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1980-10-09 第93回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十五年九月二十九日)(月 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の とおりである。    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       荒舩清十郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    江崎 真澄君       小渕 恵三君    越智 伊平君       海部 俊樹君    後藤田正晴君       始関 伊平君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    砂田 重民君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       細田 吉藏君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    渡辺 栄一君       阿部 助哉君    石橋 政嗣君       稲葉 誠一君    大原  亨君       岡田 利春君    中村 重光君       野坂 浩賢君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       正木 良明君    矢野 絢也君       佐々木良作君    永末 英一君       寺前  巖君    不破 哲三君       松本 善明君    河野 洋平君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十五年十月九日(木曜日)     午前九時二分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       江崎 真澄君    小里 貞利君       小渕 恵三君    越智 伊平君       鹿野 道彦君    海部 俊樹君       後藤田正晴君    近藤 元次君       始関 伊平君    塩崎  潤君       砂田 重民君    瀬戸山三男君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    細田 吉藏君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       渡辺 栄一君    渡辺 省一君       阿部 助哉君    井上 普方君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       小野 信一君    大原  亨君       岡田 利春君    中村 重光君       野口 幸一君    山田 耻目君       草川 昭三君    正木 良明君       矢野 絢也君    永末 英一君       寺前  巖君    東中 光雄君       正森 成二君    松本 善明君       柿澤 弘治君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     石破 二朗君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  石川  周君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         総理府賞勲局長 小玉 正任君         総理府人事局長 亀谷 禮次君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     谷口 守正君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         行政管理庁長官         官房審議官   林  伸樹君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  実君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁総務         部長      菊池  久君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省理財局次         長       宮本 保孝君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁長官   渡部 周治君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文化庁長官   佐野文一郎君         文化庁次長   別府  哲君         厚生大臣官房長 吉村  仁君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 山村 勝美君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 松田  正君         厚生省援護局長 持永 和見君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    矢崎 市朗君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君         労働省労政局長 細野  正君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         自治省財政局長 土屋 佳照君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 十月九日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     近藤 元次君   澁谷 直藏君     小里 貞利君   正示啓次郎君     鹿野 道彦君   武藤 嘉文君     渡辺 省一君   野坂 浩賢君     井上 普方君   横路 孝弘君     小野 信一君   不破 哲三君     正森 成二君   松本 善明君     東中 光雄君   河野 洋平君     柿澤 弘治君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     澁谷 直藏君   鹿野 道彦君     正示啓次郎君   近藤 元次君     塩崎  潤君   渡辺 省一君     武藤 嘉文君   井上 普方君     野口 幸一君   小野 信一君     横路 孝弘君   東中 光雄君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   塩崎  潤君     荒舩清十郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、予算実施状況に関する事項につきまして、議長承認を求めることとし、その手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小山長規

