運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1981-03-20 第94回国会 衆議院 運輸委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月二十日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 小此木彦三郎君    理事 加藤 六月君 理事 関谷 勝嗣君    理事 楢橋  進君 理事 福岡 義登君    理事 吉原 米治君 理事 西中  清君    理事 中村 正雄君       阿部 文男君    木部 佳昭君       佐藤 文生君    近岡理一郎君       永田 亮一君    浜野  剛君       林  大幹君    古屋  亨君       三塚  博君    箕輪  登君       井岡 大治君    伊賀 定盛君       小林 恒人君    浅井 美幸君       小渕 正義君    三浦  久君       四ツ谷光子君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         運輸政務次官  三枝 三郎君         運輸大臣官房長 角田 達郎君         運輸省航空局長 松井 和治君         運輸省航空局次         長       多田  稔君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    松田 慶文君         運輸省航空局技         術部長     長澤  修君         労働省労政局労         働法規課長   中村  正君         参  考  人         (日本航空株式         会社代表取締役         社長)     朝田 静夫君         参  考  人         (日本航空株式         会社専務取締         役)      町田  直君         参  考  人         (日本航空株式         会社常務取締         役)      萩原雄二郎君         参  考  人         (日本航空株式         会社常務取締         役)      橋爪 孝之君         参  考  人         (日本航空株式         会社取締役)  平沢 秀雄君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十日  辞任         補欠選任   中馬 弘毅君     柿澤 弘治君 同月十七日  辞任         補欠選任   三浦  久君     三谷 秀治君   柿澤 弘治君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   三谷 秀治君     三浦  久君 同月十八日  辞任         補欠選任   水野  清君     福永 健司君 同月十九日  辞任         補欠選任   福永 健司君     水野  清君     ――――――――――――― 三月七日  飯塚測候所廃止反対及び気象業務整備拡充  に関する請願楢崎弥之助紹介)(第一五一  三号)  国鉄篠ノ井線及び大糸線の整備促進に関する請  願(林百郎君紹介)(第一五一四号)  国鉄ローカル線運行確保に関する請願(林百  郎君紹介)(第一五一五号)  気象業務整備拡充に関する請願瀬長亀次郎  君紹介)(第一五七二号)  同(正森成二君紹介)(第一五七三号)  同(四ツ谷光子紹介)(第一五七四号)  同(田中伊三次君紹介)(第一五七五号)  同(五十嵐広三紹介)(第一六三三号)  同(寺前巖紹介)(第一六三四号)  国鉄大船渡線及び盛線廃止反対等に関する請  願(三浦久紹介)(第一六三二号) 同月十一日  気象業務整備拡充に関する請願大野潔君紹  介)(第一七三六号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一七三七号) 同月十二日  国鉄運賃値上げ反対ローカル線確保等に関す  る請願安藤巖紹介)(第一八九四号)  同(岩佐恵美紹介)(第一八九五号)  同(浦井洋紹介)(第一八九六号)  同(小沢和秋紹介)(第一八九七号)  同(金子満広紹介)(第一八九八号)  同(栗田翠紹介)(第一八九九号)  同(小林政子紹介)(第一九〇〇号)  同(榊利夫紹介)(第一九〇一号)  同(瀬崎博義紹介)(第一九〇二号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一九〇三号)  同(辻第一君紹介)(第一九〇四号)  同(寺前巖紹介)(第一九〇五号)  同(中路雅弘紹介)(第一九〇六号)  同(中島武敏紹介)(第一九〇七号)  同(野間友一紹介)(第一九〇八号)  同(林百郎君紹介)(第一九〇九号)  同(東中光雄紹介)(第一九一〇号)  同(不破哲三紹介)(第一九一一号)  同(藤田スミ紹介)(第一九一二号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一九一三号)  同(正森成二君紹介)(第一九一四号)  同(松本善明紹介)(第一九一五号)  同外一件(三浦久紹介)(第一九一六号)  同(三谷秀治紹介)(第一九一七号)  同(簔輪幸代紹介)(第一九一八号)  同(村上弘紹介)(第一九一九号)  同(山原健二郎紹介)(第一九二〇号)  同(四ツ谷光子紹介)(第一九二一号)  同(渡辺貢紹介)(第一九二二号)  飯塚測候所廃止反対及び気象業務整備拡充  に関する請願小沢和秋紹介)(第一九二三  号) 同月十六日  萩測候所夜間閉鎖計画撤回整備拡充に関す  る請願枝村要作紹介)(第一九九五号)  飯塚測候所夜間閉鎖計画撤回整備拡充に関  する請願小沢和秋紹介)(第一九九六号)  諏訪測候所夜間閉鎖計画撤回整備拡充に関  する請願串原義直紹介)(第一九九七号)  同(林百郎君紹介)(第一九九八号)  阿久根測候所夜間閉鎖計画撤回整備拡充に  関する請願村山喜一紹介)(第一九九九  号)  気象業務整備拡充に関する請願井上一成君  紹介)(第二〇〇〇号)  同(池端清一紹介)(第二〇〇一号)  同(浦井洋紹介)(第二〇〇二号)  同外一件(岡田利春紹介)(第二〇〇三号)  同(上坂昇紹介)(第二〇〇四号)  同(島田琢郎紹介)(第二〇〇五号)  同(関晴正紹介)(第二〇〇六号)  同(戸田菊雄紹介)(第二〇〇七号)  同(東中光雄紹介)(第二〇〇八号)  同(藤田スミ紹介)(第二〇〇九号)  同(前川旦紹介)(第二〇一〇号)  同(三谷秀治紹介)(第二〇一一号)  同(八木昇紹介)(第二〇一二号)  同外一件(安井吉典紹介)(第二〇一三号)  同(阿部未喜男君紹介)(第二〇六八号)  同(上原康助紹介)(第二〇六九号)  同(小川国彦紹介)(第二〇七〇号)  同(勝間田清一紹介)(第二〇七一号)  同(久保等紹介)(第二〇七二号)  同(佐藤敬治紹介)(第二〇七三号)  同(佐藤誼紹介)(第二〇七四号)  同(嶋崎譲紹介)(第二〇七五号)  同(清水勇紹介)(第二〇七六号)  同(田邊誠紹介)(第二〇七七号)  同(高田富之紹介)(第二〇七八号)  同(竹内猛紹介)(第二〇七九号)  同(塚田庄平紹介)(第二〇八〇号)  同(土井たか子紹介)(第二〇八一号)  同(野坂浩賢紹介)(第二〇八二号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二〇八三号)  同(森井忠良紹介)(第二〇八四号)  同(矢山有作紹介)(第二〇八五号)  同(米田東吾紹介)(第二〇八六号)  同(渡部行雄紹介)(第二〇八七号)  同(渡辺三郎紹介)(第二〇八八号)  国鉄大船渡線及び盛線廃止反対等に関する請  願(北山愛郎紹介)(第二〇一四号)  平戸測候所廃止反対及び気象業務整備拡充  に関する請願外一件(石橋政嗣君紹介)(第二  〇六七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月四日  国鉄若桜線及び倉吉線の存続に関する陳情書  (第九九号)  地方陸上交通維持整備に関する陳情書  (第一〇〇号)  国鉄小松島線存続に関する陳情書  (第一〇一号)  同外一件  (第一五八号)  国鉄矢島線廃止反対に関する陳情書  (第一〇二  号)  国鉄ローカル線廃止反対に関する陳情書  (第一〇三号)  海上保安庁第二管区内に救難飛行艇配備に関す  る陳情書  (第一〇四号)  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法に関する  陳情書  (第一〇五号)  国鉄三江線、木次線の存続に関する陳情書  (第一五五号)  国鉄二俣線等存続に関する陳情書  (第一五六号)  国鉄気仙沼線、丸森線の存続等に関する陳情書  (第一五七号)  国鉄鍛冶屋線存続に関する陳情書外一件  (第一五九  号)  国鉄歌志内線存続に関する陳情書  (第一六〇号)  国鉄真岡線、足尾線の存続に関する陳情書  (第一六一号)  国鉄留萌線存続に関する陳情書  (第一六二号)  北海道の国鉄地方交通線確保に関する陳情書  (第一六三号)  国鉄予土線中村線存続及び阿佐線、宿毛線  の建設促進に関する陳情書  (第一六四号)  地方陸上公共交通維持整備に関する陳情書  (第一六五号)  三陸縦貫鉄道国鉄による運営の存続等に関す  る陳情書  (第一六六号)  公共交通確保のための法制化に関する陳情書  (第一六七号)  滋賀県の気象事業整備拡充に関する陳情書  (第一六八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本航空株式会社法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二二号)      ――――◇―――――
  2. 小此木彦三郎

    小此木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本航空株式会社法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関谷勝嗣君
  3. 関谷勝嗣

    関谷委員 きょうは、運輸大臣交通安全対策特別委員会にとられておりますので、優秀なる運輸政務次官がいらっしゃいますので、運輸政務次官にまずお伺いをいたしたいと思うわけでございます。  今回の日本航空株式会社法改正でございますが、二十八年の八月一日にこの法律ができましてから、それ以後四度改正をいたしておるわけでございまして、前回が昭和四十年ですから、それ以後の航空行政を取り巻いております状況、これは大変な変化があった。その変化に対処するために今回の日航法改正ということが出てきたわけでございますが、四十年から今日までの長き期間の航空行政、またそのサーカムスタンスと申しましょうか、周辺航空業界の大きな変革、そういうようなものにつきまして、運輸政務次官はどのような判断をして今回の日本航空株式会社法改正案提出になったか、それをまずお聞きいたしたいと思います。
  4. 三枝三郎

    三枝政府委員 お答えいたします。  いま関谷委員よりお話がございましたとおり、日本航空株式会社は、昭和二十八年、ナショナルキャリアとして半官半民の会社として設立されました。今日まで三十年に近い経過を経たのでございますが、非常に大きく成長いたしました。たとえば旅客輸送量一つ取り上げましても、八十八・四倍という膨大な数になっております。また、営業収入も当時と比べまして百七倍になっている。このような大きな成長を遂げております反面、御承知のような国際情勢で、たとえば燃料の問題にしましてもあるいは為替相場の問題にいたしましても、こういった目まぐるしく変動しております国際情勢に即応しまして、自主的に、民間の持っているよさを十分に発揮できるような形に持っていく必要があるのではないか、そしてナショナルキャリアとしての十分な力を発揮することが必要ではないかと基本的に考えております。  そのために、御承知のように、今回政府株の配当とかあるいは社債発行限度を引き上げるというようなことをいたしまして、反面、運輸省としましては監督権に基づく適切な行政指導、指示を行ってまいりたい、これが今回の改正の趣旨の基本方針でございます。
  5. 関谷勝嗣

    関谷委員 今回の運輸大臣所信表明の中にも出てきておるわけでございますが、空港整備に力を入れていきたいということが述べられておるわけでございます。今日の空港整備といいますと、どうしても大きな三つの問題があると思うわけでございます。  まず第一が成田空港、これはいま滑走路一本でやっておるわけでございますが、第二期の工事進展、これは油送パイプ施設がまだ完成もしていないというようなこともあるわけでございますが、どうも第二期の進展あるいはまた政府のその第二期工事に対する積極的な姿勢というものが実際的には出ていないと私は思うわけでございます。それからまた、東京国際空港羽田沖合いへの展開、これも実際進んでおるのか進んでいないのか、目に見えるものがない。関西国際空港の新設ということ、これは調査ということが現在進んでおりまして、形の上ではいま一歩前進したような形になっておるわけでございますが、どうも大きな三つ空港整備というのが進展していないのが現実だと思うわけです。  この三つはそれぞれの考え方というものがあると思うのですが、成田にすれば一本ではまだ十分に海外航空会社を受け入れることができないということ、それから羽田沖合い展開ということは、これは住民対策といいましょうか、公害防止の意味におきましても住民から長く移転をしてもらいたいという声があるということで、沖合いの方へ出していこうという目的がある。関西空港は、私はこれはいろいろ理由があると思いますが、その中で特に私たち関西に生活をしておる者から言いますと、大阪にもう一つそういう空港というものができると、そこからローカル空港にもっと便数をふやすことができる。いまの大阪だけでは地方の小さなローカル空港には便数をふやすことはできない。それで今度は機材を大きくするかといいますと、それだけの十分な滑走路の長さがないというようなことで、関西空港もぜひ早くつくってもらいたいと思うわけでございます。  そんなことで、これはひとつ政務次官航空局長、二人にお伺いしたいのですが、私から見ておりまして、実に遅々として進まず、やっているのかやっていないのかわからないというのがこの三つ空港でありますから、ひとつそのあたりお二人に、これからの努力の姿勢、そういうようなことをぜひお願いしたいと思います。
  6. 三枝三郎

    三枝政府委員 お答え申し上げます。  いま関谷委員の御心配になっていることは全く私も同様に考えております。たとえば世界のどこの首都のそばの空港を取り上げましても、千五百人の警察官に守られて国際便が発着しているというような空港はないわけでありまして、これがA滑走路一つだけでもあのような状況でありますので、予定どおりB滑走路C滑走路を建設する場合は、現在以上の状況を私どもは想定しなければやっていけないのではないか。これは非常に異常な状況だと私は思います。したがって、いま委員お話がございましたとおり、相補完するものとして羽田空港沖合い展開という問題が現実問題として起きておりますし、また、これについては後で局長からお話がありますが、具体的な計画を進めつつあります。  私の見解を申し上げますと、私は、羽田沖合い展開を現在計画している以上に大きなものにしまして、成田と相伴って首都にある空港として十分にやっていくように持っていくべきであろうと思います。海外先進国首都にある空港は、単一というところは少のうございます。日本も二つ以上あってしかるべきだと私は思います。それと同時に、関西空港につきましては、これは裏玄関という表現は当たらないかもしれませんけれども東京を表玄関としますと、大阪裏玄関という大事な玄関でございますが、これも現状では不十分でございます。私ども大臣がいま懸命に取り組んでおります泉州沖関西空港というものを計画どおりに進めてまいりたいというのが基本的な考えでございます。
  7. 松井和治

    松井(和)政府委員 私から、三大プロジェクトにつきましての現在の状況並びに今後の見通しにつきまして、若干補足をさせていただきたいと思います。  先生御指摘のように、日本空港のネットワークは依然として東京大阪のいわゆる二眼レフ構造というもので、東京大阪を結ぶ路線が中心になっておると言っても過言ではないと思います。  その東京並び大阪空港現状は、確かに御指摘のように非常に不備でございまして、地方の方々の増便の要求になかなか応じられないという状況でございます。また、国際空港につきましても成田現状は御指摘のとおりでございまして、乗り入れを希望する各国の要望にこたえられないというのが実情でございます。そこで、私ども第四次の空港整備計画におきまして、この三大プロジェクト推進一つの大きな柱としておるわけでございます。  個別に申し上げますと、まず成田につきましては、二期工事区域の面積のうちほとんど大部分は買収済みでございますけれども、なお若干の未買収地が残っております。私ども空港周辺地域との調和を図りつつ整備を進めていくという観点から、種々の地元対策を講じてきております。これはなかなか表に目立つものではございませんが、着実に進めておりまして、今後とも農業振興策その他の推進によりまして、地元の協力を得て、二期工事のできるだけ速やかな着手に進んでまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  また、羽田につきましては、御承知のように、私ども東京都に私ども計画案を示しまして、東京都並びに画関係特別区の意見を聞いたわけでございます。その意見を聞きまして滑走路の位置について若干の修正を施した第二次案が現在まとまりつつございます。これはごく近い機会に地元に提示いたしまして、地元意見を聞きまして、着手に進んでまいりたいという段階まで来ております。  それから最後に関西でございますけれども、これは御承知のように、運輸省航空審議会の答申をもとにいたしまして段階的建設計画案をつくり上げまして、これに基づく環境アセスメントを実施いたしまして、これが現在印刷過程に入っておるという段階でございます。これに合わせまして、地域整備の中の泉州地域の根幹となる交通アクセス施設につきましての計画を現在鋭意検討いたしておるところでございまして、空港計画案環境アセスメント案とそれから地域整備案、この三つのいわゆる三点セットの形で、運輸省案という形ではございますけれども、できるだけ早く地元に提示して、地元意見を聞いてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  8. 関谷勝嗣

    関谷委員 ぜひ積極的なる対処をしていただきたいと思います。  日航法改正の内容の細部に入りたいのでございますが、もう一つだけ一般的な状況航空局長日航社長にお伺いいたしたいと思うわけでございます。  今回、日航法改正案提出した理由は、政務次官よりそういう状況変化というものを伺ったわけでございますが、今後の見通しというもの、国際航空のいろいろな見通しをぜひお伺いいたしたいと思うのでございます。  その中で、たとえば運政審予測などでいきますと、かつては昭和六十年度には貨物が五百万トンぐらいにもなるのじゃないかというようなことが運政審で出たりしたのですが、実際は、あけてみると約百万トンということで、五分の一であった。戦後から今日まで、国際航空などを見ますと、旅客にいたしましても貨物にいたしましてもどんどん大きく伸びてきたということも事実ではあります。しかし、これからはいままでのような、われわれが考えておったほどの伸びというものはないのではないかというようなことも予測がされるような点も多々あると思うわけでございますが、そういうようなことも含めまして、今後どのようになるであろうかというようなことをお聞きをいたしたいと思います。
  9. 松井和治

    松井(和)政府委員 航空輸送需要の将来見通しにつきましてのお尋ねでございます。  将来見通しというのはいまなかなか立てにくい時期に入っているかと思います。御指摘のように、かつては昭和六十年度における貨物輸送量が五百万トンというような推定をいたしましたところ、五十四年度では十分の一の五十万トンという程度にとどまっております。ただ、貨物伸びは、昨年も対前年約一八%の伸びという、伸び率としてはかなり大きな伸びを示しております。私ども、御指摘のように、一八%というような大きな伸びが今後も続くとは実は考えておりませんが、しかし航空貨物は、航空機の大型化によりまして輸送力が飛躍的に伸びたというようなことも反映いたしまして、今後もなお二けた台の伸びというものは期待してもいいんではないかという予測を立てますと、昭和六十年度には、御指摘のように、約百万トン程度には達するのではないだろうかという感じを持っております。また、旅客につきまして、この推定は大変むずかしゅうございますけれども国際交流活発化という傾向は今後も続いていくと思いますし、また、わが国の国民の海外への観光その他の旅行指向傾向というものは依然として根強いものがあるんじゃないかというふうに考えておりますので、何%という予測、なかなか困難ではございますけれども、着実に安定した成長を遂げていくのではないかというふうに考えております。
  10. 朝田静夫

    朝田参考人 お答えをいたします。  ただいまの御指摘需要予測については、航空局長お話に私はほぼ同じ意見でございます。ただ、日本航空といたしまして、中期計画その他の計画樹立の際に、需要予測GNPとの相関関係ではじいております。こういう手法というものは世界各国に共通したはじき方ではございますが、私どもに非常にコンサーバティブに、控え目控え目に将来の需要予測を立てる。現在の低成長の時代で、非常に慎重に需要予測を立てております。したがいまして、GNP弾性値につきましても、政府の考えておられる数値をさらに下回るようなGNP、あるいは物価上昇率消費傾向、そういったようなものを控え目控え目にしておる。したがいまして、昭和六十年度に貨物が五百万トンになるというような当時の運輸政策審議会見通しが、御指摘のとおり、現在は五十万トンしかありませんから、百八万トンぐらいになるだろうという局長予測に対して、私ども少しそれよりも低目に考えておる。旅客需要予測も大体少しそれよりも低目に考えておる、こういうことでございます。
  11. 関谷勝嗣

    関谷委員 それでは、多少内部に入っていきたいと思うわけでございますが、今回の改正をされました中で特段に私たちがよく耳にいたしましたのは、監督規制の緩和が非常に強調されたようなところがあるような気がするわけでございますが、そういうようなことで監督規制を緩和するということ、今回そういうようなことで五つばかり大きく改正をされるわけでございますが、そうなりますと、実際問題としてどういうところがその監督がきつくてやりづらかったというのが、正直日本航空側にはあるのではないかと思うわけでございますが、実際どこがきつかったのだ。これはもうざっくばらんに言いまして、運輸省にすれば、何がこれで監督がきついのだということでもありましょうし、日本航空にいたしますと、ここがこういうふうにきついからこれを直してくれということが正直のところでありましょうから、ここであっさり話しておいた方が、今後両者の関係が非常にスムーズにいくのではないかという親切心でここで質問をいたしますので、本当にどこがそんなにきつかったのだろうかということをまずお聞きをいたしたいと思います。
  12. 朝田静夫

