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1981-05-07 第94回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月七日(木曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 森中 守義君    理事 楢橋  進君 理事 三原 朝雄君    理事 渡辺 省一君 理事 岡田 利春君    理事 中西 積介君 理事 田中 昭二君    理事 小渕 正義君       太田 誠一君    古賀  誠君       藤田 義光君    保利 耕輔君       八木  昇君    鍛冶  清君       稲富 稜人君    小沢 和秋君       石原健太郎君  出席政府委員         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         労働省職業安定         局失業対策部長 加藤  孝君  委員外出席者         参  考  人         (石炭鉱業審議         会政策部会検討         小委員会委員         長)      向坂 正男君         参  考  人         (法政大学経済         学部教授)   矢田 俊文君         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     有吉 新吾君         参  考  人         (石炭労働三団         体政策推進会議         代表幹事)   森田 久雄君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員長)     野呂  潔君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合中央執         行委員長)   岡  新一君         参  考  人         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         議長)     鈴木 照生君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(第七次石炭対策に関する  問題)      ————◇—————
  2. 森中守義

    森中委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、第七次石炭対策に関する問題について、参考人として、石炭鉱業審議会政策部会検討小委員会委員長向坂正男君、法政大学経済学部教授矢田俊文君、日本石炭協会会長有吉新吾君、石炭労働団体政策推進会議代表幹事森田久雄君、日本炭鉱労働組合中央執行委員長野呂潔君、全国石炭鉱業労働組合中央執行委員長岡新一君、全国炭鉱職員労働組合協議会議長鈴木照生君、以上七名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  本委員会は、二月中旬、田中通商産業大臣並びに藤尾労働大臣から石炭対策について所信を聴取し、政府当局から本年度石炭関係予算の説明を聴取して以来、大臣所信に対して、各会派委員各位質疑を一巡した後、産炭地域振興臨時措置法の十年延長法案につきまして、参考人意見を聴取するなど熱心なる審査を行い、去る四月十六日全会一致議了したところでありますが、かねてより、第七次石炭対策の策定につきましては深い関心を有し、石炭鉱業審議会検討を見守りつつも、立法府の立場から論議を深めたいと念願いたしていたところであります。  参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序といたしましては、まず参考人各位から御意見をお述べいただいた後、委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず向坂参考人にお願いいたします。
  3. 向坂正男

    向坂参考人 昨年の九月以来、石炭鉱業審議会政策部会のもとにつくられました検討小委員会で、第七次石炭政策について十数回の審議を重ねてまいりました。これから答申案取りまとめに入る段階になっております。遅くとも、来年度の予算概算要求をする以前には、つまり六月末ないし七月をめどに大筋の取りまとめを行いたいというように考えている次第でございます。  検討状況について主なポイントを御報告いたしたいと思います。きょうここで述べることは小委員会論議を踏まえて申し上げますけれども、話の中に若干の私見が入るかもしれませんことを、あらかじめ御了承願いたいと思います。  政策全体を取りまとめるに当たって、新しい情勢のもとで政策の基本的な考え方をしっかり固めるということが重要であろうと思いまして、内外のいろいろな情勢検討、それに伴う基本的な考え方を固めてくるというようなことにこれまでの審議の重点が置かれてきたわけでございます。  以下、基本的な考え方を中心に申し上げますが、まず第一に、今回の新しい政策に取り組む姿勢について申し上げます。  六次答申以降、内外エネルギー情勢には非常に大きな変化があったことは御承知のとおりでございまして、例を挙げれば、石油価格が大変な値上がりをいたしまして、これまで石炭競合燃料であった石油石炭よりも大幅に割り高になるというような状況になったわけでございます。同時に、石油に対して代替燃料開発をしなければならない、そのために原子力とともに世界的に石炭利用見直しが行われつつあるわけでございまして、今後の国内炭競合燃料は、石油から海外炭に変わったという情勢になっているわけでございます。このようなエネルギー情勢変化を踏まえまして、私ども委員会といたしましては、国民各層の納得のいくような答申を出したいと考えていろいろ論議を重ねているところでございます。  次に、政策の基本的な理念について若干申し上げたいと思います。  国内資源の活用あるいはまた産炭地域経済維持ないし振興などの見地から、国内炭に特別の配慮を加える必要はあるわけでございますけれども、同時に、経済性との調和を図る必要があると考えているわけでございます。将来の石炭の置かれた環境からいいますと、国内石炭鉱業自立化の道を探る必要がある、またその環境が整いつつあるのではないかというように考えているわけでございまして、したがって、政府国内炭利用に対するいろいろな助成をする必要はありますけれども、同時に、経済効率というものに十分配慮する政策であるべきだと思います。  いま自立への道を探る環境は整いつつあると申し上げましたけれども、それは一般的に石炭需要、ここでは一般炭を申し上げておりますけれども一般炭利用の拡大の状況にあるということ、それから国内炭海外炭との価格差縮小方向に向かっているということ、将来この価格差がどうなるかは的確に見通し得ませんけれども、少なくともこの一、二年来及び今後数年にわたっては内外炭格差縮小に向かうのではないかというように考えているわけでございます。  第三点としまして、将来の国内炭生産水準についてどう考えるかという点でございます。  内外経済の諸条件あるいは国内炭鉱自然条件等から、あるべき生産水準を総合的に判断すべきものであろうと考えておりまして、先験的というかアプリオリといいますか、先験的にたとえば二千万トンの水準維持至上命令とするというような生産水準目標決め方には疑問を持っている、そういう決め方が今後の情勢から見て果たして有意義であるかどうかということについては疑問を持っているわけでございます。  今後の生産状況を考えるときに、まず現在の稼行炭鉱、稼働している炭鉱生産水準維持すべきであり、もし需要あるいは資源的に増産が可能であれば、稼行炭鉱増産するということは当然考え得べきことでございます。私ども、いまいろいろなことを精査中でございますけれども、今後日本の各炭鉱はますます深部の採炭をしなければならない、また海底奥深く掘っていかなければならない。それによるコスト増が見られるのではないか。  しかし、そのコスト増は各企業合理化努力によってほぼ吸収し得るという見通しをいま一応持っているわけでございます。つまり、現在の生産水準を実質的なコスト増なしに維持し得るのではないかというように考えているわけでございます。実質的なコスト増という意味は、毎年の賃金の増加あるいは物価の上昇ということをデフレートした、そういう意味でございます。  それから新鉱の開発については、労働力確保あるいは地上権の問題、環境問題等いろいろ解決しなければならない問題も多いと考えますけれども、基本的な考え方としては、現在のいろいろな新鉱開発に対する融資制度その他の政策条件として、その経済性を見きわめながら進める必要があるというふうに考えている次第でございます。  第四点といたしまして、生産体制でございますが、これまでもいろいろ御論議がございましたけれども、今回の答申でも私企業による生産体制を続けるべきであるという考え方にほぼまとまってきているわけでございます。これに対して、統一管理会社をつくるべきだという構想もございますけれども企業努力を損ないはしないかというような懸念が残りますので、なお検討をしている次第でございます。  事業共同化など、特にこれは北空知の四山、またその中の二山など、非常に近接している炭鉱の間においていろいろな共同事業が考えられると思いますが、そういう共同事業企業の自主的な発想によって進めるということは大変好ましいし、また、後で述べます企業間の格差是正について業界内の努力が行われるということは非常に望ましいことでありますし、そういう意味で、生産体制について個々のいろいろな炭鉱会社が相互に自主的な協力を進めていく、それによって経営の合理化を図るということを進める必要があると考えているわけでございます。  第五点といたしまして炭価ですが、再生産維持し得る炭価決定が望ましいということは当然でございます。ただ、具体的に炭価決定ルールをどのように決めたらいいかということは、目下慎重に検討中でございます。石炭生産に役立つような炭価でなければなりませんし、またその決め方は、石炭企業合理化努力を阻害しないというようなものでなければならないと思いますし、また需要家負担力、特に海外炭との格差などにも配慮する必要があると思います。いろいろ複雑な要素がございますので、これからどのような炭価決定ルールをとるべきであるかということは、なお慎重に検討を進めているところでございます。  第六点といたしまして、内外炭の調整の問題がございます。  内外炭の流通を一元化すべきではないかという構想がございますけれども、この構想海外炭確保、これから海外炭開発、輸入、長期契約などいろいろやらなければなりませんけれども、その確保についての企業努力を損なうおそれがありはしないかという点が、この構想に対するわれわれの疑念でございます。現在の検討中の方向としましては、現行IQ制度を適正に利用していくというような方法。それと同時に、国内炭についての三年程度の需給計画、これを毎年ローリングしていきまして、その需給計画について生産者需要業界の合意を求めるというような方法、これも一つ方法として検討をしているわけでございます。  それから最後に、企業間格差の是正問題でございますが、石炭企業の間には、自然条件格差などによって収支状況に差が出ていることは御承知のとおりでございまして、その差もかなり大きいという状況でございます。この是正策を考えませんと、自然条件の悪い炭鉱は、将来あるいは脱落するおそれがないとは言えません。その意味で、企業間の格差をどのように是正していくかということは、私は、私見でございますけれども、今度の政策の大きなポイントではないかと思っているわけでございます。  これに対して、安定補給金格差をつけることによって企業間の格差をカバーするということ、それもこれまで以上に傾斜配分を強める必要があるのではないかと思いますが、恐らく、現在予想される企業間の格差は、これだけでは埋め切れないのではないか。したがって、何らか石炭業界内部でも、企業間の格差是正をするような方策を考えてほしい、是正努力をしてほしいというように検討小委員会では考えている次第でございます。  以上で私の御報告を終わりたいと思います。(拍手
  4. 森中守義

    森中委員長 ありがとうございました。  次に、矢田参考人にお願いいたします。
  5. 矢田俊文

    矢田参考人 私は、石炭産業そのものに直接タッチしておりませんので、大学という場においてかなり外在的に観察しておりますので、そういう点では、細かい詰めの話については十分な見解を述べることができないと思いますけれどもエネルギー革命からエネルギー危機と、四半世紀にわたった石炭政策を私自身研究対象にしておりますので、その点でかなり大局的といいますか、大ざっぱといいますか、見解を述べさせていただきたいと思います。  第七次答申をめぐる見解に入る前に、いままでの石炭政策というものをどういうふうに評価するかという、その辺の把握の仕方によってはかなり立場が違ってくるのではないか。で、一つは、エネルギー革命期における石炭政策のあり方ということについては、反省という形ではほとんど意見が一致していると思いますけれども、どういう形で反省するかという点ではかなり違った見解が出ているのではないかと思う。  というのは、結論から申しますと、余りにも経済効率短期的経済性に固執して石炭を考えてきた。したがって、エネルギー革命期、いわゆる石油が非常に安い時期においては、石炭は基本的にはわが国では必要ではないのだという路線の中で進めてきた。したがって、五千五百万トン水準から千八百万トン水準に、ほぼ三分の一に減らしてしまった。この事実をどういう形で反省するかというときに、国際情勢及び日本経済効率ということを余りに重視した石炭政策ではなかったか、そこのところをこれからやはり考えていかなくてはならないのではないか、時間がないので、これが非常に簡単な結論だと思う。  それから、エネルギー危機以降の石炭政策、具体的には第六次答申になるわけですけれども、これも基本的な考え方としては反対ではないのですが、具体的に国内炭生産を二千万トンないしそれ以上という表現をしながら、それを保証する政策が依然として弱かったのではないか。いわゆる基準価格を決めることを通じて競合財とのバランスを考えていくというのが最も重要な柱だったはずですけれども、これもまさに内外情勢経済情勢変動によって見通しが狂ってきた。特に、円高基調の中で一般炭価格が、最近はそうでもないのですけれども、先ほど向坂先生が言われたように、かなり格差が、原料炭もかなりの期間あった。したがって、二千万トンないしそれ以上ということも、千八百万トンという形で一割目標を減らしている。  そういう点では、本当に二千万トンないしそれ以上を維持するための具体的な措置として、内外経済情勢エネルギー情勢の短期的、長期的な変動にもかかわらず維持していく政策は何なのかという形の視点がないと、やはり情勢変化によってまた数年後に見直しせざるを得ない。わが国石炭政策は、常に五年ないし十年のターム石炭政策答申しながら、実際は二、三年で答申を変更している。これはすべて内外情勢変化であるということで、ずっと幾つかの答申を読んでいきますとそういうことになっております。したがって、常に二、三年の答申でしがなかったという点では、その中で石炭長期的に維持するという政策としては余りにも弱いのではないか、そういう前提に立って第七次答申についての見解を、若干大ざっぱな話をしたいと思います。  いわゆる国内炭というものが経済的な価格メカニズムの中で意味を持つのか持たないのかという話になりますと、確かに先ほど先生が言われたようにいろいろ問題があると思いますけれども、いわゆるエネルギー危機以降のエネルギー供給における安全保障といいますか、ナショナルセキュリティーの問題、これは現在のエネルギー消費規模からいきますと、国内炭というのはそれほど大きな地位を占めるわけではありませんけれども国内資源の中でかなり重要なエネルギー源一つという位置づけの中で、ナショナルセキュリティーとしての国内炭というのは依然として重要な意味を持ち得るだろう。したがって、余り非現実的な数字をはじくわけにはいきませんけれども、それは二千万トンないしそれ以上、できるならば増産方向へ……。  それから、これから石炭見直しの中で、世界的な石炭利用というのが拡大して石炭貿易が活発化する中で、いわゆるバーゲニングパワーを確保するという点においても国内炭維持が必要であろう。  それから、炭鉱労働者雇用確保産炭地域維持あるいはそれ以上の発展、過疎対策という意味でも国内炭維持ということが必要であろう。それはあくまで短期的な経済メカニズムということではなくて、かなり長期タームで考えた上での維持ということで、たとえ海外一般炭が下がろうが、価格格差が拡大しようが、それによって変動してやむを得ず縮小するという方向ではなくて、長期にわたって二千万トンないしそれ以上を安定出炭するという方向が必要ではないかと考える。  この点では、具体的には先ほど先生の言われた見解とは、問題の指摘としては大きな違いはありませんけれども方向的に若干見解の違いがあると思いますので、幾つか挙げますと、第一点はいわゆる市場価格問題。  これも、先ほどの反省の中からいきますと、海外一般炭が現在需給逼迫の中でかなり国内炭と接近しているという状況にあり、ある種の楽観は許されるかもしれませんけれども、これが海外価格メカニズムの中で需給バランスで決まっている以上、これが下がる上がるという話は、どの程度長期的に見通しできるかというのはだれも推定できない。したがいまして、海外情勢変動いかんにかかわらず国内一般炭維持するには、いわゆる国内一般炭価格政策というものをある程度固めなくてはならないだろう、これは原料炭も含めてそう思う。  要するに、競合財変動にもかかわらず、一定の再生産維持する価格水準というものをいかなる形で決めるかということを考えていただきたい。これが第一点。  第二点は、先ほどのお話にもありますけれどもわが国石炭産業というのは、わが国だけでなくて、石炭産業という第一次産業そのものの持っているある種の宿命ですけれども自然条件立地条件の違いによってコストの差というのは理論的には克服できない。克服できないという形で克服する努力を怠るということ自体は問題ですけれども。  したがって、最劣等条件にある炭鉱ないし企業限界状況に立ち至って、そこの救済の問題を常に問われてくる。これからも恐らくそういう形になるだろう。それで、そういうのはある面では企業努力の問題でもありますけれども、ある面では、また置かれている自然条件立地条件の差でもある。  この格差構造というものがあり、そして現在一つの山でもつぶれるならば、百万トンクラスですと、千八百万トン、二千万トン水準で百万トンがつぶれるということは五%近くつぶれるということですから、長期政策においてかなりそごを来すということで、結局は、こういう形を続けていきますと最劣等炭鉱、最劣等企業をいかに救済するかという問題に終始せざるを得なくなってくる。これをいつまでも続けていくわけにはいかないのではないかというのが私見なわけです。  したがって、その格差をどう是正するかということは、在野にあって自由な発言を許されるならば、結局、一企業化してその内部で調整する、余裕のある炭鉱余裕のない炭鉱との間で調整する、当然そういうことの中から幾つかの問題点が出てくると思いますけれども、そういう形で自然条件立地条件格差をかなり大胆に是正しない限り、最劣等炭鉱維持政策という形で炭鉱政策はこれからも推移せざるを得ない。一私企業に大量の資金を投じ込むことについての疑義は当然出てくるし、私自身も持っておりますので、そういう点では、全く別の対応を要求されるのではないかと思います。これが第二点。  第三点は、労働力確保の問題で、労働条件その他からいって、高齢化が進んでいるということで、わが国石炭生産の持ってきた技術水準の高さというものを維持するのは、基本的には労働者の訓練といいますか技術の問題である。これがそのまま高齢化していって、若年層が安定して補給されない限りにおいては、そこから依然として問題が起きてくるという可能性は、若干最近の情勢は変わってきているようですけれども、基本的には解決していないのではないか。これにどういう形で対応するかという問題が出てくる。  最後に第四点は、わが国エネルギー全体において石炭がいかなる意味を持つかという位置づけが必ずしも十分ではないといいますか、二千万トンというのが常に——現在の生産能力が二千万トン弱ということですから、それを軸にして考えていくわけですけれども、放棄された資源とか、昭和三十年代以降本格的に調査していない地域とかを含めますと、わが国埋蔵量が一体どれだけあるのかということがほぼ確定した数字が得られていないということから、予算措置その他で問題がかなり起きると思いますけれども埋蔵量調査を本格的に見直して、一体どれだけの期間、どれだけの生産維持し得るのかという生産能力そのもの調査を本格的にやっていただきたい。  以上の点が第七次答申に期待するといいますか、私の考え方です。以上です。(拍手
  6. 森中守義

