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1980-11-06 第93回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十一月六日(木曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員の異動  十一月四日     辞任         補欠選任      立木  洋君     神谷信之助君  十一月五日     辞任         補欠選任      神谷信之助君     立木  洋君  十一月六日     辞任         補欠選任      中山 太郎君     三浦 八水君      田中寿美子君     藤田  進君      戸叶  武君     吉田 正雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         秦野  章君     理 事                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 松前 達郎君                 宮崎 正義君     委 員                 安孫子藤吉君                 中村 啓一君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 細川 護煕君                 町村 金五君                 三浦 八水君                 藤田  進君                 吉田 正雄君                 渋谷 邦彦君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君    政府委員        防衛庁防衛局長  塩田  章君        科学技術庁原子        力安全局次長   後藤  宏君        外務大臣官房長  柳谷 謙介君        外務大臣官房調        査企画部長    秋山 光路君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省経済局長  深田  宏君        外務省経済協力        局長       梁井 新一君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省情報文化        局長       天羽 民雄君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務大臣官房審        議官       矢田部厚彦君        外務省国際連合        局審議官     関  栄次君        農林水産大臣官        房予算課長    田中 宏尚君        農林水産大臣官        房参事官     蜂巣 賢一君        農林水産省経済        局金融課長    浜口 義曠君        農林水産省経済        局保険管理課長  海野 研一君        農林水産省農蚕        園芸局農産課長  芦澤 利彰君        食糧庁業務部需        給課長      近長 武治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百八十年の食糧援助規約締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (日米外交問題に関する件)  (放射性廃棄物海洋投棄に関する件)  (在外公館の充実に関する件)  (金大中問題に関する件)  (核軍縮問題に関する件)  (総理の外遊に関する件)  (外務省広報活動に関する件)  (日加交流に関する件)     —————————————
  2. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、千九百八十年の食糧援助規約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。伊東外務大臣
  3. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ただいま議題となりました千九百八十年の食糧援助規約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  昭和四十六年に作成された千九百七十一年の国際小麦協定は、小麦の市況の安定化開発途上国への食糧援助等について規定しておりますが、昭和五十三年以来国連貿易開発会議(UNCTAD)主催のもとにこの協定にかわる新協定作成交渉が行われております。この交渉において国際小麦協定を構成する二の規約のうち、小麦貿易規約についてはいまだ新しい規約が作成されるに至っておりませんが、食糧援助規約については、多くの開発途上国において食糧不足年ごとに深刻化しており、穀物による食糧援助に対する開発途上国要請が増大しつつあることにかんがみて、援助拡大についての合意が成立し、この新規約が本年三月ロンドンにおいて採択されました。  この規約は、本年七月一日に効力を生じました。政府は、本年六月十七日にこの規約暫定的適用宣言を行いました。  この規約は、開発途上国に対し毎年一千万トン以上の食糧援助するという世界食糧会議の定めた目標を違成する一環として、加盟国は、年間最小拠出量として合計七百五十九万二千トンの穀物またはこれにかわる現金を開発途上国援助すること等を規定しております。  わが国は、開発途上国食糧問題との関連における食糧援助規約の持つ重要性を十分認識し、従来の食糧援助規約にも加盟してきており、この規約交渉においても当初から積極的に参加してまいりました。この規約締結することは、開発途上国における慢性的な食糧不足を緩和するための国際協力に引き続き貢献する見地から有益であると認められます。  ここに、この規約締結について御承認を求める次第でございます。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 秦野章

    委員長秦野章君) 以上で趣旨説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 千九百八十年の食糧援助規約ということでこれから質問をさしていただきますけれども、きのうアメリカ大統領選挙があって、国連外交ということで日本外交の骨子、基本がそういうことになっておりますが、この問題はまた午後の時間にお伺いいたしたいと思います。この法案に限っていま御質問申し上げたいと思います。  それで、まず最初現状開発途上国食糧不足、これに対しての援助だということになろうと思いますけれども、開発途上国食糧不足状況、これ細かく言うとずいぶんたくさんあると思いますが、大ざっぱで結構ですけれども、その状況とそれからその原因ですね、これも後でまた関連して質問さしていただきますが、その原因あるいはその国々食糧不足解決するべく対応策をどういうふうにとっているか、そういうことについて概略で結構ですから御説明いただきたいと思います。
  6. 関栄次

    説明員関栄次君) お答え申し上げます。  世界食糧計画というのがございますが、この国連機関の昨年の報告書によりますと、開発途上国食糧不足量は、これはカロリー摂取量をどのように計算するかによって違ってまいるのでございますが、年間最低三千五百万トンから五千四百万トンぐらいであろうかというふうに推計されております。  このような食糧不足を惹起する原因につきましては、一九七四年の世界食糧会議におきまして指摘されました原因がございます。それはまず第一に経済社会構造の欠陥、それから第二に農業投資資金並びに熟練労働力不足等開発途上国食糧増産を妨げる原因であったという、そういう説明になっております。それからまた他方、人口増加率が三%で高いというようなことも食糧不足一つ原因になっているわけでございます。  それで開発途上国におきましては、このような原因を克服するためにおのがじしそれぞれ努力が行われているのでございますが、各国自助努力だけでは足りないわけでございまして、先進国あるいは国連機関を通ずる援助が行われているわけでございまして、食糧不足を克服するためにいろんな勧告あるいは目標国連においても合意されております。たとえば第二次国連開発の十年のための国際開発戦略の中では、開発途上国農業生産成長率目標四%が合意されております。また、昨年九月の第五回の世界食糧理事会におきましては、開発途上国食糧問題解決のために講ずべき総合的施策といたしまして食糧戦略というものが打ち出されております。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 いまちょっと数字を挙げられました三千五百万トンというのは、それは不足額ですか。
  8. 関栄次

    説明員関栄次君) さようでございます。年間最低三千五百万トンから五千四百万トンぐらいの間であろうということでございます。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 開発途上国だけを見ますといまおっしゃったような数字で、これに対して何らかの援助が必要だというふうなことだろうと思いますけれども、これについてやはり慢性的な食糧不足だとしますと、これずっと援助ばかりし続けなきゃいけない、かようなことになるので、やはり開発途上国自身努力というものを——それで慢性的な食糧不足解決するという努力に対して相当バックアップをすることも必要ですが——強調しておかなきゃいけないんじゃないか、こういうふうに私は思っておるわけなんです。  そこで、世界の全体の食糧問題から見まして、人口がどんどんふえてくる、最近盛んにこの問題も言われておるわけですが、爆発的増加をするであろうと、そうしますと、世界全体の食糧というものに、食生活向上ももちろん各国それぞれあるが、そういう中で将来食糧不足が出てくるんじゃなかろうか、こういうふうなことが言われておりますが、その点については、これもまた非常に大きな問題ですが、どういうふうに考えておられるか。
  10. 関栄次

    説明員関栄次君) 世界人口増加食生活向上食糧不足とどのような関係にあるかということにつきましては、必ずしも十分な資料がないわけでございますが、ただ一例といたしまして、FAOが昨年発表いたしました紀元二〇〇〇年の農業と題する報告書によりますれば、開発途上にあります九十カ国を対象にいたしまして、一九八〇年から二〇〇〇年までの人口増加率年間二・三%、それから一日一人当たりカロリー摂取量増加率を年に〇・七%、食糧増産率を年に三・八%という前提とした場合に、栄養不良に悩む人口は一九七五年の四億一千五百万人から二〇〇〇年には二億四千万人に減少するであろうという見込みが発表されておりまして、その時点で約二千万トンの食糧援助先進国から必要であろうという推計が出ております。この報告書は結論といたしまして、二〇〇〇年までに飢餓と栄養不良を撲滅することが可能であると結論しているわけでございます。そのために食糧の不均等配分改善であるとか、開発途上国食糧増産、そのための国際社会先進国からの経済それから技術両面での支援の必要性を強調いたしております。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 まあ将来の問題については、それではだんだんと不足といいますか、食糧不足に対しては少なくなっていくと、ですから傾向としては解決の方向に向かっていくというふうに解釈できるということですね。
  12. 関栄次

    説明員関栄次君) ただいまの先生の御質問の点でございますが、あくまでも一人当たりカロリー摂取量増加率を〇・七%とか、人口増加率を二・三%、現在は開発途上国約六十カ国について平均いたしてみますと二・六%というように高いわけでございまして、これを二・三%まで落さなきゃいけないわけでございます。それから、食糧増産率も年に三・八%に高めるというようないろんな前提がございまして、こういう前提をあくまで達成いたしますれば——そのためには日本等先進国からの援助が必要であるわけでございますが、こういう前提が満たされた場合には食糧不足も漸次改善に向かうというような観測でございます。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 そういうことで将来の大体の展望というのが予測をされておるわけなんですが、ことしの食糧生産ですね、これがまたいろいろと、たとえばソビエトが非常に食糧生産が落ちたという問題ですとか、あるいはその他いろいろな国、オーストラリアもそうでしょう、アルゼンチンもそうだ、そういう国々食糧生産が落ちている。これはいろいろな原因があると思いますが、備蓄等含めますと七五年以来の低水準にことしはなるんじゃないか、こういうふうなことも発表されている。これはアメリカ農務省予測をしているわけですね。そういうことですが、ことしの食糧生産状況食糧不足ですね、特に開発途上国も含めての食糧不足状況というのは一体どういうふうな状況なんでしょう。これは予測であろうと思いますが。
  14. 深田宏

    政府委員深田宏君) お答え申し上げます。  昨一九七九年におきましては、ソ連の不作がございまして、生産在庫ともに若干の減少がございましたが、在庫水準世界全体で消費の十何%程度を維持いたしております。先生お尋ねのございました本年の穀物需給につきましては、米国におきます熱波による干ばつのため飼料穀物に若干の被害が出ていること等もございますが、FAOの九月三十日に発表されました見通しによりますと、世界全体では昨年を上回る生産、全体で十四億五千七百万トンと見込まれております。ただ、先生御指摘のように若干その後この見通しを下回るのではないかという見方も出てまいっております。明年につきましては、やはりFAOは本年の水準を二%程度上回るのではないかという予想を立てております。  品目別に見ますと、米につきましては、本年は昨年を四%上回る二億六千三百万トン。小麦につきましては、昨年を七%上回る四億五千三百万トンということが見込まれておるようでございます。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 いまのFAOのは九月三十日の発表ということですね。
  16. 深田宏

    政府委員深田宏君) さようでございます。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、そのデータというのはもっと以前の数字で計算をしているはずだと思うんですけれども、私さっき申し上げたのは、これはもう十一月の農務省発表ですね。ですから、これはある程度成果が確認できてその数字に基づいたデータだと私は思うんです。その結果だと、大分そのいまのFAOのと大幅な違いが出てきているんじゃなかろうかと、こういうふうに思うのです。これはしかし、開発途上国については食糧生産に関して特別にことしそれぞれの国が低下したということはないわけですか。
  18. 深田宏

    政府委員深田宏君) 先ほどお答え申し上げましたように、九月三十日以降の状況を折り込んだ情勢判断をいたしますと、この見通しを若干下回るのではないかということでございますが、現在手元に数字を持ち合わせておりません。また、開発途上国につきまして個々の国の数字ということは把握いたしておりませんので、まことに恐縮でございますが、後刻整えてお知らせ申し上げます。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 いまどうしてこういうことを申し上げているかと言いますと、食糧生産予測より下回るということは、食糧価格がどんどん上がるということにつながっていくわけですね。もうすでに不作ということの情報が伝わりますと、食糧殻物価格がどんどん上がっている、二〇%から三〇%ぐらい上がっているんじゃなかろうかというふうなことも言われておるわけですね。そうしますと、援助計画の中でこれが非常に大きな影響を持ってくるんじゃなかろうか、こういうふうに考えたものですからいまちょっとお伺いしたわけなんですが、この規約の実行に当たって援助をするとき、金で援助する場合、それから物で援助する場合、あるいは食糧そのものではなくて、これは日本がかつてやったというデータをいただいておりますが、肥料ですとかあるいは農機具、そういうもので援助する、こういうふうなことになっておると思うんですけれども、そのときの価格について、これは政府の場合は恐らく予算として九十五億ですか、これに対応して予算を計上されていると聞きますけれども、その辺がまた大分日本の場合、米の場合はまた違うかもしれませんが、たとえば小麦などを対象とする場合、恐らくこの価格上昇ということで大分その辺が狂ってくるんじゃないか。この規約の中では、恐らく援助そのものの量というものは穀物量で規定されておるわけですね。ですから、そういう意味で多少その辺が狂ってくるんじゃないかということを心配するわけなんで御質問申し上げたんですが、その点いかがでしょうか。
  20. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) ただいまの先生の御質問に対しましてお答えいたしますために、現在御承認願っております千九百八十年の食糧援助規約の前の千九百七十一年の食糧援助規約についてちょっと触れさしていただきたいと思います。  実は千九百七十一年の食糧援助規約におきまして日本拠出義務量は二十二万五千トンでございました。ただ、その場合は日本は米または農業物資という留保をしておりまして、米または農業物資で出しておったわけですけれども、この換算につきましては、当時一ブッシェル当たり一・七三ドル、一ドル七十三セントという換算率が決まっておりまして、いわば固定換算率と言っていいと思うのでございますが、これに二十二万五千トン掛けますと千四百三十万ドルになったわけでございます。したがいまして、この千九百八十年の食糧援助規約ができます前は、日本政府は千四百三十万ドルが日本義務額であるということで予算措置をやってきたわけでございますけれども、この千九百八十年の食糧援助規約におきましては、日本は三十万トンの年間最少拠出量義務を負っておりますが、この換算につきましては、今回の食糧援助規約で新たに小麦平均価格換算するという規定が入ったわけでございます。したがいまして、この八十年の食糧援助規約から固定換算率でなしに前暦年、前の一年間小麦平均相場をつくりまして、それによって日本義務量が計算されるという新しい方式になったわけでございます。したがいまして、この日本義務量につきましては、本年度予算大蔵省予算でございますが、約九十五億円の予算承認を願っておるわけでございますけれども、当時小麦平均価格が百四十一ドルということで約九十五億円の予算の御承認を願っておるというのが現状でございます。したがいまして、この七十一年の食糧援助規約と八十年の食糧援助規約におきまして、その小麦換算の仕方が固定換算率から前年の、前暦年小麦平均価格を決めましてそれによって換算するという新しい方式に変わったわけでございます。
  21. 松前達郎

    松前達郎君 私はどうもそうじゃないようにいままでは解釈しておったんですが、日本の米の価格と、それから、これ、最近援助の内容を見ますと日本米というのがふえているわけですね。そういうことから、日本国内価格が約三十二万円である、国際価格トン当たり約九万円だということですね。そこで、三十万トンですか、これを計算していきますと大体九十六億ぐらいになるんじゃないですかね。そういうことで私は考えていたんです。そうじゃないんですか。
  22. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 確かにこの八十年の食糧援助規約におきましては、三十万トンが日本年間最小拠出量と書いてございますけれども、従来の経緯からいたしまして、小麦ということで考えてまいりまして、かつ、この食糧援助規約手続規則にもこれは小麦換算であるということがはっきり出ております。したがいまして、先ほど申し上げましたとおり、新しい換算をどうするかという方法が決まったものでございますから、それに基づいてわれわれへの義務額を計算する。その範囲におきまして、日本米あるいは第三国米日本義務履行として行うということにしておるわけでございます。
  23. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、最初小麦換算でその援助額金額が出ますね、それを今度たとえば日本米援助をする場合、それを日本米にまた換算していく、そのときの日本米価格については九万円で計算するのか、あるいは国内の三十二万円になるんですか。そういうふうにするのか。要するに、量でいくのか、金でいくのかという場合のその換算の仕方、これもうちょっと、ひとつ。
  24. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 日本米を出します場合には、先ほど申し上げました日本義務額をまず金額ではじき出しまして、それで、この日本米を出します場合には日本米国際価格で計算いたします。
  25. 松前達郎

    松前達郎君 その国際価格というのは九万円という価格ですか。
  26. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 日本米換算いたします場合にいろいろと価格が動いておりますけれども、九万円程度のこともございますし、案件ごと大分違うようでございますが、必ずしも九万円ということではございません。
  27. 松前達郎

    松前達郎君 九万円である場合も、ない場合も——その前後だということでしょうか。
  28. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) そのときの国際価格に合わしておりますので、場合によりますと七万三千円のこともございますし、最近はちょっと上がっておりまして九万九千円の場合もございます。必ずしも一定の価格ということではございません。
  29. 松前達郎

    松前達郎君 それで、いただいた資料によりますと、七九年と八〇年、その間におけるわが国食糧援助、この結果が出ておるわけなんですが、日本米が非常に多いですね。その前、ずっと見てみますと、最初タイ米ですとか、エジプト米ですとか、アメリカ米ですとか、いろいろあるわけです。あるいは農業物資等含まれておったんですが、最近はごく一部が外国米によって、あと大部分——部分でもないですか、これ金額にするとあれですが、各国それぞれ違いますけれども、日本米がわりとふえてきているという状況なんですが、この日本米というのはどういう米なんでしょうか。たとえば新米だとか、古々米だとか、古米とかありますね。これは古々米を出すんですか。
  30. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 日本過剰米処理一環といたしまして、私詳しく存じませんが、恐らく古米ないし古々米になるだろうと思います。過剰米処理一環として食糧援助規約に基づく日本米援助を行っておるわけでございます。
  31. 松前達郎

    松前達郎君 それは古々米を出してもいたし方ないかもしれませんが、まあ日本の場合ですと五十三年度の古々米というのが百三十万トンぐらいいまあるんですね。古米にすると二百万トンですから、両方合わせて三百三十万トンぐらいいま余っているという状況、こういうことで、その中から三十万トン出すということに、まあ全部日本米でやった場合、三十万トンですからこれは十分できないことはない話だと思うんです。  そこで、もう一つ今度は、この資料によりますと国が幾つか挙がっておりますが、この国の選択の仕方、これについては一体どういうところで選択をし、決定をしていくのか、これについてひとつ。
  32. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 食糧援助を行うときのその基準と申しますか、決め方でございますけれども、実は、各国から非常にたくさん要請が来るのが実情でございます。かつ、なかなか要請に全部応じ切れないというのが現状でございますけれども、私ども、外交ルートを通じまして日本政府にやってまいります援助要請に基づきまして、その国の食糧不足状況であるとか、その国の経済情勢であるとか、あるいはわが国との二国間関係というものを総合的に勘案いたしまして、当該国食糧不足を救済するという目的で二国間の話し合いを行った上で、本件の援助を行うということをやっております。
  33. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、その選択決定をする場合、わが国だけの意思決定できるんですか、それとも国連の適当な機関にそれは打ち合わせをしてそれで決定するのか、その辺どうなんです。
  34. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) わが国の自主的な意思決定しております。その決定した後でロンドンにございます食糧援助委員会報告をするということをやっておるわけでございます。
  35. 松前達郎

    松前達郎君 そういうことで最近日本米大分出ているというので、古々米古米の備蓄もわりとわが国は多くなってきて、それに対してその古々米古米の処分をある程度しなきゃいかぬ、それにこの援助計画が絡み込んでくるということになるんじゃないかと、かように理解しておるんですが、それでよろしゅうございますか。
  36. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 日本義務量——義務量と申しますか、先ほど申し上げました食糧援助規約に決まっています三十万トンでございますけれども、これを先ほど申し上げました方式金額換算いたしまして、その範囲内で、日本米の場合もございますし、あるいはタイ米あるいはビルマ米という第三国米を出す場合もございますけれども、その範囲内で援助を行っていく。なるべく日本米を出したいというのが私どもの気持ちでございます。
  37. 松前達郎

    松前達郎君 この食糧援助は、いままでまず贈与の形でお金を援助する、そしてその援助したお金でもってその当該国日本の米を指定して買うんだとか、あるいはどこの小麦を買うんだとかいうことになっているというふうに伺っているんですが、そのとおりですか。
  38. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) そのとおりでございます。
  39. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、ちょっと私ここでまあ疑問もあるんですけれども、たとえば食糧援助というのは、その一つの国にとってみますと、国の一つの財政の中で食糧を、買えばあるわけですけれども、買う金もない。ということは、その国の計画がまあ余りうまくいっていないということになるんじゃないかと。ですから逆から見ますと、食糧援助で金を出すんだけれども、この援助というのは、食糧に限らずその国の財政に金を投入していくんだということになりはしないかというふうな感じを持つんですね。ですから、ある意味で言うと、たとえば軍事的な援助もそれと似たような、軍事の場合は物を直接出せばこれは直接の軍事援助になりますが、そういうふうな観点から見ますと、やはり当該国の選定のときに相当そういうことも考えて選定しませんと何かおかしなことになるんじゃないかというふうな疑問も私、持っているわけです。ですから、そういう意味でいま選定はどういうふうにされるのかということを御質問申し上げたんですが、結論としては恐らく私がいま申し上げたようなことになるんじゃないかというふうな感じを持つんですけれども、その点いかがですか。
  40. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 先ほど先生から、この日本食糧援助規約に基づく義務履行方式は現金の贈与方式かという御質問がございましたので、私、そのとおりであると申し上げたわけでございますが、実は、現金の贈与方式をとっておりますけれども、これは実際は、何と申しますか、相手国に一応現金、資金を供与するという形をとるわけでございますけれども、その実態は相手国と日本国の食糧庁と申しますか、あるいは第三国の場合もございますけれども、その間の契約を結びまして、その契約を認証して日本政府がその被援助国の銀行勘定にお金を払うという形で行われておりまして、実際、現金が被援助国に行くということではございませんで、現金は日本の場合であれば食糧庁に行くというふうなことでございますので、現金供与方式とはいいながら実態は物が行っているということでございます。  そこで、先生の御指摘の、この種の食糧援助一つの軍事援助につながるんじゃないかという問題でございますけれども、これは私どもがやっております日本経済協力一般にも関連する問題かと存じますが、私ども、やはり開発途上国経済社会の発展と申しますか、この住民の福祉向上という観点から経済協力をやっておるわけでございまして、特にこの食糧援助の場合は、先ほど申し上げましたとおり、長期的にはその国の食糧生産を高めることによって解決すべき問題でございますけれども、短期的には特に人道的な観点から食糧援助もすべきであろうということで行っておりますので、特に先生の御指摘のようなことはないと考えておる次第でございます。
  41. 松前達郎

    松前達郎君 いま、軍事援助というのは、別にそうだということじゃなくて、解釈のしようによったらその辺まで言われるんじゃなかろうかというつもりで私、申し上げたので、軍事援助じゃないことはわかっておりますが、いずれにしてもその国の政策そのものの中でその国の一つの運営予算というのはあるわけですね。それで、食糧を買わないでおいてほかの物を買ってもらったんじゃこれは話にならない、食糧の方を倹約しておいて足らない足らないということになって、片方じゃ軍事的な方をやろうとする、そういう国があるかどうかわかりませんが、そういうことであると間接的に軍事援助になるんじゃないかという意味で申し上げたわけなんで、そういうことですから、相手国の選択ですね、これについては十分その点まで配慮していただいた方がいいんじゃないか、こういうことで申し上げたわけなんです。  そこで、開発途上国の場合、これはいろいろと私自身も開発途上国の問題でユネスコとかそういうふうなものを含めていろんな問題を取り扱ったことはあるんですけれども、最近国連の中でも開発途上国が多くなってきたわけですね。それで、往々にしてどうも物ごい的になる可能性があるんですね。これは私ども議論をしているとき、いろいろな人の意見としてやはりそういうのが必ず出てくるわけです。慢性的物ごいだというふうなことを言っている方が多くなってきているんですが、しかし人道的な立場から食糧が緊急に足らないんだということで出すということですから、それは結構なことだと思うんですけれども、その反面、やはり政策的な面でその国の内政まで干渉することはできないけれども、しかしそれに対してアドバイスをしていく必要があろう、その国一国がアドバイスするんじゃなくて、国連としてアドバイスするとか、あるいは食糧だけじゃなくてその他の生産面でも食糧生産に対して大いに協力していくとか、こういうふうなバックアップが必要であろうと私は思うんですが、その点どうも最近そういう物ごい的な要素が非常に多い。まあ言い過ぎかもしれませんが、過保護みたいなことになりはしないかというふうな意見すらある。これについて政府としてどういうふうにお考えでしょうか。
  42. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 先生御指摘の点につきましては、確かにいつまでも食糧援助を継続すべきかどうかということにつきまして、いろいろ問題があることは事実でございます。私どもといたしましては、食糧不足解決する一番正しい道と申しますか正しい方法は、やはり開発途上国において食糧増産をすることであるというふうに考えておりまして、そのために日本政府といたしましても、有償無償あるいは技術協力を通じまして相手国の食糧増産を促すような援助をやっているわけでございます。しかしながら、現状といたしましては、そういう措置にもかかわらず依然として各地に食糧不足国がたくさんあるということで非常に要請もございますし、一応短期的な措置といたしまして人道的な観点から食糧援助を行っていくという次第でございます。
  43. 松前達郎

