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1981-04-07 第94回国会 衆議院 決算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月七日(火曜日)     午前十時二十八分開議 出席委員    委員長代理理事 森下 元晴君    理事 越智 通雄君 理事 東家 嘉幸君    理事 原田昇左右君 理事 井上 一成君    理事 新村 勝雄君 理事 春田 重昭君    理事 中野 寛成君       天野 光晴君    植竹 繁雄君       近藤 元次君    桜井  新君       竹下  登君    近岡理一郎君       田中 昭二君    和田 一仁君       岩佐 恵美君    辻  第一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 渡邊 伊助君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君  委員外出席者         臨時行政調査会         事務局総務課長 重富吉之助君         外務省北米局安         全保障課長   丹波  実君         大蔵省主計局司         計課長     岡崎  豊君         大蔵省主計局主         計企画官    藤原 和人君         運輸省海運局外         航課長     宮本 春樹君         運輸省航空局技         術部運航課長  石井 俊一君         会計検査院事務         総局第二局長  堤  一清君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 三月三十日  辞任         補欠選任   羽田  孜君     近藤 元次君 四月三日  辞任         補欠選任   和田 一仁君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   西田 八郎君     和田 一仁君 同月七日  辞任         補欠選任   辻  第一君     岩佐 恵美君 同日  辞任         補欠選任   岩佐 恵美君     辻  第一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十三年度政府関係機関決算書  昭和五十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十三年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管防衛庁)〕      ————◇—————
  2. 森下元晴

    森下委員長代理 これより会議を開きます。  昭和五十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管防衛庁について審査を行います。  まず、防衛庁長官から概要説明を求めます。大村防衛庁長官
  3. 大村襄治

    大村国務大臣 昭和五十三年度における防衛庁関係歳出決算についてその概要を御説明いたします。  まず、防衛本庁経費について御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は一兆七千八十八億九千八百万円余でありまして、これに行政情報処理調査研究のため、行政管理庁から移しかえを受けた額七百万円余、高空における放射能塵調査研究等のため、科学技術庁から移しかえを受けた額八百万円余、震災時における応急物資確保システム調査のため、国土庁から移しかえを受けた額二百万円余、科学的財務管理調査のため、大蔵省所管大蔵本省から移しかえを受けた額二百万円余、南極地域観測事業のため、文部省所管文部本省から移しかえを受けた額十一億九千七百万円余、前年度からの繰越額四十六億九百万円余を加え、既定予算不用等による予算補正修正減少額二百七十億六千七百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一兆六千八百七十六億五千八百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は一兆六千七百二十八億八千六百万円余、翌年度へ繰り越した額は三十九億三千六百万円余でありまして、差し引き不用額は百八億三千六百万円余であります。  昭和五十三年度予算執行に当たっては、防衛計画大綱に従って、計上された予算を効率的に使用して計画を着実に実施し、実質的な防衛力整備を進めることを主眼といたしました。  以下自衛隊別にその主な内容を申し上げます。  陸上自衛隊については、七四式戦車四十八両、七三式装甲車六両を取得し、新たに昭和五十四年度取得予定の七四式戦車四十八両、七三式装甲車六両の購入契約をいたしました。  また、航空機については、連絡偵察機一機、多用途ヘリコプター三機、輸送ヘリコプター一機合わせて五機を取得し、新たに昭和五十四年度以降取得予定連絡偵察機二機、多用途ヘリコプター二機、輸送ヘリコプター一機、対戦車ヘリコプター一機、観測ヘリコプター十機合わせて十六機の購入契約をいたしました。  海上自衛隊については、昭和四十八年度計画護衛艦一隻、昭和五十一年度計画中型掃海艇一隻、海洋観測艦一隻、補給艦一隻、昭和五十二年度計画支援船一隻、昭和五十三年度計画調達にかかる支援船四隻合わせて九隻を取得し、新たに昭和五十五年度以降に竣工予定護衛艦二隻、潜水艦一隻、中型掃海艇二隻合わせて五隻の建造契約をいたしました。  また、航空機については、対潜哨戒機六機、対潜飛行艇二機、対潜ヘリコプター六機、計器飛行練習機一機、練習機五機、救難ヘリコプター一機合わせて二十一機を取得し、新たに昭和五十四年度以降に取得予定の対潜哨戒機八機、救難飛行艇二機、対潜ヘリコプター四機、計器飛行練習機一機、練習機五機合わせて二十機の購入契約をいたしました。  航空自衛隊については、要撃戦闘機十二機、支援戦闘機八機、高等練習機十機、初等練習機十二機、救難ヘリコプター一機、飛行点検機一機合わせて四十四機を取得し、新たに昭和五十四年度以降取得予定要撃戦闘機二十三機、支援戦闘機十五機、高等練習機三機、初等練習機十四機、救難ヘリコプター一機合わせて五十六機の購入契約をいたしました。  昭和五十三年度防衛本庁職員定員は、自衛官二十六万七千八百五十三人、自衛官以外の職員二万四千二百十四人、計二十九万二千六十七人でありまして、これを前年度職員に比べますと、自衛官については同数であり、自衛官以外の職員において五十五人の増員となっております。  また、予備自衛官の員数は、前年度同数の三万九千六百人であります。  次に、繰越御三十九億三千六百万円余は、計画及び設計に関する諸条件等のため工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額百八億三千六百万円余は、油の購入単価予定を下回ったことにより、油購入費を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  続いて、防衛施設庁経費について御説明申し上げます。  当初の歳出予算額は一千八百四十六億二千九百万円余でありまして、これに前年度からの繰越額百十四億五千三百万円余を加え、既定予算節約等による予算補正修正減少額四億九千二百万円余、防衛施設周辺障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ六億八千四百万円余、建設省所管建設本省へ十一億六千六百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は一千九百三十七億三千九百万円余となります。  この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は一千八百十九億五千万円余、翌年度へ繰り越した額は百十一億二千九百万円余でありまして、差し引き不用額は六億五千九百万円余であります。  支出済み歳出額の主なものは、調達労務管理費につきましては、アメリカ合衆国軍隊等が使用する駐留軍従業員労務管理離職者対策福祉対策等に要した経費九十億円余、施設運営等関連諸費につきましては、防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律等に基づき、自衛隊施設及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定に基づく、提供施設維持運営等に関連し必要な土地の購入及び借り上げ、各種補償障害及び騒音の防止措置飛行場周辺安全措置民生安定施設助成措置等に要した経費一千三百九十一億九千六百万円余、提供施設移設整備費につきましては、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定による日米間の合意に基づき、現在提供中の施設及び区域の返還を受けるため、当該施設及び区域を集約移転するのに要した経費百六十六億八千七百万円余等であります。  昭和五十三年度防衛施設庁職員定員は三千五百三人でありまして、前年度に比べますと同数となっております。  次に、翌年度への繰越額百十一億二千九百万円余は、計画または設計に関する諸条件アメリカ合衆国軍隊等事情補償処理の困難及び用地の関係等のため、工事等が遅延したことによるものであります。  また、不用額六億五千九百万円余は、職員に欠員があったので、職員基本給を要することが少なかったこと等のため生じたものであります。  以上をもって、昭和五十三年度に、おける防衛庁関係歳出決算概要説明を終わります。  なお、予算執行については、諸法規を遵守することはもちろん、最も効果的に運用するよう戒め、また綱紀の粛正にも留意し、国民信頼にこたえるよう努力してまいったところでありますが、昭和五十三年度決算検査報告におきまして、防衛本庁架空名目による旅費等支払いジェットエンジン・テストスタンド調達及びレターファイル等購入について不当事項の指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。これについてはよく部内に徹底させ、将来このような過誤を繰り返すことのないよう適切な措置を講じますとともに、改善または検討を要するものについては、速やかにそのための諸施策を推進する所存であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 森下元晴

  5. 堤一清

    堤会計検査院説明員 昭和五十三年度防衛庁決算につきまして、検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、検査報告番号第四号から第六号までの三件であります。  検査報告番号第四号は、架空名目によって旅費等支払いを受けるなどし、これを別途に経理していたというものであります。  本件は、航空自衛隊第一補給処の一部局におきまして、昭和五十一年度から五十三年度まで三カ年度にわたり、出張や会議等の事実があったように装って旅費及び会議費合計二百三十万三千九百七円の支払いを受け、これに来処者贈与金等受入金百二十一万一千九百二十三円を合わせ、総額三百五十一万五千八百三十円を別途に経理いたしまして、部内でのまたは部外との会食等経費基地周辺各種行事に対する金品の贈与等に充てるなどして計三百二十万五千六百三十二円を使用し、五十四年五月に実施いたしました会計実地検査当時三十一万百九十八円を現金で保有していたものであります。  なお、本件架空名目によって支払われた旅費等の金額につきましては、五十四年六月に全額国庫に返納されております。  また、検査報告番号第五号は、ジェットエンジン・テストスタンド調達に当たり、部品の数量を誤って予定価格を過大に積算したため、契約額割り高になったというものであります。  本件は、調達実施本部が、航空幕僚監部調達要求によって昭和五十三年度航空自衛隊三沢基地のジェットエンジンニアストスタンドの製造及び据えつけを請け負わせておりますが、その予定価格積算に当たって参考とした製造業者提出見積書におきまして、テストスタンド計測制御装置の一部である振動計数量が誤っていたものをそのまま採用したため、積算が過大となり、ひいては契約価額が約二百五十万円割り高となったと認められたものであります。  また、検査報告番号第六号はレターファイル等購入価額が著しく高価となっているもので、これらの物品の不当な価格での売り込みに対して適切な処置を講じないままその購入を繰り返していたものであります。  以上簡単でございますが説明を終わります。
  6. 森下元晴

    森下委員長代理 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  7. 森下元晴

    森下委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  8. 井上一成

    井上(一)委員 私は、まず日米関係について防衛庁長官お尋ねをしたいと思います。  さきに外務大臣訪米をされて、レーガン大統領ヘイグ国務長官ワインバーガー国防長官との一連の会談をなされたわけでありますが、その報告防衛庁長官はどのように受けていらっしゃるか、まず聞いておきたいと思います。
  9. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  伊東外務大臣米国への訪問の結果の報告についてでございますが、閣議にも報告がございましたし、国会にも御報告があったわけでございますが、防衛庁関係につきまして承知しております点は、レーガン政権におきましても厳しい財政事情下にもかかわらず、最近の国際情勢に対応して、アメリカ自身も長期の財政計画を立てるとともに国防費の充実を期しておる、そういった関係もこれあり、自由主義諸国におきましても、それぞれの立場において努力をしてほしいという一般的な表明はございましたが、具体的にどうこうというお話はなかったというふうに聞いておる次第でございます。  以上をもって要点だけのお答えといたします。
  10. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカ世界情勢に対する認識については何か報告はありませんでしたでしょうか。
  11. 大村襄治

    大村国務大臣 世界情勢認識につきましては、伊東外務大臣国務長官等と会談されました場合にいろいろ先方からもお話があり、こちらからもお話を出されて、おおむね見解一致したように承っております。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 基本的におおむね一致した、アメリカ国際情勢に対する認識とはどのよう認識なのでしょうか。
  13. 大村襄治

    大村国務大臣 お尋ねでございますが、国際情勢については、現下の厳しい国際環境の中にあって、わが国米国及び西欧諸国が互いに協調し、連帯を深めることが世界の平和のために肝要であるということについて認識一致を見た、その前にいろいろ述べておられるようでございますが、すでに訪米報告国会においてもなされておりますので、省略させていただきます。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、私は伊東外務大臣からあなたが聞かれたことをここで聞いているわけなのですよ。よろしいですか。それを聞かれたのですか。いま言われたことを伊東外務大臣があなたに言われたのですか。
  15. 大村襄治

    大村国務大臣 そのとおりであります。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、防衛庁長官国会終了訪米される予定になっていると言われているのですが、いつごろをめどになさっていらっしゃるのか、この点についても聞いておきたいと思います。
  17. 大村襄治

    大村国務大臣 私の訪米につきましては、まだ日程が決まっておりませんが、国会終了後しかるべき時期に訪米して、日米間で定期協議が毎年行われることになっておりますので、今回は日本から向こうへ行く番にもなっておりますので、先方の都合も聞いて日程を決めたい、かように考えております。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 訪米をされれば、もちろん防衛問題を話し合いをされるわけでありますけれども、ここで防衛庁長官基本的な認識を聞いておきたいと思います。
  19. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまわが国防衛基本認識についてのお尋ねというふうに承りましたので、その点についてお答えを申し上げます。  防衛庁といたしましては、国防基本方針にのっとり、近隣諸国との友好協力関係を確立して国際緊張の緩和を図る等の外交政策と、経済的、社会的発展を図るに必要な内政施策を講ずるとともに、「防衛計画大綱」に従い、わが国みずから適切な規模の防衛力を保有して、これを最も効率的に運用し得る体制整備し、さらに米国との安全保障体制を堅持してその信頼性維持及び円滑な運用体制整備に努めることによってすきのない防衛体制維持し、初めてわが国の平和と安全が保障されるものと考えております。  また、国の防衛は侵略に対する国民抵抗意思が旺盛で、国民支持協力がなければ成り立たないものであり、防衛について国民の広範な支持が得られるよう一層努力し、防衛基盤を強化してまいりたいと考えております。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、担当の人が書いたものを読んでそれが自分の基本的認識だというのは、どうもお答えとしてはお粗末だと私は思うのです。防衛庁長官としては、やはりみずからの哲学というのでしょうか、そういうものによって防衛という基本的認識を持っていただきたい。現在のアメリカレーガン大統領外交政策は、私ども受けとめる感覚としては、対ソ戦略を基礎としたいわゆる軍事優先外交である、こういうふうに受けとめるわけです。平和に徹するわが国防衛庁長官として、このよう外交政策に対してどのような感想を持っていらっしゃるのか、そういうことから防衛庁長官基本的認識とどうかみ合って、あるいはかみ合わないのかかみ合うのか、書かれたものを読むのではなく、もう少し基本的な長官防衛にかかわる認識を吐露していただかないと、これは質疑にはなりませんよ。長官から重ねて答弁を求めます。
  21. 大村襄治

    大村国務大臣 重ねてお答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、政府国防基本方針をすでに決定しておるわけでございますから、私といたしましても、これにのっとり、近隣諸国との友好協力関係を高める外交政策あるいは必要な内政政策、こういったものを講ずるとともに、「防衛計画大綱」に従ってわが国みずからの手による必要な防衛力整備を図る、と同時に、日米安保体制を堅持して、その信頼性の保持と円滑な運営体制維持する、これがやはりわが国防衛三つ基本方針でございますので、私としてはその基本方針にのっとって今後対米折衝にも臨むということは申し上げざるを得ないところでございます。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 レーガン政権は強いアメリカを夢見ているわけなんです。長官自身はこの強いアメリカの再構築をどう思うのか、あるいはこういう考え方に対して協力をしていくのかどうか、この点についてはいかがですか。
  23. 大村襄治

    大村国務大臣 レーガン政権がいろいろ新政策を発表している、中には国会に提出して、国会審議を始めている、受けているということは承知しているわけでございます。しかしながら、わが国といたしましては、先ほど申し上げました国防に関する三つ基本原則がありますので、米国米国として政策を提示し、決定をしていくことになると思うのでございますが、わが国はあくまで三つ基本原則にのっとって自主的に判断して今後米国との間の話し合いなり折衝に応ずることが基本的な構えであるということを申し上げているわけでございます。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 そのことが、わが国基本原則が強いアメリカを志向するレーガン政権政策にかみ合うのかあるいはかみ合わないのか。
  25. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど申し上げましたように、伊東外務大臣訪米におきましては、一般的な考え方はございましたが、まだ具体的な提案なり要望なりは防衛関係につきましては提示がございませんので、具体的な点を申し上げるのは差し控えたいと思うわけでございます。  先ほど申し上げました基本原則を踏まえながらわが国立場においてなすべきことをなしていく、なすべからざることはたとえ要請があってもお断りをすべきである。大変抽象的で恐縮でございますが、現在の時点におきましてはさように考えている次第でございます。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 長官、私は、わが国基本原則、そのことがアメリカレーガン政権の志向する強いアメリカにかみ合うのか合わないのか、どっちなんですかと聞いているのです。さらにあなたが答弁した、伊東外務大臣基本的な認識では一致した。これから何をするか、むしろ具体的なことについては、枠組みについては、わが日本の姿勢をアメリカは求めているわけなんです。どういうことを日本はできるのだ、こういうことでしょう。だから、まず強いアメリカを志向するレーガン政権に対してわが国基本的方針一致するのか、組み入れられていくのかどうか、このことについて答えがないじゃないですか。
  27. 大村襄治

    大村国務大臣 せっかくのお尋ねでございますが、レーガン政権政策につきましては、これはアメリカ人自身が決めることでございますので、その一々について私から見解を申し上げるのはいかがかと考えているわけでございます。ただ、外務大臣が渡米されまして先方責任者お話しになりまして、国際情勢について意見を交換しましたところ、基本的な線においては一致を見た、また、米側から日本に対しまして、そういった情勢でありますから。わが国あるいは西欧諸国が互いに協調して連帯を深めることが必要であるというお話につきましても認識一致を見た、こういう報告があるわけでございます。また、具体的な政策につきまして、これは防衛問題以外にもたくさんあるわけでございますので、いま私がこの段階でもって具体的に申し上げるのは差し控えたい、さように思うわけでございます。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 何を言っているのですか、あなた。やはりアメリカ基本的な政策というものは、わが国に大きく影響するのですよ。アメリカアメリカだというのは、そういう受けとめ方なんですか。どうなんですか。
  29. 大村襄治

    大村国務大臣 基本政策アメリカ自身が決めることでございます。わが国独立国でございますから、アメリカ基本政策に基づいていろいろわが方に今後お話があろうかと思います。それに対しましては、わが国としましてそれぞれについて態度を決めていかなければいかぬ、その場合には、先ほど繰り返し申し上げます基本の三原則はしっかり踏まえて臨まなければならない、それから見れば、もし万一合わない点があればそれはお断りする、そういうことになろうかと思うということを申し上げている次第でございます。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 長官アメリカ政策がやはりわが国とのかかわりで影響があるわけなんですね。それで私は、アメリカレーガン政権外交方針そのことについてあなたの感想なり、あるいはそれに対して協力するのかということを聞いているわけなんです。なかなか当を得た答えがないので、それじゃ強いアメリカなんというものはどういう方向を強いアメリカだとあなたは認識されるのですか。私は軍事力の増強を主とした取り組み、そしてそのことでの世界戦略、そういうのを基本に置いた政策がツーガンの志向する強いアメリカだ、こういうふうに受けとめて、それじゃだめだ、本当に強いアメリカとはそういう状態を宿さないという認識でこういう質問をしているのですが、防衛庁長官はどうなんですか。
  31. 大村襄治

    大村国務大臣 レーガン政権が強いアメリカということを標榜していることは私も承知しているわけでございますが、どういう点に重点があるかと言いますと、就任演説とかその他国務長官国防長官国会における演説等見ますると、一番の重点はやはり国民の力の復活と申しますか、活力の再現という点に最も重点が置かれているのではないか。そのための手段といたしましては、過大化している行政機構を再検討して縮減する、なるべく民間の活力を活用するような方向で経済政策等を進めていくということに最も重点が置かれているように私は拝見しているわけでございます。  国防問題につきましては、先ほど申し上げましたように、最近の国際情勢等をにらみまして中間的な財政計画を立案するとともに、それを土台として国防の充実を計画的に進めていくという点に特色があるのではないか、私はそういうふうに見ているわけでございます。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 強いアメリカは、では国防費の増額は要因にならない、こういうことでしょうか。そういう受けとめ方をなさっているのでしょうか。
  33. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  基本的には民力の活用ということを考えながら、それを土台として必要な国防力の充実を計画的に進めていくというのが新政権考え方ではないかというふうに私は受け取っているわけでございます。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 そのことに防衛庁長官はどうお考えを、あるいはそれに対してどう対応をされるのかとさっきから聞いているわけなんです。そういう考え方、いわゆる強いアメリカの裏づけに国防費の増額、増強、そういう政策に対して防衛庁長官はどうお考えなんでしょうか。これをさっきから聞いているのだけれども、一向に返事がないのです。
  35. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  いま国防力の増強についてお尋ねがございましたが、繰り返しまして恐縮でございますが、背景には民力の活用というあれがございまして、財政経済計画を立案、推進しながら、その土台に立って足りない国防力をこれから充実していこうという進め方ではないか、これはアメリカの国情からして出てきている一つのあれでございまして、わが国としてとやかく申し上げるのはいかがかと思うのでございますが、私個人としては、相当見識のある措置ではないか、しかし国会審議等もありますので、米国民自身がこういった新しい方向をどう受け取るのか、今後情勢を見守っていく必要がある、さように考えている次第であります。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 私の受けとめ方は、やはり対ソ戦略の一環としてどうしてもアメリカ軍事力を増強していく、そしてそのことで強いアメリカ世界に位置づけていきたい、私はレーガン大統領は大きなかけをしたと思うのですよ。レーガン政権が失敗したら一体どうなるのだ。防衛庁長官は敬意を表する、こういうことなんですが、もしこういう取り組みが失敗をした場合に受けるであろうわが国の影響、これをどう考えているのですか。
  37. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  まだ始まったばかりでございますので、将来の仮定の御質問に対しましてはお答えいたしかねるわけでございます。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 政治なんというものはもっともっと先を見通して対応していかなければいけないし、やはり予言、予見、そういうものが政治の中には大事だと思うのですよ。防衛庁長官は、レーガン政権が発足して間がないから後はどうなるかまだわからない、そんなことで日本防衛を論じられるとお考えですか。
  39. 大村襄治

    大村国務大臣 もとより長期的な展望を持って臨むことが必要でございますが、先ほども申し上げましたような段階でございますので、仮定の問題についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 私は、防衛庁所管のこの決算審議を通して、防衛庁長官から、本当に国民が納得する、そして一つの筋の通った答えがないことを非常に遺憾に思います。もう残念を通り越しますよ。  さらに私は、アメリカ軍事力の増強は、むしろ世界の願いである軍縮に背を向けている結果になるのではないだろうか。むしろ軍拡に走り出していく、そのような傾向に私は受けとめるわけなんです。  防衛庁長官は、軍事費増強、軍事優先、こういう政策に対して、私がいま申し上げた軍縮と軍拡、この観点からどういうふうにとらえていらっしゃるでしょうか。
  41. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま軍縮あるいは軍備の管理についてどういう考え方を持っているかというお尋ねでございます。  私は、最近における核兵器の非常な増大ということにつきましては、ほうっておいたのでは人類の破滅につながるものであると深く憂慮しているものでございます。そのためには関係国が等しく努力しなければならないわけでございますが、なかんずく、やはり核保有国が自制することが最も望ましい。そういう意味におきましては、最大の核保有国である米ソ両国が話し合いをして、できることならばこれ以上ふやさないようにする、そしてさらに減らしていくという努力をすることが最も望ましいと思うわけでございます。そして、それ以外の国々とも手を相携えてこの破滅的な核兵器の使用が行われないように、拡大が防げるようにしてほしいということを核兵器の問題については考えているわけでございます。しかしながら、こういった努力が実を結びますのには相当な時間が経過する必要があるとも思われますので、核兵器以外の通常兵器による侵略の脅威、そういったものにつきましては、はなはだ遺憾ではございますが、私は、現下の国際情勢下におきましては絶対起こらない、こういう保証はないと思うわけでございます。わが国といたしましては、平和憲法のもとでございますが自衛権は認められておると思いますので、自衛権に基づく必要最小限の備えは平生からしておかなければいけない、そしてまた、日米安保条約に基づく体制の円滑な運営、効率的な運営ということにつきましても配意していかなければならない、さように考えている次第でございます。
  42. 井上一成

    井上(一)委員 どうも一国の防衛庁長官としてのお答えにしては非常に認識が足りない面もあるということです。もう核兵器なんて、量の問題じゃないのですよ。質的な問題に入っているのですよ。にかかわらず、量的な削減というようなことで軍縮の認識をしていらっしゃる。非常に残念ですが、さらに私は防衛庁長官に、伊東外務大臣が二十四日、日米協会主催の夕食会で、西側は対ソ認識を共有し、団結すべきであると述べられたと報じられているのですが、防衛庁長官もそのとおりと思っていらっしゃるのでしょうか。この点について聞いておきます。
  43. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねの演説の内容は、私詳しく承知しておらないのでございますが、仮に団結という言葉を使われたといたしましても、帰朝報告にございます「わが国米国及び西欧諸国が互いに協調し、連帯を深めることが世界の平和のために肝要であることにつき認識一致をみた。」ということと同じことを言われたのではないかと私は理解いたしておるわけでございます。
  44. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカ対ソ戦略わが国の対ソ認識対ソ戦略とは同じなんでしょうか。
  45. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  アメリカアメリカ立場がございますので、アメリカ立場における対ソ認識わが国の対ソ認識とが全く同じであるとは考えておりません。しかしながら、現下の国際情勢下におきまして西欧なり日本なりがアメリカと協調して進めるということは必要だと私も考えております。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、全く同じでないとすれば、同じ部分と違った部分を教えてください。
  47. 大村襄治

    大村国務大臣 なかなかむずかしい御質問で、一つ一つこれから考えて申し上げるのも時間をとりますので……。私は、やはり立場が違うと思うのです。たとえば核を保有しているアメリカと非核三原則を国是の一つとしている日本、また、自衛力に基づく防衛力整備は進めなければいけないと思いますが、いわゆる集団防衛とか、そういった点は憲法上できないという日本立場からしますと、いろいろな問題で違いが出てくることはやむを得ない、さように考えている次第でございます。一つ一つ申し上げますと大変時間が長くなりますので……。
  48. 井上一成

    井上(一)委員 何を言っているのですか。答弁にならぬですよ。そんなことが答弁になりますか。
  49. 大村襄治

    大村国務大臣 私はまじめに答えたつもりでございますが、先生の御質問の趣旨があるいはちょっとはかりかねたかもしれませんので……。
  50. 井上一成

    井上(一)委員 私はあなた以上にまじめに質問をしているのですよ。まじめに答えなさい。それじゃ、わからなければもう一度私から質問しますが、いかがですか。
  51. 大村襄治