    森中委員長 ありがとうございました。  次に、有吉参考人にお願いいたします。
  7. 有吉新吾

    有吉参考人 日本石炭協会会長をいたしております有吉でございます。  石炭政策につきましては、かねてから本委員会の諸先生並びに関係当局には格別の御配慮をいただいておりますが、本日は、また石炭業界立場から発言をいたします機会を与えていただきましたことを心からお礼を申し上げる次第でございます。  昨年八月、政府石炭鉱業審議会に対しまして第七次石炭政策の諮問を行い、これを受けまして、目下同審議会政策部会検討小委員会におきまして鋭意検討作業が進められておるわけでございます。私ども石炭業界といたしましては、新政策の立案に当たって、次の諸点について検討小委員会委員方々にお願いを申し上げておりますが、本委員会の諸先生におかれましても、以下申し述べます私どもの要望につきまして、ぜひ御理解をいただきたいと存ずる次第でございます。  まず第一点は国内炭位置づけを明確にしていただきたいということであります。  御高承のとおり、高い高いと言われてきました国内炭価格も、いまでは石炭のハンドリング、灰捨てその他のデメリットを考慮いたしましても、なお石油に比べますと、カロリー当たりで比較いたしまして大幅に安くなっております。この点から見まして、国内炭経済性の面でも十分石油代替エネルギーとしての資格を持っておると私は思っております。  さらに内外炭価格差につきましては、原料炭はなお相当の価格差がありますけれども一般炭は、最近の中国炭等値上がりに見られますように、すでに価格差は解消しつつあり、今後の見通しは、円レート動きいかんにもよりますけれども価格差はほとんどなくなるのではないかと思っております。  いまや国を挙げまして石油代替エネルギーを求めているのでありますから、数少ない国産資源一つであります国内炭位置づけを明確にして、少なくとも現行生産規模維持していただくことを政策の基本として明示されますことを要望する次第でございます。  第二点は需給でございますが、昭和五十五年度の出炭は千八百九万トンでございまして、これに雑炭がありますので、これを加えますと千九百四十八万トンの供給でございました。これに対しまして引き取りは二千百六万トンということでございましたので、当初三百四十五万トンありました貯炭もこの三月末には百八十七万トンにまで減少いたしております。  原料炭につきましては、先ほど申しましたように、まだ大きな内外炭価格差があり、鉄鋼業界は、国内炭を使用することにより総額にいたしまして年間約五百億円以上の負担をされておりますために、かねがねできるだけ一般炭国内炭はシフトしてもらいたい、こういう要請を受けておりました。  かたがた、いままでは一般炭需要はその大半を電力に依存しておりましたが、昨年来セメントを中心とする燃料転換が急速に進展をいたしまして、電力以外の一般炭需要が旺盛になってまいりましたので、今年からは原料炭の一部を一般炭にシフトしていくことを考えております。  しかし、将来海外一般炭の動向いかんによりまして、一般炭需要国内炭から海外炭に置きかえられては困るわけでございますので、中長期需給計画需要業界と確認し合いまして、これを毎年見直していくというローリングプランによって安定した需給を確立していただきたいと要望しているのが、第二点でございます。  第三点は、これが一番問題でございますところの炭価の問題でございますが、一定規模の生産維持していきますためには、それを担っております企業の経常収支が償わなければならないことは言うまでもございません。  昨年は、炭鉱の深部化、奥部化に伴うコストアップに加え、ベースアップ及び物価上昇、さらには電力料金の大幅値上げ等のコストアップ要因がありました。石炭業界といたしましては極力増産に努めます一方、人員を縮減し、能率向上に努める等、あらゆる努力をいたしました結果、どうしても残ります赤字の見込みがトン当たり千四百円となりましたので、やむを得ず需要業界にこの残った千四百円の値上げをお願いいたした次第でございますが、最終的にはトン当たり一千円強の値上げにとどまりまして、約四百円弱の赤字が残ったままになっておるのが現状であります。  今後も年々深部化、奥部化することによるコストアップに加えまして、人件費、資材費、経費の値上がりによるコストの上昇は避けることができませんが、私どもは、努力もせずに、コストアップを何もかも政府需要業界にお願いするという気持ちは毛頭持っておりません。少なくとも内部要因とも言うべき深部化、奥部化による条件悪化によるコストアップは、できる限り技術の向上、経費の節減、炭鉱の若返り施策等によりまして吸収していかなければならないと考えておる次第であります。  ただ、年々労働賃金は世間相場によってベースアップもいたさなければなりませんし、物価上昇や公共料金の引き上げ等は必至でございまして、このような外部要因によるコストアップはぜひとも炭価でカバーしていただきたいというのが私どもの要望であります。  需要家さんからは、政府の助成をしてもらえと言われますし、政府からは、予算がないから需要家さんに価格を上げてもらえ、こう言われるような形で、いわばたらい回しにされまして、いつまでも赤字経営のまま放置されることのないよう、私ども業界平均で、平均で結構でございます、経常損益プラス・マイナス・ゼロを最低線とする炭価設定のルールを政策において明確にしていただきたいと要望しておる次第でございます。これが一番基本的な問題でございます。  第四点は、炭鉱格差是正の問題であります。  先ほど申しましたように、業界平均で経常損益プラス・マイナス・ゼロを最低線として炭価の設定及び助成をしていただくということになります以上、炭鉱間の格差是正をしなければ生産規模維持はできません。平均でプラス・マイナス・ゼロという状況である限り、必ず平均以下の企業が存在することになります。  現在ある格差は、立地条件あるいは自然条件に起因するものが大半を占めておりますだけに、みずからの努力だけでこれを解決することはきわめてむずかしいことであります。したがいまして、企業の自己努力に加えて、業界内におきましても連帯協調の方向で対処していくつもりでおりますので、現行安定補給金の一部を傾斜配分していただくか、新エネルギー総合開発機構のような機構に一定の納付金を納め、これを一定基準により配分していく、そういう方法をとりまして格差是正をやりたいと考えておる次第でございます。  第五点は、需給並びに炭価決定の機構についてでございます。  どんなにりっぱな答申が出ましても、これが政策として具体化されなくては何にもならないわけでございます。さきに申し述べました中期、長期需給並びに炭価についての政策を具体化する場といたしまして、石炭鉱業審議会需給価格部会に原料炭委員会、電力用炭小委員会、セメントその他一般炭委員会という形で業界別小委員会を設け、需給及び炭価について具体的に討議決定するような運用を強化していただきたいと要望している次第でございます。  以上のほか、第七次石炭政策立案に当たりましてお願いしたい問題は多々ございますが、時間の関係で省略をいたします。  石炭業界といたしましては、貴重な国産資源を生かし、わが国石油代替エネルギー供給の一翼を担うという使命達成に最善の努力を尽くしたいと念願する次第でございます。  以上をもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。(拍手
  8. 森中守義

    森中委員長 ありがとうございました。  次に、森田参考人にお願いいたします。
  9. 森田久雄

    森田参考人 私は、石炭労働三団体政策推進会議代表幹事森田でございます。  本委員会の諸先生方には、大変困難な国内炭政策に対し大変な御努力をいただいておることにつきまして、この席をかりて厚くお礼を申し上げたいと思います。  御存じのとおり、石炭の労働組合も炭労、全炭鉱、炭職協、この三つの組織がございまして、それぞれの立場に基づく行動を今日まで進めてきているわけでありますが、私ども石炭政策をめぐる諸問題について、可能な限り統一をして、行動を一にして臨もうということで考え方をまとめている次第であります。後ほどそれぞれの組織から、どうしてもこの際申し上げておきたいということについて述べることになっておりますけれども、私からは総括的に、この三団体が一致をして、特に今度の七次政策に向けて行動を進めようということについて申し上げてみたいと思います。  一つは、国内炭生産位置づけの問題であります。  先ほど来お話がございましたように、私どもとしても、国内炭はいわゆる国内唯一のエネルギー資源という認識に基づいて本問題の処理に当たるべきであろう、そのためには国内炭生産目標を二千万トン以上に置く、こういうことでなければならないと考えております。  御存じのように、昭和五十五年度の生産は千八百万トンをわずかに超した程度であります。この内容も北炭の新鉱、幌内、これが大幅に五十万トンほどの減産がありながら、残りの炭鉱で大幅な増産をなしてようやく一千八百万トンを生産をしたということでありますが、現在でも一千九百万トンを掘れる実力があると私は思うのであります。さらにこれに対策を講ずることによって、土千万トンの体制を維持することは十分でき得るというふうに判断をいたしているところであります。したがって、早急に二千万トン体制に復元をする、以降拡大生産を目指していくということにしていくべきであるというふうに考えております。  二点目は、新鉱開発並びに閉山鉱区の再開発などの問題でありますが、現状のまま推移をいたしますと、御承知のように深部化、さらに奥部化は進む一方であるわけでございまして、二千万トンの確保をうたい文句にいたしましても実体が伴わないということになりまして、炭鉱は老朽化をしていきますから、これに対する対策を講ずるためには早急に新鉱の開発を行うべきである、これを具体的に計画を明らかにして促進をすべきである、こういうふうに考えているところであります。  さらに、政府が買い上げたり、遊休鉱区あるいは消滅鉱区などという内容もあるわけでありますが、これら隣接鉱区を含めて、再開発をこの際思い切ってやるべきであるというふうに考えているわけであります。この際、新鉱開発、あるいは隣接鉱区を含めた再開発にいたしましても、現状の石炭企業経済能力からいってこれは非常にむずかしいわけでありまして、できる限り国の責任でこれを行っていただきたいと思っているところであります。  三点目は、生産、保安体制の確立の問題であります。  先ほども申し上げましたような二千万トン体制を確固たるものにする、そのためには、何といっても坑内骨格構造の改善を促進していくということ。さらに、深部化、奥部化に伴って山はね、ガス量の増加、湧水、温度の上昇、こういう自然条件の悪化が予想されるわけでありまして、保安確保に対する助成、保安技術開発、研究などを図ることについては今日までも進めていただいておりますけれども、今後ともこの充実に努めていただきたいと思っているところであります。  四点目は、国内炭需要対策であります。  国内炭の優先活用、こういうことを前提にいたしますと、今日海外炭との格差がまだございますので、どうしても安く手に入る海外炭ということに目が向いてしまうわけでありまして、私どもとしては、かつて石油に重点政策を持っていって、安いから、あるいは思うとおりの量が確保できるからということで石油に切りかえていったあの過程を思い起こすわけでありますが、今後は、やはり国内炭の優先活用という前提に立って、国内炭の一定率引き取りなど法的措置を講じていただきたいと思うわけであります。これはIQ制度の活用などという問題がございますけれども、それだけではどうもしり抜けになってしまうのではないか。もっと強力な法律的措置が必要であろうというふうに考えているところであります。  さらに、海外炭開発、輸入については、総合エネルギー及び国内炭優先活用の立場から、秩序ある輸入体制、量、価格の調整なども含みますけれども、そういう輸入体制にすべきであるということであります。  さらに三つ目としては、この国内炭及び輸入炭については、政府機関が一括購入、販売を行うよう必要な機関を設置していただきたいということであります。  続いて五点目は、労働力確保対策であります。  御承知のように、技術者、熟練労働力の自然減耗が増加傾向にあるわけであります。定年退職者だけを見てまいりましても、毎年九百七十名から千名を超すわけであります。これは定年退職者だけであります。そのほかに自然退職、自己都合退職あるいは病気退職などを含めますと、二千名に及ぶ数字になるわけでありますが、さらにこれに伴って若手労働力というものも、都市型の炭鉱にはある程度の若手労働力確保できているわけでありますが、いわゆる山の中の多くの炭鉱についてはこの労働力が非常に不足がちである。そして労働者の平均年齢も非常に高くなってまいりまして、今日では大体四十三歳になろうとしているわけであります。四十三歳あるいは四十五から五十歳くらいの労働力が全炭鉱の半分以上、六割程度を占めているというのが今日の実態でございます。  したがって、このままいきますと、技術者の不足、労働力の不足ということで、いわゆる石炭生産に大きな支障を来すということが考えられますので、次の諸点について対策を講ずるべきであると考えております。  一つは、労働力確保、特に若年層のために地下産業にふさわしい労働、福祉諸条件をぜひ導入していただきたいと思うわけであります。労働条件、賃金にいたしましても、全産業の比較の中において、坑内労働者の場合賃金は高いというようなことを言われておりますけれども、それは非常な長時間労働を行っている関係での賃金が高いという面でございまして、普通の労働時間に換算をいたしますと相当低いところにあるというのが実態でございます。  二点目でも申し上げますが、他の産業から比較をいたしますと優に百三十時間に及ぶ超過労働時間、外国の例からいたしますと二百時間、三百時間にもなんなんとする時間を多くこの坑内あるいは採炭に費やしておるということについて御理解をいただきたいと思うところであります。  次は、石炭産業の安定的な保安、生産体制確保するために早急に技術者及び熟練労働者の育成を図る、そのために既存の教育機関の育成強化及び国の養成機関を設置する等、助成措置を講ずることということでありますが、それぞれの石炭企業でも鉱山学校なども設けているところもございましたけれども、いまそれを実際に行っているのは九州松島炭鉱だけのようであります。そのほか北海道では、北海道の努力によりまして夕張市の工業学校に専門課程を設けているというようなこともございますけれども、具体的には、炭鉱に将来職を求めるといいますか、こういうような若い人たちの気持ちがなかなかまだそこまでいっていない、こういう問題等もございまして、何らかの処置を講ずるべきであろうと考えているところであります。  次に四点目は、現在ある石炭鉱業年金をもう少し魅力あるものにするための改善を行っていただきたいと思うわけであります。  次に、石炭産業の体質強化の問題であります。  これも、先ほど来それぞれお話がございましたように、現状の石炭企業は大変多くの国の助成、補助を受けながら生きているわけでございまして、これがなくなれば直ちにつぶれてしまうという弱い面を持っていることもまた実態であります。今日、若干、経営が安定しているという企業もないわけではございませんけれども、これらの企業も含めて大変苦労をいたしているところであります。  そこで、この石炭企業維持、体質強化をするということは、即将来の石炭生産、私どもから言わせますと安定をした働く場がそこに求められるということに通ずるわけでございまして、今後においても石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計制度の堅持、その財源の強化拡大を図っていただきたい。  二つ目は、各炭鉱の操業条件、これは沿岸部あるいは内陸部ということで輸送コストがかさむという問題、あるいは立地条件自然条件などの中で急傾斜あるいは傾斜が非常に少ない、機械化がどんどんできるという、それぞれの違いなどの原因もございますけれども炭鉱別の損益に格差が非常に大きくなっている。この格差を是正する方法幾つかあると思うのでありますが、私どもが当面お願いをしたいのは、安定補給金傾斜配分などの政策助成措置を行っていただきたいという問題。  あるいは坑内骨格構造整備拡充補助金、保安確保事業費補助金の拡充を図る、こういったことを含めた交付基準を再検討していただきたいということでございます。  最後でございますけれども炭価決定とルールの確立についてであります。  炭価については、生産費を償い、再生産を可能とする炭価水準確保することを基本として、適正な炭価決定できるよう炭価決定ルールを確立していただきたい。  二つ目は、炭価決定については、いままでも、六次答申の中でもいろいろ考え方はあるわけでありますけれども、実際は実行されていないと思われます。確実に間違いなく実行していただくということになりますと、石炭鉱業審議会需給価格部会に強力な権限を付与して、そしてそこで決めるということにしていただきたいと思うわけであります。  以上、簡単に総括的に申し上げましたが、私どもとして機会あるごとにこれらの問題について陳情行動などを行ってまいっておりますので、今後ともよろしくお願いをいたしたいと思います。  以上で終わります。(拍手
  10. 森中守義

