運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-12-18 第93回国会 参議院 法務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十二月十八日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員の異動  十一月二十八日     辞任         補欠選任      大木 正吾君     加瀬  完君      近藤 忠孝君     宮本 顕治君  十二月十七日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     近藤 忠孝君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 一弘君     理 事                 大石 武一君                 上條 勝久君                 寺田 熊雄君                 藤原 房雄君     委 員                 浅野  拡君                 戸塚 進也君                 平井 卓志君                 真鍋 賢二君                 円山 雅也君                 八木 一郎君                 藤田  進君                 近藤 忠孝君                 市川 房枝君                 中山 千夏君    国務大臣        法 務 大 臣  奥野 誠亮君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    法制局側        法 制 局 長  浅野 一郎君    説明員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        警察庁警備局外        事課長      鳴海 国博君        法務省民事局長  貞家 克己君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省矯正局長  豊島英次郎君        法務省保護局長  稲田 克巳君        法務省人権擁護        局長       中島 一郎君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省欧亜局審        議官       堂ノ脇光朗君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (法律扶助制度に関する件)  (再審制度に関する件)  (ロッキード事件公判に関する件)  (金大中問題に関する件)  (刑法、商法、監獄法及び刑事訴訟法改正に  関する件)  (憲法問題に関する件)  (矯正施設の被収容者の処遇に関する件)  (伊藤律問題に関する件)     —————————————
  2. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) ただいまから法務委員会開会いたします。  検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 最初に、法律扶助の問題についてお尋ねをいたします。  これは御承知のように、国民基本的人権の一つでありますし、裁判を受ける権利、ことに経済的弱者人権を守ろうとして発足した制度でありますが、法律扶助協会から資料をいただいて見ますと、この制度昭和二十七年に発足をしまして、国庫補助昭和三十三年以来二十二年にわたってついておるようであります。ところが、その国庫補助の額を見ますと、当初一千万円から出発いたしましたものが、現在は、五十四年から七千四百万になっておりますね。しかし、この程度国庫補助では、きわめて扶助の実効が上がらないようであります。  試しに法律扶助協会審査基準を見てみますと、訴額が五百万円以上の民事事件でも手数料はわずかに八万五千円ということになっておるようであります。これは、通常の事件における手数料から見ますというと、何分の一かというような少額であります。いわば国選弁護的な、あるいはそれ以下の基準のように思われるのであります。  また、外国との比較を見てみますというと、国庫補助の額はアメリカが日本の円に直しまして二百六十四億円になっております。イギリスは百十億円、これは、そのうち国選弁護刑事事件の分が入っておりますが、約八割程度、八十八億円程度民事事件法律扶助に対する補助金であると言われております。スウェーデンが五十七億円、オーストラリアが四十九億円というような、わが国の七千四百万という補助の実に何十倍、百倍以上の額になっておるわけであります。  こういう実態を見まして、まず所管の人権擁護局長としては、こういう法律扶助の貧弱な実態をどのように見ておられるのか、それをお伺いします。
  4. 中島一郎

    説明員中島一郎君) ただいま御指摘ございましたように、法律扶助制度重要性ということにつきましては、私どもも十分に認識をいたしておるわけでございまして、その充実発展につきましては従来とも努めてまいったわけでございますけれども、今後とも、ただいま御指摘ございましたように、諸外国制度その他なども参考にいたしまして、その充実発展ということについては全力を挙げて取り組んでまいりたい。大臣の御指示もいただきまして、そのように努めておるような次第でございます。
  5. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この国庫補助の額を見ますと、これはもう二十三年前でありますが、当初一千万円から出発いたしまして現在が七千四百万円ということになりますと、七・四倍ですね。ところが、御承知のように、物価水準等を見てみますと、私どもの常識では、これは少なくも二十倍以上にしないといけないように思うんですね。この点については、大蔵省当局がまだこの制度理解がきわめて乏しいのじゃないかというような感じがするんです。人権擁護局長も大変御尽力になっておるようですけれども、やはり大蔵当局の壁を突破しませんと必要な補助金が取れませんね。この制度認識がきわめて大蔵当局は不十分ではないかと思うんですが、その点どうでしょう。
  6. 中島一郎

    説明員中島一郎君) ただいまお尋ねございましたのですけれども、この法律扶助制度は、御承知のように立てかえ金制度というのをとっておるわけでございまして、その年度に出しました補助金をその年度に使ってしまうということではなくて、一たん立てかえ金として使用いたしますけれども、そのうちの七〇%なり七五%なりというものは償還をされるわけでございます。で、先ほどからおっしゃっておりますように、昭和三十三年以後の補助金の累計が約十一億ぐらいに達しております。それを法律扶助補助金として毎年使用いたすわけでございますけれども、その中には不良債権として償還不能なものもございます。  したがいまして、年間の事業規模というものが現在のところ大体三億五千万前後になっておるかというふうに考えておりますけれども、そのうちの約二億五、六千万というものは償還金で賄っておる。その不足する分を補助金で補う、こういう制度になっておりますので、単純に物価が何倍になったから補助金の額も何倍になるべきだというふうには申せないかというふうに思うわけでございます。  しかし、それにいたしましても、現在の補助金の額が十分であるというふうに私ども思っておるわけではないわけでございまして、その増額については努力をいたしております。先ほどからお尋ねございました重要性について財政当局認識を深めるための努力はわれわれも十分いたしておるつもりでございまして、財政当局もだんだんその重要性について認識を深めていただいております。ただ、何と申しましても財政状態が厳しい折からでございますので、私どもそれを突き破るべくさらに強力なと申しますか、適切なと申しますか、そういう要求をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  7. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 局長の力強い御決意を承ったわけですが、確かに償還金が大体六割か七割ぐらいはあるようでありますけれども、何しろ元が少ないですからね。元が少ないので、かなり償還金の回収に御努力にはなっておられると思うけれども、いま申し上げたように、審査基準を見ましても大変これは現実に複雑困難な事件弁護人氏が担当いたします。この程度手数料では恐らく赤字が出るでしょう。記録の謄写料ども、最近はきわめて高く上がってまいります。そのほか、事実の調査に人手を要するということから見ますと、この程度手数料では確実に赤字が出るというふうに私ども考えるんです。  そういうことを考えますと、また、先ほどもお話がありましたように、大体すべての制度は諸外国との比較をすることがきわめて大切であります。あらゆる制度が、そうした比較的な見地から考えられておりますね。ところが、諸外国制度比較いたしますと、これは何十分の一という少額なんでありますからして、これはやはり局長もそういう御決意をこれから一層強めていただきたいと思います。  大臣、いま局長が言われた御答弁の中に、財政難というのがございましたね。確かに財政難でありますが、財政難の折に、とかくこういうじみな制度に対する補助というものが犠牲になるようであります。いま防御費福祉をめぐって、福祉しわ寄せがこないようにという叫びが非常に強くなっておりますが、こういうじみな国民権利を守る制度財政難しわ寄せにならないように、これはやはり大臣にがんばっていただかなきゃいけないと思うんですが、この点、大臣がんばっていただけるかどうか、大臣の御決意を伺いたいと思います。
  8. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 日本弁護士会連合会法律扶助協会の仕事に力を入れていただいておりますこと、非常にありがたいことだと思っております。また、法務省がこの協会に対する補助金を確保していくこと、これも非常に重要な任務だと考えているわけでございまして、その助成の充実には格段の努力を払っていきたいものだと、こう考えております。
  9. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、この問題はこれで終わりまして、次は再審の問題について刑事局長並びに大臣にお伺いしたいと思うんです。  この問題は、最近非常に一般の注目を浴びております。ことに最近起きました免田事件徳島ラジオ商殺し事件、相次いで再審開始決定が出されました。これはロッキード事件その他、大変検察が最近日本の政治の浄化などについて御功績を上げていらっしゃるところでありますけれども、こういう普通事件の問題については必ずしもそうは言えないように思うんですが、ことに再審事件では、率直に申しますと検察の敗北という結果になったわけであります。これを、検察当局としてはまずどういうふうに受けとめていらっしゃいますか、それをお伺いしたいと思います。
  10. 前田宏

    説明員前田宏君) 最近、御指摘のように、いろいろと再審開始決定が行われているところでございます。もとより、無実の人を過って処罰してはならぬことは当然でございますが、そういう意味におきまして、検察当局といたしましては、そういう決定がありましたことは十分それなりに受けとめるべきものと考えております。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 免田事件最高裁のすでに決定がありまして、再現開始確定しております。その決定を読みますと、無罪判決が下りる蓋然性といいますか、裁判帰趨もおのずから明らかなように受けとめられるわけですね、一般的に見て。しかし、この事件でも、やはり検察官としましては新証拠価値でありますとか、この事実そのものをやっぱり争っていくおつもりなのかどうか。ちょっと言いにくいかもしれませんが、その点いかがでしょう。
  12. 前田宏

    説明員前田宏君) 御案内のとおり、再現開始決定確定いたしますと、原則としてその審級に従って裁判をするということに刑訴の規定上相なっておるわけでございます。したがいまして、もちろん検察官側といたしまして、みずから無罪だというふうに思う場合はそれなり措置をとると思いますけれども、そうでない場合には、いまの刑事訴訟法規定に従って検察官側としてのしかるべき措置をとるべきものと、かように考えております。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大変意味深長な御答弁でね。この事件では、最高裁決定がかなり証拠価値判断について触れておるように思いますね。これはやはりそれはそれとして重く受けとめて、それを前提にして裁判に臨まれるのでしょうね。いかがでしょう。
  14. 前田宏

    説明員前田宏君) 再審開始決定の中でいろいろ指摘されていることはそのとおりに受けとめて、しかし、そのとおりに従うというわけでも必ずしもないと思いますけれども検察官としてあるべき措置をとるべきものと、かように考えております。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、徳島ラジオ商殺し事件、これはちょっと免田事件と若干異なるものがあります。この再審開始決定について、検察当局即時抗告をなさいましたね。これは事件の当事者、関係者としましては検察当局即時抗告をしないように、即時抗告は不当であると言って検察当局に迫る、そのお立場というのは十分理解ができるわけでありますが、一般的に第三者から見ますと、検察出局検察当局なりの確信あるいは使命感、こういうものを持って行動することを非難するというわけにはまいりません。  ただ、検察当局即時抗告をするためには、そうした合理的なそこに理由がなければならないわけでありますが、検察当局としては即時抗告をしなければならないという態度をおとりになった基礎には、やはりそれ相当の合理的な根拠というものをお持ちなんでしょうね。この点いかがでしょう。
  16. 前田宏

    説明員前田宏君) いま御指摘のように、徳島ラジオ商殺し事件につきましては、十三日に徳島の地方裁判所再啓開始決定があったわけでございます。しかし、この事件は、詳しくは申しませんけれども、御案内のとおり、もとの一審、二審で有罪判決がございまして、被告人の上告が取り下げられて確定をし服役もした、その後数次にわたりまして再現の申し立てもあって、それがすべて棄却されておったというような経過をたどっておるわけでございます。  今回また改めて再審請求がございまして、いまのような決定があったわけでございますけれども、その決定をしさいに検討いたしますと、検察当局立場といたしましては承服しがたいものが多いということに相なったわけでございまして、もとよりそういう即時抗告をすべきでないというような御意見も多々あったわけでございますので、その点も検察当局としては十分考慮しながら、しかし慎重に検討した結果、やはりこれはこの徳島地裁の一審の段階確定させるのは適当でない、さらに上級審である高松の高裁判断を仰ぐのが適当である、こういう結論に達したわけでございます。  詳しいことは、これから高裁段階検察官側としての主張を述べることになりますので、ここで申し上げるのは適当でないと思いますけれども、要するに一言で申しますと、いまの経過からもおわかりのように、累次にわたる再審がなされて棄却されておる。もちろん、今回の再審では、さらに追加された証拠等も一部はございますけれども検察当局立場から見ますと、いわば実質的には同一の理由による再審請求ではないかというような感を強くするわけでございますし、また、再審請求を受けた裁判所のあり方としてどこまでできるかという問題がいろいろとあるわけでございますが、そういう観点からいたしますと、やはり確定判決をした原裁判所判断に立ち入る限度というものを越えているのではないかというような実態ではないかという判断から、いろいろと検討いたしました結果、一昨日即時抗告をするに至った、かように、承知しております。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま刑事局長から検察当局のお考え、あるいはお立場というものを詳細に承りましたけれども、ただ、この事件を見てみますと、事件のかぎを握っておりますのは、このラジオ商の店で働いておりました二人の店員証言のようであります。この証言が百八十度変化してきておるというのが、いま現実にあるわけです。この二人の店員は、過去においてなされた証言というものは検察官誘導、強制によってなされた虚偽の証言であるということを、言っておるわけですね。  ですから、検察官がこの事件即時抗告をして争っていくということになりますと、現在におけるこの二人の店員証言を覆すに足る確信といいますか、根拠といいますか、それをお持ちにならぬと困難ではないかということ、これはだれしも考えるところであります。検察官としては、そういう確信なり根拠というものをお持ちなんでしょうか。この点ちょっとお伺いしたいと思います。
  18. 前田宏

    説明員前田宏君) 先ほどもお答えしましたように、当否は別といたしまして、この事件再審請求上級審に係属しておるわけでございます。そこで検察官側としては検察官側としての考え方あるいは立証というものをするわけでございますので、この段階でどういうことを主張し、どういうことを立証するかということを申し上げるのは適当でないと思います。  したがいまして、そういうどんな証拠があるかというようなことになりますと、お答えは差し控えさしていただきたいわけでございますけれども先ほどもちょっと触れたところでございますが、この件につきましては、数次にわたる再審請求が過去になされて、それがいずれも棄却されておるわけでございますし、その一番の争点は、ただいま御指摘のように、二人の店員証言が信用できるかどうかということであったわけでございます。それがよく言われますように、検察官側誘導等によるものであるかどうかということも、これまでの再現審理の中で相当検討もされ、その結果、しかし結論としては信用できるということで棄却になっているという経過もあるわけでございますので、その点も十分勘案されるべきものと、かように考えております。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまこの二つの具体的事件、それからそれ以前にありました弘前大教授夫人事件加藤老事件、その他一連の再審事件を顧みてみますと、やはり無事を罰してはいけないという趣旨から、再審の門を広げよという日弁連を初め各方面の意見がございますね。これについては一貫して法務当局反対を唱えていらっしゃるように思われるんでありますが、現時点においてもやはり再審の門を広げるという点については、あなた方としてはこれに同意はなさらぬわけですか。いかがでしょう。
  20. 前田宏

    説明員前田宏君) お言葉にありますような意味で一貫して反対というほどのものではないかと思うのですけれども、やはりこういう問題は刑事訴訟の根幹と申しますか、そういうところに触れるわけでございます。  まあ、一つつけ加えますならば、寺田委員に申し上げるまでもなく、やはり確定判決の持つ意味というものをどういうふうに考えるかということにも帰着するわけでございまして、そう軽々に再審理由というものを緩和するのはいかがであろうかという感じを強くするわけでございまして、そういう意味におきまして、にわかに賛成しがたいという態度をとっておるわけでございます。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは、先ほど法律扶助制度についても大臣の御所見を伺って、私ども大変力強く思ったんですが、この再審の問題については、大臣としてはどういうふうにお考えでしょう。  いま再審の門というのは、きわめて狭い門とされておりますね。つまり、すでに過去になされた有罪判決を、覆すに足る明確な証拠がなくちゃいけない。ところが、白鳥事件以来、そうじゃなくて、これを疑うに足りる相当証拠相当理由といいますか、そういうものを発見したらもうすでに再審裁判開始していいんじゃないかという——これは解釈論でありますが、それを明確にするために、そういうふうな法律改正をしたらどうかという考え方があるわけですね。これは日弁連もそういう考え方をとっております。そうして、できるだけ再審の門を広げて、無実な者を一人でもなくしていこうという、そういう理想を達成しようという考え方があります。  法務当局の方は、これは治安の維持といいますか、裁判の権威といいますか、そういうものがそうたやすく覆されてはたまらないということから、いまのままでいいじゃないか、再審の門を広げるという点については必ずしも左袒できないというお考えのようですね。大臣としては、これをどういうふうにお考えになりますか。
  22. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私は、こういう問題については素人でございますけれども裁判手続において三審制をとっている、この裁判運行手続にこそ慎重を期して過ちを起こしてはならない。疑わしきは罰せずと。そこで確定したものについて、わが国ではさらに再審を許している。そのかわりその再審については、いまおっしゃったように明らかな証拠、新しい証拠があれば再審請求できる。疑わしいということよりも、もう一歩進めておる。やっぱりそれなり理由があるのじゃないかなあという感じがいたします。  しかし、いろいろ御意見もあることでございますから、今後もいろいろな御論議を伺いながら私なりの判断はしていかなきゃならない、こう思っております。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 では、再審の問題はこの程度にいたしまして、次に田中元総理に係るロッキード事件についてお伺いしたいと思います。  これはロッキード委員会において質問ができれば一番いいのでありますが、私もロッキード委員会理事をいたしたことがありますが、現在は航特委でありますが、この開会がすでに容易でないわけであります。率直に申し上げますと、自民党の方で理事の方々が航特委開会を大変お渋りになる。私どもは開けと言う。まだ開かないと言う。ロッキード委員会を開かせること自体が大変むずかしいのであります。  そこで、法務委員会お尋ねをせざるを得ないわけでありますが、このロッキード事件については丸紅ルート全日空ルート児玉ルートなどいろいろに分かれておりますね。これは検察当局が、大変わが国検察史上に残る御功績を上げられたわけです。この裁判については、国民全部がこぞってその帰趨をながめているというわけですね。しかしずいぶん長くかかる、いつ終わるのだろうという疑問があります。あなた方としてはこの裁判を、事実審理をいつごろまでに終えたいと考えていらっしゃるのか。この点どうでしょう。
  24. 前田宏

