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1981-04-16 第94回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月十六日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 山下 徳夫君    理事 今井  勇君 理事 戸井田三郎君    理事 戸沢 政方君 理事 湯川  宏君    理事 田口 一男君 理事 森井 忠良君   理事 平石磨作太郎君 理事 米沢  隆君       金子 岩三君    木野 晴夫君       小坂徳三郎君    古賀  誠君       竹内 黎一君    谷垣 專一君       中野 四郎君    丹羽 雄哉君       葉梨 信行君    八田 貞義君       浜田卓二郎君    船田  元君       牧野 隆守君    池端 清一君       金子 みつ君    川本 敏美君       栂野 泰二君    永井 孝信君       草川 昭三君    塩田  晋君       浦井  洋君    小沢 和秋君       石原健太郎君    菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 園田  直君  出席政府委員         厚生政務次官  大石 千八君         厚生大臣官房審         議官      吉原 健二君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省環境衛生         局長      榊  孝悌君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 山村 勝美君         厚生省医務局次         長       山本 純男君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      金田 一郎君         厚生省保険局長 大和田 潔君         社会保険庁年金         保険部長    新津 博典君  委員外出席者         議     員 森井 忠良君        議     員 平石磨作太郎君         議     員 米沢  隆君         議     員 浦井  洋君         議     員 石原健太郎君         警察庁刑事局保         安部公害課長  中島 治康君         外務省経済協力         局技術協力第一         課長      川島  純君         大蔵省主税局税         制第二課長   大山 綱明君         国税庁直税部所         得税課長    冨尾 一郎君         厚生大臣官房企         画室長     長門 保明君         厚生省年金局企         画課長     長尾 立子君         厚生省年金局資         金課長     阿部 正俊君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   大橋 敏雄君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     大橋 敏雄君     ————————————— 四月十五日  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (米田東吾紹介)(第三〇一二号)  同(和田耕作紹介)(第三〇一三号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三〇一四号)  同(田邊誠紹介)(第三〇五八号)  同(栂野泰二紹介)(第三〇五九号)  同(小川省吾紹介)(第三〇九六号)  同(馬場昇紹介)(第三一一〇号)  旅館業の経営安定のため旅館業法改正等に関す  る請願久保田円次紹介)(第三〇一五号)  同(長谷川四郎紹介)(第三〇一六号)  同(小川平二紹介)(第三〇一七号)  同(金子一平紹介)(第三〇六〇号)  同(毛利松平紹介)(第三〇六一号)  同(大塚雄司紹介)(第三〇九七号)  同(金丸信紹介)(第三〇九八号)  同(木村俊夫紹介)(第三〇九九号)  同(戸沢政方紹介)(第三一〇〇号)  同(鳩山邦夫紹介)(第三一〇一号)  同(細田吉蔵紹介)(第三一〇二号)  同(中村靖紹介)(第三一一一号)  同(三塚博紹介)(第三一一二号)  同(天野公義紹介)(第三一四六号)  寡婦福祉法制定に関する請願上草義輝君紹  介)(第三〇一八号)  同(川田正則紹介)(第三〇一九号)  同外四件(有馬元治紹介)(第三〇二〇号)  同外三十二件(武藤嘉文紹介)(第三〇六二  号)  同外十六件(野呂恭一紹介)(第三〇六三  号)  父子福祉年金支給等に関する請願石井一君  紹介)(第三〇二一号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (広瀬秀吉紹介)(第三〇二二号)  公的無年金者となった重度身体障害者救済等  に関する請願中井洽紹介)(第三〇二三  号)  同(部谷孝之紹介)(第三〇二四号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願(中  井洽紹介)(第三〇二五号)  同(部谷孝之紹介)(第三〇二六号)  身体障害者に対する福祉行政に関する請願(中  井洽紹介)(第三〇二七号)  同(部谷孝之紹介)(第三〇二八号)  父子福祉年金支給に関する請願浦井洋君紹  介)(第三〇四九号)  社会保障社会福祉拡充等に関する請願(安  藤巖紹介)(第三〇五〇号)  同(浦井洋紹介)(第三〇五一号)  同(栗田翠紹介)(第三〇五二号)  同(小林政子紹介)(第三〇五三号)  同(中路雅弘紹介)(第三〇五四号)  同(不破哲三紹介)(第三〇五五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三〇五六号)  同(松本善明紹介)(第三〇五七号)  新鮮血液確保及び心臓病児者内科的医療費  補助に関する請願竹内黎一君紹介)(第三〇  九四号)  同(戸沢政方紹介)(第三〇九五号)  地元建設労働者就労確保等に関する請願(野  坂浩賢紹介)(第三一〇三号)  同(馬場昇紹介)(第三一一三号)  民間保育事業振興に関する請願國場幸昌君紹  介)(第三一四五号)  指定自動車教習所における労働条件改善等に関  する請願石原健太郎紹介)(第三一四七  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二八号)  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第二九号)  原子爆弾被爆者等援護法案森井忠良君外七名  提出衆法第一二号)  廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 山下徳夫

    山下委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川本敏美君。
  3. 川本敏美

    川本委員 まず私は、日本人の平均寿命の問題からお聞きをしていきたいと思うのであります。  御承知のように、昭和五十四年度のわが国における国民平均寿命というのは、男子が七十三・四六歳、女性が七十八・八九歳、こういうふうに報告をされておりますけれども、今後のわが国国民平均寿命というのは、まだまだここ十年先、二十年先、三十年先伸びていくと政府は考えておるのか、それとも大体この辺でもう頭打ちじゃないかと考えておるのか、諸外国平均寿命とあわせてお答えをいただきたいと思うわけです。
  4. 長門保明

    長門説明員 お答え申し上げます。  ただいまわが国平均寿命先生お述べになったとおりでございまして、一番新しいものが昭和五十四年でございまして、この平均余命が今後どういうふうな推移をたどるかということにつきましては、今後の死亡率改善がどのように進むかというふうなこととも関連いたしますので、将来予測ということは大変むずかしゅうございますが、ただ、諸外国の例におきまして、各年齢別死亡率状況を見まして、日本の場合よりももっと改善されているケースもございますので、なお、現在の七十三歳ないしは七十八歳から改善する余地はあろうかと存じますが、その詳細につきましては、ここではしかとしたことは申し上げかねます。
  5. 川本敏美

    川本委員 その詳細についてはしかとしたことは申し上げられぬと言いますけれども、やはり、これからのわが国高齢化社会と言われる中で、これからのいわゆる社会保障制度をどうするのか、あるいは医療問題をどのようにするのか、国の財政をどうするのかという問題との関連において、その辺の問題がきちっと政府において見通しが立っていなかったら、その基盤になる数字が間違えば、こんなもの問題にならないわけですから、その点しかとしたものがないでは、私は国民の立場からは納得できないと思うわけです。もう少しはっきりしてください。
  6. 長門保明

    長門説明員 平均寿命の問題につきましては、今後の死亡率推移によりまして動くわけでございまして、ただ、現在考えられますのは、老人死亡率のトップにございます成人病、脳卒中でございますとか、がんとか心臓病、こういったものに対する対策が進みまして死亡率改善いたしますならば、なお平均余命が伸長するということは要素としては考えられるわけでございますが、これを数字の上から的確に把握することはいささかむずかしゅうございます。  ただ、先生御心配の将来の社会保障を考えるに当たりまして、そういった人口の問題がどういうふうになるかということにつきまして、将来人口がどういうふうに推移するか、またその中で高齢者がどういうふうな割合を占めるかというふうなことにつきましては、これはすでに将来人口推計という形で昭和五十一年に私どもの人口問題研究所推計いたしております。五年前の数字でございますので、昨年の国勢調査の結果等に基づきましてこれの再計算をいたしたいというふうな計画で進んでおりますが、そういうわけでございます。平均寿命に限りましては、ちょっとはっきりした見通し等は申し上げかねる次第でございます。
  7. 川本敏美

    川本委員 それでは、私は昨年の臨時国会でも質問したのですが、合計特殊出生率についてお聞きをいたしたいと思うわけです。現在人口問題研究所でいろいろ人口推計が発表されておりますが、その数字はあくまでもいわゆる合計特殊出生率夫婦当たり二・一児という計算に基づいてなされているのですか。
  8. 長門保明

    長門説明員 人口問題研究所で五年前、昭和五十一年に行いました将来人口推計におきましては、ちょうど当時の出生動向合計特殊出生率が一・九のレベルでございまして、これが二・一まで回復するというふうな前提に立ちまして推計いたしたわけでございますが、その後実態の方はこの合計特殊出生率一・九一から二・一に回復いたしませんで、一番新しい数字として私ども承知しておりますところでは、昭和五十四年の数字でございますが、一・七七というぐあいに合計特殊出生率は低下いたしておりますので、したがいまして将来人口推計につきましてはそういう点で大きな修正の要素があるように承知しております。
  9. 川本敏美

    川本委員 現在、厚生省が使用しておる年齢階層別人口推移推定表ですけれども、これは六十年以降は人口問題研究所推計だということを言われておるのですが、この表で見ますと、昭和五十五年で総人口が一億一千七百余万人であったわけです。これが七十五年、西暦二〇〇〇年には一億三千三百六十七万六千人、そして西暦二〇二〇年、昭和九十五年になれば一億三千九百六万七千人、こういうような推計のもとに零歳児から十四歳あるいは六十五歳以上というような推計をいたしておるわけです。これはこのままで正しいと思っていますか。これに基づいて将来計画を立てて間違いないと確信を持っておるのですか。
  10. 長門保明

    長門説明員 先生いま御引用になりました人口問題研究所の将来人口推計ですが、これの基礎として使いましたのは昭和五十年の国勢調査の結果と昭和四十九年ころまでの出生あるいは死亡動向をベースにいたしまして推計いたしたものでございます。ただいま先生指摘のように、出生率につきましてはその時点における実績見通しと、その後の実績推移が違っておりますので、今後見直します際には、この出生率は低下したところを出発点といたしまして推計し直す必要があると存じます。  したがいまして、その意味におきましてこの五十一年に行いました推計に対しまして、六十五歳以上人口高齢者比率が、ゼロ歳から十四歳までの児童数の減少に伴いまして相対的に高まってくるというふうなことは見込まれるかと存じます。
  11. 川本敏美

    川本委員 どうもわからないのですが、西暦二〇五〇年、これから七十年先の人口推計しますと、これはもう合計特殊出生率が二・一という計算でするのと——現在もう一・七ですから、さらにこれが将来低下をしていって一・六五くらいになるのじゃないかと言う学者もいるが、一・六五で計算するのとでは大きな違いが出てくるわけですよ。  いま生きておる私たち政治家、特にいまの鈴木内閣園田厚生大臣もやはり二十一世紀、将来の日本の姿を頭に描きつついま年金問題や医療の問題や高齢化社会に対応する問題を考えなければ、さいの河原の石積みじゃないけれども、そんな全く計算基礎が異なった数字で物を判断しておったのでは、大きな誤りを犯すことになると思うのです。  二・一児で計算をしますと、二〇五〇年には推定人口が大体一億四千一万三千人と言われておる。ところが一・六五の合計特殊出生率計算しますと、その年には日本人口は九千六百八十万八千人、四千万人違ってくるわけですよ。大きな違いだと思うわけです。特にその中で大きく違ってきますのは、二〇五〇年には、十五歳から六十五歳までの働き盛り人々、いわゆる労働力人口といいますか、それに該当するかどうかは別ですが、そういう人たちの数が、二・一児で計算すると五千二百四十九万四千人になるのが、一・六五で計算すると三千七百七十四万人くらいにしかならない。そうすると、六十五歳以上の老人とゼロ歳児から十五歳までの、扶養しなければいかぬいわゆる従属人口との比率が大きく変わってくるわけです。  そういう点を考えますと、厚生省が今日でもなおかつ、五十一年の合計特殊出生率二・一というものを一つ基礎にして、いろいろなところへそういう人口推計資料を出してそれに基づいて計算しているということは、全く笑止千万と言わなければいかぬ。先ほど、五十四年で一・七七とおっしゃいました。五十五年はもう一・七、将来はこれがどうなっていくのか。ほっておいてもいまの日本では出生率は上がってくると確信していますか。先ほど、老人平均寿命がしかとわからぬ、それは病気がどのように変わっていき、そしてその病気に対する治療方法がどのように開発される、そういうことによって異なるからわからぬ、こうおっしゃったわけです。そうしたら、二・一の出生率確保できるという見通しはしかとありますか。
  12. 長門保明

    長門説明員 将来の出生率動向予測でございますが、確かに最近、この五十年代に入りまして合計特殊出生率は下降いたしております。その原因につきまして、実は昨年の八月、人口問題審議会におきましてこれの解明をされた結果が報告されております。その中の理由一つといたしまして、昭和二十二、三年代にベビーブームがございまして、このベビーブーム期の人がちょうど出産適齢期に差しかかりました時期、これが昭和四十年代の末でございまして、そのピークが過ぎまして、いわゆる団塊の世代出産に関しましてはやや活動が下降現象に向かう年齢に差しかかりまして、その次の人口数が少ない世代がちょうど出産適齢期にかかったという現象がございまして、これが相当大きなファクターを占めているのではなかろうかというふうに分析されたわけでございます。そのほかにも二、三の理由が挙げてございますが、一番大きな理由はそのことを挙げていられるわけであります。  それと同時に、今後若い夫婦が何人の子供を持とうとするのかという出産の行動の将来予測といいますか、この辺につきましては社会的、心理的な要因もいろいろあろうかと存じまして、はっきりしたことは予測が困難でございますが、少なくとも過去の動向を見ます限りでは、出生率が低下いたしましたその過程におきましても、女の人が生涯に産む児童数は、ここ十年くらいの間、相当大きな変化がございませんので、この一・七七という合計特殊出生率がこのまま一直線に下向きに進むものか、あるいは途中で反転するのか、その辺は現在の段階では何とも申し上げかねますが、しかし、どんどん下がるというわけでなくて、諸外国の例も参考にしながら将来の推計を行いたい、かように存じておるところでございます。
  13. 川本敏美

    川本委員 そうしましたら、総人口の中で占める六十五歳以上の老人人口比率というものは、厚生省は一九八〇年で大体八・九%、約九%だと言われております。これが二〇〇〇年になれば一四・三%だとか、あるいは二〇二〇年になれば一八・八%だとかいうようないろいろな数字がありますが、これについてはどのようにいま推定しておられますか。
  14. 長門保明

    長門説明員 将来人口の新しい推計につきましては、昨年十月一日に行いました国勢調査の一%抽出の結果が出ておりますので、それと直近の出生とか死亡等人口動態資料をもとにいたしまして推計をいたしたい。したがいまして、ことしの秋ごろにはこの推計結果が得られようかと存じます。  したがいまして、細かい具体的な数字はまだわからないのでございますが、ただ要素といたしましては、老齢人口の総人口に占める比率といたしましては、前回行いました昭和五十一年の推計に比べまして若干高い比率になるであろうということは予想されるところでございます。
  15. 川本敏美

    川本委員 そうすると、五十五年の国勢調査の結果で見直しても、いままで推計しておった老人人口の占める比率というものは、下がるのではなくて、逆にその比率が高くなっていく傾向にある。これは出生率との関係から見ても当然私は予測されることだと思うわけです。そういうことになりますと、これは大変な問題になってくるわけで、この委員会でもたびたび指摘をされておるところでありますけれども、厚生年金受給者あるいは国民年金受給者、こういう受給者数の将来の見通しについてはどうなっていますか。
  16. 長尾立子

    長尾説明員 お答えを申し上げます。  昨年五十五年に行いました厚生年金国民年金財政計算時に推計をいたしました数字を申し上げます。  まず厚生年金でございますが、五十五年度におきまして老齢年金受給者は百九十九万人でございますが、二十年後の昭和七十五年におきましては、これが七百六十七万人にふえる予定でございます。八十五年におきましてはこれが一千四十六万人にふえるわけでございまして、現在を一〇〇といたしますと五倍になるという状況でございます。  次に国民年金でございますが、国民年金老齢年金受給者数は現在五百二十一万人でございますが、昭和七十五年におきましては八百四十三万人になりまして、八十五年におきましては八百九十六万人、現在に比しまして約七割強の増加を見込んでおるわけでございます。
  17. 川本敏美

    川本委員 いまおっしゃったように、厚生年金では大体これから二十年先、さらに四十年先というのを見通した場合、四十年先には厚生年金の場合は受給者数は約四倍になる。国民年金でも七〇%ほどふえる、こういうことになるわけであります。そういうことですから、これは自然受給者数がふえて、そして今度は一方保険税を払ったり保険料を負担する人々の数が減っていくわけですから、これは将来の保険税年金税あるいは厚生年金保険料、こういうものが大きくふえていくんじゃないかと私は思うわけです。ことしの四月一日から国民年金の場合は一人当たり掛金が四千五百円ですか、これが将来二十年先あるいは四十年先はどうなりますか。
  18. 長尾立子

    長尾説明員 国民年金保険料について申し上げますが、国民年金保険料は、次期計算期まで法律で決まっておるわけでございますが、先生いまお話ございました、昭和五十六年度の四千五百円をスタートといたしまして、以後三百五十円ずつ引き上げるという計画を持っておるわけでございます。これにつきましては、給付の面におきまして物価スライドがございますと、いま申しました額に物価スライド率を乗じましたものが現実の保険料ということになるわけでございます。  次に厚生年金でございますが、厚生年金につきましては率で決まっておるわけでございまして、男子の場合一〇・六%ということが次期計算期までの料率として決まっておるわけでございます。  この両制度につきまして、先生が御指摘になりました今後の給付の増、受給者の増という中で保険料がどういうふうに上がっていくかということでございますが、被保険者数見通しといたしましては、厚生年金は今後約三割程度は増加するのではないかというふうに見込んでおるわけでございます。国民年金はやや漸減するというような状況であろうと思うわけでございます。昭和八十五年時点というものを考えますと、厚生年金の場合には、標準報酬がどういうふうに上がっていくかというような予測を立てて議論をする必要があると思うのでございますが、一定の条件のもとに推計をいたしますと、現在の料率の一〇・六%が三〇くらいの料率にお願いせざるを得ないのではないかということでございます。国民年金につきましては、現在の価額で申し上げまして一万四千円、一万五千円程度の額になるのではないかというふうに予想しておるわけでございます。
  19. 川本敏美

    川本委員 先ほど来おっしゃったように、厚生年金については現在いわゆる受給者と被保険者の対比で見ますと、被保険者が十五・六人に対して受給者が一人という計算ですね。それがあと二十年もたつと四・九人に一人の割合に変わってくるわけですから、いまおっしゃったように、あるいは保険料率厚生年金の場合は三〇%になる。あるいは国民年金の場合は一万四千円から一万五千円ぐらいが想定されておる、それはそうでしょう。仮に二十万円のサラリーマンがおるとしますと、三〇%ということになると六万円。六万円を労使で折半するとしたら三万円、これが夫婦厚生年金掛金ですね。国民年金は半分だから、一人分だから一万五千円程度だ、こういうことはだれでも計算したらすぐわかる話だと思う。四十年後になりますと、厚生年金は三四・七%ぐらいの負担率になると言われている。その当時になると、これまた国民年金の方は一万七千円、八千円を超えなければ当然成り立っていかないということになってくる。  こうなりますと、これは大変な国民負担になってくると思うわけです。国民年金について、五十五年の財政計算の結果が出ておると思うのですが、日本国民年金西欧並み成熟するのは大体いつごろになりますか。
  20. 長尾立子

    長尾説明員 成熟の度合いを、現在の被保険者に対します老齢年金受給者比率というふうに考えますと、すでに国民年金につきましては、諸外国とほぼ同じ程度成熟状態に達しておるというふうに考えます。すなわち、国民年金につきましては十年年金、五年年金等の非常に資格期間の短い方につきまして受給権を付与するという制度でございますので、相当早期から受給者が出ておりますために、現在相当の成熟化状態になっておるというふうに思うわけでございます。
  21. 川本敏美

    川本委員 厚生年金の方はどうですか。
  22. 長尾立子

    長尾説明員 厚生年金の場合におきましては、諸外国成熟化状況の約半分程度の水準にあると思うわけでございます。
  23. 川本敏美

    川本委員 国民年金は大体成熟度西欧並みに近づいてきておる。厚生年金の方はまだしばらくゆとりがある。しかし、急速な高齢化社会ですから、いずれここ十年か十五年のうちには追いついていくわけですよね。そういう中でやはり一番われわれとして問題にしなければいけないと思うのは、社会保障負担率の問題だと思うわけです。現在、社会保障負担率というものは国民所得の大体一〇%くらいに近づいてきておると言われていますが、どうですか。
  24. 長門保明

    長門説明員 お答え申し上げます。  昭和五十四年度におきます社会保障負担の国民所得に対する比率でございますが、九・二%ということになっております。
  25. 川本敏美

    川本委員 そうすると租税の負担率社会保障負担率を合計しますと、昭和五十年では大体二三・八%程度だったはずです。それが昭和五十六年度ではどうなっていますか。
  26. 長門保明

    長門説明員 私ども手元に持っております資料は五十四年度の数字でございますけれども、租税負担の方が国民所得対比で二二・〇%、したがいまして、先ほど申し上げました社会保障負担の九・二と合わせますと三一・二という負担割合でございます。
  27. 川本敏美

    川本委員 もっと新しいものがあるのじゃないですか。五十六年度の予算編成の中で、その予算の中で恐らくこの数字は出ていなければならぬはずだと私は思うのです。
  28. 長門保明

    長門説明員 五十六年度の見込みでございますが、社会保障負担が一〇・一、租税負担が二四・二、合わせまして三四・三という数字でございます。
  29. 川本敏美

    川本委員 これは現在でも大変な状態ですけれども、この三四・三という数字は、専門家に言わせますと、まだまだヨーロッパの諸国から見ると低いんだ、もっと国民負担を大きくしても西欧並みということにおいてはまだまだ国民の負担を大きくする可能性が残っておるというような言い方をされておるゆえんだと私は思うのです。  しかし、先ほどお聞きしたように国民年金でも大体ヨーロッパ並みに近づいておるけれども、まだ全く同じというところまでいっていない。大体老齢者の数が四人に一人といいますか国民全体の二五%の成熟度までいくには大体六十年くらいになるのじゃないか、あるいは厚生年金については七十五年くらいになるのじゃないか、そうなると厚生年金の場合はあと二十年先ですよ。そういうことから見ますと、今日すでに三四・三になっておるのがあと二十年先になれば社会保障負担率というものは大体どのくらいになると思っておるのですか。
  30. 長門保明

    長門説明員 二十年先の姿につきましては、私ども実は負担の方は社会保障負担つまり社会保険料負担と租税負担との割合等の関係もございまして、この辺は試算いたしてございませんが、一つの参考になる目安といたしましては、昭和五十三年度におきます社会保障給付費の国民所得に対する割合というのが一一・九%というふうな数字になっておりますが、これがこの制度の仕組みこのままで昭和七十五年、約二十年先におきます人口の高齢化等の要素、これをそういう要素だけで試算いたしますと、国民所得対比が一一・九が約二〇%程度になろうか、こう見込まれておるのでありまして、一一・九%に対します社会保障負担が九%台、それから租税負担、これは社会保障だけではございませんでその他の財政全般についてでございますが、二二ということで、合わせて三〇%台ということでございますので、その辺で将来の負担がどういうふうになるのか、これに相応した形でふやさざるを得ないということが考えられるわけでございます。  ただ直近の数字といたしましては、現在私ども政府で持っております七カ年計画におきましては、昭和六十年度におきましては社会保障負担、現在一〇でございますのが一一%程度の負担ということを見込んでいるところでございます。
  31. 川本敏美

    川本委員 先ほど来いろいろお聞きしてまいりましたように、いまお答えもありましたけれども、二十年後には社会保障負担が大体二〇%ぐらいになる、こういう見通しを持っておるわけです。ところが、人口推計については二・一児という合計特殊出生率を前提として計算しておる人口ですけれども、二・一で計算すると日本人口のピークというものはあと七十年先、二〇五〇年ぐらいに一億四千万人台でピークになるわけです。ところが一・七ということで計算し直しますと、これは西暦二〇〇五年、あと二十五年で一億三千万人台でピークになるわけです。そうすると、その中での従属人口比率というものが大きく変わってくる。老人人口比率というものも大きく変わってくる。  そういうことになると、いまおっしゃった二十年先に約二〇%だという数字も大きく変わらざるを得ないんじゃないかと私は思うのですが、その点についてはどうですか。
  32. 長門保明

    長門説明員 先生指摘のように、先ほど申しました二十年先の社会保障給付費の国民所得対比の数字、これは五十一年の将来人口推計をもとにいたしまして算定いたしたものでございますので、最近の出生率動向を前提にいたしまして将来人口推計いたしますと、確かにその点、この数字が動いてくるということは御指摘のとおり見込まれると思います。
  33. 川本敏美

    川本委員 これはやはり早急に政府として現在の出生率に合わせた推定をやり直さなければ、こういう社会保障負担率の問題、あるいは租税負担率と合わせた国民負担がどうなるのかということ、こういうようなことも議論できないと私は思うわけです。  厚生大臣、どうでしょう、この点について早急に見直す必要があると思うのですが、大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
  34. 園田直

    園田国務大臣 ヨーロッパの国々と比較して日本が急速に高齢化社会が来るその原因は、いまの御発言の中にありましたように人口出生、寿命の延長、こういうことからくるわけでありまして、それからすると、いま厚生省が持っております資料というのは非常におくれております。私もやはり寿命は伸びる、出生率は二・一は維持できない、私は一・六、もっと落ちるおそれもある、こう見ておるわけであります。だからこそ高齢化社会が急速にくる、こういうことでありまして、したがってその次に来るのは、そうなればなるほど社会福祉というものが非常に大事になってくる。ところが、一面からは給付と負担の問題がだれが考えても出てくるわけでありますから、こういう面から早急に見直して、そうして長期に安定するような計画をつくらなければならぬと考えております。
  35. 川本敏美

    川本委員 そこでもう一度お聞きしたいと思うのですが、保険料の負担の限界は大体どのくらいのところが限界だと思いますか。
  36. 長尾立子

    長尾説明員 保険料の負担の限界は一概に申し上げられない面があると思うのでございますが、先生指摘のようなすでに老齢化状況に到達いたしております現在の西欧諸国におきまして最も高い年金負担率を持っておりますのが西ドイツでございますが、これが現在一八・五という水準でございます。そこで、西ドイツとわが国の賃金の違い、具体的にはボーナスというものを私どもの場合は算入いたしておりませんので、そういう点を考慮いたしますと、二〇程度というものが一つの目安ではないかというふうに言われておると思っておるわけでございます。
  37. 川本敏美

