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1980-11-19 第93回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十一月十九日(水曜日)    午前十時十七分開会     —————————————    委員異動  十一月十四日     辞任         補欠選任      三治 重信君     小西 博行君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         太田 淳夫君     理 事                 後藤 正夫君                 林  寛子君                 八百板 正君                 塩出 啓典君     委 員                 岩上 二郎君                 長田 裕二君                 片山 正英君                 上條 勝久君                 源田  実君                 鈴木 正一君                 鍋島 直紹君                 長谷川 信君                 松前 達郎君                 吉田 正雄君                 佐藤 昭夫君                 小西 博行君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 一郎君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      下邨 昭三君        科学技術庁原子        力局長      石渡 鷹雄君        科学技術庁原子        力安全局長    赤羽 信久君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        運輸省船舶局首        席船舶検査官   新藤 卓治君        運輸省船舶技術        研究所長     佐伯 宗治君    参考人        日本原子力船開        発事業団理事長  野村 一彦君        日本原子力船開        発事業団専務理        事        倉本 昌昭君        日本原子力船開        発事業団理事   野沢 俊弥君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十四日、三治重信君が委員を辞任され、その補欠として小西博行君が選任されました。     —————————————
  3. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 松前達郎

    松前達郎君 原子力船関連して若干の質問を申し上げたいと思うんですが、まず最初長官にちょっとお伺いしたいことがありますが、長官、わりと本音といいますか、たとえば閣議あたり本音をときどき出されて、靖国神社の問題とかいろいろやっておられるというのを報道で聞いておりますけれども、それはまた別にして、この原子力船そのものがどうも長い間かかって、今日のような状況になってきているわけなんですが、はっきり言うと原子力行政落とし子みたいな感じもないではないと私は思うんですよ。そういうふうなことから厄介者みたいな感じもしないことはないと思いますが、ちょっと長官本音をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  5. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 原子力船に取り組んだ背景というものは、これは必然性があったんだろうと思います。ただ、その途中で思わぬ故障が起きた、その結果、母港の問題、修理問題等、非常にこじれてきている、厄介な問題になっているということは事実でございます。何とかこのこじれを正常なものにしたいと、こう思って私なりに努力しているということでございます。
  6. 松前達郎

    松前達郎君 厄介な問題、確かにそのとおりだと思うんですけれども、数々の今後また解決しなきゃならない問題等も含んで、将来の展望というものをやはり立ておかなきゃいけないんじゃないか。やるからには、やはりそういった展望がないと信頼感国民から得ることができない、こういうふうな感じを持っておるわけです。  そこで、きょうは最初にお伺いしたいのは、「むつ」の研究開発計画についてでありますけれども、私自身もかつて研究所にしばらくおった経験もありますが、やはり研究開発そのもの進め方というものに基本的なパターンがあるんじゃないか。たとえば基礎的な研究から、さらにそれを積み重ねた上で開発に移っていくという段階、こういったものを踏んでやはり行っていかないと、往往にして初歩的なミスですとか、あるいは思いがけない問題がそこに出てくるんじゃなかろうかと、こういうふうに思っておるわけです。ですから、そういう意味で、原子力について以前に本委員会でもその点をずいぶん質問もし、強調もしておいたわけですが、やはり今後の「むつ」の開発計画、いままでのは大体経過としてこの委員会ですでに皆さん質問されておりますけれども、今後の計画等について一体どういうふうな開発プランを持っておられるか。  これはどうしてこんなことを言うかといいますと、「むつそのものを一体どこまでやるのか、研究開発をどの辺までやって、どこでどういうふうに、たとえば最後に「むつ」の研究開発計画を終了したという段階まで見通しが立っていて、それを説明しませんとなかなか納得いかないんじゃなかろうか。いつ、どうなるのかさっぱりわからぬというのが現在までの開発状況だろう。いろんな外的要因があったかもしれませんけれども、そういった今後の開発計画等について「むつ」が最終的に任務を終了するまでの計画について立っていると思いますので、それについて御説明いただきたいと思います。
  7. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 御説明申し上げます。  「むつそのものについての研究計画というお尋ねかと存じますが、まず政府といたしましては、本年の四月十一日付の原子力委員会決定をベースに考えているわけでございます。その決定内容は次のとおりでございます。すなわち「原子力船研究開発を進めるにあたっては、実際の運航状態における舶用炉挙動等原子力船運航することによって得られるデータ経験が不可欠である」ということでございまして、このような観点からいたしまして、原子力船むつ」につきましては、所要の修理、点検を行った上で、できるだけ早く運航状態における原子炉挙動等に関するデータ経験を取得できるようにいたしまして、それを新たに着手することといたしております船舶用原子炉研究開発にフィードバックさせるということが基本的な考え方でございます。この考え方を基本にいたしまして、今後の原子力船研究開発の進展を図っていきたいということで考えております。  それでは長期的にどんなことになるのかということでございますが、この点に関しましては、昨年約一カ年をかけまして、今後のわが国におきます原子力船研究開発進め方を御審議いただいたわけでございます。すなわち、原子力委員会に設けられました原子力船研究開発専門部会というところで一つ結論に達したわけでございます。  その一部、結論の部分を申し上げますと、「むつ」の炉心その他についての改良研究を進め、その成果を、現在装荷されている一次炉心燃焼後の「むつ」に適用することによって、より一層有効なデータを得るように努めることが、「むつ」の最大限の活用を図るという観点から非常に効果的であるという御提案をいただいているわけでございまして、私どもといたしましては、当面「むつ開発を一日も早く軌道に乗せるべく努力中でございます。  炉心についての調査研究もじみちに続けていくことにしておりまして、原子力船むつ」の運航試験が行われまして、データあるいは経験の蓄積が行える段階に至りましたならば、それまでの成果を踏まえて「むつ」の炉心につきましても改良研究を進める。そして、改良炉心を「むつ」に装荷いたしまして、さらに次の運航試験を重ねるということを考えております。そういうことによりまして原子力船むつ」を最大限に活用していくということを考えているわけでございます。そして「むつ」を実験船といたしまして最後まで活用すると。その任務を終わるまで「むつ」という船の一生を研究の対象にしていくんだと、こういう考え方で進めているということでございます。
  8. 松前達郎

    松前達郎君 いま主に御説明あったのは、原子炉そのもの、「むつ」に積んである舶用炉そのものについての細かい研究開発計画だというふうに私理解していいだろうと思いますが、「むつ」の一生について今後その研究開発をやっていくんだということですが、そうしますと、最終的にはいろいろなテストを行った結果、「むつ」が外洋に出て運航をし、そしてある程度運航そのものも含めた成果が出ませんと、「むつ」という船としての機能、そういうものに対する研究は終了しないと私は思うんですね。そういった計画については、そこまで立っているんじゃなかろうかと思うんですが、その点いかがですか。
  9. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 「むつ」につきまして一応まず最初段階といたしまして、本船が完成いたしますと、いわゆる出力上昇試験という段階があるわけでございますが、この出力上昇試験段階におきましては、まず最初は、いわゆる臨界と申しますか、原子炉が実際動き出すということの時点におきまして、この核物理的と申しますか、炉物理的と申しますか、これに関連をした各種試験実験等を行うわけでございます。  さらに、出力を徐々に上げてまいりまして、反応度係数測定でございますとか、あと原子炉冷却系、あるいは核加熱試験、それから自然循環試験等いろいろなものもやってまいります。また、この過程でやはり遮蔽の効果がどの程度上がっておるかというような点についての試験も当然やっていくわけでございます。それぞれ出力を出していきますに応じて、だんだん安全性と申しますか、出力に対応した試験出力がある程度出てまいりますと船の面で非常に特有でございます負荷変動試験とか、そういうようなものをずっとやってまいりまして、一〇〇%の出力まで一応やりまして、いよいよ一〇〇%の試験原子力船として完成をし、一〇〇%の出力で長時間運航と申しますか、所定のスピードが出たか出ないかという点等についての試験を一応やるわけでございます。この出力試験一〇〇%まで終わりますと、ただいまの速力試験からあるいは航続試験、さらには後進試験惰力試験等、いわゆる普通の船として必要な試験などを一応終わるわけでございます。  さらに、これらの試験が終わりますと、いよいよ実験航海に入るわけでございますけれども、この実験航海の第一段階と申しますのは、やはり船の操船に慣熟するための運転ということで、まず第一段階慣熟運転というような形で、この時点では原子炉の起動から出力上昇試験、あるいは原子炉基底負荷運転、それから原子炉停止等についての問題、また、原子炉の緊急時についての操練、この操作をどういうぐあいにやるかというようなことについてのいろいろな試験、あるいは訓練とまでいきませんけれども、どういう訓練をしたらいいかというようなことについてのいろんなデータをとったりするようなことをやるわけでございます。  それで、この慣熟運転という時点がございまして、この中におきましてもそれぞれ実験項目というものを決めておりまして、たとえば主蒸気管系タービン入り口、それから高低圧タービン間の湿分分離器の脱湿効果でございますとか、あるいは一次冷却水放射線分解ガス並びに放射性ガス発生量測定でございますとか、あるいは気体フィルター除去効率測定でございますとか、こういった各種実験をやる予定にいたしておるわけでございます。  さらにこれが終わりますと、性能確認のためのいわゆる実験航海というものに出ていくわけでございますが、この航海過程におきまして、これも何回か当然やっていくわけでございます。これらにつきましても、それぞれ実験航海過程におきましてどういうような実験をやっていくかということにつきましては、一応その計画を立てておりまして、これにつきましても、航海の際の海の状況等に応じまして、航海過程中においてこのプラントの運転限界がどの程度であるかというような試験から、炉の出力分布測定でありますとか、炉心反応度測定とか、タービンのヒートバランスでございますとか、いわゆる原子力船として在来の船と違ったと申しますか、原子力船としての特性がどういうぐあいになっておるかというような点につきましての研究項目を、それぞれの段階でやることにいたしております。また、これらの実験自身も一航海で終わるもの、また数航海行ってそのデータをとる必要があるもの、そういうようなものに分けて一応考えております。  さらにまた、この航海が二年ぐらい終わりますと、今度は燃料交換というような問題が出てまいります。この燃料交換につきましても、燃料交換のやり方といいますか、燃料交換の際にやはりいろいろな実際の体験と申しますか実験的な操作、またその交換を行う際のいろいろ問題点検討等というようなことも出てまいります。またさらに燃料交換、新しい燃料をその時点で入れるということになりますと、燃料交換そのものの場合には運転をしておりますので、使用済み燃料が非常に放射能の高いといいますか、ホットな状態になっておりますので、これらに関連したいろいろな対応というものも考えなければなりませんし、また燃料交換そのものをやりますと、今度は陸上付帯施設でこの使用済み燃料を受け取る、またさらにそれの貯蔵の問題、それからまた、その後この使用済み燃料を再処理工場へ運ぶというような、一連原子力船運航関連いたしました各種技術的な問題も出てまいりますし、また、原子力船運航する上におきましてどういうような問題が出てくるか、これも原子力船燃料サイクルの問題というようなことが出てまいります。  また、オット・ハーンサバンナ等では、大体八年から十年ぐらい、大体炉心を第二次炉心まで運航をいたしておるわけでございますが、その後の時点において廃炉と申しますか、ディコミッショニングと言っておりますが、これにつきましても現在オット・ハーンの方ではどのような廃炉技術について検討するかということを進めておりますが、私どもの方もそれが一応終わりましたら、この「むつ」の廃炉の問題、さらに、それが将来の舶用炉について、廃炉するためにはどのような設計にしておいた方が将来非常に有利であるか、また便利であるか、問題がないかというような点についての検討もやりながら、この点についての研究開発という角度から、常にそういった技術検討というものを進めていく計画でおるわけでございます。
  10. 松前達郎

    松前達郎君 まあ大分細かくいま説明いただいて、大体そんな内容のものが予測はされておったわけです。私自身もそれぐらい予測しておりましたが、その程度だと思いますが、問題は、大体項目はほとんど挙がってるんじゃないかと思いますけれどもタイムスケジュールなんですね、問題は。国民は恐らくそのタイムスケジュールというのが非常に知りたいんじゃないか。内容的に幾ら説明しても、細かい技術的な問題は余り理解できない。ですから、一体いつまでやるのかということですね。たとえば、さっきお話ありました廃炉、これにしましても、原子炉寿命の問題もありましょうし、それから船としての寿命といいますか、一応定められている寿命、その問題もあるでしょう。したがって、出力上昇試験を始め、さらに臨界に達して、いよいよじゃあそれを推進力として使っていくというふうな、さらに航海に出ていっていろんなデータをとっていく、こういうふうなことなんですが、そのスケジュールですね、一体いつまでかかるのかということです。それで、タイムスケジュールをひとつお知らせいただきたい。
  11. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 私どもといたしましては、大体、出力上昇試験を始めますまでの機能試験と申しますか、これまあ約一年ぐらいを考えておるわけでございますが、その後、出力上昇試験につきましても、順調にこれを取り運ぶことができますればこれも大体一年、約一年近くを費やしてやりたいというぐあいに考えておるわけでございます。またさらに、それに引き続きまして実験航海に移るわけでございますけれども、この実験航海につきましてはまあ第一期、第二期というぐあいに考えておりますが、現在まだ具体的なスケジュール等についてはこれから検討いたすわけでございますが、前回時点において考えておりますのは、実験航海も第一期、第二期というぐあいに考えておりまして、大体まあ第一期の実験航海、これも約一年から二年足らずぐらいをかけてやはりやる形ではなかろうかとただいま考えておりますが、さらにその経過を見まして実験航海の第二期というぐあいに進んでまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  12. 松前達郎

    松前達郎君 第一次が一年、二年、その前に出力上昇試験一年、こういうことですね。  第二次がやっぱり一年ぐらいかかるんですか、それとももっと簡単に済まそうということになっておりますか。これはいろいろ第一次の結果によって再確認しなきゃならぬことなど出てくるかと思いますが、大体の見当はいかがか。  それと、さらに今度は訓練、これは実験航海中に訓練もあわせてやっていくのかどうかですね。あるいは性能確認航海というのをおっしゃったんですが、これはやはり実験航海の中に含まれるのかどうか。そして、最終的に大体予測される項目についてのデータがとり終わるというのは一体いつごろなのかということですね。ということは、この法案の中にもありますように、研究船として今後何年かたった後には併合していくというふうに出ておりますね。そうすると、法案内容がそのまま通れば、途中でそういう変換が行われるわけですね。ですから、そういうとき一体どういうふうになるのかというふうな問題もあると思います。そういう点で、最終的なできましたら燃料交換廃炉までのタイムスケジュール、これが大体めどがついているんじゃないかと思いますが、それについていかがでしょうか。
  13. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) ただいま先生のお話ございました運転訓練につきましては、出力上昇試験の間も、それからまた実験航海に入りましても、その間において乗組員訓練は並行して進めていきたいというぐあいに考えておるわけでございます。  それから、いわゆる航行についての性能試験と申しますのは、まず最初は、いわゆる運航になれるための慣熟運航というものを最初段階ではやるわけでございますが、その時点では、やはりなれるためにと申しますか慣熟と、それからその間、先ほど申し上げたようないろいろな試験等をやりながら進めるわけでございますが、これが一応終わりました時点で、いわゆる実験航海と申しますか、いわゆる船をある期間にわたって運航をしていくという面で、その運航中にいろいろな海象気象に遭遇する、その際に船としてそれらにどれぐらい対応できるかというような点について、いろいろな本船性能確認をしていこうということでございます。  それからまた、この実験航海期間というのを大体何年ぐらいと申しますのは、これは燃料を取りかえると申しますか、一次燃料でやる期間を第一期の実験航海、それから燃料を取りかえて新しい燃料で次の試験へ移っていくということでございまして、この燃料自身につきましては、現在の「むつ」の燃料では、全出力で走りますと、約二年は十分もつわけでございますが、燃料交換等につきましても、燃料交換といいますのは一つの大きな経験等でございますので、これには相当の時間がかかるんではなかろうかと、オット・ハーンの場合には燃料交換で約半年近くは費やしておりますので、第一回の実験航海終わりました時点で、やはり燃料交換には相当の時間をかけていかなければいけないというぐあいに考えております。それでその期間に、第一期の実験航海につきましてのいろいろな解析、反省、また実験航海と申しましても、航海をいたします海域によりまして海象気象等は非常に変わってまいりますので、まだこの辺については具体的に計画を立てておりませんけれども、第一期の実験航海を一応太平洋のある区域で考えてまいりますれば、その次の実験航海ではまた別の海域等でこれを行うというようなことに相なるのではなかろうかというぐあいに思っております。
  14. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、いまおっしゃったのをまとめてみますと、出力上昇試験に着手をしてから出力上昇試験を行う期間が約一年、さらにそれが終わりまして直ちに実験航海に入るのですね。これが長くて二年、そして二年たてば燃料交換の時期が来るから、母港に帰って燃料交換をする、そしてさらに第二期の実験航海を行うのだと、こういうことになります。そうしますと三・五年ですね、三年半が第一次の実験航海終了までの大体のめど期間である、こういうことになろうと思うんですね。その出力上昇試験が行われるのが恐らく来年以降だと思うんですが、そうなりますといまから四年半から五年後に燃料交換に入るということになりますね。ちょうどそのころ、この法案の一番最後に出ておりますのが六十年で移行するということになりますから、その辺との兼ね合いがどういうふうになるのかということをちょっと心配をいたしておるわけです。  さらに第二次の実験航海、これは恐らく船としての性能の総合的な確認じゃないかと私は思うんですが、そういう航海を行いながら、原子力船としての最終的なデータを集めようということだろうと私は想像するんですけれども、これが果たしてどのくらいか、たとえば二年ぐらいをかけるということになると、さらに追加されて二年が加算されてくる。また同時に、その後放射性物質が出てくる廃棄の問題も後でお伺いしますけれども、そういったようなものの処理についてはこれは並行してできると思いますから、実験航海期間にできるんじゃないかと、かように思っておりますが、トータルいたしまして出力上昇試験が開始されてから大体五年から七年、ちょっと大幅ですけれども、そのぐらいの間で原子力船としての性能確認を行い、一連研究開発を終了するんだ、一応ピリオドを打つんだと、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  15. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 大体原子力船としての一通りのいろいろなデータ等につきましては、実験航海第一期をやりまして燃料交換経験を積むというところで、大体一通りのデータというものはとれるのではなかろうかと思います。  第二期等につきましては、さらにその後必要と思われるようなものについてのデータ、こういうこともやってみたいというようなことがあれば、それが追加されるということになるわけでございますが、大体うまくいきまして次の第二船または将来の船の設計に対して反映できるものについての必要なものといいますのは、大体第一期の後の燃料交換第一回まで行えば、ほとんど大半のものはそこまでに得られるんではなかろうかというぐあいに思います。したがいまして、そういった点から申しますと、ただいま先生のおっしゃいましたように、出力上昇試験から実験航海等を含めますと、この船が完成いたしましてから大体四年ないし五年ぐらいはかかるんではなかろうかと思っております。  それから統合との関連でございますけれども、私どもといたしましては「むつ開発そのもの統合先の機関に研究経過またその実績等持っていき、これをそのまま引き継いでいくということになるわけでございますので、その点については特に問題はないのではなかろうかというぐあいに思っております。
  16. 松前達郎

