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1981-03-24 第94回国会 衆議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月二十四日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 小此木彦三郎君    理事 加藤 六月君 理事 関谷 勝嗣君    理事 楢橋  進君 理事 宮崎 茂一君    理事 福岡 義登君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君 理事 中村 正雄君       阿部 文男君    上草 義輝君       片岡 清一君    木部 佳昭君       佐藤 文生君    近岡理一郎君       永田 亮一君    浜野  剛君       林  大幹君    古屋  亨君       三塚  博君    箕輪  登君       水野  清君    山村治郎君       井岡 大治君    伊賀 定盛君       小林 恒人君    浅井 美幸君       小渕 正義君    三浦  久君       四ツ谷光子君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         運輸大臣官房長 角田 達郎君         運輸省港湾局長 吉村 眞事君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 永光 洋一君         運輸省航空局長 松井 和治君  委員外出席者         運輸大臣官房審         議官      小林 哲一君         運輸省航空局技         術部長     長澤  修君         労働省労政局労         働法規課長   中村  正君         参  考  人         (日本航空株式         会社代表取締役         社長)     朝田 静夫君         参  考  人         (日本航空株式         会社常務取締         役)      萩原雄二郎君         参  考  人         (日本航空株式         会社取締役)  平沢 秀雄君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   林  大幹君     上草 義輝君   山村治郎君     片岡 清一君 同日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     林  大幹君   片岡 清一君     山村治郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本航空株式会社法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二二号)  外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法  律案内閣提出第三五号)      ————◇—————
  2. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 これより会議を開きます。内閣提出日本航空株式会社法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正雄君。
  3. 中村正雄

    中村正雄委員 議題となっております日航法改正について運輸大臣にお伺いいたしたいと思います。  第一点は、二十八年に日航法ができましてから、三十年に強力な国の支援体制をつくるということで改正が行われ、今日までになってまいったわけですが、過去、日航成長度合いを見てまいりましても、現在では国際的にも十分競争力があり、また企業体制としても国が援助をする必要がないというところまで来ておるので今回の改正になったわけでありますが、私は一歩進めて、航空法という法律があるわけでありますから、それで航空行政全体は一応規律できるわけでございまして、日本航空特殊会社として存続させなければならないという理由はもうなくなっているのじゃないか、それほどに日航は成長したのじゃないか、こう考えますので、運輸大臣の所信をお尋ねいたしたい第一点は、日本航空特殊会社として存続せしめなければならない理由がどこにあるのか、私はほとんど消滅いたしておると思うのですが、運輸大臣所見を最初にお伺いしたいと思います。
  4. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 日本航空株式会社は確かに企業といたしましては堅実に発展してまいりましたし、また国際競争に対抗し得るだけの企業基盤もできてきたと思うております。しかし、御承知のように、航空企業の、特に路線問題というのはいわば国益そのものでございまして、航空路線というものを国際的に協定を結び、わが国権益として会社に代行せしめるという場合には、やはりその会社に対しまして政府がある程度指導権指導力を持ち、また監督権を持つということは当然のことだと私は思います。したがいまして、そういう観点から見まして、世界各国とも国際航空企業に対しましては、政府はそれぞれ深いかかわり合いを持っております。  もう一点、現在の国際航空会社はお互い大変な資本投下をしなければなりませんが、それが日本航空企業力は十分あるとは申せ、これをわが国複数企業でやらしめるほど、それほどまだ日本としての航空需要もございませんでしょうし、また莫大な投資をして二重投資の弊害を受けるということになっても、これは国家的観点に立ちましても私はいいことではないと思うておるのであります。  そういうこと等いろいろ考えてみますと、アメリカを除きます他の国は大抵日本と同じように大体一社で国際航空事業を担当せしめておるという実情でございます。そして、政府がこれに非常に深いつながりを持っておりますことは、先ほども申しました国益の行使ということと同時に、国としても不時災害のありましたときに企業を指導し得る関係を持っておきたいということだと思うております。日本だけがただ国際航空会社に対し、出資もし、指導力を強めておるということではなくして、世界各国ともその傾向にあるというのは、そのようなことに因縁するのではないかと思うております。
  5. 中村正雄

    中村正雄委員 大臣のお考えは三点ほどでやはり国策会社として存続しなければいけない、こういう理由になっておるわけですが、第一点の航空協定等についてやはり国策会社一社でなければいけないという御答弁でございますが、大臣も御承知だと思いますけれども、たとえば日米航空協定にいたしましても、日本アメリカ複数企業ということを前提にして日米航空協定はできておると私は思うのです。したがって、それに基づいてアメリカ国際航空自由化政策を強行しているわけでございます。したがって、希望した企業には認可を与えておる、そして米国民間航空委員会ですか、これが認めた企業ならばどこでもその仲間入りができる、こういう体制をつくっておるわけです。したがって、航空協定関係日本国策会社一社でなければならないということは理由にならないと私は思うのです。これは複数前提にしてできているわけでありまして、そういう考え方で日米航空協定等の不平等の改定をやろうという消極姿勢そのものが、いまなお日米間におきます航空協定の不公正が残っている原因じゃないかと私は思うわけです。  それから、二番目におっしゃいました資本等関係ですけれども、今度の改正案でも補助というものを打ち切るとなっておるわけでありまして、そういう資本関係国策会社でなければならないという理由はすでに消滅いたしておる。その証拠には、今回の改正案でも国の補助についてはもう改正いたしておるということがはっきりいたしておるわけでございます。  また、各国がそれぞれ国策的な企業を持っておると言われておりますけれども、確かに開発途上国等あるいは国の防衛等関係もあって国策会社あるいは純然たる国営企業というのもありますけれども、先進国におきましては自由競争国際航空自由化ということを前提にして複数企業体制をとっているわけでございます。  したがって、大臣の御答弁は三点ともちょっと実情に反しているとぼくは思うのですが、さらに大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  6. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 第一点の、日米間における航空協定日本の方も複数前提にしておるというお話でございますが、私はそれはあながちそうも言い切れないように実は思うております。それは複数になった場合に、アメリカがその日本複数を全面的に認めていくかどうか、これは私はいまのところ、予測は、それなりにまた先方も厳しい条件をつけてくるのではないかと思うたりいたします。これはまだ確定的に御返答申すことはできないと思うのです。しかし、アメリカはああいう複数企業でございますが、これはそれなり理由と土壌があったからああいうことになったのだと思うのです。仰せのように、ヨーロッパ等におきましては、国際航空会社としては、ナショナルキャリアとしては一社にしぼっておるように思いますが、日本もその点では同様ではないかと思うのであります。ですから、日本も一社がいいか二社がいいかということは、これはいろいろ議論はあると思います。だから、おっしゃるような議論も、中村先生おっしゃるのも私はもっともだと思うのですけれども、しかし一方において現在の日本と諸外国との航空需要等を見ましたら、いまここで急に二社体制複数体制をとる必要があるのかどうかということは、大いに検討の必要があるだろうと思う。  それからもう一つ日本空港の発展を見まして、まだ相当諸外国におくれておることは事実でございまして、日本でたった一つの完全な開かれた国際空港成田というのがあのような状態で、われわれも責任を感じておるところでございますけれども、そういう点から見ましたら、やはりそれなり空港施設、いわば航空社会資本の充実ということも必要なのではないか。そういうものが相まって、これからの問題として考えていくべきだと私は思うておるのであります。
  7. 中村正雄

    中村正雄委員 私が大臣にお尋ねしました趣旨というのは、国際航空について複数にしろということを言っているわけではないので、日本航空としては国策会社でなければならないという必要性はなくなっているのじゃないか、そういう段階に来ているという立場で、いま大臣日米航空協定の問題を持ち出されましたから、私は日米航空協定前提は、日本だけが一社であってアメリカ複数でいいということが前提になって航空協定ができているものではない、こういうことなんです。二社がいいか三社がいいかということで交渉がどうなるかということは、これはやってみなくてはわからぬわけで、日本はどこまでも日米航空協定については一社でなければならないということを前提にして航空協定ができているものではないということを私は念のために言ったわけです。  それからもう一つ、この段階日本航空純然たる民間会社にして、民間活力を利用するという一本立ちにしたらいいのじゃないかということで、資本構成の面から言っても、また監督行政から言っても、航空法という法律があるわけですから、いまさら特殊会社にしてやる必要はないのじゃないかという点で、私は大臣所見を聞いたわけなんです。特に鈴木内閣としても行財政の改革、できるだけ民間に移行できるものは民間にしろ、こういう方針のもとに内閣運営されているわけでしょう。そういう関係で、もう日本航空はぽつぽつ一本立ちにしてもいい、監督の面においてもあるいは資本の面においても。運営の面においても、やはり運輸省運営していると同じようなかっこうがついているけれども、一般の民間の人は、運輸省自体日本航空の霞が関の出張所だ、こう言うている人もあるわけなんですね。そのように日本航空に手かせ足かせするよりも、この際純然たる民間企業として一本立ちをやらすことの方が、これからの日本航空権益を守る上においても必要じゃないか、こういう意味で私はお尋ねしたわけなんです。  二番目に私お尋ねしたい点は、いま提案理由説明を見てまいりますると、「民間活力を十分発揮しつつ、より自主的、弾力的な事業運営を行い得るよう措置する」、これが今度の日航法改正趣旨になっておりますね。ところが、この中で一つ役員の件について、一応いままでは代表取締役であるとか会長、社長、副社長等の特定の問題だけが認可事項になっておったわけですが、今度の改正によって役員人事についてはすべて運輸大臣認可事項改正されて、いわゆる提案理由説明とはうらはらに、運輸省認可権が拡大されているわけなんですね。その理由はどこにあるか、一遍お尋ねしたいと思います。
  8. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 御質問の前段の方でございますが、御趣旨はよくわかりました。私らも実はそう思うております。政府関係しておる企業だからといって、がんじがらめ企業活動を縛ってしまうということは余りいいことではないと思いますし、今度の日本航空法改正のお願いをいたしておりますのも、一部私たちのそういう趣旨が盛り込まれておるということも御理解していただきたいと思います。  それから、後段の御質問役員認可制でございますが、これにつきましては、確かに仰せのように、片一方では権限を緩めておきながら片一方でまたがんじがらめにしておるではないかということでございますが、私らも実はいろいろその点については苦慮したところでございますが、なかなか一遍にそう何もかも突っ走ってしまうわけにもいかないし、それで要するに私らの考えというのは、事業活動はできるだけ自主努力でやってもらいたい、そのかわりに、どういう方がこの会社責任を持って担当していくのかということについては、やはり監督権といいましょうか、そういうものの上ではっきりしておきたい、こういう趣旨でございまして、従来から見ましたら役員認可については確かに強化されたようでございますが、だからといって、この認可権を何か干渉がましく、介入のための認可にはいたしたくないと私らも思うておりますが、そういう点につきましては、御質問のこともわれわれは非常に苦慮してこういう結論に至ったということで、いわば妥協的なことでこういうふうになったのだというようにひとつ思うていただいて解釈をしていただきたい、こう思いますが。
  9. 中村正雄

    中村正雄委員 私は、大臣が苦慮されたという意味がわからないわけですけれども、やはり事業というものは人が運営するわけなんです。したがって、事業内容について一つ一つ指示監督をする、しないは枝葉末節であって、やはり企業であれば役員中心となって運営するわけで、役員人事を全部運輸大臣が握ると、たとえば内部干渉しないといまの大臣はおっしゃっていますけれども、法律ができたら法律はひとり歩きするわけなんです。したがって、いまの大臣の間は役員人事についての厚かましい干渉はしない、こうおっしゃっておるかもわかりませんけれども、これができ上がって、今後極端に言えば、役員人事についてはすべて運輸大臣の意向を聞かなければ取締役監査役も選任しない、こういうようになっているわけなんです、はっきり言えば。これは少なくとも提案理由説明にありまする趣旨とはうらはらよりも、反対に運輸省ひもつき運輸省監督人事の面において全面的に強化されている。私は法案は提案理由説明とは逆行いたしておると思うのですが、大臣が苦慮された結果だとおっしゃっていますが、どういう点で苦慮されておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  10. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 実は私は、今度は事業計画を提出してそれを承認するということで、あとは収支見積もりなりあるいは資金繰りというものはもう会社の自由にやってもらいたい、こういうことです。役員についても、私はその程度のものと思うておったのです。しかし、各省庁にこういういろいろな特殊法人を皆持っておるわけでございまして、そこのいわば慣例というものに右へならえしていきますと、日本航空政府との資本関係のあるような法人に対しては大体役員認可権というものはどうも政府にあるように、担当省庁にあるようでございまして、まあそこを運輸省だけが新例を開いてうんと突っ走ってしまうということは、どうもそのときの段階でできなかった。ですから、他省庁関係しておる、所管しております法人との均衡をとっていく必要があるということになりまして、それでそういうことになったということでございます。
  11. 中村正雄

    中村正雄委員 それで、あと部分的に、自主性を回復する、自主的な運営にさすという点で二、三改正されておりますが、このうち事業計画については、これはいままでどおりにしておる。ところが、この事業計画あるいは重要な施設等についてはすべて省令で決めるとなっているわけなんですね。したがって、私は、省令内容をしさいに検討はいたしておりませんけれども、企業運営というものはいわゆる役員等人事の問題、人の問題と事業計画によって運営されると思うのですね。したがって、役員の面については、いま言ったように、運輸大臣がすべて握っておる。また、事業計画についても運輸大臣の許可がなくちゃいけない。そして、重要な事項について省令で決めた点については監督認可指示、こういう運輸省の全面的な指導下にあるわけなんですね。  そうなってまいりますと、今度の改正で、形式的な面と言えば語弊があるかもわかりませんが、二、三の点について日航独自の判断に任す、こうなっておりますけれども、重要な面についてはかえって強化されたのではないか。また、運輸省令自体の改廃によってどんな点についても指示できる、あるいは認可事項にできる、あるいは監督できる、こうなるわけなんですね。  そうしますと、たとえばこれはささいな事例でありますけれども、いままでも問題になったことがありますが、では、もし日本航空社員用社宅を建設するとなった場合、これは純然たる部内の問題であって、事業計画に入るべきような問題ではないと思いますが、これもやはり運輸大臣認可事項になっておるらしいのですが、こういう点についてはどういうふうにお考えになります。
  12. 松井和治

    松井(和)政府委員 ただいまの御指摘でございますけれども、恐らく先生の御質問は、法律の十二条に基づきまして、重要な施設取得あるいは処分をする際に運輸大臣認可が要る、これが法律では航空機となっておりまして、その他省令で定める事項、この中に社宅用地が含まれるかどうか、こういう御質問ではないかと思います。  省令で、この法律十二条の重要施設とは何かということを定めておりますけれども、これは「営業所事務所その他の事業場の用に供する土地及び建物であってその帳簿価格が一億円(有償で取得しようとする場合にあってはその取得価格が十億円)以上のもの」、こう定められておりまして、当然、社宅用地というのはこういう事業場あるいは営業所事務所には含まれませんので、これは認可対象にはなっておりません。したがって、どういうものが認可対象になるかと申しますと、支店、営業所あるいは航空会社でございますから格納庫、こういったものが取得あるいは処分する際には認可対象になるわけでございます。  ちなみに、最近のこういう重要資産取得あるいは処分認可件数について申し上げますと、過去四年間に、合計いたしまして件数はわずかに四件でございます。これは五十三年の成田開港に伴う成田がらみ資産取得が大部分でございまして、通常この省令で定めます重要施設に該当いたしますものの取得あるいは処分というのはそうざらに行われるものではない。したがって、運輸大臣がんじがらめにしばっておるという御批判は当たらないというふうに考えております。
  13. 中村正雄

    中村正雄委員 大臣が、人事権については他の省の特殊法人関係でこうせざるを得なかった、また、いま運輸省令で、重要な施設等についての説明を聞きましたけれども、少なくとも今後日本航空一本立ちをするためには、できるだけやはり国の干渉を少なくするということの方が民間活力を引き出すためにも必要だと私は思いますので、私は個々の問題は別にして、提案理由説明にあるような方向で今後運輸省考えてもらいたいということだけを申し上げておきたいと思います。  次に私お尋ねいたしたいのは、さきに同僚の関谷君もちょっと質問いたしましたが、国際貨物輸送について一応お尋ねいたしたいと思います。  御承知のように、産業構造の変化といいますか、そういう面から、だんだん付加価値の高い高級商品というふうに移行する、こういう傾向はやはり海運から航空運送にだんだん転化してまいると思うのです。そういう関係から、昭和四十五年の十一月の航空行政に関しまする閣議了解事項もあり、四十七年七月の運輸大臣通達以来十年経過しているわけでありますが、その間航空貨物は、当初予定しておりました推移とは違うかもわかりませんけれども、先般運輸省が今後の予想を出しておる数字を見てまいりましても、五十四年度は大体四十九万トンであったのが、六十年度には百八万トンになる、あるいは六十五年度には二百万トンになる、こういうふうに運輸省が発表いたしております。そうなりますと、国際航空貨物というものが六十年、六十五年に、運輸省予想が正しいかどうかはわかりませんけれども、二倍、五倍と、こういうふうになることがはっきりと予想されるわけなんです。景気の問題等いろいろありますけれども、少なくとも過去十年以上、二けた以上の経済成長を続けた産業というものは少ないわけなんですが、やはり航空産業だけはずっと二けたの経済成長を続けているわけなんです。そういう関係から、閣議了解事項なり運輸省通達、これを具体的に早急に実現する、こうなっているわけなんですが、その間何ら具体策が提示されておらないわけなんです。  運輸大臣も御承知だと思いますが、四十五年の了解事項、四十七年の通達によりまして、それぞれ航空貨物輸送専門企業をつくろうということで、海運業界中心になって、二つグループがそれぞれこういう計画をしたわけなんですが、しかし、やはり二つグループでやることはいけない、これは陰に陽に運輸省その他からの一つのサゼスチョンもありまして、ようやく海運業界一つにまとまって、一つ会社をつくったわけなんですね。そうして、五十三年十一月に貨物運送認可申請をいたしているわけなんですが、そのままになっているわけなんですね。こういう航空会社というものは、たとえば認可されてからでも実際仕事を始めるのには一年半から二年の年月が必ず必要なわけなんです。したがって、この問題については早急に前向きに検討する時期に来ているのじゃないかと思っているのですが、運輸大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  14. 松井和治

    松井(和)政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、日本貨物航空株式会社が、日本アメリカ間の貨物定期輸送をやりたいという免許申請を五十三年に提出いたしております。この五十三年という時期は、先生承知のように、日米航空交渉がそれまで六回にわたって行われておりましたところを、両者の主張に余りにも開きが大きいということで中断をいたした年でございました。いわばこの申請はその直後に出されたものでございます。そこで、私どもいわばそういう日米のにらみ合いの状態の中でこの申請をどう取り扱うかということについて検討したわけでございますが、ここで下手な動きをすることが、逆に向こう側にいわば乗ぜられるすきを与える可能性もあるということが一つと、もう一つは、当時御承知のように、成田のパイプラインの問題がまだ見通しが立っておりませんで、この日本貨物航空株式会社申請者の方の申請書にも書いてあるわけでございますけれども、成田燃料事情を考慮して、営業開始時期については弾力的に考えるというのが申請書に記載されております。といいますのは、もっと具体的に言えば、成田がはっきり油のめどがつくまでに決着をつけてほしい、こういう趣旨であろうかと思うわけでございますが、そういうことも両々相まって実は申請の処理がおくれておるわけでございますが、御承知のように、ことし、五十三年から数えて三年目に日米交渉が再開されるという動きになっております。また、成田のパイプラインにつきましても、昨年、五十八年十二月という新しい期限が明示され、着々とパイプラインの工事が進行しておる、こういう情勢変化がございますので、その両者、つまり日米の今後の交渉の推移を見きわめ、また成田の油の事情が五十八年十二月というターゲットが決まっておりますので、その辺をにらみ合わせながら今後慎重に検討していきたいというふうに考えております。
  15. 中村正雄

    中村正雄委員 航空局長の御説明は一応わかりますが、ぼくは大臣所見をお伺いしたいということで大臣にお願いしたわけなんですが、いまの航空局長の話はそのとおりだと思うのです。たとえば成田の問題は一応五十八年にはパイプラインが完成すると予定いたしておりますが、たとえば五十八年に完成するとすれば、ことしは五十六年なわけなんです。したがって、いま認可しても二年は最低かかると思うのです、実際にオープンするとなれば。五十八年のパイプラインということになれば、いつまでもほっておくわけにはいかない、早急に決着をつけなくてはいけない、こう考えられます。  また、私は日米航空協定の成り行きということは確かに大きな問題だと思いますが、先ほどもぼくは大臣に申し上げましたように、航空協定自体、何も日本が一社だ、そしてアメリカ複数だ、この前提で、日本は一社以外は交渉できないという、そういう消極姿勢自体が、私は航空協定改正に姿勢の面において大きな支障を来していると思うのです。先ほども申し上げましたように、航空協定前提はどちらも複数でというのが前提であって、日米航空協定は、日本だけは一社でなくてはいかぬ、アメリカは何社でもいいということが前提航空協定ができているものとは私は考えられません。航空協定にはそういう、日本は一社、アメリカは数社、そんなものは全然ないし、その基盤はどちらも複数がやはり前提になってできているわけですから、そういう一社だけで対抗するという考え方、その姿勢が私は航空協定の改定に大きな支障を来すのではないか、これは私の考えでございますから、大臣なり事務当局の考え方は違うかもわかりませんけれども、したがって、いずれにしても、いま航空局長答弁によりますると、航空協定を見守り、あるいはパイプラインの完成を見守って決着をつけなくてはいけないと、こういうことなんですが、少なくとも閣議了解事項もいろいろあります、また、やはり過去十年間の日米間の航空貨物の推移等も私はよく承知しておりますが、そういうことは申しません。  少なくともこの問題は何らかの形において早急に前向きに決着をつけなくてはいかぬ時期に来ておるというふうに考えるわけなんですが、私は運輸大臣に政治的な見解として前向きにこれを検討する、こういうお考えがあるかどうか、所信を承りたいと思います。
  16. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 中村先生の御質問の結論は、これを前向きに早急に検討するかという御質問でございますが、これはいまの御質問には答えにくいような話でございまして、私はやはり絶えず検討はしなければならぬと思うております。しかし、早急に決着をつけなければならぬ時期ではないようにまだ思うておりまして、先ほども航空局長が言っておりますように、現在生産性向上を上回るほどの航空需要がふえておらないのです。そこにやはりわれわれとしてもこの問題に取り組むのに非常に重要な問題があるわけでございますので、そこらの見きわめを一つしなければならぬということ、これが私はやはり問題ではないかと思うておるのです。  それともう一つは、先ほども局長が言っておりますように、日本国際航空施設の問題と、それから日米航空交渉、これはおっしゃるように、われわれ日米交渉は何も一社にこだわっての話というのじゃございませんで、いわば日本の持っておる航空能力というものとアメリカ航空能力というものとの対比ででございます。でございますから、近く開かれます日米航空交渉にいたしましても、もちろん航空路線、以遠権、そういう権限の問題もございましょうが、やはり大きい問題は輸送力の調整問題にあるだろう、これはお互いが競争を激化して血みどろの過当競争に入ってしまったのでは、どっちもどうにもならぬ。私は今度の日米航空交渉の要点は本当はこれが中心課題ではないかと思われるほどの状況でございますので、でございますから、そういう現在の構造的なあるいは経済的な実態を見てまいりますと、いま結論を出さなければならぬ時期とは私は思うておりません。しかし、これは絶えず検討はしなければならぬ問題だ、それは私はおっしゃるように、御意見は同じなんですが、いつまでに結論を出せとか、そんなんじゃない、まだこれからの先を十分見定めて慎重に見計らっていくべきだと思うております。
  17. 中村正雄

