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1981-02-18 第94回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月十八日(水曜日)     午後三時一分開議  出席委員    委員長 綿貫 民輔君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 小泉純一郎君 理事 山崎武三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君       相沢 英之君    麻生 太郎君       浦野 烋興君    木村武千代君       熊川 次男君    笹山 登生君       白川 勝彦君    中村正三郎君       長野 祐也君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       毛利 松平君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山本 幸雄君       与謝野 馨君    佐藤 観樹君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       堀  昌雄君    柴田  弘君       渡部 一郎君    玉置 一弥君       正森 成二君    蓑輪 幸代君       柿澤 弘治君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君  出席政府委員         大蔵政務次官  保岡 興治君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主税局長 高橋  元君         国税庁次長   川崎 昭典君         国税庁間税部長 小泉 忠之君  委員外出席者         公正取引委員会         経済部団体課長 佐藤 一雄君         公正取引委員会         取引部景品表示         指導課長    波光  巖君         食糧庁管理部企         画課長     松山 光治君         通商産業省基礎         産業局アルコー         ル事業部管理課         長       井上  正君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     浦野 烋興君   山中 貞則君     長野 祐也君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     今枝 敬雄君   長野 祐也君     山中 貞則君     ————————————— 二月十八日  清酒醸造の全原料に米使用に関する請願(小沢  貞孝紹介)(第七四一号)  同(吉田之久君紹介)(第七四二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第四  号)      ————◇—————
  2. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより会議を開きます。  酒税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  3. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 酒税質問の前に大臣に御所見を伺いたいことがあります。  それは、今度の五十六年度予算一般会計伸び率九・九%、一けたは二十二年ぶりということを総理も大臣も本会議で繰り返し述べられておりますが、中身を調べてみますと、非常に無理をした、しょせん無理な理屈ではないだろうかという気がするわけでありまして、御所見を伺いたいのですが、四点指摘をしたいと思います。  一つは、公務員給与一%、昨年も合計いたしますと二千四百億くらいになっていると思います。昨年は人事院勧告四・六一%、その前は三・七〇、その前は三・八四、ことしは政府経済見通しベースになっている民間見通しでも七・五とか言っているそうでありますが、高まるでありましょう。昨年程度か昨年以上になっただけでも〇・五%くらいの伸びに当たるわけだと思いまして、それだけでも九・九では一〇・四にならざるを得ないという気がいたします。幾ら行動派大蔵大臣でも、一%枠におさまるように公務員を削るわけにはいかぬだろうと思います。それが一つ。  それから二つ目は、住宅金融公庫の利子補給の問題、昨年は千七百七十六億、ことしは二千百七十四億。しかし、これは毎年積み重なってまいりますから六百億くらい何か不足をする、それは財投の方に振りかえになっているということのようでありますが、これもいずれは補正か何かでめんどうを見なければならないだろうと思います。  三つ目には、災害問題があります。災害関係予算トータルは、昨年に比べて百五十四億九千九百万マイナスであります。大災害が起こるかどうかは神のみぞ知るわけでありますが、神のみぞ知るでは困るんで、地震予知体制も強化しなければならぬというわけであります。ことしになってもテレビのクイズなどの番組で聞かれるのは、大地震は起きるか、野球の原選手は新人王になるか、山口百恵さんは舞台に再登場するか、地震がトップに出るわけでありまして、減らすのはいかがだろうかと思います。  四つ目には後年度負担国庫債務負担行為、これは防衛費だけではなくて、いままでの慣例、いままでのやり方以上に何か翌年以降という比重を高めているという感じを非常に強くするわけであります。  そういう内容を見ますと、盛んに努力をされた姿勢として九・九%、一けたは二十二年ぶりということを言われますが、何か伸び率を低く見せるための手品の種に使われているということだろうと思いますし、ある評論家にうちの方でヒヤリングをやりましたら、これはある種の粉飾予算であるという話がありましたし、今月の中央公論を読んでおりましたら、「財政再建ごまかし元年」であるという評論もございました。  大臣、その辺は率直にどうお考えですか。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 お答えをいたします。  いずれも議論のあるところでございまして、いろいろな御批判があって当然だと私は思っております。  公務員給与一%の問題につきましては、これはいままでも二%のことも五%のこともいろいろございました。二%つけてもそれで間に合わなかったこともありました。これは今回の予算を組むに当たって、ともかく公務員だけが優先的に予算の先取りをするのか、けしからぬというような御批判も実はございました。それとは逆に、当然民間である程度のアップの見込みが予想されるならば、それを予定してつけたらいいじゃないかという正反対の御議論もありました。  私といたしましては、それらの御議論を踏まえまして、これをゼロにのせるということについてはきわめて現実的でない。それから人事院勧告というものをここ数年ずっと尊重してきておるので、それが急にゼロになってしまうということは、人事院勧告はもう政府は全然構わぬのかというような不安を起こさせるのもいかがなものであるか。一方、財源の上で資金事情は非常に苦しい。そういうような諸般の情勢を考えて、いずれにせよ人事院勧告が出てみないことにはわからぬことでもあるし、それからそのときの財政事情経済事情資金事情、そういうようなものも考慮して最終的には決定するということになっておりますから、今回は一%を計上するということにしたわけであります。それ以上に非常にむずかしい科学的論拠というものが別にあるわけではございません。  二番目に、住宅公庫利子補給について二千数百億円の利子補給があるわけでございますが、特に高金利時代に入ったものですから、一方は五・五%と据え置いた、他方は、原資の方は非常に高いというためにここで数千億円の利子補給というものが出てきておるわけであります。とても財政負担に耐えられない。したがって、今回はこの五・五%というのをもっと貸付金利を上げたらいいじゃないか、金がないんだからというような議論もございました。しかし、それは事業者負担がふえるということと、もう一つは、当面住宅着工数が足らないと景気影響があるという議論がありまして、やはり景気が落ち込むことは困る、しかし、金利を上げれば負担がよけいかかる、財源がないというような点から、今回はその増加分の四分の一をつけて、あと残りを後年度で返済することにして、さしずめその金利は引き上げない、そのかわり財投の方で資金めんどうを見るという、苦肉の策と言ってはしかられるかもしれませんが、そういうことをやったことも率直に申し上げて事実でございます。  それから災害の問題について、これは要するに五十五年度災害発生規模というのが五十四年度発生規模を下回っておるわけです。災害は一年おくれになるものですから、その年にやりませんから、ほとんどは次の年。したがって、五十四年の被害の報告が七千八百億円だ、五十五年の被害見込み額が、全部集計されておりませんが、おおよそ五千五百億円くらいというように見込めるものですから、これは根っこが減るものですからそういうように減る。ことしの発生はわからぬわけです。したがって、それらも考え合わせましてその分を減らしたわけであります。  ただいま私が住宅公庫利子補給予算計上について四分の一と言ったのは五分の一が正しいので訂正をいたしておきます。  その次に国庫債務負担行為、これにつきましては特に防衛費等の問題をおっしゃりたいのだろうと思います。  この防衛費の問題については、実は総額が一兆六千三百四十一億円でございます。しかし、これは五十五年度に対しまして七・九%減っておるのです。実際は一千三百九十三億円ばかり減ったようだから、五十五年度よりは国庫債務負担行為は少なくなっております。  以上でございます。
  5. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 御説明伺いましたが、特に公務員給与の問題、事実の経過はそうだと思いますが、二つ伺っておきます。  要するに、いまの説明を伺いますと、欠陥であるというふうに所管大臣は言われないでしょうけれども、問題を残している予算である、補正その他でいずれ措置しなければならないという部分を含んでいるということは、責任者として当然お認めになる、そういう補正措置をするとかという形での問題であるということ、お認めになりますか。  それからもう一つは、人事院勧告のこと等お話ございましたが、まさか一%で済ますという現実はあり得ないわけでありますから、人事院勧告に対しては完全実施か適切な措置か、いつも大蔵省が一生懸命抵抗するあれ、ありますけれども、とるべき措置をとるということは当然考えておられるのか、その二つ、お答えください。簡単で結構です。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私がいまここで補正を組むなんということは申し上げるわけにはいかないわけでございます。人事院勧告、そのときの先ほど言った資金事情経済事情財政事情、それらを勘案して毎年決めておりますから、ことしもそういうものを勘案して決着をつけることになると思っております。
  7. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 補正のことをいま言えないという立場だと思いますが、いずれにしてもいままでの御説明を伺えば問題は残されているという形での当初予算であるというふうに私の方は理解いたします。  酒税の方に入りたいと思います。五十三年のときにも伺ったのですが、これは最初に大臣にちょっと伺いたいのですが、酒は食品であり米及び米こうじなどでありますから農林省か厚生省、本来的にはそうだと思いますが、何で大蔵省なんでしょうか。いつまでも大蔵省でやるつもりですか。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはもう長い歴史上そうなっておるので、私もどうして大蔵省なのか、やはり酒税は国の財政の基盤になっておりますから、そういう関係で酒とかたばことかは大蔵省が担当している、そういうことじゃないか、詳しいことは政府委員から答弁させます。
  9. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 何か前回伺ったときにはお役人の方が、なぜ酒は大蔵省か、それは重要な財政物資でありましてという専門語を使われましたが、それと比べたら大変率直なお話ですね。ただ、歳入全体の中に占める酒税比率もどんどん変わってきておりますし、それから時代も変わってきておりますし嗜好も変わってきておりますから、それらをどうということをこれから論じたいと思うのであります。  お役人の方に、主税局の方に伺いたいのですが、一つは酒の税金は何が基準か、アルコール度か、値段か、品質か、あるいはたくさん売れるからよけい税金を取るのか。  もう一つは、酒税国際比較、いろいろありますからビールウイスキーだけで結構です。ビールウイスキーアメリカドイツフランスの計数を言ってください。
  10. 高橋元

    高橋(元)政府委員 酒の税金は何を基準として決めるかという御質問でございますが、外国酒税を見ておりますと大体蒸留酒アルコール分に応じてかけていくという考え方が多いようでございます。しかしながら、日本酒税法はそういう考えをとっておりませんで、分類差等課税と俗に申しておりますけれども、級別種類別品目別、そういったことで税金に差を設けていくわけでございます。たとえば清酒税金合成清酒税金と違えていく、清酒の中でも特、一、二級というふうに分けていく、ビールウイスキーとでそれぞれまた税率に差を設ける、こういう考え方をとっております。  と申しますのは、やはり消費税でございますから、消費担税力と申しますか、高級な消費にはより重い税負担をお願いするという形に構成をしたわけでございます。そういう基準が一体何であるかと申しますと、これはいろいろなものが実は観念的には入ってくるわけでございますが、過去の酒税負担水準と現在の税率連続性をどうしても持たなきゃいけません。そういう過去の負担水準でございますとか国民の所得、消費水準でございますとか酒の生産消費の態様でございますとか、ほかの消費税とのバランスということを考えながら全体の財政需要の中で酒税で受け持っていただく金額にふさわしい税率水準というものを決めていくわけでございます。  それから、しからば現在の税負担水準がどうなっておるのかということをビール蒸留酒国際比較を答えよということでございますが、それぞれの国で国産蒸留酒というものがございます。日本の場合には特級ウイスキーでございますが、これの税負担率は四三%で税額は一びん七百六十ミリリットルで千七十四円でございます。アメリカの場合には、これは恐らくバーボンウイスキーだと思いますが四九・六%でございます。もっとも酒の値段が安うございますので酒税額は五百三十六円。西ドイツは、これはウイスキーでございますが五〇・五%。ただし付加価値税を含んでおります。その税額が八百四十八円。フランスはブランデーでございますが四二%。これも付加価値税を含んでおります。千百五十八円。それからイギリスが、これはジョニーウォーカーでございますけれども、スコッチウイスキーが六五・九%。これも付加価値税を含んでおります。税額で申しまして二千三百十二円。  それから、ビールはこれと税負担状況を異にしておりまして、ビールは御承知のように国産ビールびん一本当たりで申しますと四二・五%、百一円九十七銭という税負担でございますが、アメリカの場合には一二・八%、ドイツは一八・七%ギフランスが一六・一%それからイギリスが二八・二%でございます。ビールの場合には容器の大きさが違いますので個々の税額を申し上げるのは、もし必要があれば後ほど申し上げさせていただきたいと思います。
  11. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いまの数字を伺いますとビール税金日本はずば抜けて高い。高橋さんおっしゃったようにアメリカ一二・八、イギリス二八・二、フランス一六・一、西ドイツ一八・七。日本は現在四二・五、この法案では四七・九となるわけであります。  それで伺いたいのですが、何で日本ビールはずば抜けて高いのか。さっき私は酒の税金は何が基準かということを申し上げたのですが、この状況を見ますと売れるものからたくさん取るというのが一番わかりやすい説明じゃないだろうかというふうに思わざるを得ない。いままでの政府の御説明では、外国では水がわり日本では致酔飲料ですか、酔っぱらうものという御説明でございましたが、五十三年のときも申し上げましたが、年とともにどんどん時代は変わっているということであろうと思います。いまや若い娘さんがお仕事帰りに大ジョッキをみごとに飲む時代ですから、酔うためにあるいは営業用の場所で飲むというのと違った時代であろう。それから、統計を見ましても、この五年間に三割、この十年間にも七割ぐらいビール伸びているということになるであろうと思います。  ですからいままでの説明では私はちょっとだめなんだと思いまして、やはり過去ではなくて将来を見通した形になるべきなんではないだろうか。また、考えますと、資料を繰ってみましたら、昭和四十九年三月のオイルショック後の総合物価対策、このときには五十三の品目価格凍結政策、そしてその中では、お酒の中ではビールだけが生活関連物資としてこの価格凍結品目に入っている。これも酔っぱらうために飲むんだという説明とは違った現実だと思いますね、政府自体がおやりになったことですから。そういうポピュラーなまたアルコール度の低い飲料として位置づけられているということを含めて考えておく必要があるのではないだろうかと私は思うわけであります。  それで、酒税全体の値上げに私どもは反対でありますけれども、特にこのビール値段というものも国際的に見ましても時代と合わないということになっているのではないだろうか。それで伺いたいのですが、一つは、五十四年度あるいは五十五年度見込み酒税総枠中のビールからの税金比率幾らでしょうか。それから、今度の酒税による家計への影響比率で言えば、家計にあるいは消費者物価にどれだけ影響すればその分の何割は何ぼと出るわけですから、その数字の答えは要りませんが、総枠中のビール比率酒税家計への影響を伺いたいと思います。
  12. 高橋元

    高橋(元)政府委員 これは五十五年度の実績見込み、過般の補正予算の税収に計上いたしたものでございますが、それの税額が七千九十億でございまして、全体の酒税一兆四千二百七十億の中の四九・七%でございます。五十六年度は、改正後で申し上げますと、一兆八千三百億円の酒税の中で九千三百三十億円を予定いたしております。その比率は五一・〇%でございます。なお、全体の増収額は、ただいま申し上げました五十六年度ベースで、ビールは、全体二千八百三十億円のうち千六百七十億円ということでございます。  酒の値上げが、生活なり物価にどれだけ影響するかという御質問でございますけれども、物価に及ぼす影響から申し上げますと、今回、改正案をもって御審議をお願いいたしております酒税値上がり額だけ酒の小売価格が上がったと期待しました場合には、酒類全体のCPIの中の割合が一・八七%でございますから、そういうことをよりどころといたしますと、CPIに及ぼす直接の影響は〇・一二%でございます。なお、そのほかに外食という項目の中にビールが入っておりますので、その値上がり分を加算いたしますと〇・一六%程度というふうに思います。  それから、家計に及ぼす影響ですが、お酒を飲まれる量は人によってはなはだ違うわけでございますので、たとえて、清酒二級を毎日一合ずつ晩酌でお飲みになる場合の家計考えますと、月に約四十五円、年間で五百四十円ということになろうかと思います。それから、ビールを毎日飲むということですと、月に七百四十円ぐらいの税負担の増ということになろうと思います。
  13. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いずれにしても、国際的に見ましたらビール税金はずば抜けて高い。それから、酒税の中に占めるビール税金比率は非常に大きい。そして家計への影響は、CPI比は〇・一二%と言われました。〇・一二というとごくごく微量という感じがするわけです。しかし、たとえば一年じゅう三百六十五日、毎日ビールを一本飲む人、これは健康のために肝臓を休める休肝日が必要だという説もありますから、お客様が来たときには五本飲んで飲まない日が三日あるとかあると思いますが、仮に、毎日一本、三百六十五日、そうしますと、奥さんが家計から出すのが八万七千六百円。これが二百六十四円六十九銭、繰り上げて二百六十五円、この値上がり分が九千百二十五円。その値上がり分を勘定いたしますと、いままでの御予算では三百三十日しか飲めない。したがって、三百六十五日のうち三十五日はノー・ビール・デーである。酒は飲まない。まあ実質賃金が赤字という状態が続いているわけでありますから大変味気ないことになるのではないだろうか。ですから、お酒の税金についても、数字で言えばCPI〇・一二の影響ということになるでありましょう。しかし、家庭の実生活からすると実際はそういうものでありまして、酒は涙かため息かという言葉がありますけれども、私はお酒は余り飲めませんが、そういう言葉気持ちは大変よくわかるような気がするわけでありまして、そういう言葉が、情緒を込めた言葉でなくて哀愁を込めた言葉になってはうまくないだろうと思うわけであります。  そういう意味で、この法案値上げ全体についてもそうでありますが、私はひとつここで検討をお願いし、また見解を伺いたいのは、酒税全体のあり方あるいは種類間の負担バランスなどを含めて、もう一度時間をかけていろいろと再検討をし、見直す必要はないだろうかということです。これはいろいろな理由があるだろうと思います。たとえば業界からもこの五年、十年間の御商売の変化によっての御要望もあるようであります。消費者意識も、さっきもちょっと申し上げましたが、いろいろと変わってきているということがあると思います。あるいは大蔵省でお決めになる等級等級によって税額が決まるわけでありますから、税の立場から見た等級、それと現実ですね。たとえば制限販売価格という問題もあるようでありますし、特級よりも高い一級とか、一級よりも高い二級酒とかいう現実も生まれている。外国に行ったら、一応のアルコール度による税率の何段階かはあるけれども、実際の価格その他は品質が主になって違ったレベルで流通しておる。あるいはまた五十三年、今度五十六年にこの税率改正をしようというわけでありまして、前の経過から言って、では従量税部分税負担分が下がったからまた上げましょう、上げるにしても必ずしも統一ではないばらばらという面が生まれるとか、いろいろな問題が生まれてきているのではないだろうかというふうに私は思うわけであります。ビールばかり言って恐縮でありますが、五十三年に大分上げた。五十六年にまた上げて四七・九という税率になる。また二年か三年して五十八年か五十九年にはまた上げて、ビールを飲むのか、あわを飲むのか、税金を飲むのかというようなことになっていくことも予想されるわけであります。  そういう気持ちを持ちながら私はこの間地元の酒屋さんを回りました。それで業界の新聞を見ましたら、税制課長大山さんが何かお話をなさったそうで、それを見て非常に感心したのです。これは昨年の暮れの醸界タイムスで、現場を担当されて第一線の責任を持たれているなりに、いろいろな問題意識御苦労があるのだろうという気持ちを持って読んだのですが、たとえば今度税制改正酒税法改正するとしても、根本的に考えてみてこの二、三年かけて長期的に勉強しなければならぬという問題意識を持っております、私もそうだろうと思います。それから等級制度についても大きな検討課題ということですし、それからビールウイスキーなど高い税負担酒類との関連の問題、種類間の負担バランスについてもどうなのか、私はざっと読ましていただいて、やはり現場消費にも生産の方にもタッチをされる立場でいろいろな問題意識を持って勉強され、お考えになっているのだと思いました。また大山さんが率直に言われているように、今度の改正ではこういう問題意識を煮詰めるところまではまとまらぬというふうなのも現実だろうと思います。  大臣、私はそういういまの御苦労なども含めて考えますと、酒税のあり方全体を少し時間をかけていろいろな問題点を深めて検討してみる、あるいはそういう中で、世界じゅうでずば抜けて高いビール税率が果たしてこのままでいいのだろうかと考えてみる、何か赤字財政に追っかけられて一生懸命税制を探さなければならぬので大変苦労されるわけでありましょうけれども、そういう視点がやはり必要ではないだろうかという気がするわけであります。何かそういう努力のあれがありませんと、町で話をしておりましても、今度ビール税金は四七・九%になるのですと言いますと、アルコール度一二%とか何かレッテルに書いてありますけれども、あの下に税金は四七・九とか、何ならその下に大蔵大臣のサインか顔写真でも入れておけば大変税意識が高まっていいんじゃないかと思うわけでありますが、いずれにしてもいままでの経過でどんどんどんどんやってきたということをもう一遍振り返ってみて、あるいは今後に含めてじっくり考え直してみるという問題意識が当然必要ではないだろうか。さっき申し上げた種類バランス、それからさっきの税負担のウエートのあり方、あるいはずば抜けて高いビール税率を含めてですね、ということをどうお考えになるでしょうか。
  14. 高橋元

