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1981-05-08 第94回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月八日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 坂田 道太君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 三原 朝雄君 理事 箕輪  登君    理事 前川  旦君 理事 横路 孝弘君    理事 市川 雄一君 理事 吉田 之久君       後藤田正晴君    塩谷 一夫君       竹中 修一君    玉沢徳一郎君       堀之内久男君    石橋 政嗣君       嶋崎  譲君    矢山 有作君       西中  清君    永末 英一君       東中 光雄君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         警察庁交通局長 池田 速雄君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁装備局長 和田  裕君         外務大臣官房審         議官      関  栄次君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    松田 慶文君         海上保安庁警備         救難監     野呂  隆君         安全保障特別委         員会調査室長代         理       麻生  茂君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 坂田道太

    坂田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀之内久男君。
  3. 堀之内久男

    堀之内委員 先般御報告されました有事法制中間報告について質問をするわけでありますが、その前に、先日、日米首脳会談を前にして、アメリカから日昇丸ジョージワシントン号衝突事件について御報告がございましたので、この件についてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  去る四月九日、日本日昇丸ジョージワシントン号衝突いたしまして、不幸にして日昇丸は沈没をいたしたわけでありますが、その中で十三名が救助され、二名の方々が亡くなられました。亡くなられた野口船長、また松野下一等航海士に対しましては深甚のお悔やみを申し上げますとともに、心から哀悼の意を表する次第でございます。  私は、この件につきまして、救助されました乗組員方々心情を拝察しますときに、私事を申し上げて大変失礼ですが、私も戦時中に駆逐艦に乗っておりまして、アメリカ潜水艦にやられて約数時間泳いでおりました。うねりの多い大洋の中で漂流し、いつ助けられるであろうかということを考えますときに、その経験者でないと私は実際の心情というのはわからないだろうと思うのです。十三名の皆さんがボートにつかまり、しかもまた哨戒機が見つけてくれた、こういうことで数時間後には救助されるのではないか、そういう期待もある程度あったろうと思いますが、それがすぐ救助ということにならずに、幸いにして日本海上自衛隊が救助した、こういうことになって、いろいろとそのときの経過が発表されております。この経過から見まして、結局日本海上自衛隊もある程度誤解を招きまして、これまた私どもも遺憾なことであったと思いましたが、しかしだんだん真相がわかるにつれてこの誤解も解けてきたようであるし、今回の事件におきましても、救助された乗組員の話によってまた内容が詳しく出ましたので、その後乗組員方々も憤りというかくやしさというか、こういうものを率直に述べていらっしゃいますが、これもまた当然なことだと私は思うのです。事の重大さがそういうことでアメリカ政府アメリカ海軍にもわかりまして、また率直にアメリカ政府もその非を認めておるわけです。その後、アメリカマンスフィールド大使あるいはロング米太平洋軍司令官等ステートメントが出され、またレーガン大統領が、これは異例のことだともよく言われますが、率直にレーガン大統領自身親書鈴木総理大臣あてにお渡しされまして、アメリカ側の非を認めて、そしてまた遺族に対しての陳謝もなされております。  ところが、この間の新聞報道を見ますときに、なかなかこのステートメントとか親書の実際というものが新聞の中には報道されておりません。その断片的なものが出ておりますが、そのことによって、せっかくアメリカも悪かったことは率直に認めて、日本国民日本政府に謝っておるわけでありますが、そうした実際のアメリカ側の態度というものを、外務省は、外務大臣が直接記者会見でもされたのだろうとは思いますが、どのような形で新聞記者と申しますかマスコミの皆さん方に御報告されたのか、これらのステートメントとか、こういう本文を全部記者クラブなりそういうものに出されたのかどうか、この点をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  4. 松田慶文

    松田説明員 お答え申し上げます。  本件に関します米側の種々のステートメントあるいは書簡の伝達ないし発表等は、外務省内霞クラブ記者クラブに対しまして、その全文を配付し、かつ口頭で補足説明をしております。
  5. 堀之内久男

    堀之内委員 私はきょうここに新聞の切り取りを相当持ってきておりますけれども、この記事ではステートメントなりレーガン大統領親書というもの等本文がそのまま載っておりませんので、それぞれ各社の考え方によって書かれておるようでありますが、一部またいろいろな報道誤解もあろうとは思いますが、今後ともこういうものは、いま外務省説明では全文お渡ししておるということですから、それから先はそれぞれの記者の取材のいかんによるわけでありますのでもうこのことは何とも申しませんが、先日ワインバーガー国防長官から伊東外務大臣あて中間報告と申しますかという形で、一応のこのジョージワシントン号日昇丸衝突状況を一部御報告されておりますが、この報告に対しまして防衛庁長官はどのように評価をされておられるか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  6. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  米側の今回の報告は暫定的な調査結果の報告であり、さらに最終的な報告が行われるものと承知しておりますが、軍事行動の細部についても説明するなど、短期間に取りまとめましたものとしては努力の跡が見受けられると考えております。
  7. 堀之内久男

    堀之内委員 私は、今回こういうように、アメリカ政府が、日米首脳会談を前にいたしまして、異常とも言うべきこういう早い速度でこの中間報告をなして、そして日米間の信頼友好を今後とも図っていこう、こういう気持ちから率直にこれを訴えられたものだと思います。私も長官と同じような考えを持ちますが、この発生した事故を見てみますと、いろいろ昨日内閣委員会でも一応質疑がなされておるようでありますが、普通の場合、またまた私事を申し上げて失礼ですが、私は駆逐艦でやられてから、それから今度潜水学校付潜水艦に乗っておったわけです。潜水艦やら潜航艇やらに乗っておりますので、まあわずかな経験でありますし、昔の日本の船でありますから、現在のすばらしい近代化された潜水艦と比較することはどうかと思いますが、しかし、実際乗った者としては、これは潜望鏡もやはりいまと同じようにあることですから、同じ機能と申しますか、そういう型式ではそう大きな変化はなかろとは思います。特に私が乗っておったのは潜航艇でも水中で高速が出る潜航艇でありましたから、その構造から言っていまの原子力潜水艦の小型と思ってもいいのじゃないかと思います。水深百五十ないし二百メーターまでもぐれた潜水艦でありますからその状態も大体想像できるわけでありますが、あのような天候不良で、しかも大きなうねりがあり、視界が不良であったとするならば、やはり私も、この衝突事故報告で、艦長あるいは当直士官視界を見たと言ってそれで気づかなかったと言っておるのは、これは、私は率直にそのとおり理解しなければならぬのじゃないかと思うのです。  あるいはP3Cが飛んでいたから見たはずだというけれども、これもまたよく、こういうことは全部実際に捜索がかかっておっても見落とす場合もあり得ることで、われわれはこれを悪意に解釈すれば幾らでも悪意に解釈ができますが、しかし海の男というものが遭難した者をほったらかして去っていくということは常識上考えられない。あるいは飛行機がそれを自分で発見したとするならば、何も自分潜水艦じゃなくても、日本海上自衛隊なりあるいは海上保安庁緊急信号で知らせればすぐ行けることですから、したがってジョージワシントン号が救助しなくてもいいわけなのですから。そういうように考えるときに、私はP3C哨戒機もこれを発見できなかったのじゃないか、こういうように思います。  しかし、乗組員の人が下から見ると、上を通ったからこれはもう見つけてくれたものだと、恐らく、おぼれる者はわらをもつかむという言葉がありますから、私は、そういう心情だったろうと思うのです。しかし、その辺が感情の行き違いとなって乗組員方々が非常に憤りを感じていらっしゃいますが、これはこれとして私ども率直に乗組員心情はわかります。  そこで、私はその次に、いろいろとこの中間報告を拝見いたしてみますと、この補償の問題につきましても率直に、いかなる補償にも応ずる、ここまでアメリカ政府が言っておるということは、これも異例なことだと私も考えます。これについてはほかの調査を待たずにやろうという、私はこういうアメリカの善意というものをわれわれ日本国民政府も率直に受けとめて、今後その原因等は究明はされるといたしましても、今後とも日米友好、そして日米の親善という、さらに大きくは日米安保体制に亀裂の入らないような方向で対処すべきである、こういうように感じておりますが、長官の御決意のほどをもう一回お伺いしてみたいと思います。
  8. 大村襄治

    大村国務大臣 今回の事件はまことに不幸な事件であり、私は、この事件が速やかに原因が究明され、また再びこういった事故が再発しないように万全の措置が払われること、並びに犠牲になられた方に対する対策が速やかに、十分に講ぜられることを心から期待するものでございます。  しかしながら、先生指摘のとおり、日米安保体制の堅持ということはわが国防衛の基本的な方針の一つの大きな柱でございます。今回の不幸な事件を契機として、いま申し上げたような点をしっかり講ずることによって、日米間の信頼関係を損うことないように一層わが方としましても努力してまいらなければならない、そのように考えておる次第でございます。
  9. 堀之内久男

    堀之内委員 長官のただいまの御決意のほどには心から賛同するものでありまして、ぜひそうした形で対処いただきますようお願いを申し上げておきまして、先般御報告のありました有事法制中間報告について御質疑を申し上げていきたいと思います。  この時点におきまして、有事法制研究成果と申しますか中間報告国会になされました真意というか、この辺をお伺いしておきたいと思います。  そしてまた、これに対して内閣総理大臣はどの程度了承されておるのか。  あるいはまた、関係省庁とはどの程度調整を行われておるのか。  あわせてこの三つをお尋ねしたいと思います。
  10. 大村襄治

    大村国務大臣 今回御報告申し上げました有事法制中間報告についてでございますが、この研究は、先生承知のとおり三年ほど前から開始いたしたわけでございます。いろいろな問題がございまして鋭意検討中でございましたが、なかなか全般がまとまらないわけでございますので、昨年の臨時国会あたりから、一部でもまとまったものがあれば報告をせよ、こういう強い御意見もあったわけでございます。そこで、私は、今通常国会の会期末までにひとつまとまったものがあれば御報告したいということを申し上げておったわけでございます。  そこで、防衛庁所管法令につきまして相当程度まとまりましたものでございますので、その研究成果について総理大臣に御説明申し上げまして、これを国会報告することにつきましてもあらかじめ了承を得まして、今回、防衛庁所管法令についてまとまりました研究の結果を御報告申し上げた、こういう次第でございます。  なお、他省庁所管法令の問題あるいは所管がはっきりしない法令問題等は、まだ研究はそれほど進んでおりませんので、今回の報告には含めておらないわけでございます。  また、関係省庁との調整はまだ行われておらない、こういう状況でございます。
  11. 堀之内久男

    堀之内委員 前の統一見解では「防衛研究作業結果を前提としなければならない面もあり、」と述べておられるわけでありますが、今回の有事法制研究防衛研究との関連というか、恐らくその研究作業結果を踏まえてこの有事法制研究をなされたと思うのですが、これの関連についてお尋ねをいたします。  もう一つ、「日米防衛協力指針」に基づく日米共同研究とそれから有事法制、この今回の法制研究との関連はどうなっておりますか。  あわせて御答弁を願いたいと思います。
  12. 夏目晴雄

    夏目政府委員 五十三年九月の見解でも申し上げているとおり、今回の有事法制研究防衛研究成果も踏まえたものでございます。  具体的に申し上げれば、防衛研究においては、自衛隊のいわゆる特別部隊編成、二十二条の規定がございますが、このいわゆる編成の時期を早める問題、あるいは予備自衛官の招集の問題、あるいは百三条の土地の使用等について適用時期を早めるというような事柄につきましては、防衛研究成果を踏まえた結論でございます。  また、日米ガイドライン指針に基づきます研究でございますが、防衛研究はあくまでも、自衛隊自衛隊法第七十六条によりまして防衛出動を下令された時点においていかに有効に機能するかという点についての研究が主体でございまして、米軍関係は今回の有事法制研究の対象にしておりません。
  13. 堀之内久男

    堀之内委員 昭和三十八年ですか、いわゆる三矢研究というものが、四十年の予算委員会岡田委員から暴露されて、大変物議を醸したことはもう御承知のとおりでありますが、しかし一時このことで、当時の佐藤総理も知らないことであったということで大分国会でも答弁されましたが、後でよく考えてみると、これは、こういうことは自衛隊任務遂行上、演習もしあるいは研究もし論議もすることは当然なことだと言って、前の答弁を訂正されたいきさつがあります。私どもも、これを全部が発表されておりませんのでわかりませんが、しかし、断片的に知るところでは、この三矢研究なるものも、図上演習であったとはいえ、やはり有事体制に対してどのような国内体制をとるかということが強く論議されたと聞いておるわけでありますが、恐らく防衛庁ではこのことは知っていらっしゃると思うのです。今回の有事法制研究に当たりまして、この三矢研究ですか、これを参考にされたのかどうか、あるいはこれをある程度言い分はあったということでこの中にも取り入れられたのかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  14. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いわゆる三矢研究といいますのは、昭和三十八年度統合防衛図上研究のニックネームでございますが、これは当時統幕の事務局長主宰者になりまして、わが国に対する武力攻撃脅威が逐次活発化するというか緊迫してくるというふうな状況を、各種の設想を置きまして、その設想のもとでいろいろな問題を出して関係幕僚答案を求め、それを集めたものがいわゆる三矢研究なるものでございまして、これは防衛庁正規文書でございませんし、また、当時もさんざん議論されたところではございますが、この答案の中身なるものは、関係幕僚それぞれの能力に応じて作成したものでございますし、表現に適切を欠くもの、あるいは用語の選択に適切を欠くもの、いろいろございまして世間に誤解を与えたということがございますが、あくまでもこれは幕僚研究一つであって、防衛庁正規に決められた文書あるいは計画といったものではなかったということが第一点でございます。  それから、今回の有事法制研究三矢研究参考にしているかどうかということでございますが、今回の有事法制研究は、昭和五十二年の八月に、当時の福田総理の承認のもとに、当時の三原防衛庁長官の指示のもとに、私ども、想を新たにして、いわゆる文民統制の中で整々と仕事をするというふうなたてまえから始めたものでございまして、三矢研究とは関係のない形で研究をしてまいりました。
  15. 堀之内久男

    堀之内委員 それはユニホーム研究したことだからわれわれが何にも参考にする必要はない、そういう狭い考え方ではおかしいと私は思うのですよ。それは正規であろうがなかろうが、演習でやったのですから、時の総理はちゃんと当然なことだと認めておるのだから、私はいいところはいいとして、そういう点で、これも一つ有事体制なんだから、あれを見てみなさいよ、そうでしょう。きょうはそれを論議する時間はありませんが、ここに私も持ってきておるのですが、この中を見ますと、今度あなた方が出したような有事体制のことが書いてある。国内法の整備をどうするかとか、そういうことが書いてあるのです。だから、私はそういうことを参考にしながらやって初めて本当にりっぱな法制ができる、こう思うのです。シビリアンコントロールだからユニホームのやったものは何でもだめなんだ、そんな度量の狭い考え方ではりっぱな有事法というものはできてこないと私は思う。やはりユニホーム意見も取り上げながらやっていくところに今後の有事法がよりよいりっぱなものができるんだ、かように考えております。ですから、私はやはりこれからも、ユニホームにもまた自分たちなりに研究させて、そして皆さん方意見を取り上げていく、それを防衛庁内の考え方が、ユニホーム意見を聞くとシビリアンコントロールに反するなんというおかしな考え方では、今後の日本防衛体制というのは確立されない、こういうふうに考えますので、参考にはされたかもしれませんけれども、ここでははっきりしないと言いますが、私は、それはそういう小さな気持ちでなくて、今後もやはり参考にすべきものは参考にしながら、よりよい法律をつくってもらいたいと思う。でなければ、いまお話のように、三原長官から言われて今日まで三年八カ月かかっているのです。よくもゆっくり調子でやったものだなと思うくらいです。しかもその出てきた内容はわずかこれだけですよ。たったこれだけが三年八カ月もかかっておるのだから。だから、あなた方だけではなかなかできなかったのだろうから、そういうのがあれば一年くらいであるいはできたかもしれない。そういうことを考えてみると、いろいろと誤解もまだまだあるわけです。  それなら、有事というのは一体どういうように解釈しているのですか。有事というのはどういうことを指すのですか。
  16. 夏目晴雄

    夏目政府委員 有事という言葉についての法令上の定義というか、これは用語でもございませんし確とした定義があるわけでもございませんが、私どもは一般的には、有事というのは自衛隊法第七十六条による防衛出動が下令された時点というふうに理解しております。
  17. 堀之内久男

    堀之内委員 今回、いろいろと法制研究をなされておりますが、防衛庁所管法令については今回報告されたところですが、しかも三年八カ月もかかって研究された成果がこのわずかなページだけの成果なんです。国民の中では、これは相当長期間研究したのだから、発表されていない隠れた部分がまだあるのじゃなかろうかというような批判もあるわけです。この点についてはどう考えておられるか。  たとえば危険区域への立入禁止とか、あるいは強制退去等有事の際には必要になると思うのですよ。恐らく武力攻撃を受ける、あるいは「おそれのある場合」ですから立ち退きを国民に求めなければこちらの防衛対処はできないわけですから、そういう場合にはこの中でどういうように含まれておりますか。あるいは海上護衛をやるとすれば、戦前は船舶保護法というのがあって船舶の運航を統制したが、こういう法令はまだこの中には出ていない、こういうものがあるのです。こういうものは全然検討していなかったのかどうか、お答え願いたい。
  18. 夏目晴雄

    夏目政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどの答弁補足をさせていただきますが、今回の有事法制というのは、念のためでございますが、私どもシビリアンだけがやったのではなくて、制服をも交えながら一緒に研究してきたということだけつけ加えさせていただきます。  それから、ただいま御質問の件でございますが、相当長期間かけていることは事実でございますが、五十三年九月の見解にも明らかなとおり、当時、私どもとしては、こういう研究というのは、いま日本に差し迫った脅威があるわけではないというふうな認識のもとに、冷静に、いわゆる慎重にやる必要があるということから、せっかちな研究を避けたということが一つあろうかと思います。  それから第二点としましては、現在防衛庁自衛隊法関係のものにつきましても、たとえば現在の自衛隊法に決められている各省所管法令に関するものについての適用除外であるとか、あるいは特例を設けている法律だけでも二十四件ございます。そのほか、直接現在の自衛隊法には触れていない、しかも有事の際に自衛隊行動関係のあるような法令というのは相当多くあることが予想されます。そういったものから非常に時間がかかるということを申し上げたいと思います。  それから、先生がいま御指摘国民のいわゆる避難といいますか、あるいは危険区域への立入禁止、そういった問題につきましては、私どもの今回の中間報告でも御説明してありますとおり、いわゆる第三分類の中の国民避難誘導保護、こういった中で当然検討されるべき問題である、今後の検討課題として私ども考えているものでございます。
  19. 堀之内久男

    堀之内委員 今後の検討課題として残すというのであれば、これは後でお聞きしようと思うのですが、有事法制中間報告されたもの、これを早く法制化すべきだ、こういうように私は考えておるわけですが、一たんつくって、また後からそういうものはつくるんだ、こういうことですか。
  20. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今回の有事法制研究は、私ども、現在の自衛隊法というのは、いわゆる有事法制のシステムというのはある程度でき上がっておりますが、なお有事の際に現在の法制で十分かどうかという問題点の整理を行ったわけでございまして、これを直ちに立法化する、あるいは法制化するというふうなものを企図したものではないわけでございます。  ただ、私どもこういった問題点があるというふうな認識をした以上、これからいろいろこういう国会の場の論議をも踏まえながら立法の話とかいうことは別途進められる問題だと思いますが、そういう意味合いから研究をしてまいったということでございまして、いま直ちに立法化するというものではない。したがって、第二分類、第三分類の問題につきましても引き続き精力的に研究していかなければならないという認識でおりますが、この問題については関係各省との調整協議も相当必要でございますので、そう短期間にできるというふうには思っておりません。
  21. 堀之内久男

    堀之内委員 差し迫った有事考えられないという先ほどの官房長答弁ですが、最近の国際情勢を見て、そんなに差し迫った有事は想定されないということの認識は、ちょっとわれわれと防衛庁との間に認識のずれがあるんじゃないかと思うのですよ。  また、これは特定の国の名前を挙げてどうかと思うのですが、これだけソ連の東洋艦隊というか太平洋艦隊が増強される、そして国後、択捉島には相当な軍備を持った機械化部隊が配置をされる、こういうような状況の中で、これは向こうとしても日本一つの仮想敵国という形にあるいは置いているんじゃなかろうかと想像せざるを得ないわけであって、またその脅威というものは相当感じざるを得ないのが実態だと私は思うのです。  そういう意味で考えると、今回の有事法制は、一応こうして報告しただけであって、立法化はまだいまのところ考えていないというのはちょっとおかしいのです。私は、ここまで持ってくればできるものから早急に立法化していくのが今回の中間報告だと理解しておったのですが、これについて防衛庁長官のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  22. 大村襄治

    大村国務大臣 まず、差し迫った危険がない云々という政府委員の発言でございますが、これは有事法制研究を始めたときの五十二年秋でございますか、そのときに方針を決めた文書があるわけです。そのときにそういうことが書いてあったということでございまして、その後国際情勢の変化がいろいろあって、流動性を増しているという点は確かにあるわけでございます。  また、この有事法制研究を始めるに当たりまして、まず研究をやってみる、その後の措置についてはまた別途検討するということがやはり明記されているわけでございます。  私どもといたしましては、今回中間報告申し上げましたものにつきまして、国会の御論議、世論の動向等をよく見守りながら、次の措置をどうしたらいいか別途検討するという従来からの方針に従って取り組ませていただきたい、さように考えておるわけでございます。  また、先ほど三矢研究との関係お尋ねがございましたが、形の上では異なっているわけでございます。長官の正式指示のもとに、いわゆるシビリアンコントロールのもとに始めた作業ではございますが、この作業を進めるに当たりましては、もちろん一線の制服の皆さんの実地に即しての意見等は十分くみ取ってまとめられたものである、こういう次第でございますので、つけ加えさせていただきたいと思っております。
  23. 堀之内久男

    堀之内委員 自衛隊というものは有事に備えて存在しておるのですよ。いまそういうおそれがないとか言うんだったら、自衛隊を廃止したらいい。自衛隊というのはそういう有事に備えてちゃんとあるのであって、そして訓練もし、いつでもその態勢に即応できるように自衛隊というものは日夜訓練をしておるわけであって、そのためには、内局の方でできるものは早く、その有事にいつでも対応できるような法体制をつくってやるのがシビリアンコントロールであって、いま長官から、法制については別途検討するということですが、私が、内閣総理大臣が了承しておるのかと最初聞いたのはそこなんです。鈴木総理大臣も深く理解して、国会報告までよろしいとさきに了解を与えられたということは、早急にこれは法制化を進めろというふうに私は理解をする。だから、今後こうして論議を尽くす中で、早急にできた部分から法制化、全部ができるまでと言ったらいつまでたってもこれはできませんので、できた部分から法制化を進めていくべきだ、私はかように思っております。このことは答弁を求めませんが、私の意見を申し上げておきます。  次に、他省庁所管法令で、部隊の移動、資材の輸送等に関する法令とはたとえばどういうようなものを考えておられるか。  また通信連絡に関連する法令、これもどのようなものを考えておられるか。  自衛隊法第百四条とか百十二条ですか、電波法等もありますが、こういうものについて防衛庁の方でどのような考えを持っていらっしゃるかを伺いたいと思います。
  24. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まず部隊の移動、資材の輸送に関連する法律としては、道路法、道路交通法あるいは航空法、港則法、海上衝突予防法、いろいろ交通関係の法規がこれに含まれると思います。  それから通信連絡に関する法制としては、電波法であるとか有線電気通信法あるいは公衆電気通信法、こういったものがこの対象になるのではないかというふうに考えております。
  25. 堀之内久男

    堀之内委員 この自衛隊法第百四条では、電気通信法については、郵政大臣は防衛庁長官の要請があった場合は優先的に使用を認めなければならないとなっておるわけですね。そのほかにまだどういうことをしなければならぬのか。あるいは電波法でもちゃんと除外規定をつくってあります。それでもまだ通信連絡に関することがあるのですか。
  26. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いま御指摘自衛隊法第百四条におきましては郵政大臣に対して防衛庁長官から申し入れをすることができるということになっておりますが、たとえば戦時におけるいろいろな電波の問題、ECMとかECCM、いろいろな問題が出てくると思います。そういう際に現在の法律だけで、あるいは適用除外、特例のあるものだけで十分かどうか、その辺の実態面から詰めないとなかなか各省の調整にも入り切れない問題がある。法令の改正が果たして必要なのか、現在の法制下において運用で賄えるものかどうか、こういった研究をしなければならないというふうに理解しておるわけでございます。
  27. 堀之内久男

    堀之内委員 いま言われましたECMとか、ECCMはいまの電波法除外規定だけではだめなんですか。これは最も進んだ兵器になると思うのですよ。こういうものが現在の電波法除外だけでできないとすれば、これは当然近代兵器の先端をいくわけですから、こういうのは所管が違おうが、もっと郵政省と協議を進めていかなければ質のすぐれた軍備というものは私はできないのじゃないかと思うのですが、これはどうですか。
  28. 夏目晴雄

    夏目政府委員 確かに第一分類が緊急であって、第二分類、第三分類が緊急でないということではございませんで、私ども研究のいわゆるスタンスといいますか、まず防衛庁所管法令、いわゆるまず「隗より始めよ」ということから、自分たち法令をきちんとすることが必要であろう、問題点を洗い出すことがまず必要であろう、そういう中にあって、あるいはその上に立って各省にお願いするものはするということが、また実際の仕事を進める上においても必要であるというふうに判断して、今回第一分類についての研究成果というものを具体的にお示しし、第二分類以下については今後の研究というふうにしておりますが、私ども、決してその第二分類、第三分類は優先順位が低いという意味ではなくて、作業の性格上、そうした方が今後の作業が進めやすいであろうというふうな判断をして、そういう形に整理をさせていただいたというものでございます。
  29. 堀之内久男

    堀之内委員 第三分類に属するものとして、民間防衛の所管省庁がいまだに決まっておらぬというのは、第一類しか研究しなくて二、三類はどうでもいいんだというのじゃないにしても、その所管庁自体もまだ決まってないというのは政府の怠慢だと私は思うのです。  そして、「ジュネーブ四条約」とこれに書いてありますが、ジュネーブの四条約というのはどういう条約でしょうか。中身をちょっと教えていただきたいのでありますが、この条約の中に言う「軍隊」、自衛隊はこのジュネーブ条約に言う「軍隊」に該当するのかどうか、この点お伺いしたいと思います。
  30. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いわゆるジュネーブ四条約と申しますのは、いずれも一九四九年の八月にジュネーブにおいて採択された武力紛争時における犠牲者の保護に関する条約でございまして、まず第一は戦地の負傷者の状態改善に関する条約、第二番目は海上の傷病、難船者の状態改善に関する条約、第三には捕虜の待遇に関する条約及び文民の保護に関する条約、これがいわゆるジュネーブ四条約と称されるものでございます。  自衛隊は、この条約によっての「軍隊」に該当するものというふうに考えております。
  31. 堀之内久男

    堀之内委員 それでは、この文民の保護に関する条約で、自衛隊以外の文民についてどういうように規定しようとされておるのですか。この条約の義務を実施するためにも国内法で私は規定する必要があると思うのですが、これはどのように考えていらっしゃいますか。
  32. 夏目晴雄

    夏目政府委員 この条約におきます「文民」というのは、一般住民も入りますし、防衛庁の自衛官以外のいわゆる文官も当然入ると思います。  それから、これら四条約に基づいてどういう法制化が必要であろうかということにつきましては、私どもこれからの研究課題でございますが、たとえて申し上げれば、いわゆる捕虜情報局であるとか、捕虜収容所の設置というものの法制化が必要ではないかというふうに考えております。具体的に細部についてはまだこれからの研究課題でございますので、いまお答えする内容を持ち合わせておりません。
  33. 堀之内久男

    堀之内委員 この第二、第三類については今後の検討課題で、まだ全然手をつけてないというのが実態のようです。だから、第二分類とか第三分類法制化について今後どのような手順で研究を進めようとされておるのですか、あるいは内閣官房審議室がやるとか、あるいは国防会議事務局が中心になるとか、いろいろ方法はあると思うのですが、どのような方法を今後考えていらっしゃるか、お伺いしておきたいと思うのです。
  34. 夏目晴雄

    夏目政府委員 この有事法制研究の発端が、そもそも自衛隊有事において行動が円滑にできるようにということでございますから、私どもの方で、関係省庁にまたがる法律につきましても、いろいろ問題点なりお願いをしなければならない事項を整理して、関係省庁にまず相談協議を申し上げるということが順序であろうと思います。  ただ、そういった順序で事務的に進めたのでは、仕事がうまくスムーズにいくかどうかということについての懸念もございますので、そういった研究の場というのを内閣レベル、あるいはいま先生指摘になった内閣審議室その他のところでまとめていただくというようなこともあるいは必要になるかもしれません。それは今後の調整の上、国会の御論議を踏まえながら、私ども関係各省と相談してまいりたいというふうに考えております。
  35. 堀之内久男

    堀之内委員 これは国会論議を深めていきながらとおっしゃるが、そうではなくて、これは政府のしなきゃならない仕事なんです。  それで、あなた方がどこで今後やっていこうか、なかなか防衛庁だけではほかの省のことだからと言うんだったら、これはやはり積極的に、こういう有事法の体制について、第二、第三類についてどこが中心になってやってほしいということを皆さんの方から働きかけていかなければ、これはほかの省としても言われもしないことをどうかといって、防衛庁のことまでくちばしを出して言いはせぬですよ。これは最も大事なことは、防衛庁防衛庁としての責任義務を果たすための法制化が必要なんです。あなた方の方から要請されていかなければ、向こうが来るまで待っている、あるいは総理大臣が言われるまで待っている、こういうものではないと思う。この点について長官、どうでしょう。
  36. 大村襄治

    大村国務大臣 まず、残されている部門の進め方でございますが、他省庁所管に関する法令についてでございますけれども、これはやはり防衛庁の方でお願いする問題でありますから、まず関係省庁と相談してできるだけ詰めてみることが必要であると考えております。その上でどうしても調整つかぬ場合には、また内閣のしかるべきところで調整を図ってもらうという心構えで取り組みたいと思っております。  ところが、民間防衛のように所管がはっきりしない、これは必ずしも防衛庁所管かどうかもわからないわけです、どこの省かもまだはっきりしていない、こういった問題につきましては、相手がはっきりしないのですから、それこそ内閣全体で取り組まなければいけない。その場合の扱いが、審議室がいいのかあるいは国防会議の事務局がいいのか、その辺は内閣の中の問題であろうかと思うのでありますが、そういったことも含めまして今後検討させていただきたい、さように考えている次第でございます。
  37. 堀之内久男

    堀之内委員 それでは中身に入ってまいりますが、自衛隊法第百三条について二、三お尋ねしてみます。  居所不明者等の場合、公用令書の交付ができない場合についても言及されておるようですが、公示による意思表示によって可能ではないかと思うのですが、こうすればどのような問題が派生しますか。  災害対策基本法第六十四条第一項は応急公用負担を規定して、公用令書なしで、事後の一定の通知またはこれにかわる掲示により、市町村長が「他人の土地、建物その他の工作物を一時使用し、又は土石、竹木その他の物件を使用し、若しくは収用することができる。」と規定されておるのです。戦闘上緊急の必要がある場合に、このような応急公用負担というものを考える必要はないのかどうか、お尋ねをしてみたいと思います。
  38. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御指摘のように、自衛隊法第百三条による「物資の収用等」を行う場合に公用令書を送付することになっておりますが相手方が居所不明であったりその他の事由によって公用令書の送付ができない場合が予想されます。一方、自衛隊行動に必要であるというふうなことから、そういった本来の手続をとっていたのでは間に合わない、たとえば土地の使用につきましても、百三条の使用も間に合わないというようなこともいろいろあると思います。そういったときに、たとえばいま先生がいろいろお述べになりましたが、一つの公示送達ですか、そういったことも考えられるわけですが、この公示送達につきましても、ある一つの掲示期間というか、そういった期間が必要でございます。果たしてそれで十分かどうか。  いずれにしましても、応急に使用、収用する場合の手続についての規定がいまないものですから、その辺についての方法は今後の課題として考えてみたいというふうに思っております。
  39. 堀之内久男

    堀之内委員 大体、こういう戦時態勢、戦闘態勢に入ったとき、国家存亡の危機ですから、災害対策基本法でさえ応急公用負担を認めておるのですから、こういう戦闘で国家存亡のときなんですから、そういう場合は私は当然応急公用負担を考える必要がある、こういうように思うのですが、再度、長官としてはどういうようにお考えですか、お聞きしてみたいと思います。
  40. 大村襄治

    大村国務大臣 大変重要な問題でございますので、今後とも真剣に検討さしていただきたいと思います。
  41. 堀之内久男

    堀之内委員 こうした国家存亡の戦闘時ですから、国民にもこの点は理解が得られる、また国民の協力なくして日本の存立というのはあり得ないわけですから、その点、ぜひさらに検討をお願いしておきたいと思います。  次に、「工作物の撤去」とはいかなる場合にこれを予想されておるのか。自衛隊法百三条により「土地の使用を行う場合」と言っているが、この場合の「土地の使用」とはどういうことを予想しているのか。そして、どういう目的のため工作物の撤去が必要なのか。その目的等をちょっと具体的に話してみていただきたいと思います。
  42. 夏目晴雄

    夏目政府委員 有事の際に自衛隊行動するために当たっては、たとえば部隊を展開したり、物資の集積をしたり、陣地を構築しなければならないことは御案内のとおりでございます。しかもその土地というのはどこでもいいというわけにはいかないわけでございまして、特定の土地、特定の場所、地形を持ったところが必要になるということから、代替性、どこでもいいというわけにはまいらないわけでございます。そういった意味合いからこの土地の使用の問題が出るわけでございまして、場合によっては、その上にある工作物あるいは立木のたぐいも撤去しなければならないのではないか。その場合の工作物の撤去についての規定が現在の自衛隊法にはございませんので、私どもとしてはそういった撤去の規定も設けていただく必要があるだろうというふうに考えておるわけでございます。
  43. 堀之内久男

