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1981-03-18 第94回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月十八日(水曜日)     午後零時四分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 松本 十郎君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       太田 誠一君    竹内 黎一君       井上  泉君    林  保夫君       野間 友一君    田川 誠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      栗山 尚一君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    長谷川和年君         外務省経済協力         局政策課長   松浦晃一郎君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   野間 友一君     松本 善明君 三月二日  辞任         補欠選任   永末 英一君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     永末 英一君 同月七日  辞任         補欠選任   太田 誠一君     始関 伊平君   北村 義和君     正示啓次郎君   松本 善明君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   始関 伊平君     太田 誠一君   正示啓次郎君     北村 義和君 同月九日  辞任         補欠選任   永末 英一君     林  保夫君     ――――――――――――― 三月十四日  渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国  政府中華人民共和国政府との問の協定締結  について承認を求めるの件(条約第一二号)  国際電気通信衛星機構特権及び免除に関する  議定書締結について承認を求めるの件(条約  第一六号)  条約法に関するウィーン条約締結について承  認を求めるの件(条約第一七号)  業務災害の場合における給付に関する条約(第  百二十一号)付表I職業病一覧表)の改正  の受諾について承認を求めるの件(条約第一八  号)  国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関す  る千九百七十四年十月十六日にモントリオール  で署名された議定書締結について承認を求め  るの件(条約第一九号)  航空業務に関する日本国フィンランド共和国  との問の協定締結について承認を求めるの件  (条約第二〇号)  日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の郵便支払指図交換に関  する約定の締結について承認を求めるの件(条  約第一三号)(予)  日本国政府オランダ王国政府との間の文化協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  一号)(予)  日本国政府ギリシャ共和国政府との問の文化  協定締結について承認を求めるの件(条約第  二二号)(予) 同月十八日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国政府とシンガポール  共和国政府との間の条約改正する議定書の締  結について承認を求めるの件(条約第二三号)  千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名さ  れた所得に対する租税に関する二重課税回避  のための日本国政府フランス共和国政府との  問の条約改正する議定書締結について承認  を求めるの件(条約第二四号) 二月二十八日  戦後ソ連地区抑留死亡者遺骨送還のため外  交交渉促進に関する請願北村義和紹介)(  第一四一〇号)  同(木村守男紹介)(第一四四九号)  同(中島武敏紹介)(第一四六四号) 三月七日  戦後ソ連地区抑留死亡者遺骨送還のため外  交交渉促進に関する請願竹下登紹介)(第  一五五七号)  同(山花貞夫紹介)(第一六〇〇号) 同月十六日  婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に関す  る条約批准等に関する請願外六件(塩田晋君紹  介)(第二〇五七号) は本委員会に付託された。 二月二十六日  戦後ソ連地区抑留死亡者遺骨送還のため外  交交渉促進に関する請願(第六三六号)は「川  口大助紹介」を「田邊誠君外一名紹介」に訂  正された。     ――――――――――――― 三月四日  金大中ら救出に関する陳情書外二十七件  (第七五号)  朝鮮半島の自主的平和統一に関する陳情書外一  件  (第七六号)  同外二件  (第一二三号)  パラグアイ共和国農業移住者援助に関する陳情  書(第一二二号)  婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に関す  る条約批准に関する陳情書外五件  (第一二四号)  難民の地位に関する条約批准に関する陳情書  (第一二五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  アフリカ開発銀行を設立する協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第七号)  一次産品のための共通基金を設立する協定の締  結について承認を求めるの件(条約第八号)  東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター  を設立する協定締結について承認を求めるの  件(条約第九号)  渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国  政府中華人民共和国政府との間の協定締結  について承認を求めるの件(条約第一二号)  国際電気通信衛星機構特権及び免除に関する  議定書締結について承認を求めるの件(条約  第一六号)  条約法に関するウィーン条約締結について承  認を求めるの件(条約第一七号)  業務災害の場合における給付に関する条約(第  百二十一号)付録I職業病一覧表)の改正  の受諾について承知を求めるの件(条約第一八  号)国際民間航空条約第五十条(a)の改正に  関する千九百七十四年十月十六日にモントリオ  ールで署名された議定書締結について承認を  求めるの件(条約第一九号)  航空業務に関する日本国フィンランド共和国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第二〇号)      ――――◇―――――
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  この際、渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、国際電気通信衛星機構特権及び免除に関する議定書締結について承認を求めるの件、条約法に関するウィーーン条約締結について承認を求めるの件、業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)付表I職業病一覧表)の改正受諾について承認を求めるの件、国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百七十四年十月十六日にモントリオール署名された議定書締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国フィンランド共和国との間の協定締結について承認を求めるの件の六件を議題といたします。  まず、政府より順次提案理由説明を聴取いたします。外務大臣伊東正義君。
  3. 伊東正義

    伊東国務大臣 ただいま議題となりました渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、中国との間に渡り鳥及びその生息環境保護に関する協定締結するため、中国政府交渉を行いました結果、昭和五十六年三月三日に北京において、わが方吉田駐中国大使先方雍文濤林業部長との間でこの協定署名を行った次第であります。  この協定は、本文六カ条及び付表から成っておりますが、その主な内容は、次のとおりであります。  日中間渡り鳥につきましては、まず、日中両政府がその捕獲及びその卵の採取を原則として禁止するとともに、不法に捕獲された渡り鳥、その加工品等の販売、購入等も禁止するものとしております。さらに、両政府は、渡り鳥研究資料交換等を奨励することとし、また、渡り鳥及びその生息環境保護及び管理のため、保護区の設定その他の適当な措置をとることとしております。  また、この協定付表は、日中間渡り鳥として二百二十七の鳥類の種を掲げております。  鳥類及びその生息環境保護に関する国際協力の機運は、近年とみに高まりつつありますが、この協定締結は、日中間渡り鳥保護を確実なものとするのみならず、日中両国において、鳥類保護に対する関心を一層深めることに寄与するものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、国際電気通信衛星機構特権及び免除に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  インテルサットと呼ばれております国際電気通信衛星機構は、昭和四十八年二月に恒久的な機関として設立された国際機関であり、現在百五カ国が加盟して広く国際的に電気通信業務を提供しております。  この議定書は、インテルサット任務の能率的な遂行のため、インテルサット、その職員、インテルサット加盟国代表等が享受する特権及び免除について定めるものであり、昭和五十三年五月十九日に主なインテルサット加盟国により作成され、昭和五十五年十月九日に効力を生じました。  わが国がこの議定書締結することは、インテルサット任務の能率的な遂行に資するとともに、わが国インテルサットとの協力を深めるものであり、有益であると考えられます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、条約法に関するウィーン条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  条約法、すなわち、条約締結適用終了等に関する国際法規則は、従来、主として国際慣習法として形成されてきましたが、戦後における条約数増加及びその内容複雑化に伴い、条約法法典化及び漸進的発達必要性が認識されるに至り、国際連合の主催により、昭和四十三年及び昭和四十四年、二会期にわたって全権代表会議ウィーンで開催され、昭和四十四年五月二十三日にこの条約が作成されました。この条約は、昭和五十五年一月二十七日に効力を生じております。  この条約は、国家間の条約締結効力発生適用、解釈、無効、終了運用停止等に関する規則について定めたものであります。  わが国がこの条約締結することは、二国間及び多数国間の条約締結適用等に関連して生ずる諸問題の円滑な処理に資するばかりでなく、国際社会全般法秩序発展及び安定化に貢献するものと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)付表I職業病一覧表)の改正受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国昭和四十九年に批准しました業務災害の場合における給付に関する条約は、その付表I職業病一覧表を掲げております。職業病の範囲は、産業技術進歩及び医学上の知見の進展に伴い変化するものであり、昭和五十五年六月に開催されました国際労働機関総会は、このような進歩及び進展を踏まえこの付表I改正を採択いたしました。  この改正は、すでに掲げられている項目の一部を修正するとともにカドミウムによる疾病、騒音による難聴等を含む十四の項目等を新たに追加することを内容とするものであります。  わが国がこの改正受諾することは、充実したわが国業務災害補償制度を確保するとともに労働問題の分野における国際協調を推進する見地からも有意識と認められます。  よって、ここに、この改正受諾について御承認を求める次第であります。  次に、国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百七十四年十月十六日にモントリオール署名された議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際民間航空機関ICAOは、昭和十九年に作成された国際民間航空条約に基づき、国際民間航空の安全なかつ整然たる発展を確保する目的で設立された機関でありまして、国際連合専門機関一つとしてきわめて活発な活動を行っております。現在の加盟国数わが国を含めて百四十六カ国に達しております。  この議定書は、ICAO加盟国数増加に伴い理事会において加盟国がより適切に代表されるようにするため、理事会構成員の数を増加することを目的とするものでありまして、昭和四十九年十月に招集されたICAOの第二十一回総会において作成されたものであります。その主な内容は、国際民間航空条約第五十条中理事会構成員の数「三十」を「三十三」に改めるというものであります。この議定書は、八十六の締約国批准により、客年二月十五日に発効しております。  わが国は、昭和二十八年に国際民間航空条約に加入して以来、積極的にICAO活動に参加しておりまして、現在も、理事国として国際民間航空の各分野における国際協力のために努力しております。  わが国は、この議定書の趣旨に賛成しており、この議定書締結することは、ICAOにおける国際協力を増進する上で有益であると考えられます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  最後に、航空業務に関する日本国フィンランド共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国フィンランド共和国との間の定期航空路開設に関しましては、昭和四十六年以来フィンランド側より種々の機会にその旨の希望が表明されてまいりましたが、近年に至り、両国間の貿易投資等経済関係緊密化に伴い、航空運輸需要がほぼ直通航空路を開設するに足る状況になったと判断され、政府は、両国間の伝統的友好関係にもかんがみ、協定締結交渉を行うこととし、昭和五十五年四月以降フィンランド共和国政府との間で本件交渉を行ってまいりました。その結果、同年十月協定案文につき最終的合意に達しましたので、同年十二月二十三日ヘルシンキにおいて、わが方山口駐フィンランド共和国大使先方ツオビネン外務次官との問で署名を行いました。  この協定は、わが国フィンランド共和国との間の定期航空業務を開設することを目的としておりまして、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、わが国署名した航空協定としては三十六番目のものでありまして、わが国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。  この協定は、両国友好協力関係の強化に資するとともに、両国間を直結する航空路を開設することによって、拡大しつつある貿易経済関係に伴って増大している両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上六件につきまして、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  4. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 奥田敬和

    奥田委員長 次に、アフリカ開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件、一次産品のための共通基金を設立する協定締結について承認を求めるの件及び東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定締結について承認を求めるの件の三件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  6. 高沢寅男

    高沢委員 大臣に御質問いたしたいと思いますが、ひとつよろしくお願いいたします。  このアフリカ開発銀行は、今度は域外国銀行への加盟が行われるということになって、わが国加盟する、こういうことになるわけでありますが、わが国加盟して、このアフリカ開発銀行を通じてアフリカ諸国発展に寄与していく、これは大変重要なことであり、私たちも当然そうあるべきことだと思います。ただ、その際に、ここにどうしても政治問題との絡みが避けられない、こういう状況があるように思いますので、初めにその問題を大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  これは新聞の報道でありますけれども、この三月六日に国連総会の本会議で、十件の南アフリカ非難する決議が行われているというふうに伝えられています。その決議の中の一つで、何か決議五十八ということだそうでありますが、その中では、どうも西側先進国南アフリカとの間にいろいろな取引をやっておる、そういうことがアフリカの他の諸国からは非常に遺憾なことであるというふうな形の非難を受けることになっているのです。  問題は、その南アフリカといわゆるナミビアというこの関係がいまアフリカにおける非常な地域の紛争問題になっていて、いわゆるナミビア地区独立を達成するということがアフリカの大きな政治課題になっていて、それをしかし南アフリカは抑えておる、こういう関係があるわけですが、その際に、ナミビアは非常にいろいろな資源のある地域であって、そこからウラニウムなども産出する。日本ナミビアで産出したウラニウム南アフリカから輸入するというような関係取引関係南アフリカ日本との間にある。これはまことに遺憾なことである、こういうふうな日本を名指しする非難決議国連総会で行われている。この名指しされたのは日本だけではなくて、ほかにアメリカであるとかあるいは西ドイツであるとか等々の他の先進資本主義国も名指しされた中には挙がっているわけでありますが、日本がその一つとして挙がっておる、こういう状況は、これからアフリカ諸国との関係日本がより密接に進めていく場合に非常に大きな障害になるのじゃないのか、こういうふうに考えられるわけでありますが、まずこの事実の関係及びそれに対する政府としての評価、判断というような点について大臣の御見解をお尋ねしたい、こう思います。
  7. 伊東正義

