運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1981-02-12 第94回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月十二日(木曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 片岡 清一君 理事 小泉純一郎君    理事 塩崎  潤君 理事 松本 十郎君    理事 佐藤 観樹君 理事 新村 勝雄君    理事 伏木 和雄君 理事 中井  洽君       足立 篤郎君    石井  一君       上村千一郎君    北村 義和君       後藤田正晴君    高村 正彦君       佐藤 一郎君    瀬戸山三男君       竹下  登君    原田昇左右君       山口 鶴男君    山花 貞夫君       岡田 正勝君    安藤  巖君       小杉  隆君  出席政府委員         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君  委員外出席者         議     員 片岡 清一君         議     員 後藤田正晴君         議     員 竹下  登君         警察庁刑事局捜         査第二課長   漆間 英治君         自治省行政局選         挙部選挙課長  岩田  脩君         特別委員会第二         調査室長    秋山陽一郎君     ————————————— 委員の異動 二月十二日  辞任         補欠選任   佐藤 一郎君     高村 正彦君   渡海元三郎君     北村 義和君   古井 喜實君     原田昇左右君   川口 大助君     山花 貞夫君 同日  辞任         補欠選任   北村 義和君     渡海元三郎君   高村 正彦君     佐藤 一郎君   原田昇左右君     古井 喜實君 同日  理事川口大助君同日委員辞任につき、その補欠  として佐藤観樹君が理事に当選した。 同日  理事坂井弘一君同日理事辞任につき、その補欠  として伏木和雄君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  公職選挙法の一部を改正する法律案竹下登君  外二名提出、第九十三回国会衆法第一七号)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  坂井弘一君から、理事辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任に関する件についてお諮りいたします。  ただいまの坂井弘一理事辞任及び理事川口大助君が本日委員辞任されました。これに伴いまして現在理事が二名欠員になっておりますので、この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、理事に       佐藤 観樹君    伏木 和雄君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 久野忠治

    久野委員長 竹下登君外二名提出公職選挙法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行います。  本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。
  6. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうから自民党提案によります公選法改正案について質疑に入るわけでありますけれども、私も実は、昭和四十八年から当委員会質疑をしているわけであります。当委員会というのは、日本民主主義を守る、議会制度を守る上において大変重要な委員会だと私は思い、また、こういった審議に参加できることを大変誇りに思っておるわけでございます。  政治というのは国民との間の信頼関係ですから、その信頼を実際に得る一つ共通項というのでしょうか、パイプ役が選挙だと私は思うのですね。ですから、お互いにこれは政党を超えまして、選挙というものは公正でなければいけないし、国民ひとしく立候補できるように金のかからない選挙を目指していく、こういった高い理想を掲げながら、選挙法改正というのを私たちお互いに取り組んでいるのだと思います。もちろん、それは選挙法という選挙運動だけの問題ではなくて、後からお伺いしますけれども定数の問題や、あるいは政治資金規正法の問題や、たくさんの具体的に国民皆さん方期待にこたえて国会が行う、それが私は選挙法であり政治資金規正法だと思うのであります。  そこで私は、何といっても政治浄化というものが最終的に求められなければ、いかに小手先選挙法改正してみましても、これは国民から見たら何だということになりかねないと思うのであります。こういった基本的な立場から考えてみますと、いま、さまざま言われております政治的な不祥事、この問題を政権与党としてはそれなりにちゃんと対処をしないと、いかに選挙法なり政治資金規正法法律だけ直してみましても、これは余りきれいな言葉じゃございませんが百の説法へ一つということになってしまうと思うのであります。  いま新聞紙上をにぎわしております千葉県の例をとりましても、与党の方には大変耳が痛いかもしれませんが、十三日からは参議院補欠選挙があるようでございますけれども、たとえば浜田幸一氏の百五十万ドルのばくちの件、あるいは宇野亨派の大量の選挙違反、あるいは泰道三八氏の、御本人買収資金というのでしょうか、これを配ることに参加したとかしないとか言われております選挙違反問題、あるいは一番最近問題になっております川上紀一知事の五千万円念書事件、特に千葉県は金権選挙区なのか金権県なのかわかりませんけれども、とりわけ、いま国民関心を呼んでおります千葉県知事の五千万円念書事件、これは国民にとりましては大変な問題だと私は思うのであります。何か聞くところによりますと、昨日不信任案は否決をされたようでございますけれども、こういった問題を、公選法改正提案される与党自民党皆さん方一体どういうふうに感じていらっしゃるのか。  やはり冒頭申し上げましたように、こういった問題を一つ一つ皆さん方の方で、国民期待に沿うように政治浄化を求めて対処されないと、いかにいい選挙法をつくってみましても、これは全く、国民の目から見ますれば何をやっているんだ、こんな法律改正しても意味はないではないか、こういうことになってしまうと私は思うのであります。この公選法改正案を出されたのは、この千葉県知事の問題が発生する前ではございましたけれども、やはりこういった政治的不祥事、これに一つ一つ対処していくことが国民政治に対する信頼を増すことになるし、あわせて、それと一体になって初めて選挙法というのは生きてくると私は思うのであります。  これはひとつ提出者のお二人に政治的問題として——総理予算委員会の方で、きわめて遺憾であるという、遺憾の意まで表明をされておりますけれども公選法というきわめて重要な法案審議をする前提として、政治家お二人の、この問題に対する御見解をまずお伺いをしたいと思うのであります。
  7. 片岡清一

    片岡議員 ただいま佐藤委員の御質問といいますか御意見といいますか、私は全く同感でございます。ことに最近起こっておりますいろいろの問題についての御批判、私も全く同感でございます。  申すまでもなく、選挙というものは、やはり民主政治の一番基本になるものでございまして、民主政治がりっぱに機能するためには、どうしてもやはりその選挙清浄で、しかも公正に、金のかからない、りっぱな選挙でなければならぬ、それによって初めて、出てくる人もりっぱな人が出てこられると存ずるのでございまして、そういう点については、かねて私は、自分政治姿勢の中においても、そのことを第一に掲げて選挙民皆さん方に訴えておるものでございます。私の問題に走って恐縮でございますが、私の選挙区の大先輩である松村謙三先生、これが私の実は師匠でございまして、私はその後を、まあ衣鉢を継いで出さしていただいたという関係で、特に政界の浄化といいますか、この問題については非常な関心と情熱を持って出てきておるものでございます。  私は、この選挙特別委員会に属して、金のかからない公正な選挙が行われるようにしていきたい、こういう考え方から、この委員会に属して努力をいたしていきたい、こう考えておるのでございまして、今回の千葉に起こりました最近の問題等についても私は非常に残念に思っております。これはやはり何とか国民皆さん方から信頼を得られるような、そういう選挙によって議会制度というものが基礎づけられて、そして本当に公正で清浄政治が行われるように努力していくことが必要である、こう考えておりますので、私は今後とも、そういう点で努力をしていきたいと考えております。
  8. 後藤田正晴

    後藤田議員 ただいまの佐藤さんの御意見、趣旨において全くそのとおりでございます。  日本政治代議政治をとっておるわけですから、何といっても国会に民意が正しく反映せられるということが肝心で、それがためには選挙というもので、やはり正しく、しかも清らかなプロセスを経て選ばれるということが何よりも肝心なことであろう、こう思います。  それがためには、今日やはり仰せのように選挙制度であるとか、あるいは定数の問題であるとか、選挙運動あり方、さらには政治資金の問題、こういったいろいろな問題で改革を要する点がたくさんあるんじゃないか、かように思います。そういった根本的な点についての改革は、言うべくして大変むずかしい点もあるわけでございますが、やはりできるものから、ひとつ手をつけていくということが、これまた物事を解決する一つ方法ではなかろうか。同時にまた革命的に物を処理するということ、理想どおり思い切って一挙にやっつけるというのも一つ方法でしょうけれども、現実の政治の面でとらえますというと、やはり物事というのは改良主義的に一歩一歩改善していくということも必要なことではなかろうか、かように考えます。  そういうようなことで、私どもの党では御案内のように選挙制度調査会がございまして、各般の問題について検討しておるわけでございますが、今回も、そういったできるだけひとつ政治に金のかからぬようなやり方、その一つ方法として、今日の選挙運動そのものについても、できるものから、ひとつやっていこうではないかということで、大方の意見の同意を得た線でとりあえずまとめて、改良主義的な手段、方法をとってやっていこうじゃないかということで御提案をしたわけでございまするので、どうぞ皆さん方の御審議を仰いで、何とかこの改革案を成立をさせたい、かように念願をしているような次第でございます。
  9. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 後藤田議員のいま言われたことは私もわかるわけであります。しかし、いかにりっぱな選挙法あるいは選挙運動改正、金のかからない選挙法ができてみても、いま千葉県で起こっているような、あの念書中身本当かどうか、これはまたそれなりのところで調べるのでありましょうけれども、ああいうことが行われ、しかもこう言ってはなんでございますけれども自民党さんの本部の方では放置される。確かに一義的には、これは千葉県というおのおのの県連があるのでございましょうから、組織的には千葉県の問題とはいうものの、しかし、やはり選挙法をやっている者から見ますれば、あれをあのまま自民党本部といいましょうか、放置をしておいて選挙法改正と言ってみても、これは国民の目から見れば、きわめてけったいなことだと思うのであります。  片岡先生が、われわれの早稲田の先輩でございます松村先生衣鉢を受け継がれて、きわめて政治浄化ということについて強い御決意を持っていらっしゃることも、私も存じておるわけでございますけれども、私がお伺いしたかったのは、この法案提出するときには確かに千葉県の問題というのはなかったわけであります。しかし基本的な、われわれの政治に対する姿勢あるいは選挙運動に対する姿勢として、与党自民党さんがこれを提案をしているわけでありますから、私らも何も全部が反対と言っているわけではないので、賛成するところもあれば反対するところもあるので、そのことはまたいいのでありますけれども、いかにきれいな選挙法をつくってみましても、千葉県で行われているような、何か出てまいりました念書によれば「県及び関連事業団体等のあらゆる利権について相談し貴殿及び貴殿の御すいせんの御事業が益々御発展するよう努力することを確約いたします。」というような、これは贈収賄そのもの契約書じゃないかなんてひやかされるようなことがそのまま放置されて、自民党さんの本部の方でも、これは高度の政治的判断で、それなりの処理を本部の方からすべきであるというような話も、どうも伝わってこない。そういうような姿勢で果たして選挙法だけ直してみても、本当国民信頼を得られるような選挙なり政治というものができるだろうか、その基本的なスタンスについて私はお伺いをしているわけであります。  ですから、いわば政治家お一人お一人、御提案者それなりのお考えがありましょうし、また一体自民党の中で、私は党の内部に立ち入ることはなんでございますけれども、恐らく総務会等で何らかやはり、こういうお話もなされておるのではないかと思いますので、そういった機会に、本公選法改正提案をなさったお二人は、政治家として、こういった不祥事が起こっていることに対して、とりわけ公選法をいじるわれわれとして、一体どういうふうに党内では発言をし、今度の不祥事に対して政治家の一人として、どういうふうに対処をなさるのか、その基本的なスタンスがはっきりしないことには、この公選法幾ら小手先でいじってみても、これは日本議会制度を守り、あるいは発展をさせていく立場政治本当信頼を得るものにする立場から言えば力がないのではないか、きわめて力が弱いのではないかという気がいたしますので、その点について、簡単で結構でございますから、お二人の御見解をお伺いしたいわけであります。
  10. 片岡清一

    片岡議員 先ほどから申し上げておりますように、おっしゃるとおり入れ物なり機構制度というものが幾らできても、やはりそこへ出てくる人がりっぱでなければ、なかなかその機構がうまく動いてりっぱな作用をしないものであるということは私もよく存じております。  したがいまして、私は、そういう意味でまず身を正して政治の道に携わらなければならぬ、こう考えておるのでございまして、自民党といたしましても、すでに党の倫理綱領の中に、そのことをりっぱにうたっております。そして、われわれがまず心構えとして、清浄な、そして公正な立場に立って、公務に携わる者としての心構えをしっかり振起していかなければならないことを倫理綱領にうたい、これを実践していくことを誓っておるわけでございます。ただ、たまたま、なかなか人間のすることでございますから全部が全部うまくいきません。しかしながら、そういう気持ちで、いま自民党員は新しい決意でおるということだけをひとつ御理解を賜りたいと思います。
  11. 後藤田正晴

    後藤田議員 千葉県の問題につきましては、一昨日でしたか予算委員会鈴木総理から、大変遺憾な事件だ、千葉県連で適切な処置が講ぜられることを見守っておるのだ、こういうことでございましたが、この見守っておるのだという言葉の中には、やはり事柄の進展によっては自分としてもというようなお気持ちが、その言葉の中にあらわれておるのではないかなと、私は実は、さようなつもりで拝聴しておったわけです。  ただ、ああいった事件がなぜ起きるか、同時にまた、今日いろいろな事件があるわけでございますが、やはり大きな原因の一つは、私は今日の選挙にあると思います。選挙に金がかかり過ぎるのだ、こういうことだろうと思います。そこで、今回のこの御提案も、その一助になるのではないのかというようなことで、先ほど言ったような、一つ一つできるものから解決していこう、こういうことで御提案をしておるわけで、基本は、やはり政治に金がかかり過ぎるのをどうすればいいんだということを私どもは考えておるんだ、かようにお答え申し上げたいと思います。
  12. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 このいわゆる千葉県知事の五千万円念書事件最初に聞いたときに、私が不思議に思ったのは、恐らく、この方は個人で贈られたのだと思いますので、どうして五千万も贈れたんだろうかと、まず疑問に思ったわけでございますけれども、この念書によりますと日付が昭和四十九年三月六日になっておるわけであります。もしこの念書が正しいものとすれば、この念書の中で「今般、川上紀一千葉県知事立候補について、三名は当選を期するため本日、深石鉄夫氏より多額なる選挙運動資金を賜わり、ありがたく厚く御礼申し上げます。」というお礼が四十九年三月六日付で入っているわけであります。この念書本当かうそかということはまだ議論があると思いますけれども、確かに、この現金の授受が四十九年三月六日ということになりますれば、これは改正された政治資金規正法の前でございますので、このときには個人からの政治献金の額については制限がなかったと思いますが、選挙部長、いいですね。
  13. 大林勝臣

    大林政府委員 おっしゃるとおりでありまして、今回の五千万円受領事件が、四十九年に授受されたということが事実でございますれば、五十一年一月から施行されましたいわゆる五十年改正法の前でございますから、政治資金規正法上の関係では問題がないと思います。
  14. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで警察庁にお伺いをしておきたいのでありますけれども、私たち関心は、贈収賄の問題というのは県議会の方でもやっていらっしゃるのでしょうから、公選法の当委員会の問題ではないのでありますから触れませんけれども、問題は、いま選挙部長からお話があったように、確かにこれが四十九年の話ならば政治資金規正法には触れないということはわかるのでありますけれども、これも調べてみなければわからぬ。しかも、もしそれが五十年以降ということになっていましても、事実関係を調べてみないと本当公訴期間が過ぎているのかどうなのかという事実関係が判明しないと思うのでありますが、その点について警察庁はどういうふうに調べていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  15. 漆間英治

    漆間説明員 お答え申し上げます。  御質問の問題につきましては、いろいろとマスコミにも報道されておりますし、また、この問題を審議するため千葉県会でも臨時議会を開いて審議されたことは御承知のとおりでございます。千葉警察としても、この問題はこういう状況であるということはよく承知をいたしておりまして、その状況を踏まえて関心を持って対処をしているところであります。  いま御質問のありましたように、この問題に関連して何らかの刑罰法令に触れる事実があるかないかということが問題でありますけれども、いま千葉警察では、その事実があるかないかという事実を見きわめるため作業をいたしているわけでありまして、仮に、その結果、何らかの刑罰法令に触れるというような事実が把握できますれば、これに対して、その内容に応じて適切に対処していくことは、これは当然のことでございます。
  16. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 政治資金規正法の場合には、たしか公訴期間が切れるのが最高三年だったと記憶しておりますから、たとえば五十年以降のものでも確かに、この件は時効になっているかもしれません。しかし、これは調べてみなければわからぬことですので、おたくの方でも、この五千万という大変多額な政治資金がいつの時点の授受だったのか、これが政治資金規正法上も違法にならないのか、違法だったけれども、すでに時効になってしまったのか、この点についてはきわめて関心が強い、こういうふうに理解しておいてよろしいですか。
  17. 漆間英治

    漆間説明員 警察犯罪捜査機関でございますので、捜査機関としての立場から事柄を判断していくわけでございます。先ほど申し上げましたように、千葉警察としても、この問題については関心を持っておりますが、そして、それに続いて事実関係を見きわめるため作業はいたしておりますが、警察として捜査すべき事実があるかないか見きわめることが先決でありまして、その作業は当然行うつもりでございます。
  18. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次に、先ほど、提出者である後藤田議員の方から、やれるものから改正をしていくんだというお話がございました。私はそのことは首肯するわけでございますけれども、当委員会で本来取り上げなければならぬテーマというのは、きわめて山積みをしているわけですね。一体皆さん方の方ではどういうテーマを考え、そしてそのテーマに対して、大政党である与党自由民主党としては、これからスケジュール的にはどういうふうに取り組もうとしておるのか、その点について、まずお伺いをしておきたいと思います。
  19. 後藤田正晴

    後藤田議員 先ほどお答えいたしましたように、いま自由民主党選挙制度調査会では、やはりいま一番この選挙の問題でいろいろ言われておるのは、一つ選挙区制の問題、もう一つ定数是正の問題、もう一つ選挙運動の規制のあり方の問題、こういうような点があるわけでございますので、そういった問題については党としても絶えざる研究、勉強をしておるわけでございます。特に選挙区制といいますか、選挙制度といいますか、それについて、いま世論も、今日のやり方おもしろくないではないかという大体のコンセンサスが得られておるのは、参議院全国区制の問題。これは残酷区であるとか、いろいろ世間では言われておるわけでありますが、候補者本人にとっても大変金のかかる選挙でありますし、同時にまた肉体的にも限度、限界に達するといったような選挙が展開せられておるわけでございます。  そこで、この全国区についてはやはり何らかの改正を必要とするであろうということで寄り寄りり検討しまして、昨年の八月以来、事は参議院でございますので、まず参議院の方でプロジェクトチームをつくって検討をお願いしておったわけでございますが、やはりこういった制度基本に触れる改革ということになると大義名分というものが肝心でございます。そこで一番の基本になるのは両院制度のもとにおける参議院あり方、特に、その中での全国区のあり方というものをどのように考えるのがいいことなのかということでしょう。そこで、やはり参議院全国区というのは何といっても日本英知を集める——今日出ておる人が英知でないとは言いませんよ。りっぱな人が出てきておられるわけですけれども、何といっても先ほど言ったように大変金もかかるし、肉体的にも限度に達するということで、立候補者の幅が、今日御承知のように官庁出身者であるとか、労働組合出身者であるとか、あるいは宗教団体であるとか、あるいはタレントであるといったように幅が大変狭まっておりますから、これはやはり各界各層の中のエリートが選ばれるといったようにするのが何といっても基本であろう。  そこで、それがためには、いろいろなやり方があるでしょうけれども比例代表制というものがいいのではないのか。ただ、これについては参議院というものに政党色最初に入るというのはどうかという議論が当然あるわけですけれども、今日のような政党政治のもとで公選制ということになれば、何といっても政党というものが正面に出てくることはやむを得ないことなので、一応それはそれとして、それを踏まえながら、さて改革をどうするかということになると比例代表制であろう。  そこで比例代表制をやる場合に、一つは非拘束比例代表制拘束と両方あるから……(佐藤(観)委員中身については、スケジュールで結構です」と呼ぶ)  わかりました。そこで、これは拘束制を考えていこうということで寄り寄り検討いたしまして、その次の、投票のあり方をどうするかといったようなことで、ようやく、つい二月の五日でございましたが案がまとまりまして、今日、選挙制度調査会全体としての総会にかけて、そして案がまとまれば、それと相並行しながら、何といっても、これは野党の皆さん方の御理解、御了承を得なければならぬことですから、野党の皆さん方ともお話を申し上げようというのが今日の段階でございます。  もう一点の運動規制の問題は、とりあえず今回御提案を申した案でひとつ御了承をいただきたい、こういうことになっております。  もう一点の衆議院の方の選挙区制ということになると、これはまた容易な問題ではございませんので、これは将来を見通しながら勉強をしていこうという程度でございます。  もう一点の定数是正の問題ですが、これは参議院の方については、やはり逆転選挙区等が出ておりますから、ここらをどうするかというのは、これからの問題だろうと思いますが、あわせで検討いたしております。衆議院の方については、昨年の十二月に東京高裁のああいった判決が出ましたが、この判決をめぐって、いろいろな意見がございます。私も意見を持っています。しかし、これは今日最高裁に上告になっておりまするので、それらの結果を見た上で検討すべき事柄ではないのかといったようなおおよその考え方であろう、かように考えます。
  20. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま言われた中で、選挙運動の問題、それから衆議院の定数是正参議院地方区の定数是正、それから参議院全国区制のあり方、それから政治資金規正法は抜けていたように思うのですが、あわせて後藤田さん盛んに選挙区制と言う、これは、あるいは衆議院の小選挙区と申しますか、比例代表制と申しますか、どうも、その辺のところを考えていらっしゃるようでありますが、それは余り必要ないと思うのであります。もう一つ見直しを迫られておりますのは政治資金規正法の問題ですね。  あわせて私は、もう一つお互いに考えていかなければならぬのは地方選挙の公営化の問題ですね、これは考えていかなければならぬ大きなテーマじゃないかと思うのであります。われわれが地方へ戻りますと、国会議員だけは選挙を公営化したけれども、われわれのところはちっとも公営化になっていないということで大変な批判があるわけでありますし、選挙というのは、地方の時代と言われる中で、やはりいい地方議員の方々が出ていただくということは非常に重要なことでありますから、ひとつ地方選挙の公営化という問題についても、ぜひ御留意をいただきたいと思うのであります。内容については後から申し上げたいと思うのであります。  いまのお話を聞いておりますと、スケジュール的にある程度出てきたのは、参議院全国区の改正について自民党さんがおまとめになったようであります。この中身については若干後でお伺いしますけれども、いまのお話ですと、野党と話がつけば国会の方に提出をするということなのか、一応説明をしてみて、そして自民党はやるぞ、こういう意思なんでしょうか、いかがでございましょうか。
  21. 後藤田正晴

    後藤田議員 何といいましても、この問題は選挙の土俵づくり、ルールづくりですから、これは各党間で話し合いをさしていただいて、その上で扱うのがベターであろう、かように考えております。
  22. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで先輩に失礼でございますけれども、言うならベターよりもベストだと思うのでございます。ということは、ある程度、野党も含めて全部まとまらぬことには、とても自民党さんといえども、研究はしてみましたけれども出せるものではない、こういうふうに理解をしておいてよろしゅうございますか。
  23. 後藤田正晴

    後藤田議員 今日の時点では、そのように御理解をしていただいていいのじゃないかと思います。
  24. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで衆議院の定数是正の問題なのでありますけれども、私から言うまでもなく、五十五年の国勢調査でも、千葉四区と兵庫五区の議員一人当たりの人口が四・五四対一ということになっているわけです。いわば兵庫五区の方は四・五票分、都会の人より持っているということになるわけで、これは民主主義のルールからいっておかしい。私の感覚で言えば、一人と二人が一緒というのも、これもおかしいと思うのであります。ただ基本的には、兵庫五区を物差しにして、すべて物をはかるはかり方というのは、これも一つのはかり方ではあるけれども、これだけが絶対ではない。やはり全国平均二十二万九千七十五人というこれを基準にして、ここからどれだけ離れているかというのを物差しにするというのが一番正しい考え方だと思うのであります。  そのことは別といたしましても、いずれにいたしましても、どれを物差しにとりましても、この衆議院の定数のアンバランスというのは目に余るものがあると思うのであります。昭和二十二年決めたときは、昭和二十一年か何かの国勢調査をもとにいたしまして、いわばまだ疎開の方、戦争中の方が地方にいらっしゃるころの人口をもとにしての話でありますから、しょせん狂ってくるのがあたりまえだと私は思うのでありますが、東京高裁で昨年十二月に一対二を超える格差は違憲であるという判決も出ている。とかく与党の方は都合が悪くなると最高裁があるさと言われるが、日本は三審制をとっているわけですから、地裁だって高裁だって最高裁だって、一つ一つの判決であることは変わりないのですね。後藤田さんも長いこと警察にいらしておわかりになると思いますが、私は、法律なり裁判の判決によって国会が動いていくというのは、これはアブノーマルだと思うのであります。法律というのは最後の最後であって、家庭争議だって、やはりまず当事者同士が話し合う、第三者を入れて話し合う、そして最後のよりどころが法律なのであって、ましてや法律をつくる国会といたしましては、最高裁から言われなければ手をつけないというのは、これは私、基本的な姿勢として間違っていると思うのです。  もちろん、この問題の重要さ、むずかしさというのは、私は昭和五十年のときに、いまの久野委員長と一緒に二十名の定数増をやったときの経験もありますので、しかも選挙法以上に、この定数是正の問題というのは各政党の消長にきわめて直接的に結びつくという意味では、むずかしさがわからぬわけではありませんが、最高裁の判決を待って、最高裁からけつをたたかれないと国会が動かないというのは、私はみずから国権の最高機関としての国会の怠慢だと思うのであります。  実は、私ごとでございますが、私は二月の二十六日に札幌地裁に呼ばれて、昭和五十年当時の定数是正はどうだったか、これは北海道一区の選挙についての証人として行くのでありますが、考えてみれば、お互いにわれわれは証人という立場じゃなくて、いわば国民から見れば、われわれは全部被告席に立たされているようなものであって、その意味では、この衆議院の定数是正の問題というのは、もっとわれわれは真剣に取り組まないことには、この議会制度を支える基本の問題だと思いますし、とりわけ衆議院の場合には参議院地方区の定数の配分と基本意味が違うわけでございまして、その意味では人口比というのは最も基本的な比例の物差しだと思うのですね。そういった意味で、この定数是正について一体自民党として具体的には——まあ具体策がまだ決まっていなければ別でございますけれども、この重要な衆議院の定数是正の問題について一体いつごろから着手をしようとしているのか、その際、基本的に一体、五百十一名の総定数の枠というのは、さらに増員をしようということで解決を図るのか、あるいは総定数のままでやろうとしているのか、個人意見でも結構でございますので、御披瀝をいただきたいと思います。
  25. 後藤田正晴

    後藤田議員 まだ定数是正の問題は自民党として取り組んでおるというわけでございませんので、私の意見ということでお答えを申し上げたいと思います。  おっしゃるように、裁判所の判決がなければ定数問題が動かないというのは、私はおかしいと思います。これはまさに国会マターであろうと思います。事柄自体が国会の裁量権の範囲内の問題である。それだけに国会の責任は重い。国会は、最高裁が何と言おうと裁判所が何と言おうと、やるべきことはやらなければならない、私は基本的にそう思うのです。といいますことは同時にまた、ああいう事柄を裁判所が司法の作用として、選挙法の二百四条によって適法なる訴訟として取り上げておるということ自体にも私は大変疑問に思っております。したがって、裁判所の判決そのものについて、私としては、これは憲法解釈としてもおかしい、同時にまた法律解釈としてもおかしい、こう思いますが、しかし今日、最高裁判所が取り上げてやっておる以上は、裁判所としても、いまさらこれを取りかえるというのも、なかなか容易ではないなあ、私もこう思います。しかし、今度の東京高裁の判決というものは、現実政治の上から見るならば、大変これは容易でない判決をしているわけですから、これに対応して最高裁が従来の判決を踏まえて、どういう判断を下すであろうかということについても、実は私自身は大変興味を持っておるわけでございます。  同時に、定数の問題というのは、なるほど人口を基礎にして考える、ことに衆議院においてはそうだという考え方を私は否定いたしません。大変重要な要素であるということは思いますけれども、それだけではありません。極端な例を申し上げて恐縮ですけれども、仮に私の県の知事の選挙権ということを考えました場合には、大体三十万人で知事を選ぶことができます。東京都の知事というものは三百万ないし四百万の票がなければ当選しない。ならば、東京都の都民は知事選挙権について、徳島県と比べて十分の一しか与えられておらぬのかといえば、そうではないということも、これは言えるわけでございましょう。だから極端な例ですけれども、そういった物の考え方もあるわけでございますから、人口だけで物を考えていくというのもいささかどうであろうかな、私自身はかような考えを持つ。  選挙権というものはあくまでも一人一票であるということだけ、これもまた片方の真理であろう、かように考えているわけでございますが、いずれにいたしましても、いままでの選挙法の沿革、経緯等を見ると、人口というものはきわめて重要な要素である、これをないがしろにするわけにもいくまいと考えますので、仰せのように裁判というものを待たないで、基本的には国会の手によって是正をしていくということがいい解決の方法ではないのかな、かように私自身も考えておるわけでございますので、党でその問題が取り上げられるという段階になれば、私自身いま言ったような考え方で臨んでいきたい、こういうふうに考えております。
  26. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまの知事選挙の問題は、悪いけれども、どうも下手なすりかえだと思うのです。知事は知事でいいのですよ。衆議院というのは国政ですから人口比というのは基本だと思うのです。  それから、いまのお話を聞いておりますと、どうも自民党さんとしては最高裁の判決が出ないと動き出さないというニュアンスに聞こえるのですが、そういうことなのですか。
  27. 後藤田正晴

    後藤田議員 先ほどお答えいたしましたように、党ではまだ取り上げておりませんので、党がどうだということは私はお答えを差し控えさせていただきたい、かように思います。
  28. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから、久野委員長が朝日新聞の座談会で言われているのでありますけれども、まあ本会議場も、あの大臣席を一・五メートルぐらい下げれば二十五議席はとれるという話を朝日新聞でされているわけであります。私たちも現実に定数増をやってみた。一・五メートルですね、下げればという話でありますが、委員長が言われておりましたような二十五名ふやしてみても、計算をしてみますと、なおかつ衆議院の場合には二・九九対一ということで、まだまだ約三倍なんですね。くしくも一番最後に残る最高の選挙区が、これは今度は私の選挙区の愛知三区ということになるのでありますが、それはどうでもいいけれども、いずれにしろ増員だけで衆議院の定数是正をやってみても、これはまたいずれ突き当たると思うのですね。そういった意味で、今度の改正の場合には、議場の実態からいってみても、もう総定数の枠の中で是正せざるを得ないだろう、こう思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  29. 後藤田正晴

    後藤田議員 過去の定数是正は御案内のように二回あって、いずれも定数増ということでやったわけですけれども、私個人は、これはもう限界に達しておる、やはり総定数五百十一の範囲内で、是正をやるとするならばやるべきである。今日ことに行政改革といったような問題が片方にあるわけですね。ともかく行政府自身の経費等も、こういった財政状況ですから国民の負担を考えて軽減すべきでないかといったときに、国会だけが国会議員の数をふやして、それで解決していくというのは、私は、個人としては、とるべき方法ではなかろう、かように考えております。
  30. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 財政再建をやり、あるいは行政改革だと言っているときに、現実もうほとんど議場が五百十一議席でほぼ満杯だというときに、定数増でやってみても、しょせんこれはアンバランスというのは解消できるものじゃないと思いますので、私たち基本的なスタンスはやはりそこになきゃいかぬと思うのでありまして、後藤田議員自民党選挙制度調査会の会長代理で、会長竹下先生もきょういらっしゃいますけれども、私はそれはきわめて重い発言だと受けとめさしていただきたいと思います。  あわせて参議院地方区の定数是正ですね。これは戦後一回もやってないわけであります。私たちも何度かこれはアタックをしたことがあるわけでありますけれども参議院の中でも二院クラブの方なんかは、総定数の枠の中でという話がありましたが、これはなかなか総定数の枠の中でやるというのは、逆にアンバランスができてしまって、なかなかむずかしいということがございますが、いずれにいたしましても一体参議院地方区の定数是正というのは、どういうふうにお取り組みになるのか。私は、この際は、参議院地方区については過去一回もやってないということもありますし、ある程度これは定数増ということも頭に置きながら、早急に地方区の定数是正を図らなければいかぬのではないかと思います。衆議院の場合と参議院地方区の定数の決め方の基本が若干違うということは私もわかっておりますので、時間の関係もございますので、その点は結構でございますが、参議院地方区の定数是正についての取り組む基本的なスケジュールなり姿勢についてお伺いしたいと思います。
  31. 後藤田正晴