    森中委員長 ありがとうございました。  次に、野呂参考人にお願いいたします。
  11. 野呂潔

    野呂参考人 炭労の野呂であります。  本日は、参考人として本委員会意見を述べる機会を与えてくださいましたことを私の光栄とするところであり、心より感謝を申し上げます。また、この席をおかりいたしまして、常日ごろ石炭産業産炭地域発展のために御努力をせられ、とりわけ北炭問題のために御協力をいただいております諸先生方に対し、組合員、家族に成りかわりまして厚くお礼を申し上げる次第であります。ありがとうございます。  さて、第七次石炭政策は、文字どおりわが国石炭産業の命運を決する最終的な政策として、私たちは特に重大な関心を持っております。私たちは、この第七次石炭政策を通してわが国石炭産業が安定化し、今後長期にわたって供給責任を果たしていくこと、それにより炭鉱労働者の生命、生活と雇用が確保され、また産炭地域社会が発展していくこと、そのような政策方向が確立されることを切望してやまない次第であります。  まず、第七次石炭政策を立案するのに当たり、どのような基本的な視点に立って立案すべきかという問題について明確にすることが大切ではなかろうかと思います。  この点について私たちは、第一に、ナショナルセキュリティーという立場に立って国内エネルギー源、なかんずく国内炭の果たすべき積極的な役割りを明確にしていくこと。  第二に、労働力確保問題を国内炭生産維持の最も重要な基礎的条件としてとらえ、その有効な解決策を提起していくこと。  第三に、石炭開発、輸入、流通に携わる事業が今日きわめて公共性の高いものとなっている現状を踏まえ、これらの事業に携わる事業体のあり方について掘り下げた検討を行い、可及的速やかに国の事業として推進していくことが重要であると考える次第であります。  第七次石炭政策立案に当たっての基本的な視点は、以上触れたとおりであります。詳細は私たちの主張点をお手元に配付をいたしておりますので、御参照くだされば幸いだと思います。  では、どのような内容を政策化していくべきか、以下これらの点について申し述べたいと思います。  この点に関する私たちの考え方は、お手元に配付をいたしました資料に詳しく触れておりますので、幾つかの問題に限って、私たちの具体的な考え方を申し述べたいと思います。  先ほど矢田先生より意見がございました。非常に近い考え方に立っているということを申し上げておきます。  その第一は、国内炭位置づけに関する問題であります。まず、数量的にどの程度の生産規模とすべきか。この点について私たちは、1早急に二千万トン体制に復元すること、2これを一つのステップとして、今後五カ年間で二千五百万トン体制に到達すること、3しかる後さらに生産規模の拡大を目指すこと、このような方向検討すべきであると考えます。もちろん、このためには、国内炭生産の中心となるべき現有炭鉱の保安、生産体制を確立すること、加えて新鉱開発の促進を図ること、これらのため必要な労働力確保を図ること等々の裏づけ対策が必要であることは論をまたないところであります。  ここで特に新鉱開発問題について若干触れたいと思います。  私たちの試算では、釧路地区を初め夕張、三笠、天北など六地区で十分新鉱開発にたえ得る炭量が埋蔵されており、これだけで年間生産規模にして約一千万トンの新炭鉱を造成することができると判断しております。  このほか、今後の調査により、さらに六地区が新鉱開発の対象になり得るものと期待しております。  他方、この新鉱開発は膨大な開発資金の投入が必要であり、この調達が現有石炭企業で果たして可能かどうかを考えますと、やはり否定的な結論とならざるを得ません。  したがって、第七次石炭政策においては、第一に、新鉱開発長期的な目標を明示していくこと、第二に、開発事業体のあり方についても検討し、強固な事業体を確立していくこと、第三に、遊休鉱区の集約など、必要な立法措置についても提起していくことが必要であると考えます。  その第二は、労働力確保に関する問題です。  この項は、炭政会議森田代表幹事が詳しく述べましたので、時間の関係上省略させていただきます。  その第三は、いわゆる格差政策の問題であります。  御承知のように、自然を相手として操業している炭鉱では、自然条件のよしあし、立地条件のよしあしが操業条件を大きく規定することになります。したがって、政策助成のあり方として、このような自然条件立地条件に基づいて格差をつけて配分すべきであるという発想が、すでに第六次石炭政策等で提起されています。しかし、これは何一つ実現されないまま今日まで推移してきているわけですが、私たちは、国内炭だけではなく、海外一般炭を含めて流通機構を一元化する体制を確立すること、この体制のもとで生産費を補償し、再生産を可能とする炭価確保していくこと等により基本的に解決していくべきと考えます。  そしてこのような体制が確立されるまでの間は、1安定補給金の枠を増大し、自然条件立地条件等に応じて配分する部分を設けること、2坑内骨格構造整備拡充補助金、保安確保事業費補助金について、稼行条件に応じて適正な単価を設定すること等々の方向格差政策を実施していくべきと考えます。  以上をもって、時間の関係もありますので、私の意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手
  12. 森中守義

    森中委員長 ありがとうございました。  次に、岡参考人にお願いいたします。
  13. 岡新一

    ○岡参考人 全国石炭鉱業労働組合の岡でございます。  日ごろ石炭問題に対する本委員会の諸先生方の御努力と御高配に対しまして、この席をおかりいたしまして深く感謝申し上げますとともに、本日、私ども意見を申し述べる機会を与えていただきましたことに対しまして厚くお礼を申し上げます。  具体的提言につきましては、全炭鉱としての政策要求もあるわけでございますが、この際、先ほど炭政会議森田代表幹事石炭労働三団体の統一政策内容を申し上げましたので、私は、時間的制約もあり、これとの重複を避けて、考えていることの一端を数点にしぼり申し述べさせていただきたいと思います。  第一点は、国内炭位置づけについてでございますが、現在わが国においても電力、セメント、その他の産業分野で石炭へのエネルギー転換が急速に進められております。しかしながら、そのような石炭見直し国内炭を頭越しにしたような外炭指向が重点であるようにうかがわれるのでございます。  昭和五十五年度は、石炭利用設備の増大もありまして、国内の年間出炭量千八百十万トンに加え、年度当初の貯炭三百四十五万トンが年度末には百八十七万トンに減少したことから、国内炭引き取りが活発であったように見られますけれども、これは石炭需要の拡大に対して、輸入炭がオーストラリアのストライキあるいはポーランド情勢その他諸種の事情によって間に合わなかった、そのため国内炭引き取りが活発であったということでございまして、将来ともに安定した国内炭引き取りが保証されたというわけではないと思うのでございます。  国内炭海外炭に対して割り高だということで敬遠されているようでありますけれども一般炭の現状は、国際的な需給の逼迫もございまして、先ほども出ておりましたように、中国炭を初め南アフリカ炭、その他豪州でも現在価格交渉が続いておるようでございますが、輸入炭価格は大幅に高騰を見ており、内外炭価格差原料炭を除きかなり縮小してまいっております。  しかしながら、国内炭は貴重な国内資源でございまして、現状の経済性のみで位置づけるべきではないと私は思うのでございます。  海外炭は相手国の採炭切り羽から国内需要家の手元に届くまでには各種の輸送手段を経なければなりませんし、一つの段階にストライキなどのトラブルが生ずれば、全体的に波及することは明らかでございまして、そのための対応策は不可欠なものでございます。また、今後石炭消費国が増加し、かつ増量していくという問題も出てまいります。  国内炭はこうした海外炭供給源に対し、量的には制約はあるものの、価格交渉力の保持に役立つものであり、海外炭高騰によっては、国内炭供給力増加の余力を示し得ることが海外炭価格高騰の抑止力になると存ずるのでございます。  第二点は、国内炭生産規模でございます。  結論から申し上げますと、前提条件づきですが、既存炭鉱でも二千万トン出炭は可能ということでございます。二千万トン以上の政策のもとで千八百万トン前後しか出炭できないではないかというようなことを耳にいたします。しかしながら、それは災害による減量もございますけれども、五十二年下期以降、生産しても引き取ってもらえないために貯炭が累増し、各社とも自衛のため生産制限を行ったというのが大きな原因でございます。  その結果、各企業では労働者の減耗不補充等の措置を講じましたし、あるいはまた賃金、福利条件等の切り下げ等も行いました。その結果、昭和五十一年三月末と対比いたしました五十六年二月末の常用労働者は一二・七%の減、そしてまた全労働者で見ますと一二・三%の減となっております。  昭和五十五年度は、需要増を見込みながらも、前年度末の三百四十五万トンもの大量貯炭を抱えていたことから、前年度並みの出炭体制で千八百十万トンにとどまりました。生産の内訳は、一般炭へのシフトが目立ちまして、前年度に比し、一般炭が百三十万トン増加して千百四十万トン、原料炭は八十九万トン減少して原料炭得率が三六・九%、すなわち六百七十七万トンとなっております。  五十五年度の国内炭引き取りは生産量を上回り、総量で二千百八万トンとなり、貯炭も百八十七万トンに減少しましたが、先ほども申し上げましたように、この数字が今後とも安定的に引き取りを保証されたものでないことは言うまでもございません。  そこで、二千万トン出炭を確保するためには次の対策が必要だ、このように考えるわけでございます。  第一に、国内炭の確実な優先引き取りが保証されることであり、かつ政府助成と再生産可能な炭価によって企業経理が安定することでございます。  第二に、重大災害のない安全な職場として保安を定着させることであります。  第三に、二千万トン出炭体制に必要な技術者、技能者などの労働力確保することであります。そのためには、炭鉱労働にふさわしい労働諸条件の確立など、魅力ある諸対策が必要であろうと考えております。  参考までに、昨年十月の石炭対策特別委員会で、多分これは労働省の方から出された数字と思いますが、それを見ますと、類似労働者の所定内賃金を比較いたしますと、鉄鋼に対して九二・四%、金属産業労働者に対して八八・一%、電力労働者に対して八五・四%の所定内賃金の位置にあるということでございます。  第四に、炭層の確認、掘進の確保、それから運搬系統の整備、こういうものの強化がなければならない、このように考えるわけでございます。  第五に、閉山鉱区の再開発、隣接鉱区の調整、新鉱開発等を計画的に促進することが必要であろう、このように考えるわけでございます。もちろん新鉱開発につきましては、先ほど森田代表幹事が国によってと申しましたが、私どもはその開発後の営業につきましてはリース方式による私企業体制が妥当であろう、このように考えるわけでございます。  第三点は、体制問題でありますが、私どもは一貫して私企業体制のバイタリティーを生かすべきだと主張してまいりましたが、その考え方は現在でも変わっておりません。しかしながら、今後、輸入炭の増量によって総量的には外主内従の供給体制となること、あるいは国内石炭企業間の経営格差の是正が必要であること等を配慮した場合、企業間の調整機関的機能を持った三者構成による統一管理会社を設置することがより効果的であろう、このように考えるわけでございます。  また、抜本的石炭対策を確立するためには、現行石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計を見直す、すなわち現在前向き財源としては三九%、いわゆる四割を割った対策財源というふうに見ておりますが、それとともに、厳しい財政事情のもとではございますが、石炭の前向き対策財源の強化拡大に特段の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。  最後ではございますが、新政策が文章のみにとどまることなく、裏づけを持った具体的対策によって実効が期せられるよう特段の御配慮をお願い申し上げ、陳述を終わらしていただきます。(拍手
  14. 森中守義