    松前達郎君 こういうことをなぜくどくどお伺いするかといいますと、いままでも開発に着手してから大分いろいろな問題があって、計画がどうも時期的におくれてきている。しかも現状況でもなかなか明快な将来計画が、時間的な面では立ちそうもない状況も見られる。こういうことで一体いつになったら終わるんだろうかという、そういったような疑問が当然国民の間にあるんじゃないか。ですから、やはりこういうことをやるときには一つ計画研究開発そのものスケジュールというのは一応立てて、こういうスケジュールでこの辺になったら成果が出るんだということがはっきり打ち出されておりませんと、何かいつまでたってもできないじゃないかとか、あるいはできないんだったらもうやめてしまえとか、いろいろな議論が出てくるわけなんですね。そうしてしかも、どこまで一体金を投入したらいいのかという問題もここに出てくるわけなんで、そういうことを心配するものですから、いまのタイムスケジュールというのが大体どの程度になっているか、これは国民の前にある程度公表した方がぼくはいいと思う。公表というよりも発表して、やるからにはそういう計画でやるんだということをやった方が私はいいんじゃないかと思う。ですから、たとえば定係港の問題一つにしましても、いつまでもとにかくそこにいるのか、あるいはここまでたったらこうやるんだという将来見通しがあってその議論をするのか、その辺で議論の仕方も変わってくるんじゃないか、こういうふうに私は思っておるわけなんです。そういう意味でいま御質問申し上げたわけなんです。廃炉、これは何も舶用炉だけじゃなくて、陸上にあります原発用の原子炉廃炉問題も、まだまだこれから先の問題として非常に重要な問題だと思いますが、その辺まである程度見通しを立ててひとつやっていただきたいという気持ちがあるわけであります。  そこで、ちょっといまの計画とはまた違いますが、いままでの問題、これからの問題いまお伺いしましたが、いままでの問題で、冒頭に申し上げましたようにRアンドDといいますか、いわゆるリサーチとデベロップの問題でありますけれども、やはりこういった新しいものをやるときに、ただ単に船をつくってしまえばいいんだ、そういうふうな考えから開発ということ、これを主体にして建造を行ってきた。これは法案を見ても、今度新しい改正案のときには研究というのが入っているんですね。前は入っていなかったんです。そういうことに気がついて研究を入れたのかどうか知りませんが、あるいは整理統合の都合上研究を入れたのかどうか知りませんが、しかしやはり順序、手順というのがあるんじゃなかろうか、こういうふうに思うんですが、過去のいままでの進め方について研究、それからさらに、その蓄積による開発という問題、これについて私は、どうも順序が逆だったんじゃなかろうかというふうな感じを持っているんですか、それについてどういうふうにお考えでしょうか。
  17. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 先生の御指摘でございますけれども、「むつ」の開発につきましてはその当時の時点に話が戻るわけでございますけれども、「むつ開発に先立ちまして運輸省の運輸技術研究所、これは当時の名称でございます、におきまして舶用炉の動揺あるいは振動に関する研究、これは三十三年から三十九年まで継続されました。また、民間におきましても、日本原子力船研究協会におきまして原子力船における外力の原子炉に及ぼす研究といったような基礎的な研究が行われているわけでございます。また、建造を決意いたしました昭和三十八年当時、政府といたしましてはこれらの基礎的研究あるいは陸上炉におきます知見等を総合いたしまして、当時の判断として今後は実船の設計と建造を通じて開発を進める、そういう時期に達したんだという判断を下しまして、原子力船むつ」の開発、実際には建造に着手をしたということでございます。この「むつ」の設計あるいは製作に当たりましては、原船事業団が中心になりまして原研あるいは船舶技術研究所の協力を得ながら、臨界実験あるいは遮蔽効果実験等実験研究をあわせ行いまして、    〔委員長退席、理事八百板正君着席〕 着実に当時といたしましては開発を進めたというふうに理解をしているわけでございます。ただ、不運にいたしまして、遮蔽に関しましての技術的な知見が当時乏しかったということもございまして、当時高速中性子のストリーミング現象についての知見が十分でなかったということ、また実験段階でその徴候が予測されたという事実があるようでございますが、その実験の結果に対するいま一段の配慮が欠けていたということもあったわけでございます。その点については大いに反省をしなければならないと考えているわけでございます。  今後の進め方につきまして、そういうことも踏まえ、また原子力船の経済性がより一層厳しく追求されているということも踏まえまして、「むつ」の開発を続け、そのデータあるいは経験を十分反映させながら、一方、次の時代を考えましての新しい経済性にすぐれた舶用炉開発していくという、そういう計画を踏まえまして、今回御提案申し上げ御審議いただいております法案につきましては、そういう面での研究もあわせ行うんだという趣旨で、研究という字を入れさせていただいているわけでございまして、そのように御理解をちょうだいしたいと存じます。
  18. 松前達郎

    松前達郎君 「むつ」の開発に関する当時の状況というのはもう何回もお伺いしておるわけなんですが、私が申し上げているのは、そういうふうな計画に対する一つの動きといいますか、手順というのは確かに行われたかもしれませんけれども、    〔理事八百板正君退席、委員長着席〕 それを実証しながら少しずつ積み上げていくということ、これがなかなか行われていないんじゃないか。そういうことで申し上げたので、もっと具体的に言いますと、いままだ原子力船そのもの試験には入っていないんですね。原子炉そのものの問題でトラブっているわけです。ですから、原子炉そのものが原因であって、推進のための動力発生のところが問題になっているわけですから、船自身がどうであるというのはまだわかっていない。こういうことなんで、動揺とか振動の研究といっても、これは恐らくシミュレーションだけでしょう。ですから、計算上の問題だけであって実証されてはいない。そういうことから、やはり私が申し上げたリサーチとデベロップメントの間に、いわゆる動力としての舶用炉をテストしてから船に装荷するという段取りが必要だったんだろうと私は前から申し上げている。  これ、運輸省にお伺いしますけれども、たとえば船を設計してディーゼル機関を試験するとき、船に乗っけてから試験するんですか。そうじゃないでしょう、どうでしょうか。
  19. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 通常の場合におきましては、陸上で試運転をしまして、それから船に搭載するという手順になっておるわけでございます。
  20. 松前達郎

    松前達郎君 たとえばディーゼルも高速ディーゼルいろいろあると思いますが、そういうものでも相当これは完成された技術だというふうに思うんですけれども、そういうものでもやはり一応テストするわけですね。ですから、やはり私は今後こういったような開発研究を行う場合の手順としては、やはり原子炉そのものが初めての経験なわけですから、幾ら軽水炉の技術があるといっても、ただそれを小型化しただけでは済まない。特にこういうふうな核反応を使うような場合ですと、小型化すればするほどむずかしくなるということでしょうから、やはり陸上である程度実験成果を得てから確信を持って船へ搭載する。そうしますと、わりといまさっき申し上げたようなリークのことだとか、いろんな問題を船に乗っかってから、がたがたやるよりも陸上の方が処置しやすいし、そういう面で研究の手順というのがいま申し上げた手順で行われるべきだったんだろうと、これはいまから言ってももとへ戻りませんのでとやかく申し上げたくはないんですが、しかし考え方としてそういうふうにやったらいいんじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。開発スケジュールの中で、非常に計画的に行われた一つの総合プランのもとに行われているというのもある程度理解できるんですか、残念ながらいまのところまだ、エンジンを乗せて、そのエンジンを始動してない状況でありますので、これから先、長い時間かかってエンジンが始動され、しかもその性能確認され、船全体としての、原子力船としてのデータがとれる、これにまた相当の時間がかかるわけなんです。ですから、そういう意味で最初の手順というのがちょっと違ったために、大分ロスをしたんじゃなかろうかと私は思っておるわけです。開発を急ぐ気持ちはわかりますけれども、しかし世界各国が開発されてからもうすでに十年もたっている、それに乗りおくれまいという、いわゆるメンツの問題もあろうと思いますけれども、今後ひとつその点は参考としてお聞きおきいただければというふうに思います。  そこで、さっきちょっとおっしゃいましたが、将来この原子力船むつ」の後、さらに原子力船に対する開発研究を続行するのかどうか。どういうことかといいますと、新しい原子力船設計、製造をする計画はあるのか。その場合、それじゃいま申し上げたような手順に従って、たとえば小型の高出力舶用炉開発というものを別途やる計画があるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  21. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 新しい次の時代の舶用炉というものを考えておるかという御質問でございます。私どもそれを考えてまいりたいというふうに思っておりまして、この点につきましても、先ほど触れました原子力船研究開発専門部会で昨年約一年をかけまして審議をしていただいたわけでございますが、その結論の骨子を申し上げさしていただきますと、まず「むつ」につきましては、経済性に力点を置いて設計あるいは建造されたものではないということでございますので、今後は次の舶用炉といたしましては、在来船と経済的に十分競合し得る新しいタイプの舶用炉開発を考えてまいりたいと思っているわけでございます。  そのための計画といたしましては、いまのところ三段階に分けて具体化していくことが妥当であろうと、こう考えております。それをちょっと触れさせていただきますと、まず第一段階といたしましては、開発の対象となります改良舶用炉と呼ばせていただきますが、そういう新しい次の時代の舶用炉設計研究あるいは解析研究を進めまして、新しい次の炉の概念を確立するという第一段階。第二段階といたしましては、この概念に基づきまして改良舶用原型炉の基本設計並びに関連機器の特性試験を行ってまいりたい。第三段階といたしましては、この改良舶用原型炉の建設、運転試験を行ってまいりたい、こういう手順を考えているわけでございます。そういうことで、三つの段階を経まして次の時代の舶用炉研究開発を進めてまいりたいと、このように考えている次第でございます。
  22. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、これはもう陸上でやられるわけですね。
  23. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) まあ三段階と申しましたが、先生御指摘の時点は、その第三段階目の原型炉をつくって、いきなり船に載せるんだという議論もないわけではございませんか、いままでの経験から徴しましてそういうことになるであろうというふうに想像はしているわけでございます。
  24. 松前達郎

    松前達郎君 それが普通のやり方だと思うんですね。たとえば増殖炉にしても、みんないま新しい技術のやり方というのは必ず原型炉をつくるという手順を追っておるわけですから、いまおっしゃいました開発の手順というのは、私はそれが正しいんじゃなかろうかと、かように思っておるわけであります。  そこで、この前参考人の方に来ていただいて、いろいろと参考人の方々の考え方等もお伺いいたしたんですけれども、その参考人の方々の御発言の中から私多少疑問になった点をいままで質問をさしていただいたんです。開発計画が不明である、そういうふうな意見もありました、これは船及び舶用炉に関してですね。それから国産技術開発に明確な方針がない、そういうことも言われておるわけですね。  それからもう一つは、事業団の持つ欠点ですね。事業団というのは期間的にもある程度限定された一つの寄り集まりというふうに考えていいと思うんですが、そうなるとなかなか本腰入れてやるにも、本心は本腰入れにくい面もあろうと思いますが、事業団の持つ欠点、こういう点をある参考人が挙げられたわけなんですが、さっきそれに従って、そういう意見があったものですから、開発計画についてお伺いし、さらに国産技術開発に明確な方針がない、これはいま新しい舶用炉として今後開発をする、するかどうかは別として、するつもりであるとという御希望があったわけです。これが国産技術開発の明確な方針がないということである程度のお答えを与えるんじゃなかろうか。  そして三番目に、いま申し上げた事業団の持つ欠点というやつ、まあ開発に対して完全に長期的な取り組み方でやろうというときには、なかなか事業団というのはやりにくい面もあろうと思います。恐らく人材そのものも、初めから事業団ということで来てもらって、ずっと将来もそこに残ってやっていただくんだということではなさそうですから、どうも寄せ集め的なことなんで、この辺よっぽどうまくやりませんと、また原子力開発についてどっかでそごを来す。これちょっとそごを来しますとまた物すごい時間がかかってしまうわけですね。急がば回れというようなかっこうになりかねないんで、その点も今後十分考えていただきたい、かように思うわけです。  ですからこの法案で、第二条の附則のところにございますように、「昭和六十年三月三十一日までに事業団を他の原子力関係機関と統合する」、そういうふうなこと、これは本来、いま私が申し上げたような研究開発に本腰を入れてやるようなところに移していくんだというふうに解釈していいのか。それとも行政機関の整理統合として、チープガバメントの対象としてこれが選ばれたのか。その辺どういうふうに考えたらいいでしょうか。
  25. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 非常にその時点におきましてわれわれも判断に悩んだ点でございますけれども、まず事業団の体質という御指摘がございましたが、確かに限時的な性格のもとに人材の定着を求めるということは、事業団なりにいろいろ努力はしたわけでございますが、結論的に不可能ということでございます。いついつまでになくなるという組織に、一生研究開発に力を注ごうという人材が定着するということを考える方が無理であるわけでございまして、現実に事業団の技術陣の約八割が出向人事であるという現実は、なかなかこれを改善できないで今日まで至ったわけでございます。そういう意味で、将来とも原子力船研究開発を続けていこうという前提のもとに考えますと、どうしても恒久的な機関でそういう技術者、研究者を養成する、あるいは研究活動に従事していただくということで、そういう体制をとりませんと現実に不可能であるということからいたしまして、この昭和六十年三月三十一日までに他の恒久的な原子力関係機関と統合するということにしたわけでございます。  もちろん、その判断のもう一つの要素といたしまして、政府の行政機構の簡素化という判断もあったことは事実でございます。
  26. 松前達郎

    松前達郎君 そうですね、二条の最初の方に、簡素化及び効率化ということですから、そういうことになろうと思うんですか、そうしますと、これもまた参考人からの意見を伺ったときに出てきたんですけれども、他の原子力機関というのは一体どこを指すんでしょうか。
  27. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 行政機構の改革という観点からは、昨年十二月二十八日の閣議決定がございまして、この日本原子力船開発事業団につきましては、昭和五十九年度末までに科学技術庁主管の他の原子力関係機関と統合するものとするというふうに決められているわけでございまして、そういう意味では選択の幅は非常に狭いわけでございます。  当庁主管の他の原子力関係機関といたしましては、日本原子力研究所と動力炉・核燃料開発事業団の二つしかないわけでございます。
  28. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと両方にばらばらにして統合するというのか。原研なのか、動燃なのか、どっちですか。
  29. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 先ほど申し上げました原子力船研究開発の継続性という観点から、これをばらすということは考えておりません。したがいまして、どちらかに統合を考えるかということでございますけれども、いまの時点ではそのどちらということに決める検討に入っていない状態でございます。
  30. 松前達郎

    松前達郎君 参考人の方で原研からおいでになった方おられますね。その方が原研の方針を決めるわけではありませんけれども、原研に働いている職員の代表みたいな方ですから、原子力研究所でそういうものを扱えというのなら原子炉そのもの開発、これについてはいまプロジェクトとしてはこういった小型舶用炉がないと、設定するならばそういうのを早く設定しておかなきゃまずいんじゃないかというふうなこともおっしゃっておる。必ずしもそれを受け入れるのは反対であるという意見ではなかったように私は記憶いたしておるわけですが、動燃になるとちょっとまた内容が違いますね。動燃というと、もっぱらいま海外でもってあっちこっち探査をしてオーストラリアとかアフリカとか、要するに核燃料の原鉱石ですか、それを探して歩いているような仕事もやっているし、それからそのほかもあると思いますが、多少性格が違うんじゃなかろうか。そうするとやっぱり原研じゃないかというふうな感じがするんですね。そのときに今度船をじゃあ一体どこが管理運営するかという問題ですね。もちろん統合したところに、そういうセクションができて船を管理運営、運営といいますか試験を続行するということになるんじゃないかと思うんですが、さっき私がタイムスケジュールをお聞きした中では、どうも統合時期がタイムスケジュールの中にひっかかってくる、そういうふうに思うものですから、その辺のスムーズな移行というものはどういうふうに考えておられるのか。そのときになって考えりゃいいということになるかもしれませんが、そうもいかないんじゃないか。やはりいままでの原子力船に付随した行政を考えてみますときに、将来性に対する問題、将来の計画に対してある程度先々と手を打っていきませんと、そこで問題が出てくるという感じを持つものですから、その点ひとつ十分研究をしておいていただかなければならないんじゃないか、かように思っておるわけであります。  参考人の方々の御意見の中にまだいろいろとあるんです。いま申し上げたなぜ日本原子力船開発事業団が五十九年度末まで統合されなければいけないか、それがわからんとかいろいろありますけれども、その点はまた別の機会に説明でもされたらいいんじゃないかと思っております。  そこで、今度は運輸省にお伺いをしたいと思うんですが、原子力船に関して諸外国の原子力船開発、これはサバンナとかオット・ハーンとかいろいろありましたけれども、この開発というのは一応成果を見て、原子力船としての確認をした段階で一応終わっていると、そしてまた、さらに今後原子力船の建造計画をしているところもあるというように聞いておりますが、その点の状況をひとつ御説明ください。
  31. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) ただいまおっしゃいましたように一応サバンナ、オット・ハーンにつきましては実験航海としてのデータをとりまして、その段階実験航海は終わって船は係船されておるというふうに聞いております。そこで、その後のことでございますが、経済的に見て成り立っていくような舶用炉開発がどうしても必要であるということでございまして、現在の石油価格等との競争の関係で、そういった時点に至るまでしばらくそういった開発をしていこうという段階にあるんではないかというふうに聞いてございます。
  32. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、経済性を考えないでいわゆる原子力船としての性能なり何なりは一応終わったと、今後は実際の商船として経済性を考慮に入れた船を開発していこうという計画はある、こういうことだろうと思いますが、実際に建造計画はありますか。
  33. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 私どもの聞いておる範囲ではそういうことは聞いてございません。
  34. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、どうやら経済性の問題で、恐らく原子力船というのは普通の船よりも五割ぐらい高くつくんじゃないかと思うんですが、そういったようなこととか、その他の経済的なファクターからいってどうもまだ引き合わない、いままだ油が高くなる高くなるといいますけれども、最近少しずつ頭打ちになってきておりますね。そういうことで、どうも引き合わないんじゃないか、こういうふうな感じを私持っておるわけです。ですから、将来の見通しとして一九八〇年代は原子力船時代に入るという見通しがかつてはあったにもかかわらず、いまだに実験確認のところで、データを蓄積したところで終わっているというふうな感じを持つわけですが、実際にはどうなんですか、油の価格が三倍になれば引き合うわけですか。
  35. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 昨年の末に出されました原子力委員会原子力船研究開発部会の報告書で、その辺の検討をされた結果が報告されてございますが、現在の油の価格がただいまおっしゃいましたように一・五倍ないし三倍ということになれば高出力、具体的には三万馬力以上あるいは六万馬力以上という船として高い出力を要する大型高速船の分野で、経済的に見ても競争し得る状態に至るであろうというようなことを報告されておりまして、私どももそういうことであろうかと考えております。
  36. 松前達郎

