○正森
委員 個人に対するキャピタルゲインの課税を徐々にふやしておるんだ、やるんだと言われましたけれ
ども、中には五項目のうちゼロだというものもあるし、それからわずか八件だとかいうようなのもあるし、そんなもの、いやしくも
日本という国全体の収入から見ればほとんど無視できるようなものなんですね。
私はここに文献を持っておりますけれ
ども、河合信雄さんの「現代企業税制批判」というのですか、そこに引用されている内容ですけれ
ども、こう書いてあるのですね。
有価証券譲渡所得が非課税とされた理由は、それまでの課税実績によれば、その所得の把握が困難で、ごく一部のまじめな申告に依存していたにすぎず(申告所得のうち
有価証券の
譲渡に係るものの割合はきわめて低く、
昭和二十六年分において〇・二五%程度)、課税の公平を期しえない状態にあったこと、さらに調査の徹底を図れば
証券市場に与える
影響が大きいことを考慮し、税制上は不合理であるが、資本蓄積を急務とする当時の経済的要請から、健全な
証券市場の育成を図るために、あえて行われたものであるとされる。
こういうことで、それは税制調査会の「当面の税制
改正に関する答申」からの、どうも引用のようであります。当時でもとにもかくにも〇・二五%といってパーセンテージを出す程度のものは税収を上げていたのですね。ところが、現在では
昭和二十八年に
譲渡所得課税が廃止されてから徐々にふやしまして、特に
昭和五十四年ですか、わが党の東中光雄議員がふざけておるじゃないかというので
質問をして、同一銘柄二十万株以上というのは課税するということになったのでしょう。そのときに引用したのですが、船舶振興会の有名な笹川良一氏がある雑誌で放言したのは
株の
売買は年間五〇回、二〇万株までとなっておる。両方超えたらあかん。たしかに二〇万株なんて、今どき商売にならん。しかし『注文伝票総括』ちゅうのがあって、(ひと口注文の)届け出をしておけば、ひと月に何回、一〇〇〇万株売り買いしても一回ということになる。それでいけば、月に一〇〇〇万株、年に一億二〇〇〇万株やっても回数を超えないでしょう。わたしら、そういう研究するから、ひっかからん
こう言って、何ぼやっても
税金がかからぬということを放言しているから、これはけしからぬじゃないかということになって、一銘柄二十万株以上あるいは二十万口以上はあかん、こうなったわけでしょう。それでどれぐらいその効果が上がったかといま聞いてみれば、もう数えるほどでしょう。それでどれだけ税収が上がったかと言ったら、もうこれだけ
資料の完備している主税局や
国税庁が恥ずかしくてもう小さい声で、それは一々とっておりませんと言わなければならぬぐらいの額なんですね。
〔大原(一)
委員長代理退席、
委員長着席〕
恐らくほんのちょぼっとなんでしょう。そういうことを一方ではやりながら、一方では利子配当所得は総合課税だということになれば、グリーンカードというような手間の置けるものをつくって、どれを調べるかと言えば、
課税対象になる大口の利子配当所得者を調べるのではなしに、マル優で課税してもらうのを勘弁してもらうものは全部届けろ、こういうことで
税金を納めない人の手間をかけて、五千万人、六千万人に迷惑をかけるのでしょう。一方ではそういうことをやりながら、一方では
担税力は大ありに大ありで、そして株の
売買をやってりっぱに利益を得るという人間については、こういうことで野放しにするというようなことは、大臣、これはすこぶるよくないですね。それで、いま、たび重なって、二十八年以来改善してきた、改善してきたという
意味のことを
主税局長がおっしゃるから、まあおっしゃるだろうと思って、じゃどれぐらい税収を上げたんだというのを調べてきなさいと私が言ったら、もう声も小さく、答えられないという状況なんですね。
そして、そういうように不当な優遇をしながら——私は何も、
有価証券取引税を取られる
証券会社なり何なりを弁護するわけでも何でもないのですよ。わけではないけれ
ども、利益があろうがなかろうが、
流通税としてその
取引があれば課していく、その
税率を上げていくというのでは、本当にもうかっているキャピタルゲインの獲得者は、ウハウハ笑いがとまらないんじゃないですか、損したやつだって何だっておれのかわりに
税金を
負担しているわ、おれはもうけてと。
しかもこれだけ、何十兆あるいは二百何兆でしょう、というように
売買されているのに、それで課税しなければならぬのがゼロだとか八件だとか七十三件だとか二百何十件だとか、そんなことないですよ。兜町へ行ってごらんなさい。何万回、何百万回とやっているでしょう。そういうことは大臣、ほっておいたんじゃ、そんなもの、所得税減税しろと言うのはあたりまえですよ。一般消費税反対と言うのはあたりまえですよ。
だから、
行政改革か何かでぶった切るところはぶった切るというのはもちろん大事ですけれ
ども、同時に、
担税力があり、しかも、キャピタルゲインというのはもうけている者に課するのですから、キャピタルロスが出た場合にはそれは控除すればいいんで、きちっと調べればいいんですから。
だから、それをやらないで、ロスもあるからむずかしい、つかまえるのがむずかしいと言うけれ
ども、株の
売買なんというのは、地の底へもぐってなかなかできないのですから、大体は原則として
証券取引所を通じてやるのですから、だから、
証券会社に顧客名簿の提出を命ずるとかいろいろなことをやれば、そんなものは全部つかまるのです。
そうすれば
株式市場が沈滞するとか、やれ投資しなくなるとか
売買しなくなると言いますけれ
ども、それだったらどうですか、国民はグリーンカードか何かで全部届けなければいかぬ、それで貯蓄がなくなりますか、やはり貯蓄はするでしょう。
しかも、そういうぐあいにやって、もうからないのに
税金をかけられるというのじゃないのです。もうかったら
税金を出してくださいというのがキャピタルゲインでしょう、
有価証券課税でしょう。だから、その税額さえ妥当なものにして、税を払っても結構キャピタルゲインとして引き合うというものであれば、それはなさるのが当然であって、いま五項目ぐらいの是正措置をしたからそれで十分だなんていうようなことはとうてい言えないものであるというように私は思いますが、いかがですか。