○古川
説明員 それでは私の方から、お
手元に配付してございます社会保障
制度審議会並びに社会
保険審議会の答申につきまして御
説明を申し上げたいと思います。
社会
保険審議会につきましては、三月の十日に御諮問申し上げまして、四月の二十五日に御答申をいただいております。その間十回ほどの審議をいただいております。それから社会保障
制度審議会につきましては、三月の十一日、社会
保険審議会の諮問におくれること一日、三月の十一日に御諮問を申し上げまして、四月の二十五日に御答申をいただいているわけでございます。便宜社会保障
制度審議会の御答申の方から
説明をさせていただきたいと思います。
諮問につきましては、高齢化社会の到来に対応して、総合的な
老人保健対策を推進する必要がある。したがいまして、
老人保健法案を制定することについて、
制度審議会の御意見を求めるというような形で御諮問申し上げまして、答申はお
手元にございます四月二十五日の大河内会長からの園田大臣に対する答申でございます。
これのポイントについて申し上げますが、まず一
ページの方でございますが、下から二行目でございますけれども、
この
老人保健法案は、従来の
老人医療費における
医療保険負担分と
公費負担分とを
制度的に統合し、国、
地方公共団体及び
保険者が一定の基準により
負担したものを財源として、どの
医療保険に属するか、また
本人であるか被扶養者であるかを問わず、七十歳以上の
高齢者に対しては同一の
医療を給付しようとするものであつて、
制度の仕組みの面に若干の無理はあるものの、
一つの新しい考え方に立とうとしている
ということで評価をいただいているわけでございます。この点が
一つでございます。
それから第二点といたしましては、
ヘルス等の
関係でございますけれども、
医療に傾斜しすぎたこれまでの
制度の欠陥を
改善し、予防から治療、リハビリテーション等に至るまでの総合的な保健
医療対策を実施しようとするものであり、
公費を
中心とした予防等の
事業を拡大強化しようとしていることは妥当ではある
というふうに評価しつつ、また反面、その目的を達成するには、早急にこれらの
事業の格段の普及とその質の向上並びに地域間のアンバランスの解消が図られなければならない。
というふうに指摘されております。現在のいわゆる保健サービスというもの、あるいは予防から治療、リハビリまでの保健
医療対策の地域間のアンバランス、あるいは保健婦が非常に不足しているとか、あるいは施設の面でもいろいろ不備というものもありますので、そういう点についての
制度の目的達成には早急にこういった
事業の普及あるいは質の向上を図れ、また地域間のアンバランスがございますのでそれの解消を図れということを指摘されているわけでございます。
次でございますけれども、
この
制度は、単に財政的見地からのみでなく、保健と
医療とに
一貫性を持たせることによつて、人間をそのライフ・サイクルにおいて把握することが、結果において
老人福祉の向上につながるという見地に立って創設されるべきものであり、所期の目的を達成するためには、
対象者本人の自覚と責任が求められることはもちろん、世代間の連帯が不可欠である。
というふうに指摘されておりまして、こういう
老人保健制度というものを単に財政的見地からだけで議論するということではなくて、ここにございますような人間をそのライフサイクルという形において把握する、そういうことに視点を置いてとらえるべきであるというふうに指摘され、かつまた
健康管理という問題につきまして
対象者本人の自覚と責任ということを求めつつ、また世代間の連帯ということが不可欠であるというふうに指摘されているわけでございます。
次でございますけれども、
老人医療費の
負担等につきまして改革を行う以上は
医療資源の効率的配分・利用や
医療費の適正化
対策とともに、
診療報酬のあり方の検討が速やかに行われなければ、
関係者の合意は得られまい。
というふうに指摘されております。
医療資源の効率的配分、利用、あるいは
医療費の適正化
対策とあわせまして、
診療報酬のあり方の検討が速やかに行われなければ
関係者の合意は得られないということで指摘されてございます。
以上が総括的な指摘でございます。
次に具体的な中身でございますけれども、これは地域の健康と非常に密接な
関係がありますので
実施主体である
市町村は、
保健事業の推進に当たって、マンパワーの確保、保健所の機能の強化、
医療機関の協力等の点で、国、都道府県の協力・援助のもとに、その体制を強化する必要がある。
現在の保健サービスと言いましょうか、そういうものの体制に先ほども申し上げましたような地域間のアンバランス等がございますので、そういう点につきまして国、都道府県の協力、援助のもとにこういうマンパワーの確保、あるいは保健所の機能の強化等につきまして体制を強化する必要があるということで、この保健
