するのに必要な衣食住等の経費に充当するために支給されるものとし、その額は、在外職員がその体面を維持し、且つ、その職務と責任に応じて能率を充分発揮することができるように」云々、これが基準になっているわけでございますので、幹部職員と若手の職員との間には上下格差というものがある程度存在するのはやむを得ない、当然のことだと思っております。日本におきまして管理職者と入省早々の方との給与の差は一対七とか一対八とか聞いておりますけれども、在外におきましては、大使と新入職員の格差はたしか一対三ぐらいになっておりまして、私どもは、現在の格差は大体において妥当なものでないかというふうに考えております。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 以上をもって質問を終わります。
  191. 江藤隆美

    江藤委員長 岩垂野喜男君。
  192. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 在勤法の一部を改正する法律案について質問をいたします。  かねてから本委員会で指摘されてまいりましたことでございますし、五十五年の国会において附帯決議の中に述べられていることでございますが、「激動する国際情勢に適確に対応し得るよう、外交体制の一層の拡充、強化を図ること。」このことを私どもも強調いたしてまいりましたが、外務省のお取り組みの経過やそれに対する方針をこの際、最初に承っておきたいと思います。
  193. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 先ほどもちょっと触れたのでございますけれども、昨年の三月二十六日のこの委員会で与野党一致して附帯決議をつくっていただきまして、五項目ほどのことを御指摘いただいたわけでございます。さらにその後、在外の視察をしていただいた後でまた貴重な御示唆をいただいたわけでございますが、それらを踏まえて、非常に財政事情がきついあるいは定員の削減という一般的な政府方針の中で、外務省は一体仕事減らし、人減らしができる分野があるかどうかということも真剣に私ども考えてみたわけでございますけれども、結論としてはそういうところはない、やはり行政需要がふえたところについてはそれなりの予算上、定員上の配慮をしていただいてしかるべきだ、こう考えまして予算折衝に当たったわけでございますけれども、先日成立いたしました五十六年度予算に反映された点の要点だけをちょっと申し上げたいと思います。細かいことはまたお尋ねがあったら申し上げます。  外交体制の充実強化という第一項目でございますが、これにつきましては、特に定員の増強ということがございまして、私どもはその中でも情報収集機能の充実と、それから小規模公館をなるべくなくしていくというような辺に重点を置いてまいりまして、八十名の純増が認められたわけでございますけれども、ちょっと数字で申しますと、七名以下の小規模公館は五十五年まで八十五館でございましたのが七十九館に減ります。中でも五名以下の小規模公館が五十四館あったのが四十八館に減るという形になりまして、わずかではございますけれども、小規模公館の解消も多少の進展は見ているつもりでございます。  二番目に御指摘をいただきましたのが在勤手当その他外国旅費等の改善でございますが、この在勤手当につきましては、外務省の予算のうちのODA、経済協力関係の予算は別としまして、非ODA部分というのが一千百億円ほどあるわけでございますが、この伸び率は遺憾ながら非常に低かったわけでございますが、そのような中におきまして、この在勤手当の改善につきましては対前年比一〇・六%の改善をしていただいたわけでございます。また外国旅費の話もいろいろございまして、出張するたびに足が出るという問題がございます。これにつきましては、旅費法の主管でございます財政当局と現在も種々協議をしております。現在のところ旅費法第四十六条第二項の協議、すなわち現実に足が出た場合の実費補償というものの運用を従来よりも弾力的に運用するということで対処することにしておりますけれども、旅費法それ自体の改定というところには今回は残念ながら至ってない状況でございます。  その次に、三番目にこの決議にございますのが勤務環境の厳しい地域における改善措置でございますが、給与面におきましては、瘴癘度の非常に高い、瘴癘度四、五というふうに私どもが呼んでおります地域の特殊勤務地加算というものに特に重点を置いて改善を図ったわけでございまして、特殊勤務地加算については、五十六年度の予算は約五〇%の増を認められておりまして、そういう面で特に困難な地域の勤務者の給与上の手当てをしたつもりでございます。それから勤務環境の改善そのものにつきましては、従来から行っておりますさまざまの措置、職員の健康管理休暇とかあるいはその生活環境、飲料水対策とか浄水装置というようなものとかあるいは物資の調達のための旅行の制度というようなもの等を従来に続けて行いまして、五十五年度の予算三億三千万円に対して五億三千万円という増額を見るごとができたわけでございます。  決議の第四番目にございます国有化の促進でございますが、これについては三億一千万円の予算を計上して、在外公館並びに職員宿舎についての、大幅とは残念ながら言えませんけれども、若干の改善を達成したところでございます。  決議で五番目に御指摘のありましたのが海外子女教育の問題でございましたが、日本人学校の拡充という面では、新たに三校の新設が認められまして、この結果、日本人学校は七十校、補習授業校は七十七校に達しました。それから子女教育手当につきましても、教育手当そのものと、そのほかに授業料が大幅に定額を上回る場合に、さらにこれに加算できる制度、この適用の範囲を拡大して実情に合わせるように配慮をいたしました。さらに帰国子女の教育問題がございますが、これにつきましては、これは外務省の子弟だけでなくて、海外に居住する日本人全体の子弟教育の問題ではございますけれども外務省の場合、特に転勤とか急遽赴任というようなことも多いものでございますから、外務省自体といたしましても、一般的な国の努力に加えて子女教育相談室というものを設けたり、あるいは市谷に子弟寮を置くなどしての措置を続けているところでございます。  最後に、決議にはございませんでしたけれども、海外を視察いただきました後の報告書の中でもう一つ御指摘がありましたのが、在外公館の警備の強化の問題でございます。これにつきましては、いろいろ御指摘のあった点を配慮いたしまして、従来から行っていた施設面でのいろいろな設備の拡充、それから人員面においての警備官の配置あるいは現地の民間警備会社の警備員の採用等の措置を五十六年度でさらに進めるということを行うとともに、従来外務省の官房あるいは領事移住部等でややばらばらでやっておりましたこの種の仕事を一本化いたしまして、在外公館警備室というものを本年度からつくりまして、一元的に扱うようにした次第でございます。
  194. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大体総論的にお答えをいただいたわけですが、外務省は定数の確保の計画がございますね、定数確保の目標が。それらと、予算折衝その他いろいろ事情があると思いますけれども、ことしの増員計画と見合って、大体その計画どおり進んでいるかどうか、その辺のところも御答弁いただきたいと思います。