    朝田参考人 ただいまの御質問で、どこが監督がきつかったのだ、監督をされるそのたてまえなり監督の仕方というものはございましょうが、私どもここに改正法案に上がっておりますように、資金計画収支予算というものを認可事項から外していただいておるわけでございますが、収支予算にいたしましても、石油製品価格が変動をいたし、OPECの産油国の総会で値上げをするということになりますと、直ちに数十億ぐらいの変動が出てまいります。したがいまして、その収支予算というものはしょっちゅう国際航空情勢あるいはその石油事情によって変動いたしますので、その都度変更認可を得ておるようでははなはだ現実的でない。また、資金計画につきましても、認可が重複しておる。たとえば社債の発行にいたしましても、運輸大臣の認可にかかっておりますし、資金計画の中軸をなしておりますところの社債というようなものが二重に重複をしておる、こういうことを適正に整理をしていただく。きついきついというふうに私は考えておりませんので、こういうものを合理的に、効率的に改正をしていただくということが事業の弾力的、柔軟な経営体制の確立に非常に意義のあることだ、こういうふうに考えております。
  13. 関谷勝嗣

    関谷委員 すばらしい答弁をいただきまして安心をいたしたわけでございますが、そういうような理由もございましょうが、今回第十二条の二で、資金計画及び収支予算というものはその認可制を廃止するということになったわけでございます。事業計画は当然運輸大臣の認可を受けなければならないわけでございますが、この事業計画だけを残しましたその経緯、航空局長にお伺いをいたしたいと思います。
  14. 松井和治

    松井(和)政府委員 御指摘の事業計画のみ認可制を今後も存続することといたしたわけでございますが、御承知のように、日本航空は国と国との取り決め、協定に基づきますいわば国家権益を国にかわって運営する会社でございます。協定の中身につきましては、各国との協定で若干の相違はございますけれども、それぞれ便数なり輸送力を取り決めるというケースが多いわけでございまして、その協定に基づいたある年度の事業が、どういう機材により、どういう路線に何便の便数を張るというような航空会社としての基本的な計画、これを事前に御提出願い、私どもがそれをチェックするということは、これはやはり国の立場としてどうしても必要であるということから、今回事業計画の認可制は残すということにした次第でございます。  資金計画につきましては、その事業計画のいわばお金の裏づけということであり、収支予算はその事業計画を実施した場合のいわば収支の予測という面の計画でございますので、これまた私どもとしては全く放置していいとは考えておりませんが、企業の自主性、弾力性をより広げるという観点から、今回は認可制を外し、事業計画の添付書類としてつけていただくということにさせていただきたいと考えておる次第でございます。
  15. 関谷勝嗣

    関谷委員 そういうようなことで、もちろんナショナル・フラッグ・キャリアでございますから、事業計画というものは認可制ということは当然であろうと思います。そういうようなことは十分にチェックをするということをやっていただきたいと思うわけでございますが、そうなりますと、それにいささか関連があるわけでございますが、よく言われております政府の持ち株制度、今回も五%の株を売るわけでございますが、そういうようなことでいま約四〇%にそのパーセントがなってしまった。転換社債が終わりますと三四%ぐらいになるわけでございますが、そんなことでよく言われておりますのが、三分の一は国があくまでも持っておこうというような考えがあるわけでございますが、その基本的な考え方、どういう理由でもってそれは堅持をしたいという考えを持っておるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  16. 松井和治

    松井(和)政府委員 御承知のように、日本航空株式会社が特殊法人として発足いたしました昭和二十八年時点におきまして、政府の出資比率は五〇%でございました。その後昭和三十年に会社の経営悪化に伴いまして国が助成を強化いたしました際、ほぼ七〇に近い比率まで出資比率が高まったわけでございます。その後、逐次逓減をいたしまして、昭和四十七年に至りまして五〇%の線を割りまして、御指摘のように、現在は約四〇%の持ち株比率となっている次第でございます。  私どもといたしまして、ナショナルキャリアである日本航空に対する国益を反映させるという意味合いから、相当程度の株式保有ということが今後も必要であると考えておる次第でございますが、御指摘のように、転換社債の株式転換後は四〇%の台を割るということが予測され、さらにまた今回の全株式数からいえば五%に相当する、政府の持ち株からいえば二%に相当する株式の売却措置が決まったということでございまして、現在の予測では大体三五%程度に落ちつくのではないだろうかと考えておる次第でございます。御指摘のように、私どもといたしましては、商法上も実効支配を可能にする三分の一という線は将来とも堅持するという方針で考えておる次第でございます。
  17. 関谷勝嗣

    関谷委員 日本航空にお伺いいたしたいわけでございますが、今回政府持ち株の後配制も撤廃するということでございますから、八%で計算いたしますとその配当で約十九億円、それからその関連の税金が大体同額だそうでございますから、そうしますと約三十八億円の負担増と言うとおかしいのですが、それだけでもそういうふうに稼がなければならないわけでございまして、大変なる経営努力をなお一層やっていかなければならないと思うわけでございます。しっかりやらなければまた今度は、今回撤廃になりましたが、補助金を出してもらいたいというような日航法改正案が出てくるような危険性があったのではいけないわけでございまして、これだけの重みに十分耐えられるか。耐えられるかと言うとおかしいのですが、耐えてもらわなければなりませんが、耐えてやっていくためにはどのようなまた新しい努力をしようとしておるのか、その考えを明確にしていただきたいと思います。
  18. 朝田静夫

    朝田参考人 お答えをいたします。  ただいまの御指摘で、なかなか経営も大変でございますし、第二次石油危機にいま際会して大変苦しんでおるわけでございますが、この日航法改正法案を通じまして私どもも新しい強靱な企業体質をつくり上げていきたい、こういうふうに考えておりまして、うまくいかなくなれば補助金規定も削除されておりますからそれをまた復活せいと言うのではないかという御質問でございますが、昭和四十一年以降私どもは補助金の交付を受けておりません。また、今後もいかに苦しくてもそういう依存心を起こすようなことは絶対にしない、ここで企業体質を強靱なものに切りかえていきたいということで全役職員一致してこういうことに対して努力を続けてまいりたいと考えておるわけでございます。
  19. 関谷勝嗣

    関谷委員 そうすると、補助金は絶対に復活はないということでございまして、政府としても財政逼迫のときでございますから大いに助かるわけでございますが、努力をお願い申し上げたいと思います。  そういうような関連もございまして、今回役員につきましてはその法定制を廃止いたしたわけでございますが、ということは、言うまでもなく役員数をふやしたいという考えであるわけでございますが、どういう理由でもって、またどういう部署にその役員を配置したいと考えておるのか、その内容を聞かしていただきたい。  それとまた、常勤取締役の兼職の制限というものが廃止になりました。今日までの日航法におきましても運輸大臣の認可をもらえば兼職することはできたわけでございます。したがいまして、役員でも兼職をしている方もいるわけでございますが、今回はそれを完全に廃止にしてしまったというその目的、そしてまた廃止にする限りはその方がいいから廃止にするわけでございますから、兼職ということをやってどういうメリットがあるんだろうか、この両方の問題につきまして御回答をいただきたいと思います。
  20. 松井和治

    松井(和)政府委員 まず第一の、役員の法定制廃止に関してどういう部署にどういう役員を考えているかというお尋ねにつきましては、これは日本航空の方におきまして御検討になっておることと思いますが、私どもはまだ会社から具体的な案について伺っておる段階ではございませんので、法案が成立いたしました後に定款の変更という形で私どもに御協議があるんではないかというふうに考えております。  それから、第二段の兼職制限の問題でございますけれども、これにつきましては、御指摘のように、従来認可を受ければ兼職が可能であったわけでございまして、役員十八名のうち認可を受けて兼職をしているというのは一名だけでございます。今後その兼職の認可制を廃止いたしましたのは、日本航空も非常に大きな組織になってまいりましてかなりの関連会社あるいは子会社を持っておりますが、そういうところとの兼職をするということが、これはどの企業にも起こり得る問題でございまして、私どもといたしましてそういう日本航空株式会社とそれに密接に関連する企業の役職を兼ねるというようなことは差し支えない話ではないだろうかというふうに考えておりますので、今回、ほかの特殊法人の例等も参考にいたしましたけれども日本航空株式会社につきましての兼職の制限は解除してもいいんではないだろうか、こういう判断で認可制を外した次第でございます。
  21. 朝田静夫

    朝田参考人 役員の増員が必要ではないか、そのとおりでございます。国内の同業他社に比べましても、全日空さんが三十名、東亜国内航空さんが二十五名、私どもの取締役十八名、国内だけの業務の事業の規模から言いましても非常に少な過ぎるわけでございます。全世界にまたがる事業経営に対しまして海外活動の強化あるいは安全運航体制をさらに強化するとかあるいは販売を強化していくとかいうようなことをいろいろ考えまして、現在の役員のスパン・オブ・コントロールといいますか、そういう担当をしておる幅の問題もいろいろ勘案いたしまして、必要に差し迫った部門からそれを補充、増強してまいりたい、こういうふうに考えております。いまここでこの部門に一名、この部門に一名、こういうようなお答えはまだちょっとできかねるわけでございますが、そういう考えでおるわけでございます。
  22. 関谷勝嗣

    関谷委員 全日空が何名で東亜国内航空が何名ということでございますが、私はその関係は無関係だろうと思うのです。よその会社に何名いようがそんなことは関係ないわけで、少ない人数でやっておるということはそれだけ日本航空の役員がすばらしいということでもあってほしいわけですから、他社と比較する必要はさらさらない。そういうようなことで、必要なところは当然ふやさなければならないわけですから、今後補助金をもらうような状態にならないためにも大いにすばらしい役員を置いてがんばっていただきたいと思います。  ちょっと小さなことでございますが、第十一条に「会社は、航空機その他運輸省令で定める重要な施設を譲渡し、若しくは担保に供し、又は有償で取得しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。」ということになっておるわけでございますが、これは運輸省令で決めるわけでございまして、今後また変わるかもしれませんけれども、五十三年の運輸省の省令によりますと、これが「帳簿価格が一億円(有償で取得しようとする場合にあってはその取得価格が十億円)以上のもの」となっておるわけでございますが、これは金額がちょっと安いのではないだろうか。といいますのは、飛行機はもうすごく値段も上がっておるわけだから、これをこのまま続けていくのか、あるいはこれはまだ先の話でございますが、この金額をどうされるか、航空局長の考え方をちょっと伺わせていただきたいと思います。
  23. 松井和治

    松井(和)政府委員 お答え申し上げます。  重要資産の取得、処分につきましての認可制度につきまして、御指摘のように、省令で、取得の場合には十億円以上、処分あるいは担保に提供する場合には一億円以上、こういうことで定められております。  そこで、実態はどうかということを見てまいりますと、航空機の取得、処分は法律の規定によるものでございまして、省令上の規定による航空機以外の重要施設の有償取得あるいは担保提供というような実例は、まず五十二年度からの実績でございますが、五十二年度は一件もございません。五十三年が、重要資産の有償取得で、成田転換に伴う成田の工場あるいはハンガー、この二件の有償取得の認可申請がございました。それから、同様に五十三年に重要施設の担保提供ということで、これまた成田の関連の施設についての担保提供が一件、合計五十三年では三件の申請がございました。それから、五十四年にまいりまして、同じく成田の第二ハンガーの建設に伴う重要施設の担保提供の申請がございました。五十五年は一件もございません。  こういうことでございまして、ただいま申し上げました実際の例の中で一番金額の少ないものをとってみますと、成田工場の十一億八千六百万円というのが一番少ないわけでございます。先ほど申し上げました十億円を超えるわけでございますけれども、これを著しく限度を引き上げますと、たとえば装備品の成田工場というようなものが認可の対象から外れてしまう、こういうことにもなりかねませんので、私どもといたしましては、五十三年に改定いたしたことでもございますので、十億円、一億円という額について特に変更する必要はないのではないだろうか、現段階ではそう考えております。
  24. 関谷勝嗣

    関谷委員 わかりました。  次に、これは私も委員会で何度となく、もっと力強く、もちろんこれは政府の大変な努力が要るわけでございますが、日米航空協定の関係でございます。また四月に始めるわけでございますが、やはりいろいるなことをどう考えてみましても不平等であることには間違いないわけでございまして、乗り入れ地点が日本とアメリカでは全然違う。また、以遠権などにいたしましても、ニューヨークからヨーロッパへ通る以遠権はあるのでございますが、ヨーロッパには、御承知のように、ヨーロッパの航空会社がたくさんあるわけですから、これは入っても収支が合わないということでございます。この以遠権にいたしましても、これはサンフランシスコを通って、そしてまたニューヨークヘ行って、それから向こうへ行かなければならないというようなことがあるわけでございますから、これはないにも等しいような状態でもございます。それから、事後審査主義であるというようなことで、何便でもとにかく入れろ、入れてそれから話し合おうというようなこと、そしてまたアメリカは、御承知のように、カーターになってから自由化政策というようなことでたくさんの航空会社日本へ申請をいたしておりますし、またその運賃もIATAから脱退をいたしまして安くやってよしというようなことでございますから、非常に日米航空協定というものが本来不平等であることは間違いない。ましてやいま自動車問題などを含めまして日米のあつれきが非常に強い今日でございますから、これもその一つのものとして政府としては話し合っていかなければならないと思うわけでございますが、どのような基本姿勢で進もうとしておるのか。伺いますところによりますと、シカゴヘは貨物便だけはじゃ入れるようにしようかというような話もあったというようなことも仄聞をいたしておるのでございますが、ぜひこれはがんばっていただきたい。  今後の姿勢をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  25. 松井和治

    松井(和)政府委員 日米航空交渉につきましては、御承知のように、昭和五十一年の十月以来六回にわたりまして交渉を行ったわけでございます。先生御指摘のように、以遠権あるいは乗り入れ地点等の不均衡是正ということを私ども強く要求をしたわけでございますけれども、アメリカ側は以遠権並びに乗り入れ地点についても不平等はないという立場をとっておりまして、私どもの主張と全くかみ合わなかったわけでございます。その後、ただいま御質問にもございましたが、カーター政権になりましてから非常に大幅な自由化政策をアメリカ側がとりまして、その強力な力をバックにいたしましてわが国に対してもいろんな面での自由化を迫ってきたわけでございます。これは私どもとしてはとうてい受け入れられない線でございまして、したがって五十三年に交渉が中断して以来そのままになっていたわけでございますが、五十五年、昨年の九月に至りましてアメリカ側から非公式の意見交換の申し出がございまして、それに基づきましてそのときには双方が洗いざらい自分たちの言い分を言い合うという会議をやったわけでございます。  これに基づきまして、本年に入りまして一月にホノルルで非公式協議が持たれまして、その際アメリカ側といたしましては、初めて、いわば不均衡を認めたという言い方はしておりませんけれどもいままでの日本側の言い分ももっともな点があるから、これをテーブルの上に乗せようではないかというふうに態度が変わってきたわけでございます。ただし、これには条件がついておりまして、アメリカ側の言い分とパッケージにして解決をしようではないか、こういう新しい提案がなされたわけでございます。  この提案の中には、ただいま御指摘の以遠権につきましてもあるいは乗り入れ地点につきましても年来私どもの主張していたものの一部が取り入れられておりまして、私どもとしてもそのアメリカ側の態度の変更については一応評価しているところでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますチャーター、運賃、輸送力のそれぞれの面においての自由化を強く迫っておりますので、これは私どもとしてはそのままの形ではとてものめないという条件がついておるわけでございます。  そこで、この四月の六日から東京におきまして正式交渉が始まることになっております。私どもといたしましてはあくまでもわが国の国益を守るという見地から交渉を進めていきたいと考えておりますが、アメリカ側とわが方との間にはまだかなりの隔たりがございますし、それからもう一つは、カーター政権がレーガン政権にかわりましてそこの間に若干の変化が見られるかどうか、この辺が予測のつかない点もございますので、新しい政権下における向こう側の主張、これを十分見きわめまして、あくまでも私どもの国益を守るという観点を貫いた粘り強い交渉をしてまいりたい、かように考えております。
  26. 関谷勝嗣

    関谷委員 この日米航空の不平等というのはもうどう考えても不平等であるわけでございますから、これ以上日本が後退することはもちろんないわけでありますから、ひとつ力強くこの交渉でがんばっていただきたいと思うわけでございます。特に、後ほど貨物の問題も伺いたいと思うのでございますが、アメリカがそういうたくさんの航空会社日本へ飛行をさせたい、フライトさせたいということでやっておるわけでございまして、それでは日本も国際線は日本航空一社だけでなくてもいいじゃないかというようなことをよく聞くわけでございます。これは時代の流れとかその他いろいろ考えての答弁ということでむずかしいかもしれませんけれども、その件に関しましては航空局長はどのような考えを持っておるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  27. 松井和治

    松井(和)政府委員 現在の国際線におきます日本航空の一社体制というのは昭和四十五年十一月の閣議了解の中ではっきりうたわれておるわけでございまして、現在もその線で運営が続けられておるわけでございます。  この一元的な運営ということを決めました背景は、当然のことながら、国際航空路線と申しますのは航空機あるいは地上支援施設等に非常に多額の金がかかる、あるいは多数の人材が必要であるというような観点から、わが国といたしましては、これを一社に集約して運営させることが最も適当であるという判断に基づくものでございまして、御指摘のアメリカ以外の国につきましてはほぼ同様の政策をとっておるところでございます。私どもといたしまして、アメリカ側の多数の会社日本に乗り入れを希望しておる、これは事実でございますけれども、現在日本航空は、アメリカ側のその数社の実績と比較いたしまして遜色のない実績を上げておるわけでございまして、必ずしもこういう問題は数の問題ではない、現段階において国際線の運営を一元化しているというものを変更しなければならないというような要素はないのではないだろうかというふうに考えている次第でございます。
  28. 関谷勝嗣

    関谷委員 それで、ついせんだっての新聞にも報道されておりましたが、国際航空貨物について、その貨物専用のフライトをやらしてもらいたいという申請が出ておるわけでございます。航空貨物伸び率といいますのは、先ほど航空局長が述べましたように、六十年一四・一%、六十五年が一三・六%ぐらいになるのではないかというようなことで、貨物伸び率は非常に大きいというようなことでございまして、国際貨物輸送体制を、これは先ほどの質問に似通っておるわけでございますが、今度は貨物だけから見た立場で、いままでの体制でいいのであろうか、あるいはまた、いささかなりとも貨物専用会社をどうこうというようなことを検討するような時期にあるのであるかどうかというようなことをお聞きいたしたいと思います。
  29. 松井和治

    松井(和)政府委員 貨物の問題につきまして、先ほど申し上げました昭和四十五年の閣議了解が行われました際にも、先ほどの貨物昭和六十年度に五百万トンに上るのではないだろうかという想定、このような大幅な伸びにどうやって対処するかということが議論になりましたときに、貨物専門会社という構想も検討の一つになったことは事実でございます。  今後の貨物の体制につきましていかにあるべきかということ、これはなかなかむずかしい問題でございますが、特に昭和五十三年十一月に日本貨物航空株式会社から現に申請が出ておるところでございます。私ども、この申請に対しましては、先ほど申し上げました昭和五十三年に日米の交渉が中断をした直後でございまして、いわば日米にらみ合いの状態のときにこの申請が出てきた。ここで下手な動きをするとアメリカ側に逆の口実を与えるおそれもある。それと、一方で成田の燃料事情が依然としてはかばかしくなく、パイプラインの完成時期がふらふらしていたという時期でもございますので、現在に至るまで申請は保留しておるわけでございますが、いずれにしましても、現在その貨物航空会社の申請が出ておるということで、貨物航空一般についての議論をいたしましても、それは現在申請しておる貨物航空会社の具体的な事案についての考え方というふうに受け取られるおそれがございますので、現段階でははっきりしたことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、いずれにいたしましても、日米の交渉が再開されることになったことでもございますので、その交渉の帰趨を見定めまして、一方で成田のパイプラインが五十八年十二月には完成するという目標がはっきりした、こういうことでもございますので、その両方をにらみ合わせながら今後慎重に検討していきたいと考えております。
  30. 関谷勝嗣