    堀之内委員 その工作物や立木、土石というものは土地の一部、こういうように拡大解釈はできないものですかね。一々それをやるからめんどうくさくなるのですが、これを土地の一部として解釈すればいいんじゃないか、こういうように考えますが、再度考え方を聞かせていただきたい。
  44. 夏目晴雄

    夏目政府委員 ほかの災害救助法、水防法とかいった関係については、そういった工作物の撤去についての規定があるわけですから、私どもとしては、一応工作物としては建物であるとかへいであるとか井戸であるとかそういったものが想定されるわけですが、立木につきましても特段の規定が現在ないわけでございまして、そういうもので読めればそれはそういう規定は必要ないのでしょうけれども、私どもとしては現在の法体系の中で必ずしも読めないのではないかというふうな懸念がありますので、この際そういったものも撤去できるようにしたい。  それから、いま先生がお挙げになりました中の土石といいますか、そういったものについては特段撤去とかそういったことは余り必要性は予想されない、考えられないというふうに思っております。
  45. 堀之内久男

    堀之内委員 次に、物資の保管命令に従わない者についての罰則は、災害救助法等にそういう罰則の規定があるので権衡上必要だと、こういうようにしてありますが、災害救助法では、従事命令に従わない者にも罰則規定があるのです。災害救助法をそのまま適用するとすれば、今回の百三条においてもやはり従事命令に従わない者にも罰則規定をつけるのが権衡上またこれは必要だと思うのですが、これについてはどうお考えでありますか。
  46. 夏目晴雄

    夏目政府委員 従事命令についての罰則でございますけれども防衛出動が下令されるような事態というのはいわゆる国家存亡のときであるということから、当然国民の協力、支援が得られるものと私ども確信はしております。また、その罰則を設けなければ一体支援、協力が可能でない、不可能であるというようなことでは、せっかく従事命令に従ってもらっても大した効果というか、期待ができないというふうな点もございますし、私どもとしてもなかなかその必要性あるいは有効性というものについての疑問も一方においてあるわけでございます。  確かに、災害救助法その他の権衡の問題として物資の保管命令と並んでおりますが、従事命令についてはいま申し上げたような問題が一つあるということ。それから、物資の保管命令については、自衛隊行動に際して必要な物資を確保するという意味から、従事命令よりはそういうものの罰則の適用の場面というのは必要ではないかというふうな考え方が一部あるわけでございます。  ただ、この問題は、いずれにしましても国民の権利義務と非常に重大な関係がございますので、今回の中間報告におきましても結論を出さずに、今後引き続きの検討課題というふうにさせていただいているというものでございます。
  47. 堀之内久男

    堀之内委員 いまの官房長答弁は一貫していないよ。保管命令に従わなかった者は罰則、従事命令に従わなかった者は付さない、それまで罰則したら、仮に付しても国家存亡のときの協力が得られなければ実際の効果は上がらぬという、それは大分解釈上矛盾している。物資の保管も一緒じゃないですか。それだったら、物資は保管命令をするんじゃなくて、収用法をつくった方がいいんじゃないかと思う。収用してしまう。そして防衛庁がどこかに保管していく。収用という方法を考える方が大事だと思うのです。しかもあなた、災害救助法でさえ、国内の災害基本対策においてこういうように従事命令に従わなかった者に罰則があるのに、国家存亡のときに従わない者には罰則がないということは、ちょっと権衡上おかしいのじゃないか。ここに書いてあるでしょう。最初に、災害救助法には保管命令に従わなかった者には罰則があるから、権衡上これはやるのだとはっきり言っておる。それだったら同じような解釈で、今後法制化の段階において、やはり従事命令に従わない者に対しましてもこれは罰則規定を設けるべきである、こういうように考えますが、再度お考えを聞きたいと思う。
  48. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いずれにしましても、この罰則の問題につきましては今後の検討課題でございまして、いま先生のいろいろな御指摘について、私ども十分今後の検討課題にさせていただきたいと思います。
  49. 堀之内久男

    堀之内委員 自衛隊法の第九十五条に規定する防護対象の中に、今度レーダーとか通信器材等を追加したい、こういうことでありますが、この防護対象を決める基準ですか、どういうものを入れるか入れないか、これについてその基準をちょっとお聞きしたいと思うのです。  私はこのあれを読んでみますと、ここに艦船が入っていないのですね。艦船はなぜ追加しないのですか。
  50. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛隊法第九十五条の武器防護の対象として考えていますのは、それが破壊されあるいは奪取されたときに、わが国の防衛上重大な影響を及ぼすようなものについての対象を考えているわけで、具体的に申し上げれば、武器、弾薬あるいは航空機、車両、そういったものが入ると思います。  今回われわれがお願いしてあるのは、「レーダー、通信器材等」というふうに申し上げているのは、レーダーというのはたしか昭和三十三年に最初の米軍からの返還があって、この自衛隊法の規定ができた二十九年には、まだレーダーサイトがわが国に移管されてなかったというふうな経緯によるものかと思います。その後の返還の経緯あるいはレーダーサイトの重要性というものにかんがみ、こういったものも当然武器等の防護の対象に入れるべきであるというふうに考えて入れたわけでございます。  それから、先生いま御指摘の艦船についてでございますが、まず艦船のうちの本来的に大砲、ミサイル等を積んだ艦船、護衛鑑等につきましては、「武器等」の中に読めるということで私ども理解しております。ただ、一部兵器を搭載していない船がございます。こういったものについては、はなはだ小役人的な表現で失礼でございますが、この「レーダー、通信器材等」の「等」でもって、そういった兵器を搭載していない船舶も読みたいというふうに考えておるものでございます。
  51. 堀之内久男

    堀之内委員 航空機が入るのですから、航空機にも武器を積んでいない輸送機もあるでしょう。そうとすれば、そういうおかしな解釈をせずに、この際やるのだから、なぜ艦船を入れるということを率直に言わないのですか。私はその方が素直だと思うのですよ。基準を示しなさいというのは、あれも入れちゃいかぬ、これも入れちゃいかぬとは言っていないのです。入れなさいと言うのです。なぜ入れないか。護衛艦を入れずにおって、その中には大砲やミサイルやあるいはいろいろな武器を積んでいないものもあるからと言うのですが、その辺を入れずにおって、それを「等」でごまかすんだなんて、それだったら何もかも「等」でごまかされてしまうから、かえって私は誤解を招くと思うのです。
  52. 夏目晴雄

    夏目政府委員 恐縮でございましたが、航空機は当然「武器等」の中に本来的に入っております。艦船につきましても、大半の艦船は武器の中に入るということをまずつけ加えさせていただきまして、なお兵器を積んでない船も、たとえば雑用船とかいろいろあるわけですが、そういったものは入れるか入れないかというふうな問題があろうかと思いますが、私どもとしてはもしお認めいただければ入れたいというふうに考えて、そういう表現にしているわけでございます。
  53. 堀之内久男

    堀之内委員 私は、この際、艦船もそういう誤解を受けないように、航空機もいわゆる輸送機まで全部入っておる今日だったら、当然これは追加して、誤解のないような方向をとられることが一番望ましいと思います。これは答弁は要りませんが、ぜひそういうふうに検討を進めていただきたいと思います。  それから、九十五条というのは自衛隊の部隊の戦闘力の保護を目的としておるわけですね。とすれば、戦闘力というのは物的要素ばかりじゃないわけなんです。これを使う人的要素も防護しなければいかぬわけですね。すなわち、警護を任務とする自衛官についても同じだと私は思うのです。ということになりますと、自衛官に、施設内での質問とか犯罪の予防、制止措置あるいは現行犯逮捕等の即時強制の権限を認めるべきではないか、こういうふうに思うのです。これは、武器の使用というのは最後の手段なんですから、施設内で予防することも、あるいは船の中でもこれは一緒なんですが、そういうところにあらぬ者が入ってきてやった場合には、前もってこれを予防できるような方向を考えるべきではないかと思いますが、この点どういうようにお考えですか。
  54. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛隊の戦力発揮のために、必要な物的要素のほかに人的要素も防護の対象に加えるべきであるという御意見、ごもっともでございまして、私どもとしましても、そういった見地から、今回部隊要員を防護するということの規定を追加していただきたいということをここで述べていることが一つでございます。  それから第二点は、いま先生がいろいろ施設内での質問、尋問その他の件につきましては、私ども今後の御指摘、御意見を踏まえて研究をさせていただきたいというふうに考えております。
  55. 堀之内久男

    堀之内委員 これは、戦闘力の保持という立場からぜひとも、物的要素はこういうことになりますが、人的要素の関係につきましても十分御検討をお願いしておきたい、こういうふうに思います。  それから「現行規定の適用時期の問題」でございますが、百三条の規定による土地の使用に関しては、陣地の構築等の措置をとるのに相当の期間を要するので、防衛出動下令後から措置するのでは間に合わない、また、自衛隊法二十二条の規定による特別の部隊の編成あるいは七十条の予備自衛官の招集についても同様である、こういうふうに報告書は述べております。防衛出動待機命令下から適用することが必要であるとしておるわけですが、なぜその時期で間に合わないのか。待機命令下の間にやらなければいけないということになっておりますが、これが間に合わない理由をちょっと御説明を願いたいと思います。  しかし、防衛出動待機命令というのは、防衛庁長官が、事態が緊迫して防衛出動命令が発せられることが予測される場合、それに対処するために必要と認めたときに、総理大臣の承認を得て発することになっております。したがって、出動待機命令は防衛出動命令に備える事前の出動準備態勢を確立するためにあるわけでありますが、出動待機命令では自衛隊は待機の状態にいるというけれども、どのような状態を指しておるのか。そして出動待機の間での準備措置ということを予定しておりますが、どのようなことを準備するのか。これは法律には何ら具体的に示しておりません。準備措置を考慮しているということですが、現行法では、防衛出動待機命令というのは、七日を超えた職務離脱者に罰則が適用されるというだけなんです。しかし、これは自衛隊法第七十六条によると、防衛出動命令というのは「武力攻撃のおそれのある場合」にも発することができるわけです。だから、このことと待機命令との関係から言えば、待機命令は武力攻撃のおそれのあるのと大体同じように解釈していいのではないかと思うのです。そのためにこの準備を待機命令のときからやるということだったら、出動準備を予定して待機命令を出すとするならば、おそれのあるときだから時間的に余裕があるので、この出動命令で可能ではないか。したがって、出動待機命令でいろいろな陣地構築や土地の収用をしなくてもいいのじゃないかと思いますが、これについて見解を述べていただきたいと思います。
  56. 夏目晴雄

    夏目政府委員 幾つかの御指摘があったわけです。  まず、防衛出動命令というのは、わが国に対する武力攻撃があった場合あるいはそのおそれがある場合というのは御指摘のとおりでございますが、この防衛出動命令がいつ出されるかというのは、そのときの脅威の実態によって非常に千差万別でございまして、おそれのあるときに果たして十分リードタイムをとって出し得るかどうかといったことも問題でございますので、私どもとしては、もろもろの規定についてこの防衛出動命令が下令されてからでは間に合わないのではないかということで、防衛出動待機命令下令時から準備できるようにしたい。  その理由としましては、まず土地の使用でございますが、これは先ほど来申し上げておりますように部隊の展開、陣地を構築するために必要なものでございまして、この陣地の構築一つをとりましても、この陣地の形にもよりますが、相当堅固な陣地を構築するとなれば相当長期間を要するということから、防衛出動が下令されてからでは所要の準備ができないのではないかというおそれがあるわけでございます。  それからまた、予備自衛官の招集につきましても、現行規定では出頭の十日前に本人に交付することになっております。そうしたことであって、この予備自衛官を招集し、訓練をして、部隊を編成するというようなことが果たして一体間に合うかどうかということについての懸念があるわけでございます。  それから特別部隊編成にしましても、こういった特別の部隊を編成しますと、戦術思想を統一したり、部隊を編成準備をし移動をするというふうな時間を考えますと、防衛出動下令からでは間に合わないのではないかということから、私どもとしては、いまの三つの点につきましては防衛出動待機命令からできるようにしていただきたいと考えているものでございます。
  57. 堀之内久男

    堀之内委員 防衛出動下令時に陣地構築のための土地使用が緊急に必要な場合があることは理解できるわけですが、陣地構築というのはいろいろあると思うのですが、大体どれぐらいかかるものか。そしてこの場合に、部隊の戦闘配置の一部として陣地構築をするのか、それともそれを予定して準備としての陣地構築をするのであるのか。これもやはり、武力攻撃のおそれのあるときの第七十六条、この出動命令との関連で、出動命令が出れば陣地構築もちゃんと思い切ってできるのだが、待機令のときは出動はできないのだから、そのつくるべき陣地のところに行って、そしてまた帰ってこなければいかぬわけですな。これはどういうふうになるのですか。
  58. 夏目晴雄

    夏目政府委員 先ほど申し上げたように、待機命令が出ますと、自衛隊法第百三条の土地の使用を認めるようにさせてもらいたい、こういうことになっております。したがって、それができれば陣地の構築も部隊の移動、展開も可能になるわけでございます。そういう意味で、私ども、百三条の土地の使用については防衛出動待機命令下令時にできるようにしてもらいたいというのがねらいでございます。  それからもう一つ指摘がありました、陣地の構築に一体どのくらいかかるかという御質問でございましたが、これは、先ほども申し上げましたように、陣地によって日にちは相当千差万別でございます。最も簡易な普通科部隊を例にとって申し上げれば、指揮所であるとか観測所、いわゆる簡易掩蓋のようなものについて、あるいは露天でいいようなものについては数日あればできると思います。しかしながら、たとえば小銃手全員が簡易掩蓋に入って、指揮所、機関銃が相当堅固な掩蓋に入るというようなことになると一カ月ぐらい必要でありますし、坑道式の掩蔽に指揮所が入るというようなことになりますと数カ月かかるというふうなこともございます。これは千差万別でございまして、一概に言えませんが、いずれにしても相当長期間要するのではないか。一方また、防衛出動下令後そういった日にちが一体とれるかどうかということについての兼ね合いから申し上げている状況でございます。  それからもう一点の御質問ですが、いわゆる部隊の戦闘配置の一部としての陣地構築か、あるいはそれを予定しての陣地構築かというふうな御質問がございましたが、私どもとしてはその両方を考えているというものでございます。
  59. 堀之内久男

    堀之内委員 防衛出動待機命令は公示されるのですか。もしこれが公示されないと、使用処分を受ける住民は、百三条が適用されることを事前に知らずに自己の権利について処分を受けることになるわけで、法治国家のたてまえから問題があるのではないかと思うのです。国民の財産の制限でもあり、他の所管省との関係もあるから、出動命令下令時前のこういう適用については相当手続を慎重にしなければならないと思うのです。たとえば、防衛準備態勢の急速な確立のため緊急に必要であると確定したときに政府が百三条を適用するとかいうようにですね。いまでは防衛庁長官総理大臣の承認を受けてとなっておりますが、これもある程度政府一体で、内閣で責任を持ってやるということが大事じゃないかと思うのです。そういう規定にこれを直すべきじゃないかと考えますが、この点についてお願いいたします。
  60. 夏目晴雄

    夏目政府委員 現在防衛出動待機命令の公示についての規定は確かにございません。今回私どもが提案しておりますように、自衛隊法第百三条の土地使用が待機命令の下令時からということになりますれば、当然のことながら、これは国民の財産権にも関係のある問題でございますから、何らかの形での公示の必要、国民への周知徹底を図る必要、そういった手続が別途必要になると考えております。
  61. 堀之内久男

    堀之内委員 それでは、いま私が申し上げたように、手続等については慎重に政府全体の承認を得て行う、こういうように理解していいのですか。
  62. 夏目晴雄

    夏目政府委員 そのとおりでございます。
  63. 堀之内久男

    堀之内委員 防衛出動下令前では「自衛隊行動に係る地域」というものはないわけですが、この場合は百三条の一項、二項のいずれによってこれを行おうとしているのか、別段また規定をつくろうと考えていらっしゃるのか、お尋ねいたします。
  64. 夏目晴雄

    夏目政府委員 防衛出動における百三条の適用については、いわゆる一項、二項の地域というふうに分かれておりまして、一項は御承知のように「自衛隊行動に係る地域」、二項はその「地域以外の地域」ということになっておりますが、私どもは、待機命令によって使用しようとするような土地については、将来防衛出動が下令された場合には当然この第一項、「自衛隊行動に係る地域」になる土地であるというふうに予想しておりますが、その辺の選択、峻別の仕方、区分の仕方については今後の検討課題であるというふうに考えております。
  65. 堀之内久男

    堀之内委員 肝心なところはほとんど検討課題になってしまいますが、それもやむを得ないと思います。  次に、予備自衛官の招集でありますが、これは必要性は認めるわけです。しかし、この自衛官の招集というのは、相手国に対しては日本政府が動員令を発したというふうに受け取られて、外交交渉上もこれは余り思わしくない影響を生ずるのではなかろうかと思うのです。防衛庁長官内閣総理大臣の承認を得て行う防衛出動待機命令ということになっておりますが、この予備自衛官の招集も、政府一体で、内閣で一致して、事態が緊迫して防衛準備態勢の急速な確立が必要だと認めたときに防衛庁長官予備自衛官を招集するというような形に、この規定というものもすべきだと思います。これは相手国を刺激しないとか、あるいは今後の外交交渉とかいう場合も考えまして一応考えたわけでありますが、この点についての考え方をお伺いしておきたいと思います。
  66. 夏目晴雄

    夏目政府委員 予備自衛官の招集につきましては、先ほど来申し上げておりますように、現在の規定では防衛出動下令でないとできないということになっておりますが、これも先ほど御説明いたしましたけれども予備自衛官の招集につきましては出頭の十日前に交付する。これは、当該予備自衛官というのは、招集されるまではそれぞれ自分で営業し、あるいは企業に就職して働いているわけでございます。そういった方々のことを考えて、身辺整理であるとか旅行期間というふうなことを考えております。また、この招集令状を作成するにも相当の時間がかかりますし、郵便の郵送期間というふうなことを考えると相当長期間、あるいは半月以上にわたるのではないかというふうに予想されております。そういったことから、防衛出動待機命令の時点から予備自衛官を招集したいというふうに考えているわけですが、いま先生が、予備自衛官の招集ということになると動員下令ということで、対象国といいますか相手国に対しての一種の挑発になるのではないかというふうなことを言われましたけれども、私どもとしては、そういったことのないような方法があるかどうか、御指摘を踏まえて今後検討してまいりたいというふうに思います。
  67. 堀之内久男

    堀之内委員 次に、新たな規定の追加で、緊急通行権ということになっておりますが、これは防衛出動時の規定になるのか、あるいは緊急出動時はもちろんでありましょうが、具体的にはどのような場合を想定されておるのか。戦闘行動中、戦闘準備行動、いろいろあると思うのですが、これは具体的にどのようなことを考えていらっしゃるか、ちょっとお尋ねします。  同様の規定は消防法や水防法にはあると言われているのです。だから、これらの規定では損失補償をも考えておるのかどうか。今回の防衛庁考えておれらる緊急通行の場合は補償ということも考えていらっしゃるかどうか。  また実際問題、戦闘中にもし非公共用地を緊急通行した場合に、その評価というのが果たしてできるのかどうか。  これらの点についての考え方をお聞きしておきたいと思います。
  68. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今回の緊急通行権の問題につきましては、有事の際に自衛隊が緊急に移動する場合が当然予想されるわけですが、その場合に、道路が閉鎖されたりあるいは破壊されたというふうなことから通行ができない、一般公共の通行に用いざる土地とかいうものを使用せざるを得ないような場合が想定されるわけでございまして、そういうやむを得ない場合、しかも緊急の場合には、そういったいわゆる道路以外の土地も通行できるようにしていただきたいというものでございまして、その場合に、たとえば戦車が通ったり車両が通って畑を荒らしたということになれば、当然補償の措置というのは必要であろうというふうに考えております。
  69. 堀之内久男

    堀之内委員 防衛出動待機令下にある部隊が侵害を受けた場合に、部隊の要員を防護するために武器を使用できるようにしたい、こういうように報告されておりますが、当然これは必要だとは思うのです。しかし、現在でも、正当防衛とか公務執行妨害とかそういうものでも対処できるのではないかと私は思うのですが、武器が使用できれば一番結構なことでしょうけれども、いま申し上げたような点でも結構部隊の要員の保護はできるのではないかと思いますが、その点の解釈はどうでしょうか。
  70. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今回、防衛出動待機命令下にある部隊に対するある種の侵害、たとえば国外からのゲリラが部隊要員に対して危害や侵害を加えようとする場合に、それを防護するための規定をお願いしているわけですが、この場合、部隊の要員が個々にそれぞれ個人の判断で武器を使用する、正当防衛とか緊急避難とかいうふうなことで武器を使用するということでは不十分である、適当でないというふうに私ども考えまして、部隊としてその警護の任に当たる部隊指揮官にその命令を出さしていただきたいというふうに考えておるものでございまして、現在の、先生がいま御指摘になった個人の正当防衛とか武器の使用ということでは適当ではないのではないかというふうに考えております。
  71. 堀之内久男

    堀之内委員 今日まで政令についてはほとんど災害救助法にのっとってやったということになっておりますが、私は、この従事命令でいろいろ仕事をやっていただく方々の実費弁償等々についてはこれでいいのかなと思うのですが、しかし、これは防衛庁職員の出動時の給与というのがまだ法律化されておりませんからここでどうということになりませんけれども、将来の検討課題という形で、出動した職員にはより高いものを考えないと、従事命令で後方で仕事をやる従事者は災害救助法にのっとった出費だ、これでは均衡上本当の協力はもらえないのではないか、こういうふうに考えますが、この点、職員の出動時の給与法がまだ制定されておりませんから、これについてどのように考えていらっしゃるか、これだけお聞きしたいと思います。
  72. 夏目晴雄

    夏目政府委員 現在、防衛庁職員給与法の第三十条におきましては、出動時の隊員の手当その他については別に法律で定める、こういうことになっております。  私ども今回の検討課題にはしておりますが、この出動時における隊員の手当その他については非常にむずかしい問題がございます。一つは、まず自衛隊員の給与というものを一体平時から有事を考慮した処遇をすべきであるのか、あるいは戦時に際していわゆる戦時手当というようなものを何ぼか考えてそれをやるべきなのか、あるいは事後救済ということで考えるのかというふうな方法、あるいは一般公務員、一般住民との均衡、バランスというふうな政策的な問題が多々ございますので、いまだ検討は大きく進んでいるとは申しませんが、いずれにせよ、防衛庁職員給与法に「別に法律で定める。」ということになっている以上、私ども相当急いで研究しなければならないというふうに思っておるものでございます。
  73. 堀之内久男

    堀之内委員 最後になりますが、いまこの百三条は「政令で定める」ということになっておるわけです。それで自衛隊法のいろいろなところを見ますと、「政令で定める」というふうに全部なっておるわけでありますが、この百三条だけの政令ができていないだけなのか、あるいはほかの方の政令はもう全部できているのか。  それから、いままでこの百三条の政令をつくらなかった理由ですね。大体法律を提案するときには、提案する防衛庁政府としては、一応政令の原案というか素案というものはあるはずです。それがあなた、自衛隊法ができたのは昭和二十九年、そうすると二十七年も政令をつくらずにほったらかしたというのは、これは私は防衛庁の大変な怠慢だと思うのです。職員給与法にしてもちゃんと書いてある。職員給与法第三十条は、出動を命ぜられた職員の手当、災害補償は、別に法律で定めると規定してある。それを二十何年間なぜ放置されておったのか。あなた方の場合は二、三年でくるくる責任者がかわるから、官房長が一生懸命やろうと思っても、また来年ぐらい交代するということになるから、常に新しい人、新しい人で、本当にこれをやってくれる人がいないのではないか、これでは責任がない、こういうように私は感じます。  よくシビリアンコントロールシビリアンコントロールと言われるのだから、それだったらそれなりにシビリアンとしての責任を果たしていただかなければいかぬ。政令をなぜこんなに二十何年も放置しておいたのか。防衛出動もできないような、手当をやる給与法もつくってないようなことではいかぬと思うのです。したがってこの政令も早急に、これは国会の問題じゃないわけです、政府自身の問題です。国会論議するのならばなかなか法案が通りませんでしたと言えるけれども、これはあなた方自身でやろうと思えば十分すぐにでもできる問題です。  この百三条の政令については早急に結論を出して制定していただきたい。また、ほかのが出してないなら、その政令はどうなっておるのか、この給与法とあわせてお尋ねいたします。  最後にまたもう一つ、この有事法制もせっかく三年八カ月にわたっての研究でありますから、冒頭に申し上げましたが、せっかく出した以上、なるべく早く法制化ができるような手続を今後進めていただきますように御要望申し上げて、私の方の質問を終わらせていただきます。
  74. 大村襄治

    大村国務大臣 自衛隊法百三条に基づく政令が、法制定以来二十数年を経過したにもかかわらずまだ全く制定されておらないということはまことに遺憾でございます。今回、この点に関する研究がようやくまとまりましたので、この研究に関する国会の御議論、世論の動向等をしっかり見定めまして、速やかに政令が制定できるように今後とも努力してまいりたいと考えておるわけでございます。  その他の御指摘の点につきましても、しっかり勉強しまして、所管法令についての現行規定に基づく不備な点につきましては、改正を要する問題の別途検討はもとよりでございますが、法律の根拠のすでに備わっているものにつきましては、一段と検討に力を注いでまいりたい、そういう気持ちでおりますので、御了承賜りたいと思います。
  75. 堀之内久男

    堀之内委員 官房長、ほかの政令はどうなっておるのか。
  76. 夏目晴雄

    夏目政府委員 法律に別途政令で定めると規定されながら、政令が制定されてないものはこの百三条関係以外にはございません。
  77. 堀之内久男

    堀之内委員 はい、わかりました。
  78. 坂田道太

    坂田委員長 次に、有馬元治君。
  79. 有馬元治

    ○有馬委員 同僚議員の箕輪先生が急用のために退席されましたので、持ち時間の範囲で私からは一問、それから引き続いて玉沢先生から、政府側に緊要な問題について御質問申し上げたいと思います。  それは、昨日行われました第一回の日米の首脳会談の模様につきまして、御承知のとおり、今回の首脳会談は世界の平和安全保障に対する枠組み、また、わが国の今後の進路に大変重大な影響を持つ重要な問題でございますから、われわれを初め国民皆さんも、一挙手一投足といいますか一言半句、かたずをのんで見守っておる状態でございます。  そこで、現在までに昨日の模様について外務省にいろいろと情報が入っておると思いますので、詳細にこの機会に御報告をお願いいたす次第でございます。
  80. 松田慶文

    松田説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、日本時間にいたしまして今朝早く、ワシントンにおきまして第一回の首脳会談が行われました。予定は一時間半程度、最初に二十分程度、総理と大統領のお二人だけの余人を交えない会談があるというセットでございましたが、最初のお二人だけの会談が予定の倍以上、二十分から四十分の長い時間お話があったそうでございます。その後、関係閣僚、随員を含めての全体会議を行いまして、全体として予定よりも十五分長く、いろいろなお話がございました。  その模様を若干お時間をちょうだいして御説明申し上げますと、お二人だけの会談では、伺ったところによりますと、レーガン大統領鈴木総理との間で、個人的ないろいろな相互の理解を深めるための会話がなされたようでございます。  その後、実質問題につきましては、まず自動車問題について、大統領から、今回日本政府がとった措置に対して感謝の意の表明がございました。もし日本の協力と措置がなければ、米議会において保護立法が行われ、米国として自由貿易が守れなかったかもしれない、という趣旨の御発言もございました。  その後、原子力潜水艦事故の問題が話し合われたようでございます。その詳細はまだ承知しておりませんが、実はその前の日に、ヘイグ国務長官総理大臣のところへ表敬訪問に参りました際に、大統領の伝言といたしまして、改めてこの事故に対する深甚な遺憾の意の表明の伝達がございました。その際、総理とヘイグ長官との間で、この事故日米双方にとってまことに残念な不幸な事件であったが、総理大臣としては、大統領がこの会談の前にできるだけの調査を行うという約束をされたことを果たしたこと、また責任の所在と補償については明確な言明をなされていることを日本側としては評価している、そのようなお話があったと聞いております。  首脳会談に戻りまして、原子力潜水艦の問題の後、大統領から、先般の対ソ穀物禁輸措置の解除の問題につきまして、日本側に十分事前の御相談ができなかったが、今後は日本が重要と思う問題については十分事前に御相談を申し上げていきたい、という御発言がありました。  この後全体会議に臨まれたわけでございますが、まずレーガン大統領から、いま二人だけでこのような話をした、そういう内容の御紹介がございまして、鈴木総理からは、そのとおりだ、そうして、二人で十分時間をかけて話し合っていろいろと意思の疎通ができた、今後は二人で、問題が起こったときには、電話で話し合うようなそういったことでいきたい、という御発言がございました。  全体会議は十一時三十五分から十二時十分まで行われたわけでありますが、米側は、副大統領、国務長官、財務長官、国防長官、商務長官、あとホワイトハウスのスタッフ、マンスフィールド大使等々が出席されました。  議題は主としてアジア情勢に関する討議が中心でございました。まず発言は大統領の方からなさいまして、米国は現在多くの国と緊密な同盟関係を持っているが、その中にあって日米の同盟関係を最も重要であると考えている、日米は太平洋国家であって、太平洋をはさむ友好関係を今後とも堅持したい、という趣旨の御発言がございました。  大統領は、次に、中国との友好関係を今後とも増進していくというお話をなさい、また韓国につきましては、今後とも韓国との同盟関係を維持し、その支援を続けていくという決意の表明がございました。  さらに、ASEANの立場を支持し、またカンボジアからのベトナムの撤退が図られることを希望する、という御発言もございました。  この後、鈴木総理の方からは、日本の基本的考え方の開陳がございました。  まず韓国問題については、先般の米韓首脳会談で表明されたとおり、米国が在韓米軍の駐留継続を決定したことは、朝鮮半島の平和と安定に貢献するものとして高く評価する、日本は韓国に対して軍事的な措置は何もできないが、経済協力、技術協力については今後一層努力していく、という趣旨の御発言がございました。  次に日中関係につきましては、鈴木総理は、年とともに友好・親善関係を中国との間に深めてきている、日本は中国の近代化政策を支持しており、中国が引き続き穏健な政策をとり、西側との協調関係を維持することに対して日本は支援を惜しまない、このために経済協力、技術協力を引き続き実施していく、という御発言がございました。  さらに、先般ASEAN諸国を歴訪し、これら諸国の指導者、民衆と接触したところ、これらの地域では活気がみなぎっており、自立自助の機運が高まってきている、わが国を初めとする各国の経済援助が補完的な役割りを果たしており、これらの地域の民生安定に寄与していることをはだで感じた、という御体験を話されました。  また、日本は二国間経済援助の七〇%をアジアに向けておりますが、三〇%はASEANに配分していること、今後ともこれらの経済協力、技術協力の面で一層の貢献をする、という趣旨の御発言がありました。また、ASEANのほとんどの国が、米国が引き続きこの地域に関心を持ち、政治、軍事、経済的にプレゼンスを持つことを期待している。この首脳会談に先立って、ASEANの指導者に、米国へ何か伝言することはないかと聞いたところ、米国がこの地域への関心を持ち続けるとともに、経済活動をさらに強化してほしいとの要請があり、またヘイグ国務長官が近くASEAN拡大外相会議に出席することを決定したことを高く評価している、ということをお伝えになりました。  次に防衛問題でありますが、大統領から、従来より日本側にいろいろと申し上げているとおり、日本が憲法その他の制約の範囲内で従来より防衛力の整備に努力していることを十分知っている、今後とも防衛力の整備を続けることを期待する、という趣旨の御発言がございました。  これで第一回の会談は終わったわけでありますが、この防衛問題につきましては、先方がいま申し上げたことを御発言になった後、予定がもう十五分も超過しましたので終わっておりますが、この後ブッシュ副大統領、ワインバーガー国防長官との会談もございますし、第二回の首脳会談もございますので、引き続き討議が行われる可能性がございます。  なお一言つけ加えますと、前の日のヘイグ長官の表敬訪問の際にも防衛問題が一点出ておりまして、ヘイグ長官は、米国の国内には日本の防衛問題についていろいろな意見はある、しかし米政府当局としては、鈴木総理が防衛問題について御自分で対処していかれる力、アビリティーを有しておられることについて十分な信頼を持っている、先般の伊東大臣の訪米の際にもいろいろ御相談したが、今後とも日米間では十分に満足のいく形での問題の協議を続けていきたい、という趣旨の発言がございました。  以上で、御報告を終わります。
  81. 有馬元治