    伊東国務大臣 事実関係につきましては政府委員から御答弁申し上げますが、従来、南アとの関係国連でも何回も決議がある人種差別の問題がございまして、日本としてもそういう政策は早く撤廃すべしということで、大使館も置いてない、総領事館というようなことで、また南アに直接投資をするとかそういう企業をつくるとかいうようなことも差し控えるということでやっておりますし、あるいは文化スポーツ交流等もやってないというのが現状でございます。常にあらゆる機会をとらえまして南アはそういう人種差別政策撤廃すべきだということを言っており、またナミビアからも早く撤退し、そこで自由な意思の選挙ができるようにということを日本として言っていることは確かでございますし、それを実行しているわけでございます。  いま高沢さんのおっしゃったような経済関係取引、これは日本だけじゃないのでございます。御指摘のとおり、西側先進国はやっているということが現実の問題としてあるわけでございまして、日本としましてはいろいろ日本経済上の必要性からそれをやっているということでございますが、南ア人種差別政策が一日も早く撤廃されるようにということを日本としてはこれからも国連の場で強力に進めていきたいというふうに思っておるわけでございます。  事実関係につきましては、政府委員からいま御説明申し上げます。
  8. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 ただいま大臣からお話がございましたように、ナミビア問題を契機として国連南アとの関係が再び緊張しておるということは事実でございまして、わが国といたしましても、この動向を十分注意深くフォローする必要があると思っております。先般行われましたナミビア関連総会におきましては、近く開かれる安保理事会に対しまして南ア経済制裁を検討するように要求をする決議を採択しておるわけでございます。これは、恐らく開催は四月ごろになると一般的に言われておるわけでございます。  わが国といたしましては、ただいま大臣の御答弁にございましたように、従来の国連決議、特に安保理決議を遵守いたしまして、南アに対するプレッシャー説得を重ねましてこの問題の解決を図る、同時に、余り性急な解決は現実的な問題の解決に資さないという立場をとっておるわけでございます。  ウランの点について御質問がございましたけれども、わが国といたしましては、御承知のようにウランが世界の特定地域に偏在いたしますために、南アウランにある程度依存せざるを得ないという実情があることは御指摘のとおりでございまして、この点については今後供給先多角化その他の努力によってこの問題について努力していかなければならぬ、こういうふうに私どもは考えておる次第でございます。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 いま大臣のお答えがあり、また国連局長から御説明がありました。その国連局長の御説明の中で、わが国としては南アに対して説得プレッシャーでやっておる、こういうことがあったわけですが、アフリカ諸国の見るところでは、日本南アとのウラニウムなどを含めた取引関係説得プレッシャーじゃなくて、むしろある程度激励しておる、南アのいまの行き方を支えるようなことになっておるのじゃないのか、こういう評価があるから日本を名指しの非難決議ということになってきておると思うのですが、私はこの辺の評価は、アフリカ諸国立場としてこれまた当然そうあるべき評価じゃないのか、こう思います。  例のジンバブエにしても、ローデシア問題というずいぶん長い経過があってようやくああいう独立達成という形になったわけですが、歴史の流れとしては、このナミビアというものが結局はそういうふうな独立達成の段階に行くことはもう避けられない流れだと私は思います。  そうなると、日本南アに対する説得プレッシャーというものが文字どおり説得プレッシャーの力になるように、来るべき四月の安保理事会ですか、そういう場において、あるいはまた南ア日本とのそういう貿易関係も、それがほかの国から買えるというようなものならばできるだけそちらへ振りかえて、南アとの貿易関係は当面なくしていくというふうな努力をする中で本当の説得プレッシャーということになるのじゃないのかと思うのです。その点の何かもう一歩の努力といいますか、こうやれるということが何か一本あってしかるべきだと私は思いますが、これは大臣あるいは局長、いかがでしょうか。
  10. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 高沢委員の御指摘のとおりでございまして、わが国としてもその方向で努力する必要があると存じますけれども、国連において決議として従来採択されております武器禁輸決議でございますとか、あるいはスポーツ文化交流についての問題、それから現地投資についてこれを行わないといったような内容決議は、これをわが国は忠実に遵守しておるわけでございます。貿易につきましても、これを通常貿易の範疇にとどめましてこれをふやさないという努力をしておるわけでございます。  もっとも、貿易関係につきましては米英が伝統的に非常に深い貿易関係がございますので、これらが安保理事会において拒否権を持っておりますので、安保理審議については予断を許さないというのが現状でございますが、先生の御指摘の方向でわが国が今後とも努力してまいるということは、われわれは拳々服膺すべきことと思っております。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 次に、アフリカ開発銀行加盟に関連いたしまして、日本の対外援助のあり方ということについてなお続いて大臣にお尋ねいたしたいと思います。  これはやはり新聞などの報道の伝えるところですが、今度アメリカの新しく発足いたしましたレーガン政権がいわゆる発展途上国に対する援助のやり方をカーター政権の段階と比べて大きく変えてくる、こういうことが伝えられているわけです。  その変え方が、いわゆる国際機構を通ずるマルチの援助というものはできるだけ減らしていく、そして二国間援助、しかもその二国間援助も、相手の国がアメリカにとってどれだけ協力的であるか、あるいはアメリカにとってどれだけ戦略上の重要性を持つか、こういう判断に立って、二国間で、ある国に対して集中的な援助をする、その場合の援助の中には、いま言ったようなことからすると当然非常に軍事的な性格というものが強く出てくる、こういうふうな方向をレーガン政権としてはこれから進めていく、こういうことが伝えられ、そしてそのことの関係で、日本にもそういう方向における援助のあり方でいわば協力を求めるというようなことがレーガン政権からなされておるというようなことが新聞の報道などであるわけです。  そこで、一つは、そういうレーガン政権のこれからの援助のやり方についての評価、いまの世界の平和とかいうふうな関連、あるいは発展途上国の本当の文字どおりの経済的な、文化的な水準を高めていくという関連において、このレーガン政権のやり方が一体どうなんだという評価大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  それから同時に、そのことで日本に対して協力を求めておるというふうに新聞は報道しておりますが、日米の政府間の話し合いで何らかのそういう協力要請というふうなことがあったのかどうか、こういう事実の関係、この二点について初めに大臣からお話をお聞きしたいと思います。
  12. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  援助の問題でございますが、アメリカがそういうことを言っているということが新聞に出ておるのを私も読みました。まだ具体的にアメリカの政府から、あるいは大使館を通してそういう考え方の要請は実はございません。ただ、向こうへ行ったとき、恐らくいろいろな関連でそういう話が出るだろうということは予想されますけれども、まだございません。  それで、援助の問題ですが、二国間と多国間の援助でございますが、日本は御承知のように、大ざっぱに言いますと二国間が七割ぐらい、多国間が三割ぐらいが日本の援助でございます。アメリカは、これも大ざっぱに言いまして二国間が六割、多国間が四割ぐらいになっているかと思います。日本の方が二国間の方は若干いままで実は多くやっております。  それで、援助の考え方でございますが、日本はこれは平和国家あるいは経済的に伸びていこうという国家としてのコストも考えているわけでございます。人道問題でございますとか、あるいは相互援助ということを理念に置きまして、世界的な共通した理念でございますからそういうことを理念にしてやっておるわけでございます。軍事用途に充てられるとか、あるいは紛争を助長するとか、そういうことに使うべきではない、その発展途上国の社会経済の開発あるいは民生の安定、社会福祉の向上ということに使うべきだということがこの委員会でも決議があるわけでございますので、日本としましてもそういう決議を踏まえまして日本国際協力ということを考えているということでごいます。  相互依存、人道問題、非常に所得が少ない国でございますとか、あるいは資源関係で非常に相互依存があるとか、あるいは日本西側の一員として国際協調をやっておるわけでございますから、そういうことで重要なふうに考えられるところとか、いろいろ総合的な判断で日本はやっておるわけでございます。  アメリカに行きましてどういう話が出るかわかりませんが、私ども知っている限り、そういう経済援助と防衛というものは、これは防衛努力というのは別じゃないかというような意見がアメリカにも強いということは聞いている。当たってみませんからわかりませんが、そういうことを実は聞いているわけでございますが、さっき言いましたような原則を日本は踏まえて、話が出ましたように日本ではこういう原則でやりますよということでひとつ国際協力というものは考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 いま大臣から過去の外務委員会のそういう決議も踏まえながら日本の対外援助のあるべき原則の御説明がありまして、私もその趣旨においては全く賛成であるし、また同感であるわけであります。しかし、それにもかかわらず、そういう確認されておる原則とどうも違った方へ行くのじゃないのか、こう危惧せざるを得ない、そう心配せざるを得ない状況というものがまた出ているということも残念ながら指摘をしなければいかぬ、こう思うのであります。  その一つの例として、最近、わが国政府はジャマイカに対する援助を決定された、二十一億円の円借款を決定された、こういうことであります。このジャマイカという国は、言うまでもなくカリブ海にある。アメリカのすぐ鼻先。と同時に、もう一つ言うと、アメリカにとってこのカリブ海で何とか封じ込めたいと思っているキューバ、そのキューバのまた鼻先にこのジャマイカがあるというような関係になるわけですが、最近このジャマイカで何か選挙があって、そして政権の交代が行われた。今度できたジャマイカの政権は、言うならばアメリカ側から見れば好ましい政権ができたというような状況で、ここにそれっとばかりに援助を集中して、そしてキューバに対する一種の封じ込めというか、対抗的な力をカリブ海に強化していくというような考え方がアメリカにあって、さて日本にもそこでジャマイカに援助しろというようなことがあって今回の二十一億の円借款ということになってきた。いろんな新聞の報道などから総合して判断いたしますと、どうもそういう成り行きで今回のジャマイカの援助決定になったのじゃないのか、私はこんなふうに思わざるを得ないわけです。  そういたしますと、これは先ほど大臣説明されたあるべき原則というものとどうも現実は違っているのじゃないのか、こういうふうに考えざるを得ないわけですが、このジャマイカの二十一億の円借款というのはどういう必要性というか、どういう仕事に対して、あるいはどういう判断を持って決定されたか、お聞きしたいと思います。
  14. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  ジャマイカの援助につきましては、これはジャマイカ政府から援助をしてもらいたいということで要望があったことは確かでございます。  もう一つは、これは世銀主催で実はジャマイカの援助国会議があったわけでございます。世銀が中心になりまして、こういう非常に国民所得の低い国につきまして民生安定上借款を考えたらどうかという援助国の会議がありまして、日本側も国際協調していくということから国際協力を考えてほしいということがあり、ジャマイカの政府からも要望をされましたので、二十一億でございましたか、一千万ドルのたしか商品援助だったと思うのでございます、詳しくは政府委員からお答え申し上げますが、それを決定したわけでございます。従来、実はジャマイカには輸出入銀行銀行ローンはやっていたのでございますが、今度は銀行ローンじゃなくて、いまのような世銀主催の会議で決定をしたというのが実情でございます。  商品援助の内容につきましては、政府委員からお答え申し上げます。
  15. 梁井新一

    ○梁井政府委員 ただいま大臣から御説明のございました商品援助の中身の問題でございますが、今後ジャマイカ政府との間にどういう商品を商品援助のもとに買いたいかという交渉をいたしまして、向こうの買い付ける相手も決定したい、こういうふうに考えております。
  16. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、商品の中身が決まるのはこれから、とりあえずまず二十一億円という枠を決めた、こういうことですね。
  17. 梁井新一

    ○梁井政府委員 そのとおりでございます。
  18. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、世銀の会議でどういう必要性の判断があってそういうことになったかは私も存じませんが、要するに、まず援助をするということが決まって、中身の何が欲しいか、何が必要かはこれからだということですね。通常こういう商品援助という場合には、われわれの常識では、こういう品物がこれだけ欲しい、これがこれだけ欲しいというようなことで、総額どれぐらいの金額というふうなことになるのが常識じゃないかと思いますが、いまのお話だとその点がどうも逆になっているような感じがしますが。
  19. 梁井新一

    ○梁井政府委員 今般のジャマイカに関連いたします世銀主催の会議でございますが、ジャマイカの現在の外貨事情にかんがみまして、IMFが七億五千万ドルの外貨の手当てが必要だという判断をしましたわけでございます。それで、通常いろいろなCGと申しますか、世銀主催の会議におきましてプロジェクトを決めて援助の意図表明をやることもございますけれども、今回はジャマイカの外貨事情にかんがみまして、各国とも緊急援助の必要があるというのがIMFの判断でございます。  そういう観点で日本も商品借款の供与の意図表明を行ったわけでございますけれども、通常商品借款をやります場合には、大体外貨準備が足らない、いわゆるBPリーズンが悪いということで商品援助をやるわけでございますので、事前に商品援助の中身を決めましてからコミットするということをやりませんで、商品借款の意図表明を行った後にリストをつくるというのが通常の手続でございます。
  20. 高沢寅男

    高沢委員 いまのそういう御説明を受けましたが、私はやはり釈然としない、こう言わざるを得ないと思うのであります。こういうふうな援助の場合には、だれが考えても、その国が何がどれだけ必要だ、どれだけ欲しいということがまずあって、それで援助を出す側が、それでは幾ら、こう決まっていくのが常識ではないのか。ある意味においては小切手を何も書かずに相手に渡して、自分の好きなものを好きなだけ書けというようなやり方になっているような気がいたしまして、この点は何よりも先にまず援助をするのだということが先行をしておる、それが大変政治的な意味を持っておるというふうに私は考えざるを得ないわけです。  もう一つ、このジャマイカの関係でお聞きしますが、この国の一人当たり国民所得は一千ドルを超えているわけでしょう。従来、一千ドルという国民所得のラインが政府が円借款を出すかどうかの一つの物差しであったのじゃないかと思いますが、その点はどうなんでしょうか。
  21. 梁井新一

    ○梁井政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、従来円借款を供与いたします場合に、パーキャピタのGNPが千ドルということを一応基準にしたということは事実でございます。これはたしか世銀の七五年の統計でございまして、七八年の統計では千二百九十ドルに上がっているわけでございますが、この千ドルという基準につきましても、私ども必ずしも千ドル以上の国には円借款を出さないということではございませんで、千ドル以上と申しますのは中進国になるわけでございますけれども、中進国にもやはり緩和された条件の援助が必要である国がございます。たとえばマレーシアに対しても、千ドルを超えておりますけれども円借款をやっておるわけでございまして、必ずしも千ドル以上の国には円借款を全く出さないということではないわけでございます。
  22. 高沢寅男

    高沢委員 この問題と同じような性格を持つ問題として、中東地区ですが、この中東地区に対していまアメリカの戦略上の重点が非常に志向されているというような状況があります。その関係の中で、たとえばオマーン、この国に対して日本が援助を出すということを最近政府では決められたというようなことが、これも新聞の報道で出ているわけであります。このオマーンに対する援助というのはどういう内容で、あるいはまたどういう出し方をしていくのかというようなことがありましたら、ひとつ大臣から御説明願いたいと思います。
  23. 伊東正義