    関谷委員 局長の方から名前も出ましたが、日本貨物航空というところが五十三年に申請をしておるというようなこともありまして、これは日本航空、それからまたその相手というようなところも呼んで一回聞いてみなければならないと思うわけでございます。ですから、それは局長の答弁で十分であろうと思います。ただ、われわれは興味を持ちますのは、貨物というものを考えたときには、客と貨物を一緒に運営をしておるいまの日本航空の体制というものでやる方が、これは考え方はいろいろあるでしょうけれども、また検討すべきことは今後の問題でしょうけれども、一般論といたしましても、そういう総合的な航空会社でやるのがいいのか、あるいは貨物という特異性を考えて、これは今回の申請しておる会社云々ということではなくして、貨物専門、フライングタイガーなどがありますが、そういうような運営の、どちらがどういう利点があってまたマイナス点があるのであろうかということを、私たち非常にいまの時点で興味深く考えるわけでございます。  局長、あるいはまた朝田社長さんから御答弁をいただきたいと思います。
  31. 松井和治

    松井(和)政府委員 御指摘のように、最近は機材が大変大型化いたしましたために、旅客機といえども相当量の貨物が積めるわけでございます。したがいまして、旅客貨物とを兼業するということのメリットは当然のことながらあると思っております。また、貨物専用機の、これまた大型機材を使いますれば相当量の貨物が運べるのは当然のことでございまして、専用機によるメリットというものも当然考えられるわけでございます。現在日本航空は、一般旅客機の一部を使った貨物輸送と貨物専用機を使った貨物輸送と、両面を使って貨物輸送をやっておるわけでございます。そういうことで、旅客事業とあわせた貨物営業のメリットというものは当然考えられると思います。それから、御指摘のように、貨物を専門に取り扱うという会社があれば、それはそれなりにまたメリットがあるということも否定でさないかと思います。しかし、先ほども申し上げましたように、現在具体的な事案が申請中でございますので、専門会社の利点を言えば、これはその免許をするつもりかというようなことで誤解を招いてもいけませんので、両者それぞれにメリットがあるという、非常にどうもはっきりしない答弁で申しわけございませんが、その程度にとどめさしていただきたいと思います。
  32. 朝田静夫

    朝田参考人 私どもの方から申し上げさしていただきますならば、貨物航空専門会社というのは、ちょうどアメリカのフライングタイガーの沿革を見てみますと、軍事上の必要から大変な庇護を受けて、そしてコマーシャルの航空に進出をしてきた。現在でも郵便輸送その他について優先輸送の大変な特典を与えられておる。こういうことで、国情の違いによっていろいろございましょうが、貨物専門会社が効率的であるというようなことには決してならない。私はまた飛行機を一機や二機借りてきたり買ってきて、それを動かしておれば航空貨物輸送ができるのだというような考え方をとりておりません。空、地の設備投資の上に立って、流通過程でこれを処理していかないと航空貨物輸送というものは成り立たないのでございます。私どもは、成田開港前から成田に巨額の設備投資をいたしてまいりました。原木にもまたTACTという貨物処理体制もできております。それにも参画をいたしております。そういうようなことで、JALTOSと称して、成田に自動電動装置で荷さばきなりあるいは予約管理から運賃の請求に至るまで、貨物情報システムというようなものでコンピューターを駆使しながら、そういう近代的な設備を持っておりますが、成田ばかりでなしに、ニューヨークにもロンドンにも、あらゆるところにそういう設備をしている。ウエストコーストにもしかりでございますが、そういうものが全部総合されて貨物航空輸送というものができ上がる。旅客機の腹、床下の貨物室というものも小口の荷主に対して、あるいは顧客に対してその需要に対応していく。こういう多様化しておる需要にミートしていく、そういう体制をとって、私どもはアメリカの航空会社三社を相手にいたしましても積み取り比率は四七%、アメリカの三社が四四%、こういうようなことからして、いま申し上げるような空、地一体になった流通過程においてこれを処理してまいりませんと、貨物航空輸送というものは成り立たないというふうに考えております。
  33. 関谷勝嗣

    関谷委員 あと五分になりましたので、二つだけ急いで質問をさせていただきたいと思います。  ついせんだって、三月十七日、経済対策閣僚会議、「当面の経済情勢と経済運営について」ということで閣議了解をいたしたわけでございます。これは景気の維持拡大と物価対策、物価抑制ということが二つの大きな柱でございますが、その「物価の安定」の中ではっきり出ておるわけでございます。「公共料金については、経営の徹底した合理化を前提とし、物価及び国民生活に及ぼす影響を十分考慮して厳正に取扱う。」その中で電力、ガス、電話料金といろいろ出ておるわけでございますが、その最後に「国際航空運賃については、引き続き方向別格差縮小のための措置を推進する。」というようなことがわざわざ文書になっておるほどでございまして、これは円高であるとか円安であるとかという問題もあるわけでございますが、日本でアメリカ行きの切符を買うよりもアメリカで買った方が四分の一ぐらいも安いというようなことがございます。そんなことで、伺いますと往復運賃の一七%割引もやっておるんだというようなことでいろいろ対処をしておるようでございますが、こういうようなことを早く是正をしていかなければならないと思いますので、これに対してどういうような考えを持っておるのかということ。  それともう一つは、日本の役所の方が海外へ行く場合に、日本航空があってもよそのフライトで行っているというようなことも多々聞くわけでございます。これは前からもよく出ておる問題であるわけでありますが、日本であれば日本航空のチケットを買って渡せばいいのでございましょうが、現金かそういうようなものを渡すようになっておるようでございます。そういうことにも対処して、われわれは十分に日本航空を利用してそのバックアップをするという体制ももっと力強くやっていかなければならないのではないかと思うわけでございまが、そのお考えはいかがでしょう。
  34. 松井和治

    松井(和)政府委員 第一の方向別格差の是正についてまず申し上げます。  先生御承知のように、固定相場制から変動相場制に移行いたしまして、その際、各国の航空運賃は発地国の通貨建てで決める、こういうことに決まったわけでございます。そういたしますと、極端に申せば毎日毎日両国の運賃というものは変動をするということになるわけであります。そこで、この両国発の運賃に大きな格差が生じたときにはこれをどうやって調整するかというのが各国で問題になりまして、一応通貨切り下げ国の運賃を上の方に、つまりサーチャージをつけて高くする、逆に通貨切り上げ国、つまり通貨の強い国の運賃をマイナスのサーチャージをつけて下げる、こういうふうに、上下することによって調整をしようということが決まったわけでございますが、現実には上げ下げを同時に行うことがむずかしゅうございましてなかなかその実施が円滑に進まないうらみがございました。五十三年から五十四年にかけての円周時期におきまして、わが国では各国と上げ下げの交渉をしたわけでございますが、なかなか話が進まないままに、私どもといたしましては先ほど御指摘のように、日本発の運賃の引き下げという一方的な措置で調整を行ったわけでございます。ところが、その調整が一応行われましてかなり格差が縮まったわけでございますけれども、その後また最近に至りまして円高傾向が定着してまいりまして、現在日米間の運賃には一〇〇対八五くらいの、一五%程度の格差が生じておりますので、今回私どもといたしましては改めて米国発運賃の引き上げと日本国発運賃の引き下げという措置をとって方向別格差の縮小に努力をするという予定でございまして、その方針が先ほど御指摘の経済対策に盛り込まれた、こういうことでございます。  なお、政府職員の日航利用ということにつきましては、かつて政府の方針として定めたことがございますけれども、現在はたしかその方針は解除されておるかと思いますが、御指摘のように、今後の厳しい国際情勢のもとで日本航空を育成していくという考え方は、私どもも当然考えていくべき問題だと思っております。
  35. 関谷勝嗣

    関谷委員 最後に、政務次官に、大臣は最後に来ていただきましたので、最初からいらっしゃる政務次官に最後に質問をいたします。  日米航空協定その他皆さんにいろいろ伺いましても本当に厳しい環境であるわけでございますが、そういう中で運輸省が今後日本航空をどのように指導育成していくかというその決意のほどをお聞きいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  36. 三枝三郎

    三枝政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたが、このたびこの法律改正の御審議をお願いしている中で、先ほどから局長並びに社長からお答えがありましたが、特に社長のお答えのお言葉の裏には、並み並みならぬ責任を感じまして航空機を守ろうという決意がくみ取れると私は思うのであります。私どもといたしましては運輸行政として監督権を持っておりますが、その監督権のもとに必要な指示あるいは指摘をするということでたとえば事業計画をチェックしているわけでございますが、御承知のように、非常に厳しい国際航空競争下に現在日本はあるわけでございます。特に日本と米国との間には、乗り物について言えば日本の自動車が販売あるいは生産についてアメリカに進出しておる、向こうは飛行機の乗り入れについて以遠権とかあるいは発着の地点その他がございますが、これについては航空機を守るという点で、先ほど御答弁がありましたように、その方向でがんばっていくつもりであります。  それからもう一つ、これは触れておりませんでしたが、いま日本の航空の面での市場として、たとえばシンガポールとかマレーシアとかフィリピンとか、こういった発展途上国の航空会社が熱心に進出を希望してきております。そういった中においていかにして航空機を守るかということについて、先ほども触れましたが、日本航空株式会社社長以下全社員が責任を持ってこの法律改正に伴うしっかりした運営をやっていただきたい、これを必ずやっていただけるということを信じまして御審議を願っている次第でございます。  以上でございます。
  37. 小此木彦三郎

    小此木委員長 次に、吉原米治君。
  38. 吉原米治

    ○吉原委員 私は、今回の日航法改正に当たりまして、以下大きく四点にわたって申し上げる理由に基づきまして、その改正の必要はないんじゃないか、そういう観点から質問を行います。むしろいま必要なことは、日航の会社の経営体質の改善を図ることこそ緊急の課題ではないかと思っております。つまり、日本航空は行管庁設置法第二条四の二によりまして審査の対象となる特殊法人である。過般のKDD事件に見られますように、特殊法人に対する監督指導を強化すべき政策こそ必要なときでございまして、今次改正案で見られるように、政府監督権限を緩和するような法改正は行うべきではない、そういうときではないというふうに考えるわけでございます。以下、順を追いまして質問をいたしますので、簡潔明瞭にひとつお答え願いたいと思います。  最初に、この法改正そのものに関連をいたしましてお尋ねをするわけでございますが、法改正の中に、今回役員の増員を考えて定款にゆだねるという改正内容になっておりますが、一体どの程度役員の幅をふやそうと考えていらっしゃるのか。私どもに言わせれば、現行の十八名の枠の中で非常勤の役員が二名いらっしゃる、あるいは労務担当と称する役員さんが三名もいらっしゃる。これらのことを考えますと、二名の非常勤の役員さんを常勤にすることができないのか、あるいはまた常勤ができないという事情があるなら、常勤のできる役員を選任すべきではないか。また、労務担当の役員というのは本来一人で結構なんで、三名も置くというのは異常な形であろうかと私は思うのです。それらを考えますと、二名の非常勤を常勤にする、三名の労務担当を一名にすることによって、いわば会社側が考えていらっしゃる、手薄だと思われる分野に二名配置がえをする、あるいはまたこの二名の非常勤を常勤にすることによって役員体制を強化していく。現行の十八名の枠の中でも幾らでも操作ができるのじゃないか、そういうふうに思います。  最初に、役員の問題について、これは運輸省の考え方、航空局の考え方、あわせて日航の朝田社長、なぜ定款にゆだねて、これは恐らくふやしたいという意向があるから定款にゆだねてほしいということでございましょうが、私に言わせればむしろ少数精鋭でやられるべきではないか、このように思いますが、それぞれひとつ御見解を聞かせてください。
  39. 松井和治

    松井(和)政府委員 役員の人数をどのくらいふやすつもりかというお尋ねにつきましては、先ほど関谷委員にもお答え申し上げましたとおり、これは現在日本航空の方で御検討になっておられることでございまして、私ども承知はいたしておらないわけでございますが、私どもの目から見まして、それでは現在の十八名でどうであろうかということでございますが、現在の十八名という体制が決まりましたのは昭和三十八年の法改正の時点でございます。その時点、三十八年と現時点とを比較いたしますと、営業収入あるいは従業員数等の伸びというものも相当でございますが、中でも大きく情勢が変わっておると思いますのは、その当時に比べまして圧倒的に海外の路線網がふえ、海外の基地がふえたということが一つ挙げられると思います。  それからさらに、その間の変化といたしましては、成田の開港ということで新しい成田に基地ができてきたこと、あるいは先ほどの関谷委員の御質問にもございましたように、貨物輸送というものが急増してきたこと等々の情勢変化がございますので、現在の役員の担務の体制などを見てみますと、かなりの役員の方が幾つかの部をまとめて見ておられる。もちろんそれが絶対にできないことではないかもしれませんけれども、私どもといたしましても、主として海外の路線網の充実等を考え合わせますと、ある程度の増員は必要ではないだろうかというふうに考えておるところでございます。  また、非常勤取締役を常勤化したらどうかという御提案でございますけれども、やはり社外役員の幅広い知識経験を生かした御意見を伺うという制度、これはどの株式会社にとっても必要なことではないかと思いますので、非常勤役員をすべて常勤化するということには無理があるのではないだろうか、かように考えております。
  40. 朝田静夫

    朝田参考人 役員の増員をどの部門に配置して考えておるのか、あるいは非常勤を常勤にかえればいいじゃないか、こういう御指摘でございますが、私ども、いま局長から御答弁がございましたように、業務が非常に複雑化して規模が非常に大きくなりました。いま決められております取締役十八名を制定されました当時と比較にならぬほど拡大をしてまいりました。海外におきましても一人の役員も配置することができないというようなことがございます。  それではどの部門に増員を考えておるのかという御質問でございますが、先ほど申し上げましたような運航体制、安全の強化をさらに図っていく、あるいは販売増強、あるいはいま申し上げましたような海外活動の強化というようなことを、最もアージェントな、必要なところからこれを増員してまいりたい、こういうふうに考えております。  社外重役というものは、先ほど局長の御答弁のとおりでございまして、社外人士を、外部情報を導入いたしまして経営陣を強化していく。そういう新しいアイデアというようなものもわれわれがお知恵を拝借する。どの企業でもそういうことをやっておるわけでございまして、社外重役をなくするというようなことは考えておらないのでございます。
  41. 吉原米治

    ○吉原委員 私が非公式に聞いておるのは、どうも会社側としては四、五名の増員を考えていらっしゃるようでございます、これは事実かどうかわかりませんけれども。少なくとも定款にゆだねてほしい、役員の数は企業側の自由裁量に任せてほしいという裏には、それなりに、あのポストをこう埋めたい、この部門をこう補強したい、それぞれ一定の考え方があって今度の法改正にということになったと私は思うのですよ。朝田社長の頭の中は空っぽだ、いまはまだ何とも申し上げようがないが、法改正が通れば改めて考えたい、そういうものではないと思うのですよ。全然お考えがないのですか。どの部門をどういうふうにふやして、大体どのぐらいの枠になるだろう。社長、どうですか。
  42. 朝田静夫

    朝田参考人 ただいまお答えいたしましたように、まず第一に、運航安全強化のための体制を強化してまいりたいということが一つでありますし、このように大変な競争、国際競争が激しい中にあって販売を強化してまいりたい。そして、地域管理体制の問題として、海外におきますところの米州あるいは欧州の地区総支配人の増強というような部門のことを考えておるわけであります。ただ、成田にも基地が分散いたしましたし、大変な部隊を持っておりますし、対外的にも会社の意思表示をしなければならぬという立場の人も置かなければならぬでしょうし、いろいろなことをいま考えておりますと申し上げましたが、そういう部門について考えておる。  それから、いま私、答弁を落としましたが、労務担当が三人おるという御指摘でございますが、労務担当としてはプロパーの労務担当は一名でありまして、ほかの、先生の御指摘になっておりますのは、客室部門の役員が一名おります。これは客室乗務員に対して労務問題も当然関連してまいるところでございますが、これは労務ばかりやっておるのじゃなくて、客室業務のサービス、運送サービスあるいは機内のサービス、機内食のサービスの提供とかいろいろなことがございますので、そういうものと合わせて、きめ細かくそういう業務と一体になって考えてまいらなければなりませんので、そういうものが一名おる。いま一名は法務室の担当、総務部その他いろいろな担当を重複して担当してもらっておりますが、それは法律関係でそういうものが出てまいりますので、法務室の立場で労働法関係の仕事を分担をしてもらう、こういうことでございます。
  43. 吉原米治

    ○吉原委員 時間の関係で、この部門は増員を考えていらっしゃるようだけれども、現有勢力で少なくともやれるのじゃないかという意見だけを私は申し上げて、次に進みたいと思います。  次の法律改正の中で、監督権の緩和と思われる条項がございます。具体的には、先ほど関谷委員の方の質問にもありましたが、十二条でございます。ここで事業計画だけを残して、資金計画収支予算をいわばノーチェックにして企業サイドに任せる。そうなってまいりますと、この条文を正しく読みますと、事業計画並びにその他全般にわたって会社を、その業務の適正な運営を確保するために必要があるときには監督あるいは指示を行うことができるということで、従来この事業計画そして資金計画収支予算、限定された分野が取っ払われる、企業全般に対する監督指導ができるというふうにも理解されるわけです。このことが一体政府側の監督権限を緩和することになるのだろうか。企業側もまたそういうふうな受けとめ方をしていらっしゃるのか。一定の分野に限って監督指導あるいは認可事項であるものが外されて、そして全般にわたって監督指導をするという、考え方によりますと、監督指導がより広範囲になったというふうな理解にもこの法律を読む限り相なるわけでございますが、これはどうなんでございますか。航空局長、お答えになりますか。
  44. 松井和治

    松井(和)政府委員 御指摘のように、今回の改正によりまして事業計画の認可制のみを残して資金計画収支予算の認可制は廃止することにいたしたわけでございます。これに伴いまして、御指摘の条文上、従来事業計画資金計画収支予算に関しての必要な指示ができるというものが、そこの三つ計画のところが落ちましたために、全般の指示ということで、確かに範囲はその限りにおいて広がったことは事実でございます。ただ、今回の改正は、いわば直接的事前の監督というものから、できる限り監督を事後の監督、後見的な監督に移していこう、こういう趣旨でございまして、私どもといたしまして、他の特殊法人の例に見られますように命令というような強い言葉ではなくて、指示ということでございますが、あらかじめ一々チェックするということなしに、会社の自主性に任せた運営を事後的に、監督上必要がある場合に限り指示をすることができるという形で、いわば一歩後退をした監督のやり方に改めた、こういうことでございます。
  45. 吉原米治

    ○吉原委員 朝田社長は、これは政府監督権限が緩和された、つまり弱められたというふうに企業側としては受けとめられていらっしゃるのか、それとも、いやこれは大変だ、従来は事業計画資金計画あるいは収支予算ということに限って監督指導、指示を受けてきたけれども、これが取っ払われて企業全体に対する監督指示をいろいろ受けることになって大変だという受けとめ方なのか、あるいは前段私が申し上げたように理解をされていらっしゃるのか、どっちですか。
  46. 朝田静夫

    朝田参考人 資金計画収支予算認可事項から外されたことになりますので、そのときに、現行法は事業計画資金計画収支予算についての指示ができるということになっておりましたのが外されますと、全般について指示ができるということ、そういう監督権を放棄するわけにはまいらぬ、こういう考え方だと思います。したがいまして、私どもは、さっき申し上げましたように、収支予算資金計画というものは適正な整理をされて、非現実的あるいは行政の重複、そういったものを避けるためにこれは整理していただいた。それで、いまの指示というのは全部それじゃ外れてしまうということもどうかということで、私はこれは適正な措置である、こういうふうに受けとめております。
  47. 吉原米治