    小山委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ――――◇―――――
  4. 小山長規

    小山委員長 これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。海部俊樹君。
  5. 海部俊樹

    海部委員 自由民主党を代表しまして、鈴木総理大臣のお考えをいろいろとお尋ねしてまいりたいと思います。  最初に、内外ともに非常に激動時代だと言われ、また、きょうまでの参考書や教科書がいろいろな意味で通用しなくなってきた新しい時代に向かって、総理大臣としての大きい重い責任を背負っていただく鈴木総理に大変御苦労さまでございますと申し上げると同時に、この厳しい内外の諸情勢でございますので、きょう総理大臣として臨まれた初めてのこの予算委員会でもありますから、率直にお尋ねをいたします。  総理大臣所信表明で述べられたことによって、私は、この八〇年代というものを総理はどう受けとめていらっしゃるのか、ひたすらな豊かさを求める時代は終わった、そして激動の七〇年代を乗り越えてこれからの八〇年代というのは一体どんなふうになっていくと御認識になっておるのか、また、この国をどう導いていこうとお考えになっておるのか、基本についてまずお示しをいただきたいと思います。
  6. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま海部さんからお尋ねがございましたが、私は、わが国をめぐる内外情勢はきわめて厳しいものである。私ども外交の国際的な分野におきましても、アフガニスタンに対するソ連の介入あるいはイランにおける米大使館人質事件あるいは最近のイラク、イランの紛争、そういうように国際政局も、また軍事情勢も大変厳しい様相を示しておるところでございます。  また、経済の面におきましても、石油の高騰、またこれが生産の規制その他いろいろな戦略物資的な扱いによりまして世界経済が大変な打撃をこうむっておるわけでございます。世界経済の停滞あるいはインフレの高進あるいは失業の増大、国際収支の悪化、そういう問題がございます。そういうようなことから、貿易の面におきましてもとかく保護貿易主義の台頭というようなことも懸念をされる、こういう状況にあると思います。また、わが国の内政につきましても、こういう影響の中で今後いままでのような高度の経済成長ということは期待できない。私どもは、いままでのわれわれが築いてきたところの経済安定成長、また豊かさというものを今後も守ってまいりますために今後一層の努力が必要である、このように考えておるわけでございます。  私は、そういう意味で、豊かさを追求するということよりも、今後は安定成長の成果を分かち合う、そういう国民が納得するような政治を志向していかなければいけない、このように認識をしておるわけでございます。鈴木内閣としては、こういう認識の上に立ちまして、今後の施策を推進してまいる所存でございます。
  7. 海部俊樹

    海部委員 総理のお考えはこの間の所信表明で私も十分承り、いまの御答弁でもありますように、安定成長下においては公平に平等に皆が分かち合う、けれどもそれは結果ではなくて、すべての国民にひとしく能力を発揮する機会が与えられ、その努力が正しく報われる、同時に、恵まれない人々にはきめ細かい配慮の行き届いた思いやりのある社会、こうおっしゃっております。  私は、これは人間尊重政治の基盤に置いて、活力ある社会をつくり出して一人一人の個性や能力をうんと引っ張り出して、結果において社会に役立ってもらうような活力のある社会を描いていらっしゃる、こう理解をいたしておりますが、総理のいまの御答弁でその点よくわかりますので、どうかその方面に向けての指導力を発揮していただくことを心からまずお願いいたします。  同時に、対外的には、私は実は先月イギリスのシェフィールド大学に招かれて、シンポジウムに参加してまいりました。ロンドンの街角の本屋で、街頭にかかっておる地図を見た途端にはっとしました。あたりまえのことかもしれませんが、この地図日本が載ってないのです。真ん中に載っていないという意味です、見なれたところに。東の端に載っておりました。結局、極東とかファーイーストとかいう言葉が、その地図を見ると実感としてはっきりわかるわけです。そうして、やはり日本の国は面積でいくと〇・二五%、人口が三%。その中で国民総生産や輸出、輸入の経済力は約一割になっておる。その一割国家としての責任を八〇年代は世界にどう果たしていくか。しかし、日本はいろいろな今日の立場からいくと、確かに経済的には力のある大国になりました。サミットにも参加をしてそれなり責任を負っております。しかし、資源の面からいくとこれはもう小国で、軍事小国であることも御承知のとおりであります。軍事的に貢献すること、あるいは資源の面で貢献すること、それは当面できないとすれば、やはり経済の面で世界に向かって貢献すべきこと、やるべきことがいろいろあるはずであります。総理のおっしゃる和の政治とか、きめの細かい配慮というものは、やはりただ単に国内だけにとどまらず、発展途上国やあるいはいろいろな国に対してそれぞれ、日本の持てる力、日本のでき得る問題はできるだけ協力をして、そして配慮をする、地球全体が和のもとに平和を守っていく、こういうことが根底に貫かれてしかるべきだと考えておりますけれども世界に向かってできること、これから日本世界に何をなすべきだ、その基本についてお考えを一言お漏らしいただけたら幸せです。
  8. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 海部さん御指摘のとおり、日本の平和と安定、そして繁栄というのは、世界の平和と安定が確保されて初めて実現するものでございます。そういう意味で、日本国際社会責任ある一員といたしまして、世界の平和と安定のために努力をしなければならない、私どもはそういう責任を感じておるわけでございます。特に、御指摘のように開発途上国等におきましては、最近の国際経済影響等も深刻に受けておりまして、大変経済的にも社会的にも不安な状態が続いておる状況に見受けるわけでございます。  そこで、わが国といたしましては、経済大国としての今日の立場からいたしまして、これら開発途上国に対しまして、経済協力あるいは技術援助その他の分野におきましてもできるだけの協力援助をやりまして、世界の平和と繁栄に寄与していかなければならない、このように考えておるところでございます。
  9. 海部俊樹

