運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1981-04-10 第94回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月十日(金曜日)     午後三時七分開議  出席委員    委員長 小沢 貞孝君    理事 阿部 文男君 理事 川田 正則君    理事 高橋 辰夫君 理事 上原 康助君    理事 吉浦 忠治君 理事 部谷 孝之君       愛野興一郎君    臼井日出男君       奥田 幹生君    亀井 善之君       熊川 次男君    高村 正彦君       泰道 三八君    中村正三郎君       伊藤  茂君    松本 幸男君       玉城 栄一君    瀬長亀次郎君       柿澤 弘治君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         総理府北方対策         本部審議官   藤江 弘一君         北海道開発庁総         務監理官    大西 昭一君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省条約局長 伊達 宗起君  委員外出席者         議     員 岡田 利春君         防衛施設庁施設         部首席連絡調整         官       岩見 秀男君         特別委員会第一         調査室長    長崎  寛君     ————————————— 委員の異動 四月十日  辞任         補欠選任   熊川 次男君     亀井 善之君 同日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     熊川 次男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  北方地域漁業権者等に対する特別交付金の支  給に関する法律案岡田利春君外八名提出、衆  法第八号)  沖繩及び北方問題に関する件      ————◇—————
  2. 小沢貞孝

    小沢委員長 これより会議を開きます。  北方地域漁業権者等に対する特別交付金支給に関する法律案議題といたします。  提出者より提案理由説明を求めます。岡田利春君。     —————————————  北方地域漁業権者等に対する特別交付金支給に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 岡田利春

    岡田(利)議員 ただいま議題となりました北方地域漁業権者等に対する特別交付金支給に関する法律案につきまして、提案者を代表いたしまして、その提案理由並びに主な内容について御説明申し上げます。  御承知のように北方地域は、わが国固有領土であるにもかかわらず、昭和二十年八月にソ連軍により占領されて以来、事実上同国の支配下にあり、戦後三十五年を経た今日においても、小笠原、沖繩など第二次世界大戦の結果、他国の統治下に置かれていた地域がすべて返還されたにもかかわらず、いまなお返還の見通しすら立っていないことは、周知の事実であります。  このため、北方地域地先漁場漁業を営んでいた漁業権者そのほか北方地域の元居住者北方地域漁業権者等)は、いまだに父祖の墳墓の地であるこれら諸島に復帰することができず、また、わが国でも数少ない大漁場であるこれら諸島周辺漁場漁業を営もうとすれば、しばしば拿捕の危険にさらされ、安全に操業できないという困難な状況にあるのが現状であります。  しかも、第九十三国会において北方領土問題等解決促進に関する決議全会一致決議されましたが、この決議の中で、本法案と関係する北方地域漁業権者北方領土居住者等に対する救済援護措置の拡充を強調しているのであります。  このような北方地域だけにある特殊事情及び北方地域漁業権者などの置かれている特殊な地位等にかんがみ、北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律の施行後約二十年を経過した今日、同法に基づく制度の見直しを行い、国会決議を十分に尊重し救済援護措置を講ずるため融資制度にかえて、現存している北方地域漁業権者等に対して特別交付金支給し、生活の安定に資するため、この法律案提案する次第であります。  以下、この法律案の主な内容を御説明申し上げます。  第一は、特別交付金支給の規定であります。  国は、北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律第二条第二項に規定する北方地域漁業権者等である者に対し、特別交付金支給することとし、特別交付金支給を受ける認定は、これを受けようとする者の申請に基づいて内閣総理大臣が行うものとしたことであります。  第二は、特別交付金の額であります。  北方地域漁業権者等支給する特別交付金の額は九十万円とします。ただし、昭和五十五年分の所得税額が八十万円を超える者については十五万円としました。  第三は、貸付業務の廃止であります。  現在、北方領土問題対策協会が行っている業務のうち貸付業務を廃止し、この貸付業務に係る権利義務政府関係金融機関に承継させるものとしております。  以上が、この法律案提案理由と主な内容であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
  4. 小沢貞孝

    小沢委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。      ————◇—————
  5. 小沢貞孝

    小沢委員長 沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  6. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 外務大臣にお伺いいたします。駆け足でお見えになったようですから、一息ついてお聞きください。  まず最初にお伺いしたいのは、今後の日ソ関係についてどうお考えになっているかということであります。  私は、まだ表面化はしてないが、何か新しい変化が近づいているような気がいたします。このところ、振り返りましても、三月の中旬に大臣ポリャンスキーソ連大使とお会いになりました。その前には、ソ連大使自民党三役と会談をされました、総理との会談はなしというふうなことのようでありますが。また、自民党有志議員も、鳩山さんが団長だと伺っておりますが、今月の末には訪ソをされるようなことを伺っております。  こういう動きが少し出てきた背景考えてみますと、いろいろあったと思いますが、一つにはソ連側の方で、先般のソ連共産党大会ブレジネフ書記長演説で、米ソ首脳会談の提唱あるいは対日関係前進を提唱する、極東での信頼強化措置として、ヨーロッパで行われているような演習の事前通告とかオブザーバーの招聘とかをアジアにおいても考えていきたい、いろいろな動き背景としてもまた現実にも起こっている。そうしてソ連側の方でも、これらの具体的検討のために、日ソ事務レベルの協議や意見交換を行う用意があるということを表明しておるわけであります。  こういうことを考えますと、変わらぬ面と何か兆しがあらわれている面とあるような今日の段階というふうな気がするわけであります。変わらぬ面は、言うまでもありませんが、領土問題、非常にハードであります。アフガニスタンについての態度も変わっていません。私ども残念なことだと思いますし、日ソ共同宣言田中ブレジネフ共同声明をベースにして具体的な動きがあらわれるべきであろうというふうにも考えているわけでございます。  しかし、そういう変わらぬ面があると同時に、ソ連日本との関係改善を希望している。あえて——あえてと言うのも変かもしれませんが、対話再開を求めてきた。また、外務大臣ポリャンスキー大使コンブ採取再開あるいは墓参再開を言われたようでありますが、これもにべもない言い方ではなくて、本国に伝達をして相談いたしましょうというふうなことを約束されたようであります。  それらの経過をこの間、新聞評論を読んでおりましたら、無言対決よりも、話をしながらにらみ合う方がまだましだ、残念な、また非常にユニークな面を持った評論ではないかと思いますが、もう一つ進んでもいいのじゃないか、このあたり事務レベル交渉再開糸口がほぐれることも考えていいのではないかという気もするわけであります。そういう意味で、米ソ首脳会談、対日関係前進あるいは極東での信頼強化措置などを言われましたブレジネフ演説、これをどうお思いになりますか、これが一つ。  それから二つ目に、このあたりで何か展望を持たれることが考えられていいのではないだろうかという気がするわけでありまして、与党議員の方々が行かれる、何か新聞で読みますと、鳩山元外相がというふうな話もあるようでありまして、与党政府のことでございますから、御相談があってもいいのじゃないかと思いますが、その展望をお考えになるというふうなことをどうお思いになっておられるのか、お願いいたします。
  7. 伊東正義

    伊東国務大臣 日ソ関係でございますが、私も日ソ間の平和的な関係が恒久的に保たれていくことを本当に心から期待しております。重大な隣国でございますし、いろいろ歴史的なことを考えましても、平和友好関係を続けていくことが大切だ、何とかその糸口をと考えている気持ちは私も同じでございます。ただ本当に残念ながら、今日の冷たい関係は、ソ連アフガニスタン介入北方領土への軍備増強というふうなことが契機になりまして実は、こういうことに相なっているわけでございますので、私は一日も早くそういうことが改善されることを本当に心から期待はしておるわけでございますが、まだその糸口がなかなかない、向こう態度に基本的に変わりはないということなものですから、こういう状態が遺憾ながら続いているのが現実でございます。  この前、ブレジネフ演説がございました。私どもも拝見をしたわけでございますが、平和的な考え方を述べておられるわけでございまして、特に米ソ関係でも、アメリカレーガン政権が強いことを言ったのに対しまして、非常に抑えた調子の、首脳会談でございますとか軍備管理の問題でございますとかいろいろ言っておるわけでございまして、私はやはりそれはそれなりの一応の評価をするわけでございます。ただ、これは演説だけでなくて、本当にどういうことが誠実に実行されるかということが問題なわけでございまして、この間アメリカへ行って、米ソ首脳会談軍備管理の問題、SALTの問題等も話したのでございますが、アメリカとしては、ソ連行動をもう少し慎重に見守ってから結論を出したいというようなことを言っておりましたが、日本としましても、一応の評価はしますが、実際具体的にどういう行動ソ連がとられるのかということで、いまソ連行動を見ているというのが現実でございます。  それで、日ソ、その後でございますが、この前ポリャンスキー大使から、総理に会いたいということで正式に話がありましたので、私がまず、どういう内容かわかりませんでしたのでかわって会ったわけでございますが、そのときは、先生も御承知のような信頼醸成措置という話でございましたが、私は領土問題でございますとか領土に対する軍備の問題とかアフガンの問題とかいろいろ話しましたが、ポリャンスキー大使は、そういうものにいつまでもかかずらっていては前進ができないから、経済問題とか技術問題とかそういう問題で、何か日本側から提案はないかというようなことがあったわけでございます。それで私は、そういうことならまずあなた、コンブなんというのは本当に零細漁業者がとっているのだから、コンブなどというのはまずとれるように認めたらいいじゃないか、あるいは墓参という問題は、もうだんだん関係者はみんな年とってくるので、これは人道的な問題なんだから、墓参ぐらいはまずあなた、考えるということをやるべきじゃないかというような話を実はしたわけでございますが、それはモスクワの方へ連絡はするというようなことでございました。  いま伊藤さんのおっしゃる、黙ってにらめっこよりも話してにらめっこ——話してにらめっこということもないのでございますが、そういうことも必要じゃないかということが新聞に出ていたという面も、なかなか言い得て妙なものだなと思って私もいまここで伺っていたのでございますが、私はそういう機会もぼちぼちやはりつくっていくということも必要じゃないかなと思っております。  それから、自民党からおいでになるという話、鳩山さんから連絡がございまして、自分が行ってくるからなということでございました。事前に打ち合わせとかそういうことではございませんでしたが、連絡があったことは確かでございます。
  8. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 お話をいただきましたが、まあ私ざっくばらんに言いまして、日米首脳会談も目の前にしていることですし、いろいろなことを含めて先の展望を慎重に考えなければならぬという気持ち大臣としてはおありになるのではないだろうかというふうな気がいたします。ただいずれにしても、話をしながらにらみ合っているのか、もう一つよくなり得るのか定かではありませんけれども、何か表面的に大きな変化は起きてないが、変化が近づきつつあるし、近づかなければならないようないまの状態ではないだろうか。  ドイツ、フランス、ドイツでもゲンシャー大臣とかいろいろな方にお会いになる機会も多いんだと思いますが、それらと比較をしてという御質問大臣にしたことが前にございますけれども姿勢としていずれにしても、無言対決というのは最悪ですから、あるいは、見守るといってもじっと腕組みをして見守っているということでも発展性はないわけでありますから、コンブ墓参その他などについてどういう手がかりがつかめるかわかりませんけれども、何かチャンスがあれば主体性を堅持をしながらひとつ次のアクション考えていく、あるいは可能なアクション模索をしていくという姿勢が必要であろうと思います。  ですから、もちろんこの黙って対決でもないと思いますし、ただ見守るだけではないと思いますし、後ほどお伺いしますが、経済の問題から見ても、いろいろな意味でやはり財界の要望動きも生まれつつあるといったようなところですから、その辺重ねて恐縮ですが、無言対決ではない、またただ見守るだけではない、大臣最初に言われましたように、いろいろとむずかしい問題はあるけれども、離れることのできないお隣の隣人であるし大国でありますから、その辺の姿勢一言で言うとどんな姿勢でいまのところお考えですか。
  9. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  主体性を持ってということはおっしゃるとおりでございまして、私はこれは大切なことだと思うわけでございます。そして、いろいろな人が向こうへ行かれ、話をされる、その場合に、やはり領土問題というものは常に、日本固有領土を返還してもらいたい、鳩山さんが行かれたときの共同宣言、それから田中さんのときの話、あれは私は全部向こうと会われる人は必ず言ってもらいたい。これが原則なんだ、それを理解してもらった上に本当の日ソ間の相互の理解というものはできるんだということは、どなたが向こうと話されても私は、これは必ずやってもらいたいというふうに思っているわけでございますが、そういう原則を踏まえていろいろな人が行って話されるということは、私はこれはもう結構なことだと思っておるわけでございます。  それで、日本態度でございますが、基本的には、やはりいま言った原則は、言うべきことはちゃんと通す。今度、本当はグロムイコさんが日本へ来まして、そして平和条約交渉をする番になっているわけでございますが、グロムイコさんは来ないということでございますので、私はその辺のところから、何が誠実な態度かということは私の方で言うことじゃございませんが、ソ連もやはり何かそういう誠実な態度をひとつ見せてもらいたいということを願っておるわけでございます。
  10. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は日ソのことも含めて最近心配なのは、日米首脳会談を前にした最近の動き、最近朝の新聞を読みますと毎日、幾つかの有力紙の中の一つは必ず、防衛力強化の問題を日米首脳会談を前にしたということと関連づけながら報道されているわけであります。何かずっとこのところ繰ってみましたが、この一週間を見ましても、こういうたぐいのものが載らない日がありません。  大臣は、亡き大平さんのおそばで努力をされた方でありますから、私が全然申し上げるまでもないことでありますが、大平総理が訪米をされてカーター大統領会談をされたときに、いわゆる中業、中期業務見積もりの繰り上げ実施ということについて、いろいろあったのではないかというふうなことが国会でも大きな話題になったわけでありますが、私は最近の状況を見ますと、きょうの新聞にも載っておりますが、昨日マンスフィールド日米大使が、これはオープンで講演をされまして、その中で、防衛大綱早期達成を強く要望する、また、周辺海域防衛も強調されている。その中身を見ますと、昨年の日米首脳会談では、防衛庁の中期業務見積もりの前倒しが問題となったが、昨日のマンスフィールド大使の発言を見ましても、より装備水準中身の高いレベル防衛大綱そのもの達成を公式に言及したということが、けさも大きく報道されているわけであります。  このたぐいのことがずっと続いているわけでありまして、私はこういう方向で行った場合に、いままでこの国会でも、アメリカ要求に押されて日本防衛計画考えることはありません、あるいはまた、自主的に対応しますということを総理外務大臣も言われてまいったと思いますが、まあ悪く言えば、自主的に対応するというよりも、事前要望にこたえるようないろいろなアクションが行われているのではないかというふうな心配をするわけでありまして、そういうことが日米という重要な外交折衝、それが日ソも含めたさまざまな影響を及ぼしてくるということを実は懸念をするわけであります。  ちょうど昨日マンスフィールド大使のそういうことも大きく報道されておりますし、いままでの国会における総理外務大臣のお答えと何か違うようなことを非常に憂慮するわけでありますが、その辺のところを一体どういうふうな姿勢でお考えになっておりますか。
  11. 伊東正義

