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1980-10-30 第93回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月三十日(木曜日)    午前十時四分開会     —————————————    委員異動  十月十六日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     宮本 顕治君  十月十七日     辞任         補欠選任      小谷  守君     藤田  進君  十月二十二日     辞任         補欠選任      藤原 房雄君     鶴岡  洋君  十月二十九日     辞任         補欠選任      鶴岡  洋君     藤原 房雄君      宮本 顕治君     佐藤 昭夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 一弘君     理 事                 大石 武一君                 上條 勝久君                 寺田 熊雄君                 藤原 房雄君     委 員                 浅野  拡君                 戸塚 進也君                 平井 卓志君                 真鍋 賢二君                 円山 雅也君                 八木 一郎君                 佐藤 昭夫君                 市川 房枝君                 中山 千夏君    国務大臣        法 務 大 臣  奥野 誠亮君    政府委員        法務大臣官房長  筧  榮一君        法務大臣官房司        法法制調査部長  枇杷田泰助君        法務省民事局長  貞家 克己君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省矯正局長  豊島英次郎君        法務省保護局長  稲田 克巳君        法務省訟務局長  柳川 俊一君        法務省人権擁護        局長       中島 一郎君        法務省入国管理        局長       小杉 照夫君        公安調査庁次長  西本 昌基君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   大西 勝也君        最高裁判所事務        総局人事局長   勝見 嘉美君        最高裁判所事務        総局民事局長   西山 俊彦君        最高裁判所事務        総局家庭局長   栗原平八郎君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    法制局側        法 制 局 長  浅野 一郎君    衆議院法制局側        法 制 局 長  大井 民雄君    説明員        内閣官房内閣参        事官室内閣参事        官        栗林 貞一君        総理府内閣総理        大臣官房参事官  山田 晋作君        警察庁刑事局保        安部防犯課長   佐野 国臣君        警察庁警備局公        安第二課長    西村  勝君        警察庁警備局公        安第三課長    吉野  準君        防衛庁防衛局防        衛課長      池田 久克君        科学技術庁原子        力局原子力開発        機関監理官    須田 忠義君        外務省欧亜局東        欧第一課長    兵藤 長雄君        大蔵省理財局国        有財産第二課長  桜井  直君        厚生省薬務局麻        薬課長      新田 進治君        厚生省児童家庭        局母子福祉課長  横尾 和子君        労働省労働基準        局補償課長    原  敏治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (商法、刑法、少年法及び監獄法改正に関す  る件)  (安川小倉簡易裁判所判事事件に関する件)  (金大中問題に関する件)  (恩赦に関する件)  (出入国管理に関する件)  (憲法問題に関する件)  (犯罪被害者補償に関する件)  (覚せい刑事犯に関する件)  (公安調査局職員調査活動に関する件)  (過激派内部抗争事件捜査状況に関する件)     —————————————
  2. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十七日、小谷守君が委員辞任され、その補欠として藤田進君が選任されました。  また、昨二十九日、宮本顕治君が委員辞任され、その補欠として佐藤昭夫君が選任されました。     —————————————
  3. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在、理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事藤原房雄君を指名いたします。     —————————————
  5. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 民事執行法の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。  民事執行法がことしの十月一日から施行されました。強制執行申し立てをしたのが十月一日以前ですと旧法適用されますので、不動産関係はまだ余り実例がないようでありますが、動産関係はもうぼちぼち強制執行事件現実に行われております。  その実施状況を見てみますと、かなり混乱があるように思われますのは、私が直接聞知しましたのは、百二十一条の「(差押禁止動産)」、第一号の「債務者等生活に欠くことができない衣服、寝具、家具台所用具、畳及び建具」、この債務者生活に欠くことのできない家具というものの範囲、これをどの程度にするかということがいまのところは執行官裁量に任されている。そこで、執行官によりましては、たとえばテレビであるとか電気洗たく機であるとか、あるいは冷蔵庫であるとか、こういうようなものはもう非常にポピュラーなものでわれわれの近代生活にとっては欠くことのできない家具である、そういう認定をしておる執行官もあるわけです。したがって、現実執行官がその場所に行きまして、そういうものは差し押さえはできないと。そうすると、あと差し押さえるようなものはほとんど事実上はない。台所用具であるとか布団であるとか、あるいは衣服であるとかいうものばかりで、差し押さえ執行不能ということで帰ってくる。ところが、執行官によっては、いやいや必ずしも電気洗たく機冷蔵庫テレビなんかなくたって構わない、生活ができるということで、快適な市民生活というものの範囲がどの程度のものであっていいか、どの程度のレベル以上でなければならないかというようなことで、執行官のいわば人生観というか世界観というか、そういうもので案外差異ができてくる。  私は非常におもしろいと思って、いずれをも非難したりとがめたりする気持ちはないのですが、執行官によって相違ができるということは好ましいことかどうか、その点、民事局長に御意見を伺いたいと思います。
  7. 西山俊彦

    最高裁判所長官代理者西山俊彦君) お答えに入ります前に一言御報告させていただきたいと思いますが、民事執行法が昨年の三月に制定公布されまして、その後私どもの方で民事執行規則の立案を鋭意いたしました結果、昨年の十一月に制定公布を見まして、本年の十月一日には一応現段階において考えられる準備を終了いたして新法の施行を迎えたわけでございまして、旧法から新法への移行は非常に順調に行われたというふうに私どもは考えておりますことを、ちょっと御報告させていただきたいと思います。  ただいまも寺田委員のお話がありましたように、不動産執行につきましては、申し立てがあってから現況調査、それから競売条件を設定するというふうなことがございますので、実際に競売が行われるのはことしの暮れか、あるいは来年の初めごろからということになろうかと思われます。しかし、現在の段階におきましては、不動産執行におきましても、特に混乱は生じていないというふうに認識しておるわけでございます。  そこで、有体動産関係でございますが、ただいま御指摘民事執行法の百三十一条の一号に掲げてあります規定は、実は、これは改正前の旧民事訴訟法の五百七十条の一項一号と実質的には変わることがない規定になっておりまして、この規定解釈といたしましては、新法旧法とで異なっておらないというふうに考えておりますし、私どもの現在見ておりますところでは、運用上混乱を生じているというふうには実は認識しておらないわけでございます。  私どもといたしましては、この差し押さえ——生活に欠くべからざるものであるかどうかというふうなことの基準をどういうふうにして考えるかという場合に、その当時の一般人生活水準を考えて決めるか、それとも最低の生活水準を考えて決めるかということで、委員指摘のような差が出てくることはこれはもう当然のことと存じますが、私ども執行官に指導しておりますところでは、一応一般人生活水準をも考えた上で、個々の具体的な事情に応じ、すなわち、債務者等生活状況を加味して適宜修正を加えていくべきものであるということで指導しておるわけでございます。  そういうことで、結果といたしましては各地で、たとえばテレビにしましても、押さえるところと押さえないところというふうなことが出ていることは争えないこととは思いますが、その場合でも、たとえばテレビを例にとりますと、そのテレビ白黒であるかカラーであるかということによっても違ってまいります。で、現在では白黒はもう生活必需品だということで押さえていないと思われますが、カラーになると、やや人によって違ってくるということがあります。それから、テレビの台数なんかによっても違ってきます。それから……
  8. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 質問時間に制限があるから、簡にして要を得た答弁をしてもらいたい。
  9. 西山俊彦

    最高裁判所長官代理者西山俊彦君) 要するに、そういう地域とか債務者生活状況家族構成等によって差が出てきているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  10. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、いろいろあなたも十分近く答弁をなさったが、結論を言うと、そういうものはすべて執行官裁量にゆだねられておって各地で取り扱いが違っていてもいたし方ないと、こういう結論かね、結論は。
  11. 西山俊彦

    最高裁判所長官代理者西山俊彦君) そういうふうには考えておらないのでございます。おのずから統一した線が引かれているものと考えておるわけでございます。
  12. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうもわからぬね。あなた御自身の答弁でも、各地差異があるということは認めておられるようだね。それでいて、統一しているというのはどういうわけかね。
  13. 西山俊彦

    最高裁判所長官代理者西山俊彦君) 現象として違いが出ているということでございまして、その違いが出ている理由を尋ねていけば、そこに一定の基準に基づいた差し押さえがなされているということでございます。
  14. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 じゃ、端的にお答えいただきたいのだけれども、たとえばテレビとか電気冷蔵庫とか、それから電気洗たく機というようなものは、もう近代的な市民生活にとって欠くことのできないものと認めていらっしゃるのか、それともそうじゃないと言うのか、結論を言うていただきたい。
  15. 西山俊彦

    最高裁判所長官代理者西山俊彦君) たてまえといたしましては、それは差し押さえ禁止物には当たらないという考えでおるわけでございます。
  16. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは差し押さえ禁止物に当たらない。そうすると、非常に人情家で近代的なセンスを持った執行官が、これは差し押さえ不能であると言って差し押さえせずに帰ってくることはどういうことです。
  17. 西山俊彦

    最高裁判所長官代理者西山俊彦君) 先ほど申しましたように、その地域、たとえば都会であるとか、ごく田舎であるとかいうふうなことによっても違ってまいりますし、暑いところ、寒いところということでも違ってくるかと思われますので、そういう具体的な事情に応じて執行官が押さえるか押さえないかを考えているというふうに考えるわけでございます。
  18. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 結論としては、それは執行官裁量にゆだねられているということになりますね。
  19. 西山俊彦

    最高裁判所長官代理者西山俊彦君) そういう具体的な事情を判断する限りにおいては、裁量にゆだねられている面がございます。
  20. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうもはっきりしないね。ただ、こういう問題であんまり時間が長くかかってはほかの質問ができなくなるから、いまのは余り深追いはしないけれども、結局、法律的な解釈としては、これは差し押さえ禁止物件に当たらない。しかし、地方の実情によっては押さえないこともあるようである。それは執行官裁量にゆだねられておって、別段それをとがめ立てするつもりはない、こういう結論だと伺ってよろしいか。
  21. 西山俊彦

    最高裁判所長官代理者西山俊彦君) 大ざっぱに申しますとそういうことになるかと思いますが、押さえ方のいかんによっては執行異議ということで債務者の方から異議が出て、その結果、執行裁判所が検討して、最終的な決断を下すということになろうかと思われます。
  22. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなたはほかにお仕事がおありのようですから、出てよろしい。  それから、最高裁人事局長がおいでのようですが、このごろ安川判事水沼判事ということで、最高裁長官大変責任を感じられて、この間、高裁長官を呼ばれて厳しい訓示をされたようですね。だから、水沼判事辞任を認めたということは、私も大変よかったと思うんですね。大トラ判事とか暴力判事とかというようなことを書き立てられておるのだから、その人が現実刑事裁判をするといったってもそれは形にならない。もともと信頼を失った裁判官なんというものは裁判官に値しないことはもう言うまでもないことで、辞任を認めたということは大変私はよかったと思うのですが、あれは間違いないんですね。
  23. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 昨日の裁判官会議で、いわゆる辞表受理の御決定をいただきました。
  24. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 結局、こういう裁判官不祥事を将来再発させないという決意を長官以下お持ちのようですが、一言で言いますと、どうしたらいいというおつもりなんでしょうか。簡にして要を得たことで御答弁いただきたいと思います。
  25. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 全国の裁判官の全員が、自分の職責の重大さということを十分認識していただいて、自粛自戒をしていただくということに尽きようかと思います。  それでは、具体策がどうかということになりますと、特効薬的な、あるいは即効薬的な対策というものが実は思いつかないわけでありますけれども、私どもなりに、たとえば裁判官の研修というものを司法研修所で行っておりますけれども、そのあり方等につきましてまともから見直すというようなことも考えている次第でございます。
  26. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは私も裁判所に入った経験があるけれども、ああいうことはもう裁判所雰囲気で全然考える余地のなかったことで、裁判官をやめたときは、もう一時に、あらゆる何といいますか制約というか統制というか、そういうものがもう一時になくなってしまったような解放感を覚えた経験が私にもあるわけで、だから裁判所がああいう雰囲気とか伝統とかいうものを持っておれば、安川とか水沼とかいうああいう判事が出る余地はもともとないはずなんですね。そこは、やはり裁判所のある意味で非常に貴重な伝統といいますか雰囲気といいますか、それであると思いますから、それをやはりしっかりとみんなで守っていくことが大事じゃないでしょうか。それが無言の教訓になるわけで、訓示や何よりも、みんながそういう雰囲気伝統を大切にして守っていくということが大事じゃないかと思うんですが、これはどうでしょうか。
  27. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 全く仰せのとおりだと思います。私どもといたしましても、戦前の裁判所以来のよき伝統というものをあくまでも守っていきたいと思っております。同僚同士あるいは先輩、後輩との間で、先ほど申し上げましたように、お互い切磋琢磨する、自粛自戒するということ以外にないように私どもは考えております。
  28. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それからこの問題に関連して、安川判事久山町長選に立候補して罷免訴追を免れる、罷免裁判を免れると。これは非常にずる賢く法網をくぐった、裁判官であった人がそういうことをしたということで国民も大変怒る、われわれも大変残念なことだと思いまして、こういうことの再発を食いとめるために、いま弾劾裁判所で食いとめるための法改正を計画しておるわけですね。最高裁人事局長も小委員会にお出になって、事務局案なるものをお述べになりました。  要旨を言いますと、たしか、すでに訴追委員会訴追のなされた場合には公選法九十条の適用を除外すると、そういうふうに裁判官弾劾法改正するという一つの提案であります。これは私どもも大体そういうふうに考えておりましたが、さらに一歩を進めて、最高裁判所長官訴追請求をした段階公選法九十条の適用を排除するを可とするという事務局意見をお述べになりました。これも私、非常に傾聴に値する議論だと思っておりますが、事務局案だけでなくして、それを裁判官会議にかけて、裁判官会議全体の総意としてそういう意見をお出しになるという御用意がありますか、このことをお伺いしたいと思います。
  29. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 御承知のとおり、裁判所は法案の提出権がございません。このたびの不祥事につきまして立法的な手当てをしていただくことにつきましては、積極的に裁判所として呼応していただきたいという立場にはないと、ひとつ御理解いただきたいと存じます。ただ、このたびの不祥事で、御承知のように、いわば法の網の目が抜けていたということであって、そこに立法上の手当てをしていただくことについては異存がございません。そのような基本的な立場にありますので、この事務当局案裁判官会議にお諮りして正式の決議をいただいて、さらに関係方面に申し上げるという手続はいたすことはしないつもりでございます。ただ、事務当局であるにせよ、裁判所の名においてこういう公の席上で申し上げていることでございますので、いわば大方裁判官感触はお聞きしてございます。
  30. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なるほどね。事柄によって、裁判官会議の正式の議決ということに適しないこともあります。そういう配慮でね、なるほど。しかし、あなた方が御提案になるに当たっては、大方裁判官にお諮りをして、まあどういうか、御同意という感触は得ておると、こういうことですね。
  31. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 真っ向からそれはおかしいというような御意見がなかったことだけを、申し上げさしていただきたいと思います。
  32. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この問題について衆議院法制局長参議院法制局長見えになっておられますか。——  ちょっと衆議院法制局長それから参議院法制局長、まず参議院のこれは法務委員会だから、一応参議院法制局長からこの問題についての御所見をお伺いしたいと思います。
  33. 浅野一郎

    法制局長浅野一郎君) ただいま先生お示しいただきました案でございますけれども、具体的にまだ私どもで処理する段階になってはおりません。それではございますけれども、その方法は確かに安川問題解決の有効な方法であろうかと、こう思います。  ただ、問題は、参政権を制限するということになるわけでございますので、憲法問題がいろいろ生じてくるのではなかろうかと、こう思っております。そこで、国民参政権重要性という問題とか、それから裁判官には高度の身分保障が与えられておることとか、裁判の公正を維持して国民の司法に対する信頼を確保するための弾劾裁判手続重要性とかいうような問題をあわせ考えまして、慎重に検討していかなければならない問題であろうかと、こう思っております。  まだ具体的に私どもで処理しておりませんので、このあたりで……。
  34. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 じゃ、衆議院法制局長
  35. 大井民雄

