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福岡議員
日本国有鉄道経営再建促進特別措置法の一部を改正する
法律案の提案理由を、提案者を代表し、御説明申し上げます。
さきの第九十三
臨時国会で成立した
日本国有鉄道経営再建促進特別措置法は、
審議の
過程で多くの
委員から指摘のありましたように、主要な部分を
政令にゆだねてしまうなど、法の
基本的性格そのものに重大な問題があります。
国民が主権者であることは当然のことでありますが、その主権者の生活に重大な影響を与える
法律について、その具体的内容を法の執行
責任者である
政府にフリーハンドを持たせる
法律上の
規定を置いているのが現行法であるわけです。そして、それに対する国民の評価はきわめて厳しいものがあります。法の公布後、この法の施行について、多くの国民が
自治体ぐるみでかってないほどの勢いで、
政府に繰り返し強い要求を突きつけていることはきわめて重大であります。したがって、こうした国民の声を無視したこの
法律がこのままフリーハンドを持つ
政府の意図だけで
実施されることになれば、国民生活に大きな混乱が起こり、同時に国民の間に政治不信が高まることは必至であると
判断せざるを得ないのであります。
よって、こうした国民の不安を解消し、いま一度
地域住民の生活に根差した交通体系の確立と
国鉄の真の
再建策を講ずるため、改めて本法の
幾つかの部分について改正し、国民の期待にこたえるべきであると考えます。
以下、順次、改正案の内容について御説明申し上げます。
その第一は、
国鉄の
経営再建についての国の
責任についてでありますが、
法律では、
国鉄の基幹的交通機関としての機能を維持させるため、
地域における効率的な
輸送の確保に配慮して
経営再建促進のための措置を講ずることとなっています。しかし、今日の交通問題を考えるとき、
国鉄の果たすべき役割りは、単に効率性を重視すべき状態ではなくなっています。国民の生活に深く根を張っている
国鉄について、いまこそ、
地域交通全体を重視しながら、その中での
国鉄の役割りをはっきりさせていくことが重要と考えます。したがって、
国鉄の
経営再建についてもそのことを明確にするようにいたします。
次に、
国鉄の
経営改善計画についてでありますが、
国鉄の
経営再建については、単に
政府や
国鉄当局が一方的に考えただけでは決して実現するものではありません。
国鉄に
関係するすべての労働者の協力が不可欠であることは言うまでもないことです。しかし、現実の労使の
関係は必ずしもそのようになっていません。それどころか、逆に労働者側の方からは
政府や
国鉄に対してきわめて強い不信感すら生まれています。よって、こうした
事態を改善することはきわめて緊急な課題でありますので、まず
国鉄当局は、みずからの姿勢を改めて
関係労働者の協力を得るべきであります。したがって、
経営改善計画の
策定に当たり、事前に
関係労働者の
意見を十分に聴取などの措置を講ずることはきわめて重要でありますので、そのように明記することといたします。また、
経営改善計画を
策定する際に、利用者の立場を考慮することが今日なお一層必要となってきていると考えますので、あわせてこのことを条文に加えることといたします。
次に、この
法律の最も重要な部分である
地方交通線及び
特定地方交通線の扱いについてであります。
その一は、
特定地方交通線対策についてであります。
法律は、
国鉄が
政令の
基準に照らし、
バス輸送に
転換することとして特別
地方交通線対策協議会に
協議させ、二年後に結論を得ない場合であっても、
国鉄が代替
輸送の手配をして当初の決定どおり当該
特定地方交通線を
廃止することとなっています。この
対策は、まさに問答無用、一方的な結論を押しつけるものです。特別
地方交通線として予想される
線区は、当該
地域交通の維持
整備に深くかかわりがあり、本法に見るように
国鉄の
経営、営業収支だけの観点からのみその存廃を決定し、一片の通告によって
廃止することは問題があります。よって、
特定地方交通線の
取り扱いについては広く
関係者の
意見を聞き、特に利用者と
地域住民の生活に
責任を負うべき
地方自治体の長な
ども加わっている
協議会の
会議において
協議を行わせ、その結論を得て処理する必要があります。また、
協議が調わないときにおいても、県知事が当該
地域交通の確保についての
意見を出すことによって
関係住民の声を反映させようとするものであります。
次に、
法律は、
地方交通線を他に貸し付けまたは譲渡できる道を開こうとしていますが、
地方交通線にかかわる
地域交通の維持
整備は現下の交通問題であり、適切な交通
政策の展開が強く要求されているところです。
国鉄の営業収支と都合だけでその
経営から分離するかどうかの前に、当然
地域交通の維持
整備について
関係者による検討が必要であります。
政府は、最近われわれの主張も入れて、
地域交通の維持
整備計画を各
都道府県ごとに陸上交通
審議会の部会を設けて
策定することになっており、
国鉄地方交通線に限って当然なことであるこのような手続を省略し、
国鉄経常から分離することをすべきではありません。よって、この条項は削除することといたします。
次に、
法律によれば、
地方交通線によっては、
地方交通線の運賃は、収支の改善を図るため必要な収入の確保に配慮して決めるとしていますが、ここで言うところの運賃は、幹線系に比べ割り高なものを考えての運賃を設定しようとするものであります。
地方交通線の
実情は、いまより割り高の運賃を設定した場合、収支の改善が図られるものではなく、むしろ
国鉄離れを強要するものとなり、かえって収入悪化を招きかねないと思うのであります。したがって、このような割り高運賃の導入は、これによる利用減を期待し、ひいては営業線の
国鉄からの分離または
廃止を企図するものと言うべきでありましょう。かかる方策は
国鉄経営再建に相反するものでありますから、この条項を削除することといたします。
また、都市を中心とする
国鉄運賃は、その区間や
路線に並行した
地方鉄道または軌道の運賃に比ベ
かなり割り高となっており、
国鉄の利用を妨げているものがあり、資源の最適配分からも公正競争の観点からもこれを調整し、引き下げるべきであり、かかる措置によって競争力を回復し、
国鉄の利用を増加させ、
経営再建に役立てるべきであります。よって、かかる運賃調整の条項を新設することといたします。
次に、
地方交通線に対する助成の条項についてであります。
法律は、
地方交通線の運営に要する費用を補助することとなっていますが、
地方交通線の運営は
地域における国民生活を支えるものであり、かつ、
経営には限界がありますから、
国鉄の
責任で収支の均衡を図ることは困難であります。また、その運営については、国の
政策的
責任もありますので、適正な
国鉄の
経営努力がされた場合に生じる欠損は、国においてその全額を補助することと改正するものであります。
次は、
国鉄の新線建設についてであります。
建設後開業したとしても
輸送効率が著しく低いことが予想されるものについては、
国鉄の
経営上あるいは
地域交通体系
整備のため引き続き新線建設を続けようとするものを除いて、その計画を中止すべきであります。
法律は、
地方鉄道業者の要請によって新線建設を続ける道を開いていますが、形を変えた政治
路線の建設であり、われわれの容認できるものではありませんので、これに
関係する条項を削除しようとするものであります。
最後は、
国鉄の自主性に
関係しての問題です。
法律によれば、
国鉄が
運輸大臣の承認を得て進めている
経営改善計画も中途において
運輸大臣は変更の指示ができることとしていますが、これは過ぎたる干渉であり、
国鉄の自主性と
責任を無視したものでありますので、本条項を削除することといたします。
以上で説明を終わります。
何とぞ、慎重御
審議の上、御賛成いただきますようお願い申し上げます。