○
名東参考人 最初の
不公平税制の問題は、必要経費のアンバランス初め重要な論ずべきことが相当あるんでございますが、御
質問の焦点がいわゆる租税特別
措置、これを中心にしたお尋ねだったと思いますので、それを簡単に申し上げたいと思います。
もちろん、この租税特別
措置を
考える場合には、現在の
税制を貫いている総合申告制ですね、これは私は基本的にりっぱなものがあると思うのです。それに虫食いが起こっているんじゃないか。いわゆるタックスエロージョンと言われますが、そういう税の侵食が起こっている。その税の侵食はなぜ起こったかというと、これは
御存じのように日本の伝統的な富国強兵、戦後におけるいわゆる殖産興業方式と言われるものでしょう。いかに産業を富ましいかにして国を伸ばすかというようなことばかりエコノミックアニマルに一生懸命になったということではないかと思うのです。したがって、その端的なあらわれがやはりこの租税特別
措置にあらわれておると思うのです。
しかしながら、話は少しそれますが、いわゆる
法人擬制説ですね、配当控除を裏づける
法人擬制説でも同じですが、こういったような物の
考え方というのはやはり資本主義
経済の初期それから発展期の
考え方でありまして、現在はもうその成熟期といってもいいと思うのです。成熟している段階だと思うのですよ。そういう段階にいつまでも古い
考え方に固執すること自体ナンセンスといってもいいくらいじゃないか。したがって、こういう成熟段階では大きい
所得、大きい蓄積のものにはやはりより大きな
負担を、したがって比例
税率よりも累進
税率の方が好ましいんじゃないか、こういうように思うのです。
それから、先ほど申し上げたように
中小企業の出番、
国民のニーズというのが非常にきめの細かいものを要求していますが、
中小企業というのはそういうきめの細かさに応ずることができるわけですね。そういう
意味においてはやはり
中小企業の出番が多い。多品種少量生産に向いているというわけです。そういうように
考えますと、たとえば大企業の受取配当、これを益金に算入しないというような制度がございますね。それからまた支払い配当金の軽課制がありますね。こういったようなことはやはり非常におかしいというように思わざるを得ません。したがって、こういうようなことをやめていく。はっきり申し上げれば、いままでの租税特別
措置が支えたようなそういった殖産興業方式の
考え方自体改める以上は、やはり基本的に洗い直していくというのが筋じゃないかと私は思うのですね。ただ、いまの時点で
考えられる租税特別
措置は、じゃそういう項目はなくなるかといいますと、私はいま二、三あり得ると思いますのは、
御存じのような省エネですね、特にCR化と言われていますが、CRというのはクリーン・アンド・リサイクリングする、清潔で循環していくようなエネルギーとか資材とかそういったようなものに投資を促進するというようなこと。
それから、これは非常に重要だから私ぜひ強調したいことは、いわゆるマスプロダクションという言葉がありますね。マスプロダクションというのは大量に物をつくるということに訳されていますが、そうじゃないんだ。そうじゃなくて、マス、大衆による生産、大衆が働くことによって生ずる生産なんです。それが本来あるべき姿なんですよ。したがって、人手を多くかける投資——いまの
イノベーションというか革新設備投資というのは、どうも大企業を中心にして人手を減らすことばかり一生懸命になる弊害があるんですね。それじゃもう遅いんですよ。そういう物の
考え方自体が古いのですよ。それは行き詰まる。だから、いかに人手を多くかけるか、そういったような生産なり設備投資に対して奨励すべきだ。
御存じのようにいま大企業を中心にしてかなり人手減らしをやっています。すなわち、いままで企業は非常に悪く言われてきましたけれども、いい点というのは大企業を含めて完全雇用機能、こらえ性というものがよかったのですが、ところが、最近はがっくりとこらえ性が悪くて人を減らしていく、そういういい完全雇用機能を失いつつあると思うのですよ。これが大きな問題なんであって、この企業の持つ完全雇用機能を回復するために、これを奨励するために
一つの恩典を与えたらどうか、こういうことが
一つの見落とされた点じゃないかというふうに思うのですね。
