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1981-04-10 第94回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月十日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 松本 十郎君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       石井  一君    石原慎太郎君       太田 誠一君    片岡 清一君       木村 俊夫君    北村 義和君       小坂善太郎君    近藤 鉄雄君       佐藤 一郎君    竹内 黎一君       中山 正暉君    河上 民雄君       大久保直彦君    近藤  豊君       金子 満広君    野間 友一君       石原健太郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 塩田  章君         外務大臣官房審         議官      栗山 尚一君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省条約局長 伊達 宗起君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     鳴海 国博君         法務省入国管理         局登録課長   亀井 靖嘉君         外務大臣官房審         議官      堤  功一君         外務大臣官房外         務参事官    松田 慶文君         水産庁海洋漁業         部国際課長   中島  達君         運輸省航空局監         理部長     仲田豊一郎君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   近藤  豊君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     近藤  豊君 同月十日  辞任         補欠選任   坂本三十次君     近藤 鉄雄君   古井 喜實君     片岡 清一君   田川 誠一君     石原健太郎君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     古井 喜實君   近藤 鉄雄君     坂本三十次君   石原健太郎君     田川 誠一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約  を改正する千九百八十年の議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第一〇号)  南極海洋生物資源保存に関する条約締結  について承認を求めるの件(条約第一一号)  渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国  政府中華人民共和国政府との間の協定締結  について承認を求めるの件(条約第一二号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百八十年の議定書締結について承認を求めるの件、南極海洋生物資源保存に関する条約締結について承認を求めるの件、及び、渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件の三件を議題といたします。  各件に対する質疑は、去る四月八日に終了いたしております。  これより各件に対する討論に入るのでありますが、別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百八十年の議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 奥田敬和

    奥田委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、南極海洋生物資源保存に関する条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 奥田敬和

    奥田委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  5. 奥田敬和

    奥田委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  7. 奥田敬和

    奥田委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。北村義和君。
  8. 北村義和

    北村委員 私の持ち時間は二十分だそうでございますので、念頭に入れて質問をさせていただきたいと思います。  外務大臣は、大臣に就任される早々、根室に直接お出向きになられまして、現地の住民の心をはだで感じていただきながら、その後、国連総会場所、あらゆる機会を通じて日本主張をされておられることにつきまして、心から敬意を申し上げる次第であります。特に私は、同じ地域を選挙区に持つだけに、大臣御苦労に対して本当に御苦労さまと申し上げたいのであります。  しかし、その後のソ連をめぐる情勢をながめますと、御案内のように、アフガンに対する進駐の問題、さらにレーガン大統領政権を担当するに当たりましてソ連、米、中の関係がきわめて緊張化する、ポーランド情勢等々、国際情勢は非常に変わってまいっております。  加えて、先般の新聞報道によりますと、現地漁民日ソ親善協会団体加入をいたしまして、その会員証の交付にソ連大使が出席されるというような事態が持ち上がりまして、現地は非常に混乱をいたしております。領土復帰国民運動とするこの方針に大きな亀裂が起きてくるのではなかろうか、このような心配も実は起きておるわけであります。こういった事態の推移に対して大臣としてどのようなお考えを持っておられるかお伺いいたしたい。  それからもう一点、この現地漁民団体加入をいたします背景は、漁民の心理は親善友好を深めながら漁業秩序を守り安全操業を願うという心情から発した、いわゆる素朴な行動であるわけであります。しかし、当該水域につきましては、レポ船騒動、あるいはまた最近、現地漁民でない漁船によるいわゆる密漁的な行為が頻発をいたしておるわけであります。取り締まる海上保安庁も手をやいておるというのが偽りのない現実でございます。  そしてまた、御案内のように、現地漁民にいたしますれば、違反を犯せばみずからの漁業権を失う、密漁的な行為であれば罰金で済む、こういった一つのいら立ちなどもありまして、言うならば、このまま放置をいたしますと、あの水域において、国際的にあるいは社会的に紛争の場に化するという懸念もなしとしない、こういった事態が想像されるわけでございまして、こういった面に対して大臣としてどのような御見解を持っておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  9. 伊東正義

    伊東国務大臣 去年、私、根室へ行ってまいりましたその後でも、アメリカの新政権ができる、ポーランド情勢が緊迫しているとか、いろいろな情勢があることは先生のおっしゃるとおりでございまして、私もポリャンスキー大使に会って領土の問題とかいろいろな問題を話したのでございますが、いろいろなむずかしい情勢の中にありましても、何とか日ソの間で友好的に領土問題を含めた平和条約の話し合いができないかということを期待しながら、あらゆる機会に述べているわけでございます。  いまおっしゃったような、この間羅臼で日ソ親善協会が会合を開きましたときに、ポリャンスキー大使がそこに臨席した、会長赤城さんのお名前で会員証が出たということをめぐりまして、いろいろな懸念が起こったり、いろいろな動きが出ているということを私ども承知しております。親善協会の方にも、この間、抗議文を持ってこられましたとき話したのでございますが、それは日ソ親善協会会員だということで赤城さんから会員証を出したのだということで、何も免罪符じゃない、そんなことを考えているのじゃないというお話をされたわけでございます。しかし、いろいろな動きがあることは北村さん御指摘のとおりでございまして、私どもはそれが現地の皆さんが懸念されるようないわゆる免罪符のようなことであるのかどうか、あるいはまたそれが領土抜きの日ソ友好というようなことを考えてやっておられるのかということにつきましては確認はしておりませんので、いま注意深く見ているというのが実情でございますが、そういう空気が起きるということはまことにまずいことでございますので、今後そういうことについては十分注意してまいりたいと思っております。
  10. 北村義和

    北村委員 かねてから大臣は、当委員会においてソ連側の友好的な態度の表明を待つ、こういうような御答弁をされておるわけでございます。しかし、いま申し上げましたような本当に不測の事態が起きるというようなことに相なりますとこれは大変なことになりまするので、今後とも十分な御注意と対処をお願いいたしたい、このように存じます。  次に、貝殻コンブ協定についてお伺いいたしたいと思います。  この貝殻コンブ協定につきましては、俗に言う高碕協定ということで昭和三十八年から五十一年まで継続されてきたわけでございますが、二百海里の設定に伴いまして五十二年からは中断をいたしておるわけであります。この間、大変な御苦労をされたことを聞き及んでおりまするけれども、残念ながら双方の折り合いがつかず、妥結に至っておらない、このように承知をいたしておるわけであります。この妥結に至らない点を要約いたしますると、コンブ採取区域の呼称の問題、それから操業手続、いわゆる許可証の発券の問題、裁判権の問題、以上三点に集約されると聞いておりまするけれども水産庁、おいでになっておりますか、お答えをいただきたいと思います。
  11. 中島達

    中島説明員 ただいま先生が御指摘になられましたとおりでございます。
  12. 北村義和

    北村委員 民間協定とはいいながら、以上の三点になってまいりますると、どうしても政府指導を待たなければ妥結のできない問題点のみだと思うわけでございます。交渉当事者である北海道水産会が今年の最終案を詰めるに当たって、いわゆる協定本文作業議事録の二つに分けて最後の詰めをしておると聞いておりまするけれども、この見通しについてどうなのか。  それからもう一つ、これは私の危惧になるのかもしれませんけれども、実際のあの水域ソ連邦が実効支配をしている地域である。それからまた、予想もしない者がソ連当局締結をしてコンブ採取をしても、国内法的にはわが国の国内では取り締まることができないなどということも聞いておるわけでございまするけれども、こういった点を踏まえて欧亜局長にお聞きいたしたいと思うのでございます。  何としても妥結できるように外務省の特別な積極的な努力をお願いいたしたい、こういうふうに思うわけでございますが、欧亜局長の御見解をお聞きいたしたいと思います。
  13. 武藤利昭

    武藤政府委員 コンブ漁に関します民間協定問題点は先ほど御指摘のとおりでございまして、これを一言で申しますと、要するに北方領土問題が絡んできているということになるわけでございます。このように大きな原則の問題が絡んでおりますだけに非常に交渉が難航しているということでございますが、御承知のとおり、かつてはそのような問題なしに全くスムーズに民間コンブ漁が行われていたわけでございまして、その後、ソ連側が非常にかたくなな態度に変わってきたということは遺憾に存じているわけでございます。  その協定の形式につきましては、協定本文議事録に分けるとか、いろいろ工夫をしていただいておりまして、私どもも御相談にあずかっております。  いま見通しはどうかというお尋ねがございましたけれども、どうも現段階で見通しについて申し上げることはむずかしいのでございますが、ことしは早い時期から当事者の間で交渉が始まるように聞いておりますので、外務省といたしましても、できるだけ早期に交渉が円満解決いたしますよう期待いたしておりますし、また、できる限り外務省としても御協力を惜しまない所存ではございますけれども、ただ、領土問題に絡む本質にかかわる部分になりますとなかなかむずかしい点が残るおそれもあるということだけは申し上げる必要があるかと存ずるのでございます。私ども現地コンブ漁民方々御苦労十分承知しているわけでございますので、本当にことしこそこの協定が円満に妥結するよう期待している次第でございます。
  14. 北村義和

    北村委員 協定中断をされて、本年で五年目を迎えるわけであります。先ほど申し上げましたように、この間、関係者、特に先輩各位大変な御努力をされたことを私は承知をいたしております。特に亡くなられました川端元治鮭連会長などは、このことによって命を縮めたとさえ言われております。また、川端先生のあの真剣な努力によって現地漁民も耐え抜いてきたと言っても過言でないわけでございます。その間、漁民方々経営安定資金を含めて現在では三十数億を超える負債を抱えてあえいでおる。そして、ことし決着がつかなければ集団出漁もやむを得ないのではないかという不穏な動きすら実は感じられるわけであります。  さらにまた、先ほども申し上げましたように、それに密漁的な行為やら、あるいは不穏な政治動静不規則発言などが加わってまいりますとこれは大変なことになるのではなかろうか、こんなふうに実は心配されるわけでございまして、事務当局も真剣に取り組んでいただきたいと思いますけれども大臣、これはもう政治的な判断をしなければならない時点に立ち至っているように私は考えるわけであります。特に、幸い大臣漁民の心を十分承知をされている最適の大臣でございます。どうかひとつ、この際、適切な御指導、御判断を願って、漁民の願い、そしてまた現地における安全操業が確保できるように何とか御配慮をちょうだいいたしたいものだ、こういうふうに考えて、大臣の御所見を伺って質問を終わりたい、このように存ずるわけであります。
  15. 伊東正義

    伊東国務大臣 北村さんの御質問、私も痛いほどよくわかるわけでございます。この間も歯舞の漁業者方々にも実は東京に来られてお会いしたわけでございまして、私、ポリャンスキー大使に会いましたときも、日本側で経済的な問題でいろいろ何か提案することはないかと盛んに向こうから話がありましたとき、私がまず先に言ったのは、何とかコンブくらいとらすことと墓参のことを言ったのでございます。まずそのくらいは少なくともやるべきではないかということをポリャンスキー大使にも言ったわけでございまして、モスクワにそれを伝えると言って伝えたということは、その後も調べてみましたら伝えてありますが、まだ返事は実は来ておりません。何とかして実現してあげたいなということを考えておるわけでございますが、先生も御承知のように領土がらみの問題があるものですから皆苦労するわけでございまして、私もことしの漁期に向けて何とか実現できないかということで、私なりに最善の努力をしてみたいと思っております。
  16. 北村義和

    北村委員 終わります。
  17. 奥田敬和

  18. 太田誠一

    太田委員 日米航空交渉が六日から始まって、きょうまで予定されておりましたけれども、大体きのう終わったようでございます。私、実は三年ほど前にアメリカにしばらく滞在をいたしまして、そのときにアメリカ航空運賃日本航空運賃とを身をもって両方とも体験する機会があったわけであります。そのときに、まずアメリカ航空運賃が安いのに驚かされまして、というよりも、逆に言うと日本航空運賃が余りにも高いのに驚いたわけです。いつか機会があれば、なぜわれわれがこのように割り高運賃を払い続けなければいけないのかということを運輸省にぜひ一度伺いたいと思っておりましたところ、ちょうどタイミングよくこういう航空交渉がありましたので、この際、この外務委員会場所をかりて私の長年の疑惑を払いたいと思うわけでございます。  そして、この外務委員会場所をかりるということを正当化する理由があるわけでして、実は今度の日米航空交渉のチェアマンは外務省の方が務めておられるというふうに伺っておるからであります。  時間がありませんので、早速内容に入らせていただきますけれども、まず、運輸省の方から次の質問に答えていただきたいのであります。全部で四つございます。  アメリカ側からユナイテッドエアライン参入を求められておるというふうに聞いておりますけれども、これを認めるおつもりかどうか。  それから、アメリカ側ホノルルでの提案というのは、従来の経過から見て十分積極的なものだと思えるわけですけれども、それはどうでしょうか。これは二番目でございます。  それから三番目が、日米間のインバランスということは、これは以遠権の問題以外に何かあるのかという点。  それから第四番目が、今回の交渉では、日本側から指定航空企業制限する、あるいはアメリカ側企業増便をチェックするための方策を検討するという申し出が新たになされたというふうに聞いておりますけれども、これは事実かどうか。  以上の四点について、まず運輸省のお考え方をお聞きしたいわけであります。
  19. 仲田豊一郎

    仲田説明員 お答え申し上げます。  初めのユナイテッド日米マーケットへの参入でございますが、これは御承知のように現在日米間で運営しております航空会社は、日本側日本航空一社でございますが、すでにアメリカの方からはパン・アメリカン、ノースウエスト、それからフライング・タイガー、これは貨物の専用会社でございます。それにコンチネンタル、この四社が現実日本に入ってきておりまして運航を行っております。このほかにすでに指定を受けた航空会社といたしましてTWAがございます。すなわち、すでに現在の航空協定に基づきまして指定されているという航空会社アメリカ側が五社ある、こういうような状態になっております。  さらに無制限アメリカ航空会社乗り入れを今後も航空協定上の問題として認め得るのかどうかという法律上の観点、それからもう一つは、わが方が年来主張しております日米間の不均衡という実質的な問題、こういうわれわれの年来の主張に対して、ユナイテッド乗り入れということがどういうような位置に立つのか、われわれとしてはこれは非常に重大な現状の変更であると考えておりますが、こういうような実質的な問題、この二点を十分勘案したあげく、ユナイテッド問題の処理を慎重に行いたいと考えております。  二番目のホノルルでの提案先生指摘のとおり、米側からはいままでと変わった積極的な提案がございました。その点は短く申し上げますと、積極的な提案路線の問題でございます。従来、日本側不平等の典型的な形として主張しておりましたシカゴ及びシアトルの乗り入れを認める、その他の地点乗り入れもよろしい、それから以遠権に対する配慮も行う、こういう内容がございました。これはそれなりにわれわれ評価しておる次第でございます。  それから、日本側がとられているインバランスとは何かという御質問でございますが、ただいま申し上げました路線権乗り入れ地点不平等向こうが独占的にできる路線日本ができないという問題、それから以遠権不平等、それから輸送力決め方に関する不平等、それから企業乗り入れの数に関しての決め方が不均衡である、こういうような主張がわれわれのインバランス論の根幹でございます。  それから、指定企業の数の制限及び輸送力の問題でございますが、これも私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、現行協定上ある限度があるのが当然であるということ、それから輸送力も、完全にアメリカ主張するような自由な輸送力提供というのは、航空企業の性格から考えまして好ましくないという見解をとっている次第でございます。
  20. 太田誠一

    太田委員 いま、まずユナイテッドエアライン乗り入れについて慎重な態度でもって対処をしたいというお話がございましたけれども、実はこの申し出に対して慎重な態度対処するとかなんとかという問題ではなくて、これは協定四条の規定によって遅滞なく与えなければならないとされているわけですから、今回の日米航空交渉の、いわゆるこちら側の交渉力交渉の種にはなり得ないものであるわけです。ですから、これがあたかも交渉材料であるように一部で宣伝されていることは非常に間違いであるということをまずここで申し上げたいわけであります。  それから、いわゆるインバランスの問題でありますけれども幾つかの新聞に、日米間には非常に広範囲にわたって航空協定におけるインバランスがあるというふうなことが伝えられておりますけれども、実際問題として乗り入れ地点の問題について言えば、乗り入れ地点の数においてはアメリカ側の方が多く日本提供をしているわけでありますし、それから発地点の数から言えば、これはもともと自由なわけであります。決して乗り入れ地点の問題でもって日本アメリカに対して不平等な取り扱いを受けているということはないというのが、これは客観的な見方でございます。それが私が申し上げたい第一点であります。  それから、指定企業数の問題でありますとか、あるいは増便をチェックする方策を考えるというのは、これまでの航空協定にはなかった事柄運輸省側がこの際持ち出したわけでありまして、米側が積極的な態度でこの交渉に臨もうとして、従来の日本側主張を大幅に取り入れた提案をしてきたにもかかわらず、むしろ日本側交渉というのは、その交渉自体を不成功に終わらせる可能性を十分持ったような態度でもって臨んだのではないかという疑いを私は持っておるわけであります。  不均衡は、事実上は以遠権の問題についてしかない。不均衡がある、たとえば指定企業数の問題で言えば、これはもともと航空協定の中に複数企業指定することというふうになっているわけでありますから、この複数企業指定していないのは運輸省がそうしているわけでして、一社独占体制をつくっているのは運輸省がしているわけでして、アメリカ側が四社、五社をそこに認めるということは、この航空協定の精神に全く沿ったものであるということを言わざるを得ないわけであります。ですから、インバランスの問題というのは以遠権の問題を除いてほかにはない。一般に信じられている事柄は、むしろ誤っているというふうに私は言いたいわけであります。そして、私は、どうして日米航空交渉に当たって運輸省がこのようなかたくなな態度をとられるのかということは理解できないわけでありましたけれども、実はこれは国際線の一社体制というものをどうしても守りたいというお気持ちが運輸省にあるのではないか、そこからすべての発想が出てきているのではないかというような気がするわけであります。  実は日本航空の一社独占体制というものは四十五年十一月の閣議了解事項というふうになっておりまして、ここでその幾つかのことが書いてあります。まず、閣議了解事項の中で、安全性の確保については十分考えなくてはいけない。恐らくわが国のような自由主義国家でもって一社独占体制が許されるということは、航空産業というのは非常に安全性が重要であるということがとりわけ重視される場合にのみ初めて一社独占体制というものが許されるわけでして、安全性の確保について、実際問題として、ほかの運賃が自由に決められている、あるいは競争的な環境が守られている大西洋線に就航している航空企業、あるいは同じ太平洋線に就航している企業でも、日本から出るお客さんを運ぶよりもアメリカから運ぶお客さんの方が多いアメリカのノースウエストとかパンナムとかいうアメリカ側企業、つまり日本航空会社よりもより低料金で運んでいる航空会社の方が事故率が多いかどうか、日本航空が著しく安全性が高いかどうかということについて運輸省側は何かデータを持っておられますか、そこをお聞きしたい。独占を許されるとすれば、安全性が特に日本航空が高いということでなければいけないわけであります。それについて運輸省側は何かデータを持っておられますか。
  21. 仲田豊一郎