    ○有馬委員 どうもありがとうございました。
  82. 坂田道太

    坂田委員長 次に、玉沢徳一郎君。
  83. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 去る四月二十二日でございますが、ソ連の艦船が日本海の公海上におきまして、日本の漁船が近くにたくさんおる地域におきまして、国際法を無視いたしまして無警告で砲撃をいたした、この点につきまして質問をいたしたいと私は思うわけでございます。  国際法を無視しまして砲撃をいたしました。幸いにしまして何ら日本の漁船等に被害がなかったからよかったのでありますけれども、こういう事例がしばしば起こるようでは、安心して日本の近海におきまして漁船が操業することはできない。また、この砲撃に対しまして、ソ連の大使館等におきましては、公海上におきまして射撃をしたのは違法ではない、こういうような見解も示しておりますし、事前にこれを通告しておった、こういうことでございますが、この点につきまして政府はどういうような処置をとったかにつきまして、質問をいたしたいと思います。
  84. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございました事件につきましては、その翌日、四月二十三日でございますけれども、直ちに在京ソ連大使館の参事官を外務省に招致いたしまして、なぜそのような発射を行ったのか、ソ連側の釈明を求めたわけでございます。それからまた、ソ連側から事前通報がなかったという点についても注意を喚起したわけでございます。  その後、繰り返しソ連側に対しまして回答を督促いたしまして、特に四月二十九日、魚本駐ソ大使がグロムイコソ連外務大臣と会談する機会もあったわけでございますけれども、その際にも本件に言及いたしまして、どうしてこういうことが発生したのか理解に苦しむ、ということを述べた経緯があったわけでございます。  その後、五月一日に至りまして、在京のソ連大使館から外務省に対しまして、ソ連側の正式回答を寄せてまいりました。  その内容は、事実関係につきましては日本側が申し述べましたことを認めております。それからまた、その説明といたしましては、この射撃は発射装置の点検のために行ったものである、訓練用の砲弾を数回射撃したものである、これは視界が良好なときに、その発射地点においては漁船も通過船もいないということを確認した上で、きわめて近距離の発射を行ったものである、したがってこれは国際法ないし国際的に広く認められた慣習、国際法の規範等に矛盾するものではない、しかしながら、今後ソ連側としてはこのような事件が繰り返されないよう必要な措置をとる、というのがソ連側の回答の趣旨であったわけであります。  そこで、国際法との関連についてでございますけれども、この発射が行われましたのは公海上でございまして、公海につきましては国際法上公海自由の原則というものがあるわけでございまして、このような火砲の点検のための発射を行うということは、公海自由の原則かちすればこれは認められるところでございます。  ただ、公海を使用するに当たりましては、公海の自由を行使する他国の利益に合理的な考慮を払わなければならないということになっておるわけでございます。たとえばミサイル演習等を行います場合に事前通報を行うということはあるわけでございますが、これは事前通報を行うそのこと自体について国際法上の義務があるわけではございませんけれども、ただいま申し上げましたような、他国による公海の自由の行使の利益に合理的な考慮を払うというその考慮との観点から、演習の態様、演習海域等において他国の船舶の航行等があり得るという状況におきましては、事前通報を行うことが必要とされる場合もあるということであろうと解されているわけでございます。  今回の場合は、ソ連側の説明にございますとおり、付近にいる日本の漁船等に被害がないということを確認した上で行ったということのようでございますし、また現実に、日本の漁船に対する被害あるいは危険な状態が起こったという報告も受けていないわけでございます。さらには、先ほども申し上げましたとおり、ソ連側としては、今後このような事件は繰り返さないということを言っているわけでございますので、私どもといたしましては、ソ連のその発言、今後このような事件が繰り返されないということ、これが確保されるよう注目をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。  なお、ただいま御質問の中で触れられました事前通報の件についてでございますけれども、確かに、日本側からソ連側に釈明を求めました後、タス通信等で「事前通報が行われた」という報道があったわけでございますが、この件につきましては、当時御説明申し上げましたとおり、この時点に関する事前通報があったのは全然違う海域についてであって、今度の青森沖については事前通報はなかったわけでございます。今般のソ連側の回答は、そのタス通信の報道を直接否定してはおりませんけれども、このような場合には事前通報なしに射撃を行うということも国際法上認められているという言い方をしているということから、間接的にはタス通信が「事前通報を行った」という報道を否定しているということであろうと解しております。
  85. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 ソ連は、公海上におきまして、周りに漁船がなく視界が良好であって、つまり被害を与えるおそれがないと判断した場合には、国際法上問題がないという見解のようでございますけれども、しかし一昨年の六月二十六日におきましても、ヘリ航空母艦のミンスクが極東海域にあらわれましたときに、宮古島の西方百キロの公海上で随伴艦がやはり無警告でやっておる。お互いに隣国同士のつき合い、それからまた、もしお互いに国際法を守って平和を守るということであるならば、やはりあくまでも相手国に対しましては通告をしましてやる、こういう習慣をもっと明確にすべきではないか、こう考えるわけでございます。  また昨年の八月にも、日本が非核三原則というものを持っておるにもかかわらず、エコー型の原潜が火災を起こして海峡通航を通告してきた。日本政府の方としましては、非核三原則がありますので通航を拒否した、それを押し通して海峡を通航いたしておる。だから、国際法におきましてはある程度は認められる行為であろうとも、何か力で相手の国をおどかしながらやる、こういう行為がすべて正当化されてはならない、こう考えるわけでございます。  したがいまして、私は今後とも、その点におきましてはやはり強硬に、事前に警告をなしてから砲撃の演習をするとかすべきである、あるいはまた、非核三原則の関係におきましても、あのような事件が起きた場合におきましても、もっと明確に日本の国是というものを相手に知らせておかなければならないと思う。だから、本当に日本が非核三原則を守るなら、今度の原潜の事故におきましても専管水域まで非核三原則を広げて規制すべきだ、こう言っておりますが、本当に守るというのであるならば、これは武力でもってでも非核三原則を守るという決意がなければ、これを本当に守ることはできないというぐらい厳しいものでなければならないと思うのであります。そうでなければ、非核三原則なんというものは存在の意味すらないわけでありますから、そういう点におきまして日本は力がないわけでありますので、実力の行使をもって非核三原則なんというものを守ることはできない、守らせることはできない。そうであるならば、常に相手のそのような無礼な行為または国際法を無視した行為、こういうものに対してはもっと明確に、つまり相手の非を指摘をして、今後本当にこういうことがないようにすべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。  もう一度、この五十四年度のソ連の無警告発砲事件に対してはどういう処置をとったか。  さらにまた、今後とも国際法において認められるというような見解を示しておるようでありますが、それに対してももっと明確に反論しまして、二度とこういうことがないようにするか、この決意につきましてもう一度お伺いいたしたいと思います。
  86. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 公海上におきます射撃につきましての国際法上の解釈は、先ほど申し上げたとおりでございますので、国際法上において射撃を行うこと自体が直ちに国際法の違反というわけにはまいらないわけでございまして、そのときそのときの状況に応じて、先ほども申し上げましたような他国による公海自由の原則に基づく公海の行使、それに支障を及ぼさないように合理的な考慮を払うという条件のもとにおきましての公海自由の原則というもの、これは一応国際法上確立しているものと認めざるを得ないわけでございます。  それで、わが国といたしましては、事件それぞれにつきましてその状況を判断いたしまして、的確な対応をするということを心がけているわけでございまして、先ほど御指摘のございました昨年夏のソ連の原潜によりますわが国の領海の強行突破につきましては、これは事後ではございましたけれども、ソ連側の方から核兵器は積んでいなかった、そういう回答があったわけでございますので、これは一応無害通航ということに該当することではあるわけでございますけれどもわが国の警告を無視いたしまして強行突破をした、そのこと自体はこれはきわめて非友好的な行為でございますので、そのような観点から厳重に抗議を行ったということは先生御記憶のとおりでございます。  それからまた、ミンスクが対馬海峡を通航いたしました際の随伴艦による射撃につきましては、これは付近に漁船等も認められなかった、何らの損害が発生するような危険な状態でもなかったということで、この件につきましては、先ほど申し上げました公海自由の原則に照らしまして何らの措置もとらなかった、今回の件につきましては、これは公海上ではあったわけでございますけれども、付近に日本の漁船もいた、危険も生じ得る状態であったということで、まずソ連側に対しまして釈明を求めたということでございまして、その結果寄せられました回答が、先ほど申し上げましたとおり、ソ連としてはその辺のところには十分注意をしたつもりである、国際法上これは認められるところである、しかしながら今後はそのようなことはしないということを言っているわけでございますので、今後しないというその点に着目いたしまして、今後を見守っていくということでございます。  一言で申しますと、ソ連との関係におきましては是々非々を明らかにするということが大事と考えているわけでございまして、それぞれの案件につきまして、それぞれの案件の性格、法律的な観点等を的確に分析いたしまして、それに基づいて、正しい立場に立って対処するということが肝要であろうと考えている次第でございます。
  87. 坂田道太

    坂田委員長 次に、前川旦君。
  88. 前川旦

    ○前川委員 この委員会に有事法制中間報告がありましたけれども、いままでにいろんな委員会ですでに質問をされております。したがいまして、若干重複するかもしれませんけれども、お許しをいただきたいと思います。  まず各論から入ってまいりたいと思いますが、最初聞いておりましたのは、今度の国会ではちょっと間に合わぬじゃないだろうかというような話を聞いておりました。それを二十二日とかなり急いだかっこうで出されましたが、この時期に出された理由は一体何でしょうか。
  89. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまのお尋ねに関しましてお答え申し上げます。  私は、昨年の秋の臨時国会におきまして、有事法制研究の進行状況等についてのお尋ねに対しまして、鋭意研究を進めておりますが、防衛庁所管法令についてはある程度進んでおりますので、できれば通常国会の会期中には国会に御報告するように努力いたしたい、ということを申し上げた次第でございます。  その後、庁内を督励いたしまして、ただいま申し上げました範囲内の研究がようやくまとまりましたので、その状況総理大臣に御報告いたしまして、国会報告することについての御了解を得られましたので、ただいま先生が御指摘になりました時期におきましてまず当委員会に御報告し、その後また関係委員会にも御報告した、これがこれまでの経緯でございます。
  90. 前川旦

    ○前川委員 私は、日米首脳会談にうまくタイミングを合わせたような気がいたします。  それから、総理の了承を二十二日の午前中に得ておられますが、これは単なる報告にとどまるものか、総理の了承を得たということは、これから閣議の議題にするというようなこれは権威のある中間報告なのか、その点どうお考えでしょうか。
  91. 大村襄治

    大村国務大臣 研究のまとまりましたものにつきまして内容を御説明をして、そういう研究がまとまったということについてまず御理解を得たわけでございます。その次に、近く国会に御報告したいということにつきまして、その点につきましても御了解を得た次第でございます。  また、閣議に諮ることにつきましては現在のところ考えておりません。あくまでも研究成果でございますので、研究そのものを閣議に諮るとか報告するということは考えておりません。
  92. 前川旦

    ○前川委員 先ほども出ましたが、防衛庁長官は「有事」というのはどういう場合を指すのか。実は先ほど官房長の御答弁によりますと、防衛出動が下令されるような場合、こういうふうな答弁がありました。ところが、これはわが党の稲葉誠一さんの三月二十日の質問主意書に対する答弁書、これは答弁書ですから閣議決定だろうと思いますが、有事というのは何かという質問に対して、「一般的には自衛隊法第七十六条の規定により防衛出動が命ぜられるような事態をいうことが多いと考えられる。」、「一般的には」という言葉と「多い」という言葉が加わっているわけです。先ほどかなり狭く解釈されました。ぼくは余り広く解釈するより狭く解釈なさるのは了とするのですが、この閣議決定の「多いと考えられる。」という言葉、それじゃ、そのほかに何があるんだ、防衛庁はどのように考えていらっしゃるのか、これをお答えいただきたいのです。
  93. 夏目晴雄

    夏目政府委員 「有事」という言葉の意義につきましては、いまも御指摘がありましたとおり、一般的に防衛出動命令が下令された場合が多いというふうに答弁書では書いてございますが、その前段にもありますように、もともと有事という言葉法令上の用語ではないということが一つと、特段の確固たる定義があるわけではございませんので、人それぞれ、あるいはそのときの対応によって使い方があろうかと思います。  かつては「有事」、「緊張時」、「平時」というふうな言葉を使ったときもありますし、いろいろございますが、私ども現在有事法制研究ということで考えております「有事」というのは、防衛出動が下令された時点というふうに理解しておるということでございます。
  94. 前川旦

    ○前川委員 そうしますと、後で質問しようと思っていましたが、若干矛盾が出てきますね。防衛出動が下令された時点が「有事」である、ところが、待機命令でいろんなことをやりたいという問題が出てきます。そうすると、待機命令の事態は「有事」とは考えないのか。「有事」とはあくまで七十六条が発動された事態に狭く考えるんだ、こういうように考えてよろしいですか。
  95. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今回、この有事法制研究が、第七十六条による防衛出動命令が下令された時点における自衛隊の運用上の問題を法制上の立場から検討したというふうに申し上げておりますが、いま先生の御指摘は、たとえば百三条の土地の使用の件、予備自衛官の招集の時期あるいは特別部隊編成について、七十六条の命令の以前に、すなわち防衛出動待機命令の時点に繰り上げようというのは「有事」を広げるんではないか、定義が誤りではないか、こういうことだろうと思いますが、私どもとしては、この七十六条が発令された時点において自衛隊が有効、円滑に運用できるような意味合いから、こういう三つの点についての適用時期をお願いしたということで、あくまでも「有事」というものにつきましては防衛出動下令の時点というふうに考えておるものでございます。
  96. 前川旦

    ○前川委員 それでは、待機命令を出す段階というのは、これは法律でははっきりしていませんが、どういう時点で待機命令を出すのか。というのは、これは乱用されると大変なことになります。そのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  97. 塩田章

    ○塩田政府委員 待機命令を出す時期につきましては、もちろん防衛出動の出そうな状況の前の段階ではございますけれども、もしお尋ねがたとえば何日ぐらい前なのかというようなことになりますと、これはそのときの状況によりまして全く千差万別だろうと思いますので、具体的に何日ぐらい前が一般に考えられるとかというふうにはちょっとお答えいたしかねるわけでございます。やはりそのときの情勢によって判断せざるを得ないし、お答えとしては、条文にありますような抽象的なお答えしかできないというふうに考えるわけであります。
  98. 前川旦

    ○前川委員 待機命令の段階で三つのことを新しくやりたい。しかもこの待機命令が、どこの委員会でも指摘されたと思いますけれども防衛庁長官総理との意見一致でできるわけですね。国防会議にかけるということも義務づけられておりませんし、閣議にかけるということも全く義務づけられておりません。したがって、国会はここではシビリアンコントロールが届きませんが、その段階で国民の主権をかなり制限をすることが果たしてできるのか、いまのままの法制でいいのか、これでシビリアンコントロールができるのか、これは非常に疑問に思うところであります。したがって、どういう時期に待機命令ができるのか、あるいはそれにはどういう手続を必要とするのかということを防衛庁考えなきゃいけない。これは誤解されないように、これに賛成して言っているんじゃないですけれども、これは私どもは疑問を持ちますので、その点いかがでしょうか。
  99. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛出動待機命令の時期につきましては、先ほど政府委員がお答えしたとおりでございます。  防衛出動待機命令を発動する場合の手続につきましては、いま御指摘がありましたとおり、長官内閣総理大臣の承認を得て発令されるわけでございます。その場合閣議の決定が必要であるかどうか、あるいは国防会議関係はどうなるか、その点は現在検討中でございますが、閣議の関係におきましては総理大臣の承認を得る、これが内閣の長としての立場から行われるものと理解されますので、やはり閣議に諮って行われることになるのではないかと考えております。国防会議への付議につきましては、御承知のとおり、設置法の規定からいたしますと法律上の付議事項とはされておらないわけでございます。そこで、第五号に言う「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」との関係でございますが、これは総理大臣の判断にまたなければいけないところでございますが、事態の状況により慎重に検討してまいりたいと考えたわけであります。
  100. 前川旦

    ○前川委員 きょうの新聞の記事ですけれども、きのうの内閣委員会で、待機命令にも国会の承認を得るように法改正が必要ではないだろうかということを答弁されたというふうに報道されておりますが、そのように御答弁されたんですか。
  101. 夏目晴雄

    夏目政府委員 昨日の内閣委員会におきまして、たとえば土地の使用であるとか予備自衛官の招集時期を防衛出動待機命令の時点に繰り上げることは、現在の防衛出動待機命令が国防会議にかかり国会の承認を得るという手続が明定されてないわけで、したがって、先ほど来先生からも御懸念がありますように、防衛庁長官総理大臣の承認を受けて発令できるというふうなことになるとシビリアンコントロールの歯どめがなくなるのではないか、というふうな御指摘がございました。それに対して私が申し上げた趣旨は、そういう点についての御論議をしていただく、そうして、これが法制化する場合には、国会で御審議をしお認めいただかなければこの法案は日の目を見ないものであるということが第一点と、それから、それをお認めいただくにしても、そういった防衛出動待機命令についての手続に不安があるというふうな御指摘でございましたので、その防衛出動待機命令についての御論議国会の場で、たとえば国会の承認というふうなことを私は特別具体的に申し上げたわけではございませんが、何らかの別の手続が必要であるという御論議国会で生まれることは予想されます、というふうに申し上げたものでございます。
  102. 前川旦

    ○前川委員 三十八年六月の三矢研究内容を見ますと、朝鮮で北から南に対して攻撃が開始された、進撃が始まった、その段階で待機命令が出るという想定になっています。こういうふうに考えると、私はこれは非常に乱用というか大変危ないものを感じる。果たして、日本の個別的な自衛権で説明できる問題から離れた、もっと広く乱用されることをどうやって歯どめをするんだろうか、非常に心配になります。したがって、先ほど防衛局長がお答えになりましたそれはそのときの形態によるというのは、これは私は悪いけれども非常に無責任な答弁だというふうに感じましたが、もっと正確に厳密にとらえていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  103. 塩田章

    ○塩田政府委員 決して無責任なつもりでお答えしたわけではございませんが、先ほどもお答えいたしましたように、もちろん事態は恐らく千差万別であると思いますが、それをいまここで何日前ぐらいであろうとかというふうにお答えするとすれば、それは大変むずかしいということははっきり申し上げたつもりでございます。  しからば、それではどのくらい前なのか、どういう状態のときなのかということをいま具体的にお答えすることはむずかしいので、いまお答えするとすれば、条文に書いてございますような抽象的なお答えにならざるを得ないのではないかということを申し上げたつもりでございます。
  104. 前川旦

    ○前川委員 それじゃ、確認をしておきますが、三矢研究に出ておりましたように、朝鮮で戦争が始まったという段階で日本の出動待機命令が出るということは、考えるべきではないし、考えられないと確認してよろしゅうございますか。
  105. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま三矢研究の例を挙げてのお尋ねでございますが、三矢研究につきましては一応当時の制服の間の研究であったわけでございますけれども防衛庁見解でもございませんので、三矢研究に触れてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。  具体的にそれではどこの地区でどういう状態が起こったときかということになりますと、先ほども申し上げましたように、いま具体的にお答えすることはむずかしいという感じがいたします。
  106. 前川旦

    ○前川委員 お答えを聞いていると、実はますます不安になります。防衛研究で、これは有事立法じゃないが、二月二十三日の朝日から引用しますが、防衛研究では「国際情勢の緊迫度に応じて自衛隊の警戒態勢のレベルを次第に高めることとし、警戒態勢のレベルを示す段階区分を設定する」、それから「情勢の切迫度に対応して行う作戦準備の段階区分は日米共同作戦計画の研究・協議の結論に待つこととし、幹部学校、幹部候補生学校の生徒動員など自衛隊員の人員充足、作戦用資材の確保購入など作戦準備に必要なリードタイム、方法などを研究」という記事が出ております。これは防衛出動までの間に段階的にこう来るわけですね。その段階のどの時点で待機命令が出るのか、どの段階で出すのか、どう考えていらっしゃるのか、ある程度具体的なお答えをいただきたいと思います。
  107. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま御指摘ございましたように、防衛研究におきまして、一つは、警戒態勢区分についての勉強をしております。それから一つは、防衛準備についての勉強もいたしたわけであります。  警戒態勢の方につきましては、いま御指摘ございましたように、段階区分を設けて逐次高めていくというような形を考えております。たとえば一番最初の時点考えれば、自衛隊のたとえばレーダーサイトでありますとか通信情報部隊でありますとかというようなところで勤務態勢を高める、より具体的に申し上げれば隊員の外出を取りやめるとか休暇を取り消すとかいうようなことから始まるんだろうと思うのです。そういうことから一番最後の防衛出動直前の状態までいろいろな段階が考えられますので、その段階区分を研究したということでございます。しかし、それはいずれにしましても警戒態勢の方は自衛隊の中の話でございます。  防衛準備の方は、いまのところ私どもは段階区分的に考えておるわけではございませんで、防衛準備としてどういうものが必要か、もちろんそれも段階はございますけれども、区分を設けてどの段階になったらどういうことということではなしに、防衛準備としてはどういうことが必要かという研究をしたわけでございます。たとえば、いま御指摘ございましたけれども、いろいろな学校に派遣している学生を原隊に復帰させて原隊の戦力を再編成するとかいうようなことも入りますし、それから必要な資材を購入するとか、あるいは部隊の隊員に対しまして緊急な訓練を施すとか、いろいろなことが考えられるわけでありますが、そういう防衛準備についての研究もいたしております。  いまの御指摘は、その段階のどの段階で待機命令が出るのかというお尋ねでございますが、いま申し上げましたように防衛準備につきましては段階区分的には考えておりませんので、第何段階とかというふうな形では現在考えておりません。そういうことでございますから第何段階というふうには申し上げられないのですけれども、そのいずれかの時期に防衛出動待機命令を出していただくというようなことに、実際問題としてはなるんではなかろうかというふうに考えております。そういうことでございますから、具体的にどういうことが起こった段階というふうには、いま防衛研究ではそういう形で考えておるわけではございません。  警戒態勢の方につきましては一応段階区分は設けるつもりでおりますが、それも、何もない状態を第五として、仮に一番高い警戒態勢の段階を第一としました場合に、第一の段階に防衛出動待機命令を出すとかどうとかというようなことをいま結びつけて考えておりませんので、実際問題としましてはその辺になるんではないかと思いますけれども、いま、警戒態勢の区分の第何段階に来たときに待機命令をお願いするというふうに、結びつけて案を持っておるわけではございません。
  108. 前川旦

    ○前川委員 私は、これは委員長にお願いをしたいと思います。  こればかり議論をしていても水かけ論になりますし、時間ばかりとりますが、これはシビリアンコントロールという意味で、どの段階で待機命令を出すんだということはかなり厳密にしなければ、いまの法律では国会のコントロールは全く届きませんので、委員長にお願いしますが、後ほどきちっと整理した答えを、きょうが無理であれば別の機会に出してもらうように取り計らっていただきたいと思います。
  109. 坂田道太

    坂田委員長 これは理事会で御相談をいたしたいと思います。
  110. 前川旦

    ○前川委員 それでは、有事法制の前段の防衛研究について若干伺います。  これは五十三年八月十六日、衆議院内閣委員会の伊藤さんの答弁です。それによりますと、「一応二カ年ぐらいの期間を予定いたしまして、最初の一年間は基本的なわが国に対する武力攻撃、これは地勢的に見まして周りが海で囲まれている、それから周辺諸国があるわけでございますが、想定されるいろいろな侵略の態様、たとえば陸上部隊が上陸をしてくるような場合、あるいは海上における交通路が破壊されるような場合、あるいはまた航空攻撃によって侵略が最初に行われるような場合、そういったようないろいろな場合を想定しますと同時に、今度はわが方の態勢もあるわけでございます。」という言葉がありまして、さらに続けて「最初の一年間ぐらいはわが国の置かれております環境からいろいろな侵略の態様というものを研究いたしまして、後の一年におきまして、現在の自衛隊の規模、それから日米防衛協力によってこれにどのように対処するかということを研究してまいりたい」、こういう答弁があります。五十三年からもう三年近くたっているわけでありますが、どのように研究をされましたか。陸海空それぞれを想定して、どのような侵攻を想定し、どのような有事の形態を考えられましたか。
  111. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまお読みになりました答弁にありましたように、当初約二年でこの研究をやりたいというふうに予定をいたしておりまして、そのうちの最初の一年で、いわば基礎研究といいますかそういったものをやりまして、あとの一年で仕上げる、こういう構想でスタートしたわけであります。  その場合に、いまどういう侵略の形態を考えられるかというお尋ねでございましたが、いまのお話の中にもございましたように、結局わが国に対する侵略の形態としまして、空からの攻撃、それから日本の海上交通を破壊するという形の侵略といいますか攻撃といいますかそういうもの、それからいわゆる上一着陸による侵略、この三つ。最初の空からと言いましたのは海・空と言い直した方がいいかと思いますが、海・空からの攻撃で、別に上・着陸するわけではないという形の攻撃も一つ考えられる。それからさらに、海上交通の破壊のみを取り上げる形の侵略ということも考えられる。それと普通の上・着陸。あるいはさらに、その三つを合わせた形ということも当然考えられます。  基本的に言えば、そういう三つの形の侵略の態様というものを設定しまして、防衛研究を行ったわけであります。
  112. 前川旦

    ○前川委員 ですから、具体的に空からどういうふうにして攻撃があるのか、海上からどういうふうにして攻撃があるのか、陸の場合はどういうふうになるのか。具体的にどういう有事の形があるんだ、どういう侵略の形があるんだ、このことをこの委員会に報告をしてもらって議論したいと思いますので、具体的におっしゃっていただきたいのです。
  113. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまのお尋ねの点につきましては、かねていろいろしばしば申し上げておりますが、具体的にどういう設想であるかということになりますと、その研究の中身そのものになりますので、従来から申し上げておりますように、公表は差し控えさせていただきたいということでございます。  ただ申し上げておきたいことは、いま申し上げたように、三つの侵略の形態を考えたんだと言いましたわけですが、その場合に、たとえば上・着陸という場合に、どこに上陸したとか、そういう意味の具体性を持った研究をしたわけではございません。要するに上・着陸という形の侵攻があった場合にはどうするか、海・空攻撃という場合にはどうするか。もちろん、その海・空攻撃という場合には、どういう規模のものがあった場合にどうするかという想定はいたしました。しかし、どこがどう攻められたとかいうふうな具体の場所におろしての、そういう意味の具体的な研究をいたしたわけではございません。そういうことは申し上げられますが、それでは、たとえば海・空という場合に、飛行機を何機想定したとか船を何隻想定したのかというふうなお尋ねでございますと、それは中身そのものになりますので、公表は控えさせていただきたいというふうに考えるわけであります。
  114. 前川旦

    ○前川委員 いつでも中身は出せないと言う。そういうことになりますと、やはり本気でせっかくこの委員会で真剣に議論をしようと思いましても、素材がありませんので議論できない。これ以上言っても中身は言えないと言われればやむを得ませんが、これもまた委員長にお願いしておきますが、どうか委員長の指導で、やはりそういう中身はある程度きちっと委員会に出してもらいたい、こういう要望をいたしますので、委員長の方で取り計らっていただきたい、このように思います。  それでは、五十三年九月二十一日の「防衛庁における有事法制研究について」、この統一見解について二、三お伺いいたしますが、その中に「いわゆる奇襲対処の問題は、本研究とは別個に検討している。」とあります。この五十三年九月二十一日からもう三年近くたちますし、実際にこういう研究が始まったのは、さらに一年前の五十二年八月の三原防衛庁長官のときからであります。四年近くたっているわけでありますが、奇襲対処の問題はいまどういうふうに研究が進んでいますか、その中身はどうなっていますか。
  115. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように五十三年の九月に見解を出しておりまして、それ以後奇襲対処の問題につきましても、有事法制と並んで研究をしてきておるわけでございますが、奇襲対処と言います場合には、有事法制と違いまして、どっちかと言いますと、法制面というよりもまず実体面が非常に重要な意味を持つ、法制面が意味を持たないという意味ではありませんが、実体面が非常に重要な意味を持つ。といいますことは、たとえば奇襲を受けないために、事前に察知できるための警戒態勢、たとえばE2Cを購入しますとか、レーダーサイトの換装をいたしますとかいうようなことがすべてそれに属するわけでございますが、そういう警戒態勢の能力を高めていくという実体――これは実体の話でございます。それから、マイクロ回線等に見られますような通信連絡の態勢を高めていく。これも奇襲対処にとっての一番大きな、基本的な対処問題であります。それから、具体的な各部隊について言いますと、たとえば仮に攻撃を受けた場合に、抗堪性がどの程度あるのか、いわゆる即応態勢がどの程度できておるのかといったこと、そういった実体面の整備ということは、奇襲対処問題にとっても非常に重要な問題であります。それにつきましては、御承知のように、中期業務見積もりの整備等によりまして、今後まだ大きな課題が残っておりますけれども、逐次私ども整備さしていただいておるわけであります。そういう配慮をもって私どもも整備しておるつもりでありますし、今後もそういう整備を心がけていかなければいけないというふうに考えております。  その上に、五十三年九月の見解の中にもございますが、法制面も含めて検討するということを申し上げております。奇襲対処の問題につきましての法制面ということ、具体的に言えば防衛出動下令前の事態が奇襲対処の事態でございますから、防衛出動下令前に一体何ができるのかということにつきましての法制面の研究もあわせてしていく必要があるということで、たとえば外国の法制では一体どういうふうなことが行われているのかというようなことも調べてみました。それから、現在の自衛隊法で一体どういう規定があり、どういう不備があるのか。これは先ほどの有事法制の方にも関係はしてまいりますけれども、そういったようなものも詰めていって結論を出したいということで、まだ結論を得る段階に至っておりませんが、そういうことで研究を進めておるわけであります。
  116. 前川旦

    ○前川委員 この有事法制のそもそもの発端は栗栖発言でしょう。奇襲のときには超法規的な行動しかできないという、そこから始まって、そして有事法制研究、そうでしょう。それがきっかけになって、有事法制と奇襲とはまた別問題だから、有事法制有事法制研究します、奇襲は奇襲問題で研究しますということになって、同時に並行して研究してきたと、さっきの文章の中に書いてあるわけです。しかももう四年たっている。それでいま有事法制中間報告が出てきた。四年たった今日、奇襲問題は一体いまどこまで進んでいるかと言ったら、いま研究しているということであって、それじゃ、研究しているといったって四年もたっているのですから、中身はどうなっているのか。たとえば第一線の指揮官にどう指示しているのか、どういう内容で指示しているのか、そこまでちゃんと決まってやっているはずなんです。それはもう四年もたっているのですから、この奇襲対処の問題をこの際明らかにしていただきたい、このように思います。長官、いかがでしょうかね。
  117. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま政府委員がお答えしたとおりでございまして、研究はしておりますが、まだまとまってはおりません。また、当時の長官見解にも述べておりますとおり、奇襲の問題は、まず防衛出動下令前にそういった事態を把握してそれを防止することに重点がある、そういうことで、情報収集能力でありますとか、抗堪能力でありますとかいった方面の整備を図っているわけでございます。あわせて法令面の検討も行うものとされておりますので、外国法制等の研究も進めているわけでございますが、法体系も違いますし細部にわたって資料がなかなか得がたいという点もございまして、法制面の検討はまだ進んでおらないというのが実情でございます。
  118. 前川旦

    ○前川委員 いまの憲法なり従来からの解釈から考えて、奇襲については、防衛出動下令前の奇襲攻撃に対処するということは、法的に考えること自身無理で、これは幾ら研究しても結論が出ないのではないかと私は思います。  それと、一体奇襲はあり得るのか、さっきからそういうあれもあります。人工衛星の発達した時代に本当に奇襲ということが考えられるのかどうかという問題もあります。奇襲ということは考えられませんと言い切れば、それならそれでいいのですよ。研究してもそういうことは研究に値しません、これならこれでそれは意味のあるお答えだと私は思いますけれども、四年もたってまだ研究中でございます、これは何ともいただけない答弁だと思いますが、いかがですか。そういうことはあり得ないならあり得ないと、これならこれで私はいいと思います。どうなのでしょうか。法的には非常にむずかしい、不可能だというのならそれでもいいのですよ。そういうさっぱりしたお答えが欲しいのです。
  119. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来奇襲の問題で大事な問題は、実体面の整備ということを申し上げましたが、そういうことによって、いまお話がございました奇襲が本当にあるのかということにつきまして、可能な限り奇襲がない状態に持っていくことが実際上のとるべき対策としては一番重要なことではないかということで、先ほど来そういう面の整備を図っているということを申し上げたわけです。それじゃ、ないのかということになりますと、ないと言い切るわけにいきませんので、そういうふうに「ない」と言い切っておるわけではございませんが、ないようにできる限りの整備をしていくということが一番現実的な問題ではなかろうかと考えておるわけであります。
  120. 前川旦

    ○前川委員 先ほど夏目さんの御答弁の中に、新たな規定の追加の問題について、待機命令下にある部隊が侵害を受けた場合の武器使用ということの御答弁の中で「艦」が云々されておりましたね。これは公海上の「艦」という意味で発言されたのか、日本の港湾に停泊中の「艦」という意味でお答えになったのか、どちらですか。
  121. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛隊法第九十五条の「武器等の防護」の対象として、武器、弾薬、火薬、航空機あるいは車両その他燃料、人を挙げておるわけですが、その中に、艦船は本来的に武器を搭載しているという意味から当然「武器等」の中に入っておると申し上げたわけでございまして、この艦船が停泊中であるか航海中であるかということはほかの兵器と同様に関係ない、どこでなければならないというものではございません。航海中であろうと停泊中であろうと同一であると思っております。
  122. 前川旦

    ○前川委員 それでは、たとえば、これは奇襲に関係があります。公海上の日本の護衛艦が仮に奇襲を受けた場合に、この奇襲には反撃できるという、この新しい研究のこの文書のところで、反撃できるという法的な根拠をつくることになるが、恐らくこれは現実の問題として条文そのものを新設しなければいかぬと思いますけれども、そういうことで対処できるようにする、こういうふうなことですか。
  123. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いま先生は艦船の問題を特段に取り上げられましたが、私ども考えておりますのは、「武器等の防護」というのは、もともと本来的にこれは国内にある、飛行機は飛行場に、兵器は弾薬庫とか兵舎内とかいろいろなところにあるわけでして、また移動中の際あるいは演習場にある場合、いろいろな場合が想定されますが、それが外部から破壊されもしくは盗まれるといいますか、奪取されるというようなことを考えた場合に、それを防護するための任務を持った隊員が武器を使用することができるというのが現在の九十五条の趣旨でございます。そういうことでございまして、いまの九十五条で当然読めるものであると考えております。
  124. 前川旦