    高橋(元)政府委員 仰せのように、現在の酒税法は全文改正をいたしましたのが三十七年でございます。当時は間接税に非常に重かった税制であったものでございますから、かなりの種類の酒につきまして、かなりの幅の値下げをいたしましたと同時に、酒の種類間のバランスをとった税率を決めたわけでございます。それから約二十年経過いたしておりますが、当時の頭で申しますと、たとえば清酒特級ウイスキー特級、これは大体小売価格から五〇%ぐらいの税負担というふうに定まっておりました。それからビールも五〇%ぐらいの税負担であったわけでございます。その後原料事情が米に偏っておるということで、清酒につきましてはかなり原料価格が上がりまして、したがって小売価格の上昇がかなりございました反面で、大規模生産の利益のありますビールとかウイスキーにつきましては、また消費伸びてきましたそれらにつきましては、それほど小売価格の上昇というのはなかったわけでございます。原料事情、それから消費伸び、そういったことを前提といたしましてかなり現実小売価格の推移なり税負担のそれぞれの種類間のバランスというのは変わってまいりまして、二十年たってみますと、清酒特級税負担は三三・六になっており、ビールが四二・五になっており、ウイスキー特級が、これは角びんでございますが、四七・三というような形になっております。オールドでございますと四三でございますが、そういうふうにかなり変わってまいりました。それが一つでございます。  それからもう一つは、日本酒税法は戦争中にいまの酒税法のもとができたわけでございますが、どちらかと言えば酒が足りない状態でできた法律であったかと思うわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げた分類差等課税と申しましても、級別によって高い級のものは高い税金ということになっておりますが、高い級別は申請によって受けるということでございます。品質のいい酒をつくりましても国税局に鑑定に出さなければ、また中央酒類審議会の議を経なければ特級とか一級とかいうふうにならないで、すべて二級酒で売られるわけでございます。お話しございましたように、一升一万円という二級酒もあるわけでございます。それはやはり需給関係が基本的に変わってきた、それから消費需要もそれぞれ変わってきたということから起こってきておる変化であろうというふうに思います。  そのほか酒類業の各業種につきましてもそれぞれの産業行政上の問題というのも発生してきておりますので、今回は、改正をお願いいたしております酒税法につきましては昭和三十七年以来の分類差等課税の五十三年改正時点の状態に今回の税負担率を戻すということを考え方といたしておりますが、より中期的に時間をかけまして、たとえば酒類問題、酒税問題についての懇談会というようなものをつくりまして、制度、それから執行、それから業界、それから学識経験者というようなところでこれからのあり方というものを根本的に考えていく必要はあろう。いままさに伊藤委員のおっしゃるように私どもも考えておるわけでございますし、そういう場を近いうちにつくって勉強はしたいと思っております。  一言つけ加えさせていただきますと、日本のその分類差等課税のもとでは、ヨーロッパないしアメリカ税制と違いまして、蒸留酒に重くて醸造酒に軽いというのが外国税制でございますけれども、日本の場合には必ずしも醸造酒に軽いという税制ではないわけでございます。清酒特級、それからビール、それぞれにつきまして、蒸留酒の中で、たとえばスピリッツとか、それから普通のその他のリキュールとかいうものに比べてより高い税金をかけております。そういう長い間の伝統であり、長い間のそういう嗜好、習慣でございます。そういうものを無視してヨーロッパ並みの税負担でいいというふうに私どもも思いませんし、そういうことも含めまして中期的な観点で検討はしなければならないというふうに存じますが、一概に外国に比べて日本ビール税負担率が高いから外国並みに下げるという御議論には首肯いたしかねる次第でございます。
  15. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣、いま主税局長がお話しになりましたが、やはりメーカーから見た立場、それから酒の種類間のバランス消費との関連、それからいままでの酒税の上げ方によって、その時点時点での方法でやってきたものによって起こっているさまざまなひずみとか、また確かに日本日本の土醸ですから国際水準と全くイコールかどうかということはあるでしょう。しかしビールの問題は、極端な違いがあるというのも、今日の国際化時代にはいかがだろうか。  担当課長さんも局長さんも中期的に見て勉強し、検討してみたいということを言われましたが、大臣として、これは政府税調かあるいは行政としても検討しなければならぬということではないだろうかと思います。このまま繰り返し繰り返し増税時代に入ったら、本当にこれは酒イコール楽しい飲み物ではなくて、酒イコール税という考えに皆なってしまうというようなことだろうと思うのです。その辺は大臣としてもどうお考えになりますか。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 酒の税金税率については長い歴史があります。それから消費時代とともに非常に変わってまいりまして、売れるものはうんと売れる、売れないものは値段がうんと高くなってしまって売れないとか、いろいろございます。一方、米の方は余ってしまって生産調整しなければならない。それで各党とも米の消費拡大というのは、どの政党でもみんな熱心です。これはうんと消費をふやした方がいいと、みんな国会決議なんかもございましてね。そういうようなことなども考えまして、全体として私は今回の税率の決定というものはいろいろな事情を総合的に考えて決めたものだ。しかしながら、やはり先ほど言った従価税か従量税かという問題は、これはもう非常にいろいろ議論のあるところなんです。二級酒で高いものがあって、それで従価税にしなければならぬじゃないかとかいろいろな議論がある。これも私は理屈、一つの筋道だと思っております。一長一短、捕捉の仕方がむずかしいとかいろいろあるらしい。しかしながら、現在それらも全部統合して抜本的に考え直すということは時間的に余裕がない。長期、中期的には、あなたのおっしゃるようなことも十分に踏まえて検討は進めていきたいと思っております。
  17. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それはぜひお願いいたします。その際に、国際水準からばかに高いというビール関係もぜひ検討していただきたいと思います。  次に、中小の清酒メーカー、いわゆる地酒の現状と振興について伺いたいと思いますが、最初に実態を伺いたいと思います。  いわゆるおけ買いの実態ですね。これは細かく言ったら——資料や新聞で見ましたから結構ですが、大体実態をどうとらえられているのか、どう指導しているのか、その実態に対する対応、これが一つ。  それからもう一つは、公取にもお越しをいただいておりますが、国税庁側の方でこの表示問題についてどうお考えになっているのか。ビールウイスキーは完成して中身を読ましていただきましたが、清酒の表示問題、また公取の方で公正競争規約のことで御苦労なさっているようでありますが、公取の方の取り扱いのお考えも伺いたいと思います。私は気持ちとしては——いろいろ複雑な関係があるようです。いまおけ買いをしているのに対して、おけ売りの中小メーカーの立場から言ってどうなのかという現実の事情もいろいろあるようでありますが、ただ私は中長期的に見てやはりパワーの大きいものが得をするということがない、フェアな関係というのは、取引の面でも、表示の面でも行われるべきであろうという気がするわけでありまして、その辺どうお考えでしょう。
  18. 小泉忠之

    小泉政府委員 執行の問題に関連する御質問でございますので、国税庁からお答え申し上げたいと思います。  第一のおけ取引の実態の御質問でございますが、私どもはおけ買い、おけ売りという言葉は実は使っておりませんで、正確に申しますと未納税取引という言い方をいたしております。これは四十八年以来注文生産、注文契約による委託生産という方式を前提といたしまして行政指導を行っておるということでございまして、いわゆるおけ買い、おけ売りの取引をできるだけ安定させるということとそれから品質を合理化していく、同時にまた表示問題にも対処していくということで一貫してそういう指導を行っております。したがいまして、私ども未納税の取引というふうにいたしておりますが、主としてこれは御質問ございましたように大手メーカーが自己の製造分だけでは需要を賄い切れない、非常に微妙に変化いたしております消費者需要を賄うために、やはりその不足分を他のメーカーに委託生産を行うということで行われているわけでございますが、その実態は御指摘ございましたようにかなりの数量あるいは生産者の面でもウエートを占めております。大体未納税で移出する製造場、これは全国で二千場ございます。ざっと申しまして全国で二千九百場、メーカーございますが、そのうちの三分の二ということになります。これを買います方、移入いたします方は九百四十三場ということになっております。その取引数量は先ほど申しましたようにかなりのウエートを持っておりまして、三分の一ということになっております。私どもといたしましては、やはり品質面、数量面、相互に補完し合いまして、消費者のニーズにこたえる方式としてこれはやはり相互に補完し合いながら合理化していってほしいというふうに考えております。  さらに、その実態を申し上げますと、取引の上で大手メーカーが未納税移入をするという場合には、その移入する酒の原価の面でかなり最近ば高くなっておるということで、大手メーカーが自分でつくるお湾よりも平均いたしますと約一〇%ぐらい高い酒を買ってブレンドして消費者に供給しておるということでございます。反面、大手メーカーではしかしかなりの製造余力がございまして、同時にまた消費が停滞ぎみでございますので出荷が伸び悩んでおるということでございます。一方では、先生御存じのように未納税取引酒を混和することはどうもよくないのじゃないかというような風潮が、私どもは誤解だと思っておりますが一般の消費者にあるというようなことがございまして、大手メーカーとしては未納税取引をできることなら減少させていきたいという意向が年々強くなってきておる、こういう状況でございます。しかし私どもといたしましては、清酒にとって、製造する場合にいろいろな酒をまぜる、ブレンドと申しますが、これは品質を向上させるあるいは酒の品質を均一化させるということでかなり重要なポイントでございます。御存じのように他の酒類ウイスキーにとってブレンドするということにつきましては一般の理解は非常に高まっておるといいますか、ウイスキーをブレンドするということについてはかなり理解が進んでいるわけでございますが、どうもそういった点について、ブレンドすることが悪いことじゃないかというような意識、風潮が一般の消費者の方に強いということが言えるのではないかと思います。私どもとしてはしかし、適度な安定した取引が継続して未納税移出、移入という形で行われることを一方では期待しているわけでございますが、いずれにいたしましてもこういった未納税取引の問題を解決いたします場合に、やはり安定した形で円満な解決を図るということがポイントではないか、したがいまして取引相互間の協調とか話し合いということが大事ではないか、したがいまして取引を停止するといった場合にはやはりそれ相応に見舞い金等を支払っていくことが大事ではないかということで啓蒙的な指導を私どもいたしておるわけでございます。  もう一つの点、御指摘ございました表示の関係でございますが、これはおっしゃいますようにかなりのブレンドが行われておりますけれども、先ほど申し上げましたようにお酒のできがいいか悪いかということは、産地の差というよりもむしろ製造方法の差によって結果が出てくるというふうに考えておりまして、四十八年度以来注文生産方式ということで行っておりますので、この未納税移入を図る企業側はかなり細心な注意をもって自分の酒、自社の酒として、注文に当たっては技術的にもあるいは品質、規格的にも細部にわたって指導して、しかもでき上がった酒については十分な検査をする、そうして自社の銘柄に合うような酒をつくらしておるということでございまして、業界で言われております言葉を援用いたしますと、お酒はやはり一こうじ、二もと、三つくりというようなことでございまして、産地によるよりもやはりつくり方によるということでございます。しかしながら、つくりました酒について消費者に余り誤解を与えるようなことでは問題が多いということでございまして、現在業界では自主基準がございます、よく御存じのとおりでございますが、公正競争規約をできるだけ公正取引委員会の方で御認可していただきたいということで作業を進めておりますが、その自主規約の上では、〇 ○県産酒とか○○の清酒といったような場合にはやはりちゃんとそこでつくったものというふうに自主的にいたしておるということでございます。
  19. 波光巖

    波光説明員 公正取引委員会清酒の表示に関する公正競争規約の設定につきまして指導いたしてきておるところでございますけれども、業界が作成しております現在の規約案ではいまだ問題点が残っておるという状況でございます。すなわち、いわゆるおけ買い表示に関連します問題につきましては、消費者はおけ買い酒を含めて清酒の産地をすべて表示しろ、こういうふうに言っておりまして、業界ではおけ買い酒についても品質あるいは規格、製造方法等につきましても技術指導を行っておりまして、自醸酒と全く変わらないので表示する必要はない、こういう意見でございます。こういうふうな意見の対立がございますので、公正取引委員会としましては、清酒の表示に関しましては当分の間業界の自主規制によらざるを得ないのではないか、こういうふうに考えております。
  20. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 詳しい御説明を伺いましたが、さっき申し上げたようにいずれにしろ大きな資本力と宣伝力を持ったものが得をするということではない、中小のメーカーに温かい配慮をする態度が必要であろうというふうに思うわけでありまして、何かおけ買いの制度ができた、こういう仕組みができ上がった経過を、私お酒を余り飲まないのですが審議ですから一生懸命勉強して読んでみましたら、米不足の当時満州でできた三倍何とかという方法とか、それからいろいろな等級表示などで非常に均一化したものがたくさんできるような仕組みになってしまった、そういう中での経過とか、いろいろとこういうシステムになった経過を伺うわけであります。  また今日、さっきもお話があったような問題もそれぞれぶつかっているということも聞くわけでありまして、表示のことも含めて大手、中小メーカーそれから消費者立場を含めた十分な措置をとるように要望をしたいと思います。  中小清酒メーカーに関連をして次にもう一つ伺いたいのは、いわゆる近代化事業、構造改善事業ということについてであります。  聞きますと、第一次、第二次と計画をやってきて第三次近代化計画、五十二年から五十六年までいろいろと対策をとられているようであります。規模、資金はわずかなようでありますが、中央会もいろいろな努力をしている、高度化資金とかあるいは転廃業とか。ただ、私この間地元ですから神奈川の地酒の酒屋さんを回っていろいろ話を聞いてみたのですが、二つ申し上げたいことがあるのです。  一つは、やはり内容を充実して延長してもらいたい。五十六年度でおしまいというんではなくて延長してもらいたい。そういう中でたとえば転廃業でもせざるを得ない場合でも、その制度でやってもらえるのは一千万か二千万のお金ということになると、いまどき一軒うちを買うんだって四千万、五千万とか一億なんという建て売り住宅が出ている時代ですから、一千万、二千万の貸与をしてもらってもどうにもならぬだろうというふうに思うわけでありますが、五十六年度以降の計画を前向き、積極的に考えていくという要望が一つ。  もう一つは、さっきもちょっと伺いましたおけ買い、おけ売りなどについてのさまざまな最近の状況などを踏まえながら、やはりもっと多面的な知恵を出した指導をやったらどうだろうかというふうに思うわけであります。地元神奈川の地酒のところを回って聞きましたら、七、八年前には神奈川県でも半数以上がおけ売りだったそうであります。ところがいまは一割ぐらいになった。九割は地元で愛されて飲まれている。なぜそうなったのか、その経過を見ますと、メーカーの方も中小メーカーの方もお互いにいい品質の物を、また市民に親しめる物を責任を持ってまじめにやろうではないかという努力をして、そうして今度は酒販組合、小売屋さんの方ですね、酒販組合の方でも愛好して、両者提携して愛される地元の酒を飲もうという運動が進んだ。聞きましたら、当時の東京国税局の担当の方もあるいは厚木その他税務署の方も、署長さん方も側面的に御努力をいただいたようであります。  私は行動派の大臣ですから聞きたいのですけれども、やはりそういう話を聞いて、全国でそんなことをやっているのかを聞きましたら、いや、最近地元の新聞、テレビも特集して、バス会社もあれして地元の親しめる酒を飲もう。そして地酒に美酒ありというキャンペーンとか記録を見ましたらずいぶんあるのですね。さすが神奈川と思ったのですが、そういうふうなことが進行していけばいろいろと矛盾もなくなるし、あるいは親しめるいい酒も飲めるだろうし、なつかしい気持ちでお酒を飲めば話をすることもいい話になるであろうし、酒は涙かため息かじゃなくて、百薬の長にもなる可能性があるというようなことだと思うのですね。そういうことを含めた多面的な行政サイドの努力、今後の対応をひとつやっていただきたいと思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  21. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私も大賛成でして、私の選挙区は栃木県なんですよ。栃木県でもあそこは観光地です。日光とか那須とか鬼怒川とか大変な人が来る。そこで地元の酒が使われているかというと昔は余り使われてない。そこであなたの言うように、地酒が非常にいいのがあるからみんなで旅館協会とか何かで宣伝をしてそういうものを使ってもらったらいいじゃないか、お互いにいいんだからというようなことでかなり力を入れまして効果を上げています。ですから、そういうことは特に中小メーカーの保護、育成という点で大切なことじゃないか。ただ、いい酒ができても一級とか特級にして売るのには宣伝費をうんとかけなければならぬ、そのためにおけ売りしてしまうのですね。ですから私は、そういう趣旨に沿って今後どういうふうな手だてがあるか、細かい点は組合とかあるいは実務者から聞いて、いいことがあればそのような方向を進めさせることに賛成をいたして応援をいたします。
  22. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ぜひこれはやっていくようにお願いしたいと思います。  時間ですから、最後に一間だけお願いいたします。  今度の値上げ私は反対ですが、何か値上げに伴って端数調整のことをどうするのかということが話題になっているようであります。何か報道を見ますと、切り上げて新しい小売値をつくる。ビールの場合には二十四円六十九銭ですか。要するに三十一銭。ところがこれはコンマ以下、円以下ですからあれですが、たとえばオールド、ウイスキーの場合二千七百七十円を新しい価格にする。現在は二千五百円。それに対して二百五十九円九十九銭。差額が十円一銭。清酒特級の場合には新しい価格が二千三百九十円。現行価格が二千二百円、プラス新しい税金が百七十八円五十六銭。その差額が十一円四十四銭。ちりも積もって山となるで、ビール七十億本消費でありますから二十一億七千万。酒を全部合計するとこの端数調整の額が三十一億四千万円というふうなことを聞くわけでありますが、私は当然ですけれども、さっき申し上げたようにため息ついて酒飲まんようになっちゃ困る消費者立場ですね。  それからもう一つは小売店の問題。全国で十数万あるそうでありますけれども、たとえば平均どころで五百万円程度の月間売り上げとしますと、今度の値上げによって何十万円ふえる。それによってマージン率が下がる。前回五十三年の値上げのとき伺いましたら、その程度のことは今回は小売店はがまんしてもらいたいという御答弁でそういうことがございましたが、がまんの方も二回、三回と相続くということでは困るのだろうというふうに思うわけであります。主としてどっちの方角に向かうのかということはあると思いますが、そういう二回も三回もがまんしてもらうようにしないために小売店の方あるいは消費者の方、適切な措置をとって、三十一億四千万円というお金でありますから、全部に割り振ればわずかかもしれませんけれども、公正な措置をとらなければならないということでございますが、最後にそのことをお伺いいたします。
  23. 小泉忠之

