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1981-03-23 第94回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月二十三日(月曜日)     午後一時三分開議  出席委員    委員長 綿貫 民輔君    理事 大原 一三君 理事 小泉純一郎君    理事 山崎武三郎君 理事 伊藤  茂君    理事 沢田  広君 理事 鳥居 一雄君    理事 竹本 孫一君       木村武千代君    熊川 次男君       白川 勝彦君    泰道 三八君       中村正三郎君    原田昇左右君       平泉  渉君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山本 幸雄君       与謝野 馨君    塚田 庄平君       平林  剛君    堀  昌雄君       村山 喜一君    柴田  弘君       渡部 一郎君    玉置 一弥君       正森 成二君    蓑輪 幸代君       柿澤 弘治君  出席政府委員         大蔵政務次官  保岡 興治君         大蔵大臣官房審         議官      梅澤 節男君         大蔵省主税局長 高橋  元君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人         (日本大学経済         学部教授)   名東 孝二君         参  考  人         (立教大学経済         学部教授)   和田 八束君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   椎名 素夫君     原田昇左右君   平沼 赳夫君     泰道 三八君 同日  辞任         補欠選任   泰道 三八君     平沼 赳夫君   原田昇左右君     椎名 素夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一二号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一三号)      ————◇—————
  2. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  ただいまより、三案について参考人から意見を聴取することにいたします。  本日御出席をいただきました参考人は、税制調査会会長小倉武一君、日本大学経済学部教授名東孝二君、立教大学経済学部教授和田八束君の各位であります。  この際、参考人各位に一言申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本委員会におきましては、目下、所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案を審査いたしておりますが、三案につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただきますようにお願いいたします。  なお、御意見十分程度にお取りまとめをいただき、その後委員からの質疑にお答え願うことにいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、まず最初小倉参考人からお願いいたします。
  3. 小倉武一

    小倉参考人 せっかくお招きいただきまして、何か御参考になるようなことをお話をするようにということでございますが、私といたしましては、税制調査会関係いたしておりますので、そのことに関連して、もうすでに御承知のことかと思いますが、しばらく御清聴を煩わしたい、こう思います。  税制調査会では、昨年の十一月にいわゆる中期答申というものをいたしまして、その翌月、十二月に五十六年度税制改正につきまして政府答申申し上げた次第であります。     〔委員長退席大原(一)委員長代理着席〕 したがいまして、きょうはこれらのことについて、重要点について若干触れてみたい、こう思います。  まず、中期答申すなわち財政体質改善するため税制上とるべき方策、その答申についてでございますが、重要点は四つ、五つに集約できるかと思います。  その第一点は、財政再建の期間を通じまして、全体として歳出増加率国民総生産伸びの範囲内にとどまるような水準に抑える、そのために最大限の努力を傾注することが必要である、こういうことであります。  これはいかにも当然のことのようでもありますけれども、しかし国債が大変かさむあるいは地方交付税が当然相当伸びていくというようなことを考えますと、大変厳しい注文のようなふうにも考えられるわけであります。  第二点は、税負担引き上げでありますが、税負担引き上げがどうしても必要であるというような場合にも、やはり限度考えておく必要があるということであります。  その意味は、特例公債から本格的に脱却するという六十年度、六十年度から特例公債の償還が始まるわけでありますので、五十九年度までに歳出に占める税収の割合をできるだけ多くする、八〇%くらいには持っていく必要があるのではないか、こういうことが一つ目標になろうかと思います。この程度目標にいたしますと、国民総生産との関係においては税負担割合が現在よりは二%程度引き上がるということにならざるを得ない、こういうことであります。  第三点は、相当程度税負担の増を求めるというようなやむを得ない必要に対処する場合に、どういう税制上の措置をとったらよろしいかということであります。  無論第一には既存税制の中で考えるわけでありますが、そうなりますればおのずから所得税法人税ということになります。なりますが、そのほかに新しい税を考えるということであれば、やはり間接税ということになるだろう、こういうことであります。  このうち法人税についてはただいま御審議中のようなことで、ある程度引き上げをするということに五十六年度税制改正において答申をいたしたところでありますが、所得税については特に具体的にどうするということは結論を出しておりませんが、所得税もこれを除外して増収措置考えるというわけにはまいらないであろうというようなことに考えております。  もう一つ間接税でありますが、これは今後の検討課題であるということにいたしております。  第四点は、納税環境の整備ということでありまして、これは主として税負担の公平を求めるということで、制度の上のみならず執行面においても税の公平が確保できるような措置考える必要があるということであります。  最後に、所得税減税でございますが、これにつきましては税制調査会の中におきましてもその強い要求がございましたけれども、多くの意見は、この際やむを得ず所得税減税は見送るということにいたしたのであります。  次は、五十六年度税制改正についての答申でありますが、この際は税制調査会委員の任命がえがございまして、一部新しい委員がお加わりになった調査会であります。これは昨年暮れに答申をいたしております。  この答申のおおよその考え方を申し上げますと、まず二兆円国債発行額減額するということであります。  次は、歳出についてでありますが、歳出につきましては、一般会計歳出総額におきまする割合を一けた台に抑えるという要請であります。  次は、歳入面でありますが、昭和五十六年度ではある程度の、相当規模自然増収が見込まれるのでありますが、この自然増収の分は公債減額、それからこれまでの国債費、それから地方交付税増加分といったようなものに大体消化されてしまうということであります。したがいまして、歳出を徹底的に見直しまして節減、合理化するという傍ら、歳出伸び最小限度やむを得ないというものがありますれば、このために必要な財源については税負担増加に求めざるを得ないだろう、こういうようなことであります。  それを具体的に申しますと、もうすでに御承知のとおり法人税率を一律二%引き上げる。酒税につきまして従量税率を原則として二五%引き上げる。物品税については新規開発物品等を中心にしまして新しく課税対象にする。乗用車等につきましても最小限度若干の税率引き上げを図る。印紙税につきましては定額税率それから階級定額税率を二倍程度引き上げる。それから階級定額税率最高価格の幅を検討し直す。有価証券取引税につきましては、国債を除く公社債の税率を五〇%引き上げる傍ら、一般の譲渡の場合の株式の税率を二〇%程度引き上げるというようなことが具体的な内容でございました。  最後に、今後の税制調査会進め方について簡単に申し上げます。  今後の税制調査会進め方につきましては五十六年度税制改正答申の中にごくわずかばかり触れておりますが、申すまでもなく引き続き財政体質改善ということに最大の努力を払うことが要請されておりますが、税制面におきましては、中期税制答申でもって検討課題であるというふうにいたしました諸問題を各般の観点から検討を進めてまいるということになっておりまして、これを受けまして昨年十二月の税制調査会総会特別部会を設けてこれらの検討早目に行ったらどうかということにいたしたのであります。具体的にいつ新しい年度総会を開くかまだ決定をいたしておりません。私限りの考えでありますけれども、国会で財政あり方なり今後の税制あり方なりについて大きくいろいろ御議論、御意見の御開陳あるようでございますから、そういうことについての報告をできるだけ早い機会に求めまして、特別部会において具体的な必要なことの検討を始めるというようなことにしたらどうかというふうに考えております。  以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手
  4. 大原一三

    大原(一)委員長代理 ありがとうございました。  次に、名東参考人にお願いいたします。
  5. 名東孝二

    名東参考人 名東でございます。  時間が十分間に制約されておりますので、まずイントロだけ申し上げて本論は後の御質問に応じたい、こういうふうに考えております。  まず強調したいことは、国民生活者ニーズというものが多様化し個性化しておるという現実に御注目願いたいと思います。メカトロニクスを初めとするシステム産業にしましても——御存じのように、重化学工業の斜陽化は明らかではないかと思うのであります。レジャーとか保健、生涯教育産業などの生活産業にしましてもまた流通産業にしましても、すべて目指す相手はエンドユーザーとしての生活者である、目覚めつつある消費者であるということです。この個性化し多様化しつつある生活者ニーズに呼応して新しい型の企業人、従来の会社べったり人間にかわる新しい仕事人間、したがって中小企業にも出番があるということ、そういったような新しい生活基盤を基礎にした新風が産業界にも起こりつつあるということに御注目願いたい。  ところが国家財政はいまだに巨大信仰ですね。大きいことはいいことだ、そういったような巨大信仰に取りつかれておる。旧態依然たる高度成長体質にしがみついておる、拡大しようとしておる。脱大量化マス化から脱却しつつある国民一般に対して、いまだに規格化されたお粗末な、金をばらまくようなサービスしかできないでおるわけです。本当に求めておるきめの細かい公共サービスができていない。  しかも、国民物価上昇に見合わないベースアップによって実質所得の目減りを来している。税金社会保障費などの非消費支出増大のために、GNPの中で五九%を占めておる個人消費支出、これが停滞しておる、住宅需要が落ち込んでおる、民間設備投資も頭を打った、そういうように不況の足を引っ張っておるわけであります。  欧米では御存じのように、新しい人間関係としての家庭の見直しとか家計経済重要性というものが再認識される中で、家庭の崩壊というものはわが国の将来に重大な禍根を残すのではないでしょうか。  五十五年上期の平均月収、下期はまだ私の手に入らないので残念でありますが、上期の平均月収が三十万六千円、これはもっと高い方がいいと思うのです。この勤労所得税が約一万円ですが、五十六年のベースアップを八%とすると、八%というのはやはりもっと高い方が、不況対策の上からして望ましいというふうに思っております。二万四千五百円、これに対する税金が、法人税等の転嫁を考慮しますと一万円強の増税となります。この一万円強の増税といいますのは、限界担税率が四三・七%、なわち国民所得の五十六年度増分が十八兆三千億円でありますので、それをそれで、五十六年度増税分八兆円を割りますと四三・七%、非常に高い担税率ではないかと思うのです。  皆さん御存じのように、パーキンソンの第二法則で、三〇%を超えるとアメリカのように国際的な影響力が減退する、三六%になるとイギリスのように必ずしも直接的ではないにせよ、完全かつ最終的な悲劇が訪れる。パーキンソン法則では、一〇%でよい、やむを得ないときは二〇%までだということをうたっておるわけです。松下幸之助さんも大体同じようなことを言っておると思うのです。こういったような大きな増税に加えて、公共料金等引き上げに伴う負担増が一万円強、波及効果まで含めますと、私の計算では少なくとも三万円増になる。わずか一年間で家計公的支出は三倍強となる。  ところが大蔵省の「財政中期展望」によると、御存じのように新しい新消費税を初めとして大増税を企画しておる。次から次へと企画しておる。大きいことはいいことだ、モア・アンド・モア、もっともっと、そういったような無限大信仰にとらわれておるのではないか。まさに肥大の中に肥え、ぶくぶくと太ることにのめり込んでおる。そういったような財政膨張というものは、御存じのように圧力団体などによるパイの奪い合いっこ、それのツケが結局回り回って財政膨張になる。それがインフレを助長する。御存じのように公共事業費でも生産性効果よりもインフレ効果の方が高くなっておる。そうすると、インフレの半面はコスト高によって不況をますます足を引っ張る。したがって民間の活力の衰退となり、国民生活レベルダウンとなる。こういったような悪循環を繰り返していかざるを得ない。こういったような非常に危ない瀬戸際にいまあると思うのでありますが、予算を制する者は国を制するというイギリスのことわざがあるわけであります。政府税調を隠れみのに使って、また政府政治責任という衣の陰で大蔵省密室作業というものが進行しておる。最近は、失礼ですが、自民党さんの税調を初めとして、多少は勢いを得ておるようでありますが、しかし実態はまだまだ大蔵省原案づくりにどこまで修正力があるかとなると、はなはだ問題ではないかと思うのであります。  このままの増分主義とか圧力方式のミックスでは、非常事態に対処できない。非常事態とはどういうことかということは御質問で答えたいと思いますが、私は五十三年前の恐慌が襲いかかってくる可能性は多分にあると見ておるわけであります。政党人の真骨頂というのは肉を切らして骨を断つというやり方ではないかと思うのでありますが、本来、中立的、技術的なシビルサーバントであるべき官僚の本質に引き戻す。そのためには、失礼でありますが、政党自身政策能力を向上する。私利私欲を断って率先垂範する。たとえば補助金のような問題でありますが、財政上の独善性非公開性に風穴をあけるディスクロージャー、情報の公開ということ、こういったようなことが非常に大事であると思う。それからいま問題になっておる行政改革に対するチェック、監視機能の確立、たとえば国民投票欧米でよくやられておるような国民投票に訴える、住民投票をもっと多用する、こういったような形が好ましいのではないか。  本当に生き抜いていく、勝ち抜いていくということは、イノベーションを続けていくということだと思うのです。保守の本質といえども、常にイノベーションを繰り返すことによって古きよきものを守ることができるのではないか、こういうふうに思うのであります。  はなはだ簡単ですが、イントロはこの程度にしておきます。(拍手
  6. 大原一三

    大原(一)委員長代理 ありがとうございました。  次に、和田参考人にお願いいたします。
  7. 和田八束

    和田参考人 立教大学和田でございます。  昭和五十六年度税制改正に関連しまして若干意見を申し述べまして、御参考にしていただければと存じます。  五十六年度税制改正関係では、初年度一兆四千億円弱の増税になっているわけでありますけれども、この増税案、全体として見ますと、国債の二兆円減額という政策目的のために可能なところで財源あさりをして増収を図ったという印象を強く持つわけであります。五十六年度予算編成は早くから二兆円国債減額が言われていたわけでありますが、そのためには財政体質改善を強く進めるということがかねてから要請されていたわけであります。政府税制調査会昭和五十六年度税制改正に関する答申におきましても、高度成長期に生じた歳出増加傾向是正し、財政体質そのもの改善するためにも、また負担引き上げについての納税者の理解を得るためにも、思い切った歳出節減合理化が望まれるという趣旨のことが書かれておりまして、これが五十六年度税制改正前提であるという意味合いのことが述べられているわけであります。ところが、こうした前提条件というものがほとんど達成できないまま増税だけ先行したというのが実情ではなかろうかというふうに思うわけであります。したがいまして、仮に増税をするといたしましても、これが財政体質改善につながるということでありますならばいいわけでありますけれども、そしてまたその増税がかねてから指摘されておる不公平税制是正というものに結びついてくるということであればよろしいわけですけれども、そうならなかったという点で問題が後に残るのではないかというふうに思うわけです。  つまり、この増税分が結果的に財政膨張をもたらしたということによりまして、これがまた次年度、そしてまたその次々年度というふうに財政膨張要因となるという意味で後年度ツケを残すことになり、恐らく五十七年度以降になりますとまたそのための増税が必要になってくる。つまり本年度増税が五十七年度以降に増税を生み出すということになってくるのではなかろうかという危惧を持つわけであります。したがいまして、五十七年度以降において仮に、言われております大型間接税というふうなものが登場するとしますならば、それは従来言われていた財政再建のためではなくて、五十六年度においてこのような財政税制政策をとったことのツケである、その結果であるという新しい要因によって大型間接税必要性が出てくるのではないかということを心配するわけであります。  現在の財政全体の事情から言いますと、かねて財政危機と言われていた状態からすると相当程度速いテンポで好転しているわけであります。したがいまして、ある程度このように財政が好転してきた現在こそ、物価調整減税を行って不公平税制是正する非常にいい時期ではなかろうかと思うわけでありますが、そうした点が十分に行われていないのではないかという心配があるわけであります。  そのうちで特に私が強調いたしたいのは、所得税における物価調整の問題であります。物価調整が現在必要であるという第一の理由といたしましては、所得税におきましては昭和四十九年度から税率が動かされていない、五十三年度から課税最低限が据え置かれているということによって実質税負担増大してきているということであります。そしてまた第二点といたしましては、そのような税負担増大というのが所得階級別所得種類別に不均衡をもたらしてきていて、所得税納税者問の不公平を拡大させてきているという点であります。それからさらに経済全体に対する影響からいたしますと、消費需要の減退ということによって経済に対して好ましくない影響も見られるのではないか、こういうことも同時に指摘できるわけであります。  こうした点から言いまして、五十六年度におきましては物価調整の必要というものが緊急不可欠ではなかろうか、こういうふうに考えているわけであります。  これらの点につきましては、税制調査会答申あるいは税制改正案におきましても否定的にとらえられているわけでありまして、その理由といたしましては、課税最低限が国際的に見てなお高い水準にある、また財政再建重要課題であるというふうな理由が挙げられているわけでありますけれども、私はそれらの問題とは一応切り離して、いま指摘されているような問題は確かに議論されてしかるべきだと思いますが、しかし、それとは全く別に、インフレ下におきましては物価調整をする必要性があるのではなかろうかというふうに考えているわけであります。負担水準の問題と物価上昇に対する調整の問題はやはり切り離して考えるべきでありまして、どうも議論が混同されているきらいがあるように思うわけであります。  それから、五十六年度税制改正におきましては、法人税改正がかなりのウエートを占めているわけであります。法人税税率が全体としてほぼ二%引き上げられたということでありますが、このような税率引き上げによる法人税負担増というのは、必ずしも私自身反対ではありません。かねて法人税負担の度合いから、負担の余地があるというふうに考えておりましたし、税負担の増を図るといたしますれば法人税負担についてまず第一義的に考えるべきであるというふうに考えておりましたので、その点については特に反対ではないわけであります。  ただ、法人税性格につきましては種々議論があるところでありまして、これは税制調査会の中におきましても議論がされていたように聞いておるわけです。しかし、それらの法人税性格について十分な議論がされていない、あるいは法人税負担内容について所得階級別あるいは資本階級別等企業規模による格差等について十分な結論が出ていないわけでありまして、それらについて十分議論をしなければならないのではないかということが一つ。  それから、そのような点を踏まえてみますと、全体として同率、つまり二%の税率引き上げではなくて、所得あるいは資本金階級等による累進的な税率導入というものが妥当ではなかったのかというふうに考えるわけであります。あるいは超過利潤税等導入による法人税負担に対する対応というものも必要だったのではないのかというふうに考えられるわけでありまして、一律の二%の税率引き上げという手法については疑問を持っているわけであります。  なお、その他不公平税制是正につきましては、資産所得課税あるいは資産保有に対する課税等問題が残っているところでありまして、これらについて、富裕税導入を初めとして今後問題があるのではないかというふうに考えているわけであります。  その他幾つかの短期的な課題あるいは長期的な問題というものもございますけれども、さしあたり以上のような点を申し上げておきたいと思います。(拍手
  8. 大原一三

