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1981-05-13 第94回国会 衆議院 大蔵委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月十三日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 綿貫 民輔君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 小泉純一郎君 理事 山崎武三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君 理事 竹本 孫一君       相沢 英之君    麻生 太郎君       今枝 敬雄君    浦野 烋興君       木村武千代君    熊川 次男君       近藤 鉄雄君    笹山 登生君       椎名 素夫君    白川 勝彦君       中村正三郎君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       毛利 松平君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山本 幸雄君       与謝野 馨君    大島  弘君       佐藤 観樹君    塚田 庄平君       戸田 菊雄君    平林  剛君       堀  昌雄君    村山 喜一君       柴田  弘君    渡部 一郎君       玉置 一弥君    正森 成二君       蓑輪 幸代君    柿澤 弘治君       小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  石川  周君         大蔵政務次官  保岡 興治君         大蔵大臣官房長 山口 光秀君         大蔵大臣官房審         議官      梅澤 節男君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主計局次         長       矢崎 新二君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省証券局長 吉本  宏君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁税部長 小幡 俊介君         国税庁間税部長 小泉 忠之君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局経済部調         整課長     厚谷 襄児君         警察庁刑事局捜         査第二課長   漆間 英治君         大蔵大臣官房審         議官      名本 公洲君         郵政省貯金局第         一業務課長   小倉 久弥君         労働省職業安定         局業務指導課企         画官      広見 和夫君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      前川 春雄君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     浦野 烋興君   山中 貞則君     近藤 鉄雄君   柿澤 弘治君     小杉  隆君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     今枝 敬雄君   近藤 鉄雄君     山中 貞則君   小杉  隆君     柿澤 弘治君     ――――――――――――― 五月十三日  金融機関週休二日制実施のための銀行法等の  一部を改正する法律案堀昌雄君外七名提出、  第九十三回国会衆法第一五号) は委員会許可を得て撤回された。 同日  大衆増税反対及び内職・パートタイム収入の非  課税限度額引き上げ等に関する請願五十嵐広  三君紹介)(第四五〇九号)  同外一件(塚田庄平紹介)(第四五一〇号)  大衆増税大型消費税導入反対及び不公平税制  是正等に関する請願五十嵐広三紹介)(第  四五一一号)  同外一件(小林恒人紹介)(第四五一二号)  同外三件(島田琢郎紹介)(第四五一三号)  同(塚田庄平紹介)(第四五一四号)  大衆増税及び全自営業者記帳義務法制化反対  等に関する請願外一件(戸田菊雄紹介)(第  四五一五号)  同(鳥居一雄紹介)(第四五一六号)  同(前川旦紹介)(第四五一七号)  同(湯山勇紹介)(第四五一八号)  同(武田一夫紹介)(第四五八六号)  同(西中清紹介)(第四五八七号)  大型間接税導入反対及び歳出削減に関する請願  (臼井日出男紹介)(第四五一九号)  同(大原一三紹介)(第四五二〇号)  同(高村正彦紹介)(第四五二一号)  同(佐藤観樹紹介)(第四五二二号)  同外五件(塩崎潤紹介)(第四五二三号)  同外十七件(島村宜伸紹介)(第四五二四  号)  同(田村良平紹介)(第四五二五号)  同外二件(竹本孫一紹介)(第四五二六号)  同(谷垣專一君紹介)(第四五二七号)  同(谷洋一紹介)(第四五二八号)  同(中山利生紹介)(第四五二九号)  同外四件(野中英二紹介)(第四五三〇号)  同(山崎拓紹介)(第四五三一号)  同(山下元利紹介)(第四五三二号)  同外四件(足立篤郎紹介)(第四五六八号)  同(青木正久紹介)(第四五六九号)  同外一件(稲村利幸紹介)(第四五七〇号)  同(今枝敬雄紹介)(第四五七一号)  同外一件(植竹繁雄紹介)(第四五七二号)  同(木村俊夫紹介)(第四五七三号)  同外十件(岸田文武紹介)(第四五七四号)  同(後藤田正晴紹介)(第四五七五号)  同(三枝三郎紹介)(第四五七六号)  同外四件(地崎宇三郎紹介)(第四五七七  号)  同(中野四郎紹介)(第四五七八号)  同(葉梨信行紹介)(第四五七九号)  同外一件(船田元紹介)(第四五八〇号)  同(水平豊彦紹介)(第四五八一号)  同(柳沢伯夫君紹介)(第四五八二号)  同(渡部恒三紹介)(第四五八三号)  同(渡辺栄一紹介)(第四五八四号)  同外十七件(渡辺秀央紹介)(第四五八五  号)  大衆増税大型消費税導入反対に関する請願  (北山愛郎紹介)(第四五三三号)  同(武部文紹介)(第四五三四号)  同(栂野泰二紹介)(第四五三五号)  同(野坂浩賢紹介)(第四五三六号)  大衆増税及び大型消費税導入反対に関する請願  外二件(甘利正紹介)(第四五三七号)  共済年金改善に関する請願小川省吾紹介)  (第四五三八号)  同(中西積介紹介)(第四五三九号)  共済年金改善に関する請願中西積介君紹  介)(第四五四〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十二日  金利引き下げに関する陳情書  (第一七九号)  大衆増税大型消費税導入反対に関する陳情書  外二十五件  (第一八〇号)  同外十一件  (第二二一号)  自動車関係諸税増税反対等に関する陳情書外  六件(第一  八三号)  物価調整減税等実施に関する陳情書外五件  (第二二二  号)  貸金業者規制に関する陳情書  (第二二三号)  譲渡所得に係る特別控除額引き上げ等に関す  る陳情書  (第二二四号)  税制是正及び所得減税に関する陳情書外三件  (第二二五  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  銀行法案内閣提出第六六号)  中小企業金融制度等整備改善のための相互銀  行法、信用金庫法等の一部を改正する法律案  (内閣提出第六七号)  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第六八号)  銀行法施行に伴う関係法律整備等に関する  法律案内閣提出第七三号)  金融機関週休二日制実施のための銀行法等の  一部を改正する法律案堀昌雄君外七名提出、  第九十三回国会衆法第一五号)の撤回許可に関  する件      ――――◇―――――
  2. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより会議を開きます。  銀行法案中小企業金融制度等整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案証券取引法の一部を改正する法律案及び銀行法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、ただいま議題となっております銀行法案外三案について、本日、参考人として日本銀行総裁前川春雄君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 綿貫民輔

    綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 綿貫民輔

    綿貫委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  5. 沢田広

    沢田委員 大臣がいる間に若干要請だけ先にしておきます。  先般手数料の問題でいろいろ議論がありました。その後私の手元に算出根拠をいただきましたけれども、これでは毎年変えていかなければならぬという性格のものになっていますね。いわゆるその取り扱い件数人件費を割る、こういうやり方なのであります。そのことが果たして正しい計算方法かどうかということになると、経済情勢が変化すれば、たとえば建築申請の届け出などがずっと減る、あるいは不動産の登記もずっと減るというような状況もあるわけですから、それでいくと今度はべらぼうに高くしなくちゃならなくなるということで、変動要素のないもので計算する必要があるのではないか、これは要請しておきます。後で理事会にも配っていただくことになっておりますが、きわめて安易な計算方法である。大臣もこれは一回ごらんになっていただきたい。忙しいでしょうけれども、一応目を通していただくことを約束していただきたい、こういうふうに思いますが、よろしいですか。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 手数料算定方法につきましては、御指摘のように問題点がございます。実費だけがいいのか、あるいは免許料とかそのほかのいろいろな許可料とかいうような意味も含めて、ある程度の財源の確保という面も加味してやった方がいいのか、いろいろ問題のあるところでございますから、今後とも検討させてもらいます。
  7. 沢田広

    沢田委員 それからオーソドックスな問題なのですが、ことしの経済七カ年計画あるいは財政計算の見込みでいきまして、簡単に言うと二百四十、二百五十、そのうち個人可処分所得がその六割として百五十兆円くらい、二〇%の預貯金率として三十兆円、実績も大体その程度でいっているわけですね。  都市銀行だけでいきますと、五十四年が二百五十八兆、五十三年が二百三十五兆、その前が二百六兆、百八十二兆、百五十九兆、その差を見ますと、最初が二十兆、二十兆、三十兆、二十五兆、これを今度は郵便も含めて全部で見ますと、これは五十三年までしかありませんが、三百二十六兆、その前の年が二百八十四兆、その前が二百四十九兆、二百十四兆、百八十兆、これをずっと年度別の差を見ますと、三十、三十、三十、五十三年だけが五十兆、こういう数字になっております。これで銀行店舗数を見ますと、大体二万店余ということになります。都市銀行全国銀行相互銀行その他を含めまして、郵便店舗数は入ってないのでありますが、それでも二万店舗、約二万五千くらいになるのだろうと思います。  そうしますと、いままでの銀行局長その他の答弁でありますと、今度はミニ店舗をふやすとか何か言っておりますけれども、一方、預貸率で見ますと、昭和五十年度で比較することがいいかどうかは問題がありますが、全国で八三・一だったのが現在七三・七、都市銀行が八五・六が七四・三、地方銀行が八〇・五が七二・二、それから長期が八〇・四が七二・一、信託が七七・五からこれは上がって八二・一、こういう預貸率になっている。総体的に見ますと、銀行の数がふえても競争が激しくなるだけであって、二〇%の預貯金率が特別上がらない限り過当競争に追い込まれることは必至である。ある意味においては統合などを図りながらセーブをしなければならぬという状況に逆に来ているのではないか。ところが、いままでの銀行法答弁を聞いていますと、銀行局長は、これからは大型一店を三つにしてミニ店舗にするのだというようなことを言って、よけいに過当競争を激化させるということで、自由主義経済ですから金利も自由あるいは店舗も自由、それもいいでしょう、いいでしょうけれども、そのことによって多くの国民が迷惑を受けるということは許されることではないと思います。  ですから、いままでのこの状況を見ますと、これ以上店舗の増加ということは許されない状況だ。もし成績の悪い銀行をやめてどこかへ変えます、こういう移転をさせることはやってもいいことだと思うのでありますが、いわゆる一つエリアのもとにおいてもうこれからは競争をしていく、こういう一つ条件が必要なんではないかと思いますけれども、大臣、これはいかがでしょうか。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 預金の量がふえないのに店舗の数をふやせば過当競争になるではないか、私は一面そういう面もあろうかと存じます。問題は、町の真ん中に幾つも銀行が密集をしておって、そういう状態よりもむしろ金のかからない、人件費場所代減価償却もかからないようなもっと安直な一どうせ店舗を認めるとすれば簡易郵便局みたいな安直な店舗を認めた方が資金コストも安くていいのではないか、したがって、現在のものをそのままにしてふやすというだけが能ではなくて、むしろ現在のものを整理して、それでコストのかからないように数をふやすということもあわせて考える必要がある、そう思っております。銀行がでっかい建物で、個所が少ないから土地の一番いいところを占領して、大理石の建物をつくって、むしろそんなところは入りづらくなってしまう。それで郵便局に負けた負けたと言っても、これも能のない話だ。私はそういうところの見直しもやったらいいのではないか、そう思っておりますから、店舗をふやすについては、ただふやせばいいというばかりではない、そう思います。
  9. 沢田広

    沢田委員 銀行局長どうですか、いまの大臣答弁で、私は、一方がふえたらどこか削る、これからはこういう原則に立つべきであると思う。この数字からいくとどうしてもそうなる。そうしなければどうしても預金集めに厳しさが出る、あるいは長時間労働をすることがいい悪いの問題は別として無理が起きる、こういうことに必然的になるだろうと思う。だから現在の店舗数の中身を変えていく、一つの大きな店舗をつぶすならつぶして、そして三つに分けるなら分けてもいいけれども、これはふえることになりますが、まあミニならミニにすることもいいが、これ以上は総体的な数量は限界に来ているというふうに私は判断するわけであります。ただ、ニュータウンができるとか、そういうふうなものによって変わることはありますが、しかし一方では、その背景としてはまた過疎も生まれているわけです。ですから、その意味においての整合性というものを確保しなければいかぬと私は思う。  大臣答弁の後に銀行局長に聞くというのは、銀行局長の方がどうしても金融業界からの圧迫が強いだろうと思って、大臣の方がわりあい強腰にいけるだろうと思って、あなたが弱いと言っているのではないが、弱いということになるのかな、まあそういうことなので、あなたのところがどうもそういうことになりかねない。だからあなたにもう一回それを確認の意味で質問をしておくわけであります。
  10. 米里恕

    米里政府委員 お答えいたします。  五十六年度及び五十七年度に二年度まとめまして最近店舗通達を出したわけですが、おっしゃいますように大店舗というものはできるだけ減らしていきたいというような考え方から、今度は小型店舗あるいは機械化店舗重点主義というものを打ち出したわけでございます。  それで、先日申し上げましたのは、要するに店舗設置に当たりまして振りかえ制というようなものを経営者自主判断で認める、したがってその場合の振りかえ比率は、たとえば普通店舗を一店舗与えられたところは普通店舗をやめてもよろしい、小型店舗を三店舗というふうに振りかえてもよろしいということを申し上げたわけですが、その考え方というのは、要するに銀行街角街角で壮麗な建物を建てておるということをできるだけ防いで、過疎地とかいままでわりあい店舗が少ないところ、利用者の利便から見てプラスであるというところに小型店舗をつくっていくという方向方針を出したわけでございます。そこでその場合に、まず一般店舗につきましては従来よりも減らしておるわけでございます。従来認めておった数よりも一般店舗の数を減らしまして、その減らした一般店舗も場合によってはやめてよろしい、小型店舗に切りかえてよろしい、その場合には小型店舗三つつくってよろしい、そういう意味で申し上げたわけでございまして、全体の店舗の数がそうふえるというような考え方はございません。おっしゃいました配置転換でございますが、つまり、従来ありましたところを廃止して新たに新設させる振りかえでございますが、この配置転換の枠は今度拡大させるということになっておりまして、全体としては自由化弾力化と申しますが、店舗の数の自由化ではなくて、むしろ経営者自主判断自由化というようなつもりでおります。
  11. 沢田広

    沢田委員 大臣は所用があるようでありますから結構ですが、いまの話の中で、ある意味においては総量規制しようということを私は言っているんですよ。特定の条件のところについては一応考えるが、それをパーフェクトにしようというのではないけれども、しかし総量規制をしなければこれはもう無理が起きますよ。えさをやるのですから、いまあなたはいい顔をしてやっているかもしれぬけれども、後になってそのことがはね返ってくることになるわけですから、それには決断が要るし、勇気も必要なんですよ。ですから、いまは何でも販路を広げていって預金量を集めたいというのが銀行側の主張でしょう。しかしそれは、いままでできてきたそれぞれのエリアをある程度固定化をしてその中で勝負をしていくということにならないと、過当競争をより激化させる以外の何物でもなくなる。これはいまの数字を見て結果的にそうなるでしょう。だから総量をある程度規制していく、大臣の言ったような方向見直しをしていくということが必要なんで、一つ大型店舗三つに分けていいといったら店舗数は逆にふえていってしまって、そのエリアの中の争いはより激しくなる。まあ管理社会と言われておりますから、自由主義社会だから幾らやってもいいのですがね、幾らけんかしても構いませんけれども、たとえばきょうの新聞にも出ていたように、私の地元の銀行が何かミス貸し付けをやったためにおどかされて五百万円とられて逮捕された。何の弱みがあるのだろう、ミスがあったらミスがあったで処理したらいいじゃないか、なぜそんなやくざ者に五百万も金を渡さなくてはならぬのだろう、どうしてそういう弱み銀行が持つのだろうか、なぜ闘わないのだろうかという疑問を持つのですよ。それは信用が大切だということなのかもしれないけれども、またきょうの新聞でもかえって信用を害しているでしょう。これは総会屋対策もそうですけれども、なぜそこで断固として闘おうとしないのですか。たたかれればほこりが出るから、結果的には長い物には巻かれろ式で五百万円出しているのでしょう。どちらが正しいかということになるときわめて疑問なんですね。  ですからそういう経過から考えてみても、自主的に運営するんだったらそんな指弾を受けないような防衛といいますか防御といいますか、それぞれの銀行がガードを固めて、自分の理論と信念とそれから自分の会社の方針をもって立ち向かっていくというのが銀行マンの姿にならなければおかしいのじゃないかと私は思う。それを五百万円もどろぼうに追い銭みたいなものをやっている、その金はどこから出てきた金だと私は言いたい。大臣も出かける前ですからこれを私の総体的な意見にして、銀行局が弱腰でなく今後堂々とやってもらいたい、こういう願いを込めて最後にそれだけお答えいただいて、どうぞ行っていただきます。
  12. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は沢田委員の言うのももっともである、そう思うのです。したがって、余り過当競争にならないようにしなければならない。しかし全体の預金量がふえますから店舗数がいままでと同じだというわけにはいかないでしょうが、あなたの言うような趣旨も含めまして、店舗許可に当たりましては十分配意してまいりたいと思います。
  13. 沢田広

    沢田委員 次に、銀行局の「銀行局金融年報」五十五年度版に、相互銀行主要勘定で「支払承諾」と「支払承諾見返」があるのでありますが、簿外貸し付けはこの諸表の中に含まれていると考えてよろしいでしょうか。
  14. 米里恕

    米里政府委員 簿外になっているものがもしあるとすればその数字からは落ちておるわけですが、過去に問題になりました簿外はすべて表面に出させましたので、そのケースの中に入っているということだと思います。
  15. 沢田広

    沢田委員 これは五十五年度版ですから五十五年三月末現在ですが、過去に問題になったものが入っているということは、たとえば大光であるとか平和であるとか、そういうようなものも含まれていると理解してよろしいですか。
  16. 米里恕

    米里政府委員 おっしゃるような過去に問題になりました分は全部表へ出させましたので、そういった意味では入っているということでございます。
  17. 沢田広

    沢田委員 名前を出すことはなるべく避けようと思ったのですけれども、たとえば今度の誠備グループの問題で出ていった簿外貸し付け、これは五十五年三月以後の問題ですが、これらはこの中には入ってないんじゃないかと思うのですが、一たんそれを入れさせてまたすぐ出る、一回どろぼうしてつかまえてみて釈放したらまたどろぼうする、こういうことは銀行局としてはどういうふうに判断されているのですか。
  18. 米里恕

    米里政府委員 いま御指摘のありました事実につきましては、私どもまだそういう状態にあるというように考えておりません。
  19. 沢田広

    沢田委員 名前は言わないということでしたからなるべく言わないようにしていこうと思うのですが、いずれにしても相互銀行全般についてもう一回再検査といいますか再監査をやってほしい、これはきょうは要望にしておきますが、やってもらえるかどうかということです。非常に日数がかかりますからワーストならワーストで結構ですが、ベストテンくらいを挙げてそれを実施してもらう、これが一つであります。  それからもう一つは、誠備グループ関係全貌について報告をしていただく考えはないかどうか。これは細切れ的にいろいろ言われているわけでありますが、全貌をある程度委員会において報告をしていただきたいと思いますが、その二点についてお伺いをいたします。
  20. 米里恕

    米里政府委員 まず最初債務保証の問題でございますが、相互銀行債務保証が非常に大きな問題があるということは最近その感を深くいたしております。そういった意味で、今度の銀行法改正にも関連いたしまして、一つ相互銀行に対して通達でございますが、一債務者当たり債務保証の枠を規制するという措置を講じ、あわせまして業界自主申し合わせ債務保証総量規制という措置をとらせております。その債務保証の実態につきましては、私どもの方で絶えず資料を両側から徴求して、その突き合わせということを行っておりますし、それにあわせまして、検査の際その資料を活用するということを現に進めております。  それから誠備グループ全般のお話ということでございますが、個々の金融機関の取引の問題にどうしても入ってまいりますので、それを一つ一つ明らかにするということは御勘弁願いたいと思います。
  21. 沢田広

    沢田委員 証券局も同じ意味においてこの誠備グループ問題について、やむを得ないものはあるかもわかりませんが、ある一定の限度まではそのルート、資金の流れ、そういうものについて委員会報告をしていただく用意はありますか。時間の関係で私の方で中身は言わないのですが、報告していただけますか。
  22. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 誠備グループ問題につきましては、去る二月十六日加藤外務員が逮捕されまして以降いわゆる指定銘柄と言われます株式の株価が暴落いたしまして関係証券業者がかなり苦境に立ったということが第一でございます。  それに関連して大阪証券信用、大阪の証券金融会社、言うなれば町の金融機関、貸金業と言うべきものでございますが、これが経営困難に陥ったということで私どももその対策に苦慮してまいったわけでございますが、先般この誠備グループの再発防止策と言うべきものを省令の形で公布いたしまして、今後そういったいわゆる投機的な取引、特に投資者の意向を十分しんしゃくしないでグループとして一括発注、一括受注するという取引につきまして証券会社サイドから規制を強化することにいたしました。それとあわせて外務員制度に対する規制も強化する、それと証券会社のあっせん融資と申しますか、株式を担保とするいわゆるあっせん融資、こういったものに対する規制も強化しようということで先般的な再発防止策並びに今後の証券業者の営業姿勢を正すという措置をとった次第でございます。そういったことでございますので、私どもとしては本件についてはこれで処置をとった、かように考えております。
  23. 沢田広

    沢田委員 では、三つ確認していきますが、一つは、こういう政府から発表される今後の問題について、いわゆる支払い承諾、簿外というものは今後は発生しない、もし発生した場合どうするかはまた後で聞きますが、発生しない、銀行は今後はそういう運営をされるものである、こういうふうに確認してよろしいですか。
  24. 米里恕

    米里政府委員 簿外で保証を行うことは公共性のある金融機関としてまことに好ましくないというふうに考えております。私どもも再び発生するようなことがあってはならないということで厳重に指導してまいりたいと思っております。
  25. 沢田広

    沢田委員 続いて、通達を出されたそうでありますが、その通達の写しを私たちに出していただけますか。
  26. 米里恕

    米里政府委員 去年の十二月二十四日に「相互銀行の同一人に対する債務保証の限度について」という銀行局長通達を出しております。これは、今回の法改正と関連いたしますのは同一人に対する債務保証の限度というものを今後新たに行政指導で行うことにしたわけでございまして、そういうことでございましたら通達をお渡しすることはできると思います。
  27. 沢田広

    沢田委員 では出してください。  続いて、いま証券局長の方の話では何か終結したような口ぶりであったと思うのですが、たとえば銀行の取締役あるいは監査役、こういう者が五億なり十億なり、これは背任になるか議事録を見ないとわかりませんが、個人的にこれを投資していた、これも五十億くらいの株損で、大分損をしていると言われております。また銀行そのものも担保として取った株券が相当値下がりをしたということでこれまた百億程度の損害が出ている、こういうこともあるわけでありますので、もう一回再調査をする必要があるということが一つと、この問題の内容についてはあばくものはあばいて、粛正するものは粛正をして措置をしていくことが正しい措置である、罪を憎んで人を憎まずという言葉もありますが、金融機関であるという立場から見ると。きのうの参考人の説明でも相互銀行協会ではできません、銀行からでもやってもらう以外にないんですということを協会長も言っているくらいであります。そうなればやはり行政の手でこれをある程度処理していかなければならぬ、こういう要件だと思いますので、いま言われたことをもう一回言い直していただいて、きちんとこの結末をつけるように、その内容を明確にするとともにその結論をきちんとつけて報告できる状態にしてもらいたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  28. 米里恕

    米里政府委員 金融機関の個別の話になりますのでその点は省略させていただきますが、一般論といたしまして、大証信に対します金融機関からの融資につきましてはいずれも担保など徴してはおりますが、今後の担保処分等の動向いかんによりましては、場合によって損失が発生するということもあり得るかと思われます。  いずれにいたしましても、こういった金融機関が投機、思惑等の資金を融資するということについては従来から厳しく指導してまいったところでございますが、四月十日に、最近の一連の問題を顧みまして、金融機関に課せられた公共的使命にかんがみまして、そういったような事態は非常に遺憾である、今後とも金融機関としては、公共性を十分に自覚して社会的な批判を受けるおそれのあるような融資については厳に自粛される、同時に融資が安易に流れ、投機行為などを助長するというようなことがないように十分配慮しなければならないというような意味で、指示を各種金融機関に行ったところでございます。今後ともに十分厳正に指導してまいりたいと考えております。
  29. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 先ほど申し上げましたように誠備グループの問題に関連いたしまして、今後このような事件の再発を防止しなければならないという観点から、私ども五月六日付で総合対策を実施することにいたしまして、その一つは、証券会社の健全性の準則等に関する省令、この省令の一部を改正いたしまして、証券会社がいわゆる投機的な取引を助長するような営業姿勢をしてはならない、このような行為をする場合には是正措置を命ずるということにいたしました。例示として書いてございますのは、「あらかじめ顧客の意思を確認することなく、ひんぱんに顧客の計算において有価証券の売買をしている場合」、二が「不特定かつ多数の投資者を勧誘して有価証券の売買取引についての委任を受けている者から、あらかじめ投資者の意思を確認することなく一括注文を受けている場合」、第三番目に「特定かつ少数の銘柄の株式について一律的な過度の勧誘を行い、公正な価格形成を損なうおそれがある行為をしている場合」、これらにつきましては、従来も証券局長通達というような形で指導を行ってまいりましたが、今般これを省令に格上げいたしまして、罰則を伴う措置にいたしたわけでございます。  さらに、先ほども申し上げましたが、「外務員の管理に当たっては十分な注意を払うこと」あるいは「証券会社の営業に従事する役職員が投資顧問業者又は投資グループの重要な業務に実質的に従事することは、慎しむこと」さらに「証券会社が、証券取引に関連して、顧客に資金借入れの保証、斡旋等の便宜を供与することについては、慎重を期すること」、これらは通達の形で発出しております。  さらに、今回の誠備グループ問題に関連した証券会社に対してはかねてから検査を行っておりまして、これに対しても何らかの措置をとらざるを得ない、このように考えております。また、誠備問題に関連しましてかなり損失をこうむった証券会社が若干ございます。これらにつきましては、私ども十分監督をしておりまして、いやしくも経営が困難に陥るということについては十分対策を講じてまいりたい。現在の段階では、まず非常な問題になることはないのではないか、このように考えているところであります。  以上のようなことで、本件につきましては一応の行政的な決着は行った、このようなことでございます。
  30. 沢田広

    沢田委員 先般わが党の佐藤委員からも質問がありましたアメリカの開示制度といいますか、「資産および負債の報告書」関係について、本日届いた書類だったというので翻訳をしてもらいました。これで見ますると、アメリカで行われておりまする状況では「非関連当事者に対する請求権」から、あるいはその「資産」、それから「非関連当事者に対するその他の負債」、これは「(明細書H、項目3)」となっております。それから「在米及び在外関連機関に対する正味未払」、これは「(明細書M、パート1、項目4)」こういうふうになって、負債の合計も項目13から18まで。「覚書」として出ておりますのは「再融資を受けた引受手形の額」あるいは「資産整備」、「資産担保」の問題、それから報告云々、これはあれですが、「十万ドル以上の定期預金」、それからその他の「有価証券」、こういうようなこともすでに報告になり、かつまた「在米商業銀行に対するもの」としては、「他の外国銀行の在米支店及び代理店」、「他の在米商業銀行」、それから「在外銀行に対するもの」として、「米国銀行の在外支店」、「他の在外銀行」、「その他のすべてのローン」、それから「家庭、家族、及び他の個人支出のための個人に対するローン」、こういうものまで一応報告がなされるようになっています。  さらにまた「明細書C」にいきますと、「在外銀行にある残高」というようなものもそれぞれ表示するようにこれはなっております。  さらにまた「明細書F」になりますと、これも同じようにそれぞれの州の関係のものから、それ以外の代理店のものも含めて残高、預金、そういうものも在外銀行の分も含めております。  さらに「明細書G」、「ローンに生じたが取立てていない収益」あるいは「その他(十万ドル未満でなければ、Fの項目3の一〇%を超える費目を挙げよ)」。  それから「明細書H」では、「(十万ドル未満でなければ、Fの項目3の一〇%を超える費目を挙げよ)一不労所得」ということで成っております。  また「明細書M」におきましては、これは未払い、未収の関連機関との取引、それから子会社関係の問題ということで成っております。特に「覚書」の「報告日現在の未決済額」、中には「在米の関連非銀行業子会社」それから「外国ならびにプエルト・リコ及び米国の領土及び所有地にある関連非銀行業子会社」、それからさらに「完全所有の子会社の、上の項目1及び2の額」。  「明細書N」になりますと、またこれも「売却した連銀準備金及び」「購入した有価証券」、それから「有価証券のブローカー及びディーラー」、「その他」、こういうことで成って、「明細書O」までありますが、それぞれいままで指摘をしてまいりましたいわゆる今日のディスクロージャーと言われておりまする中身がアメリカでも今日こういうようになっているわけであります。日本だけが、何かいまも言われたようにすべて秘密である、こういうことだけは許されないだろうと思いますし、先般法務委員会で聞きましたけれども、外銀の代理店、ここに来ていただこうと言ったら、それも来られない。アメリカでは代理店が取締役の権限を持っている。取締役も権限を持っているものとは言えないのですね、正式に言えば。社長でなければならないわけでありますが、そういう意味においての国内法で適用されるアメリカの銀行すらわれわれの権限が及ばない存在になっておるということは望ましいことではないし、金融機関は自由である、自由で結構です。金利も自由で私はいいと思う。何も日銀の公定歩合に連動する必要性はない。それぞれ自由で、利益の上がっているところは預金金利を高くして預金を集めて競争してもらう。結構だと思う。悪いところはどんどん悪くなってつぶれていけばいい。問題は、公共の秩序と社会的な公正が保持できるかどうかということに尽きるわけであります。私は当面そういう主張を持っております。銀行だけが社会主義社会じゃないけれども金利を一定にして、もうかっているところももうからないところもみんな一緒くたになってやっていることが正しい運営だとは私は思っていない。努力したところは努力したような効果が生まれることが望ましいことだと私は思っています。そういう意味においては、ある一定の自由性を与えることは結構です。しかし、その意味においていま言ったようなアメリカ等の法令を参酌してつくっている今日の銀行法は、あるいは商法もそうでありますが、ディスクロージャーというものを明確にしていく義務も負っているのだ、その中での競争である、ルール違反の競争ではないというふうに思います。野球の試合みたいなものだと思います。やはり一定のルールの中でそれぞれが全力を尽くして勝負をする、そのルールをつくるためには単なる自由ではない、やはりこういうものを明らかにしながら競争をしてもらうというふうなことが望ましいのだと思うのです。これは結論だけで結構でありますが、そのような御指導をいただけるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  31. 米里恕

    米里政府委員 海外のディスクロージャーでございますが、法律でディスクロージャーを規定している国というのはないようでございます。最近では、自発的に各銀行がディスクロージャーを行っておるというところは逐次ふえてきておるという状況でございますが。  それで、いまお話しのございましたアメリカにおける外国銀行の支店の義務でございますが、これはいまお読み上げになりましたような内容をFRBに届け出るということになっております。FRBは要請があればその項目を開示するということになっておるというようなことで、ややわが国で考えております一般のディスクロージャーとは制度が違う面もあろうかと思います。ただ、いずれにいたしましてもそういったようなFRBの届け出内容、それからたとえば一番自発的なディスクロージャーが進んでおると言われておりますバンク・オブ・アメリカのディスクロージャーコードといったようなものは、今後のわが国のディスクロージャーに当たりましても参考になるというふうに考えております。
  32. 沢田広

    沢田委員 時間の関係で次に参りますが、週休二日制の問題をわが党も出しておりますし、今回政府も、まあ週休二日制を出したとは言えない状況なんであります。土曜日営業しなければならないという項目が外れたということだけに現段階はすぎない。きのうの参考人等も言われていることでありますけれども、日本が二千時間ぐらいに抑えたいあるいは千九百時間ぐらいに労働時間をある程度抑えなければならぬだろうという状況を考えてみたときに、郵貯の問題もありますけれども、どういう段階を踏んでこの週休二日制に進めていくか。西ドイツその他でも——いま公務員は四週五休でやっております。この四週五休の中で、第三の土曜日なら第三の土曜日は休むということにしている、あるいは金融機関も第三の土曜日は休むということにする、こういうところからまずスタートをしていくことは可能じゃないかと思うのでありますが、その点いかがでしょう。
  33. 米里恕

    米里政府委員 週休二日の具体的な実施につきましては、現在金融機関サイドでは全銀協が中心になりまして、まず対外的なPR、それから内部体制の整備といったようなことを中心に検討を進めております。また、公務員も含めました週休二日全体の問題としては、御承知のように関係省庁の連絡会議がございまして、そこでいろいろ諸問題を詰めておるということでございます。  進め方にはいろいろなやり方があろうかと思いますし、おっしゃるようなことも一案かと思いますが、さらに今後いろいろ複雑な諸関係がございますのでその辺を実施に当たって詰めてまいる。同時に公務員の週休二日はどうなるかといったようなことをも勘案しながら総合的に検討が進められていくという状況にあろうかと思います。
  34. 沢田広

    沢田委員 検討ということだけれども、法律で土曜日の営業義務を外した、当面は外しただけである。これからは週休二日制というものへ向けてともかく一歩前向きに前進していくという、そういうことは間違いないのでしょうね。首を縦に振っているから、立ってもらわなくてもいいでしょう。そして、それを進めるためにはどういうことが、いまの公務員も必須条件ですが、必須条件とそのエリアにおける可能性の中の条件と二つあると思うのですね。金融機関なら金融機関だけでの一つの判断に基づくもの、たとえば大企業なんというものは週休二日制にみんな現実はなっちゃっているわけですね。ですから金融機関だけが何も先行というか、後追いでしょうが、後追いでやっていくことも不可能ではないというふうに思うのですが、これは公務員と一緒でなければならぬ、情勢を見ながらというのは必須条件じゃないと私は思うのですが、その点はいかがですか。金融の問題と公務員の週休の問題は、密接な関係はあるけれども必須条件ではない。金融機関だけで独自に判断できるものであるというふうに思いますが、いかがですか。
  35. 米里恕

    米里政府委員 金融機関が土曜日を具体的に休むかどうかというような問題につきましては、一番大きな問題の一つ郵便局との関係がどうなるかということであろうかと思います。したがいまして、そういった郵便局における貯金業務というものがどういう取り扱いになるか、それとイコールフッティングで金融機関も進んでまいりたいということが現在の金融機関の強い要請でございます。  週休二日が実現するまでにはいろいろな問題があろうかと思います。先ほどのPRと申しました中には中小企業に与える影響あるいは国民生活つまり消費者ローンとか給与振り込みとかといった問題がございますし、あるいはまた法制面での問題というのもある。この法制面の問題は今度の銀行法改正一つの突破口が開かれたというふうに考えておりますが、さらに銀行の内部体制を整備していくというような問題もある、いろいろな問題があろうかと思いますが、その中における公務員、特に郵便局との問題が非常に大きな問題であるというふうに私どもは思っております。
  36. 沢田広

    沢田委員 銀行法の第一条が変わりまして、公共性を含め自主的な運営をやる。銀行局はこの週休二日制については関与するんですか。それとも自主的な判断に任せるんですか、その点どうですか。
  37. 米里恕

    米里政府委員 法律上の規定で申しますと、今度政令で具体的に休日は決めることになったわけですが、銀行の休日は「政令で定める日に限る。」というような書き方になっております。したがいまして、それ以外の日に休んではいけないという法律的な書き方でございますので、土曜、日曜に絶対に開いてはいけないというような解釈にはならないかと思います。しかし、そこは金融機関として信用秩序を全体として構成しておりますので、できるならば特殊な利用者の利便その他の問題のある場合を除きまして一斉に週休二日に移るなりすることの方が望ましいというように考えております。  先ほど申し上げました関係省庁の連絡会議などもございますので、全くの自主性というよりは役所も逐次これを指導しながら全体の情勢を進めていくということになろうかと思います。
  38. 沢田広

    沢田委員 確認しますと、第一条である金融機関の自主性は、週休二日制に関してはない。あくまでも行政指導の管理下にあるんだ、こういう見解である、こう解釈してよろしいのですか。
  39. 米里恕

    米里政府委員 利用者の利便その他特殊な理由がございまして、金融機関が、全体が週休二日になっても、土曜、日曜ぜひ店を開かなければならないという場合もあろうかと思います。そういった意味で、必ずすべて統一的ということでもないと思いますけれども、全体としては、週休二日というのは特殊な事情の場合を除いては統一的に進むことが望ましいと考えております。
  40. 沢田広

    沢田委員 政令で決められた後は、自主的運営にゆだねるものなのじゃないのですか。それとも、政令に定められてもなおかつ自主的運営はできないのか。私は、自主的運営というのはもろ刃の剣だとこの間も言ったのだ。自主的な運営というのは、またそれだけ責任が重くなりますよということになるわけです。全部管理下に置かれていれば、親のすねをかじっている子供みたいに気楽なものなのだ。ところが、自由になればなっただけ、今度はそれだけ苦労が多くなる。だから、これはもろ刃の剣だと私は言ったわけでありますが、自主的な運営にゆだねたのならば、どこか団体交渉で決めようと、やって問題はないのじゃないですか。それを、あくまでも政令にゆだねて、銀行局がなおかつ管理下に置いておくということは、行き過ぎになりませんか。
  41. 米里恕

