○渡辺国務大臣 ただいま議題となりました
銀行法案につきまして、提案の
理由及びその内容を御説明申し上げます。
わが国
経済の安定成長への移行に伴う金融構造の変化等、銀行をめぐる
経済社会情勢の変化は、著しいものがあります。このような変化に対応して銀行の健全経営の一層の確保を図るとともに、
国民経済的、
社会的に要請される銀行の機能の適切な発揮に資するよう銀行
制度の
整備改善を図ることが必要となっております。
このような状況を踏まえ、金融
制度調査会は、昭和五十年以降四年間にわたる審議を行い、昭和五十四年六月に「普通銀行のあり方と銀行
制度の
改正について」の
答申を行い、銀
行法を全面的に
改正するよう提言されました。この
答申を受け、その後、政府部内において
検討を進めてまいりました結果、今般、昭和二年に制定された現行銀
行法の全部を
改正することとし、ここに、この
法律案を提出することとした次第であります。
以下、この
法律案につきまして、その大要を申し上げます。
まず、第一に、目的
規定を設けることとしております。
すなわち、この
法律は、銀行の業務の公共性にかんがみ、その健全かつ適切な運営を期し、もって
国民経済の健全な発展に資することを目的とすることとしております。また、この
法律の運用に当たりましては、銀行の業務の運営についての自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならないことを明らかにしております。
第二に、銀行が営むことができる証券業務につきまして、所要の
規定を設けることとしております。
銀行が営む証券業務につきましては、現行銀
行法に明文の
規定がないこともあって従来種々の
議論があったところでありますが、金融
制度、公社債
市場、国債管理政策等の種々の面からの総合的な
検討を踏まえ、銀行が、国債、地方債及び政府保証債、すなわちいわゆる公共債につきまして
各種の証券業務を営むことができる旨を
規定することといたしました。
第三に、大口信用供与規制に関する
規定を設けることとしております。
銀行に対する大口信用供与規制は、昭和四十九年以降行われてきたところでありますが、この規制が銀行の
資産運用の安全性の確保と銀行信用の広く適正な配分のために重要な役割を果たしていることにかんがみ、今回この規制に関し、所要の
規定を設けることとするものであります。
第四に、銀行の休日に関する
規定を弾力化することとしております。
これは、今後の
経済社会情勢の推移に弾力的に対応できるよう、銀行の休日を、日曜日その他政令で定める日とするものであります。
第五に、銀行の営業年度につきまして、一年決算制を採用することとしております。
これは、昭和四十九年の商
法改正以後、一般企業では、一年決算制を採用するものが大勢を占めるようになっておりますので、銀行につきましても、現行の半年決算制を一年決算制に改めることとするものであります。
第六に、業務及び財産の状況に関する説明書類の縦覧に関する
規定を設けることとしております。
すなわち、銀行が業務及び財産に関する説明書類を主要な営業所に備え置き公衆の縦覧に供するものとすることにより、自主的かつ創造的な努力を通じ、銀行が
社会的要請に適切に対応するよう促すものであります。
第七に、外国銀行に関する
規定を
整備することとしております。
近年、金融面におきまして急速に国際交流が進み、これを背景に外国銀行のわが国への進出が増加している状況にかんがみ、外国銀行支店等に対する銀
行法の適用の仕組みを明らかにし、もって
関係者の理解に便ならしめるとともに、外国銀行について適正な規制を行おうとするものであります。
このほか、本
法案におきましては、監督、合併または営業の譲渡、廃業及び解散等につきましても、それぞれ
規定の
整備を図ることとするとともに、この全部
改正の
機会に、現行のかたかな書きの法文をひらがな書きに改めることとしております。
次に、
中小企業金融制度等の
整備改善のための
相互銀行法、
信用金庫法等の一部を
改正する
法律案につきまして、提案の
理由及びその内容を御説明申し上げます。
中小企業金融の専門機関であります
相互銀行、信用金庫及び信用協同組合の諸
制度につきましては、昭和四十三年及び四十八年にその見直しが行われたところでありますが、その後における
経済社会情勢の推移を考慮し、金融
制度調査会は、昨年十一月に「中小企業金融専門機関等のあり方と
制度の
改正について」の
答申を行ったところであります。
この
答申では、中小企業金融専門機関につきまして、適時適切に業務機能に関する
制度の見直しを行うことが必要であるとするとともに、労働金庫
制度につきましても、信用協同組合等との権衡に留意しつつ、