    ○吉原委員 これは正しく法律の文章を読みますと、私が言っておることになるわけでございまして、そのことは企業の側の方として見れば、従来の監督権限は弱められて、企業サイドで自由濶達な経営ができるんだという御理解があるなら、それは文章を読んで感じ方がそれぞれ違うわけでございますからやむを得ぬと思いますが、私は事業計画資金計画並びに収支予算というのは、五十五年度の事業計画、航空局から取り寄せて拝見さしていただきました。どういう中身のものか、資金計画なり収支予算というものはノーチェックでいいものだろうかどうかということで実はいただいたわけでございますが、本来、事業計画資金計画収支予算というふうなものは、いずれも事業計画を支えるセットになっておる問題ではないか。事業計画、いろいろ中期計画も読ましていただきましたけれども、そういう計画を進めていくための財源的な措置、こういうものが裏づけされて初めて実行性のある事業計画ということが確認されるわけで、事業計画だけをチェックしておけばいい、あとはもう企業サイドにお任せする、これでは余りにも片手落ちじゃないか、こういうふうに私は理解をいたします。特に事業計画を見てごらんなさい、路線便数計画だけでしょう。こんなものだけを認可事項において、あとは、私に言わせれば大事な資金計画収支予算というものをノーチェックでおくなんということはナンセンスだと思うのですが、どうですか大臣、これは。
  48. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お尋ねの事業計画運輸省で厳しく指導監督いたしますが、その他のものは、これは私は政策的な配慮から、率直に申しまして運輸省としての余り深い介入は必要ないと思うております。したがいまして、先ほど朝田社長も言っておりましたように、権限は確かに緩めました。けれども、それだけに日航の責任は重くなった、そこをちゃんとしてもらわなければ困ると思うております。大体、政府関係しております企業で、手足を縛ってしまいまして企業活動を抑制するということは余りよくないと思うております。ですから、できるだけ当事者能力をつけるということ、そういう観点から見ましても、今度の改正で収支計算書とか資金繰りだとかいうようなものはもう会社の責任でやってもらいたい、そのかわり事業計画全体は運輸省でこれは厳重に監視もしていく、監督もしていく、こういう態度も私たちは決定したようなことでございまして、それだけに、重ねて申し上げますが権限は確かに私の方は緩めた、それはおっしゃるとおりだと思います。けれども会社の方としてはこれによって逆に責任は非常に重くなった、そう思うております。
  49. 吉原米治

    ○吉原委員 私も、企業活動の中身に政府が介入するということは好ましくない、これは大臣の見解と私は共通するわけでございますが、前段私が申し上げましたように、そうは言いながら実現性の乏しい、財源の裏打ちもない、そういう事業計画だけを政府はうのみにしておっていいのであろうか。できもしないことがたくさん羅列してある。大変結構なことだ。それは先ほどの関谷委員質問の答弁の中で、添付書類でつけてもらうんだ、こういうことになっておるようでありますが、それにしてもこの認可事項から外すということは、企業サイドにお任せするということに相なるわけでございまして、少なくとも政府が四〇%あるいは三十数%の出資をして、つまり株主で言えば恐らく筆頭株主の立場に政府がなるわけでございますが、その政府が、事業計画を出されておるけれども、それから先の資金繰りやら収支予算、こういうものはもう知っちゃいないんだ、これは企業にお任せだ、それでは私は政府の責任というものを完全に果たすことはできないのじゃないか。前段申し上げましたように私は朝田社長はりっぱな方でございますからそんなことはないとは思いますけれども、余りにも放任に過ぎたKDDの事件を見るときに、再びああいう過ちをお互いに犯してはならぬ。  そういう立場で、私は少なくとも政府がチェックするべきものはチェックする。資金計画なり収支予算、それは社長はたびたび国際状況に合わせて対応するように修正をせなければならぬ。これは政府認可事項であろうとあるまいと、企業としては当然敏感に国際情勢に対応して措置を講じなければならぬ。認可事項であるから、めんどうだから、煩わしいから、認可事項から外してもらいたい、これは余りにも企業側のエゴではないかと思っておるのです。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕  それでは、朝田社長に聞きますが、政府認可事項でなければその収支予算なり資金計画なりというものは直さなくてもいいとお考えなんですか、逆にお尋ねするんですけれども。それは政府認可事項であろうとあるまいと、敏感に対応して企業としては対処しなければいかぬ課題なんでしょう。それを何で認可制度から外してもらわなければ企業活動ができないのですか。私はおかしいと思う。答弁。
  50. 松井和治

    松井(和)政府委員 ただいまのお尋ねの資金計画並びに収支予算を認可制から外しまして添付書類に落とすことを考えておるわけでございますが、添付書類でついてまいりますれば一応年間を通じての資金繰りの計画は私ども承知できるわけでございます。特に資金繰りの中で一番大事な増資、長期借入金、社債の発行というのはそれぞれ別の条文で認可の規定がございます。特に新株発行についてはそういう意味合いで今回新たに認可事項に加えたということでございますので、主要な点につきまして——それからさらに、先ほど御質問がございました重要な資産の処分、取得というような面での認可制の規定、こういうことで十分監督ができるというふうに考えておる次第でございます。
  51. 吉原米治

    ○吉原委員 私はむしろこの認可事項に残しておくのが自然だと思うのです。少なくとも外す方が不自然だ、こう思っておりますが、特に、後ほど触れますけれども、航空機が老朽化したから新しいのと入れかえなければならぬ、中期計画でいきますと三十機ぐらい年次を追って導入をされる計画があるやに伺っておりますけれども、そういうものもやはり全体の資金計画なり収支予算というものが背景になくて、現有の機材が古くなったからこれから何年間のうちに導入します、こういう事業計画だけでは私は不十分であって、それが本当にその新しい機材が購入できるような資金的な裏づけもきちっとしておって間違いない、こういう判断というものはあくまでも政府がすべきであって、それは添付書類がついておるからそれを見ればわかるから大丈夫だ。それなら添付書類をつけるぐらいなら何でその認可事項から外すということになるのか、手続としては同じことじゃございませんか。そういう意味で、私はこの問題についてはいささか疑義を持たざるを得ない。  それからもう一つ、日航の企業の体質ですが、日航の会社としては関連会社なり子会社と称する会社にたくさん投資をなさっていらっしゃる。直接航空事業と関連のある事業ということになれば私もそれなりに話がわかるのですが、かなりの分野において、そんなところまで投資をしなくてもいいのではないか、日本航空という企業にそんな財源の余裕があるのかとも思われるような投資の仕方がしてございます。二、三の例を挙げますと日航開発、これも実はこの数字を見ましてもかなりの赤字を出しております。特にこの赤字を出した原因が、赤坂にホテル建設の計画を立てて用地を取得した、何かの理由でこれが御破算になって大損害をこうむった。あるいは日航商事、これは倒産会社日本熱学に七億円の債権を持っておったけれども、これが回収不能になったとか、あるいは旅行開発という傍系子会社があるようでございますが、この会社の社員が二千万の使い込みをして告発をされたとか、あるいは帝国ホテルとか京都ホテル、こういうものに資本参加をしておる。国策会社がなぜこういった民間ホテル事業にまで出資をする必要があるのか。日本航空というのは航空会社ではなくて商事会社なら、私はどうとも言いません。少なくとも政府が出資をしてナショナルキャリアという、世界でいま二位だ、三位だと言われておる航空会社が、こんな民間のいささかも航空事業と関係のないことに何で資本参加をする必要があるのか。  私はこういう点を見ますときに、政府監督権限というのはむしろ緩和するのではなくて、具体的な企業活動にくちばしを入れるということではないけれども、やはり企業のあり方というものを綿密に承知をしておく必要があるのではないか。いまのような傍系子会社にたくさん投資をしていらっしゃることについて、運輸大臣は御承知だと思うのですが、これに対してやむを得ぬ投資とお考えでございますかどうですか、ちょっと大臣のお考え方を聞いておきたい。
  52. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 航空事業というのをやりますと、こういう事業は付帯した事業が非常に数多くあると思うのであります。ですから、どこまでが自分の会社、いわゆる日本航空で資本参加していいかどうかということ、この点につきましては私は判断の基準を持っておりません。がしかし、会社はやはり業務上それを円滑に推進するためにはその会社との間に確実な契約をしなければならぬ。その契約を担保する意味においてはやはり投資も必要になってくることもあろうと思うておりますので、親会社と子会社関係というのは、やはりその業務の担保力だ、担保の必要上やっておるのだと思うております。  それからなお、もう一つお尋ねの、子会社の中にいろいろ赤字の会社があるという御指摘でございました。これは私も非常に残念でございますから、実情を十分に調べまして、みずから投資をし、それのイニシアチブを持っておる、そういう関連会社の赤字解消等の対策については、速やかに解消することを強く要請しておきたいと思うております。
  53. 吉原米治

    ○吉原委員 そんな国策会社航空会社が二〇%以上の出資をしておる会社が二十五、二〇%以下の出資会社が十六、合わせますと四十一の企業がある。二つや三つというなら、これは航空事業と関係のある分野である限り、私もやむを得ぬと思いますけれども、四十一の企業に対してこれだけの投資額、これは私はトータルしておりませんけれども、相当な投資額になる。  そこで、もう一つ、リニアモーターカーに非常に私は注目をしておったのですが、日航のHSST、いまやちまたでは日航の重役のおもちゃになっておる、こういうことになっておるのですが、朝田社長、このリニアモーターカーに今日まで相当長い年月をかけて、政府も合わせると七億ばかりの補助金、研究費を出しておる。これは日の目を見ずにどこかの車庫に眠っておるのですか。これはどうされようとするのですか。一遍社長の見解を聞かせていただきたいし、いままでのこれに要した金額、これはあらかじめ御通知申し上げておるはずですから、数字を持っていらっしゃると思うのです。相当の金と労力を食っておると思う。こんなむだをしておっていいのですか。
  54. 朝田静夫

    朝田参考人 ただいま御指摘のHSSTの開発でございますが、今日まで投資をしてきた資本費の支出と人件費と合わせて、いま先生御指摘になった金額でございますが、こういうものの独自の開発をやってまいりまして、この辺で、日航が今後この問題を進めてまいりますと膨大な資金が必要であるというので、私どもはこういうものに一つ線を引いてナショナルプロジェクトとしてお取り上げを願いたい。低公害交通機関としても今後の技術開発におきましては大変大事な問題でございますので、成田というような、アクセスの非常に悪い空港であるということは申すまでもないのでございますが、そういうようなものからこういう交通機関の開発をやってはどうか、こういうことでまいったわけでございますが、いま運輸省でも常電導磁気浮上方式鉄道の開発指針というものを策定されまして、運輸技術審議会に御諮問になりました。そういうこととかあるいは鉱工業技術研究組合法に基づきますところの組合というものを設立いたしまして、今後の展開を図りたい、こういうように考えております。技術研究組合の設立は関連業界との関係関係する分野が大変多いわけでございますので、五十六年度にずれ込みはいたしますけれども、設立できるためにいろいろな方々の御協力を得ていま努力をいたしておるわけでございます。
  55. 吉原米治

    ○吉原委員 リニアモーターカーの技術開発で大変努力をなさった。その苦労は私は多とするわけで、大いに敬意を表するのですが、今日まで人も金もつぎ込んで、せっかくいいものを開発されて、そうしていたずらに車庫の中に眠らせておく、そういう金の使い方、企業の運営のあり方というか、やはり今日まで来たなら、もうすでに実用化に向けて運輸省サイドとも協議をなさって、実用化という段階にもなっていいのにかかわらず、私は政府部内でもいろいろあるということは承っております。完全な民間会社でなくて政府が国策会社としてそこで研究開発をやらせておきながら、いまもって技術研究組合の見通しもまだ立っていないようでございます。  運輸省としては一体この問題はどう扱おうとされておるのですか。大臣のお考え方を尋ねたい。
  56. 松井和治

    松井(和)政府委員 HSSTにつきましては、先ほど朝田参考人からお答えがありましたように、日航としての研究開発段階は終了して、これをさらにもっと大きな形で取り上げていくという段階に来ておるというふうに承知いたしております。航空局そのものが所管しているわけではございませんけれども、現在運輸省といたしましては、先ほど先生の仰せになりましたように、技術組合をつくってこの事業を継承、発展させていくという予定でございます。
  57. 吉原米治

    ○吉原委員 私は大きい柱で四本の柱を質問の柱に考えておるわけで、いまの一点目について、今回の法律改正はこういう角度から見ても何も必要ないじゃないか、こういうことでいろいろ大臣にも考え方を聞かしていただきながら、法改正の必要なし、そういう理由づけに私はいまのような問題を考えておるわけでございます。そういう意味では、役員の増員についても現有勢力で、現有の十八名の枠の中で十分賄っていけると思われるし、監督権の緩和につきましても、私は全部が全部そうだとは思いませんが、いまのような不良投資と思われるような投資の仕方、あるいはまたその一番典型的なものがHSST、この問題に対する取り組み方、あるいはまた事業計画と資金あるいは収支計画は本来セットであるべきものだ、こういうことから考えまして、今回の法律改正の必要はないのじゃないか。     〔楢橋委員長代理退席、委員長着席〕 株式の後配にいたしましても、現在の法律の中で政府側に配当しても別に違法な行為ではない、私はこう思っておりますから、いたずらに日航の企業活動を制約するような現法律になっていない。いま関谷委員質問いたしましたが、どこが一体監督がきつくて自由な企業活動ができないのか、こういうお尋ねに対しても、余り歯切れのいい御答弁はなかった。私、聞いておって、何の意味かよくわからなかったのですが、私はそういう意味で今回の法律改正はその必要はない、現行の法律で十分日航の企業活動はやっていける、こういうことを申し上げて、次の質問に入ります。  次は、多少順番を違えて言いますが、技術的にも人員的にも、航空会社としての使命でございます安全対策というものについて、日航の企業の体質の中には非常にたくさん指摘しなければならぬ点があります。そこで、本会議の都合で時間の関係もありますけれども、中途半端になると思いますが、四十七年の俗に連続事故と称する事故以来、一体どの程度日航の会社は安全対策に力を注いでこられたのか、このことを私は今回調査をさしていただきました。  その段階で明らかになったことは、四十八年のあの連続事故の直後といいますか、それ以降に、日航の会社の多数を占めておる組合、全日本航空労組、この組合の手によって従業員の意識調査がなされておる。このアンケート調査の結果を見ますと、「ニューデリ事故以後、安全性の回復、事故の再発防止のため社内で適切な措置がとられたと思いますか。」という問いに対して、「思わない」というのが全体の六二%もおる。あるいは「一連の事故に関連し日航の営利優先の経営を批判する声がありますが、あなたはこれについてどう思いますか。」という問いに、「その通りだと思う」というのが、これもやはり全体の五一%を占めておる。また「あなたはこの会社で安全に対する投資が充分に行なわれていると思いますか。」という問いに対して、「思わない」これが全体の五三%。まだたくさん例はございますが、時間の関係で割愛をいたします。  このアンケート調査、一万二千名の組織を持つ全日本航空労組の従業員の意識調査だ。しかも、このアンケート調査は四十八年だからいささか古いと言われる声がございます。現在はそうじゃないと言われるかもわからぬ。しかし、その後、五十二年でございますか、パイロットの組合の皆さんが同じような調査をされております。それによりましても八〇%のパイロットは安全対策が不十分だと言っている。これは五十二年九月のクアラルンプールの事故後の「機長は安全運航体制についてこう考えている」というコメント集がございます。五十三年の三月に日本航空乗員組合、ここが発行しておる。この資料によりましても、「安全運航体制は確立されていない。」というのが八〇%。  こういうことを考えてみましても、朝田社長は安全対策に力を注いでおりますと御答弁されるかもわかりませんけれども、少なくとも日航という会社は、あれだけ連続して事故を起こしながら、いまもって安全対策にそれこそ有効な投資が行われてない。ホテルやらその他の企業に投資をする金があったら、四十幾つもの関連会社に投資をする金があるのなら、もっともっと安全対策に有効な投資を行うべきじゃないか。そういうことも実は資金計画収支予算、こういうものと事業計画というのがセットになって、監督官庁である運輸省は何と言いましても筆頭株主ですから、こういう点は厳しくチェックをする必要がある、こういうふうに思いますが、安全対策に対して日航の朝田社長の見解をまず最初にお尋ねをしたい。
  58. 朝田静夫

    朝田参考人 大変大事な問題の御指摘でございますので、率直にお答えを申し上げますが、このアンケートが行われた四十八年、いまお話しのとおり、四十七年の連続事故の後でアンケート調査があったわけでございますので、直後のショックと、これではいけないという社員、組合員の意識というもの、危険感というようなものが私はやはりもちろん背後にあったことだと思いますし、私どもは乗員組合のアンケート、いろいろございますが、アンケートそのもののやり方とか設問とかいうようなことを問題にする意思は毛頭ありません。これを率直に受けとめて、私どもは安全確保というのは会社の絶対命題であるという基本方針で経営をいたしておるわけでございます。全社員トータルシステムで、運航や整備関係のないところでも安全運航を祈るという雰囲気、会社の中のそういった雰囲気を醸成する、あるいは安全意識を全社にわたって高揚していく。安全バッジを全社員が着用したり、あるいはZD運動を展開したりしておるのもそういうことでございます。この問題はこれでいいという限界がございませんので、あくまでも未来長く永久に挑戦してまいらなければならない命題でございます。私どもは、このアンケートは大分前のことだからというようなことも申し上げるつもりはありませんし、現在もなおかつこれを真剣に受けとめて、今後も安全確保というものが至上命題だということで努力を続けてまいりたい、こういうように考えております。
  59. 吉原米治

    ○吉原委員 社長のそういった観念的な安全対策に対する熱意といいますか、お気持ち、これは私もわかるのですよ。およそその航空会社社長が、安全問題なんかどうなってもいいのだ、金がもうかりさえすればいいのだというふうな認識ではないとは私は承知をいたしておりますが、あなたのそういった熱意とうらはらに、現実に私はいまからちょっと技術的なことでお尋ねをするわけでございますが、あのニューデリー事故直後に、当時の日本航空の松尾会長、亡くなっていらっしゃるようでありますが、全従業員といいますか、社員約千人ぐらいの集会でこういう発言をしていらっしゃる。キャリーオーバーが少しやさしく、マンネリになっておるのではないか。キャリーオーバーというのはふぐあいな個所を残したままで運航するという意味でございますが、マンネリ化になっておるのではないか。自分では心ならずもそうなっておるのではないかという危惧の念を持つものであります。当時の日航の松尾会長は千人余りの職員を前にして、もっとお互いに従来のマンネリ化したこういう感覚から抜け出して、ひとつ無事故の体制を期そうじゃないかという趣旨の演説をしていらっしゃる。  そこで、キャリーオーバーというふぐあいな個所をそのままにして運航するというこの問題についてちょっとお尋ねをいたしたいと存じますが、五十五年度の修理改造認定といいますか、この更新の検査で、五十五年の九月でございますが、重整備作業でのキャリーオーバーの改善を指摘をされておるわけでございますが、これは運輸省の検査官の方から日航に対していろいろ指摘されておる事項がございますが、一体重整備を、いろいろ基準によって、一万五千キロ飛んで重整備をやる。つまりオーバーホールをやるというふうな規定になっておるようでございますが、この重整備をした、一カ月、一カ月半もかかってやるのでしょうが、大きい整備でございますから、ここから出る飛行機でキャリーオーバーのままで飛行をしておる、こういうことが一体あっていいのだろうかどうだろうか、まず航空局長としてキャリーオーバーに対する認識を、どういう認識を持っていらっしゃるのか、その点を最初にお尋ねしたい。
  60. 松井和治

    松井(和)政府委員 ただいま御指摘のキャリーオーバーの点は、航空の安全を考える面で大変重大な問題だと考えております。ただ、航空機のふぐあいと一言に申しますけれども、航空機と申しますのは当然空を飛ぶわけでございまして、その空を飛ぶ場合の安全に直接関係のある部分と、お客さんのサービスその他の部分というふうに分かれるわけでございまして、たとえば安全性に直接関係のある部分についてのキャリーオーバーという場合と、安全性に直接の関係のないサービス部門におけるキャリーオーバーとは全然質的に違うというふうに考えております。もしも安全性に関係のある部分についてのキャリーオーバーが行われるということであれば、これはまことにゆゆしき問題でありまして、私どもとしてはそういうことが行われないように十分指導してまいりたいというふうに考えております。
  61. 吉原米治