  195. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 二年ほど前に、そのときいろいろ各方面の意見も入れまして外務省が立てました計画は、昭和六十年までに五千人、これは本省二千名、在外三千名というところでございます。この計画は目標が低過ぎる、そういうことではほかの国に依然として見劣りするという御批判もありましたけれども、余り高い目標を掲げ過ぎましてもいかがかと思うということで、あとはみんなの能率とか機械化とかあるいは質の向上ということで補って、六十年までには何とか五千人を達成したいということで、自来これを一つの私どもの悲願のようなものにしてきていることは御承知のとおりでございます。そういう面から見ますと、先ほどちょっと御披露いたしました五十六年度の増員八十名というのは、残念ながらこの計画期間で単純に一年に割りました場合の二百数十名という数に達しない。つまり現在の三千五百名を五千名にするということから逆算した場合には遺憾ながら足りないわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、決して無理なことをお願いしているつもりはございませんし、また聞くところによりますと、先進主要諸国も最近は中近東、アフリカ等の途上国に対する外交に一層力を入れまして、その地域のための専門家の養成等に非常に力を入れ出しておりますので、現在の格差がうっかりするとさらに広がる危険さえあろうかと実は思っております。ただいま御指摘のように、行政改革ということになりまして、その中の一つの項目が定員についての見直しといいますか、全体としての公務員数の削減ということにあることは重々承知しておりますけれども、私自身も臨調の委員の方々等にお会いするたびに、経済社会情勢の変転に伴った合理的な公正な行政改革ということがスローガンであると承知しているので、そういう点については十分の御理解を得たいということをるる御説明しているつもりでございます。  私どもはなおあきらめずに、現在のところ六十年までの計画というものはそのまま維持していくつもりでございます。
  196. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 国際情勢が非常に目まぐるしくなっているということや、日本人のいわゆる旅行者を含めた海外に出る人たちが多くなっているということなどを含めて考えてみて、私も経験をしたのですが、小規模公館は実際問題としては仕事にならぬのです。仕事にならぬということは大変失礼な言い方なんですが、そんなに一人の人が二役も三役もできるものではないんです。だから、そういう意味では、やはり小規模公館を充実させていくという方向で、これは行革の議論の中でも必ず定員問題というのは出てきます。ともすれば、一律削減的なフレームがかかってしまってなかなかそこから伸びてこないという状況がございますから、これは大臣は言うまでもございませんが、やはり積極的にそういう実情を訴えて、そして目標を目指していく、こういうかなり積極的な努力が必要だと思うのですが、この点で御答弁をいただきたいと思います。
  197. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘のとおりでございまして、先ほど申し上げましたように、五十六年度予算編成に当たりましても、伊東外務大臣を先頭に立てて私どもなりの努力をしたつもりでございます。ほとんどの官庁が純減という中で八十名、これは新規開設の公館分とか各省アタッシェ分とかいろいろなものを含むわけでございますが、八十名ということになったのは、先ほど申しましたように、それなりの成果であったろうかと思っているわけでございます。いま御指摘の小規模公館等はまさにそのようなことでございまして、私どもは七名以下の小規模公館と言っておるわけですが、その中でも特に五名以下の小規模公館というのは、休暇もとれないとか、電信官が休むとどこかから臨時に人を出さなければ仕事が動かないというような状況でございますので、七名以下の公館を解消したいわけですけれども、とりあえず五名以下の公館の解消に最善を尽くすとかいたしまして、これは引き続き、多分五十七年の予算の編成に当たっても最重点事項の一つになろうかと考えております。
  198. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 官房長、去年私の質問に対して、瘴癘地、不健康地に勤務する職員の在勤基本手当の増額のことの際、例の特殊勤務手当という発想をぼくが言ったのですが、それについて委員会をつくって、五十六年度以降について実施をすることを含めて検討していくつもりだというふうに御答弁いただきましたが、それが要するに加算方式に変わっています。変わっていますというか、今度は加算方式に落ちつきましたね。特殊勤務手当の発想というのはしばらくは見送る、こういうことですか。
  199. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 昨年のこの委員会でいま御指摘のような御質問に対して私御答弁申し上げたわけ、でございまして、五十六年度予算におきましても、特殊勤務手当という項目を掲げまして、実は最後まで折衝に当たったわけでございますけれども、最終的には名を捨てて実をとるというとちょっとおかしゅうございますが、先ほど申し上げましたように、中身では五〇%の増、しかも四級、五級という最も瘴癘度の高い地域につきましては、特に六〇%ぐらいの改善を図ったということで、実態ではかなりな改善をしたわけでございますけれども、昨年度新しい制度は各省庁を通じて採用を見送るという政府方針もありましたので、そこのところは最終的にはあきらめたわけでございます。この構想を五十七年度にもう一度取り上げるかどうかという点は、まだ実は決めてございませんけれども、私どもの考えとしては、何かの機会にそういう制度が設けられた方が、そういう任地に赴任します職員、家族に対する士気の高揚、維持という面あるいは本当に病気とか教育上の問題とか、非常にいま大きな困難に直面するところでのわれわれの同僚の仕事をバックアップする意味で、この考え方自身は引き続き維持していきたいと思っております。
  200. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 条件がかなりまちまちなんですけれども、住宅事情というのがかなり深刻なところがございますね。それをとりあえず住宅手当という形で解決していくという方向、そういう取り組みをなさることが大事だと思うのですが、これらの点は新年度予算では必ずしも実っておりませんね。これらはどんな形になっていますか。
  201. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 住宅手当につきましては、毎年その地における住宅事情と申しますか、家賃等々のことを考えまして、資料を整えまして改定を行っておるわけでございます。予算面におきましては三億三千万円、改善率は一〇%ということになっております。確かにあるところにつきましてはにわかに高くなったということでございますので、そういうところについては、それなりの手配をしなければならないということでございます。なかなかこういう手当の性格上完全な実費補償ということはむずかしいものでございますから、やはり一つ限度額というものを設けまして、それを一つのめどにして住宅を探すという現在のたてまえはなかなか変えられないと思いますが、結局は限度額に十分の弾力性を与えると申しますか、その都度の改善を加えまして、大使館や事務所から離れた非常に遠いところに勤務するということは、それ自体が個人のみならず館務にも大きな支障を来す例もございますので、おのずから交際上あるいは勤務遂行上居住すべき区域ということもございますから、その辺はやはり任地ごとにしさいに検討して、この予算上の手当てをして、その配分を図っていくということ以外にないかと思います。これは毎年繰り返してやらねばならない一つのわれわれの仕事になっております。
