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1981-04-13 第94回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月十三日(月曜日)     午後零時十六分開議  出席委員    委員長 坂田 道太君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 三原 朝雄君 理事 箕輪  登君    理事 前川  旦君 理事 横路 孝弘君    理事 市川 雄一君       石原慎太郎君    小里 貞利君       加藤 紘一君    片岡 清一君       高村 正彦君    玉沢徳一郎君       原田昇左右君    堀之内久男君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       石橋 政嗣君    嶋崎  譲君       矢山 有作君    西中  清君       永末 英一君    西田 八郎君       東中 光雄君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 渡邊 伊助君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省条約局長 伊達 宗起君  委員外出席者         防衛施設庁建設         部長      大迫 公克君         環境庁大気保全         局交通公害対策         室長      加藤 三郎君         運輸省航空局飛         行場部環境対策         第一課長    米山 市郎君         海上保安庁警備         救難部長    吉野 穆彦君         建設省都市局都         市計画課土地利         用調整官    簑原  敬君         安全保障特別委         員会調査室長代         理       麻生  茂君     ————————————— 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   中馬 弘毅君     田島  衞君 同日  辞任         補欠選任   田島  衞君     中馬 弘毅君 同月十三日  辞任         補欠選任   後藤田正晴君     山崎武三郎君   竹中 修一君     加藤 紘一君   辻  英雄君     高村 正彦君   原田昇左右君     小里 貞利君   堀之内久男君     与謝野 馨君   三塚  博君     片岡 清一君   永末 英一君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     原田昇左右君   加藤 紘一君     竹中 修一君   片岡 清一君     三塚  博君   高村 正彦君     辻  英雄君   山崎武三郎君     後藤田正晴君   与謝野 馨君     堀之内久男君   西田 八郎君     永末 英一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 坂田道太

    坂田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。伊東外務大臣
  3. 伊東正義

    伊東国務大臣 去る九日に貨物船日昇丸米国原子力潜水艦と衝突して沈没し、日本人乗組員二名がいまだ行方不明であるこの不幸な事故に関し、経過の概要を御報告申し上げます。  米側からは、十日正午前、在京米大使館より外務省に対し、本件事故米国潜水艦関係している可能性があるので現在米側において調査中であるが、結果判明次第通報するとの連絡がありました。  日本側からは、できるだけ早急に調査してもらいたい旨の要請をした次第でございます。  在京米大使館からは、その後、同日夜九時過ぎに、衝突を起こしたのは米海軍ポラリス型原潜であるとの電話連絡があり、また、本件事故に関する米海軍スポークスマン発表文とともに、本件事故の発生について遺憾の意を表するマンスフィールド日米大使のステートメントを手交越しました。  十一日にはマンスフィールド大使が私を訪ね、本件事故について重ねて遺憾の意を表明するとともに、本件事故について念入りな調査を行うことを保証し、また、責任及び補償の問題についてもこれに取り組み、迅速に処理されることについて確信していただきたいという旨を述べたのでございます。  さらに、レーガン大統領ヘイグ国務長官ワインバーガー国防長官レーマン海軍長官を初めとして、米政府関係者本件事故に対し遺憾の意を表明しております。  政府としましては、本件事故が発生したことを非常に遺憾と考えておりまして、また、行方不明の二人の方ができるだけ早く無事に発見されることを切に祈っており、政府としては、かかる不幸な事故が二度と発生しないことを強く希望するものであります。  また、かかる事故が今後の日米関係影響を与えることがないよう、政府としては、今後の本件事故処置につき、米側損失補償でございますとか事故徹底的究明等遺漏なく対応し、事故原因等が一日も早く明らかになることで、この事故日米関係に与えるかもしれない影響をなるべく小さくするということを期待している次第でございます。     —————————————
  4. 坂田道太

    坂田委員長 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。石原慎太郎君。
  5. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 この日昇丸沈没事件というのはまことに不愉快かつきわめて不可解な事件でございまして、現在判明している事実に限って申しましても、アメリカの今後の正確な調査報告あるいは補償に関しての態度いかんでは、日米信頼関係が大きく棄損される可能性があるということを、私は与党の議員の立場からまず警告、表明いたします。  その後、政府調査で何か新しい事実関係が判明したかどうかお聞きしたいのですが、今度の事件あるいは先般のソビエト原潜事故などが起こりますと、日本の近海に改めてそれだけの重要な艦船が配備されているのかということで、ある立場方々は色めき立ちもしますし、私たちも改めて認識を新たにするわけであります。  いまもお聞きしました新しい事実関係の中で、特に、この潜水艦戦略潜水艦であるか、あるいは非常に古い型で、その装備を解かれて、一般攻撃型の潜水艦に変わっている可能性もある、この潜水艦性格いかんによっては、この事件の意味合いも少し違ってくる部分があると思いますので、その点。  それからもう一つ、きわめて大事な問題でございますけれども、一説には、この原潜日本海上自衛隊航空自衛隊共同演習をしていたのではないか、その事故原潜だけではなしに日本自衛隊も認知しながら、何か演習性格、その機密保持のために、アメリカ側からの抑圧で、即座にこの救出に向かえなかったのではないかという説がございますけれども、とすれば、これはまことに同胞を見殺しにして許せない、しかも屈辱的な事件でありまして、そういった事実があったかどうかをまずお聞きしたいと思います。
  6. 伊東正義

    伊東国務大臣 その後、、外務省へはアメリカから新しい事実ということは報告がないわけでございまして、いま先生のおっしゃったことにつきましては、防衛庁長官から何かお答えがあると思います。  それから、私がマンスフィールド大使に会いましたとき、おっしゃいましたように、これは信頼関係ということにまで及ぶようなことになるおそれもありますので、特に私が大使に言いましたことは、なぜ通報がおくれたかということ、それから人命の救護ということについて、私は、国民の感情から言えば何かどうも割り切れぬということがあるので、その点も徹底的にひとつ調査してもらいたい、それから損失補償といいますか損害賠償といいますか、そういうことにつきましても、これは十分なことをひとつ配慮してもらいたいということでございまして、二度とこういうことが起こらぬように、事故原因は徹底的に究明してもらいたいということを話したのでございます。  アメリカ側も、非常に遺憾だということの表明とともに、いまのような補償の問題とか責任の問題とか事故究明の問題とか、そういうことについてはなるべく早くできるように努力をするという誠意のある回答が私にはあったわけでございます。
  7. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛庁といたしましては、こういった事故が起こりまして、いまだに乗組員のうち二人の方が発見されてないということをきわめて遺憾に思っているわけでございます。十日以降、航空自衛隊航空機を派遣して、未発見の方の発見にいま全力を挙げて取り組んでいるところでございます。  なお、先生から、事前承知しておったんではないかというお尋ねがございましたが、そのようなことは防衛庁としては全く承知しておらないわけでございます。経過につきましては、すでに御承知のとおり、十日未明、奄美諸島における訓練を終えて佐世保向け帰航中の護衛艦が、ゴムボートで避難中の船員の方が打ち上げました信号弾発見して、それから救助活動に当たったという事実どおりでございまして、事前米潜水艦行動なんかについて、自衛隊が何らかの連絡を受けるとかいうことは全くなかったということを申し上げるわけでございます。
  8. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 当時の海の気象状況が正確に把握されていないのですが、当時の海象が、事故が起こってから悪化していったのか、それとも好転してきたのか。実際潜水艦汽船に衝突してそれが沈没する、しかも乗務員は沈みゆく船の中から背後に大きな潜水艦が浮上したのを見ている、しかし相手側は、海がしけていてこれが見つからなかった、上に飛んでいる飛行機も気がつかなかったということであります。後に自衛艦が、そのゴムボート乗員がたいたフレア、私は海をよく知っておりますので、夜間こういった一発や二発のフレアがどの程度の視界にしか届かないかということはよくわかりますが、それにしても、全く予知していない事故を、たまたま通りかかった自衛艦が目撃して、いち早くこれを見つけ、救助したということになれば、海象変化いかんによっては、どうもアメリカ側に全く誠意がなかったという判断をせざるを得ない。しかも事故データイムですかに起こっているわけでありまして、そういった分析はこれからすべきことかもしれませんけれども、この相手側誠意というものに対する判断一つの根拠に、当時の海象変化というものが大きく関係あると思うことを私はここで指摘だけしておきます。  マンスフィールド大使がいち早く陳謝に来られたということ、当然だと思いますし、また日本政府も、先ほど申しましたように、正確な調査報告、迅速なる、十分なる補償というものを今後も強く申し込むべきだと思います。これがソビエトや中国の潜水艦相手だったら、こんな問題はうやむやになってしまったんじゃないかと思うのです。  ちなみに、四十一年、ソビエト監視艇日本汽船を衝突沈没させて、六人が行方不明になって死んでしまった。しかもその報告が五日後にあったということを、私たちはもう一回ここで思い合わせてみる必要があると思いますし、四十三年には第一宏和丸、第三平進丸、こういった船が、弾頭のないミサイル演習で誤射されて、船員がけがをし、中には一人賄いの人がいて、一生腕が使えなくなって、その賠償を請求したけれども、とにかく全然返事がない、そういう事実があるわけであります。  いずれにしても、こういった軍事には機密の壁と人命の尊重の兼ね合いというものがあると思いますけれども、今回は有事の実際の戦闘ではなしに、あくまでも平時の多分演習でありましょうし、ここにおいて人命が尊重されないということは、決して許すことのできないことだと私は思います。  もしこういった事故がヨーロッパの水域で起こっていたら、一体どういう態度アメリカ艦船がとっただろうかなということを、私はふと考えるのです。  先般も、私、アメリカに福田元総理と御一緒して行きまして、防衛の問題等々でいろいろ話をしてきましたけれども、たとえば両国間にわだかまる非常に大きな問題、防衛問題あるいは自動車の輸出の摩擦問題等々を話しますと、率直に言って、人種が違い、文化文明の違いがあるから、一つの偏見も当然あるでしょう。しかし、そういった非常に本質的な問題にわだかまっているという感じがどうしてもする。たとえばフォードの会長が、フォルクスワーゲンがアメリカで売れるのはがまんできるけれども日本自動車が売れることはがまんできないという発言をする。そういう根底にあるものを、私たちは、この問題だけではなしに、これから後の質問でも申しますけれどもアメリカ日本の本当のパートナーシップというものを踏まえて、防衛問題という非常にバイタルな、致命的な問題を討論していくときには払拭しなくてはならないし、またそうする責任が相互にあると思います。そうすることで、本当に有効な防衛対策ができるのではないかという気がいたします。  先ほど外務大臣が、今後の姿勢について所信表明されましたから、これ以上申し上げませんが、ここからもう一つ派生して出てくる問題で、恐らく野党の方々も後でお聞きになると思いますけれども、この潜水艦がいわゆる戦略潜水艦SSBNであるとした場合に、アメリカ潜水艦に限らず、ソビエト潜水艦も含めて、核装備した潜水艦日本領海をとにかく自由自在に通過しているのではないか、この潜水艦SSBNであった場合に、領海侵犯、つまり非核原則にもとる行為があったのではないかという懸念があると思います。  質問が矛盾して感じられるかもしれませんけれども非核原則というのは、これはまことにおかしな原則でありまして、実はこれができたときに、私、参議院予算委員会で当時の佐藤総理と激論をしました。佐藤さんは目をむいて怒られましたが、これは依然としてまことに意味のない原則だと私は思います。  名前は挙げませんけれども、先般ニューヨークで会いました、この原則ができ上がったときのアメリカ側の当事者の高官の一人が、率直に言って、もし有事の際になれば三原則の三番目というものは空文化さざるを得ないし、私たち日本も当然それを承認するだろうと思ったから、まことに矛盾きわまりない三原則をあえて受け入れたふりをしました、ということを率直に申しておりました。だれとは申しませんが、そういった非常におかしな原則だと思います。  もし仮に、核の潜水艦領海を通過していたにしてもいないにしても、われわれにとってそれを探知する能力がないのですから、騒ぐこと自身が非常に奇態な感じがいたしますし、もしそれならば、そういった探知能力日本が持つべきか持たざるべきかという問題になると思いますけれども、非常にいろいろなことを盛り込んだ漠然とした質問になるかもしれませんが、この潜水艦SSBNであったとして、非核原則がらみ領海通過の問題について防衛庁のお考えをちょっと伺いたいと思います。
  9. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねになりました、この潜水艦SSBNとして防衛庁見解どうかということでございますが、その点につきましては私ども詳しく承知しておりませんので、そういう前提としてのお尋ねに対しましてもお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。  先生承知のとおり、米原子力潜水艦の配備の詳しい状況については私ども承知しておらないわけでございます。伝えられるところによりますと、ポラリス型潜水艦は新しいものに取りかえる作業が進められておる。そこで、太平洋海域に配備されております同種の潜水艦につきましても、果たして新しい型、その中にはまあ攻撃型潜水艦にかえるという案もあるようでございますが、この事故を起こしました潜水艦が、これまでのような目的を持って行動をしておったのか、それとも新しい方に切りかわっておるのか、その点が定かでございませんので、せっかくのお尋ねでございますが、直接のお答えは差し控えさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、防衛庁といたしましては非核原則を堅持しておりますので、核装備潜水艦領海内に入るということはこの原則に触れるわけでございますので、そういったことは容認できないと考えておることだけ、一般論として申し上げておきます。
  10. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 海にしろ空にしろ、私たちは、あると称されているアメリカの核のかさの抑止力なるものを一方的にやみくもに信じて安んじている以外にないわけでありまして、まことに皮肉というか情けないというか、アメリカ側からほとんど何も明かしてもらえないままに、頼りになるだんなとまでは申しませんけれども、お兄さんでしょうか番犬でしょうか、とにかく頼りになるんだということで過ごしているわけです。  意地の悪い質問になるかもしれませんけれども、今後の事実関係調査アメリカからの報告の中で、あの事故を起こした潜水艦SSBNであったかSSNであったか、そういう回答を得る可能性はございますか。
  11. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 直接お答えできないかもしれませんけれどもアメリカ海軍発表では、この船の名前は、ジョージ・ワシントンという名前は公表しております。それが、先生お尋ねのように、攻撃型なのかあるいは弾道ミサイル型の潜水艦であるのかということについて向こう側から発表があるかどうかについて、いまのところここでお答えすることはできません。
  12. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 先ほど申しましたように、これがSSNSSBNかで問題の性格がちょっと変わってくると思いますし、その違いというものを非常に重大視する立場方々もいらっしゃると思うので、あえてお聞きしたわけですけれども政府は、これがSSNであったかSSBNであったかという質問アメリカ側にいたしますか。
  13. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 私たちの基本的な立場は、公海上で起きた事故でございますので、一日も早くその原因究明その他、先ほど大臣が述べましたような補償等の措置を含めてきちっとした処理が行われて、これが日米関係影響を及ぼさないということを期待しているわけでございまして、いま先生の御質問についてここでにわかにお答えすることば差し控えさしていただきたいと思います。
  14. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 そうすると、領海内で起こればこれはゆゆしき問題だから、いかなる潜水艦事故原因者であったかということを調べるにしても、領海外、つまり公海上であったがゆえに、この問題について日本側が尋ねる意思がないというのか、それとも尋ねる権利がないというのか、そういうことでしょうか。
  15. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 そのとおりでございます。この事件公海上で起きたということで、尋ねるつもりがないということでございます。
  16. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 これは後に問題を残したようなことになるかもしれませんけれども、私は、やはり尋ねて、結果が得られても、公表するかしないかは別にして、政府姿勢としては、公海といえども、つまり日本に非常に近い水域でありますし、潮の流れ等々からいっても、もしそこに重大な汚染があったとする、あるいはある可能性があったとするならば、特に核弾頭を積んだ潜水艦であるか、それともそのかわりに、違うバラストを積んで平衡をとりながら攻撃型の兵器を搭載し直している潜水艦であるかということで、これは事故のもたらす影響というものはずいぶん違ってくると思いますけれども、私は、それが政府姿勢であるというならここでそれ以上のことを申しませんが、やはりこれは公表して、公表すべきであるかないかということはまた問題があると私は思いますが、この事件が起こったということを踏まえて、事故原因者がどちらの性質の潜水艦であったかということは、政府相手側究明する交渉の中での当然一つの大きな要因になると思いますけれども、まあ自分の見解だけを申し上げておきます。  委員長、私はこれで結構です。
  17. 坂田道太

  18. 矢山有作

    矢山委員 今回のアメリカ原潜事故で私どもが一番大きな疑問を抱くのは、事故が発生して後に外務省電話連絡があったというのが、二十六時間たっているわけですね。それから正式に報告があったというのが三十五時間たっている。その間一切の通報がなかった。こういうことになるわけですが、しかし現地状況、私ども新聞の伝えるところを克明に検討したり、また、昨晩実は私のところへ、この事故で遭難をした鹿児島の人から電話があったわけですが、その実態を聞いてみると、アメリカ側が言っておるように、その沈没状況を確認できなかったというような、そんな話は一切ない。  当時、この沈没した船、日昇丸に乗っておった人自体が、原潜至近距離に浮上しておるということを確認しておるわけでありますし、またその当時、上空にはアメリカ航空機が旋回をしておったんだということも、新聞だけでなしに、現地から見た人がはっきりそう申しております。  しかもおまけに、日昇丸沈没をして乗員の皆さんがボートに乗り移ったその直後、アメリカ航空機が低空でその頭上を旋回しておる、これも事実だという話が入っておりますし、さらに何時間かたって、四、五時間だったと言ったかと思いますが、四、五時間たって、漂流をしておるゴムボートの周辺を、潜望鏡をのぞかせて潜水艦が何回か回っておった、こういう事実も確認しておるんだ。  そういう状態の中で、現場がアメリカ側に言わせると確認できなかった、雨や霧で確認できなかった、こう言っているのですが、そういうことはあり得ない、こういうふうに非常に厳しく言っているわけです。  これらの状況判断しながら、これだけ通報がおくれたというこの問題について、私どもは非常に大きな疑問を持たざるを得ないのですが、一体その原因は何だというふうに判断をしておるのですか。アメリカから一々こういう結果でしたということを言ってもらわなければわからぬというのでは話にならぬので、そういうでたらめな話というのが世の中に通用する問題かどうか、ひとつこの判断をお聞かせ願いたいと思うのです。
  19. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃることは、通報がおくれたということはそれはもう事実でございますので、私もアメリカ大使に会いましたときに、それはなぜおくれたんですかということは、日本側としてはみんな疑問を持つところだから、はっきりそのことは調査をしてもらいたい、国民が、われわれが納得するような調査をしてもらいたいということが、私が伝えた中の一つの大きな問題でございます。  日本側のことは、政府の方で、また海上保安庁等調査をしておられると思うわけでございますが、その調査と、アメリカ側に私が言いました調査と、両方が出てまいりましょうが、そこで私は判断をした方がいい、いまここで想像して、こうだろう、ああだろうと言うことは、これは将来に大きな悔いを残してもいけませんので、私は判断はいまいたしませんが、どうしても、何でおくれたかということは、これは納得するように説明してもらわなければいかぬということをアメリカに強く要望しておるわけでございます。
  20. 矢山有作

    矢山委員 納得がいかないというのは、まさにそのとおりだと思うのです。これを納得がいくと言ったら、納得のいく方がおかしいんであって、だからそれは、徹底的にどういう実情であったのかということは追及すべきだと思うのです。  と同時に、先ほど言いましたような状況からして、恐らくアメリカ側は事態を確認しておったと私は思うのです。確認しておったとするなら、なぜ救助活動をしなかったのかということが大きな問題なんです。どういうことがあろうと、公海であろうと、領海であろうと、衝突事故によって遭難が起きておるというなら、これは救助活動をするというのがあたりまえの話なんです。そこのところを一体どういうふうに理解したらいいのでしょう。これはいいかげんな話では済まぬと私は思いますが、どういうふうに考えられますか。
  21. 伊東正義

    伊東国務大臣 私も先生と同じ疑問を持ったわけでございまして、公海条約があるわけでございまして、それで各国内法で、日本では船員法でございますが、乗組員等の援護等については努力するようにちゃんと決めておるわけでございます。そういうものがある中で、人命の救助ということに対して一体どういう努力をされたのか。向こうでは視界が十分でなかった、あるいは船の姿を見失ったというようなことを言われているわけでございますが、そういうことだけでは納得ができないので、私どもとしては、さっき言いました通報がおくれたことと、そして、人命救助に対してどういう努力をされたのかということについて、国民はやはりみんな疑問を持つのだから、この点も徹底的にひとつ調査をしてもらいたいということで、向こうにいま調査を要請しているところでございまして、向こうもなるべく早く調査をして随時報告をするということでございますので、私どもはその調査報告を待っているところでございます。
  22. 矢山有作

    矢山委員 たとえば、私は当時の状況判断して沈没事故を確認できなかったことはないと思うのですが、確認した上で、なるほど原潜の実態から救助活動がたとえばできない、たとえば救助活動をやると救助した者を収容しなければならぬ。恐らくアメリカ原潜というのは、収容するということについては、軍事上の機密だ何だというのでとてもできない、こういう判断があるいはあったのかもしれない。しかしながら、救助活動ができないとしたら、直ちに通報して救助態勢をとるようにそれぞれの向きに対して要請をする、これはあたりまえの話じゃありませんか。事故を起こしておいて、それを御丁寧に、航空機で旋回をし、また数時間たって潜水艦をよこしてその周辺をぐるぐる回って、実態を見ておりながら救助もしなければ通報もしない、こんな人命無視というのがありますか。私はまさに人命無視もはなはだきわまれりと思うのです。そういうふらちな状態があるのに、ただ、事情を知らしてもらいたい、知らしてもらいたいだけで済む話ですか。  第十管区保安本部からの報道によりましても、当時視界は二千メートルあったと言っているのでしょう。私はそういう条件をも考えながら、アメリカに物を言うときにはもう少し厳しい態度で言ってもらいたいと思うのです。ただただ、通報がおくれたのはなぜですか明らかにしてもらいたいのだ、人命救助をしなかったのはなぜか明らかにしてもらいたいのだ、それだけの話で解決のつく問題では私はないと思う。この点が私は今回の事件の一番重要な問題だと思いますよ。  私どもが推察するところ、この原潜行動というものは極度に秘匿されておる状況だというふうに聞いております。したがって、事故を起こしておいて、そして直ちに救助活動をやるとすれば、それはもちろんでありますが、あるいは事故を起こして直ちにその事故通報をやるとすれば、そのことによってその原潜の所在がわかる、そういった軍事機密上の問題があってもしこれをやっておらぬとするなら、まさに軍事機密第一であって、人命救助というような問題はさらさら念頭にないということになるのじゃありませんか。これで安全を守るなどということが言えますか。安全を脅かして、人命を遭難の状態に陥れておいて、通報もしなければ救助もしない、ほったらかし、こんな非人道的な話は私はないと思うのです。私は対米交渉のときにもう少し厳しい姿勢をとってもらいたいと思う。  何か新聞の伝えるところによりますと、公海に起こった事件だから抗議をやるわけにはいかぬと外務省は言っておるようであります。しかしながら、幾ら公海で起こった事件であろうとも、少なくとも通報もしなければ人命救助もやらぬというこの実態、これに対しては明確に抗議の姿勢をとるべきではないですか。いかがなんです。
  23. 伊東正義

    伊東国務大臣 原因の要請だけで終わったというふうに考えておるわけではないので、私どもはやはり原因を徹底的に究明をしてもらいたい。事故の起きた原因をまず徹底的に究明し、いまさっき言いました事故通報がおくれたこと、人命救助についてどういう努力をされたのかということをよく調べて、まず報告してもらいたいということを言っているわけでございまして、その報告を見、また海上保安庁の調査もありましょうから、そういうものを見て判断して、そうしてその後で政府はどうするかということを考えたい、こう思っておるわけでございます。
  24. 矢山有作

    矢山委員 もう一つ、私に通報のあった人からの非常に大きな問題として取り上げられたのは、自衛艦が救護に来た、考えてみると、そのときの状況からして、アメリカ側に言わせると、衝突しておいてその事故の実態もようつかまぬ、船を見失った、こういうような状況だとして報告しながら、一方で自衛艦がいち早く発見してこれを救助した、これはまさにつじつまの合わぬ話じゃないか。こういう点から考えたら、防衛庁の方には米軍の方から連絡があったんじゃなかろうか、あるいは防衛庁は何らかの形でこの原潜行動に関与しておったんじゃなかろうか、そういう疑問も強く提起をされておるわけであります。そういう点から考えて、この自衛艦は奄美大島から佐世保に帰投するそういう過程の中で、一体何をこの辺でやっておったのか、その点をつまびらかにする必要があるだろうと思うのです。いかがでしょう。
  25. 大村襄治

    大村国務大臣 自衛艦行動についてお尋ねがございましたので、事実に即して申し上げます。  海上自衛隊の第二十三護衛隊の二隻の護衛艦「あおくも」「あきぐも」の行動予定の細部を申し上げます。  四月六日午前八時三十分佐世保出港、七日の午前十時奄美大島古仁屋に入港、九日午前九時奄美大島古仁屋を出港、十日の午後四時三十分佐世保入港でございます。  また、古仁屋出港後の行動予定の細部を申し上げますと次のとおりでございます。九日の午前九時古仁屋を出港し、奄美大島の東方を北上し、午前十時三十分から午前十一時三十分の間戦術通信訓練を行い、午前十二時から午後四時三十分戦術運動訓練等を行いました。同日は以上の訓練を終了し、佐世保に向け航行したのでございます。なお、十日の予定にもバイライン、船から船へ人員や荷物を輸送する訓練等を予定しておったわけでございます。  ところが、十日午前四時三十分ごろ、護衛艦「あきぐも」の見張り員が左前方約四マイルにだいだい色の信号弾発見し、漂流中のゴムボートを視認し救助したというのが、自衛艦のこの前後の行動のあらましを事実に即して申し上げた次第でございます。
  26. 矢山有作

    矢山委員 自衛艦行動について、現地では非常に大きな疑問を持っておるということは申し上げたとおりであります。いまお話しになったことを、現在の段階としては私どもとしてはそのまま受け取っておく以外にはない。  しかし、重ねて聞きますが、じゃ、防衛庁の方には米軍からの事故についての通報は全然なかったということを確認してよろしいですね。
  27. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  先ほど石原委員の御質問に対しまして事前通報は全くなかったということを申し上げたわけでございますが、防衛庁がこの問題についてどういう連絡をしたかということを、その後の状況について申し上げます。  遭難乗組員救助後の四月十日の朝、在日米海軍司令部に問い合わせたところ、同海域を米軍潜水艦行動しているとの報告は受けていない、調査中である旨の返答はございました。また、わが方のレーダーサイト、これは甑島に航空自衛隊のレーダーサイトがございますが、そのサイトが、事故発生当時同海域の上空を米軍機が飛行したことをキャッチしていることが、十日になりわかりましたので、十日昼過ぎ米海軍司令部に確認を求めました。十日の午後五時過ぎでありますが、米海軍司令部から、問い合わせの航空機は米軍機であるとの回答がありました。そして、十日の午後十時、米海軍司令部は米国潜水艦である旨を発表し、直ちに防衛庁にも通報してきた。  防衛庁が本件について承知しております事実はいま申し上げたとおりでございます。事前には全く連絡通報もない、これは先ほどお答えしたとおりでございます。
  28. 矢山有作

    矢山委員 事故を起こした原潜行動というのは、その後どうも一切不明のようでありますが、私は、この二千三、四百トンもあるような貨物船に衝突をして、その貨物船は十数分で沈没してしまったというそういう衝突の状況から見るなら、米軍当局が発表しておるようにミサイルにも原子炉にも大きな損傷は全然なかった、軽微な損傷であったというふうな発表というのを私どもはまるまる信頼するわけにはいかぬわけであります。というのは、その事故状況によってはいわゆる放射能汚染ということが当然考えられる。そうすれば、私は、この原潜の所在、その事故の実態、それは明確に把握する必要があるんじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、その点いかがですか。
  29. 伊東正義

    伊東国務大臣 向こうからの報告は、おっしゃったような兵器、原子炉その他にはさしたる損傷なしということの報告があるわけでございまして、放射能汚染の問題は、いま調査を海上保安庁あるいは科学技術庁が担当してやられるわけでございます。これはその結果を待っての判断でございますが、いまのところは、向こうからは兵器、原子炉その他にはさしたる損傷なしという報告でございますので、これ以上、私の方からはそれを照会するとかそういうことはいたしておりません。
  30. 矢山有作

    矢山委員 御案内のように、昨年の八月にも沖繩沖でソ連の原子力潜水艦の火災事故がありましたね。それからまた、今回のアメリカ原潜事故です。  こういう実態から見ると、私どもが心配しておったように、日本領海に近い日本の近海が、米ソ原潜の活動の場になっておるというふうに考えざるを得ないわけであります。言うならば、日本近海はアメリカ原潜、ソ連の原潜がそれぞれ活動し、そして、その海底は、ミサイルの発射基地になっておると言っていいんじゃないでしょうか。これは私は大変なことだと思うのです。いま盛んにソ連の脅威からどう守るかということを議論されておりますが、そのソ連の脅威を言う前に、近海において米ソの原潜が右往左往して、それぞれ追っかけたり追っかけられたり、監視をしたり監視をされたりやっておるという実態、しかもそこが海底からのミサイルの発射基地になっておるという実態、これをどういうふうにお考えになりますか。
  31. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生がおっしゃるとおり、国際情勢の厳しさといいますか、そういう中にあって、日本は、御承知のような日米安保条約ということのもとで自分の国の防衛ということを考えておるわけでございまして、いまの先生がおっしゃったような現実が、国際情勢の中の厳しさがあるんだということは、私は認識を持っておるわけでございますが、それ以上、この問題につきまして、公海でいろいろなことが行われておりますことにつきまして、日本がとやかく言う立場にはないというふうに思っております。
  32. 矢山有作

    矢山委員 とやかく言う立場にはないということはわかります。しかしながら、ソ連の脅威、脅威と言っておるその下で、現実にこうした脅威というものが差し迫っておる、また脅威が現実の形をとってあらわれた、この実態を重視しなければいかぬと私は言うのです。  しかも、御存じのように、日本周辺の海域の防衛力強化というものを盛んにアメリカはわが国に強要しているわけでしょう。そして対潜能力を強化しろ、防空能力を強化しろと言っているわけです。米ソ両国の原潜がそれぞれ角突き合わせて活動しておる、そういう状態の中で、わが日本アメリカの要求に従って対潜能力を強化する、防空能力を強化する、これはまさにソ連を標的にしての措置でしょう。そうすると、そういうことをやることは、まさに日本自体が米ソ角逐の中に引っ張り込まれる、そういう実態ではないか、私はこういうふうに考えておるのですが、いかがですか。
  33. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本防衛力の整備の問題は防衛庁長官からお答えがあると思うわけでございますが、日米で話しておりますことは、あくまで日本をどうやって守るかということで、アメリカ側日米安保があるから期待表明があるというようなことでございまして、これはかかって日本人の手で日本をどうやって守るかということの一つの努力でございまして、どういう努力をしていくかということにつきましては日本が自主的に判断すべき問題だというふうに私は思うわけでございます。  いろいろな期待表明はございますが、私は、アメリカにもいつも、国防計画大綱というものが日本にあるので、これの達成に日本は努力しているのだということを言っているわけでございまして、日本が個別自衛権の範囲内で国を守る努力をするというのは当然のことではないか、私はこう考えております。
  34. 矢山有作