    伊東国務大臣 オマーンに対する援助でございますが、昭和五十二年から技術協力はやっております。あの国は日本への石油の供給があるわけであります。これは相互依存関係といいますか、日本は石油を輸入しておりますが、あの国が石油だけでなくて、ほかの鉱物資源も開発したいということで、昭和五十二年度から日本から技術者が行きまして、ずっと五十二、五十三、五十四、五十五と鉱物の調査をやっていることはございます。それから、製油所をつくりたいから製油所の調査をしてもらいたいというふうなことで、調査もしていることがございます。  実は昨年、いまの園田厚生大臣が特使で行かれましたときもこれは強い要請があったのでございますが、オマーンとしては民生安定上農業ということもやらなければいかぬので農業をひとつ進めていきたい、それには水がない、水資源を何とか確保したいということで、ついては地下にダムをつくりたいので日本かち技術者が来て調査をやってもらいたいということが去年からございまして、これは実際調査してみないとわかりませんが、約一千ヘクタールぐらいの農地をつくりたいということなんですが、地下ダムの水資源の調査を昨年からもう何回もやっております。これはまだ可能かどうかという調査の結果が出ておりませんので、援助をやるという結論をいま出しているわけではございません。調査をしてくれと言うので調査をやっておりますが、その結果を持ってこれはどうするかということを判断すべき問題だと思うわけでございます。新聞等で決定したということがありますが、それは全然まだ決定はしておりません。調査をやっているということで、まさにこれは、そういう地下ダムをもしつくるということで農業開発をやるということであれば、相互依存関係にもあるいは民生安定にも該当するものだと私は思うわけでございますが、いま調査中でございます。いまのところでは何とも申し上げかねるというところでございます。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 いまの大臣の御説明でオマーンに対する援助はまだ決定したわけではない、このことはわかりました。それは大臣のお答えのように受けとめます。ただ、それにしても、私たち外務委員がこういうことを新聞で見て、決めたと読んで、ああそうか、これはそれじゃこういう意味かということで大臣にお聞きしたら、まだ決めておりませんというような、こういう援助というもののあり方が、われわれもこうやって大臣にお聞きしなければ実際はわからぬというような現実の姿にあるわけです。  しかし、私の考えでは、このオマーンとか、エジプトとか、ソマリアあるいはスーダンとか、最近のアメリカ、特にレーガン政権の中東地区、ペルシャ湾に対する大きな戦略的重点志向というような関係の中で、そういうところへ日本も援助しろよという問題が、これからの日米会談等を通じて大いに出てくる問題ではないか、こう思っております。  そうなってまいりますと、日本側の立場としては、これは経済援助でございます、こう言って仮に出したにしても、そういう全体のアメリカの世界戦略、特に中東戦略というようなことの関係で言うと、日本にそういう一般的な経済援助はやらしておいて、そして軍事的な基地建設等々のそちらにアメリカは重点を向けるというようなやり方になる。こちらはそのつもりでなくとも、アメリカの軍事的やり方と日本経済援助というものが一つに合わされると、国際的な位置づけとしてはアメリカの世界戦略の中に日本もコミットしておる、日本一つの役割りを果たしておるというようなことになってくる危険性を私は非常に感ずるわけです。  それから、さらにはもっとそれが、たとえば港湾建設というようなものが出てきて、日本も港の建設をする、これはこちらとしては通常の意味の港湾建設のつもりでやっても、そのできた港がアメリカの中東に派遣された艦隊を出入りさせるというような形になってくると、これは結果としては軍港の援助をしたということにもなってくるというようないろいろな問題がこれから援助関係の中で出てくるおそれが非常にある、私はこう考えるわけですが、その辺の全体の状況判断は、大臣はどうお考えになっているかお尋ねしたいと思います。
  25. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほど申し上げました人道問題あるいは相互援助ということは、世界の共通の理念になっているわけでございます。     〔委員長退席、川田委員長代理着席〕 そういうもとで外務委員会決議というものを十分踏まえて考えていきますということを申し上げたのでございまして、いまおっしゃいました、軍用に供される可能性とかそういうようなおそれのあることはなるべくやらない、別なことを民生安定上やった方がいい、その国にとってみましてこれはいろいろあると思うわけでございますから、なるべくそういう疑いを持たれるような施設は避ける。李下に冠を正さずと私どこかで言ったことがあるわけでございますが、そういう点はなるべく注意してやっていく。ここの委員会の御決議をよく踏まえてやっていくというのが政府の態度だろうというふうに思うわけでございます。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 もう井上委員と交代する時間ですから、最後に一問だけ。  憲法八十五条は、大臣承知のとおり、国費を支出する、あるいはまた国が債務を負う場合には、国会の承認を得なければいかぬという大枠がございますね。これはだれも当然そうだと認める原則でありますが、いまのような援助問題になりますと、これは一年の国の予算で援助の枠が決まっておるから、その枠の中の個々の、どの国にどれだけというような問題は、いずれも政府の判断でなされている、こういう状況になっておりますが、いまのような援助問題がまずくすると日本の軍事的コミットとか、まずくするといまの国際政治の非常に厳しい対決の中の一環の役割りを果たすようになっていくとかいうような可能性なり危険性を非常にはらんでおる段階になってきますと、一層、本来であればそういう一つ一つの援助の案件を国会の承認を求めるというようなことが本当はあるべき原則ではないかと私は思うわけです。  過去においてそういう議論が大いになされて、この外務委員会決議もなされておるということでありますから、私もそういう過去の経過は当然尊重しなければならぬと思いますが、そういう立場でもう一度大臣から、過去でなされた決議というものを、この原則を踏まえて万々李下に冠を正すことのないそういう援助の運用というものを政府としても慎重にやっていくということについての決意の表明をお願いいたしたいと思います。
  27. 梁井新一

    ○梁井政府委員 いままで国会の場におきまして、経済協力に伴う予算の支出につきまして国会の御承認をいただいた後も、個々の国に対して分配する場合にまた承認をいただくべきかという議論がございましたので、簡単に私どもの立場を御説明させていただきますと、予算の支出を伴います国際約束につきましては、これがすでに予算または法律で認められている以上に財政支出の義務を負う場合には、もちろん国会の承認を求めるわけでございます。他方、すでに国会の議決を経た予算や法律で認められました範囲内での財政支出義務を負う国際約束につきましては、予算の支出につきまして国会の承認をいただいておるわけでございますので、その具体的実施につきましては行政権に属するものである、したがって憲法第七十三条第二号に言う外交関係の処理として外務省設置法等に基づいて処理するという立場をとっておるわけでございます。
  28. 伊東正義

    伊東国務大臣 お尋ねでございますが、その前に、さっきたくさんの国の中にエジプトという名前を挙げておっしゃった。エジプトなどは、過去においてスエズの改修について日本がずっと援助しているということで、日本に対して非常に感謝している国でございまして、今度は引き続きそれもまた確保したい、あるいは食糧をうんと輸入しておりますので、農業について何とか援助してもらいたいというようなことがあるわけでございますから、先生のお挙げになった国々一々について何も言いませんけれども、過去においてそういうこともありますということだけは、お挙げになった国で申し上げておきます。  それから、おっしゃいました外務委員会決議というのは十分心得まして、そういう軍用の目的に供されるおそれあるいは国際紛争を助長するというようなことも書いてございましたので、民生安定、社会福祉の向上、社会経済開発ということにつきましては、私は十分心して運用してまいるつもりでございます。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 あと残余の具体的なアフリカ開発銀行に関する質問は後刻やることにいたしまして、ここで井上委員に交代いたしたいと思います。
  30. 川田正則

    ○川田委員長代理 井上泉君。
  31. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は、東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター設立に関する協定を中心にして、それに関係すると思われる二、三の問題を質問いたしたいと思うわけです。  この東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターの設立に当たって、これは福田総理が東南アジアを訪問したときの話し合いの中で出て、それが今日でき上がった、こういうことになっておるという経過ですが、その前に東南アジア貿易投資観光促進センターという協定を結んでいる。今度は東南アジア諸国連合、いわゆる東南アジア全体の地域ではなしに、東南アジアの中のいわゆるASEAN諸国との間における促進センタしであって、その他の東南アジアの諸国と結んでおったセンターはもう解消してなくなってしまったということになるわけですが、これはどういう理由でなくしたのか、これをつくったけれども、これをつくった当時意図したような効果が上がらなかったがためにつぶしたのか、あるいはベトナムとかカンボジア、ラオス、ああいうふうな地域の国情の中でそれらの国との関係はもう没にしたのか、その辺の経過について御説明願いたいと思います。
  32. 伊東正義

    伊東国務大臣 経過につきまして政府委員の方から申し上げます。それで必要があれば私が補足します。
  33. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  御指摘の東南アジア貿易投資観光促進センターの件でございますが、これは昭和四十七年の一月にできまして、御指摘のとおり当初はASEAN五カ国、インドシナ三国、日本という九カ国で構成されていたわけでございます。ただし、このセンターを設立する協定によりますればこの有効期間は五年間ということでございまして、五年経過する段階におきまして当方からインドシナ三国に、その後センターが期間が暫定延長される際に参加するかどうか意向を照会した経緯がございますが、先方から返事がございませんでした。そのような経緯がありまして、この東南アジアの貿易投資観光促進センターが期間延長されたときにもインドシナ三国は入らなかったという経緯がございます。  こういった事態を受けまして、今回新たに、先ほど御案内の福田元総理がASEAN各国に行かれたときに共同声明でうたわれたASEANの貿易投資観光促進センターをつくります際には、ASEAN五カ国から、自分たちと日本でこういったセンターをつくりたい、ASEAN五カ国と日本の間の貿易投資、観光を促進したい、そういったような要請がございまして、今回はASEANと日本と、そういうことになったわけでございます。  それから、前回の東南アジア貿易投資観光促進センターにつきましては、限られた期間ではございましたけれども、投資、観光の促進とか、あるいは調査ミッションの派遣だとか、商談の手伝いだとか、限られた範囲内で相応な業績を上げております。
  34. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その相応な業績を上げておるという具体的な事例についてはまた次の機会にお尋ねしたいと思うわけですが、いま説明によりますと、こちらからこれをどうしようか、引き続いてやろうかと言ったけれども、向こうから何の返事もなかったからやめた、こういうことですか。
  35. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 御指摘のとおりでございます。
  36. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そのことは、こういうふうに東南アジアの諸国で構成をしてつくっておって、向こうがやると言ってきた場合には、今度のセンターはつくらずに、従前のセンターでやるのですか。それとも、向こうがやると言ってこようとこまいと、このセンターは別個につくるという意図ですか。
  37. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 ただいまのセンターはASEAN五カ国と日本との間のセンターでございますが、将来インドシナ地域に平和が招来されまして、インドシナ三国が同様な協力を行いたいという意向を表明した場合には、その時点においてその可能性を検討するにやぶさかでないと考えております。
  38. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういう考えということは、結局これらの旧加盟国、カンボジアあるいはラオス、ベトナム、こういうふうなものが入ってない方が都合がいい、福田総理が約束をしたこのことで、もう日本はASEAN諸国と一緒にやっていこう、これらの国々が今度また希望してきた場合にはそれに入ることにやぶさかでない、こう言いましても、やはりASEANの諸国との関係があるわけですが、こういうように排他的な政策を同じアジア地域の中でとるということは好ましいことではないのではないか。こちらが一片の外交辞令でこれを引き続いてやりますかと言ったときに向こうから返事がなかったということでそれをそのまま失効させてしまって解散をするということは、余り国際信義上いいことではないと思うわけですけれども、大臣、これはいいことでしょうか。
  39. 伊東正義

    伊東国務大臣 私も、いいことか悪いことかとおっしゃられれば、望ましいことじゃないということだと思います。その原因は、返事がこなかった。そして、いまインドシナ、カンボジア情勢でASEANと何とか話し合いの場を国際会議をやって持ちたいというようなことを言っていますが、なかなか実効が上がっていない。片方にカンボジアの問題があるということが現実でございますので、望ましいことではないと私は思うのでございますが、やはりインドシナ半島に平和が来て喜んでみんなが迎え入れるということで、東南アジア全部の者がみんな共通してそういうことがやれるという事態が来ることを私は期待もしますし、そういう努力もまた日本としては今後ともやっていかなければいかぬ、こう思います。
  40. 井上泉

    ○井上(泉)委員 ラオスにしても、あるいはベトナムにしても、第二次大戦のときに日本が非常に迷惑をかけた国であるわけだし、そしてまたいま高沢議員の質問の中でも、日本経済協力というものが本当に純粋に平和的な意図によって友好関係を促進していく、それがために日本経済協力のいろいろなことがなされておるということでなければならないけれども、何か援助の中には軍事的な意図あるいはアメリカの思惑に支配されておる、そういうふうなことが懸念される向きがあるわけです。  日本はずいぶん膨大な経済協力をしておるし、特にこのアジア地域における経済協力は、きのうの参議院でも、日本経済協力全体の七〇%がアジア地域だ、こういうふうなことを指摘されておるわけですが、やはりこのアジア地域に対する経済援助、経済協力は、私は当然日本としてやり得ることはやっていかなければならぬと思うわけです。しかし、そのことによって、今度の投資センターは投資ということも非常に重視されておるわけですが、それが経済侵略になるような形の投資というようなことになると、また日本というものがこれらの国々からいわゆる疎外をされるようなことになりかねないと思うわけですが、そういう点についてのいささかの心配もないのでしょうか、その点、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  41. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま井上さんのおっしゃるように、経済協力をやること自身が何か経済侵略みたいなことになるということでは、これは目的に全然反するようなことになりますので、その投資というようなことは経済協力とはまた別なものだ、それは民間が投資をするというようなことでございましょうから、この経済協力につきましては、何も政府投資をして、そしてそこの経済をある程度支配するのだとか、そういう意図は全然持ってないのでございますから、そういうお疑いを受けるような、あるいは相手国の国民が日本はそういう意図を持っているのだというような疑いを一点でも持たれたらマイナスでございますので、この点は十分に注意する必要があるというふうに私も思います。
  42. 井上泉

    ○井上(泉)委員 このいわゆる東南アジア投資観光促進センターにしても、主たる業務というのは日本がやることになっておるわけで、これは私はこのセンターの性質から言えば当然だと思うわけです。これは相当な事務局体制というようなものも必要ですが、こういう場合に事務局体制というものはどういうふうな状態になるのか、事務当局から御答弁願いたいと思います。
  43. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 事務局体制といたしましては、まず事務局長が一番上におりまして、その下に総務部、貿易投資部、観光部、そういう三つの部をつくることが現時点において考えられております。われわれとしましては、事務局の人員としては大体二十名ぐらいがこのセンターができました際に事務局員として採用されるものと考えております。
  44. 井上泉

    ○井上(泉)委員 この事務局の職員の身分というものはどういうようになるのですか。あるいはこの前の投資観光促進センターが失効した場合には、ここにおった職員なんかどういうふうになったのでしょう。
  45. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 事務局に勤務するただいま私が申し上げました約二十名の職員の身分に関しましては、恐らく関係政府官庁からの出向の職員と、民間から採用される方ということが考えられます。関係政府官庁で考えられるのは外務省、通産省、運輸省でございますが、ここからの職員は出向という身分になりまして、一方で、民間の方の身分につきましては、その採用の際の契約等によりますが、身分の安定等につきましても、私たちは、執行委員会理事会等がありまして、最終的には執行委員会がこういった事務局職員の採用の基準だとか身分だとか、あるいは職務上のいろいろな問題について討議をするはずでございますので、身分上不安定なことがないように配慮いたしたいと思います。
  46. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は、この経済協力というのはいわゆる平和な友好関係を促進するための重要な役割りを果たしておらなければならないわけだし、それが懸念されるような軍事的な一つ政策のもとにそのことがなされるというようなことはあってはならないし、恐らく大臣もそんなことはありませんという答弁をされると思うわけですけれども、さっき高沢議員の質問されたアフリカの開発銀行関係等について、そういう懸念というものは多分にされるわけです。  それはさておきまして、いまイラン・イラクの紛争というのは長期化しておる。そういう中で、新聞で見ると、イランにもイラクにもやっておるいろいろな仕事について、日本の商社なりあるいは大手建設業者なんかはそこへ仕事に入る、こういうふうな話を聞くわけですが、イラン・イラクのいまの戦争状態というものはどういうふうな見通しになっておるか、外務省はこれをどう把握しておるのか、この機会に承りたいと思います。
  47. 伊東正義