    海部委員 いろいろな貿易摩擦の問題であるとか、あるいは世界の中における日本という立場を明らかにするとともに、日本がやはり世界から理解をされ、認められる国になっていくためにはそれなり努力協力が必要だと思いますので、そのことを特にお願いをいたしておきます。  次に、鈴木内閣政治姿勢についてお尋ねするわけでありますけれども、まず最初に、昨日まで三日間続きました衆参両院の本会議質疑応答において、憲法に関する問題が何回か論議されました。私は、鈴木内閣の現憲法基本精神を守る、現憲法改正考えていないといういろいろなやりとりについて、じっと拝聴をいたしました。国民皆さんもこのことについては大変関心があろうと思いますから、予算委員会の冒頭に当たって、改めて総理大臣として、鈴木内閣が現憲法に対してどういうお考えを持っておられるのか、お述べをいただきたいと思います。
  10. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 憲法につきまして改めてお尋ねがございました。私は、まずはっきり申し上げておきますが、鈴木内閣においては憲法改正する考えは毛頭持っておりません。現行憲法平和主義民主主義基本的人権尊重、こういうようなすばらしい理念を持っておるわけでございまして、私どもは現憲法を誠実に遵守し、そしてこれを擁護し、われわれ閣僚はもとより、公務員がこれを誠実に実行してまいる、こういうことを明らかにいたしておるところでございます。ただ、私はこの機会に申し上げておくのでありますが、憲法九十六条に憲法改正手続が明記されております。これは憲法につきましていろいろ研究をしたり論議をしたり意見を述べたり、そういうようなことは決して憲法遵守の規定に違反するものではない、これは矛盾するものではない、このように考えておるわけでございます。  鈴木内閣は、憲法はあくまで遵守してまいるということをはっきりしておるわけでございますから、閣僚の諸君も誤解を招くようなことのないよう言動には慎重を期してもらいたい、このことも強く求めておるところでございます。
  11. 海部俊樹

    海部委員 これは外務大臣にちょっとお尋ねしたいと思いますけれども、けさの報道によりますと、金大中氏の判決文要旨外務省が入手されて、その中に、それは国家保安法を適用したものであるというような見出しであります。金大中氏の事件というのは、わが国が舞台になったものでもあり、またわが国との主権のかかわりも出てきておる問題でありまして、国民関心も非常に高いわけであります。外務大臣はどのような要旨を入手されたのか、どのような御判断を持っていらっしゃるのか、ここで御報告をいただきたいと思います。
  12. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  判決の理由の要旨でございますが、韓国からわれわれが受け取りました中に、被告人金大中に対する反国家団体関連部分については、友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、被告人韓民統議長の身分を引き続き維持しつつ国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、国内法上の証拠により本件を判断したことを明らかにする次第でありますという内容の重大な部分があるわけでございまして、国内法上の証拠によりということで、外国との関係は十分に考慮したということで国内で犯したということを言っておりますので、私どもは、この問題につきましてはいわゆる政治決着に該当するものではないというような判断をしておるわけでございます。  ただ、先生おっしゃいましたように、金大中という人の身柄につきましては、拉致事件ということがありましたので、われわれとしましては重大な関心を持ってこれを見守っておるということでございます。
  13. 海部俊樹

