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1981-08-04 第94回国会 衆議院 決算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年八月四日(火曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 國場 幸昌君    理事 東家 嘉幸君 理事 原田昇左右君    理事 森下 元晴君 理事 井上 一成君    理事 春田 重昭君 理事 中野 寛成君       石井  一君    植竹 繁雄君       加藤 紘一君    粕谷  茂君       高田 富之君    和田 一仁君       辻  第一君    石原健太郎君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君  委員外出席者         警察庁警備局長 山田 英雄君         沖繩開発庁総務         局企画課長   望月 美之君         沖繩開発庁振興         局振興総務課長 瀧川 哲男君         国土庁長官官房         総務課長    若林 正俊君         国土庁地方振興         局過疎対策室長 相馬  実君         外務大臣官房外         務参事官    渡辺 幸治君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         大蔵省主計局主         計官      公文  宏君         厚生省児童家庭         局企画課長   北郷 勲夫君         厚生省保険局国         民健康保険課長 古川貞二郎君         建設省都市局下         水道部下水道企         画課長     幸前 成隆君         自治大臣官房審         議官      小林 悦夫君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    大嶋  孝君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 関根 則之君         消防庁長官   石見 隆三君         会計検査院事務         総局第一局長  佐藤 雅信君         会計検査院事務         総局第二局長  堤  一清君         会計検査院事務         総局第五局長  丹下  巧君         公営企業金融公         庫総裁     首藤  堯君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 八月四日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     加藤 紘一君   桜井  新君     粕谷  茂君   竹下  登君     石井  一君   山口 敏夫君     石原健太郎君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     竹下  登君   加藤 紘一君     近藤 元次君   粕谷  茂君     桜井  新君   石原健太郎君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十三年度政府関係機関決算書  昭和五十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十三年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管警察庁)、自治省所管公営企  業金融公庫〕      ————◇—————
  2. 國場幸昌

    國場委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管警察庁自治省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。  まず、安孫子国務大臣から総理府所管警察庁及び自治省所管について概要説明を求めます。安孫子国務大臣
  3. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 昭和五十三年度警察庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十三年度歳出予算現額は一千三百七十六億二千二百七十万二千九百四円でございまして、支出済み歳出額は一千三百六十四億五千四百五十一万四千百二十二円であります。この差額は十一億六千八百十八万八千七百八十二円でありますが、そのうち翌年度へ繰り越した額は一億四千二百十五万八千円でありまして、これは大阪府警察官待機宿舎施設新築の際に環境問題について地元住民との調整が難航したこと、及び地質調査の結果、設計変更したこと等のために年度内に支出を完了することができなかったものであります。  不用となりました額は十億二千六百三万七百八十二円であります。これは、職員に欠員があったので、職員基本給を要することが少なかったこと等のためであります。  次に、支出済み歳出額の主な費途についてその大略を御説明申し上げますと、第一に、警察庁経費といたしまして七百八十二億八千百二十八万八千三百五十八円を支出いたしました。これは、警察庁自体経費及び都道府県警察に要する経費のうち警察法の規定に基づき国庫が支弁する経費として支出したものであります。  第二に、船舶建造経費として三億九千八万一千円を支出いたしました。これは、警察活動に必要な警察用船舶建造に要する経費として支出したものであります。  第三に、科学警察研究所の経費として六億三千四百九十六万六千五百四十五円を支出いたしました。これは、科学捜査、防犯及び交通についての研究調査等のための経費として支出したものであります。  第四に、皇宮警察本部経費として三十八億九千三百五十九万五千四百九十四円を支出いたしました。これは、皇宮警察職員の給与その他皇居の警備行幸啓警衛等経費として支出したものであります。  第五に、警察庁施設費として三十四億四千六百五十七万七千三百八十四円を支出いたしました。これは、警察庁関係施設整備するための経費として支出したものであります。  第六に、都道府県警察費補助として四百三十二億二千七百五十五万円を支出いたしました。これは、警察法に定めるところにより、都道府県警察に要する経費の一部を補助する経費として支出したものであります。  第七に、他省庁から予算移しかえを受けた経費は、行政管理庁からの行政情報処理調査研究費として三百三十二万三千四百円、科学技術庁からの国立機関原子力試験研究費として一千七十四万四千円、環境庁からの国立機関公害防止等試験研究費として一千二百十万円、大蔵省からの科学的財務管理調査費として二百九万九千二百二十円を支出いたしました。  第八に、千葉警察東京国際空港警備隊費経費として六十四億六千百九十四万三千八百六円を支出いたしました。これは、新東京国際空港に係る警備活動を実施するため、千葉警察に当分の間設置されました新東京国際空港警備隊に要する経費として全額予備費を使用したものであります。  第九に、警察庁施設その他災害復旧費経費として九千二十四万四千九百十五円を支出いたしました。これは昭和五十三年六月に発生しました宮城県沖地震によって災害を受けた警察施設について、国が直轄施行した警察庁施設その他の復旧費と県が施行した都道府県警察施設復旧費の一部を補助する経費として全額予備費を使用したものであります。  以上、警察庁関係歳出決算について御説明を申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。  次に、昭和五十三年度における自治省所管決算について、概要を御説明申し上げます。  一般会計歳出決算につきましては、歳出予算現額は、当初予算額六兆二十九億一千六百十四万円余、予算補正追加額十五億六千万円、予算補正修正減少額一千四十四億八千七百四十八万円余、総理府所管から移しかえを受けました額八百二十一万円余、前年度繰越額十三億六百三十七万円余、予備費使用額五億二千七百七十四万円余、合計五兆九千十八億三千九十九万円余でありまして、これに対して支出済み歳出額は五兆八千九百三十八億七千五百六十六万円余で、差額七十九億五千五百三十三万円余を生じましたが、この差額のうち、翌年度繰越額は五億五千三百九十九万円余、不用額は七十四億百三十三万円余であります。  以下、支出済み歳出額の主なるものにつきまして、御説明を申し上げます。  まず、地方交付税交付金でありますが、歳出予算現額は五兆三千七億五千六百四十九万円余、支出済み歳出額は五兆三千七億五千六百四十九万円余でありまして、全額支出済みであります。この経費は、交付税及び譲与税配付金特別会計法に基づき、昭和五十三年度所得税法人税及び酒税の収入見込み額のそれぞれ百分の三十二に相当する金額合算額昭和五十一年度地方交付税交付金精算額及び過年度特例措置による調整額を加算した額を、交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れたものであります。  次に、臨時地方特例交付金でありますが、歳出予算現額は二千二百五十一億円余、支出済み歳出額は二千二百五十一億円余でありまして、全額支出済みであります。この経費は、昭和五十三年度地方財政状況を考慮し、その健全な運営に資するための特例措置として、地方交付税法等の一部を改正する法律に基づき、交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れたものであります。  次に、交付税及び譲与税配付金特別会計借入金等利子財源繰り入れでありますが、歳出予算現額は二千二百十三億一千百万円、支出済み歳出額は二千百五十二億二千八百七十七万円余、不用額は六十億八千二百二十二万円余でありまして、この経費は、交付税及び譲与税配付金特別会計法に基づき、借入金及び一時借入金利子支払いに充てるために必要な金額交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れたものであります。  不用額を生じましたのは、一時借入金借り入れが少なかったことに伴い、一時借入金利子支払いが少なかったこと等によるものであります。  次に、交通安全対策特別交付金でありますが、歳出予算現額は七百八十七億六千五百六十七万円余、支出済み歳出額は七百八十七億六千五百六十七万円余でありまして、全額支出済みであります。この経費は、交通安全対策の一環として、反則金に係る収入額に相当する金額を、道路交通安全施設の設置に要する費用に充てさせるため、都道府県及び市町村に対し、交通安全対策特別交付金として交付したものであります。  次に、地方債元利助成費でありますが、歳出予算現額は九十二億五千百二十九万円余、支出済み歳出額は八十六億五千八百九十一万円余、不用額は五億九千二百三十八万円余となっておりまして、この経費は、新産業都市の建設及び工業整備特別地域等整備に係る地方債特別調整分に対する利子補給金として、道府県に対し、交付したものであります。  次に、地方公営企業助成費でありますが、歳出予算現額は二百五十三億一千九百四十六万円余、支出済み歳出額は二百四十八億六千五百七十七万円余、不用額は四億五千三百六十九万円余と相なっておりまして、この経費は、公営地下鉄事業特例債利子に係る助成金として、地方公共団体に対し、交付したもの等であります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金でありますが、歳出予算現額は百五十一億五千万円、支出済み歳出額は百五十一億五千万円でありまして、全額支出済みであります。この経費は、いわゆる基地交付金でありまして、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に対し交付したものであります。  次に、消防施設等整備費補助でありますが、歳出予算現額は百四十億五千三百六十五万円余、支出済み歳出額は百三十五億一千八百九十八万円余、翌年度繰越額は四億三千九百四十二万円余、不用額は九千五百二十四万円余に相なっておりまして、この経費は、消防施設等整備に要する経費の一部を関係地方公共団体に対し補助するために要したものであります。  以上が一般会計歳出決算概要であります。  次に、交付税及び譲与税配付金特別会計決算につきましては、歳入予算額は、当初予算額十一兆二千六百四十九億三千四百八十四万円余、予算補正追加額九百七十五億六千万円、予算補正修正減少額一千三十七億六千五百万円、合計十一兆二千五百八十七億二千九百八十四万円余でありまして、これに対し収納済み歳入額は十一兆二千六百六十九億六千三百六十四万円余と相なっております。  また、歳出予算現額は、当初予算額十一兆二千六百四十九億三千四百八十四万円余、予算補正追加額十五億六千万円、予算補正修正減少額七十七億六千五百万円、合計十一兆二千五百八十七億二千九百八十四万円余でありまして、これに対し支出済み歳出額は十一兆二千五百十二億二千七百四十二万円余、不用額は七十五億二百四十一万円余であります。  不用額を生じましたのは、一時借入金借り入れが少なかったことに伴い、一時借入金利子支払いが少なかったこと等によるものであります。  支出済み歳出額の主なるものは、第一に、地方交付税交付金七兆三百九十九億八千五十三万円余でありまして、これは、地方団体基準財政需要額基準財政収入額を超える場合にその財源不足額に応じて必要な財源を、また災害その他特別な財政需要等に対し必要な財源を、それぞれ地方団体に交付したものであります。—第二に、地方譲与税譲与金三千七百二億七千八百十万円余でありますが、これは、地方道路譲与税譲与金石油ガス譲与税譲与金航空機燃料譲与税譲与金自動車重量譲与税譲与金及び特別とん譲与税譲与金として、関係地方公共団体に譲与したものであります。  以上、昭和五十二年度自治省所管決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 國場幸昌

    國場委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。堤会計検査院第二局長
  5. 堤一清

    堤会計検査院説明員 昭和五十三年度警察庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  6. 國場幸昌

  7. 佐藤雅信

    佐藤会計検査院説明員 昭和五十三年度自治省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 國場幸昌

  9. 丹下巧

    丹下会計検査院説明員 昭和五十三年度公営企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  10. 國場幸昌

  11. 首藤堯

    首藤説明員 公営企業金融公庫昭和五十三年度業務概況について御説明申し上げます。  昭和五十三年度における貸付計画額は当初八千四百二十億円でありました。  これに対し貸付実行額は七千二百九十四億千六百六十五万円であり、前年度と比較して二五%の増になっております。  一方、この原資としては、産業投資特別会計からの出資金十億円、公営企業債券発行による収入等七千二百八十四億千六百六十五万円を充てたのでございます。  なお、当年度における元利金回収額は二千六百九十一億九百四十八万円余でありまして、延滞となっているものはございません。  貸付実行額の内訳は、地方公共団体の営む上水道事業下水道事業等に対するもの六千五百七十一億百十五万円、本年度から新たに融資対象になった臨時地方道整備事業等に対するもの五百六十七億五千七百二十万円、地方道路公社及び土地開発公社に対するもの百五十五億五千八百三十万円となっております。  以上により、当年度末における貸付残高は二兆七千六百二十八億七千五百六十三万円余になり、前年度残高と比較して三〇%の増になったのでございます。  以上のほか、短期貸し付けとして千五百五十億九千四百四十万円の貸し付けを行いました。  また、農林漁業金融公庫から委託を受けて公有林整備事業及び草地開発事業に対し二百十四億七千七百七十万円の貸し付けを実行しました。このため、受託貸し付け当年度末における貸付残高は千三百二十七億九千七百七十二万円余になっております。  次に、当年度における公営企業債券発行額は八千四百七十一億千万円でありまして、このうち公募債が七千十七億五千万円、縁故債が千四百五十三億六千万円であります。  なお、これらの債券発行による収入のうち九百九十三億七千九百十万円は、昭和四十六年度発行した債券満期償還に必要な資金に充てたものであります。また、縁故債のうち二百九十億七千万円は低利の債券発行いたしました。  次に、公営企業健全化基金について申し上げますと、当年度における公営競技納付金収入額三百二十億二千五百三十二万円余を基金に充て、当年度における基金運用益から基金管理費用及び利下げ所要額を差し引いた残額五億千二百三十四万円余を基金に組み入れました結果、当年度末における基金総額は千四百五十九億三千八百六十二万円余になりました。  次に、収入支出状況について申し上げますと、収入済み額収入予算額千八百九十二億九千四百六十六万円に対し千八百七十二億四千七十四万円余、支出済み額支出予算額千九百五十六億千六百二十五万円余に対し千九百三十三億四千二百五十一万円余でありました。  また、損益の状況でございますが、貸付金利息等利益金総額千九百四十八億四千七百七十九万円余に対し、債券利息及び事務費等損失金総額千九百三十九億七千三百六十三万円余でありまして、差し引き八億七千四百十六万円余を各種の償却に充当いたしましたので、利益金は生じておりません。  以上、昭和五十三年度公営企業金融公庫業務概況について御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  12. 國場幸昌

    國場委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  13. 國場幸昌

    國場委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 私は、まず冒頭に、政治資金について少し大臣に見解をただしておきたいと思います。  すでにけさの新聞で政治資金収支報告が公表されているわけです。かねてより政治資金については、その明瞭化を強く求められているところであるわけであります。しかし、すでに発表になったように、「空前の一千百二十八億円 「金のかかる政治」止まらず」「不透明な企業献金」等、非常に政治不信をさらに招くような実情である。  こういう時点に立って、すでに現法については五十一年の一月施行で、その附則第八条に五カ年の経過を見て再検討をということが明記されているわけです。もちろん私は、当然大臣、見直されるというふうに思うわけでありますけれども、ここで大臣から、この政治資金規正法に関しての考え方をまずは聞いておきたい、かように思います。
  15. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 見直しということに相なっておりまするが、自治省といたしましてもいろいろ検討いたしております。  企業献金個人献金の兼ね合いをどうするかという問題でありまして、原則として企業献金は好ましくない、個人献金が好ましい、こういう観点に立って議論が行われておるわけでありますが、私どもといたしましては、一律に企業献金が悪であって個人献金が善であるというわけにもいかぬだろう、こういう認識を持っておるものでございます。しかしながら非常に過度にそういう傾向が助長されることもいかがかと存じまするので、その辺のことについては十分検討いたして今後結論を出したい、こう考えておるところでございます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 検討している、しかしこれはもう五年経過したのですし、それじゃいつごろをめどに、たとえば来年の通常国会に提案したいのだというようなおつもりを持っていらっしゃるのか、もう少し大臣からの突っ込んだお考えをさらに聞いておきます。
  17. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 来年の通常国会に必ず出すというような結論まで私どもまいっておりません。十分いま検討しておる、こういうところでございます。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 そういう意欲をお持ちなのか、まだ通常国会に出すという結論は得ていないけれども、そういうつもりで検討努力をしているのか、何らかのめどというものを置いて検討が加えられなければいけないし、もうすでに五年という経過があるのですから、そういう点で取り組みのめどとすべき姿勢はどうなんでしょうか。
  19. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 必ず出すという前提で検討しているわけではありませんが、しかしきわめて重要な問題でございまするので、私どもとしては最大の努力をしていま検討しておる、こういうことでございます。その検討の結果が出し得ることになるのか、出しにくくなるのか、この辺はまだはっきりいたさない、こういう段階でございます。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 むしろ企業献金、現法で逆に一企業百五十万ということで団体数をふやせば何口でもできる、そういうことから考えていくと、企業献金法律で合法化していくというような悪い面もとり方、使い方、運用の仕方によれば考えられるわけであって、いまおっしゃられたような善と悪という単純な割り切り方——しかし、やはり何らかの見直しをしなければいけないというお考えは持っていらっしゃるわけでしょう。
  21. 大林勝臣

    大林説明員 今後の政治資金規正法見直しにつきましては、先ほどおっしゃいましたような個人献金強化方途及び企業献金あるいは組合献金あり方、これがパラレル検討すべき義務づけとなっております。従来政治資金規制の問題が論議されました都度、やはり理想的には個人献金をできるだけふやしていくという方向努力すべきである、こういう線は確立されておるわけでありますが、問題は、個人献金をできるだけふやすと同時に、企業献金あるいは組合献金あり方パラレル考えていくべしと、こうなっておるわけでありまして、一番の今後の課題といたしましては、個人献金強化する方途というものをどういう方向からこれを探り出すかということがまず先決であります。  現在個人献金促進策といたしましては、御承知のように、租税特別措置法による税の恩典というものが制度化されておるわけでありますけれども税制度以上にさらに今後個人献金強化する制度的な方策というのが何かうまい道があるかという問題、これは非常にむずかしいわけでありまして、そういった個人献金強化の制度的な確保の道を私どもまずいろいろ考えておるわけであります。  企業献金見直しにつきましては、政治資金規正法思想そのものが結局企業献金、これを悪とは考えていないわけでありまして、一つのいわゆる特定の団体から法外なきわめて大きな献金を行うということ自体に疑惑が持たれることになるのであるから、できるだけそれぞれの企業なり団体分相応献金、これで政界の浄化を図ろうというのが従来の法律思想でありまして、こういった思想につきましては今後とも同じような考え方でいかざるを得ないというふうに考えておるわけであります。  要するに、先ほど申し上げましたように、まず第一番目は、個人献金強化方途にどういう制度的ないい知恵があるかというのが当面の検討課題となっておるところであります。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 大臣企業献金がやはり政治浄化とも深いかかわりがあるし、先ほど私が申し上げたように、一企業百五十万、そういう形で団体数がふえれば分散され——いま部長分相応企業献金、私はそれなら同じ政治家に対して後援団体をたくさんつくって、そして分散をしていくということも、まとめれば一つになるわけですから、要はやはり政治浄化金権政治から脱却していくということについても見直さなければいけない、そういうことなんですね。それはわかっているわけですね、大臣だって見直さなければいけないと言う。しかしいま、いつごろめどでしょうか、通常国会にでもという、もう少しここで大臣から意欲あるお考えをぜひ聞かしてもらいたい。
  23. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 この問題は、ひとり自治省と申しますか、官庁筋だけの問題ではないわけですね、実際は。それぞれの党の財政状態というものがあるわけなんです。そこで各党の財政状況によってまたその議論の展開もおのずからニュアンスが違ってくる問題がこの問題としては大変重要なファクターになっているわけでございます。さような点から考えますと、端的に申し上げますれば各党の合意というものが前提でございませんと、なかなか制度化ということは困難な問題じゃないかと私は認識をいたしております。そこで、自治省といたしましてもいろいろ今後検討をひとつ進めてまいりますけれども、各党の合意が得られるようなものでなければ実際問題としてはこれは制度化できないわけでございまするので、各党間の合意が得られるように各党においてもせっかくの御努力を願わなければならない、そういう問題である、こういうふうに考えておるところでございます。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、それじゃ自治省としてはむしろ各党に働きかけをする、もちろん各党の合意を得るために必要なのだから、自治省の方から各党に対して自治省の見解あるいは政界浄化という意味での政治資金規制については何らかの働きかけをするという御意思をお持ちなんですね。
  25. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 役所筋としては役所筋の努力をいたします。ただ問題の性質上、ひとつ国会の中におきましても各党の間でこの問題をどう処置していくかということについて、最終的にはその合意を得なければ実現しない問題でございますので、その御努力をお願いしなくちゃならぬ、こう考えておるところでございます。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 さらにもう一点。政治資金の収支報告書については公開され、閲覧が可能であるわけであります。しかし、公開していると言いながら、実はむしろ公開をよりむずかしい状態にしているのではないか。具体的には、閲覧をしその報告書をコピーするということは拒否しているわけですね。手書きは認めるけれども、コピーはだめなんだ。これは非常におかしいわけで、より広く多くの人に承知をしてもらう、あるいは実態を把握してもらうというためにも、機械、技術が非常に発達している今日ですから、むしろコピー等も含めて効率のいい、公開の精神を十分生かせるような方策をとられるべきではないだろうか。そういう意味で、なぜコピーを拒否されているのか、こういう点についても少し聞いておきたいと思います。
  27. 大林勝臣

