○
石原(慎)
委員 そうなってくると、具体的にいろいろ問題点が出てくるのですね。栗栖さんみたいなことを私は
防衛庁長官に言ってもらいたくない。必要なものだったら、
国民は、自分
たちの払った税金でつくった飛行機を完全に飛ばすパイロットを養成するためのお金を惜しまないと思いますよ。だったら、F104Jにしても、すでに買い込んでいる飛行機の訓練要員がどれだけの時間帯の訓練を受けているかという資料を、いまでなくて結構ですから後で出してみてください、私、それを
アメリカのものと比べてみますよ。
日本の航空パイロットは一生懸命やっているかもしれないけれ
ども、本当に目つきが変わるようなもっと練習をしたくても、できない事情がある。だから、ちょっとどの例だったかわかりませんけれ
ども、
日本の
航空自衛隊が
アメリカと一緒にと
演習を申し込んだら、向こうから断られたという話があるでしょう。私はそんななまやかなものじゃないと思うのです。その資料を、きょうでなくて結構ですから、いつか出していただきたい。
私はここで、先ほどタル将軍と、そのスタッフだったヨッドバッド氏の話を出しましたけれ
ども、その来日の目的、駐日武官就任の目的をあえて挙げませんでしたが、そのときにイスラエルは、当時のシップ・ツー・シップの
ミサイルで一番高性能のガブリエルというものを開発して持っていた。これを
日本へ売り込みたくて来た。私は決してその片棒を担いだわけじゃない、その話を聞いただけでありますが、しどう考えたって、この
日本の周辺
水域、先ほど言った航路帯じゃなしに、
日本の沿岸を敵の上陸を防ぐべく守るというのだったら、あんな
護衛艦よりも、いま開発されている水中翼のついた高速のランチャーを少し持って、何発か限られた
ミサイルかもしらないけれ
ども、小型のそういう高速の舟艇を持った方がよっぽど効果があると私は思う。ただ、そこに軍艦旗を翻すと余りかっこうがよくない。旗のためにもやはり五千トン以上は要るということになるので、皮肉を言うわけじゃありませんけれ
ども。そういう発想です。
それじゃ、この次に、後でまた申し上げるけれ
ども、
マンスフィールドさんが言い出したこと、私はごく妥当なことしか言っていないと思いますけれ
ども、これをまた
日本の
新聞がある意味で歪曲して、とんでもなく遠くまで守れと言ったとか言わないとかという話になっていますが、グアム以西フィリピン以北の航路帯を守るにしたって、ああいう「あまつかぜ」のような
護衛艦をつくって、一体そのカバーができるのですか。やっている国なんか世界じゅうどこにもありませんよ。やろうと思ったら方法は
一つしかない。昔のように、歌じゃないけれ
ども「ああ堂々の輸送船」で、とにかく
護衛艦隊をつけて大陸へもう一回攻めていくというのだったら、戦車も要るでしょうし、
護衛艦も要るでしょうけれ
ども、航路帯の
防衛は別にしても、いま言われている規模の
防衛をするために、何であんな大きな船が要るのか。
アメリカを訪問するためには水中翼船じゃちょっと行けないかもしれないけれ
ども、そんなもののために
護衛艦をつくられたら
国民はかなわない。そういう発想の転換を
防衛庁の長官なり内局の人にしてもらわないと、私は制服はすべてが頭が頑迷とは言わないけれ
ども、どうも
日本の制服組と話をしていると、何か非常に胸を張っているところは結構だけれ
ども、胸を張らせるために不必要な兵器を
装備させているような気がしてならないのです。
いろいろな例がありますよ。これは私の知っているある人から聞いた話だけれ
ども、増原さんの時代に、陸上
自衛隊がホークを欲しいと言った。すでに
装備されておるレッドアイというものがあった。これは歩兵が一人一人担いでいく小さなあれですが、とにかくこれではだめだという資料を制服の方が出した。それには、このレッドアイは要するにマッハを超す飛行機を撃つには間に合わないということが書いてある。ある人がこれを指摘しました。「おかしいじゃないか、ベトナム戦争の体験から言っても、たとえその飛行機が普通の速度、二マッハで飛べるものであろうと、地上の目的物を
攻撃するためには、マッハ以下に落とさなかったら命中率が悪いから、みんな速度を落として飛んでくる、だからマッハを超す標的を撃つ必要なんかないんだ、おかしいじゃないか」という指摘をしたら、同じ資料を書きかえてきた。今度は「対応可能な標的の速度」というふうに書きかえてきた。これを見ると、レッドアイは〇・七マッハ以下、欲しがっているホークはそれを上回る三・二マッハまで当たるということになっている。結果としてはスパローという兵器になったようでありますけれ
ども、長官は御存じか、あるいは内局の
方々は御存じか知りませんけれ
ども、これは未然に食いとめられたからいいようなものの、つまりこういうシナリオが余り多過ぎるという気が私はするのです。
繰り返して申しますけれ
ども、それを防ぐためにもやはりフォーミュラを変える、そういう発想の転換をぜひ長官が指導され、そしてまた、内局の
方々も努力をして、合理的な
装備をしてもらいたい。イエスかノーかの
質問をすれば、いま
自衛隊が
装備されている兵器が限られた
日本の
防衛目的に十全の効果を上げるか上げないかということになったら、首をかしげる平服の