    伊東国務大臣 防衛力の整備の問題は、これは日本では「防衛計画大綱」をつくって、それを着実に充実していこうということでやっておるわけでございますから、何もこれはどこがどう言ったからというのじゃなくて、日本自身考えで「防衛計画大綱」をつくって、それを着実に充実していこうということをやっているわけでございます。  いま第一番目に、亡くなった大平総理向こうへ行きまして、中期業務見積もり早期達成を約束してきたかのごときことを言われるのだというお話がありましたが、私はあのとき官房長官をしておりまして、やはりいろいろと新聞に出ましたので、ワシントンまで電話をしましていろいろ確かめたのでございますが、そういう約束は一切してないのです。カーターさんは確かに、政府部内にある計画早期達成されることは極東の安全にとっても役立つことであると言ったことは間違いありません。それから大平総理は、日本はいろいろ努力をしてきた、これからも同盟国の一員として何をなすべきかということについて真剣に検討するというようなことを言っているのでございまして、計画を早く達成するとかいうようなことは言ってないのでございます。  それから、これからの防衛の問題でございますが、私も向こうへ行きまして、具体的なことはほとんど何も話が出ず、また、私からも具体的なことは何も言ってこなかったのでございます。一つだけ出ましたのは、駐留米軍の経費をできるだけ持てるだけ持つということを考えてほしいということは具体的にございましたが、そのほか、一般的に日本防衛力強化努力してもらいたいというような話、これは私が話したヘイグさんもブッシュ副大統領もワインバーガーさんも、一般的な防衛努力強化について期待表明があったというだけでございまして、具体的にはなかったのでございます。  総理が行かれましても私はその点は同じでなかろうか、こう思っておるわけでございますが、日本としましては、「防衛計画大綱」というものがあるのでありますから、これに沿うて充実していくということがやはり日本として考えていく——できることとできないこと、法律集団防衛に当たるようなことは何もできないわけなんでございますから、専守防衛個別自衛権ということははっきりしておるわけでございますから、やはりそういう態度アメリカから期待表明があっても言うべきことはちゃんと言う、そして、日本として自主的に国民コンセンサスを得ながらやっていくということが、防衛に対する態度だと私は思っております。
  12. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣、私が心配しますのは、さっきも申し上げましたが、新聞を読んでも毎日こういう記事が載らない日はない。しかも、きょうもそうですが、日米首脳会談を前にして、またこれが最も重要なテーマになるであろうという形での評論がされているわけでありまして、多くの国民が、いまは亡き大平さんのときと比較をしても、何かもっとむずかしいことになるのではないかという懸念をニュースを見て考えているのではなかろうかと思うわけであります。  また国内でも、政界の有力筋も含めまして、GNP一%論など最近また蒸し返されておる。レーガン大統領も強いアメリカであるという評論が多くなされておる。片や日本では、行政改革、厳しい財政再建をしなければならない。大蔵大臣は、防衛費についても絶対に聖域ではありませんという意味のことを、財政再建に関連して私ども質問に言われておりますが、そういうことを考えますと、大臣が言われましたように、ヤンスフィールド大使がどのような日本向けキャンペーンをやろうとも、あるいは、レーガン大統領からあるかどうか知りませんが、たとえば強い要求があったにしろ、言われましたように毅然として自主的に対応する、そして自主的にという名のもとに、たてまえは自主的だが中身は大変御要望に沿うということでは困るので、こういう緊張激化の中で、デタントからさらに軍縮とかそういう方向への模索日本はやっていきたいという姿勢で臨まれることが大事ではないであろうかというふうに思うわけでございまして、重ねてその自主性ということ、一言所見をお伺いいたします。
  13. 伊東正義

    伊東国務大臣 向こうでも私、言ったのでございますが、国民防衛問題についてある程度の理解を示してきておるというのは比較的最近だ。国会安保委員会ができたのも去年でございますし、そういう日本状態なので、顕著とかいろいろなことを言われても、それはまだ国民的コンセンサスを得られるものじゃない。日本では、先ほど申し上げましたように「防衛計画大綱」、あのときはGNPの一%にとどめるということを決定しておるわけでございますので、やはりその線に沿うて、その線の中で日本を持っていくにはどうしたらいいかということを日本が判断することが大切だという考え方でございますので、いろいろな要請がありましても、できないものはできないということは日本としてははっきり言うべきだというふうに私は考えるわけでございます。  マンスフィールドさんのことが新聞ということでございましたが、私、新聞は読みましたが、マンスフィールドさんに会ってそのままであるかどうかまだ確かめておりません。あの人は非常に慎重な人でございますので、会いましたら、マンスフィールドさんにもどういうことを言われたか聞いてみますが、日本態度総理も何回も言っておられますし、私もその点は同じ考えでございます。
  14. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ぜひそうお願いします。  日ソに関連して次にお伺いしたいのは、経済問題であります。  日ソ関係がいまのように冷却したままであってはならぬだろうという声は、経済界からも出ているところでありますし、また、ヨーロッパでもソ連とのデタントを求めるさまざまな努力がある、これも大臣承知のとおりであります。  経済で言いますと、ほかの国をどうこう言うわけではありませんが、日中問題も経済面では非常にむずかしい困難な問題にぶつかっておる。それから先進国関係、EC、日米、これも大きな問題について調整が必要だという難問がそれぞれあるわけでございまして、これらもそれぞれ打開しなければならないというわけでありますが、そういうことで、ここへ来て日ソ経済協力あるいはシベリア開発などは資源エネルギーあるいは技術その他いろいろな面から見ても、大きな意味を持っておるということは否定できない事実であろうと思います。  ただ、私は断っておきますが、領土問題抜きの本当の友好というものは存在しないということだと思いますし、また同時に、領土が解決しないから何も納得できないというのも、言うまでもありませんが、非現実的な態度だと思いますし、国益を踏まえた友好の努力ということが必要であり、そのポイントの一つ経済であろうと思います。ですから私は、政経一致か政経分離か、形式的なことを申し上げるつもりはありません。いろいろな意味で、日本領土返還あるいは要求達成をする、そのため日本が持っておるパワー、可能性も友好のレベルで大いに活用する、そのために使っていくということがあっていいのだろうと思います。その辺、一般的な姿勢としてどうお臨みになりますか。  具体的にヤンブルグの天然ガスのパイプライン、これはヨーロッパ向けでありますけれども、それに向けての年間百万トンずつの相当大規模な大型口径パイプの輸出などの話があるようでありますし、話も進んでまた交渉再開、また輸銀がそれに対しどのようなバンクローンをどういう条件で供与するか、ヨーロッパとの関係もありますから、さまざまな調整が必要でありましょう。それらの具体的な問題やあるいは日ソ経済委員会などで論議をされてまいりました五つほどのシベリア開発のプロジェクトなどあるわけでありますが、一般的な姿勢と、それから一つずつ進んではきておりますけれども、これらの懸案解決にどのように臨まれますか。
  15. 伊東正義

