○竹下
参考人 広島県の副
知事の竹下でございます。
本州四国連絡橋の
建設促進につきましては、日ごろ御
指導を賜っておりまして深く感謝いたしております。また、このたびは当
建設委員会におきまして、長年の待望でございました
旅客船問題の
対策の
特別措置法案を御
審議いただいておりまして、厚く御礼申し上げます。
以下、私は、
立場上
広島県、愛媛県をつなぐ尾道−今治
ルートを中心にして御説明を申し上げます。
この
ルートにつきましては、御承知いただいておりますとおり、一昨
昭和五十四年五月に大
三島橋が
本四架橋の一番目の橋として
完成いたしまして供用開始をされました。続く
因島大橋は現在工事中でございまして、伯方・大島大橋は先月、三月二十一日に着工されたわけでございます。これらの橋の全通は
広島、愛媛両県の長年の悲願でございまして、両県手を携えて一日も早い
完成を望んでおります。
工事中の
広島県の
因島大橋は、
昭和五十二年一月に着工以来現在の出来高は全体で約七〇%でございます。つり橋の橋梁部分は約六七%、
陸上の道路工事は現在すでに九五%で、舗装工事を残すのみとなっております。橋梁の両側の水面上に百四十五メートルの高さの塔工事が終わりまして、この三月十七日につり橋の生命とも言うべきケーブル工事の第一歩、具体的にはパイロットロープの渡海作業が幅約七百七十メートルの海峡において無事行われました。このまま順調にいきますと
昭和五十八年十月には完工すると承っております。
本州四国連絡橋の
建設に伴う
一般旅客定期航路事業とその
従業者対策及びその
関連事業に従事しておられる方々に対する
対策につきましては、すでに十年にわたります経緯がございますが、ごく最近の数年間をとってみましても、たとえば
昭和五十三年八月二十一日、いまから二年九カ月もすでに前でございますが、
本州四国連絡橋旅客船問題等
対策懇談会からその
対策についての
意見具申が出され、これを受けて
昭和五十三年九月には
政府レベルにおかれましても
建設大臣を
会長とされる
対策協議会が開かれ、損失補償には当たらないが、所要の特別
措置を講ずることにされました。
やや具体的に申し上げますと、第一は
航路の再編成、第二は
旅客船事業者に対する
措置、第三は
旅客船従業者に対する
措置、第四は現地及び中央に連絡協議機関を設置すること、第五番目は以上の
実施に当たっての所要の
立法措置を講ずること、六番目はその他海運代理店業の
調査等を引き続き行うということでございました。
これに基づきまして、中央、地方の連絡協議機関が設置され、ちょうど二年前の
昭和五十四年五月から
政府、
本四公団、
日本旅客船協会の代表の方、
全日本海員組合の代表の方で構成されまして、ほとんど毎月一回協議を重ねられ、現地は現地でほぼ同様の構成で協議を行ってまいりました。
この間におきましても
架橋工事は並行して行われてきております。時には不幸にいたしまして
意見の相違がもとになりまして
架橋工事の中断があったり、
旅客定期
航路事業のストが短時間ではございますが行われたりといったこともありましたが、この春に
旅客船協会の方との間では、船舶等不要資産の売却損の補てん、営業に関しては
転業に必要とされる期間の従前の収益相当額の補てん、
転業促進への積極的な
協力ということを中心にして了解点に達せられ、
全日本海員組合との間では、
転職先
職場の
確保、
あっせん、
職業転換給付金等の給付制度の適用、
退職金の特別加算制度の適用とその補てんということを中心にして一応の了解点に達せられ、今回当事者の了解のもとに基本的事項を
立法化されるものと私は
理解いたしております。
次に、
広島県を中心といたしました現地の状況を多少御説明いたします。
本州四国連絡橋旅客船問題尾道・今治
ルート連絡協議会、これは、中国、
四国の
旅客船協会、
全日本海員組合の中国、
四国の両地方支部、
運輸省の中国及び
四国の両海運局の方、
広島、愛媛両県、それに
本四公団をメンバーとしまして、不肖私が
会長を引き受けているのでございますが、この協議会で各種問題を現地の実情に即して