    大原(一)委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は一応終わりました。
  9. 大原一三

    大原(一)委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。平林剛君。
  10. 平林剛

    平林委員 ただいま当委員会に対しまして大変貴重な参考意見をいただきまして、まことにありがとうございました。いまのお話を聞きながら、それぞれの参考人に私の考えを申し述べながら御意見を承りたいと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。  まず最初に、小倉参考人にお願いしたいと思います。それは、最近の政府増税政策に対する考え方税調基本的考え方に少しずれが出てきたのではないかと思いまして、これに関しての御意見を承りたいと思っておるわけであります。  いまお話がございましたように、昭和五十六年度税制改正に関する答申は、その基本的な考え方として財政体質改善するために税制上とるべき方策について述べるとともに、国や地方の負担引き上げの具体的検討対象として課税ベースの広い税にこれを求めざるを得ないというのが税調の基本的な考え方でありまして、いわば大型消費税導入を示唆した、こう受け取っておるわけでございます。そして、いまも今後の調査の方向としてお話がございましたが、これらの問題についてどう対処するか研究を重ねていきたいとお述べになりました。  政府も、初めはこの答申を受けた形で、五十六年度税制改正は、現行税制の基本的な枠組みの中で増税をするという考え方に立ちまして、この国会に所要の法律の改正案を提出しておることは御承知のとおりでございます。しかし、大型消費税の問題につきましては、この国会の論戦を通じまして国民的な幅広い批判を受けまして、ついには財界までが増税なき財政の再建という要望を強めてまいりました。鈴木総理大臣も、五十七年度は大型消費税導入はもちろん、増税は一切しないという決断をいたしまして、国会に対してもその旨を明らかにしております。大蔵大臣の方も、行政改革に政治生命をかけるとまで言った総理大臣の意向を無視するわけにいきませんし、この考え方に同調する態度を示しています。つまり、鈴木内閣税制調査会が示唆したところの大増税路線を回避するという方向転換をしたと一般的に受けとめられておるわけですね。これは税制調査会の基本的な考え方に対しまして、初めはともかくとして、国会の論戦あるいは国民の総批判というものを受けて税調考えに否定的な方針をとるに至ったんじゃないのか。税制調査会の会長といたしましてはこの動きに対してどういうお考えを持っておるか、これをまず承りたいと思います。
  11. 小倉武一

    小倉参考人 昨今、総理の、総理だけではないかと思いますが、税制の今後のあり方に関連してお話があることは、新聞を通じてだけでございますが、若干承知しております。総理の意図されるところは、憶測で恐縮なんですけれども、行政改革ということが現実的な日程に上っておりまして、この行政改革の成果というものが、できれば新しい税を起こすというようなことなくして済むような実が上がるということも恐らく期待されての御発言かと思いますけれども、どちらかと申しますと、行政改革に拍車をかけるといいますか、そういうことであって、まだどういう行政改革ができるかわからないうちに、それによって新税をとらなくてもよろしいんだ、こういうことまではっきり明言されたというようなことには私どもちょっと受け取りにくいんじゃないか。しかし、仕事がある程度別々ですから、歳出減の方に役に立つことなんでありまして、それで役に立てば歳入の方についての影響もむろんございましょうけれども、これをどのように受けとめるかというのは、これは私どもとしては少し先のことになろうかと思います。いま、総理の発言がこうだったから税制調査会として従来の方向を変えていこうじゃないかということまでにはちょっと行きにくいんじゃないかと思います。もっとも昨今の国会等における総理の御発言等を踏まえて税調の中で中期答申の模様を再び議論するというようなことはまだ行われておりませんから、むろん税調全体の意見として申し上げるわけではございませんけれども、私ども歳入の方に関係するだけの者といたしましては、万が一足りないというような場合の用意は、考え方としてどうしたらいいかということはやはり考えておく必要があるんじゃないかというような気がいたしております。
  12. 平林剛

    平林委員 引き続いてお尋ねしますけれども、鈴木総理大臣の考えというのは引き続き私どもの委員会においでをいただきましてはっきりと承っていきたい、こう考えておりますけれども、いま小倉参考人が推測をされた程度の鈴木総理の認識なのか、それとも総理大臣としては、行財政改革に政治生命をかけるという発言は、私はただいまのお話のような程度の認識ではなくてかなり不退転の決意を述べたものと見ておるわけでございます。この点は少し見方が違うので残念でございますけれども、私はそう思います。そしてその考えは、単にこれに拍車をかけるというだけではなくて、私はこれから他の参考人にも御意見を承りたいと思っておりますが、今後の税の自然増収の問題とかあるいは歳出の削減、特に政治生命をかけるという行財政の改革を通ずれば国民に評判の悪い増税なんかはしないでも済みはせぬか、この傾向が続けば、五十八年、五十九年においても、当面展開中の景気総合対策その他が功を奏して税調考えるような大増税路線に行かなくても済みそうだ、私はその程度の認識はあるのじゃないか、こう思っておるのでございます。しかし、それにもかかわらず、万一の場合に用意して消費税というものの研究は進めなければならぬとお考えでございましょうか。大蔵省の方も何か特別の企画委員会などを設けて引き続き御検討いただくというような考え方をついこの間までとっていたようでございますが、これは政府の方針もございますからどう変わりますか……。しかし税制調査会政府が何と言おうとも、大蔵省考えが変わろうとも、それこそ不退転の気持ちでこれをやらなければだめですというようなお考えでまとまっておるのでしょうか。
  13. 小倉武一

    小倉参考人 税制調査会、これは、私の言いようによってはまた誤解が生まれると困るわけですが、あくまで政府の諮問機関でありまして、政府がどう考えようとわが道を行くという必要もないし、またそうあっては困るのじゃないか。むろん、一々政府のおっしゃることが万事ごもっともでございますというのもこれまた困るといいますか、能がないといいますか、そういうことかと思いますが、そこはおのずから、政府のおっしゃる大筋はできるだけその線に沿うた上でなおかつ意見を申し上げるということでなくてはならぬわけで、全然正反対の道を税調が歩くというわけにもまいりませんし、かえって都合が悪いのじゃないかと思います。  いまの、具体的な消費税のことでありますが、かつて一般消費税という名前でもって提案申し上げましたものにはこだわらないで、広く間接税ということでひとつ検討を進めたらどうかというのが昨年暮れまでの税調考え方であります。その間接税がどういうものであるかということについてはまだしかと議論をいたしておりません。国会の御決議もある次第でございますし、また総理の御発言等もあることでございますし、また税調の中でもいろいろ御議論があることでもありますので、特定の消費税ということが検討の項目になっておるわけではありません。同時にまた間接税のみならず、むろんこれとの関係もありますし、所得税についても検討を進めていく必要があるというふうに考えておる、そういうようなのが昨年暮れまでの税制調査会考え方であったわけでありまして、新しい事情を踏まえての今後の検討の仕方というものは、できれば早い機会に総会を開いて国会でのいろいろな御意見のほどもお聞きした上で税制調査会の内部で御相談してまいりたい、かように考えております。
  14. 平林剛

    平林委員 いずれ私どもは政府の方針ももう少しはっきりさせて、国民全体が心配しております大増税路線、これはたがが外れたような形で税制調査会が走って行かないように、それを私たちとしては希望いたしておきます。  次に、和田参考人にちょっとお尋ねしたいと思いますが、私の尋ねたいのは、財政再建という問題が国の緊急課題でございまして、これについては、私も税制調査会の会長がお話しになった考え方については否定をしておりません。国、地方を通じて多額の公債、借入金に頼っておるということは異常なことでございまして、これを是正するということは緊急の課題であるという認識は私は当然だと思います。ただ、その財政再建目標年次までに特例公債からの脱却を図るということは私は当然だと思いますけれども、その後の税収不足を補うという意味で大型消費税の方向を打ち出すということに対しては実は異論があるわけでございます。そこで私たちは、こういう大増税路線をとるのではなくて、それをとらないでも財政再建ができないか。和田先生にお尋ねしたいのは、自然増収による財政再建というのは可能かどうか、こういうことでございます。  私たちとしては、国民本位の歳入増加を図ったり、歳出の洗い直しをしたりいたしまして、具体的な財政計画を立てるということは必要だと思っておりますけれども、幸いにして、さっき先生もお話しになったように、最近における経済活動が税の自然増収がある程度期待をされる。そして政府がかつて発表しました財政収支試算というのがございましたね、あの財政収支計算をまな板に乗せて考えてみますと、公債発行額はあの計画では昭和六十年度水準に十二兆円、こうなっておるわけですね。これはもっぱら税の自然増収に支えられて今日十二兆円台になっているのでありますけれども、とにかく財政収支は初め政府が想定していた国債の依存ベースよりも速いテンポで回復しているということは、この財政収支の試算と比較してみてもわかるのですね。つまり、これは自然増収がかなりあったんだということを意味すると思うのですね。したがって、私は、税制調査会は万一の場合を考えてということで大型消費税にまだ固執されているようでありますけれども、しかし、もし最近の鈴木総理が決断をしたように、行財政改革を正しく断行すれば、財政再建は可能じゃないかという期待は持っておるわけでございます。この自然増収によるところの財政再建というものは可能かどうか、そういうことについての先生の御見解をひとつ承りたい。
  15. 和田八束

    和田参考人 いまのお尋ねですが、財政再建というのはどういうものなのかということにつきましては、内容的に議論があろうかと思いますが、その点はさておきまして、要するに赤字財政ではない、つまり国債に大幅に依存していない、あるいは財政収支がほぼ均衡している、大体そういったような状態に持っていくというのを財政再建というふうに考えているといたしますと、現在までのところ非常に速いテンポでそういう状態に近づいているというふうに私は認識しているわけです。  いまも御指摘がございましたように、昭和五十五年の当初に大蔵省が出しました財政収支試算によりますと昭和六十年度において十二兆円の国債発行額というのが、その後一年たたないうちに五十六年度十兆円まで実現できたわけでありますので、この点だけから言いましても、相当速いテンポであったということができるわけでありまして、そしてそれを可能にしたのは何よりも自然増収であったというのが、従来までの、つまり今日までの実績であったということは言えます。ただ、今後数年、四年ないし五年先に、どんどんこういう調子でいって最後にゼロになるかということになりますと、先のことですので何ともわかりませんが、現時点で考えるならば、なおかなりの自然増収が、ことしほどではないといたしましても、しかし相当程度自然増収はあるというふうに考えるのがリアルでありますので、そういたしますと、なお早く財政収支の改善というのは実現できるというふうに言えるわけです。したがいまして、来年度ないしは再来年度ぐらいで国債発行額十兆円ぐらいというところにまで持っていくというのは容易なことであろうというふうに考えるわけでありまして、今日の日本経済の実情、それから財政規模というところから言いますと、大体十兆円ぐらいの国債発行というのは、財政上それほど問題ではない。それよりもさらに少くしょうということに余りあわてる必要はないわけで、十兆円程度はあってもあと数年ぐらいの間には自然的に償却し得る範囲内であろうというふうに考えています。  ただ問題は、昭和六十年以降になりまして従来の特例債の償還が出てくるということでありまして、これは財政支出の面でやはりかなり大きな重荷になってきている。今日でも大体公共事業費と同じくらいのウエートですから、相当重荷になっているわけで、これがさらに重荷になるだろう。これをどうするのかというところにあろうかと思います。この点につきましては、国債発行政策あるいは借りかえ等総合的に勘案いたしまして、国債の管理政策というものを再検討しなければならないというふうに考えておりますが、それ以上にやはり財政の中身を再検討いたしまして、いわゆるむだな歳出というものを洗い直すということを積極的にしなければならないわけでありまして、そういう点で行政改革をいかに進めるかというのは非常に重要な課題であろうと思います。  それをやることが前提でありまして、いまお話のございましたような大型消費税というのは性質がそもそもまだわかっていないわけでありまして、これに期待するというところにはいっていないように思います。大型消費税とか大型間接税というのがどういうものなのかということがはっきりしないわけでありまして、はっきりしないために、これがどれくらいの税収を期待し得るものなのかどうかということもわからないわけであります。前回の一般消費税につきましては、ある程度姿形がわかっていたわけでありますけれども、それではない消費税であるということになりますと、果たしてどういうものであって、日本の税制としてふさわしいものなのかどうなのかということについてもほとんどわからないわけでありまして、そういう正体不明のものを前提にして議論するということがそもそも問題があろうかと思いますし、また、そのようなかなり増収を図るような消費税導入するということは租税政策の上から言っても適当とは思えませんので、そうしたものを前提にするのではなくて、いま申し上げましたような主として財政歳出面の問題、それから国債管理政策等の再検討というふうなものを通じて財政再建を図っていくことが好ましいのではないかというふうに考えるわけであります。
  16. 平林剛

    平林委員 どうもありがとうございました。  ついでと言っては恐縮でございますが、もう一つこの際御意見を伺いたいのは、物価調整減税の制度の問題でございます。  先ほど物価調整減税というものが必要な理由についてお話がございましたが、税制調査会の方では、所得税課税最低限は五十三年以降据え置かれているから、物価調整減税の要望が非常に強かったのだけれども、しかし、個人所得課税については課税最低限引き上げを求める改正というのは適当でないと言って結局この考え方を退けられたわけでございます。しかし、国会におきましては、和田参考人お話しになりましたような理由も込めまして所得税減税につきまして五十五年度に剰余金があればその全額をこれに当てろという与野党の合意が成立いたしまして、これに必要な法律改正の手続が進められておるわけでございます。この措置がとられた理由はいろいろございますけれども、やはりお話しのように三年間も物価調整措置がとられなくて物価上昇があった、国民の生活水準の低下が大きくなってきたし、税負担が実質的にふえてきた、所得階層別の負担のアンバランスがふえた、こういう意味で、曲がりなりにも調整をするということになったと思うのでございます。ただ問題は、それにもかかわらず、これはことしだけだということになっておるわけですね。本年度限りの措置と、こうなるわけでございまして、こういう合意ができたということは、私は物価調整ある程度必要だということも底流になければできないことでございますから、本質的にはこの物価調整減税制度をわが国の税制度に取り入れるかどうかという問題が先行しなければならなかったわけですが、まだこの点についてははっきりしておらないのでございます。私は税制調査会が言われたように、日本の税負担率は国際的に見てまだ低いのだという理由から、物価調整減税措置を否定をするという考え方についてはどうも賛成しがたいのでございますけれども、もう一つ税制調査会には、いま増税しているときだからがまんしてくれよ、こういうのがあると思うのですね。そういうことであれば、財政再建という大義名分において租税特別措置をもうちょっとなぜ大胆に整理するようなことはおっしゃらなかったのかというまた批判がございまして、どうも調査会答申についていけないところがあったわけでございます。  そこで和田参考人にお尋ねしたいのですが、この物価調整減税制度というのは、私の承知している限りでは、イギリスでもフランスでもカナダでもすでに実際政治の中に取り入れられているのじゃないかと思うのでございますが、そういうことにつきまして何か参考になるような御意見がございましょうか、これについてちょっとお願いしたいと思います。
  17. 和田八束

