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1981-03-20 第94回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月二十日(金曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 松本 十郎君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       石井  一君    木村 俊夫君       北村 義和君    小坂善太郎君       古賀  誠君    坂本三十次君       竹内 黎一君    中山 正暉君       村岡 兼造君    井上  泉君       河上 民雄君    林  保夫君       中路 雅弘君    野間 友一君       田川 誠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         外務政務次官  愛知 和男君         外務大臣官房審         議官      栗山 尚一君         外務大臣官房審         議官      関  栄次君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯課長  佐野 国臣君         法務大臣官房審         議官      伊藤 卓藏君         外務大臣官房外         務参事官    小宅 庸夫君         外務大臣官房外         務参事官    長谷川和年君         大蔵省国際金融         局企画課長   関   要君         大蔵省国際金融         局投資第一課長 石川 光和君         通商産業省通商         政策局経済協力         部経済協力課長 井上 宣時君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 三月二十日  辞任         補欠選任   石井  一君     村岡 兼造君   太田 誠一君     古賀  誠君   金子 満広君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     太田 誠一君   村岡 兼造君     石井  一君   中路 雅弘君     金子 満広君     ————————————— 本日の会議に付した案件  アフリカ開発銀行を設立する協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第七号)  一次産品のための共通基金を設立する協定の締  結について承認を求めるの件(条約第八号)  東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター  を設立する協定締結について承認を求めるの  件(条約第九号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府シンガポール  共和国政府との間の条約改正する議定書の締  結について承認を求めるの件(条約第二三号)  千九百六十四年十一月二十七日にパリ署名さ  れた所得に対する租税に関する二重課税回避  のための日本国政府フランス共和国政府との  間の条約改正する議定書締結について承認  を求めるの件(条約第二四号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  この際、所得に対する租税に関する二重課税回避及脱税防止のための日本国政府シンガポール共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件及び千九百六十四年十一月二十七日にパリ署名された所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  まず、政府より順次提案理由説明を聴取いたします。外務大臣伊東正義君。     —————————————  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府シンガポール共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件  千九百六十四年十一月二十七日にパリ署名された所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 伊東正義

    伊東国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府シンガポール共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国シンガポールとの間には、昭和四十六年一月二十九日に署名された所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための条約締結されておりますが、近年シンガポール経済が著しい発展を遂げたことを踏まえ、昭和五十四年にシンガポール政府からこの条約内容同国経済の現状及び税制面における同国の最近の政策に沿ったものに改正したいとの申し入れがありました。政府としても、シンガポール政府からのこの申し入れを機に現行条約の見直しを行うことは有意義なことであると考え、この条約改正する議定書締結についてシンガポール政府交渉を行いました結果、昭和五十六年一月十四日にシンガポールにおいて、わが方本大臣先方ダナバラン外務大臣との間でこの議定書署名を行った次第であります。  この議定書は、本文六カ条から成り、これによる主な改正は、次のとおりであります。すなわち、使用料についての源泉地国免税主義を改めて源泉地国において一〇%を超えない率で課税することができるようにすること、芸能人等公的資金によって活動することにより取得する所得については活動地国において常に租税を免除するようにすること、学生、事業修習者等の受領する一定の報酬についての滞在地国における免税限度額を引き上げること、みなし外国税額控除制度内容シンガポールの最近の税制を反映したものとすること等であります。  この議定書締結によりまして、わが国シンガポールとの間の二重課税回避制度が拡充され、両国間の経済関係が一層緊密なものとなるとともに文化交流を初めとする人的交流が一層円滑に進められるようになることが期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百六十四年十一月二十七日にパリ署名された所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国フランスとの間には、昭和三十九年十  一月二十七日に署名された所得に対する租税に関する二重課税回避のための条約締結されておりますが、締結以来すでに十数年を経過したことから主にフランス側税制改正に伴って条約の一部を改正する必要が生じました。このため、政府は、この条約改正する議定書締結についてフランス政府交渉を行いました結果、昭和五十六年三月十日にパリにおいてわが方井川駐フランス大使先方ミドモール外務省在外フランス人局長との間で署名を行った次第であります。  この議定書は、本文十六カ条から成り、これによる主な改正は次のとおりであります。すなわち、わが国居住者たる一般投資家フランス法人から配当を受け取る場合には、当該投資家に対して当該配当支払い法人が支払った法人税の一部還付を受ける権利を認めること、国、地方公共団体または中央銀行が取得する利子等については源泉地国において免税とすること、いずれかの締約国またはその地方公共団体公的資金等により実質的に賄われる芸能人または運動家活動によって生ずる所得につき活動地国において免税とすること等であります。  この議定書締結により、わが国フランスとの間の二重課税回避制度がさらに整備され、両国経済交流及び文化交流が一層促進されることが期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につきまして、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  4. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  両件に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 奥田敬和

    奥田委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。高沢寅男君。
  6. 高沢寅男

    高沢委員 若干の時間をいただきまして、大臣に当面の国際情勢についてのお尋ねをいたしたいと思います。  初めに、先般の日曜日、ちょうど私、実はかぜで熱を出しておりまして自宅で休んでおりました。そのためにテレビニュースなどもゆっくり見ることができたわけでありますが、当日外務大臣ポリャンスキーソ連大使会談が行われて、その場面がテレビニュースで非常によく放映されたわけで、私もよく拝見をいたしました。大変なごやかに会談をされた、こういうふうに私もお見受けをいたしたわけでありまして、非常によかったなという感じを持っておりましたわけであります。  ところが、その翌日、宮澤官房長官の方から、ポリャンスキー大使あるいは在日のソ連大使館のいろいろな行動様式についての見解表明がされるというふうなことが出てまいりまして、これまた大きなニュースで伝えられるということで、私の感じとしては、前日の大臣大使の至ってなごやかな会談、翌日の官房長官見解表明、非常に唐突なような感じがいたしたわけでありますが、この種のことで何か事前の御相談大臣にあったのかどうか、まずそういうことからお尋ねしたいと思います。
  7. 伊東正義

    伊東国務大臣 そういう相談等はございません。
  8. 高沢寅男

    高沢委員 対外関係を主管される外務省のお立場として、わが国政府がああいう形でもって日本に駐在している外国のいろんな大使館、公館のビヘービアのあり方についてあれこれの評価を述べる、中には非常に非難するような意味を込めての評価を述べるというようなことが現にあったわけですが、そういうふうなことが一つ政府やり方として一体行われるということになるのかどうか、今後の問題もありますので、そういうことについての御見解お尋ねをいたしたいと思います。
  9. 伊東正義

    伊東国務大臣 官房長官も、参議院の予算委員会でございましたか、自分の真意が向こうに伝わらなくてはなはだ遺憾だったという意味のことを言っておられたのでございますが、官房長官が言われたことにとやかく私からコメントすることはひとつ差し控えたいと思いますので、御容赦を願いたいと思います。
  10. 高沢寅男

    高沢委員 大臣としては大変慎重なお立場表明されたわけでありますが、日本の国あるいは政府外国の国あるいは政府との関係というものは、やはり何といっても外務大臣中心で主管されるということなのであって、したがいまして、こういうふうなことが今後も仮にあって、その国と日本との関係に好ましからざる関係をもたらすというふうなことがあっては大変だ、こう思います。したがいまして、いま大臣は、そういう見解は差し控えたい、こういうことでございましたが、私としては今後こういうことのないようにということをしっかりとひとつ大臣に御要望として申し上げておきたい、こう思います。  それで、さてそのことに関連いたしまして、ソ連大使館がそれに対して今度はまた見解表明をして、その中で、鈴木総理ポリャンスキー大使秘密会談申し入れた、そういう事実はない、こういうふうなことを言っているわけなんでありますね。こういうことが宮澤見解の中の一つのポイントになっていたので、この辺の事実関係というものは一体どうだったのか。  私も考えるのに、われわれよく人と会うのに、ちょっとひとつプライベートに会おうやというようなやり方をよくやるわけであります。恐らく大臣政治家として、そういう会い方を人と会うのによくされるのじゃないのか、そういうプライベートに会うというふうなやり方も、後々公の会い方につながるために大変有益な場合も多々あるわけであります。  そういう意味において、私的な会い方をしましょうということがよくありますが、このソ連大使館アプローチというものがそういうふうな性格のものであったのかどうか、そういうものと、あるいはまた秘密に会うというふうなことになりますとずいぶんニュアンスが違うわけでして、そこら辺の実態のアプローチがどういうことであったのか、お差し支えなければ聞かしていただきたい、こう思います。
  11. 伊東正義

    伊東国務大臣 何か秘密に会うとか、そういう希望があるということが新聞にちらちら出たことがございました。私も外務省の中に何かそういうことがあるのかなと思っていろいろ聞いてみたのでございますが、一切そういうことを私どもも承知してないわけでございまして、いろいろ調べてみましたが、外務省で一切だれもそういうことは知らぬということでございます。私自身ももちろん承知しなかったわけでございまして、この問題はわれわれは一切何も承知してないというのが実情でございます。
  12. 高沢寅男

    高沢委員 いまの大臣お答えで大体事態の推察はつくかと思いますが、では、そういうふうなお答えの線で、こういう問題は一応これでひとつ将来にわたってわが国政府態度としては進んでいただきたい、こう考える次第であります。  なお、その十五日の大臣ポリャンスキー大使会見の中で、大臣から貝殻島のコンブ漁の問題とか、あるいは北方墓参の問題とか、そういうふうな具体問題でむしろソ連側からの積極的な対応を望む、こういうふうなことを伝えられたやに承っておりますが、その辺の事実の関係、またそれに対する相手ソ連のどういう対応大臣の方では期待されているのか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  13. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほど外交の姿勢について御要望といいますか、御希望がありましたが、これは政府全般考えなければならぬことでございますから、その点は十分注意してまいります。  それから、いま貝殻島、墓参という具体的なお話でございましたが、会談は、私は前からソ連大使を個人的に知っておりますし、文字どおり久しぶりでございましたので非常になごやかに行われたのでございますが、内容は非常に厳しいものであったということでございます。  それで、話の内容としては、先方から、例のお互い信頼をしていこうということでその措置を考えたらどうだ、ヨーロッパでもやっているが極東でもやる必要があるのではないか、そのためには事務レベルの協議に応ずる用意もあるというようなことから始まったわけでございますが、私は領土問題、領土に対する軍備の増強、アフガニスタンの問題等日本立場を述べたわけでございます。そのときにポリャンスキー大使は、領土問題についてはつけ加えることはない、ソ連態度は変わらぬ、そういう問題にいつまでも拘泥していては前へ進まぬではないか、前に進むようなことは、その問題を離れて、経済問題であるとか、技術の交流の問題であるとか、あるいは政治家同士交流、どのレベルでやるかとかいろいろあるじゃないか、日本側からそういう問題に関して何か提案はないかと向こうから提案を促されたわけでございます。  そこでそのとき、いろいろの問題があることは承知しておりましたが、前から問題になっておりますコンブ漁墓参の問題、墓参の問題は人道的な問題なんだ、国境を離れた問題じゃないか、コンブはこれは本当の零細漁民がとっておるので、そういう問題が残っておるのだから、まずそういう問題を早く実現するようにしてもらいたいということを私は話したのでございます。そして、従来どおり身分証明証とかそういうものでいいじゃないか、領土は、日本は固有の領土向こうはそうじゃないと言うが、これは係争の土地なんだし、従来のやり方でいいじゃないかということを私は主張したのでございますが、ポリャンスキー大使はやはり領土問題とひっかかるということで、入国査証の問題でございますとか旅券の問題とか、いろいろそういう話を向こうは持ち出されたわけでございます。それで押し問答しました結果、墓参貝殻島のコンブのことはすぐモスクワに伝えるということでございました。やりとりした感じでは従来の向こう態度のとおりでございまして、なかなか厳しい態度だということは話の間からわかるというような状態でございました。
  14. 高沢寅男

    高沢委員 私は、いま大臣の御説明になったそういう具体的な案件で何か一歩の前進ができるというふうなことになれば、それを通じてまたもっと基本的な問題の前進のための道もおのずから開けるというふうに考えますので、これはもちろん相手もあることではありますが、そういう具体的な案件ができるだけ実を結ぶような今後の御努力をぜひひとつお願いをいたしたい、こう考える次第であります。  そこで、次の問題でありますが、あしたからまた大臣アメリカを訪問される、大変御苦労さまでございます。そこで訪問された場合、日米話し合いでいろいろの問題が出てくることが予想されるわけでありますが、私はきょうはその中の一つとして朝鮮問題について、これは恐らく話し合いのテーマに出てくるのではないかと思いますので、そのことでひとつ大臣見解お尋ねいたしたい、こう思います。  そこで、これは大臣も御承知かと思いますが、先般、社会党飛鳥田委員長朝鮮を訪問いたしまして、この三月十六日に朝鮮金日成主席との間で、東北アジア非核平和地帯創設に関する共同宣言、こういうものにお互いサインをしてこれを発表するということがあったわけであります。そこで、きょうはこの問題を中心にしながら、朝鮮情勢ということで大臣見解お尋ねいたしたいと思います。  まず、その共同宣言中身でありますが、大体こういうふうな内容になっております。日本朝鮮半島及びその周辺海域においてすべての核兵器の撤去、廃棄を進めよう、それから外国軍事基地外国軍隊の撤退を進めよう、それから侵略を目的とした軍事ブロックの解体を進めよう、こういうふうなことがその共同宣言の具体的な中身になっているわけであります。そこで、こういう共同宣言が発せられたという事実についての大臣の御所見をまずお尋ねいたしたいと思います。
  15. 伊東正義

    伊東国務大臣 飛鳥田委員長が行かれましてそういう共同宣言が発せられたことは、新聞で知りました。ただ、これは朝鮮民主主義人民共和国という日本承認していない国の、向こう相手労働党ですか、労働党社会党委員長の間でできたものでございまして、詳細のことは私はわからないのです。いま地域とかなんとかおっしゃったので初めて私は知ったというふうなことでございまして、詳細はわかりませんが、そういう宣言が出たということは承知しております。
  16. 高沢寅男

    高沢委員 承知しておりますというより、その評価お尋ねいたしたかったわけですが、まあ順次お尋ねいたします。  それで、その共同宣言では、核兵器の問題とか外国軍隊とか軍事同盟とか、こういうふうな内容に触れていますが、私はとりあえず、一番の焦点としての核兵器の問題ということにしぼりながらお尋ねをいたしたいと思うのであります。  前にも私、この外務委員会で、国際情勢審議の中で、朝鮮問題について自分見解も含めながら大臣お尋ねをした際に申し上げたことがございます。  朝鮮労働党と言えば、朝鮮の北半分、朝鮮民主主義人民共和国政権をとって執行している党であります。そして金日成と言えばその主席であります。この人がいままでも日本のジャーナリストなんかと会見をされたその談話の中では、非常にはっきりと、この朝鮮民主主義人民共和国核兵器を持つのか持たぬのかと言えば全く持つ考えはない、仮にそういうものを持とうとすればどこかで核の実験をやるとかいうことが必要になりますが、われわれの国はとても小さい国で核兵器実験をやるような場所もないということもあって、全く持つ考えはない。あるいはまた、それでは外国核兵器かさのもとにあって、外国核兵器に守ってもらうというようなことをやるかと言えばそれも全くそういう考え方はないという点で、持たず、持ち込ませず、そのかさの下にも入らないという言い方は、わが国非核三原則というものと非常に共通する点の多い見解を、金日成主席としてはいままでにも何回か表明されてきているわけですが、今度こういう共同宣言にみずからサインをされたということになりますと、政権を持っておる責任ある立場でそういうサインをされたわけでありますから、その意味においては朝鮮の北の半分の方に核兵器はない、また将来ともそういう可能性はないと判断して間違いないのではないかと私は思いますが、この辺の大臣の御認識はいかがでしょうか。
  17. 伊東正義

    伊東国務大臣 北朝鮮労働党とやられたということですが、その労働党政権を握っていることはもうそのとおりでございまして、飛鳥田委員長との間でそれをつくられたということはそれなり意味のあることだと私は思っておるわけでございますが、そういう非核地帯をつくるかつくらぬかということは、これは世界にも例があり、日本も賛成している地域もあるわけでございますので、やはりその関係国全部の信頼関係ということが土台だと私は思うわけでございます。  そういうふうなことから考えると、朝鮮半島緊張状態がいまあるということは確かでございますので、そういう問題、あるいは日本ということも出ましたが、日本安保条約アメリカ軍の駐留がある、核の問題はアメリカの核というものがいざという場合には抑止力になって日本もそのもとにあるというような状態をいろいろ考えて、関係国みんなの信頼関係というものが得られるかどうかという現実の問題を考えますと、そういう宣言があったということはそれなりにわかりますが、実現性の問題になるとこれはなかなかむずかしい、私はそういう評価をしております。
  18. 高沢寅男

    高沢委員 大臣お答えは私のお尋ねといささかすれ違っております。そういう非核地帯の設定ということで日本政府朝鮮関係をどうするか、私はそれはやるべきだ、こういう立場ですが、ここではそういう評価とは別に、朝鮮の北半分のあの場所に、朝鮮民主主義人民共和国というこの領域に核兵器はない、こう判断できるし、またすべきだ、その判断について、大臣、いかがか、こうお尋ねしたわけです。核兵器のありなし、ない、こういうふうに私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  19. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は評価しますけれども、失礼しましたが、いま日本政府立場で、あるとかないとかいうことを私が言うのもいささかどうかと思いますので、そういう判断はこれも差し控えた方がいいのではないかというふうに私は思います。
  20. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、では、今度はもう少しはっきりとして、その朝鮮民主主義人民共和国と言われるところにソ連とか中国とか外国軍隊がいるかどうか、私はいないと思いますが、この点の判断大臣、いかがでしょうか。これは判断がなければないと言えばいいのであって、大臣、御判断はいかがでしょうか。
  21. 伊東正義

    伊東国務大臣 外国軍隊が他国に入るというのは、普通は条約で、条約なしに勝手に入るというようなことはそれこそ侵略とかそういうことになるわけですから、そういう条約のもとに外国軍隊が入っているということは私は知りません。
  22. 高沢寅男

    高沢委員 この点は、さすがに大臣も知りませんという表現で事実上ないとお認めになったと思いますが、核兵器も、恐らく大臣も腹の中では、さっき言ったプライベートに会ってどうだとお話しすれば、核兵器はないというふうにお答えになるだろうと思うのですが、さて、では南の韓国の方には、核兵器というのは当然アメリカ核兵器ですが、これはあるとお考えか、ないとお考えか、私はあると見ているわけですが、この点は大臣、どのように御判断でしょうか。
  23. 伊東正義

    伊東国務大臣 これも、日本政府があるとかないとかいう判断をする資料は持っておりませんし、またそういう見解を推測をして述べることも差し控えた方がいいと思います。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 核兵器については、アメリカ政策が、あるとも言わぬ、ないとも言わぬ、こういう立場だということは私も承知しております。したがって、ないと言うこともないし、あると言うこともない、しかし、あることは間違いないというふうに見るべきだ、こう私は思うわけです。これは韓国の領域のみならず、恐らく日米安保条約がある日本にもそういう姿が現実にはあるのだろう、こう私は思っております。それは一つ評価でありますが、そういたしますと、いわゆる朝鮮半島における脅威、この脅威の性格づけにこれは絡んでくるのでありますが、大臣、いかがでしょうか、核兵器のない側と、こっちにはどう見てもある、北の方にはない、南にはある、そのない方からある方へ向かって戦争をしかけるというふうなことが一体常識上考えられるかどうか、こういうことなのであります。  私の考えでは、核兵器のない方からある方へ向かって戦争をしかける、これはどう考えてもあり得ないことだと思うのです。そういたしますと、よく言われる北から南に向かって侵略する腎威、それがあるからこうするのだということで、もう長い間のアメリカ朝鮮政策なりあるいはわが国朝鮮政策もその大前提のもとで進んできたわけでありますが、私はその大前提そのものがとんでもない虚構の前提であるというふうに見るべきではないか、こう思うのであります。  これは核兵器の存在ということから言ってもそう言えるし、あるいは先ほど外国軍隊の存在をお尋ねしましたが、北の方には明らかに外国軍隊はいない、南の方には外国軍隊がいる、こういう違いですね、これはだれが見ても明らかな事実関係ですが、そういう中で一体どっちが脅威なんだというようなことになってくると、少なくも私は北から南に向かって攻め込んでくる脅威、こういう議論あるいはそういう認識は成り立たぬのじゃないのか、こう思いますし、その最高責任者である金日成主席という人も、これまた北から南に攻め込むというふうなことは全く考えていないということを繰り返し繰り返し言明をしているわけでありますが、大臣、この辺の認識はいかがでしょうか、それをお尋ねしたいと思います。
  25. 伊東正義

    伊東国務大臣 朝鮮半島に緊張があることは確かだと私は思うわけでございます。あの三十八度線をめぐって両方で百万人ぐらい対峙しているのじゃないかと言われているわけで、緊張があることは確かでございまして、韓国側が朝鮮民主主義人民共和国に対して脅威という感じを持っておられるということは、これは韓国は常にそういうことを言っております。  私もこの間韓国に行ったときにそのことをいろいろ話したのでございますが、そういう緊張のあることは私もそのとおり認めるということを私は言ったのでございますが、日本立場としてそれが脅威であるかどうかということは、これはそういうことを感ずるのは北側か南側か当事者の主観の問題もありましょうし、これは当事者の問題であって、日本側がそれをどうかと言うことは私は避けた方がいいと思いまして、そういう議論はしませんでした。緊張があることは認めますということを私は言ったのでございまして、韓国側は北側の脅威ということを常に主張しておられるというのが現状でございます。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 わかりました。そうすると大臣のいまのお答えでは、日本にとっての脅威というふうな認識は持たない、緊張はある、しかし日本にとって北の脅威があるとかいうふうなことはない、そういうことの判断自分としては持たぬ、こういうふうに私は受けとめたわけですが、そうなりますと、朝鮮に緊張がある、ではその緊張の緩和をどうするか、この問題でいきます。  激化させるのじゃなくて緩和させるのがいいことは、だれが考えてもわかりますね。そういたしますと、その緊張を緩和させるために何が必要か、この問題が出てきますが、もう一つは、その前提として私の心配することは、今度大臣アメリカへ行かれる。アメリカのレーガン政権は、明らかに北から南に対する侵略の危険がある、彼らはそういう認識に立っておるわけです。韓国全斗煥独裁政権も同じような認識に立っておる。それで先般の米韓の協議が行われている。そして、アメリカは韓国に対して一層軍事援助を強化する、軍事体制を強化するという問題、これは皆この認識の前提から出てきておるわけです。日本も同じ認識を持て、その持った上で日本もしかるべきそういう協力体制をとれということが出てくる、これが日米会談の中のテーマになってくる、こういうことを私は恐れるわけです。  したがいまして、いま大臣が言われた、日本としてそういう認識は持たぬというこのことをきちんと押さえていただいて、そしてアメリカのレーガン政権との会談の中では、われわれはそういう認識は持たぬということを、もしそういう問題が出てきたらそういう認識をはっきりと通していただきたいということが私のお願いであります。  そうしてもう一つは、朝鮮南北に緊張があるのだ、これは私も客観的に緊張があることは認めざるを得ないと思います。では、その緊張を激化ではなくて緩和させるというために一体日本は何ができるか、この問題ですね、このことについてもひとつ大臣の積極的な御所見をお尋ねしたいと私は思うのです。先般大臣は、南北の対話が成り立つようなそういう側面的な役割りも日本で果たしたい、こういうふうなことを言っておられます。すると、この南北の平和的統一、その統一につながるような南北の対話というものは緊張緩和のためには大変重要だ、こう私は思いますが、そのための日本のとるべき方法論というものもこの際あわせて大臣見解お尋ねをして、ちょうど時間のようでありますから、私は終わりたいと思います。いまの点、大変大事な認識ですから、ひとつ十分お答えいただきたいと思います。
  27. 伊東正義