    仲田説明員 いま手元にデータはございませんが、四十七年でしたか、四十八年でしたか、事故が続発したことがございまして、それ以来、日本航空は安全の問題を会社の最大の重要な事項ということで、いままで安全運航を図ってきております。  そこで、たとえばエンジンの取りおろし率という一つの指標があります。これは出発しようとしてエンジンを回したところが、ぐあいが悪くて、整備不良で取りおろしたとか、それから定時出発率、そのスケジュールどおり出たかどうかという率、こういうのは安全という面から言いますと整備が非常に行き届いて行われているかどうかということを示す指標だと思いますが、この両方の指標は、私は具体的な数字はいま持ち合わせておりませんが、日本航空はほかの会社に比べましてずば抜けていいということが申し上げられると思います。
  22. 太田誠一

    太田委員 事故率ランキングというのがある本に書いてあるわけでありますけれども、これはたとえば一九六五年から六九年の間にはJALは三番目である、つまり安全度が高い。ノースウエストが一番である。KLMが七番である。パンナムが四十一位である。エア・フランスが五十一位であるというふうな数字がございます。それが一九七〇年から七四年の間にはエア・フランスが一位で、ノースウエストが三位、JALが五十三位、KLMが六位ということになっております。これは運航キロ数に対して死亡者がどのくらいあらわれたかという意味での安全の事故率の指標でございます。  これを見ますと、日本航空が著しく安全性が高いということは全く言えないわけでありまして、ほかのより競争的な環境でもって営業をしておる航空会社に比べて、日本航空が特に安全性が高いということが言えないのであれば、一社独占体制を許している意味、根拠というものは私は失われるというふうに思うわけであります。  それともう一つ、この閣議了解事項の中に、国際航空に関しては「特に独占運営の弊が生ずることのないよう自戒する」ということが書いてあるわけであります。この独占運営の弊が生じているかいないかということは、どうやってこれをはかったらいいかというと、いろいろはかり方はあると思いますけれども、これは通常の経済学の定義によりますと、独占が生じているということは、いわばほかの類似の市場に対して独占価格、割り高な価格がそこでついている、あるいは供給量が制限をされているということが示されれば、直ちにこれは独占の弊害が生じているというふうに言えるわけであります。  そこで、いわゆる東京からアメリカに向かう太平洋線の半分についてどういうことが言えるかと言いますと、東京-ホノルル間の旅客運賃は一キロメートル当たりについて二十一・五円であります。東京-グアム間については一キロメートル当たり二十六・二円、東京-ニューヨーク間については一キロメートル当たりは二十一円でございます。これに対して、ニューヨーク-ロンドン、ニューヨーク-パリ、ニューヨーク-フランクフルト、つまり大西洋線というのは、ただいまアメリカのディレギュレーション・ポリシーというものに従いましてかなり自由化が進んでおります。そのような自由化の進んだ競争的な大西洋市場ではどうなっているかといいますと、ニューヨークとロンドンの間が一キロメートル当たり十七円七十銭、パリとニューヨークの間は十六・五円、それからフランクフルトとニューヨークの間は十五・一円ということになっております。明白にこれは大西洋線の方が安くなっておる。大幅に大西洋線が安く、太平洋線が高いという事実がここにございます。  それから航空貨物で言いますと、東京-ホノルルと東京-ロサンゼルスというのは二十七銭であります。これは一キロメートル当たりのノーマルチャージ、四十五キロ未満のミニマムチャージであります。東京-ニューヨーク間は一キロメートル当たり二十二銭でございます。これに対してニューヨークとロンドンの間あるいはニューヨーク-パリ、ニューヨーク-フランクフルトの間は一キロメートル当たり九銭であります。三分の一でございます。一社独占体制、特に航空貨物の市場でもって日本航空が一社独占体制を維持しているために、日本の顧客は大西洋の顧客に比べて三倍の料金を払わなければいけないという事実があるわけであります。  それと、供給量の問題をここでもう一つ指摘をしたいと思います。売上高比率というものはもう少し違いますけれども、太平洋線の提供座席数の比率というものはどうなっているかといいますと、これは八一年だと思いますが、JALが三七%、ノースウエストが二四%、パンナムが二三%、そのほかの第三国が一六%ということになっております。同様にして、国際物流の中での航空貨物のシェアは、日本アメリカの間が一二%であるのに対して、ECとアメリカの間は二八%、アメリカとイギリスの間は三六%ということになっております。これは何を意味するかといいますと、まず太平洋線において、実はアメリカ人の客に対して三倍ぐらいいる日本人のお客さんに対してJALが提供している座席数というのは三七%しかないということは、つまり日本側の供給量が落ちておる。それからもう一つは、国際物流において貨物運賃が不当に高いために、日米間の航空貨物のシェアは、ほかの類似のECとアメリカアメリカとイギリスに比較して二分の一から三分の一ぐらいの量にとどまっている、こういう事実があるわけであります。つまり、これは通常の経済学の考え方でいくと、まさに独占の弊害がここに生じているということが言えるわけであります。  このような従来の運輸省の国際航空というものに対する考え方には多分に疑念が多いわけでありまして、この際、この日米航空交渉のイニシアチブは外務省が握っておられるというふうに伺うわけでありますから、伊東外務大臣から、このような自由な物の流通あるいは自由な人の交流というものを結果的に妨げるようになっている現在の航空政策、あるいは日米航空交渉に臨む外務省側の態度というものについて、高い次元からひとつ御意見を伺いたいと思うわけであります。
  23. 松田慶文

    ○松田説明員 大臣にお答えいただきます前に、一言お答えさせていただきます。  御指摘のとおり、昨日まで日米航空交渉をいたしましたが、彼我の懸隔が大きくて、一応中断いたしまして、この次は五月の中、下旬にワシントンにおきまして協議を再開いたしますが、ただいま御指摘の諸点も十分念頭に入れまして交渉に臨むつもりでございます。
  24. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  日航の料金というのは、御承知のように公共的な性格を帯びていることもございますし、またアメリカ側はそういう考えは全然ないということで、いろいろ物の考え方に違いがあることが、アンバランスが起きたり、まとまらぬ一つの原因であるわけでございますので、日本側の考え方とアメリカの考え方をどういうふうに調和させるかということが交渉をまとめる大きな原則だというふうに私は思うわけでございまして、この次の交渉では何とかこの日米間の話し合いがまとまるように、外務省としましても運輸省と一緒になって努力してまいりたいと思います。
  25. 太田誠一

    太田委員 独占の弊害についてお聞きしたわけです。
  26. 伊東正義

    伊東国務大臣 外務省運輸省のやっておられる政策につきまして、それはどうこうと申し上げるのはいささかぐあいが悪いことでございますので、私どもとしましては、これは運輸省の航空政策の基本の問題でございますから、運輸省に十分考え方を聞いて、われわれとしてもよく相談をしていかなければならぬと思うわけでございまして、私の方からこれがいいか悪いかということをいまここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  27. 太田誠一

    太田委員 政府というものはどういうものか、不特定多数の国民から税金を取って、不特定多数の国民の利益になるように行動するのが政府の役割りだと私は思っています。そうであれば、航空政策を考えるときに、国民の多くが自由に、ノーマルな状態で頻繁に交流できるようにするというのが国際航空政策の基本でなければいけない。つまり、不特定多数の国民の利益というものを考えるのが本来のわが国の航空政策だと私は思うわけであります。  それにもかかわらず、運輸省のこれまでやっておられることというのは、国民の利益というものよりも、むしろ特定の航空企業の経営の安全性あるいは独占的な利益というものを守るために費やされてきたということが言えるわけでありまして、それらのことは民主主義国家での政府の役割りではないというふうにわれわれは考えるわけであります。  ここまで極端に独占の弊害、高価格、そして供給量の制限が行われている日米航空協定、そしてまた日米航空市場太平洋線という中で、アメリカ側から自由化政策を要求されるまでもなく、日本側から自由な国民の交流――団体ツアーというのがありまして、ヨーロッパやアメリカに行けば、たくさんの日本人が徒党を組んで歩き回っている。海外旅行に行くとすれば皆さんパッケージツアーで行かれる。ああいう旅行者ばかりが日米間を往復することがノーマルな状態だとは私は決して思っていないわけであります。  一人一人がそれぞれの用で、あるいはそれぞれの楽しみでもって個人的な旅行ができる、個人的な用で移動ができるということのために便宜を図るのが本来のノーマルな航空政策のあり方ではないかと思うわけであります。現状では、団体客は大幅な団体割引の利益を享受しておりますけれども、逆に言いますと、個人のノーマルな、本来望ましい旅行者というのが不当に高い運賃でもって旅行せざるを得ないという状況になっているわけであります。これはひとり運輸省の産業政策の問題ではなくて、わが国とほかの海外諸国との間に当然あるべきノーマルな国際交流というものを事実上妨げているということになるわけでありますから、この際、外務大臣におかれましても、この問題に虚心に注意を払っていただきたいと思うわけであります。  きょうは時間が限られておりますので、ぜひとも次の日米航空交渉が再開されるときまでに、もう一度私はデータを整理しまして質問をさせていただきたいと思うわけであります。  以上でございます。ありがとうございました。
  28. 奥田敬和

  29. 土井たか子

    ○土井委員 本日私が質問申し上げますことは、非常に政治的な問題であります。したがいまして、関係の局長以下事務当局の皆さんももちろんのこと御出席でありますけれども外務大臣にひとつきっぱりした御答弁のほどをお願い申し上げたい、このことをあらかじめお断りをして本題に入ります。  外務大臣、金大中氏事件について、裁判過程の中で、私たちは終始一貫、判決文の要求ということを申し上げてまいりました。当初、大臣は、判決文を入手できるように韓国側に要求するという努力をずっと続けられたはずなのでございます。しかし、この問題の焦点は、言うまでもなく日韓政治決着という問題がございまして、この金大中氏問題をめぐる政治決着の中身に違反しているか、違反していないか、こういうことであったはずでございます。  いま、私、手元に二月十六日の予算委員会会議録を持ってまいりましたが、伊東外務大臣の御答弁の中に、「判決要旨にもその点は触れておりますが、日本にいたときの政治行動については問わない、韓国へ帰ってから後の行動につきまして証拠によって判断をしたという意味の要旨が有権的な解釈で来ているわけでございまして、日本としましては、これはその要旨で政治決着には反しないというふうに私どもは考えておるわけでございます。」こうお答えになっているのですが、これはこのとおりにもう一度確認をさせていただいて、先に進みたいと思います。  大臣、このようにお考えになっていらっしゃるわけでありますね。そして、ここに言うところの判決要旨というのは、外務省から私どもの手元にいただきました「金大中氏に対する判決理由要旨(第一審)」という文書の中に言う中身を判決要旨と大臣はおっしゃっているのでありますね、確認をさせていただきます。
  30. 伊東正義

    伊東国務大臣 そういう答弁をしたとおりでございます。
  31. 土井たか子

    ○土井委員 そこの中で「日本にいたときの政治行動については問わない、」ここが、実はいまおっしゃっている判決要旨、正確には判決理由要旨、この中の「被告人金大中に対する反国家団体関連部分については、友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、被告人が韓民統議長の身分を引続き維持しつつ国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、国内法上の証拠に依り本件判断したことを明らかにする次第である。」と書いてある四項目目のこの中身について、いわゆる政治決着に違反しないというふうに大臣としては理解されてこのような答弁をされたわけでありますか。
  32. 伊東正義

    伊東国務大臣 そのとおりでございます。
  33. 土井たか子

    ○土井委員 大臣、これはもう私どもも、当委員会もそうでございます、国会の中の各委員会の中で、いままでこの判決理由要旨を信じさせられてきたのです。この判決理由要旨の中に言ういま指摘した部分について、このように言っているから政治決着に違反しないということを信じさせられてきたのです。私もそのように信じなければならないと思ってきましたよ。  大臣、ところがどうでしょう。いまここにございますのは、先日市民グループの方が入手された第一審の判決文なんです。もちろんハングル語で書いてありますよ。訳していただきました。どこをどう押さえても、いまのこの判決理由要旨に出てくる「反国家団体関連部分については、友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、」云々という部分は出てこないのです。何ら触れられていない。判決理由要旨なるものが一体どこに書いてあるのか、目を皿のようにして見ても、そんなものは何にもないですよ。それのみならず、はっきりと日本における言動、これが主なる部分となって、国家保安法違反によるところの死刑ということが宣告されている、こういう関係になっているのです。中身をひとつ提示申し上げますから、これをごらんいただきたいと思います。委員長、お許しいただきます、よろしいですね。  第一審の判決文についていまちょっと大臣にお見せをいたしましたけれども、これはハングル語でございますから、この本文と訳文をひとつ改めて大臣のお手元にお届けをさせていただくようにいたします。この第一審の判決文を見ても、判決理由要旨は全然違っているということがまず言えるわけであります。判決文そのものがそのことをはっきり物語っている。これは動かぬ証拠と申し上げていいと思うのですが、そうなってくると、いやそうじゃない、政治決着に違反しておりませんという反証を外務省からひとつお示しいただかなければならぬという段階にただいまなりました。  ところで、これが先日一般に公表され、そして報道されました市民グループの方々が入手された第一審の判決文でありますが、きょう私がさらに提示いたします、ここにございますのは第二審の判決文なんです。入手し得た第二審の判決文なんですね。これも同じくハングル語で書いてございますが、委員長、お許しをいただきましてこれも大臣にひとつごらんいただきます。  この第二審の判決文そのものは、全文三十九ページから成っております。判決主文、判決理由という順で進んでまいりまして、中身は大きく三つに分かれます。一つは国家保安法及び反共法違反、二つ目は内乱陰謀、三つ目は戒厳法違反、この三つの部分に分けられるわけでございますけれども、問題は、この国家保安法違反という点に十幾ページ割いておりまして、ここが最も主なる部分であります。もう大臣も御案内のとおり、国家保安法には「首魁」という用語がございまして、その第一条に「首魁は死刑または無期懲役に処する」ということになっておりまして、この国家保安法違反であるという理由によって死刑が宣告されているわけであります。  まずそのことを申し上げまして、さて、その判決文の中身から少しお尋ねを進めたいと思うのですが、この第二審の中で証人が一人証言をいたしております。たった一人であります。この一人の証言について、私は当委員会でも取り上げて質問をいたしました機会が、すでに昨年の十一月五日という日にございます。名前は尹孝同という名前であります。法廷外においては呂興鎮というふうに名乗っている場合もございます。木内局長にこのことをお尋ねしましたら、よくわからぬ、よくわからぬという答弁の連続でございましたけれども一つここで確かめをしたいと思いますが、中身に先立ちまして、まず法務省にお尋ねを進めます。  この尹孝同氏なる人物は、昨年の夏、七月ごろ、さらに十月下旬、そうしてさらに十一月の終わりから十二月にかけて出入国をしたということが事実としてございますか、どうですか。記録に載っているところに従って、まず御答弁をお願いいたします。
  34. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 お答えいたします。  先生が特定されました時期につきまして当局保管の記録を調べましたところ、昨年七月十六日に尹孝同という名前の人が成田を出国し、同じ月の二十六日に成田に帰ってきた、それから五十五年の十月二十六日に同じ名前の人が成田を出国して、同じ月の十月三十日に成田に入ってきた、それから同じ人が五十五年の十二月八日に成田を出国しまして十二月二十三日に成田に帰ってきた、こういう記録が当局の方に保管されております。
  35. 土井たか子

    ○土井委員 問題は、いま御答弁くださいました中で、五十五年の十月二十六日に成田を出国して同じく五十五年の十月三十日に入国をしているというこの記録の部分でございます。裁判記録、判決文によりますと、この尹孝同なる人物がただ一人の証人として証言をしているわけでありますが、それは検察側からの申請による証人であることは言うまでもございません。その証言した日は十月二十九日という日であります。  この尹孝同について、まず証人として裁判所が採用するかどうかというのは、一般の裁判手続からいたしますと、事前に申請をして裁判所が認めて証言台に立つというのが事の順序でございまして、およそこの証人に対しても、証人として認めるかどうかということはこの日以前に問題になっているはずであります。外務省は、在韓大使館員が法廷に終始一貫傍聴されていたわけでありますから、その間の事情についても御存じのはずだと思うのです。十月二十六日に成田を出て十月三十日に入国したというこの間に、韓国における金大中氏事件の第二審で証言をするためにかの地に行っているという事情が、これは時間的経過からすると前後左右つじつま合わせをしてはっきりしているわけでありますけれども、これは事前に外務省は御存じだったのじゃありませんか、いかがですか。
  36. 伊東正義

