○初村滝一郎君 私は、自由民主党・自由
国民会議を代表いたしまして、
総理の
所信に対し、
総理ほか関係
閣僚に若干の
質問をいたします。
質問に先立ち、過ぐる
衆参同時選挙のさなか不幸にして急逝されました故大平前
総理・
総裁に対し謹んで御冥福をお祈りいたします。
まず、鈴木新
内閣の今後の政局担当に対する
政治姿勢についてお伺いをいたします。
〔議長退席、副議長着席〕
去る六月二十二日には、八〇年代初の
国政選挙が行われたのでありますが、これは、わが党の勝利であると言うよりも、良識ある
国民の賢明な
政治選択の勝利であったと思います。厳しい内外情勢の中で、有権者の大多数は野党連合政権を拒否し、自由民主党の安定過半数による政局の安定を求めたのであります。
わが党としては、この勝利におごることなく、円満に選出された
鈴木総理のもと、挙党一致、
選挙公約を誠心誠意実行していくことがわれわれに課せられた使命であり、
国民の期待にこたえる道であると思います。このためには、政権担当に当たっては絶対多数にあぐらをかくことなく、謙虚な
政治運営に心がける必要があります。この
意味で、「和」を
政治信条とする
総理の
姿勢を歓迎いたします。
総理は、真心をもって人と接し、強い信頼関係の中から問題の解決を見出すと言われておりますが、これとあわせて必要なのは、激動の八〇年代と言われている
ように、目まぐるしく移り変わる現実に直面して、必要な
政治決定や
政策対応をタイミングを逸することなく、果敢かつ積極的に行うことであります。
総理の
政治姿勢をお伺いいたします。
次に、
政治倫理の
確立と
綱紀粛正についてお尋ねをいたします。
政治と
行政が国の
経済、
社会の分野に多大の影響を及ぼすことは申すまでもありません。それだけに、これに携わる者の
政治倫理の
確立と綱紀の粛正は民主
政治の
原点であります。
昨年来、明るみになった一連の不祥
事件が
政治、
行政に対する
国民の不信を招いたことはまことに遺憾であり、われわれは、
政治に対する
国民の信頼を回復するためには、これを真摯に受けとめ、深い自戒のもとにみずからを正すため党倫理憲章を制定し、
政治家の
遵守すべき
政治倫理を
確立して、厳正な党紀の
運営に努めているところであります。しかしながら、
選挙に金がかかり、
政治に金がかかる現行の
政治資金の
あり方は、一歩誤まれば
政治腐敗の病原ともなりかねないだけに、一国の立法をつかさどる
政治家にはより高い倫理
責任が望まれるのであります。
政治倫理を強調される
総理としては、
政治資金の
明朗化に対しどの
ように対処されるのでありますか、あわせて
綱紀粛正の基本
姿勢を示されたいのであります。
これと関連して、現行の
選挙制度、なかんずく
参議院全国区制は、かねてよりその
あり方が問われているところであります。現行の全国区制は巨額な金と体力を強いる制度であり、この
ような制度は
世界に例がありません。また、参議院の創設の趣旨から見ても、理念とはかけ離れた制度へ移行し過ぎた傾向を示しております。この制度の是正のため、わが党はプロジェクトチームを発足させ、検討を開始しておりますが、
所信表明では
総理の
姿勢が就任当初より後退した感じがいたします。改めて全国区制の
改正に取り組む
決意を伺いたいと思います。
次に、
外交問題についてお伺いいたします。
今日、
世界は、
政治、軍事、
経済などの各面で混迷を続けておりまして、
世界の
経済活動の一割を占める
わが国に寄せられる期待はきわめて大きいものがあると思います。
わが国として、今後
世界の平和と繁栄にどう貢献するのか、まず
世界外交の
基本方針をお示し願いたい。
あわせて、アメリカはかつての
ように強大でなくなり、軍事、
経済の面で地位が相対的に落ちたと言われておりますが、
わが国としては、従前以上に、両国のパートナーシップに基づき日米安保
体制のもとに貿易
経済の緊密な友好関係を促進することが肝要であります。現在、日米間で問題となっております
わが国の
防衛努力や自動車、電電など個別の
経済問題などは、十分な話し合いを通じ解決していくことが重要であろうかと思います。
総理及び外務大臣の
所見を承りたいと思います。
伊東外務大臣は、
