○
美濃部亮吉君 私は最終の質問者でございますが、わずか十五分でございますからもう少々ごしんぼうを願います。
国鉄再建法案は、
国鉄が
赤字を出して累積七兆円に近くなろうという
状況を脱して健全な財政
状態となって再び活気のある
国鉄を取り戻す、その基本的な計画を
法律化したものであろうと思います。その当然の結果でございましょうけれ
ども、この
法律を貫いている哲学と申しましょうか、基本的な
考え方と申しましょうか、理念と申しましょうか、そういうものが二つあるように思います。
第一は、当然のことながら
赤字がどうして出てきたのか、その原因を追求しようと、そして、それがわからなければ当然対策というものも立たないわけでございます。それからもう
一つの理念と申しましょうか、それは
国鉄が基幹的な
交通機関であるという自負を持っていることだと思うんです。
それでありますから、この
国鉄の再建計画というものがやはり全
交通政策の上から、あるいはもう少し大きく全国民
経済の
観点から見られなければならないと、そういう
考え方であると思います。そうして、私は、この二つの
考え方が根底になっているということに全面的に賛成をするものでございますが、しかしながら実際にそうなっているかどうかということは別問題で、私は、その点において十分ではないのではないか、あるいは額面どおりにいっていないのではないかという懸念を持つものでございます。
まずその原因についてでございますが、その
赤字の原因は二つに分けられて、
一つは経営技術的ないろいろな問題というものでございまして、この点においては相当丁寧に列挙されております。しかしながら、もっと大事なのは構造的なものであって、それは
法律の中にもそう書かれてございます。この構造的なもの、つまり
経済社会の変化から出てきた
赤字、これは非常に重要であるとともに、その対策が非常にむずかしいと思います。しかしながらこの対策ができなければ、経営技術的で一時的に
赤字が解消されても構造的なものは残りますから、一時はいいかもしれないけれ
ども、またもう一度
赤字が出てくるということはむしろ必至だと言えると思うんです。
しかしながら、この構造的なものに対する追及がほとんど全くなされていないと、その点が非常に遺憾であると思います。それで、見ようによっては
赤字線を
廃止するということがこの構造的な
赤字対策であるというふうにも考えられますけれ
ども、これはそうではなくて、もう少し複雑になってはおりますけれ
ども、
国鉄が収支が償わないと思った地方
鉄道は、結局は
廃止することができるということになっておりまして、これはむしろ構造的なものに対する対策というよりも、経営技術的な対策であるというふうに考えざるを得ないのであります。
それから次の、つまり
国鉄が基本的な
幹線であるということから、その整備計画が国民
経済的なあるいは国民全般に対する
影響を十分に考えなければならないという点においては、私は遺憾ながら
赤字線の
廃止というものが、何と申しましょうか、
国鉄の自由意思によって、もちろん協議会というふうなものがございます。しかしながら、協議が調わなければ二年後には
見切り発車ができるということになっておりますから十分なことはでき得ないのではないであろうか。そうして、たくさんの御質問がありましたように、このことから
経済的なあるいは
地域的なあるいは
地域住民に対するいろいろな悪い
影響が出ざるを得ないというふうに思うのであります。
きのうの朝日新聞に法政大学の力石さんが提案をされております。それは軽油税、これが、私は存じませんけれ
どもイギリス、ドイツなどよりも非常に安いそうですが、この軽油税を課することによって
トラックの
輸送数を減らしてそれを
国鉄に傾斜させるということ。そのことによって
国鉄の
赤字を解消するのがいいのではないか。
それから、私が考えたことでございますけれ
ども、
トラックの排出ガスの二酸化窒素の規制というものは全くございません。これをやはり厳重に規制することによって
トラックの
貨物輸送を制限をするということも可能であろうと思います。
あるいは、先ほどどなたかの御質問にも出てきたように、
国鉄は
赤字が出るのが私は当然であると。それは私の経験で、都内のバスが
赤字が出るのはこれはどうしても仕方がない。それから都立の病院が
赤字が出るというのも仕方がない。これは親方日の丸ではございませんけれ
ども、国がめんどうを見なければならない
赤字である。それがつまり市民の幸せのためなんだから、民主主義的政治である以上は当然なすべきことではないだろうか。そういうふうな
考え方からして、相当思い切った補助金を出すということもやはり
一つの構造的な対策であろうというふうに思います。
国鉄さんも、新
幹線ばかりに力を入れて
赤字の
鉄道をないがしろにするというふうなことはなさらずに、数年前に警察庁が出しました「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」というスローガンをよくもう一度考えていただきたいということをお願いして私の質問を終わりますが、どうぞ
大臣と
国鉄総裁の御
意見を伺わしていただきたいと思います。