    衆議院法制局長大井民雄君) 衆議院法制局長といたしましては、この件に関する立法問題に関しまして、私の方に衆議院委員会等から公式な発言が求められておらない現段階でございます。したがって、具体的な御意見を申し上げる時期ではいまだないと考えておりますが、先ほど先生が御発言になりました裁判官弾劾法改正小委員会で指向されておる方向につきましては理解いたしますので、今後とも十分に検討していきたいと考えております。
  36. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはなぜ国民があれほどまでに関心を持ちそして憤激したか、そしてまた、私ども国会議員も何とかしなければいけないと考えたのは、なるほど参政権というものは非常にこれは基本的人権として尊重していかなきゃいかぬ。しかしその行使は、訴追を免れるための便法として利用する、あるいは罷免裁判を免れるために利用するというのは、これは明らかに権利乱用である。そこにやはり国民怒りの原因があると私は思います。  私法の原理としては、権利乱用はこれを許さずというのは、民法の大原則として私法のこれは基礎になっておりますけれども、公法の分野でも全く同じである。というのは、憲法第十二条が、国民基本的人権というのはこれを乱用してはならないということをはっきりと明文規定しておるわけですね。したがって、参政権、ことに被選挙権の行使といえどもそういう目的で使われておることが明白だというような場合に、われわれがそれを座視して放任しなければならないかということ。それに対してわれわれがもうすでに疑問を感じ、そうしてそういう立法をするということになったわけで、そこが出発点です。  ですから、したがって両法制局長におかれても、やはりわれわれの法的な感情、国民の正当な怒り、それを法律的に表現する、権利乱用は許さないという、そこに法的なやっぱり基礎を求めているということを十分含味していただきたい、こう思います。両局長、よろしいか、そういう意味ですから。それじゃもう結構です。  それから、外務省アジア局長見えになっておられますか。——  前回の法務委員会で私は、いまの全斗煥政権戒厳法を施行して以来、国会議員を多数逮捕し拘禁しておる。それも、これは決して現行犯とは考えられない。これは明らかに戒厳法の十七条に国会議員の不逮捕特権規定があり、「戒厳宣布中国会議員現行犯を除外するほか、逮捕または拘禁されない。」と明文があるにもかかわらず、国会議員多数が逮捕、拘禁されている。これはどういうわけだ。調査して報告してほしいということを要望いたしたわけであります。  アジア局長の方から御報告をいただきましたのは、ことしの五月以降、民主共和党国会議員金鍾泌朴鍾圭李秉禧無所属国会議員李厚洛、金振晩。それから七月十九日連行、八月二十三日釈放が民主共和党吉典植具泰会金竜泰申洞植張栄淳玄梧鳳、新民党の鄭海永、高興門朴海充朴永禄、金守漢、崔炯佑金東英、宋元英。五月十七日連行、いまだに釈放されないものが李宅敦、これは有名な弁護士であります。それからこれは何と読むんですか、局長。ダイシュンコウと読むんですか。
  37. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) ゼイ春浩新民党議員でございます。
  38. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ゼイ春浩、それから金禄永統一社会党総裁代行、こういう非常にたくさんの国会議員逮捕されて、短くて十五、六日拘禁されている。長いのは五月十七日以降いまだに釈放されない。中には李宅敦さんのようにこれは今回裁判を現に受けておる人もありますが、金鍾泌元首相などは、過去において不正な蓄財があった、だからその財産を差し出して釈放されたと。これは前の総理大臣であります。李厚洛、ごれも前のKCIA部長であります。  こういうふうに、法律の明文に反して国会議員をみんなふん縛っちゃう、そして政界から追放する、こんなことをすれば実力を持ったやつはもう幾らでも政権を奪取できるわけで、これはどういうわけだと言ってお尋ねしたところが、あなたの御報告を伺うというと、「韓国国内の問題について、日本側に回答する立場にはなく、その義務もない」という回答に接しましたという、これは驚くべき回答であります。  そんなことを言えば、金大中事件でなぜわれわれが関心を示すのか。総理大臣が憂慮の念を表明するのか。すべて韓国の国内問題だと言ってしまえばそれきりでしょう。あるいはアメリカが非常な憂慮の念を、不快の念を表明するということも一緒なわけでね。だから、これは明らかに全斗煥という現政権が説明ができないわけだね、明文に反しているんだから。だから、戒厳法を施行してみずからが戒厳法を破っている。ほかの破っている人間はつかまえてきて戒厳法違反だと言って罰する、自分ば戒厳法を真っ向から踏みにじっておるということになる。これは不法な暴力政権と断ぜざるを得ない。これはどういうふうに理解していらっしゃるのか。アジア局長、いかがです。これ。
  39. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) ただいま私ども調査しました結果、寺田委員にお出しした資料の諸事実は、寺田委員指摘のとおりでございます。  結論としまして、この明文に反しているからどうするのかということでございますが、何分第三国のことでございますので、私どもとしましては、少なくとも政府の者としましては、明文に反しているからどういうことができるということでは毛頭ないと考えております。
  40. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまあなたのおっしゃったことがよく理解できないんですが、明文に反しているということはお認めになったんでしょうね。
  41. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 私どもとしては、そういうことを認めるとか認めないとかいうことを申し上げる立場にないということを申し上げたつもりでございます。
  42. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはこの間も、あなたが大宮人でいらっしゃるからなかなか言いにくいことはあるだろうと、しかし個人としてどうかと言ったら、個人としてはそう思うというようなことをおっしゃったけれども、つまり現行犯以外に逮捕しちゃいかぬという規定があるのに、過去の不正蓄財なんということで逮捕しているんだから、明文に反するということはもう言わずして明らかでしょう。だから、最近よく大臣として、あるいは政治家としてというような使い分けがある。あなたも外務省アジア局長としてはなかなかおっしゃることはむずかしいだろうけれども、これは明らかに明文に反しているということを個人としてお考えにならぬわけにいかぬと思うけれども、どうです。
  43. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 私の立場としてはそういうことを申し上げるわけにいかないということを、先ほど申し上げた次第でございます。
  44. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは法務大臣にお伺いしますけれども、大臣、いかがですか。あなたは非常に正義感も強い、曲がったことのおきらいな性格でいらっしゃることを、私、前からよく存じ上げておる。こういうふうに現行犯以外には国会議員逮捕しちゃいかぬぞと——どんどんどんどん国会議員をいろいろな理屈をつけてみんなふん縛ってしまった、これをどう思われますか。
  45. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 韓国には韓国の置かれている立場、いろいろな特殊な事情どもあると思います。私の口から韓国の問題につきまして批判がましいことを言うのは避けるべきだと、国と国との関係におきましては外務省がその衝に当たっておられますので、私からそういう問題について発言することは控えるのが穏当ではないか、こう思っております。
  46. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 前の安保、沖縄・北方問題の特別委員会で、あなたは瀬谷委員にお答えになりましたね。つまり、自衛隊を憲法上存在を認めても過去の日本の帝国陸軍のようなことにはなりませんと、それはシビリアンコントロールが確立しており、国会がしっかりしておれば大丈夫だと、過去におけるあの軍部の専断横暴というものは、法的な原因というのは統帥権の独立にあったんですというような御答弁をなさったですね。これは瀬谷委員にも直接確かめたわけです。  しかし、武力を持つ者、実力を持つ者というものは、とかくそういう法の尊重、法の権威というふうなものを認めない傾向があります。韓国の場合はそれが極端で、過去の日本陸軍以上のものだというふうに私どもは見ておるんですね。日本の自衛隊を公認し、それが無限に拡大していった場合に、やはり私は非常にそういう危険性、過去に戻る危険性があると考えておるんです。韓国の事例は決して他人事ではない、むしろ他山の石として私どもはそこから教訓をくみ取るべきだ。過去において私どもはすでに失敗しておるわけです。戦前。それでも、なおかつやはりあなたは日本は大丈夫だとお考えになりますか。
  47. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 韓国のことは詳しゅうございませんけれども、恐らく戒厳令がしかれて国会の機能というものが制限されているのじゃないかと思います。日本の場合には、戦前帝国議会がございましたけれども、帝国議会が関与できない部門が非常に多かったわけであります。もう寺田さん詳しいわけですから細かく申し上げませんが、大権事項ということがございまして、国会は関与できない、軍の統帥事項もその一つでございまして、教育なんかに関しまする部門も国会の関与できない部分がずいぶんございました。大権事項があったわけでございますけれども、いまの日本国憲法に基づく国会は全面的にいろいろ関与していくことができるわけでございますし、軍も当然国会の決める範囲の中に入っているわけでございますので、私は韓国の場合と日本の場合とは全く違うじゃないか、また、戦前の軍隊といまの日本国憲法のもとにおける自衛隊とも全く違うじゃないか、基礎からして違うじゃないかと、こう考えているわけでございます。
  48. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私とあなたとはやはり見方が非常に違います。ただ、あなたの御意見はどういう御意見かということはよくわかりました。ただ、大臣、あなたは戒厳令が施行されて国会の機能が停止しているんじゃないかとおっしゃった。それは決して全斗煥政権が韓国の政治家を逮捕することの正当性を立証することにはなりません。確かに国会の機能はとまったかもしれません。しかし、そういうことのゆえに国会議員逮捕されては大変だということで特に戒厳法の十七条が、戒厳法の施行があっても国会議員現行犯以外には逮捕ができないんだということを明文規定してあるわけですから、戒厳法が施行されているから国会の機能が停止して国会議員逮捕されていいということになりません。これは理解していただけますか。
  49. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 私が申し上げましたのは、日本が同じような危機に陥るおそれはないという意味で申し上げたわけでございまして、韓国の事態を正当化する意味で申し上げたわけではございません。むしろ韓国のことにつきましては、私は発言を慎ましてもらいたいと、こう申し上げておるわけでございます。
  50. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 アジア局長、あなたもちょっとなかなか答弁しにくいだろうけれども、これはだれが見ても全斗煥政権というのは、法を無視して自分を法の上に置いている暴力政権だということは明らかです。だって明文を踏みにじっているんだから。それで、気に入らない国会議員は皆逮捕しちゃって追放しちゃう。こんなことをしたら、あなた、どんな乱暴者でもみんな政権とれますよ。そういうことがまかり通るということが私どもには理解できない。それを追及しようにも皆できない、黙ってしまっている。言論機関も黙らされている、沈黙を強いられている、こういうことでしょう。こういうむちゃな政権に対してあなた方は、第三国のことですからしょうがありませんと言ってもう何らの意思表示も何らの影響力も行使できない、こういうことですか。そうなんですか。
  51. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 日本の場合にも、いろいろなプロセスを経て民主化というものが実現いたしておるわけでございます。韓国にもそれなりの歴史、事情、背景を背にして彼らなりに民主化の努力をしているものと、私どもは評価いたしております。
  52. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 民主化の努力をしている人間をみんなふん縛っているんですよ。反対だ。民主化のために努力している人間をふん縛ってしまっている。あなたのおっしゃることはまるで逆ですよ。そうでしょう。金大中氏だって、民主化のために闘ったわけだ。それがふん縛られた。ことにあのカトリックの人々、牧師さんなんというのは、男性の牧師であろうが女性の牧師であろうがみんなふん縛られて、しかも逮捕中、手を折られ足を折られて痴呆状態に陥れられている。そういう拷問がもう頻繁に行われておる。被告人たちは法廷で皆それを明らかにしておる。それにもかかわらずどんどんと死刑判決をしておる、極刑に処しておるというのが現実なんですよ。だから、そういう現実を、あなた方が目を覆わずにしっかりと見てもらいたいというのが私の質問の趣旨ですよ。あなたはこれをしも否定されますか。
  53. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) それぞれの国の事情につきまして、あるいはその動向につきまして、私どもこれを十分フォローしていかなければならないということは、先生指摘のとおりでございます。
  54. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、伊東外務大臣が先般重ねて韓国の大使を呼んで、金大中事件の判決文を渡してもらいたい——もちろんこれは判決の原本ではありませんよ、判決のリコピーで足るわけだから、それを渡してもらいたいということを重ねて要望したようですが、それに対する反応はどうでしたか。
  55. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 去る十月二十三日でございましたか、伊東外務大臣が在京の崔慶禄大使を招致されまして、寺田委員指摘のとおりの申し入れをされたのが、一番最近の日韓間でのこの問題についてのやりとりでございます。その後、私どもとしては、いまだ韓国から何らかのインディケーションというものはまだもらっておりません。
  56. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 一方、恐らく軍法会議の控訴審も同じような死刑の判決を下すんじゃないかと私どもは見ておる。これはもう筋書きの決まったシナリオをただ形式だけ追っているにすぎないんだから、あなた方もよほどふんどしを締めてこの問題に取り組まないと、不快感の表明とか、あるいは関心の表明とか憂慮の念の伝達とか、そういうことをなさっても、それはもう単に日本国民に対するゼスチュアだけにしかすぎないことになっちゃいますよ。だから、そういうことでなくしてもっと本当に誠意を持って、また強い決意を持ってこの問題に取り組んでいただきたい。判決文も必ず取ってもらいたいと私は考えます。そういうお気持ちがおありですか。
  57. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 伊東外務大臣も、そのもとの事務当局も、そのつもりで努力いたしております。
  58. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、伊藤律の問題は、これは私どもどうしてもわからないんで、これはだれしもわからないのだろうと思うんです。いままでの国会のこれに関する質疑というものを、私ずっと調べてみました。ところが、衆議院法務委員会、それから衆議院の決算委員会、この二つにこの問題に対する質疑がなされております。ところが、伊藤律が食客であるというような答弁が出ておるんです。食客と言うたって、あなた、全然何人の目にも触れない、何人にも会わない、三十年以上にわたって——二十九年だな、二十九年以上にわたって何人にも会うことのできない、また手紙一つさえ出すことのできない食客なんていうのがあるんでしょうかね。だから、伊藤律が一体どういう状態に中国であったのか、もうちょっとその点を明らかにしてもらいたいと思うんです。そういうことは何かあなた方がせんさくする限りでないとおっしゃるのかね、その辺のところをちょっとお伺いしたいんです。
  59. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 八月下旬以来、伊藤氏の帰国につきましては、通常の在外における邦人に対する便宜供与ということで、在北京の大使館がいろいろめんどうを見たことは寺田委員承知のとおりでございますが、ただいま触れられた問題について、私どもが伊藤氏にこれを尋ねなかったわけではございませんが、その結果、伊藤氏は口をつぐんで、過去のことについては話したくないということで、外務省としてもそれ以上の追及はいたす立場にもございませんし、いたしておらないわけでございます。
  60. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 伊藤律本人に外務当局が事情を聴取されて、語りたくないと言った、したがってそれ以上追及しなかったということは、まあわからないでもないけれども、これはどうなんでしょうね、あなた方は日本人が外国にある場合に、その外国にある日本人の生命、財産を守る義務というのは当然あるわけでしょう。これは旅券を持って正式に渡航したのと、それから出入国管理令に違反してひそかに外国に渡ったのとの区別はないんでしょう。いかがですか。
  61. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 同人が旅券を所持していなかったことは、寺田委員指摘のとおりでございます。かかるがゆえに、伊藤氏にいろいろどこまで過去の事情についてこれを質問し得るかどうか、これは私も、先方ががえんじないことをどこまでお尋ねすることができるか、ちょっとお答えできないわけですが、現在は少なくとも内地におるわけでございますので、この出入国管理令、密出国した当時はまだ施行されてなかったわけでございますが、いずれにしましても、そういった関連の問題等につきまして内地でどのようなプロセスで本人にただし得るのか、そういった側面があるのじゃないかと、かように考えております。
  62. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なるほどね。本人に話したくないような事情があったんだろうというふうに推測していると。それはまあ私どもも当然そういう推測をしますが、この伊藤律を、あなた方は中国においてどういう扱いを受けておったと思っていらっしゃるんだろうか。食客だと思っていらっしゃるんだろうか、それとも抑留されていたんじゃないかと推測するのか、その辺のお考え、どうです。
  63. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 恐らく御本人は亡命というようなお考えがあったのじゃないかと思いますが、私どもが中国側から承知いたしておりますことは、同人が北京にいるというその事実と、それから本人が帰国を希望しているという事実を中国側から承知したのみでございまして、それ以上の、どういう資格で中国に滞在したのか、あるいはその間どういう待遇を受けていたのか、承知していないわけでございます。
  64. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは衆議院の決算委員会の五十五年九月四日付の会議録を見ますと、井上一成議員の質問に対して政府側の渡辺説明員というのが、「伊藤律氏をこの際本人の希望に従って帰国させてあげても日中関係にひびは入らないであろうという判断があったのではないかという御指摘でございますけれども、そういうことも当然あろうかというように考えておりまして、」と言っておりますけれども、つまり伊藤律をいま帰すのでは日中関係にひびが入らないけれども、それより以前に帰すとか帰さないとかいうことはひびが入るんだという当然解釈になると思うのだけれど、これはどういうことを意味するんですか。
  65. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 恐らく渡辺政府委員が、中国側がそう考えているであろうとそんたくして衆議院の決算委員会におきまして答弁申し上げたのじゃないかと私は思います。実際にそうであるかどうか、これはさらに中国側に問い合わせる余地もございますが、中国側としては恐らく日中国交正常化して日中間の対話という道が十分開けた、その上での判断ということもあり得るのじゃないかと思います。
  66. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 こういう問題は外務省の方でも、何か非常に長い年月がたった後で発表するという方法をとっていらっしゃるようであるけれども、ただ、私が先ほどからお話しした食客というそういう理解、これは渡辺説明員という人が使っている言葉なわけですから、それで局長にお尋ねしたわけです。あなたのきょうの御答弁を伺うと、必ずしも食客なんというふうには考えておられないように思えますね。そういうふうに理解していいんでしょう。
  67. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 表現の問題はともかくとしまして、中国側がしかるべく同人のめんどうを見ておったのではないかと、かように考える次第でございます。
  68. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これからも中国側に、伊藤律が一体どういう状態にあったか、これは中国側は当然知っているはずだから、その点についての説明を求めるということはおやりになるつもりはないのか。われわれとしてもそれを聞きたいというふうに考えておるし、それを知りたいと思う人も国内には非常に多いと思うんですが、あなた方はそのことを中国側に聞いてみるおつもりはないでしょうか。できれば聞いてほしいんだけれども
  69. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 本邦におきまして伊藤氏の過去の言動についての関心があるということは、十分承知いたしております。これは、関心を持たれる方は中国側に直接聞かれること、あるいは北京にはわが特派員が大ぜい駐在いたしておりますし、その面から中国側に聞くという道はあると思いますが、政府としていま中国側にその点をさらに問い合わせなければならないという必要は、現段階ではないと私は考えます。
  70. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、結局これはなぞとしておかれてしまうわけね。何かあなた方、外国と接触なさる場合に、外国がちょっとこれは気に入らないであろうとか不快に思うであろうというようなことは、ようなさろうとしない。これが私、どうも残念なんですね。韓国の問題しかり、アメリカに対してもしかり、中国に対してもしかり。相手が多少不快に思おうとも、日本国民が中国に二十九年間も全く音信もなくひそんでいたということ、国民がその理由を知りたがっているということ、そういう現実があり、また私どもも聞いてほしいということをあなた方に要望する、そういう現実があるにもかかわらず聞く必要はないというのは、何かちょっとおかしいんじゃないか。どうですか。
  71. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 私が申し上げましたのは、中国側にそういう点につきましていろいろお尋ねする道というのは私的なルートを通じても恐らくあり得るのではないか、外務省としまして、どうしてもその点を調べなければ日中関係上都合が悪いということが起こるということでもないのではないかと、かように考えまして、先ほど御答弁申し上げたわけでございます。
  72. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 局長、釈然としないけれど、きょうはこの程度にとどめておきます。もうあなた結構ですから。  商法改正の問題がありますが、これはちょっと後回しにさしていただいて、まず刑法改正と保安処分の問題でお尋ねをしたいと思いますが、法務大臣が新宿のバス放火事件で、あの事件が起きましたときに、保安処分の必要性というものを強調なさいましたね。あれは、やはりあの事件が精神障害者のやったことだというふうに思われて御発言になったんでしょうか。
  73. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 精神障害者とは言い切っておりません。精神障害の疑いのある者と申し上げました。同時に、八月中に精神障害の疑いのある者によって四件も殺人事件が引き起こされたわけでございまして、したがいまして、国民の皆さん方が大変不安を感じておられたのじゃないかと思うのでして、公安に関する責任を持っております法務省として何らかの答えを国民の皆さん方に申し上げなければならない、そういう気持ちで刑法改正のこと、また、保安処分に触れて閣議で申し上げさしていただきまして、関係各方面と協議を重ねてその推進を図っていきたいということで御了承を得たわけでございました。
  74. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは刑事局長にお尋ねをしますが、きのうのテレビで見たんですけれども、この新宿バス放火事件というのは、被疑者の丸山というのを何かいままで鑑定留置しておったようですが、結局起訴なさったわけですね。
  75. 前田宏

    政府委員(前田宏君) お尋ねの新宿のバス放火事件につきましては、いま仰せになりました被疑者を身柄の勾留を続け、さらに九月の六日から鑑定留置ということで精神鑑定を専門の方にお願いしておったわけでございますが、昨日、建造物等以外放火、殺人、それから殺人未遂ということで起訴の手続をとっております。
  76. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 起訴した以上は、刑事責任能力ありということは当然前提になったと思いますが、そうしますと、鑑定の結果というのは刑事責任能力を肯定しておったわけですね。
  77. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 御案内のように、精神障害があるかどうか、またその程度がどうであるかということと、刑法上心神喪失であるか、あるいは心神耗弱であるかということとは直ちに一致しないわけでございまして、精神鑑定の結果以外にもいろいろな証拠がございますから、そういうものを総合判断して心神喪失に当たるとか、あるいは心神耗弱に当たるとかいう判断がなされるわけでございます。そこで、いま申し上げましたように、昨日起訴したわけでございますから、少なくとも責任無能力というわけではないという判断で起訴したわけでございます。  しかしながら、その内容がどういうものであるか、精神鑑定の結果どういうことであったかということになりますと、これは今後の公判で明らかになることでございますので、その内容につきましては、この段階では詳しいことは差し控えさしていただきたいわけでございます。
  78. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しかし、起訴したということで、刑事責任能力を肯定しておるということはこれは明らかですね。結局、鑑定結果というのは、一口で言うと、やっぱり精神障害者ではないという結論だったわけでしょう。
  79. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 先ほど申し上げましたように、精神障害があるかないか、また、その程度はどうであるかということと、心神喪失が心神耗弱かということは直ちに一致しないわけでございまして、そういう意味で先ほど申し上げましたように、鑑定等その他のものも総合判断しながら検察としては起訴をしたということでございまして、障害があるとかないとかいうことを鑑定でどのように言っているかということについては、現段階では申しかねるわけでございます。
  80. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは大臣、精神病院に入院して退院しておる人、あるいは現に治療を受けておる人というのはたくさんおるわけですね。私どもでもかなりそういう人に接触があるわけです。いろんな事件で。今度の大臣のああいう御発言に対しては、精神神経学会の人も非常に不満としておる。それから、いま申し上げた精神神経科の病院で現に治療を受けておる人ですね、あるいはすでにもう退院した人、こういう人も非常な不満を持っているわけです。何か犯罪があると精神病者がやったんだ、精神病者は危ないぞ、こいつは保安処分で入れなきゃいかぬぞ、大臣の御発言がそういう印象を世間に与えてしまう。非常にわれわれにとって侮べつ的な発言であるということで、大変憤慨しておるわけですよ。  ですから、やっぱりそれは大臣、あなたのような法務行政を担っていらっしゃるお方が、何か特定の事件を契機に精神障害者の事件が多い、保安処分だというふうにおっしゃると、ちょっとこれはまずいんじゃないですか。少なくもそういうふうな印象を国民に、これは丸山が精神障害者だと、精神障害者がやったんだというような印象を与えてしまうんですね。これはちょっと私、まずいと思いますよ。いかがでしょうか。
  81. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 六年前に法制審議会から刑法の全面改正が答申された、その中に保安処分が一つ入っておったわけでございまして、これがおっしゃるように精神神経学会から強い反対があり、また日本弁護士会、特にこの点についても強い反対があったりして、今日までたなざらしになってきているわけであります。  その間に、私はかなり誤解もあるのじゃないかなと思うのであります。精神障害者であれば何か保安処分にするような過った考え方が一部にある。精神障害者なら幾ら犯罪を犯しても構わないのだと、こういうわけのものではないので、寺田さんにこんなことを申し上げるのは大変失礼な話でございますけれども、精神障害者が犯罪を犯した場合に責任能力がないということで不起訴になる、無罪になる。またそのまま社会に帰されていく。ところが、殺人とか放火とかいう重要犯罪だけをとらまえると、精神障害者は一〇%内外も占めておられる。そうなると、やっぱり精神障害者であっても犯罪を犯した場合には、再犯のおそれがあるかないかを裁判所で判定さしてもらう。そして再犯のおそれがある場合は、いままではそのまま社会に帰してまいりましたけれども、今度は社会から隔離して治療するようにさせてくださいよ、安心ならない、そういう気持ちを一般の人たちは持っておられるわけだから。  ごく一部の人であります。精神障害者の犯罪を犯した人でありまして、しかもその中で再犯のおそれのある人だけについて、いままではそのまま社会に帰しましたけれども、一応社会から隔離さしていただいてそうして期限を切って治療をさせてもらう。一般の人たちにもひとつ安心してもらえるような仕組みをとらしてもらいたい、こういう趣旨でありますから、私は人権を無視するという言葉は当たらないのじゃないかなと、こう思うのであります。思うのでありますけれども、広くそういう誤解を与えるような話も行われていることは事実だと、こう思うわけでございまして、いずれにしましても、関係者と十分な協議を重ねてそしてよい結論を出していきたいなと、こう思っております。
  82. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大臣のいまおっしゃったことの中には、大変事実と違うこともあるわけですよ。たとえば精神障害者の犯罪が殺人、放火に対しては一〇%というのも、これは事実と違いますね。これは、精神障害者というものの殺人の率は大体三%台です。それから放火も五%台です。ですから、あなた方は、精神障害者というのと精神障害の疑いがある者というのとを一緒にしちゃってすべて統計を立てられる。これは法務省のお出しになった犯罪白書を見ても、五十三年度、五十四年度のを見てもそうです。だから、疑いのある者というのは後でなかったことになった人もあるわけですね。だから、そういう統計もよく慎重にやっぱり扱っていただかなきゃいけません。それから、いまは法務省当局自体でも、大臣のように大上段から推進せにゃいかぬというのとは——必ずしもそういう事務当局ばかりじゃないわけで、これはいろいろあちこちで「保安処分は必要か」というようなテーマでこれが述べられています。  たとえば、朝日ジャーナルのこれは十月十七日号なんですが、この中に、法務省官房参事官の河上氏が宮沢浩一という慶応大学の教授と対談をしておる。いまあなたのおっしゃった法制審議会の改正草案、これはあなたがおっしゃったように、そうストレートに刑法改正案として提出するものじゃありませんよということを言っておる。たとえば「保安処分制度のあらましは別掲の通りですが、これはそのまま刑法の改正案として国会に提出する性質のものじゃない。さらにできる限り国民の広い意見を取り入れ、新しい学界の潮流、あるいは世界の潮流というものを勘案して、法務省としての改正刑法案をつくって、いずれ国会に提出」したいと、こういう趣旨のことを述べておられるわけで、この四十九年五月十九日の改正刑法草案の保安処分制度というものは、いま私がお読みしたように、法務省事務当局でもこのままストレートにやらぬと。できる限り国民の広い意見を取り入れる、学界の新しい潮流も十分勘案する、もちろん世界の潮流も勘案する、こう言っておられるわけです。だから、大臣のように最高の地位にある人がこの四十九年のものを真っ向から御信用になって、これだということで推進する御意見では困るんです。いかがです。
  83. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 私が、犯罪の中で精神障害者の関係の比率を申し上げましたのに対しまして御意見がございましたので、正確に先に申し上げさしていただきます。  精神障害者または精神障害の疑いがある者による犯罪は、昭和五十三年を例にとると、刑法犯の検挙人員三十八万千七百四十二人中二千七百二十七人であって、割合にして約〇・七%であるが、重大凶悪事犯で見ると、殺人で約八・四%、放火で約二二・九%と著しい高率を占めていると、こう申し上げさしていただきたいと思います。  同時に、いまおっしゃいましたように、何が何でも法制審議会の答申の内容をそのまま立法化していくのだと、こんな考え方は持っておりません。十分関係者間で協議を進めていきたい。そしてこの問題の解決を図っていきたい、こう考えておるわけでございまして、論議の過程から改めるべきものが出てくるのなら改めながら、ひとつ合意を得て解決を図っていきたい、これが私の念願しているところでございますので、御理解を賜っておきたいと思います。
  84. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま大臣おっしゃった殺人、放火のパーセンテージ、これは五十三年のものを見てごらんなさい。数はあなたがおっしゃるとおりだが、いまあなたがお読みになったのは精神障害者じゃない。精神障害者と精神障害の疑いのある者との数字をおっしゃったんで、精神障害者のあれは五十四年犯罪白書自体に書いてあるけれども、殺人の場合は三・一%、放火の場合五・六%、こうなっているんですよ。だから、それをやっぱりおっしゃっていただかないと正確じゃない。いかがです。
  85. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) いまお挙げになりました数字は、事務当局に伺ってみますと、そのとおりだそうでございます。
  86. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういたしますと、これからも大臣は関係者の意見も十分聞きますと、それから学界の潮流、世界の潮流も十分勘案いたしますと、こういうおつもりだというふうに伺ってよろしいですね。
  87. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) そのとおりだと思っております。
  88. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そこで刑事局長にお尋ねするけれども、世界の潮流というのは大分最近変わってきて、この制度の何かモデルのように言われておるのがデンマークのものでありますけれども、デンマークの保安処分というのは七三年六月に廃止せられておる。それから西ドイツ、これはもう非常に法律的な思考能力というものは抜群で、制度的にも私どもはしばしば、旧憲法はもちろんのことだけれども、現行民法でも、民事訴訟法でも、それから刑法の分野でも、ともかくこれは法的にはわれわれの先輩格なんですね。その西ドイツが七三年に新設した社会治療を目的とする保安処分というのはまだ実施されてないんですよ、現実には。こういう世界の動向というようなもの、これもやっぱりお認めになりますか。
  89. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 世界各国いろいろな方法で、この制度について取り組んでいるわけでございます。詳細は申し上げませんけれども、ただいま御指摘の、たとえばデンマークで廃止されたのじゃないかというようなことが一部に論文等にも出ておるようでございますが、私どもの理解は必ずしもそうでないわけでございます。また、西ドイツにつきまして未実施であるという御指摘もいまございましたけれども、西ドイツのまあ広い意味での保安処分、これは大部分が実施されておりまして、その一部が実施されてない部分があると、こういうふうに理解しております。
  90. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、これも学界の報告とあなた方の御答弁がちょっと違うから、一体デンマークのこの保安処分がどうなっておるか。西ドイツは現実にどの程度を実施して、どの部分を実施してないか、これの詳細なひとつ報告書を法務委員会に提出してもらいたい。いかがですか。
  91. 前田宏

    政府委員(前田宏君) わかる範囲ではもちろん御提出も御説明もいたしますが、率直なところ、その運用の実情等につきまして不明確な点もないわけではございません。そこで、いまのような御意見、諸外国の法制ないし運用の実情をよりよく調べるべきではないかということは私どもも十分考えておるところでございますので、近くまた、担当の者をヨーロッパ等にも派遣いたしまして正確なところを調査してまいりたいと、かように考えております。
  92. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 まあ余りよく御存じないようだから、よく調べて、わかり次第報告していただきたい。よろしいな。
  93. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) よろしいですか。
  94. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 十分御理解のいくように御説明をいたしたいと思います。
  95. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから問題は、この精神病質者というのを対象にするかどうかというのが、一つやはり非常に学界で問題にしておるようですが、これは法務当局としては対象にして考えていらっしゃると理解してよろしいか。
  96. 前田宏

