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1981-05-07 第94回国会 衆議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月七日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 山下 徳夫君    理事 今井  勇君 理事 戸井田三郎君    理事 戸沢 政方君 理事 湯川  宏君    理事 田口 一男君 理事 森井 忠良君   理事 平石磨作太郎君 理事 米沢  隆君       小沢 辰男君    木野 晴夫君       小坂徳三郎君    古賀  誠君       竹内 黎一君    谷垣 專一君       友納 武人君    中野 四郎君       長野 祐也君    丹羽 雄哉君       葉梨 信行君    八田 貞義君       浜田卓二郎君    船田  元君       牧野 隆守君    池端 清一君       金子 みつ君    川本 敏美君       佐藤  誼君    栂野 泰二君       永井 孝信君    大橋 敏雄君       小渕 正義君    塩田  晋君       浦井  洋君    小沢 和秋君       石原健太郎君    菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 園田  直君  出席政府委員         厚生政務次官  大石 千八君         厚生大臣官房長 吉村  仁君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省環境衛生         局長      榊  孝悌君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省児童家庭         局長      金田 一郎君         厚生省援護局長 持永 和見君  委員外出席者         議     員 金子 みつ君         議     員 森井 忠良君         行政管理庁行政         監察局行政相談         課長      柴田 嘉則君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   塩田  晋君     小渕 正義君 同日  辞任         補欠選任   小渕 正義君     塩田  晋君     ————————————— 四月二十八日  母子保健法健康保険法等の一部を改正する法  律案金子みつ君外五名提出衆法第三四号) 五月一日  健康保険歯科医療充実等に関する請願平石  磨作太郎紹介)(第三五七四号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (有島重武君紹介)(第三五七五号)  同(石田幸四郎紹介)(第三五七六号)  同(大久保直彦紹介)(第三五七七号)  同(長田武士紹介)(第三五七八号)  同(草川昭三紹介)(第三五七九号)  同(柴田弘紹介)(第三五八〇号)  同(鈴切康雄紹介)(第三五八一号)  同(高沢寅男紹介)(第三五八二号)  同(中村重光紹介)(第三五八三号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第三六三三号)  同(上田哲紹介)(第三六三四号)  同(加藤万吉紹介)(第三六三五号)  同(勝間田清一紹介)(第三六三六号)  同(金子みつ紹介)(第三六三七号)  同(串原義直紹介)(第三六三八号)  同(佐藤観樹紹介)(第三六三九号)  同(清水勇紹介)(第三六四〇号)  同(下平正一紹介)(第三六四一号)  同(鈴木強紹介)(第三六四二号)  同(田邊誠紹介)(第三六四三号)  同(武部文紹介)(第三六四四号)  同(土井たか子紹介)(第三六四五号)  同(中村茂紹介)(第三六四六号)  同(平林剛紹介)(第三六四七号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第三六四八号)  同(堀昌雄紹介)(第三六四九号)  同(山花貞夫紹介)(第三六五〇号)  同(横山利秋紹介)(第三六五一号)  同(近藤豊紹介)(第三六九三号)  同(渡辺武三紹介)(第三六九四号)  視覚障害者雇用促進に関する請願平石磨作  太郎君紹介)(第三五八四号)  療術の制度化促進に関する請願小此木彦三郎  君紹介)(第三五八五号)  同(小泉純一郎紹介)(第三五八六号)  同外一件(始関伊平紹介)(第三五八七号)  同(小沢辰男紹介)(第三六五二号)  旅館業の経営安定のため旅館業法改正等に関す  る請願池田淳紹介)(第三五八八号)  同(石原慎太郎紹介)(第三六五三号)  同(櫻内義雄紹介)(第三六五四号)  同(原田昇左右紹介)(第三六五五号)  同(丹羽兵助紹介)(第三六五六号)  同(保利耕輔君紹介)(第三六五七号)  同(臼井日出男紹介)(第三六九五号)  同(小渕恵三紹介)(第三六九六号)  寡婦福祉法制定に関する請願川本敏美君紹  介)(第三五八九号)  同(小沢辰男紹介)(第三六五八号)  同外二件(二階堂進紹介)(第三六五九号)  同外三件(佐々木義武紹介)(第三六九八  号)  同(玉置一弥紹介)(第三六九九号)  父子福祉年金支給等に関する請願河上民雄  君紹介)(第三五九〇号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (大原亨紹介)(第三五九一号)  同(岡田正勝紹介)(第三五九二号)  同(中村重光紹介)(第三五九三号)  同(平石磨作太郎紹介)(第三五九四号)  同(福岡義登紹介)(第三五九五号)  同(山本政弘紹介)(第三五九六号)  同(和田耕作紹介)(第三五九七号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三七〇一号)  公的無年金者となった重度身体障害者救済等  に関する請願愛野興一郎紹介)(第三五九  八号)  同(野上徹紹介)(第三七〇二号)  同(米沢隆紹介)(第三七〇三号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願(愛  野興一郎紹介)(第三五九九号)  同(野上徹紹介)(第三七〇四号)  同(米沢隆紹介)(第三七〇五号)  身体障害者に対する福祉行政に関する請願(愛  野興一郎紹介)(第三六〇〇号)  同(野上徹紹介)(第三七〇六号)  同(米沢隆紹介)(第三七〇七号)  新鮮血液確保及び心臓病児者内科的医療費  補助に関する請願平石磨作太郎紹介)(第  三六〇一号)  医療労働者の増員、准看護婦制度廃止等に関  する請願平石磨作太郎紹介)(第三六三二  号)  腎臓病の予防、治療対策拡充等に関する請願  (米沢隆紹介)(第三六九七号)  指定自動車教習所における労働条件改善等に関  する請願甘利正紹介)(第三七〇〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第六五号)  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第二九号)  原子爆弾被爆者等援護法案森井忠良君外七名  提出衆法第一二号)  障害に関する用語の整理のための医師法等の一  部を改正する法律案内閣提出第四六号)(参  議院送付)  母子保健法健康保険法等の一部を改正する法  律案金子みつ君外五名提出衆法第三四号)      ————◇—————
  2. 山下徳夫

    山下委員長 これより会議を開きます。  内閣提出廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  他に質疑申し出がありませんので、本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  3. 山下徳夫

    山下委員長 討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 山下徳夫

    山下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  5. 山下徳夫

    山下委員長 この際、戸井田三郎君外六名から、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党国民連合日本共産党新自由クラブ及び社会民主連合七派共同提案に係る本案附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。戸井田三郎君。
  6. 戸井田三郎

    戸井田委員 私は、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党国民連合日本共産党新自由クラブ及び社会民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。    廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項につき格段の努力を払うべきである。  一 廃棄物処理に当たっては、これを再生利用し、資源化することを重視し、最終処分場確保に努めるとともに、処理技術研究開発について積極的に取り組むこと。  二 一般廃棄物処理施設の設置に関し、地方公共団体財政的負担を軽減するため、国庫補助の内容の改善充実を図るよう努力すること。  三 産業廃棄物処理については、不法投棄を防止するため監視体制を強化すること。  四 産業廃棄物処理は、事業者自らの責任で適正に行うべきであるが、事業所管省庁においても、所要指導を行うとともに、特に中小企業に対して必要な場合には、適切な助成策を講ずるよう努めること。  五 事業者に対し、廃棄物となった場合に適正な処理が困難となる製品容器等の製造、加工、販売等を行わないよう指導を徹底するとともに、適正な処理が困難な製品容器等については、必要に応じこれを回収、処理させるよう指導すること。  六 廃棄物処理に当たり、労働災害等発生を防止するため、関係省庁間の連絡を密にし、所要指導を行うこと。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  7. 山下徳夫

    山下委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  戸井田三郎君外六名提出動議賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  8. 山下徳夫

    山下委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案附帯決議を付すことに決しました。     —————————————
  9. 山下徳夫

    山下委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 山下徳夫

    山下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  11. 山下徳夫

    山下委員長 この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。園田厚生大臣
  12. 園田直

    園田国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。      ————◇—————
  13. 山下徳夫

    山下委員長 内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び森井忠良君外七名提出原子爆弾被爆者等援護法案の両案を議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。平石磨作太郎君。
  14. 平石磨作太郎

    平石委員 まず大臣にお伺いをいたします。  被爆者援護につきましては現行原爆二法でもって援護処置が図られておるわけでございますが、いまの援護処置につきましては、いろいろと国民の間にも、もっと国の責任を持った一つ援護処置が図られてしかるべきではないか、こういった世論もございますし、さらに今日までの審議の経過の中におきましても、あるいは当委員会におけるところの附帯決議等を見ましても、国家補償の精神に基づいてもっと国の責任を明らかにして援護処置を強化すべきであるといった附帯決議もなされておるわけでございます。そういう中で政府は、基本懇に対して、一応現在の原爆二法については見直しを行い、さらに援護処置の強化について諮問をし、その基本懇が昨年末政府に対して意見報告をなされたわけでございます。  その基本懇意見報告については、国家補償といった国の責任についてこれを否定しておる、ないしは国の責任についてはもっと緩やかな考え方での意見報告であるのかどうか。この意見報告に対する考え方、所感を大臣からお聞かせいただきたい。
  15. 園田直

    園田国務大臣 ただいまのお尋ねはしばしばお尋ねをいただいたところでありますが、原爆被爆者対策の具体的なあり方については、原爆被爆者対策基本問題懇談会から社会保障理念から国家補償理念に大きくとびらをあけられたことは前進であり、将来に対する一つ方向を示されたものであると考えております。しかしながら、現段階においては、それぞれの関係者あるいは国民との合意、そういうものが財政についての問題等もありまして、とりあえずただいま出しておりますこの改正案で、懇談会から出ました重点的に対策を強化せよ、こういうことで改正をお願いしているわけでありまして、一本の法律に求めるということはいまのところは困難であったわけでございます。
  16. 平石磨作太郎

    平石委員 いま大臣お答えいただきましたように、大きなとびらを開いた、こういうお話でございました。そこでお伺いをしてまいりたいと思いますが、もちろん現在の原爆二法がいま大臣のお言葉にもございましたように完全な国の責任を明らかにした法律とは考えられません。今回の改正に当たってある程度そういったことに近づいた部分もございますし、その点については一応の評価はできるものの、やはりもう一歩踏み込んで進めていただきたい、こういう考えを持つものでございまして、われわれ野党が被爆者援護法を提案いたしておるのもその趣旨によるものであります。  そこで、戦争を行ったという国の一つ行為、これは国の行為であるとお考えでございましょうかどうか、簡単にお答えをいただきたい。
  17. 大谷藤郎

    大谷政府委員 戦争によりまして国民皆様被害を受けられましたことにつきましてはまことに残念なことでございますけれども、これをすべて国の責任で全部カバーするということは大変むずかしい問題でございます。しかしながら、政府としては、できる限り国の戦争による被害につきまして国民皆様に十分なことをしなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  18. 平石磨作太郎

    平石委員 そこまでは聞いてないのです。戦争を行ったことは国の行為であったかどうかをお答えいただきたい。
  19. 大谷藤郎

    大谷政府委員 先生指摘のように、国の行為でございます。
  20. 平石磨作太郎

    平石委員 そういたしますと、国の行為によって戦争が行われた。それに国民は参加をしたわけです。  そこでお伺いをいたしますが、国の行為によって行われた戦争によって原爆が投下された。この原爆が投下されたことは、国の行為に起因するものであるかどうか、お答えをいただきたい。
  21. 大谷藤郎

    大谷政府委員 当然戦争による結果であるというふうに考えるわけでございます。
  22. 平石磨作太郎

    平石委員 国の行為に起因しておるということですね。
  23. 大谷藤郎

    大谷政府委員 戦争は国の行為でございますから、そういう意味では先生のおっしゃるとおりかと思います。
  24. 平石磨作太郎

    平石委員 そういたしますと、戦争は国の行為であった。そして原爆投下は国の行為に起因しておるということです。  そこで、被爆者被爆を受けたということ、これは国の行為被爆者が生命、身体、財産について損失をこうむったということとの間には因果関係があるとお考えですか、ないとお考えですか。
  25. 大谷藤郎

    大谷政府委員 因果関係があると考えるわけでございます。
  26. 平石磨作太郎

    平石委員 そこで、いま確認ができましたように、戦争は国の行為であって、しかも原爆投下は国の行為に起因し、そして被爆者のこうむった損失については因果関係がある、こういう結果です。そういたしますと、私は国の責任というものは、これはまことに明らかではないか、こういうように思うわけですが、お考えをいただきたい。
  27. 大谷藤郎

    大谷政府委員 当然国の責任もあると考えます。
  28. 平石磨作太郎

    平石委員 そこで、いわゆるこの基本懇報告にもございますように、そういった結果責任に至るまでのもろもろの違法性だとか故意とか過失とか、こういうことは一応たな上げにしても、国家行為としての結果責任としてその責任は国は果たさなければならない、こういう報告がなされておるわけです。したがって、いま大臣お答えにもございましたように、この基本懇も国の行為、そして国の責任というものについてはいわば全面的にこれを認めておる。ただ、政府施策の上において十分にそれに対しておこたえができないんだ。現状では非常に困難があるといういまの大臣お答え、このことについては私は一応そういった財政事情もわかりますけれども、国の責任という形においてのそういう考え方から来るならば、何をさておいても国の責任というものを施策の上に具現していくのが政府のとるべき態度であり、またそういった被爆者に対するところのおこたえにもなっていき、さらにこれらの援護処置を強化するということが必要になってくるわけですが、この点大臣いかがお考えでしょうか、大臣にお伺いをしたい。
  29. 園田直

    園田国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、基本懇の答申というものは数カ条の条件がついております。これは、だからできないとか、だからやってはいけないという条件ではなくて、こうこうこういうものを満たしながらという一つ努力目標を示されたものと考えておりますので、そういう方向努力をしたいと考えております。
  30. 平石磨作太郎

    平石委員 いま大臣お答えで、それぞれ条件がついておる、こういうお話です。その条件と見られるものはやはり国民合意であり、他の一般戦災者との均衡論だと私は理解をするわけなんです。  そこで、そういった一つ条件というものを本当に基本懇条件としておるのかどうか。私は、政府の方がその点について余りにも過度な心配をしておるのではなかろうか、あるいは政策の上においてこのことを行うことが積極的よりもむしろ非常に消極的になっておるのではないかというような疑問を持つわけでございますが、いま大臣お話にありました原爆被爆者が特別の状態にあるということから基本懇も認めておるわけでございまして、この特別の状態ということをはっきり認識をしていただかねばならない。そして、他の一般戦災者と比べたときに、この方々がどのような悲惨な状態にあるか、さらには今後体に大きな不安を持ちながら、あるいは生活に不安を持ちながら、一般戦災者とは異なるそういった特殊の状態にあるということ、これはお認めいただけるでしょうか。
  31. 大谷藤郎