さきにアジア五カ国を歴訪いたしました。これまで
わが国は、金は出すが
政治的に手を汚そうとしないととかく言われてきました。今回の歴訪では、カンボジアの問題で見られる
ように、いままでの
経済援助中心の
政策を進めて
政治的役割りを果たしていることは
評価いたします。しかしながら、
米中ソの三大国からそれぞれ影響を受けている
体質の異なったアジアの各国に、今後
わが国が引き続いて
政治、
外交を行うにはかなりの困難な問題が生ずると考えられますが、外務大臣は、今回の歴訪を通じて得た
成果をどうとらえ、アジア
外交に対処されるのか、お伺いをいたします。
また、
国民の悲願である北方四島の一括返還がいまだ実現を見ないのはまことに遺憾であります。伊東外務大臣は国連において、北方領土問題及びアフガニスタンへの軍事介入を含む
ソ連の
外交、軍事戦略に対し、善隣と友好を具体的行動で示せと強く要請したことは高く
評価いたします。しかしながら、その後の日ソ外相会談では双方の主張は平行線をたどっていますが、
政府は北方領土問題にどう取り組んでいかれるのか、その
決意のほどを示してもらいたい。
一方、中東に目を転ずると、イラン、イラクの
紛争は
石油基地攻撃にまでエスカレートしております。長期化の傾向にあることはまことに遺憾であります。輸入
石油の七五%を中東に依存する
わが国としては、速やかなる即時停戦を切に望むものであります。
政府としてはこの
紛争の行方をどう見通されておりますか、また、
わが国の
石油情勢に及ぼす影響及び今後の
対策を伺います。
私は、中東の不安定な
政治情勢を考慮するとき、
石油入手先の多角化を図ることが急務であると考えますが、
政府はこのためにいかなる
外交を展開する所存でありますか、伺います。
現在、
わが国の
石油備蓄は百十一日分であり、これは国際
エネルギー機関加盟国の百四十日分を下回るものであります。資源のない
わが国としては、国際協調を図りつつ
石油備蓄体制の
強化を早急に図るべきだと考えますが、
政府の
見解を伺います。
次に、安全保障について伺います。
総理が申される
ように、
わが国は戦後これまで日米安保
体制を基軸として国の安全を維持し、今日の繁栄を遂げております。しかしながら、
わが国を取り巻く
世界の軍事情勢は、
ソ連の
軍事力の急速なる
増強の結果、米ソ間の軍事バランスにおいてアメリカが絶対優位に立っているとは言えない
状態となっております。とりわけ
ソ連は、この
ような
軍事力をアフリカ、中東への勢力拡大に向け、昨年末にはアフガニスタンへ軍事介入しているのみならず、
わが国の北方領土に大型トンネルを含む軍事基地を構築し、
わが国の安全にとって脅威を与えておるのであります。
こうした
ソ連の
世界戦略を冷静に分析し、いまこそ日米安全保障
体制に基づきアメリカと緊密な協力関係を維持することが、
わが国の安全保障にとって最優先の
課題であります。もとより、安全保障とは
国民生活をさまざまな脅威から守ることであります。それは、軍事面にのみ限定されるものではなく、
石油や食糧など外国からの供給がとだえると、
わが国の生存にとって脅威であるにとどまらず、
国家そのものの存立が危うくなることにもなりかねません。その
意味で総合安全保障がきわめて大事であります。これに関する
総理の
所見を伺います。
われわれは、
日本の平和と繁栄は
世界の平和と安定の中に求められるものであり、切り離せるものではありません。
経済大国となった
わが国が国際
社会の
責任ある一員として
世界平和に貢献し、自衛のための国内
体制を固めることは当然の責務であります。
わが国がみずからの安全を確保するという自主的な判断により、適切な
防衛力の整備を図るべきであると思いますが、
総理の
所見を伺います。
次に、
経済、
財政問題についてお伺いをいたします。
まず第一は、最近の
景気動向とその
対策についてであります。
わが国経済は、原油価格の大幅上昇に見舞われたにもかかわらず、五十三年後半から着実な自律的拡大の道を歩んでおりましたが、五十五年度に入り、堅調を続けてきた生産、出荷など鉱工業生産活動が素材産業の減産等により足踏み
状態となって
景気停滞の様相を濃くしております。
政府が九月五日、総合
経済対策を
