○広田幸一君 私は、
日本社会党を代表し、ただいま提案されました国鉄
再建法案について、
鈴木総理を初め各
関係大臣に
質問をしようとするものであります。
国鉄は、長い歴史の中で、
昭和三十九年以降
経営が悪化し始め、すでに六兆円の
累積赤字を見るに至りましたが、その原因は多岐にわたるとはいえ、この間の激しい経済的、社会的構造の変化に伴う輸送構造の変革に即応し得なかった
政府の無為無策によるものであって、その
責任は追及されなければなりません。しかるに、本
法案はその
責任を回避し、国鉄
再建の美名のもとに
公共的使命を放棄し、
〔
議長退席、副
議長着席〕
厳しい
経営合理化と特別運賃制度の設置、地方交通線の廃止等によって事態を切り抜けようとしておるのでありますが、とうていわが党の賛成できるところではなく、
法案の修正を迫り、
政府の猛省を促してきたにもかかわらず、衆議院においては、わが党の修正案を否決し、採決されたのでありますが、本院においては、さらに
問題点を追及し、本案の撤回を求めるものであります。
以下、
最大の焦点になっておる地方交通線の廃止を中心に論及してまいります。
国鉄から切り離そうとしている特定地方交通線の選定は、
法案では、その基準を政令で定め、国鉄が該当する線を運輸大臣の承認を受けて決め、
関係都道府県の知事に通知することになっており、また、その後設けられる地方協議会も、
関係自治体等の
意見は述べられるものの、
決定権は運輸大臣が持っており、いわゆる地方交通線廃止の生殺与奪の権限はすべて
政府の手中に握られることになっておりまして、これほどの権力性を持った
法律があるだろうかと驚くほかありません。
特に、地方交通線は、沿線地域の経済文化発展のよりどころであり、住民にとってはまさに生命線であります。それが
政府の強権によって一刀両断に廃止が
決定されることは住民としてとうてい容認できないところであります。本
法案に怒りと不満が集中するのも当然と言うべきでありましょう。全国知事会や市町村長会等が
法案に容易に賛成を示さないのはここにあるのであります。
政府は、基準に照らし、住民の
意見も尊重し、慎重に対応すると言っておるけれども、それならば、選別の
決定は住民を代表する知事等の
意見の合意を必要とすることを条文に明記すれば、住民が抱いておる疑念と不安は解消されるのであります。わが党は、誠意をもってこのことを提言したにもかかわらず、
政府・自民党はこれに応じようとせず、一部他党の協力を得て強行可決したのであります。口では協力的
姿勢を示しながらも、
最後は地元住民の意向を無視し、問答無用で
政府の思うままに押しつけようとする底意をありありとうかがい知ることができるのであります。
国民本意の和の政治を強調される
総理の言行不一致のやり方ではありませんか。あくまでも国有鉄道という
公共性を堅持し、地方交通線の
運営は地方住民の合意によって推進されることを
基本にした
法案に修正すべきであると考えますが、
総理はいまでも原案のままでよいと思っておられるのか、
お尋ねをいたします。
また、国鉄の
経営を第三セクターに移管する問題も、
経営の
責任はその
性格上自治体がとらざるを得ないということになるでありましょう。いまの地方自治体の財政事情は国以上に悪く、ましてや特定地方交通線の沿線の自治体は、より以上に悪い状態にあることは
政府も百も承知のはずであります。運輸大臣は、該当地区が
責任を持って
運営すると言えば容認していくという
方針を明らかにしておりますけれども、専門の国鉄で
経営困難なものが第三セクターで可能なはずがありません。これは国鉄側が
経営のむずかしさから逃避し、他にその
責任を転嫁しようとする、
公共的使命を放棄した無
責任さにあると言わざるを得ないのであります。鉄道が廃止されると大変だという地域住民の弱みにつけ込んだ弱い者いじめの何物でもないと言えましよう。私は、そのような、ほかにむずかしさを押しつけるような安易な他力依存の発想では、
国民が希求してやまないこれほどの困難な大
事業が
達成できるとは考えられないのであります。
総理、これほど重大な問題の強行突破は思いとどまるべきではないかと思いますが、重ねて真意のほどをお聞きいたします。
また、同時に、地方交通線沿線の自治体の苦しい財政事情と住民の
生活実態を知悉しておられる自治大臣として、第三セクター方式を是とされてのことか。そして、このことで運輸大臣とどこまで詰めてお話しになっておるのか、あわせてお聞きをいたします。また、運輸大臣にもそのことを
お尋ねいたします。
さらに、国土庁長官に
お尋ねをいたしますが、地方をより住みやすい
環境にする定住圏構想は、すでにモデル地区の指定を終わり、具体的計画が進められようとしております。地方交通線はその中核に位置づけられておるが、これが国鉄から切り離された場合は構想が根本から崩されることになりかねないと思われるが、定住圏構想と地方交通線廃止とはどう関連をして考えておられるのか。また、沿線には過疎法の適用を受けた町村も多く、過疎振興計画の中にも国鉄の
役割りが決められておりますが、どうなるのか。
また、北海道地区は対象になる線も多く、国鉄から切り離されることになれば手足をもぎ取られたも同然であって、現在進めておる開発計画に重大な支障を来すと、異常な危機感を持って全道挙げて