    伊東国務大臣 私だけ答えろということでございますが、そういう事実関係は私、存じませんので、政府委員が答弁することをお許し願います。
  37. 木内昭胤

    ○木内政府委員 第二審におきましても大使館員が傍聴を続けておったわけでございまして、その間の事情、これを照会することは可能かと思います。
  38. 土井たか子

    ○土井委員 それは可能である限りはすでにやっていなければならぬはずです。私が質問をしたときには、木内局長、あなたは余り積極的な答えではない。そのまま今日に至っているのですよ。誠意があれば、そして真剣にこの問題をお考えになるのなら、当時照会をすることは可能だったはずなんです。照会をせずして今日に至っている。ひとつこの点についても具体的に照会を再度要求します。よろしいですね。  さて、この尹孝同なる人物については、もうすでに前回この外務委員会で取り上げたときにも私は申し上げたわけでありますけれども、一九七七年の五月一日に韓国中央情報部へ、北朝鮮の指示を受けて在日韓国居留民団内で反国家活動を行ってきたということを自首して出た人物であります。自首するまでに四回にわたって北朝鮮に渡ってスパイ活動の指示を受けたということも自白しているのです。そうしてしかも、郭東儀韓民統組織局長らを一九七〇年にピョンヤンに送って一年間教育を受けさせたことがあるということもその席で言っているのです。その事実ありやなしやということで、当委員会においてこの郭東儀氏が出国されたことがあるかということを質問しますと、法務省としてはそういう記録はございませんということであります。  さて、この同じ人物について、お調べいただいたらこれもはっきりわかる事実でありますけれども、茨城県におきまして所有権移転登記問題をめぐる事件に関係いたしておりまして、被告側の証人として申請をされ、証言をした。ところが、原告側はこの人物のいままでの一連の行跡を物語る報道記事を初めとした資料を提示いたしました。それに従って裁判長は、この人物の証言を措信できないものと推測すべきだと言って、この証言を証拠としては退けているのです、尹孝同氏の証言をですよ。この人物が第二審では検察側の唯一の証人なんですね。  しかも、判決文の中で触れてある部分、ここは大事ですから読みましょう。「韓民統日本本部に関する報告などに対する領事証明書及びその他の種々の証拠と当審で適法的に証拠調べを終えて採用した証人尹孝同の当法廷での陳述、検察官作成の尹孝同に対する参考人陳述調書、尹孝同の自筆陳述書などを総合すれば、韓民統日本本部の重要構成員は反国家団体である朝総連の構成員であるか、それに同調する者たちであると認定し得る。」こう書いてあります。つまり、ここで言っているとおり、韓民統というのが反国家団体であるということのまことに有力な決め手としてこの尹孝同氏なる人の証言が取り上げられて、判決文の中で問題にされているのですよ。判決を出すに当たってこの果たす役割りというのは非常に大きいのです。大臣、これをお聞きになってどうお思いになりますか。
  39. 伊東正義

    伊東国務大臣 感想を述べろということでございますが、韓国はそれをどう見ているかでございますが、日本では外国の団体についてそれがその国の反国家であるかないかというようなことは何も判定する必要もございませんでやっておりませんので、土井先生の御説明、そういうこともあるのかなと思っていま聞いたところでございます。
  40. 土井たか子

    ○土井委員 問題は、韓民統が反国家団体であるという認定をするのに、在日韓国人であり、かつてスパイ行動をやっていたということを韓国に行っていろいろと自首した人物、この人を唯一の証人として証言をさせたのを取り上げて決め手としているのです。大臣、そんなこともあったのかなで済みませんよ。在日韓国人ですから、日本にとって無関係とは言えないのです。  警察は御出席ですか。――警察はこの金大中氏事件について捜査活動は続けていらっしゃると思いますが、そのとおりですね。
  41. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 そのとおりでございます。
  42. 土井たか子

    ○土井委員 この尹孝同氏について、過去、事情聴取をしたことがございますね。
  43. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 ございます。
  44. 土井たか子

    ○土井委員 それはいつで、どういう中身でございましたか。
  45. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 昭和五十二年五月二十九日のことでございました。警視庁にこの尹孝同という方が出頭されまして、自分は過去に四回ほど北朝鮮の方に日本海沿岸から密出入国をしたことがある、そういったことを内容とする話を申し出てこられたわけでございます。これにつきまして、これは出入国管理令違反という罪に当たる疑いがあったわけでございまして、警視庁といたしましては、たしか十数回にわたりまして本人を取り調べいたしております。
  46. 土井たか子

    ○土井委員 十数回にわたるその取り調べの最後はいつでありますか。
  47. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 手元の記録によりますれば、五十二年七月四日となっております。
  48. 土井たか子

    ○土井委員 警察の方でもそのように捜査を続けてこられた対象になっている人物である。この人物が第二審で果たした役割りは非常に大きいのです、このことが一つは決め手になったのですから。判決文を見ると、明確に書いてあるのです。改めてこの事情についても照会をするということを、大臣、約束できますね、いかがですか。
  49. 伊東正義

    伊東国務大臣 市民団体の方が裁判の判決記録を入手したということを新聞で読んだのはきのうでございますので、私としましても、それがどういうものであるか、本物であるのかどうかということが問題でございますので、私としては照会をしてみようという気持ちでおるわけでございますが、いまの人物がどうこうというのは、土井先生の方が何か非常に詳しいようでございまして、照会する必要があるのかなと思って聞いたのでございますが、後ほどいろいろ御質問があるでしょうから、全般的にお答え申し上げます。
  50. 土井たか子

    ○土井委員 いま申し上げている部分が、つまり韓民統が反国家団体であるということをまず問題にいたしまして、さて、主なる部分は、先ほど申し上げた国家保安法の第一に言う「首魁は死刑または無期懲役に処する」というこの部分に関係をするところであります。果たして金大中氏が韓民統の議長であったかどうか、そして議長という活動が日本における活動として問題にされているかどうか、この点、もし日本での活動を問題にして、それを有罪の決め手にし、死刑を判決したということになっているならば、明らかにこれは政治決着違反であると言わざるを得ないですね。大臣、改めて私はこのことに対して確かめさせていただきますが、これはそう考えてよろしゅうございましょう。
  51. 伊東正義

    伊東国務大臣 政治決着は、その後に実は一つついておるのです。向こうへ帰りましてから反国家運動をしなければ、という条件はついておるのでございます。しかし、われわれとしましては、日本内における活動は問われないということが政治決着の非常に大きな部分になっておりますので、要旨にもそういうことはわざわざ向こうからも書いてきたわけでございますので、いま先生が言われたような考え方でこの問題を考えているわけでございます。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 ということになりますと、さあ、ここが大事な部分ですから、私はやはり判決文の翻訳をしていただいたのを読ませていただくことにいたします。「韓民統日本本部結成の必要性とその趣旨を説明し、」というのは、金大中さんが「八月四日、東京パレスホテルで上記裵東湖、金載華、趙活俊、金鍾忠などと再び会合し、韓民統日本本部を結成する際に、「韓半島を中立化し、南北連邦制による漸進的統一を実現する」などの内容からなる韓民統日本本部の綱領を定め、被告人を上記韓民統日本本部の議長とし、副議長に金載華、鄭在俊、金容元、常任顧問に裵東湖、顧問に梁相基、金在述、事務総長に趙活俊、組織局長に郭東儀、国際局長に金鍾忠を選任するなど、韓民統日本本部の綱領及びその重要構成員の職責を確定することによって、実質的に被告人が主導する韓民統日本本部を結成したのであり、その場で、同月十三日、同本部結成の事実を公表し、同月十五日、韓民統日本本部が結成された事実を公開的に宣言する形式を持つことに合意した。」こうなっております。これはあらかじめ、いま読んでみました主なる部分、判決文に従って翻訳をしていただいた部分を読んだわけです。  そこで、ちょっと申し上げたいのですが、一九七三年の八月八日、金大中氏は東京から韓国に拉致されたというふうな表現をわれわれはよく使ってきました。外務当局とされては、いろいろ韓国と交渉される節、この拉致事件に関係をして交渉されることはしばしばであったと思います。いままで韓国側は拉致ということに対してどういう表現を使われてきたか、いかがでございますか。
  53. 木内昭胤

    ○木内政府委員 裁判でのやりとりの表現におきましては、韓国に帰国してからというような表現でございまして、拉致という表現は使っておりません。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 そうですね。いままでいろいろな文書に当たってみますと、私どもの手元に渡されましたあの外務省の仮訳の起訴状を読みましても、帰国という表現になっております。今回この判決文を見ると、直訳すると強制帰国という表現が出てくるのです。本人の意思に反して公権力が連れていった、こういうことでないと強制帰国などというのはあり得ないわけでありまして、今回、八月八日のこの問題は強制帰国という表現をとっておるのです。  大臣、帰国と強制帰国は違いますね。
  55. 伊東正義

    伊東国務大臣 読んで字のごとしで、意味は大分違うと思います。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 大分――大変違う。いままでには、八月八日というこの判決文では強制帰国させられたその日から後に、韓民統の議長になったということが八月十三日に公表されているのであるから、議長というわけにはいかないという論法がございました。私たちもそう思ってきたのです。ところが、この判決文を見るとそうじゃないのですね。一つ一つ読んでいくと、もっともっと具体的にはっきり、アメリカでの活動、日本での活動、ずっと述べてあるのです。その結実として出てまいりますのが、いま読んだ部分なんです。  八月四日に東京パレスホテルで、この裵東湖さんを初め、韓民統日本本部を結成するのにそれぞれの人たちと、「「韓半島を中立化し、南北連邦制による漸進的統一を実現する」などの内容からなる韓民統日本本部の綱領を定め、被告人を上記韓民統日本本部の議長とし、」さらに副議長に名前が三人あります。常任顧問に裵東湖、それから顧問に名前が三人あります。事務総長に趙活俊、組織局長に郭東儀、国際局長に金鍾忠、そういうふうに名前を明記しながら「実質的に被告人が主導する韓民統日本本部を結成したのであり、」ということで、八月の四日にもうできている、そして八月八日に実質的に議長になったという判定をこの判決はしているのです。  判決文の主なる部分はここなんですよ。ここに至るまでの経緯、またこの部分、すなわち日本での活動をおいてほかにないです。そのものずばりなんです。日本での活動以外の何物でもないのですよ、これは。このことが韓民統を実質的に結成し、韓民統の議長として行動した、つまり国家保安法一条に言う反国家組織の、団体の首魁であるということの認定になっているのです。したがって、このことによって死刑が宣告された、こういう順序なんですね。  大臣、だから私は先ほど確認をしたわけでありますけれども、こうなってまいりますと、日韓政治決着の大事な部分、さらに判決理由要旨に違反しますね。まことにそれとは違う判決文ですよ。いままで外務省がわれわれに説明してこられたのは残念ながらでたらめだということになるのです。外務省は、やれ日韓政治決着に違反いたしませんとか、やれ韓国側が言うから判決理由要旨の中から考えて日本における活動というものは一切ノータッチで判決がなされていると読まなければならないと、種々説明をされました。私たちもそれを聞いて今日まで来たのですよ。判決文全文を読んでみると、まるででたらめ、違うじゃないですか、これは。違うのです。  しかも、大変御苦労なことには、外務省は、あの起訴状について日本での活動、言動が問題にされているということをわれわれが追及いたしますと、そうじゃない、あれは背景説明の部分であって訴因ではないという説明もされたのです。この判決文を見ると、もはや背景説明ではない。判決文そのものの中の、しかも主なる部分がこれなのです。  大臣、どうですか、私はここにこういう反証を出しましたよ。いままで外務省がおっしゃってきた判決理由要旨なるもの、また、そのもとにある日韓政治決着に今回の裁判は違反しないと言われていることに対して、違反しているじゃないかという反証を出しましたよ。これが動かぬ証拠であります。これをそうではないとおっしゃるなら、今度は外務省から反証を聞かせてもらいましょう、よろしいですか。外務大臣、いかがです。
  57. 伊東正義

    伊東国務大臣 私はいままで、先生のおっしゃったとおりのことを言ってきたわけでありますから、それはそのとおりであります。私どもは何回も判決文の手交を要請したわけでございますが、それが実現しなかったことははなはだ残念なことでございます。  判決文だと言われてきたものをきのう新聞で見ましたので、それが判決文そのものなのかどうかということをまず向こうに照会してみることが私のとるべき措置だと思っておるわけでございます。ですから、いまここで先生がおっしゃったことがどうこうと私からお答えはいたしません。まず照会をするということをやってみたいと思います。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 照会をされるということでありますから、それについては、いかに照会が大切であるかということを念頭に置いてひとつやっていただかなければならぬと思います。  というのは、大臣は、今後判決文を要求することはしないときっぱり言われた。そうですね。なぜかという理由として、きょう私が取り上げた判決理由要旨の中で、政治決着に違反しないということをわれわれは認識してきた、このことを言われたのです。ところが、いま申し上げたとおりに、判決文を読むと、政治決着違反。判決理由要旨の中身からするとそういう趣旨は何らない、そういう判決そのものであります。  大臣は、日韓間において関係をぎくしゃくすることは好ましくないと再三再四言われます。私も、日韓間はお互いの国民が信頼し合って、お互いの交流を密にするのは大切なことだと思うけれども、日韓間がお互いの国民の信頼の上に築かれる友好関係でなければならないということを考えれば考えるほど、こういう欺瞞的なことを外務省がやっているのではないかという疑惑を隠蔽するような形で、判決文の要求というものは今後もういたしませんと言われる大臣の姿勢には賛同も協力もできないのです。よろしゅうございますか。
  59. 伊東正義

    伊東国務大臣 日韓関係が信頼の上に立たなければならぬとおっしゃるのは、私もそのとおりだと思うわけでございます。そして、判決文を要請することをやめたと言いましたのは、先生が言われたことのほかにもう一つ理由があったのです。それは、特赦といいますか、最高の判断で死刑の判決が無期ということになり、一応あの事件は判決も終わり、特赦も終わりということであったので、もうこれ以上判決文の手交ということを言うことは日韓関係をぎくしゃくするおそれもあるから、今後はひとつ前に向かって、日韓関係の平和友好の維持前進を図ろうという意味で申し上げたのでございます。  したがって、一つは判決文の要旨があるからということと、もう一つは特赦ということもあったので、ひとつここでこの問題を前向きに考えていこうということを私は言ったのでございまして、それはつけ加えておきます。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 さて、時間ですから、いまもう一つ言われたことに対して一言申し上げましょう。  金大中氏の命が救われた、これは本当に私たちも心の底からよかったと思いました。そして、いまでも思っております。しかし、大臣、考えてみてください。そのことによって金大中氏は無罪になったわけではないのですよ。有罪なのです。無期懲役という有罪なのです。しかし、裁判で確定したのは死刑ですよ。それをいま、高度な政治的判断によって命が救われたということに感謝すべきであるという気持ちも含めて大臣はおっしゃっているのかもしれませんけれども、この金大中氏に対して有罪にした決め手は一体どこにあったか。いま申し上げたとおり、政治決着に違反した日本における言動を間うたことをその理由として有罪の決め手とし、死刑の判決をしたという経過があるのです。このことを抜きにして、命が救われてよかったなんという問題は出てこない。命が救われたか救われなかったか、有罪であるか無罪であるか、この問題は別であります。  私たちは、あくまで金大中氏の無罪、即時釈放ということを念願してやまない。日本での言動が問題にされた限りは、大臣もう御承知のとおりに、日韓間の政治決着という約束事の上でこの問題の主たる政治責任の問題があるわけですから、そういう意味からすると、これは日本にとってぎくしゃくすることは好ましくないと大臣はおっしゃいますが、いま私が申し上げるとおり、ぎくしゃくさせないことのためにも、いまあるこの判決文の中身を見れば、政治決着に違反した日本での言動を主に問うて死刑の判決をした裁判であったということをもう一度もとに戻って確かめることが、日本の政治姿勢、外交姿勢としてはまことに大切だ、このように私は考えます。大臣、との考え方に対しても同意をなさいますね。
  61. 伊東正義

    伊東国務大臣 きょうの御質問は土井さんの持っておられる資料だけの御質問でございますので、私の方は何も持たぬわけでございますが、いままで有権的に来ておりますのは、日本での言動は問わなくても帰国後の問題でということで判決要旨は来ておるわけでございますから、いま土井さんが言われたようなことがあるのかどうかということはやはり照会してみてからでないと判断ができませんので、まず照会しようという気持ちでおるわけでございます。これは要旨と違うという質問を受けて、私もまた欺瞞の片棒を担いでいるような御質問でございましたので、そういう意思は私は全然持っておりませんので、照会してみようというのが私のいまの気持ちでございます。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 時間ですから、これで終了します。私は先日申し上げたとおりしつこいですから、これについては追ってまた何度でも継続してやることをここで申し上げて、質問を終えます。ありがとうございました。
  63. 奥田敬和

    奥田委員長 高沢寅男君。
  64. 高沢寅男

    ○高沢委員 私、きょう用意してまいりました質問がありますが、ただいまの土井委員質問は大変重要な問題提起でありますので、初めにちょっと関連質問をいたしたいと思います。  先ほど、尹孝同なる人物について警察でも取り調べをされたということは御説明がありましたが、その取り調べの結果、尹なる人物が本当に北朝鮮に四回も行ってスパイ教育を受けた、それは事実であるという判断をされたのか、そうでないという判断をされたのか、それをちょっと関連してお尋ねいたします。
  65. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 この人物に対しまして十数回の事情聴取、取り調べを行ったということは先ほど申し上げたとおりでございますが、その結論は得ていないというのが実情でございます。  と申しますのは、この人物の申し述べるところによりますれば、たとえばこういうことを言っておるわけであります。私は朝鮮総連の指令で民団反主流派などに対する工作活動に専従することとなり、昭和四十二年ごろから昭和四十八年ごろまでの間、四回にわたり日本海沿岸からわが国と北朝鮮との間を不法出入国した云々、これは本人の当時申し述べた言葉なのでありますが、それぞれの四回について、いついつ、どこからどこからということも申し述べておるわけでございます。  ところが、一つには、御案内のごとく、これは不法出入国という罪になるわけでございますが、時効という問題もあるわけでございまして、当時として一番新しかったその不法出入国の時点が昭和四十八年末のことでございました。本人が警視庁に出頭してまいりましたのが五十二年でございまして、すでに一年ないしは三年という時効の期間を経過したということも一つございました。もちろん、出入国管理令のみが罪として立つわけではございませんで、それに関連する余罪というものもあるわけでございますが、いずれにせよ、この出入国の事実というものの立証、これは時日も経過しておりました関係から非常にむずかしい。目撃証人もおらないし、あるいはそれを裏づける証拠もないといったことから、結局、当時そういうことで非常な努力をしたわけでございますけれども、その結果、本人が言う限りにおいてはそうだろう、そうだろうと思われるのですが、いかんせん、わが国の刑事訴訟法の原則でございますが、本人の供述のみをもって有罪とするわけにはいかぬわけでございまして、何らかの補強の証拠が要るわけでございます。その補強の証拠もいろいろ手を尽くしたわけでございますけれども得られないということから、結論として冒頭申しましたように何とも判断できないということであったわけでございます。
  66. 高沢寅男