    松前達郎君 最後になりますが、規約、条約という二つ言葉が使われておりますけれども、条約の中の規約だと解釈していいと思いますが、この世界食糧会議食糧援助に関する問題を討議し、それに対する目的といいますか、これを設定しているというふうなことがこの資料の中にもあるんですが、この辺は、最初のいきさつですね、これが締結されたり提案されたりしてきている最初のいきさつといいますか、これは世界食糧会議でそういう話が出て、それじゃこういうふうにしようじゃないかというので、いまここで審議しているようなものまで含めて、条約も規約も含めて発展をしてきたのかどうか、その辺のいきさつをちょっと御説明いただくのと、それからこういった問題をやはり提案するときには最初どこかの国が提案するんじゃないかと思うんですね。何となくそういう声が出てきてまとまっていくのか、その辺、私よくわかりませんので、もしおわかりでしたら御説明いただければと思います。
  44. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) この千九百八十年の食糧援助規約の第一条に「国際社会の共同の努力により、」「毎年一千万トン以上の食糧援助するという世界食糧会議目標の実質的な達成を確保することを目的とする。」という規定がございます。この規定が入りました経緯につきまして簡単に申し上げますと、昭和四十九年の秋にローマで開催されました世界食糧会議において採択されました決議の中に、食糧援助政策の改善としてこの一千万トンという数字が勧告として入っているわけでございます。で、この世界食糧会議の勧告を受けまして、千九百七十一年の食糧援助規約の改正の作業が行われておったわけでございますけれども、結局ことしの三月、各国食糧供出量全部合計いたしましても七百五十九万トンでございまして、一千万トンに達しておりませんけれども、一応この食糧援助規約各国で合意されまして、その結果現在国会に承認をお願いしておるところでございますが、七百五十九万トンであって一千万トンに達していないんじゃないかという点、確かにそのとおりでございますが、むしろ一千万トンに達していないからこそ締約国の加盟国を含みます国際社会共同の努力によって一千万トンの食糧援助を確保したいというのがこの条文の趣旨でございます。  この経緯におきましては、各国いろいろな議論があったわけでございますけれども、日本もこの議論に参加しておりましたが、特にどこかの国が言い出したということではございませんで、もちろんこの中にはアメリカのようにきわめて熱心な国もございました。しかし、各国の合意によりましてこの新しい食糧援助規約ができ上がったわけでございます。
  45. 松前達郎

    松前達郎君 まあアメリカが熱心だというのは、アメリカ食糧を大量に生産をする国ですから、しかも、どうもアメリカの場合は贈与じゃないみたいですね。供与みたいなかっこうをとっているんですね。その辺はやはり何か裏に少しあるんじゃないかという感じもいたしますけれども、それはまあアメリカのことですから。わが国として、ことし、年間三十万トン拠出をするということでありますけれども、さっき申し上げましたようなことで、開発途上国そのものに対して、いじめるわけではありませんが、やはり独自の努力というもの、これをわれわれは期待せざるを得ない、慢性的になるとこれはちょっと大変なことですし。それともう一つは、国の形態が混乱をしているところですね、国自身が、たとえばベトナムの問題等いろいろあります。これはもう緊急だと私は思うんですが、そういうところに対する援助ですね、こういうものも十分考えて対象国を選定していかなければならないんじゃないか、こういうふうに思っておりますので、その点ちょっとお伺いして質問を終わりたいと思います。
  46. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 先ほど申し上げましたとおり、日本政府といたしましては、やはり食糧援助よりも食糧増産のための援助が非常に大事であるということを痛感しておりまして、私どもといたしましては、先ほどちょっと申し上げましたけれども、円借款あるいは無償、技術協力を通じまして各国食糧増灘を可能ならしめるような援助に重点を置いているわけでございます。  それから、この食糧援助の配分につきましては、先ほど申し上げましたようないろんな事情を考慮すると同時に、日本とその国の外交関係を勘案して決める、しかも日本としては自主的に決めていくという形をとっておりまして、今後もこの方針でやっていくことになるであろうと考えております。
  47. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 先ほど本規約の御説明がありました。中に千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約食糧援助規約の二つの規約のうち、食糧援助規約締結については先ほどの提案理由の御説明にもありましたけれども、小麦貿易の規約の方はまだ新しい規約が作成されておらないという提案理由説明がございました。これにつきましての、その作成に至っていないという内容の説明をお願いをいたしたいと思います。
  48. 深田宏

    政府委員深田宏君) ただいま先生お尋ねがございました小麦貿易規約交渉でございますが、一昨年の二月から昨年の二月にかけまして都合三回ほどのこの交渉会議が開かれておりますが、新しい規約の主な要素を構成することになるべき備蓄在庫規模、各国の備蓄在庫分担量、備蓄在庫制度を運用するための価格帯の水準、備蓄在庫制度の運用にかかわる開発途上国の特別措置等、こういうような点につきまして産消間——生産国、消費国の間、特に開発途上国との間で合意が得られておりませんので新規約がいまだに締結されていない状況でございます。しかしながら、国際小麦理事会は昨年十月以来本件につきまして特別委員会を設けて、いまだ解決を見ていない問題点についての技術的な検討を行ってきておりまして、本年の十一月、国際小麦理事会でこのような技術的討議の結果を勘案しながらこの交渉会議の再開の問題が取り上げられることになっております。わが国といたしましては、この機会に理事会の会合におきまして交渉会議の再開について前向きの結論が出ることを期待しておる次第でございます。
  49. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 内容を少し具体的に説明を願うといいと思うんですが、たとえば仮に備蓄制度を中心にしていまお話がありましたような問題点が合意された場合ですね、そうしたときにわが国の備蓄制度に対する考え方というもの、相当いろんな備蓄というものに対する影響性というものが非常に大きくなってくるんじゃないか、こういうふうなことを思うわけですが、この点についてはいかがですか。
  50. 深田宏

    政府委員深田宏君) なお詳細に御説明させていただきますと、まず備蓄の規模につきましてはどの程度の規模が妥当であるか。一案といたしまして三千万トンという案を出しておる米国等がございます。他方二千万トンぐらいで十分かつ現実的ではなかろうかという意見の国もございます。このようなことで折り合いがついておらないわけでございます。  さらにつけ加えさせていただきますと、備蓄の運用のためのいわゆるトリガー、どこで積み増しなり放出を発動するかという価格でございます。この価格をどの辺にするか、それについては開発途上国のことを特別に考慮するかどうかというような問題がございます。  次に、開発途上国の備蓄の運用に関する問題につきましては、開発途上国協定の中で資金援助、技術援助を規定化することを要求しておりまして、これに対して先進国側では、貿易規約でございますので、これは貿易の面のみを扱うんだということで折り合いがついておらないということでございます。  なお、わが国といたしましては、小麦を大量に輸入しております立場から交渉に積極的に参加してまいっておりますけれども、先ほど申し上げました備蓄の規模につきましては、貿易の変動をカバーする程度の数量、いずれかと申しますと、この小さい方の数字でございます二千万トン程度というのが妥当ではないかというような意見を持っております。また、この規約援助の面を取り込むことについては、やはりこれは貿易規約であるということで、これは現実的ではないというふうに考えております。このような態度で交渉に臨んでおる次第でございます。
  51. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 十一月行われるということでありますが、いずれにしましても、備蓄の問題については開発途上国等でもそれぞれの国で備蓄をより多く要請しているということも伺っておるわけですが、いずれにしましても、この成り行きを見まして、今後の課題となると思いますが、ともあれわが国としては二千万トンの考え方の線で臨んでいくんだというふうに受けとめていいんですか。
  52. 深田宏

    政府委員深田宏君) さようでございます。
  53. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 先ほど第一条の問題で御答弁がありました。一千万トン以上を食糧援助するという一九七四年十一月の世界食糧会議目標達成を目的として第一条が決めてあるということの説明がありました。加盟国規約上そのことを履行するということを義務づけられてくるという先ほどのお話がありましたけれども、七百五十九万二千トンである、この一千万トンに満たない。第三条にございますが、わが国がこの規約で負っていく年間最小拠出量は三十万トン、この義務経済大国と言われているわが国として拡大というふうなことも一応は考えていいんじゃなかろうかと思いますが、先ほど松前委員質問の中にもございましたけれども、また一面わが国の考え方によっては、かなりの国連外交に対する基本姿勢というものの立場の中から考えてみますと、十月二十日、先月ですね、国連総会においてわが国が五たび安全保障理事会の非常任理事国に選ばれたというこのことから考えていきまして、いまさら私が申し上げることもなく、ソ連のアフガンの介入だとかイランやイラクの紛争等の国際情勢が非常にふくそうしている中で、安保理の一員として日本に大きな責務が課せられてきたと思われるわけであります。そうしたことで今回の非常任理事国承認は大体満票に近い、しかもアジアグループの統一候補であったというばかりではなくても第三世界のほとんどの国の支持があったというわけでありますが、考えてみますと、前回一九七八年の選挙で同じアジアグループのバングラデシュと争って敗れたというようなこと等も考えあわせ、わが国の今回の非常任理事国ということの立場の中からこの問題を取り上げて考えてみまして、大臣はどのようにこの問題についてお考えになっておられますか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  54. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生がおっしゃったように、援助、これは食糧援助の問題でございますが、その他の援助も含めまして、先生がおっしゃったように国連で百四十票という票数で非常任理事国に当選したというのは、まさに開発途上国の支持というものが大分あったわけでございます。特に国連の大多数の票は開発途上国が多いわけでございまして、特に日本はその開発途上国との相互依存関係先進国の中では非常に大きい関係にあるわけでございますので、開発途上国、まあ南北問題でございますか、そういう問題に対しましては積極的に取り組んでいくということが大切だというふうに思っておるわけでございます。  来年は、特にオーストリアとかメキシコが中心になりましてブラント報告に基づいて南北サミットというようなことを考えておられますが、もしもこれも招請あれば日本も参加してこの問題に取り組むつもりでございますし、いままでも南北問題につきましては国連の中で積極的にこれは取り組んでまいったわけでございまして、国際機関を通ずる資金の面とかあるいは技術面の応援でございますとか、こういうことは積極的に取り組みましたし、特に、最近は一次産品で基金ができたわけでございますが、この設立に当たっても日本は非常に努力をしたということでございます。先生御承知のような開発途上国に対する政府援助も三年間に倍増ということでやりましたが、大体ことしで実現を見るということになっておりますし、今後とも積極的にこの問題には取り組んでいこうというのが日本の態度でございます。南北問題には積極的に取り組んでいく、その中のこれは一環として食糧援助という応急的な、緊急的なものだと思うのでございます。基本的には食糧増産とかそういうようなことにいくべきものでございましょうが、緊急的なものとしてこれを取り上げたわけでございます。先生がおっしゃるように十分とはいかぬわけでございますが、一次、二次と比較しますと、大分ふやしまして援助をやっていこうと、こういう態度でおるわけでございます。
  55. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 先ほど大臣がおっしゃいました食糧増産援助費ですね、どれぐらいで、どのように分けていかれるお考えなんでしょうか。
  56. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは食糧援助、この規約ではございませんで、別な方でございますので、局長からお答え申し上げます。
  57. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 本年度二百二十億円の予算承認をいただいておるわけでございますが、この中身は農業機械並びに肥料を各国援助として供与しておるわけでございます。
  58. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 実情は……。
  59. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 本年度の食糧増産援助の配分の内容を申し上げますと、タイ、バングラディシュ、パキスタン、ビルマ、フィリピン、スリランカ、ネパール、インドネシア、インド等のアジア諸国もございますし、さらに中近東諸国のスーダン、タンザニア、ケニア、マダガスカル、カメルーン、ウガンダ、ジンバブエ、ザイール等でございます。中南米につきましても、ボリビア、ホンジュラス、ハイチ、ガイアナ、パラグアイ等に援助を供与しております。
  60. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間があれば後でまた質問をいたしますが、本条約の中で、この予算措置として昭和五十五年度の予算で、先ほどお話の中にもちょっとあったと思うんですが、九十五億円が計上されておりますね。このわが国予算の措置、年度ですね、というものとこの条約の取り決めの月日といいますか、その違いがありますね。それに対する予算上の措置の問題なんかも当然出てくると思いますね。こうして考えていきますと、九十五億円の算定は一九七八年に考えて立てられたと思うんですね。そうしますと、昨年度の実勢価格は年平均百六十六ドル、一九七八年の場合は百四十一ドルと、こういったような価格の面でもギャップが生じてきております。それらのずれといいますか、それらのずれを今日までどのような考え方で進めてきておられるのか、その辺の実情を御説明願いたいと思います。
  61. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) ただいま先生の御指摘のとおり、本年度の予算に九十五億円の食糧援助費の御承認を願いましたときの、その基礎になりました小麦平均価格は百四十一ドルでございます。ただ、現在は百六十六ドルになっておりますので、それも九十五億円はわが方の三十万トンの拠出量、義務量でございますが、ここに百四十一ドルを掛けまして、四千二百三十万ドルと、これを九十五億円に換算いたしまして、予算に計上したわけでございますけれども、その後、小麦の値段が上がりましたために、現在百六十六ドルしているということになりますと、日本義務量は四千九百八十万ドルでございます。したがいまして、この七百五十万ドルの不足が生ずるわけでございます。この予算は、大蔵省に計上されておる予算でございますけれども、この五十六年度予算でこの不足分につきまして何らかの措置がとられるものというふうに了解しております。  それから、先ほど先生の御指摘のございました過去についてのこの種の問題——必ずしも換算の問題ではございませんけれども、日本の財政年度と食糧援助規約に基づく年度の相違から、日本が追っかけて拠出したというケースもございますけれども、これは昨年までに、この間お話申し上げました七一年の食糧援助規約に基づきます千四百三十万ドルの拠出の義務につきましては全部手当てが終わっております。
  62. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 先ほども松前委員の方からお話がありましたが、この国内価格は、現在トン当たり三十二万円で国内価格になっております。価格としては流動しているからというお話がありまして、七万円のときもあったし九万七千円のときもあったというお話なんですが、これを決められた時点においては九万を単位にして考えたとしてよろしゅうございますか、この規約価格を制定したというときの考え方としてはどうですか。
  63. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) お答え申し上げます。  千九百八十年の食糧援助規約と七十一年の食糧援助規約、いろいろ違いがございますけれども、その一つの違いはこの八十年の食糧援助規約から初めて米を供与できるということが明文で規定されたわけでございます。したがいまして、この七十一年の場合には日本は米または農業物資で行うという留保をしておったわけでございますけれども、この八十年の食糧援助規約におきまして小麦のほかに米ということが規定されましたので、日本としては米が明文上出せるということになったわけでございます。ただこの換算の方法は、先ほど申し上げましたことでございますけれども、この日本の拠出義務である三十万トン、これを現金供与する場合にどういう形で換算するかという換算の方法が決まっておりまして、日本といたしましてはそれによって換算を行って、その範囲内で米、日本米あるいは第三国米を出すという形を取っておりますので、この規約日本米を幾らで出すべきかということは決まってないわけでございます。
  64. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 もちろんいま私の申し上げたのは米のことで聞いているわけですが、いずれにしましても、仮に日本の現在のトン当たりが三十二万円で国際価格を九万円にいたしますと、その差額の、単純計算をしますと、二十三万円の差額がございますね。それに対して前回は二十二万五千トンという計算をしますと、約五百十七億五千万ぐらいのずれが、違いがございますが、そういった予算措置なんかはこの差額を補てんをするのにはどんなふうなことをして今日までこられたか、その辺も伺っておきたいと思います。
  65. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 先生お尋ねの点でございますが、先ほど申し上げましたとおり、七十一年の食糧援助規約におきましては固定換算率が決まっておりましたので、日本義務は二十二・五万トンということは千四百三十万ドルであるという前提予算承認を願ってきたわけでございます。ただその過程におきまして、年度の食い違いから、日本の財政年度が終わりましてからその次の年度で食糧援助規約に基づく年度に間に合うような形で予算の御承認を願ったこともございますけれども、これは先ほど申し上げましたとおりすべて手当てが終わりまして、七十一年の食糧援助規約に基づく日本義務はすでに完了しているわけでございます。  そこで先生の、日本の過剰米を出しますときに国内価格とそれから国際価格との差をどうするかという問題でございますが、農水省の方おいでになりませんので私からお答え申し上げますと、その差額につきましては古米処理における農水省の予算で処理されているというふうに伺っております。
  66. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 きょうは食糧庁の人がいませんから——いろんなことを聞こうと思ったんですが、たとえば韓国の五十万トンの米の問題なんか、これは大臣どういうようにお考えになっているのかというようなことも、それから日本の米の事情、需給状態から考えまして、そしてアジア諸国を大臣が歴訪されましていろんなことをお決めになっておいでになりました。その中にはやはり米の問題等もありましたけれども、そういうものを総合して米に対する話をきょうは時間の関係でできませんので、特に大臣がアジア諸国を歴訪なさって表明されておいでになりました援助約束といいますか、そのことにつきましてそれぞれのタイとか、ビルマとか、パキスタンとかおやりになった内容について御説明を願いたいと思います。そのときの所見、お考え、将来に対する考え方、そういうものを含めて御答弁願いたいと思います。
  67. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私、東南アジア、南西アジアに参ったときに援助の話をしたわけでございますが、これは大体ことしの予算で総額は決まっておりまして、内容がまだはっきりしないというものにつきまして、内容をはっきりして話をしてきたわけでございます。特に、新しく予算を多く使うという意味じゃなくて、予算で決まった範囲内の問題でございますが、パキスタンに参りましたときに難民の問題がございまして、そこで食糧援助の話をしたわけでございます。それは、まさにここにあります食糧援助規約というこの構想の中のものでございますが、これは日本米じゃなくてパキスタンでは米国産の小麦をということで話が……、あそこで二億九千万、約三億でございます。小麦にして四千トンの小麦援助を話しました。  それから、タイへ行きましたとき、カンボジアの難民、それからタイの被災民、カンボジアの被災民いろいろございますが、そういう難民、被災民に対しまして五十億でございますから、日本米で二万八千トン、それからタイ米で一万七千トンというものに相当する五十億という食糧の無償援助、パキスタンでは二億九千万円の食糧援助ということを実は話したのでございます。  この食糧援助につきましては、日本米につきましてはもういま船積みの準備中でございますし、タイ側の方も出荷の準備をしているということでございますので、もう年内には何とか実現したい、向こうに届くようにというつもりで努力をしているわけでございます。  そのほかに、タイで新農村建設でございますとか、マラリアの問題とか、小さいダムの問題とか、医療の問題でございますとか、ビルマで食糧増産、パキスタンで食糧増産というようなことをことしの五十五年の予算で決まった範囲内のものの無償援助ということで、公文の交換をしてくるというようなことを実はやってまいったわけでございます。  米の問題はいま先生おっしゃいましたが、いま申し上げましたのは無償援助でございますが、韓国のお話が出ました。これは有償で延べ払いであんばいするというようなことでございまして、これは食糧庁と相談しなければならぬことでございますので、いま食糧庁ともぼちぼち相談をしておりますが、まだ数量的にはぴしゃっとはしていないんです。いろいろ文書でまだ幾らということのは来ていませんが、口頭で年内にとか来年とかいうことで話が来ていることは事実でございます。これも先ほど話の出ました古米の処理の中に輸出用というものを考えているわけでございますので、延べ払いということでどの程度できるのかということを食糧庁と十分にこれは相談して決めたいというふうに思っております。
  68. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 まあ私が申し上げることもなく、延べ払いという問題もありますけれども、ことしのように冷害で痛めつけられてまいります。来年どうなるかわかりません。備蓄のこと等から考えていきましても、日本国内事情等も考えながらこの食糧計画の中でやっていかなきゃならない。きょうは食糧庁呼んでおりませんのでその辺の詰めはできませんけれども、いずれにしましても延べ払いということ等も含めて、難民問題とか被災民だとかそういう方々の問題等も含めて、いま大臣の御答弁がありました。  ビルマに対する点のお話がございませんでした。それからもう一つ、インドと中国に対する援助約束の表明がどういうふうになっているのか、外務大臣のお考えといいますか、その辺なんかも本規約とは離れておりますけれども、お伺いをしておきたいと思うわけですが。
  69. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 米のことにつきましては、当然先生おっしゃるとおり、日本の需給計画を頭に置いて考えなければならぬことは当然でございますので、これは食糧庁と十分相談して、食糧庁の意見に従ってなるべくやっていこうというふうに思っております。  それからビルマの話がございましたが、ビルマは、食糧はあそこは輸出国でございまして、むしろ食糧援助はない。あそこの食糧援助で、日本はことしはタイの米を使っており、ビルマの米は使っておりませんが、去年までビルマの米もこの無償援助の中で日本が出したお金で買っていたわけでございますので、ビルマについては食糧増産援助、肥料とかそういうことはやっていますが、食糧援助自体は実はやっておらぬのでございます。  それから中国の経済協力のお話がございましたが、五十四年は先生御承知のように、六プロジェクトで五百億ということで経済協力やったわけでございますが、五十五年度は同じプロジェクト、同じ対象のものについて大体日本は五百六十億ぐらいになるんじゃないか、できるんじゃないかというような、まあこの間事務レベルの相談をしまして、一応そういう意図表明はやっているわけでございます。  インドのことはちょっと……インドのことにつきましてはいま局長から申し上げます。
  70. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) インドにつきましては食糧増産援助でございますが、ことし十億円の食糧増産援助を供与する予定でございます。それ以外に円借款につきましては、現在三百億円の円借款を意図表明いたしまして、現在その中身を詰めているという段階でございます。
  71. 立木洋

    立木洋君 外務大臣、大臣もこの中で「多くの開発途上国において食糧不足年ごとに深刻化しており、」というふうにお述べになっていますが、食糧問題というのは国際的に見ても、私は新たな大変な問題になってきておると思うんですね。同時に、やはり国内の問題としても、この問題はきわめて考えなければならない重要な時期に来ているだろうと思うのです。で、私は当然国際的な協力によって食糧問題を解決していくということは一面必要だろうと思います。その場合には、開発途上国やあるいは食糧を必要とする関係諸国に対して対等、平等の協力がなされていくということは私は必要だろうと思うのです。しかし私は、この条約については賛成しないんです。なぜ賛成しないのかというのは、今日のこの食糧問題というのが、アメリカなどが指摘しておりますように特に戦略物資として扱われてきている。それから最近の状況を見ますと、食糧援助というのがきわめて政治的な色彩を帯びる内容が濃厚になってきている。私はまさに千九百七十一年食糧援助規約が発足した当時からのこれは問題点だろうと思うのです。  もちろんソ連がアフガニスタンに対して介入を行った、これはまあ重大な誤りであるわけですね。これは厳しく糾弾されなければならない。しかしその問題に関して、たとえばアメリカがソ連に対する小麦の輸出を禁止した、この措置がどういう事態を招いたかというと、今度はアメリカの農民に響いた。もう一方は、その余ったものを日本が輸入するということによって、また日本の農民にもある程度の影響をもたらす。それからまた日本のインドシナ諸国に対する食糧援助の対応を見ても、私は取り上げてどれがどうだという言い方をしませんが、これも私はきわめて政治的な色彩が濃厚ではないかということを最近非常に感じているわけです。  これは大臣、お読みになったかもしれませんが、先日カンボジアのプノンペンに救援活動の現状視察に行った日本赤十字社の近衛さんという課長さんが、帰ってきて報告書を出しているのですね。その報告書を読んでみますと、これは大変な指摘があるんです。この「タイ側で行われている国際救援」、まあ食糧も含んでですが、「国際救援というのは、決して人道上の目的だけでなく極めて政治的な動きであると受け取られているわけです。私どもとしましては、」というのは、これは日赤の近衛さんですね、「このカンボジアの深刻で広範囲にわたる人道上のニーズを考えますと、これまでのようにあまりにタイ側の援助に片寄っていることは、中立な人道的機関として公平さを欠くのではないか。しかも、下手をすれば難民問題の根本的解決を遅らせることにもなりかねないと判断しているわけで、もう少しバランスを保つ方法を考えているわけです。」、こういう指摘もあるわけです。これは日赤の課長さんが、現地プノンペンを視察してこういう感じを受けたというわけですね。  私は、食糧問題というのは、本当に生死をさまよう状況の中で、人道的な立場に立って援助が行われる、あるいは必要なことに対しては対等、平等の立場で国際的な協力が行われる、そうなければならないのに、とみに戦略物資扱いされ、あるいは政治的な色彩を含めたような対応が露骨になってくるということは、私はこれは大変な問題だろうと思うのです。こういうような現状と問題について、大臣自身は別の認識をお持ちかもしれませんけれども、どのように御認識になっているのか。また私と同じような点を多少なりとも感じられるという点があるならば、その点についてどのような見解をお持ちなのか、まず最初にお尋ねしたいと思います。
  72. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答え申し上げます。  いま先生おっしゃった何点かあるわけでございますが、まず難民——タイの難民の、タイに来ている難民とか、それからカンボジアから来ている難民とか、カンボジアの中におけるまあ難民と言っちゃいかぬのでしょうが、内乱ですから、被災民といいますか、それらの人々に対する食糧援助日本が直接やっているわけじゃないんです。タイの方に来ている人に幾らとか、カンボジアの中の人に幾らとか言って日本が分けているわけじゃなくて、これは日本は国際機関に頼んで、国際機関の考えであれはやっておるわけなんで、近衛さんの報告が私はどうも解せないのでございますが、国際機関のやり方がまずいんだと言われれば、それはそうかと、そういうこともあるのかなと思うのでございますが、日本としてそういう区分けをして、難民に対してタイの方に幾らやってくれと、カンぼジアの中に幾らやってくれと、これはそういうやり方じゃないんです。その点は誤解をしないようにしていただきたいと思うわけでございますが、私は国際機関の人にこの間タイで会いまして、このカンボジアの中の被災民に対して現実にうまく渡っているかどうか、いろんな意見があるからひとつ国際機関はそこを十分によくやってくださいよということを、私はタイで国際機関の責任者に注文を実は出したのでございますが、カンボジアの難民についてはそういう扱いをしております。その点は誤解ないようにしていただきたいと思います。  それから、戦略物資ということでございますが、確かにアメリカがアフガニスタンに対するソ連の軍事介入によって食糧——小麦、トウモロコシでございますとか、こういうものの輸出を一部あれはとめたんです。先生も御承知のとおり八百万トンは、これは恒常的に約束している。これはもうアメリカもソ連に出していくんです。それを超えます千五百万トンですか、二千三百万トンでしたか、あとの千五百万トンは輸出をとめたと、八百万トンは売っているということを、あれやったわけでございます。戦略物資という言葉の定義が、これなかなか、どういうことにするというか、なかなかむずかしいことでございますが、そういうことをやったことは事実でございます。それで、御承知のように今度は中国と穀物の輸出契約を、この間話を決めたということでございまして、アメリカが中国の食糧不足に対して援助する、協力するというようなことを決めたわけでございます。ただあのとき、先生、ソ連に売るのを一部とめたから日本の農家が困るようになったというお話がありましたけれども……
  73. 立木洋