    ○前川委員 これは問題があると思います。大体この条文の趣旨は、何かあって暴徒が襲撃してくる、それを守るのには武器を使用できるというのが本来の法律の趣旨でしょう。それはいわば国内の一種の治安関係考え方です。しかし、公海にある自衛隊の艦船が攻撃を受けた場合に、治安対策を考えた法で対外国に反撃が許されるとなると、これは自衛権の範囲の問題になります。それが一体この法で解釈できるのかどうか。これは非常に大きな拡大解釈になるのじゃないだろうか。そして、公海上における自衛隊の艦が攻撃を受けたときに、それに対して艦という武器を守るために武器の使用ができるのだ。これは一体自衛権の発動になるのでしょうか、どうなのでしょうか。対外国の場合だったら明らかに自衛権の発動でしょう。しかし、この法律の趣旨は国内での対治安の問題でしょう。全然違う発想のものを一緒にして答えられるというのは、私は大変問題だと思います。
  125. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私が一緒にしているのではなくて、九十五条の「武器等の防護」というのは、外部からの攻撃に対してはなく、国内において、平時において武器の破壊もしくは奪取が企てられ、それに対して「武器等」を防護するために必要最小限の範囲で武器を使用するということが現在の九十五条で認められておるわけでございまして、これは、武力攻撃があってそれに対して自衛隊が七十六条に基づく武力行使をするということとは全然意味が違う、あくまでも警察官職務執行法に言うところの武器の使用であるということでございます。
  126. 前川旦

    ○前川委員 公海上の武装した護衛艦に対する攻撃、これは奇襲でしょうね。これに対してこの法律適用できるというのは、法理論的に私はどうしても納得できません。国内の問題と国外の問題とをごっちゃにした解釈になるのじゃないか、私はそう思います。これはまた、これから別の機会にずっと議論を深めてまいりたいと思います。  有事に際して「可能な限り個々の国民の権利が尊重されるべき」という言葉統一見解にあります。可能な範囲とは一体何を言っているのか。どの辺から不可能になってくるのか。「可能な限り国民の権利を尊重する」という文章であって、保障するとはなっていないわけです。いずれにしましても非常に主観の入る言葉になっていますね。この辺までは尊重できるが、それから先はできぬのだ、その辺の考え方はどういうふうに考えていらっしゃるのでしょうか。
  127. 夏目晴雄

    夏目政府委員 国民の権利が最大限に尊重されなければならないことは論をまたないところでございまして、私どもとしては、そういった趣旨から、この五十三年九月の見解でも申し上げているように、たとえば現在の有事法制研究というのは現行憲法の枠内でやるのだ、たとえば徴兵制であるとか、言論統制であるとか、戒厳令といったようなものは一切考えていないということを申し上げているわけでございます。  一方、国民の権利も公共の福祉とのバランスにおいてある程度の制約というものはある、しかし、その場合も無制限に認められるべきでなく、当然必要最小限度に限られるべきであるし、また一定の手続、正当な補償が裏づけされることは言うまでもないわけでございます。  一つの例を申し上げれば、現在の自衛隊法の百三条の物資の収用、土地の使用、従事命令等については、国民の権利に影響のある規定でございますが、これは現在の百三条という自衛隊法そのものが、国会の御審議を経て法律として認められているということでございまして、そういう意味合いにおいて、私どもとしては必要最小限度の範囲内において、一定の手続、正当な補償のもとで国民の権利もある程度制約といいますか、公共の福祉、いわゆる国の安全確保というために制約をしていただくということも必要であろうというふうに思っておるわけです。
  128. 前川旦

    ○前川委員 文章の中に、「旧憲法下の戒厳令や徴兵制のような制度を考えることはあり得ない」、これはよろしゅうございますね、そのとおりですね。もう一遍確認していただきたいと思います。  もう一つは、「言論統制などの措置も検討の対象としない。」、これもそのとおり、確認してよろしゅございますか。
  129. 夏目晴雄

    夏目政府委員 そのとおりでございます。
  130. 前川旦

    ○前川委員 この「言論統制などの措置も検討の対象としない。」という文章が出ましたときに、防衛庁記者会見していますね。その説明の中に、これには機密保護法も含まれるのだ、つまり機密保護法を制定するということも検討の対象としないというふうに記者団に説明をしておられますね。ところが、その後、これは五十三年の十月二日の衆議院の予算委員会、十月九日の参議院予算委員会、十月十一日の参議院の予算委員会等で、これは当時の福田総理が、このとき石橋政嗣議員が機密保護法を尋ねたのに対して、これは五十三年十月二日ですが、いまのところは検討の対象にする考えはないと、福田総理はきっぱりと言い切っておられる。ところが、九日に、これは参議院の予算委員会で、山中郁子さんへの答弁の中ですけれども、将来は考える、となってきている。その次には、十一日には、有事に国を売る行為は許されない、自衛隊員だけでなく、一般国民も対象になる、とまで言い切っておられます。これを受けて、防衛庁としては、機密保護法を研究されたのか、あるいはこれから研究する考えはあるのか。あるいは長官は、必要があると考えていらっしゃるのか。この点についてお尋ねいたします。
  131. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まず、今回の有事法制研究の中では、機密保議法についての研究は一切いたしておりません。今後研究する必要があるかどうかということですが、機密保護法についての研究といいますか、秘密保全についての何らかの対策が必要であるかどうかということは、現在直ちに具体的にその研究をしておるわけではございませんが、いまの有事法制とは別の形で研究することというのは、あるいはあるかもしれません。
  132. 前川旦

    ○前川委員 あるいはあるかもしれないというような漠然とした考えですが、いま研究しておられますか、将来研究する予定がありますか、近い将来、いかがでしょう。長官はどこかの委員会で、必要があるようなことを示唆されておられますね。
  133. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛上の秘密保全の問題に関しましては、隊員の秘密保全について、現行自衛隊法上の規定で十分かどうかについては別途検討の余地はあると考えておりますが、今回の有事法制研究の対象には含めておりません。
  134. 前川旦

    ○前川委員 それは別途研究するというふうなことでしょうか。今回には含めないが、別途研究しますという意味なんでしょうか。それとも、いまのところ全く考えていないというふうに聞いてよろしいのでしょうか。そういうふうに聞きたいのですが、いかがでしょう。
  135. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほどお答えしました、別途検討の余地があると考えております。
  136. 前川旦

    ○前川委員 これは五十三年八月十六日、衆議院の内閣委員会において、当時の官房長の竹岡さんの答弁でありますが、有事の際、最も大事なのは国民避難誘導であるというふうに答えておられる。ちょっと読み上げますと、「防衛庁といたしましては、先ほど申し上げました有事立法というような関連で、国民避難誘導はどうあるべきだろうかということの研究はしております。」とはっきり言い切っておられますよ。それからその後で、「現段階においては防衛庁自体でわれわれなりの一応の勉強はしていき、将来、高度の政治的な判断でそういう民間防衛はどうあるべきか、政府はどのように取り組むべきかというようなことが決まりました事態におきまして防衛庁研究がお役に立てば、このように思っておるわけでございます。」、つまり、研究をしております、お役に立てばいいと思っております、非常に強い言葉で言い切っておられる。ところが今度の中間報告では、第三分類で「まだまだこれからでございます」、先ほど「主管省庁も決まっておりません」、これはずいぶん違うじゃありませんか。私は、有事法制研究するのであれば、まず国民の命をどう守っていくのか、このことがまず念頭に一番初めに上がってくるのは当然だというふうに思いますが、このときには言い切っているんですよ。これは五十三年ですから、もうちょうど三年たちます。そのとき「研究している」と言っているのです。これはいまどうなっていましょうか。しかも、これは第三分類で「これからです」という言葉になって出てきている。これはどうなんでしょう。
  137. 夏目晴雄

    夏目政府委員 当時の官房長がそういう発言をしたことは私、承知しておりますし、また、竹岡官房長が八項目について研究をしているというふうな答弁を申し上げていることも十分承知しておりますが、これはあくまでも事務担当者レベルで、将来研究が予想される問題点を含めまして、予想されることを例示的に挙げたものであるということでございまして、その中には、現在、私ども、まだ研究に全く入っていない、たとえば米軍への協力の問題であるとかいうふうなものも含まれております。で、今回の私ども研究は、まずそういった、事務レベルの検討をした経緯が全然なかったとは申し上げませんが、るる紆余曲折、変遷を経まして、まず防衛庁所管法令から整備していこうということで始めておるものでございまして、いま御指摘の第三分類国民避難誘導保護に関する問題は、重要性は十分認識しておりますが、どこの省でやるべきか、どういう場で研究するのが最も適当であり、効率的であるかということを含めまして、今後の研究課題というふうになっているわけでございます。
  138. 前川旦

    ○前川委員 おかしいじゃありませんか。第一分類が大分煮詰まってきた、この次は第二分類である、そしてその次が第三分類である、その第三分類の中に国民避難誘導が入っているのでしょう。しかし、前の官房長は真っ先にこれを考え答弁しておられる。これは国民にとって有事法制というのは非常にショッキングな受けとめ方をしているのです。この考え方は本土決戦でしょう。ですから、まずぴんと考えるのは、自分たちはどこへ逃げたらいいのだろうか、どういうふうに誘導してくれるのだろうか、それを一番先に考えるのは良心的な発想じゃないでしょうか。これからというのはどうしても解せない。しかも研究していると言っているのですから、研究しておられるのでしょう。であればお出しになっていただきたい、このように思います。
  139. 夏目晴雄

    夏目政府委員 国民避難誘導といいますか、いわゆる民間防衛に関して、外国の事情等についての調査をしたという程度でございまして、私どもの手元で、具体的にどうあるべきかということをまだ検討した段階になっておりません。したがって、御報告するような内容をまだ持っておりませんので、今後至急詰めて、研究する場を含めて決定をしていただいて、研究を促進したいというふうに考えております。
  140. 前川旦

    ○前川委員 それでは、この百三条で一つ質問をいたしますが、この百三条では、施設を管理し、土地等を使用し、物資の保管、収用ということを決めていますね。これは民間の私有地あるいは私的な施設、私的な土地、私有の物資の保管、収用などを対象にしていると思います。それについて今回中間報告が出されたわけですが、公共物に対しては一体どうなんでしょう。公共物は勝手に使ってもいいと考えていられるのでしょうか。いろいろ、公共物を自由に使えるかどうかという法的な根拠がどこにあるか、調べてみたけれどもわかりません。これはどう考えていらっしゃるのですか。  たとえば例を挙げると、学校の校庭をすぐヘリコプターの発着場に使うとか、あるいは体育館を負傷者の収容に使うとか、あるいは公共の病院はそのまま従事させるとか、そういうような公共の場合はどうなるのか、あるいは民間の飛行場はどうなるのか、使うようにするのか、その手続は一体どういうふうに考えているのか、百三条との関連でお答えいただきたいと思います。
  141. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛隊有事の際に行動するに際しまして公共の施設というようなものの使用が必要になる場合もあるいはあるかもしれませんが、そういう場合には、たとえば地方公共団体であるとか、あるいは鉄道の問題であれば国鉄、国立公園であれば環境庁、あるいは学校であれば文部省というふうなところとの御相談、御協議になると思います。  ちなみに現在の自衛隊法の百一条には、防衛庁有事の際に海上保安庁、航空局あるいは気象官署、国土地理院、国有鉄道、日本電信電話公社、そういうものと相互に密接な連絡をとる。そうして、それらの官庁は「特別の事情のない限り、これに応じなければならない。」というふうな規定がございます。私どもとしては、そういう必要があれば関係の機関、官庁と連絡、協議を申し上げるということになろうかと思います。  ただ、具体的にいま学校を収用するとか使用するとかというふうなことは特段考えておりません。あくまでもあそこで挙げておるのは倉庫であるとかいうふうな、民間企業のそういった弾薬庫になるもの、あるいは燃料の集積施設というふうなものを前提としておりまして、現に授業をしている学校を使用するとかというふうなことは一切考えておらないということでございます。
  142. 前川旦

    ○前川委員 有事になって戦争をやっているときに、学校が授業をやっているはずはないわけです。そういうところの公共用地なら自由に勝手に使えるというふうに考えていらっしゃるのか。それは病院でもそうですね。県立病院とか市立病院とか、公立の病院はいろいろあります。どの法律の根拠に基づいてやるのか。たとえ協力する義務があるからといって、黙って勝手に使えるというふうにはならないだろうと思いますよ。それは乱用だと思いますよ。どこにも法規はありませんが、それをどう考えていらっしゃるのか。  もう一つは、ここで出てくる従事命令等は、対象になっているのはみんな民間の人ですね。公務員は勝手に使えるというふうに考えていらっしゃるのか。それならどの法規で考えていらっしゃるのか。たとえば施設の管理をするには知事がするということになっていますね。管理するには人が要るでしょう。これはだれがやるのか。知事さんが一人で走り回ってやるのでしょうか。そうじゃないでしょう。それから、土地等の使用もこれまた知事がするということになっていますね。物資の保管、収用、これも全部人が要るわけですよ。これはどういう人を考えていらっしゃるのか。公務員を当てようとしていらっしゃるのか、自衛隊でやろうとしていらっしゃるのか、その辺の発想はどうなんです。
  143. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まず第一に、自衛隊が公共施設を使いあるいは公務員を使うのは勝手であるかということでございますが、私どもは一切そんなことは考えておりませんが、現在そういうふうな必要があれば、それぞれ関係のある機関あるいは官庁と御連絡、御協議を申し上げることはあるいはあるかもしれないというふうに申し上げたので、無断で、無条件で使用するというようなことは一切考えておらないということが第一点でございます。  それから、百三条の物資の収用、保管、土地の使用にしても人が必要ではないかということを言われたわけですが、これは自衛隊が県に要請して、知事に要請してやっていただくということになれば、当然当該都道府県の職員にある程度のお手伝いをいただくということはあるいはあるかもしれません。それから、自衛隊が直接やる場合には自衛隊の隊員、職員が行うであろうということですが、その辺の具体的な手続につきましてはこれからの問題でございまして、私ども特段どういう人間がどういうふうに必要であろうかということをまだ詰めたわけではございません。
  144. 前川旦

    ○前川委員 これは大変大切な問題だと私は思います。公務員であれば無条件に自衛隊行動に追随をして行動しなければいけないということが義務づけられているのかどうか、私はこれも非常に重大な問題だというふうに実は考えますが、まだ研究していないとおっしゃいますので、これはまた次の機会にこれだけをひとつ掘り下げて論議をしてみたい、このように思います。  それから、この百三条による施設の管理、土地等の使用、物資の保管や収用、それから新しい規定の追加として道路以外のところを通行するというのが出ていますが、これは米軍行動にも適用されるのでしょうか。もちろんこれは安保第五条発動後のことになろうと思いますが、米軍行動にも全部これは適用されますか。どのように考えていらっしゃいますか。
  145. 夏目晴雄

    夏目政府委員 再三申し上げておりますように、今回の有事法制研究というのは、あくまでも有事における自衛隊行動を主眼として法制上の問題点を整理したものでございまして、米軍との関係については研究の対象外でございます。
  146. 前川旦

    ○前川委員 対象外ということはどういう意味なのでしょうか。それは実際に米軍と共同作戦する場合に、この道は自衛隊だけ通すが米軍は通しませんとか、この病院は自衛隊の負傷者は収容しますが米軍は収容しませんとか、こんなことは実際問題としてあり得ないでしょう。ですから、その辺はどうなんですかという質問なんですから、米軍のことも考えてのことなんですか、こう言って聞いているのですよ。
  147. 夏目晴雄

    夏目政府委員 米軍との共同対処の研究につきましては、別途日米ガイドラインに基づく研究として研究が行われているわけでございます。その研究成果によってあるいは必要になるものはあるかもしれませんが、今回の研究対象としては米軍との関係考えていないということでございます。
  148. 前川旦

    ○前川委員 考えていない。  それでは、長官、この有事立法を研究すればするほど、憲法の枠内でと言っておられますけれども、これは日本国の憲法に突き当たらざるを得ません。いまの日本の憲法は、現行憲法ははっきり言って戦争ができるようになっていません。してはいけないという精神です。ですから非常大権のような制度もありません。だけれども、技術的に、軍事的にのみ有事立法を追求していけば、必ず憲法の制約にぶっつからざるを得ません。  たとえば、一九六三年に発表されました憲法調査会委員有志十七人の「憲法改正の方向」という声明があります。この中では「現行憲法の一大欠陥の一つは、国家の非常事態に対する処置がまったく講ぜられていない点である。」こう指摘して、「そのような非常事態にどう対処するかという国家存立、国民生活の消長にかかわる重大問題がなんら憲法に規定されていないということは、これは重大な憲法のミスといえよう。」と指摘をしまして、そして、憲法を改正すべきだというふうに結論づけているわけです。この憲法を改正すべきだということには、これは私ども絶対承服できないのですが、研究すればするほど憲法にどうしてもぶち当たらざるを得ない。平和憲法にぶち当たらざるを得ない。  そこで、私は、この際長官に、この有事法制を通じて長官として現行憲法をどうとらえられていらっしゃるのか、どうお考えになっていらっしゃるのか、長官としての見解お尋ねをしておきたいと思います。
  149. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  日本国憲法が平和主義、民主主義を基本として制定されたものであることは申すまでもないところでございます。また、日本国憲法が、自衛のための必要最小限の実力を保有することを否定するものではないと考えているわけでございます。  そこで、有事法制研究は、有事の際の自衛隊行動の円滑を図るという観点から法制上の問題点を整備するものでありますので、これが現行憲法の範囲内で行われるものであることはたびたび申し上げておるところであります。また、自衛隊行動の円滑を図るため憲法の範囲を超えるようなことは、防衛庁としては全く考えておりません。
  150. 前川旦

    ○前川委員 長官有事というのは本当に心配な場面ですね。そこで、長官は、政府自衛隊有事の際に一体何を守ろうとしているのか、どうお考えなのでしょうか。これは自衛隊法にちゃと規定がありますけれども、大変に抽象的な表現です。「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、わが国を防衛する」、これは非常に抽象的な表現で、平時ならそういう抽象的な表現も通用するかもしれぬけれども、ここで出てくるのは本土決戦の準備でしょうと考えざるを得ない。長官、一体そういう段階で何を守ろうとしておるのか。たとえば国土を守ろうとしているのか。国土を守る、寸土のために、わずかな土地のために何十万という人の命をささげるような、そういう国土を守ろうとしているのか。あるいは体制を守ろうとしていらっしゃるのか。かつて私たちは、国体を護持するために「一億玉砕」ということを大まじめで言ったこともありました、考えたこともありました。体制を守ろうとしているのか。それとも国民の命と財産を守ろうとしているのか。守るべきものが幾つもあるとしたら、何に一番重点を置くと考えていらっしゃるのか。有事に際しての何を守るべきかという長官としての哲学、お考えを私はしかと伺いたいと思います。
  151. 大村襄治

    大村国務大臣 有事において何を守るのか、何が重点であるかというお尋ねでございますが、日本国憲法に基づいて制定されております自衛隊法、また「防衛計画の大綱」におきましても、先生いま御指摘のように、自衛隊は国の安全と独立を守る、また平和を守る、そういった点を使命とするものでございます。  そこで、お尋ねの領土を守るのか体制を守るのかあるいは国民の生命、財産を守るのか、いずれに重点があるかというお尋ねでございますが、私は、領土も大切でございます。一たん失われた領土がなかなか回復できないということは、北方領土の事例から見ましても明らかでございます。また、体制も大切でございます。日本国憲法が定めております民主主義体制、これはあくまで守り抜かなければならないとかたく信じております。と同時に、国民の生命、財産、基本的人権を尊重することを最も大きな眼目としております日本国憲法のもとにおきましては、これも大切であることは言うをまたないわけでございます。いずれに差をつけるということは私としてはいたしがたいわけでございまして、国の安全、独立、領土、体制あるいは国民の生命、財産、いずれも尊重して、これを守り抜くために自衛隊行動しなければならない、さようにかたく信じているわけでございます。
  152. 前川旦

    ○前川委員 たてまえとしては大変りっぱな御答弁だと思いますが、しかし、ここで予想されているのは、国土を戦場にした本土決戦です。こういうところで私たちがもしも、――こんなことがあってはいけないと思いますよ。あってはいけない、絶対に。こういうことにさしてはいけない、それは政治家の任務だと思いますね。ですけれども、ここで予想されているのはそういう場面です。そういう中では、われわれは、国民の命を守ることを一番先に考えるのか、何を守ることに重点を置くのか、そういう選択を迫られることが私は必ずあると思います。このことを非常に心配もし、そういうことをなくするためにがんばらなければいけないと思います。  そして、本土での防衛戦というのは絶対にできないと思いますよ。長官としてはこれも、できないとは言えないと思いますけれどもね。しかしこれだけ狭い国土で、これだけ大ぜいの国民がいて、そういうところで、とてもじゃないが、ここで防衛戦争なんて成り立ち得るだろうか、どう考えても、どんどん武器を使っての防衛戦なんか成り立ち得ない、私はそう思います。長官はどうお考えですか。本土を舞台にした防衛戦争、こういう防衛戦略は本当に成り立ち得るのだろうか、大変疑問ですね。成り立ち得ないと思います。あってはいけないと思います。長官、どうお考えでしょうか。
  153. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  狭い島国である国土を守るためには、まず侵略国が上陸できないように最善の努力を払うべきことは当然でございます。そのための必要な自衛力も整備しておかなければならないことは言をまたないところでございます。  しかしながら、万一上陸した場合にこれを放置するわけにはまいりません。自衛隊が全力を挙げてこれを排除することに努めなければならないと思うのでございます。そして、排除できればよろしいわけでございますが、若干でも長引くというときには、粘り強く抵抗を続け、そして安保条約に基づく米軍の支援を待つというのがわが国の防衛の基本方針でございます。そのために「防衛計画の大綱」に沿いながら防衛力の充実を速やかに達成しなければならない、私はそう考えておるわけでございます。
  154. 前川旦

    ○前川委員 時間が来ましたので、次の休憩後の質問に残したいと思いますが、いずれにしましても、本土を戦場にしての防衛戦争というのは成り立たないというふうに私ども考えております。そのことを明言をいたしまして、午前の質問を終わりたいと思います。
  155. 坂田道太

    坂田委員長 午後三時三十分より委員会を再会することとし、この際、休憩いたします。     午後一時八分休憩      ――――◇―――――     午後三時三十二分開議
  156. 坂田道太

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。前川旦君。
  157. 前川旦

    ○前川委員 いま総理が訪米されておりますが、事前に伝えられた報道によりますと、アメリカとの対ソ認識の一致を重大な要素としてとらえられている、こういうふうに聞いております。  そこで、このアメリカの新しいレーガン政権の対ソ認識というのは非常に強硬な姿ですね。たとえば、これは二月十七日の「日経」から引用さしてもらいますが、「ヘイグ国務長官は先月末の記者会見で、ソ連の第三世界への軍事的浸透について「中南米やアフリカでキューバという身代わりを使って進めている“ソ連の危険なかけ”はレーガン政権の最大関心事だ」と指摘したうえ、暗にソ連を指して「国際的テロリズムを世界に広めている」とまで言い切った。その翌日にはレーガン大統領自身がソ連を犯罪者呼ばわりし、七〇年代後半にソ連がアンゴラ、エチオピア、南イエメン、ベトナム、カンボジア、アフガニスタンなどを次々に勢力圏内に入れたようなやり方を、今後は黙視しない決意を示した。留任の決まったジョーンズ統合参謀本部議長が議会に送った八二会計年度軍事情勢報告では「中東など米国に死活的利益のある地域に対するソ連の攻撃に対し、米国はその地域で対決するだけでなく、他の地域でもソ連の軍事的弱点に多発的な報復攻撃をかけるという新戦略を強調した。」、徹底したソ連悪玉論であります。「手を抜いたらすぐ出てくる」というこの悪玉論と、考え方が一致するということになるのでしょうか。防衛庁長官のお考えは、この対ソ観と同調していかれるのか、それがまず一つ。  もう一つは、これは「毎日」の記事を引用さしてもらいますが、四月七日の衆議院決算委員会で「デタントが死んだとは考えていない」と言われましたけれども、もう一つは「一九八〇年代の半ばに戦争の危険性がある」という答弁をされたと言われております。  まずそこで、徹底したソ連悪玉論に同調していかれるのか、そのときデタントは死んだと考えていらっしゃるのか、この辺の長官のお考えを伺いたい。  さらに、一九八〇年代危機説というものをどのように考えていらっしゃるのか。  以上の点について長官考えを伺います。
  158. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま国際情勢についていろいろな点からお尋ねがあったわけでございます。  ただいまワシントンで日米の首脳会談が継続中でございますので、レーガン大統領鈴木総理大臣の間、日米間で国際情勢認識についても話し合いが行われている途上でございます。そこで、政府としてどう考えるかという点につきましては私は差し控えさせていただきたいと思うのでありますが、防衛庁長官はどうかというお尋ねもあったようでございますので、その点で、まずレーガン政権の国際情勢に関する見方について私の考え方を申し上げたいと思います。  最近の国際軍事情勢は、ソ連の世界的規模にわたる長期かつ大幅な軍事力増強と、これを背景とした世界各地への勢力拡張等の活発な行動によって、不安定さを増しつつあると考えております。  米国のレーガン政権は、ソ連のこうした行動に対処していくために、国防費以外の予算を圧縮する中で国防費を大幅に増額し、自由世界を守るために米国が率先して軍事力を増強し、強い立場からソ連との交渉に臨む姿勢を明らかにしております。こうしたレーガン政権の政策がソ連悪玉政策であるかどうか、その点は別といたしまして、私といたしましては、かかる米国の努力は自由世界の安全に貢献するものと考えているわけでございます。  次に、デタントが死んだかどうかという点のお尋ねでございますが、東西間では、従来から競争と協調の両面を持って関係が推移してまいりましたが、ソ連の長期にわたる大幅な軍事力増強及び世界各地への勢力拡張、とりわけ最近のアフガニスタンへのソ連の軍事介入とポーランド情勢をめぐる緊張の高まり等によって、東西関係は後退を余儀なくされていることは事実と考えます。しかし、東西関係も、現在後退しているとはいえ、関係改善の努力も行われており、いわゆるデタントが崩壊してしまったとは言えないと考えております。  いずれにいたしましても、最近の厳しい情勢下において、紛争を抑止し、世界の平和と安定を保っていくためには、東西間の軍事管理努力とともに、西側による防衛力強化の努力が必要と考えている次第でございます。  最後に、決算委員会における私の発言、八〇年代半ばに危機が来るのではないかという点についてのお尋ねでございますが、この点につきましては、最近の国際情勢の動向を見ますると、ソ連の長期かつ大幅な軍事力増強と、これを背景とした世界各地への勢力拡張等の活発な行動によって不安定さを増しつつあり、このまま放置すれば、一九八〇年代半ばまでに米国は軍事力でソ連より劣ってしまい、西側全体の安全保障の確保が困難になると見られる状況にあります。  このような情勢認識のもとに、八〇年代は非常に厳しいものがあり、国際の平和を維持するためには、米国を初めとする西側諸国が軍事バランスを維持するとともに、他方において、外交を通じた軍縮等を同時に行っていく必要があり、わが国としても、軍縮と平和維持のための外交努力、憲法の範囲内での防衛力の充実、安保条約の効率的運営というものを並行して進めていかなければならないということを述べたものでございまして、八〇年代半ばに戦争が起きるということを申し上げたのではございません。  以上、お答えいたします。
  159. 前川旦

    ○前川委員 防衛庁長官が軍縮、軍備管理の必要性を答えられたことは、敬意を表するにやぶさかでありません。しかし、いずれにしましても、いま米ソ間の軍事力のバランスが崩れたとは、軍事専門家は見ていないでしょう。やはりアメリカの方が軍事的にはいまの段階でまさっていると見ているのが普通であろうと思います。それを、バランスが崩れそうだ、崩れたと言うのは、私は、本当の意味の米ソ間のバランスというのじゃなくて、アメリカの優位という姿を常に維持しようという意味でのバランスじゃないかというふうに思います。  しかし、たとえばアメリカ日本、ヨーロッパ、それに中国という四つの大きな経済力を持ったところが、ソ連をいわば包囲するわけです。GNPで考えますと、包囲する方と包囲されるものとで圧倒的に差が出てきます。その場合に、包囲されたものがどういう発想法になるか。  かつてABCD包囲陣というのがありました。昭和十六年の歴史を思い出すわけですけれども、そういう軍拡競争が本当に平和をもたらすものであるかどうか。防衛庁長官はいま軍備管理、軍縮にも触れられましたけれども、こういう軍拡競争は私はとうてい危険な道としか思えませんが、その点について長官、もう一度お考えを伺いたいと思います。
  160. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほどもお話し申し上げましたとおり、デタントが崩れ去ったとは考えておらないわけでございますが、このまま放置しますと、米ソ間の軍事バランスが八〇年代半ばくらいには均衡がとれなくなるおそれがあるわけでございます。そこで、軍備管理についての両国を主とする話し合いを進める必要があるとともに、西側諸国の協力による防衛力の整備ということも戦争の抑止のためには必要ではないか、そういった観点で申し上げておる次第でございます。
  161. 前川旦

    ○前川委員 軍備管理、軍縮が必要であるという点では意見が一致いたしました。その他の点では食い違ったままでありますが、これはやむを得ません。  そこで、「防衛計画の大綱」を制定した当時といまとでは、国際情勢は同じであると考えていらっしゃいますか、変わったと考えておられますか。
  162. 大村襄治

    大村国務大臣 「防衛計画の大綱」が策定されましたのが昭和五十一年の秋でございます。それから五年間を経過しておりますので、国際情勢が同じであるとは考えておらないわけでございます。とりわけアフガニスタンへのソ連軍の進入、あるいはイラン革命、イラン・イラク戦争以来のペルシャ湾への石油ルートの問題等からいたしますと、国際情勢は策定当時に比べましてかなり変化をしておるものと私は考えておるわけでございます。
  163. 前川旦

    ○前川委員 かなり変化しているという認識の御答弁でありますが、午前中にもちょっと出てきましたが、この「防衛計画の大綱」を制定しましたときは平時という考え方でした。平時の最高限度の、限界の防衛力という発想法であったと思います。それが、長官は、最高限度がいつの間にか最小限度で、これが出発点だというふうに変わられたという新聞報道も見ましたが、平時、有事、いまが有事とは考えておられないと思いますが、もう一つ緊張時という言葉が午前中に出てまいりました。これは久保元防衛局長が使われた言葉でなかったかと思いますが、いま平時と考えておられますか、緊張時と考えておられますか、その辺のことはどうでしょうか。
  164. 大村襄治

    大村国務大臣 平時か有事かというお尋ねであれば、有事ではなく平時だと考えております。緊張時かということでありますが、かつて防衛庁政府委員がそういう言葉を使ったことがあるかもしれませんが、私どもはいまそういった用語は用いておりませんので、ちょっとお答えいたしかねます。
  165. 前川旦

    ○前川委員 それでは、米国が日本に求めている西太平洋の防衛とはどういう範囲を言っているのか。たとえばマンスフィールド大使は「周辺海域」という言葉を使っています。ワインバーガー国防長官は「北西太平洋」という言葉レーガン大統領は「西太平洋」と、さまざまな地理的な言葉が示されていますが、防衛庁としては、米国が日本に求めている太平洋の防衛というのは具体的にはどういう地域と考えていらっしゃるのか。ちょっと余談になりますけれども、「フィリピン以北」という言葉が出てきますが、「フィリピン以北」になると、そのまますっと北へ行けば南シナ海、東シナ海、黄海まで行ってしまいますね。どの辺までを言っていると認識していらっしゃいますか。
  166. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように本当にいろいろな言葉が出てまいるわけでございますが、私ども、実際に防衛庁の立場でアメリカ関係者と話をしている中におきましては、別に変わったことはございませんで、具体的に申し上げますと、いま日米共同作戦計画の研究をやっておりますけれども、そこでも、従来から申し上げておりますように、日本の周辺海域について防勢作戦を海上自衛隊がとる、それに対して米軍は機能的な面で支援する、こういう基本線がございますけれども、それによって実際の研究もやっておるわけでございまして、具体的にそういった場でいまおっしゃったようないろいろな言葉が出てきて、それを変わったように受け取られるような感じは私どもは全然受けておらないのです。  したがいまして、私どもは依然として、日本の周辺数百海里、航路帯を設けた場合は約一千海里程度を日本の防衛目標としてやっております、と従来から申し上げておることを少しも変える必要はないと考えております。
  167. 前川旦

    ○前川委員 いまのははっきりした答えでしたね。千海里という従来のお答えがあった。ところが、グアムまでは千三百海里ぐらいになりますね。かなり広くなりますね。それから、フィリピンの北も千海里をオーバーすると思いますよ、起点のとり方によって違いますけれども。この扇型の面で考えると、これは面積で言いますと広くなります。ですからこれは大変なことだと思っておりましたが、従来どおりの考えでいく、こういうふうにいま御答弁がありました。そういうふうに理解してよろしゅうございますか。――よろしいですね。  それから、従来は周辺海域、航路帯というふうに「帯」という概念がありました。それがこの前の矢山質問で「面」というふうに防衛局長は答えておられます。「帯」という航路帯であればコンボイ方式、船団を組んで防衛するという、これは非常にわかりやすいが、「面」ということになりますと非常に広い範囲になりますね。この「面」ということで考えて大綱の水準でおさまるかどうか、どのように考えていらっしゃいますか。
  168. 塩田章

    ○塩田政府委員 航路帯という言葉で「帯」という字を使っておるために、その点について、従前からのコンボイシステムを中心にしたような時代の考え方とは変わってきておるという意味のことは御説明申し上げてきておるわけでありますが、「面」になったという意味は、太平洋がのべつ「面」になってそこをのべつ守るという意味では決してなくて、いわゆる「線」とか「帯」という概念よりは「面的な要素」が広がってきております、ということを申し上げているわけです。  ということは、たとえばわかりやすく言えば、潜水艦が船を攻撃するにしましても、昔のように魚雷を撃って数千メートルで沈めるといったような時代とはいまは全然違います。はるか向こうの方からミサイルを撃ってくるわけでございます。また、そういう場合にはそれに対してこちらも飛行機なりヘリコプターなりを飛ばして対抗しなければいかぬということだけを考えても、いわゆる「線的」あるいは「帯」というような感じとはだんだん変わってきているということは御理解いただけると思います。  船団の護衛方式にしましても、もちろんコンボイシステムを全部放棄したわけではございませんし、そういう必要のある場合もあると思いますけれども、むしろ、いまの護衛のやり方はどちらかといえば船団を組んでそれを直接護衛するという方式ではなくて、そういうこともないとは言いませんけれども、飛行機なり艦艇なりで一定の区域をクリーンにしていく、そこを船が通っていくという形をとる方式が通常いま行われておるわけであります。そういう意味で「帯」という言葉によって、たとえば南東航路といえばずっと小笠原付近に「帯」があって、陸上の自動車のハイウエーみたないものを考えるという意味ではありません、ということを申し上げておるだけでございまして、具体的に「面」として太平洋全部に広がって全部守らなければいかぬのだと考えておるわけではございません。
  169. 前川旦