    説明員前田宏君) ただいま御指摘のように、いわゆるロッキード事件と称せられるものの公判は、幾つかのルートに分かれて審理がなされているわけでございます。  たとえば、全日空ルートにつきまして、全日空側被告人に対するいわゆる外為法違反あるいは議院証言法違反、これにつきましてはすでに十月の十四日に結審をして論告求刑も行われておるわけでございます。また、同じ全日空ルートの中での橋本、佐藤両被告人関係収賄事件、これは被告人質問に入っておりまして、いわゆるアリバイ関係証人尋問等も行われているというような段階でございます。また児玉小佐野ルート、この関係ではそれぞれ六十回ないし七十回ぐらいの公判が行われたわけでございますが、おおむね被告人尋問も終局に近づいているような感じを持っておるわけでございます。  そういうことで、それらの関係につきましては一部もう結審もし、また、そう遠くない時期に結審するのじゃないかというふうに思われるわけでございますが、いわゆる丸紅ルートにつきましては、これまで合計で百十九回の公判が開かれておりまして、いろいろな論点につきまして証拠調べ等が行われ、被告人質問に入って大久保、檜山、伊藤の各被告人に対します被告人質問は終了をし、現在、被告人榎本関係被告人質問に入っているという状態であることは、これは御案内のとおりであろうかと思います。  そういうことで相当な回数の公判も開かれ、関係証拠調べ等も順次行われているところでございますけれども、まだ検察官側立証が終わっていないという段階でございますし、また、それに応じまして被告弁護人側立証も行われるわけでございます。この点は、検察官側としては、どの程度のことが行われるかということも必ずしも予測できない点があるわけでございますので、そういう観点から、これがいつごろ終わるかということにつきましては、はっきりしたことは申しかねるわけでございます。  もちろん、この事件に限らず、およそ刑事事件公判というものがいつまでも長くなってはいかぬということは当然でございますので、できる限り早期に結審に持ち込みたいものというふうに考え努力しているところでございます。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この事件すべてが大変重要性を持っておるわけでありますけれども、とりわけ注目されるのは、やはり丸紅ルートの田中角榮被告の事件であります。この事件について、過去において丸紅の檜山、伊藤、大久保三被告人被告人尋問も大変私ども興味を持って見たわけであります。しかし、今回の榎本被告の被告人尋問というのは、きわめて興味が深いわけであります。この榎本被告の検察官調書、それから被告人尋問の結果、こういうものですね、これがずいぶん私はこの裁判帰趨を制するというふうに思いますけれども、この検察官調書の信憑性、信用力というものを否定しようとする理由が問題なんです。しかし、榎本被告の供述を見る限りにおいては、検事の誘導によったとか検事の作文であるとかいう弁明のようでありますが、新聞紙上で私どもが拝見する限りにおいては、これはきわめて説得力に乏しいように思うのであります。  検察当局としては、この榎本被告の弁明についてどういうふうに見ておられるのか、有無立証についての確信についてはどうなのか、これをちょっとお伺いしたいと思います。
  26. 前田宏

    説明員前田宏君) 先ほど申しましたように、現在、被告人榎本に対します被告人質問がなされている途中といいますか、最中でございまして、いろいろといま御指摘のような見方があろうかと思いますけれども、この段階で私からどういうふうな見方が適当かということを申し上げること自体、現に裁判でなされている手続の最中でございますので適当でないのじゃないか、かように考えます。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 榎本に対する弁護人反対尋問が終わった場合に、残るのは田中被告の被告人尋問という順序になりますが、これもまた、私どもが新聞紙上で見るだけなのでありますが、田中側は元総理の権威を守りたいとか、絶対否認だから拒否するという態度であるというような報道があります。これはもうすでにそういうような話し合いがなされておるのか、検察当局としてはやはり田中被告の被告人尋問はこれを行うつもりなのかどうか、その点どうでしょう。これは別段差し支えないでしょう、あなた方がおっしゃっても。
  28. 前田宏

    説明員前田宏君) いま御指摘のような報道等もあることは承知しておりますけれども、実際にそういうことにつきまして、訴訟の当事者の間で具体的な話があるということは聞いてないわけでございます。私の理解するところでは、そういうような裁判の手続を離れた別な配慮で物を考えるべきではなくて、やはり訴訟の進行に必要かどうか、検察官側といたしましては検察官側立証にとって必要であるかどうかという観点から事に当たるべきものと、かように考えております。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうです。刑事局長、全体としてあなた方は有罪立証が着々と効率的に進んでおると自信を持って見ておられるのかどうか。その点はあなた方の確信をお伺いするわけだから、これはお答えになってもいいんでしょう。どうです。
  30. 前田宏