    小泉政府委員 価格の問題でございますので、国税庁の方からお答えさせていただきたいと思います。  今回の増税に基づきまして個々の商品にどういう価格設定が行われるかということでございますが、これは昭和三十九年以来基準価格を廃止いたしておりまして、それ以来一貫して自由価格というたてまえで価格設定が行われておるという現状でございます。しかしながら、今回の増税率が確定いたしました暁には、その後この価格の設定がそれに基づいて行われる、こういうことになろうかと思います。これは基本的にはやはり間接税でございますので、スムーズな税額の転嫁が行われるように、私どもとしても環境その他については関心を持って見ていくということでございますが、基本はやはり個々の企業が市場の状況あるいは経営状態というものを判断いたしまして決めていく。その場合にいろいろな環境にマッチするように、スムーズに適正な価格になるようにということで、必要があれば私どもも業界に対しても指導はいたしますけれども、基本的にはそういう形でございます。  御指摘のマージンの問題でございますけれども、これも最近の情勢は先ほどもお話ございましたようにかなり酒類業界、特に清酒等につきましては需要の伸び伸び悩んでおる、停滞ぎみであるという状況がございますので、この増税額価格に反映いたします場合に、たとえば増税額に伴う直接的な経費と申しますか、金利負担等もその税額が上がることによってふくらむという問題がございますので、こういった直接的な経費につきましてはこれが価格に転嫁できるような配慮ということも一方では必要ではないかというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても増税額が確定した後の問題でございます。適正に指導してまいりたいと思います。
  24. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間になって済みませんが、これが法案が通った後とか適正とかいうのじゃなくて、要するに行政の姿勢としては便乗値上げはさせません。この前もそうでしたよね。それから端数だって、いま何銭というお金はないから、当然端数は出るでありましょう。自動販売機、コインのあれからいって当然しかるべき形になる。その場合にはとにかく当然ですが、さっき申し上げたように小売店、消費者という方向に、わずかのお金でもたまれば大きいのですからきちんとなる、要するに、そういう意味での行政指導をきちんとする。何も私は値上げが通ることを前提として言っているのじゃないのですよ、一般論としてですね。そういう姿勢をきちんととって消費者と小売店などをにらんでやってもらいたいということなんで、そういうことでやるということでしょう。
  25. 小泉忠之

    小泉政府委員 おっしゃるとおりでございまして、計算上といいますか形といたしましては、今回はマージン率は率としては低下するわけでございますが、額としては下がらないという状況でございます。一方ではしかし、流通業界の経営が非常に厳しい状況でございますので、同時にまた物価といった問題も勘案しながら反映していくということでございますけれども、やはり取引慣行で価格の単位というのは五円、十円刻みでございますので、増税額を前提といたしましてそういった問題を含めた形が、端数が出るという問題もございますので、これは取引慣行に従って、五円、十円未満の端数の調整をしていくというようなことになろうかと思います。
  26. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間ですから質問を終わります。
  27. 綿貫民輔

    綿貫委員長 柴田弘君。
  28. 柴田弘

    ○柴田委員 それでは、質問の前後を変更いたしまして質問させていただきます。  大蔵大臣に最初に質問しますが、今回の酒税を最初といたしました税制改正、九・六%から二四・二%の酒税、それから法人税率の二%の引き上げ、こういった税制改正を初めといたしまして、物品税ですとか、印紙税ですとか、あるいは有価証券取引税、とにかく現行税制の枠内において各般にわたり、一兆三千九百六十億円に及ぶ大増税である。一方国民生活、これは郵便料金を初めといたします公共料金の値上げ、あるいはまた中小企業を中心としての企業倒産も、この一月だけでも史上最悪の状態である、こういうふうに言われております。  こういった中で、財政再建の道をいわゆる行政改革、歳出の削減合理化ではなく、安易な増税路線で達成しようという姿勢、これは私は国民のコンセンサスが果たして得られるであろうかどうか、大いに疑問に感じているわけでございます。国民は財政再建の重要性というものはよく認識をしておると思う。しかし、政府がやるべきことをやらないでただ財政再建の道を大増税で突っ走るということ、これに対して私は大きな不平と不満が国民の中にあるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。  それで、以下三点につきまして、私は今回の増税に関しまして大臣の御所見をまずお伺いをしていきたいと思います。  一つは、御案内のように昭和五十四年度の会計検査院の決算検査報告書、これによりますと、検査院から不当事項、経理の不適正というふうに指摘されたのは、各省庁、公社公団などの特殊法人合わせまして百七十九件、金額で五千七百二十五億六千六百万円、前年度の百九十三件、二百六十九億八千五百万円と比べまして、確かに件数は減ったわけでありますが、金額は二十倍以上、飛躍的にふえております。その中で予算のむだ遣いとされたのが百七十六件ございまして、三百三十六億四千五百万円、これは前年度に比して二倍以上ということであるわけでありますね。しかもこの五十四年というのは、記憶に新しいわけでありますが、鉄建公団等々の空出張が問題になりまして、いわゆる公費天国が批判をされているといったときに、そういった火の手を横目に見ながらこの不正経理は続けられたというわけであります。まさしく論外であると言わざるを得ないと思います。この点についてまず御所見を伺いたい。     〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕  それからついでに言っておきますが、第二点は行政改革の問題であります。  これも一昨年末の閣議決定によりまして、特殊法人を五十五年度から七年間に十八法人削減をしていこうということであったわけであります。その初年度である今年度の五十五年度は、見かけでは数が減ったものの、看板をかけかえたりあるいは改組や移管、それに伴う統廃合と引きかえに新設法人の誕生、そして高級役人の天下りポストはたった一つ減っただけである。それで補助金の問題でありますけれども、こういったことに関連をしまして、国の支出は節減どころか、私の計算によりますと二百三十六億七千七百万円もふえておる。人員も民間からの出向六十人を引いても三百三十人プラスされてしまった。こういった状態で肉を削って骨に至るという行政改革というのはどこへ行ってしまったのでしょうか、こう言いたいわけであります。この行政改革の問題についても御意見を伺いたい。  それから最後に、最近マスコミをにぎわしている私立医科大学の隠し寄付金の問題と補助金の関係であります。  これはもう説明するまでもありませんが、寄付金額、学債の過少申告によって、結果的には国が本来の配分基準を超えた多額の補助金を大学側に支払ったということになっておるわけであります。それで私は、国民の血税を補助金として出す以上はやはりこういった私学助成についての見直し、つまり国庫補助金を含めた長期的な収支計画、そして厳しい経営見直しが迫られておる今日、多額の血税を負担している国民の納得を得るためにもこういった見直しというものも必要ではないかというように考えておるわけであります。もちろん私は、医科大学の社会的な使命あるいは医学教育にお金がかかるということはよく認識した上で御質問をしておるわけでありますが、こういった点についての大臣の御見解を伺いたい。  以上三点まずお伺いをしていきたい、こういうように思います。
  29. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 会計検査院の指摘事項につきましてはごもっともなことでございますから、私どもとしては極力、各省庁にその趣旨を体して、予算の執行に当たっては二度とそういうような指摘を受けないようにしてほしいということは伝えてあります。それからもう一つは、予算の編成前に会計検査院の意見を聞きまして、新しく予算を編成するに当たってはいろいろな御注意とか御意見とか承って、査定をする際にそれをできるだけかがみにするというか参考にいたしまして査定をやっていただいております。なお、予算が成立いたしますといよいよ執行という段階になるわけですが、今度は、こういうようなことで予算を組みましたよ、ついてはこういう趣旨で使ってもらうことに話しているのですということで、やはり主計局と会計検査院が相談をいたします。そういうようなことでよく連絡をとりながら批判を受けないような予算の執行というものをやってまいりたい、そう考えております。  それから行政改革の問題でございますが、これもわれわれは本当に一生懸命やったつもりなんだけれども、結果的には国家公務員が一般会計で百一人しか減らぬじゃないかとかいうことを言われます。ところが御承知のとおり、かなりの数を削減はしているのです。しているんだけれども、どうしてもふえてしまうところがある。現業、非現業両方入れて、中で例示的に申しますと、たとえば五現業等は、ことしは千百十一人職員を減らしているわけですよ。ところが国立学校の設置法に基づいて文部省では二千百十八人ふえちゃう。ふやしたくないのです、私は。ところが医科大学などは、四年から五年に上げると、やはり後を入学させれば一クラスふえちまうわけですね。それがふえると教授がふえる。教授がふえると助手がふえる。助手がふえると看護婦がふえるとか、みんなぞろぞろとふえてくる。これは抑えようがないわけですね、極力抑えてはおるんだが、もうそこだけで二千人もふえてしまうわけですから。ですから切るものも切ったんだが、そういう途中でやめてしまうわけにいかないというのも事実。そこで行政改革問題というのは今後新しいものは極力つくらぬようにするというようなことなどで、今後とも皆さんの御同意を得て、さらに第二次臨調も発足することでもあるし、総論賛成、各論反対なんですよ、行政改革というものは。だからそういうことのないように徹底的にもう一遍官業のあるべき姿というものを中心にして行管と一緒になって来年度予算編成、またその次と続けてやっていく必要がある。民間から見ればもっともっとやるべきだという意見、多いのですよ。私なども、たとえば農林省なんかもっと切れるんじゃないか。ところがこれは食管制度の問題になりまして、食管制度はさわっちゃいけませんよ、人は減らしなさい、むずかしいのですね、これは。農林省の検査員が一俵一俵米を全部検査する必要がいまごろあるのかということになれば、じゃそれは民間に委託するとかあるいはまたほかの方法をとるとかということで配給切符制をなくすとか、そういうようなだれも使ってない配給切符制度、いまでもあって印刷しているわけだから、法律があるから。したがってこういうようなものは今回のあれに間に合わないが、私はやはり農林省ともよく相談しているのです。で、近く、国会に法案を出してくれということでそういう制度を直していかなくちゃ、制度はいじっちゃいけない、人は減らせ、これはできないです。したがってせっかく皆さんこういう盛り上がりがあるときですから、どんどん制度の見直しというものについて政府も取り組んでいかなければならぬ、かように肝に銘じておる次第でございます。今後ともよろしくお願いを申し上げます。  補助金の問題もよく言われるのです。千七百億円近く補助金切った切ったと大蔵大臣大ぼら吹くが、結果は六千五百億もふえたんじゃないかと言われますとぐうの音も出ないわけですね、実際問題として。実際ふえちゃっているわけですから。何でふえたんだと言われると、結局は大きなところでは社会保障で三千億円とか文教関係で千三百億円とか大きなのがばかばかとふえておるわけですね。これも制度上の問題で、その社会保障のうちの九七%ぐらいは法律で決まっているわけですよ。大蔵大臣が法律無視してなんといったら首になってしまいますからできない。したがって、これも制度上の問題。したがって、やはりこれもこんなにふえたんでは果たして負担し切れるのかどうかというようなことについて、負担をするか、制度を少しふえないようにかげんをするか。アメリカのストックマンもやっているそうですから、彼のところも三分の二は補助金だそうです。うまく議会が通るかどうか、私もじっと見ているのですがね。向こうがうまくいくようだったら、こっちもぜひこの夏はやらしてもらいたい、そういうことで目下勉強をしておる最中でございます。  どうぞ今後とも叱咤激励を受けながら一生懸命やってまいりますから、よろしくお願いを申し上げます。
  30. 柴田弘

    ○柴田委員 大臣、私が申し上げたいのは、やはりそういう問題が、いま重立った三点について申し上げましたが、そういうようなことですっきりした形で国民の目の前で整理されないと、いかに財政再建が重要でありますと言われても、今回の大増税というものに対しては真の理解と納得が得られないということを申し上げるつもりでこう言ったわけです。もしこのことについて御意見があれば、重ねて御意見をちょうだいしたいと思います。
  31. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実際のところ、私は柴田委員の言うとおりだと思います。そういう制度的なものが、許されるならば、もっと引き締めてやっていきたいし、それから私立医大のお話がございましたが、本当にこういうものについては、文部省に今度幾ら予算を計上いたしましても、一方において隠した寄付を取っておいて、そのほかに一人前の補助金をもらおうなんというのはとんでもない話だから、これはけじめをつけてもらわなければならぬ。私は私立医大の経費の何割を補助するのだというようなやり方でやることがいいのかどうなのか。今後も私は、そんなこと言ったって、全部国の補助金だけでもっと出してくれなんて言われたって私の方は困るわけですから、だから私立医大のあり方というものも含めまして、十分に検討をしてまいりたいと思っております。
  32. 柴田弘

    ○柴田委員 次の問題、先ほども言いましたように順序が逆になりまして恐縮ですが、今回の増税路線、いま私が三点の問題について指摘しましたが、国民がこの増税に関連をして不満に思っておりますもう一つのことは、いわゆる社会保障の問題、つまり福祉問題を中心とした所得制限強化の問題がある、こういうように思います。  私は、増税を論ずる上から言いまして、この所得制限のあり方について根本的な論議、メスを入れていかなければならないのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。いま老齢福祉年金ですとかあるいは障害福祉年金ですとか児童手当ですとか、いろいろな制度、年金等々に対しまして所得制限がある。これが今回強化されました。いまそういう所得制限をされておるのは二十二のケースがあるんじゃないか、こういうふうに私は思います。これは一切を議論する時間もありませんので重立ったものについて私なりに一つの計算をしてまいりましたので、大臣に一遍見ていただきながら質問をいたします。     〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕  その一つは、老齢福祉年金の問題であります。これは二人世帯の場合で扶養義務者の所得が六百万未満のケースでは、本人の収入が二百二十六万六千円であれば老齢福祉年金は二十八万八千円受けることができまして、合計二百五十五万四千円の収入となる。しかし本人収入が二百二十六万六千一円になりますと年金額がゼロになる。前者の二百五十五万四千円との差が二十八万七千九百九十九円、所得が一円違うだけでこうなるわけです。一円違うだけで二十八万七千九百九十九円という逆転現象が起こります。これは表を見ていただくとわかります。それで計算をずっとしてまいりますと、この逆転現象がなくなる本人の収入額は二百五十五万四千円にならなければならない。それから障害福祉年金についても、二人世帯の場合で扶養義務者の所得が七百三十一万四千円の場合、本人収入三百万、年金収入四十三万二千円、合計三百四十三万二千円となる。これが本人収入一円ふえまして三百万一円になりますと、年金額はゼロで、前者との所得差は結果として四十三万一千九百九十九円となり、収入の少ない者から実質所得が四十三万円余も減少する、こういうふうになるわけです。そして、この場合も本人収入が三百四十三万二千円に至ったときに初めて逆転現象は解消されるわけであります。  それから、扶養義務者の所得も老齢福祉年金で八百七十六万が九百三万六千円で逆転差がなくなる。障害福祉年金の場合も八百七十六万が九百十九万二千円に至って逆転差がなくなる、こういうことであります。  ちなみに所得制限による老齢、障害福祉年金の実収入の逆転の範囲を例示しますと、二枚目の上の方にあります。それは一度ごらんをいただきたい。  児童手当の場合も二枚目の一番下のところにありますが、やはり標準的なケースを挙げて説明してまいりますと、所得割一課税世帯、これは六人の所得額は二百二十六万五千九百九十九円で児童手当は年額八万四千円、合計二百三十四万九千九百九十九円となる。これが所得が一円ふえますと二百二十六万六千円、税額が二百円引かれまして、手当の七万二千円を加えますと二百三十三万七千八百円となって、その差額が一万二汗百九十九円マイナスになる。同様に年収四百五十万一円の世帯は四百五十万の世帯に比べて七万一千九百九十九円マイナスになるわけですね。  大臣、私が申し上げたいのは、やはりそういった逆転現象が起こる、たった一円の差で手当がもらえない、一円の差でどれだけの生活の変わりがあるか。だから、財源の問題もありますので、やはりそういった所得制限の限界収入者に対して一番いいのは、何かの減税措置を講じていただきたいのですが、それは財源関係でちょっと無理だ、こういうふうにおっしゃると思います。だから私が提案したいのは、やはりそういった限界収入者に対して、それ以下の所得で手当をもらっている人たちの方から、限界収入者からちょっと上の所得の人に対してやはり所得差と支給差を設けて措置をしていくというような方向が議論をされて、今後の将来展望に立って所得制限のあり方というものを考えていけないものかどうか、これをぜひお聞きしたい、こう思ったわけなんです。大臣、ひとつお願いいたします。
  33. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この問題、私が厚生大臣をやっているときから非常に問題だと思っておるわけなんです。何かうまいもう少し公平な方法があるかどうか、今後の検討課題として、これは大きな問題点でございますから、検討させていただきます。
  34. 柴田弘

    ○柴田委員 それでは、ぜひひとつ、大きな検討課題ということですので、大臣、よろしく御検討いただきたい、こういうふうに思います。  それでは、大臣にもっとお聞きいただきたかったのですが、お帰りになりましたので、政務次官、申しわけありませんが、今回の酒税法改正の問題でございます。  まずお聞きしていきたいのは、今回の酒税の引き上げによりまして端数が出るわけです。たとえば清酒一・八リットル当たり一級で五十五円八十銭、それからビールの大びんが一本二十四円六十九銭ですか、それからウイスキーの一級が七百二十ミリリットルで百十三円七十六銭、こういうふうになっておるわけです。現行の小売価格にこれらの増税額が上乗せされる、こういうことになるわけですね。そうしますと、清酒一級では一千六百五十五円八十銭、ビールは二百六十四円六十九銭、ウイスキー一級は千三百六十三円七十六銭、こういうふうになって端数の価格になるわけです。一体小売価格というのはどうなるかということであります。もうすでに何か清酒一級が千六百六十円になるとか、ビールが二百六十五円になるとか、ウイスキー特級が二千七百七十円になる、このように言われておるのですが、これはどうでしょうか。
  35. 小泉忠之