    伊東国務大臣 アフガニスタン介入以来とりましたのは経済問題で、いま非常に高度の技術を要するようなものはココムで統一的にやっておるというのが一つでございます。もう一つは、政府ベースの信用供与のあるものについてはケース・バイ・ケースで考えていきましょうということで、一般の貿易については何もやっていないわけでございまして、いまも八日からでございましたか、貿易支払い協定の話を五年に一回ずつやるのをやっておるわけで、現実会議をやっておるわけでございます。問題は、先生おっしゃった政府ベースの信用供与の問題ではなかろうかと思うのでございますが、これはケース・バイ・ケースで考えますということで、森林を除きますと、主に石炭とか天然ガスとか石油とかそういう関係のものについて、政府ベースの信用供与をやるということで実はやっておるわけでございます。  御指摘のヤンブルグのガスの問題でございますが、これはヨーロッパに供給されるガスの問題でございまして、私どもの知る限りでは、そのガスがどのぐらいの量になるか、どのぐらいの値段になるかということがドイツとかオランダとかフランスとかでまだ決まっていないということを聞いておるわけでございまして、そういう量とか価格が決まって建設の問題になるのではなかろうかと見ております。この間ソ連から来て話があったというのは、向こうの事情説明だけであって、日本にどういう信用供与をしてもらいたいとかそういう具体的な問題でなくて説明だけで、また次回はひとつ具体的な問題を持ってこれれば持ってきて相談しましょうということで別れた。何も物別れとかそういうことではないということでございまして、ヤンブルグの問題については政府もどういう態度でいくかとかいうことは、まだ全然具体的な話が向こうからもないわけで、輸銀からもないわけでございますので、この問題はもう少し将来の問題になるだろうと見ていますが、先ほど言いましたように、ケース・バイ・ケースで森林木材資源あるいはエネルギー資源については考えていくという態度で、一つ一つ見てやっていくということでございます。  これはアメリカへ行ったときも話したのですが、穀物の禁輸をアメリカはどうするのか。レーガンさんが選挙演説のときは、穀物の禁輸はすぐやめると言っていましたが、まだ向こうは決定はしていないのです。どうするか方針は決まっていないと言っていましたが、アメリカでもいろいろ問題があるだろうと思います。日本では日本として自分の国でどうするか考えますが、ソ連態度が、さっき言ったような冷たくなった原因が全然動かないのだということであれば、いままでの基本的な態度を変えるということまでは私は考えていないわけでございます。
  16. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 次に大臣に、新聞の社会面のことでちょっとお伺いしたいのですが、日ソ親善協会の会員証問題というのが話題になりまして、何か三、四日前も、親善協会の会長をやっている赤城さんのお名前で外務大臣のところに文書が行ったようでありますが、日ソ親善協会が会員証を北海道で赤城会長が行って手渡す、それにポリャンスキー大使がお祝いで同席をされた。ポリャンスキー大使が直接日本の漁民に渡して、これがパスポートにかわる免罪符であるような変な印象を持たれたようであります。私もその団体の当事者にいろいろと伺ってみますと、とんでもないことだ、免罪符と言われるようなことがあるはずがないし、初めから色のついた友好もないし、色のつけられるのも困るしというふうな話でありまして、私は当然のことだろうと思っております。友好交流もあくまでも国際的なルールを守ってやるというのは当然のこととしてやっていることだと思います。  そういう意味で言いますと、純粋な友好の目的で別の効果があると考えている人も、伊東さんもいい人ですが、私も個人的に尊敬している赤城さんにしても当然そう思われているようでありますし、新聞を読みましたら先月の末ですか、外務省で調査する、それで海上保安庁や水産庁などに、免罪符か旅券にかわるみたいな意味を持っているのではないかというようなことを調査することを要請したいとか、あるいは、当面北方領土隣接地域へのソ連大使館、領事館員の立入禁止措置をとることも検討するとかいうようなことが載っておりました。私はいいかげんなことだと思いますけれども、その辺外務省から何かの動きとしてそういう新聞記事も出ておりましたので、そんなことがあるようでしたら、伊東さん、赤城さんの仲ですから、ちょっと確かめて誤解を解かれるとかいうようなことをしていただいたらどうだろうかと思うわけであります。  私もその団体の理事をしてつき合っておりますから、余り会合に出ておりませんが、大体のことはわかるわけでありまして、こういう報道が出ますと、尊敬する赤城会長にも失礼なことになるのではないかという気がいたしますし、けさもらいましたが、赤城さんのお名前で大臣に抗議文書、赤城宗徳さんより伊東正義さんへ抗議があったということになっては余りいいことじゃないと思って読んだのですが、ぜひ真偽のほどをきちんとお確かめになって、フェアなまた明朗な解決といいますか、態度をとられるようにお願いしたい。  私はそんなことだと思いますから、もし御疑問をお持ちだったら、私も赤城さんに話しますから、大臣も特別会員証でも名誉会員証でも結構ですから一度お持ちになって、グロムイコさんと会われたときに、前のときは水が出たが今度はコーヒーが出るくらいの違いがあるのかどうか知りませんけれども、要するに、何かあったときにトラブルにならないでスムーズに話ができるくらいの気持ちなのだろうと思うのです。つまらぬことですが、いろいろ話題になりましたので、また、赤城さんから伊東さんへの文書もあったようでございますから、お考えがあれば一言……。
  17. 伊東正義

    伊東国務大臣 そういうことが新聞に出まして、ポリャンスキー大使が行ったということで、いろいろな波紋を北海道で起こしていることは確かな事実でございます。私どももそれが免罪符のようなことになって、要するに、領土抜きの日ソ親善だということになってはゆゆしきことだ、こう思っているわけでございますが、何もまだ確証があることじゃないわけでございまして、様子を見ているというのが現実の姿でございますが、抗議文をいただいたことは確かでございます。赤城さん直接じゃなかったのですが、その中に、免罪符、そんなことを考えていないということが書いてありました。  ただ抗議文の中に、そんなことよりも政府領土の日をつくったことは、領土の返還を遠のかせているのではないかというような、政府に対する非難めいたことも書いてあるわけでございまして、赤城さんともあろう人がそういうことを自分で知っていて書かれたのかなと思って、私は赤城さんの関係でございますから、いささか不思議に思っているのでございますが、そこの抗議の中に、領土の日をつくったことは島の返還を遠のかせたことじゃないかということが書いてありますが、あれは国会でも満場一致で、領土の日をつくって、本当にあの日を平和友好の日にしたいのだ。それには固有領土は返してもらいたいという願いを込めた国民的な国会決議であり、領土の日であろうと思うわけでございます。  抗議文の内容を一々私はどうこうは言いませんが、それをもらったことは確かでございます。しかしさっき言いましたように、領土抜きの日ソ友好というようなことは私は何としてもいただけないゆゆしい問題だと思っておりますので、今度のことはそういうことじゃないと私は信じておりますが、そういう事態や何かにならぬように赤城さんとも一回会ってよくお話は聞いてみよう、ひそかにいま見守っているというのが実情でございます。
  18. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いずれにしても、親しい関係にふさわしいようにぜひ御解決をお願いします。  また、北方の日の話がございましたが、私も委員の一人としてあの日の行事、全国の状況などを見て、国会としてもこれから一体どういう議論をしてどういう努力をしたらいいのだろうかということを思いますが、きょうは取り上げておりませんので、そのことには触れません。  大臣に最後にもう一つ現実問題で伺いたいのですが、その前にちょっと防衛施設庁にごく簡単に一言伺いますから、それをお聞きになっていただいて、その後また一言こちらの方から大臣に御要望申し上げたいと思います。  施設庁に伺いたいのですが、大体わかっておりますから、細かい説明は要りませんが、いままでとは違った説明でしたら伺いたいと思います。  横浜港のノースドックに沖繩から米海兵隊が来て、ことしの一月七日、さらには四月一日、約千名近くの兵隊さんとりゅう弾砲、車両などが大量に陸揚げされまして、沖繩と東富士とを結ぶルートとして横浜に上陸をするということが起きたわけであります。私いままでの統計を見てみましたら、ベトナム戦争が終わった後、昭和四十八年までしかこれらのLSTとか大型の船は使っておりません。それから七、八年にわたって全然使っていない。全然使っていないのがこの正月に突然あらわれまして、ほかの野っ原だったらあれなんですが、何しろこういうものですから、町の真ん中ですから、市民はみんなびっくり仰天しまして、一体これはどうなるのだろうかと思っているわけであります。  施設庁に一言だけ聞きたいのですが、なぜ横浜かということを説明してもらいたいのであります。いままでの内閣委員会の議論その他を聞きますと、気象条件とか安全性とか何がどうとかあるそうであります。気象条件ならば、B52が沖繩に行ったときのように、これももちろん私は賛成はしてないわけでありますが、どこかで台風が起こって、だれでもわかっている、それで緊急避難をしたとか、あっちの方に台風があるから横浜にやむなく来たというならば、これはいい悪いは別にして一つ説明であります。あるいはまた安全性と言っておりますが、何で横浜が安全でいままで十年もやってきたところが安全でないのか、全然わかりません。なぜ来るのか、なぜ横浜かということを説明していただきたい。それから今後の見通し、共同使用なんということはないと思いますけれども、そんなことも研究があるのか。  時間が延びてあれですが、あと大臣一言伺いますから、ちょっと一言だけお答えください。
  19. 岩見秀男

    ○岩見説明員 お答えいたします。  いまなぜ横浜かというお話でございましたが、米軍は従来、沼津の海浜訓練場を使って揚がっておりましたけれども、横浜は港湾が整備されておりまして、輸送を安全、効率的に行うためには適した港であります。そこで米軍に今回の、先生御指摘の横浜ノースドックの使用につきまして確かめましたところ、効率的かつ安全に港湾を使用するために、気象状況とか運航計画とか後方支援態勢の整備状況とかそういったものを勘案いたしまして、実施をしたというふうな説明を受けております。
  20. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう時間ですから大臣一言だけ。  実はこれは切実な要望であります。内閣委員会かどこかでもきのうお話があったようですが、私、地元でございまして、いろいろと関係もあって言われるのですが、このノースピアというのは、瑞穂埠頭ということで大正十四から工事が始まりまして、昭和二十年にようやく完成をしたところでありまして、瑞穂という名前を戦争中につけたように言うならば、ここを横浜港の最先端を行くりっぱなものにしようという念願を込めてつくったものであります。二十年に完成をしてすぐ米軍に接収されて、今日三十数年たっている。  ところが、大臣にもいろいろと御協力をお願いしたいと思いますが、同じ横浜の港に面したところに国連大学の問題があります。知事も市長もまた私どもも、これは大変歓迎して、やはり平和な港にふさわしい施設としてぜひ努力をしていきたい、お願いしたいというふうに思っておるわけでありますが、同じ港に、片一方では平和の象徴国連大学、片一方ではりゅう弾砲を持った兵隊さんが揚がってくる、これはかなわぬ話であります。また最近、聞きますと、西の港の神戸の方では、ポートアイランド博覧会とかいう大変結構な催しをやっておる。横浜の方は、ことしになってから突如として米軍が上陸をして町の中を通っていく、これも実はかなわぬ話であります。  また、政府の御協力をいただきまして、横浜港をまたぐベイブリッジというりっぱな橋が本年本格着工ということになりました。そして、その近くに大規模な横浜の臨海地域開発計画というものを組んでいるということになっているわけでありまして、何かそういう努力の中に……
  21. 小沢貞孝

    小沢委員長 伊藤君、途中ですが、時間ですので簡略に。
  22. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 はい。冷水を浴びせられたようなことになっておるわけでありまして、これは施設庁その他関係をしますから、一挙にはどうこう言えないと思いますが、国務大臣として、また日米両国関係を担当する外務大臣として、私どもにとっては非常に市民的な切実な問題でありますから、知らないとかなんとかではなくて、そういう要望を一遍詳しく聞いて、それにこたえるような御努力をお願いしたいと思うわけでありますが、ぜひ前向きの言葉をいただきたいと思います。
  23. 伊東正義

    伊東国務大臣 私も話は聞いております。それで、これは施設庁も苦労しておられるなかなかむずかしい問題だということは知っておりますが、返還される前でも使用の方法はいろいろあろうと思うわけでございます。いろいろな点で住民の人の希望をなるべくよけい取り入れることができるように、施設庁と私の方もよく相談します。
  24. 小沢貞孝

    小沢委員長 吉浦忠治君。
  25. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 北方問題に関しまして、日ソ関係の問題を二、三先にお尋ねをいたしたいと思うわけであります。  御承知のように、七月に開かれますオタワでの先進国首脳会議は、いわゆるオタワ・サミットと言われておるようでございますけれども、鈴木総理大臣としては、対ソ政策の調整を中心とした政治サミットになるだろうという見解を持っているというふうに伝えられておりますが、政府としてそのような方針あるいは見通しを持っておられるのか、日本政府としてサミットに臨む基本的な態度はどういうふうにお持ちなのか、大臣からお答えをいただきたいと思います。
  26. 伊東正義