    和田参考人 物価調整減税につきましてのお尋ねでありますが、所得税の本来の負担実質所得に対する負担考えられるべきである。物価上昇下では、実質所得に対する実効税率よりも名目所得に対する実効税率の方が高くなる。実質的な税負担増加は低所得者ほどその程度が著しく逆進的に働くということ、いま申し上げた点は昭和三十八年度税制調査会答申に書いてある文句であります。つまり、わが国においては昭和三十八年の税制調査会答申ですでに物価調整の理論的論点というのがほとんど尽くされているように私は思うわけであります。昭和三十八年の税制調査会答申は、同時に調整方式としては課税最低限引き上げで行う。そして人的控除三控除を同じに引き上げなければ意味がないということもつけ加えているわけであります。さらに自然増収中どれだけを負担調整に回すべきであるかということの計算方式を提案しているわけであります。そこでは実質負担増加率の自然増収に対する比率分、これを調整対象にすべきだ。つまり減税すべきであるということを言っているわけであります。したがいまして、この点ではわが国においては大体物価調整減税物価上昇下では行うべきものであって、行わなければ非常にまずい。そして行うとすれば大体こういうやり方というのはかなり以前に決められて、大体そういう方向が出されているということでありまして、いまさら議論しなければならない点というのは新たにないわけじゃないわけですけれども、かなりの程度もうすでに議論済みというふうに思うわけです。これらの点につきまして、一九七六年にOECDがやはり各国についての物価調整あり方というレポートを出しているわけですけれども、これによりますと、一九七〇年代においては各国とも物価調整減税必要性に強く迫られまして、それらの導入を図っているわけですけれども、その中でわが国、というのはつまり日本でありますけれども、日本が最も先進的な国であるというふうに書かれておりまして、日本のこの昭和三十八年税調答申内容というのが相当詳しくそこでは報告されているわけであります。  その他の学者におきましても、各国で物価調整減税についての研究はありますけれども、一九七〇年以降の、あるいは第一次オイルショック以降のインフレ下におきましてこういう物価調整の問題というのは相当議論が重ねられてきておりまして、そして各国において導入されているということであります。  最近におきましても、イギリスでは一九八〇年の歳入法で、前年の小売物価の上昇率を下回らないように基礎控除を引き上げるということが決められておりまして、若干そのとおり行われてはいないようでありますけれども、しかし一応そうしたことは、その基礎控除の引き上げそのものについては行われているというふうに聞いております。それからスウェーデンにおきましては、税率表の修正というのが前年の物価上昇率によって行われているというふうに聞いております。また物価上昇率というのは、つまり消費者物価上昇率ですけれども、消費者物価上昇率だけでは不十分だということで、デンマークなどでは生計費支出指標を別個に開発いたしまして、それによってインデクセーションを行っているというふうなことであります。  そのように見てきますと、この物価調整というのはいわゆる調整でありまして、アジャストメントというふうにいわれているわけでありまして、減税の場合御承知のようにリダクションというふうになるわけでありますけれども、そうではなくて、アジャストメントという以上は減税ではないわけであります。つまり不当に課税されないように調整をするということなのでありますから、これは財源があるとかないとかというのは別の問題でありまして、たとえ財源がなくても政府が購入する諸般の物品等は市場の価格に応じて引き上げられると同じように、一種の義務的経費というふうに考えなければならないわけでありまして、当然これは財源の有無にかかわりなく、仮に大幅な赤字であっても、税負担の正当なあり方ということを考えるならば調整をすべきであるということでありまして、これは減税とは全然別でありまして、ですから私は、調整とは言っても減税とは余り言いたくないということであります。  それから、わが国の税負担程度ということで議論があるわけでありまして、特に課税最低限との関連でいわれているわけでありますけれども、これも全く次元の違う問題でありまして、課税最低限がどういうものであるかということについては大いに問題のあるところでありますけれども、それを別にしても、仮に課税最低限程度が高いないし低いというふうな問題があるにいたしましても、それはそれで議論しなければならないわけでありますし、わが国の税負担率が長期的に見てどうあるべきであるかというふうなことは、政策的にも学問的にも議論しなければいけないところでありますけれども、これもまた調整とはおのずから別の問題であるということでありまして、申し上げたいのは、わが国の政府税制調査会等の議論の経過から見ましても、それから諸外国との関連といいますか諸外国の動向というふうなもの、そういうものを見ましても、それからまた税負担あり方、ありようそのものからいいましても、今日物価調整を行うというのはほとんど議論の余地のない当然のことではないか、こういうふうに考えているわけです。
  18. 平林剛

    平林委員 次に、名東参考人に御意見を承りたいと思うのですが、先生は何か、不公平な税制をただす会の方の役割りなどもなさっておるとお聞きしておりますので、そういう角度から少し御意見を聞かしてもらいたいと思うのであります。私は、不公平な税制というのはいろいろな見方等あり、いろいろな問題点があるのですけれども、きょうは租税特別措置法の問題についてちょっと御意見を承りたいと思うのです。  この間も政府の方から租税特別措置による減収試算というのを実は資料として受け取ったわけでございますけれども、五十五年度におきまして国税の租税特別措置、これによりますと、交際費の課税の特例を除きまして大体九千八百十億円あるのです。もちろん内容は、貯蓄の奨励とかあるいは環境改善、地域開発等の促進とか資源開発の促進等とかいろいろなふうに分類はされておりますけれども、合計すると九千八百十億円ございます。それから、これが地方税においてどういうふうになっていくかというのを見ますと、同じく地方税におきまして交際費課税の特例を除きますと二千八百四億円が大体道府県民税、事業税、こういうものになっておるわけでございます。それだけかと思いましたら、地方税法の非課税措置等による減収見込み額がございまして、そのトータルは実に三千六百五十六億円でございます。この三つを合算いたしますと一兆六千二百七十億円という膨大な数字になるわけでございます。われわれもしばしばこれをテーマにして政府との間に議論をするんでありますけれども、この税収見込みがこうなっているが実際には決算はどうなっているかちっともわからないんです。決算は経済の進展だとかその年のいろいろな形において減ったりふえたりするんじゃないかと思われるのですけれども、いまだかつて決算というのにはお目にかかったことは実はないわけでありまして、今度もこの点は私どもも大いにひとつ議論を詰めていかなければならぬと思っておるわけでございます。しかし、いつもこれを取り上げましても微調整ぐらいしか行われませんで、いつまでたっても残るわけです。  これだけじゃなく法人税所得税にもいわば財政上のいろいろな恩典がありまして、準備金とかその他引当金とかありますからね。そういうのを合計したら、本当に日本の税制は不公平が温存されておりまして、これを全然ほっておいて所得税をふやさなければいけないとかあるいは消費税財源をとらなければいけないという議論国民は恐らく納得しないんじゃないかと思うのです。こういう問題につきましてひとつ御意見を承りたいというのが一つでございます。  それから、もう一つ伺いたいと思いますのは、実は私は最近の税制やあるいは経済政策等について政府考え方は少しずれがあるんじゃないかとかねがね思っております。というのは、五十六年度経済見通しによりますと、国民総生産つまりGNPは五・三%の成長をさせるということになっておるんであります。しかし、先生がさっき御指摘になりましたように、国民生活水準だとかいろいろなのが非常に低下しておる中でGNP五・三%成長させるにはどんなぐあいにするのかな。寄与度を調べてみますと、まず民間住宅が〇・二%、それから民間の在庫が〇・一%、そして民間の設備投資が一・三%、国民の消費が二・五%、このほか成長に寄与するのは輸出が一・七%、マイナスに働くのが政府の支出が〇・一%、それから輸入が〇・五%、トータルいたしまして五・三の成長ということになっておるようでございます。  ところが、政府の施策は、内需喚起になっていないんじゃないか。公定歩合の引き下げによって民間の設備投資の促進をはかることをねらっているが、それは一・三%に対する措置であって、的を外れているのではないか。肝心の個人消費の二・五については本当に見るべきものもないんですね。公共料金の引き上げとかあるいは実質賃金の低下とかいろいろございまして、おまけに減税はしない、こうなっているんですから。一体どう考えているのかというのが私は実は疑問なんでございます。こういう角度から見まして、わが国の今後の税制の中においてどういうことを考えるべきかという点をお伺いできたら幸いでございます。
  19. 名東孝二

    名東参考人 最初不公平税制の問題は、必要経費のアンバランス初め重要な論ずべきことが相当あるんでございますが、御質問の焦点がいわゆる租税特別措置、これを中心にしたお尋ねだったと思いますので、それを簡単に申し上げたいと思います。  もちろん、この租税特別措置考える場合には、現在の税制を貫いている総合申告制ですね、これは私は基本的にりっぱなものがあると思うのです。それに虫食いが起こっているんじゃないか。いわゆるタックスエロージョンと言われますが、そういう税の侵食が起こっている。その税の侵食はなぜ起こったかというと、これは御存じのように日本の伝統的な富国強兵、戦後におけるいわゆる殖産興業方式と言われるものでしょう。いかに産業を富ましいかにして国を伸ばすかというようなことばかりエコノミックアニマルに一生懸命になったということではないかと思うのです。したがって、その端的なあらわれがやはりこの租税特別措置にあらわれておると思うのです。  しかしながら、話は少しそれますが、いわゆる法人擬制説ですね、配当控除を裏づける法人擬制説でも同じですが、こういったような物の考え方というのはやはり資本主義経済の初期それから発展期の考え方でありまして、現在はもうその成熟期といってもいいと思うのです。成熟している段階だと思うのですよ。そういう段階にいつまでも古い考え方に固執すること自体ナンセンスといってもいいくらいじゃないか。したがって、こういう成熟段階では大きい所得、大きい蓄積のものにはやはりより大きな負担を、したがって比例税率よりも累進税率の方が好ましいんじゃないか、こういうように思うのです。  それから、先ほど申し上げたように中小企業の出番、国民のニーズというのが非常にきめの細かいものを要求していますが、中小企業というのはそういうきめの細かさに応ずることができるわけですね。そういう意味においてはやはり中小企業の出番が多い。多品種少量生産に向いているというわけです。そういうように考えますと、たとえば大企業の受取配当、これを益金に算入しないというような制度がございますね。それからまた支払い配当金の軽課制がありますね。こういったようなことはやはり非常におかしいというように思わざるを得ません。したがって、こういうようなことをやめていく。はっきり申し上げれば、いままでの租税特別措置が支えたようなそういった殖産興業方式の考え方自体改める以上は、やはり基本的に洗い直していくというのが筋じゃないかと私は思うのですね。ただ、いまの時点で考えられる租税特別措置は、じゃそういう項目はなくなるかといいますと、私はいま二、三あり得ると思いますのは、御存じのような省エネですね、特にCR化と言われていますが、CRというのはクリーン・アンド・リサイクリングする、清潔で循環していくようなエネルギーとか資材とかそういったようなものに投資を促進するというようなこと。  それから、これは非常に重要だから私ぜひ強調したいことは、いわゆるマスプロダクションという言葉がありますね。マスプロダクションというのは大量に物をつくるということに訳されていますが、そうじゃないんだ。そうじゃなくて、マス、大衆による生産、大衆が働くことによって生ずる生産なんです。それが本来あるべき姿なんですよ。したがって、人手を多くかける投資——いまのイノベーションというか革新設備投資というのは、どうも大企業を中心にして人手を減らすことばかり一生懸命になる弊害があるんですね。それじゃもう遅いんですよ。そういう物の考え方自体が古いのですよ。それは行き詰まる。だから、いかに人手を多くかけるか、そういったような生産なり設備投資に対して奨励すべきだ。御存じのようにいま大企業を中心にしてかなり人手減らしをやっています。すなわち、いままで企業は非常に悪く言われてきましたけれども、いい点というのは大企業を含めて完全雇用機能、こらえ性というものがよかったのですが、ところが、最近はがっくりとこらえ性が悪くて人を減らしていく、そういういい完全雇用機能を失いつつあると思うのですよ。これが大きな問題なんであって、この企業の持つ完全雇用機能を回復するために、これを奨励するために一つの恩典を与えたらどうか、こういうことが一つの見落とされた点じゃないかというふうに思うのですね。  それから後の五・三%はどういうふうになるかということでありますが、これはいま民間の見込みでは大体四%台が多いと思うのですね。しかしながら、やはりOECDあたりが言っているように日本の場合ですら三%台じゃないかというふうに私は考えるわけです。その根拠は一体どこにあるかというと、基本的には五十三年前の世界的な大恐慌、こういうものの可能性があるんじゃないか。そのきっかけは何かというと、五千億ドルを上回った開発途上国の対外債務が、いま日本の円にして大体百兆円以上の対外債務があるわけですが、これが元利ともに支払い停止、モラトリアムがもし起こったらこれは大変なことになる。これは将来の想定ですからともかくやめるとしまして、触れないとして、世界経済はもうすでになし崩しに長期停滞に入っていると私は思います。波を打ちながら長期構造の波が下がりつつあるというふうに私は見ておるわけです。日本の場合、官庁エコノミストを中心にして何か昨年あたりから未曽有の景気だなんというのんきなことを言っておる人がおるのだけれども、とんでもないことだと思います。これは要するに経済なり会社の実態を知らないんじゃないか、余り楽観的じゃないかと思います。日本の場合、総資本経常利益率をとるわけです。総資本というのは、御存じのように総資産に見合いますから、会計的には原価主義ですから、したがって時価で評価されていないわけです。どちらかというと過小になってくるわけです。それから経常利益の方は、これはいま言ったようにたとえば減価償却費は原価主義ですから、したがって水増しできないわけですね。利益の方は多少水増しされているわけですよ。それにもかかわらず総資本経常利益率をとると波を打ちながら低下しているのです。日本の場合は昭和三十五年の上期八%を頂上にして波を打ちながら下降している。現在景気が非常によかったなんということを言っているけれども、五十四年の下期で五・五%ですから、決して私はいいと思いません。それから問題のアメリカの実質成長率をとってみますと、アメリカの場合七二年と七六年が頂上になっております。実質成長率、日本の場合は一九六八年、昭和四十三年が頂点になっているわけです。そういうように波を打ちながら下がりつつあることは、これは私のつくったデータでなくて、たとえば三菱総研の資料などを見ていただけばそれが明らかに載っているわけであります。  そういうようなわけで、私はこれは決して悲観説だとは見ていないわけです。そうすると、三%といたしますと政府の見込みでは大体二%足りないのです。したがって失業を防ぐためにてこ入れが必要じゃないかと私は考えているわけです。そのてこ入れは、名目のGNPが五十五年度で二百四十二兆八千億ありますから、それの二%で四兆八千五百六十億円。それで、乗数効果ですね。乗数というのは御存じのように貯蓄率の逆数です。いま大体二五%くらい。そうすると四分の一ですから、その逆数ですから四です。四で割れば一兆二千億ですね。大体一兆二千億あればてこ入れ可能だと私は見ているわけです。この一兆二千億を一体どこからひねり出してくるかという問題でありますが、結論的には歳出の一割カット。もちろん福利厚生とかそういったようなところは切らない。それから人件費の問題にしましても、行政改革にしても失業を出すような、首を切るような行政改革なんというのは時代的におかしいと私は思うのです。公務員の高いベースを民間ベースにまで持ってくるということは非常にいいことだと思うのです。これはいいことだと思うのだけれども、首を切ったりなんか、そんなことはナンセンスだと思うのです。マイナスじゃないかと思うのです。そうすると若干でも人件費は上がります。その分だけたとえば補助金は二割以上カット、こういうことをやっていただかなければいかぬと思うのです。そういうわけでありまして、したがって捻出するのが数字的に申し上げますと四兆二千五百億円になります。この中で三兆円は赤字国債減額に充てる、残りの一兆二千億をいわゆる所得減税中小企業減税中小企業の倒産はこの三月も一千五百件を間違いなく超えると私は思うのです。そうすると事態は決して楽観を許さないと思うのです。やはりこのくらいの減税をしないとてこ入れにはならぬと私は思います。  どうも失礼しました。
  20. 平林剛

    平林委員 どうもありがとうございました。実は今度は租税の負担率の点から税制調査会の会長さんに所得税増税というのはどうでしょうかということを聞こうと思ったのですが、時間が来てしまいました。いま名東先生のお話によりますと、これからの総合的な景気対策あるいは国民生活水準を高める意味でも、増税よりもむしろ逆に減税が必要だというようなお話をいただきましたから、この辺で私の質問は終わらせていただきたいと思います。御三者の参考人の方、どうもありがとうございました。
  21. 大原一三

    大原(一)委員長代理 伊藤茂君。
  22. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 参考人の皆様にはきょうは御苦労さまでございます。  引き続いて、いま審議中の法案に関連をして御意見を伺いたいと思います。  まず最初に、小倉会長にお伺いしたいのですが、いま平林さんの質問に対して昨年十一月の中期答申で出されました広く消費に課税をするという構想の具体化を進めてまいりたいということを言われました。私は何か非常にけげんな思いで会長のお話を伺ったわけであります。実はけさ方も参議院の本会議で鈴木総理が五十七年度に大型の増税を行う、もちろんいわゆる大型消費税という意味合いであるわけでありますが、全く考えておりませんということを述べられております。この国会の同じ建物の中で、総理大臣に任命された税制調査会長がそれとは全く逆のお話をなさるということで非常にけげんな思いをするわけであります。会長のお考えはお考えでありますが、私はルールとしてあり方をお伺いしたいのですが、言うまでもありませんが、政府税制調査会は総理の任命にかかわる調査会でありますし、またそういう意味で、政府の意も体しながら、また政府の完全な言いなりではないという意味のことを先ほど言われましたが、いま国民が求めているものを考えていく、そういう責任を持っているのではないだろうかというふうに思うわけであります。いずれにしろ総理大臣の任命による行政委員会でありまして、言うならばオールマイティーではないわけであります。  先ほども平林さん言われましたが、鈴木総理は何回か、総理として政治生命をかけてやる、これは政治家の発言としてはきわめて重大な言い方であります。いまのままでいきますと、何か政治生命を縮めるような話になってしまうわけでありまして、私はルールの問題としてお伺いしたいと思うのですが、こういう新しい事態になっているわけでありますから、わが方はわが方で昨年末の答申どおりにゴーイング・マイ・ウエーではなくて、総理が政治生命をかけられる重大な時局でありますから、少なくとも任命をされました総理と一度お話をなさって、今後の税調全体の審議のあり方あるいは内容をお決めになる。これは賛成か反対かというよりも筋というものではないだろうかというふうに思いますが、いかがでございましょう。
  23. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまのお尋ねでございますけれども、先ほど申し上げましたように、今国会におかれまして、国会議員の先生方と政府ともに総理との間のいろいろの論議を通じて、政府が明らかにされるような方向につきましては十分税制調査会においても参考にいたしまして、総理とそう矛盾のないような方向で審議を進めるのは当然でございます。それにあえて異を唱えるという必要もございません。  ただ、先ほどから申し上げているのは、昨年の暮れまでに税制調査会で討議した筋道を申し上げておるわけでありまして、その後、税制調査会は開いておりません。今国会における御論議はできれば早い機会に、場合によっては先生の御示唆のように直接責任者の大臣からお聞きするということもあるかもしれませんが、恐らく新年度に入りまする税制調査会では大臣の御出席もありましょうから、そういう際に、さらに政府の意図するところも十分お聞きした上で審議をするということは当然でございます。
  24. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういたしますと、たとえば税調総会が開かれますときに、大蔵大臣は当然ですが、総理任命ですから、それが慣例のようですが、総理の御出席の場でとか、あるいはこういう重大な時局ですから、総理とお会いになることもお考えになって、政府税制調査会としてルールと筋に乗ったやり方をしていきたいというふうに理解してよろしゅうございますね。
  25. 小倉武一