    後藤田議員 参議院の場合の開きは一対五・七に五十五年の国調で開いております。ただ参議院は、仰せのように衆議院とは定数問題の考え方が基本的に違っていいんではないのか、こういうことで、参議院地方区の定数を是正をしようという考え方は私自身は持っておりません。ただ、全国区制の改正をやるという場合は、これは大きな制度改正ですから、そういった際に、ふぐあいがあるとするならば直したらどうか。そのふぐあいは何かというならば、これはやはり、いま逆転選挙区ができておりますね、人口の多い県の方が定数がまるきり少ないといったようなこともございますので、そこらは検討をしたらどうであろうか、こう思って、自民党選挙制度調査会の中では主張をしたい、かように考えております。
  32. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうも委員席には大分お目付役がいるものですから、後藤田さんの発言も大変何か慎重になってきておりますが、いずれにしろ確かに、そもそも昭和二十二年に参議院地方区の定数を配分をしたときには、たとえば北海道は面積が大きいからということで八名にしたという経緯も私も知らぬわけではありませんが、しかし議会制度というものが少なくも全国民を代表する議員で構成される以上、やはりまず人口比というものが基本だと思うのであります。その基本が著しく衆議院以上に、五・七三倍になるという大変なアンバランスになっていることについては、やはりこれは早急に是正を図るべき重大な要件だと思うのであります。この点についても、日本議会制度を守る基本の問題でありますから、自民党の中でも積極的にひとつ十分御討議を願いたいと思います。自民党にしてみれば、これからふえるであろうと予想されるところは自民党の議席がふえるところじゃないものですから、それはなかなかやりにくいだろうということはわからぬわけではないですけれども、やはりそれでは日本議会制度は守れないし、政治信頼というものは確立できないと思いますので、大所高所に立った審議というのが私は必要だと思うのであります。  その次に、後藤田議員も若干御説明がありましたけれども自民党全国区の制度改正案、これは先ほど、野党との話もつかなければ、なかなか国会への提出にまでいかぬだろうというお話もございましたけれども、これは大変御無理をなさった案ではないだろうか。新聞の表現によりますと、一本の矢で二つの的を射ようということで無理して、しかも二つの的が表裏になっているのならいいけれども離れているものだから、それを何とかくっつけようとして大変無理をしているという表現を新聞がしておりましたけれども、私は、余りにも無理し過ぎるのではないかと思うのであります。異党派投票が認められましたので、若干は従来の一票制とは変わってきたというものの、私は、どう見てもこれは無理ではないかと思います。簡単で結構でございますから、どういう説得力があって、こういう案になられたのか、若干で結構でございますが、お伺いしておきたいのであります。  まず第一に、憲法四十三条の、要するに国会選挙された議員によって構成をするという条項、正確には「両議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。」ということに四十三条でなっているわけでございますけれども一体、異党派制を認めたというものの、このような方式で、いわゆる比例選挙区議員というのでしょうか、というのが「選擧された議員」ということになるという積極的な見解は、どういうところをお持ちになったのだろうか。  それから選挙区候補に投票せず、どうしても、いわゆる自民党さんの案でいえば昔の全国区に入れたい政党があるんだというときには、自民党さんの方では無効になるというのですね。これはなるべく有権者の方々の御意思を反映をしようということで、たとえば開票でも、紛らわしいものでも大体読めるものについては、これを有効にしようという精神で今日まできたものについて、いわゆる昔の地方区には入れる人はいないけれども全国区には書きたい政党があるというのを、しかし、これは排除してしまう。だめです、これは無効ですという制度が果たして制度として憲法上問題がないのかどうなのか、その点については、どういうふうにお考えになったのか。  それから細かい話になりますが、たとえば地方区が何らかの形で無投票になってしまったというときには、昔の地方区というのは選挙はなくなってしまうわけですね。選挙がなくなってしまって、その場合に、皆さん方の案では地方区に入れた票を全国区に集計するということでありますから、この場合、昔の全国区でありますけれども、こうなりますと地方区に投票しなかったというか、選挙がないわけでありますから全国区に集計できない、こういったものは一体どういうふうにお考になっているのか。  それから無所属の方の取り扱い、確かに全国区でも三名一緒に組めば出れるということになりましたけれども、どうも自民党さんの発想というのは、あくまで無所属の方も基本的には地方区の選挙運動をやって、全国区にも重複立候補ができるんだというシステムになっているわけですね。そうしますと本来、全国区に出たいと言っていた方も地方区で選挙運動をやらなければいかぬという形になるというのは、これは私は制度的に無理ではないか、こういうふうに思うのであります。  それから五番目に、こういった制度を出しますと参議院政党化が進むんだという見解があります。これは私は少し異論があるのでありまして、やはり議会政治政党政治ということで民意の組織をなるべくしやすいようにしていごう。これが衆議院五百十一名が全くばらばらだったら審議も何もできないわけで、政党というのはそれなりの意義があるし、ましてや政党というのは、それに所属する議員が個人個人がかわっても、その政党がかってやったことというのは後の議員まで責任を持たなければいかぬという意味では、政治の連続性からいってみても、きわめて意義があるわけでありまして、無所属の方を排除するわけではないけれども政党化というのは必ずしも私は議会制度の中において矛盾するものではないと思っているわけであります。この点についてどう思っていらっしゃるのか。  以上五点について、簡単で結構でございますので、見解をお伺いしておきたいと思います。
  33. 後藤田正晴

    後藤田議員 大変無理をしたのではないのかという御質問でございますが、無理はしていないのです。大変慎重に検討しまして、そしてこういう結論が一番いいのではないのか、こういうことに落ちついた、かように御理解をしていただきたいと思うわけでございます。  最初選挙せられた議員という憲法四十三条、これには一体どうなんだとおっしゃいますが、これは私は、地方議会の選挙と違って、選挙せられたる議員ということは、間接選挙そのものも否定しておりません。これは昭和二十二年でしたか三年でしたか、当時の金森憲法大臣と言われた方の国会答弁等でもはっきりとしておると思います。そういったようなことでございますので、拘束比例代表制、これによって選挙をしても私は憲法違反といったような問題は絶対にない、かように考えておるわけでございます。  それから、一票制になった経緯はどうだ、こういうことでございますが、新聞等でも一部、自民党の党利党略ではないのか、こういう批判がちらちらあったように思うのですが、絶対そうでございません。参議院プロジェクトチームで検討したのは、やはり二票制から入ったわけでございます。ところが二票制では、いかにもこれはぐあいが悪い。というのは、今度の参議院全国区の改正の考え方の基本は、やはり金のかからぬ選挙ということを大きな眼目にしておるわけでございますが、その点から見て、これは二票制ということになりますと、やはり党としては大変な金がかかるのではないのか、できるだけ金のかからぬ方がよろしい、こういう点が一つ。もう一つは、一つ選挙で、いわゆる政党選挙比例代表制による選挙個人選挙と二つが同時に行われる、これは選挙運動の上では大変混乱を来すのではないのかということ。それから、いま一つ選挙運動の面を考えますと、二票制ということの場合に、やはり無所属というものの立候補があるわけでございますが、無所属で一人一党の形で出た方が、名簿で立候補している人よりは運動上大変有利になる。無所属の人が余りにも有利過ぎるような選挙になりはせぬかといったようなこと。こういった三つの議論から、これはやはり二票制というのには大変な問題があるぞということで、だんだん論議を詰めていった上で一票制がいいのではないのかということに落ちついたわけでございます。  さて一票制ということになった場合に、やはり出てきた問題は憲法上のいろいろな疑義がございます。私は、ちっとも憲法上疑義があると思っていないのですよ、私個人は。しかし、世間にはそういう議論がある。ならば、そういう議論の出る余地は、できるだけ防いだ方がいいではないか。その際に立候補の面からする憲法違反の疑いがあるという一つの考え方が一方にある。もう一つは、投票する者の立場から見て、投票権が侵されるといったような面がありはせぬのかという、この二つありますが、その際に、われわれとしては両方とも、そんな議論は防いだ方がいいのですけれども、やはり重点を置くのは、選挙人の立場に立って、いろいろな議論が出るのは防いだ方がいいのではないか、こういったようなことで議論をして、さて一票制ということになった場合に問題になったのが異党派問題でございます。  西ドイツ等であれば、これは異党派というのは一%か二%しかありません。しかも、あそこは政党法がございます、そういったような場合には。日本の場合は異党派が何ぼあるかわかりませんね。後藤田さんは友人だから地方区では入れる、だけれども全国区は、自民党はけしからぬから、ひとつ社会党に入れよう、これは相当あると思います。それを認めぬということになりますと、投票人の投票の意思を抑えるということになるのは、いささか問題があろうということで、異党派はひとつ認めて疑義を解消しよう、こういうことになったわけです。  ところが、今度は立候補をする人の自由を侵しはせぬか、つまり地方区に立候補しないと全国区に立候補できませんからね。その点は、三名で一つの団体をつくれば、それで認めることができるわけですから、ならば、この制度は、それをしも憲法違反というほどの瑕疵があるということではなかろうというようなことで、その点は防いでいこうということです。つまり無所属の扱いというものが、政党法がありません。西ドイツのように五%条項というものがありますと、これはもう、しゃっといっちゃうのですけれども、それがありませんので、無所属の扱いだけがいずれにしても問題だなということで、ただいま申したように異党派は認めるが、立候補の方の面については、これは三名組んでもらうといったようなことで打開をしていこう、かように考えたわけです。  それから政党化が進むという問題、これはおかしいじゃないかという議論もある。それはあるのです、実際は。しかし、それは私は佐藤さんと同意見です。こんなことを余り気を使う必要はない。それよりは先ほど申したように参議院全国区に日本英知を集めるといった方が、二院制度のもとにおいてあるべき姿であろう、かように考えるわけでございます。  あと何かあったかと思いますが……(「地方区が無投票の場合」と呼ぶ者あり)無投票ということは選挙人が意思を表明しておりませんから、それは計算にしないという考え方でございます。
  34. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これについても少し議論をしたいのでありますが、時間の関係もありますし、先ほど言われましたように、ある程度、野党の了解が得られないことには前へ進まぬようでありますので、この点でやめておきます。  ちょうど二月の八日だと思いますが日経新聞が、いま申しましたような六つばかりの若干の疑問を呈して、こんなふうに書いてあるのです。「どんな制度にもプラスとマイナスの両面がある。小委員会案に多くの欠点があるために、制度改正への動きは最初から障害にぶつかっている感があるが、結論的にいうならば、自民党案をたたき台にして、よりいい案作成に向かうことが望ましい。その場合、一つの案として考えられるのは、一票制を原則とせず、いままで通り二票制とする。ただし、全国区に関しては小委員会案通り拘束名簿式にして、選挙民個人に投票せず名簿に投票すること。その場合、選挙運動全国区では政党を中心とすることで、良識ある人材に道を開く案が考えられていい。」こういうことを日経の社説で書いてあるのがありますが、いわばこれは、社会党の正式案にはなっておりませんけれども、私が従来かねてから言っていた案になっているわけでありまして、自民党も余り一票制というのを中心にして物を考えると、非常に無理をしなければならぬことになりますので、この点についても後からゆっくり議論をさしていただきたいと思います。  最後に——最後にというのは、本法律案に直接は関係しないテーマとして最後に、先ほど触れました地方選挙の公営化の問題なんであります。  お互いに議員で、国会議員ばかりやってということになっていると思いますので、ひとつここで提案をしたいのでありますけれども、たとえば地方選挙でも今度ポスターの掲示場については、いろいろ議論はあると思いますけれども、公営化というのは非常に進むように思います。それはいいんですが、たとえば立会演説会、これも衆議院段階、国会議員段階でもいろいろ議論があります。昼間やって、一体だれが来れるのだというような議論もありますが、やはり公営化を進めるという原則からいくならば、なかなかやめるわけにはいかぬし、ましてや地方も立会演説会等も進めるべきだし、選挙公報を出しているところもありますけれども、やはり選挙公報もさらに進める必要があるのじゃないだろうかと思うのであります。  それから、このごろ町村会の方も衆議院並みに自動車を使うわけでありますので、選挙は四年に一遍、地方自治を支えるきわめて重要な課題でありますから、選挙運動用の自動車なりポスターなり、こういったものの交付税、地方交付税の算定基準の中に入れるということになると思うのでありますが、こういったことはやはり考えていくべきだと私は思うのであります。  それから国会選挙にできておりますような選挙運動用のビラとか通常はがきの郵送料、新聞広告、こういったようなものについても、やはり公営化というのは考えていくことが、お金がなくても、まじめな者は選挙に出られるという、そういった政治風土をつくっていくことになると思うのであります。ただ、いずれにしろ税金を使うわけでありますから、単なるひやかしに出るようなことは極力抑えなければならぬので、供託物が国庫に納付されるような場合には、これはだめですよということは厳しくしなければならぬと思いますけれども、いま申しましたような衆議院、参議院選挙でやっているような公営化について、地方選挙についても十分考えてあげるべきではないか、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  35. 片岡清一

    片岡議員 おっしゃるとおり、国会議員のみならず地方の議員にも選挙の公営化をやるべきだという御意見は、一つの大きなポイントであると思います。  ただしかし選挙が年じゅうある。地方選挙を加えますと、あれは竹下先生がよく御存じなんですが、私はちょっと数を間違えるかもしれませんが、三千回か四千回あるということでございます。そうしますと、これに要する費用を全部、各地方の選挙でございますから原則的には、やはりそれぞれの地方団体が負担すべきものだとは存じますが、しかしこれは、いまお話しのように地方交付税なりに加えて出すということになると、これはやはりばかにならない相当の額になると存ずるのでございます。  それから、いま、ちょっとおっしゃいました立会演説、市町村会議員の立会演説というようなことは適当であるかどうか、私はかなり問題だと思います。われわれ国会議員の立会演説についても、あれはもう余り効果がなかった、最初は非常にたくさん聞きに来ていただいたのだが、このごろはだんだん入りが悪くなったということが言われております。そういうことで、そういう地方議員の立会演説までやることが適当であるか、これはかなりいろいろ検討すべき問題があるかと存じます。  その他はがき、あるいはポスター等を公営にするというようなことについても、いま地方の赤字財政ということを考えますと、いろいろの問題を含んでおると思いますが、これもひとつ、これは党というよりも、選挙の共通土俵をどう決めるかという問題でございますので、今後十分各党と御相談をして、だんだん決めていくべき問題ではないか、こう思っております。われわれ自民党においても十分検討して、結論の出るものについては結論を出したい、こう思っております。
  36. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと私の説明も足りなかったのでありますが、県会議員の場合には、ある程度人数が大体選挙区ごとに限られておりますから、これは立会やろうと思えばできると思うのでありますが、市町村会議員ですね、これはちょっと無理だと思うのです。その点、私説明が足りなかったので、それは考えていないわけでありますが、たとえば首長選挙なんかは、むしろやった方がいいと思うのです。こういったことも含め、確かに私も大蔵委員会におりますので財政の状況わからぬわけではありませんが、ただ、個々で割ってみれば四年に一回なわけですね。確かに全国レベルでやってみれば大体毎年千件ぐらい選挙があると言われておりますが、一つの市町村にとってみれば、これは四年に一遍なわけでございまして、そういった意味で、地方の時代それの一つを支えるのは地方議員でございますから、そういった意味では十分やはりわれわれも留意していかなければいかぬのじゃないだろうか。国会議員ばかり選挙の公営化をやって、地方議員はどうなんだと言われますと、われわれもぐうの音が出ないというところでございますのでその点は十分考えていただきたいと思うのであります。  さて、本法案に直接出てくる問題に移りたいと思うのでありますが、後援団体の立て札、看板、それから「公職の候補者等の氏名等又は後援団体の名称を表示するポスター」いわゆるステッカーと略させていただきたいと思いますが、立て札、看板についてはいわば総量規制、そしてステッカーについては全面禁止、こういうことになっているわけでありますけれども一体立て札、看板というもの、それからいわゆるステッカーというもの、これは提案者の方では政治活動という範疇で、立て札、看板なわステッカーというものを考えられたのか、あるいはこれは選挙活動の事前運動なんだというふうに考えられて規制というのを考えられたのか。これによって、いろいろと見解が分かれてくると思うのでございます。その点についてはいかがでございますか。
  37. 片岡清一

    片岡議員 これは確かに、いまおっしゃった両方の意味を含んでおると思います。そのポスター、立て看板等が平素から目に余るように、あちらこちらにもあるということになりますと、これは事前運動に紛らわしいものになるということにもなりますし、また一面、非常に地方の美観を損ねる、余りいい感じを選挙民の方々に与えない、地方民の方々に与えないという点も考慮せられなければならぬと思います。とにかく余りにもポスターあるいはステッカーあたりが所きらわずべたべた張られるということになりまして、張られる人も迷惑するし、大変美観を損ねるというような点もございます。両方を考えながら、規制に踏み切ったらどうかという意見に従って、やったわけでございます。
  38. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 なぜこういうことをお伺いするかといいますと、わが党では基本的に、公選法という法律があるのは、一定のルールの中で選挙をやりなさいというため公選法というのがあるわけで、そこでは金のかからないように、あるいは選挙の公正を期するためにということで、選挙運動というのは、ある程度一定の範囲内でやるべきだというふうに考えているわけであります。政治活動というのは、基本的には選挙以外のときでも選挙中でも自由であるべきである、基本的にはですよ。これだって一定のルールは当然設けなければいかぬと思いますが、基本的には、私たちは自由だと思っているわけであります。  いま片岡議員の御説明ですと、どうも両方だと言われるのでありますけれども一体それならば憲法で保障された表現の自由なり政治活動の自由というものについて、これらの規制というのは抵触をしてこないのか。抵触をしないという積極的な根拠、理由、これがあるだろうか。それをお答えいただくためには立て札、看板なりステッカーというものは一体どういう性格として基本的に法律上とらえ、そういう性格のものの規制だということを、ひとつ御説明いただかないと、われわれも賛否の問題を含めて非常に困りますので、再度御答弁いただきたいと思います。
  39. 後藤田正晴

    後藤田議員 いま片岡さんが両方の意味があるとおっしゃったのは、現実をとらえての御議論だろうと思います。理論的に申しまするならば、政治活動は自由にやるべきである。後援会活動も純粋の政治活動であるならば、これは自由にやってしかるべきである。ただ問題は、現実を見ますと、そうではないじゃないか。これは文字どおり選挙の売り込み運動ではないのかといったようなのが実態ですね。そこで昭和五十年の改正の際に、種類によって立て札、看板等の制限の数を決めたわけですね。  ところが、そのときの決め方が一後援会について何ぼ、こう決めたものですから、そこで最近の実態は、まことに残念ながら後援会の数をふやすことによって、ともかくむやみやたらに立て札、看板の類が出てきた。同時にまた、もう一つ出てきたのは、立て札、看板ということになると、大体木製のものとか、あるいはプラスチックであるということになるわけですね。ところが、このごろ紙が大変りっぱなものができ出したということで、いわゆるポスターといいますか、ステッカーといいますか、これが軒並みに出てきた。これは純粋の政治運動とは見られぬではないか。ならば、こういったことに余りにも金をかけ過ぎるといったようなことも、これは政治に金がかかり過ぎるといいますか、選挙に金がかかり過ぎるといいますか、やはりここらで規制を考えてしかるべきではないのか、かように考えて今回の御提案を申し上げた。  もう一つの御質問の憲法上の表現の自由、これとの関係はどうか、こういうことでございますが、これは選挙法自体がそうじゃないか。およそ選挙というものは——あんなこんなやかましい規制ばかりかけた選挙法というのは日本だけじゃないですか。本当に規制が多過ぎる。だから本来は私は、こんなものなくてしかるべきと思いまするけれども、これも長い過去の歴史的な沿革、さらには日本選挙の実態、こういうようなものから見て、公共福祉の観点、何といっても正しい民意が選挙に表明せられるということを考えるならば、本来自由ではあるけれども、現状を踏まえた上で公共福祉の観点から、これを抑えるということも、これは当然あってしかるべきであろう、こういうようなことで、今回も立て札、看板、ポスター、ステッカー等について規制を加えるのはやむを得なかろう、こういうことで御提案を申し上げたわけでございます。
  40. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 提案者の見解が、立て札、看板、ステッカーについて、片岡議員の方は、どうも聞いてみますと、政治活動と選挙運動と、ほぼ両方の意味を持っているんじゃないか。いま後藤田議員説明ですと、事実上選挙運動の一種だ、売らんがための行為であるということで、どうも提案者の方の御意見が違うのは非常に困るんですね。  そのことはそれでおきましても、それならば後藤田議員説をとれば、選挙運動の事前活動だというならば、何も法律を直さなくても、事前運動はできないという項目があるわけでありますから、常時これは事前運動ということになれば、法律改正を必要としないで、その範疇でこれはできるのではないか。ただ、立て札、看板については、あらかじめ枚数が書いてございますからこれは違うけれども、ステッカーについては、それも選挙運動の事前活動だ、事前運動だというのだったら、現行法上、法律を直さなくてもこれはできるんじゃないか。ただ事前運動という場合には期間がございますから、その点があると思いますが、その点、選挙部長どうですか。
  41. 大林勝臣

    大林政府委員 事前運動になるかならないかの認定というのは、いつも非常にむずかしいわけでありますけれども佐藤委員承知のように、現在、現行法で定められております立て札、看板の規制、これが昭和五十年に成立しておりますけれども、その時点で、すでにそういう御議論も実はあったわけであります。本来ならば政治活動というのは自由である。しかし自由であるけれども、売名のためだけ、つまり事前運動と紛らわしいものが非常に多々存在する。ところが一つ一つのケースが果たして事前運動に該当するかどうかということにつきましては、御承知のような時期の問題であるとか、あるいは枚数の問題であるとか、いろいろな要素を加えて判断をせざるを得ない。それよりも、むしろ政治活動の一態様といたしましてルールをつくって、そのルールに基づいてやっていただくのが一番いいのではないかということで、立て札、看板の規制ということになったわけでありますけれども、五十年改正の際には立て札、看板だけを規制すると同時に、立て札、看板に類するようなポスターの裏打ち、裏打ちポスターというものも物体的には立て札、看板と余り違わぬのではないかということで、あわせて裏打ちポスターも規制した。  そういたしますと結局、当時規制がされなかったのが、いわゆる単なるポスターということになるわけでありまして、立て札、看板が規制をされる、裏打ちポスターも規制をされるということであれば、今度はひとつポスターをたくさんつくろうということに恐らくなってきたのだろうと思います。これがいわゆるステッカー型のポスターと言われるものであろうと思いますが、これが非常にはんらんをしたということで今回のルール改正ということに立ち至ったのであろうと考えております。  いずれにいたしましても立て札、看板にしろ、そういったポスターにいたしましても、本来は、それは政治活動という部面を重視する必要はございましょうけれども、常時の政治活動につきましてもやはり一定のルール、秩序というものが必要ではないかというのが趣旨であろうとそんたくをしております。
  42. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまの選挙部長お話を聞いていますと、要するに問題は、時期的には、いわゆるステッカーというのにしても、立て札、看板についても選挙以外のときにも張られているわけですね。そのときの政治活動にも一定のルールがあるということは問題だと思うのですね。これは公序良俗に反しない範囲で政治活動をやるのなら当然政治活動の自由はあってしかるべきだと私は思う。選挙運動あるいは事前運動でないときまで政治活動に一定のルールを設けようという見解は、政治活動の自由を侵す発言だと私は思うのです。だから後藤田議員の言われるように選挙の事前活動である、また、いま部長から言われたように、いわゆる紛らわしい行為であるという範疇で物をとらえれば、これは一つの物の考え方として一貫しますけれども政治活動にも、しかも選挙中あるいは事前運動期間でないときまで、張ってある立て札、看板についてまで政治活動に一定のルールを設けるなどという話は、政治活動の規制につながってくる話だと私は思うのですね。そういうことになりませんか。
  43. 大林勝臣

    大林政府委員 政治活動というのは本来自由であるべきはずであります。ただ、政治活動であるのか、あるいは事前運動であるのか、そういうものが非常に判定がしにくいのも、またこれは現実であります。同時に現在、選挙に非常に金がかかると申しましても、いわゆる選挙運動期間中にかかる金と常時ふだんにかかる金というものがあるわけでありますが、ほとんどは常時ふだんからの政治活動に非常に金がかかっておる。そういうことの反省の上に立って、立て札、看板の規制というものが昭和五十年に行われたわけであります。もちろん政治活動であれば、それはもう何でもよろしい、自由にやればいいのでありますということであれば、いいのでありますけれども、同時に、政治活動と申しましても、どうしても選挙というものを遠くに見まして、それに関連をして行われるのがこれまた常態であろうと思います。そういうことから事前運動との限界というものが非常にむずかしいわけでありまして、そういったいろいろなむずかしさ、あるいは金のかかる問題といったものを一つのルールによって解決しようというのが現行法の趣旨であり、また今回の改正の反省ということであろうと思います。
  44. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまのような説明ならば、確かに政治活動的部分もないわけではないけれども、きわめて事前運動として紛らわしい行為である。したがって、それはやめるというのなら趣旨は一貫するわけで、それならばそれで理解ができるわけであります。  あわせてお伺いしていきたいのは、ここに「後援団体が政治活動のために使用する事務所において掲示することができる立札及び看板の類の数は、」ということになっているわけでありますが、ここに示されているこの表現は、たとえばシンボルマークのステッカーあるいはシンボルカラーというのでしょうか、あるいは候補者の似顔絵といったものは、この表現の中に入るのですか入らないのですか。
  45. 片岡清一

    片岡議員 この看板、ステッカーの規制は、候補者の氏名の掲示それから連絡所、後援会の場所の表示あるいはまた、その後援会に入っているという会員の証といったようなものを指摘して規制しようとしておるのでございますので、物によりましょうけれども、いまのようなシンボルマークだけでありますとか、そういうものについては現行法の立場で規制を考えていくべきもので、私は今度の規制には直接関係しないというふうに考えております。
  46. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと理解できないのですが、いまのシンボルマークとかシンボルカラー等のものは現行法のどこで規制できるのですか。
  47. 片岡清一

    片岡議員 私がいま申しましたそれ自体は現行法では規制はないわけですが、そういうのは今度の規制の範囲内になるかならないか、これはケース・バイ・ケースで考えなければならぬというふうに思っております。
  48. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それではちょっと困るのですね。たとえば直に私の顔写真を入れたステッカー、それは連絡所も私の名前も会員証という名称も何も使っていない、後援会の名前も使っていない、私の顔写真だけ入れて張る、そんなみっともないことは私自身はやりませんけれども、あるいは私の似顔絵を線画でかいてもらって、それをきれいな色をつけて張るとか、あるいはシンボルマーク、シンボルカラーというのは、どのくらい意味があるかわかりませんが、それは今度の規制の中には入らないのですね。
  49. 大林勝臣

    大林政府委員 いま例に挙げられましたような顔写真だけ、あるいはシンボルマークだけといったポスターについては、現行制度上それ自体をとらえた規定は、もちろん御承知のように、ございませんけれども、そういった顔写真であるとか名前だけであるとか、あるいはシンボルマークだけを表示するポスターということになりますと、一体それが事前運動に該当するのであろうかという話になってまいるわけでありまして、従来の裁判例においても、そういうポスターについては、個々具体的には違いましょうけれども一体それは何のために張ったのだという話になりますと、非常に事前運動臭いということになって事件になった例も間々ございます。今回の改正において、そういったものがどうなるかという問題については、先ほど片岡議員の方からお話がございましたように、やはり個別的な判定ということになろうかと存じます。
  50. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうすると、シンボルカラーが事前運動だと言われて裁判になった例があるかどうか。それからシンボルマークが裁判なんかになった例があるのでしょうか。私は、あくまでステッカーというのはポスター類でありますから、演説会をやるという表示も何もなしに、顔写真だけ張っておくというのは、やはり事前運動のあれの中に入るかなと思うわけであります。似顔絵も余り似ているものは顔写真とある意味では同じであって、ポスターでも事前運動期間になれば、日時、場所等が書いてない、ただ張ってあるのは売名行為ということで事前運動となるだろう。ただ、事前運動期間前はそういうことにならぬと思うんですね。ですから現行法でも、具体的にそんなことで裁判になったものがあるのか、もう少し説明してください。
  51. 大林勝臣

    大林政府委員 裁判例になったと申しますのは、顔写真であるとか、あるいは名前だけ、そういったポスターが従来、裁判例になったわけでありまして、確かにシンボルマークであるとか、あるいはシンボルカラーであるとか、そういうポスターについてだけが裁判例になった例はございません。ございませんが、そういったシンボルカラーは別といたしまして、シンボルマークにつきましても従来いろいろ御議論がございまして、現在の法律の上では、いわゆる選挙期間中にそういうポスターを張るとか、あるいは選挙期間中の政党活動としてシンボルマークを使うということについては一定の規制が設けられておる段階でございます。まだシンボルマークであるとかシンボルカラーにつきましての裁判例というのは聞いてはおりません。
  52. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかし、この法律上の文面は、たとえばステッカーについては「公職の候補者等の氏名等又は後援団体の名称を表示するポスター」ですね。「名称」ということが入っているわけですね。色やマークというのは、幾ら法律用語であっても「名称」と言わないと思うんですね。顔写真なり、あるいは似顔絵というのはポスター類でありますから事前運動ということはわかるけれども、いわゆるステッカーの中に「名称を表示する」とある以上、名称というのは漢字であろうとひらがなであろうと具体的な文字で書かれているものが名称であって、シンボルマークなりシンボルカラーまでが、この法律で言うところの規制の対象になるというのは、これは法律解釈上少しむずかしいんじゃないでしょうか。もう一回はっきりしてもらわないと、われわれも、やる立場から、顔写真はだめならだめ、だめな根拠、似顔絵はだめな根拠、シンボルカラー、シンボルマークは、どうしてこの法律でだめなのか、事前運動という範疇に入ってだめなのか、その点ひとつ、時間がありませんから先へ進ませていただきますけれども、本審議が終わるまでに統一的な見解、そして説得力のある根拠を示していただきたいと思うのであります。  もう一つ、立て札、看板については、後藤田議員の御説明がありましたように、とりわけまた北海道では大変な本数が立って、一本三万円、十万円というものが野っ原にぼんぼん立っているようで大変なことだと思いますし、金のかからない選挙という意味から、これは私、実態はわからぬわけではないのでありますが、ここで言ういわゆる総量規制「同一の公職の候補者等に係る後援団体のすべてを通じて政令で定める総数の範囲内」というのは一体どのくらいを考え、それから、たとえば市町村の選挙区でも五名区ならば市町村も大きいし、それから面積が大変大きい選挙区もありますから、その点についてはどういうことを考えて、その本数を政令で決めようとしていらっしゃるのか。
  53. 片岡清一