    伊東国務大臣 さっき脅威論を言われたのは、北と南の関係で脅威の御質問がありましたので、韓国側は北から脅威があると常に主張しておられる、日本は北と南、三十八度線を境に緊張があるということは、それは認めます、ただ、南北間の脅威論ということについては、日本がそれがどういうことだと言うようなことは差し控えた方がいい、日本は緊張があるということは認めます、しかし、それは脅威だ脅威でないということを日本側から言うことはどうかと思いますということを私は答弁をしたのでございまして……(高沢委員「脅威論という判断には同調しない、こういうことでしょう」と呼ぶ)ですから、私は、日本がそういうことを言うことは差し控えた方がいいじゃないかということを申し上げたのでございます。先生はそれはすぐ日本と北朝鮮関係というようにとられたのでございますが、私がさっき言いましたのは北と南との脅異論の問題であります。  それから、その緊張を緩和するということが必要じゃないかという御意見でございます。朝鮮半島の平和ということは、アジアにとっても日本にとっても安全にとって非常に大切なことだという認識はいつでも私は申し上げているところでございますので、どういう方法かは別にじまして、緊張が緩和されるということは本当に望ましいことだというふうに私は思っているわけでございます。  それで、アメリカに行っての話でございますが、全面的な北からの侵略があるのじゃないかというようなことがアメリカの国防報告の中にあったときに、予算委員会でございましたか、その認識については私は若干違うから、アメリカとも会ってその辺のところはよく意見の交換をしてみるということを言ったことがございます。  いつも、私は中国に行きましても、北から南へは南侵というようなことはあってはいかぬというようなことを言って、中国もそんなことはあり得ないということを常に言っているということがございますし、また全斗煥大統領の一月十二日の演説の中にも、何とか言語が一つの民族というものは平和的に統一すべきじゃないか、その方法として首脳が自由に向こうに行ってお互いに話をするということが必要じゃないかと、対話を実は呼びかけているということがございます。私はこれは非常に大切だというふうに思いまして、今度もそういう考えで私はその対話の呼びかけというものを支持すると言ったわけでございますので、今後どういう機会がありますか、緊張緩和についてはそういう環境づくりのために日本が努力をするということは当然やってしかるべきことじゃないかというふうに私は思っております。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 どうもありがとうございました。終わります。      ————◇—————
  29. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、一次産品のための共通基金を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
  30. 土井たか子

    ○土井委員 当委員会も、定足数を厳密にということを最近強く国会の中での声として提唱がさらにございまして、先ほど来自民党側は小坂先生を初め精力的に御出席ではございますが、少し足りないようでありますので、定足数が整いますまで、暫時待たせていただくことにいたします。
  31. 奥田敬和

    奥田委員長 質疑を続行いたします。——土井君。
  32. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、定足数を何とかいま充足しているようでございますから、一次産品のための共通基金を設立する協定についての質問から、少し質問の中身を広い視野でお尋ねを進めてみたいと思っております。  まず、第四回一次産品共通基金交渉会議、昨年の六月に行われましたあの会議で、開発途上国の強い支持がございまして。先進国の同意によってようやく採択をされましたこの共通基金設立協定への出資に対しまして、アメリカは当分の間これを見送るという方針を決定して、関係各国に通告済みであるというふうなことが伝えられているわけでありますが、政府はいつこの通告を受けられたのであるか、これはいかがでございますか。
  33. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  本件につきましては、別にアメリカ政府から正式の通告は日本政府にはございません。しかし、外交ルート等を通じまして私どもが承知している限りでは、アメリカ政府としては一次産品共通基金に対する予算措置は本年度の予算では行わないということを決定したように承知しております。
  34. 土井たか子

    ○土井委員 そうなってくると、正式に通告していないということ自身も実は問題になると思うのですね、こういうことについては通告をするという約束のはずでありますから。したがいまして、それからするとその時点でも問題があると思います。アメリカは七千三百八十七万ドルをこの共通基金の第一勘定に出資するということを約束済みのはずであります。にもかかわらずレーガン政権がこの出資を当分の間見送るという決定をした理由について、政府はどういう説明を受けているか。先ほど受けていないとおっしゃるのですから、これもまた受けていないという御答弁でしょうが、いかがなんですか。
  35. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 本件につきましては、私どもが承知している限りでは、アメリカ政府は新政権発足後、一次産品の問題も含めましてアメリカ政策を再検討しているものと承知しております。アメリカ政府は昨年すでに一次産品共通基金に対する協定署名をしておりますので、いずれアメリカもそれに加入するものと思います。わが方といたしましては、アメリカ政府に対しては早期加入するように従来も働きかけてまいりましたが、引き続きそういう方向で話し合っていきたいと考えております。
  36. 土井たか子

    ○土井委員 この節、アメリカの姿勢というのは従来と違いますから、こちらが従来どおりのことをやっていたらそうはいかないということになると思うのです。共通基金というのが発効するまでには時間がかかって、出資金を急ぐ必要はないというのがアメリカ側の考え方の中にありはしないかと思いますが、どういうふうにお考えになりますか。
  37. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 その点、私どもははっきりとは承知しておりません。アメリカといたしましては一次産品問題に対しては引き続き関心を持っていると思いますし、本件に対する検討を終えて、一日も早くこれに正式加入するということをわれわれとしては期待しておる次第でございます。
  38. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、これは政治問題も絡みますから、大臣お尋ねをしてお考えをお聞きしたいと思うのです。いましきりにアメリカ側に対しては加入を勧める、早い機会に出資金を約束どおり出資するということをいろいろな場合にアメリカに対して言ってみるというふうな意味を含めた御答弁なんですが、最近、一九七九年の東京サミット宣言によって設立の検討が始められた御承知のあの第三世銀、世界エネルギー開発基金の問題があるわけですね。これに対しましてアメリカ側のレーガン政権は、国際援助融資機関の新設や新規増資には不参加の方針というのをすでに固めておりまして、エネルギー開発基金には出資しないということを関係国に通告してきたということが言われておりますが、わが国は一体いつこの通告を受けましたか。
  39. 梁井新一

    ○梁井政府委員 日本政府は、外交ルートを通じてそういう予告はアメリカからもらっておりません。
  40. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、まだ全然こういうことに対しての通告は受けていないのですか、どうなんです。
  41. 梁井新一

    ○梁井政府委員 世界銀行の理事会でアメリカ代表からそういう発言があったと承知しておりますけれども、外交ルートを通じまして通告を受けたという事実はございません。
  42. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、間接的にそれを知り得ているというのが正確なことになろうかと思います。  そこで、外務大臣、いかがなんです。七月にオタワでサミットがありますね。かねてより日本は途上国援助問題協議というものを通じて、懸案のエネルギー開発基金構想の実現を期待していろいろ働きかけるということを考えてこられた経緯がございます。そのとおりだと思うのですが、このことについていま、正式ルートを通じてアメリカ側からは何の通告もない、連絡がないということでありますから、引き続き日本としてはこの第三世銀、世界エネルギー開発基金について、この構想の実現に向けてオタワのサミットでは努力するということをお考えになっていらっしゃるかどうか。いかがなんですか、これは。
  43. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま土井さんからエネルギー基金のことについて御質問があったわけでございますが、いま政府委員が言いましたように、そういう意向だという発言があった、これは私も聞いております。  それで、私、今度アメリカに行きまして、たとえば海洋法が今度の会議でまとまるのじゃないかと言われたところがアメリカから再検討の要があるというような話が出るとか、いろいろそういういままで進んできたものが何かストップするというか、延期されるというようなことが間々聞かれるわけでございます。これは何も正式に通達があったわけではございませんが聞かれますので、向こうへ行きましたときの話にも、援助の問題で多国間の援助を減らすというようなことが言われているということがよく新聞にございますので、その辺のところはやはりアメリカに対して意見の交換をし、従来国際的に大体実行すると言われていたものについては、それをもしも延期する、中止するというようなときは関係国とよく協議してからやった方がいいじゃないかと私は思うわけでございまして、そういうような意見交換の場では、私は特に経済協力等につきましては日本の意見を言おうか、こういうふうに思っております。
  44. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、アメリカに対してそういう説得を訪米のときに外務大臣はされるという御予定のほどがおありになるようであります。  さらに、そういたしますと、国際開発協会(IDA)、第二世銀、この第二世銀については、三年間の均等拠出をやめて、最初はごく少なく、最終年には半分以上の額を払い込むやり方をとりたいというふうなことをアメリカとしては内々に決めておられるようであります。そしてさらに、最も貧しい国への融資を担当している第二世銀の第六次増資、八〇年の七月から三年間で百二十億ドル、これはアメリカの議会の承認おくれでいまだに発効いたしておりません。したがいまして、そういうことからしたら、日本を含む主要先進国がつなぎの拠出をして融資を細々と続けていくような状態なのでありますが、このアメリカの方針で三年間の融資計画が大幅に狂うのは避けられないのじゃないかというふうなことが世界的に考えられている現状であります。この点についても、大臣としてはいろいろ説得方をなさるというお気持ちでありますか。
  45. 伊東正義

    伊東国務大臣 一つ一つそう言われますと、私、知らぬ問題がございますので、まだどれがどうということは申し上げませんが、特に私は海洋法のあれを見てそういう感じを持ちましたので、国際的に大体約束されているようなもの、期待されているようなものはなるべくそれをやめないように、もしもどうしても変更するということであれば、関係国と協議した上でそういう方針を決められるのがやはりとるべき態度でなかろうかというような意味のことを、会談の際には意見交換で言おうか、特にこの際、協力の問題で問題がございましたので、私はそういう考え方で意見交換をしてみようと思います。  ただ、いま土井さんのおっしゃった、一つ一つ、これを言うか、これを言わないかと言われますと、私もわからぬことがございますので、一般論としてそういう話は意見交換のときに言おうか、こう思っておるわけでございます。
  46. 土井たか子

    ○土井委員 いま大臣のおっしゃいました、基本的に大切な問題は関係国と協議の上で、こういう重要な問題、特にすでに約束済みの問題等々については内容に対してお互いが確かめ合った上でということは、基本的に大切なことだと思われるのです。  そういう点から考えましても、去る二月二十七日にヘイグ米国務長官が、対外経済援助費の二六%の削減に関連をしまして、対外援助は多国間協力ではなくて二国間ベースに重点を置く、そして二国間、直接援助中心の援助を拡大していくということを公式に表明されているわけでありますが、これはアメリカにとっては新方針ということになるかと思います。アメリカの対外経済援助に関する大変な新方針と申し上げていいと思いますが、政府はこれについて通告を受けていらっしゃるのですか、いかがでございますか。
  47. 伊東正義

    伊東国務大臣 二六%削減といいますのは、カーターさんがいままでの予算に比較して、もっと伸ばそうというのを二六%ぐらい切るということであったわけでございまして、実額から言うとことしよりも来年の方が若干はふえるのじゃないかというふうにわれわれは計算をしているわけで、これは正確には当たりませんとわかりませんが、うんと伸ばそうと思ったのをそれほど伸ばさないということで、減りはしないというふうに思っております。  それから、多国間と二国間の問題でございますが、これは何も通告を受けるとかいうようなことはございません。アメリカがそういう方針だということをわれわれも新聞で知っているのでございまして、そういう通告を受けたとかいうことはございません。
  48. 土井たか子

    ○土井委員 対外経済援助、対外技術援助というものを考えていく場合に、このアメリカのとられる新方針の及ぼす影響は絶大だと言わざるを得ないと思うのですね。今後大変大きな意味が刻々出てくるだろうというふうなことは予測にかたくないと申し上げていいと私は思うのですが、この新しい方針で援助政策が実施されるということになりますと、既存の世銀を初めとする国際金融機関への出資、または国連機関への拠出金、それぞれが軒並みに削減されたり取りやめになったり、南側に対する国際的な援助計画というものに特に多大な影響を与えるということがその結果出てこよう。援助の実施に大変大きな混乱をもたらすことになるのじゃないか。  特に、東京サミットではこの南北問題がきわめて大きく取り上げられまして、南に対する経済援助のあり方ということが終始討議をされるという重要論点でもあったわけですから、こういうことからいたしますと、この新方針は南側に対する援助計画に多大の影響を及ぼして、援助の実施に大きな混乱を引き起こすのではないかという点が懸念されるのですが、大臣はどのようにお考えになるのですか。
  49. 伊東正義

    伊東国務大臣 私も向こうへ行きまして経済協力のことは当然意見の交換をする予定をしておりますが、その際、そういう問題について、土井さんのおっしゃるように南北問題という非常に重要な問題があるわけでございますから、日本側としての意見を述べて、向こう側の考え方もよく聞いてみようというような、意見交換の一つの項目としております。
  50. 土井たか子

    ○土井委員 まあ意見交換の項目として考えられる、この点は、日本側として意のあるところを十分におっしゃる意見交換でなければ意見交換にならないと思うのですが、さて、その日本側の意のあるところというのが実は率直な御意見としてきょうは大臣にお伺いをしたい論点なんです。  先日、総合安保の中で経済援助を柱にするという方針が策定をされまして、南北関係をその中で配慮していくというふうなことも大臣御自身が公式に発表されている中身として出てまいっております。私、いまここに持ってまいりましたのは、外務省の経済協力局が編者でございます「経済協力の理念」という御承知の一冊の本なんですが、この中でも、南側に対しての経済援助のあり方についてその持つ意義というのが大変問題にされております。  大臣に端的にまずお伺いしたいことは、国際政治、安全保障の上から考えまして、南側がいま持っている意義、それをどのようにお考えになって経済援助の問題を考えることが必要だとお考えになっていらっしゃいますか。
  51. 伊東正義

    伊東国務大臣 南北問題というのはもちろん経済問題が大きな問題でございますが、やはり南が発展しなければ北の発展もない、また北の発展がなければ南の発展もないというように、これは本当に依存関係があることでございまして、南の方の開発が非常におくれるというようなことになりますと、経済的にも大きな問題もありますし、またこれは政治的、社会的な摩擦の一つの要因にもなるわけでございますので、日本が平和国家だ、世界の平和を希望するということを言っているということから考えますれば、南北問題を重視するということは日本の平和、安全にとっても非常に大切なことだというふうに私は認識しております。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 そういう総括的な意味での御答弁と、もう一つ、こういうことについてそれではどういうふうにお考えになりますか。  第二次大戦後の国家間の武力紛争のほとんどは、いわゆる南側、開発途上国を舞台として発生してきたわけです。最近のインドシナ、イラン、イラク、アフガニスタン、そういう例を見てまいりますとはっきりわかるように、紛争の推移いかんによっては大国間の戦争にエスカレートする可能性があるということは疑う余地がございません。そういうことからいたしますと、大国間の戦争にまで発展をさせないことのためにどういう配慮が必要かということも、当然この南に対する援助の中では問われてしかるべきだと思うのですね。むしろそういう大戦争に発展することを防止するというふうな意味でのあり方というのが大変問題として問われているのじゃないか、こういうふうに私自身は考えるわけでありますけれども、そういう観点からして、国際政治、安全保障の上で南の持っている意義をどういうふうにお受けとめになり、また経済援助あるいは技術援助のあり方について大臣自身はどうなければならないとお考えでいらっしゃいますか。
  53. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生がおっしゃったように、南の方を舞台にしていろいろな紛争が多かったということは、私もそのとおりに思うわけでございます。なぜそういうところにそういうことが起こるかと言えば、結局その国が貧困といいますか、いわゆる経済的に非常に貧しい、あるいはそれがもとで社会的、政治的な混乱がその国に起きるというようなことから大国の介入ということがあるわけでございますので、南の国の国内の秩序が保たれる、それにはその国のまず民生の安定というようなこと、あるいは経済開発、社会開発ということをやって、南の国がみんな政治的にも安定していくということが大切なんだというふうに私は思いますので、そういう目で援助をするということが日本の、平和にとっても非常に関係がある、世界の平和にも関係があるという考え方で、人道的なもの、あるいは相互依存関係とか、いろいろ頭に置きまして政府の発展途上国に対する援助をやっていくことが必要だというふうに思っております。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 いま大臣が強調されましたのは、民生安定という立場から、人道的な側面での経済援助というものが実はそういう観点からして大切だというふうなことを強調されたわけでありますが、そういう点から考えますと、先日も当委員会で質問がございましたことにお答えになった中には、日本は現在、バイは七割、マルチは三割というふうな配分でこの援助の中身考えられているようでありますが、むしろ人道的な相互協力というたてまえから考えてまいりますと、このマルチの部分を今後ふやしていくという方向で南に対する援助などは考えていくということが非常に重要視されてしかるべきだと思われますが、大臣、いかがお考えになりますか。
  55. 伊東正義

    伊東国務大臣 七、三と申しましたのは、頭から七、三と決めてやっているということじゃなくて、結果において大体そうなっているということでなっているわけでございまして、土井さんのおっしゃるように、マルチの問題というものは非常に大切だということもよくわかりますし、また二国間の関係で、人道上の問題あるいは相互依存関係でも、これは直接相手国にやるということもまた非常に効果があることが多いわけでございます。その辺の組み合わせば、やはりその年その年の需要といいますか、要望といいますか、そういうものを勘案しながらやる。頭から幾らということを決めてやるということでなく実はいままでやっているというのが実情でございます。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、頭からそういう水準を決めてかかってやるということではないのが実情だというお答えではありますけれども、しかし、おおよその枠と申しますか、心づもりと申しますか、そういう中身が、言うならばバイは七割でありマルチは三割というふうな配分で推移してきたというかっこうだろうと思うのですね。  したがいまして、今後の心づもりというふうな意味から言いますと、先ほども相互依存関係というのも念頭に置きながらということをおっしゃいますけれども、やはり先ほど申し上げたとおり、第二次世界大戦後、紛争周辺あるいは紛争当事国ということの渦中に置かれた南のそれぞれの国の実情が、実は大きな世界的規模の問題として今日まで至ってきたというふうな経緯から考えますと、今後それぞれの国に対する援助の中身を二国間で考えていこうという以前に、やはりマルチの方向で問題に対して対処していくという姿勢を打ち出すことこそ、平和に貢献する、あるいは戦争を未然に防止する方向で、民生安定、そして人道的な立場での援助ということに重点を置く方向になっていくという意味も私はあるかと思います。したがいまして、その数字でどうのこうのということではなくて、そういう心づもりで今後援助のあり方というものを考えていくという側面は非常に大切だと思われますが、大臣はどのようにお考えになりますか。
  57. 伊東正義

    伊東国務大臣 当委員会の御決議にもあるように、目的としては民生安定、社会福祉の向上、それからその国の社会経済開発というようなことがみな決議にもあるわけでございまして、やはりその国の社会経済開発ということにも目的があるわけでございますから、それがマルチでやった場合に必ずそういうところも実行できるというわけにもいかぬ問題もありますし、食糧援助やなんかも、見ておりますと、こっちが、もっとこっちの方へよけいやった方がいいなと思うところにも、そうでないようなこともございます。二国間でやる場合はそういう効果がぴしゃっと出てくる問題もございますし、その辺のところは、やはりその要望要望を見ながら考えていくということが実情に一番合っているのではないかと私は思いますが、そういう考えでずっとやってきた。  先生の御意見は、もっと多国間の方をという御意見でございますが、それは大切なこともよくわかりますが、どういうあんばいに考えていったらいいのかということにつきましてはわれわれも検討はしてみますが、二国間のことも非常に需要が多いのだ、またそれも効果があることも多いのだということもひとつ御理解をいただきたい、こう思います。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、二国間の場合が意味がないとは私は言わないのです。それを活用することによって大変意味がある。ただ、あくまで経済援助、技術援助というのは目的ではない、一つの手段であるということをはっきり確認をして、何のための手段かということが明確にならないと、実は私はこれは道を過つと思うのですね。そこのところが私は非常に大切だと思われますから、ひとつお伺いを進めたいのですが、いま日本の援助政策の基準として、一人当たりGNP六百二十五ドル以下の国には無償資金協力、千ドル以下の国には円借款供与、こういうことが一応の基準としてございますね。最近、総合安全保障関係の中での援助ということを問題になさる中で、閣僚の中には、この基準を少しつくり変えることを考えてみてはという声もあるということが新聞紙上報道されておりますが、大臣、これは基準をつくり変えるなんというふうな動きがあるのですか。
  59. 伊東正義

    伊東国務大臣 そういう声があることは、これは確かでございます。余り硬直性でなくてもう少し弾力的に、そういう基準も場合によっては弾力的にも考えることが必要じゃないかというような声もあります。現実の運用としましても、千ドルを超えたところにも実は援助したということもございますし、原則は大体千ドルということにしまして、その上で必要があるかどうか、弾力的に運用できるかどうかということでいまやっている。ただ、もう少しその辺を弾力性を持たしたらいいじゃないかという意見があることは確かでございます。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 その弾力的な線を持たした方がいいじゃないかというふうな討議というのはさらに進められると思うのですけれども、これはそういうことに従って考えられていく中身というのが今度は実は問題だということを言わざるを得ないのです。いままで南に対していろいろございました援助の中身も、スムーズに行って喜ばれるという例ばかりではなくて、むしろ批判の対象になるような側面というものが非常にあったということ、これはやはり考えておかなければならないと思います。  たとえばパキスタンに対して日本が援助をやってきた中身を見ますと、一昨年に比べて昨年は約三倍の援助を行っておりますけれども、どうも紛争周辺国援助に対して欧米諸国からの批判や要請を受けたわが国が、それに対しての答えを急ごうということの余りに、まずつかみ金で援助総額を決めて、後から事業計画をつくっていくという場合も少なくないようです。そして、肝心の援助計画細目というものはいつまでたっても決まらない。そして、当委員会決議にもございますけれども、事情をいろいろ調査をして関係省庁の中でわかったことは随時ここで報告する、そういうことをお約束の上で、経済援助のあり方ということについてわれわれはこの決議に従った線ということを期待しておりますけれども、なかなかそこのところがそうはいかないということが、いままでにはずっと続けて出てまいったわけであります。  そういうことからいたしますと、このつかみ金で援助総額が決められてしまう。事業計画というものはそれから後、後追いのようなかっこうで出て、なかなかその細目というものは決まらない。そうこうするうちに軍事施設や軍事的な用途に当てられるということが後になって出てくるという場合がなきにしもあらずだったと私は実は思うのです。そういうことからすれば、あらかじめ特にこの紛争周辺国に対する援助という問題に対しては心して考えることが私はどうしても必要になってくるだろうと思いますが、軍事施設や軍事的な用途に充てられる経済、技術援助は行わない、これは原則だと私は思いますが、大臣、どのようにお考えでしょうか。
  61. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  経済協力につきましては、当委員会の決議がありますから、軍事的な用途に使われないということ、これはもうはっきりせねばならぬことでございますし、そういうおそれがある場合はその政府と特別に話をして、そういうものに使わぬというようなことをやった例も一、二あるわけでございまして、土井さんのおっしゃるように、この委員会の決議は政府の経済協力では厳に守っていくということでやらなければいかぬというふうに思っております。
  62. 梁井新一