    小泉政府委員 価格の問題でございますので、国税庁の方からお答えさせていただきます。  酒の価格は本来自由価格でございますので、たてまえといたしましては今回の酒税法改正案が成立いたしまして増税額が確定いたしました後の問題でございます。何度も申し上げるわけでございますが、この価格の設定につきましては、非常に重要な物資でございますので、あらゆる要因を勘案して必要とあらば指導も行いたいというふうに考えておりますが、本来は自由価格でございますので、各企業がそれぞれ市場の状況あるいは経営実態等を踏まえましてそれぞれ判断いたしまして、増税額を前提にいたしまして価格の設定を行うということが原則でございます。  そこで、御質問のとおり現在の増税額を前提にいたしますと、たとえばビールにつきましては現在二百四十円の大びん一本の小売価格に対しまして税額が二十四円六十九銭でございますので、これを上乗せいたしますと二百六十四円六十九銭と相なるわけでございます。しかしながら取引の慣行がございます。商品でございますので、五円、十円刻みということが一般の市場の常識になっております。したがいまして、たとえばビールでございますと二百六十四円六十九銭は端数を調整いたしますと三十一銭の端数が出まして二百六十五円、こういうことになろうかと思います。その他の酒類、これは容器あるいは酒の性質によってそれぞれ端数が出るわけでございますが、これはやはり各企業が先ほど申しましたように市場の状況を前提にいたしまして決めていくということになろうかと思いますが、私どもといたしましては諸般の情勢を踏まえまして物価問題あるいは消費者状況あるいは企業の状況、これを見まして必要であれば必要な指導を行いたいというふうに考えます。
  36. 柴田弘

    ○柴田委員 そうしますと、私がお聞きしたいのは、昭和五十三年の税制改正のとき清酒一級についてはどういった端数調整が行われたか、これをお聞きしたい。
  37. 小泉忠之

    小泉政府委員 五十三年の場合でございますが、端数の額が少額でありましたために、生産者の手取りとなったもの、これが多かったわけでございますが、場合によっては、一部は生産者が負担したというものもございますが、たとえば清酒の一級、御指摘の点を申し上げますと、増税額は二十四円八十四銭でございまして、これを上乗せいたしました価格は千四百五十四円八十四銭ということでございまして、一・八キロリットル当たり千四百五十五円という値決めになっております。
  38. 柴田弘

    ○柴田委員 千四百五十五円でしたね。それでお尋ねいたしたいわけでありますが、五十三年のときは、五月の酒税引き上げの前に清酒一級は千四百三十円でした いま御答弁があったとおりです。そして酒税額は二十四円八十四銭、増税額が上乗せをされたといたしますと千四百五十四円八十四銭となるが、しかし総理府の昭和五十三年五月の小売物価統計を見てまいりますと、北は北海道から九州まで、全国六十一の都市で千四百六十円で販売をされている。いま国税庁の方から便乗値上げ云々という話もあったわけでありますが、千四百五十五円でなくて五円十六銭アップをして売られているわけです。これは統計からはっきりと来ているわけですね。それでこういった場合に、私はこれはわからぬから質問するわけでありますが、自由な小売価格、これはもうある程度業者の皆さん方にお任せをしているというようなかっこうであると私は思うのですが、こういった実態を見ますときに、価格協定というものが果たしてなかったと言えるであろうかどうか、はなはだ私は疑問に感ずるわけであります。しかもこれは千四百五十五円でいいものを千四百六十円で売られている。やはり増税というものを一つの足がかりにして五円の便乗値上げではないかというふうに消費者サイドから見て言われても、私はやむを得ない事実であると思いますが、こういったことについてどうでしょうか。
  39. 小泉忠之

    小泉政府委員 五十三年の事例での御質問でございますが、原則は何度も申し上げておりますように自由価格がたてまえでございますが、価格につきましては、これは生活関連する大事な物資でございますので、同時にまた重要な担税物資でございますので、妥当な価格形成ということが望ましいわけでございますが、ただ商品によりましてはその内容も違うし、料金も異なります。したがいまして、市場の状況によってはある程度価格の展開といいますか、これもあり得るわけでございますが、御指摘のように増税に際してそういった価格のばらつきが出てくるということは、実は余り好ましい面ではございません。したがいまして私どもといたしましては、業界に対しまして便乗的な値上げのないような指導をするように要請するというようなことを五十三年にはいたしております。先ほども申し上げましたように場合によっては、必要とあれば必要に応じまして直接主要なメーカーに対してもそういうような要請をするということもあろうかと思います。
  40. 柴田弘

    ○柴田委員 そうしますと、あなたの方は千四百五十五円だとおっしゃっている、ところが現実には増税直後は千四百六十円だった。このことはいかぬことなんですか、いいことなんですか、これを一遍はっきりしていただきたい。
  41. 小泉忠之

    小泉政府委員 御説明が不足でございましたが、申し上げているのは、いわば標準的な価格で千四百五十五円というふうに申し上げているわけでございまして、実際上はしかし九割以上はそういった価格に収敵するというような状況になっていることは事実でございます。しかし場合によっては、申し上げましたように容器あるいは酒の性質、質がいいものは高くというようなこともございますので、ある程度の展開といいますか、これはございます。
  42. 柴田弘

    ○柴田委員 余りようわかりませんが、容器とかそういう流通経費がかかるからそればやむを得ぬだろう。だけど私の言っているのは、要するに全国一律であるということについてこれはちょっと問題があるのではないか、こういうふうに申し上げているわけです。この点については今度機会がありますればまた質問をさせていただこうと思いますが、いずれにしても言いたいのは、消費者サイドに立てば便乗値上げでなかったか、こういうことも言えるのじゃないかということなんですね。そこら辺のところをお聞きしたかったわけであります。  それで次の問題に入ってまいりたいのですが、公正取引委員会の方も来てみえますのでまずお聞きしたいのですが、今回の酒税法改正、これは現在当委員会においても審議の真っ盛りであります。しかし、そういった事実があるにもかかわらずもうすでに小売店に対しまして問屋さんの方から、小売価格は五月からたとえば清酒特級は二千二百円が二千三百九十円、一級が千六百円から千六百六十円、二級が千二百円から千二百二十円、ビールが二百四十円から二百六十五円、ウイスキー特級が二千五百円から二千七百七十円、一級が千二百五十円から千三百七十円、二級が五百五十円から五百八十円、それぞれ上方修正と申しますか修正された価格の一覧表とでも言いますか、これが出回っているようであります。もしこういったことが事実であれば、申すまでもなく国会軽視であるばかりでなく、こういった事実はやみ再販売価格を生じさせることになりまして私は独禁法上問題があると思います。こういった点につきまして、まず公取の御意見をお伺いしたいと思います。
  43. 佐藤一雄

    佐藤説明員 先生お尋ねの一覧表の問題でございますが、その一覧表の性格というものは必ずしも明確でないとは思いますけれども、仮にそれが酒税の引き上げ後の小売価格がどのようなふうな価格になるかといった一つのいわゆる試算表というような性格のものであって、それが流布されておっても単に小売業者がそれを参考にして自分の値決めをしていく場合の一つの参考資料だということであれば、これは直ちに独禁法上問題になるというふうには言いがたいというふうに思われます。ただし、その一覧表が出回っていることによりまして、それが値上げのカルテルなどに仮に利用されてしまって、カルテルの事態が惹起されてくるというようなことになりましたならば、これは独禁法違反というおそれも生じてまいりますので、独禁政策の立場から申しますならば、酒税の引き上げの行われていない段階においてそういったような資料が出回っているということは必ずしも好ましいとば言えない面を持っているというふうに考えております。
  44. 柴田弘

    ○柴田委員 そうすると、参考程度であればいいんだが、それによってカルテルといいますか、全部が値上げ一つの資料になっていけばこれは問題になっていく、こうなるわけですね。  それで私は、この点について大蔵省の御見解をお聞きしたいのですが、いま言ったような事実がもしあれば、当局としてはどうか、こういうように思いますが、どうでしょう。
  45. 小泉忠之

    小泉政府委員 お話ございましたように、目下のところは増税額が確定いたしておりませんので、増税後の価格について取引先に通知をしたり公表をしたというような例は私どもは聞いてはおらないわけでございますが、御指摘のような例がございますとすれば、いま公取の方からもお答えございましたけれども、やはり商取引でございますからその場合の参考資料として特定の業者が作成して配布して、来るべき価格改定の参考にしておるんではないかと思うわけでありますが、特に手持ち品課税等の問題もございますので、手持ち品課税に際していろいろ予想してそういう動きがあるということは、なるべくないような形が望ましいことは事実だと思いますが、ありましても、いま申し上げましたように個々の業者がある程度そういったものを予想したものにすぎないんではないかというふうに見ております。
  46. 柴田弘

    ○柴田委員 負担率の問題について実は大蔵大臣質問をしたいと思いますので以上で終わりまして、あと質問は留保させていただきます。
  47. 綿貫民輔

    綿貫委員長 玉置一弥君。
  48. 玉置一弥

    ○玉置委員 今回の酒税法改定につきまして、現在の特に清酒業界の低迷といいますかそういう状態の中、そしてその他の間接税が上げられ、また一方では所得税減税も行われないという現在の政府原案でございますけれども、そういう中でこれから酒税というものがどういう方向にあるべきか、あるいはまた現在の酒税の中のアンバランス、そして特に酒類業界の低迷についてどういうふうに対処をしていかなければいけないか、そういう観点から順次御質問をしていきたい、かように思います。  そこで大きな項目としまして、酒類業界の問題について、そして酒税の中で特に大衆向けあるいは家庭用向けの部分、そして原料米、専売アルコール、それから級別の話、大筋でいきますと大体こういう内容になるわけでありまして、まず大蔵省にお伺いをしたいと思います。  現在非常に低迷を続けている酒類業界というふうな話をよく聞くわけでございますけれども、実績から見ても五十三年、五十四年あるいは五十五年、まだつかんでおりませんけれども、およそ横ばいに近い状態である、そして当初四千軒近くあった造り酒屋といわれるところが現在二千九百台に落ち込んでいる、そういう状況から見てどのように実態把握をされて、そしてどういう動きをなされているのか、それについてお伺いをしたいと思います。
  49. 高橋元

    高橋(元)政府委員 酒の免許業者に対する行政につきましては、後ほど国税庁からお答えをいたします。  今回の税制改正の案をつくりまして御審議をお願いいたしております私どもの立場で現在の清酒業界に与える影響いかんということでございますが、どのような配慮を払ったかという御質問でございますけれども、清酒は特に中小企業割合が高い、これはいわゆる集中度から見ても明らかでございます。ビールなりウイスキーですと上位五社でほぼ一〇〇%でございますけれども、大体同じような比率をとりますと酒の場合には二〇%ぐらいになろうかと思います。しかも、その中小のつくっておられる酒は地酒、いわゆる二級ということが多うございまして、各企業の中で欠損ないし低収益の方々が非常に数多くおられます。これは、国税庁からもその経営の内容なりそれについての指導、助成の方針なり承って毎年御相談をしてきておるわけでございます。  そういう経営状況の中で今回酒税を引き上げたのは業界に酷ではないかというような御趣旨かと思いますけれども、私どもは三十七年に全文改正をいたしまして現在の酒税税率の基本をつくりました後、生産ないし消費状況に応じて随時税法の改正を数回にわたってお願いをしてきておるわけでございます。そうやって現在の税負担水準ができてきておるわけでございますが、税制調査会でそれ以後酒税の御審議をいただきます際に、中期答申でも年度答申でもいつも、これが従量税率でありますために物価、所得の状況に応じて税負担率が下がってまいる、それを随時見直していくことが一番肝要である、こういうような消費税の本質からしましてそういう御指摘を中心に酒税のあり方について御審議をしてきていただいておるわけでございますが、一方で、清酒の中で特に一級、二級、それから合成清酒、しょうちゅう、こういった比較的伸びの悪い酒、また比較的大衆の消費の割合の多い酒につきましては、たとえば酒の二級等でございますと税率を三十七年以来十九年間据え置いておる、その間に小売価格は二倍半になっておりますが税率を据え置いておる、こういうようなことをしてきております。今回御審議をお願いいたしております案でも、清酒特級につきましては二四・二%という原則の税率の引き上げ率でございますが、清酒の一級は一四・五、二級は九・六というふうに生産消費状況に応じてしんしゃくをいたしておるわけでございます。  そうなりますと、清酒特級は、仮に増税額だけ価格が引き上げられるものといたしますと約八%価格が上がるわけでございますが、いま御審議をいただいております案でございますと、一級が三・五%、二級で一・二%ぐらいの引き上げということになろうかと思います。ことに、地方の中小の酒屋さんがつくっておられます酒は二級酒、地酒中心でございます。そういうことを考えますと、特級、一級、二級の価格差がそれだけ開いてくるということは、それだけ清酒業界の現状に配意いたした結果であろうと私どもは考えております。
  50. 小泉忠之

    小泉政府委員 執行面からの清酒業界に対する対策について若干敷衍してお答えさしていただきたいと思います。  御指摘のように、清酒につきましては、民族の酒と申しますか伝統的な製造業でございますので、非常に大事な役割りを持っておるということは御指摘のとおりで、十分承知いたしているつもりでございます。しかしながら、最終的にはやはり消費者の支持と企業努力というものがそれぞれの業界の位置づけを行うというふうに私ども考えておりまして、経営合理化の努力というものは業界自体にとって大事ではないかと思いますが、御指摘のように清酒の製造業界は中小企業性が非常に高いということでございまして、九九・六%は資本金一億円以下あるいは従業員が三百人以下の中小の企業でございます。  したがいまして、他の酒類との激しい競争にさらされる場合には需要の停滞とかコストアップという複雑な問題に直面するということでございまして、私どもといたしましても、御指摘ございましたけれども第一次の近代化計画、これに昭和三十九年から取りかかっております。三十九年から四十三年、第二次が四十四年から四十八年、いずれも五カ年計画で取り上げまして、さらに第三次といたしまして、中小企業近代化促進法の特定業種の指定を受けまして、昭和五十二年度から五十六年度までの五カ年計画をもちまして適度な収益力と安定した成長力を維持するように業界も計画を進めておるという現状でございます。  このねらいは、御存じのとおりでございますけれども、第一に大事なものは販売力の強化であるということでございまして、今回の第三次の計画では関連業種として販売業と協調しながら構造を改善していくというところに焦点を置いております。  第二は、量的な拡大もさることながら、やはり質的な企業力を、体質を充実するということでございまして、規模の適正化事業のほかに、新しい商品あるいは新しい技術の開発、さらに人が大事であるということで人材養成、これを知識集約化と言っておりますが、そういったプロジェクト、あるいは取引関係の改善ということで、共同販売でありますとか共同の銘柄販売あるいは共同配送、共同によりましていろいろな取引関係を改善していくということが一つと、さらに需要開発の事業としては、先ほども主税局長からお話しございましたように、地酒の振興といいますか県産酒愛用ということで、全国各地で県産の地酒を愛用するような事業を行っておる。これらを総合いたしまして近代化を図っていくということでございます。ちょっと計数にわたって恐縮でございますが、現在までのところ、知識集約化事業といたしましては全国で七十七グループが参加いたしまして、延べ三千五百五十一社というものがこういった計画に参加いたしておる、あるいは共同事業開発におきましても六十六グループ、二千五百八十五社が参加いたしまして行っておるという状況になっております。  さらに敷衍いたしますと、残念ながら企業力が及ばずといいますか、企業収益の将来性あるいは現状における停滞という状況で、早目に事業をほかの方に転換する必要がある方もおられるわけでありまして、そういった方々に対しては転廃がスムーズにいくようにということで、これを構造改善給付金と申しておりますが、法律によりまして給付金を行うという事業を行っております。この給付金事業によって転廃いたしました転廃者は二百社を超しておるということで、三千業者が現在二千八百五十ぐらいになろうかと思いますが、かなり合理化された構造に次第になりつつあるということで御了承いただきたいと思います。
  51. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまの答弁ですと、現在二千八百五十社ぐらいですね。そのうち販売実績を五十三年、五十四年で見ていきますと、大体大手十社で三六、七%、大手五十社で五八%ということになるわけです。残りの大体四〇%近くのシェア、それを二千八百社で争っておるということになるわけです。そして五十三年、四年を見てみますと、清酒全体で五十三年が百五十三万四千九十八キロリットル、五十四年が百五十八万七百二十キロリットル、五十四年についてはプラス三・〇%の伸びということでございますけれども、実際五十年以降ずっと見てみますとほぼ横ばいに近い、場合によっては四%ぐらい落ち込んでいる時期もありますし、こういうふうに回復している時期もある。そういうことから見ますと、先ほども答弁ございましたように販売力強化をする、あるいは人材養成をする、そして地酒の振興をする、それぞれの効果が需要拡大というものがなければ、当然いまの企業の存続、業界の存続ということから考えて成り立たないのではないか、そういうふうに思うわけです。  ずばり申しまして、非常に言いにくいことですけれども、いまの構成比率からいきますと、わずか四〇%のところを二千八百で争っていること自体が大変大きな間違いではないか、そういうように思うわけです。ただ、この中には休眠状態といいますか、そういう状態である企業もあるわけでございますし、また先ほどの伊藤先生の質問の中におけ買いという話がございましたけれども、いわゆるおけ買いに転じているところもある。そして最近の傾向を見てわかるように、地酒にかなり力を入れて地酒として伸びてきているところも確かにあります。しかし、何といっても現在の総需要が横ばいであるというときに、現在の企業数あるいは総人員といいますか、それから考えていかなる処置をしても大変——逆に言えば、共倒れの可能性さえ出てきているのではないか、そういうように思うわけです。その点についていかがお考えですか。
  52. 小泉忠之

    小泉政府委員 御質問のとおり、需要の動向を拝見しますとやはり停滞ぎみであるということでございますが、過去五カ年間の需要の動向、課税率数量で見ますと、清酒につきまして昭和四十九年度が百五十九万八千キロ、五十四年度が百六十五万一千キロということでございまして、その間年率といたしましては〇・七%の上昇ということになります。全酒類をそれに見合う形で申し上げますと、年率は四・二%ということでございまして、他の酒類に比べれば伸び方は伸びてはおりますが低い、年によっては横ばいあるいは若干減りぎみという年もございます。  この原因でございますけれども、やはりお話しのように生活の様式が変わりつつある、あるいは微妙に消費者の需要も酒類の間でシフトされつつあるということはございますが、先ほど申し上げましたようないろいろな業界自体の努力ということもございます。  最近の状況では、たとえば地酒の振興はどうなっておるかということを申し上げますと、二級酒が実は昨年の後半以来かなり、いままで低下をいたしておりましたシェアを戻しつつあるというような状況もございます。これもやはりいろいろな原因があると思いますが、私どもとしては、地酒振興のいろいろな努力が各地なりに効果が出てきているという面もあるのではないかというふうに感じております。
  53. 玉置一弥

    ○玉置委員 先ほどのおけ買いの話に戻りますけれども、現在の需要停滞という中で、昨年は一応お酒の値上げがありましたけれども、いわゆる消費関連物資でもないけれども、いわゆる家庭に直結するという面から値上げをなるべくいままで抑えられてきたわけでございますけれども、枠が同じである、たとえば一〇〇という枠がありまして、原価がいま幾らかわかりませんけれども七〇ぐらい、七五になれば当然一〇〇を一〇五にしなければ同じ幅が得られないわけですね。そういう面から考えて、先ほど総需要を考えた場合に業界として何か考えなければいけないのじゃないかということを申し上げましたけれども、逆に何か考える方法として、中小零細の関係のおけ買い、要するにおけ売りですね、そういう方向に行っている部分がかなりいままではあったわけです。  ところが、大手メーカーについて自分たちの醸造範囲を拡大していかなければ、ただ買うだけでは成り立たないという状況にぼつぼつ転換しておりまして、そういう面からますます中小零細関係の問題がせっぱ詰まってきているのではないかと思うわけです。長期的に業界だけにいままで大部分任されてきたと思いますけれども、これから大蔵省としてとるべき処置を早急に考えていかなければいけないと思うわけです。いままでいろいろ申されましたけれども、最終的には時期であるとかあるいは方法について具体的なものがないわけです。  そこで政務次官に、いま申し上げました問題について、大蔵省としてこれからといいますか、いまの酒屋さんの中小関係状況から見て何らかの早急な措置をとらなければいけないのかどうか、いままでの制度でいいのかどうか、その辺についてできればお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  54. 保岡興治