    中村正雄委員 十分慎重に情勢の推移を見た上で検討するという大臣の立場は十分わかるわけですが、ただ私が懸念いたします点は、先ほども抽象論として申しましたように、やはり航空産業というものは今後ふえることはあっても減ることはない、もっと具体的に言えば、航空需要というものはふえることはあっても減ることはないと思います。先ほどの運輸省の見通しをそのまま正しいとしましても、六十年度には二倍になる、六十五年度には五倍になるというのが大体運輸省の見通しなわけなんです。そういう状態になって日本権益ということを考えた場合、一社の体制でこれに対応できるかどうか、やはり外国と競争しているわけなんですから、外国航空会社に食い荒らされるということを懸念する、そのためにはやはり国内においても、せめて第一着手として貨物輸送だけでも競争原理を持ち込んで日本権益を守るということをやるのが正しい今後の航空行政運営ではないか、私はこう考えるわけなんです。  したがって、その点について、しさいな推移なり数字は、もう時間もありませんから申しませんが、大臣は慎重に検討する、それは大臣の立場上やむを得ないと思いますが、この問題については、やはり民間活力を引き出すためには競争原理というものを企業には持ち込まなければこれは日本権益を守ることができないという面で、ひとつ慎重に御検討願いたい、かように考えるわけです。  後、小渕君に譲りまして、一応私の質問はこれで終わります。
  18. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 小渕正義君。
  19. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それでは、補足して質問をさせていただきたいと思います。  これは先日も公明党の理事の方からの御質問、また、ただいま中村先生からの御質問でも触れられておりましたが、今回日航法改正するに当たりまして、民間としての機能、活力が十分発揮できるように、弾力的運営ができるようにということで、一方非常に自主的な運営が図られるという意味で前進だということで、提案の中でも触れられまして、またそういうことが言われているわけでありますが、もともとこの日航法関係の審議を私も過去の例を議事録などで読ましていただいたのでありますが、三十年七月の参議院の運輸委員会の中においても、民営企業形態に対して過度な経営面における干渉がないようにという、きついといいますか、そういった附帯決議も出ておるように、かなりそういう意味では、この日航法改正された際にはそういった問題がいつも議論になっているようであります。今回の日航法改正につきましても、先ほどから政府側の御説明を聞いているわけでありますが、形の上では、十何条ですか、一部改正によりまして少し干渉といいますか、政府からのあれがなくなったような感じはするわけでありますが、実際にこれを見てみますと、結果的にはしり抜けでいままでとほとんど変わらないのではないか、いままでの説明の中でお聞きいたしましても、こういう感じがどうしても抜け切れないわけであります。  したがいまして、具体的に、今回のこういう改正に伴いましてこういうふうにいままでと違って企業としての運用ができるのだ、そういう具体事例をひとつ航空局長なり当の日航社長なりにお尋ねしたいと思います。
  20. 松井和治

    松井(和)政府委員 今回の改正によりまして、まず第一点は役員関係でございまして、御承知のように、役員の法定制あるいは職務執行体制というようなものが従来は法律に定められていたわけでございまして、これを変える場合には必ず法律改正が必要である、これが今回は法定事項から落として、これを定款に譲るということになったわけでございます。したがって、この面につきましてはかなりの自由度が増したということがまず言えようかと思います。  それから、財務の監督関係につきましては、先般来いろいろと御意見が出ておりますが、事業計画以外の資金計画、収支予算というようなものにつきましての認可制をやめまして、これは一々変更の都度認可が必要であったわけでありますが、それがなくなる。これまた会社の営業の自由度は増したというふうに考えられます。  しかしながら、いわば国民の税金を出資しておる会社でございますので、国民にかわって監督する立場にある運輸省としては、基本的な問題についての監督というものはやはり続けていかなければならない。しかしながら、なるべく直接的な監督から間接的な監督へ、あるいは事前の監督から事後の監督へというような形での改正を図ったわけでございますので、具体的にと言われますとなかなかむずかしい点がございますけれども、そういう全般の監督権に対する考え方から言いまして、会社の営業の自由度というものはかなり増したというふうに考えております。
  21. 朝田静夫

    ○朝田参考人 ただいまの航空局長の御答弁趣旨にのっとりまして、今回の法改正というものの企図しております点が十分民間企業としての活力を発揮する手だてになっておると私は思っております。何といいましても、いままでの政府株の後配制というものを脱却いたしまして、政府株にも配当を行うという点がございますし、また、ただいまお話がありましたように、国の経営に対する関与がある程度縮小され、株式会社としての長所、利点を発揮するということができるようになると私は思っております。  具体的には、監督規定の緩和によりますところの自主性の拡大、それから役員規定の改定によりまして経営体制が強化される、そして補助金規定を削除することによりまして、こういうものに頼らずに一層の自立化を図っていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  22. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 確かに役員の法定制を緩和して役員を何名でも自主的に決めていいというようなことは、これはわかります。しかしながら、その反面、今度は認可する役員の幅を拡大して、全役員認可制に移すように、これは従来よりもかわっておるわけであります。それから、いま言われた、確かに補助金に頼るようなことはなくしたのだということでありますが、それはそれなりにわかりますが、十二条の中で前回も質疑が交わされておったわけでありますが、資金計画及び収支予算等について、これは今回はやめて結果的には事業計画だけだ、ここに大きな監督上のあれが変わってきたのだということを言われておりましたが、結果的にはこれに類する書類は全部添付書類としてつけてもらうのだというようなことを前回の質疑の中で航空局長は言われておるわけですね。だから、対象の中身については外れていたにしても、必要書類として出すことについては一つも変わりがないという感じがするわけです。  あわせて十四条においても新たに営業報告書を出さなければならぬ、こういうふうに追加されて新しいものが出てきておる。また、いろいろ見ると、社債の枠は今度拡大するようにしたけれども、これは実際はみずからの判断でできない。増資についてもすべて認可が必要、資金繰りについても一年以上の借り入れはすべて認可が必要だ、こういうふうな状況です。  しかも、十二条の中ではいままでは対象として資金計画、収支計算書、事業計画ということに限られておったけれども、「特に必要があるときは、監督上必要な指示をすることができる。」ということで、運輸大臣が特に必要な場合と判断した場合における指示権、指示の範囲というものがすべて拡大されてしまっておる。前は十二条の中ではある一つの項目ごとの対象の中で必要だというふうに言われておったのが、ここですべてこれが外れることによりまして、特に必要な場合はということで対象がすべて拡大した。  このように考えていきますと、何一つないのじゃないですか。逆に見せかけだけそんなことをしておるだけじゃないかというふうな疑念を抱かざるを得ません。先ほどからただ文章上確かに資金計画や収支計算書はもうやめますから、これが自主権といいますか、企業活動の非常に自主的な弾力的運用ができるのだということを言われておりますが、では、そういうことをした場合、具体的にどういうふうな事例が今度できるのかということを聞いておるわけです。だから、ただそういう抽象的なあれでなしに、これだけ資金計画、収支予算を出しておったのが、今度認可しなくて済むようになりましたから、これで実はこんなことで制約を受けておりましたとか、こんなことで制約を受けておりましたけれども、もうこれがなくなって、そういう意味では非常に自主的な活動が大いにできます、何かそういう事例があったら教えてくれということを言っておるわけですから、いま私が申し上げましたような長い目で見ますと、見せかけだけは確かに少し変わったけれども、実質的な運用はほとんど変わらぬような形の中で、従来と同じではないかという指摘をせざるを得ないわけでありまして、そういう意味でひとつ御見解を承りたいと思います。
  23. 朝田静夫

    ○朝田参考人 今回の改正法案に織り込まれております収支予算それから資金計画、この問題については、確かに御指摘のように、私ども困っておったということはございます。といいますことは、収支予算を立てます場合でも、石油事情を一つとりましても大変変動の激しいことでありますので、OPECの総会で原油価格の値上げがありますと製品価格が直ちに上がってくる。そうしますと、収支予算というものが時々刻々に変わってまいりますから、もちろん会社としてはそういうものに即応していつも修正するわけでありますけれども、これが認可事項になっておりますと、その都度与件の変動によって認可をいただかなければならない、しょっちゅうそういうことをやっておるということは現実的でないというふうに私は考えておりますし、資金計画につきましても最も中軸をなしておりますのは社債の問題であります。コストの上からいいましても、また資金調達の上からいっても、社債というものが中軸になりますので、社債の問題については運輸大臣認可事項になっておりますので、行政がこれで重複しておる。一つ具体的な事項認可で抑えられれば、それで私どものこれに対応する仕事というものは大変合理化されるし、簡素化される。そういう意味において、今回は資金計画と収支予算というものを認可事項対象からお外しいただいた、こういうふうに私は解釈をいたしておるわけであります。
  24. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 さっきの十二条の「特に必要が」という対象が広がったんじゃないかということを聞いているのです。
  25. 松井和治

    松井(和)政府委員 御指摘のとおり、従来の条文が事業計画、資金計画、収支予算というものにひっかけて指示権が規定されておりました。このたびの改正で資金計画、収支予算というものが外れまして、その際の条文の整理といたしまして一般的な指示権というような形で整理させていただいたのは御指摘のとおりでございます。  この指示権と申しますのは、通常、特殊法人に対する同様の立法例を見ますと、ほとんどの場合、政府出資のある会社に対しては、命令をするというようなかなりきつい規定を書いておる例が多いわけでございます。私どもはそういうきつい例をとりませんで、いわば命令と勧告の中間的なものとして指示ということを従来からも使っておるわけでございますが、今回、先ほど申し上げましたように、直接的な事前の監督からいわば後見的な事後の監督に移していこうという趣旨でございますので、あらかじめ何かをする場合に認可をするということではなしに、会社にまずやっていただいた後で本当に必要な場合にのみ指示をするということでございますので、確かに範囲は広がったということかもしれませんけれども、その指示をする場合、その指示権の使い方というものについて、これをいたずらに乱用するようなつもりはございません。
  26. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 一部御説明で理解できる面もありますが、いまの指示権の問題ですね、いたずらに乱用することはありませんと現在の航空局長は言われておりますが、あくまでも法律というものは条文によってすべて運営していくわけでありますから、どのようにでも解釈できるような内容であることは余り好ましいことではないんじゃないかと私は思うわけです。ですから、これがいま言われるような内容の程度のものであれば、あえてこれをどうしても条文にうたわなければいけないのかどうか。肝心のところでみんな認可権を持って、届け出て認可されないとできないようになっているわけですから、その行為の中で発生するいろいろな問題についての指示的なものは言えると思うのですが、何もこういう条文をあえてつくらなくても、実際の運用の中でそういうことは当然考えられていいことであるし、あえてここにこんなふうにして書くところに、条文に載るところに——いまはいいですよ、あなたの場合は。しかし、これを一つの根拠にして運輸大臣がすべての指示ができるということでいろいろな問題が、もしそういうことがあったとしてもこれではやむを得ないということになるんじゃないですか。  そういうことで、こういう規則といいますか、法律というものは、運用する人の考え方といいますか、それによって変わることがあり得るような余地はできる限りないようにすべきだと思います。ところが、この場合はどうしてもそういう余地が十分残されておると思わざるを得ないわけですが、どうですか。いままでのあれからいって、従来も政府監督下に大事なところはみんなあるわけですから、ここにこのことだけを載せなくても、これは抹消しても構わないんじゃないですか。いかがですか。
  27. 松井和治

    松井(和)政府委員 確かに御指摘のように、重要な幾つかの事項につきましての事前の認可権は残してございます。しかしながら、さっき申しましたように、この規定は、お読みいただけばおわかりのように、「その業務の適正な運営を確保するため特に必要があるとき」ということで縛りをかけてございまして、事前に監督する事項ではなしに、会社の自由な運営に任せている事項につきまして、それが会社の適正な運営上非常に問題がある、特に必要があると認めたときに限って発動するという規定でございますので、事前認可の規定があるからこういう規定は要らないということには直ちにならないというふうに考えております。
  28. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 説明されている言葉の意味については理解をするのですけれども、私は運用次第では非常にこれがもろ刃の剣になりかねないということがあるから申し上げておるわけでありますが、特に必要な場合とはどういうことかということをある程度きちっと、やはりそういうことでここにどうしても載せなくちゃいかぬのならば、特に必要なこととは、大体想定されるものは具体的にこういうものなのだということを一つの事例なんかを何かの形ではっきり残しておかなければ、ただこれだけでは、あと五年もしたときにこれを扱う人たちによっては、運輸大臣によってはこれを一つのあれにしてどんどんどんどん経営について言ってもやむを得ないようなことになりかねないわけですよ。その点いかがでしょうか。
  29. 松井和治

    松井(和)政府委員 御指摘のように、法律の解釈がそれを担当する人間によってその範囲が変わるというようなことは好ましくないと思います。特にこの条文につきまして具体的な必要性の範囲は何かというようなことを定めたわけではございませんが、私どもの一つの事例といたしましては、たとえば事業計画認可いたしまして、その後の事業計画運営の状況等を見てまいりまして、その運営状況が著しく不適正であるというような事態、これは具体的にどういうことかと言われてもなかなかすぐに浮かばないのでございますが、事業運営が著しくおかしいというような場合にこの規定が発動されるものと考えておりますが、まず現実の問題としていままでこういう指示権を発動しなければならなかったような事例はございませんし、今後特にそういうものが頻発するというようなことはないと思っております。  いずれにしましても、その範囲をできる限り明確にしておくということは、御指摘のように、必要なことと思いますので、私どもの内部におきまして、どういう場合がこれに該当するのかということにつきましてできる限り明確にしておきたいというふうに考えております。(発言する者あり)
  30. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 議事録に残りますからその点はなにしたいと思います。それは、ちょっとそちら雑音もありますけれども、ぜひこの点は先ほどから提案されておる趣旨にのっとってできる限り企業の自主的な運営、弾力的な運営ができるように、政府はできるだけそういう干渉がましいことはしないということの精神にのっとってのこういう改正でしょうから、そういう意味で十分運用に誤りがないようにしたいということで、大臣の御見解があれば承りたいと思います、大臣は席を外されるそうですから。
  31. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 今回の立法の趣旨は、先ほど航空局長が答えておりますように、企業の自主的な努力ができるようにいたしたのであります。でございますから、日本航空会社企業ビヘービアがしっかりしており、また企業スピリットと申しますか、そういうものがちゃんと確立しておる以上は、私たちはそう事細かく企業努力に介入するというようなことは当然避けなければならぬと思うております。しかし、それじゃなぜこんなにごたごたと規定を設けて権限を確保しておるのかということでございますが、これはこうお考えいただいたらおわかりかと思います。この会社資本金の三分の一は国が持っておるという事実、そして航空権益の相当部分をこの会社に委託しておる、信任して任せておるというこの事実を見ましたら、やはり国民のサイドから見ますならば、いざというときにはその権限が行使でき得ることは明確にしておかなければならぬという責任は当然われわれにあるわけでございます。民間企業におきましてもそれぞれの関係はやはり相当厳しいものでお互いがチェックをし合っておるわけでございますから、われわれといたしましても、先ほど言いましたように、会社自体がしっかりしている以上はわれわれが何もそれに介入するつもりはさらさらございませんし、それによってますますこの会社国益を確保するために努力し、成績を上げてくれることを望んでおるのですから、どうぞ余り神経質にお考えいただかなくてもいいのではないかと思うております。
  32. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それでは、次に移りたいと思います。  日航の五十四年度の収益面は、五十四年度は出て、五十五年度がまだ出ていないと思いますけれども、見通し、そういったものの数字を簡単でいいですからひとつお尋ねいたします。
  33. 朝田静夫

    ○朝田参考人 ちょっといま資料で数字を挙げてお答えをいたしますが、五十四年度は経常利益が約四億と私は記憶いたしております。それで、特別損益等を合わせましてようやくにして民間株に対して八分の配当ができた、こういう状況でございます。  五十五年度はもうあと旬日を残すわけでありますけれども、第二次石油危機で収支のしりが非常に苦しい状態でございます。しかし、販売増強にうんと力を入れていまがんばっておりますし、また経費の節減を徹底的にやっておる、労働生産性を高めてまいる、こういうことで、私どもは十億台の経常利益をいま期待をしておるわけでございます。特別利益と合わせまして、航空機の売却益、そういったものが出ますので、何とかして民間株主に対して八分の配当を継続したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  34. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今度第十条の政府所有株式の後配を廃止するということになるわけですが、これに伴いまして、いままではそういう恩典が一部あったのが一切なくなるわけであります。それによって生ずる、それだけによって発する必要利益と申しますか、そういうものはどの程度——前回の質疑の中で、そちらからの見解じゃなしに、質問者側から三十何億とか幾らとかちょっと触れられておったような感じもしますけれども、大体日航側としてはそういうことによって今後そのための利益というものをどれだけ新たにかせぎ出さなければならないかということについて、大まかな数字があればお教えいただきたいと思います。
  35. 朝田静夫

    ○朝田参考人 五十六年度につきましては、いま仰せのとおり、政府株にも配当をしなければなりませんので、私どもは必要最小配当所要利益、こういうものを考えてみますと、税引き前百四十億の利益を上げなければ政府株に配当できない、こういうことでございます。  そこで、百四十億というのは、第二次オイルショックで、ことにまた需要が停滞をいたしておりますやさきに大変苦しいわけでございますけれども、少なくとも百四十億で総収益は大体七千七百億円ぐらい、費用は七千五百六十億というふうに、いま予算の編成途中でございますけれども、そういうふうな数字でもっていま作業を進めているような次第でございます。
  36. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これは五十六年度の事業計画一つの見通しでしょうけれども、この中には一部伝えられているような運賃値上げをある程度見込んだ数字でございますか、それともそういうものなしの企業努力でこれだけのことを大体やろうという数字なんですか。
  37. 朝田静夫

    ○朝田参考人 五十六年度においては国内運賃の値上げは考えておりません。
  38. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今度はそれだけかなり経営上厳しい状況の中でやられるわけでありますが、それに対しましていまのような見通しが立てられておるようであります。そうしますと、新たな事業の拡大か何か、企業の中において手をつけていくか、いままでのまま、従来の状況の中で、利用者の需要面が伸びればそれに従って伸びるでしょうけれども、そのことだけで——五十四年度は結果的に余り大したことは出なかったろうが、五十五年度、今度は五十六年度の経常利益その他を考えると、果たして可能なのかどうか。そのためにはどういうことをやろうと考えておられるのか、ひとつ考え方でも結構ですから。ただ、これは単なる机上の数字であってはならないと思いますけれども、日航法改正された新しい経営体制の中で一体何をやろうとしておるのか、そういうものを含めて何かございましたらお聞きしたいと思います。
  39. 朝田静夫

    ○朝田参考人 私どもも引き続いて特別にやってまいらなければならぬと思いますのは販売増強努力、これは国際競争でございますので、相手のある話でございますが、何としても販売増強努力というのは全社一体となりましてセールスマインドを高揚してまいりたいということが一つでございますし、引き続き経費、特に間接的な経費は徹底的に削減する。それから、設備投資その他を将来とも、いま抑えておるわけでございますが、私どもの需要の見方、私どもが考えておりますのはそう伸びない。これは先回も御答弁申し上げましたが、控え目控え目に需要予測をしておる。GNPの弾性値で需要予測をはじき出すという手法は世界各国よく行われておる手法でございますが、それにつきましても政府が発表しておられる経済指標をもっと抑えて、そしてその伸びにそんなに大きく期待しない堅実な見方をしており、それからふえればプラスアルファがあるわけでございますから大変結構なことでございますが、そういう考え方でやってみますと、収益力を上げていく上におきましていままでの路線便数計画を見直しまして、収益性の高いところでなお輸送力を増強した方がいいというところ、たとえば中国とかあるいはシドニーとかいうような路線がございますが、そういうものには積極的に供給力というものを提供していく。それからあと収益力の悪い路線につきましては便数を減便いたしまして、逆にロードファクターというか、利用率を高めていく、そういうようなことを計画の面において考えているということでございます。したがいまして、一例を挙げますと、最近ソビエトのアエロフロートと私どもの企業間協議が行われまして、シベリア路線を減便をする、これは当初の減便よりもはるかに少ない規模で済んだわけでございますが、将来にわたってもアエロフロート、ソ連航空と協調をいたしましてその辺の調整を図っておる、こういうようなことでございますから、いま申し上げましたように、減便をするところはし、増強をして収益が高まるような路線については積極的に増強していく、こういうような考え方でおります。
  40. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それから、参考までにお尋ねいたしますが、現在の日航役員構成の中で、日航からの生え抜きというか、生え抜きと一般に言われているのでそういう言葉を使わせていただきますが、日航出身の役員運輸省とか何かああいうところから派遣されてこられた役員との構成比は大体どの程度になっていますか。
  41. 朝田静夫