    片岡議員 今回の規制は、ここに書いてありますように「候補者等の氏名等又は後援団体の名称を表示するポスターで、当該公職の候補者等若しくは後援団体の政治活動のために使用する事務所若しくは連絡所を表示し又は後援団体の構成員であることを表示するためのもの」これを規制の対象にいたしておるのでありまして、単なる似顔絵、シンボルマーク、シンボルカラーといったようなものは、これは先ほどから選挙部長が答弁しておりますように、それ自体、時期、場所あるいはいろいろの点から、それが現行法上認められていないものであるという場合には、これが事前運動になるかならぬかということは大変微妙な問題で、その都度その状況によって判断せられなければならぬ、こういうふうに私は理解しております。  総枠は政令で指定いたしますので、これは幾らにしますか、それは、それぞれの段階の選挙によっても違うと思います。したがいまして、これは各党皆様方と十分連絡をしながら、その数を決めて具体的なものにしていきたい、こう考えております。
  54. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私がお伺いしたかったのは、いわば本数の決め方の基本的な基準みたいなものをどう考えるかなんで、それはこの審議の終わるまでに、私の審議という意味でなくて全体の審議が終わるまでに、ひとつ詰めたいと思うのであります。  それから、いま片岡議員の前半の御説明で、微妙な時期によっては、現行法律の中ではというような話では、一体つくっていいのか悪いのかよくわからぬわけです。提案者なんですから、そういう趣旨は一体どういうふうに考えてなさったのか、でないとわからぬわけでありまして、それなら私もシンボルマークのステッカーをつくろうかと思っているので、法律に違反する規制の範囲内だったらやめなければいけないが、後援会の名称を表示するポスターですからね。名称ですから、それにはならぬと思いますから、それについては時間がありませんので、本法案審議が終わるまでに、ひとつ統一見解を出してもらいたいと思う。  それから次に、二百一条関係のところに行きたいと思うのでありますが、法律用語でいきますと大変めんどうくさくなるので一般用語で言ういわゆる政党機関紙の拡販車、これは従来許されていたわけです。従来政連カーというものがあるけれども、政連カーは、確認団体が「政策の普及宣伝及び演説の告知のため」に使用する自動車ということで、そういう範疇に入っていたわけでありますが、いわゆる拡販車は、この「政策の普及宣伝及び演説の告知」と違う範疇だから許されていたと思うのです。いわゆる拡販車は、それではどういう範疇の車として今日まで許されていたのですか。
  55. 片岡清一

    片岡議員 法律最初に決められた当時においては機関紙誌の拡販車というものは余り問題にならなくて、これはそれぞれの機関紙誌の宣伝のために使う、こういうようなことでやっておったのでございますが、それがだんだん、その範囲が広くなってまいりまして、そして政治運動あるいは選挙運動の中へ逐次入り込んできて、紛らわしい状況になったものですから、そこで拡販車はこのたび、これが騒音公害等にもなるというような選挙民の方々からの批判もあり、そしてまた、まことに紛らわしいふうに使用せられるという状況がだんだん出てまいりましたので、この際これを制限しよう、禁止しようということになったわけでございます。これは、政党、確認団体が使っておる台数のものもその中へ、まあそれ以外のものはこれを禁止する、制限する、こういうふうにいたしたわけであります。
  56. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまの御答弁を聞いていますと、一つの理由としては選挙公害だという問題と、もう一つは従来の趣旨と反して選挙活動になってきた、こういうことですか。
  57. 片岡清一

    片岡議員 その点は大変微妙でありますので、ひとつ正確に申します。  政党の機関紙誌の宣伝車の使用については、通常の意味における政治活動であると考えているが、現行法の二百一条の五以下で規制せられている政治活動は選挙運動と紛らわしい一定の政治活動に限られているところから、かかる宣伝車が規制の対象となる政治活動用自動車に該当するかどうかについては、このような宣伝車が出回り始めた当時からすでに論議があったところであります。当時、関係当局とも意見調整が行われた結果、法二百一条の五以下によって規制される政治活動は、これを放任すると選挙運動の各種制限規定の効果に影響を及ぼす行為のみに限定せられると解するのが相当であること、したがって、機関紙誌の宣伝のみをもっぱらにする車については、規制対象となる自動車とまで解することは、明文で明らかでない以上困難であるという結論に達したと承知しております。  その後、宣伝車の使用実態も変化し、機関紙誌の宣伝に名をかりて候補者名を連呼したり、あるいは政策の普及宣伝そのものをすることがむしろ常態となってきたことから、今回改めて明文で規制しようとしたものであります。
  58. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、いまの御説明、後でもう一回コピーしていただきたいと思うのでありますけれども、いわゆる拡販車というのは選挙活動と紛らわしくなってきた。したがって、この二百一条の政連カーとの性格が違ってきた。いわゆる候補者カーと拡販車というものが同一的な役割りを実態上してきたではないか。ですから、これは候補者カーがあるから拡販車の方は規制しよう、こういう意味ですか。
  59. 片岡清一

    片岡議員 私は大体そういうふうに思うのですが、法律上の非常に厳密な言葉遣い、どうも私よくあれですから、選挙部長にその点答弁してもらいます。
  60. 大林勝臣

    大林政府委員 いわゆる機関紙宣伝車、拡販車と称する車が出ましたのが、私の記憶では大体昭和四十年代に入ってからというふうに記憶いたしております。当時、二百一条の五以下で選挙期間中の確認団体の自動車の台数というのは候補者数によって全部決められておるわけでありますけれども、その台数以外に、そういった拡販車が相当出たということについて、これを二百一条の五以下の条文上の解釈をどう考えるかという問題が一つあったわけであります。  確かに、政治活動というものの中には機関紙の宣伝行為も抽象的には当然入るという議論と、それは入るけれども、しかし二百一条の五以下の趣旨というのは、政党政治活動というのは本来自由なのだから、できるだけ自由にすべきであるけれども、非常に選挙運動と紛らわしい部門が多い。そういった選挙運動と紛らわしい部門については、これを規制するというのが確認団体制度の趣旨であろう。そういう趣旨から申しますと、単に機関紙の宣伝のみをもっぱらにするということであれば、特にそこまで二百一条の五以下に含めて考える必要はないであろうという意見と、いろいろあったわけでありますが、結局は法律の趣旨から考えまして、そこまで政治活動ということの中にぎりぎり含めて取り締まりの対象とするというのはいかがであろうかというので、実は、そのままになっておったわけであります。  当初は確かに機関紙の宣伝行為だけに終わっておったわけでありますが、その宣伝行為の中で、年がたつうちに、この機関紙にはだれだれさんの記事が載っておりますとかいうふうに、だんだんエスカレートしていく。さらにまた年がたちますと、今度は機関紙の宣伝ということ以外に、まさに選挙運動の連呼行為そのものが行われるというのが、また実態になってまいったわけであります。  そういう実態を踏まえられて、過去数回の本委員会におかれましても、いろいろ委員さんから機関紙宣伝車の問題というのが議論になっておりました。そういった議論の過程を踏まえて今回の改正になったものと承っております。
  61. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ここで皆さん方、騒音公害を言われる。あるいは提案理由説明の冒頭に「選挙の公正」を期するということが書かれているわけでありますけれども、少なくも法案提案をし、国民の皆さんの納得を得る限りは、一体どういう実態で選挙の公正が害されているのか、騒音公害がどういうことになっているのか、あるいは、どのくらいこういった車が出ているのか、こういったことの具体的な提示がないことには、ここで言うところの「選挙の公正を確保」するとか、「金のかからない選挙の実現」だとかいうことの説得力がないと思うんですね。一体提案者の側では、どういうことが選挙の公正を害するというような、いわば物的証拠というのはあって御提案なさっているのか。私もちょっとまだ正確に調べておりませんけれども、いわゆる拡販車で候補者名を言って逮捕されたという話も聞いているのでありますが、一体どういう現状になっているか、それは単なる言葉で言うだけではなくて、国民の皆様に、いやこんなに台数が出ています、これはもう選挙の公正を非常に害しますという積極的な説明がないことには、なかなか理解を得ることはむずかしい。  ましてや、いまお話がありましたように、これ自体は、拡販車自体は、本来から言うならば私は政治活動ではなくて、むしろ商業活動だと思っているのであります。なぜならば、恐らく政治活動ならば、選挙中に何台出たかという、いわゆる道路交通法上じゃない何らかの規制が本来あってしかるべきでありますけれども、これはないはずであります。いわゆる確認団体の機関紙誌の販売、宣伝のためでありますから、これは商業車なんですね。商業車でマイクを使っていいという自動車の構造改善の許可を地元の警察に必要とするというたぐいのものでありますから、そういったことになりますと、選挙中は政党の商業活動まで規制をするという、こういう法的根拠になってくるんですね。そういった意味では、かつてない法律の規制でありますから、それを納得してもらうためには、まさに選挙法上、いま選挙部長から話があったように非常に紛らわしい実態とはどういう実態なのか、どのくらい出ているのか、どのくらい騒音公害になっているのかを、やはり具体的な提示がないことには、私は納得できないと思うのであります。その点についてお伺いしたいと思います。
  62. 片岡清一

    片岡議員 ただいまのお尋ねの、どこで何台ぐらい、そういうものが使われて、どういう騒音公害の実態があったのかという何か調査があるのかとおっしゃられますと、これはおっしゃるように純商業的な立場から使われる場合もございますし、実際選挙運動の場において、どういうふうに使われておるかということについての統計といいますか、そういう調査はまだないようでございます。警察の方へ聞きましても、どうもはっきりわかりません。そういう統計はございません。しかし、各市町村の選挙管理委員会あるいは府県の選挙管理委員会からは、いろいろ選挙法について改正すべき点の意見聴取をして、その意見が出されておるのが自治省に集まっておるようでございます。その中には、そういうことが指摘せられて、非常に住民の方々が迷惑をしておるということが言われており、また、われわれ政党の同僚の皆さん、他の政党の同僚の皆さん方からも、そういうことが非常に強く訴えられて御意見がございますので、やはりこういうときに、そういう大方の世論、意見に従って、ぜひこれをひとつ取り入れるべきだ、私はこういうふうに考えた次第であります。
  63. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと敷衍をしてお伺いをしておきたいのでありますが、この規制では、たとえば経済団体、文化団体あるいは労働団体、私もたとえば尾張中小企業協会という節税団体の会長をやっておるわけでありますが、こういった税金の申告の指導等をやっているわけであります。そういう団体が、たまたま選挙期間とそういった納税時期が一緒になったということで、大変これからも大増税の時代でありますので、そういった会員の皆さん及びそれを取り巻くいろいろな方に、ひとつ候補者とは言いませんけれども私が、税金これからの大増税に対して、どういうふうにしたらいいかというような、そういったテーマで講演をしますから皆さん来てくださいと言って、その節税団体なり経済団体がふれをして回る、これはこの規制の中に入らぬのでしょうな。「政治活動を行う団体」とはなっておりますけれども、本来、経済団体が経済的目的で行う講演で、私が講師で行くというふれを回す。従来経済活動の一端でございますから、その中でやるということですから、これはこの範疇には当然入らない。文化団体で、私が文芸春秋にいた時代の話をしてくれというのでしに行く。みんな来てもらいたいというので、その団体が自動車でふれ回る。たとえこれは選挙中であっても従来の活動の延長でございますから、これはこの規制の中に当然入らない、こういうことですね。
  64. 片岡清一

    片岡議員 いわゆる政治活動をする団体でない場合、政治活動をする場合に、それを使うという場合ならば、問題は、非常にこれに該当する場合が出てくると思いますが、純商業的な活動をする、それから直接政治関係しない、そういう活動をする場合、たとえば輸送に使うとか、積極的に政治活動をするという意思がそこへあらわれていないという場合であるならば、それは該当しないというふうに感ずるし、また政治活動しない、たとえば候補者を推薦しておっても、政治活動をする段階でない場合に純経済的に使われる、そういう自動車は、もちろんこの規制の中に入らない、かように考えております。
  65. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そういった団体の自動車を輸送に使う話は、いま関係ないのですね。輸送じゃなくて、要するにアンプをつけて拡声機をつけて、私なら私が講演に来ますから、ひとつ皆さん寄ってくださいというものである。その話の範疇ですから、輸送の話までしますと、また話がややこしくなるので、それはちょっとどけておいてもらって、要するに、もっと端的にお伺いをすれば、節税団体が、長いこと大蔵委員会におりました佐藤観樹氏を呼びまして、そして講演をいたします、どうぞ皆さん来てくださいと言って、そういった経済団体、税金団体、節税団体等がたまたま衆議院議員である私を呼んで、税金の問題、これから大増税に向かって、どういうふうに対処したらいいかというような問題を聞くというのは、これは政治活動ではないですね。これは純然たる経済活動でしょう、たとえそれが選挙中行われたって。そう理解してよろしいですね。
  66. 片岡清一

    片岡議員 純粋に考えて政治活動でない場合には問題はないと思います。
  67. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま私が具体的に挙げた例は、純粋に考えて政治活動なんですか。政治活動じゃないのでしょう。
  68. 片岡清一

    片岡議員 あなたのいまおっしゃった段階では政治活動ではない、純経済。政治活動以外のものである、こういうふうに考えられると思います。
  69. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それは確かに講師になった私が、いま選挙中に限っての話でありますから、あたかも候補者カーと見間違えるほど、しゃべって行けば、選挙運動と見間違うようなものになれば、これはこの法律の成立後だとすれば、その範疇に入るでしょうけれども、しかし、たとえば文化団体が車を出して、私が文化的な話をするのでということで、ふれを回す。ですから、いわばそこには方法論ももちろんありますし、選挙運動と見間違うような話ならば話は別でありますけれども、純然たる講演会をやるために人の呼び集めをする、告知をするという行為、それがたまたま講師が選挙中であり、衆議院議員だった、あるいは候補者だったというだけであって、目的その他は純然たる文化活動であり経済活動である、そういったたぐいのものならば、これはたとえばこの規制ができたとしても、この範疇ではない、こういうふうに理解してよろしいですね。
  70. 後藤田正晴

    後藤田議員 政治資金規正法であれば「政党」それから「政治団体」こう書いてありますね。ところが、この二百一条というのは「政党」及び「政治活動を行う団体」ということで、そこが違うわけです。それが広いわけですね。したがって、仮に御質問のような団体が純粋に文化団体である、そしてそのことをいろいろなことで周知せられるというのであれば入りません。しかしながら、副次的に政治目的を持っておるということであるならば、それは政治活動の中に入りますから、そこで当然その規制の対象に入るということになるので、具体的な事例に徴して判断をせられますよということを申し上げた方が正確ではなかろうか、かように私は思います。
  71. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 したがって、確認をしておきたいのは、たまたま講師が衆議院議員だった、参議院議員だった、政治関係する者だったというだけで、それが選挙中行う講演なり何なりすべては「政治活動を行う団体」と認定されるということではない。それはやり方によって、本来、本当に増税についての問題とか文化的な問題について話をする。たまたまその団体が、こういう講師が来ますと、講師の宣伝ではなくて講演の宣伝に行くのなら、これは構わぬ、こういうふうに理解してよろしいですね。
  72. 後藤田正晴

    後藤田議員 たとえば佐藤さんが議員として純粋に文化団体に所属しておられて、純粋に文化団体のための宣伝をせられるというのであれば入りません。しかし、そこに違うのが入ったらいけません。
  73. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間もなくなりましたので、もう一問だけお伺いして終わりたいと思いますが、それは連座制の強化についてであります。選挙違反がたくさん起こって、百日裁判を督励をするようにはなっておりますけれども、現実にはなかなかそうはいかないということで、私たちも大変歯ぎしりをかんでいるのでありますけれども、その際、何かできることと思えば、その連座制の強化ということぐらいしか、残念ながら法律上ないだろう。被告人の弁護士を使う権利が当然認められる以上は、ある程度裁判が延ばされるのは残念ながらやむを得ないだろうというように思いますので、そういった意味では連座制の強化については賛成なんでありますが、ただそのときに、今度の場合には、同居している親族の場合にも意思を通じなければならぬということになっているのです。ところが、非常に誤解が多いのは、この「意思を通じ」というのは、たとえば買収しろ、供応しろ、こういう意思が候補者と通じていなければいかぬというように普通考えがちでありますが、そうではないのですね。ひとつこれは選挙部長がいいのか、自治省の注釈にちゃんと書いてあるわけでありますが、選挙部長、「意思を通じ」というのはどういう意味ですか。
  74. 大林勝臣

    大林政府委員 連座制の要件といたしまして、いわゆる親族連座の際に候補者と意思を通ずるという場合には、買収について意思を通ずるという意味ではございませんで、その候補者のため選挙運動をすることについて意思を通ずるというふうに解釈をいたしておりますし、また、その意思を通ずるというのはどの程度かということでありますけれども、明示の意思を通ずる場合は、これはもちろんであります。あと、意思の通じ方におきましても、黙示の意思を通じるということもございましょう。明示、黙示、すべて意思を通じておるという立証が行われました場合には、連座の対象になるということでございます。
  75. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その意味では、いまお話があったように明示でもあれ、黙示でもあれ、選挙運動をやっているということを知っていればいいわけでありますから、同居している者がそのことを知らない、それはよほど千坪もあるような家で、右と左でわからなかったというなら話は別だけれども、同じ屋根の下に住んでいて、そして候補者と、ここに掲げられているような親族が、選挙運動をやっていることを知らないということは少しむずかしいと思うのです。なおかつ自民党の案では、同居している親族についても「意思を通じ」というのが残っているわけです。私はこれを外してもいいのではないかと思うのでありますが、なおかつ外せなかった積極的な理由というのはどういうものでしょうか。
  76. 後藤田正晴

    後藤田議員 その点は、佐藤さんおっしゃるような議論がございます。ただ、総括主宰者なんかと違って、親族というものは選挙運動の主体そのものではないわけです。しかも独立の人格でございますから、現在の処罰規定のあり方として、佐藤さんおっしゃるように推定規定を入れて挙証責任をひっくり返すというのも、私自身は、やってやれないことではないのじゃないかなという気はするのですが、さて、これが処罰規定ということになってきますと、これはなかなか私は法理論上容易な問題ではないと思います。  したがって、自由民主党の中で論議をした場合にも両論ございました。しかしながら、やはりこれは現在の刑罰規定のあり方としては、意思なき者を推定規定を置いて罰するということは、いささか問題があり過ぎるといったようなことで、やはり意思を通じておるということを前提にしなければなるまいということで、かような結論になったわけでございます。
  77. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま、そのために私は大林選挙部長にお伺いしたわけでありますが、意思なき者と言うけれども、その場合の「意思を通じ」というのは、いま申しましたように黙示であれ明示であれ、候補者が選挙運動をやっていることを知っておればいいわけですよ。同居している者が、同居して一つの屋根におる者がそれを知らないというのは、むしろきわめて不自然なんじゃないでしょうか。それを今日までつかまえる側と言っては失礼だけれども、この問題についての権威の後藤田さんが、なかなかむずかしいと言われるので、わからぬわけでありますが、どうもこれは法律解釈上無理があるのじゃないだろうか。「意思を通じ」というのは、きわめて綿密にどうこうせいという指示と違いまして、自治省の選挙法注釈にも、「意思を通じ」というのは、いま部長から御説明がありましたように大変広いわけで、選挙運動をやっていることを知っているか知ってないか程度なんですね。それ以上いきますと共犯になるわけですよ。それでもなおかつ類似規定というのでしょうか、判定が罰則上むずかしいというのは、法解釈としてどうも私は不自然ではないか。これは「意思を通じ」は外してもいいのではないか。いま後藤田議員の御説明では、「意思を通じ」をきわめて狭く、具体的な候補者からの指示みたいに非常に狭くとらえていらっしゃいますけれども、従来の解釈はそうじゃない、きわめて広い解釈ですから、私は「意思を通じ」を外しても十分できるのじゃないかと思いますが、再度御答弁いただきたいと思います。
  78. 後藤田正晴

    後藤田議員 私も、自治省の行政解釈の中身、実は知りません。しかし、私は長年処罰規定の運用をやってきましたから、おやじが選挙運動をしておることを知っておれば意思を通じておるというようなことで、一体処罰規定が適用になるのかならないのか、これは私は大変疑問があると思います。私はもっぱら処罰規定のあり方として、推定規定を置いて挙証責任をひっくり返すということは、やはり現在の法律理論の上から少し無理じゃないかといったような考え方で、また、その主張をする人も相当おったわけですから、ならば、そこまで今回の改正で無理をするわけにもいくまいということで、やはり従来どおり意思を通じておるということを、そのままにしておこう、こういう結論になったわけでございます。
  79. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まだまだ、わが党の質問者も残っておりますので、時間が来ましたので譲らしていただきますけれども、まだ私自身も少し議論したい問題も大分残しておるのでありますけれども、また次回に譲らしていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  80. 久野忠治

    久野委員長 次に、山花貞夫君。
  81. 山花貞夫

    山花委員 私は、佐藤委員質問を受けまして、具体的にできるだけ法案の内容についてお伺いをしたいと思います。  ただ、全般的なこの法案の内容について申し上げますと、先ほど来お話ありましたとおり、選挙の公正を担保するためのルールをつくるのが公選法の目的であるということでありますが、そこには、公選法一条の目的に明記されているとおり一つの方向がなければならないと考えます。公選法一条は、「日本国憲法の精神に則り、」とまず大目標を掲げて、そしてその中で、この公選法が「選挙人の自由に表明せる意思によって公明且つ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする。」と掲げているわけです。  しかし、今回の改正点、提案理由説明によりますと一点から七点まであるわけですが、一点の選挙人名簿の登録制度の改善につきましては必要なことだと考えます。しかし、第六点につきましては、いまの討議にもありましたとおり、なお不十分ではないかと疑問を持つところでありますし、そのほかの移動事務所を初めとした各項目につきましては、果たして公選法の目的に掲げる趣旨に沿うものであるかということについて、基本的に疑問を持たざるを得ません。むしろ立て札、看板から始まり、ポスター、ステッカー、そして掲示の制度、拡販車の制限あるいは演説時間の制限など、まだこれから内容を幾つか確認しなければならないところでありますけれども、憲法の原理としての主権在民、国民主権、そこに基礎を置く国民政治活動の権利、当然内容として思想、表現の自由の裏づけがあり、国民の知る権利を内容とするものでなければならないと思いますけれども、それを大幅に制約するのではないか、こういう疑問を幾つかの問題点について持たざるを得ないわけであります。「選挙人の自由に表明せる意思」を確保するために果たしてプラスなのかマイナスなのか、大いに疑問だと考えるところであります。  その観点に立ちまして、具体的な内容についてお伺いをさせていただきたいと思います。  まず最初に、各改正の項目共通の問題点ですけれども提案理由の中にも「最近の選挙の実情にかんがみ、」この改正が必要である、こういう御説明があります。しかし、どうもきょうの答弁をお伺いしておりましても、その点についての判断がきわめて主観的に過ぎるのではなかろうか。第一の問題としては、もっともっと基礎的な資料をそろえた中で慎重に問題の提起を図るべきではなかろうか。第二番目は、この点についてさらに各党と話し合いを充実させるべきではなかろうかという点を強調したいと思うのであります。  先ほどの質問の、その点にかかわる部分といたしましては、拡販車の関係についてお答えがありまして、その中で、実態についての調査があるかというと、統計とか調査はないということについて明言されました。しかし、市町村の選管からの意見聴取あるいは同僚議員、他党の同僚議員を含めての意見があったので、こうした制限が必要であるのではなかろうか、こういうお返事がありました。その程度では、大変重要な問題が絡んでおるわけでありますから、私は不十分ではなかろうかと考えています。もっと客観的な資料とデータがなければ、国民を納得させることにはならないのではなかろうかと考えているのであります。  したがいまして、「最近の選挙の実情にかんがみ、」こうした提案理由になり、かつ公害論、美観論など幾つかについて御説明ありましたけれども、それぞれのテーマについて、なお自治省、選管を通じて全国的な調査などを進める必要があるのではないか。あるいは従来上がっている調査なりについても、もっともっと整理検討する必要があるのではなかろうかと思いますけれども、まず冒頭、この点について提案者の先生にお伺いしたいと思います。
  82. 片岡清一

    片岡議員 山花委員のおっしゃるとおり、いやしくも立法に踏み切る以上、それぞれ十分な資料を整え、そしてまた、これは共通の土俵をつくるわけでございますから、各党と十分な話し合いをした結果でなければならぬ、こうおっしゃるのはごもっともな次第でございます。私たちも大体そういう方針のもとに、極力いろいろの資料を整え、意見を聞き、そしてまた皆様方ともいろいろ御相談をする、ある程度の段階を踏んだわけでございます。  おっしゃるとおり選挙というものは、どこまでもやはり自由濶達に意見を述べ、運動をするということでなければならぬことは当然でございますけれども、これはしかし、先ほど後藤田議員からもお話があったように、選挙法というのはやっぱり一つの土俵づくりの申し合わせでございます。やはりいろいろ全体の立場から、国民の皆さんに御迷惑をかける、余りに夜の夜中にぎゃあぎゃあ運動をするというようなことはいろいろ迷惑をかける、こういうことは一つの例でございますけれども、やはりそういう国民の公共の福祉、大きな意味における公共の福祉というようなものを考えて、お互いに土俵づくりというものをやっていこう、そしてその土俵の上で勝負をしよう、こういうのがこの選挙法のたてまえであると存じます。  したがいまして、どうしてもある程度の制限、いろいろ問題の起こった点については制限を加えて、そして迷惑にならない、あるいはお互いに金のかからないようにすることが選挙を正す一つの大きな目的、理由でございますから、余りにも金がよけいかかる、そしてまた、むだなところへ——むだといいますか、お互いに競争し合って、そしてむだな金を使うということは、私は選挙を正していく上からは一つの大きなマイナスになる、こういうふうに考えますので、それらのいろいろな条項を考えて、お互いに話し合って土俵づくりをしていく、こういうことになりますから、したがって、どうしてもやはりある程度の制限をつくることはやむを得ないことである、これは決して選挙の自由を侵すものでない、こういうふうに私は考えておるのでございまして、今回の提案にいたしましても、それらの点を十分考えながら、他の各党の御意見も徴しながら、そしてまた、先ほど申し上げましたように地方の実際選挙を取り扱っておる選挙管理委員会等の意見も十分聞き、また、この特別委員会でも各地方へ行きまして、選挙についてのいろいろな意見を聴取いたしたという実情もございます。そういうことをかみ合わせまして今回の案をつくったものであることを御理解賜りたいと存じます。
  83. 山花貞夫

    山花委員 一般論としてお伺いする限りには特に議論するところもありませんけれども、私は、具体的に今回の改正点との関係におきまして、納得できる資料をもう少し明らかにする必要があるのではないかということをお伺いしているわけであります。  先ほど来触れておりますけれども、選管の調査ということに関しましては、実は昨年の七月二十九日の新聞記事ですが、「鈴木総理選挙制度改革の一環として「公営選挙の拡大」などの検討を石破自治大臣に指示した」「自治省はその第一弾として七月の二十八日から、地方選挙管理委員会を対象に、選挙公営制度選挙運動あり方に関する意見調査を始めた。」こう報道されました。当時の新聞記事によりますと九月三十日までには調査を終わる、こういうことであります。  調査の問題点は大体五つの項目ということが明らかにされておりまして、第一は現行の選挙公営制度に関する意見、第二は選挙公営の管理事務上の問題点に関する意見、第三は選挙公営経費の実態、第四は現行制度以外の選挙公営に関する意見、第五が選挙運動あり方に関する意見の五項目であります。  実は私この新聞記事に関心を持ちまして、当時もそうでしたけれども、その後も自治省の選管の方に、状況について幾度かお伺いをしたところでありますけれども、まず第一の問題として、こうした自治省が全国的に調査に乗り出した理由というものは、このきっかけは、これは六月の二十四日、当時の後藤田自治大臣がダブル選挙の後、初めての閣議で選挙に関して御報告をされると同時に、これに関連いたしまして宇野行管長官が、立会演説会が形骸化しているということについて問題提起をしながら、選挙公営のあり方について調査をしたらどうだろうか、こういうことについて提案し、当時の後藤田自治大臣がこれに同意をした。このことを受けて自治省が、いま私が指摘いたしました五つの項目についての全国的な調査を展開する、こういうことになったと実は御説明をいただいたところであります。  実は、これだけの調査をやったならば、五つの項目についてどうなっているかということにつきまして各党に内容を示していただいて、その中で当面、急いでこれはやる必要があるという経過があるならば、またわかるわけでありますけれども、実は、せっかく当時の後藤田自治大臣の発案に基づいて、こういう調査が始まってなされておるらしいのでありますけれども、その内容については、われわれの前には明らかになってこない。そして五つの項目だったのだけれども、そのうちの一つ選挙運動の部分についてだけ急に今回の提案で、われわれの認識で言えば、ばたばたと進もうとしているということでありますから、どうもその経過においてすっきりしないというのが率直な意見であります。  選管の関係の方にお伺いしたいのでありますが、この調査はどういう目的でやったのか、その結果どうなっているのか、内容についての整理がどうなっているのか。五項目について、できればその内容について、時間の関係があります、要点だけでも御説明いただきまして今後の資料の素材にさせていただきたいと思います。
  84. 後藤田正晴

    後藤田議員 私の名前が出たので先に答えさせていただきます。  きのうも実はそんな話があったのです。私は全然記憶がないのです。この調査は、宇野さんの発言ですか、あるいはあったのかもしれません。あったのかもしれませんが、それに基づいた指示は実はしておりません。どういう経緯で調べるようになったのかは、これは事務当局に後で答えていただきますが、私はそういう指示は実はしておりません。
  85. 大林勝臣

    大林政府委員 今回、選挙公営あるいは選挙運動等の問題につきまして調査をいたしましたのは、御承知のように昨年、有史以来のダブル選挙というようなことがございました。同時に、並行いたしまして昨年の通常国会におきましても、選挙運動面におきましていろいろ選挙公営の問題が議題になっておりました。ただ私ども従来、選挙公営についてはすでに相当数の選挙公営を行っておりますので、今後の選挙公営をどうするかという問題につきましては、まず地元の実施者であります選挙管理委員会意見も十分に聞いておかなければいけないであろう。同時に今後、選挙運動あり方について御議論がございます場合にも、やはり地方の選挙管理委員会意見も、この際聞いておきたいというつもりで調査をいたしたわけであります。  調査の対象は四十七都道府県及び全市町村というわけにもまいりませんので、九十四市町村を抽出をいたしまして調査をいたしたわけであります。  調査の内容は、もっぱら記述式で意見を求めたものでございますから、なかなかぴたっとしたまとめがむずかしいわけでありますが、大体の地方の選挙管理委員会の御意見を御紹介をしておきますと、現在十数種類の選挙公営をやっておりますが、おおむねその選挙公営の実施は長年の間定着をしておりまして、特別に現在の選挙公営について廃止意見というのは余りなかったわけでありますが、まあ大きな問題ではございませんでしょうけれども、たとえば十数種類の選挙公営の中で、参議院全国区において現在行っております投票所外の氏名掲示こういうものは、もうすでに現社会ではむだであるから、やめてほしいとか、あるいは立会演説会、これも国会においていろいろ御議論があるところでございますが、立会演説会につきましては動員合戦というような実態が恐らく反映しておるのでありましょう、その立会演説会の効果について非常に疑問を呈する委員会の数が多かったようであります。  その他、たとえば選挙公報につきましては、その存在意義は十分に選挙管理委員会承知をいたしておるわけでありますが、短い選挙運動期間の中で、なかなか原稿の提出から印刷あるいは配布までの日数が少なくて困るとか、あるいは配布手段と申しますか、だんだん困難になっておる。むしろ配布手段について何か合理的な改正をしてもらえぬだろうかというような御意見もございます。  あるいはポスター掲示場につきましては、だんだん設置場所の確保というものが非常にむずかしくなっておって、地域によっては掲示場数の減少という問題を少し検討してもらえぬであろうかとか、あるいは個人演説会の公営、これは特に一回分だけ無料にするという問題もございますけれども、その他、選挙管理委員会で一番興味を持っておりますのがこの施設の公営でありまして、個人演説会のお申し出がございました場合には、その管理者においていろいろ設備をいたすわけでありますが、会場がやはり小学校、中学校といった学校施設がかなり多いようであります。学校施設ということになりますと夜間の管理が非常に困難であるので、個人演説会の施設公営についても何か相談に乗ってもらえぬだろうかとか、もっぱらそういった管理上の見地からの意見が多かったと認識をしております。  その他テレビの活用の問題、これを今後の宿題として大いに勉強してほしい。  その他、選挙運動面におきましては、最近の選挙運動の実態を反映しておるのでありましょう、いわゆる拡販車の問題、あるいは立て札、看板の乱立の問題、こういった問題に対する批判が意見としては多かったように認識をいたしております。
  86. 山花貞夫