    ○保岡政府委員 先ほど来いろいろ努力してきていることについては申し上げたとおりでございますけれども、確かに中小零細な業者である酒造業者、しかも日本古来の酒をつくっていただいている、生活にもかなり浸透しておる長い伝統を持っているわけですから、大蔵省としても酒造の現状については十分調査をして、また将来どうあるべきかということなどもよく検討させていただきまして、御質問の趣旨なども十分踏まえた対策が立てられるように今後努力をしてまいりたいと思います。
  55. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間配分の関係で、次に移りたいと思います。  一応、いま申し上げましたように消費者立場から、年々上がってくるのはやはり困るという気持ちもあるわけです。ただ、いまの、特に清酒業界の実態を考えてみると、何らかの処置をしなければ上げざるを得ないということも事実でございますし、その両面から、最善の策というのはなかなかむずかしいと思いますけれども、思い切った、最善の策、ちょっと言い方はむずかしいですけれども、そういうことをぜひお考え願いたい、かように思います。  もう一つだけ。現在の税改正、もし成立すれば、需要予測についてまで考えておられたのかどうか。また考えておられるとすれば、どういうふうな予測を持っておられるか、その辺についてお伺いをしたいと思います。
  56. 高橋元

    高橋(元)政府委員 酒の需要のいわゆる価格弾力性がどのくらいあるか、これは大変測定のむずかしい問題なんでございます。計量経済学的にはっきり分析のできておりますのは恐らくビールだけだと思います。  ビールの例で申し上げますと、価格弾力性はマイナス〇・一五からマイナス〇・二ぐらい、こういうふうに計算されております。それを全体の酒類に及ぼしていいかどうかという問題が次にあるわけでございますけれども、それ以外によるところがございませんので、今回の全体の税制改正ビールが一〇・三、清酒一級が三・五、清酒二級一・二、こうなるわけでございます。全体をならしまして六%ぐらいかなというふうに思います。それを使いまして需要の減を出しますと、一%ぐらいというふうに計算はされるわけでございます。実際の推移がどうなりますかは大変むずかしいところなんでございますけれども、私どもはその辺のところを見まして、今回の歳入見積もりの中にも増税による酒の伸び率影響というのをある程度織り込んで推算をしておるわけでございます。  それから、酒は嗜好品で、嗜好性の高いものでございますから、ある時間を置きますとなかなか消費が減らないという傾向があろうかと思います。そこで昭和五十三年にさかのぼって、増税時の経験を申し上げますと、五十三年の酒の値上げをさせていただいた後、対前年度伸び率が三・四ということだったわけでございますが、それは五十三年を含みます最近五カ年の平均の伸び率三%を若干上回っておって、この年は天候ということもかなりあったわけでございますが、増税の消費に対する影響は、なかったと申しますか、観察できなかったと言った方が正しいんだと思いますが、観察できなかったということでございます。
  57. 玉置一弥

    ○玉置委員 まだあるのですけれども、時間の関係で次へ移りたいと思います。  今回の酒税の体系を見てみますと、たとえばみりんでありますとかあるいはしょうちゅう、いわゆる家庭用調味料そして大衆酒というふうに分かれると思うのでありますけれども、依然として課税をされ、なおかつ増税をされているということでございます。従来設定をされたときに、何でもいいから取れるものから取れ。酒類というものの定義はございますけれども、そういうときの、一律で賦課をされたというふうに聞いておりますけれども、そういう意味から考えて、従来の制度を設定されたときと現在とかなり認識度合いといいますか用途、あるいは状況が変わってきていると思うのです。  そこで大蔵大臣に、せっかくおられるのですからひとつお聞きしたいと思います。大蔵大臣はみりんというのを飲まれますか。非常に単純な質問でございますけれども。
  58. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は調味料として魚などを煮るときに毎日使っていますが、飲んだことはありません。
  59. 玉置一弥

    ○玉置委員 結構です。  高橋さんにお聞きしますけれども、高橋さんはみりんをお飲みになりますか。
  60. 高橋元

    高橋(元)政府委員 おひな様のお祭りのときに食んだくらいのことでございます。
  61. 玉置一弥

    ○玉置委員 みりんについてまずいろいろお伺いしたいと思いますけれども、本来みりんは風習として当初おとそで飲まれるということがございましたけれども、現在私が知っている限りを、聞いた範囲では飲んだことないという方が非常に多いわけです。事実、現在渡辺大蔵大臣あるいは高橋主税局長ともにまず飲まれたことがない、そういうお答えでございます。  酒税法の趣旨と申しますか、その中に一%以上のアルコールを含み、かつ飲まれるもので八八%以下というふうな規定があると思いますけれども、そういう面から見て、そして現在いわゆる家庭の調味料として使われているという状況から見て、家庭の調味料に使われているものまで何で酒税をかけなければいけないのかという気持ちが当然出てくるわけでございます。そういう意味から、現在の酒税の体系の中で、いわゆる大衆酒と言われるしょうちゅう、そして家庭用調味料という部分に課税をされている理由、その辺についてお伺いしたい。  それと、現在の酒税自体非常にアンバランスであるというふうに思いますけれども、たとえば先ほど伊藤先生の質問の中にビールお話がございまして、そのときのビール税負担率が四七・九ですか、ほかの国に比べて非常に高いということもございますし、またほかのお酒に比べても非常に高いということでございます。その辺について、今回改定のときになぜ見直しをしなかったのかということをお伺いしたいと思います。
  62. 高橋元

    高橋(元)政府委員 しょうちゅう、みりんともに、先ほどお話がございましたように、アルコール分一度以上を含む飲料でございます。それが飲まれたことがなくて主として調味料ではないかという御指摘でございますけれども、いわゆる本みりんと申しますのは、これは調味料でございますけれども、本みりんとしょうちゅうとまぜ合わせたと言ったら、私専門家ではございませんのでよくわかりませんが、しょうちゅうとみりんを混和したものが本直しでございまして、本直しの方は酒としてかなり飲まれておるようでございます。特殊の嗜好を持っております。みりんも、私文献などで見ますと古くは飲んでおったというようなことも書いておりまして、いまでもみりんを飲まれる方も絶無とは言えないと思います。しょうちゅうとみりんからつくられます本直しというもの、これは本格的な酒でございますから、そういうものを考えますと、本みりんだけを酒類から外すというのは非常に問題ではないのかなという感じでございますが、ただみりん全体につきまして生産消費の態様に配慮しまして九・五%という低い税率引き上げ幅、一・八リットル当たり十一円ぐらい今回酒税の引き上げをお願いいたしておるということでございます。  しょうちゅうにつきましても、このごろしょうちゅうの乙、いわゆる本格しょうちゅうというものの需要が非常に伸びてきておることは御高承のとおりでございます。したがいまして、しょうちゅう乙類の中にもかなり高価格品もございます。四合びんで何千円というようなものもよく売れておりまして、これは酒類の中でも消費伸びの高い方でございます。しかしながら、しょうちゅう乙類の生産状況なり、それからまた地域的にかなり大衆が広く消費しているということもありまして、昭和三十七年以来しょうちゅうの税率は非常に低いわけでございます。  今回の引き上げに際しましても、しょうちゅうの甲類、これは五十三年に引き上げさせていただいたわけですが、乙類につきましても、引き上げをやはり九・四%という一番低い率でお願いをすることにしておりまして、これはたしか一本当たり六円程度値上げでございます。  そういうふうに一消費の態様ないし生産の態様に応じて配慮いたしておりますが、いずれもアルコール分一度以上の飲料であるということで、全部の酒類について税負担の増加をお願いいたすというたてまえから、今回増税の対象にさせていただいたわけでございます。  ビール税率が非常に高いではないかという御指摘でございます。先ほどもビール税率国際比較についてお答えしておりましたが、日本ビールは確かに外国に比べれば高いわけでございますが、飲用の習慣がかなり変わっておりまして、日本人は一年に大びんで六十本ぐらいビールを飲むわけでございます。ところが、ドイツあたりに行きますと一年に一人当たり大びんで二百三十本ぐらい飲むわけでございます。イギリスで百九十本ぐらい、こういうことになっておりまして、いわば水がわりに飲むというような要因もございます。それと、日本酒税は伝統的に醸造酒、蒸留酒を問わず全部の酒類について課税をしていくという考え方でございます。ヨーロッパないしアメリカアルコール度数にかけていく。しかも醸造酒の方は低い税率を求めるという伝統的な考え方でございます。そこで、そういうことを受けまして日本酒税法は御案内の分類差等課税というのをやっておりまして、酒の種類別、酒の級別品目別価格別または成分別、それぞれに変わった税負担をやりながら、全体として消費課税としてのバランスというものを頭に置いて税率を決めてきておるわけであります。そうなりますと、醸造酒でありますビールにつきましても、日本の従来の飲用の習慣等からして、比較する蒸留酒種類によりますが、蒸留酒よりも高い税率を求めているものもございます。  そういう税負担昭和三十七年につくられてからこの方、大体そのときには各種類間のバランスをとって決めてきておったわけでございますが、酒の特性でございますとか消費の態様でございますとか企業規模や原料事情等の生産の態様、こういったいろいろの要素を検討して昭和三十七年にバランスをとって決めたわけでございます。その後、こういう事情につきましてもいろいろ変遷もございます。ございますが、今回の税率改正におきましては五十年、五十三年と同様に所得、消費水準の上昇に応じて税負担の調整を行わせていただくということを基本的な考え方にして案をつくって、御審議をお願いいたしておる次第でございます。
  63. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまの答弁の中に、本直しは飲まれる——もう一つは何ですか、本みりんですか。
  64. 高橋元

    高橋(元)政府委員 これはむしろ国税庁からお答えした方がいいかもしれませんが、みりんの中には本みりん、これは醸造してつくる酒でございます。ところが本直しと申しますのは、しょうちゅうと本みりんを合わせまして、これは柳蔭とかいろいろ落語にも出てまいりますが、二十二度ぐらいの度数を持っておりまして多分に飲まれておるようでございます。実はこういうものと本みりんば同じものでございますから、課税の対象から外すのは非常にむずかしいということを御説明した次第でございます。
  65. 玉置一弥

    ○玉置委員 いろいろ実態を聞いてみると、飲まれる方のみりんをつくっている量はごく微々たるものである。そして酒税法の中でもみりんを一応二種類に分けていますね。そのことから考えまして、わざわざ分けてあるということは、飲む方と飲まれないものというふうになると思うが、そういう面から考えて、なぜ飲まれない方まで課税されるのかということですね。  それともう一つ、たとえば全体百あったうちの一つ二つがあるものであるというときに残り全部を推定できるかどうか。そういう考えからいくと、一つ二つ、単に二、三人飲まれた、それじゃ全部飲んでいるという話で、もしそういう考えでいまの五十六年度予算を見直した場合に、ものすごい話が出てくると思うのですよ。そういうのを探せと言えばすぐ探しますけれども、実際大筋こうであるというときに果たして全体の話が出てくるわけで、ごく一部が飲まれるということで全体が飲まれる、だから課税する、そもそもその考えがおかしいのではないか、そういうふうに思うわけです。ましてや一般家庭料理に使われるといういまの用途を考えた場合に、なぜそういうものに酒税としてこだわるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  66. 高橋元

    高橋(元)政府委員 御説明が正確でなかった点はおわびいたしますが、本みりんも飲用にされておるようでございます。大体つくられている数量が六万キロリットル弱ございますが、その中の五%ぐらいは飲用に供せられておる、これは業界の話でございます。これはやはりみりんにつきましては、先ほどおとそというお話もございましたけれども、一種の嗜好がございますので、みりんの酒類としての飲用ということがある。本直しはその製成量はそれに比べますと二千キロリットルぐらいでございますけれども、これにつきましてもかなり飲まれておる。これはもっぱら酒でございまして、かなり需要も伸びておるということでございます。したがいまして、本みりん、それから本直し、それぞれ税率は異なっておりますけれども、ひとしく致酔飲料として課税の対象にするという考え方は私どもは御理解をいただきたいと思っております。
  67. 玉置一弥

    ○玉置委員 では、たとえばメーカーがいま飲まれている本直しを製造をやめた場合、大部分が飲まれないという状況になるわけです。そういう場合に酒税の対象になるかならないか。
  68. 高橋元

    高橋(元)政府委員 なかなかその用途によりまして免税をするかしないかということを決めてまいるのは酒税の執行上もできないわけでございますし、たとえば全く腐ってしまった酒を捨ててしまうときでも、今度改正でその手続を簡略にいたしますけれども、従来は不可飲措置、飲めなくするように塩かなんか入れたわけでございますが、そういうことを厳格に求めておったわけでございます。アルコール分一度以上含んでおります酒は、言葉が余り妥当でないかもしれませんけれども、財政物資という観点から、その生産、流通、消費についてかなり厳格な規制をしております。その中で本みりんにつきましても飲用されるということでございまして、これにつきまして酒税負担をお願いをする、ただしその率は低率にとどめるということで御理解をいただきたいと思います。
  69. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間がありませんので、結論を大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、うわさによりますと、五十七年度付加価値税あるいはいわゆる一般消費税の変形といった部分が打ち出されるという話が流れてきておりますけれども、たとえばほかの手段——手段というのは変ですけれども、ほかの財源でいまの財政に応ずる資源が確保されるという場合、現在の酒税のアンバランスあるいは先ほどから話題になっておりますみりんとかあるいはしょうちゅうという大衆向けの製品について酒税の改定をする意思があるのかないのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  70. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 来年その大型の消費税をやるかどうかというようなことは一切決まっておりません。ただ私といたしましては、来年度のことを言うと鬼が笑うかもしれませんが、要するに今回いろいろな予算の査定をやって、そうして歳出削減ということに努力をしてきました。実際にカットしたのとそれから抑制をしたのといろいろ寄って八千億円ぐらいの抑え込みをやったわけです。しかし何といっても制度的にどうしても大きなものがふえていく、このままの状態で本当に負担に応じられるかどうか。そういう制度をそのままの状態にすればふえるわけですから、ふえていくものは何らかの形で、それは租税によるか、また別な方法によるか、何らか負担しなければならない。したがって、ふやした方がいいのか、この際はそこまでもう負担し切れないから少し減らしてもらいたいというのか、この点はもう法律問題の絡んだ話なんです。したがって、そういうことも含めて抜本的な、やはり来年五十七年の予算編成までにはそういうような場面がなければなるまい。その結果、やはりこれは政策の問題ですから、どうしてもある程度負担は制度の維持上やむを得ないという場合には、どういう形の負担のあり方がいいか、税制全体の問題も含めて検討する必要があるということを申し上げておりまして、したがって、みりんの税金を、酒税をどうするこうするという具体的な問題は考えておりません。
  71. 玉置一弥

    ○玉置委員 そういうお話もあるのですけれども、もう一つ、たとえばいま間接税で酒税あるいは物品税というものがありますけれども、間接税がかかっているものについて、また再び付加価値税なり何かわかりませんけれども、もしたとえば全体に課税されるということであれば二重課税になるわけですね。そういう場合はどういうふうにお考えになりますか、特に酒というニュアンスで答えていただきたいと思います。
  72. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 どういう税にするかということはまだ考えておりませんから、実は御質問のところまでまだ考えておらないというわけであります。
  73. 玉置一弥

    ○玉置委員 中期展望の話がございまして、その中に五十七年度一・五%、五十八年度三・〇%、五十九年度四・五%というふうにいわゆる予備費的な枠があるわけですね。いまこの財政の厳しい中で予備費的な枠を設けられるということ自体大変異常なことですし、また政府として五十六年度予算を通すまでは五十七年以降何もわからないということでは、国民の信頼はおろか、国民の期待さえ何も得られないというような感じがするわけです。事実、長期展望とかそういうものを絶えず持ちながら現在どの位置にあるかということをやっていかなければ、大蔵省の最高権威者として、やはり大変重要な財政という部分を抱えておりますし、日本経済に与える影響が非常に大きいという面から、その場その場だけでは大臣の持ち味が生かせないと思うのですね。その場その場でいいならばだれでもいい、大蔵大臣ばだれでもいいということになってくると思うのです。鈴木総理もそういう機会があればぜひそういう話をしたいのですけれども、いままでのやり方を見ていると、どうしても何かその場さえしのいでやればいいのだ、そんな気がするわけです。ぜひ、大蔵大臣をやっておられる間、大蔵省の長期展望あるいは内閣全体の長期展望とかそういう面について話し合いをしていかなければ、個々に来年どうなるんだと話をしたときに、来年やっておられるかどうかわかりませんけれども、省としての動きがやはりあるわけですね。鈴木内閣が存続する限りは鈴木内閣の方針がある。それが全然生かされてこないということは、まるまる要するに内閣はなくても官僚機構だけでできるということを認めることになるわけです。それについてどうですか。
  74. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 鈴木内閣といたしましては、財政再建という一つの大きな筋道を立てておるわけです。これはもう説明するまでもございません。昭和五十九年度までに赤字国債から脱却するという、そういう方向で進んでおるわけですから、そのためにはやはり極力既定経費の見直し、洗い直しをやっておるわけです。これもその場その場と申しますが、その場その場というのは予算の査定段階、つまり予算編成段階ということであって、そのときの目まぐるしい経済情勢の中でその当面に一番合うような形のものをつくらなければならぬということで、めり張りのきいた仕事をやっていかなければならぬ、そう思っております。  この財政の厳しい中で中期財政見通しの中の一・五%ずつの予備費というものは、そんな余裕は必要ないんじゃないかというお話でございます。(玉置委員「いやそうじゃないんですよ、中身がわからないのに……」と呼ぶ)だから、この中身については前文にも書いてありますように、現在の施策とか制度とかそういうようなもので新しいことを考えない、そのままでただ物価の上昇とかあるいは百九十兆円の七カ年計画の公共投資とか、それから成長率を幾らとかという前提を置きまして、その前提でしかも現在の既定経費というものを積み上げてそれで伸ばしていくと、手を加えなければこういう状態になりますということをこれは書いておるのであって、しかしそうは言っても、たとえば一例を挙げれば、人件費はずっと一%ずつしか見ていないというのも、ちょっと現実的でないじゃないかとか、そういうことを言われますから、だから新規政策も全くやらない、そういうこともこれは考えていないわけですからね。しかし、そういうようなことは現実的でない。だから諸外国の例を見ても大体一・四とか一・五とかいう、そういうような予備費というものを考えておるので、日本もそのために外国の例にならって一・五程度の予備費枠というものをつくったわけです。それだけの意味であります。
  75. 玉置一弥