    矢山委員 この問題は後ほどの論議でいろいろやってまいりたいと思います。  時間の関係がありますから、ここで一つお尋ねしておきたいと思います。  五十五年の五月八日の外務委員会におきまして、わが党の土井委員と外務当局、外務政務次官を交えての論議が行われております。その中で、ごらんのようにいま海洋法が論議をされておりまして、海洋法の成立も近いだろう、いろいろ問題はあるようですが、そういうふうに考えられておるわけでありますが、この海洋法条約が成立すると二百海里の経済水域も成立するのだ。そして、そうなれば沿岸国が海洋環境の保護に対して特別な利害関係を有し、二百海里の生物及び鉱物資源について排他的な主権的権利を行使するようになる。この場合、二百海里の経済水域というのは公海とは言えない。公海と二百海里の経済水域は峻別して考えるべきである。これは外務省自身が言っていることであります。そして、土井委員の、このエコノミックゾーンに対して当然二版の非核原則は及ぶというふうに考えるのだがどうだろう、こういう質問がありました。  それに対して、外務当局の答弁を読み上げてみます。公海が新しい海洋法の立法によりある程度制限されてくるのは事実である。海洋法でいま二百海里問題として論議されているのは、そこの資源の問題であるとか汚染の問題についての沿岸国の管轄権の問題であるので、非核原則との関係は直接は出てこない。だが、どのような態度をとるかというのは日本自身の問題である。つまり、経済水域を含めて非核原則という日本原則を堅持する立場をとるかどうか、これは日本自身の問題である。こういうふうに答弁をされておるわけであります。そして、それを受けて松本政務次官が、わが国としてエコノミックゾーンにつきましても非核原則を適用したい、こういうふうに明確に答弁しておられます。  私は、今回の事件の実態から考えて、日本近海が米ソ両国の原潜の活動の場になっておる、こういうことを考えたときに、非核原則というのをこの地域に積極的にわが国は適用するという態度を明らかにすべきではないか、こういうふうに思うわけであります。いかがでしょうか。
  35. 伊東正義

    伊東国務大臣 当時、条約局長がおりましたので、詳細はお答えを申し上げますが、海洋法のエコノミックゾーン二百海里というもの、これは資源、そこの資源のことを頭に置いて海洋法で決めた二百海里でございまして、そのほかはほとんど一般公海と同じという取り扱いになっているわけで、これは資源が中心でございますので、そういう議論があったというのは、私はどうもそういう議論はちょっと初めて聞いたなと思って聞いておりましたが、当時条約局長がおりましたので、詳細はお答え申し上げます。
  36. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  私はその外務委員会では、大臣の言葉はございましたが、私もおりませんでした。ただ、後で報告を聞いたときに、若干議論が混雑したようでございまして、いささか問題の焦点がぼけてしまったというように報告を受けております。  それで、私の記憶によりますと、その後また後日の外務委員会におきまして、ただいま外務大臣から申し上げたようなことを政府側から申し上げまして、一件はそこでおさまったというふうに記憶いたしております。  改めて申し上げますが、二百海里と申しますのは、全くわが国の主権が及ぶ領海とは性質を異にしておりまして、ただいま大臣も申し上げましたように、ごく限られた分野、つまり漁業でございますとか、資源でございますとか、あるいは環境汚染について、新たな国際法、いまの新海洋法で、これが成立いたしましたときに沿岸国に認められる権利、そういうものが主権的権利と呼ばれまして、沿岸国の権利、権原としてその二百海里まで及ぶということでございまして、領海とは全く性質の異なるものである、したがって、非核原則というものをその二百海里水域にまで及ぼすことは、これはできないことであるというふうに私どもは考えております。
  37. 坂田道太

    坂田委員長 時間ですから、どうぞ。
  38. 矢山有作

    矢山委員 時間ですから簡単にやります。  しかし、このときの御答弁は、外務省は井口説明員と山田(中)政府委員ですよ。そして、いまお話しになった二百海里の問題は、生物及び鉱物資源に関するものだったということはちゃんと自分で言っているのです。言いながら、しかし領海とは違う、しかし公海とはまた峻別して考えなければならぬ水域なんだということを前提に置きながら、その地域に対して非核原則をとるかとらぬかは日本自身の問題ですと、ここまで言っているじゃないですか。したがって、その後どういう議論をされたかそれば知りませんが、しかし、少なくとも外務委員会で説明員なり政府委員が言ったことは、ぐらぐら途中で、しまった、あんなことを言ってえらいことになったというので、その後いろいろ手直しされたり、いろいろな報道で流されたり、そんなことをやっておったのでは、一体公開の国会の委員会の場というのは信頼できるのですか。そんなでたらめな話はない。少なくとも説明員が言い政府委員が言い、先ほどお話しになったようなことを全部前提に踏まえて、その上で、エコノミックゾーンに対して非核原則を適用するかせぬのか、その態度をとるのは日本自身の問題だと言っているのだから、私どもは、日本自身で、少なくとも非核原則がこの外務当局も言っておるようにわが国の国是であり、しかも非核原則を堅持しておるということは国の内外に周知徹底されておると思うので、これは矢田部説明員もそう言っていますね、そういう状態であるなら、私どもとしては当然そこまでこの際踏み込んでいくべきである、それが日本の安全を守るというならやるべき方法であるということをこの際私は強調しておきたいと思います。  後でまた、この問題については議論させていただきます。終わります。
  39. 坂田道太

    坂田委員長 次に、市川雄一君。
  40. 市川雄一

    ○市川委員 今回の原潜事故ですが、非常に遺憾な事故だと思います。  論点は大体出ましたけれども、いままでこの種の事故は、たとえば緑区で起きた米軍機の墜落事故等も、最初は政府も真相究明事故究明ということをおっしゃっているのですが、だんだん話が進んでいきますと、軍事機密ということで話がうやむやになってしまう。  そこで外務大臣防衛庁長官にお聞きしたいのです。  先ほどからお話が出ておりますけれども、なぜ通報がおくれたのか、なぜ救助が敏速に行われなかったのか、この二点について、国民が納得するような形で、わかるまで、きちっとする御決意があるかどうか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
  41. 伊東正義

    伊東国務大臣 私も市川さんと同じ疑問を持ったわけでございますので、米大使マンスフィールドさんに会いましたときも、その二点と損失補償とか、いろいろ話しましたが、特に国民として、何で通報がおくれたんだろう、人命救助はどうなったんだろうということは、やはり国民感情としてみんな疑問を持つから、これは納得のいく説明ができるようにちゃんと調査してもらいたいということを、私もアメリカ大使に言ったわけでございますので、これは私は同じ疑問を持っておりますので、アメリカ側に納得のいくように調査をしてもらうと言うつもりでございます。
  42. 大村襄治

    大村国務大臣 外務大臣のお述べになりましたとおり、米側に納得のできる調査を求めていきたい、さように考えています。
  43. 市川雄一

    ○市川委員 こちらが納得するかどうかということは、こちらもやはり状況を把握しなければならないと思うのですが、通報がなぜおくれたのか、もう一つは救助がなぜ行われなかったのか。米軍側は、先ほどから何回も出ておりますが、霧と雨で見失った、こう言っておるのですが、しかし実際、日昇丸乗員は、潜水艦が浮上した、あるいは潜望鏡が四時間後に近くまで来ているのが見えた、あるいは二、三百メートルの低空で双発の飛行機が上空を旋回していた、こういうことを言っているわけでして、しかも海上保安庁の発表では二千メートルも視界がきいた、しかも一日じゅう雨や霧だったわけではない、青空が見えたときもあったんだということを言っているわけですね。こういうことを外務省としてはどうですか、事故の発生した状況について日本として独自に調査されるお考えがありませんか。
  44. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本政府としては、海上保安庁がそのときの様子等調査をしていますので、たとえば天候はこうであったとかいうようなことは、日本側調査向こう側調査を突き合わすということは当然できるわけでございますので、政府としてはもちろん、そのときの海の状況とかそういうことの調査はしているわけでございます。
  45. 市川雄一

    ○市川委員 海上保安庁の方がお見えになっていらっしゃるようですが、その事故当時の、事故の起きた海域の気象状況についてどういうふうに把握されておりますか。
  46. 吉野穆彦

    吉野説明員 お答えいたします。  私どもが救助された乗組員から聞いたところでは、当時の天候は雨か霧、風が南東の風約五メートル、波浪が約一メートル、視界が約二キロメートルというふうに聞いております。
  47. 市川雄一

    ○市川委員 防衛庁お尋ねしますが、先ほどの説明でわかりましたけれども、たまたま護衛艦が居合わしたというのですか。どうですか。
  48. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど詳しく御説明しましたとおりです。たまたま遭難の現場を航海中の護衛艦が、ボートから打ち上げた信号筒を発見して、そして救助等にかかった、こういう事実でございます。
  49. 市川雄一

    ○市川委員 防衛庁にお伺いしますが、この弾道ミサイル原潜は普通常識的に強力なソーナーを持っておる、したがって、洋上の艦船を探知する能力は非常にすぐれた能力を持っておるわけですが、この原潜が衝突するということはちょっと常識では考えられない。こういうことについて、専門の立場でどういうふうに分析、判断されておりますか。
  50. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもも、潜水艦が浮上しようとする場合、あるいは非常に浅い深度で航行している場合に、周りの船舶に十分注意するということは当然常識的に考えられるわけであります。  一般的に申し上げますと、いま御指摘のように、どうしてこういうことになったのかよくわからないというのでございますが、そういうこともまさにアメリカ側がいま詳細に調査をして報告するということでございますので、その結果を待ちたいと思っております。
  51. 市川雄一

    ○市川委員 いまの時点では、判断というかそういうものは全然お持ちになっていないのですか。
  52. 塩田章

    ○塩田政府委員 具体的にこの潜水艦がどういう状況であったのか、ちょっと私ども判断いたしかねます。
  53. 市川雄一

    ○市川委員 外務省お尋ねしますが、日昇丸乗組員の救助を怠ったということは、公海条約第十二条にいう海難救助の義務を果たしていなかったということになると思いますが、この点はどういう見解ですか。
  54. 伊東正義

    伊東国務大臣 その問題ばアメリカに照会し、事実の調査をしてもらっておるわけでございまして、公海条約の第十二条、先生おっしゃったとおりで、その条約に基づきましてみんな国内法ができておるわけでございます。日本では船員法ができておるわけでございますが、アメリカでも、国内法に違反するかどうかという問題が、これから調査の結果どういうことになりますか、いまから予断は許せませんが、果たして人命救助についてどういう努力をされたのか、それが、アメリカの国内法あるいは公海条約が一般的に期待している努力というものに対してどういうものであったかということにつきまして、調査の結果がわかりませんので、いまここで、それは違反であったとか違反でないとかということは、私は差し控えるべきだと思うのでございます。  人命救助について大部分の日本国民は疑問を持っているということは確かでございますので、その疑問について明らかに答えてもらいたいということで調査を待っているわけで、それが法律に違反するかどうかということは、その結果によって出てくる問題だというふうに思っております。
  55. 市川雄一

    ○市川委員 最初に申し上げましたように、軍事機密人命尊重という問題かもしれませんが、とにかくなぜ通報がおくれたのか、あるいはなぜ救助が十分に敏速に行われなかったのか、この問題についてどうかうやむやにせず、国民が納得する形で、外務省としてはその決意で取り組んでいただきたいということを御要望申し上げて、質問を終わります。
  56. 坂田道太

    坂田委員長 次に、西田八郎君。
  57. 西田八郎

    西田委員 まず、最初に外務大臣にお伺いいたしますが、先ほどからの各委員方々質問の中で、アメリカ調査を要請しているというお答えば何遍も出ておるわけでありますが、それに対して米側はどう言っているのですか。調査したら報告するということを確約しておるのか。そして、いつごろその調査が実際に完了するのか。これは軍事機密その他もあるでしょうけれども、少なくとも相手方の船には、いわゆるわが国の日昇丸という完全なる民間の船なんですね、そういうことであるなら、戦略上の目的というものは全然相手方の船にはなかったと見なければならぬということであるなら、これは明らかに事故として取り上げるならば、やはり早急に報告をしなければならぬ義務があるだろうと思うのですが、その点について米側はどういうふうに外務大臣に対してお答えをされておるのか。
  58. 伊東正義

    伊東国務大臣 マンスフィールド大使と私、話したのでございますが、そのとき向こうがステートメントを持ってこられたものがあります。その中にも、調査につきましては日本政府に緊密に通知していきたいと考えていますということやら、米海軍も、自分はマンスフィールドさんに対して念入りな調査を行うことを保証いたしておりますとか、あるいは責任及び補償の問題については、これと取り組み、確立した経路を通じ、迅速に処理されることについて確信をしていただきたい、こういうようなことを向こうから言ってこられたわけで、私はさらにそれに重ねて、やはり事後処置というものも大切なんだから調査をちゃんとしてもらって、そして国民が納得するようなことでないと、日米信頼関係あるいは対米感情について悪い影響を与えるというようなことになるおそれもあるので、しっかり調査をしてもらいたいし、なるべく早く調査をしてもらいたいということを向こうに言いまして、それは向こうも承知したということでございます。
  59. 西田八郎

    西田委員 仮にそういう返事があったとしても、今回の問題は本当にわれわれに大きなショックを与えました。  私も、アメリカとは、第二次世界大戦中フィリピンのルソン島でアメリカ相手に戦争をしてきたわけでありますけれども、その間、私どもは、終戦後いわゆる投降した軍隊でありますから、終戦前につかまった捕虜の皆さんの話を聞いておると、アメリカは非常に人命を大切にするんだという話を私は聞いておったわけであります。そしてまた、多くのサイパンその他で死にかけていた人までが戦後帰ってきております。これは、アメリカの陸軍病院その他で非常に手厚い看病を受けた結果だというふうに聞いておるわけですが、そういう一連のアメリカの中に流れている人命尊重という思想が、今回に限ってなぜ軽視されたのか。衝突した船の乗組員が行方不明になっておる、あるいはその人たちは助けを求めておる、しかも、日本日昇丸の方からは背後に五百メートル近くのところで、海の距離でありますから多少の相違があるかもわかりませんが、少なくとも船に長年乗り組んでおられる方々から見た距離であるから、私は目測にそう誤りはなかったと思う、そのような五百メートルという至近距離にいながら、どうしてこの人たちを助けることができなかったのか。アメリカにはそういうときには助けなくてもいいという規定があるのか、助けてはならないということになっておるのか、その辺のところは私は今後非常に重要な問題だと思うのですが、そういう点について、直ちに人命救助に乗り出さなかった理由は、アメリカ側はどういうふうに釈明しているのか。これが非常に重要な問題である。  もう一つは、その通報が非常におくれておる。みずから、そういうことで、軍事機密潜水艦に乗せることもできないし、救助の方法がなかったというのなら、どっかの、アメリカの船なり日本の船なりあるいは外国の船なりが公海上を航行しているわけですから、最も近いところにそれを連絡をすれば、私はもっと早く救助することができたのではないかと思うのですが、どうしてその時間がおくれたのか、そういう点について米側はどういうふうに釈明しているのか、ひとつお伺いいたしたい。
  60. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまのところは、私は大使に会い、大使は武官とも一緒に会ったのでございますが、そういうことについての釈明は聞いておりません。いままで来ておりますのは、浮上して探したがわからなかったということと、飛行機も上空を飛んだがわからなかったということが簡単に触れられてあるだけで、それ以上に、いま西田さんがおっしゃるような詳しいことについての釈明はございません。  それで、私は西田さんが持たれるような同じ疑問を持つわけでございますので、やはりそのところははっきりしてもらいたいということを向こうに強く要請をして、わかったということになっておるのでございますので、いろいろな想像で、こうだったか、ああだったかということを言うのは、とかく間違うといけませんので、私はなるべく早いその調査を待って、それから日本側調査をしておられますから、そういうものを突き合わせてみて、その上でどう判断するかということにしたいと思っております。
  61. 西田八郎

    西田委員 私は、日米安保条約を肯定してきた政党の一人として、アメリカに対して非常に大きな信頼を寄せ、アメリカ一つのパートナーとして見ながら、日本防衛に対しても、米軍に対して大きな依存をしておるわけです。そういう米軍がこういうようなことをやってくれたということになりますと、これは信頼といいますか、そういうものに非常に大きな影響を及ぼすと言わざるを得ないわけでありまして、今後そうした問題についてやはり率直に、アメリカ日本に対して、悪かった点は悪い、あるいはこういう点はこういう事情があったんだということを国民の前に明らかにされることが必要であると思うのですが、それに対して外務大臣、今後どのように取り組んでいかれるか、その決意のほどを聞かしてほしいと思うと同時に、相当厳しい態度で臨んでほしいということをひとつ要望しておきたいと思います。  それからもう一つ、時間がございませんから、防衛庁長官にお伺いしておきたいわけでありますが、せんだってもソ連の潜水艦事故を起こして、そして、日本の制止その他ももうお構いなしに堂々と曳航していかれた、日本はただ指をくわえてながめているだけという事件がありました。このことから考えてみましても、日本周辺海域には、米ソの原潜が相当な数でいろいろな行動をしておることが想像できるわけであります。そういう日本周辺海域における米ソ両陣営のこうした角逐といいますか、状況に対して防衛庁は今後どのように対処していかれるのか。これはきわめて重要な問題でありますから、防衛庁長官から一言お伺いしたいと思います。
  62. 伊東正義

    伊東国務大臣 西田さんがおっしゃるように、本当のパートナーシップというのは、お互いが是は是、非は非ということを認めることが、私はやはりお互いの信頼関係を強めることだと思います。そういう考え方で、本件の疑問といいますか、そういうことが後に残って、信頼関係にかげりがないように、ということに私は当然努めなければいかぬというふうに考えております。
  63. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま、ソ連の潜水艦事故も含めまして、日本周辺海域におきまして米ソの原子力潜水艦行動している可能性が強い、これに対して防衛庁長官はどう考えているかというお尋ねでございます。  御指摘のとおり、確かに厳しい国際情勢を反映しているものと受けとめておるわけでございます。防衛庁といたしましては、非核原則を堅持しながら、日米安保体制を堅持し、そしてまた、自衛力の可及的整備を図っているところでございます。そういう意味におきまして、今回の事件日米間の信頼関係影響のある問題でございますので、こういった問題に対しましては、先ほど御要望のありましたとおり、徹底的に原因も明らかにいたしまして、再びこういった事故が起こらないように強く要請してまいりたい、さように考えておる次第でございます。
  64. 西田八郎

    西田委員 もう与えられた時間がありませんから要望だけしておきたいと思いますが、外務大臣、先ほどもおっしゃったように非常に厳しい態度で臨むということですが、もうすでに気象状況その他でも食い違いが出てきておるわけですね。こういうことで加害と被害の立場に立つ双方が争えば、どうしても自己に有利なように持っていきたいというのが心理だと思うのです。したがって、今後の事故調査、特に人命軽視等の問題については厳しい態度で臨んでいただくことを重ねて要望いたしまして、私の質問を終わります。
  65. 坂田道太

    坂田委員長 東中光雄君。
  66. 東中光雄

    ○東中委員 今回の事故発見潜水艦による加害行為だということを防衛庁が最初に知ったのはいつかということについてお聞きしたいのですが、日昇丸乗組員の収容をやったのは護衛艦ですね。その護衛艦がこれは潜水艦による衝突沈没事故だということを判断したのはいつか、そして米軍に照会をした時期、自衛隊の中でも調べたのかどうか、在日米軍への照会の時期とその結果を正確に聞きたい。
  67. 塩田章

    ○塩田政府委員 護衛艦が午前四時三十分ごろ信号を発見しまして、五時過ぎに十三名の方を収容したわけでございます。その後海上保安庁等への連絡をいたしますと同時に、収容されました方々から、いまお話しのような、どうも潜水艦ではないか、あるいは上空に飛行機が飛んでおったようだといったような話が聞かれました。それを受けまして、第二十三護衛隊司令が佐世保を通じまして海幕に連絡をしてまいりまして、海上幕僚監部としましては、直ちに自衛隊潜水艦に当時の付近の行動から見て該当する艦があるかどうかを調べまして、それはないということを確認しまして、午前八時三十分ころに米海軍に対しまして照会をした、こういうことでございます。で、米海軍司令部から、報告を受けていない、なお調査してみたいという最初の回答があったのが午前十時ころでございます。  なお、もう少し申し上げますと、上空を飛行機が飛んでおったということもございましたものですから、これは航空自衛隊の方でございますけれども、甑島にレーダーサイトがございますので、前日、つまり九日の事故があった当時の飛行の模様を調べまして、飛行機が飛んでおったということがわかりましたので、これも自衛隊機ではないということがわかりましたので、米側に対しまして十二時過ぎに照会をしまして、先ほどお答えしましたが、十七時三十分ころ米軍機であるという回答を受けております。  それから潜水艦につきましては、午後十時ころ米軍の潜水艦である旨の回答を受けております。
  68. 東中光雄

    ○東中委員 在日米軍の海軍の方でわからないということは、この潜水艦が統合参謀本部が直接指揮をしているジョージ・ワシントン、これも後で名前がわかるわけですが、SSBN、核ミサイルを持った戦略潜水艦であるという判断をするのは当然だと思うのです。そういう状態が起こっておる。  それから、いま航空機の問題が出ましたけれども、これはP3Cでしょう。航跡は全部わかっているはずでしょう。どこから出てきた、どういう軌跡を持っておるP3Cなのか。これは甑島だけではなく、航空総隊あるいは西部方面のレーダーだってつかんでおるはずであります。そういう点について、P3Cがそこにおった、何をしておったのかということは当然わかっておらなければおかしいのですが、その点はどうでしょう。
  69. 塩田章

    ○塩田政府委員 翌日事故がわかりました後、いま申し上げましたように甑島のレーダーで調べてみたわけでございますが、その日は、いわゆるアンノーン機でございませんので、特別な調査も何もしておりませんでした。翌日になりまして、こういう事態が起こりましたので当時の記録を調べてみましたら、米軍機であったということでございます。P3Cとおっしゃいましたが、P3でございます。AかBかCかはちょっと私ども確認ができておりませんが、P3であります。
  70. 東中光雄

    ○東中委員 外務省は、そういう日本潜水艦でない、米潜水艦によるものらしいということが防衛庁の方でわかる段階で、これについての照会といいますか調査といいますかあるいは究明というか、アメリカに対してやられたのですか。向こうから言ってくるまで何にもしてなかったのですか。
  71. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 十日の大体正午ごろでございますが、在京アメリカ大使館の方から外務省に対して、米国潜水艦日本の商船と衝突を起こしている可能性がある、現在アメリカ側調査中だという第一報が入りました。引き続いて、在日米軍の参謀長からも、外務省に同じような情報が入りました。そこで、私たちとしては、その時点から、正午過ぎから、アメリカ側に対して早急に調査を実施してほしいということを要望しておりまして、その結果、同日の午後九時ごろ、在京アメリカ大使館から外務省に対して、先ほど来申し上げておりますアメリカ海軍発表通報してきたわけでございます。
  72. 東中光雄

    ○東中委員 アメリカから言ってくるまでは何にもしてないということをいま答弁されたと思うのです。アメリカから言ってきたけれどもこっちからは何にもやってないということになっている。全部アメリカ待ちになっているのです。三十五時間も通報がなされない、あるいは人命救助もされない、全く異常な状態で、しかも戦略潜水艦日本の近海で行動している、日本の近海がアメリカの動く核基地の拠点になっているというふうにさえ私は思うわけであります。これが、日米安保条約と関係がないのだ、公海上のことだというようなことを言われておりますけれども、私はとんでもないことだと思うのです。あのいわゆるガイドラインによれば、「米国は、核抑止力を保持するとともに、即応部隊を前方展開し、及び来援し得るその他の兵力を保持する。」、前方展開、まさにこれがガイドラインのこの線によってやられておる。安保体制の中で、核競争、核潜水艦の拡大競争をやる、こういう危険な事態になっておるのでありますから、根本的にこういう体制についての反省と、具体的な補償要求なり、今後こういうことが起こらないような体制をとるべきだと思うのですが、外務大臣、いかがですか。
  73. 伊東正義

    伊東国務大臣 アメリカ側に言いましたのは、二度とこういう事故を起こさないように、事故原因というものをはっきり究明してもらいたい、こういう事故の再発防止という意味からもはっきりしてもらいたいということを言ったわけで、こういう事故が再発することも絶対に避けなければいかぬ、こう思うわけでございますが、このことによって日米安保体制を考え直すとか、そういうようなことはいま全然考えてないわけでございます。
  74. 坂田道太

  75. 中馬弘毅

    中馬委員 今回の事件は大変遺憾なことでございますし、日本の今後の対応が非常に大事になってこようかと思います。  先ほどからの御答弁によりますと、事実関係については大体、御答弁の趣旨はわかりましたけれども、しかし単純に考えたならば、あそこにたまたまいた自衛艦がそれを救助したということよりも先に何か知らされておったのではなかろうか。そして、近くを通っている民間の船だとかあるいは海上保安庁に救助されることがどうも都合が悪いから、まずは自衛艦が来てくれ、こういうことが行われたんじゃないかというのが一番常識的な判断ではございますけれども、しかし事実は違うようでございます。その関係をもう一度確かめておきたいと思いますが、最初に自衛艦に対して通報があったかなかったのか。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕
  76. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど来御質問に対してお答えのとおり、事前には全く通報連絡もなかったわけであります。
  77. 中馬弘毅

    中馬委員 そうするならば、日米安保体制というのは何かということになってくるわけでございまして、日米安保体制を認める多くの日本方々は、これに対してもちろんそのくらいの連絡はちゃんとしているだろう、そして、それで日本アメリカとともに守られているんだという一つ信頼関係を持っていると思うのです。それすらも、そういったことのときに知らされもしないような、あるいは連絡もとられていないような日米安保体制なのかどうかということになりますと、少しまた問題が違ってまいりますので、その点防衛庁長官、どうお考えでございますか。
  78. 大村襄治

    大村国務大臣 日米安保体制を堅持し、これを有効に運用することは、わが国の安全保障一つの大きな柱であることは申すまでもないところでございます。  そして、わが国は非核原則を堅持いたしておりますので、わが国自身が防衛努力を払いますのは、通常兵器に対する侵略なりそういったものに対応する関係でございまして、核の問題につきましては全面的にアメリカの核に依存することにいたしているわけでございます。  そこで、日米関係の重要な問題でございますから、大きな問題につきましては絶えず相談していくわけでございますが、個々の行動につきましては先方にゆだねておるわけでございますので、一一どこそこを通航するとか、そこまでの事前連絡は受けておらないわけでございます。  いずれにしましても、このような事故が発生するということはきわめて遺憾でございますので、そういったものの事故の防止につきましては、強く先方に要請してまいらなければならない、さように考えている次第でございます。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕
  79. 中馬弘毅

    中馬委員 日米安保体制を堅持するということと、それだけの緊密な連絡もとれてない体制だということとは、少し違おうかと思うのです。ですから、今後そういう面についての対応を私ども真剣に考えてまいりたいと思っております。  海上保安庁にお尋ねいたします。  この事故に対して、いまジョージ・ワシントンはどちらにいるのか。そして、それに対して調査員を派遣してでも事故のあれを日本側から究明する御意思がおありかどうか。
  80. 吉野穆彦

    吉野説明員 私どもといたしましては、ジョージ・ワシントンが現在どこにいるかということについては把握しておりません。外務省にも照会いたしましたけれども、特にわかりませんでした。  それから、ジョージ・ワシントンに対する調査につきましては、必要に応じて、外務省を通じての外交的な措置によって行われるというふうに思っております。
  81. 中馬弘毅

    中馬委員 普通の海難事故の場合にはその程度の調査をなされると思うのですが、外務省はそのことを申し入れられますか。
  82. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 この点につきましては、先ほど来御答弁しておりますように、今回の原因調査を現在アメリカがやっておりますので、その調査の結果を待っている状況でございますし、かつ、この調査の結果が早く徹底的に行われるということをわれわれも期待しておりまして、またアメリカ側もそれを約束している次第でございます。
  83. 中馬弘毅

    中馬委員 相手に調査を任せるだけではなくて、日本側もその程度の申し入れはすべきだと思っております。これの事故を通じまして——それでなくても現在反ソ機運が高まり、ナショナリズム的な、そういう国防の意味でのナショナリズム的な意識が国民の間で大分広がってきております。ここでまたアメリカの対応がまずくなりますと、ますます偏狭的なナショナリズムになることを逆におそれるようなことでもあるわけでございまして、その点はアメリカの対応というのは非常に大事かと思うのです。それにつきまして、この補償の具体的内容、どういうことをやるのか。国民一つの安心感を与える、あるいはこれでアメリカ側が本当に誠意を示したということを実証する意味におきましても、どのような内容の補償を要求されるおつもりでございますか。
  84. 伊東正義

    伊東国務大臣 補償の問題は、向こうも補償については努力するように日本側でも信じてもらいたいという意味の手紙、ステートメントをよこしているわけでございまして、これは事故原因、過失論とかいろいろと、これから原因調査事故調査をすればいろいろなことが出てくると思うのでございますが、それに基づいて損害賠償するということになればそういう事態が起こるわけでございますが、特にこれは相手が軍艦でございますから、旗国主義といいますか、その軍艦の所属する国の裁判所の問題に法律的に言えばなるわけでございますが、しかし、それはどういうことになりますか、もしもそういうことが問題になるという場合でも、あるいは外交ルートを通して、あるいはまた施設庁の関係とか、いろいろお手伝いをして協力するということもあるでしょうし、裁判だけでなくて話し合いということもありましょうし、いろいろ政府としても十分協力し、お世話をしてあげるように努力をしたいと思っております。もちろんそういう場合には人的なもの、物的なもの、いろいろあると思うのでございますが、これはもう少し事情がわかってから具体的にどうするかということになろうかと思います。
  85. 中馬弘毅

    中馬委員 防衛庁長官お尋ねいたします。  こういったケースは逆の場合もあろうかと思うのです。日本自衛艦が他国の民間船をこういう事故で沈ませてしまうといったようなこともあろうかと思います。それが非常に秘密的な意味で航行している場合だってあろうかと思いますが、そういう場合であっても、どんな場合であっても、これは速やかに救助すべしということを末端まで指令を出しておかなかったら、末端では非常に判断に迷って、このような形になるかもしれません。長官の言ったところと違いまして、そういうことがございましょうから、これを一つの契機として、人命救助ということが非常に大事なことなんだから、それが秘密裏の一つの作戦中であったとしても、そういう場合には救助すべしということを全隊員に流す必要があろうかと思います。その点防衛庁長官、いかがでしょう。
  86. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛庁といたしましては、今回の事件の発生にかんがみまして、自衛隊の艦艇に対しましては、このような衝突事故の防止に万全の配慮をするように改めて注意を促したところでございます。また、人命救助につきましては優先的に配意するように、これまでも指導しておりますが、ただいま御指摘がございましたので、重ねてその点の注意を喚起してまいりたいと思います。
  87. 中馬弘毅