制度の見直しを行うことが適当であるとして、具体的な見直し事項を提言しております。
政府は、この
答申に基づき、
中小企業金融制度等の
整備改善を図るため、
相互銀行、信用金庫、信用協同組合及び労働金庫に関するそれぞれの
法律の一部を
改正することとし、ここにこの
法律案を提出した次第であります。
以下、この
法律案の内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。
まず第一に、
相互銀行法につきましては、
相互銀行が担保付社債に関する信託業を行うことができることとしております。
第二に、信用金庫法につきましては、信用金庫の会員
資格のうち、現在
法律で定められております
法人の資本または出資の額の限度を、諸情勢の推移に弾力的に対応することができるよう、政令で定めることとしております。また、信用金庫及び同連合会が外国為替取引を行うことができることとするとともに、業務の代理を行っている公庫、公団等の資金の取り扱いを行うことができることとしております。
第三に、中小企業等協同組合法につきましては、信用協同組合が内国為替取引及び有価証券の払込金の受け入れ等の事業を、組合員以外の者のためにも行うことができることとするとともに、政令で定めるところにより、組合員以外の者に対しても融資を行うことができることとしております。
また、信用協同組合連合会が内国為替取引を会員以外の者のためにも行うことができることとするとともに、会員以外の者からの預金等の受け入れを行うことができることとする等の
改正を行うこととしております。
なお、協同組合による金融事業に関する
法律につきましても、中小企業等協同組合法の
改正に伴う所要の
規定の
整備のほか、信用協同組合等の行う余裕金の運用
方法に関する
改正を行うこととしております。
第四に、労働金庫法につきましては、労働金庫の会員たる
資格を有するものとして、地方公務員共済組合等を明記するほか、労働金庫が内国為替取引を行うことができることとするとともに、政令で定めるところにより会員以外の者に対しても融資を行うことができることとする等の
改正を行うこととしております。
また、労働金庫連合会が内国為替取引を行うことができることとするとともに、会員以外のものに対しても融資を行うことができることとする等の
改正を行うこととしております。
次に、
証券取引法の一部を
改正する
法律案につきまして、提案の
理由及びその内容を御説明申し上げます。
最近の証券
市場をめぐる環境は、公社債
市場の急速な拡大、内外資本交流の活発化等に見られますように大きく変化してきております。このような状況を踏まえまして、証券
市場の健全な発展を図り、あわせて投資者保護に資するため、
証券取引法において、銀行等の公共債に関する証券業務についての
規定の
整備等を図ることとし、ここにこの
法律案を提出した次第であります。
以下、この
法律案につきまして、その大要を申し上げます。
まず第一に、今回提出されました
銀行法案において、従来種々
議論がありました銀行の公共債に関する証券業務について明文の
規定が設けられることにかんがみ、銀行等が、公共債に関する証券業務を営もうとするときは、投資者保護の観点から、一定の場合を除き、大蔵大臣の認可を要することとしております。
第二に、銀行等の公共債に関する証券業務の認可につきまして、証券会社に関する免許の種類の
規定等所要の
規定を準用することとしております。また、当該認可を受けた銀行等につきまして、投資者保護のための不公正取引の禁止の
規定等所要の
規定を準用することとするほか、報告、検査等につき証券会社と同様の
規定を置くこととしております。なお、準用
規定の範囲につきましては、銀行等が銀
行法等による一般的な規制を受けていること、銀行等の証券業務の
対象が公共債に限られていること等を考慮して定めております。
第三に、外国の譲渡性預金証書及びコマーシャルペーパーの国内における円滑な流通を確保するため、これらの取り扱いを証券会社も行うことができるようにする必要があることにかんがみ、証券会社の兼業制限に関する
規定を
改正することとしております。
このほか、本
法案におきましては、
経済社会情勢の変化に対応して罰金の額の適正化を図る等の
改正を行うこととしております。
以上、
銀行法案、
中小企業金融制度等の
整備改善のための
相互銀行法、
信用金庫法等の一部を
改正する
法律案及び
証券取引法の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案の
理由と内容の大要を申し上げました。何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
以上であります。