    伊東国務大臣 鈴木総理がそういう考えを持っておられるということは私は全然知らぬのでございますが、サミットというのは従来、大体経済問題をやりまして、去年初めて、アフガニスタンに対するソ連の軍事介入があったので、これは共同声明でなくて、地元のイタリアの首相が発表するということで、アフガン問題を取り上げて首相談話のようなことで出したのでございますが、去年のサミットで初めて政治問題がそういう形で取り上げられたのでございます。でございますので私は、やはりサミットは経済問題が中心だろうと思うわけでございます。御承知のようなエネルギーの問題とか金融の問題とか南北の問題とかいろいろあるわけでございますが、南北の問題というのは、これからの世界の平和ということから考えれば、サミットの非常に重要な問題じゃないかと私は見ておるわけでございます。片やECは、この間イギリスの外務大臣と会いましたら、日本ヨーロッパの貿易問題を持ち出すのだということを言っていました。私はそういう二国間の問題は反対だ、自由貿易体制を堅持するという決議ならわかるけれども日本とECの間の問題を取り上げるのは反対だということでやりましたが、経済問題が中心であることは間違いないと思うのです。  ただし、西側の首脳が集まって政治問題について何も意見交換がないということはあり得ない、ある方があたりまえで、ない方が不自然だと私は思うわけでございます。その場合に情勢が、ポーランド問題その他ございますから、どういう情勢になっておりますかわかりませんが、やはり政治問題についても、ベニスのサミットと同じに意見の交換があるのではなかろうかと思っておるわけでございますが、議題は実は、これからまだ二、三回各国の責任者が集まりまして詰めるところでございまして、直前までわかりませんが、政治サミットということにはならぬ、経済問題が中心で、しかし政治の問題もあわせて討議といいますか、意見交換の対象にはなるだろうと私は予想しております。
  27. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 いま大臣の答弁で、政治サミットでなくて当然、経済問題が中心に話し合われるだろうとは思いますけれども、もし対ソ政策、特にソ連の脅威に対して日本アメリカヨーロッパ等の先進諸国が結束して対抗しようとするような戦略的なものになれば、サミットの性格が変質してしまう、こういうふうに思うわけであります。したがいまして結局、サミットがNATOプラス日本の軍事的対応の場になるという懸念も出されているようでありますけれども、この点について外務大臣、いかがでございますか。
  28. 伊東正義

    伊東国務大臣 私もそういうことになってはいかぬと思うのでございます。防衛の問題、これは個別自衛権ということで、日米安保ということでアメリカと話しているわけでございまして、NATOその他と話すということは一切やっていないわけでございますから、サミットがそういう意味の変質をしていくということ、これはサミットとしてとるべきものではない。もしもそういうことを打ち合わす必要があるとすれば、これはそういう形でなくて、何か必要があるときには特に集まるか何かということはあるいはあり得るかもしれませんが、サミットという形態で毎年、そういうことをNATOプラス日本ということでやるということは、余り形としては賛成じゃないと私は思っております。
  29. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、ポーランド問題をちょっとお尋ねいたしたいのです。  ポーランドの危機が伝えられておりますし、また、一進一退というような不安定な状況のようでありますが、依然としてソ連の軍事介入の余地も残されているようであります。このポーランド情勢を大臣はどのように見ていらっしゃいますか。
  30. 伊東正義

    伊東国務大臣 ポーランド情勢は、ついこの間、イギリスの外務大臣のキャリントンさんといろいろ話したわけでございます。そのときは、まだブレジネフがチェコに行って演説をする前でございましたが、イギリスの外務大臣は非常に切迫した感じでポーランド問題を見ておりました。ブレジネフが党大会に出るということはいままでほとんどなかった、今度初めてチェコに行くということで、このことも一つの要因として見て、これに対して非常に緊迫した情勢だということを言っておったのでございますが、チェコにおけるブレジネフの演説等で私は、やや小康を得ているのではないかと見ております。  ただ、ブレジネフ演説をよく読みますと、ポーランドの指導者ではなくてポーランドの党員というような言葉を使っているということで、これは余り指導者について評価しないのかな、こう文面から見たような感じもすることもございますし、あるいは、演習は終わったとはいえ、まだたくさんの兵隊が周囲に配備されているというようなことから見ますと、介入の可能性というものはまだまだあると私は見ております。  ただソ連も、国内の経済情勢もあり、ポーランドへ入れば、ポーランドの経済というのは悪いわけでございまして、対外債務も非常に負い、それを抱えてやる、あるいは世界からは、アフガニスタンでもいろいろな経済措置があった以上に恐らくあるだろうと予想されるわけでございますから、ソ連としても、その辺の判断は非常にむずかしいところじゃないかと見ております。しかし、それを押し切ってもまだ入る可能性というものはある、私はこう見ておりますので、油断ということをあの辺の地域の人は考えるべきではないというふうに思っておるところでございます。
  31. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣は、その危険性は心配なさっておられますけれども、もしポーランドにソ連軍が介入するようなことになりますと、再び国際情勢は大きく緊迫するおそれがあるわけであります。そうした事態が仮に起こるようなことになれば、わが国としてアフガン侵攻のとき以上の対抗措置をとるお考えなのかどうか、現時点ではちょっと答えにくいだろうと思いますけれども、どういうお考えなのか。
  32. 伊東正義

    伊東国務大臣 ソ連がアフガンに入ったときは、日本が相当厳しい措置を、ココムの問題でございますとか信用供与とか人的往来とか考えたのでございます。あれは、アフガンはアジアであり衛星国ではない、第三国でございますので、そういうところへソ連が入ってきたということで、非常に大きな問題だというふうにわれわれ考えたのでございます。今度ポーランドは、もし万一ということでございますが、アジアではなくヨーロッパであり、第三世界でなくて衛星国であるということで、アフガニスタンとは違うのでございますけれども、もし万一ポーランドに介入するということになりますと、ヨーロッパにおけるデタント、そういうものは壊滅、吹っ飛んでしまう。軍縮交渉もマドリードでやっておりますけれども、これも皆吹っ飛んでしまう。単にヨーロッパだけでなくて、これは世界的に米ソの問題になってきますし、世界的なデタントの崩壊ということになって、非常に重大な問題になるだろうということを予想しているわけでございます。  それで、その場合の日本がとるべき措置でございますが、実はヨーロッパともアメリカとも内容の相談はまだいたしておりません。ただアメリカからは、もし万一そういうことがあったら、アメリカはこういうこと、こういうことを考えたいと思うというような連絡はございます。連絡はございますが、その一つ一つについて日本はそれをやれるとかやれないとか、そういうような返事は一切まだいたしておりません。ヨーロッパに対しましても全然まだ返事はしていない、もらっただけでございます。これは国内的にも実は、外務省だけで判断する問題ではないわけでございまして、イランの人質、アフガンのときは私、官房長官をしていましたが主宰で、官邸で総理の前でいろいろ関係大臣集まって会議をやって決めたのでございます。そういう措置、どういう手続で今度やりますかは別にしまして、関係各省と相談をしなければならぬわけでございますが、まだ関係各省ともそういう相談は一切いまのところはいたしておりません。でございますので内容、どういうことをやる、どういうことをやらないというようなことをいまここで申し上げる段階ではまだないわけでございますが、イギリスとかアメリカとかの考え方は、アフガンのときよりも一層厳しい措置をとるであろうということ、これは明言をいたしております。
  33. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 わが国政府として、国際平和という立場からソ連政府に対して、ポーランドに対する軍事介入はすべきでない、こういう申し入れを、意思の伝達を正式な外交ルートを通じて行うべきではないか、こういうふうに思いますけれども、政政はこういう点については大臣、どのようにお考えでございますか。
  34. 伊東正義

    伊東国務大臣 政府は昨年も、十二月でございましたか、外務大臣の名前で、ポーランドの問題はポーランド人が自分で決めるべきで、第三国という言葉を使いましたが、第三国は介入すべきではない、ポーランド人が自分で決め、解決すべきだということを実は声明を出したのでございますし、この間もポリャンスキー大使と会いましたときに、ポーランドにソ連が介入するということになれば、世界じゅうが本当に冷戦状態のような厳しい状態になる、ポーランドに介入ということはすべきじゃないということを私はポリャンスキー大使にも言ったのでございまして、恐らくそれは本国にも伝達されていると思うのでございますが、もしそういうことになれば、日ソ関係というのはもっともっと冷たくなる、そんなことにならぬようにということを私はポリャンスキー大使に言いました。どういうルートで言うかということは別にしまして、日本側考え方ソ連は当然わかっていると思いますし、また今後情勢によりましては、そういうことをやることもあるいは必要なのかもしれませんが、いまのところは声明を出す、ポリャンスキー大使に伝えるということをやっているわけでございます。
  35. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間もありませんので次に参りますが、北方領土の問題で大臣の所信表明のときに、「北方領土の祖国復帰は、広く国民の願望であるにもかかわらずいまだ実現を見るに至らず、北方領土が戦後三十五年を経た今日なお、ソ連の不法な占拠のもとに置かれていることはまことに遺憾であります。さらに最近では、北方領土においてソ連軍備強化動きが見られるなど、北方領土問題をめぐる情勢にはきわめて厳しいものがあります。」このように述べられましたが、三月十五日、ソ連ポリャンスキー駐日大使が外務省に伊東外務大臣を尋ねて約二時間会談を行われております。  この際に大使は、去る二月下旬のソ連共産党大会で行われましたブレジネフ書記長演説をもとに、対日関係の発展、極東での信頼強化措置実施、この二点を口頭で申し入れられてきておりますが、その際伊東外務大臣は、現在不法に占拠されているわが国北方領土の返還はもとより、最近の北方領土におけるソ連軍備増強というこういう厳しい情勢を解決するために、先ほども答弁になりましたけれども、この二時間の会談ポリャンスキー大使にどのような申し入れを具体的に行われたのか、この点をお尋ねをいたします。
  36. 伊東正義

    伊東国務大臣 ポリャンスキー大使が言ってきましたのは、いま先生がおっしゃったとおり、日本との友好関係を維持するという考えを支持する、信頼醸成措置というものを北朝鮮、中国、日本アメリカに申し入れる、こういうことを言ってきたのでございます。そのとき、信頼醸成と言ったって、いまソ連がやっていることは信頼醸成と反対のことじゃないか、領土の問題はそのまま、そこに軍備の増強をしているというようなことでは、信頼醸成と口で言っても現実の問題は行動は違う、それではだめじゃないかということを言って、そして領土問題、鳩山さんが行かれたときの日ソ共同宣言、それから田中さんが行かれたときの第二次大戦後の未解決の問題、この二つを例に出しまして、こういうことにひとつ戻ってもらわなければ困る、領土問題が解決しないと平和条約ができないということで、日ソの恒久的な平和友好関係ができないんだから、これは何としても返還をしてもらわなければいけない、平和条約交渉をしようじゃないかというような話を実はしたわけでございます。  そのほか、ブレジネフ演説にあります日本の軍事大国化あるいは日米中が結託してという言葉でございますが、結託してソ連に当たるんだというそんなことは絶対違う、軍事大国にならぬ、そんなことはない、日米中結託なんてそんなことは全然考えてないというようなことを実は話したのでございますが、そうしましたらポリャンスキー大使は、領土問題はもうそういうものはないというような表現でございまして、いつまでも領土問題にかかわっていては前進がないじゃないか、経済問題、技術問題、人的交流、いろいろあるじゃないか、そういうことについて日本の何か提案はないかということでございましたので、私はさっき申し上げましたが、コンブ墓参関係を、このくらいまずやったらどうかということを向こうに言ったというのが、会談のあらましでございます。
  37. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 コンブ墓参の話を大臣がなさいましたけれども、それに対する反応は一つもないのでございますか。
  38. 伊東正義

    伊東国務大臣 その後、大使館の人とうちの外務省の職員との接触等で、そのときモスクワに約束していると言いましたのは、日米中の結託はないということ、それは必ずモスクワにすぐに伝える、墓参コンブのこともモスクワに伝えるということは言ったのでございますが、それを向こうに言ったということば、向こうの館員がうちの職員に言っております。でございますから大使も、モスクワまでは届けたということは間違いございませんが、それに対して、向こうからいまのところまだ反応はございません。
  39. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に移りますけれども、昨年の十一月、総理北方領土問題について自民党からの申し入れを受けられた際に、この問題は最大の関心を持っている一人であるとして七項目のうちの一つ、早い機会に現地根室等を訪れて生の声を聞きたいとのお答えがあったようです。早い機会に視察をされるというふうにその当時流れましたけれども大臣、こういういろいろな問題がありますときに、北方領土関係を含めて、総理に視察をお勧めなさるようなお考えはお持ちなのかどうか、お尋ねいたしたい。
  40. 伊東正義