    米里政府委員 銀行の休日というのは、公共性が非常に高い金融機関にとって一般預金者あるいは国民大衆に影響するところが非常に大であるということから、営業日が法律で定められ、その法律の具体的な内容が今回政令にゆだねられたということでございますから、公共性の高い金融機関として、やはり信用秩序全体を維持していくために、原則としては統一的にやっていくことが望ましいのだと考えております。
  42. 沢田広

    沢田委員 原則的に統一だということが行政の越権ではないのかということなのですね。そのことまで触れることが、果たして銀行局の権限なのかどうか。だとすれば、銀行の公共性が高い、高いと、これだけうたい文句に言うならば、金融機関は、さっき言ったような開示制度の問題にしても、あるいは簿外貸し付けの問題にしても、あるいは誠備なんかの貸し付けで損害を受けたような問題にしても、もっと制裁を受けなければならぬ立場にあると私は思うのですね。そういうところでは今度は自主性だ、自由だと言って、都合のいいところは今度は公共性だ。これはいわゆる使い分けというものなのですね。だから、今度公共性と自由というものをどうバランスをとっていくかということは大変大切なことだ。もう時間がなくなりましたが、いまの答弁は不公正な議論だと私は思うのです。どこまでが自由でどこまでが公共性で縛られるのか、それを線引きしなければいかぬことだと思うのです。ここまでは自主性に任せます、これからは公共性ですから監督下に置きます、そういう線引きをする意思はありますか。
  43. 米里恕

    米里政府委員 金融機関は、公共性、社会的責任を持っている反面、私企業としての自主性を持たなければならないというようなことから、金融機関の公共性に着目して、それが法的な規制が必要であるという分野について法律の条文規定を定めて御審議願いたい、こういう考え方でございます。
  44. 沢田広

    沢田委員 この点はまだありますが、先般、新聞に出ているのですから名前を挙げられてもしようがないでしょうが、これは国税庁に聞きたいのですが、虎の門病院の眼科の部長さん、虎の門病院というのは公益法人、その公益法人の眼科部長の預金が出ている。三井銀行日比谷支店に通帳がある。そこにめがね屋さんから毎月リベートとして振り込まれてきた。これは、定期にまではなっていなかったようですが、普通預金だと仮定すると、税金の上では、税制としてはどう取り扱われるわけですか。虎の門病院眼科部長という名称は、公益の名称なのですか、個人の名称なのですか。
  45. 小幡俊介

    ○小幡政府委員 ただいまの虎の門病院の問題でございますが、私ども新聞でそういう事実について報道されているのを見たわけでございますけれども、私ども自身どういうふうな関係にあるかということを調べたことはないわけでございます。ただ主計局の共済課の方で、この国家公務員共済組合の病院ということでいろいろ事実をお調べになったというお話を承っておるわけでございますが、それによりますと、すでにその預金は解約し返戻したというようなことだというふうに聞いておるわけでございます。そういうふうなことでございますと、すでに返されているということであれば、課税関係は生じないのではないかというふうに思います。
  46. 沢田広

    沢田委員 そういうことを聞いているのじゃないのだ。税法上どうなるのかと聞いているのです。
  47. 小幡俊介

    ○小幡政府委員 税法上の関係で申しますと、虎の門病院につきましては、国家公務員の共済組合の病院ということでございますので、法人税法によりますと、これについては、この病院事業に関連いたします収入というものにつきましては課税はされないということに相なっております。  それからまたこの預金の関係でございますけれども、これがもし眼科部長個人のものであればどうかということになるわけでございますが、眼科部長さん個人の預金ということになりますれば、これは所得税法によります預金利息についての源泉徴収というものが行われるということになろうかと思います。
  48. 沢田広

    沢田委員 そういうことを聞いているのじゃなくて、税法上どうなるのかということで、個人名義ならばといったって、私が言っているのは、虎の門病院眼科部長という名前預金をされているものはどう扱うのですかと、国税庁としての扱いを聞いているのですよ。簡単に言ってください。内容を聞いているのじゃないのだから。
  49. 小幡俊介

    ○小幡政府委員 私ども、事実関係を把握しておりませんので、ちょっといまの段階でお答え申しかねる状況にございます。
  50. 沢田広

    沢田委員 だって、これは常識じゃないですか。事実関係といったって、私は言っているのだから。虎の門病院眼科部長という名前預金をされているものは、公益団体として非課税になるのですか、税金がかかるのですか、こう開いているのですから。どっちなんですか。
  51. 小幡俊介

    ○小幡政府委員 それは先ほどのお答えで申し上げたと思ったわけでございますが、もしも虎の門病院に帰属しておる預金であるということになりますれば、先ほど申し上げましたように、虎の門病院は法人税法上この病院事業について課税されませんから、したがいまして課税関係は生じませんし、もしその預金が眼科部長さん個人のものであるということになれば、その預金については源泉課税がされる、こういうことになろうかと思うわけでございます。
  52. 沢田広

    沢田委員 まあいい、その辺でこの問題はとめておきましょう。逃げたい気持ちもわかる。  それで、個人だとすると、警察庁刑事局からもおいでをいただいていますが、こういう公益病院が百何十万かにわたって銀行の口座をつくって、四二四〇一四九か、そういう口座をつくって、毎月金をリベートで、眼科の医者が診断したものをめがね屋さんからもらう。こういうことは刑事局としてはどういうふうに判断をされますか。贈収賄になるのか、背任になるのか。たとえばいまの虎の門病院の名前を使えば、これはどういうふうな形態になるのか。その見解をひとつ承りたいと思います。
  53. 漆間英治

    ○漆間説明員 共済組合の役職員は、共済組合法によってみなす公務員とみなされておりますので、もし御質問の件が職務の対価として収受されたということでありますとこれは贈収賄罪が成立する場合があるというふうに考えます。ただ、この事案が具体的にそれに当たるかどうかというのは、個別の事案でありますので私ども内容を承知いたしておりませんので、お答えいたしかねます。
  54. 沢田広

    沢田委員 なぜこんな問題を私が挙げたかというと、この問題については、そういう事実を内部告発をした。ところが、その職員はとにかく追い詰められて、引導を渡されてやめさせられた。それをもらっている者がのうのうとして現在でもその役職につきながらやっている。悪法も法なりといいますが、あるいは平清盛じゃないが、悪い者が権力の座についていれば弱い者がいじめられたままで追い出されてしまう。そういうことを許すわけにはいかないという気持ちで、ささいな問題かもしれませんけれどもあえて私は問題にしているわけであります。もしも今後こういうことでどんどん弱い者がいじめられ首を切られていったならば、これは世の中の秩序が保てなくなっていくであろう一つの芽だ、こういうふうに考えてこの問題をあえて取り上げたわけであります。  ですから、けんか両成敗、もしどうしてもあれだったら両方が成敗されるべきであり、内部告発したと言われているその看護婦さんが二人とも引導を渡されてやむなくやめる状態になった、まさに生活をかけて追われたというかっこうであります。私は、そういうことが許されることではないのだということであえてこれを問題にしたわけなのでありまして、刑事当局においても、行政当局が何らこれに手を触れないとすれば当然この問題には触れて、リベートになるのか贈収賄になるのか——私はなると思っている。しかも口座をつけて毎月振り込ませるというようなことをやれば、これは職権乱用にもなるというふうにも思いますから、ひとつきちんと整理をしてほしいとお願いを申し上げます。  最後に、郵政省からおいでをいただきましたので、貯金局と人事局から週休二日制について——いつもやり玉に上がるのが郵政省であります。郵政省並びです。郵政省がやれば私の方もやります、郵政省がまずやっていく手だてを講じてほしい、こういうふうに思いますから、郵政省の貯金局関係だけでもせめてその実現を図ってほしいと思っておるわけでありますが、その見解を承らせていただきたいと思います。
  55. 小倉久弥

    ○小倉説明員 ただいまの件につきましては、御承知のように郵便局全国至るところにあまねく存在しております。また貯金、送金関係の業務のほか、郵便また恩給の支給というような国庫金の支払いなども広くやっておるわけでございます。これの土曜閉局につきましては、広く国民の方々のコンセンサスというものを得ていかなければならないだろうと考えております。  今回の銀行法の改正案が成立いたしますと、銀行関係につきましては土曜閉店なさる法的な基盤整備ができることになるというようなことをも念頭に置きまして、私どもさらに今後十分検討をしてまいりたいというように考えております。
  56. 沢田広

    沢田委員 これから検討だなんていう話じゃないのですよ。具体的にあなたの方はもうすでにやっているわけなのだから、次にどういう段階で進めていきたいか、その方向ぐらい示すのが——これから検討しますと言って、紺屋のあさってということではないけれども、そういう答弁で済まされるものではないだろうと思う。何年これをやってきました、何人の人がここで言ってきましたか。そういうのはばかにしている答弁です。だからもう少し真剣に、それは各省でまとまる、まとまらないの問題は別として、郵政省としてはこういう考え方週休二日制に踏み出したいのだ、その時期はたとえば銀行局が反対したから待ちますと言うなら、それは理由があるからいいのだ。ただあなたの方が検討だなんてことで答弁するのは、片方は銀行法がまだ通らないのだから、これは検討でもしょうがないけれども、あなたの方はもう実際に踏み込んでいるのだから、もう少し現実的な答弁をしてくださいよ。いかがですか。
  57. 小倉久弥

    ○小倉説明員 御指摘の点につきましては私どもも真摯に考えておるわけでございますが、いま申し上げましたように郵便局ならではというような業務をやっている面もございます。また全国に広く所在するという点もございますので、十分に利用者の方々のコンセンサス、御共感というものをいただかなければ国営の機関といたしましてまた問題が生じかねないのではないか。御指摘の点も十分よくわかっているわけでございますが、やはりそういう客観的な情勢というものをも十分考えながら——いま申しましたように、一歩一歩進展していくという客観情勢をもよく了知しておるのでございますが、現実にいますぐ具体的なスケジュールをお示しするような状況ではございませんので、そういう御指摘の点を十分に考えながら今後進めてまいるということで、そういう考え方をおくみ取りいただければというふうに考えるわけでございます。
  58. 沢田広

    沢田委員 あなたを怒っているのではない、しかられると思っていては困るのだけれども、問題は、もう週休二日制に進む寸前に来ている。だから、郵政省はコンセンサスを得られるよう努力をしながら実現に向かって努力したいと思います、そういう答弁をするのだよ。それならばいいんだよ。コンセンサスを得られるならばというのと根本的に違うのだ。私が言ったように答弁してみなさい。
  59. 小倉久弥

    ○小倉説明員 先生がおっしゃいますようにコンセンサスを得られるならばということではございませんで、コンセンサスを得ていくようにということであることはたしかでございますので、そのような感覚でおくみ取りいただければ幸いと思います。
  60. 綿貫民輔

    綿貫委員長 正森成二君。
  61. 正森成二

    ○正森委員 それでは銀行法等の改正案について質問をさせていただきます。できるだけ重複しないようにとは思いますが、他党がいままでに大分質問されましたので、部分的に重複する点があるのはお許し願いたいと思います。なるべく観点を変えて質問をしていきたいと思います。  まず第一に、銀行法案の「目的」のところでございます。第一条の一項に金融制度調査会の小委員会案と同じものが入っておりますが、第二項に「この法律の運用に当たっては、銀行の業務の運営についての自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない。」こうなっているのです。  それで、私はここに六法全書を持ってきておりますが、一般的に戦後一定の時期に至ってから制定される法律には、第一条に目的というのを入れるのが通例になっているのです。そのような法律のうち典型例を調べてみたのですが、このような一つの条項の中に目的と同時に運用についての基準というものが同居しているという法律はめったにないのです。  たとえば破壊活動防止法という法律があります。これは非常に問題になった法律で大論戦になりまして、当時党がたくさん分かれておりましたが、保守的な政党の方々も反対なさった法案です。これは「この法律の目的」として、第一条に「この法律は、団体の活動として暴力主義的破壊活動を行った団体に対する必要な規制措置を定めるとともに、暴力主義的破壊活動に関する刑罰規定を補整し、もって、公共の安全の確保に寄与することを目的とする。」そして第二条に分けて「この法律の解釈適用」、「この法律は、国民の基本的人権に重大な関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。」こういうぐあいにしてあるのです。  あるいは、同じように乱用の危険の多い警察法という法律がありますが、これも第一条にこの法律の目的が書いてあり、第二条の「警察の責務」というところで、警察は犯罪の予防や鎮圧や捜査をしなければならないが、「いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」というように、第二条にその運用の基準というのは定めてあるのですね。法律を一々挙げませんが、ほかにたくさんあるわけです。  いかなる理由で、こういう本来なら法の運用の基準とすべきもの、そして、わが国の法律では、もし定めるなら、それは第二条に別項目を立てて定めるようなものを第一条の「目的」の中に入れたのか、そこが法体系としてもわからないし、しかも金融制度調査会の原案に入っておらないということですから、伺いたいと思います。
  62. 米里恕

    米里政府委員 まず、この「自主的な努力を尊重するよう」という第二項を入れました理由でございますが、第一条の第一項では公共性ということを強くうたっておる。それで、従来の銀行法は、昭和二年の古い法律でございましたので、目的規定はなかった。今度新たに目的規定を挿入するという場合に、公共性ということがまず力説されなければならないことであるということは、おっしゃるとおりだと思います。今回の銀行法改正に当たりまして、近代的な立法ということから、いろいろな点で現行法よりもかなり中身がふえたというようなことで、公共性の面が全体として強く出てまいったということであろうかと思います。  そういった場合に、同時に、公共性を持った金融機関ではあるけれども、しかし、やはり私企業としての自主的な努力というようなもの、つまりある意味では、適正な競争を通じての金融効率化の実現というものが反面あることが忘れられてはならない、公共性が特に強く出てきた現在、同時に、銀行の私企業性というもののよさというものも十分認識しておかなければならないといったような考え方から、いわば確認的規定として第二項が入ってまいったということであったと思います。  そこで、私どもも法制局と相談します際に、いろいろ他の法律で一体どういうものがあるだろうかということは検討したわけでございます。一、二例を申し上げますと、私立学校法という法律で、第一条の「目的」の中に、「この法律は、私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ、公共性を高めることによって、私立学校の健全な発達を図ることを目的とする。」というような規定がございます。それから日本赤十字社法、これは第一条に目的をうたいまして、第三条に、「この自主性は、尊重されなければならない。」という、「自主性の尊重」という見出しのついた条文が入っております。他にも幾つかございますが、全然例がないわけでもない。しかし、これはいわば確認的規定ということの意味を持っておるものだというようなことで、挿入するという政策的判断をしたわけでございます。
  63. 正森成二

    ○正森委員 米里局長から懇切な御説明がありましたが、前段の部分の説明は、他の議員にもお述べになったことで、よく知っているのですね。  私が質問しましたのは、まさに第一条の「目的」の中に、項を分けて、本来目的でないものを規定するのは異例ではないか、こう言っているわけです。他の法律で、なるほど運用の基準とかあるいは乱用してはならないということを決めた法律はあるわけですね、私が幾つか指摘しましたように。しかしそれは目的ではないから、条文を分けて第二条に入れるとか、いま米里局長が引用したように第三条に入れるとかいうことで、目的は目的、運用の基準は運用の基準というようになっているのが法律のたてまえなんですね。それを目的の中の一つと読み取らざるを得ないように、第一条「目的」と書いて、それに第一項と第二項があるということは、本来運用の基準であるべきものを目的の中にすり込ませるという、やはり法技術上の非常な不整合性があるのではないかというように思うのですね。私が指摘しましたその点については、米里局長から答弁がなかったように思うのですね。  それで、私の方からあえて指摘しますと、私は弁護士ですから法律は比較的知っておりますが、すべての法律を知っているわけではありません。六法全書でばっと見たら、こういう規定の仕方をしている法律が一つだけあるのですね。  それは何かというと、警察官職務執行法なんです。これはこう書いてあるのです。「この法律の目的」第一条の一、「この法律は、警察官が警察法に規定する個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。」それで二項に、「この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであって、いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない。」こうなっているのですね。私の見ている限りでは、この法律以外には、目的の中に、乱用したらいかぬとか、運用の基準にわたるようなものが載っているものはないのです。  なぜ警察官職務執行法にこういうのが入れられたかというと、たしか昭和三十三年にも、警職法の改正というのがありました。反対でつぶれたのですが、そもそもこれができましたときに、国民の中に、警察官の職務権限を定めて、刑事訴訟法の発動される前に警察官の実力行動の基準を決めたものですから、乱用の危険が非常に大きいというので、強烈な反対があったのですね。そこで、そうではない、目的の中に乱用してはいかぬのだということを入れるということでこの法律ができたのですね。  そうすると、銀行法というのはそういう危険なものなのだろうか。銀行法というのは、国民のお金を預かって、そしてそれで貸し付けをしたり、手形割引をしたり、資金運用をやるという免許を受けた業者を監督し、あるいはそのあり方を決める法律なんですね。本来、警察官がピストルでバーンと撃ったりこん棒でぶん殴ったりという、国民の自由と生命に重大な関係がある、その権限を規制するような法律ではないのですね、業法の一種ですから。そういうものに、第一条の「目的」の中に、目的のいわば不可分の一つとして自主性を重んじろなんて入れるというのは、これは、日本のいままでの法体系では希有のことですね。入れるなら、第二条とか第三条として、運用の基準として入れるべきである。  これは、なるべく都合のいいことは自分らの思うようにさせてくれ、自分たちに役立つことは、どうぞ銀行局は行政指導もしてほしいし、預金金利も抑えてほしいけれども、自分らがやりたいほうだいという面については自主性を尊重してほしいという銀行協会の露骨な意図がみごとに法案に反映されているぬぐい去ることのできない証拠であるというように評価せざるを得ないのですね。いかがですか。
  64. 米里恕

    米里政府委員 まず法律の書き方につきましては、私どももいろいろ調べたわけですが、実はその警察官職務執行法については調べが行き届いておりませんでしたが、雇用対策法というのは同じような形になっておりまして、第一条の第一項に目的が書いてございまして、第二項に、「この法律の運用にあたっては、」云々云々で、「自主性を尊重しなければならず、」云々というような、書き方として非常に似た規定がございます。  結局、その第一条の中に入れるか、あるいは別に立てるかというような問題もございますけれども、公共性ということが非常に強く法律全体の精神として出てきておる、そういった場合に、そういった公共性の規定の裏側では、当局が余り過保護行政あるいは過剰介入というようなものを公共性という面を力説し過ぎて行うと、余り監督を強化する、あるいは細かいことまで縛るというようなことはかえって過保護行政に通ずるんだというような考え方から、そういったことが起こらないように、十分私企業としての金融機関の活力、かつその努力を尊重しながら進めなければいけないというような考え方が公共性とうらはらな話として出てきたのではないかと考えております。
  65. 正森成二

    ○正森委員 局長答弁答弁として承りますが、私は依然として、決めてはいかぬとは言いませんけれども、それは目的の中に入れるのじゃなしに、自主性を尊重するというのは運用の基準として別条項を立てるのが普通の法律の姿であったということは指摘しておきたいと思います。それがこの法律の運用の仕方についても非常に大きな影響を与えてくると思うのです。単に運用の基準じゃなしに、銀行法の目的そのものであるかのような規定の仕方は適切でないということを指摘しておきたいと思います。  次に、第二章の業務関係について伺いたいと思います。  この業務関係の中では今度は逆のことが起こっているのです。金融制度調査会の小委員会報告があります。これはどこを改正したらいいかということについて、そのまま条文に採用できるような相当細かい規定の仕方になっておる。それを見ますと、第五項に「業務範囲」が書いてあり、第六項に「銀行経営の健全性の確保等」となっています。この大きなものの百五十二ページであります。それには幾つかの項目がまた出ておりますが、その大きな項目は、毎決算期の利益の配当額の五分の一以上を積み立てていかなければならぬ、これは健全性の確保のためですね。それから、同一人に対する信用供与の総額が自己資本の一定割合を超えてはいかぬという規定、いわゆる大口融資規制と言われているものであります。しかし、この小委員会報告ではそれに先立って、第一項目に「銀行は、業務の遂行に当たり、自己資本を充実し、また資産の流動性を維持する等経営の健全性を確保するよう努めなければならない。」という文言があります。そして、これは私の承知しておるところでは大蔵省原案、あるいは銀行局原案とも言われておりますその中には、たしか一項目として入っておったと思うのです。小委員会報告でも出ており、大蔵省原案でも出ており、それがまさに銀行の業務ないしは経営の基本になるようなものが入っておらない。それはなぜ入っておらないか、これまでの答弁を聞いておりますと、第一項の「目的」の中に入っておるからそれでいいんだというお考えのようであります。しかし、第一項の「目的」は、あくまでこの法案の目的であって、大衆の預金を預かっておる銀行側の経営上の責務あるいは原則としてというのとはまた別のはずであります。したがって、これは第二章のどこかに総則的に入れるべきであったにもかかわらず入れておらない。一方、銀行の主張を聞いて自主性云々だけはこともあろうに「目的」の中に入れておるというのは重大な片手落ちではありませんか。
  66. 米里恕

    米里政府委員 おっしゃるような規定が小委員会意見として出ておったのは事実でございます。これはいろいろ議論の過程でこの条文を入れるかどうかということを検討したわけですが、最終的に落としたということの理由は、一つはいままさにおっしゃったような「目的」の中にいろいろな意味での公共性が言葉として入っておる。「銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し、」云々、これは目的ではございますけれども、法律全体にかかる精神であって、いわば銀行の一般的原則の一つとして健全経営に努めなければならないということは「目的」で当然読めるのではないだろうか、もしその健全経営の原則というようなものだけを他の条文に入れますと、銀行の公共性は何も健全経営だけに限ったことではない、資金配分を適正にやらなければならないとか、あるいはまた、資金の吸収面でも十分国民のニーズにこたえるような努力をしなければならないとか、いろいろな意味での公共性があろうかと思いますが、そのうちの健全経営というものを一般的原則の中から一つ取り出して一つの条文にするようなことはどうも適当でないのではないかというような意見が強くなりまして、この条文がなくても、結局健全経営、自己資本の充実とか資産の流動性の維持というようなものには当然のこととして金融機関は努めなければならないということでございますので、あえて規定を設ける必要はないのではないかと判断したのでございます。
  67. 正森成二

    ○正森委員 論理というものは何とでも理屈の立つもので、ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うという言葉がありますけれども、それならやはり、社会主義社会ではなし、資本主義社会だから自由企業は当然であるということになれば、第一条第二項に自主性の尊重的な規定を入れなくてもいいわけですね。まさに米里局長のいまの答弁をそっくりお返しすれば、第一条の第二項に入れなくてもいいという議論になるわけですね。それをば片や入れ片や入れないのはなぜであるかということがまさに私が聞きたいことなのであって、いまの答弁をもってしても私が考えている問題点の疑問が十分に払拭されたとは言えないというように思いますが、その点を指摘して、次に進ませていただきます。  今度は、大口融資規制の問題について伺います。  大口融資規制については大蔵省から資料をいただきまして、四十九年十二月二十五日には自己資本の二〇%という限度額をクリアしていないものが銀行数で四十四行、件数で九十九件あった、それが五十五年九月三十日現在では銀行数で八行、件数で九件に減っておるということのようであります。さらに言いますと、とどのつまりは、件数が九件ということですが、対象としては三井物産と東京電力だけであって、銀行数は三井銀行とあとは信託銀行が五つということのようであります。ほかの銀行等の名前についてはあえて申しません。  そこで伺いたいと思いますが、これからは名前を挙げて言いますから、出所を申しておきます。これは「金融ジャーナル」の八〇年の十二月号、日本貿易会企画部長古澤實氏の論文であります。この方が書いておられる論文によると、「大口融資規制が発動された際、大手商社のなかでは、三井物産、三菱商事、丸紅、伊藤忠商事、住友商事、日商岩井、トーメン、安宅産業の八社が規制基準を超えた借入をしていた。」こういうぐあいになっております。商社は全部基準を超えているわけですね。そのときに規制されたのは、普通銀行は二〇%、長期信用銀行、信託銀行は三〇%、外国為替銀行は四〇%という制限で、「貸出金には、長期・短期貸付金のほか、手形割引、外貨建て貸出、海外店貸出も含まれていた。」こうなっております。そして、そのうち丸紅以下の六商社については、銀行の自己資本の増加で超過分の解消は可能だと初めから見られていた。「三菱商事の場合は、規制基準の倍を超える融資を受けていた三菱銀行に対する超過解消が困難ではあるが、借入先を順次振り替えていくことで超過分はなんとか解消できる」こう書いてあります。それで解消しました。最後の三井は、「三井物産では、規制基準の三倍を超える三井銀行をはじめ、銀行間で借入先を振替えてもなお一千億円の超過分が残る勘定とされていた」、これは出所は総合商社年鑑、昭和五十年版だそうであります。それで、私が申したことは、この方は前三井におられた方のようですから事実であろうと思います。  それで、今度の大口融資規制については、一般には銀行の健全性の確保ということを、昨日銀行の役職者を呼んで聞いたときにも強調しておりますが、それだけではなしに資金の適正配分、中小企業や個人消費や、あるいはその他の公共部門というように適切に配分されるためには、同一責務者に対して過大の信用の集中が行われてはぐあいが悪いという点があったと思うのですね。  そういう点からしますと、私は伺っておきたいと思うのですが、十三条を見てください。十三条には「同一人に対する信用の供与」となって三項まで決まっております。それで、他の議員も質問された向きもあるかと思いますが、念のために、第一項の、例外を決めておりまして、「ただし、信用の供与を受けている者が合併をし又は営業を譲り受けたことにより銀行の同一人に対する信用の供与の額が信用供与限度額を超えることとなる場合」、ここまではよろしい。「その他政令で定めるやむを得ない理由がある場合において、大蔵大臣の承認を受けたときは、この限りでない。」この「その他政令で定めるやむを得ない理由」というのでどういうことを考えておられますか。
  68. 米里恕

    米里政府委員 現在政令案を検討中でございますが、いま考えております「やむを得ない理由」というのが一項、二項と二つございまして、一番目は、予見しがたいような緊急の資金の必要が生じて、限度額を超えて信用供与をしないこととした場合に、その事業の継続に著しい支障を生ずるおそれがあるときというのが第一点です。それから第二点が、一般電気事業その他の国民経済上特に緊要な事業を行っている場合であって、限度額を超えて信用供与をしないこととすれば事業の安定的な遂行に困難を生ずるおそれがあるとき、大体この二つがいまの検討されている案でございます。
  69. 正森成二

    ○正森委員 いまの御答弁は、一項だけでなしに、二項の「これらに準ずるものとして政令で定める信用の供与については、適用しない。」という条文がありますね、それも含めて御答弁になったわけですか。
  70. 米里恕

    米里政府委員 いや、違います。
  71. 正森成二

    ○正森委員 違いますか。それじゃ二項のその点についてお答えを願います。
  72. 米里恕

    米里政府委員 第二項の、適用除外とする信用供与を定める政令の中身でございますが、政府関係機関に対する信用供与というものを指定することを考えております。
  73. 正森成二

    ○正森委員 三項の「前二項に定めるもののほか、第一項に規定する資本及び準備金の合計額並びに信用供与限度額の計算方法その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。」となっております。これのうち二〇%、三〇%、四〇%というようなパーセンテージ等については他の議員からも質問があったと思いますが、それ以外に「大蔵省令で定める。」というのはどういうものですか、念のために言ってください。
  74. 米里恕

    米里政府委員 この十三条は、非常に政令、省令があちらこちらに出てまいりまして恐縮ですが、いまおっしゃいましたその二〇%というのは、この条文で言いますと三行目、「当該銀行の資本及び準備金の合計額に政令で定める率を乗じて得た額」、ここが二〇%というふうに考えておるわけです。  それからいまおっしゃいました第三項の「必要な事項は、大蔵省令で定める。」という省令の中身、これもまだ現在検討中でございますが、この省令の中身というのは信用の供与の計算方法、それから自己資本の計算方法などを定める省令を考えておりまして、その信用の供与の計算方法の中で商業手形の割引あるいは預金、国債担保貸しあるいはまた輸出代金保険質権設定貸し出しといったようなものを除外することを考えております。
  75. 正森成二

    ○正森委員 そうなりますと、行政指導でいままでやっておりましたときには、国債担保とか商業手形割引なども含めて二〇%の枠内にしていたようですから、商業銀行と信託銀行では違うでしょうが、今回の大蔵省令案がもしできていたとしたら、四十九年当時の二〇%という制限枠はおおよそ何%になっていたであろうかという点について、概略で結構ですから、わかれば言ってください。
  76. 米里恕

    米里政府委員 いま四つばかり計算から除外するものを申し上げましたが、そのうち預金担保貸し、国債担保貸し、それから最後に輸出代金保険質権設定貸し出しというのを申し上げたわけですが、これは貿易手形と言われておるものですが、貿易手形自体は外為勘定でございまして、除外とかなんとかいう性格のものではございませんので、それに相当するものとして輸出代金保険質権設定貸し出しというものを考えておるわけです。この三つにつきましては統計はございませんが、少なくとも預金担保貸し出し及び国債担保貸し出しはほとんど数字は現状ではネグリジブルでございます。それから輸出代金保険質権設定貸し出しは若干数字があると思いますが、何%というほどのものになるかどうかということで、問題になるのは商業手形の割引でございます。これが大体都市銀行の総貸し出しのうちの二割ぐらいを占めておるということでございますので、それから逆算いたしますと、規制比率二〇%は、実質規制比率と申しますか、換算してみますと二五%ぐらいになる、長期信用銀行の三〇%は三〇・六%ぐらいになる、外為専用銀行四〇%は四六・八%ぐらいになるという計算になります。
  77. 正森成二

    ○正森委員 そのことによって大口融資規制が緩められる問題点があると思いますが、その運用については今後見守っていきたいというように思います。そのことによって資金の公正な配分というのが害されることのないように切に希望しておきたいと思います。  ディスクロージャーについて伺います。  この点については同僚議員が多く質問をされておりますが、私としてはやはりどうしても黙視することができないのは、金融制度調査会の小委員会の原案を見ますと、相当はっきり書いているんですね。それはたとえばディスクロージャーの点について二項の(イ)のところに、これは金融制度調査会案ですが、「銀行は、毎営業年度終了後一定の期間内に、業務及び財産の状況に関する事項について書面を作成し、本店並びに命令で定めるその他の営業所及び代理店に備え付け公衆の縦覧に供さなければならない。」供するものとするじゃないんですね。「供さなければならない。」(ロ)「上記(イ)の書面には、貸出、有価証券保有の状況その他資金運用の概況を示すものであって、適切な資金の供給が行われることに資するため開示することが必要と認めて大蔵大臣が定める事項について、大蔵大臣の定めるところにより記載しなければならない。」こうなっているんですね。こうなりますと、少なくとも貸し出しや有価証券保有の状況その他資金運用の概況を示すもの、これで大蔵大臣の定めるものは、必ず縦覧に供しなければならないことになるんですね。ところが今度の場合には「縦覧に供するものとする。」こうなっておるだけで、それは供しなければならないんだけれども、法律で供しなければならないとなってないから、供してもいいし供さなくてもいい、精神はディスクローズするんでしょうけれども。そしてその中身も金融制度調査会の原案なら、こういう項目はしなければならない、大蔵大臣が、渡辺さんがこういうことをやれと言っているんですよ、こうなるのですけれども、それもないということになりますと著しい後退であることは免れない、私はこう思うのです。米里局長は、いやいや、現在の銀行もう自主的に大分大幅にディスクローズして資金運用の状況というのはやられておるのが多いし、本来自主的なものに任せるということも金融制度調査会には書いてあるんだからというような答弁をすると思いますけれども、その答弁では答弁になってないと思うのです。ですから、かくも明白に書いてあるのになぜそういう点を抜かしたのかという点について、私がいま言った答弁以外何か言うことがあれば言ってください。
  78. 米里恕

    米里政府委員 金融制度調査会の答申と実質的に一番変わりましたのはいまおっしゃった必要的記載事項を大蔵大臣が定めるか定めないかということでございます。大蔵大臣が一律に記載内容を定めるというようなことになりますとかえってそれで固定化されてしまって、それぞれのディスクロージャーというものが相互の競争によって逐次発展を遂げていくというような余地がない、非常に固定的なものになってしまうんではないかということで、銀行の自主努力にまった方がこの制度の性格から見てもより実りが多いのではないかというように考えたわけでございます。
  79. 正森成二

    ○正森委員 私が局長がそう言われるであろうという答弁に少しばかりバリエーションをつけた答弁なんですけれども、しかし米里さんそれはちょっと通らないですね。というのは、必要的記載事項を決めたらそれで固定されるかというとそうではないので、要は必要的記載事項の決め方なんですね。必要的記載事項では最小限度のことを、資金運用の状況を決めて、それで役所はいつでもやるんだけれども、その他銀行が必要と認める事項、こうしておけばそこで銀行は一生懸命競争するわけです。これだけやればもう能事終われりなんで、これ以上はもう開示したらいかぬのだ、大蔵大臣が命令してないんだというようなことを言われぬで済むわけですね。だからそういう規定の仕方をすれば資金運用の状況、資金の流れ、中小企業にどれだけ出しているか、特定企業にどれだけ出しているかというような知りたいことも知れるし、それ以外に銀行は私のところはこんなことをやっているんですよ、だからうちの銀行をごひいきくださいと言いたいですね、やりたいことは何ぼでもできるわけですから。だからそういう法律の規定は十分可能なんですね。だから必要的記載事項を決めたら銀行の自主性がなくなってしまうということじゃなしに、最小限これだけは多少いやでもやりなさいよ、それ以外は銀行が自由にディスクローズしなさいよというのは、まさに四十九年の狂乱物価のときに銀行が商社等に大量に貸し出して、土地を買い占めて値段が暴騰したりその他いろいろ投機行為に走ったということにかんがみて銀行法の改正が発議されたということにかんがみて非常に適切なやり方であり、金融制度調査会もそれを望んだと思うのです。きのう佐々木さんも、私がいろいろ言いましたら、それは調査会は関知せざるところだ、つまりそれは大蔵省がやったんだ、金融制度調査会はもっといい案を考えておったんだ、節度のある方だからそこまではおっしゃらなかったけれども。だけれども言外にそうおっしゃりたいんだなということがわかる言い方をされたのです。その点については、銀行局長が二年間にわたって非常に苦労されたという労は多としますけれども、またそれがあったからこそ銀行法ができることになったのでしょうけれども、国民のサイドから見ると非常に遺憾である、こう思わざるを得ないのです。その決断をされたのは政治家の渡辺さんですね。渡辺さんに一言。
  80. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ディスクロージャーの問題は御議論のようなことがいっぱいあったわけです。どういうふうに書くかまず政府・与党の中で議論がありました。そこばかりじゃなくて監督規定の問題とかいっぱいあるわけですから。そこでいつまでも議論をしておってもこれは切りのつかない話で、政府・与党一体でやって与党が認めないというものを国会に提案するわけにもいかないことでもありますから、そこで私の責任で決めたのです。いろいろありますが、実質的にみんなやるということになればそれを極端にやらぬとかそういう銀行もないだろうし、行政指導もできるわけです。これは行政指導ができなくなってしまうわけじゃないのです。銀行の方も自主的にやりたい、こう言うから、それじゃそれでやらせましょう、そのかわり、自主性は尊重するかわり責任を持ってくださいよ。自主性を認めろと言うのなら責任を持ってもらわなければ困るわけですから、それは念を押してあるわけです。そういう結果生まれたもので、私が決めたことでございます。
  81. 正森成二

    ○正森委員 渡辺大蔵大臣は自信あってのことだと思うのです。大臣は政治力もあり某々医師会長とでもはでにやり合われるわけで、ぎょろっとにらまれれば一にらみでディスクローズが出てくるということかもしれません。しかし、大蔵大臣にもいろいろありまして、おとなしい方もおられるわけです。そんなに目が大きくない人もいます。だからそういう人の場合でも平均的なディスクローズができるようにするのはやはり法律でなければならないのです。だからそういう点では遺憾な点であるというふうに思わざるを得ないのです。  さらに、細部ですから局長に伺いたいと思いますが、私が非常に問題があると思いますのは、渡辺大蔵大臣、現行法に比べても後退しているのじゃないかと思われる面があるのです。局長、細かい条文ですからお手元の条文を見てほしいのですが、現在の銀行法を見ていただきますと、現在の銀行法も結局第十条で業務報告書を出さなければいけない、第十一条で主務大臣の定める様式による貸借対照表を作成しこれを公告しなければいかぬというようなことが決めてあるのです。これは公告するわけですから最小限度公衆に知らせるわけです。これに対して、もしやらなかった場合にどういう罰則あるいは制裁が科せられるかといいますと、現行法では第三十四条で次のような場合には「銀行ノ本法施行地ニ於ケル代表者ヲ一年以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス」、罰金等臨時措置法がありますから罰金の額はもっと高くなるのですね。その内容は「業務報告書又ハ監査書ノ不実ノ記載、虚偽ノ公告其/他ノ方法ニ依リ官庁又ハ公衆ヲ欺圏シタルトキ」こうなっている  のですよ。だから官庁だけでなしに公衆をだまくらかしたら一年以下の懲役になりますよ。こうなっているのです。  それだけではなしに、三十五条を見ますと、「本法ニ依り銀行ニ備へ置クベキ書類ノ備付若ハ主務大臣提出スベキ書類ノ提出ヲ怠り、之ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ又ハ之ニ不実ノ記載ヲ為シタルトキ」、「本法ニ定メタル届出若ハ公告ヲ為スコトヲ怠り又ハ不実ノ届出若ハ公告ヲ為シタルトキ」という二つは一万円以下の過料に処する、こうなっているのです。  だから公衆に対してうそのことを言うたり書いたりした場合には一年以下の懲役もしくは十万円以下の罰金という刑罰——刑罰ですからこれは逮捕もされるのです。それから行政罰である過料という両方を科せられるということになっておるのです。  ところが、今度の銀行法の改正ではいかがであろうかというように見てみますと、必要的記載事項が訓示規定に変わっただけでなしに、罰則を見ますと、まず第一に六十三条を見ていただきますと、大臣に対して業務報告書を出さなかったりあるいは記載しなかったり、うそを書いたという者は、これは刑事罰になるのです。しかしそれは五十万円以下の罰金に処するということで、刑はうんと軽くなっているのです。そして他方、第二十条で定めてある貸借対照表等の公告ですが、この「公告をせず、又は当該公告をしなければならない書類に記載すべき事項のうち重要な事項を記載せず、若しくは重要な事項につき虚偽の記載をして公告をしたとき。」というのは、これは百万円以下の過料だけなんです。いいですか。そして、われわれが一番問題にするいわゆるディスクロージャーの規定の二十一条については刑事罰もなければ過料という行政罰もない、こういう仕組みになっているのです。だから、ある意味では、すべての点について現銀行法よりも処罰は軽くなっておるということなんですね。まして、公衆の縦覧に供しなければならぬという点は、必要的記載事項でなくて訓示規定だから、やってもやらなくてもいい。それで、だまくらかしてやろうと思ってうそを書いておっても、前と違って刑事罰も科せられなければ過料も取られない。やりたいほうだい。さすが目的事項に自主性を入れてくれただけはある、よかったよかったと、こうなる。これでは、この銀行法改正のそもそもの出発点からしておかしいのではないか、現銀行法よりぐんとディスクロージャーについて責任が緩和されているのですから。
  82. 米里恕