  202. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 さっき外国旅費法のことはまだ手をつけなくて、四十六条の実費補償の弾力的な適用でと、こうおっしゃいましたが、余りそれをやっていますと、いまごろ問題になる何とか出張みたいなことに誤解される心配もあります。やはりこれは法律を直していくべき時期だろうと私は思うのです。そういう意味で、この点についても努力をいただなければならぬだろうと思いますが、よろしいでしょうか。
  203. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 来年度の予算編成については、まだ着手しておりませんけれども、かつこの法律そのものは、繰り返し申しますように大蔵省の法律でございますので、大蔵省と十分の協議を必要といたしますが、ただいま御指摘の趣旨は十分体して当たりたいと思います。
  204. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 去年ナイジェリアにお邪魔したときに私そう思ったのですが、医務官が単に大使館員の病気やら健康のことをやっているだけでなしに、地域の住民にすっかり頼りにされている。そしてマラリアなりなんなりを目の前にすれば、やはり薬を差し上げたり治療をせざるを得ないわけですね。同時にその行為が実は日本に対する非常な理解を広げているという面があるわけであります。しかし、そうは言っても、それぞれのところに医師会があるのかどうか知りませんが、無制限に医薬品を提供したりあるいは診療をするわけにはいかぬと思いますが、これはやはりある程度、地域の人たちの健康について訴えられた場合、対応していくということが私は必要だと思うのです。それは予備費でどうのこうのという議論になっていくのかもしれませんが、これらのことは、特に瘴癘地については御配慮いただかなければならぬと思うのですけれども、その点、御答弁いただきたいと思います。
  205. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 この点は、ただいまの御指摘と私どもの考えと違うところはないと思います。医務官に対しましては、本来の任務は館員の医療相談ということでございまして、ほとんどの国におきまして医療行為そのものは法律等によってできませんので、相談し、まあ簡単なアドバイスを与える、場合によっては任国における病院その他に連れていく、あるいはそこでそういうことができません場合には日本に帰すなり、場合によっては医務官同道でほかの国に連れていくというようなことに主たる任務があるわけでございますけれども、余力がある場合には、その地の在留邦人あるいは日本人旅行者、場合によりましては、任国の方についてもこれを一切排除するものではないということはよく伝えております。  実情を聞きますと、毎晩のようにあちらこちらから電話がかかってきて緊急な往診を求められて、体力的にどうしようもなくなったというようなうれしい悲鳴と申しますか、そういうものもございますので、ここにはやはり一人の医務官の働ける勤務時間と申しますか、体力の限界というものもございますので、余り行き過ぎてはいかがかと思いますけれども、その範囲内においては、現に多くの医務官がそういう趣旨で仕事をしてくれて、相当な評価、感謝を得ているというふうに報告を受けております。
  206. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、外交官というのは優雅な商売だなと実は思っていたのですが、あちこち歩かしていただいて、これは大変な仕事だなという面も、すべてとは言いませんが非常に痛感をいたしました。その意味ではやはり定数の問題、勤務条件の問題、それから特に瘴癘地における健康保持の問題、警備やらあるいはまたその他の生命、安全、それらの問題について十分な配慮を願いたいと思いますので、これは外務大臣にまとめてひとつそういう問題について、首相代理をおやりになった方ですから、その辺は一番わかっていただけると思うので、御答弁いただきたいと思います。
  207. 伊東正義

    伊東国務大臣 岩垂さんからだんだんの御質問、中には激励の御質問をいただきまして、まことにありがとうございました。いま岩垂さんのおっしゃるとおり、優雅な外交官というのは恐らく大分前の話、われわれの若いときの印象かもしれませんが、最近のような本当に情報化時代になる、国際情勢も多岐をきわめる、多元化してくるという中にありまして、外交官のやる仕事というのは非常に広範にわたっているわけでございますし、また第三世界あるいは非同盟といいますか、そういう国々が国連の外交ということを中心にしまして一票一票みんな同じ資格でございますので、外交の舞台でも非常に大きな役目を占めるというようなことがあって、たとえばアフリカでございますとか中南米でございますとかそういう国々も、外交上非常に大きな役割りを果たしてくるということになったわけでございますので、従来の観念のような外交との取り組みということだけでは、これは本当にいかなくなっているということを私も痛感するのでございます。  特に、いまおっしゃいました小規模の公館というようなものがまだ五十前後あるということは、これはおっしゃるように四、五人でというのもなかなかこれは大変なんです。私もそういうふうに思いますし、そこにいる人の勤務状態あるいは不健康地の人々の問題、いろいろ考えますと、外交体制の強化ということは本当に私は必要だと思います。今度の予算のときも、定員問題等やりましたが、微力で思うような新しい定員が獲得できなかったことはまことに申しわけないと思っておるのでございますが、しかし、これは一年だけでできることではございませんので、少し息長く外交体制の整備と、そして日本世界に伍して国益を守れるように、充実には全力を尽くしてやっていく必要があるというふうに私は思っておる次第でございます。
  208. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 ちょっと一言。先ほど私昭和五十六年度の国有化のための予算を三億一千万円と申しましたけれども、これはちょっと読み違えで、三十三億一千万円でございましたので、謹んで訂正させていただきます。
  209. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実は外交問題一般について触れたいと思っていたのですが、時間の関係もございますから、国連外交を中心にして、特に国連大学の問題を突っ込んで少し御質問を申し上げながら、同時に御答弁をわずらわしたいと思います。  いまから七年前に、佐藤総理の時代でございますが、日本に国連大学を招致いたしました。大変申しわけないのですが、初心を思い出すつもりで、この際の招致の理由を御説明をいただきたいと思います。
  210. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 お答え申し上げます。  外務省外交基本的な方針といたしまして、国連に協力するということが大きな柱になっているわけでございますが、国連大学が設立されました経緯、この構想が出ました当初から日本政府はこれに非常な関心を示しまして、特に、この大学が実現した場合にはぜひ日本に招致したいということで、国連に対して働きかけをやってきたわけでございます。そういうような日本の積極的な姿勢を示すという見地からも、国連大学の経費の約四分の一を日本政府が負担するとかあるいは本部の建物を提供したりあるいはその他の点につきましても具体的にいろいろな協力をすることを国連に約束して、いままでやってきているわけでございまして、そのような基本的な協力の姿勢というものは、今後とも堅持してまいりたいと思っております。