    伊東国務大臣 予算委員会でも総理は何回も答弁されたわけでございまして、特に総理は、農林大臣もおやりになり、水産関係が専門でございまして、あの辺のところのことは非常に関心を持っておられるということでございまして、領土問題を日程が許せばなるべく早い機会に視察する、したいという希望を自分で、だれも原稿を書いたわけじゃないので、総理が自分の考えを言われたわけでございますから、総理はいまでもそう思っていられるに違いないのでございまして、私から機会を見ましてお勧めするということも適当かと思います。
  41. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりましたので、最後に一点だけ。  日ソ関係はここ一、二年の間、悪くなる一方でありまして、その原因は、これまで言われてきたようにいろいろあるわけでありますが、しかし、北方領土問題も含め日ソ関係の改善は、先ほどから大臣が言われておりますように、外交問題の重要な根本であるということには変わりはないと思います。中断している日ソ事務協議、日ソ外相会談、こういう開催の見通しについてお尋ねをいたしますけれどもソ連側が申し入れてくればこれにこたえるつもりはあるかどうか、この開催を、特にソ連外務大臣の来日をソ連側に強く求めるお考えはないかどうか、先ほども答弁がなされておりましたけれども、その点強い意思をお持ちなのかどうか、大臣の決意のほどをお尋ねして、終わりたいと思います。
  42. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほど伊藤さんにお答えしましたが、いま貿易支払い協定というような事務的なことはやっておるわけでございます。この前、日本側から何か提案がないか、ないかと言って向こうから催促があったわけでございますが、私はまず墓参コンブだ、こう言ったわけでございます。  今度はグロムイコ外相が日本に来まして平和条約交渉をするという番になっているのです。交互に訪問して相談するということで、園田外相のときにモスクワに行かれて話されたということでございますから、今度はグロムイコ外相が平和条約交渉に来るという番でございますので、これまた何か機会がございましたら、それはどうなっているのかというような聞き方で、ひとつまたそういうことにつきまして話をしてみようと思っております。
  43. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 以上で終わります。
  44. 小沢貞孝

    小沢委員長 部谷孝之君。
  45. 部谷孝之

    部谷委員 私はきのう内閣委員会におきまして一時間にわたりまして、このたびの羅臼の日ソ親善協会にかかわる諸問題についていろいろとお尋ねをしてまいりました。そうした質疑応答を通じまして、今度の会員証がいわば御朱印状あるいは免罪符の性格を持つ可能性が非常に強いという御判断を政府がなされておる、そして同時に、そういうことであるから海上保安庁あるいは水産庁、警察庁等々に調査を依頼されたというふうに理解をいたしております。しかし、そうした実際上の調査活動がきわめてむずかしい、あるいは、仮に便宜供与を受ける、そういうことが明らかになったといたしましても、取り締まる国内法を有効に適用することがむずかしいのではないか、そういうふうな判断をしておられるという印象を私は受けたのであります。  ところで、こうした案件を外務省あるいは水産庁、警察庁その他いろいろな省庁でばらばらに取り扱いまして、いわば総合的に取り扱う主務官庁と申しましょうか、そういうものがいまないのではないか、そういうものが必要ではないかと思うわけでありますが、そういう必要があるとお思いかどうか、まずお尋ねをしたいと思います。  また、現地からの報告によりますと、根室市内の関係漁民の間で、今度の羅臼の問題につきましてかなり深刻な反応が起こっておるというふうに私は聞いておるわけであります。具体的なそういう反応が出ておるわけでありますが、諸般のそうした調査を待ってというこうした間延びした対応、こういうことでは済まされない逼迫した問題だろう、こういうふうに私は思うわけでありまして、そうした逼迫した状態に対する対応が急がれる、こういうふうに思うのでありますけれども、この点どのようにお考えか、お尋ねをいたします。
  46. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  先ほども伊藤さんに私はお答えしたのですが、いろいろな波紋を投げかけておるという事実があることは私の方も聞いておるわけでありまして、それは具体的にどういうことかということを私、まだ一々調査しましてその報告を受けておりませんので存じませんが、まずやはり調査をしてみるということがどうしても先ではないかと私は思います。その上でいろいろな物の判断をするということであれば、やはり調査を待って判断をするということが大切だと思いますので、まず第一段階は調査をするということでわれわれとしては取り組みたい、こう思っております。
  47. 部谷孝之

    部谷委員 それでは、いまこうした問題に対する直接の主務官庁、これはやはり外務省の方でお持ちになるというふうに理解をしてよろしゅうございましょうか。
  48. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 この件は国内の問題でございまして、外務省といたしましては、このような動き北方領土返還に関します対ソ外交折衝上障害を起こすという観点から心配しているということでございますが、実情の調査等になりますと、これは外務省の手に余るところでございまして、それぞれの主管官庁にお願いするということにならざるを得ないのではないか。一言で申しますと、関係官庁がそれぞれ手分けをいたしまして、その任務の範囲内で対応するということではなかろうかというのが当面の印象でございます。
  49. 部谷孝之

    部谷委員 るる申し上げましたようにそうした対応が、きのうもいろいろと申し上げましたようないろいろな波紋を起こし、そのことが領土返還に対する大きな障害、水を差すことになっておる、そういう状態考えますときに、またいま申しましたように、羅臼の問題に対して今度は根室ですでに漁民の間に大きなそうした波紋が起こっておる、こういう状態考えますと、この問題はそのようなばらばら行政では何とも措置ができないのではないかというところから、いま私はそうしたお尋ねをしたわけでありますが、どうも納得のいく、理解のいく御答弁が得られませんけれども、この辺はひとつまた閣僚の一人であります外務大臣にも、積極的なそうした方策をしかるべき方面に献策していただきたい、このように思います。  次に、また昨日のお尋ねの中で外務大臣も、対ソ外交を行う上でもっと足元をしっかりしなければならない、このようにお述べになったわけでありまして、そのためには、北方領土周辺地域の振興対策が必要である、こういうことを強調されたわけでありますが、北海道開発庁にまずお尋ねいたしたいと思います。  昨年十一月の閣議におきまして、この振興対策に積極的に取り組もう、こうした発言がなされまして、これを受けて十二月に、関係省庁の連絡会議が設置されまして、所要の施策の検討を推進される、こういうことになったわけでありますが、昭和五十六年度予算の執行に当たりましてどのようにこうした点が配意されたのか、この点まずお尋ねしたいと思います。
  50. 大西昭一

    ○大西政府委員 いま先生御指摘のとおり、昨年十二月初めの関係各省事務次官の会議連絡会議を設置することが決まりまして、私どもがその窓口を務めることとなったわけでございます。  連絡会議の設置が非常に五十六年度予算の編成直前でございまして、実は五十六年度予算の中で、具体的にある一つの長期構想に基づいて五十六年度どういうことをやるというところまでは、もうすでに概算要求が各省庁出ておりましてまいらなかった関係上、予算編成後、五十六年度の予算の執行の中で配慮できる点は何だろうというふうなことを中心に一月、関係省庁といろいろ北海道の意見等を聞きながら進めてまいっております。  現在、公共事業が振興対策としては中心になろうかと思いますが、公共事業関係につきましては大体、五十六年度予算で実施計画の中でこの程度のことはやれるというふうなことがほぼ明らかになりつつありまして、目下私どもの手元で集計中でございます。  それから、それ以外の振興対策としまして、公共事業以外のたとえば文教、文化、厚生施設関係等につきましては、その実施計画の個所づけに時間がかかろうかと思いますので、恐らく全体がまとまるのは、どうも六月いっぱいぐらいかかりそうでございますけれども、大半が公共事業関係でございますので近々、全体の取りまとめができるような段階にあるというふうに考えております。
  51. 部谷孝之

    部谷委員 いまお話がございました北海道庁の方からの要望ということで、大体百五十億程度の予算を配分するような御計画があるように伺っておるわけでありますが、これは五十五年度の予算と比べまして一体どれくらいの伸びになっておるのか、その点お尋ねします。
  52. 大西昭一

    ○大西政府委員 北海道サイド、北海道庁からの要望としましては、いま先生概算で挙げられました事業費規模で約百五十億程度というふうなことでございますが、これで五十五年度と対比いたしますと、大体七%増ぐらいのことになろうかと思いますので、公共事業中心で考えますと、北海道開発庁予算ば対前年一〇〇・四、ほとんど横ばいでございますから、それよりは隣接地域の振興対策に五十六年度予算でも配意をしたというふうなかっこうはとれるのではないかというふうに考えております。
  53. 部谷孝之

    部谷委員 国の全般の予算でいきますと、大体一%ぐらいアップというふうな理解をしておるわけです。そうしますと、大体三%程度は伸びておるのかなというふうな感じではないかと思うのでありますが、胸を張るほどの大きな成果が上がったとは私は思わない。  次に、北方対策本部にお尋ねをいたしますけれども、昨年、国会決議におきましても、旧漁業権者あるいは元居住者、こういう人たちに対する援護措置の拡充を図れ、こういう決議をしたわけでありますが、政府としてはどのような対応をされたか、お尋ねいたします。
  54. 藤江弘一

    ○藤江政府委員 御承知のとおり、従来から元居住者、旧漁業権者等に対しまして、その営む事業あるいは生活資金等につきまして低利の融資の道を講じてきたところでございます。貸付枠につきましては逐年、増枠の努力をいたしておりまして、五十五年度は前年対比二億円の増加、五十六年度におきましても八億円から十億円ということで、二億円の増枠をいたしておるわけでございます。  また、そのほかの援護措置といたしましては、元居住者の唯一の団体でございます千島歯舞諸島居住者連盟に対しまして、生業研修あるいは後継者育成のための研修等の事業に対しまして枠の拡大をいたしてございます。
  55. 部谷孝之

    部谷委員 それぞれにいろいろ配慮は進められておるようでございますけれども、前からいろいろ私が主張いたしておりますように、漁業を中心とする根室の産業がその基盤を失って、まさに灯の消えた町のような状態になっておることは皆さん御理解のとおりであるわけでございまして、根室のそうした経済状態を放置しておくことが、私がきのういろいろ申し上げたようなソ連のそうした工作のつけ込むすきを与えるということになるわけであります。したがって、こうした根室を中心とする周辺の地域に対する予算措置、これは先ほどお話がございましたが、十一月のぶっつけであったので十分な措置ができなかったというお話でありますけれども、私はやはり沖繩で行ったようなそうした特別措置、こういうものが必要ではないかというふうに考えるわけでありますが、その点いかがお考えでしょうか。
  56. 大西昭一

    ○大西政府委員 隣接地域の安定振興対策として将来にわたってどういう構想を持つべきかということにつきましては、いわば振興対策の長中期的な構想というふうな問題につきましては今後、私どもが中心になっていろいろ検討していかなければいかぬと思います。その中で、現在の体制なり現在の法制、予算措置等でやれるものはどの程度かというふうな検討の上で、どうしてもやはり何か特別の対策が必要だというふうなことになれば、その段階で検討すべきことではないかというふうに考えておりまして、現在の制度なり予算措置等でどの程度のことができるかということを見きわめることが、まず第一ではないかというふうに考えております。
  57. 部谷孝之

    部谷委員 また外務省の方へ戻ってお尋ねをいたしたいと思いますが、昨日、内政干渉の問題ということでいろいろお尋ねをしてまいりました。  一般に内政干渉という御説明はございましたけれども、端的に結論的に、こうした世論の喚起をするというそうした国内問題に対して意図的に阻害するという行為、これが内政干渉に当たるかどうかということについての明確な御答弁を聞くことができませんでしたが、私はやはりこれは内政干渉と考えるべきであるというふうに考えるわけであります。そういう観点に立つならば、ポリャンスキー大使あるいはソ連政府に対して抗議をすべきである、こうした問題によってこれほど国内的ないろいろな問題が起こっておるわけでありますから、抗議をすべきではないか、私はこのように考えるわけでありますが、いかがでございましょうか。
  58. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 外国に対しまして抗議というような正式の外交上の措置をとりますためには、やはりそれなりの十分な事実的な根拠というものが必要なわけでございまして、軽々に外交的な措置をとるわけにはまいらないということでございます。  昨日も内閣委員会で御説明申し上げましたが、たとえば昨年三月のレポ船事件のときには、それなりのはっきりとした事実関係がございましたので、それに基づいてソ連の大使館に対して注意を喚起したということがあったわけでございますが、今回の事件につきましては、昨日来申し上げておりますように、ソ連に対して外交上の措置をとるに足るほどの事実関係というものが判明していないわけでございますので、現状におきましては困難ではなかろうかと存じております。
  59. 部谷孝之