    川本委員 そうすると、大体あと二十年たてばいわゆる保険料負担の限界がやってくる、こういうことになろうかと思うわけです。こうなると、それから先の社会保険料あるいは年金等社会保障国民負担というものがいまの制度のままでいいのかどうか、いまの制度でやっていけないということになるわけです。年金財政が破綻を来すか、それとも国民生活が破綻を来すか、どちらかが破綻を来さなければならない仕組みになっておる。  この仕組みについて、あと二十年あるからその間にゆっくり考えたらいいと思っておるのか。私は、先ほど大臣もおっしゃいましたが、早急に推計を見直す中で将来の年金のあるべき姿というものを確立していかなければいけないと思うわけですが、その点について厚生省はどのように考えていますか。
  38. 長尾立子

    長尾説明員 先生のお話のように、厚生年金国民年金いずれにおきましても今後受給者が増大いたしますので、その給付費をどういう形で賄っていくかということが最大の課題になると思っておるわけでございます。そこで、今後の高齢化社会の中で老齢年金等の年金がその重要な役割りを果たしていかなくてはいけないということでございますので、現在の給付水準というものを確保する必要があるというふうに考えておるわけでございますが、現在の給付水準を確保しつつ、こういった財政の急増に対しましてどういう形でこたえていくかということになりますと、必要な方に必要な給付を行っていくというような原則に立ちました改善を考えていかざるを得ないと思うのでございます。  一方におきまして、なかなかに重い費用負担と思うわけでございますが、被保険者の方には適正な負担をお願いしなくてはならないというふうに考えておるわけでございます。
  39. 川本敏美

    川本委員 給付水準を維持していくということですけれども、現在ヨーロッパの国々の年金給付水準に比して日本年金給付水準は、これをよく厚生年金の三十年のモデルをとって政府は物を言うわけですけれども、これは私はおかしいのではないかと思う。まだ実際に大多数の者が受けていないそういう水準をとって諸外国と対比をして、いかにも日本年金制度が充実しておるかのごとく、今日すでにそのような年金を大多数の国民が受け取っているかのごとく見せかけるのは、全く虚勢を張ったものとしか言えないと私は思うわけです。だから本来から言えば、いわゆる老齢福祉年金を今日の状態では諸外国年金と対比すべき性質のものだと思うのですけれども、いま企画課長おっしゃいましたけれども、年金給付水準を確保するというのはどの程度給付水準を考えておるのですか。
  40. 長尾立子

    長尾説明員 年金額の国際比較につきましては、これは先生指摘のように、どこの制度、どの金額をもちまして国際比較をするかということは大変むずかしい問題であると思うのでございまして、諸外国の場合の制度も、たとえば制度が分立しております西ドイツにおきましてどの制度をとるかというようなこととか、それからアメリカにおきましても先生指摘のような経過的な老齢年金が現在のOASDI以外にございますが、そういうものをとるかどうかというような問題はなかなかにむずかしい問題があると思うのでございますが、私ども一つは、賃金に対します比率をもちまして年金の水準を比較したいという意味で、被用者年金を一応とらせていただいております。  したがいまして、厚生年金の場合にはモデルでございませんで、現在の全受給者を平均いたしまして、それをボーナス込みの賃金に対しまして比較をいたしております。そしてこの場合には、そのボーナス込みの賃金に対します比較といたしまして、夫婦の場合におおむね四四・三%という水準になっておるわけでございます。こういうものを考えますと、諸外国の例、たとえばイギリスの四四%、西ドイツの四二・六%、西ドイツもこの被用者年金をとっておりますが、これと比較いたしますと、まあ、これはそのほかのいろいろな制度との絡みがございますのでこれをもって結論をするのはなかなかにむずかしいと思いますが、一応の水準にはなっておるのではないかと思っております。  そこで、先ほど申し上げました現在の水準を維持するという考え方でございますが、モデルの年金額を決めますときに一応現在の被保険者の方の平均の標準報酬、これは大体ボーナス以外の平均賃金というふうに考えてよろしいかと思うのでございますが、それの六割をめどといたしまして水準を設定いたしまして、これを基準にいたしまして、たとえば定額部分の単価、それから報酬比例部分をどういう形で上げていくかということを決めております。それで私がいま申し上げましたのは、現在の方の賃金の大体六割程度をめどとするという水準については国民の皆様の納得を得られておる水準ではないか、そしてこの水準を維持したいということを申し上げたわけでございます。
  41. 川本敏美

    川本委員 いまお答えになりましたが、一九七七年のわが国の状態で見ますと標準が大体五四%ぐらいですよね。そして七八年で五六%、これを六〇%とおっしゃいましたけれども、大体その水準で今後維持していこうというお考えではないかと私は推察をするわけです。  そこで、国民年金の積立金あるいは厚生年金の積立金の累積額はいま幾らありますか。
  42. 長尾立子

    長尾説明員 見込みでございますが、国民年金におきましては約二兆円、厚生年金におきましては約三十兆円でございます。
  43. 川本敏美

    川本委員 そうなると一年間に必要とする財源、さしあたり五十六年度で要る財源等から見ますと、現在国民年金の場合は二年分もないわけですよね。あるいは厚生年金の場合は、仮にいまおっしゃった三十兆円として六年ぐらいですか五年ですか。(長尾説明員「現在、給付費は約四兆円ということになっております。」と呼ぶ)四兆円ですか、そうするともう少しあるのかもわかりませんが、大体そういうことになるのではないかと思うわけです。そういう状態の中で考えますと、そして先ほど来おっしゃいました負担の最高限度といいますか限界といいますか、そういうものが想定される中で、これは将来にわたって大変な状態をいま生み出してきておることは間違いないと思うのです。  そこで、新経済七カ年計画等の中でいわゆる「日本型福祉社会」という言葉が出されてきております。この「日本型福祉社会」という言葉は、私が先ほど来質問してまいりましたいわゆる新しい高齢化社会の中で、年金財政社会保障財政というものが二十年先になると行き詰まることがもうはっきりと見えてきた、国民の負担も行き詰まるということが見えてきた、そういう中でそれから後のわが国社会保障制度あるいは福祉社会をどのような形のものに想定するか、こういうことの発想から生まれてきた言葉ではないかと私は思っておるわけです。  そこで、新経済七カ年計画の中で言われておるいわゆる日本型福祉社会というのは厚生省では大体どういうものを想定いたしておるのですか。
  44. 長門保明

    長門説明員 先生お尋ねの七カ年計画の中におきましては日本型福祉社会につきまして言及しているところでございますが、これは従来は、欧米先進諸国へのキャッチアップを方向としておりましたが、わが国社会保障の水準もおおむねこれらの諸国に比べて遜色のないところにまいりまして、独自の道を歩き出さなくてはならないということで日本型福祉社会というふうなことを申しているわけでございます。  その内容といたしましては大きく三つに分けまして、本格的な年金時代に備えるということで、年金制度が今後の社会において十分機能していけるような、体質強化というふうな問題でございます。二番目に、保健医療対策を推進する。三番目に、社会福祉施策を拡充する。この中では在宅福祉サービスの充実でありますとか福祉施設の整備、市場機構を通じて提供されますサービスの活用ということを眼目にいたしまして社会保障を整備し、新しい今後の社会に対応していかなくてはならないということをうたっております。
  45. 川本敏美

    川本委員 まずそこで私は大臣にお聞きしたいと思うのですが、先ほど課長からお答えいただきましたけれども、年金給付水準については今後将来にわたって平均収入の六〇%程度を維持していきたい、このことは、日本型福祉社会の根幹をなす年金給付のあり方について、将来とも変わらないと思いますか。
  46. 園田直

    園田国務大臣 先ほど課長から申し上げましたとおり、有効適正な、真に必要なところに必要な手を打つこと、これは当面の問題でありますけれども、そうやっても行き詰まると私は考えております。そこで、水準の問題でありますが、水準は正直に言って、俸給の全体から見たパーセント、現段階ではこれを維持することが精いっぱいだと考えておりますが、将来にわたっては逐次変動につれて修正をしていくべきものだとは考えております。
  47. 川本敏美

    川本委員 それでは、国民年金の方をお聞きしたいのですけれども、国民年金給付の水準はいま五万円とか四万円とか言われておりますが、六十年には給付の金額は幾らになるのですか。
  48. 長尾立子

    長尾説明員 国民年金給付の水準につきましては、原則として御夫婦二人で厚生年金のモデル年金をめどに水準を決めてきたわけでございますが、一方保険料負担につきまして、低所得の方もおられるということでございまして、非常に厳しい収入面の制約があるわけでございます。五十一年の時点国民年金審議会から、今後の国民年金の将来的な推計を考える場合におきましては保険料負担との均衡を十分に配慮して給付のレベルを考えていくようにという御指示をいただきまして、それ以来単年度収支を合わせることをめどといたしまして、先ほど二兆円という御説明を申し上げましたけれども、一年半程度の積立金を持ちつつ制度の運営をいたしてきたわけでございます。将来において、先ほど申し上げましたように、厚生年金といたしましても現在の賃金の六割程度の水準を維持したいと思っておるわけでございますが、国民年金の場合には、将来におきましては現在の十年年金受給者等がいわゆる本来の年金受給者の四十年または三十年というような年数を持った人間になるわけでございますが、この時点におきましては、現在の厚生年金のモデル年金よりも若干低い水準、すなわち三十年加入で申し上げますと現在の金額におきまして十一万三千円程度の水準になるというふうに考えておるわけでございます。
  49. 川本敏美

    川本委員 いま厚生年金に入りたての若い人とかあるいは二十歳代の若い人は、高い保険料を取られるけれども将来自分たちが六十五歳を超えて老齢化したときに果たしてそれだけの年金水準が確保されるのかどうか、こういうことに対して非常に大きな不安を持っておるわけです。先ほどからのお答えの中でも明らかなように、これはなかなか大変な課題だと思うわけです。しかし、やはりその点についてきっぱりとした政府の方針が示されない限り、若い人たち国民年金にも加入しない、国民年金に加入するよりも民間の保険会社のものに入っておった方がましだという意識が広まりつつあるわけです。厚生年金は強制加入ですからやむを得ず加入しておるけれども、私たちに出会ったら、われわれが年がいったときにはもらえますのかとよく言われるわけです。  その点について、大臣、どうでしょう。いまの若い人たちが老後の社会保障に対してさえ不安な気持ちを抱いている状態、これを解消するためには——先ほど来の私の質問に対する答弁を考えましたときに、これじゃやはり若い者の不安は消えないなという感じがするわけです。そこで、日本型福祉社会という言葉の中で出てくる問題ともあわせて、この辺についてきっぱりとした将来像というものを国民の前に示す必要があるのじゃないかと思うわけです。  さきの新経済七カ年計画の中では、一つ日本型の家庭本位、家族本位といいますか、親を養うのは子供の責任だ、子供を教育するのは親の責任だ、親が病気になったら看病するのは子供の責任だ、赤ちゃんが病気になったら医者へ連れていって看病するのは親の責任だ。日本型福祉社会という言葉の中には、そのすべてを家族で、自分でやりなさい、自分たちで自立自助をしていきなさい、お互いに隣近所、親戚同士助け合いなさい、そういう相互扶助の精神に基づいてやりなさい、そして公的な福祉というものはあくまでもそれの補完的な役割りを果たすものだ、こういうような認識に立っておるのじゃないかと思うわけです。  園田大臣、この間の日曜日、各党の行政改革についての政治討論会をNHKのテレビで見ておりましたら、中曽根行政管理庁長官はどう言ったかといいますと、将来の日本の姿はセルフサービスの社会をつくることにあるのだ、だから国民は全部これからセルフサービスですよ、何もかも自分でやってくださいよ、こういうことを目指しておるのが今度の行政改革だ、こういう趣旨のことを言われた。福祉の問題もセルフサービスですか、大臣はどう思われますか。
  50. 園田直

    園田国務大臣 言葉の使い方で、どういう意味で言われたかわかりませんけれども、私はやはり、社会福祉の根本は助け合い運動という精神から来るものであると考えております。二番目には、親が子をほったらかす、子が親をほったらかすという風潮が出てきたのはどうも事実でありますが、日本型福祉社会というのは、親は子、子は親を見るから、政府はめんどうを見なくてもいいのだというのは全くの誤りであり、親が子のめんどうを見、子が親のめんどうを見るような環境をつくっていくことが福祉制度の目的であると私は考えております。
  51. 川本敏美

    川本委員 弱い人たちが将来生活に心配の要らないように、そして最低の生活が保障されるような、そういうシビルミニマムというようなものが国民の前に示されなければ、日本型福祉社会と言っても、それが一体どんなものかということは国民はわからないと思うのです。将来、老人がふえ、高齢者がふえていき、だんだんと若い人たちが減り、人口が減っていくという社会の仕組みの中で、若い人たちは負担にたえ切れなくなる時期が来るわけですから、そのときに国家として、政府としてどれだけの公的なものを保障するのか。こういうことが示されない限り、国民の立場からは納得できないと私は思うわけです。  そこで、いま受益者負担の問題だとかいろいろ言われていますが、どのようにして公平な社会をつくるのか、どうして効率のよい社会をつくるのか、こういうところにしぼっていかれるべきではないかと思うのですけれども、私は、最終的に日本型福祉社会におけるいわゆる福祉、社会保障、老後の生活、こういうすべてのものを含めたシビルミニマムというものが厚生省から発表されて、そしてそれが国民の間に理解をされ、国民的コンセンサスを得る、こういうことがいまの段階で一番大切ではないかと思っておるわけでございます。その点について、政府として取り組む決意はありますか。
  52. 園田直

    園田国務大臣 まず、先ほど言われた年金の問題でありますが、国民の中に年金の将来に対する不安が出てきた。そこへもっていって、いろいろな保険会社が年金を勧誘して歩いているという話を承っております。そこで、長期の計画をつくって、しかもその計画を逐次修正しながら国民に明らかにすることがきわめて大事であると考えております。
  53. 川本敏美

    川本委員 それでは話を次に進めたいと思うのです。  実は昨年の臨時国会で、私は児童手当に対する所得制限の問題について質問をいたしました。そのとき大臣は、この児童手当の問題は、先ほど言いました合計特殊出生率等を考え、当面の財政対策として考えるのではなしに、日本の将来を展望して、所得制限を強めるべきでないと思う、だから厚生省としても全力を挙げて来年度予算の中で所得制限を強化しないようにがんばります、こういう決意の披瀝をされたわけですけれども、残念ながら今度は、四百五十万円と児童手当の所得制限額が厳しくなったわけです。あるいは老齢福祉年金における所得制限についても、新たに六百万円から八百七十六万円というランクが設けられて、現在月額二万四千円ですが、千円引いて二万三千円というものが新たに考えられる。こういうようなことで、児童手当にしてもあるいは老齢福祉年金にしても、所得制限がだんだん厳しくなる方向を向いておる。先ほど来のお話のように、幾ら給付水準を上げてもらっても、所得制限が厳しくされればこれは給付されないわけなのですから、大変な問題を含んでいると思うわけです。  その点について、今後この所得制限をさらに強化するというような大蔵省の方針に対して厚生省はどのように考えておるのか、ひとつお聞きしたい。
  54. 園田直

    園田国務大臣 まず児童手当の問題でありますが、今度の予算折衝で財務当局は、苦しいながらも私の方の要求をある程度満たしてくれた、個々の問題ではいろいろおしかりを受ける点があるかもしれませんが、概略を言うとそう考えております。その中で最後まで論争の的になったのは児童手当の問題でございまして、これが異例の大臣折衝三回ということになってきたわけであります。御承知のとおりに児童手当はここ数年来据え置きで、据え置きということはだんだん抑えられてきておるわけであります。したがいまして、ここで歯どめをする必要がある。そこで私は、この児童手当を据え置きにされたが、ここで歯どめをして、正直に言いますと将来さらに充実すべきだという考え方ですが、一方にはこれはだんだんなくしていこうという考え方があることも事実であります。かつまた、私の考え方は、与党で必ずしも多数の支持を受けることでないこともよく知っております。しかし、あくまでこれは将来重視しなければならぬと私は思う。そこで最後の妥協点として、所得制限は強化をするが、その強化した分のお金は困った方に回してこれをふやす、こういうことで妥協したわけであります。
  55. 川本敏美

    川本委員 今後所得制限をさらに強化することのないように、ひとつ努力をしていただきたいと思うわけです。  次に、簡単なことですけれども、年金支給回数についてであります。年金は拠出制といいますか厚生年金とか本人が掛金を掛けておるものについては、三カ月に一回とか、そして福祉年金あるいはその他本人の掛金によらない年金については、四カ月に一回とか、通算年金だったら年に二回というような支給回数になっておるわけですが、これを、年金で生活している人たちがだんだんとふえてきておるという現状の中で、もうオンラインも完成したことですから、できれば二カ月に一回、最終的には一カ月に一回というのが一番いいのだと思いますけれども、三カ月に一回なのを二カ月に一回というように、あるいは四カ月に一回なのを二カ月に一回というように、国民の要望にこたえて支給回数をふやすべきではないかと思うのですけれども、その点についてはどう考えますか。
  56. 新津博典

    ○新津政府委員 ただいまの年金の支払い回数の問題は、受給者の立場、国民の立場に立って、大変重要な課題だと思います。ただ先生御承知のように、過去十年くらいの間に一挙に受給者が十倍になりまして、拠出制だけでも一千万人を超え、福祉年金を入れると一千五百万人でございますが、一方では行政簡素化というようなことで、職員とかいろいろな経費、予算を抑えられるということでございまして、現状の事務体制のもとでは、率直に申し上げてこれ以上支払い回数をふやすということはきわめて困難でございます。  けれども、課題の重要性から言って先生のおっしゃっているとおりでございまして、社会保険庁も、人がふやせないなら知恵で対応しようということで、昭和六十年の完成をめどにいま一生懸命オンラインに取り組み中でございます。そういうオンラインで一方で省力化する中で、毎月払いがどういう条件があれば実現可能なのかということも十分検討しております。  一、二具体例を申し上げますと、たとえば郵便局で年金を受け取られる方が多いわけでございますが、郵便局の方もオンラインあ計画を進めておりますけれども、これもまだ完成には間があります。そして郵便局でも手作業でやっておりますために、いま保険庁でかかえておるのと同じように、量はふえるけれども人はふえないという悩みがございます。郵便局でも保険庁でも機械化が進んだ段階で、これらを全部ひっくるめて最後的な答えを考えたいということでございます。  あと細かい点をいろいろ申し上げますと、支払い通知書や何かの印刷物をたくさん刷るわけでございますから、それが省略できれば回数がふやせるかとかいろいろな細かい問題もございますけれども、重要な課題ではございますが現時点では無理だ、しかし六十年を目標に一生懸命やっております。オンラインの計画の中でぜひ考えてまいりたい、かように考えております。
  57. 川本敏美

    川本委員 そこで大臣にもう一つだけ念を押しておきたいのですが、この間大臣が、参議院だったかあるいは衆議院だったか私ちょっと忘れたのですけれども本会議で、仕事と年金というものはあくまでもつながなければいけないという趣旨の御答弁をなさいました。現在、われわれが長い間運動した中で定年制が五十五歳からだんだん伸びてきて、やっと六十歳に近づいてきた。定年制を六十歳にしてもらいたいという民間の労働者の要求、これもまだまだ諸外国と比べると考え方に開きもあるようですけれども、大臣としてはどんなことがあってもともかく年が寄って定年で仕事をやめて働けなくなったら翌日から年金がもらえる、こういう仕組みをきちっと守っていかなければこれからの高齢化社会というものは守り通せない、こうお考えだろうと思うのですけれども、その点をもう一度明確にお聞きしておきたい。
  58. 園田直

    園田国務大臣 公務員二法について、私は内閣の閣僚でありますからこれに対する批判はございません。しかし厚生大臣として考えなければならぬことは、雇用と年金は必ずつながなければならぬことであります。そこでまた一方には寿命の延長でありますが、現在の寿命の延長というのは平均寿命の延長でありまして、これは乳幼児の死亡率が減った、必ずしも理想的な寿命の延長ではなくて、やはり寿命の延長というものは何歳までも高齢者の方が健康で働けるようにすることが私の仕事だ。だとすると、働く期間というのは将来やはりだんだん延ばしていくべきだ、こう思っておりますが、いずれにしても雇用と年金は必ずつながなければ大変なことになる、こう思っております。
  59. 川本敏美

    川本委員 時間がありませんので話を進めて、次に移りたいと思うのです。  老人保健医療法の問題についてお聞きしたいと思うのですが、老人保健医療法は今度の国会に提出されますか。
  60. 園田直

    園田国務大臣 だんだんとおくれておりまして申しわけありませんが、内閣においても了解を求めておりますので、急いで今国会に提出をいたします。
  61. 川本敏美

    川本委員 いま社会保障制度審議会に諮問をされてまだその答申も出ていないと思うのですけれども、五月の十七日で今国会は終わりですよね。その間に四月の末から五月の初めにかけて連休の期間もある。だから、これから老人保健医療法というものを仮に衆議院に提出されても、衆議院の審議が終わって参議院に回って、参議院の審議が終わって十七日までに成立する見通しは私はないのじゃないかと思うわけです。これはもうただ政府の意図がこうであるということで、国民の前に示すために、国会へ提出するだけが目的で、成立してもらいたい、成立させてほしいということではないのじゃないかと私は思うのですが、その点どうですか。
  62. 園田直

    園田国務大臣 見通しとしてはなかなか困難だと私も思っております。しかしながら、これは将来の、先ほど言われましたような社会福祉行政、医療の問題、このままではいかぬとおっしゃいましたが私もそのつもりでございまして、どうやって複雑に絡み合ったこの膨大な制度を変えていくか、これが一番大事な問題でありますが、その一つの方向をつけてございますのでこれはぜひ国会に出して、できれば成立をお願いする、できなければその次の国会でもという最善の努力をする覚悟でやっているところでございます。
  63. 川本敏美

    川本委員 この間厚生省は、老人保健医療制度の中でいわゆる一部負担について新聞等で発表されましたね。初診料三百円あるいは再診料百円、そして入院したときには一日につき三百円。いまの健康保険法の中で被保険者本人は仮に入院しても一日五百円一カ月の間だけ、家族の場合は三万九千円ですか高額医療費の負担分だけということで打ち切られているにもかかわらず、老人のこの保健医療法では一部負担として入院時は一日二百円、これは期限なしですよ、この間発表された試案では。これは全く老人保健医療法というものの考え方が、いまの老人医療費の無料の制度を有料化しようという意図の一端のあらわれではないか、あるいは診療を抑制しよう、入院を抑制しようという意図のあらわれではないかと思うのですけれども、その点についてこれは全く老人をないがしろにした法案ではないかと思うのですが、その考え方はどうですか、改める気はありませんか。
  64. 園田直

    園田国務大臣 いまの問題は当初政令で決めるというふうな案を持っておりましたが、皆さん方から法律案の中に入れろ、こういうことでありましたから法律案の中へ入れて御相談することにいたしております。  金額の問題でありますが、これは将来老人医療を有料化するための前提では断じてございません。これは財政的な見地からではなくて、無料のためにいろいろ問題が起こっておりますので、むだな診療やむだな治療をなされないという自制心に訴えるという目的は確かにございます。したがいまして、金額、それから入院の三百円、あるいは無期限に三百円もらう、こういう点についてはひとつ与野党の方々の御審議にお願いをしてやりたい、こう考えております。
  65. 川本敏美

    川本委員 いまおっしゃった入院料の問題については国会へ提出して審議の段階で与野党の間で話し合いをしてもらいたいと思っておる、こういう大臣の率直な御答弁、それは言いかえれば修正していただいて結構ですという意味じゃないかと私は思うのですが、これはまだ法案も出てきてない先からそういうことを議論するのはどうかと思いますけれども、ともかく入院料を三百円、これはいまの健康保険法で被保険者本人に対してさえ五百円でそして一カ月で打ち切りというのを、老人に限って三百円で病気が治るまで一年でも二年でもというのはちょっと不合理だということは、これは否めないと思うのです。だからその点については、提案する前にもう一度各党の意見を聞きながら再検討されたらどうかと思うのですが、どうですか。
  66. 園田直

    園田国務大臣 筋の通った御発言だと思います。しかし、私が現職の閣僚で国会に出してから修正されても結構ですということを言えないことはおわかりだと存じます。いまの問題についてはなお迫っておりますが、期間もありますから十分考えてみます。
  67. 川本敏美

    川本委員 次に、老人保健医療制度の問題の中でやはり大きな問題は、いわゆる予防給付とそれから医療給付、それからリハビリ、こういう三つから成り立っておると思うのですが、特にその中の医療給付は四十歳からということで、これは四十歳からがいいのか三十五歳からがいいのかということはいろいろ議論の分かれるところだと思いますけれども、医療給付というのはこれは診療行為ですよね。診療行為であっていまの健康保険法に基づく診療に該当するものだと思うのですが、この問題についても登録人頭割りの制度がいいのかあるいは現行の出来高払い制度がいいのか、こういうことについていろいろ議論の分かれるところでありまして、大臣もこの前、登録人頭割りの制度についてもこれはなかなか新しい考え方だから一遍前向きで検討してもいい、こういうような御意見が出されたことがある、そういうお答えをいただいたことがあるわけです。現在この老人保健医療制度の診療報酬の給付の仕方について登録人頭割というようなことを考えておられるのかどうか、それが一つ。  もう一つはリハビリですけれども、私はこの間も申し上げましたが、リハビリというのは、特に寝たきり老人をつくらない、一人で歩ける、一人で行動できる、自分のことができるような老人をつくり上げていく、こういうことから、一度病気になっても寝たきりにならないようにするために、いわゆる病院でリハビリをやるだけでなしに、家庭に派遣をしたりいろいろやられようとしておる、これはいいことだと思いますけれども、その中にいわゆる日本的なはりとかきゅうとかマッサージ等を老人保健医療給付の中のリハビリの給付として認めるということは、私は大切な一つの問題だと思うわけです。そういう点について加える意思がありますかどうか、重ねてお聞きしたいと思います。
  68. 吉原健二

    ○吉原政府委員 まず、新しい老人保健医療制度におきます診療報酬のあり方でございますけれども、新しい老人保健制度におきましては、老人の心身の特性といいますか、老人医療の特性というものを十分踏まえまして、それに最もふさわしい診療報酬なり支払い方式というものを検討したいというふうに思っているわけでございます。現在の出来高払い制度についてもいろいろな問題点が指摘されておりますけれども、そういった問題点を老人医療制度の中でできるだけ改善をしていくという方向で、ほかの方法も含めて種々検討をさせていただきたいというふうに思っております。  それから、第二番目のリハビリの問題でございますけれども、はり、きゅう、マッサージを老人医療の新しい制度の中でどういうふうに取り入れていくか、いま御質問のございましたような御意見も十分私ども承知をいたしているわけでございます。それを診療の中で考えていくか、あるいはいまもおっしゃいましたリハビリテーションの給付の中で考えていくか、あるいはその他の方法があるか、これは制度実施までに十分研究をさせていただきたいというふうに思います。
  69. 川本敏美