決定したことは、この
ような
わが国経済の実情を考慮した適切な措置と言わなければなりません。しかしながら、原油価格の上昇によるデフレ効果の本格的浸透を憂慮するとき、今回の総合
経済対策だけでは不十分であります。
政府は速やかに
経済政策運営の基本を
物価中心から
景気重視に転換し、追加的な
経済対策を実施すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
また、鎮静化の
方向にあった
消費者
物価が、冷夏の影響により、野菜、果物など季節商品の値上がりに伴って上昇いたしておりますが、今後の野菜等の需給見通しと
物価対策について、あわせて
経済企画庁長官にお伺いいたします。
第二は、
財政の
再建についてであります。
五十五年度
予算で初めて一兆円の公債減額を行い、
財政再建の一歩を踏み出したことは
評価いたすのでありますが、
わが国財政はなお十四兆円という巨額な借金
財政に陥っております。この利払いのための
国債費は実に五兆三千億円にふくれ上がり、他の諸
施策の経費を圧迫しております。この
ような
状態を続けると、
財政としての働きをなくするばかりか、インフレとなって
国民生活そのものを破壊することになりかねません。最近、
ようやく
国民の間にも
財政再建への機運が盛り上がっており、
政府は、この機を逸せず、効果的手段を講ずべきだと思います。
財政再建に取り組む大蔵大臣の基本
姿勢を伺いますと同時に、来年度
予算編成についての考え方を示されたいと思います。
次は、総合
予算主義の採用による
歳出の
削減についてであります。
本年度も昨年に引き続き年度内にかなりの自然増収が見込まれる状況にありますが、その一方で人事院勧告に基づく
公務員の給与改善費の
歳出追加を余儀なくされる状況にあります。元来、
公務員の給与改定などは、災害補正と異なり、当初からある程度予測されるものであって、従来の
ように年度途中において安易に自然増収に頼るという制度は、この際改めるべきではないでしょうか。
財政再建が
国家の大命題である今日、自然増収はすべて
国債減額に振り向ける補正なし総合
予算主義を今後貫徹すべきではないかと思いますが、大蔵大臣の
所見を伺いたいと思います。
次に、
行政改革についてお伺いします。
中曽根
行政管理庁長官は、今回八項目から成る今後の
行政改革に関する基本的な考え方を発表されておりますが、これは、これまでの
行政改革が機構いじりに重点を置いていたのに比べ、
行政の減量化、ぜい肉落とし、サービスに着目して、新しい
時代に即応した簡素にして効率的な
行政の展開を目指しているものとして高く
評価するものであります。高度
経済成長
時代に肥大化した
行政組織や
事務事業は、八〇年代を迎えた今日、
決意を新たにして再点検し、不要なものはこの際思い切って改革し、
国民のニーズに合った
行政サービスの徹底を図るべきが急務であると思います。しかしながら、
行政改革は、総論においてはおおむね賛成していても、いざこれが実施に移され
ようとする各論になりますと反対に遭うという、きわめてむずかしい宿命的
課題であります。
今回再提出される
行政改革関連八件は、いずれも解散
国会において審査未了となったものであります。また、当面の検討
課題の中を見ましても、特殊法人の経営の実態の見直し、中央省庁内の組織編成、
地方公共団体の定員の抑制など、各省庁の厳しい
抵抗は必至であります。これを実行に移すには
総理の不退転の
決意、たくましい
リーダーシップがなければ、せっかくの
行政改革がかけ声倒れになってしまうおそれが強いのであります。いかにこれに取り組むのか、
総理及び
行政管理庁長官の
決意のほどを示されたいのであります。
行政改革が看板の塗りかえや机の配置を変えるという単なる機構いじりだけに終わるのでは、真の効果を期待するのは困難であります。不必要な人員は思い切って減らしていくという、ある程度の出血を伴う人員
整理も場合によっては必要ではないかと思います。
行政管理庁長官は、今後定員管理をどの
ように
合理化し、人件費
削減の実質確保に努めるのか、あわせて
臨時行政調査会設置のねらいを伺いたいと思います。
次に、冷害
対策についてお伺いいたします。