    部谷委員 続きまして、先ほどからもいろいろ質問がございましたが、三月十五日の伊東外務大臣ポリャンスキーソ連大使との会談、これはアフガン以降、日ソ政府間のいろいろな交渉が事実上断絶状態にある中で開かれただけにきわめて注目されたわけであります。  この会談内容につきましては、先ほどるる御説明がありましたので、そのことのお尋ねは省略をいたしますけれども、特に北方問題に関しましてポリャンスキー大使が、すでにこの問題は解決済みであるということを繰り返し、そして日ソ関係を発展させるためには、領土問題に固執せずに、現実的な基盤の上に立って両国関係を築く必要がある、そのために経済あるいは漁業、科学技術、文化交流、そういうものを通して進める中で、建設的な対応が必要であるという答えがあったというふうな御答弁があったわけでありますが、コンブ墓参、こういう問題は、言うところの経済等の交流、そういうふうな考え方に立ってよろしいのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  60. 伊東正義

    伊東国務大臣 コンブの問題は、これは水産の関係漁業関係でございますから、言えば経済問題だと思います。墓参の問題は、人道的な問題でございまして、人の交流の話も出たわけでございまして、やはり人の交流ということで考えたらいいのかな、人道的な問題だ、私はこれは人道問題じゃないかということで話したわけでございます。
  61. 部谷孝之

    部谷委員 そこで、いま申しました、この領土問題は解決をしておるけれども、そうした領土問題に固執することなく、現実的な基礎の上に立って両国関係を築く必要があって、そのために経済漁業ほか文化交流等々が必要であり、そういうことを進める中で建設的な政治的対話が必要になってくるというこの後段の話は、つまり、先ほどの領土問題は解決済みであるということを今度は否定したようなニュアンスにもとれるのですけれども、いかがでしょうか。
  62. 伊東正義

    伊東国務大臣 後段の方というのは、政治的な立場の人の交流とかそういうことで向こうが言ったのでございますが、あくまで向こうポリャンスキー大使の言ったことは、領土抜きの日ソ友好関係と言い、まさにそのことで領土という問題はないんだ、そういうものを抜きにして日ソ友好を考えればいいんじゃないか、こういうことでございまして、それはだめだ、領土問題というのは、日本としては国民の悲願で、これは返してもらわなければいかぬということでございまして、そこではもう完全な意見の対立ということ、向こう領土抜きの日ソ友好、まさにそういうことでございました。
  63. 部谷孝之

    部谷委員 それから最近、そういう形でポリャンスキー大使外務大臣がお会いになったわけでありますが、魚本駐ソ大使、この方は、ソ連外務大臣とそう簡単に会えないんだというふうに聞いておるのですが、どうなんでしょうか。日本の駐ソ大使とソ連のそうしたいわば政府首脳、そういう人たちの会談はしばしば行われておるのかどうか、そうした状況がわかっておればお知らせ願いたいと思います。
  64. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 駐ソ連魚本大使でございますけれども昭和五十三年八月にモスコーに赴任したわけでございます。それ以来、表敬訪問を申し入れていたようでございますけれども、なかなか会見が実現しなかった。結局、魚本大使がグロムイコ外相と会談いたしましたのは昭和五十四年の七月二日でございまして、着任後一年近くたって会談が実現したということでございます。
  65. 部谷孝之

    部谷委員 外務大臣は、ポリャンスキーソ連大使から鈴木総理との会談の要請を受けられて、一応これはお断りになったと聞いておるわけでありますが、そうした相互の関係もあるわけであります。もちろん、会うことは大変大事なことでありますけれども、バランスのとれた会い方をなさるのが国の権威を守る一つの道でもあるように思うわけでありますから、このことの御答弁は要りませんけれども要望をしておきたいと思います。  最後に、ポーランド問題につきましてもるるお話がございましたけれども、「連帯」側と政府間で妥協の成立がされたけれども、なおワルシャワ側の軍事演習軍がポーランド国内に残っておるという状態から、まだまだソ連の軍事介入の可能性があるというように言われておるわけであります。そうしたソ連の介入に備えまして、NATOを中心といたしましてアメリカ、欧州の対ソ制裁措置は、先ほどもお話を伺いました中では大体固まっておる、そして、日本にも共同歩調をとるように要請されておるわけであります。  日本を含めて西側諸国の間で具体的な制裁措置が大体合意されておるというふうな報道があるのですけれども、その事実と、あれば内容をお示し願いたい、こういうふうに思います。
  66. 伊東正義

    伊東国務大臣 考え方といいますか、対ソ措置についてヨーロッパアメリカも、アフガニスタンのときよりも自分たちは厳しい措置を考えているということを言い、特にアメリカからはいろいろ具体的な通報はございました。しかし、私はアメリカともイギリスの外務大臣とも話したのでございますが、これは国によっていろいろ事情は違う、でございますから、大筋で足並みをそろえることは必要なんで、日本も西側の一員として足並みをそろえる努力をする、ただ国によって、特殊な事情がある国もいろいろあるかもしらぬということで、全部が一緒というわけにはいかぬと思うというような一般論の話し合いはしましたけれども、中にこれはできる、これはできない、これをやろうとか、そういう具体的な打ち合わせはアメリカともヨーロッパともまだやっておりません。さっきもお答えしたかと思うのですが、これは日本でも各省に大分関係があるのです。その各省との打ち合わせも実はまだやっておりません。そういう状態でございますので、一般論の話し合いはしましたが、具体的な措置そのものについては話し合いはしておりません。
  67. 部谷孝之

    部谷委員 終わります。
  68. 小沢貞孝

  69. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務大臣に対しては後ほど質問することにいたしまして、最初に、きのうの内閣委員会の伊藤施設部長の発言に関連して質問いたします。  きのうは時間切れで質問を継続することができませんでしたが、きのう、いわゆる北部訓練場における着弾区域の設定を現地でアメリカと話し合いを進めておるということでございました。  これはバロー証言に基づくものでありますので最初にお聞きいたしますが、いま話し合いを進めておる着弾区域の設定、これは現に進めておる。これはもちろん五・一五メモ、いまはっきり着弾区域が設定されるといよいよ実弾射撃ができるわけなんですが、その着弾区域というのはどういうところであるか。私は地図を持ってきました。これは海兵隊の北部演習場の全域でございます。委員長、これを施設部長に見てもらいたいのですが、いいですか。——このどこら辺か、ちょっと印を入れてください。
  70. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 お答え申し上げます。  瀬長先生、せっかく地図をお持ちになってのお尋ねでございますが、本訓練場における実弾射撃について、五・一五メモに基づいてかねてから私どもの方の現地と米軍とで、射撃場の指定、着弾区域の特定について検討しておりますが、現在まで検討未了でございまして、いま御質問のございました着弾区域というものは現在定まっておりません。その意味で、地図上でお示しすることはできませんので、御理解いただきたいと思います。
  71. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 五・一五メモで、いまの北部訓練場の使用条件、これを「本施設及び区域内において、指定された射撃場における実弾射撃が認められる。大砲の実弾射撃は、着弾区域が特定されるまでは行われない。」まさに書いてありますね。それで、このバロー証言でありますが、やはりその線に沿っていますね。「現在、北部訓練場では実弾演習はやれない。小火器、追撃砲、砲直射兵器、空対地兵器を含む実弾演習は、実行可能だし、それは米日使用協定に規定された演習制限条件の範囲内でやれる。〔しかし、現在〕」、ここからですね。「〔しかし、現在〕実弾演習がやられていない第一の理由は、これらのとりきめに従った着弾地域の〔日米〕共同の指定がまだおこなわれていないためである。」そういったことで、米軍としてはいまキャンプ・シュワブ、ハンセン、これではもう狭過ぎてどうにも動きがとれないのだな。目をつけたのがどこか、北部訓練場なんです。  このバローさんは、御存じかもしれませんが、一九七〇年、伊部岳にいつの間にかだれも知らぬうちに砲座をつくりまして、私も二日間泊まりました。これは一九七〇年十二月三十一日から一日、二日にとうとう海兵隊は取りやめるということを発表して、われわれの予想では、一万五千人以上がいまの砲座、着弾地点、そこに結集して、とうとう実弾射撃ができなくなってやめたところなんですね。そのときのいわゆる海兵隊の関係の司令官だったんですが、この人が一番よくこの北部訓練場の地形を知っておるのですよ。  ですから、この人が言っておるたとえば「北部訓練場の着弾地域は、TOW」、これは御存じだと思いますが、「(対戦車ミサイル)の到着とともに特別の重要性をもつ。というのは、計画されている着弾地域は、自然の地形」、日本語で言えばすりばちの状態、おわんの状態、これが「(対戦車ミサイル)の実弾発射を可能にするからだ。沖繩には、他にこの兵器〔の演習〕をこのように支援できるところはない。」はっきり言い切っていて、それで日米で話し合いを進めるというふうに述べて、まさにこの五・一五メモに沿っての発言なんですね。     〔委員長退席、高橋委員長代理着席〕  そこで、地域についてはいま目下折衝中であると言いますが、地域は大体伊部岳を中心にしたあのすりばち形、そういったところであるのか。現地で話し合いを進めておるわけだから、いまバローが証言しているすりばち形というのは、いまお見せしましたが、伊部岳、佐手川、西銘岳、この三つの特別鳥獣保護区域になって、これがまさにちょうどおわん状になっているのですよ。このバローさんが一番よく知っているわけだ。ですから、そこら辺じゃないかと私は見ておるのですがね、どうなんですか、施設部長。あなたは担当者だからもう一番よく知っている。
  72. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 お答えします。  非常に現地にお詳しい先生からいろいろお話を承ったわけですが、私どもとしましては現在、日米の間でまだ話し合いの途中でございますので、特にそういった特定した場所はございませんので、せっかくのお尋ねでございますが、こうだというお答えを持ち合わせておりません。
  73. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 特定した場所はないと言われますが、話し合いは進めていますね。では、那覇の防衛施設局ですか、そことだれが話し合いを進めておるのですか。
  74. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 那覇の防衛施設局と米軍の海兵隊の方の、何といいますか、しかるべき幕僚だと思いますが、そういう間で話し合いを進めておるはずです。
  75. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 その海兵隊の司令部と那覇防衛施設局とで話し合いを進めているはずである。——はずであるなんですか、進めているということですか、どこら辺ですか、そこら辺はっきりしてください。
  76. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 まあ日米間で随時、そういった話し合いが持たれているわけでございます。
  77. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 随時というのはどういうことなんですか。
  78. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 何分日米間の話し合いでございますので、日時、場所とかそういったものについて詳しく申し上げられませんが、復帰以降、米軍があそこに射撃場ないしは着弾区域というものを特定したいという意向を受けて随時、日米間で調整を行っております。
  79. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 お聞きしますが、いまキャンプ・ハンセン、シュワブ、これはたとえばTOW、対戦車ミサイル、これの実弾射撃をやるには余りに危険なんだな。だからアメリカじゃ、どうしても北部訓練場が必要であるというものですから、いわゆるバロー証言なるものが出てきたわけなんですね。それはきのう部長がおっしゃったような進行状態なんです。  それで、大体これはいつごろまでにその話し合いが済むのか、見通しはありますか。
  80. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 先生も御承知のように北部訓練場は、ダム等もございますし、確かに保護鳥区域等もございますので、そういう条件も兼ね合わせての検討でございますので、なかなかすぐには参らないとは思います。  それからTOWの件でございますが、私どもこの過程において現在まで、米側の方からTOWということでの話が持たれたことはございません。これは昨日もそのように御回答申し上げております。
  81. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 もし北部訓練場のある場所で、バローさんはすりばち形と言っておりますが、私が指摘したところがちょうどすりばち形になっておるのですよ。そこら辺だと思いますが、TOWでなくても、ほかの大口径の大砲が撃てるようなそういったようなところの選定も含めて、いま話し合いを進めておるのですか。
  82. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 一般的な火器、小火器から大口径砲に至るまで、いろいろなところに砲座を設けるなり着弾区域を設けるなりすると思いますので、そのそれぞれの特性に応じて検討を行っておるものと思います。
  83. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 TOWというのはどんなものですか。
  84. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 私、TOWについての諸元であるとか特性というのは承知しておりません。
  85. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 施設部長はその専門家であると私は思って、教えてもらおうと思って聞いたんですが、本当に知らないんですか。
  86. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 現在、施設部長としての職務をしておりますので、TOWというものが一般的に対戦車ミサイルだという知識以外に、正確な知識というものは持ち合わせておりません。
  87. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 あれはTは、日本語で言えば発射筒発射というわけでしょう、チューブランチッドというわけだから。それでOは、オプティカリー、光学照準ですね。あれは紫外線でやるのじゃなしに、見てやるものなんですね。それからWは、いわゆる有線誘導、あれはしっぽに線を引っ張っているのですよ。これでこうやるでしょう、ターゲットを目がけて発射します。やると、しっぽに対してこっちが誘導しますから、このしっぽが切れましたらどうなるか。ちょうど糸を切ったたこみたいにどこに行くかわからぬので、実に危険なんですよ。危険だから、あれはやはりおわん状のところ以外にはできないんだ。だから非常に執心しているわけですよ。  もうこの北部訓練場以外にはこのTOW——これは例の中東の砂漠で使ったのですよ。ところが、沖繩ではこういうものは使えない。まあ砂漠があれば、アメリカはほかの国だから言いませんが、北部訓練場というのは、外務大臣にもきょう三回目ですが、ノグチゲラという珍鳥もおるし、本当に珍しい鳥獣がおる。水源地でもある。そういうところでいまあなた方、これはバロー証言に基づいて進められておることはもうはっきりしているのですよ。  このTOWの問題が出たら拒否するというふうに考えているか、それとも、まあ入れてもいいんじゃないかというふうに考えられているか、そこら辺はどうですか。
  88. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 五・一五メモにも書いておりますように、特別保護鳥区域については生息地に対して多大の損害を与えないということでやっておりますので、仮にそういう演習が行われる場合には、そういった五・一五メモに取り上げられています内容というものを十分検討した上で、訓練、演習等が行われるようになると思います。
  89. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 伊東外務大臣にちょっとお聞きしますが、五・一五メモ、これにさらに加えて大口径の大砲でも撃てるようないわゆる着弾地点、まだ設定されていない。この着弾地点が設定されると、外務委員会でも、きのう内閣委員会でもお話し申し上げましたが、沖繩本島の大自然をそのまま維持している北部が完全に荒らされてくるのですね。ですから、これはどうあっても安保条約、日米地位協定に基づく五・一五メモの改悪になる。現状ではできぬから黙っているわけだ。  私はせめて、改悪をしてまでアメリカが実弾射撃訓練をやるような着弾地域を設定するといったようなことは絶対避けるべきだと思うのですが、この点、この前も申し上げたら、いろいろな事情があるので、これを全部総合して判断すると言われましたが、ここで明確にすべきなのは、現在の安保条約、私は反対ですが、もちろん伊東外務大臣は賛成で大いにやっておりますが、これは別なんです。これを改悪してまで——いま着弾区域は設定してないのですよ。これが設定されると改悪になります。改悪になって、自然が破壊される。いま山を返せ、鳥を守れ、水源地を守れ、こういった空気がある中で、いまのようなことで話し合いが進められているということになりますと、結論としては改悪することになるわけなんですね。だから、せめて改悪はやらぬように要請したのですが、伊東外務大臣、いかがですか。
  90. 伊東正義