    大林説明員 現在政治資金の公表をいたしますと閲覧制度というのがあるわけでありますが、閲覧の際にいろいろ書き写すのも大変だということから、何かコピーができるような便宜が考えられないかというお話が以前からあることは承知をいたしております。ただ、コピーをいたしまして差し上げるということにいたしましても、また閲覧者がコピーをとってお持ち帰りになるということになるにいたしましても、いずれにしましても法律でやはりその部分の手当てというものが必要となってまいりますし、予算措置もまた必要となってまいるところであります。  同時に、現在の政治資金の書類というのが年々きわめて膨大になっておりまして、大変変なお話でございますけれども、依然としてとじひもで分厚いものをとしておる。非常に分厚くなりますとコピーも物理的にしにくくなるという障害もございます。こういった制度的な面、予算的な面を含めまして今後の見直しの際の一つ研究課題というふうに考えております。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 大臣政治資金については公開すべきである、またいま現に公開をしているわけですけれども、いま大林部長から検討課題一つにしたいということでしたが、私は、これはぜひ前向きに検討してもらわなければいかぬと思うのです。このことについてはやはり大臣から一言。それはとじひもでとして分厚いからコピーが物理的に非常に困難性があるなんというのは言い逃れなんですよ。実際は、そんなことを言っておってもそれ以上に困難な資料もコピーが可能でありますから。これはぜひ検討をしていただきたいと私は思うのですが、大臣からその意をお答えいただきたいと思います。
  29. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 御趣旨の点も含めまして十分検討してまいります。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 さらに自治省関係については臨調問題も含めて後で質問を続けますが、ここで警察庁一つ聞いておきたいのです。  ロッキード裁判でコーチャン証言等で私は十分理解しているのですけれども、たとえば自国民の裁判に関連して、いわゆる被告当事者の外国での言動、行動に関して捜査をする場合には、一つは相手国の政府、検察、そういうところの了解をとってそこに依頼をする、あるいは相手国政府の了解を得て直接取り調べをすることも可能であるわけでありますけれども、その相手国の了解なしに黙って捜査をすることは、たとえばロッキードにおいては日本が日本の公権力をもって相手国アメリカに行使したということになるわけで、そのことはアメリカの主権を侵害したことになると私は思うのです。わが国はそんなことはしない。事実できないわけですし、しなかったと思うわけですけれども、そういうことは当然私の考えているようにできないし、しないし、またそのことは友好関係に支障を来すし、そういう主権を侵害するような行為は一切やらない、そういうふうに私自身は捜査と主権の関係については認識をしているわけですけれども警察庁の方も私と同じような認識、そしてそういう取り組みであるのかどうか、念のために聞いておきたいと思います。
  31. 山田英雄

    ○山田説明員 お答えいたします。  外国の領域内における捜査につきましては、当該国の主権の承諾によって行うべきものと考えております。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 私の理解するところと全く同一でございますね。
  33. 山田英雄

    ○山田説明員 ただいまお答えしたとおりでございます。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 さて、私は金大中氏事件についてここで尋ねておきたいと思うのですが、金大中氏が日本にいたときの言動について外務省を通じて何らかの問い合わせあるいは依頼、照会があったのでしょうか。あるいは報告を求められたこともなかったでしょうか。この点についてお尋ねをいたします。
  35. 山田英雄

    ○山田説明員 ただいまの御質問は、韓国側から金大中の日本における言動についての照会があったかどうかという点でございましょうか。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 まず、外務省を通じて警察庁の方にそういう照会があったのか、依頼があったのか、あるいは報告を求められたこともあったのかどうか、こういうことです。
  37. 山田英雄

    ○山田説明員 その件については、韓国側の外務省を通じての要請、調査要求というのはなかったと承知しております。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 わが国の外務省を通してはいかがですか。
  39. 山田英雄

    ○山田説明員 外務省を通してもなかったと承知しております。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ今度は直接警察庁に何らかの調査依頼があった、あるいはなかった、どちらでしょうか。
  41. 山田英雄

    ○山田説明員 警察機関に対して、警察庁に対して直接要求があったことはございません。
  42. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ警察庁は金大中氏の日本での言動を情報として報告をしたことがあるでしょうか。
  43. 山田英雄

    ○山田説明員 外国に対してそういう情報を提供したということはございません。
  44. 井上一成

    井上(一)委員 金大中氏裁判で検察側が述べた起訴状によると、金大中氏の日本での言動が訴状に述べられているわけであります。このことについては私は外務省の正訳を持っておりますけれども、外務省が正訳をされているのですから、ここで起訴状を読むことは省きます。いままでは、この金大中氏の日本での言動等については、政府は、背景であって訴因でない、こういうふうに言っているわけなんです。私はここで背景だとか訴因だとかそういうことを論じようとは思いません。書かれている事実について、そしてそれに関連して質問してみたい。この背景であろうと訴因であろうとその理解はさておくとして、金大中氏の日本での言動が訴状に述べられている、書かれている、こういう事実は政府はお認めになりますね。御存じでしょう。
  45. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  金大中氏の裁判に関する第一審の裁判における検事側の起訴状において金大中氏の滞日中の言動が触れられたことは事実でございます。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 このことは、韓国の検察が訴状に書いてあるのは、何らかの方法で金大中氏の日本での言動を入手した確固たる証拠があって書いているわけですね。韓国側が事実として確認をしたから書いてあるわけだ、私はそう思うわけなんです。事実として確認をしたから韓国の検察がここに、訴状に列記した、私はそう思うのですけれども、このことについて外務省の見解、警察庁の見解を聞いておきます。
  47. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  韓国側が金大中裁判において、検事の起訴状において金大中氏の滞日中の言動について触れられていることは事実でございますが、それがいかなる根拠に基づき触れられているかということについては私どもとして承知していない、かような立場でございます。
  48. 井上一成

    井上(一)委員 私は、いかなる根拠ということまでは、その根拠までは聞いてない。韓国の検察が事実を、確固たる事実を何らかの方法で入手して書いてある、その事実を外務省も承知し、私と同じように、それはしっかりとした確証があって書かれたのだというふうに思われますかということを私は聞いているのです。
  49. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 金大中氏の起訴状の中に書いてございます滞日中の言動の個々の事実について、それの真偽等について、私どもとして申し上げる立場にないということでございます。
  50. 山田英雄

    ○山田説明員 お尋ねの事柄につきまして、警察庁としては論及すべき事柄ではないと考えております。
  51. 井上一成

    井上(一)委員 外務省に私は事の真偽、言動の真偽を尋ねているのではなく、いわゆる訴状にそういうものが明らかに書かれている、それは韓国側が事実として確認したから書いたのだ、そういうふうに思いませんか、こういうふうに私は聞いているのです。警察庁にも、そういうふうに思いませんか、こういうふうに聞いているのですが。
  52. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 その点につきましては、先ほど来申し上げていますとおり、私どもとして具体的に起訴状に書かれている金大中氏の滞日中の言動の個々の事実についてどうこう言及する立場にないということでございます。
  53. 井上一成

    井上(一)委員 外務省が訳したこの訳文にそういうことが書いてあるわけです。金大中氏の日本における言動が書いてあるから、これは韓国側が確固たる証拠がなければこんなことは書けぬと私は思うのです。そういうことを書いてあるのですが、その事実かどうか、あるいは正しいことなのかあるいは誤ったことなのかはここで聞いておらぬわけです。こういうことを書いてあるけれども、これは韓国検察側が、事実だ、そういう確固たる証拠を持って書いたのだというふうに思いませんかと言っているのです。思うか思わないか、これを答えてください。
  54. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 本件は金大中氏裁判という外国の司法制度といいますか裁判にかかわる問題でございますので、その点について外国政府としての私どもとしてコメントする立場にない、コメントをいたしかねるということでございます。
  55. 井上一成

    井上(一)委員 その書いてある事実に対して、何らかの方法でその事実をつかまれたと思うのですが、正しいとか誤っているとかいうことは別に私はいまここで論じていないのですけれども、そのことには外務省も警察庁も協力はしなかった、こういう事実を韓国側が確認することに手はかさなかったのですよ、そういうことは言いたいのでしょう。まずそれはどうなんですか。書いてあるけれども、こういうことについては一切外務省も警察庁も協力もしないし、俗に言う手をかしませんでした、知りませんでした、と。
  56. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先生のお尋ねは、金大中氏の起訴状の中の滞日中の言動に関する部分について日本政府として外務省なりあるいは警察庁なりが韓国政府の要請に基づいて協力をしたかどうかというお尋ねでございますけれども、その点については、先ほど警察庁からお答えがありましたように、協力はしておりませんということでございます。
  57. 井上一成

    井上(一)委員 事実確認が日本当局を通じては一切行われていない、こういうことが言えますね。どうですか。
  58. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 韓国側から要請がございませんし、それについて協力をしたということはございませんので、先生お尋ねの事実関係について協力をしたという事実はございません。
  59. 井上一成

    井上(一)委員 そういうことになりますと、韓国側の捜査当局自身が自身の手でそういう事実確認というのでしょうか、そういう訴状に列記されていることについては韓国側当局が捜査をされたということになりますね。
  60. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先ほど来御説明しておりますとおり外国の裁判にかかわることでございますので、先生お尋ねのただいまの問題についても、私どもとしてコメントするととは差し控えたいし、コメントする立場にないとお答えせざるを得ないということでございます。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 日本が、わが国の政府機関が何らそういうことに手をかしてないのだということをさっきはっきり言われているのだし、だから、それじゃ向こうが勝手にやられたのでしょうね、こういうことを聞いているのですよ。向こうの裁判について、まだ私は触れていませんよ。外務省の書かれたこの正訳されたこのことについて日本政府に聞いているのだから、それは、どない書こうが外務省も警察庁も政府当局は何ら手をかしてないのだから、韓国側が勝手にやったことです、そうですね、こういうふうに聞いているのです。
  62. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先生御指摘の点については、日本政府は関与してないということでございますので、論理的に申し上げれば韓国側で独自の立場で記述したということになろうかと思います。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 警察庁にも、この点についてはいま外務省がお答えになられたそのとおりのお考えでしょうか。
  64. 山田英雄

    ○山田説明員 外国の機関の問題でございますので、私ども全くコメントできないわけでございます。
  65. 井上一成

    井上(一)委員 外国の裁判云々についてぼくは聞いておるのと違うのですよ。  それじゃさらに私は、韓国側が勝手に独自でやられた、渡辺参事官の論理的な理解、これは当然だと思いますし、私もそういう理解をしているわけです。そこで私は、それは韓国がわが国で韓国の公権力を行使したということに論理的にはなるのではないか、こういうことなんですよ。いかがですか。
  66. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先生のお尋ねの趣旨が必ずしも私にとって明らかでございませんけれども、韓国が独自の立場で起訴状に滞日中の言動を記載したということから、即しからば韓国の官憲における公権力の行使が日本の領土内で行われたということになるかどうか、必ずしもそうは思わないということでございます。
  67. 井上一成

    井上(一)委員 それは渡辺さん、おかしいよ。それは答弁が苦しいと思うね。それはわかるけれども、やはりこういうことをきっちりとしていかないからこの問題はなかなか解決しないわけなんですよ。だから、韓国側が勝手にやった、それは私は冒頭にロッキード裁判で一般論としてちゃんときっちり聞いているわけです。外国での言動については相手国の了解、また相手国の協力がない限りにおいての捜査は、これは相手国の主権侵害になるのだ、こういうことをお互いに確認しているわけです。私は、その点については非常におかしいと思うのですよ。むしろここで、この訴状に列記されたこの事実関係をもってしても、わが国において韓国側が独自の捜査を行っていたということが立証されるし、そのことはわが国における韓国の公権力の行使であって、日本の主権を侵害していることにつながる、こういうことです。渡辺参事官、論理的にわかりますか。私の言っていることが正しいわけで、あなただって十分答えができないわけなんですね。答えにくいのでしょう。何かさっき、勝手にやったことだということには同意をされて、論理的にはそうなりますということに同意をされて、それじゃ主権侵害になるじゃないかと言ったら、少し詰まってしまった。
  68. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先ほど申し上げましたとおり、韓国側から金大中氏の滞日中の言動について起訴状で触れられている個所に関しまして日本政府に協力の要請があったかということのお尋ねがございましたので、それに対しては、そういう要請はございません、しからば韓国側において起訴状に滞日中の言動について触れられているという事実についてはどういうように考えるかというお尋ねがございましたので、論理的に申し上げれば韓国側が独自の立場で起訴状に記載したような事実を記載したということだと思いますとお答えしたわけでございます。しからば韓国側が独自の立場で起訴状に書いたことについては、これは即日本の領土内で起きたことについての記載であるから、これは日本の領土内における韓国の公権力行使ではないかというお尋ねでございましたので、私はそうは思いませんとお答えをしたということでございます。
  69. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、どう思うのですか。
  70. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 韓国側の独自の立場で書かれたことでございますから、たとえば関係者の——全くたとえばでございますけれども、関係者の供述、韓国内における取り調べにおける供述等をもとにして書かれたものということではないかと思います。
  71. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、起訴状だけではなく、私が入手している判決文でも同じなんです。外務省はもうすでに判決文は入手されたのでしまうか。
  72. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 金大中氏の裁判の第一審の判決文と言われるものが関係者により入手され、かつ公にされているということについては承知しておりまして、その点につきまして私どもといたしましては、外務省といたしまして東京とソウルで韓国側に対して外交ルートを通じて照会を行ったわけでございますけれども、五月の初めに韓国側から正式回答があったわけでございます。  その正式回答によりますと、金大中氏の判決文が外部に出たという話につきましては、その経路はもちろん、出されたこと自体についても司法部を含めて韓国政府としては全く関知していない、また、判決文は一切外部に提供しないという韓国側の立場にも変わりはございません、たとえ判決文なるものが出回っているとしても、韓国政府としてはその真偽についてコメントする立場にないということでございます。  したがいまして、判決文というものを外務省として入手しているという事実はございませんし、外務省と申しますか日本政府としては、韓国側から説明がございました第一審における判決理由要旨というものが韓国政府の正式見解であるというような立場に立っている次第でございます。
  73. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ判決文の入手については外務省はもうあきらめられたのですか。
  74. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先生御案内のとおり、本年の一月二十三日に金大中氏裁判の最終判決が韓国の最高裁において確定されました。即日、韓国の閣議におきまして減刑措置がとられたということでございます。本件については、金大中氏の生命の問題及び日韓関係から言って評価し得るという立場を政府として明らかにしておりまして、かかる観点から、これ以上判決文の入手について韓国側に申し入れるということは差し控えるということについて前国会において明らかにさしていただいたという事実でございます。
  75. 井上一成

    井上(一)委員 死刑が無期懲役に減刑をされた、それだけですベてが解決したものではないのだ、私たちはそういうふうに強く政府に指摘をしてきているわけなんです。そういうことになれば、後で伺いますけれども、この問題についてはいまも捜査を継続中だと私は理解しているのですよ。ここは警察庁から後で聞きますけれども、外務省のいまの見解では政府として相矛盾するのじゃないか、そんなことで本当の日韓友好親善なんというようなことはできないし、わが国の主権が侵害された一つの大きな事件だ、こういうふうにとらえる私にとっては非常に不満であります。  だから、もう判決文の入手を減刑という形の中で葬り去ろうとすることは間違いである。判決文の中にも日本でもって事実確認をしなければならないようなことが書かれているわけなんです。これは事実確認がなされたことになるのだという理解をしているわけなんです。だから、先ほどの、日本における韓国側の勝手な捜査の中での事実確認だというとらえ方をしているわけなんです。そのことは主権侵害になる、私はこういう論理を明確にしてお尋ねをしているわけなんです。あなたの方のお答えはいかがですかと、こういうふうに言っているわけですよ。
  76. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  先生の御質問の前提として、金大中氏事件においては韓国政府による公権力の行使が日本の領土内で行われ、したがって主権侵害があったという前提に立っていられるとおっしゃったわけでございますけれども、私どもとしては、金大中氏事件に関して公権力の行使、日本の主権の侵害があったというようには断定していない、そういう立場はとっていないということでございます。  金大中氏裁判の判決文の中にも滞日中の言動に触れた点があり、判決文という性格からしてそれが確定している、したがって、先ほど先生、そこでも公権力の行使があったということではないかという御指摘でございますけれども、先ほど御説明申し上げましたとおり、判決文と言われるものが関係者の間で明らかにされたということは承知しておりますけれども、その判決文なるものの真偽について韓国政府はコメントする立場にないということでございますし、日本政府としてあるいは外務省としても判決文というものは公にされてないという立場をとっている次第でございます。  しからば、金大中氏の裁判に関する判決については、私どもの判断としては金大中氏に対する第一審における判決理由要旨ということが韓国政府が公にしている唯一の文書であるということでございまして、その判決理由要旨に関して見れば、先生御指摘のような韓国政府における日本領土内の公権力行使という事実に関連するものは見当たらないということでございます。
  77. 井上一成

    井上(一)委員 韓国側が公権力を行使してないということになるなら、わが国がそれに協力をした、こういうことになるわけで、しかしわが国は協力をしてないというさっきの答弁だから、それなら、韓国側が勝手にやったということなら公権力の行使じゃないか、こういうことを言っているのですよ。さらに、判決文が公表されてないのだ、だから外務省の承知する韓国側からの報告ではそういうものは理解できないのだと言うなら、いまここに私が入手した判決文があるわけなんですね。この中には、さっきから何回も言うように、日本で事実確認をしなければならないようなことがきっちりと書かれている。それなら、外交姿勢として判決の原文を韓国から入手できるように韓国に強く要請してそれを確めていく、そしてその確かめたことを国会で明らかにしていくということがきっちりとした筋の通った外交じゃないですか。  韓国側が勝手な訴状あるいは判決そういうものをつくったのだと言うなら、それはまたそれなりに私は受けとめますけれども、外務省、本来なら判決文について、金大中氏が減刑されたからもうそれで了とするのだというようなことじゃなく、きっちりと、いまここで私が指摘したのだから、改めて判決文を韓国側に要請し、その真偽、そして判決文に書かれた日本における言動に対する事実確認、それはどのようにしてなされたのか、そこらをきっちりせぬことには、この問題はわが国の主権にかかわる問題である、それをしないということなら、わが国が韓国側に対して協力をしたという理解に立っていいかどうか、こういうことです。
  78. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 金大中氏の問題については、金大中氏の裁判の問題は一義的かつ基本的には韓国の国内問題であるという大前提がございまして、しかし金大中氏の身柄の問題についてはわが国としても非常に深い関心を持っているということで、その関心を累次韓国側に表明してきたことは御案内のとおりでございます。その結果、金大中氏の裁判の最終判決においては死刑ということになりましたけれども韓国政府の高次の判断によりまして減刑がされたということでございます。かかる情勢を踏まえまして、これ以上韓国の裁判制度において公にしないという判決文の入手についてさらに要請するということは、やはり韓国の国内問題に対する介入であるということになりかねないという立場から、判決文の入手については累次申し入れてきたわけですけれども、一月の時点において、これ以上その点を要請しても韓国側は再考しないであろうという前提もございまして、それを差し控えるという立場をとったわけでございます。したがいまして、現在のところ、韓国政府が公に認める判決文というものは全文は明らかにされていない、こういうことでございます。したがいまして、先生の御指摘の、さらに判決文の入手に努力して、その判決文にこうこうこういう問題が書かれているならばその点の根拠について追及すべきではないかというお立場については、私どもとしては立場が異なるということを申し上げざるを得ないということでございます。
  79. 井上一成