    大谷政府委員 原爆被爆者が放射能による健康障害、すなわち特別の犠牲であるということについては、政府としては従来からそういった立場に立ちまして、いわゆる原爆二法によりまして一般社会保障とまた違った意味での手厚い手当てをしてきているところでございます。
  32. 平石磨作太郎

    平石委員 もう一つここでお伺いをしておきたいのですが、国の責任を明確にして国家補償という形で現行法にどういう法律がございますか、お知らせをいただきたい。
  33. 大谷藤郎

    大谷政府委員 不法行為に基づく国家補償につきましては、いわゆる国家賠償法、また適法行為に基づきます損失補償というものにつきましては、土地収用法あるいは農地法といったようなものが挙げられております。
  34. 平石磨作太郎

    平石委員 現行憲法に認められておる国家補償考え方、これはいま局長お答えいただいたことは当然のことだと思う。そこには、いま発言にありましたように違法だとかいったような一つの話が出たわけですが、それは当然のこととして、いわゆる国の行為として行われた。適法に行われたか違法に行われたか、もちろん戦争行為は国の行為であって、しかもそれは国を挙げての戦争でございますから、違法、適法は一応抜きにして、合法的に行われたと仮定をしたときに、しかもそれによって損失をこうむらせたというものは国家補償という線に入りますか、入りませんか。
  35. 大谷藤郎

    大谷政府委員 基本懇で申しておられます国家補償と申しますのは、いわゆる広い意味における国家補償立場でございまして、原因行為のいかんを問わず、結果責任に基づくその結果の発生に着目した国家補償、こういうことを申されているわけでございまして、私どももその趣旨賛成をしているわけでございます。先ほど申し上げました不法行為に基づく国家補償あるいは適法行為に基づく損失補償といったものと違った広い意味における国家補償の概念だというふうに私どもは理解しているわけでございます。
  36. 平石磨作太郎

    平石委員 そこは私ども、そう意見は違いません。やはりそれぞれの学者論文等も見させていただきました。原因行為適法であろうが違法であろうが、結果責任としてそこに生まれたものについてはやはり国が責任を持って償うべきである、これは学者先生方のそれぞれの御意見もここに出ております。  さらに、基本懇の中におられる田中二郎先生論文を見ましても、いま局長のおっしゃったように国家補償とそれは呼んでよろしい、しかも両者を合わせて国家補償ということに今後はいくべきであり、現在のように違法あるいは適法と二つに分けたのでは十分にこれらの損失をカバーすることができないのだ、だからこれを結果責任または危険責任としていくべきだという田中先生論文もございます。そのことが今回の基本懇の中にあらわれている、私はこういうように思うわけでございます。したがって、いま局長のおっしゃったことと私との間にそう意見の相違はございません。そうなりますと、国家補償というものについて政府が逡巡する必要はない、むしろこのことを基本懇は求めている、私はこういうように言わざるを得ません。  ただ、先ほど大臣が言うた条件云々ということがあります。その条件云々について、いまの戦傷病者戦没者遺族等援護法、この中には身分というものが大きな——国との間に一つ法律関係のないものはとてもそこまで、この被爆者援護の問題はそこまで持ち込むことは困難であるということが基本懇の中にもあるのです。身分というものがそれほど必要なものかどうか、前段において確認をいたしました、原爆投下は国の行為に起因するものである、そして被爆者損失との間には因果関係があるのだ、この三点が確認されて、そしていま国の責任ということを明確にお認めいただいた以上は、そこに身分関係が入ってくる、なぜここに身分関係が入ってくるのか、お答えをいただきたい。
  37. 大谷藤郎

    大谷政府委員 確かに国との身分関係の有無と国家補償との間には関係がないということは先生指摘のとおりでございます。しかし、旧軍人軍属等に対します援護策というのは国が使用者、つまり使用者責任というものに基づいて行っているものでございまして、基本懇報告にもございますように、原爆被爆者をそういった使用者責任という考え方で同一視するわけにはいかないというふうに私ども考えているわけでございます。
  38. 平石磨作太郎

    平石委員 使用者責任というものが当然そこには必要だということ、これも理解できます。だがそれだけで、昔の、いわゆる戦前からのそういったもの、あるいは戦傷病者については戦後新しくできたものでございますけれども、やはり身分に執着をしておられる。それで、少なくとも法律関係がなければならぬといったことがこのように厳しく行われておって、しかもだんだんとすそ野を広げて身分関係に繰り込んできた。私はすそ野の拡大ということについては大変評価するものでございますけれども身分関係のない人に——私はこの前も指摘をいたしましたが、あの未帰還者留守家族等援護法を見ますと、二条の一項二号、これは民間人であってしかも身分関係のない、そういった方々が国の責任において処遇を受けておるわけです。この条文をここへ挙げてもいいのですけれども、もう御存じだと思うので申し上げませんが、いずれにしろ民間人国家責任において援護する、こういうことがなされておりますが、これはなぜなされたのですか。
  39. 大谷藤郎

    大谷政府委員 未帰還者留守家族等援護法は、確かに先生おっしゃいますように、軍人であると民間人であるとを問わずこれを適用しているわけでございますが、これは軍人、民間人を問わず内地に帰還したくとも帰還できないという未帰還者が置かれましたいわゆる特別の状態というものに着目した制度でございまして、これを原爆被爆者の問題と同列に論じるということはやはり違うのではないかというふうに私ども考えているわけでございます。
  40. 平石磨作太郎

    平石委員 それなら、一般戦災者とは特別の状態にあるという、基本懇指摘をしてございます。また答弁の中にも、一般戦災者とは違った特別の状態であるということを最前確認を願った。ここに相違がありますか。
  41. 大谷藤郎

    大谷政府委員 原爆被爆者の特別の犠牲と申しますのは、やはり原子爆弾による放射能による特別の犠牲、こういうふうに特別という意味を私どもは理解しているわけでございまして、未帰還者が帰還したくとも帰還できなかった、つまり主人が大陸におられて戻ることができなかったという特別の状態とは若干違うのではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。  ただ、戦災者との関係につきましては、そういった放射能というものとの関係につきましては、やはり原爆につきましては特別の犠牲であるというふうに私どもは理解しているわけでございます。
  42. 平石磨作太郎

    平石委員 特別の状態が同じような状態にあるが多少ニュアンスが違うというだけで、そこに違いが出てくる。私はいまの答弁は非常に苦しいと思うのです。だからむしろ明確に国の責任ということを、先ほども認めたのですから、そこまでもう一歩踏み込めないか。理論的に考えたときにいまの御答弁はまことに苦しい答弁、しかも一方では身分を言いながら、未帰還者留守家族等援護法においては身分というものをそこでのけておる。これは国の責任です、特別の状態です。だから原爆被爆者についても特別の状態ということはあらゆる機関において認めておるのです。政府も認めておるのです。それだったらなぜ国の責任ということを明確にできないか、あるいは法文にこれを盛るということが——戦傷病者戦没者遺族等援護法あるいは未帰還者留守家族等援護法に「国家補償の精神に基き、」あるいは「国の責任において、」と法文に出ておるのです。なぜそこまで踏み切れないかと私は非常な疑問を持つわけです。  私ども野党がこぞってすでに四回、今回で五回被爆者援護法を提案し、国家補償の精神を求めたのも、まさにここにその理由があると言わなければならぬ。そういうことから考えたときに、私は、政府はもう一歩踏み込んでこのことに対処してもらわなければいかぬ、このように考えるわけですが、政府国家補償とかあるいは国の責任ということを明文でもって明らかにしがたい、このような考えがあるのであれば、一歩下がって法体系、援護の内容、これがそういった戦傷病者等に出ておるような援護強化の体制に現行法の中でできるかできないか、一言お伺いしたい。
  43. 大谷藤郎

    大谷政府委員 先ほどから先生がおっしゃっておりますように、また基本懇の答申でも触れられておりますように、広い意味における国家補償立場に立つということにつきましては、政府としても再々申し上げているところでございます。  しかし、広い意味国家補償に立つと申しましても、現実の原爆被爆者に対する対策というのは、基本懇答申でも、  結局は、国民の租税負担によって賄われることになるのであるが、殆どすべての国民が何らかの戦争被害を受け、戦争の惨禍に苦しめられてきたという実情のもとにおいては、原爆被爆者の受けた放射線による健康障害が特異のものであり、「特別の犠牲」というべきものであるからといって、他の戦争被害者に対する対策に比し著しい不均衡が生ずるようであっては、その対策は、容易に国民合意を得がたく、かつまた、それは社会的公正を確保するゆえんでもない。 こういうふうに述べられておるわけでございまして、先ほど大臣もお述べになりましたように、私どもといたしましても精神におきましてはそういう広い意味立場に立っておりますけれども、現実の政策としてはやはり現実に着目いたしまして相当な補償でこれを実施していく、こういう考え方に立っているわけでございます。  したがいまして、今回国会に提出いたしております政府改正案におきましては、それ相応に政府としても努力して予算を提出させていただいた、こういう次第に考えているわけでございます。
  44. 平石磨作太郎

    平石委員 それでは角度を変えていきましょう。  社会保障の各法がいろいろございます。これの基本となるものは一体何でしょうか。
  45. 大谷藤郎

    大谷政府委員 社会保障は社会の構成員が連帯してその日常生活の不安をカバーし、生活の安定を図る、こういうふうに私どもとしては理解しているわけでございます。
  46. 平石磨作太郎

    平石委員 社会保障の根底には私はやはり個人責任があると思う。まず個人責任。みずから生活を確立し、みずからやっていくというのがいまの日本の体制の根幹にあると思う。それが、あるいは失業したとか、病気をしたとか、あるいは死亡したとかいったようなことでみずからできないような方々がたくさん生じてくる。それはあくまでも個人の責任としてそのまま放置することはできない。だからこそ憲法二十五条には最低限度の生活を保障してあるわけです。そこに、やはり国の責任で行ったことなのか、個人責任なのかというところに私は大きな分かれ目があろうかと思う。したがって、私はこの社会保障ということにつきましても国が最低限度の生活を保障するという意味において国の保障に相違はございませんけれども、さらにその奥の根底には個人責任であるのかどうかというものが流れておると私は思う。その観点に立つならば、現在の社会保障のそれぞれの体制というものはやはりそこから出発してきている。  そうなりますと、いろいろな面においてこれが施策の上にあらわれてくる。大きなものは何かといえばそこに所得制限の問題が出てくるわけです。だから、所得の高いものは一応国家のそういった保障については御遠慮いただきたい。このことがそこには許されておるわけです。  ところで、この被爆者の問題については先ほどからもたびたび確認したように、これは国の責任であって個人の責任ではないのです。国の責任である。そこにいま言ったような所得の制限が云々といったようなことが現行二法の中に出ておるわけですが、その矛盾、そこをどうお考えでしょうか。お答えをいただきたい。
  47. 大谷藤郎

    大谷政府委員 確かに国家補償は国の活動によって生じた損害を国が救済する制度である、また社会保障は社会の構成員が連帯して生活の安定を図る制度であると理念的には非常に明確に区別されているわけでございます。  しかし今回基本懇が提案されました結果責任に基づく国家補償といった考え方は、従来の国の不法行為に基づく損害賠償あるいは国の適法行為に基づく損失補償といったものよりは非常に広い概念でございまして、これにつきましては基本懇でもるる述べられておりますように、また先ほどからも申し上げておりますように、国民合意を得ることのできる現実における公正妥当な範囲の補償が相当な補償である、こういうふうに述べられているわけでございまして、確かに概念といたしましては社会保障国家補償というものは明快に区分されているわけでございますけれども、現実の問題といたしましては、やはりその間に当然国民の租税負担によって賄われるという底辺の事実ということに着目いたしますならば、そこのところはこういった基本懇で述べられているような公正妥当な範囲の補償に現実のところとどまらざるを得ないというふうに考えるわけでございます。
  48. 平石磨作太郎

    平石委員 いま申し上げたように、社会保障理念の中では、個人の一つ責任というものが果たされない場合に、そこには税金でもってこれらの保障をしていくということは国民的なコンセンサスを得ておるわけです。  それからこの被爆者援護について、局長はいまたびたび国民のコンセンサスとおっしゃるのですが、この国民のコンセンサスというのは特別の状態、先ほどへ戻りますけれども特別の犠牲を受けておるということ、ここで国民のコンセンサスを得られない、あるいはこの基本懇が言うておるものは非常にりっぱなことをおっしゃっておるのですが、最後にアウトになっておるところは国民のコンセンサス、合意と、もう一つ身分がないのだということです。この二つのいわば技術論でもってどうも現状においてはこのままでといったようなことになっておると私は思うのです。  だから、国民のコンセンサスを得られない、あるいは税金でもってやらなければならぬ、ここのところの配慮はよくわかるのですが、この悲惨な状態考え、特別の事情ということをお認めになるのなら、ここにもありますように、「結果責任として、戦争被害に相応する「相当の補償」を認めるべきだという趣旨である。」これは明らかに国の責任として相当の補償を求めておるわけです。そして現行においては全く、いまずっと論議をしてきました社会保障的な考え方へそのまま戻ってきてしまう、こういう施策になっておるわけですが、この相当の補償については部分的にはございますというお答えがあろうかと思いますけれども、そういった相当の補償というのは特別の状態というもの、特異な爆弾によるものだということを認識いただければ、国家補償としての体系が現行二法の中においてもとれないことはない、字句にこだわらず。このように感ずるわけですが、どのようにお考えでしょうか。
  49. 大谷藤郎

    大谷政府委員 再々申し上げておりますように、原爆被爆者につきまして、特別の犠牲であるということにつきましては政府としてもこれを認めているわけでございまして、原爆二法というものによりまして一般戦災者とは異なった意味でのいろいろな手当あるいは医療等につきまして国として処遇をいたしておるわけでございまして、政府としてはできる限り原爆二法によりまして手厚く処遇してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  50. 平石磨作太郎