    大村国務大臣 できればそのようにお願いしたいと思います。
  52. 井上一成

    井上(一)委員 私は、アメリカの対ソ認識対ソ戦略日本の対ソ認識とは同じなのでしょうかと聞いたのです。そうしたら防衛庁長官は、同じ部分と違う部分があると、こういうことなんです。だから私が、それじゃ同じ部分はどこなんですかと、違う部分はどこなんですかと、こう聞いているのですよ。私は明快な質問だと思うのですよ。防衛庁長官、私の質問の趣旨がおわかりですか。それに答えてくださいと、こう言っているのです。
  53. 大村襄治

    大村国務大臣 私は先ほど、日米の置かれている立場が違うから、同じソ連に対する認識についてもおのずから違う部分があるということを申し上げたわけでございます。その部分についてどういうのがあるかという重ねてのお尋ねでございます。そこで、最近のアメリカの首脳者の各種の演説等を拝見しておりますと、やはり核兵器に対してはここ数年間ソ連の方が非常に伸びておってアメリカの方が足踏みをしている、このままほうっておきますと非常に均衡が損われるようになるおそれもあるのでそういった点につきましても整備を図らなければいけない、それから通常兵器の分野におきましても特にソ連の軍事力が海空の面で進んできておるので、そういった点も配意していろいろな対策を講じなければいかぬと、こういうふうなことを軍事関係については見解を表明しておるように私は受け取っているわけであります。それに対するわが国の対し方はどうかといいますと、先ほど言いましたように、非核三原則もあり、また憲法のあれもございますので、アメリカの対応するよう施策を同じようわが国に求められましても、そういった点につきましては対応できないと、こういう趣旨のことを申し上げているわけでございます。先生のお尋ねの趣旨にあるいは沿わないのかもしれませんが、私としてはそういうふうに考えて申し上げておるわけでございます。
  54. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官アメリカの置かれている立場日本立場わが国はいわゆる非核三原則を国是としている、アメリカは核保有国である、そういうことの違いを私は聞いているのじゃない。そんなことはもうみんなわかっているわけなんです。私の聞いているのは、対ソ認識対ソ戦略ですね、戦略という言葉がなにであれば、対ソ認識についてアメリカ日本とはどうなんだと、一緒なのか違うのかとこう言ったら、一緒の部分と違う部分とあると言われるから、一緒の部分はどういうところが一緒なんだと、違う部分はどこなんですかと、こう聞いているのですよ。それを答えてもらわないと、核の保有数量が云々だとか、そんなことを聞いているのじゃない。認識で一緒の部分と違う部分、それを答えてください。
  55. 大村襄治

    大村国務大臣 お尋ねの趣旨が頭の悪いせいか、よくはかりかねましたので大変おくれて失礼を申し上げたのでございますが、軍事能がこの点を尋ねているのではないという先生のお話でございますが、アメリカがソ連と今後いろいろ外交折衝をし、対策を進める場合の基礎になっておりますソ連の軍事力の状況については、私ども、そう変わりはない、さように思っているわけでございます。先生のお尋ねが、そういう点を聞いているのではないと言われますと、ちょっと場面が違うような気がしまして、部分と申されましても、やはりこれは立体的な問題だと思いますので、余り平面的に比較して違う違わないというのもちょっとお答えしにくいと思います。
  56. 井上一成

    井上(一)委員 対ソ認識で、核兵器の保有についてソ連の方が優位に立っているというところは、アメリカ日本も同じ認識をしている、こういうことですね。
  57. 大村襄治

    大村国務大臣 核戦力につきましては、数量の点、質の面、いろいろございます。総合しましてソ連がアメリカを追い抜いたとは判断するわけにはいかないと思います。肩を並べるか、それに近づきつつあるというのが現状ではないかと認識しておるわけでございます。質量を総合してのお話でございます。
  58. 井上一成

    井上(一)委員 そして、アメリカ日本と違った認識は、どういうところが違っているのですか。
  59. 大村襄治

    大村国務大臣 いま申された点につきましては、余り変わりはないと思います。
  60. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 申し上げます。  米ソ関係というのは長い歴史のある関係でございまして、特に第二次大戦後は、ユーラシア大陸の中央におりますソ連が東西に膨張する、それに対してアメリカ世界戦略といたしまして東西両面からこれを抑える、最近になりましては特にまた中近東に対する進出、これに対して南方から抑える、そういうグローバルな視点からとらえております。わが国といたしましては、これは専守防衛でございますので、どうしてもわが国周辺、極東のソ連についての認識ということを中心にしております。これはいずれも自由世界の共通利益というのがございまして、基本的な認識にそう変わるものがあるわけはございませんし、またソ連のグローバルな軍事力あるいは将来の展望その他につきましても、これはまたさして大きな変わりがあるわけはございません。  ただ、局地的に申せば、これはわが国の関心が特に極東地域に偏っているという点では、たとえば違うところがあると申しますと、これは軍事技術的になりますけれども、たとえば太平洋艦隊の数え方、これは日米それぞれが、わが海上自衛隊米国海軍におきまして伝統がございまして、伝統に沿った数え方をしておりまして、おのずから若干の物の見方は違ってまいります。それから、たとえば第七艦隊がインド洋に向かう、これは従来のわが方の考え方では、わが国周辺の軍事力が手薄になるということで、これはちょっとわが国としては不安に感じる問題がありますけれども、アメリカのグローバルな戦略から言えば、現在最も緊張が高いのは中東である、これはまた当然のことでございまして、わが国といたしましてもこの点は、昨年の防衛白書以来、これはわが国周辺の軍事バランスに影響を与えかねない、であるけれどもこれは理解できる措置である、また西欧及び日本にとっての石油輸送路を守るためには不可欠の措置であるという意味で、若干の感覚の違いは歩み寄りをいたしまして、お互いに調整をいたしまして、そして日米の共通の利益を図っていこう、こういう考え方でございます。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 それでは重ねてここで私は政府委員に尋ねます。  さっき私が防衛庁長官に質問をしたのですけれども、どうも防衛庁長官は私の質問に答えておらないわけです、まあお答えにはなったけれども中身において。それで私は、まず一点は、いま防衛庁米国対ソ戦略をどのよう認識していらっしゃるか。さらには、わが国の対ソ認識基本的に一致しているのかどうか、あるいは基本的な認識で違っているなら、それをどういう点でということは大まかな骨子だけで、対ソ戦略がこういう点で違っているのだ、非核三原則が国是であるということで、防衛庁長官は、わが国の対ソ認識は平和外交であるとも受け取れるよう認識なんですね。それならそれのようお答えをいただきたいし、ちょっとそういう点について補足的答弁を求めます。
  62. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 長官の御発言の補足的答弁になるわけでございますけれども、わが国は非核三原則を持っておりまして、たとえばソ連がSS20を配備する、これは極東だけでございませんでヨーロッパも配備しております。これに対してアメリカは、やはり世界的なバランスをとるために直ちに対応しなければならない。そのために、一昨年NATOの会議におきましてパーシングIIあるいはGLCM、これは地上発射の巡航ミサイルでございますけれども、そういうものをすぐ手配しなければならないという形でもって、ソ連のSS20の戦域核の脅威に対しまして直ちに対応するということになります。  ただ、わが国といたしましては、基本的認識につきましてはそう大差はないのでございますけれども、それに対してどうするかというよう政策論的な認識になってまいりますと、これは非核三原則があるわが国はおのずから違うことでございまして、これは長官がいま申されたとおりでございます。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官にさらに私はもう一点。世界戦略の中でアメリカは中国をどう認識しているのでしょうか。
  64. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  米国が中国、中華人民共和国をどう認識しているか、そういうお尋ねではないかと思うのでございますが……。
  65. 井上一成

    井上(一)委員 軽率ですよ、あなた。国会の中で中国というのは一国しかないのですよ、国会の中でというか世界で。国会の中での答弁で、いま何とおっしゃったのですか。もう一度おっしゃってごらん。
  66. 大村襄治

    大村国務大臣 中華人民共和国のことを念頭に置かれてお尋ねになったのではないかと思いますが、それでお答えをさせていただきたい、こう申したわけでございます。  だといたしますれば、アメリカは最近におきまして中国を友好国として友好関係を進めようとしているというふうに理解しております。
  67. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、一九八二年度アメリカ軍事情勢報告というのを読まれましたでしょうか。念のために私はちょっと読みますが、「中国は大量のソ連軍を中ソ国境に引きつけることで、おおむね東アジアおよびその他の地域における米国の権益に貢献しており、それゆえに米国は中国との安全保障関係を慎重に拡大するということの利点を追求し続けるべきである。」アメリカの軍事情勢報告の中にこういう認識があるのですよ。もちろん友好ということも何でございますけれども、こういう認識アメリカは中国に対する取り組みをしている、防衛庁長官はそう思われませんか。こういうアメリカ報告に対して、私は報告を読んだだけなので、それで防衛庁長官どうなんでしょうかということを聞いたわけなんですね。それが、友好関係ということだけだったので、これはいかがなんでしょうかということなんですが、いかがですか。
  68. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 御指摘の文書は、恐らく国防報告でなしに、ジョーンズ統合参謀総長の軍事体制報告だろうと思われます。確かに、そのような記述があったことは覚えておりますけれども、また中ソ対立以来、ソ連が中ソ国境に非常な大規模な兵力を配置している、これまた事実でございます。また、その事実に着目いたしまして、こういう形でもって極東の力関係に対して一つの要素となっているという事実を認めることは存じておりますけれども、政策論として今後ともそれを利用しようというようなことがはっきり書いてあるというふうには、私は理解しておりません。  それで、アメリカがいまやっておりますことは、中国と国交正常化をいたしまして以来、友好関係というものを強化していく、これによって米中というものの相互理解、協力関係を深めていく、これがおのずから世界の安定、国際平和に寄与する、それがアメリカ政策である、かように理解しております。
  69. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、いまジョーンズ統合参謀本部議長の報告書、さらには、後でお尋ねをしようと思ったのですが、ジョーンズ議長は、「米国の軍事的関心は「診察」から「治療のための処方」の段階にきていると総括し、ソ連の脅威への対処は「米国だけでは負担できないし、負担すべきでもない」として、集団的安全保障体制の確立のために同盟国が戦力を増強するよう求めている。」その一環としてのわが国防衛力増強が向こうの強い願いとなっているのではないだろうか。こたえる、こたえないという問題はこれからの議論の問題ですけれども、いわゆる背景というものがそういうことじゃないだろうか、こういうことも尋ねておきたいのです。  しかしその前段で、いま米中関係が参事官から答弁があったのです。それで私は、防衛庁長官、このことは、きょうの前段での私の質問については、やはり一つの政治家としての哲学なりあるいは日本防衛という問題についての議論に入っているので、できるだけ長官自身がみずからのお考えを答えの中で示してほしい、こういうふうに思うのです。  それで、さらにジョーンズ議長の報告書でこういうふうに書いてある、この認識はどうなんだ。正しくない、よくない、そういう認識で米中関係を持つべきでない、友好、親善第一義に取り組んでいかなければいけない、わが国は一体どうなんでしょうか。そしてわが国と、日中関係と米中関係とは、認識は同じなのか、異なるのか。わが国は、私の認識ではやはり友好第一義、隣国である中国に対しては、そういう立場で日中関係というものは認識し、存在している。強いて言えば、このジョーンズ議長の報告書にある認識は正しくないと長官がお考えであれば、そうおっしゃっていただいたらいいわけなんです。これはアメリカ認識ですから、私はわが国防衛庁長官認識だとは指摘をしてないわけなんです。いかがですか、防衛庁長官
  70. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまジョーンズ参謀総長の報告を引用されまして、アメリカの中国に対する認識わが国がどう見ているか、こういう趣旨のお尋ねでございます。アメリカの見方の一つの参考にはなると思うわけでございます。しかしながら、わが国はいかなる国とも平和、友好関係を進めるということを基本方針としているわけでございます。とりわけ中国とは、先般の協定の締結によりまして一段と友好関係を深めることにいたしておるわけでございますので、その線に沿って進めてまいるべきであると考えておるわけでございます。
  71. 井上一成

    井上(一)委員 参考になるって、何の参考になさるのですか。どういう参考になるのですか。
  72. 大村襄治

    大村国務大臣 アメリカの統合参謀総長がそういう意見を国会で出したということが一つの事実として参考になるということを申し上げたわけでございます。
  73. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官はそういう認識は好むのか好まないのか、どちらなんですか。
  74. 大村襄治

    大村国務大臣 繰り返して恐縮ですが、事実は事実として認めざるを得ないと思っております。
  75. 井上一成

    井上(一)委員 いや、何もあなたに認めるか認めないかといって聞いているのではないのですよ。そういう認識長官として好ましくないとか、やむを得ないとか、いろいろあるでしょう。そういう感想をぼくは聞いているのです。
  76. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  事実ですから、やむを得ないと考えております。
  77. 井上一成

    井上(一)委員 あなたの、私が申し上げたように友好を第一義とするわが国と中国との関係アメリカと中国はそういう認識でやむを得ない、もう全くこれは、いわばアメリカは中国に対しては世界戦略の一環としてかかわりを持っている部分がある、あるいはそれがどれだけのベースになっているかは別として、友好なんというのは半分しかないかもわからないし、あるいはもっと少ないかもわからないし、いわゆる対ソ戦略の一環として米中を位置づけているということの指摘を私は申し上げたのですよ。そういうことで、日米安保なんというものも、日本を守るのだ、あるいは日本防衛に寄与するのだというふうな形の中で言われておりますけれども、実は、ひょっとしたら、このようアメリカ対ソ戦略の一環として日中をとらえるならば、アメリカ世界戦略の一環として日本を位置づけているのではないか、その一つが日米安保じゃないかというようなことを私は指摘をしておきます。この点については、きょうは時間がありませんが、ともあれ、こういう日中と米中との関係の違った認識をきっちりととらえて、今後長官がその関係にどう対応していかるれかということについては、次の機会に質問を譲ります。  ここで長官、がらっと変わるようですけれども、この間、駐日ソ連大使のポリャンスキー氏が北海道の羅臼の町へ行ったわけです。そうしてそこで日ソ親善協会の会員証を配ったわけですね。この出来事、これも事実なんですが、これについての感想をひとつここで聞いておきましょう。
  78. 大村襄治

    大村国務大臣 詳しい内容をまだ承知しておりませんので、感想は差し控えさせていただきます。
  79. 井上一成

    井上(一)委員 詳しい内容はって、これはもう報道もされておりますし、そういう事実がはっきりしているのですよ。だからこの出来事に対して防衛庁長官の感想を聞きたいと思います。
  80. 大村襄治

    大村国務大臣 早速内容を検討させていただきたいと思います。
  81. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、私は報道記事をまた後で担当の方に渡しておきますから、よくお聞きになって、私の質問が終えるまでに感想を聞かせていただくということにしましょう。  それじゃ、また少し戻りまして、エネルギーの供給を共産圏に依存することは西側経済の安全保障を脆弱にする、そういう有力な意見がアメリカにあるわけです。私は、今度は防衛庁長官に、日本防衛庁長官としてひとつそのお考えを承っておきます。現在西欧八カ国とソ連とで商談をしているヤンブルグ・パイプラインに日本も参加しようとしているのです。防衛という面から防衛庁長官は、この種の経済協力というのでしょうか、商談というのでしょうか、取り組みというのでしょうか、そういうことに協力することはよいことだとお考えになるのか。防衛という見地から、よいかと言えば悪いかとなるのだけれども、よいと思われる、余り好まない、いや、もう全くそれはよくない、こういう三段階に分けたお答えのどれを選んでくれますか。
  82. 大村襄治

    大村国務大臣 お尋ねの問題がエネルギー問題に直接関係し、また安全保障の問題でも総合安全保障の観点から検討しなければいけない問題であり、防衛庁だけで決しかねる問題だと思うわけでございます。わが国防衛にしぼって申し上げますと、直接関係は余りないのではないかと思うわけでございますが、広い意味では関係がないわけではないと思いますので、広い立場において慎重に検討すべき問題である、さように理解いたしておるわけでございます。
  83. 井上一成

    井上(一)委員 慎重に検討したい、まあ真ん中ぐらいですね、私が言った。いま、レーガン政権になってから、海外経済援助についてアメリカは多国間援助をやめて二国間に切りかえていこう、そういう取り組みの姿勢が表明されているわけです。私は、アメリカアメリカ日本日本の自主的外交、平和外交を強く推し進めていくのだ、そういうことを考えたら、防衛庁長官定期協議もあるし、国会を終えた早い時点でアメリカに付かれる、わが国の対ソ認識防衛庁長官としてきっちりと腹に入れて独自に一回ソ連へ行って、日本防衛の見地から、ソ連に対してはこういう認識を持っておるのですというぐらいの強い決意を話される、そんな考えを持ってもいいのじゃないだろうかと思うのですけれども——後ろからメモが入ると、もう答えがそこに書いてある、こういうことなんです。私は、この問題は人の意思で左右するのではなく、長官自身で、そのことがわが国のソ連に対する取り組みをより明確にすることであり、友好に役立つのだというお考えに立って一度ソ連にでも行くぐらいの気はあるのだ、訪ソを独自でもやるのだというぐらいのお考えはあるのか、これはもう長いお答えは要りませんから、いや、もうそんなのは真っ平だというお考えなのか、どちらでしょうか。
  84. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  御質問が外交全般にまたがる問題でございます。また私は、日ソ間にはいろいろな未解決の問題もございますので、そういったものを含めて政府として統一した方針のもとに対ソ折衝をするのが最も好ましいのではないかと思うわけでございます。そういう意味で、せっかくのお尋ねでございますが、私が近いうちに出向いて防衛立場お話しするということは必ずしも適当ではないと考えております。
  85. 井上一成

    井上(一)委員 外交というのは統一した形が望ましい、これは当然でありますから。私の申し上げているのは、閣内において長官がそれぐらいの提案をして鈴木内閣がそういうことに踏み切れるのかどうか、あるいは内閣の中でそういう提案があなたとしてできるのかどうかを尋ねているのですけれども、いまの答えであなたの意はわかりました。  いろいろと一時間ばかりここで質疑をしてきたわけですけれども、防衛庁長官の答弁をずっと聞いてまいりますと、いまの答弁の中では、デタントという言葉はもう死語化している、そういうような印象を私は受けたわけです。西欧諸国、特に西ドイツ、フランスはデタントを求めて米国と違った対ソ外交を展開している。防衛庁長官は現在のこのデタントについてどう思うのか、ひとつここで聞いておきたい、こういうふうに思います。
  86. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  私は、デタントは死んだとは考えておりません。ただ、ソ連のアフガニスタン侵入以来、デタントの最も重要な基礎を成します米ソ間の信頼関係が揺らいできている、さよう認識しておるものでございます。
  87. 井上一成

    井上(一)委員 あなたの答弁からは、死語化しているという印象を私は強く受けた。それじゃ重ねて聞いてまいりましょう。アメリカのファルツグラフ博士、これはレーガンのブレーンですけれども、八〇年代は冷戦時代よりはるかに厳しい時代だととらえているのです。さらにヘイグ国務長官も、危険な時代だ、こういうふうにも言っているわけなんです。もっとはっきりと、つい先日、問題を出して注意処分を受けた竹田統合幕僚会議議長は、一九八〇年代半ばに戦争のおそれもある、こういう発言をしているわけなんです。この認識はどうなんですか。防衛庁長官はこの認識、いわゆる竹田前議長の認識、この認識について、それじゃ、防衛庁長官の考えを聞きましょう。
  88. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま内外の著名な人々の発言を引いてのお尋ねでございます。最後に竹田前統幕議長の発言についてもお触れになったわけでございますが、その前に、私はデタントというものは何もしないで実現しているものではないと認識しているものでございます。いろいろな努力があって平和というものは維持できるものである、さように考えておるものでございます。  そこで竹田前統幕議長の発言の趣旨も、このまま放置した場合には八〇年代の半ばに大きな戦争が起こる危険性があるのではないか、そういう意味を申されたと思うわけでございまして、そういう意味だとすれば、私の認識とそう大きくは食い違っていない。やはり相当いろいろな面の努力を重ねることによって戦争は回避できるものであり、またそうすべきものであると私は考えているわけでございます。
  89. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、竹田発言、一九八〇年代半ば戦争が起こり得る、そういう認識をあなたも持っていらっしゃる、こういうことですね。
  90. 大村襄治

    大村国務大臣 このまま放置した場合には大きい戦争が八〇年代の半ばに起こる危険性がある、そういう意味では、私も危険性なきにしもあらず、こういうふうに考えておるわけでございます。
  91. 井上一成

    井上(一)委員 このまま放置をすればそういう危険性がある、こういうことの認識だ、そういう認識に立って自衛力、自衛隊を整備よう、こういうことなんですか、あなたのお考えは。このまま放置をすればというのは、どういうことなんですか。  それじゃ、これから何をしてそれを食いとめようとなさるのですか。これは国民に対しても、このまま放置したら戦争が起こるのだ、その危険性があるのだ、だからどんどん防衛力をふやすのだ、防衛費を増額していくのだ、考え方によればこういうふうにも受けとめられますから、ここは大変なことだから一回しっかりと確かめておきましょう。危険性があるということがはっきりしました。そして前段で、このまま放置すればということもはっきりしました。それじゃ、まずそのために防衛費を増額していく、防衛力整備していくということなのか。そんなことをせずにもっともっと政治的な平和外交を進めることの方がより戦争からの危険を逃れることができるのだとおっしゃるのか、そこらをはっきりしましょう。もっと極端なことを言えば、それ以外にわが国はデタントを維持するために何ができるのだとお考えになっていらっしゃるのですか。防衛力の増強ですか。
  92. 大村襄治

    大村国務大臣 平和維持の努力はもちろん進めるべきであります。と同時に、憲法の許す範囲でわが国防衛力を進めることも必要であります。そのために「防衛計画大綱」の線に乗ってわが国防衛力を充実していく、と同時に日米安保条約の信頼関係の保持、効率的な運営にも力をいたさなければならない、さように考えておるわけでございます。
  93. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、戦争の危機を避けるためには防衛費の増強だ、憲法の許す範囲内で、こういうことですか。いまのお答えではそういうふうにとれるのですけれども、防衛費の増大、防衛力整備、そのことが戦争を避ける唯一の道だ、こういうことですか。
  94. 大村襄治

    大村国務大臣 冒頭のお尋ねに対してお断り申し上げましたとおり、わが国国防基本方針は、第一に外交であります。第二に憲法の許す範囲の防衛力の充実であります。第三に安保条約の効率的運営であります。三つの柱をそれぞれ進めなければわが国の安全は保障できない、さように考えております。
  95. 井上一成

    井上(一)委員 そのことはちゃんとわが国基本方針できっちり決まっているのです。私の言っているのは、さっき言ったように、竹田発言の戦争のおそれがあるということの認識に、長官はそのとおりだ、いまのままではという条件をつけられたものですから、いまのままではそういうおそれがある、こういうお答えがあったので、それじゃ、どうするのですか、どうしたらこれが食いとめられるのですかとぼくは聞いているわけです。そこであえて私の方から、防衛費の増額ですか、防衛力整備なんですか、そのことなんですかということを聞いて、そうだとおっしゃるのか、そうじゃないとおっしゃるのか、どっちなんですか。
  96. 大村襄治

    大村国務大臣 平和維持の努力を外交その他により継続することと並行して、憲法の許す範囲の防衛力を充実する、それが必要だということを繰り返し申し上げておるわけです。
  97. 井上一成

    井上(一)委員 平和維持の努力、そのこともちらと言われているわけなんです。そんなことは口先だけに聞こえますよ。いわゆる対ソ戦略というものから戦争の危機だということが常識的にとらえられているのです。そのソ連に対して防衛庁長官が、その危機を避けるためにでもひとつ乗り込んで平和交渉にでも入ろうかというぐらいの意気込みがあるのかと聞けば、それもない。そして一九八〇年代の半ばに戦争が起こるということについても、何かこのままでほっておいたら——これは国民に不安感を与えるだけの何ものでもないわけなんです。また、そんなことで、そのために防衛力云々ということのそこに視点を合わしてそういう認識防衛力整備していく、防衛費をふやしていく、全く間違った考えであるし、そんな考えはやはり間違いである、もっと緊張緩和に向けてわが国が何ができるのだと具体的に私は聞いているのです。何ができるのですか。防衛庁長官、あなた何ができるのですか。何ができると考えているのですか。
  98. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 竹田議長の発言でございますけれども、これはグローバルに物をとらえまして、八〇年代半ばごろには危機がくるということを言っているのだと思います。これは世界各国の軍事専門家の間でも共通しておりまして、平和というものは、これは善意で守られるのは最高でございますけれども、現実といたしましては、これは軍事バランスというものによって守られている、そういう面が非常に大きいわけでございます。軍事バランスというものは、これは軍事力の、ある比較均衡でございますけれども、それがある一定の場合は、それに伴いまして世界の平和の秩序ができている。それが急速に変わってまいりますと、非常に世界が不安定になってくる、戦争の危険が生じてくる、これは常識の問題でございます。  それで、平和を維持するためには、やはり軍事バランス、均衡というものをもう一度取り戻さなければいけない。これが国際平和に対する防衛の役割りでございます。他方、外交の役割りは、これはあくまでも平和的手段によって相互理解を深める、それからあるいは軍縮の努力をするという形でもってその世界平和を維持する。これは車の両輪でございまして、われわれは防衛庁におりますものでございますから、防衛面、軍事面から一体世界の平和をどうやって維持するか、そういう御質問になりますと、これはやはり軍事均衡という視点からとらえるのはわれわれの仕事でございますので、その面から見ますと、これはやはり自由世界というものが軍事的なバランスというものを回復しなければいけない。これは何も軍拡をしてということではございませんで、軍備の拡張がはなはだしかったのはむしろソ連でございまして、西側はむしろ軍備費を削減している間にソ連が非常に拡大した、それがしかも長期にわたって続いたということでバランスが崩れておりますので、これを回復する程度のことはどうしてもしないと世界の平和に悪影響がある、そういうふうに存じております。
  99. 井上一成