    中馬委員 今後の対応に遺漏なきよう、心から要望いたしまして、質問を終わらしていただきます。     —————————————
  88. 坂田道太

    坂田委員長 引き続き質疑を続行いたします。石原慎太郎君。
  89. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 去る九日、鈴木総理大臣が矢田統幕議長以下七人の自衛隊の制服組幹部と会われまして、日本防衛大綱について話し合い、この大綱がかつてのデタント時代につくられたもので、その背景となった国際情勢が今日大きく変わったという点では、総理防衛庁側制服組との合意を見たという報道がなされております。そのときに総理は「ともかくいま大事なことは大綱が定める防衛力水準を達成することだ」と言われたようであります。また、制服組もせっかくのチャンスでこのときとばかりいろいろな売り込みもしています。陸幕長が「ともすれば陸上防衛力無用論などが出ているけれどもとんでもない」というふうな陳情をしたり、空幕の方の樋口さんが「F15が入ってきたが訓練空域が非常に狭くて遠いので」という愚痴を言っておりますけれども、いずれにしても、そういうものを聞き合わせながら、総理が「ともかくもいま大事なことは大綱が定める防衛力水準を達成することだ」と言われた。  これについて防衛問題の直接の最高責任者であります大村長官、総理の言葉が云々ということじゃなしに、この問題についてどのようにお考えでしょうか。
  90. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま制服の代表が総理に会われましたときのお話の模様につきましては、実は制服の代表が総理とさしで話されましたので、直接詳しい内容は私も承知しておらないわけでございます。ただ出席しておりました官房長からそういうふうなお話が出たということを聞いているわけでございます。  そこで「防衛計画の大綱」の問題についての防衛庁長官見解はどうか、こういうお尋ねでございますのでお答え申し上げます。  「防衛計画の大綱」は昭和五十一年に国防会議、閣議の決定を経て策定されたものでございます。それからすでに数年を経過いたしているわけでありまして、策定当時の国際状況と数年後の今日の状況、いろいろ変化があるということは事実であると思うわけでございます。  しかしながら、その後、防衛庁といたしましては、防御力の整備に毎年努力はしていると申すものの、「防衛計画の大綱」に示されております水準にはかなり隔たりがあるわけでございます。とりわけ老朽化しました装備の近代化の問題あるいは継戦能力、抗堪性、そういった点につきましてはまだまだ不備があるわけでございますので、この際「防衛計画の大綱」の線に近づけることが現下の急務であるというふうに考えておりまして、そういったことを念頭に置いて、予算その他の問題につきまして取り組んでいる最中でございます。  総理におかれましても、その趣旨もおくみ取りくださいまして、制服組との対談の際に、先ほどお述べになったようなお話が出たのではないか、私はそのように考えている次第でございます。
  91. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 繰り返すようになりますけれども、その大綱というものができたときは五十一年、つまり世の中がまだまだ平和であって、この大綱を作成する際の国際情勢認識というものは、その時点での国際情勢を「平和」と規定して、日本防衛の大綱というものをつくったわけでございますけれども、だれがどう考えても、そのときといまは情勢が違ってしまっているわけで、言ってみればこの大綱というものは日本防衛に関して最低限の外敵への規制力といいましょうか、その上にでき上がったものでしかない。しかも世の中が変わってきたのに、現状はその大綱の水準の達成すらまだおぼつかないということになっているわけです。この大綱はデタントの中で、米ソが中心になった大規模な戦争は回避ざれ得るという前提に立ってつくられているわけですし、またその他幾つかの前提がありますけれども、それが大体崩れかかっている。しかし、それでもなおこの大綱の中で、限定的な武力紛争の可能性は認めて、「限定的・小規模侵略」という言葉を使っていますけれども、それを想定して大綱ができ上がっている。しかし、いまでは御承知のようにアフガン、イラン・イラク戦争等々中東の紛争が非常に緊張化してきて、とにかくソビエトの世界戦略というものが非常に露骨に進んできている。ですから、この大綱の背景になった国際情勢もはっきり崩れて変わってきているわけですが、この状態の中で、大綱のうたった防衛力水準を当面達成するだけで事が足りるのでしょうか、日本の防御に責任が持てるのでしょうか、改めてその点をお聞きしたいと思います。
  92. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、「防衛計画の大綱」策定当時の国際情勢と今日の情勢との間にはかなりの変化があることは、認めざるを得ないと私は思うのでございます。大綱策定当時におきましては、東西両陣営間にいわゆるデタントがまだ進行中でございました。今日におきましては、これまでに至ります間に、ソ連軍のアフガニスタンへの侵攻あるいはイラン・イラク紛争をめぐるペルシャ湾湾岸諸国の動静等、大きな変化があることは否めないところでございます。  しかし、だからと言ってデタントが崩れ去ってしまった、あるいは死んでしまったと断定するのは、いささか尚早の感があるというふうに私は考えているわけでございます。  また、わが国に対する潜在的脅威なり何なりが高まっているといたしましても、わが国単独でわが国の防衛をするわけにはいかない、やはり日米安保条約を堅持しながら、わが国としてやるべきことをやっていかなければならない。その場合として策定されておりますのが「防衛計画の大綱」でございます。わが国が独立国としてとりあえず備えなければならない水準を示しているものが「防衛計画の大綱」である。  ところが、わが国の自衛隊の現状におきましては、その水準にすら達していない面が見受けられるわけでございますので、この大綱の線を速やかに実現することが、今後のわが国の防衛力を整備するに当たりまして、当面の急務であると私は考えておるわけでございます。  と同時に、安保条約の信頼性を高め、効率的な運営を高めることによって、有事の際に有効に作用するようにやっていかなければならない、またそういった点を備えまして、ガイドラインに基づく研究等の作業も進めていく必要がある、さように考えておる次第でございます。
  93. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 大綱の中にも、つまりいまだに達成できない防衛力水準プラスアルファというものがうたわれているわけです。「かつ、情勢に重要な変化」、これは国際情勢のことですけれども、国際の情勢に重要な変化が生じた場合、新しい防衛態勢に円滑に移行できるその基盤的なものとするということになっておりますけれども、デタントが死滅し切ったか、それともかすかに生きているか、動乱の八〇年代と言われておりますけれども、五十一年から数年を経た非常に激しい変化が見られる今日の国際情勢を、防衛庁の長官あるいは外務大臣にもお聞きしたいのですけれども、それをこの大綱にうたわれている国際の「情勢に重要な変化」と認識されるかどうか、お聞きしたいと思います。
  94. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  「防衛計画の大綱」は平時において備うべき防衛力の水準を示しているものと私ども受け取っておるわけでございます。そこで、いまの策定時以降の国際情勢の変化が、大綱で指定しております情勢の変化が生じた場合に新たな態勢に移行する云云に直ちに相当するものとは、私ども考えていないわけでございます。
  95. 伊東正義

    伊東国務大臣 国際情勢の厳しさというのは、当時よりもいまの方が私は厳しいと思います。  ただ「防衛計画の大綱」というものはまだまだその水準にも達してないということでございますので、私は、政府が公に決めた計画大綱ということを達成することがまずやるべきことじゃないかというふうに考えますので、厳しさの点は私は先ほど申し上げたような認識でございますが、いますぐに「防衛計画の大綱」を見直し、改定してという必要は私はないというふうに思っております。
  96. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 そこら辺の認識は、やがて、鈴木総理大臣がワシントンを訪問されてレーガン以下そのスタッフに会われる、あるいはオタワで次のサミットが行われるときに、日米間あるいは日本を除く西側の諸国と日本の間に、微妙な食い違いとして出てくるんじゃないかと私は思うのです。現在が確かに五十一年度当時のような平時でないことは外務大臣もお認めになった。しかし、これが必ずしももう本当に爆発寸前の、あるいは爆発してしまった非常に熱いものとも言えない。しかし、動乱の兆しのある時代であるということはすべての人間が認めている。そういう国際情勢下で、つまりその変化がもたらされる前の、一時代前の大綱の防衛力水準をとりあえず達成する努力だけで間に合うのかどうか。あるいは、日本といささか違った国際情勢に対する認識を持っているアメリカなり、西側の諸国というものを満足させることができるのかどうか。私は何も、これを機にむちゃくちゃな軍術を持てという話をこれからしょうとしているのじゃないのです、後の質問を聞いていただくとわかると思いますけれども。しかし、やはりアメリカなり他の西側諸国と、地政学的にも非常にアイソレートされた、この島国の日本の国際情勢に関する認識というものの非常に微妙な違いというものが、実は大きな大きな信頼関係の亀裂になっていく可能性があるのじゃないかという気が私はいささかするわけでございます。いまもし情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛態勢が必要とされるときという認識を持たれる以上、まあ、ないと言われたわけですけれども、しかし、これは人によって判断が違うでしょうが、少なくとも大綱が決まった五十一年と違った非常に激しさを加えてきた国際情勢の中で、とりあえず大綱にうたわれた防衛力水準を達成することはもちろん必要でありますけれども、同時にそれにプラスアルファを論じなくてはならないのじゃないか、またそれを論じ、その計画をしないと、私たちのパートナーとするアメリカその他の西側諸国と、いろいろ物理的にも狭くなったこの地球の上で、いろいろな形でのリンケージをしながら、日本防衛の上での一翼、これは集団自衛権ということではなくて、西側全体の集団自衛体制の中で、大きな要因の一つである日米相互安全保障というものをコンクリートなものにすることができないのじゃないかという気が私はいたします。  防衛整備計画あるいはその運用計画、この二つをやるにしても、このごろの武器の性格とか飛行機、船その他の性能、装備といったものには数年かかります。それを部隊に配備して戦力化するためには、専門家に言わせると六、七年、それ以上かかると言われているのに、しかも国際情勢は一刻一刻悪くなっていく、危険をはらんでいくのに、五十一年当時決まった防衛大綱の防衛力水準というものをいまだ達成せず、とにかくその達成をとりあえずするということだけで、それプラスアルファを具体的に論ずる、あるいは計画をする、少なくとも計画だけでも持たないで済むことなんでしょうかどうか。私はそこの点非常に懸念を感ずるのですけれども、両大臣の御見解をもう一回お伺いしたいと思います。
  97. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま、最近における兵器や装備の著しい進歩からしまして、新しい情勢に基づく移行の判断は適切に行う必要があるという御指摘がございまして、一般論としてはそういう点は確かに念頭に貫いて行う必要があると思うのでございますが、いずれにいたしましても、円滑に移行する場合にその基盤となるものが整っておらない、非常に欠けておるということでは移行自身がうまくいかないわけでございますので、私どもといたしましては、現在大綱に基づきそのための防衛力の整備を急いで進めなければいかぬ、そのように考えているところであります。
  98. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 いま長官が言われた基盤が欠けているということは、円滑に移行できる基盤的なものとするという、つまり五十一年度の大綱の防衛力水準というものが達成されてないということだけでございますか。コンセンサスその他有形無形のものが欠けているということじゃなしに、端的に大綱にうたわれている防衛力水準に達していないということですか。
  99. 大村襄治

    大村国務大臣 大綱に示している水準に達してない面がたくさん見受けられますので、それを速やかに大綱の線まで引き上げるように努力しなければならないということを申し上げているわけです。
  100. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 ちょっとおかしいのです。私が先ほど申し上げたように、現在の兵器の性格その他からいって、プラスアルファを獲得しようとするためには六、七年かかるわけですね。いまからその計画を持ったって決して早くないわけです。だから、私はこれは両方とも並行して行われるべきことだと思う。  後にも出てきますけれども、このごろ海上自衛隊防衛庁は航路帯ということをしきりに言われるようになった。しかし、これだって技術的に非常にむずかしい問題で、できるかできないか私は疑問ですけれども、どういうお考えを持っていらっしゃるか知らないけれども、この航路帯というものの確保のためでも、要するに現在保有の艦船とか機数、あるいは現在持てる種類の兵器ではできないのじゃないですか。やはりプラスアルファという装備計画というものが、あるいは運用計画というものが、とにかくとりあえずは総理が言われたようにいま大事なことは大綱の定める防衛力水準を達成することだが、同時に並行してそれも行わるべきことじゃないか、そのための討論がもっと積極的にあってしかるべきじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょう。
  101. 大村襄治

    大村国務大臣 現在の大綱におきましては、先生御存じのとおり、平時において備うべき基盤的な防衛力という考え方に立脚いたしまして、別表で陸海空の主な編成について目標を示しているわけでございます。  また一方、大綱の中におきましては、近代技術の向上等に伴う質の改善についても並行して進めるべきであるというふうにうたっているわけでございます。  そこで私ども、別表は一応この数量の線を示しているものと受け取っておりまして、その数量に達成する際に、自衛隊はすでに創設以来三十年になりますから、相当古くなっている兵器、装備品があるわけでございます。そういったものは、更新する場合には近代化を進めなければならない。そういうことで、いま、大綱に基づくいまの中期業務見積もりにおきましても、そういった装備の近代化ということは進めているわけでございますが、現在の五三中業が実現いたしましても、まだまだ大綱の線に達しておらない、そういう点から見まして、ひとつ大綱を質・量ともに実現するために全力を挙げて取り組まなければならない、さように考えている次第でございます。  なお、海上護衛の点についてお尋ねがございました。その点につきましては、必要があれば政府委員からお答えさせていただきます。
  102. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 それば後でやります。  やめられた前の統幕議長の竹田さんが、この大綱について、最初は建言というのですか、それをされた文書を出された。しかし、ちょっと物議を醸しかかって、これが提言になって、文書も回収されたようですが、私も一部持っておりますが、こういったものを、やはり同じ庁内からの大事な一つ発言として、うやむやにする必要はないと思うのです。  読んでみましても、ごくあたりまえのことが書いてありますよ。あたりまえのことがあたりまえで通らないのがこの国の不思議なところで、そういった問題をやはり公の場所で洗いざらい出して積極的な議論をすることが、私は、国民のコンセンサスを獲得するための大事な手段ではないかと思うのです。  たとえば、この大綱にうたおれている「限定的・小規模侵略」、その具体的な内容は何なのかということがわからないと竹田さんも指摘しているけれども、私もそのとおりだと思うのです。  この平時においてなお大綱がその可能性ありとしている「限定的な小規模侵略」の具体的な内容は、一体何なんですか。  敵の陸軍の数、あるいは艦船の数、航空機の数は一体幾らぐらいなのか、これは防衛庁の中で統一された見解がいまの時点であるのかどうなのか、お聞きしたい。  この竹田提言の中を見ますと、非常におもしろいアンケートの結果が出ておりまして、この陸海空三幹部学校の高級課程学生に対して、大綱がうたっている「限定的・小規模侵略」の規模についてアンケートを出したら、これはもう本当にばらばらで、たとえばその最小から最大の幅をとりますと、侵入してくる敵の陸軍地上部隊は、一個大隊という人と十二個師団という人がいる。海の場合には、数隻という人と八百五十隻という想定をする人がいる。トン数にして、五千トンからかなりのトン数。それから空の方は、侵入してくる敵機は数機から二千機という幅がある。  これは要するに、勉強中の高級幹部の候補生ということでしょうけれども、当の防衛庁は、この大綱でうたっている「限定的・小規模侵略」の具体的な把握というものをどのようにされているか、それを伺いたいと思います。
  103. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず申し上げておきたい点は、大綱で言います「限定的かつ小規模」というものは、現実にあり得るという立場で考えておるというよりも、「限定的かつ小規模」な侵略に対してはみずからの力で守れるものを日本防衛力として整備をし、それ以上の場合には日米安保体制をもって対処するという、いわば日本がどれだけの具体的なみずからの防衛力を整備するかという目標として、「限定的かつ小規模」の侵略のあった場合には云々、こういう考え方でございまして、現実にそういった侵略があるとか、ないとかという議論とは一応別個にお考えをいただきたいということが第一点でございます。  それからなお、それでは、それにしましても、具体的にその内容がわからない以上は整備のしょうがないではないかというような趣旨のお尋ねであったと思いますが、これにつきましては、まさにいまのアンケートにもございましたように、実際に考えられますことは全く千差万別でございますので、一概に、防衛庁としまして、これだけの規模だというふうな定義的なものを持っておるわけではございません。  御承知と思いますが、抽象的に言えば、侵略する側が侵略される側に、つまりこの場合、日本側事前に意図を察知されないで、奇襲的に攻撃され得る程度の規模というふうに申し上げておりますが、しからばそれは具体的にはどれだけの規模か、これもまた、実際の起こり得る態様によりまして千差万別であろうと思います。ただ、いままで国会等でこの問題について御答弁をした例で申し上げますと、一個師団あるいは二個師団と言ったこともありますし、数個師団程度と言ったこともございます、ということをつけ加えさせていただきます。
  104. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 一個師団、二個師団と数個師団では、またこれは違ってくるわけでして、いま局長が言われましたように、日米安保の発動を待たずに、日本が独力で防ぎ得る最小限の侵略というものの規模を改めて伺いたいのですけれども、地上兵力と航空機で、いまの時点で、局長、一体どのようにお考えでしょうか。
  105. 塩田章

    ○塩田政府委員 お尋ねは、日本の防御力がどの程度あればよろしいと思っているかというお尋ねだと思いますが……。
  106. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 いや、違うのです。相手側が要するにいろいろな形で攻めてくるでしょうけれども、つまり、日本が独力で防ぎ切れる相手側の侵略の質・量ということですね。
  107. 塩田章

    ○塩田政府委員 それはまさに、「防御計画の大綱」に考えております防衛力の水準がわが方に整備されたといたしますと、いま申し上げました程度の一、二個師団あるいは数個師団程度の陸上部隊であれば対処できる、という考え方であの大綱はできておるということを申し上げたいと思います。
  108. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 ちょっと違うんじゃないでしょうか。このごろ防衛庁は少しその問題について積極的になったのでしょうか、よく知りませんが、仄聞しますと、大体兵力が四、五個師団、航空機で一千機の侵略を最小、限定の侵略と想定しているように聞きますが、果たしてそれが、侵略が行われるときに日本が防ぎ得るマキシマムの敵の量であるかということになると、その限りでも、私は非常におぼつかないんじゃないかという気がします。  それから、大綱の防衛力水準が達成されても非常にむずかしいんじゃないか。アメリカ側と、いろいろな筋もあるでしょうけれども、私なりに話してみると、米国側はとても無理だろうという見解を持っているし、こういうところでそういうことを言うべきかどうか知りませんけれども防衛庁にもいろいろフラストレーションがあるようで、特に制服組が直接ペンタゴンまで出かけていって、そういうキャンペーンといいましょうか、愚痴を言っている。内局とそういう点について意思の疎通があるのかどうなのか。日本防衛体制に対する防衛庁側の熱意は結構ですけれども、どうもこれは一糸乱れずという形に必ずしもなっていないという感じがするのですが、そういった言い分に対して、アメリカ側も専門的な技術的な分析を加えての上か、あるいはそういう防衛庁の構造全体をながめての不信感といいましょうか不安感というか、とにかくそれではとても間に合わぬじゃないかという不安を持っておりますね。  それで、私がこれから申し上げたいことは、大綱にうたわれている防衛力の水準を達成しつつ、プラスアルファを考えていかなければいけないと私は思うのです。また、そうしませんと西側とのユニティーというものを獲得できないし、日本だけが孤立するおそれがあると思いますが、ただ、そのときに、防衛体制のフォーミュラ、そのモデルというものを日本は考え直す時期に来ているんじゃないでしょうか。どうもそこにちょっと問題があるんじゃないかという気がするのです。その問題は後に出しますけれども。  しからば、この大綱に言われている「限定的・小規模侵略」というものの中に、このごろしきりに言われている日本周辺水域の、グアム以西フィリピン以北の航路帯なりその部分のシーレーンというものは、平時のシーレーンとして想定されていたのでしょうか、いなかったのでしょうか。
  109. 塩田章

    ○塩田政府委員 「防衛計画の大綱」そのものは、御承知と思いますが、海上防衛力の整備につきまして四つの項目を挙げているわけでございますが、その第一に、侵略の事態に対して機動的に対処し得るような一個護衛隊群を常時備え得る一個護衛艦隊、こういうふうに言っておりまして、その区域が具体的にどの辺とかいうことは大綱そのものには一切触れておりません。  ただ、私どもが、その後の整備目標としまして、大綱の別表に掲げております海上自衛隊の作戦用航空機約二百二十機、対潜水上艦艇約六十隻というものは、従来から申し上げておりますように、わが国周辺数百海里、航路帯にあっては約一千海里程度を防衛ができるようにという目標で掲げており、それを目指して整備してきた、整備しつつあるということはそれはそのとおりでございますが、「防衛計画の大綱」そのものにそういうような地域についての記述があるわけではございません。
  110. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 違った形で同じことを質問いたしますけれども、大綱に言われている円滑に移行し得る新しい防衛力の態勢というものは、いま局長がおっしゃった計画として掲げられているものを達成するだけで充足されると思われますか。
  111. 塩田章

    ○塩田政府委員 大綱の中のいまの御指摘の個所は、別表に掲げてありますような数量的なものでなくて、機能的に見まして、陸海空それぞれの自衛隊防衛態形のことが書いてございますが、そういう、言うなればあらゆる部門についての機能を持った自衛力、つまり、数は相当おっても、ある機能の部分は欠落しているという状態の防衛力では、いざというときにエクスバンドできない、エクスバンドするためには平素から必要な機能は小なりといえども整備しておるのだという、そういう基盤的なものを整備しておくべきである、そうして必要に応じてエクスバンドができるようにしておくべきである、ということがいま御指摘のところに書かれてある趣旨であるというふうに思います。  したがいまして、そのことと別表に書いてある装備の目標としての数字とは一応切り離して、そういう機能的な面に着目した記述であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  112. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 何ですか、ちょっと言葉の論議みたいになりそうなんですけれども、要するに新しい防衛体制、五十一年当時の国際情勢下でない、非常に激しい様相を呈してきた新しい事態の中で必要とされる機能というものは、もちろん機能は機能でありますけれども、ある質・量というものの獲得がなければできないことなんじゃないでしょうか。そのための質・量というものは、先ほど局長が言われた大綱に掲げられている質・量というものを獲得することで可能になりますか、ということを私はお聞きしているのです。
  113. 塩田章

    ○塩田政府委員 それはそのとおりだと思います。質・量の、何といいますか、両方合わさった概念であるべきであるということは間違いないと思います。ただ、いま御指摘の記述個所で言っておりますことは、小なりといえども、機能的には必要な機能は全部備えておる必要がある、そうして、エクスバンドに対処し得る基盤的なものでなければならないという趣旨を述べたということでございまして、同時に、それは、質・量伴ったものでなければならないということは私も否定はいたしません。同感であります。
  114. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 何かちょっと議論がかみ合わない感じがするのですが、私、大綱を読むだけではなしに、防衛庁のいろいろやっていらっしゃることをながめていて、大綱なら大綱というそれこそ基本的なプリンシプルの中にうたわれている、非常に抽象的ではあるし、象徴的ではあるけれども、大事な内容を持つ文言が、それをパラフレーズしていくとだんだんぼやけてしまって、実体がない。たとえば「限定的・小規模侵略」云々でもいろいろな見方があるし、具体的な内容が確かでない。だから、それ以上に手に余る事態が起こったときには、安保条約を通じてアメリカの手を借りるというにしては、どの時点からアメリカの手を借りるのか、どの程度アメリカから手を借りるのかということがはっきり出てこない。だから、このごろしきりに言われている防衛の上でのバードンシェアという問題、つまり荷物をどれだけ背負うかという問題にしても、こちらの最低限自前の防衛力態勢の限界というものがかなりぼやけているので、向こうから何か言われても確固とした討論ができない。だから、最終的には空疎な予算の金額の問題になってしまって、この数字がシーリングであるとかボトムであるとかという話になってしまっている。大事なものは金の額じゃないと私は思うのです。物の考え方にのっとって、最低限これだけのものがどうしても要るというんだったら、二%でも三%でも必要でしょうし、国民はその金を出すでしょう。しかし一%出すとか二%出すとか、福祉と見合ってこれだけだという、そういう数字のレトリックで国民の合意を得ようと思っても、これはどうにもならないですよ。ですから、防衛費というものは国民の血税から捻出するものなんですから、費用対効果というものを真剣に考えて論じないと、国民の不信を買うだけじゃないかと私は思うのです。  そこで、問題を少し先へ進めますけれども、竹田さんの提言の中にもいろいろな問題がありますけれども、「防衛期待度」というのはだれの言葉か知りませんが、ここもどうも確かではない。私は、国民が国家を通じて、この国の防衛にどの程度期待していいかということを、いろいろな機会を通じて国と国民との間で確かめ合って、国も国民に向かって明らかにしていく必要があるんじゃないか。国家の目的、目標というものを踏まえた日本の国益というものを追求していく中で、それにはいろいろな方法がありますね。企業ががんばり、国民が働き、輸出を伸ばすということもそうでしょうし、しかしそういうものの絡みの中で、それこそリンケージの中で、防衛力というものがどれだけ期待されていいのか、依存されていいのかということ、何を何からどの程度守るのか、あるいは実はどの程度しか守れないのかということの確認、それがやはり必要だと私は思うのです。  「専守防衛」というのは、何かいつの間にかでき上がった不思議な言葉というか考え方で、これは、決して両手足とは言いませんけれども、片手と片足を縛って泳げみたいなもので、どうも私はそんな感じがするのです。とにかく、新しく買い入れた戦闘爆撃機の性能が相手にとって非常に脅威的であるからというので、その照準装置を外してしまうという国は世界で日本だけですよ。相手に脅威を与えない武器でどうしてこの国を守れるのですか。実際にこれをやったのだから、日本という国は。ですから、とにかく専守防衛、現況のこの防衛力の中で、それこそある「限定的・小規模の侵略」が起こったときでも、場合によったらうちは焼かれるかもしれない、どの部分は占領されるかもしれない、どれだけの一般の市民が生命を失うかもしれないという、つまり現在限りであったらかなりの犠牲を日本国民は強いられる、そういう認識というものを国民に持ってもらう。それがいやならば、どうするかという問題がそこからしか出てこないと思うのですけれども、そういう議論を通じてそういう認識を国民に持ってもらう必要があると私は思うのですが、長官、いかがでしょうか。
  115. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  ただいま国民の認識、理解を求めることが必要であるという点を御指摘になりました。この点は私も全く同感でございます。  そこで、どういった具体的な目標を国民に示したらいいかということになりますと、私はやはり、現行憲法のもとにおいて許される自衛力を充実していかなければならないと思うわけでございます。  申すまでもなく、憲法の解釈上は必要最小限の自衛のための実力は保持できる、これが政府のしばしば申し上げている見解でございます。必要最小限といいますと、これは抽象的なものであります。それぞれの時点に当てはめ、また国際情勢等にも照らし合わせ、さらには国力の状況にも合わせて、それこそ世論の支持を得て進めなければいけない問題である。その点が、昭和五十一年の時点において現在の「防衛計画の大綱」として閣議決定を見て、それが今日まで続いているわけでございます。  大綱の内容につきましても、先生御指摘のとおり、文言の解釈の幅によりましてはある程度幅があるような点もあるとは思うのでございますが、考え方は大綱で示されておりますし、また、大綱についております別表を見ますると、陸海空の備うべき目標については、大づかみではありますが示されているわけでございます。  大綱策定当時とは大分国際情勢も変化はしておりますが、何と申しましても、大綱の線にいまだ達しておらないということは、わが国の防衛を進める上におきましてきわめて遺憾であると思いますので、この際は大綱の線を、質の面におきましても量の面におきましても、国情の許す限り実現していくことに重点を置いていく、このことをひとつ国民の皆様にも御理解、御協力を得たいというのが私の考え方でございます。
  116. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 私がお聞きしているのはそういうことじゃないのです。その先のことをお聞きしているわけですね。ですから、いま言われたことを達成されたにしても、つまり自衛隊には犠牲が出るかもしれない、航空機は撃墜されるかもしれない、自衛隊艦船は沈められるかもしれないが、それだけじゃなくて、本土に住んでいらっしゃる国民にもある程度の被害が出るのだ、出ざるを得ないのだ、その限りの防衛態勢でしかないのだということを、国民にはっきり言う必要があるのじゃないかということを私は言っているわけです。それをもし国民がいとうならば、私たちはそこからプラスアルファの問題を引き出してこれると思いますし、達成達成ということじゃなくて、達成するのは結構だけれども、達成してもらわなければ困るが、した後でもなおここまでの限界しかありませんよ、この程度の犠牲が出るのですよ、ということを私は国民にはっきり示す。まあ、そこら辺はどこら辺でその線を仕切るかということはむずかしいかもしれませんけれども、何らかの形で具体的に一つのラインを示されて、国民がそれで不満を持ち、それで危惧を持たれるなら、プラスアルファの議論がそこから出てくるのではないかということを申し上げているわけであります。  そういった問題について防衛庁、基本的に積極的な姿勢をとられるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  117. 大村襄治