    ○前川委員 大綱の水準でおさまりますか。
  170. 塩田章

    ○塩田政府委員 大綱の水準でおさまるかということでございますが、海上自衛隊の勢力について言いますと、対潜護衛艦艇約六十隻、対潜航空機部隊、ヘリコプター部隊と固定翼と合わせまして約二百二十機という線が大綱に示されておるわけでございますが、こういったもの、もちろん飛行機にしましても、それから艦艇にしましても、中身の近代化ということは当然図っていかなければならないと思っておりますが、そういったものが整備されれば、現在より画期的によくなるだろうということは言えると思います。
  171. 前川旦

    ○前川委員 大綱の水準でおさまりますかとお尋ねしましたので、画期的によくなるという御答弁では満足できないです。どのように判断されますか。
  172. 塩田章

    ○塩田政府委員 結局、おさまるという言葉の意味、あるいは海上防衛を行うのだという場合の、こういう状態なら防衛ができたと言える意味というもののとり方によると思うのですけれども、やはりどんな場合でも、文字どおり一〇〇%の防衛ということはあり得ないでしょうし、また、作戦目的から許される範囲の犠牲ということを、許されるというと言葉が悪いかもしれませんが、考えられる範囲の犠牲ということも含めて、しかし作戦目的を達成した場合には護衛ができた、こういうことにもなるでしょうし、そういうようなことは、実際の作戦形態によりまして、そのときの状況によりまして、またその目的によりまして判断が違うと思うんですね。そういう意味で、これだけやればできるとか達成するとかいうふうに一義的に言えないものですから、いまよりは格段によくなるでしょうというふうに申し上げたわけですが、ですから、裏の言葉でおくみ取りいただきたいわけですが、それだけのものを整備させていただければ私どもとしてはいまの整備目標として大変ありがたい、こう思っているわけであります。
  173. 前川旦

    ○前川委員 大綱の水準でおさまらないと考えていらっしゃるなら、おさまらないと率直に言われたらいいわけです。私、恐らく大綱の水準でおさまらないと皆さん考えていらっしゃるのじゃないかと思っているんですよ。これは軍事専門家に聞いたら、とてもじゃない、おさまらないというのが普通常識です。ですけれども、それでは問題が大きくなるから、とりあえず当面大綱の水準までは近づけようということだけであって、本当はおさまらないというふうに考えていらっしゃるのじゃないかと思うのです。それは率直な話、どうなんです。
  174. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの御指摘は、結局大綱の見直し論につながっていくわけでありますけれども、私どもかねがね申し上げておりますように、現在、大綱の線にはるかに足らない現状におきまして、ともかく早く大綱の水準に到達したいということを考えておるということを常々申し上げております。それを現在の緊急の整備目標としてお願いしたいと考えておるわけでございますが、同時に、それを達成できた場合に、先ほど申し上げましたように、それではどこまでできるのかということになりますと、現状から見て格段によくなるというふうに考えておるということでございます。
  175. 前川旦

    ○前川委員 これは並行線ですから、また次の機会にして、たとえば「面」で対潜作戦をやるという場合の対象は何になるのか。恐らくこれはもうはっきり言って、皆さんはソ連の潜水艦考えていらっしゃるのはもうはっきりしているわけなんです。そこで、私が疑問に思いますのは、たとえばソ連の潜水艦でもSSNですね、攻撃型の潜水艦を対象にした場合は、この攻撃型の潜水艦がアジアへ配置されているとすれば、これはアメリカの弾道ミサイル型潜水艦を追尾しているだろうと思うのです。それを攻撃するということは、つまりアメリカを守るということになりますね。個別的自衛権の範囲を超えるのではないか。それから、今度はソ連のSSNでなくてソ連のSSBN、ソ連の弾道型潜水艦、これは中国に対して配置されている可能性がありますね。日本に対して恐らく潜水艦は対象にしていないと思いますが、これを攻撃するとなったら、これまた、恐らく日本を対象にしていないと思いますので、これは個別的自衛権の範囲を超えるだろう。まして、ソ連の戦略核を積んだSSBNを攻撃してもし撃沈でもするようなことがあったら、ソ連の核基地を一つたたいたという結果になりますから、これはそこから何とも言えぬ大変な影響を受けるのじゃないだろうか。となると、これは非常に危険な作戦ではないだろうか。個別的自衛権の範囲を超えるのじゃないだろうか。このことを私は非常に心配をするのです、実はこういうことに取り組むとされましたら。その辺はどうお考えになりますか。
  176. 塩田章

    ○塩田政府委員 結局、海上自衛隊の任務は、わが国周辺数百海里、航路帯を設けた場合には約一千海里程度の海域についてはみずから主体となって海上防衛作戦を行う、こういう任務でございますから、その任務については、いま特定の国の名前を挙げて申されましたが、要するに、日本に対して攻撃してくる国の潜水艦であれ、艦艇であれ、航空機であれ、日本の海上防衛に当たるというのが任務でございます。
  177. 前川旦

    ○前川委員 潜水艦ですから、わからないんですね。日本を攻撃しようとしている潜水艦なのか、そうではなくて中国本土をにらんでいる潜水艦なのか、アメリカの弾道型ミサイル潜水艦を追っかけている潜水艦なのか、区別つきませんね。これは音紋がわかればというような理屈もありますけれども、実際にそれがどれほど精確なものかどうか。ですから、明らかに日本を攻撃するというふうにはわからないんですよ。それを、潜水艦攻撃ですから先制的に攻撃しなければいけませんね。これが個別的自衛権の中におさまるかどうか。そうして、下手をすれば非常に危険なものを引っ張り出すというそのこわさを実は感じるものですから、その点は慎重に考えなければいけない問題だと思うのです。その点、いかがですか。
  178. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまおっしゃることはよくわかるのです。よくわかるのですが、私どもの言っていることもまた、要するにあくまでも日本が攻撃を受け、侵略を受けて、それに対して日本が防衛をするという場合の話でございまして、それより前にとかそういうことじゃございませんで、日本が攻撃を受けた場合には、日本はどうやって自分を守るかということについての限度の中の戦いといいますか防衛作戦でございますから、そこら辺は、先生の御心配の点、もちろんわからぬわけではないのですけれども、というのは、特に潜水艦ですから、もぐっているその潜水艦が何を目的としている潜水艦かわからないじゃないかとおっしゃれば、それはわからないと思うんですね。思いますが、要するにそれは、いまここで申し上げられることは、日本の防衛のために許される範囲での防衛作戦を行うということになろうかと思います。
  179. 前川旦

    ○前川委員 この「防衛計画の大綱」、これは五六中業に関連をしますが、GNPの一%で済ますということを総理は約束をされていますね。しかし一%じゃ済まないだろうというのが普通みんな常識的に言っているわけです、長官。そうなりますと、総理がきちっと野党の党首に的束されたことですから、これは守らなければいけない信義があります。そうすると、考えられることは、たとえば陸海空の中で予算の傾斜配分、はっきり言ったら陸は足踏みさせて、海と空の方に重点配分するとか、こういうことでもやらなければやれないと私は思いますよ。それは防衛庁内部でそういう調整が実際やれますかね。  それからもう一つは、装備の購入にしても、国産でやると割り高になりますね。そうすると、国産化率をずっと低くして、アメリカから購入するという方針をずっと出さないととてもやれないだろうというような気が私はしますがね。どうですか、その点一%におさめるために陸海空の傾斜配分をやるという考えがあるのかどうか。  たとえば、これは「サンケイ」に載った五月五日の共同の記事です。「陸上自衛隊 一師団一万三千人に 五六中業で改編構想」という新聞記事が出ていますが、これなんか陸上が何か抑えられるのじゃないかということをあらかじめ考えて、いまからちょっと先制攻撃、先制パンチをやっておこうというような、何かそんな感じがしないでもないのですよ。そういう傾斜配分みたいなことをやらなければいかぬ場面が出てくるときにやれるのかどうか。  それから装備の問題ですね、その点どう考えていらっしゃるのか、お尋ねいたします。
  180. 大村襄治

    大村国務大臣 五六中業につきましては、先般国防会議にお諮りいたしまして、「防衛計画の大綱」の水準を達成することを基本として作業に臨むことを御了承得たわけでございます。これからおよそ一年間かけまして作業をやりまして、まとまりました段階でまた国防会議に何らかの形で付議する、こういう手順を踏んでいるわけでございます。したがいまして、果たして「防衛計画の大綱」の線がいつ達成できるか、これは作業をしてみないと、まだ決まっているわけではございません。  一方、対GNP一%の関連でございますが、これは先生承知のとおり、五十一年の秋に閣議決定をしたものでございまして、当面防衛関係費の予算の額がGNPの一%を超えないことをめどとする、こういう閣議決定が現に生きているわけでございます。これから五六中業を作業するわけでございますが、作業の結果いかんでどういった事業の量になるか、その中身が決まらないとまず分子の方が決まらぬわけでございます。また、GNP自身の方も今後の見通しがどうなるかという点がはっきりしてない点があるわけでございますので、分子、分母の関係から相対的に出てきます比率が果たしてどうなるか、現在の時点においてははっきりしてない、こういうことでございます。  そこで総理大臣も、この国会におきまして、現在の閣議決定は守っていきたい、という趣旨のことを述べておられます。私ども作業に当たりましては、この閣議決定が現在あります以上は、これを念頭に置いて作業にかかることはもちろんでございますが、いま申し上げました点もございますので、一体事業内容をどうするかという点は、作業を始めたばかりでございまして、どこかを圧縮してどっちをふやすとかいうことよりは、むしろ、現在の国際情勢にかんがみまして、防衛計画の水準を達成するために、正面装備はもとより、これと密接に関連を持つ後方面につきましても、陸海空のバランスのとれたきめの細かい検討をこれからしなければならない、初めから一部を圧縮して一部をふやすとか、そういった考え方は私は現在とっておらないところでございます。
  181. 前川旦

    ○前川委員 恐らくそういう場面にぶつかるのではないかと思いますが、それはそれとして、外務省が見えましたので、一問だけ伺います。  安保条約第五条にあります「日本国の施政の下にある領域」ですが、これは領海、領空を含めて日本の領土内と、従来そういうふうに理解をしておりました。「施政の下にある」という言葉がありますが、これは二百海里の経済水域を含めるお考えがあるかないか。そういう考えがなければないと、きっぱり否定していただきたいと思います。
  182. 松田慶文

    松田説明員 お答え申し上げます。  ここで申しております「領域」とは、わが国の領土、領海、領空のみを言うものでございますので、御指摘の二百海里水域等は含められません。
  183. 前川旦

    ○前川委員 最後の質問ですが、三海峡封鎖、これがいろいろ議論になっています。本当に日本の防衛として三海峡封鎖を一体やるのかどうか、やるとしたらどんな場合にやれるのか。ことしの予算で機雷も大分ふえましたし、それからC130も二機入りました。これは機雷を敷設できますね。それから、案外知られていませんが、P3C、これが機雷を敷設する能力があります。十個ぐらい積むはずです。しかし、三海峡封鎖をやると大変なことになると思いますが、どういう場合にやる御計画なのか、その点を伺います。
  184. 塩田章

    ○塩田政府委員 わが国有事になった場合に、具体的にどういう状況の場合にいまの三海峡の封鎖をするのかということになりますと、その判断は、そのときの情勢が千差万別でございますので、いまの時点でどういう場合というふうにはとても申し上げられないと思いますが、いまおっしゃいましたように非常に重大な問題でありますので、わが国を防衛するため、本当に必要最小限度の範囲で、わが国に対して武力攻撃を加えておる相手方の国の艦艇の通峡を阻止するということはあり得ると思っております。  どういう場合かということになりますと、いまここで申し上げられることは、非常に重要な問題であるからそのときの情勢によって慎重に判断しなければいけないということは言えますけれども、具体的にいまどういう場合だと申し上げることはむずかしいというふうに思います。
  185. 前川旦

    ○前川委員 たとえば、日本が単独で攻撃を受けるということはないだろう、中東なり南西アジアですか等で米ソ衝突のときに日本に波及するであろう、というのが軍事専門家の一致した意見です。  きのう統幕議長の矢田さんが日本工業倶楽部で開かれた財界人との防衛懇話会でも同じことを言っておられますね。「ソ連の対日侵攻の想定される形を具体的に挙げ、ソ連軍が日本にだけ着・上陸することはありえず、朝鮮有事や、中東有事といった米ソ激突のあおりで、日本に侵攻する可能性が大きい、」、これは軍事専門家の一致した意見だろうというふうに思います。ですから、三海峡封鎖というものも米ソ対決という場合でしか考えられない。いま言ったように、日本に攻撃をかけている船や軍艦が通るのをとめるのだ、こんななまやさしい問題ではないと私は思いますね。もっと厳しいふうに考えなければいけないと思います。  そこで、ここに一つの投書があります。これは三月三十日の読売新聞に対する投書で、世田谷区の方からこういう投書が来ておりますが、ちょっと一部読みます。「私が米軍ならば、日本の憲法制約は別として、もっとも欲するであろう日本の軍事支援策の第一は、ソ連海軍の三分の一を占める潜水艦百二十隻を含む七百余隻のソ連太平洋艦隊を日本海に封じ込める三海峡の機雷作戦であり、第二に米海軍の脅威であるバックファイアーなど長距離爆撃機への警戒攻撃作戦であり、」と、こういうふうに、私が米軍ならまず三海峡を封鎖してもらうだろう、これが前提ですね。それから、「日米の基本的な差異は、中東地域で米ソ軍事紛争が生じても、米本土が攻撃される戦略核戦争には至らないであろうが、米ソの最前線に位置する日本は本土壊滅の危険があるということである。」、こういうことですね。その次に、「仮に日本本土への侵攻がないのに、米軍支援のため、日本が公海として世界に宣言している三海峡を封鎖すれば、それはソ連への宣戦布告と同じであり、即時に本土の日米軍事基地、工業地帯等にSS20核ミサイル攻撃等を受けても文句はいえない。同じく日本が侵攻されていないのに、米軍支援のための対空、対潜作戦もソ連への宣戦布告とみなされる。」、その次です。「さらに難しいのは、仮に」――これは日本がやらないでも米軍がやることはありますね、「仮に在日米空軍や横須賀を母港とする航空母艦のウラジオストクやペトロパブロフスク攻撃、あるいは三海峡封鎖の事前協議を受けた場合、日本はイエスと言うべきか、ノーなのか。前者は対ソ宣戦布告であり、後者は日米の信義を失う。」、これを事前協議でどう答えるべきか。結局「憲法をタテにとって米国の信義を破棄して」、これは安保条約をやめてということになると思いますね、「軍事的中立を保つ覚悟なのか、本土壊滅も辞せず西側同盟の一員として軍事支援を断行するのか、魂も凍るような選択を迫られよう。」、私はこれは鬼気迫る投書であると思います。これを本当に日本がやらないで米軍がやることはありますね。米軍の戦略として封じ込める。そうしますと、米ソ間の太平洋をはさんでの核の第二撃能力、これは決定的にひっくり返ります。これをソ連が黙って見ているはずはない。このときの米軍の出撃に対して、イエスかノーかの魂も凍るような選択を迫られるということがあり得ますね。こういうときに防衛庁長官、こういう発想をどう考えられますか。こういう真剣な御意見を、しかも、これはどなたの御意見か、名前を申し上げます、竹岡勝美さんです。この方はこの前の防衛庁官房長をされた方ですね。この方がこれほど真剣に、そして最後に、そのことを「思えば、ソ連の軍縮提案が口先ばかりかもしれないが、米ソの緊張緩和を求め、その仲介の労をとるほどの平和的献身以外に日本の進む道はないのではなかろうか。」と結ばれています。その前には、安保をやめて閉じこもるという選択もないのではないだろうかということも入っています。そういう非常な厳しさを私どもは最近感ぜざるを得ない。特に一九八〇年代に全面対決ということになると、これは非常に心配になります。そういう点で、長官の御認識を最後にお伺いをしたいと思います。
  186. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま引用されてお尋ねのありました問題でございますが、米側が独自で行います場合に事前協議を求めた場合に、わが方としてきわめて慎重に対処しなければならない問題であるということの認識におきましては、私も同様でございます。  また、わが国が三海峡の封鎖を仮にやるとしました場合におきましても、これはわが国を防衛するため必要最小限度の範囲内で、わが国に対して武力攻撃を加えている相手国に属する艦艇の通峡を阻止する、そういう場合にきわめて限定されるものであるということ、これは当然でございますが、明確にしておきたいと思います。
  187. 前川旦

    ○前川委員 時間がなくなりましたので、これで終わります。
  188. 坂田道太

    坂田委員長 市川雄一君。
  189. 市川雄一

    ○市川委員 最初に、アメリカから出されました原子力潜水艦日昇丸衝突事故中間報告について、お伺いをしたいと思います。  海上保安庁の方お見えになっていらっしゃいますか。――時間がありませんので、もし具体的にということであればこちらから指摘いたしますが、海上保安庁として、日昇丸乗組員等から事情を聴取して一定の認識を持っていらっしゃると思うのですが、その前提で、先日出された米側中間報告をお読みになって、いろいろな疑念、矛盾点、私たちも数々感じておるわけでございますが、海上保安庁としてあの中間報告を基本的にどう見ておられるか。そういう矛盾点や疑念という点、感じていらっしゃる点があればはっきり指摘をしていただきたいと思いますが、どうですか。
  190. 野呂隆

    ○野呂説明員 海上保安庁といたしましては、当該報告中間報告でありまして、不明な点も非常に多く見受けられますので、最終報告を待つことといたしておりますけれども、とりあえず中間報告中の不明な点につきましては、米側からより詳細な説明を得るよう外務省に対して依頼してございます。  不明な点と申しますのは、たとえて申しますと、衝突の位置あるいは衝突の直接の原因と見られる日昇丸と米原潜との相対関係、あるいは事故発生後の米原潜の日昇丸の捜索状況等でございます。
  191. 市川雄一

    ○市川委員 海上保安庁見解として、たしか前に、視界は二キロメートルで、救助しようと思えば十分可能な気象状況であった、こういうことを言っておられたわけですが、いろんな新聞等の報道によりますと、その証言の一部が出ておりますが、P3Cが救命ボートの上空に飛来した、あるいは二、三時間後に来たときには信号弾を撃ったとか、衝突直後には低空でP3Cが来て船長が遭難信号旗を掲げたとか、あるいは至近距離に原潜が浮上した、こういうのを肉眼で見ているわけですね。しかし、米側中間報告では、遭難の徴候が見られなかった、こう言っているわけです。これは全く矛盾しているわけですが、その点はどういうふうにごらんになっていますか。
  192. 野呂隆

    ○野呂説明員 先ほどお答えいたしましたように、私どもが一番不明な点でございまして、その点につきましては再度調査を依頼しておるわけでございます。
  193. 市川雄一

    ○市川委員 外務省の方にお伺いしますが、外務大臣がいらっしゃらないのですが、外務大臣は再三にわたって、委員会で、なぜ衝突が起きたのか、なぜ通報がおくれたのか、なぜ救助が行われなかったのか、この三点については国民が納得するところまで米側にその真相解明を要求したい、と再三おっしゃっていたわけですが、この米側中間報告は、いまの、なぜ衝突したか、なぜ通報がおくれたか、なぜ救助が行われなかったかということについて、全然私たちの疑念にこたえるものにはなってないというふうに私は思いますが、外務省は、この三つの点についてどういう評価をいま持っておられるのですか。納得していらっしゃるのですか、いないのですか、どちらですか。
  194. 松田慶文

    松田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、大臣が訪米中でございまして、外務省としてのあるいは政府としての公式な見解というものは、総理大臣が週未に帰られました後改めて当委員会等に申し上げることになろうかと存じますが、事務当局といたしましては、ただいま、米側からよこされました中間報告の各項目につきまして、関係省庁と相談しつつ検討を進めているところでございます。  御指摘のとおり、今度の中間報告はあくまでも暫定的の、とりあえずの言えるだけのことを言ってきておりまして、まだまだこれから先方の調査が進みますと、もっと詳細にわたって言ってくるであろうと思うのですが、とりあえず、私どものいろいろとまだわからない点は、海上保安庁等とも相談いたしまして、改めて米側に聞く必要があるというふうに考えております。
  195. 市川雄一

    ○市川委員 聞く必要があると思っていらっしゃる点は、主にどういう点ですか。
  196. 松田慶文

    松田説明員 一度に全部聞くというよりは、とりあえず、私どもは、海上保安庁が御疑問とされている点を御専門の立場から検討されたそういう諸問題を米側に聞く、そういうことでございます。
  197. 市川雄一

    ○市川委員 海上保安庁調査報告は、きのうの内閣委員会ですかで近く発表するやに伺っておりますが、もう大体まとまっているのですか、もう発表できるような段階になっているのかどうか。  それから、近く発表するとおっしゃるのですが、やはり海上保安庁として、乗組員から聴取したこと、これはある意味では国民が一番知りたがっているととだと思うのですね。新聞にも部分的には出ておりますが、海上保安庁としてのきちんとまとめた報告というものが早く知りたいという立場で、発表するに足るだけの報告にもうまとまったものなのかどうなのか、あるいは何かほかの事情があって発表を差し控えているのかどうか、あるいは近くというといつごろ発表されるのか、その辺はどうですか。
  198. 野呂隆

    ○野呂説明員 私どもが現在取りまとめておりますのは、日昇丸乗組員関係者から事情聴取したものをまとめておるわけでございます。そのまとめました結果につきましてはできるだけ早い機会に御報告いたしたい、かように存じております。
  199. 市川雄一

    ○市川委員 まとまっていないのですか、まとまったのですか、いままとめつつあるのですか、その辺はどうですか。
  200. 野呂隆

    ○野呂説明員 現在まとめております。
  201. 市川雄一

    ○市川委員 防衛庁にお伺いしますが、原子力潜水艦の持っているソーナーの探知有効範囲というのですか、これはどのくらいですか。
  202. 塩田章

    ○塩田政府委員 原子力潜水艦とか一般潜水艦とかいうことでなしに、ソーナー自体は同じようなものを持っていると思うのです。ただどの国でも古いもの、新しいものがあると思いますから、新しいものを原子力潜水艦に使うであろうということは言えますけれども、したがってその分だけ原子力潜水艦のソーナーの方が性能がいいだろうということは言えますけれども、元来原子力潜水艦であるから特別のソーナーであるというわけではございません。  なお、各国ともソーナーの性能については厳重な秘匿をしておりまして、私ども承知いたしておりません。
  203. 市川雄一

    ○市川委員 常識的に正確にアメリカのソーナーはこうで、ソ連のソーナーはこうだということをいま聞いているわけじゃなくて、大体潜水艦の持っているソーナーというのはどの程度の範囲を探知する力を持っているのか、その辺はどうですか。
  204. 塩田章

    ○塩田政府委員 これは実は私も専門家でございませんけれども、いろいろな人に聞いてみたのですが、そのときの海象の状況によりましてえらく遠くの方まで聞こえたり、余り聞こえなかったりというようなことがあるそうでございます。したがいまして一概にどのくらいだということは、もちろん秘密にもされておりますし、一般的にどのくらいだということも、そういう点から言ってもちょっと言いにくいという点があるようでございます。
  205. 市川雄一

    ○市川委員 要するに、大体の範囲はわかっていらっしゃると思うのですが、恐らくおっしゃらないのだろうと思うのです。原子力潜水艦というのは海にもぐっているわけですから、音に対しては非常に敏感であるはずですね。敏感で、しかも音がどういう音なのかという、音の識別にも相当敏感だと思うのですね。それが衝突するまで、ソーナーを持ちながらわからない。報告書によりますとわかったのは五、六分前で、当直司令官に報告したけれども司令官の耳には届かなかった、こういうことを言っているわけですが、防衛庁という立場で見てどういうふうに思われますか。非常におかしな話じゃないかと思うのですが、どうですか。
  206. 塩田章

    ○塩田政府委員 私もその辺はよくわかりませんが、そのレポートにジョージ・ワシントンのソーナーは正常に作動しておったというふうに言っておりますので、ソーナーに故障があったとは考えられませんので、まさに先生がおっしゃいましたようにどういう事情でキャッチがおくれたのか、ちょっと私どももわかりかねるということでございます。
  207. 市川雄一

    ○市川委員 中間報告で、暫定報告だからということで外務省初め皆さん、何となく態度を濁している感じを受けるのですけれども、確かに中間報告で、暫定報告かもしれませんけれども報告の本質がでは後で変わるのかということですね。要するに沈没したとは思わなかった、ここにいま尽きるわけですね。沈没したと思わないから通報もしなかった、助けもしなかった、こういうことになるわけで、それを、いや沈没したのを知っておりました、なんというふうに変わるわけはないんじゃないのか。したがって、これはよほど日本側が腹を据えてしっかりしてかかりませんと、国民の納得のいくような答えなんというものはとても出てこないのじゃないか、こう私は思うわけですね。そういう点で、どうも中間報告だから、暫定報告だから、こう言うのですが、米海軍が最初に発表したステートメント、あれでもこの中間報告の伏線はすでにあったわけですよね。あれでも視界から消え去ったとか言っている。したがって、この中間報告を読んでおりますと、要するにぶつかったことは認めているんだけれども、相手が沈んだり遭難したという事実は全く知らなかった、こう答えているわけですね。その認識を変えない限り、認識というか事実関係が変わらない限り、納得のいく返事なんか出てこないのじゃないか、こう思うのです。その点、外務省なり何なりがこれからアメリカ側に聞いてみるとおっしゃっていますが、そんな聞いてみるなんという程度でわかるのかという非常に強い疑念を持つわけです。外務省としては、これから海上保安庁がまとめる報告、それから海上自衛隊が救助したときに乗組員から聴取した状況、こういうものを海上保安庁防衛庁と両方から取り寄せて、それをこの中間報告と突き合わせて、どこがどういうふうに食い違っているのか、こういう作業は当然なさっていくのだろうと思うのですが、もう作業をなさっているのかどうか、これからなさるのかどうか、この辺はどうですか。
  208. 松田慶文

    松田説明員 お答え申し上げます。  二つのお尋ねがございましたので二つに分けて答弁させていただきますが、米側の、御指摘のとおり当初の海軍のステートメントないしは応答要領という形による補足説明、その後の種々の話も、今回の中間報告内容も、基本的には首尾一貫して説明しております。私どもが先ほどから、これは暫定的な、中間的なものであるから、なお詳細な報告が来るであろうことを期待しておると申しますのは、まさに文字どおり詳細なものがいずれ来るということでありまして、この米側の掲げております論理ないしは説明が変わるであろうことを期待しているものではございません。私どもといたしましては、当初の海軍の説明も今回のものもいずれも米国政府の公式の立場の表明であり、なかんずく今回のは、国防長官ワインバーガー氏の署名入りの公文書として公式に米大使から一国の外務大臣に与えられたものでありまして、その内容について不明な点は仮にあって聞かねばならぬとしても、これをごまかしとかでたらめとかいうふうに一部批評があるやに伺っておりますが、私どもとしてはそういうことは毛頭思っておりません。  ただ、御指摘のとおりわからない点、多々ございますので、これは今後とも詰めてまいります。詰めるに当たりましては、おっしゃいますとおり海上保安庁とも突き合わせが要りますが、これは海上保安庁からの詳細な資料をいま私どももお待ちしているところでございます。お願いしておりますのは、国会に資料が提出される段階になれば私どももいただきたい、とりあえずの海上保安庁の疑問点は米側に伝達して、いまその取り次ぎをやっておりますので、これはいずれ解明されることを期待しておりますが、早く資料を取り寄せて日米突き合わすべしという御指摘はごもっともでございまして、そのように進めさせていただきたいと思っております。
  209. 市川雄一

    ○市川委員 最初の海軍のステートメントと今回の中間報告とこういう事実関係が変わらないとしますと、本当に何かキツネにつままれた、なぞばかりの真相解明ということになると思うのですね。そういうことにならないように、きちっとただすべきことはただす、そういう方針でやっていただきたいと思います。     〔委員長退席、箕輪委員長代理着席〕  次に、有事法制の問題でございますが、防衛庁皆さんあるいは防衛庁長官国会でよく新聞の世論調査を挙げられて、自衛隊の支持率が高まってきたということをおっしゃるわけです。しかし世論調査を詳細に見ますと、一方では憲法改正はいかぬ、自衛隊に対しては現状やむを得ないだろう、しかしまた同時に、非武装中立に対する支持もある、非武装中立を支持している人もまた、自衛隊やむを得ないだろうと言う方もいらっしゃるし、アメリカが守ってくれるかというと、アメリカは恐らく日本を守らないだろうと答える人が多い、それでいて安保条約はどうだと言うとあった方がいい、こういう世論自体はいまの日本の国情というものをある意味では非常に的確に反映しておるわけでして、自衛隊に対する支持といっても、これはまだコンクリートされたものではないなということを非常に感ずるわけです。  今回の有事法制研究のような、基本的人権の制約やあるいは主権の制限、こういうことがあらわに出てきますと、これは強い反発が起きてくる、反対が起きてくる、こういうことを考えますと、やはり国民の合意というものが前提にないと、結局防衛庁答弁でおっしゃる、有事の際に国民が協力してくれるであろうという協力も得られないであろうし、またこうした有事法制の、今回は研究ですけれども、立法化なんということになったら恐らく大問題になるんじゃないかというふうに思うのです。  そういう立場からお伺いしたいのですが、一つは、自衛隊に対する世論の支持というものも非常に漠然としたものである。したがって、たとえば専守防衛と言うのですが、専守防衛という言葉はあるのですけれども、これを裏づける実体がないんじゃないのか。何となく憲法の枠内、専守防衛と言葉だけがいつも出てくるのですが、まくら言葉であって、それでは憲法の枠内とか専守防衛ということを本気で考えているのかというと、どうもそうでない印象を強く受けるわけです。それを具体的にちょっとお伺いしたいのです。  たとえば三自衛隊の間に共通の戦略想定がないとか、戦略了解がないという批判がよく行われるわけですね。海上自衛隊は海上交通路の確保と沿岸警備と言っておりますが、実情は海上交通路の方を重視している。本来、専守防衛で言えば、上・着陸の阻止ということになれば沿岸防衛の方に重点がなければならないのですが、その肝心の方は軽視されている。むしろ対潜能力の方に重点がかかっている。陸上自衛隊は北方重視である。十三個師団のうち四個師団を北海道に配置している。あるいは航空自衛隊は北と西と半々の体制である。したがって、専守防衛と言うけれども、水際で防ぐのか本土決戦なのか、これさえ何となくはっきりわからない、こういう批判がございますが、これについてどう思われますか。
  210. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまお話がございましたように、実際に防衛力を整備していくに当たりまして、各三自衛隊のそれぞれの任務あるいはそれぞれの特性がございますので、それぞれの異なった部面が強調して表現されるというようなことは間々ありがちだということは、私どもも認める点でございます。  いま先生が御指摘のように、海上自衛隊は南の方を向いているとか、陸上自衛隊は北を向いているとかいろいろ言われるわけですけれども、しかし防衛庁といたしましては、有事におきます陸海空三自衛隊の運用構想ということにつきまして、毎年度統合幕僚会議の事務局が中心になりまして統合防衛計画というのを作成しておりますが、それにはあくまでも、まず統幕が中心になったものを受けて各幕の防衛計画をつくるというようなことを実施しておりまして、三自衛隊間に統合上乱れのないように、そういうふうに配慮しておるところでございます。
  211. 市川雄一

    ○市川委員 本当は、専守防衛というのは言葉のみで実体がそうなってないということをいろいろな角度からやろうと思っていたのですが、有事法制の問題も具体的にお聞きしたいものですから、そちらの方から今度は入りたいと思います。  憲法の枠内で有事法制研究する、こうおっしゃっているのですが、徴兵制とか戒厳令とか言論統制とかは検討してない、こういうことですが、しかし防衛庁としては、真の有事の際にはこうした点も検討しなければならない、こういう考え方を持っていらっしゃるのじゃないか。軍事優先、軍事の論理を突き詰めていきますとそこへ行ってしまうのじゃないのかなという、こういう不安を持つのですが、そういうことはないと断言できますか、どうですか。
  212. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私ども有事法制研究におきましては、再三申し上げておりますように、昭和五十三年九月の見解でも明確に表明しておるように、憲法の範囲内でやるということでございまして、徴兵制、言論統制、戒厳令、そういったものについては一切研究の対象外ということでございます。
  213. 市川雄一

    ○市川委員 それでは具体的にお聞きしますが、自衛隊法百三条にある「当該自衛隊行動に係る地域」とございますが、この地域というのは、だれがどういう基準で線引きを行うのですか。
  214. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛隊法百三条の第一項というのは「自衛隊行動に係る地域」ということでございまして、その具体的な線引きというのは、そのときの態様によって、必ずしも明確にするわけにはいきませんけれども、一般的に申し上げるならば、現に防衛出動を命ぜられて任務を遂行するための部隊が行動する地域、及びその部隊がもろもろの戦闘作戦を準備しておる地域、あるいはその作戦部隊と直結した後方部隊が行動する地域、というふうなことは言えようかと思います。  具体的にどういう形になるかということは、そのときの態様によって、必ずしも一定のどこまでということを申し上げるのはむずかしかろうというふうに思います。
  215. 市川雄一

    ○市川委員 だれが決めるのですか、範囲は。
  216. 夏目晴雄

    夏目政府委員 百三条の防衛出動に係る区域については、内閣総理大臣が決めるというふうに理解しております。
  217. 市川雄一

    ○市川委員 百三条で言う物資ということ、物資の収用とか言われておる「物資」というのは、具体的にどういうものを指すのですか。
  218. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛隊行動に必要な物資、すなわち弾薬、燃料あるいは建築用資材、医療品といったものがその対象になるのではないかというふうに考えております。
  219. 市川雄一