    川本委員 いま診療の問題についてお答えをいただきましたが、登録人頭制というものも含め、その他の方法も含めてとおっしゃいましたね。その、その他の方法というのはどういうことを考えておられますか。
  70. 吉原健二

    ○吉原政府委員 いま御質問のございました登録人頭制でありますとか、総額請負制でありますとか、診療報酬支払い方式についてはいろいろな考え方があるわけでございます。諸外国のいろいろな事情等も十分研究をいたしまして、最も老人医療にふさわしい、適切なものを研究をいたしたいというふうに思っておるわけでございます。
  71. 川本敏美

    川本委員 それではもう一つ話を聞きたいと思うのです。  この間参議院でだったと思うのですが、園田大臣は、薬価基準の改定の問題について四月中に行うという趣旨の御答弁をなされておったように思うわけです。この薬価基準は、一般の新聞とか雑誌とかに報ぜられるところによると、あるいは一八%だとかあるいは一八・五%だとかいうようなことがいろいろ言われておるわけです。大体薬価基準の改定は四月中に行うという方針は、大臣の方針として間違いないところだろうと私は推定をいたしておるわけですが、その内容と方針についてひとつ御説明いただきたいと思います。
  72. 園田直

    園田国務大臣 いまの問題については参議院でお話ししたところでありますが、私は当委員会においてもしばしば年度内、三月末までに実施をいたしますということをお答えをしてまいりました。その後だんだん状況が変わってまいりまして、努力をいたしましたが四月の初旬にかかるということを答弁いたしてきております。その後、新聞等では六月と書いてあるが、四月というのは違うじゃないか、間違いではないか、こうおっしゃいまして、その場合にも私は、絶対そういうことはありません、四月でございます、こういうことを言い張ってきたわけであります。  私微力にいたしまして、委員会または個人的に発言をしお約束したことで、力が足りずにできなかったことはいろいろございます。しかし、言ったことが真っ向からうそになってきたというのは今度が初めてであります。まことに遺憾至極でありまして、申しわけないと存じますが、いまの段階では、すでに内示をいたしましたから、なるべく早く四月中か五月の初めには告示をするということでやっております。慎んでおわびをいたします。
  73. 川本敏美

    川本委員 三月末までに、年度内に薬価基準の改定はやりますというのは、この前衆議院のこの委員会においても大臣がお約束をされたことです。それがこの間の参議院の質疑の中では四月中ということになり、またいまお聞きすると、告示は四月の末か五月の初めと大臣おっしゃる。また一カ月後退するのですか。これはやはり四月中にやるのならやるということを明確にしてもらわなければいけないと私は思うのです。  それと同時に、医療費の改定の問題ですね。従来薬価の改定が三月で、そして年度が変わったところで早々に医療費の改定、少なくとも一、二カ月の間にやられるんだろうというのが大方の推測であった。ところが最近になると、医療費の改定と薬価基準の改定が六月に同時に行われるのではないか、厚生省はそういうような意図を持っておるのじゃないか、だから、大臣が年度内と言った薬価基準の改定を故意に医療費改定に合わせるために延ばしておるんだというような推測が広く行われているところであります。  だから、この点についてやはり明確にしておいてもらいたい。四月に薬価基準の引き下げをするのか、医療費の改定は六月なのか、それとも五月なのか、その点は明確にお答えをいただきたいと思うのであります。
  74. 園田直

    園田国務大臣 参議院で申し上げましたのも、四月上旬にいたしますと言ってきたのをおわびをして四月中は無理でございます、こういう答弁をいたしております。現実問題としては、なるべく早くできるよう督励をしております、告示が四月中にできるように努力しておりますが、五月にかかるかもわからぬ、これが事実でございます。  医療費の改定、これもなかなかむずかしい問題でありまして、医療費と薬価の改定というものは当然別個の問題であって、薬価の改定は薬価の改定、医療費の改定は医療費の改定とこうやるのが当然のことであると私はいまも考えております。  問題は、責任は全部私の過ちになるところでありますけれども、三年半も薬価の改定をほうり、医療費の改定もほうってきたところにこういう無理が出てきておるわけでありまして、医療費の改定と薬価の改定と直接つなぐことは原則でありませんけれども、しかし三年間もほうっておかれて、いつの間にか医療費が、薬をたたくことによって医療経営をやってきた、それに端を発していろいろ不正問題が起きた、こう考えてくると、やはり根本の原因、大きなスタートの原因はここにあった。これを今度どうやっておしかりを受けながら正常に返すかということが私の苦しむところでございまして、医療費は本日中医協に諮問をいたしたところでございますので、その諮問の結果によって医療費の改定は考えたいと考えております。
  75. 川本敏美

    川本委員 きょう中医協に諮問をした医療費の改定案の中身はどういうものですか。
  76. 大和田潔

    ○大和田政府委員 具体的な中身というものにつきましては追って御諮問申し上げる、きょう中医協におきまして御諮問申し上げるのは、医療費の改定につきまして、最近の社会、経済の実情を勘案いたしまして、診療報酬の改定を行うことについて中医協の御意見を求めますということで、この医療費の改定問題についてどうか議論をしていただきまして、どういうような改定がいいかということについて御意見をちょうだいいたしたい。  なお、先ほど申しましたように具体的な点数表の中身につきましては、追って諮問をいたします、こういうような形の諮問になるわけでございます。
  77. 川本敏美

    川本委員 そうすると、中医協からただいまの諮問に対する答申が四月中に出されるわけですね。
  78. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これは中医協の審議のマターでございますので、私どもちょっとそれはわかりかねるというのが現実でございます。
  79. 川本敏美

    川本委員 大臣にお聞きしたいのですが、中医協にただいまおっしゃるような諮問をされたということは先ほどもお答えの中にちょっと含まれておったと思うのですけれども、薬価基準の改定の告示をして医療費の改定をしないということでは、いままで三年半放置してきたというところにかんがみてやはり問題があるから、薬価基準を下げたらその後続いて医療費は上げるということに踏み切るんだという言葉だったと私は思うのですが、医療費の改定はやるんですね。
  80. 園田直

    園田国務大臣 時期はまだわかりませんが、医療費の改定はさしていただきたい、こう思っております。
  81. 川本敏美

    川本委員 その時期が大体六月だと俗に世間では言われておる。そして医療費改定は、いわゆる薬価基準の引き下げが一八%か一八・五%であれば医療費にはね返るのが七千五百億から七千七百億、そうなると大体六%前後ですね。だから医療費の改定はそれをどれだけ上回るのか。これはいまの春闘じゃないですけれども、八%台の攻防なのかどうかというようなことが言われておるわけですね。そういう点で国民的な関心もあるし、国民の中には、最近の所沢の富士見病院のような事件や乱診乱療、あるいは毎日のように新聞に出ているいわゆる水増し請求、こういうようなことにかんがみ、あるいは所得番付でお医者さんが非常に高いところに皆ランクをされておる、そういう実情から見て、医療費の引き上げをやるということに対して、国民的な批判はかなりあることはあります。  そういうことも勘案して、大体薬剤費を医療費に振りかえる分が六%あれば、そこへ人件費や光熱費やいろんなものの値上がり、公共料金の値上がり、そういうものを最低見ても八%程度になるんじゃないかと言われておるところであります。それを仮に五月に薬価基準を引き下げておいて、それから三カ月も五カ月も六カ月も医療費の改定の方がおくれるということになれば、これまたいろいろ問題が出てくると思うのですが、引き続き行われますか。それともかなりの期間をおきますか。最後にもう一度大臣にお聞きしておきたいと思う。
  82. 園田直

    園田国務大臣 薬価の改定については国民の方方からは大多数御支持を受けているところでありますが、医療費の改定については国民の大多数の方から非常な批判を受けることは私も承知をいたしております。特にいまおっしゃいましたいろんな問題が各所に頻発をしておる、こういう時期に非常につらいところでございますけれども、しかし、医療に従事する人の大多数のまじめな方々は非常に努力しながらやっておられるわけでありますから、その点は考慮をして医療費の改定はやらしていただきたい。  どの程度かということは、これはなかなか大変むずかしい問題で、その上に今日の国家財政状況等も御存じでございますので、なかなかこれは大変な問題で、いまここでどの程度か、基準を申し上げることは、まだ過早であると考えております。
  83. 川本敏美

    川本委員 以上の問題につきましては、年金法との関連において高齢者問題あるいは医療の問題等と関連して御質問申し上げた次第でございますので、御了承いただきたいと思うわけであります。  以上で終わります。
  84. 山下徳夫

    山下委員長 田口一男君。
  85. 田口一男

    ○田口委員 今回の改正案の内容は、いまさら言うまでもないと思うのですが、第一に、厚生年金国民年金などのいわゆる拠出制年金について物価スライドの実施を繰り上げて年金額を引き上げる、こういうことが法改正の主な柱だと思うのですけれども、この物価スライドについて若干御質問をしたいと思います。  まず端的に言って物価スライド程度、何%程度スライドをするのか、そしてそれに要する財源はどの程度見込んでおるのか、このことをお尋ねをいたします。
  86. 長尾立子

    長尾説明員 現在の拠出制の年金物価スライドにつきましては、年度平均の消費者物価指数が五%を超える変動があった場合に行うということが法律で定められているわけでございます。したがいまして、このスライドの数値、指数自体は実績数字になるわけでございますが、実績が確定いたしますのは例年五月上旬でございますので、予算の上では政府の経済見通し、今回の場合は七・〇%でございますが、これをもちまして予算を計上いたしております。  先生御質問の、このスライド改定に必要な財源といたしまして、昭和五十六年度予算におきまして、厚生年金国民年金及び船員保険の年金部門合計をいたしまして二千四百六十六億円を計上いたしております。
  87. 田口一男

    ○田口委員 この法律案の参考資料の後ろの関係計数表の六ページ、それを見ますと、国民年金勘定の方で、読み上げる必要はないと思いますけれども一応読み上げてみますと、歳入の保険料収入が一兆三千九百七十六億ですね、それから一般会計から受け入れるものが六千三百五億。それに対して歳出を見ますと、国民年金給付費が一兆八千九百七十八億八千七百万、この数字昭和五十六年度単年度で見る限り、言うまでもなく保険料収入で年金給付費が賄えないという勘定ですね。約五千億マイナスでございます。  続いて同じ十四ページを見ますと厚生年金の方が出ておりますけれども、これは歳入が、保険料収入五兆八千二百二十四億何がし、一般会計より六千六百四十五億何がし、運用収入もありますけれども、歳出の保険給付費、これは年金給付費だと思うのですが、四兆一千百四十三億。この厚生年金会計は、ずばり保険料収入がまだ一兆五、六千億上回っている。  こう見ますと、国民年金財政ということだけを見ますと、物価スライドの財源をどこから見るのですか。いま物価スライド七%を求めると二千四百六十六億というお答えでしたが、単年度で見れば、国民年金の方は保険料収入で賄えない。そうすると物価スライドに要する財源はずばり一般会計から繰り出しというふうに見てもいいのか。となると厚生年金会計とのつり合いからいいますと、こういう言い方はなんですが、物価政策のミスリードですね。そうでしょう。当初六・四%と言ったのに七%をスライドしなければならぬということは、数値の多い少ないは別といたしまして、政府の物価政策のミスリードといってもいいのではないか。というとちょっと先んじた言い方になると思うのですけれども、物価スライドの財源はまるまるこういった国民年金会計、厚生年金会計、私はこういう会計という意味は、掛金年金プロパーの中から取り出すのではなくて外から持ってくるべき性質のものではないかという気がするのですが、どうでしょうか。
  88. 新津博典

    ○新津政府委員 先生の御質問は、いわゆる三年金のそれぞれの年金勘定、つまり特別会計のお話でございますのでお答え申し上げますが、国民年金につきましても、厚生年金につきましても、それぞれ法律で定められました給付費の国庫負担がございます。保険料と法定の国庫負担を合わせて、それを財源として必要な給付を行うというので特別会計の歳入、歳出が組まれているわけでございまして、これはもう先生十分御承知と思います。  そういう意味で、その関連で先ほど年金局の企画課長からお答えいたしました二千四百六十六億円の物価スライドに必要な所要額の内訳を申し上げますと、厚生年金でいえば原則二割、国民年金でいえば原則三分の一が国庫負担でございますが、スライド分二千四百六十六億円のうち国庫負担分に相当する分は、厚年、国年、船保を合わせまして五百九十三億円ということになります。  なお、物価の問題は、先ほども御答弁をいたしましたように、一応政府見通しで七%ということになっておりますが、これは当然五月上旬に最終的な年度間の消費者物価の上昇率が決まりますと、その率どおりに改定をすることにしております。
  89. 田口一男

    ○田口委員 そうすると、いま最後のお答えで、政府見通し七%、五月末に実績がはっきりわかればということですが、たしか半月ぐらい前ですが、新聞報道で七・八%という数字が出ておりましたね。そうなってくると、これに相当する七・八%ずばりスライドをするのだ、こういうふうに理解してもいいのですか。
  90. 新津博典

    ○新津政府委員 おっしゃるとおりでございます。そのとおりにスライドいたします。
  91. 田口一男

    ○田口委員 次に、やや事務的な話になるかと思うのですが、この提案を見ますと、物価スライドの実施時期は、厚生年金昭和五十六年十一月を本年六月、国民年金の場合には昭和五十七年一月を本年七月にそれぞれ繰り上げてということになっておりますけれども、その理由は。
  92. 長尾立子

    長尾説明員 スライドの実施時期につきましては、厚生年金につきましては十一月、それから国民年金につきましては翌年の一月ということが法律の実施時期でございますが、これをなるべく早く繰り上げてということで、今回六月及び七月に繰り上げたわけでございます。先生御承知のようにスライドの実施時期につきましては、厚生年金につきましては六月、国民年金につきましては七月に、実際のスライドの指数等がわかります実態を見きわめましてこういうふうに従来からやってきておるということでございます。
  93. 田口一男

    ○田口委員 そのスライドの実施時期を本来より約半年前に持ってきておる。そこで事務的になかなかそうはいかぬということはわかりますけれども、従来関係審議会で幾たびか指摘をされておりますように、もっと早くというので本年六月、本年七月、確かに前には来ておりますけれども、消費者物価の上昇の動きを見ますと、六月、七月では前の分は損をしたというふうな気がなきにしもあらずであります。したがいまして、関係審議会などで言っております実施時期を早めるべきであるということについて、どのように考えておりますか。
  94. 長尾立子

    長尾説明員 先生からお話しがございましたように、社会保険審議会からも、今回のスライド実施時期について「当面の措置としてこれを了承するが、実施時期を四月にすることについてさらに検討を進めるべきである。」という御意見をいただいておるわけでございます。先ほど御説明申し上げましたように、スライドの指数自体が判明いたしますのが五月というような状況になっておるわけでございますが、御要望のような形で実施時期を四月にいたすにつきましては、事務的な面についてさらに検討を進めさせていただきたいと思っております。
  95. 田口一男

    ○田口委員 いまの物価スライドに関連してなんですが、六月、七月に実施いたしますと、それ以降の改定された年金はいつ支払われるのか。
  96. 長尾立子

    長尾説明員 厚生年金につきましては八月、国民年金につきましては九月から支払われるわけでございます。
  97. 田口一男

    ○田口委員 私はそれに関連をして、先ほどの川本委員もそういった趣旨の質問をしておりましたけれども、年金の毎月支払い、これはこれから高齢者がふえてくる。それから老後の生活の中心が年金になっていく、ウエートが高まる、こうなってまいりますと、やはり毎月支給ということが望ましいことは言うまでもない。先ほどの答弁を聞いておりますと、厚生年金国民年金だけではありません。共済年金もある。それを郵便局、銀行でという労力を考えると、言うべくして大変むずかしいというようなお答えでありましたけれども、これは金の問題ですから、物価スライドなどということが将来安定をしてないとした場合、Aという年金受給者は年間百二十万なら百二十万もらった。それを随時受給者が指定する銀行に払い込んでおいて、好きなときに取りに行く。前渡金のかっこうになりますから、利子とかなんとかいう問題も起こるでしょうけれども、そういうことも考えてもいいのではないかという気がするのですが、どうですか。
  98. 新津博典

    ○新津政府委員 先ほども川本委員の御質問にお答えいたしましたが、先生のおっしゃるお気持ちは大変よくわかります。老後の生活の支えが年金であれば、月給と同じようなものじゃないか、だから毎月決められた日には口座に入るのがたてまえだということで、繰り返しになりますが、私どももぜひそういう方向に持っていきたい。前と比べると、現在の事務体制でぎりぎりの時期まで改善いたしまして、日にちまで決めて、ことに銀行に口座などがございますと、もうその日にあらかじめ、細かい話になりますが、一週間前には日銀にテープを渡して、各口座別に、各銀行別に全部それが整理されまして、たとえば、いま厚生年金は二月、五月、八月、十一月という支払いでございますが、今度、直近で言えば五月一日の日にはもう自分の口座に入っている、そういう形まで努力してきておるわけでございます。  あと問題は、その回数を、三月に一遍をさらに二月に一遍、あるいは毎月にできないかという御要望でございまして、これについてもおこたえすべく、重要な課題という認識でやっておるわけでございますが、いま、たまたま先生もおっしゃってくださいましたように、大量のものをやるので、おくれる理由一つに、毎回毎回支払いの御通知を申し上げる。ことに郵便局の場合には一種の割り符方式でございまして、御本人に幾らいくという通知が行くと同時に、郵便局にこういう人が来たら幾ら払ってくださいというものが行って、その二つの割り符が合ったらそこで払うというのが全部手作業で行われたりいたします関係上、拠出制で一千万を超え、福祉年金を入れると一千五百万に近い人々のを毎月やるのが非常に困難だというのが実態でございます。  先ほども御答弁いたしましたように、私どもの六十年を目標に努力しておりますオンライン、郵便局もそれに近いあるいはもう少し早い時期に郵便局自体のオンラインが計画されておりますので、そういう過程の中で、あわせて会計法令の手当てとかあるいは通知書を省略して、年に一回、年金が変わった場合には、幾らになりましたよ、これからの一年間はこういう年金ですよということだけお知らせして、あとは口座にお金だけがいく、通知書が省略できるというようなことが考えられますれば、毎月支払いの可能性はさらに高まってくるという認識もございますので、オンラインを進めるかたがた、いまの御質問の毎月支払いに向けての関係部局との詰めをさらに急ぎたいと考えております。
  99. 田口一男

    ○田口委員 物価スライドの問題でもう一点お尋ねをしたいのですが、冒頭に申し上げたように、物価スライドは拠出制の国民年金厚生年金しかやっていない。いわゆる福祉年金についてはないわけですね。  今回の福祉年金の引き上げを単純に計算をしてみますと、これは所得制限が関係しますけれども、月額二万二千五百円が二万四千円と二万三千円。二万四千円の方で見て六・六%の伸び。さっき言った政府見込みの七%、または七・八%というふうなことにしても、福祉年金のみ据え置くということはいかがなものかという気がするのですが、こういった改正に当たってどういう考え方で引き上げ額を決めたのか。  これは最後に、スライドに関して大臣にお聞きしたいのですけれども、福祉年金昭和八十何年までまだまだ続く、こう見たときに、改定の方式というものについてどうするのか。端的な言い方をすれば、そのときそのときのふところ勘定によって福祉年金の方の引き上げを決めていくのか、これはちょっと安定性がないのじゃないかという気がするのですが、このことについて、これは大臣からお伺いをしたいと思います。
  100. 園田直

    園田国務大臣 御発言の趣旨は十分わかりますが、現下の厳しい財政事情のもとで、大体七%という数字に近く持っていったわけでございまして、これはそのときの情勢、財政に影響されることがないとは言えませんけれども、やはりそういう物価というものを考えて引き上げていくべきであると考えておりますが、いまの状態では、これをスライド制にすることは現実としては非常に困難でございます。
  101. 田口一男

    ○田口委員 いまの大臣のお答え、私は財政事情云々ということでわかるのですけれども、いかに無拠出だからといって、そのときのふところ勘定で左右をされるということになると、いずれ昭和八十年代にはなくなる制度ですけれども、ちょっと不安定な気持ちを与えるのではないか、こういう懸念がいたします。  私は、物価スライドの問題はこの程度にいたしまして、次に、ことしは国際障害者年ということもありますので、あえて障害者の方に支給をされる障害年金、これについてお尋ねをしたいのです。  まずその前に、この障害年金の拠出制と無拠出制とございますが、これらの体系といいますか、どういうふうな仕組みになっておるのか、さらにつけ加えて受給者の概数がわかればお答えをいただきたいと思います。
  102. 長尾立子

    長尾説明員 お答えを申し上げます。  障害年金の場合の拠出制の方でございますが、これは年金制度への加入者があらかじめ保険料を納付いたしまして、その後一定の障害が発生した場合に支給される、こういう考え方でできておるわけでございます。で、厚生年金国民年金、共済各法におきまして、すべて障害年金制度を持っておるわけでございます。  無拠出制の障害年金でございますが、国民年金におきまして障害福祉年金という制度がございますが、これは国民年金の拠出制の障害年金の資格を満たさない方でございましても、その方々につきまして、ある一定の条件のもとに福祉年金支給しております制度と、もう一つは、制度に加入されます前に障害になられました場合、たとえば国民年金は二十歳以後制度に加入していただくわけでございますが、それ以前に障害をお持ちの方の場合には障害福祉年金が二十歳から支給される、こういう仕組みになっておるわけでございます。  障害年金受給者数でございますが、昭和五十五年度九月末現在の私どもの所管の数字を申し上げますと、厚生年金の障害年金は約二十万人でございます。拠出制の国民年金の障害年金が約二十三万人、障害福祉年金は約五十八万人ということでございます。
  103. 田口一男

    ○田口委員 仕組みは大変よくわかりました。  そうなっていきますと、これは障害福祉年金の方なんですが、いまお話がございましたように、成人以前、二十歳未満に障害者になった場合を例に挙げますと、障害福祉年金受給者になる。ところが、中身を見ると、これはもう御存じだと思うのですが、いわゆる精神薄弱者といいますか、の方が多いわけですね。精薄だからという意味じゃないのですけれども、今回の改正で、月額、一級の場合に三万六千円、二級の場合に二万四千円。私はこの金額を見て、先ほどのスライドの大臣の御答弁ではありませんけれども、財政困難云云ということがあるにしても、余りにも低いのではないかという気がするのです。  第二の問題としては、この金額は、毎年改定があるにいたしましても、この金額で生涯変わらない。このことについては後でもう一度繰り返して申し上げようと思いますけれども、今度の三万六千円という金額は経済の安定その他で変わらないものとした場合でも、一級の方は死ぬまで三万六千円ですね。こういったことについての改善策を、国際障害者年であるからという意味じゃないのですが、この際検討してみる必要があるのじゃないか。  私はそういった考え方で、これは私の考えですから、検討するかどうかは別として聞き取っていただきたいのですが、拠出制の障害年金並みにいまの障害福祉年金を高めるということが第一案として考えられます。今回の改正の場合には、国民年金障害一級は、最低保障として五万五千九百八円、三万六千円に比べると約二万円上である。  なぜそういうことを言いますかというと、いまも企画課長のお話がありましたように、この障害福祉年金受給者を大別しますと、就職前で厚生年金に加入ができなかった方、これが一つあるのですね。二つ目は、いま申し上げたように、二十歳未満で国民年金に加入できないといった方。それから三つ目は、ちょっと私はこの点疑問を持っておるのですけれども、正してほしいのですが、この制度の発足前に障害にかかっておる人は当然障害福祉年金。こうなりますと、この三つの障害者の方々は障害福祉年金支給される。  ところが、先ほどから私が何回か言っておりますように、老齢福祉年金昭和八十年代のいずれかの年に消滅する、ゼロになるのです。それから、母子福祉年金もいずれは消滅をいたします。残るのは障害福祉年金だけなんですね。しかも、死ぬまで障害福祉年金の金額は不変である。ですから、少なくとも拠出制の障害年金までに高めるという方法をどうすればいいのか。  その場合に、制度発足前から障害を持って障害福祉年金受給者になっている方なんかの意見を聞いてみますと、国民年金に過去二度三度ありましたような特例納付金、いまから何十万ということになるとちょっと問題でしょうが、いまの金額の保険料でさかのぼっていったら大変ですけれども、そのときそのときの保険料、低額のときもありましたから、それを特例納付のような考えでいままとめて払う。いまは商売をして一応資力もある、こういった方もあるのですから、そういう特例納付のような方法で拠出制の年金というものに切りかえていく、これは考えてもいいのじゃないかと思うのです。ほかにもあると思いますが、どうでしょう。     〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕
  104. 長尾立子

    長尾説明員 国民年金に加入されます前に障害をお持ちの方の障害福祉年金の水準というものを考えました場合、これを引き上げるためのさまざまな工夫を検討してみろという御指摘だと思うわけでございます。  ただいま先生がお話しになりました、老齢の場合に実施をいたしました特例納付のような方法、すなわちある程度保険料を拠出するということによりまして、拠出制の障害年金に変えるという方法がとれないかということでございますが、これは確かに一つの考えとは思うのでございますが、現在の年金制度の仕組みの考え方に基本的な面で触れるところがあるのではないかと思うわけでございます。  一つは、障害の場合または母子年金の場合、これに加入をされます場合には、そういった障害状態になるか母子状態になるかということが不確定な時点で、皆さんにある意味で平等なお立場で保険料を掛けていただきまして、そこで発生いたしました障害というものは皆様の保険料給付を賄っていくという考え方になっておると思います。すなわち、障害年金の場合には終身給付されるわけでございますが、その方が掛けられた保険料給付の財源となるというよりも、そういう条件で加入されました方々全員の保険料でその方の障害年金給付が賄われるわけでございます。そういう意味では条件が同じであるということが必要であるわけでございますが、先生の御指摘の場合にはいわばすでに障害になられたということでございまして、給付を受けられるということが確実に明確な場合に、その方の保険料をほかの、給付を受けられるかどうかわからないという方の保険料と同じような考え方で制度の中に仕組んでいくことができるであろうか、それは加入者の方に御納得をいただけるようなことなのかという問題になるのではないかと思うわけでございます。  先生の御指摘のような方法といたしましては、たとえば厚生年金の場合には、障害をお持ちの方が、障害状態にもかかわらず厚生年金の適用事業所に雇用されまして厚生年金の被保険者となられました場合には、老齢年金の受給資格を満たすような、たとえば二十年というような加入期間を経ました場合には、その状態でもう仕事を続けられないということで退職をされました場合、通常でございますと支給開始年齢の六十歳前には老齢年金支給されませんが、そういった場合には支給される、こういう仕組みを五十一年の改正で入れたわけでございますが、厚生年金のこういった仕組みは、いま先生が御指摘になりましたような、いわば制度加入前に障害をお持ちの方について年金の保障を考える一つの方法ではないかというふうに思っておるわけでございます。
  105. 田口一男