  211. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 なぜ私が初心を伺ったかと言えば、七年たっているわけでございます。その七年間にいろいろな貢献をなさってきたと思いますので、わが国の貢献、それから諸外国の協力の状況などについて御説明をいただきたいと思います。
  212. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 まず日本の資金面の協力でございますが、現在までに九千一百万ドルを拠出いたしております。そして昭和五十六年度予算におきましては、さらに百万ドルを拠出する予定にいたしております。  諸外国についてでございますが、現在までに三十三カ国から約四千四百万ドルの拠出の成約が行われております。
  213. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ちょっと細かいことを聞いて恐縮ですが、一億の予定のうち九千百万ドルですね、それで五十六年が百万ドル。つまり出し方というのは、これからも百万ドル、百万ドルというぐあいに出していくつもりなんですか。
  214. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 お答え申し上げます。  その点につきましては、諸外国の拠出状況を見ながら検討していくべきことかと思います。国連におきましては、御承知かと思いますが、大体どの国際機関、特に国連本部の場合には二五%を限度とするというような総会の決議もございまして、先ほども申し上げましたけれども、国連の当初の予算でございました約四億ドルの四分の一を負担する、二五%を日本が負担するという基本方針をとっているわけでございまして、そして現在までに九千百万ドルを拠出したわけでございますが、今後さらに毎年百万ドルずつ出していくかどうかにつきましては、果たしてそういうことがいいのか、あるいは別に考えるべきか、ほかの国の拠出状況を見ながら検討してまいりたいと思っております。
  215. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 せっかく日本が誘致したのですから、二五%ということがあったとしても、それは別に取り決めじゃないわけですから、慣例みたいなものなんですから、大学の意向に沿って可能な限り対応するようにまずお願いしておきたい。  それから、各国の拠出状況を見ますと、特にアメリカを初めとする先進諸国の協力というものが非常に不十分だ、こう言わざるを得ませんが、これはどういうわけですか。
  216. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 イギリスその他西欧諸国の中にも、国連大学に拠出を成約している国はございますけれども、特にアメリカの動向でございますが、カーター前政権の場合に、外交レベルや国連大学議員懇和会のお力もおかりいたしまして、種々その拠出につきまして米国政府の配慮を働きかけてまいったわけでございます。しかしながら、残念ながら現在までに具体的な成果を得るに至っていないわけでございまして、レーガン政権になりまして、政府レベルで具体的な働きかけというようなものはまだ行っておりません。といいますのは、レーガン政権が国際機関一般につきましてどのような基本的な姿勢を打ち出すか、いまのところまだはっきりいたしておりませんので、具体的な働きかけは行っていないわけでございますけれども日本政府といたしましては、スジャトモコ新学長をできるだけ助けまして、国連大学への拠出をふやすための大学の努力が実を結ぶように今後とも側面的に協力してまいりたいと思っております。
  217. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 アメリカは、防衛問題などについてはかなり露骨に日本に物を言っているわけですけれども、国連大学について言えば、フリーライダーという言葉があるようですが、きわめて非協力だ。一度も出していないのですからね。これはやはりまずいし、要求すべきだと私は思うのです。その意味では、予定されている日米会談の席上で堂々と問題にすべきことではないかとさえ私は思いますが、外務大臣、これはどうなんですか。
  218. 伊東正義

    伊東国務大臣 国連大学を誘致しまして、その後いろいろ努力はしているわけでございますが、いま岩垂さんおっしゃったように、日本は大体一億ドルに近いところまでやっていますけれども、ほかの国の拠出が少ないということはお説のとおりでございます。それで、これははなはだ申しわけないのでございますが、私もこの間ヘーグ国務長官と会ったときこのことには言及しておりません。いまおっしゃるように、日本に誘致した国連の機関でありますし、国連大学というのは、世界でもやはり研究ということに関心を持ってもらうということでございますから、今後基金の問題を初め国連大学に協力してもらうように、日本政府としてもっと諸外国に働きかける必要があるということを、いま御質問を伺っていながら私も感じたわけでございまして、あらゆる機会をとらえまして、この基金の拠出の問題等について私も話してみたいと思います。
  219. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 言わずもがなでございますが、国連総会なりユネスコの総会などにおいても外務大臣は発言なさったことがあるそうですが、それだけでなしに、やはり個別にも、いま外務大臣おっしゃいましたからその点についてはもう触れませんが、御努力を願いたい、このように思います。  いまは亡き大平前総理大臣は、日本総合安全保障を考えるべきだ、それは防衛力だけではなしに、経済力やあるいは文化交流を重視すべきだと強調されて、国連大学にも大変御熱心であったということを承っております。その立場から、いまこそ日本にある国連大学が人類にとって緊急な、たとえば軍縮であるとか資源であるとか環境であるとか、そういう問題の解決のために世界の英知を結集する、そして自由な討論あるいは研究を進める、このことが差し迫った課題だろうというふうに思いますが、外務大臣、各論はこれから伺いますので、一般論で結構ですが、国連大学に対する見解をもう一遍お尋ねをしておきたいと思います。
  220. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃいましたように、誘致したときには、知的側面で人類に貢献しようというような非常に高い、高邁の理想を掲げた国連大学でございまして、これを誘致したのでございますから、これはやはりおっしゃるように、これを充実していくということが、平和外交といいますか、平和国家といいますか、文化国家ということを目指す日本としては当然これに力を入れるということは私は必要だと思うわけでございます。とかく国連と言いますと、平和の維持でございますとかあるいは南北問題でございますとか、われわれ目に見えるようなことに力が入る、こういうことについては、どちらかと言うと関心が薄くなるということはやはりよくあることでございますので、外務省としても、この点につきましては、いまおっしゃったことを十分心得まして努力をしてまいります。
  221. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 国連やユネスコの総会が政治と立法、そして事務局が行政の機関であるというふうに言うならば、この大学は、政治、立法、行政のいずれからも独立し、自治を原則として運営されるものだというふうに指摘をされておられる人がいるわけですが、私は全くそのとおりだと思います。  そこで、これは言うまでもないことなのですけれども、金は出すけれども口も出すというようなものじゃ困るので、大学の憲章、国連憲章に盛られている諸原則、なかんずく学問の自由、そして自治について厳粛にこれを保障するということを大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  222. 伊東正義