    政府委員(前田宏君) いわゆる精神病質者につきましていろいろと御議論があることは、私ども承知しております。ただ、いまお尋ねのように、端的に対象にするかどうかということにつきましてお答えいたしますと、非常に誤解を受けるのじゃないかというふうにも思うわけでございます。  と申しますのは、精神病質者ということは、それ自体専門家の方々の中でも御議論のあるような問題であると承知しておりますし、また保安処分制度、まあ仮に草案で考えておりますような保安処分制度でも、要するに精神障害によって責任無能力あるいは責任能力が低いという場合に初めて対象になるわけでございまして、それに当たるか当たらないかという問題でございます。したがいまして、精神病質者が当たるとか当たらぬとかいうことは直ちにいま言えないわけでございます。要するに、精神障害によって責任無能力であるか、あるいは責任能力が低いかという判定の問題であると、かように考えております。
  97. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 過去において、精神病質者を対象にするかのごとく犯罪白書で言っておることがあるでしょう。だからそういうことが言われるんですね。これは一九六二年の犯罪白書だったかな、たしかそういう考え方に立っておる記述があるんですね。だから、精神病質者というのはいまは精神障害者の中に加えていないのが学界の主流でしょう。だから、それをあなた方が入れるということになると、また一層精神神経学会で問題にする人があるわけです。これは偏った性格者でしょう。まあこれはどういうことか知らぬが、あの鬼頭判事補の場合に、私はある有名な精神神経医、これは最高峰的の人物だけれども意見を求めたことがあるんですが、決してあの人は精神障害者じゃありませんということを言った。ただ異常性格ですと、私どもは異常性格と見ておりますということだったんです。  まあ、異常性格というようなものが一体これはどういう意味を持つのかわからないけれども、偏った性格で社会に非常にいろんな害を与える者というようなものの概念を保安処分の中に入れていくということになると、これは大変なことになるんですね。われわれも偏っているかもしれない。だから、そういう意味ではこれはよほど慎重にしていただかなきゃいけないと考えるんです。いずれにせよ、大臣、これはもう非常に学界、弁護士会なんというものは大変重く見ていますからね。ことに、大臣、非常にまじめで精力的に仕事にお取り組みになる、そういう御性格だから、いい面と、もし方向を間違ったら大変なことになるという懸念がありますね。だから、これはよほど慎重にひとつ取り組んでいただきたいと思います。もう一遍ひとつ大臣。
  98. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 寺田さんの御意見ごもっともでございますから、十分論議を重ねることに努力をしていきたいと思います。
  99. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま刑法改正の問題をお尋ねしたのですが、いま民事の方では商法改正の問題、刑事の方では少年法監獄法改正、これが非常に俎上に上っておるわけですね。少年法については、かつては法務当局と最高裁の方で厳しい意見の対立があった時代があります。これは検察官の関与の度合いを非常に濃くするという問題について、つまり治安の維持を重んずるか、それとも保護の精神を貫くかという基本的な立場がやはりこれは違っていたんでしょう。現在はどうなんです。これは最高裁の家庭局長見えだから伺うけれども、現在のところは少年法改正の大体の大綱において、法務当局と最高裁との間では意見の対立はないんですか、あるんですか。
  100. 栗原平八郎

    最高裁判所長官代理者栗原平八郎君) ただいま委員指摘のとおり、昭和四十五年の六月に法務大臣から諮問されました少年法改正要綱では、十八、十九歳の年長少年を、現在の少年審判手続を改めまして刑事訴訟手続を導入するというような案が骨子となっていたわけでございます。その限りにおきましては、私どもといたしましては、現行の少年法の理念なり手続の基本的な構造は改めるべきでないというそういう考えをとっておりましたので、その改正要綱については賛成しかねるということを法制審議会の少年法改正部会で主張してまいったわけでございます。  その後、法制審議会で審議を重ねられました結果、昭和五十一年十一月になりまして法制審議会の少年法部会で、現行少年法の基本的構造の範囲内で、さしあたり速やかに改善すべき事項のみを取り上げて少年法改正を行ってはどうかというように、従来の審議の方針が転換されたわけでございます。その方針に従いまして、昭和五十二年の六月に、法制審議会の総会で少年法改正に関する答申が法務大臣になされ、そしてその答申に基づいて現在法務省の御当局で改正作業を進めておられるわけでございます。  その答申の内容は、先ほど申しましたように、現行の少年法の基本的な構造の枠内で改正を要すべき事項を取り上げるということに相なっておりますし、その内容を私ども検討いたしましても、従前私どもが主張いたしております基本的な意見に沿ったものであるというように了解いたしておりますので、現段階においては、法務省の考え方と私どもの考え方におきまして基本的には食い違いがないものと、そのように了解いたしておる次第でございます。
  101. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 少年法改正というのは、いま言ったように、最高裁との間でもう大体基本的な問題ではアグリーメントができておると。これはいつごろまでに成案を得るという方針なのか。大体あなた方のおつもり、これをお伺いしたいのです。  それからもう一つは、日弁連との協議というものをやはり大切にしていただかなきゃいかぬ、その点お伺いしたいんです。
  102. 前田宏

    政府委員(前田宏君) ただいま最高裁の方からもお話がございましたように、いわゆる中間報告に基づく法制審議会の答申につきましては、最高裁御当局の御了解も得ておるところでございます。  ただ、いまの答申は、一部には抽象的な表現で書かれているところもございますし、また、いろいろ実務の面で詰めなきゃいかぬ問題もあるわけでございます。そういうような個別の問題につきましては、なお引き続いて最高裁御当局とも御協議を続けていると、こういう状態でございます。また、そのほかにも保護関係の法規等につきましても、また矯正関係の法規につきましても関連するところがございますので、そういう点の検討も必要でございます。  それから一方、いま御指摘のございましたように、日弁連の関係があるわけでございます。これも寺田委員は御案内のところだと思いますけれども、先ほど来出ております中間報告、その答申につきましては、当時日弁連推薦の委員、幹事が御反対でございまして部会に出てこられないと、辞任届を出されたまま欠席されるというような事態があったわけでございます。もとより、その後の総会では日弁連推薦の委員も出ておられるわけでございますけれども、部会においてはそういうような経過もあったわけでございまして、現在までそういう状態が部会としては続いていると、こういうような経過もございまして、私どもといたしましては、やはり法曹三者がこういう基本的な改正についてできる限り意見の一致を見るということが望ましいと考えておりますけれども、遺憾ながらそういう状態になっていないということでございます。  刑法の改正につきましては、これも御案内のとおり一部報道等もされておりますが、ようやく日弁連の方と意見の交換をするという空気ができ上がってきておるわけでございますけれども、それもまだ具体的にどういう段取りでどういうふうに進めるかということにつきましては、日弁連側の方のお考えがまとまっていないというような状況でございます。そういうこともございまして、少年法につきましては一層そういうことが困難な状況にあると申し上げるほかないわけでございますけれども、私どもといたしましては、少年法の問題につきましても日弁連の御意向等を十分伺って、そういうことを参考にしながら事務的な法案の作成に当たりたいと、かように考えておる次第でございます。
  103. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 家庭局長、結構ですから。  監獄法の問題をお伺いしたいんですが、監獄法改正というのは、これはもうずいぶん長いこと検討をしておる問題で、たしかこれは余り日弁連との間に対立はないのじゃないかと思うんです。いまの監獄法という表現もそうですが、その内容も改正すべき点が非常に多いということはだれしも一致するんだけれども、これがこんなに長くかかっているというのは主としてどこに原因があるんでしょう。
  104. 豊島英次郎

    政府委員豊島英次郎君) 監獄法改正につきましては、往年、法務省におきまして構想細目というものをつくりまして、それを中心に審議を始めようとした経緯があるわけでありますが、この構想細目につきましては、当時の日弁連におきましてはかなり反対があったようでございます。しかし、その後、軌道に乗せるために私どもの方としましては法制審議会に骨子となる要綱を決めていただくという方法をとりまして、この方法論がある意味では成功したというふうに考えております。  昭和五十一年の三月二十七日に、法制審議会に対しまして諮問を行いました。これは改正の骨子となる要綱を示されたいという諮問を大臣からいたしまして、そして中身は法制審議会で決めていただくという形をとったわけであります。そういたしまして、法制審議会は監獄法改正部会を設定いたしまして、そこで議論をした。その部会はさらに小委員会を設けまして、そこで詳細な審議をいたしたという経緯がございまして、この小委員会、部会には日弁連の推薦なされる委員の方も加わられまして、そこで詳細な詰めを行ってうまく軌道に乗り、本年の五月からは総会に案が上がってきておるという状況になっております。  したがいまして、一つは内容を法制審議会にゆだねたということと、それから日弁連との話し合いを、それらに出席されております委員を通じて密接に行ったということが、成功の原因ではないかというように考えております。
  105. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうして、局長としてはいつごろまでに成案が得られるというお見通しでしょうか。
  106. 豊島英次郎

    政府委員豊島英次郎君) 本年じゅうには法制審議会総会の法務大臣に対する答申を得まして、それを基礎にして条文化作業をやりたいというふうに考えております。先ほど申し上げましたように、この法案は条文化の骨子を定めていただくという形をとっておりますために、骨子が定まりましたら、さらに条文化作業にかなり日数がかかるだろうというふうに考えております。したがいまして、できるだけ早く国会上程を考えておりますけれども、いましばし条文ができ上がりますまでには時間がかかるだろうというふうに思っております。
  107. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 とても来年の通常国会、これは無理ですか。
  108. 豊島英次郎

    政府委員豊島英次郎君) 先ほど申しましたように、かなり膨大な条文化作業がございますので、次期国会に間に合わせるにはいささか無理があろうかというふうに思っております。しかしながら、できるだけ早期にというふうに考えております。
  109. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 矯正局長、結構です。  保護局長にお尋ねしますが、消えてはあらわれ、あらわれては消えるのが平沢貞通氏の特赦といいますか、減刑といいますか、この問題ですね。これは特赦と言い、減刑と言う人がある。これは一体どっちなんだろうか。それから申請は二つに分かれているんだろうか、そして中央更生保護審査会の審査状態は一体どうなっているのか、ちょっと御報告願いたい。
  110. 稲田克巳

    政府委員(稲田克巳君) 平沢からの恩赦の出願につきましては、本人からは特赦の出願がなされております。が、本人の出願後、本人の代理人である磯部常治弁護士から審査会あてに書面が提出されておりまして、その書面の内容によりますと、本人を無期懲役に減刑し、生存中せめて死刑囚の汚名なりとなくして世を送らせたいといったような趣旨の書面が出ておるわけでございます。もっとも、この書面の内容につきましては、その後平沢本人からまた請願書のようなものがございまして、本人はあくまでも減刑ではなく特赦を望むというふうな趣旨の書面が出されております。  なお、現在の審理の状況でございますが、私どもといたしましては審査会における審理の内容につきましては立ち入っておりませんので、どのような状態にあるのか、的確なことを申し上げかねるわけでございます。ただ、推測的なことになるわけでございますが、平沢の恩赦の出願につきましては、もうすでに過去二回にわたりまして不相当の議決がなされておることもございます。また、この対象となっております犯罪そのものが、戦後の犯罪史上から見ましても非常にまれに見る悪質重大な事犯であるといったようなこともございますので、審査会といたしましては非常に綿密な、かつ、慎重な審理をなされているのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  111. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 保護局長、結構です。  民事局長にお尋ねしますけれども、商法改正はいまちょっと非常にホットな論争を巻き起こしておるんですが、それは、一番最近には、日本税理士会が会計監査人の要監査法人の幅を広げるという点について非常な抵抗を示していることですね。  それからもう一つは、株式会社の会計経理等の公開の問題ですね。ことに政治献金や総会屋対策の費用、これを公表させようといういわゆるディスクロージャーの問題、これに対して財界が非常な抵抗を示しておる。私どもとしましては筋を通してもらいたい。いまの政治献金の問題や総会屋対策の問題というのは、非常にマスコミをにぎわし、政治を腐敗させ、それから株式会社の株主総会なんというものを全く形骸化させる主要な原因になっておる。そういうことを考えますと、これはもう大臣を初め局長も十分筋を通してもらいたいということを考えておるわけですが、改正に当たってどういうふうな抵抗を受けておるか、その抵抗に対してどういうふうに対処するおつもりなのか、この辺のところをひとつまず局長にお伺いしたい。
  112. 貞家克己

    政府委員貞家克己君) あらかじめ現段階における商法改正の作業の状況について、一言申し上げたいと思います。  寺田委員承知のとおり、昭和五十二年、五十三年の二回にわたりまして、民事局参事官室の名をもちまして試案を発表いたしまして、各方面の意見を紹介したわけでございます。その後、昨年の七月でございますが、法制審議会の商法部会におきまして、従来、商法の本格的な、あるいは全面的と申した方がよろしいかと存じますけれども、そういった大改正の態度で審議を続けておりましたのを、やや方針を変更いたしまして、さしあたり企業の自主的監視機能を整備強化するための改正、これを急いでやろうではないか、こういう結論になったわけでございまして、その後、株式会社の計算公開に関する試案を発表したのは昨年の暮れでございます。本年に入りましてから、いわば第二読会とも言うべき、各方面から寄せられました意見を踏まえての審議を精力的に再開したわけでございます。その第二読会が一応終わりまして、ただ第二読会としての結論を出すということは法制審議会の方でいたしておりませんが、本年じゅうにさらにいわば第三読会とも言うべき要綱案作成の作業に取りかかろうと、こういう段階でございます。  私どもが発表いたしました試案と申しますのは、これは法制審議会その他で出ましたいろんな意見を紹介する、報告するという意味がございますと同時に、まあいわばたたき台といたしまして各方面の意見を誘発すると申しますか聞いてみたいと、こういう趣旨で非常に多彩な改正の内容を盛ったのが試案でございます。したがいまして、その中にはいろいろこういう内容だと問題が生ずる、弊害があるとか、あるいはこれは実行上やはり無理であろうというような若干の点もございました。そういった意見指摘をいわば私どもの方は半ば期待していたわけでもあるのでございますが、そういった点を踏まえまして、先ほど申し上げました第二読会で相当の議論を詰めまして、御指摘のような若干の問題点は残されております。  しかしながら、私どもといたしましては、なるべく早く各方面の意見というものに、各方面と常時接触をいたしておりまして、誤解を解き、私どもの考え方と申しますか、現在の進行状態を御説明いたしまして、なるべく各方面の御納得を得られるように極力努めているわけでございまして、私どもの希望といたしましては、なるべく年内ぐらいには一応のけりをつけたい。端的に申し上げますれば、法制審議会の進捗状況を私ども事務当局でこれは左右するということはもちろんできませんけれども、でき得れば年内には法制審議会の商法部会の結論を得たいと、こういうようなつもりで常時各方面との接触、御説明、それによって御納得を得たいというふうに努力している次第でございます。
  113. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 経緯はよくわかりましたけれども、いまお尋ねしました政治献金や総会対策費の公表の問題、公開の問題ですね。これは財界がきわめて激しい抵抗を示しておるということなんですが、これは十分説得してあなた方が理想を実現するお見込みがありますか。その点をお伺いします。
  114. 貞家克己

    政府委員貞家克己君) 計算書類の公示公開という点が一つの眼目になっているということは、御指摘のとおりでございます。ただ、この問題は非常に技術的な要素もあるわけでございまして、いろいろな考え方が実行方法として出されているわけでございます。どういう方法でどういう段階でこれを開示するようにするかということは、一つにはその実効があるようにしなければならない反面、コストの面、手間の面ということもこれも考えざるを得ないわけでございまして、いろんな方面を勘案いたしまして、実行可能な、しかも実効性のある方策をいろいろ御相談申し上げているところでございまして、そういった点につきまして、開示制度はおよそ反対であるというような意見は私ども承知しておりません。具体的な方策につきましては、いろいろ各方面の意見を聞きながら取りまとめをしているという段階でございます。
  115. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 法務大臣、つまり会社が、いろいろいま法人の政治献金の制度をなくしてしまおう、個人献金に限ろうというような強い流れがありますね、そういう動きが。ただ、ひそかに献金をして、それが全然社会の耳目に触れないというのはいかにも隠微なもので、もっとこれが正しいものならば公明正大にやってもいいんじゃないかと私は思うのですが、会社の政治献金であるとか、もう一つは総会屋が跳梁して、株主総会なんというのは総会屋の思うとおりに動いていく。これを何とかしないと、株式会社が民主的な制度なんと言ってもそれはもう全くの偽りなので、総会屋に金を出すなということが、いまは大変商法改正の重要な眼目だと思います。  しかし、これは非常な抵抗がある。だから、大臣もこういう面に強く関心を持っていただいて、事務当局は外部からの圧力でつぶれないよう、そういう本当に株式会社制度のいわゆるピューリタニズムですか、そういう理想というものをどこまでも追っていただきたい、そういうことに力を入れていただきたいと私は思うのですが、いかがでしょう。
  116. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 企業の不正を防止する、あるいは株主を保護していく、そういう意味において、企業の財務とか業務をできる限り開示していくということは大事なことだと、こう思っております。  ただ、政治資金、これが企業の不正だと、こうは考えていないわけでございます。政治資金規正法等で政治資金の公明公開が図られておるわけでございますので、それはその方面で個人献金、企業献金、十分論議されるべきだと、こう思っておるわけでございまして、商法改正において政治資金が悪だという立場で開示制度を考えるということは私は適当でないのじゃないか、こう思っておるわけでございます。しかし、いま申し上げましたように、企業の不正を防止する、株主を保護する、総会屋に振り回されない、大事なことでございますので、その面において、積極的な努力を払っていきたい、こう思っております。
  117. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ひとつこれは民事局長も、財界の強い圧力につぶれないように理想を追求してもらいたい。これは鞭撻の意味だけれども、がんばっていただきたい。  それから、最近ちょっと問題になっている国際離婚条約の批准の問題がありますね。これはまだ全然方針を決めていないというふうな報道をされておりますが、大体しかし、これは批准の方向に持っていくつもりなのか、まだ全く白紙なのか、その辺はどうです。
  118. 貞家克己

    政府委員貞家克己君) 国際離婚条約と申しますと——離婚自体につきましてそういう立法作業、条約の動きがあるということは実は私、承知していないのでございますが。
  119. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 まだ全然白紙だということですか。
  120. 貞家克己

    政府委員貞家克己君) 離婚につきましては白紙でございます。あるいは新聞等に報道されました子の連れ去りに関する条約、これはヘーグの方で署名いたしております子の奪取に関する条約、国際的な子の連れ去り事件の世界的増加に対処するための条約でございますが、これにつきましては署名いたしておりますが、なお国内法との関連において相当研究をしなければならない問題があると思います。民事訴訟における子の引き渡し請求との関係、あるいは家事審判における子の監護との問題、あるいは人身保護法との関係というような点につきまして、なお相当慎重に条約との調和を考える必要があるかというふうに認識しております。
  121. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 民事局長、結構です。これは時間がないので、後で別な機会にまた詳しく伺いますから。  入管局長、大変お待たせしましたが、いま私ども、韓民統の問題が金大中裁判で非常に関連がありますので、韓民統の方のいろいろ発起宣言であるとか規約であるとかいうものを取り寄せて調べてみますというと、結局この韓民統というものの目的は、独裁的な政権というものを倒して民主的な政権を樹立しようということであって、別段これが何らかの違法な目的を追求するものでもないし、まあ現政権にとっては都合が悪いかもしれない、自分たちが倒されようとするんだから。しかし、それは政権を争奪するやはり民主主義制度にある以上はもう当然のことなんで、いま私ども野党が自民党政権を倒して野党の政権をつくろうというのと少しも変わりない。  そういう目的を追求するものが反国家団体だという認定を受け、金大中氏がそのことのゆえに死刑の判決を受ける、だからそれを国際的な世論を高めるためにアメリカに渡っていきたい。しかし、行ったきりで帰れなくちゃ困るから、帰してくれというこの出国の要請ですね。これはちょっと私ども、これを不承認にするどうも合理的な理由というものはないように思うのですが、これはいかがでしょう。
  122. 小杉照夫