    ○市川委員 「当該自衛隊行動に係る地域」、これは出動命令が出れば当然その物資の保管とかいろいろな形で影響が出てくるわけですね。総理大臣が決める、そうなりますと、いま挙げたほかに、この「物資」というのは、自衛隊が必要とすれば百三条で言う「物資」に当たってしまうわけですか。要するに、自衛隊に必要のあるものは全部物資だ、こういうことですか。
  220. 夏目晴雄

    夏目政府委員 何でもかんでもこの「物資」ということにはならないであろう、多分自衛隊任務遂行上直接必要であり、かつ応急的に必要であるというふうなものに限られようかというふうに思います。
  221. 市川雄一

    ○市川委員 有事法制研究中間報告では「工作物の撤去」ということを言っておりますが、この「工作物」というのは具体的に何を指すのですか。この土地の上にある住宅を含めてすべて入っちゃうわけですか。
  222. 夏目晴雄

    夏目政府委員 具体的には建物でありますとか、へいその他の工作物あるいは立木等もその中に入ろうかというふうに思っております。
  223. 市川雄一

    ○市川委員 先ほどの御答弁では、国民避難誘導という問題は、これはまた防衛庁所管ではない、後で研究するんだということなんですけれども、結局この中間報告ですと、工作物は壊す、住宅が壊される、そこの人はどこへ行くんだ、いわゆる有事であるからという理由なんでしょうが、そういう基本的人権なり私権が制約される、あるいは侵害される、その場合に侵害された人はどうするのか、という検討もあわせて行うべきじゃないですか。  ただ壊すことだけ許可しろという感じの研究の姿勢というのは、どうも何か、ただ自衛隊が動きやすいようにということだけしか考えてないように思われるわけですけれども、やはりそういうことであれば歯どめ、歯どめというかあるいは国民保護という観点というものも、あわせて同時に研究すべきだと思うのですよね。ここから先は防衛庁所管じゃありませんから、こういう姿勢、これはどうなんでしょうか。そういう考えはないのですか。
  224. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私ども決して国民避難誘導保護ということをないがしろにしているわけではございませんで、今回の研究中間報告がたまたま防衛庁所管法令にかかわるものについての成案といいますか、それがある程度のまとまりを見たものですから御報告しておるわけでございまして、いま直ちにそのものだけを取り上げて立法化しようというふうなものではないことは再三申し上げておるとおりでございまして、第三分類のいわゆる民間防衛なり国民保護に関することにつきましては、現在どこの省庁で取り扱うべきかというようなことについて不明確な分野でございます。この点についていわゆる研究の場、検討の場というものもお決めいただいて、早急に検討していただきたいという私ども考えはありますが、今回の中間報告は、そういうものを待っていたのではいつまでかかるかわからぬということもありまして、とりあえず私どもの手で整理のできたものを報告させていただいたということで、その間に優先順位、重要性の順位があるというものではございません。
  225. 市川雄一

    ○市川委員 それから、物資の保管命令ということでありますが、この物資の保管という行為はどういう行為を期待しているのですか。倉庫に品物を入れてかぎをかけておけということなのか、あるいは人間が一緒についていて見張っていろということなのか。この保管命令、これはかなり危険な地域で保管を命令されるわけでしょうけれども、保管命令というのは防衛庁としてはどういう行為を期待しているのか、考えているのか。
  226. 夏目晴雄

    夏目政府委員 保管の態様というのはいろいろあろうかと思いますが、私どもすべての場合について労役、労務を伴うものであるとは考えておらないわけでございます。しかし、物資の保管を命じた場合に、その保管がなおざりにされていいということではなくて、自衛隊任務遂行上必要な範囲で、いわゆる善良な、十分な管理をしていただく必要があろうかということでございます。その具体的な態様についていま申し上げる材料は持ち合わせておりません。  それから、当然のことながら、この物資の保管については百三条の第一項地域、すなわち「自衛隊行動に係る地域」ということも含まれておりますので、相当危険な場合もあろうかと思います。そういった場合についてはまたいろいろなことを考えなくてはならない、あるいはその保管命令ということがむずかしいのであれば自衛隊自身がやらなきゃならぬとか、いろんな場合が考えられると思いますが、いま具体的に一概に、あらゆる場合を想定してこうこうであると申し上げるような材料は持ち合わせておりません。
  227. 市川雄一

    ○市川委員 要するに、労務提供を伴う保管行為もあるというふうに理解してもいいわけですか。それだけではないけれども、それもあるということですね。どうですか。
  228. 夏目晴雄

    夏目政府委員 一概には言えませんし、一般的には少ないだろうと思いますが、全くないと断言はまだいたすような状況にございません。
  229. 市川雄一

    ○市川委員 いまのは一項地域ですが、今度は百三条第二項の「当該自衛隊行動に係る地域以外の地域」、この「地域」というのはどういう地域を想定しているのですか。これも総理大臣ですか、決定するのは。この地域の範囲。
  230. 夏目晴雄

    夏目政府委員 この自衛隊法百三条の第二項の「地域」というのは、言うなれば第一項の地域以外の地域全部を指すものと思われますが、このもろもろの措置について規定されておる「地域」というのは、その中で内閣総理大臣が告示をした地域、具体的にわかりやすく言うなれば、いわゆる戦闘が行われている地域と相当隔遠の関係にある地域がこれに該当するのではないかというふうに思います。
  231. 市川雄一

    ○市川委員 そこで、法制局の方にお伺いしたいのですが、いわゆる国民徴用ということですね。辞書を調べますと、「徴用」というのは国家が強制的に国民を労務に服せしめて使うとか、そういう意味に使われておりますが、そういう国家が強制的に国民を徴用するということが、いまの憲法になじむのかどうか。その点はどうですか。
  232. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 旧国家総動員法には、御承知のようにいわゆる国民徴用制度というものがあったわけでございます。しかしながら、現在の法制のもとにおきましては国民の徴用というものが制度として定められていないわけであります。したがいまして、現行法に即してそういうことが憲法上可能であるかどうかということを直ちに議論するわけにはいかないわけでございますが、御質問の趣旨は、いま御引用にもなりましたように、国家が、公権力が法律で定める一定の要件のもとにおいて一定の公的な業務に国民をして強制的に従事せしめることが、どのような場合にそういうことが許されるかどうか、こういう問題であろうと思います。  そこで、こういうような役務の提供の強制が許されるかどうかは、結局は公共の福祉のために基本的人権がどういう場合に許されるかどうか、こういう問題に帰着するのでありまして、役務の提供を強制する目的とか、それから提供される役務の内容等に即して、それぞれの具体的ケースに応じて判断されるべきだと思います。  たとえば徴兵制度については、すでにそのような観点から、そういうことはわが憲法上許されないということを申し上げているわけでございます。
  233. 市川雄一

    ○市川委員 百三条一項の「地域」というのは、自衛隊が出動した戦闘地域ですよ、非常に危険な地域です。その危険な地域で物資の保管を命令される、命令されて、それがある場合においては役務の提供も伴う。そうすると、その危険な地域で自衛隊に必要な物資、弾薬とかそういうものを保管する行為、これは言ってみれば兵に準ずる行為を強制的にさせられるわけですよ。徴兵制度というのは憲法になじまない、しかし、こういう従事命令というのは憲法になじむという立場でお考えになっていらっしゃるのですか。兵に準じた行為を要求されるわけですよ、民間の人が。この点はどうですか。
  234. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 この点につきましては、先ほども申し上げました原理というものを適用して判断するほかはないと思います。  結局、まず第一に考えられることは、その目的が憲法の目から見て合理的な、公的な公共の福祉にかなった目的であるかどうかということ、さらに、強制的に課せられる負担の内容が当然問題になるわけであります。  それで御指摘は、第一項地域というのは確かに危険な地域を含んでいると思います。先ほど来お話に出ておりますように、保管命令というようなものを出した場合に、その保管命令を受けた者が履行すべき義務の態様というものはいろいろな場合があるわけで、必ずしも労務の提供ということだけではない、場合によっては、現地に必ずいなければならないというわけのものでもないと思います。先ほど官房長から御説明したようにいろいろな場合があるわけでございますから、それぞれの態様に応じて判断しなければならないと思いますけれども、先ほど来申し上げたようなことから、外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するために必要があるということで防衛出動が下令されているという場合の対処措置でありますし、さらに自衛隊の任務の遂行上どうしても必要であるというようなことでありますから、当然そういう目的は合理的だと思いますし、また、先ほど申し上げました命令の内容によっていろいろ判断すれば、これが直ちに憲法に違反をするということではないと思います。
  235. 市川雄一

    ○市川委員 物資の保管命令、保管行為を命ぜられる、これに罰則を検討しているということですね。有効性とか必要性をこれから検討する、こう言っているのですが、罰則がつきますと完全に強制的な命令になるわけでしょう。  もう一つ、百三条の二項地域におきましては、お医者さんとか看護婦さんとか土木業者、これは従事命令が出されるわけですね。先ほど午前中の議論では、従事命令に違反した場合罰則を設けたらどうかなんという御意見もあったのですが、そうなってきますと、憲法十八条で苦役の強制の禁止、徴兵制は十八条を根拠にできない、こうおっしゃっているわけですね。そういう戦闘地域に、罰則を伴う法律でもってある一定の行為を要求される、これは言ってみれば兵に準じた行為を要求されるわけですね。徴兵制は違憲だ、しかし、民間人をそういう形で強制的に使うのはいいという論理が十八条から出てきますか、どうですか。
  236. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 物資の保管命令に違反した者に対して罰則をかけるという話は、防衛庁中間報告の中において取り上げられている問題でありますけれども中間報告でも書いてありますように、防衛庁では引き続き検討をするということになっているわけでございます。いまの段階で私どもに具体的な提案なり協議というものは全くございませんので、余り先走って私が意見を申し上げることは、本来は差し控えるべきことかと思います。  ただ、一応の考え方の筋を申し上げれば、先ほども話に出ておりましたように、保管命令を受けた者が現地において保管の業務に従事する必要がない、それで目的が達成されるというような場合に、保管命令に違反する者に対して罰則をつけることが仮にあるとしても、それはむしろ憲法十八条との関係では問題にはならないと思います。ただ、先ほども話が出ていましたように、現地で実際に保管業務に従事しなければ目的が達成されないという場合が、例外的ではあってもあり得ると思います。そういう場合に、それを罰則をもって強制をするということは、確かに御指摘のように百三条第一項の地域というのはこれは相当危険な地域といいますか、「自衛隊行動に係る地域」でございますから、危険な地域である場合があり得るわけでございます。そういう場合にはやはり国民の基本的人権との調整ということは当然問題になるわけでございまして、そういう点については慎重な上にも慎重な検討が必要であろうというふうに私ども考えております。
  237. 市川雄一

    ○市川委員 ですから、徴兵というのは兵を強制的に集めるという行為ですよ。これはできないと思います。しかし、民間人を兵に準じた行為を強制的にやらせることはできるというのは、どう考えても矛盾するわけですね、同じ憲法十八条の点から考えても。  なぜこんな議論をしたかといいますと、防衛庁は憲法の枠内で検討していますと盛んにおっしゃるのですけれども、どうも法制局の方は全然相談にあずかっていない、こうおっしゃるし、防衛庁が勝手に何か枠内、枠内と思い込んでいらっしゃるようですが、決して枠内ではない。気がついたらもう枠の外で、憲法が事実上解釈が変えられていた、こういうことにもなりかねない非常に重大な問題ですから、あえてお伺いしたわけです。  さらに、この百三条第二項の「地域」というのは、「行動に係る地域以外の地域」ということは日本全土を指しているわけですか、それとも、第二項の「地域」というのは線引きで決められるのですか、どうなんですか。
  238. 夏目晴雄

    夏目政府委員 百三条第一項の「地域」というのは「自衛隊行動に係る地域」、簡単に言いかえれば戦闘が行われている地域とその周辺ということで、おのずから限定されると思うわけですが、第二項の「地域」というのは、そういった戦闘地域あるいはその周辺地域以外の地域ということで、一応全部がそれに入ると思います。ただし、この百三条の第二項に言うところのもろもろの従事命令であるとか保管命令、物資の収用、土地の使用等が行われる「地域」というのは、その中で総理大臣が特に公示した地域ということでございますから、それはそのときの態様によっておのずから決められるというものでございます。
  239. 市川雄一

    ○市川委員 その場合、総理大臣がお決めになった線引きした地域の中に、医療、土木建築工事または輸送に従事する者に適切な人が確保できないという場合に、これは広げてほかの地域から持ってくるという考えですか。
  240. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いろいろな場合があろうかと思いますが、後方地域であれば民事契約によって確保できることもありましょうし、相当危険な地域であれば、そういうふうな要員がいないということから、自衛隊のみずからの力でやらなければならぬというふうな場合もあろうかと思います。いずれにしてもいろいろな場合があろうかと思いまして、必ずしもいま先生が御心配のような向きも全くなしとしないということでございます。
  241. 市川雄一

    ○市川委員 要するに、日本全国から何か強制的に集められる感じを受けるのですよね。  それと、時間がなくなってきましたので、本当はもうちょっと逐条的にずっとやって総論をやりたいと思っていたのですが、要するに、有事法制中間報告を読んでおりますと、発想が本土決戦必至という前提で出ているわけですね。そこが問題だとぼくは思うのですよ。専守防衛というのですから本土決戦をなくす、これはもちろん軍事的な問題ですから一〇〇%なくすということはあり得ないと思うのですけれども、やはり国民の生命、財産も守るということに立てば、本土決戦なんてできませんよ、日本の都市型社会において。したがって、水際、洋上で防ぐんだ、上・着陸を何としても防ぐんだ、こういう考え方、かたい決意、その考え方に基づいて最もふさわしい装備というものを真剣に考えるべきであって、そういうものであれば国民の支持も得やすいんじゃないかと私は思うのです。他国は侵略できません。侵略する能力はありません。しかし、攻めてきたものに対しては断固として拒止する一つの力を持つということです。まず、そういう考え方を先にすべきじゃないですか。  先ほど奇襲対処の問題でお伺いしたときに、いわゆる法制面の研究よりもむしろ奇襲なからしめることに重点を置きたいんだ、こうおっしゃっていました。非常に妥当な考え方だと思うのですね。E2Cとかそういうものを装備して、奇襲を早く発見して、奇襲なからしめるんだ、それと同じように、本土決戦なからしむ戦略というものを持つべきじゃないですか。そうして、その戦略のもとに装備された、整備された自衛隊に対する国民の支持というものがコンクリートになるようにする。これが先決じゃありませんか。しかし、一〇〇%水際で防げるかどうかわからないわけで、その場合に本土という問題が起きてくるが、それは次の議論です。まだコンクリートな支持がない時点で、戦車がある日突然自分の家の前にあらわれて、あっと思ったら家がなぎ倒されたとか、そういう議論に発展するようなやり方は全く納得できない。  先ほどの議論を聞いておりましても、戦略想定として小規模・限定的侵略というのはもうないのではないかという意見が制服や専門家に多い。もしあるとすれば、グローバルな戦争に巻き込まれる形でやられる。その場合はノルマンディー上陸作戦みたいなことはない、ミサイルが最初に日本へ飛んできてしまう。そういうことを考えますと、陣地を構築するとかというと何かすごく古典的な感じを受けるわけでして、そういう意味で本土決戦は避けるという考え方、その考え方に立った防衛力のあり方をもっと真剣に考える必要があるのではありませんか。その点防衛庁長官、どうですか。
  242. 大村襄治

    大村国務大臣 専守防衛のもと、本土決戦を避けることに重点を置くべしという御意見でございます。その点につきましては、気持ちはよくわかるわけでございます。また、本土決戦を避けるための手段としていろいろございます。着・上陸を未然に防止するための必要な装備を備えなければいけないという点もございますし、本土決戦を避けるためにできるだけ着・上陸させないというための備えもしなければいけないわけでございます。そういった点から言いましても、やはり必要最小限の用意は必要でございまして、現在の法制上そういった点につきまして不備な点がありとすれば、どういう点があるかという点を今回研究して、防衛庁所管法令について御報告したわけでございます。私どもといたしましては、何も初めから本土内で決戦をすることのみ念頭に置いてこの研究をいたしたものでないということもまた、御理解願いたいと思うわけでございます。
  243. 市川雄一

    ○市川委員 そう言っては失礼ですけれども、要するに、本土決戦を絶対避けるのだというしっかりした戦略のもとに装備されてきたというふうにはどうも思えない。それは、たとえば総合安全保障研究グループの指摘なんかも、公式にはっきりそういうことが指摘されているわけですね。時間があれば一つ一つ具体的に指摘したかったのですけれども。もちろんそれのみを考えているわけでないことはわかりますけれども、水際で防ぐという方法さえしっかりできてないのに、まして本土決戦なんということは日本の都市型社会ではとてもできない、すぐパニックが起きてしまう。したがって、それを考える以前に、まずこっちの方を固めるのが先決じゃありませんか。  また、待機命令の時点で土地の使用ができるようにするという、シビリアンコントロールを崩すような方向での有事法制研究ということについては、私自身も全然納得できないということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  244. 箕輪登

    ○箕輪委員長代理 吉田之久君。
  245. 吉田之久

    ○吉田委員 初めに、今度の原潜問題についてアメリカから中間報告があったわけでありますけれども、これについて御質問をいたしたいと思います。  まず、今度のこの中間報告を読んで私どもが率直に感じますことは、いかにも支離滅裂だということです。こう言っては失礼ですけれども、誇り高きアメリカ原子力潜水艦にしては、この衝突前後にとった行動というものは、まさに夢遊病者の行動と余り違わないのではないかと思わざるを得ないわけであります。  もっとも、先ほど市川委員の質問に対しましても外務省側から御答弁がありましたように、いやしくもアメリカからの正式な中間報告書でありますし、ワインバーガー国防長官のサイン入りでマンスフィールド駐日大使から伊東外務大臣に手渡されたものでありますから、それは権威あるものとして受けとめたい、信頼すべきものだと思うというような御答弁でありまして、それはそれで私は立場はわかるわけであります。しかし、信頼すべきものであるならば、信頼されるに足るものでなければならないと思うのです。先ほどからの各委員の質問に対する御答弁を聞いておりましても、海上保安庁にしても外務省にしてもあるいは防衛庁にしても、いかにも納得のいきがたい節々を明らかに残しておられるように思います。だとするならば、お互いに国家と国家の権威においても疑点は疑点としてはっきり物を申すべきだ、問いたださなければならないと思うのです。いろいろ問いただそうとする点があるやに先ほどから聞いておるわけでございますけれども、まず海上保安庁として、この点とこの点は乗組員の証言等から比較してどうしても合点がいかない、という諸点をこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  246. 野呂隆

    ○野呂説明員 中間報告には不明な点もございます。たとえば衝突位置の問題、それから衝突の最も直接原因と見られます日昇丸アメリカ原子力潜水艦との衝突前から衝突までの相対関係、それから衡突直後から救助されるまでの間のアメリカ原子力潜水艦並びに航空機による捜索救助の状況、こういう点は非常に不明な点がございますので、ぜひとも明らかにしていただきたいと思っております。
  247. 吉田之久

    ○吉田委員 そういう抽象的な説明はきのうも内閣委員会でなされたようですし、先ほどもども聞いておったわけですが、では、皆さん方が確認なさっておるその位置とこの中間報告書の位置とは明らかに違うのかどうか。向こうは向こうできちんと位置を示していますね。いまの説明では、私たちはなお何かけげんな感じを持つだけですね。あるいはこの船と潜水艦との相対関係がどうあったかとか、原潜の行動そのものがどうだったとか、何が問題なのかということをもう少しきちんとあなたが説明しないと、向こうだって、これはどこがおかしいのだと言うと思いますよ。こういう権威ある場で、いまおっしゃったような数項目についてどうも合点がいかないと言うならば、あなた方としては、いまの時点でこう考えているのだということをお述べにならないと答えにならないと私は思うし、アメリカに対する質問にもならないと思うのです。どうなんですか。
  248. 野呂隆

    ○野呂説明員 衝突の位置について申し上げますと、日昇丸乗組員の供述から推定されます位置と中間報告にあります衝突位置は、約三・五海里の差異がございます。  それから、具体的に申し上げますと、衝突前の日昇丸の確認状況でございますが、ソーナーは正常に作動していたと言っておりますし、潜望鏡を三百六十度で二回回転させた、あるいは浅い深度に浮上した際に潜望鏡でP3Cを確認した、こういうことが書いてございますが、いずれの場合にも日昇丸を確認しなかったという理由が非常に乏しいということで、そういう問題についても詳細を承知いたしたいということでございます。  また、衝突時における潜水艦の損傷の状況とかあるいは速力等についても不明でございますので、そういう詳細も知りたい、こういうことでございます。  またさらに、衝突直後におきましては、乗組員の供述によりますと、遭難を知らせるNC旗が掲げられておりますが、これの確認状況等も中間報告にはございませんので、そういう点等について詳細をぜひ承知いたしたい、こういうふうに思っております。
  249. 吉田之久

    ○吉田委員 大分わかってまいりました。  外務省はいかがですか。
  250. 松田慶文

    松田説明員 お答え申し上げます。  私どもは、主として海上保安庁のお調べになった諸状況に基づいて今後検討することとなりますが、まだ海上保安庁からそのお調べになったことのデータに基づく詳細な御報告をいただくに至っておりませんので、来週以降大臣の帰国を待ちまして、政府関係省庁間の討議を進めまして、さらに詰めていきたいと思っております。
  251. 吉田之久

    ○吉田委員 こういう重要な問題は、やはり時期を失せず、わが方のいろいろな連絡確認を急ぎ、またアメリカに対する問題点指摘をきちんとしていかなければならぬと思うのです。前にも外務大臣に対して申しましたけれども、やはり各省庁がばらばらで、海上保安庁からの詳細な報告がまだありませんので外務省としてはよくわかりません、そういう不細工なことは許されないと思うのです。窓口を一つにして、もっと緊密な連絡をとりながら、あと何日間で、大体今日の時点においてわれわれの確認した確かな経過はこうだ、そしてやはり問題を問い詰めていく姿勢が一段と必要だと思います。  そこで、私が特に疑問に思いますことを若干申し上げますので、そういう点が確かに疑問だと思われるならば、ぜひアメリカに、お互いの今後の権威のためにもきちんと聞いていただきたい。  いまもお話がありましたが、ソーナーが正常に作動しておったとアメリカは言っておるわけなんですね。しかし、衝突寸前まで日昇丸が浮かんでおるということを確認するそういう情報は得ていなかった。要するに機械に故障はなかったんだけれども、しかし、それは全然情報として当直士官の方にも伝わっていなかったんだ、こういうことのようですが、これは、戦闘集団としては最も恥ずかしいことだと思うのです。もぐっている潜水艦で一番大事なのは、ソーナーによってすべてを探知して行動することなんでしょう。でなければみずからも危険千万ですし、他にどのような被害を与えるかもしれません。そういう内部のコントロールがなされていなかった。みずからの権威をそれほどまで否定してまで、要するにおれたちは日昇丸が上にいることを知らなかったんだということを説明しよう、またそう説明しなければ、あとの行動が全然不可解なひきょうなものになるわけでございますから、恐らくそういう観点から知らなかったんだと言い切っていると思うのですけれども、私は、この辺がやはりわれわれ日本国民としてはどうも信じがたい第一の点でございます。アメリカ原子力潜水艦が、このような内部のできの悪い指揮系統のもとで潜水艦を運用しておるというようなことは、われわれは信じられないわけなんです。  それから、潜望鏡を二回三百六十度回転させたと言いますけれども、それは、三百六十度といったって、水平に三百六十度回したのか、あるいは上を見るために三百六十度回したのか、全然わからないでしょう。その辺わが国としてはどういうふうに判断なさっているのか。  それから、何のために潜望鏡を出しにのこのことこういう状態の中で原潜が行動したのであろうか。その辺が、気がついていなければわざわざ潜望鏡を出して、上へこの時点で浮上するということがちょっと解せないわけなんです。どうも前後関係が一致しないと思うのです。  その次に、さらに幾分浅い深度に浮上した際、当直士官が潜望鏡を上げるとP3Cを見た、こういうわけなんですが、一度潜望鏡をのぞかせて、そしてさらに幾分浅い深度にまで浮上した、こういうことですが、二の場合も潜望鏡を出して見るぐらいですから、かなり浅い深度、水面下二、三メートルですか、せいぜいその辺の深度まで浮上していたはずなんですが、では、この二の場合と三の場合、さらに浮上したというのはどういう意味なんだろうかということですね。  それからその次に、潜望鏡を下げたが、その時点でソーナーは日昇丸を知った、しかし、当直士官の耳に入らず、確認もされなかった、こういうことですね。最初の、ソーナーが正常だったけれども全然情報を得ていなかったというのと、いま申しました当直士官に伝わらなかった、この二つが関係があるのかないのか、ないとするならば、最初の警告する情報を得ていなかったというのは何の意味なのか、この辺が私たちにわからないわけなんです。  それから、衝突直前にソーナーに日昇丸の影が映ったが衝突した、この時点でだれが影を見たのか。当直士官が見たのか、それが艦長に伝わったのか、この辺の経過も全くわからないわけなんです。  要するに、十時二十六分から衝突した時点までの十時三十二分ですか、このわずか五、六分の間でございますけれども、この間まさに周章ろうばいしているような足取りにしかわれわれは受け取れないわけなんです。これでも、短時間の報告としてはよく報告していると思う、こういうことが防衛庁長官として言い切れるかどうか。あるいは、さらに最終報告があるはずだとおっしゃっておりますけれども、いま私が申しましたような点が、今日の時点においてもしもやはり政府としても疑点であるならば、その辺のところをきちんと問い詰めていただかなければならない、こう思うのですが、長官のお考えはいかがでございますか。
  252. 大村襄治

    大村国務大臣 アメリカ原子力潜水艦に関する報告が、ワインバーガー国防長官からマンスフィールド大使を経て伊東外務大臣に渡されたということでございます。     〔箕輪委員長代理退席、委員長着席〕  その内容につきましては、いま先生いろいろ御指摘の点もあるわけでございますが、私どもといたしましては、これまで知らされておらなかったアメリカ原子力潜水艦行動の細部にわたるまで記載されている部分もございまして、短時間の調査といたしましては相当努力の跡が見受けられるものと考えているわけでございます。  しかしながら、これは中間報告と断ってございますし、また末尾におきましては、今後の調査の結果、追加、変更されることもあると断り書きもされているわけでございますので、この中間報告においてまだ不備とされているような点につきまして、さらに今後の調査によって補完されて、理解しやすいものになることを私どもとしては強く期待いたしているわけでございます。  いずれにいたしましても、外務省が窓口になっていま進められておりますので、防衛庁としましては、今後の調査ということにつきましてその点をなお期待いたしているわけでございます。
  253. 吉田之久

    ○吉田委員 防衛庁としてもそういう今後の調査に期待されると同時に、外務省に対してやはり強く、いろいろあなた自身が感じておられる問題点、私たち国民が感じている疑点を明確にすることを要請していかれるべきだと思うのです。  なお、特に救難の問題につきましてなお若干の問題が明らかに出てまいります。この報告書によりますと、艦長は、一つには相手の船の安全、二つ目には自分の艦の安全、三番目には戦略ミサイル潜水艦としての自艦の秘匿、この三つなどを考えて、衝突後浮上したがまたもぐった、こう報告しているわけなんですけれども、この三つのうちのやはり二番目と三番目、自分の船がまず安全だったということと、それから戦略ミサイル潜水艦としてのいろいろ秘匿、隠蔽しなければならない問題、その辺が先に頭にあって、相手の安全というものがいかにもおろそかにされたような印象をわれわれは受けざるを得ません。  艦長は、日昇丸を短時間観察したけれども同船のパニックないし混乱の徴候も見ず、衝突時の衝撃から判断して日昇丸は重大な損害を受けていないと結論した、こう報告しておりますけれども、短時間観察したと言うけれども、これは何分観察したのか、何秒観察したのか、どうも報告でははっきりしていないと思うのです。こういう点も非常にあいまい過ぎると思います。  それから、衝突時のショックといいますけれども、陸の上で物と物がぶつかるのと、海の中でぶつかるのと、またぶつかる感じが違うと思うのです。そういう単なるショックだけで、それもどの程度のショックだったのか、これも明らかに報告されておりませんし、そういう判断だけで、こっちが安全だったし向こうも大したことないのだろう、そんなことが思い得るのかどうかということも問題です。  それから、わずか短時間で観察して相手はパニック状態にないということを確認したというならば、ずんぶんこれは視界がきいたということになりますね。一方においては、全然視界が悪くてよくわからなかったが、われわれの視野から去った、まずは大丈夫だったんだ、こう言っているんですね。どうも、海上保安庁の方も当時の天候、気象条件についてはいろいろ食い違う点を持っておられるように思いますけどれも、向こうの報告書内部にも、いろいろそういう点で矛盾らしきものをわれわれは感ずるわけです。この辺をあいまいにしたままで問題は解決できないと思うのです。その点を重ねて外務省、いかがですか。
  254. 松田慶文

    松田説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の諸点につきましては、私どもも、これを承りまして今後の検討の材料にさせていただく所存でございます。  私どもがこの問題を検討するに当たりましていろいろ考えるべき要素がございますけれども、とりあえず、やはり三つについて私ども考えております。  第一点は、責任の所在であります。往々にして、事故の場合どちらにどのような責任があるかということが不分明であったり、あるいはいわゆる責任のなすりつけがあったり、それが補償関係してくるわけでありますけれども、今回の場合、御案内のとおり米国政府は全面的にみずからに責任があることをまず認めております。公式に確認し、その線に沿って全面的な合理的補償を行うということを確約しております。したがって、そのことについての争いは目下ないわけでございます。これが第一点でございます。  第二点は、先生強く御指摘のとおり、海難に際しての人命救助の義務の違反、懈怠があったかどうか。人道上の問題としても海事上の諸義務の問題としても、この点は究明し釈明を求めなくてはなりません。これは御指摘のとおりでございます。  それから第三には、再発防止と申しますか、二度とこういうことのないように、事故原因を究明し、所要の措置を米側にとってもらわなくてはなりません。しかし、これは米側が内部的にいろいろと措置すべきことでございまして、この点について私どもが直接みずからの手で介入する余地はなかなか多くはないのではないかと思うのでございます。  以上三点私どもが本件仕事を進めるに当たりましての念頭事項を申し上げたのでありますが、個別的御指摘事項は一々ごもっともな御指摘でございますので、よくこれと取り組まさせていただき、今後の仕事に役立たさせていただきたいと思っております。
  255. 吉田之久

    ○吉田委員 かなりかたい決意で、今後とも最終報告を求める中でいろいろ対処していきたいというお考えのようでございますが、ぜひとも両国の将来のためにも、あいまいな問題を残さないで、きちんと国民にわかるような結末をつけていただきたいと思うのです。特に、くどいようでございますけれども自分の方の潜水艦を秘匿しなければならないと一方で言いながら、しかも、やはりP3Cに対して、何か船とぶつかったようであるからよく調べてくれという捜索を依頼しているのですね。捜索を依頼する以上、潜水艦は浮上しなければ通信できないと思うのです。もぐったままで通信できるのかどうか、その辺も明らかにしていただきたいのですが。そうしたら、秘匿しなければならないと言いながら、やはり気になって浮上してそして通信している、どうもその辺も一貫しないのですね。いろいろ問題を残しておりますので、ぜひともひとつ、しっかりと対処していただきたいということを特につけ加えておきます。  次に、きょうの主要なるテーマとなっております有事法制研究の問題について、若干の御質問をいたしたいと思うのです。  実は、先ほども他の委員からも御意見がありましたように、この有事法制研究をしなければならないというきっかけとなったのは、明らかに栗栖発言でありました。要するに、今日のわが国の法規のもとでもしも奇襲を受ければ、われわれ自衛隊はただのでくの坊のように、人形のように立っているしかない、立って死ぬだけだ、戦うとするならば超法規的な行動をせざるを得ないではないか、まあ栗栖さんがそういう発言をしたことがきっかけになりまして、われわれ民社党もまさにそのとおりだと思いますし、したがって、奇襲のあるなしは別としても、やはりわれわれはどんな平時にでも有事のことを考えなければならないし、有事のことを考えるならば、願わないことではありますけれども、やはり奇襲ということも想定しなければならない、だとするならば、いろいろ法制上の問題が多々あるはずだから、ひとつ検討を急ぐべきではないかという意見を申した政党の一つでございます。  自来、いろいろ検討を重ねておられると思っておりましたが、今度こういう中間報告書が出されました。しかし率直に申しまして、私たちは、この中間報告書を見て、何だ、長い時間かかってこの程度のことしか検討していなかったのかという、大変な失望感でございます。しかも、中を読んでみますと、いろいろ有事の場合には、出動する部隊に対してはこういう特別な手当も考慮しなければならないだろうということとか、あるいは先ほどの御答弁によりますと、これは奇襲対処というよりもむしろ国内の問題で、武器、弾薬とか、自衛隊の施設あるいは兵器とか、そういうものを損ねたりあるいは奪おうとするような動きがあるならば武器使用はできるのだ、ということが問題として拾い上げられているわけです。それから、自衛隊有事の際の行動について協力しない場合、あるいは妨害すると申しますか、そういうきわめて抵抗的な行為をする場合、そういう国民に対してはやはり罰則を考えなければならないというようなことが、この報告の主な柱になっております。結局は、有事のときには出動したって少しはいろいろ考えるんだよといういわばあめの方と、そして従わない場合にはこういう罰則があるんだよというむちとだけがちらっと見えた、そんな感じの中間報告という印象を国民は大変強く受けたと思うのです。もっとグローバルな有事のための法制研究というものがなされていなければならなかったはずだ、また今後もさらに積極的に、もっと総論を問い詰めたところからこの研究というものは進められなければならないはずだ、言うならば総論なしの各論、それも全く防衛庁にかかわりのある部分的な法案だけの一部の検討、こんなものは私ども中間報告という名に値しないと思うのです。きわめて顕微鏡的な、部分の報告、入り口にも入ってないような報告がなぜ中間報告でありますか。大変そういう点で不満を感じております。非常に大きな疑問を感じております。  同時に、この中間報告の後にいろいろとなお検討報告がなされることは、明らかにこの文脈にあらわれているわけでございますけれども、次に出てくるものもまた中間報告なのか。一体最終的な報告、そして法律を改正しようとする問題点あるいは法案の検討、そういうことがいつの時期になるのか。その辺のところを防衛庁長官から概括的に御説明いただきたいと思います。
  256. 大村襄治