    平石委員 ここに一つの新聞記事がございますが、これは自民党の安倍政調会長、この方が四月十二日、広島の自民党選出の中川秀直代議士さんの激励パーティーに出席をされておるわけです。その激励パーティーに出席せられて、そこのホテルでお話があっております。そのときにこの被爆者援護強化についての記者会見がなされておるわけです。  この記者会見を見てみますと、非常にいいことをおっしゃっておられる。この中で、安倍政調会長はこのようにおっしゃっておられます。「自民党としては現行の原爆医療法と被爆者特別措置法の改正を重ねて、被爆者対策を充実できると考えている。原爆被爆者対策基本問題懇談会は、現行二法が国家補償的性格を有すると結論づけており、死没者への弔慰金支給も現行二法の中でできないことはない、」こうおっしゃっておられる。「厳しい財政状況の中で、政府はまだ踏み切れないが、一般戦災者の補償問題なども含めた全般的な戦後処理を見直そうという声も党内で高まり、弔慰金も検討しなければならない。」こういうお話があっておるわけです。自民党さんの党内の、しかも幹部でいらっしゃる安倍政調会長がこういう記者会見をしておられるわけです。  私が先ほどからずっと質問の中でお伺いをしてきたこともまさにこのことです。したがって、現在の原爆二法の中においてすら弔慰金を遺族に対して検討していこうか、こういう党内論議が高まっておるということですので、政府がいまるる答弁の中でそういうことはできません、できませんとおっしゃっておられますけれども、国内世論といいあるいは与党である自民党の幹部の方ですらこういったことの発言がなされておる。  大臣、どうお考えですか、一言お答えいただきたい。
  51. 園田直

    園田国務大臣 安倍政調会長の発言は、私の考え方と逆行しておるとは考えておりません。  少なくとも戦後の戦災者に対するいろいろな施策、これは戦前から戦後、今日とは大分国民感情もまた議会における論議も変わってきておるはずであります。当初はやはり前の惰性がありまして、身分関係というものが非常に重く見られておった。この前の戦争自体が、最初は外へ出て行って、鉄砲やその他を持って戦った人の戦争でありましたが、中途付近からは好むと好まざるとによらず国民全部がこの戦いに参加したわけであります。  しかも、この戦災者対策というのは日本にとっては戦後の処理でありますから、今後そのようなことがないようにというふうな前提に立たなければならぬ。だとするならば、国との身分関係を重視をして一般戦災者と非常な格差があるということは、これは逐次縮めていって、国との身分関係というものはだんだん薄くしていくのが当然だと思います。  そうすると、やはり戦後の被災者の対策というものは、その災害の重度、軽度、特別な災害、こういうことが重点になっていくべきであると考えるわけでありますが、しかしながら、口では簡単に言いますけれども戦災者というものは国全般に広範でございまして、これをいま急激に、一般戦災者身分関係のある者と一緒にすることは、なかなかこれは法律だけの改正ではなくて全般の骨組みを変えていかなければならぬ問題でありますから、現実としてはこれは大変むずかしい問題であります。  そこで、その一番上に飛び出しているのがこの被爆者の問題でありますから、社会保障から国家補償理念にと逐次とびらを開いていって、そしていまの所得制限の問題も、弔慰金その他の問題も、厚生省としては不必要だと言ったわけではなくて、財政当局といろいろ相談をしましたが、なかなか困難である。そこでこれができませんためにいろいろな手当の引き上げとか新しい費用の支出を考えたわけでありまして、したがって所得制限の問題も、この被爆者に対する所得制限は今年度の予算から撤廃をしているわけであります。ただ、現に障害を受けておられない方あるいは放射線の影響が間接的である方、こういう方に対してのみ所得制限が残っている、こういうことでありまして、おっしゃることもよくわかるし、安倍政調会長の発言も決して私はわれわれの考えと違っておるとは思いません。  しかしながら、現実の問題として政府・与党の方々が苦労されたのは、その弔慰金その他ができない、そこで何か方法はないかと言って考えて実現をしてもらったのが今度の諸手当の引き上げあるいは諸手当の創設、こういうことでございます。
  52. 平石磨作太郎

    平石委員 大臣も安倍政調会長とそう意見の相違はない、こういう御発言です。いろいろと現状というもののお話もございました。一挙には困難なというお考えのようでございますけれども、このようにだんだんと被爆者援護強化については変わってきておるということです。そういう御認識をまずいただきたい。そして私は身分関係についてももっと詰めてみたいとは思っておるわけですが、時間がございませんので十分な詰め方ができません。これは、一応身分関係については当然そこには使用者責任というものがその根底にありますから、一概にどうのこうのは言えませんけれども、ただそこはまあ一応、時間がないから下げるのですけれども、先ほどちょっと指摘したように、身分関係のないところまで国家補償が踏み込んでおるという事実、これはお認めですね。  そうしますと、いま大臣がおっしゃった一般戦災者との関係その他の関係等から、現状においてはなかなか困難です、ただ法律を変えたということだけにとどまらず、根底からその体系を変えねばなりませんので大変困難だという大臣のお言葉があったわけですが、しかし、先ほども指摘を申し上げたように、身分関係のない民間人についてすら、特別の状態という特別枠でもってそこに認めておるわけです。だから踏み込めないことはないはずだ、こう思うわけでして、そういう考え方があるからこそ、安倍政調会長が弔慰金についても検討ということを言われておると私は思う。もうそこまで来ておるということです。そのことをひとつ御認識をいただきたいと思うのです。  それで、ここでもう一つ、「必要の原則」というものが書いてございます。「公平の原則」というのは、先ほど私ずっと申し上げてきたのが一応公平である、公平にやらねばならぬ。ただ、公平は特別の状態ということにおいてそこを見ていただかなければなりませんが、一般戦災者との間の公平の原則ということも考慮に入れねばならないけれども、やはり「「必要の原則」を重視し、現実の必要に応じ手厚い行き届いた対策を講ずべきである。」ここへ今回の改正案が持ってきておると私は思うのですが、一方、戦傷病者法律の中にも必要の原則というものはある。それはどういうことかと言いましたら、傷病によってはそれぞれの款症で手厚い行き方が違うのです。そういう面から見ますと、この被爆者においても、基本懇報告の中にもありますが、重症の方もおれば軽微の方もおられるし、いろいろである。それはいまの法律の中ででもそれぞれ十分対応できないことはない、このように感ずるわけですが、局長のお考えをお聞かせいただきたい。
  53. 大谷藤郎

    大谷政府委員 基本懇において必要の原則を重視せよというふうに申されているわけでございまして、今回政府が提案いたしております中にも、特に近距離被爆者に対しまして医療特別手当あるいは原爆小頭症手当を創設いたしまして、また所得制限を撤廃する等の措置を講じているわけでございます。
  54. 平石磨作太郎

    平石委員 政府の言うことは一向にわからぬのです。一方では国の責任を認め、一方では所得制限を認め、部分的には所得制限の撤廃ということがなされておる。これは非常にあいまいなのです。だから私は、少なくとも所得制限についてはすべてにわたって撤廃ができないかと思うのですが、現在、支給率はどのくらいになっておりますか、お答えをいただきたい。
  55. 大谷藤郎

    大谷政府委員 九六%でございます。
  56. 平石磨作太郎

    平石委員 あと残った四、五%にまだ所得制限がかかっておるわけです。これをかけておる理由をおっしゃってください。
  57. 大谷藤郎

    大谷政府委員 これにつきましては、先ほどからもいろいろ御議論いただいておりますように、広い意味国家補償の見地に立っているわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、原爆被爆者と称せられる方の中にも、放射線被曝の程度によっては人によって相当の差がございまして、多量の線量を被曝した人から被曝の可能性が少なかった方々まで、いろいろな方々が含まれているわけでございまして、基本懇の中ではそういった点に着目して、必要の原則によって必要な方にできるだけ行き届いた対策を講ずべきだ、こういうふうに申されているわけでございます。  したがいまして、政府としては、近距離被爆者方々には、医療特別手当あるいは原爆小頭症手当につきましては所得制限を行わないということにいたしたわけでございますが、健康管理手当その他の方々につきましては、その健康障害の程度が認定被爆者方々に比べますれば若干少ないというふうなことで、これについては所得制限を撤廃することは非常にむずかしいと考えたわけでございます。
  58. 平石磨作太郎

    平石委員 今回の小頭症手当あるいは医療特別手当については、所得のいかんにかかわらず、こうなっておる。これはいまの御答弁にありましたが、所得制限を撤廃した理由はどういうことですか。
  59. 大谷藤郎

    大谷政府委員 先ほども申し上げましたように、放射線被曝の程度はいろいろであるけれども、そういった重い方々についてはできる限り手厚くやるようにという基本懇の御趣旨に沿いまして撤廃したわけでございます。
  60. 平石磨作太郎

    平石委員 全面的な撤廃ということは非常に困難なようなお話ですが、いままでときどきお聞きしておるところによると、予算編成の時期には、厚生省としてはこの制限撤廃については相当努力なさっておられるようですが、これは事実ですか、どうですか。
  61. 大谷藤郎

    大谷政府委員 従来からもできる限り所得制限を撤廃したいという努力はしてきたわけでございます。しかし、五十六年度の予算編成に当たっては、先生も御承知のように社会保障全体で非常に厳しい状況がございまして、むしろ所得が本当に少ない方に手厚くし、若干御無理いただける方については所得制限を課して、政府全体として必要な方々社会保障を徹底しよう、こういった大きい考え方が一方にございました。  そういった中では、この原爆被爆者といえどもその例外ではあり得ないわけでございまして、私どもとしては、そういった大きい社会保障全体の考えの流れ等をにらみながら、一方では広い意味国家補償に立つべしということで、社会保障につきましても所得制限をやるという中でこれについては撤廃をすることにしたわけでございます。
  62. 平石磨作太郎

    平石委員 所得制限を撤廃するということで努力せられた、こうおっしゃるわけでして、結局一時間かかって質問を申し上げましたが、考え方は一緒じゃないですか。そして所得制限は、先ほど御指摘もいたしましたが、少なくとも所得の高い方は個人の責任でやりなさい、そして所得の高い方は御自分で、これがあり方なのだという思想が出てきておるわけです。これは原爆被爆の事実について国家責任を認めてない証拠です。被爆したことはあくまでもあなたの責任ですよ、所得の高い方は御遠慮いただきたい、こうなっておる。論理が矛盾するのです。だから安倍政調会長がこのことをおっしゃっておる現状から考えたときに、所得制限をもうすっきり撤廃をして、そして少なくとも現行法の中において国の責任というものを明確にすべきであるというように感ずるわけです。  厚生省の努力努力で私ども承知はいたしておりますけれども、ひとつもっと努力をしていただいて、少なくとも私ども被爆者援護法を提案しておるその趣旨というもの、その理由というものをも十分お考えをいただいて、現在なし得るところの政府処置としては、所得制限の撤廃を行っていく、そして法律の中に国家補償という大きな責任を明確にしていく、このことを私は強く要望をして私の質問を終わらしていただきますが、いまの質問の経過あるいは私どもの言わんとするところをお聞きいただいた大臣から一言最後に所信をお伺いして、終わらしていただきます。
  63. 園田直

    園田国務大臣 一時間を通じてなされた質疑の御趣旨は十分理解をいたし、私もそういう方向努力をしたいと考えております。
  64. 平石磨作太郎

    平石委員 以上で終わります。
  65. 山下徳夫

  66. 小渕正義

    小渕(正)委員 私はまず最初に、昨年の暮れ基本懇から答申されました内容について、若干ただしたいと思うわけであります。  要するに、この前の基本懇の答申の中では、原爆被爆者については特別の犠牲という意味においては十分認めておるわけでありますが、結果的には、一般戦災者との対比の中で、国家補償的な立場で取り組むことについては国民合意を得るのが非常にむずかしい、困難だ、こういうことが結論じゃないかと思います。  したがって、その意味考えてみますならば、しからば国民合意というものは何かということになるわけでありますが、その前提としては、一般戦災者というものが大体どのような状態に置かれているのか、一般戦災者の実態は大体どういうものか、そういうものを十分把握した上においての比較において初めて国民合意という問題の議論ができるんだと私は思うのです。  そういう意味お尋ねするわけでありますが、政府はこの原爆被爆者以外の一般戦災者といいますか、第二次大戦においていろいろと被災された一般国民、俗に言う一般戦災者の実態というものをどのように把握されておられるのか、この点についてまず政府から見解をお尋ねしたいと思います。
  67. 持永和見

    ○持永政府委員 一般戦災者の数でございますけれども、さきの大戦におきます一般戦災者の数は、二十四年に経済安定本部が調査をしておりまして、その報告書によりますと、死亡者が約三十万人でございます。負傷者が三十四万五千人というようなことの報告が出ております。
  68. 小渕正義

    小渕(正)委員 要するに一般戦災者の死亡者が三十万、負傷者が三十四万五千人ですか。それから空襲その他によりかなり家屋、財産を損失したわけでありますが、そういった実態についての把握はどの程度行われておるのか、その点をお尋ねいたします。
  69. 持永和見

    ○持永政府委員 財産については特に把握いたしておりません。
  70. 小渕正義

    小渕(正)委員 一般戦災者の中で亡くなられたのが三十万というのは、沖繩も含めた数字ですか。
  71. 持永和見

    ○持永政府委員 沖繩はその中には入っておりません。いま申し上げましたのは、内地におけるいわゆる一般戦災者の数でございます。
  72. 小渕正義

    小渕(正)委員 それでは次に、負傷された方が三十四万五千人程度だということでありますが、この中で俗に言う身体障害者に該当するような、後遺症で、たとえば手足をなくした、そういう意味で少なくとも一級から五級くらいに相当するような負傷者というものは大体どの程度おられるか、その点の把握はできておりますか。
  73. 持永和見

    ○持永政府委員 いま私が申し上げました数は、昭和二十四年に経済安定本部が一般的に報告をいたしたものでございまして、その中で身障者の該当者が幾らあるかということは、直接には把握いたしておりません。
  74. 小渕正義

    小渕(正)委員 そうしますと、亡くなられた方は別として、負傷された、障害が残って今日も生存されておられる人がかなりおられるのじゃないかという判断はできるわけでありますが、そういう人たちについて実態がどうかということは、全然国としては今日まで承知していないということですね。
  75. 持永和見

    ○持永政府委員 一般戦災者方々につきましては、今日まで特別の援護施策をいたしておるわけじゃございませんで、一般社会保障施策の充実強化という形でそういった方々に対する福祉施策を充実してまいっておるわけでございます。現在のところ、実は身体障害者の実態調査をやっておりますが、その中に一般戦災者方々の調査も含めてやっております。この最終報告があと二、三カ月——現在集計中でございますので、その調査の集計が終わりましたらおおよその実態がある程度わかるのじゃないかと思いますが、現在はその調査の集計を行っているという段階でございます。
  76. 小渕正義

    小渕(正)委員 わかりました。じゃ、少し話を移しますが、基本懇の中では、そういった戦争犠牲者の中における一般戦災者との兼ね合いの中で非常にむずかしいという結論を出されておるわけでありますが、そういう中であと一つ私も疑問に思うのは、実は政府戦争犠牲者といいますか戦後処理の中で、海外引き揚げ者に対する特別交付金制度を設けて、二回にわたってある程度国としての一つのものを行った実績がございます。この問題は基本懇の中ではどのような議論がされたのですか、そこらあたりについて状況を……。
  77. 大谷藤郎