    井上(一)委員 八年前の拉致事件、このことが主権の侵害になり、それをわれわれは強く指摘してきたわけでありますけれども、そのときにきっちりとした外交姿勢がなされてなかったからまたぞろ今日のようなこういう状態が生まれてきた、私はこういうふうに考えるわけだし、それが事実なんです。このことはやはりぜひ、どこかでかけ間違ったボタンをちゃんと正しくかけ直さなければ日韓の正常な外交というものは私は成り立たぬと思うのですよ。いままでもそうだったのですけれども、金大中氏の身柄については重大な関心を持っているのだと、そしてそのことについては韓国側に十分伝えているのだというふうにわれわれは国会の中で答弁を受けてきたわけです。現在金大中氏の状態、実態はどういう状態、実態なのか、外務省はどう把握しているのですか。どう韓国側から聞いているのですか。あるいはわが国の在韓日本大使館からどういう報告を受けているのですか。
  80. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  金大中氏は現在、韓国の忠清北道の清州刑務所で服役中と承知しておりまして、同氏の健康状態については特に悪いというようには承知しておりません。月に一回金大中氏夫人李姫鎬女史の面会もあるようでございますし、かつ、金大中氏からの手紙も大体月に一回ぐらい届いているというような状況だと承知しております。
  81. 井上一成

    井上(一)委員 それはどこからいまの状態の報告を受けられたのですか。
  82. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 関係者からの情報を総合して申し上げている次第でございます。
  83. 井上一成

    井上(一)委員 わが国の出先機関からなのか、韓国側の機関からの報告なのか、どちらなんですか。
  84. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 わが国の出先機関を通じての情報を含めまして、総合的な印象を申し上げた次第でございます。
  85. 井上一成

    井上(一)委員 私の承知するところによれば、非常に劣悪な状態の中でいわば拘束され続けている、非人道的な状態だというふうに私は承知しているわけです。もちろん病状についても、坐骨神経痛、拘禁性ノイローゼというのでしょうか、いわゆるいろいろな症状が金大中氏にあらわれている。こういう状態からやはり解放というのでしょうか、そういう状態から救い出さなければいけないわけです。そのことがやはり金大中氏に重大な関心を寄せているのだというわが国の姿勢だと私は思うのです。もう変わったのですか、わが国の姿勢は。
  86. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  先ほど申しましたとおり、政府は従来から、金大中氏の裁判は基本的に韓国の国内問題であって、これに介入するような態度は差し控えるべきであるという立場を一方で置いて、大前提としてとりつつも、同氏の身柄については深い関心を有していると繰り返し申し上げてきたわけでございまして、特に金大中氏の生命について最悪な事態というようなことを憂慮していたわけでございます。ところが、先ほど申し上げましたとおり、本年の一月下旬に大法院の死刑判決が確定したわけでございますが、それに対して韓国政府が高次の判断に従いまして金大中氏の命を助けるという減刑措置を講じたことでございまして、これは当時政府として明らかにいたしましたように、日韓友好関係に資するものという評価をいたし、かつ、その評価に基づいて、今後金大中氏の身柄の釈放というようなことについて改めて韓国側に申し入れることは考えていないという立場を明らかにさせていただいたわけでございまして、その立場については現在も変わっておりませんし、金大中氏の身柄の問題について改めて韓国側に照会するというようなことは考えておらないという立場でございます。
  87. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ今月行われる日韓外相会議で、従前のように金大中氏の身柄についての関心を表明するということはもうあきらめたわけですか。
  88. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  今月の中旬開かれます日韓外相会談については、議題等についてまだ打ち合わせ中でございますけれども、現在のところ、ただいま申しましたような事情を踏まえて、金大中氏の問題を日本側から取り上げるということは考えておりません。
  89. 井上一成

    井上(一)委員 それが先日、全斗煥氏が日本の認識が韓国と近づいたという発言につながるわけですか。
  90. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  全斗煥大統領の発言の趣旨については必ずしも明らかでございませんし、私どもとしてコメントするのは差し控えるべきだと思いますけれども、全斗煥大統領は金大中の問題について特に念頭にあったというようには、そういう印象は受けておりません。
  91. 井上一成

    井上(一)委員 ここで警察庁に、金大中氏事件については現在もなお捜査を継続して行われているという私は理解をしているのですが、その点について状態はどうなんでしょうか。
  92. 山田英雄

    ○山田説明員 八年前に起きました金大中氏拉致事件につきましては、すでに答弁で申し上げておりますように、犯行グループの一人である金東雲を割り出しましたほか、連行に使用した疑いのある車両を割り出しております。引き続き、われわれとしましては、連行グループの追及のため新たな情報の掘り起こし、関係者の洗い直し捜査あるいは既存の捜査資料の再検討ということを中心に継続した捜査を続けておるところでございます。しかしながら、特に現在までのところ捜査の進展に役立つ有力な情報もございませんし、とりたてて御報告申し上げるような進展はないというのが実情でございます。
  93. 井上一成

    井上(一)委員 何人ぐらいのメンバーでいま継続捜査をなさっているのですか。
  94. 山田英雄

    ○山田説明員 ただいま約二十名の体制で継続捜査を行っております。
  95. 井上一成

    井上(一)委員 ここでひとつ聞いておきたいのですが、当時の大使館関係者からの事情聴取はなされたでしょうか。
  96. 山田英雄

    ○山田説明員 当時の韓国大使館、公使を含め一部の公館員から事情聴取は行っております。
  97. 井上一成

    井上(一)委員 公使とは金在権公使を指すのですか。
  98. 山田英雄

    ○山田説明員 そのとおりでございます。
  99. 井上一成

    井上(一)委員 公使から事情聴取をされたということでありますから、当然これは調書があるわけですけれども、金東雲に事情聴取を申し込んで断られていますね。金在権公使から事情聴取をされたのは金東雲より後なんでしょうか、先なんでしょうか。
  100. 山田英雄

    ○山田説明員 公使につきましては事件発生直後でございまして、これは当時金大中氏が拉致される前まで同席しておりました梁一東氏から電話で状況を聞いたということで事件発生直後に犯行現場に見えたという経緯もございまして、参考までに事情を伺ったわけでございます。
  101. 井上一成

    井上(一)委員 大使館の現職の公使を事情聴取した。もちろん、事情聴取ということですからそれなりの調書があるわけで、これは非常に証言力もあるものだ、私はこういう認識を持つのですけれども、渡辺参事官、警察庁は、現職の公使からも事情聴取をしたそれほどまでのこの事件、ただ死刑が無期に変わった、そのことだけでわが国はもうこれはおしまいなんだという外交姿勢でいいのであろうか、ここなんですよ。
  102. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 金大中氏事件については、一九七三年に発生いたしましてから日韓間の非常にむずかしい問題として政府として対処してまいったわけでございます。その間、金大中氏が釈放され、かつ大統領候補として擬せられたというような紆余曲折があったわけでございますけれども、昨年五月に再び逮捕されて裁判にかけられ、かつ国家保安法違反ということで金大中氏の生命について非常に心配されたわけでございます。そういう状況のもとにおいて金大中氏の裁判の問題については、これは韓国の国内問題であるけれども身柄について深い関心を表明してきたということでございまして、その結果、とにもかくにも一月の下旬に金大中氏の生命が救われたということでございます。これは、韓国当局が高次の判断によって減刑措置をとった、日韓関係の維持のためにも資するものであるという判断を政府としていたしまして、金大中氏の問題について、今後判決文の問題あるいは釈放等の問題について改めて韓国政府に申し入れるということは差し控えるという立場をとったわけでございまして、その立場について改めて変更するということは考えておらないということだと思います。
  103. 井上一成

    井上(一)委員 参事官、これは私は強く外務省に要望しておきますが、大臣が外遊中ですし、四日後の八月八日で八年目、非常に日本の主権が侵害された、ある意味では日本にとっては屈辱の日だ。そしてまた金大中氏個人の人権の問題もある。しかし、私はいわゆる韓国の裁判に触れようとはしない。わが国のいわゆる主権問題について、さらにはわが国のいま警察庁がさらに継続をして捜査をしていることも踏まえ、当時の韓国大使館の公使まで事情聴取をした、そういう事情も踏まえ、なおかつ国会の中でこれだけ指摘をし、私がさっきから言ったように、その起訴状なり判決文の中にも、わが国における事実確認というものが必要であり、それが事実上確固たる証拠として書かれている、そういうことが、当局が協力しなければこれは勝手にやったのだという理論になるわけで、そこまでは認めながら、それではそれに対して何らかの韓国に対する要請、要求あるいは抗議も含めてとらないなんというのはだらしがなさ過ぎますよ。この八月の日韓外相会談にこの問題をぜひ取り上げるべきだと私は強く要望します。大臣にきっちりと伝えてほしい。  あなたに、渡辺参事官にここでそれをどうこうするというだけの答えを求める方が私は無理だと思うが、そういう状態の中で、私がいま指摘したような金大中氏問題が解決されていない、そういう今日の中で対韓援助の経済問題があるわけです。私は日本と韓国の間に、金大中氏という太いとげを抜かない限り真の友好は成り立たぬという強い信念の中でこの国会で指摘をしているわけですけれども、これをこのままにして対韓援助を続けていこうという考え方は間違いである。さらに外務省の対韓援助についての基本的認識をここで聞いておきたいと思います。
  104. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  一般論といたしまして、わが国の開発途上国に対する経済協力につきましては、人道的考慮それから相互依存という二つの柱、基準に基づいて行っているわけでございます。韓国につきましては、日本に最も近い隣国であるということでございますし、歴史的にも非常に関係の深い国ということで、相互依存度が非常に高いという観点から、韓国の経済社会開発と民生の安定に資するということを目的として従来から経済協力を行ってきたわけでございまして、この基本的立場については今後とも変わらない、かように考えているわけでございます。
  105. 井上一成

    井上(一)委員 韓国側は新経済五カ年計画で来年からスタートさせる方針ですが、総額五百三十五億ドルですか、こういう計画の中でわが国に対して多額な経済援助を、伝えられるところによると六十億ドルだとか二十億ドルだとか、数字については現状をはるかに上回るそういう打診があったとかどうだとかということが報道されているわけです。相互依存、民生安定という一つの枠の中でこういうことに経済援助を続けるのだ、韓国側との今日までの基本的認識というのでしょうか、両国の経済協力についての意思表示がなされているわけなんです。それは十分おわかりですね。  そこでまず、新経済五カ年計画について韓国から何らかの形でわが国に打診があったのかどうか、そのことを聞いておきましょう。そうして続いて、両国の経済協力についての基本的な、文書による取り交わしがあるわけですから、そのことについて聞いておきたいと思います。
  106. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先生御指摘のとおり、韓国におきましては、明年、一九八二年から八六年までの第五次五カ年計画を策定中というように承知しておりまして、その五カ年計画の内容については、公にされたものについて韓国側から提示を受けております。しかし、その細かい内容について日本からの経済協力と関連づけて説明があったという事実はいまだございません。
  107. 井上一成

    井上(一)委員 非公式も含めて韓国側からの経済援助の申し入ればないということですか。
  108. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  私がいまお答えいたしましたのは、第五次五カ年計画はこうなっております、したがって日本からの経済協力はこういう形でこういう性格のものをこのくらいの規模で期待しておりますというような説明は受けておりません。他方、韓国は、現在、先生御案内のとおり、経済的に非常に深刻な諸困難に直面しているということと、それからいま申しました新たな五カ年計画を推進したいということで、わが国に対していわば高次元の考慮によって経済協力を拡大してもらいたいという期待を韓国側が持っているということについては私どもも承知しておりますけれども、この点については、いまだ具体的な形での、あるいは正式の形での要請に接しておりませんので、わが方としての対応についてこの席で申し上げる立場にないというか、申し上げられないということでございます。
  109. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、韓国が巨額な経済援助を申し込んできても、わが国の対応としては本年度並みくらいにしか受けとめられないと理解していいのでしょうか。
  110. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 韓国側としてはかなり高い期待を日本からの経済協力について持っているようであるということについては私ども承知しているわけでございますけれども、それに対する対応ぶりについては、韓国側の期待の具体的内容、性格、規模について正式な申し入れを受けていないという段階でお答えすることはむずかしいわけでございます。ただ、韓国側の期待されるようなスケールのものを日本政府として対応できるかということになると、非常にむずかしいのではないかと考えている次第でございます。
  111. 井上一成

    井上(一)委員 韓国側の意向というものは今月に行われる日韓外相会談で韓国側が公式に要請してくるであろうと外務省は受けとめているのでしょうか。
  112. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先生御指摘のとおり、日韓外相会談が今月中旬に開かれるわけでございまして、その席で、他の多くの問題とともに、経済協力の問題について韓国側の考え方が明らかにされるであろうというように、一応それを前提にして考えてございますけれども、そのとおりになるかどうかということについていまだ確言はいたしかねるという状況でございます。
  113. 井上一成

    井上(一)委員 伝えられるところによれば、あるいは南首相が三十一日にわが国の新聞記者団との会見でも発言しているわけですけれども、外相会談から始まる一連の協議では、地域安保や経済協力について素直に話したい、しかし韓国側はこれまでと違った意味での違った経済協力を求めてくるのではないか、こういうふうに思うわけです。そうするならば、先ほどの基本認識、私は、これまでの経済協力の一定の積み上げ、あるいは外相会議での共同コミュニケ等も踏まえた中で経済協力は進展していくと理解するのですが、韓国側の考えている経済協力はその枠を大きくはみ出すのではないか、こういうふうに思うのですが、その点はどうなんですか。外務省はどう受けとめているのですか。
  114. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 韓国側といたしまして、日本からの経済協力と、韓国が朝鮮半島の平和のために果たしている役割り、安全保障上の役割りというものを関連づけて期待しているということかと承知しておりますけれども、わが国といたしましては、冒頭に申しましたとおり、やはり韓国との相互依存という問題あるいは人道的配慮という柱を二本といたしまして経済協力を考えていくという立場でございます。韓国側の期待を受けて、日本側として従来の線を超えたものは期待できるのかどうかという点については、韓国側の考え方は、いま申しましたように、大体こういうものであろうということは推定できるわけでございますけれども、その期待の具体的な内容、規模についてはいまだ正式に申し入れを受けていないわけでございますし、正確に承知し得ないわけでございますから、何とも私どもとして申し上げる立場にないということでございます。
  115. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、韓国側は経済援助の根幹に韓国が日本防衛のとりでになっているのだ、こういう認識に基づいていると報道されているわけです。そのために韓国側は、韓国に対して日本は当然援助すべきである、経済協力すべきである、こういうふうに理解していると報道されているわけです。外務省は、韓国が日本防衛のとりでだと思っていらっしゃるのでしょうか。
  116. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 外務省と申しますか、私どもとしては、朝鮮半島の平和と安定が日本を含む束アジアの平和と安定に深いかかわりを持つという基本的認識を持っておりまして、そういう観点からも韓国の民生安定、社会開発に対して協力をしてまいったわけでございます。具体的に韓国の指導者が現在考えているような、たとえば韓国は三千八百万の人口のうちに六十万人の軍隊を擁して、国民総生産の六%を防衛のために使っていて、これは、日本を含めた束アジアあるいは世界の平和に貢献している、韓国の置かれている厳しい現状について理解をしてほしい、かかる観点から経済あるいは文化の非軍事面の協力を期待したいという立場であろうかと思うのですが、私どもとしては、先ほど申しましたように、朝鮮半島の平和と安定が日本あるいはアジアの平和と安定に非常に重要であるということで、朝鮮半島の緊張の緩和というようなことを含めまして努力すると同時に、韓国との間では経済、文化面の交流、協力、あるいは相互理解を深めていきたいというように思っております。  具体的に申しまして韓国が日本の防波堤であるかどうかということについては、その正確な意味を慎重に検討せざるを得ないという立場であろうかと思います。
  117. 井上一成

    井上(一)委員 韓国に対する経済援助が、基本的認識が従前の枠からはみ出ない、人道的配慮、民生安定、さらには相互依存、そういう枠の中での援助である。相互依存ということはいわゆる西側諸国の安全保障、そういう意味は含まないという理解に立ち、隣国という形の中で相互依存という考えに立つわけですが、集団安全保障の考え方は含まれないということも念のために私は聞いておきたいのですけれども、従前の経済協力の枠からはみ出さないという理解をしてよろしいですか。
  118. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 わが国の経済協力の二本の柱といたしまして人道的考慮と相互依存という二つの基準に基づいているということを申し上げたわけでございますけれども、相互依存という考慮の中には広い意味での総合的安全保障という見地のものが含まれているというように私ども考えております。
  119. 井上一成

    井上(一)委員 その点についてはおかしい。そのことにも問題がある。  余り時間がありませんが、さらにそれを含めていままでの基本方針の枠からは対韓援助についてははみ出さないのだ、そういう考えに変わりはないというふうに理解してよろしいでしょうか。
  120. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 日本からの経済協力について韓国側の考え方はこういうことだろうということを御説明申し上げたわけでございますけれども、先ほど来お話し申し上げているとおり、韓国側から具体的な形で正式な要請というものをまだ受けていないわけでございますから、いまの先生の御質問について確定的にお答えすることはなかなかむずかしい。他方、しからば韓国側の説明いかんでは従来の枠を非常に大きく越えたようなものができるかということになれば、日本側の援助に関連する財政事情等考えて、そう簡単ではない、むずかしいのではないかというように考えている次第であります。
  121. 井上一成

    井上(一)委員 対韓経済援助の基本方針は変わらない、こういうことですね。
  122. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 対韓援助の基本方針につきましては、冒頭に御説明いたしましたように、相互依存と人道的考慮という二つの基本的な基準に照らして、韓国の経済社会開発、民生の安定に貢献していきたいということでございまして、この方針には変わりはないということであります。
  123. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ第九回の日韓定期閣僚会議の共同コミュニケの中にも、民間主体の援助に移行するという意見を交換した、いわゆる対韓援助についてはもう政府間ベースではなく、民間主体の援助に移行するのだ、こういうふうに共同コミュニケにお互いの両国が同意をしているわけなんです。さらには、七八年の十回日韓定期閣僚会議共同コミュニケの中にもその方針が貫かれているわけなんです。もう一点、政府間の実務者レベルの協議を通じ検討の上、経済協力については閣僚間での話し合い、意見を調整していく、いわば実務者レベルでの突き合わせがあって、そうしてその上に立って首脳、いわゆる閣僚での話し合い、こういうことが明確に共同コミュニケにあるわけなんです。  いま韓国側からは正式な、非公式も含めて要請がない、対韓経済援助については実務者レベルでは何ら進展してない、話し合いもないのだ、八月の外相会議で出てくるかもわからぬ、これはいままで取り組んできた対韓経済援助の進め方と全く逆になっているわけなんですね。下からの積み上げじゃなく上から、これは非常におかしいと思うのです。こういうところにやはりわが国の対韓経済援助の姿勢が変わったのじゃないか、変えるのじゃないか、こういうことを私は指摘したいわけなんです。どうなんですか。
  124. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。先生御指摘のとおり、従来の日韓の経済協力の両国政府間の協議におきましては、韓国の経済がかなりのところまで発展したということを踏まえまして、今後の経済協力の主体は民間に移行していくという傾向が確認されたわけでございますし、同時に、経済協力の協議の仕方といたしましては実務者レベルの協議を通じて行うというたてまえがとられたことは事実でございますけれども、それに比較いたしまして今年と申しますか、韓国側が現在考えていることはそれと隔たりがあるということは、一面においてそのとおりだろうと思います。  他方、従来と違います点は、韓国の経済が戦後初めてマイナス成長になっているということでございまして、昨年の経済成長率はマイナス七・五%ということで、物価も非常に高くなっているということ、そういう状況の中で韓国としては新たな五カ年計画を推進するので、それだけ日本に対する期待が新たになっているということではないかと推測するわけでございます。  他方、韓国の政府が朴政権から全斗煥政権に変わったということ、あるいは指導者の世代の交代ということもありまして、日本に対する期待もそれなりに変化しているのではないかというように、これも推測しているわけでございますけれども、先ほど来申し上げていますとおり、この点については韓国から具体的な形の申し入れを受けていない、その点については外相会談以降を待たなければならないということではないかというように考えているわけでございます。
  125. 井上一成