関係者間で話し合っていくということで、他の
ルートに先駆けまして昨年の一月に第一回の会合を持ち、具体的にはその下部機構として幹事会を設けまして、これまでに四回話し合いを続けておりまして、実は本日も午後一時から現地におきまして第五回目の会合が行われることになっております。今後、この協議会、幹事会の場を通じて具体的な問題の解決に当たっていくことになると存じますが、協議すべき
内容は大きく分けて
三つになると考えております。
その
一つは、いわゆる
航路の再編成であります。
因島大橋関係で
架橋により
影響を受ける
航路は十三
航路と言われておりますが、そのうち、
地域にとりましては
架橋後もどうしても存続しなければならない
航路、第二は
廃止もやむを得ない
航路があると思っております。それを
旅客船業者の方々から、たてまえではなくて、
架橋に伴い
既存航路をどうするのか、本音で実は教えていただきまして、それをわれわれ県と地元因島市とで、主として
離島に
生活いたします島民の通勤、通学等の
関係で、業者サイドで言われることと住民サイド、自治体サイドで考えますことが一致する部分につきましてはそのことを確認し、
意見が食い違っている部分につきましてはいかに調整するかということで話し合いたい、こういうことでございます。
また、つけ加えますと、海員
組合の皆さま方もできる限り海の
職場、
旅客船に残りたい、こういった希望が強いということもあるのでございます。したがって、こいねがわくは
本四架橋も
旅客船事業も両立してもらいたいという気持ちが強いのでございます。これまで
旅客船業者の方々からは、常に中央の
方針が決まってからでないと具体的に
航路の再編成をどうするかということがなかなか出せないということを繰り返し言っておられました。今回の
立法措置によりましてこの
航路再編成の話し合いがより具体的に進められる、このように私は考えております。
二つ目は、
旅客船事業者が将来の方向を早く見きわめられて
転業される場合には、公共団体側といたしましてもできる限りのお手伝いをする
所存でありまして、具体的に希望の職種なり
内容なりを出していただけないかということを自治体側から御提案を申しております。たとえば
広島県では因島の
架橋地点に約十三ヘクタールの用地を買収して、
瀬戸内海国立公園内に県立の
架橋記念公園
事業を現在
実施しておりますが、この中につくることが予定されておりますレストハウス、食堂とか売店等を入れるつもりでございますが、こういったものが
転業の一助にならないかとか、現在、
本四公団が作業基地として使っておられます県有地約一万八千平方メートルを因島の
架橋地点の一等地に
確保しておるわけでございます。地元の
旅客船業者の方々が
転業してホテルとか宿泊部門につきまして御
利用なさるなら、県といたしましても十二分に相談に乗ろうといったような提案も県側からいたしております。これらの点につきましては地元の業者の方々、地元の商工
会議所、地元の市長、市議会等にもかなり関心を持っていただいておりまして、より具体的な話し合いをこれから精力的に続けていくことにしております。
また、これらの問題につきまして、昨年の十月以降、
事業者と県の具体的な担当部課でいろいろと
転業問題についての自由討議を行う
機会を持っております。いわゆる勉強会でございます。この際、
旅客船業者の方々からは、水産養殖業をやりたい、観葉植物の栽培をやりたいあるいは有料老人ホームの経営はどうしたものだろうかとか、あるいはホテルをやりたい、
バス事業に転出したいあるいはトラック
事業に転出したいといった希望が出されまして、たとえば昨年の十二月には、私の方の県の担当部課から、一例だけを申し上げますと、水産養殖業をおやりになるのであれば、適地を県の水産試験場で
調査検討いたしまして
協力いたしましょうというような御返事等、
個々具体的にお申し出のあった項目につきましては提出いたしまして、業者の皆様方の参考にいたしております。
また、最近、因島
航路の
旅客船業者の方々で、これと並行いたしまして、
個々ばらばらで業者ごとに