    松前達郎君 そういうふうになった場合、それじゃ原子力船に切りかえよう、三万馬力以上、比較的大きな出力のものは切りかえよう。わが国の場合、そういうふうに切りかえたとしたときに、一体どのぐらいの切りかえ量になるのか、いまの全部の商船を含めてどのぐらいになるんですか。
  37. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 将来こういった高出力を要する船がどのような量を占めていくかというのは別といたしまして、現時点で見てまいりますと、現在三万馬力以上の高出力の機関を搭載しております船は約百七十隻、主としてコンテナ船、大型タンカーでございますがございます。総トン数で申し上げますと千五百八十万総トンという量でございます。これは現在のわが国の百総トン以上の全船舶の総トン数が三千八百万総トンということでございますので、四〇%ぐらいの船腹量がそういった大型船であるということでございます。これらの船舶が現在消費しております重油の量は、推定が一部分入りますわけでございますが年間約八百万トンということでございまして、わが国の商船が使っておる石油の大体三分の一程度の分野を占めておるということでございます。  なお、日本の商船隊が使っております油は現在二千八百万キロリッター程度でございまして、日本全国の消費量の約一割程度ではないかというふうに考えておるわけでございます。いま御答弁申し上げた中で三万馬力以上の船が年間使っておる油は八百万トンと申し上げましたけれども、それはキロリッターに直しますと大体八百ないし九百万キロリッターに匹敵するかと思います。
  38. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、ちょっといまおっしゃったことで言いますと、結局日本の商船隊といいますか、全体として使っている油は原子力船に三万馬力以上のものを切りかえた場合に、パーセンテージからいくと最終的には一割程度ということですか。
  39. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 全部の船が使っている中におけるパーセントは約三分の一、三〇%程度ということであるかと思います。
  40. 松前達郎

    松前達郎君 細かいことをお伺いするようですが、それは全部国内で補給する油ですか。
  41. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 船舶の場合、国内で補給をする分と、それから当然外国の港で補給する分があるわけでございますが、ただいま申し上げました油はその両方を合わせたものでございます。ちなみに、そのうち日本海運全体が使っている油は二千八百万キロリッターということでございますが、このうち国内で補給いたしますのは約一千八百万キロリッター程度というふうに考えております。
  42. 松前達郎

    松前達郎君 わかりました。  そういう状況で、日本だけの場合で見ますと、三〇%以下だということになりますね、結局。しかし、油がなくなってしまったらこれはしようがないので、そういう意味で原子力船開発というのが重要だと言われているんだろうというふうに想像しておるわけです。  それから、船の構造の問題なんですけれども、船価が約五〇%ぐらい高くつくようなことを私聞いておるんです。これは舶用炉を載せる船として特別に一般の船と違った構造が要望されているのかどうか。あるいは海難事故等も起こらないとも限らないので、そういったような船としての運航をしたときの事故、こういう問題に対して特に配慮をされて原子力船設計されているのか、その辺私全然わからないものですから教えてください。
  43. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) お答え申し上げます。  原子力船としての船体構造が特別な配慮、安全の面からどういう配慮がしてあるかというお尋ねでございますが、これは船舶安全法に基づく規則、ルールからも要求されておることでもございますけれども、一般の貨物船に比較いたしまして特に衝突、座礁、浸水——これは海水が破れたりして入ってくることがございます。浸水、火災等の要因につきまして配慮してございます。  具体的に申し上げますと、まず衝突につきましては、原子炉室及びその隣の原子炉補機室の両側が舷側からそれぞれ三メートルをボイドスペース、空所にいたしまして、ここに上から七層の甲板を設け、ほかの船が衝突してまいりました場合の衝突エネルギーを、こういった構造をもって吸収してしまうという耐衝突構造をとってございます。  次に、座礁につきましては船底を二重底にいたしまして、その中に十分な格子構造を組み組んでございまして、座礁に十分耐えるという構造をとってございます。  浸水につきましては、船内を前から後ろまで十の区画に分割いたしまして、そこに水密の隔壁を設けてございます。したがいまして、それで計算上隣り合ったその二つの区画にたとえ水が入ってまいりましても、船が沈没しないというシビアな条件を満足するような構造をとってございます。  最後に、火災につきましては、材料等に極力不燃材料を用いておりますほか、船内を防火構造という観点から四つの区画に分割いたしまして、一カ所で火災が発生いたしましても、他の区画へ類焼することがないという構造をとっております。  その他ございますけれども、構造の面から見ました原子力船としての付加的な安全対策として主なものは以上のとおりでございます。
  44. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、そういうところでやはり船の価格が上がっていくということだと思います。一般の船舶と違っているところはいまおっしゃったようなことだと思いますが、違わないところはやはり何かあって沈没する。水の上を走っているわけですから、沈没するということも考えられないではない、こういうことがあってはいけないと思いますが。もしかそういうことがあった場合、これは何も船だけの問題じゃなくて、原子炉も含めて一体どういうことを想定できるんですかね。
  45. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 一般の場合、沈没するとそれ以上手の打ちようがないということで特に物損、いろいろな損害がありますけれども、そういうことでございますが、原子力船の場合は、御承知のように、その場合に原子炉から不当な悪影響が出てはいかぬということが絶対的な命題として与えられてございまして、沈没いたしました場合には格納容器、これは船体部ではございませんけれども、格納容器が壊れてしまってはそういった放射線等が外に出るということであろうかと思います。  そこでその対策といたしまして、格納容器には二個の圧力平衡弁というのが設けられておりまして、海水が流入いたしましたときには、すなわち沈没したときにはその格納容器が水圧で圧壊されることがないというような対策がとられてございます。
  46. 松前達郎

    松前達郎君 科学技術庁の方はそれに関して原子炉として何か想定されることはありますか。
  47. 野沢俊弥

    参考人(野沢俊弥君) 原子力船につきましては沈没時の事故対策ということを考えておりまして、大ざっぱなお話はいま検査官がおっしゃったとおりでございますけれども原子炉の事故の場合に一番大事なことは崩壊熱を十分とってあることが必要である。それから二番目に、核分裂生成物の外界への漏洩を防ぐ。この二つが一番大事なポイントでございます。  そこで、いま検査官が申しましたように、何らかの原因で沈没しました場合には、格納容器の底部に径九百ミリの圧力平衡弁というのが二つついております。これが二キロの圧力で水圧によって自然に開くことになっております。それによって格納容器の中が全部水で満たされるということになる。それによって外界と内容との圧力バランスがとれて格納容器が壊れないということが一つ。格納容器が壊れないということは、何らかの原因で一次系が漏洩しておっても格納容器の外には核分裂生成物が漏洩しないということ。  それからもう一つは、格納容器の中が満水になっておりますので、原子炉がとまった後の崩壊熱を圧力容器の周りの水によって十分冷却することが可能である。この二つでございます。
  48. 松前達郎

    松前達郎君 そういうことはあってはならないと思いますが、最近どうもタンカーがときどきぶつかって沈んだりしますから、原子力船時代が来たら必ずしも絶対にそういうことが起きないとは限らないというので、老婆心ながらお伺いしたのですけれども、海洋投棄と同じように考えていいんじゃないかという人もあるかもしれませんね。そういうふうに考えればそれっきりになりますが、しかしそういった問題も少し考えておかなければいけない。というのは、原子力の安全に関するシンポジウムというのが、これは西ドイツのハンブルグでありましたですね。そこで発表された論文、これはずっと目を通してみますと、やはりそういうことが出ているんですね。たとえば原子力船の浸水と沈没についての研究ですとか、そういった安全性の問題はもちろんありますが、船体事故の研究、そういうものが非常に数多く出ております。これはしかし動くものですから、動けば当然何らかのそういった事故も考えられないわけではないということで、そういう研究を行われているんだと思いますが、その中でもたとえば衝突のときどういうふうになるかなんというやつは出ているんですけれども、これは実際にやってみているんでしょうかね、あるいはシミュレーションだけですかね。実際やることはできないと思いますが、あるモデルをつくってやっているのかどうか。実は船舶関係の人に聞いてみましたら、船舶に関してはもっぱら計算をもとにして設計をして、すぐそれで建造にかかるんだと。土木の連中に言わせますと、橋梁の計算でも三倍ぐらいの安全率を掛ければいいとか、そういう構造上の問題ですね、これも根拠がないんです。経験上三倍ぐらいにしておけば安全だろうというのでやっているので、そんなことでどうもその辺の安全というか、運航したときの事故に対する問題、これも恐らく今後大分論議の的になる問題じゃなかろうか、あるいは研究課題になるんだろうというふうに思ったものですから質問さしていただいたわけです。  そこでさらに、これは西ドイツの船あるいはアメリカの船の例にあったというふうに伺っておりますが、たとえば原子力船がこれは商船として物を運ぶわけですから、当然瀬戸内海だけをうろうろするわけじゃありませんで、外洋に出ていくわけですね。しかも外国の港に入るということになる。その入るときにいろんな規制等が恐らく今後出てくると思うんですね。その辺についても、このシンポジウムでは述べられておるわけですが、いままでの経験からいって、西ドイツの船オット・ハーンあるいはサバンナ等が外国にすんなりと寄港できたものかどうか、その辺の情報が入っておりますか。
  49. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) お答え申し上げます。  外国船が外国の港湾に入港しようといたします場合の問題につきましては、SOLAS条約——海上における人命安全条約というのがございまして、その条約の中でそういった手続の規定がございまして、それによりますと、原子炉施設及び船舶の安全性について評価できるような安全説明書、セフティーアセスメントというものでございますが、安全説明書を原子力船が訪れようとする国の政府に十分な余裕を持って事前に提供しなければならないという手続規定がございます。したがいまして、ただいま先生おっしゃいましたサバンナ号あるいはオット・ハーン号につきましても、こういった手続を踏んだ上で外国の港に入港してきたわけでございまして、現実にはサバンナ号が二十六カ国、西ドイツのオット・ハーン号が二十二ヵ国の外国に寄港しているということを聞いております。したがいまして、その他に何か起こったら損害賠償の問題等二国間のもちろん協定等が必要なことであろうかと思いますけれども、こういった入港手続、事前に安全説明書を提出して、相手国が安全であるということを確認し、また必要な場合はそれに付加して安全なことを要求する、安全対策を要求するという処置がとられておるわけでございますが、こういった処置が決定的に外国の港に寄港する自由航行というものを阻害する要因ではないというふうに私ども思っておるわけでございます。
  50. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、たとえば外国との間に協定を結んで、それに基づいて入港していくということだというふうに解釈できるんですけれども、一々協定結ばなければいけないという不便なところあると思うんですね。そうなってくると、大分たくさんの港に入港した経験があるということになりますが、うっかりすると日本の方が入港できないような状態が、いまの状態で考えると想定できるということになりはせぬか。この辺の問題がやはりいまの原子力に関してのいろんな地域の感情からいって、そういう問題がまた一つ大きな難関になってくる、これは開発された後の話です。  そういうことで、たとえば原子力船原子力運航されるとなれば、放射性廃棄物も当然出るはずだ。まあこれレベルの高い低いあろうと思いますが、こういう問題の処理あるいは処理をしてそのまま定係港あるいは母港に持ってきて、そこでもって処分の方法を決めていくとかいろいろあると思うんですね。こういうふうな問題もやはり今後はっきりしておかなければいけない問題。  というのは、これはちょっと関連なんですが、いまちょうど科学技術庁の方でやられている海洋投棄がありますね。実はつい最近、トラック島なんですが、島から代表みたいな方が来られて、代表みたいというのはちょっと代表かどうかわからないもんですからみたいと申し上げるんですが、とにかく困った、庭先にほうり出されるような感じを持っているので、幾ら科学技術庁が来て安全だ安全だと言っても、住民はそんなレベルではないので、そういう安全ということの理解よりも先に心情的な問題の方が先行しているんだと。ですから、もしかやられるとするならやってもいいけれども、そのかわり戦没記念碑とか何とかブルドーザーで全部壊しますよとはっきり言っていきました。そういうことがあるので、これは外務委員会でも私、外務省少し何しているのだということで申し上げたんですが、そんなようなことで、やはり今度寄港問題も、これは将来の問題ですけれども、出てくるのじゃないかと思うんです。こういうふうないろいろなトラブル、トラブルというか想定される困難なことが、この原子力船開発関連して、実際の開発が終わった後も尾を引いてくるのじゃなかろうか、こういうふうに思ったもんですからちょっとお伺いをしておいたわけであります。  そこで、乗組員の養成というのがたしかあったと思います。原子力船運航に当たる乗組員の養成、これをやっておかなければいけないということですね。これに関しては現在どういうふうに行われているのか、概略でいいですから御説明をいただきたいのと、その乗組員が養成されて、たとえば「むつ」が外洋に出て実験航海をやるようなとき、これがしょっちゅうかわるようなことがないのかどうか。養成された人が責任を持ってやるのか、あるいは原子炉のプラントシュレーター訓練というのをやっておられると伺っておりますが、そういった内容について概略御説明いただきたいと思います。
  51. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 原子力船運航技術につきましては、私どもの方で乗組員訓練といたしましては、現在までにやってまいりましたのは、私どもの方がむつの事業所に持っております運転訓練用のシミュレーターを活用いたしまして、これに基づいて実際の「むつ」と全く同じ装置によっての運転訓練ということをやっておるわけでございますが、現在の乗組員は運輸省の航海訓練所及び海運会社六社から出向してきていただいておるわけでございます。  これらの方々のうち、特に機関部関係、原子炉運転を直接やっていただく方々につきましては、私どもの方の本船に乗っていただく前に原子力についての勉強をしていただくということで、私どもの方でお願いをいたしまして、日本原子力研究所原子炉研修所あるいは放射線取り扱いについての訓練ということで、原研のラジオアイソトープ研修所等におきまして、それぞれ勉強をいたしていただいておるわけでございます。特にこの機関部関係では原研の原子炉研修所では半年ないし九ヵ月ぐらいの勉強を含めて、大体一年ぐらいは事前に勉強していただいておるわけでございます。また、さらに具体的には各種の計装機器がございますので、これらの取り扱い等についてはこれらのメーカー等の持っております研究施設がございますので、そういったところ、またさらには国内の原子力発電所、電力会社の方へお願いをいたしまして、原子力発電所へ派遣をいたしまして、実地の訓練を行っていこうというような状況でございます。  また一方、航海士と申しますか、本船に乗り組んでいただく方々につきまして、こちらはやはり原子力船ということで放射線の管理技術また放射線の防護等につきましての一応勉強をしていただくということで、放射線医学総合研究所の持っております放射線防護の研修課程でございますとか、または原研のラジオアイソトープ研修所等におきまして放射線の防護あるいは管理関係についての研修を行った上で、私どもの方に出向をして本船に乗っていただいておるというような状況でございます。
  52. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、その訓練が行われた方方、ある程度訓練が完了したといいますか、ある程度訓練ができた方々を、今度は出力上昇試験のときにもやはり乗せておきませんと、この前のときみたいに、これも参考人がおっしゃっておりましたけれども、いわゆる放射線漏れ、リークがあったと、あったけれども、それに対応するべきパラフィンすらなかったし、それにどう対応していいか、それを指示する人もいなかった、いたのは新聞記者諸君の方々だけだったというふうな話がありました。やはりそういったところから乗せていただいて十分熟知をして、あるいは何かあったときに対処できるようにしておいた方がいいと私は思うんですが、その点はそういう計画はありますか。
  53. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 現在、私どもといたしましては「むつ」の維持、管理ということを中心にいたしておりますので、そのための乗組員ということで現在は三十四名体制でございますが、これは出力上昇試験になりますと、さらにこれだけでは運転ができないということで、前回運転のときには五十九名の体制で運航をいたしておったわけでございます。それで、これに関連をいたしまして、今後出力上昇試験を行いますまでに、やはり運航体制を整えていかなければならないということで、これにつきましては現在までにすでに私どもの方へ出向していただき、また二年あるいは三年という勉強をいたしてまた各社へ帰っておられる方々もおられますので、これらの方々にもまたお願いをするというようなことで、大体今後のスケジュール等につきまして、海運会社及び省の方にも状況の説明をいたし、またそのときには大体このくらいの人数で、大体どういうような資格、またそれまでにどのような訓練を実施しなければいけないというようなことで御説明もし、またそういうような方々に出向していただくべくお願いも一方でいたしておりますし、また私どもといたしましても、出力上昇試験をやるに当たりまして、やはりその前に行います機能試験段階からこれらの方々には実際に本船に乗っていただく。また一方でシミュレーター等を使っての運転訓練というものをきちんとやりまして、この体制を組んでいきたいと考えておるわけでございます。また、それぞれの方々につきましては、やはりせっかくの経験を積んでいただくということでございますので、できるだけ長い期間出向していただきたいということをお願いをいたしておるわけでございますが、各社のいろいろな御都合もあって、やはり二年あるいは三年というような出向期間になっておりますが、このメンバーの方々につきましては、やはりそれよりも長い期間にわたって船に乗っていただくということで現在までも来ておるわけでございます。また、特にこれからは出力上昇試験からさらに実験航海ということになりますと、ますますその辺の方の連係といいますか、引き継ぎ体制というものにつきまして、十分粗漏のないように考えてまいりたいと思いますし、またあわせて運転訓練ということで、実際の運航とあわせて、そういった訓練のことも考えてまいらねばと、かように考えておるわけでございます。
  54. 松前達郎