    立木洋君 影響が……
  74. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) あれはほとんど、そういう買ったらどうかという話はあったんです。あったんですけれども、現実の問題としたらほとんどもう倉庫も満庫になっているとか、いろんな理由でそんなに影響のあるような買い付けば、あのとき先生なかったんで、われわれも関係したんですが、そんなにはなかったと私どもは思っていますが、しかし、ソ連に対して八百万トンを超える千五百万トンを抑えたということは、これは確かでございます。これも外交上、戦略上という言葉をたしか使っていたと思うわけでございますが、日本がこの無償援助食糧をやりますとき、先ほど局長からお答えをしましたように、要望があちこちから非常に多い、それでその中から選んでおるわけでございますが、その際も、要望が多いものですからやっぱり外交上の面とか、そういうことも頭に置いてやっていることは確かでございます。ですから、そういう意味では、人道的な問題とプラス外交上の問題もあるということで、私はそのとおりやっていると思います。  ただ、国を見ますと、たとえば南イエメンとかラオスとか、こういうところにも、去年、七八年から七九年には南イエメン、インドネシア、北イエメン、ラオス、タンザニア、バングラデシュ、セネガル、そういうような、あれは難民ですね、中東の難民、カンボジアの難民、ガーナとか、モザンビークとか、そういうところにずっとやっているわけでございまして、特に先生が心配されるような何かさっき御質問が出ましたが、軍事援助にもつながっていくんじゃないかということで、そういうことにも見られるような御心配の向きのお話もあったんですけれども……
  75. 立木洋

    立木洋君 軍事援助とは私言ってないんです。
  76. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そういうことじゃなくて、いまの国々を見ましても、本当に大体は人道上の問題で考えている、あるいはその中に若干やっぱり外交的な、政治的なものも頭に置いて考えておるというのが現状でございます。
  77. 立木洋

    立木洋君 大臣、日本政府としての対応ではなくて、もしかすると国際的な機関の決め方に問題があるかもしれないがという趣旨のことを言われましたが、そのことについては私はここで争おうとは思いません。ただ、援助物資の最大の拠出国というのはこれはアメリカですよね。実際上やっぱりアメリカ意思に反するような形で援助をそれぞれの国にやるというのはなかなかむずかしいと思うんですよ。アメリカの意見がやっぱり相当影響する。それから、これは先ほど言いましたね、中国に対して援助しましたでしょう——援助するというか、アメリカ食糧の輸出の問題、これに対してはインドネシアが大変な批判をしましたよね。反対をした。つまり、自分のところが輸出しておる中国に対して問題があるというふうなことも問題になったんです。ところが、日本が余った米を外国に輸出するというふうな場合に今度はアメリカから文句を言われる。自分たちの市場が荒らされるからそれは困るではないかというふうなことになっていくと思うんですね。だからこういう食糧問題というのが政治的な色合いを帯びる、戦略物資として扱われる、こういうふうなことについては、私は外交上やはり日本政府としてはきちっと対応していっていただきたい。先般私は大来外務大臣に、この食糧が戦略物資として扱われるというふうな問題についてどのようにお考かということをお尋ねしました。そのときに大来外務大臣は、食糧が戦略物資として扱われるということについては、基本的には好ましくないと考えております。という判断を述べられたわけですが、戦略物資として扱われるというふうなことについて、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  78. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 戦略物資というその定義が非常にこれはむずかしい、アンビギュアスなものだと私は思うのでございますが、私は外交——さっきから外交上という言葉を使ったわけでございますが、やっぱり要望が非常に多いときにはやはり外交上のことも頭に置いて総体の問題として考えていくということが必要だと私は思っております。ただ、先生がおっしゃったように、この援助についてはこれはアメリカ意思にどうということは全然ありません。先生がおっしゃった、アメリカが市場を荒らされると言っていろいろ注文をつけたりなんかするという話は、これは延べ払いの問題で、この無償でやるものについては何もないんです。
  79. 立木洋

    立木洋君 知っています。そうです。
  80. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 延べ払いの問題について、アメリカが米をうんと輸出していたということで、それにつきまして輸出先が競合するという問題でそういうお話があることは先生の言われるとおりでございますが、この援助の国をどう選ぶか——無償援助です。あるいは幾らやるかというようなことについては、何もアメリカに相談するとかそういうことなしにいまのような国々へやっているわけでございますので、それは先生日本の自主的な考えでこの援助はやっております。
  81. 立木洋

    立木洋君 大臣ね、そういうふうに言われてくるとだんだん私も反論せぬといかぬようになってくるんですよ。去年、私は予算委員会で武藤さんが農林水産大臣のとき質問したんです。日本が外国から余った米の引き合いがあって輸出をしてほしいということで九十一万トン輸出した、そしたらアメリカから文句を言ってきたんですよ。今年度の輸出については引き合いが、希望等が百四十万トン近く出てきているが、アメリカと相談した結果、事実上四十一万トンに減らされているんですよ。私は、それがアメリカの圧力だ何だとかというようなことを言いますとまた大臣反発されるから、私はその点もよく考えていただきたい。  特に私は角度を変えて質問をいたしますけれども、いま資本主義の先進国ですね、その国の穀物の自給率を見てみますと、アメリカはこれはもう大変な輸出をしている国ですよ。フランスというところでも外国に輸出できるような、自給率というのは一〇〇%以上ですよ。工業国だといわれたイギリスでも、日本の自給率三四%から見るならばさらにいい状態にあります。あるいは西ドイツにしたってそうですよね、西ドイツが一九七五年に八〇%ですか。  私はそこでお尋ねしたいんですが、いわゆる先進国日本穀物の自給率が最低だというような状況下に置かれており、食糧問題が国際的にもとみに重要な問題になってくるという状況のもとで、こういうことがこれからの日本外交にどういう影響をもたらすとお考えになるのか。こういうふうになっても結構だと言われるのか、こういうふうになるのは外交上困るというふうにお考えなのか、どういうふうにお考えなんですか。
  82. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先生、さっき反発したんじゃないんです。実は先生の言われたことを一部認め、一部反発したんです。ただで出す経済援助については、この規約でやっているこれは自由に日本が国を選び、量を決めています。アメリカ意思でどうということはありませんと言ったんです。後の武藤農林水産大臣とかなにかのお話はそのとおりでございまして、これは輸出の関係、延べ払いの輸出ですから……
  83. 立木洋

    立木洋君 だから私はさっき輸出と言ったんですよ。
  84. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ああそうですか、それじゃ聞き違って失礼しました。
  85. 立木洋

    立木洋君 いや、私の言い間違いかもしれません。
  86. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その問題については、先生のおっしゃったようなことがあるんです。ですから、アメリカと協議しているという、確かにそれはそのとおりでございます。  それから、いまの自給率の問題、それが外交にどういう影響があるかという御質問でございますが、先生ももう御承知のように、総合的な自給度というのは低い。低いのは米、トウモロコシ、大豆というようなものが、えさを含めまして非常に低いのでございまして……
  87. 立木洋

    立木洋君 米は高いんでしょう。
  88. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 小麦ですね。大豆、それからトウモロコシ、こういうものが低い。それで米だけが過剰米ができているというのが現実でございます。それで、何とか少しでも自給率を上げるようにといって、農林水産省が米を転作して、えさとか小麦、麦類をつくっているところもございます。そういうことでやって、自給率を上げようということをやっていますのは、やはり私どもからしますれば、なるべく国内の自給率はある程度上げておくべきだと、そういう努力をすべきだということでやっているわけでございまして、外交とかいろんなものを考えましても、ある程度の自給率を保つようにしておくということは必要だというふうに私も考えます。
  89. 立木洋

    立木洋君 今度の所信表明の鈴木総理の演説の中でも、確かに自給力の向上ということを言われました。まあ自給率と言わないで自給力という言葉を使っているのは、ちょっと私もどういう意味か考えてみてるんですけれども、いずれにしろ自給力の向上と言われている。それで、やはりこれからの国際問題を考えていく場合には、その国でとれる作物をやはり自給率を高めてやっていくというふうなことでなければ、いろいろとやっぱり複雑な状況の中で問題が出てくることはあり得ると思うんですね。  ところが、先ほど言われたことで、私はもう少しアメリカとの関係でお尋ねしたいんですが、アメリカが最近発表しました、アメリカの下院貿易小委員会が出しましたジョーンズ・レポートというのを大臣お読みになったでしょうか。
  90. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 全部通読はしておりませんが、知っております。
  91. 立木洋

    立木洋君 ぜひお読みいただきたいとお願いしてあったんですが、お読みになって御感想はいかがでしょうか。
  92. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは長期的な視点から考えれば、日本が資源を海外に依存している、そして輸出をしなければ日本の国というものは立っていかぬのだということで、日本の貿易問題、日米の貿易問題解決のために競争力の問題とか、品質の問題とか、日本が輸出していかなければ日本経済構造というのは成り立っていかぬわけでございますから、それは認識をしている。ただ、アメリカも、競争力とか品質等の面で米国がもっと努力しなければならぬというようなことを全般的な問題としては言っているところがあるわけでございまして、これは私はそれなりに評価する問題もあると思うわけでございます。  それから、市場の開放ということを非常に言っておるわけでございます。それで、まあ日本の市場の開放がおくれているんじゃないか、自由貿易ということから考えれば、もっともっと市場開放ということに努力しなきゃならぬということを言っているわけでございまして、これは私は事実そういうこともあるわけだと、物によってはですよ、全般的にどうかという問題はありますけれども、物によってはあるわけでございますので、そういう見方もやっぱり冷静にこれは評価するということは必要だろうというふうに見ております。
  93. 立木洋

    立木洋君 私も見たんですけれども、まあ日本国内で八〇年代をどういうふうにしていくのかと、農政の問題に関してですね。で、これが結局お米の問題を解決する。だから、米から、大豆、小麦、大麦、あるいは粗飼料といったような、他の作物の自給増大に日本が取り組んでおる、こういう日本の農政のあり方に対してそのままそれを是として対応していくならば、これはアメリカからの将来輸入を減らす結果にならないかと、日本側の輸入をですね、減らす結果にならないかと。で、これは保護主義のおそれがあるということで、この中には日本がいわゆる転作作物による自給率の向上を図るということに対する牽制があるんですね。それから、アメリカ日本に対して高品質の農作物を大量に供給できることを保証するかわりに、いわゆる市場を広げろという趣旨のこと。それが典型的に出てきているのが、農業については、長期的にはアメリカ食糧供給を保証する条約を結び、日本国内農業の構造改善を図ることが解決の道である。だから、長期的にはアメリカがどんどんどんどん食糧日本に輸出して、日本がそのアメリカ食糧をどんどん輸入できるような、そういう農業の構造をつくるべきだと。これは私は大変なことだと思うんですよ。さっき、外交上の観点からしても確かに自給率の向上ということは考えていかなければならないというふうに大臣言われた。しかし、こういうような状態になってくれば、これはまさに日本の構造がアメリカの農作物の輸出に必要な農業構造に変えられていく。もしか、これが結構だなんて言ったら、大臣、福島に帰って農家の方々に怒られるんじゃないかと私は思うんですが、このような考え方は私は大変な意味を含んでおると思うんですよ。それで、これを今度のレーガン大統領が当選したという問題と結びつけて考えると、日本農業を守る観点からも私は一層日本外交をきちっとやっていかなければならない点に来ておると思う。その点についてどうお考えなのか、お尋ねしておきます。いかがでしょうか。
  94. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 農産物の自給率あるいは自給力の問題から先生いろいろお話が出たわけでございますが、私どもも自給率というものをなるべく、自給度といいますかね、そういうものをなるべく上げておくという努力をするということが必要だということをさっきお答えしたわけでございます。ただ、日本の畜産、えさの問題、あるいは小麦の問題を考えますと、それは先生日本の耕作面積その他お考えになるとわかりますが、これは自給度を上げましてももうある限度があることは私は確かだと思うんですよ。どうしてもやっぱり外国から買わにゃならぬ物がある——小麦、大豆、えさ、大量のものを買わにゃならぬというのは現実でございます。でございますので、長期の安定した供給、まあ条約を結ぶかどうかというのは別でございます。  安倍農林大臣とバッツ農務長官でございましたか、三年間ぐらいの大体の見通しというようなことで前に約束したことがありました。ああいうような意味の、ある数量を安定して向こうが供給を続けるということは、私はこれは大切だと思うんです。大豆でございましたか、一回大騒ぎをしたことがあるのは先生御承知のとおりです。もう大騒ぎになりましたので、これはある一定の数量は安定して外国から供給を受けられるということは、これは必要でございますから、その量を、私はどのぐらいの量にするかということで問題があると思うんです。大豆とか小麦とかあるいはえさとか、そういうものについてはほとんどいま自由に入ってきている。小麦食糧庁でもう一手に買うとか、いろんなことをやっておりますので、そのこと自体でいま日本農業に大豆が入ってくる、小麦が入ってくるということで非常な圧迫ということになっちゃいかぬので、ある一定の数量をどこぐらいまでにするかということを私は農水省が十分考えて、それを超えるものは、やっぱり消費者のことを考えれば安定した供給ができるようにするというような話し合いをするということは私は大切なことじゃないかというふうに思っております。外国から入ると一概に全部農民圧迫だという、これは物によっていろいろ私は違うと思いますので、もっと細かく議論せにゃならぬじゃないかなと私は思っております。
  95. 立木洋

    立木洋君 農水省の方お見えになっていると思うんですが、ちょっと自給率の問題でお尋ねしたいんですけれども、大臣も聞いておいていただきたいんですが、いま出ました大豆の問題ですよね。これは、現在の大豆の自給率なんて言ったら、いま五%ですよね。ところが、日本はこれはかつてはある程度自給率は高かったわけですよね。ところがどんどんアメリカから輸入してきて大変な状態になって、あの自給率の低下が大変な事態になったときに、あの自民党の中川さんが国会に出て、大豆の自給率を下げるのはけしからぬじゃないかといって質問された議事録を私読んだことがあるんですよ。ところが、あの方が農林大臣になったら今度外務省と一緒になって、結局はアメリカから大豆を輸入されても仕方がないという立場に立たれた。一体どういうことかと言ったら、中川さんが、あのときはおれも若かったからなという答弁なんですよ。私は、若かったからといってそんな自給率の問題を考えてもらったら困ると思うんですよ、まあ笑い話のような話かもしれませんけれども。  しかし、私はいま言ったように、何もすべて外国から輸入するのが全部けしからぬと言っているわけじゃないんです。しかし、日本食糧構造の問題を考えて、アメリカの言いなりになるような、アメリカの利益を保証するような農業構造に変えられていくような状態がいままでも進んできたし、また、そういうことに今後より強力に進められるとするならば、それは危険なことではないかということを私は指摘したいわけですね。  それで、特に農水省の方、いま転作の問題等々でいろいろ出されている中で、一番農家の方々が言っているのは、最も転作しやすいと言っているのは飼料米のことですよね。これは長年、長年といいますか、去年からもいろいろ問題にされてきて、いままで十一ぐらいの試験場ですか、等々で研究されているとか、ある程度部分的には見通しもできるような状況があるんではないかというようなことなんかも報道されたり、むずかしいという報道をされたり、流通過程における食糧用の米との区分けがどうなるか、あるいはコストがどうなるかというふうな問題等々があったわけですけれども、しかし、飼料穀物の自給率を高めていくという問題については、八〇年代の農政の基本的な方向という農政審議会の内容を見てみますと、「現段階で飼料穀物の本格的な国内生産を見込むことはむずかしい。」というような結論的な内容が出されており、十月の二十二日に発足した飼料穀物問題懇談会でも、飼料穀物政策として挙げているのは、食糧安保という立場から見直すということなんですけれども、しかし、実際には輸入体制をどうするか、それから備蓄をどうするかという点に集中されている。自給率をどう高めるかという点にもっと注目を注ぐべきではないか。その点に関して亀岡農水大臣が一日の日に、えさ米の国内生産のあり方については農政審議会に専門部会を設置して検討したいというふうなことも新聞で見たわけですが、この自給率を向上させるということについて、こういうアメリカのいま言われたような流れに押されるんではなくて、きちっとやっぱり対応していく必要があるし、とりわけそれは農水省が農民の観点で貫いていかなければ大変なことになるわけですからしっかりしてほしいわけですが、そのこととえさ米の問題について、いま尋ねた点、二点お答えいただきたいんですが。
  96. 蜂巣賢一

    説明員(蜂巣賢一君) 先日、御承知のように農政審議会に御検討をお願いしておりました八〇年代の農政の方向について御答申いただいたわけでございますが、それと同時に長期見通しの答申もいただいておりまして、いま先生おっしゃいましたように、自給率が非常に低いという問題でございますが、今回の長期見通しでは、今後の需要の動向を踏まえまして、国内生産可能なものは極力国内生産していくんだという考え方でつくっておりまして、先ほど外務大臣もお触れになりましたように、考え方としては、麦ですとか大豆ですとか飼料作物というものの生産をふやし、それらの自給率を上げていくという方向をとっております。それから基本的な食糧でございます米については、これからも一〇〇%の自給率を維持していきますし、野菜につきましてもほぼ一〇〇%、それから果実ですとか畜産物についても八、九割という相当高い自給率を維持していくんだという考え方でつくっております。ただ、おっしゃいますように穀物がかなり輸入をされておって穀物自給率が低いと、国内でえさ用の穀物をつくったらどうかという考え方は農政審議会の中にもかなり強くございまして、実は農政審議会の中で相当この問題につきましては時間をかけて検討をしていただいたわけでございます。その結果がいま先生お読みになりました農政審議会の答申の中に盛られておるわけでございますが、御指摘のように、結果からいたしますと、現段階ではこの飼料穀物の本格的な国内生産はむずかしいんだという結論になっておるわけでございます。  なぜそのようなことになったかと申しますと、一つにはやはり穀物国内生産コストと、それから海外から入ってきます穀物価格との間に余りにも大きな格差が現状ではございまして、これを今後試験研究その他でコストを下げていくとか、いろんな工夫でその格差を縮めていく努力がございませんと、現状でその格差を格差として残したままでは、どうもえさ米なり飼料穀物なりの国内生産したものの流通が確保できないという問題になりますので、その差をこれから時間をかけて、一つは試験研究をやりながら、超多収米で他と識別できるような作物、新しい米をつくっていくという試験研究を片一方でやりながら、その格差を何らかのかっこうで補てんするとすれば、その補てんの程度と仕組みについてどう考えていくかということをこれからさらに検討していかなければならぬ。いまの段階ではまだその点について結論が出せないということでああいうことになっておるわけでございます。  したがいまして、今後農政審議会の中でも恐らく——とりあえずは省内でしばらく検討いたしましてから農政審議会にお願いするという段取りになろうかと思いますが、この点についてさらに詰めた検討をしていただくというふうに考えておるわけでございます。
  97. 立木洋

    立木洋君 時間がないので、農水省の方に一括して四問お尋ねしますので答えていただきたいと思うんですが、一問一問答えておったら、あと十分足らずしか時間がないのであれですから。  先ほど来の私の述べたいことについてはそちらの方でお聞き取りいただいたと思うんですけれども、私はやっぱりいまの状況の中で食糧問題というのは、外国との関係ということでは非常に重要だと思うんです。これはそういう意味ではきちんとした自主性を確立した外交のあり方ということが日本農業の問題を守る上でもきわめて重要であるし、それぞれの先進諸国がとっておる対応から見ても、国内的な農業に保護政策をとらないような国というのはほとんどないんですよ。ところがそれが一般化されて、金を農業に使い過ぎるというふうなことでいろいろ御批判等々があったりして、またそういう点で農家の方々の要望を積極的にくみ上げていくという姿勢を農水省が弱めるならば、これはやはり大変なことになるだろうと思うんです。  今回私は冷害の問題で現地をいろいろ見てきたので、それについて四点だけ質問をしたいわけですが、今度九百八十二万トンということで、水稲、陸稲合わせて一千万トンを割るという大変な状況になったわけですが、その対策について第一点は、天災融資法や激甚災法、この二法の発動を望んでいるわけですけれども、これがどういうふうになるのか、それから特例措置として講じた共済金の早期確定と支払いをしてほしいというような要求があるけれども、この点についてはどうなるのか。これが一点です。  それから第二点は種もみの援助。五十一年度の場合には国が三分の一、県市が三分の一、それから自己負担三分の一というふうになっておりましたが、農家の方々の要求では、この際自己負担については援助をしてもらえないかという要望があります。しかし少なくとも五十一年度程度はやってもらえないかという種もみについての援助に関する要請がありますが、この点についてはどうなっているのか。  それから第三点は飯米の確保ですね。いわゆる自家で食べる米さえとれないというふうな状況になっているわけですから、これは第一種農家だけではなく、兼業の第二種農家についても飯米に関しては必要な場合には特別売り渡し対象とするようにしてほしいという点についてはどうなるのか。  それから最後の点については、先日——一日ですか、事務次官が記者会見で冷害の配慮から来年度上積みを縮小して減反を緩和するという趣旨の記者会見での発言がありましたけれども、しかし現実にはやっぱり八三年度から行うと。そうすると結局は若干部分計画を後年に回したということにすぎなくなるのではないか。農民としては少なくとも今回の冷害による影響が克服されるまで凍結してほしいという要望が出されているけれども、この点についてはどのように検討されているのか。  以上四点、時間がございませんので端的にお答えいただければありがたいと思います。
  98. 浜口義曠

    説明員(浜口義曠君) いま先生御指摘の四点、順次お答えさせていただきたいと思います。  まず第一点の天災融資法は準備の状況でございます。御案内のとおり、天災融資法の発動あるいは激甚災害法の発動につきましては、四十六年及び五十一年の発動の時期はともに十一月二十九日であったわけでございます。今次の冷害の深刻な事態にかんがみ、先ほど先生御指摘のとおり、農民の方々の強い早期の発動の御要望を踏まえまして、現在関係省庁と協議中、目下努力中でございまして、その発動の目途は大幅に繰り上げまして、十日を目途にしております。これが第一点のお答えでございます。
  99. 海野研一

    説明員(海野研一君) 共済金の問題についてお答え申し上げます。  共済金につきましては、被害農作物の損害評価をともかく迅速、的確に行うということで農業共済団体を指導しておりまして、損害額が確定次第、共済金を支払うということで、特に水稲につきましては農業経営のウエート非常に大きいものでございますから、遅くとも年内には全部の支払いを完了するようにということでやっておりますが、中でも被害の大きな農家、たとえば皆無作農家というようなものにつきまして、それでも遅いという問題がございますので、特にそういう農家に対しては、被害確定前でも仮渡しということを行うように指導しておりまして、すでに現在までに八連合会、四十組合で仮渡しを実施しております。さらに、今後十一連合会、四十五組合、仮渡しを行う計画というのが入っております。それから、国もその場合に再保険金の概算払いということを行うことにしておりまして、本日、青森県農業共済組合連合会に対しまして、八十四億円の概算払いを行う予定でございます。  それから、特例措置につきましては、本年の水稲、いろんな形で被害米が非常に出ておりまして、量だけでは言えない食用にならないような米というのが大量にございます。それで十月二十四日付の通達をもちまして各連合会に特例措置、通達いたしたわけでございます。内容といたしましては、従来でございますと一応縦目ふるいでふるいまして、その上に残ったものは収量ということでございますが、このような被害米の多い年につきましては被害米を除いたり、さらに粗いふるいでふるったり、それでも食用にならないようなものは搗精試験をやりまして、搗精歩合の下がりというようなものまで計算をいたしまして、食用になるものだけが収量として把握されるというような措置を講ずることにいたしております。
  100. 芦澤利彰