    ○田口委員 障害福祉年金だけを見てみますと、気の毒なという表現はなにかと思うのですけれども、気の毒な人が多い。ところが、それに対する年金の水準を見ますと、一級三万三千八百円が三万六千円、これは六・三%アップですね。二級の場合には六・六%アップの二万四千円。ということは、老齢福祉年金にリンクをさせておる。これはバランスをとる。そうなりますと、いまのお答えを一言にして言うならば、障害福祉年金を拠出制に切りかえていくのは社会保険原理からいっておかしいということですね。社会保険原理があるから障害福祉年金受給者は、途中で特例納付があってもむずかしい。といって、障害福祉年金受給者に対して、障害者の自立を支えるためにもつと金額を上げたいと思っても、老齢福祉年金とのバランスを考えるとそうもいかぬ。どうも前に行かぬ。  私は二、三の方に会ってみたのですが、乱暴な意見を出す人がありまして、それなら生活保護を受けた方がいいじゃないか。確かに生活保護を受ける道は閉ざされていない。ところが、この生活保護は、昔の救貧とかどうとかいうことを私はいまごろ言いたくはないのですけれども、仕組みとしては世帯単位でしょう。障害福祉年金は個人一人だ。こういったこともありますし、障害者の方々の自立意識から生活保護を受けることについて大変に拒絶反応がある。やせがまんじゃないと思うのですね。おれは自立をしたいのだ。こういうことを考えますと、単に社会保険原理とかバランス論ということでむずかしいむずかしいということでは前に進まぬのじゃないか、こういう気がするわけでございます。そういう点について一歩踏み込むという考えはどうでしょう、前に出るという。
  106. 新津博典

    ○新津政府委員 私どもも現場で直接接触する立場にございますので、私の立場で制度論をするのはおかしいわけでございますけれども、いまの先生のお気持ちがよくわかった上であえて申し上げますと、比較的狭い年金制度だけで障害者の問題を考えていくというよりも、スローガンにございますように何とかして障害者の働く場はないかとか、あるいはどうしても重い障害で家族の方がそのために手をとられている場合には御承知のように福祉手当の制度なんかもございます。  そういうことで、いろいろな既存の制度を総合的に考えながら、最終的に御本人の自立を中心に考えながら、なおかつ自立ができない場合も含めた本人なりあるいはそのお世話をする方の所得の保障というものをどう考えたらいいか、これらを総合した問題を内部で検討する省内のプロジェクトもできておりますので、そういうところで先生のお考えなんかも十分参考にしながら、一歩進めるためにどういう方法があり得るか、厚生省全体として真剣に取り組んでまいりたいと思っております。
  107. 田口一男

    ○田口委員 この障害問題で続いて申し上げますが、障害福祉年金支給ということになりますと、施設に入ってみえる方と在宅の障害者の区別がないんですね。まあ区別をしろという意見じゃないのですが、区別がない、平等に支給をされております。  そこで、これはもう篤と御承知だと思うのですが、ある精神薄弱者の方なんですが、入所させた施設では入寮中の費用について、こういう訓練に要する費用は一切要りません、家庭の収入により一部負担があります、小遣い及び保護者会費等は入寮者の負担となりますという入寮案内があるんですが、聞いてみますと、一番目に言った訓練費用は要らぬ、家庭の収入によって一部自己負担がある、小遣いとか保護者会費などをいま言った障害福祉年金をもって充てているケースが多い。  こうなってまいりますと、後で私は触れたいと思うのですけれども、施設に入ってみえる方はいまのままでいいとして、その施設を退所した場合に今度はむしろふやした方が理にかなっておるんじゃないかという気がいたします。在宅の重度障害者に対する月一万円の福祉手当などを考えますと、これはどういう絡みになるか知りませんが、ふやした方がいいということについてどうでしょう。
  108. 長尾立子

    長尾説明員 先生のお話大変ごもっともだと思うわけでございますが、つまり障害者の方の生活の状態というのは、施設に入っておられます場合、また介護者を必要とする場合、非常にさまざまでございまして、こういった方々についてのトータルな保障というものを考えますとさまざまな多様な方法があるのではないか、こういう御指摘であると思います。  私どもの福祉年金、また、いわば年金ということに限定をして考えますと、非常に多くの受給者、特に老齢等が非常に多い受給者になるわけでございますが、そういう多くの受給者の方にある一つの画一的な仕組みで給付をいたすというような形になっておりますために、先生がいまおっしゃいましたようなトータルとしての障害者の方のニードに応じるようなきめ細かい仕組みというものがなかなかにとれがたいという要素があると思うのでございます。  先生がお話しになられました福祉手当の場合には在宅の者だけに支給をされるという仕組みと聞いておるわけでございますが、いわばこういったほかの施策と年金とが組み合わせ方を考えていくことによりまして先生が御指摘になりましたような方向というものができるのではないかという気もいたすわけでございます。こういった年金を所管いたしております私どももそういった先生の御指摘の方向で十分に検討をさせていただきたいと思っております。
  109. 田口一男

    ○田口委員 次に、先ほど川本委員も所得制限に触れておられましたけれども、障害福祉年金の所得制限という面を見ますと、はっきり言って老齢福祉年金よりも改善緩和をされた、これは本年度評価すべきことだと思います。この結果どの程度の障害者の方が、浮かび上がっていくかという言い方をしますけれども浮かび上がってくるのか。その点を、私はそういった面で評価をするにやぶさかでないのですけれども、ただ、扶養義務者の所得制限を見ると、標準をとらえまして八百七十六万。これは昭和五十年度の第十五次改正以来本年まで六年据え置かれておるということになるわけですね、この調査室の資料にも書いてありますけれども。  そうなってまいりますと、どうでしょう。日経新聞の、これは政府の方の統計資料なんでしょうけれども、賃金指数を見ましても、昭和五十年度、五十一年度から見ると一二%、八%というふうに対前年で上昇をしておる。それから、消費者物価指数は先ほどからスライドの問題で言っておりますように昭和五十一年度九・四、五十二年度六・七というふうにこれも対前年で上がっておる。ということからいたしますと、この標準的な扶養義務者の所得制限八百七十六万を動かしてないということは、賃金、物価の上昇分だけむしろ所得制限が強まったという見方になりはしないのか。ただ、今回の二百十六万四千円が三百万に緩和をされた、改善をされたことはいいけれども、百尺竿頭一歩を進めて扶養義務者の所得制限も改善緩和をすべきでなかったのか、こう思うのですが、そういうおつもりはございませんか。
  110. 長尾立子

    長尾説明員 今回の障害福祉年金受給者につきましての所得制限の改善、それからいま先生御質問の据え置きの効果ということについて御説明を申し上げます。  障害福祉年金受給者につきましては本人の所得制限を三百万円ということで引き上げたわけでございますが、この三百万円という数字につきましては、いわば障害をお持ちの方が働いておられます場合に得られます所得の平均的なものということを考えまして設定をいたしたわけでございます。この水準によりまして所得制限の緩和の対象となります方は五十六年度におきまして約七千人程度の方というふうに推定をいたしておるわけでございます。現在、従来の福祉年金の所得制限によりまして停止をされておりましたいわゆる停止率というものは一・六八%でございますが、いま申し上げました七千人というような数字になります結果、この停止率は半分の〇・七五%ということになるわけでございまして、まずほとんどの方が、本人の所得制限によって停止されることはないと申し上げてよろしいかと思うわけでございます。すなわち、実数で申し上げますと、現在のところ、停止されております方が一万四百八十四人という推計でございますのが、停止されます方が四千七百七十九人というような数字になるのではないかと思うわけでございます。  一方、扶養義務者につきましては、現在の八百七十六万円という数字を据え置いたわけでございます。この据え置きましたいわば効果ということになるわけでございますが、実は、現在の八百七十六万円の水準で停止されております停止率は〇・六二%でございます。すなわち、先ほど申し上げました本人の所得制限の停止率に比べますと、低いと申しますか、所得制限としては非常に緩やかな率であるわけでございます。これは、据え置きました結果、先生お話のございました一般の所得の水準に比しまして、いわば逆に停止率が上がるわけでございますが、上がりました率で申し上げまして〇・七四%でございます。したがいまして、本人の所得制限、改善いたしましたものよりもある意味では所得制限の停止率はまだ低いと申し上げられるかと思うのでございます。現在、この八百七十六万円で停止されておられます方は三千八百六十九人ということになっておりますけれども、これが約千人程度おふえになりまして、四千七百十六人というような状況になるわけでございます。  今回の所得制限につきましては、いわば必要な方に必要な給付をということで、本人の方の所得制限を緩和するという考え方でこういった線を打ち出したわけでございます。
  111. 田口一男

    ○田口委員 障害者の方々の所得制限問題は、拠出制の厚生年金の場合は当然にありません。これはあたりまえの話なのです。ところが、不自由な体で、先ほど申し上げたような理由によって障害福祉年金受給者になっておる。その不自由な体で働いてみえる方も多いわけですね、雇用の機会はなかなか乏しいのですが。そういった方に対して、今回の所得制限の緩和を評価するにやぶさかでないにいたしましても、本来的には、こういう場合には、自立を支えていくためにも所得制限を撤廃すべきじゃないのか。いま言った扶養義務者の云々ということはそれなりの考え方があると思うのですが、自立をしていこう、こういう方に対して所得制限をすることはいかがなものかと思うのですが、どうでしょう。
  112. 長尾立子

    長尾説明員 先生の御指摘のとおり、御不自由な体で働いておられます障害者の方につきましての所得制限は、通常の場合とは違った観点で考える必要があるのではないかと私どもも思っておるわけでございまして、その意味で御本人の所得制限につきまして緩和を図ったわけでございます。  しかしながら、扶養義務者の方の問題も含めまして、障害をお持ちでありましても相当に余裕のある生活をしておられる方も世の中にはおられるわけでございまして、拠出制の年金と違いまして、無拠出の年金で、一般財源で実施をしておる年金でございますので、その水準がどこが適当かという御議論はもちろんあると思うのでございますが、所得制限というものはある程度必要ではないかと思っておるわけでございます。
  113. 田口一男

    ○田口委員 これで大臣のお考えをちょっとお伺いしたいのですが、いまさら国際障害者年と言う必要はありません。国際障害者年だから云々というよりも、いまから十年前の昭和四十五年に、この国会が心身障害者対策基本法というりっぱな法律をつくっておるわけですね。そこの第三条を読んでみましても、これは御存じだと思うのですが「すべて心身障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。」国連で言ったどんな憲章を見たって、私は、これがすばりあらわしておると思うのです。  ところがいかんせん、それを裏づけるものが全くない。ないと言ってはなんですが、いろいろなことで十分でない。したがいまして、高齢化社会で、高齢者の所得保障という問題も真剣に考えなければならぬ。しかし障害者の所得保障ということについてこの際見直すといいますか、再検討を要するのではないのか。  私はなぜそういうことを言うかといいますと、さっきある精神薄弱者の寮の話をしましたが、授産施設なんかで働いておる障害者の方々の状態を見ますと、障害者の方々の自立を真剣に考えれば考えるほど、所得保障、ずばり言って年金、これを確立しないことには障害者の方の生活の自立ということはむずかしい。といって、先ほどからお答えがありますように、障害福祉年金という面をとらえても、これは全額国費で、財政再建というふうな制約がある。バランスがある。社会保険原理が働く。いろいろな困難なことがあって、現制度の中でそれを一遍によくするということは、でき得べくしてなかなかできぬ問題である。私はそれは理解できます。  それならば、こういうことぐらいどうでしょう。労災、厚生年金国民年金身体障害者福祉法、いろいろと法律はありますが、そこの障害等級の認定はばらばらなんですね。労働省の所管、厚生省の所管というふうにあるにいたしましても、同じ障害等級については同じ金額の所得保障がなされるべきであるというごくあたりまえのことが、法律ごとにばらばらですから、金額の面は別として、少なくともことしじゅうに統一基準というものをつくっていく。障害等級がばらばらなものを統一させていくということをまず前提としてこれは考えていただきたい。  それから、先ほど私が申し上げたように、障害福祉年金をもらっておる方は精神薄弱者の方が多い。生まれつきそういったことで、国民年金にも、ましてや厚生年金なんということは夢にも考えられない。そういった方に対して、その介護をだれがするかというと、これも御存じだと思うのですが、大体母親かきょうだいですね。その母親、きょうだいが、自分の稼得能力を持っておりながら、それを犠牲にして介護をしなければならぬ。というふうなことを考えれば、当面障害福祉年金受給者全部というのじゃなくて、重度の障害者に限って、無拠出の障害手当というふうなものを別建てにつくれば、老齢福祉年金にリンクをしなければならぬとかどうとかいう制約からやや離れるだろうし、その基準は介護する人の稼得能力も計算に入れた、生活保護基準ということも参考にしたような障害手当といいますか、そういったことを当面考えたらいいのじゃないかと私は思っておるのですけれども、大臣どうでしょう。  障害者の方の所得保障ということをいまのままでいいのか、どうすべきか、こういう点についてお考えを承りたいと思います。
  114. 園田直

    園田国務大臣 所得保障ということ、これはきわめて大事なことであって、困難な中にも所得保障ということを考えてわれわれは努力すべきであると考えておりますけれども、現状としてはこれを緩和するという程度で御勘弁を願いたいと思ってやっておるわけであります。なお、年金制度が違いますので、同じ障害でありながら年金に差がある、こういうことは確かに御指摘のとおりでありますが、これはいまの年金の骨組みの中で是正することは非常に困難でありますが、この格差はなるべく縮めるように今後努力をいたします。
  115. 田口一男

    ○田口委員 障害年金問題はこれで終わります。  次に、あと一つ、二つなんですが、特別児童扶養手当についてお伺いをしたいと思うのですが、まず支給状況、こういったものを大ざっぱな数字で結構ですから、特別児童扶童手当についての支給状況をお聞かせをいただきたいと思います。
  116. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 特別児童扶養手当は、先生御承知のとおり、二十歳未満の障害を有する児童を監護する父母等に支給されるものでございますが、その支給状況は、概略御説明申し上げますと、昭和五十五年十一月現在でございますが、障害別の支給児童数は、まず重度の障害、一級でございますが、全体で七万八百六名、うち身体障害が三万九千九百五名、精神障害が二万九千二百五十名、重複障害が一千六百五十一名でございます。  次に、中度の障害、二級でございますが、総数三万二千六百六十名、うち身体障害一万一千七百九十一名、精神障害が二万七百四名、重複障害百六十五名でございます。  なお、手当の額につきましては、先生御承知のとおり重度の一級につきましては、三万三千八百円から今回三万六千円に、中度の障害二級につきましては二万二千五百円から二万四千円に引き上げるということでございます。なお、支給総額は五十五年度予算におきましては、三百四十億円、五十六年度予算におきましては三百七十六億円、全額国庫負担ということでございます。
  117. 田口一男

    ○田口委員 概況はわかりましたが、この支給の対象について、支給要件といいますか、第三条に「その障害児を監護する」という言葉がありますね。これで、先般ある施設に入っておるその父兄からいろいろな話を聞いたのですが、ちょっとこれを言うと、そうか、それならもらっておる方を減らしてやれということになりかねないのでそうはならぬようにお願いしたいのですけれども、養護学校というのがありますね。その養護学校に、いまうちから通う人は少ないわけです。強制的とか、いろいろな問題があるのですが、寄宿舎に入って養護学校に行く。そういう場合はいま言った特別児童扶養手当が支給されます。  ところが、これは名前を言いますけれども、三重県いなば園という精神薄弱児者総合福祉施設、これは昭和五十二年からオープンしておるのですけれども、このいなば園というところに入っている児の方が、そこから養護学校へ通学する。そうしますと監護の要件が充たされぬ、どうこうということでいったら特別児童扶養手当を支給をされない。  そこで両方の父兄、養護学校の方の父兄と、いなば園に入っている方の父兄というと、おかしいな、親元を離れておるじゃないか、そして一方はもらい、一方はもらえない、どうなんですかというしごく単純というか質問があったのですけれども、なるほど、おかしいなと思うのですが、いろいろな理由はあると思うのですね。施設の方へ入っておれば生活一切めんどうを見ておる。寄宿舎ではそうでない。ところが、双方の父兄から見ると、親元を離れていることは一緒だという、そういった不信、これはどうなんでしょう。
  118. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 特別児童扶養手当は、先生御承知のとおり、障害を有する児童を監護している父母等に介護費用として支給されるものでございます。この制度が設けられました大きな理由は、児童福祉施設に入所している児童は施設で介護されております。先生ただいまおっしゃられたとおりでございますが、親が家庭で苦労して育てている児童につきまして何らの対策もないのは不公平だという声がございまして、在宅の障害児につきまして介護費用として手当を支給することになったわけでございます。また、施設に入所している児童につきましてこの手当を支給するといたしますと、いわば公費の二重支給になるのではないかというようなことにもなりますので、本制度発足以来、手当は施設入所児童については支給されてないわけでございます。  したがいまして、この制度の趣旨あるいはこの制度は、障害児を監護する父母等に支給されるという法律の考え方から見まして、施設入所児童につきましてこの手当を支給することはただいまのところ考えてないわけでございます。しかしながら、施設の入所児童のためには施設の運営の充実等について私どももできるだけ充実強化すべきものと考えておりますので、この点につきましては十分今後とも努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  119. 田口一男

    ○田口委員 そもそもの生い立ちが、ということでわかるのですが、それならばもう一歩進めて、さっき私は高く評価すると言いましたが、障害福祉年金の所得制限が緩和された。ところがこの特別児童扶養手当については、もちろん改善はされております。五百六万が五百二十三万。八百七十六万は据え置きですけれども。さっきの障害福祉年金の緩和の度合いに比べると、この特別児童扶養手当のあれはちょっと不十分ではないかという気がするのですね。これはやはりむずかしいですか。
  120. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 特別児童扶養手当と障害福祉年金の所得制限を昭和五十五年度について比較いたしてみますと、三人世帯でございますが、特別児童扶養手当は三百九十七万円、障害福祉年金は二百五十八万円でございます。このように、もともと特別児童扶養手当の所得制限は障害福祉年金に比べまして相当高く設定されております。先ほどもお話しございましたように今回障害福祉年金の所得制限が大幅に緩和されましたのは、障害者御本人がハンディキャップを克服して収入を得ていること等を考慮したものと伺っております。特別児童扶養手当につきましては、毎年支給率維持の考え方に立ちまして所得制限の引き上げを図っております。昭和五十六年度におきましても三人世帯の場合三百九十七万円を四百十四万円に引き上げるということにしたわけでございます。
  121. 田口一男

    ○田口委員 以上で年金、特に障害者を中心に私は申し上げたのですが、最後に例の難民条約。これは大臣は外務大臣当時からお骨折りを願っておるのですが、いよいよ加入、これに伴う国内法の整備の進捗状況と、それから難民条約、難民条約ということの余り、そういう深い誤解は多くないのですけれども、いわゆる一般外国人、在日韓国人、朝鮮人の方々、そういった方々の内国民待遇ということについて実現されるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  122. 長尾立子

    長尾説明員 まず難民条約の加入に伴います国内法整備の進捗状況につきまして申し上げます。  難民条約への加入に伴い必要となります関係国内法の整備といたしましては、大別いたしまして難民認定等を行うための出入国管理令の改正がございます。もう一つ社会保障関係法律の改正がございます。政府はこれを一括いたしまして整備法として国会に提出する考えでございまして、現在関係省庁間の協議並びに法文の整理の作業をやっておるわけでございます。  もう一方の、難民以外の一般外国人についてどのように考えておるかという御質問でございますが、社会保障関係法律につきましては、国民年金法等の四本の法律につきまして、国籍要件を撤廃するということになっておるわけでございまして、すでに関係の審議会から御了承をいただいております。  このように、難民条約の加入に伴いまして、難民のみならず、従来からわが国に居住しておられます韓国人、朝鮮人を初めとする一般外国人の方にも国民年金を適用することといたしておるわけでございます。
  123. 田口一男

    ○田口委員 では終わります。
  124. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後三時二十五分開議
  125. 山下徳夫

    山下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び森井忠良君外七名提出原子爆弾被爆者等援護法案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。園田厚生大臣
  126. 園田直

    園田国務大臣 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者については、原子爆弾被爆者医療等に関する法律により、健康診断及び医療給付を行うとともに、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律により、特別手当、健康管理手当、保健手当その他の手当等の支給を行い、被爆者の健康の保持増進と生活の安定を図ってまいったところであります。  本法律案は、被爆者の福祉の一層の向上を図るため、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律について改正を行おうとするものであります。  以下、その内容について御説明申し上げます。  まず第一は、医療特別手当の創設であります。原子爆弾被爆者医療等に関する法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の状態にある旨の厚生大臣の認定を受けた被爆者であって、現に当該認定に係る負傷または疾病の状態にあるものに対し、新たに、医療特別手当を支給することとし、その額を月額九万八千円とすることとしております。  この医療特別手当は所得のいかんにかかわりなく支給することとし、また、これらの者に支給する特別手当及び医療手当は、廃止することとしております。  第二は、特別手当の額の引き上げであります。原子爆弾被爆者医療等に関する法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の状態にある旨の厚生大臣の認定を受けた被爆者のうち、医療特別手当の支給を受けていないものに支給する特別手当の額を現行の月額三万三千八百円から三万六千円に引き上げることとしております。  第三は、原子爆弾小頭症手当の創設でありますが、原子爆弾の放射能の影響による小頭症の患者に対し、新たに、原子爆弾小頭症手当を所得のいかんにかかわりなく支給することとし、その額を月額三万三千六百円とすることとしております。  なお、原子爆弾小頭症手当につきましては、医療特別手当または特別手当との併給を認めることとしております。  第四は、健康管理手当の額の引き上げであります。健康管理手当につきましては、造血機能障害等特定の障害を伴う疾病にかかっている被爆者であって、医療特別手当、特別手当または原子爆弾小頭症手当の支給を受けていないものに対して支給することとし、その額を現行の月額二万二千五百円から二万四千円に引き上げることとしております。  第五は、保健手当の額の引き上げであります。保健手当につきましては、爆心地から二キロメートルの区域内において直接被爆した者であって、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当または健康管理手当の支給を受けていないものに対して支給することとし、その額を、一定の範囲の身体上の障害がある者並びに配偶者、子及び孫のいない七十歳以上の者であってその者と同居している者がいないものについては、現行の月額一万千三百円から二万四千円に引き上げ、それ以外の者については、現行の月額一万千三百円から一万二千円に引き上げることとしております。  また、これらの改正の実施時期は、昭和五十六年八月一日といたしております。  以上がこの法律案を提案する理由及びその内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  127. 山下徳夫

  128. 森井忠良

    森井議員 私は、ただいま議題になりました原子爆弾被爆者等援護法案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ及び社会民主連合を代表いたしまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  昭和二十年八月六日、続いて九日、広島、長崎に投下された人類史上最初の原爆投下は、一瞬にして三十万人余の生命を奪い、両市を焦土と化したのであります。  この原子爆弾による被害は、普通の爆弾と異なり、放射能と熱線と爆風の複合的な効果により、大量無差別に破壊、殺傷するものであるだけに、その威力ははかり知れないものであります。  たとえ一命を取りとめた人たちも、この世の出来事とは思われない焦熱地獄を身をもって体験し、生涯消えることのない傷痕と、原爆後遺症に苦しみ、病苦、貧困、孤独の三重苦にさいなまれながら、今日までようやく生き続けてきたのであります。  ところが、わが国の戦争犠牲者に対する援護は、軍人、公務員のほか、軍属、準軍属など国との雇用関係または、一部特別権力関係にあるものに限定されてきたのであります。しかし、原子爆弾が投下された昭和二十年八月当時の、いわゆる本土決戦一億総抵抗の状況下においては、非戦闘員と戦闘員を区別して処遇し、原子爆弾による被害について国家責任を放棄する根拠がどこにあるのでしょうか。  被爆後三十数年間、生き続けてこられた三十七万人の被爆者と、死没者の遺族の、もうこれ以上待ち切れないという心情を思うにつけ、現行の医療法と特別措置法を乗り越え、国家補償の精神による被爆者援護法をつくることは、われわれの当然の責務と言わなければなりません。  国家補償の原則に立つ援護法が必要な第一の理由は、アメリカの原爆投下は国際法で禁止された毒ガス、生物化学兵器以上の非人道的兵器による無差別爆撃であって、国際法違反の犯罪行為であります。したがって、たとえサンフランシスコ条約で日本が対米請求権を放棄したものであっても、被爆者の立場からすれば、請求権を放棄した日本政府に対して国家補償を要求する当然の権利があるからであります。  しかも、原爆投下を誘発したのは、日本軍国主義政府が起こした戦争なのであります。われわれがこの史上最初の核爆発の熱線と爆風、そして放射能によるはかり知れない人命と健康被害に目をつぶることは、被爆国としての日本が、恒久平和を口にする資格なしと言わなければなりません。  第二の理由は、この人類史上未曽有の惨禍をもたらした太平洋戦争を開始し、また終結することの権限と責任が日本政府にあったことは明白であるからであります。  特にサイパン、沖繩陥落後の本土空襲、本土決戦の段階では、旧国家総動員法は言うまでもなく、旧防空法や国民義勇隊による動員体制の強化に見られるように、六十五歳以下の男子、四十五歳以下の女子、すなわち、全国民は国家権力によってその任務につくことを強制されていたことは紛れもない事実であります。今日の世界平和が三十万人余の犠牲の上にあることからしても、再びこの悲劇を繰り返さないとの決意を国の責任による援護法によって明らかにすることは当然のことと言わなければなりません。  第三の理由は、すでに太平洋戦争を体験している年代も数少なくなり、ややもすれば戦争の悲惨さは忘れ去ろうとしている現状であります。原爆が投下され、戦後すでに三十数年を経た今日、被爆者にとってはその心身の傷跡は永久に消えないとしても、その方々にとっては援護法制定されることによって初めて戦後が終わるのであります。  昨年十二月、厚生大臣の私的諮問機関である原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見書が出されましたが、被爆者や平和運動を熱心に進めている国民の期待を裏切るものであり、国家の戦争責任を否定し、むしろ日本の戦争政策を正当化する内容となっているのであります。また、われわれが原爆が国際法違反であると指摘しているにもかかわらず、全く触れていないことも問題であります。さらに許せないのは、国家補償に基づく被爆者援護法制定には国民的な合意が必要であるとしている点であります。戦後三十数年間、政府は国家補償法をつくらず、戦争体験の風化した今日まで放置した責任は重大であり、いまになって国民的な合意を要求するのは、本末転倒もはなはだしいと言わねばなりません。原爆の悲惨さの残る終戦直後に立法化されていれば、国民的課題の解決として大いに歓迎されたはずであります。  私たちは、以上のような理由から、全被爆者とその遺族に対し、放射能被害の特殊性を考慮しつつ、現行の軍属、準軍属に対する援護法に準じて、原爆被爆者等援護法を提案することといたしたのであります。  次に、この法律の内容の概要を御説明申し上げます。  第一は、健康管理及び医療給付であります。健康管理のため年間に定期二回、随時二回以上の健康診断や成人病検査、精密検査等を行うとともに、被爆者の負傷または疾病について医療給付を行い、その医療費は、現行法どおりとすることにいたしたのであります。なお、治療並びに施術に際しては、放射能後遺症の特殊性を考え、はり、きゅう、マッサージをもあわせて行い得るよう、別途指針をつくることにいたしました。  第二は、医療手当及び介護手当の支給であります。被爆者の入院、通院、在宅療養を対象として月額三万円の範囲内で医療手当を支給する。また、被爆者が安んじて医療を受けることができるよう、月額十万円の範囲内で介護手当を支給し、家族介護についても給付するよう措置したのであります。  第三は、被爆二世または三世に対する措置であります。被爆者の子または孫で希望者には健康診断の機会を与え、さらに放射能の影響により生ずる疑いがある疾病にかかった者に対して、被爆者とみなし、健康診断、医療給付及び医療手当、介護手当の支給を行うことにしたのであります。  第四は、被爆者年金支給であります。全被爆者に対して、政令で定める障害の程度に応じて、年額最低二十八万八千円から最高五百三十九万四千円までの範囲内で年金支給することにいたしました。障害の程度を定めるに当たっては、被爆者が原爆の放射能を受けたことによる疾病の特殊性を特に考慮すべきものとしたのであります。  第五は、被爆者年金等年金額の自動的改定措置、すなわち賃金自動スライド制を採用いたしました。  第六は、特別給付金の支給であります。本来なら死没者の遺族に対して弔慰をあらわすため、弔慰金及び遺族年金支給すべきでありますが、当面の措置として、それにかわるものとして百万円の特別給付金とし、五年以内に償還すべき記名国債をもって交付することにいたしました。  第七は、被爆者が死亡した場合は、十五万円の葬祭料を、その葬祭を行う者に対して支給することにしたのであります。  第八は、被爆者が健康診断や治療のため国鉄を利用する場合には、本人及びその介護者の国鉄運賃は無料とすることにいたしました。  第九は、原爆孤老、病弱者、小頭症その他保護、治療を必要とする者のために、国の責任で、収容保護施設を設置すること。被爆者のための相談所を都道府県が設置し、国は施設の設置、運営の補助をすることにいたしました。  第十は、厚生大臣の諮問機関として、原爆被爆者等援護審議会を設け、その審議会に、被爆者の代表を委員に加えることにしたのであります。  第十一は、放射線影響研究所の法的な位置づけを明確にするとともに必要な助成を行うことといたしました。  第十二は、日本に居住する外国人被爆者に対しても本法を適用することにしたのであります。  第十三は、厚生大臣は速やかにこの法律に基づく援護を受けることのできる者の状況について調査しなければならないことにいたしました。  なお、この法律の施行は、昭和五十七年一月一日であります。  以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。  被爆後三十六年を経過し、再び原爆による犠牲者を出すなという原水爆禁止の全国民の願いにこたえて、何とぞ慎重御審議の上、速やかに可決されるようお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  129. 山下徳夫