    説明員前田宏君) 検察官といたしましては、これだけの事件につきまして、慎重に検討した結果、起訴をし公判に臨んでいるわけでございますから、当然有罪確信を持って事に当たっているわけでございます。その点につきましては疑いがないと思いますけれども、私ども立場からそういう裁判がどういうふうに進むであろうかとか、どうなるであろうかということをこの席で申し上げるのは適当ではないのじゃないかと、かように考えます。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、ロッキード事件の問題はこの程度にいたしまして、宮澤長官、大変お忙しいところ恐縮ですが、金大中事件帰趨もこれは非常な国民の関心事でありますが、私はこの委員会で、しばしば外務省のアジア局長に対して判決文の取り寄せを要請いたしましたね。それで、鋭意努力するというお話でしたけれども、その後、新聞情報で、あなた方の方から、どうも判決文が訴訟関係人にも渡っていないらしいというような御発表があったような報道があるのですが、これはどうなんでしょう。事実はやはり御調査になりましたですか。
  32. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 私どもが聞いておりますところでは、金大中氏の弁護人はこの判決文を閲覧しておるというふうに承知いたしております。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、判決文があるということになるんでしょうね。だけれど、いままでの韓国の軍法会議の判決文というのは、すでに全文が発表された事例が二件ほどあるんですね、太刀川被告などの事件を含めて。これは訴訟関係人にその判決文の謄本が渡ったという、あるいは渡っていないという、そこまではわからないのですか。ただ、判決文を見たというその程度の情報なんでしょうか。
  34. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 先ほど答弁申し上げましたとおり、閲覧したというふうに私どもは了解いたしております。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 普通は判決文の謄本を弁護人請求し、それが入手される。これは当然発表されていいもので、発表されるという順序になりますが、閲覧をしたという程度のことがどうもはっきりしないわけですね。これは官房長官、やはり判決文を私どもが見ませんと、本当にこれがどういう犯罪になるんだろうか、また有罪根拠はどこにあるんだろうか、適用された法令の条項はどこにあるんだろうかということが的確なことがわかりませんので、さらにこの判決文の入手に御努力を願いたいと思うんですが、その点いかがでしょう。
  36. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 判決につきましては、すでに国会の委員会で御説明申し上げておりますとおり、判決理由要旨で一応はっきりいたしておりますが、御指摘の点につきましては引き続き努力いたしておる次第でございます。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 はっきりしないんですよ。ことに判決、最初報道された法廷であなた方外交官が録取された点と、その後送ってきた判決要旨とが食い違ったりしてはっきりしないんですよ。そういう疑惑があるから、われわれが見方によってはしつこく要求しておるわけですね。はっきりしておるのなら取り寄せる必要はないんじゃないですか。あなた方がもうはっきりしているから取り寄せる必要はないというようなお考えじゃ困る。やはり判決文全文を見ませんと、われわれは的確なことがわからないんです。これは官房長官、やはりそういう見地から、誠意といいますか、熱意をもって判決文の取り寄せに御努力願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 外務省といたしまして、引き続き努力をしておりますものと承知しております。
  39. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうも、あなたの御答弁に私文句をつけるつもりはないんですが、いま長官は外務大臣の代理をしていらっしゃるんでしょう。ですから、外務省として努力をしていると承知しておるというんじゃなくて、あなた御自身がわれわれの国会の要請にこたえて、国民の要請にこたえて努力をする、がんばるという御決意をやはりお聞きしたいですね。これは当然の要求でしょう。どうでしょう。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 従来から外務省におきまして、しばしば判決文のコピーをわれわれに提供をしてくれないかという要請を続けておるわけでございますが、今日までその要請が満たされておりません。これは韓国側には韓国側の事情があるのであろうかとは思われますけれども、私どもとしては引き続きその要請を続けてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  41. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この事件は、全世界的な規模で金大中氏を救えという大合唱になっているような印象を受けます。  先般、アメリカのブラウン国防長官が韓国に行かれて直接全斗煥大統領に対して、この事件について要望をしたというふうに承っておるわけですが、これに対して全斗煥大統領の答弁は、これは行政当局の問題じゃなくして司法の問題なんだ、司法当局の判断にゆだねるのだというような趣旨の応酬があったように報道をせられておるんですが、この点は外務省としては的確に事実をつかんでおられますか。いかがでしょう。
  42. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) ブラウン国防長官が訪韓しまして全斗煥大統領と会見し、そのときに金大中氏にかかわる問題が提起されたことば、そうであろうと思っております。  その具体的な内容につきましては、私どもとしては第三国間の事柄でもございますし、申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。
  43. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 第三国間の事情でも、あなた方は事実をつかむことは可能なんでしょう。第三国の間の折衝については事実を言えないというのはどうも納得しがたいけれども、アメリカとイギリスがどういう交渉をしておるか、アメリカと西ドイツはどういう交渉をしておるか、あなた方は事実をつかんで、そしてそれを国会に御報告になるのにいささかも差し支えないと思うんですが、それは秘密にしなければいけないのかしら。納得できない。事実をつかんでおるならば、その事実をおっしゃって何ら差し支えはないでしょう。何か秘密性がありますか。
  44. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 何分、第三国間の話し合いでございますので、これを私どもが当然に知り得るという立場にないことはまず指摘されると思います。仮に知り得たといたしましても、通常の外交慣例上、これを第三者である私どもが公の席上で発表するというようなことは、普通は行っておらないのが慣例でございます。
  45. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しかし、局長、みずからの問題として発表することはできないでしょう。しかし、あなた方がこういう情報を受け取っておるということを発表することは毫も差し支えないでしょう。そういう情報をあなた方がキャッチしておられるのかどうか、そういうことを伺っているんですよ。それは何も差し支えないでしょう。
  46. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) ごく浅く承知いたしております。
  47. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、あなた方が浅く入手していらっしゃる情報によるとどういうことなんですか。
  48. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 先ほど申し上げましたとおり、何分第三者の立場にございます。私どもとしては私どもなりに、この問題について関心を持っておることは寺田委員承知のとおりでございますが、何分これが第三者同士のやりとりということになりました場合には、ここでそれに言及することはぜひ差し控えさしていただきたいと、かように考えておるわけでございます。
  49. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうがんばることはないのじゃないか。あなた、意地になっておられるんだ。あなた方がどういう情報をキャッチしていらっしゃるのかということを伺っているので、みずからの問題としてそれをお答えになる必要はないんですよ。これは官房長官、どうでしょうか、どういう情報をあなた方はキャッチしていらっしゃるのでしょうか。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府委員が申し上げることは、私はもっともなことだと思います。アメリカもこれについて公にしていない。韓国も公にしていない。いわんや第三者でありますわが国が、仮に浅い情報でありましても公にすることは差し控えたいと申し上げておりますことは、私は理のあることだと思います。
  51. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しかし、それは発表していないといっても、かなり深く踏み込んですでにもう一般に新聞報道がなされておるわけでしょう。だから、何らかの意味で情報がすでに漏れてしまっておるわけですよね。あるいは公式の発表でなくても、何らかの発表がなされたか、それが信憑性のあるものかどうか、その程度の御判断をなさる、それに関する調査というものはなさるわけじゃないでしょうか。また、それが調査がなされておるならば、あなた方の情報でも結構だからそれはどうでしょうかとお伺いしているわけで、この私の言うことが無理でしょうか。官房長官、またお伺いしますが。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 基本は、先ほど申し上げたことに尽きておると思います。もちろん、公式の発表でございますれば、それを御紹介できますことは当然でございますが、報道そのもの、これは自由でございますけれども、政府はそれにコメントを加える立場にはないと思います。
  53. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 必ずしも満足できないことでありますけれども、その問題だけで時間がたってしまうので次に移りますけれども、アメリカがこの問題について非常な関心を持ち、憂慮の気持ちを持って、韓国に対してその憂慮や関心を表明しておるということは事実なのでしょうね。そこまではつかんでいらっしゃるのでしょうね。それはいかかでしょう。
  54. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) アメリカの当局がこの問題について心配しておるということは、事実でございます。
  55. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 局長、アメリカがこの問題について心配をしておることは事実だというんですが、その心配の情というものは、韓国へ何らかの外交ルートを通じて伝えられているんでしょうね。これは当然でしょう。いかがでしょうか。
  56. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) そのとおりだと思います。
  57. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それに対して何か韓国の方の、まあいわば内政干渉だというような反発があったんでしょうか。その点いかがでしょう。
  58. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) そのようなことは承知いたしておりません。
  59. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 宮澤長官にしろ伊東外務大臣にしろ鈴木総理大臣にしろ、同じように憂慮と関心を表明しておられますね。その御努力は私ども多といたしますが、ただそれに対して、しばしば韓国の方から何か内政干渉だというような逆襲的な態度が見られるのは、これはどうかというような印象を私ども持つんですが、これは日本の場合だけなんでしょうか、どうなんでしょうか。
  60. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 韓国の反応というものが、日本に対する場合、あるいはアメリカに対する場合とか、あるいはヨーロッパに対する場合には、おのずから違う側面があり得るかと思います。距離的にも、それからその背景といたしましても、いろいろ歴史的背景等事情が違うわけでございまして、そのようなことから、韓国の人々がどういった場合によけい敏感に反応するのか、そういった側面は現実の問題として存在しているものと想像する次第でございます。
  61. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 宮津長官のお約束が十一時までということなので、アジア局長の方はあと若干残っていますが、最後に宮沢長官にお伺いしたいのは、これは日本としてはどういうふうなこの問題で見通しを持っていらっしゃるんでしょうか。これはもう韓国任せ、相手任せ、五里霧中だというお立場なんでしょうかね。  それから、これがもし各国からの、また日本からのこの問題に関する要望にもかかわらず、韓国側が全然われわれの憂慮や関心をネグレクトしてしまった場合、これはどういうふうに対処なさるおつもりなんでしょうか。いかがでしょうか。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 第一のお尋ねでございますが、本質的に本件は韓国の国内の問題でございますし、しかも司法部の所管に属する問題でございます。わが国といたしまして関心と憂慮とを表明しておりますことは御承知のとおりでございますが、それにもかかわりませず、本件の見通しにつきまして、事の本質上、私どもに見通し得る的確な情報がございません。  第二の問題でございますが、本件、非常に微妙な問題でありますことは、寺田委員が御質問の中でも言葉を選んでお尋ねくださっておるので十分におわかりいただいておることと存じます。先ほど言われました、われわれの関心がネグレクトされた場合にどうするのかというお尋ねでございました。そのような場合を想像いたしましてただいまから何か申し上げますことは、本件の微妙な性格上、差し控えさしていただくべきものであろうと存じます。
  63. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どういう態度をとるかということはなかなかお答えしにくいでしょうけれども、あらゆる場合を想定してちゃんともう準備するという、腹づもりをなさるというか、それはなさっていらっしゃるのでしょうね。ただ、ぽかんとしているというわけではないでしょうね。これは長官いかがでしょうか、最後に伺いますが。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府としては、本件が最悪の事態になりませんように、しかし、そのような配慮は、韓国民の感情、この問題についての立場等々を十分考えて行わなければかえって逆の効果になるおそれも十分ございますので、そのような配意のもとに最前を尽くしておるつもりでございます。
  65. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 長官、時間が参りましたので結構でございます。  じゃ、アジア局長に若干、これは局長、あなたのお話では、いろいろ歴史的な事情、地理的な事情があって、韓国の反応は国によって迷うのは当然だというふうな御趣旨の御答弁がありましたね。これは各国の韓国に対するそういう憂慮なり関心の表明、そういうものはあなた方、やはり各国と十分相談をなさってしていらっしゃるんでしょうか。もう各国がばらばらにやっていらっしゃるんでしょうか。この点はいかがでしょうか。
  66. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 私どもは、日本側としましては、日本独自の立場考えるべきだというふうに思っております。
  67. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なかなか慎重な御答弁だけれども、よく各国との連絡はしていらっしゃるんでしまう。連絡は一切なしにやっていらっしゃるんですか。
  68. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 連絡をとってやっておるということはございません。
  69. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうも事実と違うのじゃないかと思うけれども、この問題はこの程度にしましょう。  最近、韓国から権正達氏、金潤煥氏、金鳳鶴氏の三氏が、日韓関係の修復を目的として日本に来ているという新聞報道がありますね。これは局長ごらんになっているでしょう。これは事実ですか。
  70. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 新聞報道で承知いたしておりますが、その事実を私どもは確認はいたしておりません。
  71. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私どもとしましては、この韓国の裁判というのは、日本裁判所のような司法の独立というものはないと見ているんですが、これは先般五人の大法院判事が連袂辞職をしたこともありますし、金夫中氏の奥さんが弁護人を委嘱しようとして五十人の弁護人に当たったけれどもことごとく、断られたというようなこと、被告人側の証人が一人も採用されていないこと、判決の内容がいまだに不明であること、被告人がこぞって拷問の事実を訴えていること、検察官調書などの任意性についての取り調べが全くないこと、表現の自由が極端に制約されていること、政治家もすべて逼塞してしまっていること。これは私ども裁判所にいた経験がありますが、やはり時勢の影響というものは裁判守もひしひしと受けるわけですね。ああいう社会の情勢の中で司法の独立なんというのは、とうてい私は得られないと思う。  だから、そういう徴表事実が幾つも起きてきておるわけで、あなた方は、これは司法の独立を前提にして裁判所の問題ですというような韓国側の弁明といいますか、言いわけといいますか、それをそのまま真に受けていらっしゃるのか、仕方がないと思っておられるのか、その点はどうなんでしょうか。
  72. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 司法の独立を前提にして対処されているものと考えております。
  73. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 だから、あなた方のこれはおなかの中とお言葉とが違っておるなら別だけれども、それを本心からおっしゃっておられるとすると、大変事実認識を誤っておられるんじゃないか。そういう誤った認識の上で外交折衝なさるということになると、これはもうとんでもないことになるので、よくやっぱり実態を把握して事に当たっていただきたいと思うんですね。これはまあ法律家でなくても容易に看破できることですね。  それから、これは外務省の政府委員にお渡ししておいたけれども、後宮元駐韓大使、この方が共同通信にこの間金大中事件のいきさつについていろいろとお答えになっていらっしゃる。あれは局長も、私がリコピーを差し上げたからごらんになったでしょう。
  74. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 読ませていただきました。
  75. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あの中に、金大中拉致事件があったときに、まず日本としては原状回復を韓国側に交渉したというお話がありますね。これはやはりそのとおり承っていいんでしょうね。
  76. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) たびたび御説明申し上げたと思いますが、原状回復という問題は、国際法上の不法行為があった上で問題になる事柄かと、承知いたしております。
  77. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、この後宮さんの当時大使として原状回復を交渉したというこのお話は、どういうふうに理解したらいいのか。
  78. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 日本の主権侵害があったかどうかということで、韓国側と折衝された経緯があるというふうに考えます。
  79. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、原状回復、これは先方に要求したのかどうか。その点いかがでしょう。
  80. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 先ほど申し上げましたとおり、仮に主権侵害ありということになれば、当然のことながらその結果としまして韓国側に原状回復を求めることに相なるわけでございますけれども、そこまで至らなかったということでございます。
  81. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、私は直接後宮さんに電話で聞いたんですよ。後宮さんははっきりと、原状回復を要求したということを言われましたよ。この新聞報道もそういう趣旨でしょう。あなたはそれをしも御否定になるんですか。
  82. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 寺田委員と後宮元大使のお電話の次第は私は承知いたしておりませんが、私が先ほど申し上げました点につきまして後宮大使に申し上げれば、当然そういうことだというふうに言われるものと承知いたしております。ですから、そこの寺田委員の御理解につきまして、結果的には私ども考えているのと同じことじゃないかと想像いたす次第でございます。
  83. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 韓国側はその原状回復の要求を拒否したというふうに、この報道、談話はなっていますが、それはそうなんですか。
  84. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 原状回復を受け入れるか、あるいは拒否するかどうかという問題は、不正の侵害があったかどうかということが確認されなければ韓国側としても何も言えない事柄じゃないかと思うわけでございます。
  85. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その点はあいまいのままでいったんだ、だからいま非難を受けているんですという後宮さんのお話でしたよ。つまり、主権の侵害があったかどうかということを的確に見きわめないまま、ともかく臭い、だから原状回復を、要求するということであったのだと。しかし、拒否されたというお話でしたよ。ですから、あなたのそのお答えは、それはどういう趣旨に理解したらいいんでしょうか。ちょっとあなたの御趣旨がよくわからない。原状回復を要求したけれども断られたというのか、原状回復を、要求しなかったというのか、時間がたつから、もうちょっと明確にお答えできないだろうか。いかがですかな。
  86. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 見きわめないままにあいまいに決着をつけたということでは毛頭ございません。見きわめられなかったということでございます。
  87. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この問題は、時間がもう大分過ぎて御迷惑を皆さんにかけるのでこれで最後にしますが、この後宮談話というものは非常に興味深く読んで、こういう原状回復を要求したのだけれども、いわゆるあいまいな政治決着という妥協に終わったのは、田中総理の強いイニシアチブによって方針転換がなされたのだという、そういうあれがありますね、談話の内容が。この点はいかがですか。
  88. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 後宮大使のこの新聞に対する談話につきましては、後宮さんの個人的なことでございますので、私どもとしてとやかく言う立場にございませんが、私どもとして当時の状況を理解いたしまするに、納得のいく解決をできるだけ早期に図りたいという態度で政府は対処したものと思われるわけでございます。
  89. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大変不満ですけれども、時間が来たので、またこれから将来にして、きょうはこれで終わります。御苦労さんでした。
  90. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 まず、先回新聞等に報道されましたスパイ事件、これについてお尋ねをいたしたいと思いますが、まず警察の方に、どうしてスパイ事件というように断定できたか、その状況を簡単に教えてください。
  91. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 御質問の物品でございますが、これは経緯を若干御説明申し上げますと、去る十一月の七日の午後四時ごろのことでございました。折から、横浜市の緑区の北八朔町二千百九十番地の一という、これは山林になるわけでございますが、そこで東京電力が鉄塔の建てかえ工事をするということで土掘り工事をいたしておったわけでございます。その作業に当たっておりました作業員の方が、その作業中に掘り起こした土の中からこの無線機を発見されたということで、翌日でございますが、神奈川県の緑警察署という警察署にお届けがあったものでございます。  これはどういう品物であるかと申しますと、これが非常に厚い強固なアルミ製の防水箱というのが一番外側になっておりまして、そこの中に、多量の乾燥剤の入りましたウレタン合成樹脂製の包装用のカバーで包み、さらにその中にビニールあるいは油紙あるいは合成樹脂様のもので包装したアルミ製の携帯箱というのがさらに入っておりまして、その中にこの無線機が収納されていたと、こういうことでございます。何重にもこのように厳重に梱包されたものでございまして、長期間この無線機の性能が保持できるように配慮された包装であったと、こういうことでございます。この中には受信機の本体のほか、イヤホンであるとか、あるいは接続コードであるとか、あるいはアンテナ線まで収納されておりまして、私どもの方で検査、調査いたしましたところ、直ちに使用できるという非常に良好な状態で保存されていたと、こういうものでございます。  これがどういう目的でこういうところに埋没されていたのかということでございますが、これにつきまして私どもでいろいろ検討いたしまして、過去の事例あるいは私どものこの種事案についての専門的知識ということから、これは恐らくはいわゆるスパイ、諜報事案と私どもは申しますが、そういうことの目的のために埋没されていたものであろうというように推理しておるわけでございます。この物が一体どこ製のものであるのかということにつきましても、これまたいろいろ専門的な分析調査を加えました結果、どうもソ連の製作にかかわるものではなかろうかと、こういうことでございます。  ただ、この物を利用してどういう活動をしようとかという、だれがそういう活動をするといったようないわゆる関係者につきましては、いまのところまだ把握するに至っておりませんので、この点については目下調査中というのが祝状でございます。
  92. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 伺うところによると、神奈川県でこうしたことが数回過去にもあったと承っております。それは時間がないから詳しくはいいが、そういうことが事実か。  それから、私のこれは想像ですが、外交官は何か相互主義というのがあって、日本の場合に、たとえば某国へ行くと一々隣の町に行くまで許可が要るのだということをされれば、じゃ、わが国に来た外交官も同じようにしますよというような相互主義があるようですね。そういう場合に、神奈川県はどうも東京から自由に行っていいところのようですな。そういうことから推定すると、どうもしばしばそういうことが起こるということは、どういうところがそういうことをやっているかということを推定できるが、どうですか。簡単に言ってください。
  93. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 御質問のごとく、過去、神奈川県下において三件、東京都下において一件、同様事案がございます。  相互主義という関係、これは直接は外務省の御所管にかかる問題でございますが、幾つかの国に関しまして外交官についての旅行の制限区域を設けているということについては承知いたしております。
  94. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 仮に、もしそれが諜報活動用だということがはっきりわかった場合でも、警察は、じゃそのことを理由にして逮捕できますか。
  95. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) まず、逮捕するためにはその実行行為者と申しますか、その事犯の関係者の割り出しをまずいたさなければいけないわけでございまして、そういった場合に、捜査を進めまして、その割り出しができました場合には、その捜査の結果、それがどういう法律の罪名に当たるかということにもよりますが、その可能性はございますし、また、そういった見込みで捜査をしていきたいと考えております。
  96. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 だから、結局、別件的に何かないかないかないかということで、電波監理法がどうでございます。出入国管理法がどうでございます、そんなことを一生懸命やって、それで逮捕しなけりゃならぬと、こういうことでしょう。ですから、スパイ活動をやったということがはっきり断定できてもそれによって逮捕ができない、こういう現状の日本じゃありませんか。
  97. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 御指摘の点は、確かにそういうことがございまして、私ども警察といたしましては、あらゆる知恵をしぼりましてこの種事案に対処いたしておるということでございます。
  98. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 しかし、知恵にも限界がありますよ。しかも、このような国際情勢の中で一体こんな状態でよろしいか。  外務省おられると思うが、外交的に考えてみてもスパイ天国と言われているような日本状態、このままでおいてよろしいか、外交上どういうふうにお考えになっていらっしゃるか。  それから、世界各国で私はスパイ防止法みたいなものがない国は数えるほどというか、私が知っているのは日本しかないと思うが、どうですか、現状は。
  99. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) ただいま問題になっております無線機につきましては、それが設置されました背景とか目的あるいは関係者につきましては警察当局の方で御調査中でございまして、まだ判明してないという段階におきましては、これを外交上どう考えるかという点につき外務省としての見解を述べることは差し控えたいと思っております。  また、スパイ関係の立法につきましては、この場で私ちょっとよく存じませんけれども、多くの国でそういう関係の法規があるということは承知しております。
  100. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 警察の方でもそういうように御苦労されているんですから、研究しているでしょうな。大体、世界各国ほとんどの国が、スパイのような活動をした者についてのいわゆる刑事的な、たとえば刑法の中にはっきりそれをうたってあるとか、ほとんどの国がそうじゃないですか。いかがです。
  101. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) 私も全世界についてまだ調査をしたということはございませんが、私の知る限りで、非常に多くの国でこの種法律があるということは承知いたしております。
  102. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 法務大臣、御案内のようなこういう情勢でございますが、私どもいまの国際情勢等から見て、こんなにスパイ天国のような状態になっているのを野放しにしているようなことは許されないと思う。これはやはり何らかの形で、スパイ防止法という名前がいいかどうかこれは別問題でございますが、そうしたものに対していまのような別件逮捕でなきゃいけない、しかも別件逮捕しても懲役にもなるかならないかなんというような状態では、これは本当にゆゆしい問題だと思います。法務大臣、そういう点について前向きに今後御検討いただくお気持ちはありませんか。
  103. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 戸塚さんもよく御承知だと思うのですけれども、私、党におりましたときに宮永事件などが起こりまして、安全保障調査会などで小委員会をつくってどう対処すべきかと。そのとき私が申し上げましたのは、防衛機密を守るそういう立法をしたらどうか、拡大をしないで防衛に限定してそれを守る立法をしたらどうだろうか。防衛の範囲がどこまでかという詰めた議論までは至りませんでしたけれども、皆さん方大体それでいこうじゃないかというような空気になっておったと思います。いまも私は、やはり防衛機密を守る何らかの立法がこれは検討されるべきじゃないかなあという気持ちを持ち続けておるわけでございまして、そういう意味で、戸塚さん心配されておるようなことを私も心配しているわけでございます。
  104. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 よくわかりました。それでは大臣、そういうことについて特に大臣は、防衛上の機密というものについての限定であっても、そのような法案は必要ではないかというふうなお考えで政治家として御活動いただいたということでございますから、今後もそういうことについて御努力をいただくと、こういうことはよろしゅうございますね。
  105. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 特別立法になりますと所管が防衛庁ということになるわけでございますけれども、もしそういうことを防衛関係者決意されます場合には、当然法務省も協力をしていかなけりゃならないと、こう思います。
  106. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 それでは続いて、先ほど寺田委員からも再審問題についてのお話がございましたが、私はちょっと最初に法務省当局に伺いたいんですが、一体いま死刑囚はどのくらいの人数がいるのか、それからその中で再審等獄中からいろいろ叫び続けている人は一体どのくらいいるのか、それからまた、執行の状況は一体どうなっているのか、まずそのあたりについて教えてください。
  107. 前田宏

    説明員前田宏君) 私ども把握しております現時点の死刑の未執行者は二十四名ございまして、その中で再審請求をしている人は十名というふうに承知しております。
  108. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 二十四名で、十名がそのようなことをして、現在再審の申し立てその他の手続をしておると。執行の状態はどうなっておりますか。
  109. 前田宏

    説明員前田宏君) 死刑の執行は、事柄の性質上、公にすべきものではないわけでございますので、一般的に数字等は申していないわけでございますが、いまのお尋ねがどういう趣旨か、ちょっとあるいは取り違えておるかもしれませんけれども、死刑の判決確定いたしますと、私どもでも、また関係部局でも十分に検討しました上で、執行すべきであるということになりました場合には、順次執行するという運用をいたしておるわけでございます。
  110. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 法務大臣、私は必ずしもこの議論に賛成とは言わないんでございますが、いま日本の国内でも死刑廃止論というようなことで、なかなかこれを熱心に連動されていらっしゃる方もある。これは私は、その刑に相当するような罪をしたということについて、やはりそれはきちっと死刑という規定があるということが、かえって予防的措置にもなると思いますし、またその被害を与えられた、あるいは社会への影響等を考えた場合、必ずしもこれについて私は賛成の立場で申し上げているわけじゃないが、しかし、こういう運動を熱心にしているという人がいる。また、それはそれなり根拠も持っているというようなことも、私はこれは耳を傾けて真剣に聞く面もあるのじゃないかと思うんです。  大臣、このいまの死刑廃止論というものについては、どのようなお考えを持っていらっしゃいますか。
  111. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 死刑制度を廃止できるような社会になれば一番いいと思うわけでございますけれども、今日なお凶悪な犯罪が現実にございますし、また、そういうものに対しましては死刑をもって報いる、そのことがある程度予防措置になるというように国民の多くがお考えになっているようでございますので、慎重にはしなきゃなりませんけれども制度として廃止してしまうことについては、にわかに賛成しがたいという気持ちを持っております。
  112. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 先ほど再審の問題についてはかなり寺田委員から突っ込んだお話もございましたから、私ここで余り長い時間とりませんが、ただ、今回の再審決定がなされたその状況から見ても、検察の取り調べのあり方、いわゆるそのときは被疑者といいますか、そういう人に対する供述の取り方等いろいろ指摘された事項もあるようでございますが、今回のこの件を一つの何といいますか機会にして、より一層そうした検察の姿勢というものを、国民の信頼を得られる、常時得ていただく検察として今後ともしっかりやっていただきたいと、こう思っておりますが、その点についてのお考えを一つだけ伺いたいと思います。
  113. 前田宏

    説明員前田宏君) 今回の徳島事件につきまして、徳島裁判所再審開始決定でいろいろと指摘されていることは承知しておるわけでございますが、そのこと自体、当否は別といたしまして、検察官側としては上級裁判所判断を求めているところでございます。  それはそれといたしまして、いろいろと捜査につきまして誤りがあってはいかぬことは当然でございます。その結果、無実の人が万一にも罰せられてはいけないということはこれまた当然でございますので、十分その点につきましては、検察当局といたしまして留意してまいりたいと考えておる次第でございます。
  114. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 時間がありませんので一括して御質問いたしますから、御担当の違った面はひとつそれぞれの方から御答弁願いたい。  刑法あるいは商法、それから監獄法、それから刑事訴訟法、たとえば刑法の場合ですと、先般答申も出されたというようなことも聞いておりますし、商法についても何か次期国会等を目指して国会にその改正を提案したい、こういったようなことも承っております。また、監獄法等についてもかなりその見直しについての事が進んでいるというふうに聞いておりますし、また、刑訴法については、いろいろ最近のこうした一連の問題等を踏まえたやはり新しい時代の刑訴法というような考え方もあるように聞いております。  こうした点について、いまどのような審議なり、あるいはどのような法務省内の検討が進められ、また、次の国会等に提案される予定であるものはこのうちどういうものであるか、そういった点についてお答え願いたい。
  115. 貞家克己

    説明員貞家克己君) 便宜、商法から申し上げます。  商法の改正につきましては、数年前から法務大臣の諮問機関でございます法制審議会の商法部会において鋭意検討を続けていたのでございますが、昨今の情勢にかんがみまして、昨年来は、企業の自主的監視機能を整備強化するための改正という点に焦点をしぼりまして作業を進めておりまして、商法部会の会議を常時開いているわけでございまして、幸い、いま最後の追い込みという段階でございまして、今月の二十四日にも商法部会を一開催いたしまして、でき得ればそこで商法部会の結論を出していただく。それから後に法制審議会の答申を明年早々にでもいただくということを期待しているわけでございまして、事務当局といたしましても、これと並行いたしまして立案の準備作業を鋭意進めている次第でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、来る通常国会には、商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律、これにつきまして改正案を提出して御審議を受けたいと、かように考えている次第でございます。
  116. 前田宏