転業を勝手に考えるのではなくて、共同して新しい仕事を行おうということで、本年の二月には
転業のための定期船
旅客船業者五社で新会社を設立されました。現在どうすれば円滑な
転業ができるか研究中の段階でございまして、業者側でもみずからの
転業につきましてかなり真剣な検討を行っていただいておるというところまでこぎつけました。
三つ目は、
従業者の
雇用対策であります。
われわれ
地方自治体といたしましても、
架橋に伴いまして一人の
失業者も出したくない、また、
離職を余儀なくされるときでも、これらの方々に
最大限の配慮をすることは当然のことと考えております。
海員
組合の方々からは、
転職に際しまして事前に研修なり講習あるいは
職業訓練を受けることにより、
陸上職場のライセンスを取りたい等の希望があります。たとえば、私の方の尾道では、昨年の六月に
船員の方々を対称といたしまして、
全日本海員組合が主体となられ、県がこれに
協力するという形で十二分に打ち合わせの上、財団法人尾道海技学院におきまして
陸上の調理師の資格を取得するための講習会を行いました。その成果はみごとなものであったわけでございます。
また、本年の一月には、県の公共職業安定所を通した一般的な中途採用者の採用時の賃金情報、年齢別、職種別の賃金水準の情報など、最高、最低、
平均賃金の情報提供等を行い、今後も引き続き必要な時期に、御要望のあります時期に中途採用者の賃金
関係につきましての情報を県の方から海員
組合の方へ御提出することにいたしております。
今後、
雇用対策につきまして、対象者数がいかなる数になるかということが
一つの問題でございます。現在、地元の
全日本海員組合の現地支部におかれまして、
離職が予想されることを前提にいたしまして、意向
調査を悉皆
調査でやっておられます。この結果が出次第、
旅客船業者、海員
組合、県及び地元市町村の行政側で協議していくことになっております。
以上のとおり、
瀬戸内海の大橋の
建設に伴うこれらの問題につきまして、地元の
地方自治体として諸
対策を講ずることにより、
旅客船問題の円滑な解決を図りたいと考えております。
これらの諸
対策の前提として、今回御
審議いただいております
特別措置法案による国の
対策が基本的な
条件になるものでございます。ぜひとも
早期に成立させていただきたいと存じます。この
法案を拝見いたしますと、「六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」となっておるのでございますが、この際にはさらに
関係者で十分
内容が詰められまして、この法律に基づきます政令、省令も同時に示していただけるようにしていただきたいと考えております。
これまで申し上げましたことでございますが、
因島大橋の
完成よりは、おおむね一年ぐらい前の時期を目途に、具体的に申し上げますと、
因島大橋は五十八年十月に
完成予定でありますので、その一年前、五十七年の十月、そういたしますといまから一年半ぐらいまでには実は余り時間が残っておりません。われわれといたしましては、この
法案を早く通していただきまして、中央のいろいろな政令、省令等の準備をしていただき、それを受けまして、現地は現地で実情に沿うように具体的に話し合いを続け、決定すべきことは決定いたし、この大橋の
完成、供用開始までに準備すべきことは実はすべて終わっておきたいと考えております。
なお、
広島県では、
広島県議会が
昭和五十年十月に
本州四国連絡橋建設に伴う
旅客船対策についての
意見書を採択され、さらに去る三月にも、三月県議会におきまして、
本四架橋に伴う
旅客船関係者等の諸
対策に関する
立法措置についての
意見書を、それぞれ両国とも各党各会派満場一致で採択されまして、特別
措置に関する法律の
早期制定を
関係方面に訴えておられますことを申し上げておきます。
以上、
先生方の御
審議によりまして、一日も早くこの問題が解決するように
お願い申し上げまして、
陳述といたします。ありがとうございました。(
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