    ○高沢委員 ただいまの御説明で経過はわかりましたが、結局、尹孝同なる人物はかなり意図的に、自分は北朝鮮のスパイであったというふうに自分の立場をつくって、そのことからいろいろな韓国の軍事政権の与えた任務を果たそうとするというふうに仕組んだと判断いたしますが、これは私の判断として申し上げておきたいと思います。  それで、大臣、いまの土井委員質問の関連で一言だけ。  いま土井委員指摘された判決文に基づくいろいろな指摘があったわけであります。結局大臣は、ではそれを照会してみる、こう言われましたが、土井委員のいま指摘された判決文は本当の判決文であるか、そうでないか、これによって当然判断が分かれるわけでありまして、本当の判決文でないとすれば別ですが、本当の判決文であるとなれば、外務省の、あるいは日本政府のいままで金大中氏の問題で韓国といろいろ対応されてきたことは、根本的に出直すことが必要になる、こう思うわけです。したがって、今度の場合には、照会をした、だけれども判決文はもらえませんでしたということでは私は済まぬと思うのです。この点については、大臣の政治生命をかけて必ず判決文というものを入手して、そしてこの事実関係を証明されるということをお願いしたいと私は思いますが、大臣の決意をお聞きしたいと思います。
  67. 伊東正義

    伊東国務大臣 要旨というものでもらっていたわけでございまして、いま土井さんがおっしゃったことはそれと全然違うじゃないか、こういうことでございますので、これは政府として有権的に私どももらって、それで国会で御説明をしたわけでございますから、私たちもそれを信じておるわけでございますので、まず照会をしてみるということが第一前提でございまして、その先どうするかということは、これはまた照会した返事によってわれわれが判断することでございますので、ここでその先どうするかということまでは、私、きょうお答えすることは差し控えたいと思います。
  68. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、いまのその大臣のお答えでは大変不満であります。すでにこれだけこの問題が日本の国民の重大な関心の問題になっておるし、国際的にも金大中氏の運命については大きな世論と要求が寄せられたことは御承知のとおりです。したがいまして、その判決文の真偽の証明ができない、それで先方にいなされてうやむやに終わってしまうというようなことは、日本政府の国際的権威にかけても、また日本の国民に対する責任から言っても私はあってはならぬと思いますので、重ねての御答弁は必要ありませんが、そのことをかたく要求するということでこの問題を終わりたいと思います。警察庁、もう結構です。どうもありがとうございました。  さてそこで、私の用意しました本来の質問に移りたいと思います。  今度鈴木総理が五月に訪米されて、日米の首脳会談になります。この首脳会談に、アメリカ側としては最大の協議事項として防衛問題を準備しておる、こういうふうに伝えられるわけです。きょうの新聞では、きのうマンスフィールド大使がやはりこの日本の海域防衛の問題についても触れられておるということも伝えられておりますし、そういうことも日米首脳会談の最大の焦点に今度はなってくる。先日大臣が行かれたときは自動車問題であったようですが、今度は防衛問題が最大の焦点になる、私としてもこう判断します。  そうすると、この会談の前提として、いまの国際情勢あるいはアジア情勢の危機の認識、あるいは脅威の認識というようなことが当然前提になると思うのであります。そこで、そういう認識についてお尋ねをいたしたいのでありますが、三月に行かれたときに、ヘイグ国務長官との会談の中で朝鮮問題のお話もされた。その際、ヘイグ長官の方からは朝鮮半島の危機の認識についてどういうお話があったのか、それに対して大臣の方から朝鮮半島の危機の認識についてはどういう見解の表明をされたか、この問題をもう一度ここで御説明をお願いしたいと思います。
  69. 伊東正義

    伊東国務大臣 アジアの問題につきましても、国際情勢の話をした中で朝鮮半島の問題に触れたのでございます。そして、これはブラウン長官時代に、緊張が起こるとすれば朝鮮半島北側、朝鮮民主主義人民共和国、北と簡単に言わせていただきますが、北朝鮮側の軍備増強とかそういうことから言って全面的な攻撃があるかもしらぬという意味の証言があったわけでございます。  それで、朝鮮半島の認識という問題になりましたときに、日本は日韓関係というものがもとでございますから、日韓関係の友好の維持発展ということは日本としてやらなければいかぬ、軍事目的、軍事協力以外に経済、外交、文化、技術、いろいろな面で協力をしていこうということを話しました後で、もう一つ朝鮮半島については朝鮮半島の全面的な平和といいますか、安全といいますか、こういうことがアジアにとっても日本にとっても非常に大切なんだ、そういうふうに自分は考える、そしていま韓国が非常に努力をしている、それから韓国には米軍が駐留している、米中、日中関係も非常に友好親善関係があるという中では、北朝鮮からの全面的な攻撃ということは、いまはそういうことはなかなか可能性は薄いのじゃなかろうか、緊張が南と北にあることは事実だ、これはもうそのとおりなんで、韓国がそれを一生懸命そういうことがないようにということで努力をしておることは事実だが、いまのような米軍の駐留、日中、米中みんな友好関係があるということから言えば、いわゆる全面攻撃が早急に行われるという可能性は少ないのじゃないかという意味のことを、ブラウンさんは起こり得るとすればそういうことだということに対して私は意見を言ったということでございます。  これに対してアメリカ側が、米軍があそこに駐留しているということは韓国側ももちろん努力をしているし、これはもしも南侵というようなことがあればアメリカは徹底的に戦うという意思を表示していることでもあるし、米中関係も非常に友好関係が結ばれているということを考えれば、その可能性アメリカとしても低い、そう高くはないという考えだというような意味の意見の交換があったわけでございまして、ブラウンさんは全面攻撃ということを非常に強調されたが、今度の政権は、その可能性というものは、ないとは言わぬ、もちろんあるけれども、ブラウンさんのようにそう考えているのじゃないというふうにとりました。  しかし、北朝鮮そのものについては、飛行機の撃墜事件とか、ポプラ事件とか、船の事件がありました。ああいうことを挙げて、北朝鮮というのはそういう意味でなかなか警戒をしなければならぬのだということも最後にはつけ加えるというようなことで意見の交換をしたことがございます。
  70. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、先般の外務委員会で、やはり大臣に朝鮮の脅威の問題についてお尋ねしたことがあります。そのとき私は、金日成主席、飛鳥田委員長の例の日本、朝鮮の周辺における非核武装の共同宣言ができたということに関連しながら、北から南へ向かって侵攻するというような可能性や脅威というものはない、こういう自分の判断を申し上げた。大臣はそれに対して、そういう朝鮮の南北間の緊張がある、この緊張を韓国の方では脅威と受け取っておる、それは韓国の認識だ、しかし、それは日本の認識じゃ別にないというふうなことをお話しになったのですが、きょうは、では朝鮮民主主義人民共和国が日本にとって一体脅威であるかどうかという情勢認識、判断、これはアメリカとの会談にも関連すると私は思いますので、大臣のお考えを聞きたいと思います。
  71. 伊東正義

    伊東国務大臣 北朝鮮が日本にとって脅威かどうかということについては、去年でございましたか、宮澤官房長官が統一見解を出しまして、あのときは潜在的というのが上についたと思うのですが、そういう判断をすることは日本の国益に何も合致した問題じゃない、こういう意味のことでそれを断定する、判断するということは国益に合わぬという統一見解を述べたわけでございまして、私も、ここで北朝鮮が日本にとって潜在的脅威であるかどうかなんということを言うことは国益に合うことではないと思っておりますし、総理もそういうことはないという意味のことを国会で言っておられるわけでございます。私も同じ考えでおるわけでございます。
  72. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は先ほどのブラウン長官の発言に対する大臣の述べられた認識、このことは実際上、われわれの言葉で言えばもう脅威ではない、こういうふうな言葉に翻訳できると思うわけでありますが、そういう認識でひとつ日米首脳会談に臨んでいただきたいということを要望いたしたいと思います。  それからもう一つの、脅威の問題に関連いたしまして、中国は日本にとって脅威であるかないか、大臣の御認識をお聞きしたいと思います。
  73. 伊東正義

    伊東国務大臣 日中関係というのは国交正常化しまして平和友好条約も結んであるわけでございますし、私は、日中というのは平和友好関係を維持していけるという双方の外交関係だと思っておりますので、そういうことを考えたことはございません。
  74. 高沢寅男

    ○高沢委員 私も、日中平和友好条約ができてお互いに戦争をしないということ、子々孫々にわたって友好でいきましょうということを確認し合っているわけですから、これはもうはっきり脅威ではない、こう言い切って臨まれるべきだと思うわけであります。  さて、そうすると、ソ連はいかがでしょうか。日本にとっての脅威ということで、大臣情勢判断をここでお聞きしたいと思います。
  75. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは軍事的には、防衛庁が前から、極東軍の増強ということ、また北方領土に対する軍備の増強というのは潜在的な脅威だ、こう軍事的に言っているわけでありまして、私はそれを何も否定するわけじゃないのでございます。ただ、外交は、それを本当に平和友好関係が結べるようにしようというのがわれわれの努力だと思っております。
  76. 高沢寅男

    ○高沢委員 そのソ連の潜在的脅威の問題については、後ほどまた防衛庁にお尋ねいたしたいと思いますが、大臣、私はいま朝鮮の問題、中国の問題、ソ連の問題とそれぞれ挙げてまいりましたが、そのほかに日本にとってこの国は脅威だというようなものが一体あるでしょうか、ありましたら、ちょっと教えていただきたいのです。
  77. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまここでどこが脅威とか、そういうふうに思いつくところはございません。
  78. 高沢寅男

    ○高沢委員 私も、たとえば国の名を挙げてはあるいは失礼かもしれませんが、フィリピンとか、シンガポールとか、インドネシアとか等々のアジアの周辺の国が日本へ攻めてくるとか、日本にとって脅威であるとかいうふうなことは全くあり得ない、こう実は思うわけでありまして、したがいまして、いままでの日本政府の公的な問題として、ソ連の潜在的脅威というものが、あえて言えばこれ一つじゃないのか、こう思うのでありますが、これ一つのものを、ではどうするかということのわれわれの対応が正しく出されていけば、日本の平和と安全にとって最もいい答えが出てくる、こうなると思うのでありますが、そのことを申し上げた上に立って防衛庁にひとつお尋ねをいたしたいと思います。  ソ連からの潜在的脅威ということを言われるわけですが、それの具体的な対応、日本にとって危険と思われる具体的な対応の御説明をまずお聞きしたいと思います。
  79. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもは軍事的な立場から見まして、近年におきますソ連極東軍の増強ぶりにつきまして、たとえば北方領土への地上軍の配備でありますとか、あるいはソ連極東艦隊の大幅な増強でありますとか、あるいはSS20とかバックファイアの配備、さらにまたベトナムの基地の常時使用といったような状況をつかまえまして潜在的脅威の増大であるというふうに受けとめておることは、しばしば申し上げておるとおりでございます。
  80. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま御説明されたそのことの中の一つとして、防衛局長、ソ連軍が北海道へいまにもやってくる、あるいはその危険性があるというようなことが盛んに言われるわけであります。いろいろ日本のマスコミの場でも盛んにそういうことが言われておりますし、あるいは従来の防衛庁関係の方からもそういう話がずいぶん出る。元統幕議長であった何がしという人物も、いわばそういう議論を一つの売り物にしておるというふうな状況にあるわけですが、この北海道へソ連軍が上陸してくる、あるいは空挺部隊で来て攻め込んでくるというふうな現実的な危険性、可能性、この問題についてきょうはひとつお尋ねしたいと思うのです。  最近私の聞いた話によれば、竹田前統幕議長がそのおやめになる少し前に、いわゆる竹田提言というようなものを作成されて、それを防衛庁内の制服の幹部の皆さん方に配付して、そしてその意見を求めた、検討を求めたというようなことを聞くわけですが、その文書の中身がいま言った北海道へ攻めてくるという危険性、こういう問題に大変関連しておると思いますのでお尋ねするのですが、まず、そういう文書があったのかどうかということから初めにお聞きしたいと思います。
  81. 塩田章

    ○塩田政府委員 竹田さんがおやめになる前、ことしの一月の終わりごろのことだったと思いますが、竹田さんの見解をまとめられたものを関係の何人の方かに配られたということはあったように聞いております。
  82. 高沢寅男

    ○高沢委員 あったように聞いていると、こうおっしゃることは、大体あったということだと思いますが、すると、塩田防衛局長、あなたはそれをごらんになりましたか。
  83. 塩田章

    ○塩田政府委員 私は見ておりません。
  84. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういう文書があったとすれば、防衛局長ともあろう方はやはりそういうものはちゃんとごらんになって、そして防衛庁の立場でその内容についていいか悪いかのいろいろな御判断を当然持たれるべきではないかと私は思いますが、見ていないというお答えは、そういう点において私は若干遺憾の意を表明したい、こう思います。  さて、見ていないとおっしゃるわけでありますが、その内容なるものについて、私の友人に軍事評論家がおりますので、これは結局私も聞いた話でありますが、それによると、竹田さんの提言の中では、ソ連軍が北海道へやってくる可能性は非常に少ない、こういうふうな判断を述べておられるということであります。北海道へやってくる可能性が少ないという、それには当然、その意思があるかどうかという問題、それからその能力があるかどうかという問題、こういう幾つかの要素が関連すると思いますが、竹田さんはそれらの要素をにらみながら、可能性は少ないと言われたと思います。この点について塩田防衛局長はどういうお考えをお持ちか、お聞きしたいと思います。
  85. 塩田章

    ○塩田政府委員 私は見ていないと申し上げましたが、当時そういう話があったものですから、実は私自身も竹田さんに照会したわけです。そうしましたら、もうないが、あの当時、その後しばらくしましてから新聞に出たわけですが、新聞の記事を読んでいただければ大体私の言っている内容と一致しているというお答えをいただいております。したがって、私も新聞で読んでみたわけですが、その限りでは、いまのように具体的に北海道がどうだとか、可能性が多いとか少ないとか、そういうことは余り触れておられないように私は感じております。  しかし、いずれにしましても、竹田さんに限らず、私どもこういう立場の者がこういう場所で、どの国が日本のどの地域に来る可能性が多いとか少ないとか、そういうことを申し上げることは無用の誤解を招くおそれがあると私は思いますので、そういうことについて私ども見解を述べることは差し控えさせていただいた方がよろしいのではないかと思うわけであります。
  86. 高沢寅男

    ○高沢委員 私の友人のその軍事評論家の話によれば、竹田さんの提言の中ではこんなようなことが述べられているということです。そこで、これはかなり具体的な状況判断について述べておられるので、それについての御判断をお聞きしたいと思いますが、ちょっとその文章を読んでみます。「日本は島国であり、対日侵攻可能兵力がそのまま着陸兵力とはならない。例えば、極東ソ連の大型上陸艦は十一隻であり、イワン・ロゴフのように戦車四十両、兵員八百名を搭載できる艦は僅かに一隻である。大砲、戦車等重量砲の揚陸は港湾利用なしではできない。」こういう状況判断。それから「また、空挺能力についても軽装備については相当な兵力を降下させることができるが、後続補給に制限があり、その機数は数十機に過ぎず、」しかも大砲や戦車等々の装備の空中投下はとてもできないというようなこと。また、仮に一個師団一万六千名、これで奇襲をかけるとすると、その輸送には三十万トンの艦船が必要になる。ソ連は極東にはそういう艦船は持っていないというような判断から、したがって北海道への侵攻という可能性は非常に少ないのだというような提言を述べておられるということなんですが、こういう内容的な状況判断のもとになったそのことについては、防衛局長はどういうふうなお考えでしょうか。
  87. 塩田章

    ○塩田政府委員 ソ連ということでなくて一般論的に申し上げますと、わが国のような島国に対してある国が上陸作戦を行おうとすれば、当然に海を越えてくるわけでございますから、そのための所要の準備が要ることは当然であります。規模にもよりますし、時期や日本側の対応力にもよりますけれども、そんないろいろな条件がもちろんあるわけですが、もともと一個師団を運ぶのに三十万トン要るであろう、こういうようなことは、軍事評論家、専門家であれば当然におわかりのことだと思います。  そういう意味で、いまおっしゃった中で、たとえば一個師団一万六千人、一万六千人というのはちょっと私、多いと思うのですけれども、そういうことに三十万トン要るであろうとか、そういうことを述べられていることは事実であります。そのとおりだと思います。ですから、一般的に島国である日本のような国に対して上陸作戦を行おうとすれば、それ相応の規模に応じた準備が要るという意味でなら御指摘のとおりだと思います。
  88. 高沢寅男

    ○高沢委員 日本一つの世論として、ソ連脅威論というものが大変わっと出て、その中の具体的なものは、いまにも北海道に来るぞという議論がずいぶん出て、北海道にいる人たちはまるできょとんとしてしまった。自分たちが日常そういうものは何も感じていない、そういうものはみんな東京から来た話だというふうなことも北海道の人たちの話として出ていますが、何かこの種の議論のつくり方は別な意図があって行われているというようなことじゃないのかと実はかねがね私は思っていたわけであります。  その別な意図ということを、私の友人の軍事評論家が言うには、北海道の自衛隊の第七師団の機甲化が実現した、そしてかねて陸上自衛隊の幹部の人たちが達成したいと思っていた師団のソ連並みの火力を持った強力な戦車師団が実現されることになった、このことによって北海道脅威論をずっとやってきた目的をほぼ達したということで、これはできたからあとは余り脅威論を言う必要がないのだというような状況判断をその評論家はしております。これは防衛局長、私もどうもそうじゃないかと思うのですが、御判断はいかがでしょうか。
  89. 塩田章

