○
目黒今
朝次郎君 私は、日本社会党を代表して、本案に対し、お手元に配付のとおりの内容の修正案を提案いたします。
これより、その趣旨について御
説明を申し上げます。
提案された
国鉄経営再建
法案は、過去債務のたな上げと
経営改善計画についての条項を除けば、
地方交通線対策についてであります。しかもそのために
国鉄を現在支えておる
日本国有鉄道法、国有
鉄道運賃法、
鉄道敷設法及び日本
鉄道建設公団法をこの特別措置法で改正しようとしており、いずれも
地方交通線に
関係しており、
国鉄の
経営の分野から
地方交通線を
廃止、あるいは分離しようとするものであります。
現在、エネルギー問題、環境保全等交通を取り巻く制約
条件の中で
国鉄の機能をいかにすべきかは重要な課題であり、
国鉄経営の再建は、この課題にいかに取り組むかが問題であります。しかるに今回の提案の主たる部分は、
地方交通線の切り離しであって、地域交通を分担している
国鉄が有無を言わさず撤退しようとするもので、とうていわれわれの賛成できるものではありません。提案されてから今日まで、この
法案の内容が広く知れわたるにつれ、ここに定められた
地方交通線を抱えている地域、そしてとりわけ特定
地方交通線に該当するのではないかと推測される地域では、きわめて大きな関心と不安の声が高まっております。
法律で
地方交通線あるいは、特定
地方交通線と定められてもそれらの線区は、その地域においては生活
路線であり、なくてはならない
路線であるわけですから、この本案のように一方的に
国鉄から切り離すということについて強い
反対の意思が表明されることはまた当然と言わなければなりません。当
委員会では
法案審議に誤りのないように審議の早い
段階で現地
調査、
地方公聴会を開催したわけですが、参加された委員各位もこうした国民の生の声を聴取する中で改めてその事態の重大さに痛感したところではないかと思うわけであります。
よって私は、国民各層の生の声を正しく受けとめ本
法案が真に国民の期待に沿えるようなものにするため、本
法案に対し次の諸点を修正すべきものとして修正案を提出した次第であります。
その第一は、特定
地方交通線対策についてであります。
原案は、
国鉄が政令の基準に照らし、ハス輸送に転換することとし、特別
地方交通線対策協議会に協議させ、二年後に結論を得ない場合であっても
国鉄が代替輸送の手配をし、当初の決定どおり当該特定
地方交通線を
廃止することとなっています。この対策は、まさに問答無用、一方的な結論を押しつけるものであります。特別
地方交通線として予想される線区は、当該地域交通の維持
整備に深いかかわり合いがあり、原案に見るように
国鉄の
経営、営業
収支だけの観点からのみその存廃を決定し、一片の通告によって
廃止することは問題があります。よって特定
地方交通線の取り扱いについては広く
関係者の
意見を聞き、特に利用者と地域住民の生活に責任を負うべき
地方自治体の長等も加わっている協議会の会議において協議を行い、その結論を得て処理する必要があります。また協議が調わないときにおいても、県
知事が当該地域交通の確保についての
意見を出すことによって
関係住民の声を反映させようとするものであります。堂垣内
北海道知事を初め全道の首長、亀井
福岡県知事を初めオール九州の県
知事、あるいは山本宮城県
知事など、現在
全国の
反対運動の大部分は本条項にあると私は
考えますので、与党の委員を含めてこの生の声を生かすよう特にこの点は付言をしておきたいと存じます。
第二は、原案は、
地方交通線を他に貸し付けまたは譲り渡しをできる道を開こうとしていますが、
地方交通線にかかわる地域交通の維持
整備は現下の交通問題であり、適切な交通政策の展開が強く要求されているところであります。
国鉄の営業
収支と都合だけでその
経営から分離するかどうかの前に当然地域交通の維持
整備について
関係者による検討が必要であります。政府は最近われわれの主張を入れ、地域交通の維持
整備計画を各都道府県ごとに陸上交通審議会の部会を設けて策定することになっており、
国鉄地方交通線に限って当然なことであるこのような手続を省略し、
国鉄経営から分離することをすべきではありません。よってこの条項は削除することにいたします。
第三は、原案によれば、
地方交通線によっては「
地方交通線の
運賃は
収支の改善を図るため必要な収入の確保に配慮して」決めるとしていますが、ここで言うところの
運賃は、
幹線糸に比べ割り高なものを
考えての
運賃を設定しようとするものであります。
地方交通線の実情は、いまより割り高な
運賃を設定した場合、
収支の改善を図られるものではなく、むしろ
国鉄離れを強要することになり、かえって収入悪化を招きかねないと思うのであります。したがって、このような割り高
運賃の導入は、これによる利用減を期待し、ひいては営業線の
国鉄からの分離または
廃止を企図しているものと言うべきでありましょう。かかる方策は
国鉄経営再建に相反するものでありますから、この条項は削除することにいたします。
また、都会地を中心に、特に関西、関東を中心とする
国鉄運賃は、その区間や
路線に並行した
地方鉄道または軌道の
運賃に比べてかなり割り高になっており、
国鉄の利用を妨げているものがあり、資源の最適配分からも公正競争の観点からも、これを調整し引き下げるべきであり、かかる措置によって競争力を回復し、
国鉄の利用を増加させ、
経営再建に役立てるべきであります。よって、かかる
運賃調整の条項を新設することにいたします。
第四は、
地方交通線に対する
助成の条項についてであります。
原案は、
地方交通線の
運営に要する費用を
補助するとなっていますが、
地方交通線の
運営は地域における国民生活を支えるものであり、かつ、
経営には限界がありますから、
国鉄の責任で
収支の均衡を図ることは困難であります。また、その
運営については、国の政策責任もありますので、適正な
国鉄の
経営努力がされた場合に生じる欠損は、国においてその全額を
補助することに修正するものであります。
第五は、
国鉄の新線建設についてであります。
建設後開業したとしても輸送効率が著しく低いことが予想されるものについては、
国鉄の
経営上あるいは地域交通体系
整備のため引き続き新線建設を続けようとするものを除いて、その
計画を中止すべきであります。原案は、
地方鉄道業者の要請によって新線建設を続ける道を開いていますが、形を変えた政治
路線の建設であり、われわれの容認できるものではありませんのでこれに
関係する条項を削除しようとするものであります。
第六は、
国鉄の自主性に
関係しての問題であります。
原案によれば、
国鉄が
運輸大臣の承認を得て進めている
経営改善計画も、中途において
運輸大臣は変更の指示ができることとしていますが、これは過ぎたる干渉であり、
国鉄の自主性と責任を無視したものでありますので本条項を削除することといたします。
なお、本修正案は、最も被害の多い
北海道、九州、あるいは
地方公聴会に出た
気仙沼線、丸森線の
関係する宮城県を中心とした東北の
皆さん、山陰、山陽、関西、中国など
全国至るところで
反対運動が見られておる国民の要求に、ぴったり合った判断だと
考えまして、十一月の十一日の
委員会提案、十分な審議を生かしてい
ただくことを提案したわけでありますが、自由民主党の
反対で提案できなく、今日に至ったことはきわめて残念であり、強く抗議を申すものであります。同時に、今後の議事
運営において、このようなやり方について改善する方向を十分に議論されることを申し添えて、本案の提案にかえたいと存じます。
何とぞ自民党の議員も含めて、
地方では
ローカル線を残す、国会では
ローカル線を撤去する、このような二面性のないように慎重な配慮をもって本修正案に賛成されんことを心から期待をいたしまして、提案理由の
説明を終わります。