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国務大臣(
園田直君) ただいま議題となりました
健康保険法等の一部を改正する
法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
医療保険
制度の
基本的改革は、かねてから重要な課題となっているところでありますが、医療保険をめぐる諸情勢は、近年厳しさを加えております。
かつてのような高度経済成長が期待できない情勢のもとにおいては、人口構成の老齢化や医療の高度化等により医療費の伸びが賃金の伸びを上回る状況が続くものと考えられます。また、このような医療費の負担の問題のみならず、医療体制の整備、老人保健医療
制度の整備など、早急に解決を図るべき多くの問題があります。
したがいまして、医療保険
制度の
基本的改革に当たりましては、医療保険
制度のみにとどまらず、医療
制度、
健康管理対策など、関連各分野においても逐次
改善を図ってまいる考えであります。
医療保険
制度の改革については、まず、社会経済情勢の変化に
対応した健康保険
制度の健全な発展を図るための
健康保険法等の一部を改正する
法律案を第八十四回国会に提出し、その後第九十一回国会に至るまで御審議を煩わしたのでありますが、成立を見るに至りませんでした。
しかしながら、医療保険
制度の改革は、緊急の国民的課題であり、一刻も早くその実現を図る必要があることから、さらに今国会にこの
法律案を提案し、御審議を願うことといたした次第であります。
以下この
法律案の内容について概略を御説明申し上げます。
まず、健康保険法の改正について申し上げます。
第一は、医療給付に関する改正でありますが、被保険者と被扶養者との医療給付について同一水準の給付を
確保することを
基本とし、患者負担を適正なものとすることといたしております。
患者負担につきましては、初診時の負担を千円とし、投薬・注射にかかわる薬剤または歯科材料に要する費用の二分の一を新たに負担願うこととしております。ただし、高価かつ
長期間連続して投与される薬剤や、
検査・麻酔に使用される薬剤は、負担の対象としないこととしております。さらに、入院の場合には一日につき給食料に相当する額を負担していただくこととしております。
これらの患者負担の額が著しく高額となったときは、高額療養費を支給することとしております。
第二は、分娩費等の給付に関する改正でありますが、分娩費等の最低保障額や配偶者分娩費等の額を実情に即して改定できるものとするため、政令で定めることといたしております。
第三は、保険料に関する改正でありますが、保険料負担の公平を図るため、賞与等についても標準報酬と同様の保険料率で保険料を徴収することとしております。
次に、給与の実態に即して標準報酬等級の上限を調整できることとするため、上限に該当する被保険者の割合が百分の三を超えた場合には、社会保険
審議会の意見を聞いて政令をもって上限を改定できることとしております。
また、
政府管掌健康保険の保険料率は、
厚生大臣が社会保険
審議会の議を経て千分の八十を超えない範囲内において定めることができることとしております。健康保険組合の保険料率も同じく千分の八十を超えない範囲内において決定するものといたしております。
第四は、国庫補助に関する改正でありますが、
政府管掌健康保険についての保険料率の調整に連動した国庫補助率の調整規定は廃止し、国庫補助率は、主要な保険給付に要する費用の現行の千分の百六十四から千分の二百の範囲内において政令で定めることといたしております。
第五は、財政調整についてであります。今後、被用者医療保険間において財政調整措置が講じられるまでの間、健康保険組合間の財政調整を
実施することといたしております。
第六は、保険
医療機関等の登録・指定等に関する改正でありますが、個人開業医については保険医の登録があった場合、保険
医療機関の指定があったものとみなすものとして手続の簡素化を図る規定、保険
医療機関などの指定を拒否できる事由を法定する規定、未払いの一部負担金について、保険者が保険
医療機関などの請求により徴収処分をすることができるものとする規定を設けることとしております。
その他、給付の平等を図る見地から健康保険組合の付加給付を規制する規定を設けるほか、療養費の支給要件を緩和するための規定、海外にある被保険者等に対する保険給付の
実施と保険料の徴収を行うための規定その他の規定の整備を行うこととしております。
次に、船員保険法の改正について申し上げます。
船員保険の疾病部門につきましても医療給付、分娩費等の給付などについてさきに述べました健康保険の改正に準じて所要の改正を行うものであります。
次に社会保険診療報酬支払基金法の改正について申し上げます。
社会保険診療報酬支払基金における審査について再審査に関する規定を整備するものであります。
なお、この
法律の
実施時期につきましては、公布の日から起算して六ヵ月を超えない範囲において政令で定める日から施行することとしております。
以上がこの
法律案を提出する理由でありますが、この
法律案につきましては衆議院において、健康保険法については、被保険者の一部負担金、家族療養費、保険料率、
政府管掌健康保険に対する国庫補助等に関し修正が行われ、また、船員保険法等についても健康保険法に準じた修正が行われたところであります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。