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太田委員 事故率ランキングというのがある本に書いてあるわけでありますけれ
ども、これはたとえば一九六五年から六九年の間にはJALは三番目である、つまり安全度が高い。ノースウエストが一番である。KLMが七番である。パンナムが四十一位である。エア・フランスが五十一位であるというふうな数字がございます。それが一九七〇年から七四年の間にはエア・フランスが一位で、ノースウエストが三位、JALが五十三位、KLMが六位ということになっております。これは運航キロ数に対して死亡者がどのくらいあらわれたかという意味での安全の事故率の指標でございます。
これを見ますと、
日本航空が著しく
安全性が高いということは全く言えないわけでありまして、ほかのより競争的な環境でもって営業をしておる
航空会社に比べて、
日本航空が特に
安全性が高いということが言えないのであれば、一社
独占体制を許している意味、根拠というものは私は失われるというふうに思うわけであります。
それともう
一つ、この
閣議了解事項の中に、国際航空に関しては「特に独占運営の弊が生ずることのないよう自戒する」ということが書いてあるわけであります。この独占運営の弊が生じているかいないかということは、どうやってこれをはかったらいいかというと、いろいろはかり方はあると思いますけれ
ども、これは通常の経済学の定義によりますと、独占が生じているということは、いわばほかの類似の市場に対して独占価格、
割り高な価格がそこでついている、あるいは供給量が
制限をされているということが示されれば、直ちにこれは独占の弊害が生じているというふうに言えるわけであります。
そこで、いわゆる東京から
アメリカに向かう太平洋線の半分についてどういうことが言えるかと言いますと、東京-
ホノルル間の旅客
運賃は一キロメートル当たりについて二十一・五円であります。東京-グアム間については一キロメートル当たり二十六・二円、東京-ニューヨーク間については一キロメートル当たりは二十一円でございます。これに対して、ニューヨーク-ロンドン、ニューヨーク-パリ、ニューヨーク-フランクフルト、つまり大西洋線というのは、ただいま
アメリカのディレギュレーション・ポリシーというものに従いましてかなり自由化が進んでおります。そのような自由化の進んだ競争的な大西洋市場ではどうなっているかといいますと、ニューヨークとロンドンの間が一キロメートル当たり十七円七十銭、パリとニューヨークの間は十六・五円、それからフランクフルトとニューヨークの間は十五・一円ということになっております。明白にこれは大西洋線の方が安くなっておる。大幅に大西洋線が安く、太平洋線が高いという事実がここにございます。
それから航空貨物で言いますと、東京-
ホノルルと東京-ロサンゼルスというのは二十七銭であります。これは一キロメートル当たりのノーマルチャージ、四十五キロ未満のミニマムチャージであります。東京-ニューヨーク間は一キロメートル当たり二十二銭でございます。これに対してニューヨークとロンドンの間あるいはニューヨーク-パリ、ニューヨーク-フランクフルトの間は一キロメートル当たり九銭であります。三分の一でございます。一社
独占体制、特に航空貨物の市場でもって
日本航空が一社
独占体制を維持しているために、
日本の顧客は大西洋の顧客に比べて三倍の料金を払わなければいけないという事実があるわけであります。
それと、供給量の問題をここでもう
一つ指摘をしたいと思います。売上高比率というものはもう少し違いますけれ
ども、太平洋線の
提供座席数の比率というものはどうなっているかといいますと、これは八一年だと思いますが、JALが三七%、ノースウエストが二四%、パンナムが二三%、そのほかの第三国が一六%ということになっております。同様にして、国際物流の中での航空貨物のシェアは、
日本と
アメリカの間が一二%であるのに対して、ECと
アメリカの間は二八%、
アメリカとイギリスの間は三六%ということになっております。これは何を意味するかといいますと、まず太平洋線において、実は
アメリカ人の客に対して三倍ぐらいいる
日本人のお客さんに対してJALが
提供している座席数というのは三七%しかないということは、つまり
日本側の供給量が落ちておる。それからもう
一つは、国際物流において貨物
運賃が不当に高いために、
日米間の航空貨物のシェアは、ほかの類似のECと
アメリカ、
アメリカとイギリスに比較して二分の一から三分の一ぐらいの量にとどまっている、こういう事実があるわけであります。つまり、これは通常の経済学の考え方でいくと、まさに独占の弊害がここに生じているということが言えるわけであります。
このような従来の
運輸省の国際航空というものに対する考え方には多分に疑念が多いわけでありまして、この際、この
日米航空交渉のイニシアチブは
外務省が握っておられるというふうに伺うわけでありますから、
伊東外務大臣から、このような自由な物の流通あるいは自由な人の交流というものを結果的に妨げるようになっている現在の航空政策、あるいは
日米航空交渉に臨む
外務省側の
態度というものについて、高い次元からひとつ御意見を伺いたいと思うわけであります。