    伊東国務大臣 イラン・イラクの紛争は御承知のように膠着状態に入っているという状態でございまして、断続的に小規模の戦闘があるとかいうようなことでございます。  それで、何とかこのイラン・イラクの紛争を早く解決したいということで、いろいろな国際的な動きが行われております。国際連合では御承知のような事務総長の特使が三度派遣されて、何とか話し合いの糸口をということでやっている。いま河川に滞留している船をもっと自由に外へ出そうじゃないかという交渉が行われておるのでございますが、そういう動きが一つある。  もう一つは、非同盟の外相会議がこの間ニューデリーでありまして、PLO非同盟の中でインドでございますとかキューバでございますとかいう国が、たしか四カ国でございました、代表になりまして、PLOの政治部長も中へ入るということで、何とかこれをまた調停をしたいという動きがございます。  もう一つ、非常に現実的な大規模な動きは、イスラム諸国会議がことし会議を開いた結果、イラン、イラクともにイスラム教でございますので、イスラムの国々で調停をしようということで、これは大統領が四名でございましたか、あと首相、外相あるいはPLOのアラファト議長も入り、大規模な使節団をつくってイラン、イラクに行って調停を行っているという事実はございます。これはまだ成功はしておりません。成功はしておりませんが、イランもイラクも拒否しているということじゃなくて、表面上はそういうことでございますが、このイスラム諸国会議の調停の動きに対しましては私どもは非常に大きな関心を持って、あるいは期待と言ってもいいかもしれません、見ているというところでございます。  しかし、まだ両方がテーブルに着くというところまでには至ってない。戦闘状態は膠着状態にある。しかし、前のような戦闘が継続されているということはないというのが現状でございまして、このイラン、イラクの調停の問題につきましては、やはり国際的な枠組みの中でこれを解決していくというのが一番現実的じゃないか。私どもは国連で頼み、またイスラムの特にパキスタン等を通しまして、調停が成功するように努力してもらいたいというようなことを実は日本としても伝えているというのが現状でございます。
  48. 井上泉

    ○井上(泉)委員 この地域日本も相当な経済協力をしておる地域でありますし、そういう中で日本との関係の深い二つの国がいつまでも戦火を交えることのないように、一日も早く日本としてはいま少し積極的な和平工作を考えるべきではないか、そういう中にこの経済協力の効果というものも出てくるのではないか、私はこう思うわけですが、この経済協力関係で、たとえばアジア地域に十三億三千百万ドルという経済協力が一九七九年にはなされておるわけで、その中で東南アジア地域に約六〇%以上のものが行っておるわけです。こういうふうな無償協力にしても、技術協力あるいは政府貸し付けにしても、どういうものが目安になってこれらの国々に経済援助あるいは協力という形で金を出されておるのか、その辺のことを説明を受けたいと思います。
  49. 梁井新一

    ○梁井政府委員 ただいま先生の御指摘の点は、日本経済協力を行います場合に、経済協力の配分を一体どうやって行っているのかという御質問かと思うわけでございます。  経済協力の配分の問題につきましては、私ども二つの要素を考えておるわけでございますけれども、その国が日本にとってどの程度大事な国であるか、どの程度相互依存関係にあるかという目安が一つでございます。  それからもう一つは、その国の援助需要の大きさと申しますか、その国がどの程度貧困か、たとえばパーキャピタのGNPがどれぐらいかという一つの人道的な考慮と申しますか、そういう二つの観点をあわせまして経済協力の実施を決めるということにしているわけでございますけれども、ただいま先生の御指摘がございましたとおり、一九七九年におきましては、日本の二国間の援助の約七〇%がアジアに向けられております。ASEAN向けば全体の三〇%でございます。アジア地域が世界の人口の半分以上を占めている、同時に一人当たりの援助の受け取り額が非常に少ないわけでございまして、国際的にも援助の谷間であるというふうに言われておるわけでございますけれども、そういう観点から、日本の二国間援助の約七〇%がアジア地域に向けられるということにつきましてはおおむね妥当な水準ではないか、私どもといたしましてはこういうふうに考えておるわけでございます。
  50. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、この政府経済協力をそういうふうな尺度でやる場合に、たとえばアジア地域が全体の七〇%であるという中で各国別を見ると、アジア地域の中で一九七九年では中国はゼロですね。技術協力が二百五十九万ドルあるだけで、それ以前にはゼロ、こういうことですが、こういう場合には、いま局長が言われるようなことは、向こうから要請があった場合にこちらがそれを算定してこれだけ出すのか、向こうから要請はないけれども日本ではこうこうするというふうにしたのか。そういう点から言えば、中国との関係経済協力というものは、局長の言う基準から言えば相当の金額が出さるべきではないか、こう思うわけですけれども、その辺はどういう関係中国のなにがないのか。
  51. 梁井新一

    ○梁井政府委員 一般的に申し上げますと、私どもが援助の配分を決めます前に、一体その国にどれくらいの援助をすべきかという前提といたしまして、各国からいろいろな援助の要請が来るわけでございます。もちろん私どもといたしましては、援助予算にも限度がございますので、向こうの要請を全部受けるということはできないわけでございますけれども、各国の要請を基礎といたしましてわれわれとしていろいろな判断を加えるというのが現状でございます。  ただいま先生の御指摘中国でございますけれども、確かに七九年の統計では中国に対する支出額は非常に少ないわけでございます。恐らく技術協力が少し出ているだけでございますけれども、これは統計のとり方が経済協力の支出の実績でとるわけでございまして、私どもは七九年の十二月に中国に対して初めて五百億円の円借款の供与を行うという意図表明を行ったわけでございますけれども、七九年の統計におきましてはその当時行っておりました技術協力の実績が出ておるだけでございまして、今後中国に対する円借款の実績がふえればこの数字が上がっていくわけでございます。
  52. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いままでの中国が別にどうこうというわけではなしに、全般的に見て中国に対する日本経済協力の金額というものは非常に少ない。七九年の末に五百億出したと言いましても、日本円で五百億だったら二億ドルほどしかないわけだから、これはそう大した金額じゃないわけだ。そういう点から見て、いまの中国経済的な状況から考えてみて、日本としてはもっと考えなければいかぬじゃないかという気持ちは、大臣、おありになるのですか。
  53. 伊東正義

    伊東国務大臣 七九年の十二月に亡くなった大平総理が行って、そのとき初めて経済協力援助の話が成立したわけでございますが、あのときの原則に言いましたのは、軍事的な協力はできない、軍事的な用途に使うことは日本協力できません、それからアンタイ、要するにヨーロッパもみんなこの経済協力の入札等には参加してください、開かれた形でやってもらいたいということと、もう一つはASEAN諸国とのいろいろなバランスというものも考えてやっていかなければいけません、この三つの原則で経済協力が始まったわけでございまして、ASEAN諸国との関係ということも頭に置きながら五百億という金額を決め、二回目は五百六十億という金額を決めたわけでございまして、やはりその三原則を頭に置きながら金額を決めていくということは必要ではなかろうかと思うわけでございます。  もっと言いますと、私も井上先生と同じように考えたことがございまして、中で相談したことがあるのですが、あのときの三原則がぴしゃっとありまして、ASEANともバランスをとるというようなことでございますので、いまの金額で妥当なところであると考えてこの間五百六十億は決めたところでございます。
  54. 井上泉

    ○井上(泉)委員 時間がありませんので、二つだけ。  いまの金額で現在では妥当であっても、いまの中国経済情勢、状況等から考えて、日本経済援助の内容については検討しなければならぬというお気持ちを持っておるのかどうかということが一点。  それからさらに、それとは別でありますけれども、こういうふうに日本経済援助をたくさんやるわけです。やるということは、一面で日本はそれだけの富を蓄積する、富を蓄積するためには外貨を獲得する、ということは日本貿易が大きな役割りを果たしておるわけで、日本貿易がいまほどふるわなくなったら資源のない国ですから大変なことになるわけで、そういう点からも、日本経済力をつける上においての日本貿易を考えなければいかぬ。輸出を考えなければいかぬ。その中で自動車問題が非常に論議をされて、法律で決めようとか、自主規制とか、窓口は外務省だ、通産省だというようなことが毎日の新聞で報道されておるわけです。  外務大臣は近く行かれるそうで、このことも当然話題になると思うわけですが、この自動車輸出についても、少なくとも日本経済力から考えて、日本貿易の比重から考えて、そしてまたいわゆる自由貿易をとるというたてまえから考えれば、余り協定で縛りつけるとかいうことではなしに、もっと自主的な規制の仕方といいますか、一体大臣はどういうふうなお考えでこの自動車問題に対処なされようとしておるのか、この二つをあわせてお答え願って、私の質問を終わりたいと思います。
  55. 伊東正義

    伊東国務大臣 後の方から申し上げますが、いま井上さんのおっしゃったように、自由貿易日本がどうしても守らなければならぬことでございますし、また世界も、自由貿易体制は世界的な秩序として維持してもらわなければいかぬという強い日本の考え方でございますので、これは先方にも伝えるつもりでございます。  具体的な自動車の問題でございますが、いまアメリカではタスクフォースが、外国からの自動車の輸入の問題、国内の自動車産業をどうしていくか、労組との賃金の問題でございますとか、幅広い自動車産業対策というものを運輸長官が中心になって検討しておる、それに基づいて大統領に報告が出るのだということを聞いております。最初のお話ではもういまごろは出ると言われていたのですが、大分おくれておるわけでございますので、私は向こうに行きましても、その報告を見てから日本としては方向を決めていいのじゃないかというふうに思っておりますので、そのタスクフォースから出てくる結論がどういうものかということを見て日本としては対策を立てる必要があるというようなことを、私はきのうも通産事務当局と話し合いをしたのでございます。  マンスフィールド大使ときのう会いましたら、向こうに行って大統領に会えば、大統領から必ずその話も出るじゃないかということを言っておられましたが、日本としましては、いまその結論を実は慎重に見守っておるということでございます。しかし、原則としてはあくまで自由貿易は世界の貿易体制の鉄則としてみんなが守るということは主張してこようと思っておるところでございます。  中国に対する経済協力の問題でございますが、先ほど私はASEANともバランスをとることが原則の一つだということを申し上げましたが、これは未来永劫変わらぬというものじゃないわけでございまして、経済情勢とか政治情勢とかいろいろありましょうから、機に応じて見ていくことは当然だというふうに思っております。
  56. 井上泉

    ○井上(泉)委員 終わります。
  57. 川田正則

    ○川田委員長代理 玉城栄一君。
  58. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は、アフリカ開発銀行を設立する協定についてお伺いをいたします。  このアフリカ開発銀行昭和三十九年に設立されておるわけですが、今回わが国も域外諸国の一員として資本参加をしようということであるわけです。アフリカ諸国といいますとわが国と距離的にも大変遠いわけでございまして、政府としてこのアフリカ諸国に対する外交的な位置づけをどのようにしておられるのか、まず最初にその点からお伺いいたします。
  59. 伊東正義

    伊東国務大臣 アフリカが地理的に日本と非常に遠隔の地にあるということから、確かに過去におきまして日本アフリカ関係がそのほかの地域よりも比較的薄かったということは事実でございます。ただ、戦後は特に国連が世界の外交の中心になってきたということがございまして、国連におけるいろいろな活躍が外交に影響することが多いのでございます。  アフリカは御承知のように非常にたくさんの国があるわけでございまして、非同盟中立という国が非常に多いわけでございますが、こういう国々との関係、第三世界といいますか、そういう世界とのこれからの外交関係というものは従来と違って非常に大切なものがあると思うわけでございます。きょうもタンザニアの大統領が国賓として見えておりますが、今後ともアフリカに対しましては、人道上あるいは相互依存というふうな両面から考えまして、経済協力あるいは日本との関係というものをもっともっと従来よりも密接にしていく必要があるというふうに私は考えております。
  60. 玉城栄一

    ○玉城委員 従来わが国も出資しておりますアフリカ開発基金への出資金のシェアが一八・三%、それからこの協定に基づくアフリカ開発銀行へのわが国の出資予定シェアが四・七%と、いずれも非常な大口出資国になるわけでありますが、こういう国際機関等を通じての援助、それから二国間援助についてどのような考え方を大臣は持っておられるのか、お伺いをいたします。
  61. 伊東正義

    伊東国務大臣 一番直接的な効果、効果という意味はいろいろな意味でございますが、それを考えますと、二国間の方がそれは非常に直接的にあらわれてくるということでございますので、二国間の援助をいろいろな国がふやしていこうという傾向は、私はそれなりにわかるような気がするのでございます。しかし、こうした多国間の問題、国際機関に対する援助というものも広い意味で考えましてこれもまた劣らず必要なものでございますから、実はアメリカに対しましても、アメリカが多国間援助を減らそうという動きがあったときに、日本はそれはおかしいじゃないかということで最近何回も意見を言ったことがございます。そういうこともありますし、日本としては二国間の援助が大切なことはもちろんわかりますが、多国間援助についてもやはり同じウエートをもって考えていく必要があると思っております。
  62. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この協定でもアメリカ側のシェアにつきましては五・六八%ですね。大臣もおっしゃいましたし、そのように報道等もあるわけですが、こういう国際機関等を通じての対外経済援助については減らすのだというような考え方のようでありますが、この協定で米側の出資予定のシェアが変動されるということはないわけですね。
  63. 梁井新一

    ○梁井政府委員 お答え申し上げます。  アフリカ開発銀行に対しますアメリカの出資のシェアは一七%で、一位でございます。このシェアが変わることはございません。
  64. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、大臣が先ほどちょっとおっしゃいましたこういう国際機関等を通じての援助については縮小の方向にいくということからしますと、今後これに類する機関等への米側の出資について、その政策の方針どおりにいきますと縮小されていくということになるわけですが、それについて大臣はそういうことはおかしいではないかという意見もおっしゃったということでありますが、そういうことに伴うわが国を含めた分担比率のアップについての懸念は考えられないのかどうか、いかがでしょうか。
  65. 伊東正義

    伊東国務大臣 アメリカの予算局長が発表しましたとき、私がさっき述べましたような意見を言ったことは確かでございますが、アメリカ側も、国際的に約束したことはちゃんと履行する、こういうことを言っているわけでございます。もしも、これはもしものことでございますが、アメリカが何か減らした場合に日本がふえるということはないかという意味の御質問でございますが、これは国際的な機関の問題でございますので直にどうということにすぐ降りかかってくるというわけのものでもないし、大体アメリカがそういうものを減らさぬようにということは、日本だけではなくてヨーロッパもみんな実は言ったのでございます。でございますので、そういうことにはならぬようにアメリカも従来どおりの方針でやってもらいたいということは、今度行きましても私は強く日本側の意見として言うつもりでございます。
  66. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この協定でちょっと伺っておきたいのですが、この域外加盟国予定二十一カ国中、ユーゴスラビアは入っているわけですがソ連とか東欧圏諸国が入っていないのですが、その入っていない理由をお聞かせいただければ、そして同時にもう一点は、このアフリカ開発銀行に対していま申し上げた諸国はどういう態度をとっているのか、その点もあわせてお伺いいたします。     〔川田委員長代理退席、青木委員長代理     着席〕
  67. 梁井新一