    小倉参考人 税制調査会としては、私のいまのところの考え方でございますけれども、これまでの経緯もございまするから、それを踏まえた上、なお新しい事態における政府のお考えも十分お聞きいたした上で、ひとつ適正な方向で論議を進めてまいる、こういうことにいたしたいと思っております。
  26. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 小倉さん御答弁がうまいので、どっちにしても、さっきお願いしましたが、賛否の意見を申し上げる前に、筋としてルールとして、こういう重大な意見の違いが表面化しておるわけですから、私心配なんですが、きょうも参議院の本会議でそれを述べられた。税制調査会長、ここにお越しになって、幾ら衆議院と参議院が距離があるからといって、百八十度反対の御意見ということはおかしいと思うので、そこは調整をされるのが筋であろう、またそれについては肯定的か前向きにお答えになったというふうに理解をいたします。その上で、総理大臣が、政治生命をかけたつもりだけれども、ちょっと心配だから増税の準備をしておいてくれと言われるのか、あるいは私が政治生命をかけて国民の前に明らかにしたことだから、私の信念どおりに小倉会長もぜひお願いしますと言われれば、そういうことであろうというふうに思うわけであります。  もう一つ、ほかの参考人にお伺いする前に小倉さんに伺いたいのですが、私は、経験豊かな小倉さんですから恐縮なんですが、政府税制調査会が非常に重要な時点にいま立っているということではないだろうかと思います。当委員会でも、いままで物品税など間接税諸法案、いま法人税所得税など直接税関係諸法案などを議論いたしているわけでありますが、いままでの審議でも非常に痛感をいたしますけれども、たとえば物品税についても品目別に、これが一体ぜいたく品か、趣味・娯楽品か、高価な便利品かとか、およそ理解に苦しむみたいな面が非常に出ている。私どもはここで議論してもわからぬことですから、国民的に常識でわかるということは、なかなかいきにくい面が広がっているだろうと思いますし、そのほかの問題でも、たとえば酒税なんかについても、改めて酒税のあり方を中期的に研究しなくちゃならぬ。政府の方でもそう言われています。  私は何か、現在の税制と社会、国民意識とのずれということを感ずるわけでありまして、しかも会長も言われているように、今回は既成税制では目いっぱい増税をされたとありますから、言うなれば、そういう意味での矛盾といいますか、社会とのずれもいろいろな面で目いっぱいあらわれているということではないだろうか。このまま延長して、ここにプラス大型消費税ということは、私は国民の御理解を得るような、国民のコンセンサスの上に立った税制にならないんじゃないかということを、審議を通じて非常に痛感をするわけであります。  そういう意味で言いますと、小倉さんの前に、東畑さんとか、中山伊知郎さんとか、いろいろなりっぱな方が御努力をされてきました。私は、これからの税調考えますと、何かやはり国民の合意を求めるという意味での見識といいますか、独立性、自立性も含めて持つことが必要な、次の時代に対応できる税制とは何かという、大きな先の展望、転換を考える。それがないと、矛盾だらけの税制が続いていくという心配が、実は審議を通じてしてならないわけであります。そういう意味から言いますと、りっぱな専門家を独自に置いて、あるいはまた各界の意見を聞く、要するに世に問うといいますか、国民に問うような努力の方向が必要であろうと思うわけであります。  私は、自分の言葉で言うと失礼ですから言いませんが、たとえば新聞の見出しで言いますと、昨年の暮れ、総理大臣に会長が答申を渡されるニュース写真がいっぱい載っかりましたが、見出しを見ますと、「出番なかった政府税調 取れるものは総ざらいした党税調の」——これは山中さんのことですね。「党税調の追認だけ」。ある新聞は「権威失墜」と書いてあります。私は、日本の国民の汗の結晶である税金を預かるという意味での税調なり税制論議の将来を実は憂えるわけであります。この際、やはりそういう方向への、汚名を着ないような税調あり方ということが一つ必要ではないだろうか。  もう一つは、オープンシステムという意味ですね。情報公開法などですね。いま内外でずいぶん議論されております。税調委員会から、議員の人からでも、何か密室なんて言葉がマスコミに出るようなことは非常に困るんで、国民に開かれた税調といいますか、そういうことが今後の税調あり方としてぜひ必要ではないか。そういうベースを改めて踏まえたことでないと、先ほど申し上げました大型消費税についての、会長の言われることと、総理の政治生命と、いろんなことが起きてくるのですが、その辺の御感想か御決意を手短に伺いたいと思います。
  27. 小倉武一

    小倉参考人 税制全体について、何と言いますか、悪く言えばその場継ぎはぎで過ごしてきたというような御印象をお持ちの上での御批判だと思いますが、来年度はできるだけ早い機会に、先ほどから間接税お話もございましたけれども、それも無視するわけにはまいりませんが、ほかのことをも入れまして、全体として整合性のとれるような税制あり方をどうすべきかということについてもできるだけ配意をしていきたいと思っております。  なお、税制調査会自体の公開制の問題等につきましても、税制調査会内部にも御議論がございましてどういうふうに対処していったらよろしいか、私自身もあるいは税調の中でもそのことについていろいろ配慮されておる方もございますけれども、できるだけそういう趣旨には沿いたいと思いますが、いわゆる公開というのはなかなかできないと思います。設備の関係あるいは委員の発言が自由にできるかどうかという問題その他ございますので、それにかわるべき、密室で何か議論しているらしいという印象がぬぐえるような一般の広報関係の方に対する接触の仕方等についても工夫を加えながら、そういう非難が起こらないように、公明正大に論議されているという実証を得るような措置をできるだけとりたい、こういうふうに存じております。
  28. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 次に、名東参考人和田参考人にお伺いしたいのですが、これも先ほどから話がございました物価調整措置、あえて減税とは申しませんが、物価調整措置についての問題であります。     〔大原(一)委員長代理退席、山崎(武)委     員長代理着席〕 先ほど和田参考人が言われましたように、財源がないからやれない、あったらやりますというような問題ではなくて、これは税制のベースとして、否プリンシプルとしての公平という角度から取り上げなければならない問題だと思いますし、また憲法の視点から見ても、さらにはOECDのレポート、さらには国民の切なる要望などを含めて早急に当委員会においても真剣な議論をして具体化しなければならない問題だと思います。  私は、そういう意味前提として名東参考人に不公平という問題、名東さんは不公平税制をただす会の代表もなされているというわけでありますが、いままで税調答申とか政府の答弁でも、租税特別措置法との関連あるいはいわゆる政策税制ということについてはほぼ整理の山を越した、終わったという見解が出されているわけでありますが、不公平税制とはそういう短い物差しではなくて現在の税制全体にまたがる構造的なものとして取り上げなければならないと私は思うわけでありますが、御見解を伺いたいと思います。  引き続きまして、和田参考人にお伺いいたしますが、物価調整措置について各国のいろいろな例などを先ほど御披露いただきました。大変参考になりましたし、五十六年度予算に関連をしても、四兆五千億程度自然増収のうち六〇%以上が勤労者の所得税と言われているわけでありますから、やろうと思えばやれる、またやらなければならないということであろうと思います。そういう中で、先生挙げられましたいろいろな国の例がございますが、OECDのレポートでも自動的調整いわゆるインデクセーション、二つ目には法的規定、三つ目には裁量的対策——裁量的対策は制度の問題ではないと思いますが、前の二つ、国によっても違いますが、大きく言って自動的調整あるいは特別な法的規定というふうな例があるわけでございますが、和田参考人、諸外国の例などをいろいろと調査なさいまして、今後物価調整措置としてはどういう方向があるべきであり、望ましいとお考えになりましょうか。名東参考人からお願いいたします。恐縮ですが、時間が限られているものですから手短に……。
  29. 名東孝二

    名東参考人 おっしゃるとおりに、不公平な税制というのはきわめて構造的、体質的なものだと思います。現在、いろいろな調査の結果非常に不公平だという国民の声が少なくとも過半数以上を占めているということは間違いないと思います。その重税感の出どころは一体何かといいますと、第一番は、やはり大企業、大資産家を優遇しているその課税上の不公平でございます。詳細に申し上げる時間がございませんが、要するにキャピタルゲインの非課税だとか分離課税の問題、法人擬制説、配当控除の問題、それから租税特別措置の問題、収益基準の問題とか比例税率の問題とか、要するにそういった構造的なものであると思います。  第二は、特に必要経費がなぜサラリーマン、勤労者にだけ認められないかということです。これははっきり申し上げますと当たりさわりがあるかもわかりませんが、政治資金の一〇〇%無税、大企業の九六%、社会診療報酬七二から五二、個人事業者四〇から九〇、専業農家六〇から七〇、芸能、小説家五〇から六〇、自由職業人四〇%。これに対してサラリーマンの給与所得控除と言われているものの中における必要経費というのはあるのかないのかわからない。少なくとも公式的にはないとしか言わざるを得ない。その給与所得控除率が五十六年度の見込みで三一・一%しかない。最高の五十年度に三四・六%だったのがだんだんと減ってきて、五十六年度の見込みが三一・一%しかない。それで、あえて申し上げると、この中の必要経費らしきものが平均一〇%前後だということ、これは予算委員会で高橋主税局長ですかがおっしゃったようであります、それも平均一〇%前後だという言葉で——よくわからないのですがね。まあ、少なくとも認められていないと私は解釈しておるわけです。  なぜ、勤労者だけ認めないのか。御存じのように高度成長、これはマイナス面もあったかもわかりませんが、今日曲がりなりにも経済がここまで来たということは、単なる資本だとか技術導入じゃないと思うのです。たとえば日本の設備投資を外国、特に南方に持っていっても稼働できない、動かせないというのです。そういったような民度といいますか勤勉度の薄い国がたくさんあるわけです。それを日本の場合はすぐ稼働し、優秀な成績を上げるということは、非常に高い人材、ヒューマンキャピタルが存在しておるからですよ。この辺のところが全然誤解されておる。それからまた、今後に期待される知識情報産業にしたところで、ソフトウエアを支えるものはヒューマンキャピタルとしか言いようがないのです。その優秀な人材に対して何ら報いるところがない、必要経費すら認めない。御存じのように、フランスにおいては概算の控除かまたは実額控除か、いずれにしても必要経費を認めて、しかる後に給与所得控除を認めておるわけです。担税率が低いとか捕捉率が高いとかいうことはフランスでも変わりないわけです、フランスの場合はもちろん源泉徴収じゃなく申告制になっていますから。そういったような先進的な実例が欧米にはたくさんあるわけです。それを日本の場合には認めない、こういったようなことが大きな問題だと思います。  第三の不公平は、天引きされていましていわゆる徴税上の捕捉率が非常に高い。クロヨンだとかトーゴーサンピンと言われているような徴税上の不公平があると思うのです。優遇されている者ほど脱税している。これは国税庁の発表にそうなっている。たとえば個人病院などを見たら、一番いい例だと思う。  それから第四番目は、三割自治と言われている地方自治の破壊ですね。七対三で取っておいて、国税が七、それで実際に執行するときにはそれが逆転して三対七。そのかわりにいろいろとマネジメントして、要するに金縛りする、こういう形になっている。こういう地方自治の破壊。  それから第五番目、これが一番大事かもわかりませんが、税金使途の不公平、それからまた乱費、これはもう会計検査院初めいろいろなところで発表されているわけです。たとえば、サラリーマンに固有の対策費なんて、どこを見てもないわけですね。中小企業といえども多少はあるわけです。そういうことを考えますと、全然と言ってもいいと思うんですよ。いわゆる利子、配当の問題でグリーンカード制がやられると言われておるわけですが、私の調べた範囲では、少なくともこれは有害無益である。雑魚ばかりつかまえてそれで大魚を逸する有害無益のやり方だ、私は、こういうふうに言わざるを得ない。したがって、そういう古臭い、これは単なる不公平の問題ではないと思うのです。要するに考え方が古いんですよ、考え方が。私は何回も申し上げる、大きいことはいいことだ、そういう古い信仰にとらわれているんですよ。そういう考え方をやめてもらわぬ限りは、不公平税制は直らないでしょうね。
  30. 和田八束

    和田参考人 所得税物価調整に対して今後どうしたらいいのかということでございまして、その点について端的に申し上げたいと思うのですが、やはり持続的にかなりの程度物価上昇があるという現状から考えますと、本当はインフレーションでない、物価上昇が起こらないという経済が一番望ましいわけですけれども、どうもなかなかそれはむずかしいようでありますので、現実としてかなり持続的に物価上昇があるという状態のもとでは、やはり所得税に対する調整というのは、法律的に義務づける必要があるのではないかというふうに思います。さきにもちょっと申し上げました、昭和三十八年の税制調査会答申で、負担調整必要性ありとしていた当時の物価上昇率は五・三%程度であったのですが、五・三%程度で、これは消費者物価上昇率として大変問題であるということで議論がされたように思いますが、今日では、五・三%という程度物価上昇率はさほどではないと言っては語弊がありますけれども、これをかなり上回る上昇が続いているわけでありますので、これを本格的にといいますか、法的に義務づける措置が必要ではないか。この場合に、二、三問題点として申し上げておきますと、一つはどういう指標でやるかということであります。広い意味ではインデクセーションなんですけれども、社会全体についてインデクセーションをするということはかなりむずかしいところがございますので、それは別にいたしますと、いわゆる消費者物価指数でいいのかどうかということになりますと、大変問題があるわけです。ですから、この点では、生計費指標とか、あるいは標準的賃金指標等が開発される必要があるのではないか。ないしは、税法全体について名目所得を読みかえるというふうなことができればいいわけですけれども、なかなかこれも全体というのは問題があるかもしれませんので、それらは今後検討すべき点でありますけれども、いずれにしましても、消費者物価指数だけでは不十分でありまして、何らかのもう少し具体的なインデックスを開発する必要があるだろう、これが第一点です。  それからその次には、やはり所得控除といいますか人的控除ですが、人的控除を修正する必要が第一義的にあるということであります。それで、その課税最低限という場合に、人的控除以外に給与所得控除が入っているわけです、給与所得の場合には。これは、現時点では、課税最低限引き上げということで給与所得控除も引き上げてやっていいと思うのですけれども、ただ、課税最低限という場合に、給与所得控除を入れるのかどうかということについては大いに疑問があるところでありまして、やはり原則的には、収入から経費の概算控除をいたしまして、そのあとが所得ということになるわけでありまして、その所得から人的控除が差し引かれるべきでありまして、そうした手続を経るとすれば、やはり給与所得でありましても、これは経費の概算でいいわけですけれども、経費の概算控除を行う。経費の概算というのは、経費はインフレーションの場合には上がるわけですから、概算分は当然価格は上昇するわけですから、その上昇した価格でもって控除が行われるわけであります。それで、人的控除の方は法律で決まっているわけでありますから、この分を修正する、こういうことになろうかと思います。この点、給与所得にかかわる所得の計算の仕方に、わが国の場合に大いに疑問があるということを、ついでながら指摘しておきたいと思います。  その次には、税率の問題でありますけれども、税率もやはり修正されなければならない。税率とびいましても税率所得区分でありますけれども、限界所得区分といいますか、それを修正する必要があるわけであります。これは名目所得で表示されておりますので、これを修正する必要があるわけですが、毎年やるかどうかということになりますと、人的控除の修正が行われた場合には、税率の修正というのは毎年でなくても、三年程度のインターバルがあってもいいのではないかというふうには思いますが、しかし修正されなければならない。この場合、わが国の税率所得区分を見てみますと、所得の低い方で刻み方が細かくなっているわけでありまして、所得が高くなるほど刻み方がラフになっている。かなりの幅で比例税率になっているわけであります。これはどういう税率がいいのかということについては、理論的には確たるものがないわけでありますけれども、たとえばイギリスなんかの場合で見てみますと、低所得の部分はかなりの幅で比例税率になっておりますので、低所得階層での物価上昇はそれほど税率に響かないというふうになっているわけであります。わが国の場合には逆になっておりまして、低所得層のところほど、所得の名目的上昇による税率上昇の影響が大きいということになっておりますので、この辺は基本的に税率表の修正も含めてインデクセーションを行う必要があるのではないか、こういうふうに考えております。
  31. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 時間が幾らもございませんので、最後小倉参考人にいまの問題に関連をしてお伺いしたいと思うのです。  名東さん、和田さん双方から、この物価調整措置、それから不公平の是正についてお話がございまして、物価調整措置についてもOECDのレポートあるいは世界各国での具体化や、また真剣な検討、言うならば世界の常識ということだと思いますが、そういう印象を受けておりましたが、それに比べて日本は、世界の常識に対して非常識ということじゃないかと思いますが、私は、これは財源があるかないかというよりも、制度がフェアであるか、アンフェアであるかというふうな意味ではないだろうかと思います。税調答申の中でも、所得減税についてはしばらくがまんしていただきたい、御勘弁願いたいと書いてありましたが、フェアなルールのベースの上に立って、現実問題はどうできるかということはあると思いますが、財源がないからアンフェアなままでおくというわけにもいかぬだろう。また、ある意味では、これは税調でも検討の御努力をお願いしたいと私は思うのですが、政府の活動に対する通信簿みたいなものだと思うんですね。ことしインフレにならないで、調節もしなくて済みましたと言えば、ことしは合格。それから、ことしはずいぶんインフレになりまして、調節措置を多額に講じなければなりませんでしたということになれば落第というふうな意味での、国民によくわかる政府経済施策の通信簿みたいな意味を持つのじゃないかと思うわけでありますが、いずれにしろ私は、政府税調においてこの物価調整の問題、小倉会長か、いまの税調委員の皆さんがいつ採用するかどうか、どういう結論を出されるかは別でありますが、少なくともこれを今後の税調のテーマとして検討していく、あるいは真剣に研究するということは世界の状況からしても必要ではないだろうか。いろいろな資料を読みますと、まだ連邦段階では実施してないアメリカなんかでも、連邦議会でもインフレに伴うこれらの諸問題について作業部会をつくって特別作業部会報告書なども出ているというようなことも読むわけでありまして、税調において今後このテーマについて検討、研究される意思があるかどうかが一つなんです。  時間がございませんからあときわめて具体的な問題で二つだけつけ加えてお願いしたいのですが、一つは、総理の政治生命をかけた決意を伺いましても、当然その中に含まれていると思いますが、五十九年度までに赤字国債をゼロにするということが至上命令として出されているというわけでありますから、五十七年度も二兆円国債減額、特に赤字国債に重点を置いて、これは必要な措置であろうと思いますが、どうお考えになりますか。  それから、財源その他のこれからのことを考えますと非常にむずかしい、構造的にどう変えていくのかを私どもももっともっと勉強し、努力しなければならないということだと思いますが、その中の大きな問題として、いわゆる現在の道路財源一般財源化といいますか、揮発油税を初めとする特定財源一般財源化ということももう避けて通れない問題になっているのではないだろうかという気がいたします。  その国債二兆円と道路財源のことは具体的な問題ですが、その前に、物価調整の問題についての税調としてのとらえ方、今後テーマとして研究、検討なさるように要望したいと思いますが、いかがでございましょうか。
  32. 小倉武一

