○松浦(昭)
政府委員 果樹共済についてのお尋ねでございますが、幾つかのことをお尋ねになりましたので、分けて御
答弁を申し上げたいと思います。
まず、加入率が低いというお尋ねでございますが、確かに
果樹共済の加入率は年々上昇してはおりますものの、
昭和五十五年度につきましては収穫共済で二六・七%、それから樹体共済で七・〇%という
状態でございまして、率直に申しまして、これは一般的に低位であると言わざるを得ないと思います。これは、やはり改善を図っていかなければならぬ一番大きな共済の対象でございます。と申しますのは、やはり二六・七%といったような
状態でございますと、本当に
被害が起こりました場合にはその補てんができないということもございますし、また、共済の設計上から見ましても逆選択の
可能性が出てくるということもございまして、その
意味で、この加入率を伸ばすということは非常に重要なポイントであるというふうに私
ども考えております。
樹種によりましては、たとえばリンゴは四七%、ナシが四五%、温州ミカンが二二%というようなぐあいで、かなり高い
状態もございますし、カキにつきましても、実は全国のベースで見ますと二四・一%といったような高い比率になっておるわけでございますが、もちろん二四%が非常に高いと申し上げるわけにもいきませんけれ
ども、全国ベースでは二四%であるにもかかわらず、岐阜県については二・二%という
状態でございます。このように、地域によりましても加入の差があるわけでございます。
どうしてこのように加入率が一般的に低いかということを次に申し上げたいと思いますが、それは
一つは、何分にもこの
果樹共済制度が
農作物共済とは違いまして、制度発足後まだ日が浅いということで、必ずしもその
趣旨が徹底していないということもありまして、また、制度の仕組みとか
内容について十分
関係者、また果樹農家の
理解が得られていないという点もあろうかと思いますが、さらにまた、先ほ
どもお触れになりましたように、専業的な農家が余り入らないという欠陥があるわけでございます。これは、やはり産地間あるいは農家間において、栽培形態とかあるいは
技術の格差がある。そこで画一的な仕組みを持った共済をいたしますと、どうしても専業農家で
技術を持った農家は、そのような共済に入らなくても自分は十分にやっていける、こういうことをお考えになってそれでお入りにならないのではないか。こういう消極性が出てくるわけでございます。
特に岐阜の場合を考えてみますると、この岐阜のカキの栽培農家の方々は、非常に高い
技術水準を持っておられるということがございます。また、そのために、仮に共済に入りましても共済金の
支払いを受ける機会が少ないということであれば、むしろ自分の
技術でカバーした方がいいというふうにお考えになったのではないかと考えられますし、また一部の農家では、品質の低下を共済補てんしていないということから品質方式を望んでおられるわけでございますけれ
ども、共同出荷が定着していないということから、その出荷量が少ないために品質方式を行うのに必要な
条件が整わないといったような問題で、この岐阜の加入率が低いのではないかというふうに思うわけでございます。この加入率が低いので、もっとこれを高めたいということを、私いま率直に申し上げたわけでございますが、このような特に
技術水準の高い農家もこの共済に入っていただいて引き受けを推進し、その加入率を高めていくということのためには、何と申しましても専業農家の方々にも入りやすいような共済をつくっていくことが非常に必要だと思います。
実はこれが第九十一回国会、前回の通常国会におきますところの制度改正の
内容でございまして、余り細かいことを申し上げてはお時間をとるだけでございますので、簡単に申し上げますが、
一つは、生産出荷団体の取りまとめによりまして構成農家の一定数あるいは一定割合以上の加入が得られた場合には加入奨励金を
交付するということにいたしておりまして、その加入奨励金の
内容につきましては、目下国会に予算案の中で御
審議をお願いしているという
状態でございます。
それから、一定年間無事故の農家に対しては共済掛金の割引ができるということになっておりまして、専業農家で事故率が低いような農家に対しては、画一的な掛金ではなくて率の安い掛金ができるようにということも考えております。