    ○朝田参考人 御承知のように、取締役十八名、これは法定をされておるわけでありますが、その中で二名が社外重役でございますからこれを一応除きますと十六名でございますが、十六名は、会長以下その他四名、合計五名が、先生の言われるいわゆる生え抜きでない。私はこの会社に十八年も勤めております。この会社の歴史はことし三十周年を迎えるのでありますが、三分の二近く勤務をしておるので、よそから来たような感じは余りないのでございますけれども、いまの分類法でいきますと、会長を除きまして四名が役所から来た人、役所の方は、運輸省が二名、郵政省が一名、大蔵省が一名でございます。
  42. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この問題を外します。  最後になりますが、実はわれわれ利用者の立場からちょっと一言ぜひ御見解をお尋ねしたいのです。  現在、民間航空で国内線を考えた場合、日航、全日空、東亜国内航空日本近距離航空ですか、ありますが、利用者として一番いつも迷惑というか、腹立たしいと考えるのが、年中行事的に行われている日航のストライキですね。ほかの航空三社と比較してみました場合に、日航だけが必ず年中行事的に定期的にやられる。その点では非常に奇異な感じを持つわけです。まあストライキは労使交渉の中での結果として出てくる問題ですから、第三者からとやかく申し上げることは避けたいと思いますが、ただ航空三社の中でどうして日航だけにああいう年中行事的なストライキが発生するのか。やはりその点についてはわれわれ国民の側から見ました場合に、一つの疑念を持たざるを得ないわけです。特に最近の傾向としましては、まあストライキは昭和四十九年ごろが日本で一番多かったようでありますが、件数からいきますと九千五百件くらいあったのが、五十四年は三分の一にも減ったように、大体世の中の傾向が、割合そういったものがだんだんなくなっていくような傾向になっているようであります。また、われわれも事例として見ますが、ストライキというのは二年に一回か三年に一回、よほどのことのない限りやらないというのが普通民間のペースだと思うわけでありますが、そういった状態で見た場合に、どうしてもちょっと異常な感じがするわけです。  そういう意味におきまして、日航のそういった体質的なものに私は原因があるのじゃないかという感なきにしもあらずでありますが、その点、社長の立場からこの問題をどういうふうにお考えなのか、お考えをお尋ねしたい。
  43. 朝田静夫

    ○朝田参考人 ただいまの御指摘、私もまことに残念に思っておりまして、私自身の責任も痛感をいたしておるわけでございますが、御案内のように、私どもの会社には四つの労働組合がございます。全日本航空労働組合、日航乗員組合、客室乗員組合、日航労組、このうちで最大の、全労と略称させていただきますが、全労は結成以来ストライキはやったことはないのでございますが、客室乗員組合と乗員組合で、いま御指摘のとおり、ストライキが頻発をした時期が特に数年前からあり、こういうことで、利用客、一般社会公衆の利便を損ね、御迷惑や混乱を与えておることはまことに申しわけのないところでございます。  当社の体質とおっしゃいますが、言葉をかえて言えば親方日の丸的な体質じゃないかというふうに私が解釈させていただきますならば、決してそうでないというふうに私は思うのでございます。と申しますのは、第一次オイルショックのときに営業損失を二百七十七億も出しました、決算上の赤字を百七十七億も出したときに、本当にこの三年間でひとつ企業を再建しようということで、各労働組合の御協力も私は要請をいたしまして、今日みんな一緒になって企業再建、三年後に復配をやるということを合い言葉にいたしまして、みんな大変御協力をいただきました。で、計画どおり、三年後には八分の配当を復活できた、りっぱに会社が再建できた。その限りにおいては、私は労働組合がそういう体質だとも決して思わないのでございます。ただ、社会的な重要な使命をもっと深く認識をする、あるいは労使の紛争になっておる火種を速やかに取り除かなければなりませんけれども、いろいろな事情がありまして、今日までこういうような状況になっている。私は、速やかに健全な労使の信頼関係を確立したい、こういうふうに考えておるようなわけでございます。
  44. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 航空産業は乗務員とか地上勤務者とかいろいろ種類別の組合があるようで、複雑な状況であるようでありますが、いずれにしても日航だけがそういう状況になるということをよく考えてみるならば、やはり国際線を日航が独占しているから、国際線についてはそういう強みを持っているということは、どうしてもこういう多発的な、慣習的なあれになってしまうのじゃないかな、逆に今度はそういう疑念さえ持たざるを得ないわけであります。  そういう意味考えると、やはりどこかで日航政府出資の特殊な会社であるという親方日の丸的なそういう体質がひとつ災いしているというか、影響して、そういう形に結果的になってしまっているのじゃないかというふうな見方。それと、いま申し上げたように、国際線は日航が独占しておる。それだけに、やはり何といってもストライキというのは大きな影響力を持つわけですから、組合側から見ればこんな大きなあれはありませんから、そういうもろもろの要素が今日までの日航としてのああいう特異な状態をつくり出しているのじゃないか、こういうふうに考えるわけですね。したがって、いま社長としてはかなり労使関係の健全化にがんばっておる、努力されておるということでございますが、国民が一番心配しているのは、日航が少なくとも第二の国鉄になってはいかぬ。そういう意味では影響、資本度、その他いろいろ政府のあれが違いますけれども、一歩間違うと、いまのようなことでずっといくとそのようなことになりかねない、私はそういう要素を持っているのじゃないかと思います。したがって、この労使関係の問題は大変複雑でむずかしゅうございますけれども、しかし要は経営のあり方として、そういった問題に事なかれ主義でいくかどうか、場合によったら毅然たる態度でやっていくか。これは長い間の習慣といいますか、伝統があるでしょうから簡単にはいかぬと思いますけれども、やはりもうここらあたりでそういった体質から抜け出す、卒業する。そのためには抜本的なあり方等ももう少し考える、こういうこと等やらないことには、ストライキをしたら少し条件を向上させる、そういうことばかりずっとやっておると、私はいつまでたっても直らぬと思うのです。そういう意味では、本当にストライキというものをやらなければならないときになったら大いにこれは労働組合としてやってもらわなければいかぬですけれども、年中行事的な、慣習的なそういうあり方だけは、日航の労使の皆さん方は冷厳に反省してもらわなければ困ると思う。  そういう意味で、ひとつ経営者としてのいま一段の努力と決意をお尋ねしたいわけです。
  45. 朝田静夫

    ○朝田参考人 ただいまの御指摘また御高説に即応いたしまして私どもも努力を続けてまいりたいと思いますが、先ほど親方日の丸的な体質じゃないかというふうに勝手に解釈させていただいて御答弁を申し上げたのですが、いままた、国際線が一社だからこういうことになっておるのじやないかと、こういうことの御指摘がございましたが、この点についてはひとつ御理解をいただきたいと思いますのは、国際線が一社だからこういうことになっておると私は決して思いません。中村先生からも御指摘がございましたけれども、一社ではありますけれども、私どもは多数の外国航空会社と熾烈な、しのぎを削る競争をやっておるわけでございますから、そういうときに、安閑として親方日の丸的な体質ではなくてそういうものに立ち向かっていかなければならぬのでございますから、私はそういうことはないと。そして、その実績はどうなんだと、一社よりも二社出した方がいいじゃないかということになりますと、御承知のように、アメリカ航空会社三社を相手にいたしまして、貨物のお話がございましたけれども、私どもは四七・五%の積み取り比率をいただいている。アメリカの三社合わせて四四%でございますから、日航一社に任せておくからこういうことになるのだという、そういうものとほど遠い結果であると私は思っておるわけであります。労使関係でも何でもかでも、国際線一社だからだというふうにつながらない問題であると私は確信をいたしております。
  46. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 私は、何も国際線を独占させてはいかぬとか何とかという意味で申し上げているのではないのです。しかし、いまのようなことが続くならば、必ずや世論としてはそういう方向でみんなの目が向いていくようにならざるを得ないのじゃないか、そういう点を日航の当事者自身はよほど真剣に考えてほしいという意味で申し上げたのですから、その点を十分銘記してもらって今後の経営をやっていただきたい。  以上、要望をいたしまして、終わります。
  47. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 午後一時から再開することとし、この際休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ————◇—————     午後一時十三分開議
  48. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。四ツ谷光子君。
  49. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 最初に、委員長にお願いいたします。  与党自民党はこの審議を非常に急いでおられるにもかかわらず、なかなかおそろいにならないということで、委員会の審議が始まらぬということはきわめて遺憾であります。今後こういうことのないように委員長から厳重に与党委員の方々に言っていただきたいと思います。  それでは、三点について質問をさせていただきたいと思います。一点は法案関係、二番目は安全問題、三番目は日米航空協定の問題について御質問をさせていただきます。  まず最初に、今回の改正法案の中に、第五条関係で、社債発行限度額を二倍から五倍に引き上げるようになっておりますけれども、それに伴います航空運賃の水準あるいは輸送量の見込み、社債の償還資金の計画など、短期あるいは長期にわたりまして整合性を持った計画が立てられているのかどうか、運輸省はそれをちゃんとつかんでおられるのかどうか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  50. 松井和治

    松井(和)政府委員 このたびの改正で社債の発行限度額を二倍から五倍に引き上げるわけでございます。日本航空は今後の輸送量の増大に対応する、そのために機材を大型化あるいは増強するという要素と、もう一つ、現在日本航空が持っておりますDC8という機材がございます。これは先生承知のように、非常に騒音値の高い航空機でございまして、これはできるだけ早く新しい騒音値の低い航空機に代替する必要がございます。したがいまして、今後新しい航空機の増強とそれからDC8の代替という両面から見まして、かなりの設備投資が必要でございます。  ところで、現在の社債発行限度は資本金並びに準備金の二倍ということになっておりますので、現時点でその数字を申し上げますならば約八百億円の倍、千六百億円が社債の発行限度になるわけでございまして、現在の社債の残高から申しますと、五十六年度において発行し得る社債の額はきわめて限られてくる、こういう事態でございますので、この際、二倍を五倍に引き上げさせていただく改正案を提案させていただいた次第でございます。  当然、そういうことで今後の航空機の機材購入を行っていくに当たりましては、将来の需要の見通し、これは先ほどの社長の御説明にありましたように、日本航空もかなりかために押さえた見積もりのもとに機材計画を立てておられるわけでございます。また、償還計画につきましても、これは社債の償還期限の調整等によりまして経営に対する過大な圧迫が生じないような配慮をしておられることは当然のことでございます。また、社債は御承知のように、長期借入金その他に比べまして資金コストが低いという利点を持っておりますので、今後とも日本航空の設備投資中心の資金調達方法として考えていかなければならないと考えておる次第でございまして、当然のことながらそういうもろもろの計画との整合性はとった計画というふうに考えております。
  51. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 この社債の限度額を二倍から五倍にするという問題について、これを国民の側から見るとどういうふうに受けとめるかという問題でこの問題を討議しなければならないと思うのです。そういたしますと、社債発行限度額がふえますと当然営業経費がふえる、あるいは政府保証債もふえる、あるいは運賃原価にもそれがはね返ってくる、こういうことが考えられてあたりまえのことなんです。  ですから、そういう観点からまいりますと、この社債発行限度額がふえるということは、結局国民や利用者の負担増につながるおそれが十分に考えられる。この点についてはただいま整合性を持った計画だというふうに航空局はお答えになりましたけれども、別に長期にわたる計画が数字的にいまこの前に明らかにされているわけではありませんので、そういう点については国民や利用者の負担増につながらないように厳重に監督をしていただきたい、これを要望して、次の安全の問題に移りたいと思います。  安全問題で航空局にお伺いしたいのですけれども、航空機の整備についてADとかTCD、こういう扱いがございますね。それはどういうふうな意味を持つのですか、それについてお答えください。
  52. 長澤修

    ○長澤説明員 お答え申し上げます。  ADと申しますのは、アメリカの連邦航空局が、アメリカ合衆国で製造されました航空機につきまして耐空性上何らかの問題を生じたときに、速やかに安全上のために措置を講ずる必要があるという場合に出す命令でございまして、耐空性改善命令と私ども呼んでおります。それから、TCDと申しますのは、これはわが国で使われております航空機に対しまして、海外の航空当局から安全上の問題で早急にしかるべき措置をする必要があるという連絡を受けました場合に、当局におきましてわが国航空機の運航者に対してしかるべき措置を通報しておるものでございます。
  53. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そういたしますと、AD扱いもTCD扱いも、ともに航空機の安全性あるいは耐空性の問題できわめて重要な問題であるというふうに理解をしてよろしいですか。
  54. 長澤修

    ○長澤説明員 先生指摘のとおりでございます。
  55. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 では、続きまして、機体の整備方式についてお伺いをしたいと思います。  機体の整備方式には、飛行前整備とそれから定期整備がございますね。定期整備の種類が幾つかあるというふうに私も承知しているのですけれども、定期整備の種類とそれから飛行時間間隔、それから仕事量といいますか、定期整備に要する時間、こういうふうなものについてお答え願いたいのですが、いろいろの機種があると思いますので、DC8の場合についてお答え願いたいと思います。
  56. 長澤修

    ○長澤説明員 ただいま先生指摘のDC8を例にとって御説明申し上げます。  整備の段階には、日常行います程度のものから、一定の時間ごとに行う定時点検、さらにいわゆるオーバーホールに相当します重整備、こういうものがございます。DC8の場合には、運航整備と通常呼んでおりますものといたしまして各寄港地で行う丁整備というものがございます。それから次に段階が重くなりますとA整備がございまして、これは百飛行時間を超えない範囲で行っております。それから次にB整備というのがございますが、これは五百飛行時間を超えない間隔で実施するものでございます。次に定時整備、少し整備の段階が深くなる、一定時間ごとに行うものでございますけれども、DC8におきましては二千飛行時間ごとにこの定時整備を行っております。さらに、いわゆるオーバーホールに相当するD整備、これは一万五千飛行時間ごとに行っているものでございます。整備のやり方と申しますか、その段階は徐々に深度が深くなると申しますか、時間がふえるほど細かい点に立ち入ってくるということでございます。  それから、これにかかります時間は、そのときに発見されますふぐあいの状況、あるいはこういう整備の作業のときには、安全上直接関係のないようなものでも、サービス上必要なことも合わせて作業を行いますので、それらの時間は必ずしも一定はいたしておりませんが、時間が多いものほどよけい日数をかけるということでございます。具体的に何日かかっておるかということにつきましては、ちょっといま手元に資料を持っておりませんので、お答えできません。
  57. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いま、何日かかっているかというのは手元にないということですが、そういうふうなことで監督ができるのですか。
  58. 長澤修

    ○長澤説明員 おおよその数字、数字と申しますか、それはわかっておりますけれども、個々の機体について何日かけておるかということは、一つ一つ事例ごとに日にちが若干違っておるということでございます。
  59. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 若干日にちがずれるという御答弁でございましたけれども、大体の目安というのか、基準というのがあるでしょう、何時間以上とか何時間以内とか、その仕事量では。  たとえばD整備、いわゆるオーバーホールなどは一体何日間かけてやるのですか。
  60. 長澤修

    ○長澤説明員 DC8のD整備を例にとりますと、およそ三週間程度かかっております。
  61. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 日数にすると。
  62. 長澤修

    ○長澤説明員 日数にしますと、二十日程度でございます。
  63. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そういたしますと、定期整備にはABCDと、DC8の場合ある。そして、だんだんと深度が深くなる。時間をかけて丁寧な整備をする。特にオーバーホールの場合は、いまの御答弁ですと二十日ぐらいかかる、こういうことでございますね。そうすると、オーバーホール整備というのは、定期整備の中でも最も時間をかけて最も丁寧にやる重要な整備というふうに位置づけていいのでしょうか。
  64. 長澤修

    ○長澤説明員 先生指摘のとおりでございます。
  65. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、飛行前の日常の点検、それから多少時間が短いAチェック、Bチェック、こういうふうな整備の場合に、いわゆるキャリーオーバーが出た場合には、どういうふうなときにそれを処理されるわけですか。
  66. 長澤修

    ○長澤説明員 ふぐあい事項が出ましたときには、原則的にはその時点で修正をするのがたてまえでございます。ただし、部品の入手の状況あるいはそのときの諸般の情勢によりまして、そういうふぐあいを若干持ち越しをすることがございます。ただし、持ち越しをする場合にも必ず安全上の技術的な検討をしさいにいたしまして、安全上全く支障がないということを確認できた場合にのみ、そういう場合にのみキャリーオーバーをすることはございます。
  67. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、具体例についてお聞きをしたいと思います。  八〇年ですから、去年になりますが、九月の二十四日から十月の十日まで、機種DC8、JA八〇〇九です、オーバーホール整備が行われておりますが、この飛行機で、右主翼下側の後方スパーにひび割れが生じた、これが発見されております。この場合、恒久処置をせずに、しかもこれは私の資料ではAD扱いになっておりますが、恒久処置をせずにいわゆるEV扱いでキャリーオーバーされている。このEV扱い、すなわち技術指令の変更ですね、こういうふうな扱いでキャリーオーバーされております。この場合の技術指令の変更、すなわちEV扱い、これは運輸省の了解がなぜ必要なのですか。この問題は運輸省、了解しているのでしょうね。いかがですか、それとあわせて。
  68. 長澤修

    ○長澤説明員 DC8の八〇〇九の翼の下面にひび割れが見つかった件でございますけれども、これはADは出されておりません。本件につきましては五十五年の九月の重整備作業中に、翼けたの下部に長さ約一インチ、二・五センチの亀裂が発見されたものでございますけれども、その亀裂の状況は、運輸大臣が承認をしております整備規程の中にございます修理作業基準、これを適用して基本的には作業できるものでございまして、日本航空においては、この航空機のメーカーでありますダグラス社の合意を得た後にEV、エンジニアリング・バリエーションを発行いたしまして修理を行ったものでございます。  本件につきましては一応の修理を行いましたが、ダグラス社といろいろ情報交換をやり、検討をいたしました結果、特別注文の部品をダグラス社において製作をいたしまして、それを日本航空へ供給をするということで、恒久的には本年の九月末までに修理を完了する、恒久的な修理を完了する、こういうことになっております。
  69. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいま運輸省はこの件についてはAD扱いになっていない、こういう御答弁がございましたが、私が手元に持っております日航の技術部が出しておられる資料によりますと、AD扱いになっていますよ。どういうことですか。では、日航の技術部の方がAD扱いだけれども、運輸省の方に了解を求めておられないということなのですか、どうですか。
  70. 長澤修

    ○長澤説明員 本件につきましてはAD扱いにいたしておりません。
  71. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ところが、この資料によりますと、この資料では、このDC8の八〇〇九の問題については、出所または参考として去年の一月二十二日にアメリカの連邦航空局からADの要望事項ということになっているということがはっきり出ているのですよ。  それでは、それを運輸省の方は聞いておられない。そうすると、日航の方がADだけれども、運輸省の了解を得ないでこういうふうにされたということですか、どうです。
  72. 長澤修

    ○長澤説明員 ADとして扱っておりませんけれども、その故障の発生の状況、それに対する修正措置等につきましては、これを直接監督しております東京航空局におきまして状況を把握して、そういうエンジニアリング・バリエーションの発行等につきましても逐一報告を受けて、それを見た上で作業を実施させておるものでございます。
  73. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ところが、運輸省の方はAD扱いにしていないとおっしゃっていますけれども、示させていただきますと、日航の方はこのようにはっきりとADという判を押しているわけです。AD扱いの場合、EVをやる場合には航空局の事前了解が必要であるというふうになっているのではありませんか。一体それはどうなっているのですか。
  74. 長澤修

    ○長澤説明員 ADの場合、つまり耐空性改善通報の場合、その内容によりまして運航者において処置できるもの、あるいは改めて修理改造検査等の検査を受けなければならないもの、そういうものはTCDを発行する際に具体的に明記をして発行いたしておりますので、それに従って検査が必要なものは検査を受ける、こういうことになっております。
  75. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいまの御答弁はきわめて不明確です。はっきりしていませんね。一方でAD扱いにしているというのに、運輸省の方はそれをつかんでいないというところですから。  では、ちょっと観点を変えて質問させていただきます。  それでは、運輸省のおっしゃったことを百歩譲って、これは相談をしてやったということですけれども、この場合には応急処置をやっておりますね。ところが、ダグラス社の方からはクラック、ひびができたときにはこういう処置をしなさい、恒久処置をしなさいという要望事項が来ているはずです。それがなぜそういうふうにならなかったかというと、いまは部品が手に入らなかった、こういうことですね。部品を手に入れるためにダグラス社の方に問い合わせをした、ことしの九月末日までに直すようにという、いわゆる応急処置をとった、いまこういうことでしたね、そうですね。  そういたしますと、この主翼の下のいわゆるスパーにひびが入るというふうな事項につきましては、先ほどAD扱いでない、TCD扱いでないと運輸省はおっしゃったけれども、日航の方はAD扱いとして処理をしておられるわけです。これは非常にADというのは航空安全上、耐空性上きわめて重要な指摘事項である、こういうふうにさっき技術部長はお答えになりましたね。そういう観点から言いまして、このようなものが去年の九月にオーバーホールで発見された、そして一年間もそのまま放置して、いわばキャリーオーバーのままでフライトさせているということになるのではないですか、いかがです。
  76. 長澤修

    ○長澤説明員 ただいま御指摘いただいておりますDC8の主翼の下面のクラックでございますけれども、この八〇〇九の以前にも、去年の三月でございますが、八〇四一で類似のクラックが発見されておりまして、そのときからこの問題に取り組んで検査をし、対策を講じてきておるものでございまして、その時点から技術的にはメーカーと十分連絡をとって対策を講じたものでございます。これは非常に特殊な部分でございますので、これを恒久的に修理する部品をつくるためには、航空機メーカーの方でこれに必要な適合する部品を製作する必要があるということで、安全上支障のない修理をひとまずいたしまして、そして最終的にはこれに合致する部品を入手した上で恒久修理をする、こういう手順を考えてやっておるものでございます。
  77. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そうすると、去年の三月にも発見をされた。二回発見されておるのでしょう。去年の三月に発見をされて、この問題については特に注意を払っている。にもかかわらず、次に発見されたときにダグラス社に問い合わせをしなければ部品が手に入らない、こういうふうなことで安全上の経営ができているというふうに言われるのですか、いかがです。
  78. 長澤修

    ○長澤説明員 昨年の三月に発見されましたものと九月のものとは若干大きさ等が違いまして、全く同じ修理方法ではなく、修理方法に若干の違いがございます。しかし、その修理の基本的なプリンシプルは同じであるということでございまして、そのクラックの程度に応じてこれに対応する修理の方法も変わってきますので、その傷に対応した部品を特につくる必要がある、こういうことで、その傷についてはその時点で検討を始めておるわけでございます。
  79. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ところが、先ほどもおっしゃいましたけれども、オーバーホール整備というのは時間をかけて最もよく点検をする、そういう整備になっていると技術部長おっしゃいましたね。そういたしますと、最も時間をかけて大切にしなければならないオーバーホールで発見された、しかも航空局の方はAD扱いでないというふうにおっしゃっていますが、これは後で本当にそういうふうなのか、日航がADにしているのにそちらの方に事前了解を得ていなかったかどうか、それはちゃんと調べてお答え願いたいと思うのですけれども、日航としてはAD扱いにしているわけです。というのは、これは安全上、耐空性上きわめて重要な部分としての要求事項だということで日航が処理をした。ところが、仮修理に終わっている。これは安全上問題がないとおっしゃったけれども、いわば仮修理に終わっておって、恒久処置ではなかったわけです。だから、いわゆるキャリーオーバーしているわけです。では、そういうふうなオーバーホールでキャリーオーバーをしたものを一体いつちゃんとするのですか。おかしいじゃありませんか。短い時間で点検して十分にできなかったものを、今度オーバーホールのときにちゃんとするというなら話がわかりますよ。だけれども、これは一万五千時間ごとにオーバーホールをやるのでしょう。おかしいじゃないですか。
  80. 長澤修