    井上(一)委員 いずれにしても、わが国の対外経済援助が筋が一本通っておるというのと、いわゆる全斗煥体制になり、そしてレーガン体制になり、さらには日米共同声明になり、続いては日韓首脳会談。何か流れを把握する中で、いわゆる世界戦略の中でわが国の経済援助が利用されつつあるのではないか、誤った方向に流されるような感がするわけであります。先ほど指摘をしたように、いずれにしても、金大中氏問題も解決されていない、そして金大中氏の原状回復を強く求めようとする姿勢も見られない、そういう中で対韓援助を進めるべきでない。さらに、防衛経費の理念で援助などするということは断じて許されない、私はこういうふうに思うわけです。そういう点について基本方針があやふやになってきたわけです。さらには、世界情勢のその背景に何か揺らいでいるような感もするわけですけれども、私は、開発途上国に対する日本のいわゆる国連中心主義の平和外交を進めるには、経済援助は大いに推進すべきだという姿勢は持っておるわけです。しかし今回の、出てくるであろう巨額な対韓援助についての問題はきっちりと指摘をしておかなければいけないし、十分心をしてこれに対応しなければ過ちを犯すことになる、私はこういう認識を持っているので、この点についてひとつ、もう一度政府の考え、いわゆる外務省の考えを聞いておきたいと思います。
  126. 渡辺幸治

    ○渡辺説明員 先ほど来御説明いたしているとおり、韓国はわが国にとって最も近い隣国でございますし、経済的にも歴史的にも非常に深い関係がありますので、相互依存という観点あるいは人道的考慮という観点から、韓国に対して同国の経済社会開発、民生の安定のために貢献していきたい、こういう観点から経済協力を進めてきているわけでございまして、そういう枠組みの中で韓国に対する経済協力を今後とも進めていきたい。  他方、韓国側から日本に対してかなり大きな期待が寄せられているというように承知しているわけでございまして、その点については、先ほど来申し上げているとおり、その具体的内容について正確にまだ承知していない、申し入れを受けていないという段階でございますので、その対応についてはここで正確に申し上げることはできませんということでございます。先生の御指摘の点については承らさしていただきたい、かように思います。
  127. 井上一成

    井上(一)委員 私は、また次の委員会等で金大中氏事件、対韓経済援助等についてはさらに質問をいたします。  続いて自治大臣に。先日、行革の実施をめぐって総理と個別会談が行われたわけでありますけれども、その報道が一部明らかにされているわけですが、具体的に報道外に何らかの話し合いがあったのかどうか。さらには、大臣は、地方自治の確立を図るという立場から、公共事業の国庫補助負担率の地域特例の見直し、かさ上げ率の引き下げについては、いわゆる特例の適用を受けている地方公共団体の財政運営や地域経済の振興に重大な影響を与える、慎重に検討しなければならない、この段階で臨時国会に改正法案を出すという結論は出せないと反対の意向を示したというふうに報じられているわけでありますけれども、事実そういうお考えを持っていらっしゃるのか、そのことについても聞いておきたい。  さらに国民健康保険給付費、児童扶養手当、特別児童扶養手当の一部を都道府県に肩がわりをさせることも反対したと伝えられているわけですけれども、そのとおりのお考えを持ってしらっしゃるのか。今後、財政再建法案のような形でこれらの問題が国会の場に提起されてきた場合、自治大臣としては、地方自治の健全な発達を保障するためにも、いわゆる所信を貫かれて反対の立場をとっていただけるのかどうか。いまはそうだけれども、そのときになってぐにゃんと折れてしまうというようなことはないとは信じますけれども、ここで改めて大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  128. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 公共事業に関する特例措置ですが、これは昭和四十三、四年ごろからやっておりまして、そのために地方の財政構造というものもその前提のもとに組まれて定着をしている感じがいたします。そしてまたこの問題が、いわゆる後進地域といいますか、そういう地域の経済の発展のために大きな役割りを果たしてまいったことも事実でございます。そこで、急遽ここで大きな方向転換をするということに多くの問題があるわけでございます。しかし臨調の答申といたしましては、こうした特例措置は廃止という究極的目的に向かって順次縮減をするということにすべきであるという答申になっておるわけでございます。それを現実の問題としてどういうふうに処置をしていくかというのが当面の問題でございます。  そこで、私どもといたしましては、来年度予算の編成に際しまして、いろいろなファクターを考慮の上にとの結論を出した方がよかろう、こう考えておるわけでございますが、しかしながら臨時特例に関する一つの統一的な法律というようなもので出すことが行革国会を開催するについての一つの中心議題になるわけでございますから、それにどうしても盛り込みたいという考え方もわかるわけでございます。したがいまして、その間の調整をどうするかということについて、今後自治省としても、大蔵当局なりあるいは行管当局と十分に相談をして煮詰めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。  それから国保の問題でございますけれども、これもしばしば申し上げているわけでございますが、従来地方団体に付与されておりました財政というものを縮減をするというのが地域特例なんかの例でございますが、そうじゃなくて、今度は新しくひとつ負担をかけようというわけでございます。二千数百億に上ると思いますが、それを府県に背負わせようというのでございます。しかし国民健康保険のたてまえ、またその他の各種の社会保険のたてまえから申しましても、これは国とそれから保険者、この負担において成り立っておるものでございまして、ほかに府県に持たせるなどというものはないわけでございます。まあ府県は監督の責任があるというのでありますが、監督の責任がある以上それも負担していいじゃないかというような議論が行われておるわけでございますが、この監督というものも国の監督を地方団体に委任をしているという関係でございますので、これは適当じゃない、監督の問題と経費負担の問題とは別だというふうに私ども考えておるわけでございまして、この問題については私どもはとうてい承知のできない問題である、こういうふうに考えておるのでございます。  そうした一連の行革に関連しての地方行政あるいは地方財政に関する各般の問題がございます。そのほか補助金の一律削減の問題もございます。こういう問題は、削減をすればその分は地方団体が引き受けるということにどうしてもならざるを得ないわけでございます。その補助制度を基本的にやめてしまえばこれは別でございますけれども補助率を削減するというようなことであれば、その削減された分は何としても地方団体で持たざるを得ない、こういう結果になるわけでございまして、彼此いろいろ考えますと、地方財政の問題というものはきわめて重大な転機に立つものだと私ども考えておるわけでございます。  行革につきましては、国と地方と相協力して、同じスタンスに立ってこの問題に対応すべきだと考えておりまするが、ともいたしますれば、国が主になりまして地方が従になりがちであるという点について、自治省といたしましては十分に配慮をしてこの問題に対処していきたい、こう考えておるところでございます。
  129. 井上一成

    井上(一)委員 まさに負担の転嫁ということで問題の処理に当たるということは間違いである。過日地方制度調査会もそのことは強く指摘をして、異例の意見書を総理に手渡しているわけなんですね。私は、やはり地方と国がそれぞれの行政の減量を図っていくということは行政改革の中で考えなければならない問題であるけれども、単に国から地方への負担の転嫁、あるいはそのことは地方財政の健全性の回復を妨げるものだという理解ですね。そういう意味で、社会保障制度及び国、地方を通ずる財政制度の根本的な検討の結果に基づくことなく、国保の給付費の問題だとかあるいは児童扶養手当、特別児童扶養手当の一部の都道府県負担を行うべきではない。さらには公共事業の地域特例の廃止、かさ上げ率の引き下げ、こういうことについてもやっぱりこれはやってはならない。そういうことをしちゃいけない。さらに地方の歳出について地方制度調査会は、国と地方の財政の構造が異なること、さらに地域経済にとって重要な役割りを果たしていることなどから適切な配慮をすべきである、こういうふうに指摘をしているわけなんです。私はいずれも当然の意見だという考えに立つわけです。ここで大臣から、この地方制度調査会の意見、考え、私は全く同感なんですけれども、このことについてひとつ触れておいてほしいと思うのです。  さらに今回の臨調と地方制度調査会との関係については、たしか三月の予算委員会でも取り上げられて、統一見解が出されているわけなんです。臨調の審議事項については重複しないように適切な選択が行われることを期待するとの答弁がなされている。にもかかわらず、今回の臨調答申が本来地方制度調査会で調査、審議すべき事項についてまで提言を行った、そういうことが今回の異例の意見書提出につながった、私はこう思うわけです。そういうことについての大臣の所見もここで聞いておきたいと思います。  まず、その二点について大臣からお答えをいただきます。
  130. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 地方制度調査会の今回の答申でございますが、これは地方制度調査会といたしまして長い間研究討議を重ねまして得た結論についての趣旨が答申の内容になっているわけでございまして、私どもはこの趣旨はまことに適切であると考えております。  ただ現実の問題といたしますと、基本的には臨調もそういう考え方に立っておると思いまするし、また今後基本的な問題を扱う場合に、この地方制度調査会の答申に基づくような基本的理念というものは臨調においても十分取り入れ、論議されるべき問題だと思いますが、五十七年度予算を編成するについての現実的な問題となりますと、やや地方制度調査会の答申と必ずしもマッチしないような傾向が第一次答申にはあるということも、これも事実だろうと思うのです。この問題は、要するに短期的に五十七年度予算をどう編成するか、増税なしの予算を編成するについての一つの基本的な立場に立っての答申でございまするから、非常に現実味を帯びているわけでございます。そこで、基本的に考えておりまする地方制度調査会の問題と現実的な第一次答申の問題とをどういうふうに総合勘案して処置をするかということが、私にとりましてはきわめて重要な問題だ、こういうふうに考えまして、いまいろいろと検討をいたしているところでございます。  そこで、地方制度調査会とそれから臨調との関係が約半年前にも相当議論をされました。地方の問題は地方制度調査会が総理の諮問機関としてあるわけであるから、これは除いて国だけの問題の臨調であるべきだという議論もあったわけでございまするが、しかし私から言うまでもございませんが、国と地方の関係というものは密接不可分の関係があるわけでございます。したがいまして、国の問題を扱う場合に地方の問題に触れざるを得ない、そういう関連がございまするので、その範囲内において地方の問題もやはり臨調において扱うべきである。ただ、臨調の方におきまして地方の問題を扱う場合においては、従来の地方制度調査会の数々の答申もございまするから、その趣旨をも十分踏まえてこの問題を扱うべきである。そしてまた特に運用の面におきましては、地方制度調査会の会長である林君が臨調の委員にもなっておりまするので、その辺の調整は十分とれるだろう、こういうことでスタートいたしたわけでございます。今後も臨調は続くわけでございまするから、その趣旨にのっとりまして運用されることを私どもは期待いたしておるところでございます。
  131. 井上一成

    井上(一)委員 私は、じゃ今度は具体的に公共事業等の補助金、負担金の問題についてお尋ねします。  今回の臨調答申では、補助金等については各省庁ごとに総枠一割削減とか言われていますけれども、そういうものを設定して整理合理化を進める、こういうふうにしているわけです。国は一括して補助金等と呼んでいるわけですけれども、その内容においてはそれぞれのやっぱり持ち味があるわけである。具体的に検討してみますと、国と地方とが共同で事業を行うこと、そのことについて負担金的な性格のものも少なくないわけであります。地方財政法第十条、第十条の二、第十条の三などに掲げられている事業に対する国庫補助金は、明らかに国と地方の利害に関係のある事務に要する経費、その全部または一部を国が負担するという性格のものであるわけです。負担の割合は法律または政令で定められており、いわゆる国の一方的な都合で負担の割合を変えるべき筋合いのものではない、こういうふうに思うわけです。この点についてどのようにお考えなのか聞いておきます。
  132. 土屋佳照

    ○土屋説明員 国庫補助、負担金の中には、お示しのございましたようにいろいろな性格のものがございます。国と地方との関連において、国がこれだけ持ち、地方がこれだけ持つということを、長い間の経緯等も踏まえましてはっきり負担区分ができておるものもあるわけでございますから、その点については今後とも国と地方との事務の分担のあり方、機能負担のあり方、そういうことも十分踏まえながら検討されていくべきものでございますから、いまお示しのございましたように、簡単に補助の負担割合を変えるということについては十分慎重でなければならぬと私ども考えておるわけでございます。
  133. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は、いま指摘をした地財法の十条から十条の三までの事業ではなくても、相当長期にわたる事業に対する国の補助金、たとえば都市再開発事業あるいは区画整理事業に対する補助金、それらの補助金等は、地方自治体では、その事業の承認を受ける段階で国の補助金等をあらかじめ財源に組み入れて計画を立てておるわけであります。もし事業の中途で国の補助金等が予定どおり交付されない、そういうことになりますと、事業の推進及び財政運営に大きな障害を来すことになるわけです。そのことは結局地方自治体と住民にしわ寄せを与えるわけでありまして、仮に補助金等の見直しを行うとしても、これらの事情に十分な配慮をする必要があると思うわけでありますし、そういうことをきっちりと踏まえた中で問題を処理していかなければ、ただ単に補助金等を削減すれば、そのこと自体で行政が効率化、簡素化、そしてそのことがすべて行政の減量につながるということでなく、むしろ地方自治体と地域住民が大きな負担としわ寄せを受けるということを十分理解していただかなければいけないわけです。こういう点について自治省はどう対処していくのか、この点もお聞きをしておきたいと思います。
  134. 土屋佳照

    ○土屋説明員 今回の行政改革に当たりまして、自治省の立場といたしましては、国、地方を通じまして全体の事務、事業を見直していく、そういう過程において国庫補助金等についても整理合理化を進めるべきだと思っておりますが、その考え方の基本は、事務、事業を縮小する、廃止して補助金をやめるという形ならよろしいのでございますけれども、ただ単に一律に補助率を下げるとかどうとかという形で、負担の転嫁になるような形での国庫補助金の整理合理化というのは避けるべきだというふうに考えており、そういうふうにも主張してきたわけでございます。したがいまして、いまおっしゃいましたように、一定の補助率等があるという前提でいろいろ事業計画等も組んでやってきておるわけでございますから、今後見直すにいたしましても、そこらが変更することによってどういうふうに影響していくのか、今後の国と地方との事務分担のあり方も含めて十分検討された上で対処さるべきものだというふうに考えております。
  135. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は、ここで公共下水道事業についてもちょっと触れて聞いておきたいと思うのです。  国は、新経済社会七カ年計画に基づいて昭和五十六年度から六十年度までの第五次五カ年計画をつくって、十一兆八千億円を投じて、六十年度の目標普及率を四四%に置いて事業の推進を図っていこうというふうに決められているわけです。各地方自治体では、この国の五カ年計画を前提として各地域ごとの具体的な整備計画をつくって、地域住民にその計画を明らかにした上で受益者負担金等の徴収を行うわけです。そして事業を進めているわけですが、万一国の方から国の事情で、一方的な国の都合によってその計画が変更されるということになると、住民から事業のおくれの責任を問われる、あるいは同時に、そのおくれがかなり長期にわたる場合は、受益者負担金等の返還を求められるおそれもあるわけであります。財政再建のため公共事業の見直しを行う必要があるということであるならば、むしろこの五カ年計画の見直しから入るべきではなかったのか。さらに、そのことは、五十六年度、あるいは五十五年度の四次計画の終えた時点でそういう見通しを明らかにしていかなければ、私は、正しい行政だ、いわゆる計画性のある行政だとは言い切れないと思うのです。今回の臨調でいきなり公共事業関係費については前年度同額、あるいはそれ以下に抑制するというのは、余りにもただ予算編成だけのための、何か場当たり的な感を受けるわけであります。自治省として、日ごろ地方自治の確立、さらには地方自治に対する温かい指導育成を図られております担当主管省として、このような中長期的計画とのかかわりのある公共事業関係費の抑制問題についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、さらには今後各関係省庁とどのような協議を行おうとお考えなのか、この点をお聞きをして、さらには、もしよろしかったら関係省庁、建設省なり大蔵省なりの見解もあわせて聞かせていただいて、私の質問を終えたいと思います。
  136. 土屋佳照

    ○土屋説明員 地方団体は関係省庁にまたがります各般の仕事をやっておるわけでございますが、今回の行政改革に当たって補助金等の整理合理化ということが行われます際には、私どもとしては、先ほども申し上げましたけれども、事務、事業の廃止等とあわせて補助金の整理をするか、あるいは縮減いたします場合は、いまお示しにございましたように、計画なりあるいは法令等で示されてあるものを十分きちんとした上で整理をいたしませんと、ただ地方団体の持ち込みという形になってしまっては円滑な運営ができないわけでございますので、その点についてもかねがね各省庁には強く申し入れておるわけでございます。今回の臨調答申がさしあたって緊急な来年度予算編成に当たってのいろいろな事項を答申されておりますので、それに基づいていろいろな検討が行われることは事実でございますが、私どもとしては、いまおっしゃいましたように、やはり中長期的に見て、そしてまたその補助金等の本来のあり方という点についても十分検討をした上で対応をされるべきだと思います。そういった意味では、具体的には、今後予算要求等が行われるわけでございますが、そういったこと等を通じまして、例年もやっておりますけれども、今回は特にそういった点については関係省庁に理解をしていただいた上で十分な、適切な対応をしていただきたいと、かように考えて、申し入れもしたいと思っております。
  137. 幸前成隆

    ○幸前説明員 お答えします。  第五次下水道整備五カ年計画でございますが、先生御指摘のとおり、去る二月十三日に総投資規模を十一兆八千億円とする、その実施に当たりましては、今後の経済、財政事情等を勘案して弾力的に行うこと、こういうことが閣議決定されております。建設省としましてはこの計画の推進を図ってまいりたいと考えておるところでございます。  来年度の概算要求につきましては、厳しい財政事情のもとにおきまして先般、各省庁のシーリング枠に関しまして閣議了解がなされたところでございまして、建設省におきましては、この閣議了解等に基づきまして現在、鋭意検討中でございます。下水道の整備につきましては、できる限り下水道の整備が促進されますように最大限の努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  138. 公文宏

    ○公文説明員 お尋ねのありました来年公共事業をどう考えていくかという問題でございますけれども、これは当然のことながら経済動向その他は考慮しなければいかぬということでございますけれども、先ほど先生から御指摘のありましたように、臨時行政調査会においては、国、地方を通ずる減量ということを踏まえてであろうと思われますけれども、公共事業については前年度と同額以下に抑制するという答申が出ているわけでございます。大蔵省としましては、この答申の趣旨を尊重しつつ今後検討していく必要があるのではないかと思っております。  これは公共事業一般の話でございまして、それじゃ下水道はどうするかということでございますが、下水道につきましては、公共事業全体がいまのような基調で考えていかなければいけない中で、事業の緊要性であるとか、ほかの事業とのバランスなどを十分考慮しながら今後考えていくべき問題であり、どの程度考慮できるかということについてはいま申し上げる段階にはございません。しかし、先生御指摘のように、やはり事業というのは計画的に進めることというのが必要なわけでございまして、その点については私どももできるだけ努力はしていきたい。しかし、それはそれとして、やはり経済、財政事情の変動に応じて弾力的に考えていくことも必要であろうというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  139. 國場幸昌