    山下委員長 次に、内閣提出廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。園田厚生大臣
  130. 園田直

    園田国務大臣 ただいま議題となりました廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  廃棄物の適正な処理は、国民の生活環境を保全し公衆衛生の向上を図る上で必要欠くべからざるものであり、廃棄物処理施設の適正な整備を図るととはその中心となる施策であります。このため昭和三十八年度以来四次にわたり廃棄物処理施設の整備計画を策定し、廃棄物処理施設の計画的整備を図ってきたところでありますが、なお緊急かつ計画的な整備が必要となっているため、現行の廃棄物処理施設整備計画に引き続き、昭和六十年度までの第五次廃棄物処理施設整備計画を策定することとした次第であります。  改正の内容は、厚生大臣は、昭和六十年度までの間に実施すべき廃棄物処理施設整備事業の実施め目標及び事業の量について計画を策定し、閣議の決定を求めなければならないこととすることであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  131. 山下徳夫

    山下委員長 次に、国民年金法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。草川昭三君。
  132. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  年金でございますけれども、御存じのとおり老後生活の支えとしてこの国民年金というのは非常に大きな役割りを果たしてくるようになりましたが、高齢化社会に向けて今後年金というものが非常に成熟化する段階の中でどのようなことになるのか。国民年金財政収支状況は、たとえば五十五年度の予算では保険料収入が一兆一千九百八十億、支出が一兆六千五百六十四億というように逆ざやになってきておるわけであります。もちろん一般会計からの受け入れだとかいろいろな関係がありますからトータルではもっておるわけでございますけれども、年金制度の長期的な安定の見通しについて一体厚生省としてはどのようにお考えになるのか、まずお伺いをしたいと思います。     〔委員長退席、湯川委員長代理着席〕
  133. 長尾立子

    長尾説明員 お答え申し上げます。  厚生年金国民年金の将来の財政見通しでございますが、五十五年に厚生年金国民年金財政計算をいたしたわけでございますが、そのときに行いました将来の推計をもとに御説明を申し上げます。  今後、わが国は全体といたしまして高齢化社会を迎えるわけでございますが、国民年金厚生年金におきまして受給者は急増いたしまして給付費の増大は避けられない見通しでございます。厚生年金の場合には、被保険者は将来におきまして三割程度の増は見込んでおるわけでございますが、老齢年金受給者におきましては約五倍程度になるというふうに見込まれております。国民年金におきましては、被保険者数は漸減をいたしますけれども、老齢年金受給者は七割程度ふえるというふうな見込みになっておるわけでございます。  このような状況の中で両制度を安定的に運営してまいるためには保険料につきましてもある程度の負担をお願いせざるを得ないというふうに考えておるわけでございますが、給付の面におきましては必要な方に必要な給付をという原則に沿った改善を行っていくという形で制度としての効率化、重点化ということに志向いたしたいと思っておるわけでございます。
  134. 草川昭三

    草川委員 高齢化社会に向けて負担がある程度増大化するということはそれなりの覚悟が必要ではございますけれども、それにしても数理計算というのは非常にむずかしい問題もあるわけでありますし、国民的な合意を得るためにも長期的な計画というものを常にその情勢に応じながら適宜打ち出していくことも一つはぜひ必要ではないだろうか、こう思うわけであります。  それから年金も、最近御存じのとおり、企業年金だとか厚生年金あるいは共済年金、いろいろな問題もあるわけでございまして、国民の関心も非常にわいてきておるわけであります。その中で本委員会においても幾多討論があったと思いますけれども、官民格差の問題、あるいは企業年金の問題等で企業ごとの格差あるいは産業ごとの格差、将来展望の中で組み方もずいぶん違ってきておる問題があるわけでございまして、その負担の中でも、たとえば各種共済年金には以前の恩給部分の整理資源というのがあるわけです。  私はこの前も衆議院の予算委員会でこの問題を取り上げましたが、この整理資源もどんどんふえてきまして、国家公務員共済の場合はこの恩給部分の当局側の負担が二千二百八十四億円になってきております。それから地方公務員共済もこれは五千五百二十億円になってまいりました。それから公共企業体職員共済は二千五百七十四億円にふえてきまして、一兆三百七十八億円という整理資源を国が持たなければならないようになってきたわけですから、一兆円を超すわけであります。一体この整理資源がいつゼロになるかということですけれども、昭和百年にならないと整理資源がゼロにならない。現実に、生存者、直接本人の受け取る方もお見えになるわけでありますし、その本人が亡くなってその家族が受けるわけでございますが、その家族も亡くなった段階で初めて整理資源というのはゼロになるわけですから。  これもいろいろな経過があるわけでありますから別にその経過についていい悪いは申し上げませんけれども、国全体の問題としては、整理資源が一兆円を超す段階になってまいりますと、いま声答えがございましたような国民年金掛金の負担もある程度考えなければいかぬと言うのですが、片一方のこの整理資源は一兆円を超しておるじゃないだろうかという話も一面的には出てくるわけです。これを生の数字で比べることは必ずしも適切ではございませんけれども、国民の感情としては割り切れないものがあるわけであります。一体、そういうもの全体のことを考えて今後の年金改革を進めるには、非常に多岐にわたる問題があると思うのですが、その点はどうでしょう。
  135. 長尾立子

    長尾説明員 先生お話しの整理資源は、年金制度としての前史的なものでございます恩給期間に見合いますものを、国がいわばその時期の事業主といいますか、雇用者として負担をしているものというふうに理解をしておるわけでございますが、先生が御指摘いただきましたように、今後の推移の中でその費用も相当に大きなものになってくるということは予想されるわけでございます。いわばその問題は、今後の公的年金制度全般を考えますと、その中での費用負担というものをどのように考えていくか、それから制度間におけるいま御指摘のようないわば格差と申しますか、そういう問題をどういう形で解消をしていくかという問題であろうと思います。  恩給期間の問題につきまして私から御説明を申し上げますのは不適当と思うのでございますが、今後の公的年金制度の全般の問題を考えてみますと、制度間に費用負担の面において国民の皆様の納得の得がたいような格差のないような配慮をしてまいらなければならないというふうに考えておるところでございます。
  136. 草川昭三

    草川委員 そこで、民間の立場からも意見が出てくるわけでございますけれども、最近企業の退職一時金の負担というのも非常に高額になってきまして、企業側の方もいわゆる企業年金というものの考え方というのが非常に多くなってきておるように伺うわけです。何か全企業の三分の二は企業年金を導入をするというような話でございますし、それからまた翻って、個人年金ということについて、いろんな銀行だとか信託銀行だとか生命保険あるいは証券会社あるいは農協、それに最近話題を呼びました郵政省の郵便年金というような新しい商品が非常に活発に発売というんですか出されてきておるわけです。ですから、個人年金ということも時宜に合って非常にいいことですけれども、厚生省としては全体の整合性を考える意味から何らかの見解というものがあっていいのではないかと私は思うのですが、その点はどのようにお考えになられますか。
  137. 長尾立子

    長尾説明員 今後の高齢化社会を考えてみますと、私どもとしては、公的年金制度が老後の所得保障の中核的な役割りを果たすべきものというふうに考えておるわけでございます。しかし、国民の皆様の間にはより豊かな老後生活を希望されるという方がおられることも事実でございますので、郵便年金または民間で発売になっております個人年金制度というような形の自助努力の方法というものを否定することはないと思っておるわけでございますが、しかしながら、こういった制度があるからと申しまして公的年金制度の役割りの重要性が失われるというものではないと思っておるわけでございます。
  138. 草川昭三

    草川委員 もちろん私も公的年金の役割りというのはそれだからこそ、二階建てになるのか三階建てになるのか四階建てになるのかわかりませんけれども、基礎になるもので非常に大切だという主張をしておるわけですから、そのことをとやかく言うわけではございませんけれども、少なくともこの十年後には各種年金が十兆円を超すのじゃないだろうか、こう言われるわけです。はっきり言うならば、余り乱暴なつくり方があってもいけないわけでありますし、あるいは年金でございますからやはり積み立てがどうしても必要でございますから、いわゆる個人の生活設計ということもある程度の方向ということがなければなりませんし、あるいは中には非常に複雑な形での年金というものが形成されても、これまた問題があると思うのですね。  そういう意味で、私は、家族を含めた長期設計を立てる意味でのもう少し行政的なある程度の考え方があってもいいのではないだろうか、全く関係がございませんというのはいかがなものかという感じがするわけです。その点はどうですか。  それから、いまの郵政省の考え方についても、厚生省は郵便年金についての考え方もいまと同様な考え方になるのかどうか、念を押して聞きます。
  139. 長尾立子

    長尾説明員 被用者の皆様の老後設計という意味でございますと、もう一つの問題といたしましては企業年金の問題があると思うのでございます。先生もいま御指摘いただきましたように、現在いわば株式市場に上場されておりますような企業のうちの七割程度が企業年金を導入しておるというふうに聞いておるわけでございます。  この企業年金でございますが、私どもの方では厚生年金基金という形で企業年金を一部所管いたしておるわけでございますけれども、企業年金は退職金の年金化でございますとか、企業自身の抱えておられます労務政策上の観点からそれぞれの企業の特色ある設計をされておられるわけでございます。その特色ある設計をされるということ自体は企業としての一つの方向であると思うのでございますが、先生のお話がございましたように、受給者の方にとりましては、将来の生活設計という意味では財政の安定性ということはきわめて重要であるというのは御指摘のとおりだと思います。  私どもは、企業年金全体がいまお話しのように公的年金とどの程度の役割りをどういう形で担い合っていくべきものであるか、それから企業年金制度として抱えております企業年金年金権の保全というものが現在すでに行われております諸体系の中で十分なのかどうなのか、そういった問題につきましては十分検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  こういった企業年金以外の個人年金の問題についてのお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、厚生年金国民年金も含めまして公的年金といたしましては、老後の生活設計という意味でいわばはっきりと当てにしていただけるという水準として考えていきたいというふうに考えておるわけでございますが、それを中核にいたしまして、その上にさらに加わった生活上の余裕と申しますか、そういうものをお考えになるというものとして、そういった個人年金というような自助努力というものがあるのではないか。その問題につきましては、私どもは公的年金とどういう役割り分担をするかという意味では、生活の基本的な部分を公的年金で、いわばゆとりの部分につきましては公的年金が及ばないというふうに考えておるわけでございます。
  140. 草川昭三

    草川委員 そのゆとりのある部分はその他の年金を組み合わせるということでございますけれども、いまも答弁がありましたように受給権の保障だとか、それからインフレによる目減りの問題等もあるわけですから、これは防止策という意味で非常に重要な問題であると思うのです。  ですから、いまの答弁は、一つの役割り分担があるんだけれども、法制化への一つの整備というものの布石を考えておるのかどうか、その点どうですか。
  141. 長尾立子

    長尾説明員 企業年金の問題につきましては、先ほど申し上げましたように現在制度が大きく申しまして三つあるわけでございます。一つは、私どもが所管いたしております厚生年金基金制度でございまして、もう一つは税制適格年金制度、もう一つは、いわば各企業が独自におやりいただいております自社年金でございますが、この三つにつきまして今後の企業年金のあり方を考えてみますと、いま先生がおっしゃいましたような受給権の保全の問題、スライドの問題、また基本的には公的年金との役割り分担の問題、それから企業自身の持っております企業年金のニードをどういうふうにとらえるかというような面で、多角的な検討は必要であろうと思っております。  この点につきましては、私どもとして、先生がお話しのような法制化の方向に進むのかどうかということについては、現在の段階で結論を得ておらないわけでございますが、実は本年度と申しますか、昨年来企業年金問題につきまして関係者の研究会を設けていただきまして、関係者と申しますのは、いわば自由な立場で企業の労務担当の方とか、それから労働組合においてこういう問題に御研究をいただいております方、また企業年金問題に造詣の深い学者の方にお集まりをいただきまして、私的な形で研究会を持たしていただきまして研究をさせていただいておるところでございます。この研究会の御意見がどのようなものでいただけますか、まだいただいてないわけでございますが、そういう研究というものを積み重ねてまいりまして、先生おっしゃいました法制化の問題も含めまして、法制化と申しますのは現行の制度を改正するという形になるかもしれないわけでございますが、検討してまいりたいと思っておるわけでございます。
  142. 草川昭三

    草川委員 研究会も必要ですが、とりあえずいろいろな組み方もあるわけですから、厚生年金基金連合会の方々は何か社会保険審議会のメンバーに入ってないのだそうですね。ですから社会保険審議会なんかにも年金基金の連合会を参加をさせるとか、あるいはいま言った企業年金の代表もそういう新しい立場から参加していただくというようなこともぜひ考えてもらいたいと思います。それから先進工業国家というのですか、主要な先進諸国では企業年金の問題についての立法が非常に進んでおるというように私ども聞いておるわけです。ですから、どういうような法律がいいかどうかは別でございますけれども、何か厚生行政としては後手後手のような気がしてならぬわけです。気がついたときには既成事実の年金制度がたくさんできてしまって、行政上の対応がおくれるという場合があると思うので、先進諸国では企業年金のための考え方というのがあるわけですから、それはもう少し大胆な問題提起があってしかるべきではないか、こう思うのですが、その点もう一度答弁を願いたいと思います。
  143. 長尾立子

    長尾説明員 先生指摘のように西欧諸国、アメリカ等におきましては、企業年金が公的年金と並びますような第二の公的年金と言われるような形で社会的に機能を果たしておるというふうに聞いておるわけでございますが、その場合も公的年金との役割り分担というものが果たしてわが国の場合とほぼ同様に考えられるのかどうか。それから企業年金の仕組みも諸外国を見ますと全国一本で、ホワイトカラー、ブルーカラー層でできておるような国もございますし、また全く企業単位でできておる国もございます。  いま先生お話しになりました諸外国の法制の内容につきましても勉強させていただいておるところでございますが、私どもといたしましては、その国その国の持っております公的年金と企業年金との役割り分担というものの関連を考えながらそういう法制化の問題を勉強する必要があるのではないかと思っておるわけでございまして、わが国におきます法制化ということを考えますと、わが国の労働組合の状況でございますとか、それから企業というものの現実の状況、構成比といいますか、そういうものを考えました上での実際的な法制化の内容を考えていかなくてはならないと思っておるわけでございます。
  144. 草川昭三

    草川委員 ぜひその問題は少し促進方を要望しておきます。  次に、いわゆる年金の資格がない国民、私は非常に重要な問題だと思うので提起をしたいわけでございます。  海外青年協力隊というのがあるわけです。これは園田厚生大臣も前に外務大臣をやっておみえになったからよくおわかりだと思いますが、日本が海外協力あるいは海外の技術援助をする場合に、もちろん無償援助あるいは有償援助、いろいろなものがございますが、実質的に人間的なつき合いをして大きな効果がありますのは、この青年海外協力隊員、ボランティアと言われているわけでございます。さらにもう一つグレードの高い専門家制度というのがあるわけです。これらの方々が農村に入りながら向こうの農家の、低開発国の方々と個人的につき合いをしながら大変な苦労をなさっておみえになるわけです。私は日本の直接的な外交だと思っておるのです。  私も現地の方々に何回かお会いをしたし、いろいろなお話をしますけれども、非常に劣悪な条件でございまして、非常に冷たい言い方ですけれども、日本の国の政府としては好きな人が行っておるというような感じの待遇しかないわけです。だからボランティアと言うのですけれども、そういう段階ではない。  それで、賃金は非常に安い賃金ですけれども、現地の待遇ということで甘んじておみえになりますからそれはきょうはさておきまして、問題は国民年金厚生年金の適用になっていないわけです。外地へ行っておる間は無年金者になるわけです。これを放置することはいかがなものか、こう思うのです。  これはとりあえず外務省の方にお伺いをいたしますけれども、きょうは時間が余りございませんから私から申し上げますけれども、五十五年度で海外協力隊員というのは三百八十人ですか、それから専門家というのが千百二十一人、こういうことでよろしゅうございますか。
  145. 川島純

    ○川島説明員 いまの数の点お答え申し上げます。  先生のおっしゃった数字は、五十五年度におきます協力隊の方は三百八十人、実は五十五年度は御承知のように三月末で終わりまして、実際は四百人をちょっと超えた数字が出たわけでございますが、これは一月末日の実績数字でございます。  それから専門家の方の千百二十人でございましたでしょうか、これは一月末現在の短期及び長期の派遣専門家の実績数字でございます。
  146. 草川昭三

    草川委員 それでそれなりの、五十五年度の数字でございますから数字に問題ないと思うのですけれども、その中でいわゆる企業に籍を置きながら専門家として参加をする方はかなりふえてきておるわけです。ところが、こちらへ戻ってきても企業の籍のない方は八・三%あります、これは五十五年度であります。それから同じく青年海外協力隊員の新規派遣の場合でも、五十五年度の場合は七九・七%、三百三人が所属籍を有していなくて向こうへ行くわけです。だから帰ってきても、その間は少なくとも無年金者なんです。私これは恥ずかしいことじゃないかと思うのですが、厚生大臣どうでしょう、外務大臣の経験者として。
  147. 園田直

    園田国務大臣 これは外務省に答弁してもらうのは残酷でありまして、外務省の外交官の家族もそういうことになっておる。それから同じ企業でも、向こうへ支店を出して、そこへ行った者は年金にかかるが、新しい会社であるとか合弁とか、あるいは国家の政策に協力して協力隊員で行った者はいまの年金の骨組みから外れておる、こういう非常な無理がございまして、これは外務大臣をやっているときから私はいろいろ苦心をしておるところでございます。  現在の年金の骨組みを変えるということになると大変な問題でありまして、どう処置していいか、いまいろいろ勉強しているところでございます。
  148. 草川昭三

    草川委員 ぜひこれは外務省にも、ほうりっ放しの問題ではなくて、やはりどこかセンターをつくってそこで雇用契約を結んで、そこで資格をとって海外へ行っていただく。そして帰られたらそこからどこかの企業を適当に見つけられるなら見つけられていって、年金はやはり通算をするようなことを考えないと、外務省の家族の方等も含めまして、いつまでもこのようではいけない。閉鎖時代ではなくて先進工業国家でありいろんな条約も結んできておるわけでございますから、私はこれは早急な対応を立てられたいということを強く要望しておきます。  外務省の方としても全くこれは考えがないというわけではないんでしょう、あるんでしょう。ちょっとその点、外務省の見解を問いたいと思うのです。
  149. 川島純

    ○川島説明員 果たしてこれは私が外務省を代表してお答えする立場にあるかどうか、まことに疑問があるわけでございますが、たまたま青年協力隊等を主管しておる課の立場におる者といたしまして、こういう時代でございますし、できる範囲のことはもちろん考えるべきだという気持ちでございます。  まさに厚生大臣あるいは厚生省の方々の御協力と申しますか、私どもも御承知のとおり海外に多く出る立場でございますので、お願いをする立場でもございますし、ひとつ何とかできることは考えてまいりたいと思います。
  150. 園田直

    園田国務大臣 いま発言されましたが、私は年金の骨組みを変えるということは、これは時間がかかるし大変問題でございます。したがいまして、いまのようなセンターをつくるとかあるいは国内で代理者が納めるとか、何かそういう便法を講ずるのが一番早いと思いますので、外務省とも相談をして検討いたします。
  151. 草川昭三

    草川委員 海外協力隊の方々の年金適用は、いま大臣がおっしゃったような答弁を私どもも前向きのものとして受けとめますので、ぜひ採用をしていただきたいと思います。  今度は話題を変えまして、年金福祉事業につきましていろいろな融資があるわけでございますが、この年金福祉事業というのが最近は非常に評判がいいわけですね。それで、特に住宅融資等についても大きな関心があるわけでございますが、中古の木造住宅は実はこれの対象になっていないのです。いま公共投資が余りぱっとしない段階で、ぜひ中古住宅等についても融資の枠を広げていただいて、そしてまたそれが新しく買いかえができるような時代が景気刺激にもつながると私は思うのですけれども、年金福祉事業のあり方について少し御意見を賜りたい。特にこの中古住宅についてどのような考え方を持っておみえになりますか。
  152. 阿部正俊

    ○阿部説明員 お答え申し上げます。  年金福祉事業団の住宅融資が最近非常に需要が強うございまして、今年度七千七百億余の還元融資を得まして、これを被保険者の住宅に回そうというふうな計画になっておるところでございます。  いま御指摘の中古住宅の問題でございますが、これは年金融資だけでございませんで、住宅金融公庫その他でもまだ対象になっていない状況でございます。これには、私ども必ずしも専門家ではございませんけれども、建物の評価の問題とか担保設定をする場合の問題とか、いろいろな技術的な問題もあるやに聞いておりますけれども、最近の中古住宅の需要が非常に高まってきておるということ、あるいは市場が徐々にではございますけれども形成されつつあるという状況も踏まえまして、住宅金融公庫等ともよく相談をしながらできるだけ前向きに進めていくようにしたいと考えておるどころでございます。
  153. 草川昭三

    草川委員 ぜひ前向きに進めていただきたい。中古住宅にも適用のほどを、これは住金の方にも関係することでございますが、促進方をお願い申し上げたいと思うのです。  なお、これの住宅ローンの保証をする場合の保険、火災保険などを特約する場合、団体信用生命保険というものを掛けなければいけないということになっておるわけですが、これが非常に企業が特定されるのですね。幹事会社が設定をされまして、たとえば競争相手の方が融資の申し込みをする、ところがいま申し上げたように火災保険を掛けろ、生命保険を掛けろ、これは特約する、競争相手の幹事会社が窓口になるというのはいかがなものか、任意性というものがないわけですね。いまの実態が非常に複雑になっておりますから、また歴史がありますから、私の方にも若干の誤解があるかもしれませんけれども、ここら辺はぜひひとつ要望として、任意性を否定しないような特約制度ということを考えていただきたいと思うわけです。  それから、還元融資の計画をずっと見てまいりますと、年金福祉事業団としての療養施設からいろいろなものがありますし、特別地方債として、本来事業の住宅、病院建設あるいは厚生福利施設、いろいろなものがあるわけでございますが、いわゆる産業廃棄物処理だとか同和対策、下水道、上水道等の事業もあるわけです。そのほかの機関として医療金融公庫あるいは国立病院の特別会計というように還元融資の資金計画があるわけでございますが、もうそろそろ産業廃棄物処理等にこの還元融資を使うことはやめるべきであって、本来業務としての年金福祉事業団の方の融資、あるいは本来事業の病院だとか厚生福利の方にその金を回して、本来の医療の問題等があるべき姿に移るように私はお願いを申し上げたいと思うわけです。  そこで、医療の問題にも還元融資が使われるわけでございますが、私はきょうは厚生大臣に率直な見解を賜りたいわけでございます。たまたま医大の医師の問題にも触れるわけでございますが、きょう、国立山口大学医学部の卒業試験の試験官が、医師の国家試験を作成したのではないだろうかという問題が少し報道されておるわけでございます。実は私もかねがね、現在の医師の国家試験のあり方でいいかどうかということについて若干意見を持っておるわけでありまして、きょうの一つの動きというものを、私非常に重要な問題ではないかと思うわけです。  これは、国立山口大学の医学部の今年度の卒業試験に出た問題と、ことしの四月四日、五日に行われました春の医師国家試験の内容とが同じであったということであります。これはちょっと簡単に見過ごせない問題ではないか、こう思うのです。いま早稲田大学の入学試験の問題でいろいろと出ておりますが、医師というのは人命を預かる最高の職業でございます。その試験が公平さを欠くことがあったとするならば、これはちょっと許せない問題ではないか、私はこう思うわけでございます。  これはもう名前も出ておりますから、あえて申し上げますけれども、その卒業試験を出題したのは、山口大学医学部の泌尿器科の酒徳治三郎教授だということまでわかっておるわけでございます。しかも、その卒業試験の問題がコピーされて受験生の間に広く出回っておったということは非常に重大だと思うのですが、まずその点について大臣の御見解を賜りたいと思うのです。
  154. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 先生の御指摘のような事件を私どもも耳にいたしまして、早速調査を始めたところでございまして、本日、同教授には厚生省へおいで願って、私どもとしてもその間の事情の聴取を始めたわけでございます。今後なるべく速やかに事態を解明してまいりたいと考えるものでございます。
  155. 草川昭三