    山花委員 いまの御説明伺いましても、せっかく四十七都道府県、御説明によると九十四の市町村で調査をしたというお話でありましたけれども、実はそのことの中身というものが各党に明らかにされたり、あるいはそのことについて議論があった中で、この改正法案が出てきたということではないわけです。加えて、いまのお話の中でも、一番最後にほんの一行程度、拡販車について意見が多かったということが明らかにされただけで、そのほか各改正の項目とはほとんど関連性がなかったというのが、いまお話伺いまして私の理解であります。そうした内容につきましては、せっかく大変御苦労をされて全国の選管の意見を取りまとめたものでありますから、何らかの形でこれを集約をして明らかにしていただきたいというのが、この機会の希望であります。それは今回の改正問題だけではなく今後の全体の改正にかかわるものだと考えます。  さて、そこで私が主張したいのは、そういう資料に基づいて、だからこうだと提案されてくれば非常にわれわれもわかりやすいわけでありますけれども、その点が欠けるのではないかということについて再度強調し、次の質問、時間の関係からもう一つだけ伺っておきたいと思います。  一つは、残り時間の関係から、任意制ポスター掲示場制度の改善とある点について伺います。  結論的に言いますと、従来たとえば市議会ならば一千二百枚ということであった、あるいは町村だったらば五百枚ということであった。ところが今度は、ほとんどそのビラが張れなくなるのではないかという点が大変心配であります。条例で定め、そして一投票区について五カ所以上十カ所以内については政令で定めるということになり、かつ方法についての選択だという議論は一応頭の中に入れましても、実はこれでやりますと非常に枚数が少なくなってしまうのではないか。この点について提案者はどうお考えになっているか伺いたいと思います。
  87. 片岡清一

    片岡議員 義務制掲示場の設置の数は投票ごとに選挙人名簿登録者数と面積によって異なりますので、厳密な比較は困難でございます。強いて比較をしてみますと、五十四年十月のときの総選挙の際設置せられましたところの義務制掲示場の数と選挙運動用ポスターとの関係を見てみますと、こういう数字が出ております。  指定市の長及び議員、これは長の場合は選挙運動用ポスターの数は普通は四千五百枚となるわけでございますが、この義務制の掲示場の設置数を見ますと千八百六十八ということで、かなり四千五百から減っております。それから指定市の議員の場合によりますと、これは千二百枚の規定でございますが、それが個所にいたしますと百六十八カ所、こういうことになります。それから指定市以外の市でございますと、長の場合は同じく千二百枚認められておるポスターが、この義務制になりますと二百二十八カ所、議員の場合もそういうことになります。それから町村の場合でございますと、長の場合も議員の場合も同じでございますが、五百枚のところが六十一カ所になる、こういうことになります。  なお、都道府県議会議員の選挙につきましては、選挙区が数町村にまたがる等事情が異なりますので、このような比較は非常に困難であるということを御理解賜りたいと思います。
  88. 山花貞夫

    山花委員 お話を伺っても、多くの部分について千二百枚が大体十分の一ぐらいしか張れないのではないかということになります。新人が出られないのではないかという議論と絡まるわけでありますけれども、もうちょっと具体的に、たとえば東京都選管の調べました区町村別の掲示板の設置、これを基準として見てみたわけでありますけれども、およそ普通の市におきましては、おっしゃったとおり十分の一ぐらいになるわけですが、この前のダブル選挙におけるポスター掲示場の数ということを頭に置きまして計算してみると、特に島部の方などにおきましては、投票区数そして設置数という数字をにらんで考えますと、少ないところは一カ所でありますから一枚しか張れないのじゃないか。一カ所、二カ所、三カ所などというところはたくさん出てまいります。  本来ならば五百枚張れるところが、これで義務制にいきますと一枚か二枚か三枚しか張れない。利島が二枚、御蔵島が三枚、青ケ島が一枚、これは島部の特殊な例かもしれませんけれども、もう一つの問題は、市町村で考えましても三多摩二十六市五町一村ありますが、たとえば、この間も選挙があった秋川の場合には投票区数が七つであります。七つで実績としては五十一カ所ということですが、千二百枚が五十一枚しか張れないということになるのではないか。稲城などの場合には、投票区数が九つで設置数が六十五であります。あるいは福生市においては六十七であります。清瀬の場合には八十五、国立とか国分寺も六十五カ所ということになってまいります。  実は人口の問題、面積の問題、この割合が問題だと思いますし、いろいろ上下はあると思いますけれども、この五カ所以上十カ所以内一投票区という枠の中で考えていきますと、およそ私が申し上げたような数字になるのではないか。市会議員の選挙で千二百枚張れた人が、普通の市で大体八十枚、五十枚、六十枚しか張れないということになってまいりますと、これは実際には新しく選挙に出ようとする方が大変不利になるのではないか。こうした問題について一体どう考えておられるのだろうか。こういう点について、いま大きく区分けをいたしました実績について御説明がありましたけれども、もっともっと細かい実態どうなっているのかということについて御調査をしていただきませんと、合理的な数というものは出てこないのではなかろうか。十分の一程度ならいいわけでありますけれども、もっともっと少なくなるということになりますと、これは大変問題が大きくなるのではないかと思いますけれども、時間の関係がありますから、この点だけ、いまお伺いしておきたいと思います。
  89. 片岡清一

    片岡議員 ただいまの義務制の掲示場をつくるかつくらぬかは、これは別に、この法律で強制するわけではございませんで、それぞれの市町村で条例によって決める場合はこうなる、こう言っておるのでありまして、それは任意でありますことを御了承いただきたいと思います。
  90. 山花貞夫

    山花委員 任意を前提としても、国が基準をつくるわけでありますから、それに従ってやったらよろしかろうというのが今度の改正一つの基準ではないでしょうか。その中身が実はこういう実態だとするならば、なおこの点については慎重を要するのではなかろうかという点を申し上げまして、時間が参りましたので、また午後に続けさせていただきたいと思います。
  91. 久野忠治

    久野委員長 この際、午後二時再開することとし、休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  92. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山花貞夫君。
  93. 山花貞夫

    山花委員 先ほどに続きまして、任意制ポスター掲示場問題に関して一つ二つだけ、お確かめさせていただきたいと思います。  従来すでに、それぞれの自治体の条例によりまして掲示板をつくっているところがあります。そういうところについては、従来の取り扱いですと、それ以外に、残るポスターを張るかどうかは紳士協定的に取り扱っているところが多いのではないかと思うわけですが、今回の改正、それが各自治体の合意ということになりますと、そこでは、この趣旨からいきますと、それ以外には張れないということになるのだと思います。その場合には従来、条例つくっているところも当然この法律に基づいてやるということになると思いますが、その点についてどうなのでしょうか。従来の条例つくっているところは自動的に、その後は掲示板以外に張れないことになるのか、改めて、それぞれの自治体で協議していただくことになるのかということについて、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  94. 片岡清一

    片岡議員 従来やっておりますものも、今回新たなる法律によって、その強制的なポスターの張り場所という制度を使う場合には、やはり新たに条例を設けてやる、こういうことになると思います。
  95. 山花貞夫

    山花委員 関連してもう一つ。実は、つくる掲示板の大きさということと関連するわけですが、従来は衆議院のポスターなどにつきましては、百四十四条の三項と百四十三条の十項によりまして、四十二掛ける三十プラス四十二掛ける十ということになっておる。これが一緒につくれるということから、比較的四角いポスターの掲示板が準備されたわけです。  今回の改正法をちょっと検討してみたわけですけれども、今回の改正法によりますと、条文を読む限りでは、四十二掛ける三十で間に合うポスターのはずですけれども、つくるものは大きいものができてしまうのではないか、この辺の調整が条文上とれていないのではないかと思うのです。一人について十センチですと十人で一メートル、五十人で、ということを考えますと、大変むだも多いということではないかと思いますけれども、この辺は一体どう調整しておられるのかということについて、ひとつ伺っておきたいと思います。
  96. 大林勝臣

    大林政府委員 今回新たに義務制のポスター掲示場と同じようなポスター掲示場を市町村が条例でつくります場合には、そのあたりは現在の百四十四条の規定に準じてつくれということになっておりますので、大きさは同じものを頭に置いて条例で決めるということに相なります。したがって、多少ポスターのすき間というものができるかもしれません。
  97. 山花貞夫

    山花委員 実は、その辺のところも、どちらかに統一する必要があり得るのではないか。市町村議会の選挙におきましても、演説会告知用ということを認めて十センチふやすか、あるいは今度の制度による掲示板ならば十センチ狭めるかということについて、その辺についての調整などにつきましても、なお検討を要するのではなかろうかと思うのが私の意見であります。  次の質問に移りたいと思います。  一つには、先ほども佐藤委員からも御質問ありました立て札、看板の総数の関係でありますけれども、同じような問題として、第四番目の改正点としてあります街頭演説などの時間の制限の関係です。  「長時間にわたり、」とありますけれども一体これはどのくらいの時間を想定しておられるのであろうか。先ほどの立て札、看板の総数規制につきましても、なお各党の意見を徴して、こういう趣旨でのお話を伺ったわけですが、提案される側で、およその基準というものを想定して提案されておられるのではなかろうかというようにも思うわけです。そうした意味におきまして、先ほどの立て札、看板の総数の関係と、この「長時間にわたり、」という部分について、提案者の側としては大体どの程度を想定しておられるのかということについて、お伺いしておきたいと思います。
  98. 片岡清一

    片岡議員 これは場合によっていろいろ考えられると思います。ことに場所あるいはその他、その時点において、いろいろお互いにそこを利用しようとしておる候補者が話し合って、そして決めるということが実情に即するのではないかと存じますが、基準として考えますならば、大体一時間くらいということが常識的ではないか、こういうふうに思っておるわけですが、具体的には、やはりその場所において、お互いに良識を持って、譲り合うといいますか話し合う、こういうことが望ましいと考えておる次第であります。
  99. 山花貞夫

    山花委員 立て札、看板の総数については、提案する側としては、およそどの程度をお考えか。このことも、できましたらちょっとお答えいただきたいと思います。
  100. 片岡清一

    片岡議員 その問題は、やはりこの間、前の臨時国会の最後のときに提案するときに、各党の理事各位といろいろ御相談をいたしましたわけですが、これはひとつ十分よく話し合って決めようじゃないか。選挙のそれぞれの段階に応ずる、大きさに応ずる数もございますので、これは十分話し合って決めよう、こういうことになっておりまして、いずれ法案成立の暁において御相談を申し上げて決めたい、こういうふうに思っております。
  101. 山花貞夫

    山花委員 立て札、看板についてもしかりですけれども、いまお話のありました選挙運動の街頭演説の時間の長さの適当性ということにつきましては、おっしゃったとおり、いろいろな形によりまして違うのだと思います。通常は一カ所に長時間ということは余りない、できるだけたくさん、あちこちで街頭演説するということが、むしろ一般的だと思いますけれども、たとえば総理大臣が来るとか、だれがどうこうする、こういう特殊な場合には長時間にわたる場合もあるのではないか、ということだといたしますと、どうもこの辺「長時間にわたり、」ということで具体的な当てはめということになりますと、なかなかむずかしい問題があるのじゃなかろうか。そういたしますと、この辺については、委員会議論その他で、ある程度のめどといいますか、その点について、もうちょっと議論を尽くして、各党の意見などを徴していただくことが必要なのではなかろうかというように考える次第であります。  次の質問に移っていきたいと思いますけれども、第五番目の、先ほど佐藤委員からも御質問ありました拡販車の関係についてです。  まず第一に、確認的にお伺いしておきたいと思うのですが、後藤田議員からも、政治資金規正法上の規定と公選法の規定の違っている意味について、「政党その他の政治活動を行う団体」という言葉の概念について若干触れて御説明がありました。実は、そのことを前提として、そうした「団体が自動車を使用して行う機関紙誌の普及宣伝については、」ということで条文ができておりますので、前提の部分について伺いたいと思うのです。  まず、これは自治省の方に、経過ということを含めてちょっとお伺いしたいと思うのですが、政治資金規正法改正に伴いまして、公選法のこの部分について若干の字句の整理が行われた経過と、そこでの定まった概念ということについて、従来の議論も含めまして、ここでいう「政党その他の政治活動を行う団体」の概念といいますか、その点について御説明をいただきたいと思います。
  102. 大林勝臣

    大林政府委員 「政治活動を行う団体」という言葉が使われましたのは、昭和五十年の政治資金規正法改正の際の公職選挙法改正であったわけであります。従来二百一条の五以下に書いてありましたのは政党その他の協会または団体、こういう言葉を使っておったわけですけれども政治資金規正法改正の際に政党政治団体の定義をはっきりいたしまして、従来「協会その他の団体」まで含めておりました政治資金規正法上の団体の概念をかなり狭めまして、政党と本来の政治活動をする目的を有する団体、これを政治団体というふうに、本来的な政治活動をする団体というものに政治資金規正法の定義を改めたわけであります。  そこで旧政治資金規正法の概念を、そのまま公職選挙法が従来取り込んでおりましたために、政治資金規正法上の概念と公職選挙法上の概念との調整が必要になったわけでありまして、公職選挙法の上では、政治資金規正法がとらえようとする団体の範囲を狭めようが広げようが、従来の範囲と同じであるという前提で考えられたわけであります。政治資金規正法の上では、政治活動を「本来の目的とする団体」というふうに限定をされましたために、その概念をそのまま公職選挙法の方に持ってまいりますと、選挙期間中の政治団体の概念が従来の広い概念から非常に狭まるという考慮がございまして、政治資金規正法政治団体の概念を非常に限定したけれども公職選挙法の上では「政党その他の政治団体」のほかに従来の旧政治資金規正法で言う「協会その他の団体」も入るのだ、こういう主義のもとに「政治活動を行う団体」という字句が入ったわけであります。  昭和五十年の改正の際にも、いろいろその点について議論をされたわけですけれども、「政治活動を行う団体」というのは、旧政治資金規正法上の「協会その他の団体」に相当する概念であって、本来的に政治活動を行う目的を有する団体でなくても副次的に政治活動を行う目的を有する団体であれば、これに含まれる、こういう解釈で今日までまいっておるわけであります。
  103. 山花貞夫

    山花委員 お話伺いますと、要するに法改正があった時点でも公選法上の概念としては従来どおりである。そして、いま御説明の最後にありましたとおり、主たる目的は政治活動でなくても副次的に政治活動を行う場合には、そうした団体はこれに該当する、こういう御説明だったと思いますけれども、そうなりますと、たとえば労働組合とか文化団体、経済団体というものも副次的に政治活動を行う場合には、ここの「政治活動を行う団体」に該当するのだ、こういう前提でこの条文を読んでいかなければならない、こういうことになるのでしょうか。たとえば労働組合ならば総評を含めた四団体しかりというふうになると思いますし、その他いろいろな具体例を挙げれば文化団体その他の社会団体もあると思いますけれども、その点については、いまの私の申したようなことで解釈していくことになるのかということについて、念のために伺っておきたいと思います。
  104. 大林勝臣

    大林政府委員 したがいまして、労働組合、文化団体でありましても、たとえば副次的に政治目的を持っておるかどうかの事実認定にかかってくるわけでありまして、一般的には、いろいろな団体がございますが、その団体の規約の上で主たる目的でなくても何か目的の中にそれが掲げられておるということであれば、副次的に目的を持っておるということにもなりましょうし、また、規約の方で全くそういうことが書いてなくても、従来の活動実績その他をいろいろ考えまして、継続的に政治活動をやってきておるというような団体であると認定されました場合には「政治活動を行う団体」ということになるわけでありまして、一般的な政治団体以外の団体、つまり文化団体、経済団体いろいろございますけれども、そういう団体につきましても「政治活動を行う団体」に該当するかどうかということは、それぞれの時点で、それぞれの団体について具体的に認定されるということに相なります。
  105. 山花貞夫

    山花委員 そうした前提で伺いますと、従来の規制にさらに本改正第五番目の問題点としての規制が加わるというようにとらえなければならないと思いますが、ちょっと確認的に、忘れないうちに伺っておきたいのですが、これは要するに確認団体制度のある選挙についてである、こういうように前提を置いて理解してよろしいのでしょうか。確認団体制度のないものについては、これは適用がない、こういうことになるのでしょうか。この点、どうでしょうか。
  106. 大林勝臣

    大林政府委員 現在の公職選挙法政治活動の規制につきましては、確認団体制度のある選挙についての規制と、ない選挙についての規制と両方が、それぞれの条文で入っておるわけでありまして、二百一条の五以下に書いてあります確認団体制度に基づきますものにつきましては、あらゆる政治活動のうちで一定種類の政治活動を押さえておるわけであります。したがいまして、確認団体制度のある政治活動につきましては、今回の規制は全面的に、従来の「政治活動を行う団体」に関する限りは働くということでございますし、確認団体制度のない政治活動の規制に関しましては、連呼行為の規制というものがまた別途ございますから、そういうものについての拡声機の使用という問題はかぶってまいると存じます。
  107. 山花貞夫

    山花委員 連呼のほかに一つ二つ制約があったと思いますけれども、原則としては確認団体制度のある選挙と、ない選挙とでは規制が違っている、こういうことだといたしますと、今回、確認団体制度のある選挙などにつきましては、この第五の「自動車を使用して行う機関紙誌の普及宣伝」について新しい規制が加わる、要するに拡販車はいかぬということになるわけですけれども、その確認団体制度のない選挙の場合、たとえば市議会議選挙、町村長、町村議の選挙の場合には確認団体制度がないわけでありますから、従来どおり拡販車が出回るということになるのではないでしょうか。この点、いかがでしょうか。
  108. 大林勝臣

    大林政府委員 それは従来どおりでございます。
  109. 山花貞夫

    山花委員 実は、選挙の仕方ということにつきまして、確認団体制度がある、ないで、かなりの違いがこれまであったわけですが、加えて特に大衆の目につく、国民の目につく各拡販車につきまして、確認団体制度のない選挙については自由にやっている、そうじゃない選挙はできないということになりますと、そこのところの違いが選挙民に与える印象も大変不可解になるのではなかろうかということが気になるところでありますし、この点についても、なおその辺の調整といいますか、従来の実態に即して各党間の協議が必要ではなかろうかと私としては考えるところであります。  一応、確認団体制度のない選挙については今回の改正関係なしということについて、お伺いいたしましたので、じゃ関係のある部分について伺っていきたいと思います。  この提案理由を拝見いたしますと「自動車を使用して行う機関紙誌の普及宣伝」こういう言葉が書かれておりますけれども、この「機関紙誌の普及宣伝」という用語につきましては、条文の中にも入ってくる、いわば法律の概念ということになると思います。常識的な用語であるようですけれども、この後の規制の具体的な形とは大変関係するところだと思いますので、この「機関紙誌の普及宣伝」は一体どういう内容、どういう形のものを含むのかということにつきまして、その概念について提案者の先生方から御説明いただきたいと思います。
  110. 片岡清一

    片岡議員 御指摘の「普及宣伝」の概念は、現行法上の「政策の普及宣伝」における「宣伝」と同意義と考えておりまして、いわゆる機関紙の読者を確保するために不特定多数の人を対象にして、そして購読を広くしようという宣伝である、こういうふうに理解しております。
  111. 山花貞夫

    山花委員 具体的な問題で議論しませんとわかりにくい点があるのかもしれません。「機関紙誌の普及宣伝については、確認団体が政策の普及宣伝及び演説の告知のために使用することができる自動車を使用して行う場合のほかは、これをすることができない」ここのところに眼目があるのだと思います。従来の拡販車はだめである、新報カー、赤旗カーあるいは自由新報カーも全部だめである、こういう形だと思うのですが、普及宣伝の方法といたしましては、たとえばわが党の場合で申し上げますならば、社会新報カーというのは上に「社会新報」という文字が入っておりまして、各党の機関紙の車もみんな同じ形だと思いますけれども、そこに「社会新報を読みましょう」とか何らかのスローガンを書いたり、こういうかっこうで、その用語で言うとお神楽が載っかっている、こういう形になっているわけです。そうして、一部幾らの社会新報を読みましょう、こうした広告を掲げて町中を車が走り回るということにつきましては、マイクを使って宣伝する場合もあるし、あるいはビラをまいて宣伝する場合もあるし、あるいは、そうしたいわゆる社会新報カー、拡販車が大きな看板を載っけている場合もあるということだと思うのですが、この規定が仮にできたといたしますと、そうした「社会新報を読みましょう」「自由新報を読みましょう」「赤旗を読みましょう」こういう宣伝の大きな看板を上にかけた車というのは、そのこと自体も宣伝の媒体、宣伝の手段ということになっていると思うのですが、選挙期間中は一切だめである、車庫に入っていろということになるのでしょうか。この点について御説明いただきたいと思います。
  112. 片岡清一

    片岡議員 そういった宣伝車が車庫に入っていなければならぬということでも少し窮屈な話だと思います。たとえば何か新聞を輸送するために走っておるというような場合、そこには「赤旗を読みましょう」「社会新報を読みましょう」というのが出ておりましても、私は、その走っておる自体が、これまた大変認定のむずかしい問題でございますが、単に新聞なり雑誌なりを輸送しておるということでなしに、何か特定の輸送場所へ直通をするということでなしに、ことさらに、あちらこちら走って歩いておるという、そこに積極性といいますか、政治活動に対する積極性が出ておる場合には、やはりこれは規制に該当する、こういうふうに解しております。
  113. 山花貞夫

    山花委員 私も実は、その点疑問に思っておりまして、先ほど、輸送のためなど純粋に営業目的ということであって、積極的な政治活動としてのあらわれ方がない場合にはよろしいのではないか、こういうお話を伺ったわけですが、実はその輸送といいましても、新聞の場合ですと、純粋に新聞の販売、配達の業務ということを考えても、印刷所からどこかの下に輸送するということもあると思いますし、どこかの取り次ぎから、その下のまとめのところに配達をする、そして一番下におりたものにつきまして、たとえばの話、各級の市会議員さんが、自分の車に「社会新報を読みましょう」こういう札をつけまして、そして自分でその車を運転して配って歩いている、これは配達の部類であります。輸送とおっしゃいましても、輸送の範囲はどこまでいくのだろうか。たとえば末端の市会議員が自分の車に看板をつけまして、日常的に新聞の宣伝を上に載っけて走っていながら実際に配達も行っているというような場合もあると思うわけです。そういたしますと、純粋に配達とかそういうことまで含めて、いまおっしゃったような形で理解しておいてよろしいのでしょうか。そうでないといたしますと、選挙になりますと、日常の機関紙の配布というのができなくなってしまうということになっても困るわけでありまして、この点について、大きな輸送のことについてだけお話がありましたけれども、その下の配達、配布のことになりますと、一体いまのお話を続けて考えてよろしいのだろうかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  114. 片岡清一

    片岡議員 実態をどう把握するかということが大変むずかしい問題だと思いますが、先ほど申し上げましたように、政治活動をするという積極的な意思がなしに、ただ各戸に配って歩いておるという場合には、私は、これは大変むずかしい認定を受ける可能性があるというふうに思いますが、ただ、印刷屋から特定のところへ輸送するといったようなために走っておるという場合は、これは該当しないもの、こういうふうに思っております。
  115. 山花貞夫

    山花委員 ただ、その輸送の後、配達がなければ大体一般の読者に届かないという形になっているわけでして、ことさらに選挙が始まってから、わざとらしく看板をつくって始めたという場合には、積極的なという先ほどの御説明に当てはまるかもしれませんけれども、日常的に行っている場合などは、やはりそれをこの規定によりましてストップさせますと、日常的な新聞配達というものを選挙期間中はやっちゃいかぬということになるのじゃないか、こういうように思うわけでありまして、その輸送問題につきまして、配達の問題も含めて、この点について少しく議論をしておかなければいけないのではないかと思うのですが、輸送の先は配達もあるわけですから、その辺について、いまの御説明だけですと若干心配でありますので、繰り返しお尋ねしたいと思いますけれども、その日常やっている形ならば当然できるのか、それもできなくなるのかということについてはいかがでしょうか。
  116. 後藤田正晴

    後藤田議員 先ほどの御質問の中にもありました「自由新報を読みましょう」「自由新報を読みましょう」、選挙になるとそれが途端にふえてきますね。それで選挙の騒音公害であるとか、あるいは選挙の公正を害するとかいろいろな問題が出てきたので、そういう行為を抑えようという趣旨で、この二百一条の中に今度の改正を入れよう、こういう趣旨でございますから、先ほどの御質問のようなことで、マイクを持って読みましょう、読みましょう、これはいけませんね。これはやはり選挙運動に紛らわしいということで、これはまさに、そこを抑えようというのが今度の改正の趣旨ではなかろうかと私は思います。  ただ、通常の従来からちっとも変わらない輸送等の方法でやっている場合に、これは入るかというと、それはむずかしいですね。したがって、一々は具体的な事案によって判断する以外にありませんけれども、この立法の趣旨そのものは、せっかく選挙運動まがいの行為を二百一条で確認団体以外は禁止しよう、そうしないと、だんだん拡販車の名のもとに、はなはだしい場合は、個々の候補者が、自由新報なり社会新報なりの拡販車でございますと言って、その車をわざわざ雇ってまでやりつつあるのが今日の状況ですね。そういう弊害を除こうという立法の趣旨であるということを頭に置いて、その立法趣旨から判断をして具体的な事案に対処していく、こういうことになりはせぬかな、かように思います。
  117. 山花貞夫

    山花委員 時間の関係がありますので、ポイントだけ幾つか、あと聞いておきたいと思うのです。が、まず法案の一番最初にあります選挙事務所の移動に関してでありますけれども、実態との絡みでちょっとお伺いしておきたいのですが、警察庁にお伺いいたします。  この選挙事務所につきまして、たとえば今回の改正によりましても、一日一回以上移動した場合には取り扱いはどうなるかといえば、恐らく閉鎖命令というようなことになるのじゃなかろうか、こういう気がいたします。それと、ここでの違反ということも出てくるでしょう。従来、移動事務所関係につきましては、取り締まりというのが非常にむずかしかったのじゃなかろうかという気がいたします。百三十条に「選挙事務所の設置及び届出」についての規定があります。百三十一条に「選挙事務所の数」についての規定があります。百三十四条に、違法な選挙事務所については閉鎖を命ずるということについての規定があります。こういう事例につきまして、実際に選挙事務所をよけいにつくって取り締まられた、検挙された、こういうような例があるのかどうかということにつきまして、警察庁にお伺いしておきたいと思います。
  118. 漆間英治

    漆間説明員 百三十条、百三十一条を御指摘になって御質問がございましたけれども、百三十一条の関係では必ずしも例がないわけではございませんで、前回のダブル選挙ではございませんでしたけれども、過去の選挙を探しますと数件検挙事例がございます。これは選挙事務所の数の問題ですね、数に違反してつくったという検挙事例はございますけれども、それ以外の場合は例がございません。  それから撤去命令違反、これは撤去命令そのものが出たという話を私は聞いたことがございませんので——閉鎖命令ですか、それの違反として検挙した例もないというように聞いております。
  119. 山花貞夫

    山花委員 従来のそうした例を頭に置きながら、実は時間がありませんので、ビラ、ステッカーの関係についてだけ伺っておきたいと思うのですが、この規定によりますとステッカーなどだめになる。そうして、そうなりますと現在張ってあるステッカーについての取り扱いが一体どうなるのか。これは経過規定との絡みもありますけれども、経過規定を含めて御説明いただきたいと思います。  そして、もし守らないものが出た場合には一体どうするのか。ちまたには依然として平然と立て札、看板の制限を無視して大きな看板を出している方もいないではないわけでありまして、どうもその辺の、これは選管の実務との兼ね合いもある、むずかしさがあるかもしれませんけれども、いざこういう法律が急にでき上がる、都会議選挙に間に合わせてというようなことででき上がりますと大変混乱が生ずるのではないかということで大変心配であります。  要するに御質問させていただきたいのは、従来張ってあるものの取り扱いは経過規定絡みで一体どうなるのか。それと経過規定後はがきないといような場合には、その後の手続が一体どうなるのかというようなことについて御説明いただきたいと思います。
  120. 片岡清一

    片岡議員 今回の改正法が成立いたします場合には「公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」こういうことになるわけでございまして、公布から施行の日まで、それだけの余裕があるわけでございまして、この間に従来張っておったもの、また立てておったものは始末をしてもらうということで選挙管理委員会からも注意がいきましょうし、それがどうしても行われない場合には、やはり司法当局で撤去を命ずる、あるいは処置をする、こういうことにならざるを得ないのではないか、こういうふうに思っております。
  121. 山花貞夫

    山花委員 もう時間が参りましたので、その点については、また機会がありましたらいろいろお伺いしたいと思いますけれども、現実にはなかなかむずかしい問題を含んでいるのではないかという気がいたします。従来のポスターの撤去命令、その後、続いて具体的に刑事問題、警察が取り上げたということまであるのかといいますと、そこまではほとんどいってないのじゃないでしょうか。選管の出しっ放しということで終わっている場合が百のうち九十九以上ではないかというように理解をしております。そういたしますと、確かに問題は問題なのですけれども、こうした形で短期日のうちに決着がつくかどうかということについては、どうも私は疑問を持たざるを得ないというのが率直な心境であります。  一応時間が参りましたので、残るところはまたの機会に同僚議員にお願いするとして、私の質問は以上で終わらせていただきたいと思います。
  122. 久野忠治

  123. 伏木和雄

    伏木委員 提案されました法律案についてお伺いをいたします。  選挙法は、もう提案者のお二人には釈迦に説法でございまして、いろいろ選挙法等に長い間携わっていらっしゃる方でございますから十分御承知のとおりであると思いますが、とにかく、この選挙法というのは民主主義の根幹にかかわる問題でございまして、この辺がゆがんでまいりますと出発点から民主主義が崩壊されるという結果になってくると思います。したがいまして、選挙にあらわれてくるところの民意、これがいかに公平にキャッチできるか、この重大な一点を欠かしますと、これはえらい問題になってしまいます。最近はございませんけれども自民党皆さん方民主主義の原則に従って多数決だということで、かつてはしばしば強行採決なんということもございました。採決の結果は多数決ということでありますけれども、その議員の定数というものが公平を欠いておったり、あるいは選挙で選出されてくる方法に不公正があったりということになりますと、この多数決原理ほど今度は逆に非民主的なものはなくなってしまうという重大な結果が起きてくるわけでございます。申すまでもございませんが、よく言われる選挙の五原則といいますか、普通、平等、直接、秘密、自由、この五原則がいかに法制化されているか、また運用面に当たりまして、この精神が生かされているかが非常に重大な問題であると思います。  私、思いますのに現在の公職選挙法というのは、どちらかというと管理、規制の面、運動の規制の面に重点があって、こうした平等あるいは自由という原則に問題点があるのではないだろうかという感じもいたしますが、現行選挙法につきまして提案者はどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  124. 片岡清一