    國場委員長 この際、午後一時四十五分まで休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後一時四十九分開議
  140. 國場幸昌

    國場委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春田重昭君。
  141. 春田重昭

    ○春田委員 私は、第二臨調の第一次答申について御質問してまいりたいと思います。午前中の同僚議員の質問と若干ふくそうする面があると思いますけれども、その点はどうか御了解いただきたいと思います。まず最初に、大臣の今回の第一次答申に対する御所見をお伺いしたいと思います。
  142. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 まあ第一次答申というものは、どちらかと申しますと基本的な問題じゃなくして、五十七年度予算を編成するについて増税なしに予算を編成したい、そのために当面とるべき方策、そういうようなものに焦点を合わした関係上、臨調の基本的な考え方から申しますとやや外れたような面もあるのじゃないか、私はこう思っております。しかしその基本的な問題については、続いて出す第二次答申あるいは第三次答申において適切に触れるというふうに私は理解しておりまするので、当面の問題についてはいろいろと問題点があると考えております。  特に総体的にながめてみますと、国の財政の再建ということに力を入れた余り、地方財政というものに対する配慮が比較的少ないという点が一つの問題点じゃないか、こういう考え方をしておるものでございます。  したがって、五十七年度予算を編成するにつきましては、この臨調の答申の趣旨を十分に尊重しながら、地方財政との兼ね合いというものを適当に調整をとっていくことが現実問題としてきわめて重要な課題である、こういうふうに考えておるのでございまして、個々の問題はまた御質問に応じてお答えをいたしたいと存じますが、総体的にはそういう感覚、そういう考え方を持ちまして、地方団体が窮地に陥って、せっかくいままで充実してまいりましたこの地方団体の活動力が急激に低下をして、そして地方に大きな問題を起こすということのないように十分に配慮していかなくちゃいかぬ、こう思っておるところでございます。
  143. 春田重昭

    ○春田委員 私も大臣の御意見と非常に同じ考え方を持っておるわけでございまして、今回の第一次答申につきましては、非常に声の小さいといいますか、抵抗の少ない教育や福祉方面に相当切り込んだ答申になっておりますし、また地方公共団体に相当なしわ寄せがいきそうな答申になっております。そういう点で、大臣は、尊重はするけれども今後各方面と調整をしていくという御答弁があったわけでございまして、私はあくまでも国民の側に立ったそういう行革を進めていただきたい。私は何も行革反対論者でございませんけれども、今回の答申を見てそういった感がするわけでございます。  また、国民が一番望んでいたいわゆる国から地方への分権化という面が明確にされていないわけです。第二次答申に期待を持つとしても、一番、そうした問題にとりあえず手をつけるべきじゃなかったのか、こういう考え方を持っておるわけでございますので、そうしたいわゆる第一次答申につきましては、先ほど言ったように、あくまでも国民の側に立ったそういう行革を進めていただきたい、こう思っておるわけでございます。  それでは若干細かい問題に入ってまいりますけれども、まず自治省関係の今回の行革の答申の中身として大きな特徴というものは、国民健康保険の給付の一部、また児童扶養手当、特別児童扶養手当の支給に要する一部をそれぞれ都道府県に負担させる考えが答申の中に盛られているわけでございますけれども、この制度の所管庁である厚生省の方がお見えになっていると思いますが、まずそちらの方から御見解をお伺いしたいと思います。
  144. 古川貞二郎

    ○古川説明員 先生御指摘の問題、第二臨調の答申でございますが、国民健康保険の国庫負担額の一部地方回しというふうな答申が適正化対策の一環として指摘されているわけでございますが、私どもといたしましては第二臨調の答申の趣旨を尊重いたしまして、年末までに結論が得られるよう関係方面とも十分調整をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  145. 北郷勲夫

    ○北郷説明員 児童扶養手当、特別児童扶養手当の問題につきましても国民健康保険と同様でございます。
  146. 春田重昭

    ○春田委員 ただいま厚生省の方から御答弁いただいたわけでございますけれども、第一次答申を尊重していくという御答弁があったわけでございます。尊重するということは実行したいという面にウエートが置かれているのではないかと私は思いますけれども大臣は先ほど、尊重するけれども調整していかなければならない、こうおっしゃっているわけですね。この国民健康保険の給付の一部、それから児童扶養手当、特別児童扶養手当の支給の、要するに一部都道府県負担の問題についてはどういうお考えを持っておられますか、お答えいただきたいと思います。
  147. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 この問題は、経過から申しますと、かつて大蔵省はやはり地方団体都道府県にこれを持たせるべきだという議論を展開した時代があるわけです。その当時におきまして、厚生省は絶対それはまかりならぬという論調を展開したものでございます。しかし今回は、ゼロシーリングの関係もあるだろうと私は思うのでございますけれども、やはりそうすべきだというような議論を持っておるようでございまするが、この制度の本質から申しますと、決してそういうものじゃないと私は考えておるのでございます。  そこで、自治省といたしましては、この問題については臨調の答申におきましても、十二月末までに十分政府の方で結論を出すように、こういう答申になっておりまするので、この点は論議の範囲が非常に広いわけでございますから、十分私どもの見解を申し述べまして、しかるべき結論、妥当な結論、また厚生省等が年来主張しておりました主張、これは私は正しいと思っておりまするので、そうした主張が、自治省としても同様に考えておりますので、そうした結論が得られるように努力をしたい、こう考えておるわけでございますが、詳細につきましては財政局長から敷衍させていただきます。
  148. 土屋佳照

    ○土屋説明員 いまお話がございましたように、国民健康保険給付金の一部の都道府県負担問題などにつきましては、政府部内において本年末までに検討を加えて結論を得るということになっておりますので、いろいろと検討すべき事柄にはなっておるわけでございますけれども自治省としては国民健康保険給付金の都道府県への肩がわりは適当でないというふうに考えておるわけでございます。  せっかく大臣が申されましたので、少し詳細に申し上げますと、まず一つには、国民健康保険は、市町村が国からの委任を受けて事業主体となっておるものではございますが、本来国の政策でございます国民皆保険の一環として行われているものでございまして、国庫負担の一部を都道府県に負担させるということは、法律で定められました国民健康保険に対する国の責任をいわば他に転嫁するようなことになると思われるのでございます。また、国民健康保険を含めて、すべての社会保険は制度上、保険料と国庫負担で運営するという仕組みになっておることは御承知のとおりでございまして、国民健康保険のみに地方負担をここで導入するということは、現在の社会保険制度全体の体系から見てもやはり不合理ではないかと考えております。  考え方として、都道府県が一部費用を持てば医療費の総額抑制にも役立つのではないかといったようなことも言われておるようでございますが、医療費総額を抑制するためには、より根本的な見地から総合的に解決が図られるべきでございますし、都道府県に国民健康保険医療費の一部を負担させることによってその解決が図られるというものではないと考えます。都道府県に運営上の指導責任があると申しましても、それは知事に対する国の機関委任事務でございまして、そのことと、保険の内容であります給付費の一部を負担させるということを直ちに結びつけて考えるということは、これは当を得ないのではないだろうかと考えておるのでございます。制度の根本的なあり方についての検討もなしに国庫負担の一部を都道府県に肩がわりさせることは、単なる負担の転嫁にすぎないし、行政改革の理念という点から見ても、その理念に沿うものではないのではないかといったように考えておるわけでございます。また、地方財政の面から見ましても、地方財政は、御承知のように現在四十兆円にも上ります地方債なり交付税借入金を抱えております。今後その償還が大きな負担にもなっておるわけでございます。そういったことで、伝えられておりますようなかなり多額の負担をするということになりますと、都道府県ごとに見ましても相当な額になるわけでございまして、地方財政の圧迫になると考えております。  また、もう一点の全額国庫負担となっております児童扶養手当あるいは特別児童扶養手当について、その負担の一部を府県に肩がわりさせるということについても、やはり負担の転嫁にすぎないし、行政改革の理念に沿うものじゃないのではないかというふうに考えられますし、さらに類似の制度でございます母子福祉年金なり障害福祉年金がいずれも全額国庫負担ということになっております。こういったものとの均衡から見ましても、現行の仕組みを私どもとしては変更すべきではないと考えております。関係省庁に対してこういった問題点を十分認識していただきまして、検討していただきまして、都道府県への負担の肩がわりを求めることのないように要請をいたしたいというふうに私どもとしては考えております。
  149. 春田重昭

    ○春田委員 自治省の御見解はわかったわけでございますけれども、しかし厚生省としては何か事務的な作業を進められているように聞いているわけでございます。  伝えられるところによりますと、国民健康保険の場合、国庫負担の五%ですか、金額にして二千二百億円程度の額を地方に負担させようという動きがあるやに聞いておりますし、また児童扶養手当、特別児童扶養手当等の場合は、国庫負担の二〇%ですか、金額にして約四百二十億円相当額を都道府県に負担させようという動きがあるやに聞いておるわけでございますけれども、こうした報道に対しまして厚生省としてはどのようにお考えになっておりますか、お答えいただきたいと思います。
  150. 古川貞二郎

    ○古川説明員 お答えいたします。  今回の第二臨調の答申というのは、行財政のいわば総見直しという見地から、今日の時点でいろいろの逼迫している財政状況、行政の改革の問題、そういったものを総見直しをしよう、こういうふうな見地から御審議がなされているものというふうに私ども理解しているわけでございます。  その中で、当面の問題といたしまして、「医療費の適正化」という項目の中で国保の負担問題が言及されているわけですが、先生御案内のように「医療費の適正化」の中では、「年々急増する医療費については、総額を抑制し、医療資源の効率的利用を図るため、以下の措置をとる。」こういうふうな観点から、国保につきましては、「地域医療保険の性格を持ち、かつ、法律都道府県がその健全な運営について指導の責任を負うとともに、医療費の監査権限を有していることにかんがみ、医療費の適正化を図る上から、給付費の一部を都道府県が負担することも制度上考えられるが、」財源上の問題があるから、本年末までに結論を得る、こういうふうな御答申でございます。  私どもとしては、こういった答申の趣旨を受けまして、現在概算要求の取りまとめの段階でございまして、八月末に要求書を取りまとめるということで省内いろいろ検討いたしておりますけれども、私といたしましては、今後も検討をいろいろしなければならぬということでございますが、今日の時点におきまして、この臨調の答申の趣旨を五十七年度の概算要求の中に盛り込みたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  151. 北郷勲夫

    ○北郷説明員 児童扶養手当、特別児童扶養手当につきましても同様の考え方でございます。
  152. 春田重昭

    ○春田委員 厚生省から数字のお答えはなかったわけでございますけれども、これに近い検討はなされていると思うのですが、自治省としては、こうした地方財政が非常に厳しい中でそれにまた地方公共団体の負担になるわけでございまして、決して受けられないことだと思いますけれども、この点どうですか。
  153. 土屋佳照

    ○土屋説明員 先ほどから申し上げましたような考え方におきまして、私どもとしてはこれは反対でございますし、また一方地方財政の面から考えましても、これは容易な問題ではございませんので、私どもとしては賛成しがたいわけであります。
  154. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、国民健康保険というのは、国のいわゆる政策の一環として地方自治体が委任を受けてやっているわけであって、これは当然国が責任を持つべきであると私は思っておるわけでございますし、また児童扶養手当にしても、特別児童扶養手当にしましても、類似制度があるわけですね。たとえばこの児童扶養手当と同じ制度として母子福祉年金制度がございますし、また特別児童扶養手当と同じ制度として障害者福祉年金制度があるわけですよ。手当と年金の違いはあれ同じ趣旨のもとでやられているわけでございまして、こうしたことを考えて、児童扶養手当だけ国庫負担を都道府県に負担させるというようなことは均衡の上からも合わないわけですから、これは当然現行制度を維持すべきであると私は思っておるわけでございます。そういう点で、自治大臣の御健闘を期待して、この問題については終わります。  厚生省の方は、この問題だけでございますからこれで結構でございます。  それでは続きまして、同じく地方自治体の単独事業としております老人の医療無料化の問題ないしは軽減措置があるわけでございますが、これは臨調答申では「廃止すべき」ということで指摘されているわけでございますけれども自治省としてはどういう御見解なのか、お答えいただきたいと思います。
  155. 小林悦夫

    ○小林説明員 お答えいたします。  臨調答申では、ただいま申されましたように、地方で行っております老人医療の無料化とかそういう単独事業を廃止すべきだと言っております。この問題につきましては、先生も御承知のように、現在地方で単独事業をそれぞれ行っておるわけでございますが、このような単独事業につきましては、その必要性なり行政効果なり、また将来にわたる財政負担、国の動向、こういうものを総合勘案いたしまして慎重に行うべきものだと考えております。
  156. 春田重昭

    ○春田委員 地方制度調査会なるものがあるわけでございますが、この中でも、干渉するのはおかしい、あくまでも地方自治体の自主性を尊重すべきというそういう内容も出ているわけでございますので、当然そういう方向で進めていただきたい、このように思っておるわけでございます。  それから第三番目には、先ほど同僚議員が質問いたしました公共事業補助負担率の地域特例の問題でございます。答申によりますと、廃止またはかさ上げ率を財政再建期間中は引き下げろ、こういう答申になっているわけでございますけれども、一応各省代表という形で国土庁と沖繩開発庁の方がお見えになっておりますので、その両省から御見解をお伺いしたいのです。
  157. 若林正俊

    ○若林説明員 先生御質問ございますように、臨時行政調査会第一次答申の公共事業の補助負担率の地域特例の取り扱いの問題でございます。  国土庁所管の地域特例制度といたしましては、琵琶湖総合開発特別措置法とか離島振興法あるいは奄美群島振興開発特別措置法など各種の地域に着目いたしました特別の助成制度を持っております。国土庁としましては、それら地域特例につきまして、それぞれ今回答申に言われております地域特例として取り上げるべき範囲というのはどの範囲であるか、またそれぞれの地域においてそれらの及ぼす影響はどうか、またそれら諸立法の制定の経緯などを慎重に検討いたしまして対処いたしたいということで、ただいま検討中の段階でございます。
  158. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答えいたします。  いま臨調の方で地域特例のかさ上げ率の引き下げについて問題になっておる、この件につきまして、沖繩開発庁でいかが考えておるかという御質問でございますが、沖繩開発庁におきましては、沖繩振興開発事業というものを法律補助率のかさ上げをいただきまして現在執行しておるわけでございますが、この補助負担率が引き下げられますと、当然のことながらそれは沖繩県あるいは市町村の負担増ということになるわけでございまして、沖繩県あるいは市町村の財政力と申しますものは全国の約半分であるということで、きわめて弱い状況にございまして、現行の諸制度を前提といたしまして考えれば、沖繩振興開発事業の実施に影響がないということは言えないと思っております。
  159. 春田重昭

    ○春田委員 両省の言い分はそうでございますけれども大蔵省が最近出しました「地域立法等による補助率カサ上げ等の見直しについて」という厳しい文書があるわけですね。たとえば終期到来のもの、これは「財政再建期間中に終期が到来するもの」で、国土庁所管では、先ほど話があったように琵琶湖総合開発法が五十七年三月三十一日、離島振興法が五十八年三月三十一日、それから奄美群島振興法が五十九年三月三十一日に終期が到来するわけですね。また沖繩開発庁では、沖繩振興開発特別措置法が五十七年三月三十一日となっております。大蔵省の文書によれば、これを「対象とする。」となっているわけですね。こういうことで、当然一財政再建期間中五十九年度までに終期到来したものについては廃止するという形になっておるわけです。見直しの対象の中には「すべての地域特例を対象として、例外を設けない。」こういう形にも書いておるわけです。また、かさ上げの問題につきましては、「財政再建期間中、当該カサ上げ額等の三分の一をカットする」というふうにも書かれておりますし、こうした大蔵省の強い姿勢があるわけでございます。両省ではいま一応たてまえ論をおっしゃったわけでございますけれども大蔵省の通達に対してどう対処していくのか、もう一回決意といいますか、それを言っていただきたいと思うのです。
  160. 若林正俊

    ○若林説明員 先生の御指摘のとおりでございまして、各種地域立法は、財政再建期間中にそれぞれ期限が到来するものもございます。それぞれ地域立法はそれぞれの事情に基づいて立法されてきた経緯がございまして、必ずしも一概に、一律に申し上げにくいのでございますが、たとえば離島振興法にいたしましてもあるいは琵琶湖総合開発振興法にいたしましても、それぞれ当初立法の際にねらっておりました目標を必ずしも現時点で達成しているというふうに申し上げられない状況になっております。これら特殊な地域につきますそれぞれの事業の進め方につきましては、これら諸制度がすでにその地域の経済なり社会なりに組み込まれておりまして、いわば定着をしている、それらを前提に事業が進められているというような現実を考えますと、期限到来時において直ちに廃止するというわけにはまいらないのではないかというふうに考えておりますが、それらの点も含めまして関係省庁とも十分協議、検討してまいりたい、このように考えております。
  161. 望月美之

    ○望月説明員 先ほどお尋ねにございました、ただいまの沖繩振興開発特別措置法が来年三月に期限が来る、法律の上で来年三月三十一日限りでその効力を失うということになっておるわけでございますけれども、この件につきましては、沖繩振興開発審議会におきまして、五月二十一日に内閣総理大臣に対しまして、これまでの復帰後の沖繩振興開発は着実に成果を上げてきておるけれども、なお現行計画の目標が十分に達成されたとは言いがたいし、さらに言えば、わが国経済社会の発展向上のためにも沖繩の資源を活用することが有益だということからいたしまして、昭和五十七年度以降の沖繩の振興開発につきまして、地元地方団体と協力して引き続いて計画をつくる、またこれに基づく事業を推進する等の特別の措置を講じていくように強く要請するという意見具申が内閣総理大臣に出されてございます。  考えてみますと、ただいまの沖繩の経済社会の状況は依然として非常に厳しい状況にもございますし、先ほどの意見具申でも触れておりますような、社会資本の整備でまだ足らざるものもあるということなどからいたしますと、お尋ねのように、非常に厳しい行財政の環境ではございますけれども、沖繩開発庁といたしましては、沖繩の特殊事情について関係省庁の理解と協力をいただいてこの特別措置法を延長する、またこれに基づく新たな計画の策定に向けていく、そういうことで現在諸般の作業を進めておる状況でございます。
  162. 春田重昭

    ○春田委員 時間がございませんので先に進みたいと思いますが、事業官庁ではございませんけれども、いわゆる地域特例に非常に関係の深い自治省としてはどういう御見解なのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  163. 土屋佳照

    ○土屋説明員 先ほどお示しのございましたように臨調での答申があるわけでございますが、この地域特例の見直しにつきましては、それぞれの政策目的なり事業の円滑な実施あるいは関係地方団体の財政運営、さらには地域経済への影響ということを十分考慮しなければならないと存じます。そういったことを考えますと、地域特例制度の基本的な仕組みが維持されることが適当であるというふうに私どもとしては考えますので、今後の見直しに当たっては慎重に対処する必要があると考えております。
  164. 春田重昭

    ○春田委員 それぞれの特例措置には目的といいますか背景があるわけでございますから、そういう点を十分配慮しながら慎重に対処すべきである、このように思っておるわけでございます。  それでは、国土庁の方と沖繩開発庁の方は結構でございます。  さらに、地方公務員の定員と給与の適正化という問題がやはり答申に盛られておるわけでございますけれども、この問題につきまして自治省の御見解を簡単にお答えいただきたいと思います。
  165. 大嶋孝