    ○吉原委員 航空局長、安全に関係のないところなら構わぬけれどもという意味の御答弁でございましたが、それでは具体的に聞きますけれども、どの部分ならキャリーオーバーで飛んでも構わぬ。私は飛行機というのは素人でございますけれども、どの部分が一体安全運航に支障ないと思っていらっしゃるのですか。
  62. 長澤修

    ○長澤説明員 ただいまお尋ねのどういう部分が安全に関係があるかというお話でございますけれども、航空機の整備をいたします際には、飛行機の耐空性に直接の関係のある部分と、たとえば外観が非常に汚れたのでこれを新しく塗装するとか、パネルにちょっとした傷があるのでこれを直すというような飛行の安全に直接的にはかかわりのない部分とがございますが、航空会社としてはこれらをすべて重整備のときに修理するということを計画するわけでございます。  安全にかかわりのある部分と申しますのは、直接の飛行に影響があるというものを指して言っておるわけでございます。
  63. 吉原米治

    ○吉原委員 そこまで言われるなら、具体的に整備工場で整備をされて、作業報告書が出ておりますが、この作業報告書に基づいて具体例をお示しをして見解を賜りたいと思います。  重整備をやって、重整備工場から出された作業報告書に基づいて言いますと、燃料漏れ個所あるいは機材の一部が外れるといいますか、そういう不良個所が九十カ所もあった、こういう具体的な事実も作業報告書、つまり整備不良個所といいますか、ふぐあいの個所を完全に修理をすることができなくて、この個所とこの個所とこの個所、つまり合わせると九十カ所、完全な整備でなくて仮の整備といいますか、そして飛行せざるを得ない、こういう形でこの報告書が上がっておる。こういう問題についてはどういう認識を持っておられるわけでございますか。  また、いま申し上げましたのはDC8の46という飛行機の作業報告書でございます。日付はことし、八一年二月二日。それから、同じDC8の50という飛行機で、整備の結果報告されたものの中に燃料漏れ個所が千百十五カ所、その他不良個所が二千四十七カ所、こういうデータが実はありますが、燃料漏れ個所が千百カ所とかパッチを当ててリベットでとめるような個所が二千カ所以上もあるような飛行機というのは一体正常なのかどうであろうか。それは技術屋さんが見て飛行に差し支えないという見解だということになれば、それ以上大事故でも起こらなかったらそれで済むのでしょうけれども、もし落ちたら一遍に何百人の人間がたちどころに死んでしまうわけでございますから、絶対にミスは許されない。そういう安全性を強く求められておる安全対策に対していまのような作業報告の——私は別にうそを言っているわけじゃない。現実にそういう作業報告書から見て、これは大変な飛行機が飛んでおるものだなという認識を持たざるを得ぬでしょう。これでも安全に差し支えないから大丈夫だという認識ですか。これはどなたがお答えになるのですか。
  64. 長澤修

    ○長澤説明員 ただいま先生から具体的に幾つかの事例の御指摘がございましたけれども、まず燃料漏れの件についてお答え申し上げます。  ことしの一月に重整備を行いましたDC8におきまして、ただいま先生御指摘のとおり千百カ所を超える燃料漏れがある、そういうスコークと申しておりますふぐあい事項があったわけでございます。この機体はアメリカのイースタン航空という会社から中古機として昭和四十六年に購入した機体でございまして、日航が持っておりますほかのDC8に比べましてもこの種のふぐあいが通常やや多い機体でございました。  DC8は、他の大型機と同じように、主翼の中に燃料タンクがございまして、主翼の表面にはおよその数でございますが、十一万本のリベットが使われておりまして、そのうち千百何本かのリベットに燃料リークの跡があるということが発見されたわけでございます。ただ、この発見された燃料リークの跡でございますけれども、この中の九五%以上はリベットを打ってございます、そのリベットの周辺に燃料が少ししみ出ると申しますか、そういう跡がつくもので、通常ステインというような言葉で呼んでおりますけれども、そのリベットの場所、その程度によりまして航空機メーカーでこれは修理が必要である、これは修理をしないでそのまま飛ばしてもよろしいというようないろいろな技術情報を出しておりますけれども、およそ九五%というのは通常の運航では問題にされない程度の軽いものでございました。しかし、こういうせっかくのチャンスでありますので、通常はメーカーは修理しろとは言っておりませんけれども、この際、重整備の期間中に万全を期すために千百何本の修理を全部完全に行ったということでございます。  このような状態は、飛行機を長年使い込んでまいりますと、だんだん時間の経過とともに発生してくる性質のものでございまして、整備を手抜きをしたからこういうことがたくさん出たということは必ずしも結びつかない話でございます。ただ、私どもとしましては、先生御指摘のように、安全の確保というのは絶対でございますので、どのようなささいなことも見逃さないで的確に手を打っていくことは必要であろうかと考えております。  それから、先ほどほかに指摘のございました暫定的な修理をしたというハニカムパネルのお話でございますけれども、ハニカムパネルの損傷の程度というのはいろいろな段階がございまして、表面的に薄く傷がついたものあるいは完全にクラックになっているもの、いろいろなものがございます。これを完全にするには新品と取りかえるということが一番いい方法でございますけれども、そういうことに対してあらかじめメーカーが決めておるような検査方法あるいはそれに準じた方法によって修理を行いまして、次の整備のときにこれを全く新しいものと取りかえる、こういうふうな手段をとって安全上いささかも支障がないような手を打ってからやるということはあるわけでございます。  以上でございます。
  65. 吉原米治

    ○吉原委員 本会議もきょうは開催されるわけでございまして、私も腹が減りましたし、皆さんも食事をした方がいいと思いますから、昼飯を食べてからひとつじっくり航空機の安全問題で論議をしたいと思いますので、午前中の時間はこれで終わりたいと思います。
  66. 小此木彦三郎

    小此木委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時二十一分開議
  67. 小此木彦三郎

    小此木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。吉原米治君。
  68. 吉原米治

    ○吉原委員 これは航空局の技術部長さん、いらっしゃいますか。−午前中のキャリーオーバーに対する考え方を再度お尋ねするのですが、一万五千キロを飛んで重整備をやるという規定になっておるようでございますが、その重整備を受けて、そして現実には飛行機は航行するわけでございますが、その場合に、キャリーオーバーという形で一体運航できるのかどうなのか。キャリーオーバーという、ふぐあいな個所をそのままにして運航するということは、少なくとも、ABCD、この四ランクあるんでしょう、あるいはジャンボ機は重整備がなしにABCの三ランクあるようでございますが、その一万五千キロも飛んで、オーバーホールで解体して整備をするという重整備だ。それをやって、なおかつキャリーオーバーという問題が残ったままで一体航行ができるのかどうか。A整備をやりB整備をやり、そしてC整備をやって最後はD整備、こういう上の段階へ行くときに、第一の段階で、A整備で多少不十分な点が残った、それは次のB整備でひとつやってくれと、こういう場合は起こり得るだろうけれども、逆に一番大きい整備をして飛行機が出る場合に、一体キャリーオーバーという、ふぐあいな個所をそのままにして運航するということが許されておるのかどうなのか、そこら辺をきちっと聞きたい。
  69. 長澤修

    ○長澤説明員 ただいま先生の御指摘のございましたキャリーオーバーがどのようにしてできるのかという点でございますけれども、ただいま先生御指摘のように、整備段階はABCDと逐次重いものになっていくにつれまして、整備のアイテムと申しますか、内容が厳しくなってまいります。そして、D整備で必ずやらなければならないようなこと、そういうことは必ずやらなければいけないということでございますけれども、キャリーオーバーをするかしないかは、その飛行の安全に直接関係があるのかどうかという点に最終的に判断が来るわけでございまして、重整備におきましては、重整備で必ずやらなければならないことはこれは絶対にやらなければならないことでございまして、私どもそういったようなものについてキャリーオーバーするということを一切認めておりません。そういう重整備で、ここでやってしまうべきことは必ずやらせるわけでございます。  しかしながら、重整備というのは、長時間飛行機を格納庫に入れまして整備をする期間でございますので、サービス上の問題等も含めまして、その他もろもろの作業をこの際一緒にやってしまうように計画を組みますので、そういった計画の中で、あるいは現実にオーバーホールに出てまいりますと、予期しないところに手を入れなければいけないというようなことが見つかることがございます。そういうときに修理の仕方はいろいろあるわけでございますけれども、たとえば次のC整備、二千時間なら二千時間の飛行に達するまでに必要なものをきちっとしておけば、次の二千時間のときにそこをまた新しいものとかえるなり必要な修理をするなりということをすれば安全な運航ができるわけでございます。  こういったような細かな問題につきましては、基本的には航空機メーカーが、この程度のことはこういう状態でやってよろしい、この程度のことは絶対だめだというようなことを事細かに決めておりますし、私どものこういった業務を担当しております検査官も、その内容については逐一チェックをいたしまして、できるかできないか、できないものは絶対にやらせない、こういうことで対処しておるわけでございます。
  70. 吉原米治

    ○吉原委員 そこで、この検査官ですが、東京航空局の羽田の先任検査官がふぐあいな事項を指摘をしておるわけでございますが、ここで、メーンベースにおける重整備作業時には、すべてのふぐあい事項はクリアにして運航する思想から考え合わせると、このようなことのないよう改善されるように今後努力してもらいたい、口頭ではあったようですが、こう指摘をしておる。これが去年の九月です。それから以後、そういう指摘があったのにもかかわらず、ことしの三月の日付による作業報告書を見てみましても、いま技術部長がおっしゃったように、重整備を済ませて出てきたこのDC8——45という飛行機は、作業報告書を見てみましても三十六カ所キャリーオーバーの個所が列記してある。こういうことがあっていいのか。あってはならぬことが、現実にこういう作業報告書が出ておるし、しかもキャリーオーバーの期間はいつまでに完全に整備するという期間が決まっておるのですか。これは決まっておらない。しかも、この資料を見てみましても、悪い個所が発見をされてから一年も一年半もそのままで飛行機が飛んでおるということがこの作業報告書から明らかになっておる。  この作業報告書は技術部長は見ていらっしゃいますか。いまお尋ねをしました点について、ひとつ明確に、私も素人ですから素人にわかるように説明してください。
  71. 長澤修

    ○長澤説明員 ただいま先生の御指摘された件でございますけれども、私が受けております報告は、たとえばハニカム構造というものがございます。このハニカム構造というものについて修理をする場合に、そのハニカムの損傷の程度によっていろいろな修理の方法があるわけでございますけれども、運航の安全を継続するために、たとえばハニカムが接着が多少はがれて浮き上がっているというような場合には、リベットどめをいたしましてこれを固定するという方法が一つの修理の方法でございますけれども、この修理の方法で十分安全に飛べるわけでございますが、外観上は見かけが悪いというようなこともございます。そういったような場合には、新しいものと交換をするというのが原則でございますけれども、そういった部品がいまたまたま手元にないというような場合には、やむを得ず、安全上は全く支障のない修理の方法、外見上は見かけは悪いのですけれども、安全上は支障のない方法で飛ばすことがございます。しかしながら、そういったようなものはその後のチャンスで新しいものとかえるということでございまして、私どもの検査官がキャリーオーバーを減らすようにしろと言っておりますのは、整備作業といいますのは一定の計画のもとに始まるわけでございますので、この計画が、非常に安易な部品の入手計画であるとかあるいは工程の管理の仕方とか、そういったようなもので混乱をいたしますと、そういうチャンスに整備上のミスが入り込むような機会も出てまいりますし、キャリーオーバーを後々に送りますと、後の工程が非常に大変になるわけでございます。したがって、少しでもそういった工程を乱すようなことは極力やめろということで、検査官は強くそのことを申しておるわけでございまして、安全上必要な点の確認は十分にいたしておるということでございます。
  72. 吉原米治

    ○吉原委員 それでは、端的にわかりやすく聞くと、重整備をやった後なおかつ安全に支障がないということになれば、次のチェックの時点、たとえば二千キロ飛んでから直しなさいよということになって、その二千キロの運航には差し支えないという個所があったままで飛んでも構わぬ、そういう意味ですね。ぼくの認識が間違っておれば正してもらわなければいけぬから、再度聞きます。
  73. 長澤修

    ○長澤説明員 当該航空機が飛行する、あるいは次のチェックまで飛行するに必要な最低限以上の整備は必ずして飛ぶということが原則でございます。したがいまして、たとえば次の整備までかくかくしかじかの手段を講ずることによって安全上全く支障がないと判断される場合には、キャリーオーバーをすることがあり得るわけでございます。しかし、私どもは工程管理等の面からそういうことをなくすように努力せよということを申し上げておるわけでございます。
  74. 吉原米治

    ○吉原委員 この安全問題をしつこく私は尋ねたいのですが、特に四十七年のあの連続事故の発生時から今日までの一連の整備費の流れを見てみるわけですが、四十七年の連続事故の翌年の四十八年は、外部購入費用の経費の中の整備費が一〇・二%を占めておった。それがずっと年を追って見てみますと、昭和五十四年度では三・二%に整備費がウエートとしては減ってきておる。それと並行的に付加価値の欄で見てみますと、減価償却が四十七年当初三一・八%であったものが年々下がってきて、五十四年度では十八・二%、そういうウエートになっておる。この数字の流れからして、いまの全体の日航の持っておる飛行機というのが老朽化してきておるのではないか。特に減価償却は税法上では定率法でやっていらっしゃるようですが、この表の数字というのは定額法ではじき出された数字のように承っておるわけでございまして、飛行機が老朽化した。つまり償却がかなり進んできておる。したがって、減価償却費が低くなった。その上に、普通なれば整備費も反比例にふえていかなければなりませんけれども整備費も同じように下がってきておるというのは、先ほどから作業報告書等々に基づいて、安全面で大丈夫だろう、大丈夫だろうと言いながら、整備費がかなり制約を受けておるのじゃないか。  そういう意味で、冒頭申し上げましたように、職員、従業員、社員、パイロットに至るまで、安全対策がなってないと言っている。現場で働いておる皆さんがそういう認識なんですからね。こういう数字からしても、朝田社長は安全は第一の問題だ、絶対的なものだ、こうおっしゃっておりますけれども、こういうデータからは一つもそうはなってない。特に整備の人員の推移などにつきまして、五十年と五十五年のデータを比較してみましても、五十年の段階では四千六百八十三名のものが、五十五年度までの間に漸次減ってきて四千四百六十九名と、約二百名ばかり逆に整備本部の人員も減ってきておる。つまり人間も減る、そして経費も少なくかける、こういうことから考えまして、必ずしも安全に対する整備状況というのが十分になされておらない、このように私は言わざるを得ないと思うわけでございます。  その点についてちょっと見解をお聞きしたい。
  75. 長澤修

    ○長澤説明員 ただいま先生から御指摘がございましたように、整備費を幾らかけておるか、整備の人間がどういう推移をしておるか、そしてその整備費と人間とによってなされます結果として出てきます整備の水準がどういう状態にあるか、これにつきましては私ども非常に関心を持って常時監視をしているわけでございます。結果として出てくる償却水準が向上する、そういう前提においてのみ整備費の問題あるいは整備人員がどう推移するかということを判断すべきであろうかというふうに考えるわけでございます。  ただいま整備費の指摘がございましたけれども、先生が御指摘になりました外部購入費用の中での整備の費用の割合が非常に下がっておる。この点につきましては私どもも関心を持ってその内容を調べたわけでございますが、外部購入費用の中には燃料費が入っておりまして、実はこれが昭和四十八年当時と比べますと高騰しておる。したがって、その結果として相対的に整備費の割合が下がってしまったということでございます。整備の費用を見る場合には、整備にかける人件費あるいは整備施設の賃借料あるいは減価償却費、そういったようなものを含めて整備費全体を見るべきかと思いますけれども、そういった意味での整備費というのは年々増加しておりますし、あるいは営業との関係整備にかける費用が総体の営業費に対してどういう割合に推移しておるか、こういう点をたとえばアメリカの航空会社等と私どもよく比べてチェックしておるわけでございますけれども、同じベースでチェックするというのは、航行援助施設料その他いろいろな公租公課の負担の割合等が違いますので、ダイレクトに比較するのはいろいろむずかしい問題がございますけれども、ベースを同じにして比較してみますと、日本航空整備にがけておる費用というのが営業の総体費に占める割合、これは外国の航空会社に比べても決して低いものではないということを確認をいたしております。そして、これらの結果として出てくる整備水準、つまり飛行機が機材の故障によって出発がおくれるとかあるいは機材の故障によって引き返す、あるいはエンジンが飛行中に停止する割合、こういった数字を私ども逐一チェックいたしておりますけれども、現在のところ、日本航空のこういうものに対する数字というのは世界のトップレベルの水準で推移しておるということで、ぜひ今後この傾向伸びるように、さらによくなるように私ども指導していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  76. 吉原米治

    ○吉原委員 私はいかに説明があろうとも、必ずしもいまおっしゃったように、安全対策に対して万全の策が講じられてあるようにいままでの御答弁の中では納得がいきません。四十七年の連続事故の教訓をひとつ忘れずに、もちろん日航の技術陣挙げてこの問題については取り組んでいただかなければなりませんが、航空機の事故というのは一たん起きますと大変な事態になることは御案内のとおりでございますが、大臣、せっかくいままでのやりとりの中でお聞きしていただいておるように、私は飛行機のことは素人でございますけれども整備状況は必ずしも十二分に行われていない。大臣はいままでのやりとりを聞かれてどういう見解を持たれたのか、あるいは日ごろ日航のそういった安全面に対して努力をされておるように社長は一生懸命に言っておられるけれども、そのとおりだと思っていらっしゃるのかどうなのか。いま技術部長が言いましたようにキャリーオーバーという、ふぐあいの点、個所を残したままで飛んでおるのがおわかり願ったと思うのですけれども、そういう点に対して大臣の決意のほどをひとつ聞かしていただきたい。
  77. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 いままでの質疑を聞いておりまして、吉原さんは安全対策上相当注意をしろということを喚起しておられますが、これは私は非常にいい指摘だと思うておりまして、こういう交通、特に航空という重要な事業に携わっておるものは絶えず安全対策というのを当然講じなければなりません。  私は、いままでずっと日本航空並びに日本の国内航空業者のやっておりましたものを見ておりますと、一言に言いまして比較的まじめにやってきておると私は思うております。それは個々に指摘すべき点はやはりあるだろうと思うておりますし、またその点については運輸省としてもこれからも十分注意して細かく検査もし、指導もしていかなければならぬと思うのですが、現在までの状況ではおおむね努力をしてきておると思うております。この事故が一たび起こりましたならば、何千億円、何百億円という損失をこうむるのですから、そのことを思いましたら安全あるいは機材の整備に投資するという費用はいわばまだ安いものでございまして、そういう経営効率からいっても安全に十分な投資をすることは結局企業の利益を守ることでもございますので、これからもなお一層励んでいくであろうと私は思います。しかし、いまいろいろ御指摘があって御心配しておられる点がございますので、私たちも今後会社と航空局の技術関係者とともどもにより細かく整備をすることについての研究をさせていきたいと思うております。  個々の内容につきまして、私も吉原さんと同じで全く技術のことはわからぬものですから、いま私は個々にいろいろと申し上げることはないのですけれども、総体的にいまの御質問の経過を聞いておりましたら、私はそういうものを感じたものでございますので一言申し上げた次第です。
  78. 吉原米治