    松前達郎君 もう一つだけ、ちょっと法案関連するんですが、原子力船開発といいますか、今後の建造も含めてですが、これたしか原子力基本法、以前に改正されたときに、運輸省が許認可権を持つことになっているんじゃないかと思うんですが、それはそうだったですね。
  55. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 原子炉等規制法に関する御質問かと思いますけれども、「むつ」のような開発研究段階の炉につきましては内閣総理大臣、すなわち科学技術庁の方が規制を行っていく、それから実用舶用炉、実用原子力船ということになりましたら、おっしゃいましたように運輸大臣が行っていくということに相なっております。
  56. 松前達郎

    松前達郎君 わかりました。それじゃ長官お待たせしました。大分時間たってしまいました。  これもう何回もこの委員会で取り上げられて、長官もこういうことをお聞きすると、またかとおっしゃるかもしれませんが、これはやはり重要なことでして、最終的にこれ確認しておかなければならぬことでもあろうと思いますが、いままでは将来計画を中心にいろいろとお聞きしたんですけれども、いま現在の問題ですね。これはまたかということですが、四者協定とか五者協定の問題です。たとえば、四者協定においては二年以内にむつ母港を撤去するという約束をされている。約束をされているけれども、すでに五十二年の四月に撤去期限が来たにもかかわらず、そのままになっているというふうなことですね。あるいはもうすでに撤去、プールなんか廃棄処分するとかいろいろあったと思いますが、撤去しつつあるのか、今後それも続けていくのかという問題、これはやはりこの前も参考人の意見の中に、今後大湊を再母港化するあるいは定係港に持っていくというときに、前もってどういうことが条件になるかと言ったら撤去することであると、それがまだ完了してないんだと、この約束を完了しない以上、その次に進めないという意見もあったわけですね。やはり早急に、たとえば修理が終わったときどこへ行くかということはやっておかないといけないだろうと思いますし、その努力を恐らく長官もされているのじゃないか。冒頭に申し上げましたけれども、その辺長官の行政手腕をもってこの問題を解決しなきゃならぬのじゃないかと思いますが、その点どういうふうに進んでいますか。あるいは全然まだ見当つかないのか、いかがでしょうか。
  57. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) まず撤去という問題についてお答え申し上げます。  大湊港の定係港の施設につきましては、四者協定のお約束に従いまして、使用済み燃料交換用のキャスクを青森県外に搬出したこと。それから使用済み燃料プールを埋め立てたこと。それからクレーンのかぎを青森県知事にお預けいたしまして、実際に動かせないようにしたということが実行されております。そういうことと、それから御指摘の撤去の期限には間に合わなかったわけではございますけれども、昭和五十三年の十月十一日には「むつそのものを大湊港から出航させまして、佐世保港に回航させたということでございます。したがいまして、現在大湊港は「むつ」の母港としての機能を停止しているわけでございまして、そういう観点からは四者協定に言う定係港の撤去ということは実質的には実現されたと、こう考えることができると思っているわけでございます。  それから一方、原子炉等規制法上、原子力船原子炉設置許可は本船むつ」と付帯陸上施設、すなわち大湊港の現定係港施設を合わせて許可が行われているわけでございまして、現在でも規制法上陸上付帯施設の一部が大湊港にあるという現実がございますので、その意味では法律上の定係港ということになるわけでございます。また物理的にも若干の施設が残されているというのが実態でございます。それで、そういう意味では撤去が完了していないということになるわけであります。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、定係港としての機能が失われているという意味におきましては実質的な撤去ということができるのではないかという立場をとりたいわけでございますが、四者協定に言います定係港の撤去ということの考え方につきましては、地元の協定当事者にもいろいろお考えがあるわけでございまして、今後四者間で話し合って改めて合意を得るということが必要であろう、このように考えているわけでございます。こういう流れの中で、昭和五十三年の八月に熊谷元科学技術庁長官が青森県下におきまして「むつ」の大湊港出港後の適当な時期に定係港の撤去について四者で検討、御相談しましょうということで意見の一致を見ているという現実があるわけでございます。
  58. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 撤去についてのいきさつ、今後の見通しについてはいま局長がおっしゃったとおりでございます。要約すれば、撤去した部分もあるが撤去の約束の守れなかった点もあると。そういう段階で、新母港を決めたいと思いましてむつ以外のところもずいぶん探してみたわけでございますが、工事期間も迫ってくる来年の十月までには長崎を出なきゃならないということの時期的なことも考えまして、総合的に判断した結果、過去のいきさつその他からいって、やはりむつにもう一度お願いすることが一番適当であるというところから、もう一度再母港化についてお願いできないか、こういうことを率直に検討方をお願いしたわけでございます。そのときに、四者の方々である県知事、市長さん、漁連の皆さんには、四者協定の問題については撤去されなかった、約束が守れなかったことについてはまことに遺憾である、申しわけないということでおわびをいたしておるわけでございます。その後漁民の皆さんからは、撤去されなかったことはまことに遺憾である、そして今後の再母港化については、大事な漁場を持っておる、ホタテを生活の場としておると、この辺から再母港化には同意しかねる、こういう返事がきてございます。今後とも原子力船むつ」をしっかり研究していくためには、何としても現段階では大湊が一番適地である、こういう判断のもとにねばり強く話し合いをしてまいり、四者協定の問題は四者間でまた話し合いをしていくという方針で進めてまいりたいと思います。
  59. 松前達郎

    松前達郎君 この前参考人の方からもその問題が出たわけです。さっき私海洋投棄の問題で南方といいますか、太平洋諸島の方々がどう考えているかということを申し上げたんですが、どうも補償、お金でもって解決するとか、何らかかわるべき新しいもので解決するとかいうやり方ですね、どうもこれでは問題にならないということをおっしゃっているんですね。やはり漁民は沿岸漁業の振興という点で大いに努力をしていく、今後それに生活もかけていくんだと。ですから、ただお金を出すとかあるいはそういう補償問題だけで解決できる問題じゃないんだと、金をもらうためにごねているんじゃないということもおっしゃっていたわけなんで、その点もひとつ十分考えていただきたいと、こう思うんです。  それからもう一つ、またネックが一つあるんですね。五者協定というのがありまして、これは五十六年の十月までに修理を終えて新母港へ持っていくんだと、こういうふうな回航するという協定があるんですね。これに関して、どうも着工がおくれたから工期が短くなった、たしか以前の委員会には政府の方の答弁では三年かかるとおっしゃっていたんですね。いつの間にか二年になって、それが今度一年何カ月でというようにだんだん短縮されてきたんですが、この前、参考人に伺いますと、どうも自信がないような口ぶりでおっしゃっている。現在、「むつ」の佐世保における修理の進行状況、一体どうなってますか、工程から言って。
  60. 野村一彦

    参考人(野村一彦君) 佐世保におきまする遮蔽改修並びに安全性総点検の問題でございますが、遮蔽改修工事につきましては本年の四月に関係者による基本合意が行われまして、直ちに極低レベルタンクの据えつけ、船上仮建屋の組み立て、据えつけなどの準備工事を実施いたしました。それに引き続きまして、七月の中旬に三菱重工、三菱原子力工業、これが原子炉部を担当しておるわけでございますが、石川島播磨重工、これが船体部を担当しているわけでございますが、それぞれの会社と第一期の工事についての契約を締結いたしまして、工事にかかりました。八月中旬から格納容器内の機器及び現在つけておりますところの遮蔽体の取り外しなどの原子炉部の工事が開始をされまして、工事は順調に進みまして、十月の中旬から格納容器外の遮蔽体の取り外しなどの船体部の工事を行っておりますとともに、遮蔽体一部の据えつけなどを行っております。これらの工事はいずれもおおむね予定どおりに進行いたしておるわけでございますが、私どもとしてはこの地元五者協定に盛られておりますところの三年で工事を終了して、そして新しい定係港に回航するというお約束を守るべくいままではできるだけの工夫をこらしてまいったつもりでございますが、今後も引き続き最大限の努力をしたいということで、いませっかく工事を急いでおるところでございます。
  61. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますとこれはスケジュール、工事予定表といいますか、これをいただいているんですけれども、そのとおり大体いっているということですね。
  62. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 現在行っております工事は非常に順調に進んでおりまして、大体その予定表どおりに進んでおります。
  63. 松前達郎