    説明員前田宏君) お尋ねの中で刑事関係の立法でございますが、刑法につきましては、昭和四十九年に法制審議会の答申があって、それを受けまして、その後引き続いて政府原案と申しますか、それを作成するための作業を継続しているところでございます。  ただ、これも御案内と思いますが、この答申によります改正刑法草案につきましては、いろいろと反対あるいは批判的な意見等も出ておるわけでございまして、そういう点も十分勘案しながら作業を続けておるわけでございます。特に刑法となりますと、国民の基本的な問題に関係するところが多いわけでございますので、できる限り多くの国民の方々の御賛同を得られるようなものをつくりたい、それがつくられるべきものであると、かように考えておる次第でございますが、さしあたって日弁連——日本弁護士連合会、その反対も強いわけでございますので、日弁連との意見の交換というものもやっていきたいと考えておるわけでございまして、日弁連の方におきましても、そういう意見の交換に必ずしも反対でないというふうに承っておるわけでございますけれども、遺憾ながら、いろいろと日弁連側の内部事情等もあるようでございまして、具体的な意見交換あるいは協議といいますか、そういうものがまだ始まっていないという状況にあるわけでございます。  それから、刑事訴訟法につきましては後で矯正局長の方から御説明があると思いますが、監獄法改正が行われることになりますと、一部関連いたしまして手直しをする必要がある部分も生じてくるわけでございます。  また、刑事訴訟法全体につきましては、いろいろと見直しをすべき点が多いというふうに考えておりますが、その点につきましては、いわば基礎的な検討を継続しておるという段階でございまして、具体的に全般的な改正案というものを確定する、また国会に御審議をお願いするという状況にはまだ至っておりません。
  117. 豊島英次郎

    説明員豊島英次郎君) 監獄法改正作業につきましては、昭和五十一年の三月二十七日に法務大臣から法制審議会に対しまして、監獄法改正の骨子となる要綱を示されたいという諮問をいたしました。その結果、法制審議会におきましては鋭意審議を遂げ、先月十一月二十五日に審議を終了いたしまして、法務大臣に対し答申をいたしております。私どもはこの答申を受けまして、現在、条文化作業を鋭意進めております。  答申は、法改正上の重要な事項につきまして骨組み、骨子を示したものでございますので、条文化の作業を必要とするわけでございます。このために多少日時を要すると思いますけれども、できる限り速やかに条文化を完成し、国会上程をいたしたいというふうに考えております。
  118. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 次に、靖国神社の問題について若干お尋ねしたいと思います。  法務大臣の信念、私は高く評価しております。総理も先般私どもに対して、少なくとも福田・大平両内閣より絶対後退しないと、こういうことを総理自身もおっしゃったところであります。何か国会で議論があると、靖国神社問題での法務大臣の発言を批判するような意見が大変多くて私は残念です。法務大臣、そういう応援するというか、法務大臣の信念を高く評価している者がたくさんいるということも忘れないで、しっかりひとつがんばっていただきたいと、こういうふうに思います。  そこで私は、きょう法制局長官にまず伺いたい。内閣法制局長官、御苦労さんでございました。内閣法制局でかねてから出していらっしゃる玉串料公費負担、それから閣議決定、こうしたものをすると憲法に抵触する疑いあり、私はそういうふうに感じているんです。だから、法制局長官のおっしゃるとおり、いまの玉串料公費負担、閣議決定というものは、これはもう百歩譲って法制局長官のおっしゃるとおり、じゃ、そこは一応こっちに置くとした場合は、全く違憲ではありませんな。
  119. 角田禮次郎

    説明員角田禮次郎君) 閣僚の靖国神社の公式参拝というものにつきましては、憲法二十条三項との関連において問題があるということを従来から政府の見解として申し上げているところでありますが、その場合の公式参拝という言葉の意味は、閣僚が公的な資格で参拝するということであります。したがって、閣僚の行う参拝が公式参拝であるかどうかは、もっぱらその参拝が公的な資格で参拝したものであるかどうかということにかかるのでございまして、閣議決定を行わない、あるいは玉串料を公費で負担せずに参拝を行いさえすればそれで公式参拝にはならないとか、あるいは憲法上、一切問題がないというふうに解釈するわけにはいかないというふうに私どもとしては考えております。  なお 御指摘の閣議決定をするとか玉串料を公費で負担するというようなことについて若干敷衍して御説明申し上げたいと思いますが、そういうことについては確かに五十三年の十月の統一見解の中で言及しておりますけれども、これは去る十一月二十六日の衆議院の法務委員会でも御答弁申し上げたところでございますけれども、そういうことをすれば公式参拝をしていないというような言いわけは立たないですよと、そういう一つの外形的な判断標準として申し上げたと、こういうふうに理解していただきたいと思います。
  120. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 法制局長官、もう一言、一言で答えてください。  靖国神社へ参拝された閣僚が、私的でございますと、こう一々断らなければいけませんか。黙っていてもいいんですね。それは別に、堂々と参拝されて、あなた私的ですか公的ですか、私は私的ですと一々断らなければいけませんか。憲法にさわりますか。私は、やっぱり閣僚が信念として参拝しました、それでいいと思うが、どうですか。いいんですね。
  121. 角田禮次郎

    説明員角田禮次郎君) 大変微妙な御質問でございますけれども、政府の方針としては、かねて国会においてお示し申し上げているとおり、閣僚が靖国神社等に参拝する場合には、私人としての参拝をするという方針を守っていただくということになっております。  質問を受けたときに答えるかどうかというようなことは、これは私からはお答えすべき問題ではないと思います。
  122. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 長官が、それはお答えすべき問題ではないが黙っていても別に問題ない、こういうふうにおっしゃったと、私はそういうふうに解釈いたします。  そこで、法務大臣にちょっとお尋ねしたいんでございますが、このように靖国神社へ行けば違憲だ、違憲だというようなことを言われたのじゃ、どうも本当に私どももはらわたが煮えくり返るような気持ちがするんですよ。で、靖国神社だけでなくその他の神社であっても、今度総理が一月四日にいらっしゃるあのお伊勢様にいたしましても、それからキリスト教の教会にいたしましても、それから仏様を飾っていらっしゃるお寺にいたしましても、そのような大臣が御参拝なさるということが違憲だと私は思いませんが、もしそういう疑いがあるとするならば、たとえばそういう神社、仏閣等へお参りをすることについては、これは即座に憲法二十条には抵触しませんという特別立法でもあったら、これは全く靖国神社問題などは一遍に解決すると思うけれども大臣、いかがですか。
  123. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) いま法制局長官が言われましたように、政府の見解は、違憲の疑いがあるということになっているわけであります。違憲の疑いがあるということは、違憲とも考えられるし合憲とも考えられる、その灰色だと、こういうことだと思います。私は閣僚の一員でありますから、政府の見解に従った行動をとってまいります。ただ、個人として、何回かお答えしてまいりましたように、合憲という解釈をしたいという気持ちを持っております。  なぜこういうことになってきたかということについて、私なりにこう申し上げてきております。戦争に負けました二十年に神道指令が出ました。それまでは神道は宗教とはされていなかった。したがって、国家神道禁止の措置を占領軍がとったと、こう言われているわけであります。その神道指令の中で、官公吏は公の資格で神社に参拝してはならない、これが私は公式参拝禁止ということになったのだろうと思います。そして、二十一年にマッカーサー憲法草案が基礎になって日本国憲法が生まれた。そして、二十条の信教の自由の規定あるいは八十九条の公金を宗教などに使ってはならないという規定が生まれておったわけでございまして、その憲法を、また神道指令が存在したままで占領期間中過ごしたわけであります。したがいまして、占領期間中は二十六年まで官公吏は公の資格で神社に参拝してはならない、これを守ってきたわけでございまして、私は独立後もそのまま守られてきているのじゃないかなという感じを持っているわけであります。  ところが、神道指令の中に、戸塚さん御承知のことでございますけれども神道も他の宗教と同じ法的な基礎に置くのだ、そのためにこの指令を出しているのだと。神道が国から切り離された場合には他の宗教と同じような法のもとに置かれる、これは許されるのだと、こう書いてあるわけであります。神道指令は神社に参拝してはならないと書いてありますし、また、学校も神社に参拝してはならないと書いてありますけれども、寺院に参拝してはならないとはどこにも書いてないのです。  ですから私は、国教的な地位を神道に与えておった、それを避ける趣旨において神道指令が出されたし、憲法も私はそれ以上出るものではない。だから、寺院に参拝することを禁止してはいないし、国から切り離された神社に参拝していることも禁止してはいないじゃないか、こういう考え方を持っているものですから、私としては公式参拝違憲とはどうしても考えられない、こういうことを申し上げてまいったわけでございまして、しかし、そういうことを強調いたしますと、政府の見解と相反する行動をとろうとしているじゃないかと、こういうような批判も受けるものでございますから、できる限りこういうことは申し上げたくなかったわけでございますけれども、たまたま戸塚さんからのお話もございましたので、率直にお答えをさせていただいたわけでありまして、ぜひこの問題、早く合憲であるか違憲であるか決着をつけたいな、いつまでもあいまいなままで政府が終始しているということは私は問題を混迷させるばかりじゃないか、責任ある政治家の姿勢ではない、こういう気持ちを深く持っております。
  124. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 全く私は大臣と見解を同じくするものでして、大変心強く思った次第でございます。しっかりがんばっていただきたいと思います。  そこで最後に、時間が参りましたから、憲法の問題については本日は中身の論争でなく、これはいますぐの問題ではありませんが、将来的問題として、何しろ改正したことのない憲法でございますから、この憲法について将来改正の問題が議論された場合、具体的に何か問題になった、具体的に発議というようなことになった場合ということについてちょっとお尋ねしておきたいんですが、私の感じでは、国会で発議ということは、議員たちが発議するという場合もあるけれども、しかし内閣の方から憲法改正はこのように願いたいということで提案されるというような場合も当然考えられると思うが、この点いかがでございましょうか。これは法制局長官。
  125. 角田禮次郎

    説明員角田禮次郎君) 正確に事柄を分けてお答えをしなければいけないと思いますが、憲法九十六条には「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」ということが書いてあります。これはいわゆる発議権と申しますが、これは国会に専属していることは、いま申し上げた規定の上から見ても明らかであります。ただ、国会においてその改正案を審議されるもとになる案を国会に出す権限、これを発議権と区別して申し上げますと提案権になるわけでありますが、そういう提案権は議員がお持ちであることは当然でありますけれども、政府もまたそういう提案権を持っているということは、従来から政府の一貫した解釈でございます。
  126. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 では、時間が参りましたので、それじゃ参議院の法制局長も大体同じ考え方であり、しかも、審議をする場合は、それはそれぞれ国会でまたいろいろどのような審議をするかという仕方についてはそのときの議論でしょうが、特例委員会をつくるとかいろんなことで審議していくんでしょうな。そのことが一つ。  それから、最後に大臣にお伺いしたいのでありますが、内閣の方からも提案される余地があるとすれば、先ほどの刑法や商法だって、法務省の中に長い間いろんな審議会なり調査会なりがあってずっと専門に研究している、憲法についてだけはどうして調査会なり審議会がないんですか。また、いまの法務大臣は、現在は現在の憲法を厳守、遵守し、しかも憲法の改正の意思など絶対内閣は持たないんだとおっしゃるから、いまはともかくとして、将来については、やはり憲法についての調査会あるいは審議会等が政府にないというのは私はむしろおかしいので、あるべきじゃないかと思うが、大臣、その点についてはいかがでしょう。最後にそれを伺って、終わります。
  127. 浅野一郎

    ○法制局長浅野一郎君) 憲法改正の発議の原案が内閣に提出権があるかどうかにつきましては、異論がないわけではございませんが、ただいま内閣法制局長官がおっしゃられたような解釈が一般的であろうと、こう思います。  それから、原案が提出されまして後の国会の審議は、ほぼ法律案の審議と同じような審議になるのではなかろうかと、こう考えております。
  128. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 日本が独立いたしましたときに、ポツダム政令を見直す機会が持たれました。私は、そういう際に、国の基本を定める法規についても見直す機会が持たれたらよかったなと思いますし、しかし、案外そんなときに見直すと、せっかく従来の国家主義に走り過ぎておった激をためるというようなことがまたそのまま浮かび上がってきたりしたかもしれないなという感じも持ちます。  その後に、三十年過ぎに、憲法調査会が法律をつくって設けられたことがあるのです。ところが、野党の中で、それをつくることも反対だ、したがってそれの委員を出すことも反対だというようなことで、不幸な形で憲法調査会が生まれ、憲法調査会が調査を続けられたという経過がございます。そういう対立が今日もなお続いているというのは日本の不幸な政情だと、こう思っております。
  129. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 閉会中のことでございまして長い時間とれませんので、先輩委員からもいろいろお話ございましたが、法務行政に関係いたします諸問題いろいろなことがございますが、わずかな時間の中でのことでございますので、先ほどもお話ございましたが、再審の問題と、また十五日から三日間私ども視察に参りましたので、それも踏まえまして若干の質問を申し上げたいと思うのであります。  去る十二日ですか、免田事件再審最高裁確定したということでございますが、死刑の確定判決に対してのものとしてはこれは初めてということで、再審問題につきましては私どもも非常に関心を持っておるわけであります。きょうも先輩委員からいろいろ質疑がございましたが、こういう一連の白鳥事件以来閉ざされた門戸を開くといいますか、一つの契機になったといういきさつがあるようでございますが、こういう社会情勢の中で私は、非常に法務当局からいたしますと、最初決まった裁判所判決というものが、ある時の経過を経たとはいいながら、それが覆るということになりますと、権威の上に非常に支障を来すというお考えがあるのかもしれませんが、やはり人のいろんな言葉の中にもございますが、十人の犯人を逃しても一人の冤罪者を出してはならないという、こういう考え方の上に立って、やはり事実の究明というものに対しては真剣でなければならないんだろうと思います。そういうことで、私はこれらの一連の問題の中で感じますことを二、三お伺いをするわけでございます。  免田事件につきましても、今回の開始決定までには昭和二十七年の六月から再審請求が何回も繰り返されて、今回六度目といいますか、こういうことで、しかも、このたびの決定につきましては、五十四年の九月二十七日の福岡高裁開始決定に対して検察側の最高裁への特別抗告が棄却されて確立されたということですから、非常に時間的な経緯を経ているわけですね。これは裁く立場と裁かれる立場ということになりますと大変な立場の相違もありますが、非常に時間がかかるのはある程度はやむを得ないものとしましても、昭和二十七年以来二十九年ですか、こういう長い年月を経なければこれはなかなかそういう場も与えられないという、そういう六回も繰り返してということですから、本人が本当に精神的にも経済的にも尽き果ててあきらめるようなことがもし途中であったら、一体これはどういうことになったんだろうかという、こんな思いがしてならないわけでありますが、これらのことにつきまして、再審の問題を中心といたしまして、法務省としまして、先ほども一部御答弁がございましたけれども、基本的な物の考え方についてお伺いをしたいと思うのであります。
  130. 前田宏

    説明員前田宏君) 一般的に申しまして、御指摘のように、実際無実の者が過って処罰されてはならないこと、これはもう当然でございますが、先ほど大臣の御答弁がございましたように、現在の裁判制度はたてまえとして三審制度をとっており、その間に慎重な手続を経てそれぞれのケースが確定していくということ、それについて国民が信頼をしているという大前提があるだろうと思うわけでございます。  したがいまして、そういう制度を前提といたしました場合に、これがいつまでも確定しない、不確定状態に置かれるということでは、別に裁判の権威とかいうようなことはさておきましても、やはり裁判制度そのものに対する国民の信頼といいますか、信用と申しますか、そういうことも薄れてくるわけだろうと思います。  したがいまして、再審の問題は、そういう問題と、それから冒頭に申しましたように、無実の人が過って処罰されてはならぬという二つの問題、この問題の調和をいまどこでとるべきかという、非常にきわめてむずかしい問題であろうと思うわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、最近の事例また過去の事例また諸外国の立法例等あらゆる角度から検討いたしまして、今後ともこの問題に慎重に取り組んでまいりたいと、かように考えております。
  131. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 一般的な御答弁があったわけですが、いろんな立場からこのたびのことについての論評があるわけでありますけれども、これは相当時間をかけ、そしてまた、それなり判断をして判決を下したわけでありますから、その御労苦に対して私どもは云々するわけじゃ決してないのですけれども昭和二十年代に比較的こういう問題が非常に多い。そして、現時点になりましてから何件か無実の罪が晴れたという、こういう問題が起きているわけです。  時代的な背景とか何とか、そういうことで私どもは軽々にこういう問題は論じられないことなのかもしれませんけれども、科学の発達といいますか、技術的な発達とかいろんなことの中で、証拠または当時の捜査とか、いろんなこと等についての問題になる時代というのはやっぱりあったのかなという、こんな感じもするわけですが、いずれにしましても、こういう冤罪の原因を探り、そして冤罪者を出さないようにするためにはどうするかということが非常に大事なことだろうと思います。  具体的には非常にむずかしいことですから軽々にできることではないのかもしれませんけれども、ここ続いております問題等につきまして、一般国民が受けるこのたびの一連の問題等につきまして、閉ざされた門が開かれたという、そういう感じと、やはり必ず真実は明らかになるんだという、こういうことも、また法の権威を高める一つのことにもなるんだろうと思います。  こういうことで、再審制度についての検討、これもいろんな角度から慎重になさらなければならないことだろうと思うのでありますが、この再現制度の問題等、また冤罪者を出さないためにはどういうことが必要なのか、こういうこのたびの一連のこと等考え合わせまして、法務省としての取り組みといいますか、お考えとか、こういうことについて概括的にお伺いをしたいと思うのですが。
  132. 前田宏