    ○大嶋説明員 御指摘のように、臨調答申におきまして地方公務員の定員あるいは給与の適正化ということが盛られております。本質的には、地方公共団体の自律的な機能によりまして定員、給与の適正化というものが図られるのが本筋であろうと私は思っておりますし、臨調でもその点は理解をしていただいているものだと思っております。しかしながら、せっかくの答申でもございますので、まず定員につきましては、国が法令あるいは補助といったような形で地方公務員の増員の根拠になるというものについてひとつ適正化を図っていただきたい、抑制を図っていただきたいということと、地方団体自身につきましては、モデル定数といったものを私ども研究会をつくって研究しておりますが、そういうものを活用して抑制の方法を指導してまいりたい、かように考えております。給与等につきましても、もちろん臨調の答申のあるなしにかかわらずその適正化を十分図ってまいらなければならないものだ、かように考えておるところでございます。(春田委員「給与の問題」と呼ぶ)いま申し上げたはずでございますが、ではもう一度申し上げます。  地方公務員の給与の適正化につきましては、もちろん臨調の答申のあるなしにかかわらず、地方公共団体としても十分その適正化の努力をしなければなりませんし、私どもとしてもその指導に遺憾なきを期してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  166. 春田重昭

    ○春田委員 審議の際に、昭和四十二年から五十五年までですかへ地方公務員が八十万人ふえた、国家公務員は全然ふえてないのにふえ過ぎじゃないかという論議もあったみたいでございますが、そのうち、学校の先生であるとか、消防職員であるとか、また福祉関係の保母さんであるとか警察官という国に関係する職員の方が八割あるということでございますから、これは国の法律を改正するなり基準の見直しをやらなかったら地方単独ではできない問題ですからね、臨調答申のような形のものは一概に、地方公務員を一挙に減らせということはできないと思うのですね。  定員管理の問題は、先ほど研究会を発足させてモデルといいますか標準をつくるということでおっしゃいましたけれども、これは大体いつごろをめどにどういう作業をなさっていくのか、これも簡単にお答えいただきたいと思います。
  167. 大嶋孝

    ○大嶋説明員 地方公共団体をある程度の類型別に区分けをいたしまして、たとえば人口規模でありますとかあるいは産業経済の状況でありますとかそういうようなもので区分けをいたしましてモデル的なものを考えてみたい、かように考えておりますや現在、九人の学識経験者並びに地方公共団体の代表者から成る研究会をつくっておりますが、ここで、いろいろむずかしい問題がございますけれども、できれば年度末までには何らかの結論を得ていただきたい、かような考えで作業を進めておるところでございます。
  168. 春田重昭

    ○春田委員 給与、退職金の問題は、確かに一部の地方団体が住民から給与水準が高いということで厳しい批判を受けておるところもあるわけでございまして、こういう点はやはり手直しをしていかなければならないと思いますけれども、それをもって全部がこれに当たるということはないと私は思うのですね。そういう点ではこれも慎重にやっていただきたい、地方団体の自主性の芽をつぶしてはならない、こう思っておるわけでございます。  さらに、臨調答申の中では、住民に積極的に公表しろという形で書いてあるわけですね。これは自治省としてはどう受けとめているのですか。
  169. 大嶋孝

    ○大嶋説明員 現在でも予算審議あるいは給与条例の審議等を通じまして議会にはその内容をある程度公表するというたてまえになっております。しかしながら、なお一層住民の理解と協力を得るというようなことから、直接住民によく理解してもらう方法なりあるいは内容といったものにどういうものがあるかということを私ども十分検討いたしまして、結論を得た上で各地方公共団体の指導に当たってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  170. 春田重昭

    ○春田委員 この臨調答申は、議会に公表するのじゃなくして——確かに議会は住民の代表ですよ——一部の地方公共団体がやっているように、広報に職員の平均年齢から平均給与全部を出して住民一人一人に知らせる、こういう意図が含まれているように私は思うのですが、すでに一部の自給体がそういう形で出しているとも聞いておりますし、そうした方向自治省としては考えているのかどうか、この点どうでしょうか。
  171. 大嶋孝

    ○大嶋説明員 そうした方法をとっておられる団体もあるわけでございます。それも一つの方法かと思いますけれども、その点につきまして先ほど申し上げましたように、私どもとしても十分検討してまいりたいということで、現在どの方法によるというような結論は得ておるわけではございません。しかしながら、なるべく速やかに結論を得たい、かように考えておるところでございます。
  172. 春田重昭

    ○春田委員 そのほか、交付税率の三二%の問題が、答申では出ておりませんけれども、議論の中で、財界の方から交付税率三二%を引き下げろという声もかなり上がったように聞いておりますが、この点については大臣はどう思いますか。
  173. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 交付税率の問題は、確かに表面の議論としてはなかったと思っておりますが、しかし底流といたしましてはそういう論議もちょこちょこ出かかったということは私も聞いております。しかしこの問題は、私から言うまでもありませんが、現在の三二%でもどうしてもバランスがとれない、それで臨時、応急の措置を講じておるわけでございます。これが国会の場におきまして、なぜ上げないのだということで皆さん方から常に責められておるのを、その他の財政措置によってこれを処置しておるからひとつ御承認を願いたいということで来ているのがここ何年間の姿でございます。したがいまして、交付税率を引き下げるなどということはいまの地方財政状況から見るならば考えられないことであるというふうに私は考えております。
  174. 春田重昭

    ○春田委員 引き上げることはあっても絶対引き下げてはならないと私は思うわけでございます。  いずれにいたしましても、今回の第一次答申は国民が期待したわりには余り評価されていないわけでございまして、どうか自治省関係におかれましてもその関係の諸問題につきましては、何回も言いますけれども、国民的サイドに立った行政改革をやっていただきたい。何回も言いますが、私は決して行政改革反対論者でございませんし、行革は断じてやらなければならない問題でございますけれども、そうした観点に立って進めていただきたい、これを要望しておきます。  時間がございませんので、最後に事業所税の問題をまとめて御質問したいと思うわけでございますが、先ほどから論議しているように、地方公共団体はいま相当な財政悪化になっているわけでございまして、今回の臨調答申から見てもますます苦しくなる様相であるわけです。そういう点で、いま事業所税というものがございますが、これは人口三十万以上の都市、また三十万以下でも首都圏整備法で言う市、また近畿圏整備法で言う市、そういう市でいま五十九市が対象になっております。これは都市環境の整備という名目でこの事業所税が取られているわけでございますが、昭和五十年に五十万から発足して翌五十一年に三十万に引き下げられたという経緯はございますけれども、以来五年間ずっと据え置きになったままになっているわけですね。確かに税率のいわゆる引き上げは行われましたけれども、対象範囲は全然変わってないわけですよ。どこに線引きするかというのは問題だと思いますけれども、二十万以上でも十万以上でも都市環境整備には変わりがないと私は思うのです。そういう点で、五年間据え置きになったままのこの対象事業団体の範囲をさらに拡充、拡大して、当面二十万とか十万まで引き下げて、その地方自治体の財政が相当厳しい中にこの事業所税を設けて財政を潤わしていただきたい、こういう希望を持っているわけでございます。  なお、三十万以下の対象事業団体をふやすとともに、現在都道府県の県庁所在地の地方団体でもまだ対象になっていないところがあるわけですよ。そういう点で、そういうところは当然、人口が三十万以上なくても都市環境の整備は一番先にやらなければならないところでございますから、こういうところも対象として広げていくべきではないか、こういう考え方を持っているわけでございますけれども、この点につきまして御見解をお伺いしたいと思うのです。
  175. 関根則之

    ○関根説明員 御指摘いただきましたように、私どもも、人口要件が三十万に引き下げられましてからすでに五年を経過いたしておりますので、検討は続けているわけでございます。しかしながら、人口が同じような都市でありましても、事業所等の集積度の非常に高いところと分散型のいわば田園都市のような都市もございますし、その辺、どこへ線を引くのかという問題が具体的な問題としてあるわけでございます。また、御指摘いただきました県庁の所在市にいたしましても、山口のように人口十万そこそこというような市もあるわけでございまして、この辺の扱いをどうするかということも一つの問題でございます。一方、税制調査会におきましても、五十一年に人口要件を緩和いたしましたときに大分慎重論がありまして、答申の中でも、今後拡大については慎重に対処すべきである、こういった意見も出ているわけでございますし、その後の税制調査会の審議の過程でもなお依然としてそういう意見も強いわけでございます。  そういう背景はありますけれども、私どもといたしましては、市町村からの要望もございますし、また地方税源拡充という見地からも、この問題については前向きに検討を続けていきたいというふうに考えております。
  176. 春田重昭

    ○春田委員 最後に大臣にお伺いしたいわけでございますけれども、地方の時代と言われて久しいわけでございますが、地方自治体は依然として国の交付金や補助金行政といいますか、ひもつき行政で行っているわけでございまして、自主性に非常に乏しいわけです。その意味で、この事業所税のいわゆる課税団体をさらに拡充するように私は強く望むものでございます。  大臣の御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  177. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 地方の時代と申しましても、やはり地方団体に財政力がなければこれは架空のものになるわけでございまするので、そういう観点からも、ただいま御指摘の問題については前向きでもって検討してまいります。
  178. 國場幸昌

    國場委員長 和田一仁君。
  179. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大臣にお尋ねしたいと思います。  国においては、五十五年度の剰余金が先般四百八十四億というふうにはっきりいたしまして、それを今年度の減税の財資に充てる、こういうことになってまいりました。私どもも、所得税の減税あるいは見直し、最低課税限度の引き上げ、こういうことが五十二年に行われて以降ない。そして、その間に国民の所得というものは物価にスライドして上がってまいりました。上がってはまいりましたけれども、しかしこれは物価も上がっておるわけでございまして、所得がこういうふうに名目的に上がりますと所得税というものは累進課税ですから、これはやはり負担が重くなってくる。そういう意味で、何とか本年度はそういう所得税減税を中心にした減税をしてもらいたい。これは国民の声として何とかそういう方向を出したいと努力したわけですが、冒頭申し上げましたようにそれはできずに、ただ剰余金を充てて、まあ標準世帯二千円程度の本当にミニ減税ではございますけれども減税になった。こういう国の状態の中で、今度のこの行革が来年度予算に向かってはとにかく増税のない予算編成をしなければならぬ、こういう意味でゼロシーリングが始まっているわけですね。そういう努力をしている中で先般も土光会長は、この行革が完全実施されるならば五十九年には減税も可能かもしれぬ、こういう発言をされている。その二、三日後に河本企画庁長官は総理との会見の中で、これを完全に行えば五十八年度にも減税ができるのじゃないか、こういう見解を示されたわけです。私どももぜひそうしてほしい、なるべく早くそういう意味での財政再建と減税が兼ね行えるような状態をつくってもらわなければならぬ、こう思うのです。  そういう中にあって、この行革を徹底的にやってみて一体地方税の減税ができるような状態になるかどうか、そういう点について大臣はどういうようなお考えあるいは見通しを持っておられるか。この地方税、特に住民税ですけれども、住民税の軽減についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  180. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 十分検討する必要はあると思いますけれども、住民税について、この行革、今回の答申に基づくような措置を講じた場合に果たして住民税を減税するような自治体の実態になるかどうかということについては私は疑問を持っております。恐らくそういうことにならないのじゃないかというむしろ逆の気持ちも持っておるわけでございます。したがいまして、日本の税制の問題、地方税源というものをもう少しいろいろな形において充実をすることによってそういう可能性も出てくるかと思いますが、現状のままでは必ずしも五十八年、五十九年に住民税を減らしてもいいという自治体の財政状態になるというふうには私は考えておりません。
  181. 和田一仁

    ○和田(一)委員 あるいはその五十八年、五十九年度時点ではむずかしいかもしれぬ、ちょっといまの御答弁の中では私聞き違いかもしれませんけれども、行革を額面どおりというかこの答申のような方向で進めていくと逆の面も出るというお考えのようでしたけれども、そういうのは具体的にはどういうところでしょうか。
  182. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 今回の答申等を拝見いたしますと、これは最大限に尊重いたすものの、基本的にはどうしても国の財政が主になりまして、その分を地方に移しかえるという面がどうしても出てこざるを得ないと私は思っておるわけでございます。そういたしますと、地方の自治体といたしましては、やはり自分のところの財源というものを何とかして強化をして住民の要望にもこたえていかねばならぬという立場に、だんだんと状況がそういうことに相なるだろう、こう思うのでございますが、そういたしますと、現実の問題としては減税というようなことを地方団体がとり得る余地は大変少ないのじゃないか、こういうふうに思っておるところでございます。
  183. 和田一仁

    ○和田(一)委員 先ほど来、同僚議員の皆さんから具体的に、今度の臨調答申をめぐって自治省としてのいろいろな対応をお聞きしておられたわけですけれども、そうなってまいりますと、この臨調答申が抱えているいろいろな問題点ございますけれども、たとえばさっきも出ておりました国民保険の給付費の一部を肩がわりしろ、何でもかんでも中央財政の再建を最優先にしてそのしわを地方へ肩がわりさせる、こういうのでは中央の財政再建、行政改革にはなっても地方の財政的負担はふえるだけだ、こういう御見解ですか。そうなりますと、これについてはやや反対である、こういう姿勢がだんだん出てくるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  184. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 結局、国と地方というものは唇歯輔車の関係にあるわけであります。相協力し合って日本全体の健全な発展を期待しなくちゃならぬ、これが鉄則だろうと思うのです。  そこで今回の臨調の第一次答申につきましては、さしあたり五十七年度の国家予算を編成するについて増税なき予算を編成するという点に重点を置きまして答申が行われました関係上、やはり国家財政というものに主としてウエートを置いて、そしてどうしてそれを実現をするかということに、論点としてはどうしてもそこに移らざるを得ない事情にあったと私は思っております。したがいまして、地方財政に対するところの問題点というものが今後の答申の中におきまして基本的には出てくるだろうと私は思うのでございます。そういう過程において、当面の問題についてはいままで申し上げましたとおりに、今回の問題はいろいろな例に見られるように、国が非常に苦しいからそれは制度的にも地方に持たしていいじゃないかという面がいろいろ出てきておるわけですね。それだけに地方団体の負担というものは重くならざるを得ないということはあり得るわけです。  そこで、補助金制度なんかはその補助制度をやめるということになればそれはそれですっきりするわけでございますけれども、単に補助率を下げるということになれば、繰り返すようでございますけれども、それは地方団体としてはどうしてもそれだけは負担をしてやらざるを得ないというところに到着せざるを得ないだろう。こういう観点から申しますと、地方財政につきまして今度の臨調答申、五十七年度の国家予算を編成した場合に、楽になるということじゃなくして少なくとも現状よりは重荷になる面が相当あるのではなかろうか、こういう予測を持っているわけでございます。しかしそれではいかぬのでございまして、やはり国も地方も一緒になって減量化を図る、効率化を図るということが行革の基本的な問題でございますので、そういう点についての基本的な政策については第二次答申以降におきましても展開されるわけでございまして、それと両々相まちまして、国も地方も減量化、効率化、さらに能率のいいローカルガバメントと中央政府、そういうものができ上がるように私ども努力していかなければならぬ、こう思っているところでございます。
  185. 和田一仁

    ○和田(一)委員 さっき質疑と御答弁の中で国民健康保険の問題が出てまいりました。これは、さっきから伺っておりますと、いま厚生省の方はいらっしゃいませんけれども、行革の答申を尊重して十二月までに何とかやりたいという、厚生省と自治省の見解がやはり違う。綱引きみたいな感じがするわけでございます。  それで、さっき、すべての社会保険というものは保険料と国庫負担で行われているものだ、そして制度がどうあるべきかを考え結論を出すべきで、財政事情からのみでこういう問題を考えてはいけない、こういうような御答弁があったと思うのですけれども、厚生省の方は、むしろ制度的にこれを地方に移管していきたい、こういう根拠を示されているのじゃないか、私はこう思うのですね。それで、制度の問題は別にいたしましても、財源だけで考えるのではいかぬというのですが、それは確かに地方の負担になりますから、その財源、負担分を国がつけた場合には自治省としては一体どういうふうにお考えになりますか。それでもこれは反対でしょうか。あるいはそれならいいとおっしゃるのか、その辺の御見解も聞かせていただきたいと思います。
  186. 土屋佳照

    ○土屋説明員 ただいまお示しのように、新たな財源措置を講じて都道府県に負担させるといったような方法をとってはどうかということでございますが、そういった方法をとるにいたしましても、私どもとしてはなおいろいろと問題があるだろうと考えております。それは、先ほども申し上げましたように、都道府県に負担させるということは現在の保険制度体系の中では基本的に問題があると考えてるる申し上げたわけでございますが、国民健康保険については、現行制度上都道府県が健全な運営についての指導責任とか医療費の監査権限を有しておるにいたしましても、これらの事務は本来国の事務でありますし、国から委任されておるにすぎないということでございますので、都道府県知事はいわば国の指導のもとに事務の執行に当たっているということでございます。もちろん都道府県知事としても、医療機関等に対して適切な指導、監督に努めるべきことは当然でございますけれども、その指導、監督に関する権限の行使には実態から見て限界があるのではないかと思っております。  そういった意味で、いろいろな総合的な体制の整備等が必要でございますし、保険制度体系の中で十分議論を尽くさないで負担の肩がわりというのは問題があると私は申し上げたわけでございます。したがいまして、財源的な面では何らか考えるということができたといたしましても、いまの国民健康保険のあり方そのものをもっと掘り下げて考えるべきではないか。幸い、老人保健等についてもいろいろと検討がされてきておるわけでございますし、こういうものを契機に国民健康保険全体のあり方は今後あるいは社会保険制度審議会等を通じて議論がされると思いますけれども、いまここで、財源をこういうふうにするというだけで直ちに都道府県が一部を負担してもいいのだというふうに踏み切ることにはやはり問題があるような感じがいたします。
  187. 和田一仁

    ○和田(一)委員 公共事業の補助負担率の問題についても、この臨調答申の中に「財政再建期間中現行の嵩上げ率を引き下げる。」こういう文言でございますが、将来的にはこれは「終期到来時には廃止を含め」こう書いてございますけれども、こういう特例措置を廃止していこうという答申の基本方向についてはどうなんでしょうか。こういう方向そのものがまずいとおっしゃるのか、かさ上げの分を引き下げるのがまずいというのか、その辺、ちょっとはっきりお答えをいただきたいと思います。
  188. 土屋佳照

    ○土屋説明員 終期のついた制度そのものについては、終期到来時において抜本的に見直すということ、これは常にあり得ることだと思いますし、今後もそういったものについては検討がされると思うのでございます。ただ、その点につきましても、私が先ほどから申し上げておりますのは、こういった地域特例というのはそれなりの政策目的を持っておりますし、御承知のように、後進地域とかあるいは過疎なり離島なりいろいろ財政力の貧弱なところにとっておる制度でございますから、やはりそれぞれの目的なり事業実施の状況あるいは地方団体の財政に与える影響、地域経済に与える影響、そういうものを十分考えた上で、廃止するのかしないのか、存続するのか、いろいろ検討すべきだと思うのでございます。そういった意味で慎重でなければならないと申し上げたわけでございます。  なお、財政再建期間中から上げ率を引き下げるといった点につきましても、同じように、ただいま申し上げたことが言えると思うのでございます。  そういった意味で、今後いろいろ検討はされると思いますけれども、私どもとしては、ただ一律に下げるということがいいのかどうか、やはりそこらの問題を十分詰めて検討すべきであるので慎重であるべきだ、こう申し上げたわけでございます。
  189. 和田一仁