    海部委員 これがいわゆる政治決着に抵触するのかしないのかの議論も当然起こるので、そのことは後からお聞きしようと思ったら、決着に抵触しないという御答弁がもうすでにいまありましたので、政府はそのように考えていらっしゃるということを私も承って、時間もありませんから、質問を次に進めてまいります。  鈴木内閣政治姿勢の中で、私は政治倫理の問題について総理のお考えお尋ねしたいと思うのですが、前大平総理大臣は、国民各層活力と総意を結集する必要を呼びかける前に、まず先立って一つの誓いをいたします、こうして一つの誓いと三つの安全という旗印を掲げて選挙に臨まれたわけであります。その一つの誓いというのは、政治倫理確立して国民信頼を呼び戻して、そしてみずから先頭に立って政治倫理確立に当たるということを大平前総裁は訴えられ、国民皆さんがそれを理解をし支持をされて、自由民主党選挙の結果多数の議席を与えられた、私はこう理解をいたします。  大平路線を受け継いで鈴木総理が就任されてから、私は総理政治姿勢に率直に大変敬意を表しますのは、倫理委員会設置すべきであるということをいち早く提唱されて、政治倫理確立に身をもって当たるという姿勢をお示しになりました。これは恐らく昨年五月、閣議了解に基づいて諮問をされた再発防止協議会の答申の中にあります倫理委員会設置というものにこたえて総理がお考えになったものであろうと思いますけれども総理が描いていらっしゃる国会倫理委員会設置、そして確立したいとおっしゃる政治倫理、それはどんなものを描いてそういう発言をなさったのか、基本をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  14. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政界の浄化と刷新を図りまして政治に対する国民信頼を取り戻すということは、議会制民主主義を擁護するという観点から不可欠のことであると私は考えております。しかも、いろいろの状況を見ておりましてそのことを特に痛切に感じておるところでございます。  私ども自由民主党は、先般の選挙におきまして、海部さんの御指摘のとおり政治倫理確立ということを国民皆さんに誓いまして、この選挙戦で信任を得たわけでございます。今後この倫理委員会設置の問題につきましても、これは本来国会でお決めになる問題でございます。内閣総理大臣というよりも自由民主党の総裁といたしまして、私は、自由民主党はぜひ国会において各党各会派と御相談をしてもらって、制度協議会なり議院運営委員会の場で各党が納得するような委員会をひとつつくるように進めていただきたい、こういうことを党の首脳にも強く求めておるところでございます。
  15. 海部俊樹

