○青島幸男君 いまさらのようにそういうことをおっしゃられるのは、ちょっと
努力不足と申しますか、見識のなさといいますか、その辺責めたいような気もいたしますけれども、このペイテレビの
放送法上に占める扱いとかその他につきましては、先ほど
大森委員の質問について御答弁がありましたので私了解しましたけれども、アメリカでは六〇年代あたりにケーブルテレビを通じてまず始めたわけですね。これが余り
需要がございませんので一回挫折したというかっこうだったようです。それが連邦
通信委員会、FCCというんですか、ここが規制を緩めたということから七〇年後半から非常に活発になったというふうに聞いております。
大体におきまして、そういう文化面——電気機器にいたしましても何にいたしましても、大体アメリカの二十年後を追っていると思えば間違いないんだということをかつて言われておりましたけれども、現在ではやがて追い越すという
部門も出てまいりまして、ですから、アメリカにならっていさえすればいいんだというようなかっこうではもう対応し切れないという時期に来やしないかと私ども考えるわけでして、ですから、先ほどの御答弁のような状態では、実際に起き上がってきた事態に的確に対処できないということで混乱を生じせしめやしないかという危惧が私にはあるわけです。
これがどういう形で発展していくのかということはちょっと予測しがたいんですけれども、二十五年前に民放並びにNHKさんが発足した当時、私ども新橋の広場でお互いに肩を接しながら伸び上がって見ていた
状況を考えますと、その後十年、十五年でこれだけ受信機が普及して、テレビがこれだけのものになるということは何人も予想し得ませんでした。ですから、このペイテレビの普及につきましても、今後どういう推移をたどっていくかということはちょっと予測しがたいと思うんですね。ですから、その辺のことについて深く思いをいたしておかないと、どろなわ的になって戸惑いばかりで、一般の方々にも迷惑かけることになりはしないかということで苦言を呈する次第でございます。
公共放送と民放とそれからペイテレビができまして、その上に仮に
放送大学というようなものができますと、四本立てという感じになりますね。それで、しかもペイテレビというのは実はNHKに一番近い性格になっているわけですね。デコーダーといりもの、発信する
電波に暗号が付せられていて、その暗号を解読する装置をお持ちの方が暗号の中から自分の見たい
電波を抽出してごらんいただくわけですね。そのデコーダーを貸与する、その使用料として
料金を払うというかっこうにはなっておりますが、デコーダーは消耗品じゃございませんので、貸与した賃貸料として払うかっこうにはなっておりますが、実際には
受信料と考えた方が的確かと思います。
こういうテレビが一般に普及してまいりますと、NHKと真っ向から対立することになりはしないかと思います。そうなったときに、NHKの経営基盤をひどく侵害あるいは傷つけるようなことになりはしないかという感じもするわけですね。この議論をもっと進めてまいりますと、実際にはこのペイテレビという認識のあり方がNHKのこれからの経営のあり方には一番私は近いんじゃないかという気さえしているわけです。NHKの
放送の
受信料というものが
放送の対価として扱われているのか、あるいは賛助料としてNHKに払っているのか、あるいは米軍の関係者が考えるように一種の税金というような考え方さえあるわけですね。
こういうあいまいなことになっているのは、実は
放送法のたてまえから言っても、実際に受信機を買ったら映るんだからおまえ払えと言うのは、基本的には契約でも何でもないわけですね。これを無理やりに契約にさしてしまおう、取り立てようという考え方が基本的に無理なためにさまざまの議論がなされているわけですね。幸いにして、NHKさんの御
努力もありまして九七%という収納率をおさめております。これはわが国の
国民性にも深く根差すところだと思いますが、非常に従順にNHKというものの姿を容認して、さらに助長させようという
受信者の方々の
理解と
努力がNHKを支えているわけですね。
しかし、こういうあいまいなかっこうにしておくということは、実は後々禍根を残すことになりはしないかという気がします。本来なら、NHKの
電波こそデコーダーを持たなければ見えないかっこうになっていて、新しく生産されるキャビネットの中にはデコーダーを収納する空間を設けて、どなたでもお買いになれます。受信機を買ったけれどもNHKが見えない。NHKにお