    ○梁井政府委員 経済協力の金額を決めます場合に、日本の特に円借款の原則と申しますか、プロジェクト援助ということで、プロジェクトを特定して援助する場合が大部分でございますけれども、場合によりまして一定の金額を決めまして、もちろんこのプロジェクトが全く決まってないということではなしに、たとえばプロジェクト援助と商品援助の割合をどうするかという問題が起こります場合には、一応枠を決めまして、それから後で商品援助とプロジェクト援助の割合をどうするということを決める場合もございます。ただ、割合といたしましては、このプロジェクト援助というものが従来の大部分でございます。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 それは事情説明だけの話でありまして、お聞きしてもお聞きしなくても同じような御答弁だったわけですが、いま人道的考慮ということで決められているいろいろな経済援助の枠とは別にと申し上げてもいいかもしれません、同時にと申し上げてもいいかもしれません、少しそこのところをいろいろと抑揚を持たせてと申し上げてもいいかもしれませんが、相互依存関係に基づく考慮というのがここのところずいぶん強く働く傾向があるのではないかと私どもは見ております。  なぜかというと、先ほどあの援助政策の重要な基準になっているそれぞれの一人当たりのGNPの中身を弾力的に考えていくというお考え政府部内でも動いているようでありますけれども、それに当てはまらない国、つまり一人当たりGNP六百二十五ドル以下の国に対しては無償資金協力、千ドル以下の国に対しては円借款供与といういずれにも当たらない国に対して、最近とみに二国間援助という線が強められてきているということが事実を見ていくと目につき過ぎるくらいあるのです。  たとえばを申し上げれば韓国、これはお伺いすればわが国といろいろつながりが深いからという御答弁が恐らく出るに違いないと思うのですが、一九七九年の世銀統計によって一人当たりGNP千五百ドル、これは中身が出ている額であります。したがいましてこれは援助基準には当てはまらない国でありますけれども、円借款を供与しているという対象国であります。同じようにメキシコについてもマレーシアについても言える。それぞれの国の相互依存関係に基づく考慮という場合の類別と申しますか、この国には援助をこれだけしてよろしい、この国にはする必要なしという判別と申しますか、それの基準が私は大変に問題になってくると思うのです。それを誤ると、経済援助とか技術援助というのは手段ですから、その手段というのが目的を誤ることによって意図が逆の方向にしか働かない。平和に向けてわれわれが念願しているにもかかわらず、むしろ戦争への危機状況というものを醸成する方向にしか動かないということにもなりかねないと実は私は思うのですが、そういうことを含めてちょっとお伺いいたします。  アメリカが、いま強いアメリカということをレーガン政権自身目指しておりまして、軍事力増強に焦点をしぼって軍拡路線に非常に力を注いでおるのは、予算の内容を見ても一目瞭然よくわかるのです。その中で開発途上国に対する援助の中身を見ますと、アメリカに対して親米であるか否か、つまり端的に申し上げますと敵であるか味方であるかということの選別をいたしまして、これを基準にする対外援助を実施しようという姿勢が非常に強まっております。  こういう米国の姿勢に対して、先ほどずっと言ってまいりましたような経緯を踏まえて、大臣は南北問題をどのように考えて、その重要性についてどのような御理解を持っていらっしゃいますか、また、アメリカのこのような援助のあり方に対して、御見解のほどを承りたいと思います。
  64. 伊東正義

    伊東国務大臣 アメリカが友好か非友好かということを頭から基準に置いて援助を考えているということは、新聞等でそういう意見があるということを聞いております。今度行きまして、その辺は意見交換で確かめたいと思うわけでございます。  きのうも会議でいろいろ議論があったのでございますが、経済協力というものを頭からこれは友好、非友好とぴしゃっと白か黒か分けて考えるということよりも、やはり南北問題、これが平和につながるのだということに重点を置いて考えるべきではないかという意見を私は持っているわけでございまして、実は会議でもそういう主張をしたわけでございます。西側の一員としていろいろ広い意味考えなければならぬことはわかりますが、やはり重点は南北問題、それが平和につながるのだということを重点として考えるべきだというふうに私は思っております。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 南北問題というのを大臣としては非常に強調されて、いまそういう御答弁をここで披瀝されているわけでありますけれども、わが国政府援助というのが、タイ、パキスタン、トルコ、エジプトと見てまいりますと、非常に手厚い援助になっているのです。最近はジャマイカに対しまして一千万ドルの円借款供与の意図表明というのがもうすでに行われている。そういう政治援助路線への傾斜がずんずん強まっていっているわけです。申し上げるまでもなく、タイ、パキスタン、トルコ、エジプトそれぞれは、具体的には紛争周辺国への援助ということになっているわけでありまして、年を追って援助の内容はどんどんふえていっています。大変なふえ方だと申し上げてもいいと思うのですが、これらの諸国に対して日本が援助することの持っている意味、これはやはり紛争を解決する方向に持っていく手段たり得るかどうか、私はこれ自身は大変問題だと思うのです。  いま大臣は、半ば批判を込めたような意味アメリカに対していろいろな話をしてみたいとおっしゃいましたが、むしろ日本も、日本にとって協力的であるか非協力的であるか、同盟国であるか非同盟国であるか、味方であるか敵であるか、そこで判別をやって、それに従っての二国間の経済援助のあり方ということを考える向きというのがこの節非常に表面化してきているのではないか、そういうことの批判が世上非常に強まってきているわけでありますが、大臣はこれに対してどうお考えになりますか。
  66. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほど私は、やはり南北関係というものを重点に考えていく必要があるというふうに言ったわけでございますが、いま、敵か味方かに分けてやる傾向が強い、こうおっしゃいましたが、この間、実はエチオピアにも援助関係をやったわけでございます。これもあそこの民生安定という意味でやったのでございまして、先生の御質問のようなことだけで考えているということではないのでございます。いまお挙げになりましたエジプトなんかも、前からスエズ運河の改修ということで経済援助を大分やっているのでございます。タイもしかりでございまして、やはりそれはその国の民生安定、ただ紛争周辺国でいろいろな面でなかなか負担も大変だ、それで紛争の周辺国の民生安定というものを考えてやらなければいかぬということでやっているわけでございまして、われわれとしましては極力その国の経済開発、社会開発、民生安定ということを重点に置いて考えていくというのが私は考え方の中心だろうと思っております。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 そういう考え方を大臣御自身が中心に置いて考えられる、相互依存関係に基づく考慮で考えられる二国間の経済援助のあり方、こういうことからしますと、ここでひとつ大臣に、こういう問題を原則として考えることが非常に必要だと私自身、また私たちの同僚の議員も恐らくは考える方々が非常に多いだろうと思いますので、確認をさせていただきたいと思うのですが、一つは、軍事施設など軍事的な用途に充てられる経済技術協力は行わな公これはいかがでございますか。
  68. 伊東正義

    伊東国務大臣 御決議にもあるように、それは行わないということで、それは厳格に守っていくということは政府の方針でございます。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 二つ目には、紛争当事国に対する経済援助、技術協力並びに国際紛争を助長するような経済援助、技術協力は行ってはならない。いかがでございますか。
  70. 伊東正義

    伊東国務大臣 御決議にありますように、先ほど御質問のありました軍事的用途に充てられるということはやらない、それから国際紛争を助長するごとき対外経済協力は行わないという御決議がありますから、御決議を厳守していくということでございます。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 紛争当事国に対する経済援助、技術協力は行わないというのはいかがでございますか。——それは大臣に聞いているのです。大臣の決意をお伺いしているのですから、局長はいいですよ。
  72. 梁井新一

    ○梁井政府委員 国際連合等で紛争当事国であるということになりますと、この経済協力も変わってくると思いますけれども、私どもといたしましては、いわゆる紛争周辺国、タイ等につきましては従来からも援助をやってきたわけでございますし、今後ともやっていきたい、こういうふうに考えております。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁は何をおっしゃったのかよくわからないのですが、大臣お答えいただきたいと思います。  紛争当事国に対する経済援助、技術協力、これは行わない、当然のことだと思いますが、大臣、いかがでございますか。
  74. 伊東正義

    伊東国務大臣 紛争当事国という概念がなかなかむずかしいのでございますが、武器の輸出の原則、政府統一方針のときには「紛争」というようなことばを使っていることがあります。あれは国連で決議のあったような、たとえばイラン・イラクの問題なんかそうでございますが、そういうところは紛争当事国ということで武器の場合に考えておるわけでございます。先生のおっしゃる紛争当事国という意味でございますが、われわれは国連でそれは紛争当事国だという認定のあったようなところには、これは当然としてやはり十分に考えていく必要がある、経済協力の面でもなるべくそういうところには行わない方が望ましいということは考えられるわけでございます。  さて、それでは紛争当事国という認定はどこがするかという問題になりますが、武器の場合はたしか国連で決議のあったようなところにはということで運用しているはずでございます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 いまのは余り伊東外務大臣らしからぬ御答弁で、どうも歯切れが悪い。なるべくやらない方がというふうなことではなくて、これは行わないときっぱりおっしゃるべき中身ではないかと思いますが、大臣よろしゅうございますか。再度これは——局長はよろしい、私は大臣お尋ねしているのですから。
  76. 梁井新一

    ○梁井政府委員 紛争当事国をどういうふうに見るかという問題でございますけれども、たとえばイラン・イラク紛争がございますと、実際問題として紛争当事国に経済協力ができないという事情がございます。そういう観点から、紛争があるにもかかわらずあえて経済協力をするということが事実上不可能になる場合がございます。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 大臣、それはよろしゅうございますか、いまの御答弁は。
  78. 伊東正義

    伊東国務大臣 後ろを向いて政府委員に、紛争の国でどこかやったことがあるかといま聞いていたところでございますが、私の狭い知識では、イラン、イラクが紛争当事国になりまして、国連でもこれは取り扱っている。そういうところには武器の問題なんか、当然援助も経済協力もしないということでございますので、恣意的にそれはどうだというふうに考えてはいかぬと思うので、私はこれは紛争当事国だということを決める国際的な基準が何かどこかであった方がいいと思うのでございますが、そういう国にはやはり考えないというのはあたりまえのことだと思っております。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 そうしてさらに、明らかに軍事施設に転用され得ると認められる、またそういうおそれがある経済援助、技術協力というのはもう厳に慎むことがどうしても必要だと思われますが、いかがでございますか、大臣
  80. 伊東正義

    伊東国務大臣 どこかで私、李下に冠を正さずということを言ったのでございますが、そういうおそれのあるところにはもうなるべくやらない。その国でいろいろな援助の対象もありましょうから、そういうところには、おそれのあるところでもなるべく避けなければいかぬということでさっきも申し上げましたが、一カ所か二カ所、たしか相手政府と文書を交換しまして、そういうことには利用しないということでやったことがございますので、おっしゃったように極力そういうものは避けるということはあたりまえだ、こういうふうに思います。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 いろいろ相互依存関係ということに基づいて考えられる場合の経済援助、それから技術協力等々なんかの中身についても、やはりこういうふうな少なくとも守らなければならない原則というものをひとつしっかり踏んまえてやっていただかないと、杞憂であればいいのですけれども、常にこの援助自身に対して不安がつきまとうというかっこうになってくるだろうと思うのです。特に最近のアメリカやり方を見ておりまして、日本もそれに追随するというきらいがありはしないかということが世上の大変大きな声でもございますから、こういう原則をきちっと踏んまえるということは今後ますます私は大切になってくるだろうと思われます。そういう意味で、大臣にいまここでひとつ確認をさせていただいたわけです。  さて、国際紛争国あるいは国際紛争の周辺国についてわれわれが心してもらわなければならない経済援助のあり方というのがいま申し上げる中身として少し出たわけでありますけれども、最近、相互依存関係に基づく協力によりまして円借款を年次強化をしていくというきらいがある韓国におきまして、こういう事例があるということを御存じかどうかをまずお尋ねをしたいのです。  馬山に輸出自由地域というのがございます。この馬山の輸出自由地域は、七一年の三月稼働後、会社の数はずんずんふえていったのですが、昨年六つの会社が一度に廃業する、五つの会社が休業する、そしていままで、稼働後総じて五十六の会社がばたばたと休廃業していったという状況があるようであります。わけても日本側が一〇〇%出資をしている、代表者も日本人である、そういういわば中小企業が向こうに進出しているわけでありますけれども、そういう企業の代表者が日本に帰ってしまって姿、形をあらわさない、いずれに行かれたのかよくわからない、辞表が一本届いたきりである、従業員の人たちは賃金はおろか退職金も手にできない、そして路頭に迷って昨年の年末からことしの初めにかけては大変悲惨な状況で、くつ下などを売り歩いて帰郷するお金の一部に充てるというふうなことをしないとどうにもならないところにまで追いやられている実情すらあるようであります。  たとえばそういう会社の名前を挙げていきますと、韓国電子キャビネット工業、韓国中谷、これは日本一〇〇%投資なんですが、韓国PAC、北菱、韓国日本製線、韓国村田産業、これをさらに挙げていきますと枚挙にいとまがないのですが、代表的なところでそういう名前を挙げてみましたが、そういう実態があるということを政府としては掌握されていますか。通産省並びに大蔵省、出てこられていますけれども、いかがですか。
  82. 関栄次

    ○関説明員 大蔵省といたしましては、対外直接投資を外国為替管理法に基づいて管理をしている立場でございますが、いま先生御指摘のような具体的な事実について最近掌握をしていることはございません。
  83. 井上宣時

    井上説明員 通産省といたしましては、御指摘の点につきましては現時点では掌握をいたしておりません。
  84. 土井たか子

    ○土井委員 大蔵省の方にお伺いしたいのですが、外為法が変えられまして、たしか昨年の十二月から新たに施行された中身は、それ以前は許可制であったのが外国に進出する企業に対しては届け出で済むというかっこうになったと聞いておりますが、そのとおりですね。
  85. 関栄次

    ○関説明員 対外直接投資が許可制から事前届け出制になったことはそのとおりでございます。
  86. 土井たか子

    ○土井委員 それは許可から届け出に変わったというのは、どういう趣旨でそのように変わったわけですか。
  87. 関栄次

    ○関説明員 外国為替管理法は一昨年の十二月に国会で通過をいたしたわけでございますが、この趣旨は、わが国の対外取引をできるだけ自由な体系に移していく、こういう趣旨でございまして、法律の立場から管理調整を行っていくのはできるだけ最小限度にとどめていこう、こういう基本的な考え方でございます。したがいまして、対外直接投資につきましては改正前も極力自由にするという態勢で運用してまいったわけでございますが、改正に当たりまして、制度自体も許可制から事前届け出制ということで、より自由な方式で管理をしていく、こういうふうに改めたわけでございます。
  88. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、端的に言うとその中身としてはむしろ日本企業の海外進出を奨励するという側面もあるわけでしょう。
  89. 関栄次

    ○関説明員 日本企業の対外進出につきましては、いまも申し上げましたように、改正前からも、許可制にいたしましたけれども、大部分のものについては弾力的に許可をするというやり方でやってまいったわけでございます。
  90. 土井たか子

    ○土井委員 それではお答えになっていないので、それは従来からそうであったのが、端的に考えたら、許可制が届け出制に変わるというのはより容易に事を進めることができるということが客観的に見えるので、以前に比べるとやはり企業が海外に進出するということがやりやすくなった。そして、そのことに対してこれはむしろ積極的にやってよろしいという意味があるのじゃないかというふうに読み取れるわけですが、それはいいです、そのとおりだと私は思っている。  そういうことからしますと、韓国の例というのを存じません、いままで聞いておりませんとおっしゃるのは奇異な感がするのです。これは向こうではずいぶん大変な大問題になっているようでありますよ。たとえば先ほど名前を出しました韓国電子キャビネットの例なんかについて言いますと、昨年の六月に日本の代表者は日本に帰った後、辞表だけを郵送して、そのまま韓国にはもう帰らないで姿、形を出しておられません。その会社の資産評価を見てまいりますと、固定資産、流動資産みんな合計して四億九千万ウォン、ところが負債は十八億ウォンです。韓国の釜山銀行、市中銀行が十億二千万ウォン貸し出しをしているのですが、会社全体を差し押さえてもまだ遠く及ばない。どうにもこうにもならない状況の中でこれは経営をされているわけで、ずいぶん無理が無理を呼んでいるかっこうなんですが、現状は、ついに代表者がおられない中で従業員の方は賃金も退職金も受け取ることができないで、当事者能力のない韓国の方々は、幹部についていろいろ賃金清算を要求されているというかっこうらしいです。  こういうことが、一社のみならずこの輸出自由地域内の問題としてどんどん深刻になってきているのですが、これはいかがでしょう、外務大臣。あと、そういう状況が起こっても、よくわからない、よくわからないとどこに聞いてもおっしゃるのですよ。これは恐らく韓国側からしますと、日本の企業が進出する、日本の資本が投下される、そこで韓国の方々は労働の機会を得て働かれる、ところがこういうありさまになる、そうすると日本に対するイメージというのはこういうことでよくなるとお考えですか。日本に対するイメージダウンもはなはだしいと思いますよ。こういう側面からすると、日本の援助のあり方に対してやはりいろいろな批判がかの地においては起きないはずはないと考えていいと思われますが、大臣はこういう問題をお聞きになってどう思われますか。
  91. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの土井さんのお話は、直接は国の経済協力援助とは関係ない話でございますが、民間の企業の姿勢といいますか、モラルといいますか、そういうことに関係してくる問題でございますが、おっしゃることがそのとおりであれば、やはり日本の企業に対するイメージを損なうということは確かだと私は思います。これは政府が企業に対してどうこうというわけにはいきませんけれども、やはり企業のモラルというものはあるはずだと私は思っております。
  92. 土井たか子

    ○土井委員 企業のモラルについてももちろん問題なんですが、大臣、ひとつこの実態というものを、どういうことなのかということを確かめていただけませんか、これは非常にゆゆしい問題だと思われますから。これはどこがこういう問題について確かめるという役割りを担われる省になられるのかよくわかりませんが、大蔵省に聞いてもそれは所管じゃない、通産省に聞いても所管じゃない、こう言われるのです。いかがですか、大臣
  93. 木内昭胤

    ○木内政府委員 御承知のように、昨年、韓国経済というのは非常に深刻なマイナス成長を経験したわけでございます。世界的にも景気が後退している中で、とりわけ韓国経済というものが深刻な打撃を受けまして、その関連におきましても日本の進出企業の活動が火の消えたような状況になり、ただいま土井先生の御指摘のような社会問題にまで遺憾ながら発展した側面はございます。この点につきまして詳細できるだけ実態を把握いたしまして、これが不測のトラブルにさらに拡大しないように努力いたしたいと思います。
  94. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それはその後、また私はそれに従ってお尋ねを進める機会を得させていただくことにいたします。  もう一つここで問題にしておきたいのは、海外技術者研修協会というところがあるのは御承知だと思うのですが、以前私は予算の分科会でしたでしょうか、拘束契約の問題を取り上げてこの質問をいたしました。その拘束契約というのは、簡単にこれを要約して申し上げますと、研修生と派遣企業との間で研修のために締結される文書によって契約がなされるわけですけれども、研修生に対しまして、協会による研修終了後一定期間、派遣をした企業あるいはその企業が指定する企業で勤務するということを拘束するわけなんです。その中途退職の場合は違約金あるいは損害金を支払うということを当人に対して義務づけるという、これは本来日本の国内では許されないような中身を注文つけして日本に派遣するということが事実ございましたために、この拘束契約というものが、いかに日本が経済援助や技術援助をしている相手国に対してイメージを傷つけることになるかということもあわせて質問をいたしまして、そのときにはこの拘束契約の全廃を目指すというお約束をいただいたのですが、これは本気で全廃を目指されるかどうか、その点、いかがですか。
  95. 井上宣時

    井上説明員 拘束契約の問題につきましては、昨年来、研修協会の中に検討委員会というものをつくりまして、大河内先生を委員長として検討してまいりました。その結論を一応得ましたので、その中で指摘しておりますことは、拘束契約というのは基本的にはやはり廃止する方向で考えるべきであるということでございます。ただ、いろいろな実態から見まして直ちに廃止するというわけにもまいりませんので、基本的方向を確認しつつ、段階的にこの問題に取り組んでいくという基本姿勢を決めた次第でございます。
  96. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、時間の都合がありますから、一つ一つお尋ねをするというのが筋でございますけれども、一括してお尋ねしますから、よく聞いていただいて、それに即応してお答えをいただきたいと思うのです。  いまは二五%以上の出資率の合弁企業だけを対象にして考えていますね。しかし、その二五%以下の出資率の合弁企業、代理店、技術提携先、得意先というのにいま申し上げているような拘束契約があった場合はどうなさるおつもりなのか、これもやはり認められないというのが筋ではないかと私は思いますけれども、この点が一つ。  それから、これは二年以内に見直してみようというお約束であったのですが、これは二年で拘束契約というものの全廃を完了するということを本気でお取り組み願えまいかという問題が二つ。  それから三つ目は、研修協会はこれを本気でやるのかどうか、業界の後押しで、どうも理事会で決められたことをサボってきたというきらいがなきにしもあらずなんです。だから、そういうことに対してしっかりと取り組んでいただけるということがお約束願えるかどうか。  以上三つ、いかがですか。
  97. 井上宣時

    井上説明員 二五%以下の企業の取り扱いでございますが、日系企業に対しましてはすべての企業に対しまして拘束契約の実態の調査をいたしまして、二五%以上と全く同じ扱いではございませんが、この拘束契約の実態が余りにもひどいというふうなものについては所要の改善勧告を行うということを考えておる次第でございます。  それから、二年以内に見直すということにいたしておりますが、これは一年間の実態、拘束契約の運営をした後にその実態を見ながら再検討するという趣旨でございまして、二年以内に全廃するということをここでお約束するということはできかねますが、一年間の結果を見ながら、二年以内に何らかの見直しを行ってまいりたい、かように考えております。  それから、三点目の研修協会を本気に取り組むかということにつきましては、私どもこれについて十分監督してまいりまして、遺漏のないように措置してまいりたい、かように考えております。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 時間のかげんで、私はもう深くこのことについてさらに追及するゆとりがなくなりましたが、大臣、最後に、この海外技術者研修協会というのには三分の二政府の補助金が出ております一そして三分の一が企業者側から出される、そういうかっこうでこの運営をされるわけであります。したがいまして、国民の税金がこれに使われるのですが、どうもいままで見たところ、日本の合弁企業三〇から三五%、日本の代理店、得意先、技術提携先全部総じて約八〇%が日本の企業の立場考えられるという内容になっているのです、いままでのこの内容からしますと。企業の社員教育をやるような中身になってしまうというのはどうも本来の趣旨に反するということが再三再四にわたっていままで指摘されてきたのですが、これ自身大変私は問題があると思うのですけれども、大臣、どういうふうにお考えになりますか。つまり、経済協力のうちの技術協力の部面で、この補助金を使って社員教育をするという側面が強いというふうな批判があったりいたしますが、どうお考えになりますか。
  99. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、いま初めてそういう組織があるということを聞いたわけでございますが、これはよく所管大臣から話を聞いてみないとわかりません。いまここですぐどうだという意見を私は述べることは、ちょっと差し控えさせていただきます。これはよく私も関係大臣に聞いてみます。
  100. 土井たか子