    大谷政府委員 基本懇においてはこれは直接議論の対象とはされなかったわけでございます。これにつきましては、引揚者給付金及び特別交付金というものが、引き揚げに伴いまして生活の基盤を失った引き揚げ者に対する更生援護ないしは在外財産問題の処理ということを目的とした特別の政策的措置であったというふうに考えており、被爆者に対する措置、対策とは全く質の異なった問題であるというふうに考えられてきたわけでございまして、基本懇におきましては直接議論の対象とはならなかったわけでございます。
  78. 小渕正義

    小渕(正)委員 確かに質的にはこれは全然違った内容でありますが、事戦争犠牲者という意味においては同一なところに置かれるのじゃないかと思うわけですね。したがいまして、やはり財産をなくし体一つで引き揚げてこられた人に対する国としての、不十分でありましょうけれども、一時何らかの形における若干の補償的な措置を行ったのが交付金制度だと私は思うわけであります。  要するに戦争犠牲者といいますか、そういう者に対して国がいろいろ行っている中に、一般戦災者は今日まで放置されておる。原爆被爆者は一部原爆医療によって医療面における国としての取り扱いがされている。それから直接的なあれじゃないにしても、戦争犠牲者の一つとして引き揚げ者に対しては国としてのそういう措置を行った。私は、今回の基本懇で、特に原爆被爆者に対して、特別の犠牲という意味においては十分認めながらも、他との兼ね合いの中で非常に困難だということで実際処理されてしまったということを考えますならば、やはりもう一度戦争犠牲者というものを同一に並べてみて、そういう中で果たしてどうなのかという議論がされなければうそだと思うのですね。  そういう点で、ただ質が違うからということで——ぼくら基本懇の中身にまでいろいろ議論することは、これはどうもならぬでしょうけれども、そういう意味で、私は基本懇の答申の内容を見まして片手落ちな感じがしたわけでありますのでお尋ねしたわけでありますが、そういった点では戦後戦争犠牲者に対して国がどのような形のものをどういうようにやっておるかということを全部洗い直して、そういうものをすべてさらけ出した中でこういう結論が出されたのかどうか、そのときの基本懇状態についてもう少し事務当局として把握しておれば、実態をお教えいただきたいと思います。
  79. 大谷藤郎

    大谷政府委員 今度の大戦はわが国全体を巻き込んだ大変な戦争でございましたので、大なり小なり国民すべてがその犠牲になっているわけでございます。したがいまして、そういった戦争災害につきましては、戦後一般的には社会保障によってできる限りこれを救済していくという考え方でございまして、先ほど先生指摘のように、特別なものにつきましてはそれぞれ特別の立法なりあるいは予算措置なりを講じてやってきたわけでございまして、原爆被爆につきましてもいわゆる原爆二法によりまして、特別の犠牲につきまして一般社会保障のほかに特別の措置を講じてきたということでございます。  ただ、基本懇の中で戦争災害全体につきましてその大小あるいは高低といったものについて議論をいたしましてこれを並べてやったということはいたされませんのでございますが、基本懇報告にも、一般戦争被害との関係においてはいろいろ御議論されまして、それが書かれているわけでございます。
  80. 小渕正義

    小渕(正)委員 基本懇の中身をいろいろ言っても始まらぬわけでありますが、ただ、私ども基本懇の内容を読みまして、結論的には少なくともそこまでいろいろと戦争犠牲者という立場で比較論をされておるわけでありますから、原爆被爆者は特別の犠牲だという意味においては認めながらも、公平の原則といいますか、そういった立場からむずかしいということで逃げたわけでありますから、言葉は悪いのですが。そういうことを考えますならば、そういった戦争犠牲者というものは実態としてはどのようにあるのか、そういうものの把握をどこまでされているのか、国はそれに対してどのような措置を行ってきたのか、そういうものを全体として並べて比較議論された中で初めてこういう結論が出されるのが至当だと思うわけであります。  そういうものがされない中で、ただ原爆被爆者一般戦災者関係の中だけでこういうことを出されてくるということは、被爆者団体が非常に憤りを持って今回の答申の内容について抗議の声明を出したのもやむを得ない措置だと私は思うわけであります。そういう点でいま基本懇の中身についてのお尋ねをしたわけでありますが、それ以上お尋ねしても、直接当事者でないわけですからその点はもう省きますけれども、そういう意味では非常に遺憾なことだったと思います。  そういう意味で今度お尋ねいたしますが、あと一つ戦争犠牲ということでは特別的な犠牲ではないのですが、自分たちの住まいが戦場になった沖繩があるわけでありますが、この沖繩の戦争犠牲者の人たちに対しては国はどのような措置をとられてきたのか、その状況をお示しいただきたい、かように思います。
  81. 持永和見

    ○持永政府委員 先生御承知のとおり、米軍が沖繩へ上陸いたしまして現地で実際の戦争が始まっておるわけでございます。私ども所管しております遺家族援護法の中に、戦闘参加者につきましては遺族年金、障害を受けた方については障害年金を支給するというような規定がございます。これは軍に協力をいたしまして、軍の命令のもとに戦闘参加したわけでございますから、そういう方々を準軍属として処遇しておるわけでございます。それで、準軍属として処遇されました沖繩の方々の数は、死亡者、いわゆる遺族年金が出ております死亡者が約四万九千人でございます。それから障害者、障害年金が出ております方が約八百人というようなことで推計をいたしております。
  82. 小渕正義

    小渕(正)委員 そうしますと、沖繩の人たちは戦闘要員に準じたという形の中で取り扱ったということですね。
  83. 持永和見

    ○持永政府委員 戦闘に参加したということで先生のおっしゃることと変わりはないと思います。
  84. 小渕正義

    小渕(正)委員 私がいまさら申し上げるまでもありませんが、今日の近代戦争は戦場だけが戦争でないわけですね。沖繩にしても内地にいたしましても、一方的にといいますか相手からの攻撃によって多大な損傷を受けたわけでありますから、そういう意味では戦場になったかならないかという分類で物を見るというのは、戦争犠牲者の場合に、第二次大戦のときには近代戦の特徴からいって間違った考え方ではなかったかという気がするわけです。  そういう点で、実はわが国の場合には昔からの考え方といいますか、軍人軍属、それらはすべてお国のために生命を賭してがんばられたわけですから、それに対して国として適切な処置をすることは当然でありますが、まだ戦場と非戦場がはっきりし、非戦場におる人たちが別に戦争の危害を受けないというときの感覚で物を分けてやっているのが今日までのやり方ではないかと私は思うわけです。  そういう点で、少なくとも沖繩でもちろん戦闘状態の中に置かれてしまったわけでありますけれども、それと変わらないようなのが内地で空襲を受けた人たち、一般に言う戦争犠牲者、そういう意味ではほとんど区別ができないのじゃないか、かように思うわけであります。  その点について私この前の本会議の質問のときにも質問したのでありますが、同じ第二次大戦で同じような状況の運命に陥った西ドイツ、あそこも戦場に国内がなってしまったわけでありましたが、そういう西ドイツの戦後処理の実態を調べてみますならば、いち早く五〇年に戦争犠牲者援護法をつくり、それから数回にわたる改正を行って、戦闘員、非戦闘員を問わずあらゆるそういった戦争犠牲に対してのいろいろな国としての措置が行われた。私はその実態をいろいろと調査いたしまして、なるほど、ともかく新しいああいった近代戦の中における後の戦争犠牲者に対する取り組みとしてはすばらしい取り組みではなかったかと思うわけであります、がそういう意味で日本は非常に旧態依然たる感覚の中で行われているのが今日の実態でないか、かように思います。  したがいまして、ひとつこれは厚生大臣お尋ねしたいのでありますが、どうでしょうか、私がいま申し上げますようなそういう意味では、まず軍人軍属は当然でありますが、戦争の様相が一変してしまって戦場と非戦場という区別がつけ切らない、しかも非戦闘員も戦争に巻き込まれる、こういう状態の中での戦争犠牲者というものについて区分けすることが果たして実情に合うのかどうか、国として当然考えなければならぬ問題じゃないか、かように思うわけでありますが、そこらあたりについて厚生大臣の基本的な考え方お尋ねしたいと思います。
  85. 園田直

    園田国務大臣 先ほども申し上げましたが、戦争の様子が変わってきて、この前の戦争では初期は兵器を持って外へ出ていった人が戦闘に参加したわけでありますが、中盤戦以降はすべての人々が好むと好まざるとにかかわらず戦闘に参加させられたわけでございます。そういう意味で、国家との身分関係のみで格差をつけてやることは間違いであって、やはりすべての戦災者を対象にして、その中で特別に被害を受けた、その被害の重度、軽度ということからやるべきであると考えておりますが、いままでの骨組みを変えていくことはなかなか大変でありまして、いまそのかじを切る一つの潮どきであると考えております。
  86. 小渕正義

    小渕(正)委員 いま大臣の基本的な見解をお尋ねして、私もその点については敬意を表するわけでありますが、当然私はそういう意味で、いまわが国の戦争犠牲者に対する戦後処理のあり方についていま一度問い直させて考えてみなければならぬような時期に来ているのじゃないかと思うわけです。  私は原爆被爆者援護法の問題一つだけを取り上げているのじゃなしに、そういう戦争犠牲者に対する援護的な立場から問題を見詰めて、実態面としてやれるかやれぬかは別としても、いま大臣もおっしゃられたように、いまは様相が変わった時代ですからもう一度戦後処理のあり方について見直して、そういう中で重い軽いという、軽いという言葉はちょっと語弊がありましょうけれども、それぞれの状況に応じて国は何をなすべきか、国としてはこれについてはこれだけしかやり切れない、しかし、やはり一連の流れといいますか関連の中で全体を見詰めて、そういう中で総合的に一つ施策をやっていく。ただ原爆被爆者が出てきたからこれを原爆医療法でやる、戦争犠牲者の問題が出てきたらまたそれについて何かやる、そういうことじゃなしに、ここらあたりでもう一度この戦後処理の問題について、戦争犠牲者に対して国として腰を据えて見直してじっくりやらなければ、いつまでたっても、戦後三十数年たった経過の中でもこういう問題が次から次に出てくるのじゃないかと私は思うわけでありますが、そういった点で、厚生大臣の前向きの姿勢の中で、政府のあり方としてそういうものに取り組んで努力していくという方向についてはいかがでしょうか。
  87. 園田直

    園田国務大臣 現実としては大変困難な問題ではありますが、しかし、そういう一つ考え方のもとにやっていかなければならぬことは事実であると考えております。
  88. 小渕正義

    小渕(正)委員 そこをお聞きいたしまして非常に心強く思うわけであります。私がいま申し上げましたように、そういう流れの中の一つとしてやはり原爆被爆者援護法の問題もとらえていただきたいというふうに思うわけです。そういう点で非常にむずかしい問題がありましょうけれども、少なくとも政府の姿勢としてはぜひ取り組んでほしいということを申し上げておきたいと思います。  それから、具体的なものにちょっと入っていきますが、終戦になりましてからこの被爆者問題がクローズアップされてきまして、三十二年ですか、ようやく医療法の問題が出てきたわけでありますが、その間お亡くなりになった被爆者の数といいますか、そういう実態は政府当局の方でつかまれておりますかどうか。
  89. 大谷藤郎

    大谷政府委員 広島につきましては昭和二十一年の調査で十二万人、長崎につきましては昭和二十五年の調査で七万人ということを聞いているわけでございますけれども、法施行前の正確な死亡数については政府としては把握いたしておりません。
  90. 小渕正義

    小渕(正)委員 お互いにああいう非常に苦しい時代で、混乱していた中から新しい秩序をつくり出していこうという時代でありましたから、そういう意味でそれが把握されてないということについては余り責める気はありませんが、一歩下がって私が考えるに、被爆者の中で一番放置されたまま亡くなっていかれた人たちがこの人たちだと思うのですよ。放置されたという言葉は悪うございますけれども原爆を落とされてそれ以後少なくとも数日の間にお亡くなりになった方、また、それ以後平常と余り変わらないような状況に置かれていながら被爆症状が出て亡くなられていった方、大体二通りあるわけであります。特にそういう意味では、原爆被爆者の中で、元気になられながら結果的には後遺症で亡くなられていった人たちが実は国から医療的な面でも何ら見てもらえなかった。  そういう点で、たとえ実態としてはいろいろありましょうとも、三十二年以後は政府として一つ対策を立てようということになったわけですから、三十二年までのその間に亡くなられた人たちに対して政府として何らかの形でもって弔慰をして報いるということは最低限の問題としてやらなければいかぬ問題じゃないか、かように私は思うわけでありますが、そのあたりについてどうでしょうか。もちろん被爆者援護法の中では亡くなられた方々に対して弔慰金を支給しろとかいろいろ言っていますけれども、そういうものがたくさんありますが、いずれにしても私としては、最低その人たちだけには政府として何らかの形でのそういうものを何かすべきではないかと思うのでありますが、そういう点についての事柄を整理していく中で、そういった点だけでもとりあえず政府としては放置できないということでその人たちに対する何らかのものを国としてあらわす、そういうことについてはいかがでしょうか。
  91. 大谷藤郎

    大谷政府委員 再々同じような答弁でまことに申しわけないのでございますけれども、弔慰金を支給するということにつきましては、毎々申し上げておりますように、政府としては大変困難であるというふうに考えております。  しかし、大臣が再々国会でも申されましたように、そういった点について政府としての姿勢を明らかにせよという強い御指示がございまして、今回の予算におきましては、被爆者慰霊祭の補助金を倍増する、あるいはまた遺族の方々に慰霊祭に出席していただく旅費を予算化する、こういうふうなことだけは大臣の御指示によりましてやっと予算化をさせていただいた、こういうふうな状況でございます。  この点につきましても、まことに申しわけないのでございますけれども、弔慰金を支給するということにつきましては私どもはそういう考えを持っておらないわけでございます。
  92. 小渕正義

    小渕(正)委員 いま国として現状よりは若干前向きに取り組んでいるということを言われましたけれども、それはそれなりにわかります。しかし、いま私が申し上げましたように、一つの区切りとして昭和三十二年以降は、満足か不満足かは別といたしましても国としてのそういう人たちに対する何らかの形の対策はとられてきたわけでありますから、やはり三十二年までの一区切りについては何らか国としてやらなければいかぬのじゃないかと思うのですが、そういう点についてはいまの答弁では全然脈なしという感じがしますけれども、先ほどの大臣のああいった前向きな決意から考えますならば、そういう線に沿ってこれからの検討課題にする、そういったことまでの答弁はできませんか、どうでしょうか。
  93. 大谷藤郎