    説明員前田宏君) 先ほども若干申し上げたところでございますが、いろいろケース・バイ・ケースでございますから、それを通じて申し上げるのは困難かと思いますけれども、やはりただいま御指摘のように、刑事事件でございますから、捜査機関、警察の段階から始まる場合が多いわけでございますが、警察、さらには検察におきましていろいろと反省すべき点もないわけではないというふうに思うわけでございます。  また、裁判のことでございますから、検察官のみならず弁護人あるいは裁判所いろいろな立場で、それぞれの立場で誤判の防止ということに努めていかなければならないというふうに考えるわけでございます。
  133. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 そうして十二日、その次に徳島ラジオ商殺しの事件のことについては、二十一年の経過を経て再審開始徳島地裁で決まったわけですけれども関係者の方々、やはり即時抗告ということに対しては非常に不満の声が上がっておるわけであります。  これも先ほどいろいろ御質疑があったようでございますが、法の権威を高めるという観点の上から、そしてまた、誇り高き立場ということから、相当いろいろな角度から検討してこの即時抗告をなさったようでありますけれども、私どもやっぱりこういう立場に立ちますと、即時抗告というのはなぜしなけりゃならなかったのかというような、こういう疑問といいますか心が起きてくるのは払拭することができないという、やっぱり認めるものは認めるといいますか、非常に長い経緯があった中でのことでございますので、こういう二十一年の間、結果を見ることなく亡くなった本人にとっては、非常にいたたまれなかったことだろうと思います。  感傷的なことでこういう問題は云々できないんでありますけれども、今後も、いまも局長からお話ございましたが、非常に重要な問題でもございますので、大臣もひとつぜひ今回のこのいろいろな一連の問題等参考にし、参考といいますか、現在のこういう問題等踏まえて、再審制度のぜひひとつ慎重な御検討といいますか、法務省としての取り組みをしていただきたいものだと思いますけれども、御決意のほどをちょっとお伺いしたいと思いますが。
  134. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 基本的には刑事局長がお答えをしたとおりだと考えておりますけれども、皆さんの御意見もあることでございますので、十分検討はしていかなければならない、こう思います。
  135. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 十五日から名古屋それから三重の方、視察をさせていただきました。いま予算編成の大事な時期にもなっておりますので、私もことし七月から法務委員会に参りまして、これで二度視察させていただいたわけですが、現場へ参りまして、いままで無関心であったものが、直接現場の方々からいろいろなお話を聞かせていただきまして、いろいろなことで、時代の推移の中でこの手直しといいますか、努力しなきゃならないことが数多くあるなということを痛感をいたしております。  過日も北海道、東北を回りましたときのことについてはお話を申し上げましたが、法務、司法関係としましては局や出張所、こういうのが非常に多いわけなんですが、合同庁舎のような形で法務省を中心としましてのものは比較的整備されているようですけれども、地方においての小さい役所が多いわけですけれども、こういうところで古いものが非常に多い、そういう中で非常に御努力をなさっていらっしゃる、そういうお話が各地でありました。こういう財政の厳しい中ですから、どこもここもというわけにいかないのかもしれませんけれども、そういうひとつ細かいところにも目を配って、このたびの予算の中で、一生懸命働いていらっしゃる現場の方々の働きがいのあるようなひとつ行政というか心の配りをしていただきたいものだと思うんであります。  それから一つは、各地にそれぞれいろんなことがございましたが、法務省のこれは三重だったと思いますが、戸籍関係のことで、地方自治体の方方が担当がかわるということで、非常に訂正とか更正とかという誤りが多いんだということのお話がございました。それで、地方では、地方自治体とのいろんなお話し合いをしながら誤りを防ぐようなことで努力をしているというお話がございましたが、統計を見ますと、戸籍関係届け出事件実数ですか、これを見ましても、昭和五十三年度で、訂正・更正というのが十五万一千二百十三ですか、ずっと大体十三万台から十四万、十五万という非常に大きい数字になっているんですね。  これは、戸籍事務というのは、私が申し上げるまでもなく非常に重要なお仕事でありますし、じみな仕事でありますが、権利義務の非常に高揚しておる今日、誤りがありますと大きなことになるわけなんですけれども、地方では、現場では、やっぱりこういうことを防ぐために地方自治体の関係の方々と講習会を開いたりいろんなことをやっているようですけれども法務省としましても、これは自治省に対して、やっぱりきちっとお話し合いをして進めなければならないことではないか。現場は現場で努力をなさっているようですけれども、やっぱり当局としましても、きちっと自治省との関係でお話し合いをなさって御努力をなさっていらっしゃるのかどうか、その辺のことを、非常に大きな数字になっているものですから、私ぜひお聞きしなければならない。どうでしょうか。
  136. 貞家克己

    説明員貞家克己君) 確かに、御指摘のとおり訂正件数というものは相当の数に上っております。ただ、ただいまおっしゃいました数字は、市町村長が職権で訂正した事件の数字だと思うのでございますけれども、十二万件あるいは十三万件というような大きな数字に上っているわけでございます。  ただ、この職権訂正をいたしますのはきわめて軽微な誤りで、誤りであることが何人にでもわかるようなそういうケースでございます。さらに重要なケースになりますと、法務局長あるいは地方法務局長の許可を得る、あるいは家庭裁判所の許可を得るというような段取りになるわけでございますが、そのようなものにつきましては、幸いそれほどの大きな件数には上っていないのが実情でございます。しかしながら、軽微な誤りにいたしましても誤りは許されないものであることは、これはもう当然でございます。  そこで、ただいま御指摘のとおり、各法務局、地方法務局あるいは支局等におきまして、市町村と常時接触をいたしまして、いろいろ指導に努めているということはそのとおりでございますが、なお本省といたしましても、これは事務の性質上、戸籍事務と住民登録の事務というような関係上もございまして、自治省とは緊密な連携を保っているわけでございます。  そこで、具体的な方法といたしましては、全国連合戸籍事務協議会というようなものがございまして、各市町村からそれに加わっておられる、こういう協議会を通じまして、いろいろ討論をし、あるいは指導をするというようなことをいたしておりますし、また本年度からの試みでございますけれども法務省と自治省と共同で共催をいたしまして、市区町村戸籍主管課長中央研修というようなものも始めたわけでございまして、これも長期間にわたるということはできませんけれども、市町村において戸籍事務を主管する課長の職務に必要な知識、管理能力を高めるということを目標にいたしまして法務本省において研修を行う、それによって市区町村における戸籍事務処理体制の充実強化を図るということにも、わずかながらではございますけれども、漸進的にさらに努力を続けたいと、かように考えているわけでございます。
  137. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いま御報告がありましたように、職権訂正ですか、大きなことじゃないということですが、これは年々やっぱり増加傾向にありますし、いろいろ御努力をいただいておるのは私どもわかるのですが、やっぱり効果のあらわれるような形で取り組まなければ——現場でのお話ですと、やっぱり担当者の方が地方自治体ですと二年ぐらいで職場をかわるといいますか、そういうことから、担当者の方が非常に少ないという中でのことですから、そういう人事異動等にあわせて、それからまた、そういう時の流れの中でどうこれを組み合わせていくかということで、これは法務省、自治省、よく協議なさった上で適切な処置をしませんと、これは年々ふえていくということは決して好ましいことではないだろうと思うんです。その点について、ぜひ自治省とまたさらに御協議いただきたいことの一つです。  それから、現場でいろんなお話ございましたが、保護司の方の充足率ですね。これも定員といいますか、定数というのはある数字で定めてあるんだろうと思いますが、一〇〇%ということは望み得ないといたしましても、非常に充足率が低いということで、私どももちょっとこれは全国的にはどういうことになっているのか、また保護司の方の年齢が非常に高いということは、それなりに社会経験の豊富な方になっていただかねばならないことですから結構なことなんですが、それに続く中堅の方々がどう跡をお継ぎになっているのか。  長い全国的な数字をちょっと見ていませんからあれですが、社会の物の考え方の変化の中で、保護司さんのようなこういう大事な仕事を本当に真剣になさるという方は、本当に篤志家といいますか、限られた方々なんだろうと思います。それだけに、充足率というものもなかなか満たし得ないのだろうと思いますけれども、それに続く方々、最近の風潮で言いますと、明治、大正の方というのはどっちかというと一生懸命ごめんどうを見る方が多いとしましても、これからの次の世代の方方がどういう形でこれを引き継いでいくのかという、こういうことをちょっと現地でお話を聞いて感じたものですから、保護司の方々の充足率と、また、これらの方々の次の世代をどういうふうに育成され、お考えになっていらっしゃるのか。  実は、これは社会に出て非常に大事なことでありますが、また、この保護観察の方々はじみな仕事で多くの仕事を背負っているわけですけれども、旅費が十分でないとか、これは北海道でもお話ございました。そしてまた、定員削減というと、こういうところから何か減らされるみたいな、現場でもいろいろお話ございましたが、ここでもう一歩お話ししてあげれば、面接できればと、それができないということで非常に悔やむようなことがあるんだというお話でございましたけれども、非常に大事な下積みの仕事であるけれどもそれなりによく見てあげなければならない大事なお仕事だということを痛感いたしましたので、この間のことについてちょっと現状、それからまたいまのお考え、これからのことについてお伺いしたいと思います。
  138. 稲田克巳

    説明員(稲田克巳君) まず、保護司の関係について申し上げますが、現在、保護観察を実施する上におきまして、保護司さんに非常に大きな役割りを果たしていただいておるわけでございます。したがいまして、私どもとしましても、やはり有能な保護司を積極的に確保するという努力はかねがね続けておるところでございますが、まず定数に対する充足率の関係について申し上げますと、保護司の定数は五万二千五百人以内と定められておりまして、それに対しまして現在の実人員は四万六千八百人でございます。ほぼ九〇%の充足率ということになります。  このように、まだ完全には充足していないというふうな原因の一つといたしましては、特に大都市におきまして保護司を獲得することが非常に困難である。特に過密地帯あるいは団地などの多い地域におきまして、適切な候補者の発見に苦しんでおるというのが実情でございますが、今後ともこの面につきまして、格段の努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  また、保護司の年齢の問題でございますが、御指摘のとおり非常に高齢化いたしておりまして、現在、六十歳以上の者が半数以上占めておる事情にございます。まあ高齢者であるということから、一概に保護司として不適任であるとは言い切れない。同齢君の方でも活動力のある方も十分おられるわけでございますが、何にしましても、しかし現在保護観察の対象者の三分の二近くが二十三歳未満の青少年であるというふうな点から考えますれば、やはりもっと若い保護司を積極的に確保するということの重要性というものにつきましては、私どもとしましてもかねがね痛感いたしておるところでございますが、最近の社会情勢あるいは経済情勢から見ますと、非常に社会的信望のある方でも経済的な余裕がない、時間的な余裕がないといったような方々も多いわけでございまして、そういう点で非常に適任者を探し出すということに苦労いたしておるわけでございます。この点につきましては、私どもとしましては、全国の保護観察所を督励いたしまして社会各層から積極的に若い保護司さんを数多く、一人でも多く獲得できるように督励いたしておるのが、実情でございます。  次に、保護観察所なり、あるいは地方更生保護委員会におきます旅費の問題、あるいはまた、職員の定員の問題についていろいろ御心配をいただいておるような点が多々あるわけでございますが、この点につきましては、私どもといたしましても積極的に十分な審査をなしたり、あるいはまた、保護観察の面におきまして、それぞれ対象者の多い地域に出向いて行きまして面接するといったようなことについて十分な旅費が確保できるように、いろいろと予算要求をいたしたり、あるいはまた、保護観察官の定員をふやしていただくというふうにお願いいたしておるわけでございますが、なかなか実現が困難で、まだ十分とまではいかない事情でございますので、ひとつ今後ともどうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  139. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣、いまお話しのように、この前も視察して感じたことですけれども、充足率は九割近いというお話でしたが、やっぱりこれは在の方へ行きましたら、私ども見ました津では七割ぐらいですかね。まあ経験豊富な方に大いにやっていただくことは心から敬意を表するわけでありますが、次の世代の方々もやっぱり加わっていただいて、切れ間なくといいますか、そういうことの配慮、それから保護委員の方々、保護観案官の方々、旅費がなくて、もう一度、二度、再び犯すことのないようにということで手当てをしたいと思っても旅費がという、ちょっとさびしいような気持ちがしたんですけれども、急激な人員増なんか図れるわけはないかもしれませんが、少なくとも現状は保ってもらいたいという気もしておるんです。  お聞きしますと、現地でおととしですか、保護司が一人減ったというような——これが保護観察官とか保護委員会の方々については、じみな仕事ですけれども、それがもう一足入れるか入れないかによって犯罪者にさせるかさせないか、考えてみますと非常に大事な立場だなあと、こういうように痛感をいたしたわけであります。起こした事件に対して厳しく取り締まるということも大事ですが、起こさないようにすることもこれは大事なことだろうと私は思うんですけれども大臣、ぜひひとつ予算編成の段階で、いまもう大枠ができている中でどうするというわけにはいかないかもしれませんが、きめ細かにひとつ御配慮のほどをお願いしたいものだと思いますが、大臣、どうでしょうか。
  140. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 保護司の活動に対しまして深い関心を得せていただいていることに対しまして、心から感謝を申し上げておきたいと思います。  いろいろ御注意いただきましたことにつきましては、将来とも留意して努力をしてまいります。
  141. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それから、昨日は津の刑務所を見させていただいたわけでありますが、これはこの前、函館にも参りましたんですけれども、お入りになっている方々はいろんな立場がありますので一概には言われないんですが、相当厳しいお仕事をなさっておられる方々が多いので、私もびっくりいたしたわけです。本当に真剣にお仕事をしている姿を見まして、この仕事をなさった報酬というのは一体どうなっているんだろうかという、こんな気持ちがふっとわいてまいりまして、一般社会とは同じには見れないといたしましても、いろいろお話を聞きますと、作業賞与金というのはことしは二千七百十六円ですか。これも監獄法という法律があって、その中でいろいろな取り決めがあるようなんですが、現在までの作業賞与金の性格というのは、明治の時代と今日では相当変わってきているのではないかと私は思うんです。  設立当時からいろんな議論があったことも私どもいろいろ聞いておりますけれども、特に国連で最低基準規則ですか、第七十六条第一項、この賃金制の決議をしていること等を踏まえますと、これはここらでひとつ再検討しなければならない、ときに来ているのではないかというような、こういう気がしてならないんですけれども法務当局のお考えはどうなんでしょうか。
  142. 豊島英次郎

    説明員豊島英次郎君) 受刑者の作業賞与金につきましては、御指摘のように、月当たり二千七百十六円というのが現況でございます。  作業賞与金につきましては、それが作業を奨励するという意味のほか、釈放後におきますところの当座の生活の維持、それから就職準備のための更生資金というような意味合いを持つわけであります。したがいまして、できるだけ高額のものを持たせて出所させるということが望ましいことはもとよりなのであります。私ども監獄法改正の機会に、従来、賞与金と称しておりましたものを報奨金というふうに名称を変えまして、できるだけ多くの更生資金を与えることに努力をいたしたいというふうに考えております。
  143. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この国連における最低基準規則、このことについてはどういうお考えでしょうか。
  144. 豊島英次郎

    説明員豊島英次郎君) 国連の最低基準の七十六条を見ますと、「受刑者の作業については、適切な報酬制度がなければならない。」というふうに規定をいたしております。この趣旨でございますけれども矯正施設におきましては、収容者が収容生活を送るための諸経費がございますので、そういう諸経費をにらみつつ、また他面におきましては、一般社会におきますところの労働報酬というものをにらみながら、適切な報奨金を定めていく必要があるのだというふうに考えております。
  145. 貞家克己

    説明員貞家克己君) 先ほどお答え申し上げました答弁の中に誤りがございますので、一点修正させていただきたいと思います。  先ほど申しました市区町村戸籍主管課長中央研修を始めたと申し上げましたが、これは法務省と自治省の共催であると申し上げましたが、法務省と全国連合戸籍事務協議会、これは昭和二十三年からございます団体で、現在、千代田区長が会長をしておられる団体でございますが、この協議会と法務省との共催でございまして、もちろん自治省とも協議はいたしておりますし、自治省から講師も派遣していただいているわけでございます。  この一点、修正させていただきたいと思います。
  146. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 これは体の頑健な人とそうでない人といろいろな差異がありますから、一概に見るわけにはいかないと思うんですけれども、国連においても最低基準規則というようなことが考えられておる段階におきまして、国内の対処もこれはやっぱり考えなきゃならない時期に来ているんじゃないか。それから、ここ数年のもう年々の物価上昇の中で、この作業賞与金というのは恩恵的な性格と、それから更生資金という性格を持っているという、実際いろんな物の本やまたお話の中に、出所をするときに持っているお金がわずかのために、やっぱり更生資金という性格があるとはいいながら、十分に機能を発揮できないようなことも間々あるんだというようなお話も聞くわけであります。  これは内容、非常にいろんな条件の方々がいらっしゃるわけですから、一律にどうするということは非常にむずかしい作業で、どういう形にするかということは、私の口からどうしなさいなんというわけには簡単にいかないことだと思いますが、世界の大勢としてそういう方向に動きつつあるということの中で、それからまた、社会情勢も非常に大きく変わっているということで、ぜひこれもはっきり——はっきりといいますか、ひとつ検討しなけりゃならないときに来ているという、こういう感を非常に深くするんです。  刑務所でそれぞれ目標金額を定めて作業をしているわけですけれども、きのう参りました津では三億一千万ですか、ことしはそこまで何とかいきそうですということでありましたが、それはもう私どもが行ったからじゃない、日常の生活がそうだと思うんですけれども、非常に真剣な仕事の姿を見まして、これはやっぱり時代の流れの中で検討しなきゃならない大事なことだと、そう思いました。  それと、溶接とか何か、非常に特別危険ということはないですけれども、大きな機械も使っておりますから、そういう中で事故はもうほとんどありませんという、注意をしておりますということですが、これも国連等でも問題になっておりますように、労働者の災害補償保険法ですか、やっぱり災害補償に対してどうするかということも一つは考えなきゃならぬという、こういうことが論議される時代の中で、法務省としてはそういうことがあるんだというようなお考えなのか、やっぱりこれは現時点で真剣に取り組まなければならない時期に来たんだというふうに御認識になっていらっしゃるのか、そこのところを私はお聞きしたいと思うんです。
  147. 豊島英次郎