    米里政府委員 まず現行法の公告でございますが、おっしゃるように刑事罰と過料と両方あった、それが公告に関しましては過料だけになったじゃないか、こういうことにつきまして、現行法の三十四条の第一号の問題でございますが、「虚偽ノ公告其ノ他ノ方法ニ依リ」「公衆ヲ欺圏シタ」とき、これは「官庁」というのはかかりませんで、この場合公告でございますから、公衆欺圏の問題でございますが、これが実は、公衆欺圏ということを立証することは非常に困難であるというようなことから、関係当局とも相談いたしました結果、実際に働きようがないということで落としたという経緯がございます。  それから一方、縦覧の方は、これは何もかからないということでございますが、これはまさに不作成の問題と不実記載の問題と両方あろうかと思います。  不作成の問題につきましては、そういった訓示規定としての性格上罰則に書けない。  それから不実記載でございますが、不実記載を立証するためには真実であるかどうかという審査を関係当局がやらなければならないということになりますが、これはいわゆる自主性という問題もございますとともに、現実の問題として、全部ディスクローズすることを官庁で内容の適否を判断するというようなことは、第二臨調も働いております現在、余りに官庁の事務を膨大にならしめ、それが果たして適当かどうか、自主性の問題のうらはらから考えましても適当かどうかということで、特にその内容についてはすべて自己責任である、大蔵省が一々事前にチェックするわけではないというようなことにしたわけでございます。
  83. 正森成二

    ○正森委員 その答弁も一見あるいは一部もっともらしく聞こえるのですけれども、しかしそれも本当は委員会での答弁なんですね。官庁機構が膨大になるからといって、ディスクローズするものについて官庁が一々全部責任を持って、過ちがちょっとでもないか調べて、ちょっとでも過ちがあれば過料をつけなければいかぬ、やれ告発して刑事罰を科さなければならぬというものではないのです。それはディスクローズしたけれども、まさに国民にとって許しがたいような虚偽であった、そのために国民が何らかの被害をこうむったというような場合には必ずどこかで問題になるのですね。その場合に、刑事罰の場合には何も大蔵省が御努力なさらなくても警察あり、検察庁ありで、すみからすみまで調べてくれるのですね。そして裁判官が、それがうそであるかどうかということはちゃんと判断してくれる。また起こった問題については詳しく大蔵省が調べて、これは過料を科すべきである、こう思えばやればいいということで、何もすみからすみまで見て回らなくてもいいのです。それをあたかも、刑法には人の「財物ヲ窃取シタル者ハ」「十年以下ノ懲役ニ処ス」と書いてあるからといって、すべて一億一千万の国民をつけて回して、どれぞあいつは物をとらないかということを調べなければこの法律を全うしたことにならないというようなことを何もやる必要がないのと同じことであります。ですから、局長の苦心の答弁ではありますけれども、こういう規定は著しく、やはり銀行の、普通の会社ではなしに、国民大衆の預金を預かっており、それを適正に運用しなければならないという責務を負っている会社、免許を受けている銀行としてそれぐらいの責任は負わされるのが当然ではないか。それは昭和二年の銀行法でも当然考慮した内容であるという点から見ますなら、私は必ずしも適切な対応ではないと言わざるを得ないということをやはり指摘しておきたいと思います。  そこで、そういう点を指摘いたしまして次の点に移りたいと思うのですが、銀行を一定の、最小限度の行政指導なり監督をしようと思えば、そこから報告を求めたり、報告だけでは不十分な場合には検査をしなければなりませんね。この検査についてのつまり監督関係の規定もまた非常に懇切丁寧になっているのです。  比較をいたしますと、現行の銀行法では、「何時ニテモ」報告を求めることができるし、「何時ニテモ」検査をすることができるというようになっている。これは二十条の規定であります。ある意味では乱暴な規定ですが、「主務大臣ハ何時ニテモ銀行ヲシテ其ノ業務ニ関スル報告ヲ為サシメ又ハ監査書其ノ他ノ書類帳簿ヲ提出セシムルコトヲ得」、第二十一条、「主務大臣ハ何時ニテモ部下ノ官吏ニ命ジテ銀行ノ業務及財産ノ状況ヲ検査セシムルコトヲ得」ということで、渡辺さんは強大な権限を持っているわけです。「何時ニテモ」ですからね。銀行というのは、あの銀行は危ないぞということがわかってから行くというのじゃだめなんです。健全にやっておるだろうけれども、念のために調べておくというのでなければ不健全なものを発見することもできないのですね。そういうことをもおもんぱかって現行銀行法は、公衆の預金を預かっているのだからというので「何時ニテモ」と、こうなっているのです。  それを受けて金融制度調査会の答申ではどうなっているだろうかという点を調べてみますと、金融制度調査会の小委員会報告では、その点も配慮をしたのでしょう、ほかの点については制限をつけておく部分もありますけれども、百五十八ページですが、「大蔵大臣は、必要に応じ、」「財産の状況に関する報告を求め、又は書類帳簿を提出させることができる。」「大蔵大臣は、必要に応じ、当該職員に銀行又は代理店の施設に立ち入り、質問又は検査をさせることができる。」ということになっているのですね。  ですから、現行銀行法は「何時ニテモ」と、「何時ニテモ」ではあんまりだから金融制度調査会は「必要に応じ、」「必要なときは、」こうなっているのです。ところが、現在当大蔵委員会提出されている法案はどうであるかというと、「大蔵大臣は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、」という制限がついているのです。もし銀行側が、「銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要がある」というその根拠を示せとこう開き直ってきたらどうするのですか。現行法なら「何時ニテモ」こうなっているのです。また金融制度調査会なら必要ありと認めるときはというのですから、必要があればいけるのですね。ところが、今度の場合には限界規定を置いて、「銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、」こうなって、単に報告を求め、あるいはさらに検査をすることにも監督官庁の方が重大な自己規制を課しているのですね。これはなぜですか。
  84. 米里恕

    米里政府委員 御指摘のように、金融制度調査会の答申で「必要に応じ、」と書いたものを具体的に条文化したものが「銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、」こういう書き方になりましたわけで、この法律全体が、ともかく大蔵大臣が監督いたしますゆえんが、「銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため」に大蔵大臣が監督、検査をするわけでございますから、そういった意味でこの法律のうたっておる公共性という観点、健全経営という観点から大蔵大臣が判断をするということでございますから、特にその基準を示さなければならないというような話ではないかと思います。
  85. 正森成二

    ○正森委員 実際の運用ではそうするのでしょうけれども、しかし、もっと立ち入って銀行に対して何かをやるというときには、それは制限規定は要りますけれども、そもそも何事かが銀行に起こっているか起こっていないかがもう知れ渡ってわかるようになれば、そんなときに検査をしたって手おくれになる場合もあるんで、これは呉文二さんの論文なんかにもそういう点が書いてありますね。  それで、よくわからないけれども、場合によったら、定期的に必要があろうがなかろうが、それこそ「何時ニテモ」検査をする必要性と利益があったわけですね。それをこういうぐあいに制限した。私はこういう制限というのはある場合にはやってもいいと思うのです、行政権限を発動する場合にはその発動要件と限界を明らかにするというのが近代法の原則ですから。しかし、それならばなぜ監督規定で、当初の大蔵省原案には、監督について業務改善命令その他発動する場合にはこういう要件のある場合にここまでできますよという条文が六カ条か七カ条かあったでしょう、それはばっさりと削ってしまって、現行の銀行法の非常にあいまいな、しかし法三条の、あたかも封建時代のお上の権限のようにやろうと思うことは何でもできるという内容の規定の仕方になっているのですね。一方ではそういう規定の仕方をしながら、それのそもそも端緒になるような報告を求めるとか職員に調査させるということだけは近代法の形をとって限界をつけるというのは、これは間尺に合わない。そういうきちっとした近代法的なスタイルをとるなら監督規定全般にわたってやるべきだし、それは困るからいまの銀行法をちょいとひらがなに直した程度でやってくれと言うならやはりそれと同じように、「何時ニテモ」報告を求められるとか「何時ニテモ」調査できるというように、その点の方も昔のあれで行きましょうと言うなら、その当否は別として首尾一貫しているのですね。ところが、そもそもの出だしだけはきゅっと縛られて、後の方は同じように近代法の体系をとって発動要件と限界を決めるということはやらないというのは、法律としては非常に矛盾なんですね、男に女を接いだようなもので。悪いのは何もかも自民党です、こうなるのでしょう。だから米里さんを責めるのは気の毒かもしれません。しかし、渡辺大蔵大臣には責任をとってもらわなければいかぬと思うのです。規定の仕方が大体矛盾しているでしょう。
  86. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そういう議論もあることは事実でございます、物は見方でございますから。問題は銀行法は五十年前にできたもので、「何時ニテモ」何でもできる、これも余りひどいということで、それじゃ答申のように「必要に応じ、」というのも、何で必要なのか。これも「何時ニテモ」と同じなんですね、「必要に応じ、」ということならば。必要だと言えば必要なんだから。しかし「必要に応じ、」と言ってもそれは「何時ニテモ」と余り変わらないじゃないかということになれば、それは職権の乱用をするわけではないのですから、銀行の業務の健全性とか運営をどういうようにやっているかということについてちょっと疑念があるとか、ない場合でも、定期的にやる場合も必要だから定期的に見ますよということもここへ入っているわけです。だからこれは「何時ニテモ」の緩衝子みたいなものでして、ある意味では言葉をやわらかくして、職権乱用とかそんなふうにどこまでも介入しませんという歯どめになっていることは事実だと思うのです。このこと自体はそうまずい規定ではない。  ただ、あなたのおっしゃるように、監督規定のところは昔のかたかなをひらがなに直しただけで、そこのところはばっさり何でもできることになっておって、ここのところだけは御丁寧になっているのはどういうわけだ、そういう議論があることもこれは決して不思議ではない、そう私は思っておりますが、これは私は財政演説のときに申し上げたとおり、関係方面と調整の上銀行法提出するということでございますから、業界が全面反対だというようなものを出しても意味がないし、いまの銀行法で権限強大でやっていけるわけですからそれでもいいと思ったのですが、しかし一歩前進、また前進というところがあれば、ここでともかく五十年来銀行法を直さないというわけでもないし、そう整合性を欠くこともないし、部分的にうんと細かく書いたところとうんと大ざっぱに法三条的なところとまじっていて体系的に体裁をなさぬじゃないか、法律専門家からはそういう議論が出るのじゃないかと実は私は思っておったのです。だけれども、それはそれとしても、しかし別な見方もあるわけですから、私どもは別な見方によって、ともかく全体としてそう矛盾したことでもないし、そういう体裁上の問題は確かに議論があるかもしれない、しかし、じんぜん日を送ってまたこれがさらに何年先になるかわからぬということでも困ると言うものですから、私の判断において、法制局とも相談をした結果、このように改正をさしたということでございます。
  87. 正森成二

    ○正森委員 与党の大臣としては御苦心のあったところと思いますから、これ以上は深く質問をいたしません。  証券局長においでいただいていますので一言伺いますが、私は証券関係についてもディスクローズする必要があると思うのですね。それは個々の証券会社が、証取法に基づいて必要なことが定められておりますね、それをやるのは当然ですが、たとえば証券業協会とかあるいは場合によったら東京証券取引所とかそういうところがディスクローズすべき点があるのではないかというように思っているわけです。これはそういう趣旨の論文もございますが、特に誠備グループなどのことがありまして、株が異常に高く買われているというようなことがありました場合に、そういう事実を情報公開するということによって防げることが大分あるのじゃないかというように思うのですね。  それで、たとえば株価収益率というのがありますね。私よく知りませんが、PERと略称されているのですが、それがこの前のときは百倍にも買われているということがございました。あるいは株価純資産倍率というのですか、略称ではPBRと言うのだそうですね。こういうものを一般に銘柄によって公開して、かくも異常に買われているというのは何かあるのではないかというようなことを公開する必要もあるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  88. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 ただいまの株価の問題でございますが、現在、東京証券取引所におきまして、株価の急騰あるいは売買高や信用取引残高の急増が見られたような銘柄につきましては、必要に応じまして注意銘柄という制度を採用しております。注意銘柄に指定いたしまして、売買等について投資家が十分注意をするようにということをやっているわけであります。そういうことで、現実には、一般投資家に対するディスクローズがかなり行われておりますので、特に、御指摘のような株価収益率、PERと申しますが、これは一株当たりの利益で株価を割った数字でございますが、こういったものを取引所として公表するというのはどうであろうかと考えております。  ただ、先般当委員会におきましても、東証の理事長からも、この辺の問題についてはさらに検討したいということを申しておりますので、私どもといたしましても、取引所と十分協議いたしまして、何らか改善するようなことがあれば今後実施してまいりたい、このように考えております。
  89. 正森成二

    ○正森委員 注意銘柄として出すというのは、それは必要な場合もあるでしょうけれども、注意銘柄として出させるというのは要注意人物というようなもので、なかなかやりにくいと思うのですね。しかし、いま言いましたような二つの基準、PERとかPBRとかを出すというのは、何もこれが注意銘柄だと言っているわけじゃないので、参考のために出しますと株価収益率はこうなっておりますよということで、投資家の自主的な判断にまつということですから、行政当局としては無用な介入の印象を与えないでよりやりやすいことではないかと思うのですね。ですから、そういうディスクローズも必要ではないかということを私はこの機会に申し上げておきたいと思うのです。  それから、誠備グループだとか加藤だとかいうのがありましたから、投資顧問というのですか、それを規制するための投資顧問法というようなものを制定しないと、証券局もなかなか行動しにくいというような声もありますが、そういう点についてはいかがですか。
  90. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 ただいまの株価のディスクローズの問題につきましては、いま申し上げましたように、PERは現実に計算は行われているわけでございまして、これを公表するかどうかという問題だけでございますので、東証とも十分諮りまして、投資家の便益に供するという意味におきまして公表してもいいじゃないかということになれば、これは実施してもいいのではないか、このように考えております。  それから、投資顧問法の問題でございますが、これにつきましては、いろいろ検討いたしました。アメリカでこういった制度がございまして、一つは登録制になっておる。それからもう一つは、規制の対象として、詐欺的な行為、要するに投資家をだますとか、そういったような行為に対する規制、あるいはのみ行為、証券業類似行為、こういったものに対する規制が行われていることは事実であります。ただ、これを日本において採用するかどうかということになりますと、御承知のように、詐欺的な行為については刑事罰の規定がございます。刑法によって罰せられる。また、証券業類似行為というものにつきましては当然証取法による処罰の対象になっているわけであります。したがいまして、投資顧問がいわゆる投資家に情報を提供する、その情報の内容について、これを法的に規制するという問題につきましては技術的にかなりむずかしいのではないか。かえって、そういった投資顧問をストレートに規制するよりも、証券業者のサイドから、証券会社のサイドから投資顧問とのかかわり合いを規制するという形にした方が実効が上がるのではないか、こういう考え方をとりまして、先ほども申し上げましたが、今回、健全性省令というものを一部改正いたしまして、証券会社が投資顧問とかかわり合って、特に投資顧問あるいは投資グループからの株式の一括受注、特に投資家の意思を十分確認しないで行われるそういう一括受注については厳に慎んでもらいたい、こういうような措置をとった次第であります。  そういうことで、投資顧問法については今後も研究を続けたいと思いますが、やや時間を要することでもございますので、当面の措置としていま申し上げた省令の改正で措置をした、こういうことでございます。
  91. 正森成二

    ○正森委員 ディスクロージャーと監督の問題をこれで一応終わらしていただきますが、その前に、公取は来ておられますか。——私が実は心配しておりますのは、ディスクロージャーについて訓示規定になった。その場合に、たとえば都銀なら都銀が、お互いにしょっちゅう会っているわけですから、うちのところはディスクローズはここまででやめておくことにした、だけれどもうちのところだけじゃぐあいが悪いからあなたのところはどうかというようなことで、資金運用の状況について非常に細かいことはやめておくというようにだんだんとなっていくのではないか。つまりそのことについての談合行為が行われるのではないか。その行われたときに、銀行法上は文句の言いようがない。それで独占禁止法では不公正な取引方法とか不当な取引制限という規定があるのですが、一体それで何かできるだろうかというように考えてみたのですが、情報の提供、サービスの提供という程度のことについて何か話し合いで自己規制をやった場合に、どうもそれが不当な取引制限だとか不公正な取引方法と言えるのだろうかという疑問もあるのですね。公取はそれについてどう判断しますか。
  92. 厚谷襄児

    厚谷説明員 先生ただいま御指摘になりました銀行の縦覧制度につきまして、そのあり方につきまして銀行間で意見や情報を交換すること自体、それは独占禁止法に触れるということはちょっと申しかねるのじゃないかと思っております。しかし、そういう意見や情報を交換する過程におきまして、縦覧に係る内容、範囲を、個々の銀行の意思に反して制限的に統一するということ、これは公正取引委員会といたしましては、独占禁止政策上好ましいことではない、このように考えております。
  93. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、いまの御意見は、独占禁止法の政策上好ましいことではないが、不公正な取引方法もしくは不当な取引制限に当たるということで権限を発動するほどではない、こういう意味ですか。
  94. 厚谷襄児

    厚谷説明員 そのように理解しております。
  95. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣銀行局長もよく聞いておいていただきたいと思うのです。いま公正取引委員会がああいう意見を言ったのですね。つまり、ディスクローズについて余りやらない、むしろやらないようにしようじゃないかと言って相談するということをやっても、新銀行法では訓示規定だから、実際上はそれほどできない。じゃそれは独占禁止法上の不当な取引制限なり不公正な取引方法になるのかと言えば、好ましいことではないけれども、しかし権限を発動するほどでもない、こういうのですね。そうすると、結局、やらぬでもいい、もちろん自分の意思でやるのは自由ですよ、ということになるのですね。ざる法になるというおそれがあることを私は遺憾ながら指摘せざるを得ないということで、時間が大分たってきましたので次に移らしていただきます。  まず国債の窓販、ディーリングについて伺いたいと思います。その法律面については六十五条二項の解釈その他ありますが、一応決着がついたことですし時間がございませんから省略しますが、私は実態面について幾つかの疑問を感じざるを得ないのです。その論点を幾つか申し上げたいと思います。  まず第一にこの窓販、ディーリングを認めることによって個別の銀行としては自分のところの預金がどんどん減ってそれで国債が買われるということでは商売にならないわけですから、どうしても他行の預金からの振りかえをねらうということになるのじゃないですか。銀行としては何と言ってもコストの安い預金をたくさん持っておってそれを有利に運用すればいいわけで、それが減るほど自分のところの預金者が国債を持つ、預金がどっと引き出るというようなことは困るわけです。そうなると窓販やディーリングができればうちのところの預金は置いといて、よその銀行のものを崩してそれで買うてくださいという競争になるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  96. 米里恕

    米里政府委員 銀行が窓口で国債を販売しましたときにどこの金融資産を食うことになるのか、あるいはまたどこも食わないことになるのか、これは抽象的に考えてもなかなかわからない問題であろうかと思いますが、国債自体をとってみますと、やはり現在の証券会社だけというようなルートに比べまして、金融機関店舗を非常に数多く持っておりますから、そういったものが売り出すことによって国債の新たなニーズが出てくるというようなことはあろうかと思います。その場合に、もし全体の金融資産が一定であるということになりますと、何らかのものを食うということになると思いますけれども、それは具体的にどういうことになりますか、そのときの経済情勢にもよると思いますし、かつ食うということになりますか、金融資産の増加分がどこにどう行くかというようなことはそのときそのときの情勢によるということだと思います。
  97. 正森成二

    ○正森委員 いま銀行局長答弁でも、やはりどこかを食うという現象が起こるということは否定できないと受け取れる答弁だったと思うのですね。  さらにバンクディーリングをやりますと、銀行というのはただでさえシ団で引き受けさせられて国債はげっぷが出るほどたくさん持っているわけですから、これをいつでも売っているわけですね、現先で売ってみたりいろいろなところで売ってみたり。そうすると、こういう恒常的な売り大手である銀行が、果たして売り手と買い手の仲介業者として公正な値段形成ということでディーラーの責任が果たせるだろうかという疑問が証券業界から出ておりますが、私はそれは無理からぬ疑問であると思うのです。  さらにこれに絡んで言いますと、銀行は資産の運用部門として国債の売買をやるのですね。一方は仲介としてディーラー業務をやる。そうしたら資産運用部は物すごく持っているわけですから、だからこれの損害になるようなことでこっちのお客の利益を一生懸命守るということはなかなか無理じゃなかろうか。  それからもう一つは、国債の価格がそのときそのときのニーズによって比較的自由に決せられることが望ましいというのが大方の説でありますが、それについては財政当局も余り自由になり過ぎては困るという説は伝統的大蔵省の意見ですから、問題はありますがそれは触れませんが、そうだとしますと、しかし銀行としても、余り国債の評判がよ過ぎて、それが商品として価値が高くて全部国債に逃げてしまって預金へ来ないというほど国債が有利になっても困る。だから預金にもそこそこ来る、国債もまあまあだという程度の価格が少なくも銀行としては望ましいわけですね。証券業界はそうじゃない。証券業界は自由な値段で国債を売れるなら売れて結構ということでしょうけれども、そうすると、やはり銀行というのは預金が逃げない程度に国債の利回りというものを抑えていくという力が働くのじゃないかというようなことを多くの証券業界は言っておりますし、また私は経済学的に見てもそうじゃないかと思うのです。  そういう銀行が大挙窓販、ディーリングに出ていくというのはどういうものだろうか、果たして、実態面から見て多少国債の売れ行きがよくなり、そして大量国債の消化と借りかえに資するというだけで評価していいものであろうかという気がいたしますが、いかがですか。
  98. 米里恕

    米里政府委員 国債を流通市場で金融機関が扱うようになった場合に流通市場の価格形成にどういう影響を与えるだろうかということはいろいろな面があろうかと思います。考え方としてデメリットの点もあるかもしれませんが、メリットの点もあるだろうというようなことだと思います。御承知のように流通市場ができるだけその担い手が寡占化されないで多角化していく、数もふえていくというようなことが価格形成にプラスになるという面も十分あろうかと思いますし、要はその辺は今後の運営の仕方あるいは銀行のビヘービアの問題であろうかと思いますが、十分当局としても気をつけなければならない問題だと思います。
  99. 正森成二

    ○正森委員 やはり非常に心配な点があるということを言われたと思うのですけれども、それと同時にもう一つ心配なのは、銀行というのは資金を貸し付けるわけですね。だから貸してもらっている企業は非常に弱いです、貸してくれなかったらえらいことですから。そして多くの場合銀行は、相当程度以上の企業になると株をぎょうさん持っていまして、独禁法で制限はあるけれども、一番目ではないまでも十位以内には必ず入っているというところが多いわけです、大株主ですから。そういう力を利用して、貸してはやるけれどもそのうちの一割か二割国債を買うてくれという歩積み両建ての代替品として使われる可能性は非常にあると思うのですね。当然それをやると思うのです。そうしたら、特に大きな企業は力があるからそれをはねのけるかというとそうじゃないので、たとえば大口融資規制でも国債担保は別だということになれば、国債を持ってくれ、そのかわり金も貸す、だけれどもこれは大口融資規制の枠外だから持ってもらったっていいじゃないかということで大口の方にはいく。小口の方には、買うてくれないと一億貸そうと思っておったけれどもまあ五千万ですかというようなことになるという弊害は、やはり陰に陽に起こってくると思うのですね。そういう点はどう考えていますか。
  100. 米里恕

    米里政府委員 歩積み両建て的なことが起こるのではないかというようなことにつきましては、きのうも参考人の方々から一部御発言があったと思いますが、歩積み両建ての目的というのは、やはり一つは実質金利の引き上げである、それから二番目は両建てにすることによって業容の拡大の形をとろうとする、こういうことだと思います。国債の場合にこれがそれぞれ当てはまるかどうかということを考えてみますと、まず国債を売ったからといって、預金と違いまして預金量がふえるというような形ではございませんので、そういった意味での業容の拡大ということとは性格が違うのではなかろうか。それから実質金利の引き上げになるかどうかというのは、これまた若干議論のあるところであろうかと思いますけれども、いわゆる預金と貸し出しといったようなものの関係と、それから貸し出しと有価証券という関係、しかもそれは自分が発行している有価証券ではないというようなことを考えてみますと、どうもやや性格が違うのではなかろうか。つまり、貸し出しと預金を相殺に持ち込めるような拘束性のあるものになるのかどうかという点は、私はどうも性格が違うのじゃないかと思います。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 そういった意味で、どうも歩積み両建てということとイコールのことが発生するかどうかということは疑問でございますが、ただ恐らく御指摘の点は、そういったような銀行の力を利用して取引先に無理に消化をさせるのではないかというようなことにつきましては、そういうことがないように十分気をつけてまいりたいと思います。
  101. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 ただいまいろいろ御指摘がございましたが、これらの御指摘についてはすでに証券取引審議会におきまして窓販あるいはディーリングを実施する際にこういう問題があるぞということでいろいろ御指摘をいただいているところでございます。今回の法改正は、そういった実態面の問題は一応別に置いて、六十五条を基本といたしまして銀行法と証取法との整合性を図ろうという観点から法律改正をお願いしたということでございます。したがいまして、今後窓販の実施に際しまして認可をどうするかという認可の時期等について、たびたび申し上げておりますように三人委員会の御意見も十分伺って大蔵大臣において決定しよう、こういう段取りになっております。また、仮にバンクディーリングというようなことを認めるといたしますれば、それに伴う弊害については十分目張りをしていかなければいかぬ。たとえば第五十条の不公正取引の禁止、これは証券取引法の規定がございますが、これを今回銀行が証券業務を行う場合にも準用しようということにいたしております。また、仮にそういったディーリングを行うということになれば、やはり投資有価証券と商品有価証券との勘定の区分を明確にする必要があるのではないかというようなことも考えております。  そういった問題も含めて今後の検討課題にしたい、このように考えております。
  102. 正森成二

    ○正森委員 両局長からいろいろ御意見を伺いましたが、私はやはり非常に問題があり、しかもこういうぐあいに法律を整備し、六十年からは大量の借りかえもあるということになりますと、私がいま指摘したような点は単なる危惧にとどまらないで、現実性を帯びてくるのではないかということを指摘しておきたいと思うのです。  それで、一々本当は質問で聞くべきなんですが、時間がなくなりましたので質問でなしに私の方から申し上げたいと思います。  調べてみますと、コール市場と手形売買市場、短期金融市場ですが、それを見てみますと、大体いつでも資金の取り手というのは都銀ですね。手形売買市場なんかでは大体九〇%ぐらい、それからコール市場の場合でも大体八〇%を超えるというような状況であります。資金の提供者の方はどうかというと、意外なことに信用金庫とか相互銀行というのは、わりと小さなところがそれぞれ一〇%近く出しておるということで、手形売買市場などでは信用金庫と全信連が二〇%というような資金の提供者になっているのですね。それはその限りにおいてこれらの地方の中小金融機関が都銀に対して余裕資金を提供する、こういう関係になっているのですね。私は、こういう状況が国債の販売という面でも出てくるのじゃないかということをやはり思わざるを得ないのです。いま銀行局長が歩積み両建てとは違うのじゃないかという意味を言いましたが、必ずしもそうとは言えない。その一つは、なるほど業容の拡大とかという意味では、従来どおりに預金の預け入れと貸し出し、割引だけが銀行の業容ならそうでしょうけれども、今度からは公共債をどれだけ取り扱ったか、それによってどれだけ利益を売買手数料とか何とかで上げたかということが業容の一つであれば、これはやはり業容の拡大ということで出てくる。それからまた、実効金利の点から言いますと、歩積み両建てのようにもろにはそれによって実効金利が上がるということはないにしても、銀行というのは恒常的に大量の国債を持っておるわけですから、窓販で新規国債を売るという場合にはそれは右から左に国へ行くかもしれませんけれども、自分の大量に持っておる国債をお得意さんに売りつけるということになれば、これはもろに銀行に金が入ってくるわけですから、そしてそれを運用できるということになるわけですから、ある意味では利息のかからない金が、国債を押しつけることによって、うんとこすっとこ入ってくるということになりますと、これは同時に銀行にとって利益であり業容の拡大になるというように思わざるを得ないわけであります。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕  それを申し上げて、一言大蔵大臣、あなたは昨年十一月の相銀大会で演説をしておられますね、それは週刊東洋経済の五十六年三月十四日号に書いてあります。そこで「自己責任の原則に基づき経営を合理化し、体質を強化していくことが不可欠。店舗行政の弾力化も進めるが、さらに、各行間における業務提携、合併等、幅広い措置について、金融機関の自主的判断に基づいた検討が必要」こう言っておられるのですね。つまり金融再編成のお考えであります。再編成を必ずどんどん進めるというわけじゃありませんけれども、それは否定しない。その点から見ますと、今度の銀行法の改正では合併だとか譲渡の規定が非常に整備されているんですね。現行銀行法とは比べものにならないのです。しかもその中には異種銀行相互銀行信用金庫、信用組合、労働金庫まで吸収できるという規定になっておるのですね。それについて大蔵大臣三つのことを判断しなければならないとなっておりますが、逆に言えば、三つの点に触れなければこれはどんどん信金やら信用組合やら労働金庫まで吸収してもいいというかっこうになっているんですね。これはこの大臣の演説と比べ合わせますと、あるいは呉文二さんなどが護送船団方式なんというのはやめて銀行といえども倒産あり得べし、余り健全でないのはどんどん吸収合併をやって整理していくのだという意味のことを言うておられる、そういう方向と軌を一にするのではないか。それがなぜ行われるかと言えば、これは国債の大量消化の時代を控えて、本当に消化しようと思えば、財政負担という点を考えなければ、買いやすい国債にする、つまり金利をある程度引き上げて市場の実勢に従った金利にするということが望ましいというのはいろんな方面から出ておるのですけれども、それをやりたいけれども余りそれをやったら財政負担が莫大になる。既発債の値段が暴落する。だからそれはできない。だからやはり金利は統制しなければならぬ。財政負担が過大にならないように、許容する範囲内に国債つまり長期金利はとどめなければならぬ。しかもなおかつ国債は消化しなければならぬし、借換債は消化しなければならぬ。それには銀行に窓販、ディーリングを認める、そうすると大きなところは自分預金を減らさないように消化しようとする。どこへ行くか。資金に若干余裕がある地方銀行やら信金やら相銀やら、そういうところへ行く。そして系列化することによって吸収合併されるならそれは大いに結構という発想がやはり財政当局にあるんじゃないかというように思わざるを得ないわけであります。  私はその点について一言だけ指摘しておきたい。わが国が同じような状況にあったのは、昭和六年の満州事変の後の昭和八年の八月に政府は銀行政策について新方針を決定して、今後は一府県または経済的に一単位とみなされる地域内での全金融系統を整備し、金融統制を確立することを決定した。昭和十一年、いよいよ昭和十二年の支那事変が始まる前に、当時の馬場蔵相は有名な一県一行主義というのでどんどんと整理をしたのです。ですから昭和十一年には四百九十八あった銀行昭和二十年にはなんと六十五に減ってしまった。これについて日銀の「満州事変以後の財政金融史」では次のように言っているのです。「しからば政府は何故にかくも積極的に合同を進めたのか。……いうまでもなく国債消化、低金利政策遂行の要請であった。日華事変以来日銀引受による国債発行が累増するに従ってその消化の過程にも波乱を免れなかった。当時大都市所在の大銀行はこの国債消化と生拡資金の供給とで手一杯の状態であったから、消化の鉾先を地方銀行にまで拡げることは当然の成行であった。そしてその拡大のためには銀行の合同を必要としたのである。しかもそれは単に国債消化の技術上の便宜のためのみではなく、この種の銀行のもつ地方的特色を減殺しその大銀行への従属化、従ってその「国策」への順応を実現せんがためでもあった。そしてそのためには国債消化政策と密接な関係にある低金利政策を地方へ浸透させねばならなかったが、」云云「地方銀行を合同させることがより根本的だとされたのである」というようになっているのですね。私は、殷鑑遠からず、わが国の昭和八年から十一年ごろの財政状況というのは、現在の日本を考える上で大いに参考にしなければならぬことだと思います。  鈴木総理がレーガン大統領と会われて、日米共同声明で同盟関係を誇示されて、そして恐らく軍拡が行われるであろうという状況になってまいりました。そういう状況で国債を消化するために、やはり低金利政策は維持しなければならぬ。だから大臣も言われておるように、相銀やら信金やら信連というのは合併だ、そして、国債の窓販を認めてそういう方向へどんどん売り込ませるというのが、やはり今度の銀行法改正なり中小企業関連法案の改正の根底に流れる歴史の必然の方向であり、哲学ではないかというのが私の推測であります。  私の予測が当たっていなければ幸いですけれども、当たっている可能性もまた非常に多い。歴史が決定するであろうと思いますが、渡辺さんの哲学を伺って、時間が来ましたので、私の質問を終わります。
  103. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大変歴史的事実に基づいた御解釈をいただいてありがとうございますが、私は、それほど組織的に、意識的に考えてやっておるわけではございません。それは御参考にして承ります。  銀行の合併というようなものも、別にスケジュールやプログラムを持って考えているわけでもありません。それぞれの銀行の健全性を図っていくというためには、場合によっては合同する、合併することも必要だろう。そのときに、私といたしましては、大きな金融機関が小さなところをみんな併呑してしまうというようなやり方ではなくて、まず同種の金融機関から、合併をする必要があればしたらいい、その上級のものとやったらいい、やるべきものがないときは、大銀行信用組合もそれはやむを得ないだろう、そういう考えでございまして、異種金融機関の合併を容易にするということは、併呑、吸収合併でなくて、まず同種の金融機関、またはそれに類似した金融機関、そういうようなものの合併を優先すべきである、そう考えております。
  104. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  105. 綿貫民輔