    ○長澤説明員 このDC8に対して行いました修理は恒久的なものではありませんけれども、その修理それ自体は安全上全く支障がないように補強して修理をしておるものでございます。オーバーホールにおきましては、原則的にキャリーオーバー項目をつくらないという前提で作業をするわけでございますけれども、安全上支障がないということを十分確認した上で、なおかつ今回の場合のように部品を特別につくらなければいけないという場合には、安全上全く支障がない措置を講じた上で、その部品ができるのを待って最終的に修理をするということをやるわけでございますが、そのほかにもたとえばペイントが少しはがれかけておるというような場合に、ペイントの塗り方というのはごく部分的にタッチアップの形で塗る場合と、ある程度面積を広げて塗る場合とで、その後のいろいろな処置も変わってきますので、そういうような点につきましてはキャリーオーバーをするということがございます。
  81. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 先ほどから航行安全上絶対に支障がないということだというふうに繰り返しおっしゃっていますが、われわれが航行安全の問題を云々するときには、あすにでも飛行機が落ちるというようなことを言っておるわけじゃないのです。確かにいまのジェット機は安全度を大変大事にしてつくられているというのは常識になっているわけですけれども、しかし、だからといって、大体キャリーオーバーをなくしていくというのは運輸省の方針じゃないのですか。キャリーオーバーは残しておってもいいというのですか、どちらなんです。
  82. 長澤修

    ○長澤説明員 私どもが航空会社を指導します場合には、キャリーオーバーは原則的になくすべきであるということで指導をいたしております。
  83. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 原則としてキャリーオーバーをなくしていくというのが原則だ、これはあたりまえですね。ところが、このADの問題、いまの問題につきましても、日航の資料によりますと、いわゆる応急処理をして、恒久処置をキャリーオーバーしているというふうにちゃんと報告書は書いているのです。キャリーオーバーしている。実際持ち越している。こういったことは実際好ましいことなんですか。あなたは安全だからそれでいいんだとおっしゃいましたけれども、これは何も恒久措置ではなくて、いわゆる仮縫いでしょう。仮修繕ですよ。こういうふうなのをオーバーホールでやったものをさらにキャリーオーバーをまださせている。ことしの九月の末日まで構わないんだ。こういうふうな姿勢はいいのですか、どうですか。
  84. 長澤修

    ○長澤説明員 航空機の整備におきましては、安全の確保ということは絶対の要件でございます。したがいまして、オーバーホールにおいてふぐあい事項、今回の場合クラックでございますけれども、クラックが発見されたものに対して、安全上支障のない措置をとるということが絶対の命題でございまして、そういう観点での修理は必ずやらなければならないし、またやるべきものでございます。ただ、特殊の部品でないと最終的な形に直らないというような場合には、それ以上のと申しますか、安全上全く支障がない修理をしまして、そういう修理というのはたとえば若干機体の重量が目方がふえるとか、そういったようないろいろふぐあい点もありますけれども、安全上全く支障がない、必要な強度、構造、全く支障のない形に修理をして飛ばすということはどうしてもこれは避けられないことだと思いますが、安全上の点に関しましては、全く遺漏がないようにチェックする、これが基本でございます。
  85. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いま特殊の部分品だとおっしゃいましたけれども、日航の資料によりますと、こういうひびが割れたときにはこういうふうに当てなさいというダグラス社からの指示書もちゃんとあるわけですよ。さっきあなたは二十日とおっしゃいましたね。この場合は十五日間のオーバーホールになっていますけれども、初めの日にこれを発見してダグラス社にちゃんと問い合わせをすればすぐに手に入るものじゃありませんか。  それで、こういうふうに考えますと、さっきから運輸省は一生懸命航行安全上問題がない、問題がないとおっしゃっていますけれども、私が言うように、旅客機の航行安全という問題は、飛行機がいま落ちるとか落ちないとかいう問題ではなくて、常に安全に航空機の状況が保たれていなければならないということがまず基本にならなければこの問題を云々できないと思うのですよ。だから、日航の安全対策に対して最優先課題だというふうにはおっしゃっているけれども、そこのところはきわめて問題点が多いと思います。  運輸省に重ねて聞きます。先ほどから部品の入手不足だというふうにおっしゃっていましたけれども、整備をする場合の要員ですね、これについて問題はなかったのですか。こういうふうにこれは日にちが足りないとか部品が足りないとかいうふうなことでキャリーオーバーしていますけれども、部品の入手不足だけだったのですか。整備要員の問題には問題なかったのですか。
  86. 長澤修

    ○長澤説明員 私どもが報告を受けておりますのは、部品の入手の問題であったというふうに報告を受けております。
  87. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、重ねてお聞きします。  この問題を外れて日航の整備の問題について、部品の入手不足、それから要員不足という点について、要員が十分に配置されて整備されているかどうか、その辺まで、ABCD各段階においてそこまでチェックをされておりますか。
  88. 長澤修

    ○長澤説明員 日本航空におきます整備の実態につきましては、一年ごとに修理改造認定工場の更新検査がございます。そのほかに安全性確認検査というものをやっております。それから、検査官が適宜巡回をいたしましてその実施状況を確認しておりまして、そういったようなものを総合して日本航空の整備がどういう水準にあり、どういう体制で行われておるか、必要があれば必要な是正措置を求めるということで、施設の問題、要員の問題、あるいは整備にかけるお金の問題、こういうものを総合的に見ておるわけでございます。
  89. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 見ておってどうなんですか。十分なのか不十分なのか、どちらですか。
  90. 長澤修

    ○長澤説明員 そういったいろいろなチェックをしました結果、一応良好な状態に保たれておるというふうに判断いたしております。
  91. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいま良好な状態に保たれているということでしたね。  ところが、これも日航の技術部から出されている資料によりますと、これはDC8ではありません、ボーイング747ですが、去年の七月七日のCチェックに、これも主翼の下側にコロージョン、すなわちさびが発見されているのですね。ところが、この報告書により、ますと、「コロージョンに対し、マンパワー不足ですべてがコレクションされなかった機会を利用してさびの進行状況をチェックしたので参考までに写真を送付いたします。」ということで、約六カ月間そのさびの進行状況を技術部が参考のために写された、こういう写真が来ております。六カ月間で翼のさびがこういうふうに進行している。何カ所かのさびが発見されているわけですね。  もう時間がありませんのでさびの問題は省略いたしますけれども、ところが、ここのところではマンパワー不足というふうに日航は言っているのですよ。あなたの方はおおむね良好です、これはどういうことですか。マンパワー不足は人手不足ということじゃないのですか、いかがですか。
  92. 長澤修

    ○長澤説明員 先生ただいま御指摘の747のJA八一一七の翼下面のコロージョンの問題でございますけれども、これは日本航空としましては、747のハイサイクル、離着陸回数の多いものに対する対策等いろいろ考えておる中で、コロージョン対策というのを徹底的にやろうということで対策を立てて始めた一連の作業の中で出てきておるものでございますけれども、このときには、左側の翼の下面におよそ百五カ所、それから右側の翼の下面に約三百カ所のいわゆるコロージョンというスコーク、ふぐあい事項が挙げられております。ただし、このふぐあい事項のうち処置を必要とすると考えられるものは左翼に九カ所、それから右翼に二カ所の計十一カ所でございまして、この十一カ所についてはすべて徹底的な修理をいたしまして問題ないようにしております。残りの軽度のもののうちのおよそ八〇%は処理をし、強度上は十分な状態にしておるわけでございまして、比較的ひどかった十一カ所につきましても、さびをとった後の板の厚さ等を測定してみた結果、すべてこれは許容値内にあったということでございます。
  93. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私の質問は、さびの問題をさておいてと言ったはずです。いまさびの問題について私も質問したいのですけれども、もう時間がありませんので、私が言っているのは、この日航の技術部の報告によりますと、「発見されたさびに対し、マンパワー不足ですべがレクションされなかった機会を利用してさびの進行状況をチェックした」、このマンパワー不足、いわゆる人手不足で、さびは発見したけれどもすべてがちゃんとできなかったと、人手不足と言っているんですよ。どうなんですか、その辺はチェックされないのですか。その人手不足ということについてどうお考えですか、そこのところを言っていただきたい。
  94. 長澤修

    ○長澤説明員 徹底的なコロージョン対策を行いました結果、一時的にマンパワーの不足を来しておるわけでございますけれども、その一時的な不足というのは、作業管理全体から見まして特にひどいものであるというふうには私どもは理解をしておりません。
  95. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいまの御答弁はきわめて国民を、飛行機に乗る人をだましていますよ、そんな言い方は。一時的に人手不足、そんなばかなことがありますか。私は技術部の人を追及しているわけじゃない。これはちょうど六カ月間さびを放置したらこういう状況になるよということになるわけですけれども、大体六カ月間手をつけないでさびをそのままに放置した状況があるわけです。結局人手不足でキャリーオーバーが続いておるということになるんじゃありませんか。そういうふうな日航の安全が最優先だとおっしゃっている経営方針の中で、まさにみずからが人手不足だということをここではっきりと出しておるわけじゃありませんか。  私はもう時間がありませんので、最後に大臣にお聞きしたいのですけれども、まだまだたくさんこういう問題があるのです。私たちに与えられた時間がきわめて少ないのでまた後で質問させていただきますけれども、しかし大臣、先ほどからお聞きいただきましたように、翼の下の非常に大事なスパーというのですか、枠にひびが入っている。応急処置をして安全だというふうにおっしゃっているけれども、航空機のきわめて大事な部分に入っているひびを恒久処置をしないでそのままキャリーオーバー、これはキャリーオーバーという言葉を運輸省は余りお好きでなさそうですけれども、実際使っているんだから仕方がない。持ち越し、ちゃんとしないで欠陥の持ち越しですよ。  それもオーバーホールの重整備のときにちゃんとしないで持ち越している。こういう問題がまずある。  それから、いま言ったように、みずからが人手不足だというふうに技術部がちゃんと指摘している。ということは、整備の方に、先ほど私が指摘したように、日航法改正になって社債なんかがたくさん発行するようになるとかいうことになると、どうしても日常経費がかさんでくる。一体どこでその経費を節約してくるか。ガソリン代が高くつくといえば、これは払わぬとしようがないからする。そうすると、整備費の方が削られてくる、合理化が進んでくるということで安全対策上きわめて問題の経営方針ではありませんか。これは現在、いまやっているんですよ。日航法改正前、いわば運輸省監督権限をまだしっかり持っていらっしゃる時点でこういうことなんですよ。  運輸大臣は、国民の立場から見てこういう日航の安全経営についてどのようにお考えですか、また、今後どういうふうに行政指導をされるつもりなのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  96. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 先ほど長澤技術部長からもいろいろ答弁しておりますように、一時的にそういうようなものがあるのかなと私は思うておりますが、しかし、そういうことがあってはやはりいけないと思います。でございますから、それが人手不足に起因するのか、あるいはまた修理計画が若干おくれてそういうものが残置しておったのか、その点私はむずかしいことはわかりませんが、いずれにいたしましてもこういう精密な機械でございますから、十分な整備をしておかないと簡単な一カ所のミスが重大な事故につながっていくということは過去の歴史も物語っておることでございますから、今後十分により一層厳重にそういうものをチェックしていくように、そして改善せしめるように強力に指導いたすつもりであります。
  97. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 まだ幾つか質問が残っておりますけれども、三浦議員の関連質問がございますので、かわらしていただきます。  どうもありがとうございました。
  98. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 三浦久君。
  99. 三浦久

    ○三浦(久)委員 まず、運輸省にお尋ねをいたします。  昨年の二月二十八日に都労委が、日本航空労働組合からの申し立てのありました不当労働行為救済事件について組合の主張を全面的に入れて救済命令を出しました。この件について、まずお尋ねをいたします。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕  この救済命令は、日本航空労働組合の組合員に対しまして昇給、昇格について差別があるから是正をしろ、こういうものであります。その総額は約十億円というふうに試算をされております。この事件は、実際に審査は十年以上都労委で行われているわけですね。それにもかかわらず、会社は中労委に再審査の申し立てをした、こういうことを口実にしてこの救済命令に従おうとしていないのであります。  私と四ツ谷議員は、昨年の七月二十三日に運輸省を訪ねました。そして、これは不当労働行為救済制度の目的に反しているではないか、労働者を早急に救済するという制度の趣旨に従って、日本航空株式会社に対してこういう命令に従うように指導すべきである、そういう申し入れをいたしたわけであります。それに対して当時の松本航空局長から、検討して対処いたします、こういう御返事をいただいたわけなんですが、その後どういうような措置をとられたのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  100. 松井和治

    松井(和)政府委員 ただいま御質問の、昨年の夏の三浦先生、四ツ谷先生からの申し入れがございまして、私の前任者松本航空局長日本航空株式会社に対しまして、私ども労使問題に介入する立場ではございませんけれども、しかし航空会社という非常に公益性の高い企業監督する立場から関心を持っておることも事実でございますので、できるだけ早期に解決するように要望したところでございます。     〔楢橋委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 三浦久

    ○三浦(久)委員 早期に当事者間で解決するように、こういう要望をしたというのですが、それは私に言わせると何もしていないのと同じなんですね。当事者で話し合いがつかないからあれだけ十数年間にわたって審査をし、その結論が出たにもかかわらず、まだそれに従おうとしない、当事者間で話し合いがつかないから再審査の申し立てをしているんですよ。そういうところへ、ただ当事者で話し合いをしたらどうですかと要望いたします、これは何もしていないということです。それは全く指導権というものを放棄しているあり方だというふうに思わざるを得ないのですね。これはだれが聞いてもそうだと思うのです。ですから、なぜ運輸省はこの命令を履行しなさいというふうに指導をしなかったのですか。
  102. 松井和治

    松井(和)政府委員 私ども航空局といたしましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、労使の問題に介入する立場ではございませんので、そのようなことは指導いたさなかったわけでございます。
  103. 三浦久

    ○三浦(久)委員 労使の関係には介入できないと言うけれども、この都労委の命令というのはどういう命令ですか。会社は組合員に対して差別した賃金の差額を支払え、そういう内容の命令なんですよ。そしてそれは、後で労働省に聞きますけれども、現に効力を有しているんですよ。そうであれば、この日航法の第十二条の二「その業務の適正な運営を確保するため特に必要があるときは、」云々とありますね、「監督上必要な指示をすることができる。」とあるでしょう。これに合致するじゃありませんか。当然十億円の金を支払わなければならない義務を会社がいま負っているのです。それについて支払おうとしなければ、支払えという指示はできるでしょう。たとえば会社が四十億円か五十億円か知らないけれども機材を購入した、当然払わなければならないその金を会社が支払わなかった、そのために裁判まで起きそうになった、そういう場合にあなたたちはこの十二条の二に基づいて指導できるでしょう。それはできなければおかしいでしょう。十二条の二に「事業計画及び資金計画の実施並びに収支予算の執行について、」監督することができる、指示できる、こうなっている。十億円は当然払わなければならない金なんです。それについて資金手当てをどうしろとか予算に計上されてないじゃないかといろいろな指導はできるはずですよ。それを労使関係については介入できないなんて、これは逃げ腰ですよ。法律に違反をしているという事態がいま目の前に起きているということです。  私ちょっと労働省にお尋ねいたしたいと思いますが、この都労委の救済命令というのは裁判所の判決と違う。裁判所の判決ですと確定をしなければ効力は発生いたしません。しかし、私は都労委の救済命令というのは行政処分だと思っています。そういう意味で、労働組合法の二十七条にも、この都労委の命令というのが、写しを交付したその日から効力を発生するとちゃんと書いてますね。そのことについてお尋ねをしたいのですが、どういう効力が発生をするのか、そうしてそれは再審査の申し立てによってどういう影響を受けるのか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  104. 中村正

    中村説明員 命令の交付を受けまして直ちにその効力が発生する、その効力は一体どういうことかということでございますけれども、行政上の処分があった、それに従うべき義務が発生するということになろうかと思います。  それから、再審査の申し立てをしたときにその効力はどうなるかでございますが、それはたしか二十七条の第五項に書いてありますように、効力はそれによっては失わないということでございます。
  105. 三浦久

    ○三浦(久)委員 この義務の内容ですね。いまあなたはただ命令に従う義務が生ずると言いましたけれども、もっと具体的にこの救済命令に従ってお話をしていただきたいのです。いかがですか。
  106. 中村正

    中村説明員 本件の命令は、差別があった、したがって、さかのぼってバックペイをしろ、こういうことになっておりますから、命令の効力が生きているということはすなわちバックペイをしろという義務が残っているということになります。
  107. 三浦久

    ○三浦(久)委員 その義務ですけれども、行政上また公法上の義務だと思うのですね。この命令によって会社と組合員との間には直接法律関係、権利義務関係は発生しない。しかし、会社はその労働者に賃金を支払うべき公法上の義務を負っているというふうに理解してよろしいのですか。どうでしょうか。
  108. 中村正

    中村説明員 そのとおりでございます。
  109. 三浦久

    ○三浦(久)委員 公法上の義務、行政上の義務というのはだれに対する義務でしょうか。
  110. 中村正

    中村説明員 これは地労委の命令でございますので、知事に対する義務を負っているということになろうと思います。
  111. 三浦久

    ○三浦(久)委員 大臣、いまお聞きになりましたか。いま義務違反が続いているのですね。昨年の二月二十八日に都労委の命令が発せられましたね。その後、中労委の履行勧告がなされている。この履行勧告というのは都労委の救済命令が現在効力を発生しているということを前提にして行われたものだと思いますが、いかがですか。
  112. 中村正

    中村説明員 履行勧告の制度は法律に基づく制度ではございませんが、中労委の規則によって行っております。したがいまして、命令自体の効力がある、それを是認するような形で履行勧告を出している、こういうふうに解釈をいたしております。
  113. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、去年の二月二十八日から現在まで日本航空株式会社は、いまあなたがおっしゃったような履行すべき行政上の義務、公法上の義務に違反をしている、そういう状態をずっと続けているということになりますね。どうでしょうか。
  114. 中村正

    中村説明員 確かに義務があり、それに従っていないということは義務違反ではございますが、もう一方、その義務を履行するのに対していろいろな強制手段がある。たとえば罰則を設ける、あるいは過ち料をつけるとかいろいろございますが、この都労委の命令に対する義務違反には、いろいろな観点から罰則というものを設けず、当事者の任意の履行にまつというような形になっております。その意味を含めまして、義務はあるけれどもそれに従っていないという状態がいま続いている、こういうことでございます。
  115. 三浦久

    ○三浦(久)委員 大臣、どうですか。いまそういう国の法律に基づく公法上の義務に違反をしているという状態がずっと続いているのです。裁判なら最高裁の判決が確定しなければ何の義務も生じません。しかし、これはそうじゃないのですね。そういう状態運輸省がそのまま放置しておいていいのですか。私は大変疑問に思うのです。ただ要望いたしました、そんなことじゃ済まない問題じゃないですか。  日本航空株式会社にお尋ねをいたしますけれども、どうしてこういう命令に従わないで公法上の義務に違反をし続けるのですか。
  116. 朝田静夫

    ○朝田参考人 初審命令をお受けいたしまして、私どもはできるだけその命令に従いたいと思っていろいろ検討したのでございますけれども、わが社におきますところの人事制度、賃金制度というようなものの現存しております体系とその運用に、正確な都労委の認識というものが得られていない、これはとても私どもとしては承服しかねるということで中労委に再審の申し立てを行っているのでございまして、ただいま中労委で組合と会社とがお互いに譲歩して早期解決のために審問協定というものを合意いたしまして、それに基づいていま審問を進めていただいておるような次第でございます。
  117. 三浦久

    ○三浦(久)委員 審問協定とか立証協定というのは、それは審問をするための協定であって、だからといって組合が、この救済命令はそれまで履行しなくても結構です、そういうことを決めたということには、私も事情を聞いてみると、なっていないはずですね。それはお認めになると思うのです。いま社長さんのおっしゃることは、結局都労委の命令には不服である、都労委の考え方が間違っておるのだということですね。それは結構だと思うのです。間違っておるから私らは再審査の申し立てをしたのだ、それをいま一生懸命やっているのだからまあ待ってくれ、こういう話だと思うのですね。再審査の申し立てをすること、政治的にはいろいろ問題はあるだろうと思いますが、しかし、不服だからといって争われるということは結構だと思います。しかし、だからといって公法上の義務に違反をするということをし続けていいということにはならないと私は思うのです。ですから、よくありますね、仮処分の問題でも何でもよくありますけれども、まず履行しておいてそして争うという場合だってあり得るわけですよ。特にこの場合にはもう都労委の命令自体が現に効力を生じているわけですから、それに従わないという公法上の義務違反というものを続けてまで支払いを拒否するという理由にはならないと思うのですね。その点いかがですか。支払ってから、履行をしてから争ったらいいじゃないですか。
  118. 朝田静夫

    ○朝田参考人 ただいまのお話のようなことも十分考えてみたわけでございますが、この初審命令を履行いたしますと、将来もし取り消しとか変更というものがありましても原状回復はきわめて困難であるというふうに判断をいたしまして、まことにいたし方ないと存じますけれども履行をいたしておらないということは、率直に申し上げてそういうことでございます。
  119. 三浦久

    ○三浦(久)委員 原状回復が困難だとおっしゃいましたね。私は必ずしもそうは思いませんけれども、しかし、仮に原状回復が困難であったとしても、違法な状態を続けるということはよくないことですね。あなたたちにはそういう違法な状態を続けない手段があったはずなんです。それは都労委の救済命令というものの効力を一時停止するという法的手段をあなたたちは持っていたはずなんで力やたとえば再審査の申し立てをしませんで取り消しの行政訴訟を出すことができますね。これは両方どっちも選択できるわけです。行政訴訟を提起した場合には救済命令の執行停止の申し立てをすることができるのです。執行停止の申し立てが入れられればあなたたちは合法的にこの都労委の命令の効力を停止することができたのです。それを何でしなかったのですか、それほど自信があるのなら。あなたたちが、おれたちは正しいんだ、裁判所は必ず認めてくれるというのであれば、そういう合法的な道をとる手段があったじゃありませんか。それを何でとらなかったのですか。
  120. 朝田静夫