    説明員豊島英次郎君) 御指摘のように、作業報奨金につきまして十分な認識を持たなければならぬというふうに考えております。実は「監獄法改正の骨子となる要綱」におきまして、報奨金につきましては、「報奨金の額は、作業の種類及び内容により同種作業に対する一般社会における賃金額等を考慮して定める金額を基準とし、本人の作業成績、就業態度その他作業に関する事情を参酌して定めること。」というふうに要綱の答申をいただいておるわけであります。  それからまた、災害補償につきましては、「作業に就いた受刑者が、作業上死亡した場合又は作業上負傷し、若しくは病気にかかり治ったとき身体に障害が残った場合には、法務省令で定めるところにより、災害の補償を行う。」という規定を設けることにいたしまして、報奨金につきましても、現在でいう作業賞与金でございますが、報賞金につきましても災害補償につきましても、できるだけの手当てをするという方向で改正作業を進めたいというふうに考えております。
  148. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 七月に法務委員会で参りまして視察さしていただいて、素人なりに感じたことでありますが、確かに一つの大きな転換といいますか、過渡期にあるんだろうと思います。新しいこういうことについての検討をしているということでありますけれども大臣、ひとつ精力的にこれらの問題についてもお取り組みをいただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  149. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 監獄法改正を目指しておるわけでございますので、ただいまの御意見を十分考えながら成案を得て国会に提出する努力をしたいと思います。
  150. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 最初に、大臣にお伺いします。  韓国では、間もなく金大中氏に対する最高裁の死刑判決がなされる、直ちに処刑の可能性がある、こういう危機が差し迫っているわけであります。金大中事件は、もうすでに先ほど来の議論で明らかなとおり、単に韓国の国内問題だけではなくて、わが国の主権侵害というまさにわが国自体の問題です。そこで、これも主権侵害があれば原状回復を求めるという、こういう答弁もございました。この点に関しまして、私も十月十六日の当法務委員会におきまして、田中伊三次氏とそれからレイナード氏、当時の日米両国政府の責任者がはっきりとした根拠を持ちましてこれはKCIAのしわざだと、そう言っている以上、これらの人人から事実を聴取をして、そして政治決着の見直し、原状回復を求める、そのことを大臣に求めたわけであります。これに対して大臣答弁は、「御意見のあるところをよく理解いたしました。」単に耳から聞いてすぐ出したんじゃなくてよく理解をしたと、こういう答弁を得たわけであります。  その後、事態はさらに進んでおりまして、たとえば週刊現代、そこで田中伊三次氏は、これは検察もしくは警察の最高首脳と思われる高官、それからもう一人は在日韓国人ですが、それは文面全体から見まして、大体金在権ということが想定されるわけです。当時の在日韓国公使でKCIAの日本の責任者、この人物からKCIAの行為だということを聞いたと、こういった事実が明らかになっておりますし、レイナード氏も来日いたしまして金大中救出の行動に参加しておるわけであります。  すでに明らかになっているこういう事実というのは、すべてKCIAのしわざであることは明らかである、こう思います。金大中氏をわが国に連れ戻すというこういう断固とした措置を法務大臣としてもとるべきだ、示すべきだと思いますが、いかがですか。
  151. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 金大中事件は、御承知のように、警察が直接捜査に当たっているわけでございまして、同時に、警察当局が田中さんにもお目にかかって伺ったようでございますけれども、格段新しい証拠が得られたわけでもなかったようでございました。そういうことでございますので、いまおっしゃったことと私たちが承知していることには、若干食い違いがあるようでございます。また、政治決着もあるわけでございますので、政治決着は守られなければならないと、これは強く考えているわけでございますけれども、自余の問題につきましては、もっぱら外務省が中心になりまして韓国と話し合いをしておりますので、そちらにゆだねておきたいと思います。
  152. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私が前回申し上げて大臣理解をしたというのは、この問題は単に警察に任せず法務大臣としてもそういう対処をせよと、それを理解したと私は考えたわけでありますけれども、その点につきましては、もうすでに国際的に見てみますと、西ドイツでは自民党大会あるいは西ドイツ外務大臣、議会、首相、こういったところの人人がはっきりと金大中救出の決議をしたり演説をしております。また、アメリカは国務大臣、アメリカ下院の外交委員会国際機関小委員会、こういったところ、さらには社会主義インターなど、国際法律家会議アピール、その他EC、オーストラリア、タイ、イギリス、フランス、スウェーデン、オランダ、ニュージーランド、イギリス・アムネスティ。私は、KCIAのしわざと見るのは、まさに国際的な常識でさえあると思うのです。  国内的にはいま大きな救出運動が起きておりますし、この間、私、高山へ行きましたら、さらにその周辺の町村でも、まさに飛騨の山奥でも署名運動が起きております。まさにそれが常識的な普通の人間の考え結論であるのに、ただわが日本政府のみがかたくなな態度をとっておる、こうとしか理解できないわけでありますけれども、再考の余地ありませんか。
  153. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 警察当局は検察当局とも連絡をとっておることだと承知をいたしております。私は別に、そういう検察的な立場で取り調べなどすべき立場にはないわけでありますけれども、田中先生と雑談的にいろいろな話をしたこともございます。しかし、それらを通じましても明確な資料はございませんでした。したがいまして、いま近藤さんがおっしゃっていますのと、ちょっと政府当局が把握しておりますところとには食い違いがあるようでございます。もちろんいろいろな推測、これは当然できると思います。したがいまして、別に近藤さんの推測を否定しようとも思いません。思いませんが、しかし、政府間の問題としては明確なものがございませんと、それ以上出られないということについても御理解いただけるのじゃないかなと思います。  いずれにしましても、深い関心を持っている課題でございますけれども、韓国との関係におきましては外務省がその責任の当局者だと、こう考えておるわけでございます。
  154. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私の推測を否定できないとおっしゃったことは、まさに私は真実だと思います。まさに緊急の事態でありますので、さらに積極的な取り組みを求めたいと思うわけであります。  この事態ということから考えましても、これは韓国の事態ですが、日本に当てはめてみますと、特に法務大臣、その職務の遂行に当たっては真実と憲法、法律に基づいて行動する、韓国の場合にはこれは明らかに政治的な配慮が加わっていると、こう考えざるを得ないのですが、特に法務大臣の職務遂行に当たってはこういう政治的な配慮が加わってはならない、こう思います。特に検察権が公正妥当に行使されることは、司法権の独立を確保するためにも不可決であります。そのために、検察権の立法権及び他の行政権からの独立、特に政党の利害や都合によって左右されることがあってはならない、すなわち政治による検察の支配は絶対に避けなければならない、こう思いますが、大臣いかがでしょう。
  155. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 先ほど申し上げましたように、政治決着、これは守られなければならない、こう考えておるわけであります。しかし、現在のところ、新しい証拠が明確になったわけではない。したがいまして、自余の日本と韓国との関係の問題につきましては外務省にゆだねる以外にはない、それ以上干渉がましい姿勢にとられることは避けなければならない、こう思っておるわけでございます。
  156. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は韓国の問題は別として、わが国内の問題として、法務大臣の職務遂行のあり方について聞いたわけですが、検察権の執行が政治に左右されてはならない、この点はいかがですか。
  157. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) そのとおりに思っております。
  158. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 と同時に、法務大臣の職務の遂行も厳正でなければならないわけでありまして、大臣自身あるいは大臣関係者被告人、被疑者あるいは被告訴人となっている事件について、事実の認定や法の適用などに関して検察官大臣が影響を与える、こういったことをしてはならないと思います。こういう場合にはむしろ一層、大臣自身が問題になっているのですから、厳正な捜査を進めるような態度大臣自身から示して、検察官が公正に職務を遂行できるようにすべきだと思うのですが、この点はいかがですか。
  159. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 検察が他の不当な影響を受けないように検察の体制を守っていく、これは私の責任だと思っております。したがいまして、また仮に私が何か言うたからといって、すぐそれによって検察が動かされるような検察であってもならない、そういうことも大事じゃないかなと思っていますし、常日ごろ、そういうことでお互いに連絡をしているわけでございます。
  160. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 検察大臣のたとえば不当なやり方に拘束されないという強さと同時に、大臣自身のあり方として、大臣自身もそういったことをしてはならない。これは当然でしょう。
  161. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) できるだけそういう配慮をしていくことが大切だと思います。
  162. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これはできるだけではなくて、私は絶対的な要件だと思うんですね。どうです。
  163. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) おっしゃっておることはわかるのですけれども、絶対的とかできるだけとか、お互いに政治家ですから、そういう気持ちを尊重していかなきゃならないということは当然だと思います。
  164. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大臣、余りうまく変わっちゃ困ると思うんですね。  そこで、これは刑事局長にお伺いしたいと思うんですが、司法の公正を保つために、裁判官には忌避、回避の制度があります。検察官がこういうことに該当するような事件を担当することがあると思うんですが、そういう場合には実務上どういう措置をとっておりますか。
  165. 前田宏