    ○梁井政府委員 お答え申し上げます。  今般、アフリカ開発銀行加盟資格が増大する資金需要に対応するために域外国に開放されたわけでございますけれども、この協定によりますと、基本的にはソ連等の社会主義国も希望すれば開発銀行加盟できるわけでございます。もちろん一定の条件がございまして、アフリカ開発銀行と補完的な関係にございますアフリカ開発基金に対する参加国または将来の参加国という条件がついているわけでございますけれども、この条件を満たすことができますれば、その他の国も、ソ連圏も含めまして参加ができることになっておるわけでございます。  そこで、ソ連圏あるいは東欧圏がどういう態度をとっているかということでございますけれども、まだ公式にいかなる態度もとってないのでわからないわけでございますが、実はアフリカ開発銀行の創設の準備段階におきましてはソ連、チェコスロバキアが積極的な支持を表明した経緯がございます。ただ、その後アフリカ開発銀行への加入に関連いたしまして何ら態度を表明していないということで、現在の立場はわからないわけでございます。また、中国につきましてもまだ何らの態度を表明しておりません。
  68. 玉城栄一

    ○玉城委員 この協定についてまだお伺いしたいのですが、経済援助につきまして先ほども種々御質疑が交わされたわけでありますが、レーガン政権になりまして、こういう対外経済援助政策の変更と申しますか、あるいは直接間接わが国に対する圧力といいますか、そういうようなことの報道等があり、いま国民の間には非常に不安があると思うわけであります。大臣とされて近々訪米されるわけでございますので、レーガン政権の対外経済援助政策についてどのような見方をしておられるのか、また今度行かれましたときにその点についてどういうふうに率直におっしゃるおつもりでいらっしゃるのか、その点あわせて伺います。
  69. 伊東正義

    伊東国務大臣 新政権ができまして、予算局長が最初予算原案なるものを発表した段階で、二国間をふやして多国間の経済協力はどちらかというと減らすのだというようなことがあったのでございます。それで、これは日本だけではなくてヨーロッパもそうでございましたが、そういう援助を減らすという考え方はいまの国際情勢、南北問題、いろいろ考えたときに適当ではないのじゃないか、援助というものをふやすべきじゃないかという意見を日本もヨーロッパも実はアメリカに言ったのでございます。それで、アメリカの予算でございますが、現実には援助の費用はことしの実績よりも若干ふえるというふうに私どもは考えております。ですから、減るということはない、若干でございますがふえるだろうという見方をしております。  それで、アメリカがその援助の仕方をどういうふうに考えるか、いろいろ新聞等で伝わったこともありますので、これは日本としてもアメリカに対してその考え方を実は聞こうと思っております。それと同時に、日本としましては、先ほど高沢先生にもお答え申し上げましたが、これは外務委員会決議があるということはよく承知しておりますので、あくまで国際協調ということはもちろん繊維その他の会議でやったこともございますし、今後もそういうことは援助国会議とかいろいろあるわけでございますから、そういう国際協調の問題もございますが、日本としてはその結果も、日本としてここがこういう理由で必要だからこうするというような、日本があくまで自主的に判断して決めるということの原則は貫こう、私はこういうふうに思っております。
  70. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、実はわが党の訪米団がいま向こうでレーガン政権の関係者と会談しているわけです。これは十六日ですが、国務省のホールドリッジ国務次官補との会談で、戦略的重要地域を顧慮した海外援助を推進してもらいたいという強い要請がわが国に対してあったということでありますが、大臣はこういうことについてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  71. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、直接まだ聞いておりませんから、その内容は詳細つまびらかでありませんが、向こうへ行っていろいろ向こうの考えを聞こうということをいま申し上げたのでございますが、向こうがどういう意見を言うか別にしまして、日本としてはどの地域のどういう国のどういう事情に対して経済協力するのが日本として一番望ましいことだということで決めるべきであり、その内容は先ほどから申し上げております外務委員会決議は十分頭に置いて決めていくというのが、私は日本の態度だろうと思う。たとえばアメリカがこういうことを言ったから日本も全部そうだというようなことじゃないと私は思うわけでございまして、その辺のところはよく向こうの意見も聞いてみる。そして、日本としてこの地域、この仕事、との国、この仕事ということを自主的に判断して決めることが必要だろうと思っております。
  72. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは当然そうなると思うわけですが、自主的に判断されるわが国としての海外援助の判断の基準といいますか、従来政府がとってこられた経済援助に対する基本的な考え方の変更はない、先ほど強調しておられますように、本委員会での海外援助に対する決議を尊重されるということを何回もおっしゃっておられるわけでありますが、政府としてもそういう従来の方針には全然変更はないというふうに理解していいわけですか。
  73. 伊東正義

    伊東国務大臣 そのとおりでございます。  先ほど高沢先生がおっしゃいましてお答えしたのでございますが、その中に、たとえばオーマンの話が出ました。これは日本は五十二年から枝術協力その他をやっていたわけでございまして、いまも民生安定のために地下ダムということで調査団を出しているわけでございます。自主的に五十二年ごろからそういう調査をしているということもございまして、日本として自主的にそういうことは判断をして決めるということが大切であるというふうに思っております。
  74. 玉城栄一

    ○玉城委員 最近、報道等で承知しているわけでありますが、わが国に中米のエルサルバドルに対する援助要請があるやに報道されているわけですが、その辺の経過について御説明いただきたいと思います。
  75. 伊東正義

    伊東国務大臣 エルサルバドルにつきましては、エルサルバドルの国内事情がこういうふうになっているという説明、アメリカの大使館で、ワシントンで、日本だけじゃなく各国の大使館に説明があったことは確かでございます。しかしその後、たとえばエルサルバドルから日本に対して援助をしてもらいたいとかそういうことは一切ございませんし、外国からもそういう話が日本にあるということはないわけでございまして、何もそういうエルサルバドルから経済協力をしてほしいというような要請もないところに、日本が求めて経済協力をするなんということはいま考えておりません。
  76. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは要請があったときには、政府の方針としてはどのような対応をされるわけですか。
  77. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは仮定のことでございますから、いまここでどうするということを申し上げるわけにいかぬのでございますが、一体その場合にどういうものを要望するのか、ああいう国内事情の中で、そういうことが国際紛争につながらぬかとか、いろいろ判断する必要がありますから、要請があったらすぐどうこう決めるということじゃなくて、その場合でも私は慎重に考えなければいかぬと思う。しかし、いまは一切そういうものはありません。ですから、何もやるなんということは決めておりませんということだけははっきり申し上げます。
  78. 玉城栄一

    ○玉城委員 国会決議にもあります、おっしゃっておられる国際的な緊張を助長する地域への援助はしないということからしますと、このエルサルバドルは、いま申し上げた地域に該当するとかしないとか、その辺の判断は大臣としては現在どのように考えていらっしゃいますか。
  79. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまのエルサルバドルは、第三国から武器が中の反政府の反徒と言ってはなんでございますが、そういうものに送られて、国内的にそういう反徒と戦うということで苦労しておるのだというような説明があったわけでございまして、武器という話のときに、国際的な話がいろいろ出ておるのでございます。そういうことでいまあそこの問題が非常に問題になっておるという際でございますので、私はそういうところは、先ほど高沢先生に李下に冠を正さずと言ったところに近いところじゃないのかなと思いますが、いまここでそうだと決めつけるわけにもいきませんから、いま感じを述べろと言われれば、それに近いのかなという感じは持っております。
  80. 玉城栄一

    ○玉城委員 ということは、そういう地域であるということで、従来の方針どおりそういう緊張を助長するような地域に対する援助はしないというような考え方だと受けとめておくわけでございます。  そこで、先ほど経済援助に対する原則というお話がありましたのですが、これも二、三日前の新聞で拝見したわけでございますけれども、いわゆる地域的配分の問題とか、柱として三項目あるわけです。これは二十一日、大臣が訪米されて、レーガン政権との会談の際に表明するとか、あるいはその前の十九日の総合安全保障会議でこういう考え方の基準設定をしたいというように報道されているわけでありますけれども、その点いかがでしょうか。
  81. 伊東正義

    伊東国務大臣 ゆうべ新聞に出ておるようなことを主に内容にした話を実は聞きました。私の方で、ざっくばらんに言うと、あした総合安保会議がある、外務大臣が発言をするのだということになっておるそうで、その発言の内容につきましてそういう問題があるのだということでゆうべ聞いて、私は私のところでいろいろ相談したことは事実でございます。新聞はその前にどうも何かいろいろ出たらしいのでございますが、その内容はよく知りません。ゆうべ私のところでいろいろ相談したことは確かでございます。
  82. 玉城栄一

    ○玉城委員 ということは、やはり報道でありますから、いろいろな考え方のいろいろな整理がされているものがあるかもしれませんけれども、こういう報道されておるような考え方を十九日の総合安全保障会議で決め、それでレーガン政権との会談のときに、わが国としてはこういう考え方を持っておるのだということを表明されるわけでございますか。
  83. 伊東正義

    伊東国務大臣 実は私はその新聞は詳細読んでおりませんからわかりませんが、ゆうべ安全保障会議で外務大臣がいろいろ発言をすることがあるということで相談しましたことは、アメリカへ行きましても、日本側の考え方として述べる際には、日本で述べたことと同じことを向こうに日本の考え方としては述べるつもりでございます。
  84. 玉城栄一

    ○玉城委員 実際にわれわれが懸念しますことは、レーガン政権が、軍事費の問題はきょうは別でありますが、経済援助の問題につきましても、戦略的なそういう二国間援助を重点にしてやっていく、そういうことについても日本も含めて西側諸国に同調を求めたいというようなことも報道されているわけであります。非常に心配されることは、そういうことにどんどんわが国も引きずられていって、原則的なことは、たとえば民生の安定だとか、社会福祉の問題だとか、相互依存関係、いろいろおっしゃっておられますけれども、言葉としてはそうなんですが、実質的にはそういういわゆるアメリカの世界戦略の中にわが国としても経済的な援助という形で組み込まれていって、それはむしろ国際緊張を緩和どころか逆の方向に持っていく、わが国の安全保障についても心配されるのではないかという懸念があるわけであります。  そこで、そういうことについて、率直に大臣とされて、たとえばそういう米側の経済援助の縮小に対する肩がわりをわが国がやる、これをもし求められたときには、これもはっきりと断っていただくということをやっていただかないといけないと思うのですが、いかがでしょうか。
  85. 伊東正義

    伊東国務大臣 引きずり込まれる、肩がわりというような表現がございましたが、先ほど予算のときに申し上げましたように、アメリカの援助は減ってはいないのです。実際来年もことしよりも若干でございますがふえております。私、向こうへ行って考え方を述べる際には、西側の一員であることは間違いないのですからそういうことも頭に置きますが、しかし日本としてこういうところが大切だと思って経済協力をやるのだという判断は、日本側が自主的にしなければいかぬと私は思っております。  その場合の原則は、ここで外務委員会決議がありますからそれは十分踏まえるということでございますが、先ほどエジプトとかオマーンの話が出ましたけれども、これは従来日本が必要だと思ってずっと前から経済援助をやっていたところでございますので、そういうところにつきましても、日本日本として自主的に判断するということでやってまいりたいと思っております。
  86. 玉城栄一

    ○玉城委員 この協定で、私ついこの間、テレビでアフリカの飢餓の非常に悲惨な状態、本当に深刻な状況を見たわけでありますが、アフリカ地域の飢餓の状況に対してわが国としてどういう援助をしているのか、概略御説明いただきたいと思います。
  87. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細は政府委員から申し上げますが、飢餓の状態、これは人道問題でございまして、アフリカに相当の、百万を超える難民があるということをわれわれも聞いておるわけでございまして、わずかではございますが食糧の援助をするというようなことをやっております。これは後ほど申し上げますが、しかし日本の力ではアフリカまで大量のものにはなかなか手が届かぬ。やはりASEANが一番日本の援助の近い国でございますので、中心になっている。それでアフリカについては、ヨーロッパの諸国が主としてやってもらい、日本は従としてやっていくということを言わざるを得ないと私は思っております。
  88. 村田良平

    ○村田政府委員 現在の干ばつ等の状況でございますけれども、大きく言いまして二カ所ございまして、一つはサハラの南の方、サヘール地域と呼ばれているところでございます。もう一つアフリカの東側でございまして、エチオピアからウガンダ、ケニア、タンザニア等の国におきまして、やはり深刻な干ばつが起こっております。  大体現在まで国連等で検討した結果によりますと、約二千万人が栄養失調と申しますか、飢えに悩む人の数でございまして、その中で千二、三百万人は餓死線上にある、きわめて深刻な事態でございます。
  89. 梁井新一

    ○梁井政府委員 アフリカの難民に対します経済協力の問題でございますが、ちょっといま詳しい資料を手元に持っておりませんが、最近、世界食糧計画、WFPと言っておりますが、これを通じまして十二億円、これは日本米も入っておりますが、食糧援助をやっております。それ以外につきましては、各国からいろいろと食糧援助の要請あるいは延べ払いの要請が来ておりますけれども、先ほど大臣から御説明がございましたとおり、なかなかアジアの難民ほど手厚い協力ができないというのが現状でございます。
  90. 玉城栄一

    ○玉城委員 その件で政府のできる限りの援助と同時に、国内の民間諸団体にも呼びかけて救援の手をぜひ差し伸べるべきではないかと思います。  最後に、時間が参りましたが、この協定に産油国はクウェートしか入っていないわけでありますが、御存じのとおりオイルマネーが産油国に偏在しているわけです。したがって、産油国にオイルマネーが偏在している状態を開発途上国等に有効に活用できるような方法を講じないと、世界経済にも重大な影響を将来もたらしてくるのではないかと思うわけでありますが、大臣とされて、いまの件についてどのようなお考えを持ち、どういうことをした方がいいというお考えを持っていらっしゃるでしょうか。
  91. 梁井新一

    ○梁井政府委員 アフリカの域内国にも、たとえばナイジェリア、ガボン、アルジェリアもそうでございますが、産油国もございます。現在域外国の産油国で加入を検討中なのは、サウジとア首連が検討中と聞いております。
  92. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、大臣、そういうオイルマネーはアフリカ諸国内だけではなくて、開発途上国の援助に有効に活用できるような方法を考えるべきではないかと思うのです。わが国としても、何らかのそれに対する役割りを果たすべきではないかと思うわけですが、いかがですか。
  93. 伊東正義

    伊東国務大臣 オイルダラーの利用方法というのはいろいろなことがあると思うのでございますが、どちらかというと産油国と近い地域アフリカでございますから、私はまだ具体的にそういう行動を起こして産油国にいろいろ頼むというようなことはしておりませんが、何かの機会にそういうことが必要じゃないかという意見を述べることも大切なことだと思います。
  94. 玉城栄一