    綿貫委員長 伊藤茂君。
  106. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いままでの銀行法の審議を通じまして、法律上の諸問題がいろいろと指摘をされてきたと思います。ディスクロージャー、大口規制週休二日、窓販、証券業務、いろいろと問題が出されました。その答弁を伺っておりますと、おおむね理解できる部面もございますし、よく理解できない点もあります。私は、視点を変えまして、今後の金融構造、金融政策、そのベースには産業構造、産業政策の変化もあるわけでございますが、そういう金融構造、金融政策の変化と今後の銀行のあり方という点から、問題を幾つか指摘をしてみたいと思います。  最初指摘をしたいのですが、いままでいろいろ同僚議員から指摘がございましたように、今回の法律改正のルーツは、七〇年代初頭の列島改造、狂乱物価、土地の買い占めなどというところからスタートをいたしているわけであります。あれから、長い年月を経た今日でありますけれども、銀行のそのような反社会的態度というものをどうチェックしたか、繰り返させないように保障措置ができたのかということが、私は、この銀行法を採点をする第一の物差しではないだろうか、経過から来た判断の基準ではないだろうかという気がいたします。  それから、もう一つの物差し、基準を考えますと、高度成長から安定成長と経済条件も大きく変わりましたし、また、調査会の答申もございますように、銀行をめぐる環境、条件も大きく変化をいたしました。また、今後の金融構造もさらに急速な変化も予想されるということであります。そういう将来展望にどう対応するのか。言うならば、金融機関が今後求められる国民経済、国民生活の課題に効果的に対応するのかどうかということが二つ目の基準ではないだろうかというふうな気がいたします。  そういう二つの物差しを考えてみたわけでありますが、総合して一歩前進というのか、〇・五歩か〇・三歩前進というのか、というふうな気持ちでありますけれども、まず第一の物差しで考えますと、私は、率直に言って、大変不十分というふうなことであろうと思います。同僚議員からも、この審議の中でいろいろと指摘をされております。  それは、金融制度調査会の答申、それから、大蔵省原案と言われるもの、正確には大蔵省銀行局案ですか、というものから今回の提案をされている法律の段階へという中で、大きかったのは、数十日にわたって与党内での議論があったようであります。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 またその背景には、銀行が活発な政治工作をしたということ。ある新聞を読みましたら、銀行協会が自民党議員二百人ぐらいを個別訪問をして頼んだというような記事も載っておりましたけれども、そういう経過の中で、大変御熱心な数十日に及ぶところの審議が与党の中であったようでありまして、その結果として幾つかの骨抜きがなされたというふうなことであろうと思います。  また、新聞を見ますと、そういう結果といたしまして、自民党が銀行に、励ます会のパーティー券をたくさん買いなさいというツケが残って大変だとかいう記事まで幾つか載っておりますが、いずれにいたしましても、この経過を考えますと、これは国民の立場から見てどうだろうかという問題意識を非常に感ずるわけでありまして、そういう意味で言いましたら、これは冗談ではなく、審議の一環として、与党がどういう大変御熱心な審議をなさったのか、特別報告をしてもらってやったら非常に明快になるであろうというふうな気もするわけでありますが、そういう経過を踏まえまして今度の法案が出され、幾つかの問題点指摘をされております。  私がその第一の物差しに関係をして伺いたいのは、先ほども質疑がございましたけれども、第一条第一項、第二項の関連、特に第二項の自主性という問題についてどう見るかということであります。  先ほども正森議員から、法律的な視点でのいろいろな問題がございました。理論と実践と申しましょうか、現実論で幾つかお伺いをしたいというふうに思うわけでありますけれども、伺いたいのは、第一項にはいろいろと目的事項が書いてございます。第一項に書いてあるそれぞれの目的事項、銀行業務の公共性、信用の維持、預金者の保護、金融の円滑な運営、銀行業務の健全かつ適切な運営、国民経済の健全な発展に資するということは、私は、まことに結構なことだと思います。第二項の方も、自主的、自発的に努力をすることを尊重するというわけでありますから、言葉だけを見れば結構なことが書いてあるということだと思いますが、しかし、問題は態度なんですね。言葉はいいけれども、やはり問題は態度で示すということだと思いますから、歌の文句ではありませんが、態度で示すということから見ますと、第二項が保障されるかどうかということを非常に疑問に思うわけであります。  言うならば、第二項の文字はあるけれども、銀行業界としてあるいは銀行協会としてでも結構でありますけれども、今度の法改正を機会に社会と国民にみずからのフェアな、あるいはあるべき責任に基づいた態度を表明するというふうなことは一遍もなかったと私は思います。新聞のいろいろな評論を見ましても、銀行法改正の原点を問うとか、与党の銀行法改正の姿勢を問うとか、あるいは不毛に終わった銀行法審議——当委員会ではないですよ、前段にございました与党内の審議についてそういう新聞の社説でもずいぶんたくさん出されております。私はそういうものを見ますと、非常に残念なことですが、金融界に国民に向けた見識と識見のある人はいないのかという気持ちがいたします。新聞報道を途中で見ますと、大臣もなかなか国会提出の見込みがつかないとか、本当にそう言ったのじゃないだろうと思うけれども、見出しでは継続審議もやむを得ないと大臣語るなんという段階も一部の新聞には経過上あったわけでありまして、担当された銀行局長その他もいろいろと思うところがあるのではないだろうか、同じ与党の中ですからあれですけれども、そんな気も実はするわけであります。  私は、そういう意味からいってまず最初に伺いたいのは、自主的な努力、自主性、その現実というものを考えてみますと、第二項の言葉に書いてある状況とは大分違った、ダーティーとまでは言えませんけれども、国民に向けて、また国民経済の中での重要な部門の責任感に基づいて見識のある発言を国民に御理解を願うという姿勢が一つもなかったというようなことを考えますと、私は官僚的監督は反対ですけれども、世論をベースにしたフェアな意味での行政指導というものは今後とも必要なのが現実ではないだろうかというふうな気がいたします。この審議の中での大臣の御答弁を伺っておりますと、とにかく銀行の方が自主的にしっかりやるというのだから、監督を削ったにしたって自主的にしっかりやってもらえばいいじゃないかと大変銀行性善説、私ども性悪説ではありませんけれども、そういう姿勢の御答弁がいままでございましたが、私は現実問題としてそれだけでは足りないというのが現実の姿ではないだろうかというふうな気がいたします。  そういうことの考え方と、それからやや具体的に言いまして、昨日もわが党の堀委員参考人業界の皆さんに言われておりましたが、業界自身が自主的にたとえばディスクロージャーの面でも努力をする、これはミニマムではなくてなるべくマキシマムの方向に向けて努力があるべきだと思うわけであります。また銀行協会の意見書を見ましても、各行別に自主的に努力をするというふうなことでいいのだということになっているわけでありますが、いま求められている社会的責任ということから見て、しかも態度で示すということから見れば、やはり業界全体として、あるいは銀行協会なりそれぞれのジャンルの団体の責任として必要な努力をもっとやるというくらいの姿勢がなければいかぬじゃないだろうか。参考人にお見えになって質問をされて、大変興味ある御提言なので前向きに勉強してみたいと思います、というような答弁でございましたが、私それを伺っていて、一つ社会的な責任感と見識が欠けるのではないかという気がいたしました。それらのことは大蔵大臣大蔵省銀行局長の方からしかりおくといったらオーバーかもしれませんけれども、また訓示規定というふうになっているそうですから、あり方を懇々と訓示をするとか、そういうふうなことも昨日の参考人意見を聞いてみた上に立ってみれば現実問題必要なときではないだろうか。あるいはこの銀行法の成立を期してそういうことが一遍あってもいいのじゃないかというようなことを思うわけでありますが、第一条第二項の現実性についての率直なお考えを伺いたい。
  107. 米里恕

    米里政府委員 たびたび御議論が出ておりますが、金融機関というのはまさに銀行法という法律を中心としていろいろな面で法規制がなされておる。これは金融機関が他の一般の業種と違って、預金を預かり、信用秩序を維持しておるというような意味で、非常に大きな社会的責任を負っておるということであろうかと思います。そういった意味合いからは金融機関が公共性を発揮する、それも健全経営ということだけでなしに、資金の調達面についてもあるいは運用面においても、社会的に必要としているニーズに十分こたえていかなければならないということを今後ともに努力していくということが、いまの銀行法改正についての基本的な考え方であろうかと思います。しかし、同時に金融機関も私企業である。したがって私企業としてのいいところ、つまり活力というものは自由主義経済体制下において十分生かしていかなければならない。そういったような意味合いで大きなルールを法律で決め、そのルールの中ではできるだけ相互に競争し合う、自主性を発揮し合うことによって国民経済的な機能を拡大していくことが一番望ましいのじゃないかということで、その両面がこの第一条の精神として出ているということかと思います。
  108. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 米里さんからいままでと同じ話を聞きましたけれども、私が言うのは、いままでの経過を見ましても、新聞の社説その他このことに関する報道、それからマスコミが一斉に社説に書く姿勢というものは共通しておりますが、ある意味ではこれは国民の声ですからね。何を言っているか。さっき申し上げたとおりですよ。きのうの参考人の話を聞いたって、堀さんが質問提起をしたくらいのことは、やはり業界に見識のある指導者がいたら、役員の方がいらっしゃったら、少なくとも七年前、八年前の状態を繰り返しません、これからの時代の要求にこたえることをわが金融界は大いにやっていきます、という気持ちを持っていれば、あんなことはやっていたと思うのですよ。ですから、いまの御答弁の解説は結構ですけれども、たとえば銀行法施行されるくらいの時点で、いろいろと大蔵省側は苦労されたわけですから、銀行協会のさまざまな動きがあり、与党の長い長いあれがあり、苦労されたわけですから、解説ではなくて、正直率直にあるべき姿勢、今後の方向について何かあるべきではないだろうか、そういう気持ちあるいは行為があってもいいのじゃないかということを申し上げたのですよ。いかがですか。
  109. 米里恕

    米里政府委員 最近の時代と申しますか、経済、金融環境は非常に激変いたしておりますし、国民経済的に金融に要請されていることも刻々変わってきておるというような時代でございます。今後においても非常に時代の激変が激しいと思いますので、公共性ということを考える際においても、金融界においても十分ちまたに出てちまたの声を聞きながら、社会の一つの重要なファクターとして十分社会に接しながら事柄を判断していってほしいというふうに考えております。
  110. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ちょっと気持ちを言われましたけれども、もうちょっと私は言いたいと思うのです。  この間この審議に関連していろいろな資料を読んでおりましたら、日本経済新聞社が発行しました「ディスクロージャー 秘密主義は許されない」という本がありまして、読んだらアメリカのディスクロージャーの歴史が書いてありました。バンク・オブ・アメリカの状況の詳しいことまでは書いてございませんでしたけれども、非常に興味があったのは、アメリカでも一九二〇年代から社会のいろいろな問題があって、ディスクロージャーという発想が具体化をして、情報公開への動きに発展をしてきた。御承知のとおりに一九三三年に証券法、銀行法証券取引法、そしてSECと言われる証券取引委員会がつくられて大統領直属の独立機関として活動している。これはロッキード、ATT、グラマン、ボーイングその他のことで日本国民も記憶に新しいわけでありますが、それから今日に至るその経過を見ますと、ディスクロージャーをめぐるSECと企業との闘いの歴史であり一つ一つの事件の積み上げであった、そして今日の情報公開というかディスクロージャーの一定の発展が図られている。現在SECのスタッフも全国で二千五百人ほど活動しているようであります。また、いろいろな苦情とか申し入れとか申し込みというものが年間一万件以上コンスタントにある、それらに対する調査、情報活動などをいろいろとやっているということのようであります。そういう歴史を見ましても、企業は本来的に自分の会社と自分の事業、自分のもうけに不利な内容を公表する。「私は特別銀行性悪説、性善説じゃないのですが、残念ながら今日資本主義社会ですから、資本主義というのは利潤追求が原理です。しかし今日の近代的な資本主義社会においては、公共性とか国民に対する責任とかいういろいろな枠組みの中で、しかもそれを尊重しながら企業活動をしなければならないというのが今日の社会構造であろうと思います。どちらにしても企業というのはもうけるようにやらなければ倒れてしまうわけですから利潤追求があくまでも原理である。そういう意味から言いますと、本来的に不利なもの、あるいは自分のやっていることにダーティーなことがあってもみずからそれを進んで公表するということは原理的にはなかなか生まれない。それで社会にあるべき問題意識、問題点といろいろの不断の闘争があってだんだん発展をしてくるというのがこのディスクロージャーについての原理的な物の考え方ではないだろうかと私は思います。  ですから、いままでも議論がありましたように訓示規定になった。それでは果たして自主性でもってディスクロージャーは発展するのかということは疑問を感ずるわけであります。さっき申し上げた本を読んでいましても、いまでも百社以上の企業が疑わしきは進んでディスクローズするようにとSECが求めたのに対していろいろと不正献金問題などについても自主的に公表するという姿もあるようでありまして、日本でもそういう対抗関係の中で今後発展をしていかなければならないというのが、たとえばディスクロージャーについても原理といいますかルールといいますか、現実はそういうものだろうという気がするのです。銀行局長はこの法案提出までの経過に非常に悩まれた立場だと思いますから、銀行局長にけしからぬと言うわけではないのですが、やはりそういうものであろう。その本を読んでおりますと、アメリカの企業の年次報告では書き出しのところがユアコーポレーションから始まっているのです。あなた方の会社とか企業とか法人、ユアコーポレーションから始まっている。私も幾つかの銀行からそのディスクロージャーに関係をした資料をいただいて読ませてもらいましたが、それは当行、わが企業、法人は、当行はということです。それだけの違いが現実に起きているということだろうと思うのです。ですから、そういう意味から言いますとディスクロージャーの発展についても、何も頭から性悪説で言うわけではないけれども、それを規制し要望する世論とか努力とか、あるいはある意味でのそういう社会的パワーとか行政指導とかいうものがなければ、いまわが党も情報公開法を提案をいたしましたけれども、そういう意味でのフェアな社会秩序というものは生まれないのではないだろうか、参考までに本を読んでも、何かそんな感じを深くいたしました。  また、これは銀行局長に苦言を呈しておきたいのですが、この間どなたかの御質問に対しまして、大蔵省原案あるいは銀行法大蔵原案の段階からディスクロージャーについての罰則なんかありませんでしたというようなことを言われていたのですが、大蔵省銀行局案というのがございまして、これを資料で出してもらいたいと言いましたら、これが本物ですから印刷を出すまでもありませんというお話でございました。それを読んでみましてもディスクロージャー、開示制度に関係をする条文に対して三十万円でしたか、罰則の項目が入っている。これが削られて訓示規定になった。罰則の方を削られたというのが事実の経過というわけでありまして、先ほど来議論がありましたように、ダーティーな部分は言わない、不利な部分は言わない、PRだけになっても問題なし、業界全体でしめし合わせても問題なしということでは困るわけであります。ですから、そういう企業の社会的責任、金融機関の社会的責任、公共性、ディスクロージャーの歴史、現実問題としての経過から考えてみますと、単に自主的にそれぞれの銀行がやるというだけではない、要求といいますか必要なアクションといいますか、きのうも村本さんでしたか、堀さんの質問に対して業界全体として比較対照しなければ、とにかくどこの銀行が健全なのかどこの銀行がリスクがあるのかわからぬ、だから項目別に一覧表にしたものをつくってみたらどうですか。これは大変興味ある話でございました。相当前向きの話でございました。現実にいま社会的な声とか要望というのは、全体がそういうところにきていると思うのです。ですから、監督だ規制だ、自主性の強化がどうだとか法律上の条文の解釈は別にして、マスコミが一斉に言ったような意味での国民世論だと思いますし、また銀行を利用する多くの国民があり方についてはそう思っている。そういう声を代表してあるべきではないだろうか。何か専門家に向かってディスクロージャーのそういう論理学から歴史なんか申し上げて恐縮なんですが、そういう意味から言ってあるべき姿勢あるいはあるべきアクションは国民を代表する行政として必要なのではないだろうかと思うわけであります。大体そう思いますか思いませんか。感想を言ってください。
  111. 米里恕

    米里政府委員 ディスクロージャーについていろいろお話がありましたが、私もディスクロージャーによって企業があるいは金融機関がみずからの内容をはっきり国民大衆に知らせていくことは今後の社会的な風潮の中でますます必要になってくる。これは決して石油ショック以後の一過性とかそういったような問題ではなしに、今後国民大衆に広く深く金融機関が接していく上ではどうしても金融機関自身にとっても非常に必要なことであると考えております。また、そういったディスクロージャーを行うことによって国民のニーズが金融機関にもわかってくる、そのニーズに即した業容の進め方もできるということで非常に重要なことであると思います。  幸いにして、現在各種金融機関はディスクロージャーについて非常に前向きに取り組みたいという姿勢にございますので、できるだけ相互触発し合っていいディスクロトジャーが行われることが期待されるわけですが、必要に応じましては行政面でもそういった自主的な努力を補完するという必要もあろうかと思います。
  112. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私は率直に申し上げたいのですが、米里さんがいて恐縮なんですが、いままで銀行局長を務められた多くの方が主として金融界で、民間で主要な役割りをやられている。私はこういう気がするのです。国家と国民の重要なパートとしての行政を担当されたわけですから、わが地元の吉國さんなんかそうですけれども、そういう方々がほかとは違ったくらいのプライドを持つ七社会のためにあるいはあるべき業界のフェアな発展のために支えとなっているというくらいの姿勢を持ちながら行動されるようなことがあっていいんじゃないだろうか。各界で活躍されているOBの方々なんかを見ましても、そういう期待をもっと持ちたいという気もいたしますし、何もこれは銀行局長に苦言を呈するだけじゃなくて、金融界だけでない問題ですし、また、情報公開とかいろいろな問題についても、自治体でも国レベルでも市民運動などを通じて努力されているわけですから、それらとともにもっと発展していくという方向で御努力いただきたいと思います。正直に言って、ロッキードその他のように国を揺るがす大問題がアメリカからわかってくるというような状態は、いまでもまだ変わっていない。この銀行法の審議なり参考人意見を伺ってもそういうことではないだろうかと思いますし、骨抜きにした方は大変けしからぬと思いますけれども、行政の方でもぜひそういう時代の方向づけとしての見識を持って行動されていただきたいと思うわけであります。  これはそのくらいにしまして第二の物差しの視点ですが、申し上げましたように、今後の金融構造の変化、今後の金融政策、これとこの銀行法の運用とはもちろん不可分なものでありますけれども、そういう部面から見て銀行法の採点というものは一体どうできるだろうかという問題であります。  私から申し上げるまでもなく、この数年間に銀行をめぐる環境あるいは日本の金融構造は大きな変化をしたわけでありまして、高度成長から低成長への構造変化、オイルショック以降の日本の産業、金融、経済状態、それから銀行預金、貸し出し両面での伸び悩み、企業の銀行離れ、海外取引、個人取引の増加、国債の負担、利ざやの縮小、不良債権の増加、郵貯問題等一斉に挙げられているわけでありまして、厳しい環境に置かれているというのが今日の状態であろうと思います。いま当面している問題も、それぞれ効果的にして合理的な打開策が求められているということだろうと思います。その中での五十年ぶりの改正ということでありますが、今後五十年間改正しないということでなくて、やはりもっと機敏に対応しなくてはいかぬという御発言もいままでございましたけれども、私はそういう意味で、幾つかの柱でそういう視点のことを質問したいのです。  総論的に申しますと、金融制度調査会の答申にも、金融構造の変化やこれからの諸問題について幾つか研究した結果が述べられていますが、大蔵省は銀行や金融政策を担当する面から見て、八〇年代、九〇年代——二十一世紀までというとちょっと話が長過ぎますけれども、たとえば、考えなければならないあるいは考えるべき八〇年代とか、これから五年、十年の間に、金融政策上から見てどういう点が新しい大きな問題意識になってくるのだろうか。答申にも、国際化、効率化、公共部門のウエートの高まりとか国民のニーズの多様化、新経済社会七カ年計画に示される産業構造の変化に伴う対応措置とかいろいろ述べられておりますけれども、いろいろ述べられている中で、柱として、テーマとしてこんなことが金融政策のこれからの新しい大きな課題であると思うし、そういう状況の中で、この銀行法の枠組み化というものをどうメリットがあるように考えなければならないのか、いろいろ長い長い銀行法担当の経過でございましたからおわかりかと思うのですが、項目だけでも幾つか考えておられることをおっしゃってください。
  113. 米里恕

    米里政府委員 経済の国際化が非常に進みまして、諸外国もわが国も環境が非常に似てまいっておるわけでございますが、一九七九年、八〇年あたりに、先進主要国でほとんど軌を一にして金融基本法の改正が大幅に行われております。  その共通点を見てみますと三つございまして、一つは健全経営、つまり金融環境が非常に厳しくなっておることはどこの国でもほぼ同じでございまして、国によっては、多少金融機関の倒産が一九七〇年代の後半から出てきております。そういった新しい時点に立って今後の金融機関の健全経営をいかに確保していくかという問題が一つ。  それから二番目に、インフレーショフが非常に続きまして、そういった意味金利の問題がかなりクローズアップされてきておる。国際的には経済の実勢に比べてやや高金利になっておる。高金利になってきますと、実勢的な高金利に対する金利規制というものが金融構造にいろいろな影響を与えておる。特に商業銀行に対しては、どこの国でもほかの金融機関よりは金利その他でかなり厳しい規制を行っておりますので、そういったこともございまして商業銀行の地盤沈下ということが各国ともに発生しておる。これをどう解決するかという問題意識が各国にある。ある国では競争原理の導入、ある国では預金金利自由化、いろいろなアプローチを試みておるわけですが、そういったグループの問題があろうかと思います。  それから三番目に、内外金融機関の相互乗り入れの促進、いわゆる金融機関の国際化ということであろうかと思いますが、これにどう対処するかというのは国によっていろいろな対処の仕方がございますが、特にアメリカ、カナダあたりの金融関係法ではこの問題が非常に重要な問題として浮かび上がってきておる。わが国の場合も大体似たような状態にあろうかと思います。そういった経済成長パターンの変化あるいは国際化の問題、あわせまして、わが国の場合にはいわゆるボンドの方の国債の問題、国債を抱いた経済金融というものがどう金融構造に影響するかという問題が一つの問題であると思いますし、それからまた、経済成長のパターンとも関連いたしまして、個人部門または公共部門に対する資金の供給が一つの非常に大きな要素になってきておる。  こういうもろもろの問題の変化に金融機関としてどう対処していくかという問題でございますが、私どもは、基本的には健全経営の面が一つと、もう一つは効率化の問題が一つ、この二つが理念としての中心になるのではないかというように考えております。     〔大原(一)委員長代理退席、小泉委員長     代理着席〕
  114. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ありがとうございました。私もそんなことであろうと思いますし、またわずかな範囲で諸外国の例などを読んでみましても、たとえば西ドイツで金利自由化政策の影響で大変な金融機関の地殻変動といいますか革命といいますか、非常に大きな変化が起こっておるとかいうこともあるわけでありますが、銀行局長が言われました幾つかの中で一、二点伺ってみたいと思うのです。  一つは、健全経営と申しますか、あるいは効率化という問題があります。調査会の答申でも効率化ということが大きな柱になりまして、言うならば、一つの方面としてはさまざまな技術革新、合理化という問題、それからもう一つは合併の問題が述べられておりますが、いままでの徳田さんなんかとの質疑を振り返ってみますと、これまでは金融効率化、効率化行政の言うならばメーンイメージとして合併、いろいろな雑誌とか新聞には大蔵省の縁結び構想とか出されたりした時代がございました。またそれに伴っていろいろトラブルも起きたりしたことも記憶に新しいところであります。今回の金融制度調査会の答申は、その合併問題についてのメリット、デメリット両面を相当クールに分析をしているというふうな印象がございますし、そういう意味で言いますと、いわゆる金融再編論というイメージから言うとトーンダウンしたみたいな形になっておるというふうに感ずるわけであります。しかし、現実問題としては水平、垂直両面のいろいろ組織的な合併という問題意識もあれば、いろいろな提携関係でも問題がある。今度の金融制度調査会の答申というものを踏まえ、また今度の銀行法というものを考える中で、調査会の答申もございますけれども、効率化の中でのそういう技術革新、合理化という側面ではないもう一つの金融再編成というふうなことはどういう大まかな姿勢で考えるべきなのか、その点、どうお考えでしょう。
  115. 米里恕

    米里政府委員 金融効率化というのはいろいろな面がございまして、金融政策の効率化、金融制度の効率化、金融機関経営の効率化というふうに分かれようかと思いますが、その中の金融機関経営の効率化ということについては決して道は一つでないというふうに考えております。結局、最終的にはできるだけ資金調達面で国民に多くを還元でき、かつ資金運用面でできるだけ安い金利で国民にサービスできるといったようなことがなし得るためには、金融機関経営ができるだけ効率的なものでなければならないというところからまいった考え方でございますが、そういった金融機関経営の効率化の一つの手段として合併ということによって規模の利益を発揮できるというようなことがあれば、これは望ましい方向であるというように考えております。しかし、これはあくまでも一つの手段であり、かつそのときそのときの情勢、コンセンサスといったようなものを十分考えなければいけないわけでございますし、再編成といったような何か一定の意図を持って金融機関の数をいじってみても、そこに真の効率化が出てくるというようには考えられない。したがって、個別の問題としてあくまでも業務提携なり合併というものが当事者の意図、関係者の全体のコンセンサスを得て行われるときにこそ初めて金融効率化に役に立つというように考えますので、そういった場合には当局としてもそういった面の促進をお手伝いするにやぶさかでないということが基本的な考え方でございます。
  116. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういうことでいいますと、一時は金融再編成、合併論、大蔵省で縁結びというような記事がずいぶん出たことがございましたけれども、ややクールな、それぞれ冷静にそのメリット、デメリット、合併についてあるべき姿を考えるというふうな感じがするわけでありますが、さっき申し上げたように、これは資本主義のメカニズムでありますから、一定の時点に非常に厳しい条件か、あるいは非常にラッキーな条件か、何らかの条件のもとにそういうものが進んでいく、表面化するというのも法則性としては考えられるというふうなことであろうと思います。  そういうことに関連をいたしまして、いまの局長答弁に関係をいたしまして、二つ伺いたいのですが、一つは寡占といいますか、金融寡占、寡占の問題意識というものを一体どうとらえていくのかということが一つであります。ヒルファーディング流で言えば、金融独占資本論となるわけでありますけれども、それは別にいたしまして、現在の銀行支配、資料を読みましても、一部上場非金融企業八百三十八社の中で都銀融資シェアが三〇%、七九年ですか、長銀を加えますとシェアが四四%、あるいはこれはダイヤモンドに載った資料でありますけれども、都銀からの派遣重役数が九百七十七人、まあ言うならば大企業と大銀行の人と金のつながりが強まる傾向というようなことも言われているわけでありますが、効率化行政あるいはそういう中での金融再編成、合併というものの考え方、具体的にこれから五年、十年にどう転がっていくか明確ではございませんけれども、そういうものが効率化行政といいますか、金融効率化のもとにさらにこれが強まっていくといった場合に持つ社会的な諸問題ということも十分含めて考えておく必要があるのだと思います。アメリカの場合には一〇%大口規制問題、これも直接金融、間接金融のウエートが日本と全然違いますし、日本の方ではメーンバンクのない会社はつぶれるなんという状態ですから言われませんし、それからさっきもお話がございましたが、西ドイツなどでは金利自由化の後の金融界の大きな地殻変動が起きて、合併、系列化が急速に進んでいるというふうな変化もある。対照的な例でありますけれども、そういう寡占についての問題意識をどう持ちながら新銀行法のもとでの今後の運用をどうしていくのかという問題。  もう一つつなげて伺いたいのは、金融における専門性と総合性のバランスという問題であります。これは日本銀行の調査ですか、ずっと前に読んだものですが、いま都市銀行のシェアは非常に厳しい条件で低下をしている。しかし、長期に見ると、八〇年代はこれでいくが、それから先は、新たな資金需要の拡大などもあってシェアをまた拡大していくであろうというふうな見方もあるようであります。ですから、そういう意味から言いますと、いまの時点で長期に影響する一つの指針を立てるあるいは制度の改革をするというのがいいのか悪いのかという、中小企業金融それから各種金融機関間のかきね論争などと関連いたしますが、そういう問題意識もあるのではないだろうかという気がいたします。そういう意味で、今回銀行法あるいは関連法案の改正で相銀、信金それぞれ改善措置というか、強化措置がとられるということでありまして、私は結構な方向であると思います。  ところが、そういう専門性、総合性という視点から見ますと、都銀の中小企業への貸し付けのシェアが増大をしてきた。しかし、そういう長い展望で言いますと、都銀にとって必要なときには中小企業分野の支配を積極的に拡大をする。しかし有利な企業金融の分野があらわれれば締めていくというふうなことも、私は都銀としては当然あり得ることではないだろうかというふうな気がするわけであります。ですから、必要以上に都銀を助けるだけではまずいじゃないかということじゃないのですけれども、やはりそういう意味での専門性というものの目標、目的を達成する方向に活動できるような環境、条件の整備なり、育成と言っちゃなんですけれども、そういう問題意識なりというものは、かきね論争などありましたけれども、十分持って対応する。何しろ日本では、自動車にしろ、電気にしろ中小企業が支えているのですから、そういう分野を重要視をしていくという、視点ですね、今後のこの新銀行法に基づく金融政策でも忘れてはならない大事なところではないだろうかという気がいたしますが、簡単にちょっと御感想を……。
  117. 米里恕

    米里政府委員 まず寡占のお話ですが、御承知のように都市銀行全体でとってみますと、この十年、二十年の間にかなり全体としてシェアダウンという傾向が見られます。どこの金融機関がどの程度のシェアになれば適正かということは申せないと思いますけれども、それぞれの各種金融機関、特色があるわけでございますから、それでまた同種の金融機関の中でもそれぞれ複数が適宜競争しながら国民的なサービスを充実していくというような形が一番望ましいというふうに考えておりまして、現在の制度はおおむねそういう形になっているのではないかというように考えております。  専門機関の問題は、まさにいわゆるファイナンシャルギャップという考え方、つまりすべて同じような種類の金融機関であれば国民経済的に必要な分野へ十分きめ細かく資金が回らないのではないかというようなところからそれぞれの特殊な制度をつくってまいったということで、中小企業金融専門機関につきましても、その中で相互銀行信用金庫、信用組合と三つございまして、それぞれ対象の規模を違えながら、しかも相互にオーバーラップしながら重層的な組織でかなり国民経済的な要請にはワークしてまいったというように考えております。  ただ、そういった取引対象の企業が、中小企業もそれぞれ変容を遂げましてニーズが違ってまいります。     〔小泉委員長代理退席、大原(一)委員長代理着席〕 そういった場合には、それを受ける金融機関の側も次第に機能をある程度拡大していくというようなことで、ある面では競争を異種間でも激化しながら、しかも全体としての効率を上げていくというような制度として現在それぞれ位置づけられ、またそれぞれ国民経済的に機能を拡大し実績を上げているんではないかというふうに思っております。
  118. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 今後の慎重な運用をお願いをしたいと思います。  それから、さっき局長が言われました、特に日本でということで国債の問題あるいは公共、個人部門のことを触れられましたが、今後の新銀行法下における問題として、金融における公共部門と民間の分野の問題、いろいろな問題があると思います。  当面、大きな問題は郵貯の問題、郵貯懇ですか金融懇ですかが八月までにどう答えを出すのか。その出された方向に大蔵大臣も郵政大臣もはいと言うのかどうかというような問題もございます。それから、行革とも関連をいたしまして政府金融の洗い直しあるいは財投のあり方ということもありますし、いままでも当委員会で議論ございました窓販、バンクディーリング、これらのことを、三人委員会の話もございましたけれども、ルールとしてどういう視点から考えていくのかというようなこともございました。いろいろな問題もあるわけでありますが、時間がありませんから一つだけ郵貯の関係で伺っておきたいと思うのです。  私どもも郵政省の意見、大蔵省の考え方、その他いろいろな書面を見せていただきました。それぞれごもっともなことがたくさん書いてある感じでありますが、やはり財政、金融全体を預かっている大蔵省でありますから、郵政省対大蔵省ということでなくて、もう一つ国民から見て筋の通った論理を展開するという努力を払っていただきたいという気がいたします。  ある雑誌を今月も読んでおりましたら、特集記事で「大蔵対郵政 仁義なき郵貯戦争」、それで大臣のりっぱなお写真が出ておりまして、メンツをかけて対決する渡辺大蔵大臣と山内郵政大臣というようなことで始まっておりまして、まるでやくざのけんかのような百年戦争の新段階なんと書いた雑誌がございました。政府内部でけんかすることは野党としてはおもしろいことですけれども、国民から見たら困るわけでありまして、やはり国民に明快にわかる、説得性のある一つの論理を権威ある大蔵省は常に出していってほしいわけであります。  時間もありませんし、私から申し上げるまでもなくいろいろな要素がある。金利政策の要素もあれば財政政策の要素、それから国全体の金融政策としての問題もあれば、つめに火をともすように少額の貯金をためている庶民の貯蓄手段あるいは生活貯金という要素もある。そういうものをどうルールを引いてしかも今日の社会に必要なように考えていくのかというようなことになるんだろうと思います。  そういう意味で言いますと、たとえば郵貯についても一過性の要素と長期の要素とが当然あるのだろうと思います。大蔵省の考え方という書面を見ましても書いてございましたが、一過性の要素というのは、昨年の夏、秋と今日ともう大分違って落ちついてきている。長期的に見て、大蔵省の考え方の文書では限度額の問題とか書いてありましたが、こんなことはマル優の考え方その他で、マル優の限度額とかはみんな共通のことでいかがなものかなというような気がいたします。  それから、六月一日に認可されると言われる新型預金制度。ここで一言銀行局長に苦情を言っておきたいのです。この間五月六日、一番最初銀行関連質問のときに、うちの佐藤議員が質問しましたらえらく抽象的な話で何だかよくわからぬ話でありましたが、質問通告を四月三十日にやって、五月六日に質問してよくわからぬお話をいただいて、そうしたら五月八日には、それが十一日ごろに届け出を行って一日から一斉に取り扱う。いつもそうなんですけれども、国民を代表するところにフェアに答えてもらわないと、一佐藤さんの質問に対してどうこうというのじゃなくて、大蔵省は担当大蔵委員会にはきちんと説明をしていただくということがルールだろうと思います。そういうことも実はちょっと反省をしてもらいたいところになるわけであります。  したがいまして、私は、幾つかの要素がある。あるいは郵貯についても一過性と構造的なものとある。郵貯の前年度実績と比べてみれば一体どうなったのかという問題もある。また、生活貯金、零細な貯蓄手段ということについても、この間生活団体にいろいろ御意見を伺いましたら、自助的な福祉制度としてのシルバー貯金とか、いろいろな切実な話もございました。また、ある研究レポートを読みましたら、ヨーロッパの国営貯蓄銀行みたいな形でやったらいいじゃないかということを提言しているということもございました。     〔大原(一)委員長代理退席、越智(伊)委員長代理着席〕 それらについてのルールをきちんと立てて、この間も雑誌、新聞にも出ておりましたけれども、銀行、大蔵、日銀の郵政省大包囲網とかいう権威のない話でない対応をすべきじゃないだろうか。いずれこの問題は、金融懇、郵貯懇の進行等と伴って、当委員会でも小委員会などで十分な議論をしなければならないことではないであろうかと思いますが、ちょっと簡単にお考えを……。
  119. 米里恕