    政府委員(小杉照夫君) 実は、国連に日本で集めた署名を持ってお出かけになりたいということで、去る十月の三日であったと思いますが、韓民統の代表の皆様方が入国管理局においでになりまして、再入国許可の申請をやりたいと思っておると、申請があったらひとつ許可していただきたいという御要請がございました。で、私ども、常にやっておることでございますが、この要請を受けたところで早速関係省庁と協議を開始いたしたわけでございます。現在の状況を申し上げますと、目下協議継続中であるということでございます。  ただ、先生承知のとおり、予算委員会あるいは外務委員会等で伊東外務大臣が再三発言しておられるところでございますけれども外務省としては、本件を許可するかどうかということについてはかなり高度の外交的な配慮を必要とする問題であるから、外務省といたしましては慎重にいま検討したい、しばらく待ってほしいということを私どもに連絡してきておるわけでございまして、私どもは、目下の状況を申し上げれば、外務省の検討結果を待っておるというのが現状でございます。
  123. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは法務大臣、韓民統の性格というものをよくお調べになりまして、つまり、民主的な政権を打ち立てたいというのがたまたま反国家団体というふうに韓国の独裁政権に認定されてしまった、そしてそれに関与したということで金大中氏が死刑の判決を受けた、それが不当じゃないかということで国際的な世論を高めたいということですからね。私はなぜ法務大臣にそのことをお話しするかというと、法務大臣は人権を守るということではこれは閣内におけるそのことに関するもう専管なさるお立場におられるわけですし、人権というものを非常に大切にしていってくださらぬと困るわけです。そういう意味で、この問題については前向きにひとつ御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  124. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) いま入管局長からお答えしましたように、外務当局の回答を待っておると、こういうことでございまして、やはり外交当局、治安当局等の意見も聞いた上で最終的な結論を出させていただきたいと、こう思っておるわけであります。お気持ちはよくわかっております。
  125. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは委員長にお願いするんですが、結局、韓民統の性格というものが金大中裁判の死刑判決のやっぱり基礎になっているんですね。それからいまの問題もあります。これはだから法務委員会がやはり韓民統の責任者をこの委員会に呼んで、証人なり参考人として、韓民統の目的であるとか性格であるとか、その立場であるとか、そういうものを十分これは聴取する必要があると私は思います。そういう意味で、ぜひ韓民統の責任者を法務委員会に参考人——できれば証人としてですが、証人でなくても参考人としてでもこれを喚問するということを、きょう改めて要請さしていただきます。
  126. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) これは後刻理事会において協議をいたしたいと思います。
  127. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 以上で終わります。
  128. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  129. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査を議題とし質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  130. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 時間が三十分ですので、端的にお伺いいたしてまいります。  憲法問題について、法務大臣に御所見を承りたいと思います。  私は、奥野法務大臣の憲法にかかわる一連の発言について、また、政治家としての信念についで非常に尊敬しているんです。心から法務大臣を御支持申し上げたい、こういうふうに思っている一人でございます。国会の中の議論を聞いておりますと、大臣に対する御批判の声が強いけれども国民的には奥野法務大臣の姿勢を評価される国民が大変多い、こういうことを大臣はしっかり胸に置いて、これからも信念を持ってがんばっていただきたい、私はそう思いますが、まず、いままでの国会におけるいろいろな御発言、そうした信念を曲げないでしっかりやっていただくと、この御所信を一言伺いたい。
  131. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 国会は国の運命を背負っているところでございますから、国の基本にかかる憲法、これを絶えず十分に論議を積み重ねていくべきだ。憲法あっての国ではなしに、国あっての憲法だということを忘れてはならない、こういう気持ちを非常に強く持っております。
  132. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 これまでの国会論議でもそうでございますが、憲法論議というとすぐ九条問題、こういうことでありますが、確かに九条もこれは大事な議論であろうと思います。しかし、そのほかに問題はないのかというと、この憲法について、たとえば字句の点あるいはまた表現の点等の、当時からのおかしな点もあるように私も思いますし、さらにまた内容につきましても、よく国民の間で、あの最高裁国民審査、あれが一体あのままでいいのかねという声が非常に強い。  それから、大臣御存じのとおり、両院制度につきましても、参議院無用論、参議院改革論がいろいろ言われております。最近、私も議運で参議院改革についてのいろんな国民の声を審査しましたけれども、憲法に、もう第二院というのですかね、参議院がある程度羽ばたこうと思ってももう羽ばたけないように頭からなっている。アメリカの上下両院などは、両院制度があっても、上下両院が上手にお互いに権限を持ちながらそれぞれに活発に活躍している。こう考えてみると、日本もこれら両院制度のあり方などについても、憲法によって来る問題もあるのじゃないか。  そのように憲法の中にも、第九条問題だけじゃなくって、幾つかのそうした今後議論をしていかなければならぬ点があると私は考えますが、大臣はいかがでございましょうか。
  133. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 私の憲法論が問題になりました当初、八月の末の衆議院法務委員会でございました。そのときに自主憲法が話題になったわけでございまして、私は国民の間に合意が生まれて、同じものであってもいいから、もう一遍つくり直してみようじゃないかという考えが出てくるならそれは好ましいと思うと、こう答えたわけでございまして、先日他の委員会でその理由などの話になりましたときに、こんなことを申し上げさしていただきました。  日本国の憲法が生まれたときの国際情勢といまの国際情勢はすっかり違っていますよと。日本国憲法が生まれたときの国際情勢、アメリカが経済的にも軍事的にも絶大な力を持っておって、アメリカ一国の考え方で世界をリードできた。いまはもうすっかり時代は変わってきている。同時に、国際社会における日本の地位、これも日本国憲法が生まれたときといまとはすっかり変わっている。アジア情勢も変わっているということを申し上げたわけでございまして、私はやっぱりこれからの日本、これだけの日本になったわけでありますから、国際社会における役割りを進んで分担する日本になっていかなければ、世界じゅうから総スカンを食らっていくのじゃないだろうかなという心配をしているわけでございます。  そういういろいろな問題が出てまいりますときに、憲法上できないのだと、こういう話が先に出てきたりいたしまして、それも結構でありますけれども、こういうふうに変わってきたのだから憲法をこう改めなければならないのじゃないか、こういう議論も私はもっと率直に国会の中で言われなければならないはずじゃないかと、こんな気持ちも持っておるわけでございまして、やはり私はいま申し上げましたように、国際情勢が変わってきた。国際社会における日本の地位が変わってきた。それにふさわしい日本国憲法になっているかどうか、やっぱり全面的に考えるということも私は一つの大事な考え方じゃないかなと、こう思っておるわけでございまして、そういう意味で戸塚さんのお話、よく理解しておるものでございます。
  134. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 大臣も御存じのとおり、衆議院におきまして、ホルムズ海峡について、お金の問題とか、派兵、派遣の問題が出ております。政府の見解としては、派遣ということであるならば憲法上には抵触することはないだろう。しかし、現在の自衛隊法その他で現実には派遣はできないんですというように私は解釈しております。しかし、現実問題として、いま起こっている国際情勢を見ますと、これはわれわれが議論しているうちにホルムズ海峡が閉鎖されちゃって、そうしてわが国に来る七割の油がとめられちゃった。油がとめられちゃうということは、日本人にこれは自然に死を待てということと同じことだと思うんです。こういうような事態が起こっても、これは私たちの国は自衛隊は派遣できません、何もできませんなどと言っていて、一体日本の国は生存ができるのかというふうな感じさえ私は持っているわけであります。  もちろん、現在の憲法下においては現在の憲法で許される範囲、これは私は踏み出すものではありません。しかし、たとえば自衛隊が、そうした公海上、ホルムズ海峡を自由主義諸国なら自由主義諸国、国際連合なら国際連合の人々が守って、そして閉鎖しないようにするのだということであるならば、われわれの自衛隊も出かけて行って、弾は持たなくても鉄砲は撃たなくても、せめて後ろで飯ごう炊さんぐらいはして、それらの人々を助けるぐらいのことはあたりまえのことじゃないか。漫画の中に、先進国首脳会議をやったら、偉い人たち、外国のほかの人たちはどうして防衛するかと言ったけれども鈴木善幸さんだけは、私は関係ありませんと、こういう顔をしているという漫画が日本で出ています。こういう情勢を一体法務大臣はどういうふうにお考えになりますか。私は、やはりそれはもう毅然とした態度で臨むべきだと思うが、いかがでしょう。
  135. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 私は、いまの日本が用心していかなきゃならないものは、日本人は金さえ出せばそれで片づいてしまうというような誤解を世界じゅうに与えはしないだろうかなと、これが心配でなりません。同時に、いま申し上げましたように、私はこれだけの日本になりますと、進んで国際社会における役割りを分担していかなければならない。そして世界から信頼される日本になっていくことが、日本の独立を保持していく上において大切なことだと、こう考えておるわけであります。  そういう意味において、何か問題がありますときに、憲法上できない。これも大切な議論でありますけれども、こうしなければならない、憲法上適当でないから憲法をどう改正しなければならない、そういう発想も当然生まれてこなければならない。その中で、私は日本の将来にわたる大事な事柄を、国会において絶えず慎重な論議の末にまた結論も出していただく姿が望ましいなと、こら思っておるものでございます。
  136. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 防衛庁に伺いますが、自衛隊が、憲法上は問題なくても現実の自衛隊法で出られない。自衛隊法は、これは当然見直していくべきじゃありませんか。どうです。
  137. 池田久克

    説明員(池田久克君) 御指摘の問題点は、公海上において自衛隊が、海上自衛隊でございますけれども、わが国の船舶の航行についてどうできるかという問題に絡んでいると理解をいたします。  まず、現在の自衛隊法によりますと、実際の侵略が行われた場合の防衛出動は七十六条で規定されておりまして、その範疇に属するものは法律的には可能であります。また、防衛出動に至らない事態につきましては、八十二条に「海上における警備行動」というのがございまして、内閣総理大臣の承認を得て、公海上において自衛隊が公海の安全に寄与するということは法律的には可能であります。  派遣することは憲法上許されるけれども自衛隊法上できないという点につきましては、従来、議論された点は二つあるように思います。  第一は、国連の活動の一環として自衛隊が参加できるかという点が第一点と、第二点は、外国の海軍なりと一緒に共同行動をとってお互いに助け合っていけるかどうかという二つの点があると思いますが、第一点につきましては、自衛隊法は、御承知のように、たとえばオリンピックに協力する場合につきましても、自衛隊法に特別の規定をつくってわれわれは参加しております。したがいまして、現在の規定では、ございません。  また、集団的な行動につきましては、これはわれわれは、行動の態様にもよりますけれども、集団的自衛権の範囲に属するものとして憲法上許されないものと考えております。当然、現在の自衛隊法の規定にはないと理解しております。
  138. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 時間がありませんから、また後日議論いたします。  法務大臣、靖国神社の法案を私ども自由民主党としては一刻も早く国会提出したい、そういうもう念願、悲願と私は個人の議員としても考えております。法務大臣も閣僚として靖国神社にも御参拝いただいたし、そうした多くの国民的な世論というか、気持ちというものは十分御在じだと思います。大臣のこの問題について、大臣がこれは御提案なさるわけじゃないことはわかっていますが、どのように靖国神社問題をお考えか、一言承りたい。
  139. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法にうたわれております宗教的活動、これが私は本当にあの際に十分な論議がなされたのだろうかなという疑問を持ち続けております。  私たちが靖国神社に参りますのは、やはり国のために犠牲になられた方々に対しまして感謝の気持ちをあらわす、こういうことでございまして、特定の教義に共鳴してその活動に参加しているという性格のものじゃないと思うのです。しかし、憲法上疑義があるものでございますから、私が靖国神社に参拝いたしましても、私人の資格で参拝しましたと言わなければ国会で問題にされてしまう事態になっている。これは、やっぱり何か早く解決の道をみんなで出してもらえないものだろうかなと、念願しているものでございます。
  140. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 十分に納得いたしました。がんばってください。  ナヒーモフの財産について承ります。  承るところによりますと、大蔵省と法務省といろいろ詰めて、法的に財産の帰属は日本側にある、ソ連側にあるんじゃ絶対にないというようなことが決まりつつあるようでございますが、法務省の見解を承りたい。
  141. 柳川俊一

    政府委員(柳川俊一君) 法務省といたしましては、この問題は将来何らかの訴訟問題に発展した場合に初めて直接の関係を持ってくるわけでございます。したがいまして、将来この問題がどのように発展するかわからないという関係で、関係の省庁と相談を受けているわけでございまして、私どもとしては、訴訟との関連で事を考えざるを得ないということになっておるわけでございます。  この件におきましては、現在関係の省庁で資料も収集しておりますので、今後なお慎重に検討した上で何分の結論を得たいというふうに考えております。
  142. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 では、大蔵省さんおりますか。  これは大蔵省さんが中心になって、この帰属問題について考えていると考えてよろしゅうございますか。それだけ、一言で結構です。
  143. 桜井直

    説明員(桜井直君) お答えいたします。  日本の中で、日本国政府に属するものであるか私人に属するものであるかの検討につきましては、私どもで検討いたしております。
  144. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 その結論はいつごろ出ますか。
  145. 桜井直

    説明員(桜井直君) 非常に現在注目を集めている問題でもございまして、私ども慎重に資料を集めて検討しなければならないと思っておりますが、できるだけ早急に結論を出したいということで、鋭意作業を進めております。
  146. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 大蔵省が、個人のものであるか国に属するかということを慎重に検討するということであるということは、外国のものであるということを前提に考えるのじゃないから、いずれにしても日本に帰属すると、そう考えてよろしいですね。
  147. 桜井直

    説明員(桜井直君) これは先日外務省がソ連の方に通告いたしましたように、アドミラル・ナヒーモフ号は、日本海軍に拿捕された時点におきまして、その時点におきましては戦利品として日本国政府の財産になったということについては疑いがないというふうに考えております。
  148. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 大蔵省、ありがとうございました。  外務省さん、一言だけ申し上げたいのだが、この間の笹川良一氏が北方領土と引きかえにひとつ考えてみようじゃないか、日本政府に迷惑をかけちゃいけないから自分で交渉してみる、こう言われた。これに対して、私が少なくとも聞いている限りでは相当の人が、いやなかなか痛快だ、これは一つのアイデアだと、こういう評価をしていますよ。  外務省のコメントというのを見たら、財産の問題などわれわれは関係ありません、北方領土の問題と笹川氏のことは関係がありません、この返還交渉はあくまで政府で行うことでございます。——なるほどそのとおりでしょう。だと思います。しかし、もうちょっとやっぱり何か、言葉が足らぬかもしれませんが、ウイットに富んだというか、笹川氏であってもともかく一生懸命がんばってそう言っておるのですから、自分であれを取っちゃう気はないのですから、御苦労さんでございますと、一言ぐらいコメントするならつけたっていいんじゃないですか。どうです。
  149. 兵藤長雄

    説明員(兵藤長雄君) 笹川良一氏が記者会見その他で個人の御所見をいろいろ発表しておられるということに対しましては、外務省としてとやかく見解を述べるとか、コメントを述べるというようなことは御遠慮を申し上げようということで、外務省としての見解、コメントを申し上げたことはないつもりでございますが、一、二の新聞に先生指摘のような記事が出たということを私も承知しております。笹川良一氏の北方領土問題その他に対します個人的な御熱情、見解に対しては私どもも理解し共感するところも多々ある、こう思っておる次第でございますが、私どもはそれに対してとやかく公式的に見解を申し上げるということは御遠慮申し上げているというのが事実でございます。
  150. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 いまの答弁のとおり新聞に出ていただければ、何にも私はこんな質問をしません。ただ、あの人は何も関係ありませんというそういう言い方はちょっといかがかな、こういうふうに思ったので、御情熱はなるほど一国民として敬意は表しますがということであれば、よくわかりました。  次に、午前中出ました新宿のバス放火事件につきまして、特にこれは犠牲になられた方々、新聞を通じて大きく世論が、実はいろいろこの問題で考えさせられる問題がたくさん出ております。  けさも私は秋葉さんの母子寮に朝早く行ってまいりましたが、七十八歳のおばあさんが朝の食事の買い物に行っているときでございました。本当にこれからの秋葉さん一家のことを考えたり、あるいは秋葉さんだけじゃありません。六人の犠牲になられた方の中で、もう一人まだ母子世帯があるんです。非常に気の毒です。きょう午前中御質問ありましたように、この法律で七百万円払ってあげるのは来年一月一日以後ですと、だから閣議決定をして二百万円だけはお払いしましょうと、これもささやかな私は内閣としての恩情だと思います。しかし、いつまでも払ってくれないのじゃ、ただ払います。払いますだけじゃこれは困るんですよ。やっぱりもう十一月初旬くらいには払っていただいたらどうでしょう。総理府、どうです。
  151. 栗林貞一

    説明員(栗林貞一君) 先生ただいまおっしゃいましたように、閣議決定を行いましたのは九月十九日でございます。確かにもう一カ月を過ぎてきたわけでございますが、私どもそれ以来、支給のための準備を進めてきております。  具体的な支給に至りますまでの問題点といたしまして、具体的な支給のやり方を固めなければいけない、これも大体でき上がっております。  それから、対象となる事件でございますが、これは警察庁に依頼して洗い出しをしております。と申しますのは、あの閣議決定にもございますように、先生おっしゃいました来年からの法律が公布されました五月一日以降の分についてそういった通り魔事件、それ以後の通り魔事件についてやろうということでございますので、そういったものを含めていま検討しておりますが、これも大体つかみができております。  それからもう一つは、実は労災保険とか公的な給付の関係がどうなっているか、本当に気の毒な方に弔慰あるいは見舞いの気持ちをあらわしたいということでございますので、その辺もひとつつかんでおきたいということでございます。  それからさらに、たとえば先生いまおっしゃいました新宿の事件について申しますと、そういう被害者の方の病状が実はこのところ刻々変わっております。それから、不幸にして最近また二人亡くなられたというふうなこともございます。それから、ほかの方々については一体どういう状況なのか。と申しますのは、閣議決定でも重度の身体障害が残ることが明らかな場合にそういった特別支出金を支給しましょうということでございまして、これは犯罪被害者等給付金支給法の対象と同じような考え方で、その辺は相当厳しく見た上でやるというふうなことになっておりますので、そこもよく見なければいけないということで、現在最終的な詰めをやっているところでございます。  ただ、先生おっしゃいますように、余り遅くなってはいけない、弔意をあらわすのにそう遅くなるのもよくないということは十分認識しております。したがいまして、私どもの気持ちでは十一月のできる限り早い時期に支給決定ができるように関係機関にも協力をお願いして努力していきたい、こう考えております。
  152. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 それは速やかにお願いします。  次に、一部新聞によりますと母子寮を出なければならない、お母様が亡くなってしまったから出なければならないというようなことでございましたが、そうなると、おばあちゃんと子供はみんな別々に住まなきゃならぬということでしたが、けさ問い合わしてみましたところが、準母子世帯ということで、おばあちゃんがいるからということで残ることができる、こういうことです。できるというのはでき得るということであって、できると断定されたわけじゃない。やはりこういうことは、法に涙がなきゃならぬです。ですから、やっぱりこれは当然国の方でも心配してあげて、母子寮に残れるように計らってあげなきゃいけない。厚生省御迷惑ですが、そのことを一言いただきたい。  それから、労災の問題がありましたですけれども、これは勤務の帰り道なんですよ、あのお母さん。ところがお金が——三人何しろ男の子を育てておばあちゃんですから、昼間の勤めだけじゃどうにもならぬので、夕方の勤めに行くあるいは途中だったかもしれません。しかし、昼間の勤務を終えて帰っていることは間違いないんです。静岡のガス爆発だって、全然勤務とは関係なかったけれども、役所が広義に解釈して、通勤途上だからといって払ってやったんです。それならば、この秋葉さんに対してだって労災の適用をしてあげて、残った子供さんたちやおばあさんがしっかりできるようにしてあげてほしい。どうです。労働省も考えてください。
  153. 横尾和子

    説明員(横尾和子君) 母子寮の入居につきましては、担当の社会福祉事務所を通じまして、御家族の生活が十分成り立っていくように指導を続けたいと思っております。
  154. 原敏治

    説明員(原敏治君) 労災保険の給付対象につきましては、業務上の災害のほかに通勤災害につきましても現在では支給されるようになっておるわけでございますが、通勤災害につきましては途中での寄り道等がございまして、どこまで給付をしていくかというところが大変問題がございまして、法律上その範囲について明確な規定を設けております。合理的な経路を逸脱中断した場合には支給対象にならない、こういう形になっておりまして、そのようなものに該当をしているのかどうか、これが秋葉さんの場合に特に問題がございまして、退勤後二時間三十分の時間を経過しております。現在調査中でございまして、果たして逸脱中断になるのかどうか、その辺について調査の結果を待って処理をしたいと思っております。
  155. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 重ねて労働省にお願いいたしますが、法に涙があるということで、ぜひひとつ、静岡のガス爆発でもずいぶん労働省よくやってくれました。感謝しています。今度の場合もひとつできるだけ考えてやってほしい。  法務大臣、大臣が直接の御所管ではないかもしれませんが、こうしたような問題、やはり犯罪者によって起こされた被害を受けた方、これは本当にかわいそうだと思うんです。私も党で個人災害の救済の小委員長というのをやっておりますが、これは災害といいましてもなかなかむずかしい問題で、犯罪でもございますから、私の委員会の範疇には入れないかもしれませんが、本当にいろいろ調べてみればみるほどお気の毒な被害者が多いと思うんです。そこで大臣、恐縮でも、こうしたいまのケースについて、できるだけひとつめんどうを見てあげてほしいということ。  もう一つは、これを機会に、多くの犯罪で被害を受けて、突然本当に予期もしない、そしていまのようなどん底に落とされてしまうという家庭の方々が、相談に行くといってもどこに相談に行くか、せめて法務省のどこかの中に、犯罪人を更生させることもいいが、被害者の救済のセンターのような、相談窓口のような、駆け込み所のようなそういったようなものがあったら、そしてそこへ行ったら厚生省のことは厚生省のこと、労働省のことは労働省のこと、文部省のことは文部省のことというふうにいろいろ親切に手はずをとってやる、そういうことが私は何か必要なんじゃなかろうか、こんなふうな気がするのでございますが、その二つを大臣、お考えを承りたい。
  156. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 犯罪被害者救済につきまして、十分な措置をしていかなきゃならない、全く同感でございます。そんなこともございまして、いまいろいろお尋ねいただいておりました総理府で来年一月から施行される犯罪被害者等給付金支給法に、かわる措置をとっていただくことになったわけでございます。お気持ちを体して努力していきたいと思います。  もう一つ、よろず相談、これはやっぱり各省それぞれ仕事を分担しておりますので、各省それぞれでお世話をするということになるのじゃないかなと、こう思うわけでございまして、法務省としては人権擁護局のようなものがございますし、またブロック、地方に地方法務局、そこには人権擁護課がございますし、またそのためには人権擁護委員という方々もいらっしゃるわけでございますので、そういうところがどちらかというと窓口になるのじゃないだろうかなと、こう思います。府県や市町村は総合行政をやっておりますので、よろず相談のような機構があると思いますけれども、中央政府になりますと縦割りなものでございますので、やっぱり各省ごとの所管についてのよろず相談ということになるのじゃないかな、法務省としてはいま申し上げたようなことじゃなかろうかなと、こう思っておるところでございます。
  157. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 せっかく大臣、救済の第一歩を来年一月から踏み出すわけでございますから、今後ひとつ、さらにまたそうした被害者に対する救済を国が進めることのできるような法制度並びにいろいろな施策を、できれば私は大臣が中心になっていろいろお考えいただきたいと思いますが、その点もう一回だけ承っておきます。
  158. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 大事なことでございますので、十分検討してまいりたいと思います。
  159. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 安川氏問題につきましても、きょう午前中御質問がありましたから重複を避けまして、検察庁では取り調べられているというふうに二十日付の新聞等に出ておりますが、その後はどんな状態でございますか。
  160. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 一部新聞報道にも出ておりますように、福岡の検察庁におきまして本人並びに関係者の取り調べと申しますか、事情聴取を行っておるところでございます。
  161. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 結論が出されるのはいつごろでございますか。
  162. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 何分にも刑事事件の捜査のことでございますから証拠の収集ということでございまして、何日までということは明言できないわけでございますが、なるべく速やかに結論を出したいと考えております。
  163. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 午前中に御質問がありましたから、もう対策等については重ねて伺うことはやめます。  このようなことがあることは、国民に対しても非常に裁判ということについて、あるいは司法ということについてのいろいろな不信感を招くことになりますので、重々お気をつけいただきたいことは当然でございますが、半面において、裁判官が人間らしく生活するということがやはり必要なんじゃないか。私が一部承りますと、裁判官はもう忙しくて、書類や何か皆いろいろなものを持っていって判決までうちで書いてくる、とても人間らしい生活ができない、この状態ではこれは裁判官も時には変な気持ちになることもあるんじゃないか。ですから、まず裁判官裁判件数に対して著しく不足しているのじゃないか、あるいは裁判官の処遇は大丈夫か、私はそう思いますが、この点について簡単に答えてください。
  164. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 現在、裁判官の数が非常に不足しているかどうかというまず前提問題でございますけれども、確かに一部の裁判官が非常に忙しい目をしておることはそのとおりで、おっしゃるとおりでございます。人間らしい生活をという御趣旨でございますが、この点につきましては、いろいろな物的、人的な処遇につきましては十分努力いたすつもりでございます。  なお、最初にお話がございましたように、このたびの重なる不祥事につきましては、国民の司法に対する信頼というものを損なったことは、深く国民の皆様にお詫び申し上げるところであると同時に、この損なわれた信頼裁判官一同が自粛自戒して回復することに鋭意努力いたすようにいたしたいと思います。
  165. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 法務大臣、最後に二点承ります。  一点は、大臣も大変親しくしていただいた私の恩師である小原国芳先生がよく口ぐせに言っておりましたが、裁判官検察官と学校の先生を大切にする国は大丈夫、治安も大丈夫だし国も安定し発展すると、こう言っておりました。教師の問題については、奥野大臣御専門でずいぶん努力されました。やはり裁判官検察官のそうした人間らしい生活ができるようにする、そのための努力も今後大臣していただきたい。  最後にもう一つ、BBSという、お勤めしている二十、二十二、三のもう本当に若い人が、そのゆとりの時間を全部非行少年の善導に向けている団体があります。全国的にやっていて、法務省でも非常によく世話をしていただいていますが、しかし何分にも全部自費でやっています。せめて、何かケース研究のときの費用くらいは多少国で補助していただけるくらいの温かみを持っていただきたい。また、大臣にBBS大会にはぜひ出て若い人たちを激励してあげていただきたいと思いますが、その二点伺って、終わります。
  166. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 裁判官検察官は、社会の安泰を確保する意味において非常に重要な役割りをしていただいている。国民信頼が向けられる検察官、裁判官でなければならないし、同時にまた、その処遇を厚くしてそれにこたえてもらわなきやならない。教育は未来を切り開いていく大きな力だと思いますので、私もいまおっしゃった三つ、非常に大切だと思います。また、御指摘の点について将来とも努力していかなければならないと、こう思っております。  もう一つ、BBS運動がございます。これは非行少年に対しまして非行防止に民間団体として協力してくださっている、非行少年たちについて友達になって、非行に陥らないような協力をしてくれているわけでございます。私は、役所の仕事も国民の間に理解がなければ実らないと思います。理解があって実る、理解があるばかりじゃなしに、協力してくだされば役所の仕事の効力は倍加してくると、こう思うわけでございます。非行少年の非行を防止していかなきゃならない、大事なことでございまして、警察、検察その他社会教育、いろいろ努力しているわけでございますけれども、民間で非行に陥りやすい子供さんたちの友達にみずからなって非行に陥らないように協力をする、力づけていく、これは私は非常に大きな役割りだと、こう考えておるわけでございまして、そういう意味において今後もBBS運動がさらに発展してまいりますように、法務省としても特段の努力をしていかなければならないと、こう思っております。御協力いただいておりますことを、この機会に感謝申し上げておきます。
  167. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 ありがとうございました。
  168. 藤原房雄