    大谷政府委員 私も気持ちとしてはまことに申しわけないと思うわけでございますけれども、今日の時点になりましてはこれにつきまして何らかの処理をするということは非常にむずかしいというふうに考えているわけでございます。
  94. 小渕正義

    小渕(正)委員 何でむずかしいのですか。むずかしいと言ってしまえば何でもむずかしいのですけれどもね。
  95. 大谷藤郎

    大谷政府委員 すでに長い年月がたっておりまして、その実態につきましても詳細把握することも非常に困難でございますし、また一方では、そういった弔慰金あるいは遺族年金等の問題につきましても、政府としてもこういった基本懇の答申を踏まえて現在の予算というふうになっているような状況をいろいろ考えますと、事務当局といたしましてはこれはやはりむずかしい、残念ながらむずかしいというふうにお答えせざるを得ないわけでございます。
  96. 小渕正義

    小渕(正)委員 先ほどの園田大臣の御答弁から、少しでもそういう新しい決意の中で取り組まれるならばという感じがしたのでありますが、局長の答弁を聞くとこれは全部逆戻り、またもとに戻してしまって、基本懇基本懇ということで基本懇から一歩も出ないようなそういう感じがして非常に残念であります。少なくとも、先ほど指摘しましたように、基本懇の答申内容自体が、原爆被爆者だけにしぼって議論された結果かしれませんが、どうも私どもから見ると、基本懇の結論として出されたものを見ると、そういう議論の経過というものが全然突っ込んでやられていないで、一般戦争犠牲者に対してどのようなあり方が一番いいのかということの中から出てきた結論でないという感じですから、そういう点では余り基本懇にこだわられることは非常に残念に思うわけでありますが、いま局長にいろいろ言っても無理かもしれませんのでその点は申し上げません。  しかし、先ほど私は一歩下がった話として申し上げたのでありますが、そこらあたりを一つのめどに考えてこの問題と取り組んでいただかぬことには、この被爆者援護法の問題ほかにもいろいろありますが、これはこれからも年々歳々ますます大きな動きになってしまって、次に政府が取り組もうとしたときはえらいことになってしまうのじゃないかという気がするわけです。そういう意味ではこの問題は早目に取り組まれた方が政府としては結果的にはよかったのじゃないかということになりかねないと私は思いますので、そういう意味でいま少し考え方を変えた立場からこの問題をもう一度見直してみる、そういうことを特にお願いしておきたいと思います。  次にお尋ねいたしますが、今回の基本懇の中では外人被爆者それから被爆二世、三世と言われている人たちについて全然触れられていないわけですね。この点は基本懇では議論の対象にならなかったのですか。
  97. 大谷藤郎

    大谷政府委員 基本懇被爆者対策の基本的な理念、あり方というものについて御議論いただくということで出発いたしましたので、そういった具体的な問題については御議論をいただかなかったわけでございます。
  98. 小渕正義

    小渕(正)委員 そうすると基本懇の中でいろいろ議論するとき、こういう話は全然出なかったのですか。
  99. 大谷藤郎

    大谷政府委員 私も陪席いたしておりましたけれども、私の記憶に関する限りでは、もちろん二世の問題につきましては話題は出ましたけれども、外国人の問題等につきましては私は承知いたしておりません。
  100. 小渕正義

    小渕(正)委員 外人被爆者という問題でこれが最高裁までいろいろ争われたことが基本懇発足の一つの要因でもあろうと思うのですが、当局としてはこの外人被爆者に対してはどのようなお考えをお持ちでこれからやろうとされているのですか。
  101. 大谷藤郎

    大谷政府委員 原爆二法につきましては居住地主義でございますから、外国人が日本においでになる場合には二法を適用いたしまして十分手厚くいたしたいというふうに考えているわけでございます。
  102. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に、被爆二世並びに三世について健診を長崎、広島それぞれやられたと思いますが、その状況、たとえば対象というか健診を受けられた人たちの数、年何回くらいやられたのか、一般的傾向としてはどのような傾向が出たのか、そこらあたりひとつ御説明いただきたいと思います。
  103. 大谷藤郎

    大谷政府委員 昭和五十四年に国会等の御議論を踏まえまして被爆者二世の健診を実施いたしました。これにつきましては、現在自分の健康障害原爆放射線被曝によるものではないかという不安を持っておられる方あるいはまたそれによる健康障害発生するのではないか、そういった不安を抱いておられるというふうな点に着目いたしまして健診を実施いたしまして、約一万八千人、正確には一万七千二百十二人の方に対して健診を実施いたしました。  簡単に申し上げますと、被爆二世の方々の健康状態は、そのほかの一般国民の健康状態の調査との関係では余り変化がない、変わりがないという結果が出ております。しかしこの被爆二世の中には、そういった客観的な検査とは別に、意識調査では健康面に対して非常に不安を抱いておられる方が多い。約四分の一の方が、自分の体が悪くないかあるいは遺伝的影響がないか、その他そういった問題について不安をお持ちになっておられる方が非常に多いということが調査結果としてあらわれております。
  104. 小渕正義

    小渕(正)委員 わかりました。その資料をもしいただけるんだったら、ひとつ後でお願いしたいと思います。  次にこれは具体的な、現在取り組まれている制度の中の一つですが、国が原爆二法によっていろいろ施策を行っているわけでありますけれども、それ以外に地方自治体がみずから独自の立場で取り組まれていろいろやられているところがあるわけでありますが、そこらあたりの状況をひとつお示しいただければと思います。
  105. 大谷藤郎

    大谷政府委員 被爆者対策につきましては、各地方自治体におきましても地域福祉という観点からいろいろ御努力をいただいているところでございます。  たとえば、国の事業に対する上乗せ事業といたしまして入院見舞い金等を支給する、あるいは健康診断の受診奨励金の支給をするというふうなケースがございます。  また独自の事業といたしましては、関係団体を助成するとかあるいは温泉保養所利用というものに対する補助をするというふうな、各自治体においていろいろ御努力をいただいているところでございます。
  106. 小渕正義

    小渕(正)委員 ちょっと質問のあれが雑であったのですが、そういう地方自治体の数、何県くらい、何市町村がそういう独自性を持っていろいろやられておるのか、おわかりでありましたらひとつ。
  107. 大谷藤郎

    大谷政府委員 正確な数字はちょっとあれでございますが、国の施策に対する上乗せ事業といたしましては約七府県、それから単独事業といたしましてはやはりいろいろございますが、約三十三府県ございます。
  108. 小渕正義

    小渕(正)委員 これは話がまた戻って申しわけないのですが、要するに三十三府県が何らかの形で原爆被爆者に対する独自的な施策に取り組まれておるわけですね。そうしますと、わが国の地方自治体の中でも三分の二余りの府県がこういった認識を持っておるということに大体とっていいと思います。こういうものが基本懇の中ではやはり議論の対象になりましたか。  というのは、国民合意を得るのは、公平の原則というたてまえから非常にむずかしいということが大きなあれになっている。しかしこの実態を見ますように、もうかなりの県が独自性を持ってこういうことでもやろうとしているわけですから、果たしてそういう実態を基本懇の人たちは承知されて議論されたのかどうかということを、ちょっと話が戻るのですけれども、そこらあたりはいかがでしょうか。
  109. 大谷藤郎

    大谷政府委員 こういった地方の実態についても十分御議論いただきまして御答申をいただいたわけでございます。  たとえば基本懇報告の中で   原爆被爆者対策は、国家補償の見地に立って基本的には、国の責任において行うべきであるとしても、その具体的内容は、結局は被爆者の福祉の増進を図ることを狙いとするものでありそのためには各地域の実情に即した対策が望ましく、このような地域福祉の見地からいえば地方公共団体被爆者対策への協力が強く要請されるものと言わなければならない。 というふうに結論をいただいているわけでございます。  ただ、この結論だけを見ていただくとちょっと誤解が起こるかもしれませんが、たとえば地方が行っている事業と申しましても、そういった中には、たとえばその三十三府県と申しますのは、その地域にいろんな被爆者方々関係の団体等がございまして、それに対して府県が補助金を出してそれを御援助するというふうなもの、あるいは保養所の利用でありますとか、あるいは就職の場合にそういったお世話をするというふうなことだとか、国として一般論としてよりはむしろ地域の実態に即してやった方がよいというものが多うございますので、その点については文書だけ見ますと非常に冷たい、国の責任を回避するような印象もあるいは与えるかもしれませんが、実態というものはそういったものについて各都道府県の事業が行われるのは非常に妥当なことであるとお述べになっているわけでございます。
  110. 小渕正義

    小渕(正)委員 わかりました。  じゃ次に移りますが、実は被爆者の方たちの一つの不安として、これは根拠があるのかどうか私も専門家でございませんのでわかりませんが、こういうことがあるということを御紹介しながらひとつ見解を承りたいわけであります。  医療用のレントゲンというか放射線、これでいろいろとずっと健診を受けておられるわけでありますが、これはこういう放射線のレントゲンの健診をずっと受けられると、何らかの形で体内に少しずつでも蓄積されてそれが残るのじゃないか、そういう説もあるそうですが、そういうこと等を考えれば、そういったいろいろ原爆被爆者に対する健診をやられる場合に、できる限りレントゲンの放射線というものよりももう少しそういう不安がないような、これは医学的にどんどん蓄積されていくのかどうか私わかりませんけれども、そういう説もあるとかということで若干の不安を持たれている方もおられます。そういう点からいきますならば、超音波装置というのですか、そういうものをもっとどんどん取り入れて、そういう形の中でやってもらえぬだろうかというような、これは素人のあれで専門的なことはわかりませんけれども、そういう意味での不安感を訴えられると同時にそういう御要望が非常に強いのでございますが、そこらあたりについて当局としてはどのようにお考えでしょうか。
  111. 大谷藤郎

    大谷政府委員 超音波診断の問題は、昨年の富士見病院でにわかに知れわたったわけでございますが、やはりこの診断には限度がございまして、深部のがん等につきましてはレントゲンでありませんと診断できないというふうな現状もございます。しかし先生指摘のように、できる限りそうした放射線被曝を避けるということは医学界の常識になっておりまして、これは被爆者であると否とにかかわらずできるだけ被曝線量というものを少なくしようという努力が医学界でなされているわけでございます。ただ現在の医学の状況では、超音波診断をもってすべてのレントゲン診断にかえるということは非常にむずかしいのではないか、また早期診断上問題があるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  112. 小渕正義

    小渕(正)委員 次にお尋ねしますが、これは長崎の場合、私も長崎なんですけれども、端的な言葉で地域拡大といいますか、東西が六キロで南北が十二キロ程度の広がりを見せている地域になっているわけです。これはどんな理屈をつけようと不合理には間違いないのです。こんな不合理、説明のしようがないと思いますが、そういう意味でたとえば半径八キロなら八キロ、十キロなら十キロという中ですべて包含すべきであるという意味での地域拡大の非常に強い要望が、県の世論として実は長崎の場合出ているわけであります。  そういう中の一つの方法として、たとえば現在地域拡大で言われているのは、大体東西南北の関係からいって爆心地半径十二キロを範囲にしてひとつやってもらえぬかというのが現在の強い声であります。  そういう十二キロの当時の在住者について国として一回全員健診をやっていただく、そして健診をやっていただいて異常が何らかの形で認められるような人たちにのみ手帳を交付する、こういう措置というものは考えられないか。ただ十二キロ全部だめだということじゃなしに、そこに少なくとも一年間か二年間か定期の健診をやって、そういう二回か三回の結果の上に立って初めて判定して、異常な人たちだけ手帳を交付する、こういう措置はどうだろうかということが実はかなり出ておるわけでありますが、そこらあたりについてはどうでしょうか。ただ被爆地域を十二キロに拡大しろということじゃなしに、そういう方法での解決策も少し出てくるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  113. 大谷藤郎

    大谷政府委員 現在の被爆地域の指定につきましては、それぞれ歴史的にいろいろな理由によりまして拡大をされてきたわけでございます。いま先生指摘のように、その間に多少、恐らく指定地域とそうでない地域との問で感情的に考えまして若干問題があるかもしれませんが、現実の問題として半径十二キロメートルというのは相当広い範囲でございまして、これについては現在確かに十二キロメートルのところも入っているところもあるわけでございますけれども、それにつきまして私ども考えとしては、やはり歴史的に、たとえば地形だとか風向きだとか雨だとかいろんなことで考えられてそういうふうになってきているわけだと理解しておりまして、これを機械的に十二キロメートルの半径をもって全員の方々に健康診断を行うということについてはやはりいかがかというふうに考えられるわけでございます。  また先生指摘のように、健康診断をやってその結果を見たらどうかというお考えのようでございますけれども、これは医学的に見ましても全く不可能と申しましょうか、その根拠がはっきりしないように考えられるわけでございまして、それについてはやはりやる必要はないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  114. 小渕正義

