○柏原ヤス君 私は母乳について
質問をしたいと思います。
それは、母乳のことにつきましては
高等学校の
教科書に母乳の問題が取り上げられております。その
教科書に取り上げられている範囲の中での母乳の問題についてお聞きしたいと思うわけです。
それは、母乳については
子供の幸福というものを
考えますと、母乳で育った
子供は一生幸せではないかと、幸せだと、こう思うておりますので、こうした母乳について
文部省で取り扱っている
教科書にこれがどのように扱われているか。母乳のことはここ数十年私
たちが牛のお乳で
子供を育てるというようになってまいりました。そういう中で学者の中にもいかにもそれが結構なことだというような講演をなさる方も多い。また、乳業界は巨大な資本を使って情報を流し、人口栄養、特に特殊調製粉乳がいかにもよいというような宣伝をいたしまして、
子供をミルクで育てた方がいいんだというような風潮になってしまいました。母親の方は昔から
子供を母乳で育てるのは当然だというふうにして母乳を与えてきたわけです。そういう中で自分の
子供全部を母乳で育てたという、そういうお母さんに、あなたはお子さんを全部母乳で育てましたね、なぜですかと——なぜですかと聞くのもおかしいんですけれ
ども——聞きますと、そのお母さんは出たからよと、こういうふうに言うんですよ。出たからよって、おしっこでも出たみたいに。さもなければ、ただだからと、こう言う。それじゃ貧乏人が母乳で育て、お金のある人はミルクで育てるという、そういうのかというような感じを持つわけなんです。ですから、あなたが
子供を全部母乳で育てたとしても、出ないわよとか、哺乳びんで育てた方がハイカラだというような、そういう若い人に対して何も言えない。これを一歩踏み込んで、自分のお乳というものがすばらしいものなんだと、お乳で育った
子供はまたお乳で
子供を育てるという、こうしたとうとい作業というものが続いているからこそ今日人類の発展はあるんだと、このくらい言っても差し支えない。これがここでとだえてしまったならばどうなるだろうか。アメリカあたりではもうすでにお乳で育ってもいない、母乳のすばらしさを忘れちゃった、そういう国民が非常に多くなったというので、これは問題になっているわけなんです。日本もこのままにしておけばそういう社会になってしまう。テレビなどを見ていても、おっぱいはだれの物なのかしらと、こう言いたい。おっぱいは赤ちゃんのお弁当箱なのかしら、それとも大人のおもちゃ箱かしらと、こう言いたいような現状でございます。
ほかの動物のお乳で育てても肉体の害というものはいま医学が進歩しておりますから何とか治していけることができると思いますけれ
ども、心の害というものは果たしてどうだろうかと、こう
考えますと、いまの母親
たちに、特に未来の母になるべき人、一人一人に母乳の大切さ、とうとさ、これこそ人間
文化なんだというこの語り継ぎというものができなきゃならない。こう痛感しますときに、私はやはり根本は
教育だと、
教育によってこの思想をしっかりと持たせなきゃならないと、こう思いまして、こういう観点から、一体
文部省は、また
文部省の検定によってつくられている
教科書でどんなふうにこれを扱っているだろうかということを調べてみました。果たしてこれでいいだろうかと思わずにいられませんので、
教科書の
内容を取り上げて、まず厚生省にお伺いをし、その後で
文部省にお尋ねしたいと、こう思うわけでございます。
そこで、何冊かの
教科書に目を通してみました。
まず、この「母乳栄養の重要性」というものをどういうふうに説明しているか。これはある
教科書ですけれ
ども、「母乳栄養は、育児上きわめてたいせつである。」当然そういうふうに言います。ところが、その後に職業を持つ母親がふえた。誤った母性保護や育児感を持つ者もいるので母乳を飲ませるのをやめる者がある、出が悪い者があると、こういうふうに水をかけたような
言葉をここに述べているわけですね。そして、「つとめて母乳を与える必要がある。」、「つとめて」とは何事だと、こういうふうに私は頭へきちゃうわけなんですね。また、この
内容で職業を持つ母親が母乳を飲ませるのに大変支障を持って飲ませられなくなるというようなことをまことしやかに取り上げていますけれ
ども、それじゃ産前産後、特に産後六週間の休暇というものが法律上認られているじゃないか。育児時間というものもとれるじゃないかと。現在働いている女性が、母親が母乳で育てている例はもうどんどんふえているわけなんですね。そういうものを時代おくれに取り上げている。
また、もう
一つの
教科書を見ますと、「乳児に最適の栄養食品は母乳である。」、こういうふうにりっぱなことを言っているわけです。そのとおり。ところが、その次に、「最近人工栄養が進歩して母乳に劣らない働きをするようになってはいるが、粉乳や牛乳はあくまで母乳不足や母乳を与えられないときの
補助に与えるべきである。」と、ちょっともう少し説明させていただきますと、乳児に最適の栄養食品は母乳だと、ところが最近人工栄養が進歩して母乳に劣らない働きをするようになった粉乳や牛乳があると、こういうふうに。何でこんなよけいなことを言うんだろうと。「乳児に最適の栄養食品は母乳である。」と、それで粉乳や牛乳のことはほめなくていいからそこを抜かして、粉乳や牛乳はあくまで母乳不足や母乳を与えられないときの
補助にすべきであるでいいじゃないかと思うんですね。
それからある本を見ますと、やはり母乳は非常にいいということを書いているんですけれ
ども、しばらく読んでいくと、「母乳栄養を行うには、乳の分泌が豊富であることが必須
条件なので、母親は、日常の健康管理によく注意し、栄養をじゅうぶんにとり、心の安定をはかるように努めなければならない。」、大変ですよと言わんばかり。それで、その後に人工栄養の説明がずうっとしてあって、これは非常に簡単である。
最後のところで「湯に溶かして与えるだけでよい。」なんて言ってるんですね。そうすると、何だか母乳を上げるときは物すごい努力をしなきゃならない、人工栄養の方はちょっと「溶かして与えるだけでよい。」なんて、私は本当におかしいんじゃないかなと思うんですね。そういう点で厚生省はどういうふうにお感じですか。