    海部委員 この問題は、総理おっしゃるように、院の方で各党合意で基準を決めて設置をしていくというのが筋だろうと思いますし、それから特に、イギリスが一九七四年にまず下院で決議をいたしまして、そして議員の地位に関連しての収入とかあるいは金銭上の後援関係、そういったものをすべて登録事項にする、あるいは本会議委員会で特定の法案を議題として扱うときは、その議題と利益の関係を有する議員はその旨の宣言をあらかじめしておくというようなことを院で決議をして、その決議が守られたかどうかの委員会がイギリスなんかでも設置されたわけですし、アメリカでも立法府における倫理規定、これをちょっと調べてみましたら、アメリカでもずいぶん細かいことまで院の方でまず自主規制を決めて、ロビイストとか利害を有する者とか団体からは年百ドルを超す贈り物はいけないとか、議員が地方へ行って講演するときは七百五十ドル以上の報酬を受けちゃいかぬとか、あるいは議員の秘書の仕事をしない者を議員秘書の名義で雇ってはいけないとか、いろいろなことを院の方でみずから自主的に倫理綱領を決めて、それが守られるかどうかの報告をする倫理委員会というものができておるわけでありますから、私はやはりこのことは政治倫理確立政治をどう変えていくかということは、一言で言うなれば国民皆さんから見ておってわかりやすいきれいな政治をするということだと思います。政治はお金を使わないで済むというわけにいきませんから、必要にして十分な要るお金はこれぐらいだ、そのかわりここから入ってこうなっておるんだということが明らかになっていけばそれでいいわけだと思いますので、そういう意味で、私たちは一度、政治倫理確立という問題を自由民主党が挙げて国民皆さんに誓ってきた問題でもありますから、この問題については今後具体的に党内でも検討を進めていくわけですが、総理大臣のお考えを続けてお聞きしておきたいのは、金のかからない選挙を実現するのだということを言っていらっしゃいます。選挙の実態というものは本当にお金がかかるものでありますし、私はむしろ脱法行為に類似したようなことが最近の選挙の実態では多過ぎると思うのです。あの新聞拡販車なんというのが次から次から出てきている。落ちついた静かな雰囲気で街頭演説ができないような状況になっておることは、各党の皆さん通じて、困ったことだと思っていらっしゃるでしょう。しかも、聞くところによると、自動車一日一万円で出しましょう、運転手つきなら二万円ですという申し込みが商売のようになってどんどん来ておるという。立て看板だって一事務所に十枚という制限でありながら見渡しただけで二十枚も三十枚も立っていますから、これは選挙違反ではないかと思うと、後援会の数さえたくさんつくればそれに比例して全部できる。ステッカーでも同じことであります。ああいった脱法行為に準じた行為がお金をどんどん使うようにしておる一つの要因だとも私は思いますし、選挙戦というものは、政党の政策の違いや個人の信念や思想、信条を訴えることによって支持を受ける環境を整備していくべきだ、こう考えておりますので、選挙法の問題はこれまた党内で議論しなければならぬことでありますが、そういう選挙期間中の問題とともに、選挙前に行われる後援会活動、やや常軌を逸したようないろいろな利益誘導活動みたいなことが行われておる。選挙というものがお金がかからないようになっていかなければならぬ。同時に、かかるお金は明らかになっていかなければならぬということも当然のことだと思いますが、総理大臣選挙法の改正でそういった私がいま指摘したような問題を総理としてはどのように受けとめていらっしゃるのか。政治資金規正法については今国会にお出しになって決着をおつけになるというお気持ちを報道で知らされておりますけれども、そのお考えにお変わりはないのかどうか。お答えをいただきたいと思います。
  16. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 選挙法の改正の問題につきましては、私が自由民主党の総裁に選任をされました直後の記者会見におきまして、先ほどの倫理委員会設置の問題とあわせて申し上げたものでございます。私は、政治に金が余りにもかかる、特に選挙に金がかかり過ぎる、こういうことが国民からいろいろ批判を受けるような政界の問題につながってくる、こういうことで、金のかからない選挙制度というようなものをぜひ実現したいものだ、こういうことを申し上げたわけでございます。特に参議院の全国区制度、こういう問題は大変膨大な金もかかるようでございますし、また限られた選挙期間内に全国の有権者に、候補者の人柄、抱負経綸等々、政策を徹底し認識してもらう、評価をしてもらうということはできない、こういうこともございます。私は、この参議院の全国区制度というようなものにつきましても国民も何とかしなければいけない、こういう考えが強まってきておりますので、そういう問題を含めて金のかからない選挙制度をぜひ実現をしたい。また、御指摘のように、一口に言いますと、騒音公害であるとか、あるいはビラその他のはんらんであるとか、そういうような問題もございます。そういう問題についても是正をすべきではないだろうか、このようにも考えます。しかし、この選挙法あるいは選挙制度の改正という問題はいわばスポーツのルールのようなものでございまして、一方だけに有利な、偏ったものであってはいけないことは当然でございます。したがいまして、私は国会におきまして、各党各会派におきまして十分議論を尽くされて、そして選挙制度なりあるいは選挙のあり方というものを御検討いただきたい、特に参議院の全国区制という問題等につきましてはできるだけ早い機会に結論を出していただきたい、このように念願をいたしておるものでございます。  なお、政治資金規正法につきましてはいろいろの問題があるわけでございますけれども、とりあえず先般、個人に対するところの政治献金の報告義務の明確化、明朗化という問題を中心に政治資金規正法をまとめたわけでございまして、これを今度の国会にもぜひ提案をいたしましてこの成立を期したいもの、このように考えております。
  17. 海部俊樹

