○稲富
委員 私の承っておるのは、そういう特権的な
事業を持たされたということはもちろんでございますが、経済的な問題でございます。御承知のとおり、今日中央
競馬会というものが競馬を開催いたしております。これは
大臣も御承知だと思うのでございますが、この
競馬会というものに対しては国として特権を与えられたか知らぬけれども、経済的な援助はやっておられないのです。それはなぜかといいますと、歴史をひもといてみますと、かつては民間の団体、競馬クラブというのがありました。それが
昭和十一年に
日本競馬会というものが設立されまして、そして
日本競馬会が競馬を開催しておったのであります。ところが戦後、占領下の
特別事情で、地方の馬匹組合等は、戦争に
協力した、軍馬に
協力したというようなことでGHQの意向で解散団体となりました。中央におきます
日本競馬会というものもそういう
意味からやはり強制的に解散させられようというような状態にあったわけでございます。そのときに
政府はGHQと協議された結果、
日本競馬会の資産及び負債のすべてを国が無償で継承しているのですよ。そして、国がその後国営として競馬を開催しておりました。ところがその後になりまして、国が競馬を施行するというようなことには問題があるというわけで、
昭和二十九年九月に中央
競馬会法が制定され、
特別法人として中央
競馬会が設立されて、
政府は旧
日本競馬会から継承した国の資産のすべてを現物出資として、その
資本金の四十八億七千三百万円相当の金額を
競馬会に現物出資で出された。これが現在の中央
競馬会の状態であって、
日本競馬会から国がGHQの指示によって取った、それをそのまま中央
競馬会の方に継承されたのであって、国はひとつも腹を痛めてないのです。開催はその特権を
大臣が言われたように与えたということは事実だと思うのです。そしてその後
政府は、この競馬開催に対しては指導監督をしながら今日までやってきたというのが事実なんです。
ところが、競馬開催に対しましては、では競馬はどうして開催されておるかというと、これは御承知のとおり馬なんですよ。馬はだれが出すかというと、民間の人が馬を出している。現在も中央
競馬会に出馬されておる馬というのは非常に多いのですよ。五十三年は七千百八十六頭ありました。五十四年は七千五百五十一頭なのです。五十五年は七千六百四十七頭という馬を民間の人が出して競馬に走らせている。しかもこの馬の価格というものは恐らく今日では一千万円を下らないというようなこういう
競馬馬なのです。高いのは、昨年のごときは一億八千万円という馬があったのですよ、二歳で。こういうように民間の人の
協力によって競馬というものが行われているというこの事実だけは私たちはまず見逃すことはできない、かように
考えます。ただ、国が特権を与えているのだ、しかし経済的な問題は民間の
協力でやられている、これだけは私は十分見ながらこれに対しては競馬というものを見ていかなくちゃいけないと思うのでございます。
それで、こういうような中から競馬が開催されて、今日でも
政府は第一
納付金あるいは第二国庫
納付金という名前において、国はこれから徴収しておる。しかも馬主はこの馬を養うためには毎月三十万ないし四十万という預託金を出しまして馬を預けている。恐らく年間には馬一頭持っていると五百万ぐらいの費用が要る。賞金をもらうと非常に華々しいけれども、その賞金を取る馬というのは七千頭のうちにどれだけいるかなんですよ。華々しいのはわずかなんです。しかも華々しいその馬も賞金を取りましたら源泉徴収として金を取られております。たとえばダービーのごときは賞金は六千五百万なんです。六千五百万の賞金をもらいますと、これに対しましては源泉徴収として五百十四万円の源泉徴収を取られる。さらにその賞金と普通の収入とが一緒になってまた課税されるのですよ。私にもし馬があって賞金を取ったとしますと、私の国の歳費とその賞金と合わせて別個に課税される。こういうような、民間では非常に
協力をしながらそういう犠牲も非常に払ってきている。これは私たちは認めなければいけないと思う。それで、本来から言うならばこれによって
政府は今日まで第一次
納付金、第二次
納付金ということで相当な金額のものはもう
政府も取られておるわけなんです。五十四年度を見ましても、第一国庫
納付金というものが約千二百六十三億あった、第二国庫
納付金が三百億、合計しますと千五百六十三億というものが納められている。これに今度はかけるとおっしゃる。それは、かけられるとおっしゃるのは別といたしまして、それはいいとしまして、われわれはそういうようなことを
考えるときに
考えなくちゃならぬことは、今日この競馬の
剰余金は、本来から言うならばできるだけ競馬の将来の発展のために尽くすあるいはこれまで犠牲を払ってきた一般ファンであるとかあるいは馬主であるとかそういうものに何とかして還元する方法を
考えることが将来の競馬が発展するゆえんである、かようにわれわれは
考えるけれども、
国家財政上これは取らなければいけないというならば取る法もありましょうが、一応そういう民間人の
協力のもとに今日の競馬というものが開催されているのだ、しかもその益金ができた場合は、
剰余金はそういう犠牲を払っている
協力者に還元することが
基本である。しかしながらこれはやむなく国が吸い上げるのだ、こういうような上に立ってこれをなすことが必要である、こういうことを私はまず十分
政府としても認識をした上で
対策をやってもらいたい、こういうことを
考えるわけでございますが、
大臣のお
考えを承りたいと思います。