    ○玉城委員 それでは、時間が参りましたので、これで終わります。
  95. 青木正久

    ○青木委員長代理 林保夫君。
  96. 林保夫

    ○林(保)委員 本日議題となっております三協定の審議、三つ一緒に並べて見ますと、大臣は変わらないのだと言われるかもしれませんけれども、私どもの立場から見ますと非常に積極的でもある、その点だけでも変わっているように思われてなりません。そういった中で、これから日本が対外的にどう処していくか、そしてまた、本日議題となっております援助の手を差し伸べていくについてどういう方向と原則でやっていくか、大変大事な要素だと思われます。これは決して南北問題ではなくて北々、南々の問題でもあろうかと思いますし、東西関係も絡んでくるかと思われます。後でまた個別にはお伺いいたしますけれども、とりあえずちょっと時間をいただきまして、最近の外交の問題で、大臣御苦労なされましたソ連との交渉でございますが、ポリャンスキーさんと久々ぶりにお会いになられてそれなりに実が上がった、このようなお話も聞いておりますし、また宮澤官房長官からはああいった問題が出、ソ連からも抗議が来ている、こういうような状況もございます。先般、私も予算委員会で、この問題を北方領土の日と関連いたしましてかなりの時間を割いて聞かせていただきましたが、一歩進んだ、脈はあるのだ、このように御理解なさっているかどうか、まずその点を承りたいと思います。
  97. 伊東正義

    伊東国務大臣 日曜日にポリャンスキー大使と会いました。先方から話のありましたことは、日ソの友好は大切なので、何とか友好関係を続けていくように努力しなければならぬということが一つ。もう一つは信頼措置。ヘルシンキの最終文書に、ヨーロッパではできておりますが、東洋ではまだ信頼措置がないということで、ブレジネフ演説の中の極東部分という考えでございましょう、信頼措置をやる必要がある、ついては事務レベルで相談する用意があるということの申し入れがあったわけでございます。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕  それで私は、ブレジネフ演説には領土問題は今度は落ちているが、日本としては領土問題というものは国民の総意で、四島返還というものはどうしても実現しなければならぬことだ、特にまたその上に軍備の増強がある、あるいはアフガニスタンに対してソ連の軍事介入がある、そういう中で信頼措置と言われても、やっていることとどうしても逆行しているとしか思えない、日本としては四島返還ということを国民の総意としてどうしても主張するのだというようなことを、実は従来の主張を私はしたわけでございます。  それに対しまして、ポリャンスキー大使は、領土問題はもう十分ソ連から伝えてあるので、それ以上伝えることはないのだ、領土問題にいつまでも拘泥していては両国関係が進まぬじゃないかということで、あと経済問題でございますとか、科学技術の問題でございますとか、文化の問題でございますとか、あるいは政治のいろいろなレベルの話し合いということもあるだろう、そういうことをやるべきだ、ついてはそういうことについて日本で何か提言はないかということでしたから、私は、北方領土の墓参とコンブ漁の問題を、従来実現しておりませんのでこれを逆に提案したというようなことでございました。  領土の問題につきましては、日本は従来どおりの主張をしたのでございますが、ソ連側はもうそれは終わっているのだ、そのことについてつけ加えることはないということでございまして、この問題は進展を見なかったというのが実情でございますが、会談そのものは、会って話したポリャンスキー大使も、こんなにゆっくり日本の主張を聞いたことはなかった、日本が日米中で結託してソ連に当たるのだなんて言いますから、そんなことはないとはっきり言ったこと、軍国主義化していると言うから、そんなことはないと言ったこと、あるいは墓参、コンブの問題、この四つはモスクワにすぐ連絡するというようなことを言ったのでございまして、会ったこと自体、話したこと自体、私はやはり有意義であったというふうに思っております。領土の問題につきましては、はなはだ遺憾ながら進展することはなかったということでございます。
  98. 林保夫

    ○林(保)委員 大変有意義であったという御評価、それなりに結構だと思いますが、なお、どうもやはり宮澤官房長官がああいう発言をなさいますと、何か閣内不統一なのか、あるいは日本政府の外交の姿勢として、一方ではやわらかくいき、一方ではかたくいくというような非常に高度のテクニックがあったのじゃないだろうか、新聞紙面を見て、実は専門家がそういうような話をしたりもしておりました。大臣として、その点どのようにお考えなのでございましょうか、外交上のテクニックの問題と内容の問題と二つあろうかと思いますが、果たしていいのだろうか、このような感じを私自身も持ちますので、お伺いしておきたいと思います。
  99. 伊東正義

    伊東国務大臣 私とポリャンスキー大使の会談は、非常になごやかなうちにやったのです。特に大使は前から私はよく知っている人でございますので、外務大臣になってから初めて会って話したのでございますが、そういう関係でなごやかでございましたが、内容は厳しい内容だったのでございます。  官房長官の発言は、私は何にも連絡を事前にしたわけでもなし、きょうも官房長官は、自分の真意が向こうに伝わらなかったことは残念だというような意味のことを言っておられたわけでございまして、私が、それ以上官房長官の発言についてとやかく申すことは適当ではないと思いますので、その点は差し控えさせていただきたいと思います。
  100. 林保夫

    ○林(保)委員 なろうことなら、お打ち合わせぐらいして、ぴっちりと硬軟両様の作戦で持っていかなければ、なかなか大臣のおっしゃるように厳しい条件が出てまいりますので、そのような印象も持たなくはございませんが、先ほどおっしゃいました、新聞でも大きく報道されました信頼措置でございますが、この内容は一体どんなものなのかという点、ひとつ御説明いただきたいのでございます。
  101. 伊東正義

    伊東国務大臣 具体的にポリャンスキー大使が信頼措置の内容説明するということはございませんでした。ございませんでしたが、ヨーロッパにおけると同じようにという発言はあったのでございます。ヨーロッパでは、たとえばあれはたしか、二万五千人以上の兵員が参加してやる演習は事前に報告するとか、そういうようなことが内容になっていたわけでございますので、事前にいろいろなことを報告し合うということでお互いが信頼しようということが中心だろうと思うのでございますが、具体的な内容、こうだこうだという説明はございませんで、ヨーロッパでやっているようにと、こういうような話でございました。
  102. 林保夫

    ○林(保)委員 その信頼措置につきましては、大臣はこれから措置を進めていく模索というか、あるいは逆に日本から提案してもよろしいわけでございますけれども、何かなさいますでしょうか。
  103. 伊東正義

    伊東国務大臣 向こうから口頭で申し入れがあり、書き物は参考にとして置いていかれましたので、これはどういうふうに取り扱うかまだ相談はしておりませんが、ポリャンスキー大使には、返事を出すときはモスクワにいる日本の魚本大使から返事をするから、そのときはグロムイコ外務大臣に必ず会えるようにしてもらいたい、私はポリャンスキー大使に会ったのだから、モスクワでは日本の大使がグロムイコ外相と必ず会えるようにしてもらいたいというようなことを実は言ったのでございますが、返事をどうするかということにつきましては、まだ返事の内容、あるいはいつごろするかとか、そういうことは決めておりません。  こういう申し入ればアメリカに対してもあったのだろうと思いますし、そのときの話では、中国にもするつもりだ、北朝鮮にもするつもりだ、こういうような話が口頭でございました。でございますので、そういう国にしていられるのかもしれません。われわれとしましてどういう返事をするかということは、十分考えましてするつもりでございますが、その場合に、こういうことを言われても、やっておられる行動は逆じゃないか、逆なことをしながらこういうことを言われるのはおかしいじゃないかという意味のことを私は口頭ですぐに言ったのでございます。これからその辺のところは十分に相談をしまして、どういう取り扱いにするか決めたいと思っております。
  104. 林保夫

    ○林(保)委員 ちょっとこれで時間をとられて申しわけないですけれども、もう少し聞いておきたいと思います。  結局、演習に参加するといいますか、一緒にやろうということでありますと、軍事的な側面が非常に強いような印象を受けるわけでございますが、日本のいまとっている姿勢から申しまして、果たしてそういうことが可能なのだろうかどうか、検討に値するのかどうか。あるいはまた、十九日に安全保障会議も持たれるように新聞報道がなされておりますが、そこいらの議題になるものでしょうか。どういうような扱いになるのでございましょうか。
  105. 伊東正義

    伊東国務大臣 十九日の会議というのは、私が国際情勢を話すことが議題だということでございます。ブレジネフ演説の分析といいますか、あれをどういうふうに考えるかというようなことで、国際情勢が大分ございますから、あるいはレーガン政権が、まだ私は会っていませんけれども、いろいろなところで演説をしたとか、いろいろと新聞に出ていますが、そういうものの分析とかいうことの報告を私はしようと思っております。ポリャンスキー大使に会ったということはもうみんな知っておられますから、会ってこうだった、こういう話だったということは報告はしますけれども、そのことが議題になってどうということは私はないと思います。
  106. 林保夫

    ○林(保)委員 わかりました。と同時に、いわゆる信頼措置を含めて、先般の予算委員会でも、アヒルの水かきぐらいは一体どうなんだろうという話も大分私はさせていただいて、なおいまだに水かきが始まっていないのかなという印象で、はっきりしませんでしたけれども、これから、先方が提案しました事務レベル会談、これをどういうふうに外相のお考えとして進めていかれるのか。それから、先ほどお話しのグロムイコさんとわが魚本大使とが会われる時期、これは非常に早くおやりになるのだろうと思われますけれども、その辺の見通しについてお伺いしたいと思います。
  107. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  最後の、魚本大使から返事をすると仮定しまして、さていつごろそういうことをするかということは、いろいろなことを考慮して決めなければいけませんので、大体いつごろにというようなことはいま実は決めてないわけでございます。  それから、事務レベル会議のお話がございました。去年は、貿易協定の見直しということで、期限が切れましたので、一月に貿易協定の見直しを事務的にやったことがございます。そういうような問題がいろいろございますので、この前の会談で向こうから提案があるのかなと私は思ったのでございますが、日本側から何か提案がないか、こういうことでございましたので、私は墓参とコンブの話をしたのでございます。これは向こうから提案があるかどうかまだわかりませんが、いまの情勢のままでこっちからぜひやってもらいたいと言うような筋のものではないと私は思っておるわけでございまして、事務レベルの会議でございますとか、そういうものが両方でいま恐らく頭の中にあるのだろうなとは思いますけれども、いまここでそれをやる、やらぬとか、こっちから提案するということは考えておりません。
  108. 林保夫

    ○林(保)委員 私がやはりそういう接触は小さい大きいにかかわらず早い方がいいのじゃないかと申しますのも、昨年十一月、円卓会議へ党を代表して行かしていただきましたときに、いろいろ感じたのでございますけれども、率直に言うて、ソ連は日米中の同盟関係強化をやはり一番心配しておるという印象を禁じ得ませんでしたし、第二には、リムパックの合同演習なんか、向こうは、一体どうなんだということで、個別にあるいは会議の席で大分話が出ておった、こういうことも事実でございます。と同時に、大変大事なことは、鈴木総理が東南アジアに行かれる、一体何しに行くのだ、これは公的にも私的にも、私が名指されて聞かれたわけじゃございませんけれども、いろいろな話がございました。  ということは、急に出てきたわけじゃございませんけれども、今回審議の対象になっております三つの協定、さらにまたこれから審議していかなければならぬ協定条約なども、やはりそれらとの連帯を経済援助の側面で強化していくという線がはっきり出ておりますので、向こう側にとっては一層、従来以上に気をもむ立場に立つだろうと思われます。そういう点の外交上の御配慮も、今国会で批准あるいは承認いたします協定条約の審議の促進とあわせてぜひしておいていただきたいということをこの機会にお願いしておきたいと思います。  それから、もう一つ大変大事なのは、先ほど来質問もございましたけれども、アメリカの対外援助政策が非常に変わってきておる。これは予算上の理由だけではないと思います。いつか、レーガン政権登場のときに大臣に、政策は変わるのでしょうかということで大分ここで申しまして、人権外交から国権外交という線で、利害打算と言っては悪いのですけれども、そういった側面が強く出てくるのじゃないだろうかというふうに質問もさしていただいたわけでございますが、見れば見るほど、国際機関への援助はできるだけ控えて、二国間の援助を強化していく、総体としては援助を減らす。そういうことになりますと、一部の新聞論調に見られますように、わが国がアメリカの手の届かぬところを肩がわりするといったような形にもなってきておって、やはり変わってきているなという印象を禁じ得ないのでございます。  重ねまして予算委員会でも聞いたのでございますが、わが国の対外経済協力あるいは援助の政策というものをどういう方向でこれから特に注意してやっていかれるのか。ここにも大臣が国会で外交演説をなさった資料もございますが、これ自体、私は大変変わっていると思うのでございますが、御方針を承りたいと思います。
  109. 伊東正義

    伊東国務大臣 最初の日米中の問題でございますが、これはポリャンスキー大使は言いませんでしたけれども、ブレジネフの演説にございますように結託ということでございますので、日本はそんな結託なんて考えていない、日中は日中、日米は日米一日ソは日ソということで、それぞれ二国間の問題として平和友好を保っていくのだ、日米中が結託をしてそれに当たるなどということは全然考えていない、そういうことをるる説明いたしました。それはわかったからモスクワに連絡しておくということをすぐに言っておりました。  この点は、グロムイコ外相に会いましたときは、米のことは一切言いませんでしたが、日中ということを盛んに言いました。日本中国が仲よくしている、平和友好を保っていることが日本の軍国主義化につながるのだというようなことをグロムイコさんが言いましたので、これも、全然そんなことは違う、経済協力はする、中国の近代化を助けるけれども、軍事的な援助とか協力は一切しないのだということを説明しましたが、私はその辺にソ連の大きな一つの誤解があるのじゃないかという感じを非常に強く持ったのでございます。それは日本側も常に、そういうことじゃないということを外交面を通してもはっきりソ連に理解させることが必要だ、こういうことを私はこの間強く感じたのでございます。  もう一つの問題でございますが、来年は予算が減るのじゃなくて若干ふえるのです。それは確かでございます。アメリカも、カーターさんがうんと伸ばそうと思ったのを、そう伸ばさぬでいいと言って減らしたということでございまして、実際はことしよりも若干アメリカの援助の予算はふえるはずでございます。  ただ、そういうことからだけでなくて、二国間をふやそうとしているということは予算関係だけでないじゃないかとおっしゃることは、確かに私もそうだと思います。それはそういうふうに見れるわけでございますが、先ほどからるる御説明するように、やはりこれは人道問題あるいは相互依存ということから考えて、経済援助の本質は南北問題が中心なんだということを私は信じておりますし、そういう考えのもとに立って、この委員会決議というものを十分頭に置きまして物は考えていく、これは必要かどうかという日本としての必要性について自主的に判断していくというのがやはり日本としてやらなければならぬことだと私は思っているわけで、先ほどから高沢先生、井上先生、玉城先生みんなにそういう考えでお答えをしているわけでございます。向こうへ行きましてもその考えは述べようというふうに思っております。
  110. 林保夫