    井上(一)委員 岡崎参事官、ではぼくはちょっとあなたに尋ねましょう。  いま米ソの核兵器、軍事力のバランス、さっきは防衛庁長官からソ連よりもアメリカの方が質量ともに優位だというようお答えがあったのです、私の配慮では。あなたのいまのお考えからいけば、ぼくは防衛庁長官のそういう認識は少しずれていると思うのだけれども、しかし私は専門家でないし、わからないから……。軍事力のバランスということをいき言われたものですから、米ソの軍事力はいまどうなんですか。
  100. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 長官が言われましたのは、質量ともにソ連が近づきつつあるということを言われたのでございまして、これは現在アメリカでもどこでもほとんどもう認識一致しておりまして、いずれが明白に有利であるとも言えないような状態になってきたということが言われております。これはある面ではまだ少しぐらいの差はあるかもしれない、また選挙中の共和党のスローガンに言わせればもうなくなっている、しかし軍事力というものは、非常に僅少な差というものはいろいろなシナリオによりますものでございますから特別な意味はございませんで、いずれかが明確な優位に立っているとはもう言えなくなってしまった状況であるというあたりが一番客観的な判断ではないかと思います。  ただ、バランスと申し上げましたけれども、これは両方の力が全く同じになれば平和になる、そういう性質のものでもございません。バランスという言葉は同等という意味ではございませんで、むしろ比較考量という意味でございまして、ある一定の軍事力関係というものがございまして、それを中心にいたしましてその時点時点における国際の秩序であるとか平和というものが維持されておりまして、それが急速に変わりますと不安定になってくる、従来の力関係が大きく変わるということがいわゆるバランスが崩れるということでございまして、両方が全く同じであるから平和である、そういう理論はございません。
  101. 井上一成

    井上(一)委員 全くそうなんですよ。バランスというのはイコールだというふうにとらえるのは正しくないのですよ、それはイコールでなければいかぬ場合もあるでしょうけれども。  私はやはり政府での、防衛庁での統一した見解というものを求めなければいけないと思うのですが、近づきつつあるということは、やはりアメリカ優位だという認識の受けとめ方をしたわけなんです。もし私の受けとめ方が間違いであれば、あるいは答弁が間違いであれば、それはそれなりに正してもらわなければいけないわけですけれども。  そういう意味では、西側が常に優位であるということが東西関係のバランスを保つのだという認識なら、それで、私はそういうことなんだ、それがためにいわゆる防衛力、戦力を増大していかなければいけないんだという——それは私の考えじゃありません、私はそんな考えは持たないけれども、仮にあなた方の立場に立って私が論ずるなら、そのこともそれは一理かもわからないけれども、それじゃ、それに対して日本がどうしてそこへ組み入れられて戦力増強に、戦力をふやすためにかかわっていくのか。私はそうじゃないと思うのです。日本はあくまでもできない、そういう軍事力については、戦力についてはできっこないのだから、もっともっと経済的な面で、さっき言う、たとえば第三世界に対する経済援助の取り組み、あるいは軍事にかかわる経済援助は一切やらない、あるいは第三世界に対する信頼を深める、そのための援助はもっともっと推進していかなければいけない。これは防衛庁政府委員であればあなた方の立場ということになりますからいわゆる防衛庁の与えられたポジションの中での答弁、防衛庁長官は国務大臣でありますし内閣の一員でありますから、政府を代表する一員だから、防衛庁長官として、防衛の見地からも、さらにはわが国の将来にかけてもかくあるべきだという一つの信念がないといかぬ、そういうことなんです。だから非常にくどいようですけれども、いや、私はくどくないと思うのです。長官の答弁が当を得てないから、ひとつわが国は緊張緩和に向けて何ができるのか、そして具体的にどういうことをやろうとしているのか、こういうことを長官からもう一度答えてください。
  102. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど私は、米ソの軍事力の比較につきまして、質と量を総合して見た場合、肩を並べたかあるいは近づきつつあるというふうに申し上げたわけでございます。  それを申し上げました背景には、六〇年代までは、先生御承知のとおり、圧倒的な差があったわけでございます。ところが七〇年代に入りまして、急ピッチでソ連が核兵器も通常兵器も増大を図っておりまして、その間アメリカがどちらかといいますと停滞ぎみでございましたので格差が急速に狭まってきている、そういうことを念頭に置いて申し上げた次第でございます。したがいまして、これから先もアメリカが努力を怠るということになり、またソ連がこれまでと同じようなピッチでいけば、そう遠からぬ将来におきましてバランスが逆転してくる可能性もなきにしもあらずだ、私はさように考えているわけでございます。  そういった場合に、わが国防衛のために何をなすべきかというお尋ねでございます。繰り返して恐縮でございますが平和努力を交渉する、これは外交当局の仕事でございますが、国連の場を通じあるいはその他の場を通じてやはり核の軍縮なり核の管理なり、その他、軍備をこれ以上増大しないように米ソ両国がまず努力するように働きかけることが必要である、さように考えておるわけでございます。  その一方におきまして、わが国自身としてなすべきことがある、それは何か。これは繰り返して申し上げましたように、平和憲法のもとでございますが必要最小限の自衛の組織は持てるものと私ども解しております。その水準にまだ達しておりませんので、大綱の線を速やかに達成するようにできる限りの努力を傾注すべきである。また安保条約につきましても申し上げたとおりでございます。
  103. 井上一成

    井上(一)委員 どうも長官の答弁は私は納得がいきません。このことについては留保して、このこともまた私は次回に重ねて、予定されるならば二十日の委員会ででも聞きたいと思います。  防衛庁長官、やはり長官自身の取り組みという強い信念が全然出てませんし、あなたがコントロールされてリモコンで答弁しているようなことでは私はどうも納得がいきませんし、これ以上この問題については——物の考え方についてもっときっちりしたものを持って、そして具体的な取り組みの姿勢を示してほしい。納得はできませんが、時間がありませんから私は次に移ります。  防衛問題については、もう時間がありませんので次回に譲るとして、海上交通路についてここで尋ねておきます。  わが因の海上交通路の防衛目標範囲が過去何回となく国会で論議されたわけです。わが国周辺海域の地理的範囲としてなぜ防衛白書に記されていないのかということを私はまず聞いておきたいと思うのです。もし防衛白書に記されているというならば、何ページにどのように記されているか教えていただきたいと思います。
  104. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまの御質問は白書の関係でございますので、政府委員からお答えさしていただきます。  その前に、先ほどポリャンスキー大使が北海道の羅臼で文書を配ったという点のお尋ねがございまして、一応調査ができましたので、ちょっとお答えさしていただきます。  配られました文書の性格につきましては、まだ詳しい事実関係は確認されていないようでありますが、もしそれが新聞に報道されているように操業許可証のような性格を持つものでありますれば、そしてまたこれが領土抜きの日ソ友好というふうな考え方に基づくものであるとすれば、これは放置できないゆゆしい問題ではないか、私はそう考えております。
  105. 塩田章

    ○塩田政府委員 防衛白書に周辺海域のことが書いてあるかというお尋ねでございますが、五十五年度版には書いてございません。五十四年度以前の版について、いま手元にございませんので覚えておりませんが、周辺海域について特に書いたような記憶はございません。
  106. 井上一成

    井上(一)委員 なぜ記さなかったのか、なぜ書かなかったのか。国会で答弁をされておりますから、それはそれなりにわれわれとしては承知しているのですけれども、なぜ書かなかったのかということです。  それから、三月の十八日と二十八日ですか、報道されているわけなんですけれども、これは防衛庁が発表されたものですね、この「周辺海域の範囲 北緯20度線の前後 防衛庁設定」。
  107. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまのお尋ね、よく聞き取れませんでしたが、防衛庁の方で特に最近発表したことはございません。
  108. 井上一成

    井上(一)委員 十七日の記者会見で前田海上幕僚長は、防衛庁防衛責任分担の中でわが国周辺海域の地理的な範囲ということでいままで国会答弁で答弁をされてきたその範囲がこの部分だと、具体的に想定されているこの部分がこの範囲なんだということを明らかにしたという報道なんですけれども、これはいかがですか。
  109. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもは、わが国周辺海域数百海里、航路帯を設けます場合には約一千海里を守れることをめどにして防衛力整備を進めておるということはかねてから申し上げておるとおりでございますけれども、具体的にその区域を区切って防衛庁見解として申し上げたことはございません。海幕長の会見につきまして、どういう内容だったか詳しく承知しておりませんが、防衛庁としてはそういう海域を区切って申し上げたことはございません。
  110. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、これも私の質問が終えるまでに確認をしてください。  さらに、国会で周辺海域数百海里、さらには、航路帯の場合は一千海里が防衛対象の枠と説明してこられたわけです。これはアメリカに正式に伝えているのでしょうか。
  111. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、周辺数百海里、航路帯を設けた場合には約一千海里を防衛できることをめどに防衛力整備を図っておるということを申し上げましたが、このことは、現在日米でやっておりますガイドラインに基づく作戦計画の研究におきましても、周辺海域については日本海上自衛隊が主体となって防衛するというふうに表現してあります。その場合の周辺海域という概念の場合には、私どもが言っておりますわが国周辺数百海里、航路帯を設けた場合には約一千海里というようなことを含んだ表現として周辺海域というふうに表現をいたしております。
  112. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカには正式に伝えてあるわけなんですね。いつごろ伝えられたのか、そのことも聞いておきましょう。
  113. 塩田章

    ○塩田政府委員 特別に伝えるという行為をしたわけではございませんで、いま申し上げましたように、五十三年からあのガイドラインの作成をやったわけでございますけれども、その間にそういう話が出てまいりまして、いま申し上げたような表現になってあらわれておると、こういうことでございます。
  114. 井上一成

    井上(一)委員 五十三年十一月ですか、その策定されたガイドライン、それ以後に説明をされた、こういうことでしょうか。
  115. 塩田章

    ○塩田政府委員 その五十三年十一月のガイドラインができたときにはもう入っておるわけでございまして、そのガイドラインをつくるときの作業の中で出た、こういうことでございます。
  116. 井上一成

    井上(一)委員 いま私は三月十八日の海上幕僚長の報道を指摘しましたけれども、このことについて事実関係を調べてもらうわけなんですが、この、発表されたというか、示された、このことはアメリカ側に伝えているのかどうか、このことも尋ねておきたいと思うのです。だから、発表されたのかどうか、あるいはこういう説明があったのか。いや、なかったと言われるのならなにでございますけれども、一応記者会見でということになっていますし、ぼくはこれは正しい報道だと思っていますから、このことはアメリカに伝えられたのかどうか、このことも聞いておきます。  さらに、外務大臣訪米したときに、ワインバーガー国防長官から北西太平洋のグアム以西、フィリピン以北の海域を日本が分担してほしいと要請された、これはもうすでに明らかになっておるわけですね。このことは防衛庁長官外務大臣から報告を聞いていらっしゃるのでしょうね。
  117. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほども申し上げましたように、一般的な形での期待表明があったということを聞いておりまして、具体的な問題については特別な話はなかったというのが当初の報告でございましたが、その後の模様によりますと、いま言ったようお話があったようお話もございますが、防衛分担というような意味でのお話ではなかったというふうに承っておるのでございます。
  118. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘の海幕長の記事が出たことにつきましてアメリカ側に内容を話してあるかということでございますが、先ほども申し上げましたよう事情でございまして、わが方から何も発表もしておりませんし、アメリカに連絡したというようなことはございません。ただ、考えられますことは、記事が出ておりますから、記事はアメリカ側も読んだろうと思いますけれども、防衛庁から連絡したということはございません。
  119. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官、あなた何を言っているのですか。外務大臣は参議院で、誤解をされるといけないと思って、日本はそういうことはできないと拒否した、こういうふうに言っているのですよ。一般的なことで、いや、それは何か言うたような言わぬようなわからぬ、一体何なんですか、どっちなんですか。そういうことの報告を聞いていないのですか。
  120. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  その参議院の外務大臣の答弁の際、私は同席しておりましたので、外務大臣は、集団防衛ような意味であればそういったことはできないという趣旨でお話をされたというふうに私は聞いておりました。
  121. 井上一成

    井上(一)委員 どうもピンぼけというか、私はさっき、外務大臣からあなたは報告を聞きましたかといって聞いたのです。そうしたら、何かわかったようなわからぬよう答えが返ってきて、何を言っているのだ、参議院の委員会で外務大臣はこう言ったじゃないですかと言ったら、いまそのときには同席をしていた。私は、それ以前に、外務大臣が帰ってきたときに報告を聞いたでしょう、その報告の中にこれはあったでしょう、そのときにあなたはどう言ったのですか、こういうことなんです。
  122. 大村襄治

    大村国務大臣 最初の報告のときには、別にその関係はなかったのです。その後、国会で御質問がありまして、外務大臣が答弁されたのを同席して聞いておった、こういう経緯でございます。
  123. 井上一成

    井上(一)委員 それでは防衛庁長官、最初は外務大臣からは報告はなかったということですね。そうですね。これは防衛庁長官報告がないということは、またこれなりに問題があるでしょう。あなたは参議院でその質問の中で知ったのだ、こういうことですか。
  124. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねの部分につきましては、当初の報告にはなかったわけでございます。その後、参議院の質問に対して外務大臣が答弁されましたので承知したわけでございます。
  125. 井上一成

    井上(一)委員 もう一度念を押しておきますけれども、伊東外務大臣訪米したときに、グアム以西、フィリピン以北の海域を日本が分担してほしいという要請がされたということについて、防衛庁長官には報告がなかった、これは念のためにもう一度聞いておきますが、防衛庁長官にかわるべき、しかるべき人にも報告はなかったのですか。だれも聞いておらぬのですか。全くこれは知らなかった、こういうことに受けとめてよろしいですね。
  126. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛分損という意味の要請があったということは、最初の報告ではなかったわけでございます。以下は先ほど申し上げたとおりでございます。
  127. 井上一成

    井上(一)委員 私のさっきから何回も言っているのは、ワインバーガー国防長官から北西太平洋のグアム以西、フィリピン以北のこの海域を日本が分担してほしいという要請があったということなんですよ、このことなんですよ。このことの分担の話があったかどうか、これはなかったのですね。なかったならなかったでそれでいいのですよ。はっきり答えてください、全然なかったならなかったと。
  128. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま御指摘の、グアム以西、フィリピン以北について日本防衛分担をしてほしいという要請があったという御指摘でございますが、そういう要請がなかった、そういう分担をしてほしいという要請があったわけではないというふうに私どもは外務省から聞いております。  外務大臣が、誤解があるといけないから云々と言われましたのは、それはそのとおり聞いておりますけれども、それは分担をしてほしいという要請があったからしたのではなくて、ただ外務大臣の方から、誤解があるといけないから、それはできませんよということを私の方から言いましたというふうに、私どもは外務大臣国会の答弁等を通じて承っておるわけであります。
  129. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁長官外務大臣がそういうことはできませんよということを拒否してきた、こういうことを国会で答弁されているのです。これは正しいと思いますね。
  130. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  外務大臣は、できないこととできることがある、それでいま集団防衛にかかわるような、防衛分担の要請がそういう趣旨であるとすれば、これはできない方に属する、こういう見解を表明されたものと理解しております。
  131. 井上一成

    井上(一)委員 私は防衛庁長官の意思を尋ねているのですよ。外務大臣がそういうふうに拒否されてきたことは正しいですね、いかがですかと。
  132. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  いま私が申し上げましたように、できないもの、これは憲法上その他のわが国防衛基本原則から、できないものについてはできないと答え、集団防衛を意味するような分担の要請があるとすれば、それはできないというようお答えになったことは正しい、さように考えます。
  133. 井上一成

    井上(一)委員 その拒否をしたことは、いわゆる憲法上の制約でできないということなのですね。集団防衛という見地からという認識でしょうね。それだけの認識なんですか、あるいはそれ以外に——それだけなんだという認識ですか。
  134. 大村襄治

    大村国務大臣 集団防衛を意味するとすれば憲法上の理由でできない、さように考えています。
  135. 井上一成

    井上(一)委員 だから、私がいま指摘したグアム以西、フィリピン以北、いわゆる報道されるこの海域についての要請は、集団防衛になり、これは憲法上許されるわけはありませんし、そういうことでこの海域についての分担はできない、分担という言葉、それ自身が問題があるわけですけれども、そういうことに理解してよろしいですね。
  136. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  分担という言葉の意味が必ずしも明確でないわけですね。でありますから、グアム以西、フィリピン以北と申しましても、分担の仕方によっては憲法に触れてくる問題がある。わが国は自衛のために、単独自衛である分においては何ら憲法の問題は出てこないわけでございます。海面を限って、こちらは日本、こちらはアメリカ、そういうふうに割り振って守備範囲を決める、こういうことになりますと集団防衛に触れてくる、これは憲法に触れる、そういうふうに考えられますので、これは全く仮定の問題で、分担の意味がそうであるとすれば憲法に触れる、こういう趣旨で申し上げておりますし、外務大臣ができないことはできないと言われたのもそういう趣旨ではないかと私は理解しておるわけでございます。
  137. 井上一成

    井上(一)委員 いまの防衛庁長官の話では、分担ということでは拒否するけれども、いわゆるわが国独自の行動ということではあり得ることだ、こういうふうに私はいま受け取ったのですが、そうなんですか。
  138. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど政府委員答えましたように、わが国の海上警備の整備目標としましては、わが国から五百海里、航路帯を設ける場合にはおよそ千海里ということを防衛庁としては方針として決めているわけでございます。これをわが国の自衛のために。自衛隊が警備するということにつきましては、憲法に何ら触れるものではないというふうに考えておるわけでございます。
  139. 井上一成

    井上(一)委員 理事会の申し合わせもありますから、私は、残余の質問は次回に留保したいと思います。
  140. 森下元晴

    森下委員長代理 新村勝雄君。
  141. 新村勝雄

    ○新村委員 少し方向を変えて、防衛庁内の会計経理、そしてまたそれに関連をする内部監査の制度等について、ちょっと伺いたいのです。  会計検査院の報告によりますと、これは五十四年度決算検査報告の中にあるわけですが、その実態は五十三年度にかなり関係があるわけでありますのでお伺いしたいのですけれども、「本院において、昭和五十五年一月から五月までの間に航空自衛隊補給統制処ほか十二部隊等における物品の管理状況を検査したところ、次のとおり、物品報告書の記載内容が適切でないと認められる事態が見受けられた。」こういうことがあるわけです。そして「物品報告書に記載漏れとなっていたものが二百六十六品目、八百十八個百十億万余円あった。」ということであります。そして、「五十三年度の物品報告書の対象とすべき物品について再調査を行い、記載漏れとなっていることが判明した陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊、計九千八百四十六個千百五十二億円余の物品については、五十四年度の物品報告書における本年度の増の欄に、また、謀計上となっていることが判明した海上自衛隊千三百二十一個百二十一億円余の物品については、本年度の減の欄にそれぞれ記載してその誤びゅうを調整した。」こういう記載があるわけですね。  こういうように、これは物品の減失あるいは不正使用ということではないのですけれども、明らかにこれは管理上のミスであり、不適当な管理であると思うのですけれども、この事態を大臣はどうお考えですか。
  142. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  会計検査院から指摘のあったことは、私ども十分承知しているわけでございます。これに至る理由をいろいろ調査してみますると、防衛庁の物品が非常に種類も多く、多岐にわたるというような点もございますし、いろいろ分類の仕方につきましても事情はあったように承知しているわけでございますが、いずれにいたしましても、物品増減及び現在額の報告に際して記載の誤謬があったことはまことに遺憾であると考えております。今後こういうことが起こらないように、指導なり監督なりを厳正にしていかなければならない、さように考えている次第でございます。
  143. 新村勝雄

    ○新村委員 いかに複雑であっても、その数が多くても、これはちゃんと法令に定められておることでありますから、それを厳守をしていただかなければならないわけですね。     〔森下委員長代理退席、原田(昇)委員長代理着席〕 防衛庁では会計経理等の内部監査の制度、機構はどういうようになっているのか。物品の監査については毎年実施されているはずでありますけれども、どうなっているのか。実施されているとすれば、会計検査院から指摘されるまでもなく、事前に記載漏れ等が発見できたはずでありますけれども、それがどうなっているのか。監査を実施していないとすればその理由、及び今後の監査の充実に努むべきであると思いますけれども、そのお考えを伺います。
  144. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねの内部監査の機構並びに毎年の監査の実施状況につきましては、政府委員からお答えさせます。
  145. 吉野實

    ○吉野(實)政府委員 二点お尋ねと思います。一点は、内部監査の制度、機構はどうなっておるかというお話と、もう一つは、いま物品管理に関して会計検査院の指摘がありましたこととこの内部監査との関係はどうなっているのだ、こういう二点のお尋ねと存じます。  まず最初のところからお答えをいたしますが、防衛庁におきましては、内部監査制度は、会計経理についてその実態を把握して、適正かつ効率的に行うように是正指導、業務の改善に資する、こういうふうな目的のためにできておるものでございまして、機構といたしましては、防衛庁内局に監査課というのがあります。これに相当するようなものが各機関にあります。陸上幕僚監部に、海上幕僚監部に、航空幕僚監部に、それからまた各付属機関の会計課等に同じような組織がありまして、さらに各部隊におきましても監査課あるいは監査班を設置いたしておるわけであります。これらの監査機関は、防衛庁長官が毎年度示す当該年度の監査方針及び重点項目にのっとりまして、それぞれ監査の実施計画を立てて部隊や各機関の内部監査を実施しているところであります。  ところで、五十四年度のこの指摘されたような事項についての関係でございますけれども、物品の監査につきましては、通常年一回内部監査時にこれを実施しております。内部監査と申しますのは物品だけでございませんので、会計、予算執行に関する内部監査、これに伴うときに物品管理の監査をやる。それかもまたもう一つは、物品管理法に規定するいわゆる物品管理検査を定期的に年一回実施しております。さらにまた、物品管理官等が交代する場合には、その都度同じようなことを、これは若干粗いことになると思いますが、いたしておるところであります。  ちょっと長くなりますけれども、御指摘の、監査によって事前に記載漏れを発見できなかったかというその点でございますけれども、ちょっと言いわけがましくなりますが、各自衛隊の所有する物品が二百万品目に及んでおります。特に装備品の修理、交換用として装備品の構成品、部品類を多く保有しておりまして、これらが報告の対象となる機械器具に該当するか否かという判断が非常にむずかしい物が多いわけでございます。つまり物品増減報告をいたします対象は機械器具でございまして、その小さい構成部品は、これは別個でございまして、報告すべきものは機械器具というものに限られておりますので、その中に入るのか入らないのか、その判定にむずかしい問題があるということが一つ。     〔原田(昇)委員長代理退席、越智(通)委員長代理着席〕  それから、今度指摘をいただきました日米相互防衛援助協定に基づいて米国政府から無償で供与を受けておりますMAP物品につきましては、これは御指摘を受けました件数の三分の一を占めておるわけでございますけれども、これは返還条件づきの譲渡と解されているため、物品管理法にいうところの国が所有する物品と同等に取り扱わなくてもいいのではないか、つまり所有権は日本側にない、現に、使って要らなくなった物等はアメリカに返しておるということでございますので、そういう解釈ができるのではないかということで報告の中に載っけていなかった、こういうものでございます。  いずれにいたしましても、今回こういう御指摘をいただいて処置をいたしたわけでございますので、今後はこのようなことが生じないように、五十六年度の会計監査の方針の中で重点項目として掲げておりますし、われわれとしては十分気をつけて監査をしてまいりたい、こういうふうに思っておるところであります。
  146. 新村勝雄

    ○新村委員 この制度は、物品管理法の定めるところによって厳正な報告をして、そして大蔵大臣に送付をし、大蔵大臣はこの報告書に基づいて物品増減及び現在額総計算書を作成して、内閣がこれを国会報告する、こういうことになっているわけです。ところが、これが長期にわたって脱漏していたということです。その適用、記載をする必要がないのではないかというふうに考えておったというふうないまの御報告でありますけれども、これは大変ずさんなことであって、そういう解釈を間違うということはとんでもないことだと思うのです。会計検査院はどうですか。こういうあいまいな考えで執行されては非常に困ると思うのですけれども、会計検査院の所見をひとつ伺いたいと思います。
  147. 堤一清

    堤会計検査院説明員 ただいま先生御指摘のとおりだと思います。そういう点を踏まえて防衛庁におかれましても今後の物品の管理計算書、現在額計算書、そういったもののやり方をきちんとするような通達を出されているのだと思います。
  148. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしてかなり長期にわたって、しかも大量の脱漏があったということでありまして、これは一片の釈明では済まない問題ではないかと思うのですけれども、長官はこれに対してどうお考えであるのか、それからまた、これを取り扱った関係者に対しての責任の問題はどういう処理をされたのか、長官からひとつ。
  149. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、このような事態が生じましたことは私としましてもまことに遺憾に存じておるわけでございます。そこで、会計検査院から問題の指摘を受けました直後、防衛庁内部の報告書作成基準を定め、これに基づき五十四年度の物品増減及び現在額報告書から、従前報告対象としていなかったMAP物品等についても早速報告することにいたしたわけでございます。また、今後このような問題を起こさないようにするために、適正な報告書を作成するため統一的な報告書の作成基準を通達をもって示したわけでございます。これまでは各幕で多少まちまちであった、そういった点を改めるために統一的な報告書の作成基準を新たに定めまして、これを通達をもって示したわけでございます。また物品の保有状況の調査を一層厳格に実施することといたしました。以上のよう措置を踏まえて、誤りなきよう一層指導監督の徹底に努める所存でございます。  また、関係者の処分をどうしたかというお尋ねでございますが、先ほど来御説明しておりますとおり、いろいろ規定の不備等の事情もございまして、関係者の報告を怠ったという点は確かによろしくないわけでございますが、意図的に出たものではないということも明白でございます。また、物品の管理それ自体は適切に行われておった、いわば記帳、報告の漏れがあったということでございますので、処分自身は行わないことといたしておるわけでございます。しかしながら、いま申し上げましたように、基準を新たに定める、報告を励行する、漏れているものは直ちに追加させる等の措置を講じまして、今後こういった事態が発生しないように万全を期している次第でございます。
  150. 新村勝雄