制度のいわば基盤と言いましょうか、そういうものの実施主体である
市町村における体制の強化を指摘しているわけでございます。
次に、
被用者
保険の
加入者については、現在の実施状況に配慮を加えながら、職域で保健
対策を実施することを
中心に考えることが自然であろうが、この場合、職域と地域との連携をどのように図るかについての具体策を樹立することが喫緊のことであり、それによって、
国民が保健サービスを受ける機会が確保されるのでなければならない。
ということでございまして、この点は職域と地域、この
老人保健の
ヘルスサービスというものとの関連で相当議論がなされたわけでございますが、基本的には現在の被用者
保険の
加入者につきましては職域で保健
対策を実施するということを
中心に考えることが実情からいたしましてごく自然であろうということを指摘されつつ、この場合に職域と地域との連携ということについての具体策の樹立が非常に必要である、早急に確立する問題である、こういうふうなことでございます。いずれにいたしましても、この職域と地域との連携によって
国民が漏れなく保健サービスを受ける機会が確保されるようにしなければならぬということを指摘されているわけでございます。
次でございますが、
保健事業の効果を高めるために、健康手帳
制度の活用に努め、
健康管理に資する必要がある。さらに、特別養護
老人ホームを拡充することはもちろん、中間施設を設けることが重要であり、いわゆる終末ケア
対策に対する配意の不足にも目を向けるべきである。
ということでございまして、健康手帳
制度の活用ということを指摘しつつ、また特別養護
老人ホームあるいは中間施設の拡充あるいは新設というようなことについての指摘をいたしているわけでございます。
次に、3でございますが、この
費用の問題でございますけれども、
老人医療に要する
費用は、国、
地方公共団体及び
保険者がそれぞれ一定の基準で
負担するという考え方であるが、各
保険者ごとの
費用負担の案分については、各
保険者の
老人医療費の実績を反映した方式をとるべきである。
ということでございまして、
老人医療に要する
費用につきましては、国、
地方公共団体あるいは
保険者——国、
地方公共団体についてはこの
制度に対する公的責任というようなもの、また
保険者については、
国民全体で
老人医療の
負担を共同で一定の基準で
負担するという考え方であるけれども、この各
保険者ごとの
費用負担の案分につきましては各
保険者の
老人医療費の実績、言うなればまた経営努力とでも申しましょうか、そういった点についてそういったものの
医療費の実績というものを反映した方式をとるべきである、各
保険者のそういった経営努力というようなものを反映したものとして考えるべきであるということの指摘がなされているわけでございます。
それから一部
負担の問題でございますが、
老人保健医療においては、
対象者本人の自助努力が必要なことは認められるが、一部
負担は
高齢者にとって無理のない範囲で定めるべきである。なお、長期
入院者等に対しては特にこの考えに立つた配慮が必要であり、また、懸案となっている
保険外
負担の軽減措置が速やかに講じられなければならない。
というふうな指摘がなされているわけでございます。
それから四番目でございますけれども、
法案要綱において、多くの重要事項の決定が
老人保健審議会の審議にゆだねられていることは、やむを得ないとしても、他
制度との
均衡において法律事項とすべきものもあろう。また、この審議会は、本
制度において重大な役割を担うものであるので、その
構成については、
関係各方面の意見が十分反映されるよう特に配属することが望まれる。
というふうな指摘でございまして、たとえば一部
負担の問題等、
説明を省略いたしましたが、お
手元に配付しております各
医療審議会に諮問いたしました諮問書には、政令でというふうなことでございましたのでそういった点についての御指摘でございますが、この一部
負担等につきまして、審議の中では、法律事項とすべきものもあろう、そういった議論がございました。
それから
老人保健審議会の
構成等でございますけれども、非常に重大な役割を担うというようなことから、
関係各方面の意見が十分反映されるように特に配慮することが望まれるという指摘をいただいておるわけでございます。
最後でございますけれども、
この法案は、新しい
制度を創設しようとするものであるところから、その実施に当たっては種々の事務処理上の問題の生ずることが予想されるので、あらかじめこれに対する万全の準備が必要である。また、新
制度における保健と
医療との間に
一貫性を持たせるため、
老人保健医療に関する総合的研究を推進し、科学的裏づけを深めることにより、