今回の冷害による総被害見込み額は実に六千億円と言われております。これは大正二年以来の大災害であり、被災地からは収穫の見込みのない青立ちの稲穂を手に苦悩に満ちた農民の表情が伝えられております。
わが党は、去る九月二十五日に、冷害等による農作物等の被害救済に関し
政府に申し入れを行っております。
また、異常気象による影響は、ひとり農業のみにとどまらず、経営基盤の弱い中小
企業にもかなりの打撃を与えております。
政府は、これら農業者及び中小
企業に万全の被害救済措置を講ずべきだと思いますが、その
対策を伺います。
次は、水田利用再編
対策の第二期
対策でありますが、冷害は冷害、減反は減反と果たして単純に割り切れるものでありましょうか。大きな疑問があります。米需給の不均衡の是正が当面する農政の最
重要課題であるとは申せ、水田利用再編
対策という名の転作は農家にとってイバラの道であります。今回、空前の大災害をこうむった農家に、さらに来年度からこれに追い打ちをかける第二期の水田利用再編
対策の実施は、被災農家に十分配慮し、慎重に
決定していただきたいと思います。
さきに、日韓間の最大の懸案でありました北海道沖の
韓国漁船操業問題が四年ぶりにこのほど解決いたしましたが、関係各位の御努力に対し心から敬意を表します。
この結果、問題となるのが、
韓国漁船の規制
強化の見返りとして、済州島周辺の以西底びき網漁業の規制
強化を受け入れたことであります。以西底びき網漁業は、燃油の高騰、資源条件の悪化などによって厳しい経営状況に追い込まれている中で、文字どおり過重な負担を負わされることになり、減船による業界の再編は不可避であります。
政府は、その
責任において減船補償に万全を期すべきであると思います。
以上の諸点について
政府の
所見を求めるものであります。
次に、科学技術の振興と創造的
能力の
開発について伺います。
資源に乏しい
わが国が今後国際
社会の一員として生き延びるためには、科学技術立国を目指し、創造的な技術
開発を通じて
世界に貢献していかなければなりません。
わが国は、外国の技術を導入し、加工改良する
能力はすぐれているが、独創的な発明が少ないと指摘されてまいりました。いま求められているのは、こうした導入型・模倣型
体質から脱却し、自主的技術を
発展させる基盤をつくることであります。このためには、青少年に、みずから調べ、みずから考える創造的
能力を育てる
教育環境を
確立するとともに、すぐれた科学者や技術者に存分に腕をふるえる場所を用意することが大切であります。それには、大学も
企業もそれぞれ
日本型の縦割り
社会的な閉鎖性を打破し、国の研究所も含めて、情報の交換、研究者、技術者の交流等をもっと活発に行う必要があります。
また、
わが国の研究投資は民間主導型で、研究
開発費における国の負担割合は
米国や西ドイツの半分にすぎません。技術
開発の主力を
企業だけに任せておいては、どうしても営利に直結した短期的効果のあらわれる導入型・改良型技術に偏りがちであります。模倣は創造よりコストが安いのであります。目先の利益にとらわれたり、失敗を恐れていては、独創的な発明や技術革新は生まれません。創造的な研究土壌は育ちません。事、科学技術の研究に関する限り、多少のむだを容認する風潮も必要ではないかと思います。そして、こういう分野にこそ積極的な
政府の研究投資が望まれるのであります。
財政事情厳しい折でありますが、
国家百年の大計である科学技術立国のため、創造的な研究、頭脳の
開発に
政府は思い切った手を打つべきであると信じますが、
総理の
所見を伺います。
次に、
原子力船「むつ」について伺います。
佐世保市で改修工事中の「むつ」は、地元との協定では、一昨年秋の佐世保回航後三年間で工事を終え、新母港へ回航する約束となっております。しかしながら、本格的改修工事に取りかかったのは、
ようやくことしの八月に入ってからであります。工事に当たって関係者に望みたいのは、何よりも放射能監視や
環境保全など安全の確保に万全を期してもらいたいということでありますが、しかも、この工事を行うのに、昼夜兼行の突貫工事で工期を守らなければならないというきわめて困難な問題に迫られております。さらにまた、新母港の
決定もむずかしい今後の