    ○塩田政府委員 何か防衛庁が北海道脅威論というような形のものをぶって、それによって七師団を機甲師団化することの地ならしをしてきて、今回その目的を達したのだというふうにおとりになっておられるようでございますけれども、まず第一に、防衛庁が北海道脅威論をぶっているわけではございません。それから、第七師団の機甲化というのは従前からの既定のペースでございまして、それが今回、確かに三月二十五日にやっと編成を完了した、そういうものでございます。  なお、いまお話しの中に、今度の七師団でソ連の戦車師団並みというお言葉がございましたけれども、今度の七師団は兵力で七千人の師団でございます。実数はもっと少ないのですけれどもソ連の戦車師団並みにはとてもまだ及ばない師団でございまして、わが国としては最初の機甲師団である、それは間違いございませんが、そういう戦車の数からいきましても、あるいは所属する人員からいきましても、ソ連の師団並みというようなものではございません。
  90. 高沢寅男

    ○高沢委員 私がいままで触れてきたことは陸の問題でありますが、今度日米首脳会談で出てくるのは、今度は海と空ということが中心の問題になってきておるわけですね。それで、三月に外務大臣アメリカに行かれてワインバーガー国防長官とお会いになったときに、いわゆるグアム以西、フィリピン以北の海域防衛について日本が防衛分担をやるように、こういう話が出て、大臣はその問題は直ちにお断りしたというふうにわれわれもこの外務委員会でお聞きしているわけです。  ところが、防衛庁の方の御見解としては、かねて一千海里という海路の防衛という議論はアメリカから言われるまでもなくこちら側の議論としてあったわけであって、海路の防衛というのはただ単なる線じゃなくて、海の上の防衛となれば当然それは面になる。とすれば、このワインバーガー長官から出されたことと、もともと防衛庁で考えてきたそういう日本の周辺海域防衛というものとがほぼ同じようなものなんだというようなことを防衛庁では判断として持っておられる。  そうすると、アメリカから言われたそういう海域防衛のことは言われるまでもなくやるのだという防衛庁の立場になると私は思うし、外務大臣はその話が出たときに、それは従来の防衛計画大綱を踏み出すことになる、それはできません、こうお断りになったと言う。私はこの辺の食い違いがあるのじゃないかと感ずるのですが、初めに外務大臣にお聞きして、それから防衛庁にお聞きしたいと思います。
  91. 伊東正義

    伊東国務大臣 前の御質問、ちょっと違うのでございます。これは私は予算委員会でも常に言ったのでございますが、アメリカがペルシャ湾とかインド洋とかずっと言ってきまして、そしてそれと同じにグアム以西、フィリピン以北の西太平洋でも防衛をやっているのだという、一般論としてアメリカが防衛をやっておる海域を概念的にずっと説明があったのです。そして、その後についた言葉は、日本も防衛力の強化ということに努力をしてもらいたいということであったので、いま高沢さんのおっしゃるようにグアム以西、フィリピン以北の西太平洋の防衛をやってくれ、そういう表現ではなかったのですよ。  これはいつでも私は御説明しているのですが、ペルシャ湾、インド洋、こう言ってきた中にそれが一緒に出てきまして、その後で日本は防衛力の強化ということを努力してもらいたいという要請があったのです。そして、具体的には在日米軍の駐留費についてもっと負担をできるように考えてもらいたいという、そこらぐらいの話があったわけでございますが、いまの海域を防衛してくれという要請でなかったということだけははっきり申し上げておきます。  ただ、そういう話がインド洋とかペルシャ湾とかいうことじゃなくて、グアム以西、フィリピン以北という具体的な名前が出ましたので、私はそれについて何も言わないとその海域の防衛を認めたのかということをまた必ずどこかで言われるのじゃないかと思いまして、頭に置いて言ったのは二つでございます。  一つは、海域分担論という考え方が前からあるわけでございますが、海域分担論というのは、その海域はたとえば日本が分担をして、日本の艦船だけじゃなくて外国の商船もみな守るのだとか、そういう集団自衛権につながる問題でございますので、海域分担という字がすぐ頭に出ましたから、そういうことはできないのですよと言ったこと。  もう一つは、海上自衛隊の整備目標が、周辺数百海里、航路帯をつくる場合には千海里を大体基準にして海上自衛隊の装備の整備目標にしているということでございますので、フィリピンとかグアムとかということになってくると線じゃなくてもっと延びるはずでございますし、そういうだんだん広く広げていくことはなかなかむずかしいのですよ、これは五十一年の防衛計画大綱ということで日本は整備をやって、航路帯をつくるなら千海里、周辺は数百海里ということを頭に置いてやっているので、日本としては防衛計画大綱という正式の政府の計画を充実するということをやっているのですよということを私は言ったわけで、いま先生の御質問の前段は、そこの海域を分担して防衛してくれという意味じゃなかったのですから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。
  92. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの外務大臣のお答えで尽きておるわけでございますから、つけ加えることもないわけでございますが、私どもは、いまお話がございましたようにフィリピンとかグアムという名前を挙げて新しい分担を求められたわけではないというふうに承知しておりますので、従前どおり、私どもの整備目標であります周辺数百海里、航路帯を設けた場合には一千海里という防衛力の整備を今後も引き続き努力をしていきたいということに尽きるわけでございますが、ただ、面という問題が出ましたので、ちょっとその点だけつけ加えさせていただきたいと思うのでございます。  防衛庁は近ごろは面ということを考えているのじゃないかということでございますが、一昨日も私、総理のところにお伺いして御説明をしたのですけれども、航路帯約一千海里という場合に、航路帯という帯という字がございますものですから、いかにもその一千海里ずっと陸上の自動車の道路みたいなものがあってそこを船が通るのだ、それを守るのだというふうにとらえられがちである、しかし、実際のいまの対潜水艦作戦というものはそういう形ではございません、第二次大戦型のような船団護衛をしていく形もいまはないとは言えません、そういう形もありますが、いまはそういう形よりも、いまのP2Jでありますとか、今度のP3Cでありますとかという飛行機を使って広範に捜索をしていきますし、それが見つかれば艦載機でありますヘリコプターを飛ばして攻撃をするというような形をとっておりますので、そういう意味で航路帯という言葉から何かこう狭い線のようなものが守られていくというふうにはお考えにならないで、もう少し面的な要素が実際の作戦技術の面から出ておるのです、それはごく最近そうなったということではなくて、近年の趨勢としましてそういう面的な要素が出ておりますということを総理にも御説明をしたわけです。  そのことが伝えられておるのじゃないかと思いますが、そのことといまの外務大臣のお答えになったグアム以西とかフィリピン以北とかという話とは別な話でございまして、私どもがそういう作戦の実態を総理に御説明申し上げた、こういうことでございます。
  93. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう私の与えられた時間はなくなりました。私としては、この問題は、わが国の自衛権が個別的自衛権から集団的自衛権に現実にどんどん移行しつつあるということを指摘して、その質問をしたかったわけですが、すでにこの先の時間がございませんのできょうはこれで一応打ち切りまして、次の質問者に御迷惑になってはいけませんので、また機会を改めてそういう問題もお尋ねをいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
  94. 奥田敬和

    奥田委員長 玉城栄一君。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 最初に、外務省の方に確かめておきたいわけでありますが、実は御案内のとおり、きょう、日本時間で今晩八時四十八分にアメリカの宇宙連絡船スペースシャトルが打ち上げられることになっておるわけでありますが、私どもそれの成功を心から期待をいたしておるわけであります。  ただ、万一の事態に備えて、日本、スペイン、それからハワイだったと思うのですが、三地域を緊急着陸地に指定をされているやに承っているわけであります。その点、外務省の方はこの問題についてアメリカ側からどういう連絡を受け、何か打ち合わせがあったのかどうか、その点の御説明をいただきたいと思います。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕
  96. 伊東正義

    伊東国務大臣 本件につきましては、去年の一月に口上書でアメリカから依頼があったそうでございます。去年の一月でございますからもう一年前でございますが、そのころから向こうは計画があったのですが、だんだんそれが延びて、最近になっていよいよ打ち上げということでございます。  そのときの依頼というのは、宇宙条約の第五条に万一の場合の救助とか国際的な協力を規定した条項があるわけでございまして、これは日、米、ソ連とか皆入っている条約でございますが、その五条に基づいて、もしそういう故障の場合には協力を頼みたいという連絡が去年の一月にあったそうでございます。それからずっと計画が延びたのでございますが、最近、いよいよ具体化してくるということでこれは在京の大使館から連絡がございまして、それを運輸省に伝え、もし万一そういう故障があった場合には、日本の沖繩の嘉手納も一つの候補地としてそこに万全の態勢をとるということで、運輸省の方からもそれぞれ管制の方に連絡をされ、あるいは沖繩の知事さんの方へも万全を期するという意味で連絡をするというようなことをやっているのが現状までのところでございます。  その故障の可能性というのは本当に少ないのだということを聞いているわけでございますが、私どもとしてはそれにしても万全の対策はとらなければいけませんし、そういうことがないことを祈っておるところでございます。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 もちろん成功すること、特にアメリカは国の威信をかけてということも聞いているわけであります。ただ、これは地球を三十六回半回る、その中で八回ぐらいはいま大臣がおっしゃった沖繩の方に緊急着陸の可能性もあるというようにも聞いているわけでして、いま嘉手納米軍基地の方ではそういう緊急救難態勢で待機状態にあるわけですね。ですから、そういう万一の事故があっては困るわけですが、もしそういう事故があった場合の被害の補償という問題について、それをここでちょっと確認をしておきたいわけですが、どういう形になるのか、まあそういうことがないことを願うわけですけれども、その点をお願いします。
  98. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  わが国は入っておりませんが、アメリカは宇宙損害賠償条約というものに入っておりまして、先ほど大臣が言及されました去年の一月、向こう側から日本側に対する協力要請がございましたときに、アメリカ側は、万々一の場合のことではございますけれども、その場合にこの条約に基づきまして賠償義務を完全に負うものであるということを明確に申し述べてきておりますし、わが方が宇宙条約第五条、これは別の条約ですが、宇宙条約第五条に基づきまして、宇宙飛行士の緊急避難の場合の援助の義務というものを履行するという返事をいたしましたときにも、アメリカ側の申し入れに十分留意しているということも申しております。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、それは万一のことですけれども、そういう物々しい態勢であるわけでありますから、当然いまおっしゃったように、もしそういう損害が生じた場合には米側が一〇〇%補償するというふうに理解してよろしいわけですね。
  100. 伊東正義

    伊東国務大臣 向こうからもそう言っておりますし、日本政府としても、もし万一の場合にはそういう問題についてはもう最善の努力をするということでございます。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題は成功することを願うわけですが、一般論で結構なんですが、米軍機が基地外の民間空港に着陸することは許されていないと思うのですが、いかがですか。
  102. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 このスペースシャトルと申しますのは非常に特殊な場合でございまして、先ほども申し上げましたように、宇宙条約第五条に基づきまして日本国は緊急着陸のような場合に宇宙飛行士及びその飛行機に対する援助を最大限尽くさなければならないという義務を負っているわけでございます。これは全くいわゆる不時着と申しますか、緊急な着陸であるということで、現にまたこのオービターが着陸できるような滑走路の長さというものから判断いたしまして嘉手納以外に適当なところがないということで、嘉手納が選ばれたわけでございます。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 私が質問申し上げているのは、米軍機は基地外の民間空港に着陸は許されていないと思いますが、いかがですかということです。
  104. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お答えいたします。  地位協定第五条によりまして、アメリカの艦船あるいは航空機は日本の港及び空港に入ることができるという規定がございますので、それは可能でございます。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 米軍機が基地外の民間空港に入ることが可能であるということですが、それはやはり条件があるわけでしょう。そのときの手続なんかはどうなりますか。
  106. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 混乱いたしまして申しわけございません。いまアメリカ局長が答えましたのは、米軍機が施設、区域に着陸する、あるいは米軍機ではなくても米国政府の公用の航空機が施設、区域に着陸する場合を御答弁したわけでございます。  そこで、米軍機が日本民間空港に着陸すること、これを禁ずるものは何らございません。ただし、これは安全保障条約とは何ら関係がございません。したがって、日本の航空法に基づく通常の着陸許可その他の手続を経るものということで、現在も実際上もそういうことになっていると思います。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 通常の手続を経てない場合、どうなんですか、それは。
  108. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 地位協定の五条でございますが、条文を読んだ方がよろしいと思うのでございます。読ませていただきます。これは……
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう時間がございませんので、具体的な問題で伺います。  今月の四日に、沖繩の宮古島に米空軍の偵察機OV10ブロンコニ機が緊急着陸したわけですが、そのときの模様をちょっと御報告していただきたいと思うのです。
  110. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 突然の質問でございますので、私、ちょっと把握しておりません。ただ、一般論を申し上げれば、先ほど条約局長が申し上げましたように、五条の一項に基づきまして、施設のみならず日本国の飛行場には入れるわけでございます。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 困るのですよ、米軍機が民間の空港に緊急に何の音さたもなく飛来してくるということで、地元では緊張されているわけです。この実態はわからないということになりますと、これはちょっと質問のしようもないわけです。どういう手続がとられてそこの空港におりてきたのか。あの小さな空港に、しかも偵察機が二機。その理由をちゃんとおっしゃっていただかないと。
  112. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 申しわけございませんが、そのときの状況を把握しておりませんので、これは調査してお答えいたします。  ただ、先生も御承知のとおり、たとえば那覇の飛行場に米軍機が着陸した例もございますように、緊急の場合においてはもちろん、それ以外にも、五条の一項で地位協定日本の施設以外の飛行場にも入れるわけでございます。もちろん、アメリカ提供しております施設、区域を通常使うことになっておりますので、民間の飛行場に入ることによって民間の航空機の活動を妨げることはないということはアメリカ側も十分に了解しておりまして、それが地位協定の趣旨でございますが、民間の飛行場に入るということを一概に否定しているわけではございません。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは、たとえば給油という名目で米軍機が民間空港に緊急着陸できますか。
  114. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 それはもちろんできると思います。なぜならば、油が切れて飛んでいるということは非常に危険であるということも考えられますので、その場合には当然民間の飛行場にも着陸できるというふうに考えております。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 その場合に、手続はどうなりますか。
  116. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは、その飛行機が地位協定上特権を持っていない貨物を積載している場合、あるいは旅客を積載している場合は、当然日本への入国あるいは出国については日本国の法令に従うわけでございます。しかし、それ以外の場合についてはこの五条の一項に従いまして入港料あるいは着陸料を課されないで日本の飛行場に出入することができるというふうに明記されております。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 いま申し上げましたように、ブロンコ二機、給油という一応の名目になっているわけですが、それは事前に、外務省にも実態がわからないというのですから質問のしようもないのですが、県の方にも連絡があったのかどうか。といいますのは、沖繩は御存じのとおり米軍機はすごく飛来しているわけですし、また民間飛行場も多いわけですから、そういうことで安易にどんどん緊急着陸なんかされたのでは、もう不安でたまらぬわけです。まして、この飛行機は、われわれも現地等でもよくわかっているわけですが、報道では韓国から嘉手納経由でフィリピンに行くということで、給油だということで宮古島におりているわけです。これはもう常識的に考えられないわけですね、パイロットのイロハですから。燃料をどれぐらい積んで、どこの目的地に行くかということを当然想定してやるわけですから、その辺ももう少し実態を調べて、ちゃんと報告していただきたいと思うのです。
  118. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 もちろんそれはいたしますけれども、韓国の飛行機であれば問題でございますが、合衆国の飛行機であれば地位協定上当然日本の飛行場には入れるわけでございまして、その入る場合にもちろん航空管制には従うわけでございますが、その都度外務省に何の目的で入ってくるかという通告の義務は、アメリカ側は負ってないわけでございます。したがって、そういう意味で、われわれとしては現在御指摘になりました飛行機が、何の目的で、どういう理由で、何月何日に特定の飛行場に入ったかということは把握してないわけでございます。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 それはちゃんと把握していただかないと困るのです。どういう理由で民間空港に着陸をしたのかということはちゃんと調べていただきたいと思うのです。  それからもう一点、最近、嘉手納飛行場の騒音がやたらとまた激しくなっているわけですね。外務省は、どれくらいの轟音の状態なのか、それもわかりませんか。
  120. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お尋ねの点が具体的にどの程度の騒音であるかということであれば、現在のところ、騒音がふえているということは承知しております。かつ、騒音の把握のために、従来の騒音測定器に加えまして新しい騒音の測定器を施設庁の方で設置しておりますが、現実に何ホンかということについてここに手持ちの資料はございません。  ただ、われわれとしては嘉手納飛行場周辺の航空機の騒音の問題、これは従来から地元の陳情もございますし、われわれ自身としても問題意識を持っておりまして、まず地元の三者協議会で十分話し合っていただきたいということでそういう協議会ができたわけでございますが、残念ながらその協議会では話がつかなかった。一番つかなかった理由は、やはり飛行時間あるいはエンジンテストということでございまして、現在、いかにしてこういう地元の御要望を踏まえながら解決ができていくかということについて、施設庁、外務省あるいは米軍との間で引き続き協議を行っているというのが実情でございます。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、この間、外務委員会でマンスフィールド駐日大使とお会いしたときにもお話し申し上げたわけですが、沖繩の場合、五三%という米軍基地が集中的にあって、地域住民はもとより、県民が非常に被害や不安を持っている、もちろん、日米友好関係ということは非常に大事なことであるが、一方、住民生活に非常に影響を与えるような形の、たとえば実弾が住民地域に飛び込んでくるとか、山火事があるとか、とにかくいま申し上げている嘉手納の場合も、地元で音を測定しておりますけれども、百ホン以上とか百八ホンとか、これは高速列車のそばで聞く音というようなことで、まさにひどい状態であるわけですね、これはF15イーグルとかいろいろな飛行機の轟音であるわけですが、そういうことであっては、本当に日米友好ということは考えつつも、心としては離れていくのじゃないか、したがって、大使とされてもぜひその点を理解していただいて善処できないものかというお話をしたわけでありますが、大使も善処をしますということをおっしゃっておりました。  大臣、いま申し上げました点を踏まえまして、いまの騒音の問題とか、民間空港への緊急着陸を突然してびっくりさせるとか、そういういろんなものについて大臣としてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  122. 伊東正義