    草川委員 国家試験の試験官がその時期の卒業試験を担当するということがそもそもおかしいわけでして、李下に冠を正さずという言葉もございますけれどもやはり遠慮すべきではないだろうか、このような点は試験官の採用に当たって、厚生省としては当然過ぎることだと思うのですが、そういう指導はなされていなかったのかどうか、お伺いします。
  156. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 御指摘のとおりむしろこれは当然の問題でございまして、試験委員をお願いしている先生方は、その所属の大学では試験は担当なさらぬのが通常でございまして、そういうことが今後幾つも出てくるということは御指摘のとおり困ったことでございますので、たとえばこの山口大学の場合には、泌尿器科には教授はこの先生お一人しかおられなかったというような事情も聞いておりますが、そういう立場の先生には試験委員になることを差し控えていただくように十分検討してまいりたいと思っております。
  157. 草川昭三

    草川委員 しかもこの国家試験の担当者は、本来は隠しておくのが筋ではないだろうかという意見もあるわけでございます。かつて何かそういう事件があったかもわかりませんけれども、四カ月前に発表するんだそうですね。ですから生徒にしてみれば、受験生にしてみれば、その先生の過去の出題傾向というのは猛烈な勢いで探すわけですから、かえって混乱が起きるのではないかという考え方があるのです。これは隠しておった方がかえって問題だという意見もあるかもわかりませんけれども、非常に重要な点だと私は思うのです。その点はどういうお考えですか。
  158. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 まず制度の面から申しますと、試験問題の作成というなかなか時間のかかる作業をお願いいたします関係上、四月程度前に任命、発令ということをいたしまして、これはまたある意味では一種の公務員の中に入る制度でございますので、任命、発令いたしますと公表いたすということになっておるわけなんでございますが、また実態の面から申しましても、こういう方を試験委員にお願いしたということを公表いたしますことが試験委員の方々の自覚を促すゆえんでもある、こういう御意見もございます。  先生指摘のように四月も前からわかるということに問題があるという点も、私ども自覚は持っているのでございますが、それにつきましてはむしろこれを伏せるという方向ではなく、試験問題の出し方を改善していく、たとえば現在検討しておりますのは、試験の問題数を少し増大させる、あるいは診療科を広くとるというような方向で、たとえ試験委員の方々のお名前がわかりましても、なおかつそれに対処するためには非常に膨大な勉強が必要であるというふうな方向に持っていくほかはないのではないかと考えております。     〔湯川委員長代理退席、戸沢委員長代理着席〕
  159. 草川昭三

    草川委員 その出題傾向については私またちょっと間を置いて申し上げますけれども、今回のことについては厚生省としても厳重な調査をなされると思うのですけれども、もし調査されて、受験生の調査結果ですけれども、山口大学の卒業生の受験者の成績結果が他に比べて非常に著しくいい場合はどういうような処置をされますか。再試験だとかいうことを考えられますか。
  160. 園田直

    園田国務大臣 医師の国家試験の問題、各所にいろいろな問題が起きて医療に対する国民の疑惑を招いているときに、その出発点である国家試験でこういう問題を起こしたことはまことに遺憾でございまして、申しわけなく存じております。早速わかりましてから電話で連絡いたしましたところ、本人の教授の方からの自分が直ちにこちらに出頭するというので、ただいま来て事情の聴取を行っているところであります。  そこで、その結果がわからないうちに軽率に言えませんけれども、第一は、しばしばあなたが発言されておる国家試験のあり方、これもこれを契機にひとつ検討しなければならぬ大きい問題である。次には、仮にいまおっしゃいましたように試験の結果を調査して山口大学の卒業生がこの問題について特別成績がいい、これはコンピューターに入れるとわかるそうでありますから、こういうことで調査をしたらこの部分だけ試験をどうやるのか、やり直すのか、こういうことも今後の問題として起こるわけであります。かつまた、一般の医大の試験問題漏洩事件ということとはやや性質を異にしておりますが、大変に国民に疑惑を与えるという点においては同じでございます。  そこで、まず厚生省としては文書をもって、医師の国家試験の出題をなさる方は大学の試験の出題に関与なさらないようにという文書、これは日にちは忘れましたが出してございます。しかし、この問題について厚生省としてその実行をもっと徹底すべきであったし、また重ねて試験委員の方にもそれは確かめるべきだった、この大きな原因はうかつであったということが非常に残念な原因だと考えております。かつまた、その結果によって、そういう全般的に委員の方の調査をいたしまして、大学の試験に従事される方は国家試験は遠慮してもらうとか、国家試験の委員をされる方は大学の試験委員をやめてもらうとか、逐次そういう問題が出てくると考えております。
  161. 草川昭三

    草川委員 ではちょっと警察庁にお伺いしますけれども、医師法の三十条には「試験事務担当者の不正行為禁止」という項があるわけです。これは不正行為のないようにしなければならないというのは当然になっておるわけです。あるいは同じく医師法の三十二条には「故意若しくは重大な過失により事前に試験問題を漏らし、又は故意に不正の採点をした者」は刑に処すというりっぱな明文があるわけですが、警察庁としてはどのような御関心を持っておみえになりますか。
  162. 中島治康

    ○中島説明員 ただいま先生が御指摘の事件につきまして警察も強い関心を持っておるところでございますが、事実関係はいまのところはっきりしておりません。早急に関係機関などと協議いたしまして事実関係を明らかにした上で適切に処理してまいりたい、こう思っております。
  163. 草川昭三

    草川委員 そこでいま厚生省の方もおっしゃいましたように、いまの国家試験の内容が大体おかしいのですよ。  それで国家試験の内容は、これは厚生省が発表いたしておりませんけれども、AとBという内科系、外科系というようなアイテムに分かれますし任意の題材もあるわけでございますが、全部で二百題あるわけです。それを縦のカーブで点数をつけるわけです。横のグラフは六十題出すわけです。この横の六十題というのはいわゆる技術というのですか臨床というのですか、六十問出す。そちらの方はウエートが高くて一題について十点、これは横六百点になるわけですね。縦は二百題ありまして一題について三点なんです。縦も六百点になる。  ですから、いまは縦の二百題の方は、五つの項目がございまして次のうちのどれを選ぶかという選ぶ方法ですから暗記だけなので、暗記の方の二百題を生徒は猛勉強するわけです。だから新設の私立大学なんかは受験用の特別のホテルがあるわけです、ホテル形式の宿舎が。そこで、二十四時間とまでは言いませんけれども猛烈なハードな詰め込みテストをやるわけです。それで大学には専門官がいて、四カ月前に発表された先生の出題傾向を専門的に追うわけです。そしてそのホテルのような二十四時間詰め込む生徒のところへ来て徹底的な詰め込み教育をして、まずこの二百題、いわゆる六百点をたくさんとるように訓練するわけです。これを大体六〇%までとれば縦の線で一応の成績になる。  横の方は六十題なんですけれども十点ですからちょっとウエートが厳しいわけです。ところがこっちの方の臨床というか技術というものは六十しかないわけです。ですからこちらも同じ六〇%あれば——五〇%という意見もあるのですがそれは厚生省が秘密にしておりますからわかりませんが、五〇なり六〇のところでカーブを立てまして、横でカーブした赤線のグラフのところにとにかくどこでもいいからとまれば国家試験が通過ということになるわけです。  だから技術が強くて先生になる人と、技術は下手だけれどもとにかく詰め込みで二百題まる暗記で覚えれば、技術が低くてもこれで国家試験に受かるという、こういう特別なグラフで国家試験のテストが行われておるわけです。  このやり方がいいかどうか、ウエートのとり方がいいかどうかは別でございますし、これは恐らく厚生省はこういうことでやっておるということは否定をされると思うのですけれども、否定されるかどうかいまから聞きますけれども、とにかくこういうやり方で国家試験が通るということはいかがなものかという気がするわけです。  特に、最近のお医者さんは専門的な教育になってきましたので、早く言うならば、脳外科であろう心臓外科であろう、あらゆる病気を知ってみえる先生というのはだんだん少なくなってきている。専門家になってまいりましたから、医師といってもオールマイティーの方が少なくなってきている。これから、そういう将来の問題は将来の問題として、試験のあり方を考え直さなければいかぬと私は思うのですが、何か厚生省の方としては、試験制度の改正ということを、いまも審議会の方にかかっておみえになると思うのですが、この試験制度の改正ということをもう少しスピードを上げてやられる考えはないかどうか、そしてこのようなシステムでやられておるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  164. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 御指摘のとおり、現在医師国家試験の改善というものにつきまして医療関係者審議会医師部会で御検討いただいております。同部会では、昨年三月から小委員会を設けていただきまして、内容についていろいろ御検討いただいてきたわけでございますが、この春、一応の検討の結果を私どもも伺っております。  その主な内容を申し上げますと三点ございまして、第一点は、医師国家試験の実施回数を春一回にすることが適当ではないか。第二点は、受験回数を制限するという考え方については慎重に検討すべきである。第三点は、試験の問題数についてはこれを増加させまして、試験内容の充実を図る。そういうような御意見をいただいております。  この問題は引き続き医師部会で御検討いただくわけでございますが、それと同時に、学校教育あるいは病院の現場での問題その他もいろいろ関係ございますので、関係方面とも調整を進めてまいりまして、審議会からの御意見に基づいてなるべく速やかに対処してまいりたいと考えております。またその御意見の中で、ただいま御指摘の臨床実地の問題というもののウエートをもう少し上げるというようなことについても御検討いただいているわけでございまして、トータルとして、より資質の高い医師を選抜することに適当な試験制度に持っていくという方向で御審議をいただいているところと存じますので、その御審議の結果を受けて善処してまいりたいと思います。
  165. 戸沢政方

    戸沢委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  166. 戸沢政方

    戸沢委員長代理 速記を起こしてください。  草川委員
  167. 草川昭三

    草川委員 それで大臣、最後に、十万人に対して百五十人の医師というのが昭和六十年にはできるわけでございますので、ぜひともこの医師の国家試験の問題については慎重な検討を立てられるよう特に私は要望しておきたいと思うので、一言だけお伺いしたいと思います。
  168. 園田直

    園田国務大臣 慎重に十分検討いたします。
  169. 草川昭三

    草川委員 いまたまたま私は、年金福祉事業の融資の中についても医療の問題こんなにたくさんあるわけですから、こういう病院についても、問題は、医師が年金福祉事業団の融資を受けるわけですから、そういう関連で申し上げておるわけでございます。  それでは最後に、実は障害者の年金の問題に関連するわけでございますが、大蔵省の方もお見えになっておられますが、身体障害者の方々の自動車税だとか取得税、いわゆる物品税の軽減の問題で、障害の区分の中で言語障害、音声障害の方々だけはこれが適用除外になっておるのですけれども、大蔵省として、ことしは国際障害者年でもございますので、障害の区分によって差別をすべきではないのじゃないかという意見があるのですが、その点はどのように考えられますか。
  170. 大山綱明

    ○大山説明員 この問題は物品税の性格なり経緯にも関係いたしますので、少々御説明をさしていただきたいと思います。  物品税と申しますのは、これは特定の物につきまして、その商品の背後にあります担税力に着目して課税する税でございます。そして製造者の段階を離れるときに課税する税でございます。私どもこれを物税と言っておりますが、こういった物税でございますものですから、こういう税につきまして人的な要素、人的な特殊事情を配慮するということはなかなかなじみにくいわけでございまして、そういった観点から、物品税につきましては特殊な人的な事情をしんしゃくするということは、基本的に、いたしておらないわけでございます。  ところで、いまの乗用車の物品税の件でございますが、物品税の課税の趣旨にふさわしくないものにつきましては、人的な事情も若干しんしゃくするということで、現在の物品税は著移品とか趣味娯楽品あるいは便益品に対して課税をいたすわけでございますが、たとえば学校で教材用に使いますピアノ、こういったものは趣味娯楽品といった観点からはとらえにくいということで、特殊な用途免税をいたしております。  そういったような線上のものとして、身体障害者の方々に対する乗用車に対する物品税の免税措置ができているわけでございます。身体障害者の方、特に下肢、体幹の不自由な方、足の御不自由な方々は、自動車はまさに便益品というよりも足でございます。そういった観点から、物品税の課税対象にするにはなじみにくいということで課税対象から外しているわけでございますが、こういった物品税の性格からして、課税するにふさわしくない方々の購入なさる物品税は免税にいたすという趣旨で現在の線引きをいたしておるところでございます。  実は、昨年までは下肢、体幹の不自由な方だけに限っておりましたが、それを各方面からの御要請もございましたものですから、物品税の課税の趣旨をぎりぎりのところまで拡大と申しますか、いたしまして、単独では歩行に著しく支障のある方々という線で切ったことから、現在、先生指摘の言語の障害のあられる方、そこまではなかなか広げられないということでございます。御了承いただければと思います。
  171. 草川昭三

    草川委員 こういう国際障害者年のことでございますから、それは厚生省の方もぜひ対応を立てられて、障害者の全体にわたるようにしていただきたいと思います。  最後になりますが、例の国民年金の問題と難民条約との関係でございますが、永住権を持つ在日外国人の方々の三十五歳以下の問題は何回かお伺いしております。問題は、三十五歳以上の方々の適用について便宜的な措置あるいは特例措置ということを何回か私どもも主張してまいりましたが、いよいよ作業も進んでおると思いますが、その点についての新しい考え方はあるかないかお伺いをしたい、こう思います。
  172. 長尾立子

    長尾説明員 難民条約への加入に伴いまして、国民年金におきまして、同条約に定めております内国民待遇を実現するために改正を行おうとしておるわけでございますが、この改正の趣旨から申しまして、外国人の方のみを対象とする特別措置は講じないということでございます。
  173. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  174. 戸沢政方

    戸沢委員長代理 次に、米沢隆君。
  175. 米沢隆

    米沢委員 昭和五十六年度予算におきましては、関係当局の必死の努力にもかかわりませず、老齢福祉年金、児童手当、住宅金融公庫低利融資につきまして、所得制限が導入、強化されました。反面、例外的に、原爆被爆者に対する手当の中の認定患者分の新しく一本化されました医療特別手当に所得制限が撤廃され、児童扶養手当、母子福祉年金がやっと現行に据え置きということに相なりました。  財政再建をにしきの御旗といたします大蔵省の所得制限攻勢からいかに福祉を守っていくか、これからの大きな課題の一つでもありますから、きょうは福祉の分野における所得制限の問題について若干の質問をさせていただきたいと思います。  まず細かい話から入りますが、今回の一連の所得制限強化によりまして、実際にどれぐらいの人数が不利益を受けるのか、児童手当、老齢福祉年金につき、財政負担軽減額もあわせて御答弁をいただきたい。
  176. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 まず、児童手当について申し上げたいと思います。  児童手当の場合におきまして、まず財政効果でございますが、四百九十七万円、据え置きの場合に比べまして、五十六年度におきましては約十七億円、四月から実施したといたしました満年度ベースでは二十六億円の国庫負担の減となるわけでございます。  ただし、他方、低所得者の手当額の改善によりまして、国庫負担は十億円、満年度ベースで三十億円増加いたしますので、その結果、国庫負担額は七億円の減、満年度ベースでは四億円の増となります。  また支給対象者でございますが、支給児童数におきましては、被用者階層で八万人、自営業者階層で二万人、合計約十万人の減少ということになっております。
  177. 長尾立子

    長尾説明員 福祉年金の今回の扶養義務者所得制限の据え置きに伴います状況につきまして、御説明を申し上げます。  支給停止になります人数は九千人、国庫負担額は八億円の減でございます。
  178. 米沢隆

    米沢委員 それから、従来本人所得制限が同じでありました母子福祉年金あるいは児童扶養手当と特別児童扶養手当が、今回別扱いとなりまして、特別児童扶養手当の本人所得制限のみが緩和された理由は一体何ですか。
  179. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 特別児童扶養手当につきましては、従来から支給率維持の考え方に基づきまして、所得制限額の引き上げをいたしたものでございます。  児童扶養手当及び母子福祉年金につきましては、母子世帯の所得状況に照らしまして、児童の福祉増進の見地から支給されておるものでございますが、このような趣旨から、その所得制限は一般世帯の所得状況とのバランスがとれていることが適当と考えられます。児童扶養手当の所得制限は、六人世帯の年収で五百六万円、二人世帯では三百六十一万円と、一般世帯の所得状況と比べましても、一般世帯の所得状況の平均よりもある程度高いという状況でございまして、かなりの水準となっておりますため、五十六年度におきましては、限度額を据え置くこととしたものでございます。
  180. 米沢隆

    米沢委員 それから同様に、この本人所得制限が従来まで同じでありました老齢福祉年金、障害福祉年金、福祉手当のうち、障害福祉年金と福祉手当のみが老齢福祉年金以上に緩和された理由は何ですか。
  181. 長尾立子

    長尾説明員 お答えを申し上げます。  障害福祉年金、福祉手当を受けておられます方の場合には、ハンディキャップを克服しながら職業についておられる、収入を得ておられるという方々でございます。こういった方々の実情を考慮いたしまして、大幅に引き上げたものでございます。  今回、三百万円という金額に引き上げたわけでございますが、この三百万円といたしましたのは、身体に障害のある方の給与水準の年収を基礎に考えたものでございます。
  182. 米沢隆

    米沢委員 次に、児童手当については所得制限を強化すると同時に給付の充実を図るということで、市町村民税の所得割の額のない者については手当額を月額六千五百円から七千円に引き上げたわけでありますが、収支バランスはどういうことですか。
  183. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 収支バランスにつきましては、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、最終的には、国庫負担額といたしまして七億円の減、満年度ベースで四億円の増ということになっております。
  184. 米沢隆

    米沢委員 以上、それぞれ今回の予算措置におきまして所得制限が強化されたり撤廃されたりいろいろな措置がなされておるわけであります。  大臣、この五十六年度の予算編成に当たりまして、こういういろいろな意味での所得制限が中に入ってきましていろいろと御苦労もあったのではないかと思いますが、まず大臣の予算編成時点における御感想をちょっと聞かせてもらいたいと思います。
  185. 園田直

    園田国務大臣 今度の予算編成で特に私が重点を置いて、それぞれの関係、特に財政当局にお願いしたことは、国の財政状況あるいは置かれておる環境が厳しくなればなるほど社会福祉行政というものは大事になってくるということが第一。第二番目には、一方また国の財政も考えなければなりませんので、社会福祉行政、年金、児童手当等が切り捨てられては困る、切り詰める、むだを省く、適正に、しかも効率的にこれを使う。本当に困った方には、つらい中でも引き上げる、がまんしてもらえる方々には少しがまんしてもらう、こういうことで折衝をやったわけであります。  個々の問題でいろいろおしかりを受ける点もあると思いますが、まあまあ今度の予算編成の環境では、一、二はありますけれども、大体水準を維持できるところでお助けを願った、こう思っております。
  186. 米沢隆

    米沢委員 ここではっきりしなければならないことは、この所得制限は、やはり国民が納得する程度のものは必要であろうと思いますが、所得制限のやり方に原則や方針が定かでない、各制度によって異なっているのはおかしいという問題指摘は大変重要だと思うのでございます。明確な原則、方針がないから財政事情に左右されることになるのではないか、こういう疑念があるわけでありますが、大臣いかがですか。
  187. 園田直

    園田国務大臣 先ほども申し上げました方針ではありますが、いろいろな問題ごとにそれを考えまして、たとえば所得制限を外したもの、あるいは強化されたもの、緩和されたものと、こういうことになっておるわけでありますけれども、これを財政状況に応じて変化されないよう基本的な考え方を持っていくことはきわめて大事で、その基本的な考え方というのは、制度の重要程度、それから、本当に困っている方々の立場、こういうことを勘案しながらやっていかなければならぬと考えております。
  188. 米沢隆

    米沢委員 たとえば児童手当の所得制限等については、やはりその児童手当の支給というものに対する国民的なコンセンサスがない、大蔵省の児童手当を見る目と厚生省の見る目とは全然違う、そういう観点から、所得制限の議論になったときには、いつも丁々発止で決まらない。御承知のとおり、今度の場合でも、児童手当の所得制限につきましては、大蔵原案が四百十三万四千円、厚生省は現行据え置きの四百九十七万というものを主張されたそうでありますが、結果的にはもめて決まらないから足して二で割って四百五十万、こうなりますと出てきた数字そのものは何にも意味がない、説明できない数字になってしまっているわけですね。そういうものが毎年毎年積み上げられていきますと、所得制限とは一体何か、所得制限の数字そのものは何を意味するかと原点に返って議論すると、全然鬼っ子が出てくる、私はそんな感じがするのですね。そういう決め方には大変不満があるのですけれども、大臣どうですか。
  189. 園田直

    園田国務大臣 児童手当の所得制限はやや趣を異にしておりまして、いま発言されましたとおり、財務当局と私の意見は真っ向から食い違っております。私はこれは充実すべきものだ、財務当局はこれは逐次廃止していきたい、そこで私は充実するための足場として今年度歯どめをかける、こういうことでやったわけでございます。
  190. 米沢隆

    米沢委員 どうも釈然としませんけれども、やはり所得制限そのものはあっても、ある程度のものは仕方がないであろう、少なくとも所得制限をかけるならばそこでぴしっと、給付をがくっと変えるわけでありますから、そういう意味でそれなりの意味と意義と物の考え方が統一されたものがなければだめだ、私はそう思います。  それで、本人の所得制限の設定につきましても、そういう意味で各制度の所得制限をこの程度にしなければならないという理由について、もう少しぴしっとしたものをつくってもらわないと、たびごとに、財政事情がよくなる、悪くなるに従らていつも揺り動かされる、本質的にはそういうものであってはならない、そういう感じがしますので、ぜひその点、物の考え方を統一してもらいたいということを御要請申し上げます。  特にこういうようなはっきりした物の考え方をされないと、今後、先ほど申しましたようにいつも論議の対象になって財政がおかしくなればなるほど意味のわからない所得制限の数字になってくる、これだけはどうしても避けてもらいたいということを重ねてお願い申し上げたいと思うのです。  そこで、その問題を考えるために、各制度いろいろ所得制限がなされておりますけれども、発足当初考えられた所得制限の根拠みたいなもの、あるいは基礎的な物の考え方みたいなものを逐次説明していただきたいと思うのです、老齢福祉年金、障害福祉年金、母子福祉年金、児童扶養手当、特別児童扶養手当、福祉手当、児童手当、原爆手当。
  191. 長尾立子

    長尾説明員 福祉年金につきまして御説明を申し上げます。  福祉年金の所得制限は、本人の所得制限と扶養義務者の所得制限とございますので、両者につきまして御説明を申し上げます。  本人の所得制限でございますが、福祉年金制度は、創設されました昭和三十四年当時はこれらの三種の福祉年金の本人の所得制限につきましては、地方税の住民税の非課税者というものを支給対象とするという考え方であったわけでございます。形といたしましてはそういう考え方を法律に示してあったわけでございますが、その後この地方税の改正に伴いまして限度額方式と申しますか、具体的な金額をもって表示するという方式に改めたわけでございます。こういった方式に改めましたのが昭和三十八年でございますが、それ以後現在までの推移の中では、原則的には地方税の非課税というものを考えまして、これに扶養親族がおられます場合にその控除をする、つまりその額をふやすわけでございますが、そういう考え方でほぼ現在まで及んでいるというふうに申し上げられるかと思います。  次に、扶養義務者の所得制限でございますが、当初扶養義務者の所得制限は現在の扶養義務者の形のものと配偶者の所得制限と二種類あったわけでございます。配偶者の所得制限につきましては、当初所得税を納めておるような配偶者があった場合には、これを所得制限の対象とするという考え方でございました。それから配偶者以外の扶養義務者の場合には、一定の所得税額を示しまして、三十四年当時の金額でございますけれども、五十万の所得の方が納めるべき——これは一つのモデルでございますが、扶養親族は五人ぐらいの方でございますけれども、この方が納める税額を示しまして、それ以上の方が所得制限がかかるという考え方でもっておったわけでございますが、これはいわばそのときの大体二割程度が所得制限に該当するというようなところをめどとして定めたというふうに聞いておるわけでございます。  その後配偶者の所得制限につきましては、所得税を少しでも納めた場合には所得制限にかかるというのは、実態といたしまして大変厳しいという御批判がございましたこと、また扶養義務者と区別をするということが合理的でないという御批判がございまして、四十一年に配偶者と扶養義務者を一緒にといいますか、配偶者の所得制限と扶養義務者の所得制限というものを統一いたしまして、現在の形にしたわけでございます。  この扶養義務者の所得制限につきましては、四十六年まで先ほど申し上げました考え方とほぼ同じ程度の水準で推移したわけでございますが、本人に所得がある場合の所得制限と、扶養義務者に所得がある場合の所得制限には若干の考え方の相違があってよいというような御意見から、この所得制限の水準を緩和いたしたわけでございます。この段階、四十六年、四十七年、四十八年の段階におきまして、大幅な所得制限の緩和をいたしました。四十八年時点の金額で申しまして、六百万円という水準になったわけでございますが、いわばこの当時は非常に高い水準の方々以外は所得制限がかからないというような水準であったというふうに考えておるわけでございます。  それ以来この水準をいわゆる支給率維持という考え方で推移させてきたわけでございますが、この水準はある意味で非常に高い水準でございます。そういう意味では、福祉年金の財源は税にゆだねられておりますので、この部分につきまして問題であるということで、現在この八百七十六万円という水準になってきたということでございます。
  192. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 児童扶養手当、特別児童扶養手当、児童手当、福祉手当について申し上げたいと存じます。  まず、児童扶養手当でございますが、この制度は母子福祉年金の補完的制度でございますので、母子福祉年金の所得制限にならったわけでございます。  次に、特別児童扶養手当でございますが、この手当は、障害を有する児童を監護する父母等に支給される手当でございます。同じ子供を扶養する者に支給される手当である児童扶養手当と性格が似ておりますので、児童扶養手当の所得制限にならったわけでございます。  次に、児童手当でございますが、児童手当の財源は、事業主の拠出のほか国及び地方公共団体からの公費により賄われております。また児童養育家庭の家計負担の軽減も目的にいたしておりますところから、給付の必要性が比較的少ないと考えられる所得階層の者については、給付をしないこととしたわけでございます。当時昭和四十六年度に発足いたしましたときは、六人世帯の場合年収二百万円が所得制限限度額として設定されたわけでございます。このときの支給率は約九割の水準でございました。なお、この所得制限額を国家公務員に当てはめてみますと、本省の新任課長程度以上が受給できなくなるというものでございました。  最後に福祉手当について申し上げますと、この手当は障害福祉年金受給者のうち特に重度の障害者に支給されるものでございます。その趣旨及び制度の仕組みから障害福祉年金に準拠することが適当であると考えられますので、障害福祉年金にならったわけでございます。
  193. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 原爆関連諸手当につきまして申し上げます。  昭和四十三年に原爆特別措置法を制定いたしました時点におきましては、特別手当の支給率が約八〇%になるような考え方で所得制限を設けました。その後、原爆被爆者の置かれております特殊な事情にかんがみまして支給率の改善に努めまして、現在は九六%の支給率となっているところでございます。  なお、今年度新たに創設いたします予定の医療特別手当及び原子爆弾小頭症手当につきましては、支給対象者の原爆放射線による顕著な健康障害という現状にかんがみまして所得制限を撤廃するということにいたしております。
  194. 米沢隆