    森中委員長 ありがとうございました。  次に、鈴木参考人にお願いいたします。
  15. 鈴木照生

    鈴木参考人 炭職協の鈴木でございます。  石特の先生方には、委員長初め常日ごろ石炭産業の安定のためにいろいろ御配慮いただきまして、ありがとうございます。心から御礼申し上げます。  本日の陳述の主眼は、国内炭位置づけ炭価アップルールの確立並びに答申の確実な実行、この三点に考えております。  なお、全般的な政策要請につきましては、炭政会議を通じまして要請提言をしておりますし、また、炭職協独自のものといたしましては、炭職協要請メモということで見解を表明しておりますが、本日は、根本的な問題について意見を述べてみたいと思っております。  まず、国内炭の積極的な活用でございますが、エネルギー情勢変化に伴いまして、今後のエネルギー政策が従来の経済性の優先という問題から、供給面における安定供給を第一義として、そのためにはエネルギー源の多様化と供給先の分散化を図るという基本的な方向にある中で、国際的に石炭利用拡大が進展しているということは御高承のとおりでございます。しかし、翻りまして国内炭について考えてみますと、かつて石油との価格差においてスクラップ政策がとられまして、いまは世界的な石炭回帰、こういう状況に逆行いたしまして、海外炭との価格差を理由に、石油と比較しても四〇%程度も安い国内炭は敬遠されようとしておるのが現状ではないかと判断しております。  しかしながら、次に述べます数点の理由から、国内炭を積極的に活用いたしまして、総合エネルギーにおける位置づけを明確にし、その経済性につきましては、日本経済全体の問題として、多様化する各種エネルギー価格のプール値から考察してしかるべきではないかと私は考えております。  その理由でございますが、まず第一点は、石油の高騰によりまして、国内炭エネルギーとしての経済性、これは今後とも石油に対して優位を保ち得るのではないのか。  次に、国内炭は、供給分散という使命からいたしますと、その一端といたしまして最も安定した供給源であろうと考えております。しかも世界石炭研究会議に出されております日本側の資料によりますと、一九九〇年におけるわが国石炭の消費量、これに占めます国内炭の比率は一三・八ないし一五・一%、これはA、Bのケースがございますので二つ出しておりますが、こういうふうな比率になるようでございますし、さらにこれを一般炭のみでとらえてみますと二五%ないし一二・四%、かなり大きなウエートを占めておりまして、エネルギーセキュリティーとしての役割りは大きいのではないかと考えております。  次に、産炭国側の展望といたしまして、これは外国を含めてでございますが、世界のエネルギー需給バランス次第では、石炭石油と、いわゆる海外石炭でございますが、石炭石油と実質等価までに上昇するというような見方もあるようでございまして、その場合、国内炭は輸入炭に対する価格抑止力になるのではないか。  次は若干消極的になりますが、今後海外炭開発、輸入という場合には、いままでの単純買い付けということはなかなかむずかしくなるのだと思いますし、そうした場合に、いわゆる石炭開発技術の温存ということからいたしましても、国内炭を持続すべきではないのかというふうに考えております。  次に、炭価アップのルールの問題でございますが、われわれが新しい石炭政策の最大の眼目と考えておりますのは、技術者、熟練労働者確保と、それから次は企業収支の改善、これはイコール財源対策であり、イコール炭価アップのルールの確立というふうに考えております。  率直に申しまして、第五次石炭政策までの社会政策的な石炭政策から脱皮、転換いたしまして、いわゆる国内炭の積極的な維持と安定供給という問題を前提といたしました第六次石炭政策を高く評価したわけでございますが、五年目を迎えました今日の国内石炭産業の実態を見ますと、実質的には、石炭産業は崩壊の危機にあると言っても過言ではないのではないかというふうに考えております。  六次政策におきまして、炭価問題が再重要項目というふうにされながらも、毎年の炭価答申案作成の機構あるいは手順並びにその拘束力につきまして具体的な詰めがなされなかったということが、今日の事態を招いたものというふうに考えております。こうしたことから、炭価アップのルールの確立、これを図るべきであろうと考えております。具体的には炭政会議森田代表幹事が申し述べましたので、省略させていただきます。  次に、三点目は答申の確実な実行ということにしておりますが、第六次政策企業収支、財源、労働力確保、これらの諸対策について、新しい基本理念に沿いましてかなり明確に方向性が示されました。われわれは、その方向性については大綱的には高く評価いたしまして、その答申の趣旨が具体的展開の過程におきまして一〇〇%生かされ、新しい政策の目的が達成されることを期待いたしまして第六次政策に賛成をいたしました。しかし、現実には円高等の経済情勢変化もありましたでしょう、そういうことがあったことは間違いないと思いますが、われわれとしては答申が確実に実行されたというふうには判断しておりません。  そのことは、政府需要家もそして国民も、負担がふえても国内炭は必要なんだというようなはっきりした認識を持っていなかったからにほかならないというふうに考えております。したがいまして、石炭産業の安定を現実のものとするためには、国内炭はどうしても必要なんだというような認識の上に立ちまして、答申の確実な実行こそが唯一のかぎであろうというふうに考えております。  最後に、私たちは保安を確保いたしまして、供給の安定と生産性の向上を図ることが責務であると考えまして、今後とも最大限の努力を傾注いたしまして国民の皆様の期待にこたえる所存でございますが、この七次対策、端的に申し上げまして、私たちは最終的な政策にしてもらいたいというふうに考えております。どうぞ委員長初め諸先生の御理解と御支援をお願いいたしまして、私の陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手
  16. 森中守義

    森中委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  17. 森中守義

    森中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢橋進君。
  18. 楢橋進

    ○楢橋委員 本日は、第七次石炭対策に関する問題について、参考人各位、お忙しい中貴重な御意見を述べていただきまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。  各参考人からお伺いしました御意見の中で共通しておる大きな問題があるというふうに思います。それは、石炭というものがわが国唯一のエネルギー資源でありまして、また、わが国エネルギー安全保障上からも、国内炭というものの位置づけをしっかり考えていかなければならない。具体的に申しますと若干の意見の相違もあるようですけれども、二千万トン生産体制の確立と位置づけという御意見がおのおの述べられたわけであります。  この政策の確立ということでありますが、具体的に例を挙げますと、中期的といいますか長期的といいますか、需給計画を確立するというような問題あるいは炭価を設定していくという問題、そういったことがどうも基本になるのではないかというふうに感じたわけでありますけれども向坂参考人矢田参考人そして有吉参考人に、その点につきまして具体的にお伺いをしたいと思います。
  19. 向坂正男

    向坂参考人 私ども検討小委員会の議論を通じて見ますと、現在の稼行炭鉱生産が実質的なコストの上昇なしに現在の生産水準維持できる、もしこれに需要があり、また炭層条件などで増産条件があれば、これ以上会社も増産することを考えるでありましょうし、その意味で、少なくとも現在の千八百万トン体制を維持し、さらに若干の増産可能性はあるというふうに考えているわけでございます。  それから新鉱開発については、これは今後いろいろな具体的な調査をよくやった方がいいと思いますけれども、ただ二千万トンという目標達成のために是が非でも新鉱開発をやらなければならないのかどうか。つまりある程度の政府助成を前提とした新鉱開発が可能であり、それに対して需要がつくようであれば、もちろんこれはやった方がいいと思いますけれども、果たしてその二千万トンという目標達成のためにどうしても新鉱開発をやらなければならないかどうかというふうに考えますと、なお私どもとしては検討の余地があるように考えているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、国内資源は貴重であり、それを活用するということは、現在の審議の中でも十分その点を認識しているつもりでございますけれども、二千万トン、仮に申して二千万トンという目標を掲げて、それを実現のために政府介入、政府関与をさらに強めていくという方向に行くか、ある政策条件のもとで、内外状況のもとで、ある生産水準、それは国の安全保障という立場からいっても、あるいは資源条件からいっても好ましい水準である二千万トン、現在のあれで言えば千八百数十万トンから二千万トン、その程度のことが維持されるいろいろな政策は考えていくというふうな考え方でいま検討しているところでございます。  端的に申し上げて、これからの国内炭をめぐる状況を考えたときに、恐らく内外炭格差縮小が進み、それから全般的に国内炭一般炭需要はふえていく、そういう条件の中で政府介入を強めていくような、たとえば一部にあるように国内炭の優先引き取り制を制度化する、法律化するというような方向に介入をふやすべきかどうかということは、この際私どもとしても十分検討してみたいというふうに考えている次第でございます。
  20. 矢田俊文

    矢田参考人 国内炭経済性確保という問題と二千万トン維持ということが両立するかどうかというのは、競合財価格動向いかんにかかってくるということで、いま言った三つのバランスの問題、現在の政策のもとでは競合財との価格格差が接近して経済性確保できる、その中で二千万トンが維持できるという論理構造だと思うので、もしこの格差状況が変わって拡大した場合に、経済性優先の原則に立てば、二千万トン維持ということができなくなる可能性は十分持っている。したがって、経済性を尊重することと二千万トン維持ということが二つ併記されても保証される体制というのは必ずしもないのではないか。  そうしますと、先ほど向坂先生が言われましたように、経済性というものを損なわない形でということと二千万トンという言葉にこだわらないということから考えますと、状況いかんによっては両立する可能性は持っていると思いますけれども状況いかんによっては短期的経済性を尊重いたしますので、二千万トンというのは必ずしも保証できないという論理にならざるを得ない。私個人としては、二つの問題に関して、いままでのエネルギー政策ナショナルセキュリティーということを考えていきますと、二千万トンないしそれ以上というところにこだわるという形で、経済性を相対的に短期的には犠牲にせざるを得ない。もし著しく矛盾する情勢海外に起こった場合はそちらの方に重点を置いた政策をとるべきであろう。できるならば新鉱開発ということの可能性を、私自身細かいことはよく知りませんので、十分あるとかということを断定できませんけれども可能性をかなり真剣に追求する方向でやっていただきたい。以上のように考えています。
  21. 有吉新吾

    有吉参考人 私としましては、先行きどういうふうになっていくか、外国炭が上がりまして国内炭よりも高くなるかもしれぬ、そうすると政策は必要でない、介入は必要でないのではないか。それは先行きどうなるかわからない問題でございまして、現在石炭企業は非常に困った状況にあるわけであります。したがいまして、将来そういうふうになっていけばそれは非常に結構なことでございまして、政策も国の負担も要らなくなる、需要家の負担も少なくて済む、こういうことでございますので、少なくも現在の稼行しておる炭鉱というものは、将来のそういう見通しがあればなおさらのことでありますが、これははっきり維持していくのだという姿勢をきちんと打ち出したらどうかと私は思うのであります。経済性を多少考えながらというのは、先行き外国炭が上がってくるのであれば経済性を持ってくるわけでありますし、そういうことはある意味から、裏から言いますと、国内炭が依然として高ければつぶすかもしれぬ、こういうふうなことに誤解をされる心配が私はあると思う。  この際、私は、少なくも新鉱開発とかそういう問題はこれからの問題として検討して結構だと思うのでありますが、現在の炭鉱はつぶさないのだ、そのためのあらゆる施策を講じていく、これが一つの基本だろうと思っております。  私は、つい二、三日前台湾の石炭鉱業会に招かれまして行ってきたのでありますが、台湾におきましては、日本と同じように、かつて五百万トン出しておりましたのが、油に押されまして二百五十万トンになっておりますけれども、現在におきましては油が上がりましたことによりましてりっぱに黒字を出してやっておりますし、需要業界との間に台湾の鉱務局というのが仲に入りまして、炭価の設定その他油を中心にしてやっておるわけでありまして、二百五十万トンをまず優先的に使ってしかる後足りない分は外国から輸入をしろ、こういう明確な政策をとっておるわけであります。私はそういう姿勢が望ましい、こう思っておるわけであります。
  22. 楢橋進

    ○楢橋委員 有吉参考人に引き続いてお伺いしたいのですが、先ほど政策の確立という問題から、現実的に行うためには、たとえば需給計画とか炭価の設定のルールをつくるということを申されたわけでありますけれども、いまおっしゃいましたように、現実的に炭価維持するためにはそういったルールをつくって、先ほどありましたようにはっきりとした位置づけを確立していくことが必要ではないかというふうな感じを持ったものですから、その点もう一度詳しくお話をお伺いしたいと思います。
  23. 有吉新吾

    有吉参考人 冒頭の陳述にも申し上げましたように、先行き国内炭が競争力を持つことになれば需給問題もおのずから、国内炭が引っ張りだこになりまして解決する、こういう問題でございましょうが、重ねて申しますけれども、先行きのことはまだわからないわけでございますし、石炭産業というものは、引き取り量をころころ変えられたのでは生産計画が立たないわけでございます。  したがいまして、私どもがこのたび要望いたしておりますのは、三年間ぐらいの長期といいますか中期の引き取りの、契約とまではいきませんけれども、大体の見通し需要家さんから提示していただきまして、一種のローリングプランでございますが、契約は年々やっていく、そういうことでございませんと、先行きの生産構造を準備していくことはできない、こういうことを言っておるわけでございます。そういう意味で、三年ぐらいのローリングプランで需給をはっきりしてほしい、これを要望いたしておるわけでございます。  それから炭価問題につきましては、これが一番の問題でございまして、陳述にも申し上げましたように、また第六次答申ではきちっと、企業の収支がペイするようにすべきであるということを書いてあるのでありますけれども、実際はそのとおりいかない。需要家さんに炭価アップをお願いいたしますと、外国炭の方が安いのだから国の予算で見てもらえ、国の方は予算がないから需要家さんで見てもらえということで、毎年毎年赤字を積み残したまま来ておるというのが現状でございますので、この際私は、そういう抽象論でなしに、作文でなしに、どうするのだということをはっきりしてほしいという考えでございます。  炭鉱は年々深くなり遠くなっていきますので、それに伴うコストアップというものは避けられない状況にございますが、これは過去の実績を見ましても、技術の改善とか坑内構造の改善とか、こういうことによりまして大体吸収してきておりますし、今後に関しましても、そういうコストアップは企業努力によって吸収をしていきたいと考えております。しかし、それ以外の賃金アップ、電力料が上がる、輸送費が上がるとか、こういうふうな問題につきましては、どうしても吸収できないというのが現状でございますので、そういう分だけはひとつ炭価で見ていただきますか、あるいは国の助成というようなものを考えていただきますか、そういうどっちでどういうふうに見ていくのか、この辺を、抽象論でなしに何らか具体的に決められないものかというのが私どもの希望でございます。
  24. 楢橋進

    ○楢橋委員 次に移ります。  企業間の格差の問題で、自然条件とか立地条件企業間格差があるわけでありますが、矢田先生から、企業間の格差是正の問題については一企業化して内部でアジャストするというような陳述があったように思いますが、この点につきまして再度お伺いをしたいと思います。
  25. 矢田俊文

    矢田参考人 お断りしたいのですけれども、私の方はいつも一般的、抽象的な話しか七きないもので、そういう原則の話としてお聞きいただければと思うのです。  価格をある程度維持して、そして再生産可能であり、かつ二千万トンを維持するという方向を打ち出す場合に、その価格とは、結局は最劣等炭鉱価格にならざるを得ないという構造になっていると思うのです。でなければ、平均のところでいくならば、先ほどほかの参考人も言われましたように、平均よりもコストの高いところは当然再生産ができないということですから、平均で価格設定するということは、恒常的にその半分近くが再生産が不可能である。したがって、あらゆる企業が収支が安定していまの体制ないしそれ以上を維持するとすれば、理論的には最もきつい炭鉱のところに価格を設定するという議論にならざるを得ない。そうしますと、やはりかなり高価格ということが常に問われてきます。現在平均の方向で基準炭価を決めているようでございますけれども、そうしますと、最劣等炭鉱のところが常に救済を求めてくるという構造になっておりますので、いろいろな問題があります。  そこで、考え方として、西ドイツのルール炭鉱のように劣等部分、優等部分を統一して一つの会社にして、その中で平均以上のコストを持っているところと平均以下のコストを持っているところを調整していただければ、膨大な財政補助によって、最劣等炭鉱といいますか高コスト炭鉱維持しながらようやく二千万トンを維持するという構造にある程度の決着がつくのではないかというのが考え方の枠でございまして、どういう形でどう進めるかという問題は、法律上も、会社の姿勢その他からいってそう簡単ではないということを重々知っている上で、基本的な方向というのはそういう方向を目指さない限り、やはり幾つか閉山するという可能性は常につきまとうのではないかというふうに考えているわけです。
  26. 楢橋進