    小渕(正)委員 十二キロの問題で、これをここで余りやってもどうかとは思いますけれども、やはり主張されているだけ、それなりの根拠がかなりあるのですよ。当日、十二キロの近くの人たちが屋根が一部吹き飛んだりやけどしたり、いろいろと部分的なそういう地域の人が出ておるのですから。それから落ちたときのなにがあってそちらの方に飛んできたとか、いろいろそういうことだから、全然根拠なしで皆さんただ言われているのではないのです。その具体的ないろいろな例示はもういやというほど見せられておると思いますので私は申し上げませんが、そういう意味で行政区域ごとに区切ったところにどうしても問題があったと思います、現行の地域の指定は。  これはどうしても何らかの形で考えぬことには、われわれが考えてみましても、現在長崎市内のあそこの港の入り口の近くの深堀という町がありますが、ここは当時長崎市じゃないから指定から外れておる。ところが土井首という町は港の入り口からもう少し南の方に行っておるのでありますが、それは長崎市であったから入っておる。これはもう明らかに、どのような理屈もつけようがないのです。  こういうような不合理がはっきりしておるのですから、何らかの形でやはりある程度、当時地上五百メートルのところで原爆が炸裂したと言われておりますが、それから言うと半径何キロという形の中で考えていかないことには、これはどうしても今日の地域の指定では現状固定化ということは絶対不合理でありますし、ぜひこれは、どこまでやるかは別としても、いずれ考え直してもらわないことにはいかない問題だということを申し上げ、そのための解決策として一つ申し上げたのでありますが、いろいろとまだ知恵をしぼれば出てくると思いますので、その点はぜひ考えておいていただきたい、かように思います。  もう余り時間がございませんのであと一つだけお聞きいたしますが、現行制度の中で地域被爆者手帳を交付されて、県市が、長崎の場合主に市が中心になりまして健診を年二回やっておるわけですね。しかしこれはあくまでも本人の自主的な判断で健診を受けるか受けないか、本当に本人みずからの意思一つにかかっているわけです。そういう点で考えますと、手帳だけは交付されて、健診は一回も受けない、もう二年も三年も四年もほったらかす、そういうことが果たしてどうだろうかという感じがするのですね。たとえば健診を一回か二回受けて、五、六年ほったらかして健診を受けなかった、それで今度ちょっとぐあいが悪くなったということで、医師に証明書をもらって保健手当をもらうとか、そういうことで手当だけすぐもらえるとか、やはりそれでは基本懇で言っている国民合意を得るにむずかしいというような、被爆者以外の方が見たらいまの制度の運用の中にも若干そういう、もっと合意、理解を受け得るようなところでの問題点があると私は思います。  だから、そこらあたり何らかの考え方をしないことには、やはりどう見てもその面だけを見れば、手帳を持たない人たちから見ると不合理な、おかしいという形にどうしてもなりかねませんから、被爆手帳を持たれたら、ある程度健診を義務づけるというか、何かそういうようなものをしないことにはどうだろうかという、これは片側から見た場合の一つ意見なのですけれども、そういう意見もかなりあるのです。  だからそこらあたりについていかがかということと、非常に実態的な運用の中で、医者の診断によって管理手当、保健手当がもらえるわけですけれども、非常にそこらあたりの医者の判断の違いというか、ある病院に行けば、だれでも手帳を持って行ってちょっとぐあい悪いと言えばそういう証明を書いてくれる病院があるかと思えば、そうじゃない、本当に厳密にやって、ちょっと簡単に書いてくれない病院もあるというような問題とか、いま私が指摘したこういう二つの問題等は現行制度の運用の中でもやはり考えていかないと、本当に皆さんの合意、理解を得るようなことになっていかぬのじゃないかという気もするのですが、そこらあたり、いかがでしょうか。
  115. 大谷藤郎

    大谷政府委員 健康診断を義務づけるということにつきましてはいかがかと思いますが、できる限り受けていただくように私どもとしても行政努力をいたしたいというふうに考えるわけでございます。  それから診断の格差の問題でございますが、確かに各府県で相当な差がございます。特に健康管理手当の場合非常な差がございますが、これにつきましては五十五年度から各県に認定委員会というのをつくっていただきまして、できるだけ複数のお医者さんで相談してやっていただく、また年に一回のお医者さん方の研究会を開催いたしまして、そういった知識についての情報を交換して、できるだけ均一な診断の基準というふうな考え方でこれを進めていったらどうかというふうにしておりますので、今後ともできるだけそういった、各府県とも平等になるように努力をいたしたいというふうに考えるわけでございます。
  116. 小渕正義

    小渕(正)委員 ひとつそういった面についてはぜひ当局として強力な行政指導をやっていただきたい、かように思います。  時間も最後になりましたが、先ほどからこの原爆被爆者問題等をあわせて、わが国の戦後処理といいますか、やはりもう一度振り返ってみた中で考えていかないことには、こういった問題は永遠に続いてくるのじゃないかということを私は申し上げて、大臣の前向きな御見解をお聞きしたわけでありますが、この被爆者援護法問題もそういうものの一つとして、私はこれからますます大きな世論になってくるのじゃないかという気がいたします。そういう意味でも、大臣の先ほど申されたそういった考え方の中で、非常にむずかしい問題でありますけれども政府部内がそういう方向で動くような大臣の強力な御努力を特に期待したいと思いますが、いかがでしょうか。
  117. 園田直

    園田国務大臣 非常にむずかしい問題でもあるし、慎重を要する問題ではありますけれども、しかしそれは当然のことであって、被害を受けた人が一人も残りなく補償を受けることは大事でありますから、そういう方向努力をいたします。
  118. 小渕正義

    小渕(正)委員 ではこれで終わります。
  119. 山下徳夫

    山下委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時三十三分開議
  120. 山下徳夫

    山下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  労働関係の基本施策に関する件について、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願うことといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 山下徳夫

    山下委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  122. 山下徳夫

    山下委員長 内閣提出障害に関する用語の整理のための医師法等の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。園田厚生大臣
  123. 園田直

    園田国務大臣 ただいま議題となりました障害に関する用語の整理のための医師法等の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。  昨年来、障害者の方々を初め関係方面から障害に関する法令上の用語のうち不適当なものを改めるべきであるという御意見を多数いただいてきたところであります。このため、政府においては、当面、法令上の「つんぼ」、「おし」、「盲」という三つの用語を改めることとし、本法律案を提案いたした次第であります。  改正の内容は、医師法など厚生省所管の九本の法律において用いられているこれらの用語を改めるものであります。  改正の対象となる九本の法律は、医師法、歯科医師法、保健婦助産婦看護婦法、歯科衛生士法、毒物及び劇物取締法、診療放射線技師及び診療エックス線技師法、歯科技工法、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律及び優生保護法であります。  なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。  以上が、この法律案を提案する理由及び内容でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  124. 山下徳夫

    山下委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  125. 山下徳夫

    山下委員長 次に、金子みつ君外五名提出母子保健法健康保険法等の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。金子みつ君。
  126. 金子みつ

    金子(み)議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、母子保健法健康保険法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。  母性を心身ともに健全な状態に保つことは、人類の永遠の存続と発展を保障する上で、国の最も基本的な事業と言わなければなりません。この観点からわが国の関連制度を見直してみますと、諸外国ではすでに解決済みになっている基本的事項の立ちおくれが、少なくとも二つあります。  その一つは、妊娠及び出産に関しては、疾病にかかわる事例を除いては、保険給付の対象にならず、原則として自己負担だということであります。女性は、出産によって、児童の出生とその育成という重要な社会的役割りを担うことになるわけでありますから、出産は、単なる個人の責任ではなく、母と子の二つの生命にかかわる厳粛な社会的機能というべきであります。したがって、妊娠及び出産に関しては、公的責務を果たすことは当然の理であると考えます。現に社会保障の最低基準を定めたILO百二号条約においては、出産医療としてこれを保障し、本人に経済的負担を課さないことを規定しています。  わが国においては、出産は、公費の保障がないばかりでなく、健康保険の医療給付としても扱わず出産費として現金給付を行っていますが、加入している保険の種類によって十二万円から八万円とその金額の格差があるのが現状であります。したがって、このような出産に関する給付の不公正、不合理は、自由料金と相まって大きな自己負担として問題になっています。大都会では、すでに三十万円を超える出産費用が常態なのであります。出産という社会的役割りを有し、かつ、生命の危険を伴う身体的現象に対しては、公平な医療給付を行うべきであります。  そこで本案においては、健康保険法、船員保険法、日雇労働者健康保険法及び国民健康保険法を改正し、被保険者の出産に関しては、現物給付を行うものとしたわけであります。  第二の点は、母性保護の見地に立つ健康管理の体制が、ゼロに等しいことであります。新生児から老人に至るまで、法律で保障された健康診査がないのは、就業していない婦人だけという現状はすでに周知のとおりであります。  わが国の妊産婦死亡率は、世界第一位の高率を占めておりますし、また周産期死亡率及び妊娠後期死産率も非常な高率を示しております。これらは、わが国における妊産婦保健管理の徹底が、緊急の課題となっていることをよくあらわしていると言わねばなりません。  母性の健康は、健康な児童を産み育てる社会的役割りの上からも放置できない重大問題であり、一家の主婦の健康は、その家庭の安らぎの基礎でもあることを考えるとき、まず、欠如している健康診査の制度を緊急に確立する必要があります。このため、本案においては、母子保健法改正し、満十六歳を超える婦人で、他の法令すなわち学校保健法及び労働安全衛生法並びに老人福祉法等による健康診断または四十歳以上を対象とする成人病健康診査を受けない者に対し、都道府県知事は、毎年健康診査を行われなければならないものとするとともに、妊産婦に対しても、少なくとも妊娠中は毎月、出産後は一回の健康診査を行わなければならないことといたしました。  次に、本案の概要を御紹介いたします。  まず、母子保健法については、主として次の諸点を改正することにいたしました。 1 都道府県知事は満十六歳を超える女子で他の法令による健康診断または健康診査を受けない者に対し、毎年健康診査を行わなければならないものとすること。 2 都道府県知事は、妊産婦に対し、少なくとも、妊娠中十回、出産後一回の健康診査を行わなければならないものとすること。 3 都道府県知事は、妊娠もしくは出産またはこれらに起因する疾病につき医療保険を受けた者に対し、その自己負担分(初診、入院時一部負担金を含む。)に相当する額を出産医療費として支給するものとすること。 4 1及び2の健康診査に要する費用は、国が三分の一、都道府県または市が三分の二をそれぞれ負担すること。 5 3の出産医療費に要する費用は、国が十分の八、都道府県または市が十分の二をそれぞれ負担すること。また、健康保険法については、主として次の諸点を改正することにいたしました。  ア 被保険者の妊娠及び出産に関し、療養の給付(現物給付)を行うものとすること。  イ 療養の給付の範囲に、助産を加えること。  ウ 妊娠及び出産に関する療養の給付を担当する保険医療機関に、都道府県知事が指定した助産所を加えること。  エ 保険医療機関において健康保険の助産に従事する助産婦は、都道府県知事の登録を受けた助産婦(保険助産婦)でなければならないものとすること。  オ 保険医療機関たる助産所または保険助産婦に対する厚生大臣または都道府県知事の監督は、現行の保険医療機関または保険医に対する監督と同様のものとすること。  カ 被保険者の資格を喪失した際妊娠または出産に関し療養の給付を受けている者は、継続して同一保険者から当該療養の給付を受けることができるものとすること。  キ 被扶養者が妊娠及び出産に関し、療養を受けたときは、その費用の百分の八十に相当する額を支給するものとすること。  ク 出産費及び配偶者出産費の支給制度は廃止するものとすること。  なお、船員保険法、日雇労働者健康保険法及び国民健康保険法についても、健康保険法と同様の改正を行うこととしております。  以上が、本案を提案する理由及び本案の主な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、委員各位の御賛同を賜りますよう心からお願い申し上げる次第であります。(拍手)
  127. 山下徳夫

    山下委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  128. 山下徳夫

    山下委員長 内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び森井忠良君外七名提出原子爆弾被爆者等援護法案の両案を議題とし、質疑を続行いたします。小沢和秋君。
  129. 小沢和秋

    小沢(和)委員 まず一番最初に六党案の問題について森井議員にお尋ねをしたいと思います。  私自身もこれには賛成者として名を連ねておりますし、ぜひこの法案が成立することを願っておるわけでありますけれども、特にお尋ねをしたいと思いますのは、政府の今回の法改正ではどうしても不十分だというのはどういう点なのか、どうしてもこの点を法律としてつくらなくちゃならないというポイントはどういうところにあるのか、またなぜいま援護法をどうしても急いで制定しなければならないのかというような点について、ひとつ説明をお願いしたいと思います。
  130. 森井忠良

    森井議員 政府が提案しております今回の特別措置法それからもう一本の医療法両法を通じて言えますことは、現行法が総じて社会保障の精神に貫かれておるという点でございます。したがって結果としてどういうところが出てくるかといいますと、被爆者の皆さんあるいは死没者の遺族の皆さんがしばしば要求しておられる点でありますが、たとえば亡くなられた方に対する弔慰金あるいはその遺族に対します遺族年金、そういったものが現行法におきましては支給することができない。それが一つであります。  それからもう一つは、よくあります、たとえばケロイド症状の非常にひどい方、すでに症状は固定しておりまして医療を加えても治癒の方法がない。しかし現実には女性にとってケロイドという状態は、美容の上で欠かすことのできない非常に大事な点でございます。これもどうすることもできない。したがって私どもが知っております範囲では、自分の費用でケロイド症状を治すための手術を受けたという例をたくさん聞いておるわけでありますが、そういった方々の救済ができない。  それから、広島大学の名誉教授をしておられます森滝市郎先生がよく例に挙げられるのでございますけれども、たとえば両眼がある、片方の目はもう原爆で全然見えなくなっている、治療を加えてもこれは治る見込みがない。そういった目については現行法では救済の方法はないわけでありまして、残っております片方の目がだんだん失明に近づきつつある、しかしこれは治療をすれば少しでも失明を延期することができるというのでこちらは対象になっておるわけでございます。  こういったふうな矛盾がございまして、どうしても現行二法ではいま申し上げましたような点が救済されないという決定的な欠陥があるというふうに私ども理解をいたしております。  それから、なぜこの時期に急いで提出をするのかということでございますが、当然のことでありますが被爆者は老齢化をいたしております。特に放射線を大量に体内に吸収をいたしますと、加齢現象、普通の人よりも早く老け込んで身体の各機能が老齢化をしてくるという深刻な状態がございます。平均年齢もすでに六十歳をはるかに超している状況でございますから、私ども一刻も待てないというふうに理解をいたしております。
  131. 小沢和秋

    小沢(和)委員 どうもありがとうございました。結構です。  そこで今度は大臣お尋ねをしたいと思うのですが、この前のいわゆる基本懇が出した答申のの中でも、現在の原爆二法が広い意味での国家補償の見地に立っているというようなことが言われているわけですけれども、私はやはりいま森井議員が言われましたように、この二法というのは基本的には社会保障立場に立った立法である、それを今度は若干手直しをして改善するという範囲の法の改正ではないかというふうに考えるわけです。  それで問題を明らかにするためにお尋ねをしたいと思いますのは、国家補償という場合、被爆者の人たちは三つの点で国家責任というのを明らかにして補償を法制化してもらいたいというふうに言っておるわけですね。  一つは、国がああいう無謀な侵略戦争を始めて結局破滅させ、国民にこういうひどい被害を与えたという責任であります。  もう一つは、アメリカが広島、長崎に原爆という人類史上未曾有の残虐な兵器を使った、これはもう明らかに国際法違反であって、被爆者の人たちは当然損害賠償の請求権を持っているはずです。ところが、日本政府はサンフランシスコ講和条約で一切アメリカに対する請求権などを放棄してしまった。これについてのいわば放棄した責任をとるという意味で、日本政府がその点について責任をとるべきだ。  それから三番目に、敗戦直後からこの原爆医療法が成立するまで十数年の間、被爆者の人たちは全く放置された。この点についても余りに国家の誠意がなさ過ぎる。  そういう点での責任、この三つの責任をとって、国家補償立場に立った被爆者援護法をつくってもらいたいというふうに言っているわけですね。  こういうような国家補償立場とは全く縁のない立場でつくられた法律がいまの二法ではないでしょうか。だから、それを少々改善するといっても被爆者の人たちに納得がいかないということで、非常に大きな不満が残るのは私は当然ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  132. 園田直

