○堀
委員 ひとつ、それでは各党の
皆さんで、いまの問題について、国民にこたえられる
法律内容にするということで、ひとつ御
検討をいただきたいということをお願いをいたしておきます。
そこで、あとはちょっと、これまた、この
法律を離れての話になるのでありますが、この間も私、政治資金規正法の
法律に関連いたしまして、鈴木総理に一つ問題を提起をさしていただいております。それは何かといいますと、いまの
自民党の金権腐敗と言われておるこの問題は、私は確かに
自民党の
皆さんの中に、そういう倫理観その他で不十分な部分があるということを否定するわけではありませんけれ
ども、それにもまして大きいのは、要するに
個人本位の
選挙になっておるために、心ならずもその競争には金が要る。金が要るなら、どこかから集めてこなければならぬじゃないかということが、私は、いまの日本の
選挙制度に大きな禍根を招いておる、こう
考えておるわけであります。
この間市川房枝参議院
議員が亡くなられました。私は、昭和三十四年でありますか、三年だったか四年でありますか、ちょっとはっきり覚えておりませんが、第一次
選挙制度審議会がつくられまして、そのときに私も社会党を代表して特別
委員でございましたが、市川房枝さんも実は参議院から特別
委員として御参加をいただいておりまして、お互いにそのときに話し合ったことは、何とか日本の
選挙制度を
政党本位の
選挙にしない限り公正は阻害されるということを市川さんと話し合ったことを、この間市川さんが亡くなられたときに、しみじみと実は思い出したわけであります。それから約二十年がたっておるわけでありますが、実は、
選挙制度審議会は、たび重なる審議をいたしましたけれ
ども、
選挙制度の問題については何一つ実は
自民党政府は取り上げないという形で今日に至っておるわけであります。
私は、この間鈴木総理に申し上げたのは、ともかく政治倫理を確立したいなどということは、まさに訓辞
規定でありまして、要するにシステムを変えない限り、訓辞
規定幾ら設けてもそれは守られない。だから、お互いがひとつ
政党本位の
選挙で争える仕組みにすることは、いま、この
公職選挙の
委員会に籍を置く与野党の
議員の国民に対する責任だ、私は実は、こう理解をしておるわけであります。
そこでこの間、私は西ドイツ方式の比例代表制をひとつ導入したらどうでしょうかという問題提起をいたしました。残念ながら明くる日の新聞を見ますと、共産党の赤旗紙が、社会党の堀
議員、小
選挙区制を推進というような見出しが出ておるわけであります。私は、共産党の
皆さん大変勉強家がそろっていらっしゃるので、いやとんでもない記事が出たものだと思って実は林
委員にそのことを申し上げました。これは大変な間違いですよ。西ドイツにおける小
選挙区というのは、比例代表で総数が決まって、その総数を、政党の一方的な拘束名簿だけに頼るのは民主的でないから、その半数だけは、政党の名簿の
いかんにかかわらず、小
選挙区で当選した者をもって当選者にするというための、名簿に対する
選挙民の民主的介入だ、こういうふうに理解をしておりまして、制度は、そういうふうになっているのでありますが、何か私が小
選挙区を推進しているかのような記事であったことは大変遺憾であったということを林
委員に申し上げたわけであります。
それでは、私はなぜ小
選挙区に反対かという問題を一つ申し上げますと、いま小
選挙区については二つのやり方がとられております。一つはイギリス方式です。イギリス方式の小
選挙区制度というのは、比較多数当選制度なのであります。もう一つはフランスの方法であります。フランスは比較多数ではだめで、過半数の投票を得た者がない場合には、一位、二位または一位、二位、三位をもって再度投票を行って、過半数の投票を得た者をもって当選者とする、こういう制度に実はなっているわけであります。
それはどういうことから、こうなっているかといいますと、イギリスは、これからはどうなるかわかりませんが、少なくとも今日までは保守党と労働党の二大政党対立なんであります。二大政党が対立で、自由党はありますが大したことはありませんから、二大政党対立なら比較多数という問題は起こらないのです。大体どっちかが過半数を超えて、どっちかが過半数を割るというのが制度上の問題であります。ところがフランスは御
承知のように多党化している国でありますから、比較多数でやれば、その
選挙区の
選挙民の意思を十分に反映しない
候補者が当選する。そこでフランスは多党化しているから、小
選挙区でも二回
選挙で過半数の支持のある者を選ぶ、こういうふうな制度になっているわけです。
そこで、ただ
自民党の方で、これまでいろいろと何回もございました。かつて江崎自治大臣のときに突然として小
選挙区法を
提案をしてこられました。田中総理のときであります。私は、この
公職選挙法の
委員会で、これに歯どめをかけて、結果的に、それは
提出をしないことになりましたけれ
ども、そのときに、いつでも
自民党が持ち出されるのはイギリス式の比較多数で小
選挙区をやろう、こういう発想であります。だから、これは今日、日本も多党化しておりますから民主的なルールとは言えないわけでありまして、まず小
選挙区は、そういう
意味でフランス式の方法というなら、また二の次でありますが、まず第一点非常に問題がある。日本の
現状に比較多数小
選挙区制度を導入することは、きわめて問題があるということで、反対なんであります。