    伊東国務大臣 これはおっしゃるように、学問の自由あるいは大学の自治ということはそのとおりでございまして、憲章にうたわれていることは当然守っていく必要があると思っております。
  223. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 御承知のとおりに、昨年の九月に国連大学にインドネシアのスジャトモコ氏を第二代目の学長に迎えました。新しい学長は、昨年の十二月一日から五日まで東京で開催された第十六回国連大学理事会において演説をされました。その内容を、大変膨大なものでありますが、要約してあえて述べてみたいと思うのです。  その第一は、これまでの国連大学の活動を徹底的に見直し、大学の新しい方向を決定し、それを具体化するための諮問委員会あるいは企画特別委員会を設置するということ。  第二に、国連大学は、大学憲章が定めるように国連機関、政府その他の国際機関と密接に協力し、それらの知的必要を満たすために、人類の生存、発展、福祉にかかわる世界的な問題の研究に従事し、国連機構の中で人類に対し知的に貢献すべきであり、そのためには、大学は単なるプログラムの管理センターとしてではなしに、世界的な問題を研究する全世界に広がる学術共同体に拡大、発展させる必要があるということを強調されました。  そして、これまで飢餓と栄養、それから自然資源の利用、人間と社会の開発ということをプログラムとして検討をしてきたわけですが、それに加えて世界経済と地球的経済危機、社会変革の管理、二十一世紀に向けての人類の準備の三つの研究課題を検討することを投げかけておられます。  学長はさらに、それを具体化させるための新構想を述べられておりますが、それは長くなりますから省略をいたします。     〔委員長退席、染谷委員長代理着席〕  演説の最後に学長は、世界の学者、研究者が大学の事業に参加するため来訪することのできる規模、設備を持った恒久的施設と、人類の生存、発展、福祉にかかわるグローバルな問題に知的に貢献する同等研究研修センターの設置を日本政府と協議することを指摘されております。  この提案は、昨年の理事会はもちろんでありますが、ことしの三月の諮問委員会でも圧倒的な支持を得たそうでございます。この方針に対する日本政府の原則的な見解を、私はこの際お尋ねをしておきたいと思うのです。
  224. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 ただいま委員から、昨年、第十六回国連大学理事会での、新しく打ち出されました新学長の方針につきまして御指摘がございましたけれども外務省といたしましても、このような新学長の新しいプログラム、方向づけというものを尊重いたしまして、できるだけそれが早い機会に実現するように、今後とも協力してまいりたいというふうに考えているわけでございます。国連大学の今後の発展をさらに進めていくという観点から、国連大学のプログラムであるとかあるいは資金とか施設というものは、やはり相互に関連しているわけでございまして、資金を充実し、さらに施設も改善いたしまして、その高邁なる目的と、そして具体的なプログラムが実現されていくように、それぞれ相補っていくべきだという考えのもとに、外務省といたしましては、今後とも積極的に協力を進めていきたいと思っております。  新学長のこの新しい構想というものは、今後大学の諮問委員会であるとかあるいは企画特別委員会その他の場での審議を経まして、次第に具体化されていくわけでございますが、外務省といたしましては、大学とも十分連絡をとりつつ、さらにまた文部省ともよく密接に協議をいたしまして、大学に対する一層の協力を強化してまいりたいというふうに思っております。
  225. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう一度尋ねておきますが、いまスジャトモコ演説の中で述べられている原則といいましょうか、そういう方向というのは、日本政府として支持できるものだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  226. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃったスジャトモコ総長の演説、四つのことをおっしゃったわけで、その中の研究問題とか、具体的にまた出てくるのだろうと思うわけでございますが、その中で施設の問題、センターの問題等も触れておられるわけでございます。こういう問題については、文部省と十分連絡をとりながら、どうやってこれを実現していくか、最初の大学誘致のときにも、この本部施設の問題があるわけでございますから、これは外務省、文部省共同してこれの実現に努力していくということは大切だというふうに考えております。
  227. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 国連大学というのはアジアでただ一つの本部機構でございます。それは平和憲法と唯一の原水爆の被爆国である日本世界の人々と力を合わせて、これは東とか西とか、南とか北とかというのでなしに、すべての人々と力を合わせて世界の平和をつくっていこうという一つの拠点に役立つことができる、それから日本の進んだ科学や技術あるいは経済的実力が人類の福祉や文化や教育に貢献することができる、そういう意味をこの大学というのは持ち得る、私はこのように思うのです。その意味で、スジャトモコ学長の提案のように、国連大学がその面目を一新して、日本の国際的な役割りといいましょうか、地位といいましょうか、それをより大きなものにしていくチャンスだろうと私は思うのです。そのために政府も国民も全力を挙げて支援をしていくことが必要ではないかと思います。  そこで、実は、いまから七年前でございますけれども、昭和四十八年六月十二日の閣議の了承として、国連事務総長の国連大学に対する財政的その他の寄与についての照会に対するわが国の回答がございます。これはいま申し上げた基金の問題もございます。同時に企画調整センターを東京を中心とする首都圏圏内に設置するための資本的経費の全額を負担する。またこの施設を日本国内の適当な場所に設置するための資本的経費の全額を負担する。いまのは、国連大学の研究教育施設が設置される場合、日本もその設置国の一つとなることを希望するということを前提として約束をしてきたわけであります。つまり日本に誘致した。それが実現した。ところが、その誘致に際して、日本はこれだけのことをしますよと国際的に約束したことが今日なお果たされてない。これは私はいろいろな事情があったことを承知いたしておりますが、なおかつ日本としてその対応が適切でなかった、積極的でなかったというふうにあえて言わざるを得ません。  そこで、もう七年間も渋谷の東邦生命ビルに間借り生活しているのです。本部施設それからセンターの建設を早急に進めていただきたい。ちょうどこの六月に第十七回でございましょうか理事会があるのです。私は、日本にそれだけの努力の方向があるということを明らかにすることによって、大学の理事会だけでなしに、世界のそういう良識に対して訴えていくチャンスだろう、こんなふうに思いますが、その見通しをこの際お示しいただきたいと思います。
