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佐藤(誼)
委員 論争ということを言われましたが、これは学会ではありませんから論争するつもりはない。ただ、あなた方は
労働行政の
責任ある
立場にあるわけですから、そういう観点から言えば、これは介入といいますか限度がある問題もあります。しかし、
労使の動き全体を見て不正常であるとか不均衡であるならば、あなた方が行政の
立場で指導、助言するということも重要な行政上の任務じゃないですか。私はそういう観点で申し上げているということをまず御
理解をいただきたいのです。
そこで、いまこういう問題は働いた人だけに
責任を負わせるわけに
いかぬという趣旨のことを言われました。それは当然そうなる。そこで
労使の関係ですから、私はいま
労働者と企業の側を比較した場合にどういう現状にあるかということを御
理解いただきたいために、次のことを申し述べたい。
まず、
労働者は、私から言わせれば、いままで
賃金を不当に抑えられた上に
消費者物価の
上昇で、これは
政府が
責任を負うことができなかったから、したがって、
労働者はむべなるかな
実質賃金は
マイナスになって大変
生活に苦しんでいる。これは
労働者の
責任じゃないのです。これをはっきり自覚してもらわなければ困る。だれも好んで
実質賃金が
マイナスになることを望んでいるわけじゃない。しからばだれがこれを救ってくれるか。
政府は何遍も公約するけれ
どもさっぱり
物価は守ってくれない。そうすれば自分たちの法律上許された団結権を行使してやるしかないのです。いまの
春闘というのはこういう観点に立っているわけです。つまり、
実質賃金が
労働者は
マイナスになっていることは御
承知のとおり。
ところが、一方企業の側は、昨年の九月まで連続六期増収増益です。大変な収益。しかもその関連で
昭和五十六年度設備投資計画も全産業で一一%増の見通しになっている。これは
政府資料でも明らかです。さらに、ごく最近の新聞報道によれば、鉄鋼五社は
昭和五十六年度の設備投資計画四二・五%の大幅増の見通しになっているのです。しかもこれは自己資金の比率が非常に高い。このような企業の、ひっくるめて言うならば収益の背景になっているものは何であるかということです。
これは経済企画庁で出している経済白書にも出ていますけれ
ども、それは生産性
上昇率が賃上げ
上昇率を上回っているということです。これは紛れもない事実なのです。したがって、
賃金コストが
マイナスになり、これが企業の異常な収入の大きな要因になっているということです。これは経済白書に出ているのですよ。持ってきていますけれ
ども、これにちゃんと書いてある。
政府がちゃんとそれは認めているのです。
賃金コストが
マイナスになっている
状況なんというのは、ごく最近諸外国にはないのです。これはなぜかと言えば、
賃金が生産性
上昇率に比べて非常に低く抑えられているという結果生まれてきているのですから、紛れもない。経済白書にちゃんとそのことが書いてある。
つまり別の言葉で言うならば、生産性
上昇率を下回る
賃金上昇率は、
物価が安定していればいいのだけれ
ども、
物価高騰によって
労働者に対して
実質賃金の
マイナスを来している。つまり、
労働者は生産性より低い
賃金を押しつけられる。
物価が安定してくれればいいのだけれ
ども、
政府が公約を守ってくれないために、両側から
労働者は大変な落ち込みになって
生活に苦しんでいるという実態がある。一方企業の側には
賃金コストの低下、企業収益の増大をもたらしているというアンバランスの状態をもたらしている。
さらにこのことは、
日本経済全体に焦点を当てれば、民間設備投資はまあまあのところへいっている。ところが
国民所得の五九%を占める民間消費
支出、つまり個人消費が停滞しているために、今日の
消費不況を生み出しているものと私は思う。
実質賃金は
目減りしているし、
実質可処分所得は
マイナスだし、さらに貯蓄性向から見て実質の消費
支出が落ちているのですから、当然個人消費が落ちますから
消費不況になるのはあたりまえなのです。このことはごく最近の
雇用状況を見れば明らかだと思うのです。これは
労働省も出していますけれ
ども、
昭和五十六年二月の
時点で見ますと、完全失業者は百三十五万人でしょう。前年同月比二十四万人増。かってないことだ。
つまり私が言わんとするのは、
賃金上昇率が
労働の生産性
上昇率よりも非常に不当に低く抑えられたために、
先ほど言っているように
労働者は大変な
生活の収入の低下をもたらし、
消費不況をもたらし、そして景気全体が冷え込んで異常な失業の状態をいま現出しているということです。ところが一方企業の側はどうですか。
先ほど述べた
状況なのです。
このようなアンバランスを、
労働行政に当たる
労働大臣並びに
労働省が、これは
労使の関係ですからお互いにやってごらんなさい、やっていただきますなどということで行政の
責任を全うすることができますか。そういう意味で、私は
日本の最近の
労働者の
賃金は非常に不当に低く抑えられていると思うのです。したがって、勤労所得と企業収益の不均衡を是正して
労働者の
生活の向上を図る、また今日の
消費不況を克服して
日本の経済成長を押し上げていく、そういう観点からもこの賃上げについて一定の
理解を示しながら、不当に抑えていくということについては避けるべきである、私はそういう
考え方を持っている。
労働行政の
立場にある
労働大臣並びに
労働省としては、いまのような実態に即してどのように
考えているか、私は所見を伺いたいと思うのです。