電話をするなり連絡をすると、デコーダーを持った徴収員がおいでになって、これをお取りつけいただくにつきましては御契約をいただきます。そのときに初めて契約というものが本質的に法律的な意味で成り立つと思うんですね。それで、これをごらんになるんでしたら
受信料をお支払いくださいというときに初めて近代的な契約が成り立つわけですね。そういうことになるということを、先々のことまで考えますと非常に複雑な問題を含んでいやしないかと私は思うわけです。
で、一般に表に流れている
電波を雨の水と考えて有線
放送を水道の水と考えるという例を私前にも出しまして、雨の水も水道の水も同じじゃないか、しかし水道を引かなけりゃ水は取れないし、雨ならどこにでも降るんだからという考えであいまいに過ごしてしまったことが一番禍根になっているという気がするんですね。
いまCATVの現状を見ますと、CATVはもっぱら難視聴の方に使われている比重が多うございまして、自主
放送はそれなりにいま
運営はしておるようですけれども、まだ目立った
状況にはなっておりませんが、やがては違ったかっこうになると思いますね。特にアメリカなんかでいまやっておりますのは、実際には新しい
電波を一つ認可を受けるということでなしに、普通の民放局が昼間普通の
放送を普通の免許で流しているわけですね。夜間にデコーダーをつけなきゃ見られないサブスクリプションテレビともいいますか、このペイテレビを流している。そういう
状況すらあるわけでして、いまに民放さんもそういうことを始めんじゃないかという気がしますね。
もう一つは、劇場にわれわれが参りまして映画を見ますけれども、そのときには、いまロードショーを見に行こうとすると二千円ぐらいかかるでしょうね。往復の足代あるいは食事費なんかを入れますと、ちょっと映画を見に行こうといっても三千円、五千円はかかるわけです。たとえばアメリカで何でこれが発達してきたかというと、アメリカでもでき上がった写真は一年か二年ぐらいたたないと劇場用映画はテレビには乗りませんですね。ということは、企業としての相互互換性もあるでしょうしね。しかしクローズドサーキットになりますと、有料でしか見せないというところへ上映権だけを渡すわけですからね、フィルムを渡すのじゃなくて。そうすると、かなり早い時期に渡せるわけですね。そうすると、実際にはそういうペイテレビに三千五百円なり五千円なりで契約をしていると、居ながらにして、ついこの間ロードショーとして上映したフィルムが自宅にいて、しかもCMに煩わされることもなく、時間制限のため重要な部分がカットされたり再編集されたものでないものが自宅にいて見られるわけですね。そうすると、映画好きの方が三本、五本ごらんになるんだったらペイテレビはずいぶん安くつくわけですね。そういうかっこうで発展してきていると思います。
先ほど電監
局長おっしゃいましたけれども、
放送大学なら
公共性があるけれども、娯楽一辺倒で劇映画ばかり流すようなものについては
公共性の面からして公共の
電波を使用するについてはちょっと考慮が要るのではないかというような御発言もなさいましたけれども、まさに私もそのとおりだと思います。しかしアメリカのその種の局の中には四六時中報道だけ流している局もあるわけですね。そういうものの要求が出たときに、そのことをもってエクスキューズとすることにならないわけですね。拒否する理由にはなりませんね、
公共性のたてまえから。そうなりますと、そういうかっこうのものが申請されたときには、いままでの論法ですと拒否できませんことになりますね。ですから、対応の仕方を綿密に考えておかなければならないような気がします。
それから現在のオーディオの機器の発達の
状況なんかを見ますと、FMの発達とFMの
放送が
開始されてからオーディオ機器の産業というのは非常に躍進しましたし、オーディオのファンもふえましたね。ということは、音楽なんかを聞きますと、FMを聞いてたらAMは聞けないわけですね。それと同じように、NHKさんの
研究所で開発なさっているような高品位のテレビなんというものがUHFで2を使うようなかっこうでペイテレビが細かい走査線で良質の画を流すようになりますと、これは一回それを見たらほかのが見られないよということになりやしませんか。自宅に居ながらにして大型のスクリーンで見るのと同じような画が見られるということになりますと、NHKの
料金を払うんだったらおれは何々ペイテレビと契約したいという方が大ぜいさん出てこられますと、これは
受信料収納に全く影響が出てくると思いますね。そうなってからあわててもちょっと遅いんじゃないかという気さえするんですけれども、その辺は電監
局長はどういうふうにお考えになりますか。