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松田説明員 お答え申し上げます。
先生御
指摘のとおり、
日本時間にいたしまして今朝早く、ワシントンにおきまして第一回の首脳会談が行われました。予定は一時間半程度、最初に二十分程度、
総理と大統領のお二人だけの余人を交えない会談があるというセットでございましたが、最初のお二人だけの会談が予定の倍以上、二十分から四十分の長い時間お話があったそうでございます。その後、
関係閣僚、随員を含めての全体
会議を行いまして、全体として予定よりも十五分長く、いろいろなお話がございました。
その模様を若干お時間をちょうだいして御
説明申し上げますと、お二人だけの会談では、伺ったところによりますと、
レーガン大統領と
鈴木総理との間で、個人的ないろいろな相互の理解を深めるための会話がなされたようでございます。
その後、実
質問題につきましては、まず自動車問題について、大統領から、今回
日本政府がとった措置に対して感謝の意の表明がございました。もし
日本の協力と措置がなければ、米議会において
保護立法が行われ、米国として自由貿易が守れなかったかもしれない、という趣旨の御発言もございました。
その後、
原子力潜水艦の
事故の問題が話し合われたようでございます。その詳細はまだ
承知しておりませんが、実はその前の日に、ヘイグ国務
長官が
総理大臣のところへ表敬訪問に参りました際に、大統領の伝言といたしまして、改めてこの
事故に対する深甚な遺憾の意の表明の伝達がございました。その際、
総理とヘイグ
長官との間で、この
事故が
日米双方にとってまことに残念な不幸な
事件であったが、
総理大臣としては、大統領がこの会談の前にできるだけの
調査を行うという約束をされたことを果たしたこと、また責任の所在と
補償については明確な言明をなされていることを
日本側としては評価している、そのようなお話があったと聞いております。
首脳会談に戻りまして、
原子力潜水艦の問題の後、大統領から、先般の対ソ穀物禁輸措置の解除の問題につきまして、
日本側に十分事前の御相談ができなかったが、今後は
日本が重要と思う問題については十分事前に御相談を申し上げていきたい、という御発言がありました。
この後全体
会議に臨まれたわけでございますが、まず
レーガン大統領から、いま二人だけでこのような話をした、そういう
内容の御紹介がございまして、
鈴木総理からは、そのとおりだ、そうして、二人で十分時間をかけて話し合っていろいろと意思の疎通ができた、今後は二人で、問題が起こったときには、電話で話し合うようなそういったことでいきたい、という御発言がございました。
全体
会議は十一時三十五分から十二時十分まで行われたわけでありますが、
米側は、副大統領、国務
長官、財務
長官、国防
長官、商務
長官、あとホワイトハウスのスタッフ、
マンスフィールド大使等々が出席されました。
議題は主としてアジア情勢に関する討議が中心でございました。まず発言は大統領の方からなさいまして、米国は現在多くの国と緊密な同盟
関係を持っているが、その中にあって
日米の同盟
関係を最も重要であると
考えている、
日米は太平洋国家であって、太平洋をはさむ
友好関係を今後とも堅持したい、という趣旨の御発言がございました。
大統領は、次に、中国との
友好関係を今後とも増進していくというお話をなさい、また韓国につきましては、今後とも韓国との同盟
関係を維持し、その支援を続けていくという
決意の表明がございました。
さらに、ASEANの立場を支持し、またカンボジアからのベトナムの撤退が図られることを希望する、という御発言もございました。
この後、
鈴木総理の方からは、
日本の基本的
考え方の開陳がございました。
まず韓国問題については、先般の米韓首脳会談で表明されたとおり、米国が在韓
米軍の駐留継続を決定したことは、朝鮮半島の平和と安定に貢献するものとして高く評価する、
日本は韓国に対して軍事的な措置は何もできないが、経済協力、技術協力については今後一層努力していく、という趣旨の御発言がございました。
次に日中
関係につきましては、
鈴木総理は、年とともに
友好・親善
関係を中国との間に深めてきている、
日本は中国の近代化政策を支持しており、中国が引き続き穏健な政策をとり、西側との協調
関係を維持することに対して
日本は支援を惜しまない、このために経済協力、技術協力を引き続き実施していく、という御発言がございました。
さらに、先般ASEAN諸国を歴訪し、これら諸国の指導者、民衆と接触したところ、これらの地域では活気がみなぎっており、自立自助の機運が高まってきている、
わが国を初めとする各国の経済援助が補完的な役割りを果たしており、これらの地域の民生安定に寄与していることをはだで感じた、という御体験を話されました。
また、
日本は二国間経済援助の七〇%をアジアに向けておりますが、三〇%はASEANに配分していること、今後ともこれらの経済協力、技術協力の面で一層の貢献をする、という趣旨の御発言がありました。また、ASEANのほとんどの国が、米国が引き続きこの地域に関心を持ち、政治、軍事、経済的にプレゼンスを持つことを期待している。この首脳会談に先立って、ASEANの指導者に、米国へ何か伝言することはないかと聞いたところ、米国がこの地域への関心を持ち続けるとともに、経済活動をさらに強化してほしいとの要請があり、またヘイグ国務
長官が近くASEAN拡大外相
会議に出席することを決定したことを高く評価している、ということをお伝えになりました。
次に防衛問題でありますが、大統領から、従来より
日本側にいろいろと申し上げているとおり、
日本が憲法その他の制約の範囲内で従来より防衛力の整備に努力していることを十分知っている、今後とも防衛力の整備を続けることを期待する、という趣旨の御発言がございました。
これで第一回の会談は終わったわけでありますが、この防衛問題につきましては、先方がいま申し上げたことを御発言になった後、予定がもう十五分も超過しましたので終わっておりますが、この後ブッシュ副大統領、
ワインバーガー国防長官との会談もございますし、第二回の首脳会談もございますので、引き続き討議が行われる可能性がございます。
なお一言つけ加えますと、前の日のヘイグ
長官の表敬訪問の際にも防衛問題が一点出ておりまして、ヘイグ
長官は、米国の国内には
日本の防衛問題についていろいろな
意見はある、しかし米
政府当局としては、
鈴木総理が防衛問題について御
自分で対処していかれる力、アビリティーを有しておられることについて十分な
信頼を持っている、先般の伊東大臣の訪米の際にもいろいろ御相談したが、今後とも
日米間では十分に満足のいく形での問題の協議を続けていきたい、という趣旨の発言がございました。
以上で、御
報告を終わります。