    ○林(保)委員 ここに大臣の外交演説がございますが、二度、三度繰り返して読んでみまして、この「経済協力の理念」の中でも同じでございますが、大変強く受けましたのは、総合安全保障にわが政府経済援助を背負って踏み切った、このような印象すら感ぜられる。特に外交演説の中では、「わが国の広い意味での安全保障の確保のためにも必要であり、わが国が近年パキスタン、トルコ、タイ等の」ここが大事なところですが、「紛争周辺国への援助を拡充しているのは主としてかかる観点からであります。」というふうに演説もなさっておられます。その辺につきまして、先ほど中南米あるいはアフリカ、そのほかちょっといろいろと問題のある国々への援助もやはり出てきておるように思いますが、はっきりとこれから、人道上の援助というのも一つございましょうけれども、なお視点としては総合安全保障に対して役割りを果たすのだ、こういうことに御決意されているのかどうか、御説明をお願いしたいと思います。
  111. 伊東正義

    伊東国務大臣 南北問題といいましても、南と一番関係の深いのは先進国の中で日本だと私は思っているわけでございます。資源その他の面から考え、いわゆる欧米以外の国でこんな先進国になったのは日本だけでございますので、日本に対する別な意味の期待というものも私はあるだろうと思いますし、南と一番関係のあるのは日本だということを考えますと、日本の広い意味の安全保障というようなことから考えて、南の開発途上国がいかに大切であるかということはよくわかるわけでございます。  でございますので、これは南北問題が中心であるべきだということを私は申し上げましたが、広い意味でそれじゃ総合的な安全保障というものは何だ、こういうことを言いますと、これは何も軍事力だけじゃなくて、日本の平和、安定ということをやっていくには世界が平和、安定でなければいかぬ、あるいは日本の資源、外国から入る資源を考えてみましても、その関係国とも協調を保っていくことが必要だということを広い意味の安全保障ということから考えれば、当然発展途上国との経済協力ということは入ってくるわけでございますので、やはりそういうことを総合的にいろいろ考えてやっていく。しかし、その途上国というのはもうほとんど南の国であり、日本にとりましても非常に関係の深い国だ、こういうことは言えると思うのでございます。
  112. 林保夫

    ○林(保)委員 そこで、この「経済協力の理念」の中にも出ておるわけでございますが、われわれは「援助は相手国に直接役立つと同時に、それが平和で安定した国際秩序構築への貢献となって、」回り回ってすなわち「国益に役立つもの」こういう考えをここではっきりさせておられます。と同時にまた、これをちょっと承りたいのでございますが、「日本の総合的安全保障を確保するための国際秩序構築のコスト」である。言葉をかえて言いますと、平和を維持する、安全を維持するためのコストとして経済援助をやるのだ、こういうふうにもとれるわけでございます。  これは従来、戦後三十五年間、何かわれわれ国民の立場から見ますと、やみくもにお金があるから助けてあげるのだ、あるいは出すのだというような、どちらかというと無原則の援助のような印象を受けておったのでございますが、まあ経済大国になった、積極的にやろう、やる以上はということで、国民は大変そこのところの理屈づけを期待していると思います。その辺について大臣はそういうコストをそれぞれにもちろん見てやっていられるのでございましょうが、どういう御判断で国別の援助をやっておられますか、これからやられますか、承りたいと思います。
  113. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま、平和のコストということが書いてあるとおっしゃいました。そのとおりだと思います。あるいはそれだけでなくて、私は日本がこれだけ経済的に伸びてきたということに対する一つのコストでもあるというふうに考えるわけでございまして、日本のいわゆる平和を保っていくという面からしましてやはり発展途上国が平和でなければ困るわけでございますし、ある程度伸びていってもらわなければ、格差が開くだけであってはこれは摩擦の起こるもとでございます。そういう発展途上国が平和であり経済的に伸びていってもらうということは、日本の平和にとりましても、世界の平和がなければ日本の平和がないのですからこれは大切なことであり、あるいは経済面で日本が繁栄していくという面でも、資源はほとんどないのですから、資源の供給を安定的にやってもらうということにもその国の経済社会開発あるいは民生の安定ということは役立つわけでございますので、平和だけでということじゃなくて、平和にも、日本経済的に力をつけていく上にも、これはやはり一つのコストと考えていいのじゃなかろうか、こういうふうに思っております。
  114. 林保夫

    ○林(保)委員 そういう点で、従来援助いたしますときも、何か私どもの立場からしますと、国民から見ると、なぜあそこにああいうふうにやらなければならぬだろうかということの、むしろ積極的に日本にこう役立つのだ、われわれはこう大国としてやらなければいかぬのだというようなPRといいますか、位置づけがどうもやはり足りなかったような感じがいたしまして、何か外国にはくれてやるのだという感じを持っているグループもございますので、これからむしろ、そういう面がございますのでしたら、これはコストとして確かに正当なものなんだというものをもう少しはっきり出していただきたいというような感じもいたします。  そういう点で、時間がございませんので三協定について簡単に御質問申し上げたいと思うのですが、アフリカ開発銀行の今度日本が出資、拠出いたしますそれについて一番心配なのは、アメリカがこれに果たして期待どうり乗ってくるのだろうかという点でございますが、この辺の見通しは事務局はどのように御判断になっておられますか。
  115. 梁井新一

    ○梁井政府委員 アメリカはこの銀行に対しまして一七%という一番大きな出資比率で出資するわけでございますが、先ほど大臣からお話がございましたとおり、アメリカは、多少今後援助政策の変更があるかと思うのでございますけれども、すでにコミットした多数国間援助は守るということを言っておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、アメリカが従来の経緯に従いまして一七%の第一位の拠出国としてこの銀行に加入することは間違いないと考えております。
  116. 林保夫

    ○林(保)委員 そう期待いたしまして、次の点でございますが、中国はなぜ入らないのだろうか。従来のアフリカに対する中国の、これは台湾もそうでございましたけれども、積極的な姿勢から見て、当然入るべき国がどうも落ちているように思います。
  117. 梁井新一

    ○梁井政府委員 中国は昨年の暮れに世銀に加入したばかりでございまして、恐らく世銀に加入したところで、今後の問題は次の課題だと考えておるのじゃないかと思いますけれども、現在までのところ、この銀行に対してどうするという態度の表明はございません。
  118. 林保夫

    ○林(保)委員 また、中国とは逆に、被援助国と見られるようなアルゼンチンとかブラジル、韓国、スペイン、それから東欧ではユーゴが入っていると思いますが、これは入れば入っただけメリットがあるということから入ったのかもしれませんが、その背景をどのように外務省としてはとらえていらっしゃいますか。
  119. 梁井新一

    ○梁井政府委員 ユーゴスラビアにつきましては、従来から国際開発金融機関に関心を持っておりまして、世銀、それから米州開発銀行アフリカ開発基金にも入っておるわけでございます。そういう観点からアフリカ開発銀行にも加入すると思うのでございますけれども、アルゼンチン、ブラジル等につきまして今回加盟する理由につきましては、私どもといたしましても、これは各先進国共通でございますけれども、ある程度力をつけた開発途上国と申しますか、いわゆる中進国と申しますか、こういう国がさらに開発途上国に対して援助をするということは非常に結構なことだと思っているわけでございます。特に南北問題の場では開発途上国間協力ということをもって言われておるわけでございますけれども、私どもとしても、今後こういう動きをなるべくエンカレッジと申しますか、奨励と申しますか、やっていきたい、こういうふうに考えております。
  120. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一点、アフリカ開発銀行につきまして、実際にあちらをずっと回ってみますと、アフリカ諸国の政治体制が大変違います。それからまた、生活水準、経済水準もまるっきり違うと思いますが、特に政治体制の違いを、南アだけ除いてあと五十カ国が融資の対象そのほかになるわけですが、これについては、日本としてと言ってもいいと思うのですが、アフリカ開銀は無差別でやっていくのでしょうか、日本の意思をどこかへ入れる余地がございますのでしょうか、その点を伺っておきたいと思います。
  121. 梁井新一

    ○梁井政府委員 アフリカ開発銀行南アを除きますすべてのアフリカの国が入っておるわけでございますけれども、融資の決定につきましては、関係加盟国の政治的性格によって影響を受けてはならない、経済的考慮のみに基づいて行われるということが協定上決まっております。したがいまして、アフリカ開発銀行の融資政策につきまして、域内の国の状況によりまして融資政策上の差別が行われるということは考えられませんし、また日本も一定の票数を持つわけでございますけれども、日本としてもこの政策を支持したい、こういうふうに考えております。
  122. 林保夫

    ○林(保)委員 時間が足りませんので、一次産品共通基金について事務当局の方から一言だけ承っておきたいのでございます。  日本がいわゆる第二勘定への二千七百万ドルの拠出表明を早くやった。それで交渉促進にはずみをつけたような印象でございますが、これはどういう効果をねらわれたのかが第一点。  もう一つは、一次産品の総合プログラムでは十八品目ございますが、国際商品協定ができておりますのはゴムとすずの二つだけでございますが、これがあとも続いてできるような状況にあるのか。日本がその中で、そういう協定をつくるのにどういう役割りを演じて促進していくのか。それがないとできないと思いますが、連携協定がもしおくれるとすれば、これは第二勘定中心の運営になってしまうと思うのでございますが、その辺の見通しについて、事務当局の方から簡単で結構でございますがポイントだけお聞かせいただきたい。
  123. 賀陽治憲

    賀陽政府委員 お答えいたします。  第一点の、第二勘定に対して二千七百万ドルを早きに及んで拠出いたしましたのは、これは先生御指摘のように、わが国として第二勘定の早期な充実を図るということでございまして、一国としては現在までのところは最大の拠出でございます。御承知のように第二勘定は、研究開発でございますとか、市場調査でございますとか、いわば一次産品の安定を志向する諸国のそういった分野における一種の開発援助的な要素を持っているわけでございまして、これは従来の国別の融資的な機関に比しまして、一次産品に即した対応をするというきわめて効率的なものでございます。そういった意味で、新しい画期的な意味があるわけでございますが、わが国としてはこれに対して早期に拠出を表明したということでございます。  それから第二の点は、十八品目の交渉状況はどうであるかということでございますが、これも林委員の御指摘になりましたように、現在有効な国際商品協定のうち、第一勘定の貸し付けの対象となるように規定を有しますものはすずと天然ゴムでございます。ただ、これも御高承と存じますけれども、一九八〇年の国際ココア協定がございまして、これが国際緩衝在庫制度に関する規定を有する協定として現在署名のために開放されておりまして、潜在的にはこの協定も第一勘定の対象となし得るということになっているわけでございます。  それから、国際的に調整された国内在庫を有するというやや異なった概念でございますが、そういった組織を有するものが一九七七年の国際砂糖協定でございます。  そういったことで、第一勘定が提携可能と考え得るところの国際商品協定というものは、いま申し上げたようなところでございます。  また、第二勘定につきましては、これは先ほどちょっと御説明を申し上げたわけでございますが、最近の例としてジュート及びジュート製品に関しましては、研究開発、市場開拓ということを目的とした史上最初の商品協定というものが本年一月から交渉されておるわけでございまして、これは内容から申しまして第二勘定の融資対象になり得るということでございます。  また、その他につきましては細かくなりますのでお許しを得て省略させていただきたいと思いますけれども、熱帯木材でございますとか、硬質繊維、銅、茶、綿花等については、現在UNCTADの予備協議の場で協定することについての検討が行われておるわけでございますが、注目されております銅とか綿花等につきましては、現在のところ協定化が可能であるかどうかということは白紙の状況でございます。
  124. 林保夫

    ○林(保)委員 最後のASEANセンターの設立協定でございますが、これは時間がございませんので質問を省略しまして、御要望申し上げておきたいと思います。  こういう機関は、何といってもやはり人の問題、そしてPRの問題だろうと思います。特に三省一緒になってうまくいくのだろうかという問題もあろうかと思いますが、なお外に詳しい外務省、外務大臣がひとつ中心になられまして、理事、執行委員、さらには事務局長、何とかしっかり有能な人を採られまして企画し、プロモートしていく、こういう形をぜひ出していただきたい。  このことを御要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  125. 奥田敬和

  126. 野間友一

    野間委員 ASEAN貿易投資観光促進センターについてお伺いをしたいと思います。  本協定の背景ですけれども、恐らくASEANの強靱性を高めるためという点が背景となって本協定が結ばれたのではないかというふうに思います。その援助に当たっては政治的な意味合いを本来持たすべきではない、こういうふうに思いますが、この点について政府の方針についてお伺いしたいと思います。
  127. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  このASEANセンターの設立協定に関しましては、昭和五十二年の八月、当時の福田総理がASEAN諸国を訪問した際にASEANの各国の首脳と話しまして、その結果日本とASEANの共同声明が出たわけなんですが、その共同声明の中で、ASEANの産品の対日輸出を促進するためにASEANの貿易観光常設展示場の東京設置を含むいろいろな措置をとる用意があるということがうたわれたわけでございます。こういった共同声明の趣旨を背景にしまして、ASEAN各国と日本といろいろ意見を交換しまして、先方から、日本からASEAN各国に対する投資をより伸ばしてほしいとか、あるいはASEAN各国から日本に対する製品その他のなかなか売れないものを売れるように日本側で援助してほしい、さらにはもっと観光客を出してほしい、そういったような要望がございまして、主たる目的経済交流あるいは人的交流、このような目的をもちまして、交渉の結果、協定ができたわけでございます。
  128. 野間友一

    野間委員 大臣、いかがでしょうか。つまり、ASEANに対するいろんな援助、これはASEANに限るわけじゃありませんけれども、一般的な意味におきましても経済援助、経済協力については政治的な意味合いは持たすべきではない、これが本来の方針ではなかろうかと私は思いますけれども、この点についていかがなのかということなんです。
  129. 伊東正義

    伊東国務大臣 厳密な意味で経済と政治を分けて、経済経済で考えるべきだ、こうおっしゃいますけれども、やはり経済だけひとり歩きということはないと私は思うのでございます。現実の問題として、政治的な問題と経済の問題というのはどうしても完全に切り離して別に考えるというわけにはなかなかいかぬじゃないかということを私は考えます。
  130. 野間友一

    野間委員 そういう方針でもしゃられるとすれば、これまたいろいろ問題が出てくると思うのです。たとえばいまのこのセンターの設立についても、従前は取り決めでインドシナ三国も入ったものがあったのです。今度はそれがないわけです。そういう福田さんが行かれたときの約束事が背景にある、あるいは鈴木総理も行かれましてそういうことも背景にあるということは私も知っておるわけでありますけれども、今度のASEANセンターを見ますと、インドシナ三国がすっぽり抜けておるわけなんです。そこで、今日、政治的な状況についてもASEANとインドシナ三国の溝は深くなっておるというふうに私は思うわけですが、この溝を大きくするようなことを日本がしてはならない、これがやられる場合の基本的な立場、方針でなければならぬというように思うのですけれども、その点いかがでしょう。
  131. 伊東正義

    伊東国務大臣 私も、日本としては何とかインドシナ半島の平和ということを考えまして、それが東南アジアの全部の平和につながるという努力日本としてもやらなければいかぬということで、国連等でいまいろいろ話しているところでございますが、できるだけそういう努力をする、平和が来るように政治的な面でそういう努力をしていることは確かでございます。でございますので、今後ともこういう努力は続けていくということでございまして、このセンターも本当に平和が来ればみんな入ってもらってやるという事態が来ることが望ましい、私もそれは考えます。
  132. 野間友一