    藤原房雄君 法務委員会もこの臨時国会で二回目ということで、過日の委員会でいろいろ法務大臣を中心にいたしまして問題提起といいますか、改憲問題についてのいろんな議論がございまして、そのことを中心としまして、また過日も視察をいたしましたことで二、三御質疑いたしました。きょうもちょっと憲法のお話もございまして、またいろんな法務当局にかかわる諸問題がございます。何点か取り上げて大臣の所信、また関係の方々の御説明、そしてまた、基本的な考え方をお尋ね申し上げたいと思うのであります。  それで、憲法のことについては今日までいろんな議論もありましたし、先ほどお話ございましたが、さっきのお話で一点だけちょっとお伺いしたいと思うんですが、どこの党も憲法のことについて口にしてはいかぬなんという、こんなことを言った党はどこもないはずで、また大臣もいまの憲法、それに対して憲法を非難するようなことを発言なさったはずもないわけでありまして、憲法擁護ということは当然のことながら、それを踏まえた上で、国際情勢の変化、いろんな多様な社会の中でそぐわない点がだんだん出てきて、これは大いに議論すべきだという、このような大臣のお話だったと思う。  過日の委員会のときに私も申し上げましたが、このときに、法の番人というか、その立場にある法務大臣が提起なさったということで、それなりに非常に世間の見る目も、ほかの大臣、ほかの閣僚とは違った面で強い印象を受けた、こういう点は否めないんじゃないか。そういう点では大臣も慎重でなけりゃならぬし、また鈴木内閣としましても、憲法は改正しないというはっきりとした路線といいますか、お話があって、閣僚の一人としてそれに沿っていくのだというお話が過日ありました。  これは二十二日ですか、自民党の本部で比較的若い当選の方々だと思いますが、その方々と総裁とのお話の中で、この憲法問題につきましていろいろなお話があっただろうと思います。私も報ずる新聞で知る以外にないわけでありますけれども、総理のお話の中に、このたびの改憲論といいますか、こういう憲法問題については、それなりの成果があったというお話が一つ、また憲法擁護と自主憲法制定努力という両面の対応の必要性が出てきたんだというような、このような何点かお話しになったようでありますが、それなりの成果があったということは、そういうことになりますと、私どもは法務大臣の御発言も、何かやっぱり成果をあらかじめ予測してのこういうお話だったのかなと、こういうふうに考えざるを得ないんですね。  私どもは過日の委員会で法務大臣の率直なお話をいただきました。それなりに理解もし、また私どもの党の立場から私どものまた考えもありますけれども、これは党での話とは言いながら、総理が総裁という立場でのお話だと思いますけれども、それなりの成果ということは一体どういう成果であったのか。閣僚の一人として、また党員、自民党の大幹部といいますか、そういう立場にあられる奥野法務大臣につきましても、これはやっぱり総裁という立場であろうといたしましても、そのお話の中から、意図するものは何であったのかということは、ある程度お感じになっていらっしゃるのじゃないかと思うんですけれども、それなりの成果というのはどういうふうに受けとめていらっしゃるか、まずお伺いしたいと思います。
  169. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 鈴木総理・総裁がどういうお話をされたか承知しておりません。  ただ、私の立場で申し上げさせていただきますと、八月の末衆議院法務委員会で、自主憲法についてのお尋ねをいただきました。それにお答えをいたしましたら、途端に法務大臣罷免という声が上がったわけでございます。そのときに私は、これは日本の将来にとって憂うべきことだと、こう判断をしたわけでございまして、やっぱり国会は自由な論議の場にしようじゃありませんかと、私の意見に反対は結構ですけれどもそれは反論でこたえてくださいよというようなことを申し上げてまいりました。国会が始まりましてから、憲法擁護義務と憲法を改正するその論議、両立する、しない、これが話題になってきたと思うのでございますけれども、いまおっしゃいましたように、憲法擁護義務と改憲論議とは両立するのだと、こういう空気になってきたと思いますし、それは私はもう国会ではお認めいただいたのじゃないかなと、こう思います。  政党はやはり社会の安泰、国民の福祉の向上、それを願って積極的な努力をしているわけでございまして、何ものにもとらわれないでそれなりに積極的な努力を続けていかなければならない。そういう意味で、自民党としては憲法の基本的な理念を守りながら自主憲法をつくりたいということを綱領に挙げている政党でございますだけに、いま申し上げましたような考え方が国会の中でも定着してまいりますと、それは政党としても望ましいことでございますだけに、そういう意味で成果があったということになれば、そういう点を私は言えるのじゃないかなと、こう思っているわけでございます。  総理・総裁がどうお考えになられたかは別にいたしまして、私自身はいま申し上げましたような考え方で今日まで来たわけでございまして、それなりに認めていただいたのじゃないかなと、こういう気持ちを持たせていただいているところであります。
  170. 藤原房雄

    藤原房雄君 この場合、この憲法はもう三十数年の経過をいたしまして、特に戦後生まれがもう七割というような時代にもなってまいりまして、現在の憲法に対しての定着性という、その定着という言葉に、大臣はいろいろそういう形ではなくてというお話でございましたけれども、これはいろんな考え方はあろうかと思いますけれども、この現憲法に対しての理解とか定着性とか、まあこういうものについては深まりは出てきただろうと思うんであります。実質的に自民党の若い方々の中にも、これを機に改憲という御議論の方もいらっしゃるようでありますし、またいま地方議会におきましても、自主憲法制定ということでいろいろ議会の決議とか、あるいは意見書を提出とか動いているようですが、改憲は相ならぬという決議をしたところもございますし、非常に国民の大きな関心事であり、そしてまた、今日までの長い年月の中でそれなりに国民の中に奥深く定着したものだと思います。その個々の条文、個々の問題については、社会情勢の変化、いろんなものがあろうと思います。  そういうことで、私は過日、法の番人という立場の中で、これは法理論から言いますと、閣僚が口にしちゃいかぬのかという、そういうことを口にするとすぐに罷免という言葉が出るなんというのはおかしいという大臣のお話がございましたけれども、そういうことは慎重でなければならぬし、今後やっぱりこういう推移については、いろんな論議の中で大体一つの方向性というのは出てきたようでございますけれども、私どもはこういういろいろな議論をすることはこれは結構だと思うんですけれども、どういう意味で成果があったということを言われているのか。なし崩し的にそういうものが醸成されてくる、醸し出されていくという、やっぱり九条というのはいろんな経過があって今日あると思いますけれども、しかし、真っ正面からの議論の上に立ってならいざ知らず、急迫した国際情勢の中でこういう問題が提起されて、そしてそれが国民の世論を大きく動かしていくようなこういうことじゃなくて、やっぱり時間をかけ、各界各層いろんな立場からの、そしてまた長期的な、急激な国際情勢の変化ということじゃなくて、やっぱり長い目で見た上でのこういう議論というものも、憲法ということになりますと必要なことなんだろうと思います。  そういうことで、過日の御答弁にもございましたが、この憲法問題につきましては一応の姿勢といいますか、そういうものは大臣もはっきりおっしゃっておりますけれども、十分にひとつ慎重な対応、こういうもので今後貫いていただきたいものだと思うんです。  まあ、このことについては深く私は云々するつもりはないんですが、次に、問題になっております安川判事の、安川事件のことについて、これは午前中もいろいろお話ございました。私ども接する国民のだれもが、裁判官のこういう問題について、しかもちょっとここのところ問題が続いておりますし、さらにまた、鬼頭問題から、非常に法に明るい立場を利用してといいますか、巧みな、普通の人にはできない法の網をかいくぐってのこういう問題、行動に、一般庶民としてはやり切れない気持ちでおるわけですね。立法上のことについては午前中もお話ございましたし、またこれはもう本院といたしましてもそれなりに検討しなきゃならぬことだと思うんですが、まず最初にお伺いしたいのは、このたびのこういう一連の問題に対しまして、最高裁長官からもいろいろ国民に対してのお話があったようでありますけれども人事局長、実はこのたびのこういう一連の事件についてはどう受けとめていらっしゃるのか。  そしてまた、これに対しまして、まあ精神的なことはさっきお話ありましたけれども、何をどうするという具体的なことはなかなかむずかしいことなんですけれども、私どもは法作業というか、こういう問題については立法府ですからいろいろ検討するわけですけれども、今回の一連の事件を通して、いろいろお話あった中での皆さん方のそのお話の中で、私どもやっぱり注意しなきゃならない点とか考えておかなきゃならない点とか、そういう感触というものはある程度どもはこの際得ておきたい、こんな気持ちがするわけです。一連のこのたびの事件等を通しまして、最高裁としてはどのようにお考えになっていらっしゃって、また今後に対してどういうふうになさろうとしていらっしゃるのか、その辺のことについてお伺いをしたいと思います。
  171. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) たびたび申し上げて恐縮でございますが、重ね重ねの裁判官不祥事につきましては、司法に信頼を寄せていただいている国民に対してまことに申しわけなく存じます。  午前中も申し上げましたけれども、この国民の司法に対する損なわれた信頼を回復するためには、裁判官一同がまさにえりを正しまして、お互い自粛自戒して、この損なわれた信頼を回復するように努力していかなければならないというふうに思っております。  御指摘のように、具体策といいましてもなかなか見つけることができません。先ほど申し上げましたように、第一前提としては、裁判官一同の自粛自戒だと私どもは考えております。午前中にも申し上げましたけれども、具体的な方策として裁判官の研修等につきましても十分改めて見直す必要があるかどうか、どういうふうな形で研修をしていったらいいかどうかというようなことも、これから早急に考えていこうということでございます。
  172. 藤原房雄

    藤原房雄君 午前中もお話あったと思うんですが、このたびの安川が町長選に出馬したというこういう事象に対しましては、これはたしか最高裁としても、まあ裁判官立場としましても法改正というものが必要なんだという大勢の意見だったというように私聞いたつもりなんですけれども、そういう判断についてはどうですか。
  173. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) このたびの安川元簡裁判事の町長選立候補につきましては、法の網の目に穴があいているとすれば、これは立法手当てをしていただくということにつきまして、私どもとしても異存のあろうはずがないわけでございます。  ただ、午前中にも申し上げましたように、裁判所立場といたしましては、法案の提出権もございませんので、積極的にどうしていただきたいということを申し上げる立場にはございませんけれども関係御当局のいろいろな改正の動きに対しましては、私どもなりの、事務当局なりの考えを申し上げた次第でございます。
  174. 藤原房雄

    藤原房雄君 事務当局のお話ということは、即まあ主なそういう立場にある方々の御意見の集約と、こう考えてよろしいわけですか。
  175. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 私ども事務当局の内部で検討いたしました考え方でございます。お尋ねの御趣旨をちょっと理解いたしかねますけれども、十分検討いたしたつもりでございます。もっとも、私どもで申し上げている考え方にも問題点がなくはございません。これからも十分慎重に検討いたし、意見を求められた際には、また裁判所事務当局の考え方として申し上げていきたいというふうに考えております。
  176. 藤原房雄

    藤原房雄君 先ほど同僚委員の戸塚議員からもお話ございましたが、こういうことが何度も続くということは、やっぱり内部にそういう問題が起きるような原因があるんじゃないか。先ほど処遇の問題とかいろんなことがございました。多くの方々に接してお話を聞いたわけではございませんから詳しいことはよくわからぬのですけれども、一般の国民の方々、そういう立場にある方々は、あるいはこんなに何人か何度か続くということになりますと、そういう点では戸塚さんのおっしゃったお話も私は確かに一つの大事なことなんだろうと思います。  そういうことで、門外漢ですから中のことはよくわからないんですけれども、そういう処遇のこと等についてはこれはそれなりに検討していただいて、そういう環境といいますか、そういう裁判官の方々の内部的な問題についてのことについてもやっぱりよく御検討いただくことが大事なことではないかと、こう思うんですけれども、その間のことについてはいろいろ内部的にも御検討なさっていらっしゃるんだと思いますが、どうなんでしょう。
  177. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 裁判官の処遇につきまして御関心をいただきまして、まことに恐縮に存じます。私どもなりに、裁判官一般の処遇の問題につきましては常に努力を重ねているつもりでございます。  このたびの重なりました事件の原因というものは何かということに相なりますと、第一の安川元簡裁判事の女性被告人との交際問題につきましては、当初その情報を得たときに私自身といたしましては、そういう事実がありとすれば全く言語道断のことである、私なりに裁判官のあり方としてはもうイロハのイ以前だというようなことを申し上げてきたところでございます。余りにも私どもの常識から外れた行為でありまして、原因が那辺にあるのかということを冷静に考えてみましても、どうも御理解いただけるような原因が見つからないわけであります。  それから、第二の旭川の問題につきましては、これは私行上の自分の身の持ち方の問題でございます。数ある裁判官の中にはいわば酒が好きな方も大分おられるわけでありますけれども、その私行上ああいうことになってしまってはこれまた弁解のいたしようがありません。最初に申し上げましたように、もう自粛自戒を求める以外にはないものというふうに考えております。特に御関心をいただきましたいわば処遇が足りないと、不足しているということから、このたびの相重なる事件が起きたというふうにはちょっと考えられないところでございます。しかし、不祥事はあくまでも不祥事でございますので、今後このようなことのないようにいたしたいというふうに考えております。
  178. 藤原房雄

    藤原房雄君 国民信頼を置いている信頼が破られたということで非常に関心を持っていることでもございまして、私は中のことを全部知っていてこれをこうだという具体的に考えがあって言っているわけじゃございませんが、やっぱり採用なさって何年間はまじめにお勤めになっていらっしゃったと思います。最初からそういう性格の人であったわけじゃないんだろうと思いますけれども、それがある環境の中でそういう方向に走っていったということであるならば、それなりに考えなければならないことだと、こう考えているわけであります。  さらにまた、最近、簡易裁判所の制度の洗い直しにつきましても、新聞報道等によりますと、法曹界の三者協議の中で検討しようというのですか、しなければならないというんですか、新聞にも報道されているようでありますが、まず簡易裁判所判事の登用制のことについてや、またこの簡易裁判所と地方裁判所との訴訟対象額の引き上げ等、こういうことについても検討しているやに報じられておるんですけれども、この問題についてはどうでしょうか。
  179. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 第一の簡易裁判所判事の任用の問題でございます。私どもといたしましては、申し上げるまでもございませんが、簡裁判事として適任な人物を採用するということに尽きるわけであります。現在の簡易裁判所制度、簡易裁判所判事は、いわゆる司法試験を通りました法曹有資格者と別の資格の者でも採用できるということになっておるわけであります。世上言われておりますように、司法試験を受けるために簡裁判事になっているという者もあるいはあるかもしれませんけれども、全く別個の採用方式になっております。  それはそれといたしましても、簡裁判事として適任な、このたびの不祥事を起こすような者は採用しないということに尽きるわけでありますが、具体的に採用時におきまして果たして将来ちゃんとやっていけるかどうかということは、まさに人事の初めにして終わりの問題でありまして、常に苦慮しているところでありますが、具体的に簡裁判事の素質の向上といいますか、あるべき素質というものにつきましても、過去においていろいろ考えておったわけでありますが、さらにそれ以上に慎重に考えて採用の仕事をいたしたいというふうに考えております。
  180. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいま藤原委員が仰せになりましたもう一つの問題、簡易裁判所の管轄の問題でございますが、これは今回の一連の不祥事関係のある問題では実はございません。これは御承知と存じますが、簡易裁判所の民事の事物管轄が三十万円以下というふうに十年ほど前の改正で決まっておりまして、その後の経済事情の変動等によりましてその三十万円をそのまま維持していいかどうか、相当経済事情が変動しているから、それにあるいはスライドして管轄を手直しすべきではないかというふうな議論を三者協議でしようではないかということを大分前々から話し合いをしておりまして、実は最高裁判所の方からそういう議題を決定して協議してはどうかということを申し上げておりまして、現在、弁護士会の方でもその点について御検討中でございまして、いずれ弁護士会の方からそれについての、議題にするかどうかについての返事があるだろう、そういう状態にあるわけでございます。そこら辺のところが、一部新聞にこの間報道されたわけでございます。
  181. 藤原房雄

    藤原房雄君 これは直接つながりはないのかもしれませんけれども、簡易裁判所と地方裁判所の取り扱い件数を見ますと、六二%ですか地方裁判所の方が多いという、こういう諸物価の高騰の中でそういう一つのバランスがだんだん崩れてきておる。それはまた即簡易裁判所裁判官のそれぞれの立場に対しての過重な件数が集中するというような形になるわけですから、そういう一つ一つのことのいろんな検討といいますか、そういうものの中からも、いろんなまた解決の方途というのが見出せるのかもしれません。こういうことは直接つながりのないことかもしれませんが、インフレとか、三十万ということですから現在に当てはめれば少なくとも百万近くということのようでありますから、いずれにしましても、国民の大きな信頼の中にある裁判官ということでございますので、やっぱりここのところちょっと続いておりますし、それなりに対応策というものを御検討いただき、やっぱり信頼を回復していただく、これは私どもの率直な考え方でございまして、せっかく御努力いただきたいものだと思います。
  182. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 先ほど申し上げましたように、簡易裁判所全体の制度そのものが今度の安川裁判事の問題を引き起こした、つまり制度が悪いからかどうかという点については、必ずしもそういう認識ではございませんが、ただしかし、いろいろ検討いたしますれば、もう少し改善すればこういうことがあるいはもっともっと可能性が少なくなるというようなこともあるいはあるかもしれません。今度の問題を契機にいたしまして、簡易裁判所のあり方全体についてやはり問題がないかどうかということは、改めてもう一度見直してみたいというふうに考えております。
  183. 藤原房雄

    藤原房雄君 二十八日に、犯罪白書ですか、法務省で閣議に報告され了承をされたということが報じられておりますが、犯罪白書、私も具体的には手にしていない、新聞報道にある範囲内のことでありますが、その中で何点かそれぞれの問題について各紙が取り上げておるようでありますけれども、これは新聞云々ということよりも、当事者がいるわけでありますから、まずこのたびの五十五年度の犯罪白書、これはいままでと違った傾向なり特筆すべきことといいますか、そういう問題点について、詳しいお話は結構でありますけれども、粗々その中心になる基本的な話だけちょっとお伺いしたいと思うんであります。
  184. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 法務総合研究所で犯罪白書をまとめておるわけでございまして、そこからだれも出てきていないようでございますから、私から一言お答えをさせていただきたいと思います。  一つは、諸外国の犯罪あるいは検挙の状況と日本とを比較したのが初めてじゃなかったかなと、こう思います。そういう面におきまして、格段にわが国におきましては犯罪が少ない、同時に検挙率が高いということでございまして、それなりに検察関係なり、あるいは警察関係なり、あるいは社会の協力なりが進んでいるということが言えるのじゃないかと思うのでございまして、こういう体制をさらに一層強めていかなきゃならない、こう思っております。  もう一つは、最近、覚せい剤の犯罪が非常に多いようでございまして、それが一般の主婦にまで広がっていく。最近、刑務所に入ったりされる方の二割ぐらいがこの関係者だと、こう伺っておるわけでございまして、その状況も指摘されておるわけでございまして、幻覚症状を起こすわけでございますし、犯罪にも結びついていくわけでございますだけに、こういう覚せい剤犯罪、この防止に対してもっと積極的な努力を払っていかなきゃならない。これも犯罪白書を通じて一つの特色になっているのじゃないかなと、こう思います。  もう一つは、最近、青少年の犯罪が非常にふえているようでございます。ふえているばかりでなしに、低年齢化、年齢の低い方々の犯罪がふえてきている。両様に、日本の将来を考えると大変恐ろしいことじゃないかなと、こう思っているわけでございまして、やはり青少年問題、いろんな方面から力を合わせていまの姿をひとつ改善しなきゃならないのじゃないかなと、こう思っているわけでございまして、なお、再犯の模様なんかも若干そこで取り上げておるわけでございまして、どちらかといいますと、再犯率がまあほんのわずかでございますけれども下がっていく傾向にあるということは望ましい傾向だと、こう思っておるわけでございます。しかし、それはまだ私は誇るに足りる程度には来ていないじゃないかなと、こう思ったりしているところでございます。
  185. 藤原房雄

    藤原房雄君 また、私ども手に入りましたら詳細にいろいろな角度から分析してあれしたいと思いますが、いま大臣のお話にもございました覚せい剤のことですね、いい面はこれは大いに伸ばしていただいて結構なんですが、当面その問題に対しましてはやっぱり真剣に努力しなければなりませんし、諸外国に誇ることばかり大きい声で言ってもなんでございますが、一番青少年問題に関すること、覚せい剤問題について、これは過日の委員会においても、私ども視察に行かしていただきまして、札幌、函館、青森、どこに参りましてもこれが大きな問題であったというふうに思っております。こういうことで、これは厚生省とか警察庁とかそれぞれの担当がございますので、担当の方に来ていただいているわけでございますが、少しくこの問題についてお尋ねをしてみたいと思うんであります。  この犯罪白書の中にも覚せい剤利用の検挙者は一万八千五百五十二人、十年間で十一倍に達している、年齢構成を見ると二十四歳以下の層が二二・八%を占めて、学生、生徒や主婦にも検挙者が出る、覚せい剤の作用によって二十五人が殺人で検挙されるなど、その危険性を示している、こういう一部を見ましてもこれは非常に——戦後一時期非常に多かった時代もございますが、予想される第二、第三の波といいますか、大きな顕著な現象といいますか、こういうふうに言われておるわけです。まあ、大臣がいまお話ししておりましたとおりだと思います。覚せい剤がいかに使用者に害を与えるだけじゃなくて、社会に及ぼす影響が大きいかということは、こんなことを私が長々申し上げるまでもないと思うんでありますけれども、これは厚生省が一義的には担当なさっていると思うんでありますけれども、厚生省としまして、この現在の覚せい剤問題についての取り組み等についての現状をちょっとお伺いしたいと思います。
  186. 新田進治

    説明員(新田進治君) 御指摘の覚せい剤の事犯についてでございますが、昭和四十五年以降全国的に発生するようになりまして、覚せい剤乱用者は、もう一部、従来は特定の人に限っておりましたけれども、御案内のように、最近は主婦、学生、さらにはサラリーマンなど、一般市民の層に深く浸透するようになってまいりました。で、覚せい剤のそういうふうな乱用が増高するにつれまして、それに関します一般の事件、事故等、各種の犯罪が末広がりに広がってきておるわけでございます。で、覚せい剤の密輸、密売等、不正取引におきましては特に暴力団が大幅に関与しておりまして、暴力団の最大の資金源となっております。暴力団の資金源となっておりますだけに、その抑制が非常にむずかしい。したがいまして、取り締まりをなお一層強化いたしまして、その防犯を推進する必要があるわけでございます。しかも、そういう暴力団の取り締まりを強化すればするほど、暴力団のその手口もますます悪質、巧妙化してまいりまして、その取り締まりが非常にむずかしくなっておるという事情でございます。  それから、この事犯に供されます覚せい剤でございますが、これはほとんどが海外から密輸入のものでございます。従来は、戦後、二十九年ごろに第一次のヒロポンの乱用時代がございました。そのときには、ほとんど旧軍部が持っておりました覚せい剤、それを放出して国内で密造されておったものでございますが、最近は海外、特に私ども調査した範囲では、東南アジア、韓国、台湾、香港、そういうところからの密輸入が非常に多いように見受けられます。こういうふうな覚せい剤の乱用の趨勢に対しまして、四十八年の十一月に覚せい剤取締法の改正をいたしまして、罰則の強化、さらには覚せい剤原料の規制等々、こういう強化を骨子とした法律改正をやりまして、そして取り締まりをより一層強化してまいっておるわけでございます。今後とも関係機関の御協力を仰ぎながら、徹底的な取り締まりをやっていきたいと思っております。
  187. 藤原房雄