    片岡議員 伏木委員がおっしゃるように、確かに選挙はどこまでも、いわゆる五原則といいますか、普通、平等、直接、秘密、自由、これが完全に守られて行われるということが理想でございましょう。しかしながら、これはなかなか現実の問題としてはむずかしゅうございます。そこで、やはりいろいろの公共の福祉といいますか、選挙民立場からのいろいろな迷惑をされる点は遠慮し、規制をしていかなければならぬという立場もございましょうし、また、できるだけ金のかからないように、お互いにしていこうじゃないかというような合意も必要ではないか、そういう点からの規制というものも必要ではないか、かように思われるわけでございます。  本当に理想的にいくためには、私はやはり個人本位の選挙でなしに政党本位の選挙に移行していくということが望ましいと思うわけでございます。しかしながら、これはなかなか一朝一夕においそれといくものではございません。これは土俵をつくり変えるといいますか、かなり大きな基本的な問題になりますので、十分お互いに各党意思の合致を見なければ、できることではないと思います。そういう意味で、ある程度の規制はやむを得ないものであるということを、われわれも理解しなければならぬと思います。そういう規制なしに、いわゆる政党本位の選挙でなしに個人本位の選挙で、野方図にといいますか際限なく規制をやめてしまうということになると、これはいろいろな弊害が出てきて、かえって公平を欠くし、それがまた選挙を腐敗するもとになる、こういうふうに思いますので、その点はやむを得ないものではないかと思っておる次第でございます。
  125. 伏木和雄

    伏木委員 規制面で改正をしなければならない、その御趣旨はわかるのでございますが、現在政治不信という言葉がございまして、これが選挙の投票率等にも影響を及ぼしているというように言われております。国民の皆さんの政治に対する関心とは逆に、何か政治に参加すること自体が不潔感といいますか、そのような意識があるということはまことに残念だと思いますが、午前中、社会党さんからも御指摘がございましたが、最近も政治腐敗についてはいろいろ国民の批判が高まっております。真の民主主義をつくる上において、もちろん政治資金規正法をなお検討していかなければならないという面もございますし、あるいは、せっかく選挙に参加しておりながら、その選挙を逆に無効の訴えをしなければならない。定数是正等に見られる、選挙法上これは違憲とし、定数の是正のない選挙について無効ではないか、こういう訴訟が起きる。あるいは同じく選挙に参加し、たまたま選挙違反ということで、戸別訪問これは訴訟問題になり選挙法によって取り締まり当局の取り締まりを受けた、それが裁判において戸別訪問は違憲であるという判決が出てくる。このように、ただ運動面だけではなくて現在の選挙法にいろいろな問題が入っておる、こういうところからもスムーズに、ストレートに政治に参画できないというような意思があることも私は事実であると思います。  したがいまして、今回御提案になったほんの氷山の一角と申しますか、この運動面だけをさわってみたところで真の民主主義というものが果たして確立できるか。いわばもっともっとやらなければならない、もっと重大な問題が多く含まれていると私は思うわけでございます。したがいまして、こういう問題につきまして、提案者といたしまして、今回の改正で、もちろんよしとはしないと思いますが、それ以上に重大な問題が今日の選挙法に存在しているという点について、お考えのほどをお伺いしたいと思います。
  126. 後藤田正晴

    後藤田議員 おっしゃるように、本当国民の自由な意思が公正なルールのもとに議会に反映するということは、これはもう理想であろうと思います。そういうような意味合いから、おっしゃるように今日の選挙の実態を見ますと、本当改革をしなきゃならぬ面が私たくさんあると思います。それは選挙区制の問題もあるだろうし、定数の問題もあるでしょうし、あるいは選挙運動やり方の問題、さらには政治資金の問題、いろいろございます。そういった点については、ひとつやろうじゃないですか。これはやはり一つ政治全体の信頼をどうして回復するかという重大な問題ですから、これは政府に任せるというよりは、私は、各党各派の間で本当にフランクに話し合って、そしてやるべき改革をやっていくというのが基本だろうと思います。したがって、私ども自由民主党としては、そういうオープンな態度で本当に野党の皆さん方お話し合いをしてやっていきたい、かように思います。  ただ問題は、選挙法改正というのは、御承知のように各政党の消長にも直ちに影響する、同時にまた議員の運命にも直接響くといったようなことで、なかなか意見の一致を見にくい問題であるということも、これは御案内のとおりだろうと思います。だとするならば、いま、ともかく大方の皆さん方の御意見改正しなきゃならぬという点が、たとえ小さい問題であろうとも、先ほど言ったような大改革をやるまで待とうという選択よりは、やはりやるべきところから手をつけてやっていくというのも一つ方法じゃないでしょうか。そういうような意味合いで今回の御提案は申し上げたんだ、かように御理解を願いたいと思います。
  127. 伏木和雄

    伏木委員 非常に前向きな御意見でございます。早急に基本問題に入って各党間の意見調整というものをおやりいただきたいし、また、私どもからも積極的に御提案を申し上げていきたいと思います。  そこで、その一つですが、今回この運動につきまして、やはり戸別訪問は自由化すべきではないか。これは、よく自民党の皆さん、あるいは政府の方々も、税金などでは国際的比較を出して、わが国はどうのこうのということをおっしゃるわけですが、先進国でもって、戸別訪問を禁止している選挙運動をどこの国でおやりか、ひとつ提案者の御意見を承りたいと思います。
  128. 片岡清一

    片岡議員 われわれも、この問題を煮詰めるときに、いまおっしゃるような各国の事例を見まして、何としてもやはり戸別訪問を自由化しようではないかということで、まず発足をしたのでございますが、しかし、だんだん煮詰めていく間に、いろいろの問題が出てまいります。  その間、たとえば訪問の時間とか、あるいは人数、あるいはその訪問先というようなものを限定してやる行き方を考えようじゃないかという点でも、いろいろ検討をいたしたのでございますが、しかし長い間いままで日本の国の慣例で、これが禁止になっておったということから、これが一挙にせきを外したように、これを自由にするということになると、これはどんなことが起きるかということを考えると、ちょっとそら恐しいものがあるのではないか。訪問を受けなければもう選挙はしない、投票しないというようなことになってきますと、これはもうむしろ選挙というものが戸別訪問というものを本体にして展開されていく、こういうことになりますと、これはまた訪問を受ける側の方も大変迷惑するのじゃないか。  それからまた、これに要する費用あるいは規模。規模がだんだん拡大していきますと、まことに費用も相当莫大なものになるであろうし人員も相当大きくふえてくるだろう。そういうことになることが果たして望ましいことであるかどうか。そして、これがますます競争が激化してくるということになりますと、やはりそこに何とも言えない一つの弊害が出てくるように思われるわけでございます。  そして国会議員の選挙でも市町村会議員の選挙と同じようなことになってきて、範囲が広い上にそういう細かい点まで配慮しなければならない、実行しなければならない、こういうことになると、やはり弊害の方が大きくなるのではないか、こういうことで、最初いろいろ検討いたしましたが、結局、今回はこれを外すことに一応皆の合意を得たわけでございます。
  129. 伏木和雄

    伏木委員 私は意見を異にしておりまして、選挙民が一番選挙に参画できるのは戸別訪問である、このように理解をいたしております。何か選挙を自由にすると大騒ぎになって、右往左往と大ぜいの人が動き回ってなどというのは少し選挙民を軽視しているのじゃないか。もっと選挙民の意識というものは高いと私は思うのです。  ただ、運動面においてある程度の規制というものがあることは、これはやむを得ないと思います。しかし、個人の活動というものは極力自由化すべきである。時代が変わってどんどん近代社会になりまして、いろいろな機動力とか、あるいは機械力こういうものが発達をしておりますから、これを無制限にしておきますと、それこそ車何百台というようなことにもなりかねないし、印刷機は徹夜で輪転機を回しておけば人力をかりずに幾らでも印刷はされますし、こういう機械あるいは機動力、機器ですね、こういったものを使用するものについては、おのずから公平という意味から規制ということが若干必要ではないかということは私も思います。しかし、個人自分の意思で行動し、自由に言論を用いていく、この点を規制したのでは、やはり選挙の原点が崩れてくるのではないか、私はこのように思います。  今回提案にはなりませんが、今後この点につきましてもいろいろ御議論をしてまいりたい、このように考える次第でございます。残念ながら先進国で戸別訪問を禁止しているのは、わが国だけでございまして、その点では一番おくれた選挙法であるということを御自覚いただきたいと思います。同時に裁判で、これも無罪の判決が出ております。ちなみに戸別訪問に対する判決は、ちょっと記録は置いてまいりましたが、裁判でも無罪の判決は出ております。この点は御承知のことであると思います。  そこで次に伺いたいのは、これも最も早急に、もう次の選挙に間に合わせなければならない、参議院の地方区の定数是正と衆議院のこれまた定数是正であります。この辺について、これは基本にかかわる問題だから、のんびりとというわけにはいかないと思います。もう二回、三回、選挙をやるたびに、ここ三回ほど続けて訴訟問題が起きております。しかも最近、御承知のように東京高裁では衆議院の定数についての違憲の判決も出ておりますし、これは院みずからが、こうした判決に対して早急に検討をしなければならない課題であると思いますが、これはただ一般論として、あるいは基本にかかわる問題だから時間をかけてということではなく、当委員会において、もう可及的速やかに、この定数の問題の真剣な討議に入るべきだ、こう私は考えますが、いかがでございましょうか。
  130. 後藤田正晴

    後藤田議員 定数の問題ですが、確かに今日アンバランスがございます。余り極端なアンバランスがあることは適当ではない。同時にまた、参議院と衆議院の場合は定数是正についての考え方は違ってしかるべきである。同時にまた、定数を決める場合に、特に衆議院等の場合においては人口というものを重要なファクターとして考えなければならぬ、こういうことも私はよくわかります。  しかし、ただこの問題は、私は実は定数を決めるのは人口だけではないと思いますよ。従来の沿革あるいは地理的な条件、住民構成、産業構成、面積の広狭、いろいろな問題がございますから、そこらを含めて当然考えなければならぬ問題であろう。ことにまた、裁判所の判断を待つまでもなく、これは国会の、立法府の裁量権の問題ですから、国会の中で議論をしてやるのが正しいので、私は、裁判の判決は、午前中お答えしたように理論的におかしいと思っているのですよ。これは私個人意見ですけれどもね。しかしアンバランスがあること、極端なのはよろしくないから国会で取り上げてやるべきであろう。  ただ、御承知のように選挙法改正する場合に何が一番厄介かといいますと、これは選挙区の区割りの問題、よくゲリマンダーというのが出てきますね。だから、なかなかこの問題は口で言うほどやさしい問題ではありません。ことに去年の十二月の東京高裁のような判決、それは机の上で絵をかいたら、あんなこと言えるかもしれませんよ。しかし、二対一ならばいけないとか、三対一ならどうとかという議論もこれはおかしい。基準を何に置くかということ自身から、これは大変厄介ですね。投票価値の平等というなら一対二だって、これは不平等ですよ。だから、そこらに大変厄介な問題がある。  しかも、あの判決のように総定数の枠内でやりなさいなんというようなことを言われますと——事実、改正するとなっても私は総定数をふやすなんということはやってはいかぬことだと思います。避けた方がよろしい、こう思いますね。そうすると、その範囲内でやるとなると百三十の選挙区の中で百動くわけですよ。それが果たして現実政治の課題として解決できるのかということになると、この問題は単なる定数是正の問題ではない。定数是正だけで解決できる筋合いのものではない。これはやはり日本選挙制度全般の改革を行う、その際に、こういったようなものも頭に含んでおいて、そして改正を考えていくというのでなければ事実不可能じゃありませんかということを私はかねがね主張しているわけでございます。  したがって私自身、別段アンバランスが余りにあり過ぎるのがいいなんてちっとも考えておりません。しかし、それを現実政治の課題でどうすればいいんだということ、ここは各党の間で慎重にお話し合いをするのが肝心なことではないのか。そして裁判所なんというものの判断を待つまでもなく、立法府において解決すべきであろう、かように考えるわけでございます。
  131. 伏木和雄

    伏木委員 私は、東京高裁の判決は当然のことだろうと考えております。四・五対一というようなのは、冒頭申し上げましたように民主主義の根幹にかかわってまいります。多数決という、議員の頭数で物を決めるのであるならば、その議員を選出する基本になる定数が、このような大きなアンバランスがあったのでは、これは多数決原理に反していく、どうしても定数は是正すべきである。  こう申し上げますと、また自民党さんは、選挙制度の問題がどうのこうの、こう言うかもしれませんが、まず今日、中選挙区制、わが国の歴史といい、あるいは、このような多党化の時代といい、当然中選挙区制がわが国には一番適している、私はこう思っておりますが、歴史的にも、わが国の多党化の政党状況の中からも適している中選挙区制を基盤としている現行選挙制度、これを基盤とするならば、その基盤の上に立った定数の是正を速やかにやるべきではないか。  自民党さんもきついのは私どももわかるのです。自民党さんの得票率の高いところほど定数が多いのですよ。自民党さんが得票率が低いところほど定数が厳しいのですね。ですから、たとえば自民党さんが二〇%くらいしかとれないようなところは定数は少なくしておく。これは他党へいく票ですから、他党へいく議席になりますから、そこは極力定数を抑えておいて、そして自民党さんがたくさん票をとれる、五〇%、六〇%という得票率のあるところ、そこは極力定数を広げておこう、こういうお考えが根底にある。そうやって政権を維持していこう、こういうことではないかと思います。四十数%で五五%からの議席数をおさめてしまう。それは選挙制度の問題ではなくして現行定数に問題があるので、このように民意が公正に反映してこないという結果が出てきているわけでございますので、定数については積極的に今後御検討いただきたい、このように考える次第でございます。  時間も余りありませんから、法案中身について若干伺ってまいりますが、改正案の第三に看板の数の制限が出ておりますが、これは政令で定めるという、大体どのくらいかということは御検討されておるのでしょうか。
  132. 片岡清一

    片岡議員 前の臨時国会の終わりのころの、この問題を提起するときの理事懇でもいろいろ話し合ったわけでございますが、そのときも具体的な数は出ませんで、これはひとつよく各党と連絡、話し合いながら決めることにしようじゃないか、こういうことで具体的な数字は出ておりませんでしたことを御了承願いたいと思います。
  133. 伏木和雄

    伏木委員 ここに言う看板というのは公職の候補者その個人の名前が入った看板ですか。個人の名前に一切関係のない団体これもやはり、この看板の対象に入るのでしょうか。
  134. 片岡清一

    片岡議員 個人の名前があろうがあるまいが、後援会の名前が出ておるものはいけないわけでございます。それから、その連絡所、事務所の所在地、そういうものを規制しておるわけでございます。
  135. 伏木和雄

    伏木委員 そうなってまいりますと、個人の名前が入っておらぬで、団体がたくさんある、そこに支部をたくさん設けているというところも、個人の名前が入らずに何々会、何々政治協議会何々支部という団体名だけでも対象に入れるということになりますと、たくさん支部を持っておるところは看板も出せなくなるという危惧はないか、その点はどうお考えでしょうか。
  136. 片岡清一

    片岡議員 一つの後援会でたとえば立て看板十本、そういうことで昭和五十年のときは決まっておったわけでございます。これは御承知のとおりでございますが、その後いまお話しのようないろいろの名前を使って、そして後援会、連絡所の数をあちらこちらとふやして、それでもう際限ない立て看板のはんらん、そういう事態が起こってまいりましたので、総数で規制をしよう、こういうことになったわけでございます。したがいまして、国会議員の場合、府県会議員の場合、市町村会の場合ということで、おのおのその選挙区の広い狭い、その他その重要性等をいろいろ勘案をして、それぞれの選挙に適応した総数規制をする、そういうことで御相談をしたいと思っておるわけでございます。
  137. 伏木和雄

    伏木委員 その規制というのは、あくまでも個人の名前をたくさん掲げるというところに問題があったんではないかと思いますが、個人の名前が書かれていない何々会、何々協会あるいは何々連絡会というような、個人の名前が入ってないのまで規制をするという必要が、私は全く考えられないと思うのですが、これはまだ政令で定められるところでありますので、お考えになった方がいいんじゃないかと思います。
  138. 後藤田正晴

    後藤田議員 その点は従来から同じです。別段個人の名前でなくても、何々後援会とかいろいろな名前をつけていますね。実際、率直に言いまして政治活動をやるのに、いまの立て看板いっぱいありますね、あんなに看板なくても政治活動はできるんですよ。あれは実際は選挙運動まがいであることはきわめて明瞭なんです。そこで、これが乱に流れているから、そこを抑えようというわけなんですから、その看板の種類その他については従来とちっとも変わっておりません。
  139. 伏木和雄

    伏木委員 次に、第四のポスターの掲示場についてですが、これは地方は地方の条例等で定めるようにはなっておりますが、実際問題として政令都市ぐらいまでで、それ以下の選挙については、地方団体が一つのところへ掲示場をつくるというのは全く不可能じゃありませんか。たとえば東京の大田区ですと、区会議員さん五、六十人いるんじゃないかと思いますが、候補者を入れて七、八十人になると思いますが、そういう七、八十人分のポスターを一カ所に掲示できるようにするとか、定数が四十人、五十人いる地方議会が一カ所に候補者全部のポスターを張り出すなんということは、実際不可能な問題だと思いますが、この点、いかがでしょうか。
  140. 片岡清一

    片岡議員 おっしゃるとおりでございまして、たとえば参議院全国区でありますとか、多数の立候補が予想せられるような選挙、そういうところでは実際上それはなかなか実行ができない、こういうことでございます。したがいまして、それぞれの団体の自主的な判断でやることにしてもらうわけでございまして、現在都道府県会議員の選挙では二十九団体がやり、市町村議会議員の選挙では三百七十二団体が採用いたしておるわけでございます。そういうことでございますから、地域の実情に応じて各自治体が判断をして決める、こういうことになるわけでございます。
  141. 伏木和雄

    伏木委員 次に第五の一定の場所で長時間という問題ですが、これはだれが認定するのですか。一定の場所で長時間にわたらないように、こういう法律をつくってみても、だれが、これを一時間以上だとかどうだとかいうことを決めるのですか。
  142. 片岡清一

    片岡議員 これはもともと取り締まりの規定というよりも、お互いに良識を持って話し合っていこうという一つの訓示規定でございます。したがいまして、成果が上がるかどうかは各候補者、各党が良識を持っておるかどうかということに帰着すると思いますので、これはどこまでも、ひとつそういうことでいこうじゃないかと、お互いに良識を持ってこの問題を処置していきたい。それは一時間とか二時間ということを決めてみても、たとえば総理とか委員長とかいう場合には、そう簡単に一時間で切るわけにもいかぬだろうと思いますし、それぞれの場合によって実情が違うと思いますので、その都度お互いに話し合っていくということにしたいものだなと思っておるわけでございます。
  143. 伏木和雄

    伏木委員 こういう余りわけのわからないことを法律に字を書きますと、お困りになるのは取り締まり当局です。先輩のお二人が現場を混乱させるような結果になるのじゃないかと思いますが、これはもう実際何の効用も出てこないと私は思うわけでございます。  第六番目のいわゆる拡販車でありますが、これも冒頭申し上げましたように、余り数が出てくれば当然規制の対象にはならざるを得ないというごとも私ども理解はできるのでありますけれども、こういうものをつくりますと、また、ほかのものが出てくるということは、今日の選挙制度から、もう追いかけごっこみたいな感じがあるのです。大体拡販車をなくすというのは、先ほどお答えにもありましたけれども、私は騒音ということも考られているのじゃないかと思いますが、騒音ということから考えますと、これがなくなっても、ほかの方法が出てくれば結局同じことになるのではないか。と申しますのは、御承知のように選挙になりますと、政治団体以外の団体が、何々組合とか何々消費者団体とか、あるいは健康保険組合であるとか、いろいろな団体が、それぞれ推薦をする候補者の宣伝活動といいますか、これが行われているのが現状ではないかと思います。こういう政治団体以外の団体が、その団体が推薦する候補者の政策あるいは反対する政策、反対する政党、こういうことを選挙期間中に行うというようなことにつきましては、現在は何ら取り締まりの対象になっていない、こう考えますが、この点はいかがでございましょう。
  144. 後藤田正晴

    後藤田議員 先ほどお答えしましたように、政治団体以外であっても副次的に政治活動をやっているということになりますと、これは選挙まがいの車であるということになるわけですから、やはり規制の対象になります。  ただ、伏木先生のおっしゃったように、次から次へ出てくるぞというのは本当に現実を踏まえての御議論だと思いますけれども、しかし、さればといって、御意見にもありましたように、多少の規制はしようがないじゃないか、大変ありがたい御意見だと私は思うのです。本当にいまのままではどうにもなりませんね。そこで、どうにもならぬものを今回こういう形で抑えようじゃないか。しかし、われわれも立法過程で、また次に悪知恵を出すのがおるなということぐらいはちゃんとわかっているわけです。しかし、それがまた選挙の公正を害する、あるいは選挙公害と言われるところまでなってしまう、あるいは金がかかり過ぎるということになれば、その段階でまた御相談しようじゃないですか。これはいま余りにもひどくなり過ぎておりますから、そこをとりあえず抑えていこう、こういう趣旨でございます。
  145. 伏木和雄

    伏木委員 新しい方法が生まれてくる、私は決して悪知恵などとは思わないのです。皆さん一生懸命おやりになって、それぞれの党を表徴しようということでおやりになるわけですから、ただ規制規制と言ってもそう効果は出ない。だからといって何もかも規制を加えてしまえば、これは民主主義の上から重大な問題になりますから、むしろ余り規制はせずに、自由な運動の方向ということを私ども選挙法上は考えていかなければならないのではないか、このように考える次第でございます。  最後にお伺いしますが、自民党さんの当初の原案が出たときには、連座制で、同居の親族は意思を通じているものとみなす、こうあったわけでございますね。その部分が削られてしまったというのは、どういう理由でございましょうか。
  146. 後藤田正晴

    後藤田議員 おっしゃるように、最初そういう意見が出ておりました。ただ、いまの処罰規定のたてまえ上、同居しておっても独立人格ですね。それを意思の推定までやって、そしてそれを処罰していくというのは、これは現在の処罰法規の理論の上からも多少問題がありはしないかといったような強い意見が出まして、これは取りやめた方がいいのではなかろうか。同時にまた、実態の問題としても、これはレアケースだと思いますけれども、家庭の中にいると案外おかしな考えの人だってなきにしもあらずだ、それはうっかりすると、かえって選挙の結果に重大な影響を及ぼすおそれが出てきはせぬかという、そういう現実面から意見があったのです。そういったようなことで現実の面でも、そんなものはネグってもいいんじゃないかなと私自身も考えましたけれども、しかし、これは絶対ないとは言い得ないなということが一つあった。それと同時に、理論的にも少し行き過ぎになりはせぬかなということで今回のような御提案に原案を改めたわけでございます。しかし、この問題はやはり私は引き続いての一つの検討課題である、かように考えております。
  147. 伏木和雄

    伏木委員 私は連座制につきましては、当初自民党さんが原案としておった案にすべきである、それでないと連座制の意義がなくなってしまう、このように思う次第でございます。  法案については以上ですが、こちらから一、二要望といいますか提案といいますか、それは、今回の改正案で拡販車を仮にこのように制限する以上は、政党活動として政党の宣伝カーですね、政連車と申しますか、現在候補者二十五人以上に三台、十人ふえるごとに一台ですか、衆議院ではこのようになっておりますが、この政党の車、これをもっとふやすべきではないか。それこそ先ほど来何回か言われておりますように、政党本位の選挙に移行していこうという以上は、政党が積極的に、支持する候補者、推薦した、公認した候補者を応援するという形で政策活動、選挙活動を政党自身ができるように確認団体の車をふやすべきではないか、こう考えますが、この点いかがでございましょうか。
  148. 後藤田正晴

    後藤田議員 この原案作成の過程におきましても、そういう議論もございました。同時にまた、選挙運動用の自動車、あれについてもふやしたらどうだといったような意見もございました。しかし、今回の改正はいろいろな要素が入っておりますが、その中の一つに、できるだけ金のかからぬ選挙ということが大きな柱になっている以上、ここでまた車をふやすというのはいかがなものか、こういう議論が出まして、それで原案のようになったわけです。この点もやはり将来の一つの検討課題だ。  実は、今度の改正案だけでないのです。たくさんの問題が党内ではございまして、それらで意見がなかなかまとまらない、甲論乙駁あるというものは、それでやめたというのではなくて、引き続いて検討していこうじゃないか。同時にまた、これは竹下会長の御意見ですけれども選挙法といものはできるだけ安定した方がよろしい。よろしいが、やはり不磨の大典ではないのだ。だから一つ一つできるものからやっていって、そのときに間に合わなかったものは、その次の機会にやってもいいんではないのかといったようなことで今回の案が出てきておるわけですから、たくさんほかにも問題がございます。これらは私どもも引き続いて党内で検討し、同時にまた野党の皆さん方とも十分お話し合いをさせていただきたい、かように考えております。
  149. 久野忠治

    久野委員長 岡田正勝君。
  150. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 まだ、わが党は意見を詰めておりませんけれども、当面疑問に思っておりますことにつきまして種々質問をさせていただきたいと思います。一部重複する点がありますが、お許しをいただきます。  まず第一に、先ほどの質疑応答の繰り返しの中で大変気にかかる問題が一つありますので、本案に直接関係のないことでありますけれども、お尋ねをしておきたいと思います。  参議院全国制度の問題につきまして、比例代表制度を自民党におきましては総会にかけるところまで現在立ち至っておるというお話でございました。しからば、それを提案するつもりか、こういう質問に対しまして、いまのところ、ありませんということじゃなかったかと思いますが、いかがですか。その点の答弁をもう一度はっきりと。
  151. 後藤田正晴

    後藤田議員 先ほどお答えしましたのは、党内で、参議院での御意見が済み小委員会議論が済みまして、総会でこれから検討するという段階になっております。その上で党内がまとまれば野党の皆さん方とも十分御協議をさしていただいて、その上で、できるだけ早い機会に改正をいたしたい、かようなことでございます。
  152. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、くどいようでありますが、もう一度聞いておきたいと思いますが、間もなく総会にかける予定である。その総会でまとまれば野党の皆さんとも十分協議をいたしましてというお答えであります。総会でまとまるというのは間もなくまとまると思いますので、次の段階の、野党の皆さんと十分協議をいたしましてというのは、どの程度のことをおっしゃっているのか。手順の関係も含めて、その意思を表明してください。
  153. 後藤田正晴

    後藤田議員 いまの御質問の中に、与党の中ではまとまるだろう、こういうことでございましたが、それは必ずしも私はそう即断をいたしておりません。やはり大変重要なことですから、いろんな御意見が初歩的な意見から出てくると私は思いますから、それをできるだけ、いまの原案でまとめていきたい、こういうことでございます。まとまるかどうかは議論してみなければわかりませんが、ともかくまとめる努力を必死になってやります。  そして、それと相並行してと言うと少し問題があるかもしれませんけれども、まとまればと言った方がいいのかもしれません。やはり選挙法改正というのは選挙のルールづくり、土俵づくりですから、与党だけでやるべき筋合いではないんじゃなかろうか、これは私個人意見でございます。やはりできるだけ野党の皆さん方との話し合いもさせていただいて、ある程度の御理解を得た上でなければ、これはやるべくして、そうなかなか簡単なものではなかろう、これは私自身の今日の考え方を述べておるので、そこまで議論自民党内では詰めておりませんので、はっきりしたことは申しにくい、かようなことでございます。
  154. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは一つだけ確認のために申し上げておきます。  これから与党の皆さんと総会にかけて御相談をなさるわけでございますが、その総会において意見がまとまれば、野党の皆さんと、共通の土俵づくりですから十分なる協議をいたしてまいりたい。ある程度の理解を得たならばということで、やはり提出をなさるという御意思は変わりがないようであります。そこで日程的な問題でありますけれども、本国会に間に合わそうというようなおつもりはないわけですか。
  155. 後藤田正晴

    後藤田議員 これは私、先ほど言ったように、できるだけ早くまとめたい、こう思っております。それがいつになるかというのは、これはなかなかむずかしい御質問でして、そこまでは私どもとしてはまだ議論が詰まっておりません。  ただしかし、言い得ることは、参議院選挙は五十八年にあるわけです。そうすると全国区の選挙というのは少なくとも一年や一年半、場合によっては二年ぐらい前から、改正すべきであるならば改正しておかぬと、もう次の選挙の準備が始まりますから、そこらを逆算してきて、そして何とかこの改正案だけは取りまとめていきたい、こう考えておるということでございます。したがって、いつどうなるかということは、まだ今日の段階で私の口からは明言申し上げる段階に至っていない、かように御了承願います。
  156. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは内容につきまして順次質問をいたします。  立て札、看板の総数については政令で定める、これはまた各党と御相談を申し上げましてというようなことをおっしゃっておりましたが、たしか、そうだと思うのですね。各党と御相談を申し上げましてという限りにおきましては、提案者としての腹案をお持ちであろうと思うのです。現在、御承知のように候補者本人について十枚、それから各後援団体それぞれ十枚、これが無制限にたくさんの後援会ができるものですから何百という看板が乱立をする、これをひとつお互いに自粛しようではないかということが御提案の本旨でございますが、ただ政令でその総数を定めるということだけでは、実際に選挙をやっておるわれわれといたしましては、一体これはどうなるのかいな、どのぐらいのことを考えておるのかなということがわからぬずくに法案の審査を進めるということは、これはちょっと乱暴ではないかと思うのです。腹案がおありならば、この際御提示願いたい。
  157. 片岡清一

    片岡議員 これらの問題は大変重要な問題でございますので、自由民主党だけで独断で大体これぐらいというようなことも言うのは行き過ぎであろう。まずやはり第一回の皆さん方との懇談をやって意見の交換をして、その中へあらわれた段階において決めていこうというふうに思っておるのでございまして、まことに権威のない話だとおしかりを受ければそれまでの話ですけれども、それほどきわめて率直にフェアに考えていきたい、かように思っておる次第でございます。
  158. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 よくわかりました。  次に、看板の問題でありますが、「後援団体を通じて政令で定める総数の範囲内とする」こうなっておりますが、これは各級選挙ごとに、その総数を定める御意思であるのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  159. 片岡清一

    片岡議員 そのとおりに考えております。
  160. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大まかに言いまして、各級選挙ごとと申し上げましても参議院全国区から村会議員の選挙まであるわけでございまして、大まかに分けて、たとえば政令都市以上はこう、それ以下はこうというような決め方をなさろうとしておるのか。ランクといいますか、その大まかなランクもお考えになっておりませんか。
  161. 片岡清一

