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真鍋賢二君 第九十二回
国会閉会後に、
委員会より香川県及び高知県へ派遣されました
委員を代表して、
調査の結果を御報告いたします。
去る九月十日から三日間、
鈴木委員長、
上條理事及び私、
真鍋とが、高松、丸亀、善通寺及び高知の各市におきまして、最近の司法行政及び法務行政の実情について
調査を行ってまいりました。
調査の対象は、香川県におきましては高松高等
裁判所、高松地方
裁判所、高松家庭
裁判所、高松高等
検察庁、高松地方
検察庁、高松法務局、高松矯正管区、四国地方更生保護
委員会、高松入国管
理事務所、丸亀少女の家、四国少年院でございます。高知県におきましては、高知地方
裁判所、高知家庭
裁判所、高知地方
検察庁、高知地方法務局、高知少年鑑別所、高知保護観察所、高知刑務所でございます。
以下、
調査項目に従いまして、御報告申し上げます。
第一は、
裁判所及び
法務省関係各庁の管内概況でございます。
初めに、
裁判所における各種
事件の処理状況について申し上げます。
まず、昭和五十四年までの五年間の
事件の概況を民事
事件について見ますと、高松高等
裁判所の民事訴訟
事件の受理件数は、一時減少したもののその前後に大きな増減はなく、管内の地方
裁判所及び簡易
裁判所の新受件数は、全般的に見て、緩やかな増加の傾向にあると認められます。特に高知地裁管内の簡易
裁判におきましては、昭和五十一年以後民事訴訟
事件が急増しており、これは割賦購入あっせん業者からの立てかえ金請求
事件の増加によるものと見られます。
次に、刑事
事件について見ますと、高松高等
裁判所における刑事訴訟
事件の受理人員は、昭和五十三年以降増勢に転じ、管内地方
裁判所におきましても、五十四年は五十年に比較して約二八%の増加となっております。ただ、管内簡易
裁判所における刑事訴訟
事件及び略式
事件の新受人員は、ほぼ横ばいの状態にありますが、高松では略式
事件が増加し、高知では訴訟
事件が減少してきております。刑事
事件の増加は、覚せい剤取締法または道路交通法の
違反事件の漸増によると考えられます。
各
裁判所における
事件の処理状況を見ますと、民・刑
事件とも新受件数、新受人員数の増減に応じて推移しており、未済件数、未済人員に大きな変化はありませんが、高松高等
裁判所における昭和五十四年の刑事
事件の未済件数は、過去五年間の最低となっております。
なお、再審請求
事件として注目されております。いわゆる財田川
事件は、現在、高松高等
裁判所に係属するところとなっております。
次に、家庭
裁判所関係の
事件について見ますと、高松高等
裁判所管内の家庭
裁判所における家事
事件及び少年
事件は、ともに年を追って増加の傾向にあります。少年
事件は、高松家裁管内に例をとると、昭和五十四年までの五年間に、道路交通法
違反保護
事件を中心に四三%の著しい増加を示しております。家事
事件は、審判
事件、調停
事件とも、高松、高知両家裁管内ではほぼ横ばいの状況にありますが、核家族化の進展等社会情勢の変化を反映して複雑困難な
事件がふえております。これら
事件の処理状況はほぼ新受に見合っていると見られます。
次は、
検察庁
関係でございます。
高松高等
検察庁管内の治安情勢は、おおむね平穏に推移しておりますが、ここ数年覚せい剤取締法
違反事件が累増の傾向にあります。このことは、覚せい剤の使用による心神喪失の状態での犯行の発生あるいは暴力団の資金源等にも関連するゆゆしい問題と言わなければならず、今後とも厳正な取り締まりが望まれるところであります。刑法犯と特別法犯との割合は、ほぼ一対二の比率で推移しております。また、高松地検の昭和五十四年の受理人員で見ますと、刑法犯の七三・八%が自動車による業務上過失致死傷
事件、特別法犯の八七・九%が道路交通法
違反事件であり、交通
事件が両者の大半を占める状況にあります。高知地検管内の犯罪状況の特徴としては、殺人
事件と交通事故による死亡者数がともに全国ワースト一位にあることを挙げなければなりません。さらに、飲酒運転による事故件数も、愛媛を除く四国三県はすべて上位にあり、道路交通事情の改善等適切な対策の必要が痛感されます。
次は、法務局
関係であります。
高松法務局管内の最近の訟務
事件の動向は、量的にはほぼ横ばいの状況にありますが、質的には顕著な変化が見られます。すなわち、伊方原発訴訟、未熟児網膜症訴訟等公共事業
関係あるいは薬害
関係の大型で複雑困難な訴訟の増加がそれであります。一方、民事行政部門におきましては、戸籍、供託事務は横ばいの状況ながら、登記乙号
事件の需要の拡大傾向はとどまることなく、特に直接請求