    海部委員 次に、行政改革を総理所信表明で取り上げていらっしゃいますが、私は行政改革について申し上げますと、行政改革、いま出ておる問題を全部片づけても、お金の上ではそんなにプラスにならないではないか、これは財政再建とも絡んでまいりますけれども、という意見もあるのですが、私は、これはお金の問題を乗り越えてやらなければならない政治姿勢である、こう考えるわけです。  総理所信表明でも、明治三十年の原敬さんの言葉を取り上げて、「恰も枝葉繁茂し根幹蟠錯せる一大木」の如くである」こうおっしゃっておりますが、やはり盤根錯節、もって利器を分かたずという言葉もありますように、こういったものをひとつしっかりと解決することができるかどうかということが本当の利器か鈍器かの分かれ道になる、こういうことだと思うのです。  私は、政府が先頭に立って汗を流して姿勢示していただく、結果においては、この間行政管理庁がいろいろ補助金のむだを洗い出されて、当面十億というお話も出ておりますけれども、また中曽根長官の一昨日の本会議の御答弁では、お昼に窓口を開いてくださるとかお便所をきれいにしてくださるとか、いろいろきめの細かい、行き届いたサービスを国民のためにもやろうとおっしゃっていただきますが、私はやはり、ぜい肉落としのために先頭に立って政府が一生懸命にやっておるんだという姿勢を示すことと、ここまでやりましたということを国民皆さんにわかるようにしなければならぬ。行政改革というものは、その意味で野党や国民皆さんのいろんな御協力をいただきながら進めていかなければならぬ問題でありますので、御協力がいただけるように熱意を持ってぜひ取り組んでやっていただかなければならぬ。これが財政再建を国民に訴えるまず最初の大前提になる、このように理解しておりますので、簡単でよろしいから、決意のほどを行政管理庁長官からお述べください。
  18. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 海部委員のいまのお考えにつきましては全く同感でございまして、その御趣旨の線に沿って真剣に努力いたしたいと思っております。  戦後三十年間いろいろな仕事をやってまいりまして、高度経済成長もありましたし、不況時もございましたが、一概に申せば、いま御指摘になったような原敬さんの言うとおり、枝葉繁茂して云云というように膨大化しております。それから、ややもすればマンネリズムになりまして、むだなことも多いと思いますし、国民皆さんから見れば、民間企業と比べてみて非常に能率の落ちているところもあるとわれわれ考えなければなりません。そういう点、思い切ってこの際刷新をするということと、それから、いまや財政的には非常事態でございます。したがいまして、増税とかなんとかという国民に負担をおかけ申し上げる前に、御指摘のように政府がまず姿勢を正さなければその筋は通らないと思います。そういう点からいたしましても、財政再建の先導的条件とすらなっておると考えております。  そういうことをよく心得まして、総理御指導のもとに内閣一体になって真剣に努力してまいりたいと思う次第でございます。
  19. 海部俊樹

    海部委員 次に、外交と安全保障の問題についてお尋ねいたしたいと思いますが、所信表明の中で、日本は自由主義諸国、理念をともにする国々と提携をしてやっていく。私は、一時期、全方位等距離平和外交というような、すべての国と仲よく、しかも同じ距離でというような言葉がはんらんしたときに、花が咲き鳥が歌っておるのどかな春で、世界の国がすべて紳士、神様の国であるならばそれはいいけれども、やはり日本国際社会復帰の原点というものを忘れてはならないということを絶えず考えておったのですが、自由主義陣営の一員として、しかもアジアの国々を重視して今後世界の平和のためにすべての国とやっていこう、こういう基本姿勢であると私は所信表明から受け取りました。総理基本的なお考えはそうだと思いますけれども、念のため基本をお伺いしたいと思います。
  20. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私の外交基本方針につきましては所信表明で明らかにしておるところでございますし、ただいま海部さんから御指摘のあったとおりでございます。そういう考え方で今後進めてまいる考えであります。
  21. 海部俊樹