    伊東国務大臣 私も自然をなるべく大切にして、改悪しないということを希望しますね、私もそう思います。ただ、片や地位協定で日本の安全を守るということのためにやっているということも確かでございますので、どういうように調整するのかなという非常にむずかしい問題がそこにあるんだろうと私は思うわけでございまして、施設庁がいまどういう相談をしていられるか私はよくわからぬのでございますが、できるだけ御希望に沿うような形で、また、向こう考えていることも実現する方法はないものかなと思って、そこに座って聞いていたところでございます。
  91. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私せめて改悪はしないんだというぐらいは、伊東外務大臣の口から聞きたかったな。というのは、いまでもわれわれは反対だが、国民の立場に立って、国民の生命とか財産を守る立場ですね、それから大自然を破壊から守るという問題、これに関連しているわけなんだから、せめて——いまは着弾区域がないですね。これを着弾区域を設定しよう。これはいまの五・一五メモにさらに改悪の方向を加えていく。バロー証言はまさにそういった方向で、話し合いをいま進めているがまだ解決はしないんだ、だが、唯一の弱点はここにあると指摘しているように、私はこれだけはぜひ、要請ではなくて、大臣の口から、安保条約を維持する、地位協定はもちろん、基地は認めるというふうなことだけは——それを改悪するという改悪まで一歩踏み出されないようにしてもらいたいと思うのですが、どうですか、大自然を守るために。
  92. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほどお答えしたようになかなかむずかしい問題で、昔、国破れて山河ありというような言葉があったり、昔からその辺のところは非常にむずかしいことがあるわけでございます。気持ちとしては私は瀬長さんのおっしゃることはよくわかるのです。現実の問題は私、現場を見ていないので余り知らぬものですから、何とか両方の言い分が調整されて目的達成ができないかな、こう思うわけでございますが、お気持ちは私もよくわかります。
  93. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 要望だけをしておきますが、伊東外務大臣忙しいでしょうが、また淺尾北米局長も忙しいでしょうが、一遍は北部訓練場に足を運んで、ノグチゲラというのはどんなものかなくらいを見てもらうと、外交がただ口だけじゃなしに親身になって国民の立場になっていけると思いますが、時期を見てひとつ沖繩に行って、とりあえず北部訓練場を見てください、これは別にお答えはいいですから。  最後に、これは条約上の問題なんですが、沖繩が返還される前に日米沖繩協定ができて、その四条に請求権の問題が規定されている。いわゆる放棄請求権といいますが、その請求権の問題についてこの前の沖特委、二十七日でしたか、中山長官にも質問いたしましたが、放棄請求権という放棄は中身はこういうことだ。いわゆる外交保護権の放棄である、これが一つ。外交保護権を放棄した。ところで、個々人の請求権または請求する実態を破壊するものではない。まあはっきり言えば、放棄したのは外交保護権であって、個々人のアメリカに対するあるいは加害者に対する請求、これは否定するものじゃないという解釈を開発庁はやっておるのです。  そのときに、矛盾が出ませんかと中山さんに質問したのです。それじゃ現に被害者が、アメリカに対してまたは加害者に対して要求しようと思うんだが、これはどうかと言いましたら、これは外交関係なんかもあっていろいろ検討せぬといけませんから後ほど返事をすると言いましたが、外務省もそういった見解、すなわち、あの四条で放棄したのは外交保護権であって、個々人の請求権あるいは請求というものまで放棄したんじゃないという見解に立っておられるのか、そこら辺はどうなんでしょうか。
  94. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  請求権の保護に関しましては、確かに沖繩返還協定では第四条で請求権放棄の規定があるわけでございますが、日本国がこの第四条に基づきまして放棄した請求権は何であるかと言えば、ただいま先生が御指摘になりましたように外交保護権の放棄であるというふうに考えております。これは沖繩返還協定に限りませず、平和条約その他においてわが国が国として国民の請求権を放棄するという場合にすべて、外交保護権の放棄であるという政府の一貫した立場でございます。
  95. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうなりますと矛盾するのは、個々人が請求する場合に、個々人はどういうふうにアメリカに請求するのか、その救済はどうするのか。外交保護権がなくなった場合、これはどうにもならぬでしょう。たとえば私なら私が、瀬長なら瀬長が被害者である。この遺族がどうしてもこれだけの金じゃだめだ、請求しよう。政府にするか本人にするか。この救済について、外交保護権は放棄しました、どうなるのです、この辺は。いま見舞い金制度になっていますね、土地問題にしろ漁業補償にしろ人身補償にしろ。見舞い金制度になったのは、外交保護権は放棄した、だから政府として補償する義務はないが、沖繩の諸般の事情を勘案して見舞い金制度をつくったというためにこの問題が出たんですよ。だからいま私が申し上げましたように、個々人が請求する場合、どういうふうにアメリカに直接請求すればいいのか。外交保護権はないですよ、ちょっと答えてください。
  96. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 個人の請求権は実態は放棄されていない。すなわち、この第四条によって、卑近な言葉を用いますれば殺されていないわけでございます。したがいまして、これはアメリカの法廷へ参りまして、アメリカの国内法によって救済を受けるという道は開けているわけでございます。ただ理論の問題といたしまして、果たしてアメリカの国内法でそれを救済するのがあるかということになりますれば、これはアメリカ法による以外に私どもとしては承知する道がないわけでございます。  そこで、そもそも外交保護権と申しますのは、簡単に申しますれば、請求権を有する国民の本国、仮にこれが日本人だといたしますれば日本国でございますが、そして、請求の相手方が仮にアメリカ人だといたしますれば米国になるわけでございますが、この場合に、日本国がアメリカに対して持つ国際法上の権利でございまして、この権利を行使するには一定の条件がございます。  それは普通の場合でございましたならば、日本国民アメリカの国内法によっていろいろな救済手段、これは一般に文明国におきましては当然、裁判ということになるわけでございますけれどもアメリカの国内法によって救済を受ける。その場合に、救済を受けられない、つまり、裁判においてきわめて不当なことが行われる、ないしは、裁判の拒否に遭うということになりました際に初めて、日本が外交保護権を行使する条件が整うわけでございまして、そういう場合に、日本が外交保護権を行使して、国際法の主体としてのアメリカ国を相手に国民の権利、請求権をかわって請求をするという、これは日本国がアメリカに対して持つ国際法上の権利でございます。  ただ、それは権利を行使できる条件でございまして、国民がそのような状況に陥ったときに当該国が、相手国を相手として外交保護権を行使しなければならないという義務は全然ないわけでございます。これは当該国が諸般の状況、外交上の考慮、政治的な考慮もございましょう、いろいろなことで、要するに自由裁量に任されている事項でございます。  そのような外交保護権の性質でございますので、外交保護権を放棄することによりまして、ただいまの例で申しますと、沖繩返還協定の第四条において日本国が日本国民の請求権を放棄することによりまして直ちに、日本政府が当該日本国民に対してかわって補償をするというような法的な義務が生ずる問題ではございません。したがいまして政府は従来より、そのような見解のもとに必要ある場合には、法的責任はないけれどもその他の名目をもちまして、見舞い金と先生はおっしゃいましたが、そういう名目にしろほかの名目にしろ適当な措置を講じているところでございます。     〔高橋委員長代理退席、委員長着席〕
  97. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が参りましたのでやめますが、外務大臣一言要望しておきます。  いまの外交保護権放棄の問題は、具体的には深刻な問題になっているのですよ。これは後でまた詰めることにいたします。  先ほど申し上げました実弾射撃訓練の着弾地域の設定問題、これは改悪になりますから、沖繩県民だけじゃなしに本当に全日本国民の大きい問題になっていく、この点を十分配慮なさって、国民の生命財産、さらに大自然を破壊から守るという外交姿勢を貫いてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  98. 伊東正義

    伊東国務大臣 さっきから何回もお答えしているとおりでございます。
  99. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは、終わります。
  100. 小沢貞孝