    ○玉置委員 そういう話でなくて、たとえば五十七年予備費枠を設けた、それは通常考えてわかるのですけれども、五十六年の大体予算編成が終わって次の段階に入っているわけですね、まだありますけれども、それがどう動こうと、そうなったときに、では、次どうするのだということも絶えず動いていかないといけないわけですね。全体の方針というものがあって、次の——大体いまの日本の現状を見て財政再建というものをやらなければいけない。そのほかにどういうことをやらなければいけないのかということがいろいろ入ってくると思うのです。そういうわけで一・五%ずつ積まれてきたと思うのですね。どれか新しいことをやらなければいけない、そういうので方針があるはずです。それをやはりぼくらとしては推進していただきたいという気持ちもあるわけです。  それで、来年のことはわからないということでは、では出てきた問題にマルかバツをつければ物事は成り立つのかということになるわけです。そうじゃなくて、いまからこういう方向でやらなければいけない。それが何個かあって、そのうちにだんだん状況によって選択をされていく、そういう方向だと思うのですね。そういうのから見て、何らかの財源が確保できたときとわざわざ言っておるのは、いま問題で付加価値税の話もできないだろうし、そういうことを考えて言っているわけですから、たとえばこういうものがありまして、ほかに何らかの、どういうもので確保されるかわかりませんけれども、財政再建という面から見て何か確保しなければいけないということは、いままでずっと大臣が言っておられるわけですね。もしそういう事態になったときにどうされるのかということを聞いているわけです。ただわからないということじゃなくて、大臣がふだん言っておられることを受けて言っているわけですから。いろいろな負担はやはり持ってもらわなければ困るよという話はふだんされていますね。ではそれは要らないのか、考えなくていいのかということになりますか。そうじゃなくて、たとえば大臣がふだん言っておられることがもし実現したとならば、いまの酒税の中のアンバランスとかあるいは大衆酒あるいは食品、調味料、そういうものについての見直し、そして物品税あるいは酒税がかかっている、要するに、いま税金のかなりの負担をしている部分について、一律でまたかさ上げになるのかどうか、その二つなんです。
  76. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 何も考えていないわけじゃないんですよ。それはちゃんと考えておりまして、経費は極力削減するし、しかし、削減できないようなものは法律を直してもらわなければ困るし、そういうような場面もあり得るかもしらぬ。第二次臨調も進める。したがって行政改革の成果は当然予算の編成時には取り込んでいきますから、という話はしているのですよ。(玉置委員「その次なんです」と呼ぶ)その次の、全部そういうものができた後で、みりんの税率幾らにするとかどうとか言われても、そこまではまだ考えていないわけですよ。(玉置委員「そういうふうに限定しないで」と呼ぶ)ですから、仮に税金が、新税を設けるという場合、ダブったり何かしちゃいかぬという場合は、当然それはダブらないようにすることでしょうね、まだその税金考えていないけれども。考えるとすればダブらないようにそれはすることだと思いますよ。
  77. 玉置一弥

    ○玉置委員 その場その場の感じもしないではないですけれども、時間がありませんのでせっかく大臣おられますから、最初はおられないときやる予定だったのですけれども、おられるものですから、ちょっとついでにお願いをしておきたいと思います。  現在、原料に酒米を五十五万トン前後使っておるわけでございますけれども、現在の酒米、酒米というよりも米全体を考えた場合に古米処理ということで、食糧庁の方で来ておられますけれども、どれだけの金額を古米処理としてお使いになっておられるか。それと、現在酒屋さんに実際売り渡しておられるのはどれぐらいの金額、量であるか、それについてお伺いしたいと思います。
  78. 松山光治

    ○松山説明員 お答え申し上げたいと思います。  五十四年度から第二次の過剰米処理に入っておるわけでございますが、全体の数量、五年間のうちに大体六百五十万トン程度を処理する必要があろうかと考えておりまして、それに伴います損失発生額が全体で大体一兆三千億程度になるのではないかというふうに現在見込んでおるところでございます。  それから、酒米の流通量なり価格についてのお尋ねでございます。  御案内のように、酒米につきましては従来から自主流通米を主体といたしまして、五十一年度から一部政府米も売却する、こういう形態をとっておるわけでありますが、五十四酒造年度の実績で申しまして総量が約五十五万トン、そのうち自主流通米が約三十八万トン、政府米が約八万六千トンの結果になっております。それから、五十五酒造年度につきましては、全体量五十七万トン、うち自主流通米四十一万五千トン、政府米が十二万五千トンというような計画で現在売却を進めております。  価格につきましては、五十五酒造年度におきます自主流通米、これは一種の見込み価格、まだ全体としては固まっておりませんので見込み価格でございますが、一俵六十キログラム当たり、いわゆる掛け米の価格で申しまして一万七千九百六十円程度、それから政府米は主食並みの価格で売り渡してございますので、大宗を占めております三類の価格で申しまして一万五千六百三十九円、こういう数字に相なっております。
  79. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間がありませんので、大臣、こういうことが可能かどうか、農林大臣のときも思い出していただいて、そしてお伺いしたいと思います。  たとえば現在、酒米が五十五万トン使われております。そして、全体が大体九百万石お酒をつくっておるわけですけれども、現在お酒に使われている米をもうちょっとふやせばどうかという観点から見まして、技術的にどこまで可能かということはわかりませんけれども、それはきょうちょっと間に合わなかったのですけれども、たとえばそういうことができる。たとえば現在五十五万トンを一〇%アップできるということであれば、五万トンか六万トンについては古米の処理ができるわけです。古米になりますか新米になりますか知りませんけれども、要するに残るお米が減るわけですね。そういう面から見て現在酒米を使用しているメーカーに現在の米を一割アップして原価を現在のレベルに維持させるという面から考え価格の補助ができるかどうか。要するに売り渡し価格を今度下げることになると思いますけれども、そういう面から見てできるかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  80. 小泉忠之

    小泉政府委員 米の消費拡大のために酒の原料に米をより多く使うようにという御指摘は私どもも承知いたしております。先ほども食糧庁からお答えございましたように、年々酒に対する原料米の消費状況は、たとえば昭和五十四酒造年度では合計いたしまして五十四万トン、五十五年度の酒造米としては五十六万トンというような状況でございまして、酒づくりに対して米は大事な原料ではございますが、コストの問題がまずございます。先ほど来いろいろ御議論ございましたけれども、適正な価格消費を拡大するということも大事でございます。したがいまして、そういった意味で全部米を使って酒をつくるということになりますと、現在の時点で申し上げますと約千億の業界負担になるということです。そういうことで一升に換算いたしますと百円を超す負担がかかるということでございますので、なるべく米を使うようにということで業界としても努力はいたしておりますが、ある程度の限界はあるということではなかろうかと思います。  ただ、米のほかにアルコールの添加をいたしておりますが、これまた適度なアルコールの添加というのは醸造技術上もエスタブリッシュいたしておりまして、良質なお酒というのはやはり適度なアルコールの添加ということも必要であるという技術的な見解もございます。そこら辺のバランスを見ながら業界としても自主努力を続けておりますし、食糧庁の方でもたとえばお米にいたしましては五十三年度からは古米は使っておりません。新米で、しかも政府の管理米の払い下げる枠を年年増加していただいてそういった点をカバーしてきている、そういった状況でございます。
  81. 玉置一弥

    ○玉置委員 私が聞いているのと内容が全然違いまして、要するに価格差、原価がアップする分だけ価格補てんをできるかどうかということなんであります。
  82. 松山光治

    ○松山説明員 ただいま国税庁の方からお答えございましたように、私どもといたしましても酒米は米の重要な用途でございますので、自主流通米につきましても主食並みの自主流通助成を行う、あるいはアルコール添加の減少を図っていく、そういう観点から政府米についても所要の売却を行う、これは主食用の価格で行う、こういうことを行っておるわけでございます。  ただ、いま御指摘の価格を下げて、さらに消費量の増加が図れないかということは、いわば米価政策と消費との関係一般にかかわる話でございますが、特に酒米についてだけそういうふうな形をとってまいるということになりますれば、主食用の価格よりも酒米用の価格の方が安いというようなことになるわけでございまして、これが一般の消費者なり納税者なりの感覚からして果たして納得されるものかどうか、その他いろいろな事情もございましてむずかしい話ではないか、このように考えておる次第でございます。
  83. 玉置一弥

    ○玉置委員 あと一分少々しかございませんのであれですけれども、専売アルコールについて一言だけお伺いしたいと思います。三言ぐらいになるかもわかりませんが……。  五十三年ぐらいにアルコール部会の話が出てあるいは今回第二臨調という動きがありまして、そういう中から現在の国営アルコール工場を民営化しようという話がちらほらと出ておるようでございます。それと民営化され、現在の民営の中で採算等も考えるならば、アルコール専売というのは自由化の方向ではないかというふうな意見も出ておりますし、そういうふうに考えました場合に、現在の専売制度で守られている部分というのがかなりあるわけでございます。一つは沖繩、奄美大島の主力産業でございますサトウキビの生産、そして糖みつの利用ということでございますし、あるいは九州の南部地区にありますサツマイモ等、いろいろな農産物が絡んでくるわけでございます。そういう面から現在のアルコール専売のメリット、デメリットについて通産省の方にどういうふうに考えておられるのか、時間がないので、これは途中で中断になってまた次回へ持ち越しということになりますので、そこだけお伺いしたいと思います。
  84. 井上正

    ○井上説明員 お答えいたします。  アルコール専売事業、先生も御承知だと思いますけれども、昭和十二年来やってきておりまして、要するにエタノールという基礎的な工業用の原料であるとともに、飲用に供される、なおかつその飲用につきましては、先ほど来お話ございますようにかなり財政目的があるという特殊な性格のものでございます。  で、工業原料にできるだけ低廉な価格で安定的に供給し、なおかつそれが飲用に流用されないようにということで流通面を規制していくというのが制度の目的、趣旨でございます。  現在のわが国のアルコール専売事業といいますのは、製造、販売、輸入、すべて国がやっておるという一貫した国営でございます。  まず、その生産面につきましては、やはり国営工場でやっておるということで安定的な供給が図れていると思いますし、先生先ほどお話ございましたように、要するに国産原料を、現在量的には大して多くはございませんけれども、経済性が許す限りできるだけ使っていけるといったようなメリットがあろうかと思います。  それから、現在の国営工場がございますのが、やはりへんぴな地域にあるのが多いわけでございますけれども、そういう地域におきます雇用効果と申しますか、そういったものも無視できないというふうに思っております。  それからさらに流通過程でございますけれども、これも国が直接規制をしているという面から、直接的に適確な流用防止ができておると思いますし、具体的に申し上げますと、流用防止のために工業向けのアルコールにつきましては変性措置というのをとっているわけでございますけれども、これはやはり用途によりまして適切な変性をする必要があるわけでございます。これもやはり国の手で行っておるということで適確な措置がとれておると思っております。  それから輸入面でございますけれども、これも現在国が輸入しておるということでございますが、残念ながら、日本国内のアルコールの原料事情というのが外国に比べますと必ずしも恵まれておりません。そういう意味で、やはり現在輸入管理をやれているという面が国内のアルコール業界の秩序維持といいますか、安定といいますか、こういった面に大いに寄与しているのではないかというふうに考えております。
  85. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間が参りましたので、残りの方でまたお願いしたいと思います。
  86. 綿貫民輔

    綿貫委員長 柴田弘君。
  87. 柴田弘

    ○柴田委員 多少時間が残っておりますので、大臣にお聞きいたしたいと思います。  先ほど大臣から、例の所得制限の問題で、一円の違いで手当がもらえない、もらえる、こういう質問に対しまして、検討するというような御答弁をいただいたわけですね。それでその検討ですが、やはりこれは早急にやっていただきたい、お願いをしたい、こんなふうに私は思っておるわけであります。ことしはこれでやむを得ぬかもしれませんが、やはり何年か先ということでなくて、少なくともそういった検討の結果を踏まえて、多少なりとも五十七年度予算にそういったものが反映をしていけるような方向の検討を一遍進めておいていただきたい、こんなふうに考えているわけでございますが、どうでございましょうか。
  88. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは長い歴史がありますから、なかなか技術的にどういうふうにできるかという専門的なことは私はよくわからない。わからないけれども、御指摘の点はごもっともな点なんです。だから、財源影響があっては私の方としては困るわけだけれども、所得制限を緩和するというようなことも困る。財政がいま非常に厳しい状態の中ですから、限られた財源の中で、やはり困った方の人に手厚くしようという考えでやっているわけです。だから、素人考えで、それが何かもう少しうまい工夫はできないものか、あなたと同じようなことを思っているのですよ。ですから、そういう点は専門家に少し研究をさせます。その結果が五十七年までに出るかどうか、私も専門家じゃないからいまここで断定はできませんが、検討はさせます。
  89. 柴田弘

    ○柴田委員 じゃぜひひとつ検討していただきまして、できるだけ早くそういった方向で願わくは実施をお願いしたい、こういうふうに思います。  それでは税の負担率の問題です。これは先ほど伊藤委員の方からの御指摘もあったわけでありますが、今回の税率の引き上げによりまして二千八百億余円の増収を大蔵省当局としては意図しております。しかし私は、こういった増税をする場合にはやはり税の公平という立場から考えていかなければならない、こういうふうに思うわけであります。  これも先ほど議論があったので、私の考え方だけをずっと述べさせていただきまして、最後に大臣の御見解を承っておきたいと思いますが、清酒特級が現行税率三三・六%から三八・五%、それからビールは四二・五%から四七・九ですか、それからウイスキー特級が四三・〇%から四八・三%、それから清酒の一級が二四・一%から二六・七%、ウイスキーの一級が三七・六%から四二・八%、こういうふうに今度引き上げられるわけであります。こういった、販売価格小売価格とでも申しましょうか、それに占める税の負担率というのはまちまちだ。やはり消費者立場からとってみれば、これはいまいろいろと主税局長さんからも答弁があったようでありますけれども、一体どんな根拠でこれが決定をしているかということは、少なくとも消費者に税の負担をお願いをする以上は明確な根拠に基づいたものを提示していく必要があるのではないか、私はこういうふうに考えるわけであります。これはやはり適正な負担水準ということで特にそういうことが言えますし、また、いま申しましたように、公平な課税、税の公平化という立場からもこういった問題がある、私はこういうふうに思います。  それで大蔵省からいただいた資料を見てまいりますと、たとえば昭和五十四年、課税数量、それぞれ各種類に分けてあるわけでございますが、総数量七百十三万三千四百キロリットルの中で清酒が合計百六十五万一千四百キロリットルですか、それからビールが四百六十九万七千キロリットル、六五%のシェアを占めている。それからウイスキーが三十四万キロリットル。ビールが特に六五%ということで高い。過去五年間の伸び率を見てまいりましても五・一%、清酒が〇・七でございますから相当な伸び率である、こういうことであります。  他方、課税額、これは数量に応じて出てくるわけでありますが、清酒が、昭和五十四年度でありますが、合計で二千八百八十三億円、一九・七%、ビールが七千五百五十八億円で五一・七%、ウイスキーが三千五百七十二億円、二四・四%、課税額一兆四千六百十三億の中でこういった比率ビールが半分以上の課税額である、こういうふうに思うわけであります。  だから、先ほどもお話がありましたが、やはり取れるところから取るんだ、こういった姿勢、これは消費者立場から考えれば、特にビール愛好家の立場から考えればそんなふうにとられてもやむを得ないと私は思う。だからこれは正当な負担水準ですよということを私は増税をする場合にはぴしっと提示をしていかなければいけない、こんなふうな考え方を持っておるわけでございますが、この辺につきましての大臣の御見解をお伺いをしておきたいと思います。
  90. 高橋元

    高橋(元)政府委員 大臣からお答えのございます前に私からやや事実の問題を御説明さしていただきます。  いまもお話がありますように、大体ビールは全体の、これは非常に目方の重いものでございますから数量は別としまして、税額の半分はビールからいただいているわけでございます。その税負担水準につきましては、たびたび申し上げておりますように、外国と違うわが国の飲酒の風習なりそれからビールについての嗜好の変遷なりというものによってきているわけでございますけれども、今回の増税につきましては、五十三年度改正以後五十五年、昨年の三月にビール値上げがございました。当時考えておりました四七・四%の税負担が四二・五%に下がったわけでございます。たびたびの税制調査会の答申の中でも、物価、所得水準の変化に応じて常に税負担水準を適正に保つべきだ、こういう御指摘がございまして、前回の増税時の税負担水準に戻すということを基本に考えまして二四・二%という引き上げ率を決定したわけでございます。全酒類につきまして二四・二%ということを原則といたしておりますが、清酒の一級、二級、合成、しょうちゅう、みりん、こういうものにつきましては、たとえば清酒につきましては、全体の税のアップ率をほかの酒の六割にするということを目途におきまして、一級酒を一四・五、二級酒を九・六といたしまして、清酒の二級としょうちゅう、合成のバランスをとって九・六%のアップ率にしておる、こういうことでございますから、全体としては、昭和三十七年以来、たびたび申し上げておりますように、若干の変化はございましたけれども、三十七年の税制改正でつくられました各種類間のバランスというものとその後の情勢の変化を織り込んで、五十三年に改正をされましたその税負担水準に戻るということがたてまえでございまして、それが二四・二%の税負担のアップということに表現されておるわけでございます。それが今回ビールについて税負担の引き上げをお願いしております根拠でございます。
  91. 柴田弘

    ○柴田委員 大臣考えをお願いします。
  92. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはいろいろむずかしい物の考え方でございまして、確かにビールは急激に伸びたことは事実なんです。ビール伸びるということは外国農産物がうんとふえるということなんです、実際は。一方においては国内のものをうんとつくって外国から輸入を少なくしろという議論があるわけですね。だから、実際問題として、ビールを伸ばすということは外国からの麦をどんどん入れるという話なんです。そこで外国品だけがどんどん売れ行きになってしまうことがいいことなのかどうなのか。お米の方は、なぜ酒というものはだめになってしまったかというと、農家の人はお米を上げろと言う。それで値上げをする。値上げをするとストレートにそれが全部原料代になってしまう。一方ビールの方は長い間値上げしない。外国から輸入するわけですから。安い麦がどんどん入ってくる。国産の方も使ってくれと言ってわれわれ交渉しているのです。半分くらい使えと言っているのだが、とんでもないということで一六%くらい。いまは少しふえましたかな。それでもビール会社に交渉してふやしてもらっておる。もう競争にならない、原料が違うのだから。ということで、それじゃビールばっかり全部伸びてしまって、米は要らないのだ、酒は飲まなくてもいいんだ、競争にならぬのだからというようなことにしてしまうことがいいことか、どういうことか。これはまた大きな別の政策上の問題なんですね。そこで、やはり米は片方で余っている、減反政策は進めている、そこへ持ってき、酒の方も五十万石から四十五万石、三十万石、二十万石と減っていくということはこれまた困る、農村の問題もある、社会の問題にもなるというような関係も頭のすみっこにはどこかやっぱり政治家はないと——直接は関係ないですよ。直接は関係はないが、頭のすみっこには多少あっても差し支えないのじゃないかという気もするのです。ともかく盛っ切り一杯とビール一本と大体同じくらいのアルコールの量ですね。特級の盛っ切り一杯をぐうっと飲むのとビール四杯、あわもあるから五倍くらいになりますか、そのくらいとアルコールの量は大体似たようなところですよ。(「しょうちゅうは」と呼ぶ者あり)しょうちゅうはもっともっと強い。三分の一ぐらいでもいいわけです。そういう点から考えて、確かにそう言われれば日本の原料を使っているところはいま落ち込んじゃっている。したがって、値上げしたと言うけれども、たとえば盛っ切り一杯で実際は一円五十銭なわけですね。値上げ分は盛っ切り一杯飲んで一円五十銭上げるわけです。一升で十四円ですから。ですから大ざっぱに言って盛っ切り一杯で一円五十銭。ですからこれはもう本当に非常に最小限度のものにしたい。しょうちゅうだと九十六銭なんですね。(「ゼロにすればなおいい」と呼ぶ者あり)ゼロにすればなおいいのだが、そういうような原料を国産のものをある程度もっと使ってもらいたいという気持ちがあることもそれは事実なんです。ですから、ゼロにしたのじゃ税金、収入、財源がなくなってしまいますから、こういうようなときなので、そういうことも加味して、まあまあともかくいろいろな——消費者だけの本位の立場から言えばいろいろ議論があります。ありますが、いままでの売れ行きその他のことも考えて、国産品の原材料の消費ということも考えて、最終的にこういうようなことに決めさせていただきました。
  93. 柴田弘