  228. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 国連大学の本部を整備するということは日本政府の約束になっております。恒久的な本部施設をなるべく早くつくらなければいけないのですが、現在それに至るまでの暫定的措置といたしまして、御指摘のように、渋谷にあります東邦生命ビルの二フロアを借りて必要な設備備品とともに無償で国連大学に提供しております。さらにことし五十六年度予算におきまして、スジャトモコ学長も新しくいらっしゃいまして、いまの二フロアではどうしても狭いということでございましたので、同ビル内の半フロアの借り増しをいたしているところでございます。  いずれにしましても、この国連大学の恒久的な本部の建設といいますのは国際的な約束でございますので、できるだけ早期にその実現を図らなければならないと私たちも考えております。これまでも実は恒久本部の建設に必要な用地問題につきまして国連大学側とたびたび協議してまいりました。これまで協議が調わなかったわけでございますが、新学長が新しく来られましたこの機会に、新学長の意向も十分に徴しつつできるだけ早く国連大学にふさわしい恒久本部を建設したい、まずそのための必要な用地の確保のために検討を進めているところでございます。
  229. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私が申すまでもないのですけれども、国連大学の過去に行われてきた三つのプログラムの研究でさえ世界中に散らばる研究者、研究機関で編成される十九のネットワークによって推進されている。研修は二十七の国連大学提携機関において国連大学フェローを対象にして行われてきた。そして研究活動から得られた知識は研究会やセミナー、出版を初めとするさまざまな手段で普及が図られている。しかし、やはりまだまだ不十分だ。その意味では私は、スジャトモコ演説あるいは学長就任というのはまことに時宜を得ている、このように思います。そこでなるべく早くというような議論でなしに、五十六年度予算が成立したばかりなんですけれども、ことしは、伺うところによると、サマーレビューではなくてスプリングレビューだそうでございます。明年度予算編成の作業が始まろうとしているわけでございます。たとえ財政事情が厳しいということがあったとしても、国際的に約束をしてきたことなんですから、ぜひ明年度予算に調査費を計上して調査を始めるべきだ、このように思うのです。私は、大学の対応も文部省なり外務省のこれまでの接触の中で、その時期だと判断できるに十分な態勢が整ってきているというふうに判断いたします。そこで大臣、文部省、大蔵省の御決意を、せめて調査費は新年度予算で組む、そのことをお約束いただきたいと思うのです。
  230. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 ただいま申し上げましたように、文部省としましては、国連大学の恒久本部の建設を実現する、そのためにできる限りの努力を行うつもりでございます。五十六年度におきましては、国連大学事業の協力に必要な経費として私どもに経費がございますので、その既存の事務費の中で予備的な準備調査を行っていきたいと考えております。こうした予備的調査の結果を踏まえまして、さらに先生御指摘のように、来年度予算において国連大学本部施設の準備調査の経費の要求につきまして検討してまいりたいと考えております。
  231. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 外務大臣、ぜひ大臣の決意を示していただきたい。これは文部省とも関連ございますけれども、あなたの決意いかんによっては調査費は必ず実現する、それが六月に予定されている理事会にも非常に有効なといいましょうか、歓迎される措置になるだろう、私はこう思いますので、ぜひ決意をお示しいただきたいと思います。
  232. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま文部省の方からも御説明がありましたように、ことしは事務費の中で予備調査をする、来年は調査費を要求するつもりだという御説明がありました。私としましても、文部大臣と相談しまして、それが計上されるように大蔵当局に外務大臣として働きかけるということをお答え申し上げます。
  233. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大蔵省、お忙しいところを恐縮です。
  234. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 大蔵省におきましても、国連大学の本部施設の問題につきましては、これが協定上の約束になっておるということについては十分念頭に置いて対処してまいっておるつもりでございます。一方におきまして、御承知のような財政事情、大変厳しいものがございます。いずれにいたしましても、文部省の予算要求をよく検討させていただきまして、予算計上の問題を検討させていただきたいと思います。
  235. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま文部省から御答弁いただきましたように、既存の予備費を使ってやってよろしい、ゴーを出されたわけですね。ということは、つまりその結果を待って調査費を計上するということは、常識的に見て大蔵省が予定していることだと理解してよろしゅうございますか。一声御答弁をいただきたい。
  236. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 ただいま五十六年度でどういうふうにするかということについて文部省の方から御説明がありました。その結果で予算要求が具体的に出てくれば、私どもとしても十分検討させていただきたい。ただいまのところは、予算計上を最終的にどうするかということについては御勘弁いただきたいと思います。
  237. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大変前向きな御答弁だと私は理解させていただきます。大学の開設が一九七四年の十二月です。だから、あたりまえで言えば、創立十周年の記念行事は新しい施設で盛大に挙行してほしい、だれもそう思うのです、一つの区切りでございますから。そのためには、明年度調査、明後年度設計、そして着工というようなスケジュールを目指していただきたいと思います。  大臣、大平前総理大臣が残された大きな事業でございますから、最近政治生命をかけるという言葉がずいぶん使われますが、それはそれとして、そのくらいの決意であなたが外務大臣の時代に文部大臣とも十分に語らってそういうスケジュールで進める、進めたい、そういうことを具体的に御答弁をいただきたいと思います。
  238. 伊東正義

    伊東国務大臣 財政事情がいま御承知のとおりでございますので、ここではっきり確約というわけにいきませんが、五十七年は本当に調査費をとって、そして次の年はというような順を追って、なるべく早くこれができるような努力ということはいたしてまいりたいと思います。
  239. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 文部省に重ねて伺いますけれども、いま皆さんそうおっしゃっているわけです。だから、可及的速やかにその体制をとっていただきたい、このことをお願いしますが、よろしゅうございますか。