    説明員芦澤利彰君) 第三点の水稲等の種確保問題についてお答えさしていただきたいと思います。  ことしの冷害で、本来農家が自分の圃場からとれてくる予定の種がとれなくなったので、いつもよりよけいに種を買わなきゃならないという、そういう問題が出てきておるわけでございますが、このままの状態にしておきますと被害を受けない農家は稲を収穫して、もみすりして玄米として政府に売り渡すことになっちゃいますが、玄米になれば、それは種として使えなくなりますので、玄米にならないうちにいいところの種を種として十分確保しておくように、しかもその種が変なものがまじらないような、種として使えるようなもみが確保できるようにということで、すでに冷害の様相が濃くなりました九月の六日あるいは九月の十六日にそういう種の確保を行うようにと、しかもなかなか県の中だけで種の確保が十分行われない場合には、ほかの県からのあっせんをしたりというふうなことで、県間調整をしてまず種を確保しろということで指導を進めてまいったわけでございますが、その中で水稲について見ますと、すでに北日本ではおおむね種の確保ができておりますが、西日本の場合にことし御案内のように生育がずっと遅延しておりまして、収穫がおくれている等の関係もございますので、まだ一部の部分については種の確保が完全にできているというところまでは至っておりませんが、いまの見通しではおおむね確保できる予定になっております。ただ、大豆等の豆類、これもやはり西日本での生育がずっとおくれておりまして、この確保にいまさらに最善の努力に努めておるところでございますが、何とか確保できる見通しがついてまいったわけでございます。  そこで、具体的な種の確保対策でございますけれども、ただいま申し上げましたように、西日本における収穫がほぼ完了いたします段階において、全国的により正確な種の必要量等の調査を行った上で、過去の事例等を十分参考にしながら、また関係方面と十分な打ち合わせをして、今後の対応を考えてまいりたいというふうに考えておりますが、その際、五十一年あるいはその前に行った四十六年等の事例等も参考にしながら対応してまいりたいと思っております。
  101. 近長武治

    説明員(近長武治君) 飯米の確保の問題についてお答えいたします。  御質問は、今回の災害によります被害を受けた農家に対して政府米を特別に売るわけでございますが、その場合に第二種兼業農家であるからという理由で対象から除外しないようにと、こういう御趣旨だと思います。特に今回は非常に大きな災害でございますので、現実に収穫皆無であるとか、それから非常に大きな減収になった農家がかなりあるようでございます。そういう農家の方に対しましては、政府が持っておりますお米を、都道府県それから市町村のルートを通じまして特別な売却をしていく、それからその場合の代金は一年以内の延納を認めるというような方針でございます。この対象になる農家につきましては、特に被害が甚大で収穫が皆無あるいは著しく減収となって、経済的な理由によってお米が買えないと、こういうような農家を対象として考えております。したがってこのような条件に合致いたしますれば、単に第二種兼業農家であるということで対象外にするというふうには考えておりません。そのような方針で取り扱いたいと考えております。
  102. 田中宏尚

    説明員田中宏尚君) 第四点の生産調整の次期対策についてでございますが、先生御承知のとおり、これだけの冷害の年でございますので、基本的には生産調整という、米の過剰という構造問題でございますので、冷害とは別だという立場をとってきたわけでございますけれども、これだけの冷害につきまして、大臣もしばしば発言していますように、当面は冷害対策に全力投球を加えるということで、ここ一カ月次期対策の検討というものをストップいたしまして冷害対策に取り組んできたわけでございます。おかげで若干の細部につきましては冷害対策でまだ残っておるものもございますけれども、基本線につきましてはおおむね方向づけが済みましたので、先週あたりから次期対策の検討に入っているわけでございますが、米の過剰という構造問題と冷害という緊急な問題と、この両者をどう調和させるかということにつきまして実は頭を痛めているわけでございまして、ここのところ関係方面の意見等も幅広く聞いておりまして、できるだけ早い機会に方向づけはいたしたいと思っておるわけでございます。     —————————————
  103. 秦野章

    委員長秦野章君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、田中寿美子君、戸叶武君、中山太郎君が委員辞任され、その補欠として藤田進君、吉田正雄君、三浦八水君が選任されました。     —————————————
  104. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間の制約がございますので、ひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。  この食糧援助規約によりまして、開発途上国に毎年一千万トン以上の食糧援助をできる、こういう目標が掲げられて、各国がその確保を約束し合ったことは評価をし得ることである、こういうふうに思っております。しかし各加盟国援助義務を負うことになる年間最小拠出量の合計が七百五十九万二千トン、はるかに目標値には及んでいないということですね。したがって、今後この目標値はどのような方法によって達成をされるのか、その実現の見通しについてまず伺いたい。
  105. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) ただいま先生御指摘のとおり、一千万トンに達してないというのは事実でございます。私ども考えておりますのは、現在入っておりますこの加盟国以外に新しい国が入ってくることも期待しておりますし、それから同時に各加盟国がこの援助規約に基づく義務の履行としての援助以外に援助する場合もございます。日本の場合も、延べ払いによる米の輸出は、食糧援助規約に基づく日本義務の履行ではございませんけれども、一応この食糧援助委員会に統計として提出するわけでございます。そういうこともございまして、加盟国の幅を広げる、それからもう一つは、各加盤国が自分の義務以上の援助をするということを期待いたしまして、一千万トンになることを期待したいということでございます。
  106. 木島則夫

    ○木島則夫君 わが国開発途上国に対する援助は、従来いろんなやっぱり問題があったと思いますね。その質においても御批判があったようですし。こういった状況の中で、わが国が無償援助一環である食糧援助の量を、従来の二十二万五千トンから三十万トンにふやしたことは、これは私はやはり前向きに評価できるんだろうというふうに考えております。しかしわが国が抱えている六百五十万トンという過剰米処理の観点からも、援助量はもっとふやしてもいいんじゃないだろうか。しかも今回の規約では、米による援助というものが正式に認められたわけであるので、年間最小拠出量三十万トンに固執するんじゃなく、いま局長が言われたように、もっとそれを超える量を飢えに苦しむ諸国に援助してもいいんじゃないだろうか。これは当然、わが国義務的な援助量三十万トンに上積みをして援助することは、規約の第四条ですか、ここに言う開発途上国不作が生じた場合には、食糧援助委員会加盟国食糧援助の量を増加することを勧告することができるという趣旨にも合致をすると思われますので、ぜひともひとつこの援助量の増加を図るべきだというふうに考えておりますけれど、これはどうでしょうか。
  107. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 先生御指摘のとおり今回からわが国援助量、最小拠出量は三十万トンでございまして、前回の食糧援助規約の二十三万五千トンから約三三%ふえていることは事実でございます。それから同時に現金供与の場合の換算の方法が変わりまして、日本の拠出すべき金額換算いたしますと大幅にふえていることも事実でございます。そういうことで、この三十万トンを決めますときには、各国の伸び率も比較いたしまして決めたわけでございますが、日本といたしましては、先生御指摘のとおりこれ以外にも食糧援助はできれば行いたい。もちろんこの援助規約に基づく義務の履行ではございませんけれども、何かの形の援助はできないかということを検討しているところでございます。  そこで先生の御指摘の第四条の所得の低い開発途上国にかなりの不作が生じた場合云々という規定をいかに解釈するかという問題につきましては、今後この食糧援助委員会におきます審議を待つ必要がございます。私どもといたしましては、この審議のいかんにかかわらず、先ほど申し上げましたような形でこの食糧援助規約に基づく義務以外の何かの援助ができないかということを現在検討中の段階でございます。
  108. 木島則夫

    ○木島則夫君 やはり積極的にこれは前向きで取り組んでもらいたいと思いますね。  さて、その援助を受ける国の中には、どうしても嗜好そのほかいろいろな国情によりまして、米による援助をきらう国もあると思いますがね。わが国年間最小拠出量三十万トンのうち、米と小麦などそのほかの穀物との比率はどの程度を予定をしているのかということと、また米でも、すべてを日本米でやるんじゃなくて、一部は外国産米によって行っていると聞いておりますけれど、この比率はどの程度なんでしょうか、念のためにちょっと教えていただきたい。
  109. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) 本年度について申し上げますと、開発途上国要請もございまして、一部分米国産の小麦を使っております。全体の量から申し上げますと、全体の二割弱が小麦でございまして、そのほか全部米になる予定でございます。米は日本米第三国米が大体二対一の比率になる予定でございますが、もともとこの比率は固定されておりませんで、そのときそのときの各国要請等勘案いたしまして決めることにしているわけでございます。
  110. 木島則夫

    ○木島則夫君 わが国は従来から米そのものの現物を贈与するんじゃなくて、被援助国が米の購入に充てるための現金を贈与するいわゆる現金贈与方式をとっているわけですけれど、これはどうしてなんでしょうか。そのメリットもひとつつけ加えていただきたい。
  111. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) いろいろ理由がございますけれども、まず大きな理由は、日本がたとえば国内法上日本米を直接現物で向こうに無償供与することができないという事情がございます。食管法の規定に基づくものでございます。  それからもう一つ、財政上の問題といたしまして、予算を作成する場合に、現物でございますとなかなか金額がはっきりしないということがございまして、予算作成の前に日本義務額がはっきりと金額で決まっていた方が望ましいということでございます。  そういうことがございまして、この規約の第三条七項に基づきまして現金の贈与、こうなっておるわけでございますけれども、この贈与方式と申しますのは現金を相手国政府に与えて、相手国政府が自由に買うという形ではなしに、日本米の場合でございますと——日本米の場合は食糧庁でございますけれども、相手国政府と契約を結びまして、その契約を認承した段階で日本政府がお金を払い込むという方式でございますので、実態は日本米が行く、現物が行くという形をとっているわけでございます。
  112. 木島則夫

    ○木島則夫君 相当専門的なことになるんで、素人の私にはちょっとむずかしいことでございますので、あるいは質問の趣旨がどうかと思うんですけれど、こういうことはどうなんでしょうか。  従来からわが国が米そのものの現物を——これはいま私が申し上げた、つまりわが国が現金贈与方式をとっているために、年間最小拠出量三十万トンを小麦の実勢市場価格で評価をして、これを邦価に換算をした九十五億円が昭和五十五年度の予算に計上をされていると、こういうことになっておりますね。この九十五億円で購入できる米の量を逆に計算をしてみると、米の国際価格トン当たり約九万円として試算をしますと、大体十万トン強にしか過ぎない、計算上はそうなりますね。規約三条におけるわが国義務量を見ますと、現物贈与方式であれば米三十万トンをまるまる援助することを義務づけられているという解釈も成り立って、その場合現金贈与方式によっているために、九十五億円全額を日本米の購入に回しましても、実際の援助量は三分の一の十万トンに減ってしまうことになるが、これじゃせっかくの食糧援助の効果も半減をしてしまう。そこで、この際従来の現金贈与方式を改めまして、現物贈与方式によってまるまる三十万トンの米を援助するように切りかえられないかと、こういうことはどうですか。私の言っている論理があるいは違っていたら、ひとつ御考慮をいただいて、この配慮の上に立ってお答えをしてもらいたい。
  113. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) ただいま先生御指摘のとおり、食糧援助規約をごらんになりますと、三条の規定の仕方が単に三十万トンの「年間最小拠出量」と書いてございますので、これは米か小麦かという御疑問が出てくるだろうと私は想像するのでございます。この点につきましては、実は手続規則ではっきり決まっております。手続規則がございます。この手続規則によりまして、ここで書いてございます。定の年間最小拠出量は、現金供与する国につきましては小麦換算であるということが明白になっているわけでございます。協定上必ずしも明白でないではないかとおっしゃるかと思うのでございますけれども、実はこの協定の第三条に、現金拠出をする国につきましては、前暦年小麦平均価格を基礎として、翌年度の実勢市場価格決定するという規定がございまして、三十万トンという数字は、現金拠出する場合には小麦換算して決めるのだということが裏から書いてあるわけでございます。そういう観点から、私ども木島先生の御疑問が出てくるような規定の仕方をとっていると思いますけれども、従来の国際会議におきまして、この条約をつくる過程におきまして、小麦換算であるということは明白になっているわけでございます。
  114. 木島則夫

    ○木島則夫君 もちろん現物贈与方式には、援助される国の側から言いますと、米に対する嗜好の問題であるとか、国情の問題、環境の問題いろいろあろうと思いますね。また、食管会計に及ぼす莫大な赤字の補てん、こういった問題などが確かにあるんだろうと思います。こういった点もさることながら、わが国は現物贈与をした分に見合う金額を被援助国の通貨で現地に積み立てをさせて、それを利用して被援助国が自国の社会開発などに取り組むことになるならば、米三十万トンが及ぼす効果はさらに大きいものになるんじゃないかと、こういうことになるのです。どうでしょう。
  115. 梁井新一

    政府委員梁井新一君) ただいま先生御指摘のごとく、日本食糧援助規約に基づきまして、日本義務履行といたしましてこの食糧援助をする場合に、相手国に対しまして、この相手国外におきます日本食糧援助の買却代金を積み立ててもらっております。この積み立てば相手国政府の名のもとにおける勘定に積み立てられるわけでございますけれども、これはその後日本政府との協議によりまして、その国の開発計画に使用するということになっておるわけでございます。
  116. 木島則夫

    ○木島則夫君 さて、その食糧援助規約とともに、国際小麦協定を構成する小麦貿易規約はいまだ成立のめどが立っていないようでございます。その主な理由は、備蓄の規模であるとか、トリガー価格開発途上国の備蓄の取り扱い、こういった点にあるように聞いておりますけれど、各国の対立は具体的にどのようなものなのかということと、またわが国がこういったそれぞれの点についてどのような見解を表明をしているのか。  もう一つ伺いましょう。政府小麦貿易規約の成立はいつごろになるという見通しを立てているのかどうか。アメリカの政権もかわったことでありますし、この辺の見通しも一括して伺っておきたいと、こういうふうに思います。
  117. 深田宏

    政府委員深田宏君) 簡単にお答え申し上げます。  先生御指摘の諸点がまさに問題になっておるわけでございますけれども、まず備蓄の規模につきましては、三千万ドンという案と二千万トン程度という案とがまだ残っております。それから、トリガー価格につきましては、これは非常に細かい数字がございますけれども、放出価格、積み増し価格、それぞれについて数十ドルの開きがまだございます。開発途上国の備蓄運用に関する問題につきましては、この規約援助的な要素を導入するかどうかというような点をめぐって、まだ折り合いがついてないわけでございます。わが国といたしましては、小麦の大規模な輸入国であるという立場から、交渉に積極的に参加しておりますことは御存じのとおりでございますけれども、備蓄規模につきましては貿易の変動をカバーする数量で足りるのではないかという考えを持っております。また、開発途上国の備蓄運用問題につきましては、この規約援助を取り込むことは現実的でないのではないかということを考えております。  最後に御質問がございました今後の見通しでございますけれども、これは十一月に予定されております国際小麦理事会で、従来から特別委員会を設けて行ってまいりました技術的な検討の結果を踏まえながら、交渉再開の問題を取り上げることになっておりますので、わが国といたしましてはこの理事会で再開につきまして前向きの結論が出ることを期待いたしております。ただ、先生御指摘のような最近の諸般の発展もございますので、現時点でこの規約がいつ成立するかということについて、的確な予測をすることは困難な状況でございます。
  118. 木島則夫

    ○木島則夫君 結構です。
  119. 秦野章

    委員長秦野章君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  千九百八十年の食糧援助規約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  120. 秦野章

    委員長秦野章君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時三十分に再開することとして、暫時休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後一時三十六分開会
  122. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  123. 松前達郎

    松前達郎君 外務大臣にお伺いいたしますが、昨日アメリカ大統領選挙が行われて、その結果ロナルド・レーガン氏が当選をしたわけなんですが、レーガン氏のかねてからの主張を見てみますと、「強いアメリカ」という言葉がその中にあるように思います。これに対して、これは非常に今後の日米外交あるいは日ソの問題まで絡めて非常に重要な問題になるんじゃないかと私思うんですが、そういう面から、政府としてこの結果についてどういうふうに評価されておるか、それをまず外務大臣からお願いいたします。
  124. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) きのうの選挙でレーガン氏が勝って、一月二十日ですか、新しい大統領に就任されるということになったわけでございますが、正式にまだ政策がこうだとかいうようなことは聞いてないわけでございまして、選挙中の演説とかそういうことで承っているだけでございます。ただ私は途中に、副大統領候補のブッシュさんが中国から日本にということで来られましたので、私は、これは面接お会いしましていろいろ質問を実はしたことがございます。ですから、私はブッシュさんと会ったときの印象といいますか、それが一番頭にあるわけでございますが、その中で私の印象に深くございましたのは、「力による平和」ということを言われたことが印象にございます。これは具体的に軍備をどういうふうにするとかSALTIIの批准をどうするとか、そういう具体的な話はございませんでした。そういう話はございませんでしたが、力による平和ということでソ連との話が出ました。軍事力のバランス・オブ・パワーといいますか、そういうことに触れました話が出たわけでございます。今度の戦いの結果を見ますと、いま先生「強いアメリカ」と、こういう御表現がございましたが、その点正確にレーガンさんがどう言ったかということは別にしまして、そう思われるような演説もあっちこっちであったやに私どもも聞いておるわけでございます。でございますので、私はそういう政策が一つのやはり、力による平和ということを言われましたので、大きな一つの政策の項目になってくるのかなというふうには思っておりますが、正式にはまだ承っておりませんので論評するわけにはいきませんが、そういう話が出ました。  それに関連しまして、私は日本に対しまして防衛力の問題等についていまもカーター政権のもとでいろんな期待表明があるわけでございますので、その点について質問をしたのでございますが、そのときの話は、いまよりももっともっとというような、何もそういう要請とか期待表明をする考えはないんだと、日本アメリカの問題については必ず事前によく協議するから、協議をするつもりだということを言っておられました。自動車の問題がありましたので、自由貿易の問題でございますとか、あるいは台湾関係の問題でございますとか、いろいろ質問をしたのでございますが、いま言ったような防衛の問題については話が抽象的な話であったわけでございます。  で、レーガンさんの演説や何か拾ってみますと、日米関係については、私は、ニュアンスの違いは若干あるいはあるかもしらぬが、大きな変化はないじゃないかというふうに見ておりますのは、共和党もアジア政策の中で、外交の中で日本というものを基軸にして考えていくのだということを言っておられますし、日米関係は共通の利害もあるし、安保条約もありますし、特別な関係にあるのだというようなことも言っておられるわけでございますし、貿易のところでは、私は自由貿易の話をし、向こうもそうだと、そのとおり自由貿易を守っていくのだという話がございましたので、カーター政権と、ニュアンスの違いはあると思いますが、私は日米関係等については大きな変化はないだろうというふうに見ているところでございます。ただ、これは何も正式な政策を伺ったわけでございませんから、いままでの選挙中の演説とブッシュさんに直接会った感じを私は申し上げたのでございますが、そういうような受けとめ方をいましております。
  125. 松前達郎

    松前達郎君 ちょっと角度を変えて感触をお伺いしたいんですけれども、このレーガン氏の当選に関してヨーロッパの感触ですね。ヨーロッパはいままでどうもアメリカの提唱することに一〇〇%そのとおり忠実ではないという面もあったわけですね。欧州の方の反応というのは、一体どういうふうな反応だというふうに見ておられますか、その点。
  126. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 正式に向こうの大使館等から連絡があるというようなことはございませんが、これも新聞で見る限りのことでございますが、指導力等の問題いろいろ議論がございまして、レーガンさんが勝ったことの方が望ましいではないかというふうに述べておられる人が多いというふうに私はいま見ておりますが、しかしこれは正式にまだ公電等が来ておるわけではございませんので、きのうのきょうでございますから、そういうようなことを言っている人が多いというふうに見てはあります。
  127. 松前達郎

    松前達郎君 レーガン氏がどういうふうな考えで今後政治を担当していくかという問題については、まだ評価するはっきりした基礎がないという、そういうお話だったんですが、いろいろな関係から、やはりわが国としても日米間の問題がたくさん山積しておりますから、これらについて、できるだけ早い時期にその問題について、われわれとしても内容を十分理解しなければいけないんじゃないか、こういうふうに思うんですね。それに関して今後日米の間での政治的な日程ですね、総理がアメリカに行かれるとか、あるいはその他あると思います。大体いまほとんど決まりつつあるんじゃないかと思うんですが、その点はどういうふうになっておりますか。
  128. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日米間のいろいろ問題あります中で、大体私はこれは動かないと思うのでございますが、電電、たばこという経済問題がございます。これは少なくとも、遅くとも年内には、いままで大分話が詰まっておりまして、年内にはいまの政権のもとで解決できるのではないかと、アメリカ側もそう言っておりますし、私どもも従来やってきまして、もう山で言えば八合目ぐらいまでは行っておるとこう見ておりますので、これは解決するんじゃないかと思っております。  それから自動車の問題は、御承知のようなITCの審決報告が十日に出ることになっておりますので、これに基づいて政府がどういう態度をとるかということでございまして、私どもはいま自動車はITCの結論持ちというふうなことで考えているわけでございます。まあこれは十二月までに片づくかどうかということは、私はこれはなかなかむずかしいかなあと、こう思うのでございますが。  もう一つは防衛の問題でございます。防衛の問題は、これは十二月中に鈴木内閣としては予算の編成を終えたいと、一月には再開冒頭に出せるようにということで、鈴木内閣としてはそういう考えで努力をしておりますので、五十六年度の防衛の費用につきましては十二月の末に、まだレーガン政権ができる前に、日本予算で来年度の防衛はこういう予算でございますということが決まるわけでございますので、懸案になっていることでもまあ幾つかはこの十二月中に解決するんじゃないかと私は見ているわけでございます。  しかし、これからの日米関係、新しい政権になりましてからの向こうの考え方、こっちの対応、いろいろございましょうし、いまから予測をしまして、新政権になったらこういうことが出てくるだろうとかいうふうなことは申し上げる段階じゃ私はないと思いますので、いずれ新政権ができてからということになろうかと思います。そうしますと、これはもう通常国会が二十日過ぎ再開されるわけでございますから、それから二十日に向こうの大統領就任、それからいろんな新政策ということになりましょうから、総理の日程も、国会との関係がありますから、実はきのうも総理と話したのでございますが、大体いつごろというようなことはちょっとまだいまの段階では言えるようなところまでは、実はきのうも相談しましたけれども、至ってないわけでございまして、総理がいつごろ新しい大統領に会われるかということにつきましては、まだ具体的に申し上げる段階でございません。  まあ私も、外務大臣も、新しい政権でございますから、総理が行かれる前にやっぱり行って意見交換をしてくるということも必要だと思いますけれども、これまた国会との関係いろいろございますので、いままだ大体いつごろということを決めてないというのが現状でございます。
  129. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、新聞にたしか出ていたんですけれども、五月に総理が訪米をされるというように相当大きな活字で出ておりましたですね。ですから、その前に外務大臣が訪米されると、こういうことが出ておったんですが、その五月というのは決まっているわけじゃありませんか。
  130. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その点はですね、まだそんな具体的なことは決まっておりません。ただ、五月には大体連休を利用して総理がよく行かれましたので、恐らくそういう予想をされたかもしれませんが、まだ具体的には決まっておりません。
  131. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、十二月に外務大臣がヨーロッパに行かれるというのは、これは決まっておるわけですか。
  132. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 十三月の八日、九日にパリでIEAの閣僚理事会がございます。これは石油の関係でございますが、それに私出る予定をしておりますので、行きましたときにECといろんなやはり経済上の、自動車でございますとかカラーテレビの問題でございますとかいろいろ問題がございますし、また政治的にもいろいろ打ち合わせておかなければならぬ問題もあると思いますので、行きましたときに、いま予定していますのはフランス、ベルギー、EC、オランダ、ドイツというような国々を訪問しまして首脳の方と意見交換をしてこようと思って、いま向こうと問い合わせ中でございます。
  133. 松前達郎