    ○楢橋委員 向坂参考人にお伺いしたいのですが、参考人からは現行安定補給金ですか、その一部傾斜配分、これは有吉参考人からもそういう御意見があったように思いますが、この点につきまして御意見をお伺いしたいと思います。
  27. 向坂正男

    向坂参考人 企業格差の是正を今後十分考えていかないと、現行炭鉱生産維持すらも困難であるという事実認識においては、皆さん、ほかの参考人とも同一でございます。  この企業格差是正のためにまず第一に考えられることは、安定補給金傾斜配分でございます。しかしこれは、金額的にいってもこれだけで自然条件の悪い炭鉱の再生産維持されるかどうかということにはかなりの疑問がございます。それだけ格差の幅が大きいと思います。  そこで、統合会社の案が出ましたけれども、私は、いきなりここで統合してみても、各炭鉱の会社の、企業の体質も違えば労使関係も違う、そういうところで統合していって統一的な経理にすることでうまくいくかどうか、特に炭鉱間の、何といいますか、合理化努力にいろいろ差が出てきて、内部的にいろいろ問題が起こるんじゃないか、いきなりそこへいくよりは、有吉参考人からも御提案のあったように、何らかの形であるプールを設けて、それを、自然条件の悪い、それを合理化では克服できない、そういう炭鉱に配分するというような段階をまず考えていくという方が合理的ではないかというように考えているわけであります。
  28. 楢橋進

    ○楢橋委員 森田参考人にお伺いしたいのでありますけれども労働力確保対策の問題であります。  お話しございましたように、定年退職者が毎年九百七十人ですか、そしてそれに伴って平均年齢が上昇してきておるということですね。これは私は大変大きな問題だろうと思うのです。主張点を見ますと、全国炭鉱平均四十二・七歳、これは恐らく毎年毎年高齢化といいますか、それが進んできておる。したがって、労働力高齢化によって、話がありました二千万トン体制自体が労働力供給力といいますか、そういう面からも非常に困難な事態になってくるのではないだろうかと実は非常に心配しておるのです。  それで、その対策としまして地下産業にふさわしい労働、福祉条件云々、いろいろあるわけでありますけれども、実際にいま若い人たちが地下に入りまして、苦しい労働というものに余り魅力を感じないような時代になってきているというふうに思うのですね。ですから、よほどの労働条件といいますか、よくしなければますます高齢化が進んでいくというふうに思うわけでありますが、実際に、そういう若い労働者の人たちに魅力のある職場にしていくためには、よほどの手を打たなければむずかしいんではないかというふうに感じておるのです。  そこで、具体的にどういうふうにやったらいいかということを、森田参考人並びにほかの参考人の方、御意見ございましたらぜひ具体的にひとつお聞かせいただきたいと思います。
  29. 森田久雄

    森田参考人 いま先生から言われたとおり、これは非常にむずかしい問題だと思います。ただ、平均年齢も四十二・七歳がずっと続いたときもありますし、もっと下がったときもあるわけです。それから、五十五年、六年の統計でまたそれが本当に下がるかもしれません。ただ、継続してそのまま年が上がっていくというふうに機械的にはなっていないようであります。若干若い人もそれぞれの炭鉱に入ってきていることも事実です。ただ、その若い層が入ってこれる炭鉱は限られております。明らかになっているのは、都市型炭鉱の太平洋とかあるいは三池とか、そういう町に近いところの炭鉱ですね、いま大きく分けますと。山奥の炭鉱にはなかなか行きたがらない。  先生が言われましたようにどういう対策があるのだろうか。これは一口にはちょっと言い切れませんけれども、坑内労働そのものがいやだということになれば、これはもう話にならぬわけであります。ただ、その中で問題なのは、いわゆる一、二、三番方という制度がありまして、三交代でないといまの生産能率を上げることが非常にむずかしいわけでありますけれども、一口に言いますと、三番方をなくすとか、で、二交代制でやれる方法はないか。その場合また賃金の方に影響してまいりますから、そういった減収にならないことを考える場合、これがまたコストにはね返るという問題などもあると思います。  さらに住んでいる場所が、昔から炭鉱のごく近いところに、至近的なところに居住区を設けているわけですが、この生活の場を町に近いところにするとか、あるいは居住区の付近をもっとにぎやかなものにして、若い者もそこに居つくような娯楽設備とかいろいろなものを整えるとか、いろいろな方法があると思います。いまのレジャーブームの中では、休みになりますと大都市へ出かけていくという傾向がありますから、必ずしもそれがいいとは思いませんけれども、そういった若い者が仕事以外の時間のときにおもしろく、愉快に過ごせる場をつくってやるべきだ、こう思うわけであります。  さらに将来展望、これは先ほどからも意見がありますように、山によっては展望が非常に暗い。もう一つは災害率が他の産業から比べると非常に多い。大分少なくなったと思いますけれども、そういった危険度というものについて保安の万全を期して、炭鉱は昔と違って非常に安全になったというようなことや、将来展望、この山はいわゆる国の政策その他からいっても大丈夫なんだ、こういった展望を持たしてやるということが大事なことではないかというふうに考えております。  ほかにも幾つかございますけれども、大別してこのようなことでございます。
  30. 岡新一

    ○岡参考人 決め手というのはなかなかないわけでございまして、いま森田炭政会議代表幹事幾つか申し上げましたけれども、私なりにそれにつけ加えて申し上げますと、やはり保安の問題は非常に大きな問題です。ただ、いまある制度の中で雇用促進事業団というのがございますが、この雇用促進事業団は閉山炭鉱の離職者を扱うのがもともとの出発点でございまして、現在でも雇用促進事業団の方では閉山炭鉱の離職者を対象として、主体として仕事をやっておる。しかし、時代が変わったわけでございますから、むしろこの雇用促進事業団の中に炭鉱労働者確保していくという任務も与えていいのではないか、またそのような活動を与えていいのではないか、このように一つは考えております。  それからもう一点は、炭鉱労働者海外労働者との交流。海外に行くことが若者の非常な楽しみにもなっておるようでございますが、以前西独派遣制度がございました。これは当時の事情として向こうで技術習得というのが名目で、実際には西独の労働力不足、こういうものを補う意味もあったわけでございましょうが、石炭が見直されてきたこういう情勢の中では、むしろ同数の人員を交流し合うということも一つ方法ではなかろうか、このように考えるわけでございます。  三つ目には、炭鉱地帯は先ほどからの話もございましたように、どうしてもだんだん過疎化していく。それで若い女性が外に出ていくものだから若い男性もとどまらない、こういう問題がございます。  一つ例を挙げますと、私、松島炭鉱の出身でございますけれども、現在鉱業学校がございまして、年間大体三十名から三十五名の若者が鉱業学校に入ってまいります。そしてまたそれが卒業していきまして、当初は、卒業したけれどもほかの職場に離れていくという率が多うございました。ところが、最近は定着しておりますのは、女子労働者の賃金を非常に高くいたしまして、そういたしますと、若い女性がたくさん今度は試験を受けなければ入れないような状態にまでなってまいります。そうすると、不思議と若い男性がまたとどまるというような傾向もございます。いろいろ総合的にそういうような政策を進めていく、そういう中で労働力確保ができるんではなかろうかと思います。  最後に一言言わせていただきますと、終戦直後職場もなく家もなく、あるいはまた食住ともに非常に苦労した時代がございましたが、そのころ傾斜生産方式の中で石炭に働く人たちは黒ダイヤの戦士とか、そのように新聞にも本にも書き立てられて、たくさんの労働者が集まってまいりましたが、この石炭見直しと同時に、時代は変わりましたけれども、そのような石炭産業に従事することを誇りとするような方向がとられるということも一つ方法ではなかろうか、このように考えておるわけでございます。
  31. 楢橋進

    ○楢橋委員 ありがとうございました。終わります。
  32. 森中守義

    森中委員長 岡田利春君。
  33. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、いままでの石炭政策を振り返ってみて、第五次政策まではスクラップ・アンド・ビルド政策がその基調であったと思うわけです。そして第四次、第五次政策原料炭重点主義、そして良質一般炭を一応意識しながら原料炭重点に移った。第六次政策はいわゆるオイルショックもございましたから、そういう意味原料炭一般炭同時並行的な視点というものが顕著に出ていると思うのです。だが、残念ながらこの第六次政策は、政策の教本であって政策そのものではなかった。だから、このことによって制度を改正したり法律改正をしたというのは真新しいものは何もないわけです。当時幌内炭鉱が水没した関係上、この部面が追加され、海外石炭開発が追加された。これが第六次政策の内容であったと私は思うわけです。  そういう総括の中でこれからの第七次政策を考えなければならぬと思うのですが、特に国内石炭位置づけ一つは量的な面があります。一つ国内炭の持つ意義、こういう面から量的な面から離れたいわば安定的な方向、そういう二つの視点があるのではないかと私は思うわけです。ところが、当初は油の価格国内石炭価格というものが影響されて、炭価の問題が非常にジグザグしてきた。今度は海外炭が入ってくる。海外炭国内炭炭価の比較。しかし、残念ながらいままでの第五次政策までは、レートは大体一ドル三百円というのが基調でまいったわけでありますから、そういう極端な変化もあったということをわれわれはこれから意識の中に入れておかなければならないのではないかと思います。  それと同時に、わが国石炭の質の問題についての認識が最近はずいぶん乱れておると思うわけです。たとえば原料炭についても、南夕とか新鉱の原料炭は強粘結原料炭と認識してよろしい、こうわれわれは認識をいたしております。そしてまた流動性が非常に高い。したがって、外国炭よりは三千円程度高くてもそれだけの価値があるというのが従来の常識であります。あるいは一般炭についても、北海道の一般炭はきわめてローサルファの石炭であるわけです。油にはサルファメリットがあるけれども石炭にはサルファメリットは全然考慮されていないわけです。しかし、そういうローサルファの石炭だからこそ、北電の場合にはどこの発電所にも脱硫装置はつけなくても今日電気を起こすことができている。したがって、三%の油の値段と国内炭のカロリー比較をするということは余りにも無謀過ぎるのではないか、こうわれわれは言わざるを得ないと思うのです。  同時に、今日需要先が鉄鋼やガス、コークス、原料炭向けと、一般炭は電力が今日までは重点であったわけです。そうしますと、その供給先は大部分が北電と電発に向けられている。北海道電力の場合には非常に広大な地域であって、配線だけでも他の電力の一・八倍かかる。北海道電力をずっと調べてまいりますと、エネルギー的に見ると、油の価格を上回ったというのがわずか一年しかないわけです。石炭を使ったがゆえに北海道の道民にそれを還元してきたというのが、北海道電力の歴史であったと私は思うわけです。だが残念ながら、北電重点に石炭供給をされる、そうすると北電の経営に炭価が合わせられている、こういう悩みが厳然としてあるわけですね。ですから、そういうものを総合的にもう一度検討し直し、組み立てなければ、第七次政策というものはぴしっとしたものができないのではないか、私はこういう気がします。  そういう意味で、これは向坂先生にお伺いするのですが、先ほど六月か七月の末には大筋をまとめる、答申をする。私は、この答申を余り急ぐ必要はないのではないかという意見を持っているわけです。もちろん、八月末には来年度の第七次政策の予算が要求されますから、中間的なまとめは必要かと思います。しかし、今年一年間のエネルギー情勢を考えますと、まとめて答申したことによって、逆に失敗する可能性もあるのではないか、そう思いますので、私自身としては、予算要求の大筋はまとめられることは結構であるけれども、慎重の上にも慎重を期して、ひとつ余り時期にこだわらないで、来年の法律改正に間に合わなければなりませんけれども、そういう点では、ひとつ落ちついて第七次政策を御答申願いたいものだ、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  34. 向坂正男

    向坂参考人 大変貴重な御意見を承りました。私ども情勢判断も、できるだけのことをしまして、それから新しい石炭政策石炭鉱業安定のために、また、エネルギーの安定供給のために、どのような政策をつくっていくかということは、十分慎重に審議をいたしたいと考えている次第でございます。中間的取りまとめにするかどうかということは、御意見ございましたので、さらに検討小委員会で考えてみたいと思う次第でございます。  これまでいろいろな御意見を承って、石炭位置づけから考えて、二千万トン程度を目標にして生産を続けていくという、それをどうやって保証するかということはやはり最大の問題でございまして、ただ、これをいきなり法律制度にして、国内炭の強制引き取り制度にするかどうかこの点については、十分慎重に考えてみなければならない問題であって、どちらかというと、現在行政改革をやり、補助金の整理をやろうという中で、石炭についてそういう方向へ行くことが、果たして世論の納得を得られるかどうかという点も十分考慮しなければならない問題だと思っているわけでございます。  需給計画についても、さしあたりの見通しとしましては、三年の需給計画をつくり、これを従来以上に需要家の方の確認といいますか合意を得て、それの実施を強めていくというような方向はもちろん考えなければなりませんし、見通しとしましても、IQ制度利用していけば、一般炭利用増加、もちろん輸入炭がふえますけれども、そういう増加の中で一般炭の引き取りは、ほぼ目標どおりいけるのではないかというように考えている次第でございます。  それから、炭価決定は、もちろん現行炭鉱生産維持、継続のために大変重要なことであるという認識は十分持っておりますし、これまで答申なされたことが必ずしもそのとおり実現されていなかったということも十分反省しているつもりでございます。ただ、それでは実効性のある炭価決定ルールをどのようにつくったらいいかということは、具体的に詰めていけばいくほど大変難問でございます。  一般的に、たとえば海外炭の場合は、国際的な需給価格を考慮したベースプライス、生産コストをもとにして、国際的な市場価格を勘案したベースプライスを決めて、それであと一定の方式でインフレエスカレーションを決めて、それをときどき見直すというような方式があり得るわけですけれども国内炭について仮にそういう方式を考えたときに、ベースプテイスをどうやってつくるか、その問題もありますし、インフレエスカレーションをどのように決めるかということも問題であって、その方式は決めても、その内容の決め方によっては、必ずしも炭鉱の収支にプラスであるかどうかわからないということも考えられるわけでございます。  いま御指摘のように、実際の炭価決定に当たっては、一般炭炭価決定がやはりまず真っ先のポイントになっておりまして、それをさらに詰めていけば、北電の買い上げ炭価をどのぐらいにするかということになります。その北電の炭価を決めるときには電気料金と関係がある。電気料金の方は、先般のこの二回ほどの経過を見ましても、北電が財政上、大変苦しくて、また北海道の電力料金をなるべく上げないようにということもあって、これは消費者あるいは国会でもいろいろ論議されましたし、その査定の結果、炭価を十分引き上げられないという状況になっておりますので、そのルールを決めただけで必ずしも実効性を保証するということは大変むずかしい。  したがって、炭価設定ルールを何らかの形で決める必要がありますけれども、その実際の年々の炭価決定に当たっては、そういった各般の関係が十分うまく運用されないと、そのルールは実現されない。そういうものを無視して、ルールの決め方によって実効性が保証せられるということは、私は、大変むずかしいのじゃないかというように考えて、現段階ではそういう状況ですけれども、さらに各方面の意見を承って、炭価決定の仕方についても検討を進めていきたいと思っております。
  35. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 結局、九電力体制が変更できないとすれば、別な装置をしなければならない、こう言わざるを得ないと思うわけですね。そうしますと、これからの一般炭の電力での消費計画というものを分析しますと、やがて一般炭は総輸入量から言えば四分の一、さらには二〇%程度になっていくわけですから、そう考えますと、やはり外炭を使うところ、それから主として国内炭をウエートを高く使うところ、電発の場合は問題ないわけですね、それぞれ卸値でできるものですから。かつての水火調整金のような何かの措置をしなければ、これは解決できないということに結局は落ちつくのではないか。ここを解くところに、今度の第七次政策一つの重要なポイントがある、こう実は私は認識をいたしているわけです。そういう意味で、せっかくの御研究、そしてこれにこたえ得る結論をひとつ出していただきたいということをお願いを申し上げておきたいと思います。  第二に、いまの石炭産業を安定させる、もちろん既存の炭鉱を、最終可能フィールドを決定して、そして資源を大切に、しかも効率よく経済的に掘ることが最も合理的だと思うんですね。それが基本であることは何人も否定し得ないのだと思うのです。だがしかし、その中で格差が生まれてきている。実は当委員会でもずいぶん議論をいたしておるわけです。特に象徴的に北炭問題というのが今年も問題になってきたわけですが、北炭問題をもう一回分析する必要があるのじゃないかと思うんですね。一つには、政策上乗らなかったいわゆる格差、借金というものがあるわけです。いままで第五次政策の第三次肩がわりまで、ほとんどの炭鉱は、閉山したものは、その肩がわりで救済されておるわけです。新鉱開発についてもそういう傾向があるわけであります。  ところが、北炭に限っては、原料炭指向できたものですから、第三次肩がわり以降四山の閉山を行っているのですね。この期間で閉山が行われたのは六つの炭鉱しかないのですけれども、北炭だけで四山があるわけであります。それと、重点が変わってきて、純一般炭である幌内炭鉱を再生させなければならない、だから水を揚げて世界に類例のない幌内炭鉱の再生をやったわけであります。この点は他の企業にない決定的な負債の中で格差としてあるのだ、このことはやはり素直に認めて対応策をとらなければいかぬではないか。もちろん、その後計画に対して出炭が出ないとか人的な労働力確保できないとか、いろいろなそういう問題は別にして、北炭のみに存在しているそういうものについては素直に認めて対応しないと、まずそういう基盤を少し上げないと、どういう対策をしても、全体的な日本石炭産業の安定はできないのではないか、こう私は思うわけです。  そして格差是正の問題でありますけれども石炭産業は体制問題が問題意識であるということは常々言ってきたわけですが、意見のあるところです。きょうも御意見を聞きますと、経営者側あるいはまた組合の中でも私企業重点という意見が出てくれば、今日の政治情勢の中ではなかなか体制問題というのはむずかしいというようなこともぴんと私自身も感ずるわけであります。だがしかし、それにかわる政策手段をわれわれは構築しなければならないのではないかと思うのです。そして格差の発生する要因というのは大体科学的に分析できると思うのですね。そういう意味では、第七次政策はその格差の要因というものをどのようなウエートでとらまえるか。もし体制的にできないとすれば、それを政策手段で、政策方法で埋め合わせをしない限り、全体の安定がなければ、百万トンの山がつぶれると百万トンショートするわけでありますから、結局第七次政策というものは挫折をしてしまう、こう思うのですが、そういう意味安定補給金程度、全部いいところから取って空知炭田にぶち込んだとしても、この格差は私は解消できないのではないか、こう認識をしておるのですが、先生はどういう御認識でしょうか。
  36. 向坂正男