    米沢委員 いろいろ詳しく御説明をいただきましたが、端的に申し上げまして大変不思議に思いますのは、ことしは国際障害者年、したがって障害を持つ者については所得制限を緩和する、そういう発想が入っておるのですけれども、たとえば特別児童扶養手当あるいは児童扶養手当を最初から同じにしておられること自体が本当はおかしいのですよ。国際障害者年がやってきたからこの分だけは所得制限を何とか緩和してあげよう、そういう発想そのものがつけ入れられるすきをつくるのではないか、つくっておるんじゃないかという感じがするんですね。  たとえば支給率維持を一つのめどにされるということは、前年の物の考え方をそのまま継続するという考え方ですね。ところが、何らかの契機によって所得制限をいじったらそれに従ってまた支給停止率維持を図る、こういうことでございますから、支給停止率を維持するという、言葉で聞いたら何となく思想がそのまま伝わっておるようなものに見えるんですけれども、実際はちょっと変わったらそれに応じてまた支給率を維持するということでございます。支給率維持という言葉からして、何か制度そのものの所得制限の考え方が一貫しておるふうに聞こえますけれども、実際は年度によっていろいろばらつきをつくり、いかにもそれを維持しているような感じに見せる、そのあたりはどうも納得できない部分があるのです。  そういう意味で、いまさら過去のことを申し上げてもしょうがありませんけれども、今後の問題として再度申し上げますけれども、物の考え方だけはぴしゃっとして、そういうものは絶対譲れないと言えるぐらいの基本的な物の考え方、セットの仕方というものをぜひ御検討賜りたいと思うのでございます。  問題は、財政当局の事情だけで所得制限が強化されていくということになりますと、よく言われますように本来の政策目的が忘れ去られてしまうのではないかという懸念が一つ確かにありますね。同時にもう一つは、所得制限が果たして公平な物差しかどうか。これは予算委員会等を通じましても幾たびか議論になったところでございます。そういう意味では、この所得制限が果たして公平な物差しかどうか、この議論の消化が必要だ、こう私は思うのです。むずかしいからしないとか、これしかいまないからだめだなんて議論では、こんなに所得制限がねらい撃ちされる時代になってきますとちょっと逃げ腰に過ぎるのではないかという気がして私はなりません。  御承知のとおり、この所得制限額を低い水準に設定すればするほど問題は出てきやすいということも言われますし、ウエルフェアトラップと言うのですか、福祉の落とし穴。線を引けば必ずその前後に、引いたがゆえに不利益をこうむる者が出てくるわけでありまして、できれば、こんな線を何本も引いてもらっては困るのであります。だから、児童手当に線がまたふえるとかあるいは福祉年金にまた線がふえるとその前後に、額のいかんは別にいたしまして、あの人と比べてどうだという議論になりますとどうしてもその人が不利益をこうむるような感じになる。そこらから制度そのものが不信の目で見られる。そういう意味では、こういう線引きというのは一本で十分であって、二本にする、一回一本ふやしたら、今度は三本くらいどうだ、こういうふうになるのですね。そういう意味で今度線が二本もふえるということ自体は大変問題だ、そうわれわれは思っておるわけでございます。  そこで、最初に申し上げました財政当局の事情だけで所得制限が強化されていきますと本来の政策目的が忘れ去られるのではないか。特に中央児童福祉審議会の意見具申の中にもそういうようなことが書いてありますよね。結局、児童手当の支給の目的というのか、そういうものがはっきりしてないがゆえにこういう所得制限が入りやすいのですね。それはやっぱり財政の面で何とか合理化しようということでの所得制限の導入ということであって、児童手当を支給するということで線を引かねばならないということではないわけですから、そういう意味では政策目的が忘れ去られる代表的な事例ではないかという気がするわけです。その点、局長はどうですか。
  195. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 ただいま先生は児童手当を中心として申されたわけでございますが、児童手当の事情につきましてはしばしば大臣が申されているとおりでございます。  ただ一般的に申し上げますと、厳しい財政事情は所得制限を見直すきっかけになったことは事実でございますが、単に財政事情のみでこのことが行われたものではございません。制度本来のあり方を考慮いたしましていろいろ見直しをしたということでございます。この点につきましては先ほど先生がおっしゃいました障害関係の年金について所得制限を大幅に緩和したことでも御理解いただけるのではないかと存ずるわけでございます。
  196. 米沢隆

    米沢委員 たとえば今回所得制限が強化をされたとしても、もし所得制限そのものの物の考え方がぴしっとしておりますならば、財政事情が好転したならばもとの考え方に立ち戻る、そういうことが前提になければならぬと思うのですね。どうなんでしょうか。
  197. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 ただいまも申しましたように、この財政事情は所得制限のあり方を考えるに至りました一つの契機ではございますけれども、ただいま申し上げましたように財政事情のみがこのようになった理由ではございません。そういった意味におきまして、財政事情が好転いたしましたから直ちにもとに戻るということにはならないことかと思います。
  198. 米沢隆

    米沢委員 単に児童手当だけではなくて、今度いじられたもの、従来からときどきさわられたもの等々、はっきりしておれは——それはそうでしょう。財政事情のみではないとおっしゃいますけれども、これは財政がうまくいっておったらこんな物差しなんか出てこないな、こんなもの。本来物の考え方がぴっちりしておりさえすれば、この際財政が大変だからこうしましょう、そのかわり、よくなったらまたもとに返しましょう、そういうような所得制限のいじり方をしてもらいたい、こう申し上げておるわけでございます。  それから、所得制限の物差しが果たして公平なものかどうかという問題でございます。これは従来からいろいろなところで論議されておる問題でありますが、御承知のとおりトウゴウサンとかクロヨン等々と呼ばれておりますように、給与所得者や自営業者、農業所得者などの間では所得の捕捉率に格差があることは周知の事実であります。この所得捕捉の不公平、こういう形でしか基準を定められない、基準を同列に扱えない、こういうことだけで当然のごとく扱われておりますと不公平なものである。不公平な捕捉率でありますから、それによって出てきたものを基準にするということは不公平をつくるということ、あたりまえの話だ、そう思うのです。  大臣、どうなんでしょうか、この問題は。
  199. 園田直

    園田国務大臣 一律に言うわけにはまいりませんけれども、所得制限というものはちゃんとした基本的なものがなければならぬ。それはある程度の所得がある方はがまんをしていただくが、真に困った方にはさらに手厚く対応の策を講ずるという考え方ではありますけれども、その中で、御発言の中にしばしばありましたようにその制度の目的、趣旨、それからこれを受ける方々の実態、こういうものが基本になっていかなければならぬことであって、所得制限を強化されたものの中には財政事情が大きく響いたものもございます。そういうものは財政事情が好転すれば当然緩和されていくべきであると考えております。
  200. 米沢隆

    米沢委員 この所得の捕捉率という問題は、確かに税務上は大変むずかしい問題かもしれませんけれども、これはいわゆるサラリーマン族にとってはいつも税制そのものに対する不満の種であり、同時に不満であるがゆえに不公平だと思っているわけでありますから、不公平な物差しですべてをはかられる。児童手当ばかりじゃありませんよ。保育料でもそうですし、奨学金を貸す、貸さないというときもそうですし、公営の住宅入居のときにも使われますし、何でもかんでもみんなこれを基準にされておるわけですね。よくぼくらが見る例でありますが、外車で保育所に子供さんを迎えに来る親の方がぎりぎりいっぱい働いて迎えに来る母親よりも給料が低いことになっていたりする、そんなばかな話はないのですね。少なくとも自己申告を一つ制度としておるということは、正直に申告してもらおうということでしょう。しかしながら、それを前提にしておきながら、実際はいろいろな申告についての不正がよく新聞に伝えられますよね。サラリーマンなんて本当にガラス張りで完全に一円たりとも不正申告できないんだもの。そうなりましたときに、どうしてもこの不公平というものは正してもらわねばならない。これは単にこういう所得制限がどうだこうだという以前の、財政再建のまず第一の眼目でなければならぬ。そう思うのでございます。  そこで、いま実際所得制限をされる場合、判定基準というものを具体的にはどうやってやっておられるのか。いわゆるサラリーマン族といわゆる自営業者というのかそういう皆さんと、どういう形で相均衡できるような装置がなされておるのか。そして、これしかないというならば、いつまでも捕捉率が不公平である限りずっと将来にわたってこれしかないということになりまして、どうもいらいらがいつまでも続くということでありますが、変えられるような方式は考えられないのですか。
  201. 長尾立子

    長尾説明員 福祉年金等の所得制限をいたします場合の所得の範囲及び計算方法でございますが、所得の範囲は住民税によっておるわけでございます。すなわち、いわば粗収入といいますか、そういうものがあるといたしますと、それから経費を差し引いたもの、給与所得者の場合にはこれが給与所得控除に当たると思いますが、こういう差し引いたものがいわば総所得というような形になるかと思います。こういうものを前提といたしまして、具体的な政令で定めております諸控除等をこの上に加えまして、具体的な限度額を比較してやっておるわけでございます。  先生おっしゃいますように、所得制限を行います以上、受給者の方の間に公平性の原則が保たれなければならないということは御指摘のとおりだと思います。しかしながら、所得制限を行います方法につきまして、いろいろな業態にわたるいろいろな多数の受給者の方がおられますし、そういった方々の所得を税によりませんで違う方法で把握するということをいたしますのは、実際問題といたしましてはまず不可能ということになるわけでございまして、全国一律に一つのラインをもって所得制限をいたします以上、現実的には、この税で把握されております所得を基礎として行うことが適当であると考えておるわけでございます。
  202. 米沢隆

    米沢委員 そうであればあるほど——大蔵省の方、来ておられますね。所得の捕捉についての公平さを追求してもらうということは重大な問題だと思うのです。  そこで聞かしてもらいたいのは、自営業者の脱税の状況は一体どうなっておるのですか。
  203. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 お答えいたします。  国税庁といたしましては、税務当局といたしましては、いま先生指摘のように課税の基本としての収入金額をいかに把握するかということが最大の眼目でございます。そういう意味でいわゆるサラリーマン、給与所得者とそれから申告納税をしていただく事業所得者との間に不公平が生じないようにということで、私どもとしては最大の努力をしているわけでございます。  いわゆる事業所得者の脱税の状態につきましてはどうかという御質問だと思いますが、これにつきましては、私ども年間約十数万件の税務調査をやっておりまして、事業所得者の約五%程度をやっているわけでございます。これにつきましては、最近青色申告の普及その他もございまして、一部に悪質な納税者のあることも事実でございますけれども、全体として見ればそれほどの脱税というような状態にはないのではないか、このように私どもとしては考えているわけでございます。
  204. 米沢隆

    米沢委員 それほどの脱税ではないけれども、所得の把握の仕方には苦労されておる、これがおっしゃりたい本音だと思うのですね。そう言われながらも、たとえばサラリーマンが所得税について、申告所得について脱税することはほとんど制度的に考えられないことですよね。現にこうして自営業者あたりが申告に不正をやる、脱税をするということ自体が推して知るべしでして、そこらはトーゴーサンとかクロヨンとかの割合は別としても、所得の捕捉の仕方に大変問題があり、苦労はなさっておると思いますけれども、もっともっと苦労をしてはっきりしたものにしてもらわないと、私は不公平感はなくならないのじゃないかという気がしてなりません。逆にそちらの方が、財政再建される場合にはまず最初にやってもらわなければならないことじゃありませんか。
  205. 冨尾一郎

    ○冨尾説明員 私どもといたしましても、課税の公平を図ることは財政再建の一番基本的なことだと考えておりまして、国税庁職員五万人でございますが、総力を挙げて今後とも課税の公平の確保のために、青色申告その他納税者の協力を確保する体制の維持に努めながら、一方で税務調査の徹底を図りまして、悪質な脱税ということがないように今後とも最大限の努力を続けてまいりたいと存じております。
  206. 米沢隆

    米沢委員 大臣、聞いてもらいたいのでありますが、サラリーマンと自営業者の比較が五十四年度のある新聞に載っております。たとえばサラリーマンの就業者数は三千二百五十三万人、自営業者は千二百三十五万人。このうち納税しておる人は、サラリーマンが八九・四%、自営業者はわずか二二・二%。就業者一人当たりの納税額は、サラリーマンが十四万四千五百円、自営業者はその半分の七万二千三百円。児童手当をもらう世帯数はほぼとんとん、自営業者の方が約四万世帯ぐらい多い。それから児童手当をもらう児童数も、これは約十五万人ぐらい自営業者の方が多い。ですから、たとえば三人以上の子供さんがおってそして児童手当をもらえるような立場にある人の支給率というのは、サラリーマンの方が八三・三%児童手当をもらっておるのに対して、自営業者は九二・八%もらっておる。  ですから、サラリーマンは税金は取られるわ、支給率は低いわで、やはり自営業者の所得の捕捉の仕方そのものに私は問題があるような気がしてならぬのです。出てくる国庫負担額も、サラリーマンの場合には百四十五億に対して自営業者は六百一億も使っておるわけですね。そういうところから、たとえば児童手当の財源についてはいろいろな論議がなされておりますけれども、いわゆる自営業者、農民からもある程度負担してもらったらどうなんだというような答申がなされておるのですが、こういうやつはもっと真剣に検討してもらいたいと思うのですね。どうなんでしょうか。
  207. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 ただいま先生おっしゃいました自営業者、農民からの拠出につきましては、被用者グループについて事業主からの拠出があるのに対しまして、財源負担のあり方として不均衡であるという指摘が従来からございまして、私どもも検討してまいったところでございます。  一方におきまして、自営業者等の拠出の性格づけ、徴収の技術的方法、徴収コストなど多くの問題がございまして、早期に実施することはなかなか困難であると考えております。社会全体が連帯して児童を健全に育てていくという児童手当の考え方からいたしますれば、社会の構成員が応分の負担をすることは基本的には望ましいことと考えている次第でございます。
  208. 米沢隆

    米沢委員 そこで厚生大臣、御承知のとおりこの法律案の提案に先立ちまして諮問されましたいわゆる社会保障制度審議会の答申は、今回のこの所得制限の導入強化につきまして「所得制限について掘り下げた検討のあとがみられない。」「今回の老齢福祉年金における扶養義務者等の所得による一部支給停止の導入は、」「明確な方向づけに欠けていることを指摘せざるを得ない。」「所得制限の問題は、ますます重大となってきているので、関係諸制度の性格を充分考慮しつつ、給付額と所得制限との関係をも含め、社会保障制度の本質に立脚した基本的検討に努められたい。」と答申をいたしておりますし、国民年金審議会の答申も「福祉年金給付制限については、他の関連する諸分野をも含め、基本的な検討を行うべきである。」このように所得制限の物の考え方をもっと基本的に検討しろという答申になっておるわけでございます。  財政当局並びにさまざまな国民世論相手の簡単なようでむずかしい問題ではありますけれども、この両答申を今後厚生省としてどのように受けとめて、今後どのように基本的な検討をなさろうとされるのか、その点を大臣に聞かしてもらいたいと思います。
  209. 園田直

    園田国務大臣 所得制限の基本になっております所得のある程度ある方はがまんをしてもらう、本当に困った方には重点的に効率的に給付をするという基本的な問題は、両審議会とも了承をいただいていることと考えます。しかし、いまおっしゃいましたように、その所得制限のやり方については、実態というものをもっと把握をしてやれという御注意があることも事実でございます。  その実態把握についていま御指摘のような問題があることは私も十分考え、心配をしておるところでありますが、厚生省の現在の能力では、やはり税の対象ということを基本にしてこれをやるというのが今日ではやむを得ざることではありますけれども、御指摘のとおりいろいろな問題点は国税庁とも連絡をしながら、まずその税の対象が公平になるように、かつまた私の方ではその基本の上に何かこうかげんをする方法はないかなどということは検討して、適正給付ということを考えなきゃならぬと考えております。
  210. 米沢隆

    米沢委員 それからもう一つ、これは大事な問題だと思うのでありますが、児童手当というもののコンセンサスみたいなものを早くつくらないと、いつまでたっても何かもやもやした感覚で、私自身もそういう感覚でこの児童手当を見ておるのでございます。  雑談になってちょっと恐縮でありますけれども、ちょうど十五、六年前、私はアメリカにちょっと遊びに行ったのですが、そのときある公園に遊びに行きましたら、こういう光景があったわけです。  きれいに刈り込まれた芝の上に、小さな三歳ぐらいの子供が無心にいたずらして遊んでおるわけです。そこには、芝生に入るなと書いてあるわけです。ところが、ある年とった女の方が寄ってきて、赤の他人ですけれども、そのとき子供さんに何と言ったと思いますか、厚生大臣。ここにはちゃんと、芝生には入るなと書いてある。だから一生懸命説明するのです、わけのわからぬような小さな子供に。それでも一向に聞かなかったら、つかみ上げてけつをたたくのですよ。ちょうどそのときお母さんが帰ってきたのです。そのときお母さん、何と言ったかといいますと、ありがとうございますと言うのです。  私は、その情景をもし日本に持ってきたらどうだろうと思ったのです。まず日本の母親は、しかられるかもしれませんが、大部分の母親は、こんな小さな子供にそんな文句を言ってもわかるはずはないじゃないかと食ってかかると思います。そして、何も他人のあなたにけつなんかたたかれる必要はない、こう言うでしょうね。自分でさえ、母親でさえ手を出さないのに、何でこんなことでけつまでたたかれなければいかぬのだ、そう言うて食ってかかるのが日本の大部分の母親ではなかろうかと私は思います。  そういうところから、たとえば児童手当をやる場合に、社会の子だとか国全体の未来を担う社会の一つの共通の宝みたいなものだという発想が、外国日本と全然違うのだ。そういう違うところに児童手当なんかやって、健全な子供さんの育成だとか社会の子だとかいろいろな小理屈を言われても、わかるような土壌が日本にあるだろうかと私は思う。だからこそ児童手当の物の考え方がいつも宙に浮いておる、そういう気がしてなりません。  だから母親でも父親でも、確かに児童手当をもらってありがたいと言う人は、世論調査やれば何ぼでも出てきますよ。それはもらうのだからありがたいのだから。ところが、果たして児童手当が目的とするような使い方が本当になされ、本当に児童手当をいただいて子供の健全な育成のためにと心を痛めてくれるようなもらい方が一体なされておるかというと、私は誤解があるかもしれませんけれども、ただ入ってきた、まとまって入ってきたから便利だ。ひょっとしたら酒代になっているかもしれない。マージャン代になっているかもしれない。そんな気がしてならないのです。だから、制度が一回制度になされて、それがずっと維持されていきますと、もうあたりまえみたいにしてもらう。そのときに児童手当という形で健全育成のためにやっておるのだと言って幾ら政府がしかめ面をして御説明をされても、果たしてもらう方にそんな気持ちや意識やそんな感覚があるだろうかというと、何か私はそら寒い思いがする。そこに児童手当の不幸な背景があるような気がいたします。  そういう意味で、この答申にも出されておりますように、支給のあり方等、児童手当を出すことによって母親なり父親なりがそれなりにやはりわかってくれる、同時にそれ以上に子供さんそのものがよくわかってくれる、そういう物の考え方をもうちょっと普及させたりPRさせたりしないと、私は本当のばらまきだと言われても仕方がないと思うのです。  所信をちょっと大臣に聞かしてもらって終わりたいと思います。
  211. 園田直

    園田国務大臣 いまのアメリカの芝生の問題でありますが、これは確かに現在の日本では、おっしゃったとおりだと思います。これは親の子供に対するしつけの問題、考え方が変わっておる。  なお、児童手当の問題がございましたが、すべて児童手当ばかりでなくて、社会福祉制度というものが権利と義務のピンポンであって、片方は苦労してやりくりをして出す。もらう方は上がったときにはにこっとするが、もうその次にはこれがあたりまえだと思う。そしてさらに要求する。こういう権利と義務のピンポソであっては、社会保障制度はヨーロッパの国々が行き詰まっているように行き詰まってくると思います。  そういう意味において、確かに児童手当で私自身の意見が孤立しているということも、いまおっしゃったところに原因があると思います。中には、児童手当を出すことによって出産率を伸ばそうというように簡単に考えている方もおるわけでありますが、この児童手当の真の意味を国民の方方に話しかけ、相談をすることはきわめて大事であると考えております。
  212. 米沢隆

    米沢委員 最後になりましたが、いわゆる福祉がもう権利化したときにはその目的を半分失った、こう言われるように、そのところが本当は福祉の見直しでなければならないと思うのでありまして、金額を下げるとか制度を変えるということ以上に、私はその部分にもうちょっと厚生省としても力を入れてもらわないと、本当に福祉そのものが、われわれが福祉を言うと何かたかりみたいに言われる、そういう風潮を脱するためにも、そこらに力点を置いて行政運営をやってもらいたい、こう思います。
  213. 戸沢政方

    戸沢委員長代理 次に、浦井洋君。
  214. 浦井洋

    浦井委員 国民年金、特に最初に福祉年金の一番問題になっております老齢福祉年金の問題について、いろいろと私の意見を交えながら大臣並びに厚生省当局の御意見をお伺いしたいと私は思うのです。  今度の老齢福祉年金の場合に、後で詳しく申し上げますけれども、引き上げの幅が低いということだろうと思うのです。いままでは大体物価スライド率よりも上回るテンポで伸びてきておったのが、今回物価上昇率が大体五月になったらわかるそうで八%ぐらいだと言われておりますけれども、二万二千五百円が二万四千円であるとしても六一七%、これはまだもう一つ線を引いて二万三千円の層ができるわけでありますが、これで計算してみると二・一%という伸び率であります。  大臣は常々福祉の充実拡充ということを言われておるわけであります。しかし、近年一番シンボルのようなかっこうになっておるこの老齢福祉年金の上げ幅がこういうかっこうだと、これは福祉切り捨てのことしの予算だというようなかっこうで批判されても仕方がないと私は思うわけであります。そういう点で、大臣、いままでもきょういろいろと御意見を言われておるようでありますが、こういう批判にはどうお答えになりますか。
  215. 園田直

    園田国務大臣 老齢福祉年金は、これは老後のただ一つの基本でありまして、これが物価、社会経済の変動とつながり、かつまた老後の保障をするものでなければならぬということは私も考えておりまして、この額の引き上げで厚生大臣として満足しておるわけではございません。しかし、現在の財政状況では守ることが精いっぱいでありまして、それを財政当局が引き上げを認めてくれた、応じてくれたということは、現在の状況ではまあまあよかったと私は思っておるわけでございます。
  216. 浦井洋

    浦井委員 強気な大臣としては非常に控え目な自己評価をされておるようでありますが、私は福祉切り捨ての一つのシンボルみたいなかっこうでこれは受け取られるのではないかというふうに批判せざるを得ないわけであります。  しかも、今度の国年法の改正案の中の最大の問題だと思いますのは、いままでも指摘されておりますように一部支給停止の条項であります。これによって本来二万四千円支給されるところが二万三千円に一部支給停止されるということになるわけで、まずこれによって一部支給停止される人たちは何人のうち何人おられるのか、そしてまたそれによって、どう言いますか表現があれですが、節約される財源なるものは一体どれくらいなんですか。
  217. 長尾立子

    長尾説明員 六百万円以上八百七十六万円未満という今回の二段階の対象になられます方は十八万人と推計いたしております。これは受給者全体の二百九十四万人のうちの六・一%に該当する方方でございます。  この千円を支給停止することに相当いたします金額は七億円と考えております。
  218. 浦井洋

    浦井委員 大臣、こういう何か非常に中途半端なかっこうでの一部支給停止というようなことをされた、しかも上げ幅は少なくするという意図は一体どういうところにあるのですか。
  219. 園田直

    園田国務大臣 年金の引き上げをやったわけでありますが、その引き上げを一律にやらずに、がまんのできる人はいまのままでがまんしてもらって、本当に困った方の方に引き上げの重点を置く、こういうことは、二段階方式がいいと思ってやったことではありませんが、現状では現実に即して、これを受ける方の実態に応じた姿であると思っております。
  220. 浦井洋

    浦井委員 一方では軍事費の伸び率が社会保障の伸び率を上回る、そういう状況の中でこういう結果というのは社会保障費の削減を目指すものだというふうに批判されても私は仕方がないと思う。  そこで、いまも問題になっておりましたけれども、所得制限の問題、これははっきりさせなければならぬだろうというふうに思うわけであります。  まず厚生省にお聞きしたいんですが、拠出制の国民年金を将来何か所得制限でもされるお考えはございますか。
  221. 長尾立子

    長尾説明員 現在のところ、考えておりません。
  222. 浦井洋

    浦井委員 それは私は当然だというふうに思うわけでありますが、国民年金法をずっと見てみましても拠出制と無拠出制というかっこうの表現はないわけですよ。そういう中で違うのは、老齢福祉年金の場合で言うならば、これは無拠出でありますけれども、結局は無拠出の財源が一般会計から出ておるということの違いだけであります。この制度がつくられたときにも、議事録を読み返してみますと、やはり戦前戦後の日本の社会が一番激動しておるときを生き抜いてきた人たちに対して年金権を保障するためにもこういう制度をつくらなければならぬというようなことで経過的年金になったというふうに私は理解をしておるわけであります。そういうことになってまいりますと、これは一般的な抽象的な論議になりますけれども、国民年金の目的に書かれております、国民の共同連帯で老齢によって国民生活の安定が損なわれることを防止するというような点では、拠出制も無拠出制も差がない、全く同じだというふうに私は思うわけなんです。しかも、それが社会保険の方式でいま実施をされておるというようなことになってまいりますと、これは極端に言いますと、老齢福祉年金についてはもう本人の所得制限あるいは配偶者の所得制限、あるいは扶養義務者の所得制限、一切つけないのが本来の姿ではないか。いささか極論ですけれども、そういうふうに思うのですけれども、この論議は間違っておりますか。
  223. 長尾立子

    長尾説明員 年金におきます所得制限がどういう場合に適当なものかということにつきましては、さまざまな観点からの御議論があろうと思います。諸外国におきましても、いわば拠出の年金のほかに無拠出の年金を持っておりますものもございますし、また無拠出の本来の基礎年金構想のような年金の中で、ある一定の範囲を限りまして所得制限を持っておる制度もあるように思います。  わが国の福祉年金は、先生がお話しになりましたように、国民年金という基本的な理念に基づきまして行われている制度でございますので、その意味では本質的に拠出年金と目的が違うことはないということは御指摘のとおりと思います。しかしながら、現在財政の厳しい折で、こういった福祉年金につきましては一般財源をもってその費用を賄っているわけでございますので、ある程度生活にゆとりのある方につきましては御遠慮いただくことが国民の皆様の納得をいただく方向ではないかと思っております。
  224. 浦井洋