    園田国務大臣 基本懇の答申で一番大事な点は、社会保障理念から国家補償理念にとびらを開かれたところに大きな評価すべき点があると考えております。しかしながら、現実の問題としてはなかなか一挙に骨組みを変えることはできませんので、とりあえず短期間にいろいろな問題を具体的、重点的に施策を行うのには現法の改正でお願いする、こういうことで今度の改正をお願いしたわけでございます。
  133. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いままですでに、私が挙げた三つの責任のうち前の二つについてはずいぶん多くの方が議論をされましたので、私は、戦後被爆者を長期にわたって全く放置をした責任ということについて一言触れてみたいと思うのです。  昭和十七年に第七十九回帝国議会で戦時災害保護法という法律制定をされたということは、もう関係者は御存じだと思います。この法律は、当時の状況からして、戦時災害を受けた国民に対して国家が損害賠償を行うというものではありませんけれども、罹災者に対する応急救助、生活困窮者に対する扶助、三番目に生命、身体、財産に危害をこうむった者への給与金の支給など、大別してこの三種類の国家的な保護を行うということになっておったわけであります。  私は、当然広島、長崎の被爆者に対してもこの法律は一たんは適用されたのだと思うのです。しかし、早々と打ち切られてしまったというふうに聞いているのですけれども、実際この法律はいつごろまで適用されて、どの程度救助に役立たされたのかということをお尋ねします。
  134. 大谷藤郎

    大谷政府委員 戦時災害保護法は、当時の銃後におきます民心の安定を目的として制定されたものと聞いております。その適用期間につきましては二カ月とすると施行規則で規定されておりまして、広島、長崎の原爆被災につきましても、十月上旬をもって戦時災害保護法による救護措置は終了したものだというふうに聞いておりますが、いまになってみますと、現実は詳細わからない点がございます。  昭和二十年代におきましては、わが国の経済力あるいは一般国民の生活水準等からいたしまして、被爆者方々に対しまして特別対策を講ずることは非常に困難であったと理解しておりまして、そういった意味でこの戦時災害保護法がどういうふうになっていったかという問題につきましても、そういう施行規則で二カ月をもって終了しているという程度の理解を私どもはしているところでございます。
  135. 小沢和秋

    小沢(和)委員 確かに応急措置については二カ月ということになっているのですが、第二の措置である戦時災害による傷疾、疾病、身体障害、死亡のため生活困難となりたるものには生活扶助、療養扶助、出産扶助、生業扶助の四種類を給与するということになって、これは十年間受けられることになっているのです。  さらに、第三の措置である給与金の支給制度では、遺族給与金、障害給与金、住宅、財産への給与金などが支給されることになっていたわけです。  そうすると、あなたが言われる二カ月間でこれを切ってしまっていいということにはなっていなかったはずだと思うのですが、被爆者に対して実際にこの制度がそのように適用されて、十年問いろいろな援助をやったのかどうか。やらなかったとすればその理由は何か、お尋ねします。
  136. 大谷藤郎

    大谷政府委員 戦時災害保護法に基づく救助が広島、長崎においてどの程度、いつまで行われたかということを示す行政資料を現在私ども持ち合わせておらないわけでございますが、文献によりますと、広島につきましては昭和二十年十月五日、長崎につきましては昭和二十年十月八日まで行われていたと、一部に記載が残っておるそうでございます。  その後、恐らくその戦時災害保護法につきましては適用が行われていなかったのではないかというふうに思うわけでございますが、昭和二十一年に生活保護法が制定されまして、そこの第四十四条で「戦時災害保護法は、これを廃止する。」というふうになっているわけでございまして、私の個人的な考えでございますけれども、恐らく生活保護法を初めその他の社会保障の政策によってこういった方々に対する民生安定を図る、こういう考え方で引き継がれていったものというふうに理解しているわけでございます。
  137. 小沢和秋

    小沢(和)委員 昭和五十五年十一月一日発行の、ごく最近の発行ですが、広島市医師会史第二編を読みますと、いまお話があったとおり、昭和二十年十月五日に戦時災害保護法の適用が打ち切られたために、これ以後患者は自己資金によって治療することとなったというふうに記載をされているのです。  ですから、ああいういままでの歴史にないようなひどい被害を受けたような方々についても、もう二カ月たったら自分のお金で治療をしろということで突き放されて、その後昭和三十二年に原爆医療法が制定をされるまで、この人たちは全く放置をされてきたというふうに私は事態の経過を認識するわけですが、そうかどうか。そうだとすれば、私はいま振り返ってみたら、そのことだけでも実に申しわけない事態ではなかったかというふうに政府当局者としては痛切な反省を持たなければならない問題ではないかと思うけれども、その点どうでしょう。
  138. 大谷藤郎

    大谷政府委員 先ほども申し上げましたように戦後の一時期、わが国の経済力あるいは一般国民方々の生活水準等から考えまして、被爆者方々に対して特別な対策を講ずることははなはだむずかしかったのではなかったろうか、しかしながら、先ほど申し上げましたように、生活保護法を初め社会保障の諸制度をだんだん整備することによってそのことをやってきたのではなかったか、このように私どもとしては理解をしているわけでございます。
  139. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いま、敗戦直後の時期は大変苦しかったけれどもだんだん整備をしてきた、何か政府が積極的に整備を推し進めてきたように聞こえるわけですが、あの原爆医療法はどうしてできたかと言うならば、この調査室が出した本を見ても、私たちに配っていただいたものを読みましても、あのビキニ事件で昭和二十九年に久保山愛吉さんが亡くなられるというようなことを契機にして非常に運動が盛り上がって、その力の中でこれができてきたということがこういう資料の中にだって書かれてあるくらいで、そういう意味では、何か政府が積極的に整備を進める立場に立ってきたというよりは、この原爆関係法律というのは、いつも運動があって、そういう運動の中で政府の方は受け身でだんだん今日まで整備してきたというのが実態であったのじゃないか。その点についてももっと反省をして前向きになってもらいたいということをこの機会に申し上げておきたいと思うのです。  さて、そういうように非常に不十分ですけれども改善されつつあるということは私も認めているわけですけれども、次に運用の点でお尋ねをしたいと思うのです。  最近私どものところに被爆者健康手帳の交付が非常に厳しく制限されているというようなことについていろいろと陳情が参っております。また認定などについても非常に厳しい、締めつけが行われているんじゃないかというようなことが言われてきておるわけです。  そこで、まず確認をする意味お尋ねをしておきたいと思うのですけれども、この被爆者健康手帳をどういう人に交付するのかということについては、昭和三十二年の五月十四日にその手続、どういう書類を添付しなければならないというようなことについて公衆衛生局長の通達が出されておりますね。これを見ると、できるだけ客観的な被爆者であるということについての証明の資料を添えなさいということにはなっているけれども、しかし、そのいずれもない場合には親族でもいいし、また本人において当時の状況を記載した申述書及び誓約書でいいということになっているわけです。今日でもこの通達に基づいて行政がやられているというふうに理解してようございますか。
  140. 大谷藤郎

    大谷政府委員 昭和三十二年の通知におきます基準はそれ以来一貫して変わっておりませんで、現在でもその交付の基準をかたく守ってやっているということでございます。
  141. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ところが、実際にはどういう状態か。むしろ時間がどんどんたってくるからますます証明が困難になってくる、その実態に合わせて行政の方もますます弾力的に運用していかなければ、厳密な証拠を要求するような運用を強めていったのでは、実際には被爆者として当然いろいろな施策を受けなければならない人たちが締め出されていくということになるわけです。ところが、いま実際にはそういうように運用をされていっているのではないかということなんです。  私のところにいろいろ言われてきておるのも、たとえば目撃した、一緒に行動したという証言でなければだめだ。たとえばこの人は私のたな子ですという証言を大家さんがしてもこれはだめだというわけです。あるいは当時中学生だった人が被爆したということを同じ中学生の友人に証言してくれということで証人として出したら、あんた当時はまだ十七歳以下でしょう、これじゃだめだ。あるいは手帳がない人はだめだ。いろいろな事情で手帳をもらっていない被爆者というのは実際にはたくさんいるのですよ。ところが、自分でそういう手帳を持っていない人が証言してもだめだ。そして、中にはずいぶんひどいことを言うのですよ。高血圧の人がふるえる手でこの人は確かに被爆者ですということで二、三行書いて出した。そうしたら余白がまだいっぱいあるじゃないですか、これを真っ黒にするぐらい書いてこなくてはだめですと言った。こんなものは私は本当にナンセンスな行政のやり方じゃないかと思うのです。こういうことを挙げれば本当に切りがないのです。  私、先日このことの調査のために広島に行ったのです。そして、もらえないという何人かの方にお会いしたので、そのときの話も申し上げてみたいと思うのですが、一人は本田昌子さんという当時七歳でそういうことに遭われた方なんですが、この方は直接の被爆者じゃないのです。五日市町に収容されてきた被災者の人をお母さんが看護するために動員されて、十一日間お母さんと一緒について回った。お母さんはもちろん手帳をもらっているわけです。ところがこの昌子さんは母親と一緒に、もう七歳ですから赤チンを塗ったり包帯を巻いたりの手伝いもした。そして確かにそのことを見かけたという人も三人も証人がいるのだけれども、子供が看護する必然性がないと言ってはねられたというのです。こんなに三人も証人がりっぱにそろっておってもそういうような扱いをする。これは私は扱い方としては全く間違いじゃないかと思うのですが、いかがですか。  それからもう一つは、これも広島の郊外ですけれども、飯室というところの国民学校高等科の当時一年に在学した三人の方にもお会いしたのです。この方たちの訴えは何かというと、当時やはりこの飯室というところにも被爆者の方が避難をしてこられた。そこでその学校の校舎を病院に急造して、そして男女ともそのために動員されたというわけです。女子の方は全部看護したということで手帳をもらったけれども、男子の生徒の方は当時汚れた毛布を洗ったとか被爆者が移動するとき肩をかしたりとか、あるいは死体の処理などにも従事した。当時の先生がまだ二名も健在で、当時は男も女もなしにそういうようなことをやったのだという証言をしたけれども、これまた男子が看護に当たる必然性はないというふうに言ってこれが突っぱねられておる。教師の証言までこういうように認めないというなら、一体だれの証言があればいいのか。こういうような事例がいっぱいあるということなんです。  局長としてはこういうような運用でいいと思うかどうか、その点お尋ねします。
  142. 大谷藤郎

    大谷政府委員 関係者の立証資料として採用するかどうか、この問題につきましては、私どもとしては形式論理をもって律しているわけではございませんで、たとえば被爆者健康手帳を持っているとか持っていないとか、あるいは被爆当時十七歳以下であったというだけの理由で立証資料として採用しないというふうなことにはいたしておらないわけでございます。しかし、やはり通常考えますと、手帳を持っていない人よりも持っていた人の方が証拠能力があるし、未成年者よりは成年者の方が証拠能力があるというふうなことは考えられるわけでございますけれども、いずれにいたしましても証明しようとする目的、内容にかなっているか否かということについて現場で総合的に判断せられるべきものである。つまり被爆者手帳を交付するに足りるかどうかということについて常識的、総合的に判断せられるべきものであるというふうに考えるわけでございます。  そこで、先ほど具体例としてお示しいただきました、たとえば母親が看護されて、その子供さんが看護を行っていたかいなかったか、またその子供さんがいま大きくなられて被爆手帳を交付するのが妥当かどうかというふうな問題になってまいりますと、具体的問題でございますから、私いま直ちに結論を申し上げるわけにはいかないのでございますけれども被爆者の方を被爆地域でないところで看護した場合に被曝されるということにつきましては、たとえば直接被爆でありますとか、あるいは降下物による被曝でありますとかに比べますと、これは明らかに被曝線量も少ないことは事実でございます。したがって、そういった問題についてそこで総合的に判断せられるべきものでありまして、私いま直ちにその子供さんについて被爆手帳を交付すべきかどうかということについては結論は申し上げられないわけでございますけれども一般的に申せば、これはやはりなかなかむずかしいのではないだろうかというふうに想像いたすわけでございます。これについては、恐らくそういった立証能力のある人の有無というふうなことでそういうことがされているのではないというふうに私は想像いたすわけでございます。  また飯室国民学校のケースでございますけれども、これはちょっと私伺っておりますのにつきましては、先ほども申しましたように、看護した人につきまして被爆手帳を交付するに足りるかどうかということにつきますと、これは直接被爆とかそういった問題とは若干状況が科学的に考えて違うということは常識的に考えられるところでございます。したがって、飯室国民学校の場合も、伺っておりますと、女子生徒につきましては被爆者方々の着せかえだとか看護等直接被爆者に接する救護活動に従事された、男子の生徒は薪の運搬や机の移動をやっていた、こういうふうなことで女子の方については被爆者手帳を交付して、男子の生徒については、これについてもう少し確実な本当に被爆手帳を交付するに足りるかどうか、それを確認した証拠をまってそれについて手帳を交付しようということのように伺っておりますが、先生のそういうふうな国会でのあれもございますので、もう一度私どもといたしましてもこれについては十分慎重に検討いたしたいと思います。
  143. 小沢和秋

    小沢(和)委員 この前この社会労働委員会戦傷病者戦没者等の援護法改正を審議したのですよ。そのときも私は、戦後三十六年たっている、そうすると実際に当時戦地やらに行ってきた人でも、戦友はもう散ってしまっているとかいうようなことで非常に立証がむずかしいと言って、もう断念している人が多いのだということをお話しして、そのときも弾力的な実情に見合った運営をやってもらいたいということを申したのですけれども、これについてもやはり同じことを言いたいわけです。あなたはいま常識的、総合的にこれは判断をすべきことだ。常識的な答弁として私はそれを受け入れたいと思うのですが、末端でいま申し上げたような苦情がいっぱい出てきているということを考えて、ぜひともその点については実情に見合った運営をしていただきたいのです。  実際これは長崎県の例ですけれども原爆被爆者手帳交付申請等件数というのをそちらの方から資料としていただきましたけれども、昭和四十八年ころは申請に対して交付率というのは九六・四%なのですよ。このころはあるいは直接被爆をした人が主だったのだというような理屈も立つかもしれませんけれども、しかしその後どうかといったら、五十一年には五一・五%、それから五十三年には三三・四%、五十五年になりますと二五・一%というようにこの交付率が急激に下がってきております。これはいま申し上げたような末端での運用と無関係だとは言えないのじゃないかと私は思うのですよ。その点もう一度弾力的な実態に見合った運用をするという考え方を明確にしていただきたい。
  144. 大谷藤郎