    松前達郎君 大体いっているということですと、五十六年の十月末に修理完了すると、ですからひとつ行く先ですね、行く先を十分考えておいていただかなきゃいけないと思うわけであります。  私いろいろ質問させていただきましたけれども、どうも原子力船に関してはしょっぱなからいろいろな問題が出てきて、なかなかうまく進行してこなかった、こういうことになろうと思いますが、それはもっぱら船そのもの開発にかかわるものと、それからさっき協定等にあらわれておりますような問題、こういう二つの問題が重なってきて、なかなかスケジュールどおり進んでこなかったということなんですが、ここまでやって相当金もつぎ込んでいるわけですね。ですから、それに対する一つの責任というものをやはり感じてやっていただかなきゃいけないと思いますし、さっき冒頭に申し上げましたように、今後の計画というものもはっきり提示しませんと、いままでも計画性がないと言われているのに、さらにこれいつになったらどうなるかわからぬということじゃ困るわけであります。ですから、私は逆に言うと、これは廃船スケジュールだと思っているんですよ。いますぐ廃船しろとかそう言うんじゃなくて、最後の廃船に至るまでの一つ研究開発計画というものが、一連のものとし提示されるべきじゃないかというふうに思ったものですから、今後のスケジュール等もお伺いしてきたわけであります。  そこで、あと吉田委員の方からこの法案について多少の御質問ということですので、私は最後一つだけお伺いをしたいと思うのですが、これはまた非常に跳びはねた質問になるかもしれませんが、いまこれが実用化されているのはいわゆる舶用炉ですね。原子力船じゃなくて、舶用炉が艦船等には完全に実用化されている。これは経済性無視で実用化されているんですが、やはり原子力そのもの開発に対する平和利用ということが基本にあるわけですから、潜水艦とかそういうものに積めばこれは非常に有効なことはわかり切っているんで、舶用炉を今後開発するに当たっても、平和利用に徹してもらうということですね。これがやはり一番基本じゃないかというふうに思うわけです。最近どうも核を武装に使うことは、防衛に関してはいいんだというふうな議論がだんだん出てきつつあるんですね。また同時に、潜水艦等にこの舶用炉を流用したと、転用したということは、推進に使うんだから武器に使ったんではないとか、いろんなことが出てくるわけなんです。しかし、この辺はやはりはっきり平和利用に徹するということだけは、原則としてわれわれ守っていかなきゃならない、かように思うわけなんで、その点について長官の御意見を伺って終わりたいと思います。
  64. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御承知のように、昭和四十年の四月十四日の政府統一見解として、原子力基本法第二条に「原子力研究開発及び利用は、平和の目的に限り、」と規定されております。わが国における原子力の利用が平和の目的に限られることは明らかでございます。したがって、自衛隊が殺傷力ないし破壊力として原子力を用いる、いわゆる核兵器を保持することは同法の認められないところであります。また自衛艦の推進力として御指摘のありました使用されることも、船舶の推進力としての原子力利用が一般化していない現状では同じく認められない、こういう見解がございます。  そこで、推進力として一般化した場合はどういうことになるかということでございますが、推進力として原子力の利用が一般化した状況というものが、現在においては想像の域を出ないので、そのような想像のもとで政府の方針を述べるわけにはいきませんが、現時点において言う限り、原子力基本法第二条のもとで、原子力を自衛艦の推進力として利用することは毛頭考えておりません。
  65. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 法案内容について若干お尋ねをいたします。  第一条で、従来は開発ということであったんですが、今度「開発及びこれに必要な研究」というふうに改められたわけですね。開発には前提として研究が伴うのはあたりまえの話であって、事を改めてここで研究というふうにつけ加えてきたということは、従来当然行われなければならなかった研究がなされてこなかったということなのか、あるいはこれから特殊な研究でも行うという意味で、ここに研究というのをつけ加えたのか。単にごろ合わせ的なことでもって、ここに研究という文字をくっつけたとすれば何ら意味がないということになりますので、改めてここに研究をつけ加えた目的と内容をお聞かせ願いたいと思います。
  66. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) お答え申し上げます。  現行法の第一条におきましては、先生御指摘のとおり、事業団の目的は原子力船開発を行うというふうに規定されているわけでございます。しかしながら、事業団が広く原子力船開発に必要な研究業務を行うという立場に立った場合には、次のような問題があると考えるわけでございます。  第一点は、現行法は「むつ」の開発業務が終了する時期を予定して廃止するものとされる期限を付して立法されているわけでございまして、また事業団も現実には「むつ」の開発及びこれに伴う研究のみを行ってきたという経緯がございます。したがいまして、事業団が改良舶用炉等の原子力船一般の開発に必要な研究を行い得るということを改めて明らかにする必要があると考えるわけでございます。  もう一点、二十三条になりますが、業務規定におきましては、「原子力船設計、建造及び運航を行なうこと。」、これが第一号でございます。及び当該業務に関する研究を行うこと、これが第三号で規定されているわけでございます。研究業務第三号は、第一号の業務に伴うものとして位置づけられているわけでございます。したがいまして、現在の事業団が現行法を改正することなく、「むつ」のような特定の原子力船の建造等を前提としない原子力船一般を踏まえました開発に必要な研究業務を広く行うということは、必ずしも適当と言えないというふうに考えるわけでございます。したがいまして、今後「むつ開発成果を踏まえつつ、将来における原子力船の経済性及び信頼性の向上を目指しました改良舶用炉等の開発に関する研究を進めるに当たりましては、もしこの法律改正をお認め願いました暁の新事業団が、広く原子力船開発に必要な研究業務を行い得ることを明確にすることが必要であろうと考えまして、このために現行法の業務規定あるいは廃止に関する規定の改正だけでなく、目的規定である第一条におきましても、これまでの「原子力船開発」と書いてございますのを、原子力船の「開発及びこれに必要な研究」というふうに改正させていただきたいというのが今回の改正の趣旨でございまして、その趣旨を一層明らかにしたいということで、このような改正をお願いしている次第でございます。
  67. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 第四十一条、四十二条、四十三条の罰則関係では罰金であるとか、過料というものを引き上げておるわけです。私は、単に金額を引き上げるということだけでなくて、この事業団の性格からして罰則を設けなければならないような一体事態というものが生ずるのかどうかという点で、非常に疑問に思っているんですよ。というのは、認可とかあるいは承認を求めるとか、いろいろな規定がございます。しかし、この事業団の人事というのは、まさに政府と表裏一体の関係での事業団であるわけですね。そういう点で事業団が政府に対する報告で虚偽の報告をしたとか、報告を拒むとか、あるいは各種の立入検査等についてこれを阻止するとか、そんなことは通常考えられないことなんですね。罰則規定を設ける前に、すでにそのような人事を行うこと自身が問題であるわけですし、もしそのようなことが行われたならば、罰則という前に一体その報告が正規の報告として認められるのかどうなのかという、そういう問題も出てくるわけなんですね。そういう点で私は、この罰則規定を設けるにしてはそれに関連したいろいろな人事行政なり、違反行為が行われた場合に、その違反行為そのものは有効なのかどうなのかという法上の問題も生じてくると思うんですね。そういう点で、従来の法律の内容というのは罰則だけがいきなりぽんと飛び出しておいて、関連したそういうものについては余り触れてないということで、私はきわめて不備だと思うんですね。  たとえば、罰金と過料、「カリョウ」には二つあって、科学の「科料」と、過ちの「過料」と、こういうのがあるわけですね。ですから、この罰則の中には罰金と二つの「カリョウ」というふうに区別をしてあるんですが、内容を見ますと、どうも罰金の方に入れていいようなものが過料になっておったり、過料でいいものが罰金になっておったりというふうなことで、必ずしも私は、この内容を見ると区別をしなければならぬような内容ではないというふうに思っておるんです。時間がございませんので答弁は要りません。いずれ何かの際、あるいはまた残された委員会の審議の段階で、あるいはそれらの回答は求めるというふうなことになろうかと思うんです。  きょうはあと時間幾らもないんですが、緊急のひとつ質問を大臣にいたしたいと思うんですよ。ちょっとこの法案とは直接関係がないように思われる質問というふうに大臣から受けとめられてもらっては困ると思いますのは、今日までの原子力行政国民から不信を買っておったのは否めない事実であり、周知の事実だろうと思うんです。したがって、国民国務大臣である科学技術庁長官の政治姿勢が、今後の原子力行政のあり方に大きく反映するというふうに思っておるわけですよ。それだけに大臣の政治姿勢に大きな関心を抱いております。そういう観点から私は大臣にお尋ねをいたしますが、これも時間がありませんから四点ほどお尋ねいたします。緊急ですから、あらかじめのあれでありませんが、大臣、答えられる範囲内において答えていただきたいと思うんです。  まず第一点は、十七日の衆議院の議運理事会の席上で、宮澤官房長官から示された憲法改正問題と国務大臣の靖国神社参拝についての政府統一見解の内容については御存じですかというのが、まず第一の質問です。  それから第二点は、その議運委理事会の席上で、野党側の質問、閣僚がこの統一見解からはみ出す発言をした場合どうするのかという質問に対して、宮澤長官は、今後閣僚はこの見解と矛盾した行動をすることはないと思うが、もしはみ出した場合はしかるべき措置をとると言明をしているということを御承知でしょうかということが、第二点です。  それから第三点、中川大臣は今日まで靖国神社に参拝されておりますが、その記帳に当たってはどのような肩書きを用いて記帳されましたでしょうかということです。  それから第四点は、政府統一見解に対して、きのう十八日の閣議では、この統一見解に対して大臣から不満と非難が述べられた。そして官房長官、角田法制局長官との間に激しいやりとりがあったと新聞では報道をされておりますが、その事実があったかどうかということと。一番大事なことは、この統一見解を国務大臣として認め、今後これに従う意思があるのかどうかですね。もう一回言いますと、国務大臣としてこの統一見解を認め、今後これに従う意思があるのかどうかということと、党人の立場と閣僚としての立場は明確に区分すべきであると思う。自民党の政策はいろいろあります。しかし、閣僚として内閣に連なる以上、そこのところは明確に区別をすべきだと思うんです。そうでないと、私は原子力行政というものについて、大臣が内閣の統一見解に従わないなどということになったならば、どちらに一体原子力行政が暴走するのか。いま言ったように核武装なんかというのも、大臣の意向一つでとんでもない方向へ行くなんていうことになったんじゃ大変な話ですから、そういう点で、国民の不安を解消するためにも政治姿勢、行政のあり方としてきわめて重要だと思いますので、国民の不安を払拭する意味からも、この点についての大臣の御見解をお尋ねいたします。
  68. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 第一番目の、政府統一見解はよく承知いたしております。  二番目の、官房長官がはみ出した場合処分するとかいうようなやりとりについては、これはきのう確かめたんですが、どうもはっきりいたしません。はっきりいたさないまま、約束したようでもあるし、しないようでもあると、よくわからないままにきのうは終わっております。  それから、過去大臣として参拝したのが農林大臣のときと科学技術庁長官になったとき、いずれも八月十五日に参拝いたしております。肩書きは、農林大臣中川一郎であり、今回の場合は国務大臣科学技術庁長官中川一郎となっております。  それから、まあ激しいやりとりがあったというかどうかは別として、私はきのう、国民に与える印象はよくないのではないかという不満を持ったことは事実でございます。と申しますのは、いろいろ靖国神社の問題については議論のあるところでございます。しかし、私は、特定の宗教の人だけを祭っているのじゃなくて、あらゆる宗教の人も戦争犠牲者は祭っておるという性格、あるいは世界じゅうの国々が戦争の犠牲者の霊には公的な立場で参拝しておるという事実、そういう点から言って、どなたも気楽に御参拝ができる仕組みが必要だと、こう思っておりますから、国務大臣であるがゆえに参拝ができないというような仕組みについては不満であると。向こうもそういう受けとめられ方をしたと。そこで、意見のやりとりがありまして、閣僚として公的な参拝は憲法上問題があると。公的な参拝とは、閣議の決定をして参拝すること、あるいはまた祭祀料を国費をもって出すことが国務大臣として公的な参拝として問題があると、こういう意味だそうでございまして、閣僚として前回、また私が過去参拝してきたようなことを妨げるものではないということでございますから、政府統一見解の範囲内において今後も参拝は続けていきたい。  ただ、申し上げておきますが、靖国神社を参拝する立場は、決して戦争を礼賛したり今後戦争をという気持ちじゃありませんで、むしろ参拝をすることによって平和の誓いをすると、二度と再び犠牲者が出るようなことはないと、こういう誓いと、国家のために本当に御苦労さまでございました、大変でございましたでしょうと、こういう二つの願いを込めてやるのであって、決して国民の心配を受けるように戦争への道などということはさらさら考えませんし、科学技術行政に当たる者としましては、平和利用に徹するという法律の精神に従って、ひたすらその方向で衝に当たってまいりたいと、こう思います。
  69. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 吉田君、時間ですから。
  70. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 大臣、ちょっと答弁漏れがあるんですよ。というのは、私がお尋ねしたのは、気持ちはわかるんです、考え方はわかりますが、ただこの統一見解に対して国務大臣として認めて、今後これに従う意思がおありかどうなのかという点がどうもちょっとはっきりしない。
  71. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 閣僚である以上、政府統一見解には従っていくと、こういう意味で、参拝が統一見解をはみ出すものではないという判断のもとに、統一見解の範囲内において従っていきたいと、こう思っております。
  72. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      —————・—————    午後一時二十七分開会
  73. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先般当委員会に各界の参考人をお呼びいたしまして、いろいろ御意見も承り、質問をしたわけでありますが、率直に申しまして造船業界、海運業界というものが、この原子力船事業団に対する熱意がちょっと足りないんじゃないかな、将来原子力商船実用化の時代が来るとは言われておるけれども、余り金をつぎ込むと危険であると、だからそういうものは国にひとつやってもらおうじゃないかと、こういうような率直に言って感じを受けたわけでありますが、そういう立場で二、三お尋ねをしたいと思います。  今日までの原子力船開発に対して要した資金の状況がどうなのか、それに対する負担はどこが負担しているのか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  75. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 事業団が設立されました昭和三十八年度から、昨年の昭和五十四年度までに支出いたしました経費は総計二百四十八億円でございます。このうち民間からの出資金及び寄付金は、両方大体半々でございますけれども、合計いたしまして二十一億六千万程度でございます。
  76. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この民間の出資及び寄付金はどこが出しているんでしょうか。細かいことはいいですけど、たとえば造船業界とか海運業界とか、そういうふうに分けた場合どうなりますか。
  77. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 大体主なところは、この二十一億のうち造船工業会の関係が大半でございまして、これが十三億円ぐらいでございます。それからあとは船主協界、それから原子力関係の産業界、さらに鉄鋼業界、舶用工業界等でございます。
  78. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今日まで造船工業界とかあるいは海運業界として、この原子力船の実用化というものに対してどういう対応をしてきておるのか、その点を承っておきます。
  79. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) お答え申し上げます。  昭和三十年代の後半、事業団が発足したのは三十八年でございますが、後半におきましては、その当時の原子力船実用化の見通しというものが、アメリカ、西ドイツと西欧諸国における原子力船開発の動向、それから当時はタンカーを中心といたしまして、船舶の大型化というのがダイナミックに進行しておった一方、四十年代に入ってからでございますが、コンテナリゼーション——コンテナ化という輸送革命が起こりまして、これの大型化、スピード競争化が諸外国との間に始まったというような状況にございまして、業界におきましても、そう遠くない将来、一九八〇年ぐらいには原子力船の実用化というものが来るのではないかという意見が一般的であったかと思います。このために、造船・海運業界の原子力船開発に対する熱意も当時強いものがございまして、三十八年に原子力船第一船の建造、運航を目的とした事業団が設立されたときに、官民共同でこのプロジェクトの推進を行ってきたところは御承知のとおりであろうかと思います。問題はその後でございますけれども、その後原子力商船の開発が進むに従いまして、西欧諸国におきましても、その実用化を図るためには、原子力第一船の建造、運航のみでは十分ではないというようなことが明らかになってまいりましたほかに、世界的な経済変動、石油ショック後の変動、海運・造船界におきましては、タンカーの中でも大型船を中心として、世界的な船腹過剰というものが出てきた。それからコンテナ船におきましても、石油の価格が非常に上がったということで、スピード競争というものが消えてしまったというような状況を迎えまして、この原子力船の実用化時代がいつ来るかという見通しを、業界の見方としても大幅に修正して見ざるを得なくなってきたというようなことであろうかと思います。  これに加えまして、いまのことと関連あるわけでございますが、長期かつ深刻な海運・造船不況に見舞われて、現在まだ完全に立ち直ってないわけでございますが、海運業界も造船業界も減収、大幅な欠損を計上せざるを得なくなった。特に造船等におきましては、従業員数を三分の一ぐらい削減せざるを得ないというような窮状に見舞われまして、こういったことで、人材あるいは資金といったようなものを、原子力船に限らず、研究開発投資部門に投入する余力がきわめて乏しくなったというような事情にございました。このようなことから、御指摘のように、原子船開発に対する積極性が後退しているじゃないかと、あるいは熱意はないではないかというような印象を与えることは、これは否定し得ないことであろうかと思います。  しかしながら、現在船舶の運航に要するエネルギー源を、石油だけじゃなく、多様化していく必要があるということ、またわが国の造船産業、先生御承知のように、世界の約半分ぐらいを賄っておるわけでございますが、こういった産業が将来にわたって技術的な競争力を維持していくためにも、早い時期に先進諸国との技術格差というものを克服し、原子力船に関する技術基盤を確立しておく必要があるということにつきましては、造船業界のみならず、海運業界ともども十分認識しておると私ども見ておるわけでございます。現在、資金的にはともかく、事業団に対する人員の派遣というようなことは、前と同じような規模で継続しておるという状況でございます。  今後のことでございますが、今後におきましても、この「むつ」の開発及び原子力船に関する舶用炉研究開発を進めていくということで、今後の原子力船研究開発事業団というものができました場合には、引き続いて人材等を派遣し、現在置かれている立場から、最大限の協力のための努力を続けていくものと私どもは考えておるわけでございまして、必ずしも熱意がないということではないんじゃなかろうかと私ども考えておるわけでございます。
  80. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先般も参考人の方から、造船・海運関係からも勤労奉仕として原子力船事業団には人を派遣しておると、こういうお話でありましたが、現在何名ぐらい派遣をしているのか、その内訳はどうなっているのか。さらに、そういう人の給料というものは原子力船事業団が払っているのか、あるいはそれぞれ派遣をした企業が払っているのか、その点はどうでしょうか。
  81. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 現在と申しますか、一応ことしの十月一日現在で、造船関係でございますが造船八社、ここから全部で十八名ほど現在派遣をしていただいております。それからあとその他のメーカーから三名ほど、計これらのメーカーから二十一名でございます。それから船会社の関係から、これは中核六社から二十六名ほど出ております。その他原研等、これは民間に入るかどうかわかりませんけれども、そういったところから十三名ほどの人に来ていただいております。  それからこれらの方々につきましての給与でございますけれども、現在申し上げました方々は、出向ということで私どもの事業団の方の籍に一応入っていただいておりますし、また給与につきましては、一応それぞれの所属しておられますところの給与というものを勘案し、また事業団の職員との関連もございますので、この辺を勘案いたしまして給与をそこで決めておるわけでございます。民間の方につきましては、各社の状況にもよりますが、各社の方で恐らく補てんしておられるところもあるようでございます。
  82. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 海運業界あるいは造船業界として独自にいろいろな検討をし、そして原子力船の実用化の見通しなりそれに対する業界としての意見とか、そういうように具体的に発表したものはあるのかどうか、それはどうですか。
  83. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) お答え申し上げます。  造船業界におきましては、造船研究協会という社団法人を会社が会員でつくっておりまして、造研と呼んでおりますけれども、造研の場でもって従来から原子力船関係の研究をしてまいっております。これは主として机上の研究でございますが、現在まで約四、五億円程度研究をしてきており、これに関するレポートは当然出てきておるわけでございます。それから、これは直ちに海運・造船業界ということではございませんが、例の原子力産業会議の中の原子力船懇談会というのがございまして、ここが今回も来年をめどにいたしまして、原子力船の実用化についての検討会、ワーキンググループをこの十二月に発足させるということでございますが、過去にもこういった場におきまして、将来における業界としての原子力船の見通しあるいは開発方針といったようなことを審議いたしまして発表した経緯がございます。
  84. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 長官にお伺いいたしますが、本当に原子力船実用化の時代というものが来るのであれば、これは日本の造船界にとっても大変なことで、世界の造船量の五割を突破してきた日本としてその対応がおくれるということは、造船業界にとっては大変なことじゃないかと思うんですね。ところが、私が先ほど申しましたように、余り熱意がない。そういう危険なことは全部科学技術庁や原子力船事業団に押しつける、もう政府としても原子力船事業団ができた以上はつぶすわけにはいかぬ、仕方なしに何となく予算がついていくと、こういうことでは私は困ると思うんですね。やっぱり科学技術庁の予算、原子力船事業団の予算にしても、これはとうとい国民の税金ですから、むだにはできないと思うんですね。そういう意味で、もちろん造船業界、海運業界の不況はありますけれども、やはりいかなる企業においても、不況であっても将来への研究投資というものはぼくは当然やっていかなければ、その業界の将来はないわけでありまして、そういう意味でもうちょっと真剣に取り組む姿勢がほしいと、私は率直にそのように思うわけですが、長官としてはどう考えるのか、また今後どう指導していくつもりなのか、これを伺っておきます。
  85. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 原子力船の実用化というのは先々のことでございますから、確定したことは言えませんが、昨今のエネルギー事情から言って、そういう時代が来ないと言い切れないものだと思います。そういう時代に備えて研究をし、体制を整えておくということは、造船業界にとっても、また政府にとっても大切なことだと存じます。今日までもかなりの御協力はいただいておりますが、今後ともいろいろと御協力いただくように指導してまいりたいと、こう思っております。
  86. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、今後の原子力船研究開発のための長期的な見通しはどうなのか。きょう午前中松前委員質問でいろいろの御答弁もあったわけですが、多少重複する点もあると思うんですが、長期計画についてお伺いしたい。と申しますのは、私らのところへ寄せられております、たとえば科学技術産業労働組合協議会の質問状においても、原子力船むつ」の運航利用などの長期の具体的な計画を明らかにされたい、国会答弁でも抽象的な説明に終始をしている、こういうような質問状が科学技術庁長官に出されております。まだ、日本原子力研究所労働組合からも、今後の原子力船開発のあり方を含めた総合的な原子力政策の中での位置づけを明確にした後に「むつ」問題に取り組むべきではないか、こういうような意見が寄せられております。また、先般の当委員会における参考人の御意見の中にも、小野周先生は、衆知を集めて今後「むつ」をどうしていくのか、原子力船をどういう方向に進めていくのか、そういう総意を結集してはっきりとした方針を決めて新しいスタートをすべきではないか、こういうような御意見があったわけでありまして、そういう点を踏まえて現在政府としてどういう長期計画を持っていらっしゃるのか、これをお伺いいたします。
  87. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 原子力船に関します研究開発の長期的な展望、見通しについてでございますが、昨年約一年をかけまして原子力委員会原子力船研究開発専門部会で審議されたところでございます。  まず、その結論の骨子を申し上げますと、まず現在の原子力船むつ」は経済性に力点を置いて設計建造されたものではございませんので、今後は在来船と経済的に十分競合し得る新しいタイプの舶用炉開発を図るべきである。そのためには開発のための計画を三段階に分けて具体化していくことが考えられるといたしまして、第一段階開発といたしまして、対象となります改良舶用炉設計研究あるいは解析研究を進め、その炉の概念を確立すること、第二段階といたしまして、この概念に基づきまして改良舶用原型炉の基本設計及び関連機器の特性試験を行うこと、第三の段階といたしまして、改良舶用原型炉の建設、運転試験を行う、こういうことが示されたわけでございます。  私どもといたしましては、この趣旨に沿って研究開発を進めたいと考えているわけでございます。そのため、今日現在御審議をいただいております事業団法の改正をお願いいたしまして、今後まず五年程度の日時を考えまして、改良舶用原型炉建設のための概念設計及び設計研究を行いまして、原型炉の概念を確立したいと考えているわけであります。  この第一段階でございますが、もう少し具体的に申し上げますと、設計評価研究といたしましては、改良舶用炉としての加圧水型軽水炉プラントにつきまして、船体あるいは陸上支援施設を含めた数種の試設計を実施いたしましてその比較評価を行いたいと考えております。数種と申し上げましたが、現在一応の分類といたしましては、一体型あるいは半一体型、分離型と、この三つの大きなタイプについての比較検討となろうかと存じます。また、解析研究といたしましては、改良舶用炉炉心特性、燃料の挙動あるいは動特性等の解析コードを開発いたしまして、これを用いました解析研究を行うことを考えております。  また、実験研究といたしましては改良舶用炉にとって特に重要となります出力の負荷変動に耐え、かつ高燃焼度の燃料棒の開発を目的といたしまして照射実験を行うと、こういうことを考えておりまして、これらの結果を総合的に検討いたしまして、第二段階以降の開発の対象となる最適な改良舶用原型炉の概念を確立するということを、当面第一段階として考えているわけでございます。このための予算の措置でございますが、一応来年度以降の研究開発に備えまして予備的な調査を今年度行うこととしておりまして、二千万円の予算を事業団に計上しているところでございます。  さらに来年度におきましては、新しくなりますでありましょう事業団に新たに研究開発を担当する組織を設けまして、原型炉の建設を目指した設計評価研究あるいは解析研究をスタートさせたいと考えております。このための予算としまして約二億円及び研究担当者の七名の新規増を要求しているところでございます。その後研究開発の進展に応じまして、逐次研究開発部門の予算あるいは人員の拡充を図っていくことを計画しているわけでございます。私どもの腹づもりといたしましては、研究開発が順調に進んでいった場合には、当面約五カ年間の間に必要な研究開発費は、先ほど申し上げました第一段階五年間に約四十億円程度になろうかと思っております。そして、第一段階が大体まとまってくるであろう五十九年度ごろ、すなわち統合を控えた時点では、研究開発のための要員は約五十名程度に持っていきたいと、このように考えているわけでございます。  また一方、原子力船むつ」につきましては、ただいま申し上げました改良舶用炉についての研究開発を進めるに当たりまして、原子力船運航時におきますデータあるいはいろいろ得られるであろう経験を十分に取り入れる必要があると考えておりまして、「むつ」につきましては、所要の修理点検を行った上で、できるだけ早く運航試験を実施いたしまして、運航状態における原子炉挙動等に関するいろいろなデータ経験を取得いたしまして、それを申し上げましたところの研究開発にフィードバックさせていきたいと、こういうことを考えて、この考えをベースにした計画で進んでまいりたいと、このように考えているわけでございます。
  88. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 企業においては私は一つの将来の経済予測、そういうものを誤るとやっぱり企業は大きな損失をこうむるし、やっぱり社長としてその判断を間違えば社長は首になると。やはり将来の動向に対する誤りのない判断というものは、本当にぼくは大事な問題じゃないかと思うんですね。やはり原子力船研究においても、常に将来の動向と無関係ではあり得ないと思います。しかし、わが国の昭和三十八年あるいは昭和四十年前後、この原子力船事業団がスタートした時期の将来に対する見通しというものは大きく食い違ってきたわけですね。もちろん油ショックとかそういう問題があったわけですが、しかし、むしろ油ショックなんかあればもう一つこれはいい方向に、むしろ原子力船実用化時代がもっと早く来なければならないようなそういうハプニングであったにもかかわらずこれほど狂ってきた。私たちは過ぎ去ったことはいまさら責任を言ってもこれは始まらないわけですけれども、これから先のやはり予想に当たっては、そういう過去の経験というものを本当に生かしてやっていかなければ、余りにも科学技術行政は私は無責任と言わざるを得ないと思うのですね。そういう意味で、原子力船研究開発専門部会が昨年の十二月二十日に答申を出した原子力船研究開発専門部会報告書というものが、これからの日本の原子力船の将来を決める指針のようにいま御説明があったわけですけれども、この指針を決定するには、過去の見通しの誤った経験などがどのように生かされているのか。それはどうなんですか。
  89. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 昨年一年かけました審議の過程で、昭和三十八年あるいは四十年当時、遅くとも昭和五十年半ばぐらいには原子力船時代が来るのではないかとみんなが考えておったということ、それが結果として大きな見通しの誤りであったということについては、委員各位十分反省をしつつ慎重に御検討願ったわけでございまして、そういう意味で、文面の表現はとにかくとして、十分な反省と経験を踏まえて、このリポートがまとめられたというふうに理解をしているわけでございます。  また、先ほど各段階において三段階ぐらいに分けてと申し上げました趣旨は、やはりその節々で十分将来の見通しというものを、その時点でさらに慎重に見きわめつつ次の段階に進んでいくということを基本に考えておりまして、昨年末にまとめていただいたこのリポートで、将来とも突っ走るということを考えているわけではございません。ただ、現在時点での判断の基礎になっているということは事実でございます。その次のステップに進むに当たりましては、その時点でさらに慎重に将来を考え、よく見きわめた上で次の段階に進んでいくというふうに今後進めてまいりたいと、このように考えているわけでございます。
  90. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この原子力船研究開発専門部会のメンバーですね、十四名が最後に書いているわけですけれども、大学の教授が東京大学が二名、東京商船大学が一名、一橋大学が一名。十四名のうち四名は大学の先生でありますが、あとは運輸省の船舶技術研究所所長とか日立造船社長とか日本原子力船開発事業団専務理事とか三菱重工の副社長とか日本原子力研究所理事、三菱総合研究所副社長、日本原子力研究所大洗研究所所長とか、ともかくこういうメンバーを見ておりますと、私はやはり衆知を集めて日本の原子力船の方向を本当に研究したと言えないと思うのですね。大山委員会の場合は大学関係七名、民間研究一、ジャーナリスト一、協会一と、こういうようにまだいろいろ範囲も広かったように思うのですが、やはり原子力商船実用化の時代がどうなるか、こういうような問題になってくると、必ずしも専門家ではなしに、もっとやっぱり広く多くの意見も集中をしていかなければいけないのじゃないか。これを誤ると、やっぱり日本の将来にとっても大きな損失にもなるわけですし、そういう姿勢が私はこういう選ばれたメンバーの構成から見ても、科学技術庁として本当に慎重に将来の方向に命をかけてどう行くかということを判断するという、こういう姿勢が私は足りないのじゃないか。これはどうですか、科学技術庁長官。私も余り内部のことは詳しく知らないんですが、率直にそういう感じがするんですが、その点どうですかね。
  91. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 専門部会のメンバーについて御指摘ございましたが、いままでもいろいろ配慮は加えておりますが、今後ともしっかりした幅広い委員構成を図って、その結論を得た上で命がけでひとつ実行に取り組んでいきたい、こう思います。
  92. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私たちは、今回の法案によって原子力船開発事業団が一部改正をしていくという、こういう方向については賛成でありますが、いまの政府の進めておる姿勢そのものを認めたわけではないわけでありまして、これはやはり衆知を集めて、本当に日本の原子力船行政が間違った方向に行かないように、ただ一部の賛成する人の意見だけではなしに、反対する人の意見の中にも本当に聞くべき意見はいろいろあると思いますし、そういう賛否両方の意見を聞いた上で正しい判断をしていくのが、私は科学技術庁ではないかと思うわけでありまして、その点を特に科学技術庁長官に要望しておきたいんですが、その御決意を承っておきたい。
  93. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 前向きの積極的な御意見、しかと承りまして十分配慮してまいりたいと思います。
  94. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、きょう午前中の松前委員質問とも多少ダブる点もあるわけですが、原子力船安全性、また将来これが実用化をした場合も含めて推定される事故、それとそれに対する対策はどうなっておるのか。
  95. 野沢俊弥