    大村国務大臣 今回御報告いたしました有事法制研究は、防衛庁所管にかかわるものでございまして、有事法制研究そのものから言えば一部にすぎないという御指摘は、そのとおりでございます。  また、これだけのものをまとめるのに三年半もかかったのはどういうわけか、こういうお話もございますが、私どもといたしましては、三年半以上前に長官の指示で始まりました作業につきまして、何とかまとまるものからひとつ国会に御報告させていただきたいということで作業を進めました結果、今回防衛庁所管法令について一応まとまりましたので、総理大臣にも御説明をし、またその御了解を得て、国会に御報告させていただいたという次第でございます。  また、この研究成果をいつ立法化するかというお尋ねでございますが、これは初めのときの方針にも記されておりますとおり、研究研究としてしっかり行う、立法を含めてのその後の措置はまた別途検討するということになっておりますので、研究成果国会に御報告し、また世論の動向等もしっかり見定めまして、また、立法の問題は立法の問題として別途検討させていただきたい。したがって、いつ立法の提案をするとかそういうことはまだ決まっておらないわけでございます。  また、残された問題につきましては、他省庁所管法令もございますし、これは所管省庁と具体的に協議しなければいけない問題があるわけでございます。また、物によりましては所属のはっきりしない問題もあるわけでございます。国民の生命、財産を守るためには最も必要とされております民間防衛につきましては、はなはだ残念なことでございますが、所管がいまのところはっきりしておらない問題があるわけでございまして、こういった問題につきましても、内閣全体とも相談しながら詰めていかなければいけない。  そういったたくさんの問題が残されておりますが、そういった問題につきましては引き続き研究を進め、これがまとまりました場合には、またその段階において御報告申し上げる、そういうことになりますると、中間報告ばかりでいかぬではないか、全く総論がおくれるではないか、こういうお話もあろうかと思うわけでございますが、現実の問題としましてそういった順序で進めざるを得なかった、そしてまとまりましたものから逐次御報告申し上げる、こういうことで進めている状況でございます。
  257. 吉田之久

    ○吉田委員 まあそれはいろいろ説明の仕方はありますけれども、私どもは何か、いまの時点で、国民国会に対していろいろ検討しています、と福田総理時代から言われたことでありますし、当時の三原防衛庁長官もここにいらっしゃるわけですが、そういういろんな経過がありましたので、一応は検討いたしておりますとこう思っておったのでありますが、これでは、本当にただお茶を濁した程度の報告にしか値しない。非常に残念ですけれども、私は、これが中間報告だといったって、それから後に続くものの展望が全然開けておりませんし、そしてまた、大体全体の輪郭がはっきりしていません、そうしますと、それはおっしゃるとおり、一つずつばらばらに思いついて法律をつくったって、これはもうしごく混乱を生ずるだけでございますから、やっぱり研究しかけたものは徹底的に研究して、そして人事を尽くし総力を挙げて、いま考え得るいろんな場合の想定に対処する仕方としてはかくかくしかじかでございますということを、やっぱり内閣全体として取り組まなければ、ただ内閣総理大臣が、防衛庁長官ひとつあなたの方で考えてくれよ、私は考えましたけれども、うちの分野はこれだけでございます、ほかのことまでわれわれは構いません、そんなものじゃ、国民に対して非常に失望感と国家の防衛に対する不安感を与えるだけで終わってしまうというような気がするわけなんです。  特に民間防衛、いまも長官自身からお話がありましたけれども、私はこれがやっぱり一番大事だと思います。戦争というのは好まないことですが、もしも攻撃を受ければ国家の独立のために戦わなければならない、国民の生命、財産を守るために戦わなければならない、自由を守るために戦わなければならない、先ほどあなたがおっしゃったとおりです。しかし、それは自衛隊だけで戦えるものではありません。総力戦なんです。本当に国民がその気にならなければとても防ぎ切れるものではないと思うのです。にもかかわらず、その民間防衛に対処する仕方については所管がはっきりいたしません、一体どうすればいいんでしょうか、全くこれはもう壁にぶつかってしまっているわけですね。あなたが国家の防衛に任ずる責任ある大臣であるとするならば、この時点総理大臣に対して、内閣全体に対して、みんなで考えてくれ、どうすればいいんだということを直ちに提案されなければ、あなたはその使命を果たしておられることにはならないと私は思うのです。まずその点を強く申し上げておきます。  ところで、私は、いまも問題になっておりますこの民間防衛につきまして、本当にこの機会にいろいろ国民と一緒に考えるべきではないか。あるいは単に防衛庁だけではなしに、およそ各省庁、行政の任に当たるそういう責任ある部門というものは全部、そういうときにはわれわれは何をすればいいんだろうかということを、いまから考え始めても決して早過ぎるわけではないと思うのです。  たとえばいざ有事の場合部隊を移動するためには、いろいろな道路とかその他通信施設であるとか、百般のそういう施設を完備しなければならない。そういう場合に突貫工事というのができるのかどうか。そういうときに、平時とは全く違った金と物量と人員を動かさなければなりませんけれども、そういうことは果たして可能なのかどうか、こういう問題が出てくると思うのですね。あるいは、いざそういう事態が起こったときに自衛隊が動こうと思っても、橋という橋は、道という道は、ほとんど戦車が動けるに値しない脆弱なそういう橋や道であったということであるならば、すべてはもう絶望だと思うのですね。そういうことに対しても、これはいまからいろいろと、建設省やら運輸省やらすべてのお役所がそれに対して対応していかなければならないと思うのですね。こういう他省庁との合意、連携、それはひとつだれかがいつか考えてくださいということでは、私は間に合わないと思うのです。  長官はその点について今後どうなさろうとなさっておりますか。
  258. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御指摘の点、一つ一つごもっともでございまして、私ども今回の作業中間報告をしましたけれども、言われてみるとじくじたるものがあります。しかしながら、私ども決してその第二分類、第三分類についても他人事であるとういことで手をつかねているということではなくて、とりあえず、私ども自分たち防衛庁所管法令についての問題点を整理して御報告したということでございまして、これが一つの引き金になって各省庁にもお願いできる、それからいわゆる、防衛庁対各省庁が個別に協議、御相談するということだけで足りなければ、政府全体として、あるいは内閣審議室なりそういったところで、もっと高い立場から検討を指示していただくというふうな一つの引き金にもなり得るんではないかというふうな考えもあって、今回防衛庁所管法令について御報告させていただいたということで、私どもは、今度は各省庁の持ち分でございますからよろしくと言って、手をこまねいているわけでは決してございません。自衛隊有事における部隊運用上必要な問題点について御意見を申し上げるについては全くやぶさかではない、ということを申し上げておきます。
  259. 吉田之久

    ○吉田委員 よくわかりました。  もっとグローバルな視点から全般の整合性ある対策を研究しなければならないということだけはみんな同感だと思うのです。だとするならば、いま内閣審議室という一つのお話も出ましたけれども、何かしかるべきそういう機関というものが設定されなければならないもう時期だと思いますね。長官はその点で、総理がお帰りになったら御進言なさいますか。
  260. 大村襄治

    大村国務大臣 御意見も踏まえまして、真剣に検討してみたいと思っております。
  261. 吉田之久

    ○吉田委員 次に、先ほどもお話がありましたが、これほど高度に発達した近代都市が、果たしてそういう有事の場合に在来のような状態で守り得るだろうかどうかという点で、いろんな疑問を私は感じるわけなんです。  先ほども長官からお話がありましたとおり、もしも攻撃があるとするならば、まず空からあるいは海から、そして最後に陸からということが普通の順序であります。もちろん同時にやられる場合もあると思いますけれども。まず一番先に考えなければならないのは空からの攻撃なんですね。そうすると、やはりわれわれの常識から言えば、昔のいやな思い出から言えば、空襲ということがまず考えられなければなりません。それに対して国民をどう守っていくかということから考えなければなりません。  この間北京に行きましたら、縦横無尽に張りめぐらされた防空ごうがある、そういうのを見てまいりました。数年前スウェーデンへ行きまして、ストックホルムで、これも、向こうが第一番に日本から来た国会議員に見てくれと言って案内したのは、やはり壮大な地下ごうでありました。敵の空襲や、特に核兵器から国民の命を守るためには、今日これほど高度に発達した都市であっても、やはりそういう防空ごうというものは依然として必要だろうかとわれわれは思うわけなんでありますけれども日本の場合はどうお考えでございましょうか。
  262. 大村襄治

    大村国務大臣 御指摘の問題につきましても、有事における国民の生命を守る重要な手段でございますので、今後政府全体としてこの問題について真剣に取り組んでいかなければならない課題であると考えております。
  263. 吉田之久

    ○吉田委員 もう少し具体的に申しますと、たとえばスウェーデンの場合、そういうふうに完璧な地下ごうをつくりながら、かつ、国民に対して、いざという場合にはどの居住地区の人たちはどの地下ごうに避難しなさい、ということを全部図解して各戸に配布しているわけなんですね。しかも、いまこの近代的な国家においてどの家庭にも必ずある刷り物は何であるか、それは電話帳だということで、電話帳の何ページかを割いて、そこに事細かに誘導の注意とかあるいは順序一手続、方法を周知さしてあるんですね。しかも、この中立国家であります国においてさえ、われわれがもしも空襲を受けた場合、空襲警報というのは、サイレンの吹鳴の仕方だとか、あるいはそれが解除される場合にはどういうサイレンが鳴るんだとか、全部説明してあるんですね。それから、有事の場合には停電もあり得る、必ず電池を用意しなさい、ラジオだけは携行するように、しかもラジオも、こういう場合にはいろいろ混乱があってデマ放送もあるから、必ずどのサイクルに合わせなさい、これだけは最後まで信頼すべき国家の放送ですから、ということがちゃんと書かれてあるのですね。やはり国民を守っているのだ、おれたちの国は国民の命を守ってくれるのだ、やはりこの辺の納得と合意から事を始めなければならないと思うのです。人はおらなくったって収用するぞとか、あるいは協力しなければ罰則をもって対処するとか、それも必要でございますけれども、しかしもっと基本的に、国家としていざというときに、われわれはここまで努力しかつ皆さん方を守ろうとしておりますという、やはりこういう基本的な姿勢が打ち出てこない限り、国民は国家のこれからのいろいろな防衛方針に対して抵抗を示すか、あるいは疑問を持つかだけに終わってしまうおそれがあると思うのです。私は、そういう点が非常に欠落していると思います。  それから、特に、もしかそういう不幸な事態が起こったときに、果たして灯火管制というのができるのかどうか。昔のあの第二次世界大戦のころでしたら、みんな乏しい生活の中で、暗くして何とか外から気づかれないように努力はいたしました。しかし、いまこれほど張りめぐらされた高速道路あるいは主要道路は、あかあかと照明されているわけなんですね。至るところに信号がついていますね。もしもビルや個人の家を全部暗くしたって、町全体を暗くすることはできませんね。ライトを消して自動車を走らせろ、そんなことはできないと思うのです。一体どうしてこれを空から守ろうとするのか。やはりそろそろ、その責任者である防衛庁長官は何かお考えいただいていなければならないと思うのですが、どうなんでしょうか。
  264. 大村襄治

    大村国務大臣 有事の際の国民の生命、財産を保護するため、いま御指摘がありましたように、諸外国においては政府あるいは自治体の主導のもとに民間防衛のための各種の施策を行っているのでありますが、わが国におきましては、大変遺憾なことではございますが、国民避難誘導に関する整備と民間防衛について国家施策として取り組む状況には、現在至っておらないわけでございます。  しかしながら、先生から御指摘ございましたように、民間防衛問題は重要かつ多岐にわたるものでございますので、今後わが国としましても、政府全体で十分検討しなければならないと考えているわけでございます。もちろん防衛庁関係があるわけでございまして、政府全体として検討するように、本日の御意見も踏まえまして、防衛庁としては、その点につきまして必要な努力を続けてまいりたいと考えておるわけでございます。  また、灯火管制の問題につきましても、有事の際空襲等から国民保護するために行われるものでございまして、これも広い意味の民間防衛の一分野と考えられるわけでございます。そういった必要が有事の際にあるのではないかという点では、防衛庁もこれを認めるにやぶさかでないのでございますが、これを国の施策としてどう進めるかということにつきましては、政府全体として今後検討をしなければならない、民間防衛の問題に取り組む際にこの灯火管制の問題についても取り組んでいかなければならない、さように考えている次第でございます。
  265. 吉田之久

    ○吉田委員 さらに、自衛隊の運用自身の問題につきましても、たとえば有事の際に、本当に自衛隊の車両を的確に、必要に応じて、随時スピーディーに移動させることができるだろうかという疑問がやはりあります。いま、たとえば消防車であるとか、警察のパトロールの車であるとか、あるいは救急医療車とか、あるいはガス会社の応急の処置に走る車だとか、そういう車には緊急自動車としてのいろいろな規定がなされているわけですね。しかし、自衛隊の車両というのは緊急自動車に準ずるわけなんでしょうか。その辺の法的根拠はどうなっているのでしょうか。それは今度のこの中間報告にも全然触れられていないように思うのですが、いかがなんですか。
  266. 夏目晴雄

    夏目政府委員 現在、自衛隊の車両につきましては平時において一部緊急用の指定というのがありますが、大半の車についてはそういう指定がございません。  ところで、有事におきましては、自衛隊の部隊の緊急移動ということから、道路の優先使用、あるいは民間の一般の車両との規制調整の問題というのは当然必要になってくると思います。これらの問題については現在特段の規定がございませんので、今後警察庁と相談するような課題であろうというふうに考えております。
  267. 吉田之久

    ○吉田委員 そういたしますと、今後のいろいろな有事法制検討の中のやはり一つ問題点になるわけですね。むしろ第二分類に入るのでしょうか。そういう点をやはり速やかに、私は中間報告と思いませんけれども、何でもよろしい、一応の報告として、次にも検討すべき問題はこうだ、あるいはグローバルにはこういう機構というものをやはりつくるべきだ、この辺のところにいろいろ検討を進めていかれませんと、きょうまでの努力というものが全く水泡に帰すと思います。その辺を特に申し上げておきたいと思います。  それからいま一つは、地方自治体との協力の関係であります。部隊というのは移動してしまうわけであります。そこに地主がいなかった、あるいはいろいろな建物が、もうどうせそういう非常事態でありますから所有者がまともにその辺にいるとは考えられません、それを一時使用したり借用したりいろいろされるわけでしょう。そこを通過したりなさいますね。戦争に負けてしまって国が滅べばもうすべては終わりでありますけれども、戦争が終わって平常に戻りましたら、やはりその後の補償の問題とかが当然出てくると思うのです。通過した部隊が、いや、うちは通らなかったと言えばこれは大変な問題になります。あるいは、実際にいろいろ使用したりあるいは若干の損害を与えた程度のものであるのに、それが過大に補償を請求された場合、やはり問題になると思います。だとすれば、一体だれが責任を持つのか。やはり私は、地方自治体というものが、こういう有事の際には自衛隊と不即不離、緊密な関係に立たなければ事は進まないと思うのですね。住民は納得しないと思うのです。この辺の対策をどう講じようとなさるのでありますか。
  268. 夏目晴雄

    夏目政府委員 百三条のもろもろの措置をする場合に、相手方がいないということによって公用令書の送達ができないような場合は大いにあり得ると思います。そういう場合についても、たとえば公示送達なんというのは一つの例でありますけれども、そういった相手方が所在不明で公用令書の送達が不可能であっても、何らかの形でそういった要請が効果あるようにしていただきたいということを考えておることが第一点でございます。  それから事後、戦争が終わった、あるいはそうでなくても、そういった処置を終わった後に、もろもろの損失を相手方に与える場合は大いにあり得ると思います。そういう場合は、百三条の規定によって当然正当な補償といいますか、通常生ずべき損失についての補償をすべきことは論をまたないというふうに考えております。
  269. 吉田之久

    ○吉田委員 やはりいろいろ、こういう防衛の措置の仕方、憲法は違いますけれども、しかし世界の国家の現状は一緒でありまして、したがって、それに対して諸外国はどういう対応をしているか、かつ、それが今日の日本の場合にどう採用できるかというようなことは、もっと真剣に検討されなければならないと思うのですね。  私どもの聞いておりますことでは、NATO諸国では軍管区と自治体とが完全に合致しているということを聞いております。そして、軍管区が命令し自治体がぴたっと協力していく、そういう構えがとれないと、防衛というものが達成できないと思うのですね。こういう点につきましてもいろいろ御検討をいただきたいと思うのです。  最後に、時間が参りましたので長官に一言申しておきますけれども、われわれはあくまでも、平和を求めた崇高な原理に基づく平和憲法を守るべきだと思います。しかしその平和憲法を守る、全く自由な国の防衛というもの、それが、そういう願いにもかかわらず諸外国からじゅうりんされ侵略される場合に、われわれは断固としてこの国を守らなければなりません。そのときに、ぴたっとそれに即応できるような法体制というものが、そろそろ検討されなければならない時期にきていると思うのです。私はそれは憲法違反にならないと思います。憲法というものを堅持しながら、しかし、非常な事態の場合には直ちに国民の生命、財産を守るために、そういう機能をする別な法の思想というものが確立されておるということでないといけないと思うのですね。  くどいようでございますけれども、せっかく出された中間報告にいろいろ失礼なことを申したかもしれませんけれども、どうかひとつもっと真剣に、もっとやる気になって、もっとグローバルな問題を突き詰めていかれますように特に期待したいのでありますが、長官決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  270. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまいろいろ貴重な御意見をお述べくださいましたので、それを重要な参考意見として承り、防衛庁としてやれることは最善を尽くしたいと考えております。  なお、他省庁の協力を得なければならぬ問題、あるいは内閣全体として取り組むべき問題につきましては、国務大臣としての立場において善処させていただきたい、さように考えておるわけでございます。
  271. 吉田之久

    ○吉田委員 終わります。
  272. 坂田道太

    坂田委員長 次に、東中光雄君。
  273. 東中光雄

    ○東中委員 ここ二、三カ月の間にいろんな研究の結果が一応まとまったということになっておるわけですが、「有事法制研究」、それから「防衛研究」、あわせて「日米防衛協力のための指針」、ガイドラインに基づく共同作戦計画案といいますか、これも一応の結論が出て、防衛庁長官が決裁をされて総理大臣報告されたということであります。  有事法制に入る前に一点だけ、共同作戦計画案についてですが、内容的には全く明らかにされていないわけですが、防衛庁長官はいつそれを決裁といいますか、承認といいますか、それをされたのか、内容の概要を明らかにしていただきたい。
  274. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  私は、昨年十二月に「日米防衛協力のための指針」に基づく日米共同作戦計画の研究について、中間報告を受けたのでございます。これはあくまでも中間報告でございまして、ガイドラインにおきましては、日米共同作戦計画の研究を初め検討事項が記されておるわけでございますが、その他の部分についてはまだ研究が進んでおりませんので、報告を受ける段階には来ておらないわけでございます。  また、報告を受けた研究内容を明らかにせよというお話でございますが、ガイドラインそのものがかなり詳しく公表されているわけでございまして、それに基づく作戦計画の研究そのものの内容につきましては、いわば作戦計画の手のうちに該当する問題がございますので、相手方の立場もございまして、さらに細部にわたる御説明は控えさせていただきたい、こう思っている次第でございます。
  275. 東中光雄

    ○東中委員 私の言っているのは、日米共同作戦計画として、在日米軍司令官と統幕の議長が起案をしたことになっておって、すでに文書になっておるということが他の委員会でも言われておるわけですが、共同作戦計画といったんでは何のことかさっぱりわからぬわけですね。どの程度のことが検討されたのか検討事項がわからない、それで、総理大臣報告されたときの後の記者会見で、これは防衛事務次官でしたか、塩田さんも一緒に行かれたようですけれども、次官が、この計画は武力攻撃を受けた場合及び受けるおそれのある場合の両方にわたっての作戦計画である、という趣旨のことを言われたと聞いておるんですが、そうなのかどうか、お聞きしたいわけです。
  276. 塩田章

    ○塩田政府委員 ちょっといまその記者会見のときの言葉は忘れましたが、いま御指摘の二つのことが別々の計画としてあるということじゃございません。一つの計画の中で考えておるということでございます。
  277. 東中光雄

    ○東中委員 日米共同作戦計画というのは、日本が武力侵攻を受けるおそれのある場合の段階から侵攻を受けた場合の段階に至るその期間の計画である、別々のものではない、こういうことですね。
  278. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの作戦計画の研究は、しばしば申し上げておりますように一つ設想を設けてやっておるわけですが、その設想の中では、おそれのある段階が入っておるわけでございます。おそれのある段階ということは、要するに防衛準備の段階ということでございますが、防衛準備そのものにつきましては別途また研究項目となっておりまして、いまは作戦計画の中の関連する範囲においてその段階も含まれておる、こういうことでございます。
  279. 東中光雄

    ○東中委員 だから、私の言うのは、作戦準備段階における段階区分、基準というものの研究はまた別にあるというふうになっているから、そのことじゃなくて、作戦計画自体が一つの想定に基づいて「設想」と言うんですか、特殊な言葉なので、想定を設例するという意味の設想ですね。それで、おそれのある段階からの計画がつくられているんだ。計画事項は、作戦行動に基づく陸海空部隊の運用及び展開、それから指揮及び通信の運用、それから調整機関の運営、それから情報活動のあり方及び後方支援の協力態勢、こういったものの大枠について作戦計画をつくっているというふうに思われるのですが、そうではないんですか。
  280. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま御指摘のようなことを内容としております。
  281. 東中光雄

    ○東中委員 何でこんなことを防衛庁は隠すんですか。それを聞いているんですからね。だから、この日米共同作戦計画は、後方支援協力態勢についても一定の設想の段階においてこういうふうにやるんだということも書かれている。あるいは、情報活動のあり方についても、詳細な情報交換についての研究というのはこれはまた別の条項でやることになっていますね。しかし、ここでは大枠のそういうものが書いてある、そういうことだというふうに私はいまの御答弁で理解したんですが、長官、そういうことでよろしいんでしょう。
  282. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまお挙げになりました項目は、御承知のようにそれぞれ別個詳しくやる項目でございます。詳しくやるものはまだ進んでおりませんけれども、いまの大枠が現在の設想の中で取り入れられていることは事実でございます。
  283. 東中光雄

    ○東中委員 だから、これは一つ設想というものが、設想というのがなかなかわかりにくいんだけれども、いずれにしてもガイドラインに言う、おそれの段階からそれから侵攻があった段階ですね、その全段階を通じての日米協力の大枠、たとえば指揮の問題あるいは調整機関の問題及び作戦構想に基づく部隊運用の問題、大体もう全体ですね。そういう全体の構想がすでにできたというふうにいま御答弁をいただいたと思うのですけれども、私はこれは今度の有事法制とも大いに関係があるんじゃないかというふうに思っておるわけであります。  それで、初めて明らかにされたことでありますので、そういうものとして有事法制研究についてお伺いするんですが、一つは「現行規定の適用時期の問題」ということで項が起こされておるわけでありますが、百三条の規定による土地の強制使用の問題及び特別部隊編成に関して、それから予備自衛官のいわゆる防衛招集について、これらの時期を待機命令の時期にまで早めるという構想でありますけれども、この待機命令というのは、七十七条で出されるわけでありますが、七十六条の「命令」があるということが「予測される場合」に出されるというんですが、予測して出される「命令」でこの「命令」を出すことによって、現行法上どういう法律効果があるんですか。
  284. 夏目晴雄

    夏目政府委員 現在の自衛隊法の中では、七十七条の防衛出動待機命令が出たからといって、直ちに特別の効果をもたらすような規定というのはございません。強いて例外を挙げれば、多分私の記憶に間違いなければ、予備自衛官が、自衛官が職を離れて何日以内に帰隊しないときは何とかというふうな罰則がついているということが、唯一の規定であるように理解しております。
  285. 東中光雄

    ○東中委員 それは、官房長がそういう認識でおられたら大変なことだと思うのですよ。予備自衛官じゃありません。百十九条では、自衛官がその任務につく、そこから七日間離れておったら処罰される、つけと言われた任務に七日以内に正当な理由がなくてつかなかったら処罰される。要するに防衛庁長官のいわば部下なんですね。部下に対して職務につけ、待機しろという命令なんですよ。だから、それによって起こってくる効果というのは、処罰で強制されるという法律効果があるようになっているんですよ。だから、これはいわば自衛隊内部の問題なんですね。だから「防衛庁長官が予測をした場合」と、こうなるわけですね。七十六条の出動命令が出されることを予測した場合と、こうなっている。非常に安易に書かれているのですよ。「予測」というのは非常にむずかしいことですよね。概念は何ぼでも広がる、そういう言葉だと思うのです。七十六条の場合で言えば、内閣総理大臣が出動命令を出した、議会の議決を得るいとまがなくて出したという場合は、当然承認を得られると思って出すんでしょう。しかし、否決される場合があり得るということが法制上決まっておって、それで承認されなかった場合はちゃんと取り消す、いままでやったことはやめさせるんだということまで七十六条には書いてあるわけですよ。だから、内閣総理大臣防衛出動命令でさえ、議会がどうするかということは予測できぬというのが法のたてまえなんですよ。ところが、七十七条というのはそれも含めて予測ということで書いてあるんだから、侵略がまだ現実に起こらないどころか、七十六条に言うおそれがあるという段階でもない、もっと前の段階でそういう予測をするというのは、きわめて政治的な判断でできるわけです。ただ、自分のところの部下についてやることだからこういう規定でいいというふうになっているんだと私は解釈するわけです。そういう点で、非常にあいまいな規定だけれども、それなりに合理性を持っていると思うておったわけですが、今度の防衛招集とかあるいは土地使用とかいうようなことになりますと、あるいは特別部隊編成というのは部隊の戦時編制をつくるということですから、そういうことになりますとこれは国民に直接影響を及ぼしてくるわけですよ。土地の強制使用、国民の土地使用排除というものが含まれてくる。こういう国民の権利義務に直接関係するという問題について、あるいは予備自衛官の招集というのは、何も具体的に侵略が起こっておるとかおそれがあるというわけでもないのに、普通の仕事についている人を防衛庁長官考えだけで招集するということになるわけですから、これは大変な国民に対する権利の制限になるわけですね。これはうんと質的に違う問題なんですよ。それを、予測する場合の待機命令の時期というところへ安易に持っていくというのは大変なことだ。私はむしろ、これはいままでの自衛隊法の体系から言えば、私たちはこれ自体を憲法上認められないという立場ですけれども、その立場から、概念的にはごろっと変わってしまうということなんです。有事でないのに有事の体制をつくるということなんです。国民に対して権利を制限するという体制をつくるということになるのです。これは平和時における戦時体制を確立するということ、この時期の問題というのはそういう性質のものなんだというふうに思うわけです。それで、そういうものとして見る場合に、その「予測」というのは、防衛庁長官として、どういう事態で出動命令が出されることを予測するという判断をされるのですか。これは防衛庁長官が判断されることなんでしょう。だから、防衛庁長官は現行法についてどういうふうにお考えになっているのかということをお伺いしたい。
  286. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まず、現在の自衛隊法のたてまえでは、隊法二十二条の特別の部隊の編成、七十条の予備自衛官の招集、百三条の土地使用については、防衛出動下令でなければできないことはお説のとおりでございます。  私ども、これを防衛出動待機命令のときから適用するようにしていただきたいというふうに報告をしていますのは、御承知のように、自衛隊の任務というのは有事の際に有効に機能し任務を達成することでありまして、この防衛出動の命令が出されたときに有効に機能し得るものでなければ自衛隊の意味がないわけでございます。したがって、陣地の構築、部隊の展開をするにしましても、防衛出動の下令からそういうアクションを起こしたのではなかなか間に合わない。予備自衛官の招集につきましても一定の出頭日までの余裕期間というものを見ていますので、そういうものが間に合わない場合があるかもしれない。特別の部隊の編成にしましても移動、編成あるいは戦術思想の統一等、いろいろな準備期間が必要でございます。  そこで、防衛出動命令というのは、適確に、間合いを持って確実に出されるという保証があればそういう問題はある程度解決し得ると思いますが、侵略の態様というのは一概に言えない。いつ何どきどういうことになるかわからないというふうなことになりますと、防衛出動の下令からでは間に合わないということから、防衛出動待機命令、すなわち防衛出動命令が予測されるときにそういう準備をしていただきたい。そうしてこそ初めて、自衛隊が任務の遂行が完全にでき、国民の負託にこたえられるということからお願いしておるわけでございます。  ところで、そういった出動待機命令のときに、国民の財産権についての制約というものがいろいろあろうかということでございますが、それはいま、私どもは、現在これを立法化するということでなくて、この場の御論議を踏まえながら、そういうことで必要だというふうなことになればそれは立法化の問題も出てきましょうが、私どもは、いま中間報告ということでそういった問題点があるということを御説明しているわけでございます。その辺御理解いただきたいと思います。
  287. 東中光雄

    ○東中委員 それが、全く自衛隊のことだけ考えて、国民の権利を考えてないからそういう発想になるんだと私は言いたいのです。といいますのは、予測したけれども予測どおりにならなかった場合はどうなるんだ。自衛官の待機ならそれはそれなりの内部のことです。ところが、国民の土地を強制使用して、言うならば、国民が同意を与えない場合に任意に強制使用するんでしょう。そして陣地を構築するんでしょう。陣地といったって、戦時中の中学校の教練の陣地じゃないんです。近代戦から言ったらこれはもう要塞的なものにならざるを得ぬじゃないですか。それでどんどん要塞を構築する。しかし防衛出動命令は出なかった。予測したんだけれども、予測は文字どおりあらかじめ予測したんであって、予測が外れるということがあるのは当然なんです。そういう場合に、国民の権利が侵害されてどうなるんですか。それはそのままになるのですか。そういう問題を含んでいるんだ、だからこれは質的にうんと違った体制になっていくんだということについての認識が、問題点と言っているけれども、とんでもない、これは自衛隊優先の考え方で全部物を見ているから、国民の権利ということを見てないからそういうことが起こるんですよ。予測が外れた場合はどうなるのですか。土地使用されて陣地を構築されて、その構築された陣地が要塞であった。自衛隊が使用するんですから国民の使用は排除するということを同時に含んでいるわけですから、排除された国民は、自分の土地はあそこにある、しかしもう陣地にされてしまった、それで、待機命令は解除の規定も何もないのですからね。その後どうなるのか。それは自衛隊内部ならいいでしょうけれども国民との権利関係で言えばどういうことになるのか。そういう点での国民の権利侵害になるんだということについての認識があるのかないのか、まずそこのところを聞きたい。
  288. 夏目晴雄

    夏目政府委員 待機命令下において財産権の制約というような事態も確かに百三条関係についてはあり得るわけですが、私ども、決して無差別に勝手にやろうということでなくて、一定の手続と正当な補償のもとにお願いをするということでございまして、おっしゃるとおり、防衛出動の待機命令が出た、しかしいろいろなそういう措置をとったけれども結局は防衛出動に至らなかったということは、理論的にあり得ると思います。そういう場合には当然正当な補償をして、前の所有者に損失補償をするというふうなことは必要であろうと思います。  ただ、先生がいま言われたような、防衛出動の待機命令から実際に武力侵攻が始まって防衛出動命令が下令されるまでの間、どのくらいの期間がとられるかということは一概に言えません。したがって、その間にベトンで固めたような要塞が一夜にして、あるいは数日あるいは一週間にしてでき上がるようなことは必ずしも考えておりませんで、小なるものは素掘りのざんごうのようなものもあり得ると思いますし、その辺は余裕が得られる期間に応じての陣地構築になろうかと思いますが、先生の言われるようにマジノ線のようなものを周辺の沿岸地域に設けるというものでは必ずしもないというふうに思います。
  289. 東中光雄

    ○東中委員 「必ずしもない」じゃないんですよ。それは、土地使用ができるという法制度をつくったら、使用するのはどういうふうに使用するのかと言ったら、陣地構築だと言うんでしょう。陣地構築はどういう陣地にするかというのは自衛隊自身が決めてしまうことであって、国民の方は何も言いようがないわけですよ。自衛隊自身がそうやって、いまのように、マジノ線のようなものをつくるかどうかというようなことを具体的に考えているとは私も思っておりません。しかし、そうならざるを得ないんじゃないですかと言うんですよ。こういう国民の権利制限、これは国民の合意を得てそれで使用権を設定してやるというんだったら、それはそれでいいんですよ。ところが、そんなことはしない。一方的にやるんだ。百三条というのは一方的に強制的にやることでしょう、土地使用というのは。だから、そこが問題なんだということを言っているんです。
  290. 夏目晴雄

    夏目政府委員 百三条というのは、その百三条に盛られているもろもろの物資の収用、土地の使用、保管命令、従事命令というのは、必ずしも命令というか、一方的にやるということを前提としておるものではなくて、その一番最初の前提にあるのは、あくまでも契約により、あるいは相手方の合意に基づいてやられるべきであるというふうに考えております。そういうことが万々一できない場合のことを想定したものでございまして、それが原則であるというものではございません。
  291. 東中光雄

    ○東中委員 契約によってやるんだったら百三条は要らないのですよ。契約によってやれないとき、そういうときに百三条を適用する、そのための百三条なんですよ。その百三条をいま問題にしているのですから。  じゃ、百三条についてお聞きしますけれども、先ほど話に出ましたが、「自衛隊行動に係る地域」について、一項の問題が起こってくるわけです。「自衛隊行動に係る地域」というのは、先ほど内閣総理大臣が線引きをするというようなことを言われましたけれども、これは明らかに官房長の間違い、錯覚だと思うのですが、そうは書いてないですね。「自衛隊行動に係る地域」というのは、内閣総理大臣が線引きをするというのじゃなくて、実際に行動をする地域ということになるんじゃないかと思うのですが、どうなんです。
  292. 夏目晴雄