    松前達郎君 先ほどちょっとお話出ました防衛問題なんですけれども、これについても、どうも「強いアメリカ」という言葉の印象から見ますと、わが国に対してさらに防衛力を強化せよという要望が恐らく将来来るのじゃないかという予測もできるわけなんですね。そこで、レーガン氏が政策として、選挙の演説ではないかと思いますが、日本に対して恐らくこういうことを要求してくるであろうという予測のつくものが二、三あると思うんですね。これはたとえば九・七%の予算ということでいまやっておられると思いますが、これについては、予算は早目に出してくるわけですが、決まるのは、国会の審議状況から、予算としては新大統領が就任される後に決まるわけですね、ところがそれとまた別に、たとえば第五艦隊を設置するというふうな具体的な、これは公約なのかどうか知りませんが、そういう話も持ち上がっておるわけですね、インド洋艦隊といいますか。そうしますと、それが簡単にはできそうもない。したがってその間はどうしても第七艦隊を向こうに回さなきゃいけないから、日本周辺の防衛に関しては日本に相当分担をしてもらわなきゃいけないというふうなそういう要望が恐らくあるような予測もつくわけですね。こういうふうなことをいろいろ含めてみますと、相当やはり新しい大統領のもとで、日本に対する要望といいますか、これが非常に強くなってくるのじゃなかろうかと、こういう予測を私はしておるわけなんですが、それに関して、これは新聞で私見たんですが、自民党の方々が今度アメリカに行かれると、そして大体その方々のメンバーを見ますと、防衛関係が多いわけですね。そういうことで近々行かれる、十二月までには行かれるような話がちょっと出ておりましたが、これなどはやはり防衛予算についてアメリカ側の意向が恐らくそうなるとそこで伝えられてくるんじゃないかと、こういう気もするわけなんです。するとそれは予算編成の前ですから、予算編成というか予算審議の前ですから、そういうことでアメリカの圧力が予算に反映せざるを得なくなるというようなことになるんじゃないだろうか、こういう懸念を私は持つんですけれども、その点いかがでしょうか。
  134. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 予算の原案ができますのは、鈴木内閣としては十二月中に何とか原案をつくりたいと、そして一月の再開冒頭には予算案として国会に提出したいということでございますので、これは新しい政権ができる前に原案というものは、五十六年ですけれども、できて国会に出るわけでございます。  それから日本に対する期待ということでございますが、カーター政権のもとでも、日本に対しましていろんな期待表明はあるわけでございます。数字的に何%どうということはないわけでございますが、抽象的にはいろんな期待表明はあるということでございます。そういうことを考えますと、私はそう変わりはないのじゃないのかなあという考えを持っておりますが、アメリカ日本に対していろんな期待表明が防衛問題についてありましたときも、私が常に言っておりますのは、これは日本は平和憲法があるんだ、そして専守防衛、軍事大国にはならぬ、専守防衛でもう個別自衛権という、非核三原則でございますとかそういうことがあり、日本自体の問題として自分の国の防衛をどう考えるかということは自主的に考えていくのだ、財政上の事情もございますし、国民のコンセンサスがなければこれはできませんということを、私はどの段階でも必ずこれは言っているわけでございます。これは私は日本の態度というものはやはり同じだということを新しい政権にも理解してもらうということは、日本としては当然やらなけりゃならぬことだというふうに思っているわけでございます。  それから自民党の先生方が行かれるというのは、私新聞では見ましたが、事実かどうかまだ確かめておりません。
  135. 松前達郎

    松前達郎君 レーガン氏が当選をして一月二十日に交代をするということになりますけれども、その結果いろんなことがいま憶測みたいに言われておるわけなんですが、幾つかの問題がまた大きな問題になってきそうな気もするわけです。その中の一つに、いまちょっと大臣がおっしゃいました貿易問題ですね、これも電電の問題、政府調達資材の問題等も含めて大分煮詰まってきたというお話なんですが、これについてもやはり早く解決するということもあるかもしれませんが、内容的な問題ですね、これはもう十分御承知だと思います、内容というか、日本の将来との関連ですね。だからそういうのを踏まえてひとつ行っていただきたいと、こういうふうに考えておるわけなんですが、そのほかこれはレーガン氏がカリフォルニアの出身だということですから、あそこにはシリコンバレーという特別な半導体を製造する工場がたくさんある場所があるんですね。これはそう工場は大きくはありませんけれども、たくさんあるわけですね。このシリコンバレーの問題、これが恐らく次の問題になるであろうということは、もうすでに予測をされておるわけですね。日米半導体戦争なんという名前をつけているところがあるわけですが、こういったような問題もクローズアップされてくるんじゃなかろうか。ですから貿易問題については、自由貿易よりも公平貿易だというふうなことで主張がなされてくるだろうと、これは予測できないことはないと思うのです。これについてやはりわれわれ日本側としては、どういうふうに今後対応していくか。たとえば農産物にしましても、アメリカは農産物の輸出ということはもう最大のあれですから、農産物に対する圧力といいますか、これも恐らくかかってくるんじゃないか。日本国内での市場拡大をねらう、そういうことが恐らく引き続き次から次へと押し寄せてくるんじゃなかろうかというふうに考えておるんですが、この辺について外務大臣、何か予測なり何なりしておられますか。
  136. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま電電の問題につきまして、将来のことも考えてよく慎重に解決はすべきだというお話、そのとおりでございまして、条約の御承認を願うときも、本体の問題については入札制度をとらぬとかいろんなことがあったこと、私どもよく知っております。それで、これは将来に悔いを残さぬように十分電電あるいは郵政省と、大来前外務大臣がこっちは代表でやっているわけでございますので、十分連絡をとりながら、この問題にも取り組んでまいるつもりでございます。  いま先生市場開放の問題で御質問があったわけでございますが、特に農産物の問題でございますとか、半導体はこれはもう自由化しているわけでございます。自由化しても自動車のように問題が出るということは、これはあり得ることでございますが、この前ブッシュさんと話したときに、自動車問題だけは話しました。だけれども農産物のこととかそういうことまで具体的には話さなかったのでございますが、一般論として共和党も自由貿易主義をこれは守っていくのだということで、日本からの自動車の向こうへの輸出の問題で話が出たのでございますが、市場開放の問題につきましては、いろいろいま先生の御指摘になったような問題があるということは私らも十分知っております。ただ、そういうことを向こうの新しい政権がそれをどういうふうに取り上げるかというようなことにつきましては、まだ何も私ども感触をつかんでおりませんので、いまここで、こういう問題が出るだろう、ああいう問題が出るだろうというところまで申し上げる段階ではございません。
  137. 松前達郎

    松前達郎君 それともう一つ韓国との関係ですね、これはまたいまちょうど金大中問題が大分大きな問題としてクローズアップされてきているんですけれども、韓国とアメリカ関係というのは、これはどういうふうに変化するであろうか、あるいはもっと強化されるのか、それに伴って金大中の問題等も相当影響を受けるんじゃないかと思いますが、その点いかがでしょう。
  138. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 共和党の綱領では、たしか演説かどちらでございましたか、韓国を非常に重視しておられると、駐韓米軍の引き揚げというようなことは恐らく考えていないというような意味のことをたしかいつか何かで言われたような気がしますが、韓国というものを政策として非常に重視しておられるということをわれわれも伺っております。ただ、これがいまの挙げられました金大中氏の裁判の問題とか、そういうものにどういう影響があるかということについては、いま向こうで正式な政策として発表あったものがまだございませんので、私ども、いまのところはそれをどうといって予想すること、あるいは言及することは差し控えたいというふうに思っております。
  139. 松前達郎

    松前達郎君 アメリカ大統領選挙の後早い時期に、対ソ制裁措置についてアメリカ、欧州各国と再調整を行うんだ、その必要があると外務大臣は前に発表されたと思うんです。選挙が終わったわけですね。それでさっきお伺いしましたら十二月にヨーロッパの方に行かれるということですね。そうなりますとどっちみちそういった公式の集まりといいますか、各国が代表を送って集まってくる会議というのは、ある意味では非常に重要な会議の場所というか、場を提供することになるんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、外相レベルの協議を行うということを検討しておられたようですけれども、これについては予定どおり行われるわけですか。
  140. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私申しましたのは、外相レベルでみんな集まって協議するか、そういうことなのか、あるいは個別にいろいろ話し合いをするのか、そういう具体的なやり方までは私は触れたお答えはたしかしていなかったのでございますが、しかし、何らかの相談をしなければいかぬということを私はお答えしたことは確かでございます。  それで、ヨーロッパへ私——予定ですが、行きますれば当然各国回りますので、意見の交換を私はする必要もあるだろうと思っております。ただ、レーガン氏が大統領になられて対ソ政策というものをどういうふうに考えられるか、防衛の面だけのことか、いまのようなことまでも新しい政策を出されるのか、その辺のところはいまわかりませんので、時間的にはアメリカの新しい政権の政策ということがわかるのは少し後でございますので、それははっきりわかりませんが、私参りましたら各国の外相と話す意見交換の中には、そのことはやっぱり入れて話そうと思っております。
  141. 松前達郎

    松前達郎君 新しい大統領レーガン氏がどういうふうな考えを持っているかわからないのでそういう話ができないというのはちょっとやはり自主的じゃないと思うんですね。日本としてこういう問題を独自の体制でどういうふうにとらえていくかと、これは日ソ問題、日米問題みんな含めてですが、そういった外交があってしかるべきじゃないか、主張すべきことは主張するんだとおっゃっているわけですから。そういう観点に立って、ヨーロッパも、先ほど申し上げましたようにいろいろな意見があると思います。そういう意見をひとつ交換していただきたい、かように私思うんですね。どうもアメリカ追随みたいな感じがしないでもないので、アメリカ合衆国日本州じゃありませんので、その辺はひとつがんばっていただきたいと私は思うんですけど、その点いかがでしょうか。
  142. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そういう誤解をお与えしたら私申しわけない、取り消しますが、私の言いましたのは、実はこれみんな協調してやったことでございます。政策を決めるときに事前に打ち合わせてやったということは確かでございますので、もちろん日本としてはこう思うがということでやるわけでございますが、政策決定の前にみんな協調してよく連絡してやったということだけは確かでございますので、そういう意味のことを申し上げたので、やっぱり最後決めるときは日本としてこれが正しいと思うからこうするということであることはもう当然でございます。
  143. 松前達郎

    松前達郎君 主張することは堂々と主張していただきたいと思います。  それから、もう一つお伺いしておきますが、一月二十日はこれ大統領就任式がある予定になっておりますね。大統領就任式には日本からはどなたが参加されるのか。
  144. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) アメリカの大統領が新しくなられたときの招請というようなことはないものですから、いままでのどの大統領のときも日本から代表で行っておりませんので、今度も恐らくそういう招請はないだろうと思っております。
  145. 松前達郎

    松前達郎君 招請がなければ日本からは行かない、あれば行くということなんですか。
  146. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そういうことでございます。もしあればあったときの段階で考えるということで、いままではそういう例は、招請はなかったということで、これは日本だけでなくてどの国にも招請はないというふうに了解しております。
  147. 松前達郎

    松前達郎君 この前も私当委員会でお尋ねしたわけなんですが、日ソの問題ですね、これも恐らく今後非常にむずかしい問題になる可能性があるんじゃないか、流れが少し変わりつつあるような感じを持っていたわけなんですが、どうもそれがどういう方向に変わるのか、これはまた大きな今後の問題だろうと私思うんですけれども、いずれにしてもパイプをあけておく必要があるんだということを申し上げて、大臣からもパイプはあいているんだと、こういうお話があったわけですね。メーンパイプ、サブパイプという言葉まで使ってお話があったわけなんです。経済面での交流ですね、これは今日ケース・バイ・ケースで行っていくんだ、こういうふうなことをおっしゃったわけなんですが、これは政経分離論はとらないんだということをほかの委員会でもまたおっしゃっている。経済面で交流をケース・バイ・ケースに行っていくというのはある意味でいうと政経分離の考えじゃないかと、私は思うんですが、その点どうでしょうか。
  148. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ケース・バイ・ケースでやっていると言いますのは、何も私が外務大臣になる前からのことでございまして、アフガニスタンの軍事介入がありました後に政府ベースの新しい信用供与についてはケース・バイ・ケースでやりますと、通常貿易は、これは従来どおりやっているわけでございますので、そういう意味でいまアフガニスタンの問題がありましても通常貿易はそのままやりましょう。ただ、政府関係の信用供与につきましては、新しい政府ベースの信用供与につきましてはそのもの自体が日本のためにもまたどういう利益といいますか、効果があるのかというようなことを考えながら、経済の問題は全部もう何でもいいんですということでなくやっておりますと、こういう意味でございます。
  149. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、さっきの問題と関連しまして、いまのようなものを含めて十二月にヨーロッパに行かれたときにそこで話し合いが行われるだろう、行う意思があるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  150. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私はそういうことを頭に置いて向こうのしかるべき首脳とは話すつもりでございます。
  151. 松前達郎

    松前達郎君 はい、わかりました。それでは、後またほかの委員の方々も質問されると思いますので、大統領の選挙結果についてはそのぐらいで。  今度は、放射性廃棄物海洋投棄問題、これは実はつい最近、私トラック島から来た代表の人にお会いしたんですが、これは相当外交的にも大夫な問題だろうと私は思うんですね。これについてお伺いをいたしますが、まず科学技術庁の方から、当初から立てられた計画について、これは私はある程度わかっておりますが、もう一度ひとつお聞かせいただければと思います。
  152. 後藤宏

    政府委員(後藤宏君) お答えいたします。  放射性低レベルの廃棄物の試験投棄計画につきましては、実は昭和五十一年の十月に、原子力委員会がこういったものの処分につきましては、海洋処分と陸地処分とを組み合わせて行うという決定がなされておりまして、その後、実は海洋調査とかいろいろ各種の安全のための実験等を繰り返し、さらに安全評価も、行政庁と原子力安全委員会のダブルチェックをするといったような安全評価の面も十分確めた上で、一つの計画案をいま固めておるわけであります。  その計画案の概要につきましては、現実にこういった放射性廃棄物の投棄計画は、ロンドン条約——この春にこの委員会でも御承認いただきましたロンドン条約でも投棄が認められております対象物でございますので、こういったものについてロンドン条約に基づく国際的な原子力機関、IAEAの基準を満たし、かつ国際的な監視のもとに、これはOECDのNEAという、同じく原子力機関の国際監視のもとにやっていこうということで、実際上投棄いたします対象物としては、低レベルの放射性廃棄物を五キュリー程度、それをドラムかんにして五千本から一万本程度のものを、現在予定されております地域といたしましては、東京湾の南東約九百キロ、小笠原の北東五百五十キロといった、B海域といったところを候補地点に選んでおりまして、いろいろな各種の手続を済ました上で、最も早い機会として来年の秋以降のしかるべき時点に投棄しようということで、現在は国内及び海外諸国についてのいろいろな御説明をやっております段階でございます。
  153. 松前達郎

    松前達郎君 これは第一次の説明ですね、これは派遣されたというのは私聞きました。第二次が近いうちに出るという話もありましたが、もう出発しましたですか。
  154. 後藤宏

    政府委員(後藤宏君) 実は、本日サイパンに出発しておりまして、第二次の説明はこの八日、九日にかけまして、まずサイパンで北マリアナ地区に対していたしまして、その後グアムに参りまして、グアムの関係者と三日間ほど、またいろいろな関係者ともお話をいたしまして、さらにその後ミクロネシア、これはかなりミクロネシア連邦がいろいろ分かれておりますので、ポナペとかコスラエとかその他の地域を回りまして、二十六日帰ってくる予定でございます。
  155. 松前達郎

    松前達郎君 この海洋投棄の問題が出てきてから、各島々の方からものすごい反対運動が出ているんですね。それはもう御承知のとおりだと思いますけれども、聞くところによりますと、戦没者の慰霊塔までぶっ壊すぞとか、そういうふうな極端な話まで出てくるんですが、これはおどかしじゃなくて、私本気だと思うんですね。ですから、この点やはり、ただ安全だ安全だということで説得をして、向こうが納得をするということだけの問題ではどうもなさそうだというふうな気がするわけなんですが、これは外務省として、外交問題になってくる可能性があるんで、可能性というか、もう事実そうなんでしょうけれども、外務省はどういうふうにとらえておられますか。
  156. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 科学技術庁が専門家を派遣して説明をずっとしておられる、外務省としても御協力を申し上げるということをやっておるわけでございますが、客観的な情勢は、なかなか納得してもらうというところまで至らないで厳しい情勢にあるといういまのところ判断をしております。今後とも科学技術庁で十分にひとつ説明をしてもらいたいというふうに思っております。
  157. 松前達郎

    松前達郎君 それについて、外務省はそういうふうに思っておられるんでしょうが、実際に何かそういう運動をしているところとの接触その他はやられましたか。
  158. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 主として在外公館を通じて先方への説明を行っております。
  159. 松前達郎

    松前達郎君 その結果、説明されて、どうも皆さん反対されているようだとか、そういうふうなことは報告がありましたですか。
  160. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 心配しておる、非常に憂慮しておるということが伝えられております。
  161. 松前達郎

    松前達郎君 それに対して何か対応されましたですか。
  162. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) これは先ほど科学技術庁から御説明がありましたように、技術的な安全性については問題がないんだということを科学技術庁の専門家の方から先方に主として説明をしていただいておるわけでございまして、外務省といたしましては、先ほど申しましたように在外公館を通じて、折に触れて随時必要な補足の説明をしておるということでございます。
  163. 松前達郎

    松前達郎君 その辺がちょっと問題になるんじゃないかと思うんですね。もう官僚的なといいますかね、技術的に大丈夫なんだからこれを押しつければ大丈夫なんだという考えが、どうもそれが外交の中でも非常に今後大きな問題になってくるんじゃないか。小さな島だからといってそれを全然相手にしないんだ、とにかく押しつければいいんだというふうな考え方ですね。安全だからということは、これはもう技術的な面での評価ですから。ただ、問題はそこじゃなくて、やはり自分の庭みたいなところにごみを捨てるなということなんですね。ですから、安全とかそういう問題じゃない。やはりこう心情的な問題がものすごくこれは絡み込んできているだろうと思うんです。この島々、ずっと二百海里合わせますとアメリカの二分の一ぐらいの広さになるわけですね。日本の場合、水産その他の関係でもこの島々は非常に大きな役に立っているわけで、そういうこともありますので、やはり日本にとってもこれは庭なんですね。  ですから、そういう意味でやはり今後外交レベルでもそういう努力をしていただかないとならないんじゃないか。科学技術庁に任せておいて、安全だからという説得を幾ら繰り返したって私は解決できない、かように思うわけなんですね。それで、その辺ひとつ外務大臣、いかがですか。
  164. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その点はおっしゃるとおりだと思います。単に安全性、安全だからといって、それだけで強行するとか押しつけるとかという態度は、これはもう十分注意せにゃならぬ。そういう感情問題でございますとかいろんな問題、これは必ずつきものでございまして、そういうところに配慮しないと外交上も問題になるだろうとおっしゃるのは、私は全然同感でございまして、そういう点は十分に気をつけてまいるつもりでございます。
  165. 松前達郎

    松前達郎君 そういうことでひとつ外務省もかみ込んでいただいて、科学技術庁の技術的説明だけで済ましてしまうということじゃなくてやっていただかないと、これどんどん問題がこじれてくるんじゃないかと私は思っておるわけなんです。  そういうことで、その反論の中には——これは科学技術庁にもお聞きしたいんですが、安全だということはもう自信があるわけですね、この投棄について。
  166. 後藤宏

    政府委員(後藤宏君) 先ほども御説明しましたとおり、私どももかなりこの安全面につきましては、ただ単に国際条約で認められたものであるというような形ではなくて、日本自身が海を非常に大切にしなければならない国であるということを頭に置きまして、慎重過ぎるほどの手続と実験、調査、評価を積み重ねてきておりまして、安全面についてはかなり確信を私ども持っておるつもりでございます。
  167. 松前達郎

    松前達郎君 かなりの確信ですね。
  168. 後藤宏

    政府委員(後藤宏君) これはもう私の言い方が変でございますが、安全であるという原子力安全委員会のお墨つきをいただいておりまして、もう日本としては最大限の安全についての手続を済ましたものと考えております。
  169. 松前達郎

    松前達郎君 それなら東京湾に沈めてもいいわけですな。
  170. 後藤宏

    政府委員(後藤宏君) 実はロンドン条約に基づきます。まあIAEAからの捨てる場所の選択の基準がございまして、ここでは少なくとも水深四千メートル以上の海であり、かつトレンチといった、まあ海溝部だとかあるいは海底火山、あるいは火山地域等から離れたところでなければならぬといったような条件がございまして、これを東京湾に捨てることはロンドン条約に加盟した日本としてはできない。こういった事情のことにつきましては、具体的な地図と基準を用いまして南の島でも説明をしてきておりまして、その辺につきましては少なくとも南の関係政府筋はよく理解をしてくれたと思っております。
  171. 松前達郎

    松前達郎君 まあ言葉じりをつかまえるわけじゃないんですが、これはそうすると相模湾に捨てたとか大島の横に捨てたというのはどうなんですか。
  172. 後藤宏

    政府委員(後藤宏君) 実はロンドン条約ができましたのは一九七五年でございまして、相模湾等にかつて試験的な意味で、一部放射性同位元素の廃棄物を捨てましたのはその以前のときの話でございまして、そういった面でまあ御説明が可能なものではないかと思っております。
  173. 松前達郎

    松前達郎君 そういうふうな御返事があろうと私は想像をいたしておったわけです。いずれにしましてもこの問題、今後非常に大きな問題に発展するだろうと私は思うんです。やはりこれは外務大臣ももう十分御承知のことだと思いますが、やはり日本の庭として——庭と言ったらおかしいんですが、庭だから捨てていいというわけじゃなくて、やはり日本との非常に関連の深い太平洋の島々、この中ではもう近く独立するところもあるわけですから、この国々との今後の友好関係といいますか、恐らくその島々の方々は、日本に対しては相当友好的な方々ばかりだと私は思うんです。そういう意味でこの問題少し慎重に取り扱って事を進めていただきたい、かように考えておるわけでありますが、その点もう一度。
  174. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先生おっしゃるとおりですね、太平洋の島々という国々日本との友好関係というのは、これは非常に大切だと私も思うわけでございまして、この点につきましては科学技術庁が説明をされましたが、私どももこれはもう慎重に、非常にあれは無理なものを強行するんだというような印象を与えないように、その点は十分注意してまいりたいと思います。
  175. 松前達郎