    参考人(野沢俊弥君) 原子力船の事故に対します解析の内容についてのお尋ねかと思いますので、お答えしたいと思います。  原子力船の事故についてはいろいろな事故が想定されて、それに対応しての解析というのが実施されておりますけれども、まず一番が衝突事故に対してどうかというのが一点。それから第二番目が、座礁事故に対してどうかというのが第二点。それから第三点が浸水及び沈没に対する事故解析というのが三番目。それから四番目が、火災及び爆発事故に対する事故解析。以上四点が事故解析の大きなポイントでございます。  衝突事故に対しましては、午前中御説明がございましたように「むつ」は十分な対衝突構造を有している。それから座礁事故に対しましてはこれもまた十分な座礁対策、構造的な座礁対策というのが講じられている。それから、浸水及び沈没でございますけれども、「むつ」の場合には連続した二区画が浸水しても沈まないことになっておりますけれども、それが何らかの原因で沈没した場合というのが、沈没ということで対策が講じられております。それから、火災及び爆発事故につきましては、三区画についての火災に対する十分な配慮がなされているというのが全般的なお話でございまして、それぞれに対応した十分な事故対策が講ぜられているというふうに考えております。    〔委員長退席、理事後藤正夫君着席〕
  96. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 午前中の説明の中でもし沈没した場合に、もちろんそういうことあってはならないわけですが、沈没した場合も水圧によって格納容器の中に海水が浸水をして、そして崩壊熱を防ぐ、そういうお話があったわけですが、原子炉の圧力容器の中はどうなるんですか。やはり非常に深海に達した場合は圧力容器がつぶれるという、こういう点もあると思うんですが、圧力容器の中に水は入るようになっていないのか、その点はどうなんでしょうか。
  97. 野沢俊弥

    参考人(野沢俊弥君) もし万一原子力船が沈没した場合の対策でございますけれども、まず原子炉室に水を入れる必要がございます。この原子炉室に水を入れるためには船底弁をまず開くこと、それから次に遮蔽とびらを開き、水密とびらを開く、この三つの操作によりまして原子炉室に十分な水をまず導入いたします。水圧が二キロに達しますと格納容器の底部にございます圧力平衡弁を開いて水が入るということになります。  そこで、先生のお尋ねの、最も深いところに沈んだ場合の圧力容器の中はどうなるかというお話でございますが、加圧型の原子炉でございますので、当初から圧力容器の中は水がいっぱいに入っているわけでございます。したがって、水がいっぱいに入っておりますと、剛体とほぼ同じでございますので、深海に沈没しても圧力容器の中に積極的に水を入れる必要はなく、その健全性が保たれるということを考えておるわけでございます。
  98. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、原子力船の定係港の機能とその安全性についてどうなのか。わが国においても当然定係港が設置をされなければならないわけでありますが、定係港においてはどういう心配があり、そしてそれに対する対策はどう立てられておるのか、この点を御説明願いたいと思います。    〔理事後藤正夫君退席、委員長着席〕
  99. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 定係港の主な施設でございますけれども、まず最初にこの原子力船を係留いたしておきます係留岸壁、また係留に必要な設備がございます。それからさらに燃料交換、それから燃料の貯蔵を行いますための核燃料物質の取り扱い施設、それから核燃料物質の貯蔵施設がございます。それからさらに、本船の方から出てまいります放射性廃棄物の陸揚げをいたしまして、その処理及び処理をいたしました後の廃棄物の貯蔵等を行います放射性廃棄物の処理施設及び放射性廃棄物の貯蔵施設がございます。その他、原子炉プラント、機器等につきまして除染、放射能で汚染いたしましたものを除染する装置、それから開放点検、それから整備補修等をいたしますための除染設備、工作設備等がございます。さらに、定係港におきます放射線管理を行いますための放射線管理施設、さらに本船への資材等の補給に必要な純水の製造設備あるいは資材倉庫等がございます。さらに、乗組員実験員等の教育訓練に必要なシミュレーター、また乗組員実験員等の休養等に必要な福利厚生施設、またその他一般の事務棟等があるわけでございます。  ここで発生をいたすと思われます事故といたしましては、本船から陸揚げをいたしますイオン交換樹脂あるいは放射性廃液等を揚げます際、これらの放射性物質が周囲へ放出をされるというような事故でございますとか、定係港におきます電源が喪失したことによる事故、それから定係港の火災、また燃料交換時におきます燃料交換キャスクが落下をするというような事故が考えられるわけでございますが、これらの事故につきましては、本船から使用済みのイオン交換樹脂等を揚げます際には、イオン交換樹脂自身は十分堅牢に設計製作されましたイオン交換塔に入れられたまま陸揚げをされるということになっておりまして、これが万一落下した場合でも、大量の放射性物質が周囲を汚染することはないというぐあいに考えております。  また、放射性廃液の陸揚げでございますが、これはポンプを使いまして陸揚げの配管を通じて行われるわけでございますが、この配管等につきましては、使用前に耐圧漏洩試験等を行い、その健全性を確認してまいりますので、この破損により周囲を汚染するような事故というものは起こさないということでございます。  またさらに、定係港の電源喪失事故でございますが、定係港の放射能の監視装置等は一般の電源を使用しておりますけれども、停電が起きますとこれらの装置が動かなくなるということでございますけれども、これらの事故に備えまして、定係港には直ちに作動する非常用の発電機を設置をしておりますので、電源喪失に対しては対応し得るというぐあいに考えております。  また、定係港におきます火災でございますが、陸上付帯施設の主な施設でございます燃料の貯蔵施設、それから廃棄物の処理設備等には可燃物がきわめて少ないというような点から、これらの施設から火災が発生することはちょっと考えられないわけでございますが、万一火災が発生した場合に対応するために、火災探知装置がもちろん設けてございます。直ちにこれは守衛室に通報されまして、この通風装置の停止、また消火水の放出等、消火活動を実施をする。また、これらの施設の建物自身は耐火構造でございますし、またほかの建物と一応離して配置されておりますので、ほかの建物から延焼することは考えられないわけでございます。  また、本船が岸壁に係留中に火災を起こしたというような場合には、もちろん船内の消火設備がございまして、これによる消火活動、また岸壁、燃料交換棟等からの消火水の放出等の準備が一応できておるわけでございます。また、その施設には一応消防体制等も配備をいたしてございます。  またさらに、燃料交換時の燃料交換キャスクの落下事故でございますけれども、この燃料交換に当たりましては、これらの燃料交換キャスクの運搬は、岸壁に装備をいたしますクレーン、岸壁のクレーンによって行うわけでございますが、このクレーン自身の点検、また作業前には機能試験等を十分に行いまして、そのつり上げ能力というものを確認した上で作業を行うことにいたしておるわけでございます。また、このつり上げ用の金具にはいわゆる防脱装置を設けておりますので、キャスクの移動中にケーブルの切断、またキャスクが脱落することによる落下ということは一応考えられないわけでございます。また、このキャスクの落下については万全の対策を一応施してあるわけでございますけれども、万一またキャスクが落下し破損するという場合を想定いたしまして、交換キャスクが落下衝撃に耐え、また岸壁の給水管で使用済み燃料の冷却を行えるというように設計をいたしてあるわけでございます。したがいまして、燃料交換キャスクが落ちたときに燃料が破損したり、この中にあります放射性物質がキャスクから放出するというようなことは一応ないようになっております。
  100. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 原子力商船が実用化を迎えるために解決をしなければならない問題点と、その対応策はどうなのか。たとえば原子力商船が実用化すれば、当然これは高速、しかも大規模な船により有利でございますので、当然外国航路になるわけで、そうしますと寄港のための条件整備もしていかなければいけない。そのほかにも何か解決すべき問題はあるのかどうか、その点の検討はどうなっておりますか。
  101. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) お答え申し上げます。  ただいまおっしゃいましたように、いろいろの問題があろうかと思いますけれども、船自体は国際航海が仕事そのものであるということでございますので、おっしゃるとおり、どこの港でも自由に航行できるということが、まず必要であろうかと思います。これに関しましては、海上における人命の安全のための国際条約に基づきまして、事前に入ろうとする外国政府に対して、原子力船原子炉施設及び船舶の安全性について評価できるような安全説明書を、余裕をもって提供するという現在国際的な取り決めがございます。現在におきましても、この取り決めによりましてサバンナあるいはオット・ハーンの例に見られますように、これが決定的な自由航行を阻害する要因にはなっていないというふうに考えられるわけでございますが、各国ともさらに原子力船安全性というものを高める努力をいたしまして、この制度が国際的に定着していくことが必要であろうかと思います。
  102. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 原子力船の実用化時代を迎えた場合に、さらにもう一つ配慮されるべきことは、賠償がどうなるかという点にあろうかと考えております。日本の原子力船が日本の国内において何か事故があり、それに伴って損害が生じたという場合におきましては、陸上の原子力施設の場合と同様に原子力損害の賠償に関する法律、通称原賠法といっておりますが、原賠法の適用がございますので、原子力船に関する損害賠償制度が確立していると国内的には言えるわけでございますけれども先生御指摘のように、実用化の暁には、日本の原子力船が外国に出かけて行くということになるわけでございます。またその逆もあるわけでございます。したがいまして、国際的な損害賠償制度が確立されていることが必要となろうかと思われるわけでございます。  国際的な損害賠償制度といたしましては、第十一回海事法外交会議、通称ブラッセル会議というのが一九六二年、昭和三十七年に開かれておりまして、五十カ国が参加をし、いわゆる俗にブラッセル条約と言われております原子力船運航者の責任に関する条約、そういう条約ができ上がっておりますが、まだ批准書の寄託の国が規定の数に達していないために、発効していないという状況にあるわけでございます。このブラッセル条約の基本的な枠組みといたしましては、基本的な考え方につきましてはおおむね各国の合意が得られていると思われますので、今後原子力船の実用化の機運が高まった段階におきましては、関係各国間の話し合いが進んで、国際的な損害賠償制度が確立していくという可能性は十分あると思われるわけでございます。  なお、御参考までにサバンナ号あるいはオット・ハーン号の場合に、賠償の関係はどうであったのかということを御報告さしていただきますと、まだこういうブラッセル条約の動きが熟していない時期でございますので、米国あるいは西ドイツはそれぞれの寄港を希望する国と二国間の協定を結びました。それぞれ損害賠償の責任限度ということで、サバンナ号の場合は五億ドル、約一千百億円になるかと思いますが、それからオット・ハーン号の場合は四億ドイツマルク、四百八十億円を責任の限度として損害賠償に応ずるという協定をそれぞれ結びまして、それぞれの国の入港同意を取りつけたという経緯があるようでございます。
  103. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 原子力船が寄港した場合、その寄港地における安全性の問題点はどういう問題があるのか、これを簡単に御説明願います。
  104. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) はい。原子力船が寄港いたしております場合でございますけれども、その場合、一般的にはオット・ハーンサバンナ等におきましては、一応原子炉はその場合でも運転をいたしておるわけでございますけれども、その時点におきましては、船の中の必要とする動力程度ということで、出力は低いような状態であるわけでございます。そこで万が一何か事故等が発生するというような場合には、これはオット・ハーン等の例を見ましても、実際に事故があったわけではございませんが、オット・ハーンが外国の港に入るという場合に、これはそう多くの国ではございませんが、データによりますとたしか二つぐらいの国、例でございますが、入る場合に、万一に備えて引き船を用意をしておけというようなことを、その相手国の方から言われておる例があったように聞いておるわけでございます。本船が寄港をいたしております時点におきましては、出力も低うございますし、本船自身も一応係留、岸壁あるいはブイに係船をしておるというような事態でございますので、そういう状況で特に大きな事故が起きるというぐあいには考えられません。
  105. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に。  先般の参考人の御意見の中に、日本原子力研究所労働組合の代表の人が、今回の法案決定されれば、昭和五十九年度末までに日本原子力研究所または動燃事業団と合併をすると、そういう話は全然事前に相談はない、こういうようなお話がありました。やはり研究研究者あっての研究であり、研究者の人たちの協力がなければうまくいかないのじゃないか。そういう点は労働組合に相談してないのかどうか、なぜ相談しないのか、その点どうでしょう。
  106. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 昨年末の時点統合の問題が議論されましたときに、時間的な関係もございましたし、庁としての方針決定にもなかなか手間取ったという事情もございまして、最終段階でそれぞれの組織を代表する者とは大体の御相談はしたわけでございますが、まだその時点統合先決定するという段階に至りませんでしたので、その程度の御相談で一応行革に対する態度を決定したという事情でございます。今後の持っていき方につきましては、なるべく早く対象となるであろう機関との御相談ということは念を入れてやっていきたい、このように考えているわけでございます。
  107. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後長官に要望したいわけでありますが、原子力の平和利用を進めていく、しかも原子力船研究をしていく、こういうことは本当に衆知を集めてやっていかなければいけない。そういう意味で、先ほどの研究者はもちろん、また日本原子力研究所の人たち、実際に研究に当たるそういう人たちの意欲、協力というものもなければこれは成功しないのではないか。そういう意味では、広く労働組合の方々の意見も尊重しながら誤りのない方向をとるように最大の努力をしていただきたい。この点についての長官の御意見を承って質問を終わります。
  108. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 今度の統合は三つ四つの目的がありますが、中でも、働く皆さんが職場の中が安定をしておる、こういう点も配慮して、落ちついて研究ができるという点に着目いたしております。働く皆さんには働きやすいように最善を尽くしていきたいと存じます。
  109. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 原子力船事業団の六十年三月末までの統合に当たっての前提条件の問題で、先日来いろいろただしてきているわけですけれども、引き続きその点について質問をいたしたいと思います。  いままでも何回か引用をしてきておりますが、原子力委員会の五十四年十二月二十七日の原船事業団の統廃合問題についてという文書、そこでは、「「むつ」の開発がある段階に達するまでの間は、事業団は責任ある」「機関として」やっていくというふうに書いておりますし、さらにそれを一層具体化をしたのでしょうか、五十五年、ことしの四月十一日の「原子力船研究開発進め方について」という文書では、「将来は、「むつ」が実験船として活用できることとなった段階において同事業団を他の恒久的な原子力関係機関と統合し、」云々という表現になっていると思うんです。  そこで、まずお尋ねしますが、「「むつ」が実験船として活用できることとなった段階」というのは、具体的にはどういう段階を考えているのですか。
  110. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 「むつ」が完成をいたしましてその運航によって、われわれが一番欲しいと思っております運航状態での炉の挙動あるいは運航経験といったようなものが取得できるような状態、そのように考えております。
  111. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 前回、私の質問に対して石渡原子力局長は、統合の前提の条件としては地元の問題が解決をされていることが必要だということを非常に強調されて、私は出力上昇試験もちろんのこと、航海実験もおよそ完了をして、それに必要な諸データが把握できているということが、この前提条件として必要なんじゃないかということを繰り返し言ってきたわけですけれども、いや航海実験が行われるというところまでを条件とはしていませんというふうに言われたわけですけれども、しかし、これはことしの春の通常国会での衆議院の科学技術特別委員会、ここで公明党の議員の方の質問があるわけですけれども、局長はこういうふうに答弁を、当時局長は前の局長でしたか、答弁をされている。「むつ」をまず十分運航データをとるということができるようになるまでは統合ということを考えないわけでございますと。ことしの春の五月の七日の局長答弁。この臨時国会で衆議院でわが党の瀬崎議員が質問をしているわけですけれども、「むつ」についての今後の統合後に残されるスケジュールは何が残るのかという質問に対して、実験航海が残りますということで、ここでちょっと食い違いが起こるわけですね。しかし、出力上昇試験の完了、これは条件であるというふうに言われておる。そこで、さっき聞きましたこの間の私の質問では、地元問題の解決が前提であるということが言われている。何かもうくるくるくるくると答弁が変わっていく、変わっていくというよりもあいまいになっていくという感を強くせざるを得ないわけです。そこで、先ほど私原子力委員会決定文書の内容を聞いたんですけれども、「「むつ」が実験船として活用できることとなった段階」とは何かとお尋ねをしますと、原子力船むつの」運航状態での挙動、経験、これら一定のものが把握できたときということは、これは具体的に言うとどういうことなんですか。私は出力上昇試験だけでは、まだ原子力船むつ」として動くという点では未完成の段階ではないか。実験航海には午前中の御質問にもあったように、第一段階第二段階いろいろありますから、ある程度実験航海完了をして、それに必要な船が動くという点での諸データが把握をされた状況。ですから、もう出力上昇試験が終わったらこれで実験船としての活用ができるという段階になったと、したがって、統合へもういったらよろしいということではないだろうというふうに思うんですが、この点どうですか。
  112. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 私がいろいろ申し上げまして、若干というか、食い違いがあるじゃないかという御指摘でございますが、私どもの立場をまず一言言わせていただきまして御理解を賜りたいわけでございます。  まず、統合という問題につきましては、たびたび申し上げておりますように、昨年の十二月末閣議決定ということで統合するんだということが決定されておりまして、その趣旨を受けまして、ただいま御審議いただいております本法案を提出させていただいているわけでございます。それで、もし成立さしていただきました暁には、立法府の御意思でもあるということになるわけでございますので、私ども行政当局といたしましては、そこでお決め願いました六十年三月三十一日までに統合を実施するということは、至上命令になるわけでございます。そういう責務をわれわれは負うわけでございます。そういう時点にどういう状況に持っていかなければならないのかという行政的な責任は、われわれは負うものであるというふうに理解をしている次第でございまして、そういう時点でどういう状況であるべきであるかということを申し上げたわけでございます。それが逆になりまして、どうでなければ統合できないということを申し上げられるわれわれは立場にはないわけでございます。その点を、ぜひ御理解賜りたいと存じますので、この際先日の発言も踏まえましてこのことを申し上げさせていただきたいわけでございます。  そういうことを前提にいたしまして統合を考えます場合に、何といいましても地元の問題ということで、いろいろごたごたしているということは、これはどうしても好ましくないということが言えるわけでございまして、それを敷衍いたしますと、やはり静かな研究環境というものが取り戻されて、そして原子力船運航ということでいろいろ希望されるデータの取得あるいは経験の取得が可能になっているという状態が望ましいと、また行政的にはそういう状態にまで何とか持っていくべきであるということを申し上げたいわけでございます。  以上が私の申し上げたかった点でございまして、先生の御指摘のお答えにさしていただきたいわけでございます。
  113. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 その前段の部分ちょっと重大なことを言っておられますから、それは後から言いますけれども、私の尋ねておる原子力委員会決定立書でうたっておる「実験船として活用できることとなった段階」というこの内容は、出力上昇試験が完了をし、それで試験として合格だとなった局面なのか、実験航海の一定程度の完了も含むのか、この点はどうなんですか。
  114. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 当時の原子力委員会におきます議論の内容を振り返ってみますと、こういう文章に落ちつきました背景といたしましては、やはり実験航海が済み、船として一応完成できたという状態を背景にいたしまして、こういう文章に落ちついたと記憶しております。
  115. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 本来政府側としてこの提案の基礎として考えておるのは、実験航海も含むと、こういうことで国会の方に提案をしてきたんだということですね。  そこで、ちょっと関連ありますので運輸省に聞いておきますけれども、おられますね。船舶安全法第五条に基づく船舶検査証書の発給がなされるのはどの局面ですか。
  116. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 船舶の検査は普通定期検査と呼んでおりますけれども、その定期検査に合格した時点で検査証書が発給されるわけでございます。具体的に申し上げますと、船としての工事が完成いたしまして、海上において試運転というのをするわけでございますが、そういった試運転における船全体としての効力試験が行われまして、その試験に合格した時点になろうかと思います。
  117. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 海上における船の運転試験と言ったって、これは舶用炉を積んだ船ですね。ですから、そういう点でもって具体的に答弁いただきたいと思いますのは、改修が終わってどこかの母港へ行って出力上昇試験があると。それから午前中の松前さんの質問に対する事業団の方の答弁でいきますと、航海試験のいろんな段階がある性能試験。それから憤熱試験。いろいろ読んでおられましたけれども、どの局面なんですか。
  118. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) 「むつ」の場合におきましては、船の推進機関、これが原子炉を含みますところのタービン船ということでございますので、当然出力上昇試験を経た後でなければ、先ほど私が御答弁申し上げました海上公試運転ということができないということであろうかと思います。
  119. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 出力上昇試験だけでいいんですか。
  120. 新藤卓治