    向坂参考人 御指摘のように、格差が生じている要因を十分分析する必要がございまして、私どもも事務局の手をかりながらその分析をしている次第でございます。それで、自然条件による格差がどの程度かということを見きわめることは技術的に大変むずかしいのですけれども、何らかの方法で、そういうことを考えながら、現時点において一体どの程度の格差を生ぜしめる要因が働いているのかということはできるだけとらえてみたいと思っているわけでございます。  それで、大ざっぱに各炭鉱の経常収支の差を見ましても、かなりな差があって、御指摘のように安定補給金傾斜配分程度では、とても埋め切れないだろうということは私どもも認識しております。それをどういう方法でということになると、私先ほど申し上げたように、いきなりこれを統合するという状況にはない。そこで、段階的な手段として、まず何らかの、ある条件のもとでの炭鉱からの拠出金を求めて、それを傾斜配分するというような方法が考えられる。これを果たして法律的にやるのかあるいは業界の自主的な方法でやるのかということは、なお検討の余地があるのではないかと思うのです。しかし、後者の方法を実現するには、まず炭鉱が平均的に再生産のできる炭価が実現しなければそういう手段を考えても実現性がない、その意味でやはり妥当な炭価をどうやって決めるかということは、新しい政策においても重要なポイントだというように考えております。
  37. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 従来の新鉱開発制度というのは、原料炭重点政策の中で生まれた新鉱開発政策だと私は思うのです。そういう意味で、今度は一般炭の新鉱開発という場合には——原料炭はやはり炭価が高いわけですから、そういう点をにらみ合わせながら政策を決めたというのが本当だと思うのですね。一般炭の場合にはもちろん高能率である程度の採算性をとる。比較的浅いところに賦存しているという面もあるわけですから、そういう手法に私はなると思うのです。だがしかし、当初やはり投資が過大に伴うのが新鉱開発でありますから、そういう意味では、原料炭重点主義の新鉱開発に対して、一般炭開発する場合には、浅いわけですから、そういう面を考慮して、対応をある程度の補強をされれば、一般炭開発可能性もあるのではないか、こう思うわけです。  私はこの委員会でも言ったのですけれども、通産省は十年計画——ある程度大ざっぱのを各社から出さしたらしいですね。だけれども、その内容を私らで見ますと、ほぼいままでの延長で、一千八百万トン体制というのが恐らく集約されただろうと思うのです。私は、これは参考には多少なるけれども、客観的に批判する目を持たなければいかぬではないか。なぜかなれば、果たしていまの生産体制と規模がそのフィールドを開発するのに最も効率的かといえば、私はそうでないと思うのですね。いままで抜き掘りをした傾向もあるわけですから。  まして、深部化する深部化するというけれども、深部化しない炭鉱もあるわけですね。赤平のように今度は六百メートル掘れば実質上これは十年間深度はゼロというところもあれば、あるいはまた百年祭を迎えた高島のように横に展開して飛島地域に十年ぐらいの展望の炭層を把握をすれば、この後は深部化するということにはならない。新鉱だって平安八尺掘れば、浅いところを掘るわけですから、深部化しない。一概に深部化するということにはならないのであって、抜き掘り的な採炭手法を、資源を大切に効率的に掘るという方向に転換しなければならないと思うのです。そういう点の視点を、今度の政策をまとめるに当たって、もう少し客観的に、どう各山を分析をするか、こういう点についてもぜひ御努力をお願いをしたい。この点はお願いを申し上げておきたいと思うのです。  そしてもう一つ、第七次政策のつなぎの問題なんですけれども、五十六年度の炭価決定ということは、第七次政策のつなぎの問題として重要だと思うのです。もう中国炭は十七ドルから十七ドル四十五セントもなって、五千トンの船で北海道に持ってくると、炭価は、中国炭は高いわけでありますから、まあカロリーは多少高いといっても炭の質がまた違うわけでありますから、九州で横持ちすれば、辛うじてどうかというような状況ですね。また、大体、今年度は最低十ドル、まあ南アとの契約を見れば最低十ドル上がっておるわけです。二百二十円にすれば二千二百円上がるわけであります。油の方もすでに四月からまた上がっている。  こういう状況の中で、いまの置かれている石炭産業、いままでとにかく何とかかんとか生き延びてきた状況から見れば、第七次政策につなぐ踊り場として五十六年度の炭価をどう決めるが非常に重要だと思うのです。この点について、審議会として特段議論を願わなければならぬと思うのですが、私のこういう考え方について、どういう御感想をお持ちか、承っておきたいと思います。
  38. 向坂正男

    向坂参考人 御指摘のように、五十六年度の炭価決定がどのようになるかということは、今度の新政策答申と非常にかかわりあるというふうに、これは私個人ですけれども、考えている次第でございます。また北電になりますけれども、あるいは近く料金のアップの申請があるかもしれないということがありまして、先ほどの問題につながってくるわけですけれども、その問題をどのように解決するかが実は今度の新答申炭価ルールの実効性ということとかかわりがありますので、どのように新しい五十六年度の炭価決定するか、石鉱審としてこれからいろいろ検討されると思いますけれども、その点十分関心を持っているということを申し上げたいと思います。
  39. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 十二炭鉱のうち九州三炭鉱、釧路に一炭鉱、残りの八炭鉱が空知炭田、南三つ、北に五つ炭鉱があるわけであります。特に北が問題であります。しかも砂川のように水力採炭をやりますと五千なら五千カロリーのものが出てくる。地場消費する以外にないわけですね。砂川の四号機も来年度運開しますけれども、今度の七次政策の中で北電の奈井江火力発電所は十年間ないし十五年間一体どういう位置づけになるのか、これが決まらぬと決まらぬということになるのではないかと思うのですね。  そういう点で、北電の問題というのは、炭価の問題も含め、今後の電源の配置、維持の問題を含めて非常に重要な問題であるし、それに対応する北空知地区、特に五山、これはどうあるべきがいいのかという点が、先ほども先生が触れられておりましたので私は非常に意を強くしておるわけでありますが、非常に大きなポイントではないかと思いますので、この点も特に深めて議論をいただきたい、かように思います。  私は、そこで先生にもう一問伺っておきますけれども、今度の新政策の中で一つ一つ切り離すと結論が出ないんじゃないかという気がするのですね。石炭の安定供給、優先引き取りという問題がある。企業間には、炭鉱間には格差がある。炭価石炭の銘柄で決まりますから、これは格差をつけるわけにはまいらない。したがって、この三つの問題を、私に言わせると三次方程式を解くところに第七次政策方向がある、そのために装置が必要なら装置をしなければならないということに結果的になるのではないかと思うのですが、私のそういう考え方に対して、いま先生が中心になって進められている第七次政策方向と認識が一致するかどうか、承っておきたいと思うのです。
  40. 向坂正男

    向坂参考人 検討小委員会の取り組む姿勢も、まさに先生御指摘の方向で取り組んでいこうということでございます。御指摘のように、個々ばらばらに考えていたのではいけないのであって、全体をある基本的な理念のもとで、体系的に政策をつくり上げていくということが大事であるという認識を持っておる次第でございます。
  41. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 矢田先生にお伺いしますけれども、先般エコノミストに「わが国石炭産業に活路はあるか」なかなかすらっと、恐らく専門外なんでしょうが、産業政策先生がやられておるという中で石炭産業というのを挙げて書かれたものだと承知をいたしたわけです。  そこに大手十二炭鉱の原価というのがあるわけですね。名前は入っておりませんけれども、私はこの炭鉱の名前は全部わかります。これに山元手取りが入ると非常にいいグラフになったと思うのですけれども、機密でなかなか収集できなかったということなんであります。だがしかし、この段階では山元手取りは六千強の差があるわけですね。最低と最高で六千以上の差があるわけです。今年は五千ちょっとの差があるでしょう。したがって、これは多少順序も八〇年度は入れかわっております。八〇年度で山元を入れると非常にすっきりした図表になって参考になるだろうと私は思うのです。  そういう意味で、出炭の幅と出炭原価というものが出ておりますから、ここから導き出されるのは、先ほど先生の言われた炭鉱格差というのはそう甘いものではないということを図式で示されたと思うわけです。  そこで、特に言われておるはっきりしない埋蔵炭量、確かに、昭和二十五年にわが国の全国の炭田調査をして、二百億トンの埋蔵量があるという発表をして以来、部分的にはやっておりますけれども、余り炭量調査というのはやっていないわけですね。今度の炭田開発可能性調査なんといったって、その炭鉱の周辺可能調査にはボーリングを打ったり金をかけていますけれども、あとほとんど従来の資料を集めてやっている程度なんですね。  後からまた通産省に聞きますけれども、炭田可能性調査というのは、そういう意味では、既存の炭鉱の周辺の調査には金をかけたけれども、あとは従来の資料を集めて分析をしてやった程度、こういう点で、確かに先生の指摘は当を得ていると私は思うわけであります。  特に、いまわが国の最大のポテンシャルと言われる西彼杵炭田というものをどう見るかということだって、これはまだできていないわけですね。釧路とか天北になるとこれは浅いところですから、従来の資料でもある程度読めるわけであります。そういう点を考えますと、将来に備えても、第七次政策の中でこういう調査をするということは、私は当然ではないかという気がするわけなんですね。そういう意味では先生の指摘は妥当ではないか、こう思います。  それともう一つは、生産体制の改善という問題で先ほども意見が述べられておりますけれども、結局、格差是正という問題は民間のサイドでできるものだろうか、私はこれはなかなかできないと思うのですよ。強制的に金を取り上げて傾斜配分すればできますけれども、できないと思うのですね。そういう意味でもうちょっと具体的に、いまの分析から見た日本国内石炭産業というものの体制は理想的に言えばこう、もし理想的にできないとしてもこの程度の体制にした方がいいのではないかというような御意見があれば、承っておきたいと思います。
  42. 矢田俊文

    矢田参考人 自然条件によるコスト格差の問題については、先生のおっしゃるとおり、山元手取りを入れて採算性の格差を明確にするというのは当然のことなんですけれども、余りにもはっきりと公表するのは差し控えるということもありまして、文章でかなりそれは触れていると思いますし、これからもできたらそれを参考にして勉強しようと思っております。  それから、埋蔵量調査の問題は、確かに、昭和三十年代に大規模にやられて以降情勢が全く変わって、評価する基準自体が変わっているにもかかわらず評価されていない。いわゆる相対的に評価されてないという点では、これから長期政策をつくるときに、それがなくて長期政策をつくるということについては依然として疑問があるわけです。特に、確かに、技術水準が上がって海底部分というものがかなり掌握できるだろうという先生のおっしゃる側面と、それからいままでエネルギー革命のときに経済性が成り立たなくてつぶしてきたというところが、現代の経済性のもとでどの程度見直しができて、つぶし方が非常に悪いがゆえに見直しができないのかという、少なくとも炭量としては把握されているけれども開発する対象になり得るのかならないのかの調査もかなり本格的にやっていただきたい。これはエネルギー危機以降の情勢変化ということを基本的な姿勢においてやっていただければということ。  それから最もむずかしい生産体制の問題なんですけれども、きょうの参考人の中でもほかの参考人は余りはっきり言われなかったもので、現実問題として関係者が非常にたくさんおりますので、それぞれの立場からそれぞれの見解がありまして、恐らく調整というのは非常にむずかしいのだろうというふうにきょう伺ってきましたが、ただ依然として原則を言わせていただくならば、わが国国内資源というものを確保するんだ、二千万トンないしそれ以上ということを何回も繰り返しながら、その保証という点が非常に弱々しいといいますか、その点において、形態においては、先ほど言われました総合エネルギー開発機構を軸にして再配分するとか、安定補給金傾斜配分するとかいろいろなアイデアが出てくると思うのですけれども、それが一体最終的にどちらの方向を向いてしているのか、  ある程度、その次元で押さえる程度で終わるのか、当面はこれだという当面の長期目標をどこに設定しておるのか、その辺が依然としてはっきりわからないもので、国有化とか、民間企業一会社化とか、開発機構がかんだところの利潤再配分とかといういろいろな考え方があると思いますけれども、原則としては一企業体制というものを確立する方向でいろいろな困難な問題を突破していただきたい。  そこの腰がすわってないと、どうしても内外競合財価格情勢に振り回されて、結局はまた見直しをして千八百万トンを割る可能性だって常にあるというところで、基本的基盤をどこに置くかということを特に強調したいわけで、具体的な形態について、非常に正直に言いまして、先ほど言われましたように、当事者外なもので余り具体的に提起するわけにいかないと思います。
  43. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 わが国の総資源という立場石炭を見てみる。たとえば食糧もそうでしょうし、あるいは鉱物資源の場合もありますし、またエネルギーの場合も、水力もこれからずんずん小水系になっていくわけであります。それから新エネルギー開発も、ローカルエネルギーの面についても今度進めるということで、機構も生まれたわけです。     〔委員長退席、中西(績)委員長代理着席〕 そういうわが国の総資源という立場における国内石炭位置づけといいますか見方、こういう視点も私は政策決定の場合大事じゃないかな、こういう気がするわけです。  食糧も、もし経済効率でいったら全部やめてしまえということになってしまうわけですね。しかし、そういうわけにいかぬから、一定の自給率は確保しなければならぬ。あらゆる政策を展開しておるわけです。小水力の場合も、これはわが国エネルギー確保の一環として、高くついてもどんどん小水系もこれから開発をするという方針がすでに出されておるわけです。そうしますと、石炭産業だけが常に経済性だけが求められる。初めは油、今度は外炭。これでは、最も新しい炭層で、新しいから上下盤の条件も悪いし、それでいい炭が出るわけだから、地層ももめているという日本石炭産業が安定するはずがないわけですね。  だから私は、総資源の中で国民行為として、国内石炭産業はこういう規模をこういう価格維持をしていくことに合意ができるというところをねらわなければ、第七次政策は成り立たないような気がするのです。たとえば、体制が一元化されてもされなくても、まずそういう点が政策上求められなければならない段階に来たのではないかな、こう思うのですが、先生はいろいろな産業政策をやっている中で、私のいまのこういう見方から第七次政策の骨になるものを出すという考え方について、どういう御意見をお持ちでしょうか。
  44. 矢田俊文