    ○吉原委員 さらに、航空安全輸送をモットーとする航空会社の社内の管理体制、職場の環境、こういうものに私は非常に注目をしておるわけでございまして、その中で先ほどアンケートの問題についても質問いたしました。こんな意識では大変だなという気がいたしておりますので社長の見解をただしたわけでございますが、同じ四十八年に会社の方が、立教大学の早坂さんという方に委嘱をして従業員の意見調査というか、こういうものをやっていらっしゃる。「従業員の意見調査に関する総合所見と提言」というのが立教大学の早坂という先生の手によって出されております。この資料は恐らく会社が出された資料のはずでございます。  この資料で中身を読んでいきますとたくさん貴重な意見が書いてあるわけですが、わざわざ会社が従業員の意見調査、こういうものを委嘱されたねらいと、それからその結果どういう形で企業にプラスさしていったのか、反映さしていったのか、従業員に具体的にどのような指示を出しておるのか、これはひとつ日航の会社の方にお尋ねをしたいのであります。
  79. 朝田静夫

    朝田参考人 早坂アンケートというものによりまして一体会社がどういう措置をとったかという御質問でございますが、いま先生のお話しのように、この中にいろいろなことを指摘されておりますので、全部に触れて申し上げるわけにもいきませんけれども、特に精神的なあるいは肉体的な疲労を訴える者やあるいは業務中の危険感を訴える者が多いという点がございまして、これは運航の安全、従業員の健康、教育訓練等の問題でございますので、会社としては常々研究を重ねて最善のものをそれ以後追求してきております。  従業員の疲労につきましては、特に運航乗務員、客室乗務員ともに健康管理のためにそれ以後打った手は、専門の組織、体制というものを充実いたしましてきめ細かく運用を行っております。運航乗務員について言いますと、航空身体検査というものがございますが、単にこういう項目だけでなしに総合的な健康管理に最大限の努力を傾けております。客室乗務員につきましては腰痛という問題がその後大変大きな問題になってまいりまして、整形医を配置いたしましたり、リハビリテーションの施設を充実いたしましたり、あるいはカウンセラーの配置等の対策をとっております。  業務中に危険を感ずるというようなことに対しましては、連続事故以後八十八項目にわたる安全対策を政府にも御報告をいたしましたり、またその後総合安全推進本部で追加の安全対策も強化してまいりましたが、こういう安全対策を推進していく中で乗務員の意見を吸い上げあるいは聴取し、あるいはその対策の内容を職場に周知徹底するというようなことで危険感を除去するように努めてまいってきております。その後も各種訓練体系の見直しをやりましたり、教育の拡充に十分注意を払ってまいっておりますので、今後ともそういうものに対する充実強化についてさらに努力を続けてまいりたい、こう考えております。
  80. 吉原米治

    ○吉原委員 朝田社長、続いてお尋ねするのですが、この早坂提言といいますか、調査によりまして、最後のまとめの段階でこう書いておるのですね。日航の会社の実情について調査の結果「忌憚なくいえば、「巨大なる中小企業」の印象を禁じ得ない。」「巨大なる」という、その「「巨大さ」を感じさせるのは、職員と経営者との距離感、職種間のさまざまな相違とそれからくるアンバランス、コミュニケーションの不徹底さなどであり、「中小企業」を感じさせるのは、たとえば昇進・昇格の不公平、福利厚生の不十全感、人間関係についての配慮の欠如などの諸点である。」というふうな書き方をまとめの段階でされておる。これは何もどっちかに偏った方じゃない。会社がお願いされた大学の先生ですから、恐らく公平な意見だろうと思うのです。これが日航という会社の職場の実態なのか、あるいはまた「巨大なる中小企業」というふうな印象をこの大学の教授に与えるほど日航の労使というのは不正常な労使関係なのかと、こういう資料を読ましていただくと改めて心配になってくるわけです。少なくとも安全を第一義とする航空会社である以上、乗務員を主体にした全従業員が、そういう意味では、いま社長も言われておりましたように、健康にはもちろん留意をしなければならぬし、それは守っていかなければなりませんけれども、少なくともこの労使間の不正常さから来る仕事の非能率性といいますか、非常にやる気を失うとか、そういうものが出ておる、そういう職場の下地があるのじゃないか。後ほど触れますけれども、そういう下地というのは一体最初からそうであったのかというと、必ずしもそうではない。むしろ主導的な役割りを果たしてこられたのは会社の経営姿勢だろうと私は思うのです。  そこで、そういう大学教授の職場の調査報告書を見てもそうでございますが、そういう土壌がどういうわけで起きてきておるのか。私はこれは挙げて会社の労務政策のまずさだと思っておるのです。資料を見てみましても、日航はナショナルキャリアという、世界でも誇れる企業に成長されたかもわからぬ。しかし、その中身を一皮めくってみたときには、経営者の姿勢は、少なくとも前近代的な感覚の経営者だと指摘をせざるを得ないほど、経営者としては一番おくれた感覚を持っておる。経営者がよくやる手でございますが、不当労働行為の常習会社だ。まことに恥ずかしい次第でございますけれども、いままでに地労委、中労委で十五件も事件が発生をして、この十年来ずっとこういう不当労働行為の係争が絶え間なく起きておる。最近はどうも中労委の段階へ皆移って、案件も四件ぐらいに整理をされたように思っておりますが、ひとつ不当労働行為事件の現状を、これは会社のどなたかお見えになっていますか、説明していただけますか。
  81. 朝田静夫

    朝田参考人 ただいま早坂レポートといいますか、アンケートの、続けて御指摘がありました点もあわせて申し上げたいと思いますが、「巨大なる中小企業」という表現を使われておりますし、会社はこれを一体、まあ四十八年当時のことでございますけれども、私どもは謙虚にこの問題を受けとめておりまして、教育訓練や安全感覚の問題につきましては先ほど申し上げたとおりでありますが、人事考課というようなものも大変大きな影響を与えておるということは事実でございますので、この改善策といたしましては、考課項目を恣意的にやらないで、点数を明示するようなやり方をとりました。また、執務態度や能力や業績の、考課を見ますこういう要素の中で、態度だとか、そういうようなことよりもむしろ能力、業績を重視するというようなことにもいたしましたし、あるいはその考課の着眼点といいますか、ビヘービアチェックリストといいますが、こういう、考課者がどういうことを考えてどういう点に着眼をしなければならぬかというガイドブックのようなものも出して注意を喚起いたしております。  いずれにいたしましても、こういう意識調査の最終章に入りまして、調査報告書は、いろいろな問題や不満があるにしても、六割を超える人は、結局この会社に入ってよかったと、こう答えております。逆に、失望したという回答は一割に満たないというふうに総括しておられます。したがいまして、私はこれで満足しておるという意味で申し上げておるわけじゃございませんが、私どもは全体としてこれを把握いたしまして、いま言われたような疎外感、あるいは客室乗員あるいは運航乗員も、定着性がございませんので、非常に特殊な勤務態様で、ずっと地上で定着をして一般の地上職と同じような仕事をしておるわけではございません。なかなかコミュニケーションというものが徹底をするのはむずかしい業態でございますし、特にそういう点では少数グループの管理、こういうようなものを通じてできるだけコミュニケーションを図ってまいりたいということで、これも実現をしつつあります。運航乗員も、組織を改正いたしまして、そういうように少数グループの管理ということに重点を置いて充実をしてまいっております。いま、それに関連いたしまして、労務問題については御指摘のとおりいろいろとむずかしい問題を労使ともに悩んでおりますけれども、私どもはこれは精力的に粘り強く、人事、労務関係についてはお互いの信頼関係を確立して健全な労使関係を築いてまいりたい、こういうふうに考えております。
  82. 吉原米治

    ○吉原委員 ここでちょっと労働省に見解をただしておきたいと思いますが、いま日航の不当労働行為事件というのは、残っておるのが四件と私は聞いておるのですが、すべて中労委の段階へ移行されております。ところが、十五件あった中で、それぞれ東京都労委の出した命令がございます。この命令に会社側が、罰則のないことをいいことにして従わないというケースが出ておる。  最初に、労働省としてこの日航の労務政策、私はまことに前近代的な労務政策だなと思ってつくづく感心をしたりあきれたりしておるわけですが、労働省としてどういう見方を、この日航の労使の紛争、なかんずく日航の経営者の労務政策を理解されておるのか、それをまずお聞かせ願いたい。
  83. 中村正

    中村説明員 一つ会社の労務政策がいいか悪いかというのを判断するというのは、私ども行政官庁としても非常にむずかしい点であると思います。しかし、確かに先生御指摘のように、日航においては残念ながら多数の不当労働行為事件が係属しておる。最近においては昇格、昇給問題の差別をめぐりまして都労委の命令が出、中労委でいま審査が行われている、こういう状態でございます。  日航には、御存じのとおり、従来から複数の組合があるということから、それがゆえに労務管理を非常に複雑なものにしているという点はございますけれども、先ほどから繰り返し出ておりますように、人命を預かる重要な企業でございますし、万が一にも安全面への影響を及ぼすことがないようにというような点から、差別問題を含め、紛争ができるだけ早く解決するように私どもとしては望んでおります。
  84. 吉原米治

    ○吉原委員 課長さん、そこにおってください。  もう一つ、当時あなたかどうかわかりませんが、これはちょっと名前を把握しておらぬから言えないのですが、中労委から都労委命令の履行勧告が日航の会社に出されておる。当時の労働省の労働法規課長は、当該労組に、履行勧告が出されたら早速会社を指導します、こういうことを約束をされておるようでございますが、一体直接会社にそういう指導をされたのか。指導はしたけれども、それに会社は従わなかったのか、全然指導はしていないのか、どっちなのか、その辺をちょっと尋ねたい。
  85. 中村正

    中村説明員 当時の法規課長、現在の私でございます。確かに四月に中労委から履行勧告が出たところで会社に指導するというお約束はいたしました。現に会社の人事及び労務の責任ある方においでいただきまして、勧告の趣旨を尊重しまして紛争の早期解決を図っていただきたいというお願いをいたしましたが、会社側は、命令を履行するとなれば将来その回復が非常に困難であるということから、残念ながら履行ができない、こういうお話を伺っております。
  86. 吉原米治

    ○吉原委員 これは二時間いただいておるから十二分にできると思うておったのだが、もう残り時間がなくなってしまったのですが、私がなぜこういうことをわざわざ運輸大臣の前、日航の社長も来ていただいて聞いておるかというと、少なくとも国策会社である会社が法を守らない、あるいは監督行政機関の指導にも従わない、こういう経営姿勢を私は大臣にもよく認識をしてもらいたい。そういう会社に今度は監督権限を弱めるというのだね。強化するというのではなくて、弱めるというのだ。だから、こういう企業、法律も無視し、監督官庁の言うことも、罰則のないことをいいことに言うことを聞かぬ、従わないというそんな会社に法的な権限を緩和するということはいかがなものか、こういう認識をひとつ大臣に私はよく承知をしてもらいたいということでわざわざ尋ねておるのですよ。会社の不当性というのは、罰金も二百万ずつ三回も払って、罰金を払えばそれで事は済むような感覚かもわかりませんけれども、そんな会社では困るわけで、いまの話を聞かれて大臣、どう思われますか。けしからぬとお思いにならぬですか。あたりまえですか。
  87. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 日本航空の中に、一部の組合と日本航空との間が、お互いが相対抗しておって、労使がうまく一部の組合との間にいっていないということは承知いたしておりますが、しかし、事ここに至るまでには、私はどちらがいい、どちらが悪いということではなくして、やはり長い間のいきさつがあると思うのであります。ですから、この際願わくは一刻も早く労使お互いが理解しなければ、片一方だけ責め立ててみましても、これはやはり両方あっての話でございますから、そういう話し合いをして円満に解決してもらいたい。これはもう私らといたしましては非常に強く期待しておるところであります。
  88. 吉原米治

    ○吉原委員 朝田社長に重ねて尋ねますが、いまもって一万二千名の組織になっておる全日本航空労組ですか、これが職場の圧倒的な組織を持つ組合なんですが、今日までいろいろ差別扱いをされて、俗に言う第二組合ですね、この第二組合を育成強化するために今日まで、いろいろな計算方法はございますけれども、経費援助をされて圧倒的な多数の組合に育てられた。いや、おれはそんなことはやっていないとあなたはおっしゃるかもわからぬが、そうは言わせないですよ、いろいろな資料がありますから。私どもの資料に基づいて計算をしますと、第二組合を育成するために使った経費というのは約三億円に上るというのです。いまの日航の社員をいい子、悪い子をつくって、片一方にだけそんな経費援助をして、非常にいびつな形の職場の環境にしてしまう、その結果がすべてこの会社の業績にはね返ってくる、あるいは職場が暗くなる、やる気をなくす、そんなむだな経費をなぜ使われるのか。  いまもってまだそんなことをされておるのでございますか、いまはもうやめられたのですか。
  89. 朝田静夫

    朝田参考人 ただいま御指摘の三億円も援助しておるというようなことの話は、恐らく労働生産性研修会のことを指しておっしゃっておられるのだろうと私は思いますが、これはずっと以前は日航連盟という、いまのたくさん職能別に分かれておる組合も皆一緒になっておりましたときから、この労働生産性研修会というものを会社と労働組合と共同で共催をして行ってきておったものでございます。その後連盟がいろいろな事情でなかなか一緒になれませんので、全労と会社の側で一緒になって共催という形でそれぞれの費用を分担をしてやっておるものでございまして、生産性本部にその研修会というものを委託してやってもらっておる、こういうことでございます。このことが組合への差別をやっておるというようなことには当たらない、私はこういうふうに考えております。
  90. 吉原米治

    ○吉原委員 不当労働行為の審問会の席のようなことを私はここでやろうとは思いませんが、非は非で率直に社長もお認めになって、いや、それはいろいろ考えたけれども悪かった、おれの方の労務政策のまずさから今日あるのだ、その点は率直に認めなければ、社長いけませんよ。いろいろここでそうじゃないとかあるとか、不当労働行為の審問会で証人に問いただすような、そんなやりとりはしようとは思いませんけれども、皆わかっていらっしゃるわけだから。  いずれにしても今日まで、社長、あなたは十年この方社長をやっていらっしゃる。社長の意のままに部下が動かなかったのか、社長の真意をくまずに勝手なことを中間の管理職らがやったのか、そこら辺は私はもっと突っ込んであなたの会社の中身を勉強させてもらわぬとわかりませんけれども、いずれにしてもあなたの会社のあなたの労務政策、あなたが今日までとってこられた労務政策のまずさからこういう事件が起きておることは事実でしょう。それは反省していらっしゃるのですか。
  91. 朝田静夫

    朝田参考人 私はいま労働生産性研修会の話をいたしましたが、それはただ単にそれだけの説明を申し上げたつもりでありまして、いまの根本的な問題については私も大変残念に思っております。そして、私の責任であるとも思っております。それは痛感をいたしておるのでございますが、これはどうしても労働組合の分裂というようなこともございまして、ストライキが頻発をする、そういうものについていけないという労働組合同士の問題もございます。私どもがそういうものに手をかしたとか、あるいは不当労働行為——不当労働行為一件だけ御指摘をいただいて、私どももその非を認めて、今後一切そういう不当労働行為と間違えられるような行為すらやってはいけないというようなことにも厳重通達をいたしております。  ただ、今日こういうような労使の紛争があるという事実を考えてみますと、私は本当に残念に思っておりますし、これでいいとはもちろん毛頭思っておりません。したがいまして、労使双方に信頼関係を確立いたしまして、正常な、健全な労使関係を何とかしてつくり上げたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  92. 吉原米治

    ○吉原委員 それでは、ついでに社長にお尋ねするのですが、いま中労委で四件係争中なのでしょう。この四件の係争中の案件はいつごろまで中労委で審問が続く見通しですか。まだ一年も一年半も二年もかかるのですか。そんなことをしておったらますます労使の正常化がうまくいかない。その結果がどういう形になってあらわれるか。大変な事故なんというものにつながる危険性というのは、これはもう航空会社だけでなくて交通関係の企業は皆すべてそれが重要なのです。労使がぴしっと気合いを合わせる、そこに安全輸送という使命が達成される。職場で反目をし合い、けんかしておるような状況で、何で安全輸送という期待にこたえられるのですか。  そういう意味で、私は、現在四件中労委で係争中のようでありますが、何も裁判所のような形で論議をしなくたって、早速労使が直接裸で話し合いをしたらいいのではないかとさえ思うのです。もし時の氏神でどなたか第三者が介入して、ひとつうまく話し合いをしようじゃないか、俗に言う和解ですね、そういう和解の呼びかけでもあったら、あなたはその線に沿って円満に話し合いで片づけよう、日航ともあろう会社、企業の労使が中労委の場で、そういった公的な場で、やったとかやらなかったとか、そうであるとかないとかという論争をするというのは実にぶざまなことだと私は思うのですよ。そういう意味で、和解をしたらどうかという第三者の勧めがあったら、社長、あなたはそれに気持ちよく応じられますかどうですか。
  93. 朝田静夫

    朝田参考人 中労委のただいま御指摘の日航労組の賃金差別問題に関してでございますが、これは御承知のように、組合と会社が相互に譲歩をいたしまして、立証協定というものが合意されまして、その協定に基づいていま審問が行われておるどころでございます。  そこで、立証協定で十八回の審問を行う予定になっておりまして、そのうちいまようやく四回が済んだ段階でございまして、いまこの段階ですぐ自主交渉に入れると私は思っておりませんが、いま先生のお話しのように、審問の途中で和解とかいろいろな形が想像できることは事実でございますから、そういう可能性に基づいて、絶対に自主交渉の場があり得ないというふうには私は考えておりません。したがいまして、審問の進展状況等も関連いたしますが、まずいまの段階ではまだたった四回しか審問をやっておりませんから、いまの段階ではこれを続けて審議を尽くしていただくということが必要だ、こういうふうに考えております。
  94. 吉原米治

    ○吉原委員 以上、大綱四点にわたって、私は人的な面あるいは技術的な面から見て、日航という会社の経営姿勢といいますか、それを正さなければならぬじゃないかという意味からいろいろお尋ねをいたしました。その中で明らかになりましたように、私は法治国家である今日、法に対する感覚のなさといいますか、そういう中で監督権限を緩和する今日の法改正は必ずしも必要はない、むしろそれよりも先に、いま私がいろいろ申し上げました点について、なるほどナショナルキャリアとしての企業である、人的にも技術面でも模範的な企業だ、こういう企業にいつまでも政治が介入してああだこうだと言うことよりも、自由に濶達にひとつやってもらおうじゃないか、こう信頼ができるような体制にされることが私は急務だと思います。  私は二時間の持ち時間で、まだ足りませんけれども、足らない点はもう一時間予備に持っておりますから、一応きょうの会社側の御答弁を聞いて、もう一回整理をして今度は次回の委員会でやりたいと思いますので、きょうは時間が参りましたから、この程度で終わります。  ありがとうございました。
  95. 小此木彦三郎

    小此木委員長 次に、西中清君。
  96. 西中清

    ○西中委員 今回、日本航空株式会社法の一部を改正する法律案が出たわけでございますけれども、その前に航空企業の運営体制、昭和四十一年、四十五年、四十七年、それぞれ閣議了解によって、その時期に適応した航空企業の運営体制についての政府の方針が示されてまいりました。  今日、午前中からの議論にありますように、航空業界、企業を取り巻く環境というものもやはり大変な変化を来しておるわけでございます。今日、需要が頭打ちの傾向、さらに燃料を中心とするコスト上昇、そうしたことで各社、航空三社を中心に低空決算というような状況もございます。さらには、ある企業では地方ローカル線を切り捨てたいとかいうお話も出ておるようでございます。また、運賃につきましても、割引をするという一面、また値上げをしたいという話も出ております。非常に一つの曲がり角に来たような気もするわけでございます。さらに、日本とアメリカの関係、いわゆる日米航空協定、さらにはこの両国間の権益の問題に関して協議が行われるというような段階でもございます。  こういうことを踏まえまして、四十七年以来のこの航空企業の運営体制について政府の方針、政策というものは見直す必要があるのではないかとも考えられるのですが、政府にいまそういうお考えがあるかないか、まず最初にお聞きをしておきたいと思います。
  97. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 いわゆる四十五年、四十七年体制と申しましょうか、これに対する見直しをするのかという御質問でございますが、確かにいま御指摘になりましたような内外ともに非常な変化が起こってきております。とはいえ、いまその変化が一定の形で定着してきたとは思えない状況でございますので、われわれはまずそういう航空業界全体の動きというものをもう少し見定める必要があると思うております。  それからもう一つは、航空関係に関しますところの社会資本の充実というものがまだ十分ではございませんので、こういうようなものがある程度完備してまいりましたときに、航空業というもの、航空が全体の交通量に対してどのような新しい使命を帯びてくるかということが、この社会資本の充実とあわせて考えられる問題だと思うております。そういう事態になりましたときに見直すべきではないかと思うております。したがいまして、現在の時点においては、その状況を見直すつもりはございません。
  98. 西中清