    片岡議員 国会議員でも、今度全国区がどうなるかという問題はありますけれども、現行法では全国区については百枚ということにいまでもなっております、五十年度の法律改正で。したがいまして国会議員の段階においても、全国区と地方区それから衆議院の段階でも、やはり同じにするというわけにはいかぬのじゃないかなと思っておるわけでございます。それから、まだ私は十分話し合っているわけではございませんが、府県会議員の場合でも府県の大きさによって、やはり若干考慮は要るのではないかなとも思っておりますし、こういう点きわめて自由に討論をしていただいて、まだお話し合いをしたい、かように思っている次第でございます。
  162. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 といたしますると提案者の御意思をちょっとここで伺っておきたいのでありますが、これはスケジュール的なことであります。  たとえば、この法律案が成立したとします。成立したといたしますると公布に至るまでの間に各党との間で、いまのようなまだ決まってない判然としないような問題について協議を重ねていくということになるわけでありますが、やはり一つの問題は、目標を設定していらっしゃることから考えますと、途中の段階になると、ええいもうめんどうくさい、自民党の思うとおりにやるんだ、賛成多数で決めてしまおう。各党で協議をいたしたいと思うというのは何にも法的根拠はないわけですね。だから御連絡をしたけれども、おたくの党は出席せぬかったから、もうそれっきりなんですということもあり得るわけであります。ということになると、いわゆる自民党さんの思惑と腹づもりとによって、どんどんとブルドーザーのように事は進んでいくのではないかと思いますが、法案が成立するまではまことに低姿勢で、ソフトでよろしいのでありますけれども、済んだ後は、がらっとよろいが出てくるのではありませんか、いかがですか。
  163. 片岡清一

    片岡議員 われわれはそういうことは考えておりませんで、きわめてフェアに、そしてこれはおっしゃるとおり、ある程度なるべく早くお話し合いをした方がいい、こういうふうに思っておりまして、参議院へ行っておる間に話し合うとか、いろいろな余地は十分あると思いますので、またぜひ御相談で円満に決めたい、かように思っております。
  164. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次にステッカー、いわゆる俗に言う裏打ちのないポスターのことについてお尋ねをするのでありますが、これがはんらんしている、何とか自粛をしたいという気持ちもよくわかるのであります。ただ、実施に至ってから後々また問題が出てもいけませんので、この際、明確にしておきたいと思うのでありますが、ここに書いてありますのは「公職の候補者等の氏名等又は後援団体の名称を表示する」というふうな文句を書いてありますね。ということになりますと、私のような単純な人間から言いますと、この氏名それから団体の名称、それさえなかったらいいのか。  私、先ほどからいろいろ御意見を聞いておりますと、どうもわかったようなわからぬような、どうなったのかなという感じがするのでありますが、たとえば、さっきはカラーの問題なんか出ておりましたね。もうちょっと、はっきりしたことを申し上げますと、たとえばスローガン、私ども民社党で言いますと、民社党では「知性と勇気の民社党」なんというようなスローガンがあるわけですね。そういう「知性と勇気の民社党」その下にたとえば岡田なら岡田と書けば、これは氏名じゃないですかということをおっしゃるのでありましょうが、その岡田もごく小さく書いてある、まことに遠慮して書いてあるというような場合、そばに寄って見なければよくわからぬという、こういう問題の場合は一体どうでしょうか。その次に、今度はスローガンと政党名だけだったらどうなのか。それからスローガンだけだったらどうなんですか。それから政党名だけだったらどうでしょうか。この四つの部分に区切って、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。  もう一度繰り返しますと、スローガンを書いて政党名を書いて候補者たるべき者の名前が書いてある、それも遠慮げに書いてある。それからその次は、名前を抜いた分、その次は政党名を抜いてスローガンだけ。それから今度は政党名だけ、民社党なら民社党だけ書いてあるものは一体どう思われますか。そのことから先にお答えください。
  165. 片岡清一

    片岡議員 いずれも事務所及び連絡所を表示するものであることが——それぞれのものを書いたもので連絡所あるいは後援会の名前の入っているもの、こう言っておるのでございまして、いま御指摘のようなものは余り該当しないのじゃないかと思います。  ただそれが、先ほどからいろいろ問題になっておりますように非常に微妙な点がございます。単に名前を売るためのものであった場合には、やはり事前運動の一種に紛らわしいものになる場合がございます。これらの問題については、午前中も申し上げておったのですが、現実の問題でケース・バイ・ケースで判断をする以外にないんじゃないかということでございましたが、統一見解を出せという御指示がございましたので、いまそれをつくっておりますから後刻申し上げたいと存じます。
  166. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、いまの私の質問に対しましては、まずいいだろうと思うけれども誤解があってはいかぬので後ほど統一見解をお示しいたしましょうということで理解しておってよろしいですね。——それでは、その次の問題に入ります。  これも同じような問題でありますが、よくありますね、相談所。私どもも、市民の各位が相談事がありましても、私どものように、こんにちはと言うて、いらっしゃい、どうぞどうぞと三回言ったら裏へ抜けちまうような小さい家では目立ちません、りっぱな屋敷ではありませんから。どうしてもやはり、相談所ですよ、いつでもいらっしゃいという、この紙の倍くらいの程度の看板でありますが、そういうものをよく相談所として出しておるのですよ。この相談所というのは、一切そういうものもいかぬ、これは外してもらいたい、こういう御意向でしょうか。
  167. 大林勝臣

    大林政府委員 御質問は、今回の改正に直接関係することではなくて、本来、現行法におきます立て札、看板がおっしゃるような形態の場合にいかがであるかということと共通いたしますので、私どもの方からお答え申し上げたいと思います。  百四十三条の第十五項では、大前提といたしまして「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者の政治活動のために使用される」云々とあるわけであります。したがって、その政治活動のために使用されない看板というのは実は初めから対象外でございますが、問題は、市民相談所という看板が政治活動のために使用しておる看板であるかどうかの認定の問題になってまいると思います。  極端に申しますと、いわゆる政治家の方々が御自分で別途職業をお持ちでございまして、たとえば何とか経済研究所であるとか、あるいは弁護士事務所であるとか、いわゆる社会一般の職業を別途やられておる場合に、弁護士事務所というような看板をかけることにつきましては直接本問題と関係はない。ただ市民相談所ということになりました場合には、実際問題として市民相談というのを政治活動の一環としてやっておられるに違いないと認定される場合の方が多いであろうと私どもは考えておりますので、政治家の方が市民相談所という看板をかけられる場合には、証票をお願いいたします、つまり、この規制の範囲内でございますというお願いをしてまいっておるわけであります。
  168. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは大変重大な問題ですが、候補者たるべき者の名前も何にも入ってない、しかし、よろず相談所的に皆さん方の御相談に、いついかなるときでも応じましょうという相談所を、たとえば民社党相談所とか、あるいは市民相談所民社党なら民社党と書いてあるだけのいわゆる案内板みたいなもの、表札がわりのもの、そういうものはだめなのですか。
  169. 大林勝臣

    大林政府委員 ただいまお答えいたしましたのは、当然に御質問の前提を、だれのだれべえ市民相談所という前提でお伺いしたものですから、先ほどのようにお答え申し上げたのでありますけれども、この百四十三条の十五項というのは「公職の候補者等の政治活動のために使用される当該公職の候補者等の氏名又は氏名が類推されるような事項を表示する文書図画で」という大前提がございますので、名前の書いてないものは、この中には入っておりません。
  170. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは次に入らせていただきます。  ポスターの掲示の問題につきまして、都道府県であろうと市町村であろうと三つの方法がとれる。任意制で法定数だけ張れる場合、一部掲示場を設ける場合、条例で掲示場だけにとどめてしまう場合、この三つの方法のどれでもお好きな方をおとりなさい、こういう非常に御親切なことを今度言い出したわけでありますが、こんな親切なことを言い出す限りにおきましては、一投票区につき五カ所ないし十カ所以内においてという数を入れていらっしゃいますが、これは何か根拠か自信があるのですか。
  171. 片岡清一

    片岡議員 それは衆議院並みに考えておるだけでございます。
  172. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 衆議院並みの個所数ということで親切にこれを規定してあるのだ、こういうのですが、親切にこの規定をする以上は、いやしくも国会議員が集まって、この法律をつくるわけですから、それほどの親切があるのなら公営費用、いわゆる掲示板をつくる費用は、この法律が適用されるときからは、すべて公営でやってあげましょう。たとえば、それはその市町村だけが金を出すのではない、都道府県だけが金を出すのではない、それは交付税に上乗せして公費をもって充当するというような措置をとってあげましょうというようなところまで、ちゃんと裏打ちをしてあるのでしょうね。
  173. 大林勝臣

    大林政府委員 条例で定める市町村におきましては、今後は当然に、そういう経費負担ということが起こってまいるわけであります。交付税上の措置と申しますのは、従来、全国的な統一的な問題について交付税の内容に盛り込んでおるというのがやり方でございまして、したがいまして、現在すでに任意制ポスター掲示場という制度もございます。また、相当数の任意制ポスター掲示場あるいは任意制の立会演説会であるとか任意制の選挙公報、こういうものを選挙のたびごとに実際にやっておる地方団体も相当ございます。相当ございますけれども、そういうものを採用するかどうかは、まず条例で決めていただかぬといかぬ。しかも、全国的な統一的な施策というものでもございませんので、交付税上の積算というものが非常にむずかしいという問題がございまして、現在でもまだ交付税の段階には至っていないわけでございます。
  174. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そういう答弁をいただくと、もう一つ聞きたくなってくるのでありますが、市町村に至るまで全国的に掲示場で掲示するのだということになれば交付税の対象にしやすい、これはよくわかります。わかりますが、そういうことは横に置いておいて、わざわざ法律で、こうしてもよろしいのですよと打ち出していくということは、言うならば勧めることでしょう。各地方自治団体にお勧めするわけでしょう。メニューをつくってお勧めする限りは、交付税で全国的に一律にやるのではないからということであるならば、言葉を返すようですが、補助金を出してやるべきではないのですか。少なくとも法律によってメニューをこしらえて、それを採用することを勧める以上は、私はその裏づけが何にもなしにやらせるということはいかがなものかなと思うのですが、どうでしょうか。     〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕
  175. 片岡清一

    片岡議員 公営の範囲をだんだん広げていくということは望ましいことでございます。したがって、このポスター掲示場についても、やる以上は、それまでめんどう見てやるのが、規格を定める、メニューを定める一つの親切ではないか。ことに議員立法でやるなら、それくらいやれという御趣旨についてはよく理解できますし、われわれも、できればそうしたいと思うのです。  ところが、どこまでこの公営を徹底してやるかということは、将来の大きな問題だと思います。したがって、市町村、府県のところまでめんどう見るということになりますと、はがきを出すことについてもやらなければならないとか、いろいろな問題が出てまいりますので、いままでは、これは自由に選択をしていただくわけだからということで、そこまで考えていなかったわけでございます。
  176. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次に、いまの長時間にわたって同一場所で云々というのですね。先ほどの御質問に対してのお答えは、これは取り締まり規定ではなくて訓示規定でございますので、そこはお互いにフェアに、紳士的に、明朗な選挙を目指して考えようではないかという御説明でございましたが、そういう守れぬようなものなら、わざわざ挙げぬでもいいではないかと思うのですよ。訓示規定だからとおっしゃっておりますけれども法律というのはつくってしまったら、つくったとき、つくった人の意思に反して、その法律が勝手に歩き出すことがよくあるのですよ。それでとんでもない不幸な事件が起きることがよくあるわけでありますが、できれば余り選挙運動というものは規制が多くなくて自由に濶達にできるのが一番いいのであります。  ですから、ここに何のために長時間同一場所をということを書くんだろうかな、こういうように思うのです。しかも同一場所と言いましても、同一場所というのは点なんですか、面積なんですか、これは何を指しているのでしょうね。これも私はよくわからないのです。出された人のお考えを私が推定して言うならば、恐らく、たとえば駅前なら駅前のいいところを長時間にわたって占拠している、何遍行って演説をしようと思っても、いつまでたってもあかない、まことに腹が立ってかなわぬということが、やはりこれに出ておるのかなと思うのです。しかし、警察もどうしようもない、だれも文句の言いようもない、何もしようがないというようなものをわざわざ決める必要があるのでしょうか。その真意は何かということをちょっと聞かしてください。
  177. 片岡清一

    片岡議員 真意はどこまでも、ひとつ選挙お互いにフェアにやっていこう、これを取り締まりの対象にして、そして時間を決めてやる。いまおっしゃるように線か面かというと、これは線である場合もありましょうし、そこら辺ということで面でいく場合もあると思うのです。同じ場所でも非常に線的に、点的に、そこの場所がいいというところもありましょう。そういうことで、これまた規制を大変厳重にする、そして処罰の対象にするということになりますと、この決め方が非常にむずかしい。そうかといってお互い選挙を戦うのですから、真剣勝負ですから、おれは一歩もそこは譲れないんだということでエキサイトする場合もございますけれども、できるだけそういうことのないように話し合いで紳士的にやっていこう、こういう一つの良識に期待をしてやったわけでございます。  たとえば、この前の政治資金規正法個人的に受け取るものを登録する、こういうときにそれが罰則がかかっていないわけでございますが、そのときにもいろいろ御議論がございましたけれども選挙をやる人は、それぞれ国民の選良としての良識を持った方が出てくるという、その良識に期待をして、ひとつできるだけ円満にやっていきたい。そうかといって何もないと、これはそんなことをする必要がないじゃないかと言って、けんかになる場合がございますので、そういうことにならぬように、お互いに気をつけていこうという一つの良識の方向を示したということでございます。
  178. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 わかりました。考えはいいと思うのですが、ということになりますと、これはどう思われますか。選挙というのはできるだけ良識に従ってお互いにフェアにやることがいいではないかということは私も同感ですよ。それで、ここで街頭演説や何かをやるときに長時間にわたって同一の場所にとどまるなよ、とどまっちゃ困るよということまでお決めになろうというぐらいですから、いま一つ入れたらどうですか、忘れているものがありはしませんかということを申し上げるのです。  これは、この席には大臣経験者がずいぶんたくさんいらっしゃるわけでありますが、この大臣経験を持っていらっしゃるというだけでも選挙に有利であることは間違いない。そのことは別にとやかく私は思わないのですけれども、よくありますね。新人が出るとき、あるいは苦戦をしておる人がおると、なかなか他の候補者のように宣伝カーが一台でフェアな選挙をやっておったのではとても勝てないというので、たとえば総理大臣を引っ張ってくる、あるいは大蔵大臣を引っ張ってくる、外務大臣を引っ張ってくる、その土地で一番歓迎されるような、いわゆる公職の地位についた人が、ヘリコプターで飛んできたり、あるいはフェリーでやってきたり列車でやってきたりしまして大騒ぎになりますね。大げさな言い方ではありませんよ。何百台に近いほどの自動車を動員して国道が交通麻痺に陥るぐらい大パレードをやりますね。これは選挙部長でも法制局の方でもいいですが、お答え願いたいと思いますが、選挙法には「気勢を張る行為」をしてはならないという条項があったと思いますが、あれは消えていましたかな。
  179. 大林勝臣

    大林政府委員 現在でも、選挙運動の面で「気勢を張る行為」は禁止されております。
  180. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 というふうに明確なお答えが返ってくるわけでありますが、こういういわゆる気勢を張るも何も、とにかくだれもそばに寄りつけないぐらいの大騒ぎになるのでありますが、公職の地位をもって運動されるわけですな。現実にマイクを持って、わあっと大勢集まった群衆の中で、やあ、だれだれ君を頼むよとやるのですから、これは明らかな選挙運動ですね。これは公職の地位を利用した選挙運動には入りませんか。同じく専門的にお答えください。
  181. 大林勝臣

    大林政府委員 選挙運動もいろいろございますが、どの程度になると「気勢を張る行為」になるかという問題、これはなかなかむずかしゅうございます。私どもも従来「気勢を張る行為」についての裁判例というものを実は存じないぐらいでございまして、戦前はときどき裁判例が出ておったようでありますけれども、戦後はなかなか裁判例になっておらないようでございます。どうも、ここまでいくと「気勢を張る」、ここら辺まではそうでもない、そこら辺の判断が恐らく私どももむずかしいと思いますし、現実にその場その場での取り締まり当局の判断も非常にむずかしいものがあろうかと存じます。
  182. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私はやっかみで申し上げているのではないのですよ。やっかみで申し上げるのではなくて、選挙民が見ておって、まことにおかしいなとみんな言うのです。というのは、たとえば普通の候補者の場合ですと、道案内車が一台、宣伝カーが一台、それからいわゆる交代要員を乗せた車が一台、それからウグイス嬢なんかの交代要員を乗せたものが一台、その後に地元の道案内といっても、同じ村でも一カ所だけじゃないですから、その次の方へ行ったら、もうわからぬようになるわけでしょう。その次の迎えの者が来ておって、すぐバトンタッチして行けるようにする。多いときになりますと少なくとも六、七台の車になるわけです。われわれみたいに法律を非常に尊重します人間は、おい数が多いぞ、数が多いぞと言って、離れてこいと言うんですよ。ところがスピードのぐあいとか道路の状況によりましては、ばらばらっと数珠つなぎになることがあるのです。ということになると、ちょい待った、こうなるのです。これは取り締まりの対象になっておりますね。だから、六台か七台がつながっても「気勢を張る行為」ということで取り締まりを受ける者があるかと思えば、総理大臣とか大蔵大臣という肩書きを利用して大動員をやって選挙運動を大っぴらにやっておる。これが「気勢を張る行為」でないとだれが言うのか。そういうことが私は、法律をつくっても運用する人によって勝手に歩き出すと言うのです。この点、もう一遍明確にしてください。  そういう御趣旨があって親切気で、大勢の市民や他の候補者に迷惑をかけるかもわからぬから良識に従ってフェアにやろうではないかというので、この第四の条項、いわゆる同一場所に長くとどまってということを書いたのであると、そこまで親切心を持っておるならば、いやしくも公職の地位を利用しての選挙運動だけはやめさすべきである、それをなぜ書きませんか、答えてください。
  183. 片岡清一

    片岡議員 いま例に挙げられましたような大臣であるとか総理大臣であるとかというのは、その公職にあるために、地方へ来ますと、それに対して警察が警護の立場から、ある程度人数を要することはやむを得ないことでございますし、また地方民としても、せっかく総理が来られた、大蔵大臣が来られたということで、飛行場をつくってもらいたい、道路をつくってほしい、橋をかけてもらいたいという、いろいろの陳情をしたい。そういうことをやってはいかぬということもどうもむずかしいと思います。選挙中といえども、地域の方々のそういう願望をむげに退けるわけにもまいりません。そういうおのずからの姿で自然どうしても自動車の数が多くなったりすることは、これは御理解をいただきたいと存じますし、また、そういうものを選挙において利用することはけしからぬ、こうおっしゃいますが、岡田先生の党がやがて総理をとられるようになれば、やはりその役得はあるのじゃないでしょうか。     〔小泉委員長代理退席、松本(十)委員長代理着席〕  そういうことで、これは特に何かわざと気勢を上げる行為は法律違反だ、こうおっしゃるが、特に気勢を張るように仮装行列のようなことをしたとかなんとかということであれば、これは私は法律違反になると思いますけれども、ただ陳情者その他町村長やいろいろな方が来られて自動車の数が多くなった、それが「気勢を張る行為」だとは私は思いません。役得という言葉がいいか悪いかはわかりませんが、これは与党の役得と心得て、ひとつ御理解を賜りたい。そして皆様方とともに、そういう政権の座に座るためにいろいろ選挙をやり、政治闘争をやるわけですから、それはフェアにやろうや、こういうことでございます。
  184. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 さすがに議員提案だけあって、非常にユーモラスな御答弁をいただきましてありがとうございます。ただ、これは後日に問題をおきたいと思いますが、いまもおっしゃいましたように、非常に正直におっしゃっているわけですが、ああ総理大臣が来たか、鈴木さんてどんな人だろうかと思って、みんなが顔を見てみたい、遠くからでも見たい、これはわかります。それが動員になる、それでやがては何十台という自動車が連なって「気勢を張る行為」になる、これもわかる。しかし、まあ役得ですよということもわかります。気持ちはよくわかります。だがもう一つ、それは選挙法で禁じられておる大きな利益誘導にもなるのではないかと私は思う。「気勢を張る行為」であると同時に、利益誘導罪を堂々と犯しておるのではないかという考えがするのです。  たとえば地元の皆さんの御要望は〇〇君を通じて私に、こう言えば、もうはっきりした利益誘導のパイプがつながったわけでしょう。これぐらい強烈でパンチのある選挙運動はないのでありましてね。そして地元の者が飛行場をつくってください、いやどこどこのバイパスをつくってください、どこどこの港湾を早くつくってください、今度はオリンピックをぜひ誘致してくれということを言う。その陳情する気持ちもわかります。せっかくお見えになったのですから、何にも言わぬでお茶出して弁当食って帰ってもらうというわけにはいかぬでしょう。それは何かをお願いするでしょう。しかし、そういうお願いせざるを得ない状況に置くということは、やはり利益誘導罪を構成しているんじゃないですか。この点はいかがですか。
  185. 大林勝臣

    大林政府委員 利害、利益誘導罪、つまり広い意味で買収罪の一種と言われておりますが、この利害誘導罪についても、実はその具体的な事件事件における判例の積み重ねで今日に至っておるわけであります。一般的に言いますと、非常に具体的、直接的な利害関係にある者を使って、その投票を勧誘するというものが利害誘導罪の対象になるわけでありますが、どの程度が具体的で、どの程度が直接的というのは、やはりその場その場におきます具体的な判断、裁判所の判例の積み重ねということで今日に至っておるわけであります。
  186. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、この問題はいま一つだけの念押しでやめておきますが、これがいかに具体的であり、直接的であるかということを、それぞれの事例によって判断しないと、ちょっと言いにくいのであります、こういうことです。これもよくわかるのでありますが、いまから何年も前の話ですけれども、珍しくも利益誘導罪を宣告されて選挙当選無効になった人があるのです。それは何をもってなったかといいますと、電気が来てない村へ行ったのですね。その電気がついておらぬ村へ行って演説をするときに、何とこの昭和の御代に電気がつかぬとは何ということだ、こんなことをほっておくという政治はなっとらぬ、わしが当選したら必ず電気をつけてやる、みんなどうだということで、ウワーという物すごい歓迎を受けたわけですね。そこの札があったから通ったのかどうか知りませんよ。しかし、ともかくめでたく当選したのです。当選したら、すぐつかまってしまって、利益誘導罪でそれが有罪と判決がおりましてね。それで本人は一カ月足らずで議員をやめました。こういう例があるのです。     〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕  まあ、これは総理大臣に比べたら、こまいこまい政治家ですね。しかし、その政治家の地位や立場が低かったら法律は厳しく厳しく行われ、相手が大物となったら法律は途端にもやもやもやっと先が見えぬようになってくる。そういうことがあっていいと思いますか。思うか思わぬかだけ言ってください。
  187. 片岡清一

    片岡議員 私は、そんな身分によって、また人によって法律の適用を二、三にすることは、これはあってはならないと深く感じておる次第でございます。
  188. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 了解。それでは、続いて次にいかせていただきます。  宣伝カー、いわゆる候補者カー一台だけで、あとはいわゆる拡販車と称するようなものは一切認めないということでいこうじゃありませんかという趣旨の御説明でございますが、小さな市町村でしたら候補者カー一台だけでもいいと思うのです。ところが、極端な例をとるようでありますが、全国区の参議院なんかは四十七都道府県ありまして、選挙期間は二十日間ですね。ということになれば、全国の都道府県を一日に二つずつ行きましても、まだ行ってない県が出るぐらいでございますよ。まあ、そのために候補者カーを三台渡してあるではないかということになるのでありますが、しかし本人が飛んでいけるのは、飛行機を使っても汽車を使っても、どんなにあくせくしたところで選挙期間中に四十七都道府県回ることはまず不可能に近うございます。そこへ持っていって、たった三台の宣伝カーでございます。こういうような状態ですから、ろくろく選挙区内を、全国区で言えば全国選挙区ですが、全国を回ることはできません。市町村会議員クラスの程度なら候補者カー一台でも何とか行けるでしょう。市民の皆さんに新人が立候補しましたと言っても、ある程度わかるでしょう。ところが、それも大きい市になったらちょっと無理だと思います。  そこで、ここで先ほどから各党からも御意見が出ておりましたが、候補者カーだけではなくて、候補者一名につき政連カーといいますか、そういうものを二、三台認めてやったらどうか、そういうお気持ちはないかということに対して、いや、そんな必要はない。それが陰で聞いてみますと、これはうわさでありまして信憑性はありませんけれども、候補者カー以外に宣伝カーを二台も三台も出したら、まず一番先に困るのは候補者の奥さんや。奥さんがまことに酷使されて往生する。奥さんや娘がかわいそうだから、やめとけやというような御意見もあるようでございます。だがしかし、この選挙というのは、新人が出ても勝てるという素地をつくってあげることも、やはりわれわれは考えておかなきゃいかぬのじゃないでしょうか。それがやはり選挙運動のフェアなやり方じゃないのでしょうか。活動する車が少なければ少ないほど、いわゆる現役が有利ですよ。こういうのはちょっと行き過ぎである。  そこで、一台でいいではないかと言ってお出しになったのだから、よほど自信があるのだろうと思うのでありますが、一台の車で、その選挙区内における、車いわゆる自動車ですね、車の通行可能な道路を、選挙期間中に全部——選挙運動の時間だけ動かすんですよ、寝とる時間を入れるんじゃないですよ、朝の七時から晩の八時までを走らせまして、そしてその選挙期間中に選挙区内の有権者が住んでおる車の通れる道路を全部一巡できますか。一回だけでも回ることができますか。計算したことがありますかどうか、お教えください。
  189. 後藤田正晴

    後藤田議員 私の例を申し上げましょう。私は五十市町村、全県一区でございます。大体選挙運動期間中に三回回ります。しかし、それはいまおっしゃるように各町村について、国道、県道、市町村道全部回るのかとおっしゃれば、それは回れません。それはどなたも同じじゃないでしょうか。  それから、さっき全国区のお話がちょっとありましたが、あれはやはり確かに全国区という制度がいかに問題があるかという一つの例になると思うのですね。やはり全国区の場合、自動車三台を五台にしても、これは本人がやはり行かぬとしようがありませんからね、このごろの選挙というのは。だから、ちょっと私は無理なんじゃないかなと思う。ただ今度あれをいじってないのは、先ほど申しましたように、やはり金がかかり過ぎるから、これを何とか抑えようやという趣旨があったのです。それで自動車についてはこの際は見送ろう、こういうことになったわけでございます。
  190. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、いまお答えになりましたお二人のようなお立場の方ですと、これは余り小まめにお回りにならぬでも、おい、わしゃ出るぞと言うただけでも大丈夫なんですよ。やはり有名人と無名の人とを一緒くたにしちゃいかぬと思うのです。やはり立候補した以上は、本来から言えば各所、各所において辻説法をやって、それで皆さんに自分の政見を訴えて歩くのが一番いいのですけれども、これはなかなかそうはいかぬ。そうはいかぬとなれば、せめて顔だけでも見せて歩くぐらいのことは、顔見世興行ぐらいはやらなきゃ、新人は、無名の人は一体どうするんですか。だから、いま後藤田さんがおっしゃいましたけれども、おれのところだって五十市町村あるよ、しかし、おれは三回回っているよ、しかし、まあどの道路も全部といっちゃ無理だなとおっしゃる。有名な人はそれでいい。三回も回るのは余分ですよ。一回ぐらいでよろしいんです。ところが無名の新人だった場合は、せめて一回ぐらい、私が立候補したこれこれですと言って歩いて顔ぐらいは見てもらいたいと思うのがあたりまえじゃないでしょうか。それで本人が行かれぬ、それは物理的に時間もないということになれば、せめて本人のかわりに車をあと二台か三台ふやして、そして回らしてあげるということの方が本当じゃないのでしょうか。選挙の強い先生方ばかりがお考えになって法律を変えようと思っちゃいけませんよ。私はそれを言いたいのです。無名の新人に、このままで通した場合には、これはむごいことをしたなということになりはしないかと思うが、いかがですか。
  191. 後藤田正晴

    後藤田議員 現在の選挙法が新人にとっては大変出にくいということは私は否定いたしません。確かに、そういう面があると思います。やはりできる限り新人も出やすいように制度というものはあるべきだ、この一般論については私ちっとも反対申し上げる筋合いでございません。  ただ、お話の自動車の数をふやせば回れるかということになりますと、これは選挙運動期間中だけですから、それはちょっと自動車の数とは違うのではないのか。自動車の数が多いからといっても、本人が行かなければならぬということになりますと、これはちょっと違う立場で考えなければならぬのではなかろうか、かように考えます。
  192. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんから、この問題はまたペンディングにさせていただきます。  その次に、まことに小さなことでございますが、「自動車の上において」というのがありますね。この「自動車」というのは何を言うのですか、それを教えてください。
  193. 大林勝臣

    大林政府委員 公職選挙法上の選挙運動用自動車の場合の「自動車」というのは、道路交通法上の「自動車」を持ってきておりまして「原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であって、原動機付自転車以外のもの」というふうに定義をいたしております。
  194. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それではここで確認しておきますが、もし、これが原案どおり通ったといたしましたら、五十cc以下の車であれば構わぬわけですね。確認しておきたいと思います。——また新戦法が出ますよ。
  195. 片岡清一

    片岡議員 五十cc以下の原付自転車であれば問題ありません。
  196. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 提案者の方は、それでいいと思っていらっしゃいますか、一言だけ。
  197. 片岡清一

    片岡議員 従来もそうでございましたから、今度の改正には関係ございません。
  198. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それから、ここのところで関連してちょっとお尋ねいたしますが、この機関紙誌の普及宣伝等について、あるいは演説の告知について、自動車のマイクの上において、こうなっておるわけでありますが、長さが二メートルぐらい、幅が五十センチぐらいののぼりを立てまして、そこへたとえばスローガンとか、あるいは候補者の名前の入ったものを三、四十本ずらっと立てて黙って立っておる分はどうなるのですか。何も言わぬのですよ。全然声は出さない、じっと立っておるだけ。それを人間が持っておったらいかぬというのだったら、木へくくっておきますと言うて、木へだあっとお祭りののぼりみたいに立てておくというやつは違法ですかどうですか。
  199. 大林勝臣

    大林政府委員 いまの選挙期間中の政治活動で規制をされておりますのは「政党その他の政治活動を行う団体」これが主体として一つの前提でございます。それから、そういう主体が政談演説会、街頭政談演説あるいはポスターの掲示、立て札、看板の土類の掲示及びビラ、こういうものについて選挙期間中は規制をするという仕組みになっております。  したがいまして、そういう「政治活動を行う団体」が立て札及び看板の類——たとえば、のぼりということになりますと、この立て札及び看板の類ということになってまいろうと思います。そういうものにつきましては、選挙期間中は確認団体が一定の制限のもとに使用する立て札、看板の類しか使えない、こうなっておるわけであります。
  200. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんから、これもこのぐらいでやめさせてもらいます。  一番最後にお尋ねをしたいと思いますのは、親族の場合「同居していない場合であっても」というのがありますね。この「同居していない場合であっても」と、そこまで範囲を広げられますと、よくあるじゃありませんか、きょうだい同士でも仲が悪くて、裁判ざたでお互いに法廷で争っておる。他人が聞いておっても、他人でも、あそこまではいかぬだろうと思うほど激しくやるというきょうだいはざらにありますね。中には殺し合いまでやりますね。そうすると、あのきょうだいさえおらなければ、おれは何とかなると思ったら、おとりになることだってあり得ることですね。何で、ここまで範囲を広げなければならぬのですか。その意味を教えてください。
  201. 後藤田正晴