老人保健医療対策の究極の目的が達成されるよう努めるべきことを付記しておく。
という付記事項がございます。
老人保健制度という国の将来に大きな影響を及ぼす
制度でございますし、実施につきましてはいろいろな事務処理上の問題が生ずることが予想されるわけでございますので、その点について万全の準備が必要であるということを指摘しつつ、また
老人保健に関する総合的研究の推進、そういった
老人保健医療対策の科学的な裏づけを深めるというようなことが非常に必要であるという指摘でございます。
以上、社会保障
制度審議会の御答申の内容を読み上げたわけでございます。
次に、社会
保険審議会でございますけれども、社会保障
制度審議会から
老人保健医療制度の制定ということで御答申いただいていることに対しまして、社会
保険審議会は、事柄から申し上げましてその審議事項は、お
手元の
資料にございますように三月十日の社会
保険審議会に対する諮問は、「
老人保健制度を創設することに関し健康
保険、船員
保険及び日雇
労働者健康
保険の各
制度を改正することにつき、貴会の意見を求めます。」ということで、健康
保険、船保それから日雇健保の三つの
制度に関する改正ということでございますが、これから御紹介申し上げますけれども、この答申につきましても、諮問項目そのものとその他の事項に分かれているわけでございます。
そこで、社会
保険審議会の御答申の内容でございますが、別紙一
ページの特に2でございますが、
今回の諮問は、
老人保健制度を創設し、壮年期からの
疾病の予防と
健康管理を推進することにより、健康な
老人づくりを目指しているもので評価に値する。
ということで、この
老人保健制度の創設の目的というものについて、これが健康な
老人づくりを目指しているということで評価されているわけでございます。
それから3でございますけれども、
診療報酬体系の合理化、
医療費の無駄の排除、
保険外
負担の解消など当審議会がかねて指摘してきた現行
医療保険制度の問題点については、着実に
改善が図られなければならない。同時に、本
制度に対する各
制度の
費用の拠出の公平を期するためには、
保険料の
負担方法などの面における
医療保険制度間のアンバランスの是正も必要である。
というふうに、その前提といいましょうか、そういったものについての包括的な指摘がなされているわけでございます。
それから4でございますが、これは
医療担当者たる公益
委員は、七十歳で生命の尊厳を区別した本
制度には反対であるという意見であった。
ということで、一部公益
委員の意見を付記しております。
以上がこの諮問の前提といいましょうか、包括的総括でございます。
それから諮問事項でございますが、二
ページの上の方でございます。諮問事項については二点ございまして、第一点が「
医療の
対象者について」、二点目が「
医療に要する
費用の
負担」ということでございます。
医療の
対象者につきましては、
対象年齢について七十歳以上とすることは、現下の厳しい社会経済情勢からみてやむを得ないものと考える。しかし、被
保険者を代表する
委員は、社会通念からみて六十五歳以上とすべきであるという意見であった。
ということでございまして、
対象年齢七十歳以上ということについてはやむを得ないとしておりますが、一部被
保険者を代表する
委員から社会通念から見て六十五歳以上とすべきであるという意見があったということを付記しているわけでございます。
それから二番目の「
医療に要する
費用の
負担」でございますけれども、国、
地方公共団体、
保険者が共同して財源を拠出するという
費用負担の方法については、現行
制度の
費用負担の不
均衡を是正する有効な方法
であることは理解できる。これは先ほど老
人保健課長が御
説明しましたように、
老人の各
制度に占める
割合が非常にアンバランスであるというような点から
医療費の
費用負担の不
均衡が生じている、それを是正するということについては有効な方法であることは理解できるということでございますが、
その是正に当たっては、各
制度における
加入者数と
老人医療費の実績を踏まえたものとすることが望ましく、具体的な
費用の按分方法については、慎重な検討を行うべきである。
ということでございます。
それで、この点に関しては
事業主を代表する
委員から、
保険者の拠出金は
加入者数ではなく被
保険者数で按分すべきであり、
国民健康保険の被
保険者の所得の把握については、別途検討すべきであるという意見
が付記されております。
それから、
公費負担についても適正な水準を確保し、特に、国の
負担については、少くとも現行の実質的な水準を維持すべきである。
という指摘がなされております。
以上が、社会
保険審議会の諮問項目の「
医療の
対象者について」「
医療に要する
費用の
負担」ということについての御答申でございます。