    大村国務大臣 先生御指摘の点につきましては、先生の御主張にも傾聴すべき点がなきにしもあらずと思うのでございますが、私といたしましては、先ほど繰り返し申し上げておりますように、大綱の線を速やかに達成することに全力を挙げて取り組むべきものと信じておりますので、その先の点につきましてはまだ検討しておらないということを率直に申し上げざるを得ないわけでございます。  また、大綱をもし見直すことがあるとすればどういう場合か、というお尋ねが国会でしばしばございました。それに対しましては、私どもは、国際情勢の変化国民世論の動向、そしてまた計画自身の達成状況、そういったものに見合って今後検討すべきものと考えております、ということはしばしば申し上げておりますので、御参考に申し上げておきます。
  118. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 核心に触れる防衛論をすると、いつもこんにゃく問答みたいになっちゃうんですね。これはもう本当に、長官もおつらいと思うのですけれども、やはりそこから一歩、二歩踏み出しませんと、日本には新しい、しかも具体性のある、現実性のある防衛論というのは出てこないと思いますよ。  まあ、先に進みますけれども、私、しきりに、先ほど新しい防衛力の態勢といいますか、プラスアルファのことを言ってきました。先ほど言ったフォーミュラの話をここでお聞きしたいのですけれども、先般福田元首相と御一緒してワシントンに行きましたときに、向こうでヘイグ国務長官と会いました。御存じのようにこの人は専門家の職業軍人であった人ですが、そのときにヘイグさんが、冗談半分に「私は第二のダレスたらんとしている」と言った。私は「それはあなたの一つのスタンスとして結構でしょうけれども、あなたが第二のダレスたらんと半分冗談で言うならば、ダレス氏が、これはすべてダレス氏の責任とは言いませんけれども、ダレス氏に象徴される当時のアメリカが、日本に与えた防衛力態勢のフォーミュラというものをここで変える必要がある。変えなければ、日本防衛力態勢というものはアメリカが期待しているような実効が上がってこない。どうもそこのところが、特に制服組を通じて非常に歪曲、誇大化されてアメリカに伝わっているというか、逆にその疎通を欠いている」ということを私は言ったのです。私に言わせると、いやこれは私だけではなしに、防衛庁の内局の皆さん方はみなそう思っていらっしゃると思いますが、日本防衛態勢というのは、かつて警察予備軍としてアメリカが設計して与えたものを、ほとんどGNPの成長に沿ってエンラージしてきたとしか言えないのじゃないかと私は思うのです。  大体、アメリカという国の戦略というものの基本は、あの非常に広大なアメリカの大陸で敵を迎えて戦うということはなくて、とにかく防衛ということであるにしても、まあベトナム戦争なんかいろいろな評価があるでしょうけれども、いずれにしても基本的には、ヨーロッパなり中東なりアジアに出かけていって戦うという図式を持っている。そのアメリカが、自分たちのそういうフォーミュラというものを縮小した形で日本に与えたものが、日本でレーゾンデートルを持つわけがないのですね。そこら辺をやはり考え直さなくちゃいけないけれども、いまの制服組の言い分を聞いていると、本当に昔の旧帝国海軍、陸軍と同じ発想だ。それをまた、残念なことに平服の方々が十全にチェックしてない。だから、何か私たち防衛問題を論ずると、いつも不満を持っていると見られている制服に肩を持つことが政治家としてかっこうよくて、そしてどうも役人はけしからぬ、この役人というのは内局の要するに平服の人たちだ、それが、物をわかってないくせにわかっている顔をしているという不満を、制服にかわって喧伝することが政治家の務めみたいに錯覚されがちだけれども、私はちょっと違うと思う。  たとえばさっきの提言、竹田さんはなかなかいいことを言われたけれども、しかし、この竹田さんもやはり職業軍人で、統幕の議長ということになると、とんでも一ないことを言っている。  たとえばある雑誌のインタビューで「七四式タンクというのはひじょうにいいんですけれども、いま陸上自衛隊には、これが三百両ぐらいしかない。元来、千百両ぐらい持ちたいと思っているんだが、現在全タンク数が八百、その中で新式の七四式は三百、数量的にも質的にも、圧倒的に劣る」云々、これは私に言わせると、私は何もここでドグマを押しつけるつもりはありませんが、かなり議論を呼んでいい言い分だと思う。これは旧陸軍の大艦巨砲主義的な発想の一端でしかないと私は思います。  一つの例で申し上げたのだけれども、大体七四式タンクが相対的に世界の中で一流の戦車だと思っている人というのは、要するに日本の陸上自衛隊しかいないのじゃないですか。こんなもの相対的に言って——では局長にお聞きしますけれども、これは一流の兵器ですか。
  119. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在の時点で、世界各国が使っておる第一線戦車の中にあっては、一流の兵器であるというふうに私は考えております。ただ、次  の世代に各国がかわっておりまして、たとえばソ連のT72でありますとか、ドイツのレオバルトIIでありますとか、アメリカの新しいいま開発している戦車でありますとか、そういうものに比べますと、これは残念ながらとても一流と言えない、しかし現在の主力戦車の中にあっては一流の戦車  であるというふうに私は考えております。
  120. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 局長の立場でなかなかこれを二流ときめつけるわけにもいかぬでしょうし、七四式の製造元が、これからあらわれてくるであろう世界の一流品に拮抗して、どういう開発計画を持っているかということは、非常に心もとないと思います。  私、また後で申し上げますけれども、これはいずれ別の機会に資料を全部網羅してじっくりお話をしますが、要するに日本の国産を原則としている通常兵器、特に火器の性能というのは、かなり外国の一流品と比べて見劣りがするということを、私は参議院のときに予算委員会でやりかけましたら、早速企業が飛んできてやめてくれと言う。やめてくれたら私の後援会に入ると言いました。それを断りましたら、今度は防衛庁からやめていただきたいという依頼があった。私はその話をあえてしましたら、当時はいまと時代も違って、同じ発言を言いましても新聞が取り上げるかどうかわかりませんけれども、恐らく外国だったら、一つの内閣がつぶれるくらいスキャンダラスな事実だと私は思うのだけれども、一向に問題にならなかった。これが現在どのような状態にあるかということを違う機会に私は申し上げたいと思うのだが、そんなことを言うと理事の人たちが私に質問させてくれないかもしれませんがね。  この七四式タンクも、産軍癒着とまで言わないけれども、やはりこれに対する自負というか、それを千数百台もそろえてどこを守るのか知らないけれども、そんなことで防衛態勢を完備するという物の考え方自身がナンセンスだと私は思う。  十年ほど前、私は、あの六日間戦争で赫々たる戦果を上げたダヤン国防相ですか、あの人の片腕のタルという、イスラエルの戦車戦術というものを全部変えた将軍と個人的に話をしました。日本にも来ていただいたことがある。そのスタッフは、日本に初めてのミリタリーアタッシェとして来ていましたヨッドバッドという准将でしたけれども、彼らと話して、タルも日本状況をつぶさに分析した後で、「何で日本に戦車がこんなにたくさん置いてあるのかよくわからぬ」と言う。私もそのとおりだと思う。ここら辺になってくるといろいろな議論があるかもしれませんが、その議論そのものがないということに私は非常に不満なのですけれども、そのときにタルは、六日間戦争の体験で、「自走砲は牽引している大砲六門に匹敵した、しかも日本のような、北海道といえども、あるいはもっと本州、四国、九州のように非常に山の多い複雑な地形の場所では、戦車よりもはるかに自走砲の方が防衛の効果を上げるということを自分は実銭で体験している、何で日本はもう少し大砲を自走化しないのか」という疑念を披瀝しておりました。そして「戦車をつくる金があったら対戦車ミサイルをつくった方がいいのじゃないか」とも言ったし、私はそのとおりだと思うし、また「この北海道なり本州なり九州、四国でたくさんの戦車を配備して迎え撃たなくちゃならないような、戦車あるいは重火器を持った敵の上陸を許す想定を何でするのかわからない」ということをタルは言った。私もそのとおりだと思います。  で、一体、日本海上自衛隊はどうなっているかというと、これまた大艦巨砲主義だ。リムパックに参加した日本の「あまつかぜ」と「ひえい」ですか、大変ミサイルの命中率がよくてアメリカからおほめにあずかったそうだけれども、この日本で一番りっぱな護衛艦、何発ミサイルを積んでいて、ランチャーが何台ありますか。
  121. 塩田章

    ○塩田政府委員 リムパックに参加しました船は、ターターのランチャーが一基でございます。それぞれ一基でございます。  弾は何発か、ちょっといま覚えておりません。
  122. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 恐らく五、六十発でしょう。これを次から次に撃ってしまったら、もう一分足らずで終わりですよ。その後は、この大きなずうたいの船がどこへ行くのか。私は、こういう、現在の日本では一隻四百億以上かかる、非常に大きな船を持つという姿勢そのものがどうも解せない。タル将軍の指摘じゃないけれども日本は何で地政学的な利点、つまり島国というものを想定した防衛態勢の配備をしないのか。これは砂漠の国からやってきた専門家が指摘するのです。この島国に何千年、千数百年住んでいる日本人が、自分の利点というものを生かし切れないでいる。  そのときに私にタルが言いました。「恐らく日本という国は、歴史が長いけれども、自分の本土で敵を防いだ体験が歴史的にないのじゃないか」、私は「そのとおりだ」と言った。「たった一度だけある。それは何かと言うたら蒙古が攻めてきたときだ。」、「これをどうやって撃退したか」と言うから、「そのときは神風が吹いた。」、「それは何だ、カミカゼというミサイルか」と言いましたけれども、当時のミサイルは吹いたわけです。  私は、そういう体験を歴史的に生かして、日本防衛のフォーミュラというものを相当変える時代に来ているのじゃないかと思います。どうもやはりむだな装備、つまり、はったりと自己満足、こういった装備の要求が多過ぎる。そして、国民の金が決して生かされずにむだに終わっている。  たとえばこういう例があります。「ウイング」という航空機専門の雑誌に出たことですけれども、いまF15の購入計画がある。この理由は、この飛行機の空中戦闘の性能が非常にいいということ。かつて大騒ぎして入れたF104Jも、またいま生産・装備中のF4EJも、みんなそういう空中戦闘能力、ドッグファイトの性能がいいということで購入されてきたし、また購入されようとしている。しかし、この飛行機というのは、このごろはやりの日本自動車と違って、ボタンを押せば走るというものじゃない。やはり相当な訓練をしませんとだめだ。このもう最後の有人機と言われたような飛行機、それをさらに追い抜いた性能のこういった飛行機は、いまの訓練ではコントロールできないわけでしょう。その練習はしてますか。ほとんどしてない。F104にしてもF15にしても、これを完全にコントロールできるパイロットを養成しようと思ったら、金が幾らかかるか。二億円かかる。それを聞いただけで、防衛庁はとにかくあきらめちゃった。それはパイロットはいい、飛行機はあるかもしれないけれども、この人たちを乗せて本当に完全なドッグファイトができるかどうか。この間の鈴木首相と会った空幕の幕僚長が「とにかくF15を入れるつもりでありますけれども、なかなか訓練ができない、そういう広範囲の空域がない」という愚痴を言っているけれども、それはそのとおりだと思うのです。そしてまた、むだをあえてしょうとしている。こういう、何というんでしょうかな、むだ、宝の持ちぐされというものをコントロールする、監視するというのが、実はあなた方内局にいらっしゃる方のお仕事なんじゃないんでしょうか。私は、防衛のシビルコントロールというのは、正確には政治家が、与党、野党含めてこれを監視する、コントロールするということだと思いますけれども自衛隊法にのっとって言えば、平服組が大事なポジションを占めていらっしゃる、その人たちがやはりこういった問題をチェックする必要があるし、それこそ大事な仕事で、シビルコントロールの真髄だと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  123. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまのお尋ねに対しまして、まず私からお答えさせていただきたいと思います。  最後にあった、防衛力の整備について、全体として整合性のある、バランスのとれたものを進めるためには、制服組だけではなくて内局の補佐が必要ではないかという御意見、私は同感でございます。防衛庁長官を補佐する組織としましては、内局と各幕僚監部、統合幕僚会議議長、それぞれ役目を担っておる。内局の方は、どちらかといいますと政策の基本にかかわる事項について長官を補佐する、そして、制服の方々は軍事の専門官として、その立場で補佐していくというのが大筋の役割りではないかと思うわけでございます。  そして、先ほど来先生の御指摘がありました点につきましても、私が意見を同じくする点が相当あるということもこの際申し上げておきたいと思います。たとえば自衛隊の砲は、これまでは牽引式のために操作に時間がかかっていざというときに間に合わない、まさにそのとおりでございます。そこで、本年度の予算におきましても二百三ミリりゅう弾砲、百五十五ミリりゅう弾砲は自走式のものを採用していくことに踏み切っているわけでございます。  また、この点はちょっと先生とは所見を異にするわけでございますが、今日の海上自衛隊の整備が、昔ながらの大艦巨砲主義ではないかと言われたのでございますが、その点はちょっとどうかと思うわけでございます。今日の各国の状況を見ますると、空からも船からも、遠距離からミサイル攻撃を受ける可能性が非常に高まってきておるわけでございますから、護衛艦もそういった点に対するためにミサイル装備を急がなければならない。それを装備するためにはある程度の大きさが必要でございます。ところが、いま海上護衛隊の一番大きい護衛艦でもやっと五千トン。実際に主力になって活躍しておりますのは三千トン前後が多いわけでございまして、旧海軍の大艦巨砲主義から見ますと、大和、武蔵はおろか、そういった数万トンのものから比べますと一割以下でございますので、大艦巨砲主義には当たらないのではないかという感じを持っているわけでございます。  また、空の整備につきまして、超音速の航空機を導入した場合のパイロットの訓練が間に合わないのではないかという御指摘がございますが、そういった場合に備えましての訓練のあり方につきましても工夫改善を加えつつあるところでございますし、さらに高等練習機がもう古くなって更新しなければならない、そういった要請にこたえまして、MTXの開発予算も本年度の防衛研究所の予算に計上しまして、いままでの教程を簡素化・合理化しまして、高度の技能を必要とするパイロットの訓練にも充てられるように努力をしているということも申し添えておきたいと思います。
  124. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 そうなってくると、具体的にいろいろ問題点が出てくるのですね。栗栖さんみたいなことを私は防衛庁長官に言ってもらいたくない。必要なものだったら、国民は、自分たちの払った税金でつくった飛行機を完全に飛ばすパイロットを養成するためのお金を惜しまないと思いますよ。だったら、F104Jにしても、すでに買い込んでいる飛行機の訓練要員がどれだけの時間帯の訓練を受けているかという資料を、いまでなくて結構ですから後で出してみてください、私、それをアメリカのものと比べてみますよ。日本の航空パイロットは一生懸命やっているかもしれないけれども、本当に目つきが変わるようなもっと練習をしたくても、できない事情がある。だから、ちょっとどの例だったかわかりませんけれども日本航空自衛隊アメリカと一緒にと演習を申し込んだら、向こうから断られたという話があるでしょう。私はそんななまやかなものじゃないと思うのです。その資料を、きょうでなくて結構ですから、いつか出していただきたい。  私はここで、先ほどタル将軍と、そのスタッフだったヨッドバッド氏の話を出しましたけれども、その来日の目的、駐日武官就任の目的をあえて挙げませんでしたが、そのときにイスラエルは、当時のシップ・ツー・シップのミサイルで一番高性能のガブリエルというものを開発して持っていた。これを日本へ売り込みたくて来た。私は決してその片棒を担いだわけじゃない、その話を聞いただけでありますが、しどう考えたって、この日本の周辺水域、先ほど言った航路帯じゃなしに、日本の沿岸を敵の上陸を防ぐべく守るというのだったら、あんな護衛艦よりも、いま開発されている水中翼のついた高速のランチャーを少し持って、何発か限られたミサイルかもしらないけれども、小型のそういう高速の舟艇を持った方がよっぽど効果があると私は思う。ただ、そこに軍艦旗を翻すと余りかっこうがよくない。旗のためにもやはり五千トン以上は要るということになるので、皮肉を言うわけじゃありませんけれども。そういう発想です。  それじゃ、この次に、後でまた申し上げるけれどもマンスフィールドさんが言い出したこと、私はごく妥当なことしか言っていないと思いますけれども、これをまた日本新聞がある意味で歪曲して、とんでもなく遠くまで守れと言ったとか言わないとかという話になっていますが、グアム以西フィリピン以北の航路帯を守るにしたって、ああいう「あまつかぜ」のような護衛艦をつくって、一体そのカバーができるのですか。やっている国なんか世界じゅうどこにもありませんよ。やろうと思ったら方法は一つしかない。昔のように、歌じゃないけれども「ああ堂々の輸送船」で、とにかく護衛艦隊をつけて大陸へもう一回攻めていくというのだったら、戦車も要るでしょうし、護衛艦も要るでしょうけれども、航路帯の防衛は別にしても、いま言われている規模の防衛をするために、何であんな大きな船が要るのか。アメリカを訪問するためには水中翼船じゃちょっと行けないかもしれないけれども、そんなもののために護衛艦をつくられたら国民はかなわない。そういう発想の転換を防衛庁の長官なり内局の人にしてもらわないと、私は制服はすべてが頭が頑迷とは言わないけれども、どうも日本の制服組と話をしていると、何か非常に胸を張っているところは結構だけれども、胸を張らせるために不必要な兵器を装備させているような気がしてならないのです。  いろいろな例がありますよ。これは私の知っているある人から聞いた話だけれども、増原さんの時代に、陸上自衛隊がホークを欲しいと言った。すでに装備されておるレッドアイというものがあった。これは歩兵が一人一人担いでいく小さなあれですが、とにかくこれではだめだという資料を制服の方が出した。それには、このレッドアイは要するにマッハを超す飛行機を撃つには間に合わないということが書いてある。ある人がこれを指摘しました。「おかしいじゃないか、ベトナム戦争の体験から言っても、たとえその飛行機が普通の速度、二マッハで飛べるものであろうと、地上の目的物を攻撃するためには、マッハ以下に落とさなかったら命中率が悪いから、みんな速度を落として飛んでくる、だからマッハを超す標的を撃つ必要なんかないんだ、おかしいじゃないか」という指摘をしたら、同じ資料を書きかえてきた。今度は「対応可能な標的の速度」というふうに書きかえてきた。これを見ると、レッドアイは〇・七マッハ以下、欲しがっているホークはそれを上回る三・二マッハまで当たるということになっている。結果としてはスパローという兵器になったようでありますけれども、長官は御存じか、あるいは内局の方々は御存じか知りませんけれども、これは未然に食いとめられたからいいようなものの、つまりこういうシナリオが余り多過ぎるという気が私はするのです。  繰り返して申しますけれども、それを防ぐためにもやはりフォーミュラを変える、そういう発想の転換をぜひ長官が指導され、そしてまた、内局の方々も努力をして、合理的な装備をしてもらいたい。イエスかノーかの質問をすれば、いま自衛隊装備されている兵器が限られた日本防衛目的に十全の効果を上げるか上げないかということになったら、首をかしげる平服の方々が多いのじゃないかと私は思いますよ。どうも制服の人たちは、日本のおかしな社会風潮でディプレスされているせいか、とにかくはでなことにしか目が向かない、どうもそういうもののためにしか金を使いたがらない。このごろ原宿にいる竹の子族じゃないけれども、着ている制服がやぼなせいかなんか知らぬが、とにかく新しいものばかり追っかけるという風潮があって、必ずしもそれが防衛の実効にはつながってこない、効果を上げることにつながってこないと私は思うのです。  で、これから行われる鈴木・レーガン会談、それからそれを受けてオタワで行われるサミット、このサミットも、福田元総理が向こうで、かねて来日したブッシュ氏を通じて、とにかく「政治サミットにすべきだ」ということを言われていたし、レーガンさんも「そのとおりだ」という合意を示した。また、フランスのジスカールデスタンは同じことを前から言っておりますし、一、二年前は、「大事な大事な、経済サミットではなしに、政治サミットをやる場合には、日本なんという国は防衛では音痴みたいな国だから、日本だけ外して政治サミットをやれ」ということを公言してもいた。しかし、このごろは言わなくなりましたし、日本のロボットをねらっているみたいだから余り大きなことも言えないでしょうが、とにかくそれが集まって政治的な性格を帯びてくるオタワのサミットで、私は具体的な提案があると思うし、また日本はそれをある程度強引にのみ込まされるおそれもある。  この間ニューヨークでニクソン元大統領とお目にかかって話をしましたが、そのときにニクソンさんが、「これから行われる鈴木・レーガン会談はあくまでもシンボリックなものにしなければいかぬ。象徴的な意味を持たせなければいけない、それが主目的で、そういった印象を相殺するおそれのある自動車問題は、できるだけその前に片づける努力をお互いにしよう」ということを言っておられた。私はなかなか含蓄のある言葉だと思いますけれども、この象徴的な意味を持たせる鈴木・レーガン会談で、いかなる内容の会談が持たれるのか。いろいろ表現もあるでしょうけれども、恐らく「友人ですね」という確認が何回も行われて、三回も四回も総理は握手させられると思います。それで、基本的なところで言質をとられて、オタワの会議あるいはその先、恐らくアメリカは具体的な要求を出してくるでしょう。しかしこちらはこちらで、この時代の流れの中で、いまの努力だけでは相手も不満だろうという認識は一応持って、それならば何をもって最小限の出費で最大の信頼なり満足をかち得るかという検討をする必要があると思うのです。そのためには、何もヘイグなんかに言う必要はないので、日本の中で日本防衛のフォーミュラというものを考え直す、それを合理化していく動きがもっと出てきてしかるべきじゃないかと私は思うのです。  仄聞しますと、大事なことですからここで言っていいかもしれないのですが、前細田防衛庁長官は、この間もちょっと御一緒しましたけれども、大平内閣で防衛庁長官を務められて、そのときに大平さんが、何度かのサミットを通じて、非常に防衛問題で深刻な受け取り方をされて、相当な努力をせざるを得ないんじゃないか、そういう受け取り方をしておられた。それが具体的にどういうものかつまびらかにいたしませんが、何か代がかわって同じ同族会社の鈴木内閣で、大平さんのそういう認識というものが一つのコンティニティーとして続いているのかなという感じがちょっとするのです。まして外務大臣は、官房長官を務めていらっしゃった伊東先生がしていらっしゃる、宮澤官房長官も大平さんの意図をほかの人よりもはるかに詳しく知っていらっしゃる方で、恐らくそういう準備がおありだと思いますけれども、このオタワ会議で何が出てくるかわかりませんが、これからも西側がいろいろな問題をリンケージしながら進んでいかなければならない、そうすることで西側としての結束を固めていこうというとき、いままでと非常に違った姿勢政府アメリカにでき上がってきた。しかもその国務長官のヘイグは、御存じでしょうけれども、NATOの司令官のときに、中性子爆弾の展開配備ということについて、オランダとベルギーが非常に渋ったときに、NATOの中のユニティーということを構えて、非常に政治的に強力な動きをしてこの両国を合意せしめた、ジスカールデスタンはこのヘイグのやり方を見て、非常に政治家としても評価をしていると聞きますが、そのでんで、オタワで具体的な問題が出てきたときに、日本だけが四面楚歌になってしまうおそれがある。  あの東京で行われたサミットのときも、ジスカールデスタンは、ほかの問題にかまけて、実は日本だけを外してカーターを迎賓館ですか、自分の部屋に呼び込んで、日本に対するほかの戦略の合意を取りつけて会議に臨みました。  そこで、どうか日本だけが、妙な形で孤立して、とにかく条件つきで一年間猶予を見てやるから出直してこいみたいなことにならないように、一年、二年でできないことかもしれませんけれども日本防衛態勢を新しい状況に展開していくための発想を、基本的に考え直していただきたいと思うのです。  大分長くなりましたけれども、そういった件について両大臣のお考えを伺いたいと思います。
  125. 伊東正義

    伊東国務大臣 レーガン大統領に会われるのが五月、オタワのサミットが七月でございますが、実は両方とも、いまはまだどういう議題でお話し合いをするか、あるいはサミットの議題というのも決まってないわけでございます。  米大統領に会われるときは、恐らく世界情勢の認識の問題、あるいは二国間の問題では、おっしゃったような防衛の問題とかその他、経済問題が出ると思うのでございますが、実はこれも、この間私が行きまして大統領、ヘイグさん、ワインバーガーさんに会ったときも、一般論は出ました。一般論は出たのでございますが、具体的な要望とか期待、そういうものはほとんどなくて、これは、いずれ防衛庁長官がワインバーガーさんに会われるだろうから、そのときに話が出るでしょうというようなことをお互いに話したわけでございます。  サミットはまだ議題を決めておりません。いままではサミットは、先生承知のような経済サミットでずっときたわけでございますが、去年から、去年ちょうどアフガニスタンへの軍事介入ということでこれが話題に上りまして、共同声明は出さなかったのでございますが、地元のイタリーの首相がこれについて新聞発表するということをしたわけでございます。今度のサミットでも、もちろん経済問題、南北問題、エネルギー問題、金融の問題とかが出ることは当然でございますが、西側の首脳が集まるのですから、政治の問題も当然話題になるだろうと私は見ております。ただ、この場合に共同声明を出すとか具的な対策を決めるとか、そういうことになるかどうかは予想がつきませんが、恐らくそういうことにはならぬのじゃないかなと私は思っております。  しかし、政治家が寄って政治問題が話題にならぬということはかえっておかしいわけでございますから、当然なるものと予想されます。  ただ、いまおっしゃったような、福田元総理もおっしゃったような政治サミットということに、性格が全然変わっていくかどうかということにつきましては、まだそこまでは私もいささか疑念を持っておりますので、経済問題が主で政治問題も話し合われることだろうと私は思っておるわけでございまして、その場合の対応、西側の一員であることの確認というようなことは出てくるでございましょうから、十分総理と御相談をして、私もお供をしてまいる予定ではございますが、先生承知のように、総理も常に言っておられることは、日本が軍事上できることとできないことがある、防衛というものは広い意味で考える必要がある、経済の問題も政治の問題もみんな総合的な安全保障なんだ、日本は憲法と、そして軍事大国にならぬ、専守防衛という制約があるんだということは、アメリカも実はよく知っておるのでございます。総理は常にそれを言っておられますので、われわれとしては、日本としては当然こういうふうに考えるということで、軍事上の、自分の国を守るということ、これは個別自衛権で、そのほかのことにつきましては、経済の問題、経済協力の問題あるいは外交の問題で、西側の一員としての役割りを果たしていくということを総理は当然主張されるんじゃないかと考えております。
  126. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま、今後予想される重要会談について外務大臣がお述べになりましたので、その線に即して、私といたしましても対処してまいりたいと考えている次第でございます。
  127. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 そこで、最近マンスフィールド大使が、記者クラブですかで講演をされて、「日本がとにかく周辺の水域防衛に積極的になってほしい」ということを言ったとか言わないとかいう話があるが、しかし、日本語の新聞を読むとずいぶんヘッドラインと内容が違ったり、内容も微妙にゆがめられて、何かある意味でセンセーショナルな書かれ方をしておりますけれども、これは日本タイムズでしたか、恐らく英文だから日本語よりもより正確な内容だと思いますが、見ますと、決して大それた範囲の防衛をしてほしいということを言っているわけではない。ただ、日本の周りの海ということと同時に、つけ加えて、日本は小さな孤立した島がたくさんあちこちにあるのだ、そういうものを含めてということを言っておるようですが、一方、これを受けてなのか、前後して、とにかく航路帯ということを「線ではなしに面だ」ということを防衛庁は言い出した。また、五十四年の防衛白書を見ても、日本の生命線とも言える海上交通の安全を維持する努力を続けていくことが必要だ、それが日米安保体制の信頼性をより高めるきずなとなると書いてある。また、恐らくそういう防衛活動の中に不可欠として要求されているP3Cの説明文にも、敵の原潜を見つけてこれを撃破するという文言が書かれていますが、私は、場合によったら撃破するという、そこまで踏み込んだというか、つまり警備というとすぐ平時から有事有事というふうな物の考え方も、ちょっと危険というよりも現実性がないと思うのです。  とにかくグアム以西の小笠原諸島に沿った航路帯というのは二百四十掛ける千マイル、フィリピン以北で百五十掛ける八百三十マイルの非常に広範囲な水域になっているわけです。しかし、シーレーンというのはもっと先に、インド洋にもあるわけですけれども、この地域に限っても、こういう水域というものを完全にシーレーンとして警備できている国というのは世界にあるのですか。
  128. 塩田章

    ○塩田政府委員 お尋ねの趣旨が必ずしもよくわかりませんけれども、戦争状態でなくて平素の警備ということでおっしゃっているとすれば、各国いろいろな形で努力しておると思いますけれども日本の場合で言いますと、海上保安庁が日本の周辺海域、あるいは私の知っておる範囲では、海上保安庁の船が小笠原方面、硫黄島方面までずっと平素から巡回しておるようでございますけれども、そういったような意味でやっておると言えば、私は、日本でも、こういった区域について平時の警備状態としてはやっておるのではないかというふうに言えるのではないかと思います。  ただ、具体的にどういうことを指しておっしゃっておるのかによりまして、とてもやっているとは見えないというようなことになるのかもしれませんが、一般的に言えば、各国それぞれ、自分の周辺海域について警備をやっておるのではないかというふうに私は考えるわけであります。
  129. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 聞き方が悪かったかもしれませんけれども、現在世界のシーレーンが各個所で撹乱されずに続いているということは、つまりいまが平時だからということですね。アメリカソビエトも大変な艦船を持っていますけれども、それぞれの艦船を使ってそれぞれの国のシーレーンをカバーしているわけでも何でもないわけで、たまたまいま世界じゆうに戦争がないからシーレーンが撹乱されていないだけの話で、ハロウェー大将でしたか、アメリカ海軍作戦部長も「ペルシャ湾から大西洋にかけてのシーレーンなんか守れっこない、これを守ろうと思ったら、全水域ソビエト海軍を撃滅するだけの大海軍アメリカが持つということしかない」と言っているけれども、私もそうだと思うのです。  ですから、マンスフィールドさんの言ったことがどのようにさらに展開されて受けとられるか、アメリカがそういう要求をしてくるかわかりませんけれどもアメリカが、とにかくこの水域だけは艦船をふやしてでも、金をかけてでも守れと言っても、実際これは機能的にできないことなのですよ。ですから、私はそれを心得た上で、とにかく艦船をある程度ふやして、アメリカがそれで気休め、安心してくれて信頼関係が保てるなら、それも安い買い物かもしれませんが、それは機能的には実は無理なものでしかないということ、それを国民に説明しようと思ったって国民は納得しないかもしれませんが、きょうは時間が来ましたけれども、私は一つだけ方法があると思うのです。  それは海上自衛隊方々、制服組はそんな屈辱的なことはできるかと言われるかもしれないけれども、アラパホ・システムと申しますか、私は、日本の民間の船舶というものを使って、純警備的なウォーニングシステムだけに徹した情報海軍といいましょうか、情報ネットワークを、日本が、海上自衛隊艦船なんかではなしに、そのレジュメは海上自衛隊がするにしても、日本の民間の船舶を使って、純警備的な情報収集のネットワークをつくるということしかないと思うのです。私はこれならできると思うのです。  しかし、これはいつかまた別の機会に詳しくお話をしますけれども、こういう大事なことをするということになると、日本がその能力を持ち、意思表示をするということ自身にアメリカは反発をします。不思議なことに、アメリカの当事者はこういうオファーに対してリラクタントであります。どうも考えるところ、アメリカは、日本防衛のバードンシェアというものを、あくまでもアメリカの傘下の、アメリカのリテーナーとしての、つまり家来としての負担分担ということしか念頭に置いていない。どうもそう考えざるを得ない。ここら辺に私は向こうの考え間違いもあると思いますし、そういった大事な問題を、これから先ひとつ、外務大臣防衛庁長官が向こうのカウンターパートと会われたときに、最高の責任者として、先ほどの原潜の衝突事件にも感じられた微妙な本質的な問題がある、私たちはこれを否定できないし、それを乗り越えていかないと、本当のパートナーシップは獲得できないという説得を、ひとつ日本側から西側に向かってしていただきたい。  私は日本のすばらしい近代化というものは、どうも歴史の流れからいって白人にとっては非常に不本意なものだと思います。それは文化的にもよることと思いますし、仕方がないと思います。また私たち自身も、日本に近代化というものを教えた西欧の先進国に対して、あるディスクリミネーションといいましょうか、偏見というものを持っている。やはりそういうものを超えたところに本当のユニティー、結束というものが獲得されるし、私たちはそれを超えることで、私たちに欠かすことのできない自由と平和の安定というものを、防衛を通じて獲得できるのではないかということを私は両大臣の口からアメリカ側にも伝えていただきたいし、そういうわだかまりといいましょうか、本質的なかきねというものを超えることでしか、より望ましい日米関係はならないと私は思う次第でございます。  終わります。
  130. 坂田道太

    坂田委員長 次に、矢山有作君。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕
  131. 矢山有作