    大谷政府委員 できる限りそういう被爆者手帳交付に該当する方につきましては、実態に即した交付が行われるべきである、またそういうふうにいたしたいというふうに考えるわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても被爆者健康手帳の交付というものは、それに伴います国の責任というものが生ずるわけでございますから、私どもといたしましても、やはりこれを厳正に執行しなければならないという点もございます点もひとつ御認識をぜひいただきたいというわけでございます。
  145. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私いま広島について具体的な事例を挙げたのですが、実を言うと長崎にも行ったのですよ。長崎でも聞かされたのは同じようなことなのです。長崎では私諫早で陳情を伺ったのですが、この諫早では二十年の八月九日に、被爆直後から続々と長崎から被爆者の方が運び込まれて、そして市内の海軍病院の分院やあるいは学校などの施設を使って、この被爆者の人たちに対する治療、看護が行われたのです。こういう人たちを看護したりするために、町内会とかあるいは女学校とかいうような関係でたくさんの方が動員をされて、五十一年の七月ごろまではほとんどの方が手帳をもらったというわけですね。ところがそのころを境にして非常に手帳がもらいにくくなったというよりは、ほとんど手帳をもらえなくなった状況だということなのですね。これについては、海軍病院の分院で民間人を動員したことがないというような証言を一部にする人があったことがきっかけになったというように聞いているのです。ところが行政管理庁の長崎支局というのでしょうか、この方で調べてみたら、どうも実態と違うのじゃないかということで、県に対してそのことについて照会したりしたというようなことも私新聞で承知をしているわけです。  行政管理庁の方がお見えになっているのじゃないかと思うのですが、どうしてそういうような照会をしたのか。行政管理庁としては、やはり海軍病院でたくさんの民間人、町内会などで動員された方々がこの被爆者の方たちを何日間にもわたって看護をしたという実態があったというふうに判断したから、そういうような照会をなされたのではないかというように思うのですが、その点の経過などについて、また行政管理庁としてはどう判断しているかというような点について御説明を願いたいと思います。
  146. 柴田嘉則

    柴田説明員 先生指摘の御相談事案につきまして御説明申し上げます。  先生御承知のとおり、昭和二十年八月九日から七日間、佐世保海軍病院分院と市内の国民学校あるいは中学校で重症被爆者の救護活動に当たられた方から御相談がございまして、被爆者健康手帳を速やかに交付してもらいたいという御相談に参られました。これに対しまして長崎行政監察局では申し出人からいろいろ事情をお伺いいたしましたのですけれども、基本的にはこれは事実認定、いわゆる看護、救護活動の事実認定の問題でございますので、申し出人が申し述べました活動内容と、それから提出されました資料を添付いたしまして、単に添付した資料に対する県の見解というものを求めたものでございます。  これに対しまして県の回答は、この方は一度五十一年の六月に交付申請をしておられますのですけれども、五十二年の一月に至りましてこれを取り下げております。ですから相談に来られました当時は未申請となっております。したがいまして、県がわれわれのところに回答してまいりましたのは、申し出人は手帳交付が未申請であるから申請が先決だ、その申請の手続をするようにわれわれのところで指導してくれ、こういう内容と、もう一つは、われわれが申し出人が提出いたしました資料につきましての県の見解をただしましたことにつきましては、提出資料を見ましたが、申し出人が申し述べておりますところの看護、救護活動を直接的には証明しているとはとらえがたいものであるというような回答でございまして、先生お尋ねの海軍病院内での活動云々については直接回答を得ておりません。  以上でございます。
  147. 小沢和秋

    小沢(和)委員 はっきりさせる意味でもう一遍お尋ねしますけれども、海軍病院で民間の人たちが動員をされて看護、救助に当たったということは認められるという考え方に立って、そういうことを全体として否定したのはおかしいんじゃないのかという立場での照会だったんじゃないですか。一人一人、この人がやったということについてまであなた方がその証拠があると言って照会したんじゃないことは私はわかってますよ。その点どうですか。
  148. 柴田嘉則

    柴田説明員 われわれも相談を受けましてその個人のことにつきましてあっせんいたしますので、その全体の、問題になっております海軍病院の分院で民間の方、特に婦人会の方々が活動に従事したかどうかということにつきましては調査をいたしておりませんし、それにつきましての判断はつきかねております。
  149. 小沢和秋

    小沢(和)委員 この諫早の海軍病院などで看護あるいは救助に当たったということで申請をした人たちが、その後県の方が態度を変えたために何百人と申請をしても却下をされるという事態になっているわけです。そしてそのうちの一部分ですけれども、国に対して、行政不服審査法という法律に基づいて、いまもう一度審査し直してほしいということで言ってきているわけです。私がこのの江頭市会議員からいただいた資料によると、この行政不服審査の申し立てをしている人は諫早の市内だけで百四十一名を数えるというふうになっております。  お尋ねをしたいと思いますのは、いまの問題について決着をつけるためにも、やはり厚生省の方がこの不服審査の請求のあるものについてどういうような判断をするかということがいまの事態を打開する上で非常に大きな役割りを果たすと思うんですけれども、これが実際にはなかなかさばけておらないようです。一体いつごろまでにいま出されてきているものは結論が得られるという見通しなのか、その点をひとつお尋ねしたいと思うのです。  それからもう一つ続けてお尋ねをしておきたいと思いますけれども、行政不服審査法の第二十五条によると、原則は書面審理だけれども、その審査の請求人または参加人の申し立てがあったときには、「申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。」ということになっているわけです。  この点についてはすでに、から去年の暮れに上京した人たちが口頭陳述をしたいという申し立てをしておるはずです。ところが地元に対してはそれを受け入れるともあるいはいつそっちへ行くということもないわけなんですが、これだけたくさんの人たちが問題をいま抱えている、そして申請も出してきておるだけに、市で厚生省としてはこの口頭陳述を聞く機会をつくっていただきたい、この点についてどうか。二つ続けてお尋ねします。
  150. 大谷藤郎

    大谷政府委員 行政不服審査請求は昨年の十二月に行われておりますが、厚生省といたしましては、申請者が実際に看護を行い、身体原爆放射能の影響を受けるような事情にあったかどうか、これをできるだけ早く確認いたしまして速やかに処理するという考えでございます。日時についてはいまちょっと正確に申し上げられませんが、できるだけ速やかに処理いたしたいと考えております。  それからもう一点でございますが、現在個々の申請者ごとに追加資料を必要とするものについてはそれを求める等事実の確認を行っておりますが、厚生省としては口頭で意見を聞くことは必ずしも必要でないというふうに考えておりますけれども、仮に申請者からそういうふうに強い申し立てがありました場合には、個別にこの問題について考えてまいりたいと思っております。しかし、そういうわけで、原則としてはできる限り書類で審査をするというたてまえになっておりますから、これについては、いま先生に、現地で口頭の申し立てを受けるかどうかということについてはお答えをいたしかねるわけでございます。
  151. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ちょっと認識をはっきりさせてもらわなければいけないのですが、仮にそういう申し立てがあればというお話だったのですが、私はさっきちゃんと申し上げているのですよ。去年の十二月にこの関係者の人たちが私の紹介で厚生省に行っているのですよ。そしてそのときに明確にそのことをやってもらいたいということを言ってきたけれどもどうなっておるのですかというお尋ねを、私は受けているのです。仮になんという話じゃないのですよ。だから、いままでそういう認識でおったとすれば、そのこと自体まことにこれは誠意のない態度だと私は言わざるを得ないと思うのです。  それから、他の省庁などでは現地まで行っていろいろそういうような言い分を聞くという機会をつくったりしているという実例は何ぼでもあるのですよ。それを知ってもなおかつそういう考え方ですか。
  152. 大谷藤郎

    大谷政府委員 私どもとしては申請者からそういうお話を聞いておらないわけでございまして、ただ、うわさといたしましてほかの方からそういうお話を伺っておる、申請者からそういった口頭申し立てをしたいということは聞いておらないわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても申し立てを受ける場所につきましては審査庁が選定することができるというふうになっておりますが、できる限り個別に検討をいたしまして対処いたしたいと考えるわけでございます。
  153. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私もあの十二月に厚生省の方に行っていただいた人の中にこの申し立てをした人が、直接の申し立て人が入っておったかどうかまではいま記憶にありませんけれども、その人たちの委任を受けた人が実際に行って直接そういうことを言っているのですよ。それでも何かまだ手続としてはあなた方の方では足りないというのですか。そういうような形式的な、整っているとか整ってないとかいうようなことばかり言っているから進まないのじゃないですか。この点については、いまあなた方のやっていることは余りに誠意がないということを私は厳しく指摘をして、その問題についてすぐ誠意のある検討をされることを要求しておきたいと思います。  それから、時間もありませんからあと一、二点全部まとめて質問をいたしたいと思うのです。  一つ被爆者への相談業務の拡充です。私自身もかつて県の原水爆禁止協議会の事務局長というような仕事をして、県の被爆者相談所に国から助成を出させるということで一生懸命運動したようなこともあるのですけれども、こういうような相談所活動などに対して国から全く補助がないわけです。この前の基本懇でもこういうような相談業務をもっと強化すべきだというようなことも言われているわけですけれども、その点についてどうなのか。何か若干ふやした、体制を強化したというようなことを言われているようですけれども、福岡県あたりなどにはそういうような恩恵は全然及んできていないのじゃないかというふうに私は考えるのです。被爆者というのは全国に散っているのですから、広島や長崎だけ手を打っておったのでは間に合わない。むしろある意味ではそういうような地域の人たちこそ、いろいろな情報やら何やらも不足して非常に難儀しているのですよ。だからそういうところまで手を差し伸ばしてこの相談活動を充実していただきたいと思うのですが、その点どうかということをまず一つお尋ねいたします。  それから指定医療機関の問題ですけれども、これも私どもの地域にも指定医療機関がありますけれども、このお医者さん自身もいろいろ情報不足なんですね。だからたとえば認定を受けるための診断書を書いてくれというふうに言われても、年をとったからそういうような症状を呈しておるのか、それとも被爆のためにそういうことになったのかというようなことについては自信がない。ところが診断書の様式には、「原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかである場合はその旨の意見」という欄があって、それを記入せよということになっている。だもんだから自信がないから専門の人のところへ行ってくれということで、結局なかなか書いてもらえない、認定がもらえないというような悩みがあるんですよ。  こういうようなことについては、実は去年もわが党の浦井議員が問題にした。それであなたは検討して後ほど御報告しますというふうに言われているというのですが、浦井さんに聞いたら返答ないそうですよ。だからこれはどうなっておるか。  それからまた、いまのようなことで、原爆の症状のことについてもっと情報が欲しいということにこたえる意味で、去年五百例ほどを都道府県に至急情報として提供したいというようなこともやはり答弁されておるようですけれども、この点についてもどうもまだ都道府県にそういうようなことをやられていないようですね。この点はどうか。  以上、幾つか質問しました。まとめてお答えください。
  154. 大谷藤郎

    大谷政府委員 相談業務につきましては、基本懇答申の中でも非常に重要視されておりますので、予算の中で相談の人件費補助につきまして、従来二人でありましたのを九人にふやす、わずか九人ということでございますけれども、なかなか人件費問題非常にむずかしい折でございましたので、ようやく九人を確保いたしましたが、これについてどう配置するかという問題については、実はまだ決めておらないという状況でございますが、いずれにいたしましても七人の増員を図ったわけでございます。  それから医療機関のお医者さん方につきまして情報をもっと提供せよというお話でございます。これにつきましては、都道府県を通じましてできる限り治療指針等につきましても情報を提供しているところでございますが、五十五年度から医療機関のお医者さん方の研修会、講習会というのを設けまして、ここでお話し合いをしていただきまして、できる限りそういった問題について誤解のないようにやってまいりたいというふうにいたしております。それにつきましては、旅費等につきましても手当てをしているわけでございます。  それから浦井先生につきましては、前々から御指摘をいただいておりまして、先生のおっしゃること、もっともでございますので、私どもとしてもこれは検討いたしておりまして、いずれ近く省令を改正いたしまして、それにつきまして非常にわかりやすい形にいたしたいというふうに考えております。これは遅くなりましてまことに申しわけない次第でございます。  それからケースにつきましての事例についてもっと明らかにせよ、これも浦井先生からも強く医師として御指摘をいただいていたところでございますが、これはようやく一応統計処理をいたしまして、昨年五月二十二日に都道府県の担当者会議におきましてその内容について説明をいたしております。これは浦井先生報告がおくれておりますので、これはできるだけ早く実物を持ってまいりまして、御説明伺いたいと思っております。(小沢(和)委員「私にも説明していいのですよ」と呼ぶ)先生にももちろん御説明伺います。  それから都道府県の方には、そういうことで国会での御審議をいただきました折のあれを受けまして、都道府県の連絡会議において示したところでございます。
  155. 小沢和秋

    小沢(和)委員 これで終わりますが、もうあと一点だけ。  先ほど申した点、ちょっと私気になるからもう一遍言わしていただくが、行政不服審査法では、本人たちなどから——本人だけと言っていないのですけれどもね。審査請求人または参加人の申し立てがあったときは口頭で意見を申し述べる機会を与えなければならないのですよ。だから義務なんですよ。それはあなた方の裁量によってどうしてもいいということじゃないのですよ。だからこの点についてはあなた方はその口頭陳述の機会を絶対与えなければならないのですよ。その認識ははっきりしているんでしょうね。  それからどうせ与えるのであれば、先ほどから言っておるように、これは長崎県と市で態度も違うというようなことで非常に不公平だというようなことで、何百人という利害関係者がおって、その人たちの一部が申し立てしている。だから国がどういう裁定を下すかによってその何百人かが解決の手がかりを得るということになるのですからね。やはりそのことを重視して地元にぜひ行って話を聞いていただきたいのです。  この点私はぜひ大臣にも前向きで検討していただきたいと思いますが、最後にその点は大臣いかがですか。
  156. 大谷藤郎

    大谷政府委員 先生指摘のとおりでございますので、できる限りこれにつきましては申請者の方々に対しまして御迷惑をかけないように対処してまいりたいというふうに考えておりますが、何分行政不服審査というのは行政をやっている者が審査することになりますので、仕事の問題もいろいろございますから、いや、しかし先ほどから先生がおっしゃっているように非常に重要なケースでございますので、これはできる限り前向きに検討いたしたいというふうに思うわけでございます。
  157. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わりました。
  158. 山下徳夫

    山下委員長 次回は、来る十二日火曜日午前十時理事会、十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十七分散会      ————◇—————