    松前達郎君 そういう点から外務省の方も、まあくどいようですが、ひとつこういう問題今後いろいろ出てくると思います。これだけではなくて。まあいまちょうど原子力船の問題がクローズアップされているわけですね。これなども将来原子力船をつくったら、あの船は輸送の手段に使うんで、港から港へ入らなきゃいけないんですね。一遍港を出たら帰ってくるわけにいかないというわけじゃ、とてもこれは話になりません。ですからそうなると、果たしてその船が輸送のために外国の港に入れるかどうかという問題ですね。これもやはり原子炉を積んでいるわけですから、放射性物質も持っているわけです。こういう問題もどうせ将来、いまの政府の御計画ですと出てくるはずです。そういった問題、あるいはもっと大きな問題で言いますと、軍事面の問題でも核兵器の開発と保有の問題について、これは非常に大きな問題になりますが、そういう問題でももう当然外交の問題としてひとつ考えなきゃいけない大きな問題が出てくるし、そういったいろいろな核に関する問題が今後山積してくるのじゃないかと私は思うのです。ですから、そういう面もひとつ外務省としてでも十分その点に配慮をしていただいて、今後それに対応できるような体制をひとつとっていただきたい、かように要望いたしておきますが、その点ひとつ……。
  176. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 同感でございます。これはもう慎重に考えてまいります。
  177. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回のアメリカにおける大統領選挙はあるいは大方の予想を裏切った結果であったかもしれない。外務省としてもどちらの方が大統領に選ばれようとも、さまざまなその変化を当然考えつつ、しさいに分析もなさってこられたであろう、こう思うわけであります。  さて、そこであるいは大変唐突な質問で恐縮でございますけれども、今回レーガン氏が大統領に選ばれたが、政策的にもいろいろな変化があるであろう。特に対日関係においては、あるいは予測しないこと、予測していること。予測していることの場合には全面的にそれが大きく打ち出されてきはしまいか等々の判断が当然成り立っていくであろう、こう私ども考えておるわけでありますが、外務大臣としても、今回の大統領選の結果について、いままでの経緯を十分とらまえながら、今後の日本外交の展開に当たってどういう変化が起こるであろうか、その所感を交えてでも結構でございますので、冒頭にその点についてのお考えを述べていただければありがたいと思います。
  178. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 御質問でございますが、いままで私どもはレーガン氏の選挙演説でございますとか、共和党の綱領でございますとか、そういうものを見ており、あるいは私はブッシュさんと直接会って話をしたということでございまして、まだまだ正式のものは一月二十日に就任されて政策が決まるわけでございますので、いまのうちからこういうことが出てくるんじゃないか、ああいうことが出てくるんじゃないかというのは、これはまだそういうことを申し上げる段階でないし、またそういうことは言うべきものじゃないだろう。静かに見守る、慎重に見守るということが私は本当だと思うのでございます。  ただ、いままでのレーガン氏の選挙演説の内容でございますとか、私がブッシュさんに会って直接話したことということの中で、やはり特徴的に出ておりますのは、力による平和といいますか、そういうことがブッシュさんからも言われたのが非常に印象的でございます。安全の幅を広めるというような表現をされた演説もあるようでございますが、そのときに出たのが対ソの問題が出ました。具体的にさっきも申し上げましたが、SALTIIをどうしようとか、そういう具体的でありませんでしたが、バランス・オブ・パワーといいますか、力の均衡といいますか、あるいは優位、——均衡だけじゃなくて、優位ということもあるかもしれませんが、そういうことがございましたので、やはりそういり政策において、何か力による平和ということを言われたことから演繹すれば、何かそういう政策では従来より変わりが出るのかなあという感じは持っておりますが、まだまだ正式にはわからぬわけでございます。  特に日本との関係でございますが、私はブッシュさんに確かめたのでございますが、そのときは、日本との関係は何もいまとそんな変わることはないということを断言をしておられたのでございます。共和党も、アジアの外交を考える場合に日本というものを基軸にして考えていくんだということを言っておられますし、日本アメリカとの関係は共通の利害がある。これはまあ日米安保等も当然頭に置いての議論と思いますが、あるいは特別な関係にあるということを言っておられまして、日米の協調ということも言っておられますので、私はカーター政権の対日政策とレーガン大統領になられての対日政策でそう大きな変化というものは考えられない、大体同じ線でなかろうか。ただ、若干のニュアンスの違いはあるかもしらぬ。先ほど経済の問題で質問が出たわけでございますが、自由貿易ということで自動車の問題で私は議論したのでございますが、共和党も自由貿易はしっかり守るんだということを言っておられたわけでございます。市場開放せいということを言われたわけでございまして、そのときには日本に対して日本の市場を開放しろというような議論は出ませんでした。出ませんでしたが、新しい政権になればその辺は少しはニュアンスの違いが出るかどうかとか考えられることはございますが、しかし正式にはまだ政策が決まって発表になったわけでございませんので、私どもは慎重に新政権の政策を見守ると、それから対応しても遅きに失するということはないのじゃないか。たとえば防衛の問題は十二月中に五十六年度の予算は組まれるわけでございますし、先ほど言いました電電とかたばこは恐らく十二月中に私は解決をするんだろうというふうに思っておりますので、正式な新政権の政策の発表を見守るということをやっていきたいというふうに思っているわけでございます。
  179. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おっしゃるとおりだとは思うんですが、いままでさまざまな形で伝えられている点はすべてを言い尽くしているとは思いません。ただ、アメリカ政界きってのタカ派であるとか、相当政策的にも変化が出てくるであろう、なかんずくこの対日政策については防衛力の一端をもっと大幅に担うべきではないだろうかという問題もございましょうし、また、すでに質疑がなされた問題の中でも、象徴的にいままで繰り返し選挙期間中に言い伝えられたことの中に自動車の問題があるわけです。これは日本にとってもこれが大変窮屈な規制を加えられますと死活問題にも発展しかねない等々さまざまな、もちろんアメリカにおける国内経済事情というものもございましょう。しかし、そうした一連のいままで選挙期間中あるいはそれ以前のレーガン氏が描いていたであろうと思われる考え方というものがいろんな形で伝えられる、それがすべてではないだろうとは私は思うんです。ただ、われわれが非常に印象的に、象徴的にとらえられた一点は、対日政策もそれはいい面か悪い面かは別問題といたしまして、特に軍備増強については相当強行なそういう要請を繰り返してくるであろうというようなことが一貫して実は伝えられているわけであります。こういったことで対日政策についても一つの変革をもたらすそういう行き方というものが考えられるんではないだろうか。  いま外務大臣は大変穏当な——それはこれからレーガン政権というものが動き出してみませんと対日政策を初め、あるいは対ソビエト政策というものはどういう一体推進がなされていくのか、その方針はどうなんだと、これからはむしろ一つ一つの言動を通じて分析をし取り組んでいかなければならぬということは十分わかるのでありますけれども、ただわれわれとしてもいま対外的にさまざまな問題を抱えておりますときだけに、その中で特に軍備増強であるとか、あるいは経済摩擦がますます表面化して日本としてはにっちもさっちもいかなくなるという心配がやはり今回の政権交代に伴って、憶測を交える面も一面はあるかもしれません、そういったことをどう整理しながら取り組んでいかなきゃならぬのか。当然先ほど冒頭に申し上げたように、外務省としては、もしカーターさんが引き続き政権を担当する場合どうであろう、あるいは今回のレーガン氏が政権を担当した場合はこうなるであろう、さまざまないままでの考え方というものに立っての今後のアメリカの政治の変化というものについて分析もなさってきたであろう、そういうことを背景にして、今後対日政策としてどういう問題に重点を置いたレーガン路線というものが表面化してくるのか予測をするということは、いま外務大臣がいろいろと慎重な御発言の中でわからぬわけではございませんけれども、重ねてその辺をどんなふうにとらえられていらっしゃるのか。これは私はやはり世界情勢の一つの大きな変革だと思うんです。そういう面で日本としてもわれわれとしても知っておかなければならない、理解を深めなければならない、認識を新たにしなければならぬという観点に立ちまして、その辺も隔意のない、もしお考え方があればお述べをいただければ大変ありがたいとこう思います。
  180. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生いろいろ、いままで出ているタカ派じゃないかとか、あるいは政策変化があって強いアメリカといいますか、力による平和といいますか、そういうことで防衛分担の問題でございますとか、あるいは貿易の問題で自動車の問題、あるいは対ソ政策、いろいろおっしゃったわけでございますが、外務省でもいろいろ分析をしたことは確かでございます。しかし、いまの段階でこうじゃないか、こうじゃないかといろいろ私は憶測をするということは余り利益のあることじゃないと、ああ日本はそんなことを考えているのかというふうなことにもなりますし、私はその点非常に慎重な態度で政策を発表されるのを見守ろうと実はそういうことでおるわけでございます。その中でタカ派というようなことがいろいろ言われましたが、われわれの知る限り、カリフォルニア知事をしておられたときに権限委譲といいますか、周囲のブレーンといいますか、そういう人にいろいろ権限を与えて十分仕事をさせてというようなタイプの人だというようなことも言われておるわけでございまして、そういう意味から言うと、だれが一体国務長官になられるのか、だれが国防長官になられるのかというようなことは、やっぱり非常にその人の性格によって政策がある程度左右されるというようなことがありますれば、これはだれがなるのかということも静かに関心を持って見守っているということでございます。  それから、選挙中にいろいろ言われたことは途中で軌道修正がありましたり、選挙中のことでございますから、いざ政策になるとそのままそれが出てくるかどうかというようなこともいろいろこれわからぬことがございますので、慎重に見ているというのが本当でございますが、ただ私が直接ブッシュさんに聞きましたのは、力による平和ということでソ連との関係をいろいろ言われたということを、私は直接会いましたので非常に印象に残っているわけでございますので、そういう面からすれば、対ソ政策というようなものは非常に大きな問題になるならどういう政策をやられるのかなというようなことを見ておるわけでございますし、防衛の問題につきましても、強いアメリカとこう言われましても、恐らくやっぱり同盟国あるいは自由主義陣営についての責任分担がなければやっぱり自由主義というところが協調していかなければならぬということは当然考えられましょう。そういうことからすれば、防衛の問題というのも非常に問題が出てくるのかもしらぬ。その場合に日本はどうかというようなこともいろいろ考えているところでございますが、一つ防衛の問題とってみましても、これはカーター政権でも日本に対して強い期待表明があったことは確かでございます。しかし、私はどういう政権であろうとも日本の憲法というものはこれ厳然としてあるわけでございまして、その憲法のもとで考えているということになりますれば、これは専守防衛ということもはっきりしております。個別自衛権しかないということもはっきりしておりますし、また非核三原則というものも日本では堅持している、武器の輸出はしないというようなこともやっておるわけでございまして、こういうことにつきましては、日本というのはこういう平和憲法があってこういう制約があるんですと、その中で最小限度の自衛力、他国には脅威を与えない、自分を守るだけの、侮られはしないが他国に脅威は与えないということは、日本の原則でございますので、これは私は堂々とアメリカに主張して、理解をしてもらうということを日本としては考えなけりゃいかぬというようなことを思っているわけでございますが、いずれにしろ自動車をめぐるその他の経済の市場開放の問題、いろいろ問題はあるわけでございますが、具体的に政策が出ないうちにいろいろああだこうだとわれわれが言うのはどうも時宜を得たものじゃないだろう、静かに政策を見守って、静かに対応していくというのが私は一番大切な態度でなかろうかと、こういうふうに思っております。
  181. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その辺が一番無難な受けとめ方であり、そうあってほしいというのがわれわれとしての共通した願望であろうというふうに思うんですけれども、カーター政権時代と違った色彩というものが、いろんな形を通じてレーガン氏の考え方を軸にした今後のアメリカの対外政策、なかんずく軍備増強というか、その一翼というものを友好国にも分担をしてもらわなきゃならぬというようなことが一つの線のようにつながっているんではないだろうか。確かに憲法の条項、いろんな問題がわが国においては制約がございますので、何もかも米国の要求どおりにはいかないであろうことは理解しつつも、しかし、いままで以上にアジア地域の防衛力増強を日本も自由国家の一員としてもっと負担をしてもらえないかというような要請がちらちらちらちらといままで、レーガンにかわった場合、こういうような要求というものは強く前面に出てくるであろう、われわれも少なからずそういうようなことを非常に心配をするわけであります。  で、なし崩しにだんだんだんだん憲法の条項なんかも形骸化されちゃって、それがもう正当化されていくというようなことをわれわれとしては非常に心配するわけでございまして、確かに日本の国情というものもアメリカは十分知悉しているであろうとは思いつつも、いま中東の問題ありあるいは東南アジア地域のいろんなさまざまな変化がある。そうした中で、今度対ソ問題というようなことをしきりにやはり米国も考えなきゃならならぬ。力の均衡という上からブッシュさんの発言をいま述べられたようでございましたけれども、これは非常に力の均衡というのは言い得て大変危険な考え方ではないだろうか。では力の均衡というのはどういう状態を具体的に考えて、あるいは日本もその一翼を担いながらやってくれというふうな考え方の上に立ってそういうことを述べられたのか、どうなのか。そういたしますと、これはますます軍拡への道をまっしぐらに突っ走るような方向へ、まことに危険な道を開くということにつながりはしまいか。もちろんこれから具体的に大統領に就任され、一年たち二年たって、そしてそのレーガン氏が考えているその政策というものが表面にあらわれてこなければ、あるいは正確な把握というものはなされないかもしれませんけれども、しかし、いままでの言動というものを通じて恐らくこういうことはあり得るだろうという一つの可能性の上に立てば、いま申し上げたような問題についても決して否定できない。彼自身の一貫した考え方には違いないであろう。そうすると、日本に対してさまざまな形において防衛力の負担をやってもらいたいという、そういうような要求というものが、品を変え形を変えて要求が出されてくるんではないだろうか。あるいはその場合に費用の負担ということも当然起こってくる場合もありましょうし、具体的には日本の自衛隊をもっと強化しろとかいろんなさまざまな要求が、表面化しないながらも出てきはしまいか。少なくともアジア地域における防衛については日本が責任を持って守れというようようなことまで言い出されてきますと、これは非常に大きな問題になる危険性が将来においてやはりあり得るだろうと。その辺日本外交としてやはり目を据えながら、そういう方向へ道を開くことのないように、やっぱりわれわれ心配があるものですから、その点についてはそういう心配が全くないとわれわれは判断していいかどうか。もちろんこれからのいろんな推移を見ませんと、レーガン政治というものがどういうふうに対外的に影響を与えていくのかということはいま即断することは非常にむずかしいかもしれませんけれども、ただ、従来の言々句々を振り返ってみると一本にとっては非常に厳しいなと、こうやっぱり常識として受けとめざるを得ないという心配がありますがゆえに、いまあえてそのことを重ねて触れてみたわけでございますが、その点はよろしゅうございましょうか。
  182. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私もブッシュさんと会いましたときに防衛の問題をお互い意見交換をしたのでございます。それで力による平和ということを言われましたときに、日本に対して民主党政権、カーター政権について防衛力問題はこうこうこういうふうになっているという話をしたときに、何も日本に対してそれ以上のものを要求する、要請するなんということは考えていないんだということをブッシュさんは私に話したのでございます。いろんな問題について、日米間はいろいろの特別な関係で問題があるから事前によく協議をするということを最後には言っておったのでございますが、いまのように、いまのカーター政権以上のものを自分らは日本要請するということはないということをはっきり明言をしておったわけでございます。  ただ、新政権がまだできませんから、新政権ができてどうだということはいま私はこれはわからぬわけでございますが、先生いろいろ御心配の点ということをおっしゃいましたが、これは、防衛力問題は特にこれは国民のコンセンサンスがなけりゃできない問題でございます。予算その他でも国会の御承認を得る、シビリアンコントロールということでございますし、また、日本日本をどうやって専守防衛ということで守るかということはこれは日本が自主的に考えることでございますので、個別自衛権を超えたようなことまでは憲法ではこれはできないわけでございますから、そういうことにつきましてはやはり日本が言うべきことはちゃんと言う、憲法ではこういうことなんだ、防衛力の充実ということは考えるけれども、それは専守防衛なんだ、自主的にやるんだ、国民のコンセンサスを得てやるということを私は筋を通して話して理解を求めるということ、私は、アメリカ日本を基軸として考える、日本との間は特別な関係にあり共通の利害がある、非常に日本というものを重視して考えておられるということは、基本にはやっぱりお互いが言うことを言って信頼関係というものをちゃんとしておくということが大切だと私は思いますので、先生いま防衛の話いろいろおっしゃいましたが、そのほかに安全保障というのは狭い意味の防衛努力だけでなくて、たとえば南北問題も広い意味ではそうでございますし、紛争周辺地区に経済援助を特別にしているタイとかパキスタンとかトルコなんかに援助を重く考えたわけでございますが、そういう広い目から見てこういうふうに日本は考えるというようなことで筋を通して理解を求める、話す、主張すべきことは主張するという態度で日本はいくべきだというふうに思っております。
  183. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私はそれは正論だと思いますね、そうあってほしいと思うんですけれども。ただ、最近の一連の動きの中にいかがなものであろうかなという疑問を抱く変化が一つあるんですね。たとえば、ソビエトに対する脅威論あるいは北朝鮮に対する脅威論、そういったことに連動しているかどうかわかりませんけれども、中期業務見積もりの早期実施等々、そうすると、勢いアメリカ要請を受けながら、先ほど来申し上げてまいりましたように、アジア地域の防衛の責任の一端は当然日本が日米安全保障体制の中で分担すべきであるというような、だんだんだんだん広がりを見せていくような、もちろんアメリカも側面援助する反面に、日本もある程度独力でもってそれをやるべきではないかというようなことで、だんだん日本の防衛力整備という問題について拡張の方向へ道を広げるような、そういう可能性というものはありはしまいか。時たまたま今回、アメリカ大統領選挙で、大変そういう点では積極派と目されるレーガン氏が大統領にこれから就任なさろうとする、その絡みの中で、いま申し上げたように、一方においては対ソ脅威論がある、あるいは北朝鮮の脅威論がある、恐らく防衛庁としてもそういう点については十分詳細に検討し、あるいはその既成事実をつくっているかどうかわかりませんよ、そういう既成事実をつくりながら、だからもっと増強、整備を図っていかなきゃならないんだと、もちろんそれは財源という一つの枠もありますので、もうむやみやたらにということはないにしても、いままでわれわれが考えているような枠をはるかに超えたそういう方向へあるいは行きはしまいかという、最近の一つの動きの中でちょっと心配になる面がないではないという点がございます。いまずっと、アジア地域の防衛力増強という一面については、今後、次期レーガン大統領からそういうような強い要請というものはありはしまいか。そうした場合に、日本としてのいままでの防衛政策の上に何らかのやはり変化をそこにもたらしながら、その責任の一端をやはり担っていく方向へ道を開いていく必要があるのだとする考え方に立つのか。これからその推移というものを見守っていかなければ、想像だけで、予測だけでもってこういう議論というものは成り立たないとは思うんですけれども、いま国際情勢というものは非常に緊迫しておるその状況を考えますと、十分これはあり得るであろうという一つ予測に立って、こうした政府の考え方を十分にここでお聞かせいただくことも決してむだではないであろうという観点に立っていま私はお尋ねをしているわけであります。その点は、きょうせっかく防衛局長もおいでになっておりますので、最近、衆議院の安保特別委員会あたりでも北朝鮮の脅威論だとかあるいは対ソ脅威論というものがいろんな形で述べられ、それをまた否定するかのような言動があった。そういうような背景を考えると、アメリカとしても、アジア地域の防衛というものは、やはり日本に相当分担をしてもらわなきゃならぬと、そういうような姿勢がやっぱり整理をしていきますと、どうしてもそういう方向へ道が開けていくような気がしてならない。ちょっとくどくどしく申し上げて大変恐縮でございましたけれども、その辺を整理して防衛庁の方からもその見解を示していただければ大変ありがたいと、こう思うわけです。
  184. 塩田章

    政府委員(塩田章君) すでに、いまのお尋ねの点につきまして外務大臣の方から先ほど来お答えを申し上げていることで尽きておると思いますけれども、私ども防衛庁といたしましても、もちろん今度の選挙結果、選挙の動向に十分注意を払ってまいっております。今度レーガンさんが当選されたわけでございますが、共和党の七月に出されました政策綱領、その中で防衛の部分を見てみますと、最初に「日本は、アメリカのアジア政策の支柱である。」という言葉がありまして、途中省略しますけれども、「我々は、日本の防衛努力の実質的増強を支持するとともに、我々の安全保障上の目的及び地域内でのソ連の軍事バランスの増大に対してつり合いのとれたものとすることは、日米双方にとって利益となるものであることを再確認する。」というふうに共和党の綱領の中でうたわれております。先生もよく御存じのことと思いますが、私どもそういった綱領で見ます限り、これは現在のカーター政権の政策と基本的には変わらないものではないかというふうに考えられるわけであります。もちろん個々の政策面での変化ということは実際に政権を担当された以降あり得ると思いますけれども、基本的には私どもは変わらないのではないかというふうに考えられるわけであります。  で、いま先生がおっしゃいましたように、分担論なり大きくなってきて、わが国の考え方をはみ出していく要求が出てくるんじゃなかろうかというような点でございますけれども、外務大臣からもお答えございましたように、これは要するにアメリカのどういう要請があり、対日期待表明があるにしましても、わが方の自主的な立場を失わないで対応していくということさえ誤らなければよろしいわけでございまして、私どものいまの憲法の中での立場、防衛の整備の立場というものは、これは変わらないわけでございますから、その辺は御心配のような、無制限に広がっていくというようなことは私どもはあり得ないというふうに考えております。
  185. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おっしゃるとおり財源には限度がございますし、憲法上の拘束もございますし、そういった面を考えますと、たとえどういう要請があろうとも、あるいはカーター政権時代よりももっと強い日本に対する軍事力整備のための協力方を求められてもそれ以上のことはできない、これはもう確かに常識であろうと私思うんです。ただ、そのほかに費用の分担であるとかいろんな形で間接的なアメリカと共同歩調をとる上から、あるいは防衛力整備という表面的なことではなくして、あるいは費用の分担の面で、施設の面なんかでもって、まあ利益供与といいましょうか、そういう面でやっぱり新しい道を開く一つの手がかりになりはしまいか。ですから、表面的には従来どおり予算の枠内で限られた自衛力の保持というものしかわれわれとしても常識ではとらまえることはできません。しかし、形を変えれば、いま申し上げたように、費用の分担であるとかあるいは基地の開放であるとか、そういうような変化の中で、あるいは実質的な防衛力増強に結びついていくようなそういう面は、そういう危険性は考えなくてもいいのであろうか、さまざまなそういう疑問が出てくるんですよね。やはり政権が交代するということは一つの変化をもたらす——どこの国においてもそうであろうと私思うのでありますけれども、そういうことを含めても心配はないとわれわれは理解をしてよろしいのかどうなのか。防衛局長としてさまざまないままでの各国の考え方を分析されながら、将来日本のあり方というものも十分検討されてこられているであろうと思うし、今回の政権交代に当たりましても全く従来どおりであると、こういうふうに理解をしていいのか、いま私が前段で申し上げたような変化が起こるという可能性がないのか、その辺重ねて確認をしておきたいと思うんです。
  186. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほども申し上げましたように、日本に対する基本的な考え方が変わらないであろうということは先ほど申し上げましたが、具体的にどういうことを言ってくるであろうとかなんとかということはいまの段階で——先ほど外務大臣も同じ趣旨のことをおっしゃいましたけれども、私どももいまの段階でいろんなことを予測するにはやはりまだ早いのではないかというふうに考えられるわけでございます。基本的には変化はないであろうというところまでいま申し上げられますけれども、それから先どういうことが起こるであろうかということは、ちょっとまだ予測するには早いんじゃないかという感じがいたします。
  187. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 あとわずかな時間であれもこれもということは不可能でありますので、また次回ということにいたしたいと思いますが、特にきょうは軍縮の問題について、なかなか俎上に上らないこの問題をお尋ねをしたいと思いましたが、次回にこれは譲らさしていただきたいと思います。  最後に、これはもう今度の大統領選挙には関係はございません。いまからちょうど十日以上前になりますか、二週間ぐらい前、クウェートの今井さんが投稿されております。これはやっぱりかねてから私心配していたことが表面化している。幸い事故がなかったからいいようなものでありますけれども、これはもう将来こうしたような、イラン、イラクにおけるような問題が起きないという保証は何にもない。そこで働いているであろう日本人を含めた、また日本の会社で仕事をしている方々の措置についても、よくぞまあこれだけの足りない人数で対応ができたものだなあというふうな印象を改めて実は抱いているわけであります。こうしたことが、今回はしなくも外務省の当事者の方からこういう投稿があって、もう本当によくがんばってここまで取り組んでこられたなあ、これでいいのかと、こういったことが二度起きないということの保証は何にもないわけですね。これはもう再々私は一貫して在外公館の整備充実という問題については苦言も申し上げながら、その充実を図れということを提言してまいりました。もう投稿を私ずっと拝見して——いまここで言う時間ありませんけれども、お読みになっていただいたろうと私思うのでありますけれども、まことに背筋にあわ粒が出るような思いですね。よくぞこういう不可能な状況の中で布留邦人の脱出に対して懸命の努力を払った。これはよくいったからこれでよかったと私思うんですね。しかし、必ずしもこういうよくいったということだけとは私考えられないと思うんです。私は予算委員会でもこのことをお尋ねいたしましたけれども、まあ現状の整備の仕方では外務省の機能としては大変おぼつかないものではなかろうか。もうはしなくもこういう問題で表面化してきたことを思いますと、いままた私はあえて苦言を呈しながら、その強化充実のために心を用いて万全を期していかなければ日本の真の外交というものの展開は、幾ら上手なことを言ったって、現地で働くであろう日本人の顔と言われる外交官が思う存分の仕事ができないであろう。しかも危険にさらされながらこういう仕事に取り組んでおるわけでございますので、この点について、もうやはり短期、中期、長期という展望に立った機能の強化を図る一環として外務省の陣容の整備というものを強力にやはり推し進めるべきではないだろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  188. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生から激励のお言葉をいただいたわけでございますが、今井大使という人は、あれは民間から入られた原子力関係の技術者でございまして、初めての赴任地がクウェートの大使ということで、行かれるとすぐに今度の紛争が隣の国に起きて、日本人の脱出ということについて非常に苦労されたわけでございます。ずっと民間におられまして、外務省を見られた目と中へ入ってみて体験された目で、体で体験されて、朝日新聞でしたが、投稿があって、いま先生おっしゃったように、よくわずかな人数で、薄氷を踏む思いでやっておるという意味の投稿があったわけでございまして、確かにおっしゃるように、問題が起きなかったからいいようなものでございますが、体制が不備であるということは、私も外務大臣になりまして痛感をいたします。百六十四ある公館のうち五十四がたしか五名以内というような公館でございまして、今後とも外交体制の整備ということには一生懸命努力せにゃならぬと思っておるわけでございます。先生には外務委員会はもちろん、予算委員会でも外交体制の充実につきましては御激励をいただいておることを感謝申し上げますが、われわれとしましても最善のひとつ努力をしてまいるつもりでございますので、よろしくお願いします。詳細は官房長からお答え申し上げます。
  189. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 中期的、長期的いろんな目標を持ってやるべきだという御指摘、まさにそのとおりに私ども感じております。特に人間の養成というのは一朝にしてなりませんので、仮にことし定員がとれましても来年すぐこれが使えるわけでございません。いま中東のお話が出ましたので、これをアラビストというものについて申し上げますと、戦後細々ながら外交が始まって以来、アラビストの養成というのは、ほかの語学に比べればそれでもわりあいに重点を置いてきたわけでございます。最近では上級職合格者二十数名のうちから二名、専門職合格者四十数名の中からは二名、四名は必ずアラビストとして入れまして、現地における研修その他で——これは十年、二十年先に活躍する人たちではございますけれども、いまでも手当てを続けているつもりでございまして、現在約五十数名のアラビストがおりますが、本省、それから現地あるいは国連等の第三国というところにこれをちりばめますと、中東の大事な地域でも一、二名しかいないというようなところも出てくるという意味においては、非常に手不足だということはまさにそのとおり感じておるわけでございます。したがいまして、これはアラビストだけでございませんで、世界の非常にたくさんの言葉の専門家だけをとりましても、またあるいは地域とか、非常に多角化した問題別の専門家の育成につきましても、これは私ども質の改善努力して、研修の強化とか、登用制度による士気の高揚とか、そういう面の努力も一方では払っておりますけれども、やはり絶対数の不足というのは御指摘のとおりでございますので、これは明年度の予算におきましても、外交体制の充実、特に定員の確保ということを最大の柱にして現在鋭意折衝中ではございますけれども、これは来年の予算だけで解決することではないので、すでにお聞き及びかと思いますけれども、当面昭和六十年までに、いまから五年のうちには現在の三千四百八十名という外務省全体の人間を少なくとも五千人にはふやしていただきたいという長期計画も持ちまして、これにつきましても財政当局並びに行管当局には、大臣以下、省を挙げて現在御説明をして、来年度はその初年度というようなとらえ方で現在努力しているつもりでございます。
  190. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう時間が過ぎておりますので、最後に締めくくりとして、その点については強力に推し進めてもらいたい。いつまでたってもらちが明かぬのでは、もういろんな今回の変化が起こった問題についても直ちに対応できない、分析もできない、右往左往しなければならぬということになりますと、今後の日本外交において大変致命的なことになりはしまいかということを恐れますので、重ねてその点の充実を着実に、強力に推し進めていただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  191. 立木洋