    米里政府委員 郵貯の伸びが一過性かどうかというお話でございますが、一過性であった面もあると思います。昨年あたり急速に伸びたというのはどうも構造的な要因が大きかったわけではないと思いますが、しかしここで過去十五年ぐらいを見ておりますと、四十年度末の個人預金に占める郵貯のシェア一五・九%から、四十五年度末は一八・九%、五十年度末が二二・八%、五十五年九月末が二八・七%。こういう数字を見ますと、どうもやはり構造的なものではないかということだと私どもは考えております。  金利一元化につきましては私もいろいろな機会に申し上げておるわけですが、やはり一つは現在の景気政策の中で金利機能の占める役割りが非常に過去に比べて大きくなってきた。と申しますのは、御承知のように過去においては、主としていわば金利はやや低くしておいて資金需要が常に供給を上回るというもとで日銀の窓口指導を中心とする量的調整中心の金融政策をやってまいったわけですが、それがいろいろな状況の変化がございまして、金融の国際化というような問題もございますし、企業の自己金融力の増大ということもございますし、都銀のシェアダウンというようなこともございまして、景気政策に占める金利機能の役割りが非常に大きくなった。そこへ財政の問題もございまして、景気政策に占める金融政策に期待される面も非常に大きくなってきている。そういたしますと、どうしても今後の景気政策というのは金利政策が中心となる。その場合に預貯金金利というのは、わが国の金利体系に占める位置から考えまして、実質的な金利をアップ・ダウンさせるためにはどうしても預貯金金利の弾力的な変更が必要である。こういう情勢になってまいりまして、さてそういった金利の決定方式あるいは金利の決定の理念というものが二元化されているというようなことが公定歩合のタイミングあるいは幅についていろいろな影響を与えておるといったようなことから、ぜひ私どもはこの際今後の景気調整機能の円滑な遂行のためには一元化が必要である、一言で申し上げるとそういうふうに考えておるわけでございます。もちろん、御承知のとおり現在総理のもとにあります五人委員会でいま熱心にその問題を審議しておられるわけですから、私どもとしてはその結論を期待しておるという状況でございます。  それからちょっと、お話のございました五月六日に佐藤先生が御質問になりまして新種預金のことをお聞きになりました。そのときにまだ確定的なことを申し上げられなかったわけです。それは、最終的な意見調整がまだ終わっておりませんで、税の問題なども残っておりまして、はっきりしたことを申し上げなくて失礼したわけですが、その後急速に、先生の御質問のこともございまして調整を進めまして、五月八日に大臣からちょうどその直前に決まったものでございますから発言をさせていただいたという経緯でございましたので、ひとつあしからずお願いしたいと思います。
  120. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 銀行局長が前にも言われた国際化の問題とか、それからオイルマネーの問題なんかにしても十倍ぐらいふえるのじゃないかという見通しもあるようであります。日本の金融機関の対外投資活動も拡大をするでありましょうし、在日外銀などを含めた円資金の吸収その他大きな問題もありまして、伺いたいと思いましたし、また、いまの郵貯問題、金利一元化、その他のことについても論理的な議論をしたいところでありますが、時間がなくなってしまいました。恐縮ですが、最後に三つ、ちょっと具体的なことを大臣にお伺いをして、質問を終わらせていただきたいと思います。  その一つは、週休二日制の問題であります。先ほどわが党の沢田委員からいろいろと議論をいたしましたが、郵政省といいますか郵便局側の答弁なども、まだまだあいまいなことを言っているという感じを深くいたしました。要するに、大臣、伺いたいことは、週休二日制について法的条件はここで全部整備をされたということですね。土曜日と政令との言葉の違いはあるけれども、法的条件は整備をされました。したがって、あとは、具体的に一体どういうふうにやれるか、やるかという問題になってくると思うのです。言うならば、それを一体計画的にどう持っていくのかということが、金融機関の、大蔵省を初め関係をする各省庁その他各団体あるいは国民に理解を求めるその活動に具体的に入るという段階になるわけであります。そうなってまいりますと、たとえば現実問題として、さっき銀行局長の御発言を伺っておりますと、一部にはどうしても社会的ニーズからいって閉められない、部分的にはそういう特例的なこともあり得る。しかし、やるときには一斉にやらないと、金融機関の持つ全国的な社会性からいって問題であろう。西ドイツなんかの場合には月一遍から始まったのですね。そういう意味からいったら、いま郵便局だって四週五休の試行制が広がっているときだから、そうむずかしくないじゃないかという気もいたしますし、いろいろな調整をしながら現実具体化論に入っていく、その現実具体化論というものを一体どういうふうに考えて取り組むのかということですね。  もう一つは、大臣、とにかくいま米里さんから正直な釈明がございましたけれども、予算のシーリングは六月五日という報道で、総理大臣の訪欧は六月九日の予定のようですから、その前には閣議で決定をする。例年よりも速いテンポで進む。新聞記事を見ましても、何か秋から年末に読む新聞記事が毎日載っかっているみたいな最近の状況ですね。それ全体をリードされているのが大蔵大臣であることは言うまでもないと思いますから、そういう意味で言って、全体のそういうテンポというものを、臨調との関係も含めてどう、お考えになっているのか。  それから、十五日には本会議質問もございますけれども、今後の日本の防衛、軍事同盟がどうなるのか、軍事費がどうなるのか。GNP一%以下にとどめるなんてきょうの新聞に出ていましたけれども、それだって十何%かの伸び率にならざるを得ないという計数に当然なるはずでありますが、それに関連をして、二段階編成にして、最初は政治的要素を加えず、後でもって、年末か秋あたりに政治的に調整をする部分はやるのだとか、それから三つ目には、財政再建法で、特別委員会か大蔵委員会か知らぬけれども、持ってくるとかいう構想が何十遍となく新聞に出ております。新聞には大まかなことを言っても、わが大蔵委員会にははっきりしたことを率直に言うというのがやはり望ましい姿であろうと思います。そうでなかったらまじめに審議する気持ちがなくなってしまいますから、恐縮ですが、簡単で結構ですけれども、その三点をお答えいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  121. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 週休二日制の問題は再三事務当局が答弁をしたと思います。何といっても経済取引に影響が大きい。特に中小企業から不満が一遍に噴き出すということでは困る。したがって、その方の説得をするということが先じゃないか。第二番目は郵便局の問題でしょう。郵便局と一斉にこれをやらなければできない問題でございます。各官庁その他の関係もございますから、そういう方面と一緒に、法律ができた以上は入るように……(伊藤(茂)委員「計画的に」と呼ぶ)計画的と言われましても、週休二日という労働条件改善それ自体は大蔵省が主導権を持ってやることではございませんので、これは中小企業の労働条件との関係もございますから、各省にまたがる問題である。私の方はいつでも、法律の改正によってそういうあく抜きができれば対応できる体制になったということは大変な進歩であって、いままでは法律がないから、たとえそういう事態が進んでもこちらは法律違反でできない。今度は法律違反じゃなくなるわけですからできるという体制になる。しかし、それは大蔵省が先頭を切って労働問題をやるという話ではない話なんです。したがって、中小企業との問題等も含めて労働省——中心になってやるのはむしろ労働省でしょう。そういうところともよく連携をとって前向きで進めてまいりたいと思っております。  それから、第二番目のシーリングの問題でいろいろなことが新聞に出ておりますが、私の知らないことがいっぱい出ておるわけです。大蔵大臣が何人いるのか知りませんが、私も本当に全く知らない問題が新聞を見ると載っております。これは推測記事、だれかが言って、それをさらに推測してうまくあっちこっちつないで出しているのじゃないかという点もかなりございます。ただ考えられることは、ともかく六月の総理の訪欧前に何とかシーリングの枠を示したいということで、いま努力をしておる最中であります。もう少し過ぎてみないと、これも確実にできるかと言われても断定できない。やりたいと思っていま努力の最中であるということであります。それで、臨調の答申が出て、それを背骨にしてさらに洗い直しをするということでございます。  それから、防衛費の問題につきましてはどういうふうにするのか。同じようなものがあるのです。経済協力という問題も、五年間で倍にする、五十七年だけは全然ふやさないで、あと四年間で倍にするというと、これも果たしてできるのかどうか、非常に問題があるところでございます。そういうものも二、三ございますから、それらをどういうふうにするのか。最初からもう全然認めないというふうにするのか、去年のような方法をとるのか、そこらも現実は固まっておらない。いろいろな政治的な問題もございましょうし、事務的な問題もありますから、もう少し詰めた上で内閣として相談をして、その上で正式に発表したいと思っております。
  122. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 終わります。
  123. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 午後二時二十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五十八分休憩      ————◇—————     午後二時二十四分開議
  124. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。平林剛君。
  125. 平林剛

    ○平林委員 銀行法の改正はだれのための改正か。公共性のある銀行の法律を書き改めるという場合にはその意義というものが一般の国民にも理解できないのでは雲の上の話になる。そこで私はこれから庶民の立場で素朴なる質問を展開したいと思います。  まず、むずかしい話は別にいたしまして、銀行法の改正によって一般の国民はどういう利便を受けることができるのか。大蔵大臣は非常に親しみやすい話で国民にすぐ理解できるようなたとえを展開しながら説明をすることがお上手な方でございますから、この素朴なる質問に対しましてまずお答えをいただきたいと思います。
  126. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 庶民大衆がストレートに銀行法が通ったらあしたからどういうふうなメリットを感じるかという御質問でございますが、直ちに金利が上がるというわけでもございませんし、それはあしたから特別に銀行のサービスが急に改善されるというわけでも実はないわけでございまして、御承知のとおり銀行の健全性というものが損なわれるということになればひいては預金者にも影響が出るし、日本の経済にも影響が出る、こういうことだと思うわけであります。仮に週休二日制というものが通れば、銀行の行員は一番喜ぶかもしれませんが、それじゃ取引している中小企業者がストレートに喜ぶかどうかということはまだわからない問題でもございます。ディスクロージャーのようなものが訓示規定とは言いながら出されて、現在でも銀行ではどこの銀行でもいろいろ、うちでやっている営業御案内みたいなものは出しておると私は思っております。金の使い方などでも、信用金庫などでもかなり詳しいパンフレットを配っております。したがって、ディスクロージャーができたから、それより以上にもっと詳しくなるところもございましょうし、もうすでにそれぐらいのことはやっておるよというところもあろうかと思います。しかしながら、ディスクロの規定ができた以上は、全体としての自分の営業内容あるいは資金の使い方等についてはいまよりはサービスはよくなる、さように考えております。
  127. 平林剛

    ○平林委員 一般の国民は銀行法の改正があったとしてもどういう利便があるかということでは余りぴんとはこないですね。     〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、それじゃ私の方から具体的な素朴な質問をしますが、今度は国債が銀行の窓口で買える。これは証券取引法上の認可を受けてからの話でございましょうが、国債を買うという場合に、いままででありますと、証券会社へ行って買うとか、あるいは証券会社の方から電話がかかってきて、今度はこういう国債が出るのですがいかがですかというようなことで買い求めるとかという形で行われてきたのが通常でございますね。今度の銀行法改正によって銀行の窓口で買えるように仮になった場合、銀行というのはどの範囲のものまでなのか、どういうところに行ったら買えるのか、こういう点についてはいかがでございましょうか。
  128. 米里恕

    米里政府委員 まだ制度が具体的に動き出してない現段階におきまして、銀行のどのぐらいの店で窓口販売をやるようになるのかということは確定いたしておりません。恐らくこれは認可申請の取り扱いにもかかってくる問題であり、今後の運用上の問題かと思います。
  129. 平林剛

    ○平林委員 そうすると、一般の人はこの法律が通っても一体どうなるか当分の間わからない、こういうことになるわけですね。しかしそう言われてしまうと庶民の素朴な質問ができなくなるから引き続いて言いますが、国債はいずれかは制度が動いて認可の申請があって確定をしていくということになるので、いつかはそういう時代が来るわけです。しかしその国債の価格というのは上がったり下がったりするわけですね。したがって、その国債の価格について、いままでですと証券会社  へ行って、これはどうなんだろう、これは損する、これは得する、他のものと比べてどうだというようなことを聞きまして、そうして最終的に決断して買うというのが実態の姿ですね。今度国債を販売するという場合には、銀行の窓口は懇切丁寧に説明をしたり、顧客に理解をするような形にして売ったりなどするのかどうか、これはいかがですか。
  130. 米里恕

    米里政府委員 銀行の窓口で国債を売るようになりましたら、現在の証券会社と同じように、その価格の点についも顧客に十分説明するということになると思います。
  131. 平林剛

    ○平林委員 あなたのレベルからいうとつまらぬ質問かもしれませんが、素朴な質問ですから。それでは、お客が希望すれば既発行の国債も販売してくれますか。
  132. 米里恕

    米里政府委員 御承知のように、募集の取り扱いというのは新発債のことを言っておるわけでございます。残額引き受けいたしまして、それを当初の発行条件で売るというのが募集の取り扱いになりますが、今度の法律で申しますと、十一条関係に書いておりますわれわれが俗にディーリングと言っておりますものは、既発債も売るということになります。
  133. 平林剛

    ○平林委員 庶民ですから十一条とかなんとかと言われてもわからないのですから、きょうはわからないことにしますから。  次に聞きますが、そうすると、新しく発行された国債を買ったお客が、いまのあなたの言葉で言えば募集の扱いですね、一年か二年たちましてどうもお金にかえなければいかぬ、そういうときは銀行の窓口でこれを買い取ってくれますか。
  134. 米里恕

    米里政府委員 認可をどういうふうにおろすかという問題にもかかってまいりますが、考え方としては、自分の店で売ったものは自分で買い取れるようにするというのが普通の考え方だと思います。
  135. 平林剛

    ○平林委員 済みませんが、その銀行の窓口で買った国債でなければ買ってくれないのですか。
  136. 米里恕

    米里政府委員 これまた認可の仕方によると思いますけれども、既発債の売買が銀行に認められるようになれば、別にそこの銀行で売ったものでなくても銀行は買えるようになるということになると思います。
  137. 平林剛

    ○平林委員 国債の利回りその他評判が悪くなりまして、どうも損をしそうだ、早目に売ってしまった方がいいというようなときでも、銀行の窓口はいやな顔をしないで買い取ってくれますか。
  138. 米里恕

    米里政府委員 売買の話でございますから、両当事者が価格をどう決めるかという問題はあろうかと思いますが、銀行の募集の取り扱いあるいはディーリングというものが認められましたら、それは銀行は応ずることになると思います。
  139. 平林剛

    ○平林委員 その場合、百万や二百万の国債なら話は別ですけれども、そのときの適正な価格で買ってくれるのか、それとも、おまえには金を貸してあるからちょっと割り悪くしか買いませんよなんて言われたときはどうするのか、そのときの適正な価格で買ってくれるかどうか。
  140. 米里恕

    米里政府委員 適正な価格と申しますか、市場で一般的に売買されている価格で売り買いするというのが普通だと思います。
  141. 平林剛

    ○平林委員 国債価格の形成がおかしくなるからこれは全部普通でなければ困るのだけれども、普通庶民はそんな言い方しませんから私もう一回素朴な方に戻りますが、銀行の窓口で販売する国債よりも、一般のお客の方から国債を買ってくれないかという場合が多くなることだってあると思うのですよね。そのときでも銀行は買うということになると思うのですけれども、どうなんでしょうか。
  142. 米里恕

    米里政府委員 まあ銀行も商売でございますから、お客さんが窓口に持ってくればいかなる場合でも必ず買うというわけでもないかと思いますけれども、そこは通常金融機関としての常識的な行動を行うと思います。
  143. 平林剛

    ○平林委員 証券会社もそういうことがあるんですよね。ときどき、この国債欲しいなと思って行くと、それが有利なときは売ってくれないんだ、もうなくなりましたと言って。ところが、どうも諸般の客観情勢が悪くなってこの国債は利回りが悪くなりそうだというようなときは、お客さんを探して、いかがでございますと夜の七時でも八時でも電話をかけて買い取ってくれないかと来るんですよね。銀行なんかはどうなんでしょうかね。
  144. 米里恕

    米里政府委員 これは個別の商売のビヘービアの話でございますのでいまから予測して申し上げられませんが、公器であるところの金融機関としてできるだけ適正な行動を売買に当たってもとってもらいたいと思います。
  145. 平林剛

    ○平林委員 どうも庶民の立場で聞いているとなかなかわからないですね。これは一般の人から見ると、実際に銀行で国債を売買する場合のことがいっぱいあるんですよ。いままで銀行はこういうような価格が変動する国債なり証券を一般の顧客に対して大量に扱ったことがないわけですね。それでいろいろなことが起こり得るんじゃないかと私は思うのです。たとえば銀行の窓口の勧誘で預金者が国債を買ってそのために損をしたというような場合、証券会社はいろいろ言いわけをしましてああだ、こうだと言う。しかし銀行はそんなことをやってくれるのかどうか、またそれが広がってきた場合に銀行というイメージがどうなるのかというような点なども私どもは考えなければいけないんじゃないかと思うのですが、いずれにしても銀行は、保有する有価証券とか国債等の価格変動で銀行経営の経理面で損をしたり得をしたりすることはあるんですね。たとえば六・一国債のときには経理上の損失で大騒ぎしたことがありまして、私ども承知いたしております。今度は銀行の窓口で国債を売買する、そうすると、いままで保有しておった国債などの乱高下で経理上のいろいろな違いが出てくる、そのほかに銀行の窓口で売買をするという一つの業務、この二つの業務の間でそれぞれ勘定を区分して銀行の経理ができるのか、ごっちゃにしてしまってやるのか、二つは区分して銀行経理の計算をするのかという点がちょっとはっきりしないのです、これは庶民より私の方の立場の質問でございますけれども。
  146. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 将来窓販あるいはディーリングについて銀行に対し認可をしその営業をやるという段階になれば、投資有価証券の勘定と商品有価証券、要するに顧客を相手方として売買をする、そういう勘定とを分離するのが望ましいのではないか、かように考えております。ただ、これは今後さらに検討をして詰めていきたいと考えております。
  147. 平林剛

    ○平林委員 ちょっとわかりました。この二つの業務を区分してそれぞれきちんと勘定していく、こういうことがわかったわけです。  次に、さっき私言いましたけれども、銀行においても国債を窓口で売ることを認めた場合に、その銀行が売る対象、顧客は、私は個人に限らぬだろうと思うのですよ。としても、この面である分は有利だというような場合には、証券会社ほどうるさいことは言わないと思うのですけれども、しかし法人や個人の事業主などを大口の消化先としてねらうということは当然あり得ると思うのです。法人だとか個人の事業主は、通常銀行からお金を借りている側ですからどうしても弱い立場です。証券会社とは違った形で売り込みを図る場合には、結局無理が出てくるのじゃないか、私はこういうことも想定しておかなければならぬと思うのであります。そういうようなことをやるのはいいことなのかいけないことなのか、いかがでしょうか。
  148. 米里恕

    米里政府委員 銀行がたとえば取引先の企業に対して大量に国債を売ることはあり得ることだと思いますし、別にそれはいけないということはないと思います。ただ、その際融資機関としての立場を悪用して無理に押し込むのは好ましくないと思います。
  149. 平林剛

    ○平林委員 銀行法の改正にディスクロージャーの規定がございますけれども、それは無理して売ったのか、お客が好んで買ったのかという区分はどうやったらできるのですか。
  150. 米里恕

    米里政府委員 実際の区分はなかなかむずかしいと思いますが、銀行のビヘービアとしてそういうことがあればそれは望ましくないと考えるということだと思います。
  151. 平林剛

    ○平林委員 考えるだけじゃだめなんでありまして、そういう場合はどうしますか。
  152. 米里恕

    米里政府委員 個別の金融機関の国債販売がどういうビヘービアで売られたのか、相手がどう考えたのかということをチェックするのは、実際問題としてなかなかむずかしい問題であろうかと思います。何かの場合に、企業が買いたくないものを押しつけられたということが具体的に出てきたら、その段階で、その売買がどうであったかということをチェックすることになると思います。
  153. 平林剛

    ○平林委員 なかなかむずかしいので、法律ができてから後でまた議論をしなきゃならない問題が恐らく起こり得ると思いますが、これはかりやっていると時間がなくなるから……。  大蔵大臣、この銀行の窓口販売につきましては、どういう銀行に認可するかという基準については何かあなたの諮問機関の三人懇談会で検討するというお話でございまして、われわれはまだどういう基準であるかということがよくわからぬのでございます。なぜこの許認可というような行政の根幹にかかわるような問題を、何か三人くらいの委員の方にお願いする懇談会でやるのですか。つまり私は、行政当局はその間はノータッチで、この三人の結論を待ってあなたの判断を決める、こういうふうに理解をすべきでしょうか。
  154. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 窓販の認可の問題は非常に争いのあるところで、いままで騒いできたわけです。しかし、現実には銀行は窓販もディーリングもやっていないわけですから、有権解釈上そういう権利があるということで、それが決まらなければ前に進まない。そこで、有権解釈というものを今度は法文に織り込んだ。織り込んだ以上は、いつかは当然そういうようなものも実施をさせる時期があってしかるべきだ、そう思っております。その実施の時期その他につきましては、国債の発行状況、消化の状況、公社債市場の状況、金融資産に対するいろいろなニーズ、そういうものの客観的情勢が備わったときというふうに考えております。そのときも、私は一存で、大蔵省の中だけで相談してやっちゃうというのも一つの手だとは思いますけれども、やはりそれぞれの業界に利害の大きな問題がございますから、中立的な人というよりも、両業界に精通したような人を両方から出して、どちらの業界からも公平に見られるような人を、大蔵大臣の一種の相談役といいますか、そういう人の意見を聞いた上で、認可する場合はいろいろな手続その他の細かい問題もありますから、そういうところでどっちに片寄ったのか、どっちに力を入れたのかというごたごたは起こしたくないし、そういう人の公平な意見の上に立ってやろうというために、これらの人を実は相談役というくらいのつもりでつくったので、何とか審議会とか委員会とかいうようなものではないわけです。(「審議会や調査会、ああいうものはだめだ」と呼ぶ者あり)だから、そういうようなものは考えないで、この程度のことでやっていこう、頭でっかちにしてみたって始まらぬし——実は私一人で決められるんですよ。決められるんですが、実は、そういう業界代表の方の意見も聞いて慎重を期したいと思っておるわけでございます。
  155. 平林剛

    ○平林委員 ただ、お話を聞いていると、いつ認可をするか、どういう基準でするかの判断を三人に任せるということは、行政の一番重要な問題についてそれにゆだねるというかっこうになる。公正な判断を確保すると言うけれども、証券局もあるし銀行局もあるし、あなたを補佐する人はいっぱいいるわけだから——そういう人たちは公正じゃないということになるとまた問題があるわけですね。そういうことから考えると、どうも、この三人にそういう時期とか判断してもらうという形で逃げている態度は正しくないと実は私は思っておるのですよ。あなたは、相談役だ、最終的におれが決めると言うけれども、形の上ではその三人懇談会というものでやるのだというかっこうで、きょう具体的なことを聞いたって、法案の審議で、これから上がるか、そうかというときにあなたは答えられないことばかりじゃないですか。それでわれわれは審議しているのですよ。三人懇談会で相談して、まだあれでないからなんて言って、答えてくれない、庶民の聞きたいことについても聞いてくれない。ですから私は、これはどうかなと実は思っているのですよ。仮に窓販の問題について三人懇談会の基準その他の結論が出て、あなたが見て、まあこんなものでいいんじゃないかというようなことで出発したとしますね。ところが予想もしなかった問題が起きたという場合、もう一回この三人に相談するのか。これはあなたの相談相手なのだから相当長生きしてもらわなければ困るのですが、手直ししなければならないというような場合はどうするのですか。今度は行政手腕を持っておるところの大蔵省内でやってもらう、こうなるのですか。それとも、そうした問題が起きたときに、どうしますかというようなことを改めて聞くようなことになるのか。後の責任は最終的には大蔵大臣が負わなければならないけれども、どうもこれで出発するということになると、この懇談会の責任はどうなるのか。こういう問題がありますのでお尋ねします。
  156. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 行政の責任は大蔵大臣が最終的に負うわけですから、大蔵大臣の責任で決めて何ら差し支えないわけです。しかしながら、国会などでもそういう時期になれば各党からいろいろ議論が出るでしょう。そういう人の声は国民の声だと思って私は判断しておりますけれども、非常に専門的な部門がございますから、原案は一応大蔵省が、こういうふうにしてやりたいと思いますがどうでしょうかと内々相談をしてつくります。それでその方面に精通した専門家を充てたいと思っております。まあ、お役所だけでは実務上の細かいことがわからぬという場合もあるでしょうから、そういうときに間違わないように念には念を入れるという意味で相談役を置きたい。これは別に法律事項でもございませんし、いつまでも置くわけでもございません。まあ、最初のうちだけだと思っていただいて結構だと思います。
  157. 平林剛

    ○平林委員 多分そういう答弁があるだろうと思ったから私は聞いたのですが、そうすると、こうした問題についてある程度精通したり公正な判断ができる人というのはまだたくさんいるのだよ。この大蔵委員会に所属している人の中でもこの問題についてかなり精通している人がいるし、おれも精通しているなと思っている人もいるかもしれない。そういう人の意見を聞くという態度がないと、三人の意見を聞いたらいいというわけにはいかないでしょう。そこでわれわれはいま国会で、賢明なる大蔵委員長を初めこの問題を審議しておるのだから、基準はこんなものでいいでしょうか、どうでしょうかというようなことをこうした委員会でも聞くような考えはありますか。
  158. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 具体的に概要を国会にかけるということはないと思いますが、いろいろ正反対の意見もあるでしょうから、皆さん方の自由濶達な御意見というものはよく聞いて、そういう意見を踏まえた上で行政当局の責任者である大蔵大臣が行政事務を執行する、こういうように御解釈をいただきたいと存じます。
  159. 平林剛

    ○平林委員 別に審議するとかなんとかでなくても、こんなものでございますが御意見がありましたらというようなことを、たとえばこの大蔵委員会でも委員長理事の打合会があるでしょう、そういうところに、こんなふうになったがというふうに出すとかしていただけませんか。われわれはまだそれでいいのか悪いのか判断できないのだから、そういう材料を提出していただけますか。
  160. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは行政権、立法権、司法権の問題がございます。司法、立法、行政は別でございますから、行政の内容についてその都度全部国会の意見を聞くということはないかもわかりません。しかしながら、当然に国会というものは国民の代表だと私は思っておりますので、そういう人たちの声を十分踏まえた上で執行していきたいと考えております。
  161. 平林剛

    ○平林委員 委員長、そのくらいでいいですか。——基準というものは、われわれはどれを認可するなどというところまで相談にあずからない方がいいのですが、基準というものができたらそういう措置をとるべきだということを申し上げたいのです。  それでは次の問題に移りましょう。銀行法の改正によりまして大口の融資の規制が法律で義務づけられることになります。これから若干の質問を展開するわけですが、初めに原則を聞いておきましょう。  大口融資の規制を行う理由は何でございますか。
  162. 米里恕

    米里政府委員 大口融資規制のねらいは二つございまして、一つは健全経営という問題、つまり一カ所に極端に多量の資金を貸し込んで、もしその企業が倒産した場合には金融機関も共倒れになるというようなことを避けるために規制しようということでございます。  それから二番目は、資金の適正配分と申しておりますが、大ぜいの預金者から預かっている金を余り一カ所にだけ貸し込んでしまうということは、資金の配分のやり方としても適当でない、この二つの考え方でございます。
  163. 平林剛

    ○平林委員 規制の比率などは具体的内容を大蔵省令に任してありますけれども、みんな二、三、四とか言っているが、正式にどういうふうにするか、ちょっとお答えを願いたいと思います。
  164. 米里恕

    米里政府委員 政令で率を決めるということにいたしておりますが、普通銀行については自己資本の二〇%、長期信用銀行及び信託銀行については三〇%、それから外国為替専門銀行については四〇%というふうに決めたいと考えております。
  165. 平林剛

    ○平林委員 大口融資の規制比率は、いまお話のあったとおり、大体現行の比率をそのまま法律に規定をするというような方向になるわけですが、商業手形の割引とか預金担保貸し、国債担保貸し、貿易手形等を除外するというようなこともお話しになっておりましたから、それではこれは大口融資の規制じゃなくて大口融資の緩和じゃないのか、私は実はこう思っておるわけでございます。  私、実はこれをちょっと方々の資料をあさりまして調べてみたのですよ。そうしたら、大口融資の対象になっているのは総合商社が多いようでございまして、たとえて言うと、Aという総合商社は第一勧銀、協和、住友、東京銀行、住友信託などから約四千百五十五億円借りておる。そのほかに日本輸出入銀行から千三百八十四億円を借りていまして、合計すると五千五百三十九億円の融資を受けておる。Bという総合商社は第一勧銀、三菱、三和、東海、東銀、三菱信託、東洋信託等から合わせて五千五百三十四億円借りて、それに日本輸出入銀行からの千八百六十七億円を加えますと実に七千四百一億円借りている。Cという総合商社は三井、富士、大和、北海道拓殖、東銀、三井信託等合わせて四千二百二十五億円、日本輸出入銀行からは三千二百八十四億円を借りて、合計七千五百九億円。総合商社の中ではこのCという商社が一番多い。それからDという商社は富士、太陽、東京、安田、合わせて三千八十三億円で、日本輸出入銀行から千五百三十五億円ですから四千六百十八億円、つまり、都市銀行などの大口融資は、金融機関の自己資本比率に対しまして二〇%という規制を加えておりますけれども、細かく検討してみますと、どの都市銀行もこれらの総合商社に対する融資はいずれも一九・九%あるいは一九・八%、一九・六%、ぎりぎり、すれすれ融資、今回商業手形割引などが緩和されれば自主的に融資枠が広がる、あるいは広げてやるという方が適当かどうか別にいたしまして、こういう状態でございます。  これは、今度の銀行法改正は、大口規制を緩和するという措置になっているんじゃないかと思うのですが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  166. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いままで大口規制の問題は、御承知のとおり通達でやっておったわけでございますが、今度はそれを法律から政令ということで法制上きちっと決めるということになりますもので、なかなか行政通達で自由に直すというようなこともできない。そこで余りきつく縛っちゃって、幾ら政令だからといってそうちょいちょい直すこともできないことでございます。したがって、直さないでも済むようにというようなことも考えまして、しかも一方、その債権の確保という点からも安全性というものを見なければならない。そういう両面から決めた結果、現在の行政指導よりも少し幅が広まったじゃないかという御主張はございますが、それによってもう動かさないということでございますから、ここらのところが妥当かな、そう思っておるのでございます。
  167. 平林剛

    ○平林委員 大口融資の規制の問題については、私はいまとりあえず総合商社の例を挙げて指摘をしたのですが、しかし私は商社活動の果たしている国民経済的な役割りは否定していないのです。また十分、総合商社の活動の果たしている役割りについては理解しているつもりです。同時に、昭和四十六年のニクソン・ショックだとか四十七年以降の過剰流動性の問題だとか、四十八年から四十九年にかけての原油値上げのときの商社活動の悪徳ぶりも国民心理に大きく動揺を与え、批判の対象になったことも事実ですね。私はそのときの議論を踏まえて、大蔵省銀行局を中心に大口融資規制についてかなり努力をしている傾向は認めるのです。私が調査した数字でもそれは明瞭に伺うことができます。  私、かなり時間をかけて調べたから、ちょっと参考のために申し上げますが、Aという商社は、五十四年三月三十一日から五十五年三月三十一日の一年間で、大体メーンの銀行に対しまして五百七十九億円返しているのですよ、一年間で。それでこのときだけ、銀行法が議論されるから、大口融資が問題になるからあわてて一九・九に駆け込みでもってやっておかなければいけないというのでたくさん返したのかなと思いまして、その前の一年をもう一回調べてみたら、その前の一年は三百九十億です。しかし合わせれば九百六十九億です。  ところがBという商社になりますと、最初の一年間に一千二十二億円返しています。そうしてその前の年は五百九十四億円ですから、二年間に千六百十六億円返しているのですよ。  それからCという総合商社は、同じ最初の一年間に千三百三十一億円返して、その前に四百二十三億円ですから、二年間に千七百五十四億円返した。  Dという総合商社は、同じく二年間に七百七十六億円です。  先ほど申し上げたように、A、B、C、Dの総合商社は相当の融資を受けていますから、その利払いだけでも大変だと思うのですが、それ以外にこういう形で返済をしておるわけです。私、「最近の金融政策について」という経団連の月報に書いてあった「大口融資規制のあり方」というのを読んでみたのですが、ここでも率直に言っていますよ。「この五年間に純減させるために相当の努力をした。借り入れ返済強行額は膨大なものになった。しかもこの過程で生じた企業の営業活動や資金調達コストの面での影響も少なからぬものがあった。」こう書いてあるのです。私はこの二年間において主力銀行に対する急激な借入金の返済の数字を見ていきますと、これは大口融資規制の基準二〇%におさめるための駆け込みもあるかな、いま経団連の報告が言うようにこの過程でいろいろなことがあったのかなと思うけれども、同時にこれだけの借金、融資額に対する金利負担と合わせて借入金の返済ができたというのは、この期間にいかに膨大な利益を得たか、そういう証明でもあるという感じがしたのであります。これだけの余力を持っておる企業に対しまして、この銀行法の改正の機会にさらに大口融資の規制緩和をすることが果たして適当だろうか。都市銀行のサイドから見て、大口融資の実情は特定企業に集中し過ぎておるのじゃないかという指摘を私はしたいのです。  たとえば今度は名前を言いますが、都市銀行のAは伊藤忠初め四社に対しまして自己資本の七五・八%、都市銀行のBは三井物産初め三社に対しまして六六・八%、つまり特定の貸出先に集中させておるわけです。今回の法改正はそれに輪をかける。そういう結果どういうことが起こるか。中小企業や、融資を死活問題として受け入れたいと考えておる企業に対しましてのパイプはますます細くなるんじゃないのか。特に最近は、郵便局に対して預貯金が集中して、都市銀行初め市中銀行預金の増加が低下しておる。きのうもこの大蔵委員会にお見えになった参考人は、都市銀行初め市中銀行預金がふえても、その八〇%は国債を買わなければならぬという実情だと言って泣きを入れておるのですね。その金融機関がこの融資規制の緩和について一生懸命になった、かえって要求しておる。矛盾じゃありませんか。こういうような実態を考えますと、大臣、さっきお話しになった点から見ても、こういうふうに緩和していくということが適当だとおっしゃったけれども、余り適当じゃないと思うが、いかがでしょうか、再度お尋ねいたします。
  168. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほども申し上げましたように、いままでは野方図にやっておった。それを行政指導でああいう問題がありましたから、強く締めまして、それで基準をつくったわけです。ところが基準をつくっても、大体守っておりますが、守られない場合もありますし、外国銀行等もかなり出てきているということになると、なかなか大蔵省の威令がそう行われるとばかりは限らない。そこで法制化をすることにしたわけです。その基準の中で、二割、三割、四割というのは同じなんです。それは変えるつもりはないのですけれども、そこで、ともかく担保として確実なようなもの、あるいはそうでなくとも、手形や何かでも確実だと思われるものは、第一の目的は債権確保ですから、またもう一つ一つのところに集中してもいけないという点もありますが、それ以前に債権の確保ということが目的なわけですから、二〇、三〇、四〇は変わらないが、前から比べると、そういうような除外例をつくったので、それぞれ数%実質的に額がふえるということが言われておるのであって、その率は変えるつもりはないのです。
  169. 平林剛

    ○平林委員 率が変わらなくとも、いまお話ししたような実態ですね。国債の問題について、預金増加は一〇%もとられてしまっているのだと言って銀行は泣きを入れることをやめたらいいですよ。いま言ったようなわがままを言って、多々ますます弁ずだ、率は変わらないけれども、額はどんどんふえていくということで、しかもそのために巨額な利益を得ているというようなことを特定の企業だけに許していいのか。今日のわが国の経済全般から見て、ちょっと融資租界ができていると私は思うのですよ。これは少しメスを入れる必要があるという感じがしておるのです。まして実際の銀行等を経営しておる人たちの話をひそかに聞きますと、たとえば金融機関別に率が決まっているといたしましても、ある総合商社が系列銀行から、大口融資の率が決まっているというけれども、すれすれの大口融資を受けましても、その参加グループの融資あるいは子会社の融資、こういうものについては手形の裏書きをしたり、債務保証をしたりしていますから、率が決まっているからいいというわけにいかないのですよ。そういう形で幾らでもふやすことができるのです。するとせっかく率が決まっているからいいじゃないかというような融資規制の枠を超えてしまうのじゃないか。この際、政府が提案されていることも問題でありますが、せめて借入債務の範囲というものは、直接的債務のほかに手形の裏書きとか保証等に伴う債務も大口融資の規制対象に含めるべきだと私は思うのです。たとえば自分のグループ、あるいは子会社の中で株の過半数を持っている会社だとか、これを実際上支配している子会社だとかいうようなものについては、これを一定の基準の率に加えて、大口融資規制の実効を上げるべきじゃないのか、こう思うのですが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  170. 米里恕

    米里政府委員 法律の条文の話になりまして恐縮ですが、今度の第十三条の中に「銀行の同一人に対する信用の供与」とございまして、括弧書きで「(当該同一人と政令で定める特殊の関係のある者に対する信用の供与を含む。以下この条において同じ。)」というのがまず一つございます。また「は、政令で定める区分ごとに、」という言葉がございます。実はそれぞれ政令、政令と書いてあって非常に抽象的なのでございますが、前者の「政令で定める特殊の関係のある者」という「者」の中にはどういうものが考えられるかというと、考え方としては、御指摘のありました関連会社というようなものを含めるシステムができるようになっておる。それから二番目に、「政令で定める区分ごとに、」ということを申し上げましたのは、貸し出しというのが典型的な一つの区分ですけれども、そのほかにたとえば債務保証というものも入れる余地がある、そういった配慮のもとに政令で定めるという書き方をしておりますので、制度としては御指摘のようなものが入れ得るようになっておるということでございます。ただ、今度新たに法律で初めて規制いたしますので、当分の間はとりあえず政令で定める区分といえば貸し出しだけに限る。あとは実行上の実勢を踏まえた上で考えていきたいと思っておりますが、必要が生ずればおっしゃるような点は制度的にはできるようにしております。
  171. 平林剛

    ○平林委員 大臣、私もう時間がないからこれ以上言いませんが、金を借りておいて、またそのお金を銀行と同じようにほかのところに貸したり何かするような企業がたくさんあるのですよ。自分の特定の有利な条件を利用して銀行と同じようなことをやる、こういうことを考えますと、大口融資の規制については実効のあるような方法をひとつとってもらいたい。私はもう一回これを取り上げます。きょうはほかの問題があるからこのくらいにしますが、そういうことも含めて——しかも政府の金融機関までが貸し出しているのですから、それを企業が今度銀行の肩がわりになったようなつもりでやるようなことまで広げるようなら少し遠慮してもらいたい。その金をできるだけ他に回して、そして公平なる資金の分配ができるようにすべきだと思うので、これは要望いたしておきます。改めてまたこの問題を取り上げたいと思います。  次に、日本銀行の政策委員会の問題についてちょっと触れておきたいと思うのですが、大蔵大臣、私はこの委員会で公定歩合政策についての批判を繰り返して展開してまいりました。もちろんそれぞれ日銀、政府それから各政党の幹部たちの考え方もあったと思いますけれども、公定歩合を去年の八月、十一月、そしてことしの三月、三回にわたって下げてまいりましたが、最近アメリカの公定歩合は逆に今度は一四%に引き上げられました。これによって円レートに対するはね返り等がございますれば相当な影響がございましょうし、物価その他にも関係するようなことになり、日本経済にも少なからざる影響があると思うのであります。このことにつきまして大蔵大臣、どういうふうにお考えになりますか。公定歩合がアメリカと日本がすれ違ったことについて、日本経済に与える影響はどういうふうに考えますか。
  172. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 金融政策の上でどういうような公定歩合を設定し上げたり下げたりするかということは、それぞれの国の事情によってやることでございますから、日本で下げて、アメリカで上げるという場合があっても仕方のないことだ。日本の方は金利を下げて、そして景気刺激をやれという要求が強いし、物価も順調に下がってきている状況ですからそれに適応させて下げたわけでございますが、アメリカの方は物価は下がりつつはあるが依然としてまだ予断を許さない。そしてともかく減税をやるということについて下院の反対が強い。理由はインフレになるんじゃないかということですから、インフレを抑えるというような議会対策上の意図もあったかどうか、これは私の想像ですからよくわかりませんが、インフレマインドを打ち消さなければ政策の法案が通らないというようなことだと一時的に下げるということも考えるかもしれない。これは想像の部分だけれども。そういうことで食い違いがあったとしても、それ自体は別にどうというふうに取り上げてどうこうという筋合いのものではないのじゃないか。ただ、アメリカのように非常に金融政策の影響力を世界全般に及ぼす国でありますから、これは今後世界の会議等においてもアメリカの金利については、自分の国の都合だけでうんと上げたりなんかすることは控えてくださいよという話は表に出てくる話になるかもわかりません。
  173. 平林剛