    小沢委員長 柿澤弘治君。
  101. 柿澤弘治

    柿澤委員 大変遅くなりましたが、時間の許す限り外務大臣からお伺いいたしたいと思います。  北方領土の日が制定をされて、北方領土返還への国民の祈願というものがますます高まってきている。そんな中で、北方領土返還のために外務大臣として今後、御尽力をいただくわけですけれども、それには外交環境をどうとらえているか、その認識が一番基本にあるのじゃないかと思います。  その点で先般、訪米されてレーガン大統領、ヘイグ国務長官とも会談を重ねてこられたわけですけれどもレーガン政権の強いアメリカという政策の中で、アメリカはこれから対ソ政策をどう展開させていこうとしているか。一方では大変強硬な発言があると同時に、現実的な柔軟な対応も見られるということで、私どももその点が明確につかめないわけですけれども外務大臣首脳会談を通じての御認識をお伺いをしたいと思います。
  102. 伊東正義

    伊東国務大臣 この間行きまして率直に感じたのは、レーガン政権がはっきりした外交政策、総合的な外交政策といいますか安全保障政策といいますか、そういうものを全世界的にぴしゃっと確立した、まだそうじゃないのじゃないかという感じがいたしたことがございます。よくサミットまでというような言葉を使って、そのときまでいろいろ意見を決めるとかいうようなことを言ったことがございますので、私は新政権の総合的な政策というものはまだぴしゃっとは固まっていないという感じがいたしました。  ただその中で、対ソ問題ということでお話しになったわけでございますが、一方でおっしゃるように、力のバランスといいますかそういうようなこと、いろいろなことを言いまして、対ソ問題につきましては非常に強硬ないろいろな演説があったりしたことは事実でございます。会う人ごとにみんな言いますのは、アメリカがまず強くならなければいかぬ、それには、経済再建計画は何としてもやって、アメリカ経済的に足腰をしっかりしなければいかぬ。そしてもう一つは、対ソとの力のバランスをもってやらないと、いままで第三世界に対する進出とかいろいろなことがあったので、そこはカーター政権と自分らは違うというようなことを説明したわけでございます。  その中で、その力のバランスということはわかる。しかしソ連演説では、非常に抑えた調子で、米ソ首脳会談でございますとかSALTの問題、核の軍備管理の問題を言っているわけでございますので、日本としては、米ソが全面的に対決して核戦争だなんということになったら、これは世界じゅう大変なことになるので、米ソの間は平和関係が維持されることを本当に希望する。それには、力のバランスもわかるが、いろいろ話し合いも現実的な問題として必要じゃないかという話をしたわけでございます。そうしたら、ヘイグさんが特に言っておりましたが、それはわかる、自分らも、話し合い、それからSALTの交渉とか、そういうことについてどうするかということをいま検討しているのだ、ヨーロッパで戦域核の問題は早く話を始める、こういうことを言っておりました。  SALTの問題は、SALTIIIといいますか、あるいはいまのものを直すか、その辺はわからぬけれども、国内でまだ決めておらぬが、そういうことも中で相談するつもりだ、しかし、ソ連の出方というものはやはり慎重に見なければいかぬ、いろいろな演説では、平和攻勢をやることは確かだが、ソ連が果たしてどういう態度をとるのかということを見ないと、ただ話し合いといってソ連にだけ乗っていくわけにいかぬということがございまして、やはり力のバランスを考えると同時に、話し合いもアメリカ考えているということがわかったのでございますが、さてそれでは、対ソ措置というものは、たとえば穀物禁輸を解くと言っていたのですが、どういうことをするのか、まだ決めていないのです。そういうことにつきましては、まだ中で十分固まっていないのだなという感じを持って帰りました。
  103. 柿澤弘治

    柿澤委員 去年以来、日本の国内でも、北方からの脅威というのが非常に喧伝されたわけですけれども、北方から脅威があるのかないのか。この点については最近、私も雑誌で読んだのですが、アメリカの制服組は、余りソ連から北海道への侵攻能力というのは高くないということで、大きな北方からの軍事的脅威というのは認められない、そういう考え方をとっているというふうに聞いたわけです。  大臣が訪米されたときにもアメリカ側からは、日本防衛力増強に対する努力要求というものが出たと思うのですけれども、その中で、北方からの、ソ連からの軍事的な脅威に対する対応を主として先方は言っているのか、それとも、シーレーンの保護とか南からのいろいろな軍事的な脅威に対する共同防衛体制の整備というのを主として言っているのか、北方脅威論というものがアメリカ政府部内ではどう評価されているのか、その辺についての議論がありましたら、お教えいただきたいと思います。
  104. 伊東正義

    伊東国務大臣 世界情勢の認識あるいは日本防衛ということで話したことはございますが、直接、北方からの脅威があるかどうか、そういう触れ方では実は話はしませんでした。  アメリカ防衛努力でこういうことをやっているのだという例として、ペルシャ湾とか南西アジアとか、よく新聞にも出ていますフィリピン以北、グアム以西とか、そして北西太平洋、こういうことでアメリカ防衛に非常に努力しているのだ。その中で、ソ連の飛行機の問題とか潜水艦の問題とか、ベトナムの問題の話に触れ、北西太平洋の話でそういう話がいろいろ出たことはございます。そういう一般論があって、日本防衛力強化努力してもらいたいという一般論の話は出ましたが、直接、北方から日本の脅威云々というようなことについては、お互いに意見の交換はしませんでした。
  105. 柿澤弘治

    柿澤委員 ソ連の対日政策というものは、日本アメリカとの関係だけで決まってくるものでもないと思うのです。ソ連の場合には、対欧州といいますか、西側の正面と東側の正面をどう組み合わせていくかということが外交政策の柱になるわけだと思うのですけれども、最近におけるポーランド情勢、東ヨーロッパの社会主義諸国におけるさまざまな不安定要因の発生がある意味では、対日政策の変化をもたらすのじゃないかという考え方もあるわけですが、そうした東欧における新しいシチュエーションというものはソ連の対日政策にどういう変化をもたらすか、その辺については外務大臣、どうお考えでございますか。
  106. 伊東正義

    伊東国務大臣 これはアメリカと直接、いま柿澤さんがおっしゃるような形で議論はしませんでしたが、世界情勢の分析をしますときに、ヨーロッパの正面の問題、もう一つは、アフガン介入以来、またイラン・イラクの紛争以来、中東の分野が非常に複雑になってきた。アメリカ寄りのところもあればソ連寄りのところもあればということで、中東の問題についてもアメリカは、ソ連に東西関係が出てくるのじゃないかと非常に心配をしておったわけでございます。  そこで、ヨーロッパの対ソ連の政策によって日本はどういう影響を受けてくるかということでございますが、私ここでこうだこうだと申し上げるには、軍事的な知識とかその方はいささか乏しいわけでございますが、私はやはり主正面というものはヨーロッパにあるのかなというような——最近はまた中東が問題になっているということも考えられます。そういうことになればまた、日本にもある程度の影響があるということは当然でございますので、一々ここで御説明しませんが、西のことは東にも必ず関係があるというふうに見ております。
  107. 柿澤弘治

    柿澤委員 欧州正面での緊張の高まりというのがある意味では、東アジア地域での緊張緩和への欲求になってくるという考え方でよろしいわけでしょうか。もしそうであるとすれば日本としては、対ソ政策を進める上で一つのきっかけができるというふうにも考えられるわけですけれども、その辺はいかがでしょう。
  108. 伊東正義

    伊東国務大臣 柿澤さんの御質問は、非常にむずかしい御質問でございまして、日本がそういう判断でソ連との関係をいろいろ考えているということを、私がここでそうだと言いますことも、これまた非常に影響のあることでございますから、やはり西と東とは関連があるということだけは私も申し上げますが、それ以上のことはちょっと御勘弁を願いたいと思います。
  109. 柿澤弘治

    柿澤委員 それから中ソ関係についても、中ソの対立は永続的なものだ、継続するだろうという見方が一般的であったわけですけれども、今後の進展いかんによっては中ソ和解の新しい可能性も出てこないではない、こういう見方もあるわけですが、その辺がまた、日本の対ソ外交というものに大きな影響を及ぼしてくると思うわけです。その点で、その辺についてもアンテナを張りながら、新しい変化の芽というものを十分キャッチしていく必要があると思うわけですけれども、その辺についての御認識はいかがでしょう。
  110. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本としては、将来の問題としてそういうこともいろいろ配慮をしておかなければならぬことは当然でございますが、私は当分、いまの中ソ関係というものは変わらないという前提でいま外交と取り組んでおります。
  111. 柿澤弘治

    柿澤委員 先ほど中東の問題が出ましたけれども、中東についてはなかなか情勢が複雑で、日本としても判断をしかねる点があろうかと思います。ただ、最近のレバノンの内戦の中で、一方では、シリア、PLOがソ連からの教唆といいますか支持を受けて、レバノンへ侵入してきているという説がある。一方では、いやそうではなくて、自由レバノンなりイスラエルの方がヘイグ国務長官の中東訪問に合わせて、アメリカの支持を期待しながら動き出したんだという意見もあります。  ちょうど昨年、外務大臣がエジプトへいらっしゃっておられましたころに、私も木村俊夫団長とともにパレスチナへ行って、アラファト議長とも会ってきたわけですけれども、この動きというものを、ソ連の中東に対する一つのイニシアチブというふうに受け取っていいのか、それとも、アメリカ側の巻き返しの第一歩というふうに考えていいのか。その辺は最近のレバノン情勢に絡んで、どういうふうに外務省としては御判断をしておられるのでしょう。
  112. 伊東正義

    伊東国務大臣 レバノンというのは、本当に穏やかなスイスみたいな国であったわけでございますが、あれが、中東のイラン・イラクの紛争ももちろん関係がありますし、中東の和平、PLOの問題もあり、その辺が錯雑していまのような状態になったわけでございます。あの根は、やはり中東の和平というものが来ない限り——あそこはもう御承知のように、曼陀羅のように入り乱れた状態になっているわけでございまして、あの国自体でということよりもいま先生のおっしゃったように、後ろには東西の影が見え隠れしているという状態でございますので、今度の紛争がどっちからということを外務省として断定するのはなかなか困難でございますし、立場上むずかしいことでございますが、私はやはり中東の和平という問題を何とか早く解決しないと、いつまでたっても同じ問題があそこに起こるという感じで見ております。
  113. 柿澤弘治

    柿澤委員 四十五分までということでお約束をして質問をしておりますので、もう一問で終わりたいと思いますが、いまおっしゃったように中東の和平というのは、これからの世界の平和の中でも非常に大きな意味を持っていると思うわけです。その点で、ソ連なりアメリカなり超大国が中東情勢の混乱の中で、自分の主導権を確立するためにいろいろな形で介入をしてくる、これは逆に中東の紛争を拡大する危険を持っていると思います。  その点で、日本としてはなかなか中東和平について積極的な貢献ができる部分は少ないと思うのですけれども、友好国としてのアメリカなりソ連に対して、中東での火遊びは危険ですよ。その点では、中東諸国の自発的な自決権といいますか、自発的な紛争解決の努力を、超大国としては側面的にサポートをするということでなければいけないと思うわけですけれども、その辺について日本の外務省、外務大臣として、アメリカなりソ連なりに意見を言っていくという必要があろうかと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょう。
  114. 伊東正義

    伊東国務大臣 私もその点は柿澤さんと同感でございます。  それで二、三日前、キャリントン外相と会ったのでございますが、ECと日本とは、中東の和平問題について考え方が非常に近いわけでございまして、それじゃまずアメリカを説得しようじゃないか。おっしゃるように超大国がそこに介入するということは、これは本当に大問題になるわけでございますので、キャリントンが、それじゃ日英同盟だなんて言って笑ったのでございますが、私もこの間アメリカへ行きまして、ヘイグさんには、いまのようなことに近い考え方を私は言ったわけでございます。  あそこは本当に民族問題、宗教問題というようなことで紛争になったところへ、最近はイラン・イラクの紛争でまたむずかしくなってきた。そこへ東西関係が後ろに影響するというようなことで非常に複雑になって、あそこが世界の活火山になるのではないかというように非常に心配しているわけでございまして、その解決方法等については私は柿澤さんと同じような考えを持っています。
  115. 柿澤弘治

    柿澤委員 ぜひその点で御尽力をいただきたいと思います。  終わります。
  116. 小沢貞孝

    小沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十六分散会      ————◇—————