政治課題として残されている
ようであります。果たして「むつ」は約束の期限内に工事を終え、新母港に向けて佐世保を出港できる見通しがあるのかどうか。
長崎県は、御承知のとおりに原爆被爆県であります。いまなお被爆後遺症で多くの人が苦しんでおります。
政府は、こうした県民感情を十分認識し、仮にも大湊出港の際の不手際の二の舞を繰り返すことのない
ように、周到に手はずを進める
よう要望し、
総理の
所見を伺います。
次に、環境問題でありますが、去る七月、アメリカ・ホワイトハウスが発表した「二〇〇〇年の地球報告」は、「もし現在の傾向が持続するなら、西暦二〇〇〇年の
世界は、現在に比べ一層汚染され、物的生産は拡大されるにもかかわらず、人々は多くの面で今日より貧しくなるだろう」と指摘し、「問題が悪化するまで決断をおくらせるならば、有効な
施策の
選択の可能性は著しく狭められるであろう」と警告しております。
総理も、
所信表明において環境問題の
世界的広がりと対応の重要性を指摘されましたが、現下の環境
政策の
課題のうち、当面最も緊急を要するものは、
開発行為が環境に与える影響を事前に調査、予測、
評価し、あとう限りこれを未然に防止するための統一的なルールを
確立することを目的としたいわゆるアセスメント制度の法制化にほかなりません。この問題に対し、
総理の
所信を伺います。
最後に伺いたいのは
憲法問題であります。
去る八月二十七日の衆議院法務委員会における
奥野法務大臣の
憲法発言をめぐって、今日これが大きな
政治問題となっております。それぞれの
立場において解釈すれば、それぞれの言い分はあると思います。しかしながら、私は当日の速記録を詳細に調べました結果、今回の
奥野発言は、言論の自由を定めた
憲法第二十一条、
国会内
発言に
責任は問われないとする第五十一条、改憲手続を定めた第九十六条など、現行
憲法の各条項には全く抵触せず、
遵守義務と改憲論議とが矛盾するものでないことは、当の
憲法自体に照らしても明らかであります。
憲法は
国家存立の基本法であるだけに、軽々に改憲を行うべきでないことはもちろんでありますが、だからといって
憲法を不磨の大典として絶対視すべきではなく、
憲法の
改正を認める条項があるからには、
時代の推移、国情に応じ、これを自由に論議、研究することは、民主
政治のもとにおける当然の
国民の権利であります。
「人民は常に
憲法を再検討し、改革し、変更する権利を有する。
一つの世代は、将来の世代をその法に従わせることができない。」という一七九三年フランスの権利宣言を例に引き出すまでもなく、自由主義国、
社会主義国を問わず、
世界の主要国で戦後
憲法を
改正していない国は
日本を除いて一国もありません。
米国とイタリアは五回ずつやっております。フランスは八回、西ドイツは三十四回、
社会主義国の
ソ連は実に五十一回です。中華人民共和国も四回の
改正をそれぞれ行っております。
総理は、
所信表明で
憲法の理念を堅持することを述べられておりますが、
憲法制定後三十有余年を経た今日、当時と内外情勢は一変しております。
憲法は
国家、
国民にとっていかにあるべきかということを真剣に考えるときであると思います。当初より
改正を意図するのではなく、その今日的な問題を洗い出し、材料を
国民に提供する
意味で、改めて
内閣に
憲法調査会を設け、検討してはいかがかと思いますが、
総理にお伺いをいたします。
終わりに、大平前
総理は、参議院
選挙公示日の街頭
演説の第一声で、「集団には意見の相違はある、
自民党もその例外ではない。しかし、意見の相違は、その意見を闘わせる中でよりよいものをつくり出していく」と絶叫して倒れました。この大平精神は
総理の言う「和の
政治」と脈絡相通ずるものがあります。
鈴木総理、あなたは大平精神の継承者として、これまでの軌道をそのまま歩くのではなく、
事態の変化、展開に応じて創造的に発想を転換され、先見性を持った「思いやりのある
政治」を達成するために、新しき八〇年代を切り開いていただきたいのであります。
以上、お尋ねし、かつ要望いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣鈴木善幸君
登壇、
拍手〕