    後藤田議員 御質問のような意見も党内でもございました。ただ、選挙違反について連座制をもう少し強化したらどうだというのが、これは一種の世論になっておったわけですね。そこでいろいろ検討しまして、やはり一定範囲の親族であるならば同居していなくても、やはり行為の中身が買収等の実質犯であって、しかも禁錮以上の刑に処せられて執行猶予のつかぬもの、つまり重い違反ですね、しかも、それを「意思を通じて」ということになれば、これは連座にしてもいいのじゃないかということで入れたわけです。  そこで、いま御質問のような点は、これはどう考えたって意思は通じていませんね。したがって、それに連座制が働くということはなかろう、かように考えるわけです。
  202. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 最後に申し上げておきますが、よく法律がひとりで歩き出すという言葉を私はたびたび使うのでありますが、よくあるのですよ。おとりに使われたというような場合に、意思を通じたということにはならぬじゃないですかというのは、これは小説に書いたらそのとおりなんです。ところが、いままでのやりとりの間で御説明を聞いておりますと、同居していない親族であっても、ああ本人が立候補しているなということを知っており、そしてもっと具体的に言うたら、ああ何とかあいつが通ってくれればいいがなあという気持ちを持っておったら、意思を通じたことになるわけでしょう。そういうお答えが先ほどありましたね。だから立候補しておることを知っておるというだけでも意思が通じておるということに解釈をされるような問題であるだけに、実はそういう運動は一つもしていなくても、おまえはあれを当選させたいと思っただろう、口では言わぬでも思うただろう、だれもが思うじゃないか、思っただろう、こういうことになってくるのですよ。これはちょっと胸に覚えもあるでしょう、先生方。だから私はそういうことが起こってはならぬと思いますので、この問題についても、さらに党内でよく煮詰めてまいりたいと思うのであります。  ありがとうございました。時間が参りましたので、終わります。
  203. 久野忠治

    久野委員長 次に、安藤巖君。
  204. 安藤巖

    ○安藤委員 質問に入ることになっておるのですが、いまの委員室の模様を見ますと、これは委員会は成立していないと言わざるを得ないのです。しかも、これは自民党の議員提案ですよ。それが提案者を含めてわずか四人、これは一体どういうことですか。私は委員会が成立するまで質問を待ちます。委員長の方で、しかるべく出席をするように督促していただきたい。
  205. 久野忠治

    久野委員長 理事の皆さんで御協議をいたしまして、本委員会は成立をいたしております。協議の結果です。
  206. 安藤巖

    ○安藤委員 私の方には何の相談もありません。成立していないですよ。だれが見ても成立していないですよ。二十五名ですから十三名以上必要ですね。どうですか委員長、これで審議を強行するのですか。
  207. 久野忠治

    久野委員長 強行ではございません。理事の皆さんにお諮りをいたし、御協議の結果、再開をいたしたのであります。
  208. 安藤巖

    ○安藤委員 定足数を欠いていますよ。定足数を欠いているということは委員長は認めるのですね。どうですか、これは明らかですよ。
  209. 久野忠治

    久野委員長 現実には不足しておることは私は認めます。
  210. 安藤巖

    ○安藤委員 そうすると定足数が不足しておるというにもかかわらず質問をしろということは強行じゃないですか。
  211. 久野忠治

    久野委員長 委員長の強行ではございません。先ほど申し上げたとおりでございます。
  212. 安藤巖

    ○安藤委員 委員長、これは完全に成立していないですよ。定足数に達していないですよ。これは委員会審議じゃないですよ。どうなんですか。
  213. 久野忠治

    久野委員長 先ほど何回も申し上げましたように、理事の皆さんにお諮りをいたしまして御了解を得た上で再開をいたしたものでございます。各種委員会には、このような慣例は間々あるように私は記憶をいたしております。
  214. 安藤巖

    ○安藤委員 いや何の相談も得ていないですよ。定足数は完全に不足している。委員会審議の態様をなしていない。そのことをはっきりわかっておりますね。
  215. 久野忠治

    久野委員長 それは安藤君の御意見として承っておきます。
  216. 安藤巖

    ○安藤委員 いや御意見じゃないですよ。これは歴然たる現実の姿ですよ。いま定足数はないですよ。(「開会のときはあった、何をもとにないと言うのか」と呼ぶ者あり)開会のときにあっても、いまはないですよ。何をもとにって、計算すればすぐわかりますよ。
  217. 久野忠治

    久野委員長 発言を許しました。提案されてあります案件について御質疑をお願いします。
  218. 安藤巖

    ○安藤委員 それでは、こういうような状況のもとで審議が進められている、これは明らかな事実ですよ。そのことをお認めください。
  219. 久野忠治

    久野委員長 従来とも国会の慣例上間々あることであると委員長は思っております。
  220. 安藤巖

    ○安藤委員 呼んできてください。委員長、定足数に満つるまで呼びに行くように委員部の方へ指示してください。
  221. 久野忠治

    久野委員長 先ほど来数回申し上げましたように、再開をいたします際に理事の皆さんにそれぞれお諮りをいたし、御理解、御了解を得た上で開会を宣したものでございます。ただいま委員会審議が継続中でございます。
  222. 安藤巖

    ○安藤委員 現在、定足数を欠いていることは明らかですよ。委員長の方から委員部の方にちゃんと呼びに行くように連絡してください、指示してください。それからにします。
  223. 久野忠治

    久野委員長 努力はいたします。努力はいたしますが、委員会はただいま審議中でございます。案件について審議中でございます。
  224. 安藤巖

    ○安藤委員 指示してください。
  225. 久野忠治

    久野委員長 発言を許しました。安藤君の発言を進めてください。
  226. 安藤巖

    ○安藤委員 いや、まずその指示をしてください、定足数が満つるように、すぐ出席をするように。
  227. 久野忠治

    久野委員長 努力はいたします。
  228. 安藤巖

    ○安藤委員 いや、委員部は動いていないですよ。すぐ呼びに行ってくださいよ。呼びに行くように指示されたのですね。委員長、どうですか。
  229. 久野忠治

    久野委員長 連絡してください。——連絡をいたしました。
  230. 安藤巖

    ○安藤委員 それでは定足数が満つるまで待ちます。
  231. 久野忠治

    久野委員長 委員会はただいま再開されております。安藤君の質疑は私が許しました。許可をいたしました。どうぞ質疑を進めてください。
  232. 安藤巖

    ○安藤委員 いま手配をされた、だから早急に定足数が満つるように、特に自民党の方ですよ。わかっていますね。
  233. 久野忠治

    久野委員長 努力をいたします。
  234. 安藤巖

    ○安藤委員 早急に出席をされないと、こういうようなていたらくで、しかも採決をしてほしい、採決をしてほしい、こういうようなことでは通りません。そのことを最初に申し上げておきます。  それからもう一つ、これは委員長に申し上げるのですが、私の質問時間はわずか五十分であります。もともとこれは総枠を決めておいて、議席の多いところは何分だから、議席の数によって割り振るとするとこうだ、だから私の質問時間が、ほかの党の議席の数によって左右されるという非常に矛盾をしたおかしな運営になっております。きょう午前中からも各党から質問があったのですが、いろいろな問題があります。だから、とうていこの五十分という時間では不足であります。もっと時間が必要であります。だから、このきょうの質問が終わりましても引き続いて質問をする時間をとっていただくように、この委員会の運営をしていただきたい、このことを委員長に強く要求をしておきます。どうですか。
  235. 久野忠治

    久野委員長 安藤君から、ただいまのような御要請があったことは承りました。理事会に諮った上で決定をいたします。
  236. 安藤巖

    ○安藤委員 それから、この改正案質問に入る前に、提案者である後藤田さんあるいは片岡さん、竹下さんもお見えなんですが、竹下さんはまだきょうは答弁しておられないからよくわかりませんが、後藤田さん、片岡さんは、選挙というものは本来自由濶達でなければならぬ、選挙法にいろいろな制限があるというのは本来これは間違っておるとまでおっしゃったかどうかわかりませんが、自由であるべきだ、こういうふうにおっしゃった。  ところが、いま提案をされておりますこの法律案は、御承知のように現在ある公職選挙法が何をやってはいけない、これをやってはいけないという、いわゆるべからず集の集まりみたいになっておるのですが、それにさらに規制を加えようとする。これは訓示規定ですけれども、街頭演説の時間の制限、ステッカー、ポスター禁止、立て看も制限する、あるいは政党の機関紙拡販車あるいは「政治活動を行う団体」と称して、その団体の行動も規制をする、こういうことになりますと、これはまさに国民の知る権利しかも言論、表現の自由の裏返しとしての国民の知る権利、これを選挙のときに一番侵害すること、はなはだしいと思うのですね。そして、さらにそういう規制を加えるということは、公に、公然と政党なり候補者が政策を訴える、これをも制限する。あるいは国民の皆様方が選挙に参加する、後援会活動をやる、これも制限をする。見ざる、聞かざる、言わざると言われておりますけれども、見せない、聞かせない、言わせない、こういうような法律案なんです。  そうなりますと、金のかからない選挙ということを非常に強調しておられますけれども、これはそういう公然たる選挙活動がやれなくなって、まさに水面下にもぐって暗やみ選挙。ということは買収金権選挙、そういうような方向に——首を横に振っておられますけれども、そういう方向に道を開くものなんですよ。かえって、そういう金権選挙ということになればお金がたくさんかかることになるわけです。全く逆のことを、あなた方は提案をしておられる。これから順次そのことをお尋ねしますけれども最初にこれを申し上げておきます。  そこで、こういうような法案提出するよりも前に、きょう、これまでもいろいろ議論がありましたけれども、もっと先にやるべきことがあるのではないかと思うのです。それは定数の格差是正の問題です。「選挙の公正を確保」するというのも、この法律案提案の理由になっているのですが、まさにこの定数の格差を是正するということこそが選挙の公正を確保する道。しかも昨年の十二月二十三日のあの東京高裁の判決以後、国民の世論としてはまずこれをやれ、こういう要求が大きく巻き起こっておることも御承知のとおりだと思うのです。しかも、これは議会の構成の問題、本当国民の意思が議会に正確に反映されているかどうか、これを担保するものですね。だからそういう意味で、こちらの方をこそ優先をしてやるべきだと思うのですが、先ほどの後藤田さんの御答弁によると、自民党としては、そういうようなことについては取り組んでいないということなんですが、これを優先していくべきだと全く考えていないのですか。
  237. 後藤田正晴

    後藤田議員 定数の問題は大変重要な問題であるという認識は私は持っております。同時にまた先ほども、まだそこまで自由民主党選挙制度調査会審議はしておりません、しかし今日の選挙法には、こういう問題も含めていろいろな重要な問題がございます、しかし、なかなか解決の容易でない問題ばかりでございます、そこらはひとつ各党間で、これから十分話し合いをしようじゃありませんか、こう申し上げた。しかし、それらの大変困難ではあるが重要な問題、これらの話し合いがまとまらなければ、実際の今日のこの選挙法改正はやらないと言ったんではぐあいが悪いでしょう。それで今回の御提案は、おおよその意見の一致したところで、そこで今日余りにもひどいではないかといったような点だけを取り上げて、そして御提案を申し上げ、残っておる問題については引き続いて私どもとしては検討をいたします、こう申し上げておるわけなんですね。  今度の改正が、私は別に自由な選挙民の意思が国会に反映しないで見ざる、聞かざる、言わざるなんというようなことを考えているとはちっとも思っておりません。これは残念ながら、あなたの御意見と私は所見を異にするわけでございます。選挙というものは、およそ自由に濶達にやるのが原則である、私もその点は否定しません。しかしながら今日の日本選挙の実態を見るならば、いろいろな面でふぐあいが出てきておるじゃありませんか。ごとにまた、いま例に挙げられたような問題については、一般の有権者からも選挙公害が少しひどいではないかといったようなことがある。あるいは先ほど御質問のあった訓示規定等も、今日の選挙の実態を見れば、たとえば渋谷の忠犬ハチ公の前であるとか、いろいろなところになると、とにもかくにも場所取り競争がきわめて激しい。そして、しかもそこで長時間にわたってやるということは一般の通行人の立場一つは考えなければなるまい。同時に、そういった多くの人が集まるところは、できるだけ各候補者に公正に時間が割り当てられることが必要じゃありませんかと、そういう立法の趣旨から、こんなものを罰則にかけるべき筋合いではありません。そこで各党間で円満な話し合いをするきっかけ、それをこういった訓示規定で与えたらどうであろうか、こういうようなことで改正案を考えておるわけでございまして、私は、今度の改正で自由なる意思の表明を抑圧する、そして有権者を見ざる、聞かざる、言わざるというような立場に追い込むのはけしからぬというところについてだけは、残念ながら安藤さんと考えが違う、こうお答えせざるを得ないわけでございます。
  238. 安藤巖

    ○安藤委員 現在のいろいろな公選法における規制の上に、この法案はさらに規制をするものであるということは間違いのない事実だと思うのです。だから、公選法の現在の規制にさらに上乗せをして規制を加えるということは——本来自由濶達であるべきだ。ところが現在の公選法はいろんな制限がある。そしてその上にまたやるというのですからね。これはまさに選挙活動を規制する以外の何物でもないと思います。いま特にひどいのはとおっしゃったのですが、特にひどいのこそは定数の格差がひどいということなんですよ。こちらの方こそ優先すべきだということを私は言うておるのですが、そういうことはちっとも考えないのかということなんです。  そこで竹下さんお見えですね。私は、きょうは竹下さんにも答弁していただくように委員部に連絡してありますが、聞いておられますか。——そこで竹下さんにお聞きしたいと思うのですが、そのこととの関連です。  ことしの一月十一日に定数格差是正の問題を中心にしてNHKのテレビ討論会がございました。そのときに社会党の山本幸一議員がこういうことを言っておられる。竹下さんはそのときには出席をしておられなくて後藤田さんが出席しておられた。竹下さんの名前が出てくるのです。自民党は再開国会の冒頭に選挙運動についての趣旨説明をやろうと焦っている。それより定数是正の方がもっと重要だ。各党集めて話し合いをやろう。自民党竹下選挙制度調査会長もやりますと言っていたという山本さんの御発言があるのです。これはどうなんですか。そういうような話し合いがなされたのですか。
  239. 竹下登

    竹下委員 これは私が答弁してもいいのですか。
  240. 久野忠治

    久野委員長 いいでしょう、提案者ですから。答弁台にお願いします。
  241. 竹下登

    竹下議員 まず最初に、私が答弁者の席になぜ座っていないかということについて私なりの理解の仕方を申し上げます。(安藤委員「それはいい」と呼ぶ)言わしていただかぬと後が言えませんので。  と申しますのは、いま私、自由民主党選挙制度調査会長であります。確かに本案における提案者の一人であります。ただ、いま他の問題について、きょうもいろいろ御議論が出ておりましたが、それらをまとめるに際しては、当然野党の皆様方とも折衝をしなければなりません。その際、私がある種の予見を持っておった場合、折衝というものがいわばやりにくくなる。こういう考え方から、小委員長であった片岡さんと会長代理である後藤田さんに、理事会の了承もいただいて答弁席に立っていただいておる、こういうことであります。  ただ、ただいまの質問につきましては、いま委員長からのお許しがございましたので、お答えをいたします。  廊下で会って、とにかくやろうなというようなことに対して、もちろんやりましょう、こう申しておりますが、具体的に話し合ったことはありません。
  242. 安藤巖

    ○安藤委員 ちょっとそこに座っておってください。もう一つ。  私が聞いているのは、廊下でもどこでもいいです、いま審議されているこの選挙法法案よりも、それよりも定数是正の方がもっと重要だ、だから、そのことについて話し合いをしようじゃないか、やりましょう、こういう話です。あなたは、廊下の話し合いかどうか知りませんが、いまのこれよりも、やろうじゃないか、こういうような話に対して、やりますと言ったのかどうかということです。
  243. 竹下登

    竹下議員 もう一つ、お答えをいたします。  廊下でお会いいたしましたとき、定数是正問題を議論しようや、やりましょうと申し上げたことは事実でございます。ただし、これよりも大事だからというようなことはおっしゃったかおっしゃらないか、記憶にございません。
  244. 安藤巖

    ○安藤委員 記憶がないようですが、後藤田さんどうですか。そのときにおられたのですが、山本さんの発言は。
  245. 後藤田正晴

    後藤田議員 テレビ討論のときに何かそういう趣旨のことを言っておられたと思いますが、正確にはもちろん調べてみぬと記憶にございません。しかし、どっちが重要かといって、両方重要じゃないですか。この改正も大変重要だし、それから定数是正だって、先ほどから言うように、いまはまだ自民党の調査会では、そこまで進んでおりませんけれども、これはやはり大変重要なことだから、今後お互いに検討、研究をして相談をしようじゃありませんか、こう申し上げておるわけです。
  246. 安藤巖

    ○安藤委員 ところが、自民党の方ではまだ定数是正の問題には取りかかっていないということですが、私ども共産党としては、公選法別表一、いまのは何か、それを例とするというようなふうになっております、国勢調査後見直しをするのを例とする。しかし、これを法律の本文の中に入れて義務づけるべきだというようなことも含めて考えて、そして定数の是正だけを——後藤田さんは選挙制度全体のことまでいかなくちゃいかぬのだということで、すぐ小選挙区制のことばかり言いたくて、うずうずしておられるようなお方ですが、そういう方向ではなくて、国民がいま一番要求をしている定数是正の問題のみにしぼってやろうじゃないかというようなことも考えているのです。だから早急に、これはどの党が言い出してもいいのですが、定数是正の問題について話し合いをするという御用意はおありなのかどうかという点、どうですか。
  247. 後藤田正晴

    後藤田議員 定数是正について安藤さんの党の方で御勉強なさっていらっしゃる。大変結構なことだし、私、敬意を払います。自由民主党も、今日ともかく参議院全国区の問題がございますから、そういうようなことで調査会でまだ議題にはなっておりませんけれども、それは恐らくは、これは私の推測でございますが、竹下会長もこの議論を聞いておるのですから、竹下さんもお取り上げになるのじゃなかろうか。そして重要な問題ですから、各党の間で十分お話し合いを願いたい、かように私は考えております。
  248. 安藤巖

    ○安藤委員 もう一つだけ本論に入る前に聞いておきたいのですが、先ほど私が言いました現在の選挙法の中にいろいろな制限があるのですが、百三十八条の一項ですか、戸別訪問の禁止ですね、これを削除をして戸別訪問を自由化すべきだという点、これは九つの裁判所がもう戸別訪問の禁止は憲法違反だという判決まで出しているわけですね。いまおられないが、先ほどまでおられた小泉純一郎さんも戸別訪問自由化論者ですね。自民党の中にも自由化すべきだという御意見が相当に強いと伺っております。この自由化の問題について、先ほど片岡さんの方から何かいろいろ細かい話がありましたけれども、そういうことも含めて話し合いをするということは考えておられませんか。
  249. 片岡清一

    片岡議員 先ほどから申し上げておりますように、いろいろ検討をいたしましたが、結論から言うて、いまそういうことをする段階にはまだ至らないのじゃないかという結論になりまして、今度の改正には見送ったわけでございます。  しかし党内では、自由化の問題についてはやはり有力な意見もございました。これからも論議をしなければならぬと存じます。ただ、諸外国で非常に自由化されておるとはいうものの、わが国の長い選挙の実績といいますか、まだわが国では、戸別訪問の際に率直に申しますと物を持っていったり金を持っていったりする風がなきにしもあらず、こういうことが実際にあるわけでございますので、そういうことについても、やはり十分検討をしなければならないなというようなことや、それから先ほど申し上げましたように、とにかく全面的に自由になると、これが選挙の一番中心になって、このためにかえってたくさんの費用を要することになって、金のかからない選挙にしようということに逆行するというようなことから、いろいろ検討した結果、あれやこれや検討して今度の改正案には取り入れなかった、こういう事情であります。
  250. 安藤巖

    ○安藤委員 これは最初に申し上げましたように、相当時間をかけて議論をしなければならぬ問題だと思うのです。これほど国民をばかにしたお話はないと思うのです。あるいは、いまおっしゃったようなのは、げすの勘ぐりみたいな話で、恐らく金を持ってくるのじゃないか、そのことをすぐ最初にお考えになる発想が、もうすでにどうかしているのじゃないかというふうに思います。早急にこれは禁止を解除するという方向で、各党間で具体的に話を進めようじゃないかということを、いまここで提案をしておきます。  そこで、政党の機関紙の普及宣伝について規制をされるというのがこの法律案ですけれども、時間がありませんから一応話だけ、まず言うておきますが、もともと政党の機関紙誌の普及宣伝というのは、午前中もちょっと話が出ましたけれども、これは一つの発行者としての営業宣伝活動、だから、もともと選挙活動でも政治活動でもない。だから、それは選挙法上にも全く規制の対象になっていなかったわけなんです。これはそういうような意見が有力にあるということを申し上げておきます。  それから政党の機関紙誌というものが、国民の側から見て、選挙のときにいかに重大なものかということについて、どういうふうにお考えになっておられるか知りませんが、これは財団法人明るい選挙推進協会の理事をしておられる池田了という人が、その推進協会が調査をしたアンケートに基づいて述べておられるのですが、そのアンケートの結果はこういう結果になっているということを篤と御理解しておいていただきたいと思うのです。  「何といっても政党民主政治の中心だから、自分たちの味方となってくれる政党を盛り立てていくことが大事」だというふうに考えておられるのが一九七一年七月の調査のときには五一・九%だったのが、六年後の七七年七月には六二・六%にふえているという事実があるのです。そしてさらに、政党の機関紙を読むかどうかという調査で、読むという人が、これは昭和四十五年一月のときは二一・五%、それが九年後の昭和五十四年十月には三二・六%にふえている。しかも定期に読むという人が一・七%から五・七%に急激にふえているわけです。ときどき読むという人も八・三%から一一・五。この池田さんは、有権者が政党の活動への関心を高めて来ている明確な証拠と考えて間違いないと言っていますが、こういうような数字と、そして意見があるのです。  まさに選挙のときこそ、これは政党国民皆さん方に、自分政党の考え方はこうだ、ですから、こういう新聞を読んでくださいという新聞の普及宣伝を通じて自分政党の考え方なり政策なりを知ってもらう、姿勢を知ってもらう、これは一番大事なことだと思うのです。それを制限するというのは、まさに政党の自殺行為じゃないかと思うのですが、そういうふうには考えませんか。
  251. 後藤田正晴

    後藤田議員 今回のこの改正は、政党等あるいは政治活動をする団体の今日のやり方が、機関紙等の拡販に名をかりて選挙運動そのものをやっておるのではないのか、紛らわしい行為、これが大変多くなった。そして選挙になると、むやみにあの車が走り回る、これはいかにもおかしいではないか、それを一応抑えよう、こういう趣旨です。そこで、それじゃ、いまおっしゃるように政党本来の使命をこれで規制するのかとおっしゃれば、そうではない。だから今度のこれは二百一条でしたか、それの後段の方にちゃんと、各政党が政策宣伝をやるのは結構ですよ、こういうことの改正規定も入れてある、かようなことでございます。
  252. 安藤巖

    ○安藤委員 それが本当に紛らわしい行為であり、有権者の皆さん方にとって迷惑だとか、あるいは騒々しいとか、午前中にもいろいろ話がありましたが、ということであれば、かえってそういうような行動をした政党に、有権者の皆さん方国民皆さん方の方から逆の効果を与える、かえって批判をされる、かえってマイナスになるのだ、票をけ散らして歩くみたいなものだということになろうかと思うのです。  だから、そういうものこそ、まさに国民の良識に任せるべきだと思うのです。そういうことを考えないのですか。まさにあなた方はお二人とも、竹下さんは別だけれども警察官僚の出身でおられるのだ。だから、そういうような方向でばかり考えておられるのじゃないかという疑問さえ持ちたくなってくるのです。まさに国民の良識を信用しない。国民の良識にこそ、それは任せるべきであって、政党政党としての国民に対する責任を果たすために一生懸命、政策の宣伝をする。政党姿勢も知ってもらうために機関紙も読んでもらう、そういう宣伝もする、これは必要だと思うのですよ。どうもそういう国民の意思、意向を信用しないという態度が基本的に貫かれていると思います。だからこれは撤回すべきだと思うのです。  時間がありませんから二、三、念のために聞いておきますけれども、これは特に「政治活動を行う団体」という関係で、これからお尋ねする団体がそうだというわけじゃないのですよ、その関係でお尋ねするのですが、法律案要綱の第六の一、二の関係です。  たとえば労働組合があります。この労働組合がある候補者を推薦決定している、あるいは支持の決定をしている。そういう労働組合選挙期間中に屋内あるいは屋外で、自動車を使って、拡声機を使って集会をやる、そういう場合も、この法案では規制されることになりますか。
  253. 後藤田正晴

    後藤田議員 その御質問の前段の、国民の良識に任せるべきでないかというお話、まさにそのとおりです。その国民の良識が、今日のあの拡販に名をかりて余りにもひどいではないか、自動車が走り回られて、拡声機でがんがんやられちゃたまらぬじゃないかという、この声に私どもはこたえなければならぬ、こういう意味で私ども改正案を考えていた、かようにお考えをいただきたいと思います。  いま一つ労働組合の方も、これは副次的に政治目的だと思っておるのだということになると、これは対象になりますけれども、そこいら大変デリケートな法律問題ですから、専門家から答えさせます。
  254. 大林勝臣

    大林政府委員 今回の改正は、機関紙の宣伝あるいは拡声機の使用というところに及んでおるわけでありますけれども、あくまで行為の主体がだれであるかということは従来と全く変わっておらないわけでありまして、労働組合が二百一条の五以下に言う「政治活動を行う団体」ということになりますれば、つまり、その活動組合が副次的に政治活動を行う目的を持っておると認定されます場合には、規制がかぶってくるということでございます。
  255. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、その労働組合が「政治活動を行う団体」というふうに認定するのは、だれがするんですか。
  256. 大林勝臣

    大林政府委員 法律の解釈その他につきまして常時いろいろ御協議をいただくのはわれわれでございますが、実際に事件として起こりました場合に、その判断をいたしますのは、あくまで司法機関ということになります。
  257. 安藤巖

    ○安藤委員 司法機関というのは、普通言われるのは裁判所なんですよ。あなたがおっしゃったのは、その司法機関というのは警察も含むのかどうか、もっとはっきり答えていただきたいのです。警察だということになると、その当該労働組合——これはほかの民主団体、婦人団体、青年団体いろいろあると思うのですが、私は労働組合一つの事例として挙げているだけですよ。そういう集会を開いているときに、たとえば屋内の場合、これは自動車を使わない。拡声機を使っている。そしてその労働組合なりその団体の発行している、総評なら総評新聞を読もうじゃないか、こういうようなことを言っている。そして賃上げ要求を闘い取ろう、全国最低一律賃金制だ、こういうような集会を開いているときに、あなたの言う司法機関が入り込んでいって、いろいろ調査するということになりますか。
  258. 大林勝臣

    大林政府委員 司法機関と申しましたけれども、現実に事件が起こりました場合には、取り締まり当局の立場の方々の行為ということになろうかと思います。ただ、実際問題として選挙運動なりあるいは政治活動に関する個々具体の事件につきまして、個々の事件についてどういう判定をするかということになりました場合には、従来そういう取り締まり機関におきましても、いろいろな証拠あるいはいろいろな協議の末、決定されておるというふうに伺っております。
  259. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろな協議をして決定するというのですが、とにかく警察が入り込んで状況を偵察しなければわからぬわけでしょう。何をしゃべっておったか、普通のメガホンでやっておったのか、拡声機を使っておったのかということは、警察が入り込んで内偵をしなければわからぬじゃないですか。そういうようなことまでやらせよう、やることができるようにしようというのがこの法案なんですよ。そういう重大な問題を含んでいる。これはとんでもないことだと思います。そして臨検をして、あなたのところの団体は「政治活動を行う団体」だ、それが機関紙の宣伝を自動車を使って——屋外だったら自動車を使う場合がありますよ。屋内でマイクを使って、先ほどから議論になっておる「自動車の上においてする場合」ではなくてやっておる、けしからぬ、やめろ、弁士中止だ、こういうようなことになるおそれがあるのですが、後藤田さん、笑っておってはだめですよ、そういうような重大な問題を含んでおるのですよ。いまの大林さんのあれでも、時と場合によって、ちゃんと協議をして決定する、協議をする材料はやはり最初から内偵をして調査しなければ出てこないのですから、そういうことがやられる、とんでもないものだということなんです。  それから、もう一つ念のためにお伺いしますが、政党もしくは政治団体が発行するパンフレットあるいは書籍ですね、この宣伝をするのに自動車、拡声機を使ってやるのはいいのかどうか、いかがですか。
  260. 大林勝臣

    大林政府委員 「新聞紙及び雑誌」こういう表現で今回の立法がされておるようであります。従来、新聞紙あるいは雑誌の部類の中にはパンフレットあるいは単行本というものは含まれておりません。
  261. 安藤巖

    ○安藤委員 ということであれば、自動車を使って、拡声機を使ってもいい、こういうことになるわけですね。  そこで街頭演説等の時間の制限ですが、これはいろいろお伺いしておると、その場で話し合いをやってもらえばいいというお話片岡さん言うておられるのですが、これはこういうことになりますか。たとえば私どもがある場所でやっておりますね。そうすると自民党さんが来て、おまえのところ、もう長時間だと。先ほど一時間とおっしゃったのですが、これもとんでもない話ですけれども、まあ一時間にまだなっておりませんし、これから協議するというお話ですが、とにかく長時間だと、もうそこをどけ、おれがやるからというようなことを言う、あるいは言われる一つの根拠に、これは使われる、こういうことになりそうに思うのですが、どうですか。
  262. 片岡清一

    片岡議員 そういう言い合いをすることを前提にしたのじゃなしに、そういうふうにならないように、あらかじめ話し合いましょうや、こういう趣旨であります。
  263. 安藤巖

    ○安藤委員 そのときに、これはもう長時間になっておるというようなことで警官が、取り締まり当局が出てきて、もういいかげんどいてくれというようなことは全く考えられないと思うのですが、どうですか。
  264. 片岡清一

    片岡議員 争いになるといいますか、そういう事態になるおそれのある場所でも、それはほかの候補者なり政党がそこを使わないという場合には、まあ若干の時間は問題にならないと思います。ただ、そこを使いたいという段階になると、私はお互いに現場で話し合う、こういうことが望ましい。そのときに、おれは先に来たんだから、おれは優先権があるんだと言ってお互いにひじの突っ張り合いをしないで、良識に従って譲り合おうやという望ましい姿をわれわれは希望いたしておるわけでございます。
  265. 後藤田正晴

    後藤田議員 警察は、選挙の際には選挙妨害になりはせぬかというのは、本当に必要以上に慎重なんですよ。大変慎重にしかやりません。したがって、警察がそんなとき出てくるのかというと出てきませんよ。ただし、殴り合いになったら別ですよ。暴力事案になれば、それは選挙の問題でありません。暴力事案としてそれは当然出てきますけれども、このことの言い合いぐらいで出てくるなんて、絶対それはありませせん。
  266. 安藤巖