    野間委員 インドシナ三国が今度抜けたのはどういう理由によるものでしょうか。
  133. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 今度のセンターにインドシナ三国が入っていない理由につきましては、基本的にはこういう背景があると思います。  昭和四十七年の一月に東京に、ASEANでなくて東南アジア貿易投資観光促進センターというのができたわけでございますが、これにはASEAN五カ国、インドシナ三国、日本という九カ国がメンバーでございました。これは期間五年ということで発足しまして、さらに五年たった後、議定書によりまして一年ずつ二回延長したわけでございますが、延長の際に当方からインドシナ三国に、延長に同意するかどうかということを何回か照会しましたけれどもナシのつぶてであった。それから、当時のインドシナ三国の国内の政情等を反映したのだと思われますが、当初の五年間の段階においても、インドシナ三国から分担金の支払い等が滞りまして、事実上休眠状態だったというような事態があったと思います。  こういった事態がありまして、ASEAN五カ国が今度はとりあえず、とりあえずという言葉は当時あったのですが、日本とASEAN五カ国でこういった貿易投資観光の促進センターをつくりたいという話がございまして、今回協定をつくりましてお諮りしている次第でございますが、先ほど大臣からも申されましたように、あるいはインドシナ地域に平和が招来されて、もしインドシナ三国が同様の協力をしたいというのであれば、その時点においてわれわれとしても可能性を検討するにやぶさかでないと考えております。
  134. 野間友一

    野間委員 やはりアジアの平和、安定というような点から考えましても、インドシナ三国を除くことは私は正しくないと思うのです。いまいろいろないきさつについて話がありましたけれども、やはり粘り強く、特に外務大臣は援助についてアジアを重視しているというような表現もありましたけれども、粘り強く呼びかけて、そうして平和あるいは安定に寄与するというために積極的に日本努力する必要があるのじゃないかというように思いますが、いかがですか。
  135. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本も極力呼びかけるということは私も大切だと思います。それで、さしあたっては国連でも決議をし、ASEANもみんな希望している国際平和会議にも出席して、一回でなるとは思いませんが、話し合いをするという態度をベトナムにも持ってもらうということが必要だ、そういう努力を続けるというお話はよくわかります。
  136. 野間友一

    野間委員 関連してお聞きしますけれども、カンボジア問題の国際会議でありますが、これを大変に期待をされておるということのようです。しかし、現実にどうかといいますと、カンボジア自身がこれに反対をしている。その上に、三月の十日、十一日、ピョンヤンにおいてシアヌークあるいはキュー・サムファンの会談が行われまして、新聞報道等々も私は承知をしておりますけれども、こういうのを見ましても、カンボジア問題の国際会議は現実性がほとんどないというように私は考えておりますが、この点についてはどのようにお考えでしょう。
  137. 伊東正義

    伊東国務大臣 この国際会議の開催につきましては、ワルトハイム事務総長が特使を決めるということで、特使も決めて、事務総長がひとつ努力をしよう、こういうことでございますので、日本としてはその事務総長の努力を支援し、それをまた期待しているといういまの立場でございます。ただ、情勢は非常にむずかしいものがあるということもよく承知しております。
  138. 野間友一

    野間委員 結局、自国がそういう気分が全くないし、条件もない、ところが、外からやれやれというようなことでけしかける、けしかけると言うとあれですけれども、そのこと自体が言ってみればカンボジアへの一種の内政干渉になるのじゃないかというふうに私は思うわけです。したがって、そういう気分、あるいは条件が出てきた場合はともかくとして、そういうのを外から働きかけるというようなことは私はよろしくないと思うのです。すべからくそういうことはやめる必要があるのじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。
  139. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほど申しましたように、国連という機関の事務総長がいま働きかけるということをやっているのでございまして、それが内政干渉だ、こういうふうにおっしゃると、先ほどの日本がベトナムなりカンボジアにこれに入れ入れと勧めるのも内政干渉だというふうなことにもなりかねないのでございまして、やはり国際機関がそういうことをひとつ国連決議もあったのだからぜひ参加して平和裏に話し合いをしようじゃないかと言って話しかけること自体は内政干渉ということじゃない、当然そういうことはあっていいというふうに私は思っております。
  140. 野間友一

    野間委員 しかし、カンボジアの中ではそういう条件がないわけです。あるいは大変困、難厳しいというときに、外からわあわあとやること自体大変おかしいのじゃないかということの指摘なんです。  インドシナ三国とASEANが仲よくやっていくことをもし望むなら、インドシナ半島そのものの平和あるいは安定が不可欠じゃないか、これは当然だと思います。だとするならば、いまある現カンボジア政権の承認あるいは一層の安定化への協力が必要ではなかろうかというふうに私は思うわけです。イギリスとかあるいはインドに引き続いて、オーストラリアがポル・ポト政権の承認を撤回しました。日本の外交としては、この実態に即して考え、現実的な問題としてこのようなイギリスとかインド、あるいは最近のオーストラリア、こういうような国にならって、少なくともポル・ポト政権の承認撤回というようなことをする必要があるのじゃないかと思いますけれども、この点に対する外務大臣の認識はいかがでしょうか。
  141. 伊東正義

    伊東国務大臣 インドシナ半島の平和というのは、本当に日本も、ましてや東南アジアみんな希望していると思うわけでございますが、ベトナムのカンボジア侵攻が撤兵して、カンボジアの中で自由に国民が意思表示をして、選挙をして自分のリーダーを決めていくというやり方をやることが私は一番平和につながっていくのだというふうに考えております。そういう撤兵ということが私は必要なことだというふうに思っておるわけでございます。  民主カンボジア政府承認国連における代表権の問題について御意見がございましたが、いまのヘン・サムリン政権はまさにベトナムの、外国の軍隊の占領、軍事介入ということで支えられている政権でございますので、日本としましては、ポル・ポト政権が過去においてやりました政策がみんな正しかったとはちっとも言っていません、政策でもやはりおかしなことがあったということは私は認めるわけでございますが、ヘン・サムリン政権を承認するというようなことになりますと、これは外国の軍事介入というものを認めるというようなことにつながるわけでございますので、日本としましては、国連での世界の大多数の国が民主カンボジア政府の代表権を認めたという事実も昨年の九月の事実でございますし、いま民主カンボジア政府の代表権につきましてそれを反対するとか、民主カンボジア政府承認を取り消すとかいう考えは持っておりません。
  142. 野間友一

    野間委員 ヘン・サムリン政権についての評価なり見方については大臣と私は全然違いますので、それはもう始終国会の中で論議されておりますのできょうは触ればいたしませんが、少なくともそれを承認しないとしても、いま申し上げたようにポル・ポト政権の承認を撤回するというようなことぐらい考えるべきじゃないかということにいま重点を置いて私は質問したのですけれども、再度お答えいただきたいと思います。
  143. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本はASEANの諸国といま非常に友好関係を強めておりまして、インドシナの問題についてもASEANの見解を支持するということを日本は原則として言っておるわけでございます。ASEANの諸国もいま民主カンボジア政府承認を取り消すということは考えていないわけでございまして、日本としてもいま野間さんのおっしゃったようなことは全然考えてないというのが現状でございます。
  144. 野間友一

    野間委員 質問を変えまして、ASEANへの投資を含めた政府の援助についてお聞きしたいと思いますが、世界全体の中で占める対ASEAN援助はどのくらいの割合になっておるのか、まずお聞きします。
  145. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 お答えいたします。  七九年の実績で申し上げますと、政府開発援助の中の二国間援助に限定して申し上げますが、ASEAN諸国のシェアは約三〇%でございます。
  146. 野間友一

    野間委員 同じような質問ですが、世界全体の中で占める対アジア援助の割合はどんなものでしょうか。
  147. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 お答えいたします。  同じく七九年の実績で申し上げますが、アジア全体では六九・三%でございます。
  148. 野間友一

    野間委員 アジア重視はいま大変破格であります。それでは、アジアに対する援助の中で占めるASEANへの援助の割合はどうなっていますか。
  149. 松浦晃一郎

    ○松浦説明員 お答えいたします。  同じく七九年の実績で申し上げますけれども、大体六〇%弱でございます。
  150. 野間友一

    野間委員 こうして数字で見てみますと、大変にアジア重視、しかもASEAN重視ということがうかがわれると思いますが、先ほども若干お聞きしましたのですが、インドシナ地域あるいは先ほどの質疑にもありましたアフリカにおきまして、いま大変な飢餓の状態あるいは発展途上国の置かれた実態というものは非常に深刻なものがあるわけです。ASEANを非常に重視する、あるいはアジアを重視すると言われますけれども、そういうところも特に困っておるわけですから、もっと積極的に重視するということが必要じゃなかろうかというように私は思うのです。余りにも偏重し過ぎておるのじゃないか。  私も、立場としては、たてまえとしてはASEANに対してもそれが必要であれば対等あるいは平等という立場で、これが国民の利益になるならそれはいいとしましても、ただ、こういういろいろな数字統計からして、もっと地域に偏りがないような援助も考える必要があるのじゃないかという観点からの質問なんです。
  151. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま説明いたしましたように、アジアが非常に重視されているということは確かでございまして、あとアフリカ一割、中近東一割、中南米一割ぐらいだと思うのでございますが、日本はアジアに位置するわけでございまして、隣近所と言ってはなんでございますが、アジアがやはり日本にとりまして非常に重点を置いた地域であるということ、発展途上国の存在、いろいろ分布を考えてみまして、これはやはりアジア重視ということは正しいのじゃないかと思うわけでございます。  いま野間さんのおっしゃるように、特に食糧の問題等につきましては、本当に人道的な見地というような見地でやれば、アフリカの難民等に対しましてもう少し食糧援助というものを考える必要があるかなというように私は実は考えているわけでございますが、私は重点の置きどころは間違ってないのじゃないかというつもりでございます。
  152. 野間友一

    野間委員 私が大変懸念をするのは、先ほども大臣が言われましたけれども、要するに経済援助というのは、純粋な経済援助と政治的なそういうものを切り離して考えることは大変むずかしいというような趣旨の答弁をされたわけですが、ASEANに対するいま申し上げた大変多い統計上の数字から見ましても、何か政治的なそういうねらいとか意図があるのじゃないかという感じがするわけです。つまり、このアジアにおいてインドシナ三国に対するいわばアメリカなり資本主義国の防波堤としての役割りを果たすようなそういう背景があって、こういうような偏りがあるのじゃないかというふうに思っておりますけれども、この点はどうなんですか。
  153. 伊東正義

    伊東国務大臣 アジアといいましてもいろいろな国があることは野間さん御承知のとおりでございますが、ASEANによけい援助することは、アメリカの肩がわりと言ってはなんでございますが、インドシナ半島に対する防波堤として何か考えているというような意味のことをおっしゃったのでございますが、これは実はそういうことを考えてやっているわけではないのでございまして、バングラデシュにも、ビルマにも、あるいはインドにもというようなことで、パキスタンもそうでございますが、相当な援助をやっておるわけでございます。インドシナの防波堤としてアジアによけい考えているのだということは、私はそんな考えでアジア重視ということをやっているのじゃないということだけははっきり申し上げます。
  154. 野間友一

    野間委員 関連して聞きますが、レーガン政権の誕生によってアメリカの対外的な援助政策が転換したのではなかろうか。たとえば友好国と非友好国、これを選別して、友好国に対する援助を強めるとか、あるいはさまざまなことが言われております。私も、今度また訪米されるわけでありますが、おそらく経済援助についてもこういう友好国あるいは非友好国というように分けて、そして友好国に対する援助を重点的に強めていく、日本の場合も同じようにアメリカが圧力をかけて、そういう方向で援助の基準を決めて選択しろというふうなことを迫ってくるのじゃないかと思いますけれども、その点どうでしょうか。
  155. 伊東正義

    伊東国務大臣 まだ会っていませんので、その点詳細はわかりませんが、二国間援助を多国間よりもふやす傾向の方へ持っていこうじゃないかという話があったというようなことは、新聞等で私も読んでおります。でございますので、その辺のところは具体的にやってみませんとわかりませんが、援助をする場合に頭から友好、非友好と決めてしまってというやり方は、やはり中間もあるわけでございますし、いろいろな広い意味でこれは考えなければならぬわけでございます。  特に日本では、先ほども申し上げましたように、これだけ経済大国になった、あるいはこれだけ平和で、今後も平和を続けなければならぬという一つのコストだということも考えなければなりませんので、これはもっと広い立場日本としては自主的に考えていくということが必要だと思います。敵か味方かと言えば言葉はなんでございますが、分けてしまってということは、いろいろな情勢の変化もあるわけでございますから、私はそうでなく、もっと広い立場で物を考えていくということが日本としては必要だというふうに思っております。
  156. 野間友一

    野間委員 中央公論の三月号、四月号に連載された古森義久という人の「ワシントン情報」、これは外務大臣もお読みだろうと思いますし、予算委員会の中でもわが党の参議院議員の上田さんが問題にしたわけですけれども、アメリカではレーガン政権になってから特に日本に対して風圧と申しますか、厳しい対応を迫ってくる。これはマンスフィールド氏の記者会見や、あるいはきのうも外務大臣もお会いになったと思いますけれども、いろいろな形であれこれと来ているわけですね。それに対して古森氏の観測としては、日本側はかなり見方が甘いのではないか、そういうようなことも書かれておるわけでありますけれども、いまのレーガン政権のもとで、軍事力だけではなしに、あるいは経済協力、さらにはそうした政治力、いずれにしても非常に強い力で、とりわけソ連を封じ込めるという点で日本に対する共通認識を求めてくるというようなことが観測されております。対ソ共通認識というようなことが言われておりますけれども、訪米されるわけでありますが、それについてどういうお考えでお臨みになりますか。
  157. 伊東正義

    伊東国務大臣 対ソということだけに限定しないで、国際情勢につきまして認識の問題でいろいろ議論があることは確かだと思います。そういう国際情勢についての認識について議論する場は必ずあるというふうに私は思っているわけでございますが、その場合に日本としましては、いろいろな期待があっても、やれることとやれないことはまたあるわけでございまして、古森氏の論文も読みました。核の問題でございますとか、あるいは周辺海域を広める問題でございますとか、いろいろ書いてあったのでございますが、やはり私は、日本としては西側の自由主義諸国の一員であるということはもうはっきり踏まえまして、その上に立って、日本の法令でございますとか、あるいは予算制度、あるいは国民のコンセンサス、いろいろな面でできることとできないことははっきり言う、これが日本立場だというふうに考えております。
  158. 野間友一

    野間委員 もっとやりたいのですけれども、大臣所用のため時間の厳守を要求されておりますので、とりあえずきょうはこれで終わりたいと思います。
  159. 奥田敬和

    奥田委員長 次回は、来る二十日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時九分散会