    矢山委員 先ほどアメリカ原潜事故の問題につきまして申し上げたことでありますが、海洋法で決められるであろう経済水域、それに対して非核原則を適用するという問題について触れたわけでありますが、そうしましたら、外務省当局の方からは、その問題については後の委員会で変更をしたんだ、だからこの問題はけりがついた、こうおっしゃっておるのですが、外務省はけりがつきましても私どもの方はけりがつかぬのです。  なぜかというと、この五十五年五月八日の論議というものを会議録で一遍よくごらんいただきたいのでありますが、この論議を通じて見てみますと、経済水域というものに対する理解というのはちゃんと外務省は理解をして、その上に立って、しかも公海領海ではない、しかしながら公海は経済水域とは異なったものだ、こういう考え方、公海と経済水域とは峻別すべきものである、こういう考え方の上に立って、この地域に対して非核原則を適用するということが論議をされておるわけであります。  その場合、この経済水域については、先ほどもおっしゃったように、生物や資源の保護のためだ、しかし生物、資源保護をやるのには環境保護というものも要る、だから汚染防止という問題に触れられまして、そして、汚染防止の問題につきましては海洋投棄の規制条約等々を議論をしながら、そういう議論の経過の上に立って、先ほどの繰り返しになりますが、この経済水域非核原則を適用する、こういうふうな結論になっているわけであります。  日本の近海における米ソの原潜の活動の実態というものが、たまたま昨年のソ連の原潜の火災事故なり、今回のアメリカ原潜事故によって露呈をしてきたわけでありますから、そういう中で、われわれはきわめて危険な状態に置かれておるというふうに感ずるのはあたりまえだと思うのです。そうすれば、それを防ぐためにはどうするかということを真剣に私どもは考えなければならない。それをやるためには、やはり核を廃絶していくとかあるいは軍縮をやっていくとか、そういうことが考えられて当然でありますし、また、この核廃絶なり軍縮の問題につきましては、かつて国連の軍縮特別総会でも、その当時の園田外務大臣は、われわれが見てもりっぱなことを言ったなという発言をしておられるわけでありますから、そういう立場から踏まえるなら、経済水域に対して一たん非核原則を適用する、それは日本立場で適用しようと思えばできるという、そういう姿勢というもの、態度というものは打ち出せるわけでありますから、ぜひそれをやっていくということについて、私どもは再度御見解を伺いたいと思うわけであります。
  132. 伊東正義

    伊東国務大臣 原則論は私から申し上げて、詳細は条約局長から申し上げますが、排他的経済水域というのは、さっきも申し上げましたように、天然資源の探査開発とか保存とか、こういうことに関しての主権的権利、こういうことでございまして、そのほかに、海洋の科学上の調査でございますとか海洋環境の保全とか、こういうことが条約の草案にあるわけでございます。そうして、すべての国は、排他的経済水域においてこの条約の関連規定に従うことを条件として、航行及び上空飛行の自由を持っている、海底電線及び海底パイプラインの敷設の自由、これらの自由がみなあるわけでございまして、航行の自由、上空飛行の自由というのはみんなほかの国は持っているわけでございます、領海でない、領海の外でございますから。  二百海里というのは、あくまで水産資源とか海底資源とか、こういうものに対する権利なのでございまして、領海とまさに違うところでございます。でございますので、わざわざこの条約の中にも、上空の飛行でございますとか航行の自由とかいうのは、ほかの国も認めているわけでございます。  こういうことから言いましても、この二百海里に日本が三原則の適用を拡大してやるということは、この条約から本当は出てこないのでございまして、私は先ほどお伺いしていて、何かそれはおかしいな、外務省のだれかがそういうことを言ったとすれば、私はそれはおかしいということで御答弁したのでございますが、この条約上からもこれは無理なんで、そういう見解は出てこない、できないのでございますので、これは私、原則論として非核原則領海までで、その外まではこれは無理だ、できないということだけははっきり申し上げておきます。
  133. 矢山有作

    矢山委員 そうするとなにですか、五月のこの会議のときには、答弁をされた矢田部説明員、井口説明員、そして山田政府委員は、そうしたことを理解せずに答弁しておるのですか。それは経済水域というのは、先ほどおっしゃったように生物及び鉱物資源に対する排他的な主権的な権利だということはちゃんと触れておられますよ。そういうことを言う上に立って、なおかつ、この水域において非核原則を適用するような態度をとるかどうかというのは日本自身の問題だ、こう言うてはっきり言い切っておるのではありませんか。そして松本政府委員は、「わが国としてはエコノミックゾーンにつきましても非核原則を適用したいのでございます。」、こうはっきり言っておるわけですよ。そうしますと、私どもは、委員会でやりとりしたことをさっぱり信頼できないじゃありませんか。そういう頼りない話でこの委員会をやっておるのですか。一たん口に出してこれはやるんだと言ったらやるべきじゃないですか。そのことを理解せずにしゃべっていたのですか。その当時の説明員なり政府委員というのは無責任きわまるということになりますよ。
  134. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  この五十五年五月八日の議事録を、先ほど先生から御指摘がございましたので早速私も取り寄せてみました。  そこで、まず第一に、二百海里と公海とは峻別すべきものであるということを御指摘があったわけでございますが、峻別というのは非常に強い言葉でございますが、政府側の委員から別に峻別という言葉は使っておりません。御質問になりました土井委員の方から、峻別すべきではないかというお言葉を使っておられるわけでございまして、井口説明員はそれに関しまして、そのような方向で収斂しつつあるというふうには申し上げられます、と申しましたのは、やはり先ほど申しましたように公海というものではない、純粋の公海ではなく、そこに、今度の新海洋法によりまして、汚染でございますとか資源でございますとかいうことについて沿岸国の権利、これは主権ではなく主権的権利、排他的な管轄権というものが及ぶという意味において、そこは公海とはその点は違いますということでございます。  ただ、同日の委員会におきましても、井口説明員の二百海里の経済水域の説明といたしまして、その性格と申しますか、そこはただいまの土井先生の御質問の前に、引用いたしますと、「わが国の立場は、二百海里の経済水域というのは法的な性格は強いて言えば公海であろう、しかしながら、汚染防止に関して条約上与えられた権原が今後行使されるというふうに解しております。」と、明瞭に答えているところでございます。また、松本十郎当時の外務政務次官からの御答弁といたしまして、ただいま御指摘がございましたが、御審議の大体終わりのところでございますが、確かに、「わが国としてはエコノミックゾーンにつきましても非核原則を適用したいのでございます。それが国際的に必ずしも認められておるということは、先生、恐らく御認識のとおりだと思います。」、これは非常に言葉足らずでございまして、松本十郎政府委員の真意は、まず前段では、これは政治家としての気持ちを、非核原則をなるべく広範囲に適用したいという気持ちは持っておる、しかし、「それが国際的に必ずしも認められておる」云云と、こういうふうに議事録ばなっておるのでございますが、これは真意は、「おるかということは、先生、恐らく御認識のとおりだと思います。」と、この「か」が抜けているのであって、「必ずしも」という言葉は必ずそれは否定があるわけでございまして、「それが国際的に必ずしも認められておるかということについては、土井委員承知のように、やはり国際的には認められないところでございましょう」ということを申し上げたのが、その真意であるということでございます。
  135. 矢山有作

    矢山委員 それはいいかげんな言い抜けですよ。そこで「公海とは言えないですね。やはり公海と経済水域というのは峻別すべきである、」、その前段で公海領海とは違うということも指摘しているわけですね。そうすると、その経済水域というものは「生物及び鉱物資源に関する排他的な主権的権利を行使するということでございまして、環境保護、資源保護、双方の立場から、投棄というものは沿岸国が事前に許可をしない限りは外国船は投棄してはならないということになるわけでございます。」、こう言うておるのだから、それを受けて、原子力潜水艦というのは海洋汚染の危険性が多分にあるのでしょう、そういうことを考え合わせていくならば、国際的に認められておろうとおるまいと、わが国が一方的でもいいから、わが国の立場として非核原則を適用するということを明らかにするということは、われわれが核戦争を回避する、そのために核廃絶を目指し、軍縮を目指して最大限努力するのだという気持ちを国際的には示すことになるでしょう。私は、核廃絶の問題や軍縮の問題をあなた方は否定されぬと思うのですよ。否定されないのなら、この文脈全体から検討して、日本立場として、非核原則を適用するということを声明するということは何らやって悪いことじゃない、あたりまえの話なんです。私はそう考えるのです。しかし、いまのところ、あなた方の考え方とすれ違いでありますから、われわれは、将来においても、今回の事故にかんがみて、この地域における核の危険というものを私どもは痛切に感ずるわけでありますから、したがって、核廃絶なり軍縮を目指すその足がかりとしても、こういう立場をとるということを考えながら、今後対処してまいりたいと考えております。  次に進みますが、今回の事件についてアメリカからいろいろ報告されておりますが、その当時の状況で、雨や霧のために船を見失ってしまってわからなかった、こういう話がある。ところが、第十管区海上保安本部ですか、そこの言によると、そしてまた先ほどの政府委員からの話によると、視界は二千メートルあったとはっきり言っておる。しかも、衝突された方、ぶっつけられた方、当て逃げされた方がはっきりと潜水艦を現認しているわけでありますから、しかも飛行機も低空でその衝突事故後旋回をしておるし、また潜水艦もボートの周りをぐるぐる回っておるのですから、したがって、そういうことであるのにもかかわらず、さっぱり霧と雨のために見えなかったというようなでたらめな報告を平然としてよこす、そういうようなアメリカ姿勢、そして先ほどの質疑を通じて明らかになりましたこの原潜事故に対して、わが方が積極的に対応していない、そういう姿勢等から、私ども判断をいたしまして、これはぜひ委員長にお願いしたいのでありますが、今回の事件というのは、ポラリス型の潜水艦としては通常考えられないような行動をやっておるわけですね。そういう中で起こった事故なんだ。そして、しかも通報が三十五時間もおくれてくる、救助活動は一切なされてない、放置をして逃げてしまった、こういうようなことになっておるわけであります。しかも、この原潜というのは一体どこを通ってどこに行ったのか、さっぱりわからぬという。しかも二千三、四百トンの船にぶつかっておるのでありますから、その当時の日昇丸乗員の話によると、相当激しいショックを受けた、こう言っておるのでありますから、だから米海軍当局が言っておるように、積載のミサイルや原子炉に何ら異常はなかった、軽微な損傷だったということをわれわれはまるで信ずるわけにいかぬ。しかも、事故を起こした後、原潜がどこを通ってどこへ入ったのかさっぱりわからない。そうすると、これは放射能汚染の範囲というのは、事故の態様によれば相当拡大をされておるということも想像できるわけであります。  そういうようないろいろな問題を考え、しかも先ほども触れました日本の周辺海域、それも近海ですよ、近海での米ソ両国の原潜の活動が非常に活発だということが今度暴露されたわけでありますから、そうした状況の中で、今後の事故防止の問題をどう考えるかということも、これは重大な問題だというふうになってきます。  したがって、私どもは、弱腰の政府にこの実態調査を任しておいたのじゃこれは話にならぬ。したがって、政府政府調査をされましょうが、それと関連をいたしまして、本委員会においても一体これに対してどう対応をしていくかというのを、後刻理事会の場でひとつ御協議を願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  136. 有馬元治

    ○有馬委員長代理 矢山君、委員長にだね。
  137. 矢山有作

    矢山委員 あなたにです。
  138. 有馬元治

    ○有馬委員長代理 きわめて重要な御提案でございますので、後刻理事会を開いて協議いたします。
  139. 矢山有作

    矢山委員 そこで質疑を移してまいります。  対ソ認識において、先般の伊東・ヘイグ会談あるいは伊東・ワインバーガー会談等によって、伝えられておるところにおきましては一致した、しかも伊東外務大臣は、西側諸国の団結を強調し、西側の一員としてこの役割りを果たす、こういうことを日米協会の夕食会の演説でもしゃべっておられるようですね。そうすると、対ソ認識において一致をするということになれば、その上に立って対ソ共同戦略を立てる、こういうことになる。対ソ共同戦略が立てば、その中でわが方がどういう役割りを分担するか、何らかの役割りを分担しなければならぬというのは当然の話であります。したがって、すでに実態は、対ソ認識の一致、共同戦略を立てる、その中において日本の果たすべき役割り、それはもう一定の路線を走りつつあるのじゃないでしょうか。どうなんでしょう。
  140. 伊東正義

    伊東国務大臣 ソ連がアフガニスタンに軍事介入をしたことも、これはアメリカ日本の見方も一致しております。それから、東南アジアでカンボジアにベトナムが入りました、後ろにソ連軍の援助がベトナムにあるというような認識も一致しております。そういう世界情勢の中で起こったことについてのソ連の行動等について、考え方が一致したことはそのとおりでございます。  ただ、西側の甘貝であるということは常に言っておるわけでございますが、日本がやれることとやれないことがあることも常に申し上げているところでございまして、いわゆる軍事的には憲法の個別自衛権ということで、専守防衛、自分の国を守るというだけでございますので、それ以上のことは何もこれは日本ではできないということははっきりしているわけでございますから、対ソ認識で一致したということはございますが、いわゆる集団自衛権の中に組み込まれるようなことでございますとかそういうことについてはこれは全然考えておりませんので、従来どおりの日本の考え方でございます。
  141. 矢山有作

    矢山委員 いつ聞いても同じことをおっしゃるのですが、対ソ認識において一致した、そして共同の戦略を立てるのだ、西側の団結を固めていくのだ、こういうことになれば、できることとできないことははっきりします、しますと言いながら、やがてそういう基本的な認識の一致、対ソ認識においての一致、西側諸国の団結を強化する、そしてその中の一員としての役割りを果たす、こうなってくると、好むと好まざるとにかかわらず、どうおっしゃろうともやはりその役割りを分担しろ、こういうことにならざるを得ない。そして、それが軍事面においてはやはり日本の軍事力を強化しろという要請になってくるし、経済面においては、あくまでも対ソ戦略上の配慮から、アメリカ戦略的な立場に立っての対外援助というものが強化されてくる、そしてそれを押しつけられざるを得なくなる、これが私は筋道だと思うのです。だから、幾らできることとできないことをはっきりさせるのだと力んでおられても、なかなかそういうふうにはいかぬのじゃないか。  現実に最近の防衛庁あたりの動向を見ておると、だんだん対米要請に従う方向に行っておるようだし、また対外援助の実態を見ましても、いろいろおっしゃるでしょうが、オーマンからジャマイカから、アメリカ戦略上重要だと考えられておる地点に対しての経済援助が強まりつつあるし、こういう実態がそのことを証明しておる。したがって、今後の推移においては、あなた方がどう対応されてどうなるのか、これは事実経過を見なければわかりませんが、私は、先ほど私が指摘したとおりの方向に行かざるを得ないだろうということをこの際申し上げておきたいと思うのです。  そこで、次に移りまして、伊東外務大臣ワインバーガー国防長官との会談で、米側防衛の問題について話が及んだときに、日本周辺海域での日米防衛責任分担ですか、それに関連をした話の中で、北西太平洋のグアム以西、フィリピン以北の海域の防衛の話が出た、これはそういうふうにおっしゃっていましたね。しかしこれを黙っておると、日本がそれを引き受けたと思われるので、これはおれのところは絶対できないのだとすぐあなたはおっしゃった、こう言っておられる。そして、そう言った理由は、一つは憲法上の制約がある。それからもう一つは、それに対応していった場合には「防衛計画の大綱」の枠を乗り越えることになってしまう。こういう理解で、これはできませんということを言ったのだ、こう言うのです。それは防衛庁外務省も、両方とも全く意見は一致しておりますか。
  142. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほどから大分信用できぬ、こうおっしゃるのでございますが、弱腰だとか信用しないと言わないで、ひとつ信用していただきたい、一生懸命ひとつ努力をしているところでございますので。  それから、いまの防衛の問題でございますが、私が言いましたように、ワインバーガーさんと話したときに、ペルシャ湾、南西アジア、東南アジアというようなことをずっと話してきて、グアム以西、フィリピン以北という話が出たわけでございます。そして最後に、日本は経済的にも強くなったんだから、防衛の強化ということを努力してもらいたい、それから在日駐留米軍の経費、これは具体的に出た話です。これのもっと負担してもらうということも考えてもらいたいというように、こう話がずっと出たわけでございます。  そのときに、私は、いま矢山さんがおっしゃったように、一つは、海域分担論ということでございますと、海域分担論は、これは集団自衛権につながることでございますので、これは私は憲法上、法律上できない問題だと言った。もう一つは、前々から防衛庁は周辺数百海里、航路帯千海里ということを言っておられる。そして「防衛計画の大綱」ができておりますので、グアム以西、フィリピン以北ということになると、それより少し外へ足を出すということになりますので、それを黙ってそのままにして次の話題にいけば、何か引き受けたのだというような誤解を与えちゃいかぬということだったものですから、私はすぐ頭の中にそれが出たものですから、それはむずかしいことなんだということを私は言ったというのが実相でございます。
  143. 矢山有作

    矢山委員 防衛庁はどういうお考えですか。
  144. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま外務大臣のお述べになりましたことについては、別に変わった考えは持っておりません。
  145. 矢山有作

    矢山委員 変わった考え方を持っておらぬとおっしゃるのですから、ここのところではそれをそのままお聞きしておきます。  そこで、この前の内閣委員会でちょっとお聞きしたのですが、いろいろな議論を交えないで率直に言っていただきたいのですが、先ほど外務大臣もお触れになった、わが国自衛隊日本周辺海域のこの地理的な範囲、それと、それからワインバーガー国防長官との会談で示されたというグアム以西、フィリピン以北の海域、その関係は、地理的にいうとどういうふうに考えたらいいわけですか。私どもいろいろな報道で承知しておるところでは、それは実質的にほとんど一緒だというふうに言っておられるやに聞いておるわけでありますが、どうなんでしょう。
  146. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもはかねてから、わが国周辺数百海里、それから航路帯を設けた場合には約一千海里を防衛できることをめどに防衛力の整備を進めておる、こういうふうに申し上げております。  一方、先生の御指摘のようなワインバーガーとの会談の中で出たことが、グアム以西、フィリピン以北ということであれば、地理的にはどの程度の重なり関係になるかということでございますが、私どもはそういうことを考えておりませんで、いま申し上げたように周辺数百海里、航路帯を設けた場合には約一千海里と言っておりますので、具体的にいまのアメリカの言っておるグアム以西、フィリピン以北という地域に、わが方の言っておりますことを当てはめて、広いとか狭いとかというようなことを検討しておるわけではございません。ございませんが、ごく常識的に言えば、純粋な地理的な範囲としては、私どもの方は周辺数百海里と言っておりますから、グアム以西よりは東の部分ももちろんあるでしょう、それから航路帯を設けた場合の約一千海里と言っていますから、グアムはそれより遠いということは言えるわけでありますが、しかしそういうことをひっくるめて、地理的にどの程度の違いかとか、あるいは大体重なっておるじゃないかというような議論であれば、これは見方によると思いますけれども、重なっておると言えば重なっておると言えますし、いや、それは大分違うということも見方によって言えるだろうと思いますが、私どもはいずれにしましても、そういうグアム以西とかフィリピン以北だとかということではなしに、わが国周辺数百海里、航路帯を設けた場合には約一千海里という整備目標で防衛力の整備に努めておる、こういうことでございます。
  147. 矢山有作

    矢山委員 これは八日の夕方ですか、鈴木総理にお会いになったときに、この問題、わが国周辺海域の問題についてお話をいろいろされておるようですが、そのときにどういうような説明を総理に対してなさったのですか。
  148. 塩田章

    ○塩田政府委員 これは私が直接御説明をしたわけですが、これはグアム以西とかフィリピン以北とかという話の説明ではなくて、わが国の航路帯約一千海里と言っておりますが、その海上護衛というもののやり方を総理に御説明をしたわけであります。  実際に、対潜水艦作戦とかいうけれども、具体的にはどういうことをするのだというようなお話がございまして、それはこういうふうにやっておりますということを御説明をしたわけですが、その私が言いました主要な点は、航路帯と言いますので、帯という字が書いてありますので、いかにも何か海の中に、陸上で言えば自動車のハイウエーみたいなものがあって、そこを船が通っていて、それを自衛隊が護衛するのだというふうに、何かそういったものが頭に浮かんでくるわけですが、実はそういうやり方をいましておりません。私どもは、もちろん船団をつくって、コンボイシステムで直接護衛をすることもいまからもないとは言えない、考えられるとは思いますが、いまからの海上護衛作戦というものはそういう形ではなくて、飛行機も使い、ヘリコプターも使いまして、かなり広範囲な幅でその必要な海域の護衛を行います。したがいまして、自衛隊の方でクリーンにした海域を個々の船舶が自由に通航していく、直接には自衛隊の方で護衛するわけではない、こういうやり方をとります。  したがいまして、航路帯、帯という字から浮かんでくるイメージよりはさらに広い、いわば面としての要素が出てきつつあります。したがいまして、航路帯という場合の考え方として、私どもは、面とまでは申しませんけれども、面的要素が最近の作戦上出てきつつあります、ということを御説明したわけであります。
  149. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、わが国の周辺海域として数百海里、航路帯では約千海里、それは線だけの問題ではない、面的な要素も入ってくる、それを考えておるのだ、こういうことで御説明になったという話です。  じゃ、聞きますが、その範囲であるならば、これは「防衛計画の大綱」の枠内で考えられている問題なのだ、こうなるかどうかということが一点。  それから、そうなると、もう一つは、アメリカが話に出したというグアム以西、フィリピン以北という面的な防衛という問題とは完全に食い違ってくる、こういうふうに理解していいのですか。
  150. 塩田章

    ○塩田政府委員 「防衛計画の大綱」では、先ほどのお答えでも申し上げましたが、具体的に区域が書いてあるわけではございません。区域が書いてあるわけではございませんが、私どもが「防衛計画の大綱」の別表に掲げてある防衛力というものは、大体周辺数百海里、航路帯を設けた場合一千海里というものを守れることをめどにして整備しておるものであります、と申し上げております。そして、私が先ほど御説明しましたことは、その中の範囲のことであると考えております。  そうすれば、いまのグアム以西、フィリピン以北ということと面的な面でどうかということでございますが、先ほど来申し上げておりますように、私どもは、アメリカの方からグアム以西、フィリピン以北の面を防御してほしいという具体的な要請があったとは聞いておりませんし、もともとそういう話と私が先ほど総理に御説明した話とは別な話でございます。
  151. 矢山有作

    矢山委員 アメリカから出た区域の面的防衛まで担当できない、いまの「防衛計画の大綱」の中ではできないということは、大体はっきりしたのじゃないかと思うのです。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 そうすると、将来グアム以西、フィリピン以北の海域、面的なものを含めて海域と言っておきますが、海域防衛には要請が出ても応じられないという態度を貫くのかどうか、これが第一点。もしそこがぐらついてくると、防衛大綱の見直しを迫られるということになるのであろうと思うのですが、そういうふうに理解してよろしいか。
  152. 塩田章

    ○塩田政府委員 貫くかどうかというのが第一点でございますが、そういう話が出ると、いまの防衛計画で私ども日本が考えておる以上のものを考えなくてはいけないという話につながるおそれがあるので、そこは否定しておいたというふうに先ほど外務大臣お答えになったわけですが、私どももそういう考え方で、現在「防衛計画の大綱」の線に沿って整備していこうということでございます。
  153. 矢山有作

    矢山委員 そこでお尋ねをしたいのですが、たとえばの話ですが、米ソの紛争がよその方で起こった、そういう中で、防衛庁が考えておる日本周辺の海域の中で米軍から支援を求められたという場合は、どう対応していきますか。いろいろな事態が予想されますが、それらを踏まえて御答弁いただきたいと思うのです。
  154. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来申し上げております私ども防衛力整備目標は、日本が侵略を受けた場合の日本防衛力についての整備目標でございます。日本に対する侵略とは関係のない米ソの争いは、私どもには関係はございません。
  155. 矢山有作

    矢山委員 それじゃ、さらにもう一遍念を押しておきますが、たとえば南西アジアの方で米ソの紛争が起こった、そのときに、自衛隊日本周辺海域と言っておるその地域の中で支援を米軍から求められた、この場合は絶対拒否しますね。拒否しなければならぬはずなのです。
  156. 塩田章

    ○塩田政府委員 お尋ねは安保の六条の事態のことではないと思いますが、五条の事態について言えば、私どもは、日本が自衛権が発動できる事態でなければ、いかなる意味でも武力の行使はできません。
  157. 矢山有作

    矢山委員 そこで、次に移していきますが、アメリカの言っておるのは、要するに南西アジアの状態というのがきわめて不安定だ、アメリカは南西アジアの状態というのを一番重視しておるようですね、そして現在ですらそういう不安定な情勢であるということから、第七艦隊をペルシャ湾やインド洋方面に割かなければならぬような実態になっておる、そういう実態を踏まえながら、この北西太平洋が手薄になる、手薄になるのだからその穴埋めを日本でやってくれ、だからそれに対応して防衛能力を高めてもらいたい、具体的に言うなら対潜能力や防空能力を高めてもらいたい、こう盛んに言ってきておるわけですね。しかし、そういうふうに言ってきておっても、そして現実にそういう事態に遭遇しても、わが国が自衛権を発動するという事態にならない限りは米軍支援はやれませんね。くどいようですけれども、いかがですか。
  158. 塩田章

    ○塩田政府委員 そのとおりでございます。
  159. 矢山有作

    矢山委員 しかし、いまのアメリカのとっておる態度から見て、下手をすると、これは個別自衛権の行使だ、行使だと言っておりますが、集団自衛権の行使に引っ張り込まれていくおそれが多分にあると思いますので、これは十分注意をしながら対応してもらいたいと思うのです。  そこで、それに関連しながら次に進みたいのですが、先般ジョーンズ米統合参謀本部議長が、八二会計年度の軍事情勢報告の中で、新しい対ソ戦略を打ち出しておると私は受け取っておるのです。それはどういうことを言っておるかというと「紛争が発生した場合、米国は優勢な軍事力を攻撃地点ばかりでなく、世界各地のソ連の多くの弱点に使用すべきだ」、こう言いながら「この新戦略の重点は中東、とくにペルシャ湾岸にあることを明らかにして、」その上で「とくに南西アジア地域におけるわれわれの死活的利益を侵せば、同地域に限らず米国と対決しなければならなくなることをソ連に信じさせなければならない」、こう言っているのです。これを俗に対ソ多発報復戦略だ、こう言っておるわけでありますが、そうなってくると、南西アジアで米ソの紛争が起こった、そのときに日本にいろいろな要求をしてくるというおそれがあるのじゃないでしょうか、多発報復戦略をとるという立場から言うならば。その心配はありませんか。
  160. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどから何遍も申し上げておりますように、日本の場合、日本の自衛権の発動の要件に該当する場合しか自衛隊行動は考えられません。いま御指摘のような事態が起こるのかどうかわかりませんけれども日本はいずれにしてもその点ははっきりしておるわけであります。
  161. 矢山有作

    矢山委員 それでは、そうおっしゃるなら、次にもう一つお伺いしたいのですが、南西アジアで米ソの紛争が発生した、そういう事態が、この「日米安全保障協議委員会が了承した防衛協力小委員会の報告」、いわゆる防衛協力の指針と言っておるのですか、この中で、日本以外の「極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合」、これに相当するとお考えになりますかどうですか。  もう一遍言います。南西アジアで米ソの紛争が発生した、その事態は、ガイドラインに言っておる日本以外の「極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合」、これに相当するとお考えになるかならぬか。
  162. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 そこで言っております日本以外の「極東」というのは、安保条約に言っております「極東」でございますので、いま先生の御指摘になったような事態は該当いたしません。
  163. 矢山有作

    矢山委員 それでは、ガイドラインに言う「極東」というのは、日米安保条約の第六条で言っておる「極東」、それと同一であると解釈してよろしいか。
  164. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 そのとおりで結構でございます。
  165. 矢山有作

    矢山委員 私は、なぜこういうことをお尋ねしたかというと、私は、いまアメリカ日本の北西太平洋を中心とした地域における日本の軍事能力を強化しろと言っておる、その底の考え方というのは、彼らがいま最大の危険地帯として見ておる南西アジア、その紛争が起こった、そのときを想定しながら、ジョーンズの言う多発報復戦略というものを発動する、そういう事態が来るのではないか、そのときにわが方があいまいな態度をとっておると、たとえばこれまでもいろいろ言われてきましたような三海峡の封鎖であるとか、あるいは日本の周辺海域において積極的にアメリカ軍を支援するような態勢をとってくれとか、こういう注文が来るのではないか。私は、そういう危険性を感ずるから、あえてそういった問題に触れてみたわけであります。  しかしながら、南西アジアにおいて紛争が起こっても、それはガイドラインで言っておる「極東」には当たらないし、それからもちろん安保条約第六条の適用にもならぬ、こういうことをおっしゃったわけでありますから、南西アジアの紛争が極東には無関係であるというふうに防衛庁外務省も理解しておられると思うのですが、そういう私の理解でよろしいか。
  166. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まず、私の方からお答えいたしますが、安保条約で言っている極東の脅威に影響を与える、中東の情勢が極東の脅威に影響を与える、そういうようなふうには考えておりません。
  167. 矢山有作

    矢山委員 そこで、もう一点お伺いしたいのですが、ガイドラインで言っておる武力攻撃の「おそれのある場合」、これと自衛隊法第七十六条で言っておる「外部からの武力攻撃のおそれのある場合」、これの関係はどう理解したらよろしゅうございますか。
  168. 塩田章

    ○塩田政府委員 直接関係はございませんで、自衛隊法の方は、あくまでも七十六条の防御出動を発動する「おそれのある場合」ということでございまして、一方、ガイドラインの方は、それよりももっと広い概念というふうに私ども考えておりますが、事前に必要な準備をしなければいけない判断をいつするかということになりますので、必ずしも自衛隊法のような狭い段階のみを考えておるわけではございません。
  169. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、ガイドラインで言っておる武力攻撃の「おそれのある場合」ということで、南西アジアに紛争が米ソ間で発生したときに、そういうふうにとらえていくという心配はありませんか。
  170. 塩田章

    ○塩田政府委員 何度も申し上げますけれども日米ガイドラインそのものが、特にいま御指摘の二項の関係は、あくまでも安保五条の事態でございますから、日本攻撃をされるおそれのある場合、あるいは日本攻撃された場合の共同作戦計画でございますから、いま御指摘のような日本関係のないところの話とは別でございます。
  171. 矢山有作

    矢山委員 それじゃ、武力攻撃の「おそれのある場合」というのは、一体具体的に言ったらどういう場合を想定し、そしてまた、その判定というか認定というか、それはどこでやるのですか。
  172. 塩田章

    ○塩田政府委員 どういう場合というのは、これはまさに千差万別であろうと思います。いま具体的にどういう場合だ、どういう場合だというふうにはとても申し上げられないと思います。  具体的に、どこでどういうふうにだれが判定するのかということでございますが、そのために、いま、ガイドラインに基づく研究の中に、防衛準備の体制についての研究項目が一項目入っておるわけでございます。それはまだ具体的には余り進んでおりませんけれども、いずれはそれはお互いに研究をしまして、そうして、どういう事態にはどういう準備に入るというようなことについての研究・協議をしておく。それを受けまして、事態によって、決めるのは日米双方のそれぞれの政府でございますが、しかし、そこは整合のとれた基準をつくっておこう、こういうことになるわけであります。
  173. 矢山有作

    矢山委員 日米双方の政府が決めるというのは、それはわかるのですが、その政府のどういう機関でそれを決定するのかということが一つです。  それからもう一つは、武力攻撃の「おそれのある場合」というものを考えて、そしてあらかじめ、ガイドラインによると、共通の基準に基づいて、段階区分に従って、自衛隊、米軍が警戒監視態勢の強化から戦闘準備の態勢の最大限の強化に至るまでの作戦準備をやる、そういうことを一応このガイドラインに従ってつくっておくのだ、こうなっているのでしょう。そうですね。
  174. 塩田章

    ○塩田政府委員 そういうことでございます。それで、日本政府の場合、決める機関はどこか、だれかということももちろんいまから決めるわけでございますが、常識的に考えて、防衛庁長官、内閣総理大臣、そういうことになろうと思いますが、どういう段階でどういう手続かというようなことについてはまだ決めていない、そこまでいっていない、こういうことでございます。
  175. 矢山有作