    ○朝田参考人 ただいまのお話のような行政訴訟を提起する、そして初審命令の執行を一時停止する、こういう手段があったじゃないかと、こういうお説でございますが、私どももその方法も考えたわけでございますけれども、裁判の問題に持って出ますと、いままでの労使関係も、はなはだ残念なことで、なかなかうまくいっていない、そこへ裁判でやってまた百年戦争かと、こういうような感じを与えては、労使の関係というものをもう少しのところで修復しようといってもそれは非常に悪い影響を及ぼすじゃないか、こういう判断で、もう一度中労委の、上級の機関にアピールをしてひとつ是正を図ってもらいたい、その方が穏当じゃないかと私は判断をいたしたわけであります。
  121. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、中労委でもうあとやらないということですか。また中労委の命令が出ますね。それに対してまた行政訴訟できるのですよ。ですから、会社がどこまでも最後まで争うということになりますと、一番長い道をあなたたちは選んでいるのですね。あなたたちは、短くしようなんていまおっしゃっているけれども、いままでのあなたたちの経過を見ていると、とことん最後まで争っていますでしょう。そういうことをやれば、一番長い道なんです。また再審の命令が出たら、今度は行政訴訟ですから、一つだけよけいになるわけですね。ですから、お言葉ですけれども、それはちょっと私は納得できませんですね。  それで、行政訴訟を出せば、あなたたちは執行停止の道を選ぶこともできるかもしれません。しかし、逆に緊急命令が出されるかもしらぬ。そういうことを恐れたのじゃありませんか。会社の方は、都労委が間違っておるのだと、こう言っていますけれども、私は労使関係については、会社に遵法精神がないのではないかというふうに思っているのですよ。というのは、そんなこと失礼ですけれども、不当労働行為の件数では最近ワーストワンになりましたね。とうとう三菱重工と肩を並べてしまった。そして、その争い方も、私が見ていますと何か野蛮な感じがするのです。日本航空株式会社という、日本ナショナルキャリアとして、われわれは非常にあこがれているといいますか、日本の国民はみんなあこがれていると思うのです。何か文化の香りの高い、そういうものだというふうに思っていると思いますけれども、ところが、労使関係を見ると野蛮だ。たとえば裁判所の緊急命令にも従わないのですから。そして、二百万円も過料を払っている。これも三回もやっている。ここにやはり原因があるのじゃないか。正々堂々とあなたたちは争われたわけです。そして、都労委の判断が下ったのであれば、不満であってもそれに従うというのがフェアな態度じゃないか、労使関係を正常化する道じゃないか、私はそう思うのですけれども、その点はいかがでしょう。
  122. 朝田静夫

    ○朝田参考人 裁判に訴えて法的措置を講ずる、遵法精神なり法的手続というものをおろそかにして、いつも時間を遷延して争っておるじゃないかと、こういうことでございますが、中労委で、先ほど申し上げました事実誤認と私どもは判断しておるわけでありますが、それと賃金制度あるいは人事制度、こういうものも、従来労働組合とコンセンサスを得てつくった制度でございますから、それが都労委の命令に従いますとこれは根底から崩れるということで、やむを得ず私どもは中労委に再審申し立てをいたしておるのでありまして、裁判上の問題は、先ほど申し上げましたように、余りにもぎすぎすすると、どこまでも争うのかと、こういうようなことであってはいけないので、できるだけ早期に上級機関である中労委で御判断をいただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  123. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、もう中労委段階で和解をするか、それとも中労委の命令が出ればそれに従う、そういうお考えですか。もうほかには争いませんか。
  124. 朝田静夫

    ○朝田参考人 中労委が判断をお下しになりましたその内容を、いまからどういうものが出るかわかりませんから、それを前提にお答えするわけにはまいらないと思うのでありますが、また審問の進捗状況に従って、和解をするとか、いろいろな勧告なりアドバイスがありますならば、それはもう実際自主交渉もお断りと、こういうような考えは毛頭持っておりません。そのときの進展状況によって判断をさしていただきたいと思います。
  125. 三浦久

    ○三浦(久)委員 しかし、それは答弁が矛盾しているでしょう。余り裁判なんかで争いたくない、だから中労委へ持っていったんだと、こう言うから、じゃ中労委どまりかと。あなた、中労委の命令が出たら裁判しかないのですよね、取り消しの行政裁判しか。それならいまの参考人の答弁が、一貫した答弁をするとすれば、もう中労委段階で終わりにしますという答えが出てこなければいけないのじゃないですか。どうですか。
  126. 朝田静夫

    ○朝田参考人 中労委が判断をお下しになりました時点で、その内容いかんによると、こういうことを申し上げておるわけであります。
  127. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それじゃ、あなたたちは自分の満足する答えが出るまではずっとこういう公法上の義務に違反をし続けると、そういう意味ですか。
  128. 朝田静夫

    ○朝田参考人 初審命令が有効であるということは重々承知いたしております。したがいまして、また法で許されておる再審申し立ての機会も利用させていただいて、そして私どもの申し上げることも十分ごしんしゃくをいただきまして、そして第三者の公平な判断にまちたいというのが再審申し立ての理由でございますから、そういうことに応じて出ましたその判断、中労委の下されるでありましょうその判断の内容というものに従って、その時点で考えさしていただきたいと、こう思います。
  129. 三浦久

    ○三浦(久)委員 もう幾ら聞いても同じ答えしか出てこないでしょうから、大臣にちょっとお尋ねしたいのです。  いま労働省も、また朝田参考人もお話しになりましたように、現在この命令に従って履行をしなければならない公法上の義務に違反をしているということは認められているのですね。また、現にそういう状態が続いているのです。それに対して大臣は、このままでいいというふうにお考えになっていらっしゃるのですか、どうですか。
  130. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 これは長年にわたりまして労使紛争を繰り返しておる、非常に私も残念なことだと思うております。しかし、事ここに至るまでには、長い歳月の間にお互いの理解の不足がこういう事態になってきたと思うのです。そこで、やはり会社といたしましても、許される手続は十分とって、いろいろな手続をとって会社の立場を主張するでありましょうし、組合の方もそれに対し自分らの真意を理解してもらいたいと思うていろいろとやっておるでありましょうし、そういうことからいま中労委で審問が、何か四回か五回持たれておるように聞いております。その審問のスケジュールからいきましたらまだ入り口に入ったところだと思うのです。ですから、ここで十分に話し合ってもらうことがやはり解決の道だと思うております。先ほど航空局長が言いましたように、私たちといたしましては、いわば公共性の強い会社であり、政府関係しておる会社ではあるというけれども、やはり企業でございますから、その企業経営者を中心とした考え、組合は組合の役員中心とした考えで、お互いが自主的に話しておられるものにわれわれ役所の者が介入し、そこで何かの結論を出そうということはできるだけ避けるべきだ、皆さん方もそうおっしゃっているのだから、国会でもいつでも不当に介入してはいかぬとおっしゃるのでございますから、われわれはその成り行きを十分に見守っていきたいと思うております。
  131. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それは大臣ちょっと違うんですよ。労使関係がお互いに、国が決めたルール、また労使が決めたルール、そういう枠の中で行われているときにはそういう紛争に介入してはいけないと私も思います。それはそのとおりです。しかし、いまはそうじゃないんですね。完全に公法上の義務に違反をしておるという状態がずっと続いているわけなんですよ、大臣。そういう状態をそのまま続けさせていいのか。いまの大臣のお言葉ですと、中労委で話し合いがつくか、また決着がつくまでの間はそういう違法な状態大臣は続けさせるということなんです。そういう違法な状態というものはやはり一日も早くなくさなければならないのじゃないですか。そのための監督権限を大臣が行使するべきだというふうに私は思うのです。もっと具体的に言えば、この救済命令の内容を履行しなさい、そういう指導をしなければいまの違法状態はなくならないのです。大臣はそういう違法状態を放任するのですか、どうなんですか。
  132. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 違法、違法と振り回して言われますけれども、しかしながら、やはり法の中にも、先ほども労働省の課長が言っておりますように、いわゆる罰則としての義務を負わしてはおらない。だから、確かに一種の行政命令として、そういう点から見れば違法と先ほどから言うておられますが、それに対して、また日本は民主的な国でございますから、それに異議がある場合にはこういう手段がある、いろいろな手続と手段が与えられておるわけでございまして、その途中にわれわれが物を申すということは、これははっきりと介入ということになってまいりますので、手続をとってやっておる間はわれわれはその成り行きを見守っていきたい、こういうことです。
  133. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それは都労委の救済命令が出るまではそれでよかったかもしれませんよ。紛争があって、そしてずっといろいろ経過があって、都労委の命令が出るまではそれでいいかもしれない。都労委の命令が出た段階では違法な状態が続くのです。再審査の申し立てをしようと行政訴訟をしようと、履行しなければ違法なんです。ただ、それについてはまだ制裁の規定がないというだけなんです。怒られなければ何でもやるか、子供みたいな話じゃないですか。母親にぶん殴られなければ悪いことをするとか怒られたからしないとか、そういう性格の問題じゃないのじゃないですか。やはり国法上の義務なんですから、そういうものが厳然として存在している限り、それをみんなが守るということが民主主義であり、法治国家の原則じゃありませんか。それを監督すらできないというのであれば、私はちょっと困るのですね。困るというのは、本会議がありますからもうやめますけれども、しかし大臣、これはひとつそういう違法な状態が続いているということを念頭に置いて、早期解決のためにお骨折りいただきたい。  一言お願いします。
  134. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 三浦さんのおっしゃっていることは私らも理解できますが、近いうちに日本航空の当事者を呼び、十分事情を聞いて、それなりに話し合いの経過等を一回よく聞いた上で、できるだけ早く解決するような方法を、会社自身も努力するように申し伝えたいと思います。
  135. 三浦久

    ○三浦(久)委員 終わります。
  136. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時二十四分休憩      ————◇—————     午後三時五十八分開議
  137. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中馬弘毅君。
  138. 中馬弘毅

    ○中馬委員 日本航空株式会社法の一部を改正する法律案の審議が続いているわけでございますが、この法案が提案されたそもそもの経緯を考えますときに、これは五十五年の十二月二十九日、今後の行政改革の推進についての閣議決定に基づいて、五十六年度予算の財源対策として、政府保有の日本航空株式のうち二百五十万株を売却して、これによって約五十八億円の歳入増を図るための法的措置と私なんか簡単に考えておったわけでございますけれども、提案理由を見ますとなかなかりっぱなことが書いてあるわけでございまして、「近年の変動する国際情勢に対応して、より機動的、弾力的な事業運営」をするだとか、あるいは「民間活力を十分発揮しつつ、より自主的、弾力的」云々、こういうふうなことが書かれておるわけでございます。  そうしますと、本法律改正の提案の基礎に、やはり日航を取り巻く航空政策あるいは航空行政企業の形態の見直し等の基本理念ないしは方向といったものがあるはずだと思うのですね。もう少し先のことを考えますならば、いま運政審に出されております、この答申が近く出るようでございますから、それを待ってからしたらよかったと思うのでございますけれども、それを待たずにこういうことをされておるということになりますと、やはり政府としても一つの方向がお気持ちの上では出ているんじゃないかと思いますので、その点についてひとつお聞きしたいと思っております。  現行の航空政策の立案がされましたのが四十四年で、それ以降もう十年たっているわけでございますが、その間に国内旅客あるいは国際旅客、あるいは国内貨物、国際貨物、数字は申しませんが、非常に大幅に伸びておるわけでございまして、当時から見ますならば航空の機材にしましてもかなり大型化されております。したがいまして、航空というものが一つ日本の交通体系の中に占める役割りが当時とはかなり違ってきておると思うのですね。そのときに、ひとつその役割りというものをここではっきり認識あるいは位置づけておかなかったら、日本航空さんにしましても今後の事業運営は非常にやりにくいのじゃなかろうかと思うのです。それがどうもわれわれにはあいまいのままこの法案が提案されておるわけでございまして、その点についてまずお聞きしたいと思いますのが、新幹線鉄道網と航空路線の競合の問題なんです。  日本航空さんが全くの民間航空であって、あるいはいままでの質問の中でもいろいろ論議されております二重投資とかいったような問題がございますけれども、民間企業が二重投資をし、それぞれ競争をするというのは、それこそ民間活力を生かす意味でも、ある意味ではいいことだと思うのですね。しかし、この法案にもうたわれておりますように、あくまでも国策会社としてやっていく、国の航空会社としてやっていく。そうすると、これはあくまで国営企業と言っていいかもしれません。同時に国鉄もそういうことでございますね。その国鉄の方は、新幹線というのは、御存じのように、大量輸送でございます。航空機は、昔は高速輸送だけで大量輸送ではなかったかもしれませんが、いまでは機材が大型化して大量高速輸送になっているわけですね。そうしますと、ここに同じ国家企業の中で競合関係が起こってくるわけでございます。  そうすると、まずお聞きしたいのは、鉄監局長お見えになっておりますのでお聞きしたいと思いますが、鉄道を監理する方の立場から言うならば、やはり新幹線、これの収益も考えなければならないし、また整備新幹線という問題も一つの方針としてもう決まっているわけでございますから、そうすると、一つの限られた需要の中で新幹線の方をある程度採算的に乗せようとするならば、航空の方は幹線のところでは少し空港の整備をやめておいてもらいたい、むしろ整備新幹線が採算に乗るようにしてもらいたいというのが本音かもしれませんし、あるいはその逆かもしれません。  その点について、新幹線並びに国鉄を監督する立場の鉄監局長、どういうお考えでございましょうか。
  139. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 お答えいたします。  航空と新幹線の関係の問題でございますが、新幹線鉄道はその特性としまして、現在の東海道新幹線は、平均乗車キロ三百キロちょっとでございます。いわば中距離輸送といったところだと思います。しかもまた、相当な程度の輸送量を抱えておるということで、大量中距離輸送というようなところを分担しているというふうに言っていいのではないかと思います。一方、航空は主として二地点間を結ぶような長距離輸送、あるいは海を越えたりなんかするような場合の時間短縮効果が非常に高いような、そういう路線といいますか、輸送を分担をしておるというふうに見ることができるわけでございまして、いわばそれぞれその特性的にとらえますと、やはり輸送特性が違うのではないかというふうに考えます。したがって、新幹線は新幹線なりに、航空航空なりに、それぞれの特性に応じまして今後適切な輸送網を形成すべきだというふうに考えておるわけでございます。
  140. 中馬弘毅

    ○中馬委員 航空局長はどういうお立場でございましょう。
  141. 松井和治

    松井(和)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま鉄監局長からお答え申し上げましたとおり、航空の特性は、やはり何といっても高速性にあると思います。したがって、その高速性が一番発揮できるのが長距離である、あるいは距離がもう少し短くても、海を越えたり山を越えたりする、要するに時間を短縮する効果が大きいところが一番航空の特性の発揮できる分野だというふうに考えております。  ところで、航空をさらに進めていくためには、何といっても空港の整備が必要でございます。現在、空港の整備は残念ながらまだ非常に立ちおくれていると申して過言ではないと思うのでございます。したがって、今後私どもといたしましては空港の整備、これは比較的初期投資としましては小さくて済むという利点がございますし、また高速交通機関の恩恵に浴さない地域に高速交通機関を導入するというのに最も適した点を持っておるという点を考えまして、今後空港の整備をさらに進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。  ところで、空港と申しますのは点の整備でございますけれども、その空港を使って幾つもの路線が引かれるわけでございますから、先ほど先生がちょっとおっしゃいましたように、それでは新幹線が通っている都市に空港が必要ないのかと言えば、それはそういうことではなくて、たとえば現在、東京−名古屋便というのが一便に減便され、名古屋−大阪線という昔の航空路線がなくなりましたけれども、名古屋空港航空一つの拠点といたしまして多くの都市との路線網を形づくっているわけでございます。  したがいまして、今後新幹線が整備をされていく、新幹線の特徴は、先ほど鉄監局長言われましたように、やはり大量輸送という点にあろうかと思いますので、航空と新幹線とのそれぞれの特性を生かしながら、効率的な組み合せによる交通体系というものを形づくっていくことは可能であるし、私どももそういう観点から今後の航空路線考えていきたいというふうに考えております。
  142. 中馬弘毅

    ○中馬委員 現実問題として、北海道から東京あたりの旅客の九割以上は、あるいは鹿児島からでも同じでしょうけれども、航空に頼っているわけでございますね。大量輸送といいましても、それが大量輸送の効果が発揮できるのは、これはいっぱい乗って初めてその大量輸送の効果が発揮できるわけで、幾ら新幹線を引っ張っても、それが乗車率が二割や三割では大量輸送の効果が出ないわけでございますから、そうすると、一つ日本の今後のあり方を考えたときに、北海道にあるいは九州に、大阪や東京をしのぐような大都市ができて、その間で大量の一つの需要が出てくるということは考えられないわけですね。そうしたときに、どちらかに特化した方が日本の国土運営の上では効率的ではないかというような一つの判断も出てくるかと思うのです。  大臣はこの両方の考え方に対しましてどのように一つの御判断をお持ちでございましょう。
  143. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、当分の間、現在のようなエネルギー状況であるといたしますならば、やはり九州あるいは四国、北海道というような遠距離は、航空中心の輸送機関にならざるを得ないだろうと思うております。しかし、これはエネルギー事情等の変化があるに伴いまして変わってくると思うのです。  ただ、たとえば、いま中馬先生のお話にあります新幹線沿線で、問題は大阪とか福岡なんかですが、これが新幹線がもっと安くなれば、逆に言って航空運賃が高くなればまたこれは状況が変わってくるわけでございますので、当面の政策と、それから将来、まあ十年、十五年先のことは私たち予測できませんけれども、当面について言うならば、遠距離はやはり航空に依存するという政策を進める、そして航空とその周辺の鉄道とをどう組み合わせていくかということがわれわれとして考慮すべき問題だろう、こう思います。
  144. 中馬弘毅

    ○中馬委員 その点なんですけれども、逆にローカル空港あたりで、ローカル路線なんですけれども、東亜航空ですか、あれが飛んでおりまして、採算に乗らないからこれを切ろうという話になっているわけですね。しかし、考えてみるならば、どうも大型機を投入して、それに十分乗らないから採算が悪くなるというような形が悪循環になって出てきているんじゃないかと思うのです。逆に、先ほど言いましたように、大臣がおっしゃるのと逆になりますけれども、航空の方を安くして、そして大型機じゃなくて小型機を数多く出せば、需要としては、乗客の利便としては非常に高まるわけでございます。しかも、やはり四国の方だってあるいは東北の方だって、早く東京に、大阪に行きたいという気持ちはあるわけでございますから、そうするならば、その方がむしろ国民の利便にも合いましょうし、空港一つだけを少し整備すればいいわけですから、ここに大量の土地を買って新幹線を通すということじゃなくていいわけですから、はるかに全体の投資額としては安いと思うわけですが、大臣いかがですか。
  145. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 それは余り、見方によってはそういう見方がございますけれども、しかし、私が知っております限りでは、昭和四十七、八年ごろ、いわゆるエアバスが導入されて、これによるところの生産性の向上と申しましょうか、これがコストを非常に引き下げたのです。ですから、これを小型機に戻して、数を多く離発着させる、便数をふやすということ、これは料金はいかがなものなんだろうかと思いまして、それはおっしゃっているような数字にはならないんではないかなという懸念もいたしますが、これはしかし私たちも勉強してみます。
  146. 中馬弘毅

    ○中馬委員 特に結論を出せと言っているわけじゃございませんが、一つの交通機関の中で、自動車は一つの技術的な意味で限界に来ていると言われています。鉄道につきましても同じようなことで、リニアモーターカーでもできれば別でございますけれども、大体技術的な意味では一つの極限にまで発達している。しかし、航空機につきましては、今後まだまだ技術的な進歩が考えられ得る交通手段なんですね。これは先ほど言いましたような低騒音の問題あるいは水素燃料あたりを使っての低公害の問題であったり、あるいは短距離の離発着の問題、こういうようなことで、技術進歩はいろいろ考えられると思うのですが、そういうことで二十一世紀あたりのことまでも考えて、一つの交通体系というものは考えていかなければいけないと思うのですね。そのときに、先ほど言いました一つ可能性があるのは航空機じゃないかと思うのです。  この航空機の技術進歩について、何か具体的な御研究なりあるいは見通しというものが学界あたりである場合にありましたらひとつ御紹介をお願いしたいと思います。
  147. 長澤修

    ○長澤説明員 お答え申し上げます。  ただいまお話のございました航空技術の今後の進歩の問題でございますが、現在飛んでおりますボーイングの747あるいはダグラスDC10、ロッキード一〇一一、こういう広胴機が採用されるようになりまして、航空機の騒音が大幅に低減をいたしております。そしてさらに、現在開発が進められておりますボーイングの767あるいはボーイングの757あるいはヨーロッパで進んでおりますブリティッシュエアロスペースの146、こういう飛行機にはさらに最近の技術の成果が組み込まれておりまして、新しいターボファンエンジンが搭載されることになっております。そして、なお一層騒音の低下ということが図られる見込みでございまして、これら開発中の飛行機については、まだ正確なデータをつかむには至っておりませんけれども、人間の耳の感じで聞きまして、半分に近いぐらいにまた音が下がってくるのではないかというふうな予測もされている状況でございます。  それから、短距離離着陸機の問題でございますが、民間機としましては運航に現在すでに供されておるものは、カナダで開発をされましたデハビランドのDHC7という飛行機がございます。これは小型でございまして、五十人乗りのターボプロップ機でございます。  現在やはり世界的に待ち望まれておりますのは、大型のジェット機で短距離離着陸ができるようなものというのが望まれておるわけでございますけれども、これらについてはまだ具体的な見通しが得られるというところまで至っておりません。アメリカでは主としてNASA、米国の宇宙航空局がこれの問題について中心になって研究開発を進めておりますし、わが国におきましても、科学技術庁におきまして航空宇宙技術研究所が中心になりまして、昭和五十八年度から実験機を使って本格的な短距離離着陸機の研究開発に取り組もう、そういう段階に立ち至っておるということでございます。
  148. 中馬弘毅