    ○平林委員 時間もないからこれ以上言いませんが、私は実は、アメリカはアメリカの事情があるし、日本は日本の事情があるのだけれども、その判断を正しくしてもらうためにはもう少し日本銀行の政策委員会というものがしつかり機能してもらいたいという希望を持っておるわけです。日本銀行に政策委員会というのがございますが、この政策委員会が設けられた理由というのはどういうことなんでしょうか。
  174. 米里恕

    米里政府委員 日本銀行の政策委員会でございますが、昭和二十四年にできまして、この当時はちょうどドッジ・ラインの実施という時期でございまして、金融政策の重要性が一属増加しておるという時代に、中央銀行においても外部の声を十分聞くようにというようなことで日銀の最高意思決定機関として設立されたものであるというふうに承知しております。
  175. 平林剛

    ○平林委員 実は私、きのう参考人で参りました今井一男さんが「資本金融行政史」という本を書きまして、それを読んだのですよ。当時の古いことを記録されておりまして、日本銀行が株式組織になっておることに対してアメリカの総司令部の心証が非常によかった。しかし、その当時日本銀行の定款に国の総力戦云々という戦時中の日銀法の文があったものですから、それが非常に気になった。そこで、日本銀行を政府から切り離すということとあわせて日本銀行の独善を抑えるために政策委員会の設置を命じたというのが政策委員会ができた始まりだ、歴史だというのを読みまして、昔のことよう覚えておってこんなのに書かれたなと感心を実はしたわけでございます。  ただ、私きょうこれを取り上げましたのは、この政策委員会というのは七人の人で成っておりますが、七人のうち一人は大蔵省、それからもう一人は経済企画庁を代表する者、あとの五名のうち一名は日本銀行総裁、その他地方銀行の者とか銀行経営に詳しい者とかというので七人で構成されている。ところが、議長を日銀総裁が兼ねているのですね。政策委員会を設けたという理由からいきますと、一つには政府と日本銀行との間をできるだけ離して主体性を持たせる配慮もあることとあわせて日本銀行の独善を抑えるため、もしこういうことの趣旨で発足していまもその精神が残っているとすれば、日本銀行の総裁が政策委員会の議長を兼ねるというのはちょっとおかしいのじゃないかと思うのですよ。たとえば日本銀行の総裁というのは理事などと相談をいたしまして実際上の運営をするんでありますが、その前に基本的な問題は政策委員会へかけるわけですが、実際上の運営をしている提案者が採決者を兼ねるというやり方、これはどうも問題があるんじゃないかということを私は今井さんの本を読んで感じたんです。たとえば衆議院の議長が内閣総理大臣のいすへすわっていろいろな行政をやるというとおかしいでしょう。司法、行政、立法とちゃんと区分しておりますがね。だから提案者が採決者を兼ねるなんというのはおかしい話なんでありまして、こういう点から見ると、私は公定歩合政策を例に挙げたんだけれども、いろいろなことについて非常にむずかしいようなときに独善を犯すんじゃないかと思うのですよ。昔のこの経緯を聞いてみると、本当言うとこういう考えじゃなかったらしいのですね。政策委員の中のどなたかに議長になってもらうつもりだったところが、その方がどうしても入ってくれないということで当時の日銀総裁がそれじゃあということになったので、きわめて便宜的なところから出発したのが今日まで残っておるというようなお話も聞いておるわけでございます。  この間、この大蔵委員会におきまして日銀法の改正についても大蔵大臣は検討すると言われたんですけれども、そういう検討する段階にいま私が問題提起したことにつきましてもどういうふうにお考えになるか。ひとつ検討すべきではないか、こう思うのでありますが、私の指摘はどうでしょうか、間違っておりましょうか。またその指摘はもっともだというのなら、ひとつ検討することについてもやっていただけますか。
  176. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いろいろな御意見でございますから、間違っているなどという大それたことを私は申し上げる気持ちはございません。それも一つ考え方でありましょう。ただ、昭和三十五年の金融制度調査会の答申では、総裁が職務上当然に政策委員会議長を兼ねる案があのときは提示されておった。ほかの銀行あるいは会社なんかも、株主総会というのは社長が議長になるのは確かに理屈の上から言えばおかしいのじゃないかという議論があってもこれは当然な一つの議論だと思いますが、長い慣行でそういう例が非常に多い。それがどういうメリット、デメリットがあるのか、そういうような点も含めまして検討さしてもらいます。
  177. 平林剛

    ○平林委員 私の質疑の残り時間はあと三分、グリーンカード制度に関する非課税貯蓄の問題について触れようと思ったのですが、これを始めるとちょっと尽きませんから、中途半端になるから改めてまた質疑をすることにいたしまして、私の質疑はこれで終わりたいと思います。
  178. 綿貫民輔

  179. 渡部一郎

    渡部(一)委員 銀行法の審査を始める前に、銀行に対する行政指導の責任を持たれておられる銀行局に対してお伺いするわけでございますが、本年は、言うまでもなく国際障害者年であります。ところが一番肝心なことは、現在一番問題の中心点となっておりますのは、各業界の身体障害者に対する雇用率を一応ランクづけをしているわけでありまして、それに対する雇用率というものが他産業に比べてはなはだ低過ぎるというのが指摘されておるところであります。たとえば、政府の統計によりますと、農林漁業については一・二%、鉱業については三・八三%、建設業については一・〇五%、製造業については一・三四%となっておりますが、銀行及び信託業の雇用率は〇・八四%となっておるわけであります。身体障害者雇用促進法によりますと、法定雇用率を満たさない企業は納付金を納めること、つまり罰金を納めると言うに近いやり方になっており、銀行については一・五%というのがその指示されているパーセンテージのようでございます。どうしてこんなに低く抑えておられるのか。銀行局は天下に名だたる日本の銀行をことごとく掌中におさめてふだん指導されておられる局でございまして、これについての責任は他の行政官庁と違ってはなはだ重いもあと感じておるわけでございます。  銀行局にいきなりお答えを迫りますとちょっと気の毒なことになりますから、直接担当の労働省の担当官がお見えいただいていると思いますので、労働省の担当官にこの問題について基本的なところをまずお尋ねしたいと存じます。よろしくお願いいたします。——じゃ労働省来られてませんから、順番を逆にしまして銀行局の方からお答えをいただきます。
  180. 米里恕

    米里政府委員 身体障害者の雇用状況でございますが、御指摘のように法定限度一・五%に対しまして、五十五年六月一日現在、普通銀行で〇・八五%という数字になっております。ただ、これは過去の数字と比較してみますとかなり顕著に上がってまいっておりまして、五十二年六月一日現在、三年前の数字を見てみますと普通銀行で〇・三五%、これが三年間で〇・八五%に上がってまいったというようなトレンドはございますけれども、しかし、なお法定限度一・五%に対して低いというのは御指摘のとおりでございます。  まあこの問題、第一義的には労働省の問題ではございますが、私どもも労働省の方針に沿いましてできるだけの努力を払わなければいけないと思いますし、また銀行もそういうふうに指導してまいっておるところでございます。  ペナルティーの金額はどのくらいかという御質問でございますが、申しわけございませんが、業種別の雇用納付金の額の統計がございませんので、つまびらかにしないということで御了承願いたいと思います。
  181. 広見和夫

    ○広見説明員 お答え申し上げます。  昨年六月一日現在で私どもの把握いたしております金融、保険、不動産業の身体障害者の雇用率の状況は〇・七一%、そのうち銀行、信託業は〇・八四%、それから証券業は〇・四二%というふうになっております。これはいずれも全国平均を下回っておるわけでございますが、前年に比べますとそれぞれ改善いたしておるわけでございます。  それから、雇用率未達成の企業につきましては、労働省といたしましては納付金制度を進めておりまして、雇い入れ計画の作成命令とかその他適正な実施の勧告等を行っております。  それから身体障害者の雇用納付金の問題でございますが、これは個別の業種別の状況は必ずしも統計で把握する形になっておらないものでございますので、現在のところ把握いたしておりません。
  182. 渡部一郎

    渡部(一)委員 またすごく奇妙な答弁ですな。そうすると、統計では把握していないのに個々には把握していて、勘定してないということですか。個々では把握していて統計では把握していないということは、足し算が済んでないということですか。そろばんがないんだな、そちらの局には。
  183. 広見和夫

    ○広見説明員 納付金の正確な額そのものは把握いたしておらないわけでございますが、たとえば、先ほど申し上げましたように銀行、信託業はいま〇・八四%の雇用率になっております。したがいまして、法定雇用率一・五%を達成するために平均的に雇用するといたしますと〇・六六ポイント雇用しなければならない。それから推計いたしますと大体約七億円銀行関係から納付金として徴収されておるということになっておるわけでございます。これは一応の推計でございます。
  184. 渡部一郎

    渡部(一)委員 納付金の推計額としては七億近いペナルティーを払いながら、銀行はなおかつ身体障害者の問題については非常に態度の悪い状況で今日まで推移しておる。社会的な公正とかあるいは社会的に銀行業務というのは企業の中核的な立場であるにもかかわらず、このペナルティーの大きさは、まあペナルティーと言うべきかどうかわかりませんが、少し大き過ぎると思いますね。特に証券が〇・四二なんというのはもってのほかだ。こういう問題について証券局長はどうお考えなのか、証券局長の方からまず伺いましょうか。
  185. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 証券業務の性格上、どちらかと申しますと外に出て仕事をする場合が多いというようなことも一つの原因かなあと思いますが、その辺の実態について一度十分事情を聞いてみたい、このように考えています。
  186. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外に出る業務が多いから雇用が達成しないというようなことを言ったら、あなたは局長を首になるほど抗議されますよ。その答弁はちょっと取り消した方がいいのじゃないか。私はあなたの将来のためにそれはまずい答弁だと思う。だから、外に勤める業務が多いからと言うのだったら、労働省とかけ合ってそのパーセンテージを変えなければいけない。それがあなたの仕事でしょう。それにもかかわらず、いまごろになって外務員が多いから身体障害者の雇用というものは少ないのであると公然とあなたが弁明をされたとしたら、あなたは国際障害者年に最も不理解なる国家公務員としてその責任を追及しなければならぬ。私はいまそういう立場で物を言うてもいいわけなんだ。あなた、ちょっとそれは口のきき方を変えなさいよ。問題ですよ。あなたはこれから調べると言うくらい無理解なんだから、そう言うのは当然なのかもしれない。銀行局長の方はもう用意しているけれども、あなたの方は用意してないのはわかっているから、特に心配だから言うのだけれども、その答弁は取り消した方がいいのじゃないか。心からざんげを表明して、そういう答弁はやめた方がいいよ。
  187. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 本件について調査をしておりませんで、突然のお尋ねでございましたので、さらに十分実情について調べさせていただきたい、このように考えております。
  188. 渡部一郎

    渡部(一)委員 銀行局長。この問題については、身体障害者雇用はいわば銀行の社会的な貢献度とも言うべき問題ですから、銀行あるいは保険、証券等を通じてこうした問題はディスクロージャーの対象にもなるべき項目だと私は思うわけなんです。だからそういう意見があることについてどう思われるか。第二番目には、少なくともこの銀行法の審査においてこれだけ銀行の社会的活動が問題になっているわけですから、労働省とも協力なさって国際障害者年にちなみ身体障害者の雇用率を他産業に比べていち早く達成するというような方向で考えるべきではないか。そうでないと、週休二日制のような企業の方向づけをいち早く銀行でやろうとしているときに、余りにもその社会的な任務について無理解だというそしりを免れなくなってしまうと私は思いますが、どうでしょうか。
  189. 米里恕

    米里政府委員 実はディスクロージャーにつきましては主として資金の運用の概要というようなものを考えておりまして、銀行の組織、人事、待遇といったような面については余り考えてなかったわけでございますが、御提案もございますので、なお研究してみたいと思っております。  それから銀行のパーセンテージ、先ほど申し上げましたように短期間にかなり上がってまいってはおると思いますけれども、なお決して十分ではないと思いますので、私どもも労働省の線に沿って十分銀行を指導していきたいということを重ねて申し上げておきます。
  190. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ではこの問題に対しては今年じゅうに十分の改善をなさるよう私はこの場で御要請しておきたいと思います。  次のテーマに移ります。  私は、最近の銀行経営の、特にこの改正案における銀行及び証券業務の相互乗り入れあるいはその他のかきね論争というものが長い間にわたり激烈な紛争を呼んだのを承知いたしておるわけでございます。銀行対証券の問題は、国内においては国債の窓販、ディーリング等の問題が中心ではございますが、この委員会のいままでの質疑を見てみましても、国際的に外債発行の引き受けの問題が相当大型の問題になっており、企業から見れば間接金融ではなく、銀行からお金を借りるような形ではなく、直接金融、つまり金融市場から自分がお金をかき集めてくるという方向に向かっていま非常に大きな流れが出ているように見えるわけであります。  今年の統計は承知いたしておりませんが、五十年度におきまして、こういう外債発行の引き受けという形で日本に流れ込んだ金は五十年度十七億ドル、五十四年度三十五億ドルというような、ラウンドで申し上げましたが、数字があるということを承っているわけであります。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 この数字を見ましてもますますこの数字が急上昇していく、こう思うわけであります。そうすると銀行と証券という関係はこの銀行法の中で海外の問題についてどういうふうに今後判断していくか、その境目はますます微妙かつあいまいなものになると私には思われます。そのときの基本的な方向につきまして銀行局長、証券局長おのおののお立場でまず簡明に基礎的な立場を御表明いただきたいと思います。
  191. 米里恕

    米里政府委員 銀行と証券の海外における業務の問題でございますが、基本的にはやはり進出先の国の慣行あるいは法制というものが十分尊重されなければならない。同時にわが国の銀行、証券がそれぞれ海外に出ていっているわけでございますから、わが国の国内の法制、たとえば証取法六十五条といったようなものについて実質的に影響を与えないようにしなければならない、そういったような点を勘案しながら、しかしできるだけ、長期的な方向としては自由化の線に沿い、その国の法制をより取り入れていくような形で進めるべきではないかというように考えております。
  192. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 基本的にはただいま銀行局長がお答えしたとおりでございます。現地法制に即して措置をするということが妥当ではないかと考えております。  ただ私どもが若干懸念しておりますのは、日本の銀行の海外現地法人が外債の引き受け等をいたす場合に、親銀行の影響力が非常に大きい、実質的に親銀行が引き受け幹事的な業務をやってしまう。言うなれば、現地法人はそのダミーであるというような形で本件が進行するといたしますと、これは日本の法制上の六十五条問題というのがやはり関連してくるわけでございます。そういった点で、できるだけ親銀行の影響力ないし支配力を及ぼさないで現地で現地法人としての業務をするということであれば、これは現地の法制に即して考えるのが妥当ではないか、このように考えております。  ただいまも申し上げましたように、現状ではまだそこまでいっていないのではないか、このように考えております。
  193. 渡部一郎

    渡部(一)委員 御両所がもうすでに問題を指摘されましたように、これはとんでもない問題があるわけであります。言ってみれば、銀行の現地法人を国籍地主義で考えるのか、その海外の属地主義で考えるかという差になりますし、証取法六十五条の趣旨から考えれば、海外の銀行支店に対しては国籍主義をとって証券業務を禁止し得るけれども、現地法人は形式的には外国の法人で、国籍主義で割り切れないというこの二つの問題に真っ二つに分かれておる。いま証券局長が仰せになりましたように、親銀行の影響としてダミー化された支店がそういう行動をとることについてどこで線を引っ張るかということになりますと、一々きわめてあいまいきわまるルールになってしまう。そうすると、当銀行法の審査の際に、あるいは関連、証取法等の審査の際に、こうした問題をいまやっているわけでありますけれども何かきわめてあいまいな、右を向いても左を向いてもわからないような奇妙な状況が海外では事実上存在しているように見えるわけであります。  大蔵省の中でも、関係局でしばしば起債等の問題について各局合意をつくりながらこの問題を処理してこられたことはわかるのでございますが、現在のところこうした問題についてどういう方向でいかれるおつもりなのか、局間の完璧な合意はできているのかどうか。言ってみればちょっと気の毒なんですが、いま証券局長はすでにダミーの問題についてはきわめてあいまいな部分がある旨お話しになりましたから、それはそれで一つの結論といいますかあいまいな状況があることをみずからお認めになっているわけではございますが、このあいまいな状況を今後どういう方向でなさるのか。また銀行局長がお認めになったように、この方向は結局海外において証券と銀行のかきねがどんどん下がってきて自由化方向へ向かって進んでいくという方向性があることをお述べになっておられる。そのとおりだと私も思うのですね。  そうすると、ここで銀行法の審査をしておりますが、この境目が海外でなくなっていく、そしてその海外でなくなっていった状況が日本にはね返ってくるという問題に対して、方向性をどうつけていくか、ここのところをぜひ伺いたいところでございまして、重ねて伺うわけでございます。どなたでもひとつ……。
  194. 米里恕

    米里政府委員 海外の金融機関あるいは証券業者がどういうふうに具体的に活動を行っていくべきかということにつきまして、御指摘のように大蔵省の中でも銀行局、証券局、国際金融局とそれぞれ関与いたしておりまして、三局で集まっては歴史的に見ましてもいろいろな合意をつくってまいっておるわけです。  それで、この三局合意というものが、時代により若干の緩急ございますけれども、漸次緩和していく、できるだけ現地法制に従って、できることは相互乗り入れでやっていくというような方向で基本的には進んでおるということでございまして、この点につきましては、今後とも緩和の方向で持っていくということについて、これまた三局が合意しております。  ただ、具体的に個別にどういうふうに緩和していくかというようなことは、いろいろな問題が起こってまいりましたときにケース・バイ・ケースで三局集まりまして相談しながら、しかし基本的には世界の経済がますます一体化しておりますし、制度も一体化してまいるというような傾向がございますので、そういった意味合いで余り厳しい縛りを続けないように逐次緩和の方向に持っていくということはコンセンサスを得ていると思っております。
  195. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 三局合意につきましてただいま銀行局長からお答えがございましたが、私どもといたしましても基本的には時代の趨勢に即して現地法制によって自由化するというのが筋道ではないかというふうに考えております。そういった意味で実際問題としていまの邦銀の現地法人における出資比率とか銀行免許の取得の問題、こういった点につきまして関係局、特に銀行局、国際金融局と相談しながら現実に即して処理していきたい、このように思っております。  ただ、先ほども申し上げましたように外債の公募発行、公募引き受けの問題につきましては、六十五条問題というかなりむずかしい問題が控えてございますので、現在直ちにこれを外すということは問題があるのではないかというふうに考えております。
  196. 渡部一郎

    渡部(一)委員 スイスにおける私募債の発行について、これは公募債と私募債の奇妙な境目だと私も思うのですけれども、いま六十五条問題は非常にめんどうな問題だとおっしゃいましたが、公募債についてめんどうなのじゃなくて、私募債と公募債の境目についてもうすでにきわめてめんどうな問題が出てきている。この間の解決というのは、あいまいもこと一言にして言ったら悪いのですけれども、手打ち式風にワン・ツー・スリーで縦割りで真っ二つにちょん切ったように思えるわけであります。こういうその場ごとに関係局長で何となく相談しながらやっていくというのは、いいようではありますけれども、これは長もちしない結論だろうと私は思うわけです。  私は今度の銀行法に実は非常に期待しておったわけです。このような関係行政機関が一々呼び出されては一つずつのケースについて、たとえば下品な話ではツームストーンの上に証券会社を上にするか銀行を上にするか、一々何番目になったかというのを格闘をして、そして銀行と証券会社の親玉が各局駆けずり回って訴えるというような状況、これは決してプラスにはならない。むしろわが国の幹事会社というものに対する権威を失墜せしめると思う。  先日も、外国からやってきたアラブの王様の手先でしょうか、そういうのが、ツームストーンの話になったら顔をゆがめて、日本はツームストーンになると非常に御熱心な熱意のある討論が行われるので、私たちはその問題に触れたくないというようなことをひやかしぎみに言っておったのを私も横で聞いておりまして、これはみっともないことだと思ったわけでございます。  こうしたことを含めまして、じゃ、どういう方向にするか、六十五条問題だけで縦割れない、いままでの三局合意でも縦割れない状況というものが出てきたのではないか。だから私は、この際この問題をもう一歩きちっと打ち合わせを済ませて、わが国の自由化方向について——銀行法改正の中に織り込むことは失敗したのですから、海外においては事実上自由化方向に向かってしまっているし、その影響がわが国にも及びつつあるわけでありますから、この問題について実務的な自由化方向に対する指針を固められる必要があるのではないかと思います。まず三局長に御答弁いただいて、大臣にまとめていただこうと思いますが、いままでさんざんお答えになった二局長はちょっとどけておいて、国際金融局長が深く思索にふけっておられますから、その辺からひとつお願いいたします。
  197. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 銀行局長と証券局長答弁のとおりでございます。ケース・バイ・ケースというのは、あるケースについて結論が出ますと、類似のものはそれで済んでしまうわけです。ところが、国際金融業界では次から次へと新手が出てくる、そういう場合に集まって議論していく、銀行局長が申しましたケース・バイ・ケースというのはそういう意味でございまして、いまのところ考えられるケースについては、一応一年くらい前に大体方向が出ておるということで、私といたしましては、これからいろいろなバリエーションでいろいろなのが出てまいりますが、目下のところは非常に円滑にいっているのではないか、そう見ております。
  198. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日本の法制と外国と違いますから、そこにいろいろ問題が出てきておる。そこで、どういうふうにうまくやっていくか、実際のところなかなか難問題なんです。だけれども、現地法人に証券業務をやらせる問題等の点については、漸次緩和をしていくというのが一つの流れではないか、したがって、今後も制約はできるだけ外していくという方向にならざるを得ないのではなかろうか、そう思っております。
  199. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣いま非常に慎重に答弁されて、いまの段階ではその程度にしかお答えになれないだろうということは私は理解しておりますからあえて詰めませんが、ただ、私はこのままほっておけなくなってきたという印象を持っているわけです。たとえばCDとかCPとかTBとか、譲渡性預金証書を初めとしたような売買一つを見てみましても、国内で売買されているときはまだ何とかなっておりますが、これは国内だけで売り買いしなければならぬという問題ではありませんし、インターナショナルな広がりを持って売買されるわけですね。またそういうふうに金融市場も広がってきたと私は理解しているわけです。  そして、海外では証券業と銀行業ともろに、それらの海外支店、ダミー会社あるいは海外設立法人、各種各様の形態を持つものが猛然と売り買いをやっておる。そして、それがたまたま本店勘定になるとか、海外から日本国内へ売買された途端にそのかきねが発生して、売り買いしてはいけませんよ、おまえさわっちゃいかぬのだ、おまえもやってはいかぬ、これはもうそういう実務的な手形の売買、譲渡性預金証書の売買の問題に発生してしまう。いまのうちはその辺こっちへ踏み込むなよというので、これは扱えないからしようがないのだということでかきねをつくってやるから何も問題がないように見えるかもしれませんが、この趨勢というものと余りにもちぐはぐな状況が生まれておる。  日本の法律は、明らかに日本国内しか通用しません。そして外国の法律は、おのおのの国しか通用いたしません。しかし、あんまり突拍子もない法律を日本国内でつくれば、世界と駆け引きずる場合に一々路線が変わってしまうという形になってしまう。自動車でも、左ハンドルの日本の自動車と右ハンドルの自動車と相互乗り入れするわけにはいかないというやり方で、お互いはえらい損をしなければならぬわけでありまして、私は自動車の売買なんかと違ってそれより猛烈な数秒間に取引の成立する国際金融業界については、こうした状況を放置するわけにはいかないのではないかと思うわけであります。この点重ねてでございますが、局長答弁ください。
  200. 米里恕

    米里政府委員 先ほど来申し上げておりますように、基本的には漸次緩和と申しますか自由化方向に沿いながら、しかしこれはまた長い歴史のあることでもございますので、そう一朝一夕にドラスチックにまいるというわけにもいかなかろうと思いますが、一歩一歩確実に漸次緩和の方向に持っていくということで三局で相談してまいりたいと思います。
  201. 渡部一郎

    渡部(一)委員 緩和という言葉がかぶせ得るのは海外支店についてのみでありましょう。この緩和なんというのじゃいやだとなれば、現地に現地法人をつくってしまえばそれで済むことでありますから、この方針というものはまさに日本の法制上はかっこうがついたように見えますけれども、企業の実態から見れば穴があいており、そしてかご抜けができるものも認めているわけでありますね。だから、ある意味でいまの局長の御答弁というのは、要するに実態論から言うともう成り行き任せだと、うまくやってくれと、日本国内の法律との整合性についてはゆるゆる考えますと言っていることに近いことになってしまう。その辺はもう決断をし、私たちの対応というものを固めた方がいい時期に来ているのじゃないか、またその御研究もすでに相当行われていることだと私は信じますから、これは早急におやりになった方がいいのではないかと私は思いますが、どうですか。
  202. 米里恕

    米里政府委員 先ほど国金局長も御答弁いたしましたように、ただ一般論をゆるゆると検討しておるという状況ではございませんで、毎日毎日いろいろな問題が起こっているわけでございます。その起こってくる新しいパターンの問題をどうさばくかということで三局で相談しておるわけで、かつ個々にさばきをつけておるというようなこと、そのさばきの仕方というのが結果的に言ってドラスチックではないけれども一歩一歩全体が緩和の方向に進んでおる、こういう状況であると申し上げます。
  203. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今回の銀行法の改正が週休二日制の問題と銀行、証券の間で多年議論された窓販、ディーリングの問題である、その二つの問題さえ何とかなれば後のことはたいした変更ではないというふうに批評する人もいるわけであります。私は必ずしもそうだとは思いませんけれども、少なくとも二つの大きな柱があった、しかしもう一つ大きな柱を立てなければならない国際化時代の対応というやつが、ここのところでは詰め切れなかったというのが実情だろうと私は思うのです。しかも条文の上に安定して書くほどの安定したものが存在しにくいということも、またこれは私も認めざるを得ない。事実それは認めている。だから、こういう不確定な状況、変則的な状況あるいは判断を次から次へと恒常的に決めにくい状況の中において、それに対するルールというものをつくらなければならないだろうと思う。たとえばイギリスで言うように、担当ボードあるいはコミッティーをつくってそのボードの裁決に全部ゆだねて一気にやっていくとかというのがそのやり方であります。恐らく三局長合意のもとにこうした問題を次から次へと処理していくということもその一つなんでございましょう。ただ、三局長は非常にお忙しい。そしてなかなか三人でお顔を合わせになることもむずかしい。三人で顔を合わせるのは委員会のみなんてこの間もおっしゃっておったところを見ると、きょう三人そろい踏みしておられるというのはもう希有なることなのでございましょう。そうすると、もうちょっと恒常的な機関が要るのじゃないかなと私は思っておる。しかもその判断がきわめてむずかしい自由化方向、日本にとってはそれこそ天照大神以来の大改革とでも言っていいこの国際化という大問題に対して、日本の金融業界をいままで抱えに抱え込んでこられた大蔵省が、あらしの吹いている港の外に小舟に乗ったわが金融業界をこぎ出させるというのはちょっと大げさかもしれませんが、それに近い決意を持って当たらなければならぬということを三局長だけの権限と責任でやれるか、それほど責任を持っちゃっていいのか。私は、三局長の御実力があればこそ今日までうまくいったのだろうとは思いますけれども、それだけじゃもううまくいかぬ時期に来たのじゃないか、これはもう重大なテーマとしてしかるべき対応システムをつくるべきときが来たのではないか、対応研究を大テーマとして上げるべきときが来たのではないかとさつきから言おうとしているのです。銀行法全部やめろと私言っているわけではありません。銀行法の改正が間違っているわけではない。ただ不足しておると私は言っておる。これほどの大きな波に対して何かの対応策が要るのではないかと申し上げ、その対応が出てくる方向性、それに取り組む気構えあるいはそういう意思をいま問うているところであります。どうでしょうか。これは大臣にお答えいただいた方がいいのかもしれませんが、どうぞお答えいただきたいと思います。
  204. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 現在の銀行法でそういうような国際情勢の現実にうまく適応できない、言われてみるとそのとおりであって、国内のかきね論争だけでもこれはやっと押さえ込んでやってきたという実情なんでして、ともかく海外までやる暇はなかったということ、これも事実なんです。しかしさらに国際化が進むということになってまいりますと、なかなか逃げて通れないということでございます。だから、先ほどから局長が言っているようにかきねをつくって秩序を立てていくということよりも、国際関係の部門についてはむしろ緩めていくという方向で行くほかないんじゃないか。しかし日本がこれだけ国際社会において経済的に大きな役割りを占めるようなことになったわけですから、三局長会議ばかりやらしておくわけにもいかない、何らかそこについてはもっとさばきのきくようなことを法制問題も含めまして検討していきたい。次はすぐというわけにはまいりませんが、そう何年もかけないうちに検討の結果を得るように極力勉強させたいと思っております。
  205. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣から非常に現状にふさわしい御答弁をいただいて私も喜んでいるわけでありますが、これは研究する部面と一緒にいますぐ何かの答えを次から次へ出す実施部隊とが要るというきわめてめんどうな問題だと私は思います。その実施部隊の方はまたあんまりよく考えていないのに結論を下すという蛮勇をふるわなければならないだろうと、私はその担当になられる方に深い同情を申し上げたいと思います。しかしながら笑っておられないのだし、考え込んでおられるわけでもないのだし、そして現在の銀行法の枠縛りが、ふんどしにたとえて言うと緩んでいるふんどしを締めるならまだわかる、だけれどもふんどしが外れちゃってなくなっている部分がたくさんあるんだからこれは締め直すと言ったって締める方法がないような部分だってある。もうふんどしを外してパンツに取りかえた方がいい場合だってある。だからこの問題については研究と一緒に実施するグループを直ちに何とかしなければいけない。実施する権限をだれに与えるかの問題になろうかと思います。その辺も含めまして適応能力の早い大臣に適切な施策を打たれるように、私は重ねて希望したいと思います。
  206. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御趣旨は尊重してまいりたいと思います。私もこの間フランクフルトとかロンドンとか歩いてきまして、銀行、金融の連中みんな集まってパーティーなんかやってくれたんですよ。やはりこれに似たような話が雑談で出まして、こちらはどうですか、銀行と証券とうまくやっていますか、けんかばかりやっていますかと言ったら、非常にうまくやっているとみんな言いましたね。ですから、結構話し合いでやっても、現実にはうまく動いてはいるのです。ですからこれはやはりケース・バイ・ケースで、そういう問題については当面現実的に対処してまいりたいと思っております。
  207. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まだ少し続く話をして申しわけないのですけれども、もうすぐこの話を終わりますからがんばってください。  次から次へ答えられないようなことばかり聞くいやなやろうと思っておられるかもしれないのですが、最近の外貨預金というものと円預金というもの、様子を見れば見るほどこの両者というものは区別ができなくなってきてしまっておる。そして円というものは、これから見ておりますとますます国際通貨化してくる。だから現在の海外市場における借金をしようという日本の企業も、あるいは商売をしようという方も、円建ての商売というのはきわめて多くなっている。ドル建てばかりじゃない。つまり、日本の円というそのもの自体が国際通貨化してしまうという状況にある。それはもうみんなわかっている。しかし、その国際通貨となったときのむずかしさと苦しさというものが、遺憾ながらわが国は経験がきわめて浅い。それは、インフレ状況になったときとデフレ状況になったときに全く違う。先行き戦争が起こりそうなときと起こらないときと全く違う。そんなことはもう観念的にはわかっておったとしても、とんでもない問題である。たとえば、ミッテランが当選したというだけの話で、もう円というのは俄然売られてくる。フランスだけにしてくれればいいのに、日本まで売らぬでくれと言いたいところだろうけれども、そうはいかないのが実情なんでありますね。  こんなことはあたりまえですから、そうすると、国際金融市場という名目の中で日本が固定金利を続けていくということに対して、いま非常に大きな圧力がかかっておる。だから、円の為替相場を張っている人たちに聞くと、日本政府の持っている固定金利のおかげで、われわれはもう大変もうけさせていただいておる、がんこきわまる大蔵省の反対側の手を打てば必ずもうかる、これほどありがたい商売はない、私が今日背広を着て座っておられるのは大蔵省のおかげですなんて私にぬかしたやつがいる。私はこれを見ておりまして、本当に何とも言えぬ気がいたしておるわけでございますが、こういう笑われ方をしているのは、やはりしばらくたつと無理を生じてくると私は思うわけですね。  また、日本の企業がいま次から次へとインパクトローンの借り入れを国際市場で増大させておる。これはもうとめるわけにいかない。むしろ、日本の企業がそういう勢いでインパクトローンを多く組むということ自体が、三千五百億ドルという膨大なオイル資金というものを還流させる一つの手続にもなることですから、むしろ世界的なレベルからは奨励しなければならない問題だろうと私は思うわけですね。  ところが、国内の貸出金利と国際的な自由金利とにこうギャップがあったんでは、どうしても国内の貸出金利というものは空文化してくる。この貸出金利について非常にあおられてくる。  先ほども同僚議員が質問されておりましたけれども、アメリカの方がプライムレートを、一九・五%ですか、それに勢ぞろいさせた。向こうは一九・五%と勢ぞろいさせて、日本の方は五、六%のところへ並んでいるなんというのは、電報と電話と為替相場がつながっているいまの世界の状況の中で、もう気違いざたであると私は思うのですね。それ自体が日本の大きなマイナスになっていく。  だから私は、こういう時代の対応の仕方というのは何とかしなければならない、要するに、日本の固定金利状況というのも、そのまま続けていくわけにいかないのではないか、そう思うわけですね。また、それに大きな問題があるのは十分認めた上で申し上げているわけであります。  しかも、膨大な国債が、いよいよ償還期が追ってきつつあります。昭和六十年になりますと日本の国債の償還期がぶつかってきますが、その償還される国債がいま市場で、言ってみれば自由な金利がついているわけであります。そうすると、その自由な金利のついている国債マーケットというものが、日本の二年ものの定期金利あるいは定額預金等と金利水準を争うことになるでしょう。そうすると、固定金利で構えているという名目が、昭和五十八年、五十九年、六十年にはもう吹き飛ばされてしまう。そのときに国債の借りかえをやろうとか、あるいは固定金利に抑え込みをしようとかという行政指導自体がもうナンセンスな時代になってくる。日本は自由化をしたいとかしたくないとかというものじゃなくて、みずから持っている膨大な国債残高によって、一方は吹き飛ばされ、一方は日本企業の、それこそ世界に現金を求めて進出しようとする、国際的な信用供与を受けようとする日本企業のその鼻息でつぶされてくる、こういう状況にあるわけですね。  そうすると、ことしは昭和五十六年ですから、まだ時間があると言えばあるわけでありますけれども、こういう状況についての地ならしはもうすでに開始されていいのではないか。この三年間というものは、三年間余裕があるかどうか。私はせいぜい一年か一年半と思うのでございますが、この間において、日本の金融政策について、海外市場とのリンクについて、海外市場金利との調整に  ついて、あるいは日本の金融市場の国際化の問題について、もう少し基本的な立場が明示されてい  いのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  208. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 大変御示唆に富むお話でございまして、私は、ちょうど国内の金融市場と海外の金融市場との接点を担当しておるわけでございます。まことに、いろいろ御指摘のとおりのような事態が進行しております。  答弁が長くなるといけませんので、二、三具体的な点を申し上げてみますと、ただいまのプライムレートが、アメリカは一九・五、当方が、短期が六・七五ですか、えらく開いておる。  ただ、この場合、金利と申しますのは、通貨の力によって、キャピタルロス、キャピタルゲインというような問題が介入しますために、そこに直先のスプレッドというのが働きます。したがって、先ほどの外貨預金、円預金の問題、インパクトローンの問題、現実にごらんいただきますと、海外のドルの金利が高ければうんと出ていってしまうように思いますが、ドルが将来弱くなるというような見込みがあれば、直先スプレッドが働きまして、そこで調整されるという問題がございます。  この問題は、当面日本のファンダメンタルズが、要するに、物価なり経常収支なりの動向がいい方向に向いておるということであれば、将来の円が強くなる。強くなる通貨の金利は低いわけです。弱くなるともう金利は高いわけです。そこで、そういう調整作用が働きます。  それから第二点は、日本の金融市場は、波打ち際の短資の市場はほとんど自由になっております。言い過ぎになりますが、かたい部分もございますけれども、まあかなり自由になっておる。そこで、調整作用も働きます。  ただ、御指摘のように、外為管理法が昨年の十二月一日から施行されまして、日本経済をもう一段質量ともに大きくするためには、自由化をしなければいけない。経常収支が逆転しておるという問題がございましたが、大蔵委員会の御審査の際も、これを発案したときと全く条件が違うじゃないか、にもかかわらずやるのかという御質問を当委員会においても受けたわけでございますが、私としては、外から言われてやるのではなくて、日本経済を質量ともにもう一段オーダーを上げるためには自由化しなければいけないんだという考え方を申し上げまして、御賛同を得たわけでございますが、そういう考え方で、昨年十二月一日に、状況が必ずしもよくなかったのですが、踏ん切ったわけです。そういうかっこうで徐々に徐々に日本の経済を国際経済と余り差のないようにしていくという考え方は、基本的に持っております。ただ、当面は、いま申しましたように、円の先行きについてコンフィデンスがありますので、金利差だけでは短資が動いていない、そういうかっこうで、レートにおきましても、きょう、もう一つ御質問があるやに聞いて伺ったわけでございますが、たとえばフランが四、五%ダウンしておりますが、円の方は一・何%ぐらいのダウンで済んでおるというような状況にあるわけでございます。
  209. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまのお答えをいただいて私は痛感するのでありますが、まさにこの問題についてこれから質問を始めなければいけないような応酬の口ぶりになってまいってきて恐縮でございますが、私は、こうした国際化に関する諸問題についての討議、討論が薄いうちに、この銀行法という仕立て直しの着物をせっかく用意したんだけれども、その仕立て直しの着物が案外と背丈に合っていないで、着た途端からもうつんつるてんが変わらないような気がして仕方がない。要するに、いまの国際化の時代において、ただいま御指摘いただきましたように、ファンダメンタルズの強い日本経済というものが非常に救われている面がある、しかし、そのファンダメンタルズの状況が悪化した状況であったら、このままの金融的な対応では済まなかったと私は思うわけでございます。  そうしますと、わが方にどういう対応が残されていたかというと、対応は非常に少なく、打撃ははなはだ大きいと言わなければならないと存じます。その意味で私は、現在日本経済が奇跡的に、ある意味では非常にフロックが続いておりまして、こうしてうまい状況というのが継続しているわけではございますけれども、この問題について今後も御研究をいただき、ひとつ何とかしていただかなければならないと考えているわけでございます。  私は質問をまだ多数残存させながら、質問時間がなくなってしまいましてまことに恐縮でございますが、よろしゅうございますか。  最後に、証券の問題につきましてまとめてちょっと申し上げておきたいと存じます。  先ほどの御質疑の中にもございましたけれども、昨年秋の金融・証券小委員会での銀行界からのヒヤリングにおきまして、銀行法に証券業務を明記し、すぐに実施させよということを主張されたのは都銀代表のみであったと承っておりますが、大方の御意見では、将来に備えての法制整備をしておく必要があるということであったように承っているわけであります。したがって、国債の大量発行ということ、そもそもそのこと自体が、当局の計画では財政再建の線に沿いまして発行額を減少させる方向にあるものと理解をいたしておるわけであり、そういう計画でありますならば、よほどの失敗がない限り、いわゆる借換債を含めましても今日の規模を大きく上回るような国債発行というのはあり得ないというふうに考えられるわけであります。したがって、場合によりましては窓販の即時実施を考えるのではなく、今後の国債発行の中で国債個人消化の伸展を見きわめた上で配慮してもいいという意見が介在するということは、ある意味でうなずけるわけであります。しかも銀行に窓販を認めた場合に、銀行が力の弱い中小企業等に対しまして押し込み販売をしたり、歩積み両建てのかわりに国債を買わせたりするおそれがあるということは当委員会指摘されておりますが、そうした問題に対してどういうように指導をなさるかという問題については、まだ詳細に承っていないわけであります。  また、銀行間の格差というものもかなり格差を拡大するおそれがあるのではないかと思うわけでございまして、伝えられる三人懇談会につきましても、認可の時期をどうするかという点だけにしぼって議論をされるのか、認可の時期そのものだけではなく、そのときどういう必要状況が生まれるか、予想される問題点をどういうふうに解明するかという基本問題に立って御相談になるのか、その辺注目いたしておるところでございまして、この辺をまずお聞かせいただきたいと思います。  第二、認可の基準でございますが、証取法によりますと、銀行は認可がなければ営業としての公共債の証券業務ができないとされておりますが、営業であるかないかは営利性と反復継続性で判断するというふうに承っておるわけであります。銀行法によりますと、不特定多数を相手にする場合は銀行法上の認可が必要となっているわけでありまして、こうしますと、この二つの法律の間に認可の基準があり、表現の仕方が異なっているわけであります。この二つの法律が、一つは投資者保護の問題であり、一つ預金者保護のためという異なった表現と趣旨を持つところから生じているところでも理解しているわけでありますが、この二つの表現というものが法律の運用上の多大に大きな問題を生じると思われるものでございまして、この両者の整合性をどのようにとっていくか、ぜひお伺いをしたいと思っているわけでありまして、これが二番であります。  第三番目は、銀行法上で付随業務として位置づけられております投資目的の売買の具体的な中身についてお尋ねをしたいわけであります。  投資目的ということの範囲を広くとりますならば、実態的にはかなりな程度までディーリングもできるということに究極的にはなるものと思うわけでございますが、認可制度をとったことの意味はそうなるとなくなってしまうわけでございます。したがって、認可をとらずに、Aから買ってBに売るというような市場の仲介者としての機能をすることなど、これを反復継続すること、あるいは結果的にそうなることを慎むというためには行政指導が非常に必要であろうと思いますので、その点当局の御意見を承っておきたいと思うわけでございます。  第四番目に、イコールフッティングにつきましてお尋ねをしておきますが、金融界と証券界の双方につきまして、競争によりまして国債の個人消化の伸展を図るということは初めの意図であったかと思いますが、この競争条件が違うという状況、たとえば私は必ずしも証券の肩を持っているわけではございませんが、ある意味での中小企業者の色彩がまだ色濃い証券業者に対しまして同じ立場でスタートさせるのではなく、かなり競争条件の違うところで一気にスタートさせるということになりますと問題が生ずるのではないか。その点の配慮、その点の行政指導のニュアンス、そうした面につきましてお尋ねをしたい。  以上、まことに恐縮でございますが、同僚議員の御理解によりまして最後にこの四問追加させていただき、私の質問とさせていただきます。
  210. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 いろいろ御質問がございましたが、私と銀行局長とそれぞれ答弁をさせていただきたいと思います。  まず第一に、窓販の認可の時期、そのときにどういった基準あるいは条件を考えておるのか、こういう御質問でございます。  銀行法、証取法が今国会で成立しました暁におきまして、私ども三人程度の中立的な立場にある有識者によりまして懇談会を設けさせていただきたい、そこでこの認可の時期等につきましていろいろ御意見を承りたい、このように考えているわけであります。  それではその際にどういったことが問題になるのかということでございますが、第一には、やはり国債管理政策上の要請、そういった立場から国債の安定的消化を推進する必要があるわけでありますけれども、この点につきましてどういうタイミングを選んだらいいのかということであります。  それから第二に、こういった銀行に窓販を認めた場合には、これは銀行の新規参入ということになるわけでありますけれども、これが公社債市場にどういった影響を与えるのか。先ほど来御議論がございましたけれども、銀行がただ国債を売るというだけでございませんで、そのはね返り玉の処理とかあるいはその際の価格は市場価格でやるのかどうか、そういった問題もございます。さらに、これは銀行経営上の問題として、こういった価格変動商品を扱うのがどうかというような問題、こういった点につきまして認可の時期とあわせてひとつ御議論をいただきたい、このように考えているわけであります。  それからもう一つ、そもそもこういった窓販あるいはディーリングを認める場合に問題が非常にあるのではないか。たとえばイコールフッティングの問題はどうか、はめ込み販売と申しますか押し込み販売と申しますか、そういった点がないのかどうか、こういった点について御質問がございましたけれども、この点につきましても何らかの芽生えと申しますか、それに即応した対策についてもあわせて検討を加えなければいかぬ。窓販について実施する場合のそういった証取法上の規制措置、これは今回準用規定を設けておりますけれども、この準用規定についてさらに詳細な省令等の措置もとらなければいかぬ、このように考えております。  それから証取法上の認可と銀行法上の認可に若干の食い違いがあるのではないかという御質問がございましたが、これにつきましては、私どもは証取法上の営業と申しますと、通常営利の目的をもって反復継続して証券取引を行うということで解釈いたしております。そういったことで、仮にある銀行がたまたま親密な関係にある機関投資家に新発債をはめ込むとか、あるいはある銀行が投資の目的で保有している国債を資金繰りのために親密な取引先の会社に売却する、こういった単発的、偶発的なものは営業とは見ておりません。したがいまして、こういうものについては特にこの認可を要しないというふうに考えておりますが、ただいま申し上げましたように、証取法の観点からはやはり投資者保護ということが基本概念でございます。したがいまして、社会通念から見て大体これは営業だなということになれば、免許制の趣旨に即して認可をとっていただきたい、このように考えております。  いろいろございましたが、大体以上、私どもの方からお答えいたします。
  211. 米里恕