    ○新村委員 いまのお話で、報告の対象としなかったものについてもこれからはするようにしたということでございますけれども、そうすると、してもしなくてもいいのだというような言い方ですね、これは。それでは大変不穏当だと思うのですよ。これは当然すべきものをあなたの方でしなかったわけですからね。それを、いままでしなかったものをするようにするというのでは、大臣、これは大変不謹慎な発言でしょう。
  151. 大村襄治

    大村国務大臣 ちょっと言葉が足りなくて失礼いたしました。やはり、すべきものをしてなかったのでありますから、直ちに基準を改めるし、御報告をするように命じた次第であります。今後もそういった点を怠らないように指導してまいりたいと考えておる次第でございます。
  152. 新村勝雄

    ○新村委員 やったことに悪意はないということでありますけれども、悪意のあるなしにかかわらず、間違ったことをしたことは間違ったことであって、これは動かすことのできない事実ですから、その点については十分反省をして、これから間違いのないようにお願いをしたい。特にこれは国民の貴重な財産ですからね、どんなに数が多いからあるいは種類が多いからといっても弁明になりませんから、その点はひとつ厳しく反省してもらいたいと思います。
  153. 大村襄治

    大村国務大臣 御指摘のとおり、悪いことは悪いことでありますので、十分反省をして誤りなきを期したい、そのように考えております。
  154. 新村勝雄

    ○新村委員 これは別のことになりますけれども、防衛大学校というものがあります。これは自衛隊の幹部を養成する学校でありますけれども、この防衛大学校の卒業者のうちで任官をしない者が毎年ふえておるようであります。特に、五十二年度入学ですから二十五期生ですね、ことしの卒業生は。二十五期生の場合には非任官者が四十二名。当初採用した数が四百九十五ですか、そのうちで四十二名が任官をしないということでありまして、約一割の者が、せっかく膨大な国費を投じて教育をされて、そして卒業したところが任官をしない、こういうことでありますけれども、これについて大臣はどうお考えですか。
  155. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  御指摘のように、最近防衛大学を卒業した者のうち任官をしない者の数がふえてきた、ことしの場合四十二名の多数に上ったということはきわめて遺憾なことであると考えているわけでございます。よって来る原因、事情等もいろいろ調査いたしているわけでございますが、四十三名のうち任官を拒否した理由が何であるかという点を調べてみますると、四年間在校中に健康を損ねて自衛官としての勤務にたえないという者が十名以上おります。また、家庭の事情でどうしても任官に服することができないという者も十名前後おったように記憶しておるわけでございます。そのほか、他の大学の大学院に進学したいという者も若干名おるのでございます。民間企業に就職するためというのは比較的少ないわけでございます。しかしながら、先生御指摘のとおり、四年間莫大な国費を投じて幹部自衛官として養成するための学校におった者が卒業と同時に任官しないという事柄自体好ましくないことは申すまでもないわけでございますし、その数がこれまでよりもかなりふえておるという点はきわめて遺憾であると思いますので、私といたしましては、入学時の心得、いままでもパンフレットを配ってこういう学校だということは十分知らせているつもりでございますが、必ずしも徹底していない面もございます。また、四年間の勉強に耐えるだけの健康診断の問題もさらに入念に行う必要があろうかと思います。また、入校時以降の教育のあり方につきましてもいろいろ工夫を講じまして、国費のむだ遣いというようなことは今後起こらないようにあらゆる工夫を講じていかなければならない、さように考えている次第でございます。
  156. 新村勝雄

    ○新村委員 表を見ますと、一期生はゼロ、二期生は一名任官をしなかった。そして三、四、五、六、七、これはゼロというように当初はほとんどいない、あるいは一名ぐらいであったわけですが、それが十八期生あたりから急速に漸増してきておるわけですね。それで二十五期生は四十二名ということでありまして、家庭の事情あるいは健康上の理由というのであれば、これはこういう傾向をとらなくてもいいのじゃないか。当初でもそういう事情はあったはずでありますから、何かそこにこういう傾向を裏づける事情なりあるいは教育方針なりあるいは情勢の変化なり、外部的な要因があるのかどうか。そこらの点についてはどう把握なさっていますか。
  157. 石崎昭

    ○石崎政府委員 御指摘の任官しない者が最近ふえている傾向を裏づける要素として考えられますのは、一つは、従来防衛大学校を卒業しましてさらにその先の陸海空の幹部候補生学校へ進学して、進学してからやめる人がかなりおりました。五十人、六十人というような単位でそういう人たちがかなりおりました。それが最近は防衛大学校を卒業する段階で自衛官に任官するかどうか意思の確認もしっかりやりますし、本人のやる気があるのかないのかも見定めるということをかっちりやるようになった。そういうことにしましたために、それから先の課程へ行ってやめる人が大変減ってきまして、そういう意味では、長い間を通して見ますと、防衛大学校を卒業した時点でやめる人が少なかったときに、そこから先へ行ってからやめる人が多かった。いまでは、そこから先に行ってからやめる人が減ったかわりに、出た段階でやめる人がふえたというようなことで、数字の動きで見ますとそう大きな波はないというのが私どもの感じでございます。それが一つの要素。  もう一つは、やはり現代の青年の背景にある社会の環境の変化というものがあるのではなかろうかと思います。私ども防衛庁は別に青年心理の解剖をすることを任としている役所ではありませんから、そういうことをコメントするのは適当かどうかわかりませんけれども、以前防衛大学校に入っていた卒業生たちのなまの感想などをいろいろ聞いてみますと、御指摘の最初のころは憲法違反の自衛隊だとか税金どろぼうとさげすまれて、なにくそというので歯を食いしばってがんばっておって、その結果がやめる人が少なかったというようなこともあるようでございます。最近はいわゆるクリスタル世代で何となくという傾向が青年たちの間にみなぎっている、そういうこともあるいは背景にあるのかもしれないと思います。
  158. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、世相も反映をしておる、最初は自衛隊が憲法違反ということで、かえってそれがつらいことにも耐えていく、それに反発してがんばっていったけれども、現在は自衛隊がもうそろそろ認知されかけてきたので気が緩んだ、こういうことですか。
  159. 石崎昭

    ○石崎政府委員 さっき申し上げましたのは、卒業生の率直な感想などを聞いてみた結果私がそういう印象を得たところでありまして、いま申し上げましたようなことが、任官をしない人の数の増減を決めるすべてであるとは私は考えておりません。
  160. 新村勝雄

    ○新村委員 これは学生のうちから給与を受けているわけですね。少ないでしょうけれども給料をもらって、ボーナスまでもらって、そして一人当たり投資、これは膨大なものでしょう。教育施設に対する投資あるいは教官の人件費等数えたら大変なものでしょうけれども、そして任官をしない。それこそいわゆる税金のむだ遣い、食い逃げというようなことがしきりこ言われていますね。そこら辺やはりけじめをつけなければ、食い逃げと言われますよ。ですから食い逃げ、こういう事態を起こさないためには、入校時における意思の確認であるとかあるいは防衛大学の性格をはっきり知らせるとか、そういったことの手落ちがあるのではないか。あるいはまた巨額の国費をもらったりあるいはかけてもらったりして任官をしないという場合には返還をしてもらうとか、そこらのけじめを何かつけないと、これは税金どろぼうというのは言葉がおかしいのですけれども、食い逃げと言われてもやむを得ないと思うのです。そこらどう考えますか、大臣。
  161. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど政府委員から、創設当時はほとんどいなかった任官拒否者が最近ふえてきたということの社会的背景等述べられたのでございます。私、防大できましてからの二十数年の歴史をずっと見てみますと、やはり最初は入校志願者、受験者も大変多いわけです。そして優秀な者が選抜されて入校した。どこの大学も創設当時は、一期、二期、三期なんというのは非常に優秀な者がそろっているというふうに承知しておるのですが、そういった背景があったのではないかと思うわけでございます。その後数年たちまして任官拒否者もふえるし、卒業をして候補生学校に行きましたら二日、三日でやめてしまう、これも余りよくないと思うのですが、これも並行してふえてきた。最近に、なりますと、卒業後やめてしまう、いわゆる任官拒否者がふえたかわりに、幹部候補生学校で、入ってからは余力落ちこぼれが少なくなった。これはいい傾向ではないかと思うわけでございます。しかし、両者を通じましてやはり落ちこぼれが出るということは、防衛大学という教育機関の本旨からしましてきわめて遺憾なことだと思います。御指摘のように毎月毎月相当な手当も支給してやっている学校でございます。ただし、起きてから寝るまでも規律は厳しい。教科課程等に従って厳しい練成をしておりますし、身分は特別職公務員でございますので、これは一般の大学とは性格が違う点はあろうかと思うわけでございます。  そこで、今後こういった落ちこぼれを防止するためにはどうしたらいいか。まず私は、運用の改善が必要だと思います。先ほど二、三の方法について申し上げたわけでございますが、運用の改善を現下の内外の情勢に照らし合わせまして極力図るということに大いに力を注いでまいりたいと考えているわけでございます。その上でどうしてもいかぬという場合に、制度の改正を加えるかどうか、その検討もあるいは必要になってくるかと思うのでございますが、制度の改正といいますと、防衛医大のように、すぐやめる人にかかったお金の相当部分を納めてもらう、こういう制度もございますし、また英仏等におきましては一定期間を義務づける、こういう制度もあるわけでございます。こういった厳しい制度を直ちに採用することがいいかどうか。余り厳しい制度を導入しますと入り口の窓口が狭められまして、広く人材を求めるという趣旨に必ずしもそぐわない面がありはしないか。また制約の仕方によりましては、いろいろな問題が出てまいります。人事管理上の一般的な問題と関連する問題も出てくるわけでございますので、民主主義諸国のこの種教育機関のあり方等をも十分調査し、わが国わが国としてとるべき方策につきましてこれから検討さしていただきたい、私はそういう気持ちでおるわけでございます。
  162. 新村勝雄

    ○新村委員 現状で、しかもこういう傾向が進んでまいりますと、納税者の感情からすると、どうしてもこれは食い逃げあるいは税金のむだ遣い、こういう印象を受けますので、ひとつ適当な処置をとってもらいたいと希望しておきます。
  163. 大村襄治

    大村国務大臣 御指摘の点を踏まえまして最善の措置を検討し、できるものから実行に移したい、さように考えているわけでございます。
  164. 新村勝雄

    ○新村委員 次には、防衛庁がかねてから研究を打っていると言われておる防衛研究、有事立法研究あるいは奇襲対処についての中間報告、こういったことの作業の状況はどうなっているのか伺います。
  165. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  まず、防衛研究につきましては、これは防衛庁内部のいろいろな場合を想定しての研究でございますが、一月末までに一応私の手元に報告されておるわけでございます。  それから、いま有事法制についてのお尋ねがございました。有事法制につきましては研究を続けているわけでございまして、何分対象が広いものですからなかなかまとまらないわけでございます。防衛庁が直接所管する法令の問題もございますし、あるいは他省庁にまたがる問題もあるわけでございます。さらにはどこに属するか所管のはっきりしない法令もあるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、防衛庁所管の法令について研究を取り急いでおりまして、一応取りまとめることができるのではないか、さように考えておりまして、まとまりましたものを今国会中に中間的な報告として報告させていただきたい、さように考えまして、いま鋭意検討、準備中のところでございます。  概況はいま申し上げたような状況でございます。
  166. 新村勝雄

    ○新村委員 そうすると、防衛研究については、すでに大臣のところに報告されておるということですね。そうしますと、できれば全文拝見できればいいのですけれども、それが無理だとすれば、その概要をひとつ伺いたい。  それから有事立法については、これは今国会報告をするということでありますけれども、現在の法体系を変える必要はないとわれわれは考えておりますが、長官としては現在の法体系をある程度変えるというお考えなんですか。それからもう一つは、奇襲対処についての中間報告、これもやはり似たようなものですけれども、これはやはり別の項目として検討されておるわけですか、伺います。
  167. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛研究につきましては、先ほども申し上げましたとおり、私の手元に報告されているわけでございます。  ただ、その内容につきましては、いわゆる手の内に該当する事項が多いわけでございますので詳細な御報告は差し控えさせていただきたいと思います。アウトラインにつきましては、後ほど政府委員から御説明させたいと存じます。それから有事法制の方でございますが、これは有事における法令の問題点についての研究でございます。でありますから、先ほど申し上げましたように、一部についてでございますが中間的に御報告は申し上げますが、研究の報告でございますので、法律改正をどうするか等につきましてはまた別途検討すべきものである。もともとスタートのときからそういう方針で進めておりますので、念のために申し上げておきます。
  168. 塩田章

    ○塩田政府委員 防衛研究につきまして、概要どういうことを研究したかということを御報告させていただきます。  もともとこの研究は、わが国の自衛隊が有事の場合にとるべき行動についての研究でございますが、項目といたしましては五つばかりございます。  順番に申し上げますと、第一は警戒態勢でございます。情勢の緊迫度に応じまして、それぞれの段階に応じて自衛隊がいかなる措置をとるべきかというようなことを研究したものでございます。  それから第二は防衛の準備態勢でございまして、これもわが国に対する武力攻撃が発生する可能性が認められるという事態におきまして、防衛出動が下令されましたら当然武力攻撃をもって対処するわけでございますが、その場合に防衛力を有効に発揮するためには事前にどういう準備をしておくべきかといったようなことを研究したわけでございます。  それから三番目に、三自衛隊の統合対処の構想につきまして、有機的、統合的に運用を図るための研究をしたわけであります。  それから四番目に、有事の際におきます防衛庁長官の指揮命令に関します統合幕僚会議議長の補佐及び各幕僚長の補佐のあり方についての研究をしたわけであります。  それから五番目に、有事の際におきます民間の船舶、航空機等の運航の安全を図るために関係機関との間でどういう措置をとったらいいかというような、いわゆる船舶、航空機の安全確保のための措置、そういったような五つの項目についての研究をしたわけでございます。
  169. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと大きく分けて五つということでありますけれども、これはかなり具体的なものにわたっているわけですか。それでこれはどのくらいの分量の文書なんですか。そしてその中に国民の義務を束縛する、あるいは所有権あるいはいろいろな権利を制約する、あるいは収用する、そういったことの具体的なものも含まれているのかどうか、そこらをひとつお伺いします。
  170. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、どのくらいの量がというお尋ねでございますが、約二年半にわたりまして作業いたしまして集めました資料等まで含めますと大変膨大なものでございます。しかし、長官報告いたしましたものはそんなに膨大なものではございませんけれども、いま申し上げましたような内容につきまして検討した事項を記載したものというふうに申し上げておきたいと思います。たとえば、いまそれに関連しましてお尋ねのありました国民の権利義務に関係するような内容を含んでおるかどうかというようなことでございますが、先ほど私が申し上げました第二番目の防衛準値といったような段階で、攻撃が予想される場合にどういった準備をするかといったような場合に、たとえば現在、予備自衛官を招集するというような場合に、防衛出動が下令にならないと招集できませんけれども、その時点で招集したのでは遅いので、それをもっと早く招集できるようにしてほしいという問題がございます。あるいはまた、陣地の構築につきましても、防衛出動下今後に初めて陣地の構築ができるのではなくて、それより前に、たとえば防衛出動待機命令が出たというようなときには陣地の構築ができるという措置をとってもらいたいというような、現行法令の改正を要する点を含んでおります。そういう点につきましては別途、先ほど大臣のお答えのございました有事法制の研究の中でそれを受けとめてもらって、今度は有事法制としての研究の中で取り組んでもらう。いまここで私が申し上げております防衛研究といいますものは、あくまでも運用サイドからこういうことをこういうふうにしてほしいという点を含めた内容になっておりますので、その中で法改正をするものにつきましては、いま申し上げたような有事法制の研究へバトンタッチといいますか、そういう形で今後の進め方をしていくというふうに考えております。それ以外、原則としまして最初に申し上げましたように自衛隊の運用をどうするかという問題でございますから、国民の権利義務というようなことに直接関与する面はそう多くあるわけじゃございませんで、自衛隊自体の運用の問題が中心であります。しかし、いま申し上げたような中身を含んでおりますので、そういった点は今後の有事法制の方で引き続いて検討していく、こういうことになろうかと思います。
  171. 新村勝雄

    ○新村委員 大臣にお願いするのですが、いまの御説明によると、これはいわゆる防衛に関する般的な原則あるいは方針、そういったものが大部分だと思うのですね。そうすれば、これは当然国会報告をしていただく、あるいは公開をすべきものじゃないかと思います。というのは、戦前の帝国陸海軍の時代でも、作戦要務令であるとか軍隊内務書であるとか、いわゆる典範令については一般に公開していましたね。それに相当するものじゃないかと思うのです。ですから、これは当然公開してもいいと思うのですけれども、公開されるお考えはないですか。
  172. 塩田章

    ○塩田政府委員 これは、御指摘の旧陸海軍の典範令といったようなものではなくて、いま警戒態勢とか防衛準備とか申し上げましたが、どういう段階になったらどういう準備をするということを具体的に書いておりますものですから、そういう意味では、大臣から申し上げましたように、いわゆる手のうちを出すというような形になりますので、具体的な内容の公表は差し控えさせていただきたいと思うわけであります。
  173. 新村勝雄

    ○新村委員 本会議があるそうですから以上で終わりますけれども、防衛研究、有事立法、あるいは奇襲対処の方法の研究、こういったものについては、これはできる限りやっぱり、国民の自衛隊ですからね、国民の税金で運用されておるわけですから、どうしても必要な部分はあるでしょうけれども、できる限り公開する、あるいは一定の手順を経て国会にはその文書は報告してもらう、こういう努力をひとつお願いしたいと思うのです。ひとつその検討をできるだけお願いをして、終わりたいと思います。
  174. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  ただいま御指摘の問題につきましては、できるだけ国民に知ってもらいたい気持ちはやまやまでございますが、事柄が防衛の運用の内輪の問題になってまいりますとどこの国も発表してないという事例もございますので、研究しました題目でありますとか項目でありますとか、方向はできるだけ御報告させていただきますけれども、詳細にわたる点はお許しを願いたいと、こう思うわけでございます。  また、法令を改正をする問題につきましては、もちろんこれは国会に御報告し、提案の暁には御審議を願うということでございます。また、政令以下につきましても、研究の結果は御報告申し上げまして、内容を十分御理解願った上で必要な改正措置を講ずることにいたしたいと考えている次第でございます。
  175. 越智通雄

    ○越智委員長代理 なお、井上委員の質問に対し防衛庁側から発言を求められておりますので、これを許します。防衛局長
  176. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどお尋ねのございました三月十七日の海幕長の記者会見の際の件でございますが、記者会見の際に、一千マイルの航路はどこを起点にするのかという記者側からの質問がございまして、これに対しまして海幕長の方から、一般に航路は貨物を集積する場所から考えられるという、この点から言えば京浜、阪神から何マイルということも言えるのではないかというふうに答弁をしたということでございます。
  177. 越智通雄

    ○越智委員長代理 ただいまの防衛庁の発言に対し、井上委員の質問を許します。井上委員
  178. 井上一成

    井上(一)委員 時間の制約がありますから、私は、これにかかわる質問は最後にいたします。
  179. 越智通雄

    ○越智委員長代理 次に、春田重昭君。
  180. 春田重昭

    ○春田委員 伊東外相の訪米に続きまして総理の五月訪問、そして事務レベルでの日米安保協議、そして大村長官訪米と、一連の対米外交スケジュールが立てられていると聞いているわけです。そこで、その時期はいつごろなのか、何を主題として話し合いになっていくのか、目的、内容についておわかりになれば御説明をいただきたいと思います。
  181. 大村襄治

    大村国務大臣 まず、私の訪米についてでありますが、国会終了後なるべく早い時期と思っておりますが、まだ詳しい日程は決まっておりません。また、その場合の議題がどうなるかという点でございますが、これは日米定期協議の一環でございます。安保条約があります以上、一年に一回責任者が集まって意見を述べ合い、相互理解を深めるという会議を毎年一回持っております。それがことしの場合日本から先方に行くという番になっておりますので、先方の都合も聞いた上で日程は決めたいと思うわけでございます。議題につきましても、そのときまでに決めることにいたしたいと考えているわけでございます。  また、関連してお尋ねになられました事務レベルの会議でございますが、これも毎年一回、定期協議の前後に行われているわけでございます。ことしどうするか、まだ先方と打ち合わせ中でございまして、これも日程等は決まっておらないわけでございます。事務レベルで日米安保条約の運用なり何なりについて話し合うのがこの事務レベルの会議の主な目的であるわけでございます。いずれにいたしましても、国会開会中はむずかしい、国会が終了した後しかるべき時期、さように考えておるわけでございます。
  182. 春田重昭

    ○春田委員 伝えられるところによりますと、日米の安保協議ですか、事務レベルのこの会議は六月早々ハワイで、長官はその後七月ごろに訪米されるのではないか、こういう報道もされているわけでございますけれども、どうでしょうか。
  183. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど申し上げましたように、まだ日程は決まっていませんので、せっかくのお尋ねですが、何月ということはちょっといま申し上げかねるわけでございます。しかし、秋とか冬とかいうことではなく、国会終了後できるだけ早い時期で、しかも先方の都合のつくとき、さように、考えているわけでございます。
  184. 春田重昭

    ○春田委員 そうしたら、日米安保協議と長官訪米は、どちらの方が時期的に早いのですか。
  185. 塩田章

    ○塩田政府委員 この点も先ほど大臣がお答えしましたように、毎年の例で前後しておりまして、別にどちらが光とか役とかということを決めておるわけではございません。ことしもいまから相談しようと思っておりますが、具体的にどの時期というふうにまだ決めておるわけではございません。
  186. 春田重昭

    ○春田委員 それから総理の訪米でございますが、当然自動車輸出の問題と防衛問題が主題になると思いますけれども、そういう点で防衛庁長官は、いわゆる総理の訪米でございますけれども、現時点で可能かどうか、どのように思いますか。
  187. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします、  現時点で可能かどうか、先方さんの都合もありますが、レーガン大統領の客体が快方に向かうとすれば予定されたときに実現も可能ではないか。ちょっと私がお答えする限りではございませんけれども、お尋ねでございますので、そういう感じを持っているということだけ申し上げます。
  188. 春田重昭

    ○春田委員 一点だけお尋ねしますけれども、首脳会談の中身を充実するために、事前に防衛問題について事前協議ないし話し合いといいますか、そういうものが行われることを考えているのかどうか、または全くしないかどうか、お尋ねしたいと思います。
  189. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねの問題につきましては、総理大臣の手元でいま検討中であるというように承っております。
  190. 春田重昭

    ○春田委員 いや、総理大臣の手元で検討中であるといっても、防衛の問題については防衛庁が所管なんですから、当然防衛庁の意見なり提言なりがあると思うのですよ。そういう面で私は防衛庁長官に聞いているのです。
  191. 大村襄治

    大村国務大臣 お尋ねの問題につきましては、国会の席上総理大臣が、国際情勢の変化等の問題もあるけれども、わが国としては憲法その他の基本原則を踏まえて、なすべきことはやる、なすべからざることはたとえお話が出てもお断りする、そういう基本姿勢で臨むということを表明されておりますので、私どももその線で進めていただきたいということを願っている次第でございます。     〔越智(通)委員長代理退席、森下委員長     代理着席〕
  192. 春田重昭

    ○春田委員 時間がございませんので、先に進みたいと思います。  外務省の方がお見えになっておりますのでお尋ねしますが、伊東外相の訪米でいかなる防衛に関する会談がなされたかどうか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  193. 丹波実

    ○丹波説明員 お答え申し上げます。  防衛問題をめぐりまして外務大臣ワインバーガー国防長官の会談の概要は次のとおりでございます。  まずアメリカ側から、レーガン政権のもとでアメリカとしては、経済再建計画の進行という非常に財政的に苦しい中にもかかわらず、最近のソ連をめぐるあるいは中東をめぐる西側にとっての国際安全保障情勢が非常に厳しくなっていることにかんがみて、アメリカとしては国防というものに非常に力を入れるので同盟国の協力が必要だ、そういう意味で日本もぜひ応分の援助をしてほしい、そういう発言がありました。  これに対して外務大臣からは、日本国内におけるコンセンサスの状況であるとかあるいは憲法の制約であるとか、そういうことを説明しながらも、日本としては今後とも引き続きできるだけの努力はしていく考えだ、こういう考え方を述べたわけです。  これに対してワインバーガー国防長官からは、これまでの日米間の防衛論議を見た場合に、数字の伸び率とかいった、そういう不毛の論議が非常に行われておったけれども、自分たちとしては中身の話をしていきたい、そういう発言がありまして、いずれにしてもこの辺の中身の問題は、まさにいずれかの時点でハワイで行われると予定されておりますところの日米安保事務レベル協議であるとか、そういった場で意見交換をしていきたい、そういう話し合いがございました。  以上であります。
  194. 春田重昭

    ○春田委員 同盟国にも応分の協力、こういうことでございますが、この応分の協力という具体的な示唆はなかったわけですか。
  195. 丹波実

    ○丹波説明員 お答え申し上げます。  外務大臣も累次国会で申し上げておりますとおり、いわゆる日本防衛努力の問題につきましては、一般的な形での要請はございましたけれども、具体的に中身をどうこうという話はございませんでした。
  196. 春田重昭

    ○春田委員 先ほども出たわけでございますけれども、北西太平洋地域での分業体制、それから対潜、防空の強化、これが米側より要請された、このように言われておりますけれども、どうでしょうか。
  197. 丹波実

    ○丹波説明員 お答えいたします。  ワインバーガー国防長官は、ソ連の海上軍事力の増強の問題を伊東外務大臣説明した際に、そのような地域として、たとえばグアム以西云々という表現を用いたことは事実でございますけれども、日本の自衛力の向上との関連では、このようなソ連の軍事力の増強ということにかんがみ、日本防衛に直接関連する周辺海域については今後とも自衛力の向上に努力するようというような話があったわけでございますけれども、それ以上にわたって、具体的な中身について議論はなかったと承知しております。
  198. 春田重昭

    ○春田委員 はっきり中身がわからないわけでございますけれども、もし仮にこの海域防衛米側が意図しておるものが、たとえば航路帯のカバーではなくして面的カバーであった場合、防衛庁はどういうふうに対応するのか、その見解を聞かせていただきたい。
  199. 塩田章

