○渡部通子君 私は、公明党・
国民会議を代表いたしまして、ただいま
提案理由説明のありました
健康保険法等の一部を
改正する
法律案につきまして
質問をいたします。
医療の荒廃が叫ばれてすでに久しいわけでございますが、最近の
医療をめぐる
国民の批判は一段と厳しさを増しており、危機的
状況にあると申しても過言ではございません。
現行の
健康保険制度が
国民皆
保険のもとで果たしてきた役割りは大きく、
医療が私たちの身近になったその成果は私も率直に認めるところであります。しかし、一方、
国民の
医療費負担は不断に
増大し、
保険医療の質的低下をもたらしていることも否定できないと思うのでございます。この意味で、
改正案を議論するに当たっては、単なる
財政対策にとどまってはならず、いかに
医療を健全化し、
医療に対する
国民の信頼を回復していくかという立場からその是非が論じられなければならないと思うわけでございます。
ところで、
衆議院より送付されました
本案は、さきの通常
国会における四党間の合意を十分に実現する努力を怠り、単に
財政収支のしわ寄せを被
保険者にかぶせるもので、従来、政管健保について
保険料率引き上げと
連動してきた
国庫負担を凍結させようとすることは、とうてい賛成いたしかねる
内容であることをまず明らかにしておきたいと思います。
そもそも、
修正前の
政府原案は、
保険料の
引き上げと薬剤について
患者に半額
負担をさせることによって、
平均保険給付水準を
現行より五%引き下げ、八三%
程度にして政管健保
財政の収支を合わせることと
国庫負担の
抑制を
目的とするものでありました。このようなねらいを持つ
政府案が当初
国会に提出されたのは二年六カ月も前の五十三年五月のことであります。
その後の
医療保険を取り巻く諸環境、特に政管健保
財政は大きく変化をいたしました。すなわち、四十九年以来の赤字続きは、五十三年度決算で見込み額より三百七十三億円好転、百二十六億円の黒字、五十四年度も単年度で二十三億円の赤字にとどまっているのであります。また、四十九年度以降の
財政悪化の要因も、石油ショックによる
政府の経済運営の失敗がもたらした急激かつ異常な経済変動のもとで起こったことであり、それを直ちに被
保険者負担に転嫁し、収支を合わせようとする態度は、
医療保障としての社会
保険を正しく理解する態度とは言い得ないと思うのであります。過去の累積収支不足額解消には慎重に時間をかけ、
国民の納得の得られるような
解決をすべきです。
政府の従来の態度に強い反省を求めます。
政府は、この点をどのように認識し、三たび同一の法案を本
国会に提出してきたのか、その真意はどこにあったのか、まず明らかにしていただきたいと思います。
私たちは、
財政対策の域を出ない
法律改正をする前に、
医療費のむだの排除、
医療をめぐる周辺問題の
解決が先行しなければならないと主張し続けてまいりました。しかし、最近の一部
病院で見られる乱診
乱療事件は目に余るものがあり、しかも悲しいことに、
国民の多くはそれら
不祥事件を例外的存在だとは思っていないのです。また、
事件を事前にあるいは初期の段階で防げなかった
行政当局や同業の
医師に対し
不信感を高めております。
行政の最高の責任を負う
総理は、
現状をどのように認識しているのか、また、
医療及び
医師に対する
国民の信頼をどう回復しようとするのか、明確にしていただきたいと思います。
また、こうした
医療をめぐる
不祥事件は、
医師の資質を厳しく問うものであり、
医療の根幹に疑問を投げかけております。
言うまでもなく、
医療に携わる人には、それにふさわしい資質が必要です。医学に対する鋭い理解力、判断力はもちろんのこと、それにも増して
患者の心を理解する能力と強い責任感と誠実な人格が要求されております。しかし、現在の医学教育は、入学試験の段階から、また国家試験、卒業後の研修
制度においても、
医師として十分な資質を育てる体制にあるとはとても言い得ない
状況です。大学側は、医学部を志す者に対し最小限必要な資質について明確にし、入学試験においてもすぐれた医学生を発掘し、六年間の教育の場でも厳しく
使命感を育てていただきたいと思います。同時に、医学教育でもう一つのテーマは、卒業後の教育、生涯教育でございます。
医療の技術水準と倫理の向上のため、体系化された卒後研修
制度をより充実することが必要でございます。
この際、
医師の養成に当たる文部、厚生両大臣の、あるべき
医師像に向かっての教育、研修についての
考え方を明らかにしてください。
さて、今日、
わが国の
国民医療費は、
昭和五十四年度十一兆円と予測され、
国民所得に占める割合は六%をすでに超えております。もちろん、
医療費の
増大の要因は単一ではありません。医学や薬学の進歩に起因する
医療のコストの
伸びなど必要な要因も少なくないことは言うまでもございません。しかし、それと同時に、乱診
乱療とか、薬の過剰使用とか、検査の過剰といった望ましくないと
考えられる要因も多く存在していることを
指摘しないわけにはまいりません。
そこで、薬剤の問題です。薬づけ
医療の追放が進まないのは、
現行の
医療保険制度が薬で利ざやをかせげる
仕組みになっているからであります。
その
原因の一つは、
保険の基準価格と実勢価格との乖離です。
現行薬価基準の算定は、品目別に実勢価格を
調査し、安い価格から積み上げ計算をしていって、全体の九〇%に達したところの価格を基準としております。したがって、ほとんどの
医療機関は
薬価基準をかなり下回った値段で購入することとなります。安く仕入れて高く売ることが可能となれば、どうしても薬や注射を過剰に投与しがちになります。それが薬づけ
医療をもたらす土壌になっており、
医療の荒廃ぶりをそこに見ることができるのであります。その是正のためには、
薬価調査を厳しく
実施し、
薬価基準を引き下げて実勢価格との差を解消する
薬価の適正な把握と、そのための法的
整備が必要であると
考えます。さらに
医療機関、製薬会社間の流通面の姿勢を正すことなど、厳正に対処していただきたいと思います。これら
関係団体に対する
指導を含めてどのように対処されるお
考えか、明らかにしてください。
次に、いわゆる検査づけと言われるものがございます。昨年度は、対前年度一八・六%も検査料の
増大を招いています。現在の
わが国の自由開業制のもとでは、高額な
医療機器導入に際し何らの規制も受けておりません。
それが真に
医療サービスの向上につながるのであるなら問題はありません。しかし、
医療機器を使いこなせないような
病院が導入した場合、それが収入を上げるための検査づけを助長し、
医療の荒廃を招く以外の何物でもないことを最近の
事件は教えております。諸
外国では、
医療機器配置のガイドラインを設けるとか、導入に際し
許可制を採用するなど適正配置に努めております。
医療内容が伴わないのに機械だけ買い込むといった不必要な投資は厳に規制していかなければならない問題でございます。高額
医療機器について共同利用を図るなど、
患者のための適正配置
推進についてどのような
対策を準備しておられるのか、明確にしてください。
それから、今日、
国民皆
保険のもとで受診者の多くが不合理を感じているものは
保険外
負担です。
保険外
負担の存在自体、
医療保険の
性格と矛盾するものであり、こういった問題はすでに論議の段階ではございません。解消に向けて
対策が待望されております。重症者に対する看護、室料の特別加算
制度が検討されていると聞いておりますが、どのような方法でこれらの
保険外
負担を解消していこうとしているのか、御説明願います。
以上、何点か御
質問申し上げましたが、最後に、
医療に対する
国民の
不信、不安を払拭するため、厳正な
医療行政を
推進されることを強く要望して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣鈴木善幸君
登壇、
拍手〕