    ○土井委員 質問はこれで終えますが、最後に、これは一次産品の問題についてブラント委員会報告の中に、「この一次産品価格を採算のとれる価格で安定させ、市場の変動に対する脆弱性を小さくすべきである。これらの目的のため、現在設立交渉中の共通基金、及びその他の関連機構に十分な資金を確保する必要がある。」こう前置きをした上で、「価格の不安定性を救済するため、既存の諸制度を改善し、拡大すべきである。」ということが述べられているのですが、日本としては今後どういう点に既存の諸制度を改善し拡大するという部面があるというふうにお考えになっているかをお伺いして、私は質問を終えます。
  101. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 御指摘の点でございますが、一次産品総合計画というものが十八品目において行われることになっておりますし、今回御承認をお願いしております共通基金はこれらの十八品目の価格安定に寄与するためにつくられたものでございますので、こういった方向で努力がなされるわけでございます。そのほか考えられますものとしては、国連のUNCTAD等においては輸出所得補償制度という制度がございまして、これは直ちに価格安定というよりは、間接的に、いわゆる特定の産品の輸出に依存をしておる国がその輸出が不振に陥ったために所得を補償しなければならぬという考え方がございまして、ECにロメ協定というものがあることも御承知のとおりでございますが、この方向については日本といたしましても従来から検討課題としては考えてきておるというようなことでございまして、そういう意味でそういったいろいろなスキームを通じて今後とも安定を図ってまいりたいということでございます。      ————◇—————
  102. 奥田敬和

    奥田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、いよいよあしたから日米会談に臨まれるために御訪米されるわけでありますが、大変御苦労さまでございます。  今回の日米会談内容また結果につきましては、国民も大変重大な関心を持って見守っているわけであります。したがって、大臣の御決意、また御認識と申しますか、これをぜひお聞かせいただきたいと思うわけでありますが、レーガン政権が誕生以来、大幅な軍事費の増額、軍事増強一本やりとでも申しますか、そういう感じであります。これはレーガン大統領の公約であります強いアメリカを目指すという政策一つのあらわれかとも思うわけでありますが、しかし世界的に見ますと、米側の軍拡路線政策という感じがするわけであります。そういう中での御訪米でありまして、本当に大変だと思うわけでありますが、戦後三十五年、日米関係というものは、多少のさざ波もあったわけでありますけれども、今回のレーガン政権の出現によって一つの新しい局面に入ってきたのではないかという感じすらいたすわけでありますが、大臣の御決意のほどをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  104. 伊東正義

    伊東国務大臣 新しい政権ができましてから初めて政権担当者と意見の交換をするわけでございますが、私は淡々とした気持ちで行こうと思っているのでございます。余り悲壮感を持ったり、荷物をしょったり、そういう気じゃなくて、いままで国会で御答弁しているようなことを、日本立場を淡々として向こうに伝え、また向こうの意見も聞き、意見の交換をしてこようと思っているわけでございますが、やはり日本の外交あるいは防衛の問題でも、自主的に考えるということが基本の問題でございまして、そういう基本的な態度をもって、御承知のように安保体制ということで日米関係というのが言われておりまして、この友好関係が基軸でございますから、その信頼関係をますます発展させることは必要でございますので、そういう考え方で、どういうことがこれから日本考えられ、できるか、どういうことが言われてもできない問題か、日本は国際的な立場でどういう役割りが果たせるかというようなことの意見交換をしてまいろうと思っております。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 淡々としたお気持ちでいらっしゃるということでありますが、最近レーガン政権の特にわが国に対する防衛分担要求等を見ますと、性急かつ度を超しているという言い方、そういうことからしまして、わが国民の理解を得られるどころか、むしろ逆に懸念されるのは、対米不安と申しますか、不信と申しますか、いま大臣のおっしゃいました日米関係の友好あるいは信頼関係を持続していくということから考えますときに、そういう不安が出てくることを非常に憂慮するわけであります。したがって、そういう点を日米会談におきまして率直に申し上げるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  106. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃることはよくわかります。本当の信頼関係、友人関係といいますか、それは何も一〇〇%オーケーと言うことではないと私は思うのでございまして、お互いに率直に耳の痛いことも言い合うということで真の信頼関係が保たれるのではないか、私はこういうふうに思うわけでございまして、いろいろ期待表明等あるいはあるかもしれませんが、国民の皆様にわかるような、あるいは納得のいくようなことでなければこれはできないことでございますので、イエス、ノーだけははっきりして、それがお互い信頼関係のもとじゃないかという態度で話そうと思っているわけでございます。  いま防衛の問題についてお話がございましたが、具体的にどうこうということはいままでまだ全然ないわけでございます。最大の努力、あるいは着実、顕著という言葉が最近はまた出ておりますが、そういう抽象論だけでございまして、具体的な要請、期待表明等はまだないわけでございます。これから行きまして、十分お互い考え方を述べて、相互理解を深めてこようと思っているわけでございます。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 結局、レーガン政権としては軍拡路線、わが国は平和憲法の精神から軍縮というはずですから、非常にかけ離れているわけです。どっちかというと水と油というような状態になりかねない。したがって、そういう中でどういう接点を見出すか、これから大臣は大変御苦労されるわけでありますが、その接点の見出し方、何とかかみ合わすために、米側がわが国の軍縮という基本的な考え方について乗ってくることもちょっと考えられないし、そうかといいまして大臣が行かれて米側のそういう軍拡の方向に乗っていったらまた重大なことになると思うわけでございますが、重ねて、どういうふうな話し合いをしてこられるおつもりであるのか、お伺いをいたします。
  108. 伊東正義

    伊東国務大臣 日米関係は二国間の問題もございましょうし、国際情勢判断、認識ということに基づいての二国間関係、安全保障であれば二国間関係ということになってくるわけでございますので、これはやはり国際的な情勢の判断ということがまず大切でございますし、そういうものの上に立っての二国間の問題があるわけでございます。安保条約をお読みになってもおわかりのように、経済問題も当然入っていることでございまして、関係するところはやはり広いということでございます。日本は憲法その他の法令の制約があることは御承知のとおりで、総理もいつも言っておられる。専守防衛、軍事大国にならぬということをしばしば言明されておりますから、枠がはまっているわけでございます。そういう中で日本はどういうことを考えていくのかという立場で、いままで何回も国会でお答えしたと同じ考え方で向こうには意見を言うつもりです。そういう態度向こうと話そうという考えでおります。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 とにかくあしたでありますので、大変しつこくなるかもしれませんが、いまおっしゃいました軍事大国にはならぬ、専守防衛を貫く、あるいは憲法の枠内での自衛権の整備であるとか、あるいは非核三原則であるとか、個別的自衛権、そういうことで乗り切れるという御自信は持っていらっしゃるわけですか。
  110. 伊東正義

    伊東国務大臣 これからの話し合いでございますから、乗り切れるか乗り切れぬかと言われてもちょっと困るのでございますが、私は日本態度も言い、向こう考え方も聞いて、相互の理解を深める、信頼関係を発展させるというのが今度のアメリカに行く目的だというふうに思っておりますので、これはお互いに話し合って、ああそうかとお互い立場を理解し合って、その上で日米安保の円滑な運用とかそういうことができることを私は期待しているわけでございます。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、重要な問題の一つとして、いわゆるソ連の脅威をどう見るかということにもなると思うわけであります。対ソ対応の仕方がわが国と米国とはおのずから異ならなくちゃならないと思います、置かれている状況、立場等で。したがって、ソ連に対する日本側立場というものは米側と違うのだということをこの際はっきりおっしゃった方がいいと思うのですが、いかがでしょうか。
  112. 伊東正義

    伊東国務大臣 ソ連との関係は、アメリカアメリカソ連の見方がございましょうし、日本日本で、潜在的脅威ということをよく防衛庁長官が言われるのでございますが、領土問題があったり、漁業問題があるとか、いろいろなアメリカにない問題もまたあるわけでございますから、日本日本としてソ連との平和、友好というものをどうやって保っていくかという問題と、それから核大国としての米ソ両国が何とか全面的な対決というような悲惨な事態にならぬように努力してもらうということも必要なことでございますから、いろいろな面で、世界平和ということをもとにしましていま先生のおっしゃったようなことについても意見の交換をしてみよう、その場合に日本には日本で独自の問題もあるということでございます。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう一点は、先ほども高沢先生の御質問の中にありましたけれども、朝鮮半島には緊張は存在する、したがって緊張緩和についての環境づくりにわが国としては努力するのだという意味の御答弁があったわけでございます。この間の米韓共同声明等、前カーター政権と違って、韓国に対する米側の軍事的てこ入れというようなことは、むしろ緊張緩和でなくて緊張激化の方向に行くというような心配がされるわけでありますが、当然そういう朝鮮半島問題等につきましても率直にレーガン政権におっしゃるおつもりはございませんか。
  114. 伊東正義

    伊東国務大臣 それは国際情勢判断、認識の問題にかかわる問題でございますが、朝鮮半島に緊張があるということは、私どもも明らかにそう思っております。ただ、その緊張をなるべく緩和しようということは関係国みんなが努力すべきことだというふうに私は考えております。  それで、ブラウン国防長官の最後の国防報告でございましたか、北からの全面侵略があるじゃないか、侵攻があるじゃないかというような判断があったときに、たしか予算委員会で質問がありまして、そういうことは中国も言ってないし、われわれとしてもアメリカと意見交換をするときにその辺の認識についてよく意見交換をしてみたいということを私は予算委員会で言ったことがございます。そういうことで、朝鮮半島についての認識が一緒か違うかというような問題については意見の交換をしようというふうに私は思っております。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう一点は、やはりアジアの平和、安定という立場から、米中関係というものがまた非常に大事な問題だと思うわけであります。レーガン政権は台湾重視、これは公約やその後の政策を見ましてもそういう感じがし、中国側が米側に対して不信感を持たれるようなことになったらこれはまた非常に重大問題になると思うわけでありますが、そういう米中関係、そしていわゆる台湾重視という問題等につきまして、大臣はどのようなお話し合いをきれるおつもりでございましょうか。
  116. 伊東正義

    伊東国務大臣 去年の八月でございましたか、まだアメリカの選挙の途中でございました、いまのブッシュ副大統領とアレン補佐官ですか、来られたときに私も会いまして、いろいろアジアの情勢について意見交換をしたことがございます。そのとき私はブッシュさんに、日米関係というのは非常に信頼関係が高まっている、日中も非常に平和友好関係が保たれている、米中関係も非常にいい関係にある、お互いが友好関係を発展させようと、日米、日中、米中みんないまいい関係にあるという状態だから、米中関係がまずくなるというようなことのないように、さざ波が立たぬように、米中関係がまずくなるというようなことだとアジアの平和にも影響があるから、そこは十分に米中の良好な関係が維持されるようにというのが日本考え方だということを言ったことがございます。でございますので、もしそういう話があれば、それと同じような考え方を述べようというふうに思っております。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでこの際、せっかくの日米会談でありますから、例の日、米、西ドイツの石炭液化プロジェクトですが、この行方が非常に心配されているという報道等もあるわけでありますが、その点について大臣とされて、米側の公約をそのとおり実行すべきではないかということはおっしゃるおつもりはございませんか。
  118. 伊東正義

    伊東国務大臣 さっきも土井さんの御質問でお答えしたかと思うのでございますが、あの計画はアメリカから提唱されて日米独で始まったことでございます。あの計画を変えるときは関係国が協議の上でということになっているわけでございます。いまアメリカは予算的には公社に移してというような考え方でございますが、これはその協定にもありますように、これをどうするかということにつきましては日米独で協議をしてから結論を出すということが私は筋だと思いますので、一方的にどうこうということじゃなくて、三者がよく協議すべきじゃないかということを私は言うつもりでございます。  日本としましては、あの石炭液化ということは代替エネルギーとして非常に大切なことだというふうに思っておりますので、従来どおりの方針であれが完成できるということを期待しているわけでございまして、さっきの一方的に変更するということではなくて、海洋法と同じことでございますが、私はアメリカにそういう意向を言おうと思っております。      ————◇—————
  119. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。玉城栄一君。
  120. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいまの東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定についてお伺いをいたしたいのであります。  この協定に関連いたしまして、ことしの一月、鈴木総理、そして伊東外務大臣ともにASEANを御訪問されましたときに、対ASEAN人づくりプロジェクトのお約束をしてこられたわけでありますが、その点についてお伺いをいたしたいわけであります。  対ASEAN人づくりプロジェクトに関連しまして、国内では沖繩に設立するということでありますが、対ASEAN人づくりプロジェクトといいますと、当然ASEAN諸国の社会経済発展を支える人材の養成のためにわが国としても積極的に協力してあげようということだと思うわけであります。そのために、国内においては沖繩に国際協力事業団の付属機関として国際センターを設立するということであります。人づくりプロジェクトという構想からいたしましてこれは当然成功させなくてはなりませんし、また長く続ける必要もあるかとも思うわけであります。当然そういうセンターが設立される地元の協力体制というものが非常に大事なことになってくるわけであります。したがって、そういう地元の協力体制を求める意味において、この沖繩に設立される国際センターは、沖繩県側の参加、意見を聞くというようなことも当然必要ではないかと思うのですが、大臣としてどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  121. 伊東正義

    伊東国務大臣 一月に総理と一緒に参りましたときに、総理が、いま玉城さんのおっしゃったような、人づくりというのは一番大切だ、社会、経済、政治、みんな考えてみてもまず人が大切だということで、人づくりに協力しようというので約一億ドルのお金も考えているということを言われて、これはASEANで非常に共感を得られた一つのプロジェクトでございます。  ASEAN各国に一つずつでき、また日本は沖繩にということになっているわけでございまして、どういうものをつくるかということは各国の考え方に任せてあり、また沖繩につくりますセンターも、これはASEANの意向を聞いて決める。どういう組織にし、どんな規模とか、いろいろな注文があると思います。これは押しつけでなくて、ASEANの人々の希望を聞いて、ASEANの人がある案を持ってきたらそれをなるべく尊重するということでやろうと、来年度は調査費だけ計上してあるわけでございます。これは沖繩にできるわけでありますから、沖繩の人々の意見を聞くということもまた当然なことだと私は思います。できて喜ばれるような、沖繩の人はもちろん、ASEANの人みんなから喜ばれるようなセンターをつくるべきだというふうに思っております。
  122. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、局長さんで結構ですが、三十一日にASEAN諸国から外務省に来まして調整会議が開かれますね。そういう席に、設置がされる地元の沖繩県の代表をオブザーバーみたいな形ででも参加させてみるというようなことはいかがですか。
  123. 梁井新一

    ○梁井政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、三十一日と四月一日にASEAN諸国の代表が参りまして東京で会議をやるわけでございます。  沖繩県との連絡につきましては、沖繩県から提供していただく予定の土地がございまして、その土地の視察と、その他沖繩県側との打ち合わせ、大学にどういう学科があるかとか、そういう点も含めまして、現在、経協同から人を派遣いたしまして沖繩県と詰めているわけでございます。その結果いかんによりますけれども、もしそういうことになれば、今度の会議でオブザーバーに参加していただくということも検討してみたいと思っております。
  124. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、これは大臣にお伺いしたいのですが、実は新全総、新全国総合開発計画の中の沖繩に関する部分に、これはちょうど沖繩が本土復帰しましたときに、その沖繩の部分を挿入するということで昭和四十七年十月三十一日に閣議で決められたわけであります。自乗この考え方を生かして沖繩の振興開発等もされておるわけですが、その中に、沖繩はわが国南の交流拠点として東南アジア諸国等広く海外諸国との人的、物的交流基地あるいは中継基地としての発展が期待される地域である、これに類することがたくさんありますけれども、そういう考え方があるわけですね。したがって、この沖繩に設置されます国際センターと、いま申し上げました考え方との関連性について、大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。
  125. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまお読みになった趣旨がまさに、センターをつくるということは普通だったら東京、こう言うところでございますが、沖繩にそのセンターができるということは、いまお読みになった趣旨どおりのことに合致するのではないかというふうに私は考えております。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕
  126. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、これは提案なんですが、いまの問題に関係しまして、今回、総理そして外務大臣がASEAN諸国に約束された人づくりプロジェクトということは、何のために人づくりかといいますと、やはりさっきも申し上げましたとおり、ASEAN諸国の経済社会の発展、そういう人材を養成する、同時に、ASEAN諸国の平和と安定ということを願えばこそ、わが国としてそういう構想を打ち出し、協力しようということだと思うわけであります。したがって、青少年の教育の中で近隣諸国との文化交流ということは欠かすことができない非常に大事な問題の一つだと思うわけであります。  したがって、地元はもとよりでありますが、こういう国際センターができるということは一つのいい機会でもありますし、そういう青少年間の文化交流というものはASEAN諸国の平和という問題を考えますときに非常に大事な問題だと思うわけでありますが、そういう点、ひとつ推進をされるお気持ちはございませんでしょうか。
  127. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、一月に総理と参りましたとき、インドネシアでございましたか、青年と座談会をやったことがあるのでございますが、青年との交流というのは非常に大切なことだ。あれは総理府でやっておられますか、青年の船をもう少しよけい出して青年の交流ということを考えるべきだということを、インドネシアの青年たちが言っておりました。予算の原案ができて国会へもかかる間際でございましたので、予算をいじるということはできなかったわけでございますけれども、そういうことは現地の人々からも希望が多く出ておりましたので、今後ともそういう機会を多くすることは必要だ、こういうふうに思っております。
  128. 玉城栄一

    ○玉城委員 それから、これは局長さんで結構ですが、人づくりプロジェクトの予算関係ですね、二百億という話だけは聞いておるのですが、たとえば五十六年度どういう調査に幾らの金が組まれ、五十七年はどうなっているか、それをちょっと説明していただけますか。
  129. 梁井新一

    ○梁井政府委員 先ほど大臣から御説明のございましたとおり、五十六年度予算に国際協力事業団に一千万円の調査費が計上されております。  私どもといたしましては、今回の東京でやりますASEANとの会議は非常に重要な意味を持つわけでございまして、ASEAN側から、各国がどういう分野の人づくりセンターをつくってほしいかという要望が出るはずでございます。この要望につきましても、ASEAN側は、東京に参りましてからASEAN側だけでまず会議を開いて、事前にASEAN側の要望をまとめたいということを言っておるわけでございまして、ASEAN側の要望が決まりましてから、私どもがどういうふうに対応するかということを考えていかざるを得ないと思っておるわけでございます。したがいまして、五十六年度以降、特に五十七年度予算にどういう要求をするか、いまの段階ではっきりわかっていない状況でございますけれども、ASEAN側の対応を踏まえまして国内の措置、国外の技術協力の措置を考えていきたい、こういうふうに考えております。      ————◇—————
  130. 青木正久

    ○青木委員長代理 一次産品のための共通基金を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  131. 玉城栄一

    ○玉城委員 この一次産品のための共通基金を設立する協定につきましては、一次産品の価格の乱高下を防ぐ共通基金の設立問題は長い間南北交渉中心的課題であったわけですが、当初、わが国共通基金の設立に関して必ずしも賛成ではなかったように承っているわけであります。今回、これを積極的に支持をするというふうに協定として出されてきているわけですが、その理由についてお伺いいたします。
  132. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 この一次産品共通基金の設立交渉は四年以上にわたる長い間行われたものでございますが、先生御指摘のとおり、初めの構想は大変大きな構想でございまして、一次産品共通基金にすべての資金を集中してそこで一次産品価格の安定を図ろう、そういうところから発想が出たわけでございますが、長い間にわたります先進国と開発途上国間の交渉の過程でだんだんと現実的な考え方が出てまいりました。  最終的には、先生御承知のとおり、この共通基金といいますのは必ずしも自分のところで資金を集中してやるのではなくて、現存する既存の国際商品機関と提携することによりまして、それが有する資金あるいはその加盟国が保証する保証資本を活用して活動していく、こういうことになりまして、考え方としてはきわめて現実性が出てまいりましたので、基本的にわれわれといたしましては一次産品問題の解決が開発途上国にとって大きな問題であることを認識しておりましたので、かなり早い段階からこの共通基金を支持するという方向に向いたわけでございます。
  133. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、アメリカ、それからソ連、これは間違いなくちゃんと加入する見通しは持っていますか。
  134. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 アメリカにつきましては、すでにこの一次産品共通基金設立協定署名をしております。ですから、私どもといたしましてはいずれ入るものと考えております。  他方、ソ連につきましては、昨年の六月二十七日の協定採択会議においてはコンセンサスをもって採択いたしまして、そのときは当然ソ連も賛成をしていたわけでございますが、その後の動きについては十分承知しておりません。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 ソ連側が加盟するかどうかについてはわからないということになりますと、この協定そのものの発足に影響してきませんか。
  136. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 私どもといたしましても、ソ連は入ってくるものと思っております。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この共通基金の性格についてなんですが、共通基金は基金の業務を遂行するため、基金に設けられる第一勘定は緩衝在庫操作のための必要な資金を融資し、また第二勘定は一次産品の研究開発、生産向上等のプロジェクトへ融資することになっているわけですが、こうした業務を行う共通基金は国際金融機関として考えてよいのか、金融機関でないとすればその理由について御説明いただきたいと思います。
  138. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 この問題は、国際金融機関をいかに解釈するかという問題とも関連があると思いますが、私どもといたしましては、この一次産品共通基金は国際商品機関に対して貸付融資を行う、あるいはグラントを与えるということを機能としておりますので、広い意味における国際金融機関であると思います。  しかし、たとえば世銀とかあるいはIDAとか、ブレトンウッズ協定の枠内でつくられております国際開発融資機関あるいはそのほかのいろいろな開発融資機関と若干異なりまして、これは一次産品に視点を当てて開発融資を行う、それから与える対象も加盟国ではなくて国際機関であるというところが大きな相違かと思います。
  139. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がございませんので、最後に、共通基金の第二勘定の業務活動は既存の国際的、地域的金融機関の活動と重複する面があると考えられるわけですが、それをどのようにして調整をするつもりなのか、そして、政府としては基金の業務活動が既存の金融機関等の活動と重複するものとしてはどのようなものがあると予想していらっしゃるのか、お伺いします。
  140. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 ただいま私お答えいたしましたが、基金の活動の特徴といたしましては、普通の開発金融機関が加盟国、国別の開発に視点を当てて行うのに対しまして、これは一次産品という商品というものに視点を当てて行うことになっております。したがって、この共通基金と既存の開発金融機関の活動は基本的には重複しないものというふうには考えておりますが、もちろんそういう重複があってはいけないわけでありまして、その設立協定におきましても、できるだけ既存機関との活動の重複を避けるということがうたわれております。また、場合によりましては開発融資機関と一緒にジョイントで資金供与を行うということも考えられております。  いずれにいたしましても、本件は共通基金活動が具体的に発足してから後のことでございますので、これは総務会あるいは理事会等々、その基金の活動、基金の機関の枠内におきまして、いま先生のおっしゃられたような方向でわれわれとしても考えていきたいと思っております。
  141. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りましたので、条約関係でまだお伺いしたい点もありますが、一応これで終わります。
  142. 青木正久