反対しておると聞いておりますが、北海道開発庁長官として
現状をどのように
認識されておるのか、あわせて
お答え願いたい。
地方交通線は、国鉄
再建にとって根治不能のがんだから、すべてに優先して順次除去する
方針を決めていますが、いま対象が予想される約九十線の
赤字は、五十三、五十四
年度の全体の純損失総額の十分の一の約八百五十億であります。ちなみに他の部門と比較してみた場合、たとえば工事完成が間近い上越、東北新幹線は、すでに四兆二千億円以上の巨費を投じ、最近ではさらに相当な増額が言われており、開業の暁には工事費をそのまま国鉄に背負わされ、年間三千億円以上の
赤字が出ると言われており、
政府は十年後には黒字に転換ができると苦しい
答弁をしておりますが、根拠のない不確実なものであります。他にも類似した多額の費用を要しておる部門があります。
単純に比較してみましても、約九十線の
赤字は驚くべき数字ではなく、過疎化に追いまくられている住民にとって唯一の
生活路線を目のかたきのようにぶった切ろうとする発想に対して、住民として耐えられないのではありませんか。政治への不公平感を持つのはあたりまえと言えるではありませんか。政治の公平を公約しておられる
総理は、これでも急いで地方線を国鉄から切り離されるのか、再びお伺いをいたします。
私は、特定地方交通線と思われる幾つかの沿線住民の生の声を聞いてまいりました。ここで多くを述べることはできませんが、二、三の共通した点を申し上げますならば、自分たちの
生活路線として、
赤字を少しでも少なくするために創意工夫し、可能
最大の協力を送っているにもかかわらず、国鉄側に積極的な反応は見られず、むしろ自然衰退を待っているかのごとき
姿勢に強い不満を示しておりました。また、高校生など学生諸君は、バスに転換しても期待はできず、町に下宿を余儀なくされるであろうし、それだけ父兄の
負担もふえ、これに耐えられない者は進学をあきらめるしかないという深刻な訴えを学校側、また父兄代表から随所で聞かされたのであります。もっと憂うべきことは、国鉄が廃止になれば町の総合病院にも通えない、入院も
負担がかかって入れず、結局は医者にも診てもらえず、病に苦しみながら死を待つしかない。ぜひ鉄道だけはなくしないでくださいと、祈るように思い詰めておるお年寄りが余りにも多いのに驚きました。
政治は経済力の弱い
人たちのためにあると言われてきました。学生といい老人といい、まさに交通弱者であります。地方線の廃止は一層過疎化に拍車をかけ、ますます人の住まない地域に追いやっていきます。こうした住民が持つ血の出るような叫びに政治はいかにこたえていくべきでありましょうか。学校をやめなければならない子供たちはどうなるのか、死を待つしかないと悲しむお年寄りはそのままにしておいてよいのか、これでも採算主義で国鉄から切り離していこうとするのか。運輸大臣の
答弁を求めるものであります。
さらに、この際ただしておきたいのは、五兆三千億円の巨額の工事費を必要とする新幹線整備五線の建設についてであります。運輸省が依頼した運輸経済研究センターは、工事費全額を国が補助しても年間三千億円以上の
赤字が見込まれ、財源の見通しもむずかしいと報告しておるのに、政治的な絡みでいまだ結論を出していないのはなぜなのか。
政府が言うところの緊急を要する財政
再建とは、そんな御都合主義でよいのか。結局は弱いところにしわ寄せを押しつける弱い者いじめの何物でもないと言えるではありませんか。
国民注視の五線はいつ決着をつけるのか。国鉄
再建との関連をどのように考えておるのか。
総理大臣並びに
大蔵大臣にお聞きをしておきます。
私は、以上
質問を重ねてきましたが、これではとうてい
国民の理解と協力が得られるものではありません。国鉄の真の
再建は、国鉄側が
公共性の理念を前提にした徹底した
経営努力と、国鉄の手の届かない構造
欠損部門に
政府の適確な助成を行い、これに
国民の理解と協力を得て三位一体の体制ができるとき初めて持続性の持てる安定した国鉄
再建が実現できるものと信じます。
最近の国鉄側の
経営刷新の積極的な取り組みは、遅きに失した感なきにしもあらずでありますが、監査
報告書の中に読み取ることができます。また、労働組合も可能
最大の協力を惜しまず、むだを排除し、近代化を進めており、五十四
年度、また去る十月一日のダイヤ
改正では相当数の要員を縮減し、いまや国鉄側の労働組合も困難を克服し、
国民のための国鉄を再現するために全力を傾注し
努力しておるのであります。このような国鉄側の積極的な
姿勢が
国民に理解されるとき、日ならず
再建の実を上げることは可能と信ずるものであります。
政府は、いま、将来のあるべき総合交通体系を作成中であります。その中で今後国鉄がいかにあるべきかが位置づけられることになっています。私はその成案を待ってからでも決して遅くはないと思うのであります。
総理、私の言っていることは、大勢としてそう間違っていないと思いますが、あなたはどのようにお考えになりますか、
お答え願いたい。
関係住民の合意が得られないまま、断じて強行すべきものではありません。わが党の誠意ある提言をいま一度謙虚に受けとめて、
法案を撤回し、出直しを強く求めまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣鈴木善幸君
登壇、
拍手〕