    浦井委員 だから私は、現在ある所得制限を全面的に否定しているわけじゃないんですよ。しかし、本来はそうではないかということを言いたいわけなのです。であるのに、今度は、これは後で言いますけれども、扶養義務者八百七十六万円は据え置きにして、しかも六百万円つけ加える、あるいはそのほかさまざまなことをやってきておられる。そこの意図が、先ほどからいろいろ言われておりますけれども、大臣、もう一つわからぬのです。  そこで、いまも読まれたわけですが、これに対しては、所得制限については制度審は「所得制限の問題は、ますます重大となってきている」だから「社会保障制度の本質に立脚した基本的検討に努められたい。」それから国年審も「基本的な検討を行うべきである。」という形になっておるわけなんですが、これを踏まえて大臣、前向きにそういうような考え方、私がいま言ったような考え方で断固として施策を実行されていきますか。
  225. 園田直

    園田国務大臣 そういう努力をやることは厚生大臣の責任であると考えております。おっしゃることはよく筋は通っておりますが、ただ違うところは、何といっても厚生省社会福祉行政を進めていくについては、その原資は、つらい中に国民の方が骨身を削って納められる税金か、あるいは各人が拠出をされるお金、国民の骨身を削ったお金であります。したがいまして、こういう時期にはこれを有効的にしかも実際に即したように使うことがわれわれの仕事であって、そこのところが、われわれ実際にやる者とあなたとの考え方の食い違いが出てくるところであると考えております。
  226. 浦井洋

    浦井委員 まあ大臣の御意見はそういうことにしまして、次の問題に移りたいと私は思うのです。  そこで、具体的な所得制限のあらわれ方ですが、やはり一番問題になっているのは、扶養義務者の所得による受給制限ですよ。これはもう十分御承知のように、四十八年当時六人家族で六百万円であった所得制限が五十年から現在八百七十六万円でずっと据え置きになっておる。これは八百七十六万円が、先ほどの答弁でいきますとたまたま高いところで線引きをしたものだから、幸か不幸か余り議論が起こらなんだということは言えると思うのですけれども、私はやはり本質論といいますか、本源的な議論をしなければならぬのではないかと思うわけなんですよ。  大臣もよく御承知のように、年金保険というかっこうになって、これがいまの日本の場合に所得保障の根幹をなしておるわけですよ。そういう中で、これは日本だけではなしに近代的な政治形態をとっておる国家というのは大体そうでありますけれども、所得保障の原則は家族内扶養から社会的な扶養にずっと変わっていっておる。これは国年の発足に当たっての答申の中でもそういうふうなかっこうで言われておるわけであります。だからそういう意味からいって、扶養義務者の所得による給付制限、支給制限というような考え方は近代社会の本来的な年金保険のあり方から見て時代に逆行する措置ではないかというふうに私大上段から決めつけたいのですけれども、どうでしょうか。
  227. 園田直

    園田国務大臣 社会が簡素であった場合には親子の助け合いで済んだものが、いまはそれでやっていけないから社会の助け合いになってきたと私も思っております。そこで、そういう社会の助け合い運動が適正にいくためにいろいろやりくりをしているのが現在の状況でありまして、制限を強化したところもあれば、あるいは外したところもある、あるいは手当等をふやしたところもある。これは、そういう一つの理想のもとに前進する苦労のあらわれであると私は考えております。
  228. 浦井洋

    浦井委員 大臣、これは昭和三十三年の国年制度の発足に当たっての社会保障制度審議会の答申の中の「国民年金制度に関する基本方策について」ということで、ちょっと読み上げてみますけれども、「拠出制年金とともに無拠出制年金を設けることとした。その理論的根拠は、一定年令をこえた老令者は、社会がある程度扶養する義務があるというにある。すなわち、一家の子女が個人的に行う老令者の扶養を、社会連帯の立場における扶養に漸次切替え発展させようというのである。」こういうふうに社会的扶養の原則を明らかに書いてある。所得制限については、「もっとも」、これはただしという意味でしょうね、「もっとも、こうした程度のものであれば、収入の多い人びとに支給するのは考えものである。そこで無拠出年金については、収入調査を行って、一定額以上の収入または資産がある者には支給しないなどの措置を講じてはどうかということになった。」という答申があるわけなんです。  こういう状況を踏まえて、私はその当時社労委におらなかったのですが、四十七年六月一日の当委員会質疑の中でこういう話が出ています。「当面最も緊急な福祉年金の額の飛躍的な充実と扶養義務者に係る所得制限の問題の解決を中心に、着実な改善を図っていくことが重要であることをとくに強調しておきたい。」という国民年金審議会福祉年金委員会の中間報告が引用されたんですね。それに対して、当時の斎藤厚生大臣は「扶養義務者の所得制限は、来年度は撤廃の方向で努力をいたしたい、かように考えております。」こういうふうに答えておるわけです。  やはり政策は整合性がなかったらいかぬ、一貫性がなかったらいかぬ。大臣、どうですか。
  229. 園田直

    園田国務大臣 斎藤厚生大臣がどういう意味で答弁されたか、私よくわかりませんけれども、いまの審議会の意見はよく私はわかります。この審議会の意見を踏まえて、それが実行できるように努力をすることが厚生行政だと思いますけれども、問題は、金だけではなくて、老人の健康をさらに増進して、六十まで働いた人が七十まで働けるようにするとか、あるいはその他の生活も全部かみ合わせてそして拠出と無拠出との差額は縮めていく、これは正しいことだと思います。ただ現実の問題としては、金を積み立てた人と、全然出さない人と全然差額がないということもまた大変問題のあるところでございますので、そういう点を踏まえつつ、審議会から示された方向で努力をすべきであると考えております。
  230. 浦井洋

    浦井委員 もう一つ、これは、ことしの一月二十七日の毎日新聞の「アクションライン」という欄に、東京世田谷区の五十歳の主婦が電話を寄せておられるわけです。これはかなり収入の多い世帯であります。「主人の収入が増えたので、同居の母の福祉年金が打ち切られました。同じ年収でも老人が別居していれば年金がもらえ、同居はだめ——というのは、どうしてもわかりません。別居すれば、それだけ生活費もかかるわけで、〃別居できないから同居している〃人も多いのです。主人は定年が近く、子供もいちばんお金がかかるのに、年金打ち切りは本当につらいことです。母もおこづかいがなくては困りますので、私は内職を始めましたが「同居はだめ」は、どうしても理解できません。」  同居というのはちょっと事実誤認でありますが、扶養義務者八百七十六万円の線の該当者、それ以上の収入のある人だと思うのですが、私は、現実に八百七十六万円の線というのは決して無理な線ではないと思う。確かにいまの社会では多い収入の方に属するだろうと思うのです。ただそこで、それ以上の収入の方には、そこのお年寄りには老齢福祉年金を上げないというのが必ずしも妥当でないとは言いません。しかし、現実にこういうような御婦人の御意見もあるわけなんですよね。だから、それから見てもそう楽ではないということは言えるのではないかと私は思う。いまの状況の中で、核家族化が進んでおりますからね。  私、この間淡路島のある町へ行きました。ちょうどそこの社協ですね、社会福祉協議会の事務局長の方にお会いをしまして、そしてそこの扶養義務者はみんな神戸や大阪に出ておられるわけです。それで老人の単身世帯あるいは老人の二人暮らしというおうちがずっとふえてきておるわけなんです。ところが、その事務局長が調べたところによりますと、それならそのお年寄りが病気になったときに、子供さん、これは恐らくもう五十歳ぐらいです、子供さんは大阪や神戸から飛んで帰ってきてそこで住めるのかといったら、そういう人は一〇%もないわけですよね。実際、核家族化してそういう状況なんですよ。特に農漁村の僻地に行きますとね。そういうような状態の中で扶養義務者というような形で、それを基準にして所得制限をやっていくというのはちょっとぐあいが悪いのではないか。  先ほど言いましたように、本人なりあるいはその配偶者、あるいは扶養義務者の所得制限というのは、少なくとも老齢福祉年金というものについては撤廃すべし。これから受給権者がふえていく年金ではないわけなんです。これは大臣もよく御承知のように明治四十四年以前の方ですから。そういう人たちは明治のころに生まれられて、そして十五年戦争、戦後のインフレの時期というふうに何とか過ごしてこられた。そういう方たちの老齢福祉年金を、どんな形にしても、所得制限というようなかっこうで切っていくべきではないんではないか。だから私は、今度の措置については非常に憤慨にたえぬわけなんですが、大臣どうですか。来年からはひとつ、五十七年度どうされますか。
  231. 園田直

    園田国務大臣 年金、児童手当その他社会福祉行政でいま一番考えなければならぬことは、本当に困った方はお互いに救う。その困った方に対する対応の策というのは、まず家族が必死になってこれを守る、その後ろで国も守る、こういうことでなければ、権利と義務のピンポンでもらうのがあたりまえだという風潮、あるいは、その他の手当によって親は子を養わぬでもいい、子は親のめんどうを見なくてもいいという風潮が出てくるということは非常に恐しいことであって、国がとうとい税金を使いながら人間の本当の基本である親子恩愛の情までつぶすようなことがあることは非常に注意をしなければならぬと考えております。  そこで、本当に困った方については所得制限というものはおっしゃるとおりになるべく緩やかにしていって、そして許す時代が来たなら、家庭の方でも裕福になる、国も裕福になる、こういうことで両方相まってお互いに笑う社会をつくっていくべきだ、こういうふうに考えております。
  232. 浦井洋

    浦井委員 よく日本型福祉社会ということを言われる。そういうものの中には、何か昔の戦前のような形に引き戻そうというような意図が隠されていやへんやろかと私思う。確かに子供は親を大事にしなければならぬと思う。大臣がいま言われたように、一部には子供が親を見ないとか、そういう風潮があることは——一部にはあるでしょう。しかし、大部分の人たちは、やはり親は大事にしなければならぬ、できたら一緒に住みたいし、親が病を得て不幸にして亡くなるまでは十分に介護もしたい、看病もしたいと皆思うておるわけなんです。ところが、現実の厳しさの中で別居せざるを得ぬわけなんです。同居できる人というのはかなり条件のよい人なんですよね。いまそういうような状況に置かれておるんだということを十分に考えていただいて施策を打ち出していっていただきたいということを私は強く要望しておきたいと思うわけです。  そこで、年金の、いろいろな問題があるのでありますけれども、国際障害者年でありますし、特に障害者の中で無年金者があるというような状態はぐあいが悪いと思います。そういう点で二、三質問をしたいと思うわけであります。  五十一年の改正で障害年金受給資格の通算制度ができた。だから、厚生年金国民年金は通算できるようになったわけです。ところが、これはもうよく御承知のように、厚生年金三級、それと国民年金二級というようなかっこうで、これが基準が全く整合性を持っておらないためにいろいろな矛盾が出ておるわけですよね。  一例だけ申し上げますと、厚生年金三級では「両眼の視力が〇・一以下に減じたもの」国民年金二級は「両眼の視力の和が〇・〇五以上〇・〇八以下のもの」こういうふうになって、視力が〇・一の人の場合、厚年には適用になるけれども、国年には適用にならないというような問題がある。やはりせっかく通算制度ができたわけですから、この辺の基準も統一するような方向に努力されるべきではないかと思うのですがね。
  233. 長尾立子

    長尾説明員 厚生年金の障害等級と国民年金の障害等級が異なっているということについてのお尋ねと思いますが、厚生年金はいわゆる被用者を対象といたしておりますので、障害等級の考え方といたしましては、労働能力の喪失、減退ということをその基本に考えております。一方、国民年金は、無業の方も含めまして一般の国民の方を対象といたしますために、日常の生活能力の制限度合いという観点から障害等級を定めております。  現在、厚生年金は一級、二級、三級に分かれておりまして、国民年金は一級、二級に分かれておるわけでございますが、それぞれの組み合わせを見ますと、国民年金につきましては、厚生年金の一級と二級の一部を含むという形で一級が構成されております。二級におきましては、厚年の二級の大部分と三級の一部がこれに該当するような仕組みになっておるわけでございます。  先生のお尋ねは、こういった障害等級を一本化すべきではないかということかと思うのでございますが、制度の目的がこのように違っておりますということから、この両者を単純に比較し、これを一つの等級表で律することはなかなかできないというふうに考えております。
  234. 浦井洋

    浦井委員 それでは先ほどのものなんかどうなりますか、視力の問題。
  235. 長尾立子

    長尾説明員 先ほどの場合は、厚生年金は三級に該当いたしますが、国民年金には、障害等級表に該当いたしません。
  236. 浦井洋

    浦井委員 いや、だから機械的に単純に統一しなさいというようなことは私も言っていないわけなんです。そういうような、いわば自分としては被害を受けたと思うような人が発生しないような措置を講じなさい、こういうことなんですよ。
  237. 長尾立子

    長尾説明員 国民年金の場合に、いま申し上げましたように、日常生活能力の制限度合いというものでどこまでを障害年金の対象とするかという問題であろうと思います。障害の範囲をどの程度までに考えていくかということは、いわば費用の面とも均衡を考えていく問題だと思いますが、先生の御指摘の問題につきましては、実態に沿って検討させていただきたいと思います。
  238. 浦井洋

    浦井委員 いろいろな問題点があるので余り時間をかけられないのですが、障害年金の問題では大臣にぜひ聞いていただきたいのは、だるま理論というものです。端的に申し上げますと、指一本落とした、これは障害等級に入らないからだめだ。その次、ある時期また一本落とした、これも一本だからだめだというかっこうで、極端に言えば、たとえば五本とも全部指がなくなってだるまさんの手みたいになっても障害等級に入らない、これをだるま理論と言うのですね。専門的には、併合認定せよという要求が出ておるわけなんですが、これについてはどうですか。
  239. 新津博典

    ○新津政府委員 現実の認定の問題でもございますので、私からお答えをいたします。  いま先生のお挙げになった例でも、たとえば壊疽によりますように、同じ病気が原因で次々に指が落ちるというようなケースについては、これは当然該当いたしまして障害年金支給されます。ただ現実に余り多い例ではございませんが、法律の組み立てなりその運用で、全然別な理由で指を一本ずつ欠くとか、あるいはいろいろな障害が間を置いて全然別な理由で生ずるというような問題のすべてが障害年金の該当として救済されるわけではございません。  もう少しその点を詳しく申し上げますと、厚生年金の場合、被保険者期間中の障害で法別表に該当しないような障害がまずありまして、それから同一部位に新たに後から別な障害ができて、その結果、後の障害の労働能力の減退の状況と前の障害の労働能力の減退との認定基準に照らしまして別表に該当すれば障害年金あるいは障害手当金が出るとか、国民年金の場合で申し上げますと、二十歳前あるいは制度が発足いたしました昭和三十六年四月前の障害と、その後の被保険者期間中の障害で後発障害があって、その後発障害が告示で定められます一定限度以上であれば、それらを併合認定してやるとか、許される範囲での併合認定による障害年金支給ということを運営面では大いに努力しているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、全部が全部それで救われているというわけではございません。
  240. 浦井洋

    浦井委員 先ほど申し上げたように、五十一年の改正で通算制度ができたわけですから、そのときにそういう関係者は、すべての障害が障害の程度にかかわりなく併合認定されるように当然改正されるだろうというふうに思っていたところが、みごとにそれが期待外れに終わったということで、いまだにいろいろな不満があるわけで、これは余りお役所的な判断ではなしに、やはりずばっと政治的に、大臣どうですか、これはむずかしいですか。
  241. 長尾立子

    長尾説明員 先生のお話しの期間の通算の問題は、いわば被保険者としての期間について、障害発生前の期間を幾つかの制度を渡り歩かれました方について通算をするという考え方になったわけでございます。いまの先生の御指摘の点は、制度をまたがりまして障害が起こったというケースでございますが、現在の公的年金における障害年金は、保険の考え方と申しますか、その期間に起こりました障害を保険するというような考え方でできているところが基本的にあると思います。そういう点では、それぞれの制度で起こりましたものを一つに合わせました場合に、どこがどういう形で分担していくかというような問題になろうかと思うわけでございます。実態といたしまして、障害者の方にとりましては、幾つかの障害が重なりました場合に、その重なった状態において給付が受けられる形を希望されるということはごもっともだと思います。  それで、この幾つかに分かれております制度をまたがって障害が起こりましたものの実態に即して給付の面で考えていきます方法につきましては、制度的な面もございますし、また認定の面において、運用の面で、たとえば前後の障害を合算した状態を想定いたしまして、そのものについて給付を行い、前の部分については、たとえば前の制度で受けられる場合にそれを差し引く、そういった制度もできるのではないかと思いますが、御指摘の問題につきましては、なお実務的な面も含めまして考えさせていただきます。
  242. 浦井洋

    浦井委員 大臣、こういう調子で非常にややこしいのです。  もう一つ障害者の問題でぜひここで取り上げておきたいのは、前から問題になっております事後重症の問題です。これも大臣御存じだろうと思うのですけれども、病気になった、ずるずると慢性化してだんだん悪くなっていく。リューマチみたいなものですね。厚生年金の場合には、初診日から五年以内に障害等級に該当しないと障害年金が受けられない。ところが国民年金の場合には、六十五歳までに障害が重くなれば年金が受けられる。それから共済の場合には退職後五年と、厚生年金よりちょっといい。厚生年金の場合には初診日から五年ということで、これがかなりいろいろなところで、慢性的に悪くなっていく内部障害なんかの場合には、これが必ずひっかかってくるわけなんです。せめてこの厚生年金の事後重症初診日以後五年、こういう制限は何とかならぬかと私は思うのですがね。
  243. 長尾立子

    長尾説明員 実は厚生年金の事後重症制度は、先生御承知のように昭和五十一年の制度改正によって導入されたものでございます。厚生年金はその以前事後重症制度を持っておらなかったわけでございます。厚生年金は被用者年金という性格を持っておりますので、被用者であった期間に起こりました事故、それによって起こりました障害を補償していくという考え方に立っておるわけでございますので、この場合、その障害の原因になりました疾病が加入期間中に発したかどうかということが非常に大きな要因となるわけでございます。それを判定いたしますためには、医療機関におけるカルテが基礎になると思われるわけでございますが、医師法によってカルテを保存することが義務づけられている五年というものを考えまして、この事後重症の場合を五年以内というふうに考えたというふうに聞いておるわけでございます。  先生の御指摘は、たとえば共済年金国民年金にならってこの要件を緩和するべきではないかという御指摘だと思うのでございますが、いま申し上げました厚生年金の被用者年金としての性格でございますとか、共済組合の場合には退職をいたしまして初めて障害年金支給されるというような厳しい条件がついておりますが、こういうことを考えてみますと、厚生年金においてこれらの制度と同一な扱いをすることが適当かどうかということにつきましては慎重に検討する必要があると思っております。
  244. 浦井洋

    浦井委員 そういう具体的な問題があるのですが、これもなにしますかね。  妻の年金権が問題になっておるのですが、いまの障害年金制度でいきますと、サラリーマンの妻等の場合、国年の任意加入者ですよね。この方たちが障害者になった場合は、どこからも障害年金支給されぬ。これは大問題であるわけなんですが、これいつですか、社会保障制度審の勧告もあるわけですから、五十四年の十月十八日ですか。だから、これも早急にやっぱり検討すべきではないかと思うのですが……。
  245. 長尾立子

    長尾説明員 国民年金制度もいわば社会保険の仕組みで成り立っておるわけでございますので、加入していただきまして、あらかじめ一定の保険料を掛けていただきまして、事故が発生いたしました時点で、その費用を掛けていただきました皆様相互の負担で障害年金としてお支払いをしていくというような形をとっておるわけでございます。  したがいまして、障害になられてから何らかの年金支給の道を開くということは困難であると思うのでございますが、問題の御指摘は、いわば皆年金とは申しましても、サラリーマンの妻の場合、任意加入ということになっておりますために、御自身の不注意による障害の場合、任意加入しておられない場合に、無年金になるということが起こり得るということでございます。いわば妻の年金権と申しますか、婦人の年金権を今後どう考えていくかという問題の一環として考えさせていただきたいと思います。
  246. 浦井洋

    浦井委員 もう一つの大きな柱としては、オンライン化が全国の社会保険事務所、大体五十七年度で前半期計画が終わるということになっているわけなんですが、かなりサービスできるように、それだけの力を事務的に備えてきておるのではないかと思うわけです。  そこで、もう時間がございませんから三つほど質問をしたいと思うのですが、一括してお答えを願いたいと思うのです。  いまは年金受給権者が請求をして、裁定があって、それで支給される、こうなるわけなんですが、老齢年金やそれから通老では六十歳の時点受給権が発生している人に、もうこの辺で役所の方から通知をするというようなサービス改善を行ってはどうか。なかなか大変なことだろうと思うのですけれども、どういうんですか、請求主義でなしに通知主義にしたらどうかというふうに私は思うのですが、これが第一点です。  それから、私個人もこれに該当するのですけれども、厚生年金の加入期間が十年以上、それで退職をしたというような場合に、半年以内に任意継続にできるわけですね。それを知らぬわけなんですよ。だから、そういうことをその人たちに、一定の年齢、たとえば五十歳以上の人たち厚生年金のそういうようなことを知らせるような通知が出せないか、それが第二点。  それから第三点ですね、国年の人はそれぞれ自分の住んでおる市町村へ行っていろんなことを相談できるわけですよね。ところが、それこそ通算じゃないですけれども、厚年とかあるいは船保とかいうようなかっこうでそういう保険に加入しておったような人は、市町村に行っても、そこは知りません、社会保険事務所へ行ってくださいということで、またとことこ行かなければいかぬという不便さがあるわけなんです。これを、なかなか簡単にはいかぬと思うのですけれども、市町村の窓口というのは住民にとって一番行きやすいところですから、そこで、あらゆるとまでは言わぬですけれども、かなりな程度年金相談ができるような体制が、コンピューターなんかを活用してできないものかという提案であります。  それからもう一つは、老齢年金の支払い回数ですね。これは、いま老齢年金年四回でありますが、これを毎月に支払うとか、あるいは通老はいま年二回であるけれども四回に支払うとか、支払い回数をふやすというようなことは検討できないのかというような問題。  それから通老の場合、それぞれの年金制度から、いま長尾さん言われたようにそれぞれが来るわけでしょう。だから現況届けもそれぞれ出さなければいかぬということですから、通老の支払い体制はもう一本化する、そうして現況届も一通出せば済むというようなかっこうにならないか。  非常に細かい問題ばかりでありますが、オンライン化に伴って、こういうことを大胆にやっぱり国民サービスのためにやるべきではないかと私は思うのですが、どうですか。
  247. 新津博典

    ○新津政府委員 先生指摘ございました五つの点、それぞれ住民の立場に立ち、あるいは受給者、被保険者の立場に立ってみるとごもっともな御要望が多いと思います。私どもも、現に受給者が十年間で十倍になる、拠出だけでも一千万、福祉年金を入れると一千五百万というような時代に対処しまして、何とかその辺のサービスを向上しようという気持ちで実はオンラインを図っているわけでございますが、御指摘の第一期というのは五十六年度で一応終わるわけです。前期が終わるわけですが、それは各事務所にオンラインの機械を配置するというだけで、きめの細かい仕事を全部機械化して、省力化して、その余った力をサービス向上に振り向けるトータルのゴールインというのは、昭和六十年完成を目標にしているわけでございます。     〔戸沢委員長代理退席、委員長着席〕  具体的には、御指摘の第一の点、通知主義にできないかという点は、実は私ども、厚生年金で言えば事業所単位で管理しておりまして、おやめになった後の住所管理ができていないというような技術的な点もあってむずかしいわけですけれども、一般論としてのPRあるいは年金相談の充実という点で大いにカバーをしていきたい。  それから第二点の、第四種の問題でございますが、これは今日非常に国民年金に対する関心が高まってまいりまして、五十年と五十五年で比べますと、第四種の被保険者が五万八千から九万九千にふえるというようなことで、大変PRも行き届いてきているとは思うのでございますけれども、本年度の社会保険庁の事業計画の中でも、年金受給権者の受給権確保対策の強化というようなことで、特に第四種被保険者制度の周知徹底に努め、加入の促進を図るということを一項目挙げておりまして、重点広報の対象としておりますが、先ほど申し上げたような、住所が必ずしも全部正確にわからぬというようなこともあって、通知主義まではできませんけれども、PRの重点項目に考えたいと思っております。  それから三番目の、身近な市町村窓口で厚年も含めあらゆる年金制度がわからぬかという御要望、これもまことにごもっともでございまして、国民年金については完全に御相談に応ぜられる体制がありながら他制度については非常に不十分でございますけれども、これも新年度の予算で、とりあえず全国の社会保険事務所を設置してない市に毎月一回は事務所が出ていって、市の職員と一緒になって出張相談所を開設する。つまり地元で相談が受けられるというようなことのために七千五百万円ほどの予算措置もいたしておりまして、何とか身近なところで充実した、個人個人の問題に答えの出るような相談をするという努力は続けてまいりたいと思っております。  それから毎月支払いの問題につきましては、午前中も御質問がございましてお答えいたしましたように、重大な関心を持っております。それで私どものオンラインの完成の六十年あるいは郵便局の方のオンラインの完成もあわせまして、その過程で、あるいはその後どうやって、どういう条件で、会計法令を直すとかあるいは支払い通知を簡略化するとかという条件つきで毎月支払いがどうすれば可能かということを現在深刻に検討中でございますので、大事な課題としてなお検討さしていただきたい。  最後の通老の問題でございますが、これは先生十分御承知のように、いわゆる数珠つなぎということで、年金の資格自体は各制度を渡り歩いた場合全体を通してみますけれども、個々の給付はそれぞれの制度に加入していた期間に応じた金を出すということで、その制度ごとに現在事務処理体系が違いますもので、御趣旨はよくわかりますけれども、現在のところ急にそれを一本化して一遍で済ますということは困難でございます。
  248. 浦井洋

    浦井委員 もう終わりますけれども、最後に、大臣、いま聞かれたようにいろいろな点で改善されていっているところもあるけれども、まだまだやらなければならぬところもある、そういう中で、六百万円でもう一本線を引くというような形で明治四十四年以前に生まれた方に対して、せっかくの期待を、一部支給を停止するというような後退は私は絶対許されないと思う。そういう点で私ども共産党としては、一部停止の条項の削除を要求する修正案を出したわけでありますが、ひとつ委員会でも十分に審議をしていただくことを委員長にも要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  249. 山下徳夫

    山下委員長 次回は、来る二十一日火曜日午前十時四十五分理事会、十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十一分散会      ————◇—————