それから後の五・三%はどういうふうになるかということでありますが、これはいま
民間の見込みでは大体四%台が多いと思うのですね。しかしながら、やはりOECDあたりが言っているように日本の場合ですら三%台じゃないかというふうに私は
考えるわけです。その根拠は一体どこにあるかというと、基本的には五十三年前の世界的な大恐慌、こういうものの
可能性があるんじゃないか。そのきっかけは何かというと、五千億ドルを上回った開発途上国の対外債務が、いま日本の円にして大体百兆円以上の対外債務があるわけですが、これが元利ともに支払い停止、モラトリアムがもし起こったらこれは大変なことになる。これは将来の想定ですからともかくやめるとしまして、触れないとして、世界
経済はもうすでになし崩しに長期停滞に入っていると私は思います。波を打ちながら長期構造の波が下がりつつあるというふうに私は見ておるわけです。日本の場合、官庁エコノミストを中心にして何か昨年あたりから未曽有の景気だなんというのんきなことを言っておる人がおるのだけれども、とんでもないことだと思います。これは要するに
経済なり会社の実態を知らないんじゃないか、余り楽観的じゃないかと思います。日本の場合、総資本経常利益率をとるわけです。総資本というのは、
御存じのように総資産に見合いますから、会計的には原価主義ですから、したがって時価で評価されていないわけです。どちらかというと過小になってくるわけです。それから経常利益の方は、これはいま言ったようにたとえば減価償却費は原価主義ですから、したがって水増しできないわけですね。利益の方は多少水増しされているわけですよ。それにもかかわらず総資本経常利益率をとると波を打ちながら低下しているのです。日本の場合は
昭和三十五年の上期八%を頂上にして波を打ちながら下降している。現在景気が非常によかったなんということを言っているけれども、五十四年の下期で五・五%ですから、決して私はいいと思いません。それから問題のアメリカの実質成長率をとってみますと、アメリカの場合七二年と七六年が頂上になっております。実質成長率、日本の場合は一九六八年、
昭和四十三年が頂点になっているわけです。そういうように波を打ちながら下がりつつあることは、これは私のつくったデータでなくて、たとえば三菱総研の資料などを見ていただけばそれが明らかに載っているわけであります。
そういうようなわけで、私はこれは決して悲観説だとは見ていないわけです。そうすると、三%といたしますと
政府の見込みでは大体二%足りないのです。したがって失業を防ぐためにてこ入れが必要じゃないかと私は
考えているわけです。そのてこ入れは、名目のGNPが五十五
年度で二百四十二兆八千億ありますから、それの二%で四兆八千五百六十億円。それで、乗数効果ですね。乗数というのは
御存じのように貯蓄率の逆数です。いま大体二五%くらい。そうすると四分の一ですから、その逆数ですから四です。四で割れば一兆二千億ですね。大体一兆二千億あればてこ入れ可能だと私は見ているわけです。この一兆二千億を一体どこからひねり出してくるかという問題でありますが、
結論的には
歳出の一割カット。もちろん福利厚生とかそういったようなところは切らない。それから人件費の問題にしましても、
行政改革にしても失業を出すような、首を切るような
行政改革なんというのは時代的におかしいと私は思うのです。公務員の高いベースを
民間ベースにまで持ってくるということは非常にいいことだと思うのです。これはいいことだと思うのだけれども、首を切ったりなんか、そんなことはナンセンスだと思うのです。マイナスじゃないかと思うのです。そうすると若干でも人件費は上がります。その分だけたとえば
補助金は二割以上カット、こういうことをやっていただかなければいかぬと思うのです。そういうわけでありまして、したがって捻出するのが数字的に申し上げますと四兆二千五百億円になります。この中で三兆円は赤字
国債の
減額に充てる、残りの一兆二千億をいわゆる
所得減税と
中小企業減税。
中小企業の倒産はこの三月も一千五百件を間違いなく超えると私は思うのです。そうすると事態は決して楽観を許さないと思うのです。やはりこのくらいの
減税をしないとてこ入れにはならぬと私は思います。
どうも失礼しました。