    伊東国務大臣 やはり施設、区域の円滑な運用というのは、周囲の住民の理解がないとできないわけでございます。いまのようなお話、飛行機が突然民間の飛行場へ何の連絡もなく入るということは、よほどの理由がなければ極力減らすべきだと思いますし、騒音の問題、意見をお伺いしていてなかなかむずかしい問題があるなと思っております。しかし、少しでも改善するように、そして理解を得られるように、円滑な運用ができるように努力をするということが、区域の提供をしておるのですからやはり政府としてやらなければならぬことだと私は思いますので、いまの民間の飛行場に入る問題、いろいろ私も私なりに努力をしてみます。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 防衛局長がいらしておりますので、お伺いしておきます。  先ほど高沢先生もお聞きになっておられました日本周辺数百海里、航路帯千海里、ちょっと理解しにくい点等もあるわけですが、現在、防衛庁の立場で、おっしゃっておるこの海域の防衛というのはできているわけですか。
  124. 塩田章

    ○塩田政府委員 周辺数百海里、航路帯を設けた場合に一千海里という整備目標は、五十一年にできました「防衛計画の大綱」のときの考え方でございまして、現在、防衛力の整備はまだ「防衛計画の大綱」の線に到達しておりません。したがいまして、そういう意味でいきまして、いまできておるのかと言われますと、私ども決して十分にできておるというふうには申し上げられないと思うわけであります。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうすると、いまおっしゃる「防衛計画の大綱」ではできるという考えなのですか。
  126. 塩田章

    ○塩田政府委員 五十一年当時に作成しましたときに、一応のめどとしましてそういう計画を立てたことは事実でございます。したがいまして、計画大綱の別表にありますように、海上自衛隊の作戦用航空機二百二十機、対潜水上艦艇約六十隻というものがそろえば、いま申し上げました海域については、これは防衛できるとかできないとか、一〇〇%というような議論ではございませんけれども、そういう意味でなしに、格段に防衛力が充実してくるということは言えると思います。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 いま「防衛計画の大綱」の二百二十機、六十隻では一〇〇%できないということをおっしゃったわけですね。皆さんの考えているいまの面のことも含めて、この海域はどれくらいあれば完全防衛ができるという考えを持っていらっしゃるわけですか。
  128. 塩田章

    ○塩田政府委員 先生もおわかりいただけると思うのですけれども、この防衛が一〇〇%というのは実際問題としてなかなか言えないと思うのです。と言いますのは、起こった時点での作戦の態様というものが千差万別でございまして、一概に想定されませんものですから、そういう意味ではなかなか一〇〇%というふうには申し上げにくいわけでございます。いま申し上げましたような二百二十機の飛行機、約六十隻の艦艇というものが整備された場合に、それが元来の目標であるわけでございますから、私どもは大変に防衛力として充実したものになるということを申し上げたわけでございまして、数字的に一〇〇%とかそういう意味で申し上げにくいということをいま御説明申し上げたわけであります。
  129. 玉城栄一

    ○玉城委員 充実したものと言うけれども、これは切りがないですね。  この二百二十機の中にP3Cは何機入っているのですか。
  130. 塩田章

    ○塩田政府委員 二百二十機の飛行機は、大型固定翼としまして約百機、回転翼としまして百二十機というめどでございます。  いま、P3Cが何機かということでございますが、P3Cは今年度から入ってくるわけでございますが、現在の中期業務見積もりで四十五機整備することを目標にいま進めておるわけでございます。
  131. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、このP3C四十五機。百機ということがときどき出ますが、百機あるといまおっしゃるところの海域の防衛はできるというお考えがおありなんですか。
  132. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどから申し上げます、できるという言葉の内容にもよるわけでございますが、現在、P2Jを中心にして八十機体制で運用しておりますが、これがP3Cが入ってきて百機になり、あるいは先生のいまの御指摘のように仮に百機とも全部P3Cだ、こういうことになりますと、それは現在のP2J八十機で運用している体制から比べますと格段によくなることは間違いないと思います。
  133. 玉城栄一

    ○玉城委員 「防衛計画の大綱」でも、いまおっしゃる海域の防衛というのはできないのでしょう。足りない分はアメリカにまたなにしてもらうとか、これはもう本当に際限がないと思うのです、こういうことをしていきますと。たとえば「防衛計画の大綱」の四十五機、それに関連して装備というものが出てくるでしょうが、沖繩の基地はこれに関連してどんなふうになってきますか。
  134. 塩田章

    ○塩田政府委員 「防衛計画の大綱」は装備の整備目標を掲げておりまして、別にどの基地がどうだというふうに大綱の中では触れておるわけではございません。御承知のように、沖繩には今年度から第五航空群を新設していただくようにお認めいただいておりますが、そういう体制でいきますと、沖繩について今後とも第五航空群という体制で運用していく、こういうことになろうかと思います。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 とにかく「防衛計画の大綱」の目標を達成してもできない、あるいはまた、それ以上米側が期待している、百機とかなんとか新聞にも出ております。「防衛計画の大綱」の見直しということをここでおっしゃらないでしょうけれども、そういうことはもう腹の中ではちゃんと考えていらっしゃると思うのです。そういうことに伴って、特にいま申し上げているグアム以西とかフィリピン以北等の海域ということになりますと、沖繩の地理的な位置というものはまた非常に軍事的な価値を高めてくるという懸念があるわけです。私も沖繩出身でありますので、さっきから申し上げておりますとおり米軍の五三%も集中的にあって、さらに自衛隊基地がこういう状態で機能が強化拡大されていくことはとんでもない、このように思うわけですが、その点いかがですか。
  136. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げましたように、大綱の装備整備目標とは別に、基地の整備目標のお話だと思いますが、沖繩につきまして現在の第五航空群を将来どうする、あるいはもっと大きくするとか、そういう計画を現在持っているわけではございません。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 これ以上の基地の強化拡大というものは本当に御免こうむりたいということを申し上げておきたいのです。百十万の県民が国民として生活しているわけですから、これ以上日米で県民生活にそういう軍事的な不安を与えるようなことは決してしていただきたくないということを要望しておきたいのですが、最後に大臣のお考えをお聞きしておきます。
  138. 伊東正義

    伊東国務大臣 先のことをここでお約束するということはなかなかむずかしい問題でございます。ただ、いま玉城さんのおっしゃったように、沖繩に非常に基地が多い、県民の人々も非常に苦労していられるということは私はよくわかるつもりでございますので、そういうおっしゃったことを頭に置いて、今後の基地の提供の問題でございますとか、あるいは自衛隊が考えられる――局長もおられますが、われわれとしては十分そこは注意しなければならぬというふうに思います。
  139. 青木正久

    ○青木委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ――――◇―――――     午後二時五分開議
  140. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。渡辺朗君。
  141. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  去る四月の六日でございましたか、日英外相の間で定期協議が開かれました。レーガン政権が発足した、あるいはポーランド情勢が非常に緊迫している、また、ECとの間で日本がいま貿易の問題などの摩擦を懸念している等いろいろな問題があるときでございますだけに、実力者である両国の外相がお話し合いをされたことは大変重要な意味を持つものではなかろうかと私は思います。どのような問題をお話し合いになったのか、手短で結構でございますから、焦点になりました点をお知らせいただければありがたいと思います。
  142. 伊東正義

    伊東国務大臣 キャリントン外務大臣とは、日英定期外相会議を去年東京でやる予定でしたが、イラン・イラク紛争が起きましてキャリントンさんが来れなかったので、きょうまで延び延びになったわけでございます。  出ました主な話題でございますが、レーガン政権の外交政策といいますか、これが話題になりまして、キャリントンさんも政権ができるとサッチャー首相と一緒にすぐ行ったことでございますし、私も行ってまいりましたので、それぞれアメリカの新政権に対する見方というような話をいたしました。  それから、特に時間を費やしたのはポーランド情勢の問題でございまして、介入があるかないかということに始まりまして、キャリントンさんは介入が非常に切迫しているという認識に立って、そういうことになればもうヨーロッパのデタントというものは壊滅する、軍縮などという問題はすっ飛んでしまうというようなことで、そういう場合にはソ連に対してヨーロッパでどういうふうに考えているかというような話で大分時間をとったのでございます。  そのほか、EC、特にイギリスは今度は六月以降議長国になりますので、議長国として、中東の和平問題につきましてキャリントンさんも非常に関心を持って去年も行ってまいりましたので、中東の問題をいろいろお話ししたわけでございますが、中東の和平という問題につきましては、ECの考えは日本と非常に近いということでございました。  それから、外務大臣はパキスタンに寄り、中国に寄って日本に来ましたので、アフガニスタンの問題等の話をし、政治問題というのは余りないわけでございまして、二国間の貿易、経済問題、それからECとの経済問題というようなことが話題になった主な点でございます。  結論的には、ECと、去年アフガニスタン、それからイランの人質の問題で当時の大来外務大臣が参りましていろいろ連絡をしたわけでございまして、あれから特にECとの関係が近くなったということがございましたので、キャリントンさんも日本とECとの連絡協調をひとつ緊密にしようじゃないかというような話をしたこと、それから一つ、オタワのサミットの問題についても言及をしたというのが、大体の話題の主なものでございます。
  143. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまの詳しくお話しいただきました議題について、本当を言うと、それぞれ意見の同意点と、あるいは食い違った点がありましたら、そこら辺も聞かせていただきたいとは思いますが、時間の関係もありますので二、三に限ってお聞きをさせていただきたいと思います。  一つは、その時点から今日まで一週間ほどたっているわけでありますけれども、依然として外務大臣は、ソ連あるいはソ連の軍隊、それからワルシャワ条約国の軍隊がポーランドに介入する危険性はあるとキャリントン外相と一致された見解をお持ちであった時点から今日に至るこの数日の間でございますけれども、同じ考え方をお持ちでポーランド情勢を見ておられますか、あるいはかなりの変更あるいは情勢の変化があったと考えておられますか、そこら辺はいかにいまお思いでございますか。
  144. 伊東正義

    伊東国務大臣 ポーランドの問題につきまして、そのときはまだブレジネフ書記長がチェコで演説をする前でございました。その後、非常に切迫しているのじゃないかという一つの理由に、ブレジネフ書記長は党大会というのには余り出たことはない、そこで、チェコの党大会に出たということはやはり非常に切迫をしている一つの理由じゃないかということをキャリントンさんが挙げておったのでございますが、その後ブレジネフ演説がありまして、やはりポーランドの国民がというようなあいさつがあったわけでございまして、私がキャリントンさんと会ったときよりは若干、好転という言葉を使えるかどうかわかりませんが、緊迫の度合いがあのときよりは少し薄れたのじゃないかと私は見ております。しかし、基本的にまだまだ安心はならぬし、可能性があると思って見ておりますのは、ブレジネフ演説の中で、ポーランド指導部と言ったのではなくて、ポーランド党員はという言葉を使っているのでございます。指導部と言わず、わざわざ党員はというような言葉を使っていることは、私は一つやはり注意すべきことなんだなと思って見ておりますし、演習は終わったと言いますけれども、やはりまだたくさんの軍隊が周囲に配備されているというような情勢がございますので、これはもう遠のいてしまったのだというようなことには私は見ておりません。可能性はあるだろうと思って見ておるわけでございますが、しかし、キャリントンさんと会って話したときよりは若干やわらいだのではなかろうかなという感じを持っております。
  145. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 キャリントン外相とのお話し合いの中では、もし介入があった場合には対ソ制裁で足並みをそろえるのだということもお話し合いをされておられるし、そうなると西ヨーロッパ諸国とすでに話し合いをしておられてどのような対策を講ずるのか、日本政府としては具体策を持っておられる、あるいはそこら辺を調整しておられるものだと考えますが、その点はいかがでございましょう。
  146. 伊東正義

    伊東国務大臣 もし万一介入があるというふうなことになりますれば、アフガニスタンのときもなるべく大筋は足並みをそろえようということでやったわけでございますので、やはり今度も同じだと私は思っておるわけでございます。ポーランドにもしも介入があれば、ヨーロッパのデタントの壊滅、軍縮という問題も吹っ飛んでしまうだろうし、あるいはもっと全世界的にデタントという空気が壊れてしまうような、本当に世界的な規模の冷たい関係が出てくるだろうと想像されるわけでございまして、やはりそういうことがないように、そういうことになったら本当に西側としては厳しい対ソ措置というものを考えざるを得ないのだということは、これは共通の認識でございます。アメリカに行ったときも話が出ました。キャリントンさんともその話が出たのでございます。  ただ、内容が、どういうことをやる、どういうことをやらないというような、一つ一つ実はまだ詰めて外国と話し合いをする、あるいは国内的に話し合いをするということはやってないのでございます。それで、そういう内容のもの、こういうことを自分らは考えているという連絡はあったことは確かでございます。しかし、その一つ一つについて外国と、いろいろな日本の意見を言うとかどうするとかという詰めはやっておりませんし、また、国内的にも、これは外務省だけの問題ではございません、関係するところは非常に広いわけでございまして、イラン、アフガンのときは大平総理のところに関係閣僚が集まっていろいろ相談したということがございます。今度はどういう手続でやりますかは別にいたしまして、関係する省庁は多いわけでございますが、その省庁にも、こういうことをやる、こういうことはやらないというような相談は実はまだやってないわけでございまして、ましてや外国とはもちろんまだやってない、一般論として考え方を話しているだけという段階でございます。
  147. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その際に、いまもお話の出ておりましたデタントも、確かにそんな事態が生まれてくれば世界じゅう大変になってくる。ソ連の軍事的脅威というような問題、これが当然話題の中心であったろうと思いますけれども、これについてはイギリスの外務大臣伊東外務大臣は同じような見解をお持ちでございますか。ソ連の脅威というようなものについては共通の認識をお持ちだというふうに私は理解してよろしいのでしょうか。
  148. 伊東正義

    伊東国務大臣 キャリントン外相と特に軍事的な問題について話し合うということはやっておりません。ただ、八〇年代が非常に厳しい国際的な情勢だということについては、アフガニスタンの問題でございますとか、いろいろ意見は一致しているわけでございますが、軍事的にどうだというようなことについては実は私は話し合いはしなかったわけでございます。
  149. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そうなりますと、私、いろいろと突っ込んでお聞きしたいと思います。  伊東外相、ポーランドも含めまして東欧というもの、あるいはソ連圏とも言っていいかと思いますけれども、そういうものに対する基本的なわが国政府の方針というようなものは何かお持ちでありましょうか。そして、それをもとにしていろいろポーランド情勢お話し合いになり、あるいは対ソ制裁が論議されているのでございましょうか、何かそこには基本原則のようなものがすでにできているのでございますか、それともないのでございますか、そこら辺、ちょっとお聞かせください。
  150. 伊東正義

    伊東国務大臣 東欧圏ということに対して日本が何か原則を持って外交をやっているかということでございますが、それはいつも私、申し上げますように、日米が基軸であり、西側の国々と連帯協調を原則にしてどの地域でもなるべく友好関係を結んでいくということをやっておりますので、東欧の国々に対しましても、特別にどういう対策をとるとかいうようなことじゃなくて、東欧の諸国ともなるべく平和友好関係を結んで続けていくという態度でやっておるわけでございまして、人の往来も東欧圏とその他何も区別はしておりませんし、また貿易その他も毎年着実にふえていっているということでございますので、東欧につきまして日本が特別な態度で臨むというようなことはいたしておりません。  ただ、ソ連はアフガニスタン介入があった、あるいは北方の領土に対する軍備の増強、領土問題があるというので、ソ連との関係は御承知のとおりでございますが、特に東欧関係につきまして、いま特別なことを考えているということは何もやっておりません。
  151. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 アフガンだとかいろんな問題があったからソ連はいま暫時除くけれども、他の国々はどこの国とも友好関係を進めるというお考えだというふうに聞きました。理解いたしましたが、たとえばポーランドに対して、今回ずいぶん西欧諸国と一緒になって多額の援助を必要としている情勢にあるし、また経済的にいま破綻しつつあるという情勢を救済するためにも、日本は何千万ドルかの援助をすることを決めているというふうに、新聞情報でございますが、私どもは聞き及んでおります。そういうことは決めておられませんか。
  152. 伊東正義

    伊東国務大臣 ポーランドの問題でございますが、政府援助、いわゆる円借款とかそういうことはいま考えておりません。いままでやりましたことは、六月までの暫定的ということで、民間の金融機関とかそういうところが中心になりまして、約三千万ドルのバンクローンを認めるということを民間同士では話をしておられますが、国がそれ以上政府援助をするということは何も決めておりません。
  153. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 西ドイツだとか、あるいはフランスだとか、そのようないわゆる西側の国々、そこは政府がむしろ主導権をとって援助策を打ち出しており、現実に援助をしているのではないでしょうか、その点は外務大臣、どのようにお考えでございますか。
  154. 伊東正義

    伊東国務大臣 去年十二月、私、ヨーロッパへ行ってきたときも、EC諸国は、食糧を安い価格で値引きをして、支払い条件も非常に有利にして、政府が食糧の援助をするというようなことをやっております。向こうは国が考えるということをやっておるわけでございます。
  155. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そうしますと、西側の一員として、一つの協調行動をとるという原則を踏まえていままでも行動しておられる中で、民間の金融的な措置はそれはやってもいいけれども政府の方は知らぬというのでは、これは西側の一員というには実に言葉だけで行動が伴わないと誤解されるおそれがあるのではないかと思いますが、その点いかがでございますか。
  156. 武藤利昭