    小倉参考人 物価調整減税と言われるものにつきましては、いま先生の御質問の中にもございましたように、そういうことはなくても済むように経済を持っていってもらうということが第一の希望でございます。といってその希望どおり経済の実態が動くわけでもございませんし、いつまでもある程度物価が上がるということでございますれば、これは税制としても当然考えなければならぬことになるかと思います。いまがその時期かどうか、これはちょっと政治的判断等がございましょうけれども、今後税制調査会税制を広く検討する中に所得税の問題もございますので、所得税あり方の中の一環としてそういう問題は当然取り扱われるものであろう、こういうふうに存じます。  なお、国債減額あるいは道路財源一般財源化というお話がございましたけれども、国債減額も金額等、具体的に申し上げるわけにまいりませんけれども、来年度と準じて減額をしていただくようなことを恐らく税調としても希望するだろうと思います。  それから一般財源化につきましては、これは両論ございまして、道路の整備の関係等もにらんで結論が必要なときには結論を出さなければならぬと思いますが、税調の中でもこれはなかなか両論相対立しておるというのが今日までの状況でございます。
  33. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。
  34. 山崎武三郎

    ○山崎(武)委員長代理 大原一三君。
  35. 大原一三

    大原(一)委員 きょうは参考人の方々、本当に御苦労さんでございます。自民党は質問時間を遠慮いたしまして非常に短時間しかありませんので、ひとつ簡単にお答え願いたいと思うのです。  私、きょうお伺いしたいのは、日ごろ税制について考えることでありますが、税負担経済成長という問題をお伺いしていきたいと思うのです。次に第二段階として、その税の中身、大ざっぱに分けて間接税と直接税、その構成がどのように経済成長に違った影響を与えるであろうかということをお聞きしたいのであります。  まず、小倉税制調査会長もおっしゃいましたけれども、租税負担をこれからどのように考えていったらいいのかということであります。諸外国と日本の税負担を比較いたしますと、これは私はやはり社会保険負担を加えて考えた方がいいと思うのです。社会保険負担というのは、医療費にしても払っただけが自分に返ってくるわけでもないし、年金にいたしましてもこれは払っただけ返ってくるわけではない。だから型を変えた目的税だと私は思うのです。そういう意味で全体を総括してみますと、スウェーデンは七割を超えておるということでありますね。だから国民の手元に残る、フローの中で残る経済余剰というのはわずかに三割しかないということであります。それからヨーロッパ諸国は両方合わせて大体五割を超えておる水準、アメリカが三八から四〇%、日本が三〇%をちょっと超えているという水準だと思うのです。こういう仕組みになっておるのでありますが、それと経済成長とは逆相関になっておりますね。つまりスウェーデンはゼロ成長ないしマイナス成長、五〇%水準のところがやはりゼロを中心にして一、二%からマイナス一、二%、その次の負担率であるアメリカが二、三%の成長、一番租税負担、つまり社会保険負担を加えた国民負担の低い日本が経済成長率が一番高い。考えてみますと、国民の手元に残される部分が多ければ多いほど経済成長は高くなっておるという実態でありますが、小倉会長にまず、これから赤字公債を五十九年度までになくしていく、租税負担が二%程度上がるであろう、これはやむを得ない、いまの財政再建から当然この程度負担は、諸外国の負担と比べてみまして当然の緊急避難的税制改正であろうというふうに私は考えるわけでありますが、将来、これら諸国の負担を見た場合に、会長としてはどの程度が一番わが国の租税負担として適切であろうかということでありますが、大変むずかしい問題ですけれども、お答え願いたいと思います。
  36. 小倉武一

    小倉参考人 将来の問題に関連しまして、税負担がどの程度のパーセンテージがよろしいかということは、余り先のことは税調としても議論したことがございません。そこで、税制調査会としてこういう考え方であるというふうにお答えするわけにまいりませんけれども、御引例にございましたように、従前から社会保障が非常に充実しておると言われておった国で、ある意味においては日本のモデルではないかと言われておった国が大変税負担が重く、そしてまた、それに応じて税を逃れるというようなことが非常に多くなっておるというようなこともございまして、北欧的な行き方は必ずしも好ましくないのじゃないかというふうに個人として考えております。日本といたしましては、できるだけ余り税負担が重くならぬ程度に、しかも、むずかしいことですけれども、教育なりあるいは社会福祉なりを充実しながら国力というか、民力といいますか、の伸長を妨げない限度はどの程度であろうかということをひとつ見きわめながら税負担の増を求めていくということになろうかと思います。
  37. 大原一三

    大原(一)委員 先ほど名東先生は、だれの質問に対してですか、パーキンソンお話をされまして、二〇%が限度であるということをおっしゃいましたですね。たしか私も大学時代に、コーリン・クラークという人の経済成長の条件ということを書いた本がありましたが、その中には、四分の一が限度である、つまり二五%程度限度であるということでありますけれども、どうも諸外国を見ますと、社会保険負担を加えまして、こういう原則をはるかに超えた負担をしておるということでありますね。先生はその点、先ほど私が申し上げた点といまの点を勘案されまして、どのようにお考えになりますか。
  38. 名東孝二

    名東参考人 いまおっしゃいました税負担経済成長率の問題についてはいろいろな研究データがありまして、学者によってそれぞれ違うかもわかりませんが、私はやはり逆相関になる、お説のとおりだと思う。はっきり申し上げれば、税金を高くして盛えた国はない、私ははっきりそういうふうに思っております。  それから間接税と直接税の関係でございますが、大体ラテン系、フランス、イタリアとかが間接税主体だと思うのですね。それが大体ECに引き継がれたわけですが、わが国が属しておる英米系は直接税中心できたと思うのです。それは両方ともいろいろなプラス・マイナスはありますよ。しかし私の見解では、間接税というのは税痛がない、痛みがない。人間が転んで痛いと言うのはこれは重大な警戒信号ですね。警戒信号がなかったら致命傷になるわけですよ。ところが、間接税というものは一見痛みがないのですね。それで、これでもどんどん上がっていくわけですね。  御存じのように、いまECでは大体一五%から二〇%ぐらいになっているわけですね。ECだけじゃございません。御存じのようにアメリカですら、一九八〇年租税再構成法案というのをいまウルマン委員長の下院歳入委員会の公聴会でやったわけです。こういったようなことを私は非常に憂えているわけですね。レーガン政権の施策が必ずしも成功するとは見ていませんが、しかしある程度成功してもらいたいという気持ちがあるわけですね。そういう間接税主体、いわばこれは体制最後税金だということを言われているくらいなんですね。困ったことは、非常に麻薬的な、民間の活力を失わしめるという力がある。それから歴史を開いてみると、軍事費を調達してくるというような機能があるのですね。  こういうようなわけで、どうも為政者というものは税金の抵抗を排するために、できるだけ取りやすいように取りやすいようにということで、抵抗のないところに入っていくわけですね。そうすると、やはり弱いところだとか税痛がないところだとか、そういう方向に為政者が誘惑されるんだけれども、これが先進国の共通の弊害じゃないかと私は思っているのです。先進国が大きな病弊があるとすればその病弊の一つである、こういうふうに申し上げたいと思います。
  39. 大原一三

    大原(一)委員 先ほど、それと直接関係ないのでありますが、名東先生は、行政改革はやるべきである、人は切るべきでないとおっしゃったですね。そうしたら、どういう改革が行政改革であるのですか、お教え願いたいと思います。
  40. 名東孝二

    名東参考人 まずカットの中身でございますね。それはやはりインフレ促進的になっておる公共事業費、特に大型プロジェクト、こういったようなものですね。中小企業の場合にはやはり現場担当者が多いですから、これはできるだけ生かす。それから、この辺は見解の相違だと思いますが、やはり挑発的な防衛費の問題ですね。これは恐らく見解の相違に帰着するかもしれません。それから、やはり補助金の問題でありますね。問題の公務員人件費の問題、これは私は民間並みに抑えるのがいいと思っているのですね。いまみたいに何らかの形でいろいろと優遇されている形になっていると思うのです。これはやはり抑えるということ。そうやって、人減らしよりも仕事自体をカットしていく。農林省あたりには、吟味していけば半ば遊んでいるような仕事の内容、それからまたポジション、そういうものが相当あるのじゃないかと思うのですよ。  そういったようなことをやって配置転換をする。それで、いま私聞くところでは、省内では配置転換はあるけれども、省間では配置転換ができないそうですね。なぜできないのかということ。日本的な経営、経営という意味は広い意味ですが、日本的経営のいい意味は、有無相通じていくところじゃないかと思うのですよ。たとえば企業だったら壁を破って配置転換をやっていますよ。なぜ省庁はおのれを、おのれの壁だけ守って配置転換をやらないのですか。これははっきり申し上げて日本的経営に反すと思う。  そういうようなわけで、私の見方はかなりシビアな見通しの上に立っておりますので、したがってこれ以上失業をふやすということは非常に危険だと見ているわけです。公務員だけじゃない、大企業ですらいまのような省力化設備投資というようなことは私は危険だと思うのです。そうじゃなくて、人を雇っていくような投資をすべきだというのが私の考え方ですから、したがって民間にもどんどん天下っていただく、何と言っても公務員の方々は優秀な方が多いですから、そういったような人材を単に首切ったのではもったいないですから、民間でも大いに活用していただく、有無相通ずる、こういうようなことが私は最も好ましい形である、こういうように思うわけです。
  41. 大原一三

    大原(一)委員 和田先生にお伺いしたいのでありますが、先ほど間接税と直接税の割合というお話経済成長の関連ということを申し上げましたけれども、わが国の場合は、いまも名東先生おっしゃいましたように、アングロサクソン系といいますか直接税の割合が非常に高い。アメリカが一番高くて、その次日本の割合が高いですね。それに比べて、ヨーロッパといいますか大陸系の方は、間接税割合が逆に六、四、六割が間接税で四割が直接税というような構成になっておるのですが、これと経済成長との関連をどうお考えになりますか。  つまり、直接税は貯蓄に影響すると思いますね。特に法人税、貯蓄を削って投資を少なくする税制というのは、やはり基本的に経済成長のてこになるのは投資でありますから、投資を削る税制というのは成長を低くするのじゃないかと私は思うのです。消費が大事か投資が大事かということは、そのときの経済情勢によっていろいろまた税制議論も変わってくるでしょうが、ロングランには少なくとも私はそう思うのですね。そういう意味間接税の方がウエートが高い方が経済成長に強いインパクトを与えないのではないか、つまり成長率を高くするのではないかというふうに私は単純に考えるのですが、先生はいかがお考えでありますか。
  42. 和田八束

    和田参考人 先ほどお話がございましたように、租税負担率が高くなってまいりますと一般に成長率が低くなるということはそのとおりでありまして、ヨーロッパ諸国においてはそういう状態が見られるわけでありますし、逆にわが国の昭和三十年代、四十年代の場合には租税負担率が大体二〇%程度で先進国の中では非常に低い方であります。したがって、高度成長が行われてきた、こういうことになります。  しかし、一方において、成長率は高いけれども福祉は低い、こういう状態も招くわけでありまして、一方においては福祉を高めるためにはある程度税負担率を高くしなければならないという要請が出てくるわけです。ですから、一国の社会経済政策といたしますと成長率と福祉とのバランスといいますか、こういう点が考えられなければならないという点だろうと思います。そういうことでいまお話しの直接税と間接税ということでいいますと、直接税と間接税との割合というのはいろいろ沿革的に形成されてきたものでありまして、一概にその割合によって成長率がどうなるかということは断定できないのではないか、むしろ直接税、間接税を含めた租税負担率ということで考えられるのではないかというふうに思います。  お話しのように貯蓄率という点はありますけれども、間接税消費支出を高めるわけでありますので、家計の貯蓄率は低くなるということになってまいります。一方直接税を高くするという場合におきましても、これは法人税の場合に転嫁が生じるわけでありますので、ある意味では間接税的な作用もするということになりますので、これは何とも言えないわけであります。  それと同時にまた、成長率を中心にして考える場合に、わが国の場合に短期的にいって、少なくとも短期的には成長率を考える必要はありますけれども、長期的に考えますと、現在の平均的な成長率以上にことさらに成長率を高めるということが中心的な社会の目標になるかどうかということになりますと疑問でありまして、私は福祉を高めるということの方がそれよりも優先順位として考えられるべきじゃないかと考えるわけであります。そうすると、租税負担率は高度成長期よりもある程度高くなっていいということになるのでありますが、しかし、ヨーロッパ各国の例を見ても、高い租税負担率になれば福祉が充実するというふうにも言えないわけでありまして、かえって社会の停滞を招く、経済の停滞を招く、そして福祉が後退する、行き詰まるということにもなりますので、その辺のバランスということではなはだ根拠のないようなお話になって恐縮なんですけれども、そういうバランスを今後考えなければいけないのじやないか。  そういう点で言いますと、現在わが国では社会保険料も含めますと大体三〇%ぐらいにいっておりますので、現在程度が妥当な負担率である。ですから、現在程度よりも低いと福祉にかなり影響が出てくる。現在程度より高くなると成長率もマイナスであるし、かといって現在程度よりも上げても福祉が向上するとも言えないわけでありますので、現在程度の三〇%程度負担率のところで最も好ましいバランス、好ましい内容というものを考えていくのがベストではないか、こういうことでございます。
  43. 大原一三