    ○青木委員長代理 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。林保夫君。
  143. 林保夫

    ○林(保)委員 日本の姿勢とアメリカとの関係についてお伺いしたいと思うのでございます。  明日、大臣が渡米なされるやに聞いておりますが、日米間の懸案は新聞報道で出尽くしている、ほかにもいろいろあるかと思いますけれども、大変な問題を抱えていると思います。  それにつきまして、最初に大臣から、今度の渡米で日本立場を御主張なさり、また向こうの意見も聞いてこられる、こういうことでございましょうが、今回の渡米をどう御判断なさっておられるのか。一口で言いますと、かつての繊維交渉、その後、田中・ニクソン会談があったわけでございますけれども、それに匹敵するあるいはそれ以上の問題が、ことに防衛あるいは経済摩擦そのほかの問題で出ているのじゃないだろうか。考えてみますと、国際緊張といった面ではかつてのそのとき以上の緊迫した情勢になっております。御認識と御所感を冒頭承りたいと思います。
  144. 伊東正義

    伊東国務大臣 林さんにお答え申し上げますが、私はいまの日米間というのは非常に信頼関係は強いというふうに見ております。特に昨年のイランの人質問題におけるイランに対する経済制裁でございますとか、アフガニスタンに対する軍事介入に伴う対ソ措置等、あるいは前の内閣時代でございましたが、たとえ犠牲があっても西側の一員としての責任を果たそうというふうなことで方針をはっきりしたわけでございます。アメリカは、あの問題以来日本に非常に協力をしてもらっているということで、信頼関係は非常に高いというふうに私は思っておりまして、この信頼関係を今後ますます維持、発展させていくことが日本の平和、繁栄にとりましても大切だということでございまして、私が向こうへ参りましていろいろ意見を交換する一番の目的は、信頼関係を維持し、発展させていくことだというふうに考えて参ります。  参りまして、恐らく国際情勢、国際的な問題、あるいは二国間の関係とか、いろいろ意見の交換があると思われるのでございますが、国際関係になりますと、特に米ソ関係でございますとか、あるいは中東問題でございますとか、あるいはアジアのアフガニスタン、カンボジア問題とか、いろいろその情勢判断、認識の問題が出ると思うわけでございます。  二国間の問題になりますと、防衛の問題あるいは自動車の問題というようなことがすぐ出てくるわけでございますが、こういう問題についても、国会でいままで御答弁を申し上げていたこと、そのとおりの考え方を私は言うつもりでございます。  自動車につきましては通産大臣もよく言っておられるわけでございますので、日本側が国会でお答え申し上げているのと別なことを主張するとか、あるいはそういうことを約束するというふうなことは私はあり得ないことだと思っております。  防衛問題につきましても、いろいろ期待表明はあると思うのでございますが、日本考え方は、憲法という大枠があるわけでありますから、日本は専守防衛だ、軍事大国にならないのだ、他国に脅威を与えるような国にはならないのだということを総理も繰り返し言っておられるわけでございますから、アメリカもその点は当然認識してくれるというふうに私は思っております。その枠の中で日本としてはどういうことができるかできないかというようなことを向こうに話をする。率直に意見を言って、そして理解を深めるということが大切だと思うわけでございます。  今度参りますのは、交渉して何かまとめてこようとか、そういうことではないわけでございますので、特に総理の五月の訪米が後に控えておりますので、総理が訪米される場合にいろいろな話が出るだろう、それはこういうことではないか、アメリカ考えはこうでございますよというようなことも総理にお伝えして、日米首脳会談が本当に円滑に信頼度を増せるような会談にできるようにという下準備のために参るというようなことでございますので、日本立場は率直に話してこようと思っております。
  145. 林保夫

    ○林(保)委員 大変御苦労なお役割りだと思いますが、二つお聞きしたいと思います。  まず一つは、先ほど大臣がおっしゃいました国際情勢の認識の問題でございます。米ソ、中東あるいはアジア情勢、いろいろあるというお話でございますが、時間がございませんので一つだけ米ソの問題でございますが、私どもいろいろな報道から見まして、そしてまた実感といたしまして、アメリカソ連に対する考え方が前の政権とは大変変わってきている、むしろ強硬な線が強まっておると思うのでございますが、大臣、そのように変わったという御認識をお持ちでございましょうか、そして、それに対して大臣はどのような御所見でアメリカ側の皆さんとお話しになる御決意でございましょうか、承っておきたいと思います。
  146. 伊東正義

    伊東国務大臣 国際情勢の認識はカーター政権とレーガン政権とそんなに大きな変化はない。いろいろ取り組み方とかプロセスの問題とか、それは若干違いはございますが、国際情勢は厳しいという認識は前の政権と今度の政権でそう大きな変わりはないと私は思っているわけでございます。レーガン政権も、米ソが全面的に対決して核戦争になるというようなことはやはり避けなければならぬ、SALTの問題等についても、ソ連が本当にこれを減らしていくということであれば自分の方もテーブルにつくということを言っているわけでございます。  ただ、若干違いますことは、力による平和とか安全の幅とかいう表現がよくあるわけでございますが、ワインバーガー国防長官が、過去の歴史において抑止力のアンバランスができるところに紛争が起こるのだ、そのアンバランスというのを埋めた上でテーブルにつくとか話し合いをするということが必要じゃなかろうかというようなことをどこかで証言したことがございます。これは力の平和とか安全の幅ということにつながっていく考え方かもしれませんが、そういう意味では無原則にSALTの交渉に入るのじゃない、やはりそこにバランスがとれるようなことをしてから話さなければいかぬというようなことは若干違うということを感じます。  しかし、全面対決で核戦争というようなことは避けなければいかぬ、やはり世界の平和というものを何とかして求めていくという態度はレーガン政権もカーター政権もそう大きな違いはない。国際情勢の認識については、何も国際情勢が変わったわけじゃない、事実は一緒でございますので、そう大きな違いはないだろうというふうに私は見ております。  そういう中で日本が、今度は私がアメリカの首脳と話すわけでございますが、米ソ間のSALT交渉の継続の問題でございますとか、何とか平和を求めていく、米ソが戦ったということになれば本当に世界の壊滅、人類の壊滅というような事態になりますので、日本としても、米ソが全面的に対決するようなことは極力避けるということをやるべきだというようなことも、私も意見は言ってこようというふうに思っております。
  147. 林保夫

    ○林(保)委員 その中で日本ソ連に対してどういう態度をとるのだ、こういう問題がありますが、おさらいになろうかと思いますけれども、大臣アメリカに対してどういう御所見をお述べになるおつもりでございましょうか。
  148. 伊東正義

    伊東国務大臣 日ソ間がいま冷たい関係にあるというのは、かかってソ連の行動から起きてきたことでございます。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 アフガニスタンに対する軍事介入あるいは北方領土に対する軍事の配備、増強ということが原因になりまして冷たい関係になったわけでございますので、私は日ソと限定されれば、やはり日ソは隣の国でございますからなるべく恒久的な平和友好関係ができることを期待しておるわけでございますので、ソ連がいま言いましたような態度を改めるというような態度を示してもらうとか、あるいは平和条約、これは領土問題が入っておるわけでございますが、その平和条約話し合いをしようというような問題でございますとか、何かやはり誠意のある態度ソ連が示してもらいたい、そういうことの上にいろいろな話し合いをしていくというようなことが必要だと私は思っております。  この間、ポリャンスキー大使とも友好裏に話したわけでございますが、内容は厳しかったということを先ほどお答えいたしましたが、日ソ関係につきましては、恒久的な平和友好ができるように、ひとつ日本としてはソ連態度を待つということでございます。それまでは、やはりいまの対ソ措置というようなものを全然改めてしまうとかいうことは私はまだ時期尚早だ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  149. 林保夫

    ○林(保)委員 国益を踏まえてひとつその辺も、待つというだけでなくて、むしろ積極的に両国一体となってというのでしょうか、あるいはばらばらということになるのかもしれませんけれども、道を模索していただきたい、このことを御要望しておきたいと思います。  第二の問題でございます。  昨日も総合安全保障会議が開かれまして、大きく各紙に報道されております。その中で、防衛努力に限界があるという日本立場、そしてそのかわり経済援助、経済協力を積極的にやっていこうという姿勢がこのところ目に見えて顕著になっていると思います。このことは一昨日質問もさせていただきました。そこで、この報道によりますと、ヘイグ国務長官が、経済協力は防衛の肩がわりにはならない、このようなことを外務省に言ってきている、このことを昨日の会議の席上で外務大臣がおっしゃった、このように聞いておりますが、これは事実でございましょうか。
  150. 伊東正義

    伊東国務大臣 公式にそういうことをアメリカから言ってきておるというわけじゃないのでございますが、アメリカ大使館の人がアメリカ政府に行きましたときにそういう意見があった、(林(保)委員「だれが言ったというのですか」と呼ぶ)ヘイグさんがそういう意見を言ったということで、公電が来た、公式に申し入れがあったとか、何もそういうことじゃないのですが、そういうことがございましたので、私はきのうの会議でそういう話をしたことは確かでございます。
  151. 林保夫

    ○林(保)委員 この経済問題は、時間がございませんので午後にさせていただくといたしまして、訪米に関連いたしまして、このように、われわれの受ける印象では、アメリカ日本考え方が大変食い違っておる、こう言わざるを得ないという印象を禁じ得ません。  これから承ります問題は、これは防衛庁長官の問題と思いますけれども、なお外交上、大臣としてアメリカへ行かれまして、日本に対する防衛努力、いろいろなものが出てきております。ちょっと挙げましただけでも、海、空自衛隊を二倍にしろという意見があるとか、あるいはかねて言われている中期業務見積もりの前倒しをもっとやれという問題とか、あるいは三海峡封鎖をソ連に対してきっちりやれと言わんばかりの話もございますし、防衛海域の拡大の問題とかいろいろございます。挙げればきりがないほどございます。それらを見ますと、われわれはえらい大きなアメリカ日本との考え方の差があるのだなと、こういうふうに思うのでございますが、率直に申し上げまして、大臣アメリカに行かれて、要路の方々とお話しなされてきっちりと日本立場を主張なされて、向こうとの真の、大臣がさっきおっしゃられましたような信頼関係を増す、こういう役割りをお果たしになることができるのかどうか、御決意を持っておられると思いますので、その辺のところを承りたいと思います。
  152. 伊東正義

    伊東国務大臣 アメリカ側から日本に対しまして正式に、いま林さんがおっしゃったようなことを何も言ってきているわけではないわけでございまして、ヘイグさんとかワインバーガー国防長官とかの議会の証言あるいは演説等で、同盟国に対しまして、それぞれの国が防衛に努力をしてもらいたい、最大限の努力という言葉があったり、着実にして顕著なということがあったり、それは抽象的にそういう話が責任者から出ておりますけれども、それ以上のものは、まだ日本に対して何も期待表明というものは責任者からいままで出ていないわけでございます。ヘイグさんからも出ていない、ワインバーガー国防長官からも出ていないわけでございまして、私、向こうへ参りましたときどういう話になるかわかりませんが、これは総理も何回もお答えをしているわけでございまして、それ以上に日本の憲法の制約、法令の制約、いろいろあるわけでございますから、それ以上にまた国民のコンセンサスも必要なことでございますし、いろいろな問題がありますから、私は、いままで総理あるいは防衛庁長官、私が国会でお答えをしたそういうことを率直に向こうに伝える、そして日本立場というものを理解してもらうということに最善の努力をしてまいりたいと思っております。
  153. 林保夫

    ○林(保)委員 いろいろな状況を検討いたしますと、何かこう、日米関係のギャップの大きさが、大臣が行かれてかえって余りはっきりし過ぎるのじゃないだろうかという懸念を禁じ得ないのでございますが、もう一言承って、本会議へ行きたいと思います。
  154. 伊東正義

    伊東国務大臣 私が行きましてかえって差が大きくなって信頼感が薄くなっては、これはまことに行ったかいがないことでございますので、ひとつそういうことにならぬように最善の努力をしてきたい。ただ、余り肩ひじ張ってということよりも、淡々として向こうへ行って日本考え方を述べてこよう、こう思っております。
  155. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  156. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。林保夫君。
  157. 林保夫

    ○林(保)委員 引き続きまして、先ほども触れました昨日の総合安全保障会議内容につきまして、何かきょうの新聞の見出しだと、大臣は、援助も防衛の一環だ、このような感じのことが出ております。一昨日御質問申し上げたときに、経済援助協力は総合安全保障の観点から強化していくというような御答弁があったと思うのでございますが、どういう内容のお話を昨日の総合安全保障会議でなされて合意されたのか、承りたいと思います。
  158. 伊東正義

    伊東国務大臣 きのうの会議は、案を出しまして、それで方針を決めるとか合意するとか、そういう会議じゃなかったのです。私からは、ソ連のこの間の大会におけるブレジネフ演説についての感想、レーガン政権のいろいろなことが言われる中で特に経済再建計画が具体的に発表になりましたので、その中でいろいろな削減があるが防衛費はふえているという話やら、それから経済協力につきまして、カーターさんはうんと伸ばそうとしたのをレーガンさんは減らしているのですが、ことしの実績よりは来年は若干ふえるだろう、減りはしないというような話、そしてアメリカは二国間をふやそうとかいう考え方があるというようなことを実は説明をしたわけでございます。  そして日本としては、経済協力につきましては人道とかあるいは相互依存というのが世界の共通な理念でございますが、経済協力というのは平和国家のコストでもあり、日本の経済がこれから伸びていくことのコストでもありますというような話をしまして、目的は、この委員会で決議がありました、軍用にはならぬようにするとか、社会経済開発あるいは民生安定、社会福祉の向上というようなことが目的でありますというような説明をしたのでございますが、その中で、やはり南北問題というのは広い意味で世界の平和、日本の平和にも非常に関係をすることでございますので、経済協力を考える場合に南北問題というのは非常に重視する必要があるというような意見を私は言ったのでございます。案として決めるとかそういうことじゃございませんでした。  その中で千ドルの話が出ましたり、もう少し事業の対象をしぼった方がいいじゃないかというような意見が出たり、いろいろな意見が出たのは確かでございますが、方針を決定したとかそういうような会議ではございません。日本が防衛でやれることは法律で制約がございますので、経済的な面で、経済協力というようなことで世界の平和のために協力していくということが必要ではないか、総合安全保障という広い意味考えた場合にはそういうことが考えられるというな説明を私はいたしました。
  159. 林保夫

    ○林(保)委員 ただいま大臣のお話しになりました、援助対象国を従来千ドル以下で限定しておったのをこれから国民所得一人当たり千ドル以上の国も対象にするのだ、これはどういうことからきたのでございましょうか。
  160. 伊東正義

    伊東国務大臣 これはそういう意見を言われた人の理由とか詳細は時間がないから説明はございませんでしたが、恐らく、いまも千ドル以上のところで経済協力をやっているところはあるわけでございます、それで質問された人は、千ドルと決まったのは大分前なので、その後の経済の発展から考えれば千ドルという枠は当時の経済状態、現在の経済状態から言うと大分事情が違っているのじゃないか、千ドルというものをもう少し大きくしてもいいじゃないかという意味の御質問だった、あるいは御意見だったと私は思うわけでございます。  この千ドルの問題につきましては、きのう私は、いやそう言っても千ドル以下のところの需要が非常に多いのだから、いますぐこれを動かすということじゃないけれども、やはり将来の問題としては、経済が大きくなっていくということにつれて検討する必要はあるのかなと、いまもそのときの質問を思い出して考えているところでございますが、きのうそれを動かすということを決めたとか、そういうようなことは一切ございません。
  161. 林保夫

    ○林(保)委員 この千ドル問題を何も批判する立場でなくて、やはり生活水準、経済水準の低いところばかりでなく、高いところでもやるのだというような感じにとれるわけでございますけれども、やる以上は何を目的としてやるか、それなり政策の選択が非常に大事だろうと思うのでございます。大臣は、そういういわゆる千ドルに仮に仕切ったといたしますと、それ以上の国に認める場合にどういうことを配慮されておやりになるかを伺いたいと思います。
  162. 伊東正義

    伊東国務大臣 いままで行ったのは、私の知っているのは、マレーシアの五カ年計画にやるとかあるいは韓国にもやったというようなところはたしか千ドル以上でございますが、これはやはり相互依存関係といいますか、そういうような関係を頭に置いて決めているということでございます。いままでそれは例外としてやっている。原則は、大体千ドル未満というところを基準にしましてやっているのが大部分だということでございます。
  163. 林保夫

    ○林(保)委員 これからの問題としては、たとえばどういうところが想定されてこういう問題が出てきたのでございましょうか。
  164. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま具体的にどの国からどういう要望が出てきてということは、私、ちょっと存じません。後ほど政府委員から御答弁を申し上げますが、そういうところが一番考えられますのは、資源その他の相互依存関係とか、経済的に非常に密接な関係があるとか、そういうようなところがやはり基準になることが多いのじゃないか、私はそういうふうに思っております。
  165. 林保夫

    ○林(保)委員 後から政府委員の方に答弁いただきたいと思います。  続きまして、新聞報道によりますと、アジアに七割くらい、東南アジアに一、アフリカに一、中南米に一、これは一昨日も大臣がこの外務委員会でそのようなニュアンスのお話をしておられたのでございますが、これらを足しまして五十六年度は大体どのくらいの援助総額になる、このようにお考えになっておられますでしょうか。
  166. 伊東正義

    伊東国務大臣 ちょっといま私、手元に数字を持っておりませんので、まことに申しわけありませんが、政府委員が来ましてからお答え申し上げます。
  167. 林保夫

    ○林(保)委員 それでは、質問を変えたいと思います。  これは大臣、答えられると思うのでございますが、ここに外交演説がございます。その中に、八〇年までの五年間の総額は百七億ドル、こういう数字が出ております。百七億ドルに達すると見込まれますが、その総額の二倍以上にするようこれから考えるというふうに言っておられます。そういたしますと、たとえばこれから五年後にこれの倍、つまり二百十四億ドル、そういった数字を腹にお入れになってやっておやれるのかどうか、あるいはどういう長期の見通しで財政難の折からなおおやりになろうとしておられるのか、その辺を伺いたいと思います。
  168. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生のおっしゃった百七億ドルというのは、八〇年を含めた七六年から五年間の援助の総額でございます。それで、今度の目標は八一年から五年間にその倍以上でございますから、二百十四億ドル以上のものを五年間にひとつ援助をしましょう。それで以上ということをつけましたのは、総額では日本はいま世界で四番目でございますが、近くアメリカに次いで二番目になると思うのでありますけれども、GNP比がまだ低うございますので、何とかGNPの比率を改善したい、そのためには、やはりその倍以上のものをやらないと改善にならぬではないか、こう思いますので、倍以上ということを関係省で了解を得まして、あと五年はひとつ倍以上のものをやろうという目標を立てまして、目標を立てた以上は何としても守っていきたい、実現をしたいということでこれから努力をしていきたいと思います。
  169. 林保夫

    ○林(保)委員 そこで、これらの点を含めて大変大事な役割りをこの経済援助に促そうとしておられることはよくわかったわけでございますが、一体これらはどこの機関で、どういう手続を踏んで、だれが決めるのか。たとえば韓国に幾ら、あるいはまたマレーシアに幾らとか、あるいは先般出ておりました紛争周辺国に幾らというような形で、パキスタンとかトルコとかといったところへ出すのをお決めになるのか。やはりきっちりと国民にわかりやすいような決め方をしていただくことが、額が大きくなればなるだけ大事だろうと思うのでありますが、どうお考えになっておりますか。
  170. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  経済協力の問題でございますが、円借款は経済企画庁、大蔵省、通産省、外務省四省で相談をして決めております。今度の目標を決めますときにも、経済企画庁の長官が主宰しまして、いま申し上げました二百十四億ドル以上ということを政府の方針として決めたわけでございます。  無償の援助につきましては、外務省が大蔵省と相談してその具体的な問題を決めていくということでございます。  それから、技術協力の問題は各省にまたがるのでございますが、これは外務省中心になりまして、国際協力事業団等に具体的な問題を実行するように打ち合わせてやっておるというのが現状でございますので、円借款を幾らということは四省で相談をして決めるという形になっております。
  171. 林保夫

    ○林(保)委員 緊密な連絡をとられてそういうことをやられるように望みたいと思います。なお、援助額がこれだけ大きくなって大変大事な柱になってきたら、それを一本化するような方向にした方がいいのではないかという事務的な御意見が一部にあることも聞いておりますけれども、そういう面でぜひ御努力をいただきたい、このように御要望申し上げておきたいと思います。  この問題に関連いたしまして、先ほど、防衛に関する日米間の差がどうも大き過ぎて非常に目立つのではないかというような御質問を申し上げたのでございますが、経済援助の問題につきましては、この会議におきましても、一昨日のこの委員会におきましても、アメリカのねらいが、国際機関の援助というよりもむしろ二国間で直接役立つような方向にいきたいというような報告が出ております。やはり訪米されますと、これまたはっきり言うと主張が分かれるような感じがするのでありますが、この援助の問題については、大臣はどのような御見解をお持ちになっておられましょうか、また、アメリカにどのような御主張をなさるのでございましょうか。
  172. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  きのうの会議でも私は説明したのでございますが、アメリカの意見というのは定かではありませんが、言われておりますことは、二国間をふやそう、多国間のことはいままでより減らそうではないかということと、被援助国を友好国とか非友好国と頭から決めてしまって、そういうことで運用したらどうかという意見があるということも聞いているわけでございますが、きのうの会議でも、南の開発途上国を頭からそういうふうに決めつけてやるということはいささかどうだろう、この援助の基本は南北問題だと私は思いますので、日本としては南北問題ということに視点を当てて運用した方が世界の平和につながるのではないか、また日本の平和につながるのではないか、そういうふうに私は考えるという説明をしたわけでございます。  アメリカに行きましても、この国際協力のことは討議の一つの対象になると思っておりますし、その際に日本考え方はこうだと、もちろんそれは西側の一員であることは間違いございませんから、そういうことはよく踏まえてですけれども、日本考え方をはっきりアメリカに伝えたいということをいま考えております。
  173. 林保夫