    武藤政府委員 西側の国の間でいろいろ相談をしながらやっているわけでございまして、現にきのうからまたその会合をやっておるわけでございますが、日本といたしましても民間に任せ切りという趣旨ではございませんで、いま大臣民間の銀行と申しましたのは、たとえば政府開発援助のような形での政府援助ではないという趣旨でおっしゃったわけでございまして、もちろん輸銀でありますとか、保険でございますとか、そういう形で政府が絡んでくるということはあるわけでございます。  国によりましてそれぞれ金融の形態が違うわけでございますので、ポーランドに対する援助と一言で言っておりますが、これはいわばポーランドが外貨が底をつきまして返済能力がない。その返済能力がない分についての金融支援と申しますか、リファイナンスでございますとか、リスケジュールでございますとか、制度は国によっていろいろでございますけれども、そのような形で当面のポーランドの対外債務を免除すると申しますか、穴埋めをすると申しますか、そういう意味での金融支援でございまして、申し上げましたとおり、国によって制度が異なるという点からする違いはございますが、基本的姿勢は西欧の国も日本も同じだろうと考えておる次第でございます。
  157. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その点、もうちょっと突っ込んで、外務大臣、お考えを聞かしてください。  二百四十億ドルもの大変大きな対西側の負債を抱えているポーランド、これが破綻しそうになっている。これに対して、日本側はどういうふうな援助をするのか。いまお話を聞きますと、事情は違うけれども、同じような援助をする、救済をするという姿勢で臨むのだ、しかしその際に、その援助というのは、いま危機に陥っているからこれを援助するのですか、それとも、向こうに一千万人をも含める連帯組織ができ、ソ連のいわば介入の危険性にもさらされながら、そこに自由化を求める動きポーランドにある、そのようなポーランドの自主的な動きを支援するために援助するのですか、どちらを原則として考えておられますか。
  158. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  これはポーランド国民が非常に経済的な危機に瀕しておるということでございまして、ヨーロッパがやっておる食糧の問題でございますとか、これはどの国のどういう組織を支援するとか、そういうことじゃなくて、ポーランドの国民が、あるいはポーランドという国が非常に経済的な危機に瀕しておるということを支援する、経済援助をするということでございまして、何党がどうだからということではない、ポーランドの国民のことを考えている、こういうことでございます。
  159. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そこなんですね。問題が起こったらそれに対応するという姿勢にすぎないのか、何か国際的な戦略をもお持ちで、そして東欧諸国においてはレーガンさんも自由化を促進しようというお考えであるかのように私は理解をいたしますけれども、たとえばそれと歩調を合わしていくのか。西側諸国は自分の国が戦場になったら大変だと思いますから、ポーランド情勢を早く原状復帰に持っていきたいというふうに考えておる国もあるでしょうし、あるいは自由化を促進するという意味で非常な関心を持っておるかもわからぬ。幾つかの動きというものがあると思います。  もう一度確認しますが、単にポーランドの国民がいま困っているからそれに援助するという姿勢なのでございますか、それとも、国際的に少なくとも何らかの合意がある西側の戦略の上でのポーランド援助でございますか、ここら辺の哲学みたいなものを教えていただきたい。
  160. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本ポーランドに対して支援するということで六月までは三千万ドル、その後のことはいま相談をしておるということでございますが、これは先生のおっしゃる連帯を助けるためとか、自由化を助けるために経済的な援助をするということを日本は考えておるわけじゃなくて、原則としてその国の国民あるいは国が非常な経済的な危機に陥っているという際に、それを人道的な立場あるいは経済的な問題を助けるということでやっているというのが政府のたてまえでございます。
  161. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 少ししつこいようですけれども、そうなりますと、対ソ制裁でもしポーランドソ連が軍事介入でもしたときには西側と一緒になってやるのだというのと、何か矛盾したものになってくるのではないだろうかと思うのです。大臣、そのようにお考えになりませんか。ただそこで困っている人たちを救援するために西側と一緒にやっているのだと言うが、対ポーランド政策で、対ソ牽制であるとか、ソ連の軍事介入をやらせないためだとかということに重点がある西側の一員としての動きを今日まで示してこられたのではなかったかと私は思うのですが、いかがでございましょうか。
  162. 伊東正義

    伊東国務大臣 ソ連ポーランドへ介入をするかしないかという問題の中に、やはり経済問題が一つあるわけでございます。経済的な問題から国内が社会不安あるいは政治不安ということになっては、先生がおっしゃるようないろいろな政治紛争を起こしてくる、国際的な問題になるわけでございますので、これはあくまでその国のことはその国の国民が決め得るという体制をどうしてもとる必要がある。第三国は介入すべきじゃないということは日本も何回も言っていることでございますし、私もポリャンスキー大使にも言ったことでございます。  ほかの国に軍隊を持って入るということは、アフガニスタンの例、カンボジアの例を見まして、これは絶対とるべきことじゃないというのが日本の方針でございますので、ポーランドの国の経済的困窮を救って、そして政治不安、経済不安をなくしていこうという考え方でございまして、どの政党を支援するためだとか、そういうふうに考えるべき問題じゃない。その国の経済的な不安にならぬように、それが社会不安、政治不安になって国際紛争のようなことが起きないようにということが日本の考え方でございます。
  163. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いろいろお聞きしたいのですが時間がありませんが、たとえば非常な大国であろうとも、連続して経済計画を進めてきている、よその国に少しく軍事介入をし過ぎた、そのために国内の民需に対して生産も間に合わない、だから新しい五カ年計画などをつくって、そのときに西側と協調しながら、そこの援助を求めながら国民の立場に立っての経済政策を進めたいという立場からアプローチがあった場合には、外務大臣としてどうされますか。そういう問題についてもそこの国の国民の立場を考える、援助をしてやる、あるいは日本でできる範囲内の経済協力、技術協力というものは進めるというようなことはあり得るわけでございますか。  私はいまここで特定の国の名前は出しておりませんけれども、そういうふうな立場で東欧諸国を考え、ソ連を考え、私どもの対外援助、経済協力を考えるというふうなのが外務大臣の姿勢だというふうに理解してよろしいでしょうか。
  164. 伊東正義

    伊東国務大臣 申しわけありませんが、御質問の意味がちょっとわからぬことがありましたので、もう一回お願いします。
  165. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 では、もう一遍やります。たとえば第十一次五カ年計画をソ連はこれから進めようとしているわけです。西側の技術も資金もいろいろ必要とするでありましょう。そうした場合に、それに対して協力することはデタントを進めることになりますか、それとも、そういうことをすることは軍事力を強化し、そしていままでの日本に対する脅威をより大きくすることになるからそれはできないのだというふうにお考えでございますか、具体的にお聞きします。
  166. 伊東正義

    伊東国務大臣 その場合、その国と日本がどういう関係にいまあるかというのが一つの前提になると思うわけでございます。ソ連ということでお話しになりましたが、いままでも、たとえば技術協力の問題でございますとか経済開発の問題でございますとか、こういう問題が起きる前は比較的スムーズにそういうことをやっていたわけでございます。これは経済援助というふうにはいきませんけれども、技術の協力、あるいは経済開発の協力ということはいままでやっていたわけでございますから、そういうことは当然考えてもいいと私は思います。  ただ、その国とのつき合いがどういうふうになっている、その国が現にどういうことをやっているということが前提になるものでございますから、それはやはり考えて判断しなければならぬわけでございますが、そういうものを除いて考えれば、ソ連ともいままで技術協力、経済開発に対する協力ということは日本もやっていたということでございます。
  167. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この問題はなかなかデリケートなところもございましょうから、これ以上これについては触れません。  ただ、もう一つ、先ほどのキャリントン外相との話の中でありました中東和平問題に関連いたしまして、いまイラン・イラク戦争というのはどういう状況になっていますか、国連の和平特使なんかも動いているようでありますけれども、その進捗状況はどうでございますか、外務大臣として見通しはいかがでございますか。
  168. 伊東正義

    伊東国務大臣 イラン・イラクの紛争はちょうどこれから雨季明けになるところでございますが、膠着状態ということでございます。たまに空襲があるとかいうことはございますが、一ころから見れば非常に膠着状態になっているということでございます。  片や、この紛争を早くおさめようということで、いま先生のおっしゃいました国連パルメ特使、それからイスラム、これはたしかギニアでございましたか、大統領が中心になりまして、大統領がたしか四人、首相が二人、そのほか外務大臣とか、アラファトPLO議長とか、そういう人が加わって、たしか二回仲介に行きましたが、これもなかなかうまくいかぬ。国連の特使は、特にいまシャトル・アラブ川の航行の問題で仲に入っていろいろやっておりますが、これもまだなかなか実現しない。いまちょうど非同盟のキューバとか、インドとか、PLOとか、そういうところの外相等が行ってやっておる。しかし、これもなかなか話がつかぬということで、両方の主張が非常に隔たっておるものですから、まだまだ和平の話し合いのテーブルには着いていないということでございます。  それで、日本としましては、国際的な仲介の機関といいますか、特にイスラム、ギニアの大統領などが大々的にやっておられる、それと国連の仲介というものに期待をかけ、これをまた支持するということでやっておるわけでございますが、残念ながらいまのところは膠着状態で、いつ解決するかというめどはまだついておらぬというのが現状でございます。
  169. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一つ二つだけお答えをいただきたいと思います。  いまのイラン・イラクの問題で、クウェートの新聞でございましたか、イラク側が日本製の弾薬を捕獲したというようなことがあって問題になったというふうに聞きました。メード・イン・ジャパンの判こが弾薬箱か何かに押してあるというようなことで問題になったと聞いておりますが、この問題は確かにそういうことがあったのでございますか。どのように処理をされたのでございますか。
  170. 堤功一

    ○堤説明員 イラン、イラク双方から、おのおの相手国に対して武器を輸出したのではないかという発言あるいは報道等が行われたことがございまして、その都度調査をいたしまして、いずれも事実無根であることが判明している次第でございます。わが国が武器の輸出に関しましては武器輸出三原則、統一方針の形で立場を明らかにしておりますので、先方の政府は十分これを承知しているものと存じております。
  171. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いや、そういうことがあったのかなかったのかということをまず先に答えてください。
  172. 堤功一

    ○堤説明員 報道あるいは発言等が行われましたのに関しまして、早速調査をいたしまして、その事実はないということが確認されております。
  173. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私の聞きましたところによると、そういうことは事実あった。ただし、日本側の方から、これは朝鮮戦争のとき、あるいはベトナム戦争のとき、そのときに日本からそういうふうな箱か何かが行ったので、そこにメイド・イン・ジャパンの判こが押してあったというようなことで盛んに説得をし、納得をしてもらったというふうに聞いておりますが、そういう事実はなかったのですか。そういう仕方をされたのではございませんか。
  174. 堤功一

    ○堤説明員 二つの場合、双方につきましてわが方の大使日本から武器を輸出したというようなことはないということを明言いたしました際に、先方からいろいろな種類の照会があったということはございませんでした。先方はわが方の大使の明言を信用したということだと理解しております。
  175. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 では、最後にもう一つ、中東和平の問題で、伊東外務大臣アメリカに行かれました際にいろいろな点では合意点に達せられたそうでありますが、一つ、中東和平の中でのもう一つのポイントであるPLO、これに対する方針については食い違いがあったというふうに伝え聞いておりますが、その中身はどのような食い違いでございましたでしょうか。
  176. 伊東正義

    伊東国務大臣 PLOに対しましては日本とヨーロッパは大体一緒でございまして、この間も、ECと一緒になってアメリカを口説こうじゃないかと言って話したのです。日英同盟だと言ってキャリントンさんは笑っておりましたが、こういうことでございました。  私は、中東和平の恒久的な包括的な和平ということのためには、パレスチナ人の自決問題というものを認め、解決しなければ、包括的、長期的な和平というのは来ないのじゃないか、しかし、その場合に、パレスチナ人もイスラエルの生存権というものは認める、イスラエルもパレスチナの自決権を認め、パレスチナの有力な代表であるPLOというものも和平のテーブルに着かせることが大切じゃなかろうか、だから、PLOもイスラエルを認め、イスラエルもPLOを認めるということで和平の交渉をすることが大切じゃないか、キャンプ・デービッドのイスラエルとエジプトの和平、これは大切でございますから、それをやって、もう一歩そこへ進めていくということが大切だということが日本の考え方だ、これはECも同じでございます。  そう言ったことに対しまして、特にPLOの認識でございますが、PLOというものを和平のテーブルに着かせるとかそういうことはアメリカとしては考えてない。アメリカとしては選挙中に、あれはテロ集団だなんて言ったことがあるわけでございまして、私は、PLOはイスラエルを認めるし、また武力というものを用いて問題を解決するということじゃなくて、話し合いで問題を解決するという態度をPLOもとるべきだというような話し合いをしたときに、アメリカはPLOに対する認識が違っていたわけでございます。PLOの議長が日パ友好議員連盟の招待で日本に来られれば私も会うつもりだし、総理も会うと言っておられるということに対して、余りいい顔はしていなかったということは事実でございます。
  177. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。以上をもって終わります。
  178. 奥田敬和

    奥田委員長 野間友一君。
  179. 野間友一

    ○野間委員 一番最後になったわけですが、私も、午前中から論議のありました日米間の防衛分担あるいは防衛協力、これらの点について大臣質問をいたしたいと思います。  いまにわかに、特に大臣が訪米されまして、その前後からですが、北西太平洋あるいは西太平洋と、時の言葉として連日マスコミをにぎわしておりますし、国会でも相当な論議が重ねられておるわけであります。たいへん波が高くなってきたという感じであります。  ところで、この北西太平洋とか西太平洋、これが、たとえばアメリカのいろいろな人が使う用語が必ずしも統一されていない。これは防衛に関して出たいろいろな言葉でありますから、決して地理的なそういう概念で言っておるものではないわけですが、ワインバーガー氏は「北西太平洋」、これは大臣の国会での答弁にもありましたですね。それから、レーガン大統領は福田元総理に対しまして「西太平洋」という表現を使ったということ、それから、マンスフィールド大使は「日本本土と周辺海域」、これは三月九日の記者会見の中でこういう表現を使っておられるわけでありますが、外務省として、それぞれの使った言葉の意味、これは同一というふうにお考えなのか、それともそれぞれ違うというふうに考えておられるのか、大臣の御所見を賜りたいと思います。
  180. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お答えいたします。  確かに、アメリカ側は北西太平洋あるいは西太平洋という言葉を使っております。しかし、こういうアメリカ側の発言は、必ずしも厳密に一定の海域あるいは一定の範囲を軍事的目的から使っているわけでございませんで、日本の防衛に関連のある地域ということで述べたわけでございまして、私たちとしては日本側から見て、日本の周辺海域ということについて日本の防衛力を増強してほしい、こういうふうにとっているわけでございます。
  181. 野間友一

    ○野間委員 その周辺海域のことなんですが、これはよく使われておりますようにグアム以西、フィリピン以北、これは確かに防衛上の用語でありますけれども、そういうふうに理解をされておるのかどうか、いかがでしょう。
  182. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 大臣がワインバーガーさんと会談された際にアメリカが言ったのは、グアム以西、フィリピン以北、そこの地域におけるアメリカ側の追加的努力、その前段には、先ほどもこの委員会で出ましたけれども、南西アジアあるいは東南アジアということがございましたが、その北西太平洋という言葉を使った際に、グアム以西、フィリピン以北、そこにおける追加的負担にかんがみて日本側としても防衛について努力をしてほしいということにすぎませんで、厳密の意味で軍事的な用語というふうに使ったわけでなく、単なる地域の描写として用いた言葉でございます。
  183. 野間友一

    ○野間委員 しかし、大臣がお帰りになりまして参議院あるいは衆議院の中でもおっしゃっておりますけれども、具体的にいま局長が言いましたように、グアム以西あるいはフィリピン以北というようなことを言いながら、北西太平洋というこの区域に対して大変な防衛努力をしておるということを再三国会の中でも答弁されておるわけですね。したがって、大臣としても北西太平洋あるいは西太平洋、日本本土及びその周辺の海域ということは、当然そういうことを同一の防衛上の言葉としていま申し上げたような特定のそういうところを指しておるというふうに理解されておるのじゃないでしょうか。
  184. 伊東正義

    伊東国務大臣 人によって、日本の本土周辺という言葉を使ったときに、いま野間さんのおっしゃるようにグアム島以西、フィリピン以北とそれは同じに使っているのじゃないか、あるいは西太平洋ということを使ったときにグアム以西、フィリピン以北というのと同じじゃないか、こう思っているのじゃないかという御質問でございますが、私はそういうふうに一緒だとは思っておりません。  実は私も、これは参議院で御質問を受けたのですが、いろいろスピーチをやりましたときに西太平洋という言葉を使ったことがあるのです。西太平洋というのは何もグアム以西、フィリピン以北なんということを限定して使ったのじゃなくて、太平洋の西の部分と日本の近辺だという意味で使ったのでございますということを私は言ったので、そのとおりのつもりで私は使ったわけでございまして、いま野間さんのおっしゃるように、いろいろ言うけれども、それはグアム以西、フィリピン以北と一緒じゃないか、こういうふうに使っているのじゃないかと言われますが、私は違うと思いますし、私もそんなことを考えないで実は使ったのでございます。  グアム以西、フィリピン以北というのはえらい有名になりまして、私は方々質問されるのですが、いささか当惑しているようなことでございまして、ワインバーガーさんとの話のときは、本当に一つの描写、ペルシャ湾とか、南西アジアとか、東南アジアとか、そういうのとずっと一連の地域として出てきたのでございまして、そしてそういうところでアメリカが防衛努力をやっているのであるから、日本も経済的に大きくなったのだから防衛力の強化についてひとつ努力をしてもらいたい、こういう一般的な話の前段にそういう描写がずっと出てきた。肩がわりしてくれとかどうしてくれとか、そういうことじゃ全然なかったのでございます。
  185. 野間友一

    ○野間委員 私はそこまで聞いていないわけで、つまり、その範囲はどのところを指して言うのか、それぞれ言い方が違うから聞いておるわけですね。西太平洋あるいは北西太平洋、日本本土及びその周辺地域、それぞれ使い分けをしておるのか、同一のことを指して言うのか。これは、西太平洋と言えば太平洋の西半分というのは当然の話なんです。恐らくいま大臣も常識的な意味で受け取ったというような趣旨のことを言われたと思うのです。だから、そういうふうに漠然とか、あるいは正確かはともかくとしても、一応アメリカが使った言葉の意味はそういうふうに受け取ったのじゃないでしょうか、こういう点、余り論議しても意味がないが。
  186. 伊東正義