    説明員前田宏君) ただいまお尋ねにもありましたように、裁判官につきましては明文の規定があるわけでございますけれども検察官につきましては制度的にはそういうものはないわけでございます。しかし、実際上、同じような精神と申しますか、心構えで当たらなければならぬことは当然でございますので、実際の運用におきましては本人が申し出る、あるいは上司において他の検察官事件を担当させるというような措置によりまして、いやしくも公正について疑いを受けるようなことがないように配意しているところでございます。
  166. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そのことは、司法修習生に対する講義書であります検察講義案、そこにもはっきりとそう書いてあるわけであります。そこで、それをさらに指揮監督——法務大臣は一層当てはまることだと思うんです。そういうことについては御答弁ありました。  ただ、具体的に法務大臣は御自分が被告訴人となっている事件、これは中野区長選挙に応援に参りまして、その際、こういう発言をしておるんですね。人殺しをした人を委員長にしておるような共産党——これは宮本さんのことであります。さらに、中核とか革マルとか日本赤軍とか、みんなマルクス・レーニン主義者ですよ。社会党も共産党も同じように、マルクス・レーニン主義の信奉者です。ところが、どこかちょっと違うだけでいがみ合い、憎しみ合い、殺し合いまでする。違う点はちょっとだけであとは似ていると。その似ている点は、いがみ合い、憎しみ合い、殺し合いまでするという、このように取れる発言をしております。  それだけではなくて、実は、これは十一月二十六日の衆議院法務委員会におきまして、わが党榊議員の追及に対しまして、この種の過去の宮本さんのリンチ事件に触れます場合に告発を繰り返しておられる、それが何度も皆不起訴になっている。なおかつ告訴を続けるのは権利の乱用だと、こう発言しました。また、これは民社党の塚本氏の質問に対しましても、これは奥野法務大臣、あなたが告訴された事件についてどうかと、こう聞かれたことに対しまして、その告訴、告発は選挙戦術だと思うと、こう発言しておるわけでございます。事件が違えば、その発言の日時、場所、内容あるいは発言の態様、そういうことが違えば、ある事件に関する、宮本さんの治安維持法事件ということに関する発言という共通性はありましても、それぞれの発言はまた別だと思うんです。たとえば、これはその質問者である塚本さん自身は、共産党の、委員長は仲間を針金でしばって出刃包丁で殺し、前科を持っているから国民の前に出てこれない。これは、明らかに大臣先ほどの発言と違うわけですね。  与件が違えば、それに対する別件として処理される、これは当然です。また、大臣もそう発言しておるわけであります。判断や法の適用も違ってくると思うんです。しかし、大臣のこの発言を見てみますと、宮本委員長の治安維持法被告事件に関する宣伝に対しましては、告訴、告発した者は名誉毀損罪や、あるいは公選法違反の構成要件とか、あるいは責任とか、一つ一つ発言について吟味することなく、みんな権利乱用、選挙戦術にすぎない、このように十把一からげにして判断して処理してもよいと、こういった判断を示されたことになるのかどうなのか。
  167. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私が、いまおっしゃいました選挙応援演説をしまして、翌日、赤旗で私が告訴されていることを知りました。そのときに、私のどの部分が一体告訴に値するのだろうかなという疑問を持つとともに、やはりこれは選挙戦術で告訴されたのだなと、こう思ったわけでございますので、その感想をそのとおり塚本さんの御質問に対してお答えをしたわけでございまして、同時に過激派集団、ちょっとした考え方の違いだけで現実に殺し合いをしているのは私は事実だと、こう思うわけでございます。共産党がそうされているとは申しませんでした。共産党もマルクス・レーニン主義を信奉しておられる。過激派集団もマルクス・レーニン主義を信奉している。その点は同じだと、こうは申しておるわけでございます。  私は講義をしているわけではございませんで、選挙応援演説をやっているわけでございますから、聞きようによってはいろいろ誤解がある点もあったかもしれませんけれども、私の趣旨はそういうことであったことを御理解いただいておきたいと思います。  同時にまた、同じことを繰り返し繰り返し不起訴になっても告訴していくということは、権利の乱用に当たるのじゃないかなという疑問を提示しました。これも事実でございます。やはり公の手続を経ることでございますので、同じ結論が繰り返されるなら権利の乱用という批判も出てくるのじゃないかなと、こう思うわけでございまして、近藤さんが御指摘になりましたように、それぞれ違うのだよと、こうおっしゃるなら、それは当然告訴権を御利用になって何ら不穏当じゃないと思います。私は同じ内容であり、それが不起訴になってきている。それを承知で繰り返し繰り返しやることは、権利の乱用ということになるのじゃないかなという疑問を提示したわけでございまして、違う場合に告訴をされることは、何ら私は不穏当ではないと思います。
  168. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ですから、塚本さんの発言と奥野さんの発言は明らかに違いますね。これは別件でしょう。お認めになるでしょう。
  169. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 塚本さんの発言が近藤さんのおっしゃるとおりであるとしますならば、私の発言とはかなり食い違いがあると思います。
  170. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そういう発言がたくさんあるんです。にもかかわらず、大臣は、それを告訴しますと、あるいは告発しますと、それが選挙戦術だ、権利乱用だと、こういう答弁をなさったわけです。要するに、正当な告訴権の行使ではないというこういう判断、それをしかも公の場所で示したわけです。法務大臣が、自分が被告訴人になっている事件を含むこういう一連の事件についてこういう発言をするのは、いずれも正当な告訴ではないから受理するな、あるいはいずれも正当な告訴ではないから不起訴にせよということを、そういう検察官への指揮を行っていることになる。それはそうでしょう。ここで発言することは法務大臣の発言ですから、法務省の見解ですから、これは二重の意味でとんでもないことなんです。  一つは、国務大臣の国会答弁の場を利用して私人としての自分の被告訴事件についての主張をしてしまう。そういう点で、まさに公私混同きわまれりと言うべきです。  それから第二点は、法務大臣として公式の場で自分の被告訴事件について大臣見解を示した。特定事件の処理に影響を与えてもいいんだ。要するに、自分を不起訴にせよと、まさに法務大臣の地位利用です。法務大臣としては絶対してはならないことだと、いま思っておりませんか。どうです。
  171. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私の選挙演説しましたこともずいぶん古いことでございまして、それを別に頭にも置いていませんし、そのことで私が不起訴にしてくれと検察が受け取るというような検察でもないと思うわけでございまして、政治家同士の発言でございますので、法律論を戦わせるという性格のものでも私はなかったような感じがいたします。しかし、御意見は十分受けとめておきたいと思います。
  172. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 よく個人としてということを言うのですが、きょうは政治家としてということですね。あなたの言葉を持ってきておりますけれども、政治家としてであれ、要するに、ここでの発言は法務大臣の発言です。そして実際、この告訴事件の処理は、奥野法務大臣がこの発言をした後の十二月十二日付で、不起訴処分の通知がされておるんです。十一月二十六日に自分の被告訴事件について国会で大臣見解を示した約二週間後に、そういう結果が出ておるんです。  ですから、これはまさに大臣の圧力によって、あるいは大臣の見解に従って、あるいは大臣の要望にこたえて、検察庁が大臣の意向に沿って不起訴処分にした、こう思われて仕方がないじゃないですか。意見をよく受けとめたとおっしゃったことは、そういうことであれば、先ほどの選挙戦術とか、あるいは権利乱用とか、こういう発言を取り消してしかるべきだと思います。いかがですか。
  173. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私の発言に対してどうして告訴されるのだろうかなあと当時非常に疑問でございまして、ですから選挙戦術でおやりになっているのだなと判断した、こう申し上げたわけでございます。したがいまして、そういう気持ちでおるわけでございますから、私は取り消すとか取り消さないとか、そういう性格のことでもないのじゃないかなあと、こう思うわけでございます。  しかし、近藤さんのような御熱心な御発言もございますので、これはもう十分受けとめさしていただきますと、こう申し上げておるわけでございます。
  174. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 受けとめたということは、大いに反省をして、これからそういった誤解を受けるような発言はしない、あるいはそういう影響を与える可能性があることはしない、こう承ってよろしいですか。
  175. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) できる限り誤解を受けないようにしなきゃならない、これは当然のことでございます。したがいまして、近藤さんの発言も十分私は受けとめてまいります。
  176. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから、先ほど宮本委員長の治安維持法違反事件ということを申しましたが、それがリンチ事件ではないと、そういうふうに法務大臣考えになっておるでしょう。
  177. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 治安維持法の事件と傷害事件とは別だと思いますし、傷害事件宮本委員長が起訴され判決を受けられたことも事実だと、こう思っております。
  178. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 すでに何度も繰り返しておりますけれども、これは絶対リンチ事件ではないということを申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、大臣はこういう発言をしておるんです。「伊藤律氏が日本に帰っておりましても自由に物を言える立場にないように私も推測しておるわけでございまして、彼の身辺——必ずしも好ましい環境でないというように心配をいたしております。」こういう答弁を塚本氏にしております。伊藤律がいまなお事実上の幽閉状況、拘束状況にあるという判断大臣が示したことになるんじゃないでしょうか。大臣、本当にそう思っているんですか。
  179. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私自身、伊藤律さんが何もおっしゃらない、また人に会おうとされない、何が原因だろうかなあという疑問を持っております。したがいまして、また客観的な事実が明確にされれば憶測が憶測を生むというような事態が避けられるのになあと、こういう希望も持っているわけでございます。  私がそういうことを申し上げましたけれども、何が原因であるか私も知りませんし、そのときももちろん申し上げておりません。中国に長くいらっしゃったわけでありますけれども、中国でどういう生活をされておったかということもいまだに明確でないわけでございますから、いろんな憶測が生まれるのは当然だと思います。しかし、何が原因であるか、私にもわかりません。
  180. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そうしますと、大臣は、中国のことは別にしまして、国内、帰国してからのことについて事実を何も知らずにこういう発言をした、「必ずしも好ましい環境でない」あるいは「自由に物を言える立場にない」、根拠なしにそういうことを言われたんですか。
  181. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 客観的事実を、そういうふうに推測しているという私は表現の仕方をしたのじゃないかなあと、こう思っておるわけでございます。
  182. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それでは、その客観的事実を申し上げましよう。  伊藤律は九月三日帰国、すぐ昭島相互病院に入院して以来、九月四日は病院が精密検査を始めたと記者会見しております。五日に長男夫妻が見舞い、次男もしております。六日、キミ夫人面会。九日、長男の家族と面会、孫の顔を見る。十三日、病院で病状発表。十四日、律の弟、妹が面会。二十七日、透析のある公立病院に転院を決定。十月十一日、伊藤律、記者会見。二十四日、長男宅に三泊四日の外泊。十一月十一日、退院、長男宅に住む。以上はテレビで、あるいは新聞で、しかもテレビでは孫と散歩している姿も紹介されておるわけです。この間、新聞記者の皆さんは病院周辺とか、あるいは家族宅など密着した取材をしておるわけです。その他の律身辺の行動はありません。  十一月二十六日の大臣答弁は、この日、伊藤律はどこにどうしていたのか、大臣知っての上での御発言でしょうか。そして、そのどこに、具体的こういう事実だから自由に物が言えないということをお考えになったわけでしょうか。御答弁いただきたい。
  183. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私は、自由に物が言えないという表現を使ったと思います。身柄がどうこうじゃなくて、自由に物が言えない。なぜ物をおっしゃらないのか、これはわかりません。中国の生活のことも何にもおっしゃいませんし、帰ってきてからもいろいろなことを何もおっしゃいません。また、あの方についてはゾルゲ事件その他についてのいろんなうわさもございますし、またいろんなことを推測記事として書かれておるわけでございます。にもかかわらず、何も言われませんから、やっぱり自由に物が言えないと判断する以外に私はないと思うわけでございまして、身体的なことを申し上げておりません。自由に物が言えないように思えるという推測を申し上げたわけであります。
  184. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 物を言う言わぬは個人の自由です。言わない人はたくさんおります。ところが、共産党に関した場合には、そういう場合には自由に物が言えない、こういう判断をするんでしょうか。  現に、これはサンケイ新聞です。奥野法相のこの発言をとらえまして、共産党が伊藤律を自由に物を言えない状況にしているという、法務大臣がそういう判断を示したと。こういう発言の影響があるんです。撤回すべきじゃないでしょうか。
  185. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私は、初めて近藤さんがどういう意味お尋ねになっているかということがわかりました。私は、共産党だとかだれだとかいうようなことを一つも言っていませんし、そういう意識を持って申し上げているわけではございませんで、客観的に私はこういうふうに推測されますと、こう申し上げているわけでございます。  伊藤さんの健康状態もございましょうし、あるいは家族の関係もございましょうし、先ほど申し上げたゾルゲ事件とか中国における処遇の問題とか、あるいは隔離審査を受けたというようなことを言うておられる問題とか、いろいろなことがあるわけでございまして、私はどれかわかりません。どれかわかりませんけれども、サンケイ新聞がそういう推測をされましたとしますならば、またサンケイ新聞として別途の推測をされたのだなと、こう思います。
  186. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 十一月十九日に、すでに伊藤律は東京女子医大に入院しております。精密検査を受けて治療を行っております。しかも、家族と一緒に住むというのは、これは伊藤律個人の希望です。また、長らく日本を離れて国内事情に疎い者にとっては、家族の判断、家族の紹介で入院先を決める、これはまさに自由じゃないでしょうか。大臣先ほど来客観的に自由に物を言える立場にない、そう判断した、あるいは好ましい環境でないというふうに判断したとおっしゃるんですけれども、その客観的な事実はどこにあるんですか。一体、何を根拠にしてそういうことを言っておるんですか。
  187. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 中国側も物を言いませんし、また伊藤さんも物を言いませんし、そういう形で帰国されてきているわけでございますから、いろんな憶測が私が出てくるのは当然じゃないかなあと、こう思うわけでございまして、それを率直にそう表現してまいったわけでございます。
  188. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そのこと自身も、私は事実に反することだと思います。しかし、時間がないのであえてそれ以上指摘しませんが、少なくとも大臣の発言が、共産党が伊藤律の身辺を制限している——そういうようなことは絶対ないと大臣考えになるでしょう。いかがです。
  189. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私は、そういう意識で物は言うておりません。
  190. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 となれば、そういう影響を与えた発言は大臣の本意でないから、そういう趣旨では取り消すべきだと思いますが、いかがですか。
  191. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 国会の論議をいろいろに受けとめられる、それは私は、そのことにまで干渉すべきものではないのじゃないかなと思います。  いずれにいたしましても、いま近藤さんのお気持ち、よく私理解いたしました。これからもそういう理解をしながらお答えをしていきたいと思います。
  192. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ですから、公党である共産党が伊藤律の自由を制限した、あるいは好ましい環境に置いていないという、そういう認識大臣お持ちでないと、こう理解してよろしいですか。
  193. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) そういう認識に立って私はお答えをしておったわけじゃございません。
  194. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大臣にお伺いしますけれども、妻や子あるいは孫など、家族に囲まれて生活をすることにまさる好ましい環境はないと、こう思いますが、いかがですか。
  195. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 大切なことでございます。
  196. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは十二月七日の朝日新聞岐阜版ですが、律の恵那中学時代の同窓生十三人が十五万円見舞い金を贈ったことに対しまして、丁寧な礼状が届いたと報じております。「祖国に帰って三ケ月近く、家族や友人、知己の皆さん方の暖かい配慮と励ましの中で私の心は春の如く暖かく幸せに療養に励んでおります。」、要するに、本人が家族と一緒に療養できて幸せだと言っていること、これに対して他人はとやかく言う必要ないわけですね。となれば、大臣が好ましい環境だとは思わないというようなこのことは、大臣認識と完全に違うんです。そういうことはお認めになるでしょう。いかがですか。
  197. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 帰国された当時とその後の事情と、だんだん変わってきていると思います。元気も回復されてくるでしょうし、また、病院もおかわりになったようでございますし、また家族との接触も多くなってくるでしょうし、だんだん変わってきていると思います。
  198. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いまの発言によると、帰国直後はどうも制約があったというような感じですが、決してそうじゃないということを確認したいと思います。
  199. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 御本人が病院をかえたりしておられるわけでございますから、だんだん本人の自由な行動がとれているのじゃないだろうかなと、こう思います。
  200. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 最後に、そうしますと、衆議院での発言はそういった事実も理解しないままの軽率な発言であったと、こう理解すべきですが、そして取り消すべきだと思うんですが。
  201. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私は、当時の状況で私がそう申し上げましたことは、私の感じを申し上げているわけでございますが、別に間違って申し上げたわけではないと、こう思っているわけでございます。
  202. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そう言われますと、だったら、まさに当時そんな客観的状況があったのかということをもう一度聞かざるを得ません。まさに事実、間違えておったじゃないですか。そして公党である共産党に対して、ある新聞には共産党が幽閉したと、そう大臣答弁理解している、そういう影響を与えたんです。そのことについては大臣、少なくとも軽率であって申しわけないと謝罪すべきじゃないでしょうか。
  203. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 近藤さんの話を聞いていまして、だんだんおっしゃりたいことがわかってきたのですけれども、私は別に共産党を意識して、共産党が身柄を拘束しているのだ、物を言わせないようにしているのだというようなことを一言も言っていないわけでございまして、また、質問者と私の答弁とを結びつけていろんな憶測をされる向きが起こる、これを私の責任にされることもこれも困るのじゃないかなという気がするわけでございます。しかし、だんだんとおっしゃっておりますこと、よく理解しております。また、これからも誤解を生まないようにしていくべきだなと、こうも思っております。
  204. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そうしますと、サンケイ新聞のこの記事は少なくとも誤りで、大臣の意図を正確に書いたものでないと、こう理解すべきですな。
  205. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) サンケイ新聞を読んでおりませんけれども、私は共産党を意識して申し上げたわけじゃないということは、はっきり申し上げておきます。
  206. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は、徳島ラジオ商殺し事件に関連して、三、四法務当局に向いたいと思います。  前回の法務委員会で申し上げましたように、私は市民団体である「富士さんの無実を明らかにする市民の会」というものの会員の一人といたしまして、前から請求人や、あるいは弁護団の方々等と連絡をし、そのために努力をしてまいりましたので、去る十二月十三日には徳島地裁に行き、この再審開始決定の受領に立ち会っておりますし、それからその後、検事総長にもお目にかかりまして即時抗告をしないように陳情をいたしました。  ところが、十六日の夜、フジテレビのニュースレポートの時間で、キャスターの某氏がその中で、多分私が検事総長に会いに行くときのテレビでしょうか、画面に現職の国会議員が出ていたが、立法府の立場にある者が現在進行中の案件に対し圧力をかけた、こんなことがあってよいのかと言われたそうであります。私は聞いてないので、友だちがそれを聞いて私に知らせてくれたんですが、現職の国会議員とありますが、これは私のことを指していることは明らかだと思います。  しかし、私としては、国民の声を代表して裁判についても、あるいは検察に対しても疑問があればこれを国会で伺い、あるいは院外でそのための運動を展開するということは私は差し支えない、いや、当然だと思ってやっておるわけでありまするが、それはどうなんですか。こういう意見がたまたま出てきたわけですけれども法務当局としてはその件に関してどういうふうにお考えになっておりますか、念のために伺いたい。
  207. 前田宏

    説明員前田宏君) 私どもテレビも実は拝見しておりませんので、正確なことをお答えできないわけでございますし、また、お尋ねのことにつきまして、私どもお答えする立場にないのじゃないかというふうに思っております。
  208. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま聞いてないし答えられないということでしたが、これはまた別の機会に少し伺うことにいたしましょう。  私は、裁判とか法律とかについては全くの素人でございますけれども、第五次、第六次の再審経過を知っておる一人といたしまして、今度の徳島地裁再審開始決定を私は高く評価するもので、その努力に対して、あるいはその勇気に対して敬意を表し、いままで裁判に対して持っておりました信頼を幾らか回復することができたと言っていいと思います。それに対して、徳島地検の即時抗告は納得できません。  徳高地方検察庁から即時抗告申立書というものの写しがけさ手に入ったんですが、まだよく読んでおる時間がないし、その内容については新聞なんかに多少出ておりましたからそれに触れることは差し控えますが、一口に私は、検察即時抗告をなすった理由といいますか何かを私なりに解釈をすれば、徳島の地検は、地裁の決定が出て、そして一審、二審の判決といいますか、捜査といいますか、それが間違っておったということを強い調子で検察は非難されているようです。そこで、もし即時抗告をしないと、それを認めたことになるといいますか、あるいはそういう地裁の判決に対して憤慨をなすったという、あるそういった感情と、それから即時抗告権が刑事訴訟法でちゃんと与えられている、そこで抗告すると、一つの権利の乱用とでもいいますか、そういうことではないかというふうに思えるのでございます。  私は、全く無実であった富士さんが、もう二十何年、人生のほとんどを無実の罪で、そして、せめて徳島地代での再審再開するという決定だけでも、あの人が命のあるうちに聞かせてあげてほしい。その当時、私は徳島裁判の、地検にも行ってお願いをしたんですけれども、まだ審理が済まないということで、それから約一年たってやっといま地裁が再審再開の決定を下したわけであります。  これについては、法務当局も御存じのように、いろんな人たちがほとんど無罪を信じ、そうしてそのために努力をし、ことに私は、この事件の弁護団、それから日弁連人権委員会のたくさんの弁護士の方たちがほとんど無償で努力をされたことに対して非常に感謝をするわけでありますが、その他支援団体も幾つかありまして、それもみんなが努力をしてまいった。ことに再審再開に対しては、ごらんになりましたようにマスコミが非常に大きく扱って、そして一般の国民はこれを喜んで、そして即時抗告をしないようにという希望もこれは表明されておったのに、私は徳島の地検があえて即時抗告をしたということを非常に残念にというか、あるいは検察に対する不信というものをなお深くした、こう申していいと思います。  この件については、先ほどから他の委員の方々からも御質問があり、刑事局員からの答弁もありましたので、私はそれに対しての当局のお考えというものはもう伺わなくてもいいと思うんですが、ただ、今度の再審で新しく発見された、私としては非常に重大な問題が一つある。そのことをちょっと伺いたいんです。  この事件の第一審が二十八年にあり、その後になりますが、ちょうど自治体警察と国家警察の境目になっていたようです。それで自治体警察は、ある程度これを調べたわけなんで、その調べた調書がたくさんあるらしいんですけれども、ところが、それが地検の方といいますか、検察の方には引き継がれなかった、隠されていたんだということで、検察はああいうはっきりしない証拠有罪判決をしてしまったことになると思うんです。  これは私は、検察といいますか、警察といいますかのいわゆる行政として、一体そういうふうに重要な調書が隠されているというか、引き渡さないというふうな事実があることを実は現実に知って、大変びっくりしたんですけれども、これは法務当局としてはそのことは御存じですか。あるいはそういう事件が、これはもう大分前の話になりますけれども、最近もそういうことがもしあるのじゃ私は大変だということを思うんですけれども、それについてお答えを願いたいと思います。
  209. 前田宏

    説明員前田宏君) 適切なお答えができるかどうかと思いますけれども、まあ一般的に申しまして、警察なら警察でいろいろと事件の捜査をする。その場合に、事件検察庁に送るわけでございますから、関係証拠物なり証拠書類というものが当然に検察庁の方に送られるわけでございます。   ただ、当時といいますか、その警察の捜査当時において内偵段階からいろいろと段階を経て手続を進めていくわけでございますから、いろんな情報とか、そういうものもあろうかと思いますけれども、その場合に、そのすべてを全部検察庁に送らなければならぬということもないのじゃないかというふうに思うわけでございます。内部的にたとえば検討した資料等もあろうかと思いますが、そういうものは本来、性質上、検察庁に送らなくてもいいものであろうと思いますので、やはり内容によってその当否というものは考えられるべきものではないかというふうに思います。
  210. 市川房枝

    ○市川房枝君 それから、検察は法務大臣の管下にあるわけですね。それで、今度の徳島地検のその即時抗告については、やはり徳島の地検と、それから高松の高検と、それから検事総長と三者で、ちょうどその期限である十六日の午後ですか、何か最高検で御相談をなすって、それが何でも五、六時間もかかったんだと。それでその中で、法務省がある程度反対をされたみたいで時間がかかったんだと。これは私のところへあるところからそういうニュースが入ったんですけれども、そういう事実があるかどうかということは別として、法務当局としては、この事件についてはどういう関係にあったといいますか、それを伺いたいんですが。
  211. 前田宏

    説明員前田宏君) お尋ねを正確に理解しているかどうかと思いますが、やはり具体的な事件のことでございますから、第一次的には現地の徳島地検で判断すべきことでございますが、事柄がいろいろな意味で重要でございますから、高松高検、さらには最高検まで相談をして結論を出したということでございまして、具体的な事件のことでございます以上、法務省といたしまして、特にああしろ、こうしろというようなことを申す筋合いではないわけでございます。
  212. 市川房枝

    ○市川房枝君 具体的なことは伺わなくてもいいと思いますよ。ただ、いわゆる検察に関することは一切検事総長に任してあるんだということなのか。あるいは検出総長は、法務大臣に対してどういう関係になっているか。それを伺いたいんです。
  213. 前田宏