    ○林(保)委員 そのほか、貿易アンバランスをどう是正していくかという問題は大変大事な問題になろうかと思うのでございますが、政府委員の方はどういう展望をお持ちでございましょうか。
  174. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 お答えいたします。  日米貿易アンバランスの現状でございますけれども、七八年が百一億ドルの日本側の黒字で、七九年が少し減りまして六十億ドルの日本側の黒字になりました。ところが八〇年になりましたら、少しまたわが方の黒字がふえまして、大体七十億ドルになったわけでございます。  われわれの考え方としては、日本アメリカといったような二国間のバランスをとって考えるべきではなくて、バランスというものはそもそもグローバルにとって考えるべきものであるというのが基本的な立場でございます。しかしながら、たとえ二国間のバランスでありましても余り不均衡が大きくなりますといろいろな貿易摩擦とか問題を生じますので、なるべく均衡に向かって改善を図るべきである、このように考えております。しかし、均衡を図る場合にも、わが方の輸出を抑制するとかとめるとかいうようないわゆる縮小均衡ということではなくて、わが方が輸入を増大するというような方向で拡大均衡を図るべきであるという考え方でございます。  それではどういう方法があるかと申しますと、一番基本になるのは、何と申しましてもわが国の内需を拡大することではなかろうかというように考えております。それと同時に、アメリカ側の輸出拡大という努力も大切でございまして、わが方もアメリカ側に対して輸出拡大の努力を促進するように慫慂しているわけでございますけれども、そういったアメリカ側の輸出拡大の努力に対しまして日本側としてもできるだけの協力は惜しまない、こういう態度で臨んでおります。
  175. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございませんので、大臣、最後に一つ承りたいのでございます。  こういうアンバランスの解消、これは防衛問題と関連いたしますけれども、F13とかP3Cの繰り上げ発注の問題がいま出ております。そのほかに民間ベースで、貿易アンバランスの是正という視点からアメリカに何か大きな貢献をしなければならぬ立場日本はあるのではないかと思うのでございますが、大臣、特にお考えの点があったらひとつ承っておきたいと思うのでございます。
  176. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま卒然として、こういう大きなものがある、それが非常に役立つというようなものはすぐには私は思いつかぬわけでありますが、自動車の問題をやりましたときに、アメリカと、日本への自動車の問題につきまして、いろいろな手続とか、部品の関税を免税にするとか無税にするとか、アメリカのものが日本の市場に入りやすいようにということをやったことがあるわけでございます。  いま何か一つの商品でぼこっと大きいというものは思いつきませんけれども、私は関税の問題も大分ガットの関係で直したこともありますし、あるいは輸入の手続等でいろいろ直さなければならぬところがあれば、日本側も自由貿易ということを言うたてまえ上、これは率直に検討する必要があると私は思います。どの部門でどれだけということはちょっといま思いつきませんけれども、やはりそういうじみちな努力をやっていく必要があるのじゃないかというふうな感じを持っております。
  177. 林保夫

    ○林(保)委員 質問時間が中断されて残念でございますけれども、ともかく大臣の御健康と御奮闘を特に期待いたしまして、質問を終わります。次回にひとつ聞かしていただくようにしたいと思います。質問を保留しておきます。
  178. 奥田敬和

    奥田委員長 次回に経済資料に関しては提出させます。  中路雅弘君。
  179. 中路雅弘

    中路委員 大臣が訪米の前でございますので、関連して二点ばかりお尋ねしたいと思います。  昨年の五月にシュレジンジャー元国防長官が日本の安全保障条約発効二十周年記念事業の一つとして日本で講演を行った際に、次のような発言をされています。その一部ですが、「中東石油への依存は、伝統的な防衛同盟の概念を全く変えてしまいました。すなわち、かつては同盟国、締約国領土保全の確保を目標とするものと考えられていましたが、今日では、共通の安全保障に対応するためには、われわれは伝統的な同盟に見られた締約国領土の境界線の外側に位置する資源並びにその輸送路の保護にも備えなければならなくなっているのであります。」という発言をされているわけです。  日本は特に中東に対する石油依存ということは大変顕著なわけですけれども、こうした防衛についての考え方を外務大臣はいかがお考えですか。
  180. 伊東正義

    伊東国務大臣 石油資源の問題で輸送路というようなことをお考えで御質問だと思うわけでございますが、個別自衛権の問題になりますと、これはいろいろもっと広い解釈ができるのでしょうけれども、日本の防衛力の整備の目途は、周辺航路帯で千海里でしたか、何か防衛庁で決めていられるわけでございまして、それが防衛努力の目途ということでやっていられるわけでございますので、個別自衛権の法律論は別にしまして、政治的に見ていま先生のおっしゃったようなところまで日本がやれる、防衛をするというようなことは考えてないわけでございまして、いまの個別自衛権の範囲で、防衛努力の目途というのはもっと近海の日本本土の周辺ということに考えているということでございます。     〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕
  181. 中路雅弘

    中路委員 同じような問題ですが、もう一点、同じような発言で重ねてお聞きしておきたいのです。  これはブレジンスキー元大統領補佐官がやめられる直前に、たしか一月十六日だと思いますが、読売新聞とのインタビューで答えられているところですが、それも一部読みますと、「過去数年の間に、米国だけでなく、第一、第二の戦略ゾーンにとっても死活的に重要な第三の戦略ゾーンが現れたペルシャ湾地域である。日本の防衛問題を論じる時、日本の安寧がこの地域に依存していることを認識しなければならない。」「日本の安保上の利害は第三戦略ゾーンやマラッカ海峡のような日本と第三戦略ゾーンを結ぶ地域の情勢に直接左右されており、日本が八〇年代の現実に直面する時、安保上の責務について広い視野を持たなければならないということだ。」というふうに述べているわけですね。先ほどの発言と日本に対する期待ということが非常に共通しているわけです。  日本の安全保障と言う場合、ブレジンスキーが「広い視野」ということを言っていますけれども、こうした考え方、先ほどもちょっとお答えになりましたけれども、もう一度、こうした問題について外務大臣はどうお考えですか。
  182. 伊東正義

    伊東国務大臣 安全保障の問題は、これは世界的な視野に立って考えなければいかぬということは私はそのとおりだと思うのです。ただ、それは何も集団的自衛権という意味じゃなくて、西側としましてはそれぞれの国でひとつそれぞれの可能な範囲で努力をしなければならぬ、こういう意味だと思うのでございますが、広い意味で安全保障を考えなければならぬということは私は当然だと思うのでございます。ただ、それは集団自衛権とかそういうものに結びついたものじゃないということだけはもうはっきりしているわけでございます。  そこで、日本の場合でございますが、日本の憲法あるいは自衛隊法で決められた枠がございますので、海外派兵をするとかそういうことは法律上できないとか、法律の制約の範囲内で日本自分自分の国を守るということをやっていくのだということだと私は考えております。
  183. 中路雅弘

    中路委員 日本の中東に対する石油依存というのは、たとえばペルシャ湾岸の石油に対する依存率を見ますと、アメリカは五%ですが欧州は三二%、日本は五三%。非常に依存が決定的ということが言えるわけです。いまおっしゃったように、もちろん海外派兵はできないわけですし、日本の憲法、法律の枠の中でという、それぞれの可能な範囲というお話ですけれども、アメリカの中東防衛の努力というか、石油輸送路の保護に対して、日本はこの中東石油に非常に大きな依存をしているわけですから、何らかの形で、海外派兵とかそういうことはできないわけですけれども、応分の対応をしなければならない、そういうお考えはお持ちですか。
  184. 伊東正義

    伊東国務大臣 中東からの石油に非常に依存しているということは確かでございますが、それでは日本が何かやれることということになりますと、これは御承知のような防衛上の問題では制約があるわけでございますから、それ以上踏み出してということはできない。日本としましては、その関係国との間の平和友好が保たれるような外交努力に真剣に取り組む、その沿岸の国々との平和関係を維持していくというような外交努力をやっていくことが必要だというふうに私は思うわけでございます。
  185. 中路雅弘

    中路委員 では、二、三これと関連して具体的にお尋ねしますけれども、たとえばアメリカの海軍作戦部長のヘイワードが、ことしの二月五日の上院の軍事委員会で、日本向けの石油タンカーの七五%が航行するシーレーンを防衛しているアメリカの航空母艦機動艦隊二グループの維持費は一日当たり五十万ドルに達しているということを述べているわけですけれども、たとえば一日当たり五十万ドルに達しているとアメリカが言っている、日本が依存している石油輸送路の保護に当たっている第七艦隊の維持費、これの一部を負担するということは、さっきのお話の関係でいかがですか。
  186. 伊東正義

    伊東国務大臣 アメリカからそういうような具体的なことは一切ございませんし、共同パトロールのときもいろいろ議論があったのでございまして、御質問がありましたが、あのときもそういう要請は一切なかったのでございますから、私どもはそんなことはあり得ない、こう思います。  また、日本としては、それは憲法で許される範囲内がどこまでだという法律論もございましょうし、政治論としてそれは妥当かどうかという問題もいろいろございましょうから、具体的な場合になってそれは御返事申し上げるのがいいと思いますけれども、全然そういうことはいままで要請もありませんし、考えたこともない問題でございます。
  187. 中路雅弘

    中路委員 アメリカからの話はない。政治論のことはありますけれども、いまおっしゃった憲法上の範囲というお話で、それでは、いま私がお尋ねした問題は憲法上できるわけですか、憲法上もできないということですか。
  188. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  具体的には、先般、ホルムズ海峡の共同パトロールということで若干問題になった点でございますけれども、共同パトロールの経費分担というのができるのかできないのかということで御質問がありました。その当時、政府側として、特に外務省として御答弁申し上げましたのは、日本では憲法上の制約と申しますと個別的自衛権の行使はできるが集団的自衛権の行使はできないのだ、その限りにおいては集団的自衛権の行使と申しますのは、実際上日本に対する武力攻撃というものが起こったときにそれに対して実力をもって排除するというのが集団的自衛権の行使ないしは個別的自衛権の行使ということになるわけで、要するに実力の行使ということが自衛権の概念と結びついたものでございます。  したがって、経費を分担するということに関しましては、特に集団的自衛権との関連におきましては憲法上持てないということでございますけれども、その問題は起こらないだろうということをお答え申し上げているわけでございます。
  189. 中路雅弘

    中路委員 そうしますと、たとえば第七艦隊の維持費の一部を負担するという問題はいま話が来ていない、しかし憲法上は許される範囲だというお答えですか、もう一度重ねてお願いします。
  190. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 憲法問題となりますと、中路委員よく御承知のとおり、やはり法制局の問題でございまして、外務省として、あるいは外務省条約局長としてお答えできますのは、ただいまはっきりしております集団的自衛権の行使ができないという憲法の制約についてでございまして、経費の分担ということは少なくとも集団的自衛権の行使には当たらない。したがって、その点で憲法上触れることはないだろうというお答えを申し上げる次第でございます。
  191. 中路雅弘

    中路委員 憲法上触れないということになりますと、第七艦隊の維持費までも将来もし話があれば検討されるということになると、これは大変重要な問題だと思うわけですけれども、きょうは法制局も来ておられませんし、この問題は改めてまた御質疑をしたいと思います。  もう一つ、これと関連して、それでは今度訪米される問題とも関連しますけれども、直接的にいまもお話が現実にやられている問題で、たとえば米軍の駐留費等の新しい負担増、たとえば思いやり予算の増加とか、こういう形でさらに協力していくというようなことだとか、あるいは最近、外務大臣が防衛庁長官と会われたときに、長官から対潜、対空能力の向上と関連してP3CやF15の発注を繰り上げるというお話が、新聞報道で意向が表明されたようですけれども、こうした問題が日米会談で出された場合に、アメリカの方もこれは強い要求がある問題ですから、外務大臣として、日米会談でこうした問題にどのように臨まれるわけですか。
  192. 伊東正義

    伊東国務大臣 具体的にどういう話が出るのか、それはわかりませんが、この間の防衛庁長官との話は、中業一年繰り上げの足がかりができたということを国会で説明しておられるが、どういうことですかと言って私が聞いたのでございます。そのときに、いまのP3Cですか、そういうような話が予算で頭を出したということを実は説明を聞いたのでございまして、それが繰り上げ発注になるとかなんとか、そういうことは実は聞きませんでした。そういうものがことしの予算で頭を出したということの説明を受けたわけでございます。  それから、在日米軍の駐留費の問題ですが、これは地位協定に基づいてやっているわけでございまして、労務費あたりは大体解釈の範囲内で負担しているということでございますので、いろいろな施設等につきましては、これはいろいろな財政問題その他の問題がございますが、地位協定で読めるものは日本の財政が許せば負担をしていくということはあり得るということ、これは当然じゃなかろうかと思うわけでございまして、ただ具体的にどうこうするとか、予算を幾らどうするとか、そんなことは、今度行きましても私は話すつもりはないわけでございます。
  193. 中路雅弘

    中路委員 アメリカの方から繰り返し日本の防衛の分担については強い要求が出ているわけですから、今度の日米会談外務大臣がどういう態度で臨まれるかということは大変重要な問題だと私、思いますし、向こう会談の結果によっては改めてこの問題は御質問もしなければいけないと思っています。  いまの問題と関連はあるのですが、もう一つ、これは緊急投入軍に関する問題です。二月下旬にレーガン氏とサッチャー氏の会談が行われた際に、中東に照準を当てた国際緊急展開部隊の創設が話し合われて、その検討が始まる見通しが報道されていますけれども、中東に石油を大きく依存する日本政府として、こうした問題についてどのようなお考えですか。このサッチャー氏とレーガン氏の会談の報道されている問題について、外務大臣のお考えをお聞きしたいと思うのです。
  194. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本アメリカ関係安保条約で規定をされているわけでございまして、駐日アメリカ軍は、五条の場合の日本の本土への攻撃があった場合、あるいは六条の場合の日本の安全、極東の平和、安全ということになっているわけでございますから、それで施設を使うというような地位協定もできているわけでございまして、その点ははっきり私は制約があるものだというふうに考えております。
  195. 中路雅弘

    中路委員 いずれにしましても、もしこれが創設されますと、アメリカの緊急展開部隊が中心になるのは当然だろうと思うのです。  いまもちょっと触れられましたが、重ねてお聞きしますが、この緊急部隊が在日の米軍基地を使用するという問題について、日本も中東に石油依存をしているわけですから、こういう点を踏まえていわゆる基地の自由使用ということになるのかどうか。
  196. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お答えいたします。  いわゆる緊急展開部隊とアメリカ考えておりますのは、中東のみならず、NATO以外の局地紛争が発生したときに迅速に兵力を展開するという構想でございます。その緊急展開部隊の中には何が含まれるかということでございますが、これは四軍が含まれるということになっていますけれども、現実に沖繩にいる海兵隊が含まれるかどうか、それはそのときの事態にならなければわからないというのがアメリカ側の見解でございます。  私たちが安保条約とこの緊急展開部隊との関連を考える場合に、まず沖繩にいる海兵隊それ自身は、その駐留目的でございます六条の日本の安全と極東の安全と平和に役立っているというふうに考えております。さらに、仮にその部隊が他の地域に移動していく、これは安保条約上禁じているところでございません。  それから第三点の、それでは沖繩にいる部隊が、理論的な問題として、中東の問題のために戦闘作戦行動に出ていく場合はどうか、こういうことになるかと思いますが、事前協議における戦闘作戦行動ということは、そこに書いてございますように日本の施設、区域から直接戦闘目的のために発進するということでございまして、そのときの任務と態様によって決定される問題でございます。いま沖繩にいる海兵隊が中東地域において戦闘作戦行動のために発進するということは、沖繩と中東との距離あるいは兵力の運用ということから考えて、現実的に私たちは考えられないというふうに思っておりますし、いまのところそういう問題は起きてないのが現実でございます。
  197. 中路雅弘

    中路委員 私がお尋ねしている中心は、もう一度お答え願いたいのですが、一つは、緊急展開部隊、もっぱらそれに携わる部隊の日本駐留というのは認めるのかどうかという問題についてはいかがでしょう。
  198. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは六条の駐留目的というのがございまして、日本アメリカ軍の駐留を許しているということは、日本の安全と極東の安全と平和に寄与するのだ、そういう目的でございます。それから同時に、そこの施設、区域を使っている部隊なりあるいは艦船、飛行機そのものが、全体として六条の目的に書いてございます駐留の目的に合致するかどうかということで判断しているわけでございまして、仮に一つの飛行機なりあるいは一つの艦船というものがたまたま極東の地域から出かけていっても、それは別に六条の駐留目的には違反しない。要するに、施設、区域が全体として日本の安全あるいは極東の安全と平和のために使われているかどうか、さらにそこにいる部隊それ自身が同じような目的のために使われているかどうかということが判断の基準でございます。
  199. 中路雅弘

    中路委員 昨年の予算委員会で、亡くなった大平総理は、緊急展開部隊のみに利用されるというようなものであってはならないということを答弁でおっしゃっているわけです。この問題と関連して、先ほど、戦闘が起きたときに沖繩の海兵隊が含まれるかどうかということでお話もありましたけれども、もう一度お尋ねしますが、いま日本の沖繩に駐留するこの部隊は現実に緊急展開部隊ではないのですか。
  200. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほどお答えいたしましたように、緊急展開部隊は四軍から成り立つということだけで、現実にどの部隊が緊急展開部隊として編入されるかどうかというのは、その事態によってアメリカ側がどこの部隊を投入するかということで決まってくるわけでございます。
  201. 中路雅弘

    中路委員 これはことしの二月三日のアメリカの上院軍事委員会の冒頭証言で、バロー海兵隊総司令官が証言している問題ですけれども、「わが全現役部隊、つまり三個の海兵水陸両用軍団は緊急展開部隊である。たとえばわれわれは南西アジアでの緊急事態に際して、水陸両用の強制介入能力を持つ戦闘師団、航空団の混成チーム、すなわち水陸両用軍団を迅速に使うことができる。」ということで、わが全現役部隊、つまり三個の海兵水陸両用軍団は緊急展開部隊だということを証言している。この三個というのは御存じのように、二つはアメリカの西海岸カリフォルニア、東海岸のノースカロライナに置かれていまして、もう一つが沖繩に司令部がある第三水陸両用軍団ですね。第三海兵師団は沖繩、このうちの第一海兵航空団は岩国、いま普天間にもいますけれども。アメリカの議会の証言で行われている総司令官の証言は、沖繩にいるいまの部隊は緊急展開部隊なんだということをはっきりと証言をしているわけです。  その証言の中でもう一カ所引用しますと、「国に対して危機に対処する迅速かつ信頼性のある対応力を与えるために、われわれ海兵隊はわが前方展開部隊を」ほとんど在日海兵隊を指しているわけですが、「先鋒隊として活用しつつ、そのユニークな構成と緊急派遣的性格を利用してきた。わが戦闘空・地混成部隊は、このような役割りに大変よく適している。それは、われわれが能力の範囲の中からわれわれが必要とするものだけ、つまり与えられた任務を完遂するための課題設定だけを行って、それにより戦略的輸送資産を節約しているからである。」  いろいろ述べていますけれども、ここでバロー総司令官が言っているのは、在日第三水陸両用軍団というのは、一年三百六十五日中東やインド洋やアフリカなどをにらんだ緊急投入部隊であるということを明らかにしているわけですが、在日第三水陸両用軍団は、アメリカの司令官自身が証言しているように、これはそのものが緊急投入部隊ではないのですか。
  202. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま御指摘の点は、先ほど私が説明したことと変わりないことでございまして、ここでバローが言っていることは、アメリカの海兵隊の現役部隊である三つのいま御指摘になりました海兵両用部隊は緊急展開部隊であって、たとえば南西アジアの緊急事態に際して投入することができるということを一般的に言っておりまして、具体的にそれでは沖繩にいる部隊が特定してこれが必ず中東なら中東の地域での緊急事態に投入されるということまでは述べていないわけでございます。これはその前の国防報告の中にも非常に明確に、緊急展開部隊というものは四軍からできるそういう一つのメニューである、具体的にどの部隊が抽出されるかということはそのときの事態によって変わってきているのだということでございますし、さらにつけ加えさしていただけば、緊急展開部隊は中東だけでなくて、NATO以外のあらゆる局地紛争に対処するためにアメリカ側が考えた部隊の構想であるということをつけ加えさしていただきます。
  203. 中路雅弘

    中路委員 御存じのように、わが国における部隊の配置の目的というのは、安保条約の六条で、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために基地を提供すると明記してあるわけですから、いわゆる極東の平和や安全に関係があろうがなかろうが、アメリカ側が言う中東における平和と安全に寄与するために必要だとすれば、中東だけではなくてアフリカでもどこでも出動する部隊、そういうことが初めから明らかにされている部隊、これは明白にそのものが緊急展開部隊ではないか。当時の大平総理も答弁しておりますように、こういうもっぱら展開部隊のみに利用されるというようなもの、これは部隊の配置の限定された目的からいってそうあってはならないということを答弁されているわけですから、その点で私は、いまの沖繩の部隊が緊急展開部隊に編入されるかもしれないというような理解ではなくて、この部隊そのものが緊急展開部隊であるということが大変重要じゃないかと思うのです。  もともと海兵隊というのは、これまでもベトナム戦争でもそうだったように、有事の際の火つけ役、殴り込み部隊であって、バロー証言で緊急投入部隊として明白に性格づけられているように、そういう任務を明らかにしていると思うのですが、その点ではいまの政府の答弁とは実態は逆であって、緊急展開部隊というのが沖繩に置かれている部隊の基本的な性格であって、その行動がない場合に、日本と極東の平和と安全に寄与するという、これはいわば副次的な任務があるにすぎないと私は思うわけです。重ねてお聞きしますが、いかがですか。
  204. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 沖繩におります海兵隊というのは、あくまでも日本及び極東の安全と平和のために駐留しているわけでございまして、仮に緊急投入部隊に編入されたとしても、そういう沖繩にある海兵部隊が日本の安全と平和に寄与するという実態があるという点については変わりはございませんので、いま御指摘になりました、沖繩の海兵隊がもっぱらある特定の地域のためにのみ駐留しているというふうには私たちは理解しておりません。
  205. 中路雅弘

    中路委員 いずれにしましても、いまの御答弁とこのバロー証言とは私は全く違っていると思うわけです。そういう点では、在日の海兵隊は緊急展開部隊であるというアメリカ議会の証言というのもあるわけですから、この部隊の性格についてはひとつ明確にしていただきたい。  外務大臣も訪米されることですから、直接当事者にもお会いすることもできるわけなので、大臣、いかがですか、この沖繩の部隊の性格についてさらに明確にしてほしい。やはりアメリカの議会の証言といまの答弁では私は違うと思うのですが、いかがですか。
  206. 伊東正義

    伊東国務大臣 アメリカとどういう話をするか、まだこれから向こうへ行ってからのことでございますので、いま中路さんのおっしゃったようなことに話がいくのかどうか、あるいはそういうことは私が話すことよりも防衛当局が話すことがいいのか、その辺のところはよく考えまして、ワインバーガーさんと会うのでしょうが、そういう具体的なことまでいくのかな、どうかなと、いま私は思っているところでございまして、どういうことにしますか、少し考えさせていただきたいと思うわけでございます。
  207. 中路雅弘