それからまた、特定の防災施設を設置しているような農家につきましては共済掛金の割引を行う。あるいはひょう害のみを共済事故とする方式を実施する。あるいは全相殺方式及び特定危険方式の足切り水準を、現行の三割から二割に引き下げる。それから果実の単位当たり価額については、品種間及び県内の地域間の格差を設けるような価格差によりまして、それを反映するような細分化を単位当たり共済価額について設けていくといったような改正をいたしておりまして、これによりまして、かなり専業的な農家に対しましても、その実態に応じました共済が実施できるということで、その加入率の増加を大きく期待しているところでございます。また掛金の延納等についても規定がございます。
ところが、ただいまの御
質問の中で一番私
どもの考えを申し上げたい点は、一筆、園地単位共済の問題でございます。この問題につきましては、先般の通常国会において法律の改正を行いました際も非常に御議論のあった点でございまして、この採用についてはいろいろな角度から御討議が行われました。私
どもの考えを申し上げますと、この一筆あるいは園地単位共済、あるいはこれを農家単位でやるか一筆単位でやるかということは、共済の制度が始まって以来すでに長い歴史の間で論争されてきた点でございます。それは率直に申しまして一長一短あるわけでございます。特に園地単位の引き受けをいたしました場合には、総体としての
被害の
程度は同じでありましても、たまたま
災害がある園地が偏った場合には、その農家だけに共済金がいくという制度になります。そのために確かに
支払いを受けるチャンスは多いということで魅力はあるということになるかもしれませんが、一方におきましては、経営的に見た損害が非常に深い場合に共済のてん補を最も安い掛金率でもっててん補してもらえるという制度が本来の共済制度であるというふうに考えるわけでありますが、そのような合理的な損害のてん補という角度から見ました場合には、農家単位引き受けの方がより適しているということが言えるわけであります。また同時に、共同出荷
体制が整備されている地域におきましては、むしろ損害
評価の事務効率の面からも、このような農家単位共済の方が好ましいということが言えるわけでございます。また園地単位でやりました場合には、
農業経営上重要でないような
被害に対しましても薄く広く共済金がばらまかれるという形になりますために、大きな
災害の場合の補てんを同じ水準で維持しようと考えますと、その場合には当然掛金率が高くなるという問題が生じてまいります。このような
趣旨から、水稲においても一筆方式をとりますと同時に農単へとわれわれは誘導をしているというのが
現状でございます。
このようなことで、基本的には、長い論争はございましたが、私
どもはやはり一筆単位、園地単位よりも農家単位の方がより合理的なてん補ができるということを考えているわけでございますが、しかし一方におきまして、園地単位にしてほしいということには、やはりそれなりの合理的な
理由があるというふうに考えております。それは何かと申しますと、
果樹共済の全相殺農家単位方式においては、
被害農家の中で
災害のない園地まで
評価するという
状態が生じます。と申しますのは、全相殺でございますから、当然
被害があった園地の
被害を
評価すると同時に
被害のないところでの増収分も相殺して
支払うというかっこうになりますから、これは全筆
被害の調査をしなければならぬということで、損害
評価の実務からも非常に煩瑣でありますし、また農家感情から見ましても、この増収分を差し引くということが何としても農家感情にそぐわないという面があろうかというふうに考えるわけでございます。そこで、先般の第九十一国会における改正におきましては半相殺方式というのを導入いたしまして、これによって園地の中で
被害のあったところだけを調査いたしまして、それによって共済金を
支払うという制度をつくったわけでございます。これによって、私
どもとしては、相当
程度この農家感情にそぐわない面を解消できるのではないかと考えます。
なお、最後に
災害収入方式についてお話がございましたが、確かに品質の低下なりあるいは価額の低下なりというものを補てんしてほしいという農家の声はございますが、やはり
農業災害補償法というものは物的な損害を補償するということがその目的でございまして、収穫共済というものが中心でございますが、価額の保険までをいたしますと、その場合にはかなりまた保険設計上も無理が出てくるというケースがございます。各国の例でもそのような例が見られるわけでございまして、私
どもは今回全面的な収入方式というものはとりませんでしたけれ
ども、しかしながら、このような考え方も一部取り入れた方式を試験的に実施しておりますので、その試験の結果によりまして、今後このような問題には取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。