    ○中馬委員 御説明のようにいろいろの可能性考えられるわけで、今後の一つの特に国内の交通体系につきましては、その配慮も含めてかなり航空機あるいは空港の整備ということについての重点が置かれていいんじゃないかと思っています。  最近、日米航空協定を初めとして空の自由化の問題が出ておりますが、きょうずっとの御審議の中でも、特に国際航路につきましては大変な競争が行われていることは認識いたしております。しかし、それで何か相手側のこれを国策的な意味で制限しようだとかあるいは日本の国策を発揮するために相手側と交渉する、これも大変結構なことなんですけれども、しかし日本という一つの国から考えたときに、むしろ自由往来によって日本国益になるんじゃなかろうか。むしろ来たいというのは拒まない形、これにはもちろん空港の制約もございますけれども、その点についてどうなんでございましょうかね。日航一社が一つはその権益を守るために、相手にはある程度交換条件をつけて制約を加えるというよりも、むしろ積極的に来るものは来てくださいという形ですね。これについては大臣いかがお考えですか。
  149. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 発展途上国なんかそうなんですね。来るものは来てください、私のところからは余り行けませんのでというのが多いですけれども、しかし私らは、航空権益というものはやはり重要な国益としてこれは十分守っていかなければいかぬのじゃないか。それがためには、それに従事する企業がやはり経営基盤をきちっとして、りっぱに経営力が発揮できるようにしなければならぬと思います。そうしますと、この日米航空協定にもうたってありますがごとく、平等互恵という精神でやはり進めなければいかぬのじゃないかなと思いまして、自分の国に能力がない場合は、おっしゃるように、来るものは来い、それは一面から言ったら、中馬さんのおっしゃるのは、完全な自由主義に立った方がいい、自由競争に立った方がいいという趣旨だろうと思うのですが、これはしかしあながちそうばかりもいえないように、ある程度自由競争、それは刺激として当然必要ですけれども、こういう特殊な権益は、やはり権益を維持するための方策というものも同時に裏づけしておかなければいかぬと私は思うております。
  150. 中馬弘毅

    ○中馬委員 その権益というのがたとえば国策会社である日本航空権益なのか、あるいは日本全体の一つの国際交流という大きな場面で考えるときに、むしろある程度後進国からもあるいはロンドンからもニューヨークからもどんどん人が来て、そして日本で経済活動あるいは文化活動というのが活発になる方が国益になるということが十分考えられるわけでございますから、そういう点の配慮があるのかないのかということでございます。
  151. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 それは双方満足することが真の国益だと思います。
  152. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いや、満足というところにぼくは一つの力点を置いて考えているわけでございますけれども確かに一つ日本が国として持っている企業、この利益を伸ばす、あるいは一つのあれを守るということは大事かもしれませんけれども、日本全体の国際的な一つの経済交流あるいは文化交流といった面からは、どんどん来るものは拒まずというような形の方がより活発になるんじゃなかろうか。これは過去におきまして、一つの空の時代じゃなくて海の時代のことを考えたときに、どんどんやはり外国の船が日本に来ることの方が、その町なりその国が発展するわけでございますから、そういう点との兼ね合いで大臣のお考えをお聞きしているわけでございます。
  153. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 こちらの方もどんどん出ていくし、向こうもどんどん来てくれる、これが一番上できだと思うのです。ただし、それが無競争にやられまして、相手も傷つけば日本も傷つくという、野方図に無統制でやるということについては、私は、先ほどから言っています国の権益を守るという点から見てどうだろう、そういう点を心配するのです。だから、おっしゃるように、それはもう交流が多いほど活気があり、繁栄をするし、またそのことが利益を直接国民に与える、それも間違いないことだろうと思います。
  154. 中馬弘毅

    ○中馬委員 そのときに、一つの制約として空港の問題があるのですね。この空港をいま国際空港として外国の乗り入れを認めている空港、それからそのほかの空港で乗り入れを認めていない理由といいますか、制約といいますか、その辺についてちょっと御説明いただきたい。
  155. 松井和治

    松井(和)政府委員 通常、相手国と日本との間で航空協定を結びまして、その航空協定でそれぞれの国のお互いの乗り入れ地点というものを定めるわけでございますので、この乗り入れ地点の交換というのが非常に大きな権益一つになっていることは御承知のとおりでございます。現在そういう航空協定上、多くの国との間におきまして自国発の地点というのは限定しないのが普通でございますので、日本国内の各地点から海外へ向けて、たとえばアメリカならアメリカへ向けての日本発の地点というものを日本航空がふやすということはできるわけでございまして、現に昨日から千歳空港発ホノルル便というものが創設されたということでございます。  現在そういう意味で国際空港、要するに定期便の就航する空港というのは、いま申しました千歳を含めて十二の空港がございます。それから、そのほかに最近国際線のチャーター便が非常に多く利用されるようになってまいりまして、ただいま申し上げました十二の定期便の就航しておりません空港の中で、国際チャーター便が最近の実績として出ております空港が大体七つぐらいございます。  そういう意味で、かなり日本空港も国際化が進んできておる。したがって、わが国から海外に行く窓口というものはかなり広がってきておる。ただし、相手国の企業日本国に乗り入れてくる場合の地点というものは、先ほど申しました協定上の権益によりましてある程度限られたものになる。そこへ、たとえば東京とか大阪とかあるいは福岡というようなところに相手国から乗り入れてきてもらう、日本国から外へ出るときにはそれ以外の地点からも出ていくというような形が通常でございます。
  156. 中馬弘毅

    ○中馬委員 東京、大阪あるいは福岡についてはかなり便数の制限もあろうかと思います。そうするならば、その乗り入れ空港を千歳、鹿児島あるいは長崎といったところに広げるお考えはございませんか。
  157. 松井和治

    松井(和)政府委員 確かに成田、大阪という日本中心になるべき国際空港が、施設の面から非常に制約をされておる、これは御指摘のとおりでございます。しかしながら、これは相手国との交渉の結果決まるわけでございますが、相手国が日本の乗り入れ地点としまして第一に希望するのは、当然のことながら成田であり、成田に次いでは大阪であるわけでございます。私どもがかわりの地点をどうですかということを提示しましても、相手国がこれを断るというケースが多いわけでございまして、したがいまして先ほど申しましたように、どうしても相手国の乗り入れ地点というのは東京であり大阪を希望する、こういうケースが多いということでございます。
  158. 中馬弘毅

    ○中馬委員 希望とすれば、もちろん東京、大阪を希望するのでしょうけれども、それが便数で制約があってどうしてもだめだといった場合に、たとえば鹿児島なら鹿児島、あるいは千歳なら千歳を提示した場合に、相手がそれでもいいですよと言った場合にはお認めになるのですか。
  159. 松井和治

    松井(和)政府委員 これは航空協定上の権益の交換でございますので、日本国としてたとえば相手国に要求する権益と、そのバランス上これが均衡が保たれるという判断がなされました場合には、また相手国がそれを了承しました場合には、他の空港を相手国に提供するということは当然可能でございます。  ただ、いま御指摘の千歳空港は防衛庁の空港でございますので、これはいささか問題があろうかと思います。
  160. 中馬弘毅

    ○中馬委員 まだ日本に希望しておって日本が認めてない国が三十ほどあるかに聞いておりますけれども、その国々でそういうようなところはございませんか。
  161. 松井和治

    松井(和)政府委員 ちょっと私いま記憶しておりませんが、たしか少し前のケースでございますけれども南太平洋のナウルから鹿児島に入りたいというケースがございまして、現在たしか鹿児島にそれを認めておりますが、その他現在、成田待ちと言ってはちょっと言葉が悪いのでございますが、成田の能力が完全になるまで待っていただいている国々、その中で成田以外のところを希望しておるという国は、私いまたしかそういう国はないというふうに記憶しております。
  162. 中馬弘毅

    ○中馬委員 私の意図して言っておりますのは、そのように日本に来たい国があるならば、ある程度日本がそこに飛ばす余裕がなくてもこれは与えてやっていいじゃないか。もちろん将来についての一つの保証はもらっておくことでございますけれども、そういうような国際化を考えた上での各国との航空協定というのがあってもいいのじゃないかと思っております。その場合の空港につきましては、まだまだいろいろな地点が考えられるのじゃなかろうかというような気がいたします。  日本航空のあり方についてなんですが、国策会社ということを非常に強調されるわけでございますけれども、国策というのは何ですか。
  163. 松井和治

    松井(和)政府委員 先ほど申しましたように、国際間の航空路線というのは二国間が協定を結んで権益を交換する、いわば国家の権益でございます。その国家の権益である路線を日本国の利益のために運営する会社国策会社というふうに考えております。
  164. 中馬弘毅

    ○中馬委員 その国策会社というのは、政府が直接出資したりあるいは国営であったり、そういう必要があるのですか。
  165. 松井和治

    松井(和)政府委員 ただいま申し上げましたように、国の権益をいわば国にかわって代行する企業主体というふうに考えておりますので、これにつきましては国が一定の出資をするというのは当然のことではないかと思っております。  世界の航空会社を比べてみまして、ソ連や中国のようないわば国が直接行っているような企業、これを一番左に置くといたしまして、その次にありますのがイギリスのBAでございまして、これは国が一〇〇%出資をして企業形態としては株式会社、つまり公有民営の形態でございます。これはオーストラリアのカンタス航空などもこれに入ります。第三のグループといたしまして、たとえばエア・フランスというのはたしか九八・五%ぐらいの政府出資、それからドイツのルフトハンザその他が七割程度の政府出資、だんだん比率が下がってまいりまして日本航空は四割、あるいはスイス航空は二割五分というような政府出資の形態、つまりこれは民と公との共有で民営という形態でございます。そして、一番右にアメリカの全く私企業の形態、大ざっぱに世界の航空会社を分けるとその四つの形態になろうかと思いますが、アメリカ複数の非常に歴史の古い巨大な航空企業、これが民営で行っております例はいささか特例ではないかと思っております。その他の国におきましては、ただいま申し上げましたように、国が一定の出資比率を保って国が監督をするという形態が、その国を代表する国際航空会社として最もふさわしいという形態で進められておるというふうに考えております。
  166. 中馬弘毅

    ○中馬委員 国益を代表する企業なりそういう業種の場合に、国が出資し、あるいは監督しなければならないというような御発言でございますけれども、しかし、いろんな場面において国際的な交渉というのは国益を代表してやられているわけですね、自動車交渉にしましても繊維交渉にしましても。しかし、自動車に政府出資しなければいけませんでしょうか。あるいは運輸省なり通産省が直接に内容にまで立ち入って監督しなければ、その自動車あるいは繊維各産業国益に反するようなことになりましょうか。
  167. 松井和治

    松井(和)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、国際航空路線と申しますのは、航空協定によって国同士が交換した権益の上に成り立つ、その権益を行使する企業でございまして、自動車、繊維とは全く性質の違うものと考えております。
  168. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ここで議論しても始まりませんけれども、そのようなことで、いろんな国益を代表する、あるいは国益を守るというような意味におきましても、必ずしも国営で、あるいは国の監督が非常に強くなければだめだとはどうも考えにくいのでございますけれども、そういう点からいたしましても、果たして一社だけでいいのかどうかというような問題にまでひっかかってくるわけでございます。  大臣、いかがでありましょう。
  169. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 現在の日本の状況なり世界各国航空需要、こういう状況から見ましたら、当分日本として国際航路を担当するのはやはり一社でいいんではないかと思います。それは国際航路を持っておるということは大変な投資が必要でございますし、それにまたそれだけの人員の教育というものも大変でございますし、数社が日本国際航空を持たなければならぬというほど、現在まだ日本自身としての航空事情にはないと思うております。いずれそれは時代が変わってまいりまして、そういうこともあり得るかもわからぬと思いますので、われわれはただそれに固執しておるというわけじゃございませんけれども、現在の情勢ではまだ一社でこれの責任は十分果たし得られるんではないかと思うております。
  170. 中馬弘毅

    ○中馬委員 将来は考えるというようなお考えでございましたけれども、日本航空は世界で三位か四位の大企業になっておりますね。これは国鉄のことからも言うんですけれども、余りにも企業一つの形が大きくなり過ぎますと、いろいろな意味で非効率が出てまいります。ですから、日本航空のほかにもう一つ日本航空のようなものをつくれというんではなくて、場合によっては二つに割ってでも競争させた方が、日本のためにあるいはそれぞれの企業のためになるんじゃなかろうかという気がするのです。  それから、他国の例のことをおっしゃっておりますけれども、日本の経済規模あるいは人口といったものからしましても、欧州の二つや三つの国を合わせたぐらい力があるわけですね。そうしますと、それの航空会社一つでいいのかどうか。むしろそこが何らかの形で非常に非効率になってきて、国鉄のような形になった場合に、それに代替するものがなかったら逆に大変じゃなかろうかという気がするのでございますけれども、大臣いかがですか。
  171. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 中馬さんに一つ誤解があるんではないか、誤解と言えるかどうか、認識の相違かもわかりませんが、確かに日本航空は世界で一けたにランクされるような航空会社になりまして、また積み取り比率も非常に上がってまいりました。しかし、その中身をよく見ますと、そのふえた原因は日本人の乗客なり貨物がふえたということなんです。決して外国の物を、人をがっがっ獲得して、たとえばヨーロッパ人を日本航空でどんどん運ぶ、それがふえた、それもあります。ありますけれども、今日の乗客の内訳、貨物の内訳を見てまいりますと、やはり日本人が対象なんですね。そうしますと、日本の国内で国際航空二つに分けたといたしましたならば、それは日本人の乗客をとり合いしておるということ、これが一番極端に出てくる、ロスになるんだろうと思うんです。それを二つに割って、片っ方は外人専門に獲得してくれるんだ、これも経済摩擦が起こるかもわかりませんが、しかしそういう事情にはなかなかならない。もちろん二つ三つに分割すれば外国のお客さんの獲得にも懸命の努力はするでしょう。けれども、乗客そのものを見ますと、やはり自国のナショナルフラッグに頼ろう、やはりこういうことがどこの国でも多いようです。そういう点を見ますと、私はまだ当分の間はこれでいいんではないかなという感じがしておるのです。
  172. 中馬弘毅

    ○中馬委員 しかし一方、海運界を見ますと、海運界は便宜置籍船の国を除けば日本が世界一の商船隊を持っておるわけですね。これはそれぞれの企業がそれこそ場合によっては国内のお客のとり合いまでもして力をつけたがために、あるいはまた外国の荷物もどんどんとっていく、あるいは乗客もとっていく、そういう形の中から世界一の商船隊ができ上がったんじゃないでしょうか。  そういう意味で、今後のことをお考えになる、あるいは日本の乗客だけを積むというんじゃなくて、世界に雄飛する、それこそ国策であり、国益であるというならば、もう少し競争体制でやった方がいいんじゃなかろうかと思うのでございますが、どうですか。
  173. 松井和治

    松井(和)政府委員 ただいま先生海運の例をお引きになりましての御質問でございましたが、海運の場合はもともと海運自由の原則でございまして、これによって自国海運を大いに伸長し、あるいは第三国間の貨物をとるというようなことで、確かに御指摘のように、日本海運は現在世界に冠たる力を備えておると思います。  ところが、航空の場合は、先ほども御答弁申し上げましたとおり、あくまでも相手国と自国との間で互恵平等の原則に立って協定を結ぶ、したがって輸送力も両当事国が半々に運ぶということを本来の原則としておるわけでございますが、最近たとえば相手国からさらにその先へ行くいわゆる以遠権を行使いたしまして、自国と相手国以外にいわば第三国の輸送を行うというようなケースがかなりふえてまいりました。一例を申し上げますと、東南アジアの国が日本以遠、日本からアメリカヘの路線を運航する。そういたしますと、日米の間で日本アメリカの両当事国が五〇、五〇を運んでいるというわけにはまいらないで、第三国もある程度のシェアが獲得されてくる、こういうことでございまして、そのシェアの適正な比率というものはなかなかむずかしゅうございますけれども、かつて海運の場合でもUNCTADで四、四、二という、両当事国が四対四、第三国が二という比率が討議されましたが、航空の場合にも大ざっぱに言えば両当事国が各四、第三国が二というあたりが一つの目安ではないだろうかというふうに考えられますので、海外に雄飛してじゃんじゃんかせぐというようなことは、海運の場合と航空とはいささか事情が違うんではないだろうか、かように考えます。
  174. 中馬弘毅

    ○中馬委員 先ほど中村委員の方も指摘されましたけれども、航空貨物の需要が非常に大きくなってくる。そのときに、日本貨物航空株式会社ですか、こういった認可申請も出ております。これを慎重に検討するという大臣の御発言もございましたが、私の先ほど言いましたようないろんな意味でのことから言いますと前向きに検討してほしいという気がするんですが、その慎重な検討というのは前向きの検討なのか後ろ向きの検討なのか、ひとつ。
  175. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 政治家の検討というのは後ろ向きで検討したってだめです。それはやはり前向きなんですが、しかし先ほど来言っていますように、航空貨物に見ましても乗客に見ましても現在のところはまだそんな状況では実はないんです。ですから、将来においてはこれは変わってくると思います。だから、その条件が、たとえば施設の問題なりあるいは産業構造の改革なりあるいは燃料というのは大きく変わると私は思うんですよ。そういういろんなものを総合して考えていくべきであって、現在の時点でただ競争を激化するためにこういう政策を入れたらどうだろうという観点から、刺激を与える観点からのみであったのではこれはいかがなものだろう、現在の状況から見まして私はそう思うております。ですから、何も私たちはかたくなに考えておるんじゃないのです。そういう客観的な情勢が生まれてくれば当然これは考慮しなければならぬ問題だろうと思うておりますが、現在はそうではないということを申し上げておるんです。
  176. 中馬弘毅

    ○中馬委員 もちろん将来の方向として、そういう方向が前提のこの日本航空株式会社法改正であればこちらも認めるところであるのでございますけれども、しかし先ほど言いましたように、この中にはやはり運輸省監督が非常に強いというようなことがあるんですね。もういろんな方が御指摘なさっておりますから詳しいことは申しませんが、たとえば役員人事につきましても、なぜ役員の方々の任免権を大臣が握っていなければならないのか。一つ企業として社長にお任せになるのですから、その社長が一番やりやすいようにされた方が、一つ企業の自由な、それこそ民間活力を十分に生かしたようなことになるんじゃなかろうか。その点で朝田社長はどうお考えでございましょう。もちろん一つの国策的なことで対米交渉あるいはいろいろな交渉にも当たってほしい。しかし、日本航空を預かる者として、自分たちはそんな制約を受けずに、あるいは政府に別にお金も出してほしくない、どんどんやらせてほしい、経営者であればそういうお気持ちじゃなかろうかと私は思うのですが、どうですか。
  177. 朝田静夫

    ○朝田参考人 いまのお話のようなことなら好ましいという考え方もありますけれども、これは総体的にほかの改正法案の条項とあわせて考えなければならぬと私は思っておりまして、規制をある程度緩和する、そのかわりに、民間活力を十二分に発揮できるような体制にするけれども、それを動かす役員というものを一般的なあるいは後見的な監督というようなことでそこだけ押さえる、こういう考え方もこの改正法案に盛り込まれておる思想でございますが、十分それが適切な考え方であると私は考えております。
  178. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ところで、日本航空の五十四年度は営業利益は赤字、経常利益はわずかな黒ということでございましたが、五十五年度、もうこの三月で終わりますが、見込みはどうでございますか。
  179. 朝田静夫

    ○朝田参考人 五十五年度はこの三月末日で会計年度が終わるわけでございますけれども、第二次石油危機で燃料費が非常に高騰いたしましたし、あるいはそのために国際企業間競争も非常に熾烈になりましたし、大変苦境に立ってはおりますけれども、経常利益十億台の計画を立ててこれを何とか達成できるんじゃないか。この三月期の決算、ことにこの三月の一月間の締めがいろいろなものが全部年度末で集約されておりますので、外貨債務の評価がえとかいろいろな技術的な決算の問題が明らかになりますれば、特別利益も合わせて何とか民間株主に八分の配当は継続できる、こういうふうに考えております。
  180. 中馬弘毅

    ○中馬委員 今後の問題としまして、油が高騰するわけでございますし、人件費も航空会社さんというのは一般の民間企業よりもはるかに高い給料をお払いになっております。こういうようなことで、需要もいまのところそう伸びておらないわけですね。五十六年度の見通しはいかがですか。
  181. 朝田静夫

    ○朝田参考人 五十六年度の見通しは、収支じりだけを申し上げますと、政府の株式にも配当しなければなりませんので、配当所要利益、税金、法人税、住民税も合わせましてどうしても税引き前百四十億の利益を上げなければ政府の株にも配当できません。  そこで、先ほどお答えを申し上げましたように、私どももできるだけ採算性が向上できるように、そしてできるだけ適正需要、適正輸送力というものを見合ったものにして、そしてロードファクターを高めまして採算性を向上してまいりたい。それでも中国とかシドニーとかあるいは米国の西海岸のように需要が堅調なところは輸送力の供給力というものをつけていく、ふやしていく、こういうふうに考えております。もちろんその根底には、役職員全員相協力をいたしまして販売増強運動あるいは間接的な経費は徹底的に削減をする、労働生産性を高めていくというようなことは引き続き努力をしてまいらなければならぬところでございますが、そういうことでできるだけ採算性を向上させるということで、路線便数計画等もそういう意味で見直して新しい計画で臨みたい、こう考えております。
  182. 中馬弘毅

    ○中馬委員 日本航空はかなりの関連事業といいますか、子会社等をお持ちでございますけれども、日本アジア航空あるいは数社は利益を出しておりますが、むしろ赤字のところもあるわけでございまして、これを連結したらどういう形になるのですか。最近の二、三期だけでも連結した数字をちょっとおっしゃっていただければと思います。
  183. 朝田静夫

    ○朝田参考人 連結決算を実行しておりますのは関連会社五社でございます。いま御指摘日本アジア航空それから南西航空航空開発、それからAGSといいましてエアポートのグランドハンドリングをやる会社がございます。それから、旅行開発株式会社、これはJALPACKの仕事を企画をしておるところでございます。連結決算対象関連会社はこの五社ございますが、これを連結決算をしてみました結果は、五十四年度の連結決算の経常利益は八億八千五百万円でございます。私どもの単独の経常利益は、先刻申し上げましたように四億でございまして、それを上回っておる、こういう状況でございます。
  184. 中馬弘毅

    ○中馬委員 連結した結果が逆にいいのであれば寄与していることで、好ましいことではあるわけでございます。ただ、関連事業のあり方あたりについて少し日航社長の方のお考えをお伺いしたいのですけれども、たとえばパリの日航というのを持っておるわけですね。そうすると、JALPACKで連れていってパリの日航ホテルに泊めてそしてまた帰ってくる、当地には全然お金も何も落ちないわけです。全部日本航空が吸い上げるという形で、これは相手の国にとっては余りおもしろくないことじゃないかと思うのです。いろいろな国際交流を深める意味でも、自分がわざわざ外地にホテルをつくるんではなくて、むしろいろいろなところと提携しながら進める方がいいんじゃないかと思うのですが、社長いかがですか。
  185. 朝田静夫

    ○朝田参考人 先生のいま御指摘の点は確かにございまして、現地ですべて一貫して旅行から食事に至るまで、ホテル等関連会社の間で吸い上げてしまう、こういうようなことではありますけれども、そういう現地の企業活動を通じて現地における職員を雇用するとか、エンプロイメントの問題もございますし、それからまた現地のそういった利害関係をうまく調整をしながらやっておるということでございまして、その点は細かい神経を使いながら共存共栄の実を上げていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  186. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いまおっしゃいましたように、それこそ国策会社とおっしゃるのであれば、その程度、日本の国際的な立場も考慮して、相手国とも刺激なしに共存共栄される方がいいんじゃないかと思ってお伺いしたようなことでもございます。  それからHSSTの実用化の問題でございますが、これは実用化で、場合によっては人まで乗せて動かしておったのに、いま断念されたような形だと聞いておりますけれども、その点についてお伺いいたします。
  187. 小林哲一