    中路委員 時間が来ているようだし、大臣の退席時間もあるということなので、いまの問題をもう少しお聞きしたいのですけれども、最後に一問だけお聞きします。  このバロー証言は、先ほど言いましたように、たとえば在日海兵隊を含めて南西アジアでの緊急事態に対しても迅速に使うということも言っているわけですが、在日米軍が南西アジアの緊急事態に対応する、直接戦闘行動に参加するということは、いわゆる安保条約の範囲という問題から拡大になるわけで、この点についてはどのようにお考えですか、最後にお聞きしたいと思うのです。
  208. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま、アメリカ側で南西アジアということでございますけれども、中路先生は、南西アジアでどの点をお考えになっておるか、恐らく御承知だろうと思いますが、南西アジアと申しますのは、アメリカの用語にいたしますと、イランからサウジアラビア、オマーン、北イエメン、アラビア半島でございますね、それからソマリア、ケニア、そのあたりまで含めた、先ほど来御論議になっております中東地域を含めて南西アジアと言っておる地域でございます。  そこで、沖繩の在日の駐留軍をそちらの方面に投入するということになると、いわゆる極東の範囲ないしは極東の周辺の範囲が広がるのではないかというお尋ねではございますけれども、極東の範囲に関しましては、昭和三十五年の政府統一見解が非常にはっきりしておりまして、その範囲が広がるようなものではございませんし、また極東の周辺につきましても、極東に対する武力攻撃がありましたり、ないしは極東の周辺に起こった事情のために極東に脅威が生ずるというときに、米軍がそれに対処してある行動をとる場合に、その米軍の行動の範囲というのは極東だけの厳密な地域的範囲に限られるものではないということを言っているだけであります。極東の周辺と申しますのは、極東に対する武力攻撃ないしは極東に対する脅威の態様いかんにかかわるわけではございますけれども、先ほど申しましたような中東地域アメリカの言う南西アジア地域でございますが、そこにおける事態が直接的に極東に対する脅威になるということは実際問題として考えられませんので、極東の周辺とも実際問題として観念できないということを申し上げたわけでございまして、政府といたしましては、極東ないし極東の周辺につきましては従来どおりの考え方をとっているところでございます。
  209. 中路雅弘

    中路委員 事前協議と直接戦闘行動に関連してもう少しお尋ねしたかったのですが、一応時間ですので、きょうはこれで終わりたいと思います。
  210. 稲垣実男

    ○稲垣委員長代理 田川誠一君。     〔稲垣委員長代理退席、委員長着席〕
  211. 田川誠一

    ○田川委員 大臣が二十五分にお立ちになるというお話を聞いておりますから、どうぞ時間になったら帰ってください。  難民の地位に関する条約日本も今度加盟することになって、この承認について国会でもこの委員会に付託されることになっております。これに対する国内法の手直しもされているようであります。難民条約に今日こうしておくれて加入するようになりましたのは、いろいろ理由があったようですが、その理由の中に、難民の定義、難民というのはどういうものか、この範囲をどこまで難民とするか、こういう見きわめをもっとしたい、それから、各国が実際上どういう取り扱いをしているか、こういうことをもう少し見きわめていきたいという理由もあったようであります。その意味で、今回難民条約に加盟することになって国会に承認を求める運びになったことは、難民の定義が国際的にも国内的にも相当はっきりしたと私は想像しております。  難民の地位に関する条約、この難民という名称は、学者によっては亡命者というふうに言っている学者もあるようであります。私がきょうここでお伺いをしたいのは、最近中国の人が相次いで二人ばかり、一人は女性ですが、失踪して、みずから後悔して中国へ帰った。もう一人は、きのうからきょうにかけての新聞に出ておりますが、中国の留学生がアメリカ大使館に出頭して、アメリカに行きたい、こういう事件が起こったわけです。このごろ、中国が開放的になって、その上に日本と中国との交流も相当幅広く行われるようになった。香港で御承知のように、中国から香港へ出てくる、そしてまた帰る人もある。それほどではないにしても、日本ではこれから似たような問題が頻発すると思うのです。  そこで、そういう人たちに対する取り扱いを一体どうするか、これは政府がしっかりとその対応をしていかなければならない時期に来ているのではないかと私は思うのです。ここで議論するために申し上げているのではなくて、いままで余りこういうことがありませんでしたので私どもにも知らないところがたくさんございますから、そうした点について少し具体的に質問をいたします。  最初に、外務大臣にもう時間がありませんから簡単にお伺いしたいのは、今度この委員会に付託されることになっております難民の地位に関する条約、この条約といわゆる政治亡命者との関連。難民条約をちょっと読んでみますと、政治的な理由で自分の国で迫害を受けるおそれがあるとかいうことで外国へ逃れるというような例が中心になってこの条約ができているように思われるのですけれども、難民の地位に関する条約、以下難民条約と言いますが、難民条約と政治亡命に関する関係について、一体大臣はどういうふうにお考えになっているか。大臣がよく承知できなければ、外務省の方、ちょっと説明してください。
  212. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  難民条約がおくれた理由は、私の知っている限りでは、国民年金とか社会保障関係、これをどうするかということが一番大きな理由でおくれたということでございます。  しかし、いま田川さんのおっしゃる難民と政治亡命の区別といいますか、非常に似たところがあるわけでございます。難民の定義というのは、今度法律改正して法務省で統一的にやってもらうことになっておりますが、概念としてはわかるような気がしますけれども、実際問題としての区別というのは非常にむずかしい問題がございますので、政府委員からお答えします。申しわけありませんが御了承願います。
  213. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 難民といわゆる政治亡命者との関連はどうかという御質問でございますので、その点について御説明さしていただきたいと思います。  数年前にも当委員会で同じような御質問がございまして、それに対しまして政府の方から関係省庁の間で十分検討して詰めた結論を示せということがございまして、その際に政府側から難民と亡命者の定義についてということで御説明さしていただいた経緯がございますので、ここに改めましてかいつまんでその内容を御紹介さしていただきます。  先ほど田川先生のおっしゃいましたように、難民と申しましても亡命者と申しましても、いずれにしても英語では御承知のようにレフュジーと言っておりまして、日本語で難民あるいは亡命者、政治難民あるいは政治亡命者と申しますときに、そこに概念的に非常に明確な区別があるわけではございません。これは国際法上もそういう区別があるわけではございませんし、また国内法的にも明確な区別があるわけではないというふうに承知しております。  難民と申します場合には、今回国会の御承認をいただこうとしております難民条約の中に「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者」というような定義がございます。広く申し上げまして、いわば政治的な迫害を受けるおそれがあるために本国におられない、あるいは本国の保護を受けることを望まない、そういう者が難民条約で言うところの難民であるというふうに定義づけられております。  政治亡命者と申す場合にも、実際問題としてはいま申し上げましたような難民条約上の難民の定義と似たような政治的な迫害というものを避けて外国に逃れ、その外国のいわば庇護を求める、そういう者であろうということでございまして、その庇護を与えるかどうかということに着目して議論をする場合には、多くの場合、政治亡命者あるいは亡命者という言葉が使われる。それから、そういう迫害を逃れてきた者を受け入れる場合に、受け入れてどういう待遇をその人に与えるかという側面に着目いたしまして議論をいたします場合には、難民という言葉が非常に多く使われる。  いずれにしましても、難民とか亡命者とかいう表現の区別は、いま申し上げましたこと以上に明確な区別があるわけではないということをかつて御説明させていただきましたことがございますが、そのとおりであろうというふうに承知しております。
  214. 田川誠一

    ○田川委員 もう一度確認しますけれども、難民とはどういうものかというその定義の中でわれわれが一番知っておかなければならぬのは、政治的な要素というのが非常に強い。たとえば自分の国の社会制度、政治制度がいやになってしまったとか、自分の国では食えないから外国へ行こうということよりも、政治的なあるいは人種的な、宗教的な、そういうようなもので迫害を受けるとか、そのおそれがあるとかという、政治的な要素が非常に強い、こういうウエートが非常に高いというのが難民条約に言う難民だ、こういうふうに理解してよろしいのでしょうか。
  215. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  ただいま田川先生御指摘のとおりでございまして、ここで申します難民と申しますのは、先ほど私からも御説明申し上げましたように、まさに政治的理由、広い意味での政治的理由でございますが、政治的理由に基づく迫害があって、そういう迫害を受けるおそれがある、あるいは本国に帰ればそういう迫害を受けるおそれがあるというものを対象としたものでございます。したがいまして、それ以外の理由で、さっき先生のおっしゃいましたように経済的な理由でありますとか、その他政治的理由でないものによりましてその国を離れるというようなものは、この難民条約で申しますところの難民ではございません。
  216. 田川誠一

    ○田川委員 具体的にこういう場合はどうかということを一つ、二つ例を挙げてお聞きしたい。  この間の新聞や週刊誌でいろいろ出ておりましたが、中国の女性通訳が仙台で失踪した。この人は後で後悔して国に帰ることになった。中国へ帰ることになって、それで解決したわけです。私はこの女性通訳の失踪事件に多少関連のあるものですからある程度事実は知っているわけですが、この女性がなぜ失踪して日本国内にずっといたいとか、あるいはアメリカに行きたいとかというような気持ちを一時抱いたかと言えば、日本人のある人と男女関係ができて、それも一回ばかりではなくて数回できて、そういうことが理由で失踪したわけです。それは私もある程度、証拠というと大げさですけれども承知しているわけでありますし、それからそれに似たような手紙類も残っている。  そういう者が、今回の場合は後で後悔して、国へ帰ると言って中国の大使館へ出頭していったからそれで済んだのですけれども、そういうような人が日本外務省やあるいは警察に出頭して保護を求めたい、庇護を受けたい、こういう申し出をした場合に、政府はどういう対応をされるのでしょうか。
  217. 木内昭胤

    ○木内政府委員 通常の場合ですと、その日本に滞日中の外国人の本当の意思がどういうものであるのか、何ゆえ保護を日本の官憲に求めてきたのか、その辺の意思を十分に確認する必要があるわけでございます。その結果、人権上の問題あるいは人道上の問題等もあると思いますが、すべて勘案いたしまして、所属する本国に帰った方がいいということを勧奨する場合もございましょうし、あるいは第三国へ赴きたい、場合によっては亡命をしたいという場合には、第三国との折衝等を経まして、日本からの出国というケースも考えられるわけでございます。
  218. 田川誠一

    ○田川委員 局長判断と前に審議官のおっしゃったことと少し違うような気がするのだけれども、先ほどの審議官のお話だと、私がいま言った中国の女性通訳のような場合は難民条約の難民に入らないと思うのですけれども、どうですか。入らないとすれば、いま局長が言ったように、人権問題云々で何とかするとかアメリカへあれするとかいうこととちょっと違うような気がするのですけれども、いかがですか。
  219. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先ほど私が田川委員に御説明申し上げたのは一般論でございまして、先生が問題とされました女性通訳の場合には、これは御本人の意思で中国に戻られたものと私ども考えておりまして、いわゆる難民ないし政治亡命の意図があったということではないというふうに考えております。
  220. 田川誠一

    ○田川委員 いや、私が言っているのは、あのような女性の場合に、今度は仮定になるわけですが、みずから帰らないで、日本にとどまっていたい、あるいはアメリカへ行きたいというようなことを日本側の方に言ってきた場合です。みずから反省して故国へ帰るのじゃないのです、結果は今度帰ってしまったのですけれども、そうじゃなくて、日本政府の方に、自分は、男女関係ができたとかなんとかということは言わないかもしれませんけれども、とにかく日本にいたい、あるいはアメリカに行きたいと言ってきた場合に、日本側が調べて、これは男女関係だなということがわかったときにどうするか。私はこれはもう難民の問題じゃないと思うのですが、どうですか。もう一度ちょっとお聞きしたい。
  221. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 難民条約自体との関連で申し上げますと、特定の人がわが国にとどまりたいという希望を申し出てきた場合に、その理由を調査いたしまして、先ほど私から御説明しましたようなことで、送り帰した場合には迫害を受けるおそれがあるというふうに認定されれば、これは条約上の難民だということで、それ以後は条約に基づきまして一定の待遇なり保護というものを与えるということになろうかと思います。そういう理由がない場合、これは条約外の問題ということになりまして、そういう人たちを政府としてどういうふうに扱うかということになれば、これは全く別途の問題だろうと考えます。
  222. 田川誠一

    ○田川委員 法務省伊藤審議官、大体いま外務省の審議官が言われたのでよろしいですか。
  223. 伊藤卓藏

    ○伊藤説明員 難民条約関係におきましては、難民条約が批准されますと法務大臣が難民かどうかの認定をすることになるという関係で私どもの考え方を申し上げたいと思いますが、結論的には先ほどの外務省の方の御答弁どおりと私どもも理解いたしております。
  224. 田川誠一

    ○田川委員 いまお二人からお伺いしたところによると、この間の中国の女性の問題が、もし男女関係だけで中国へ帰りたくない、日本にいたい、アメリカに行きたいということであるとすれば条約外のことである、こういうふうに解釈してよろしいですね。つまり、これは政治亡命ではないと言って差し支えないですね。もう一度確認します。
  225. 木内昭胤

    ○木内政府委員 田川委員の御見解のとおりだと思います。
  226. 田川誠一

    ○田川委員 もうちょっと具体的にお聞きしたいのは、今度の女性通訳の場合に、失踪するのを助けた日本人がいるわけですね。これからもこういうことは起こり得ると思うのです。これは助けた人は女性の相手方なんです。男女関係相手方が助けたわけです。こういう助けた行為というものが日本の法律に反する場合があるかどうかということをちょっとお伺いしたいのです。  たとえば今回の場合も、中国の女性はパスポートを預けて、持っていない。三人の団体ですけれども、預けて、持っていないわけです。そういうパスポートを所持していないということを承知していながらそういう故国を離れようとした中国女性をかくまっていたこと、こういうことは違法行為に当たるのかどうか、警察の方が来ていらっしゃると思いますけれども、ちょっとお伺いしたいと思います。
  227. 佐野国臣

    ○佐野説明員 私どもの方では、今回の中国人通訳の失踪の件につきましては、いわゆる部外秘扱いでの捜索依頼という形で参っておりますので、ちょっと御答弁いたしかねる向きがございますので、あらかじめ御了承いただきたいと思うのでございます。
  228. 田川誠一

    ○田川委員 新聞にも出たし、いろいろなところで報道されております。しかし、具体的にその事件については言えないということであれば、一般論として、先ほど私が言ったような場合にそういうことをやっても差し支えないのかどうか。
  229. 佐野国臣

    ○佐野説明員 一般的には、犯罪を行っておるということを承知しておるいわば第三者がそういう前提で関与いたしていきますと、法律に触れる場合ということも考えられます。
  230. 田川誠一

    ○田川委員 これも一般論で結構です。一般論でなければお答えできないというのであるから、一般論で結構ですが、私は事実をある程度知っていますから申し上げますが、捜索願が出ているわけです。捜索願が出て警察が、いまあなたがおっしゃったように秘密で捜査をする、そうしてこの人は疑わしい、この人がかくまったのじゃないか、この人が連れ出したのじゃないか、こういう疑いのある人に聞いて、その人がいやそうじゃないと警察の人にうそを言う、一般論で結構ですが、そういうことも差し支えないのですか。
  231. 佐野国臣

    ○佐野説明員 虚偽の犯罪事実を警察に申し入れたり申告したり、あるいは災害の事実などをうそで申告いたしますと、これは軽犯罪法などに規定はございますが、家出ないしはそういった人の捜索の場面において、いわば情報を隠した、あるいはうそを言ったという範疇のものでございますれば、一応犯罪としてあるいは違法性の問題としては格別いまのところ思い当たるものはございません。
  232. 田川誠一

    ○田川委員 もう一つ、一般論で結構です。今回のようなああいう中国人が失跡した、そして捜索願が出てわかった場合に、警察はどういう処置をおとりになるでしょうか。その失跡した人を警察が保護し、調べて、調べた上で外国大使館に引き渡すのか、そういうわかった場合、警察自身が発見した場合にどういう処置をおとりになられますか。
  233. 佐野国臣

    ○佐野説明員 蒸発などの事例が最近大分ございますが、それの一般的な取り扱いを申し上げますと、私ども警察といたしましては、まず手配された人間に間違いがないかどうか、人定事項の確認が最優先であり、むしろそれでほぼ終わるような範囲の事情は確認いたします。その上で、今度は依頼人あるいは保護者と思われる人に、捜索願が出ておった人の所在場所あるいはそれの安否、そういったものをできるだけ速やかに通知する措置をとるということになります。
  234. 田川誠一

    ○田川委員 もう一つ、中国の留学生の場合、これは外務省はある程度御存じだと思います。中国の留学生がアメリカ大使館へ出頭して、すでにアメリカへ行ってしまったという事件ですが、この中国の学生は政治亡命になるのでしょうか。それから、この難民条約に言う難民の定義の中に入るのでしょうか。
  235. 木内昭胤

    ○木内政府委員 厳密な意味におきまして難民条約に言う難民に問題の中国人留学生は該当するかどうか、これはしさいに判断する必要もございましょうし、あるいは判断しても主観的な判断しか出てこない場合もあり得ると思いますが、今回私どもが行いましたことは、この留学生某がアメリカへ赴きたいということでございまして、せっかく留学半ばにありながらアメリカに赴くという理由も必ずしも納得しがたいわけでございます。したがいまして、本人が果たしてそういう意思が強いのかどうか、十分事情聴取いたした経緯がございます。
  236. 田川誠一

    ○田川委員 時間が来ましたし、それから難民条約はいずれここで審議をいたしますから、これでやめますが、最後に一点だけ、先ほども申し上げましたように、こういう問題はこれからしばしば起こると思います。中国に限らずかなり起こると思う。そういう問題が頻発するおそれがあるので、この難民条約の難民に入るのかどうか、政治的な理由で亡命者として政府が扱うかどうか、どういう場合にこういうものが適用されるのか、されないのか、具体的ないろいろなケースを踏まえてやっていく必要があるような気がいたします。  それから、これも法務委員会でいろいろこれから議論をされると思いますけれども、難民の認定は一体だれがやるか。入管令の改正をちょっと見ますと、法務大臣が認定するようなふうになっているように聞いておりますが、やはり非常に微妙な政治的な問題でありますから、実質的には関係の当局、法務、外務あるいは警察、こういうようなところで公正に扱っていくことを考えていく必要があると思います。この点について、外務省でも法務省でも結構ですから、ちょっと御意見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  237. 伊藤卓藏

    ○伊藤説明員 御指摘のとおり、法務大臣が認定をするということで現在法案の作成をいたしております。  難民に該当するかどうかということは、難民条約一条に掲げてあります定義に合致するかどうかという当てはめのものでございまして、これはやはり具体的な事例を幾つか重ねまして、裁判で申しますと、裁判例の積み重ねによってより適正な認定なり判定なりができるだろうと思います。そういうことも踏まえまして、認定するのは法務大臣でございますけれども、その補佐機関といたしまして、関係省庁の皆様の知恵をかりられるような体制づくりということを考えて、いま作業を進めております。
  238. 田川誠一

    ○田川委員 終わります。      ————◇—————
  239. 奥田敬和

    奥田委員長 次に、アフリカ開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件、一次産品のための共通基金を設立する協定締結について承認を求めるの件及び東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定締結について承認を求めるの件の三件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  240. 高沢寅男

    高沢委員 私は、アフリカ開発銀行設立協定について、ほんの二、三点お尋ねをいたしたいと思います。  初めに、このアフリカ開発銀行と並んでアフリカ開発基金があるわけですが、この両機関、銀行と基金の両者の相互関係、どんなふうな運用をなされるかということの御説明をまずお聞きしたいと思います。
  241. 梁井新一

    ○梁井政府委員 アフリカ開発銀行もアフリカ開発基金も、双方ともアフリカ諸国の経済開発並びに社会的進歩に貢献することを目的といたしましてでき上がった金融機関でございます。  アフリカ開発銀行の方は、通常の貸付条件、利子率は七%でございまして、これに貸付手数料の一%と、さらに約定手数料が一%つくわけでございまして、大体期間は十二年から二十年という通常の商業条件と申しますか、こういう条件で貸し付けを行っておるわけでございます。これに対しましてアフリカ開発基金は、緩和された条件と申しますか、無利子、手数料が〇・七五%、期間は五十年で据え置き十年という緩和された融資を行うことによりまして、アフリカ開発銀行の融資活動を補足しているというかっこうになっております。  そこで、アフリカ開発銀行とアフリカ開発基金が、どういう地域に、どういう事業にいままで融資活動を行ってきたかということを簡単に申し上げますと、アフリカ開発銀行の方は、大体運輸、工業、それから農業、こういう順番で部門別の融資をやっておりまして、これに対しましてアフリカ開発基金の方は、農業が一番大きな融資分野でございます。  また、開発銀行と開発基金の融資先につきましても、開発銀行の方は、モロッコ、チュニジア、ザイール、ケニアと申します比較的経済発展の進んでいる国が多いのに対しまして、基金の方は、マリ、タンザニア、エチオピア、中央アフリカと申します比較的開発のおくれている地域に融資しているということになっておりまして、銀行と基金が補完的な役割りを果たしているということが言えると思います。
  242. 高沢寅男

    高沢委員 この二つの機関は、同じ事務所にいて同じ事務局でやっておる、こうお聞きしておりますが、将来、これは何か一つになるような可能性や展望はあるのですか。
  243. 梁井新一

    ○梁井政府委員 この銀行と基金の組織でございますけれども、銀行の総裁と理事九人のうち六人がそれぞれ基金の総裁と理事を兼務しておるわけでございます。したがいまして、アビジャンにおるわけでございますけれども、この二つの銀行ないし基金は、補完的ではございますけれども、全く別個の目的と申しますか融資活動を行っておりますので、ちょうどアジア開発銀行とアジア開発基金、あるいは世銀とIDAとよく似た関係にございまして、別に将来一つになるということは聞いておりません。
  244. 高沢寅男

    高沢委員 基金の方が出資の総額が九億七千万単位ですか、それで、いままでにすでに融資なされた累計額が七億七千万単位、あと二億単位ぐらいの資金の残りがあるわけですが、やはりこういう五十年というふうな長期の融資活動をされるには、もうかなり資金が不足じゃないかという感じがしますが、この増資の手続とかいうものはどんなふうな形になりますか、展望は。
  245. 梁井新一

    ○梁井政府委員 アフリカ開発基金が先生御指摘のとおり五十年という長期の貸し付けをやっておりますので、非常に資金需要がふえてきているということも事実でございます。現在の財源ではとうてい将来の資金需要に応じ切れないということが予想されますので、すでにアフリカ開発基金は過去二回一般増資を行っているわけでございますけれども、現在のところ、昭和五十七年から五十九年の三年間にわたります融資のための資金を募ることを目的といたしまして、第三次の増資交渉が行われているという状況でございます。
  246. 高沢寅男