    藤原房雄君 厚生省のいまのお話、これは国内では海外からのものが主流を占めるという、また暴力団やなんかのこういうものに結びつくものが非常に多いという、いろんな以前とは違った面がだんだんと出てきて、凶悪化といいますか、こういう方向に進みつつあるように感ずるわけでありますが、こういう現状に対しまして、取り締まり当局であります警察庁としましては現在どういうこれに対する対処をいたしておりますか、現況を御報告いただきたいと思います。
  188. 佐野国臣

    説明員(佐野国臣君) ただいま情勢全般につきまして厚生省からお話がございましたが、警察の判断もほぼ同様でございます。ただ、警察的な面から、取り締まりの面から申し上げますと、以下のことが申し上げられようかと思います。  一つは、まず原料なりそのものが外国から輸入されるという点でございます。したがいまして、私どもは外国から流入するいわゆる水際での検挙活動、これを第一義的に考えてまいりたいということから税関当局との連携というふうなこと、あるいは空港あるいは地方の漁港あたりにまで水際検挙のための対策を講じつつあるということが第一点でございます。  それから次の問題は、外国との絡みでございますので、特に国際協力というふうな場面におきまして相互の情報交換を適切に行っていくというふうな問題あるいは違法なものを見つけた場合の、あるいは見つけるための何といいましょうか、いろいろな情報あるいは身柄の引き取り、そういったふうな面での国際間の協力、こういったものを進めておるという状況でございます。  それから、これはもっぱら警察の問題でもございますが、次には密輸、密売人の検挙という問題、これを考えてございます。特に密輸、密売の大もとになりますところ、ここのところをどう押さえるかという問題は、むしろ警察固有の業務ではなかろうかということを考えてございまして、鋭意密輸、密売人の大もとに対する捜査活動、これを重点に活動を行っておるという状況でございます。  それと、いま申しました密輸、密売の大もとの中には相当数暴力団の関係者もございます。したがって、刑事部門の暴力団対策という問題とも両方連動しながら、検挙活動を進めていくということにいたしてございます。それ以外には、捜査手法の工夫あるいは捜査一鑑定資器材の整備の問題とか、それから捜査に当たります捜査員の充実の問題なども鋭意努めております。  さらに申し上げますならば、この種の事犯を検挙活動だけでとどめられるかどうか、いささか問題もあろうかと思います。密輸の大もとにつきましては、検挙活動、これは非常に有効ではございますが、一般の末端の施用者に対しましては、いわば事後的な検挙活動で果たして予防あるいは防遏ということが十全であるかどうか、その辺の問題もございますので、検挙、取り締まり活動以前の問題といたしまして関係省庁にも関心をお寄せいただいて、啓蒙啓発活動の問題あるいは行政の場面でのいろいろな指導、そういったものをも推進してまいりたいと、かように考えております。  それから、さらに細かく申し上げて恐縮でございますが、覚せい剤使用の動機なり原因というものを分析してみますと、若い層の間で、要するに好奇心に駆られてそういったものに手を出したというふうなグループが相当ございます。その辺の問題になりますと、やはり強固な意思とでも申しますか、非常にさかのぼった教育なり家庭の問題と申しますか、そういった問題もあろうかと思われますので、国民一般に覚せい剤に対する危険意識とでも申しますか、そういったものを涵養していただく必要があるというふうなことも一つのテーマとして、鋭意取り締まり、あるいは指導に当たっておるという状況でございます。
  189. 藤原房雄

    藤原房雄君 いま警察庁のお話ございましたが、やっぱりこれは水際で対策を立てるということが私ども大事なことだと思います。これは各省庁それぞれ担当分野がありまして、それぞれに努力なすっていると思いますが、通称運び屋と言われておりますこういう者に対しての取り締まりというのは、特に重視してやっていらっしゃるんだと思いますけれども、どうなんでしょうか。
  190. 佐野国臣

    説明員(佐野国臣君) 先ほど申しましたように、暴力団関係者が相当入ってございますし、それの平素の動静の把握というふうな問題、これを十分考えていかなければ対策がむずかしいという点がございまして、特にこういったものに対する捜査体制、昨年これの充実強化をいたしてございます。行政改革その他財政上いろいろ厳しい折からではございますが、昨年そういった要員のための増員をお願いしてございますし、また今後もそういった体制づくり、こういったものに鋭意努力してまいりたいと、かように考えております。
  191. 藤原房雄

    藤原房雄君 厚生省でもいろいろ御努力していらっしゃるようで、それぞれいろんな啓蒙のための月間を設けたり、それから覚せい剤乱用防止推進員というような形のものをつくってやっていこうということや、それから国際協力をどうするかとか、麻薬取締官の海外派遣については検討しようとか、こういうことで、総理府が中心になってこの問題についてはいろいろ検討しているようですが、四十五年からですか、総務長官を本部長としまして、薬物乱用対策推進本部という、総理府が中心になりまして、各省庁にまたがるものですから、それの調整役としてやっていこうということで、こういう強力な体制ができているわけであります。  しかしながら、社会情勢の大きな変化といいますか、海外に行く方も非常に多くなり、また国内的にも先ほどお話がありましたようないろんな変化の中で、とにかく最近ここ数年というのは非常に多いわけで、総理府にあります薬物乱用対策推進本部というのは、現在どれだけの陣容で、本当にかなめとして役割りを果たしているのかどうか。また、今日こういう急激な問題が起きておることに対しましては、さらに強力な施策が考えられているのかどうか、これらのことについて総理府の担当の方にお伺いしたいんですが。
  192. 山田晋作

    説明員(山田晋作君) お答えいたします。  覚せい剤等の薬物乱用対策につきましては、ただいまお話ございましたように、関係機関相互間の密接なといいますか、緊密な連絡を図る。その上で総合的、効果的な対策を実施していくという観点から、四十五年に薬物乱用対策推進本部が設置されましたが、その構成は、総理府総務長官が本部長でございまして、本部員といたしましては関係の十の省庁、この局長クラスの方々がそれぞれ本部員ということで構成しているわけでございます。それと総理府でございますが、そして総理府の審議室の方で私どもは業務を処理するということになっておるわけでございます。そういったかっこうで本部では現在の覚せい剤の乱用の風潮、そういったようなものを非常に危惧しておる状態でございますので、関係機関が協力しながら積極的な広報とか取り締まりを実施してまいっておるというのが実情でございます。  それで、この活動につきましては、昭和四十八年の六月でございますか、覚せい剤の問題が非常に大きくなっておりましたので、覚せい剤乱用対策実施要綱というのが推進本部で決定されまして、対策の基本的な方針といったようなものが一応示されておるわけでございますけれども、毎年度、大体年度の当初に推進本部の会議を行いまして、その会議で年度の活動方針、こういったようなものを協議、検討いたします。そして、その年度の薬物乱用防止強化月間といったようなものの実施要綱を決定いたしまして、その要綱に基づきまして関係の行政機関がそれぞれの立場でその実施を推進していただく、さらに推進に当たっての地方本部が都道府県に置かれてございますので、都道府県に対しましてもこれらの推進についてお願いしておるということでございます。  ここ二、三年の例をとりましても、七月に広報の強化月間、十月と、それからこれは年度でございますので翌年の二月に取り締まりの強化月間と、こういったようなものを設定しておりまして、本年度もそうでございますが、それぞれ強力に実施したいというわけでございます。
  193. 藤原房雄

    藤原房雄君 こういう月間を設けてずっとやっていく、とにかくここ数年非常にこの問題が凶悪化、暴力団とかこういうものとの結びつきとか、いろんないままでの考え方だけでは対処できない大きな問題もだんだん出てきつつあるということで、確かにこういう薬物乱用防止強化月間、これは無意味だと私は言っているわけじゃないんですけれども、過去のいろんな施策の上になされたものはそれはそれとして、やっぱりもっと総合的な施策というものを強力に進めていきませんと、いままでと同じことを繰り返していたのでは、いままで以上の成果はこれはおさめ得ないのではないか。  五十四年から覚せい剤乱用防止推進員というのを各地域で設けて、きめ細かな対策を講じていこうという、地方の方で有力者というか、そういう責任の方々にお願いするような形でこれはやるんだろうと思いますけれども、こういう啓蒙にも、ただポスターを張るとか何かするだけじゃなくて、もっときめ細かな強力な施策が必要なんだと、一面では水際での強力な対策、また国内的にはこういう啓蒙運動、そしてまたきめ細かな対策と、こういうことで、これを五十四年度から——これは覚せい剤乱用防止推進員というのはこれは総理府が所管ではないんですか。厚生省ですか。これは去年からできたようですけれども、現状どうなっているのか、今後またどういうふうに考えているのか、その辺聞かしてください。
  194. 新田進治

    説明員(新田進治君) 御案内のとおり、こういう薬物乱用の防止のためには、一にまず取り締まりの強化でございます。さらに、水際作戦等でその供給物を断つということ、これも大事な要件でございます。先ほど来お話ございますように、その三番目に供給を断つ、需要を断つという大きな仕事のために一番有効な施策としては、一般市民の関心、特にそういう薬物に対する恐怖の心を十分浸透させまして、薬物から遠ざけるということが重要な仕事でございます。  そのために厚生省では、五十四年度から覚せい剤防止推進員制度というものを発足させまして、これは従来からやはり保護司とか民生委員とか、またその地方地方の有識者がたくさんいらっしゃいますが、そういう人たちにそういう推進員になっていただきまして、これはもちろんボランティアでございますが、そういうふうな人々の日常業務を通じまして、地域活動を通じまして一般の人人に啓蒙をやっていただくと、そういう制度でございます。五十四年度は十県ほど予算化されまして、現在その実行を行っております。さらに、五十六年度におきましてはこれについての予算を要求しておりまして、その該当県をふやしていこうと、こういう計画でございます。
  195. 藤原房雄

    藤原房雄君 法務大臣、閣僚の一員ということで、ぜひひとつこれは大事なことでございまして、各省庁にまたがり非常に複雑な問題、そういう調整といいますか、むずかしい問題もあろうかと思いますけれども、ほかの大臣いらっしゃいませんので、閣僚の一員である法務大臣に申し上げるわけですが、ぜひひとつこれは連携をとり合い、そしてまた、諸施策を、十分に機能を発揮しまして効果の上がるように対策を講じていただきたいと思うのです。  時間もありませんで、もっといろいろなことについて私もまた提言なり何なり申し上げたいと思っているのですが、以後にしまして、それでは法務省にちょっとお伺いするわけでありますが、覚せい剤の事犯者に対する起訴率とか求刑の実情というのは一体どうなっているのか、ちょっとお伺いしたい。
  196. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 覚せい剤事犯の現況等につきましては、先ほど厚生省あるいは警察から御説明があったとおりでございまして、私ども法務、検察立場におきましても、覚せい剤事犯の絶滅を期しまして厳正な態度で臨むという方針をとっているところでございます。  私どもといたしましては、警察あるいは麻薬取締官から送致を受けました事件を捜査し、また処理をするわけでございますが、その捜査に当たりましても、先ほどお話のございましたように、いわゆる供給事犯というものに重点を置いて、根源を突く捜査と申しますか、そういうものに力を注ぎたいと考えております。  また、処理の面では、ただいま御指摘のありましたように、起訴率という問題もございますが、基本的には先ほど申しましたように厳正な態度で臨みたい。最近の起訴率は九割近くにも達しているという状況にございまして、そのことからも検察当局の基本的な態度ということがおわかりいただけるのではないかと、かように考えております。
  197. 藤原房雄

    藤原房雄君 覚せい剤事犯に対する執行猶予率がほかのものに比べて多いというような話も聞くんですが、その問題についてどういうことからそうであるのかどうかということと、また、それには何らかの理由があったら、こういうことだということでお伺いしたいと思います。
  198. 前田宏

    政府委員(前田宏君) いま申しましたように、原則としてと、言うと言い過ぎかもしれませんけれども、事実と認められるものにつきましては起訴をするという方針をとっておりますので、逆に申しますと、起訴する者が多いということから、中には末端の使用者等もございますわけで、そういう者が事情あるいは情状がいいと、もう反省をしておるというようなことから執行猶予になる場合も出てくるし、その率も相対的にはふえるという状況にあるわけでございます。  それから、関連して執行猶予の取り消しという問題があるわけでございますけれども、これも一般よりやや高いという結果は出ておりますけれども、それはやはり執行猶予になっている者が多い。執行猶予になりますことは、不起訴によります場合よりも、再犯の防止という観点から、一度は実刑に処さないけれどもその間の行状を見るというような精神で言い渡されているものと考えるわけでございまして、そういうようなことの間でそのとおりに再犯をしない者ももちろんございますけれども、やはりこの事犯の性質上、再犯に陥る場合があるということから、また、それを厳正に措置するということから取り消しになる場合が多い、こういうことでございます。
  199. 藤原房雄

    藤原房雄君 覚せい剤取締法というのは昭和二十六年ですか、これが制定されましてから、二十九年、三十年、四十八年と改正されて法定刑の引き上げが行われてきまして、現在では広い事犯並みの最高は無期懲役ですか、こういうことになっているわけですね。先ほども罰則の強化でというお話ございましたけれども、こういうように法定刑の引き上げがずっと続いてきておるわけですけれども、現在、限度といいますか、そんな感もするわけですけれども、こういうように罰則の強化ということで対処してきたということについては、もう限度というか、そんな感じに受け取られるわけであります。  こういう罰則の強化だけでは効果はないのだ、このことだけですべてがおさまるわけはないのは当然でありますけれども、いろいろな原因がありまして、そういう根本的なものからたたき上げなければならぬだろうと思いますけれども、こういうことで罰則強化、これはそれなりの効果があったというふうにお考えになっていらっしゃるのか。しかし現状を見ますと、これは罰則の強化だけではだめなんで、もっとほかの問題について総合的に強力に進めなければならぬとお考えになっていらっしゃるのか、法務省としてのお考えはどうでしょうか。
  200. 前田宏

    政府委員(前田宏君) この問題は、先ほど厚生省からもお話があったかと思いますけれども、やっぱり国民のすべての方々が覚せい剤の害悪と申しますか、危険性と申しますか、そういうものを認識されまして、こういうものにかかわらないようにするということが先決であろうと思うわけでございます。ただ、遺憾ながら法に触れる者もあるわけでございまして、そういう者につきましては厳罰をもって臨むということも、こういう事犯を減少させ絶滅に向かうというためにはやはり有効な方策の一つであろうというふうに考えているわけでございます。
  201. 藤原房雄

    藤原房雄君 いろいろのことがあろうかと思いますが、大臣いまお聞きのように、犯罪白書にもございます問題として非常に根の深い、そしてまた広範な非常に影響力の大きい大事な問題でございまして、せっかく総理府の中にも対策本部が設けられておるのでございまして、財政とか、または機構上とかいろんなことで制約があろうかと思いますけれども、政治家として私どもこれは本当に真剣になって取り組まなければならない問題だと思います。閣僚の一人としまして大臣にもぜひひとつこれは真剣にお取り組みいただき、また閣議等におきましても積極的な——犯罪白書の中にもはっきりとこういう文言が出ておるわけでございますので、推進方については極力ひとつ働きかけていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  202. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 覚せい剤事犯について大変御心配いただいておりますこと、ありがたいことだと思っております。御指摘のように、総合的な角度から各省協力して取り組まなければならない問題でございますので、そういう方向で協力していきますように、私も努力をいたしてまいりたいと思います。
  203. 藤原房雄

    藤原房雄君 覚せい剤のことについては以上で終わりますので、警察庁それから厚生省の方、それから総理府の方結構です。ありがとうございました。  あと時間もございませんのでございますが、過日の新聞に、アメリカの電話公社の贈収賄事件に絡みまして、六月に丸紅職員がアメリカ大使館で証言を求められたということが新聞に出ておりましたですね。これは、今月の一日から、十月の一日からは国際捜査共助法というのが施行されることになって、この法律にのっとってやられるんだと思いますが、このアメリカ大使館で丸紅の方々が——六月ですから、まだこの法律が発効する以前のことでありますので、どういう手続のもとに呼ばれて、こういうことが可能であったのか、これは法律の根拠ですね。  それから、それと国際捜査共助法というものがこの十月一日から発効するようになりますと、これによりまして今後特別な動きというものは、動きといいますか、これの発効によってどういうことに今度はなるのか、その辺の、最近は国際的な犯罪といいますか、動きが非常に多い、こういうことからちょっと私もどういうことなのかなと、こう感じたものですからお伺いするのでありますが、どうでしょう。
  204. 前田宏

    政府委員(前田宏君) まずお尋ねの、アメリカ大使館での証人調べということの中身でございますけれども、これはいまも御指摘になりましたように、昭和五十三年にアメリカのカリフォルニアの裁判所に起訴された事件に関することでございまして、その事件が係属しております裁判長の命令によりまして、日本におるアメリカの領事が丸紅の社員等について事情を聴取したと、こういうことでございます。  その根拠と申しますと、これは日本国とアメリカ合衆国との間の領事条約というのがございまして、その十七条に、領事官、いわゆる領事でございますが、その領事が派遣国つまりこの場合はアメリカに当たるわけでございますけれども、「派遣国の裁判所その他の司法当局のために、その者が自発的に提供する証言を録取すること」ができると、こういう規定が十七条にあるわけでございます。これがいわば法律的な根拠でございまして、領事官が現地、つまり自国であるアメリカの裁判所のために、この条文に当てはめますと、日本の丸紅の社員が自発的に提供する証言、これを録取をした、こういうのが事柄の内容でございます。したがいまして、そういう条約に基づく措置でございますので、国内法との関係では特に問題はないわけでございます。  一方、お尋ねの国際捜査共助法との関係でございますけれども、この法律はいま御指摘のように、十月から実施になっておるわけでございますが、これはいわば国際的な捜査の協力関係ということでございます。したがいまして、たとえば外国で捜査をしている刑事事件がございまして、その関係の証拠が日本にある、あるいは証人が日本にいるという場合に、外国の要請によりまして、日本の検察官あるいは関係の捜査機関が関係者から事情を聴取する、あるいは必要な所要の証拠の提出を求め、場合によっては強制的な令状による手続によりまして、それを諸調整をして要請国の方に引き渡すと、こういうような手続を定めておるわけでございます。  そのほかに、国際刑事警察機構との協力関係のことも定めておりますけれども、そういう関係で外国の刑事事件、それについて当該外国からの要請によって日本国の捜査機関が必要な措置をとると、こういう関係に相なるわけでございます。また一面、そういう国内法が整備されておりますと、日本から外国に対して同様なことをお願いすることもしやすくなると、こういう効果も持っておるわけでございます。  したがいまして、先ほど来お尋ねの、過日六月のアメリカ大使館の領事の取り調べとは直接関係のないことでございます。むしろ関係があるといたしますと、その事件はアメリカの裁判所に現に起訴されて係属しておることでございますから、裁判所間の共助という問題は起こるかと思いますけれども、この国際捜査共助法とは直接なかかわりはない、捜査中の段階での問題であると、かように御理解をいただきたいわけでございます。
  205. 藤原房雄

    藤原房雄君 外務省の方、いらしていますか。——時間もございませんので、後日にしたいと思います。次に難民問題を取り上げてちょっとお伺いしたいと思っておったんですが、時間もございませんのでこれで終わりますから、大変済みませんでした。  きょうは何点かについてお尋ね申し上げましたが、特に先ほど大臣からもお話ございましたが、ぜひひとつ覚せい剤問題につきましては、このたびの犯罪白書の中でも一つ大きく取り上げられている問題でもございますので、御努力いただくことを心から私からも訴えまして、私の質問を終わりたいと思います。
  206. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まず、公安調査庁にお尋ねをしますが、公安調査庁の調査活動はいかなる根拠法規に基づいて行われておりますか。
  207. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) お答えいたします。  破壊活動防止法に基づいて調査いたしております。
  208. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この破壊活動防止法、いわゆる破防法は、言うまでもなく希代の悪法として、わが党としては一貫してこの悪法の廃止、公安調査庁の即時解散を要求してきておる立場でありますが、この悪法である破壊活動防止法の法規に照らしても、ずいぶん重大な法違反、法逸脱の問題が起こっているのではないかということで、きょうは少し具体的な例として御質問をしていきたいと思います。  本年の九月の二十五日の夜、茨城地方公安調査局のマツヤマ、ワタナベと名のる人物が、原子力研究所労働組合として係争中の、その労働組合の二人の組合員の私宅を訪問をした。この二人のそのうち一人は、茨城地方労働委員会へ提訴をしておるその申し立て人であり、もう一人は地労委審理の証人という位置にある人、この二人の組合員宅を訪問したのは事実ですか。
  209. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) お答えいたします。  本年九月二十五日の夜、茨城地方公安調査局の調査官が、茨城県東海村にあります日本原子力研究所の職員二名のお宅を訪問したという報告は受けております。
  210. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ただいま御答弁ありましたように、そのとおりの事実だということだと思いますが、その際に、調査に出向いた調査官が、核ジャックに関連して情報を集めている、ひとつ話を聞きたいというふうに話をした模様でありますが、それに相違はありませんか。
  211. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 破防法に基づく調査に赴いたという報告を受けております。
  212. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 昨日、私は質問の通告をいたした際に、たとえばその翌日二十六日、九月の二十六日ですね、二十五日の夜、そういうことで調査官が赴いたということで、これはもう重大な問題だということで労働組合としても取り上げ、茨城の公安調査局へ抗議申し入れに行っておる、そのときの模様についての新聞報道がありますと。現地の地元新聞である九月二十七日付の「いはらき」、これにも報道をされておる事実だということを、通告の際に申し添えておいたはずでありますので、余り問題をあいまいにしていただきたくないと思うんですが、この新聞を確かめられたかどうか。この新聞の中にもこういう記事が書かれています。  応接に出たのが公安調査局の橋本局長で、かぎ括弧して、局長の何といいますか答弁、これが報道されているわけですが、「昨夜(二十五日夜)確かにうちの調査官二人が原研労組関係者宅に行ったが、これは極左グループによる核ジャックの動きなどの情報を探るための調査で、地労委の審理とは無関係だ」云々と、こういう新聞報道がありますし、これは勝手に新聞が書いたということじゃなくて、片一方、原研労働組合のニュースにも、ほぼ同一内容の局長答弁をされておるという報道もありますので、核ジャックの情報収集だということで調査官が赴いたということは間違いないだろうというふうに私は確信をしているんですけれども、この点どうでしょう。
  213. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 先ほど申し上げましたように、破防法に基づく調査に赴いたわけでございますが、さらに具体的に申しますと、日本原子力研究所の職員の内における過激派の動向について調査に赴いたと、こういう報告を受けております。
  214. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっともう一遍正確に言ってください。破防法に基づく調査だと。で、日本原子力研究所における過激派の動向調査ということですか。
  215. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 日本原子力研究所職員内における過激派の動向についての調査に赴いた、こういう報告を受けております。
  216. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 日本原子力研究所職員の内における過激派の動向の調査。どのような根拠があるんですか。
  217. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 過激派の動向についての調査なんでございます。
  218. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 職員の中における過激派があるんですか。
  219. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 職員内に過激派があるかどうかも含めての調査でございます。
  220. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 問題を正確にする意味で重ねて尋ねますけれども、過激派に関する動きの調査だと言いつつ、核ジャックについての調査ということは一切口にしていませんか。
  221. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 過激派の動向についての調査に赴いたという報告を受けているわけでございます。
  222. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私はさっきも言ったんですが、質問通告の際に、あえてそこまでの詳細な通告をする必要はなかろうとは思ったんですけけれども、事実確認を正確にした上で答弁をしていただいた方がいいだろうということで、新聞「いはらき」に報道をされておるということも添えて質問通告をしておいたんですけれども、この新聞はごらんになりましたか、検討になりましたか、ここの記事は。
  223. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 新聞は私は見ております。
  224. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 見ておって——私が尋ねておるのは、核ジャックという言葉は一切口にしなかったんですかと、こう聞いておる。
  225. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 公安調査庁の本庁の方で報告を受けた範囲内では、過激派の動向についての調査に赴いたということでございまして、核ジャック云々という報告自体は受けていないのでございます。
  226. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そのように事実をごまかしてもだめですよ。現地の茨城の新聞にもきちんと報道されておるという事実であるし、同時に労働組合の機関紙のニュースでもこういう問答があったということで、一問一答形式でニュースに報道されておるという事実ということで、調査官が核ジャックに関しての情報を集めているんですということを言っているんです。もっと具体的に言えば、ワタナベ、マツヤマという二人の調査官が調査に出向いておるわけですけれども、このワタナベという調査官が渡辺という組合員の家へ行っている。その席上で核ジャックについて、その動きについて聞きたいということで行っているというこのことまではっきりしているんだ。なお事実をあいまいにするんですか。
  227. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 事実をあいまいにしているわけではないのでございまして、公安調査庁の本庁として茨城の地方公安調査局から受けている報告の範囲内では、過激派の調査に赴いたという報告になっているわけでございます。
  228. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 科学技術庁おられますか。——  原子力研究所に対して科学技術庁は指導監督の位置にあると思うんですけれども、その監督の位置にある科学技術庁として、原子力研究所の職員の中に破防法の調査対象になるような過激派の動向があるという認識ですか。
  229. 須田忠義