それから社会
保険審議会は、諮問項目そのものではございませんけれども、諮問項目を御検討いただく際に関連いたしまするいろいろな問題について御検討されておりますので、その点もあわせて「その他の事項について」ということで記述がございますので御紹介申し上げますと、まず「
診療報酬支払方式について」でございますけれども、
老人保健制度における
診療報酬支払方式については、
医療費の適正化を図り、
老人の特性に見合つた
診療報酬体系とするため、現行の出来高払
制度を見直すべきである。
ということでございまして、非常に長期慢性的な
疾患が多いということとか、あるいはいわゆる加齢といいますか、年をとるということと
病気とが一体となったようなそういう特色があるとか、
老人の
医療特性というものがいろいろございますが、そういったものに見合った
診療報酬体系とするためのことを指摘しているわけでございます。
次に「
患者の一部
負担について」でございますけれども、
患者の一部
負担の導入については、現行
制度における
老人の受療の状況、新
制度における
費用負担のあり方等からみて、やむを得ないものとする意見の外、導入そのものに反対という意見もあった。
ただし、導入するとしても初診に限るべきであるという意見もあるので、その方法、
金額については、なお検討を要する。
ということと、
また、法案要綱において
患者の一部
負担を政令で定めるとしているのは妥当でなく、事柄の重要性からみて法定すべきものである。
というふうに、
患者の一部
負担につきましてはやむを得ないということが大勢でございますけれども、導入そのものに反対するという意見もあり、また導入する場合でもここに掲げているように「初診に限るべきである」というふうな意見もございまして、その方法、
金額についてはなお検討を要するというふうなことでございます。それから、決め方としては事柄の重要性から見て法定すべきであるというふうな指摘がなされているわけでございます。
それから、第三番目は「
医療以外の
保健事業について」ということでございます。これは幾つかのパートがございますが、まず
この
制度の眼目の
一つである予防から治療、リハビリテーションに至るまでの一貫したサービスの供給は、治療偏重の現行
制度を改めようとするものであり、そのねらいについては評価できる。
というふうに、この
制度の目的である
健康管理、予防ということ、一貫したサービスの供給というこの
制度のねらいにつきましては評価をしております。
しかしながら、その効果的実施については、
政府をはじめ
関係者の努力にまつべきところが多い。本
制度の目的を達成するためには、
老人の健康維持にふさわしい
保健事業のシステム化を図る必要があり、
市町村において行われる
保健事業の充実、円滑な運営のため、国が財政的裏付けに十分意を注ぐべきである。
ということでございまして、それから
さらに、保健婦等要員の養成、施設の整備等保健
医療体制について一層拡充するとともに、特別養護
老人ホーム、在宅ケア等関連福祉サービスとの連けいを深めるほか、デイ・ケア、ナーシングホーム等いわゆる中間施設についても計画的に充実すべきである。
ということで、マンパワーの問題あるいは施設の整備拡充の問題等の指摘がなされているわけでございます。
それから、これは各職域等において各
保険者が
中心になって行う、それと地域における保健サービスを一体としてやっていくわけでございますが、
各
保険者が行う
保健施設活動においても、全体として本
制度における
保健事業を下回らないレベルで行われる必要があり、国は、そのための行政指導をすべきである。
ということで、各
保険者が固有の業務として行う
保健施設活動について今後とも大いに推進していこう、こういうふうな前提のもとに国はその行政指導をすべきであるというふうに指摘がなされておるわけでございます。
それから四番目でございますけれども、
老人保健審議会でございますが、
診療報酬のあり方等この
制度の運営に関する重要事項を審議する
老人保健審議会の任務は、極めて重要である。
というふうに位置づけまして
したがって、
費用拠出者である被
保険者と事
業主、
保健事業従事者など
関係者の意見を十分
反映できる
構成とすべきである。これらの点に
ついては、法律上明確にすべきである。というふうに
老人保健審議会の重要性を指摘しつつ、そういった
構成等について指摘がなされているわけでございます。
その他でございますけれども、
老人保健推進協議会とかあるいは
老人保健審議会の運営について、社会
保険審議会との
関係、密接な連携をとるというような運営等の指摘がなされているわけでございます。
以上、社会
保険審議会の御答申の内容でございますが、
制度審議会、
社保審の答申の御
説明をさせていただきました。