    海部委員 時間の関係もありますので、私は外交の問題について一つお尋ねしたいことは、いまの世界の機構の中で一番心配になっておるものはどんなことだろうか、たとえば東西の対立であるとか南北の援助問題であるとかいろいろありますけれども、私は先ほど、ヨーロッパで見た地図の真ん中に日本がなかったという話をしましたけれども、ヨーロッパの地図にはこのごろ、北極を中心に置いて北極の上空からながめた、魚眼レンズで写真を写したような地図が非常に売られておる。それはやはりそこを中心点としてソ連とアメリカとの対決というものがきちっと出てきておるわけです。一体、ソ連というもう一方の勢力の旗頭をディフェンシブな国と見るのか、要するに防衛的な国と見るのか、あるいはそうでない、こう見るのか、いろいろな考えが出ておるようであります。  ロンドンの戦略研究所が去年の四月に発表したものを見ておりますと、ノルウェーからアフガニスタンを通って日本の北方四島に至るこのラインにソ連は戦略的な関心を持っておると見受けられる、こう指摘されておるのでありますけれども、その四月の指摘が十二月にはアフガニスタンで現実の問題となり、またノルウェーの主権が及んでおるスピッツベルゲンの島にソ連の軍事基地ができておるという最近の新しい出来事を次々と想像しますと、一体ソ連という国はどういう性格の国で、わが国に対してどういう影響を及ぼすのかということは、外交基本としては大切なことだと思うのです。  それにもう一つ私は心配なことは、この間、総理府の世論調査によると、日本国民世界で一番きらいな国はソ連だ、数字が八〇%を超えておるわけですよ。しかもそれはアフガンと北方領土の問題が原因だ、こう出ております。私はこういったことは非常に不幸な状態だと思います。できることならばこれらの問題を率直に正直に伝えることによって、ソ連に対して何らかの反省を求めるとか、何らかの政策変更の参考になるようにこういった問題を伝えるとか、あるいはその他の努力をするとか、いろいろな方法でこの問題についてはわが国も解決をしていかなければならぬと思う。お互いに知らないことは悪いのですが、誤解しているということはもっと悪いことでありますから、この程度のことをしても日本の世論は認めるであろう、黙っておるだろうというような考え方を持っておられたのでは、お互い両国のために不幸だと思います。  こういう相互理解を深めながら、しかも世界の平和を守りながら日本立場として潜在的脅威を少しでも取り除いていく努力はやはりしなければならぬと思いますが、あのソ連という国を一体どうごらんになるのか。これは外務大臣ですか、お答えをいただきたいと思います。
  22. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えします。  いまソ連に対する見方はどうかという御質問でございますが、こういう場で個々の国に対してどう考えるかという認識を述べるのは適当でないと思いますので、その点はひとつ御勘弁を願います。  ただ、ソ連に対しましてこの前世論調査が出たことは、私もよく知っております。ソ連というのは日本の隣国として大きな隣国でございますし、日本との関係も従来から非常にありますし、この日ソの関係を友好にしていくことはもちろん日本の望むところでございます。ただ、先生おっしゃったように、最近アフガニスタンの軍事介入の問題でございますとか、北方のわが国の領土に対する軍備の強化の問題等をめぐりまして、厳しい関係にあることは御承知のとおりでございます。  それで、私も先生のおっしゃるように、誤解を解くということは大切だと思いますので、先般も国連の総会で領土の問題、アフガニスタンからの撤退の問題あるいは領土の軍事配備は日本国民の感情を逆なでする問題だというようなことを訴えまして、世界の世論に訴えてソ連の反省を求めたのでございますが、次の日はグロムイコ外相に会いまして、率直にいま申し上げたような点は先方にも伝えたわけでございます。率直に申し伝えたわけでございますが、ソ連はソ連としての主張はございますが、今後とも私は、この問題については常に、北方四島の返還というのは国民の総意なんだ、あるいはそこに軍備をするということは国民の感情を逆なでするんだというようなことを十分踏まえながら、息の長い、粘り強い態度でやはりソ連に理解をしてもらうということを前提にして日ソ交渉を進め、日本とソ連との友好親善関係の安定した関係をつくっていくということに努力してまいりたいというふうに思っております。
  23. 海部俊樹