    ○和田(一)委員 その財政再建期間中ということはさっき大臣もおっしゃっていましたけれども、とにかく五十七年度予算、これの編成に向かって具体的にこれを反映していかなければいかぬのじゃないかと思うのです。その辺で大変な御苦労をされると思いますが、八月末には概算要求をまとめなければならぬのじゃないですか。そうなりますと、そういう作業のリミットがございますけれども、そういう中に今度それがはっきり出てくるものと考えてよろしいのですか。
  190. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 例年の予算編成と違いまして、ゼロシーリングという枠が大体決定されておりますので、それで各省はその線に沿って予算要求します。そういたしますと、大枠はそこで大体片づくと思います。しかし最終的に税収の見込みでございますとかあるいは来年度の経済成長の問題でございますとか、そうしたものが八月、九月は未確定の状態でございますから、やはり十一月、十二月にかけてその辺のデータが大体そろったところで最終的な予算を編成し終わるということになるだろう、こう思うのでございます。したがいまして、そうした客観的、経済的諸条件というものが出そろった時期におきまして、十分八月のゼロシーリングというものを前提といたしまして、そこで調整をとりながら五十七年度予算編成というものに移行していくのではなかろうか、私はそういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、例年と違いまして八月ごろに大枠は決まってしまうと思いますけれども、やはり最終的な予算編成というものは例年のとおり十二月にこれが決定される性質のものだろう、こう考えております。
  191. 和田一仁

    ○和田(一)委員 それと、さらに答申の中では、補助金については「各省庁ごとに総枠を設定して整理」しろ、こういうようなことですけれども自治省関係というのは補助金は少ないのですけれども、少なくても見直しはしなければならぬと思いますが、私、その中で一つだけお聞きしたいのは、選挙常時啓発費補助金というのがわずかですがございますね。これは戦後に選挙というものに対する意識を啓蒙しなくてはというような意味合いからつけたものの名残ではないか、こう考えておりまして、金額もそう多くはございませんようですが、これなどはどうされますか。まだ必要とお考えになっているのか。私はもうこういうものは見直して、なくしてもいいのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  192. 大林勝臣

    大林説明員 来年の予算要求に絡みまして選挙常時啓発費補助金もやはり行革補助見直しの一環ということにならざるを得ないと考えておりますが、先ほど御指摘ございましたように、非常に長い歴史的な経緯を踏まえて行われてきたものであります。特に従来、関係者の大変な御理解で粘り強い啓発を続けていただいておるわけでありますけれども、いろんな政治的な問題であるとか選挙違反の問題であるとか、そういうものに絡みましてその効果というものがその都度問題視されております。  御承知のように、一つ政治教育と申しますか社会教育と申しますか、そういう性格のものでございますので、結局私ども長い目で見てまいらぬといかぬと考えておりますし、またさらに先生も御承知のように、航空機疑惑問題協議会等からもさらに政治の倫理化運動を高揚しろ、こういう提言もいただいております。最近は、特に地方選挙におきます投票率の低下の傾向もございますし、私どもといたしましては一層強力な推進をしていかないといかぬと思うわけであります。  同時に、その資金の効率的な使途の問題というのがございます。結局、行政改革の一環ということになるわけでありますが、恐らくは来年はかなり厳しい枠で努力をしなければならないと思います。いろんな資金の効率的な使い方というものを考えながら、厳しい枠の中でなお一層がんばってまいらなければならない、こういうふうに考えておる次第であります。
  193. 和田一仁

    ○和田(一)委員 これは各市町村まで細かく分けておろしてしまうのだろうと思うので、実際にはどういう使われ方をしているか私もよくわかりませんけれども、いまの御答弁の中で、政治の倫理であるとか選挙の投票率を上げるため、こういう意味に使われるものではない、政治の倫理なんていうものは議会人のやることであって、行政がそういうことをやる筋ではなくて、これは議会人みずからが反省してやらなければならぬ問題であります。投票率が下がるというのもこれは一つの啓蒙運動として大事かもしれませんけれども、これもやはり議会と選ぶ市民との間の信頼関係というものをきっちりしない限り、幾ら笛や太鼓をたたいても選挙民は踊らない。むしろそういう問題は議会の問題であって、そういう意味でこういう啓蒙開発費なんというものをつけているのだったらこれは見当違いで要らないと思うので、ぜひひとつお考えいただきたいと思います。  それから、同じ補助金でも各地方の団体は縦割り行政で従来はどんどんおりてきている。その弊を排して今度は統合・メニュー化というようなかっこうで合理化を図れ、こういうことの答申のようですけれども、これを私どもは何とか、公共事業関係の補助金を一括してそして交付する、いわゆる第二交付税というか、そういうような制度をここで取り入れてはどうかというふうに考えておるのですが、そういう考え方についてはどういう御見解でしょうか。
  194. 土屋佳照

    ○土屋説明員 補助金の整理合理化ということは積極的に進めるべきだと思っておりますが、必要な補助金についてもできるだけ統合・メニュー化ということを図るべきだと考えております。  そういった意味から、民社党として前から第二交付税的な形で建設補助等、三兆余りのものでございますが、こういうものを一括して総合化して補助として出したらどうかという御提案がございますことは承知しております。地方の自主性を尊重するという立場から、御意貝として私どもとしても伺っておったわけでございます。  ただ、全般的に考えてみますと、余りにも広範囲にそれだけのものを一括してやるということになってまいりますと、国と地方との事務配分にも若干かかわってくるような大きな問題でもございますし、またいろいろな行政、たとえば河川なり道路なりといったようないろいろな行政を国の立場で一定の水準を維持するといったような行政目的もあるわけでございますので、それを余りにも、全部一括して交付するということになると、そこらがうまくいくのかどうかといったような危惧も一部にはあるようでございます。  そういうこともございますので、全般的に方向としてお示しになった事柄は十分理解できるわけでございますが、おっしゃいましたような、余りにも大きな形での第二交付税的なものを直ちにつくることがいいかどうかということになると、私どもとしてもなお十分検討してからでないとお答えしにくいといったような立場にあるわけでございます。
  195. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういういろいろな理由はあろうかと思いますけれども、とにかく三千五百件ぐらいの国庫支出金がいろいろなかっこうで縦に出ているわけですから、そのために住民にとっては、道路を舗装してやれやれと思っていたら今度は暗渠のためにまたほじくり返すというように、非常に非能率というかむだの多い事業が行われている。これを目の前に見せつけられていると、その辺の工夫がそろそろ考えられていいのじゃないか、こういうことは痛切に感じていると思うのですね。ぜひひとつ御検討いただきたいと思います。  それから、これは時間がないのでちょっと飛びますけれども、今度の答申の中でも地方公務員の定員の問題であるとか給料の問題が大変取り上げられているわけですね。  これに先立って七月二日に、自治省行政局公務員部長の名前で大阪府知事あてに「大阪府各市における期末・勤勉手当の超過支給について」という大変特異な通達が出されたわけですね。この中身はもう御存じのように「六月の期末・勤勉手当について国の支給基準を前年以上に上回って支給することとしたことはまことに遺憾である。このようなことは、地方公共団体全体に累を及ぼし、ひいては地方自治そのものに不信を招く結果ともなる。したがって、」云々、法の趣旨に従って適切に対処するよう強く指導してくれ、こういう要請を出されて、「なお、その結果を当省あて報告すること」というような通達が出されたわけでございます。  これについて、一体適切に対処されておるのかどうか、この通達に対して結果が自治省あてに報告があったかどうかをお伺いしたいと思います。
  196. 大嶋孝

    ○大嶋説明員 御指摘のような通達を大阪府知事あてに出したわけでございます。それで、結果をいつまでに自治省へ報告してほしいという期限をつけての通達ではございません。現在その通達を受けまして、大阪府におきましても関係の市当局の指導に当たられておるようでございますし、また関係各市におかれましても、今後どうするかということを含めていろいろと御検討なされておる、かように私ども承知をいたしておるわけでございます。現在までのところかくかくしかじかのことに相なりましたというような報告はまだ受けておりません。目下各市当局の今後の動き、あるいは適正化への努力というものを私どもとしては見守ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  197. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大変珍しい通達でございまして、受けた方も相当重要に受けとめてくださっていると私は思います。がしかし、これは出しっ放しにならないように、期限を切るのがむずかしくても、出した以上国の指導としてきちっとしたものにしていっていただきたい、そういうふうに思うわけなんです。それでもし報告が来て、国としてこれはまだ適切でないというような判断をされたときにはどういう措置を考えておられますか。
  198. 大嶋孝

    ○大嶋説明員 私どもとしては、適切な対応がなされるものというふうに期待をいたしておりますし、また中途半端な形にならないということを十分期待をするわけでございます。しかしながら、御指摘のように、通達は出しっ放しで無視されたらそれでおしまいというようなことになってはいけないわけでございまして、その対応の結果を待って判断をいたしたい、かように考えております。
  199. 和田一仁

    ○和田(一)委員 これは通達の中にもございますように、こういう事態がそのままになりますと、これは「地方公共団体全体に累を及ぼし、」とはっきり示されている、私はそのとおりだと思うのです。したがって、それなりのきちっとした措置をぜひ指導していただきたい。もしそれはどうしてもできぬというところには、やはり国は国としての措置をこれまた適当に考えていただかなければいかぬ。それにはいろいろなものがあろうかと思いますが、ぜひそういうふうにして——いま地方の市民は自分の住んでいるところの市と近隣の市との行政コストはどうなっているのだとか、そういうことが大変気になり始めているのです。特に住民税、相当高額なものを取られているだけに、おれのところの町はむだが多いのじゃないか、これは中央のむだ遣いよりも身近な問題として非常に切実に考え、そして目につきやすいですから非常に注目をしておりますので、国はそういう指導を出した以上きちっとそれに合うような方向を早く出していただきたい、私はこう考えております。  それから、もう時間もございませんけれども一つだけ、この臨調答申の中にはどうも見当たらないのでぜひお聞きしたいと思うのですけれども、行政管理庁の方でかつて昭和五十四年一月から三月にかけて「特別地方機関等の設置及び運営に関する調査」というものをなさったわけですね。それによりますと、要するに地方の公共団体がどうしても置かなければならぬという必置規制が法律的根拠によって与えられる、そういうものが非常にたくさんあって、実際から言えばもうすでに不要のものが多い、そういう調査が出ておるわけです。私の手元にありますのは、五十五年五月の調査結果なんですけれども、各省庁別に見まして、必置規制の根拠法律数というものが八十五本ある。それに基づいて特別地方機関を置かなければならぬというその機関が百八十一もある、こういう数字が出ております。これについては「これまでさしたる見直しが行われることもなく、昭和二十年代に創設されたものを原型にして、増加している」と、こういう現状の中でもう要らないものはやめて廃止あるいは統合しろ、こういう大変大事な調査が出ておるのですが、こういうものに対して自治省としてはこれからどういう取り組みをされるか。地方が切実に、こんなもの法律があるからこそ置かなければならぬのでもうやめてくれ、法律を整理してくれ、そういう声もずいぶん出ているはずでございますが、いかがでございましょうか。
  200. 砂子田隆

    ○砂子田説明員 ただいまお話がございましたが、五十五年五月現在で、おっしゃられるように特別行政機関と称せられるものが百八十一ございました。  この調査は、実はもともと行政管理庁が私の方と協議をしながら調査をしたものでございまして、この調査の結果私たちも各省の協力を得て多くのものが廃止されるなりあるいは任意制に移るということを期待をいたしたわけであります。しかし、なかなか各省との協議が調いませず、さきの通常国会でおよそ十件ほどが整理をされた結果になったわけであります。まだ残りの件数が大変多うございますから、今後とも私たちの方も行革本部なりあるいは行政管理庁の方に協力方を要請しながら、国の制度としてこういうことが一日も早く整理されるように努力をしていきたいというふうに考えております。
  201. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ぜひひとつお願いしたいと思います。  いまめくっておりましたら臨調答申の中にも若干出ておりまして、「トラホーム患者の診断届出」、こんなものは廃止しろ、こういうふうに具体的に指摘されております。確かにトラホーム患者というのは、この法律ができたころには一千万人いた。いまは、五十二年度でわずか一千人である。これだけ違ってしまっているのですね。  それから寄生虫病患者数というのは国民の約半分に近い三千万、これが法律ができた当時。現在は四万三千人。もう格段に衛生状態も医療の対策も確立されていて、なおこういう法律が残っている。こういうものについてはそのしわ寄せを受けるのは地方公共団体ですから、ぜひ厚生省とかけ合っていただいて、こういう問題については自治省が、先ほど申し上げたようにたくさんな必置規制がありますけれども、この必置規制を全部見直していただく。これは地方の自治体にとっては大変に助かることではないか、こう思いますので、ぜひやっていただきたい、こんなふうに思います。  時間が参りましたので、終わります。
  202. 國場幸昌

    國場委員長 辻第一君。
  203. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、第二臨調の第一次答申について質問をいたします。  午前中からの同僚議員の質問と重複をすることがあろうと思いますが、了としていただきたいと思います。  まず初めに大臣にお尋ねをいたします。  第二臨調の第一次答申については地方自治関係者からさまざまな意見が述べられていること、御存じだと思います。これらの多くは第二臨調の答申が地方自治体住民に与える影響について問題点を指摘したものであると思います。  ことに全国知事会は、七月二十日の全国知事会議の決議の中で五項目の決議をされているわけでありますが、その三番目、「行政の減量を図らず、単なる補助率の引下げ、負担区分の変更等によって、地方公共団体に国の財政負担を転嫁するような制度改正は、国・地方を通ずる行政改革の趣旨に反するものであり、行わないこと。特に、国民健康保険給付費並びに児童扶養手当、特別児童扶養手当の都道府県への肩代りは絶対に行うべきでない。」四番目、「公共事業の補助負担率の地域特例の廃止、嵩上げ率の引下げは国土の均衡ある発展を妨げることとなるのみならず、財政負担の増加によって、事業の実施に支障を生ずるおそれがあるので、行わないこと。」こういうふうに決議をされております。  また、七月三十一日に出ました地方制度調査会の意見書の中にも同様の趣旨のことが意見として書かれておるわけでございます。私は、いま全国知事会の決議の中で三番目と四番目を申し上げたわけでありますが、ここのところ、この部分で、全国知事会の決議、見解について、大臣はどのような御見解を持っていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。
  204. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 地方制度調査会の答申、結論、これは長い間の検討の結果、また当面する事態に対処いたしまして要約をした要点でありますから、私はそれは尊重すべきものだと思っております。ただ一方、臨調の答申もあるわけでございます。臨調の答申と現実的には若干ニュアンスの違うところが出てきておることも事実でございます。  そこで、政府としては臨調の答申というものを最大限度に尊重していくという決定をいたしてその方針で進めてまいりまするので、その過程におきまして地方制度調査会の答申の趣旨をもでき得る限り生かして現実的な施策を講じていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えているところでございます。
  205. 辻第一

    ○辻(第)委員 全国知事会の決議のところについても同じようなことでございますか。
  206. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 同様に考えてよかろうかと思っております。
  207. 辻第一

    ○辻(第)委員 先ほどの同僚議員の御答弁におきましても、今度の第二臨調の答申については、いろいろと問題点がある、このようにおっしゃったように思うわけでありますが、いまの全国知事会の決議の内容を見てみましても、今度の第二臨調の答申というのは、私どもから見てまいりますと、政府あるいは行政の浪費の根絶、行政の民主化など、国民的な課題には本当にこたえていない。弱者に大胆、強者に遠慮、国民にツケを回す行革、防衛費は聖域扱い、このようにマスコミや新聞が言うように、国民サービスはなで切りをしている、国民負担は大増強であり、また地方自治を踏みにじるようなものであります。そして大企業奉仕、軍拡推進の、言うならば行革の名に値しないものであるというふうに考えております。  私どもは、さきに国民本位の民主的な行政改革を目指すということで、当面の行革計画要綱の提案、このようなものを明らかにしたところであります。  このような第二臨調の第一次答申、そしてその中での先ほどの問題点、この点で申しますと、国保の給付費や、あるいは児童扶養手当、特別児童扶養手当の地方自治体の肩がわり、あるいは地域特例の廃止や補助金のかさ上げの引き下げ、こういうものはいろいろ問題点がありますが、ことに地方自治体への負担増になるということは言うまでもありません。大変な問題だと思うわけであります。  ところが、このように国が大変な財政事情であるので地方も応分の負担をという考えが貫かれている、地方への肩がわりということが大きな問題になっているというふうに思うわけであります。  ところが、地方財政状況はどうなのか。単年度収支では地方団体の血のにじむような努力という中で黒字となった団体は増加しておりますが、これをもって地方財政危機が解消されたとするのは一面的な見方であり、誤りであります。現に昭和五十六年度において、地方財源は一兆三百億円の不足を生じております。地方交付税特会の借入金が必要であり、これまでの交付金特会の借入金残高は八兆円、地方債残高は三十二兆円もある、このような状況を見ても、地方財政危機を克服していないことは明らかである、私どもはこのように認識をしているわけでありますが、大臣はどのように御認識をなさっているのか、お尋ねします。
  208. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 地方財政も決して楽じゃない、これは事実だと思います。言うまでもありませんが、地方交付税につきましても、臨時特例の措置を講じてこの事態を切り抜けておりますから、表面的には安定しているような感じも人には与えておるだろう、こう思います。しかし、それは借金政策によって安定しておるわけでございます。それからまた、地方自治体といたしまして、いろいろな三千有余の団体があるわけでございまするから、それを一律に割り切ってしまうわけにはいかぬ。非常に苦しい団体もある、あるいは若干余裕のある団体も恐らくないわけではなかろうかと思います。国という単一の機関じゃない、三千有余の団体でございますから、その間にいろいろなバラエティーがあることも事実でございます。そして率直に申しますと、たとえば先ほどお話がございました給与の問題なんかについて、まことに国家公務員よりも相当高い措置を講じておる、そういう団体が出てまいりますと、多くの人々に地方団体は非常に楽じゃないかというような間違った考え方を普及させる端緒にもなる、こういうことも事実です。実態は決してそんなに楽な地方自治体の財政状態ではないということだけは事実だろうと思っております。
  209. 辻第一

    ○辻(第)委員 そのような財政状況が非常に厳しい中でこのような大変な負担の肩がわりということになれば、地方財政がそれで持ちこたえられるのか、また事業が本当にまともにやれるのかどうか、その点についてお尋ねをいたします。
  210. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 地方自治体は、それぞれの団体においてそれぞれの事業というものを執行しておるわけでございます。その厚薄もございまするし、程度の差もございます。したがって、今後いろいろな仕事をやっていく上において、いまの財政状態でいいかどうかということになりますと、大変苦しいと思っております。  それから臨調の答申等にもありますが、地方自治体自体もよほど反省をしてもらわなければいかぬ、それで引き締めるところは引き締めるというような態度が私は必要だろうと思います。そしてそれをいろいろな事業運営に回すというようなことを自治体としても努力をしていく必要があるだろう。ただ、地方自治体のそうした組織、機構あるいは運営につきましても、中央の方針というものによって束縛されている面が多々あるわけでございまするから、そういう点はひとつ中央において十分にカットしてもらって、地方自治体が地方自治体の理念に従って地域社会に最も活動するような体制がつくり得るような、そうした立場を与えてもらうようにしてもらわなければならぬ、これは両々相まってやっていかなければならぬ問題だ、こう思っております。
  211. 辻第一

    ○辻(第)委員 そういうことではなしに、いまお尋ねをしたのは、先ほど来の国保の負担金の問題、児童手当の問題あるいは補助金のかさ上げを引き下げる問題、こういうことが実際にやられれば地方自治体としてこの財政危機の中で耐えられるのか、そして事業が実際にやり切れるのかどうか、その点についてでございます。
  212. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 その点の懸念も私は持っておりますので、これを現実的な施策といたします場合には、最小限度地方団体が活動し得るようなそういうものを確保して、地方自治体に非常な打撃を与えないように、そして地方自治体が活動力を失わないようにするという点について調整をとっていかなければならぬ、このように思っている次第でございます。
  213. 辻第一