    説明員(新藤卓治君) お答え申し上げます。  出力上昇試験が済みまして、通常その船に求められます性能、所期の出力、あるいは所期のスピードその他そういった性能を満足する段階であろうかと思います。
  121. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうしますと、出力上昇試験だけではまだオーケーということにならぬ。出力上昇試験終わって船として海上を動かして、大体これで性能的にほぼ大丈夫という局面だということですね。  そこで、いま運輸省の方もそういうふうに御確認になっておる。それから法案提出者としての科技庁当局も、さっき改めて再度確認をしましたように、出力上昇試験だけじゃなくて航海試験、これが一定程度やられた上でということを望んでおると、望んでおるわけでしょう。
  122. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 私先ほど言い間違いまして、実験航海終了というふうに申し上げた……
  123. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大事なこと詰めて聞いておるんだから言い間違いということでは困るな。
  124. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 出力上昇試験の完了ということで発言をしたつもりで、間違いまして大変申しわけございません。
  125. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ちょっともう一遍言ってください。
  126. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 出力上昇試験の完了をもって実験船になるんだと。実験データの取得あるいは経験の取得が可能になる段階であると、このように理解をしております。
  127. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私、別にぱっぱぱっぱとあなたごまかすように早口でしゃべったわけじゃない。ずいぶん念を押して念を押して聞いているのに、そんな言い間違いで済む問題ですか。前回質問をしておる関係で、前回あなたはこういう言い方したけれどもどうですかと再度尋ねて、先ほどのというか、もう一回前の答弁で、出力上昇試験だけじゃなく、航海実験の一定段階を含むという答弁があった。何でそういう答弁の間違い起こったんですか。
  128. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 昨年来原子力委員会等で、どういう段階統合と考えるかということでいろいろな議論がございまして、若干混乱をいたしまして申しわけございませんでした。
  129. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、この間から一貫して言っていますように、いよいよこれで原子力船むつ」が実験船として大体大丈夫でございますと、こういうことが確認をされて、それで事業団が——すでにその段階では研究開発事業団という名前になっておるか知らぬけれども、とにかく事業団がどこか統合をして新型の舶用炉、そして新型の原子力船研究開発に乗り出していこうと、こういう論法になっていますわね。当然前提として原子力船、いわゆる原子力船むつ」はこれで大体大丈夫ですということを見きわめてという、理の当然としてそうなるだろうと。その理の当然の中身は、もっと言えば出力上昇試験で、原子炉がばあっと作動をして、出力一〇〇%へいったという、このことだけでは不十分じゃないかと。原子炉が作動をする、それと同時に船が安全な船として動くということが基本的に確認をされたという状況で、これでいよいよ原子力船むつ」は大丈夫ですということに理の当然としてなるじゃないかというふうに思っているんですけれども、なぜそこが後退したんですか、考え方が。出力上昇試験だけで原子力船むつ」としてそれで大丈夫なんですか、出力上昇試験だけで。
  130. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 出力上昇試験から実験航海へ移ります過程につきまして、私どもといたしましての計画を若干御説明申し上げたいと思います。  出力試験につきましては、大体二〇%程度までは船の推力にこの原子力でつくりました動力では足りませんので、それを上回る時点、大体まあ三〇%、四〇%、だんだん上げてまいります。大体四〇%以上になってまいりますと、原子力を動力とした形で船が動くわけでございます。したがいまして、出力上昇試験の大体五〇%以上の段階におきましては、出力を出しながら本船も海の上を走りながら、いろいろのデータをその時点ではとりながら、一〇〇%まで運転を行うということでございますので、この一〇〇%の出力上昇試験までの過程におきまして、本船原子力船として必要な一応のデータはここで得ることができると。  それで、一〇〇%の試験を終わった時点で、いよいよこれで大丈夫だという段階で、今度は海上公試運転ということ、これはいまの運輸省の方でのいわゆる第一回の定期検査の最後のあれになるわけでございますが、その海上公試運転、これは公式な試運転でございまして、この段階では一応私どもの考えております速力が出るかどうかという、この海上公試運転の中身といたしましては速力試験、また時間についての航続試験、さらに後進試験、後ろの方へ進むと申しますか、それからエンジンをとめた段階で大体どのくらい走るかといういわゆる惰力試験でございますとか、今度は補助動力への切りかえ試験、それから操舵力といいますか、船がどの程度の旋回性能を持っておるかというような旋回試験、それからさらにかじがどのくらい効くかという操舵試験とか、それからいわゆる軸系のねじり振動試験でありますとか、船体振動の計測とか、一応原子力船の安全証書をいただいて、いよいよ一人前の原子力船としてこれで大丈夫だということを、国の方の機関で御確認いただくための一連試験を海上公試運転と言っておるわけでございますが、これを受けまして、その時点でこれに合格いたしますと、運輸省の方から原子力船としての安全証書をいただくわけでございます。それをいただきますと、いよいよ一人前の原子力船として今度は実験航海に乗り出して、いわゆる一人前の船としての実験航海に出ていくと。その段階からいわゆる航海をしながらいろいろのデータなり経験を積んでいくということで、その時点からは実験航海と、こういうことになるわけでございます。
  131. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろ言われておりますけれども、この問題は今回の法改正案の重要な骨組みの一つでありますから、はっきりしてもらわなくちゃいかぬ。いわんや局長がさっき、さっきと言ったって三回目ぐらい前ですね、答弁の前段で、国会がこの改正案をお決めになりますと、六十年三月三十一日までに統合するというのが至上命令になりまして、行政当局の願望いかんにかかわらず六十年三月というのがタイムリミット、至上命令になりましてとにかく統合するんですという、これほど問題をすりかえる答弁というのはないと思うんですよ。原子力委員会の文書で出されておる方針書がある。それがもとになって今回の改正案が出されてきた。その方針書にさっきから何遍も引用しておりますような文言が出てくる。原子力船として活用できる段階ということだ、それの具体的な中身はこういうことだなということをお互いに確認し合って、私どもはこの法案に反対ですけれども、賛成なさる会派もそこの認識の上に立って賛成なさるんでしょう。それがどうなっているかわかりませんと、今後いろいろありますから。国会が六十年三月に統合だということをお決めになったら、もうとにかく統合するんですと、そのときに原子力船むつ」の開発進行状況がどうなっておるかにかかわらず、統合するんですよというふうに言わんばかりの論法を出されたら、これはもう審議の土台が狂ってくる。そういう意味で、原子力委員会決定の方針もあるわけですから、この法案提案の背景になっている「「むつ」が実験船として活用できることとなった段階」において、事業団を他の機関と統合するという実験船として活用できる段階、この段階というのは具体的に何を指すのか。そして具体的にこの局面を指すんですという、これが原子力船むつ」として大丈夫だと判定をされる理由ですね。だからどの局面かということと、この局面だというふうに判断基準を置く理由、これをきちっと文書で出してくださいよ。これは委員長にもお願いをしておきますけれども、この法案のいよいよ各会派判断をなさる場合の一つの重大なポイントになるということで、この資料提出を局長に求めますが、どうですか。
  132. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 何回か混乱をいたしましたが、この原子力委員会決定で言われております局面といいますのは、出力上昇試験が終了し、「むつ」が実験船としてデータがとれる段階、すなわち実験船として活用できる段階ということで原子力委員会は考えておりまして、そういう原子力委員会の意思を踏まえまして、法案も御審議をお願いしておる次第でございます。私どもといたしましてはそういう段階にまでぜひ持っていかなければならないと考えているということを申し上げた次第でございます。
  133. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ということであれば、しかしいろいろ言い方が変わりますから、ひとつ後々あのときああいう解釈だったということで、要らざる混乱が起こってもいけませんから、ひとつはっきりしておく意味で、いまあなたも言われた実験船として活用できる段階というのは、具体的にはこの局面なんですと、この局面でいいんですというもう一つ理由ですね、これを文書で出してください。
  134. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) ただいま私が御説明申し上げた文案を文書で提出さしていただきます。
  135. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、今度は長官にお尋ねをいたします。私の意見はありますよ。ありますけれども、二転三転しましたけれども、局長答弁は出力上昇試験が完了し合格をした局面ですと、こう言われた。ところが、前回私が問題にした長官の前々回最後の御発言、前回御答弁なかったんでもう一遍聞きますけれども、こういう言い方されているわけですね。「「むつ」が成功しておることが研究開発をしていく上に非常に望ましいことであると申し上げたのであって、仮に「むつ」が上昇試験ができない、」、これはできていないという意味だと思いますが、「あるいは航海実験ができない、だから合併できないというものではなくて、それはそれなりのデータとして利用できるわけでございます」ということで、この言葉読めば、出力上昇試験が済んでなくても合併することはありますよというふうに受け取れるような表現ですね。長官が科学技術庁の一番長ですから、いや、わしの言うておるのが何だというふうに開き直られたら別ですけれども、これだけ時間をかけて話をして、最終的に出力上昇試験が完了をし合格をした局面だということで、話が進んできているんですけれども、そのことを長官としても確認をされるか。確認をされるのであれば前々回の、ただいま引用いたしました表現はどうしても訂正をしていただく必要があるというふうに思いますが、長官どうですか。
  136. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) これは訂正する必要も何もありませんで、仮にいま出力上昇試験が終われば、実験船としてできると、実験データがとれると、この段階になって研究機関に統合するのがいいと、こう書いてあるわけです。しかし、これは絶対の条件じゃないんで、そういうことの段階にやることが一番いいことだと、そしてまたそういう努力をしなさい。また逆の言い方をすると、原子力事業団がなぜそれまでの間合併しないかと言えば、その段階ぐらいまでは原子力事業団としてやった方が望ましいと、こういう裏の意見もあってそういう説明にはなっておりますが、仮にこれがその段階出力上昇試験ができないから半年待とうとか一年待とうというものではないと。行政改革の精神もありますし、それから長期の職員の身分安定という目的もありますから、三つ、四つの条件のために合併することでありますから、その一つのいまのこの「段階」ということにとらわれてこれを合併しないで済むと、こういうものでないことだけははっきりいたしております。
  137. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 えらい長官、開き直るですな。大臣というのは、自分の一たん言ったことを取り消すということについては、なかなか簡単にできないのか知りませんけれども、あなた同時に、原子力委員会の長を兼ねておられますね、大臣として。で、原子力委員会文書、さっきから何回も引用しております原子力船として活用できる段階に達したとき、その内容は何かと問えば、出力上昇試験が完了をし合格をした局面だと。取り消す、取り消さぬの問題はいいですよ。長官、聞いていますか。局長と長官の言い方が、いろんな違った言い方でこの法案の審議をするわけにはまいらぬと思うのですよ。だからはっきりしてほしい。いま言いました原子力実験船として「むつ」が活用できる段階に達したとき、この局面だという、これは出力上昇試験が完了し合格をした局面、このことは認められるでしょうね。
  138. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私と原子力局長と一つも違ってないんです。先ほど原子力局長が答弁したように、六十年の三月三十一日には統合するというのが、法律の、国会も決めた、議会も決めた至上課題でありますということは、ほかの条件がいろいろ変更されてもこれは変わることはありませんと答弁しているんであって、それをすりかえて違う違うと。原子力委員会考え方は、こういう段階が望ましいということを考えて言っていただけであって……
  139. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 あなたはその長じゃないですか。
  140. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 長ではありましても、それをまた上回る法律で日にちを決めるわけですから、これを変更することはないと言っているんであって、私も原子力局長も何ら変わってないんで、私は私の言ったことに固執をして意地張っているわけでは決してない。ただ答弁の仕方が、前回もそちらが質問したことに対して、何かこれが絶対条件であるような印象に受けとめられて私に決めつけられたから、そういうことはありませんと、はっきり申したわけです。そうしたところが食い違う、じゃ速記録を調べてということになったので、原子力局長が六十年三月三十一日は至上命題でありますという表現で、原子力委員会が指摘している実験ができる段階でというものはそういう解釈ではあるが、それ以上に法律で決めたことは守らなければならないと言うんでありますから、何ら違ってないと、力んでおるわけでも固執しているわけでもございません。
  141. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 六十年三月三十一日というのは、これはまだ国会でこの法案が通るか通らぬか未定なんですよ、大臣は一定の見通しを持っているかもしれぬけれども。六十年三月三十一日ということで法定をした行政改革方針があるんですか。ないでしょう。ただ、政府当局がこの法案を出してきたのには、六十年三月三十一日までに望ましき前提条件が大体満たされるだろうという確信があればこそ、六十年三月三十一日という日にちを入れた法案を出してきたんでしょう。だから、あなたの論法は国会に問題をすりかえる非常に卑劣な論法ですよ。いずれにしても実験船として活用できる段階というのは、少なくとも出力上昇試験は終わって合格してなくちゃならぬということは、これは否定するわけじゃないでしょう。それを大臣が否定するというんでしたら、これは大問題ですよ。どうですか、もう一遍聞きます。
  142. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) もちろんこの法律が通らなければ、六十年の三月三十一日ということは効力を発しないことは言うに及びません。この法律が委員会を通り、国会を通過をしたという段階においての前提であることは言うに及びません。しかし、原子力委員会が決めた段階というのは、いま言った出力上昇試験が終わって実験データがとれる段階に他の機関と合併するがいいと、こういう趣旨のことが書いてあるわけです。そうなんではありますが、それだけがこの法律のねらいではないんです。これは恒久的に研究体制をやっていかなきゃいかぬという目的もあれば、行政改革をやっていかなきゃいかぬという目的もある。そういうことを総合的に判断した結果、六十年の三月三十一日になれば、実験データもとれるであろうという想定のもとにこの法案を出したと。ところが、実験データがとれない、おくれた、こういうこともあり得るわけです。その場合はどうなのか。これができないから、六十年三月三十一日は変更するものであるという趣旨で法案を提出しているものではない。それが仮にできなくても、やはり行政改革の目的、職員が定着して研究体制をとれる、そういったことも総合的に判断をして、別の研究機関と合併をして、そして満たされなかった部分は統合した段階での研究機関でやっていって事は足りると、こういう判断であって、何ら固執もしていません。ただ、いまの活用できることとなった段階においてというだけで法律を提案しているなら、これができなくなったら、延びることがあるかもしれませんと言いますけれども、これだけではない。提案理由にありますように二つ三つのことを総合判断して出した法案でありますから、六十年の三月三十一日には新しい組織に変わるように法案の提案もそのときするんでしょう。そういうことでやっていきたい、そのとき変更することがあるということは断じて言えないと、こういうことでございます。
  143. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 断じて納得できませんよ、いまの言い方は。まあ次回、文書で出すと言うんですから、それをもとにしてもう一遍議論やりましょう。  六十年三月三十一日、行革方針の角度からこのことがありますと言ったって、六十年三月三十一日という日付を入れた行革方針が法定されているわけじゃないでしょう。政府が口で言っているだけじゃないですか。国会で法定をしたわけじゃないです。
  144. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) もちろん国会の意思を私はあなたに聞かれているんじゃなくて、内閣、政府の意思はそこにあるということで提案をしているということでありますから、六十年の三月になればもちろん国会の同意を得なければならぬことは当然ですけれども政府の姿勢はどうかと言うからそういう姿勢でございますと答弁しているのに、大変な問題だと言われるのは全くわかりません。
  145. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 この問題だけやっておるわけにいかぬから次回、正式にその局面とその根拠、これが文書で出ますからもう一回はっきりしましょう。  話を進めまして統合の対象について、この問題で幾つかお尋ねをしたいと思うんですけれども、これも同僚委員の方いろいろ触れておられますけれども、科技庁傘下の他の原子力関係機関、こことの統合を目指すんだということで、考えられるところとしては日本原子力研究所ないしは動燃事業団、こういうとこだということですけれども、まず運輸省にお尋ねしますけれども、船舶技術研究所というのがありますね。ここの原子力船についての研究内容研究体制といいますか、どれくらいの研究者があるのか、それから予算、こんな点ちょっと御説明願いたいと思います。
  146. 佐伯宗治