    ○西中委員 そこで、早速この法案に入るわけですが、前提となりますこの法律案の提案理由、非常に簡単に書いてあるわけですが、この法律改正理由でございますけれども、これはいろいろの要素が入っているようですが、たとえて言いますと、大臣がお読みになったこの提案理由の説明の中には「政府助成の適正化を図るとともに、民間の活力を十分発揮しつつ、より自主的、弾力的な事業運営を行い得るよう措置することとした」、こういう日本航空の経営を民間活力を十分発揮できるようにしよう、そして自主的、弾力的な事業運営を行うということに重点があるのか、また一方では、いわゆる行財政改革という面から行政簡素化、そういった要素もこの改正の中には盛り込まれておるのじゃないかというように見ておるのですが、そういう要素もあるが、力点はどちらに置かれておるのか、まず最初に聞いておきたいと思います。
  99. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 力点は、むしろ先ほどお読みになりました中の活力を与えるということ、自主的な運営によって弾力性のある経営をしてもらいたい、これが主眼であります。しかし、そのことによってやはり効果としては、一つの効果として行政改革につながる効果も出てきておるということはわれわれも期待しております。
  100. 西中清

    ○西中委員 そこで、お伺いをしますのは、まず最初に、今回の改正で、役員の大臣の認可についてでございますけれども、現行法は会長以下常勤取締役、ここまでになっております。それが改正案では全役員にわたっておる。いわば大臣の権限の強化、こういう形になっておるわけですね。  そうしますと、この改正基本方針、いま申されました機動的、自主的運営をするという上において逆行するのじゃないか、こういうふうに私としては印象を受けるわけですね。しかも、三十年改正の当時から見れば、もう政府所有の株式というものは比率がうんと下がっておる。こういう中において、人事に関してこういうように大臣認可という、全役員認可するという強化をしなければならなかったその理由は何でしょうか、お伺いしたいと思います。
  101. 松井和治

    松井(和)政府委員 ただいま御指摘のように、今回の改正で、従来常勤取締役に限っておりました大臣認可の対象範囲が、全役員に広がったということでございます。今回の改正におきまして、役員の法定制並びに業務執行組織等の規定について削除をいたしまして、人的側面における監督、これはすべてこの役員の認可の規定で、いわば国が日本航空株式会社の業務運営に当たる役員に信任を与える、こういう意味合いで人的側面における監督をいわばこの一項目にしぼったわけでございます。  その際、取締役というのは、先生御案内のように、商法上も常勤取締役と非常勤取締役の差は全くございません。先ほども質問にございましたが、社外役員の広い知識経験を生かしていただくという必要性は今後も非常に高くなってくると思いますし、そういう意味合いで、常勤取締役、非常勤取締役の差を設ける必要はないという判断から、非常勤取締役にまで認可対象範囲を広げた。  また、監査役につきましても、御案内のように、近来監査役の権限は著しく強化の方向に向かっております。これも重要な職責でございますので、監査役につきましても認可の対象に加えた、こういうことでございます。
  102. 西中清

    ○西中委員 説明はよくわかりますが、基本的な方針からいって、私はこれは逆行しておると思うのです。よけいな人事干渉をする、こういう強化をする必要が何であるのか、ぜひしなければならないという理由は何か、もう一つこれはわからぬ。  参考人にお伺いをしますけれども昭和二十八年当初には、これはたしか代表取締役だけが大臣の認可だったと思うのですね。むしろこの精神から、提案の趣旨からいけば、私はその線まで引き下がってもいいんじゃないか、こういうふうに考えます。この点はいかがでしょうか。特に私はいまおっしゃった中で、確かに監査役というのは非常に重要な位置を占める今日でございますからこれはわかるとしますが、ほかの役員すべてということは、会社にとっても余りいいことではない、私はそう思うのですが、参考人の意見を聞きたいと思います。
  103. 朝田静夫

    朝田参考人 法制定当時の昭和二十八年当時は、御指摘のとおり、こういうことはございませんでした。ただ、今回役員の法定制あるいはその業務組織の問題は全部定款に譲る、こういうことになりまして、大臣からお話がございましたように、事業経営に弾力的な、機動的な経営を確保してやるのだ。したがって、私どもの感触といたしましては、それだけに自主性が拡大いたしますと同時に責任も倍加されておるというふうに考えておりますので、従来なかったものではございますけれども、役員の経営責任を重く一般的に見られたというふうに解釈をいたしております。
  104. 西中清

    ○西中委員 いま企業の経営者としての責任が重大になったのだから、なお逆に言ったら、会社にとって最も必要な方をみずから選んで取締役にしていく、これが筋じゃないですか。一々大臣に認可を受けて、それを待って、これはだめだ、いいだなんというクレームをつけられたんじゃ自由に動けないでしょう。私はこの特殊法人というこういう形態の中において、いろいろと問題はあるけれども、一面ではやはり第二の国鉄というような、何でもかんでも縛りつけて身動きができないような状況に置いておくということがある面では問題があるわけですから、こういう点で少なくとも二十八年の時点まで下がったっておかしくない、こういうように思いますけれども、もう一度大臣にお伺いしたいと思います。
  105. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 それはやはり一つの考え方だと私は思います。今回改正しましたときには、いわば経営者だけはちゃんとしてもらいたいと一いまでもちゃんとしておりますが、悪いと言っておるわけじゃないですけど、経営者はやはりちゃんとしてもらいたいという気持ちがあること、それから政府関係の特殊会社理事だとか取締役の選任が認可制であるということ、これはたくさんあるのです。  そこで、今度この法改正で、会社に定款で役員の数を決めさすということは大きい権限を与えた、だからまあまあ選任するのにこちらの認可を一応とれということ、片方で権限を緩めるかわりにちょっと届け出をして、届け出と言ったら失礼ですが、いわば認可ですね、せよというのは、まあまあその辺が何と言いますか、一種の妥協みたいなことで考えた、そう思うておいてもらったら間違いないだろうと思いますが、私らもむずかしく考えてこれに大きい重大な意義を持たせてやっておるというものではございません。しかし、役員たる人はどんな人だろうということは最大の関心を持っております。
  106. 西中清

    ○西中委員 最後の言葉、ちょっとひっかかりますね。どんな人がなるのだろうという重大な関心を持っているというところに問題がある。やはり私は経営として、会社として最もふさわしい役員を選出する、これは政府がよけいな関与をしない、こういうように強く要望しておきたいと思うのです。  それから、参考人にお伺いをいたしますけれども、先ほどもちょっとお話がありまして十分な御答弁がいただけなかったのですが、今回十八名の役員の規定を外して何名にされるのか、これはやはり構想があると思うのですね。特に常勤、非常勤、それから生え抜きの社員の中から取締役をつくっていく、いろいろな考え方があると思いますが、その辺はどういう考え方をお持ちなのか、御説明をいただきたいと思います。
  107. 朝田静夫

    朝田参考人 定款に譲って、そして大臣認可事項から外れますと、先ほどから御説明を申し上げておりますように、緊急増員をして補強をしたい部門は、先ほど挙げたような運航関係で安全をさらに重視する、あるいは国際競争がますます熾烈でございますので販売の強化をする、あるいは欧州、米州、そういった地域管理体制をどう考えていくか。しかし、一挙に多くの増員を、この際法律が通ったからといってやるつもりはございませんで、緊急な部門にひとつ配置をしてやってまいりたい。いま人数を各部門について明確にお答えをできないような答弁をいたしておりますが、これは慎重に他社との関係その他を見て決定をいたしたい、こう考えております。  もし増員をして、役員の候補者をどういうふうに考えるのかというお尋ねでございますが、外部からの者が、いま十八人のうち、社外重役は除きまして、十六名のうち五名おります。他は全部内部からの職員が役員に昇格をいたした方ばかりでございますが、今回もしこの法案が御審議を経て通過すれば、私どもの考え方としては内部から今後はできるだけひとつ登用をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  108. 西中清

    ○西中委員 次に、十二条についてお伺いをしておきたいと思います。十二条では、「会社は、航空機その他運輸省令で定める重要な施設を譲渡し、若しくは担保に供し、又は有償で取得しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。」こういうことになっておるわけですが、事業の運営という点からまいりますと、一々大臣の認可をとるということ、私はこれはもう明らかに手足を縛る一つの条項ではなかろうかと考えておる。この点、運輸省としてはいかがお考えか、聞かせていただきたい。
  109. 松井和治

    松井(和)政府委員 法十二条の関係でございますが、航空機その他重要な資産というのは、当然のことながら事業運営の根幹にかかわる重要な施設でございまして、それを取得、処分するというのはこれまた重要な商行為でございます。政府といたしまして、会社の適切な事業運営を確保するという観点、さらには政府出資が、先ほど申しましたように、四〇%を占めておる、いわば税金が出資されている会社を国民にかわって監督する立場にある役所が、このような重要な行為につきましてその行為の適否を判断するというのは当然のことと考えております。
  110. 西中清

    ○西中委員 とりわけ「有償で取得しようとするときは、」とございますが、これは三十年の改正で追加をされておりますね。企業体がいろいろとこういうものを購入するという場合に、大臣の認可を待っておる。土地、建物、航空機、それぞれ待っておる間にどんどん値上がりする。こういう考えからいきますと、よけいな金を日本航空は使う。税金で責任を持って見ていかなければならない会社という考え方、さらに行財政の上から言って今後補助金もカットするという中において、この条項を残しておくということは、やはり機動的、自主的、弾力的な運営上非常な支障があると私は思っておるのです。いま日航は国際路線を主体にしておるわけですが、より厳しい競争条件の中でこれから運営をしていかなければならない。そこでどんどん赤字をふやすというようなことがあってはならないわけですから、この大臣認可を一々こういうことで受けなければならないということについては私は非常に支障が多いと思います。  この点、参考人はどういうような御意見をお持ちか、伺っておきたいと思います。
  111. 朝田静夫

    朝田参考人 重要財産の取得については十億という先ほどからの金額がございます。やはりこういうものは、もっと引き上げるかという問題はございますが、五十三年、最近改正をされたわけでございますので、私はとりあえずいまの段階ではこのところが適当ではないかというふうに率直に考えております。そして、いろいろな制約があってタイミングを失するというようなことも実はあると思いますけれども、できるだけその運用を支障のないように運用していただきたい、こういうような希望を持っております。
  112. 西中清

    ○西中委員 何か御遠慮なさっているようなお話ですが、実際相当負担がかかっているでしょう。これは省令を見ますと一億、そして十億、こういう一つの制限がある。大臣に認可申請をしてすいすいとすべてが早々と認可なされるのならよろしいですよ。しかし、事実はそうではないと思うのです。たとえば航空機の場合、大型機ですといろいろなものを合わせて大体百五十億というようなお金がかかるのでしょう。発注してから大体二年半、大臣に認可申請を出す、こういう形になっておるわけですから、すぐによろしいですよという返事が返ってくればまだいいけれども大臣の認可を待っている間にいわゆるベーシックプライスということで年二回は三%、三%ずつ航空機が値上がりしていくじゃありませんか。それだけよけいに飛行機代は高いものを買わなければならぬ。土地、建物にしてもそうですね。ちょっとしたものを買えば十億をはるかに超えてしまうに決まっているわけですよ。認可を待っている間に値はどんどん上がっていくわけですよ。日本航空は国民の財産というような立場に立つならば、これは明らかに損害をかけているということになるのです。  ですから、この十二条のこういった省令に基づく問題は、これは見直した方がいいんじゃないか、省令をもう少し緩和した方がいいんじゃないかと私は考えるのですが、もう一度答弁をいただきたいと思います。大臣から。
  113. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これからはやはり傾向としてはそういう方向に向いていくと思います。しかし、御承知のように、過去におきます政府とそれから政府の公社公団あるいは特殊法人との関係というものは、いわばがんじがらめにやってきた気配がありますね、いままでの経過は。私は、行政改革の面から言いましても、一つはそこいらが今後の行政改革のポイントだと思うております。それから、企業が自由に活動するのにはできるだけ当事者能力をつけてやった方がいいと思います。最大に縛られているのが国鉄なんです。国鉄が何でこのように苦しい状況になったかと言ったら、当事者能力を与えないでしっかりやれ、泳げと言っているようなものなんですね。そういう点等いろいろ考えていきますと、これからの方向としてはそういう方に行くであろう、しかしそう一遍に何もかも急に、西中さんのおっしゃるようにはいかぬものなんですね。だから、段階を経てわれわれも考えていきたい。  そこで、この十二条の問題は、そんな文言そのものよりも運用だろうと私は思うておるのです。この法の適用、運用、これにつきましては、先ほどお話ししておられるように機動的に、行動しやすくするようにわれわれも十分配慮していきますし、また過去の経過から見ましても大体そのようにしてやってきておると思うております。今後もその気持ちは十分に参酌していきたいと思います。
  114. 西中清

    ○西中委員 ぜひこの省令は再検討していただきたい、これを強く要求しておきます。  さらに、十二条の二についてお伺いをしておきたいと思います。  現行法は、営業年度の開始前に、運輸省令で定めるところによって、当該営業年度の事業計画資金計画収支予算、これを大臣提出してその認可を受ける、こういう形になっておりますね。これが簡素化された、私はいいと思うのです。簡素化されたことは評価しますけれども、この省令で定められておる事業計画ですね。ここには一、二と二つの事項、これが必要だということになっていますね。一「事業運営の基本方針」「二 各半期における路線ごとの基本となる運航回数及び使用航空機の型式」、こういう二つの内容を含んでおるわけです。  今回、資金計画収支予算の認可が外れたわけですが、これは確認の意味で、この項目についてはそのまま残るのか、何か新たに加わるものがあるのか、その辺はいかがでしょうか。
  115. 松井和治

    松井(和)政府委員 ちょっと御質問の意味がはっきりわからなかったのですが、このまま残るのかというのは、その十二条の二の……(西中委員「事業計画」と呼ぶ)事業計画はそのまま残ります。事業計画の認可制はそのまま残ります。
  116. 西中清

    ○西中委員 そうすると、これ以外のものは要求しない、そして三条、四条はカットされる、こういう形になるわけですね。確認しておきます。
  117. 松井和治

    松井(和)政府委員 失礼いたしました。省令の規定でございますか。私は法律と勘違いしておりましたので失礼いたしました。  省令の規定につきましては特に変える予定はございません。
  118. 西中清

    ○西中委員 ですから、もう一遍確認しますよ。二条は何ら変わらない。三条、四条、五条、五条の事業計画はまだ残っておりますけれども、これは消滅するというか、削除するというか、そういう形になるのですね。
  119. 松井和治

    松井(和)政府委員 事業計画の中身についてではなくて、先ほど御答弁申し上げましたように、資金計画収支予算は今回認可制から外れるわけでございますが、これは事業計画の添付書類にするつもりでございます。
  120. 西中清

    ○西中委員 そうすると、省令はどういう扱いになるのか、もう一遍精査して、いまの説明じゃぼくはよくわからないんだ。これははっきりさせてくださいよ。どういう省令が出てくるのかわからぬからね。これは全部ひっかかっているでしょう、三条も四条も五条も。この扱いはどうするのかということを聞いておるのです。
  121. 松井和治

    松井(和)政府委員 省令の二条は、事業計画について申請書の中身、記載内容を書いてございます。これは事業計画の認可制度が残るので変わりはない。それから、三条が資金計画の認可の中身についての規定でございます。これは先ほど申し上げましたように、事業計画の添付書類にするということでございますので、その旨の改正は当然行うという予定でございます。それから、第四条が収支予算の中身でございます。これも収支予算の認可申請書という書き方をしておりますが、認可制が外れますから当然その改正は行いまして、これまた事業計画の添付書類という改正をいたす予定でございます。それから、五条が事業計画資金計画収支予算の変更の認可の規定でございます。これは資金計画収支予算は認可制がなくなりますので、当然その旨の改正をいたしまして、事業計画の変更のみの規定となる予定でございます。
  122. 西中清

    ○西中委員 ですから、いまの説明によりますと、法律上は事業計画だけを残して、あと資金計画収支予算及び資金計画等の変更の認可についてはなくなるけれども添付資料として提出をさせるということであれば、実態的には変わりはないということになるのじゃないですか。その点はいかがですか。
  123. 松井和治

    松井(和)政府委員 これは認可の対象ではございませんので、あくまでも参考資料でございますので、大きく違うと思います。
  124. 西中清

    ○西中委員 行政簡素化と言うんだから、余りごちゃごちゃしたものは添付させないようにした方がいいのじゃないでしょうか。大臣どうでしょうか、御意見を。
  125. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これからはそういう方向に政府も考えていかなければいかぬと思います。
  126. 西中清

    ○西中委員 そうしましたら、省令は中身はほとんどなくなっちゃうというか、こういう形になるわけですね。  ですから、これは委員長にお願いしたいのですけれども、どういう省令が出るのか、委員会提出を願いたいと思いますが、取り扱いのほどをよろしく。
  127. 小此木彦三郎

    小此木委員長 後刻理事会で協議します。
  128. 西中清

    ○西中委員 次に、政府所有の株式についてお伺いをいたします。  第二条で、会社が新株を発行しようとするときは運輸大臣の認可を受けなければならぬ、こういうふうに大臣認可がまた一個ここで加わっておる。要するに、この趣旨とまた反しておる。その理由は一体なぜか、何なのか、その点を御説明いただきたいと思います。
  129. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 それは西中さん、ちょっと議論が違うと思います。これは御存じのことだと思うのですが、行政改革の一つの考え方として、民間企業の自由な活力を醸成していくためには、余り行政で介入しないようにしたいということ、これは私は先ほど申しております。しかし、日本航空株式会社というものに対し、政府は約四〇%近い株を持っておるのです。ですから、これは大変ないわば国民財産としての管理を任されておるわけですから、それが株式そのものの評価が政府が全く知らない間に下がってしまうかもわからぬというような、そういうことをされるということは、これは国民の利益を守る点からいって好ましくないことだと思います。でございますから、借入金をして事業の資金をつくるということにつきましては、社債の発行限度なんかをふやして、それだけ活力をつけるようにしておるのですから、資本をふやし、あるいはその措置をするというときには、これは政府干渉の一番きつい、政府に相談してもらわなければいかぬ、これは当然のことだと思うのです。そういう意味におきまして、これは認可制にしたということでございまして、これは御理解いただきたいと思います。
  130. 西中清

    ○西中委員 それで、新聞等でもすでに伝えられているのですが、もう一遍確認しておきますが、政府所有の株式は、今後いかに増資が行われても三分の一は絶対確保するという方針に間違いはございませんか。
  131. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 仰せのとおりでございまして、三分の一は確保いたします。
  132. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、航空機会社の投資というものは金額が非常に高いですね、飛行機が一機千百五十億というような。増資を計画した場合に、三分の一を確保するためには政府が持ち株数をふやさなければならぬ。相対的にこれはふやさなければならないのは当然ですね。そうすると、政府の増資の払い込みが必要である。一方、小さな政府、こういう考え方からいきますと、また今日政府が盛んにおっしゃっておるように財政に余裕がないと、こういう増資のケースの場合に、政府の財政事情によって増資の認可が左右されるというケースも理論的にはあり得るわけですね。  これは参考人に聞きたいのですけれども、こういう御心配はお持ちになっておりませんか。
  133. 朝田静夫

    朝田参考人 三分の一を政府確保するという大臣の御答弁がございましたので、一般会計かその他の産投特別会計か、政府が積極的に出資される、そのときの財政状態によって認可しないというようなことはあるまいというふうに私は考えております。三分の一はあくまでも堅持するというふうに言明をいただいておるわけでございますから、何らかの手だてを尽くして政府も出資に応じられる、こういうふうに私は考えております。
  134. 西中清