    説明員(須田忠義君) 原研当局からは、そのようなことは聞いてございません。
  230. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 報告はない。
  231. 須田忠義

    説明員(須田忠義君) はい。
  232. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 原研当局からはそのような報告がない、しかし、公安調査庁としてはその必要を感じて調査に回っておるというこういう事実ですね。破防法というのは、言うまでもないわけですけれども、この法律が制定された当時の国会でも大議論になったということで、国民基本的人権を侵害する重大な危険性をはらむおそれがあるということで、その調査活動範囲を厳しく法によって限定し、定めておるわけですね。どういうふうに認識しますか。
  233. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 佐藤委員も十分御承知のように、破壊活動防止法の二条に、解釈適用について拡張解釈してはならないという規定もございますし、第三条に、一口で申しますと、労働組合その他団体の正当な活動を制限し、またはこれに介入することがあってはならないという趣旨の厳しい規定がございまして、公安調査庁も、こういった厳しい規定もございますので、こういった規定を十分こちらの方は注意しながら調査活動を行っているわけでございます。
  234. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そういう法の第一条、第四条、さらには第二十七条、ここで公安調査庁の行う調査の活動については非常に厳しく限定的に定めておるという状況、法律がそういう構造になっておるという状態のもとで、一方、科学技術庁の答弁にもあったように、原研当局からは研究所職員の中に過激派活動があるというような報告はまだございませんという、監督官庁はそういう認識をしている。にもかかわらず、公安調査庁は過激派の活動についての調査をするんだということで、組合員の重要な、ここは地労委に提訴中ですから、その組合員の二人の自宅へ調査に出向いたということで、これこそまさしく法律が限定的に拡大解釈、その乱用を戒めておるこの法の精神からの逸脱じゃありませんか。そう思いませんか。
  235. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 公安調査庁は過激派を調査の対象にしておりますので、したがって、何ら破壊活動防止法の規定を逸脱している調査ではない、このように考えております。
  236. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 公安調査庁としては、過激派活動が職員の中にあるというふうに考えておるのでと言うんですけれども、しかし監督官庁はそういうふうに認知していない、当局からも報告はない。当然、公安調査庁が一定の動きをする場合には、その関係のそこの機関の管理者というか、長というか、そこからの一定の情報、報告に基づいて動くのが常識だろうというふうに私は思うんですけれども、そういった点から考えて、法務大臣、どう思われましょう。こういう公安調査庁の動き方というのは、さっきから議論していますような、これは破防法が厳しくこの調査活動についてその逸脱、拡大解釈、これを戒めておる精神に照らしてちょっと問題があるというふうに思われませんか。法務大臣、どうでしょうか。
  237. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 科学技術庁が判断しておられるところと公安調査庁が見ているところと、若干食い違いがあるのかもしれないなというふうに思いました。しかし、それはやっぱりやむを得ないのじゃないかな、こう思うわけでございまして、公安調査庁の方では法の示す基準、守るべき規定、それに準拠しながら調査に当たっています。こう答えていますし、それは当然そうでなければならない、こう思います。したがいまして、やはり公安調査庁としては正当に調査をしたつもりだ、こう答えておるわけでございまして、私としてはそのように理解させてほしいと思います。
  238. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私はいまの法務大臣の答弁では納得をいたしませんが、話を進めますけれども、公安調査庁が過激派の活動についての調査の必要を感じたからということで動いておるということですけれども、これは破防法の法規との関係でいきますと、どういう認識なんですか。破防法第四条でいうところの暴力主義的破壊活動、これがあるんじゃないかというそういう疑いを持って調査をやっているということですか。
  239. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 公安調査庁は、破防法に基づきまして過去において暴力主義的破壊活動があり、将来暴力主義的破壊活動を行うおそれがある団体を調査しているわけでございます。過激派はまさにそれに該当いたしますので、調査をしている次第でございます。
  240. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまの論法をもってすれば、原子力研究所ないしは職員をもって構成をしておる原子力研究所労働組合、これが過去においてこの暴力主義的破壊活動があった、あるいは今後その破壊活動のおそれありと、こういう認定でその中の一部職員の調査をやっていると、こういうことですか。
  241. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 全く違います。日本原子力研究所の労働組合が過去において暴力主義的破壊活動をやったと私申しておりません。ただ、調査対象が過去において暴力主義的破壊活動を行い、かつ将来その暴力主義的破壊活動を行う危険がある団体を調査しているわけでございまして、日本原子力研究所の労働組合がその団体であるとは私申しておりません。
  242. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうすると、その労働組合の中の一部構成員にそのおそれがあるということですか。
  243. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 日本原子力研究所の職員の中に、先ほど申しましたように、過激派の者がいるかどうかということも含めての調査でございまして、労働組合が過激派の団体であると私は申しているわけではございません。
  244. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ますます重大になってくるわけですけれども、破防法で、過激派というあなたは俗称を使われますから、そういう俗称ではなく、法律に基づく厳格な用語でこれから議論をしていきましょう。  破防法で定める調査の対象となる暴力主義的破壊活動、この内容は何ですか。
  245. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 暴力主義的破壊活動の内容は破防法の四条に詳細に規定してありまして、たとえて申しますと、四条は一項に一号と二号と条文が分かれておりまして、一号だけ申し上げますと、一号のイは、刑法七十七条、七十八条、七十九条、八十一条、八十二条、八十七条、八十八条というふうに暴力主義的破壊活動が四条に詳細に規定されておりますので、それを私は暴力主義的破壊活動と申しているわけでございます。
  246. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その第四条に、破壊活動の具体的なケースとして一のイからホまで、二のイからヌまでかなりたくさん限定列記していますね。この中のどれのおそれがあると言うんですか。たとえば内乱を起こす、そういうおそれがあると言うんですか。あるいは外患誘致、外から、外国から何か破壊活動を引っ張ってくるおそれがあると言うんですか。どこの部分でおそれがあると言うんですか。
  247. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 公安調査庁では、主義的破壊活動団体を調査しております。しかしながら、どの団体に、どれに該当するかということを申し上げることは調査上支障を来しますので、この席で申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。前回の国会におきましても、調査対象団体の名称を申し上げることも差し控えさしていただきましたので、申しわけございませんけれども、そのようにさしていただきたいと思います。
  248. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私の質問に対して答えることができないから、どこの項目の疑いで調査をやらざるを得ないんですという、そういう当局としての答弁ができないという問題だと思うんです。  角度を変えましょう。二人の私宅へ調査に出向いた。この二人があなたの言う過激派のおそれのある人物ということですか。あるいはもっとたくさん調べているんですか、ほかに、二人だけじゃなくて。その点はどうですか。
  249. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 茨城地方公安調査局の職員がお伺いしたそのお二人は、こちらは過激派と見ているわけではございません。過激派の状況について事情をお伺いしようと思って行ったという趣旨でございまして、お二人の方は決して過激派とこちらは認定したわけではございませんし、その疑いも持っておりません。
  250. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 過激派の状況、動きについての情報を得るために、しからば二人以外の職員にもいろいろ調査に出向いているんですか、二人以外にも。
  251. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 茨城地方公安調査局からの報告では、このたびのお二人だけだと聞いております。
  252. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 調査に出向いておるのは二人だけだと、この二人は別にその人が過激派だというふうにも思っていない、過激派の動きの情報を得るために二人に限って出向いたと、こういう言い方ですけれども、ところがこの二人というのはどういう人か、冒頭に私が申し上げたように、労働組合としてはいま地方労働委員会に提訴をやっておる、そういう労働組合の中での、労働組合の団体活動の正当な、法でも保障をされておる地労委提訴という団体活動の中で、申し立て人だとか証人だとが非常に重要な役目を持ったそういう位置にある人だと。この二人の人にことさら破防法をかざして調査という形で出向いておるということは、これは明らかに労働組合の活動に心理的な威圧を与えて労働組合の正当な活動に介入をする、そういう結果にならざるを得ないじゃないですか。そういうふうに思いませんか。
  253. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 茨城地方公安調査局の職員が訪問した先の相手のお二人の方が、茨城県の地方労働委員会に提訴をしておられる方だということは全く承知していなかったという報告を受けております。先ほども申しましたように、破防法三条の規定によりますと「労働組合その他の団体の正当な活動を制限し、又はこれに介入するようなことがあってはならない。」という厳しい規定がありますので、私の方はそれを忠実に履行いたしまして、労働組合運動に介入するようなことは毛頭考えていませんし、そのような事実もなかったと、このように思っております。
  254. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あなたも朗読をされたように、第三条の定めによって、労働組合の正当な活動に対していやしくも介入するというようなことがあってはならぬというふうに定めておるということは重々承知をしておりますと。ですから、たまたまこの二人というのが地労委での審理に深く関係をしておる重要な人物であったということを知らずに二人の私宅へ出向いたんだということで、あなたは弁明をする。しかし、いまやこの二人が地労委の審理に深く関係をしておる重要な労働組合の団体活動の上での役目を持った人だということが明らかになった現在、現時点で振り返ってみて、この二人の人に公安調査庁が調査に出向いたということについてこれは間違っていたというふうに思いますか、それならば。どうですか。
  255. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 破防法二十七条に基づく調査である限り、誤っているとは思っておりません。
  256. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 全然口で言うことと、最初に言うことと後で言うことと違っているじゃないですか。何もそのことを私は望むものでさらさらないですよ。しかし、職員の相当多数の人をずっと回っている中でたまたまこの二人も含まれていましたと言うんだったらまだしも、二人だけその私宅へ公安調査庁が回っている。その二人はどういう人かと見れば、労働組合の地労委審理に深く関係をした重要な役目を持った人だと。これは明らかに労働組合の正当な活動にこういうことになれば心理的な威圧が加わることはもう明らかですし、労働組合の介入にならざるを得ない。  いまにして思えばそういうことはまずかったと、せめてそういうふうに思わぬですか。いや、何にもまずかったと思いませんというふうに言い張るんですか。言い張れば今後もそういうことが、労働組合の役員をやっている人はほかにも何人かおるでしょう。そういう人のところへも、今後もどんどん回るというおそれがある。せめて、振り返ってみればまずかったというふうに思わないんですか、あなたは。どうですか。
  257. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 訪問先の二人の方が労働委員会に提訴をしていたということも知りませんし、また、労働組合活動に介入しようとする意図もない以上、調査としては私は正当だと考えております。
  258. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 だから念を押して聞いているんですよ。労働組合の提訴、審理に深く関係をしている人だということは、いまはそういう人だというふうに思っているんでしょう、認識しているんでしょう、この二人が。だから、いまから振り返ってみれば、たまたまであったかしらぬけれども、そういう人のところへ調査に出向いたということはまずかったというふうに思いませんか。  もう一つ聞きましょう。今後はそういう人たち、労働組合の団体活動に深く関係をしておるようなそういう人たちの自宅へ回るというようなことはこんりんざいしませんと、労働組合の正当な活動への介入のおそれが発生するようなそういうことはしませんというふうに約束ができますか。
  259. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 破防法に基づく調査は、労働組合の活動に介入しない限り、法律上当然許されると……
  260. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 介入になっているじゃないですか。
  261. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 介入とこちらは解しておりません。介入と解しておりませんので、何ら破防法上違法とは思っておりません。
  262. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あなた、その法律の条文も朗読をして、介入をしてはなりませんと。しかし、もう明らかにだれが見たって、地労委提訴と深い関係のある人を回った、これは介入になりませんか。それならどういうケースが労働組合への介入になるか、考えていること、具体例を幾つか挙げてみてください。
  263. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 労働委員会に提訴をしておられる方は過激派でもございませんし、その方のところへ行きまして過激派のことを教えていただけませんかという趣旨で訪問しているわけでございますから、何ら労働組合活動に対する介入とは思っていないわけでございます。
  264. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 公安調査庁の職員が行う調査権というか調査の活動は、第三条でその基準を厳しく定めておるし、その第三条を受けて二十七条でも「第三条に規定する基準範囲内において」というふうに厳しく書いておるわけですね。どうして、繰り返し言っているわけですけれども、地労委で審理しているその申し立て人あるいは証人、これを破防法に基づく調査だということで、そういう人たちの自宅へ調査に出向くということがまず心理的圧迫にもならないというんですか、それは。
  265. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 公安調査官は破防法二十七条に基づく調査をしているわけでございまして、全くの任意の調査権しかございません。したがって、調査するに当たりましては相手方の御協力をいただくという方法調査しているわけでございまして、何ら強制をしているわけでございません。繰り返して言いますように、御協力いただくという形で行っておりますので、心理的な強制もあり得ないと、このように解しております。
  266. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 しかし、私はあなたの論法というのは、もうこれこそ破防法の危険な性格が露呈をしておる危険な答弁だと思いますね。どこかの労働組合が、たとえば労働争議が起こる。そういう場合に、ありもしない公安調査庁の一方的な認識で過激派集団が、過激派分子がおるやもしれぬと、おるかおらぬかそれを調べるんだということで、そして実際はどこを目当てに調査をやっていくかと言えば、労働組合の役員とかそういう人たちのところをずうっと回っていく。これも法で厳しく禁止をしておる労働組合活動への介入には全くなりませんという、何ら介入になるものではありませんという、こういう言い方でそういうところをどんどん回る、こういうところへ事は拡大をしていくおそれを私は多分に感ずるんですよ。そういう方向へもいまの法のもとではやれるというんですか。
  267. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 一つの例を申しますと、たとえば——たとえばでございますが、労働組合員のところへ訪問いたしまして右翼の情報をこちらは聴取することもあるわけでございます。したがって、私の方の調査が、労働組合員のところに行ってそして事情を聴取すれば、すべて労働組合活動に対する介入であるということになるとは考えていないわけでございます。
  268. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 話をもう少し前へ戻しましょう。  あなたは、この現地の茨城の局長からは、核ジャックの調査云々というこういう報告は聞いていませんということで言い張るわけですけれども、これは私は「いはらき」新聞というそういう証拠まで出して言っているんですから、事実どうだったのかという、この点については調査をしますね。局長発言をしたごとく、本当に核ジャック云々という言葉を使って核ジャックのその動きについての調査をやるために回っているんですということを言ったのか言わないのか、この事実を調べますね。
  269. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 新聞記事の内容の真偽につきましては、調査したいと思っております。
  270. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、その調査の結果、もしも本当に核ジャックのおそれありということを口にしていたという場合に、これは破防法の対象になりますか。
  271. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) まあ、仮定の御質問のようでございますけれども、先ほど来私は過激派の調査に赴いたと申し上げております。委員の方からは、核ジャックの調査に赴いたということで、二つがかなり矛盾したようにお考えのようでございますけれども、常識的に見て、核ジャックをする団体となりますと、これは普通過激派と見なければなりませんので、私の方は格別矛盾していることはないというふうに考えております。
  272. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私の質問に答えてくださいよ、あなたがどういう解釈をなさるのかは勝手ですけれども。私は、この過激派云々という言葉と核ジャックのおそれありという言葉と一定の違いがある、破防法との関係において違いがあると思っております。核ジャック云々というこの調査活動というのは、破防法で言うどの根拠法規、第何条第何項でどこで出てくるんですか。
  273. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 先ほど来申し上げましたように、公安調査官の調査権というのは破防法二十七条に基づくだけでございます。
  274. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 二十七条は、第三条を受けての二十七条ですね。その第三条のどこが、この核ジャックのおそれありという場合の調査活動をやれる根拠として定めていますか。
  275. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 破防法の二十七条は公安調査官の調査権の規定でございまして、しかし調査権は乱用してはならない、三条という厳しい締めくくりがございますよと、そういう規定のように解釈しております。したがって、三条といいますのは、公安調査官の根拠じゃございません。
  276. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いや失礼、四条。第四条の第何項で核ジャック云々の調査活動行使できるんですか。
  277. 西本昌基

    政府委員(西本昌基君) 先ほども申し上げましたが、公安調査庁で調査しております団体、その団体が四条、五条のどの規定に当たるかということを公の場で申し上げますと、調査に支障を来しますので、申し上げることは差し控えさせていただきたいと、このように思います。先ほど述べたとおりでございます。
  278. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いろいろお尋ねをしたんですけれども、一つは、私がきのうの質問通告の段階で、こういう新聞報道までありますよという、そこまで付言をしてきょうの質問に臨んでおるにもかかわらず、そこもよく調べもしないで、とにかく茨城の局長の報告をうのみにして、これはうのみなのか、本庁の方が国会答弁すり抜けのためにオブラートをかけた表現のそういう答弁をやっているのか、それはわかりませんけれども、そういういろいろ卑劣な策まで使ってきょうの答弁に臨んできておられる。しかし、この点は、とにかく一体事実は何かということを調査をしますと言うんですから、少なくとも監督官庁である科学技術庁としては、原研当局からは、原研のその職員の中にそういう動きがあるというような報告はこれは何も聞いていない、報告は上がっていませんと監督官庁は言っているにもかかわらず、公安調査庁の一方的な判断で、おそれありと称して調査活動に乗り出しておるというこの問題が一つあると思うんですよ。  それから、具体的に法に定めるどの条項でおそれがあるのかというふうに尋ねても、それは調査上の秘密でありますから答えられませんということでそこはもう逃げ切るという、まことに不当な態度だ。いわんや訪問をしておるのが、労働組合活動にとって非常に、いま地労委審理をやっておる、地労委提訴をやっておるこの中で重要な地位にあるこの二人の人に限って、ここにマークをして訪ねている。あなたはそのことは知らなかったと言うんだけれども、そういうことについて反省の色も見せない。今後についても、回ることあるでしょうという、こういう言い方をしている。まことに許せない態度だと思うんですよ。  ここにこそ、この破防法の危険性が如実に出ているというふうに私は思うんですけれども、ぜひともひとつ実際の事実はどうだったのかということを厳格に、まあさっき確認をなさったけれども、どういう言い方で公安調査庁の職員が回ったのかというこの事実をきちっと調査をしてもらうということと、大臣、公安調査庁はいろいろやっていると言っていますけれども、あなたずっとこの問答をお聞きになっていて、ずっと調査で回るにしても、労働組合の役員とか、それから地労委へ提訴をしておるその申し立て人だとか証人だとか、ことさらこういう人たちを回る、別にその人が、何か聞いてみたら過激派本人ではさらさらありませんと、こう言っているわけです。そういう人にことさら調査と称してその自宅まで回ると、こういうやり方が大手を振ってまかり通るならば、今後どこかで労働争議が起こったときに、公安調査庁としては、過激派がいるおそれありという一方的に認定をして、どんどん労働組合の役員とか活動家とか、こういうところへだあっと公安調査庁が調査に出向くということになれば、これは明らかに労働組合運動に対する心理的圧迫になる、それは結果として労働組合運動への介入になるということは明らかであります。  こういう点は、ぜひとも法務大臣として公安調査庁のこういう考え方はたしなめて、やっぱり悪法ではありますけれども、この破防法の二条、三条に書いておる「いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。」という二条の定め、あるいは第三条の、思想、信教、結社、表現の自由、これを侵してはならぬと、「不当に制限するようなことがあってはならない。」とか、同じく第三条の第二項で書いている「労働組合その他の団体の正当な活動を制限し、又はこれに介入するようなことがあってはならない。」というこの法の精神から言って、いま私がるる申し上げておるようなこういうことについてはやめるという指導方向を法務大臣としてとっていただきたいということを要望をするんですけれども、見解どうでしょうか。
  279. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) いま質疑応答を聞いておりまして、正直言ってかみ合っていないなという感じを持っておったところでございました。おっしゃいますとおりに、公安調査庁の調査、破壊活動防止法で定められているとおり厳格に守っていかなければならない、こう思います。  ただ、私は、二人の方にお尋ねしたことが組合の活動に介入するということにまで、そんな大きな影響力を持つものだろうかなということがちょっとよくわかりかねまして、これはよく勉強したいなと、こう思います。同時にまた、破壊活動防止法に基づく調査に対しましては、多くの方々に御協力いただきたいものだなと、こんな感じを持ったわけでございます。いまお二人の話かみ合っていないと、こう申し上げましたが、私なりによく勉強していきたいと思います。
  280. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もうこの問題だけで終始をしまして、大臣の改憲発言の問題で伺うもう時間がなくなりましたので、最後に警察庁、一点だけ聞いておきますが、本日午前十時過ぎに大田区の路上において、いわゆる暴力集団、この内ゲバによって五名が死亡するという事件が起こったと昼のテレビで報道しているわけですけれども、一つはこの事件の概要、その原因はどういうふうに現時点で把握をされておるかということ。聞きますと、これは近所に保育園もある、市民が常時通行をする、そういう路上でありますが、まことに危険きわまりない問題であるし、こうした事件いままでも再々起きているわけですけれども、こうした事件を本当に根絶をするための警察庁の対処、方針、これをお伺いをして、質問を終わります。
  281. 吉野準

    説明員(吉野準君) お尋ねの事件は、本日の午前十時四十五分ごろでございますか、都内の大田区南千束二の二の十番地付近の路上におきまして、通行中の男性五人が、犯人と見られる七、八人の男、これはベージュ色の作業衣を着てヘルメットをかぶっていたようでありますけれども、これらの者にいきなり鉄パイプないしはハンマーのようなもので殴られて、頭蓋骨骨折等によって五人が死亡をしたという事件でございます。現在までわかっているところによりますと、犯人等は用意していたと見られる車両二台で逃走した模様でございます。  これに対してまして、午前十時五十五分でありますけれども、百十番の通報がございましたので、事件発生を認知した警視庁では、十一時直ちに緊急配備を実施いたしまして、現場臨検、検問、検索等所要の初動措置を講じておりまして、ただいま現在、捜査を継続しておるところでございますが、いまだ犯人検挙には至っていないという状況でございます。  なお、午後一時ごろでございますけれども、都内の新聞社に対しまして、中核派を名のる者から犯行声明の電話があったということでございますので、警視庁としましては、これは内ゲバ殺人事件であるというふうに見まして、捜査本部を設置して鋭意捜査をやっておるところであります。  この種の事件、従来とも厳正に取り締まりをやってきたところでありますが、おっしゃるとおり、白昼五人もの人間を公然と殺すというのは許されがたいことでありますので、今後ともさらに捜査を強化して厳しく取り締まってまいりたいと考えております。
  282. 中山千夏