  240. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 先ほども申し述べましたように、この恒久本部の建設に必要な用地の確保のために検討を進めている段階でございます。したがいまして、まずこの適切な用地の確保を実現いたしまして、しかる後に用地の整備とかいろいろございましょうし、基本設計、実施設計、いろいろな段階がございます。その上で施工という手順になります。したがいまして、それらのすべての手順を踏んでまいりますとかなり時間がかかる。それから現下の財政的な諸事情もいろいろございますので、国連大学の設立十周年までに恒久本部建設が完成するかどうかはいろいろむずかしい問題もあろうかと思われますが、私どもとしましては、とにかくできるだけ早く恒久施設を建設したい、そのための最大の努力をしたいという考えでございます。
  241. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 くどいようですが、十周年の行事というものを中心にして具体的に作業を続けていただきたい。あなたの方から、国連大学の自治ですから、いろいろな意味でお願いをすることになるわけですけれども、そういう点で対応していくということをもう一度答えてください。
  242. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 いろいろ困難な事情もあろうかと存じますが、最大限の努力を尽くしていきたいと思っております。
  243. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 本部及びセンターの設置場所というのは、東京メトロポリタンエリアというふうになっておりますが、この中にはもちろん神奈川県が含まれると理解してよろしゅうございますか。
  244. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 お答え申し上げます。  国連本部協定におきましては、東京首都圏ということになっておりますが、この東京首都圏というのは、申し上げるまでもなく東京都の区域及びその周辺の地域を一体とした広い地域と解すべきでなかろうかと思うわけでございます。さらにこの大学の事業の発展及び相当の生活条件のために適切な施設が得られるという場所、条件がそろっているということ、さらに交通、通信その他十分な施設が存在するということ、さらに建物の維持管理であるとかあるいはそこで働くたとえばタイピストであるとかそういう技術的な要員が有効に得られるというような条件が満たされる地域であろうかと思います。したがいまして、神奈川県全域が国連本部協定に言います首都圏に入るかどうかは別といたしまして、少なくとも神奈川県の主要都市部はこの条件を満たしているのでなかろうかというふうに私どもは考えております。
  245. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 神奈川県の長洲知事は学者知事でございますけれども、長洲さんはかねてから国連大学の本部とセンターを神奈川県に誘致したいというふうに言っておられます。それは神奈川県にとってのイメージアップなどということではなしに名誉にもなるだろうというふうにお考えになっていらっしゃるわけでございます。それは私もまさに同感でありまして、県選出の代議士として熱意を持って誘致したいというふうにあえて陳情をいたしたいと思います。  この際外務大臣に、これらの問題について神奈川県が有力な候補地であるということはお考えいただけるんじゃないかと思うのですが、御理解と御協力をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  246. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 ただいま外務省から御説明がありましたように、本部協定の解釈では、神奈川県などの一部も含めまして、東京都の区域及びその周辺地域は東京メトロポリタンエリアの中に含まれるということでございますので、大学本部の設置場所につきましては、乙の本部協定に言います東京メトロポリタンエリアの中の適切な用地を確保するということで関係省庁、国連大学側と十分に協議して検討を進めていきたいと思っております。
  247. 伊東正義

    伊東国務大臣 長洲知事さんも非常に熱心だということを聞いております。いま文部省の方も十分検討するということでございますので、私は神奈川県というのも一つの有力な候補地だというふうに見ております。
  248. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 まだ具体的には言えないにしても、これはかなりいいところまで煮詰まってきているわけです。ですから、もうそれ以上言いませんけれども、ぜひ調査費、そして設計段階、そして十周年を目指す建設ということについて御協力をいただきたい。大変くどくて恐縮ですが、このことを最後に一言、大臣お願いいたします。
  249. 伊東正義

    伊東国務大臣 岩垂さんがおっしゃったとおりだというふうに考えております。
  250. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 みんな時間が少し迫ってきたような顔をしておられますから、最後に、施設庁を中心にして伺いたいと思うのです。  「横浜ノースドツクとキャンプ富士間の兵員及び車両輸送について」の要請というものが神奈川県知事あるいは横浜市長から出ております。これは外務大臣防衛施設庁長官、荘日米軍司令官ウイリアムH・ギン中将殿ということですが、   去る一月七日から、大型LSTが横浜ノースドツクに入港し、キャンプ富士との間で過密化した市街地と交通渋滞の中を、気象上等の理由を条件に、米軍兵員、車両等の大量輸送が行われたことは、県民に多大な不安を与え、県民感情を無視した重大な問題と受けとめ、直ちにそのとり止めを強く要請したところであります。   しかるに、今回、三月三十日から再び横浜ノースドツクを使用してキャンプ富士との間で、大量の兵員、車両等の輸送が行われることは、県民不安を増大させ、まったく県民感情を  無視するもので、誠に遺憾であり、強く抗議するとともに、そのとり止めを重ねて要請します。   また、県は、地元横浜市とともに長年にわたり、繰り返し、全面返還を要請してきたところであり、今後、県民の不安を抜本的に解消するため、横浜ノースドツクの全面返還を重ねて強く要請します。という要請が出されていますが、神奈川県並びに横浜市の要請をどう受けとめられたか、このことを最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  251. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘になりました三月三十一日に横浜ノースドックを米軍の海兵隊が富士演習場出入のために使用しました。それを一つの契機としましてか、かねてから、数年来御要のありましたノースドックの返還につきまして重ねて神奈川県、横浜市からそれぞれ御要望がありました。  当庁としましては、地元のそういった御要望、かねてからノースドックの返還を受けて横浜港湾の充実、近代化といったようなことを図りたいという御要望は承っておりました。折をとらえて米側等にも申しております。  ただ、先生も御承知のように、当ノースドックというものは、米側の兵たん輸送基地として過去においても今後においても機能していくものでございますので、日米安保条約を受けて施設提供義務を負っております当庁としましては、地元御要望に対する御理解とほかに、米軍として今後とも当施設を必要とするという事情についても御理解いただきたいと考えております。
  252. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いままでずっとやってなかったのですが、これからも二、三カ月おきにこういう輸送が行われるというふうに理解をしなければならぬのですか。これらの事情というのはアメリカに問い合わせていただいているはずだと思いますが、いかがですか。