    ○塩田政府委員 航路帯のカバーが線でなくて面であった場合どうかというお尋ねでございますが、そもそも航路帯といいます場合に、従前のように船舶のいわゆる直接護衛、船団を組んで直接護衛をするという形をとらないことはございませんけれども、そういうこともありますけれども、現在のやり方は、もっと広く一般的に一定のエリアを防衛していく、いわゆる間接護衛方式にいま移行しつつあるというふうに申し上げてよろしいのじゃないかと思います。  したがいまして、航路帯といいます場合も、狭い帯のような、そういう意味の航路帯を現在でも考えておるわけではございませんで、そういう意味では、もっと広いといいますか、面的な要素というものに海上防衛のあり方が移りつつあるというふうに申し上げてよろしいかと思います。そういう意味では、面として云々というお尋ねでございますが、面と申し上げていいのかもしれませんが、しかし何といいますか、一面、全部面で守るという意味ではございませんで、従前から申し上げております航路帯、いわゆる南西航路、南東航路と言いますけれども、そういった航路帯につきまして実際に防衛する仕方において面的な要素が出てきつつある、こういうふうに申し上げられるかと思います。
  200. 春田重昭

    ○春田委員 それから伊東外相の訪米は、自動車の輸出問題が主題であったみたいでございまして、防衛問題は影が薄かったようでありますけれども、今後この自動車輸出問題が防衛力増強と取引される心配はないか、おそれはないかということが言われているわけでございますけれども、外務省の見解はどうですか。
  201. 丹波実

    ○丹波説明員 この点につきましては、アメリカ政府としては、防衛問題と自動車問題とをリンクする考えは全くないということを累次にわたってわが方政府に表明しております。
  202. 春田重昭

    ○春田委員 レーガン政権わが国防衛に対していかなる見解を持っているのか、また米側への協力負担をどう求め、期待しているのか、この点をお伺いしたいと思います。
  203. 塩田章

    ○塩田政府委員 新政権になりましてから、国会証言等その他で対日期待表明というものがいろいろな人からなされておるわけでございますが、私ども日本に対する期待が非常に強いということは感じ取れるわけでございますけれども、従前と別に変わった点があるというふうには受け取っておりません。特に、具体的にどこをどうしろというような、そういう意味の期待表明が出ておるわけではございませんで、一般的に日本防衛力整備について強い期待を持っておるというふうに受けとめておるわけでございます。
  204. 春田重昭

    ○春田委員 これも報道等でございますけれども、確かにレーガン政権日本に対する防衛問題については明確じゃない。しかしワインバーガー国防長官やマンスフィールド駐日大使が記者会見等で言っている、そうした一連のアメリカの要人の発言をまとめてみると、大体対潜、防空についてもっと強化してほしいというものが予想されるのではないか、こう言われているわけでございますけれども、この点どうでしょうか。
  205. 塩田章

    ○塩田政府委員 確かにいろいろな発言の際に、対潜能力あるいは対空能力といった言葉が出ておるようでございますから、そういった面を強く期待しておるのではないかということはうかがわれますけれども、私ども直接にそういう何か具体的な話があったわけではございませんので、それ以上ちょっと私どもはコメントしかねるわけでございます。
  206. 春田重昭

    ○春田委員 伊東外相の訪米では、基本的な線で一致した。恐らく総理の訪米でも、中身の込み入った細かい問題については首脳会談で出ないでしょう。大きな問題で恐らくは会談が行われると思うのです。そういう点で、具体的な中身の問題、これが今後大事になってくると思うのですが、先ほどから論じておられますように、事務レベルの協議ですね、ここで具体的な詰めというものが行われるのかどうか、この点どうでしょう。
  207. 塩田章

    ○塩田政府委員 日米事務レベル協議といいますものは、日米防衛関係者が随時いろいろ話し合いをしよう、こういう趣旨で、別に、一年一回以外にもいろいろな機会に私ども話し合いしておるわけですけれども、一応一定の形をとって、一年一回ぐらいは随時話し合いをしようというのがもともとの趣旨でございまして、ここは具体的に議題を持ち寄って何かを決めていくといったような趣旨で行っている会議ではございませんで、いわばフリートーキングといいますか、自由に、それこそフランクな形で話し合いをしていこう、こういう趣旨でございまして、今回も私どもはそういう趣旨で行いたいというふうに考えておるわけでございます。
  208. 春田重昭

    ○春田委員 従来もやってきたのだ、変わりはない、こういうことでございますけれども、しかし、過去と若干情勢が変わってきているのではないか。伊東外相が訪米した、まして総理が初めてアメリカへ行くわけです。それを受けて、日本の今後の防衛といいますか、アメリカに対する協力といいますか、こういう問題がやはり出てくると思うのです。たとえば、カーター政権のときは中業の見積もりを一年早くやれとか、いろいろ予算面で九・七%やれとか、いろいろそういう予算面で具体的な数字でもって要求があったわけですね。ところが今回のレーガン政権につきましては、大きな問題だけで具体的な中身にはまだ入ってないわけですよ。しかし今後、外相、総理の訪米に続いてそうした問題が煮詰められていくのではないかと十分考えられると思うのです。だから、日米安保協議ではそれをやらないとしたら、どの場で、どういう機会でやっていくのか、そういう考え方防衛庁は持ってないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  209. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま政府委員から事務レベル会議の性格については申し上げました。  重ねてお尋ねでございますので、そういった性格の会議ではございますが、そのあり方と申しますか、そういった点について付言させていただきますと、五月初めに予定されております首脳会談におきましてどういった問題が協議されるか、これはやってみなければわからぬわけでございますが、日米間の諸問題についていろいろ意見交換がなされるのではないかと考えております。  その場合に、防衛に関する問題、これは外交と密接な関係を持つことは申すまでもないわけでございますが、そう細かい問題は首脳会談のあれに適しないとは思われますが、大きな問題につきましてはお話があるいは出されるかもしれない。鈴木総理大臣はできることとできないことを明らかにしてきたいということを国会の席上でもしばしば述べられておるのでございますが、その出ました結果を踏まえて、私ども会談におきましても臨む必要があろうかと思いますし、また事務レベルの会議が私どもの会談の先になるか後になるかわかりませんけれども、当然首脳会談のお話の線というものは踏まえて臨まなければいけない、さように考えている次第でございます。
  210. 春田重昭

    ○春田委員 もう一つはっきりしないのですけれども……。  ところで、日米防衛協力指針、ガイドラインというものがございますけれども、ここで基本的な日米間のいわゆる共同作業の計画が練られていると聞いているわけでございますが、これは大体いつごろ終えるのか、またその中身についてお尋ねしたいと思うのです。  それから、外務省の方、結構です。
  211. 塩田章

    ○塩田政府委員 ガイドラインに基づく研究は、御承知のように、ガイドラインそのものに基づいてやっておるわけでございますが、一番メーンになりますものが日米の共同作戦計画に関する研究でございます。これは五十三年の十一月にできました後、十二月から日米関係者の間でスタートいたしまして、現在がなり進展を見ておるわけでございますが、これは一つの想定を置きまして、その想定の場合に日米はいかに共同対処するかという作戦計画を、あくまでもこれは想定でございますけれども、一つの想定を設けてその場合の対処の仕方を現在研究してまとめておる。このまとめそのものは近く、そう遠くない時期に一つのまとまった段階に達するであろうというふうに考えております。  しかし、それはあくまでも一つの想定でございますから、実際に起こることを考えました場合には、次々にいろいろな想定を考えていく必要があります。それからまた、この一つの想定につきましても、その後の軍事技術の発達とかいろいろな要素がございますから、逐次、毎年毎年見直しをしていく必要があるということで、そういう意味では私ども、この研究はいつ終わったということではなくて、いわばエンドレスに続いていくものであるというふうに考えております。  それから、なお、いま申し上げましたメーンである共同作戦計画の研究以外に後方支援の体制でありますとか、情報交換の問題でありますとか、指揮連絡の調整機関の問題でありますとか、幾つかの問題がございまして、そういった問題もそれぞれテーマごとに研究を進めておりますが、いまの時点で共同作戦計画以外の研究はまだ進んでおると申し上げられる状態でなくて、余り進んでおらないという状況でございます。
  212. 春田重昭

    ○春田委員 第一段階は近い将来というお答えがありましたけれども、近い将来というのは今国会中の時期にでき上がるのかどうか。それから、この中でいわゆる日本防衛分担といいますか協力といいますか、そういうものが責任が明確になるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  213. 塩田章

    ○塩田政府委員 時期の問題でございますけれども、これは米側との関係もございまして、米側も最終的には国防省まで当然報告が上がっていくだろうと思います。そういった手続の進行も絡んでまいりますので、いま具体的にいつごろというふうにはちょっと申し上げられませんが、いわば最終段階であるというふうに申し上げられると思います。  それから、具体的に日本防衛分担が出てくるのかということでございますが、日本が侵略を受けた場合の一つの想定に立っておるわけですけれども、その想定に基づく日本の自衛隊の対処行動と、それに対して米側が来援してきた場合の共同対処行動というものは当然その中で考えておるわけでございます。
  214. 春田重昭

    ○春田委員 極東の地域の日米間のいわゆる防衛分担といいますか協力というものは、この中で研究されていくのでしょうか。
  215. 塩田章

    ○塩田政府委員 ガイドラインに二項と三項とございまして、二項の方が日本が侵略を受けた場合の、いわば安保条約五条事態でございますが、いまはそれをやっております。三項の日本以外の極東地域の事態については、まだ研究に入っておりません。
  216. 春田重昭

    ○春田委員 恐らくその中で日本の責任といいますか分担というものが明確にされていくのではないかと思っておるわけでございますが、まだ作業にかかっていないわけですから、その時点でまたお尋ねしてまいりたいと思います。  さらに、マンスフィールド大使は記者会見の中で、防衛大綱が七六年に制定されたわけでございますが、その後、今日では国際情勢が相当変わってきた、こういう発言をしているわけですね。案に相違してこれは防衛大綱の見直しを示唆しているのではないか、こう言われているわけでございますけれども、長官の御見解はどうですか。
  217. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、大綱が制定されましたのが昭和五十一年でございますから、すでに五年ほど経過しております。制定当時の国際情勢と今日とかなり変化がある、これは事実であると思います。しかしながら、先生いま御指摘になりましたものが大綱そのものの見直しを示唆したものというふうには私ども考えておりません。
  218. 春田重昭

    ○春田委員 五六中業の作業がいよいよ始まるみたいでございますが、この五六中業の基本的な考え方、これは時期的にはいつごろ完成するのか、それから、時間がありませんので、この五六中業において防衛大綱の水準に達するかどうか、この三点、あわせて簡単にお答えいただきたいと思います。
  219. 大村襄治

    大村国務大臣 五六中業でございますが、これは御承知のとおり五十八年度から六十二年度五年間の次の見積もりでございます。防衛庁としましては近く準備の作業に入りたいと考えておりますが、相当準備期間が要りますので、でき上がりますのは一年ぐらいかかる、さように考えておるわけでございます。  また、その内容が「防衛計画大綱」との関係はどうなるかという趣旨のお尋ねでございますが、まだ準備が終わっておりませんので、その点については明確なお答えをするわけにはまいらない、さように考えております。
  220. 春田重昭

    ○春田委員 五六中業においてGNP一%の聖域は超えない、これは断言できますか。
  221. 大村襄治

    大村国務大臣 対GNPの一%を超えない範囲で防衛予算をつくるのだという方針が五十一年閣議決定になりました。そのまま生きております。でありますので、今後、次の中業を策定する場合におきましても、この閣議決定を念頭に置いて処理してまいりたいと考えておるわけであります。
  222. 春田重昭

    ○春田委員 次に、次期主力戦闘機F15、次期対潜哨戒機P3Cの問題でありますが、これは国防会議で決定しております。すでに過去発注されているわけですね。残された分があるわけでございますが、米側より対潜、防空の強化が要望されている今日の中で、いわゆる残された発注の計画というものはどういう形で考えておりますか。
  223. 塩田章

    ○塩田政府委員 F15とP3Cの現在計画しております百機、四十五機体制の残りの部分の発注の問題でございますが、これは五十七年度、五十八年度、五十九年度、つまり現在行っております中業の期間中に発注をいたしたいと思っておるわけでございますが、その中におきましても、私どもとしましては可能な限り早い時期に発注ができるようにしたいというふうに考えておりますが、具体的に五十七、八、九年度とういう割合になるかというふうなことは、いまの時点でまだ決めておりません。
  224. 春田重昭

    ○春田委員 報道等では五十七年に、F15三十二機、P3Cが十二機、五十九年にF15が十一機、P3Cが十五機、こういう形で報道されておりますけれども、こういう決定はまだされていない、こういうことで理解していいのですか。
  225. 塩田章

    ○塩田政府委員 まだ決定いたしておりません。
  226. 春田重昭

    ○春田委員 防衛庁基本的な考え方としては、残されたF15が四十三機ですか、P3Cが二十七機あるわけでございますけれども、従来より速いペースで一挙に発注したい、こういう考え方は持っておりますか。
  227. 塩田章

    ○塩田政府委員 速いペースで発注したいという考え方は持っておりますが、一挙にできるかどうかということはまだ申し上げられる段階ではございません。
  228. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、五六中業で国防会議で決定している百機、四十五機をさらに超えて、この枠を上回るF15、P3Cが発注される予定があるかどうか、この点どうでしょうか。
  229. 塩田章

    ○塩田政府委員 それは五六中業の段階になりますので、いままだそこまで入っておりませんので、何ともいまの段階で申し上げられません。
  230. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、国民の納得のない防衛費増加、防衛力強化については、やるべきではないと私は思っているわけでございます。あくまでも平和憲法、非核三原則、こういう大原則の上で専守防衛に努めるべきである、これを主張いたしまして、あと補助金の問題と防大の問題がございますけれども、本会議がございますので、これで打ち切って、残余の問題は本会議終了後質問していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  231. 森下元晴

    森下委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十二分休憩      ————◇—————     午後四時三十四分開議
  232. 森下元晴

    森下委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行します。春田重昭君。
  233. 春田重昭

    ○春田委員 総理は第二臨調に政治生命をかけると宣言されています。大村長官のこの第二臨調に対する御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  234. 大村襄治

    大村国務大臣 鈴木総理は、第二臨調の発足に当たり、行政改革に政治生命をかけるという趣旨の御発言をなさっておるわけでございます。私も鈴木内閣の一員といたしまして、総理の方針に沿いながらこの問題に全力を傾けて取り組みたいと考えている次第でございます。
  235. 春田重昭

    ○春田委員 さて、行政改革の緊急課題となっておるものに補助金の整理がございます。行管庁並びに大蔵省は現在この補助金の整理削減についてどういう方針を進めようとしておるのか、両省から簡単に御説明いただきたいと思います。
  236. 重富吉之助

    ○重富説明員 お答え申し上げます。  第二臨調が発足しました三月十六日の第一回会合におきまして、鈴木総理から調査会に対しまして、現下の急務である財政再建を図るため歳出の削減などに重点を置いた改革を早急に進める必要があり、昭和五十七年度予算の編成に向けて当面の要請にこたえる具体的改革案をこの夏までに提出いただきたいという趣旨の要請が行われたことは、先生御承知のとおりでございます。この総理要請にこたえるため、調査会におきましては目下、改革案の検討が行われているところでございます。  先生の御指摘の補助金につきましても、歳出中に占める補助金の割合が三〇%を超しておるというだけでなく、従来から種々の問題提起が行われておりますので、重要な調査会の検討課題になるのではないかというふうに私どもは考えております。
  237. 藤原和人

    ○藤原説明員 補助金の整理につきましてのお尋ねでございますが、補助金の整理につきましては従来から政府として積極的に取り組んでまいったところでございまして、御指摘の、御承知のような整理合理化計画というのがございまして、五十六年度におきましても合理化、廃止二百九十二件などのほか、減額などを加えまして総額千六百八十八億円の整理合理化を実施したところでございます。  五十七年度以降どういうふうにするかということにつきましては、今後の問題でございますので、現在まだそのスケジュールや基本的な考え方は定まっておりませんけれども、基本的には、財政再建を進めていくためには歳出の全般にわたる見直し、削減を進める必要があるわけでございますから、補助金につきましても従来にも増してより積極的な態度で整理合理化を進めていく必要がある、かように考えております。
  238. 春田重昭

    ○春田委員 新聞報道等では一律カットとか、また各省庁に自由裁量を認めるノルマ方式とか、いろいろな形のものが書かれているわけでございますけれども、こうしたものは大蔵省としては決まっていないわけですか。
  239. 藤原和人

    ○藤原説明員 先ほど申しましたとおり、基本的な考え方はまだ決まってないわけでございます。  ただ、一律削減というお話が出ましたので一般論としてお話をいたしますと、補助金の多くはそれぞれ法律なり制度なりに基づいて支出をされるものでございます。したがって、その補助金を大幅に削減をしようということになりますと、どうしてもそれぞれの基本にある制度にメスを入れざるを得ないということになろうかと思うわけでございます。したがいまして、その補助金のすべてについて非常に機械的に一律的な削減をすることは実際問題としてなかなかむずかしいのではないか、こう思うわけでございますが、他方、実効性を上げるという観点から申しますと、一律的な手法というものも有効な手法であるということは否定し得ない事実かと思うわけでございまして、そこらの問題を踏まえてどのような方法が最も効果的かというようなことを今後検討してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  240. 春田重昭

    ○春田委員 補助金等の整理合理化、削減といっても、純然たる補助金、負担金、交付金、それから委託費、分担金等があるわけでございますけれども、こうしたものについても全部やっていくのかどうか、この点お伺いしたいと思います。
  241. 藤原和人

    ○藤原説明員 歳出の節減合理化を検討いたします際には、いわゆる聖域を設けることなく、すべての経費を対象とした見直しが必要かと考えておるわけでございます。
  242. 春田重昭

    ○春田委員 さて、補助金の削減の問題でございますけれども、防衛庁本庁ないし施設庁にはかなりの補助金があるわけでございます。しかし、防衛予算というのは非常に外圧もありまして、他の予算と違いまして大幅に伸ばそうという動きもあるわけですよ、一面。そうした中で、時の流れは補助金の整理削減という方向に来ているわけでございますけれども、具体的に補助金の整理削減については防衛庁としては、これは何%かまだ出ておりませんけれども、たとえば五%削減、一〇%削減と出た場合、それにこたえることができるかどうか、自信がおありですか。
  243. 吉野實

    ○吉野(實)政府委員 防衛庁の補助金につきましては、防衛本庁並びに施設庁に幾つかあります。  たとえば防衛本庁の五十六年度の補助金について見てまいりますと、一番大きなものは共済組合の負担金でございまして、これは九百五十億のうちに八百六十億という大宗を占めているわけであります。この負担金につきましてはもちろん法律事項であるというだけではなくして、すぐさま何%減らせという結論はそう簡単に出せるものではないと思います。  それから、防衛施設庁関係で申しますと、五十六年度につきまして千三百何十億のうちに千二百億に近い数字は周辺対策費等によって占められておるわけでございまして、こういう大宗のところをちょっと目をつけてまいりますと、補助金の整理というのはなかなかむずかしい問題がある、防衛庁にとってはそう思います。ただ、政府の方針がありますので、政府の方針が具体的に出た場合にはいろいろ工夫をこらさなければならないと思いますけれども、基本的にはそういうむずかしい問題があるということを申し上げておきます。
  244. 春田重昭

    ○春田委員 たとえば仮に、いま一部では一〇%の一律カットということも出ているわけでございまして、先ほどの大蔵省の答弁でも、各省の事情を聞いていればなかなかできない、そういう面からはそういう頭越しに一律にやる方法もあるという答えが返ってきたわけでございますけれども、仮に一〇%の削減になった場合、現実にできるかどうか、再度御答弁いただきたいと思います。
  245. 吉野實

    ○吉野(實)政府委員 一〇%の削減のお話がありましたけれども、削減するべくしさいに検討を進めてきておりませんので、いまここでお答えを具体的に申し上げることはいたしかねます。
  246. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、政府方針なり、また臨調から出た方針については、防衛庁はいろいろな外圧がありまして他の予算と性格上違うという理由は述べないで他の予算と同じように一律に削減していく、こう理解していいですね。
  247. 大村襄治

    大村国務大臣 一律削減がどうか、これはまだ決まったわけでございませんので、仮定の問題に答えるのはきわめて困難でございます。  ただ、私といたしましては、先生いまお述べになりましたとおり、現下の国際情勢等からいたしまして、わが国としまして必要最小限の防衛措置は講じていかなければならないと考えている次第でございます。  具体的には「防衛計画大綱」の線に沿いながら、財政その他の事情が許す限り整備を図ってまいらなければならないと考えているわけでございます。その場合におきまして、新しく出されるであろう行政改革の方針と照らし合わせましてこの問題の答えを出していかなければならないわけでございますので、なかなかむずかしい問題も予想されるわけでございますけれども、そういった点も十分念頭に置きましてあらゆる努力を払ってまいりたい、さように考えている次第でございます。
  248. 春田重昭

    ○春田委員 長官に再度お尋ねしますけれども、防衛庁だけを特別扱いはしない、そういう理解をしていいですか。
  249. 大村襄治

    大村国務大臣 補助金整理の方針が具体的にどう出るかまだ定かでございません。その方針に従って私は対処してまいりたいと思うわけでございます。
  250. 春田重昭

    ○春田委員 ところで、昭和五十四年の十二月二十九日閣議決定されております「補助金等の整理合理化」、これは件数の削減を昭和五十五年から四年間で従来あった件数を四分の一整理する、こういう形になっているわけでございますが、防衛庁関係の補助件数はどれくらいあって、現在どれだけ進んでいるのか、また今後の見通し、これについてお尋ねしたいと思います。
  251. 吉野實

    ○吉野(實)政府委員 昭和五十四年度におきます防衛庁の補助金の数でございますけれども、全体で三十六件ありました。それで合理化四分の一を四年間にやるということでございまして、五十五年度三件それから五十六年度二件整理合理化いたしまして、したがいまして、九件合理化するということであれば五十七年、五十八年にあと四件残っておる、こういう数字になります。
  252. 春田重昭

    ○春田委員 防衛庁は残りの補助金等の検討をなされていると思いますけれども、その残りの補助金四件カットできるかどうか、自信がございますか。
  253. 吉野實

    ○吉野(實)政府委員 閣議決定がありますものですから、われわれとしてはまだどの補助金を削るということではありませんけれども、この二年間に四件整理合理化するという方向で検討を進めております。自信は必ずしもありませんが、しなければならぬだろうと思っております。
  254. 春田重昭

    ○春田委員 時間がございませんので、最後に確認しておきたいわけでございますが、先ほど同僚議員からも膨大な任官拒否の問題がございました。長官からは、今後、制度改善について見直していきたい、検討していきたいというお話がございました。  私もこの問題につきましては質問する予定だったわけでございますが、防大生については大体年間三百万ぐらいかかっているみたいですね。したがって四年間に一千二百万円かかっているわけです。防衛医大生については最高一千六百三十四万円を限度として償還制度をとっているわけですね。ところが防大生にはそういう償還制度はないわけです。そういう点で、この償還制度の見直しといいますか検討を先ほど大臣はお答えになったのだと思いますけれども、防衛医大生では償還制度をとっている、同じ目的で進んでいる防大生にはそれがない、これは非常に何か不自然な感じがするわけですね。そういう面では防大生の任官拒否の数が非常にふえている、また、入学してからも中途退学者が多いし、また、たとえ卒業しても一年以内にやめていく人が非常に多いということを聞いておりますし、年々増加している。そういう傾向からも、歯どめとしてはやはり何か考える必要があるのじゃないか、こう思うわけです。そういう点で、この償還制度の検討、見直しをするということかどうか、再度長官の御答弁をいただきたいと思います。
  255. 大村襄治

    大村国務大臣 防大の卒業生で任官を拒否する者が最近ふえてきているという点はきわめて遺憾でございます。これをふえないようにする、あるいは減らすようにするためにはどうしたらいいか。制度の運用の改善ももちろん講じなければいけないと思うのでございます。さらに、いま御指摘の、途中でやめた者に対しましてお金を納付させる問題を採用したらよいかどうかの問題、これは公務員制度万般にかかわる問題でもございますし、その適否については慎重に検討さしていただきたい、さように考えている次第でございます。
  256. 春田重昭