方々が多いのじゃないかと私は思いますよ。どうも制服の人
たちは、
日本のおかしな社会風潮でディプレスされているせいか、とにかくはでなことにしか目が向かない、どうもそういうもののためにしか金を使いたがらない。このごろ原宿にいる竹の子族じゃないけれ
ども、着ている制服がやぼなせいかなんか知らぬが、とにかく新しいものばかり追っかけるという風潮があって、必ずしもそれが
防衛の実効にはつながってこない、効果を上げることにつながってこないと私は思うのです。
で、これから行われる鈴木・レーガン会談、それからそれを受けてオタワで行われるサミット、このサミットも、福田元
総理が向こうで、かねて来日したブッシュ氏を通じて、とにかく「政治サミットにすべきだ」ということを言われていたし、レーガンさんも「そのとおりだ」という合意を示した。また、フランスのジスカールデスタンは同じことを前から言っておりますし、一、二年前は、「大事な大事な、経済サミットではなしに、政治サミットをやる場合には、
日本なんという国は
防衛では音痴みたいな国だから、
日本だけ外して政治サミットをやれ」ということを公言してもいた。しかし、このごろは言わなくなりましたし、
日本のロボットをねらっているみたいだから余り大きなことも言えないでしょうが、とにかくそれが集まって政治的な
性格を帯びてくるオタワのサミットで、私は具体的な提案があると思うし、また
日本はそれをある程度強引にのみ込まされるおそれもある。
この間ニューヨークでニクソン元大統領とお目にかかって話をしましたが、そのときにニクソンさんが、「これから行われる鈴木・レーガン会談はあくまでもシンボリックなものにしなければいかぬ。象徴的な意味を持たせなければいけない、それが主目的で、そういった印象を相殺するおそれのある
自動車問題は、できるだけその前に片づける努力をお互いにしよう」ということを言っておられた。私はなかなか含蓄のある言葉だと思いますけれ
ども、この象徴的な意味を持たせる鈴木・レーガン会談で、いかなる内容の会談が持たれるのか。いろいろ表現もあるでしょうけれ
ども、恐らく「友人ですね」という確認が何回も行われて、三回も四回も
総理は握手させられると思います。それで、基本的なところで言質をとられて、オタワの
会議あるいはその先、恐らく
アメリカは具体的な要求を出してくるでしょう。しかしこちらはこちらで、この時代の流れの中で、いまの努力だけでは相手も不満だろうという認識は一応持って、それならば何をもって最小限の出費で最大の信頼なり満足をかち得るかという検討をする必要があると思うのです。そのためには、何もヘイグなんかに言う必要はないので、
日本の中で
日本の
防衛のフォーミュラというものを考え直す、それを合理化していく動きがもっと出てきてしかるべきじゃないかと私は思うのです。
仄聞しますと、大事なことですからここで言っていいかもしれないのですが、前細田
防衛庁長官は、この間もちょっと御一緒しましたけれ
ども、大平内閣で
防衛庁長官を務められて、そのときに大平さんが、何度かのサミットを通じて、非常に
防衛問題で深刻な受け取り方をされて、相当な努力をせざるを得ないんじゃないか、そういう受け取り方をしておられた。それが具体的にどういうものかつまびらかにいたしませんが、何か代がかわって同じ同族会社の鈴木内閣で、大平さんのそういう認識というものが
一つのコンティニティーとして続いているのかなという
感じがちょっとするのです。まして
外務大臣は、官房長官を務めていらっしゃった
伊東先生がしていらっしゃる、宮澤官房長官も大平さんの意図をほかの人よりもはるかに詳しく知っていらっしゃる方で、恐らくそういう準備がおありだと思いますけれ
ども、このオタワ
会議で何が出てくるかわかりませんが、これからも西側がいろいろな問題をリンケージしながら進んでいかなければならない、そうすることで西側としての結束を固めていこうというとき、いままでと非常に違った
姿勢の
政府が
アメリカにでき上がってきた。しかもその国務長官のヘイグは、御存じでしょうけれ
ども、NATOの司令官のときに、中性子爆弾の展開配備ということについて、オランダとベルギーが非常に渋ったときに、NATOの中のユニティーということを構えて、非常に政治的に強力な動きをしてこの両国を合意せしめた、ジスカールデスタンはこのヘイグのやり方を見て、非常に政治家としても評価をしていると聞きますが、そのでんで、オタワで具体的な問題が出てきたときに、
日本だけが四面楚歌になってしまうおそれがある。
あの東京で行われたサミットのときも、ジスカールデスタンは、ほかの問題にかまけて、実は
日本だけを外してカーターを迎賓館ですか、自分の部屋に呼び込んで、
日本に対するほかの
戦略の合意を取りつけて
会議に臨みました。
そこで、どうか
日本だけが、妙な形で孤立して、とにかく条件つきで一年間猶予を見てやるから出直してこいみたいなことにならないように、一年、二年でできないことかもしれませんけれ
ども、
日本の
防衛態勢を新しい
状況に展開していくための発想を、基本的に考え直していただきたいと思うのです。
大分長くなりましたけれ
ども、そういった件について両
大臣のお考えを伺いたいと思います。