事件の増加によって窓口事務に混雑の度を加えております。このような状況から、事務量に見合う職員の増員と処遇改善のための行政職(一)四等級定数の拡大について切実な要望がなされたのであります。法務局の増員については、かねてから強い要望のあるところであり、この際、職員の適正配置等格段の措置が望まれます。また、高知地方法務局におきましては、管内二十一出張所中、八庁が一人庁であり、職員に事故ある場合の対応に苦慮している実情にあります。
次は、矯正
関係であります。
丸亀少女の家は、四国唯一の女子少年収容施設でありまして、長期または短期の処遇を必要とする者に対して、その資質と特性に応じたきめ細かい個別的矯正教育がなされております。出院後四年までの更生率は八〇・七%となっております。
四国少年院は、長期処遇の少年の収容施設でありまして、現在、収容者の約半数は窃盗によるものですが、二割近くは毒物・劇物取締法または覚せい剤取締法の
違反によるものであります。当院におきましては、薬物乱用、暴力志向等問題群別講座を設け、非行の態様に対応した特色ある処遇が行われております。
高知刑務所は、明治四年の開設にかかるものでありますが、昭和五十一年十月に現在地に新築移転し、実刑刑期八年未満で犯罪傾向の進んでいる若年者を主として収容しております。昨年末に収容定員が倍増しておりますが、収容者の適正処遇とボイラー技能等の職業訓練の充実に向けて実績を上げております。ちなみに、全国の
裁判所、
検察庁の指定用紙は、一括して当所の印刷によるものであります。
高知少年鑑別所におきましては、虞犯による女子中学生の収容が急増しているのが注目されます。
次に、更生保護
関係でございます。
四国更生保護
委員会管内の保護観察
事件の受理件数は増加しております。これを高知保護観察所について見ますと、昭和五十四年までの五カ年における件数は、保護観察付執行猶予者を中心に二倍以上に増加し、中でも交通
事件は約四・五倍に達しております。また、四国管内の一般的動向として、覚せい剤常用者、暴走族少年等の処遇困難者及び暴力団
関係者、精神障害者等処遇上特別な配慮を要する者がふえる傾向にあります。これら保護観察対象者に対しましては、保護観察官の定期駐在による面接指導や家庭訪問による直接処遇が肝要とされながら、現在の定員と予算をもってしてはその効果的実施は期待できない状況にあります。同管内における保護観察官一名当たりの
事件担当件数が全国平均を上回る事情もあって、現地では保護観察官の大幅増員と旅費の増額が望まれております。
次は、入国管理
関係であります。
高松入国管
理事務
所管内の外国人登録数は、本年六月末現在五千六百九十五名で、その八二%は
韓国・朝鮮人であります。いずれの県におきましても定住者は漸増の傾向にあります。管内の過疎地域では、無医状態を解消するため、主として中国、
韓国を国籍とする外国人医師を招聘する傾向が強く、七月末現在では五十名が在留中とのことであります。また、最近の状況の特徴は、小型
韓国船の入港の急増でありまして、今年八月現在で九十四隻と、昨年一年間の実績をすでに大幅に超えております。これらの入港地はいずれも入管出張所から遠隔の地にありますため、臨船審査体制の充実上、出張旅費の増額について要望がありました。
第二として、
裁判所及び
法務省関係の庁舎及び宿舎の営繕状況について申し上げます。
まず、庁舎施設についてでありますが、
裁判所関係では近年鉄筋建築への整備が進んできているものの、高松及び高知管内の簡易
裁判所のうち八庁は、主として昭和二十年代の木造建築であり、雨漏り、壁落ち等の見られる庁舎もあって、その整備が急がれております。
検察庁
関係では、昭和五十二年に高松法務合同庁舎が新営され、現在、高松高等
検察庁ほか九庁が使用し、その施設、執務環境は満足すべき状況にあります。一方、区
検察庁の一部には、
裁判所同様昭和二十年代の木造庁舎が見られ、そのうち、台風常襲地帯にあって老朽化のはなはだしい赤岡区検、シロアリ被害と狭隘化の著しい土庄区検については、現在新営方について検討がなされております。法務局
関係では、庁舎の整備は逐次進んでおりますが、いまだに木造老朽化庁舎が多く、また登記
事件の急増による利用者の増加等によって狭隘化が著しく、早期新営ないし増築を要する庁は二十庁を下りません。また、四国四県における法務局の冷房機設置率は一五・七%にすぎず、管内の高温多湿の気象条件を考慮すれば、その充実が望まれるところであります。
最後は、宿舎についてであります。職員の宿舎は、逐年増築整備され、安定充足の方向にあると言えますが、高知地検におけるごとく宿舎不足の例も
指摘されております。特に、法務局の支局管内では職員宿舎の大幅不足によって人事管理上に隘路を生じており、その確保については、一層の配慮が必要と思われます。
以上をもちまして報告を終わりますが、詳細は
調査室保管の資料に譲りたいと存じます。
最後に、今回の
調査に当たり、最高
裁判所及び
法務省から種々便宜を得ましたこと、また現地の各
関係機関から終始懇切な御協力をいただきましたことに厚くお礼を申し上げます。
以上です。