    ○春田委員 以上で終わります、
  257. 森下元晴

    森下委員長代理 中野寛成君。
  258. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私は、御通告を申し上げております質問に入ります前に、やはり日本防衛について防衛庁長官として基本的な姿勢、これはそれぞれ立場が違いますと受け取り方ももちろん違いますけれども、まず私どもなりにお聞きをしておきたいと思うわけであります。  もちろん国の安全を守るということは平和戦略を積極的に進めていくということがあくまでも第一義でなければなりません。しかし、それでもなおかつ万一有事の際ということを考えて防衛体制を整えるわけでありますけれども、しかし、言うならばこれもわが国が危険にさらされることに対する抑止力としての意味が第一義的にあると思います。そしてそのことの方がよほど強いと思います。長官とは以前に武道議員連盟等で御一緒させていただいたことがありますけれども、たとえば武道の世界でも、やはり自分の身を守り安全を守る場合には、より強くあるということだけではなくて、敵にすきを見せない、すきをつくらない、このことが重要な意味を持つと思うのであります。戦わずして勝つ、もしくは戦う前に勝つことでなければ防衛の意味はないはずでございます。そういう意味で、日本防衛を考える場合にも、たとえばシビリアンコントロールという言葉であらわされるけれども、国会とそして自衛隊との関係、そしてまた国民の理解、世界情勢をしっかりと読み取る情報収集能力、そしてまた、もっと一つの範囲に限って言うならば、防衛庁長官のもとにあって内局と自衛隊との有機的な連携と協力、決してそれは管理したりされたり、監視したりされたりというものではなくて、まさにその中に、きちっとした協力関係とそして役割り分担の明確な、いわゆるいざというときに混乱を生じない役割り分担の明確な制度化等々が必要になってこようかと思うのであります。このようなことについて防衛庁長官基本的な御見解をまずお聞きをしたいと思います。
  259. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  防衛に関する基本的な考え方についてお尋ねがございましたので、まずそれについてお答え申し上げたいと思います。  防衛基本方針は「国防基本方針」に明記されておりますとおり、まず平和外交の推進と民生の安定でございます。第二は、自衛のための必要な防衛力整備でございます。第三は、日米安保体制信頼性の確保と効率的な運営。以上の三つの柱の上にわが国防衛基本方針は打ち立てられているものと私は考えているわけでございます。  その場合、わが国のみずから備うべき防衛力につきましては自衛のための必要の最小限度を備え、その場合に、そのときどきの国際情勢等に対応してわが国をみずから守るためにふさわしい防衛力を備え、陸海空バランスのとれた、そしてまた先生の御指摘のありました、すきのない防衛力整備するということが最も肝要であると私は考えているわけでございます。  そして、御指摘のありましたシビリアンコントロールの問題につきましても、これは軍事に対する政治の優先というのがシビリアンコン小ロールの最も大切なところであると理解いたしているわでございます。具体的には、法律案、予算案等を通じての国会のコントロールの問題、そしてまた、政府内部における政治の優先の原則を貫きますためには、最高指揮官としての内閣総理大臣、そしてその統括的補佐役としましての防衛庁長官、さらに防衛庁の内部におきます政策的な面におきますいわゆる背広の関係の補佐とそして軍事的、技術的専門家の組織であります制服組との補佐のあり方が両々相まちましてこのシビリアンコントロールの原則を徹底させてまいらなければならない。具体的には、防衛庁設置法、自衛隊法等に基本原則は規定されているわけでございますが、これらの規定を活用することによりましてシビリアンコントロールが行われるように私といたしましても努力してまいらなければならない、さように考えている次第でございます。
  260. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 シビリアンコントロールの定義に至るまでお答えをいただきましたから、ダブってお尋ねをすることはいたしませんが、私は、そのシビリアンコントロールにも関連をいたしまして、きょうのこの委員会に統幕議長の参考人としての出席を求めたのであります。しかしながら、それは今日段階においては実現できませんでした。なお各党国対委員長会談等において一つの懸案として論議をされ、そして与党自民党の回答待ちという段階でありますから、きょうはそのことについて深く追及をしようとは思いませんけれども、いずれにせよ、自衛官に対する、先ほどシビリアンコントロールの定義についておっしゃった政治が軍事を統制するという意味からいたしますと、いろいろな方法、手段はありますし、その国国においてそのあり方は独自のものがあっていいとは思いますけれども、しかし、それに正確さを求めようとするならば、私たちは、この委員会においても自衛官の出席を求めてその参考的な意見を聴取することは、決して間違っていないし、それはむしろ必要なことである、このように考えてもいるわけであります。ゆえに、私どもの要求はきょうのこの委員会においては実現できませんでしたが、引き続きその要求を続けたいと思いますし、そして近い将来本委員会においてそれが実現できるように要望をしたいと考えております。ゆえに、そのことについて一たん用意をいたしました私の質問は、きょう段階においては留保をいたします。  さてそこで、私はきょうこの段階では各党のそれぞれの意見の違いがあることも承知をいたしておりますが、自衛官国会で意見を述べるためには、法改正、訓令の改正等が必要であります。いわゆる政府委員として出ていただくためにはそのような制度の改正が必要でありますが、参考人や説明員という形で出席された前例は今日まであるわけであります。そういう意味で、先ほど申し上げましたよう国会がシビリアンコントロールの最上位にあると理解するならば、国会防衛論議を進める場合に、いわゆる最高の軍事専門家としての統幕議長や各幕僚長等から専門的意見を聞いた上で的確な論議を進めていく、そのことが必要である、このように私どもは思いますし、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、国防組織たる自衛隊も法律、予算等について国会の民主的コントロールのもとに置かれているとされておりますが、その法律、予算等を審議する場合にもそのような専門的意見の聴取は当然国民を代表する国会として必要であると私どもは考えますが、長官のお考えはいかがでありましょうか。
  261. 大村襄治

    大村国務大臣 自衛官国会出席につきましては、国会の問題でございますので、国会から御要請があった際に防衛庁としては検討したいと考えております。ただ、防衛庁としては現在、自衛官国会出席についてはおよそ次のように考えておりますので、御参考に申し上げておきたいと思います。  防衛庁におきましては、自衛隊に関する各般の方針の作成等重要な政策決定に関する事項につきましては、長官を補佐するのは内部部局の各局長等が当たっておりますことからいたしまして、従来から、国会における責任ある御説明も、私、長官のほかにこれらの者がその衝に当たってきているところでございます。また、軍事技術的専門事項につきましても、重要な問題は長官以下各局長がこれを把握してこれまで御説明してきているところでございますので、統幕議長等を国会に出席させなくても国会のシビリアンコントロール機能が確保できるのではないか、一応そのように私どもはこれまで考えてきているということを申し上げておく次第でございます。
  262. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 そのことについては、後ほどまた幾つかの事例の中でお尋ねをしていきたいと思います。  本年度からいわゆる有事の際の中央指揮所の整備に本格的に着手する、こういうふうに聞いているわけでありますが、有事の際その中で自衛隊を直接指揮する最高責任者はだれになるのでありますか。その際これを補佐するのはだれでございますか。総理大臣のいすはその中にありますか。そして、その補佐をするのは次官や局長であるのか、それとも統幕議長や各幕僚長であるのか、第一義的に補佐するのはだれであるのかをまずお聞きしたいと思います。
  263. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  ただいま中央指揮所の整備に関連してお尋ねがあったわけでございます。まず、具体的に中央指揮所に最高指揮監督権者である内閣総理大臣のいすがあるかというお尋ねでございますが、いまの計画では、中央指揮所ができましても、その中に内閣総理大臣の座るいすは予定しておらないわけでございます。そこで、有事の際その中で直接指揮する最高責任者はだれかと申しますと、総理大臣の下で自衛隊の隊務を統轄する防衛庁長官が有事の際に必要な命令を下達するまでの一連の活動を迅速かつ適確に実施するための働きをしなければならないものと考えているわけでございます。そこで、防衛庁長官情勢判断、意思決定、あるいは命令の下達などを行うに際しましては、次官、局長、統幕議長、各幕僚長等の主要な補佐者が、現行法の規定、防衛庁設置法その他現行の規定によってそれぞれの役割りが制定されておりますので、現行法の規定に基づきそれぞれの所掌事務に関して長官を補佐することになるのではないか、さように考えているわけでございます。主な補佐者のそれぞれの補佐権限、現行法の規定等も用意してございますが、長くなりますので、この点の御説明は省かしていただきます。
  264. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ある自衛官出身の方がこういうふうに書いております。   防衛庁設置法第六条に「自衛隊に関する指揮監督については自衛隊法に定めるところによる」とある。それを受け自衛隊法第八条には「各幕僚長の監督を受ける部隊等に対する長官の指揮監督は、それぞれ当該幕僚長を通じて行う」と規定され、同九条には「各幕僚長は長官の指揮監督を受け、それぞれ各自衛隊の隊務を監督することと、各幕僚長は各自衛隊の隊務に関しそれぞれ最高の専門的助言者として長官を補佐する」とある。   ところが片や防衛庁設置法第二十条には「官房長及び局長は“統幕会議及び各幕僚長に対する長官の指示、承認、各自衛隊に対する一般監督”について長官を補佐する」とある。   とすると、いったい誰が部隊の監督者であり、誰が長官の第一次的補佐者であるのか判らなくなる。料理飲食業者が風俗については警察の監督を受け、衛生面については保健所の監督を受けるように、性格の異なったものについては監督者が複数であってもさしつかえないが、同一性格のものについて複数の監督者のあるごとは好ましくない。  と書いております。いざ有事のときに、ややもすればこのような権限の問題等において混乱を生じたり、そしてまたその混乱の中で論議をされている、その間に事態はますます悪化していくという、そのようなことも考えられるわけでありますけれども、このような場合を想定すると、長官はどのように先ほどの質問をお受けとめになられますでしょうか。
  265. 塩田章

    ○塩田政府委員 お尋ねは有事の場合を想定してのお尋ねだと思いますが、先ほど長官からお答えいたしましたように、防衛出動時における自衛隊の行動に関しまして、主な補佐者としましては政務次官、事務次官、防衛局長、統幕議長、各幕僚長といったような人がそれぞれの任務に応じて長官を補佐するということになります。その場合、政務次官は国家行政組織法の規定によりまして政務を処理し、「大臣不在の場合その職務を代行する。」ということになります。事務次官は「庁務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する。」これも国家行政組織法でございます。いまの二点は有事の場合というよりも、有事の場合を含めた一般的な政務次官、事務次官の任務でございます。  有事の場合、自衛隊の行動に当たりましては、内局は、防衛局長の権限の中に「行動の基本に関すること。」というのが防衛庁設置法の第十二条にございます。それから統幕議長につきましては、防衛庁設熾法の二十六条に、指揮命令の基本及び統合調整等を所掌する統幕会議の会務を総理するということで、指揮命令の基本に関しまして防衛庁長官を補佐するという立場にございます。  いま先生がお述べになりましたように、各幕僚長は隊務に関し最高の専門的助言者として長官を補佐する、これは一般の場合も、有事の場合も共通な規定でございます。そういうそれぞれの規定に基づきましてそれぞれの立場長官を補佐する、こういうことになろうかと思います。
  266. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 そうすると、作戦、指揮命令は自衛官の統幕議長や幕僚長の補佐に基づいて長官が直接命令をされるのですか。事務次官や防衛局長を通すのですか。
  267. 塩田章

    ○塩田政府委員 その辺の具体的な境目といいますかその辺はいろいろ議論はあるかと思いますが、いま申し上げましたように、作戦の場合の指揮命令といいましても、部隊の行動の基本に関することは防衛局長の所掌ということになっております。したがいまして、部隊の行動の基本に関しては防衛局長の方から長官を補佐するという立場になります。しかし、先生のおっしゃいます意味のいわゆる作戦の指揮ということになりますと、これは調整という意味では統合幕僚会議議長の権限、あるいは指揮命令の基本に関しましては統合幕僚会議議長の権限でございますけれども、それぞれ各幕僚長が最高の専門的助言者として長官を補佐する、こういうことになろうかと思います。
  268. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 もうひとつわからないのです。統幕議長や各幕僚長等はそれでは防衛局長の下にあるのですか。それとも長官に——統幕議長や幕僚長が直接長官の指揮を受けて、またはそれを補佐してやるという行動の範囲はどの範囲があるのでしょうか。
  269. 塩田章

    ○塩田政府委員 これは私は土とか下とかというのではないと思うのです。それぞれの立場長官を補佐する立場にございまして、防衛局長と各幕僚長あるいは統幕議長との間に上下の関係はございません。
  270. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 上下の関係でそれでは言わないでおきましょう。それでは長官との関係で言いましょう。事務次官や防衛局長または官房長を通さないで統幕議長や幕僚長が長官と具体的に相談をして何らかの行動を起こす範囲というものはあるのですか。
  271. 塩田章

    ○塩田政府委員 全く何にも知らないという実態上の話じゃなくて、権限上の手続という点からいきますと、個々の作戦段階になりましては当然各幕僚長が長官を補佐することになりますので、そういう場合に、内局あるいは事務次官といった人を通さないで長官を補佐するということはあり得ると思いますが、実際上何も知らないということになるかどうかという話は、これは制度の問題じゃございませんで、実際の運用の問題でございますからそれは別でございますが、制度的にはおっしゃいますようなケースはそれはあり得ると思います。
  272. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 制度的にはあり得るということなんですが、たとえばシビリアンコントロール、それをいわゆる文官優位であるとか、内局が自衛官に対する、または制服に対する優位を示すとかいうふうに誤解されている向きもあります。そして、むしろ日本ではそういうふうになっている。そのことのためにややもすると制服組の不満がうっせきをする。たとえば制服の代表が長官や総理大臣に、みずからの愛国の精神に燃えて防衛政策についても具申をすることが果たしてできるのか。そしてそれはシビリアンコントロールに反するのか。私は、先ほど申し上げたように、日本防衛体制というものをすきのないものにしていくためにその辺のことはきちっと整理をして、同時に制服の皆さんにも誇りを持って国の防衛に当たっていただく、その体制をつくることも必要だと思う。ですから先般も官房長官お尋ねをしたこともあるのですが、最近はシビリアンコントロールではなくて、いわゆるコントロールではなくてリレーションという言葉を使われるほどに、いまその考え方さえ変わってきつつある。そういう事態の中で、日本の場合にはシビリアンコントロールではなくて、制服に対する内局のシビリアンコントロールだとさえ皮肉を言う人がいるぐらいです。これらのことについて、私が質問している対象、いわゆる二つ並べているその対象のお一人であります局長お答えいただくのは酷だと思います。これはむしろ長官からお答えをいただきたいと思います。
  273. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  それぞれの補佐権限につきましては各法律で規定されておりますので、その規定に従って防衛庁長官を補佐する仕組みになっているわけでございます。ただ、実際の運営に当たりましては、やはり緊密な連絡を図っていくことが望ましいことは申すまでもないところでございます。中央指揮所をつくりました場合にも、そういった主な補佐者はなるべく同じ建物の中に勤務することができるようにして、相互の権限に基づいて私を補佐する場合におきましても有機的な連絡が図れるように持っていきたいと考えておるわけでございます。  また、お尋ねのいわゆる制服と背広との関係は、上下とかいう関係ではない、これは政府委員お答えしたとおりであると思います。また、全く排他的なものであるとも私は考えておらないのです。軍事的なあるいは軍事技術的な問題につきましては制服が主として補佐する立場にあるわけでございますが、さればといって政策的な問題につきまして、これは背広の守備範囲だから制服にくちばしを差しはさませない、そういうことがあってはならない。それを判断しますのはあくまで統括的責任者である私の責任である。制服の方におきましても、政策問題につきましても意見があればどしどし申し出て、そして結論は私の責任において下す、そういう運営にすべきものであると私は考えておるわけでございます。
  274. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 少なくとも今日の段階で、むしろ日本防衛について、または自衛についてある程度の知識を持っている人たち、この人たちの論評するもの、または発言するもの、そのほとんどが、統幕議長や幕僚長といえども内局の顔色をうかがわない限り物が言えないというのが今日までのほとんどの論評であります。むしろ長官と制服との間に内局が立ちはだかって、そして妨害しているかのごとき印象を与えていることも事実であります。恐らく内局の皆さんにとっては心外であろうと思います。しかし、そのような印象を持たせないことがきわめて大切であります。このことも後ほど、また改めて触れたいと思います。  時間の都合で先に進みますが、防衛研究について伺います。  防衛研究の内容がほぼまとまって、そして防衛庁長官のお手元に一月に届いた、こういうことでございました。その結果を、概要等について国会に、まあわれわれも手の内を明かすというのもまずいと先ほど御答弁がございました。私はそのことには同感です。しかし、研究の内容の中には、自衛隊法の改正が必要となるものもある、こういうふうに聞いているわけです。それはどのような点であるのかを総括的にお聞きしたいと思います。  それから、その自衛隊法の改正案をこの国会に提出するおつもりであるのか、または今国会でないとすればその作業はいつごろなさろうとお考えであるのか、お聞きをしたいと思います。
  275. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛研究につきましては、一応作業を終えまして、一月末に私のとこにまで報告が届いているわけでございます。その内容につきましては、情勢の変化に応じて自衛隊内部の運用の問題についていろいろ研究をした事柄が含まれておりまして、いわば手の内に関する問題でございますので、全部公表することは差し控えさせていただきたいと思っておるわけでございます。  どういった問題を研究しているかということにつきましては、すでに国会の席上におきましても政府委員から御説明申し上げているところでございます。そしてまた、法律改正にかかわりのあるような点につきましては、別に検討を進めております有事法制の研究、これは広範多岐にわたるわけでございますが、防衛庁関係する法令の研究につきましてはある程度進んでおりますので、近く今国会中に中間的な報告を申し上げたいと鋭意検討中のところでございます。その場合の予想される問題点につきまして、防衛研究との関係のある事柄につきましては、これから政府委員をして説明させたいと思います。
  276. 塩田章

    ○塩田政府委員 防衛研究は、自衛隊の運用自体を直接の研究対象といたしますので、法律改正を要する点がそう多くあるわけでもございませんけれども、けさほどもお答えいたしましたが、たとえば予備自衛官の招集時期を、現在は防衛出動命令が出た後予備自衛官を招集することができる、こうなっておりますが、これでは運用面から見て遅いというので、防衛出動の下命の前にも予備自衛官の招集ができるようにしたいという問題指摘がございます。それから、現在防衛出動下今後に特別の部隊の編成ができる、特別の部隊といいますのは陸と海の、あるいは空の、異なった自衛隊間で部隊をつくりますとか、あるいは同じ陸海空の部隊であっても平素の編成と異なった指揮官のもとに入れるといったような特別の部隊の編成の時期を、これもやはり状況によっては防衛出動下令前に編成してもいいということができるようにしたいという問題点、あるいはまた陣地の構築でございますけれども、これも防衛出動下今後でないと現在はできませんけれども、防衛出動下令前に陣地の構築ができるようにしてもらいたいという問題点といったような点が、現在防衛研究の中から指摘されておるわけであります。  これらを受けまして、いま大臣がお答えしました有事法制の研究の中でこれを受けとめていって、今度は運用サイド以外の面からの検討を加えていく、こういうことになろうかと思います。
  277. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 これらの問題は、冒頭に申し上げた日本防衛体制のいわば一つのすきのうちに入るわけです。そのすきをなくすために、でき得る限り急いでその体制整備をしなければならないはずです。内容については、もちろんわれわれ御提案をいただいてそのよしあしを論議したいと思います。しかし、いずれにしましても、そのすきを早くなくすための努力は緊急にしなければならないはずです。それで今後の日程をお聞きしたわけです。いかがですか。
  278. 塩田章

    ○塩田政府委員 今後の日程でございますが、先ほど今国会にも提出するような用意があるかという趣旨のお尋ねもございましたが、いま申し上げましたように、いままでの運用サイドからの研究に加えて、別途防衛庁全体としての観点からの研究をさらに加えていきたいと思っておりますので、有事法制の研究の一環として取り上げていくことになります。したがいまして、いまの時点でどの時期に立法化をお願いするような時期が来るか、ちょっとまだ申し上げられる状況にはございません。
  279. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 長官に再度お尋ねいたしますが、これはいま局長お答えにならなかった。しかし政治的判断、もっと高度な判断の中から、これはいつまでにむしろすべきだ、もちろん防衛というのは限度がないようなものですからその判断はむずかしいですけれども、しかし少なくとも長官のお考えとして、今国会中に間に合わせたいなとか、この国会に間に合わないとすれば次の機会に、それはいつごろまでに、そういう目標を設定して、むしろこういう作業というものは迅速に進められるべきであると思いますが、いかがお考えでしょうか。
  280. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  今国会中に中間報告を申し上げたいと申し上げたのは、有事法制の研究の事柄について申し上げたわけでございます。今国会中に研究の成果が一部報告になるわけでございます。それを立法するのはいつになるか、これは世論の動向も見なければいけません。先生御指摘のように、できれば早くしたいという気持ちは持っているわけでございますが、そういった情勢も勘案しながら進めてまいりたいと考えておるわけでございます。  また、法令の中には、法律の根拠規定はあるけれども政令ができていない問題がございます。そういった問題につきましては、政令の改正を要する点につきまして中間報告の中で問題点を掲げているわけでございます。こういった点につきましても世論の動向等を見定めながら、これは法律改正を要しないのでありますから、政府が決意できれば政令を制定することができるわけでございますので、そういった作業も法律の改正と並行しながら進めてまいりたい、さように考えている次第でございます。
  281. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 世論の動向を見きわめながらということです。そのことは大切なことだと思います。しかしながら、内容が提示されなければ世論は何とも判断のしようがないわけであります。中間報告にも期待をしたいと思いますが、しかし、その作業日程は、むしろ法案の提出が国会でいつになるかは別にしても、その作業というものは進められ、そしていつでも提出できる段取りを整えておくということは、これは防衛庁としての一つの任務でもあろうと思います。こういう意味で、その作業はいつまでかかりますか。
  282. 大村襄治

    大村国務大臣 繰り返して恐縮でございますが、研究の成果を中間的に御報告申し上げるわけでございます。そして、まず御報告できそうなのは防衛庁所管の法令についてでございます。問題点、不備な点が研究の成果として明らかにされるわけでございますから、これをいよいよ立法化するということになりますと、防衛庁所管の法律でございましても関係省庁が存在する場合がございます。世論の動向も見定めながら、また関係省庁と緊密な連絡を図りながら立案の準備を進めなければいけないわけでございますので、防衛庁単独ですべての問題を進めるというわけにもまいらぬわけでございます。そういった事柄をも念頭に含めて、できることならば早く進めたいと考えているわけでございますが、いずれにいたしましても、今国会に法律案を出すということは、いま申し上げましたような筋合いからいたしましてもきわめて困難ではないか。では、その次はどうなのかと申しましても、その点につきましてはまず研究の成果を公にいたしまして世論の動向も見定める、そしてまた、関係省庁のございます問題につきましては関係省庁とも緊密な連絡を図って進める、そういうことでございますので、次はいつかというせっかくのお尋ねでございますが、具体的なお答えはいまのところいたしかねるわけでございます。
  283. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それでは、とりあえず中間報告をお出しになられますのを待って、また論議を進めていきたいと思います。  この機会に、防衛研究については、先ほど朝の御答弁でも五つの項目について局長から挙げられました。たまたま、この月刊誌「現代」四月号に「間違っていた局長答弁」というタイトルで報道されております。そして、この質問をしました二月四日の衆議院予算委員会におけるわが党民社党の塚本書記長に対する御答弁でございますので、あえて念のために確認をしておきたいと思います。すなわち、朝の五項目のうち、三項目目についてであります。速記録の部分を読みますと、塩田局長がこうお答えになっている。   「それから三番目には、陸海空三自衛隊の統合的運用といった点からは対処構想を考えまして、いかなる問題があるか。たとえていいますと、現在、陸海空、各異なった自衛隊の統合部隊を、防衛出動の下命があったときにつくることができるようになっていますが、時期はそれでよいか、という点の検討であります」   局長は統合部隊をつくることを前提にしてその時期を検討している、と答弁しているのである。   局長の答弁をテレビで聴いていた制服幹部は慄然とした。答弁がまるで正反対だったからである。   たとえば、北海道に陸海空の統合部隊を編成したとする。敵軍が北海道を攻撃してくるなら問題ない。しかし、青森や秋田、あるいは山陰だったらどうするか。統合部隊のたとえば海軍力をその方向に振り向けるためには、統合部隊を一度、解散させなければ身動きがとれない。北海道侵攻を考えて作った統合部隊をそのまま振り向けたなら、その統合部隊が機能不全を引き起こすに違いない。だから、防衛研究では、統合部隊は編成しない、という結論になっていたはずである。制服幹部は歯ぎしりした。 こう書かれています。  このような記事がすべて正しいかどうか、それはそれなりの解釈の仕方があると思います。しかし、このような記事が書かれるとすれば、これまた内局と制服幹部とのいさかいのもとであるかのごとく国民の目には受けとめられてしまうわけであります。ゆえに、この内容の真偽について私はまだわかりません。恐らく秘密事項でしょうから、私だって知っておったらおかしいのでしょうから。このことについて、局長とういうふうにお答えになりますか、確認をしておきます。
  284. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、私のそのときの答弁が統合部隊のことについてのみ触れておった点は、私は十分な答弁ではなかったと思っています。というのは、先ほどお答えしましたように、特別な部隊というふうにお答えすべきであったと思います。といいますのは、いま御指摘の統合部隊、つまり陸海空異なった自衛隊を含む部隊の編成の統合部隊と、それから異なった部隊でなくて平素の部隊と違った指揮官のもとに入れる、同じ陸上自衛隊であってもですね、そういう特別な部隊と、私ども両方含めて特別な部隊と言っておりますが、特別な部隊についての編成の時期を防衛出動下令前においてもできるようにしたいというふうに答弁すべきであったと私はいま思っております。その点は先ほどそういうふうにお答えをしたわけであります。  そういう意味におきまして、私はあのとき、統合部隊と言ってしまって、狭い意味の統合部隊に言ってしまったわけですが、特別な部隊の編成をそういうふうに先にしてもらいたい、早くできるようにしてもらいたいという、防衛研究はそのとおり、私はそういう報告を受けておりまして、防衛研究でそうなっておりますので、まあ、その記事について私、いまここでコメントはいたしませんけれども、あり得ないことだとかいうふうには——そういう考え方の人もおるのかもしれませんが、防衛所究としましては、特別な部隊の編成を早くできるようにすべきであるという研究結果が出ておることは事実でございます。
  285. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 この防衛研究というのは文書になっているわけですね。そして、いろいろな意見の違いは当然、論議をする場合、研究する場合、あるでしょう。それを最終的にまとめて文章化するのだろうと思います。そして、その文章ではどうなっているのかということです。結局「防衛研究では、統合部隊は編成しない、という結論になっていたはずである。」、これは「はずである」と、あくまでも、これもまた断言はしていません。ですから、統合部隊は編成するのかしないのか。局長は、すると言う、まあ特別な部隊とおっしゃっていますけれども、統合部隊も言うならばその中へ入るでしょう。このことについて、私は、そのどっちであるかというのは、素人ですから、どっちが正しいかはわかりません。真実はどうであるのかということが問題であって、そしてこの国会で、たとえば制服幹部のまとめたものが局長を通じて国会で答弁されるときには逆になっていたりしたら、われわれは予算も法律も審議できない、そういう観点からお聞きしているわけですから、そのことを明確にしていただきたいと思います。
  286. 塩田章