    ○柴田委員 それで、いまも見直しということについての提案があって、私も実は全くの同意見でありまして、やはり、先ほど来申しておりますように、もちろん業界の経営安定ということを願うことは必須条件でありますが、消費者に対してもこういった税の負担——総体的に言っていま国民生活というお話がありましたが全くそのとおりでありまして、そういった国民経済的な視点、国民生活を守る立場から、こういったいわゆる税の負担のあり方、あるいは酒税全体のあり方、あるいはまた流通業界のあり方ということにやっぱり根本的な見直しというものをすべきである、これは全くそのとおりだと私は思います。それで、この点については、私の聞き間違いかもしれませんが、見直す方向でというような答弁があったように思いますね。それで酒税懇談会というのですか、いま何とか懇談会……
  94. 高橋元

    高橋(元)政府委員 間接税でございますから、消費税でございますから、担税者であられる消費者の事情なり納税義務者であられる製造者の事情なりそういうものを織り込んで、時々刻々酒税制度が一番現実にふさわしいものであるようにしなければならない、私どもとしては当然そういう責務を持っておると思っております。先ほどお答え申しておりましたように、基本問題につきましてやや時間をかけまして関係の方々、学識経験者の御意見を伺いながら、まだ何という名前にするか決めておりませんけれども、そういう基本問題を検討する場を早急につくって勉強を進めていきたいという考え方でございます。
  95. 柴田弘

    ○柴田委員 早急につくって検討を進める、勉強するということで、これは私はぜひお願いをしたいと思います。  やはりこれも本当に申しわけないわけですが、最近の酒税の増税あるいは業界値上げをずっと見てまいりますと、昭和四十二年以来、とにかく昭和四十三年の五月に増税がありまして、そして四十八年に値上げがあった。それから四十九年、五十年にまた値上げがあった。これは業界の理由で値上げがあった。それから五十一年の一月にはまた増税があったわけです。それから五十二年には今度は清酒値上げがあった。それから五十三年の五月の一日にはまた酒税の増税があった。そして、五十五年に清酒ウイスキービールともに値上げをされる。また今回の、いわゆる税の負担率が下がったというのを理由の一つにして値上げがされる。これはいろいろな理由があると思います。やむを得ぬ場合もあると思います。流通経費の増大ということでやむを得ぬ場合もありますが、とにかくこの経過をずっと見てまいりますと、値上げと増税が、イタチごっこという言葉があるかどうか知りませんが、そういった方向で追いかけっこしているというふうに私は思うわけなんです。だから、こういった増税を機にして、先ほど来申しておりますように、きちっとした、そういったものを、消費者にもあるいはまた業界に対しても、これは適正なんだよとはっきり言えるようなものをつくっていただきたい、私はこれを要望したいわけであります。この点についての御見解をお伺いしまして質問を終わりたいと思います。
  96. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先ほどお答え申し上げましたような場をつくりまして、そこで真剣な検討をしてまいるわけでございますが、その際に当然、ただいま承りましたような御意見、それからまた国会での御論議というものは、一番重要な検討の視点として私ども取り上げてまいりたいというふうに存じております。
  97. 柴田弘

    ○柴田委員 それでは終わります。
  98. 綿貫民輔

    綿貫委員長 正森成二君。
  99. 正森成二

    ○正森委員 大臣、連日御苦労さまです。少し遅くなりましたけれども、もうしばらく質問させていただきます。  先ほど同僚委員から質問がございましたが、それをさらに別の観点から伺わしていただきたいと思います。  それは、増税をする場合に各酒別について端数が出てまいります。先ほど政府側の答弁を伺いますと、酒は本来自由販売で、それをどう決めるかは各業者が決めるわけだけれども、余りに便乗値上げがないように助言するとか、あるいは場合によっては指導するとかいうことをしていきたいという趣旨の答弁でありました。その例として幾つか挙げられましたが、たとえばビールの場合には二十四円六十九銭で、端数調整して恐らく二十五円の値上げになるだろう、ウイスキー特級の場合ば二百五十九円九十九銭ですが、これが端数調整して二百六十円でなしに二百七十円ぐらい上がるだろう、清酒特級も、百八十円ぐらいに端数を調整するのが百九十円になるだろう、というように新聞等に出ているんですね。それは大体そう承ってよろしいですか。
  100. 小泉忠之

    小泉政府委員 御指摘のとおり酒類は自由価格でございます。今回の増税に伴いましてやはり増税額が、間接税でございますので、スムーズに転嫁するということも必要でございます。価格に増税額が上乗せされるということは当然私ども予想いたしておりますが、増税後の酒類価格につきましては、これは個々の企業体が市場の状況、経営の実態等をもとにいたしまして自主的に決めていくということでございますので、いまのところは価格は未定ということでございますが、やはり環境に応じた、必要に応じた妥当な価格ということで、必要に応じまして、私どもも便乗的な値上げにならないように指導してまいりたいというふうに考えております。したがいまして、いま御指摘の点は、たとえばビールにつきましては二十四円六十九銭というものと二百四十円と二百七十円の間にどういう価格帯があり得るかということになりますと、ビールは五円刻みになっておりますので、やはり市場の取引の慣行による値段というものに調整するということは、これは当然でございまして、それがやはり五円とか十円刻みの調整を超えるような形にできるだけならないように心がけてまいるというのがその時点での私どものスタンスになろうかと思います。
  101. 正森成二

    ○正森委員 五円刻み、十円刻みと言われましたが、ビールの場合は五円刻みですが、洋酒だとかあるいは清酒の場合は恐らく十円刻みだろうと思いますね。ところが、清酒のようですが、特級は本当なら一円四十四銭ぐらい上に上げればちょうど切りのいい丸い数字になるのに、十一円四十四銭ぷいと上げて、一段階飛び上がるというように世間で言われているんですね。しかも、それには大臣、自民党政調会のお墨つきがあるというように出ているのですね。どういうように言われているかというと、これは陳情がありまして、「政府が勝手に行う酒税引き上げで、流通業者のマージンは下がって、経営は苦しくなるばかり。引き上げに伴う金利負担増などの当然増は値上げ認めてほしい」とこういう陳情があって、自民党政調会は「増税に伴う金利負担の増加等については、価格に転嫁できるよう配慮すること」というのを一項目つけ加えた。そこで国税庁との間で、大体一%ぐらいは価格転嫁の幅をふやしてもいいじゃないかと、こういうことを申し合わせたんだと、この一%を全体としての酒別の中で出すために、この清酒の場合なら十一円四十四銭の値上げと、あるいはウイスキーの場合ならやはり十円何銭という値上げということになったんだと、こう報道されているんですね。そのことによる便乗分の総額は年間約三十一億四千万円になると、こういうぐあいに報道をされているわけであります。そうしますと、大体幾ら何でも何十何銭というのは金を払う場合も困る、第一銭なんか持ってないというので、五円とか十円とかいう丸いのにするのはわかりますけれども、一段階飛び越して、何十銭かあるいは一円か上げたらいいものを十一円何ぼ上げるというようなのは、明らかに便乗値上げであり、それを金利として一%ぐらいは認めるんだというように自民党政調会が言い、業界との間で大体その話をしているんだと、それを国税庁が受けて事実上行政指導しているんだということになりますと、これはなかなかわれわれとしても注目しなければならぬ問題だと思うのです。なぜかといいますと、私はきのうも予算委員会質問さしていただきましたが、私どもは、税調の言う課税ベースの広い間接税は避けて通れない課題だとは思っていないです。しかし、そう思っている人もいることは事実ですね、税調のように。そうしますと、課税ベースの広い間接税というのは仮に一般消費税的なものだとしますと、今度の酒なんかは酒だけの値上げですけれども、大体あらゆるものにかかってくるわけですからね。それの税額が、三%だ、五%だということになれば、全部端数が出るのは決まっているんです。それを、端数を都合のいいようにぐっと上げるんだということになれば、税でいいかげん上がるのにそのまた便乗値上げが通常の値上げ以外にあるということで、これはゆゆしいことなんですね。ですから、そういう点について財政当局はどう考えておられるのか、答弁していただきたいと思います。
  102. 小泉忠之

    小泉政府委員 引き続いてお答え申し上げますが、先ほど申し上げましたように酒類価格は未定でございますけれども、今回の増税をスムーズに価格に転嫁するという考え方からこの問題をながめますと、やはり増税額に伴う直接的な流通経費というものがござろうかと思います。これは、端的に申しますと、酒類はすぐに売れるものではございません。したがいまして、流通界にある程度一定期間これが在庫といいますかストックされるわけでございます。これが仮にたとえば一カ月とか何十日という全体的な、標準的な期間がございます。その期間の間の金利負担というものは当然流通界の負担になるわけでございます。通常、たとえば五十三年度の増税の際はそういった非常に微細といいますか全体から見ればそれほどではない額になるわけでございますが、これはその増税後の酒類の需要の伸び、数量の伸びというもので業界全体として吸収していくという方式で従来まいっておりましたわけでございますが、最近の酒類の市場の動向あるいは需要の停滞ぎみの動向をながめますと、やはり流通界の経営の状況もかなり厳しさを増しておるということでございまして、今回の仮に増税が、この政府案が確定いたしました際には、それの転嫁ということもスムーズに行われることが必要であろうということで、直接的なそういったような経費につきましては、やはり増税額と同時に転嫁されていくということを予定いたしまして、価格をながめますと、それと、そこで決まります価格と実際のその取引慣行による、先ほど申し上げました五円、十円の単位の価格との間の調整は端数の調整として行う、こういう関係になろうかと思うのです。
  103. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ説明はされるのですけれども、流通界が増税になって高いものを売らなければならない、しかも、自分のところへ残るマージンがそれでごつうふえるわけではないというのは非常に気の毒な問題点でもあるということは私も思っております。しかし、それは増税という国の政策をこういう形で行ったからであって、やはり財政当局がその影響というものを痛みを持って考えなければいかぬと思うのですね。  ところが、ある報道によりますと、国税庁に酒税課というのがあるのですか、国税庁の次長に来ていただいておりますけれども、これは二月二日の朝日新聞ですけれども、その中でいまあなたがるる説明されたことを、大体一%ぐらいは価格転嫁の幅で増税額よりもたくさん認めてやらなければいかぬというのについて、こう言ったというんですね。「当初から引き上げ幅はビールウイスキーなどでは二五%程度といってきたはず。今回の実際の引き上げ率二四・二%に、流通経費分の一%分を加えると、その程度になるはず。本来国が取るはずの税収の中から一%をさいたわけで、消費者負担増になるとは思っていない」こう言ったと書いてあるんですね。これはとんでもない考え方じゃないですか。こういう考え方をとるとすれば、税率を初めから何%か高く吹っかけて言うて、結局下げてやったじゃないか、何を国民文句言うことがあるか、流通経費の増加に充てて何が悪い、こういう理屈になるんですね。  こういう考え方ができるとすると、課税ベースの広い間接税なんか導入したときどうなりますか。初め五%と言うておいて、実際四%にしてやった、一%ぐらい高くなって国民何文句言うことがあるかという論理になるのですね。私はまさか国税庁がそんな不遜な考えを持っているとは思わないけれども、新聞報道では日本で一、二を争う、そういう内容の報道が広くされている。これは事実だったらえらいことだし、もし事実でなければ国民に対して公の席で誤解を解く必要があると思うのですね。ですから、国税庁なりあるいは大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
  104. 小泉忠之

    小泉政府委員 報道の件につきましては、私どもの立場から申し上げることは差し控えたいと思いますが、先ほどお答え申し上げましたように、今回の増税につきましては、やはり酒類市場の状況等従来と違った点が非常に出てきております。そこら辺を踏まえまして、やはりスムーズに税率の変更が価格に転嫁されるようにということを配慮いたします場合には、やはり流通界の状況も当然メーカーの状況と同時におながめいただくと同時に、消費者状況も勘案するということが必要ではないかと思うわけでございまして、便乗値上げにならないような指導は、増税額が確定いたしました後に私ども必要とあれば必要に応じて指導してまいりたいと思うわけでありますが、それ以前の、市場の取引慣行に基づく値決めの単位、価格の単位というものは、私どもとしては、商品でございますので、その点は理解を持って、しかも、それがその範囲を超えて便乗的な値上げにわたらないようにということで処理をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  105. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、いまの答弁お聞きになりましたか。私がこれだけ問題提起をしてもああいう答弁をするのです。私は、業界になるほど流通経費が何ぼか要るかもわからないという事実があるかもしらぬ、これは、私は酒類販売業者じゃないからわからないけれども、わからぬでもないけれども、こういうようなことを国税庁が言っているとしたら大変なことではないかと言うているのです。もし仮に必要な流通経費を価格に転嫁するためにやむを得ないとしても、これは増税をした結果起こったんだ、二四・二%増税して、それでも国民の皆さん、酒を飲まれる皆さんには嗜好品が高くなって申しわけないと思っているのに、わずか一%とはいえなお流通経費がかかるというのは申しわけないことだけれども、経済の法則としてがまんしていただきたい、こう言うのがあたりまえでしょうが。それが何だ。もともと二五%程度やると言うておった、一%流通界にまけてやったんだから何文句を言うことがある、こんなことを言うて国民が納得すると思いますか。そのことを指摘したら、指摘された以上は少々頭の悪い者でも気がつくかと思えば、またもう一遍ああいう答弁をするでしょう。そんなことで国民が納得しますか。政府たるものは——私ら反対ですよ、しかしどうしても増税しなければいかぬという立場なら、まことに申しわけないことだけれども増税しなければいかぬと、おまけにその増税分以外に増税に伴う必然的な結果として余分に一%ぐらいは見なければいかぬということですけれども御了承願いたいと言うのがあたりまえでしょう。それをこういう不届きなことを一流新聞に堂々と言うておるから本当なんですかと、こう聞いて、私は実はこれは事実に違うようでございますぐらいの答弁があってしかるべきだと思って余地を残して聞いた。開き直っておるじゃないですか。言語道断。——いや、あなたの答弁なんか聞かない。大臣、答えてください。
  106. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私はその新聞を見ておらないし、ただいま聞いたばかりでございます。そのとおり言ったかどうかも私はわかりません。わかりませんが、私は正森委員と同じ考えですね。それはやはり私どもとしてはどうしても増税をお願いしなければならない、その結果確かにいま間税部長が言うように流通業者にしてみればコストがその分高くなる、すぐには売れない、金利負担もかかる、だから実質上マージンが減ったことになるからその分を見てくれ、ある程度はやむを得ないかと、だけれども先ほど言った二百七十円、百九十円、これどうだかわかりませんよ、わかりませんが、精査をしてある程度のものは仕方がないかと、その分は増税のほかに申しわけないが多少のものは原価として乗るかもしれませんと、その分は仕方がないのでよろしくお願いします、私はそれだと思うのです。私はそういうつもりで、私が代表して言い直しますから、よろしくお願い申し上げます。
  107. 正森成二

    ○正森委員 そうおっしゃっていただけば、そういうのを是認するかどうかは別として、それで理屈は通っているのですね。国民も納得する人は納得するだろうと思うのです。やはり物事というのは、なんか当然で何文句あるというような言い方じゃなしに、こういうようなことまでお願いするということは国民にとっては非常に御迷惑な点もあるだろうけれども、必然的な点もあるんだ、どうか納得してくださいと言えば、これは税を払う方だって、物が上がる方だって、ああそういう理屈だなと思うかもしれないけれども、こんな新聞に書いてあるような言い方をもししていたんだとしたら、これはやはり心がけが非常に悪いですね。元手なしで金を取るという根性がしみ渡っておるというように言わなければならないですね。大臣からそういう御答弁がありましたから、最高責任者ですから、私は納得して次に移りたいと思います。  もう一つ私が質問をさせていただきたいのは、先ほどやはり同じように同僚議員が質問されましたが、十年ぐらい前までは全酒類販売量の三割以上が日本酒だったようですね。間違っているかもしれません。それがいまでは二割そこそこぐらいまでに落ちてしまったというように言われているようですが、そうですか。
  108. 高橋元

    高橋(元)政府委員 国産酒類の課税数量でございますからキロリッターでございますが、申し上げますと、三十七年という時点をとりますと、全体の移出数量が二百九十四万三千キロでございまして、その中の清酒が九十七万九千キロでございますから、お話のように三割を超えておったわけでございます。
  109. 正森成二

    ○正森委員 つまり、先ほど他の委員からも指摘がございましたように、日本酒というのは原料の点でも割り高だ、あるいは嗜好が変わってきたこともございますでしょうが、売れ行きが減ってきたということだろうと思います。ところが、最近異変が起こって、昨年ぐらいから売り上げ全体は横ばいなんだが、特級と一級がそれぞれ前年比九・一%減あるいは三・八%減と落ち込んだのに対して、二級だけが六・二%増だ。これはやはり地方の地酒というか、そういうものの嗜好性というものが見直されたということと、国民の生活が非常に楽ではないということから、しかしそうかというて酒の好きな者が酒をやめるわけにいかないということで、二級酒の方へシフトを移したというような、二つの理由ではないかと言われているのですが、そういう二級酒が上昇するという傾向はあるのですか。
  110. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いろいろな要因があろうかと思うわけで、私どももよくわからない点があるわけでございますが、価格の展開ということが一つあると思うのでございます。御案内のように、一級酒と二級酒ではかなり税差がございます。ざっと申して三百円がらみ違うわけでございますから、その三百円がらみ違いますことで、一級の認定をとりますと三百円だけコストが上がるわけでございますので、したがって売価が上がってまいります。そういうところから、一つは販売者、生産者の販売政策というものもあるかもしれません。  それからもう一つは、いまもお話ございましたが、俗に東の方が二級酒がふえておって、西の方は一級酒の割合の方が高い、こういうふうに聞いておりまして、調べてみても事実そういうことがあるようでございます。どうしてそうなったかということは必ずしもはっきりわからないのでございますが、ごく最近、五十五年をとりますと、確かに御案内のように、二級酒の割合の方が一級酒を上回りつつあるということは言えるかと思います。
  111. 正森成二