    夏目政府委員 先ほどの答弁で二項地域と一項地域とを混線していたことはそのとおりでございまして、いわゆる一項地域というのは自衛隊行動にかかわる地域ということでございまして、ざっくばらんに言えば、戦闘が行われる地域とその周辺というふうに御理解いただければいいと思います。したがって、それは総理大臣が告示するとかいうものではなくて、第二項の地域、すなわちそれが内閣総理大臣が告示して定める地域ということでございます。
  293. 東中光雄

    ○東中委員 いわゆる戦闘行動が行われる地域及びその周辺地域といまおっしゃったけれども防衛研究によれば、侵攻態様というのはいろいろある。さっきも言われましたね。主として三つの態様があるということを言われている。海・空の戦力による攻撃、これは着・上陸を除く部分ですね。要するに空襲があるという場合ですね。あるいは艦砲射撃があるという場合でしょう。前の戦争の経験で言えば、東京も大阪も全国の主要都市が空襲を受けた。あるいは主要都市に限らず地方まで受けた。その場合は「自衛隊行動に係る地域」というのは東京や大阪、あるいは一回でも空襲を受けたところは入るのか入らないのか、そしてだれがそれを判断するのかということがわからぬのですけれども、どういうふうになるのですか。
  294. 夏目晴雄

    夏目政府委員 そこの一項地域、いわゆる「自衛隊行動に係る地域」がどの範囲になるかというのは非常にむずかしい問題でございまして、その侵攻の態様、あるいはいま例示として申されましたような空襲のあり方、いろいろなことを総合判断して決められるべき問題であろうと思っています。
  295. 東中光雄

    ○東中委員 だれが決めるのですか。総合的に判断するのはだれなんですか。この自衛隊法百三条では、この地域をだれが決めるとも何とも書いてない。しかし、その地域に入ったということになれば、いろいろな権利制限を強く受けるということになるわけですね。きわめてあいまいもことしているということになるわけですが、そういう規定でしょう。
  296. 夏目晴雄

    夏目政府委員 それこそまさに、百三条に言う土地の使用なり、物資の収用なり、従事命令なり、保管命令なり、いろいろなことをやらなければならないということ等を勘案し、あるいは戦闘態様の中身からいっておのずから決まるべきことであろうというふうに考えます。
  297. 東中光雄

    ○東中委員 一項と二項とでは、「自衛隊行動に係る地域」は明らかに一項だ。この右地域以外の地域で内閣総理大臣が告示する「地域」というのが二項でしょう。条文じゃきっちりそうなっておるんだけれども、現実にはさっぱりわからぬわけですよ、どこがどこなのか。特に空襲なんか受け出したら、「自衛隊行動に係る地域」ということで、戦闘地域及びその周辺地域と言うたら、もうその地域は日本全体がそうなっちゃうじゃないですか。そういうふうに、百三条というのはまず適用地域自体においてもきわめてわからない。しかし、その「地域」だと言われたら、もうとにかく強制的な力で、国民に対する権利侵害がぐっと始まってくるという関係になっておるわけです。  次に、「自衛隊任務遂行上必要があると認められる場合」というふうになっているわけですね。この任務遂行上必要があると認められる場合に、防衛庁長官または政令で決められた者の要請によって知事が動くと、原則はこうなるわけです。必要があると認めるのはだれなんですか。「自衛隊任務遂行上必要があると認められる場合」という認定をするのはだれですか。
  298. 夏目晴雄

    夏目政府委員 最終的には都道府県知事ということになろうと思います。
  299. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、防衛庁長官などがそういうふうに思って要請をしても、知事の方で、「必要があると認められる場合」でないというふうに判断をすれば、その要請に従わない。これは法制上当然そうなっているわけですね。
  300. 夏目晴雄

    夏目政府委員 都道府県知事に、防衛庁長官または政令で定める者が、もろもろのことについての要請をすることが規定されております。その場合の事務というのは、御承知のように地方委任事務ということに相なっておりまして、これについては内閣総理大臣の指揮監督権というものが及ぶのであるというふうに理解しております。
  301. 東中光雄

    ○東中委員 地方委任事務の話をしているのじゃないのですよ。認定権者は最終的には知事だとあなたがおっしゃった。そういう答弁がいま正式にあったから、それじゃ知事が、必要があると認めないということになれば、要請があっても、知事は使用、収用、そういうことはしないことができる、これは百三条に対する最終の有権的解釈権限者が知事であればそういうことになる。そういうことをさっき答弁されたから、念を押しておるだけであって、そういうふうに言われたということだけお聞きしておきましょう。  そこで、その次の条項に、「事態に照らし緊急を要すると認めるとき」というのがあるのですね。自衛隊が直接出ていくというやつがあるのですよ。この「事態に照らし緊急を要すると認めるとき」というのはどういうときですか。
  302. 夏目晴雄

    夏目政府委員 知事に対する要請が正当であれば知事はそれに従うでしょうし、正当でなければ、不当なものであれば、知事は従わないことがあろうと思いますが、不当な要請をするはずがございませんし、知事はその要請にこたえるだろうというふうに思います。
  303. 東中光雄

    ○東中委員 もう次の質問をしているのですよ。「事態に照らし緊急を要すると認めるときは、」防衛庁長官または政令で決められた将以上の人たちが、使用、収用を直接やれるという規定がありますね。その「事態に照らし緊急を要すると認めるとき」というのはどういうときなのかと聞いているのですよ。  それじゃ私の方から言います。知事の方が言うことを聞かない、見解が違うというふうになった場合、しかも事態に照らして防衛庁長官としては緊急を要すると認めるときは、防衛庁長官がみずから出ていくのだということでしょう。そうじゃないですか。
  304. 夏目晴雄

    夏目政府委員 知事が言うことを聞かない場合ではなくて、要請するいとまがないときに、長官または政令で定める者がみずからそういう措置をすることができるというものでございます。
  305. 東中光雄

    ○東中委員 知事にはその場合でも通知をせにゃいかぬ。通知をして使用、収用するようになっておる。要請するいとまはないけれども通知をするいとまはあるはずだ。そんなばかなことありますか。
  306. 夏目晴雄

    夏目政府委員 通知は一方的に通知すれば足りるものですから、いとまはあると思います。
  307. 東中光雄

    ○東中委員 要請も一方的に要請するのですよ。それに応じるか応じぬかは、知事が正当かどうかを判断する、それは知事の側がやるのでしょう。
  308. 夏目晴雄

    夏目政府委員 要請をすれば当然その要請に基づいて知事がある種のアクションを起こす、その間にタイムラグが生ずるということはあろうかと思います。
  309. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、事態に照らして緊急を要するときというのは、知事に要請したけれども知事の見解が違って、それは正当な要請ではないという見解で職権を発動しなかった、委任事務の権限を発動すべき時期ではないということで発動しなかった場合は、防衛庁としてはあきらめるわけですね。そういうことになるのですか。
  310. 夏目晴雄

    夏目政府委員 先ほども申し上げたとおり、不当に知事は拒否できないという仕組みになっております。
  311. 東中光雄

    ○東中委員 正当に拒否した場合にはどうするのかと言っているのです。国家総動員法のときは、知事が従わなかったら処罰するという規定までありましたね。今度の規定にはそういうことはないのです。だから、必要があると認められる場合ということで、見解が違うということはあり得るわけですよ。あり得るからこそ執行者を違うようにしてあるわけでしょう。それじゃ、防衛庁としては、防衛庁が要請すれば、長官なり政令で決められた者が要請すれば、文句なしにそのとおりに知事がやってくれればいい、こういうことですか。
  312. 夏目晴雄

    夏目政府委員 正当な要請をする限りそういうことになると思います。
  313. 東中光雄

    ○東中委員 それで、知事に言っておる暇もなく直接防衛庁長官等がやる場合に、いろいろ項目があるわけですけれども、「管理」というのがありますね。管理する対象には補修なんかをするものがあるということが言われているのですが、これは明らかに工場ですね。しかも装備に関係する工場ということになれば武器等の補修工場、航空機、船舶に関する工場、修理工場になるわけですが、それの管理ということになりますと鉄工所、自動車整備工場、自動車メーカーあるいは電気機器通信機器、大抵の生産部門について管理ができることになるわけですけれども、先ほどの質問にもありましたが、その管理の仕方はどういうふうにしてやるのか。国家総動員法の場合は監理官を送って、監理官が被管理者を、その管理工場、事業場を指揮監督するというふうになっていますね。だから、緊急を要するということで自衛隊から派遣された監理官というものはどういう管理をするのか。管理前と管理後とどういう点が変わるのかをお聞きしたいわけです。
  314. 夏目晴雄

    夏目政府委員 百三条によって管理する施設として予測されますのは、病院、診療所のほか、いわゆる倉庫あるいは装備品、兵器等の応急修理施設というふうなものがこれに入ろうかと思います。  この管理の仕方でございますが、これは先ほども質問がありましたように、私どもとしては、自衛隊の用に立ち得るように善良な管理をしていただくことが必要でございますが、必ずしも労務を要するものとは考えておりません。  それからまた、その管理する施設におきましても、百三条の第一項地域と第二項地域との間には、やり方によってそれぞれ具体的に変えられるべきものがあろう。特に第一項のような地域であれば相当危険も予想されるということから、みずからある程度の人員を提供しなければならないというふうなこともいろいろあろうかと思いますが、具体的なケースにつきましては、いま直ちにこういう場合、こういう場合ときちんと決まっているわけではございません。
  315. 東中光雄

    ○東中委員 私は法律の解釈を聞いているのですよ、法律はもうすでに決まっているのですから。国家総動員法による工場事業場管理令というのが、昭和十三年五月四日に出ています。これによると監理官を出して、そして監理官は指揮監督する。しかし、この場合は、主務大臣は内閣総理大臣と協議をしてそして監理官を出すのだ、こうなっている。今度の場合は国家総動員法よりももっと悪いのですよ。出先の将以上の、たとえば司令官あたりがぼっと行くわけですよ。だから、あの帝国憲法下における戦時中につくられた国家総動員法、それに基づく工場・事業場管理令よりもまだ厳しい状態になっているというのが一つです。  それからもう一つは、使用、収用すべき「物資」というのがあります。この「物資」も、およそ自衛隊が必要だと思ったものは全部、こういうことになるわけであります。何の制限も書いてない。国家総動員法を見ますと「総動員物資」と言って、ちゃんと法律で挙げていますよ。被服、食糧、飲料及び飼料、それから医薬品、医療器具あるいは通信用物資、たくさんあります。これについてあの国会審議を見てみますと、昭和十三年の帝国議会でさえ、たくさん並べてあるようであるけれども、こうすることは、最後は勅令で決めると書いてあるのですが、それについて当時の監野法務大臣が答えているのです。第七十三回帝国議会昭和十二年三月一日国家総動員法案委員会議録によりますと、「戦時二際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所二依リ」物資を決める、というふうになっておるけれども、「如何ニモ広イヤウニ見エルノデアリマスケレドモ、其命令ノ範囲ト云フモノハ、寧口各本条ノ義務ヲ狭メル所ノ命令デアリマシテ、国民が心配スルニハ当ラヌ程度ノモノト考ヘテ居りマス。」、列記してあるのだから狭めることになるのだ、国民は心配せぬでもいいのだ、昭和十三年でさえこういう答弁をしているのです。ところが、この自衛隊法百三条は「物資」と書いてあるだけなのです。何でもいいのです。およそ「物資」と言えば全部だ。しかも、それは自衛隊が必要とする、任意にやれないときにやるのだというのですよ。任意にやれない理由は何かと言えば、物資が不足しておって応じないか、「いやだ」と言って応じないかのどっちかしかないのですから、そうすると「いやだ」という国民の意思に反して強制的にやる、あるいは物が足らぬようになっておるから、自衛隊に任意に契約で手に入らぬから強制的に収用する、そういう対象物件はおよそ物資及び土地、家屋、こうなっているのです。「家屋」という概念もどういうことになるのかわかりませんけれども、要するに国家総動員法よりも、この百三条というのはよりひどい国民の権利侵害をやるものなのだということであります。  百三条というのはいわば憲法違反のかたまりみたいなものであります。体系自体がそうであると同時に、百三条自体が、明治憲法下においてさえ、国家総動員法について憲法論議をされているのですが、それよりひどくなっているものであります。だからこそ、いままで法律があって政令をつくられぬという状態が二十年も続いてきたのでしょう。私は、こういう憲法違反のかたまりは、研究するのじゃなくて廃止するという方向に向かって検討すべきであると思うのでありますが、最後に、防衛庁長官意見を聞いて、時間ですから終わります。
  316. 大村襄治

    大村国務大臣 いろいろ御意見を述べられたのでございますが、自衛隊法第百三条関係、いろいろ御指摘があったわけであります。  自衛隊法全体が国会の御審議を経て、正当な手続を経て成立したものでございますし、これに基づく政令の制定に当たりましても、日本国憲法の精神を踏んまえまして、先生の御指摘の点につきましても慎重に取り組んでまいりたいと考える次第でございます。
  317. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。
  318. 坂田道太

    坂田委員長 次に、中馬弘毅君。
  319. 中馬弘毅

    ○中馬委員 今度の有事法制についてでございますが、自衛隊はその任務を遂行するために、一つのそういう有事の場合の研究をされることはもちろん当然でございますし、これが三年半もかかったということ自体が、遅きに失したような気もいたしております。しかし、出てきたものを見ますと、技術論のみで哲学がないということを非常に残念に思うんですね。  先ほど防衛庁長官は、非常にかたい決意で国と民族とそして体制を守るとおっしゃいましたけれども、こういった技術論であったとしても、その端々にそういったものが見えておれば、その御決意というのが非常に貴重に思えるわけです。  たとえば侵攻してこられた、そしてまずは陣地を構築する、そのときにまず婦女子をどのように逃がすかといったようなことが入っておったり、あるいは建物を撤去するときに、文化遺産だけはこれは民族の大事な遺産ですから決して壊さないようにするのだとか、あるいは、先ほどから問題になっております、もう少し事前に待機命令の時点でそういうことが必要だというのであれば、そのときにできるように、これはいまの法律の中では国会の、ということは国民の承認を得ていないから、これは法律的に不備だから、まずはそこで国民の承認を得る、すなわち国会の承認を得るという手続が必要ではないか。そういったことが入っておるならば、これは本当に国民のことを考えた、先ほどの御決意にもありますように、日本民族の存続を守る自衛隊だということが国民にもっとはっきりわかるのですけれども、その点が余りにも技術的なことだけに過ぎておることを私は非常に残念に思うのです。防衛庁長官の御見解をお願いいたします。
  320. 大村襄治

    大村国務大臣 今回、有事法制研究中間報告を行いましたのは、先ほど申し上げましたような経緯に従いまして、防衛庁所管法令についてとりあえずまとまりましたものを中間報告いたしたわけでございます。この研究成果につきましては、国会における御審議の状況あるいは国民世論の動向を判断いたしまして、今後所要の措置、すなわち立法化等に当たらせていただきたいと考えている次第でございます。  今回御報告しましたのが技術的に執して哲学がないという点につきましては、十分反省を加えながら、今後取り組ませていただきたいと考えている次第でございます。
  321. 中馬弘毅

    ○中馬委員 言われております奇襲対処だとか、あるいは有事のことでございますけれども、客観的に見まして、私どもは奇襲といったようなことはもうほとんど考えられない。そのような狂人国家は少なくとも日本の周りにはおりませんし、現在の状況の中で、そのようなことがあらかじめつかめずに、ある日突然、青天のへきれきで攻めてくるといったようなことは、万々起こり得ないと思っております。  また、有事のことにつきましても、かえって日本が下手な対応を起こすことによって相手を刺激するということはあったとしても、ここで言われるような、何か向こうから自動的に攻めてくるというようなケースは非常に少ないのではないかと思うんですね。しかし、それは、その体制をつくっておいて、私はむだになっても結構だと思っておりますから、それを否定するものではございませんけれども、しかし、その「有事」ということの定義あるいはまたその「体制」ということについて、下手な法制をつくってしまうと、それがかえってマイナスになるということを恐れるわけでございます。  そのことについて少し質問させていただきますが、まず「有事」の定義でございますけれども、ずっと聞いておりますと、要するに、これは法律用語でもあるいは何か定義された言葉でもございません。非常にあいまいな言葉でございます。しかし、これが今回のように公文書に使用されておるわけですね。そうすると、ここをもう少しはっきりしておく必要があるのではなかろうか。  きょうの御答弁ですと、自衛隊法第七十六条の規定により防衛出動を命ぜられるという事態ということでございますけれども、この自衛隊法第七十六条の規定でいきますと、「外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要がある」と、国会も認めた場合だけですね。非常に限定されておりますね。ということであれば、これを法制化する場合は、このことをはっきりとお書きになりますか。
  322. 夏目晴雄

    夏目政府委員 「有事」という言葉法律上の用語でもございませんし、明確な定義でもないというふうなことは再三申し上げておりますが、この有事法制研究においては、いま先生が言われたように、自衛隊法第七十六条による防衛出動が下令されたときというふうにわれわれは理解しております。したがいまして、そういう点についての明確を期すべき個所があれば、今後そういうことをはっきりさせるべきであろうというふうに考えております。
  323. 中馬弘毅

    ○中馬委員 そうしますと、その七十六条が、先ほども言いますように外部からの武力攻撃だけでございます。内部からのものは入っておりません。そのことをここではっきりさせておいていただきたいということを申しているわけでございます。といいますと、これは戦前の法律なんかに使われております「戦時ないしは事変に際し、」ということと同義語だと考えていいですか。
  324. 夏目晴雄

    夏目政府委員 旧軍時代においては「戦時」と「事変」という言葉を使い分けておりますが、私どもとしては、戦時とか事変というような区別はしておりませんで、あくまでも防衛出動命令が出たときということでございまして、たとえば国内に騒乱、騒擾が起きたというふうなことで治安出動が下令されるというふうなことがありましても、それはここで言うところの「有事」には入らないというふうに思います。
  325. 中馬弘毅

    ○中馬委員 このように、この「有事」ということをかなり厳密に定義しておかないと、後でいろいろ問題が起こってくると思うんですね。これは軍事の一つの論理から言えば、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行するためには、超法規的な行動を起こさざるを得ないというのは、これはもう軍事力の宿命でございます、スポーツじゃないのですから。どういう手段を使ってでも相手を倒さなければ自分が倒されてしまうわけですから、ルールは無視せざるを得ないケースが非常に多くあるわけですね。そうしますと、第七十八条の治安出動において、その任務を有効かつ円滑に遂行するためにも、個人の土地使用、通行あるいは特別部隊編成が必要になってくるわけですね。七十八条の方でもそれが必要でございますね。そうすると、そのときには、今回の研究で言うようないわゆる土地の収用だとかそういうことは必要ないのか。自衛隊の任務を遂行するために現在必要になってくるわけですね、自衛隊が動くんですから。しかし、治安出動のときにはそういうことは一切しないのだということをむしろここではっきりさせておいていただきたいと思うんですがね。いかがですか。
  326. 夏目晴雄

    夏目政府委員 ただいまも御答弁申し上げたとおり、あくまでもこの適用時期の繰り上げという問題は、防衛出動待機命令という問題でございまして、治安出動であるとか国内騒擾といった問題については一切対象として考えていないということを申し上げます。
  327. 中馬弘毅

    ○中馬委員 だから、そこで自己矛盾を起こさないようにしておく必要があると思うんですね。二十二条では特別部隊編成もうたわれております。そして二十一条には、七十八条の場合をこれでしたら想定していることになるのじゃございませんか。
  328. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛隊法第二十二条の「特別の部隊の編成」は、七十八条の前提としておりますが、待機命令の場合の問題につきましては、あくまでも防衛出動を予想される、防衛出動待機命令が下令された時点ということで、はっきりさせておきたいと考えております。
  329. 中馬弘毅

    ○中馬委員 この待機命令なのでございますけれども防衛庁長官は去年の安全保障委の御答弁でも、これもはっきりソ連ということで申し上げますけれども、ソ連に対し「潜在的脅威」がある、こう明確におっしゃっております。しかし「脅威」ではないとおっしゃっていましたね。その潜在的というのは、相手に意図があるかないかということであるから「脅威」でないとはっきりおっしゃっております。「潜在的脅威」だとおっしゃっております。  しかし、きょうの新聞によりますと、レーガンと鈴木善幸さんはソ連は「脅威」だとはっきりと決めつけておられますが、その点について、防衛庁長官は事態は変わったと御認識なさっているのですか。
  330. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  私は、ソ連の軍事力は、特に最近の軍事力の増強はわが国の安全にとって潜在的脅威であると考えているということは、しばしば国会で申し上げておるところでございまして、現在におきましてもその考えは変えておりません。  ただ、いまお尋ねの点につきましては、私まだしかと見ておりませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  331. 中馬弘毅

    ○中馬委員 今回、レーガン・鈴木共同声明でソ連が脅威と、この事実は確かめておりませんからこちらも結構でございますけれども、しかし、たとえばそのように一つの事態が変わってきた。北方四島に何個師団かまた増強したといったときに、やはりこれはまた脅威認識されると思うのですね。その脅威の発生と出動待機命令との関係を少し明確にしていただきたいと思います。
  332. 塩田章

    ○塩田政府委員 出動待機命令は「防衛出動が発せられることが予測される場合」ということでございまして、具体的にいまどういう場合にそういうことになるかというふうに申し上げることは、先ほど来お答えしておりますように、大変むずかしいわけでございます。やはりここでお答えするとすれば抽象的なお答えしかできないのではないか。  いま北方四島の師団の数がふえたときどうかとかというふうにおっしゃいましたけれども、そういうふうなたとえば何個師団になったからどうだというふうに結びつけて、ここで具体的に数字を挙げてお答えすることは私はむずかしいと思います。
  333. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いずれにしましても、この出動待機命令というのは非常にむずかしい判断だと思うのですね。  そして、待機命令が発せられますと、この研究によりますと、もうすでにいろいろな私有地の通行権だとか工作物の撤去権だとか、そういったものをすべて得てしまうわけでございますから、先ほどからの御議論にもありますように、先ほど言いました民主主義体制を大事にしていくというのであれば、やはりこれはその時点国会の承認が要るのじゃなかろうか。大半の国民が、これはやはり日本に対する脅威だ、あるいは一つの事態発生だという認識でもって、軍の出動ではないにしても、その待機の準備をするといったようなことが国会論議され、そして承認されていいのじゃなかろうかと考えていると思うのですが、その点はいかがでございますか。
  334. 夏目晴雄

    夏目政府委員 土地の使用であるとか、特別の部隊の編成であるとか、予備自衛官の招集を待機命令の下令時から適用していただきたいということを申し上げておるわけでございますけれども、その待機命令の時期からいま言ったようなことをやることは非常に国民の権利義務にも関係のある問題でもあるし、一方また、防衛出動待機命令というのは国会の承認を得るというふうな手続も要らないということになっておりますことから、いわゆるシビリアンコントロールからの問題点指摘されるところでございます。  私どもとしては、有事における部隊の任務遂行上必要であるという判断でこういう一つの提案をしているわけでございまして、いまおっしゃるような事柄については、今後の御論議の中でおのずから道が開けてくるのではないかというふうに考えております。
  335. 中馬弘毅

    ○中馬委員 私がこういうことを申しますのも、これは、そういうような出動の待機命令がかなり任意な形で、政治的な形で出されるということを恐れているわけです。そして、これを防ぐことから、いまさっき言いましたような「有事」というものの定義も非常に厳密に考えなければいけないし、これが政治的な意味に使われるということは、これはいまではないのでございますけれども、あえて保革とは言いません、与野党と言いましょう、つまり政権党と政権党でないところが非常に緊迫した状況で伯仲している、その中で非常に過激な右翼であったり、過激な左翼が何らかの形で一つ行動を起こす、それに対して国内治安のために軍隊を投入できるわけですから、そのときのことを恐れて私は言っているわけで、ここで下手な法制をつくってしまうとそれがいい言いわけになって使われてしまうのじゃなかろうか、そのことを恐れているわけで、その点について防衛庁長官はどのように御判断なさっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  336. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛出動待機命令のあり方と申しますか、手続を含めての御質問であるように拝聴いたしたのでございますが、そもそも防衛出動待機命令を現行自衛隊法に取り入れましたゆえんは、防衛出動の下令される前におきまして必要な準備を進めるために、必要とする範囲のものを想定しての規定ではなかったかと思うわけでございます。したがいまして、要件も、防衛出動命令の下令と比べまして、国会の承認が必要であるとかそういった点が織り込まれておらないのではないかと理解いたしているわけでございます。  今回の研究において報告申し上げました中に、三つほど防衛出動下令後認められる問題を防衛出動待機命令の発せられるときまでさかのぼると申しますか、そういう提案が織り込まれておるわけでございますが、そのうち土地の使用につきましては直接民間に触れる問題でございます。予備自衛官の招集あるいは部隊の編成、これはどちらかといいますと自衛隊内部の問題かあるいは自衛隊と深いかかわりのある問題でございます。そういった提案をもし法制化することが、実現されることが許されるとした場合に、御指摘のような点についてどう対処したらいいか、御意見等も踏んまえて今後なお検討させていただきたい、さように考えているわけでございます。
  337. 中馬弘毅

    ○中馬委員 防衛庁長官は、ただ防衛庁長官であるだけではなくて国防会議の一員でもあるわけですから、そういった全体の法体系あるいは全体の軍事のあり方、こういったものに対して御疑念を抱かれたら、どんどん提言なさっていったらいいかと思うのです。  一番悲しいことは、日本の軍隊が日本人に銃口を向けることであるのですね。これの歯どめということをやはり考えておかなければいけないのじゃなかろうか。これは事態の終結の問題も一つもうたわれておりません。待機命令が下令されてから、緊迫した事態が解消したことをいっ、だれが、どのようにして認定するのかとか、そういったことの規定もはっきりされておりません。アメリカの場合におきましても、たとえば戦争権限法、大統領は議会の承認なしにかなり戦争をやっておりますけれども、しかし、この戦争権限法あたりができまして、軍隊を投入しても、六十日間で期限が切れてしまう、こういったような一つの歯どめがはっきりかかっておるのですね。今度の研究を見ておりますと、何かいままでがんじがらめであったということにとらわれたような形で、何も決まっていないのだから、極端に言えば何でもできるわけなのですよ。それなのに何にもできない、しかしこれだけはさせてほしいというような形で、だんだん広げていっているように私は思うのです。  しかし、逆じゃないかと思うのです。むしろ、たとえば、警察はともかくとして、治安の問題ですから、軍隊はどんなことがあっても日本人に対しては銃口を向けてはならないのだ、たとえばですよ、そういったような規定を設けるとか、先ほど言いましたように文化遺産は大事にするんだとか、あるいはまあいろいろなことが考えられますが、要するに最低の守るべき、平和憲法のもとでの日本自衛隊が守るべき歯どめなり禁止条項、こういったことをむしろ整備して、それで有事に対応する方がよっぽどいいのじゃなかろうか。戦争終結ということに対しても、これはいまの有事体制においては何も決まってないのですね。昔なら天皇陛下がおられて、一つの裁断を下されたかもしれません。しかし、いま裁断を下す人がないのですよ。そうすると、軍隊がひとりでに最後の一兵まで戦うんだということになったときに、日本の民族が滅びてしまうことをむしろ恐れるわけで、そのような本当に有事のことも真剣に考えるのであれば、あるいはスウェーデンの有事立法のように、被占領下においての命令は聞かなくていいのだとか、あるいは占領下は政府を別のところに移してでも戦うのだといったような、ゲリラ戦まで想定したようなことをちゃんとうたっておくとか、そのようなことが本当の有事法制じゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
  338. 大村襄治

    大村国務大臣 およそ民主主義国家におきましての有事法制のあり方につきましては、それぞれの国の憲法に従ってそれぞれの法制がしかれているものと私は理解いたしておるわけでございます。わが国におきましても、日本国憲法の理念のもとに従って諸般の法律は制定されなければならない、私はそう信じているわけでございます。  そこで、自衛隊法初め防衛庁所管法令につきまして、有事における自衛隊の任務達成のために法制上不備な点があるかないか、その点を研究して今回御報告いたしたわけでございます。  繰り返しまして恐縮でございますが、国会における御審議、国民世論の動向等見きわめまして、立法化の措置を進めるに当たりましては、あくまで憲法の枠内であるということを念頭に置いて、所要の立法措置を講ずることにいたしたいと思っているわけでございます。
  339. 中馬弘毅

    ○中馬委員 有事法制じゃなくて有事研究全般と考えた方がいいのでしょうけれども三矢研究が前に問題になりましたが、こういうことは非公式にやられることを私は否定するものではございませんが、その中で、たとえば警備地誌、これも極秘になっているようでございますし、OB整理項目ですか、こういった個人データを当たるといったようなこと、これは事実関係はどうなんですか、そういうことももちろん研究されているわけですね。
  340. 塩田章

    ○塩田政府委員 警備地誌のような、平素からやっております情報整備のための、何といいますか、平素やっていることは、今回の有事法制とは関係ございません。全く平素において必要な情報収集処置としてやっておることでございます。  それから、いま警備地誌の次におっしゃったこと、ちょっといま聞き取れなかったのですが……(中馬委員「オーダー・オブ・バトルの整理項目」と呼ぶ)ちょっと私もよくわかりませんですが、ちょっとお待ち願います。――失礼しました。対日指向兵力等の情報についての収集活動であれば、やっております。
  341. 中馬弘毅

    ○中馬委員 情報収集活動ももちろんこれは一つの軍事を円滑に遂行するために必要なことでしょうけれども、先ほど言いましたように、これも国内治安の問題と外国侵略の問題とをやはり区別して考えなきゃいかぬと思うのですね。国内治安の問題であれば場合によっては警察の業務かもしれませんし、外国侵略のことであればこれは防衛庁のことでございますから、そこのところの区分というのがはっきりしているのかしてないのか、そこはどうなんでございますか。
  342. 塩田章

    ○塩田政府委員 警察庁がどういう観点で警察庁としての情報活動をおやりになっているか、私ども必ずしも内容承知しているわけでございません。防衛庁防衛庁の、いま御指摘のような観点でやっておるわけでございますが、その場合に、警察庁のやっていることと防衛庁のやっていることとの間に重複みたいなことがあるのかどうかというお尋ねかと思いますが、私ども、そういう点で警察庁と打ち合わせてやっておるわけでございませんので、わかりませんし、おのずから立場も違うし目的も違うので、そういうことはないのではなかろうかと思いますけれども、それ以上詳しいことはわかりません。
  343. 中馬弘毅

    ○中馬委員 時間もありませんので、あれしますが、この有事法制ではなくて、わざわざ法制化しなくても、いま防衛庁の任務として他省庁に要望したりすることがかなりできるのじゃなかろうかと思うのですね。これは前回の質問でも私は申し上げましたとおりでございまして、たとえば建設省あたりに防衛庁から、幅員は少なくとも幹線はこのぐらいにしてくれだとか、あるいはこういうような、場合によってはですよ、ドイツのアウトバーンだとかあるいは韓国の道路のように、飛行場にも使えるようにしてくれといったような申し入れば、一回もないということなんですね。産業の面からの、経済の面からの要望は、いろんなところから、橋の大きさだとかその他について要望が来るけれども、少なくとも国の安全保障なり国防の問題からはそのようなことは受け付けたことはございませんということなんですね。しかし、これは、私はむしろ必要なことじゃないかと思うのですよ。これはただ道路だけの話ではなくて、国鉄の問題も、青函トンネルのことも申し上げました。あるいは通信の問題やあるいは石油備蓄のことも、これは国防の問題から、石油はこの程度は備蓄しておいてもらわないといけないということをはっきりおっしゃっていいのじゃないかと思うのですね。そして、それはただ有事のときだけではなくて、本当に石油ショックのときにもまた間に合うわけでございますし、食糧の備蓄もそうでしょう。これは何も法律をつくらなくたって、いま本当に日本の国の安全だとかあるいは将来の危機に備えるというような意味で、堂々とおっしゃっていいのじゃないかと思うのですね。それを相手が聞くか聞かないかは別ですけれども、対等なんですから、卑屈になって、何か他省庁のことには口は出せませんのでといったようなことでなく、それができれば、こんな第二分類、第三分類とか、こんなことをする必要はないのじゃないかと思うのですね。本当にその省庁法制化をしなければならない問題であればこれはそうかもしれませんけれども、国の安全の上からこれは必要だということは、どんどんおっしゃっていただいて結構だと思うのですね。そして、それは、先ほど言いましたように、国防会議の席に、防衛庁長官がメンバーなんですから、堂々と御提言して、本当の日本のこの国防を守っていただきたい、このように思っている次第でもございます。  時間がなくなりましたので、最後に御所見を伺いまして、質問を終わらしていただきます。
  344. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま他省庁関係につきまして御意見があったわけでございますが、防衛庁におきましては、今回御報告しましたのは有事法制研究でございますが、平時におきましても、他省庁との関係につきまして、防衛庁の立場なり意見なりを絶えず連絡して、現行法制の許す範囲内でいろいろ御協力を得ている点は多々あるわけでございます。  たとえば、自衛隊の車両の道路交通の問題につきましても道路法に基づくいろいろな規制があるわけでございますが、その範囲内で個々にいろいろ運用上範囲を認めていただいておるという点も多数あるわけでございますが、今後におきましても、そういった点につきましては積極的に協議いたしまして、防衛の任務が達成できるように一層努力してまいりたいと考えておるわけでございます。  また、備蓄の点につきましても同様でございまして、エネルギーの厳しい状況下ではございますが、もちろん節約その他には国策に従いまして協力するところでございますが、必要最小限のものはこれを確保する、また、そのためのタンク等の設備につきましても毎年度の予算においてお願いいたしておるわけでございますが、必要最小限はあくまでこれを確保するということで、今後とも努力してまいりたいと思っておるわけでございます。
  345. 中馬弘毅

    ○中馬委員 終わります。
  346. 坂田道太

    坂田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十一分散会