    立木洋君 大臣、前回の外務委員会で、金大中氏の問題について、大臣に日本国民の声を韓国側にもよく伝えていただきたいし、判決文の要請を速やかに行うように努力していただきたいということを前回の委員会で要請したわけです。その後御承知のように、去る三日の日に金大中氏の高等軍法会議における控訴が却下されて、再び死刑ということになりました。金大中氏が抹殺されるかどうか、歴史に汚点が残るかどうかという問題は、あと時間の問題だと言われるような重大な時期に来ているのではないかというふうに考えて、改めて大胆に幾つかの点を質問さしていただきたいと思うんです。  最初に、いままで繰り返し言われてきたわけですが、いままでの状況の中で判断される限り、二回にわたる政治決着が行われましたけれども、その政治決着に抵触するというふうな事態はないと判断されるということを政府として何回か言われてまいりました。その政治決着に抵触しないという判断の根拠ですね、どういう根拠に基づいて抵触しないというふうな判断をなさってこられたのか、それを最初にお伺いしたいと思います。
  192. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答え申し上げますが、この前もお答え申し上げたことと同じでございますが、韓国側から判決理由要旨というものをわれわれは人手しておるわけでございますが、その判決の骨子はわれわれが入手した判決理由要旨の中に盛られている、それから判断しまして、いわゆる政治決着には抵触していないというふうにわれわれは理解をしている。前と同じお答えで恐縮でございますが、そういうことでございます。
  193. 立木洋

    立木洋君 私たちが外務省からいただいた文書等々を見てみますと、一つは、金大中氏の裁判関係資料として起訴状がありますね。それからもう一つは「判決公判メモ」というのもいただいているわけです。「判決公判メモ」、大使館員がメモをとったというものですね。最後にいただいたのが「金大中氏に対する判決理由要旨(第一審)」、この三つの資料ですが、この三つの資料以外に、政治決着に抵触しないという結論を出した何か材料か資料かございますか。この三つによって判断をなされたのか、それ以外の材料が何かあるのかないのか、いかがでしょうか。
  194. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) それ以外の資料はございません。
  195. 立木洋

    立木洋君 一番最後にいただいた「要旨」のものですが、これについては四の項目のところに「反国家団体関連部分については、」云々として、「被告人が韓民統議長の身分を引続き維持しつつ国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、」というふうになっていますが、この犯罪事実に基づいて死刑となった罪名というのは国家保安法違反というふうに明確になっているのか、あるいはそのように推定をなさっているのか、そこらあたりはいかがでしょうか。
  196. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ただいまの点に基づきまして、私どもは、国家保安法第一条一号違反というふうに韓国側は考えておられるものと判断する次第でございます。
  197. 立木洋

    立木洋君 それで、これをよく見てみますと、「判決公判メモ」によりますと、「金大中被告に対する国家保安法の違反については、友邦国との関係によりこれを不問に付するが、」、言うならば国家保安法の違反については不問に付するということになっているわけですね。それで「判決理由要旨」では、いま読み上げた項で見ますれば、いま木内さんが言われたように国家保安法違反だと推定される、韓国側がそういうふうに解しているものと推定される。一方の「公判メモ」では「国家保安法の違反については、」「不問に付する」と。「要旨」では国家保安法違反だというふうに推定される。これは矛盾しているのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  198. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの点でございますが、先生も判決理由書でお読みのとおりだと思うんですが、これは「友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、」、こういうことで、外国における行動については問わないということで判決理由書にもあるわけでございまして、先生のいまお読みになったのを全文ずうっと読んでいただけば、外国における行動については罪を問わないという趣旨に書いてあると思うのでございまして、その点は、いま局長が言いましたように、死刑の条文は国家保安法の一条ですか、ということしかないわけでございます。ほかのものがないわけで、ですからわれわれは、日本における行動は罪にならないということで判決理由書にも書いてある。しかし、死刑ということであればそれは、国家保安法の第一条は死刑の条文でございますからそうであろうと理解をしている、こういうことでございまして、判決要旨にも「友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討した」、それで国内で犯した罪ということにこれはなっておるわけでございまして、われわれは政治決着に違反しないというふうに考えておるわけでございます。    〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕
  199. 立木洋

    立木洋君 大臣、それは後でつじつまを合わした内容から言えばそういうことが言えるのですよ。最初の、大使館員がとった「判決公判メモ」によりますとそうはならないんですよ。ここでははっきりと、「金大中被告に対する国家保安法の違反については、」と書いてあるのです。外国における国家保安法の違反じゃないんですよ。「国家保安法の違反については、」「不問に付するが、」なんですよ。そして、証拠があるから明白だということを述べてありますが、その次に「同被告の断罪は、国内における反国家的活動」ですよ、これ国家保安法違反とは書いてないんですよ。「反国家的活動のみによっても十分に重罰」に付せられる。ところがそれをつじつまを合わされたのがこの「要旨」なんですよ。これは、よく読んでいただけば、この両方は矛盾しているということは明らかだと思うんですよ。矛盾しているというふうにお考えになるのかならないのか、あるいは若干の違いがあるというふうに考えるのか、全く両方が同じだというふうに判断されるのか。これは進展の過程があったと思うのですが、大臣どうでしょう。
  200. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ただいま立木委員御指摘のとおり、それは矛盾があるわけでございます。すでに国会において、衆議院外務委員会で御答弁したことがございますが、要するに第一審の判決のときの第一報ということからそういう間違いを実は犯しておるわけでございます。これは、裁判というものになれない館員が、しかも韓国語で行われるというものを傍聴いたしましてのとおりあえずの第一報というもので、十分正確を期し得なかった。したがって拙速を犯した点については私どもの不明をおわびしたわけでございますが、最も正確なものはその後お配りいたしました「判決理由要旨」でございまして、その過程においてそういう間違いを犯したという点についてはこれはもう釈明申し上げるほかないと思います。
  201. 立木洋

    立木洋君 木内さんね、私は何ぼ考えてもそうは思わないんですよ。それは後で外務省がそういうふうにつじつまを合わされたというふうにしか見えない。  大臣、そこで大臣のお考えもよく聞きたいのですが、大使館員が金大中氏の裁判に行ったわけですね。そして裁判をメモしているわけですよ。裁判というのがいいかげんな裁判だと思って大使館員は行っていないんですよ。これは日本にとっても重大なかかわりのある裁判である、だからきわめて緊張して、重要なことであるから間違いないようにメモをとらなければならないという考え方で大使館員は行っているんですよ。そして、そこで述べられたのを大使館員は忠実にメモをした。だから、裁判で述べられた内容から言えば、私はこの「判決公判メモ」というのが最も事実に即した内容だろうと思うんです。それが、その後これならば判決理由はどうなっているか、これは私に言わせると創作なんですよ。これは裁判の判決、裁判所で述べられたこととはかかわりなくても書けるものなんですよ。ところがこの判決メモというのは事実裁判所で聞いた者でなければ書けないことなんですよ。私はそんないいかげんなことをするような、大使館員の方がまさかいいかげんに、間違えました、はいそうですか、ミスをしまして申しわけございませんなんていうようなことで大使館員の方がやられるとは思ってない。私はそういうことから言うならば、やはりこの公判メモの方がより事実に即した内容を反映しているのではないかというふうに思うんですが、大臣は大使館員、外務省のみずからの部下を信頼されるのか、後からの創作を信頼されるのか。いかがでしょう。——いや、大臣に。
  202. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 正確を期するためには速記の能力もあり、しかも外国語じゃなくて自国語であると、それも一人の速記ではなく数名の速記で、しかもテープレコーダーというようなものもあわせて用うれば恐らく正確を期し得たと思いますが、あえて弁解申し上げれば、そういうハンディキャップのもとで取材をいたしておりますので、先ほど申し上げましたような誤りが起きたわけでございます。決してつじつまを合わせるとか創作であるというようなことでは毛頭ないわけでございます。
  203. 立木洋

    立木洋君 それは木内さん、つじつまを合わせましたなんて言ったら大変なことになりますからね、そうはおっしゃらないと思いますけれども、だけどやっぱりみずからの部下が一生懸命書いた公判メモというものに対しての、少なくともやっぱり外務大臣は信頼性を置くのだとか、ああ、いいかげんにやったんだというふうにお考えですか。その感想だけで結構です。大臣。
  204. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 感想を述べろということでございますが、私は緊張をし過ぎて間違っていたという感じがします。何か後で現場の感覚を聞けば、何か公判廷の途中から飛び出して電話をかけたりなんかしたというふうなことを聞いたわけでございますが、私は非常に、先生おっしゃったように、緊張したから間違えないはずだとおっしゃったんですが、どうも本件は緊張し過ぎて間違ったんじゃないかというのが私の感じでございます。
  205. 立木洋

    立木洋君 感想を求めたわけですから、その外務大臣の御感想にとやかく私は申しません。ただ、ですから先般——前回ですね、私が申し上げましたように、こういろいろと経過があり、やっぱり何としても問題が残っておる。だからどうしても全文を入手して、そして精査をした上で結論を出さざるを得ない、だから外務省としても韓国側に要請をしたんだということでよろしいですね。判決文の全文を要請したんだと。
  206. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その点は先生と異なるのでございまして、私はこの判決要旨の中に大切なことは皆書いてあると、こういう判断をしているわけです。その中に、政治決着のことを頭に置いて、友邦国のことは、「友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、」ということで、「国内で犯した犯罪事実を」「訴追していることから、」ということで、私はこれは政治決着には抵触してないという判断をしております。判決文をということを言っておりますのは、なおもらえばその点がはっきりするという意味で判決文をぜひ手交してもらいたいという要請はしてあります。ただ、要旨で私どもは政治決着に触れてないと確信をしておるわけでございます。
  207. 立木洋

    立木洋君 判決文の全文を要請されたのに対して、韓国側の一番最近の反応はいかがでしょうか。どういうふうな回答をされているのか、どういう態度をとっておられるのか。
  208. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 一番最近の韓国側の反応も遺憾ながら否定的でございます。
  209. 立木洋

    立木洋君 判決文を渡すことが否定的だと言われる理由については韓国側はどのように述べているんでしょうか。
  210. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 裁判関係者は、所要の手続を踏んで判決文等の裁判関係資料を入手することができる、というふうに書いてございますが、軍法会議法におきましては実際にできると書いてあっても、そうするということではないと、ましてや第三国の関係者にはそういうわけでお渡しするのは非常にむずかしいんだということでございます。
  211. 立木洋

    立木洋君 私はその理由がやっぱりあいまいだと思うんですね。少なくとも先ほど言われたように、日本国民の考え方を明確に韓国側に伝え、判決文の全文を入手して精査をする、それは日本政府としても私は当然の責任としてやらなければならない。これは責任と言うと、また外務大臣はそういう点とは違った見解をお持ちかもしれませんけれども、私はそう考えている。  それで、いま木内さんが若干触れられましたけれども、韓国の軍法会議法の六十七条に確かにそう書いてあるんですよね。第六十七条を見てみますと、「対審判決の公開」ということで、「裁判の対審と判決は公開する。」、判決は公開する、と書いてあるんですよ。できるじゃないんです。するんです。「但し、安寧秩序を妨害するか、風俗を害する憂慮がある時、または軍機保持上必要な場合には軍法会議決定によって公開しないようにすることができる。」というんです。公開しないようにすることはできるんですよ。だけど公開するんです。公開しないようにすることができるのは、ここに述べられているのは三つの要件なんですよ。一つは、公開することによって安寧秩序を妨害する。もう一つは「風俗を害する憂慮がある時」ですよ。三つ目は「軍機保持上必要な場合」ですよ。外務省としては向こう側が公開することはできないというふうに言われている理由について明確に確かめることが必要じゃないでしょうか。こう述べられているんですよ。
  212. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 策三国の刑事訴訟法上の問題でございますから、私からこうだと明確に申し上げることはできませんけれども、確かに裁判の公開主義ということになりますと、審理と判決は公開でなければならないということに相なるかと思います。ただし、判決書と裁判関係の書類を公開するということに即相なるかどうかについては、これはいろいろ御意見があり得るのじゃないかと、かように考える次第でございます。
  213. 立木洋

    立木洋君 ちょっと木内さん、今度は黙っておいてね、外務大臣に私聞くから。  大臣ね、いま日韓関係の問題において金大中氏の問題というのは最大の問題になっているんですよ。大臣自身、この問題というのは日韓関係が今後どうなるかということにも影響するだろうと言われるぐらい大臣自身も考えておられることだろうと思うんです。それはどのようにお考えになっているかはわかりませんが、考えておられることだろうと思うんですね。そうすると、この問題がもうすでに軍法会議で死刑の判決が出されたんだ、あとはもう時間の問題なんですよ。    〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕 いまずるずる、ずるずるしておって、あいまいもことして時間が過ぎ去っていって、結局は金大中氏が死刑になり、抹殺されたというようなことになれば、これは私は大変なことだと思うんです。そういうことで、結局そこまでこういう事態が明らかになり、相手側も公開するというふうに軍法会議法でなっているにもかかわらず、理由も明確にしないで、そして判決文の全文も入手しないで、先ほど申し上げましたように矛盾したような公判メモと判決要旨をつじつまを合わせて——私に言わせればですよ、それによって事足れりとするようなことでは、国民の中には絶対にこの問題は解決しないですよ。これは私はそういう意味でも、日本政府が本出に明確にすることが私はいまの時期に最も大切なことだと、そういう点について最後に外務大臣のお考えと、これに対して、もう残された期間わずかですから、前回も私の考え方は述べてありますから、努力を再度お願いしたいんですが、この問題に対するお考えと努力要請についての大原の見解を述べていただいて私の質問を終わります。
  214. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 時間的に非常に切迫している問題だろうということは私も同じ認識です。それから、これが非常に大きな問題になる可能性がある、日韓関係にひびが入るおそれがある、国民からいろんな意見が出てくる、ということを私は国会で述べたことがあるのでございますが、その点も同じに考えております。  で、判決文の入手につきましては、これはわれわれとしてはあきらめたということじゃございませんで、これは今後も最善の努力はするつもりでございます。目的は、しかし最悪の場合にならぬようにというのがわれわれの考えている、いろいろ深く憂慮するとかということを言っていることでございまして、それに一番いい方法はどうかということもいま苦慮しているところでございますが、判決文についての努力はいたします。
  215. 木島則夫

    ○木島則夫君 外務大臣にお尋ねをいたします。  アメリカ大統領選挙の結果につきましては、まだ新政権の政策が具体的に決まっていない段階で具体的なお答えはできないという状況のもとでの先ほどからのやりとりがございました。で、そのことは承知の上で私も大統領選挙の結果について数項目にわたってお尋ねをしたいと思います。重複があることをひとつお許しをいただきたいと思います。  レーガン氏が当選をされたわけです。アメリカの大統領の権限というのは、私も非常に大きいものがあるということは疑っておりません。しかし、閣僚がどういう顔ぶれになるか、あるいは補佐官、スタッフ——ホワイトハウスのスタッフがどういう構成を見るか。上院はともかくとして下院における制約、そういったものを考えますと、レーガン氏の性格や選挙公約そのものが直ちに言われるところのバランス・オブ・パワー——対ソ強行措置であるとか、保守回帰、保護貿易に徹するということにそれがストレートに結びついていくかどうか。この辺はやっぱりある時間をかけなければ私はいけないと思うし、ある距離をとってみなければいけないという、こういう考え方を基本的に持っているものでございます。したがって、レーガン政権、いわゆるレーガン政権の外交経済、対日政策についての大臣のお答えは現状ではやむを得ないものがあるし、また慎重にならざるを得ないというお立場もよくわかるわけでございます。当委員会における大臣の御発言について再度の確認をまずしたいことは、日米関係につきましてカーター政権との間に大きな差異はないだろうというこの点についての御確認はいかがでございましょうか。
  216. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先生がおっしゃったように、選挙当時の演説とか綱領とかが即政策にすぐにあらわれるかどうかということは、これは時間もかかりという御意見は私も本当にそう思っておるんです。でございますので、私は非常に慎重なお答えをしておるので、はなはだ申しわけないのでございますが、最後におっしゃいました日米関係、友好関係、こういう関係についてカーター政権と大きな変化はないと私が言ったがそうかというお尋ねでございますが、私はいままでのレーガン氏の演説、ブッシュさんより直接聞いた話、綱領その他から見れば、日本に対する評価というものはカーター政権とレーガン政権とに変わりない。でございますので、日米関係は従来と大きな変化というものはあり得ないということを私は信じております。
  217. 木島則夫

    ○木島則夫君 通商貿易問題につきましては、電電、たばこの問題は恐らく年内に解決を見るであろうということをおっしゃっておりますね。早い解決というのは私も望むところでございますけれど、通信機本体に関する問題は、日本の通信政策の将来展望ともかかわる、これは非常に大事な問題ですから慎重を期していただきたいということを付言をすると同時に、このたばこと電電の問題は年内に解決をするということは、ある程度レーガン政権に移ったときに経済問題そのほかで、何というんでしょうかね、もっとフリーハンドの立場で新たな問題に臨んだ方がよいという外務大臣の御意向、日本政府の御意向なのか、その辺もひとつ確かめておきたいと思います。
  218. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 電電、たばこの問題でございますが、これはアスキューさんがこの間寄って帰ったわけで、あのときも交渉して帰ったのでございますが、大体いままでのところは私はさっきも言いました山で言えば八合目ぐらいまで来ているという感じがしますし、向こうもこの問題は年内に、特に電電は牛場・ストラウス会談で決めたわけでございますので、年内に解決するということにもうなっておりますので、たばこ、電電についてはアスキューさんも遅くとも十二月中には解決をしようということで話をこの間したわけでございまして、いま解決しないとレーガン政権になるとまたむずかしい問題が起きるおそれもあるから早くという御質問、そういうことがあるのかという御質問でございましたが、そういう考えではございません。もう大体話し合いが煮詰まってきておりますので、従来の経緯もあり、年内に解決をしておいた方がいいんじゃないか、解決すべきじゃないかと思って、両方で話しているところでございます。  ただ、電電の問題は先生おっしゃるとおり、本体の問題とよくわれわれも問題の所在をわかっておりますので、これは電電公社、郵政大臣、その他関係者とも十分打ち合わせて、その点のそごを来さないように慎重にしますことは当然でございまして、いままでもずうっと電電の人も交渉に出ておりまして、郵政省その他にも連絡をしておりますので、最後先生のおっしゃったような点は十分踏まえて決着をつけるということをやりたいと思います。
  219. 木島則夫

    ○木島則夫君 まあこれも確認でございます。防衛力の増強を日本に要求された場合には、当然日本の、日本自体の自主的な判断によって決めるという政府の基本姿勢に変わりはないんだ、それについては事前によく相談をするんだと、こういうお答えでございます。これはこれで結構でございます。  私は、一つ懸念をしますことは、日本が率先をして行わなきゃならない世界の核軍縮ですね、これについて選挙中とは言いながら、レーガン氏の言動というものはやっぱり相当日本にとって懸念をされるというか、関心を持たざるを得ない発言をされております。ことにSALTIIの問題について、非常に警戒的であって、これを批判的ですね。いま私がちょっと申し上げたように、日本が核軍縮の問題については世界の先頭に立って、世界の世論を動かしていかなければならない立場にある日本としまして、どうでしょうか、政府はやっぱり——政府というか、私どもはこの辺非常に危惧を持っているんですね。まだ具体的な政策が決まっていない段階でとおっしゃられればそれまででありますけれど、この辺を政府はどんなふうに見ているか。
  220. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 核軍縮は日本から言えば、これは日本の平和憲法、日本の憲法というのは軍縮の政治哲学だと私は思っているわけでございまして、核軍縮については、これは核兵器保有国に対して、これの管理、縮小ということにつきましては、常に主張をしているところでございますし、いま何とか早急にと言っておりますのは地下の実験も含めました核の包括的な実験禁止というようなことを何とか早く条約にということで、常に主張しながら世界国々とやっているところでございます。これはやはり核軍縮というのは日本としては常に主張し、進め、実現していくという努力をすべきだと思っております。いまレーガン大統領が候補時代にSALTII、SALTIIIというふうな話をいろいろされて、演説の途中で最初はSALTIIというものはやめたらどうかというふうな演説もあったやに記憶しますが、途中で軌道修正がありまして、SALTIIIの交渉をやるべきだというふうなまた演説があったことも記憶しております。これは選挙の演説でございますからそのまま、さっき先生言われたように、政策にストレートにあらわれるかということは私はわかりません。その点はわかりませんが、演説の途中ではそういうことがあったということを私は記憶がありますので、SALTIIIの交渉というふうなことになると、やっぱりそういう核兵器の管理といいますか、そういうことまでも考えておられるのかなと。あるいはスイスで戦域核の交渉を米ソでやっております。あれについては演説ではほとんど何も触れておられない、あれやめろとかどうせいというふうなことは触れておられないということがございますので、どういう政策になるかわかりませんが、その点は注意深く私ども見ているというところでございます。
  221. 木島則夫

    ○木島則夫君 これも仮定の問題ですから、もちろんいま確実な具体的なお答えということは無理であろうと思いますが、このSALTIIを含めた戦略核兵器制限の実現のために、レーガン政権が日本の主張なり理想なりにもし支障を与えるような行動をとったときに、日本が行動をとるというか、結果してそうなったときに日本がやはりこれに対して積極的に取り組んでいかなければいけない、こういう意味での積極的な外務大臣の御発言がこの場でございませんでしょうか。
  222. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまおっしゃったのは核の問題だけでございますが、どういう政策が出てくるかわからぬわけでございます。台湾の問題等につきましても途中でわれわれの考えておるのと若干違うなあというような演説もあったことがございますし、あるいはブッシュさんと話しましたときに、中東の和平等についてもいろいろ私は議論したことがございます。そういういろんな面で日本と考え方が違うこともあるいは政策によっては出てくる可能性もなきにしもあらず、これはアメリカのことでございますからアメリカが独自に判断して政策を立てられるわけでございますが、そういうときにやっぱり日本としては主張、言うべきことは言うという態度は、これは日本はちゃんとして筋を通してやらなきゃいかぬことだと、私は抽象論で恐縮でございますが、そう思っております。
  223. 木島則夫