    ○塩田政府委員 当然防衛研究は文書になっているわけでございますが、その中で、いまの点は、統合部隊を含めた特別な部隊の編成を防衛出動下令前にできるようにすべきである、こういう結論になっております。
  287. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それでは次に進みますが、その防衛研究と日米防衛協力のガイドラインの研究との関係はどうなっておりましょうか。たとえば、いまの統合部隊の編成については三自衛隊間でやる場合もあるでしょうし、またやらない場合、日米間で編成することもあるのではないだろうかと思うわけですが、これらのことについてはどのように。なっておりますでしょうか。
  288. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず防衛研究は、先ほど来お答えしておりますように、自衛隊の運用に関する研究である。ガイドラインに基づいていまやって括ります研究は、日米の共同対処する場合の研究であるということで、当然、研究目的も研究対象も異なっておるわけでございますが、両者にはもちろん関係はございます。自衛隊と米軍との共同対処でございますから、その自衛隊がどういうふうに動くかということを研究しておる防衛研究が関係があることはそれは当然でございます。そういう意味では両者に関係がございますが、一応別個の研究として進めてきておるものであります。その際、いまお尋ねの統合部隊の編成を米軍との間にやるのではないかということでございますが、これはガイドラインにも明記してありますように、日米関係におきましては指揮系統はあくまでも別個に共同対処する、それは調整機関によってやるということになっておりまして、日米間で統合部隊をつくることはもう全然考えておりません。
  289. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 日米間で統合部隊をつくるということのお答えにもしなったとしたら、これは大変なことです。しかし臨機応変の、いわゆるルーズにやれということではなくて、あらゆる場合に迅速に対応できる体制をつくる必要はあるであろうと思いますが、このこともこれ以上触れません。次に進みたいと思います。  シーレーンの問題について、けさほど井上委員からもお尋ねがありました。私もあの新聞報道を読みました。海上自衛隊の前田海上幕僚長が十七日の記者会見でお触れになっているということであります。海幕長がこうして記者会見でいろいろなことをおっしゃるのは決して悪いことではないと思います。しかし、これと同じことを記者会見ではなくて国会で参考人としてどうして答弁できないのかなと、この記事を読みながら実は一つ思いました。  さて、そこで改めてお聞きいたしますが、海上自衛隊が目標とする防衛海域は南東約一千海里、南西約一千海里の航路帯とこれに囲まれた部分及び太平洋岸三百海里、日本海岸百五十海里、南シナ海岸二百海里のわが国周辺海域である、こういうふうに述べられていると思うのであります。これを改めて確認したいと同時に、防衛庁はこれらの海域を航行する日本船舶の動きを常時把握する体制を持っておられますかどうか、これを一点聞きたいと思います。同時に運輸省にも、運輸省など関係省庁がこうした面での情報提供などを防衛庁に対して行っておりますかどうか、その実態についてお伺いをいたします。
  290. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず最初に、いろいろ数字を挙げてのお尋ねがございました防衛海域の問題でございますけれども、私どもいつも申し上げておりますように、わが国の海上防衛につきまして海上自衛隊防衛能力を整備していく目標としまして、わが国周辺数百海里、航路帯を設けた場合においては約一千海里ということをめどに整備を進めておるということをかねてから申し上げております。いま御指摘の点は、南東約一千海里、南西約一千海里の航路帯、これは私ども申し上げておるところでございますが、これに囲まれた部分というところ。それから太平洋岸三百海里、日本海岸百五十海里、南シナ海——これは東シナ海ではないかと思いますが、海岸二百海里というふうにおっしゃったと思いますが、そういうふうに各区域を何百海里というふうに決めて防衛海域のことを考えておるわけではございませんで、あくまでもわが国周辺数百海里、航路帯を設けた場合には約一千海里を目標に整備を図っておるということでございます。  それから、いま自衛隊はわが国の船舶の動向を常に把握し得る状態にあるかというお尋ねでございますが、そういう体制にはございません。
  291. 宮本春樹

    ○宮本説明員 お答えいたします。  わが国の商船隊の動静の把握の状況についての御質問だと思いますが、一般的に申し上げますれば、わが国の海運企業の運航いたしております商船隊の動静について海運企業に報告を求めることは可能でございます。しかし、現在運輸省で行っておりますのは、ペルシャ湾海域、これは御承知のとおり紛争が発生しておりますが、ペルシャ湾海域につきましては常時百十隻程度のわが国商船隊がおります。それについては各船ごとに動静を常時把握するようにして、わが方に報告を求めております。これにつきましては、必要に応じまして関係の向きにもお伝えしております。しかし、ただいま具体的に御質問になりました日本周辺海域につきましてはそのような商船隊の動静の具体的な把握という措置は現在とっておりません。  それから、今後どうするかという問題でございますけれども、それらのことにつきましては、今年度予算におきまして若干の調査費が認められておりまして、どのようなシステムをとればそういう商船隊の動静把握が合理的に行えるかということについて研究を行う、そういうことを考えております。
  292. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それでは、これを常時把握する体制を持っていないということ、そうして各省庁もこれに対応して情報提供をする体制にないということ、これでどうして防衛海域というものを設定し、かつそれを防衛することができるのでしょうか。  時間の関係でもう一つ先の質問もあわせていたしますが、今後の中東情勢などの変化によっては、この海域からアメリカの第七艦隊の空母部隊がすべてペルシャ湾方面にスイングされることも十分あり得ると思われるわけであります。もちろんそうしていると言っても過言ではないと思います。その場合、「防衛計画大綱」によって定められた海上自衛隊の水準でこれらの海域の防衛が果たして可能なものだろうか。不可能とすれば大綱を見直してさらに規模の拡充を図らなければならないのではないのか。先ほど来の御答弁とあわせてこのように感じるわけでありますけれども、このようなことについてどのように対応しようとされておられますか。
  293. 塩田章

    ○塩田政府委員 けさほども防衛研究のお答えの中で申し上げた最後の点でございますけれども、船舶の安全航行に関しまして関係機関と自衛隊との間をどうしたらいいのかという問題提起があるということを申し上げました、航空機も同じでございますけれども。そういう点につきましては、現状はいまお答え申し上げたとおり、ないわけでございます。これは今後の大きな問題点であろうと私どもは考えております。  それから、第七艦隊がスイングする場合に、そのスイングした後いまの自衛隊で守れるのか、あるいはそのためには「防衛計画大綱」を見直す必要があるのではないかという点でございます。この点につきましても、私どもは現在、日米の共同作戦研究なども進めておるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、ガイドラインにありますように、わが国の周辺海域の防衛については日本海上自衛隊が主体となって防衛作戦を行う、足らざる機能については米軍が支援をする、こういうガイドラインの線に沿って研究をいま進めておるわけでございます。  その点につきまして、私どもは、一方でそういう作戦計画の研究を進めると同時に、整備の面におきましても「防衛計画大綱」の線に早く達するように、いま中期業務見積もりを立てて努力をしておるわけでございます。米軍の方は、いま御指摘のようにたとえスイングがあるというようなことがありましても、わが国に対するコミットメントは守るということを申しております。私どもは、米軍のスイングのあるなしにかかわらず、みずからの防衛力整備努力を進めていくということが肝要なことではないかというふうに考えておるわけであります。
  294. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 しかし、この「防衛計画大綱」に沿って整備をしてみても、いまおっしゃった目標に達しないのでしょう。それによってできるのですか。ゆえに「防衛計画大綱」の見直しというのがむしろ強く求められているというのがいまの実態なのではないでしょうか。今日までは、何しろまずその線にまで到達すること、それを目標にやっているというお答えが繰り返しいろいろな機会に行われてまいりました。しかし、到達してからまた改めて研究をしていく、まあ研究はされているようですけれども、次の目標を立てると言われても、それでは結局またブランクができてしまいませんか。むしろ常にこの見直しは図りつつ、段階を追って、そして現実に即応した整備というものが行われていく必要があるのではないのでしょうか。  すなわち、前の竹田統幕議長初め白川、栗栖、そういう歴代統幕議長の方々、そして永野陸幕長も含めて制服の高級幹部が、在任中や退職後にそろって防衛大綱の見直しを主張しているわけです。防衛庁は、これら制服の高級幹部の意見を果たして取り上げているのだろうか。たとえば、防衛研究はある意味では栗栖さんの発言がきっかけになったとも聞きます。しかし、これらの人々の意見はいずれも正常な形で発表されたものではありません。ある人は意見を発表したことで退職させられたり、他の人は退職後にやっと意見を発表したりしているわけです。こういうふうな、正常な形で発表されないところにシビリアンコントロールが崩れるもとがある。こういうものが正常に意見具申もされ、そしてそれが尊重もされ、論議もされていく、そしてこういう不正常な形で発表されるということがなくなっていく、それがシビリアンコントロールだと思うのです。こういうふうに歴代の統幕議長がこれをやっているわけです。それでは日本の統幕議長になる人たちはみんな異常なんでしょうか。もし異常な統幕議長を選んだとしたら、選んだ人に責任がある。むしろりっぱな人が統幕議長に歴代なってきているとするならば、このようなことを異常な形で発言したことは何と解釈すればいいのでしょうか。  そういう意味で、政府防衛大綱など国の防衛政策基本問題に関して制服の代表者の意見をどのような方法で反映されてきたのか、その反映させる仕組みというのは十分機能しているのか、そのこともあわせてこの「防衛計画大綱」の見直しについてお伺いをしたいと思います。
  295. 大村襄治

    大村国務大臣 「防衛計画大綱」についてのお尋ねでございますが、昭和五十一年に。国防会議、閣議の決定によって制定されたものでございます。自来、政府はこの大綱の実現を目指して逐年努力をいたしているわけでございますが、まだまだその線まで到達していないというのが現状でございます。最近の国際情勢等にかんがみまして、私どもといたしましては、大綱の線に速やかに到達するのがまず力を注ぐべき一番重要な事項ではないかと考えている次第でございます。  先ほど来お尋ねの海上警備目標数百海里、千海里の警備の問題につきましても、私どもは大綱の線が実現し、そしてまた質的な改善が図られるならば、海上警備能力も相当改善されていく、完全とは言えないまでも、相当それに近づくことができるのではないか、そういうことで努力目標を掲げている次第でございます。  統幕議長等を経験された方がいろいろこの防衛計画に関連しまして発言されておりますことも承知しているわけでございますが、私は、いま御指摘のように、これらの方の御発言が異常なものであるという批判は当たらないと考えている次第でございます。部内におきましてもそういった問題につきましての検討はいたしているわけでございます。今後は一層それは活発に研究を続けるということはいたさねばならぬと思うのでございます。  いつこの「防衛計画大綱」を見直すかといいますと、これはまさに政策判断の問題でございますので、かねて申し上げますとおり、国際情勢の変化、世論の動向、そしてまた防衛計画の達成状況、こういったような状況を見守りながら将来決すべき問題ではないか、当面はまだまだ隔たりのございます「防衛計画大綱」の実現を目指して努力するのが防衛庁としての努めである、さように考えている次第でございます。
  296. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 歴代統幕議長等の発言の形が正常な形で行われていない、だからこそいろいろな処分を受けたり、そしてまた退職をさせられたり、表向きの形はいろいろとれるでしょうけれども、実質上そういう形になっている。それは決して正常な形ではない。長官は決して異常だと思わないとおっしゃった、あの発言の形は異常だと思わないとおっしゃった。しかし異常でなければ、どうしてあんな処分がなされるのでしょうか。私は、そのように自分の職を賭してまでも発言される、それはなぜそんな事態が起こるのかわからない。そのような意見を全部採用しろというのではありません、むしろそのような意見に十分耳を傾けて、そしてともに論議をして、お互いに納得し合って、ともに力を合わせて努力していく姿が出てくるならばこのような事態にはならないと思うのであります。そういう事態が実際に起こっているのですから、これを異常でなかったと長官が一言おっしゃってそれで済まされるという問題ではないと思います。
  297. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど私が異常なものであったという批判は当たらないのではないかと申し上げましたのは、多少言葉不足の点があったと反省いたしているわけでございます。先ほど先生のいろいろ御指摘のありました中に、そういう者を任命するとすれば異常な人物を任命したということにもなるのではないかという趣旨の御発言がございまして、私は、発言した方々が異常な人物であるというふうには考えておりませんのでそういうふうに先ほど申し上げたわけでございます。  ところで、注意処分なり、あるいは形は任意退職でありましても退職するようになった事例があるではないか、それが異常でないというのはどうか、こういうお尋ねでございますが、私は、統幕議長といいますのは制服を代表する、そういう意味では最高の立場にある方であると思うわけでございます。そういう立場にある方が部外に発言する場合には、ある程度節度を持っていただかなければならない。発言の内容がそういう意味の節度を越えるか、あるいは越えるような疑いを持たれるような場合には、その仕方について注意をせざるを得ない場合もあり得る。これは「防衛計画大綱」を批判したとかなんとか、そういうことだけではございませんでして、やはり最高の責任にあります方が、政府の決定しましたものを、本人はその意思でないにしましても、すぐ変更することが必要であるというふうに受け取れるような発言をしたり、活字にするということにつきましては、時と場合によっては慎んでいただかなければならない場合もある、さように考えているわけでございます。
  298. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 時間が来ましたから終わらなければなりませんけれども、少なくとも適任者だということで、今日も適任者だったと長官お考えのようですが、歴代統幕議長、しかしいまおっしゃった節度を心得てとおっしゃる、その節度を踏み外さざるを得なかったところに——長官がいまでも統幕議長としてふさわしい方たちであったと評価される方々が節度をなぜ踏み外さなければならなかったか。たまたま一人そういうことがあったということではない、それこそ歴代の統幕議長と言っても過言ではないくらいにこういう事態があるところに、日本防衛庁体制やいまの仕組みや、そして今日までの総理や長官がとってこられた姿勢、そのようなものに対して問題があるのではないか。それが問題がないとするならば、歴代の統幕議長はそれにふさわしくない方がなったということになってしまう。このことを、くどいようですがあえて申し上げざるを得ません。そして、決してふさわしくない人がなったとは私も思いません。むしろ国を守ることに使命感を持って、そしてやむにやまれぬ気持ちであのような発言がなされたと思っています。ならば、その意見をもっと防衛庁の内部で、または国防会議で、そしてこの国会で発言できる機会と体制をつくるべきであると考えるわけです。  最後に、そのことについて長官基本的な姿勢をもう一度お尋ねをして、質問を終わりたいと思います。
  299. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  それぞれ数十年の貴重な経験を持っている、しかも数ある資格者の中から選ばれて任命された、いずれもりっぱな人物であると私は考えているわけでございます。御指摘の点につきましては、平生から防衛庁内部における活発な議論を闘わす機会をふやし、あるいは持っている意見を述べる機会をますますふやす、要するに意思の疎通を図るように努めなければならないと考える次第でございます。また、最高の責任者である総理大臣に対しましても、制服の幹部の方が平生から接触して、最高責任者に意のあるところを述べる機会も今後ますますふやしていく必要があると考えているわけでございます。  国会との関係につきましては、先ほども申し上げましたように、国会がお決めになることでございますので、私どもといたしましてはその結論に従いたいと思うわけでございますが、これまでの運用におきましては、関係局長等が努めて御説明を申し上げておるわけでございまして、今後特にふやす必要があるのかどうか、絶対ないとは決して申しませんが、その辺のこともひとつ御勘案の上進めていただきたい、さように考えている次第でございます。
  300. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 終わりますが、委員長、最後に、いま国会の意思を待つという長官の御発言でもございましたので、本委員会において、自衛官のこれまですでに前例がある参考人としての出席要請について御検討をしていただきますことをお願いしておきたいと思います。
  301. 森下元晴

    森下委員長代理 はい、検討努力をいたします。  岩佐恵美君。
  302. 岩佐恵美

    岩佐委員 私は、横田基地の問題について最初に伺いたいと思います。  二月一日から四月の上旬まで、米韓合同軍事演習チームスピリット81が行われていますが、米軍から今回の演習について詳細な報告を受けているかどうか、特に横田基地の使用についてはどういう報告を受けているのか、外務省の方からお答えをいただきたいと思います。
  303. 丹波実

    ○丹波説明員 お答えいたします。  本件演習の計画につきましては、在京のアメリカ大使館から次のような通報を受けております。  すなわち、この演習はチームスピリット演習と呼ばれ、先生がいまおっしゃいましたように二月初旬から四月初旬までの間、韓国領域を中心として行われる米韓の合同演習であり、その目的は、朝鮮半島における不測事態に対する米韓の合同の防衛作戦を通じ、指揮官、幕僚及び部隊を演練することにある、特に先生の御質問になっておられます横田基地の使用の問題については、今回の演習で横田基地の第三四五戦術空輸飛行隊の一部がこのチームスピリット演習に参加する、こういう通報が参っております。
  304. 岩佐恵美

    岩佐委員 私は、昨年もこの委員会でもって、チームスピリット演習期間中に横田基地で核事故演習ブロークンアロー、これが行われる、あるいは難民輸送の中継基地に使われている、そういう実態を明らかにしたわけですけれども、米韓合同演習が日本、アジアの平和を脅かす、あるいは基地周辺住民の安全を脅かす非常に危険な演習であることを私は具体的な事実をもって述べて、その演習を直ちに中止をするように強調、要求をしたわけでございますけれども、ことしも演習開始前から、横田基地の監視行動を東京平和委員会が昨年と同じように続けています。その報告を見ますと、米本土から初めて核攻撃機であるスカイホークだとかあるいはイントルーダー、こういうものが飛来をしてきている。また、今回の演習の非常に大きな特徴としては、大型輸送機やチャーター機の飛来が昨年よりも大幅にふえている。しかも、ここが一番私は問題だと思うのですけれども、横田基地内で、あわや大事故になろうというような、まさに演習ではなく本物の事故が頻発をしている。そういう事実が指摘をされている点であるわけです。  たとえば一月二十九日九時に、C130Eハーキュリーズが左内側エンジンが停止したまま着陸をした。一月三十日には十四時一分、C130がやはり同じように左内側エンジン停止のまま着陸をしている。二月五日には十二時三十五分、C130がこれも内側左エンジン停止のまま着陸。二月十八日十二時十分にC130、これも同じような状態です。そして二月二十七日には、十一時五分に発進したC5Aが左車輪が引っ込まないで十一時三十五分にまた戻ってきて着陸をする。それから二月八日十四時五十分、C130が滑走路で一たん発進態勢に入ったけれども、右翼端から燃料漏れを起こしていた、そしてまた戻ってきた。それから三月十六日十二時三十五分、発進しようとしたDC10が滑走中にパンクをして、タイヤの破片を飛び散らしながらそのまま滑走して、滑走路北端で誘導路に曲がりそこで停止、乗っていた兵士三百数十名が脱出用シュートで誘導路わきの草地に避難。この辺につきましては、東京平和委員会の撮りました写真がここにございますけれども、これは大変小さくて遠くでは見えないのですが、タイヤがありましてパンクしていて、飛行機から脱出するという装置がされていて、しかも脱出した兵士たちがまた飛行機を見守っているというような、こういう写真があるわけです。(写真を示す)それから三月四日には十六時十分、発進しようとするC5Aが滑走路へ入ったところにC141が着陸態勢で突っ込んできて、あわてて機首を持ち上げて空を低く通過、C5Aが発進した後C141は十六時十七分に着陸をした。これはあわや衝突事故になろうとした、そういうものであったというふうに思われるわけです。  私がいまここに挙げました例というのはほんの一部分であるわけですけれども、東京平和委員会が一月二十九日から三月二十七日までの監視行動の中で、事故だというふうに思ったものだけで二十五件もあるわけです。このような事故について、一体米軍から日本政府報告がきちんと来ているのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  305. 丹波実

    ○丹波説明員 ただいま先生が述べられましたことには三つの問題点が含まれておりますので、一つずつお答え申し上げたいと思います。  まず第一に、チームスピリット演習の性格でございますけれども、私たちは米軍が韓国においてあのような形で存在しておるということが朝鮮半島の曲がりなりの安定というものを今日まで保ってきておる、こういうふうに考えておるわけです。それから第二に、米軍の輸送機その他が随時横田を通過する、これは、米軍は安保条約、地位協定上の権利を行使しておるわけですから、日本側としてそれにとやかく言うそういう立場にはない、私たちはまさにそういう米軍の行動自身がこの場合日本の平和と安定に役立っておる、こういう認識であります。第三点の、先生が言われますところの事故なるものの意味の問題が関係するわけですけれども、従来米軍は、施設区域内の事故、いわゆるトラブルあるいは事故、そういったものであっても施設区域外の住民の生活に直接影響を与えるというようなものについては現実の問題としてわれわれに通報してきておる、こういうのが実際上の慣行ではないか。ただし、米軍は施設区域内で生じた航空機事故について、一般的に地位協定日本側に通報する義務というものは持っていない、そういう状況にあるわけでございます。
  306. 岩佐恵美

    岩佐委員 米軍側から今回の演習期間中に報告が何回あったのか、どういう報告だったのか、その点について伺いたいと思います。
  307. 丹波実

    ○丹波説明員 この点につきましては、先ほど申し上げましたチームスピリットの内容について、わが方が在京の米大使館に照会したときに先ほど申し上げたような通報があった、そういうことでございます。それ以上のことはございません。
  308. 岩佐恵美

    岩佐委員 運輸省にお尋ねをしたいと思いますけれども、民間外国航空機でこのような事故があった場合に、一般的にどういう報告が行われるのか、その点について伺いたいと思います。
  309. 石井俊一

    ○石井説明員 お答えいたします。  いま先生のおっしゃいました中には、事故といわゆる事故には当たらない異常運航というものがあるかと思われますけれども、事故並びに異常運航につきましては空港事務所並びに空港出張所より直ちに運輸本省の方に連絡がございます。私どもはそれに基づきまして内容を検討いたしまして、必要があれば報告を求めいろいろな指導をいたします。
  310. 岩佐恵美

    岩佐委員 民間機の異常運航の回数というのは年間どのくらいあるのでしょうか。今回二カ月間という非常に短期間に、しかも同一空港内でエンジン停止あるいはタイヤのパンク、車輪故障、ガソリン漏れ、そういうものが二十数件も起こる、これは民間機の場合にごくあたりまえのことなのかどうか、その点について運輸省に伺いたいと思います。
  311. 石井俊一

    ○石井説明員 まず、最初の計数の件でございますけれども、民間航空の場合は異常運航は大体年三百件でございます。  それから、いまお尋ねの燃料漏れあるいはタイヤのパンク等の異常運航につきましては、いわゆる破壊あるいは機能の喪失といったようなものに当たらない場合は、これは私どもは異常運航として処理しているわけでございますけれども、異常運航だからといってこれを軽んずるわけではなく、十分向こうにその調査報告を求めまして、その内容によりましては私どもも十分これを検討し、いろいろな指導を行っております。
  312. 岩佐恵美

    岩佐委員 三百件というのは幾つの空港ですか。
  313. 石井俊一

    ○石井説明員 これは全国の空港でございます。
  314. 岩佐恵美

    岩佐委員 具体的に係数字も。
  315. 石井俊一

    ○石井説明員 はっきりした数字は、たとえばこれは小型機が使用しております空港等もございますので、約八十くらいかと存じます。
  316. 岩佐恵美

    岩佐委員 この事故あるいは異常運航、こうした問題について、周辺地域の住民にとっては大変重大な問題であるわけですけれども、事故の問題については軍用機の災害協定の問題があると思います。私は昨年の当委員会で、横田基地周辺についてもこの災害協定がもうすぐまとまるというふうなことを伺ったわけですけれども、こうした協定がもうできたのかどうか、その点伺いたいと思います。
  317. 森山武

    ○森山(武)政府委員 横田飛行場周辺におきましては、入間飛行場とかそのほかの厚木飛行場等含めました少し広域な範囲で、ことし昭和五十六年二月二十四日に事故等連絡協議会が発足しまして、この四月一日から緊急措置要綱というのが関係者間でまとまりまして発効することになりました。なお、一市だけまだ市の内部事情でおくれているのがありますが、緊急措置要綱が四月一日から発効することになった、こういうことでございます。
  318. 岩佐恵美

    岩佐委員 先ほど外務省の方から、一般的通報が事故の場合にあるというふうに言われているわけですが、この通報というのはいつ来るわけですか。
  319. 丹波実

    ○丹波説明員 お答えいたします。  そういう事故が起こって、アメリカがこれは日本政府に通報する必要があると判断するようなケースにつきましては事故直後あるいは若干時間がかかってもできるだけ早く通報してくる、そういうことでいままで慣行が成立しております。
  320. 岩佐恵美

    岩佐委員 横田基地内の事故対策の体制は一体どうなっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  321. 丹波実

    ○丹波説明員 お答えいたします。  先生が問題にしておられますのは、たとえば飛行機が着陸するときにパンクしたというようなその種のケースであるとすれば、いわゆる日本語で言うところの事故というとらえ方ができるのかどうか、日本語で言うところのトラブルといったような感じのことが多いのではないかと考えるわけですが、そういうことであれば、これは御承知のとおりアメリカ地位協定の第三条で基地に対する管理権というものを持っておりまして、基地内に起こりますことにつきましてはアメリカが内部的に処理するという体制をとっておるわけでございますので、このようなトラブルが生じたときにアメリカの軍の内部でどのよう措置がとられているのかということは米軍内部の問題でございまして、私は承知しておりません。
  322. 岩佐恵美

    岩佐委員 基地内の事故の問題もそうですけれども、一番私が問題だと思うのは、たとえば横浜で起こりましたファントムの事故でございますけれども、ああした、飛行機が飛んでいて、そしてトラブルがあって、それで飛行士、パイロットだけはパラシュートで逃げてしまう、飛行機はそのまま民家に突っ込むというようなケースがあったわけです。現実にこういう事故が起こっているわけです。ですから、事故が起こったよ、こういう事故だったよという事後報告では不十分だということをこの前の委員会でも私は指摘をしているわけです。事故が起こったらすぐにどういうふうに対処をしたらいいのかということを地域住民の方方に知らせなければならないわけですね。その点について一体どうなっているのか。たとえば、あわや大きな事故が起きるかもしれない、そういうことを横田基地の管制あるいは基地内の人はつかんでいる、だけれども、その連絡が周辺住民、自治体には全く何にも知らされない。あの横浜の緑区のファントムの事件でもそうですけれども、周辺住民が知っていれば逃げられる。だけれども、そこに落ちてしまえばそこで死亡事故が起こってしまうわけですね。そういうことでは、幾ら軍用機の災害協定ができても、これはちっとも住民の安全にとっては役に立たない、最も肝心な点が抜けているのではないか、そういう点で伺っているわけで、その点のお答えをいただきたいと思います。
  323. 丹波実