    ○正森委員 二級酒をつくっておりますのは、主として地方の中小の醸造業者なんですね。私は概略で申し上げますが、醸造業者は大体三千ぐらいあるのじゃないか、こう言われているそうです。しかし、大手というのはほんの少しで、大手二十社とか百社とか言われるのですが、大部分は中小企業であります。このごろは二級酒が見直されてきたとはいえ、なかなか苦しくて、五十四年の倒産、廃業が五十八社、五十五年は七十九社、五十六年は何社になるだろうと言われているというような報道もあるわけであります。  そこで、私も酒は少々たしなみますが、日本酒が全く日本からなくなるということはちょっと考えられない。少なくとも私の生きているうちはそんなことは起こってほしくない、こう思うのですけれども、やはり一定の配慮が必要な場合もあり得ると思うのですね。イギリスではスコッチだとか、ドイツではビールとか、フランスではワインとか、それぞれ誇りにして、通産とか行政でも考えているようですから。  そこでわが党は、少し前になりますが、清酒醸造業の振興に関するアンケートというのを業者に出したのです。それでいろいろ困難な点とか希望する点とかずっと出してもらったのです。その一部を持ってまいりましたが、時間の関係で全部は申しませんが、その中で非常に共通して言われていることは何かといいますと、農林省に来ていただきましたが、新米、良質で価格の安い原料米の確保というように書いてございまして、その関係の幾つかをちょっと読んでみますと、この書いてあるとおり読みますからちょっと言葉遣いが不適正なのもありますが、その他米というのですか、括弧して自由米などと書いてありますが、その売り込みが多い今日、高い自流米、これは自主流通米のことでしょうね、これを買わされるのは何か損をしているような気がする。また、まじめに自流米を使用している者は、その他米を使用する業者に販売競争上不利となっている、こういう意見ですね。それから、原料米は全量新米で、主食用政府売り渡し価格で売却願いたいというような意見ですね。アンケートに書いてあるのです。それから、古米または古々米となって飼料に放出されるくらいなら、新米のうちに安い価格で放出すべきである。そうなれば、無理にアルコールを使用し価格を引き下げることも考えず、米の使用量も多くなり、品質も向上することになる。別の人は、等外の低品質米が約半額、半値で売られている。等外の低品質米の使用を禁止して政府米を使うようにすると、品質の劣悪なものがなくなると思う。また、低品質米を使ったものは二級酒外の三級酒と指定してはいかん、これは非常にユニークな意見ですが、そういう意見を書いておられる人がいる。あるいはその他米についていろいろ制限をつけられているが、企業安定のため、その他米購入を自由にさせてほしい等々、これはいろいろな方ですから、ちょっと矛盾する意見もあるようですが、アンケートの中での原料米に関する要望というのが非常に多い、ほとんどすべての人が言っている面があるわけであります。  そこで、先ほど農林省から資料もいただいたわけでございますけれども、政府米の供給というのを希望している人も多いようですが、同時に、これを希望すると、古米と抱き合わせでないと売ってくれないとかいう意見が一部で出ている。うそならうそ、違うなら違うでいいのですよ。それから遠いところへ行かぬと買えないとかいうような意見も出ているのです。  以上、私が申し述べましたアンケートにあらわれている、地方で一生懸命日本の酒を支えている中小醸造業者の希望について、農林省の御意見あるいはお考えを承りたいと思います。
  112. 松山光治

    ○松山説明員 まず酒米につきましては、米の重要な用途として私ども重視いたしておりまして、そういう意味で、従来から自主流通米を主体にいたしておりますけれども、それについて主食用並みの政府助成を行う、それからアルコール添加の減少等を目標といたしまして、マル白米よりも安い価格で、主食用の売り渡し価格政府米を売却してきておるということは先ほども申し上げたところでございます。  それで、いろいろな御要望があったわけでございますけれども、まず新米で安定的にという点について申し上げますと、原料供給の安定性という点からいたしますと、農業の場合には自然災害がございますから、古米も含めて需給操作をした方が安定性は維持されるわけでございますけれども、現段階では、ごく一部のメーカーに古米売却の希望がございますから、これについては古米も売っている場合もございますけれども、ほとんど全部のメーカーにつきまして、去年のように単年度需給からすれば若干きつい話になった冷害のもとでも優先的に新米を確保する、そういう形で安定供給を図っておるところでございます。  それから、買い取り地の問題につきましては、これは従来から、現に自主流通もそうでありますけれども、産地の産倉在姿で売却するという形をとっております。私ども主食用の売却は需給調整との関連をにらみながらできるだけ近くの倉庫で引き取ってもらうという基本線で需給操作に当たっているところでございますけれども、酒屋さんの所在地が消費県でございまして産地と離れているというようなこと、また五十五年の場合には近くの中国筋なんかがかなり災害でやられたというようなこともございまして、多少遠くまで引き取っていただいておる、こういう実情にあろうかと思っております。  いずれにいたしましても、私ども主食用価格とのバランスも念頭に置きながら、しかしまた自主流通につきましては、それに置きかえる形で政府米を売っていくというようなことになりますれば、今度は逆に生産者の実質的な手取りが減少になるといったような影響もございます。そういうふうな諸事情を総合勘案いたしながら、酒に使われる米の消費拡大というところにひとつポイントを置いて適切な処理をやってまいりたい、このように考えているところでございます。
  113. 正森成二

    ○正森委員 いま一応の答弁がありましたが、より一層中小の醸造業者の希望にこたえられるように努力を願いたいと思います。  そこで、きょうはお酒の方の質問ですが、先ほどの答弁の姿勢にも見られたので私は危惧しているわけですが、増税をすると同時に徴税する方の国税庁あるいは大蔵省がやはり国民に対して姿勢を正さなければならない点があるのではないかということを大蔵大臣に申し上げたいのです。  例を挙げたいと思いますが、まず国税庁に伺います。  このほど兵庫県の神戸市にある近藤病院というところが十億円以上という巨額の脱税事件を起こしまして摘発をされ、逮捕されたという事件があったようであります。この近藤病院というのは、昭和四十七年ごろの脱税によりまして以前にも起訴されて、一審で有罪、高裁で五十四年にその判決が確定したというように聞いておるのですが、またこういうことをしたということで問題になって広く報道されているようであります。この事件についての公表し得る内容について簡単に説明していただきたいと思います。
  114. 川崎昭典

    ○川崎政府委員 近藤病院、個人でございますが、近藤直という人の脱税につきまして五十五年九月二十六日査察調査に着手いたしまして、現在調査中でございます。その後、検察庁におきまして三名の者を逮捕するということになっております。  調査の内容につきましては、個別の事件でございまして、いま調査中でございますので御説明できないわけでございますけれども、ただいま先生が申されましたようなやや大きな事件でございます。
  115. 正森成二

    ○正森委員 いまの答弁を聞いていただいてもわかりますように、私、ここに新聞の切り抜きを持っているのですけれども、いまの答弁よりはずっと詳しいことが書いてあるのですね。脱税額が約十億円だというように、こんなに大きく載っているのですよ。これは逮捕される前から載っているのですね。逮捕されてからますます載るようになりましたが、こういうように一般の新聞に出ておって逮捕までされたという事件について私が国会で聞きましても、しかもこちらから十億円ぐらいというようなことを言うても、やや額が多いようでございますという人を食ったような答弁をして、大体どれぐらいの額かというようなことも言わない。この新聞記事を見ますとどういうぐあいにして利益を上げて脱税したかということまで書いてあるのですよ。それなのに言わない。  もっと言いましょうか。普通こういう脱税事件は国税局が告発するのですね。ところがこの事件はなぜか告発もしてないのです。それで、いきなり検察庁がばかっと逮捕しているのですね。  一体なぜそんなに言うことを渋るのか、私から申しておきますが、普通の問題についてはもちろん守秘義務もありますし、みだりに何のたれべえが幾ら所得があって税金幾らというようなことば、多額の納税者で一定の範囲以上の人は言うべきではないでしょうけれども、逮捕をされて被疑者になった場合には、その人の場合は刑法の上から言っても報道しても名誉棄損は成立しないということになっており、いままでの扱い上も、そうなればある程度の事実は公表するというたてまえになっているのですね。ところが国会で——これからまだ後があるのですよ。あなた方と関係のある、そのことについて聞いているのに、持って回りて、調査中だから内容は言えない、額もある程度多いようでございます、そんなことで私が、そうでございますかと言って次の質問に移れますか。細かい手口を全部言えと言っているのではないのですよ。私が言ったことについて、その額にほぼ等しいようなものだと思っておりますとか、多少違いますとか、そんなことぐらいは言ってもいいでしょうが。
  116. 川崎昭典

    ○川崎政府委員 先生のおっしゃるお気持ちもよくわかるわけでございますけれども、私どもには守秘義務ということもございますし、また特に本件は調査中でございまして内容を申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたいと考えるわけでございます。
  117. 正森成二

    ○正森委員 守秘義務、守秘義務と言っても、児玉譽士夫の脱税のときだって守秘義務で論戦をして、逮捕され起訴されている者についてはやはりここまでは言わなければいけませんと言って、私はあのときの航空機調査特別委員会で相当大きな声を上げて、磯邊長官はある程度言ったのです。それでも守秘義務ですか。それなら、守秘義務なら守秘義務でもいいよ。なぜこの人についてこれだけ守秘義務にこだわるかということをこれからお話ししたいと思うのです。  この近藤病院というのはこういうぐあいに二回にわたって脱税で起訴されている。起訴されるというのはよくよくのことなんです。大抵はお金を払えばそれで済むのでして、よほど悪質でなければそういうぐあいにはならないのです。ところが——ちょっと資料を置き忘れて見当たりませんが、宙で覚えておりますから申しますが、この近藤病院には昭和五十年前後から所轄の税務署長が、兵庫税務署ですが、その税務署長が三人まで顧問税理士として天下っているのです。管内の兵庫税務署の署長だった者や国税局の査察部次長になった者が全部で八人天下っているのです。顧問税理士に税務署、国税庁の職員から天下るということは多うございまして、それが一人じゃない、二人行く場合を二階建てというのだそうです。中には十六階建てというのがあるのだそうです。十六人ぐらいいて、顧問税理士室というのがあって、そこでいろいろやっているところもあるのです。ここは八人天下りまして八階建てですね。そしてそのうち四人ぐらいは、これはひどい病院だと思ったのでしょうか一年でやめたらしいのです。やはりまじめな税務職員がおるのですね。ところが四人ぐらいは現在でも顧問税理士なんです。そのうち少なくとも一人は兵庫税務署長で、その人物は五十四年に有罪になったその事件のときに摘発をした張本人なんです。それが事件係属中に、兵庫税務署長、自分が、その管内だったのですよ、取り締まる立場に立ったのがやめると同時に顧問税理士に天下って、そして経理事務を取り扱っていたんですね。今度の脱税についても重大な関与をしている疑いがあるんですね。名前もわかっているのです。名前を申しましょうか、また守秘義務だと言って言わないかもしれないから。嵯峨時重という男なんです。八人全部名前がわかっているんですよ。だけれども、余り名前を挙げるのも本意じゃないから、一人だけ代表で責任をとってもらって名前を挙げておくけれども。不届き千万でしょう。まあ不届き千万と言えるかどうか、それは大いに問題があるのでしょうけれども。  ですから世間では、結局、税務署長が天下って、そしてこういう脱税をやらせておるのではないかという声があるんですね。いまみたいに守秘義務だとかなんとかかんとか言って、新聞に広く載っており、逮捕されて、司直がやっておることについて、逮捕被疑事実なんてもう世間に公表されているのです、そのことも言わないということになると、やはりそうだなあ、その息は国税庁の次長ぐらいまでかかっているのかなという気に国民はなるんですね。そんなことでどうして、お酒は値上げする、法人税は値上げする、物品税は値上げする、それで国民にがまんしてくれと言えますか。私は、国税庁の職員全員悪いなんて言っているのではないのです。九九%まではまじめな職員で、一生懸命やっておられると思いますし、私は、まじめにやっておられる方も多数知っております。しかし、こういうのが出ますと、やはり全体が疑われることになる。しかも、私はこの問題について質問すると言っているのに、次長の答弁の態度というのはああいう態度なんですね。そんなことで国民の信頼を得ることができますか。  大臣、もう少しお話ししましょうか。これは昭和五十三年八月三十一日の参議院の決算委員会なんです。わが党の沓脱タケ子議員が当時の磯邊律男国税庁長官に質問をして、私が申しました例の天下り税理士と言われる国税庁の職員のどうかと思われる点について指摘しているんですね、七月にもやったのですが。その中で、二十年余り勤続する部内のある職員から大阪国税局長に建議が出ているのです。その建議書を沓脱さんが手に入れて、そして委員会でそれを読み上げているんですね。それを全部読み上げますと非常に長くなりますから、ごく一部を申しますと、大臣、よく聞いてください、同じ国税庁の職員がこう言っているんですよ。  先ず例年二月頃になりますと会社毎の顧問リストを元にして候補会社を選定し、未処理の事業年度のあるものは以後五月末位迄の間にかなりの調査期間を見込んだ実地調査計画を盛り込みます。そして増差所得から相手方の反応次第で概ね一千万円内外から数百万円の減額をするのが普通です。つまり、もっと所得があるじゃないかと見つけておいて、そして相手の顔色を見ながらそれを下げるというのです。  又調査時期に至らない会社には幹部が訪れ、自後一年ないし二年の間調査を省略するとか、優良、準優良への格上げ等の取引条件を切り出す訳です。つまり、やめていく上司を顧問税理士にするためにこういうことをその副署長や統括官上席がやっておる、こういうことを書いておるのです。「局長は」というのは国税局長ですね。あっせんを止めることは職員の士気に影響するとも言われましたが、大部分の未だ長い将来のある我々職員にはこんな腐敗堕落したあっせんを続けることはやり切れない思いなのです。報道された内幕がすべて真実であることは、部内から憤激の声のかけらも出ず、只沈黙だけであった事実からしても推察願えると思います。今後もあっせんを続けるということは、とりも直さず圧力による押し付け、課税面での取引等の不正を続けるということに他ならないと職員も納税者も理解することでしょう。  六月ごろになると毎年いやでも耳にするのが顧問先のあっせんの話です。顧問先のあっせんと共に申告是認、調査省略の交換条件が成立して数百万円の税金を脱税していても帳消しになります。大企業でも、調査をしても、天下り税理士と統括官の談合で調査した税金も三分の一にされてしまうのです。これは私が言っているんじゃないのです。部内の職員が大阪の国税局長に出した建議書の中に書いてある。それをわが党の沓脱議員が質問の中で明らかにしているのです。こういうような事実がありまして、自粛します、こう言ったので、大分よくなったかと思ったら、今度の近藤病院の事件があり、そして所管の兵庫税務署長等々が天下って、事件の最中に、摘発した当の本人が、それでまた今度十億円もというのをやらしておるその顧問税理士だ。こんなことで国民が国税庁や徴税当局や、あるいはそのもとになる増税法案をつくる大蔵省を信頼すると思いますか、しかも私が遺憾にたえないのは、渡辺美智雄大蔵大臣はやはり政治家だから、私の言わんとするところをわかっていただいて、先ほどの端数切り上げの問題でも、間税部長とは違った答弁をされましたから私はすぐ引き下がりました。いまどうですか。国税庁の次長は、こういう問題だぞということがわかっておって、被疑事実についてはもう世間に大部分公表されているのに、守秘義務である、こう言って答えようともしないでしょう。こういう事実があれば、こういう人たちをかばわなければならないから国会でも答弁しないんだなと常識のある国民なら考えるのがあたりまえではありませんか。そういうことで値上げをしたって、国に対する納税義務があるんだから納めるのがあたりまえだというような姿勢では、これは役所はうまくいっても、政治というものはうまくいかないです。ですから、私はくどくどと多くは申しませんが、ちょうどもう時間も参りましたので、大蔵大臣に政治家として御所見を承っておきたいと思います。
  118. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 今回の近藤病院の問題はまことに遺憾なことだと私は考えます。私、新聞を見まして、すぐに実は聞いたわけです。ところが庁の方ではまだ具体的な細かいことはわからない、間もなくして連絡がございました。私はただ不思議に思ったのは、四人も同じところへ税理士が、歴代署長みたいなのが行っている、こういうのはちょっと常識的じゃないじゃないかなという気が現実的にした。前にその男が摘発されたことがある。そこでこれはどうなんだと言ったところが、局の方でも調べているという話だった。結局ば、私はこういうふうに思ったのです。この近藤病院というのは前に摘発された。それもつい二年ぐらい前の話ですから、それがまたそういうことをやるというのは一体どういうわけか。ちょっと税務署を甘く見たんじゃないか。歴代署長が行っているから、前にやられたばかりで、三年もたたないうちにまたやるわけですから。それに国税局が手をつけているという話を聞いたので、それは結構なことだと実際は思ったのです。ところが、私は具体的な細かいことは知らぬけれども、国税と検察とは恐らく連絡をとってやっているのでしょう。やはり私はそういう意味では、国税局、検察もしっかりしていると思いますよ。本人が少し事態を甘く見て、署長でもいっぱい連れてさておいたり、査察も次長か何か連れてさておけば何とかうまくいくんじゃないかと思ってでたらめをやった、私はこう見ているのです。  問題は、やはりいまのことが事実かどうか私知りません。知りませんが、同じところに四人も五人も押し込むということは、これはろくなことないに決まっていますからね。一人とか、何か関係のなかった人が行くことは、それはやはり食っていかなければならぬわけですから、どこでもやっていることだし、それ自体は悪いことはないと思いますが、やはりけじめはつけなければいけない。したがって、これから四人も五人も行っているところがどれくらいあるのか、私の方から逆に調べさせて、そういうところは特別に調査をしてもらう必要があると私は実際は思っている。やはり国民の信頼を受けなければ、あなたのおっしゃるようなことを言われても仕方のないこともありますから、十分に厳正に気をつけて、またそういうふうなものがほかにもあるかもわからぬ、ないかもわからぬ。私の方から逆にそれは調べるようにいたします。  以上でございます。
  119. 正森成二

    ○正森委員 大臣から政治家らしい答弁がありましたので私はこれ以上は申しませんが、一言申しておきたいのは、私は、職員をやめられて税理士になられ、あるいは顧問になられた方が全部悪いと言っているんじゃないんです。それは当然法律上も認められていることも多いわけですから。ただ、こういうのは非常に問題だ。やはり姿勢を正す必要がある。特に大臣がいま摘発している、国税局も検察庁もりっぱだと言われましたが、実はそれは少し違うので、普通の脱税の場合は、通常は国税局とか税務署が検察側に告発するのですよ。細かい税務のことなんかわからないでしょう。それで、関税の場合なんかは、これは告発がなければ刑事権は発動できないことになっているんですね。国内のいろいろなものは独自に捜査機関ができますけれどもね。ところが、今度の場合は国税局は告発してないのです。査察、調査する、調査すると言ってうじうじと長いことやっておって、恐らくたまりかねて警察、検察当局がじかにばっと逮捕したんです。ですから、国税局は今度の場合決してでかしてないんですね。むしろ非常に疑惑がある。なぜそんなに遅疑逡巡したんだろうか。そして摘発もしない、告発もしないのにどうして警察や検察がいきなり逮捕したんだろうかという疑問が、私のように弁護士で多少専門で通じている者にはぴんとくるんですね、これはおかしいなということが。ですから、そういう点で非常に問題があり得る。そのことによって結局国民に対する信頼が失われ、何とかのあれもアリの穴から崩れると言いますから、幾ら営々と大蔵大臣が努力したって、それはやはりだめになっちゃうかもしれない。  私は、大蔵大臣の方針を認めるわけではありませんけれども、そういう点を申し上げて、姿勢を正してくださることを国民にかわって要請したいと思います。特に次長は、答弁は求めませんけれども、きょうみたいなあなたの答弁の態度では、それは国民はとても納得できないですよ。そういう点はやはり反省をしていただきたいと思います。  終わります。
  120. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次回は、来る二月二十日金曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十三分散会