    説明員前田宏君) 細かい法律のことを申し上げるのは恐縮かと思いますけれども検察庁法という検察庁の組織あるいは運営につきましての法律があるわけでございまして、法務大臣は、具体的な事件につきましては、検事総長に対してのみ指揮ができるという、例の指揮権というふうに言われておる規定があるわけでございますが、それは規定の上でございまして、実際の運用といたしましては、検事総長を頂点とする検察の独自の判断で事を決めていくというのが通例でございます。
  214. 市川房枝

    ○市川房枝君 法律に暗いからよくわかりませんけれども、指揮権発動ですか、あの有名な事件があってそれは幾らか知っているんですが、そういう場合には法務大臣が指揮権を発動なさるけれども、あとは全部検事総長に任してあるんだと、事務的な打ち合わせというのはあるでしょうけれども、そう理解していいですか。  それから、前の委員会でも私申し上げたけれども裁判所再審開始決定するんであって、だから引き続いてやっぱりまた有罪無罪かといいますか、取り調べをするわけで、検察庁もそこで十分意見が発表できますわね。だから、わざわざ即時抗告をして、そして上級の裁判でまた同じことを何年かかかって繰り返すということは、私はむだといいますか、重複といいますか、といってもいいわけなんであって、この前、西ドイツで即時抗告をさせていないということを申し上げたわけです。  それは事情が違うからというお言葉だったんですが、この問題に関連しては社会党からも、それから日弁連人権委員会からも刑事訴訟法改正案というものがあって、社会党のはすでに国会にお出しになったことがあるんですが、その中にいろいろ細かい点もあるけれども、この即時抗告権を認めていないという点は、私、両方に共通の大きな点だと思うんですが、現在でなくても、この問題を将来法務当局刑事訴訟法改正考える方向でといいますか、ということ。これを法務大臣から御意見をちょっと伺いたいんです。
  215. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 先ほど刑事局長からお答えをしたことでございますけれども裁判手続、これは慎重の上にも慎重を期して、冤罪が起きないようにしなければならない。三審制もとっておりますし、被告の意見も十分開陳されるように必ず弁護士がつかなきゃならないことにもなっておるわけでございますので、そうやって判決確定する、これはやはり不安定なものではないと思うのです。そこでおしまいにしてしまうと、新しい証拠、明らかな証拠が出てきたときに救えないものですから、再審制度が認められているのだと思うのです。  その再審制度を、もっと疑いがあるだけでも再審が認められるようにしろという御意見が出ておるわけでございますけれども、やっぱり判決を安定させるという意味においては、簡単に疑いがあるだけでまた再審開始されるということになれば、なぜ裁判にあれだけの慎重な手続を繰り返してきたのかということが意味がなくなってしまうというわけでございまして、そういう意味合いにおいて法務当局としては、いまの明らかな、かつ新しい証拠が出なければ再審請求できませんよという姿勢はとりたいと、こう考えておるわけであります。  しかし、人道上いろいろな問題から、そこまでかたくなに言わないで、いま市川さんがおっしゃいましたように、無罪にするわけじゃないじゃないか、裁判をもう一遍やるというだけのことじゃないか、だから、そうかたくなに言わないで再審請求の事由を広げたらどうかと、こういうことをおっしゃっているわけであります。  したがいまして、先ほど私がお答えをいたしましたのは、いろいろな御意見があるわけでございますから、そういう御意見も十分検討してひとつ勉強していくようにいたしますと、こう申し上げさしていただいているところでございます。
  216. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま大臣に伺いましたけれども再審開始決定の内容といいますか、事件によりますし、もう明らかなというか、私は本当は今度の決定を見て、検察といいますか、あの当時の裁判所も同罪になるけれども、ずいぶんひどいものだ、あんな簡単なことで十分調べもしないで一人の人間を有罪判決にし、そうしてもう何年も何年も監獄に入れて、そしてそれでとうとう死んじゃったというか、まことに人権を重んじないというか、いわゆる人情といいますか、そういうことを考えないことに実は驚いているわけなんですけれども、これはひとつ御検討をいただきたいと思います。  それから最後に、私は司法に対して国民が参加するといいますか、それは最高裁裁判官の選挙で、あれもおかしな選挙なんですけれども、一応は参加することになっているけれども、あとはほとんど裁判官あるいは検察の方で一般の国民は参加してないんですね。私は今度の事件なんか考えて、やっぱり一般の国民がもっと具体的に参加する必要があるんじゃないかという考えを深くし、そして、前にも陪審法というものが日本にありましたね。ところが、いまストップしているんですか。だから、これはほかでも陪審法を復活しろという意見も出ているようですけれども、陪審法の復活といいますか、陪審法についてどういうふうにお考えになっておりますか、御意見をちょっと伺いたい。
  217. 前田宏

    説明員前田宏君) 裁判に一般の国民の方が関与するという考え方、これは一つの考え方であろうと思います。しかし、ただいま御指摘のように、陪審法というものはわが国でも一時とられたことはございますけれども、実際上余り機能しなかったという実態もあるわけでございます。  それはなぜかということになりますと、その当時と現在との事情が違いますからそのとおりには言えないかと思いますけれども、やはり裁判というものに対する日本国民感情といいますか、それから国民の意識というか、いろいろな問題があろうかと思うわけでございますし、また、英米法系の国で陪審制というものがとられているところはありますけれども、その制度自体について、また反対にいろいろ弊害があるとか問題があるとかいう御意見もあるわけでございますので、やはり裁判制度というものはその国の国情に沿ったものであるべきものだと思いますから、もちろん一つの課題として検討はいたしますけれども、早急にそういう形が望ましいかどうかということは、ちょっと疑問ではないかというふうに考えております。
  218. 市川房枝

    ○市川房枝君 まだこの問題いろいろありますけれども、時間が参りましたので、私の質問はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  219. 中山千夏

    ○中山千夏君 私は、一連の再審問題の中で免田事件と、それから免田事件に関連してちょっと死刑制度についてお話をお伺いしたいんですけれども、最初に、先ほど戸塚さんの質問が死刑制度でございまして、その中で死刑囚は現在二十四名である、十名が再審請求をしている、執行については公にしないというお答えがあったんですけれども、たとえば過去五年間に何名の執行があったというようなことも公にはできないんでしょうか。
  220. 前田宏

    説明員前田宏君) いま正確な数字を持っておりませんけれども、平均いたしますと年間に数名ぐらいの執行があるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  221. 中山千夏

    ○中山千夏君 免田事件というものを見るときに、免田元被告の死刑が最高裁確定したのが一九五一年十二月なんですね。それから、新聞なんかでも報道されていますけれども、二十九年ぶりに無罪への道が開かれた、これは世界でも例のないことだと言われているんです。その間の被告や被告の家族の状況というのは、いろいろなところで語られていますけれども、大変人権という見地から見て問題があることだと思います。毎日毎日、死の恐怖というものに襲われながら獄につながれている人のありようというものは、だれの心にも響かずにはいないと思うんですけれども、もっと恐ろしいのは、やはり死刑という制度は、もしこの間に法務大臣決定を下していたならば彼の命はなくて、いま死んで、いなかったかもしれないということなんですね。  死刑制度については、こういう一連の事件が起こった後でも、やはり現在は廃止するわけにはいかないというお考え大臣は持っていらっしゃるというのは、戸塚さんの審議の中でも伺ったんですけれども、たとえば廃止とまでいかなくても、いまこういう事件が起こったことを一つのわれわれの考えるべき問題ととらえて、死刑制度の一時的な中止というようなことは考えられないでしょうか。大臣いかがでしょうか。
  222. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 裁判において冤罪が起こらないように慎重の上にも慎重を期さなきゃならないと、こう考えております。  死刑制度の問題につきましては、六年前に法制審議会から刑法改正についての答申をいただいておるわけでございまして、その中で、死刑に当たる罪種がたしか十八であったのを八に下げましたか、下げてはいるわけでございますけれども、やはり死刑制度は存続すべきであるという答申になっておるわけでございます。そういうこともございますので、廃止とか中止、停止とかいうような措置国民多数の意見には反するじゃないだろうかなと、こう思っておるわけでございます。
  223. 中山千夏

    ○中山千夏君 先ほどから、こういう冤罪事件であるとか、それから再審が必要とされるような事態をなるべく起こさないように注意をするべきだ、また、これからも努力をしていくというようなお話は伺っているわけですけれども、具体的にどういう対策をとっておられるのかということを、ちょっとお伺いしたいんです。
  224. 前田宏

    説明員前田宏君) 具体的にと申しましてもなかなかお答えしにくいわけでございますが、まあ一つの例で申しますと、いろいろと反省すべき点のある事件につきましては、検察官なら検察官の研修の際に、それを一つの貴重な資料として検討するというようなこともやっておるわけでございます。  また一方、性質は違いますけれども、死刑が確定しました場合に、その執行について大臣の命令が必要でございますが、その手続におきましては慎重にも慎重の度を加えて内容を検討するということもやっているわけでございますので、そういうことによって過った裁判が執行されるということがないようにするわけでございますが、それにも増して、もともとそういうことがあってはならない。そのためには、そういう事件の処理に携わる警察から裁判所まで、それぞれの自覚といいますか、見識といいますか、そういうものが積み重ねられていくべきものであろうというふうに思っております。
  225. 中山千夏

    ○中山千夏君 とかくこういう事件が起こったり、それから捜査がおくれたりしますと、新聞や何かでも警察は何をしているとか、それから裁判所はもっとちゃんとしなくちゃだめじゃないか、検察は取り調べにもっと気をつけろというようなハッパがかけられるんですけれども、もちろん間違いなくやるということはすごく大切なことだとは思うんですね。でも、裁判といっても人間がやることですし、悪気はなくても、本当に間違いがないようにと一生懸命やっていても、人間がやることである以上、過ちというのは避けられないというふうに私なんかは思うんです。その過ちがあった場合に、死刑のような、つまりある人の存在をそのまま消してしまう、ある人の未来を取り返しのつかないことにしてしまうというような制度というのは、過ちが人間にはあるということを考えた場合に、どんな方法であっても非常に残虐なものではないかと思うんですよね。  それで、私なんかは死刑は廃止すべきではないかと考えているんですけれども、死刑制度に対する法務省調査というものについてちょっとお伺いしたいんですけれども、少し死刑制度に対する調査が不十分なのじゃないかなという感じがあるんです。それはたとえば死刑制度を存続した方がいいという意見の中には、非常に凶悪な犯罪防止の効果ということが挙げられているんですけれども、その点については専門家の書いたものや意見なんか聞きますと、大分違った見方をしている人もたくさんいらっしゃるわけですね。それに対して効果があるのだという具体的な説得力のあるデータだとか事実だとかというようなものを法務当局で出していらっしゃるのを、私は知らないんですけれども、それだけに限らず、その死刑制度についての調査というものをどんなふうに、どんな形で、どんな方向でしていらしたのかということを、ちょっとお伺いしたいんです。
  226. 前田宏

    説明員前田宏君) なかなか一言でお答えにくいわけでございますけれども、率直に申しまして、死刑制度を存続するか廃止するかということ、これはいろいろと物の考え方によって違ってくることだろうと思います。確かにいま中山委員の仰せのような考え方、それで廃止論を主張しておられる方も一部におありのことは十分承知しておりますが、お言葉の中にありましたように、およそ人間のやることであるからということでございますが、やはり国の制度というものもすべて人間に頼っている面が多いわけでございます。  もちろん、誤りのないように、法律的にも、また運用的にも整備しなきゃならぬということで最大限の努力が尽くされているわけでございますが、やはりそういう制度国民が国会を通じて制定をしておるということでございますから、やはりそれを信用しない以上はどうにもならないといいますか、そういう面も一面あるのじゃないかというふうに思うわけでございます。  死刑を存続することによってそういう間違いがあってはいかぬからということで、そちらの面だけを強調いたしますと、およそ刑事事件の処理というものも心配でできないということになって、極論すればそういうことにもなりかねないわけでございますから、なかなかむずかしい点が多いのじゃないかと思います。  なぜそういうことを申しましたかといいますと、いまの調査のことに関係いたしますが、いわば存置した場合と廃止した場合との比較ということが、これはなかなか性質上できないわけでございます。実験でできないわけでございますから、いろいろと諸外国の例等も参考にしながら考えていくほかないというふうに思うわけでございまして、そのいわゆる抑止力というものがどれだけあるかということを数的に出すということも、やはり事柄の性質上むずかしいのじゃないかというふうに考えております。
  227. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうすると、その存続の理由として、死刑制度の凶悪犯罪の抑止力というのは余り重要には考えていらっしゃらないということになるんでしょうか。そのデータとして、あるいは具体的に人を説得するに足るだけの何かこう具体的な説明、データなり事実なりというものが出せないという状態であるとしたらですね。
  228. 前田宏

    説明員前田宏君) 先ほども申し上げましたように、存続している場合と廃止している場合とが同じ場合に適用にならないわけでございますから、こうすればこうなったであろうということは言えないわけだと思います。したがいまして、先ほど申しましたように、諸外国の例で見たり、また国民感情といいますか、そういうことから見たり、あるいは心理的な問題とか、そういうふうなことから総合判断するほかないのじゃないかというふうに思うわけでございまして、やはり一般の国民感情として重い処罰ということが設けられている場合には、それをしないようにするというような意味での抑止力というものはあるというのが、やはり大方の国民の意識ではなかろうかというふうに見て差し支えないと思っております。
  229. 中山千夏

    ○中山千夏君 その大方の国民の意識というのは、何か世論調査ですか、そういうもので数をお出しになりましたでしょうか。
  230. 前田宏

    説明員前田宏君) いま正確なものを持っておりませんけれども、毎年というほどじゃございませんが、総理府のいわゆる世論調査というものがございまして、たしか昨年からことしにかけてだったろうと思いますが、死刑につきましてもそういう世論調査をして、六〇何%の方が死刑存続という意見であったというふうに記憶しております。
  231. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうすると、主に世論によっているという感じなんでしょうか、その死刑存続ということは。
  232. 前田宏

    説明員前田宏君) 繰り返して申し上げるようでございますけれども、やはり刑罰というものは何のためにあるかという基本的な問題にもさかのぼるわけでございまして、そういうことがなければなくて済む世の中であればいいと、さっき大臣もおっしゃったわけでございますけれども、やはり何か犯罪、つまり悪いことした場合に処罰を受けるという制度がなければ、国の秩序といいますか、治安といいますか、そういうものは維持できない。もしそういうことがなくて済めば理想的といいますか、ということになろうかと思いますけれども現実はそういうことでない。したがって、刑法なり、またその他の法令でいろいろ罰則は定められているわけでございます。  その場合に、そのやった行為の重い軽いに応じて刑罰も重い軽いといいますか、それ相応の刑罰を定めるということが、やはり常識といいますか、そういうことであろうと思いますし、それは日本に限らず、世界各国共通の問題ではないかというふうに思っております。
  233. 中山千夏

    ○中山千夏君 刑罰に関しては、まさにおっしゃることに同意できる点があるわけですけれども、事が、つまりある一人の人間を全然いなくしてしまう、殺してしまうということですので、たとえば刑罰の中には悪いことをしたから罰するということだけではなくて、近代的な国家になればなるほど、その人がもっと社会に溶け込んでよい生き方をできるように、犯罪を犯した人でも将来立ち直れるようにという面があると思うんですね。しかし、死刑という制度はそれも全く絶ってしまう。同じ人間としてどうにもちょっとやりきれない、死刑を施す方も、もちろん施される方もやりきれない制度だと思うのでこだわっているわけです。  時間もなくなりますので、これもまだほかの機会にもう少し深くいろいろお話ししてみたいと思いますけれども、六年前に法制審議会で死刑制度存続に関する答申が出たんですね。その答申が出てから一連の再審事件なんかが起こっていまして、その六年前の答申というのが現時点で参考になるものかどうかというのを非常に疑問に思うのですけれども、ちょっと状況が変わってきたのではないかというような気がするのですが、それはいかがですか。
  234. 前田宏

    説明員前田宏君) 確かに最近著名事件と申しますか、世の中でいろいろと知られている事件につきまして、再審開始というようなことがありまして、またそれなりに関心を高めていることは事実だと思います。しかしながら、死刑の存廃ということはもうずいぶん昔から議論されていることでございますし、いま中山委員が仰せのように、もし間違って死刑に処したならば取り返しがつかないではないかということが、その廃止論の一つの大きな理由になっていることは、もう前々からのことであるわけでございます。法制審議会におきましても長年にわたって検討をし、そういう存廃諭、特に強い廃止論、これも十分勘案した上で結論を出したということでございますから、実質的な意味での事情の変更というものはないのじゃないかというふうに思っております。
  235. 中山千夏

    ○中山千夏君 今後、死刑制度について調査研究していかれるというような予定はありますか。
  236. 前田宏

    説明員前田宏君) 刑法の全面改正作業というものは、先ほどのほかの委員お尋ねにもございましたように、現在進行をしておるわけでございます。その中で、死刑の問題も当然一つの問題点であるわけでございます。先ほどの答申というのも、死刑問題だけじゃなくて、刑法の全面改正についての答申であるわけでございますが、その中で一つの問題点であったことは事実でございます。したがいまして、いまのような御意見また最近のいろいろな事象、そういうものももちろん勘案しながら作業を進めていきたいと、かように考えております。
  237. 中山千夏

    ○中山千夏君 どうもありがとうございました。終わります。
  238. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十二分散会