    大原(一)委員 これは大変むずかしい問題提起を私もしているわけでありますけれども、問題はいまからのわが国の社会保険制度ですね、国民年金、社会保障制度。医療保険はともかく別にいたしまして、老人社会になった場合、これだって大変な増加になると思いますよ。それから端的に申して、国民年金と厚生年金と合わせていま支払っているのは五兆円くらいですか、六兆円近いと思います。その三分の一は国が負担しているわけであります。昭和八十五年、いまから三十年後にはその制度が完熟化していき、老齢人口はどんどんふえていくという状況の中で両年金合わせて二百兆円近く支払わなければならぬという状態の中で、保険料が厚生年金の場合いま一〇%くらいでしょう、それが三〇%くらいに上がってしまうんですね。国民年金で二千七、八百円だと思うのでありますが、それが三万円くらいに上がる。そういう状況で三分の一は国が負担しなければならぬということで、三十年後の税負担というのは、先生方がいまおっしゃったように非常にむずかしい問題が出てくると思うのですね。  そういう意味でいろいろの議論がなされておりますけれども、たとえば福祉税というのをつくって、大型消費税を福祉税という目的税にしてぶち込んでいったら三十年後にはそれで賄えるだろうというような議論も一時社会保障制度審議会で大河内さんが出されたこともございます。そういうことを考えますと、これからの日本の税制というのは相当の負担をしていかなければならない、それがためには行政改革を総理が言われるように思い切ってやらなければならないと思うのですね。  たとえば私も大蔵省におりまして予算をやったのでありますが、昭和四十三年に政府関係機関というのは三十しかなかったのです。それが五十一年には百三十一にふえてしまって、現在二つ削って百二十九なんですね。だから、高度成長時代にわれわれがタコの足みたいに編み出してきたたくさんの機関を削っていかなければならないという作業が残されると思うのであります。民間でできることはできるだけ民間に任せる。測量なんか役人がやらなくたって民間にたくさんいるんです。それから工事の監督だって民間にたくさんいるんですから、役人がやらなくていいという方に、民間経済にできるものはほとんどこれを譲っていくという大作業が私は行政改革だと思うのですね。だから、先生がおっしゃったように首を切ることになるんですが、その切った人は民間の方へ持っていかなければいけないんですよ。  そういう意味で、私は、このまま置いておいたら三十年後は税負担がスウェーデン方式になるのは当然だと思うのですよ。先ほど国民年金と厚生年金だけで申し上げましたけれども、ほかの健康保険にしてもこれは大変な問題であります。そういう意味で、小倉会長も先ほど触れられましたが、とにかく行政改革前提にして、それから税の問題を考えていくとおっしゃいました。税制調査会はその両面を見きわめながら、御苦労さんですけれども、ひとつ果断な提案を小倉会長にお願いいたしまして、私の時間が参りましたので質問を終わります。どうもありがとうございました。
  44. 山崎武三郎

    ○山崎(武)委員長代理 鳥居一雄君。
  45. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 まず小倉参考人に伺いたいと思うのですが、先ほども指摘がございました、きょうの午前中参議院の本会議におきまして鈴木総理はさきの中期答申に相矛盾する明確な答弁をされているわけであります。     〔山崎(武)委員長代理退席、大原(一)委員長代理着席〕 大型消費税導入を五十七年度はやらない、こう明言されております。また一方、大蔵大臣もこの委員会におきまして大型消費税導入をしたくない、やりたくないと明言されております。そうなってまいりますと、税調でこれまで大型消費税導入を土台にして答申をしてこられましたから、この作業をおやりになってきたことが全くちぐはぐな結果を露呈しているだろうと思います。この後、どんな手続になりますでしょうか。五十七年度税制改革についての作業がこれから始まるわけでありますけれども、これはそっと取り下げられる形でしょうか、あるいはどんな手続が踏まれることになりますか、この矛盾、ちぐはぐは。
  46. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまのお尋ねでございますが、先ほどから他の先生方からも類似のお尋ねがございましてお答えしたので繰り返すことになりますけれども、政府の意図するところは新年度になりまして総会などでお聞きした上で今後の税調の審議をひとつ進めてまいりたい、こういうことに尽きるかと思います。無論大型消費税は私どもの税調としては検討課題ということになっておりまして、その検討課題というのは必ずしも導入するということを決めた意味での検討課題ではありませんので、検討しないで済むという問題ではなかろう、こういうことだったということでひとつ御了解を願いたいと思います。
  47. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 和田参考人名東参考人に伺いたいのですが、政府税調の昨年十一月の中期答申で、「今後、こうした課税ベースの広い間接税に着目する必要があろう。」こういうふうに述べまして、大型消費税導入を意図する部分が実はありました。私たちに言わせれば、肥大化した歳出構造の見直し、これがもう大前提になければならないことでありますし、それをろくにやらずに国民に重い負担を押しつけていく、このこと自体とんでもないことだと実は考えるわけです。現に、これまでの経過を見ましても、行政改革というのはもう本当にかけ声だけで見るべきものは全くない、補助金の整理につきましてもかえってふえてしまっている、また、会計検査院が指摘いたしました国の予算のむだ遣い、これも前年に比べまして金額にして二倍を超える、こういう状況でありますから、その後の総理あるいは大蔵大臣の発言はそうした背景から生まれているものだと思うのです。  この際、和田参考人名東参考人に、民間税制調査会という立場で、また学識経験を積まれたお立場で、政府税調に対して批判の意味を含めてさまざま御意見がおありだろうと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  48. 名東孝二

    名東参考人 おっしゃいましたように、政府税調に対しましていわば目付役といいますか、皆さんかなりりっぱな方々が委員をやっておいでになるのですから、大蔵省のデスクプランというものはそれは必要かもわかりませんが、しかし、大局から見た場合はやはり違った角度、それはお役人とは違ったものがあってしかるべきではないかと思うのですよ。少なくとも私はそういうものがあると思うのですね。そうすれば、やはり相当な修正とか——一例を挙げますと、失礼だけれども、鈴木さんのような御決断がなぜ税調の方に出なかったかというのを私はちょっと不思議に思うのですよ。そういうようなわけで、非常に権威のある方々のお集まりですから、そういった後々に至ってみごとであるというような見識をお示しになられたいと思います。  それから、情報公開の重要性は幾ら強調しても足りないわけでありまして、だから情報公開、もうどんどん資料をわれわれに流していただきたいと思うのです。こういういわば世界の大乱の時代だと私は思う。こういうときは、ある一定のイデオロギーだとか一定の見識だけで世界を泳ぎ切ることはできやしないのです、神様じゃないのだから。だから、われわれのつまらぬ意見でも、庶民の意見を幅広く聞く。そういう意味ではきょうの委員会を非常にありがたく思っているわけです。そういうつまらぬ意見でも幅広く聞いていただくというような考え方こそ私は非常に必要だと思っているわけです。したがって、はっきり言えば、政府税調さんは、われわれみたいの異説でも、つまらぬ意見でもどんどん吸収していただけるような、そういった開かれたる税調になっていただきたい。これは私だけの意見じゃないと思いますね。(「税調が公聴会をやればいい」と呼ぶ者あり)ぜひ公聴会をやっていただきたい。どうも失礼しました。
  49. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 和田参考人、同じ質問でいかがでしょうか。
  50. 和田八束

    和田参考人 御承知のように昭和五十二年の税制調査会答申として一般消費税が出されておるわけでありますが、これはヨーロッパ共同体、ECの共通税制である付加価値税に範をとったものでありまして、それなりにいわば首尾一貫したものであったのではないかというふうに見ております。ECの付加価値税の方がもう少しすっきりした税であったわけですけれども、それを若干修正する日本的というふうなことにしたことによって仕組み自体について誤解を受けたという面があったわけでありまして、むしろやっぱりEC型の方がもっと首尾一貫していたのではないかというふうに考えております。ただ、わが国においては社会的、経済的条件としてこういう一般的な消費税導入する基礎というのはやはり現在においてもないのではないか。現状から言いますと一般消費税導入というのはかなり問題が大きいのではないかというふうに考えているわけでありまして、したがって、課税ベースの広い間接税と言われるものがどういうものであるかはともかくといたしましても、前回の一般消費税よりももう少し性格の不明確なものにならざるを得ないと思います。そういたしますとなおさら一般消費税以上に導入がむずかしいのではないか、こういうふうに考えております。しかしながら、現在の社会的あるいは経済的条件からいたしますと、税制全体についてやはりかなり根本的な再検討が必要ではなかろうかというふうに思います。先ほど来からもインフレーションとの関係というのがございましたけれども、その他経済成長率なりあるいはその後お話がございました福祉との関係、あるいは社会保障との問題、老齢化社会、いずれをとってみましても税制上でもやはり大きな根本的な問題が出ているわけでありまして、これはかなり基本的なところで議論がされなければならないのではないかというふうに思います。これは、ヨーロッパ共同体を見ましても、あるいはイギリス等においても、税制についての委員会ができておる、あるいはアメリカ、イギリス等についても法人課税、それから個人課税を通じてかなりいろいろな基本的な問題としての検討が行われている、それから国と地方との税源配分というふうなことについても根本的な問題があるということから考えますと、そういう根本的な問題について体系的に議論するということがどうしても必要であるわけでありまして、そういう機関が設けられて広く客観的にそういう議論が行われるということが必要ではなかろうかと思います。これを現在政府税制調査会がやってくれるならばそれはそれで結構ですけれども、政府税制調査会の枠を超えた問題なりあるいは性格であるとするならば、新たに民間の研究者等も含めて基本的、根本的、体系的な税制議論が短期的な政策に左右されることなく行われるということが望ましいと思います。この場合に、やはり諸般の情報が公開される、データが公開されるということが最も必要なことでありますけれども、そういうことを含めてより基本的、根本的な議論が客観的に行われるような機会といいますか、そういう制度といいますかがつくられることが必要であろう、こういうふうに考えます。
  51. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ありがとうございました。  政府税調あり方については情報公開、会議の公開制、それからまた、政府とは全く違うような意見がまとまってもいいんじゃないか、まことにごもっともな御意見だろうと思いますし、また機会を改めまして論議できるようにしたいと思います。  それで、課税ベースのしっかりしたといいますと、所得税法人税、これが位置づけられているわけでありますが、所得税の最大の欠陥であるインフレに非常に弱い性質が指摘されております。実際に五十二年度の人的控除の手直し以来四年そのまま据え置かれてきておるわけですけれども、この間の物価上昇というのは大変なものがございました。このインフレに弱い点をぜひとも今後改革をしなければならないだろうと思うのです。  それで一つは、所得税の性質からまいりますが、最低生活費に課税をしてはならない、これを法律で明確にできないものだろうかというふうに思うわけです。憲法二十五条の精神からまいりましても、現在人的控除と言われている三控除あります、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、これはある数字でありますけれども、位置づけを生活費控除という、人的控除と言われているものをいわゆる生活費控除というふうに定義をいたしまして、それで生活費控除というのは生活保護費を下回らない、こういうような位置づけを明確にする必要があるんじゃないかと思うのです。このところ数年の経過の中でこれが逆転してしまったというデータもございます。一つはあるデータでありますが、四十八年度に一級地で生活保護費が六十万七千円、生活費控除、人的控除と言われるものが七十二万五千円、つまりこの時点で生活費控除を一〇〇といたしますと生活保護費が八四でございました。これが四十八年でありますが、五十三年に逆転をいたしまして、現在生活費控除を一〇〇といたしますと生活保護費一二八という指数になるわけでございます。つまり生活保護世帯におきましては、所得税が免除されるというような具体的な仕組み、これをつくり上げるべきだと実は考えるのですけれども、和田参考人、この点についていかがでしょうか。
  52. 和田八束

    和田参考人 お話を伺ったわけですが、もう一つ具体的な仕組みについての構想といいますか、御提案といいますか、それがのみ込めませんので大変申しわけないのですけれども、またよくお伺いしてからと思うのですが、ただ私の考え方からいいますと、やはり生活費といいますか、基本的に必要な生活費について、サラリーマンの場合ですけれども、これはかなりの部分所得を得るに要する必要経費的部分があると思われるわけです。そういたしますと、所得税の原則からいたしますと、まずもって収入から所得を得るのに必要である経費部分というものを控除するということが制度的には行われるべきであるというふうに考えます。そうして、その上でその所得部分から人的控除つまり基礎控除、それから子供についての控除等が行われるべきであって、順序としてはそういうことではなかろうか。わが国の場合には給与所得について、どうも必要経費的部分についてのとらえ方が非常にあいまいであって、これが一体何なのかということが、理論的だけではなくて、実際の所得税の計算上非常にあいまいになっている。つまり人的控除等と、それから給与所得控除とが非常にあいまいな形で取り扱われているというところにおっしゃるような問題もあるのではないかというふうに考えます。これが第一点です。  それからもう一つは、憲法などの要請している、健康で文化的な最低限の生活の保障という点を所得税が原則とすることは当然のことでありますので、生活扶助費等とのバランスというのは御説のように十分に考えられなければならないわけでありますけれども、それらを含めて生活扶助だけではなくて、児童手当でありますとか、あるいはさらに拡大するならば、そういう一般的な生活に対する保障の制度というものが、所得税と組み合わされて最低限の生活が保障されるような制度的な裏づけというものが行われることが望ましいのではなかろうか、こういうふうに考えます。
  53. 名東孝二

    名東参考人 いまの生活費控除、賛成でございまして、外国など、これはフランス、ドイツなどでもいろんな必要経費控除が行われておりますね。だから、そういうことにならいまして、必要費概念を広げるということを私は年来主張しておるのです。いまの必要費概念というのは非常に狭いのです。もうけ仕事とか、それに関連したことだと思うのです。そういったものを広げていけば、われわれ勤労者にもそれが均てんできるのじゃないかということで、ねらいとしては、いまおっしゃったような生活費控除と内容的には同じことになると思うのですが、形式的には、私のいま言った必要経費の概念を広げていただいた方が不公平がなくなるのじゃないかと思います。  それからもう一つは、いまのは課税最低限の上の方になりますね。ところが、それ以下の、たとえばいま年収二百一万五千円以下、そういったようなところには要するに非課税だという、税金がかからないというわけですね。それに対してやはり負の所得税、フリードマンあたりも言っていますね。そういったような生活扶助的な要素をこれから加味していかないと相当シビアな面が出てくるのじゃないか、こういったようなこともお考え願いたい、こういうように考えております。一言……。
  54. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ありがとうございました。  それでOECDレポートにおきまして、わが国の減税方式が取り上げられまして、かなり評価される皮肉な一面があるわけですけれども、これまでの減税の足跡をたどってみますと、ことしあたりも、五野党の要求に対しまして大変なやりとりの結果、七月の段階におきまして調整減税が行われる、こういうことであります。それでアジャストメントができないということに大変に腹立たしい限りなんですけれども、課税最低限、これがわが国の場合国際的に見てかなり高いのだと盛んに宣伝されているわけです。和田参考人の御意見の中に、これを否定的に御意見をお述べになっているものがございますが、御意見の御開陳をお願いしたいと思うのです。
  55. 和田八束

    和田参考人 課税最低限というものの中身が何をもって構成されているのかということがまず第一に問題だろうと思います。  たびたび申し上げるようですけれども、給与所得控除をどういうふうに位置づけるのか、入れるのか入れないのか、それからたとえばイギリスの場合には基礎控除だけでございまして、わが国の扶養控除に当たるようないわゆる子女控除というのですけれども、これは一九八〇年で廃止されておりますので中に入っておりません。そのかわり児童手当があるというふうに制度的な違いというものがありますので、各国そのまま比較することはちょっと現実的ではないということが第一点であります。  それからもう一つは、比較するとすればやはり同じ所得課税であるところの地方税で比較すべきでありまして、わが国の場合で言いますと夫婦子供二人の四人給与所得者で百五十八万四千円というのが五十五年における住民税の課税最低限でありまして、これで比較しますと、大蔵省のデータですけれども、各国においてそれほど比較して差がないというふうなことになりますし、それからこういう場合に為替レートで換算して比較してそれがいいかどうかということも疑問点としてあろうかと思います。  いずれにいたしましても課税最低限を比較するといたしますと、いろいろないま申し上げましたような制度の違い、それから換算の違い、それから住民税等も含めて考えるというふうないろいろな点を総合的に判断しなければならないのではなかろうかということでありまして、そういたしますと結論的でありますけれども、わが国の課税最低限というのは国際的に見て高いというふうには言えないのではなかろうかというふうに考えております。
  56. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 名東参考人からもお願いします。
  57. 名東孝二

    名東参考人 この問題は、前提になっている為替相場、為替レートが問題であると思うのです。私は、昭和四十六年、一九七一年十二月のスミソニアン協定によって決まった一ドル三百八円を基準に日米の卸売物価、輸出物価、それから消費者物価を比較して計算してみました。そうすると消費者物価は、計算すると一ドル三百五十五円、こういうのが出ています。だから、これは結局住宅費だとか食料費、こういうものが非常に割り高だということを反映していると思うのです。そうしますと一ドル三百五十五円で計算すると、すなわち円の外面はいいけれども内面が悪いということですね。これで計算しますと、アメリカよりも低くなります。いま申し上げたように日本のこの二百一万五千円に対してアメリカでは御存じのように四人で七千四百ドル、二百六十二万七千円というふうになりますね。それから住民税でも、日本の百五十八万四千円に対してアメリカの百七十七万五千円、五千ドルということになるわけです。  それからもう一つ、EC付加価値税をのけて考えてみた場合、そうするとフランスなんかではこれは一六・七%にすぎなくなってしまう。ドイツですら付加価値税の割合が二六・六%ございますから、それをのけてしまうと二三・五%、日本よりも少し高いという程度になるわけですね。  そういうようなわけで必ずしも、私の調べた範囲では課税最低限が日本は高いということは絶対にないと思います。
  58. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 時間の都合で最後のお尋ねでありますが、税執行上の不公平感、これが実は充満しているわけです。トーゴーサンあるいはクロヨンという表現で言われております。本委員会におきましても四度も附帯決議いたしましてこの改善を迫る、こういう経過をたどってきておりますけれども、税執行上の不公平、それから税制そのものの不公平、大きく分けてこう言われておりますが、実際どういうふうに御認識されていらっしゃいますでしょうか、名東参考人和田参考人
  59. 名東孝二