    矢山委員 この間、たしか国会の論議の中でも、だれが決めるのか、まだ決めていないのだというような話だったように思うんですよ。きょうもやはり同じで、だれが決めるかわからない、防衛庁の長官か総理かと言う。しかし、これほど日本防衛について大事な問題が、日本政府で決めるのだが、政府のどこの機関で決めるのかわからぬのだということで、これは済ませるのですかね。きわめて頼りない話じゃありませんか。
  176. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまのお尋ねの点についてお答えいたします。  前に、この問題についての国会の御質問に対しまして私が答弁いたしたのでございますが、ガイドラインに基づく作戦計画の研究の方はかなり進んでいるということを申し上げたわけでございます。  そこで、いまお話しの「おそれのある場合」に対処する場合の問題、これは別のケースでございまして、まだ日米間の研究がそれほど進んでおらないわけです。しかし、それがまとまった段階で、一体日本側でそれを判定する者はだれであるか、こういう御質問がございまして、その御質問に対しましては、これからの問題でありますけれども、やはり自衛隊の運用に関する問題でございますから、それは防衛庁長官判断する問題ではないか、また、場合によっては最高指揮官である総理大臣報告する必要も出てくることもあるのではないか、そういう趣旨のお答えをしたということであります。
  177. 矢山有作

    矢山委員 いずれにしても、お話を聞いておっても、やはりさっぱり前進はしてはおらぬので、だれが判定をするのかわからぬという結論になるのだろうと、いまの御答弁から考えるわけでありますが、これはなぜ重要かというと、武力攻撃の「おそれのある場合」というのを、どこのどういう具体的な状況のもとで、だれがどう判定するのかというのは大変な問題でしょう。というのは、武力攻撃のおそれのある場合で、それぞれ警戒態勢から作戦準備の段階に至るまで段階区分まで設けて、そして、戦闘準備の最大限の態勢にまで持っていくということが決められておるのでしょう。この判断をどうするのか、判断基準なり判断をする責任者がだれかということを明確にしておかぬと、ガイドラインは現実にできているのですから、もしその状態の中で、いまそうでなくても、アメリカは南西アジアは危険だ、危険だと言っているわけでしょう、南西アジアの緊張がもう世界最大の緊張だと言っておる、南西アジアで、われわれの好むところじゃないけれども、米ソの紛争が起こったとして、しかもアメリカはジョーンズの言う多発報復戦略を考えておるのだ、こういうことになったら、さしずめこの武力攻撃のおそれのある場合に従ってつくった警戒態勢、あるいは作戦準備の段階区分に従って、その態勢に入れという要求が来ないという保証はないでしょう。その要求を突きつけられたときに、一体いまのような状態でどうするのですか。なるほど、これからその問題については具体的に検討するのだと言われる。しかし、検討するのだけれども、その基礎になるガイドラインはもうできているのですよ。まだ決まっていません、具体的にどういうふうにするかわからぬということで済ませるのですか。
  178. 大村襄治

    大村国務大臣 重ねてお答えいたします。  御指摘のように、ガイドラインは決まっておるわけでございます。ガイドラインに基づく研究項目が数項目ございまして、その中で日米共同作戦計画の研究はかなり進んでおる。ところが、この準備段階に関する研究はまだそれほど進んでおらないわけでございます。しかし、進んだ段階において認定はどうするか、これはまさに先生御指摘のように重要な問題でございます。そこで、やはり責任のある防衛庁長官判断すべき事柄ではなかろうかということを申し上げておるわけでございます。  また、その際、制服に任せるようなことはないかという御質問に対しましても、文民コントロールを貫く上から言いましても、防衛庁長官責任を持って判断すべき事柄ではないか、そういうお答えをしたことでございます。(発言する者あり)
  179. 矢山有作

    矢山委員 そこで、お話としては出ておりますが、実際きわめて自信のない話ですね。こういうていたらくで、一体国の防衛というのを真剣に考えておるのかおらぬのか、私どもは疑問を持つわけですよ。たとえば先ほど来言っておるように、いまアメリカが一番重視しておるのは南西アジアの状態でしょう。南西アジアで紛争が起こった、いまの段階では、武力攻撃のおそれのある場合についての具体的なものは何もない。しかし、アメリカとしては日本に対する支援を要請してきた、こういう事態が絶対にないというふうにお考えになっておるのですか。ましていわんや、武力攻撃のおそれのある場合の態勢が具体的に、態勢というか、相互の間の相談がまとまってそのときの共同対処の方法が決まった、こういう段階になって、南西アジアの紛争は日本が武力攻撃をされるおそれがあるのだ、だからこの決めた方針に従って対処してくれ、こういうことにもなるかもしらぬ。だから、いまは武力攻撃のおそれのある場合に対する方針が決まってない。しかし、決まってない段階のいまにおいてさえそういう要求がある可能性があるし、まして、それができた後に南西アジアの紛争、米ソ衝突に対して、日本に対しての要求が出てこないという保証はあるのでしょうか。そのときに、日本は武力攻撃を受けないのだから、日本の領域は侵攻されないのだから、それは私の知ったことじゃありません、一切何もできませんと言い切れますか。言い切れるのなら言い切れるということをこの際はっきりしておいていただきたいと思うのです。
  180. 大村襄治

    大村国務大臣 最初のお尋ねが、自衛隊法七十六条の「武力攻撃のおそれのある場合」と、ガイドラインの「おそれのある場合」の範囲についてのお尋ねでございました。そこで、七十六条の場合は、わが国が武力攻撃を受けるおそれのある場合の規定でございます。それを判定した場合には防衛出動の命令の下令に至るわけでございまして、それを発動する場合の国防会議、国会等に関する手続は法律の明記するところでございます。  そこで、ガイドラインで言っております「おそれのある場合」はどうかといいますると、それよりはやや広い範囲である。しかし、これはあくまでわが国が侵略されるおそれのある場合の準備の問題でございます。したがいまして、お尋ねのありましたような日本の国の防衛に全く関係のない事柄について、そういうことに巻き込まれるというおそれはないと考えておるわけでございます。
  181. 矢山有作

    矢山委員 いや、それはないとおっしゃっても、ないかあるかはこれはわかりませんよ。では、何でアメリカ日本に対して、南西アジアの厳しい米ソの緊張状況を言いながら、北西太平洋地域における日本の軍事能力を高めろということをやかましく言ってくるのですか。それをやかましく言ってくるというのは、南西アジアの紛争が起きたときに日本に対して何らかの役割りを果たしてもらいたい、それは日本が直接領域の侵害を受けたか受けぬかにかかわらず果たしてもらいたい、それを果たさせるためには、いわゆる自衛隊法よりもっと範囲が広いとあなた方がおっしゃっておる、ガイドラインによる武力攻撃のおそれのある場合というものをつくって、南西アジアの紛争は日本に対する侵攻のおそれがありますよと、だから対応してくれということに、それがならぬと断言できますか。だから、ならぬという断言よりも、そうなっても絶対に対応しませんと言ってもらえればいいのです。そこまであなた方ががっちりと踏み込めるのなら、北西太平洋地域の防衛の問題について、その時点でいろいろ言われていることに対して防ぎがつくのじゃありませんか。
  182. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  ガイドラインは急に起こった問題でございませんので、五十二年以降、有事の場合の事柄がいままで日米間で何にも話し合っておられないから、これから決めようじゃないかということで相談しまして、それで、それの手続を受けて決まった問題でございます。しかし、ガイドラインに基づく研究がそれぞれ行われておるのでありますが、この準備段階についての研究の具体的なところまではまだ来てない、こういう状況でございます。  そういった経緯からしますれば、あくまでわが国自身の安全の問題であり、攻撃を受けるおそれのある場合の対処の仕方でございますので、先生の御指摘のような問題について巻き込まれるおそれはないと考えておるわけでございます。
  183. 矢山有作

    矢山委員 これは幾らやってもそれ以上進まぬでしようが、もう一遍言っておきますと、何もやってなかったからガイドラインをつくって、これからそのガイドラインに基づいてどうやるかということを研究するのだ。これは研究のための研究をやるのじゃないのでしょう。研究をやるということば、そういう事態が起こったときに対応するための研究をやるわけでしょう。どういう事態で対応していくかということの判断を迫られることになるのですよ。その場合に、アメリカ側がさしずめ考えられるのは、南西アジアの紛争が起こったときに日本側に対して要求をしてくる、こういうことは当然私どもは予測のつくことである。  それでは、それが考えられないのに、何でこれほど、明けても暮れても、対潜能力を強化しろ、防空能力を強化しろ、グアム以西フィリピン以北のところの海域を守ってもらいたいのだと、朝から晩まで何でそんなことを言っているのですか。それをそれだけ強調するということは、やはり南西アジアなら南西アジアで紛争が起こったときに、日本アメリカ戦略の中における一定の役割りを果たさせたい、あるいは南西アジアに限りませんよ、多発報復戦略をジョーンズさんが言っているのだから、そのほかの地域に起こっても日本に対して一定の役割りを果たさせたい、こう考えておるわけでしょう。こう考えておるから言っているのですよ。それを、そんなことはないでしょう、そんなことはありません、そんなことでは済まない。だから、私の聞きたいのは、そういう事態があっても、南西アジアで起こった紛争は日本の安全には関係ない、極東にも関係がない、したがって、たとえばガイドラインに基づいての武力攻撃のおそれのある場合の研究が完成した後においても、それに基づいて警戒態勢に入るとか、作戦準備の段階に入っていけとかいうことが要求として出てきても、それはアメリカさんどうぞおやりなさい、私どもには関係ありませんと言い切りますね。
  184. 塩田章

    ○塩田政府委員 何度もお答え申し上げておりますように、日米それぞれが判断をするわけでございまして、日本日本判断をするわけであります。
  185. 矢山有作

    矢山委員 いまの御答弁で、日米それぞれが判断する、日本日本判断すると言われるが、それで、その判断をするのについて、いま私が例示した事態については、判断をした結果、アメリカの協力要請は断る、こういうふうに理解してよろしいですか。
  186. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本が侵略されるおそれがあって、日本の自衛のために必要である場合には、当然意見が一致するでしょうし、そうでなければ一致しないということもある、これは当然だと思います。
  187. 矢山有作

    矢山委員 きわめてあいまいだ。それぐらいの答弁しかできぬでしょう。侵略をされるおそれがあるかないか、日本に危険が及ぶか及ばぬか、それはまさに主観的な判断ですからね。主観的な判断だから、アメリカの要求に従って、ああ、おっしゃるとおり日本にも攻めてこられるおそれがあります、じゃ一緒にやりましょうか、こうなっていくだろうという危険を感じます。  ところで、そうなった場合に一体どうなるのかということなのです、私が言いたいのは。そうなった場合に、現実には日本が武力侵攻はされてない、されてないが、そういう危険が南西アジアの米ソ紛争であるのだということで、こういう態勢に入ったとき、警戒態勢から作戦準備の最高段階にまで入ったときに、それが相手側に対してどういう影響を及ぼすのかということです。そうすると、まさにこれは挑発でしょう。アメリカの挑発ですよ。アメリカ側がそういうふうな言い方をしてやってくる。日本は、そうですかというので、そういう態勢に入る。これはソ連に対して挑発じゃないのですか。武力侵攻のおそれはよく考えてみたらないのに、武力侵攻のおそれがあるというふうに思い込まされて、作戦準備、戦闘準備の最高段階にまでいく。ソ連はそれに対して黙っておるでしょうか。私はソ連の反応というのは出てくると思いますよ。それが日本の安全を守ることになるのですか。(発言する者あり)南西アジアの米ソの紛争に日本がそういう形で関与していったら、エネルギー資源が確保できるのですか。私はそういう点を冷静に考えなきゃいかぬと思うのですよ。いまどなたかしゃべっておったけれどもアメリカの側に立って物を考えたらだめなんですよ。日本を守るのは日本人でしょう。日本人の判断でするんですよ。アメリカからとやこう言われる問題じゃないでしょう。そうなんでしょう。  ところが、日本の軍備の増強というのは、一体実態はどうなんです。最近の例は、皆さん、いろいろ言っておられるけれども、よう御存じでしょう。一方的にアメリカがどうしろこうしろ、わが国の予算の内容にまで立ち入って、数字まで挙げて、どうだこうだと言っている。われわれから言わせればまさに内政干渉なんだ。それほど日本防衛に対してアメリカからくちばしを入れてもらわなければやれないのですか。二言目には日本の自主性だとか独立性だとかいうことをおっしゃる人たちに、私は聞きたいのです。日本がやる防衛力に対してなぜアメリカからとやかく言われなきやならぬのですか。日本日本立場で考えたらいいんじゃないですか。そこのところを私は一番疑問に思うのです。
  188. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  御指摘のとおり、重要な問題であり、わが国の防衛にかかわる問題でございますから、わが国は自主的にかつ冷静に判断すべき問題である、これはまさに御指摘のとおりでございます。  ただ、先生は、日本は自主性がないから人の言うなりになるのではないか、まあそういうことを申されておりますが、私は決してそういうことを考えてないということをあえて申し上げる次第でございます。
  189. 矢山有作

    矢山委員 御答弁の中で、いや、おっしゃるとおり自主性はありませんと、そんなことはおっしゃらぬでしょう。しかし、よく考えてごらんなさい。対ソ認識においては一致だ、ソ連に対しては西側諸国が団結しなきゃいかぬ、わが方がいかにも団結の旗頭に立つようなことを言いながら、西側の一員としての責任を積極的に分担するんだ、こういう路線を歩いているわけでしょう。そこまでいくんなら、では共同戦略を立てましょう、それに対して日本はこういう役割りを果たしなさい、こう押しつけられてきている。それで言われた中で、あと自主的にどうこう、こうこう言っている。つまり路線は敷かれてしまっている。路線は敷かれてしまって、その敷かれた路線の上に乗って、わずかに、いや、それはどうも不本意ですとか、あるいはどうもすぐにはやれませんとか、いや、それは憲法上の制約があるんですとか、まあいろいろ言っているわけだ。言っているけれども、しかしながら、その日本側の言うことがいままで通ったためしがあるのか。通りゃせぬ。全部押しつけられてきているわけでしょう。私はその実態を言うておるのですよ。アメリカが言っても、言われてから、やるかやらぬかの自主的判断はわが方ですとおっしゃっている。自主的ということを盛んに強調される。しかしながら、客観的に見たら決して自主的などというものではない。それが、いまの日本の軍事力の増強の実際の姿だということを私どもは言っているわけです。それじゃ、日本防衛なんていったところで、しょせんはアメリカの対ソ戦略の一環を担わせられるにすぎないんじゃないんですか。  先ほど、私とは観点が違いますが、石原さんが言っておられましたね、アメリカの家来のようなものだと。まさにそういう実態じゃないんですか、実態は。そこのところに私は問題があると言っているのですよ。
  190. 大村襄治

    大村国務大臣 せっかくの御質問でございますが、私どもは、これまでも、あくまで日本防衛のために、日本の国のために、自主的に判断してやってきたと考えておりますし、今後もそのようにしなければならないと考えているわけでございます。  また、南西アジアの紛争がわが国の領域なり周辺に侵略の脅威を与える実際上の可能性もいまのところ考えられないのではないか、そういう考え方も持っているわけでございます。
  191. 矢山有作

    矢山委員 そういう南西アジアの紛争の危険性が考えられないんなら、そのことを率直に言って、アメリカの要求をけ飛ばしてくださいよ、もう少し自主的に。  そこで、私は、どだい無理があると思うのですよ。あなた方は、日本自衛隊日本の領域が侵害されたときに守るんだ、そう言っているわけでしょう。いわば、言葉をかえて言うなら、日本自衛隊日本列島守備隊なんだ。その日本列島守備隊の日本自衛隊が、アメリカと共同対処をやろうと言う。アメリカは地球規模で軍事力を展開しておるのですよ。アメリカの考えているのは世界戦略です。当面はソ連が標的なんですよ。ソ連を標的にした地球規模で広がっておるアメリカの世界戦略の中で、日本列島守備隊の自衛隊が共同対処していく、そのためのいろいろな研究をやる、こういうことになれば、行き着く先はもう決まっているのじゃないですか。アメリカの世界戦略の片棒を担ぐ、一翼を担わせられる日本自衛隊だともうはっきりしているでしょう。  そういう状態に対して私どもは納得ができない。そういう状態で続くならば、米ソの軍拡競争の中で、日本もその軍拡競争に巻き込まれて、そして東西対立を激化する、南北対立を激化する、さらに南々対立を激化する、世界の不安定を拡大するだけだ、私どもはこういう認識を持っているわけです。  そこで、ここでやり合っておっても時間の関係がありますから、次へ進みます。  この間、バローというアメリカの海兵隊司令官が上院の軍事委員会で証言しております。一九八二年度の海兵隊関係予算の証言です。その中で、NBC兵器戦に備える部隊を、海兵隊の師団、航空団、補給支援軍などにことしから配置する計画を明らかにしております。そして、今後敵のNBC兵器使用を抑止するためにも確固たる報復力を備えなければならぬ、だからそれをやるんだ、こう言っているわけですね。  それからまた、先般の朝日新聞だったと思いますが、阪中さんという編集委員の方とハワイの太平洋軍司令部のロング提督が対談をされたのが新聞に出ておりました。それを見ると、ロング太平洋軍司令官は、ソ連の戦域核兵器配備に対抗するため、米太平洋軍でも戦域核兵器の有効性を研究しておると言って、西太平洋地域でのアメリカの戦域核兵器の配備問題というものに触れておるわけであります。  こういうことをずっと総合して考まえますと、私どもがまず思い及ぶのは、沖繩には第三海兵師団がある、岩国には第一海兵航空団がある、そうすると、いまもやっておると言われておるのですが、やっておるかおらないかは別として、この沖繩の第三海兵師団、岩国の第一海兵航空団等が、NBC兵器の配置、戦域核兵器の配置ということで考えられておるのではないかというふうに私どもは思うわけです。皆さんは非核原則があるから拒否するんだ、こうおっしゃるのは目に見えておりますが、そういう事態が考えられておるということをどう御認識になりますか。
  192. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまパロー海兵隊司令官、ロング太平洋軍司令官の発言をとらえてのお尋ねでございますが、わが国といたしましては、核の脅威に対しましては米国の核抑止力に依存することにいたしておるわけでございます。そういうわけでございますので、米国の核抑止力の信頼性が維持されるということは、わが国の平和と安全にとっても重要な関係があると考えております。しかしながら、先生がさきに御指摘のとおり、わが国は非核原則を堅持しているのでありますので、またこの点につきましては米側も十分承知しているところでありますので、たとえ太平洋地域への配置等がなされるといたしましても、わが国に米軍の核兵器が持ち込まれることはあり得ないと確信いたしておるわけであります。
  193. 矢山有作

    矢山委員 そうおっしゃるだろうと思ったのです。しかし、私は、そうおっしゃったから、ああ、そうですが、それは安心しましたというぐあいにはいかないのです。というのは、これまでもたびたび、沖繩やあるいは岩国に核兵器が配備されておるのじゃないかということは、国会の場で論議になりました。アメリカに聞き合わした、文書回答が参りました、そういうことはやっておりません、ああ、そうですが、アメリカ日本の間には信頼関係がある、アメリカ日本非核原則を知っておる、だからその日本の信頼を裏切って核兵器は持ち込まないだろう、こういうのが政府の繰り返してきた答弁ですね。ところが、核がどこにあるかないかということは、御承知のようにアメリカでは最高機密なんでしょう。だから、核がどこにありますということは絶対言わないのです。もし日本から、岩国にあるんじゃありませんか、沖繩にあるんじゃありませんかといって問い合わせを受けて、正直に、はい、ありますと言ったら、核がどこにあるかということを絶対の最高の秘密として考えておるアメリカのその秘密がまるでばれてしまうことになりますから、それは言うはずがないのですよ。言うはずがないことを、聞き合わしてみたら「ある」と言わぬからないんだ、こういうのが日本側の受け取り方だった。  ところが、ここで考えなければならぬのは、アメリカ戦略体系というのは一体どうなるかという問題です。核を頂点に据えた戦略体系でしょう、アメリカ戦略体系というのは。そして、しかもNATOにおいても戦域核の問題が重視されておる。また今度、パローやあるいはロングさんから、戦域核の太平洋配備の問題が持ち出されてきた。私は、非核原則があるから絶対大丈夫だ、日本には持ち込まぬだろう、そういうふうにのんきには構えておれぬのじ牛ないかと思うのです。というのは、たとえば、これはこの間の参議院の予算委員会だったですか、有事来援の米軍の核装備というのは当然あり得るだろう、こういうふうな見解を示されたようですね。違いありませんね。
  194. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまのお話は、もし共同対処という事態になった場合に、アメリカから来援してくる機動部隊等に核装備があるだろうということは推定できる、そのことと日本に核を入れないということは当然別なことでございますから、機動部隊そのものが核装備を持ってくる可能性があるということは、それば否定できないだろう、こういう趣旨で申し上げたわけであります。
  195. 矢山有作

    矢山委員 その際、日本には非核原則があるから持ち込まぬだろう、そうすると、核を積んだアメリカの支援艦隊が日本にやってくるとすると、おい、核を積んだ船だけはここから領域に入るなよ、おまえたちはここにとまっておれ、あるいは日本には核は持ち込めぬからグアムぐらいで外して置いておくか、フィリピンのスビッグ基地ですか、あそこに置いておいて、外して、核を持たずに入ろうじゃないか、こんなことになるのでしょうか。まさに理屈のための観楓だ、こんなことがまかり通って、それをこの国会の場で論議しておることが私はおかしな話だと言うのです。  私は、この間、実はアメリカのカーネギー財団の平和研究所におるある人の話を聞きました。そうしたら、日本での核論議をアメリカでは笑っておるそうです。核兵器を日本の領域に入るときには外して入るんだ、こういって日本では一生懸命言っておる、子供じゃあるまいし、そんなばかげたことを信じておるのだろうかと言って笑っておるのです。まさに私はそのとおりだと思うのですよ。ソ連を相手に戦争が起こったときに、日本を支援に来ておる米軍が、核を持ってきたが、領域に入る前で核はどこかに外して置いてきた、あるいは核を積んでおるものだけには、おまえはここから先は入ってはならぬ、そこへとまっておれと言って、核を積んでいないものだけが横須賀へやってくるとか、あるいは領海に入ってくるとか、こんな話を信用されるのですか。そういうことを信用して日本防衛の問題を論議しておるから、全くナンセンスだと言うのです。そういうことは私ははっきりさすべきだと思うのですよ。それを言ったら世論が沸いて大変なことになるだろう、だから言ってはいかぬのだ、外してくるんだ、核を持ったものは領海外にとめておくんだ、そんなばかげた話になるのですよ。こういうばかげた話を防衛局長、あなたはまじめな顔をして本当に言っているのですか。防衛庁長官もそう思っているのですか。
  196. 大村襄治

    大村国務大臣 、お答えします。  非核原則は、国会の議決を経た、わが国にとりましては、いわば国是とも言うべき原則でございます。最大の友好国であるアメリカ政府におきましても、その点はよく承知しているところだと考えております。この点についていろいろな御意見があり、その一部が先生のお耳に入ったということもあろうかと思うのでございますが、基本においてはそういう間柄でございますので、私はその基本の大筋に従って今後も対処してまいりたいと考えているわけでございます。  それから、先ほど御発言の冒頭におきまして、アメリカが核戦力のみを重視しているようなお言葉もございましたが、最近の、新政権になりましてからのいろいろな公式発表を見ますと、通常兵器に対する対処の仕方ということにつきましても、相当重点を遣いできておるという事実もございますので、関連して申し上げておきます。
  197. 矢山有作

    矢山委員 誤解されては困りますが、核だけつくっておるとか、通常軍術をつくるのを抑えておるとか、そんな議論をしておるのじゃないのですよ。核は核で、戦略核の近代化とか言って全力を挙げておるし、また通常軍事力の強化も必要だということでやっておるんだが、しかし、総体としてのアメリカ戦略というのは核を頂点に置いた核戦略態勢なんだということを言っておるのであって、決して核だけやっているとか、通常軍備をゆるがせにしておるとか、そんな意味のことを言っておるのじゃないということです。  この問題は、やればやるほど、こちらも理屈のための理屈の言い合い、そして、まさに子供だましのような議論になってしまいますから、この辺でやめまして、次に問題を移していきます。  有事法制の研究が大体まとまって、近いうちに中間報告と称するものがあるんじゃないかと思うのですが、その具体的な内容というのをごくかいつまんでお示しいただけませんか。
  198. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 有事法制の研究につきましては、まず第一は、防衛庁所管にかかわる法令、これは防衛庁設置法、自衛隊法あるいは防衛庁職員給与法がこれに該当するかと思います。これが第一の分野です。  それから第二の分野としては、防衛庁以外の各省庁にわたる法令の研究、すなわち通信連絡、輸送手段、火薬類の取締等に関する法令がこれに含まれようかと思います。  それから第三の法令としては、いずれの省とも所管のはっきりしないもの、たとえば有事における国民の避難誘導に関するもの、あるいは捕虜の問題、そういったいわゆるジュネーブ四条約にかかわる国内法制のようなもの。  こういう三つに分けられようかと思います。  このうち、現在私ども検討しておりますのは、この第一分類、すなわち防衛庁所管にかかわる法令を中心に研究しておりまして、この中身が、研究が大分進みまして、そう遠くない将来において中間御報告できるのではないかというふうに思われます。  主な中身としましては、自衛隊法百三条による土地の使用、物資の収用あるいは従事命令等がありますが、この政令の中身が決まっておりません。そういったものの中身、あるいは適用時期の問題、あるいは二十二条で特別の防衛出動が下令された場合に特別の部隊を編成することになっておりますが、この編成の時期、あるいは隊法第七十条の予備自衛官の招集の時期の問題、こういったことが主な内容であろうかというふうに思っております。
  199. 矢山有作

    矢山委員 いまお示しになったことに一つ一つお尋ねする時間がありませんので、その問題は御報告があった段階でいろいろお尋ねをしていきたいと思いますが、一つだけお聞きしておきたいのは、跡術出動時における物資の収用あるいは従事命令を出すという場合、その手続や範囲等を研究されるということなんですが、その場合に、従来いろいろと言われておる論議の中で出てまいりましたのは、従事命令を出した、そういった場合に罰則規定がないじゃないか、だから、従事命令を出しても聞いてもらえなければそれだけの話になってしまう、だから、やはり従事命令を出した以上、それを担保する罰則規定とかどうとか、そういったものが要るのじゃないかという議論がなされてきたわけでありますが、この点はどうお考えになっておりますか。
  200. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 確かに百三条のいろいろな命令に関しての罰則規定はございません。ただ、災害救助法その他には同種の規定があることは御承知のとおりであります。  ただ、私ども、いまこの罰則の問題について検討しておりますけれども、果たしてこの罰則があることが必要であるかどうか、あるいはまた有効性があるかどうか、これは国民の権利義務にも重大な影響を及ぼす問題でもありますので、現在まだ慎重に検討しておるというのが実情でございます。
  201. 矢山有作

    矢山委員 そこで、もう一つお聞きしたいのですが、きょうは法制局の方が見えておると思うのですが、私はまだ詳細なやりとりを会議録で承知しておりませんので、その前提でお尋ねしたいのですが、従事命令を出すということ、これは災害救助法等と同じように憲法上問題はないという見解を出されておるやに聞いておるのですが、これは質問に対する答弁書でやられたのですが、それはどういう根拠から、従事命令を出したとしてもそれは憲法違反ではない、合憲だという結論に持っていかれたのですか。
  202. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 自衛隊法百三条に基づく従事命令につきましては、災害救助法などに基づく従事命令と同じ範崎に属するものである、そういう意味で憲法に反するものではないということは、先般の森清議員に対する答弁書、さらに衆議院の法務委員会における稲葉誠一委員に対する私の答弁、その二度にわたってお答えをいたしておるところであります。  それでは、なぜ災害救助法に基づく従事命令と同じように憲法上許されるかということになるわけでございますが、これは広い意味では両方の制度ともいわゆる公用負担、そういうものの一種であろうと思います。公用負担につきましては、その公用負担を課する目的なりあるいは負担の内容なりあるいは手続、そういうものが合理的な範囲内のものでなければならないということになると思います。  そこで、手続につきましては、先ほど来話が出ていますように、将来政令で公正な手続が定められると思いますが、まず目的なりあるいは負担の内容という点に着目して申し上げますと、災害救助法に基づく制度も、それから自衛隊法百三条に基づく制度も、一定の役務の提供を強制するという点では全く同じでありますけれども、百三条に基づく制度の目的というものを考えてみますと、これは自衛隊防衛出動して、現にわが国の防衛活動に従事している、そういうものに対する補助的と申しますか、あるいは後方支援といいますか、そういう目的のもとに公用負担が課せられるわけであります。したがいまして、それは、一般の公共的な事業と同じような意味で、国の防衛という公共的な目的を持っていることは間違いないと思います。  さらにまた、負担の内容としても「外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要」という、きわめて緊急の場合に初めて課せられるものであるということ。  さらにまた、自衛隊の防御出動下における自衛隊の任務遂行に特に必要がある場合に限られていること。  さらに、役務の内容が運送とか医療とか土木というような現にそういうものに従事している、専門的な業務に従事している者に対して、それと同じ種類の業務を課するわけであります。しかも、その業務地域というのは、役務の提供の場所は、自衛隊行動に係る地域、そういう地域以外の後方の地域であるということ。  そういう点から見て、災害救助法等の災害対策関係法の従事命令の制度と同じように、公共の福祉に照らして社会的に当然に負担すべきものとして認められる範囲内のものである、このように考えられますので、私どもとしては憲法に違反するものではない、こういう結論を出しているわけでございます。
  203. 矢山有作

    矢山委員 これは憲法論議になろうかと思いますが、私はそういう結論を出されたのは非常に大きな疑問を持つのです。  災害救助の場合と横並びで考えるということは、どだいおかしい議論であって、武力攻撃を受けて自衛隊防衛出動を下令された、それに対して、いわゆる自衛隊の支援として従事命令が出されていくので、災害救助の場合と同一視するというのは私はおかしいと思うのです。そういうような点はどうお考えなんですか。
  204. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 先ほどの私の説明を繰り返して申し上げるほかはないと思いますが、災害救助の場合も、これは社会的に当然に負担すべきものとして認められるものであるというと同じ意味で、国の防衛ということが公共的な性格を持つことは確かだと思います。そういう意味においては、公共負担の一種として許されるであろうということをまず目的の点では申し上げたつもりであります。  それから負担の内容につきましても、先ほど申し上げたようなことで、実際に自衛隊が活動している地域よりずっと後ろの方の、一定の府県知事の指定した地域に限られており、しかも職務の内容というものも負担の内容というものも、ふだんやっておる仕事をやらされるということでございますから、災害救助と同じように引き直して考えていいのじゃないか、こう申し上げているわけでございます。
  205. 矢山有作