    高沢委員 この協定第八条で、特別基金の設置ができる、あるいは引き受けることができる、こうなっていますが、いままでにこの特別基金はどういうふうなものができたか、そのケースの御説明をお願いしたいと思います。
  247. 梁井新一

    ○梁井政府委員 協定第八条に書いてございます特別基金、これは先ほど御説明申し上げましたアフリカ開発基金とは別個の基金でございます。この第八条に書いてございます特別基金は、銀行の通常資本財源と別個に管理することになっておりまして、この基金とは、この協定の規定に基づきまして銀行が設定し、またその管理を引き受ける基金を言うわけでございますが、現在どういう基金があるかと申しますと、大体三つ基金がございます。  一つはナイジェリア信託基金という基金がございまして、これは昭和五十一年にナイジェリアと銀行の間に締結されましたナイジェリア信託基金設立協定というのがございまして、ナイジェリアの拠出する原資を銀行が管理をしているという状況にございます。この基金は、特に開発のおくれました加盟国に対します農林漁業、輸送等の長期のプロジェクトに対して融資を行うということになっております。  それからもう一つ、特別救済基金というのがございまして、これは銀行の加盟国、非加盟国その他国際機関からの任意の拠出金あるいは純益等を原資にいたしまして、干ばつの被害を受けたアフリカ諸国に対しまして短期、中期の融資を行うという基金でございます。  最後に、職員倹約基金という基金がございます。これは前の二つの基金とちょっと性質が違うわけでございますけれども、その職員の給与から一定の割合のものを積み立てまして、職員の住宅資金ないし年金に充てるという基金でございます。
  248. 高沢寅男

    高沢委員 大蔵省からお見えになっていますね。  あなたにお尋ねしたいことは、一つは、条約二十八条によって、加盟国の出資する通貨の価値の維持、こういう規定が定められておりますね。それから、これとの関連になるわけですが、域外国の銀行への加盟を規律する一般規則の第七項でもやはり「価値の維持」という項がありまして、ただここでは、世界銀行の関係なりIMFの関係で、まだ当分の間はそういう価値維持の手続はとらぬというふうな、こんな規定がありますが、この相互関連と、実際の運用が将来どういうふうに行われるようになるか、それを御説明をお願いします。
  249. 石川光和

    ○石川説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、協定では実施規定がございまして、一方、一般規則では、世銀で導入が決まるまで、いわゆるこの価値維持の規則、MOVと言われておるものでございますが、この導入を見合わせるということになっております。  その理由といたしまして、先生御承知のとおり、世界銀行の通貨の基準が、一九四四年の、米国のドルと固定相場制度、しかも金との結びつきがあった当時のものでございます。その後変動相場に移行いたしましてから、まず何を基準にするか、そしてまたさらに、技術的なことになりますけれども、どういう期間でどの程度の幅乖離した場合に実施していくのかとか、そういう技術的な問題、それから基準のとり方によりまして加盟国間の不公平が起こらないように、ある通貨については基準となり、ある通貨については基準とならない、そういうようないろいろの問題がございまして、現在世銀において検討が進められている状況でございます。したがいまして、今後この世銀の検討の状況を見まして、アフリカ開発銀行につきましても具体的な実施の方法等について検討が行われ、決められることになると思います。  以上であります。
  250. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、いまの点の重ねてのお尋ねですが、世銀でそういう一つの基準が決まってきて、それから今度はこのアフリカ開発銀行の各出資国の通貨の、これはいろいろ外国為替市場が動きますよね、そういう動く場合の、どのくらい動いたら価値維持の措置を発動するとかいうふうなものもその後決まってくる、こう理解していいですか。
  251. 石川光和

    ○石川説明員 先生お尋ねのとおりでございます。
  252. 高沢寅男

    高沢委員 このアフリカ開発銀行の債券発行の規定がございますね。これは条約二十三条ですが、たとえば日本との関係において、アフリカ開発銀行日本において債券を発行し、その募集をするというふうなことが現実に行われる場合、有価証券市場のそれに対する対応の仕方とかという関係をちょっと説明していただきたいと思います。
  253. 石川光和

    ○石川説明員 将来の仮定の問題でございますが、まず協定上は、発行しようとする加盟国の承認を得ることになっております。それから国内法との関係でございますが、外為法上、事前の届け出を要することとなっております。  それで、具体的な措置、運営につきましては、民間の市場関係者、具体的にはアンダーライターでございますが、アンダーライターが市場の状況を見ながら自主的に判断をしていく。やはり各銘柄の知名度とか、親しみやすさとか、引き受ける側といいますか、発行状況を見ながら決めていくということになると思います。
  254. 高沢寅男

    高沢委員 以上で私の質問は終わります。どうもありがとうございました。
  255. 奥田敬和

    奥田委員長 野間友一君。
  256. 野間友一

    ○野間委員 最初に、ASEAN関係の貿易投資観光促進センターに関してお伺いしたいと思います。  おとといも私、申し上げたように、五十二年八月の日本とASEAN首脳会談で、当時の福田総理が、ASEAN貿易観光常設展示場の東京設置を含む措置をとることを約束されて、これが具体化したというふうに言われておりますが、これは貿易観光常設展示場の東京設置ということになっておったわけです。ところが、このセンターの協定を見ますと、貿易あるいは観光だけではなくて、投資の流入というものが今度目的に入っているわけですが、これはASEANからの希望によってこうなったものか、あるいは日本側の発議なり発案でこうなったものなのか、その点のいきさつをまずお尋ねしたいと思います。
  257. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、この協定締結交渉の過程におきましてASEAN側から、投資も加えてほしい、そのような要求がございまして、それを入れまして、事業内容を、貿易、観光のみならず投資も加える、そういうようになりました。
  258. 野間友一

    ○野間委員 次にお伺いしたいのは、この組織の問題ですが、理事会あるいは執行委員会ですね、これは各国が一名の代表を任命されることになっておるようでありますが、この決定については全会一致制、こうなっております。これはASEAN側からの希望であったものなのか、つまり互恵平等という原則からこういうようなことで実ったものであるかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  259. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 この協定の規定によりますと、御指摘のとおり理事会ないし執行委員会においては全会一致という方式がとられておりますけれども、これはASEAN側もそういうことを要望しておりまして、昔からASEAN側には話し合い、インドネシアで言いますとムシャワラという考えがあるわけでございますけれども、みんなで話し合ってみんなでお互いに決しようということで、たまたまASEAN側の要望と、日本側もそう思っていましたので、それが一致したということでございます。
  260. 野間友一

    ○野間委員 十条について、これは財政ですが、このセンターの年次予算は幾らなのか、また日本の分担はどのくらいになるのか、それから日本がこの常設展示場、サンシャインシティですか、ここのビルを借りるわけですが、この展示場の賃借料は一年間どのくらいのものですか。
  261. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 展示場の借料は年間約四千三百万円でございます。それから、予算全体は約五億五千万円でございます。
  262. 野間友一

    ○野間委員 この規模については固定したものか、それともずっと規模を将来拡大するというようなことが想定されておるのかどうか。
  263. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 このセンターの事業につきましては、事業計画というのをつくりまして、これは毎年理事会で採択されることになるわけでございますけれども、将来の問題としましては、この事業計画の内容いかんによっては事業が拡大されていくということもあり得るかと思います。
  264. 野間友一

    ○野間委員 センターの活動についてですが、日本からのASEANへの投資流入加速化、こういうことがうたわれておりますが、このセンターをつくることによって、投資流入加速化という点でどういう寄与をしていくのか、どういう見通しを持っておるのか、この点についてお尋ねします。
  265. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 投資に関しましては、たまたまASEAN各国の方から日本に対して、もっと投資をしてほしい、また、投資を促進してほしいという希望がございまして、センターとしては、各国の投資環境に関するパンフレットをつくったり、あるいは各国の投資に関する法制、こういったものを調べまして日本側関係の業者に紹介する。日本側におきましては、大きな企業は現地に出張所とかあるいは駐在員とか支店を持っていまして、こういったことには通じておりますけれども、たまたま日本側の零細企業とか中小企業というのはこういったこともできないので、センターがこういった仕事をしまして、その結果を役立てるということを考えております。
  266. 野間友一

    ○野間委員 関連して、この日本の企業の投資状況が、今日までいろいろとASEAN諸国では物議を醸し出したことは御承知のとおりであります。たとえば現地労働者雇用の劣悪な条件とか、あるいは公害企業の進出の問題等々がこれでありますが、それらに関して、このセンターをつくることによって、今日までのそういうさまざまな物議を醸し出したような投資のあり方についての改善に貢献するようなことが期待できるのかどうか。とすれば、何か特別の手だてが講じられる、その用意があるのかないのか。
  267. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 先ほどお答えいたしましたが、センターが行う活動の中には、各国の投資環境等に関するパンフレットをつくって配るとか、あるいは各国の投資状況とか投資のマナー等に関するセミナーを開く。現在、サンシャインシティの横にありますワールド・インポート・マートというところにございます暫定のセンターでは、こういった問題に関しまして投資のセミナーを開いたりして、関係業者の方にいろいろ情報を提供するとともに、投資についても好ましいマナーで行うように指導を行った経緯がございます。
  268. 野間友一

    ○野間委員 アジア局長がいませんが、私、ちょっとこれからお聞きしたいことがあります。  ASEANへの投資を含む政府の援助についてこの前も若干お聞きしたわけですが、日本から与える世界全体の中で占める対アジア援助が約七〇%、こういうお答えもありました。しかも、世界全体の中で占める対ASEAN援助が約三〇%ですか、アジア全体の中で占めるASEAN援助の割合が六〇%。前回のとき、大臣もASEANを非常に重視しておるような発言等もあったわけですが、こういう統計数字から見ますと、前回もお聞きしたように、非常にASEAN重視ということが著しい特徴だと思います。インドシナ地域あるいはアフリカ等々は、他の途上国と比べて偏重というか、バランスがとれていないというように私は思えてならないのですけれども、あえてそれはそれでいいのだというお答えなのかどうか、その点についてはいかがですか。
  269. 梁井新一

    ○梁井政府委員 先生御指摘のとおり、七九年の統計でございますけれども、日本政府開発援助の七〇%がアジア地域に向けられております。残りの三〇%をアフリカ地域、中近東地域、中南米地域に分けて約一〇%ずつ役資しておるわけでございます。  世界の援助国の地域的な援助配分を見ますと、たとえばフランスの場合は、フランスの二国間援助の九〇%がアフリカ地域に向けられております。イギリスの場合は、イギリスの二国間援助の約七二、三%がコモンウエルス地域に行っておるわけでありますけれども、日本政府開発援助の七〇%がアジア地域に向けられておるということにつきましては、アジア地域には世界の人口の半分以上がいるわけでございますし、かつ一人当たりの援助の受け取り額がほかの地域に比べまして非常に少ない地域でございます。そういう観点から、日本の二国間援助の七〇%がアジア地域に向けられておるということにつきまして、ほぼ妥当な線ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  270. 野間友一

    ○野間委員 ただ、アジア重視の中でも、ASEANの占める割合が六〇%ということで、この前申し上げたようにインドシナ三国とかいろいろあるわけで、この点について私はいま指摘をしておるわけであります。  質問を変えますが、アジア局長はいませんか。——いまASEANに関して、経済協力なりあるいは投資の問題、これがバランスを失していやしないかというようなことについていろいろお聞きをしておったのですが、質問を続けます。  五十五年の「日本の防衛」を見てみますと、防衛庁としてASEANに対してこういう記述をしておるわけです。「ASEAN諸国は、日本への資源輸送路上、重要な地点に位置する国々であり、かつ、わが国との経済的結びつきも強い。したがって、ASEAN諸国の安全保障は、わが国の安全保障にとって、」「ASEAN諸国の強じん性強化の努力に対する協力を益々増大しており、今後の動向につき重大な関心をもって注目しているところである。」これが、防衛庁の「日本の防衛」の中にあるASEAN諸国に対する防衛庁としての観点からの位置づけでありますけれども、外務省はこの防衛庁の位置づけと同じ見解なのかどうか、この点についてまずお伺いします。
  271. 木内昭胤

    ○木内政府委員 私どもといたしましては、ASEANというグループが日本に非常に近接しておるということ、それから大臣も累次御答弁になりましたとおり、相互に補完した関係にあるということ、それから確かに防衛白書であるいはそういう指摘があるかもしれませんけれども、日本にとって重要な海上輸送航路に当たっており、地理的にまたがっておるという事実もございますし、いずれにしましても、この地域が安定的に発展することが日本の利益にも相なるのではないかという見方があるわけでございます。
  272. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、軍事的観点からASEANをどう見るかということでありますけれども、この点についての政府見解はどういうことになるのか、もう一遍御答弁いただきたいと思います。
  273. 木内昭胤

    ○木内政府委員 御質問の趣旨をよく把握できなかったのでございますけれども、私どもとしては、軍事的に即ASEANがこうだということは考えておりませんで、先ほど申し上げましたとおり、ASEANが安定して発展すること、それから本委員会で大臣からもしばしば御答弁になりましたとおり、ASEANとそれに隣接するインドシナとの関係が平和裏に発展することは日本の利益にも相なるということかと存じます。
  274. 野間友一

    ○野間委員 つまり、防衛庁のいまのASEANに対する位置づけについてお尋ねしたわけですが、経済的な相互の補完とかいろいろ言われますが、結局このASEANについては、防衛庁の中にもありますように、わが国の安全保障にとっても非常に重要だという位置づけですね。ですから、これは経済的な位置づけなり、軍事的あるいは準軍事的なさまざまな要素が入っていると思うのです。特に防衛庁の白書の中では安全保障の観点からの位置づけでありますけれども、外務省としてもこれと同様な見解をお持ちなのかどうかというお尋ねなんです。
  275. 木内昭胤

    ○木内政府委員 同じ考え方に帰一するかとも存じます。
  276. 野間友一

    ○野間委員 福田さんが前に共同声明の中でASEANの強靱性ということを言われているわけでありますが、いま申し上げた経済的な強靱性のほかに、ASEAN諸国から軍事的あるいは準軍事的な観点からの協力を日本に求めるというようなことがいままでずっとあったのかどうか、その点についてはどうでしょうか。
  277. 木内昭胤

    ○木内政府委員 日本政府のその問題に対する考え方はASEANの首脳もよく存じておりまして、政府に対してASEANに対する軍事協力を要請してきたことは一度もございません。
  278. 野間友一

    ○野間委員 「経済と外交」の八一年二月、最近のものに、木内局長日本工業倶楽部で一月二十二日に講演をされておりますのがあるわけです。この中に、治安維持、警察用の日本製の武器への期待とか、あるいは掃海艇やそれに類するもの、こういうものをぜひ欲しいということを盛んに言っておるというようなことがあなたのお話の中に出てくるわけです。こういうことは、あなたが言っておられるわけですから、間違いありませんね。
  279. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ASEANの諸国がコマーシャルベースで日本のそういったたぐいの物品を欲しがっておるということは事実かと存じます。
  280. 野間友一

    ○野間委員 それに対応して、どうなんですか、軍事的あるいは準軍事的な協力については外務省はやるのかやらないのか。きょうも国会の決議でもありましたけれども、武器輸出の三原則や政府見解、こういう点から考えまして、もしそういう要請があった場合にどう対応されるのか、いかがでしょう。
  281. 木内昭胤

    ○木内政府委員 わが国の経済協力に軍事協力は対象となっておりませんし、政府はそういう協力要請に対してはネガティブに対応するわけでございます。
  282. 野間友一

    ○野間委員 いま審議中のものの中には、これらについての歯どめというものが条文の上ではないと私は思いますけれども、それはそれとしてお聞きをしていきたいと思いますが、この前私もお尋ねしたし、それからきのう外務大臣が総合安保閣僚会議の中でしょうか、経済協力あるいは援助のあり方について人道上の問題とか南北問題が中心でなければならぬ、アメリカは友好国あるいは非友好国、こういう区分けとか、あるいは東西関係というものを非常に重視しておるようだが、わが国の独自の立場で接するのだというようなお話があったように聞いております。  従来、日本政府外国に対する経済協力あるいは経済援助という場合には、民生の安定とか生活向上あるいは人道上の問題ということを常に方針として言っておられたわけでありますが、これはこのとおりいまも維持されておるのか、あるいは変更をされるのか、この点はどうでしょう。
  283. 木内昭胤

    ○木内政府委員 従来どおりの方針で対応するものと考えて間違いないと思います。
  284. 野間友一

    ○野間委員 ところで、いま私が引用した「経済と外交」で、木内局長、あなたはこの方針が変わったということを言っておられるわけですね。たとえば「日本の援助も単にインフラの整備ということではなく、紛争周辺国を指向するように変わってきている」、そしてその具体的な例として、タイあるいはトルコ、パキスタン、これを挙げておられます。「経済と外交」の十ページに、あなたの言われたことが速記の結果出ておりますね。  それから、昨年の四月二十二日、日本外交協会主催の講演で、あなたは「アジアをめぐる情勢」ということで話しております。こういうようなパンフレットができておりますね。これを見ますと、「今までは割合全般的に、政治がらみなしに経済協力をしてきたわけですが、最近は少し事情が変わって、ソ連の南下の脅威を受けているパキスタンとか、ベトナムの脅威を受けているタイとか、中国をこちらのペースに引きつけるための布石としての援助とか、政治がらみになってきているのが特色じゃないかと思います。」これはパンフレットの二十ページであなたはそういうふうにお答えになっておりますけれども、そうしますと、あなたがいま言われたことと、あるいは伊東外相が言われるのと違うわけです。ですから、この講演の中では局長はむしろ本音を言っておられるのじゃないかと私は思いますけれども、あなたは質疑の中でこういう御答弁をされておりますね、いかがですか。
  285. 木内昭胤

    ○木内政府委員 日本政府といたしましては、たとえば東南アジアにつきましてはインドネシア、タイ等のASEAN諸国、その他インド、パキスタン、バングラデシュ等に援助を行っておりますが、同様にベトナムに対しましても、現在は中断されておりますが有償あるいは無償の百四十億円に上る援助を考えておるわけでございます。かように理想としましては、あまねく開発途上にある困った国々の民生安定のためにこれを行うというのが私どもの考え方でございます。ただ、現実にはベトナムのカンボジア侵攻というようなこともございまして、ベトナムに対する援助は現在中断されておるわけでございます。これに対する援助を再開することを私どもとしても願っておるわけですが、それに至るまでの過程におきまして、たまたま結果的にタイであるとか、インドネシアであるとか、そういう国々に重点が指向されておるという事実は否定できないものと思います。
  286. 野間友一

    ○野間委員 率直に答弁をいただかないとこれまたいろいろな論議をしなければならぬことになるわけで、時間がたつばかりですね。あなたは明確に、いまいろいろ言われましたけれども私の質問に対する答えにはなっていないわけです。  「今までは割合全般的に、政治がらみなしに経済協力をしてきたわけですが、最近は少し事情が変わって」云々。つまり「政治がらみになってきているのが特色じゃないかと思います。」と、はっきりその方針について政治がらみ、そして変更、変わってきたということを、評価として、あなたはアジア局長として認めておられるわけですね、これはどうなんでしょうか。つまり、あなたの先ほどの答弁や、あるいは伊東外務大臣が言う民生の安定とか生活向上、あるいは人道上の問題ということが一つの基軸になった援助でなくて、いろいろこういうようなことを言っておられるわけですが、やはり本音としては変わっておるわけでしょう。  これは時間の関係で余りいろいろなものを引用することは避けますが、「経済と外交」の中でも随所にそういうことを言っておられるわけですね。これは私は本音ではなかろうかと思うのです。したがって、率直に、そういう方針なり基準が変わったのかどうか、これをお答えいただきたいと思います。
  287. 木内昭胤

    ○木内政府委員 わが国の援助が開放経済体制を志向する国におのずから重点があるということは私は否定できないものと思います。
  288. 野間友一

    ○野間委員 何度も余り外さぬでください。変わったかどうかということをお聞きしておるのです。
  289. 木内昭胤

    ○木内政府委員 日本の外交が自由主義陣営の一員ということにアクセントがある点におきましては、私は従来と変わりないものと思います。
  290. 野間友一

    ○野間委員 そうすると)あなたが「政治がらみになってきているのが特色じゃないかと思います。」あるいはこの「経済と外交」の中でも言っておられるのは、どういうわけでこういうことを言っておられるのですか。変わったから言っておるし、あるいは政治がらみになったということ、そういう判断をあなたはしておるわけですよ。そうでしょう。政治がらみになってきているのが特色だと、はっきり言うておるわけですね。変わったということをあなたは認めておるわけですよ。これはどうなんでしょうか。
  291. 木内昭胤

    ○木内政府委員 日本の援助というものが非常に顕著に拡充、充実されておるわけでございまして、それだけにより目立った存在になってきておるという意味合いにおきましては、私は変わってきたということは言えるかと思います。
  292. 野間友一

    ○野間委員 わけがわからぬことで変わったということですが、政務次官、いかがですか。
  293. 愛知和男

    ○愛知政府委員 日本の経済援助は、大臣お答え申し上げておりますとおり、従来からその哲学とするところは変わっていない、このように感じております。
  294. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、いまお聞きのように、「経済と外交」あるいはこの「アジアをめぐる情勢」の木内さんのこういう講演、この中での記述、これをどのようにあなたは評価しますか。
  295. 愛知和男

    ○愛知政府委員 実は私、その記述を拝見しておりません。詳細に読んでおりませんので、的確なお答えにならないかもしれませんけれども、世界のいろいろな状況が地域的にも変化をしております。インドシナ半島等の状況もございまして、そういう状況に応じて、そういう環境の変化を勘案した上で援助をしていく、これは決して従来から変わったわけではないので、状況が変わったということに応じて変わったということで、哲学は変わっていないのだろう、こういうふうに理解をいたします。
  296. 野間友一

    ○野間委員 これが詭弁なんだな。  政務次官気の毒なので、これはこれとして、局長、いま二つの文献を引用しましたけれども、あなたが書かれたこういう方針、観点、これは外務省なりあるいは伊東外務大臣の方針と同一のものであるかどうか、この点について確認しておきたいと思うのです。
  297. 木内昭胤

    ○木内政府委員 同一のものと私は承知いたしております。
  298. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、この点についてはいずれ外務大臣がおられるところでお聞きしたいと思います。  質問はこれで終わりたいと思いますが、結局、あれこれたてまえとしては言われる。日本には日本立場があるのだ、できることとできないこととは言ってきますと、はっきり言われるわけですね。そして、民生の安定とかあるいは人道上の問題、南北問題は言っても東西問題に干渉しないとかいうようなことを言っておられるわけです。ところが、実際木内さんの答弁からも明らかなように、これが伊東外務大臣あるいは外務省の方針であるとするならば、本音としては、経済外交なり経済援助については、アメリカの言う友好国、非友好国の分け方とか、あるいは東西関係、こういうものにすでにアメリカと同じように日本外務省の方針も変わっておる、こう言わざるを得ないと思うのです。これは客観的な記述からそういう評価をせざるを得ないと思うのです。したがって、この点については後日またお聞きすることにして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  299. 奥田敬和

    奥田委員長 次回は、来る三十日月曜日、午後零時三十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会      ————◇—————