    ○木島則夫君 核軍縮の問題についてはまた日を改めて時間があるときにお話をさしていただきたいと思います。  これも先ほどの確認を一ついたします。いずれにしてもレーガン政権が一月の二十日に発足をする。しかし日米の懸案というものは通商の面においても、防衛の面においてもいろいろある、軍縮問題一つとってみてもそうですね。ですから、できるだけ新しい政権との間で早い接触がなければならないということで日米首脳会談がいつ開かれるかということが問題になっている。報道によると五月ということ、先ほど外務大臣はこの五月というものについては、いままで五月の連休にこの日米首脳会談が持たれたということで恐らくこの五月ということになったのではないかという意味のお答えをされた。しかし、実際首相の日程などを繰ってみても、なかなか余裕というものがおありにならないということも事実で、この辺に落ちつくのではないかという大方の予想が五月という時点を設定されたんじゃないだろうかというふうに考える人もいます。  そこで、その日程について、政府はいつごろ日米の首脳会談をおやりになりたいのか。その場合、もう一つ、当然東南アジアを先にしてという、これは私どもの希望でありますけれど、アメリカを先にやっておいて、帰ってきて東南アジアを回るというようなことでなしに、これはもう東南アジアが当然先になるんだということ、その後に日米首脳会談が行われるという、この辺はどんなふうに考えていらっしゃるのか。政府の基本的なお考えにもかかわることだと思います。伺っておきたいと思います。
  224. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) まず順序の問題を申し上げますと、東南アジアに首相が行かれますのは一月八日からということで、もう相手国にみな日程の折衝をしているわけでございますので、これはもう動かないと私どもは考えております。十二月は予算を組んで、それから一月の再開までに東南アジアを首相が訪問される。そして一月二十日からはもう、何日になりますか、国会が再開になりますので、レーガン政権が正式誕生するのは一月二十日でございますから、もう私は、国会に入れば総理はなかなか外交日程といえども出れないわけでございますから、当然日米首脳会談というのは、東南アジアが一月の八日から行かれて、その後になることだけはこれはもう私は間違いない、東南アジアが最初ということで総理もこれは既定方針で動かされないはずでございますし、また動かすべきものじゃないというふうに考えます。  それから五月の問題でございますが、これは総理とお話を私もしましたが、五月の連休ということが、何もそのころがどうだということで話が出たとか決まったということじゃないのでございます。毎年、大平総理のときは五月の連休のときに二年続けてことしも去年も行かれたわけでございます。国会の少しでも暇ができたときと言えばそのころかなあといって大方の人が予想して書かれたんじゃないかというふうに思っております。ですからまだいつということは決まっておりません。
  225. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 レーガンさんが大統領に当選したわけでございますが、もちろんレーガン、カーター、この二人の争いですからどちらがなっても不思議はないわけでありまするけれども、しかし、とにかくいままでの大統領がかわったわけでありまするから相当な政策の変化が予想せられる。先ほどからの質疑もどういう変化があるかということ、それから政府の方では、まだ現実にレーガンが大統領になったわけじゃないからはっきりしたことは言えない、こういうことで、これもごもっともなんですけれども、しかし、やはり現在も非常に日本で問題になっておりまする韓国、金大中の問題なんか、これが一月の二十日に大統領にレーガンさんがなる、レーガン政治が始まるわけですけれども、そういう場合にこの日米間で一応一致しているように見える金大中問題の解決が一体どうなるかという予想を、予想といいますか、お見通しがあったら伺いたい。これは大臣にひとつ伺いたいと思いますが。
  226. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 金大中氏の裁判の見通しということでございますが、これは政権がかわったらどういうふうになるか、何か見通し持っているかということでございますが、私はいまここでどうなるという見通しを申し上げるような、それほどしっかりした思慮を持っているわけでもございません。また話し合いをしたわけでもございませんので、見通しということはお答えはしにくいことだということでございます。いままでカーター政権では、いろいろ意向の伝達ということがあったことは知っております。ですが、新しい大統領になられてどういう考えかということにつきましては、私はいまここでちょっと予想はしにくい、申し上げにくいということでございます。
  227. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 裁判の問題でありますから、非常に言いにくい面がありましょう。また、裁判というものの陰に隠れると言ってはなんですけれども、それによって物事が非常に明瞭を欠いているという点がありますから。しかし、ただこの事件に対するいままでのアメリカ政府、それから日本政府、この間には相当な一致点があり、協議もなされ、それから、やっぱりある程度見通しは相互に情報を交換されていると思うんですが、レーガン政権の成立によって、それが著しく変わるということはありますか。
  228. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) レーガン政権になってアメリカ側の対韓政策といいますか、その中で金大中氏の裁判についてのアメリカ側の考え方が変わることはあるかという御質問ですが、これは私も、この問題は新しい政権との、まだできないわけでございますので話し合いをしたこともございませんし、いまこの問題についても、ちょっとお答えをしにくい問題でございます。
  229. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 この問題ですが、これはもういずれ非常に切迫はしているわけですね。レーガンさんが大統領になる前に決まっちまうかもしれない。まあ極端に言えば刑も執行されるかもしらぬと、こういう予想さえされるわけですけれども、レーガンさんがなる前に、カーターさんが依然として大統領であるわけですが、カーター政権の期間は短いけれども、その間いろいろやることがあるわけですが、その間にカーター政権とも十分連絡して、この問題が日本国民の納得のいく解決をされるように努力されるおつもりはありますか。
  230. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私は従来もいろんな努力をしてまいりましたし、今後も、時間が切迫しておることはわかりますから、努力をしてまいります。ただ、どういうルートで、どういう努力をしているかという、いま先生が挙げられたのは一つの例でございますが、そういうことにつきましては、ひとつ説明することを御勘弁願います。
  231. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 金大中氏が死刑を宣告される大きな理由は、朴政権から続いている現在の軍事政権よりも、南北の緊張緩和という問題に対して積極的だったわけですね。カーター政権も一時はこの問題に相当積極的に取り組み、恐らく再選されたならばこの問題にはっきりと取り組む腹じゃなかったかと私は想像しているんですが、そういうカーター政権にかわってレーガン政権ができる。これは選挙中の演説とかいままでの言動からいって相当なタカ派であると信じられているわけですけれども、アメリカの朝鮮政策というものがカーター政権とレーガン政権の間で大きく変化する、あるいは少しでも変化するという可能性は考えられていますか。
  232. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) まだアメリカの政策というものは正式に発表されないわけでございますので、カーター大統領の政策とレーガンさんが大統領になったときの政策がどうかという、これは批評、意見を述べる段階じゃまだないのでございますが、カーター政権もたとえば駐韓米軍の引き揚げというようなことが最初にはありましたけれども、やっぱり現実の問題になるとそれがストップされるというようなことで、その点は私はわかりませんが、カーターさんの時代にもそういうことはあったということだけははっきりこれは言えると思います。
  233. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 要するに緊張を緩和する積極的な外交努力をするか、あるいは緊張を緩和するためにまず強いアメリカをつくるか、こういう議論に今度は基本的には分かれたと思うんですね。でありまするから、やっぱりレーガンさんが強いアメリカをつくると、こういう方向で動いていくことも予想されますけれども、私どもは、大分長いこと政治家やっているものですから、いろんな情勢を見ているわけですけれども、第二次大戦後に東西対立が非常に露骨になって、それでもう一度戦争が始まるんじゃないかという雰囲気があったことがありますね。極東の方では朝鮮戦争なんか起こったりして、それからその前にヨーロッパではベルリンをめぐる紛争がありまして、そうしてアメリカも相当強硬にこれには取り組みまして、そのときにイギリスの政治家たち、私はヨーロッパの政治家たちは戦後の平和の維持に相当手柄があると思っていますけれども、あのイギリスの政治家たちは、そのベルリン騒動のときにアメリカに非常に強い忠告をしていますね。それはどういう忠告かというと、このベルリンの現在のアメリカの政策を続けると、場合によると戦争になるかもしらぬ——マクミランとかああいう人たちですね、保守党の政治家ですね。戦争になるかもしらぬ。しかし、戦争になるとアメリカは勝つかもしれない。しかしイギリスは、ヨーロッパは、めちゃくちゃになるだろう、滅びるだろう、こういうことを言ってアメリカのヨーロッパに対する積極姿勢に対して非常に大きなブレーキをかけたという事実は、お調べになればこれはわかると思いますが、かけたわけですね。それで結局アメリカもこの強硬姿勢をだんだん改めていって、結局ヨーロッパにおける強硬姿勢がどういうかげんか、これはいろんな解釈の仕方がありますが、極東にやってきて朝鮮戦争になったなんという話もありますけれども、しかし、とにかくヨーロッパにおける緊張がぐっと緩和して、それで一九五四年ころからヨーロッパのまあ高原景気といいますか、経済が安定してきて景気が回復したと、こういうことがあるわけですけれども、私は、その当時の日本はほとんど外交的な発言力はなかったわけですね。安保条約の改定以前の問題であるし、改定後にはあっても積極的な発言力がなかったわけですけれども、しかしいまはあるわけですね。いまはあるわけです。それですから、当時イギリスとか場合によってはフランス、こういう国が果たしたような——強いアメリカが力の政策を用いてそして極東に無用な波乱を起こさせないために、それでアメリカが勝つかもしらぬけれども、日本がめちゃくちゃになるようなことがないように、日本外交は積極的な努力をしなきゃならぬと、こう思いますが、これはごく大まかな質問になりますけれども、大臣にひとつお答え願いたいと思います。
  234. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 朝鮮半島の緊張緩和の問題でございますが、これは日本政府としても南北の対話ということが始まったとき、あれは歓迎するということで、少しでも平和的に、一つでも二つでも問題が解決されること、遠い将来は平和的な統一ということを目標にしたあの話し合いというものは歓迎する、そして緊張緩和されるような、また話し合いができるような環境づくりに努力しますということを亡くなった大平総理も言いまして、私どもも中国へ行ったときも北朝鮮の南進というものについてはないというふうなことを、何回も中国が言ったことがございますし、アメリカと話すときにも朝鮮半島の緊張緩和ということは常に言っているのでございまして、日本としては朝鮮半島の緊張が緩和されるということは、これは日本の平和にとりましてもアジアにとってもソ連にとっても、一番大切なことだというふうに思いますので、この点は政策として当然私はやっていくべきだというふうに思います。  いまのベルリン問題を中心にして英国の保守党の方々の主張といいますか、そういう歴史の事実があったということ、先生からそういう御意見があったことはよく受けとめておきます。
  235. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 このヨーロッパと日本の事情がまた少し違う点があります。これは非常に似ているんですけど違います。それは何といってもヨーロッパは大きい、大きいですね。日本は海があるという点が違いますけれども、ヨーロッパは大きいです。ですから同じ破壊するにしても、破壊されるにしても、ヨーロッパは相当長期間かかるかもしれませんが、日本などという国は戦争に巻き込まれますと、非常に困難な事情になることは、だれでもいま承知しているわけですね。それで一番日本が近代の戦争に弱いという点は緩衝的な国家がほとんどなくて、いまは中国が大きな緩衝国の役割りを演じてますけれども、しかしこれもアメリカの政策が余りへんちくりんになるとどうなるかわからぬ事情もないことはない。それで中国というものを想定しない場合には、日本は非常に薄っぺらな防衛線に頼って国を守るわけですから、だからたとえば中国に対して中国が日本と同じ破壊兵器を持つという場合に、中国とたとえば仮に日本が戦争する、そういう場合に同じ数量の兵器であっても中国の抵抗力の方がはるかに強い、こういうことが軍事専門的には言われるわけですね。そういう日本状況でありまするから、ああいうタカ派と言われている、みずからもタカ派と言っている政治家が日本——安保条約が軍事同盟であるかどうかは一応問題ですけれども、しかし軍事同盗とすれば軍事同盟を結んでいる。そういう状況ですから、新大統領の軍事的、外交的な動きに対してはかつてのイギリス保守党政治家がやったような、そういう強い決心を持って日本周辺に戦争が波及しないように、外務大臣の年来の主張に従って御努力願いたい、こう存じます。
  236. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外交というのは本当に紛争を抑止する、あってももう最小限度にするというのが外交努力しなきゃならぬことでございますし、本当に日本の平和、繁栄ということを守るのがこれは外交でございますから、その点は十分心得て世界の平和、安定がなければ日本の平和、安定がないんだということで、先生のおっしゃったことを十分意にとめまして、平和外交ということで徹してやっていくつもりでございます。
  237. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 最後に一言だけ申し上げますが、とにかく日本外務省にも軍縮課という課がありますね。それからアメリカには大きな軍縮庁という役所があるわけですが、やっぱり軍拡と同時に軍縮というものは大きな世界の問題ですから、国連の平和維持機能というものを十分に活発化すると同時に、そういう軍縮の役所があるんですからね、国民の税金使って。そういうことも十分活発化していただきたいと、こう思います。どうお考えですか。
  238. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 軍縮の問題まだ十分じゃないんですけれども、私の方も国連局に軍縮課がございます。それで先生おっしゃるように、軍縮の問題というのは、これは一つの政治哲学といいますか、世界じゅうみんなで考えていかにゃならぬことで、もっと力を入れてこの問題に国連中心に取り組むべきだという御意見はわかりますので、さっき申し上げましたが、核の地下実験禁止を含めた包括的な禁止とか、化学兵器の使用の禁止とか、いろんな一つ一つこれは解決していかにやならぬむずかしい問題があると思いますが、努力してまいります。
  239. 山田勇

    ○山田勇君 外務大臣にお尋ねいたします。  日本政府としては、今回のアメリカ大統領選挙について、カーター、レーガン両陣営のどちらが勝つと予測しておられましたですか。これは大臣の個人的な意見でも結構です。
  240. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外国の選挙でございますし、日本の選挙自身も判断することがむずかしいのでございますので、大接戦だということを伺っていただけで、見ていただけで、どちらかということは本当にわかりませんでした。
  241. 山田勇

    ○山田勇君 大臣、レーガンについての認識度というのはどの程度まで持っておられましたですか。
  242. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) カーター大統領につきましては、時の政権でございますし、日本へも何回も来られたりしまして、話したこともありますが、私はレーガンという方にはカリフォルニアの知事をしておられた、日本に対して理解が深いということは聞いておりましたが、直接お会いしてお話するというようなこともなかったものですから、新聞、雑誌等でいろいろ個人的な性格とか、そういうふうなものを読んだ程度でございまして、まだはだで実感として感ずるというには至っておりません。
  243. 山田勇

    ○山田勇君 この大統領選挙の期間中レーガンが優位という情報外務省へ入った時点で、そういうアメリカの世論的にも優位ということになってから、レーガンに外務省として何か接触をしたことはありますか。選挙中でも選挙前でも結構です。
  244. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 予想は大体の場合、若干レーガン氏が上ということが出ていたのは知っておりますが、大使館等でもそれについて解析をしてこうだと言ってきたことはございません。新聞、その他ギャラップ世論調査とか伝えてきただけでございます。それから選挙中、また選挙前、大統領候補になられるだろうというふうなことを意識して外務省でだれかがお会いするというようなことはしておりません。
  245. 山田勇

    ○山田勇君 レーガンは保守派右寄りと見られておりますが、強いアメリカをつくるというように、軍備の増強などによってこれからの米ソ間の問題が出てくると思うんですね。非常に緊張が高まると考えられるんですが、大臣、どう思っておられますか。
  246. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先ほどから何回も答弁していますように、正式に大統領になられて、政策がこうだという発表がありませんから、とやかく言うことはいかがかと思いますが、ブッシュ副大統領候補に会いましたときに、力による平和ということを話されて、ソ連との関係が話題に上ったということは、これは事実私が体験をしましたのであるわけでございまして、政策が何か出るとすれば、それについてSALTII、SALTIIIの交渉の問題とか、いろいろそういうものが現実に出てくる可能性はあるというふうに思っております。
  247. 山田勇

    ○山田勇君 レーガンをタカ派、タカ派というふうに決めておりますが、ブレーンが相当なタカ派がたくさんいるわけでして、レーガンの選挙公約の中、選挙演説の公約、私ら新聞で知る限りではそんなにタカ派的な発言もそうあるようには思いません。たとえばレーガンは選挙公約中に、余剰農産物をソ連に輸出してもいいというふうなこともはっきりと公約しているんです。ですから、悪い言葉で言えばあめとむちというような外交姿勢をこれから出していくのかというふうに思いますが、上院議員になった——ちょっと名前を失念いたしましたが、ミーズ上院議員だったと思います、これはもう唯一のアメリカ議会のタカ派ですが、それとの親交が非常に厚いとか、そういうイメージ的にレーガンをタカ派と決めつけている部分がややあるんではないかと思います。ですが、ブレーンの、きのうNHKの報道等見ていますと、なかなか実務的なブレーンもたくさんおられますから、即レーガン大統領タカ派というふうな形の結びつきもぼくはいかがかと思います。  そこで、先ほど来の質疑の論議の中で、大変外務大臣の言葉じりをつかまえるようですが、防衛費の増強等が要求されるであろうというふうな質疑の中で、もう予算は十二月で予算編成は終わるんだというようなことを二度も強調されております。ですから、この一年についての防衛費の増強というのは、仮に新政策が、アメリカ大統領の閣僚が決まったとしても要求されない、一年はまあ大丈夫だという形ですが、来年はわからぬぞというふうな変化、大臣の心理的な中に変化が若干やはりあるんではないかというふうに私は先ほど来からの質疑、論議を聞いておったんですが、どうしても政党が変わり政策が変わるということについて、大臣はやはり防衛の増強は要求、要望はされるだろうという気持ちはややあるかのように私は思うんですが、いかがですか、大臣。
  248. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先ほど私が申し上げましたのは、まあ五十六年度はもう予算については十二月にできますので、これはカーター政権の時代にできるわけでございますから、ということを答弁をしたわけでございまして、先生おっしゃったように、五十六年はそうだけれど、五十七年以降はあるかも知らぬぞということを頭に置いて私は言ったわけじゃないんです。防衛費自身につきましては、カーター政権の時代にもいろいろと期待表明があるわけでございますし、ブッシュさんにも私は気になるから質問しましたら、民主党のカーター政権のとき以上にいろいろ日本要請するというようなことは考えてないということをブッシュさんは言われたわけでございまして、この点、先ほどから何度も申し上げますが、日本の態度ということ、まず自主的に国民のコンセンサスを得て専守防衛ということで最小限の防衛力の整備をやるんだという基本的態度、平和憲法で個別自衛権しかないんだというような態度を私は日本側がはっきりしておくことが大切だ、その上に立って日米の安保の効率的な運用とか特別に日本アメリカ関係ということを考えていく、まずこっちの態度が私は大切じゃないか、こう思うわけでございます。
  249. 山田勇

    ○山田勇君 伊東外務大臣は前大平総理の番頭役として、いわば一身同体といった形で内外の政治に対処してこられたわけですが、その大平総理は対外的には約束をしたことは必ず実行する、信頼のおける政治家であるという評価が海外で非常に高く認識をされておったと聞いておりますが、この外交関係における相互の信頼ということが最も私は大切なことではないかと思います。伊東外務大臣は大平路線の踏襲を基軸にすると申されておるわけですが、外交におけるこの相互の信頼ということについてどのようにお考えになっておられますか。
  250. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 相互の信頼が防衛の問題でも経済の問題でもどの問題でも中心、基礎になっているということは私は間違いないと思うのでございます。それで相互に信頼を——先ほど軍縮の話も出ましたが、信頼がなければ軍縮なんというのはないわけでございますので、外交の基本はもう相互信頼ということが基礎だというふうに私は信じておりますし、その信頼を築き上げるために頻繁に意見の交換をするような場をつくるとか、あるいは重大な問題に当たって協議をするとか、両方で決めたことは必ず守っていくとか、そういうようなことで相互信頼を築き上げていくということがこれはもう何より大切なことじゃないかというふうに思っております。
  251. 山田勇

    ○山田勇君 外交問題になりますとどうも一般国民にとってはどこか遠い国の出来事のように感じられて、いまひとつ身近な問題として考えない傾向があるようでございますが、幸い伊東外務大臣昭和三十八年初めてこの参議院に立候補した際、立会演説で台湾問題を大変取り上げられて中国・北京政府の国交の正常化を提唱され、福島県の地方で外交のことを言っても一票にもならぬと言われながら外交重要性を非常に力説したと私はある書物で読んだわけなんですがね。そういう点ではぼくは外務大臣にまさに適役かと考えておる者の一人ですが、私は最近のこの国際情勢を考えるとき、外交問題がいかに国民一人一人に密接につながっておるかと思うのであります。  で、外務省発行の昭和五十五年版の「わが外交の近況」、いわゆる外交青書の中にも、外交は、単に政府外務省によってなされるものではなく、国民一人一人の正しい理解と強い支持に支えられて行われるべきことは多言を要しない。また、外交実施体制の一層の拡充、強化と国民の幅広い理解と支援という確固たる国内基盤をもって初めて試練の八〇年を乗り切る方途が開けるであろう、というふうに述べてあります。外務省としてはこの青書を発刊することも一つの方法かもしれませんが、単に美辞麗句を並べるだけでなく、国民一人一人に実際に理解を求める手段としてどのような具体策を今後講じていかれるつもりでしょうか。
  252. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 詳細は局長から御説明しますが、そこに書いてありますことは、確かに言葉でだけでなくて、私は実行せにゃいかぬことだと思います。外務省だけが外交をやるわけでもなし、国民一人一人が私は場合によっては外交官だというふうに思っているくらいでございますので、そこに書いてありますことを単に言葉だけにしないように努力をしてまいります。  それから、ひとつ先生、先ほど参議院に立候補したとおっしゃいましたが、私は衆議院に……。
  253. 山田勇

    ○山田勇君 どうも失礼しました。
  254. 天羽民雄

    政府委員(天羽民雄君) ただいま山田先生のおっしゃった点でございますけれども、まさにそのとおりでございまして、私ども外務省といたしましても、具体的にいろいろな方法でもって国民の皆様方の外交に対する理解の御増進に一助たり得ようと思いましていろいろやっているわけでございます。具体的には、たとえば国際情勢とか、外交問題に関します広報啓発資料、これを定期、不定期につくらしていただきまして、これを全国の都道府県とか学校等に配らしていただいておるわけでございます。  また第二には、講演会等を全国でもって開かしていただきまして、五十四年度でもって約七百回の講演会をあちこちでもって外交問題に関する講演会を開いた次第でございまして、その大部分外務省の省員が津々浦々に出かけまして、努力しているわけでございます。  また第三には視聴覚と申しますか、テレビあるいはラジオを通じまして、事あるたびごとに外交の問題を取り上げまして、これを通じまして広報活動をしている次第でございます。
  255. 山田勇

    ○山田勇君 大統領もかわることですし、この機会に、いまアメリカのテレビで放映されて、「将軍」というのが大ヒットして、アメリカ一般国民の日本に対する関心がかつてないほど高まっているのではないかと思います。まあいろいろこの功罪はあるようです。古い日本を見てしまったというような形の罪の方もあるかもわかりませんが、外務省としてはこういうようなチャンスに、日本について知りたいという米国人の気持ちにこたえていくことが、対日偏見の定着を防ぐためにもぼくは非常に効果的と見ているわけですが、「新たにこの全米社会教育協議会の機関誌に日本特集号を組むための補助金を出したほか、現代日本の戯曲や小説、テレビ台本などを翻訳してまとめ「現代日本の読み物」と題した小冊子を発行することも決めている。」という、十月二十五日の朝日新聞の記事がありましたが、これはどのぐらい金が、このPRといいますか、これにかかったかということと、積極的に外務省として取り組んでおられるのは、ぼくは大変結構なことだとは思うんですが、アメリカだけではなく、こういう機会にヨーロッパなどにも今後どしどし日本についての理解を深めるPR作戦を展開すべきだと思うんです。その具体策があれば教えていただきたいと思います。
  256. 天羽民雄

    政府委員(天羽民雄君) いま山田先生のおっしゃったとおりでございまして、あの「将軍」というのは、御承知のように視聴率が実に全国平均、アメリカでもって五一%。したがいまして、一億二、三千万の人が見たということになるわけでございますけれども、これにつきましては、いま先生おっしゃったとおり、いいとか悪いとか批判がございますが、とにかくこれを機会に、日本に対する関心が非常に一時的、とにかくふえたということは言えるんじゃないかと思うわけでございます。  私ども、先ほどのいわば国内啓発と同様に、海外啓発と申しますか、これもいたしておる次第でございまして、まあ五十四年度では大体二十三億程度の金を使いまして、やはり資料作成等によります定期、不定期の刊行物等を通じまして、年間百六十万部ぐらいでございますけれども、これをあちこちに出しているわけでございます。また、視聴覚の方を通じますやはりPRもやっておりまして、たとえば広報映画とか、テレビの短編映画とか、そのほかまあ小さいことになるようでございますが、日本紹介のポスターとかカレンダーとか、これも年間二十万本ぐらいやはりあちこちに配らしていただいている次第でございます。  さらにベースになりますものといたしましては、人物交流と申しますか、これを去年も五十四年度でもって大体百八十七名の世界各地のオピニオンリーダーと申しますか、有力者並びに報道関係の方を招かしていただきまして、日本を見て、それをまた帰られてから少しでも日本紹介のために役立ててもらいたいということでもって御招待等申し上げている次第でございます。  さらに随時、映画とか展示会とかシンポジウムとかいうものをやりまして世界各地でもっていま日本紹介に努力をいたしておりますが、いま先生おっしゃられたように、一層これ努力して今後とも促進したいと、こう考えている次第でございます。
  257. 山田勇

    ○山田勇君 外務省唯一の外郭団体に、文化交流基金がありますね。これは一年前ぐらいからの計画を出してやらないと予算がなかなか取れないという問題もあるんですが、物資によっての供給ということはなかなかちょっと、交流基金の中のまあ会則といいますか、規約があるものですからむずかしいんですが、ぼくは、何とか海外援助的なものの中で文化交流の中の物資の供給というようなことも今後の課題として考えていただきたいわけです。  たとえばまあ外国なんか行きまして、日本の禅の心を知ろうというようなことで剣道の防具などを送ってくれと言われて、ぼくは交流基金の方へお願いに行くんですが、物資に対する援助はできないというようなことで非常にいま苦慮をしているさなか、少しずつみんなで資金を集めていま送ったりしているわけなんですがね。そういう点でも、ひとつこれからの交流基金の中の予算の獲得という中で、多少また会則といいますか、規約というのも変えていただきまして進めていただきたいと思います。  これは最後の質疑をいたしますが、外交青書の中で「わが国の行った外交努力」というところでカナダについての記述がありますが、その中で「七九年は日加修交五〇周年に当たり、両国間の文化交流も広範囲に進められ、教育、科学技術協力などの分野と相まつて日加関係をさらに増進させていく期待が高まつている。」とありますが、外務省としてまあ具体的にどういうことを行ったのか、また行おうとしているのかということについてお尋ねをいたします。  前回、前回といいますか、去年、おととしですか、カナダの通産大臣が参りましたときでも、大使館へ私はちょっと招待されて行ったんですが、そのときは、国会関係者は外務大臣園田さんと、ぼくと、日加の議員連盟の会長をなさっております前尾前衆議院議長、三人でして、園田さんが、山田君、カナダ関係でこんなことじゃいかぬなと——商社関係とかそういうのはたくさんお見えになっておりますが、もう一度そういう日加の問題は見直さにゃいかぬねなんて外務大臣おっしゃられたことがあるんですが、そういうことを含めてこのカナダの関係について伺いたいと思います。
  258. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 日加五十周年記念に際しましては、わが国からカナダ各市においてシンポジウム、それから劇映画の上映等をいたしております。さらに、カナダ側からも東京においていろいろな文化事業を進めております。  それから、特にことしは大平総理がカナダを訪問されまして、その際の共同声明の中にも、日加関係を従来の経済関係のみにとどまらず、文化、科学技術の面においても広げていこうという共同声明が出されておりまして、具体的に日本政府がブリティッシュコロンビアの大学に対して金を出す、それからカナダ側も日本のカナダ研究にお金を出すというような約束がございまして、今後とも私たちとしてはカナダ関係をより多角的な面で発展さしていきたいというふうに考えております。
  259. 山田勇

    ○山田勇君 ありがとうございました。
  260. 秦野章

    委員長秦野章君) 本日はこの程度としまして、散会をいたします。    午後四時二十九分散会      —————・—————