    名東参考人 これはいま申し上げたように、課税をする場合と徴税の場合、これは明らかにアンバランスがあるわけです。これはもう体質的なものだと思うのですね。この基本は何と申し上げても戦後——戦前と言ってもいいのですが、殖産興業方式ですね。要するに産業優先にのめり込んでいく。日本人は何でものめり込むのですね。防衛問題でものめり込むところに問題があるわけで、国債でもそうでしょう。国債でも一たん口が開いたらのめり込んでいく。こののめり込んでいくところに問題があるわけで、そういうわけで殖産興業方式にのめり込んできたと思うのです。ここに私は問題があると思う。したがって、課税上にどういう不公平があるかということはもう列挙すれば切りがないわけであります。それから徴税上の不公平、これもいろんな資料を私持参しておりますが、要するにこういったような体質的なものを一遍に改めるということは、利害関係がありますから、既得権益がずいぶん重なっていますからむずかしいにしても、やはり新しい考え方——正統的な意識を変えてもらって徐々にでも変革していただかないと、下から盛り上がってくる大きな波に足をさらわれてしまうのじゃないかという危険性を感ずるわけであります。単なる減税問題とか増税問題というようなものを超えた大きな一つの波、時代の流れがあるわけです。そういうものを認識していただかないと、もう取り残されて流されてしまうということを申し上げたいと思うのです。
  60. 和田八束

    和田参考人 制度的、それから執行上の不公平ということでございますけれども、制度的に言いますと、私は三点ぐらい主なものがあるのではないかと思っているわけです。  一つは、資産所得の優遇という点でありまして、所得において、特に資産所得面が優遇されている。これは利子配当課税につきましては昭和五十九年から是正されるということになりましてグリーンカード制の導入というふうなことが決められましたので、これはどうなるかということは今後の問題でありますけれども、なお土地の譲渡所得課税でありますとか、あるいは株式の譲渡所得課税等に問題があるということでございます。  第二点は、資産の所有というところにかかわる不公平があるわけでありまして、土地資産あるいは有価証券その他の資産保有というところに対する課税がもう少し強化されなければならないであろうということであります。  第三点といたしましては、わが国はいわゆる法人資本主義とも言われるような、いわゆる法人経済の中心を占めておるわけでありますけれども、その法人に対する課税というものがかなりあいまいである。これは租税特別措置も含めて法人税制そのものの基本税制について言えるわけでありまして、法人と個人との負担の平等とか、あるいは法人性格等につきましてはなお理論的かつ実際的に問題があるところでありますけれども、それらを含めまして法人に対する租税のあり方というものを、古典的な議論ではなくて現代的に再検討する必要がある、こういうふうに考えております。  それから税務執行上につきましてはいろいろ問題があるでしょうけれども、何といいましても給与所得者に対する課税上の問題というのが一番大きいのではないか。クロヨンといいますと、やはり六とか四というふうなところも問題があるわけでありますけれども、給与所得者の税負担というのは特に近年インフレ下で次第に重くなってきているような状態でありますので、この給与所得者に対する課税のあり方というのは、先ほど言いましたような必要経費の導入というふうなことがやはり基本だろうと思いますけれども、他の税負担所得者との均衡というふうなことを十分に考えていかなければならないのではなかろうか、ここに一番問題があるように考えております。
  61. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  62. 大原一三

    大原(一)委員長代理 この際、十分間休憩いたします。     午後四時休憩      ————◇—————     午後四時十一分開議
  63. 小泉純一郎

    ○小泉委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉置一弥君。
  64. 玉置一弥

    ○玉置委員 参考人の皆さんには、大変お忙しい中、御苦労さまでございます。ありがとうございます。  今回の国会、特に所得減税の話で大変紛糾をいたしまして、まあ多少の物価高の責任という形で所得減税が、いまのところ形だけ確保できたという内容でございますけれども、先ほどからのいろいろな御議論をお聞きをいたしておりますと、どうしてもいまの、特に給与所得者に対する不公平感、そういうものが大変国民の間に強いというようなニュアンスでお聞きをいたしておりますけれども、そういう中にありまして、現在税調では、所得税の体系も含めて、いろいろな税体系の全般の見直しをなさっておられる。特に昨年の答申にもございましたように、すそ野の広い消費体系というものに着眼をされて、大型間接税なるものを検討中であり、特にことしの三月以降、積極的にといいますか、本腰を入れて検討なさるという小倉会長のお話がございました。  そこで、現在の段階において、たとえば五十七年以降の税制についてどの程度意見をまとめられているか、それについてお伺いしたいと思います。
  65. 小倉武一

    小倉参考人 税調としましては、先ほど冒頭にごく簡単に申し上げましたような中期税制あり方、それから五十六年度税制改正におきましてもちょっとそのことにも触れておりますけれども、その後税制調査会は開いておりませんので、税制調査会として現在どういうようなことを考えているかということは、ちょっと申し上げるものがございません。  ただ、これまでの経緯から申しまして、いまお尋ねの中にもございましたように、主要な税目分についてやはり一通りの検討はできるだけ早い機会に進めなければならないだろう、まあ三月というようなことを申したこともございますけれども、国会の御審議の状況等を考えますと、やはり四月以降の方がむしろ適当じゃなかろうかというような気がいまのところしております。
  66. 玉置一弥

    ○玉置委員 先ほどのお話の中に、特に大型間接税につきましては、鈴木総理の発言もあり、また国会決議というものがあり、そういう内容から、政府の方針と全く同じではないけれども、ほぼ沿ったように検討してまいりたい、そういうようなお話をされておりました。  そのときの国会決議というものは、一応一般消費税によって増税を図ることはよくない——よくないというのは変ですけれども、いけないというようなことでございましたけれども、国会決議をなかなか大蔵省が重要視しない、そういう動きがあるわけですけれども、税調としては、やはり国会決議に基づいた動きを十分配慮してやるという考えに受け取ってよろしいでしょうか。
  67. 小倉武一

    小倉参考人 国会の御決議の次第でございますが、これは大蔵省が重く見ないとか税調が重く見るとかいうようなことではなくて、恐らく政府関係はすべて国会の御決議は重く見るということかと思います。一般消費税の御決議につきましても、そのことは絶えず念頭に置いて検討してまいりたい。検討というのは、決議自体ではなくて、一般消費税といったようなものに関連いたします間接税検討する場合に、御決議の次第は絶えず念頭に置いておく、こういうことかと思います。
  68. 玉置一弥

    ○玉置委員 不公平税制お話に戻りますけれども、現在、クロヨンあるいはトーゴーサンと言われておりますように、特に課税把握率といいますか、対象所得の把握に関する精度が非常に悪い、そのことが大変大きな要素であり、かつ、給与所得あるいはそのほかの所得に対する格差、この二つが大きな原因であると私も思っておりますし、先ほどからの御説明をお聞きをいたしておりますと、そういうニュアンスに受け取れました。  そこで、現在の法人所得考えようによっては、法人、個人の区別が非常につきにくい部分、特に個人法人といいますか、そういう部分が法人として取り扱われている、こういうことも一つ大きな要素ではないかと思うわけです。納税が非常に少ないにもかかわらず、外車を乗り回したり、あるいは大変豪華な家にお住まいになっているということも見受けられますし、また一方では、サラリーマンがあくせくかせいで、ようやく中間管理職になりながらせいぜい小型車しか買えないということも実態でございます。  そういう中で、先ほどから大きな要因を述べられましたけれども、給与所得者についてはまず固定的なものだという、それは考え方はおかしいですけれども、置いておいて、法人税性格としてどうあるべきであるか、また課税方法としてはどういう改良をすべきであるか、もし御意見をお持ちであれば、名東先生、和田先生、それぞれお伺いをいたしたいと思います。
  69. 名東孝二

    名東参考人 産業界でも、大きいことはいいことだという巨大信仰がまだかなりあると言わざるを得ないわけですね。この資料は、公正取引委員会の企業集団の実態調査などです。これを調べてみますと、まだまだそういった——また、アメリカにもあるのですね。アメリカにも、巨大信仰、大きいことはいいことだ、そういったようなことがありまして、スケールメリットといいますか、規模経済性を追求するという時代おくれの感覚にまだとらわれているのがかなり多い。  しかし、そういったようなものに対して優遇措置を講ずること自体、私は、おかしいと考えているわけなんですね。したがって、現代のような資本主義の成熟段階においては、やはり小さいものこそ優遇さるべきだと思うのです。そういう意味で、大きい所得、大きい蓄積にはより大きな負担をかけていただく。したがって、原則的にはやはり比例税率よりも累進税率であるべきだ、こういうふうに考えております。  中小企業は、確かにそれはいろいろな抜け穴とか、いろいろなみなし法人とか、いろいろな便法もあると思うのでありますが、しかし大局から見れば、やはり多品種少量生産というものに向いておると私は思うのです。きめの細かいサービスをするには、やはり中小企業は向いていると思うのです。大企業でも心あるところでは、小さいセクションに分かれてやっているわけです。そういう意味で、奨励的に低い税率を適用した方がよいと考えているわけです。  中には、国際競争力を維持する、そういうたてまえでいくべきだという考え方もあると思います。少なくとも欧米法人税と肩を並べる。今度はそういう意味で少しでも、二%でも上げれば意味があると思うのですが、低いということはまずい。  しかし私は、ある意味においては日本の法人税が、税制が新しい機軸を出してもいいんじゃないかと思うのです。何も国際水準にばかり右へならへする必要はないのであって、新しい機軸を示すということですね。ただし、先ほども私指摘したのでありますが、これからの苦しい時代を考えた場合には人手を多くかけていくような投資、したがって貯蓄ですね、そういったような施策、いままで持っておった企業の完全雇用機能がいま衰退しているわけですが、そういうものを回復するような施策を優遇していただきたい。こういったような日本の企業における一つの特殊性、これは欧米とは若干違うと思うのでありますが、そういう意味で基本的には巨大化していくようなところに歯どめをかけていくという税制であるべきですが、しかし、いまのような新しい情勢に即したきめの細かい優遇措置を講じていくべきだと考えるわけです。  そこで、たとえば法人擬制説でありますが、現在の法人税制を考える場合、有力な説というのはやはり法人擬制説だと思うのです。しかしこの説は、企業内蓄積を促進しようとする資本主義の初期的段階とか発展期には妥当すると思うのでありますが、現在のような成熟期には妥当しないと思うのです。したがって、はっきり言えば配当控除制はやめる、しかしながらたとえば金利に見合う、利息に見合う配当金の損金控除は認めた方がいいのではないか。御存じのように、配当金は現在事実上利子化していると思うのですね。そういう意味において費用控除は認めるべきだ、こういうふうに思います。そういうわけで、御存じのように欧米では配当控除、インピュテーションがかなり優勢でありますが、これは会社というものに対する考え方欧米と日本ではかなり違うのではないか、こういうふうにも思いますので、したがって国際競争力を全然無視してしまっていいとは考えません。しかし、国際競争力は必ずしもそういったようなことだけに影響されるものではないと思うのですよ。そういう意味において新しい累進税率考えてみることは、これは世界、欧米一つの模範を示すという意味にもなるんじゃないかと思うわけです。  簡単ですが、以上です。
  70. 和田八束

    和田参考人 税制の方では法人税の問題というのは理論的にも非常にむずかしいものがございます。ただ、わが国の場合には法人数が非常に多いわけであります。そしてその中の大部分、九九%近くはいわゆる個人としての法人といいますか、法人というよりもむしろ個人的な色彩の強い性格のものになっているということでありまして、そういうところでは個人と法人とを非常にうまく使い分けているというのが実態ではなかろうかと思います。そういう点で私は、法人としての法人と個人としての法人といいますか、ちょっと言葉はなんですけれども、そういうふうに二つに分けられるとすれば分けていった方がいいのではないか。現在でも若干区別はされているのですけれども、もう少しはっきり区別をして、法人としての法人といいますか大法人といいますか、社会的に自立した法人ですね、この場合には税法の上でもいわゆる独立課税主体としての扱いをして個人との負担調整はしないとか、あるいは累進的な税率を採用するというふうにした方がいいのではないか。それから個人と紛らわしいといいますか、個人的性格の強い法人の場合には法人、個人一体説といいますか、いわゆる法人擬制説にのっとった課税をして、法人と個人とをうまく使い分けるという余地をなるべく残さないような税制にすべきではないかということであります。ただ、現実に余り個人企業と同列に扱った場合には法人企業としてのメリットというものがなくなるわけでありまして、この点は経済的インセンティブといいますか、こういうものとの関連があろうかと思いますけれども、その辺は政策上の問題でありまして、制度といたしましては何といいますか、第一法人税、第二法人税と言ってもよろしいでしょうし、何かそういうふうな形で分けた方が税の公平という点からいっても好ましいのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。     〔小泉委員長代理退席、大原(一)委員長代理着席
  71. 玉置一弥

    ○玉置委員 確かに区別が非常にあいまいであることが一般的に不公平感というものに大変大きな影響を及ぼしていると思います。そういう意味で、当委員会でもこれから法人税は長く検討をしていかなければいけないと思うのです。  そこで、今回税制全般について見直しをする余裕なく単に増税に踏み切ったということで、国債の発行について、十兆円程度は国の財政として不健全でないというお話が先ほどからございましたけれども、われわれとしても、昭和五十九年という非常に短期間に財政再建を図るということではなく、まだ比較的償還の薄い六十二年程度までは延ばせるのではないかというふうな見方をしております。その辺に対して何か御意見ございましたらお願いをしたいと思います。
  72. 和田八束

    和田参考人 私もそういうふうに考えます。現在発行額が、これはフローの方だけからなんですけれども、十二兆円ということになりますと相当程度その依存度が低下してきておりまして、もう一歩だと思うのですね。もう一歩、十兆円というところまでいけば将来とも相当楽になりますので、そうなりますと、五十九年、六十年というふうなことで余りあわててやる必要はないのではないか。財政の中身というのも大変大事ですから、その辺の財政状況とか支出の内容ということも総合的に勘案して決定すべきであろうということです。  それからもう一つは返す方の問題ですけれども、これも特例債の償還が差し迫ってきているわけですが、その辺につきましても、特例債だから現金償還しなければならないということにこだわらないで、四条債と同じように借りかえを行うようにして償還を先に延ばすというふうなことも考慮されてよろしいのではないか。  いずれにしても、借金に非常に頼るということは財政上好ましくないとはいうものの、しかし相対的に経済規模なり財政規模との間での問題でありますので、その辺を総合的に勘案をしていかれる方がよろしいのではないかというふうに考えます。
  73. 名東孝二

    名東参考人 この問題はやはり金融との関連ですね。いま金融事情がかなり過保護体制といいますか、それと御存じのような銀行対郵便貯金の問題やら、かなり変則な面が出ていますね。そういったような国債管理政策自体にかなり問題があるんじゃないかと思うのです。だからこれは単に財政問題だけじゃなくて、金融をひっくるめた、郵便貯金もひっくるめた今後の全体としての経済政策をどうあらしめるかということを全体的に再検討する必要がある、こういうふうに考えております。
  74. 玉置一弥

    ○玉置委員 いろいろな問題点が出てきましたけれども、その中で先ほどから自然増収財政再建を進めるべきであるという話が再三出てまいりました。しかし、現在の経済状態、経済情勢から見て、当初大蔵省でもかなり楽観ムードがありましたけれども、最近はかなりぴりぴりと締まってきているというように、世界的に大変低成長である。日本だけが日本独自で高度成長を続けることができない。先ほど名東先生の方から五千億ドルの負債の話がございましたように、いずれどこかで火がつけば、それが全部表へ出てくるような世界的な金融恐慌というものに陥る危険性も大変ある。そういうことを考えますと、これから先経済見通しとしてはかなりかたいところを読んでいかなければ日本の財政運営ができないのではないか、そのように思うわけです。そういう意味で、現在の日本が置かれている経済情勢から見て、これからの財政再建自然増収で本当に賄えるのかどうか。というよりも、近い将来五十六年、五十七年を見通して、石油との絡みもありますし、世界的にインフレがアメリカを中心にしてまだまだおさまらない。そういう状態の中で貿易摩擦が生じておりますし、そういう中から見て日本の経済規模、これが本当に拡大できるかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  75. 名東孝二

    名東参考人 おっしゃったとおりでありまして、かなり厳しい場面が今後予測されるわけです。そうすると、まず大事なことは、人間個人の場合と同じように、ぜい肉があるということは危ないと思うのです。やはりぜい肉を落とさなければいかぬと思うのですね。その点民間では大なり小なりぜい肉を落とし、これが中小企業なんかでは倒産という形で出ているわけです。いやおうなしに出てくるわけですね。ところが国家財政の場合は、不幸にしてぜい肉をいつまでも持続できるのです。これが非常に困ったことだと思うのです。そういったような周囲の情勢というものがかなり危ない方向へ落ちつつあるのにかかわらずいつまでもぜい肉を抱えておる、目が覚めない。大恐慌でも来ない限り恐らく目が覚めないのじゃないですか。もう少しそういうような将来のことをお考え願って、ぜい肉落としを、これは単に行政改革だけでないと思いますが、あらゆる面で、国民経済はもちろん企業ももちろんでありますが、官庁あたりが率先して、国会でもそうだと思うのですが、率先してぜい肉落としに心がけてもらわないと、緊急事態に対して恐らく対処できないのじゃないかという危惧を非常に持っておるわけであります。
  76. 玉置一弥