    米里政府委員 投資の目的を持ってする有価証券の売買とは何かということについて申し上げます。ここで言う投資の目的というのは、証取法上の営業に含まれない一切の有価証券の取得または譲渡というふうにわれわれは考えております。これは本来企業体としては、特に法律の規定がなくても、いわば余資の運用という形で、有価証券をどれでも取得できるというものであろうかと思いますけれども、金融機関の場合には最近非常に大量に有価証券を取得するようになった、これはある程度貸し出しと似た性格、つまり資金の運用という意味で貸し出しと似た性格も持っているし、本来決して銀行業と無縁のものでもないとも考えられるということから、従来特に規定がございませんでしたのを付随業務ということで認めることにしたということでございます。投資の目的かどうかというチェックはどうするのだということにつきましては、必要があれば銀行検査等を通じて個々のケースでチェックしてまいりたいと思っております。  それから、たびたびお話の出ました押し込み販売の話でございますが、さっき正森先生の御質問にも若干申し上げましたように、私は歩積み両建てとはやや性格が違っておるというようにも考えておりますけれども、いずれにせよ融資金融機関であるという力を利用いたしまして無理に企業に対して国債の販売を強制することは望ましくない、これまた問題があれば検査等を通じてチェックするということになろうかと思います。
  212. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ありがとうございました。
  213. 大原一三

    大原(一)委員長代理 堀昌雄君。
  214. 堀昌雄

    ○堀委員 大変難航しておりました銀行法案が四月の終わりごろに駆け込み提案というかっこうで提案をされました。しかし、五十年来の法案が本日私が最終の質問者ということで採決になることになりました。この前、本会議で少し私の基本的な考え方については議員の皆様に申し上げ、今後の対応についての問題を申し上げたわけでありますけれども、実は今後の金融問題の中で、最も重要な問題は二つあるのではないか、こう私は考えているわけでございます。  一つは、国際的に金利自由化をされているのでありますけれども、日本の場合には依然として管理金利といいますか、金利調整審議会とかいろいろなところで人為的に金利が決められておるという現状であります。しかし、今日の国際的な情勢でありますから、当然日本も、金利自由化をされていかなければ対応ができない段階になると思っているのであります。私は、昭和三十八年ごろから金利自由化問題を当大蔵委員会で申してまいりましたから、すでにもう十八年たつわけであります。十八年たちまして、確かに少しは前進いたしましたけれども、依然としてまだそういう人為的金利で日本の金融が動いているということは、私から見ると大変残念なことだと思っているわけでございます。そこで、この金利自由化問題について、一体日本銀行としてはどういうふうに今後の問題を含めて考えておられるかを最初に日銀総裁からお答えいただきたいと思います。
  215. 前川春雄

    前川参考人 私どもも、これからの金融政策の中心は金利政策であろう、金利機能の活用ということが非常に必要になるであろうと思っております。それは、量的な規制であるとか預金準備率であるとかいうようないろいろな方策もございまするけれども、国際的に資本移動が非常に活発になってくる、これは不可避の事態でございます。そういう事態に対応いたしますためにも金利機能が十分にそこで発揮されることが必要であろうというふうに思っております。私どもも金利自由化という点につきましては、あらゆる機会をつかまえて自由化の推進に努めておるわけでございまして、できるものから逐次自由化を進めておるというのが現状でございます。いま先生がおっしゃいましたように規制金利がまだ残っておりまして、非常にむずかしいところ、預金金利という問題についてまだ自由化が進んでおりません。しかしそれも、たとえばCDとかいうものについては自由化をいたしたわけでございまして、今後もそういう方向に進めていきたいと考えております。
  216. 堀昌雄

    ○堀委員 預金金利の問題は、欧州はかなり自由化されておるところがありますが、アメリカも、この間の一九八〇年の銀行法改正で八六年から自由化というようなことでありますから、私も、一足飛びに預金金利自由化ということを考えているのではないのでありますけれども、最近日本銀行はこの四−六期における資金余剰に対応して政府の短期証券で売りオペレーションをやられたと承知しておるのでありますけれども、この内容についてちょっと簡単に御報告をいただきたいと思います。
  217. 前川春雄

    前川参考人 季節的に四月、五月は非常に資金の余剰期になります。これは毎年そういうことでございますが、本年はその幅が一段と大きくなっておりまして、四月、五月両月を合わせますと約五兆円の資金余剰が出るわけでございます。  その資金余剰をどうやって吸収するかということでございますが、日本銀行の貸し出しにつきましても回収いたしました。それから手形を買っておりました分も売り戻したわけでございますが、まだ資金余剰がかなり残っておるわけでございます。これを吸収する方法といたしまして、日本銀行の手形を売って売り出し手形で吸収するかあるいは日本銀行の持っておる資産を売って吸収するか、この二つの方法があるわけでございますが、本来日本銀行の売り出し手形というものは日本銀行が新たに債務を負うわけでございますので、それよりも、日本銀行の持っておる資産を売ることが自然な形でございます。そういう意味におきまして、現在、日本銀行の政府短期証券の保有は、その日によって違いますけれども、八兆円前後ございます。これを売却することによってその資金を吸収しようというふうに考えたわけでございます。
  218. 堀昌雄

    ○堀委員 資金余剰に対応するのに政府の短期証券で売りオペレーションをやる、私はここまでは大変いいと思うのですが、聞くところによると、短資会社に日銀は一括して売り渡した、こういうふうに承知しておりますが、いかがでありますか。
  219. 前川春雄

    前川参考人 おっしゃいましたとおり短資業者、農中、全信連も入りますけれども、短資業者に売りまして、短資業者から転売を認めるということをいたしました。
  220. 堀昌雄

    ○堀委員 いま総裁は、できることから金利自由化をやりたい、こうおっしゃいましたね。もしそれならば、私が聞いておるところでは、今後なお一兆円ぐらい売りオペレーションをなさる、こういうふうに承知しておるのでありますが、この一兆円全部をそういうふうにして公募でやれとは言いませんけれども、要するにその幾らかを——あとは今度おやりになったように短資なり農中なり全信連、そういうものでやられるのもいいのですが、部分的に公募によって金利自由化というものの新しい道を開く時期が来ているのじゃないだろうか。短期証券の売りオペレーションがやれるのは資金余剰時期に限られておりますから、そうなるとやれるのは四、五月のこの売りオペレーションと十一月ごろにまた資金余剰が来ると思いますからそのときの、年に二回くらいしかありませんけれども、しかしやれるときにやれる範囲でそれを進めていただくことが、今後の国債問題を含めての金利自由化の新しい道を開くことになる、こう考えておりますので、ぜひそういうふうにしてほしいと思うのですが、総裁の御見解を承りたいと思います。
  221. 前川春雄

    前川参考人 金利自由化をいたしますのに先ほど先生おっしゃいました一つの突破口をつくっていくような考え方を私どもとっておりまして、できるところから少しずつやるということを申しましたのはそういう意味でございます。今度売り出し手形と並行いたしまして私どもが引き受けております短期証券を市場レートで売る、日本銀行はそれだけの負担をすることになりますけれども、これも一つ大きな突破口であると私どもは実は考えておるわけでございます。  入札にするかどうかという点につきましては、今回は期間が非常に限られておる、先生おっしゃいますように資金余剰期というのは四、五月、それから十一月くらいにあるかということでございますが、その資金の吸収手段として期間と金額を大体予定いたしまして実施いたしておりますので、今回はいままでの方式でやるのがいいのかなというふうに考えております。しかし、将来の問題といたしまして政府短期証券を入札発行するということは日本の短期金融市場の育成のために、また企業と金融機関が参加するオープンマーケットの育成のためにもぜひ必要なことであろうと考えております。
  222. 堀昌雄

    ○堀委員 私が金利自由化問題というのを昭和三十八年ごろに考えましたのは、金融政策の勉強をいたしておりますとそこには公定歩合操作と準備率操作とオープン・マーケット・オペレーションと三つあるのだというのが諸外国の状態であります。ところが、日本では、公定歩合と窓口規制と二つだけしか当時はなかったのであります。そこでいろいろ調べてみますと、オーブン・マーケット・オペレーションが一番広く効果のある金融政策の手段ではないのか、その中での大事なことは金利自由化をされていなければこういうオペレーションはできないということから、正常な金融政策を広範囲に推し進めるためにはやはりネックになっておるところの人為金利というものを改めるべきだ、それが私がこの問題を位置づけることになったもとでございまして、もちろんいまのは、もう六月に入ればまたどんどん回収されてくる性格のものでありますから、必ずしも公募入札に限れというわけではありませんけれども、これまでに比べれば私は一歩前進だ、こう見ておるのでありますけれども、今後ともやはり機会をとらえてそうやっていただきたいと思うのであります。  そこで官房長官、きょうここへ御出席をいただきましたのは、実は、日本の金融問題の今後の問題では、民間金融機関のあり方と政府関係の金融機関のあり方、ですから公的な金融と民間金融、こういう問題が、いまは金利自由化問題を一つ挙げたわけでありますけれども、二つ目の非常に重要な課題だ、こう考えておるわけであります。そこで金融の分野における官業の在り方に関する懇談会というのが官房長官のお手元でいま論議が尽くされつつあるようでございます。そもそもこの金融の分野における官業の在り方に関する懇談会を設置されることになった本来の目的といいますかお考えはどういうものであるのかをちょっと伺いたいと思うのでございます。
  223. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 懇談会が設置されました直接の動機と申しますと、実は、もう御案内のことでございますが、昨年の末にいわゆる個人年金を創設するということを決めました際に政府と自民党の合意に端を発したわけでございまして、個人年金を発足させるということは、これはことしの九月からを目途にすることになっておりますけれども、このことに関して、民間がやっているところの業務に官が新たに進出することには問題があるという意見が政府部内に一方にございました。そういうこともございまして、そのあたりをどういうふうに考えたらいいのであろうか、あわせまして、今後の金利の決定はどのようにあるべきかといったようなこともひっくるめまして、公平な第三者的立場から検討してもらったらどうであろうか、こういうことでこの懇談会が設けられるに至ったわけでございます。
  224. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話を伺っておりますと、個人年金という一つの具体的な問題があったんだと思いますが、あわせて、昨年大変郵便貯金に預金が集まるという現象もあったためににわかにこの問題というのは民間の金融機関からも非常に問題視されておるということになったと思っておりますので、こういう懇談会を設けられたことは私は適切な措置である、こう思うのでありますけれども、きょう官房長官にもお越しをいただいておりますのは、民間金融と公的金融というもののあり方の問題を私なりの考えを述べながら、日本銀行総裁を含め皆さん方の御意見を少し伺いたい、こう思っておるわけであります。  この間私本会議でも触れたわけでありますけれども、実は二月十日の当委員会におきまして、私は、財政投融資の見直し問題を中心にしながら国債特別会計というものをつくったらどうかという提案がしてございます。これは、実は現在の国債発行がなかなかむずかしい条件にまずございますし、同時に、発行当局が完全にフリーハンドを持っていないということも発行の対応を大変困難にしている面があるというふうに考えたものでありますから、そこで、そういうことをひとつ合理的にやろうということのためには国債特別会計というものをつくって、そこで大蔵省はフリーハンドで国債を発行できるようにしたらどうかという問題を取り上げました。  同時に、郵便貯金というのは、これは国民が公的な金融機関に預けておる預金でありますが、公的なところに集まったものはできるだけその使用を公的な側に限定していったらどうか。そうしますと、仮にことし八兆九千億郵便貯金がふえる、それならばこの八兆九千億で全部長期国債なりその他の国債を買ったらどうなるかということの提起であります。これは一つ考え方であります。八兆九千億買いますと残りは三兆程度になりますね。十二兆二千七百億ですから三兆余りというのが残るわけですから、その三兆余りというのは市場に出したらどうか、これが私の考え方でございました。  実は、昭和五十六年の国債の発行というのは、現状で見ますと償還や借りかえなんかがあるから大体十一兆円実際には出ていくということになるようであります。資料をこの前理財局に見ていただいたのです。その中で、そういうふうにやりましたらいまの三兆円ぐらいなら非常に公正な価格が市場で決まるだろう、無理に押しつけるわけではありませんから。そのかわり財投の方は穴があきますから、ことしは、五十六年は資金運用部で三兆五千億しか引き受けないということになっていますから、その差額だけは財投に穴があく。穴があいたのは民間資金を政府保証債その他で活用したらどうかということを申しているわけです。それはどういうことかといいますと、公的なところで集めた金はひとつ公的なところに主として使おうではないか、民間が集めた金は主として民間で使うようにした方が問題が少ないというのが私の基本的な考えなんです。というのは、銀行側にすれば自分たちが苦労して集めた金を政府が公的に持っていってしまう。持っていってしまうだけでなくて、郵便貯金で、民間の銀行が集めようとしておるところ、競合しておるところでまた民間の金を持っていく。それではちょっと政府のやり方はひどいではないかというのが私は一つのベースにある問題だと思う。ですから、そこのところを少し整理をして、民間で集めたものは民間に使う、それから余剰が出ればそれはまたその市場においてそういう債券類の処理で処理をすればよろしい。ですから、その整合性というものは全体として考えなければなりませんが、一遍には——渡辺大臣もこの間から話はわかる、急にはいかぬ、それは私もわかります。だから方向一つ定めるということが今後の日本の金融政策で非常に重要な問題だ、こう私は考えておりまして、そうなれば、いろいろなトラブルが非常に減ってくるのではないだろうか。要するに、公的なところで集めたものは優先的に公的なものが使用する、民間が集めたものは民間でひとつ使用する、こういうふうにやるべきではないか、こう思っておるのです。  そこで日銀総裁に伺いますが、最近の資金の需要状況で、経済各部門の資金過不足の状態というのは一体どういうふうになっておるかをちょっと簡単にひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
  225. 前川春雄

    前川参考人 いわゆる資金の流れと申しますか、マネーフローのことであろうかと思いますが、公共部門の資金不足が五十四年中は十七兆四千五百億、法人企業部門の不足が六兆七千億、個人部門と申しますか、民間部門の資金余剰、これが二十兆一千億というのが五十四年度の計数でございます。
  226. 堀昌雄

    ○堀委員 これはちょっと前の方を見ましても、大体五十年から見てもだんだんとこの公共部門の不足は拡大をしておりますね。今後それではこの公共部門の不足というのはずっと縮小するかというと、私はやはり少なくとも、角度は別としても、依然としてまだ拡大をするのじゃないか、こういうふうに思いますが、総裁はどうお考えでしょうか、公共部門の不足について。
  227. 前川春雄

    前川参考人 もし財政再建が着実に実施、実行されるということでございますれば、必ずしも不足が拡大するばかりでなくて、それにもおのずから限界が出てくるということが期待できるのではないかというふうに思っておりますが、すべてこれは財政再建ができるかどうかということにかかるわけでございます。
  228. 堀昌雄

    ○堀委員 おっしゃるように、これは財政に関係することでありますから、日銀は客観的な立場でお答えをいただいたわけであります。  そこで、このような資金不足はしばらくは続きます。財政、この中期経済政策というのをもとにして国債の発行、償還というのをこうずっとデータを調べてみたのでありますけれども、この中期試算では五十九年に新規国債の発行というのは六兆七千九百億円、こういうことになりまして、それから後は全部六兆七千九百億円を発行するという前提で物が組まれておりますから、これは一つの試算ですからこれでいいと思いますが、実態はやはりそんなわけにはいかないだろう。要するにこれから財政再建で、公共事業も抑える、何も抑える、まあしっかり一遍抑えてみるが、一応特例債の発行というものがけりがつけば、それからはやはり日本経済というのは拡大するわけですから、日本経済の拡大に伴って公共部門もやはり拡大をやっていかなければならないんで、この六兆七千九百億という数だけで物事は動くわけではございませんから、そう考えてみますと、やはり公共部門は不足がかなりずっと引き続きあるだろう。その公共部門の不足を、郵貯がふえても、私はそれがカバーしておれば問題はない。さらにもしいまの公共部門の不足を超えるほどになったとするならば、そのときにはまた新しい角度で検討が必要な時期も来るかもしれないけれども、公共部門の不足部分を郵便貯金がカバーをする範囲まで、これは国債の発行の問題はかなり下がってきますが、いま政府は四三%ぐらいしか地方債をやっていないで、あと民間に皆、これも地方銀行に持たしているわけですから、ひとつ郵便貯金で地方債も買いましょう、公共部門はみんな一手に郵便貯金で買いましょうというふうになれば、地方銀行も中がすいてきますし、ここの入れかえがまた変わってくる。ですから、要するにいま非常に民間と公的部分が複雑になっておるものを徐々に少し整理をしていって、こう物の動きや区切りをつけていくということになれば、問題は非常に望ましい方向に発展をするんじゃないだろうか、私はこう考えるわけです。  そういう点で、これは官房長官はこの問題のあれじゃございませんが、大蔵大臣にはどうせ伺いますが、経済企画庁長官、通産大臣と私も何回も閣僚である宮澤長官とは論議をさせていただいておりますので、私がいま申し上げましたような構想についての御感想をひとつちょっと承りたいと思います。
  229. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 堀委員からずいぶん長いこと御教授を受けておりますし、ことにしばらく前でございますが、戦後のわが国の経済の発展を顧みて、座談会で御一緒になりましたときに、経済の各分野において自由化というものはずいぶん進んだ、しかし金融だけは、ことに金利だけはそうなっていない、なぜかという問題点を御指摘になりましたことをいまでも私記憶しております。やはりそこにいろいろ事情はあるものの、努力しなければならないたくさんの問題があるのではないのだろうか。ただいま言われましたようなことも、私専門でございませんので詳しくそしゃくして申し上げることはできませんが、今後解決しなければならない問題点を御指摘になっておられるのではないかと思って承りました。
  230. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでこの問題について、大蔵大臣は最後にして、郵政大臣は私がいま申しておるような考えについてはどうお考えになるか、ひとつ承りたいと思うのです。
  231. 山内一郎

    ○山内国務大臣 どうも本当の専門、いわゆる所管ということではございませんので、的確なお答えはできないと思いますけれども、昨年郵便貯金が四月に最高の金利になりまして、いずれ下がっていくであろう、こういうことで十二月に下がったのでございますが、したがって七月ごろから大分ふえてまいりまして、十二月以降一月、二月、三月はこれは実際減っております。四月は伸び率が減っている、こういう情勢であるわけでございます。  そこでいろいろどういうのが適正な貯金高であるかということは非常にむずかしい問題だと思うのです。これはなかなかだれがコントロールしても、お金を預けられる方が銀行もそれから郵便局をもずっといろいろ研究をされまして、いまのところはこれが一番有利じゃないかというのでお預けになるのでございまして、なかなか計画的にいくかどうかという問題、もし計画的にいくものとすれば、これは堀先生のおっしゃるような方向に持っていけるものだと思いますが、私はなかなかそういうふうには計画的に、まず前提条件としてうまくいかないのではなかろうかということを考えておるわけでございます。
  232. 堀昌雄

    ○堀委員 郵政大臣、私、計画的に郵便貯金をふやせなんて一言も言ってないですよ。郵便貯金いまふえているわけですね。これは国民が預けているのでして、国民が預けてふえておるものを減らすような何らかの政策をとるなんということは、これは国民不在の政治ですからね。それは許せることではないわけです。だから、要するに選択の条件がいろいろありますでしょう。それは都市銀行の方はいろんなことを言っておられます。ともかくイコールフッティングにしろという話もあります。しかし私は性格の違うものをイコールフッティングにしろという話はおかしいと思っているのです。本来郵便貯金というものと、仮に例を都市銀行にとれば、都市銀行というのは全然中身が違うのですね。第一、都市銀行預金構成というのは、個人貯蓄よりば法人貯蓄がうんと大きい銀行なんですね。片一方で郵便局というのは個人預金ばかりなんですね。要するに預金構成が全然違う。いろいろな点で仕組みが違うものが何でもいいからイコールフッティングにしろというのは、私は問題があると思うのです。同じ条件でやれる条件のもの同士がイコールフッティングで競争するというのならわかるのですが、それはそういうことで、私はこのイコールフッティング論というのはおかしいと思っていますがね。いまの山内郵政大臣、計画的にと言う。私は計画というのはだめだと言っておるわけですよ。自由にやれと言っているのですから。社会党の中で昭和三十八年以来自由にやれ自由にやれと、かえってどうも自民党の方の中にそうでもない方があるぐらいなんで、だからここらちょっと思い違いをしないで、私が言っているから計画的なんというふうに思わないでください。ここだけは完全に逆なんです。  そういうことですから、私は自然の成り行きに任せるが、要するに国の方の公共の資金不足というものに、まだ当分追いつかないのですよ、少々郵貯ががんばってみたって。だからいまは私は余り郵貯の頭を押さえるようなことをしないで、交通整理をきちんとしたらどうかということを言っている。大蔵大臣いかがでしょうか、交通整理論。
  233. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、この前もお聞きをいたしまして一つ考え方である、しかし一遍にすぐやることはできない。現実に財投の金が約十九兆、そのうち五十六年度では郵便局からの財源が約半分、約九兆弱です。一方、財投の需要というのはいろいろございまして、それらの需要をどうしてなくするか。問題は、財投需要があるから年金と郵便局の金を集めて、国立学校だとか電電公社だ、日本航空だ、開発銀行だ、全部まいているわけですね。だから郵便局のお金の分だけを切り離しちゃって、そこで国債を引き受けろ、どうせ市中に出したものだってだぶついていれば、現に数兆円運用部で買っているじゃないか、だからそんなまだるっこしいことしないで、最初から出口で買っちゃったらいいじゃないか、これはやはり一つの理屈なんですよ。だから一つの方法として、私はこれは真剣に内部で検討してみたらいいということを実は言っておるのです。だけれどもその場合に、運用部が一体どうなるのか。それから一般の、最初からてんずけ八兆円なり九兆円なり買ってしまった場合に、いままでの惰性で財投に絡みついている需要がいっぱいあるわけですから、それを一遍にばさっと切れないわけですね。仮にやるとしても、一遍に八兆円買うなんということはできないですね。徐々にやって、片っ方減らしながらふやしていくという方法しかないし、それから民間で言うようなところまで財投資金が行っておるではないか。財投の金が行ったものが、実際は民間に回っているという例がたくさんありますよ。そういうものを交通整理できないか、私はこれはむしろ第二臨調の話じゃないか、そう思っているのです。  これは国会中で受け合ってはいるんだが、実際問題としてまだそれに専門に取り組んでおるというところまで行っておりません。行っておりませんが、年末までには真剣に勉強するように、それぞれの担当局には指示はいたしてあります。だからまじめにこれは検討しているのです。いろいろ問題点、難点もありますよ。
  234. 堀昌雄

    ○堀委員 私がいま伺っているのは具体的なプロセスの話ではなくて、考え方はどうかと聞いているわけですよ。要するに民間のものは民間に、公的なものは公的に、いま入り乱れていますからね、あなたの言うように時間がかかりますよ、現実に動いている構造を徐々に、私の言うのはシステム転換論ですからね。それは時間はかかるけれども、そういう問題意識を持って方向に向かって徐々にやっていくというふうにみんなが考えなければ、小手先でどこかだけをちょっとしようったってだめだと思うのですよね。だから私は、大蔵省の事務当局の方にも言っておるのですけれども、財投に少し順位をつけたらどうか。要するに公共性が高くて、単に資金運用部の金だけではなくて、一般会計から入れなければならぬものもあるわけですからね。そういう利子補給とかなんとかという問題を含めて公共性の順位をつけて、私に言わせれば、たとえば開発銀行一つ例にとりますと、開発銀行というのは確かに戦後に非常に重要な役割りを果たしました。しかしいま開発銀行がやることは、安い金利のものを提供するということではないのです。開発銀行という一つの機関がやりますよ、民間も一緒にやりましょうということで、協調融資のしんになれば、省エネの問題でも技術革新の問題でもいけると思うのです。今度は特に地域開発なんというのは全く民間ベースの金利でいいんですよ。だから物の考え方がそこで切りかわっていきませんとまずいので、そういうところはほとんど開銀債を出して民間債を引き上げればいいわけです。それで見合うものでやりなさいということになれば、見合わないような仕事は落ちていきますからね。だから私はこの前から、行革問題について、この前官房長官も御出席いただきましたからお聞きをいただいたわけですが、量的な問題ではなくて質的な転換を図ることによって結果的に量的減少が起こるというシステム転換をやりましょう。ただそれはいろいろなところで、この間は電電公社問題をやったわけですが、きょうは広範な金融問題の構造対策を考えた方がいいんじゃないか、こう言っておるわけです。そういう基本のところが押さえられてくれば、対応がまた変わってくると思うのです。いまは現象面の議論になり過ぎておるわけです。現象面の議論の前にシステムを考え直して、その中からその現象は将来どう変わっていくかということに変わるわけですから、そこを考えた方がいいんじゃないか、こういうことを問題提起をしておるわけです。考え方についてのお答えをもう一遍大蔵大臣から。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  235. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は一つ考え方だ、そう思っております。それをさらに突き詰めれば、国債発行するなら郵便局に国債をじかに売らしてしまったらいいじゃないかという議論も出てくるわけです、郵便局で集めた金で国債を優先的に引き受けるのですから。それなら、貯金する人もあるから貯金部門は置くにしても、郵便局の窓口で貯蓄国債をどんどん売らしたらいいということも一つ成り立つわけです。いろいろな問題がございますので、今後の国債発行の状況等と絡めて、それらについては十分検討してメリット、デメリット、将来の展望、全部勉強してみたいと思っております。
  236. 堀昌雄

    ○堀委員 官房長官がお急ぎでございますので、最後に一言だけ、懇談会にいま私が申し上げておるような現象面の話は最後でいいんじゃないかと思うのです。要するに、今後の日本の金融構造のあり方を、公的と民間というものをどういうように位置づけをして、将来的にいかにあるべきかという一つのビジョンが立たない限り、小手先だけでいまの郵貯問題をさわるというのは将来の日本経済の問題としてもマイナスだ、こう考えておりますので、その点だけをお含みいただいて、この懇談会の運営に私の意見も反映させていただければ大変幸いだと思います。ひとつお願いいたしますが、よろしゅうございましょうか。
  237. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 懇談会には八月の末ごろまでに結論を出していただくということでテーマをお願いしてございますが、実は懇談会の進行の中途では、きょうも私ちょっと聞かしていただきましたが、かなりそのような広い問題にも御議論が及んでおります。政府に対する答申の中にそれが盛り込まれるか否かは別といたしまして、広い見地から検討していただくように私からも重ねてお願いを申し上げておくことにいたします。
  238. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで問題を次に入らせていただくわけでありますけれども、私はここまで郵便貯金の問題をやってきましたからちょっと郵便貯金について触れておきたいのです。  郵便貯金というものが民間と比べて非常に非効率なものだということならば国民経済的にまたその部分は考えなければならぬ問題があるだろう。私なりに都市銀行との関連で少し郵便貯金の問題というのを調べてみました。私の方の計算ですから計算が間違っているという問題はあるかもしれません。きょうすぐ御指摘はいただけないと思いますから、また後で委員会があったときに関係の皆さんの方からこの私の計数についての意見は出していただいて結構なんでありますが、まず郵便貯金と都市銀行とを並べて昭和三十五年から五十四年まで支払い利子率、経費率ということで実は試算をいたしてみました。  支払い利子率、経費率は各年度の預貯金平均残高で支払い利子、経費を除した比率であるという考え方でありますし、民間は税金率を除いてございます。民間は各年度下期計数であります。郵貯は実質上預金部門だけであるのに対して民間金融機関は貸出部門をあわせ持っておりますので、その分だけ経費率が幾分高めに出るということはあるだろうと思いますが、出所は主として日本銀行の資料によっておるということでございます。  そこで昭和三十五年を一つ例にとりますと、郵貯の支払い利子率は四・七七%、経費率は二・〇五%、計六・八二%でございまして、都銀の支払い利子率は四・三一、経費率一・八九、計六・二〇、ここでは要するに都銀の方が効率が高いという状態がはっきりしておりました。ところが五十四年で見ますと、五十五年は非常にふえたんですがデータがなくて、五十四年しか正確なものがありませんので五十四年で見ますと、郵貯は支払い利子率が五・七五、経費率〇・九五、計六・七〇、都銀は支払い利子率五・九七、経費率一・六七、計七・六四と完全にこの問題は逆転をいたしてまいりました。  そこで今度は一人当たりの効率といいますか労働生産性に関連したデータをちょっと申し上げますと、この資料は都市銀行全国銀行財務諸表分析をとりました。郵貯は国の予算と特別会計予算書であります。昭和四十年からですが、昭和四十年を一といたしまして都銀は、まあ五十五年のデータもありますが、五十年はどうかというのを見ますと預金量は五・三倍になっています。人員は昭和五十年に一・四九倍になりました。一人当たり預金量の伸び率はその結果三・五倍になりました。四十年上期と五十年上期の比較であります。ところが郵貯は四十年の一に対して五十年に貯金量は八・八九にふえました。人員の方は一・一九しかふえていないのであります。そこで結果的に一人当たり貯金量の伸び率は七・四四ということでありまして、都市銀行の三・五倍に比べて七・四四倍。実は大変な一人当たりの預金量、要するに郵貯における労働生産性は高いという一つのデータでございます。  時間がありませんからそうたくさんは触れられませんので、設備投資というのを一つ調べてみました。具体的な形で都市銀行の五行の計、要するに第一、富士、住友、三菱、三和銀行、上位五都市銀行の計数を一つ調べてみました。そうしますと五十年三月から五十五年三月までの設備投資額は四千四百十三億となっているのであります。  それに対して郵貯の方の設備投資ですが、これはなかなかむずかしいのですが、一応郵便貯金特別会計の営繕費というもので調べたわけです。だからそれはちょっと少な過ぎるということになればまた別ですが、仮に郵政特会全部で見てもこの五十年三月から五十五年三月までの五年間は四千二百四十一億です。郵貯特別会計の営繕費だけで見れば一千二十四億円ですから都市銀行五行に対して四分の一しか設備投資を行わないでやっている、こういうことになるわけであります。  実は最近第一勧業銀行は新館を建造されたようであります。伝え聞くところによると六百億円ですか、それで三菱銀行は四百億円かかったというのですが、これは銀行局の方で私が言っていることが正確かどうかちょっと確認してください。
  239. 米里恕