    ○安藤委員 言い合いの前に、もともと時間が長くなったというようなことで言うてくるんではないかということを言うたのですが、いま後藤田さん、しっかり首を横に振っておられるのですが、そのことも含めて警察が出てくるようなことはない。そして先ほどから伺っていると、それは結局話し合いをやって決めることだ。結局、良識に任せるということでしょう。それだったら何も法律に書くことないじゃないですか。もともと良識に基づいていままでやってきておるはずですよ。なぜ法律に書くのか。もともとこれは訓示規定だからとおっしゃるのですが、法律でそういうようなことを規制すべきではないということなんです。  たとえば長時間にしても、この演説がおもしろければ、もっと長くやってくれぬかという人だってあるし、あるいはボリュームを調節することによって、あるいは騒音の問題にしても考えられるし、あるいは街頭で騒々しいところ、あるいは、それぞれの商店があっていろいろ宣伝のために音楽を流しているとか、そういうような場所、条件、ボリューム、演説の内容とか、いろいろな要件があって違ってくるのですよ、長時間というのが。それをもともと法律でこんなものを決めるのが間違いだし、もともと話し合いでやってくれというなら、法律でこれをうたう必要の全くないものなんですよ。これは撤回するべきだということを強く要求をしておきます。  それから、先ほどちょっと迷惑なんとかということを後藤田さんもおっしゃった、音が騒々しい、政党の拡販車、拡声機の問題でね。念のために、こういう統計があるのですよ。これは私の地元の名古屋の選挙管理委員会が調査したものですが、この前の一斉地方選挙のときです。一斉地方選挙のときは、御承知かと思うのですが、各候補者がたくさんですから、あちこち候補者カーで走り回って、よけいにぎやかになることは間違いないのですが、こういう場合でも、市会議選挙の運動方法に行き過ぎがあったかなかったかという質問に対して、なかったという人が六五・七%、あったというのが二八・五%、残りはわからない。それで、あったという二八・五%のうちの五七・六%が街頭演説宣伝カーの連呼に行き過ぎがあった。だから全体でいきますと、これは一五、六%にすぎないのですよ、行き過ぎがあったというのは。だから先ほどから、やかましい、うるさい、迷惑かけておるんだというようなことをしきりにおっしゃってみえるけれども、これは一つの統計ですが、こうなっているのですよ。  そうなると、これはもともと先ほどから言うておるように、国民の良識に任せるべき問題であるということですね。そういうやかましいことをやれば、かえって批判を受けるのですから。そして、こういうような統計もあるのです。となると、全く提案者の言っておられる騒々しいとか迷惑だとかというようなのは根拠がないわけなんですよね。だから、こういうようなものを法律で規制するというのはとんでもないことだということを強調しておきます。  そして、金のかからない選挙ということをしきりに強調しておられるのですが、後藤田さんの選挙のときには買収で検挙された方もあるし、本当は後藤田さんに、金のかからない選挙をやるにはどうしたら一番いいのか、一番お聞きしたいのです。だから、そういう金のかからない選挙というのは金権買収をやらない選挙、これが一番ですね。そのことは御異議がないと思うのですが、午前中もちょっと話が出ましたけれども、泰道さんの問題とか宇野さんの問題とか、いろいろあります。いいですか、こういうお金ですよ。泰道さん、一億円の運動員抱き込み資金を賄った。宇野亨さん、三億円を買収資金などのために借り入れた。ちょっと昔の話ですけれども、糸山英太郎さん、総括責任者だけで六億円の裏金、まさに億単位の金ですね。こういうような選挙をやるからお金がかかるわけなんですよ。だから、これをなくすためにはどうしたらいいかということを真剣に考えるべきだと思うのです。しっかりうなずいておられるから間違いないと思うのです。  それで、この関係について読売新聞が昨年の二月に、どうしたら金権買収選挙をやめられるか、有権者の人たちの希望をとってみたのです。一番の四四%の方は「罰則強化」だ。そして二番目が「有権者の自覚」、三番目が「政党の派閥体質改善」、ちゃんとこうあるのです。こういうような点について真剣にやるということを考えておられるかどうかということが一つ。  そして、私がいまいろいろ申し上げたのは、たとえば、これは党利党略で、選挙になると赤旗が制限されるとかというようなことでもって言うておるのではなくて、まさに言論、出版、表現の自由という憲法に保障された権利、これは国民の知る権利と表裏一体となっているものだ、そういう関係で、これは多くの国民皆さん方が重大な関心を抱いているのです。だから、その辺の制限になる、その辺のところは考えていないのか。本当に金のかからないのは、買収の選挙金権選挙をやめるという方向で考えるべきではないか、このことを真剣に考えているかどうか。どういう方向でやろうとしているのか、そのことをお尋ねします。
  267. 後藤田正晴

    後藤田議員 今日の選挙に金がかかり過ぎるということは否定し得ない事実ですから、選挙に金がかからないように、あらゆる角度から検討してやっていくべきであろう、かように考えます。今度の改正もそういう趣旨が含まれておるのだ、かように御理解をいただきたいと思います。  表現の自由の問題との関連の御質問ですが、これはまさに言論とか出版とかは自由であるべきですが、かねがね私が申しておるように、選挙運動それ自身も本来自由であるべきなんですね。しかしながら、何よりも肝心なことは、国民の自由な意思が正しい手続で選挙に反映するということではなかろうか。その観点に立ってみた場合に、今日の選挙の実情、現状というものが、これでは公正な自由な意思が反映をしておると言いにくい面が各方面にあります。これは金の問題もその一つでしょう。しかし、同時に自由という問題についても、表現の自由ということについても、やはり公共の福祉という観点から、現状を踏まえて規制すべきものは規制せざるを得ないのではないのか、かように考えるわけです。  先ほど御質問の中にありました立て札、看板の類とか拡販車の問題とか、いろいろ国民の世論調査を名古屋でお聞きになったらば余りないという話ですけれども、これは私は相当あると思います。現実にお互い選挙をやってるのじゃないですか、安藤さん。われわれ自身だって、本当の頭の中ではおわかりだろうと思うのです。私の選挙区ではこんなことは一つもないのですよ。ただ、問題は選挙区によりますよ。選挙区によるが、大府県、大都市の選挙の実態を見ますと、今日一般の市民の方だって、少しひどいではないかということは私はあると思いますね。  私自身参加しなかったのでわかりませんけれども、この公選の委員会皆さん方久野委員長も現地視察をなさったのでしょう。その際に、こういう問題についても規制してもらいたいのだということを選挙管理の実務を扱っている皆さん方からも大変御要望があったというふうに私は伺っているのです。だから、その実体がない、自由を抑えるためばかりだというのは、それは私は少し——物事には裏もあれば表もありますから、あっちから見こっちから見すれば違う意見が出るかもしれませんけれども、素直な物の考え方をしていただけるならば、今度の改正はやったっていいのではないかな、これは私の見解でございます。
  268. 安藤巖

    ○安藤委員 確かに公職選挙法特別委員会で調査に行きました。私も委員長と一緒に行きました。私は寡聞にして、そういうような選挙管理委員会からの話は聞いておりません。そういう事実もありますという程度のことであって、そういうことがあって騒々しくて、有権者の皆さん方から早く取り締まってくれなんということがあるという話は私は聞いておりません。しかし、これは言うた言わぬの話、聞いた聞かぬの話ですから、また別です。  最後に一つだけ、これは肝心なことですからお尋ねするのですが、ステッカーと言われているものも含めてポスターのことです。  この中で言われている法律案要綱の第三の二、立て看でない方、これはどういうようないきさつで、それぞれの家の人が張っているか知っておられるか。それぞれ依頼をされて、よろしゅうございますという承諾あるいは自分自身で進んで張るということだと私は思うのです。たとえば大売り出しとか、ほかの選挙政治的なスローガン、戦争反対、増税反対、何でもいいのですが、そういうものを張るのと同じで、あるいは各党何人かの候補者のポスターも張ってあるので効果がないのじゃないかとか、いろいろな議論もあるのです。  もう一つ質問は、これはもともと、それぞれ張る人の自由じゃないかというのです。勝手でしょうと思うのです、「カラスの勝手」じゃないけれども。あれはそれぞれの人が承諾を得て自主的に家のガラスやへいに張っているのです。どうしてそれを規制する必要があるのかということです。  その二つ。これで質問を終わります。
  269. 片岡清一

    片岡議員 問題は程度ものですな。これは余りにもいろいろなところに、べたべたそういうものが出てくるということは、言われると、しようがないから、どうぞと言って、否定するかわりに肯定のようなかっこうをせざるを得なかったという場合もありましょうし、そういうことで受ける方も非常に迷惑するでしょう。また、そういうものがいろいろなところに、べたべた張られておるということは、町の美観、村の美観を非常に損する。こういうことから程度の上で、お互いに自粛しようということから出た発想であります。
  270. 安藤巖

    ○安藤委員 自粛しようということだったら自粛すればいいのであって、これは法律で罰則がつくんですよ。
  271. 片岡清一

    片岡議員 いや同時に、それが大変なよけいな金を使う、こういうことでありますから、できるだけ金のかからない選挙にしようという立場から、これを禁止する、こういうことになったわけであります。
  272. 安藤巖

    ○安藤委員 金の問題は、先ほど言いましたように、一番金のかかるのは買収金権選挙です。これをやめることが一番ですよ。そして、それぞれの後援会、連絡所ということなら、本来これは後援会が届け出てちゃんとやるわけです。後援会で収支報告もしております。後援会の財産ですね。どうしてこれを候補者が負担するとかなんとかという金のかかることになるのか。やはりこれは、それぞれの自主的な判断、了解あるいは自分で進んで張る、本来自由勝手たるべし。これがもし美観を損なうということであれば、広告物条例とか、それも私どもは問題ですけれども、美観を保つようなほかの法律なり条例なりで、これはやるべきであって、選挙法で取り締まるべき問題ではない。だからこれは撤回すべきだということを強く要求して、そして委員長最初にも申し上げたのですが、まだ連座制の問題にしろ、地方の県、市会議員のステッカー、ポスターの問題にしろ、ポスターというのがいかに重要な問題であるかということ、あるいは外国の事例から見て、現在の選挙法がいかに制限が多いか、その上にまた規制しようとする、これはとんでもないものだということ等々、まだたくさん質問をして明らかにしなければならぬ問題点がありますので、最初に申し上げましたような運営を強く要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  273. 久野忠治

    久野委員長 安藤君の要望については承りました。理事会で諮った上、協議の結果、決定をさせていただきます。  小杉隆君。
  274. 小杉隆

    ○小杉委員 すでに各党から質問が繰り返されておりますから、私は重点的にお伺いをしていきたいと思います。  まず第一は、定数是正の問題であります。去る一月十一日のNHKの国会討論会には、私も後藤田さんと一緒に出させていただきました。先ほど来の答弁によりますと、定数是正は早急にやらなければいかぬ、それから、この定数是正の問題は、裁判所の判決にゆだねるのではなくて、国会がみずからの判断でやるべきであるという点、あるいは現行定数をふやすのではなくて、現在の五百十一名の定数内で是正を図るべきである、そしてできるだけ人口比例方式によるべきであるという見解を後藤田さんの方から示されましたが、そう確認してよろしいですね。
  275. 後藤田正晴

    後藤田議員 おおむねそのとおりですが、人口割合というものを重要なファクターとして考えなければならぬが、それだけではありませんよということを私は申し上げておる。それと一票の価値というものについては、午前中大変恐縮な事例を申し上げましたが、選挙権というものは一人一票でありますよという考え方を私は持っておる、こういう点もつけ加えてお答えをいたしたい。同時にまた、こういう問題は各党間でよく話し合って、意見の調整をし検討をすべきだろう。その検討は、自由民主党としては、全国区等の問題があるから今日まだ論議をしておりませんけれども、いずれ、こういう問題も党としては当然取り上げて検討せられるであろうということを申し上げておるわけでございます。
  276. 小杉隆

    ○小杉委員 去る五十五年十月一日の国勢調査に基づいて、一応私は各都道府県別に現行の五百十一名を割り振ってみました。そうしましたら驚くなかれ、現在の定数よりもふやさなければならないところ、減らさなければならないところ、さまざまありますが、概して言いますと、東京を中心とする首都圏あるいは愛知県を中心とする中京圏そしてまた大阪を中心とする近畿圏、これら過密都市あるいは大都市周辺が著しくしわ寄せを受けている。これは従来からも現実に言われておりましたけれども、実際にこうやって国勢調査の結果を定数で割ってみますと、この差がきわめて歴然としてくるわけであります。  たとえば首都圏で見ますと、埼玉県は現行定数十五名ですけれども、これを九名ふやさなければいけない。あるいは千葉県は十六名を五名ふやさなければいかぬ。東京は四十三名の現行を八名ふやさなければいけない。神奈川県は十九名を実に十一名増員しなければ、全国との均衡がとれないという状況であります。ちなみに中京圏を申し上げますと愛知県が五名、静岡県が一名という状況でありますし、近畿圏を見ますと大阪が十一名、京都が一名、兵庫が二名という状況でございます。きょう答弁に立たれているお三人の県を見てまいりますと、たとえば片岡議員の富山県では、現行六名ですけれども一名減らさなければならない。それからまた島根、これは全県一区のところですが、現在の五名を二名に減らして当然である。そしてまた徳島県、後藤田さんの地元では、全県一区五名のところを一名減らす、こういう勘定です。現実に自民党選挙制度を担当しておられる幹部の皆さんの選挙区は、すべて減員にならなければいけないところなんです。ここら辺に、定数是正がなかなか進まない一つの現実的な問題があると私は思うのです。  ですから、先ほどからゲリマンダーという言葉が出てきましたけれども、やはり特に問題になるのは減員区だろうと私は思うのです。私もかつて定数問題を地方議会でやっておりましたけれども、増員のところは何も問題がないのです。減員のところをどうするかが一つのポイントになってくるわけでございます。いままで、こうして定数の問題が不均衡のままきたのは、そういうゲリマンダーとか、いろいろな党利党略というものがあったと同時に、人口比例ということを口では言いながら、現実には過疎地域の方を政治的に配慮しなければいかぬというようなことで盛んに擁護した結果が、従来格差がだんだん開いてきてしまった結果だと思うのです。  私は、いま現実に全国を見渡してみて、政治的な配慮をいろいろ加えなければならないのは何も過疎地域だけではなくて、やはり都市の方で、災害対策にしても、公害対策にしても、住宅問題にしても、いろいろ深刻な問題がいま出てきているわけですから、いままで余りにも不当に、こういうしわ寄せを受けてきた大都市あるいは過密都市の問題を考えたときに、いまのようなこういう格差があっていいのかどうか。この辺の見解を改めて伺いたいと思います。
  277. 後藤田正晴

    後藤田議員 二対一の開きということを前提で、五十五年国調を基礎にして、各選挙区どんなになるかということになると、私きょう正確な資料を持っておりませんので言えませんけれども、これは、あなたがおっしゃったような異動が出てくると思います。しかし、私が先ほどから言っているのは、定数是正という問題、これは余り極端な開きはいけません。やはり人口というものは大きなファクターです。しかし、それだけではありませんよ。ただいまお話しになった過密過疎の問題、こういう問題だって必ずこういう問題には出てくるでしょうし、あるいは地理的な問題あるいは従来の行政区画の状況、いろいろな長い歴史の積み重ねによって今日出てきているのですから、人口だけで全部直せという理論そのものについても私は大変疑問がある。しかし余りにも開き過ぎているのはいけませんよ、だからそこらは各党間で検討すべき課題ではないのか、私は先ほどからそう申し上げておるのです。  だから別段、党利党略だけで言っているわけでもありませんし、また、減る方が問題で、ふえる方は何もないのだというのは、あなた間違いですよ。選挙は、あなた、お互いやってわかるでしょう、そうじゃないのです。減る方が一番困るのは言うまでもありません。しかし竹下さんなんて、ちっとも困りはせぬ。困るのは私と片岡さんぐらいで、あとは困らない。ふえるのも実際は問題ですよ。というのは、現在当選している人が一人引退したということになると、候補者が変わっただけで、もう大変なことになりますね。従来七人出よった人が六人になれば楽になるかといったら、そうじゃありませんし、どんな人が次に出てくるかわからぬし、ふえる方だって実際はなかなかオーケー言わぬものですよ。  そこで、百三十の選挙区の中で百の選挙区を変えなければならぬといったことが、現実の政治課題として定数是正の問題だけで一体解決できますかと私は言っている。これはやはり選挙制度基本の問題とあわせて、こういう問題をやらなければ、言うべくしてできませんよということを言っているのだ。しかし、私は検討しないと言っているのじゃない。むずかしいが各党間でひとつ検討しましょうや、こういうことを申し上げているわけでございます。
  278. 小杉隆

    ○小杉委員 増員の方は問題なくはないと言いましたけれども、現実には比較をしてみれば、やはり減員区の人たちの反対でつぶれてきたケースが多いのですよ。だからこそ、いままで昭和三十九年と五十年に二回にわたって定数是正をやったけれども、いつも十九名とか二十名とか増員、増員で切り抜けてきたという現実が、やはり雄弁に物語っていると思うのですよね。減員ができるかどうかが、現行定数内でも是正が図れるかどうかを決めるかぎだと私は思うのです。  そこで、いま後藤田さんから、厳密に人口比例でやるとしたら百カ所ぐらいを動かさなければいかぬという御答弁がありましたけれども、もし自治省の選挙部長の方で、どのくらいの選挙区で手直しが必要かというのがわかれば、お答えいただきたいのと、それから先日の東京高裁の判決で一対二、これは本来ならば一対一と言いたいところですが、現実のそういうむずかしさを考慮して、許容限度として一対二程度ということを判決に出したと思うのですが、もしこの高裁判決の格差一対二以内で、しかも現行の定数以内で是正をするとしたらどんな方法があるか、選挙部長から、いまの二点お願いしたいと思います。
  279. 大林勝臣

    大林政府委員 格差を二対一ということを前提にして二対一未満におさめるという場合に、いろいろやり方があるわけです。本来、初めから全面的なやり直しをするというやり方、つまり、まず都道府県に配分をしまして、都道府県の中の選挙区に、それぞれ人口に比例して配分する、こういう方式をとりました場合には、試算をいたしてみますと、増員となる選挙区が三十五、そのうちで分区を要するものが二十一。それから減員の選挙区が六十選挙区、それから合区を要するものが二十四。合区を要するもの二十四と申しますのは、これはいいのでありますが、分区を要するもの二十一ということになりますと、相当境界が変わる関係選挙区が多いということになりましょう。いずれにしましても、境界の変わる選挙区、それから単なる増減の結果になる選挙区、こういうものが合計九十五選挙区ということになるわけであります。  さらに従来、定数是正一つの方式としてやってまいりました経験のありますのが、いわゆる全国平均をとりまして、その上下三分の一でおさめる、つまりこれが結果的に二倍以内におさまる、こういうかっこうで考えました場合に、しかも定数はふやさないというかっこうで考えました場合には、増となる選挙区が二十二、そのうちで分区を要するものが七、増員が二十九名。それから減員選挙区が二十九選挙区、そのうちで合区を要するものが十四、減員の数は二十九名。差し引き五十一選挙区に影響がある、こういうことになろうかと思います。
  280. 小杉隆

    ○小杉委員 先ほど後藤田さんから、一対二の格差で是正をしようとすると、かなり手直しが要る。仮に一対二じゃなくて一対一でやったら、それこそ百選挙区も動かさなければならぬというようなことで、現実的に非常にむずかしいという私見を申されたのですが、それじゃ大体現実的に可能な方法としてはどんなことが考えられるのか、私見で結構ですから、お聞かせをいただきたいと思います。
  281. 後藤田正晴

    後藤田議員 私もそこまで精細に検討しておりません。というのは、私はあの判決自身納得しておらぬのです、これはおかしいと。憲法解釈としてもおかしいし、法律解釈としてもおかしいじゃないか。というのは、選挙法の二百四条による訴えが一体適法なんだろうか。これはいわゆる民衆訴訟なんですね。民衆訴訟の一形態として認められているものなんです。ところが、民衆訴訟というものは法の規定がなければむやみにやれないようになっていますね。それを、ほかに方法がないからといってお取り上げになっている。ほかに方法がないからといってお取り上げになるのは、それはまた、それで一つの見識かもしれません。  しかしながら、憲法違反の法律によって選ばれた、その選挙それは有効だという、これはまた事情判決の原理を持ってきているわけですよ。ところが、公選法というものは事情判決の原理を採用してないんですよ。それはとらないとなっている。それをしも引用してきて、しようがないから生きていると、こう来ているわけだ。あなたね、私ども、東京高裁の判決をそのまま受け取ったら、これは憲法違反で出てきた議員なんですよ。これはいかにもおかしいではないか。そこで私は、やはりこの問題は最高裁というものが一体どんな判決をするであろうかということを大変注目しておるのですよ。  そういうような事情も一方にありますしするんで、私は、この判決自身は、これは文字どおり統治行為ではないのか、つまりは国会の裁量権でやるべきで、司法の作用としてはお門違いというのが正しいのではないか、私、きょうはこれは私見を申し上げているわけですから……。  そういうようなことですから、この問題の指摘した事柄意味合いは、これは立法府としては十分考えなければならない、私はこれはよくわかるのです。それだけに、裁判のことはいろいろあっても、ああいう指摘を受けておるその実態があるわけですから、一対二が正しいなんというのは、私はそれは全然思いません。それは大体が無理だ。もう少し、基準は一体何がいいんだろうか。それから、基準をとるにしても、最高と最低だけを比べて全部憲法違反なんてどこから出てくるんだ、これを言うときには真ん中の平均でやるべきだろう。その平均でやる場合にも基準はどこに置いたらいいんだろうかといったようなことを、これこそ各党の間で十分ひとつ御審議を願って、そして妥当な解決をする、これがいいんじゃなかろうか、私はさように考えているのです。
  282. 小杉隆

    ○小杉委員 後藤田さんは、一方においては裁判に任せるのはおかしいと言いながら、最高裁の行方を見守るという、ちょっと矛盾したような言い方をしているのですが、いずれにしても、これは純然たる国会が処理すべき問題であるという点においては、私もそのとおりだと思うのですが、なかなか自民党の中というのはそう簡単に動かないんですね。  そこで、それでは一体後藤田さんは、一対二が無理だというならば、大体どのぐらいならば可能性があるとお考えなのか。  それからもう一つ、自治省に伺いたいのは、いま後藤田さんが最大過疎区と最大過密区を比較するよりも、その平均から考えてやった方がという意見を出されたのですが、自治省の方で、いまの平均の一人当たり人口から上下三分の一ずつやってみて、格差が二対一でおさまるようにした場合にはどうなるかという試算があれば、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  283. 後藤田正晴

    後藤田議員 どの基準がいいかということは各党間でお話しを願って、私はその結論に従いたい、こう思います。
  284. 大林勝臣

    大林政府委員 上下三分の一の範囲内におさまるように、つまりそれで二対一になるわけですが、それでやってみますと、増員となる選挙区が二十四選挙区で増員数三十四名、それから減員となる選挙区が二十一選挙区で減員が二十一名、四十五選挙区変動がございまして、差し引き増員が十三名、総数が五百二十四名、こういう結果に相なります。
  285. 小杉隆

    ○小杉委員 後藤田さんに伺いますけれども、私の方は増員という手段は絶対とるべきでないと考えておりますけれども、現実に余り急激な変化を及ぼさないということで、いま自治省の選挙部長が申された、要するに議員一人当たり人口の全国平均から、これを基準として上下三分の一、すなわち二対一の範囲内でおさまるとした場合の増員、減員をいま挙げられましたけれども、これは検討に値するとお考えになるかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  286. 後藤田正晴

    後藤田議員 私は、これも先ほどお答えしたのですけれども定数是正をやる場合に従来は増員、増員でやってきていますね。しかし、今日の行政改革のやかましいときに国会だけ増員というのは無理だ。これは、やはり改正するにしても五百十一名、現在の範囲内でやるべきだ。といいますのは、増員、増員でやりますと、これはさいの河原になるのですよ。日本ほど人口移動が激しい国はありませんよ。増員というのは、その都度五年ごとにやった日にはえらいことだ。だからやはり五百十一名の範囲内でとどめるべきであろう、私はこう思います。そのときに、仮にそれが二十名ともかく減る選挙区ができたという場合に、これが一体できるかできないか。これはよほど皆さん方で御検討を願わないと、私の口から、できるということは、ちょっと明言をいたしかねるというのが今日の実情じゃないでしょうか。
  287. 小杉隆

    ○小杉委員 この問題は、やはりいまの選挙区制で一番恩恵をこうむっている自民党と社会党が、本気でやる気があるかどうかにかかっていると思うのです。  それから、いま定数是正によって被害を受ける方というのは、たかだか長くても二十年か三十年被害を受けるだけですから、このため国民の権利というものを不均衡にさしてはいかぬということで、たとえばアメリカあたりで、現実的に定数が減らされて、あぶれちゃうような人を、あらかじめいろいろなポストにつけるとか、やはり政権を握っている自民党だったら、そういう弾力的な、現実的な対応で減員対策というのはできるわけなんですから、本気でやる気があれば、そういう便法とか現実的な手法で実現はできると私は思うので、その辺はひとつ英断というか、そういうものを期待をして、私はこの問題は、これで終わりたいと思います。  持ち時間の制約がありますので、一々この法案の具体的な問題については、もう各党が触れましたから私はあえて申しません。最後に一つだけ問題として取り上げたいのは、選挙の公営ということが国会議員の選挙だけに限定をされているということで、都道府県会議員とか首長、政令指定都市あるいは全国の市町村の方々には、なかなか公営ということが行われていない。先ほども、その指摘がありましたけれども、今回の法案改正の目的が金のかからない選挙というならば、やはり国会議員だけが金のかからない選挙であってはならないと思うのです。むしろ地方議員の方が資金パイプも細いし、いわゆる金のかからない選挙の必要性を一番感じているわけですから、そういう面で、むしろ地方選挙にもっと公営の拡大ということが要請されると私は思うのです。  いま現実に十数種類の公営が行われておりますけれども、主な項目で結構ですから、その項目と金額、そうしたものを自治省の方からお答えいただきたいと思うのです。
  288. 大林勝臣

    大林政府委員 項目をまず申し上げますと、選挙運動用自動車、はがき、ビラ、ポスター、そこら辺は、いわゆるはがきとビラとポスターは費用の公営と言われておりますが、そのほかに管理の公営としまして、ポスター掲示場、新聞広告、政見放送、経歴放送、立会演説会それから個人演説会の施設公営、選挙公報、候補者の氏名掲示、特殊乗車券等の無料交付、こういう種類があるわけでございます。  個々についての金額の資料は現在持っておりませんが、大体従来の実績でまいりますと、衆議院、参議院とも、その時点の総執行経費の約三割から三割五分ぐらいの金額になろうかと思います。先般のダブル選挙の例を申しますと、公営費総額が七十三億七千万ということになっております。それから参議院の通常選挙の公営費が五十九億七千五百万、こういう数字でございます。
  289. 小杉隆

    ○小杉委員 私はかつて都議会議員をやっておりまして、国会選挙に臨んで一番最初に感じた印象は、国会議員の方が非常に恵まれているなということを率直に感じました。選挙はがき、新聞広告、法定ビラ、宣伝カー、政見放送、ポスター、公報、それから乗車券、こういったすべての費用を地方議員の選挙の場合は全部自前でやらなければいけないわけですから、仮にいま都道府県知事なり都道府県議会の議員、あるいはせめて政令指定都市の首長、市会議員までに適用した場合に、もし国会議員と同じような公営にしたとしたら、全国の都道府県並びに政令指定都市でどのぐらいの金額がかかるか、そんなことを試算したことがおありでしょうか。
  290. 大林勝臣

    大林政府委員 試算したことはございません。
  291. 小杉隆

    ○小杉委員 それでは提案者に伺いますけれども、私が申し上げている趣旨について、金のかからない選挙を目指すのならば、国政、地方政治を問わず、なるべくそうした仕組みをつくっていく。公職選挙法委員会というのは国会議員だけで審議していますけれども、やはりそういう地方議員のことまで考えた審議というか配慮が必要だと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  292. 片岡清一

    片岡議員 地方の選挙につきましては、これはそれぞれ自治体、公共団体ですから、その議員の選挙はやはりその自治体が負担するというのがたてまえであろうと存じます。国会議員が府県会議員あるいは地方の議員よりも、いろいろの点において恩典があるという点は確かにあると存じますが、たとえば共済制度やなんかにつきましても、大体国の国会議員の制度にならったような制度が逐次できつつありまして、それらについてもやはり国がある程度負担をするという方向へ行っております。さらに、それが選挙の公営についても国のある程度の負担において行われるということは望ましいことであるとは存じますが、しかし、これは大変選挙の数も多いわけでございますし、いま小杉さんに返事をいたしましたように、全部公営にしたときに、どれくらいかかるかということについても、まだ自治省においても計算をしておらないということでございます。そういう点は地方の負担が相当ふえることになる。それに対してどれだけ国が交付税その他で——まあ公営となれば、これは全般的なものになると思いますから交付税でやるということになるかと思いますが、それらの問題上、国の財政状態もにらみ合わせながら、将来の問題としてひとつ十分検討していきたいと思っております。
  293. 小杉隆

    ○小杉委員 やはり今度の選挙法改正で、いわゆるポスターの公営掲示板ですね。これは現実にたとえば東京都議会で六月の選挙で実施しようとすると、都選管の試算によりますと約一億円かかるわけですよ。東京都はもう張る場所がありませんから、仮に都選管が国政並みに公営掲示板だけでやろうとすると、現実にそれは支出しなきゃいかぬわけですね。  やはり私は、ここの公選法特別委員会というのは、国会のことだけ考えてはいけないんで、地方自治体のことは地方自治体が独自で判断すればいいじゃないかといいましても、やっぱり国政選挙でこういう公営化というものが決まりますと、一応それに準拠して地方自治体もだんだんそういう公営化の道をたどると思うんですね。そういう場合に、やはり自治体もいま大変深刻な財政難ですから、私は、いままでの論議がどうも国政選挙のことだけを考えた審議が非常に多くて、地方全体を配慮した、考えた審議というのが行われなかったんじゃないかと思うんですが、ぜひ私は自治省の方に、次の機会に、もし国政並みの公営選挙をやるとしたら、私は全部とは言いません、三千自治体全部やれとは言いません。せめて都道府県の首長、議員あるいは政令指定都市の首長、議員あたりまで適用した場合に、どのくらい各自治体でお金がかかるものか、そういうことも含めてやっぱり考えていくのが私は自治省の役目じゃないかと思うんですよ。ですから、そういう資料を私は次の機会にぜひ出していただきたいということを要求して、質問を終わります。
  294. 久野忠治

    久野委員長 この際、提出者から発言を求められておりますので、これを許します。片岡清一君。
  295. 片岡清一

    片岡議員 先ほど佐藤委員から統一見解を求められております事案がございますので、それについて申し上げたいと存じます。  シンボルカラー、シンボルマーク、似顔絵のみのステッカーについて、こういうことでございます。  今回掲示を禁止しようとするのは、政治活動に使用する候補者等の氏名または氏名類推事項、後援団体の名称を表示する文書図画のうち、従来禁止の対象とならなかった裏打ちのないポスターで「候補者等若しくは後援団体の政治活動のために使用する事務所若しくは連絡所を表示し又は後援団体の構成員であることを表示するため」に掲示されるものである。したがって、シンボルカラー、シンボルマークは、候補者等の氏名、氏名類推事項または後援団体の名称には該当しないのが通常であると考えられるし、候補者の似顔絵は、候補者の氏名類推事項に該当するとしても、単にそれのみでは事務所、連絡所または後援団体の構成員を表示するためのものと認めることは困難であろうから、一般的に言えば今回の改正による規制の対象とはならないものと考えている。もちろん、これらの文書図画が、掲示の時期、態様によっては事前運動の禁止規定に該当してくる場合があるか否かは別問題である。  こういうことでございます。  次に、岡田委員から御質問がございまして、若干答弁が残っておる点につきまして、さらに申し上げたいと存じます。  先ほどの岡田委員のステッカーの設例について申し上げますと、スローガンと政党名だけのもの、それからスローガンだけのもの、それから政党名だけのものの三例につきましては、そのスローガンが候補者の氏名類推事項に当たるような特別の場合を除きまして、公職選挙法第百四十三条第十四項の規制の対象とならないと考えます。  スローガンと候補者名が記載されたものは候補者名があるので同項の対象となりますが、一般的には、それが事務所もしくは連絡所を表示するものであるとは認められませんので、今回の規制の対象とはなりませんが、別途、事前運動等の観点から問題となることがあり得ることは先ほどお答え申し上げたとおりでございます。  以上でございます。
  296. 久野忠治

    久野委員長 この際、暫時休憩をいたします。     午後五時五十七分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