○
中村(正雄)
委員 私は、再建のかぎは現場管理者が握っておる、そういうふうに感じているわけでございます。私のこの目で見た事実を基礎にして、二、三具体的な
国鉄の運営についてお伺いしたいと思うのです。
実は、卑近な例でありますが、私、去る五日の休みの日、ちょうど家に帰っておりまして、中学に行っている孫
たちに誘われて、ハイキングに行こうということで、私、高槻でありますから、嵐山から清滝の方にハイキングに行こうじゃないかと孫に誘われて、いやいやながら腰を上げたわけです。中学へ行っている孫
たちですが、五、六人連れを呼んできて、九人で行こう。私の考えでは、古い頭でありますから、国電に乗って京都で乗りかえて、嵯峨でおりて、それから嵐山から清滝に行こう、このコースをとろう。ところが、孫
たちは、阪急電車で行けば、同じように桂で一遍乗りかえたらいい、しかも運賃が
国鉄の半分以下だ、したがって、時間は十分くらいしか違わないけれども、運賃が半分以下だ、おじいちゃんに負担かけるのは気の毒だから安い方で行きましょう、こう言うわけなんです。中学生が、並行して走っている
国鉄と私鉄の運賃を知っておって、そして
国鉄の半分以下だから私鉄に乗っていこう、それで阪急電車に乗ったわけなんです。
総裁も御承知のように、あの区間、
国鉄と阪急は並行して走っております。五日と言えば、ちょうど私鉄が運賃値上げをする前の日です。しかも、休みの日ですから、乗りました私鉄は超満員、並行して走っている
国鉄を見ますると、立っている人は一人もいないわけです。これでは
国鉄が幾ら努力しても、これだけの運賃の格差があれば、特に輸送密度の高い都会において、やはり
国鉄から私鉄に流れることはやむを得ないだろう。いまこれだけ私鉄に流れておりまする乗客を
国鉄が奪い返すことは、もうとうてい困難な作業です。しかも、単年度で達成できるものじゃないわけです。後で運賃を調べたわけですが、やはり阪急の方が半分以下です。今度値上げをしても半分です。そうなりますと、並行線を走っている
国鉄と私鉄の運賃政策というものは、この再建計画にも営業努力いろいろ書いておりますけれども、これは
相当考えなくてはいかぬのじゃないか。
私、振り返って考えますと、
国鉄が赤字になって何とか再建しなくちゃいかぬということで、
国鉄内部においてもこういう経理といいますか、数字といいますか、そういう面の
意見のみが重要視されて、
国鉄の営業活動の面が軽視された結果ではないか。私は、運賃政策の失敗が現在の
国鉄の危機を招いておる面も
相当あると思うのです。
もう一つの例を引きましても、関西のことでありますが、先般福知山線の一部の電化をやりました。これまた阪急が並行して走っております。
相当増発はいたしましたけれども、それに伴いまする乗客はふえておりません。定期旅客は便利になりましたけれども、一般の客は、これだけ運賃の格差があったら、
国鉄を利用する人は少ないわけです。御承知のように、通勤定期は、いまはほとんど企業負担でございます。したがって、通勤客は自分の住所を中心にして便利な路線を選択いたしますが、通学とかあるいは一般の旅客は、自分のふところ勘定の利害でどの線を利用するかを決めるわけなんです。
国鉄にもやはりいままで特定旅客運賃という制度はあったわけです。したがって、私は、運賃政策の失敗がこういうふうに
国鉄の利用客を非常に少なくいたしておるとつくづく感じたわけです。
再建計画にもありますように、これからの運賃政策、営業政策が
国鉄再建のかぎになると思うのですが、こういう面について、役員の方どなたでも結構でございますが、今後の方針についてお聞かせ願いたいと思います。