    矢田参考人 大変むずかしい質問なんで、十分意見を述べられるかどうかあれですけれども日本のいわゆる戦後の高度成長というものをどういうふうに資源との関係で見るかというところにかかわってくると思うのです。われわれないし一般国民全体のかなりの合意というのは、基本的に、国内資源というものを食糧を含めまして捨て去りながら、世界貿易、平和貿易の中で、臨海性工業地帯という有効性を利用して、できるだけ海外の低コスト資源というものを利用していく。     〔中西(績)委員長代理退席、委員長着席〕 その中で、それも一つの理由となって国際競争力をつけてきた。これが日本の高度成長及び戦後の復興のポイントであったという考え方がかなり国民的な一つ見解にあったと思うのです。  これが、エネルギー危機その他の南北問題の中で、そういう考え方そのもの、いわゆるもう国民の中では資源そのものが日本にはないんだ、したがって、世界から貿易ないし外交政策の中でいかに有効に利用していくかという一つの哲学が貫いていると思うのです。にもかかわらず、四つの島を中心にして見て、自給などということはやはり無理ですけれども、可能な限り自給率を上げて資源を有効利用した上で、それを基盤として外交的に資源確保するという考え方というのは、いままでの経済効率中心主義から見ますと、何といいますか、かなり国民的な合意の形成を変えなくちゃならない。その中に石炭一つあるというふうに考えないと、非常にむずかしいんじゃないか。  そういう点では、先生見解と基本的に一致するわけですけれども、やはり国内石炭資源、水力、それから可能であればある種のソフトエネルギー関係というもの、短期的な競合財との競争ということを常に意識し過ぎて、成り立たないんだということを余りにも強調し過ぎてきたのがいままでの政策ではなかったか。やはりそれなりに資源というものはあり、それを基盤にして一定の自給率は確保できるんだという経済運営の立場に立った上で国内石炭位置づける。  国内石炭だけでは、どうがんばっても、倍にしても、エネルギーの一〇%もいかないという点では、国内石炭をがんばれば何とかなるというほど事態は甘いものだとは思いませんけれども、しかし、それと、だからゼロにする、あるいは非常にネグリジブルで結構であるというのと全く違った考え方なんで、第一の優先順位をどこにするかという点では、やはりあらゆる国内資源というものを基本的に有効利用する。その上で外国からいろいろな形で資源確保するというふうに国民的な合意を形成しないと、石炭経済性の名においてまた依然として振り回されていくという状況では、具体的な政策を見ている限り、余り変わってないんじゃないか。スローガンとしては変わっていますけれども、実態的には余り変わってないんじゃないかという認識でおります。
  45. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 WOCOLの報告書も私読んでみたのですけれども、甘いなという感じが私自身はするわけです。特に、これからコストの高い石炭と安い石炭というものをバランスよく掘る。これが世界各国の共通の理念になるだろうと私は見ておるわけです。  たとえばオーストラリアでもソ連でもアンダーグラウンドとオープンカットとをいわばフィフティー・フィフティーぐらいの体制で維持していく、長期的に維持する、こういうような政策もとられておりますし、また地上鉱害等の問題もありますから、問題点というものは、そう報告書に簡単に書かれているようなものではないのではないか。  特に、労働力の問題から見れば、オーストラリアにおいてもいずれ労働力の問題が出てくるでしょう。アメリカでもまだ増産ができるけれども労働力確保できないという悩みを持っているわけですね。最大の人口を持っている中国ですらも、労働力確保ということになると、流動性に欠けていますから非常にむずかしい側面があるのじゃないかと私は思うのですね。そういう面からも、WOCOLの報告書というのは甘い判断だというような気がしてならないわけです。  有吉さんは中国にも行かれて、これからの新しい地域開発にも参画されておるわけですが、こういう私の見方についてどういう御意見をお持ちか、この機会に承っておきたいと思います。
  46. 有吉新吾

    有吉参考人 オーストラリア、アメリカにおきましても、やはり徐々にアンダーグラウンドに移っていくという傾向にございます。それでコストの安いのと高いのを調整をする、そういう目的でそれをやっておるのか、それは必ずしもそうとは思いませんですけれども、オープンカットに適したところがやはり徐々になくなってきまして、可採埋蔵量から言いますと、対象になります埋蔵炭を持っておりますのはやはりアンダーグラウンドでございますので、石炭がこういうように増産体制になりますと、どうしてもアンダーグラウンドというものを考えなければならぬ、こういう一つの趨勢ではないかと私は思っております。  そこで、私、去年オーストラリアへ行きましたときにも、アンダーグラウンドにそういうふうに移っていけば、オープンカットと違いまして相当の労働力というものが要るんだが、オーストラリアというのは人口の少ないところで、一体そういう労働力があるのか、これを一つ質問をしたのでございますけれども、オーストラリアでの話は、計画的に移民の移入でございますか、これを考えておるということでございます。  それともう一つは、アンダーグラウンドの採掘も、御承知のように非常に機械化されてまいりましたので、日本とは違いましてやはり坑内条件は非常にいい。こういうこともありますので、オープンカットに比べますと、それは確かに所要労働力というのは多いのでございますが、それほどの人数を必要としない、こういうふうなことを申しておりました。  アメリカ、カナダ等につきましても、やはり炭鉱労働力というのは集まるのだろうかということを非常に心配しているのでございますが、ただ、私どもの接触しております範囲で、ユタ州での新しい炭鉱開発ですが、そういうことを問題にいたしますけれども、大体労働力は大丈夫だ、こういうことを向こうの当事者は言っております。カナダでもクインテットの山というのは大きな五百万トンの山を開くわけでございますが、これは露天掘りで人が少ない点もございますが、いまは労働力の問題につきましては心配はないようでございます。  それから中国につきましては、これは大変な労働力を持っておりまして、御心配のようなそういう問題はないような気がいたします。一ころは、日本流の非常に人間の要らない高能率の炭鉱開発してくれ、こう言っておったのですが、つい最近参りましての話は、やはり一方において雇用問題もあるのでというような話が出ております。  ただ、日本の計画でも一九九〇年に五千三百五十万トンというようなものを、一般炭を入れるのだとかなっておりますが、そういったものの開発労働力の面で順調にいくのかと申しますと、私は、これは先々はちょっと問題だろうという感じがいたします。しかし当面の、いま開発を進めておりますそういうものにつきましては、労働力はそう心配はないんじゃないかという感触を私は受けております。  以上でございます。
  47. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど五点有吉さんは挙げられたのですが、その中で特に私きょう取り上げてお聞きいたしたいのは、経常収支という問題は、もちろんこれは経営でありますから大きな問題点でありますが、この中でやはり労働賃金、労働条件をどう決めるかという点の長期的な視点がないと、労働力対策からいっても非常に問題があるのではないか。まして北炭のように、現在半分の賃金で、ボーナスも半分だなんということが長期的に続いて、労働力が集まるはずがないわけです。自然崩壊するのではないか、こう私は心配をいたしておるわけです。  それと同時に、炭鉱格差、先ほど安定補給金傾斜配分、機構に一定の納付金を納入するというようなことも考えて、連帯的な協調を図っていきたいという意見が述べられておるわけです。私は、やはり今度の政策の中でも労働力の安定確保というものを起点にしながら、経常収支の一応の安定化、同時に、全体が安定するためには、炭鉱企業間格差を解消して、連帯協調しなければならぬ、ここが非常に大きなポイントのような気がするわけであります。したがって、炭価政策の問題もあるわけでありますけれども、この点、第七次政策に向けて、協会としては、特にコストアップのうちの労働力安定確保労働条件というもの、どこの線で持っていこうと訴えられるのか、具体的な御説明を願いたいということ。  それから連帯協調の二つの問題点が示されたわけですが、これは現時点におけるきょうの参考人としての御意見であって、さらにこれを中心にしてあらゆる角度からこの問題について具体的に深めて検討される用意がおありなのか、この点承っておきたいと思うのです。
  48. 有吉新吾

    有吉参考人 確かに、日本国内におきましては、労働力確保ということは非常に問題でございまして、平均年齢はそんなに上がってはおりませんけれども、決して若返りはしない、こういうふうな状況でございます。やはり一番大事なことは、石炭産業というものの先行きに対する一つの明るさと申しますか、大丈夫なんだ、自分の一生を託していいんだ、こういう産業の安定ということが労働力確保いたします一番の根本ではないか、私はこういうふうに考えております。それが、こういうふうに石炭復権だと言われながら、依然として赤字だ赤字だというのがやはり労働力確保に大きな暗影を投じておるのではないか、こういうふうに思っております。  もちろん、労働条件が世間並みでございませんと労働力が集まらないわけでございます。組合の方々から言わせますと、炭鉱労働は非常に苦しいのだから世間並み以上であるべきだ、こういうお考えでございましょうが、いろいろ石炭政策の真っ最中でもございますし、政府の助成も受けてきておりますので、大方の御理解と協力なしには、石炭産業をりっぱに立て直していけないわけでございます。ただ、世間並みの労働条件は整えませんと、こういう過酷な地下産業には人は集まらない、こういうことを関係需要家さんを初めといたしまして、そういうところには訴えておるわけでございますし、今後といたしましても、少なくもそういうところは私ども確保していきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから経常収支と格差是正の問題でございますが、先ほど向坂参考人に御質問がございました、いわゆる経常収支が成り立っていくために、私どもは平均で少なくもプラス・マイナス・ゼロを最低にということをお願いしてきておるわけでございますけれども、これにつきまして、いわゆる炭価ルールという表現をしておりますけれども、ちょうど外国炭にありますようなベースプライスを決めまして、エスカレーター条項をなにするという、そういうふうな一つの形式的な方法ではなかなかむずかしいのではないか。これは向坂参考人意見と全く同じでございます。  繰り返して申しますけれども、私どもは、深くなったり遠くなったりした条件悪化は自分で克服いたしますが、あとのベースアップとか経費、資材代、こういったものの値上がりによるコストアップは石炭価格なり何なりで考えていただきたい。ちょっと出炭が動きますれば非常にコストも変わってくるわけでございますので、毎年そういう実績に基づきましてコストをチェックしていただきまして、それをひとつ考えていただきたいというのが私どもの希望でございます。  格差是正という問題は、そういうことが実現されますならば、私どもとしては当然やらなければならぬわけでありまして、経常収支が平均的に一応ペイするということが一つの前提になっておりまして、格差是正だけが先走ってもどうにもならぬわけでございます。それと一体になったものでございまして、もし経常収支がペイするような状態が実現されますならば、私どもは、業界全体が生きていくために安定補給金をさらに傾斜して配分していくということは当然やってもらいたいと思いますし、それでも足りない分につきましては業界でおのおの一定額を拠出して、連帯的にみんなで生きていこう、こういう考え方業界としては大体意見の調整を終わっております。  具体的には、方法等につきましては今後検討していかなければならぬわけでございますが、ただ赤字を基準にしてそれを埋めていくというような考え方はとらないで、ある一つの客観的な基準によりまして、ひとつそういったものをみんなで負担をしていこうじゃないか、そうでございませんと、結局そのしりをすべて持っていけばいいんだ、こういうふうなことになってまいりまして、企業の自主性、努力、そういったものがなくなりますので、方法論はそういうふうなことを今後ひとつよく詰めていく、こういう考え方でおります。
  49. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、今日の政治、経済、社会情勢から考えて、日本石炭産業は三井石炭の肩にがっちりかかっておるという認識を持っておるわけです。これは、やはりウエートからいっても資本系列の連関性からいってもそうではないかと思うのです。そういう点で、三井鉱山のこれからの石炭方向というものが日本国内石炭産業方向を決めると言い切っても過言ではないだろう、こう思っておりますので、これは私の意見だけ述べておきたいと思います。  最後に、先ほどから答弁されていない労働者側の参考人に伺っておきますが、炭労の野呂さんは、二千万トン、そしてステップして二千五百万トン、こういう意見を開陳をされたのですが、労働力その他あらゆる面から考えて、あるいは資金も考えなければなりませんが、要は、いまここまで来た日本石炭産業は二千万トン体制というものを何とか維持をする。でなければ千八百万トンも維持できなくなると思うのですね。二千万トンという目標があって千八百万トン台を維持しておるのだと私は思うのです。千八百万トンになると千六百・万トンにはなる、こう私は言い切るのであります。そういう意味で、第七次政策の基本というものは二千万トンに凝縮をして、そういう体制をがっちり固めるということに意思統一してはどうかという点について御意見を承りたいというのが一つ。  それから鈴木参考人に、炭職協は特にエンジニアが集まっておる組織でありますけれども、やはり重装備の体制も、最近はずいぶんレベルアップして似通った水準になってきておりますけれども、職制の課長以上じゃなくて、いわば中堅技術屋の風通しがよくない炭鉱というのはやはりよくないと思うのです。風通しがよくなければいかぬと思うのですね。そういう意味では、労使とも話し合って、中堅の技術屋の交流研修を実地にやる、こういうことをもう少しダイナミックにやったらどうか。いま即養成すると言ってもなかなかできないわけでありますから、そこに最重点を置いてやられたらどうか、私はこういう意見があるのですが、この点の御意見を承って、終わりたいと思います。
  50. 野呂潔