    ○丹波説明員 先生が言及されましたところの横浜のファントム事故につきましては死傷者その他犠牲者が出ておりますので、これは安保条約に対する立場のいかんを問わず、われわれとしてもきわめて遺憾なことであった、このように考えております。  事故と申しますのは突発的に起こるものですから、その直前に通報してくるというようなことは不可能だろうと思うのですが、もし先生が問題にしておられますのが、そういう事故が起こらないようにふだんから体制を整えろ、アメリカもしっかりしてくれなければ困るということでございますならば、この点については私も全く同感で特に異論はございません。私たちは、いままでもいろいろなケースにつきまして米軍との関係を密接にしてきたつもりでございますけれども、今後とも、御指摘がございますので、在日米軍全体とさらにこういう問題が起きないように密接に協議していきたい、このように考えます。
  324. 岩佐恵美

    岩佐委員 事故の問題については、事故が起こることは突発的なことであるわけですけれども、しかしそれは二つの問題があって、一つは、いま答弁されたように、日常的に一体どういう状態なのか、その基地がどういう使われ方をして、具体的な事故あるいは異常運航というものがどういうようになっているか、これをはっきりとつかんでいかないと米軍の使われ方という実態が明らかにならないわけですね。その点について先ほどから伺っていると、一般的報告はあるけれども細かい点についての答弁がはっきりしていない。そういう点では私たちは危惧を持つわけです。  それからもう一つ、事故が起こればそれは避けることができない場合もあるかもしれない。しかし避けることができる最大限、住民にいち早く知らせて避難をしてもらう、そういうことが考えられているべきだというふうに私どもは考えているわけです。そういう万全の体制を整えるべきだ。この点について防衛庁長官のお考え、そして防衛施設庁のお考えを伺いたいと思います。
  325. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 先ほど来外務省の方から御答弁ございますように、私どもももちろん事故が未然に防止されるということは最も望ましいということは論をまたないわけでございます。そのために日常、在日米軍の方と接触する機会あるごとに事故の未然防止について注意を喚起しておるわけでございます。先ほどお尋ねございました航空機の事故連絡調整体制、これは先般の横浜の事故以後、各飛行場ごとにこの体制を整えておるわけでございます。横田につきましては、先ほど総務部長の方からお答え申し上げましたように、四月一日から発足をしておるということでございます。  この連絡調整体制というのは、事故が起きた後におきまして被害者に対する救助措置というものを最大の眼目にしておるわけでございます。事故が未然に防止されれば一番よろしいわけでございますけれども、私どものいまとり得る措置としては、米軍に注意を喚起すると同時に、事故が起きた後におきましていろいろな被害を最小限に食いとめるということが唯一の措置であるというふうに考えておるわけでございます。この事故連絡調整体制と申しますのは、具体的には先生御承知と思いますが、地元の地方公共団体、県、市町村それから米軍、自衛隊それから防衛施設庁、その他警察、消防といったよう関係の機関を集めまして、事故が起きた場合に速やかな連絡情報をとって必要な消防とかその他の救助措置を講ずるということがねらいでございます。  ただいま私どもがこれから努力したいというのは、この体制整備し、いま申し上げましたような救助措置を可及的速やかにとる、こういうことを考えているわけでございます。
  326. 岩佐恵美

    岩佐委員 私が再三申し上げているのは、事故が起こってしまった、だから消防自動車が行きますよ、担架が行きますよ、病院にすぐ収容しますよ、そういうことをいま主眼点としてやっておられる、それでは不十分だ、これは前回から私が言っているところなんです。どうしても未然に防がなければいけない。そのためには事故が頻発をしたり異常運航があったり、そういうものをきちんとこちら側が把握をして、日常的にお互いに住民も注意をするし、注意というか警戒をするし、それから、これを問題にすることによって米軍側にそれを未然に防がせる。これは私、前回も言いましたけれども、私たちは基地があることには反対です。ですけれども、ある限り、住民を危険から守らなければならないので、そういう点を強調しているわけです。そういう体制をとらなくてはならないのじゃないか。あるいは事故が起こった、飛んでいる飛行機が落ちる、それは民家に落ちるのか、それとももうちょっと外れて森の中へ落ちるのか、海の中へ落ちるのか、そういう問題だってあるわけですよね。ですから、そこのところを私は毎回言っているわけで、長官のお考えを、いまのやりとりを踏まえた上で答弁をいただきたいと思います。
  327. 大村襄治

    大村国務大臣 不幸にして事故が発生しました場合には、貴重な人命、財産を保護するために適切な措置を講じなければいけないということは申すまでもないところです。その点がこれまで不備な点が見受けられましたので、横浜事故の経験にかんがみまして、現地関係機関の連絡通報、任務分担等について緊密な連携を図ることとして、当面主要飛行場についてそういった連絡体制整備ようとしている。それはそれなりに私は意義のある問題であると考えているわけでございます。  そこで、いまお尋ねの事故の防止とか、被害を少なくする等の措置を講ずる問題につきましては、事故発生の都度、その状況に応じまして、外交ルート等を通じて米軍当局にもしばしば要請しているところでございまして、これは両国の努力によってそういう事故を防ぐように、起こらないように継続努力をしていかなければならない問題である、さように考えております。
  328. 岩佐恵美

    岩佐委員 この問題については、きょうは外務省の答弁について、まだ私は問題が残っているというふうに思いますけれども、これはまた機会を改めて聞いていきたいというふうに思っています。  次に、ガイドラインに基づく日米共同作戦計画、このことについて伺いたいと思います。  塩田防衛局長は、三月三日の衆院予算委第一分科会で、わが党の東中質問に答えて、防衛庁長官のところまで報告されたガイドラインに基づく日米共同作戦について、これはいまの段階では作戦計画の研究をしているということであるが、「もしいざ有事の事態が発生した場合には、それをベースにして作戦計画は実際につくられる」、そう答弁をされておられますけれども、この答弁どおり、この研究が実際の作戦計画のベースとなる、そういうものであるわけですね。
  329. 塩田章

    ○塩田政府委員 そのように考えております。
  330. 岩佐恵美

    岩佐委員 それから、同じ日の分科会で同じ答弁ですが、この共同作戦計画について「ある一定の想定」というふうなことを言っておられるわけですけれども、この「ある一定の想定」というものについて、日米共同でございますので、この想定はアメリカ側から出されたものなのか、あるいは日本側から出したものなのか、その点について伺いたいと思います。
  331. 塩田章

    ○塩田政府委員 日米双方で共同して想定をつくったものでございます。
  332. 岩佐恵美

    岩佐委員 この想定の文書名といいますか、それはどういう名前になっているのですか。
  333. 塩田章

    ○塩田政府委員 想定についての文書名というのは別にございません。いま申し上げました共同作戦計画の中に入っているわけでございます。
  334. 岩佐恵美

    岩佐委員 その共同作戦計画といいますか、それはどういう名前になっているのでしょうか、正式名称といいますか……。
  335. 塩田章

    ○塩田政府委員 「日米共同作戦計画案の研究」でございます。
  336. 岩佐恵美

    岩佐委員 この案の研究の起案者はだれなんでしょうか。
  337. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本側の場合は、いつも御説明申し上げておりますように、統合幕僚会議の事務局が中心になりまして事務を進めておりまして、したがいまして統合幕僚会議の議長ということになると思います。
  338. 岩佐恵美

    岩佐委員 アメリカ側も同文の文書を作成していると思いますけれども、そうするとアメリカ側の起案者はだれになるのでしょうか。
  339. 塩田章

    ○塩田政府委員 在日米軍司令官というふうに理解しております。
  340. 岩佐恵美

    岩佐委員 中間報告ようなものであるけれども、この間の御答弁では「一応の一つの段階としてのめどが間もなくつくようになる見込みだ、」というふうに言われていますけれども、これがまとまった後、どういう扱いになるのですか。
  341. 塩田章

    ○塩田政府委員 これは先ほどもお答えいたしましたが、間もなく一つの想定に基づくものが一応でき上がるわけでございますけれども、これは作戦計画の研究として、そのまま日米それぞれ保存するというのですか、処理するわけですが、先ほど申し上げましたように、今後これをずっと継続的にフォローしていく。毎年毎年いろいろな情勢が変わりますから、それに応じて計画の中身を変えていく必要がありますので、そういうことはやはりお互いに相談をしながらずっと続けていく、こういうことになるわけでございます。
  342. 岩佐恵美

    岩佐委員 しかし、一応の一つのめどができるということですね。ですから、それはそのままとどまるわけじゃなくて、どこかに報告をされていくということになると思うのですけれども、その点を伺っているのです。
  343. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本の場合は、そもそもこの作業が、防衛庁長官の指示によりまして統合幕僚会議の作業として進められてきておるわけでございますので、防衛庁長官報告をする。アメリカの場合は、在日米軍司令官がどういう処置をとるのか、定かには承知しておりませんけれども、太平洋軍を通じてアメリカ国防省に行くというふうに聞いております。  なお、日本の場合は防衛庁長官までで形式的には終わるわけでございますが、最高指揮官である内閣総理大臣には報告をするということになろうと思います。
  344. 岩佐恵美

    岩佐委員 そうすると、防衛庁長官は、このものについて決裁をするという形をとられるわけですか。
  345. 塩田章

    ○塩田政府委員 言葉はともかくとして、実体は決裁するという形になると思います。
  346. 岩佐恵美

    岩佐委員 そして、国防会議には、これは付議するのでしょうか。
  347. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど申し上げましたように、ガイドラインができたときに国防会議、閣議には報告いたしましたが、その後の具体的な作業でございますので、それは閣議の席上防衛庁長官が、今後の作業は防衛庁長官にお任せいただきたいということを申し上げて了解をいただいておりまして、防衛庁長官の命じた作業としていま行っておるわけでございますので、先ほど来申し上げておりますように、防衛庁長官報告され決裁を受けたときで終わるというふうに考えておりまして、総理大臣への報告は別にしまして、特に国防会議への報告事項であるというふうには考えておりません。
  348. 岩佐恵美

    岩佐委員 最初にお尋ねしたように、有事の際の作戦計画の下敷きになるものであるわけです。ですから、当然、総理あるいは国防会議、そういうところの決裁といいますか、そういうところに明らかにしていく必要があると思うし、その中身について公表しなければならない。そうじゃないと、秘密の日米の軍事関係者だけのところの問題として処理されて、しかも有事になった場合にはその作戦計画が下敷きになったものによって戦争に巻き込まれていく、そういうことになるわけで、その辺は大変問題だと思うわけですが、その点はいかがでしょうか。
  349. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  政府委員から御説明申し上げましたとおり、これは、いま取りまとめておりますのは日米共同作戦計画に関する研究を進めているわけでございまして、これはあくまで研究でございます。そして、有事になった場合にはこれを基礎にしましてそれぞれの立場計画をする、こういうことに相なるわけでございます。また、その計画を実施する場合におきましては、あるいは防衛出動命令あるいはその前の段階の命令等につきましては、これはそれぞれ法律の規定に従いまして国防会議に付議する等の手続を進めるわけでございます。そういう意味で、このガイドラインに基づく共同作戦研究の研究がまとまりました後、私が決裁し、またその内容につきましては総理大臣に報告するわけでございますが、策定に当たりましたものが統幕事務局でありましても私が責任を持って決裁し、総理大臣に報告しているという意味におきまして、シビリアンコントロールの原則は貫けるものと考えておるわけでございます。
  350. 岩佐恵美

    岩佐委員 ただ、この共同作戦計画というのは日米共同の戦争計画ということになるわけだと思いますが、その作戦計画国民の全く知らないところで行われるということに結果的にはなるわけですね。その点は大変問題だというふうに思いますし、直ちにこれは公表すべきだし、そしてこういう危険な作業はやめるべきだという意見を私どもは持っているわけですけれども、その点について指摘をしておきたいと思います。強く要望しておきたいと思います。  次に、西太平洋地域という言葉の問題でございますけれども、五月の日米首脳会談を前にして、先日訪米された伊東外務大臣が三月二十四日にワシントン日米協会主催の夕食会で「平和と安全のための日本の役割り」と題して行った演説の中で、わが国防衛努力に言及した部分は非常に重大なことを述べておられるわけです。これはもうすでにわが党の安武議員や立木議員が取り上げているわけでございますけれども、主なところを読み上げますと、「わが国は、日米安保体制の枠組みの中で所要の自衛力を整備し、自国の防衛を図る政策をとっていることは、皆様も十分御承知の通りであります。西太平洋地域は、わが国を初め、米国、ソ連、中国、さらに韓国、ASEAN諸国等、政治体制や経済・社会状況の異なるさまざまな国々の利害がかかわりを有しており、地政学的にみて複雑な様相を呈しておりますが、その一角にあってわが国がこのよう政策を推進していることは、この地域の安定に大きく貢献しております。」というふうなことを言っておられます。西太平洋地域とは、アメリカ側が使っている軍事上の概念ということで言うと米第七艦隊の作戦区域を示すもので、ハワイを境に太平洋を南北に割った西側の部分、北はアラスカ、南は豪州、ニュージーランドまで含む広大な地域を示すものではないかと思われるわけです。現に伊東外務大臣もこのスピーチの中で、先ほど読み上げましたように、この西太平洋地域について、「わが国を初め、米国、ソ連、中国、さらに韓国、ASEAN諸国等、政治体制や経済・社会状況の異なるさまざまな国」云々というふうなことで地域を指しているわけです。この点で非常に重要なことは、この前提に立って伊東外相が、「その一角にあってわが国がこのよう政策を推進していることは、この地域の安定に大きく貢献しております。」、そういう言葉を使っておられるわけです。これから貢献するとか貢献できるようにしたいということじゃなくて現在形でメークスという言葉で、貢献しているのだということを言っておられるわけで、この西太平洋地域について防衛努力の面で大きく貢献しているということを言っているというふうに素直にとることが通常だと思うわけですけれども、一体どのような貢献をしているということで伊東外務大臣がこのときこういう発言をされたのか、伺いたいと思います。
  351. 丹波実

    ○丹波説明員 外務大臣のスピーチの件でございますので私から答弁させていただきますけれども、外務大臣がワシントンの日米協会におきまして御指摘のようなスピーチをされました、その意味は、日本が安全保障政策として安保条約の枠組みの中で自衛力の整備を進めるということは何よりもまずもちろんわが国の安全と繁栄にとり不可欠だという認識でございますが、日本がそのように抑止力を安保条約とともに持つということが日本の平和と安全に役立ち、それが日本の周辺ひいてはアジア、世界の平和と安定の寄与につながっていくのだという認識を述べたわけでございまして、これは非常に常識的なところだろう、そういう意味で、外務大臣が西太平洋とここで言ったのは、西太平洋における日本防衛努力を言われたというかのごとき解釈はひとえに誤解に基づくものである、こういうふうに考えております。
  352. 岩佐恵美

    岩佐委員 この西太平洋地域という軍事的概念についての言葉を日本政府として使ったのは初めてではないか、こういうふうに私ども理解しているわけですが、伊東外相が日米協会夕食会のスピーチでこういうことを初めて言及される、そしてアメリカ側から絶大なる拍手をもって迎えられるということになると、日米首脳会談を前に今後の日米共同作戦区域を従来の極東の範囲から西太平洋へ拡大する意思表示だったのじゃないか、そういうふうにも思われるわけですけれども、この点について、わが党の安武議員の質問に対して伊東外務大臣が西太平洋地域の範囲については明確に答弁されないで、厳密な意味での質問であれば今後は言葉の使い方について防衛庁とよく相談するという答弁をされているわけですが、防衛庁としてはこの点についてどういう相談があったのか、伺いたいと思います。
  353. 大村襄治

    大村国務大臣 御指摘の外務大臣の講演における発言についてでございますが、ただいま外務省の担当課長さんからお述べになりましたとおり、西太平洋地域という言葉は特別な意味で用いられたものではない、一般的にわが国周辺の地域という意味で用いられたということを外務大臣は申されておりますので、私どももそのように理解いたしておるわけでございます。したがいまして、自衛隊の行動範囲について、広げるとかそういう趣旨のものではないというように理解いたしております。
  354. 岩佐恵美

    岩佐委員 塩田防衛局長は、四月二日の参院予算委員会で、わが党の市川正一議員の質問に答えられて、海上自衛隊と米海軍が海域を分けてそれぞれ防衛することがあるかという質問に対して、日米が共同対処する際、担当する海域を分け、したがって一定の海域で日本が他国の船舶の保護にまで当たるのは、憲法が認めない集団自衛権の行使によるとの疑義がああというふうに言われていますが、一定の海域で日本が他国の船舶の保護にまで当たるのは憲法上疑義があるということがあるならば、日本周辺海域で海上自衛隊が米艦隊の護衛に当たる、これはやはり憲法上疑義があるということになると思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  355. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの私の答弁の場合の一定の海域というのは、要するに海域分担の考え方からして、どこでもよろしいわけですから、とにかく一つの区域を決めて、そこは日本が守る、そこ以外のところはどこが守る、こういうふうに決めるやり方をした場合にはという意味で申し上げたわけでございまして、一定の海域というのは、そういう意味の、何といいますか、まさに一定の海域でございまして、日本の周辺海域というような意味とは全然違いまして、特定の区割りといいますか、海域を日米で分けて、ここは日本、ここはアメリカというやり方をした場合には、という意味の一定の海域という言葉で使ったわけであります。
  356. 岩佐恵美

    岩佐委員 そうすると、周辺海域での米艦船の護衛、これは憲法上できるという判断をされるのかどうか、その点についていかがですか。
  357. 塩田章

    ○塩田政府委員 日米共同対処の段階で、日本は周辺海域について主として自衛隊が防勢作戦を行う、こういうふうにガイドラインで決めておるわけでございますが、そういう場合に、日本の自衛上必要な範囲で日米が対処行動をとることは当然あるわけであります。その場合に、結果的に日本の自衛艦がアメリカの艦船を守るということになることも、それは当然あり得るというふうに考えておるわけであります。
  358. 岩佐恵美

    岩佐委員 私は、軍事的には全くの素人でございますけれども、いまの答弁を伺っていて、共同対処の場合には憲法違反にならないのだ、そこのところがよくわからないというか、おかしいというふうに思うのですね。それは、もうまやかしたというふうに思います。その点について、これ以上、ちょっと議論する時間もなくなってしまいましたので、その指摘をしておきたいと思います。  それからもう一つ、ちょっとお尋ねしたいのですけれども、一昨日の新聞で、環太平洋合同演習、リムパック82に韓国海軍も参加するというふうに報道されていますが、それについて政府は知っておられますか。
  359. 塩田章

    ○塩田政府委員 承知しておりません。
  360. 岩佐恵美

    岩佐委員 リムパック演習というのは、日米韓共同軍事体制につながる非常に危険な演習です。これについて、私どもは、海上自衛隊が参加する、こういうことになったのも大変重大だというふうに思いますし、この点について、韓国が海軍も参加するという話が伝わっているわけで、そういうことの危険性というのを指摘をさせていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  361. 森下元晴

  362. 井上一成

    井上(一)委員 午前中に、私からの質問に対して留保したお答えがあるわけなのです。一点は、十八日の報道。一点は、防衛白書に記載されていない理由。まず、この二点についてお答えをいただきいと思います。
  363. 塩田章

    ○塩田政府委員 十八日の報道の件につきましては、先ほどの最後のときにもお答えをいたしたわけでございますが、当時の記者会見の模様をいま読んでみますと、海幕長から発表事項としまして二つ。一つは、グアム島方面の遠航部隊の出発の件、一つは、「くらま」という新しい護衛艦でございますが、「くらま」の艦旗授与式の件についての発表がありました後、記者団との間に質疑応答があります。その中で、主として船団護衛の質問が出ておりまして、その質問の続きといたしまして、南西、南東一千マイルの航路帯を守る場合でも補給艦は必要なのかというような質問がございまして、それはケース・バイ・ケースであるということ、それから補給艦以外で補給する方法があるのかないのかというような質問があった後に、普通一千マイルと言った場合、基点はどこかという質問がございまして、それに対しまして海幕長の方から、一般的に航路は、貨物を集積する場所から考えられる、この点から言えば、京浜、阪神から何マイルということも言えるのではないかという答えをしております。  さらに質問がございまして、沖繩に基地を設けた場合、そこから一千マイルということにはならないのかという質問に対しまして、そのようにはならないと思うというよう質疑応答がございました。これを先ほど申し上げたところでございます。  それからなお、防衛白書になぜ記載していないのかということでございますけれども、特に記載をする必要といいますか、記事の脈絡からしまして、特に必要を認めなかったということだけでございまして、特段の意味はございません。
  364. 井上一成

    井上(一)委員 時間がないのではしょりますけれども、さっき答弁があったと言うけれども、私の質疑の時間の中での答弁はないわけで、私は、最後にこれは留保するということですので、それで改めて私はここで答弁を求めたのです。  それで、北緯二十度線の前後というのも、沖繩を基点ということから考えれば、こういう報道をされたそういう範囲が自然と成り立っていくわけなのです。私は、そこで、この海上自衛隊防衛海域の目標というものと、今回外務大臣訪米されたときに、アメリカの期待するであろうところの海域、これはほぼ重なっている区域だ、こういう認識を持ってよろしいでしょうか。その分担云云ということについてはいま論じません。区域というのでしょうかね、そういうことでは重なっているという認識をしていいでしょうか。  さらに、防衛白書に、ただその理由がないからだ、他意はないのだ、と。しかし私は、これは当然載せるべきだと思うのです。どうでもいい、載せなくてもいいというような問題ではないと思うのです。そういうことについて少しこれまた議論があるわけなのですけれども、時間がないからそういうことの議論は別の機会にいたします。載せなかったということについての認識がやはり私と大分違うし、もっと素直に答えてもらいたい。  それで、重なっているのじゃないでしょうかということを聞いておきます。
  365. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、お断りしておきますけれども、アメリカが言っておると言われるグアム以西、フィリピン以北という区域を、何度もお答えしておりますように、日本防衛をしてくれと言っておるわけではないということを申し上げておきます。  いま御指摘の区域海上自衛隊防衛の目標としておる区域と重なっておるかどうかというお尋ねでございますから、地理的に言えばそれは大体重なっておる、こう申し上げられると思います。
  366. 井上一成

    井上(一)委員 はい、結構です。重なっているということ。これに対する防衛負担の問題については、時間がありませんから、次に譲ります。  五日から来日をしている米国防総省のリチャード・アーミテイジ次官補代理から何か具体的な提示があったかどうか、このことも聞いておきます。
  367. 塩田章

    ○塩田政府委員 次官補のアーミテイジさんに私は先ほど会いました。今回の来日は、アーミテイジさんが新しい政権のもとで東アジア担当になられたので、日本を含む韓国、東南アジア、そういった地方にいわゆる視察旅行といいますか新任者として勉強のために旅行に来たということでございまして、その第一番目に五日に日本に来て、あした離日されます。そういう目的でございまして、いろいろ私どもと話はいたしましたが、特に何か提案を持ってきたとか、そういうことではございません。
  368. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、軍拡ではなく軍縮ということを朝から私の基本姿勢の中で質疑を交わしてきたわけです。これは参考ですけれども、エコノミストの三月二十四日付に記されている部分、いわゆる経済大国であるわが国が「軍事負担をふやすべきだ」、そういう声も聞かれるようになっているわけです。「輸出競争力を弱めるためにも、軍事負担を急増すべきだ、」云々と書かれているわけなのです。  私が伺いたいのは、わが国防衛のために必要とする装備を取得する一つの手段としてどのような形態があるのかということなのですね。これは防衛白書にも書いてありますが、国内開発による国産、あるいはライセンス生産、輸入、このことについては五十三年度決算では武器車両等購入費としての額はそれぞれ挙がっているわけなのです。それぞれというのは航空機購入費、艦船建造費、武器車両等購入費、こういうことの中でさらに細分化したいわゆる予算執行額について、後刻で結構でございますから、もう時間がありませんから、ひとつお答えをまとめてお願いをしたい。  さらにもう一点、基地対策費の執行状況について、これまた説明をつけてひとつ私の方に答弁を願いたい。  さらには、防衛庁が運輸省の赤字路線廃止にかかわって何らかの、いわゆる防衛庁としてはどの路線、あるいは全くそういうことがなければないで結構でございますが、どの路線を残してほしいというのでしょうか、何のために、そしてそういう話し合いはまとまったのかどうか、あるいは赤字の埋め合わせはだれがしていくのか、予想される金額はどれくらいなのか、こういうことについても私は尋ねておきたいわけです。さらに、私はここで新兵器開発について防衛庁長官に尋ねておきたいと思うのです。むしろこれは強い意識を、正しい認識を持っていただきたいということでありますが、新しい戦車をつくろう、そういう計画があり、それに着々と取り組まれているわけです。これはむしろ大型化されつつある、そういう傾向にあるわけです。八八式戦車なんてその代表的な兵器なんです。こういう新開発を進めている兵器なんというのは、実際問題としてはわが国では使えないわけなんですね。それを使えないというのは、たとえば重量が五十トンあるいはそれをさらに上回るぐらいのものであれば、実際日本では通行できるような道路はありませんし、橋梁なんかもそうでありますし、あるいはそういうことはむしろ鑑札のないトラクターを町の中で乗り回すようなものでもある。そういうことで、どんどんとそういうことが企業主導型の中で開発されていく。それは何を意味するか。防衛庁がサンプル的にそれを購入することによって、それはさらに海外に武器輸出という形の中でそういうものに取り組まれていく、こういうことをやはりきっちりと認識をしてもらう。そんなものは現在の日本の市街化社会の中での防衛という視点から考えても、私は非常に強い問題をそこにはらんでいるということを防衛庁長官に強く指摘をしておきます。  最後に、防衛庁長官、自衛隊は合憲であるあるいは違憲である、どちらの認識を持っていらっしゃるか聞いておきます。
  369. 大村襄治

    大村国務大臣 日本国憲法は自衛のための必要最小限の実力は保有することができると解されます。そういう意味で合憲であると考えています。
  370. 井上一成

    井上(一)委員 もう時間が大変遅うございますので、きょうの質問はとりあえずこれでおいておきたいと思います。
  371. 森下元晴

    森下委員長代理 次回は、明後九日木曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時八分散会