    ○玉置委員 何か時間が余りありませんので、最後小倉会長に一点だけお聞きをいたしたいと思います。行政改革、不退転の決意を鈴木総理が言明をされましたけれども、これがいままでかけ声だけでなかなか進まなかったというのは、いまのサービスを自分のところだけで削ることはないだろうという、各省庁のそういうのが根底に流れているような気がするのですけれども、ずばり言って、本当に進まなかった理由というのをもしお考えになっておられましたならば、参考にお聞きしたいと思います。言いにくいでしょうけれども……。
  77. 小倉武一

    小倉参考人 ちょっと私お答えする筋ではないかもしれませんが、私は第一次臨時行政調査会のときの専門委員だったこともありまして、全く縁がないというわけでもございませんのですが、なぜうまく実行できないか、こういうことになりますと、やはり具体的な人減らしとか具体的な政府支出の削減ということになりますとそれぞれ利害関係のところがございまして、そういう利害関係者のおおよその納得を得なければ、何事でもそうかもしれませんけれども、ただ行き当たりばったりばっさりというわけにはまいらぬというところが問題であって、どのようにしてそういう関係方面との合意を得ていくか、おおよそのやむを得ないというところくらいの合意を得ていくか、そういったようなことができるような世論を形成していくことが非常に重要ではないか、そういう感じがいたしております。
  78. 玉置一弥

    ○玉置委員 終わります。
  79. 大原一三

    大原(一)委員長代理 正森成二君。
  80. 正森成二

    ○正森委員 正森でございます。最後ですけれども、私からまず最初小倉参考人に伺いたいと思います。  税制調査会が昨年末に中期の答申をお出しになりました。それの解説のようなものがあちこちで行われておりますが、木下和夫さんがあなたの代理で月曜会というところで講演をしておられます。それを拝見しまして二、三会長である小倉参考人に伺いたい、こういうように思います。  そこで言われておりますのは、私がいま第一番目に聞きますのは、税調が全体として言っていることですが、国税で二%、地方税で一%の増税が六十年までには必要である。その理由は、五十五年の歳出はGNP比率で一七・二%だ、その八割を少なくとも税金で賄わなければならない、こう考えると一三・八%になる。ところが五十五年の租税収入、国税収入が一〇・七%だから、その差は三・一%である。ところで、自然増収が大体一%ぐらい見込めるから残りは約二%である、こういう理屈ですね。  それから地方税については、昭和五十五年はGNPの一六・八%ぐらいの割合である。そこで地方税としては普通会計の歳出の四二・七%ぐらいあれば満足であるから、一六・八掛ける四二・七で七・二%ぐらいになる。現在地方税がGNPに占める比率は六・一%だから、七・二から六・一を引くと一・一だ。地方税の場合には自然増収がGNPの〇・二だから、それを引くと〇・九%、約一%の増税が必要である。両方足してGNP比三%の増税が必要であるというのが税調の論理のようであります。  そこで伺いたいと思いますが、鈴木総理が行政改革によって五十七年度課税ベースの広い間接税導入考えないということを言われた。先ほどから小倉参考人の御意見を伺っておりますと、やはりその導入に向けて準備しなければならないということのようですが、中期の答申で言っておられる国税で二%、地方税で一%の対GNP比税負担の増額というのはどうしても必要だというように思っておられるわけですか。
  81. 小倉武一

    小倉参考人 無論これはいろいろな条件がございまして、昨今非常に論議されておりますような歳出の削減というのがどの程度行われるか、またその背後で行政改革がどの程度行われるかというふうなことが一つ大きく影響するわけであります。それからまた、今後の経済成長がどうなるかとか、税収の関係で言えば名目でいいわけでしょうけれども、経済成長が名目あるいは実質どの程度に成長していくか、いろいろな条件がございますから一概に申せませんけれども、どの程度税負担の増が今後必要になるだろうかというおよその感じを一般に得ていただくというために、五十五年度のおよその、当時年度の過半が過ぎておりますので、そのときの例を例示しまして、そこから推察をしていただくということでありまして、そこから大胆に、当然三%の増税といいますか、中央、地方を通じての増税税調の基本的方針であるというところまでお考えいただくと、ちょっとそれは強過すぎるというような感じであります。  お答えになるかどうかわかりませんけれども……。
  82. 正森成二

    ○正森委員 中期の答申を見ますと、相当気合いを入れて三%ぐらいふやさにゃいかぬというふうに読めるわけですが、いまの御意見はややトーンダウンされたようであります。  そこで、税調は、政府が閣議決定もいたしました新経済社会七カ年計画、五十六年一月にはその「フォローアップ昭和五十五年度報告」というのも出されておりますが、それとの整合性についてはどう考えておられますか。
  83. 小倉武一

    小倉参考人 この点については、私よく存じませんといいますか、深く税調では論議した記憶がございませんけれども、たしか委員の中からも総会等でそういう質問が出まして、当時の役所の方の答えによれば、大体整合性を得ている、ぴったりは合わないようですけれどもそんなに大きなそごはない、こういう答えだったことを記憶しております。
  84. 正森成二

    ○正森委員 それは必ずしも整合性がないように思われるのですね。新経済社会七カ年計画というのは、政府が閣議決定して、あらゆる省庁が、今後数年間の日本経済あるいは財政はどうあるべきかということで立てているわけです。そこには租税の負担率というようなものも明白に目標が提示されているということになっているのは御承知のとおりであります。その目標値によりますと、五十三年度の、国民総生産に対するものじゃなしに国民所得に対する租税負担率というのは、当時二〇・五%でありました。それを昭和六十年度には六%ふやして二六・五%にまで上げる、そうしなければ、日本経済といいますか日本の財政はうまくいかないのだという考えであります。  ところで、私が今度の予算委員会で、発表されている数値等に基づいて計算しますと、昭和五十六年度ですでに国民所得に対する租税負担率というのは二四・七%にまで上がるのです。これは河本経済企画庁長官も認めております。あるいは担当局長も認めているのです。そして全く増税がなしで、しかも租税弾性値が国税の場合は一・二、地方税の場合には一・一という非常に低い、政府が認めている弾性値でしか税収はふえないと見ても、六十年度には租税負担率は二五・四%で、ほとんど目標に達するのですね。  だから、もしもあなたの税調の言うようにGNPの三%も増税しますと、国民所得に対する割合だとそれは四%近くなりますから、私どもが計算してみますと、ここに細かい数字は全部出ているのですけれども、それを申しますと長くなりますから、五十六年度に行われた増税ですね、それを、もうすでに増税が、あなたの言われる国税二%、地方税一%の増税が一部行われたという前提で、その残りだけを五十九年度までに増税をするというように考えまして計算したら、大体、六十年度の租税負担率は二八・三ないし二八・四%になるのです。これは租税弾性値を国税で一・二、地方税で一・一という非常に低く見ても、なおかつ、あなたの言うような——あなたの言うようなと言うと語弊がありますが、税調の言うような、国民総生産に対して五十六年度から五十九年度までに国税二%、地方税一%の増税を行えば、新経済社会七カ年計画の目標をはるかに上回るような国民所得に対する租税負担率になるのです。  これは整合性の上からいっても非常に問題があるし、逆に言えば、課税ベースの広い間接税というような増税は必要がないということを数字で示しているのじゃないですか。  私のこの数字は、河本経企庁長官に質問したら、それは大体当たっているという答弁なんですよ。それで、経企庁長官は別の場所では、昭和六十年どころか五十七年度か八年度ぐらいで租税負担率二六・五は達成してしまうということを言うているのですね。  そうしますと、あなたのところが四月から鋭意やろうとしているような、課税ベースの広い間接税の研究、検討なんというのは少し休んで、ゆっくり体力を整えてそれからやるという方がいいのじゃないですか。
  85. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまお尋ねの中にございました経企庁長官のおよその見込みのことにつきましては、私はその席でそばで聞いておったわけじゃございませんが、たしか経済審議会ですかの席で、ある委員の御質問にお答えになったところで類似のお答えがあったことを伝え聞いております。そういう見方もあるいは成り立つかもしれません、企画庁長官がおっしゃるのですから。だけれども、それは余りにも楽観的に過ぎるのじゃないかという気もしないこともございませんので、無論今後間接税というようなものを検討する場合はそういう御意見のあるところもひとつ十分よくお聞きしまして、考慮して検討したい、こう存じます。
  86. 正森成二

    ○正森委員 それでは、和田参考人にお伺いいたします。  「租税政策の再検討」という本も読ましていただきましたが、御経歴を見ますと、当初静岡大学を出られたそうで、私は旧制静岡高校の出身でございますので、同窓生であることを光栄に存じております。エコノミスト一月二十七日号にも先生の論文が載っておりまして、非常に興味深く読ましていただきました。ここでも出ているところでございますが、政府は二言目には、所得減税、あるいは先生のお言葉では調整ですね、アジャストメントをやらない理由には、金がない、つまり財政上余裕がないということと、もう一つは、いつでも、課税最低限が国際的に見て高い水準にあるということを言うわけです。このエコノミストでは、先生が三つぐらい例を挙げまして、そういうような言い方は必ずしも正しくないのじゃないかと言われておりますが、念のために御説明願えればありがたいと存じます。
  87. 和田八束

    和田参考人 課税最低限質問ですが、いま御指摘のエコノミストの論文でも書いたわけなんですが、いわば常識的と言えば常識的なことで、新たに言うほどのことでもないかもしれませんけれども、第一点といたしましては、先ほども指摘がありましたように、課税最低限を比較する場合に為替レートでやっている。ここの場合、そのときのいろいろな変動によって違うわけですけれども、一ドル二百二十五円とか二百二十円とか、そういった為替レートでやるわけでありますけれども、実際に税負担をする場合には、所得税の場合には購買力を比較をすべきではないかというのが私の論点の第一点です。その点で言いますと、わが国の購買力水準は、為替レートで換算した場合の円よりもかなり弱いということが言われておりまして、これは大変むずかしいところはありますけれども、その点を勘案しなければいけないのではないか。  それから、第二点といたしますと、課税最低限の中身でありまして、給与所得控除、それから人的控除がわが国の場合にその中身になっております。このほか、社会保険料控除などがありますけれども、国によりましてはこれがさまざまでありまして、給与所得控除あるいは勤労控除がある国ない国、それから人的控除の中身もいろいろでありますし、また教育費控除等を含めているところもありますので、その辺はベースを同じにしなければいけないわけであります。仮にこういう国際比較の数字を挙げるとすれば、そうしたベースについて客観的に納得できる説明が加えられるべきだろう、こういうことであります。  それから、第三点といたしますと、課税最低限はともかくそこから税金がかかるということでありますので、住民税の課税最低限をとるべきであって、所得税課税最低限では不正確である。この点では、地方税で所得課税を持っている国は比較的少ないわけでありまして、通常挙げられる先進工業国の例で言いますと、アメリカの州所得税というのがあるわけでありまして、あとは一本化されておりますので、わが国の場合には住民税の方をとるべきである、こういうふうな理由で、課税最低限の比較が正確ではないということを指摘したわけであります。
  88. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。  いまの第二の点は、たとえば各国でも共通している扶養控除といいますか、人的控除、それだけで比べてみるというようであれば比較的公平な比較ができるというような御内意だろうと思います。  たくさん聞きたいのですけれども、時間の関係で、次に「租税政策の再検討」の「法人税制改革の課題」という先生の論文のうち、三つぐらい聞きたいのですが一つだけにさしていただきます。近時、法人の株式保有が非常に急速なテンポでふえております。この本では昭和四十七年までの率しか掲げられておりませんが、それでも昭和二十年の三五%前後の比率に対して、四十七年ですでに六七%ぐらい、最近では上場株式関係について見れば七〇%をやや超えているような状況であります。この傾向がどういう理由で起こったのかという点について著書で書いておられますが、時間がありませんが、ごく簡単に御意見をお伺いできればありがたいと思います。
  89. 和田八束

    和田参考人 いま手元に本がありませんので、どういうことだったのか記憶がないので申しわけありませんけれども、第一点としては、法人による法人支配といいますか、株式による支配が目的である、それから事業会社による資産運用ということがあるだろうと思います。投機目的というふうなことがあるでしょうけれども、いずれの場合にも、やはりこういう法人による法人の支配あるいは法人の資産運用が他の法人の株式保有によって行われることがかなり支配的になってきているということは言えるのではないかと思います。
  90. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。  同時に、こういうぐあいに法人の所有株式がふえるということは、税制の上でそれを有利にするような特別措置が非常に大きな影響を与えているのではないかという説がございますが、そういう傾向もございましょうか。
  91. 和田八束

    和田参考人 それにつきましても一々具体的な説明をいま準備してきていないのですけれども、恐らくその一番顕著だったのは、昭和四十年、四十一年ですか、あの大不況のときにかなり大幅な特別措置導入改正が行われまして、そうした法人の動向とか、あるいはあのころは合併に対する特別措置が行われたわけですけれども、そういう合併ないし株式による子会社あるいは孫会社の形成が有利になるような税制導入されたということは記憶しております。その後これらの特別措置はかなり改廃されてきておりますので、現在はそれほど顕著なものはないと思いますけれども、四十年代においてはかなり顕著なものがあったのではないかというふうに記憶しております。
  92. 正森成二

    ○正森委員 名東参考人に伺いたいと思います。  先生が「小さい政府を目指して、市民のための財政読本」という著書をお書きになっておりますので、非常におもしろく読ませていただいたのですが、ここに、必ずしも先生の御担当の御執筆場所ではないかもしれませんが、「官僚王国を斬る」とか「財政再建の具体策を問う」という章がございます。これを見ますと、たとえば特殊法人等々は最初は目的があって設立されたんだけれども、そのうちにその目的と存在がひっくり返って、目的がもうすでにある意味では達成されたというか効果がなくなっても、存在しているものだから、逆に存在を続けるために仕事を探すというような傾向がやはりあるのじゃないか、パーキンソン法則というのも提起されておりますが、大体ほっておくと組織というものは毎年毎年五・七五%ぐらい自己増殖をする、たとえば建設省関係のものはそれにぴったり合うとかいうようなことが書いてございますが、この問題について御意見がございましたら、伺いたいと思います。
  93. 名東孝二

    名東参考人 いまおっしゃったように、パーキンソン法則では、仕事のいかんにかかわらずお役人というものは仕事をつくっていく、部下をふやしていく、これはイギリスの実例を調査した結果だと思うのです。これは私も十年ぐらい前から調べておるのですが、日本の場合でも大体妥当するということを、私、大体確証を得ておるというように思うのです。その場合抜け道になったのはやはり特殊法人ですね。総定員法で抑えましたね、そのためにどんどん特殊法人で抜けていく、こういう傾向は間違いないと思うのですね。これはやはり困ったことだと思うので、何とかしていただきたいと思うのです。  それから、ちょっと外れますが、株の持ち合いは、公正取引委員会でも明らかに統計的に認めておると思うのです。いわゆる法人の受取配当金は二兆円以上だと思うのですが、これは相当な金額だと思うのですよ。やはりぜひメスを入れて、これをごっそりと取れば——グリーンカード自体いろいろと問題がありますけれども、そういったような利子配当問題は、やはり単なる個人じゃなくて法人にメスを入れることによって初めて明るみに出ると思うのです。個人ばかり追及したって、いまおっしゃったように個人株主は三割を割っておるわけですよ。機関投資家の方がはるかに多いのですよ。しかもそれは、持ち合っておるわけです。この持ち合ったところにメスを入れない限りは利子配当問題は解決しないと思います。
  94. 正森成二

    ○正森委員 最後に一問だけ小倉参考人にもう一度伺います。  本年度は、いろいろの税目で既存税制で約一兆四千億円増税になるわけですが、その中には法人税の二%アップということで、これは中小企業に対してはどうかという意見がございますが、大企業に対する二%アップについては与野党含めて大きな異論がないようです。そういうもののほか、印紙税から物品税から有価証券取引税からさまざまなものがありますが、こういうその他の増税についてどういうように思っておられますか。妥当なものだと思っておられますか。
  95. 小倉武一

    小倉参考人 個々にいろいろな立場からごらんいただくと、御不満というかこれは困った増税だとかいろいろ御意見がございましょうけれども、いろいろ歳出を詰めていただいた上で、しかも二兆円の国債を減らすということを含めましてこの程度、いまのお話の一兆五千億程度増税はどうもやむを得ないということで、既存の税目を洗ってできるだけ増税をお願いするということでいたしました結果あのようなことになっておるということでございますので、御了承願いたい、こう存じます。
  96. 正森成二

    ○正森委員 「月曜会レポート」で「中期税制答申について」といって税制調査会長代理が講演されたものを見ますと、「来年度は税収不足額が二兆円の国債減額をやって、一兆五千億円の税収不足があるので、そこで法人税を二%上げる。これで五千億円できる。あと酒税を二〇%程度アップして二千億円の税を稼ぐ。あとは乱診状態といいますか、理屈のない増税といいますか、かき集めです。」こう書いているのです。税調の責任者が乱診状態——乱診というのはむちゃくちゃな診察で、富士見病院とかなんとかいって何でもかんでも取ってしまえということが起こりましたけれども、それと同じ乱診状態で理屈のない増税といいますかかき集めですと言っているのです。責任者が乱診状態で理屈がなくてかき集めだと言っているようなそんな増税に国会が賛成するわけにはいかないのです。代理といえばやはりあなたの代理でしょう。ということは、あなたもそういうぐあいに思っているということですか。  これで質問を終わります。
  97. 小倉武一

    小倉参考人 私は毛頭そういうふうに考えておりませんのであしからず。
  98. 大原一三

    大原(一)委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明二十四日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会