    野呂参考人 ただいまの岡田先生の質問でありますが、私も、当初申し上げましたように、当面はまず二千万トンを必ず確保できるような政策をつくってほしい、そのことはもう前提であります。二千万トンが果たして可能かどうか、現状千八百万トンですから、直ちに、きょう、あすというわけにはいきませんけれども、こういう政策が裏づけをされるならば可能であるというように私たちは、労働三団体でも意思統一をいたしています。  といいますのは、何といっても長期ビジョンですね、有吉参考人も言っておりましたが、きょう入ってあしたつぶれる、そういうようなところに長居は無用ということで腰を落ちつける気はしません。したがって、長期的に国内炭は二千万トンは必ず維持し、そしてそれを拡大していくんだという具体的な政策の裏づけというものがまず必要であろう。  それともう一つは、保安の問題とかあるいはまた環境問題、特に危険だという問題について私たちは真剣に取り組みます。取り組んでおりますから、もはや地上産業と同じような災害率の炭鉱が出てきているということを私たちは自信を持って言い切ることができます。したがって、これからわれわれはそういう問題について真剣に取り組もう……。しかし、炭鉱長期ビジョンがないために、けがをしても医療制度——病院一つ見てもその近くにはない。医者も北大から先生をお借りして、出張で来てもらうということで、そういう設備がほとんどないということを私たちは憂えるわけであります。  したがって、何といいましても、都市炭鉱であります太平洋あるいは三池というようなところ、まあ松島も若干でありますが、これは長期ビジョンというものがはっきりしているでしょうし、どんなにつぶれてもこの炭鉱だけは残るというビジョンがあるでしょう。それから、都市型のところは人が集まりやすいのでありますが、そういう環境整備を私たちもやらなければなりませんけれども政府の力もおかりをしたい。特に北海道の空知炭田の場合は、四区から出ておられます渡辺先生もいらっしゃいますのでよくおわかりのとおりでありますが、そういうところを十分に対策をしていただいて、環境づくりというものを積極的にやっていかなければならぬと考えています。私たちも一生懸命努力をいたしますが、当面は二千万トンを維持する。現行炭鉱ではそういうビジョンとか対策をやることによって早急に二年程度のうちには可能であるというように、私たちは自信を持って言い切ることができるであろうというように考えています。  以上であります。
  51. 鈴木照生

    鈴木参考人 先生のおっしゃるとおりだと思います。ただ、いままでいわゆる鶏と卵の関係じゃございませんが、やはり石炭産業は人が足りないということでもってフル配番ということをやっておりますので、なかなかそういう余裕がなかったというのが実態だと思います。  しかし、そうはいっても、そういうことだけではなかなか済まぬと思いますので、今後も私たちの場を通じまして、できるだけそのような方向で進んでいきたいと思っております。
  52. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  53. 森中守義

    森中委員長 小沢和秋君。
  54. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 時間も余りありませんので、ごく簡単にお尋ねをしたいと思うのです。  まず、矢田参考人にお尋ねをしたいと思うのですが、先ほどから国内炭位置づけということが非常に問題になっております。私は、先ほど矢田さんも言われたかと思いますけれども、食糧やエネルギーは、国のいわば経済的な独立にかかわる非常に重要な問題だというふうに考えているわけです。特にエネルギーでは、日本の場合、石炭よりも石油の方がべんと安いというので石炭をつぶした。ところが、ああいうエネルギー危機ということで非常な打撃を受けた。そして今度は、海外炭の方が安いということで海外炭の方に大きく目が向いているわけですけれども、アメリカにしろオーストラリアにしろ——アメリカを中心にしたメジャーが石炭もがっちり握っているというような点から考えてみれば、今度はこの石炭の問題でまた大きく揺さぶられるということがないとも言えないというふうに思うわけです。ですから、そういう意味では、日本の国の経済的ないわば自立の基礎を保障していく問題として国内炭を最大限に活用する、そういう意味ではもっと増産をする必要さえあるというように私考えているわけです。  先ほどから二千万トンでも大変だというような話がいろいろされておりますけれども、こういう根本的な認識に立って政策を変えていくならば、私は、いままでの国内石炭資源状況などを調査してみても、可採炭量だけでも三十億トンからあるというような資料もかつて見たように思いますし、また、かつて五千万トン以上実際にも掘っておったというような点などを考えてみても、この点でもっと積極的に国内炭増産する展望というものは十分あるんじゃないだろうかというような点を一つお尋ねしたいのです。  それから、有吉参考人にもその点で関連してお尋ねをしておきたいと思うのですが、新鉱開発も含めて、そういうふうな立場石炭政策を、国内炭をもっともっと充実するように転換をさせていくならば、私がいま言ったように、もっと大きく増産さえ可能ではなかろうかというように考えているのですが、実際に掘っていらっしゃる立場から見てどうかというのを有吉さんからもお伺いしたいと思います。
  55. 矢田俊文

    矢田参考人 いま言われました、エネルギー革命の時代に非常に安い石油に依存して、五千五百万トンから千八百万トンに落としたということをどう評価するかという点では、私は、研究者として、その点においては過去は過去であるというふうに評価するわけにはいかない。そこから何をくみ取って、これからどうするかという点では、恐らく見解は余り違わないのだろうと思います。  ただ、五千五百万トンを掘っていたということと千八百万トンまでつぶしたという現実との関係からいきますと、千八百万トンからどう増産方向にいくか、どれだけいくか、五千五百万トンという数字が必ずしも的確かどうかというのはかなり疑問がありまして、要するにつぶした出発点、千八百万トンから出発せざるを得ない。  したがって、つぶし方によっては、本来かなり丁寧に掘っていけば可能であったところが、いまどう投資してみてもほとんど再開発が不可能であるというのが恐らくかなりあるだろうと思うので、時間の問題もありますけれども、そういう点では、五千五百万トンが可能であるというふうに私はちょっと考えておりませんというか、確信は持てませんので、その点は別にしまして、ただ、先ほどからいろいろな方が言われますように、二千万トンを維持するというスローガンというのはほとんど一致し、あるいはできたら増産という点でもそれほど見解は違わないのだろうと思うのです。  何しろエネルギー危機以来の石炭政策というものはそこのスローガンだけがひとり歩きしまして、どうしてもこれ以上つぶさないという政策が実態であったということで、したがって、一割減という形で現在続いているので、やはり具体的にどういう体制でもってそれを維持し、その維持するものが一定の軌道に乗る展望のもとでどれだけ増産可能であるかというふうに、基本姿勢の問題として、現実的であると同時に、かつ姿勢がかなりきちんとするというところから増産が始まるのだろうと思うので、数字的にいかがかと言われますと、正直言って自信がございませんということです。
  56. 有吉新吾

    有吉参考人 いまの増産と新鉱開発の問題でございますが、現在動いております炭鉱自体でさらに二千万トン以上に増産をしていくということは、私は、これは山ごとにはそれぞれちょっと違うかと思いますが、全体といたしましてちょっとむずかしい、こういうふうに思っております。現在残っております山は、石油に押されていわゆるスクラップ・ビルドをやりましたビルド鉱というのが残っておるわけでございまして、その大部分は本当の経済出炭以上の出炭規模を強いられたと申しますか、出炭をふやさないと採算に合わないものですから、そういうふうな姿が現状でありまして、これをさらにふやしていくということはちょっとむずかしい、そういうふうに私は思っております。  それから、新鉱開発等につきましては、九州、北海道にもそれぞれ二、三の対象区域はございますが、いずれも品質的にもまだちょっと問題あるいは不明の点もございまして、現在置かれておる石炭価格とかそういう条件からいきますとなかなか採算はとれない、こういうふうなことでございますので、とりあえずいま稼行いたしております現存の炭鉱が平均的に成り立つという、まずそれを一つ確立をいたしまして、そしてできれば、新鉱開発とかそういう前向きに進んでいくことは、私どもとしても心から希望をいたしておる次第でございます。
  57. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 引き続いて矢田参考人にお尋ねしたいと思うのですが、いままでの政策というのはこれ以上つぶさないという政策であって、もっと積極的なものを持っていなかったという指摘は私も全く同感なわけです。ただ、今後そういう方向に積極的に政策を展開していこうということになりますと、先ほどからもときどき問題になっておりましたけれども、いまのような私企業で、いまのような状況のもとでやっていけるかというのは、これは重大な問題だと思うのです。  私どもの党では、石炭だけでなく電力、石油、原子力といったようなエネルギー全体を総合公社化して、国の責任でエネルギー政策を運営していく、こういう中で石炭ももっと国内増産をするという可能性も大きく開けてくるのではなかろうかというふうに考えているわけですが、こういうことについてどうお考えか。先ほどから流通一元化とか生産の面では統合した会社をつくらないと自然条件のアンバランスを克服できないとか、いろいろ議論があるのも、結局、そういうようなことも含めて考えなければいけない段階に実際来ているということの反映ではないかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  58. 矢田俊文

    矢田参考人 非常に細かい話になりますと依然として確証ある確実な発言ができないのですけれども、いままで参考人の方からいろいろ意見をお聞かせいただきますと、現在の特定の企業増産に向かって、現在の骨格構造以外のところに大規模な設備投資をするということは、姿勢的にもあるいは内外情勢全体としてもどうもなさそうな感じはいたしますので、もし増産ということを前提にして政策をつくるならば、少なくとも石炭に限定しますと、新鉱の大規模投資というものは、何らかの形で政策が介入しないと恐らくいかないのだろうという点では、まあ形態は詳しくは知りませんけれども考え方としてはかなり共通しているのではないかというふうに考えております。
  59. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それからもう一つ、今度は有吉さんと炭労の野呂さんにお尋ねをしてみたいと思うのですけれども石炭増産をしていく上で労働力確保というのが非常に大きなネックになっているというお話がありました。私もその点全くそうだろうと思うのです。国内炭の将来展望が明確にならない限り、自分の人生を石炭にかけようというような人はなかなか出てこない道理でありますし、少なくとも七次答申の中で、賃金とか労働時間あるいは保安体制、こういうようなものについてみんなが安心してこの石炭産業に従事できるような保証を明らかにさせる必要があるのではないかと私は考えているわけであります。ところが、現実には非常に厳しい状態がある。  先ほどから、賃金も、特に北炭などでは半分は払われていないとかいうようなお話もあったのですけれども、私のところに最近北海道の人から手紙が来まして、保安の問題で非常に大変な状況になっているということなんです。北海道ではこの三カ月間に十一名の方が亡くなられておる。特に、その中でも北炭の夕張に四名も集中して亡くなられる方が発生しているということがこの手紙の中で訴えられているわけなんです。北炭というのは、恐らくいま再建できるかどうかということで焦点になっている会社ですし、そういう点で、保安にそれが大きくしわ寄せをされた結果がこういうところに出てきておるんじゃなかろうかということを、この手紙を読んで私は感ぜざるを得ないわけですね。実際、ちょっとでもそういうことを考えておったら、事故なしで済ませたんじゃなかろうかというようなことをこの手紙の中から感ずるのです。  たとえば二月二十六日に起きた生き埋め事故というのも、労働者の方の証言では、初めに一人埋まって、助けてくれという声が聞こえた。駆けつけたけれども、救出するための材料がなくて、それで、何とか助けたいというので、危険を覚悟で掘っておったら、また崩落して、もう一人埋まって、それで、二次災害のおそれがあるというので、別のところから資材を運んで、天盤を支えて掘ったけれども、もう二人とも亡くなられておった。これなんかも、本当に近くに資材があったらこういうことにならなかったのじゃないかというようなことが書いてありますし、あるいは四月四日の災害にしても、トロッコで非常に狭いところを通ったときに労働者がはさまれて亡くなった事故なんですけれども、これも、ここを広げないと危ない、危ないと言っておって、そういう事故になっている。  だから、もっともっと出てきて働かないと会社が危ないと言って督励するけれども、こんなに危ない状態では、実際自分たち自身も安心して出ていかれないのだというようなことがこの手紙の結びに書いてあるわけですけれども、私は、北炭など本当に再建していくためにも、やはりこういうような、少なくとも保安などについては万全を期する。それで、みんなが安心して出ていって働けるというような状態を最低保障しないと、悪循環になってしまっているんじゃなかろうかというようなことを感ずるわけなんです。  労使一言ずつで結構なんですけれども、特に北炭の再建の上でこういうような点にしわ寄せが来てないか。これを解決するということが、私は、北炭の再建にとっても非常に重要な意義を持つんじゃなかろうかということを感ずるわけですが、どうでしょうか。一言ずつおっしゃっていただきたい。
  60. 有吉新吾

    有吉参考人 この保安の問題につきましては、われわれ炭鉱業界はまず保安優先という考えでおりますし、これは北炭さんにおきましても同じであると私は考えております。再建のための出炭増に迫られまして保安を犠牲にするなんて、おおよそこういうことは考えられないと私は思っております。  坑道が狭いとか、いろいろ細かい具体的なことを私は知りませんけれども、これはやはり一定の保安規則がございますので、それに従った坑道になっておると思うのでございますが、北炭さんにおかれましても、再建計画を認可されて、そして事故をいろいろ起こすということを大変心配されまして、いまこの保安の点検班を四月いっぱい各所に巡回をさせられまして、保安体制の確立に努力されておるように伺っておりますし、ぜひひとつ事故を減少いたしますことを私どもとしても願っておりますが、保安を犠牲にするようなことは、これはもう絶対にわれわれとしてはない、こういうふうに考えております。
  61. 野呂潔

    野呂参考人 ただいまの質問でありますが、細部について、小沢先生の言ったことについては私は調査をいたしておりませんから知りません。しかし、保安を無視して生産に従事をするということは、これはもうあり得ないことであるというように、ここでは原則的に申し上げておきたいと思います。  ただ、これはまあ推定を出ないわけでありますけれども、北炭の場合、再建計画というものがつくられて、そのように出炭が確保されないということで、何回となく経営危機問題ということが俎上に上り、そして労働組合も含めて、やはり労使が甘えの構造にあるんでないかという御指摘を受けておりますので、出炭を第一義的に考えざるを得ないというような問題がやはりその心の奥底にはあるのかもしれないなという気がするのであります。  しかしそれは、私たちは、保安を無視したり法規にあるようなことを犯すようなことをしてはいないと思うのですが、そういうような点が個々の面で、自然を相手ですから、打柱をしておいた方が安全だろうと思っても、きょうで終わりで、あしたからもうそこはない、ずっと使わないというところになると手抜きというようなこともあるかもしれませんが、そういう問題が果たして起きているかどうかはもう少し調べませんとわかりません。個々のところでは、私もそういうサボがあったとかあるいは手抜きがあったとは聞いておりませんが、そういうように体質的な、あるいはユーザー、政府とかいろいろな方々に御協力を願っている点で、出炭をもう頭に入れるなと言っても入れざるを得ないようなところにここがある。  したがって、私たちはそういうようなことを含めて真剣に取り組みますけれども、何といっても石炭産業全体の将来展望と、そういうものを克服できる具体的な政策というものをやはり急がなければならない、特に北炭については急がなければならないというように考えているところであります。  以上であります。
  62. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 終わります。
  63. 森中守義

    森中委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお漏らしいただき、まことにありがとうございました。  今後、それぞれの部署におかれて一層の御精進と御活躍を心からお願い申し上げ、かつまたこの委員会の運営にも一層の御協力をお願い申し上げて、委員会を代表してお礼の言葉といたします。大変どうもありがとうございました。(拍手)  次回は、来る十四日午前九時二十分理事会、午前九時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十八分散会