    ○中山千夏君 十月十六日の委員会で奥野さんに、憲法を守るべき法務大臣としては不適格なように思うからおやめになってはどうかというような意味のことを申し上げまして、大臣はおやめになるともならないともおっしゃいませんでしたけれども、これは私は謙虚に受けとめて十分反省していかなきゃならないと思いますというふうにお答えくださいました。  確認なんですけれども、法務大臣としては憲法に対してどのような姿勢でいま臨んでおられますか。
  283. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法は国の基本的な法規でありますから、これを厳正に守っていかなきゃならないと思います。同時にまた、国を支える基本的な法規でございますから、絶えずどうあらねばならないか十分勉強し、また多くの方々と討議を続けていかなきゃならない。問題点があればそれを指摘して、改正のための努力もしなければならない、そう思います。
  284. 中山千夏

    ○中山千夏君 大臣としては改正のための努力——お考えになる、それからいろいろな方と憲法について論議をされる、そこのところはいいんですけれども改正のための努力といいますと、法務大臣の任務をなさりながら改正のための努力もなさるということですか。とすると、その内容はどういうことになるのでしょうか。
  285. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 鈴木内閣は、憲法を改正することは全く考えていないということでございます。その閣僚でございますから、鈴木内閣の閣僚であります限り私はそういう態度をとりません。できる限りお答えをする場合にも、改正に触れるような問題は避けておるわけでございます。しかし、いま中山さんのおっしゃった問題は、そういうこの一、二年どうするかという意味でお尋ねになっているわけじゃなしに、むしろ憲法の擁護義務と改憲論議と、この二つがどうかみ合わなければならないか、こういう気持ちで聞いておられると思いましたので、いまのようなお答えを申し上げたわけであります。
  286. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうすると、鈴木内閣においては絶対に改憲の方向では仕事はなさらないというか、憲法をしっかり守っていかれると、こういうふうに確認していいわけですね。
  287. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) ちょっと何か誤解があるのじゃないかなと思うのですけれども、憲法を守るということと、よりよい憲法にするための努力をするということ、これは両立することだと思うのです。私は、法律の性格は違いますけれども、刑法を担当いたしております。これはもう刑法を厳正に守り施行していかなきゃならないと思います。よりよい刑法にしますために、また刑法改正論議も私が積極的に進めることを非難される方はないと思うのです。努力をしていきたいと思うのです。憲法についても同じだと思うのです。ただ、鈴木内閣では憲法改正全く考えないと、こうおっしゃっているわけでありますし、その一員でありますから、憲法改正につながるような言動は慎んでいかなきゃならない、こう思っているわけであります。  同時にまた、憲法改正国会議員三分の二で発議をすることになるわけでありますから、いま憲法改正に三分の二の国会議員が賛同しておられるかといいますと、とてもそういう数字にはなっていないわけでありますし、また国民の間にも、私は衆議院法務委員会で申し上げましたように、合意が得られていないのに政府がそういう動きをすることは適当でない、こうも申し上げたわけでございまして、そういう考え方も持っているわけであります。
  288. 中山千夏

    ○中山千夏君 ちょっと単純にお伺いします。単純なことを確認したいだけなんです。つまり、法務大臣は憲法を守られるのですか。
  289. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) あらゆる法を守っていきます。悪法と言われる法であっても、守っていきます。
  290. 中山千夏

    ○中山千夏君 非常にそれが伺いたかったのです。つまり、憲法に対するお考えはどうであれ、いまここに参院手帳というのをいただいたら、一番最初に憲法が書いてあるわけですね。これに対しては、いろいろなお考えをお持ちだろうと思うんです。でも、これがある以上これを守るという、その言葉を伺いたかったのです。  それで、その上で憲法に対する考えだとか論議だとかを自由になさるのは、大臣がおっしゃるように自由な論議が必要ですから、私も先日申し上げましたね。ですから、それは大切だと思いますから、言動を慎むというようなことをおっしゃらないで、やっぱり考えはお述べになっていただいた方がいいんじゃないかと私は思っています。その上で、ちょっときょうも自由な、はつらつな論議を進めていただきたいのです。  先日の話で、大臣は自衛隊は合憲だと考えておられることを知りました。その自衛隊についてちょっとお伺いしたいのですけれども、自衛隊がなければ国民の安全は守られないというふうに考えていらっしゃるのでしょうか。
  291. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 外からの侵略に対しまする大きな抑止力に自衛隊はなっていると思います。やはり抑止力を持たなければ私は国の安泰を確保できないと、こう思っております。
  292. 中山千夏

    ○中山千夏君 外からの圧力といいますと、どこかほかの国が主権を侵しにきた場合とか、攻めてきた場合の抑止力になるということですか。
  293. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 直接侵略もございましょうし、間接侵略もあろうと思います。また、日本国憲法ができましてから、世界各地で侵略活動あるいは間接侵略、各地で起こっていることでございます。同時にまた、国の独立、一たん失われたら、もう後で幾ら努力しても取り返しがつかないわけであります。そういうことでございますから、国の独立を守るためには政治家は最善の努力を常に払っていかなきゃならない。そのためには相当な犠牲を払っていかなきゃならない、こういう考え方を持っておるものであります。
  294. 中山千夏

    ○中山千夏君 私はいまここに載っている、参議院手帳に載っている憲法はとてもいい憲法だと考えているんです。その点で大臣とずいぶん考え方が違うんですけれども、いまおっしゃった抑止力、外からの脅威という考え方ですけれども、憲法の前文にこういうところがありまして、もうもちろん御存じだと思いますけれども、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」というふうに書いてあるわけですね。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、」という考え方と、それからだれかが攻めてくるかもしれない、必ず攻めてくることはあり得るという考え方は違いますね。これはどうでしょうか。
  295. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 日本国憲法が制定されましたころは、先ほど申し上げましたように、アメリカ一国で世界をリードする力を持っておったと思います。アメリカにさえ頼っておれば、日本は安全を確保できたと思います。それから今日の国際情勢は非常に大きく変わっておりますし、各地でいろんな事例も生じております。私は、その憲法に掲げられている気持ちはとうといものだと思いますが、だから自衛隊を持たなくても日本は独立を将来にわたって確保できるのだと、そういう甘い考え方でいけるかどうかということになりますと、否定的な考え方を持っております。
  296. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうすると、これは守る守らないは別として、大臣のお考えとして、憲法のこの部分とそれから大臣のお考えとは、あるいは大臣が現実の世の中をごらんになって日本の将来をお考えになったその上での判断とは、ちょっとずれがあるというふうに理解してよろしいんでしょうか。
  297. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法前文のその考え方も大切な考え方であります。同時に、だから自衛隊は要らないのだという結論がそこから導かれるとするならば、それは私は少し考え方が単純でありはしないだろうかなという疑問を持つということを申し上げているわけであります。
  298. 中山千夏

    ○中山千夏君 要るとか要らないとかという問題ではなくて、私が申し上げているのは、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、」という考え方と、それからだれかが攻めてくるかもしれないからといういわゆる諸国民に対する疑いを持って軍備を持つという考え方は、相入れないのじゃないですかと言っているんです。
  299. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 信頼し合うことも大切ですし、信頼し合うからそれ以外の事例は一切起こらないのだということを独断してかかることも危険だと思います。
  300. 中山千夏

    ○中山千夏君 独断してかかっているわけじゃないんですけれども、私の感じでは、素直に大臣のお考えを伺うと、やはり憲法の前文の部分は考え方としては認めるけれども現実にいろいろな世の中を見た感じ、大臣が御勉強になった感じでは、それをそっくりそのまま字義どおり信頼して、ほかの事例は起こらないんだと決めてかかるような見方をしてしまってはいけないという考え方を、大臣は持っていらっしゃるというふうに伺っていいんでしょうか。
  301. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) いまお述べになりました条章、そういう考え方も大切だと。だから、それからさらに考えを推し進めていってはいけないということにならないのじゃないか。やはり国際社会にいろんな事例が起っているのだし、国の独立というものは一たん失われたらもう取り返せないのだということだけはお互いよく考えていかなければならない。そのためにはある程度の犠牲をふだんから払う、そういう意味において自衛隊を持っている、これも大切なことじゃないかなと思っていると、こう申し上げているわけであります。
  302. 中山千夏

    ○中山千夏君 ここに、元軍需省航空兵器総局長官だった遠藤三郎さんという方が、軍備国防は時代錯誤である、非武装こそが最もこれからの世の中にとって賢明な国防なんだという考えを述べていらっしゃるんですけれども、私もどうでもいいと思っているわけではなくて、世の中の先行きを一生懸命考えている人たちの中にも、非武装の方がいいという考えを持っている方がいらっしゃるわけですね。  それで、ちょっと軍備のことをお伺いしたんですけれども、そういう非武装の立場というものを大事に思っている者、それから私みたいにここに載っている憲法というのがすごくいい。いま余りストレートにはいいというふうに大臣に言っていただけなかった憲法の前文のこの部分なんというのは、このとおり実行していくことが人類の将来にとってすばらしいことなんじゃないかと私なんかは思っているものですから、大臣のお話やなにかを伺っていると、非常に不安で心配でたまらないという感じがあるんですけれども、とにかく最初のところで、どんな悪法であっても法律は守るというふうに伺ったので、それだけ伺っておけばいいという感じがしているんです。  ほかの憲法についてちょっと伺いたいんですけれども、十九条についてはどう思われますか。
  303. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 大変りっぱな規定だと思っております。
  304. 中山千夏

    ○中山千夏君 二十一条についてはどう思われますか。
  305. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) これも大事な規定でございます。
  306. 中山千夏

    ○中山千夏君 十九条、二十一条ともに評価なさったというふうに受け取ります。ぜひこれは守っていただきたいというふうに思いますけれども、大臣は一連の憲法発言、改憲発言いろいろありましたけれども、その発言をめぐって言論、表現の自由を自分は侵されたと、非常に言論、表現の自由を制限されているというふうにお感じになったことはありますか。
  307. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 私の発言に対しまして、すぐ罷免要求というのは穏当でないと思いました。
  308. 中山千夏

    ○中山千夏君 何か言論によるものではなくて、おどしとか、それから暴力的な手段で大臣の発言はけしからぬという妨害のようなことはございましたか。
  309. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 別に感じておりません。
  310. 中山千夏

    ○中山千夏君 大臣には、いつも身辺を警護するような方がついておられますか。
  311. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) おられます。
  312. 中山千夏

    ○中山千夏君 ちょっと聞き取れないんですが。
  313. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) お世話になっています。
  314. 中山千夏

    ○中山千夏君 あれだけやはりセンセーショナルな発言をいろいろなすって、それでおどしもない、いろいろな妨害、暴力的な妨害もない。ただ、罷免というような反論というものは非常に不愉快なぐらいたくさんあったけれども、そういうことはないというのは、やはりいまの世の中で大臣の発言の自由、表現の自由というものは、さすがにしっかり守られているというふうに私は思います。それはそれで大変結構なんですけれども、二十一条が保障する表現の自由というものは、何よりも一般の人々の自由、主権者たる国民の自由でなければならないというふうに思うんです。  最近、言論、表現、出版の自由を侵されたひどい例を知りましたので、それについてちょっとお伺いしたいんです。  ここに、東京タイムスの一九八〇年九月十三日の朝刊があります。ちょっとこれのタイトルだけ読みますけれども、「「噂の真相」右翼にゴメンナサイ 圧力、示威行為に悲鳴 皇室ポルノ紹介で大騒ぎ」というふうに出ているんですね。これについてちょっと事実を確認したいんですが、警察庁の方、お願いします。
  315. 西村勝

    説明員(西村勝君) ただいま御指摘のありました九月十三日東京タイムスの記事には大きな見出しで、「「噂の真相」右翼にゴメンナサイ 圧力、示威行為に悲鳴皇室ポルノ紹介で大騒ぎ」と、こういうことでいろんな内容のことが書かれておるわけでございますが、ごく簡単にこの記事が載るに至った経緯を申し上げますと、月刊雑誌で「噂の真相」というのがございますが、これの六月号に、これは「天皇Xディに復刻が取沙汰される皇室ポルノの歴史的評価」と題する記事が掲載されたわけでございます。この記事、内容につきまして、これは一般に市販されている雑誌の記事でありますから、どなたもこの雑誌を手にして見ておられることであります。  この記事の内容が、非常に皇室を侮辱するものであるというようなことを一部の右翼団体の中には叫ぶ者がありまして、七月の十六日の十時過ぎごろ、世田谷にありますところの防共挺身隊が、これは約二十人ぐらいの者が街宣車三台に乗車いたしまして、台東区台東一の五の四に所在します凸版印刷株式会社本社に赴きまして抗議をするという事案がございました。この際、警察におきましても、部隊を前面に出しまして穏当な話し合いをせよと、こういうようなことで、右翼団体の代表三人が会社内に入って会社の代表と約十五分にわたってその抗議をし、会社側がこれに対しての応答をしたという事実はございます。このことが、その後のこの「噂の真相」の十月号には岡留さんという編集長の名前をもちまして謝罪文、おわびのことを書かれたと、このことを紹介する記事が九月十三日の東京タイムスの内容になったというふうに理解しております。
  316. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうすると、一応現場には公安の方はいらしたんですか、その押しかけたときには。
  317. 西村勝

    説明員(西村勝君) 警察といたしましては、防共挺身隊が凸版印刷会社に抗議に出向くという情報をキャッチいたしましたので、所轄は上野警察署でありますけれども、同署から警察官が四十人ほど現場に出向きまして警戒配置をしてトラブル防止に当たったわけであります。そういうところへ防共挺身隊の一団がやってまいりまして、会社内に入れろ入れないというようなことでの話になり、会社側から代表を制限してくれと、こういうような話もありまして、警察側といたしましても右翼に対して、会社側の申し入れを入れて代表だけで話をしなさいというようなことを強く申し入れておるわけでございます。
  318. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうするとそれだけで、押しかけてきたときに、その押しかけるようなことはよくないからやめたらどうかというようなことはおっしゃらないわけですか。
  319. 西村勝

    説明員(西村勝君) この事の発端が、この右翼団体におきましても、「噂の真相」という記事、内容に憤激すると、それに対してはやはり自分たちの主張、意見というものを聞いてもらいたい、こういうものが前提にもございまして、それが平穏に行われるならばこれは特にこれをやめさせるというわけにもいかぬ。しかし、右翼団体というもの、その性格その他従来の行動形態から見ると、やはり警察部隊が出て警告してみたりするという場面もありますので、今回の場合もそういう意味で部隊が出て、その行動については十分注意をしたり、あるいは会社内に入るということについても規制をして、全部の者が中へ入って抗議をするというようなことでないように、お互い代表同士で話し合ったらどうかというような意味で、その中に全部が入ろうとするのを押しとどめたということでございます。
  320. 中山千夏

    ○中山千夏君 非常に平和な感じにお話になるのでびっくりしているんですけれども、これはそう簡単な話ではなくて、その後この「噂の真相」という会社がどのような被害に遭ったかということをお知りになれば、恐らく非常なこれは言論弾圧だというふうにお考えになって、手ぬるくは済まされないとお思いになるだろうと思うし、そう思っていただきたいんですけれどもね。  まず、その被害をお話ししますと、これは岡留さん自身がその後、これは十月二十七日発売の雑誌「話の特集」という本の百二ページに載っていますけれども、インタビューに答えています。その中でも明らかになったし、それからこの話は出版界では非常に有名な話であるにもかかわらず、これをまた取り上げると恐ろしいからというので、なかなか取り上げる出版物もないというような状況なんですね。その恐ろしいからというのは、つまり書けばまた押しかけられると思うわけですよ。  どういう被害が起きたかというと、まずさっき話に出てきた凸版印刷、この会社がおびえて印刷をしなくなった。それで、その後の号からは、この雑誌に印刷所が必ず書かれているわけですけれども、印刷所の名前が書けなくなってしまったんですね。それから、先ほどの右翼におどかされて広告スポンサーがおりる。つまり広告スポンサーのところに、この本に広告を出すんだったらばおまえのところを襲うというようなおどしをするわけですね。  それは、この会社に対してだけ初めて起こったことではないし、あちこちで起こって、ほかの会社で起こった場合のその右翼が出した書状というのもここにちょっと手に入れて持っています。これを見たら、大抵普通の一般市民だったら、恐ろしくておとなしくしなければいられないというようなものなんですね。そういうおどしを受けてスポンサーがおりてしまった。雑誌にとってスポンサーがおりてしまうということは、その後の経営にとっても差しさわるわけですね。で、編集長がそういう非常な妨害を受けて、自分の雑誌を出し続けるために、やむを得ず先ほどおっしゃった謝罪文を同誌に載せて、その上に同じものを六百の右翼団体に郵送しているんですよね。それでようやくまた次の雑誌が出せるようになった。こういう状態は、いま出版界の中ですごく多いわけです。  大臣の改憲発言が、たかだか反論ぐらいで守られているという状況と比べて考えるときに、余りにもひどい状態じゃないかと私は思うんですけれども、大臣はどうお考えでしょうか。
  321. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 具体の事実は私は詳しく承知しておりませんで、ただ刑事事件として取り上げるほどのことはないと、こう事務当局から伺っておるわけでございます。したがいまして、あと事務当局の方から答えるようにいたしたいと思います。
  322. 中山千夏

    ○中山千夏君 事務的なことは結構です。言論、表現の弾圧が、この事件はいま話したとおりの事件だということは資料も全部事務の方にお届けしてありますし、それから公安の方の説明でもある程度おわかりになったと思います。言論、表現の弾圧が行われているというふうにはお考えになりませんか。
  323. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) どういう経緯からそうなったのかということはございますけれども、警察当局としても話し合いをするために、できるだけ平穏に行われるような配慮をされたようにいま伺ったわけでございまして、したがいまして、刑事事件になるような事実はなかったのじゃないだろうかな、しかし争いはかなり深刻だったのだなと、こう受けとめておるわけであります。
  324. 中山千夏

    ○中山千夏君 つまり、改憲発言をした途端に罷免だと言われたということだけでも、大臣は非常に自由を奪われたようにお感じになったとさっき発言なさいましたし、それから、何か少し憲法にかかわる発言をするとタカだハトだというような議論で非常に物を言いにくくするということでも、もっと論議は活発にすべきだということで、大臣はいつも表現の自由ということをすごくおっしゃっています。  そのことから考えると、このたかだか本に何かを書いた、それに対してあの本に書かれていることは違っている、間違っていると言論でもって応酬があるのならいいけれども、押しかけていって、しかもその印刷をしている印刷会社に押しかけていって、そこの印刷をやめさせるような行為をする、あるいは謝罪文を書かせて、それからその雑誌の経営が成り立たないような圧力をかけるというのは、どう考えても、大臣の基準から言っても、言論、表現の自由が非常に侵されていると私は思うんですけれども、そうはお思いになりませんか。
  325. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) いま中山さんは、たかだか何かを書いた、こうおっしゃった。私は、たかだか何かを書いたという程度のことだろうかなという疑問を持っております。あれほど憲法を守らなければならない、憲法第一条に掲げていることとどれほど大きな違いがあるのだろうかなという感じを持つわけでございます。  同時に、私は自分の表現の自由に対しまして抵抗を感じますけれども、私はそれ以上に国会の姿を頭に描いてああいう議論を展開してきたわけでございまして、私一個のことは何も考えておりません。私一個の表現の自由なんてどうでもいいことであります。それ以上の問題を、私は国政の問題として考えたわけでございます。憲法を大切に考えるというなら、たかだかあんなことというような表現は私はお慎みいただいた方がいいのじゃないかなと、こう思っております。
  326. 中山千夏

    ○中山千夏君 さっき二十一条は大切だっておっしゃったと思うんです。二十一条というのは、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と言っているんですね。これは保障しなくちゃしようがないんですよ。それは大臣のお考えは、この言論はけしからぬとか、あの言論はけしからぬとか、右翼の方たちのようにいろいろおありでしょうけれども、それでもけしからぬ言論だからといって、暴力的な行為でとどめてはいけないんだというのが、この憲法の約束じゃないんでしょうか。
  327. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 表現の自由は守っていかなければならないと思います。いまお話を聞いている限りにおいて、表現の自由、ある程度そこに障害が起こっているなという感じはいたします。  同時に、表現の自由の乱用も戒めていかなければならない。これは本当に慎んでいただかなければならない、こう考えておるわけでございまして、表現の自由の乱用と表現の自由の障害と、両方かみ合ったケースじゃないかなという、その間に処して警察が穏当にやってくれたのだな、だから刑事事件にまで発展しないで済んだのだな、こんな感じを持っているわけでございまして、しかし具体の事実でございますから、私は余りつまびらかでない。だから、事務当局からお答えするようにさせていただきたいと、こう申し上げたわけであります。
  328. 中山千夏

    ○中山千夏君 私たち、ときどきデモをいたします。そのデモをして歩いているときに、物すごい規制をされるんです。そのときに警察から受ける規制というのは、またたかだかという言葉を使うとお怒りになるかもしれませんけれども、道を歩きたい、デモですから少し幅広くなります。そうすると、お巡りさんが、がんがんがんがん持っている棒で押したり、ひじで押したりするんです。端の者は痛くてたまりません。そういうときに私たちが主張しているのは、いろいろな考え方や思想や表現を主張して歩いているわけです。政治的なこともあれば、政治的でないこともあるかもしれない。けれども、暴力的に何かをやろうというのではなくて、ただ歩いているのでさえ、お巡りさんたちは非常な規制をする。  ところが、こうやってだれが見たってこの事件を見れば表現の自由が侵されている、言論の自由が侵されている、その言論の質はどうであれ、非常に暴力的な手段で表現の自由が侵されているとわかった場合に、その自由を侵している人たち、右翼団体の人たちに対しては、実に穏当な手段しかとられていないというふうに私は考えます。考え方は確かに自由です。大臣が何をおっしゃるのも自由だと思います。でも、先ほどどんな悪法であれ憲法は守るとおっしゃった以上は、憲法に保障されている言論、表現の自由をまず積極的に保障していくと、法務大臣としてまず積極的に保障していくということを第一にやっていただきたい、そう思います。いかがでしょうか。
  329. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) 表現の自由を守ること、大切なことだと思いますし、守っていかなければならないと思います。
  330. 中山千夏

    ○中山千夏君 そのために御努力いただけますか。
  331. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) そのための法制も整備されていると思いますし、それらの法制が確実に守られるように努力していきたいと思います。
  332. 中山千夏

    ○中山千夏君 ありがとうございました。  それから、保安処分のことで少しお尋ねしたいというか、ちょっと申し上げたいことがあるんですけれども、前回の法務委員会のときに、「また犯人が精神障害者だということになりますと、そのまま不起訴になったり無罪になったりして社会に帰されていく。そのまま社会に帰すような無責任なことをしないで、再犯のおそれがあるならやっぱり隔離をした上で治療すべきじゃないか、」というようなことをおっしゃっています。  それから、きょうもずっと皆さんの論議を伺っている間に、大臣が何度かそのまま社会に帰されていく、つまり精神障害者であって何か犯罪を犯した人がですね、それからいままではそのままそういう人たちを社会へ帰してきたがというような表現を再三なすっているんですけれども、現状をそういうふうに表現されますと、全く精神障害者だという判定がつくと、普通に世の中に出ていって、その人たちは普通にその辺を歩いて普通に生活をすることを許されているんだっていうような誤解を受けると思うんです。ですから、こういう表現はちょっと慎んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  333. 奥野誠亮

    ○国務大臣(奥野誠亮君) よく検討していきます。
  334. 中山千夏

    ○中山千夏君 終わります。
  335. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会      —————・—————