    伊東国務大臣 条約でございますとか法律に書くときということじゃなくて、私は西太平洋という言葉はスピーチで使ったわけでございますが、そんなに海域をいま先生のおっしゃるように頭の中でぴしゃっと決めてそれを使うということじゃなかったということ、私自身はそうでございますし、人によりまして一緒のことをそういうふうに表現したのかどうかということは、人のことまでわかりませんが、私はそういうことじゃないのじゃなかろうかと思っておるのでございます。
  187. 野間友一

    ○野間委員 子供の対話でありませんので、事防衛に関してアメリカの首脳と日本の外交を代表される大臣とのこういう取り交わしの中、あるいは福田元総理が行かれてレーガン大統領との会話の中で出てきたこういう一つの用語、使い方がありますから、これはやはり外務省としては正確にこれを把握しておられると思いますし、私は恐らくグアム以西あるいはフィリピン以北というふうにお考えであろう、これは常識としてそうだろうと思うのです。  防衛庁としても、たとえば安保特の中でも西太平洋地域ということを防衛上の言葉として使っておるわけですね。これは御存じだろうと思いますけれども、それではアメリカの言う北西太平洋あるいは西太平洋、これとどういう関係として外務省はとらえておるのか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  188. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 アメリカ側が確かに北西太平洋、西太平洋という言葉を会談の中で使っておりますけれども、これは会談の中での言葉でございまして、そこで厳密に一定の地域を限定して言っているわけではございません。  それから、防衛庁が西太平洋という言葉を安保特の中で話しているときには、恐らく日本側から見ての太平洋の西側、こういう意味で理解して話しているのじゃないかというふうにわれわれ理解しております。厳密な意味については当局の防衛庁から御承知願いたいのですが、われわれの理解はそういうことでございます。
  189. 野間友一

    ○野間委員 これ以上言葉の範囲については深追いをしませんけれども、そうしますと、厳密な意味ではともかくとして、ほぼアメリカ側が言う範囲、防衛庁が言う範囲と、これは常識的にあるのじゃないかというふうに私は考えるわけです、言葉の使い方として。  次に、外務大臣にお聞きしたいのは、レーガン氏あるいはヘイグ氏、そしてワインバーガー氏とお会いになったわけで、特にこの中で、先ほども申し上げたように、北西太平洋の防衛の強化についてアメリカは大変努力をしておる、その中で日本も防衛努力を強化してほしいというような期待表明があったのだ、こういうお話がありましたね。その際に、もし誤解があってはいけないからということで、とうていそれはできないというふうなことを言われたということを何回か国会答弁されておりますけれども、えらい繁雑になりますがもう一度この場でひとつお答えいただきたいと思います。
  190. 伊東正義

    伊東国務大臣 午前中も高沢先生にお答えしたのでございますが、そういう話が出まして、具体的には駐日米軍の経費の負担をもっと持ってもらいたいのだ、地位協定の範囲でできるだけという話が出たわけでございます。いま野間さんのおっしゃるように、グアム以西、フィリピン以北という非常に具体的な地名が出たものでございますから、そのとき私は頭に二つ浮かんだのでございます。一つは、その海域の海域分担というような考え方で、それがその海域を日本で分担して防衛してもらいたいというようなことにとられれば、それは日本では集団自衛権はないのだ、個別自衛権しかないのだということがはっきりしておりますし、その海域では日本の艦船だけでなくて、外国の商船も艦船も日本が守るのだというようなことになると、これは集団自衛権になりますから、そういうことは認められないということで、もしもワインバーガーさんがそんなことを頭に置いて言ったのならこれは打ち消しておくべきだということで、まずそれが頭に出てきたわけでございます。  その次に出てきましたのは、防衛庁がいつも言っておりますように、航路帯の場合は千海里、それ以外は周辺数百海里、こういうことを言っているわけでございます。そういうことを頭に置いて「防衛計画の大綱」というものができておるということが私の頭にありますので、グアム以西、フィリピン以北ということになると、それよりも延びるじゃないか、そういうことになってくれば、それは法律上は自衛権の範囲ということで延びても考えられますけれども、閣議で防衛大綱というものを決めてやっているということよりも足を出すということになると、これは政治的にはまずいことだということで、そこまで「防衛計画の大綱」をたとえばもっと伸ばすとかふやすとかいうふうなことにつながるようなことであれば認めるわけにいかぬという、両方頭に出てきまして、それはむずかしいことなんですよと、そういうことは誤解があってはいかぬと思って言ってきました。私はどこかでも言ったのですが、向こうの言われたことを黙っていて、そして防衛力の強化をしてもらいたいということが外へ出れば、日本はそのときに黙っていたのじゃないか、認めたのじゃないか、あるいは海域分担論とか「防衛計画の大綱」をもっとふやすことを認めたのじゃないかというようなことにとられると、これはやはり誤解でございますので、そういう意味で私はすぐに私の意見を言ったというのが真相でございます。
  191. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、グアム以西あるいはフィリピン以北というのと、いわゆる日本の防衛大綱に定める防衛区域は違うのだということを前提としていま答弁をされたと思いますが、次にお聞きしたいのは、これは午前中も高沢委員の方からも聞かれたと思いますが、防衛庁が最近、周辺海域数百海里、それから航路帯千海里という、航路帯を線から面にふくらますということがいま問題になっておるわけであります。大臣がワインバーガー氏と話し合われたというそのとき、これは四月七日の衆議院の決算委員会で線より面重視ということを公式に大村防衛庁長官も答えておられますし、きのう付の新聞で原事務次官もそういうことを言っておられる。これは御存じのとおりなんですが、そういうことを前提にしてワインバーガー氏と話し合われたかどうかということについてまずお聞きしたいのと、いま言いました防衛庁が考えておるこの範囲、従前は千海里あるいは数百海里と言っておりましたが、今度はこれを面としてふくらませていくということですね、これと大臣の考え方とは同一なのか違うのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  192. 伊東正義

    伊東国務大臣 防衛庁が来ておりませんので、防衛庁のことを私がお答えするのはいささか当を欠きますので、防衛庁がどう言っているということには触れませんが、私は、航路帯の場合には千海里、そうでない場合には周辺数百海里ということを頭に置いて言ったわけでございまして、そのほかのことを考えて言ったわけじゃないのでございます。けさのお話でも、航路帯というのは何も自動車の通るような道ほど狭いものじゃないのだ、やはりその周辺は何ぼかあるものだということを防衛庁が言っておりました。これはひとつ防衛庁の方からよく聞いていただきたい。私はいまのことだけ、千海里、周辺数百海里ということだけ頭に置いて話しました。
  193. 野間友一

    ○野間委員 それは車が通る道路と違いますので、そのとおりです。これは前々から言われておりました常識のことなんですね。ただ、今回これを面的な側面というようなことで防衛庁が言い出したということは、新しい事実だと思うのですね。航路帯のことですから、多少はみ出る、ふくらむことは当然の話としても、それは決して面とは言わないわけですね。したがって、いま外務大臣は、ワインバーガー氏とお会いになったときには千海里、数百海里ということだけを念頭に置いてお話しになったということですね。ところが、いま申し上げたように、防衛庁としては面的な側面をこれに絡ませるというふうに変わっておるわけですけれども、これは確かに常識として、道路と違いますから一定のふくらみがあるとしてもこれを面とは言わない、面的なものがあるのだということを防衛庁が言い出したのは最近になって初めてだということは外務大臣もお認めになると思いますけれども、その点はいかがでしょう。
  194. 伊東正義

    伊東国務大臣 そういう専門的なことになってきますと私には余りお答えする能力がございませんので、これはやはり防衛庁を呼んで聞いていただけば結構だと思うのでございますが、帯の幅をどれだけとるか、どれだけとればそれが面と言われるのか帯と言うのかというようなことは私にはちょっとわかりませんので、やはり航路帯は航路帯と言った方が――私はそれ以外のことを考えて言ったわけじゃないわけでございます。
  195. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 けさの本委員会討論でもございましたけれども、防衛庁が述べている航路帯というのは線ではなくて、対潜航空機の能力の向上もございまして最近の対潜作戦というものが必然的に面的な要素が入ってくる、そういう意味で面的要素という言葉を使っておるというふうにわれわれは理解しております。ただそれだけ、けさの質問を踏まえながら、面的要素という言葉を防衛庁が使っている意味においてわれわれの理解として申し上げておきます。
  196. 野間友一

    ○野間委員 ちょっといま聞きにくかったのですが、面的なそういう側面を防衛庁が前面に出したということは、いま申し上げた七日の衆議院の決算委員会あるいはきのうの原次官の鈴木総理との会談後の記者会見でも、はっきり面という言葉を使っておるわけですが、私が聞いておるのは、公的に防衛庁が面という言葉を使ったのは最近ではなかろうかというふうに私は思うのですけれども外務省としてもそういう認識ではないかということです。
  197. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私の理解するところでも、国会の場で面的要素というその言葉自身を使ったのは恐らく最近のことだろうと思います。ただ従来から、さっき申し上げたような航路帯についての説明は行っていたと思います。
  198. 野間友一

    ○野間委員 線がどうなれば面になるのか、量的な発展と質的な変化、弁証法の問題だろうと思いますが、しかし少なくとも外務大臣、航路帯がありまして、航路帯から多少のはみ出し、ふくらみ、これは決して面とは言わない。もしそうだとすれば、従前から防衛庁は面という表現を使っておったわけですね。  ところが、私はここに奇妙に符合すると思うのですけれども、何度も言いますが、グアム以西、フィリピン以北防衛上の努力期待表明、こういう中で、しかも首脳会談を控えておる、防衛庁はそれを踏まえて面というようなことをこの際改めて初めて出したというふうに思えて仕方がないわけで、つまり、アメリカに呼応してそれに応じていくという姿勢がここにはあらわれておるのじゃないかというふうに思うわけです。  このふくらみというか、面的な要素ですけれども外務大臣、あなたがワインバーガー氏と話をされたときの頭には千海里あるいは数百海里しかなかったというお話ですが、だとしますと、原次官が記者会見の中でこういうふうに言っていますね。「グアム以西フィリピン以北の海域と、自衛隊が対潜作戦を考えている海域は大差ない」、また続けて「航路帯といっても対潜作戦をやる場合は面になることについて、首相にもよくわかっていただけたと思う」、つまり、ワインバーガー氏が言うグアム以西、フィリピン以北と、自衛隊が対潜作戦を考えている海域は大差がない、原次官はこういうふうに言っておるわけです。そうしますと、外務大臣がワインバーガー氏とお会いになったそのときの前提とは相当変わってきておる、違うのじゃないかというふうに言わざるを得ないと思うのですけれども、その点の認識はいかがでしょう。午前中も防衛庁の塩田局長が来られていろいろ話をしたというふうに聞いておりますけれども、いかがですか。
  199. 伊東正義

    伊東国務大臣 けさの防衛庁の塩田局長の説明を聞いていても、私の言うこととそんなに違っていなかったという印象を私は持っていますが、面といっても全面的ということもあるし、一面的ということもあるし、これはいろいろありますから、その辺のところを私から答弁しても正確に申し上げるわけにまいらぬと思います。私が向こうと話しましたときは、さっきから言ったようなことを頭に置いて話したわけでございます。
  200. 野間友一

    ○野間委員 一面的でも全部でもそれはいいのですが、私がお聞きしたいのは、原次官は大差がないということを言っておるわけですね。「対潜作戦を考えている海域は大差ない」「対潜作戦をやる場合は面になる」こういうふうにはっきり言っておるわけで、この面になるという点から言いますと、大臣の行かれたときの認識とはさらにそれよりもエスカレートしておるのじゃないか、これは当然そういうことが言えると思うのです。  大臣は防衛庁の認識とは余り違いないような認識だということを言われますけれども、しかし、少なくともあなたがいままで国会で答弁されていることと、昨今の、これは四月七日以降のようですけれども、国会で公式に面としてのそういう側面を前面に立てるという認識とは相当違うと思うのです。これは一面的でも全面的でも、少なくとも面であるという点については変わりがないと思うのです。しかも、アメリカの考えとは大差がないと原次官がここまで言うところに今日の問題があると私は思うのですけれども、こういう防衛庁の認識に対しては、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  201. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は原君の話は聞いておりません。けさ塩田君の話を後ろで聞いておりまして、私の言っておることと大差ないという意味のことをたしか塩田君は言ったと思うのでございまして、原君がどう言ったか、また新聞に書かれておることがそのまま原君の言であるかどうか、その辺は私はちょっとわかりませんので、いまここで当たっているとか違うとかいう論評をすることはひとつ御勘弁を願いたいと思います。
  202. 野間友一

    ○野間委員 次にお聞きしたいのは、三十日でしたか、土井委員質問に対する答弁でも、きょうも言われたのですが、要するに防衛大綱というものがある、そしてそれは閣議決定しておる、これが国民のコンセンサスなんだ、したがってここから足をはみ出すことはできないのだ、こういうことを言われました。そしてしかも、そのことは政策的あるいは政治上の判断なんだ、こういうことを言われました。つまり、憲法や法律のこういう制約については一言も触れておられませんですね。そこで、集団自衛権が違憲であることは別にいたしまして、そうしますと、大臣のお考えでは、個別的な自衛権の行使であればその防衛する範囲については全く無制限、憲法やあるいは法律には制約はないという御認識でしょうか、どうでしょうか。
  203. 伊東正義

    伊東国務大臣 法律的なことは条約局長から申し上げますが、私がそういうことを言いましたのは、たとえば航路帯千海里ということでいま「防衛計画の大綱」も大体そういうことを頭に置いてやっておるわけでございますが、それでは千一海里になったらそれは法律違反かというとそうじゃないということを私はどこかでも言ったことがあるのでございまして、個別自衛権の範囲というのは距離で決まっているものとかそういうものじゃないということが私は頭にあるわけでございまして、これは後ほど政府委員から答弁申し上げます。  私が言ったのは、「防衛計画の大綱」というものを勝手にふくらますとか、閣議決定以上のものを閣議決定も何もなしにやるとかいうことは、これは法律違反ではないかもしれぬけれども、いわゆる政治的に考えましてもそういうことは妥当でないということで私はこの間お答えをしたということでございます。
  204. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、局長の答えの前に最後にまとめて質問をしたいと思いますが、これは大変な問題だと思うのですね。つまり、憲法や法律の制約が仮にないとするならば、防衛大綱なり何なりをつくって、しかもそれをふくらますことによってこれは幾らでもエスカレートすることができるわけですね。つまり、地球のどこへ行ったってこれは防衛の範囲なんだ、個別的には自衛権の行使の範囲が許されるとするならばそうなると思うのです。しかも防衛庁長官も、大綱はいずれ再検討しなければならぬ、こうまで言っておる。総理大臣も、一日も早く大綱を達成しなければならぬと言っておる。達成すれば、必ず次の段階が生まれるわけですね。つまり、憲法や法律の制約がなければ、大臣の理屈からしましたら、もう至るところで制約なしに、これは金とか能力とかは別です、しかし、少なくとも憲法や法律の面では制約はないということに行きつかざるを得ないと思うのです。これは私はおかしいと思うのですけれども、この点について、局長、もしお答えになるならお答えいただきたい。  これはかつて四十八年、当時の山中防衛庁長官が、マラッカ海峡まで防衛の守備範囲を延ばすことは憲法違反だということをはっきり言っておるわけですね。ここいらの限界について言及しながらひとつ答弁をいただきたいと思います。これは局長、それから最後に外務大臣に。
  205. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お答え申し上げます。  自衛力の限界と申しますか、地理的な限界というものは直ちにお示しするにはなじまない概念でございます。つまり、自衛隊がわが国に対する武力攻撃に対処するために行動できる範囲というのは、わが国の領域、領海に限られるものではなく、武力攻撃の態様によりまして公海、公空にも及び得るものだ、したがって、その限度は何であるかということになりますれば、結局自衛権の行使に必要な限度内ということしかお示しできない概念でございます。したがいまして、いまわが国の防衛庁が海上自衛力の整備のために「防衛計画の大綱」というものに準拠いたしましてその目標を達成すべく掲げている一応のものは、周辺数百海里、航路帯の場合には千海里ということをもってわが国の海上自衛力の整備を目標として行っているということでございまして、この場合、当然のことながら憲法上の制約で言う集団的自衛権の行使というものは考えているわけではございません。したがって、防衛庁が頭の中に置いていることは、そこにおいて個別自衛権のみを行使する範囲と申しますか、目標として、周辺数百海里、航路帯を設ける場合は千海里ということを言っているだけでございます。  それから、山中防衛庁長官のマラッカ海峡まで広げるのは憲法違反であるというただいまのお話でございますが、私、その答弁をよく承知いたしておりませんけれども、山中長官が憲法違反だということをおっしゃったのであれば、それは集団的自衛権との関係を頭に入れた上で、集団的自衛権の行使になるから憲法違反になるとおっしゃったのだと思います。
  206. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は個別自衛権の法律的解釈の問題を言ったので、それは地理的にどこまでが個別自衛権で、それから一キロでも出れば集団自衛権だというようなものじゃない、そういう法律論を私は言ったわけでございまして、ただ、法律的に認められてあるからそれは何をやってもいいのだということではない。やはりそこにその国の政策あるいは国民のコンセンサス、財政の問題とか国際情勢とか、そういういろいろな問題を判断して、どこを整備なら整備の目標にするのが適当かと考えるのは、これはまた法律ともう一つ政策判断が要るじゃないかということを私は申し上げているわけでございまして、何も法律上可能なことは何でもやるのだ、そういうことを言っているわけじゃございませんから、それは誤解のないようにお願いします。
  207. 野間友一

    ○野間委員 時間が来たのでこれで終わりますけれども、そうなりますと結局、日本が自主的にとおっしゃいますけれども、あるいはアメリカの要請に従って、いずれにしてもいかようにでも変幻自在にそういう大綱なりなんなりを変えることによってできるということに道を開くということになるわけで、大変危険だと思います。  終わります。
  208. 奥田敬和

    奥田委員長 次回は、来る十五日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十一分散会