    米里政府委員 第一勧銀は大体六百億でございます。三菱はちょっといま手元に計数がございませんが、四、五百億であったかと思います。
  240. 堀昌雄

    ○堀委員 私はこの前地方銀行大会に出席をいたしました。大蔵大臣がお役人の書いた原稿はちょっと横に置きまして大変いいことを言われました。要するに銀行はりっぱな建物をつくるけれども入りにくい、かえって郵便局の方が入りやすいんだ、だからそれは銀行も少し考えろ。私は、大変適切な指摘がありましてさすがに渡辺大蔵大臣だな、こう思ったのであります。  そこでこの問題について一つ資料を御紹介しましょう。「郵便貯金に対する主婦の意識調査」というのを昭和五十六年四月埼玉県地域婦人会連合会がやっておられるわけであります。この調査の中で「郵便貯金に対するイメージ」というものが問われておるのであります。その中のウエートが一番高いのは何かといいますと、七〇・三%あるのですが「小額でも気軽に利用できる」。これは国民のニーズの調査ですからね。それから、これは重複しますけれども、「郵便局は入りやすい」。これが四番目で六二・二%。まさに渡辺大蔵大臣指摘のとおりなんですね。三番目が「貯金を引出しやすい」で六八・七%。銀行の場合は預けるときは大変きげんがいいのですが、引き出しにいくとどうも何か自分の方が損するのじゃないかという感じで引き出しにくい。郵便局はその点そういう意識はないものだから出そうと入れようとそこのところは非常にフリーなので貯金を引き出しやすい、そのとおりだと思うのです。次に実は「安心感がある」。これはやはり国がバックにあるということで大きな意味がありましょうね。その次が「利回りがよい」というので五四%くらい。これは私は国民が郵便局に持っておるニーズを非常に具体的にあらわしておると思うのです。そういう意味で私は前にも申し上げましたけれども、三木総理のときの予算委員会における総括質問で、定額貯金をこれは大変いい品種ですよと生中継で全国の方が聞いておる中で紹介したことがあるのですよ。それ以後だんだんふえてきたから多少はその役割りを果たしたかなとこう思うのです。  そういう問題についてどこが考えなければいかぬかと申しますと、日本には貯蓄銀行というのがいまないのです。今度の法律で貯蓄銀行法というのはなくなるのです。貯蓄銀行法の一番肝心なところは何かというと複利で預金を預かる、こういうことだと思うのです。銀行局長どうですか。
  241. 米里恕

    米里政府委員 おっしゃるとおりだと思います。
  242. 堀昌雄

    ○堀委員 この六月一日からようやく貯蓄銀行法がなくなるけれども、銀行も戦後三十六年たって初めて貯蓄銀行を兼営しておるところらしいことになるわけですけれども、これまでなかったわけですね。そうしますと、第一に日本では郵便局が貯蓄銀行業務を戦後ずっとやってきた、私はこう考えているわけです。  そういう意味で各国の貯蓄銀行を少し調べてみました。この貯蓄銀行の特性とは何かというと、預ける者は個人に限られておる、これが一つの特性ですね。それから貸出先は国民か国か地方自治体に限定されていますね。例外は少しはあるかもしれませんが、主としてそういうふうに限定されている。そうしてそこでは個人向けのファイナンスはやらないというかっこうになっておる。それが現在各国にある貯蓄銀行の現状のように思うのです。  そうすると、いまの郵便貯金というものが、だんだんいろいろなことをやりたいと言っておられるけれども、私の考え方からすると、郵便局で集めておる十年の定額貯金というものは一覧払いの貯蓄国債だ、私はこう見ておるわけです。アメリカでは貯蓄国債を発行しておるけれども、日本はそれにかわる貯蓄国債を郵便局の定額貯金という形態で発行しているんだ、こう考えているわけですから、貯蓄国債の発行なんか必要ない。これ以上そんなものを発行するのはかえって混乱を起こす、こう思っておるわけです。そういうふうに思っておりますが、同時に、郵便局が現在ゆうゆうローンその他でやっておられるのは、これは貸し越しになりませんから、要するに貯金担保貸しなんですからこれは問題がないのですが、もし貸し越しになるとすれば郵便局信用創造を行うということになってきますから、貯蓄銀行という位置で物を考える限り郵便局は絶対やるべきでない、私はこう考えているわけです。それが公的な問題といまの問題の区別をする一つの区切りになる。日本における貯蓄銀行に徹するというかっこうを、ぜひとってもらいたい。  貯蓄銀行の個人貯蓄に占めるシェアは西ドイツで五九・五%、イタリーで四四・九%、フランスで四四・三%、日本は二九・一%ですか、ここらで西ドイツ、フランス、イタリーに比べればシェアとして個人貯蓄の中でそんなに大きなシェアをまだ占めているということにはならないんじゃないか、こう思うので、まず郵政大臣、そういう貯蓄銀行に徹するかっこうで今後の郵便貯金をやられるということならば、よそからいろいろ問題があってもそれは当然なことだ、私どもはこう考えるのですが、いかがでしょうか。
  243. 山内一郎

    ○山内国務大臣 いま堀先生から外国の例もお引きになりましてるる御説明ございまして、われわれ郵政省においても研究をいたしている面でございます。したがって、外国に貯蓄銀行もあり、なおかつ郵便局もあるところもあるようでございますけれども、主体がやはり貯蓄銀行でございますので、それに相当するわが国の郵便局につきましては貯蓄銀行の例もよく参考にいたしまして今後とも運営をしてまいりたい、こういうように考えております。
  244. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣郵便局はいま私が申した貯蓄銀行的な存在だ、これについての御感想はいかがでしょうか。
  245. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そういう面もございます。ございますが、問題は金利の問題、金利が貯蓄銀行にしては高過ぎる。まして国がやっているわけですから安全、確実であることは一番いい。それから免税問題、この問題で限度管理がきちっと行われていない、そこらに問題点がある。いろいろそういう問題点がございますから、そういうような問題点も踏まえて検討する必要があると思います。
  246. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ考え方はわかっていただいておると思うのですが、いま三つ触れられましたね。今度は郵政大臣、グリーンカードが実施をされますと、限度はグリーンカードによって管理をされますね。だからその点は、いま大蔵大臣が言われましたけれども、これは民間と同じ条件になる、こう理解をしてよろしいでしょうか。
  247. 山内一郎

    ○山内国務大臣 御承知のとおり現在は名寄せということでオンライン化をしながら名寄せ作業をやっておりますが、やはり住所、氏名でございますので、今度はグリーンカード制ができました場合にはその番号によってチェックをしていく、こういうことにしております。
  248. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、まずいまの問題は片づく。五十九年になれば片づく。こういうことが一つですね。  それから、金利がちょっと高過ぎる、安全なのに高過ぎる、こういう話ですけれども、これはもういまの郵便貯金法貧農——まあ私は角度が違いまして、臨時金利調整法と郵便貯金法とは書き方が違います。もちろん郵便貯金法にも他の金融の条件を勘案してやるんだとありますからそれは勘案するのでしょうけれども、法律の角度が違うのだから、そこは立法によって法律を何らか変えない限りこれはある程度避けられないのじゃないかと私は思っているのです。私はこの前本会議でお聞きいただいたように、金利には二つある。生活金利である貯蓄の金利とそれから貸出金利と二つあるのだ、こういう話をいたしましたね。大臣よく御承知のごとくですからね。ですからそういう意味では多少の問題というものは避けられない点があるのじゃないか。後ですぐこれから金利一元化の問題に入りますが。  それから、三つ目は何でしたか……。
  249. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 強いて言えば、要するに、仮にそれによって郵便局が商売繁盛した、どんどんふえていったということは、国にとってはいいかもしらぬが、やはり民業と官業との問題、そこまで国営で国がやるという方針ならば別だけれども、日本の場合は国営を、最小必要限度のものは必要だが、果たしてそんなに大きな規模にしていく必要があるかどうかという根本問題があるということでございます。
  250. 堀昌雄

    ○堀委員 これは民主主義の国家ですからね。いいでしょう。民主主義の国ですね。私も、市場経済でいいと思っているわけですよ。しかしそこは国民のニーズがありますからね。国民のニーズに逆らって減らす必要はない。しかしまたそんなにもふえないですよ、これは。これはこの間たまたま異常にふえただけで、私はそんなにふえると思っていない。さっきのように、運用のところがきちっとなれば、これはまた徐々に解決される問題だと思っているのです。国や地方の公共不足を超えてなおかつふえてくるようなら、そういうときには考える必要はありますよ。しかしいままだとてもじゃないがそこへ行ってないのですから。そういう意味では私はそういう点で考えていいんじゃないかと思う。  そこで、金利の一元化という問題を大蔵大臣がおっしゃいました。日本銀行の方がさっきの金融懇でございますかの方に意見をお出しになっていて、日本銀行金利を考えるときにはともかくも物価の安定を最重要に考えたい、こういうふうなことがお述べになられておるように拝見をいたしました。確かに物価の安定ということは非常に大事なんですが、その物価安定が金融政策だけでやれるかというと、私はそうは思っていないのです。物価安定のために金融政策が大きく働かなければいかぬと思いますけれども、これは一つは私は日本の置かれた条件から言いますと、さっきも渡辺さんがお触れになりましたが、ファンダメンタルズの話に実はなってまいります。ファンダメンタルズの話になってきまして、国際的な関係もあるわけですから、国内的なともかく金融政策だけですべてが処理できると私は思っていないわけであります。  そこで、私はこの前本会議で言ったので総裁はお聞きになっていないからちょっと簡単に言いますと、要するに、日本経済というものがこっちにございまして、これをずっと細分してくると、個人の家計がこちらにあって、日本経済というのは個人の家計の集積と見合っているものだ、私はこう考えております。そうしますと、個人の家計は収入と支出がありますが、収入は日本経済のあり方によって変わります。しかし、支出はいまの物価の問題と貯蓄のあり方によるわけでございまして、支出の方に貯蓄がある。この貯蓄がまた実は物価に関連するわけであります。物価が安定しておれば非常に高い金利を保証することはないと思うのですけれども、物価がかなり上がれば目減りが生じるような金利では個人の生活設計はできませんから、貯蓄の面から見ても物価は非常に重要なんですが、これは卵が先か鶏が先かに多少関係がありまして、ですから私は、生活預金として一定の範囲のものは物価が主体になるべきなんです。そして片一方は金融政策、当時の経済情勢を反映した貸出金利を動かすという問題があるだろう。接点が銀行になる。金融機関だ。私は、そのためには、より高い金利で国民に金を預けてもらって、より安い金利でユーザーに貸し出すというのが金融機関の本来の任務でありますけれども、郵便貯金の場合はそうなっていませんけれども、そのことは関係ないのですが、貸し出しはありませんけれども、いまの設備投資の面から見ても、経費率やいろいろな面から見て民間が非常に効率的にいっているかというと必ずしもそうでない。そのために、昔は公定歩合の操作と預金金利は連動なんかする必要はなかったのですね。かなり幅がございました。しかし、いまや経費率がもうぎりぎりに来ているものだから、連動させなければいかぬということになってきているようでありますね。これは一つ金融機関プロパーの問題だと私は思っているのですね。より経費率を圧縮することが真剣に考えられるべきではないか。六百億も五百億ものものを建ててそれが経費率に入るわけですから、それは国民の期待にこたえるあり方ではないのじゃないか。こう考えてみますと、私はいまの金利の一元決定の問題については、それはどこかで一元的に決めてもいいけれども、金利のあり方は二つあっていい。要するに生活貯蓄というものに関する金利とその他の一般金利というものと二つあっていいのじゃないか。これは私の個人的な考えでございます。ですから、そういう角度から見ますと、私は金利を一元化することだけがすべてではなくて、ただ生活金利の部分が個人貯蓄の中で非常に大きなウエートを占めるということになればこれは問題がございますから、それは適切を欠きますけれども、ある部分に限って要するにそういう金利が考えられる。そしてその他は公的機関の貯蓄資金であっても連動するというような考え方の対処は必要ではないか。そのある限られた個人貯蓄、要するに私が言う貯蓄銀行としての個人貯蓄の限られた部分の金利とその他の金利が二つあっても、私は日本経済の活力を阻害するようなことにはならない。問題はこの大きさの問題ですよ。ここに問題がある。  きょうは時間がありませんからここまでにいたしますが、日銀総裁の金利一元化に対するお考えと私の考えとについて、ちょっと御意見を承りたい。
  251. 前川春雄

    前川参考人 金利一元化の問題を私どもが申しておりますのは、先ほど一番初めにお話がございましたように私どもは金利自由化されていくべきものだ、これが理想の形だということで、そういうことになりますれば市場原理が働きますから、一物一価の原則によっておのずから一元化されていくものだと思います。そこまで行く過程においてどうするか。規制金利というのはある程度あるわけでございまするけれども、金融政策を遂行してまいりまする場合に金利の水準というのは非常に大事である。金利機能というものを活用していかなければいけないということでございまするので、そのときどきの情勢に応じまして金利も動くということが必要である。そのときに、いろいろの金利があるのではなしに、やはり一つ整合性を持った金利の変動が行われることが必要である。一元化ということがいいとは思いませんけれども、そういうふうに整合性を持って金利が動くということが必要であるということが、これが初めて金融政策の効率化、有効性を確保するゆえんであろうというふうに思っておるわけでございます。それで、預金金利というのは公定歩合を動かしたときに常に必ずしも連動しなければならないものではございませんけれども、しかし、いまめ金融機関の経理から申しますると、コストが下がらないと貸出金利が下がらないということである程度の低下が必要である。  それで、いま先生御指摘の生活的な預金というのは別でもいいじゃないかということでございます。その考え方は、確かにそういうふうな考え方があってもいいと思いますが、ただ、いま仮に郵便貯金と個人のマル優預金、これをあわせて考えますと、個人預金全体の中の七割になるわけですね。非常に大きなものです。これは別ですということでは、あと三割しか動かないというのでは金融政策の有効性は確保できないというふうに私どもは思います。したがいまして、仮にそういうふうな生活的な預金というものも考えなければならないという、それは一つ考え方で、まだ検討を要しますが、その場合にもその限度というものはさらに厳しいものにならなければ、いまよりは厳しいものにならないと金融政策の有効性は確保できない、そういうふうに考えております。
  252. 堀昌雄

    ○堀委員 郵政大臣も御用がございますようですから、いまの問題、いまの郵貯のウエートは相当高くなっておりますから、この郵貯を全部別個にということはなかなか無理があるかもしれませんけれども、しかし少なくともその中の一定部分については私は生活金利というものが保証されるべきである、それはどういうふうなかっこうになるかは物の考え方として今後の検討課題である。ですから、アメリカでも実は貯蓄銀行金利は一般のレギュレーションQの上でも〇・二五から〇・七五ぐらいまでの間高くなっているわけですね、それは貯蓄銀行という特性があるわけですから。そういう面を含めると、私は、いまの何でも一元化で処理をするということが国民経済に望ましいんではなくて、やはり郵貯の中には全国民が貯蓄をしているのであって、そういう意味銀行とはやや性格が違いますからそこの区切りをはっきりするという前提に立てば、私は生活金利というものが郵便貯金にあってしかるべきだ、こう思うのですが、郵政大臣のお考えを承りたい。
  253. 山内一郎

    ○山内国務大臣 いま金利二元化ということは、もう御説明するまでもなくやっているわけでございますが、考え方が違うものですからどうしても二つの流れになっているということはやむを得ないし、一つ考え方ともう一つ考え方を調整をしながら決めておるのが現在のやり方であろうと思うわけでございます。したがって、郵便貯金は何でも預金者の利益の増進を図るだけではなくて、民間の金融も配慮しなさい、こういうことでございますので、大蔵省と調整をしながらやっているということでございます。いまはそういうことでわれわれはそういう方法をとり、それが一番いいと思っておりますが、いま堀先生から重大な御提案といいますか貴重な御提案ございまして、なるほどそういう考え方もあるなということで、それではどの辺にその境をとるかということになると、何百万円以上持っている人はあなたの利子は下がりますよ、何万円以下持っている人はあなたのものは高いのですよということをどういうふうにやっていくかという点が、ひとつ検討もしてまいりますけれども、一つ考え方であるというので貴重な御意見として拝聴いたしておきます。
  254. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの郵便貯金関係はこれで終わりまして、次に、さっきからずっと議論になっております国債窓販の関係のことをちょっと申し上げておきたいのですけれども、三人の学識経験者でこれからこの問題の調整が行われるようであります。私も尊敬しておる方たちがすでに報道されておりますから、このことは大変結構だと私も思っておるのでありますが、ちょっと私の窓販に対する考え方を申しますと、これからそうやって公的部分と民間部分を分けようという方向でものを発展させるとしますと、ともかくいつまでも長期国債を銀行に持ってもらうということは必要がなくなるのじゃないか。これからの経過を見ますと、だんだん減ってくるのではないだろうか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。  国債発行というものの中身をちょっと見ますと、市中に八兆八千億ぐらい出たのは、五十三年ごろがそのぐらいなのですね。五十二年かな。ちょっとデータがどこかへいってしまってわからないのです。資料を持っていたのですけれども。  そこで、そういう整理をしていくことにするならば、銀行はもう窓口で国債などを売らないで、もっぱら集まった預金を民間の方にだけやるということにしたらどうか。民業は民業に専念したらどうか。また専念できるような条件をつくるのが私は国の任務ではないかと思っているのです。さっきの考え方に立ちますとね。それで窓販なんというものは要らない。  ディーリングは、おととしの十二月二十六日に佐々木金制調査会長に来ていただいて原価法、低価法の議論をいたしましたときに、ともかく短期証券は当然ひとつ銀行もディーリングに参加させろというのが私の意見なんですね。今度ディーリングまでいかないで、日銀が短期証券をオペレーションされるのですが、私の考えておる国債特別会計というものが仮に実現すれば、そこでは国債特別会計の国債融通証券という短期証券が出ますし、この短期証券はもう別にどこにも影響しないのですから、銀行も大いにディーリングに参加をされたらいいし、そうやって短期市場の厚みをふやしたらいいじゃないか。長期国債は原価法、低価法のような処理をしなければならぬという、商品としてリスキーな商品だから、こんなもののディーリングをいまさら民間金融機関がやることはないのじゃないかというのが私の基本的な考え方なんです。おまけに、これから国債発行はだんだん減っていく。減っていくのに郵貯の方はだんだんふえてくるということになれば、当然そういう公共不足を賄うのは公的機関が賄えばいいということになってくる。ですから、そういう客観情勢も踏まえて、今後の窓販問題というのは検討されてしかるべきではないだろうかなと実は考えているのですよ。だけれども、これはいま大蔵大臣が言われたように、一遍にいくわけじゃありませんから、だんだんかかる。  もう一つ、よく言われるのは、借りかえ問題の対応のためにも窓販やディーリングが必要だということが言われておるようですが、借りかえ問題は、私が言う国債特別会計の問題が行われれば問題なくスムーズに対応できます。これは短期証券を出しておいて資金の調達をしながら償還をするとかなんとかできるわけですから、そういう点を考えると、ちょっとこの問題は検討を要する別のファクターもあるということを御認識をいただいておきたいと思うのであります。  もう時間がないものですから、まだいろいろ伺いたかったのですが、ちょっとはしょりまして、大蔵大臣、実はきのう参考人として信用金庫連合会の小原会長に来ていただきました。私は、三月の段階で大蔵省の方にはちょっと調査をお願いしてあったわけですが、財務部の仕事は、現在御承知のように、国有財産の管理と資金運用部の取り扱いと公務員住宅の管理と信用金庫の検査、この四つがいま四十一ほどある財務部の主たる仕事のようですね。いろいろと私なりに検討してみまして、資金運用部の処理は財務局でやったってやれるのじゃないか。自治体が金を借りに来るわけですから、これは自治体が来ればいい。それからもう一つは、公務員住宅の管理なんというものは一一県でやらなくたって、財務局でやって、ときどき人間が行って調べればいいことですから、これも何も財務部に置く必要はない。国有財産は、農業をやっていらっしゃる皆さんはいろいろ土地関係の問題がありますからね、これはちょっと東京まで来いという話は無理ですから、県庁所在地の財務部でやらなければならない。そうすると、前の三つは財務局でやれるではないか。だから、財務部を縮小して、国有財産管理だけを財務部に残すという形にすれば、いまの行政改革に非常に適合するのではないか。そこで多少浮いてくる人員は、少し講習をして国税職員として税の徴収に当たってもらう、そして不要になった財務部の土地、建物は全部売却をする、こうなると行政改革ぴったり。そういう考え方でやっていたら、この前、林敬三行草委員の、隗より始めよ、大蔵省は財務部を、行政管理庁は地方行政監察局をやめろというのが新聞に出たので、同じようなことを考える人がやはり行革におられるなあと意を強くしたわけであります。  そこで、信用金庫の検査について、あなた方責任を持って問題が起きないようにやれますかと言って小原会長に伺ったら、小原会長は、やりますと言われた。きのうの答弁では、信用金庫だけが三段階処理です、相互銀行から上は大蔵省と財務局の検査で終わっています、一年生、二年生のときはともかくも、三十年たって大学も卒業いたしました、一人前になりましたから、ひとつ一人前の待遇をしていただければ大変ありがたい、こういう小原会長の答弁がありました。これについてのお考えを伺いたい。
  255. 名本公洲

    ○名本説明員 ただいま財務部の事務につきましてお話がございましたけれども、財務部につきましては、昭和四十八年に集中可能なものは局へ集中する等のことをいたしまして、その後もいろいろ合理化をいたしております。多分、今度の第二臨時行政調査会におきましてもいろいろ御議論があることと思いますので、その経過を十分慎重に見まして検討を進めてまいりたい、かように考えます。
  256. 堀昌雄

    ○堀委員 それで結構です。  その次に、これは最後ですけれども、今度の証券取引法の一部を改正する法律案の提案理由の説明、この前渡辺さんが読まれたものの第三に、「外国の譲渡性預金証書及びコマーシャルペーパーの国内における円滑な流通を確保するため、これらの取り扱いを証券会社も行うことができるようにする必要があることにかんがみ、証券会社の兼業制限に関する規定を改正することとしております。」こういうふうになっております。それでいま改正案が出ておるわけですね。  国際化に伴って向こうからCDも来る、向こうのコマーシャルペーパーも来る。それを日本では扱える。しかし、外国のものだけ扱うのではなくて、日本のものもやられたらどうか。というのは、いまの日本のCDは三カ月から六カ月と限定しているわけですね。そうすると、三カ月からゼロの間というのは、企業側とすればちょっとあいているわけですよ。これはリスクレスでなければいけないから、アメリカでもこの問題については実は格づけが行われております。ムーディズというのとスタンダード・アンドープアズというのが格づけを行ってコマーシャルペーパーが出ておるわけですが、こういう問題を含めて、日本では三カ月と一週間ぐらいですか、アメリカは、三十日以内のところはレギュレーションQで制限をされていますからCDを出せない。だから、三十日というこの幅でやっておるようですが、日本の場合は三カ月、六カ月になっているから、三カ月までの間がかなりありますからね。これはひとつ日本でもコマーシャルペーパーを発行して、そういう企業側の資金の需要の対応を前へ進める。せっかく今度ここで制度をつくった以上、こういうふうにあなたも提案しておられるのだから、これはぜひ問題を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  257. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 御指摘のように、今回の証取法の改正の中で兼業制限の規定を若干緩和しております。これは、海外のCDあるいはCPが国内に入ってきた場合、銀行と証券会社が相乗りの形でこれを取り扱わせるようにしたい、こういう趣旨でございます。  さらに先生御指摘の、国内でCPを発行するということについても前向きに検討したらどうかと  いうことでございますが、この点につきましては、御承知のように、CPの発行形態を今後どういう形にするのかとか、あるいはアメリカの場合は格づけがございますけれども、日本でそういった企業の格づけができるのかどうか、この格づけがないとディスクロージャーの問題との関連もございましてちょっとぐあいが悪いのじゃないかという問題がございます。さらに法制的に、現在の商法でこういったCPのようなものが一体出せるのかどうかというような点もございます。こういった点について十分検討をする必要があるのではないかというふうに思っております。  ただ、こういう短期資金市場において今後新しい証券類が出てきた場合には、やはり銀行と証券が相乗りの形でこれを取り扱うというのが一番望ましいのではないかと思っております。これは今後の検討課題ということで御理解をいただきたいと思います。
  258. 堀昌雄

    ○堀委員 少しはみ出しますが、一つだけ申し上げておかなければいかぬ問題がありますのは、「日経公社債情報」の五月四日号をちょっと見ておりましたら、「窓販への準備本格化」ということで、「債券売買には複雑な手法を駆使」ということでいろいろなことが出ているのです。その中でちょっと気になりますのは、ともかくこれから窓販やいろいろなことが起こるんだからいまからその体制をやろうと言われる、それはいいのですけれども、これまでは法律がなかったのですが、今度この法律が成立をしましたら、銀行法の十一条できちんと取り扱いその他が規定をされることになるわけですね。これまでは法律がなかったのですから多少有権解釈でやったとかなんとかいうことがあるのですが、今度は法律ができてきちんとなったのだから、そして皆さんの方でも三人委員会委員の方たちに委嘱をしていろいろな検討をして窓販をやる時期を決めたい、こういう姿勢をしておられるときに、いまの法律の事項と紛らわしいような行為は、法律ができるまでは、法律で窓販をやってよろしいということができるまでは差し控えるのが相当ではないのか、こう思っておるわけです。ですから、法律がこれから発効して窓販もやりますよということで皆さんがやっている中で、ごそごそいろいろなことをやるということは適切を欠く。具体的な問題は時間がありませんから申し上げませんが、これは事務当局もよく御存じのことでありますので、大臣から、やはりけじめはきちんとつけて、そして法律でせっかくやっているものがまたあっちやこっちで問題が起こるようなことのないように適正な措置を大蔵省としても考えてほしい、こういう点についての御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  259. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 新しい制度が円滑に進むように十分注意をしてまいりたいと思います。
  260. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  261. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これにて四案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  262. 綿貫民輔

    綿貫委員長 この際、お諮りいたします。  第九十三回国会より継続審査となっております堀昌雄君外七名提出金融機関週休二日制実施のための銀行法等の一部を改正する法律案につきまして、提出者全部より撤回の申し出があります。  これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  263. 綿貫民輔

    綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、許可することに決しました。      ————◇—————
  264. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより銀行法案中小企業金融制度等整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案証券取引法の一部を改正する法律案及び銀行法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  265. 沢田広

    沢田委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブを代表して、ただいま討論に付されました四法律案に対し、今後の期待、不満を残しながらもその前進部分もあることを評価し、賛成の意見を表明するものであります。  銀行法は、昭和二年に制定された古い法律のままでありますため、その後の経済社会情勢の進展に適応しない面が多く、その改正は多年の懸案でありましたところ、近年に至り各種の金融資産に対する国民のニーズの多様化、経済の国際化の進展等、銀行をめぐる経済金融環境の構造的な変化もあり、加えて先進主要国においても金融制度の改革が実施されてきたところであり、わが国でも、かかる時代の要請にこたえて今国会に銀行法の全面改正案を初め関連の諸法案が提出されたのであります。  各法律案について、まず銀行法の改正部分、六十六条に及びますが、その主な点について主張を明らかにいたします。  第一に、目的規定を創設し、銀行の業務の運営について銀行の業務の公共的性格を明らかにするとともに、自主性を尊重する旨を規定することにしていることであります。このために必要な行政の責任と金融機関のみずからの責任もまた重大と言わなければなりません。  第二に、みずから招いた結果とはいいながら国債等の大量発行の状況の中で公共債の分野における銀行の役割りを明確化する見地から、銀行の証券業務の取り扱いを制度的に明文化することとしていることであります。このために起こる領域紛争も影響も大きいことを考え、慎重に対処しなければなりません。  第三に、銀行の資金運用の安全性を確保し、銀行信用の広く適正な配分を図るため、従来とかく批判のあった大口信用供与規制を法定化することとなり、わずか前進をしたのであります。これが適正、厳粛な運営が今後求められるところであります。  第四に、銀行が自主的かつ創造的な努力を通じ社会的要請に対応する道を開くため、業務及び財産の状況に関する開示制度の充実はより多くの委員から求められてきたところであり、いまだ不十分な点なしといたしませんが、一歩前進と思われます。今後政府がこの期待にこたえられることを強く求めるものであります。  第五に、内外交流の進展に対応して外国銀行の規定を整備したこと及び長年の懸案であり世界の流れでもあります週休二日制へ向けて従来の土曜日の営業義務を今回はなくして一歩前進したことであります。この実現が条件整備ととともに速やかになされんことを期待してやまないものであります。  また、一年決算制への移行等の措置が講ぜられてきたところであります。これも運営面に多大な不満、不備を残しますが、その誠意を信頼し、理解するものであります。  次に、中小企業金融制度等整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案につきましては、経済社会情勢の進展に即応して業務範囲の拡充を行う等、中小企業金融制度の充実と整備改善を図るものであります。今後とも中小企業金融の円滑化及びそれぞれの特異性を充実し、一層の適正な行政運営を期待するものであります。  また、証券取引法の一部を改正する法律案につきましては、銀行法案において銀行の公共債に関する証券業務について明文の規定が設けられることに伴い、証券取引法上の取り扱いを明確にするための規定の整備を図るほか、最近における証券市場の変化に対応し、その健全にして正常な運営が求められ、投資者保護に資するため、所要の改正が行われたものであります。  なお、労働金庫法の長年の懸案事項もほぼ解決したことは、十分評価するにやぶさかではありません。  最後に、銀行法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきましては、このたびの銀行法の全面改正に伴い、関連いたします法律につきまして所要の規定の整備等が図られたのであります。  以上、四法律案の内容を見まするに、当初の答申から見ますと重要な点で欠落、後退をしていることをはなはだ遺憾とするものでありますが、前進でもありますので、不満ながら賛成するものであります。  以上です。(拍手)
  266. 綿貫民輔

    綿貫委員長 蓑輪幸代君。
  267. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 私は、日本共産党を代表して、銀行法案銀行法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案証券取引法の一部を改正する法律案中小企業金融制度等整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案について、一括して反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、銀行法案を中心とする四法案が、経済、金融構造の変化への対応と金融の効率化をスローガンにして大銀行中心の金融制度の再編成を行おうとするものにほかならないということです。  銀行法案は金融制度の基本法と言われるものですが、今回、銀行の業務範囲の弾力化、営業所の設置等の許認可権の弾力化、営業時間の弾力化、増資の自由化などが図られています。このような弾力化措置は、都市銀行などの大銀行の支配力強化となる業務の多様化、同質化を一層促進し、金融の効率化を推し進めるものにほかなりません。  さらに、中小企業金融制度の改正についても、信用金庫の法人会員資格の資本金の限度額を政令事項とし、四億円に引き上げていますが、これは信用金庫の会員と貸出先の重点を規模の小さい企業よりも比較的力のある中小企業に移すもので、中小企業金融機関としての専門性を損なうものです。さらに業務範囲の拡大などについても、貸し出しの大口化や業務の同質化の方向で、中小企業専門金融機関をも含め全体として金融の効率化を促進しようとするものです。  反対の第二の理由は、今回の改正が国民生活の安定、日本経済の民主的な再建に役立つ金融制度の改革を求める国民の要求には全くこたえていないということです。  今回の銀行法の全面改正は、一九七〇年代前半に頻発した大銀行による為替投機や大企業、大商社の買い占めのための資金供給など、反社会的な行為について大銀行の社会的責任を追及する国民的批判が直接の契機となったものです。  しかるに、今回の改正は、銀行の自主的かつ創造的な努力を妨げないよう留意すべきであるとの考えを強調し、業務規制の多くは法律になじまないということで排除されています。さらに、法律上根拠規定を設けることになった大口融資規制についても、大企業への信用供与を規制するためのポイントでありながら、現行の通達によるよりも大幅な後退となっているなど、全くしり抜けとなっています。  しかも、銀行の公共性を確保していくためのディスクロージャー制度は基本的に銀行の自主性に任されています。行政監督権や処分権は、子会社に対する立入検査権の規定が新設されるなど若干の改善点もあるものの、全体として現行法の不十分さはそのままにした上、欺罔行為に対する罰則規定などは現行法よりも後退させています。  反対の第三の理由は、銀行等への公共債に関する窓販、ディーリングの認可が、大量国債の継続的発行と大銀行の中小金融機関及び国民への消化押しつけを容易にする体制づくりにほかならないということです。この窓販やディーリングによって、都銀等大銀行と中小金融機関の格差はさらに一層広がり、系列化と金融再編成のてことなることは明らかです。  最後に、今回の改正で、銀行等の休日について「政令で定める日」とすることによって金融機関週休二日制への道が開かれたことは改善措置として評価するものです。早急に週休二日制が実施できるよう強く要求して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  268. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  269. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより採決に入ります。まず銀行法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  270. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、中小企業金融制度等整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  271. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、証券取引法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  272. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、銀行法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  273. 綿貫民輔

    綿貫委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  274. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ただいま議決いたしました銀行法案に対し、小泉純一郎君外四名より、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。伊藤茂君。
  275. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ただいま議題となりました銀行法案に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を簡単に御説明申し上げます。  銀行法の改正問題につきましては、金融制度調査会が大蔵大臣から「経済金融情勢の推移にかんがみ、銀行に関する銀行法その他の法令及び制度に関し改善すべき事項並びにこれらに関連する事項について、」意見を求める旨の諮問を受け、審議を開始して以来、実に六年、答申が出されてからでも二年を経過した今日、昭和二年に制定されて以来半世紀にわたり機能してまいりました現行銀行法の全文を改正することとする銀行法案が、ようやくここに、当委員会において可決されました。  この間、国民各層、各界から多くの意見が開陳され、また、当委員会におきましても、あらゆる機会を通じて、金融制度のあり方等について論議を重ねてきたところであります。  今回の法案審議に当たりましても、銀行の公共性と社会的責任、大口信用供与規制の適正な実行、ディスクロージャー制度のあり方、銀行の証券業務の意義と認可の時期等について熱心な質疑応答が交わされてきました。  ただいま可決されました新銀行法が成立、施行されることによりまして、銀行が、金融構造の変化等に対応して、健全経営を一層確保しながら、国民経済的、社会的要請に適切にこたえていくことが期待されるのでありますが、何と申しましても、新銀行法の目的とするところを適確に実現していくためには、一に、この法律が、いかに適時、適切に執行されるかにかかっていると申しても過言ではなかろうと考える次第であります。  本附帯決議案は、かかる観点から、政府において、銀行法その他の関係法律の運用に当たって特に配慮すべき諸点を取りまとめたものであります。  個々の事項の内容につきましては、案文の文言で十分御理解いただけるものと考えますので、その朗読によって内容の説明にかえさせていただきます。     銀行法案に対する附帯決議(案)   近年における我が国の経済社会構造の変化、国際化の進展等に伴い、銀行その他の金融機関は、その健全かつ効率的な業務の運営を通じ、公共的機能を一層適切に発揮することが緊要である。よって銀行法その他関係法律の運用に当たっては、次の諸点に特に配慮すべきである。  一、国民の社会的ニーズにこたえるよう個人金融の拡大を図るとともに、中小企業金融の円滑化のため、引き続き条件整備に努めること。  一、証取法上の認可に当たっては、国民経済的視点に立ち、直接金融・間接金融の現状、今後の見通しなどを検討し、混乱のないよう慎重に措置すること。  一、大口信用供与規制については、制度の趣旨を踏まえ、適正な実行を確保すること。  一、業務及び財産の状況に関する開示制度の充実強化に努め、自主的かつ積極的な対応を促進ずること。  一、金融機関週休二日制を速やかに実施するため、郵便局・農協等預貯金業務を行う諸機関を含め必要な体制を具体的に整え、金融機関利用者の理解を得られるよう積極的に努力すること。  一、国際化の進展にかんがみ、金融商品の多様化を図る観点から、コマーシャル・ペーパー等についても前向きに法制面、実務面の検討を進めること。 以上であります。  何とぞ、御賛同賜わりますようお願い申し上げます。
  276. 綿貫民輔

    綿貫委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく本案に対し附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  277. 綿貫民輔

    綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。渡辺大蔵大臣
  278. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  279. 綿貫民輔

    綿貫委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました四法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  280. 綿貫民輔

    綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  281. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて故会いたします。     午後六時十一分散会