    小林説明員 お答えいたします。  HSSTは、日本航空が西ドイツの技術をもとにいたしまして開発いたしました常電導磁気浮上方式鉄道の一種でございます。五十四年当時、日本航空中心になりまして、重電、鉄鋼あるいは土木等の関連企業に参加を求めまして、株式会社を設立いたしまして、この株式会社が開発を行うという構想を持っていたわけでございます。しかしながら、この技術というものが世界でも初めての技術でございまして、開発に多額の資金を必要といたしますし、利潤が期待できないというような点から、株式会社方式というのは不適当ではないかという意見が大勢を占めたわけでございます。  そこで、日本航空といたしましては、鉱工業技術研究組合法に基づきます技術研究組合を設立いたしまして、この組合はいろいろ税法上の特典もあるわけでございますので、この組合が開発主体になりまして将来の開発に当たるということで、現在関連企業とも組合設立のための折衝を続けている段階でございます。  ただ、将来の開発を行うに当たりまして、まず技術的にいろんな問題がございます。そこで、技術的な諸問題を解明をいたしまして将来の開発のための指針をつくりまして、その上で組合をつくるということが、これも関連企業の間の強い御意見、御要望でございますので、日本航空といたしましてはまずその開発指針を作成する、それができましたらこの組合が設立できるのではないかという見通しを持っておりまして、またわれわれもそういう報告を受けている次第でございます。  運輸省といたしましては、この常電導磁気浮上方式鉄道が低公害あるいは高速性という点で非常にすぐれた交通機関であるという認識を持っておりまして、この開発を促進する立場でございますが、将来の開発のための技術指針というものも非常に大切でございますので、現在運輸技術審議会におきまして御審議をお願いしながら、また調査委託費によりましてこの指針の作成のための作業を鋭意続けているという段階でございます。
  188. 中馬弘毅

    ○中馬委員 国鉄の方式と両方あるようでございますけれども、技術的な面ではどちらが先に実用化のめどが立つことでございますか。
  189. 小林哲一

    小林説明員 国鉄の方の超電導と常電導と、これは磁気浮上ということで原理的には同じでございますが、その技術内容というのは相当異なるわけでございます。そこで、それぞれの方式について、現在技術開発が進められているという段階でございます。どちらが早く実用化になるかという点につきましては、私も専門家でございませんので、ちょっとお答えしかねます。
  190. 中馬弘毅

    ○中馬委員 何か両方で張り合っているようでもありますし、あるいは運輸省が何か中で少し制約するような状況にもなっているようなことを聞いておりますが、いずれにしても、これにつきましても日本航空がやはり国営といいますか、半官半民にしましても、国の監督権が非常に強いがためにそういう問題が起こってくるのじゃないかと思うのです。これが民間企業であれば、企業の自主的な責任でどのような研究開発をしようが、それは企業の自由でございますし、あるいはそれがひいては日本の技術開発にもいい意味で寄与していくのではないかと思うのですけれども、そういう意味におきまして、いずれにしましても、この提案の趣旨にございますように、民間活力を十分に生かしたような形で、自主的あるいは弾力的な一つ運営ができますような日本航空となりますことを、運輸省としましても、ひとつ将来の方向としてははっきりやっていただきたいということを念願いたしまして、質問を終わらしていただきます。
  191. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 吉原米治君。
  192. 吉原米治

    ○吉原委員 いまのHSSTの話でございますが、国鉄とどちらが早く実用化されるかという質問でございますけれども、少なくとも私が承知しておる限り、日航の方がかなり遅くから研究を開始されて、技術面では一歩リードされておるように聞いております。特に国鉄は三十七年から研究開始をされて、日航は四十九年から、遅くから研究を始めて、しかも実用化にほぼ近いところまで日航の開発は進んでおるというふうに聞いておるわけでございますが、第一、日航という航空事業事業者にこの種の研究をさしておるというその本旨がどうもぼくにはもう一つつかめないのです。何か承りますと、国鉄の開発といわばミックスをして、日航の持っているリニアモーターカーを一本化するといいますか、むしろ日航の方から取り上げる。それがために、いまいろいろな工作が運輸省内部でやられているように私は聞いておるわけでございます。  まず、日航朝田社長に聞くんですが、日航にそういう研究開発を命じたといいますか、指示したといいますか、そういう考え方、HSSTを開発研究されて、航空事業に直接メリットがあるんでございますか。そこら辺を先に聞きたい。
  193. 朝田静夫

    ○朝田参考人 私どもが技術者中心に研究開発を始めました動機は、もちろん西独のクラウス・マッファイの基礎原理をもとにいたしまして、これを開発研究をいたしたわけでございますが、その動機になりましたのは、成田空港というのがアクセスが非常に悪い。いまのような事態じゃなくて、まだ開港が非常に遅延しておりました時代でございまして、アクセスもそれなりに大変条件が整わないということで、航空輸送需要というもの、あるいは利用客というものをもっと大きく発展拡大するのにはこういうものの研究をしておくべきだということで、社内で研究を始めましたわけでございます。  しかし、これは実用段階にまで持っていくというのには大変むずかしい問題がいろいろございまして、どうしてもある時期において、これ以上新しい交通システムとして完成するのには、ますます技術的な問題の詰めを行わなければならぬ。これは日本航空が今後も引き続きやってまいるというわけにはまいりません。いまおっしゃるように、プロパーの航空運送事業というものに、それはもう体力としても耐えられませんので、ひとつナショナルプロジェクトとしてお取り上げ願いたいということで、運輸省にお願いを申し上げたような経緯でございます。
  194. 吉原米治

    ○吉原委員 国鉄は。
  195. 永光洋一

    ○永光政府委員 国鉄の超電導の磁気浮上方式の鉄道につきましては、先生承知のように、集電を非接触でやりまして、五百キロ程度の超高速での都市間輸送ということをねらっておりまして、HSSTが、いま申されましたように、空港アクセスなり近郊都市輸送というような分野を主としてねらわれておるのと比較いたしまして、超高速の都市間大量輸送ということを目指しまして開発をいたしておるところであります。
  196. 吉原米治

    ○吉原委員 率直にお尋ねするのですが、いまどちらの開発段階が優位か、こういう質問に対しては専門家でないから何とも言えませんという答弁でございましたが、私が承知しておる限り日航の方がかなりリードされておるようでございますが、政府も五十四年度から六億円の補助金をつけて、現実にはこれはお流れになって、五十五年度も結局繰り越し、どうもこういうことになっておるようでございます。  これは運輸大臣、とうとうこの六億円は出さずにしまうということでございますか。
  197. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 いや、六億円使いたいのですが、まだ使えるような環境と受けざらができておらないということで未執行であります。
  198. 吉原米治

    ○吉原委員 六億円を出資する受けざらを早くつくろう、そして六億円を有効に活用したいということのようでございますが、これに対して、去年の十二月でございますか、HSSTの新会社、新組織といいますか、他の業者、他の業者というよりも日航も含めて、何か国鉄だけで研究開発をしようという意図があるように聞いておるのですが、そういうことはないのでございますか。
  199. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私が承知しております範囲内で申し上げますと、このHSSTを日本航空が導入されたというのは、何と申しましょうか、十分な準備がなかったのではないかと私は思うておるのです。先ほど朝田さんからもお話ございましたように、成田と羽田を結ぶアクセスとしてこれを使いたいというので、西ドイツで出ておった特許を日本へ導入されたのですが、私の直感的な感覚で申して恐縮ですけれども、これはアイデアを実験してみたという範囲のものではなかったのかと思うのです。ところが、日本航空としてはこれをアクセスに使おうというので、たてまえでぱっぱっとやってしまってさっとアクセスでいけるだろう、そういう予想があったのではないか。ところが、こういうプロジェクトの研究を進めますと、大変な問題が次々と出てくる、輸送機関の新規技術、先端技術を開発するということは簡単なものじゃないのですね。そこで、やってまいりましたら、たとえば公害問題に対してどうするか、あるいは建設、具体的な土木関係はどうなるか、あるいはエネルギーの関係はどうなるかとか、いろいろな問題が付帯して出てまいりました。それだけじゃなくして本体の研究もこれからますます進めなければならぬ。  そこで、こういう事業は同種類の重電機関係企業と共同して開発される方がいいのではないかということで、私たちが希望しておりますのは、鉱工業技術研究組合という制度がございまして、この制度に乗せてそういう技術に関係のある各社が共同してやってもらいたい、そういうことの方が完全を期せるし、かえって技術の開発が早くできると思いまして、それに移行しようということでございます。したがって、その研究組合ができるならばそれに対して補助金も出そう、こういうことで予算を計上してきたということでございます。
  200. 吉原米治

    ○吉原委員 いまの大臣答弁で理解がいきました。結局、飛行機屋さんは飛行機を一生懸命やっておればいいじゃないか、何も国鉄まがいのことをやる必要はないじゃないか、そんな意味だろうと思われるわけでございます。  朝田社長、これは全くあなたのアイデアでぽっと思いつきでやられて、やり出してみたら、いや、これは大変なことだから皆さん寄ってたかってやってください、こういう投資の仕方、私は前回傍系企業をたくさん例に挙げたのですが、思いつきにしては余りにも度が過ぎるのではないか、こういう気がしてならぬのです。今日まで投資をされた、たくさんな金額になると思いますけれども、そんなものは大日航から見れば大したことはない、ちまたでうわさされておる日航重役のおもちゃじゃないか、こういう批判があるということについては社長としてはどう思われますか。つい思いつきでやったけれども、いや後悔しておるということになっておるのでございますか、どういうことでございますか。
  201. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 西ドイツから特許の移管をされまして、それから非常にじみちな研究をしてまいりました。ですから、技術の開発は相当進んだと私は思うておるのです。ところが、当初はアクセスにすぐ間に合うだろうと思うておられたのが、研究したらなかなか深いところがある。ですから、日本航空としてこれを意図されたのはあくまでもアクセス、だから国鉄とかなんとか、そんな意識は全くなく、現在国鉄の超電導とこの常電導というものは全く用途も違うだろうし、また開発の方法も違うということはわれわれも承知しております。だから、HSST、あれは近距離の輸送機関として開発したい、こういう気持ちはあるのです。ですから、私らはただ単に日本航空だけの問題としてではなくして、運輸省の技術としてもこれを活用していきたいな、そういう気持ちを持っていま取り組んでおるということです。
  202. 朝田静夫

    ○朝田参考人 単なる思いつきでおもちゃのようなことをやったのじゃないかということでございますが、私はそうは思いません。ある程度のところまでいきますと、国鉄と同じようなことをやっているわけじゃありません。五百キロメートルのスピードの都市間大量輸送を考えておられる、先ほどから説明がございましたように。常電導磁気浮上方式の交通機関として私どもは三百キロくらい。それは先ほど申し上げましたようにアクセスの問題、これは大変だ、だれも研究に手をつけていないので、ある程度のところまでは研究して、これを政府その他にナショナルプロジェクトとして、私どもの実力のほどは知っておりますから、ここまでやれば後はお取り上げいただけるだろう、こういうことで申し上げたわけでありまして、その受けざらができていないということも事実でございます。鉱工業研究組合というものを設立すべく関連産業界とお話を申し上げましたが、なかなか進みません。それも事実でございますが、これも一つはいかに今後の開発がむずかしいかということを示しているのだと私は思うのです。それは技術の問題もさることながら、これが実用化されて企業化するかどうかということにだれも自信がない。ですから、私どもはナショナルプロジェクトとしてこういう新しい交通システムをお取り上げください、そこで私どもの任務は終わっておる。終わっておるというけれども、むだ遣いしたのじゃないか、こういうことの御批判があるかもしれませんが、私どもはそれはアクセスの問題として、航空全体として周辺を取り巻く環境整備ということも私どもの仕事であろう、こう考えてやったわけでございます。
  203. 吉原米治

    ○吉原委員 この問題だけに時間をつぶすわけにまいりませんので、前回、二十日に二時間にわたって質問をしたわけでございますが、幾分徹底を欠いたきらいもございますので、その個所についてまた質問をさせていただくわけでございますが、この事業計画、これは単年度ずつ出されるわけでございますが、日航の出されております中期計画という資料を読ましていただきますと、その収支予算、この計画を見てみると、五十六年度は百六十三億、いま社長は百四十億ぐらいが、政府株に対する配当を考えると最小限度のものだ、こうおっしゃっておりますが、中期計画の中では五十六年度百六十三億、続いて五十七年度は四百一億、五十八年度では四百七億、そういう経常利益を実は計画をされておるようでございますね。これはあくまでも後配制を今回法改正によって改正をして、政府株へも配当をせんがためにこういう利益計上を考えておる。特に、五十七年度四百億を超える経常利益を考えていらっしゃる背景には、料金値上げというものを考えていらっしゃるようでございますが、結局この後配制をやめて、政府株へも配当します、補助金は要りません、こう社長はかっこいいことを言っておられるけれども、中身をずっと考えてみると、結局は利用者負担によって政府株へも配当する、こういうことにつながっていくのではないか。  あるいはまた、社債の発行高にいたしましても、現在二倍のものを五倍まで引き上げる、枠を広げるという。そうすると、七百億の約五倍としますと、三千五百億ぐらいの社債の発行高になりますが、このDC8は非常に老朽化した機材だ、この中期計画でいきますと何年間かに分けて、DC10を三十機購入しよう、いい飛行機を買おうという計画のようでございますが、三十機新しい機材を購入するその財源が約三千六百億ぐらいのようでございますね。そうすると、ちょうどこの社債の発行高の枠を広げて、そして新規購入をする機材の財源に充当する、どうも金額が似通っておるので、そういうことも実は考えていらっしゃるのかな。そうなってまいりますと、社債についても利率が要るわけでございまして、このごろのことですから八%ぐらいの利率を考えますと、その利息分だけでも約三百億、単年度に経常収支に影響を与えるということになるわけです。結果的に経常収支がやりくりつかぬ、非常に無理がいくということで、これまた運賃値上げにはね返ってくる。株式の後配制をやめました、なるほど政府の出資は国民の血税ですから、それに対して八分配当をしましょう、それだけでは一般の国民は、それは結構でございますと言うに決まっておる。私も大賛成です。ところが、中身は、利用者負担によってそれを賄おうという計画になっている。これじゃ何のことはないじゃないか、こう言わざるを得ぬのですが、社長としてはどういうお考えでございます。
  204. 朝田静夫

    ○朝田参考人 ただいま御指摘をいただきました中期計画というのは、そして単年度の利益の額を御指摘になりましたが、これは五十四年の当初につくりました、第二次石油危機以前に策定をいたしました中期計画でございまして、その後、燃料費の大変急激で大幅な値上がりとか、あるいは需要が低迷をしたりして与件が変動いたしております。事情が根本的に変わっておりますので、私どもは、一時アップカーブに上がっていくだろうというような時期に策定をいたしました中期計画というのは、いまそういうことはなかなか現実に合わない、したがって見直さなければならぬ、こういうふうに考えております。  そこで、先のことはよくわかりませんけれども、後配株というものから脱却して、政府の株にも配当する、しかし利用者の負担においてやるのじゃないか、こういう御批判でございますが、遠い将来はともかくといたしまして、来年、先ほどから申し上げておりますように、経常利益で百四十億の利益を上げなければ政府株にも配当できませんので、その際に、五十六年度において百四十億の経常利益を上げませんと政府株にも配当できませんので、われわれは大変努力を必要とするわけでございますが、五十六年度においては、国内の運賃の値上げは考えておりません、こういうことでございます。  それから、中期計画で、先ほど導入機数を御指摘いただきましたが、いまの計画では、私どもは四年間で二十機程度の導入を考えておるわけでございまして、当時の中期計画とは様相が非常に変わっておる、こういうことで御了解をいただきたいと思うわけであります。
  205. 吉原米治

    ○吉原委員 中期計画は資料が古い、その後の情勢変化があったからということで、中身についてはあのものずばりではない、あのものよりもむしろ圧縮されるだろう、こういうことで理解してよろしゅうございますね。  続いて、前回同様に、きょうも議論がありましたけれども、例のキャリーオーバーについて技術部長に再確認をしておきたいのですが、現場のメカニックからこういうふうに自分たちは指導を受け、また現実にそういう姿勢で取り組んでおりますと言っておるのは、つまりD整備から下の整備ですね、CとかBとかAとか。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕 そういう下の段階の整備に向かっては、キャリーオーバーはゼロ、こういうことでこのD整備が済んで運航する飛行機については、そういう指導を受けてきておる。そのことに間違いないかどうか。午前中、午後のあなたの答弁を聞いておりますと、そういう指導を口頭でも何でもしておきながら、現実にはD整備から依然として何十カ所というキャリーオーバーのままで飛行機が飛んでおる。これは前回御指摘をしたメーンベースにおける、これは成田のことでございましょうが、重整備作業時には、すべてのふぐあい事項はクリアにして運航する思想、この思想というのはあくまでも一本貫かれておるのじゃないか。それは今回のわれわれの質問の中で、いや、それはたてまえで、現実は実際に運航に差し支えなかったら、キャリーオーバーは何十カ所もあっても、それは技術的な面を検討した上でのことだから、D整備から出た飛行機がキャリーオーバーの個所が何十カ所あってもそれは何ら差し支えない、差し支えないというか、いままであなた方が指導なさった方針から外れることになるのですが、その点はどうでございますか。
  206. 長澤修

    ○長澤説明員 D整備というような大きな整備におきましては、たてまえということではなくて、原則としてそういうキャリーオーバーはなくすべきものでございます。ただ、原則としてなくすべきものでありますけれども、時として予定された部品の入手の見込み違い、または予期した以上の作業が発生するというようなことから、やむを得ず次の機会へその作業を持ち越さざるを得ないというようなことが生ずるわけでございますけれども、そういう場合でも、いかなる場合でも安全上の対策というものは完璧にした上で持ち越す、こういうことでございます。  具体的に少し申し上げますと、たとえば過去半年の間にDC8につきまして五機ほどD整備、オーバーホールを実施いたしております。そして、それぞれについて、そのオーバーホールのときに是正すべきふぐあいとして千数百から二千の個所が指摘をされております。そのうちの二機につきましては、一つは千三百七十二のふぐあいが指摘され、一つは千六百九十一のふぐあいが指摘されておりますけれども、これらはすべてクリアしまして、持ち越しはゼロということでやっておるわけでございます。その中で一番多かったのは、ことしの三月にオーバーホールを終わりましたJA八〇四五という機体でございますけれども、この機体では千四百八十二のふぐあい事項指摘されたのでございますが、その中の三十四はこのオーバーホールを終わるときまでに是正できなかったということでございます。  その中身はどういうことであったかと申し上げますと、そのうちの三十三、その大部分はデラミネーションという現象でございまして、これはハニカム構造というものが航空機によく使われておりますけれども、ハニカム構造の接着が浮き上がったといいますか、部分的にはがれておる状態になっておる、そういうことでございます。それで、これにつきましてはファスナーでとめまして、安全上支障がないような修理作業、作業自体は終わったわけでございますけれども、ファスナーは表面が、頭が少し飛び出まして、びょうの頭が出た形になるわけでございます。こういうふうに頭が出ておりますと、飛行機を長年運航しております間に、空気の抵抗が多いものですから、その分だけ燃料の消費がふえる。省エネの見地からはこういうものは新品にかえてフラットな状態にして飛ばす、こういうことの方がより望ましいということで、可能な限りフラットな状態のものにかえようということをしたわけでございますけれども、部品が入っていないために、安全上の手続は完全にクリアしておるのでありますが、運航上のほかの見地からもっといい形に修正すべきだというようなことがたまたまこのときできなかったということでございます。ほかの一件は小さなクラックがあったということでございますが、これはストップボールという一般的に使われております修理方法で修理をされております。これもいずれはきちっとしたものと取りかえる方が望ましいということでキャリーオーバーされたわけでございまして、こういった千四百八十二挙げられたふぐあい事項のうちの三十四はどうしてもクリアできなかった。  そのクリアできなかった中身は、いま申し上げたようなことでございまして、私どもも本来D整備のときにはこれは完全にクリアしてやるべきものであるということで、日本航空に対しましても、整備計画を立てるときにきちっとした計画を立てて、持ち越しを少しでも減らすように、こういう持ち越しがあるということは工程管理上後々いろいろと気を使わなければいかぬという問題も残しますので、極力修理持ち越しを行うことのないように指導しておる、こういうことでございます。
  207. 吉原米治

    ○吉原委員 技術部長、私が聞いておるのは、その話は前回耳にたこになるほど聞いておるわけなんです。D整備から出る飛行機は、少なくともキャリーオーバーはゼロでなければいかぬ、クリアでなければいかぬ。少なくとも仮の整備じゃだめですよという思想があるんでしょう。だから、具体的な作業報告書で前回も質問したのですが、D整備を終わった飛行機はもうキャリーオーバーというふうなものはあり得ないんだという物の考え方はしなくてもいいんだ、つまり安全運航上仮の整備でもよろしい、こういうふうに理解をしていいんですなという点を確認しておるのです。
  208. 長澤修

    ○長澤説明員 整備という観点から申し上げますと、仮ということではなくて、そういう修理作業をすることによって機体の安全性というものは完全にもとに復しておるわけでございます。あと残っておりますのは、いまの例で申し上げますと、空気抵抗がふえるという問題があるとか、あるいはほかによく残っておりますのはペイントを塗りかえるというような作業で、間に合わないときに残すということはありますけれども、安全上の処置はすべてクリアになっておるという、作業管理上キャリーオーバーという項目が若干出ることがあるということでございます。
  209. 吉原米治