    説明員(佐伯宗治君) 御説明いたします。  船舶技術研究所では船舶及び船舶用機関等に関しまして調査研究を行っておりますが、造船技術に関する基礎的な応用研究、あるいは行政需要に基づく安全規制、こういったものに関する研究を実施する唯一の国立の機関でございまして、それに必要な設備あるいは研究スタッフを持っております。この研究の一環として原子力船につきましても、原子力船特有の問題に関しまして基礎的な研究、あるいは行政需要に基づく原子力船安全性評価、手法の確立、こういったことについての研究を実施してまいっておりますが、今後もこれを続けていくつもりでございます。  なおスタッフといたしまして、現在本所に原子力船部というのと東海村の原子力研究所の中に東海支所というのがございまして、それぞれ定員十六名と六名で現在研究を続けております。  いままで実施いたしました幾つかの研究テーマを挙げますと、原子力船の安全対策の研究、あるいは原子力船の遮蔽及び環境安全に関する研究、あるいは原子力機関の動揺、振動に関する研究、こういったものを実施してまいりまして、本年度におきましては一体型舶用炉機器の性能研究、あるいは一体型舶用炉の一次遮蔽に関する実験研究、それから原子力船の事故解析の研究、こういったことを現在実施しております。  予算につきましては、原子力関係予算のうち原子力船に関するものは本年度約八千七百万円でございます。
  147. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 先ほど資料についての御意見、要望がありましたが、資料は出しますけれども、当委員会から正式の御要望があった段階で出したい、こういうことでやらさしていただきます。
  148. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それはどういうことですか。私が言って提出をしましょうという答弁があった。大臣も横からいいじゃないかというふうに言っておられたわけです。
  149. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 委員会に出せということならば、委員長の御指示があったことで出すことが国会の慣例になっておると存じます。
  150. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私個人。
  151. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 個人が欲しいというならば、御持参は申し上げます。
  152. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いま船舶技術研究所の御説明いただいたんですが、同様に原子力船問題についての研究、日本原子力研究所ないし動燃事業団の研究体制、どういうことになっているか、御説明をお願いいたします。
  153. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 原研及び動燃の原子力船関係の研究開発という御質問でございますが、原研におきます船舶用原子炉研究に関しましては、過去原子力船事業団や船舶技研との間の共同研究あるいは受託調査という形で実施されているわけでございます。  また、原研の動力試験炉におきまして昭和三十八年の運転開始以来昭和四十三年にかけまして、負荷変動に関するタービンバイパス系の性能試験、これは船の急停止あるいは急起動に対応する負荷試験で、通常の軽水炉の場合の約五倍の大容量のタービンバイパスを設けて実施したということ。また、大きな出力の変動に対する原子炉の過渡応答性試験等船舶用原子炉に関係の深い研究を行ってきております。  それから、同じく昭和三十六年から四十三年にかけまして原子力船関係者がJPDR、先ほどの動力試験炉でございますが、建設、運転試験等に多数参加をいたしまして、JPDRを使って原子力船技術者の養成が行われたという実績もあるわけでございます。しかしながら、最近ではいわゆる舶用炉としては圧力水型、PWRが定着してまいったということがございまして、沸騰水型でありますJPDRにおきましては昭和四十四年の改造以降、特に船舶用原子炉と関係する研究は行われておりません。  それから、動燃におきましては原子力船に関係のある研究開発は行っておりません。
  154. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 研究内容的な御説明願ったわけですけど、研究者の人員問題などのそういう研究体制ですね、原研と動燃の。動燃はないということですけれども
  155. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 直接の関係のある原研の研究体制といたしましては、遮蔽研究室がそれに相当するかと存じますが、現在の原研の遮蔽研究室の人員は四名でございまして、専任二名、兼任二名、計四名ということでございます。
  156. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それで、六十年三月に統合を目指すという提案ですけれども一つ統合をまだどことも決めてないというわけだけれども、どこということに最終的に決める基準ですね、ここがふさわしいという判断基準のようなものはどういうことを考えていますか。
  157. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 直接的な物差しというものではございませんで、その時点におきます「むつ」の研究開発の進展状況、あるいは原子力船を取り巻く状況、この場合は世界的な状況になりましょうが、研究開発の進展状況等を踏まえまして最も適当な統合の対象を決めたいと、このように考えているわけでございまして、ただなるべく早い機会にそういう検討に入らなければならないというふうに考えている次第でございます。
  158. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 これから具体的な検討に入る段階だということですけれども、先ほど来の御質問で明らかのように、船舶技術研究所の方は支所を含めますと二十二人の研究体制。それから原子力研究所は四人、うち専任は二人だと。人数対比をしましても、どちらが原子力船研究について蓄積があるかということはおのずから判断がつくことでありますけれども、しかし、これが例の行革の一省庁一法人をスクラップするというこの関係から、科技庁傘下の他の機関との統合をと、こういう形で問題が提起をされてきておるということじゃないかと思うのですけれども、私はこの論の立て方というのは、この「むつ」問題発生以来、大山委員会でも触れております最も基礎的なところからの研究の蓄積が不十分であったという、これがはしなくもああいう「むつ」の事故を起こす重要な原因の一つになっているということで、大山委員会が以来つとに指摘をしてきておる問題ですね。こうした点については、仮にどっかと統合をするにしても、どう原子力船問題についての研究の蓄積を生かすかということについては、検討をされた経過はあるんですか。
  159. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 統合問題が議論されましたときに、当然原子力船開発事業団の共管官庁であります運輸省とも十分な議論がその点なされたわけでございまして、将来とも相補完する形で十分うまくやっていけるという判断のもとに、今回のような結論を見出した次第でございます。
  160. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 逆に運輸省にお尋ねをしますが、もし法案に言っているような方向で、六十年三月統合が起こるということになった段階、船舶技術研究所の方は一定の機構縮小が起こると、研究の縮小が起こるというようなことがあるんですか。
  161. 佐伯宗治

    説明員(佐伯宗治君) 御説明いたします。  先ほども御説明しましたように、一般船舶に関する研究の一環として、原子力船研究を行っておるわけでございまして、私どもは縮小を現在は考えておりません。
  162. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 もう一つお尋ねしますけれども、六十年の三月統合を目指すというんだけども、いよいよどこと統合を目指すという問題は、これは政府の権限で決めるというやり方なのか、国会の同意を必要とするという考え方なのか、どうなんですか。
  163. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 統合につきましては、その段階法案をまたお願いするわけでございますから、当然政府の責任において案は提出させていただきますが、国会の御承認を得るということになるかと存じます。
  164. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 松前さんも塩出さんも触れられましたけれども、この問題については事を慎重に進めなくちゃいかぬと。行政改革とはいえ、機械的に事を性急にやったらいかぬということでありますし、片や私は船舶技術研究所の問題を一つの例にして、いままでのせっかくの研究の蓄積を十分引き継いで、どうやってその発展をさせるかという、こういう見地に立った総合的な検討が得られなくちゃならぬというふうに思うんです。そういう点で、行政改革論だけの立場から問題を詰めるんじゃなくて、本当に研究開発事業団として今後の発展を目指そうというのであれば、実際の研究内容充実がどう図られるかという、この角度からの検討がこれから大いにやられる必要があるというように思いますが、長官その点は見解どうでしょう。
  165. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 全くそのとおりでございまして、合併する相手先の選定、そしてまた、出力上昇試験が終わって実験データが得られるように最善の努力を尽くしたいと思います。
  166. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 現在佐世保で行っております「むつ」の改修並びに安全性総点検の関係で少しお尋ねをしますけれども、これはいままでも何回か当委員会で私も発言をしてきたんですけれども安全性総点検について言えば設計図上の点検にすぎない。圧力容器については、ふたをあけて中に立ち入って綿密な点検がやられるという、そういうことにはなってないということで、いわば手抜き改修、手抜き点検ではないかということを言ってきたわけですけれども、いやそうじゃないということで強弁をして事が進められてきているわけですけれども、そこでことしの十月、科学技術庁と運輸省の名前で出されております原子力船むつ」の安全性総点検、補修工事についてというこの冊子、これはいかなるものですか、どういう目的のものですか。
  167. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 安全性総点検に伴います補修工事につきまして、どういう内容の工事であるかという御説明のために当庁並びに運輸省で作成した資料でございます。御説明のための資料でございます。
  168. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 これ長崎や佐世保への地元説明用につくった資料じゃありませんか、もっと具体的に言うと。
  169. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 地元の方々に御説明するために作成をいたしました。
  170. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 しからば、この資料に基づく長崎県や佐世保への説明は、いつ、どんな形でやられてきたんでしょうか。
  171. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 去る十月二日に担当官を長崎県に派遣いたしまして、地元の関係者の方方にその内容を御説明いたしたところでございます。
  172. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私が耳にしているところでは、ことしの十月二日長崎市において、これはいわゆる五音協定の関係団体、ここに対して口頭で説明を行ったというふうに聞いています。それから十月六日、佐世保市において議会の全員協議会、ここで同様に口頭で説明を行ったというふうに聞いていますが、それに間違いありませんか。
  173. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 先生お手元の資料を配付いたしまして、御説明をいたしました。
  174. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いまの二回は間違いないですね。
  175. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 六日の日の御説明は、佐世保市の方からの御要望で私どもが御説明をいたしました。
  176. 石渡鷹雄

    政府委員石渡鷹雄君) 十月二日には科学技術庁から担当官を派遣いたしましたが、六日は事業団単独で長崎、佐世保市の議会関係に御説明した、こういうことでございます。
  177. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 さらに、今後の地元説明はどういう計画がありますか。どこの、だれが、いつ、どんな形で説明するか。
  178. 倉本昌昭

    参考人倉本昌昭君) 今後私どもとしては引き続き御説明を地元にはしていく所存でございますけれども、さしあたり、まず現在予定をしておりますのは、今月の二十七日に長崎県の御要望もございまして、長崎県に出向いて県議会の総務委員会に御説明をするという予定にいたしております。
  179. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろお尋ねしましたけれども、私が指摘したい問題は、改修工事の安全性確認については、事業団じゃなくて、国というか原子力安全委員会が責任を負っているわけですね。しかし、にもかかわらず、たとえば十月六日の佐世保市における説明会、これには国が出向いていないと、事業団任せになっていると、こういう状況でよろしいのかということが一つなんです。  それからもう一つは、議会の代表とか五者協定の代表とか、そういうところには説明をしているわけですけれども、昨年いよいよ佐世保で改修工事に入るかどうかという局面の段階では何回か足を運んで、たとえば公民館なんかにも出向いて、いろいろ質問があればそれに答える、こういう労をとったにもかかわらず、なぜ今回トップレベルだけのそういう話し合いで済ませていくのか、説明で済ませていくのかというこの二点、どうですか。
  180. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 今回の総点検・改修にかかわります安全性につきましては、先生御承知のとおり、すでにいわゆる大山委員会、それから総点検・改修工事技術検討委員会としていわゆる安藤委員会、これの結果を踏まえて事業団においてこういう改修の方針が出されたと承知しております。安全委員会として当たりますのは、こういう具体的な改修につきまして申請がありますと、まずわれわれ行政当局として審査をし、そしてそれを安全委員会がダブルチェックを行うという形で関係するわけでございます。ただし、こういう総点検に基づく安全性確認でございますので、申請された事項だけを、表だけを審査して、全体の安全性を判断するに不十分な場合には、こういう考え方が出た背景につきまして、総合的な審査を行うことになるかと思われます。したがいまして、この説明書にありますのは、まだ具体的には安全委員会のダブルチェックを経たものではございませんが、先ほど申しましたような二つの委員会によって、広い学識経験者の総合的な検討の結果出されたものと承知しております。
  181. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 質問に対する答えになってないと思うんです。私が言っているのは、これはいわゆるスリーマイル事故教訓も含めて、改修計画について若干の見直しもやって出したものでしょう。それの説明書でしょう。ですから、そういう点でスリーマイルのあの事故以来、非常に大きな不安が起こっておる。果たしてその教訓がきちっと組み入れられて、「むつ」大丈夫だというそういう補修工事になっているかどうか。ここの疑問に答えて、地元に対して労をいとわずそういう説明をもっと積極的にやるべきじゃないかということを言っておるわけです。  時間参りましたので、最後にもう一問だけお尋ねをしておきますけれども、実はこの「むつ」問題にかかわって昭和五十三年六月の二日の当委員会で、私は地元の説明会、公聴会にとどまらず学者、専門家の意見を広く聞く、そういう「むつ」シンポジウムとも言うべきものをひとつ積極的にお考えになったらどうかということを、会議録にも載っておりますけれども提起をいたしました。それに対して当時の山野原子力局長、こういう御答弁をなさっているんです。前段ずっとあって、いろいろそういうシンポジウムのようなものなんかも必要に応じて今日までやってまいりましたということを言いつつ、「きょう現在「むつ」についてそのような企画はあるかと聞かれますと、きょう現在はないわけでございますが、将来課題としまして前向きに検討したいというふうに考えております。」と答えられておるわけですけれども、この「むつ安全性の問題について単に地元だけじゃなくて、東京の段階といいますか中央段階でも非常に大きな「むつ」の安全性原子力船の行方についての関心もあり、果たして安全かという不安も寄せられておる。こういう点で、形態は問いませんけれども、広く学者、専門家のいろんな意見を聞く、そういう場をひとつ検討をされたらどうか。本当にこれが国民信頼の原子力行政を進めていく上で、いま必要なことの一つじゃないかというふうに私は思うんですけれども長官、どうでしょう。
  182. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 先ほど申し上げましたとおり、今回の安全性の総点検につきましては、大山委員会、安藤委員会の手を経ております。ここでは原子力関係、船舶関係を初めといたしまして、広い専門の方が参画されて答申を出されておるところでございます。そしてさらに先ほど申し上げましたように、ダブりますけれども、行政庁において顧問の方々とも御相談いたしますし、ダブルチェックの原子力安全委員会では原子炉安全専門審査会で、またこれ非常に広い専門家の方々の御意見を伺った上で総合的な審査をする予定にしております。シンポジウムのような形のものは基礎的な事項等につきまして、必要性は私ども感じておりまして、今後とも積極的に進める検討はしているわけでございますけれども、このような具体的な問題につきましては、こうした公式の機関で、日本じゅうの得られる専門家の方々を総動員といっては失礼でございますけれども、衆知を集めて審査をしていただきますので、その方が適切ではないかと考えております。
  183. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 本日は終わります。
  184. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時三十三分散会