  253. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答えします。  ノースドックにつきましては、駐留米軍の港湾施設、輸送施設としてかねてから提供しておりますし、継続的に使用されたわけでございます。先生御指摘のように、富士演習場に出入する米海兵隊の部隊がノースドックを使用するということは絶えてございませんでして、沼津の海浜から主として行われたわけでございます。ことしの一月、それから三月から四月にかけて二回ほど同施設を使用したわけでございます。それで、この点につきましては、一月当時輸送上、気象上といったような条件から行われたものというような米側の説明も受け、そのように国会等でも御説明申し上げたわけでございますが、今後の米海兵隊による横浜ノースドックの使用は兵員、資材の積み込み、積みおろしを安全かつ円滑に実施するための問題、それから輸送に当たる艦船の運航計画、気象状況、それから後方支援態勢の整備、そういったいろいろな条件を勘案して決定しているということでございますので、今後ともこういった諸条件勘案の上に横浜ノースドックから富士演習場にかけての兵員輸送が行われる可能性はあると判断しております。
  254. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 車両で言うと延べ有数十台、それからりゅう弾砲六門が輸送に使用されています。弾薬や重車両の輸送はなかったというふうに言われていますが、今後そういうものも輸送することがあり得るというふうに考えなければならぬのかどうか、これはどうなんですか。
  255. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 御指摘のように、今回の二度にわたる輸送では、特殊車両ないしは弾薬等の輸送はノースドックを経由しては行われておりません。私どもの方は、そういった使用が行われる行われないということに関しては、今後十分知り得る状況にありません。現在までのところ行われていなかりたということだけ承知しております。
  256. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、こういうことはやめるべきだ、そしてノースドックの全面返還を改めて要求をしたいと思うのです。人口の密集した交通渋滞の中をそういう形で百数十両というような車両がりゅう弾砲を含めて運ばれるなどということは、私は常識では考えられない、そういうことはやはりやめていただきたい、このように思うのです。じゃ百歩譲って、たとえば重車両とか弾薬などというのは幾ら日米安保で提供義務があるといったって、これは県民なり市民の生命だとか安全だとかという立場から見て配慮すべきことが当然だと思うのですが、施設庁、それらのことについて物を言う気持ちはございませんか。
  257. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答えを申し上げます。  地位協定に基づきまして軍隊機能を持つ米軍に必要な基地を提供し、かつその基地を、米軍の日米安保条約に基づく日本駐留のための目的を有効にかつ円滑に機能させるということも私どもの義務でございますので、私どもとしましては、いま先生御指摘になりました特殊車両等の通行とかあるいは弾薬の輸送等におきましても、米軍の諸規定あるいは必要に応じまして日本の国内諸法規といったようなものに照らし合わせて安全にかつ適切に運用されればそれをもって有効であると考えております。
  258. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 しかし、地方自治体の非常に強い要請があるということをアメリカ側に伝えていますか。
  259. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 県、市の御要望、特に返還等に対する御要諸等につきましては、数年来からの御要請でもございますので、機会をとらえて米側にも連絡してございます。
  260. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 外務大臣、いまお話をしたような経過です。それで、一月そして三月とだんだん頻繁になってきているわけです。あの港というのは戦争中に横浜の市民が一生懸命でつくり上げてきた港です。でき上がったら間もなく終戦でございましてアメリカに接収されてしまった。そして今日までそういう状態が続いていた。最近までは実はそんなに頻繁に兵員の輸送というのはなかった。ほとんど静岡県の方からというコースの方が多かったわけです。突然というわけではないが、最近頻繁にそういうことが行われるということになれば、これはやはり県民感情を逆なでするものだと言わざるを得ません。さなきだに実は神奈川県というのは沖繩に次いで基地県だと言われているわけでございます。そういう点について、これはやはり日米のやりとりの機会に率直に横浜の、あるいは神奈川県民の気持ちを訴えていただく、それらについて大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  261. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま施設庁から答弁がありましたので、施設庁としてもそういうことは米軍に伝えているということでございましたが、返還そのものの問題、返還がなかなかむずかしいとしました場合に使い方の問題、いろいろあると思うわけでございます。特に安全というようなことを考えればいろいろな問題があるわけでございまして、施設の使用ということは近辺の人々の理解がないとこれはなかなかむずかしい問題だということは、私もよくわかりますので、これは施設庁とも私どもの方もよく話しますし、機会がありましたら施設庁と一緒ななりまして、米軍に使い方の問題その他について地元の意向を伝えるということはやるべきだというふりに思っております。
  262. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 新聞などで陸上自衛隊と海兵隊の合同演習というようなことの話題も出ています。それらの一環として横浜の港が使われていくということになれば、これはやはり新しい意味でも私たちは問題にせざるを得ない観点があるわけです。きょうはそれには触れません。しかし、そういう点で、いま大臣が言われましたように、日本政府の立場からアメリカに対して県民や市民の気持ちを伝えていただきたい、そしてその要請が生きるように御努力を賜りたい、このことを最後にお願い申し上げて、御答弁をいただいてやめたいと思います。
  263. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃるように、特に密集地帯でございますとか市街地とかいう場合の施設の使い方の問題とかいうことにつきましては、地元市町村あるいは県の要望を伝えるということは、これはもう当然やっていいことだというふうに思っております。
  264. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もっとやろうと思ったのですが、みんなもう遅いじゃないかという顔をしていますので、この辺でやめたいと思います。
  265. 染谷誠

    ○染谷委員長代理 次回は、来る九日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会