その次に、それではなぜ小
選挙区に反対いたすかといいますと、現行中
選挙区でもそうでありますけれ
ども、衆議院は、いまともかく
委員会が火曜日から金曜日までということになっております。土曜、日曜、月曜——日曜は当然ですが、土曜、月曜
委員会をやらない。なぜやらないのか。金帰火来こう称して、金曜日から
選挙区に帰って、火曜旦戻ってきて国会でやる。もしこれをやらないと
選挙民が、ともかくおれ
たちに顔を見せないようなやつは投票しない、こういうことになるおそれがあるというわけです。
私はかつて政策審議会長を四年間やっておりまして、党務専一で一生懸命がんばっておりました。その当時、私の地元の市会
議員の
皆さんから、堀さん、党もいいけれ
ども、ちょっと地元へ帰ってくれぬと
選挙にならぬぞと、こういう話でありました。しかし私は、国会
議員として国政に参加をし、政党の役員として政策に参加をしておって、実は自分の
選挙よりも党務、政務の方が大切だと思うから、申しわけないけれ
ども、ひとつ勘弁してくれと言って一生懸命やりました。そうしたら、その次の
選挙でみごとに落選という
事態が起こるわけでありますね。これは、いま金帰火来をやっているけれ
ども、
選挙区に集中していないことには次の
選挙に出られないのでは、
政治家としての一貫性がないわけです。小
選挙区になったら、実はもっと帰らなきゃいかぬようになるのですよ。金帰火来じゃなくて、国会は水曜と木曜だけにして、ともかく木曜から帰って、そうして今度は水曜に戻ってくるということにでもしなかったら、何しろ自分はこっちにいるが、相手の
候補者は地元にいて、毎日てくてく狭い
範囲やられてたら、心ここにあらずで、国会で審議しようなんてことは不可能になる、私はこう思っているんです。
そうすると国政を預かる私
どもとしては、その
選挙区も大事ですが、要するに国政、政策をもって国民全体に奉仕をするというのが国会
議員の任務ではないか。その任務を達成するためには、比例代表制ならば、これはもう
選挙区へ帰ってばたばたしなくても、国政の上でしっかりがんばり、そうして、いい政策で政党同士が争うということが、初めて近代的な民主政治を確立する道だ、私はこう
考えているわけです。ですから、その限かでは、いま日本のこの風土で
政党本位の
選挙にしようとするならば、何としても西ドイツ方式を導入する以外に道はない。私は、それを単に政党の利害で言っているわけではないのであります。
それはなぜかといいますと、実はこの前ちょっと試算をしてみました。ドント式とかいろんなものを使いますと、これまた偏差が出ますので、単純に比例代表をウエートで計算をしてみるというやり方をしたら、この前の同時
選挙、総
選挙のときのあの
議員の配分がどうなるかというのをちょっと試算をしてみますと、あの
選挙で自由民主党として当選した人は二百八十四名でございました。私
ども社会党は百七名でありました。公明党三十三名、民社党三十二名、共産党二十九名、新自由クラブ十二名、社民連三、無所属が十一というのが、この間の
選挙の党派別の議席数であります。これを完全比例方式でウエートで配分をしますと、自由民主党は二百四十五になります。社会党は九十九になります。公明党は四十六、民社党は三十四、共産党は五十、新自由クラブは十五、社民連は三、無所属十八、こういう形になるのです。
ですから、自由民主党と私
どもが多少制度の結果としては減るけれ
ども、この際われわれが踏み切れば、あとの野党の
皆さんは、制度が変わるだけでどんと議席数ふえて、そして民意が正しく反映されるわけでありますから、この問題についての大きな反対は起こらない、私はこう見ているわけでありますね。
おまけに、そうなれば今度は自由民主党の
皆さんもわれわれも政策の争いになりますね。いまの中
選挙区で、われわれ社会党のところは、この間二名以上立てた
選挙区は十七しかありませんからね。ですから
政党本位の
選挙のできてないところは十七で、あとの
選挙区は一名しか出てなければ、これはもう
政党本位の
選挙と同じになるわけです。その
選挙区で
候補者が一名なら
政党本位の
選挙と同じになる。
自民党は全
選挙区でほとんど複数立てておるわけです。だから、そうなれば
皆さんの方は、実は私
どもとの政策の争いでも何でもないのですよね。
自民党内部で、いかにして当選するかという争いで、これは不毛の争いだと私は思うのです。
後藤田さんは、そのことはよく身にしみてお
感じになっておる、私はこう思うわけであります。何しろ警察庁長官をした人が
選挙に出たら途端に
選挙違反なんというのは、
後藤田さんとしては、こんな制度はどうにもいかぬと、私
ども以上に身にしみて、あなたは
個人選挙というものの弊害に気がついておられると思う。
ですから私は、ちょっと
後藤田さんに伺いたいのですけれ
ども、ひとつわれわれ、この
公職選挙法の
委員が、任期中にこの問題に結論を出すというくらいの
気持ちで真剣に取り組むことが、私は日本の政治が本当に民主的で、そしていまの金から離れて、国民のための政策の争いということになって、ようやく先進国の
選挙制度のレベルに達する、こう思うんですね。そのくらいのことがやれなければ、私は国民の負託を受けておる国会
議員として、きわめて不勉強なものだ、こう
考えるのでありますが、
後藤田さんの
お答えをひとついただきたいと思います。