    ○吉原委員 何回聞いても同じような答弁でございますが、議事録が残ることですからね。あなたの答弁を現場の技術屋さんは、私は議事録ができれば現場へ送りますから、それは少なくとも私が聞いた限りでは、このキャリーオーバーの個所が千何百カ所なんというものはもう不正常です。こういう安全に対する危惧の念から現場の技術屋さんはそういうことをぼくに説明しておる。いまのあなたの答弁はそのまま議事録になって出ますから、それを現場の人は当然読まれる。あなたのおっしゃることはそういう意味で徹底するわけですから、少なくとも私どもの方に日航は不完全な飛行機のままで飛んでおるんだという印象を与えるような、そういう話は今後は出ないと思いますけれども、私もそれなりに勉強させていただきましたから、おっしゃっておる話はわかります。  安全問題は前回もやりましたからこの程度にいたしまして、時間がかなり切迫しておりますから、問題の労使問題。私がこの労使問題を非常に重視しておるのは、御案内のとおり、労使関係が不正常ということは航空機の安全運航に大きな影響を与える、そういう観点からこれまた社長にお聞きするのですが、一連の不当労働行為事件、こういうものに対する日航の労務政策について前回もただしたところですが、朝田社長は前回の答弁で、組合分裂なんというものは組合の方針が違うから自動的に起きたことであって、会社はいささかも関与しておりません、会社の関知しておるところでない、こういう意味のことを発言なさっていらっしゃいます。  しかし、これは地労委や中労委に、十五件もいままで不当労働行為事件が発生をしておるわけでございますが、そういう意味では私も分裂組合の出身でございますからその辺はよく理解がいくわけでございまして、会社が関知しない組合の分裂なんというものはもう日本全国ないと思って差し支えないと思うのですが、あくまでも会社は関知しません、会社が手をかしたものじゃありません、こう社長はこの場で言い切られますか。
  210. 朝田静夫

    ○朝田参考人 分裂をいたしましたのは、客室乗員組合が分裂をしておる。一つは客室乗員組合と、全労客乗支部というものに分裂をいたしておるわけでございますが、ちょうど四十九年から五十年の春闘にかけまして、客乗組合が非常に強い要求から延べ十三日にわたるストライキが打たれたわけでありますが、こういうような方針とか運動路線にはもうついていけない、批判的なグループが事実、存在をいたしておりまして、そういう方々が客乗組合を脱退をして全労客乗支部というものを結成したものでございます。     〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕 その際に、そういった大変批判的な一部組合員、それから職制の末端において、ちょうど接点になるところにおいて、そういう非常に深刻な考え方の職場の雰囲気でございますので、一部不当労働行為と思われるようなことがあったことは私は否定をいたしません。しかし、かといって、もとよりこういう大きな流れというものに対して会社が左右し得る立場にないと私は思うわけでございます。  一方、そういうような考え方を持っておるわけでございまして、この件について労労問題だ、こう言って平然としておるわけでは決してございません。大変不幸な事態でございますので、一日も早く正常な関係に戻るような、そういう努力も私ども経営側の方におきましてもしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  211. 吉原米治

    ○吉原委員 大変不幸な事態でございますと言って、何か社長は対岸の火事のような御答弁をなさっていらっしゃるけれども、管理職と現場の非組合員、この接点におる段階で云々というような話もいまされましたが、少なくともあなたの部下がやったことには間違いない。あるいはまたこの全労の組合の組織を拡大していくためには、いろいろな意味会社が有形無形の手をかさなければ、あれはふえるものではないですよ。それはもうどこの分裂組合に行ったって常識になっておるのじゃないか。会社は一切育成強化について——なるほどこの労使協調、ストライキを否定する組合ができることは、それは企業にとってはある面ではいいかもわかりませんけれどもね。今日では、そういう感覚の経営者というのは、私どもに言わせれば非常に前近代的、古い感覚の経営者だと言わざるを得ないわけですが、そういう組合の育成に対してあくまでも手をかしていないとおっしゃいますか。簡単に、その手をかしたのか、かさないのかというところ。
  212. 朝田静夫

    ○朝田参考人 手はかしておりません。
  213. 吉原米治

    ○吉原委員 手をかしておりません、こう言い切られると、社長、後に問題は残ると思いますよ。  今日まで、これは資料があるのですが、これは四十三年の七月の資料なんです。この資料を見てみますと、これは不当労働行為事件で出された資料「第八九号証ノ二」というやつ、これによりますと、時間内の組合のストライキはきわめて悪いことだ、こういう路線を持っておる組合の委員会、大会、こういうものが毎月、あるいは大会は年に一回でございましょうが、委員会とか本部執行委員会とか、いろんな会議が毎月のようにある。これすべて会社の給料、組合活動に会社の給料が払ってある。これでも、一方の方の組合は、これは無給ですわね。こっちの方の組合だけは会社の給料を払ってある。これは経費援助、労組法上禁止してある、そういう経費援助をすることによってその組合が組織を拡大していくわけですから、会社が手をかしてないと、いま社長おっしゃいましたけれども、それはうそですよ。あなたはうそを言っておられる。偽証です、それは。  こういう資料があってもなおかつ会社は手をかした覚えがないとおっしゃるのですか。
  214. 朝田静夫

    ○朝田参考人 ずうっと以前の時代のことは私は詳しくは知りませんが、ずっと最近におきまして、相当長い期間、組合独自の会合についてはそれは無給、組合と会社交渉とか会合については有給化をしておる、こういうことで、専従職員に対しても会社は一切給与は支払っておりません。ずっと以前のことは私はよく承知いたしませんが、いまはずっと相当長い期間そういう方針で来ておりますし、事実またそういうことで運営されておると私は考えております。
  215. 吉原米治

    ○吉原委員 あなたは少なくとも社長になられてから十年、社長になられるまでは副社長か専務かやっていらっしゃる。いまの話、先ほどの質問の中でも、日航が始まって三十周年の記念式が、この秋ですか、やられるようでございますが、その中で十八年もあなたは日航役員をしていらっしゃる。四十三年というのはいまから十三年前でしょう。少なくともあなたが社長になられるまでか、恐らく社長になられるまでは専務か副社長をなさっていらっしゃった。こういうことはありません、そんな組合の会合に会社の給料を払った覚えはございませんと言うのですか、あくまでも。資料あるのですよ。  しかも、あなたが社長になられた四十七年、四十七年もそうで、いや五十年ですね、一番新しいので。五十年に、スチュワーデスの組合を分裂さしたでしょう。しかも、四十七年の交通安全対策特別委員会で、これは亡くなりましたわが党の久保代議士の質問に対して、社長は、労使関係の正常化に努力する、こう国会で答弁なさっていらっしゃる。それから今日までも八年も九年もたっておるのですね。労使関係の正常化にどのように努力なさったのですか。労使関係の正常化に努力すると言ったこの舌の根の乾かぬうちに、五十年にはスチュワーデスの組合が分裂しておる。私は、分裂しておるというのではない、これは会社がさしたんだと言う。  その点について、労使の正常化に対して社長としてはどういう努力をなさっていらっしゃるのですか、具体的におっしゃってください。
  216. 朝田静夫

    ○朝田参考人 亡くなられた久保先生の国会での御質問に対して、私は、労使関係の安定というのはやはり経営の基盤でなければならぬ、その意味において、何としても重要な問題でございますから、私も日夜腐心してこの安定化に努力をしてまいっております。ただ、日航労組の賃金問題、いま中労委にかかっております問題、あるいは客室乗員組合が二つに分かれた、こういうことについて大変残念に思っております。これは評論家的な立場で申し上げているわけじゃございませんが、私も日夜大変腐心をして正常化、安定化に努力をしておるつもりでございますが、どうも成果が上がらぬじゃないかとおっしゃられれば、こういうぐあいに上がっておりますと私は申し上げようがないのでございます。ただ、今後もこういう考え方に変わりはございませんで、将来ともに組合との間にも信頼関係を確立をして、そして何としてもお互いの信頼の上に立った労使の平和的な安定した関係というものを築き上げたい、今後も私は責任を持って努力をしてまいるつもりでございます。
  217. 吉原米治

    ○吉原委員 もう一回確認しておきますが、この四十三年七月の「時間内組合活動について」の通知というのは、これは会社の資料でしょう。関係各課長に羽田管理部の総務課長が出しておる。こういう資料がありながら、会社は経費援助した覚えはない、自分が社長以前のことだから知りませんと社長はおっしゃるのですか。この事実はお認めになりますか。
  218. 萩原雄二郎

    ○萩原参考人 お答え申し上げます。  私、労務を担当している者でございますが、先生指摘の件につきましては、恐らく四十年から四十四年くらいまでにかけてのことであろうかと思います。この件につきましては、当時のことで、私も五十年から労務を担当しておりますので詳しいことはわかりませんが、過去において日本航空整備会社がありまして、そこの組合との関係でそういう慣行があったということからそういう取り扱いをしていたということはあったやに聞いております。その程度のことしか現在私はお答え申し上げかねるわけでございます。
  219. 吉原米治

    ○吉原委員 あったやにということですから、事実上お認めになったと私は理解いたします。きょうは不当労働行為の審問会の席じゃございませんからそれ以上は言いません。  そこで、労働省もお見えになっておりますね。中労委から履行勧告が出されたので従うよう指導した、会社は従えない、これは三浦委員質問の中で出ておりましたけれども、中労委が履行勧告を出された、一体この原状回復が困難になるような勧告の内容になっておるのかどうなのか、労働省としてはどういう見解を持っていらっしゃいますか。中労委が出した履行勧告、このことに会社が従えない、無理があるのかどうか。
  220. 中村正

    中村説明員 中労委の履行勧告は都労委の命令を守れという趣旨のものだったと思います。  さて、それが履行した場合に回復困難な状態になるかどうかの判断は、私ども第三者からとやかくなかなか言いにくい問題でございまして、恐らく私が推測するには、昇給あるいは昇格についての格づけを一たんやってしまうと、さて命令が中労委でどうなるか、その結果によってはなかなか戻しにくいとか、あるいは、バックペイの問題で十億云々になるとうわさされておりますが、それが一たん支払われた後、それを返還を求めるというようなことはなかなかむずかしい、そういうような観点から会社の御判断は、回復が困難だ、こういうふうに御判断になったのではないかと推測しております。
  221. 吉原米治

    ○吉原委員 それじゃ社長にお尋ねするのですが、格づけの問題は別として、バックペイの場合、該当組合が、もし中労委が都労委とは違った命令を出した場合、直ちに返還をしますという一札をあなたのところに入れても、それでもバックぺイは履行される気はないのですか。そういう該当組合が一札入れればバックペイだけでも考えようというお気持ちがあるのですか、ないのですか。
  222. 朝田静夫

    ○朝田参考人 組合がバックペイについて一札を入れた、それでも命令を実行しないのか、こういうお尋ねでございますが、私はそういう一札をお入れになっても、現実の問題として、その変更なりあるいは取り消しなり、そういった決定がなされた場合に、原状回復は困難だ、こう解釈をいたして中労委に再審申し立てをしておるわけでございます。
  223. 吉原米治

    ○吉原委員 支払う相手方が、もし違った命令でも出ればいつでもお返ししますという一札を入れておるのに、それでも払うものを払わぬ、こうおっしゃるのは、これは社長、頑迷と言わざるを得ないと思うのですがね。どうしてそう日航社長たるお人が物わかりが悪いのですかね。  ちょっと質問を変えまして労働省にお尋ねするのですが、よくタクシー会社等でこの種の事件がたびたび起こります。そういう場合に地労委にかかったり、都労委にかかったり、中労委にかかったりよくするのですが、そういうケースの場合に、そういう中労委、都労委、地労委という場でなくて、運輸省と労働省が協力をして解決をされたケースもあるやに聞いておるのですが、そういうケースはいままでありましたか、どうですか。
  224. 中村正

    中村説明員 具体的にタクシー会社の場合にどうやった、こういうケースがあると具体的な名前を挙げることはできませんけれども、確かにそういうケースはございました。しかし、労働省の基本的な姿勢は、具体的な労使紛争が労働委員会にかかっておるというときには、やはり労使関係の正常化についての専門機関である労働委員会の判断をまつというのが基本的姿勢でございまして、きわめて例外的な場合にのみ労働省が何らかの手助けをする、こういうのが私どもの姿勢でございます。
  225. 吉原米治

    ○吉原委員 いま労働省にお尋ねをしても、関係各省が協力をして解決をつけたというケースも、数は多くはないとしてもあるようでございますので、運輸大臣、どうですか、これは労働省を通じてひとつ、この種の問題はそう格式張ったぎすぎすしたところでなくて、もっと話し合えばわかるではないかという、大臣得意の弁舌でもって円満に解決されるために御努力をされる気はございませんか。
  226. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 先ほども御質問がございまして、お答えしておるのでございますが、現在中労委におきまして審問が開始され、まだその入り口に入った程度のことだと聞いておりますが、その審問が完全に聞き取りをされまして、そこで何らかの判断が出るかどうか、それは私もいきさつはわからぬのでございますけれども、そういう審問をいま始めておられるときに、私たち役所の権限でもって労使の間に入るということは控えさせてもらいたいと思うております。
  227. 吉原米治

    ○吉原委員 時間も参りましたから、最後に、朝田社長は審問会の席上でもあるいは国会の答弁の中でも、労使の正常化が安全上からも企業基盤の上からも必要不可欠だ、こういう発言、あるいはまた前回の私の質問に対しても、大変恥ずかしいことだ、あるいは労務政策のまずさからだ、そう責任も感じていらっしゃる。しかし、要はこの問題を早期に解決するかしないかというのはあなたの決断ですよ。人任せではだめなんです。社長自身がどろをかぶって解決をするという気構えになれば、あしたにでも解決がつくことなんだ。私はここまでしつこく質問をしました以上は、この問題について今後も十分関心を持っていきたいと思いますが、これが解決せずに、ますますエスカレートしていくということになったら、あなた自身の責任も私は追及しなければならぬ。ストライキも、やるのは組合ですよ、やらせるのは会社ですからね、私に言わせれば。一人で相撲はとれません。要は社長の決断いかんと私は思います。  何回も同じようなことを繰り返して答弁をされておるようでございますが、もうここらで日航の労使問題については正常化されるために一大奮起をお願いしたい。決意をお聞かせ願いたい。特にことしは、十月ですか、創立三十周年を迎えるというのですから、そのためにもいま申し上げましたような煩わしい懸案事項は一切解決をつけてしまう、このぐらいの気構えでひとつ問題の処理に当たってほしい。最後に決意を聞かしていただきたい。その上にひとつ大臣運輸省としても、事航空機の安全と密接不可分な問題ですから、大臣の決意も最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  228. 朝田静夫

    ○朝田参考人 ただいまのお話、私も痛感をいたしておる責任の上から申し上げましても、できるだけ速やかに労使の関係を安定したい、この考え方には変わりはございません。今後も一層の努力をいたしまして、特にまた諸先生方の御教示にもあずかりまして、できるだけの努力を続けてまいりたい、こう考えております。
  229. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 ただいま朝田社長も言っておることでございますので、私たちもできるだけ早くこの問題が解決するよう強く期待するものでございますし、また、われわれといたしましても重大な関心を持って今後見守っていきたいと思うております。
  230. 吉原米治

    ○吉原委員 終わります。
  231. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  232. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  233. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、本案に対し、賛成の討論を行うものであります。  日本航空株式会社は、昭和二十八年発足いたしましたが、諸種の理由により大幅な赤字を出す結果となり、昭和三十年法改正を行い、政府出資の増大、助成措置と監督規制の強化等を行ったのであります。その結果、同社は現在では国際定期輸送において世界第四位の実績を上げる等、欧米の主要航空企業と比肩し得るまでに成長いたしました。  本改正案は、政府所有株式に対する後配制を廃止するとともに補助金交付に関する規定を削除して、政府助成の適正化を図っております。また、役員人数及び業務執行組織の法定制並びに役員の兼職制限に関する規制を廃止するほか、毎営業年度の資金計画及び収支予算の認可制を廃止して、一層機動的な事業運営を行うよう措置しております。さらに、社債の発行限度を、資本金及び準備金の二倍から五倍に拡大することとしております。  これらの措置は、現状において当然の措置であると存じます。  以上、本改正案は、日本航空事業の発展と近年の変動する国際情勢等にかんがみ、同社が一層自主的、弾力的な事業運営を行い得るよう改正しようとするもので、きわめて適切妥当な措置であり、その早急な実施を強く望むものであります。  政府は、日本航空の経営の一層の改善のため適切な指導を行うとともに、日本航空は、本改正案趣旨を体し、みずからの責任においてその事業の一層の発展を図り、もって国民的要請にこたえるよう最大限の努力を尽くすことを強く要望いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  234. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 次に、吉原米治君。
  235. 吉原米治

    ○吉原委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、日航法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  日本航空株式会社は、国策で創立された企業でございます。したがって、その使命達成の責任は、他の民間企業とは比較にならないほど重いはずでございます。しかしながら、今日までの経営姿勢は、たび重なる指摘にもかかわらず、法を無視した不当労働行為事件の頻発などに見られるように、社会的にも厳しく批判されるなど、きわめて憂慮すべき事態を招いているのが現状でございます。  しかるに、今日の法改正の目的は、こうした企業体質を改善しないまま、政府からの監督規制を緩和し、単に役員数をふやす、あるいは社債の発行限度を大幅に緩めることなど、そのねらいはより一層自由な企業活動を保障するための措置を求めることを中心としたものでございますが、今日までの質問の中で明らかにいたしておりますように、不正常な労使慣行、また従業員アンケートに見られますような安全運航体制に憂うべき状況が続いておる現状からいたしまして、これが是正をされない限り、国の監督権限をさらに強化することこそ急務であって、緩和するなどのような今回の法改正は不適切である、以上の理由で反対をいたすものでございます。  討論を終わります。(拍手)
  236. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 次に、四ツ谷光子君。
  237. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私は、日本共産党を代表して、日本航空株式会社法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  今回の改正は、日本航空株式会社政府持ち株への配当と引きかえに政府監督権限の緩和を行い、民営色を強め、日航を一層大企業、大資本として保護育成するものであり、これは航空会社の公共性や安全性の確保という国民的課題に反する措置と言わざるを得ません。  今日、航空輸送も増大し、公共性が重視されなければならないときに日本航空株式会社をもうけ本位のものに放置することは、航空輸送の安全の確保から見て絶対に軽視できない問題であります。日本航空株式会社の経営と経理を国会に報告させ、国会の十分な監督と規制が行われることこそ必要です。  ところが、今回の改正案はまさにこれらに逆行するものであります。しかも、最近では国際電信電話会社疑獄事件にも見られるように、特殊法人等の不正事件が相次いでおり、今回の改正案特殊法人などへの監督強化を求める国民の声にも反するものであることを強く指摘いたします。  第一に、監督規制の緩和についてですが、航空会社の最大の課題は安全性の確保です。本委員会の審議でもわが党が指摘したように、航空機の安全、耐空証明上重大なふぐあい事項を応急処置のまま一年も飛行させたり、また人手不足等による整備の繰り延べなどは、もうけ本位の日航の経営姿勢を示す何よりの証明ではありませんか。また、労働者への不当労働行為の常習会社であるとの指摘にもあらわれているように、日本航空は本来労働者の諸権利を規定した法律を守っておりません。今回の監督規制の緩和を行う改正法案は、ますますもうけ本位の経営を促進することとなり、安全確保に重大な影響を与えるものであります。  第二は、役員定数を法定事項から定款事項への移行及び役員の兼職制限規定の廃止についての問題です。政府事業規模の拡大、国際関係等、業務の複雑多様化に柔軟に対応するためと説明していますが、法定定数十八名の役員中二名が非常勤役員、しかも労務対策役員が三名も配置されているのが現状です。役員定数を法定事項から定款事項に移すことは、日本航空の自由な判断で役員定款を定めようとするものです。さらに、常勤役員の兼職制限規定は第二十二国会で改正された規定であり、当時政府は、運輸事業は特に安全性を強調しなければならないとして、仕事に役員が専念することが適当であるとの提案説明を行っているものです。日航は、当時に比べ事業規模は大幅に拡大されており、こうしたことからも、ナショナルキャリアにふさわしい役員の業務に対する責任もこれに比例して一層明確にしておくべきです。ところが、今回の改正案では、兼職制限規定を廃止し、一方で役員定数を定款へ移すという逆行したものになっています。  第三は、社債発行限度を二倍から五倍に拡大する問題ですが、現状でも商法二百九十七条の規定を上回っており、さらに大幅に拡大しようとするものです。これは金融資本等への依存を強化するものであり、また政府保証債の増大につながるおそれがあります。こうした大量の社債発行は放漫経営に道を開き、経費増大につながり、安全性無視の経営体質が一層進行することになります。さらに、こうした経営は運賃原価にはね返り、最終的には国民、利用者への負担の増大にもつながるものであります。  以上三点にわたって、今回の改正案の重要な問題点を指摘いたしましたが、最後に、わが党は航空行政の民主的、自主的発展を目指して一層奮闘することを表明して、討論を終わります。(拍手)
  238. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  239. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 これより採決に入ります。  内閣提出日本航空株式会社法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  240. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  242. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 この際、塩川運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩川運輸大臣
  243. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 ただいま日本航空株式会社法の一部を改正する法律案につき、慎重御審議の結果、御可決いただき、まことにありがとうございました。  審議中における委員各位の御高見につきましては、今後その趣旨を生かすよう努めてまいる所存であります。      ————◇—————
  244. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 内閣提出外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。塩川運輸大臣
  245. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 ただいま議題となりました外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  京浜外貿埠頭公団及び阪神外貿埠頭公団は、昭和四十二年十月に設立されて以来、外貿埠頭の計画的な整備を推進し、昭和四十年代後半から五十年代にかけてのコンテナ等の外航貨物の急増にこたえてまいりました。しかしながら、外貿埠頭の整備はすでに相当の進捗を見ており、外貿埠頭を緊急に整備するという両公団の設立の目的はおおむね達成されたことから、近年行政改革の一環としてその廃止が取り上げられることになったものであります。  政府といたしましては、このような状況にかんがみ、両公団の解散とその業務の円滑な継承を図るため、昭和五十四年十一月、運輸大臣の諮問機関である港湾審議会に外貿埠頭公団の業務の移管について諮問し、昨年十二月に答申を得たところであり、これを受けて、両公団については、昭和五十六年度内に業務の移管を完了する旨の閣議決定を行った次第であります。  以上のような経緯を踏まえ、政府といたしましては、両公団の業務は、その公共性、国家的重要性を考慮し、港湾管理者が設立する財団法人であって運輸大臣が指定するものに移管することとし、その運営について国の海運、港湾政策の反映を図るほか、国の助成、債権者の保護等にも配慮を加えることとして、この法案を提出した次第であります。  次に、この法案の概要について御説明申し上げます。  第一に、両公団は、この法律の施行のときにおいて解散することとし、両公団の一切の権利及び義務は、原則として、各港ごとに一を限り指定する指定法人が継承することとしております。  第二に、政府の公団に対する出資金は指定法人に対する無利子貸付金になったものとし、関係地方公共団体の公団に対する出資金は指定法人に対する出えん金になったものとすることとしております。  第三に、政府は、指定法人の業務の適正な運営を確保するため、貸付料の届け出の受理、整備計画等の認可、財産処分の制限等指定法人に対する所要の監督を行うこととしております。  第四に、政府は、指定法人に対し、外貿埠頭の建設等に要する費用に充てる資金の一部を無利子で貸し付けることができることとしております。  以上が、この法律案を提案する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  246. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  次回は、明二十五日正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十分散会      ————◇—————