    矢山委員 きょうは、この論議を続けることは、時間が来たからこれでやめておきますが、私はやはり、自衛隊法で武力攻撃を受けて防御出動が下命された、その段階での徴用、従事命令というのは、きわめてこれは軍事的色彩が強いと思うのですよ。それを国の防衛という、公共の負担だというふうに考えるのなら、これはまた、私は、それとの関連で別の問題に広がっていって、大変な議論になるだろうと思うのです。しかしながら、この議論は後日また別の機会に残しておきます。  予定しておった質問が大分残ってしまったわけでありますが、私は時間を守るという意味からこれでやめたいと思いますが、私が最終的に申し上げたいのは、いまの世界の緊張や不安定がソ連に根源があるというふうな対ソ認識というところに、非常に大きな疑問があるというふうに思っているのです。  というのは、第二次大戦以後の世界の紛争というものを取り上げてみたときに、この間の内閣委員会でも言ったのですけれども、この紛争というものは、特別な例外、それを除いては、御存じのように全部第三世界の中で起こった問題です。植民地独立戦争だとか、あるいは独立した後の権力の所在をめぐっての争いであるとか、あるいは国境をめぐる紛争であるとか、そういう実態から見たとき、現在の世界の紛争というのは第三世界の中での問題である。それを認識しないで、ソ連を標的に置いて、ソ連さえ抑え込めば世界の不安定と緊張状態は解消できるのだという考え方には、どうしても納得できないのです。第三世界の問題を解決するということがまず優先されるべきである。私はこれが世界の不安定の根源だと思う。  たとえば、この間ヘイグ国務長官が中東方面に行きました。そして、ソ連に備えるという立場からそれぞれの国に対して軍事協力を申し出た。しかしながら、これはみごとに拒否されておりますね。つまり、アメリカが軍事協力という形に出てくるならソ連の介入を招くだろう、要するに中東の紛争というのは米ソにかかわりのない問題である、その米ソに直接的なかかわりのない中東紛争にアメリカの軍事協力を受ける、それがソ連介入の引き金になる、まさに中東が米ソ対決の場になる、そういうことを絶対承服できないという彼らの立場が、ヘイグ国務長官を迎えたときの彼らの態度であり、その結論であったと思うのです。  そういう意味から、現在の国際情勢の認識、つまりソ連の軍事力の増強、そしてその軍事力の増強を背景とした第三世界への進出、これが世界の不安定、緊張の最大原因である、したがってソ連を標的にした軍事力強化で抑え込んでいけば世界の不安定はなくなる、こういう考え方には基本的に私は賛同できない。むしろ第三世界の問題にわれわれは目を向けるべきであるという私の意見を最後に申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  206. 坂田道太

    坂田委員長 嶋崎譲君。
  207. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私は時間も一時間半でございますから、回答の方も簡潔にお願いをしたいと思います。主として軍事基地をめぐる、基地と環境の問題を最初に御質問申し上げます。  先々週の何日か、日を忘れましたが、石川県の小松の基地にファントムの三〇六飛行隊の配置の通知がございましたが、いつ配置されますか。
  208. 塩田章

    ○塩田政府委員 五十六年度第一・四半期であります。
  209. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それは何月のいつごろですか。
  210. 塩田章

    ○塩田政府委員 六月末までを予定しております。
  211. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 六月末ですね。第六航空団三〇三飛行隊がすでに小松におりまして、F104にかわりまして三〇六飛行隊が配置されると聞いておりますが、そうですか。
  212. 塩田章

    ○塩田政府委員 そのとおりでございます。
  213. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 現在F4の配置されている基地はどこと、どこと、どこですか。
  214. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在F4の配置されておりますのは千歳の第二航空団第三〇二飛行隊、小松の第六航空団第三〇三飛行隊、百里の第七航空団第三〇一飛行隊、同第三〇五飛行隊、築城の第八航空団第三〇四飛行隊、以上でございます。
  215. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私が昭和五十年の六月五日の内閣委員会で質問をした際に、このファントムの配置の一番最後が、丸山政府委員の説明によりますと、小松から築城に行きまして最後は沖繩と聞いておりましたが、沖繩にどうして配置していないのですか。
  216. 塩田章

    ○塩田政府委員 沖繩は現在104が配備してございます。まだそこまでの配備計画に至っていないわけであります。
  217. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうですか。地元との交渉がまとまらなかったのではありませんか。
  218. 塩田章

    ○塩田政府委員 まだ地元交渉をいたしておりません。
  219. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうじゃなくて、私が内閣委員会で質問したときには、築城の次は那覇だということをこの委員会で答弁をされておられたのです。ところが、那覇に行くべき三〇五が百里に行ったんじゃありませんか。
  220. 塩田章

    ○塩田政府委員 ちょっと恐縮でございますが、御指摘の点、私、いま事情を承知いたしておりませんので、お答えいたしかねます。
  221. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 当時は、小松にはF104とそれからF4です。そして築城にその次に三〇四飛行隊を配置して、そして次に三〇五飛行隊は那覇に配置する予定であったのです。ところが、地元の交渉がまとまらなかったために、これが百里に配置されたと私は理解しております。つまり、那覇に予定したけれども、地元との交渉がまとまらなかったということのために配置計画の変更があったとすれば、小松に配置する場合にも、地元との交渉がまとまらなければ配置しないということがあり得るのですか。
  222. 塩田章

    ○塩田政府委員 急なお尋ねでございますのでちょっと資料がございませんでしたが、御指摘の丸山政府委員の答弁を読んでみますと、「沖繩につきましては、かなり先の問題になりますので、まだ予算もついておりません。」というふうに、当時嶋崎委員お答えいたしております。
  223. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 作戦計画として恐らくその辺の見通しを持っていたから、当時那覇と答えたものと私は思いますが、したがいまして、防衛局長がこんなことの経過がわからぬというのはぼくにはさっぱりわかりませんけれども、そういう事態が過去にあったとすれば、地元との交渉というのは、大変重要な防衛の配置、飛行隊の配置計画の問題にかかわってまいります。そういう意味におきまして、その点を調査の上、御連絡を願いたいと思いますが、いいですか。
  224. 塩田章

    ○塩田政府委員 調査の上、御連絡いたします。
  225. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、現在新鋭のF15はどこに待機中でありますか。
  226. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在、岐阜基地にございます航空実験団に二機配備いたしておりまして、実用試験用として使用いたしております。来年度に、五十七年度に最初のF15飛行隊を新田原基地に配備する予定であります。この準備のために、臨時飛行隊を今年度後半には同新田原基地に配備することになろうと思っております。
  227. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 F15の編成定数は何機ですか。
  228. 塩田章

    ○塩田政府委員 恐縮でございますが、いま数字を私、承知しておりません。
  229. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 全然そんなことわかっていないの、防衛局長。編成定数もわからぬで、年度末に——ここの飛行隊は八機配置するんじゃありませんか。
  230. 塩田章

    ○塩田政府委員 臨時飛行隊は八機であります。
  231. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 F15がいま岐阜に二機おりますね。これは月産どのくらい、一機ですか。どのくらいの勢いで生産しますか。——時間がかかりますから、後で調べて回答ください。大体月一機です。ですから、六十年度までに二つの飛行隊ができるという計画が進んでおると聞いていますが、いかがですか、F15の場合。
  232. 塩田章

    ○塩田政府委員 F15の新設は五十八年度までに二つであります。
  233. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 どこに配置される予定ですか。
  234. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま決めておりますのは、最初の飛行隊の新田原基地だけでございます。あとはまだ決めておりません。
  235. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 小松に配置するF104は耐久年数が来ているということで、ファントムに切りかえられると聞いております。千歳は現在F104が配置されておりますが、千歳にこのF15が配置されると聞き及んでおりますが、いかがですか。
  236. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げましたように、F15で配置先を決めておりますのは新田原だけでございまして、残りの配置先についてはまだ決めておりません。
  237. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私は情報として聞いておりますから、千歳に配置されるものと防衛局長が答えられると思ったのに、まだわからぬそうでありますが、いずれにせよ、そのような配置になるはずであります。  いま築城にありますT2という練習機五機が配置されますが、この飛行機は何ですか。
  238. 塩田章

    ○塩田政府委員 T2自体は御承知のように練習機でございますが、いま御指摘の築城の五機は、飛行教導隊を五十六年度新編をいたす予定でございまして、そのための飛行機でございます。
  239. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これはソ連の飛行機を想定しての練習機でありませんか。
  240. 塩田章

    ○塩田政府委員 ソ連の飛行機ということでなくて、御承知のようにT2は日本の国産の練習機でございまして、その練習機を使いまして飛行教導隊というものを新編いたしまして、全国のパイロットの中で優秀な者を教官として集めまして、全国の戦闘部隊のパイロットに対する再教育を実施する、こういう予定の飛行隊でございます。
  241. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 先ほど自民党の委員からの質問にもありましたように、F15の最新鋭機の飛行機の飛行訓練は十分に行われていると思いますか。
  242. 塩田章

    ○塩田政府委員 F15に限りませんで、航空自衛隊のパイロットの訓練のための、主として油の問題でございますけれども、あるいは訓練空域等いろいろな問題がございまして、私ども必ずしも十全の訓練環境にはないと思っておりますけれども、その中でベストを尽くして訓練をしていくという考えで努力しているわけであります。
  243. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 年間決められた飛行の訓練時間数はどのぐらいですか。
  244. 塩田章

    ○塩田政府委員 正確に申し上げるのは差し控えさせていただきますが、百六十時間前後というふうに御理解いただきたいと思います。
  245. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 目標は二百時間、しかし二百時間にならないので、百六十時間前後になっているのではありませんか。
  246. 塩田章

    ○塩田政府委員 各国とも一応二百時間程度を目指しておるわけでございますが、各国とも、いまの油の事情等もございまして、大体私どもが申し上げた程度になっているというふうに聞いておりますが、わが航空自衛隊の場合も同様な事情でございまして、百六十時間前後というふうな状況でございます。
  247. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 恐らく国際比較をしたら、この時間数ではパイロットのまともな訓練ができるかどうか、最新鋭の飛行機の場合には非常に重大な問題があると思います。そのことは後の環境問題を議論するときに重要になります。飛行機の安全性という問題に絡まるからであります。したがって、まず前提としてちょっと申し上げておきます。  そこで、六月の下旬ごろ小松基地にF4の三〇六飛行隊が配置されるわけでありますが、この小松市と防衛施設庁の間に昭和五十年でしたかな、一〇・四協定なる協定が結ばれているのを御存じですか。
  248. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 存じております。
  249. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この一〇・四協定で結ばれたその協定の精神を、今後も実行していくという決意のことと思いますが、いかがですか。
  250. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 五十年十月四日に、両当事者として防衛施設庁長官、石川県知事、小松市長ほか関係市長、その他立会人の方がございますが、そういうことで結ばれた協定でございますので、私どもはこの協定をこれまでも誠実に実施してきたつもりでございますが、今後も誠実に実行していく、こういうつもりでございます。
  251. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 環境庁来ておりますか。——この当時の防衛施設庁長官と石川県知事との間に結ばれた基本協定書の第一の点は、昭和四十八年十二月二十七日の環境庁告示百五十四号「航空機騒音に係る環境基準について」、これに相当する小松飛行場の種類を定めた上で、つまり、公共用飛行場区分第二種Bと定め、「期間内に速やかに環境基準の達成を期する。」と明記してあることを御存じですか。
  252. 加藤三郎

    加藤説明員 存じております。
  253. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 すでに昭和五十年の三月、六月、十二月などの内閣委員会や公害対策委員会で、この一連の問題の長い討論をやってまいりました。したがいまして、この環境庁の環境基準は、運輸省も、同時にまた建設省の都市計画に当たっても、この基準を適用するという観点で対処しようとしていると思いますが、いかがですか。まず運輸省。
  254. 米山市郎

    ○米山説明員 環境基準の達成のために、運輸省としても努力をいたす所存でございます。
  255. 簑原敬

    ○簑原説明員 都市計画の市街化区域、調整区域の区域区分及び用途地域等の地域、地区の決定に当たりましては、都市計画法の十三条の規定によりまして、「土地の自然的条件及び土地利用の動向を勘案して、」、「都市機能を維持増進し、かつ、」「公害を防止する等適正な都市環境を保持するように定めること。」とされております。  騒音につきましては環境基準が定められておりまして、基本的には発生源について環境基準を達成するよう対策を講ずるというふうに考えておりますが、周辺の土地利用につきましても、公害の防止を図る観点から環境基準についても配慮するように、都市計画決定権者を指導しているところでございます。
  256. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 このように環境基準は、民間の飛行場並びに基地近辺、民間の場合には、飛行場近辺の都市計画に当たりまして、基本的な基準としてその達成に努力しているということが前提でありまして、防衛施設庁も、この中西陽一石川県知事並びにその基地のある当市の市長、当時の竹内市長、近辺の町村長などとの協定におきまして、公害基本法九条に基づく騒音に関する環境基準を達成することを約束しておりますが、防衛庁はこの立場で今日まで対処しているわけですか。
  257. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 ただいま関係省庁の方から御答弁ございましたように、環境庁の告示は、生活環境の保全等を図る上で、維持することが望ましい環境基準と、達成期間について定めておるものでございまして、外部の騒音を七十Wもしくは七十五W以下にする、それが環境基準であるというふうに理解をいたしております。  ただ、その中で、航空機騒音の防止のための施策を総合的に講じても、この達成期間でただいま申しました環境基準を達成することが困難と考えられる地域におきましては、「当該地域に引き続き居住を希望する者に対し家屋の防音工事等を行うことにより環境基準が達成された場合と同等の屋内環境が保持されるように」しなさい、ということが定められております。  もともとこの環境基準そのものは、自衛隊等が使用する飛行場の周辺地域におきましても、これに準じてやるようにということが定められております。したがいまして、私どもは、これに準じた考え方で現在まで取り組んでまいったわけでございます。  ただ、ただいま先生御指摘の、いわゆる五十年の一〇・四協定で、四十八年十二月二十七日の環境庁告示の「航空機騒音に係る環境基準について」というものに従って、「定められている期間内に速やかに環境基準の達成を期する。」と、こういうふうに掲げてございますが、これは、先ほど申しました外部の環境を環境基準そのものにまで達成するということはきわめて困難でございますので、私どもとしては、この環境庁告示の先ほど申しました第二の三項の措置を含めて、環境庁告示の定めるところに従って措置するということをあらわしたつもりでございまして、その考え方に沿って従来から努力をいたしておるところでございます。
  258. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私が昭和五十年十二月十六日の内閣委員会で質問をした際には、この一〇・四協定で言っているところの環境基準を軍事基地に適用した場合に、十年後という時期までにその実施はできないのではないですかという、あらゆる観点で質問をいたしました。そうしたら、防衛施設庁の方は、「できるし、しなければならぬ」と答えております。御存じですか。
  259. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 念頭にはそういうことがございます。ただ、現実の問題として、私がただいま申しましたように、外部の環境につきまして、環境基準に定めるところと全く同等の環境を保持することはきわめて困難な見通しでございますので、先ほど申しましたように、屋内環境について速やかにこの基準を達成するように努力をいたしておるというところでございます。
  260. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それは違う。その当時は、防衛庁はファントムを入れたかったのです。ファントムを入れたかったから、私が軍事基地についても民間並みの環境基準を実施するのですかと言ったら、前提としてまず実施しなければならぬと言った。ところが、民間の飛行機と軍用機とでは、騒音源の規制にしても運航の規制にしても、さらにまた、基地近辺の防音堤並びに防音林などの対応をしても、屋外における七十ないし七十五以下という環境基準の適用は事実上できない、私はそう判断をして、環境基準の適用は、その意味では、基本的な屋外における七十ないし七十五以下の状態には軍事基地の場合にはできないはずだということを、皆さんにいろいろ質問をいたしました。ところが、それを前提にした上で努力をすると答えてきたところに、できもしないことをよく答えるものだと不思議に思いまして、確認を幾度かしてきたところであります。そう私は理解をしておりますが、施設庁はどう理解しておりますか。
  261. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 当時の議事録を読みますと、その当時の防衛施設庁の政府委員の答弁はやや舌足らずの点があるように思いますが、環境基準の達成という意味は環境庁告示の定める全体を含めて申し上げたところでございまして、先ほど申しましたように第二の三項の措置、つまり屋内環境の基準の達成、これも実は非常に困難でございまして、私ども大変苦慮いたしておるところでございますけれども、この達成について努力をいたしておるというのが私どもの真意でございます。
  262. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この協定書の第一項に言っているのは、非常に重要な協定の第一項であります。当時の市長や地元では、この第一項の協定の内容は、環境庁告示第百五十四号「航空機騒音に係る環境基準について」非常に基本的な環境基準をまず明確にした上で、それに「従って、公共用飛行場の区分第二種Bについて定められている期間内に速やかに環境基準の達成を期する。」、このような理解の上に、非常に重要な意味を持って、この環境基準に従ってという協定をしたと、当時内閣委員会で議論した上で、地元の市長とこの協議に参画したものとして、私は理解をしております。どうですか。
  263. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 私も実は、御質問があるということでいろいろ調査をいたしてみました。先生おっしゃるように、地元の方々はそのような御理解であったかもしれないと思いますが、一方の当事者である施設庁の方におきましての考え方というものは、先ほど申しましたように環境庁の告示の第二の三項を目指して努力をする、こういうのが真意でございまして、そのために「環境庁告示第百五十四号「航空機騒音に係る環境基準について」に従って、」という表現になっております。つまり、このかぎ括弧は第二の三項も全部含めた「従って、」という意味であります。  そういう意味で実は書いたつもりであったようでございますけれども、非常に厳密なことを申し上げれば、「環境基準の達成を期する。」と書いてございますから、それは、先生先ほど来御指摘のようなふうに誤解を与えたかもしれません。したがって、この表現自体について議論はあろうかと思いますが、真意は私が先ほどから申し上げているような考え方でやったものでございまして、当時この問題について両当事者間で話し合ったという記録はないように聞いております。
  264. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この「環境基準について」は、その問題が重大だから、私は、内閣委員会や公害対策特別委員会で、屋外で七十ないし七十五以下の環境基準の実施に向かって努力するのですか、環境庁の指示どおりにやるのですかという質問をいたしました。その際には、あくまで屋外においてW七十ないし七十五以下にするということが基本であるが、附則条項があるので、こういう回答をしてきたわけであります。ですから、そこでぼくは、それならば民間飛行機の場合には騒音源の規制もできる、また運航の変更も優先滑走路方式などの方法がとれる、また同時に、防音堤その他の対応も民間の場合には厳しくやるが、軍事基地の場合にはできないのではないですか、ということを何度も何度も言ってきたのです。それを結局環境基準の、屋外において七十ないし七十五以下にするという原則を貫きながら、防衛施設庁は努力するということで附則の問題は説明してきました、委員会の議事録を私はこう理解しております。したがいまして、これには防衛施設庁の側の解釈とわれわれの解釈の違いがありますが、現地の市長や自治体の理解は、基本的に、私の議事録を受けましてこの協定を結んだということを、まず前提として申し上げておきます。  そこで、内容に入ります。運輸省は、現在環境基準に従って、昭和五十八年までの間にどのような対応をいたしておりますか、環境基準達成のために。
  265. 米山市郎

    ○米山説明員 運輸省といたしましては、航空機騒音に係る環境基準の改善目標の達成に向けて、航空機騒音防止法に基づいて指定されました十六の特定飛行場につきまして、低騒音の大型機、いわゆるエアバスの導入等の発生源対策を一つの柱、それから移転補償、民家防音工事等の周辺対策をいま一つの柱として、種々の対策を講じてきております。  特に民家防音工事につきましては、これまで約千五百六十億円余りを投入をいたしまして、五十四年度からは家族数に応じまして五室まで防音工事の対象とする、いわゆる全室防音工事を進めてきたところでございます。  本年度におきましては、助成対象区域の基準を、現在WECPNL八十まででございますが、これを七十五まで引き下げまして、対象区域の見直しを行うことによりその充実を期していきたい、かように考えているところでございます。
  266. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いまの説明によりますと、民航の場合には八十の騒音コンターの線引きをしたということ、そして八十を超える分については、八十から八十五までも含めて全室防音という対応をしてきたということ、そして現在七十五のコンターの作成に入ったと聞いておりまして、昨年の十一月ごろ七十五線引きのための調査に入ったと聞いておりますが、そのとおりですね。
  267. 米山市郎

    ○米山説明員 七十五への線引きはこれから行うわけでございますが、その基礎資料として昨年騒音調査の実態調査をいたしております。
  268. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今年中に七十五の線引きをやるのですか。
  269. 米山市郎

    ○米山説明員 本年度中に線引きの告示をしたいということで、地元との調整等もございますので、作業を急いで、できるだけ早く告示に持っていきたいと思っております。
  270. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 防衛庁は、小松の基地についていまどこまで線引きの告示をしましたか。
  271. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 小松飛行場の騒音の区域指定は二度にわたって行われております。第一回は、昭和五十三年の十二月二十八日で……(嶋崎委員「どこまでと聞いているのです」と呼ぶ)八十五Wのところまでを五十二年十二月二十八日にい、たしまして、昨年の九月十日、八十WECPNLの地域まで告示しております。
  272. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 民航の場合には八十までは全室防音ですが、基地近辺の場合はどうなっておりますか。
  273. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 自衛隊等の飛行場は対象となる飛行場も多うございますし、公共用飛行場と違いまして運用形態等に特殊な事情がある、かなり苦しい財政事情下での制限等もございまして、対象世帯数は膨大でございますので、差し当たって住宅騒音に悩まれる方を一人でも多く救おうということで、当面一、二室防音ということを重点的にやっております。
  274. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 民間の場合には、全日空を初めとして民間の企業は、国で決められたとおりの環境基準を実施するためにあらゆる努力をしています。基地の近辺は甘えていいというものではありません。環境基準の適用をするということを防衛施設庁が約束した以上は、民間並みの努力をする意思はありますか、財政の問題は検討するとして。その意思はありますか、八十以上の場合。
  275. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 ただいま施設部長が御答弁申し上げましたように、民間のいわゆる公共用の飛行場と違いまして、自衛隊の場合には飛行形態等が非常に特殊でございます。したがいまして、いわゆる音源対策等に限度があるということが一つ。そのほかにも、対象戸数が非常に膨大でございまして、非常にラフな数字でございますけれども、現在私どもが推定し得る対象戸数というのは約四十万戸近くございます。  そういうこともございまして、私どもとしては、予算の非常に厳しい制約がございますために、とりあえず一室及び二室の工事をやっておりまして、一遍に一家屋全室の防音工事というものはでき得ない状況でございますので、とりあえず非常に騒音に悩む方々を対象にいたしまして、一室、二室の工事をやっておるところでございます。  もちろん私どもとしても、環境基準というものが示されているわけでございますから、それに沿って今後あらゆる努力を払いたいというふうに考えておりますが、現実の問題としては、財政的にも非常に困難な見通しにあるということを御理解いただきたいと思います。
  276. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だって、十年前に、再来年の五十八年には屋外で七十ないし七十五以下にいたしますと、その努力を前提にして対応するということを約束してきたのです。民間の場合にはすでに八十まで努力をして、全室防音までやっておるのです。防衛に金がかかるのはしようがないのですよ。国民のコンセンサスを得るために防衛に金を使っているのでしょう。だから、その努力するということを約束しなければ、二年以内に環境基準の達成はできないじゃありませんか。
  277. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 小松基地につきましては、とりあえず一、二室の防音工事を実施してまいりまして、協定にうたわれている昭和五十三年度までには希望の世帯についてすべて終わっております。つまり一〇〇%完了いたしまして、その後五十四年度、五十五年度に新たに出てまいりました希望世帯数についても全部完了いたしておりまして、とりあえず一、二室については一〇〇%終わっておるわけでございますが、ただ、これは八十五W以上の区域でございます。その後八十Wに拡大をして現在実施しつつありますし、それからさらに、いずれは七十五Wの方に区域を拡大しなければならない。それからさらに、一、二室だけではなくて、その後追加工事として、全室化も追いかけて工事を実施しておるという状況でございます。  ただ、先ほど申しましたように、非常に言いわけになりますが、財政的に制約が大変厳しいということもございます。非常に対象戸数も膨大であるということでございます。予算の仕組み等も若干異なっておるために、私どもとしては十分な財源を与えられておらないわけでございますが、しかしこれは言いわけにならないわけでございまして、先生御指摘のとおり、私どもは今後あらゆる努力を払ってこの目標に向かって努力してまいりたいというふうに考えております。
  278. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 七十五の線引きは、防衛施設庁はいつごろやりますか。
  279. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 現在、調査結果等に基づきまして、総理府令の変更、それから告示の準備等を行っておりますので、今年内には七十五の区域指定を行えるだろうと考えております。
  280. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今年内ですね、間違いありませんね。
  281. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 そのとおりでございます。
  282. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 七十の予定はいつまでですか。
  283. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 七十につきましては、現在のところまだ予定を立てておりません。
  284. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 二年後には十年後の環境基準達成の時期が来るのですよ。そして、十年前にわれわれがこの環境基準に基づいてここで議論したときは、先ほど言いましたように、十年後には屋外で七十五、七十以下を言いながら、基準で言っている五年までの間は第二種Bであるとすれば、五年までの間には八十五です、屋内では六十五以下。したがって、その後については、つまり再来年までの間には七十以下と七十五以下の線引きをやっていなければ、環境基準の第I類型、第II類型の線引きにはならないのです。そういう意味では、今年じゅうに七十五をやるとすれば、七十までも今年じゅうぐらいに線引きをやらなければ、二年後には全体の方針が立たないと思います。速やかにやるべきだと思いますがいかがですか。
  285. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 先生おっしゃるとおりでございまして、七十Wまで二年後に完全に達成をするということであれば、まさにおっしゃるとおりでございます。  ただ、どうも言葉じりで大変恐縮でございますが、協定では「達成を期する。」というふうにしておりまして、私どもはそれに向かって努力をしたいという決意を表明しております。したがいまして、先生おっしゃるように、この目標に向かってあらゆる努力を傾注したいと思いますが、ただ、先ほど来申し上げますように、財政的には大変困難な状況でございますので、私どもとしては、二年後にこれの達成を完全にするということについては容易ならぬ見通しを持っておるわけでございますが、なお一層の努力を払いたいというふうに考えております。
  286. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 防音対策そのものには金がかかるけれども調査して線引きするのはそんなに金がかかりませんよ。したがって、再来年に十年の期限が来て、その達成を期すると言ってきたら、少なくとも一年前や二年前には七十五、七十の線引きをすべきだと私は思います。早急に対応していただきたいと思うが、いかがですか。
  287. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 実はこの騒音コンターの線引きにつきましては、従来とも、大体予算の見通しがつき得るのと並行した形で見直しをし、告示をしておるということでございます。したがいまして、七十Wを調査してこのコンターを引く線引きそのものはできないことばないと思いますが、ただ、その中身が伴わなければ余り意味がないということが一つございます。それからもう一つは、類型指定の問題がございまして、果たしてそのような必要性が出てくるかどうか、その類型指定がなされるかどうかという見通しの問題もございますので、それらをあわせて、先生の御指摘を検討さしていただきたいというふうに思います。
  288. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 現地では、すでに小松の現市長は防衛庁に対して七十ないし七十五も含めての線引きの要望が出ていることは御承知のとおりでしょう。知事は、今度は七十と七十五の線引きの権限は、知事の都市計画その他と関連を持ってきます。知事の権限の問題に関係をしてきます。しかし、軍事基地のある近辺の環境問題については防衛施設庁が責任を持たなければなりませんから、当然この環境基準について一年ないしは相当早く現地の要望にこたえて七十、七十五にすべきだと思います。どうしてかと申しますと、小松基地にファントムが入る前のF86並びにF104の当時、私たちが環境調査をやったときに、旧小松市街はすべて七十五の中に入ってしまいます。現在の八十五から八十に線引きをいたしますと、小松市の重要な本丸、昔のお城を中心とした中心部がすっぽり入ってしまいます。このことをめぐって県知事が、小松市の都市計画について、建設省の都市計画の指示に基づいて調査をやっている事実を御存じですか。
  289. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 私は存じておりませんでした。
  290. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これです。昭和四十八年の都市の環境整備に当たっての基準を、法に基づいて指示いたしました。それで、各地域において都市づくりについて、新たないろいろな対応やマスタープランを検討していることは御承知のとおりであります。そこで、石川県におきましても、知事が、現地の小松市長と連絡をとった上で、権威ある野村総研に依頼をいたしまして、この答申が出ております。  この答申を見ますと、これは、中央公害審議会の答申で、八十以上のところはもはや都市として居住地専用地域にはならない、七十五から八十の間は高層建築その他を認めても、居住地の定住地域は、騒音基準でいきますと大体七十五以下が住宅専用地域であります。もちろん建設省の第一種、第二種というのと、環境基準の第一種、第二種というのは違いますよ。中身としては、高い建物を建てずに、みんなが楽に住めるような居住地専用地域は七十五以下です。そして、高い建物や工場などを含めて、商業地その他に入る地域は七十から七十五の間は可能だ、しかし、七十五を超しますとこれは環境基準以下にならないわけでありますから、もう外ではとても対応できないから、一切屋内防音の体制に入らなければなりません。この環境基準でも、七十五と七十の間は保全を要する地域というふうに、環境基準では中身を説いております。御承知のとおりだと思います。  そうしますと、七十五の線引きをいまからやって、七十の線引きをやったときに、小松市全体という旧市街地がもし七十五の中にすっぽり入ってしまった場合、都市計画を考えるときには、環境基準をこの期間で全部達成するとすれば、全戸防音を七十五以上は全部やるか、もしくは基地が出ていくか、さもなくば、都市の大改造をやらなければ都市計画は成り立たなくなります。そういう問題を含めた環境問題として、この野村総研が答申として、小松に軍事基地を今日認めている限りは、あそこには北陸線がありますが、その北陸線の内側、海岸側に旧市街地がありますが、恐らく住宅専用地域その他は北陸線から東側、山側に、今後はいわば土地の利用形態を変えていかなければならぬという答申をやっております。  そういうことなどを含めますと、あと二年間に迫りました環境基準の達成を期するというこの考え方に基づいて、防衛施設庁は速やかに七十五並びに七十の線引きをやることが、知事が都市計画について対応していく場合にも、地元の市が都市計画に今後対応していく場合にも、重要な基準になると考えざるを得ません。したがって、先ほど申し上げましたように七十五、七十の線引きを急速にやられる必要があると思いますが、その対応の約束を願えませんか。
  291. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 ただいま先生からるる御指摘がございましたが、ただ、私どもの対応としては、先ほど来申し上げておりますように、屋内において、環境庁告示で定めるところに従って措置してまいりたいという考え方でございます。  従来から、基地周辺の住民の方々には大変御迷惑をおかけいたしておるわけでございます。そのために、私どもとしては、公害環境問題というものが今日のように大きな社会問題になる以前、つまり具体的には昭和二十八年ごろから、すでに学校等の防音工事あるいは建物の移転補償というものを予算措置として実施してまいりました。それから、御存じのように、昭和四十一年には現在の周辺整備法の前身である旧周辺整備法が制定されまして、これに基づきまして環境対策の整備を推進してまいりました。それから、昭和四十八年以後におきましては、環境基準について告示がなされましたので、それ以後におきましては住宅に対する防音工事を開始いたしてまいりました。それから、建物の移転先地の公共施設の整備等にも取り組んでまいったわけでございます。  ただいま七十をすべて完全に達成するかあるいは基地が出ていくか、どちらかであるという御指摘でございますが、小松基地につきましては、現実の問題として、自衛隊にとりましては非常に重要な基地でございますから、撤去ということはまず考えられないということでございますので、私どもとしては、住民の方々に対します影響というものをこの上ともに緩和するという措置で、実施してまいりたいというふうに考えております。  これには音源対策と周辺対策と二つの大きな対策の仕方がございまして、先ほど申しましたように、音源対策につきましては自衛隊機については限度があるわけでございますので、今後は運用規制を図ると同時に、住宅防音工事について努力を払ってまいりたいというふうに考えております。したがいまして、先ほど先生御指摘のように、区域の拡大につきまして今後ともあらゆる努力を傾注したいというふうに考えておりますが、いまここで約束せよというのはちょっと御無理な御要求でございまして、いずれにせよ、予算措置を今後毎年必要とするわけでございますので、その意味におきまして、私がここで申し上げますのは、あらゆる努力を払うという御答弁で御理解いただきたいというふうに思います。
  292. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ことしは七十五、来年は七十にというのはいかがですか。
  293. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 先ほど申しましたように、コンターの拡大と申しますのは、私どもが従来やってまいりましたのは、ある程度予算の見通しがついたところで見直しをして、拡大してまいったという経緯がございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、線を引くこと自体は困難ではございませんけれども、中身が伴わなければ余り意味がないということでございますので、そのことを申し上げたわけでございます。
  294. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 しかし、それは約束が違うのだよ。十年後にはこの環境基準の適用をやるということを約束し、したがって私は、騒音源対策はこれではできないでしょうと言ったのです。  それでは防衛庁に聞きますが、先ほど言いました小松の基地で、自衛隊の飛行訓練は一年間に何時間ぐらいやっていますか。
  295. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま手元に資料を持っておりませんのでお答えできません。
  296. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大体百六十時間ぐらいです。どうしてそのとき百六十時間が内閣委員会で問題になったかというと、軍事基地の場合には、軍用機は民間飛行場のような騒音保障制度は適用できない、したがってこれは音源対策ができない、しからば運航方式というので、運航方式を変えてもらいました。ぼくは内閣委員会で質問をして、いまは海岸で、うまく町を通らないようになりました。それは結構なことです。ところが、そうなりますと、いま言った環境基準というものを、こういう都心部のど真ん中にあるような基地の場合には、どのように騒音源の規制をやるかということになると、訓練回数を減らさざるを得ないという問題が出てくるのです。アフターバーナーをたいてばあっと行くときはものすごい音を出すのですから。それで問題は、目標二百時間あるけれども、百六十時間前後で努力せざるを得ないというのがこれまでの回答でした。  そこで聞きますが、昨年の十二月に、千歳と三沢でファントムとF104の共同訓練が行われたことを知っておりますか。
  297. 石崎昭