    ○辻(第)委員 いま大臣はそのようなお話でしたが、先ほど局長さんはもっとはっきり物を申されたように思うのですが、その辺はどうなんでしょうか。
  214. 土屋佳照

    ○土屋説明員 大臣からもお答えを申し上げたとおりでございますが、地方財政の最近の状況を見ると、毎年大幅な収支不均衡を生じておると申しましても一応昭和五十四年度に比べると昭和五十五年度は半分ぐらいに財源不足も減り、そして五十六年度は一兆三百億ということでさらに五十五年度よりも減ってきておりまして、一応形の上では健全化が進んだように見えるわけでございますけれども、現実には御指摘のございましたように、普通会計だけでも本年度末で三十二兆円の地方債残高ということになりますし、また交付税特別会計における借り入れが八兆近くになるということでございますから、今後こういったものの返還にかなりな負担がかかってくるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、単にこの収支の不均衡を是正するというだけではなくて、いままでのこういった借金というものを返していく、そういう形で健全化を進めていくという責任を持っておるわけでございます。そういった意味でなかなか容易ではないわけでございます。しかも地方財政においてもやはり国と同じように、今後たとえば地方債の返還金が毎年六千億ないし七千億ぐらいふえていくだろうと思っております。今後それほど大きく地方債をふやさなくてもそういう形になっていくことが懸念されるわけでございます。交付税特別会計の返還金も今後六十五年度あたりをピークにかなりふえていくわけでございまして、決して容易ではないわけでございます。一今回の、来年度、五十七年度予算編成に向けて国も財政再建への一歩を進めようということでいろいろな努力がされると思いますが、それが地方への負担の転嫁という形で行われるということは私どもとしてはぜひとも避けてもらいたいと思っております。国、地方を通じての財政再建の方向へ進めるべきだと思っておる次第でございます。
  215. 辻第一

    ○辻(第)委員 先ほど来申し上げておる国保の負担金の問題、あるいは補助金のかさ上げの引き下げの問題、このようなものは本当に理に合わない、また事実にも本当に適さない問題であります。このようなものを許さないためにも一層の御努力をいただきたいということでございます。次に、大蔵省にお尋ねをいたします。  地域特例の見直し措置について官庁速報というのが出ておるわけでありますが、五十六年七月二十三日、御存じでしょうか。かなり具体的に「地域特例の見直し対象は三十一件 非公共、起債利子補給も 大蔵省、二千億円節減へ方針」というようなところ、それからさらには「地域立法等による補助率カサ上げ等の見直しについて(五十六年七月 大蔵省)」こういうようなものが出ているわけでありますが、この中に三分の一カットというようなことも書かれております。どのような特例についてどのような見直しを行おうとされているのか、お尋ねをいたします。
  216. 公文宏

    ○公文説明員 お尋ねの地域特例の問題でございますけれども、御承知のように、臨時行政調査会の答申は、「補助負担率の地域特例については、終期到来時には廃止を含め抜本的な見直しを行うとともに、財政再建期間中現行の嵩上げ率を引き下げる。」という答申が出ております。これに対しまして政府としては七月十七日、「第一次答申を最大限に尊重し、速やかに所要の施策を実施に移すものとする。」という閣議決定を行っておりまして、この答申の具体化についていま具体的な検討に入っておるということでございます。  いま具体的な新聞報道についてお示しの上で御指摘があったわけでございますけれども、かさ上げ率の引き下げをどの程度に行うかということについてはいろいろな議論があると思います。先ほどから先生の御議論を伺っておりましても、やはりその地方財政との関係が非常に大きな問題であろうということもございます。そういうこともございますので、たとえば三分の一という考え方もあるかもしれませんけれども大蔵省としていま三分の一でやりたいというふうに方針を決定しているわけではございません。関係省庁たくさんございます。今後そういうところと十分相談しながら考えていく、その一端を担っていくという考え方で進んでいくのではないかというふうに思っております。
  217. 辻第一

    ○辻(第)委員 どのような特例についてどのような見直しを行おうとしているのかということで、もう少し具体的なものがないわけですか。ここに出ておるのは官庁速報というのですが、これは大蔵省のいまお考えになっておることとかなり近いのでもないのでしょうか。
  218. 公文宏

    ○公文説明員 お尋ねの地域特例の見直しについては、まずどういう範囲で、しかもどの程度やるかということにつきましてはさまざまなお考え方があろうと思います。そこで政府部内でも、もちろん財政当局だけの見地でこれを決められるわけではございません。各省庁、法律を持っておる省庁あるいは地域の利害を代表しておられる省庁、そういうところと十分相談しながらやっていくということでございまして、財政当局としてたとえば地域特例の法律の範囲をこの程度に考えるとか、あるいはかさ上げ率をこれでぜひやりたいというようなところまで具体的に考えているわけではございません。
  219. 辻第一

    ○辻(第)委員 まだ具体的に考えていないというようなことですが、そんなことで事が進むのかどうか。私は、見直しを本当に検討する以上は、その制度の趣旨だとかあるいは背景、それから見直しによって生まれる事業量あるいは各計画の進捗の状態、その見通し、それから国との調整の終わった各事業計画やあるいは地方の負担能力、こういうふうにいろいろと総合的な検討が必要だというふうに思うわけでありますが、そのような総合的な検討を鋭意やっておられるというふうに理解してよろしいですか。
  220. 公文宏

    ○公文説明員 地域特例の問題の最大のポイントは地方負担に関連する問題であろうと思います。そういう意味におきましては、これは幅広く考えていかなければいけない問題であろうというふうに思っているわけでございます。先ほども申しましたように、これは関係する官庁は非常に多岐に上っておりまして、そういう省庁と十分話をしながら今後詰めていかなければいけないということで、先ほどの繰り返しになりますけれども、私どもはそういう考え方で、財政当局としても政府の臨時行政調査会答申最大限尊重という方針のもとに協力してまいりたいということでございまして、具体的にいまの段階で申し上げられるほどコンクリートな方針が決まっておるわけではございません。
  221. 辻第一

    ○辻(第)委員 そういうことですと、関係省庁などと十分な意見を交わしつつ、総合的に御検討されているという状況だと思います。そういうことは非常に結構なのですが、そうなりますと、これまで総理が言われておった補助金の一律カットというような方向考え方というものが理に合わない、現実に合わないということが明らかになったのではないかというふうに思うわけでございます。  次に、国土庁にお尋ねをいたします。  過疎だとか、山村、離島、国土庁はこういうところに関連をしていただいているわけでありますが、それぞれの制度はそれぞれの目的があり、大変な必要性があってつくられたということは言うまでもないと思います。私ども奈良県では、過疎ということが非常に問題であります。この過疎については、その対策の必要性から旧法の全面改正をして、新過疎法が全会一致でつくられたということであります。いま過疎の問題は非常に深刻な状況をまだ持っているわけであります。このような状況の中で、現在施策を見直して上乗せをカットできるような状況へと変化したのかどうか、その点について国土庁はどのようにお考えになっているのか、お尋ねします。
  222. 相馬実

    ○相馬説明員 ただいま御指摘のありましたとおり、現在の過疎地域振興特別措置法は、昭和四十五年に時限立法されました旧過疎法の期限切れに当たりまして、旧過疎法時代に講じられました各種過疎対策等によりまして過疎地域におきましてかつてのような急激な人口流出は減少いたしましたものの依然として人口減少が続いておるということ、それから若年層を中心といたしましたかつての急激な人口減少の結果地域社会の機能が低下いたしまして生活水準及び生産機能が依然低位にあることなどを踏まえまして、新たに十年間の時限立法として昨年制定されたところでございます。  御案内のように、過疎地域振興特別措置法におきましては、旧過疎法に引き続きまして基幹道路等、あるいは統合学校施設、保育所、消防施設等、過疎地域におきます最も根幹的な過疎対策事業につきまして補助率のかさ上げ等の措置を講じておりますが、財政力が特に乏しい過疎市町村等におけるこれらの事情を考慮した場合、こうした地域特例の基本的な仕組みにつきましては従来どおり維持されることが適当であると考えておるわけでございます。したがいまして、地域特例の取り扱いにつきましては、こうした過疎地域の実情、それから地域に及ぼす影響、法律制定の経緯等を踏まえまして慎重に対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  223. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、いま過疎の問題を中心に言いましたが、離島の問題あるいは山村の問題、大変な状況にあると思います。ですから、そこではとてもカットをしてやっていけるという状況ではないと思いますが、その点簡単にお答えをいただきたいと思います。
  224. 相馬実

    ○相馬説明員 いまお尋ねのありましたように、過疎地域以外の離島とか山村等につきましても、それぞれ国土の均衡ある発展と地域格差の是正を図るため、それぞれの地域の特殊事情等を考慮いたしまして地域特例が定められておりまして、これらの特例措置によりまして地域振興が相当図られてきたところでございますが、いずれにいたしましても、現時点におきます地域特例の見直しにつきましては、これらの地域あるいはこれらの地域における地方公共団体に対しまして大きな影響を及ぼすおそれがございますので、行政改革の推進と、こうした特例措置を必要とする地域の実態等を十分勘案いたしまして、慎重に検討を進めてまいる考えでございます。
  225. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、自治省にお尋ねをいたします。  やはりかさ上げの見直しに関してですが、後進地域の特例やあるいは消防施設強化法、このような問題でのカット、これについてはどのようにお考えになっているのか。
  226. 土屋佳照

    ○土屋説明員 後進地域の特例についてもそうでございますが、こういった地域特例を受けておりますところはすべて市町村が貧弱団体でございます。財政的に大変弱いところでございますので、これがカットされるということになりますと、財源確保ができませんので、それだけ仕事の確保がむずかしくなるということになります。そうなりますと全般的に地域経済へも影響するということになりますので、その点については十分配意して対処すべき問題だと思っております。
  227. 石見隆三

    ○石見説明員 消防施設補助金の地域特例につきましては、御案内のとおり、一般的に財政力が貧弱だと考えられます過疎地域、あるいはまた離島地域、さらにはまた防災上消防施設の緊急な整備が要請されております地震対策強化地域等につきまして適用いたしてまいったわけでございます。このような特例措置は、それぞれの地域におきまして関係地方団体の財政負担を軽減することによりまして、かなりの施設整備の促進に役立ってきた、あるいはまたそれはそれなりの効果を発揮してきたものというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。したがいまして、このような地域特例措置をカットするという構想につきましては、私どもといたしましては、いま申し上げましたような従来の効果等にもかんがみまして、基本的にはこのような制度は、仕組みは残していただきたいという気持ちは持っておるわけでございますけれども、他のもろもろの事業に対します特例措置の取り扱い等々も見ながら、慎重に対処していかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  228. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、沖繩開発庁にお尋ねをいたします。  沖繩振興開発特別措置法、これも地域特例の中に入れられているというような状況だと思いますが、もしこの見直しがやられるということになれば、私は大変な問題だというふうに思うのですが、沖繩開発庁のお考えはどうでしょうか。
  229. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答えいたします。  沖繩は、御案内のように、本土復帰以来まだ九年ということでございまして、所得であるとかあるいは失業率であるとか、経済社会、非常に厳しい状況にまだあるわけでございます。一方、社会資本につきましても整備は九年前から始まったばかりであるということで、本土との間にまだ格差があるということでございます。また、一方では先生御案内のとおり、県、市町村の財政と申しますのは非常に脆弱でございまして、財政力指数でいいますと、おのおの本土と比べまして約半分ぐらいしかないという状況にございますので、これら特殊事情を踏まえて、今後とも引き続き特別の財政措置というものを構じて振興開発を図っていかなければならない、こう存じ上げておりますので、今後とも関係方面の御理解を得るように精いっぱい努力してまいりたい、こういう考えでおります。
  230. 辻第一

    ○辻(第)委員 いまいろいろお聞きをいたしましたが、それぞれ本当のところは大変な状態にあるというのが現状であろうと思います。とてもカットができる、カットをされてもやっていけるという状況ではないというふうに私は認識をしているわけでございます。  このかさ上げのカットの問題や、あるいは国保の国庫負担の地方自治体への移しかえしというような問題、このいずれをとってみましても、本当に理に合わない、実態に合わない、そのような問題だ。どうしてもここで自治省としては、地方自治を守る、本当に住民の生活や福祉や教育を守る、そういう立場からも、何としてでもこのような不当な試みを許さないということで御奮闘いただきたいということを強く申し上げて、私の質問を終わります。
  231. 國場幸昌

  232. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 ことしは国際障害者年ということで、内閣総理大臣が本部長となられてその目的達成のため努力されているようでありますけれども自治省としてはこれにどのように対応されているのか御説明ください。
  233. 大嶋孝

    ○大嶋説明員 自治省としてというお話でございますが、地方自治体の指導という立場から私、お答え申し上げたいと思います。  自治省といたしましては、これまで地方公共団体に対しまして、通達あるいは会議等を通じまして、身体障害者雇用促進法の趣旨にのっとりまして、その法律に定める基準を達成するように、また身体障害者に適した職域の開発の研究に積極的に取り組むよう指導してきたところでございます。今後とも、この問題を所管いたしております労働省と協議いたしながら、法律で定められております身体障害者の雇用基準を達成するようにその指導に努めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  234. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 せっかくの障害年で総理大臣が本部長でがんばっておられるわけですから、身体障害者の自治体への雇用促進というほかにも、地方の市町村なんかも障害福祉都市の指定を受けたり、そういう関係もあるわけで、積極的に進めていただきたいと思うわけなんですけれども自治省では、身体障害者の雇用率が達成されている自治体はどのくらいあるかとか、新規に採用された人がどのくらいいるかとか、そういった自治体の数字は把握しておられるのですか。
  235. 大嶋孝

    ○大嶋説明員 地方公共団体におきます身体障害者の雇用状況について申し上げます。  五十五年六月一日現在の労働省の調査によりますと、総体といたしまして、雇用率一・八%というのが適用されております現業的機関では、都道府県の機関、それから市町村の機関ともに基準を達成しておるところでございます。  なお、雇用率一・九%というのが適用されております非現業的機関で申し上げますと、市町村の機関は基準を達成しておるのに対しまして、都道府県の機関では一・五三%ということで基準に達していない状況でございます。  このように、都道府県の非現業的機関で基準に達しておりませんのは、中身で申し上げますと、知事部局の方でとってまいりますと二%程度でございまして基準を達成いたしておるわけでございますが、教育委員会で基準を相当に下回っておる、このような事情によるものであるというふうに聞いております。  なお、新規採用の状況については、いま的確な資料をここにお持ちしておりませんので……。
  236. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 私が聞いた範囲では、自治体の中で実際にその雇用率を達成しているのは半分ぐらいじゃないかというようなことも聞いておりますし、また一・九%、一・八%と言いましても、小数点以下は切り捨てられているわけで、百人職員がいるような職場でも一人いればそれで達成された、そういうような現実になっているわけですので、せっかく障害者年と言ってこうやっているわけでして、役場とか市役所、県庁というものはある意味で地方の中心ともなっているような実情でして、そういうところで障害者の方が働かれるということは、世間一般の障害者に対する認識を高めていくのじゃないか、かようにも考えられるわけです。さらにまた、現に在職されている方が交通事故などで障害者になられたのも一人に数えられているというようなことで、本当に新規に採用されるというのはまれなくらいにしかないというふうに考えられるわけであります。それで、今後より一層積極的に障害者の雇用というようなことも検討してみていただきたい、かようにお願いをしておきます。  次に、地方団体の財政が容易でないということは先ほど来お話があったわけでありますけれども、実際地方の町村に行ってみますと、人口一万人にも満たないような村なんかが、五億円、六億円もかかるような御殿、殿堂のような役場を建設しているわけであります。役場の建築コンクールのような感じがすることもあるわけなんですけれども、一方、公立大学の付属病院なんかに行ってみますと、待合室なんかは通風も悪くて、この暑いさなか、患者さんなんか汗だくで顔を真っ赤にして、よけい病気がひどくなるのじゃないか、こんな心配が起こるような病院があったり、また、その病室にしても、狭い部屋に六人くらいが入っていて、付き添いの人はベッドの下で休んでいる、こんなようなありさまもあるわけです。確かにそれぞれ別な団体なんでしょうからそれぞれの自由なのかもしれませんけれども、こういうアンバランスを解決するために何か手段を講じていらっしゃるならば御説明いただきたいと思います。
  237. 土屋佳照

    ○土屋説明員 公共団体がいろいろな施設をつくります際は、そのときどきの状態を全般的に配慮してつくるわけでございます。たとえば庁舎などと病院などとの施設の差などをいま御指摘いただいたわけでございますが、確かにそのようなこともあろうかと思います。しかし、どうしても老朽した役場を建てかえるという際には、何十年に一回しかつくらないわけでございますから、いろいろと考えてつくる。それが結果として見れば近代的なものになりますのできわめてぜいたくなものに映る。一方、古い病院等についてはいろいろ御指摘のあったようなことも事実あるとしますれば、そこにおける格差というものが非常に目立つだろうという気はするのでございます。ただ、いま申し上げましたように、病院等については、それがたとえ仮に公立のもの、公営のものであるといたしますと、公営病院としての、公営企業としての立場でいろいろ経営をしておるということから古い建物でがまんしておるというようなこともあるのだろうと思います。それはそれぞれの団体によっていろいろと事情が違うと思いますので、いまおっしゃいますように、それを全部バランスをとってどうするという計画的なことはなかなかできにくいと思うのでございますけれども、現実問題としては、おっしゃいますように、いわば非常に社会的に恵まれない立場におるような方々のための施設というものについては十分配慮していくべきであるし、そういった社会一般の世間の人が見た場合にそのバランスが余りにもおかしいということがあってはならないと思うのでございますが、ただ、いま個々のものについてそれぞれの立場でつくるものについて全般的にどうバランスをとっていったらいいかということになりますと、私どもとしてもにわかにそういったものについての結論は持っていないわけでございます。要は、当該地方団体が公的な施設をつくる際に、全般としてのそういう国民の考えというものも頭に置いて、十分総合的に配慮して建設等をされるということが望ましいというふうに考えております。
  238. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 地方の山村、農村地帯にりっぱな役場とか公民館——公民館なんかの場合、十数億の公民館なんというようなものもあるわけなんですけれども、こういったものは確かに、おっしゃったように、何十年に一回だからそれなりの価値はあるかもしれないのですけれども、そういうりっぱな建物がある一方、それを利用する人は、一時ほどの傾向はないにしてもやはりどんどん離村していく。将来は建物だけ残って、そこを利用する人が本当にごくわずかになってしまうのじゃないか。何かそういったものよりもっと別に、地域の人たちの所得の向上につながるとかあるいは就職の場を広めるとか、そういったやり方もあるのじゃないかと思いますので、ちょっと御質問してみたのです。  それから、公立の大学付属病院なんかにつきましては、いろいろ地方債の枠の拡大とか充当率の引き上げとか基準単価の引き上げ、そういったものが考えられるのじゃないかと思うのですけれども、そういった点についてはいかがでしょうか。
  239. 土屋佳照

    ○土屋説明員 確かにお示しのとおり、過疎地域等におけるいろいろな施策というものは、単に建物だけいいものをつくればいいというものではない、もっと住民がそこに住みつけるような多方面の施策を講じてやるべきであろうかと思います。御指摘のとおりだと思います。  それから後段の方の、公立病院等を設置いたします場合の単価等は、常に見直しをいたしまして現実に合うような方法で、起債その他等についても対応いたしておるつもりでございます。
  240. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 時間ですので、終わります。
  241. 國場幸昌

    國場委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十三分散会