    ○西中委員 いま参考人は、絶対にないというふうに信頼している意味のお話がございました。間違いありませんか。
  135. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 国の財政状況からそういうことは起こり得ない、それはやはり朝田参考人の言っているとおりでございます。ただ、西中さん考えていただきたいのは、増資をするということは、いわゆるナショナルキャリアとしての体面を保つために絶対に事業資金が必要であるか、あるいはまたそれが利益を生むから、そういう見通しが明確になっておるから増資の必要があるんだということか、いずれのときかでございまして、今度の法律で後配制をなくしまして政府も配当を受けるということになります。そういたしますと、配当が確実にされるような事業会社である限りにおいては、これは増資に応じても何ら財政上の制約というものはあり得ない、そういうように思います。
  136. 西中清

    ○西中委員 現時点の話としてそういうことであって、配当ができなくなる事態もやはりあるわけですね。要するに、将来のことを考えて私は申し上げて、またこれが補助金条項復活などという、こういうことにならないように私は聞いておるわけなんです。ですから、もしもそういう事情で財政事情が許さぬから増資は待てということになれば、ほかの方法でやはり調達してくるしか道はなくなるわけですね。そうすると、それだけ金利負担がいろいろとふえてくる、こういう形になると、日本航空の経営悪化ということにつながってくるのですから、その点非常に危険があるのじゃないか、私はそう考えるのです。ですから、認可は大臣に一々受けなくてもいいようにしておけばいいのじゃないかということを話しておるのです。  こういう私の考え方について、もう一度、大臣何かありましたら。
  137. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 増資をするというときは、直接の資金どうのこうのというよりも、もっとやはり会社としての意義が違うと思うのです。資金が必要ならば、借り入れした方が増資するよりもコストは安いです。けれども、やはり増資をしなければならぬというのは、新しい事業の根本的な拡大を図るとか、あるいは先ほど申しましたナショナルキャリアとしてこうなければならぬというときに増資が起こってくると思うのです。けれども、そのいずれの場合にいたしましても、やはり利益が保証されておる、配当が保証されておるということが前提になってこなければその事業を認めるわけにもまいりません。だから、新しく発展する事業と増資というものは一体になっております。ですから、その点は余り心配していただかぬでもいいのじゃないかと思うております。
  138. 西中清

    ○西中委員 ただ、経営悪化した場合に自己資本率が非常に下がってくるわけですね。そういう点では会社の信用性というものは低下をする、こういう問題も実は一方ではあるわけですよ。まあ大臣が、配当している限りにおいては増資に応じる、こういうお話でございますから、この議論はこれでとどめますけれども、私の言わんとするところは、できるだけ機動的な動きができるように、認可はない方がいいのじゃないか、こういう意見を申し述べておきたいと思います。  同時に、この権限をもって、いわゆる権限の行使を強めるということはあってはならぬと思うのですよ。そういう点も重ねて申し上げておきたいと思います。  それから、今度の改正には直接関係ございませんけれども、第一条の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  これは日本航空は、運送事業をするのに「国際路線及び国内幹線」と、こういうふうになっておるわけですが、この国内幹線というのは一体どういう線を言うんでしょうか。これをお伺いしておきます。
  139. 松井和治

    松井(和)政府委員 国内幹線につきましては、四十七年の大臣通達において国内幹線、そこで括弧をいたしまして、札幌、東京大阪、福岡、那覇と、五つの空港を括弧でくくってございまして、この五つの空港をそれぞれ結ぶ路線、これを私ども幹線と考えております。
  140. 西中清

    ○西中委員 なぜそういうふうに決まったのか、理由を聞かしていただきたいと思います。
  141. 松井和治

    松井(和)政府委員 ただいま申し上げました五つの空港は、国の基幹的な空港であることは御承知のとおりでございまして、北は札幌から南は那覇に至るこの中心的な空港、これを相互に結ぶ路線、これがすなわち幹線であるというふうに考えております。
  142. 西中清

    ○西中委員 札幌、東京大阪、福岡、那覇、それ以外に重要な線として新たに国内幹線というものは考えられないということですか。何か基準があるのですか。これはただ縦にすうっと通っているからという物理的な問題だけですか。
  143. 松井和治

    松井(和)政府委員 当然幹線という概念に明確な定義があるわけではございませんが、ただいま申し上げました五つの空港、これはこの四十七年当時にまさしく国の北から南までを貫く一本の線の中心となるべき地点ということで選ばれたわけでございますが、未来永劫この地点以外が幹線たり得ないかということになりますと、これは必ずしもそういうことは言えないというふうに考えられます。
  144. 西中清

    ○西中委員 現時点ではどうなんですか。
  145. 松井和治

    松井(和)政府委員 御承知のように、航空機がまだ初期のころにおきましては、ただいま申し上げましたような幹線のポイントとなる地点からそれぞれ枝が出まして、いわゆるローカル線という形で始まったわけでございますけれども、その後航空機が大型化するに伴いまして、いわゆるビームラインと称する東京大阪から直接地方空港を結ぶような路線、これがだんだん発展してまいっております。そういうことから、幹線の輸送量にかなり近い輸送量を持つビームラインというものが逐次あらわれてきておるというのは事実でございます。
  146. 西中清

    ○西中委員 だから、相当変化しておるわけでしょう。四十七年から十年近くたっておるわけですね。ですから、この幹線の概念も、これはやはり明確にしておいた方がいいと思うのです。どこが、何が基準になって幹線が決められておるのかというのがさっぱりわからない。私は、一番冒頭において航空企業の運営体制についての見直しをしないのかと言った中の一つとして、やはりこういう問題も実はあるわけなんで、いまやらないならやらないで結構ですけれども、今後の情勢をいろいろ判断してやはりこれは取り組むべき問題ではないかと思うのです。もうすでにそれは時が来ておるというように考えておりますが、再度お伺いをしておきたいと思います。
  147. 松井和治

    松井(和)政府委員 先ほど申し上げましたように、一部のビームラインの輸送量がかなり幹線の輸送量に近づいておるというような事実はございますけれども、ただ単に輸送量が多いところがそれでは幹線なのかというあたりも非常に問題でございます。私どもももう少し勉強させていただきたいと思っておりますけれども、いま直ちに、ただいま申し上げました五つのポイント以外のところを幹線に加えるというほどの必要性はまだ来てないのではないかと思っております。
  148. 西中清

    ○西中委員 次に、航空運賃についてお伺いをしておきたいと思います。  日本航空は、日米間の太平洋空路の日本発円建て運賃を四月から値下げをすることを運輸省に申請をしておるわけですが、運輸省としてはいつごろ認可されるのか。  それから、新聞報道によりますと、運輸省はさらに、円高傾向日本発の円建て運賃が米国発のドル建て運賃より割り高になっておる。このために、日本航空に対して、日本発円建て運賃をさらに引き下げるように指導していきたいというふうに伝えられておるわけですが、そういうお脅えをお持ちかどうか。  これはまず最初に運輸省から、後段の方は参考人から伺っておきたいと思います。
  149. 松井和治

    松井(和)政府委員 前段のお尋ねの国際航空運賃の割引率の引き下げということにつきましては、現在私ども内部で検討中でございまして、検討を終わり次第認可する予定でございます。
  150. 朝田静夫

    朝田参考人 いま御指摘の方向別運賃が格差がございます。円高でありドル安である、こういうことでございまして、通貨の価値が一その前に、いまの国際運賃というのは発地国建ての運賃になっておりまして、前には固定相場制でございまして、ドル、ポンドが基軸通貨であった、こういう時代では、いかなる国でもいかなるときもドル、ポンド建てでございますから、固定相場制で、どこであってもそういう格差は出てこなかったわけでございますが、現に変動相場制になり、ドル、ポンドの基軸通貨としての価値が失われた後は、これはもう発地国建ての通貨で運賃が決まるというのが原則になっております。  したがいまして、いま円高で、相対的にドル安でありますから、通貨の価値の下がった国の運賃を、サーチャージと申しまして、付加料金をつけるのが私は本則だと思います。通貨の価値が下がったものが、運賃をその発地国建ての通貨で上げる、これが私はサーチャージをつける、現にずっと以前に、いまよりももっと円高になっておりましたときに、私どもも往復運賃の割引調整をやりまして、アメリカでは一五%引き、ヨーロッパでは一〇%引き、こういうようなことで、片道買いというものを、片道で買った方が安いという、こういう事態がありましたので、それを調整するために往復運賃の割引をいたしました。いま一七%割引をしております。それでもなおかつ、いま方向別運賃の格差というものは起こっております。これはもう世界各地で起こっておるわけでございまして、日本ばかりではございませんで、ロンドン−ニューヨークでも格差が起こっておる、フランクフルト−ニューヨークでも起こっております。  そこで、いま先生御指摘のように、通貨の価値の下がったところはサーチャージをつけて上げる、通貨の強い、円建ての方は逆に下げる、そうして方向別格差というものを縮小していくということで、政府もあるいは経済対策にもそれが言及をされておりますので、私どももそれに従って御指導をいただきながら調整を図ってまいりたい、こう考えております。
  151. 西中清

    ○西中委員 運輸省、いまの問題を基本的にどういうふうに考えているか。いまの運賃の格差の問題、もう一度伺いたい。
  152. 松井和治

    松井(和)政府委員 方向別格差の問題につきましては、前回五十三年時点の円高時点にも私ども努力をしたところでございまして、太平洋線については一七%、そのほかについて一五%というような日本発運賃の割引を行ったわけでございます。  今回の円高に備えまして、経済対策にも盛り込まれましたとおり、私ども方向別格差の縮小に今後努めていきたいと考えておりますが、できれば一番格差の大きい日米間の運賃につきまして、できる限り早急に相手国運賃の引き上げと日本発運賃の引き下げとを両方かみ合わせた形での格差是正が望ましい形であるというふうに考えております。  それからなお、先ほど私、先生の御質問に対しまして、最近の値下げの申請について直ちに認可する予定があるかという御質問に対するお答えの際に、割引率の引き下げと申しましたのは間違いでございまして、割引率の引き上げ、つまり値下げということでございますので、訂正させていただきます。
  153. 西中清

    ○西中委員 できるだけ早急にということは、ここ五月、六月というような意味、格差是正というのはそういう意味でございますか、それとも今年中というような先の話でございますか。
  154. 松井和治

    松井(和)政府委員 今年中などという悠長なことは考えておりませんで、先生仰せの五、六月よりもできれば早くやりたいと思っております。
  155. 西中清

    ○西中委員 それより早いということは四月中ということですか、もう一度。
  156. 松井和治

    松井(和)政府委員 時期ははっきり申し上げかねるわけでございますが、できるだけ早くやりたいと思っております。
  157. 西中清

    ○西中委員 引き続いて、航空三社の国内幹線の一割割引回数券の発売、これは六月一日の実施を申請しておりますね。それはいつごろ認可するのか。一方では、全日空や東亜国内航空は、国内航空運賃の値上げを申請する、こういうふうな話も伝わってきておるわけですが、これに対する運輸省の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  158. 松井和治

    松井(和)政府委員 まず、前段の回数割引運賃の設定でございますが、これは現在運輸審議会に説明をいたしまして御審議願っておりますが、その手続を経次第、できる限り速やかに実施に移したいと思っております。  また、第二段の国内運賃の値上げにつきまして、一部の会社が運賃の値上げを考えているという趣旨の新聞記事が出たことは事実でございますが、私ども航空企業の方から具体的な運賃値上げの話を聞いているわけでもございませんし、まだ今期の決算も出てない時点でございますので、私ども段階では運賃の値上げということについては全く検討を行っておりません。
  159. 西中清

    ○西中委員 それから、東亜国内航空は、採算性の悪い赤字ローカル線の休廃止を検討しておるというふうに聞いているのですが、いろんなことが新聞報道では伝わっておるわけですが、一点にしぼって考えた場合に、いわば生活路線としてのローカル線、これが切り捨てられるということは地域住民にとっては非常に影響の大きい問題になろうかと思います。  こういった点について、運輸省はこれからどういうように対処しようとしておられるか、お考えがあれば伺いたいと思います。
  160. 松井和治

    松井(和)政府委員 これまた新聞に、一部の会社が赤字ローカル路線の切り捨てということを考慮している旨の記事が出ておりますが、具体的に私ども会社からそのような話は聞いておりません。しかしながら、もし仮にそういう申請が出たと仮定しての話としてお聞き取り願いたいわけでございますが、ローカル線と申しましても、いま先生御指摘の生活路線になっておる、たとえば離島の路線というようなものにつきまして、これを不採算なるがゆえに廃止をするということについては非常に大きな影響があろうかと思います。しかしながら、同じローカル路線と申しましても、鉄道と並行しておる航空路というものもないわけではございません。また、現実に、最近の需要の低迷から、路線の利用率を見てみますと、確かに五〇%を切っておる、あるいは四〇%を切っておるというような路線が全くないわけではございません。したがいまして、これは路線の性格あるいは便数、それから代替交通機関の有無、いろいろな要素があろうかと思いますので、仮に具体的な申請が出てまいりましたときには、そのような路線の性格等によりまして厳重な判断をしていきたいというふうに考えております。
  161. 西中清

    ○西中委員 次に、外務省おいでいただいておりますね。——日米両国政府は四月に本格的に航空交渉を行うように聞いておるわけですが、新聞報道によりますと、一月中旬のホノルル協議で、米側は日本側の要求しておる路線、以遠権の大幅な拡大を認める用意があることを示して、米国内乗り入れ地点として新たに四地点を示した。一方、アメリカ側は、日米間で標準運賃を設けて、これを基準に上下の一〇%ないし三五%ですか、こういった範囲の運賃決定は、双方の航空当局がともに拒否しない限りは航空会社の自由にするというこの自由化、さらにチャーター便の運航を日米協定に基づく指定航空会社以外にも拡大すること、日本国内乗り入れ地点として新たに名古屋その他一点を加える、こういうような条件をつけてきたというような報道があるわけですが、事実関係はどうか、まず確認をしておきたいと思います。
  162. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘のとおり、昨年九月とことしの一月と二回にわたりまして日米両政府間で非公式な航空交渉をいたしました。交渉と申しますか、協議でございますが、その第二回目の協議、一月の際に、大体先生がいま御言及になりましたような内容の包括提案をしてまいりました。  これは従来米側は、わが国の多年にわたる不平等是正の主張に対して、必ずしもそれを前提とすることなく、個別の問題処理という態度でございましたのに比べますと、新しい態度と申しましょうか、一歩前進した提案であるとそれなりに評価しております。
  163. 西中清

    ○西中委員 それ以外に、すでに昨年九月にユナイテッド航空の日本への乗り入れ企業としての指定、いわゆる指定航空企業の通告をしてきておるわけですね。これも一緒に話に出ておったのですか、それともどうなのか。それから、日米航空協定の問題もその場では話し合いが行われておるのかどうなのか、その辺はどうでしょうか。
  164. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  ユナイテッド・エア・ラインズのわが国への乗り入れの問題は、ただいまお答え申し上げました一月の包括提案とは別個に申請が出ているものと承知しております。航空協定は、御承知のとおり、一つのルールを定めておりまして、その付表におきまして細目を定めていくわけでございますが、今次提案を基礎として今後交渉が展開されて何らかの合意点に達するということになりますれば、当然に付表の改正ということもございます。
  165. 西中清

    ○西中委員 その辺に私は少し疑問を持っておるのです。ということは、アメリカは昨年成立いたしました国際航空輸送競争法によっていわば力の政策、きれいごとで言えば空の自由化ということでしょう、こういう方針のもとで、わが国にこういう形で持ちかけてきた。しかし、本当にベースになる問題は何かと言えば、いまもおっしゃったように、日米航空協定そのものが非常に不平等きわまりないものである。戦後の遺物そのものであって、日本が弱い立場にあるときに決められた協定そのものの土俵の上に立って話は進んでおる。これでは日本の権益よりもアメリカの権益の方が拡大されてくるのは当然だろうと思うのです。その点で、この土俵のあり方ということについて、アメリカが理解を示すような方向に来ているということでなくて、本来不平等きわまる、不均衡きわまる日米航空協定の抜本改正が行われて、平等な立場において各種の交渉が行われなければならないと私は考えておる。  とりわけこれは、単に路線がどうだとかこうだとか、以遠権がどうだとか、地点がどうだとかいう問題以前に、こういう不平等な協定というものがいまだに存在しておっていつまでも解消できないなどというのは、国際社会における日本の基本的な姿勢というものが問われる問題だと私は思うのです。そういうとらえ方をしてこの航空問題というものは論議をし、交渉していただかなければならぬ。こういうことを横に置いて、実態だけがどんどん進んでいくということは非常に好ましくない姿だと私は思っております。この協定が解決されぬ限りは戦後は終わらないと言ってもいいと私は思っておるのです。外務省はどうですか。そういう立場でまずきちっとして、その上で路線がどうだとか以遠権がどうだという交渉をしてもらいたい、この不均衡きわまりない土俵の上で物事を進めてはならぬと私は思うのです。
  166. 松田慶文

    ○松田説明員 先生の御指摘の点はまことにそのとおりだと存じております。  航空協定は、協定本文は一つのルールが書いてあるわけでございますが、先ほど申し上げました付表において双方が供与し合う利益、権益を書いてあるわけでございます。諸先生方、皆様からも不平等だと御指摘を受けておりますのは、その付表において与え合っているところの実態が不平等だということでございます。したがいまして、日米航空問題における不平等の是正というのは、実態的な議論をいたしまして到達した合意点を付表に書き込む、付表を改正する、そういったシステムになっております。  御指摘のとおり、私ども長い間、昭和二十七年以来、日米航空の権益間には合理的な意味での平等がないということは主張し続けてまいりました。この基本的立場は今後とも変わることはございませんし、その基本的立場の上に立って相互理解の上に日米の交流を拡大するという観点から今次の四月の交渉に臨む所存でございます。
  167. 西中清

    ○西中委員 しつこいですけれども、外務省に重ねて。  私、去年これはやはり運輸委員会で議論しているんです。あなたじゃないけれども、説明員の中の認識が、若干の不均衡などというような非常に不謹慎な発言を実はしておるのです。これは若干の不均衡なんという問題じゃないですよ。だから、私は外務省の基本的な考え方は一体どこにあるのかということに疑問を持つ。あなたに言ってもなんでしょうけれども、これはよく外務大臣に伝えてもらいたいのです。こういう甘い認識じゃ困る。基本的に日本の国際社会における立場から言っても、こういう屈辱的な日米航空協定というものはきちっと平等にしていく、この努力は何が何でもやってもらいたい、こうでなければならぬと私は思います。  もう一度答弁を。
  168. 松田慶文

    ○松田説明員 ただいまのお書案は、持ち帰りまして大臣に報告いたします。  先ほどからのお答えで申し上げておりますとおり、長い間私どもが本件を不平等であると主張してきておりましたのに対して、基本的には米国はそれを認めようとしませんでしたが、今次提案は実態的には拡大均衡を図る意味での何がしかの建設的な態度を示しているものであります。したがいまして、私どもといたしましては、四月六日から始まります正式交渉におきまして、この米国提案を基礎とした上で私どものあるべき姿を十分に主張し、合理的、建設的な解決を図るべく最大の努力を傾ける所存でございます。
  169. 西中清

    ○西中委員 これはいわゆる自動車のああいった問題とは違うんですね。あれはビジネスです。商売の話です。こちらは国と国との一つの問題でございますから、その点は片方で自動車が来るからこっちはへこむというような、そういう弱腰じゃ困る、私はそう思うのです。問題の性質が違う、こういうことをよく認識をしていただきたいし、いま外務省はそういうことで大臣にお伝えいただくということでございますから、これ以上申しません。  最後に、これはやはり運輸大臣もしっかりひとつがんばってもらわなければならぬ問題でございます。決意のほどを伺って、質問を終わりたいと思います。
  170. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 航空権益はまさに国益なんです。そういう点におきまして、おっしゃる趣旨は私はもう全く同じでございまして、外務大臣にもよく私の方からも強くお願いし、交渉を進めてもらうようにいたします。
  171. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  172. 小此木彦三郎

    小此木委員長 次回は、来る二十四日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十六分散会