    ○石崎政府委員 昨年のいつでございますか。
  298. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 十二月ごろです。
  299. 石崎昭

    ○石崎政府委員 やっております。
  300. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そのとき、アフターバーナーをたかずに共同訓練をしたという事実がありますが、そうですか。
  301. 石崎昭

    ○石崎政府委員 突然のお尋ねでありますので、そこまでつかんでおりません。
  302. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もう一カ所、松島でもパイロット訓練でアフターバーナーをたかずにやったという経験がございます。防衛局長、その理由はどうお考えですか。
  303. 塩田章

    ○塩田政府委員 突然のお尋ねで、私もその事実を承知しておりません。
  304. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 油の節約です。簡単なことです。油問題がこれだけ国際的に起きているので、自衛隊の共同教育訓練でも油の節約をしなければならぬということから、アフターバーナーをたかずに飛んでいるのです。だとすると、教育訓練ではバーナーをたかずに飛べるということを意味しますね。いかがですか。
  305. 塩田章

    ○塩田政府委員 飛んでおるとすれば飛べるということになると思いますが、その辺の事情は私もよくわかりません。
  306. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 調査した上で私に報告を願いたい。つまり飛行回数、飛行機の訓練で、飛び立つのを制限しなければ環境基準が達成できないという問題が一方にあるとすれば、その音を下げるための工夫をするということが必要でありますね。そのアフターバーナー問題をこういう形でできるとすれば、小松の基地に適用すべきだと私は思います。いかがですか。
  307. 塩田章

    ○塩田政府委員 調査して検討してみます。
  308. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いまの問題は、こんな油の事情もこれあり、財政問題もこれあり、そして環境問題もこれあり、したがって、十分検討して対処していただきたいと思います。  そこで、もう時間もありませんからこの問題はやめますが、かつて一〇・四協定を結んだときに、基地の近辺に騒音公害をもたらしている原因は国であるということを確認した事実があることを御存じですか。これは防衛施設庁。
  309. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答えいたします。  お尋ねの件は、一〇・四協定に記載されております第五項の「障害防止工事は、国が原因者であるとの認識のもとに実施するものとし、」という文章そのものを御指摘のことだと思いますが、一〇・四協定にそういうような表現がございます。
  310. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そういうような表現と言うが、これは重大なことですよ。民間の騒音の原因は民間の飛行機会社なのです。したがって、運輸省は、環境庁の言うとおり環境基準を実施しなければならぬ。軍事基地の場合の公害ば、国が原因者でありますから、国が補償すべきだという基本理念がうたわれている。そんなこともわかっていない。だからとんでもないことになるのです。「ファントム配備に関する確認書」を御存じですか。こんなものわかっているでしょう。
  311. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 五十年の十月四日、いわゆる一〇・四協定を結んだ際に、小松市長との間に別途取り交わしたものだと承知しております。
  312. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その際に、ファントムを入れるときに、ファントムを断わる条件がないという理由として、「防音堤及び民家防音工事が施行され、その効果が発揮し始めた段階にはファントム配備を断る理由はなくなる」と記してあるのは、御存じですか。
  313. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 存じております。
  314. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その後つくった防音堤や防音林はそのような対応になっておりますか。
  315. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答えします。  その後に、防音堤、防音林等の工事を実施しまして、一〇・四協定当時、地元とお話のありました件については実施してございます。
  316. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは写真です。後で防衛施設庁に渡しますが、一〇・四協定でファントムを入れるといってこしらえた防音林は、木は全部枯れています。それから防音堤は、ちゃんと防衛施設庁がいつも頼む音響学会で決められたような防音堤の基準とは外れています。植えてつくったものは全部枯れています。御存じのとおりです。そして防音堤と言われる堤は、木があってその木の下にへいをつくっただけです。こんなものは防音堤と言いません。へいです。そういう一連の事実、つまりこういう協定を結んでおるにもかかわらず、その協定に対応してつくった防音堤その他は、機能を果たしていないという現実を知っていますか。
  317. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答え申し上げます。  私どもは、まず植栽等につきましては四十ヘクタールほどの植栽をいたしまして、騒音の緩和、防塵、防風、美観等多目的に実施しております。それから防音壁につきましても、一応の音響上の緩和効果というものを考えて、防音堤等はつくっております。それから、先生御指摘のように、防音堤上の植栽木については、その後の生育状況が若干悪いということは私どもも認められましたので、専門家等に調査を依頼して、現在逐次土壌改良とか補植等を実施しております。
  318. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その際に、社団法人日本音響学会の、防衛施設庁が東京新空港をつくるに当たりましての防音堤その他をつくる、その調査の基準を検討したことがありますか。
  319. 大迫公克

    ○大迫説明員 防音堤築造に際しましては、地元の御要望を検討いたしまして、現在の防音堤を築造することによりまして、航空機の地上騒音を減衰することができるというふうに考えまして築造したものでございます。
  320. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この写真は防衛施設庁に渡します。よく見てください。そして、音響学会が答申した防音堤というのはこういうつくり方をしなければいけないのですと、ここに図示してあります。距離は長い全体の土手であって、木は全部上に生えている、こういう形のものでなければ防音にならないのです。防衛施設庁は知っていますね。これを参考の上、前回の協定違反と考えられるこの防音堤、その他防音林についてすべて対処することを約束できますか。
  321. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 検討いたします。
  322. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私ももう一遍、現地調査を国会のわが党としてやりたいと思っています。この基準は、いま資料をお渡ししますからよく検討した上で、ファントム導入に関する協定違反を防衛施設庁がやっているという事実を認識していただいて、速やかに対処しないならば、六月末にファントム三〇六飛行隊を持ってくると簡単に言うけれども、前回のようにうそをついて持ってきたような仕組みだったら、住民が納得するはずがありません。そういう意味で、防衛問題が国民のコンセンサスを得たいというなら、決められたことや約束したことぐらいを完全に履行しないで、何が防衛になりますか。そういう意味で、直ちに対応するということを約束できますか。
  323. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 先生御指摘の問題、十分検討さしていただきたいと思います。
  324. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もう時間がありませんから、次に移ります。  昨年の春の通常国会に、安保特別委員の石橋委員が、日米共同演習について質問をいたしました。その際に、防衛庁は、石橋さんが提出をいたしました日米共同作戦をやっているその作戦の編隊が、わが国の自衛隊ではどういう飛行隊が参加し、アメリカの飛行隊はどういう機種が参加し、どこで行われたかということについてそれぞれ確認をいたしましたが、全部そのとおりですと言われました。それで石橋さんは、それに続きまして、では、日本の空域と言われる自衛隊の空の訓練地域について、日米共同演習にこれが使われているということは明らかであるという事実に基づいて、いつだれがどのような法的根拠に基づいて、わが国の領空における日米共同作戦を行うのか、こう質問したのに対して、防衛庁は、自衛隊の要請があれば、日米が共同作戦に自衛隊の基地を使うのは当然だという答えで、質問は終わっています。御存じですか。
  325. 石崎昭

    ○石崎政府委員 承知しております。昨年の四月二十六日の議事でありました。
  326. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 白菊隊のこの訓練区域というものの共同使用について、条約並びに地位協定はどう規定しておりますか。
  327. 石崎昭

    ○石崎政府委員 御質問の意味がよくわかりかねるところがありますが、自衛隊の訓練空域を米軍が使うことをどう考えるかという御質問でしょうか。
  328. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 外務省いますか。——外務省、安保条約に基づく地位協定の第二条四項の(a)、並びに第二条四項の(b)、並びに第三条の一項でそれぞれ共同使用に関する規定が行われていると思いますが、いかがですか。
  329. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 御質問の趣旨が施設、区域についての共同訓練であれば、二条四項の(a)に従って、アメリカ合衆国が持っている区域、それを一時的に日本側が使用する場合にはそういう使用は認められておりまして、また逆に、自衛隊が持っている地域について合衆国の軍隊が一時的に使用するということは、(b)項によって規定されているわけでございます。
  330. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 地位協定は三つのタイプを規定しております。いまここで問題になるのは、地位協定第二条四項(b)、自衛隊管理下の共同使用で、米軍が自衛隊基地を使用する場合であります。この場合に、この間の防衛庁の答弁は、自衛隊が米軍に要請をすれば、わが国のこの現在の自衛隊管理下のいわば区域と施設を利用することができるという、この判断に基づいて回答されたものと思いますが、いかがですか。
  331. 石崎昭

    ○石崎政府委員 昨年四月二十六日の議事録を見ますと、最後が、石橋委員の「またこれは引き続きやることにいたします。」という発言で終わっておりまして、時間切れらしくて、細かく説明が行われていないようであります。
  332. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 地位協定では、施設、区域と言っておりますが、施設、区域の中に空は入りますか。
  333. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 施設、区域というのは土地及び公有水面ということでございまして、それと一体になっている空を使って、たとえば対地射爆訓練ということを行う場合には考えられますけれども、単に空間のみということばこの施設、区域に入りません。
  334. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、地位協定には、わが国の領空については、この地位協定では、わが国の自衛隊の訓練区域であっても、それは地位協定に入っていないから、これは自衛隊アメリカ軍との間で、ないしは日米合同委員会では、当然の前提として使用できると判断してよろしいのですか。
  335. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 単に空間を使用するということでございますれば、地位協定、その基本に安保条約がございますが、さらに地位協定に基づいて米軍の駐留を認めている以上、米軍の活動の一態様として、空間を利用することは可能でございます。
  336. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、訓練区域というのは何ですか、外務省
  337. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 地位協定には一々何が訓練であるとか、あるいは軍事演習ということを規定しておりません。ただし、その施設、区域を使う場合には、当然その施設、区域としての中で限られる活動というのがございますので、現在、先生御指摘の点が単に飛行訓練ということであれば、この施設、区域に限られるということではございません。
  338. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今度は防衛庁、軍用機と民間の飛行機とはその活動の原理が違います。片一方は輸送であり、生命と安全を保障しなければなりません。しかし軍用機というのは、高さが低空でもそんなに厳しい指定はありません。低いところまでおりてくることもあれば、空中旋回もやります。そういう意味で、軍用機というのは性能、戦闘能力が問題になります。その軍用機の訓練というのはどこからどこまでを訓練と言いますか。
  339. 石崎昭

    ○石崎政府委員 訓練内容は多種多様でありまして、民間航空機と全く同じように、離陸し、着陸し、水平に飛び、そのようなものもありますし、また民間航空機にはないような特技飛行、急激に姿勢変化する飛行、そのようなものもございます。
  340. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 空の自衛隊の訓練をする地域は、主として訓練が行われる地域であります。わかりますか。その主として行われる、「主として」という意味はどういうことかというと、空で主に訓練をするからであります。しかし、スクランブルはいざというときには飛行場からだあっと発進します。スクランブルのボタンが押されますと、待機していた飛行機が全員編隊でもって上がらなければなりません。そうなりますと、飛行場から出ていくことも訓練であり、同時にまた、訓練が終わって帰ってきたときも訓練、つまり着陸の仕方その他を含めて、きわめて重要な訓練に該当すると思いませんか。
  341. 石崎昭

    ○石崎政府委員 そのように思います。
  342. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、地上の物件並びにそれに関連する区域は、使用する場合には地位協定によって行われているのに、その施設、区域を利用しながら訓練が行われるという場合の空の共同訓練については、当然に地上の施設、区域を使うと同じように、日米合同委員会で取り扱うべきではありませんか。
  343. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、施設、区域というものは、土地あるいは公有水面ということでございまして、それ以外の空間というものは、国民の主権との衝突あるいは公共の利益との調整という必要はございませんので、空間のみを、施設、区域というふうに提供するということは考えてないわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、それならば、他方において施設、区域を利用して飛行機の発着ができるのはおかしいじゃないかということでございますが、これは地位協定の五条に基づきまして、米軍機は日本の空港に入ることができるし、また施設、区域の間と空港、あるいは施設、区域の間を移動するということで認められているわけでございます。
  344. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そのときには官報で告示するのではありませんか。
  345. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 それは、お尋ねの件が航空管制ということであれば、NOTAMということで通知をするわけでございます。
  346. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 新田原の基地で共同訓練をやるに当たりまして、これを告示をしたという事実は御存じでしょうか。
  347. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 承知しております。
  348. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 先ほどこちらの防衛庁の方の答弁では、飛行訓練というのは飛び立つときからおりるときまでだということになれば、飛び立つときからおりるときまでが飛行訓練だとそのように区域や施設を考えるとすれば、日本の基地を利用しつつ共同訓練が行われ、しかもわが国の領空権が侵害されているとわれわれ国民が考えることがあり得ると思うだけに、地上で告示をするならば、領空でやる自衛隊の飛行訓練地域を共同で訓練するという場合には、合同委員会で国民に了解を得たり、政府に了解を得るための告示が必要ではありませんか。
  349. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 新田原の件はまさに飛行場の使用、たとえば滑走路の使用あるいは隊舎の使用ということがございますので、二条4項(b)に従って、地位協定に基づいて合同委員会の合意を経て、米軍に一時使用を認めているわけでございます。
  350. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それはわかっていますよ。さっき言ったのは、飛行訓練区域とは何かと言ったら、こちらの方の防衛庁の答弁は出ていくときから帰るまでだと言うのです。だとすると、空と同時に施設を使うということが訓練なんですから、それについて日米共同でやるということになれば、わが国の領空の域圏を貸すことになる。地上の場合に告示するならば、空の場合も告示すべきだと私は思う。そういう意味で合同委員会において、地位協定というものの扱いについて、空の訓練区域というもの、ここに全部区域の地図をつくってきました。小松の基地は訓練しないのです、ソ連からのレーダーに入りますから。訓練するのはみんな岩手沖それから四国沖、そういうところで太平洋岸でやるのです。そういう際の共同訓練、これを見ればおわかりのように、民間飛行機のパイロットには航空図指というものを渡しています。そしてどこどこの区域が自衛隊の訓練区域、どこが実弾の区域、実弾の場合には特別に公にして、何月何日から何日まで実弾の演習をいたしますと届けを出して、これは実弾ですから、しかも、この実弾区域は海面からアンリミテッドですから、UNLと書いています。空は何ぼでも高うまで使えるのです。下は海面から使えるのです。そういうふうにちゃんと使い方について区域の指定というものがあります。その指定されたわが国の自衛隊が使う区域を米軍と一緒に使うという場合には、当然わが国の領空権の問題として、地位協定の中では地上の施設、区域しか問題になっていないけれども、空について日本の主権を主張すべきだと私は思いますが、いかがですか。
  351. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 先ほど私、御答弁いたしましたように、仮にその実弾射撃、地対空、そういう射撃を行う場合には、明らかに訓練場というものを設定して行うわけでございますが、単に上空を飛ぶという場合には、施設、区域の提供というものになじまないということで、施設、区域の提供という手続をとらない。しかし同時に、雫石の事件もきざいまして、航空機の安全管制ということから、現実に自衛隊が訓練をする場合には航空管制に服すると同時に、アメリカもこの地位協定の六条に従いまして航空管制については協力する、こういうたてまえになっておるわけでございます。
  352. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 航空機運航に関する自衛隊の訓令によりますと、射撃等の訓練について、十五条の二項では、運輸大臣防衛庁長官はその訓練について通報をして、国民に明らかにする手続をとることになっております。したがいまして、この場合は射撃、爆撃等の訓練を行おうとする場合でありますが、わが国の自衛隊の訓練地域というのはわが国の領空でありますから、それをアメリカと共同訓練するかどうかというときには、地位協定で空が省かれているとすると、それを入れるか入れないかについて、外務省日米合同委員会で問題にする意思はありますか。
  353. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 先ほどから御答弁しておりますが、日本の領空あるいは上空を自衛隊が仮に使う、それも別に国内法に基づいて使っているわけでございませんで、ただ、民間航空機との安全等の関係上、調整を行うということが運用として決まっているわけでございます。したがって、地位協定においての施設、区域というものは、一定の施設、区域を限るということで、そこにはアメリカの管理権が及ぶ、その結果国民の主権との衝突が起きるということで、施設、区域というのを提供しておりますので、おのずから空の場合とは異なっているということでございますので、結論から申し上げれば、空の場合を施設、区域として提供するということは本来の地位協定になじまないということでございますので、合同委員会で取り上げるというつもりはございません。
  354. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 国益国益といって、安保条約の第三条は、個別的、相互的に憲法の枠内において防衛に協力するというものです。第四条では随時協議がありますから、随時協議に関連して、ガイドラインの問題が出てくるわけでしょう。しかし、いまの安保条約の中にあるところの今日の個別的、相互的な援助の体制という条約の解釈からするならば、個別的、わが国の国家的利益、国民的利益と同時に、それがもたらすであろう、国内法の枠の中での最大限にわが国の国民の主権を尊重すべきだと思うし、主張するのが日本人だと思う。そういう意味で、いまの回答には納得できません。今後検討していただきたいと思います。異常接近報告の集計表を見ました。いわゆるニアミスであります。外務省、よく聞いておいてください。ニアミスについて、昭和四十八年から昭和五十五年までの間に、民間機と民間機がすれ違った場合、民間のパイロットはニアミスと届けを出します。そして、それが結果としてニアミスと判定されるのは届け出の大体八分の一です。ところが民間機と自衛隊機が接近をした、ニアミスと判断をして届け出たが、結果としてニアミスと判定されたのは二十五分の一です。どうしてこんな数字の差が出るのでしょう。どう思いますか、防衛庁
  355. 石崎昭

    ○石崎政府委員 それは、自衛隊機がニアミスを犯さなかったからであると思います。
  356. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこなんです。これはどういうことを意味しているかというと、自衛隊機は飛行編隊を組むときにはしょっちゅうニアミスのような距離で飛んでおるのです。しかし民間機の側から見ると、その至近距離というのはこれはニアミスの状況になるのです。そこに軍用機の持っている原理と、民間の飛行機の持っている原理の違いがある。その違いを前提にするからこそ、航空局長と防衛局長との間に覚書を交わし、そして中央協定というものを結んできたのじゃありませんか。そしてその中央協定の中には、いま民間の飛行機は全部計器飛行です。自衛隊の場合にはレーダーで指揮しています。しかし、スクランブルの場合にはレーダーの指揮だけで全部届きませんから、途中は視界飛行か、もしくはそういう口頭の、いわば迎撃指揮官の指揮に入るのです。そういう意味では、自衛隊の飛行機というのは民間の飛行機に比べて原理が違うから、自分らはニアミスと思わないことが民間ではニアミスと判断をするのです。だから雫石事件のような事故が起きるのです。  そういう意味で、その後わざわざ空に自衛隊の訓練区域を指定して、基地からそこに飛ぶためには廊下をつくって、民間の飛行機に迷惑のかからぬように廊下をつくった地図をつくったのじゃありませんか。  そこで、資料要求しますが、航空図指というのはわれわれ安保の委員にくれるのですか、くれないのですか、防衛庁
  357. 石崎昭

    ○石崎政府委員 すでに御要求によって貸し出しをいたしました。
  358. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 貸すって何ですか。しょっちゅう変更があってパイロットに渡しているものを、われわれ安保の特別委員に渡さないということはあり得ないでしょう。要求があったら出すべきだと私は思います。  それに関連して、同時に資料要求しておきます。  防衛庁公報をわれわれの要求があればくれますか。防衛庁公報は、訓令が早く載るのですからわれわれには必要です。それから、防衛施設庁の広報を要求があればくれますか。もう一つ防衛大学の中の紀要について、贈呈を要求したらくれますか。いかがですか、防衛庁
  359. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 防衛公報と申しますのは、防衛庁のいわゆる関係の法令、訓令、通達もしくは告示等を記載し、あるいは長官発令に係る人事事項を記載したものでございます。これはあくまでも内部的な資料で、各部隊、機関が事務の参考準拠として使用するものでございまして、ことさら現在外に配るような手当てはしておりませんが、もしお求めがあれば、その特定の号数を指定いただければ、私どもの方で提出もしくはコピーをとって差し上げることは可能だというふうに思います。
  360. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 政府委員室を通じて要望したら、国会図書館並びにそこに見に行けと言われました。ばかにするのにもほどがある。要求があったら資料提出すること、いま言ったのは全部そうですね、全部提出しますね、長官。
  361. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 防衛施設庁広報につきましてもそうでございますし、防衛大学校紀要でございますか、これも、現在防衛大学校の教官が研究の成果を発表するいわゆる内部資料でございますが、お求めがあれば供覧もしくは貸し出しは可能だと思います。
  362. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 一定期間図書館並みに貸し出しを要求します。  それで、最後にちょっと、小松飛行場で起きた十年間の事故についてのデータと、われわれ小松市から見た小松基地における事故のデータの間にすれ違いがあります。御存じですか。
  363. 石崎昭

    ○石崎政府委員 どこがすれ違いなのか私はわかりませんが、私どもが知っている十年間の自衛隊機の事故は五件でありまして、着陸に失敗したものが三件、訓練中に海上に墜落したものが二件ということになっております。
  364. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 あなた方の事故というのは、先ほど言ったように軍用機の原理が特別ですから、軍用機が故障が起きたことに関連して、事故を羅列しているのであります。それからパイロットに傷がつくかつかないかだけが問題なのです。ところが、飛行機の事故というものの中には、明確に近辺の住民や漁民やその他に迷惑のかかるような事実があるのに、それは事故、被害と理解していないのはなぜですか。
  365. 石崎昭

    ○石崎政府委員 どのようなものについて御指摘なのか、ちょっと私にはわかりません。
  366. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 こういうのです。自衛隊が訓練地域に行くときに、訓練するために必要なターゲットを腹の中に抱えていくのです。電信柱みたいに太い長いものだ。それには電線の物すごい厚いものでつないである。それを抱えて飛行場から上に飛び立つ、そのときは腹に抱えていますから下に落ちません。訓練地域に行ってそこで訓練をするときに、腹の中のものをぱっと外すのです。外しますと、ちょうど飛行機から後ろにくっついて、このターゲットが出てくるわけです。このターゲットをめぐって射撃訓練をやるわけです。その射撃訓練をやったときに、ターゲットに当たったのを最後に持ってくれば、訓練の結果がわかります。途中で落っこちたら、この訓練はパアになっちまうわけです。ところが、そのターゲットにも弾が当たり、当たっているだけじゃなくて、つなげてある電線に弾が当たるとふらふらし出すわけです。それをしりにぶら下げながら飛行機がおりてくるわけです。そういうときにどんな事件があったか御存じですか。知らぬでしょう。町の電線に巻き込んで、電線を断ち切ってしまうのです。そうしたときは、当分はもう完全に飛行場近辺のいわば電源が切れちまいますから、大変な迷惑をかけることになります。  同時にまた、今度は、途中訓練をやったときにふらふらしておったものは、おりる前に線に巻きついたものは、まだそれでも持ってきたなら戦闘訓練としてはわかるが、しかし、途中で落っこっちゃうのです。海に落ちたり、ゴルフ場に落ちたり、そういう一連の事故をあなた方は事故と見ないのです。あなた方の事故は、飛行場におりるときに着陸に失敗したら事故なんです。着陸に失敗するということは、飛行場では大変なことなんです。軍事基地だけの飛行場ならいざ知らず、失敗したときにはサイレンが猛然と鳴り始めて、どこからともなくぶわっと人が出てきて、そしてその飛行場は管制が一切とまってしまうのです。そんな事態が起きても、そういうものを本当の事故と理解していない節がある。したがって、もちろんこれには法律ですでに事故の規定があります。承知いたしております。しかし、その航空機事故の理解と、われわれ市民の側から見た、航空機がどのような影響を与えるかという被害を含めた航空機事故という観念を、自衛隊は持っていないのです。そこに自衛隊というのは、自分たちの戦闘能力と、そういうことばかりを追求して、つまりその戦闘能力が、いかに国民との間にコンセンサスを得なければならないかという防衛の基本にかかわる配慮がなしに、現実に動いている。そういう実情のもとで現実に被害事故が起きてきているという事実を、時間がありませんから述べておきます。  今後そういう問題については、私が申し上げた趣旨から、自衛隊事故と判定したものと、市長や知事や地域住民が被害事故と判定したものとを参照した上で、きちっとした対応をすべきだと思うが、いかがですか。
  367. 石崎昭

    ○石崎政府委員 御指摘の電話線を切った事故については、いま調べましたら記録がございました。自衛隊の中でどの程度以上のものを統計上事故と扱うか、その基準の是非についてはなお検討すべき余地があるかもしれません。その点は、私どもは何が事故であり、何が事故でないかということについて、国民の十分な御理解と御支持がないことにはやはり困りますので、研究してみたいと思います。
  368. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 時間がなくなりましたが、一つだけお聞きします。  今年度の予算に短SAMの予算の計画が入っています。将来小松基地に短SAMの配置を予定していますか。
  369. 塩田章

    ○塩田政府委員 各基地に将来配備したいと思っておりますので、当然小松もその対象になると思います。
  370. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 最後に、今年度予算についております中央指揮所というものがありますが、この中央指揮所は、一九七七、八年ごろから、アメリカ防衛通信システムとして問題になっておりますC3Iと関係がありますか。
  371. 塩田章

    ○塩田政府委員 関係ございません。
  372. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、中央指揮所は、わが国でCIのような対応をするための努力をするものと考えなくていいのでしょうか。
  373. 塩田章

    ○塩田政府委員 中央指揮所は、防衛庁長官が直接、陸海空三自衛隊の動きを自分で把握しながら、迅速・的確に指揮ができるようにということで考えておるものでございまして、そのための必要な通信連絡体制は当然考えていくつもりであります。
  374. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もう時間が来ましたのでこれでやめますが、じゃ、防衛庁長官がその責任者ですね。そして、その組織は幕僚会議関係を持ちますね。そして、それの責任者は幕僚会議の議長ということになり、ここには特別な定員が後に配置されるというような、それぞれについて簡単に答えていただくこと、これが一つ。  もう一つは、もし陸海空の三軍についてのそのような中央指揮所であるとすれば、共同機関ですね。共同機関だとすれば訓令に起こさなければなりませんね。そうすると、その訓令に起こす際に、その共同機関というものがいかなる意味を持つかについて、マル秘の事項と公にすべきこととの問題が出てくると思います。私はこう判断しています。  日本におけるCIの問題が、必ずこの中央指揮所を通じて防衛通信システムとして動き出すでしょう。そうなりますと、アメリカから入ってくる原子力潜水艦の情報が日本に入ったときに、これは暗号で入ってきますから、それを解読して、それによってスクランブルの対応その他をするためのセンターの役割りをすることになると、陸海空自衛隊の場合に想定されます。そういう意味でかつての大本営がつくり始められつつあると私は判断をいたします。昔は軍政と軍令があって、軍政に対して軍令というものは大変マル秘でありました。しかし、国の予算はわれわれがつけて今年度に建物をつくるとすれば、それの組織や運営や機能について一定程度の判断国民に公にすべきだと思いますが、いかがですか。
  375. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま私どもが考えております中央指揮所といいますのは、新たな組織、機関をつくるということではございませんで、いま申し上げました防衛庁長官が指揮する場所、そのために必要な装置、そのために必要な通信連絡機能、こういったものを持たせるつもりでございますけれども、そこで具体的に新しい自衛隊法上の機関、あるいは組織がつくられるというふうには考えておりません。  したがいまして、この建物ができます以上は管理が要りますから、管理の要員は当然将来考えていかなくてはならないと思っておりますし、その管理の責任者としては統合幕僚会議にやってもらおうというふうに思っておりますが、そこに別に中央指揮所という機構ができるわけではございませんので、御指摘のような訓令上の措置でありますとか、そういうようなことをいま考えているわけではございません。
  376. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いずれ予算がつき、さらに建物ができた上で、どう機能するかは、さらにここでの議題といたします。  きょう申し上げたかったことは、一連の基地をめぐる状況から判断をいたしまして、防衛庁が真に防衛という問題を考えるならば、防衛のあり方について、基地のあり方について、地域住民や地方自治体の首長が要望していることにきちっとこたえること、そして、国に定められた方針に従って、たとえば環境基準であるならば、防衛庁といえどもそれを実施するために最大の努力をすること、そして、たとえば航空機事故が、あなた方のニアミスの判断と民間の判断とが違ったり、また同時に、事故についての判断が違うというような、空の管理権というのは運輸大臣にあるわけですから、日本国憲法のもとで、運輸大臣のもとにあって、航空法適用除外というかっこうで、最低限の空の利用だという観点を持ちながら、国民立場に立った対応を今後すべきだと私は思います。  そういう意味での質問であったということを御理解賜りまして、積極的な回答を今後とも賜りますように、幾つか答えられなかったことについて、すべて後で御報告いただくことを要求いたしまして、私の質問を終わります。
  377. 坂田道太

    坂田委員長 次回は、来る二十日午後三時三十分理事会、午後四時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十三分散会