    海部委員 日本国民考えておりますことをやはり率直にお伝え願うとともに、ますますその相互理解を深めるための御努力をなされるように心からお願いを申し上げて、次の問題に進みます。  私は、国の安全と防衛という問題はただ単なる軍事力だけではない、軍事力ももちろん大切でありますし、どこかの国が攻めてきたら赤旗と白旗とを掲げて降伏してしまうというような、そんな考えは毛頭とるものではありませんけれども、しかし、それだけではいけないのであって、やはり食糧とかエネルギーとか、いま言った外交努力とか、いろいろなものがその上にかぶさって総合的な安全保障が行われなければならぬということは正しい考え方だ、私はこう思っておりましたが、総理が総合安全保障に関して構想をお持ちになっておる。総合安全保障構想というものはまさにそういったことを政府でも取り上げて具体化していこう、こういうお考えだと思いますけれども、総合安全保障構想についてお述べをいただきたいと思います。
  24. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま総合安全保障問題につきましてお話がございました。私も所信表明で申し述べておりますように、国の安全と平和を確保してまいりますためには、防衛的な側面だけでなしに、外交あるいは経済資源、食糧、いろいろな政策を総合的に、かつ、政策の展開に当たりましては整合性を持って国の安全を確保する、こういう観点で進めてまいることが必要であると考えておるわけでございます。安全保障というのは、脅威が未然に防止できるようなこと、特に平和外交の展開あるいは経済、技術協力等、善隣友好関係を進めていくということが非常に大事だ、私はこのように考えまして、所信表明でも明らかにしたところでございます。  私は、現在ございますところの国防会議というものは存置してまいる考えでございますが、総合安全保障に関する政策を総合的、整合性を持って進めるためにハイレベルの一つの協議機関を設けたいということを考えておりまして、現在その具体化の検討を進めておるところでございます。
  25. 海部俊樹

    海部委員 時間の関係で財政の問題に移らせていただきます。  大蔵省は、財政制度審議会への提出資料だと称して「一般歳出の伸びをゼロとした場合の問題点」というのをきのうお出しになりました。委員皆さんのところにも、委員長のお許しをいただいて、用意があったらまずお配りをいただきたいと思います。
  26. 小山長規

    小山委員長 では配付させます。全員に配付してください。
  27. 海部俊樹

    海部委員 配っていただくそうでありますから、後ほど委員皆さんに全部見ていただけると思いますので、私はまず大蔵大臣にお尋ねしますけれども、新聞を通じてきょうもうすでに詳しく要点が報道されてしまいました。ゼロになった場合はこうだという想定図であります。これは増税をするためのキャンペーンではないかという批判もあれば、あるいは、またまたお出しになったな、いろいろなものが出ております。またお出しになったなということも言われるわけですが、この中の六十九項目、全部ゼロ査定したらこうなるぞという、余り楽しい話じゃないし明るい話じゃないけれども、これ以外にもいろいろあるわけでありますし、私の基本を申し上げると、何でもかんでも一律ゼロにしてしまうとか、いいも悪いも全部一緒にカットしてしまうとかいうような発想ではなくて、まさに思いやりの必要なところにはきめの細かい配慮をされる、国の立場で大切だと思われる施策には配慮もする、しかし徹底的な歳出の見直しをやってむだを省く努力をします、その努力はこういうものだということをむしろ国民皆さんの方は知りたがっておるのではないだろうか、こう率直に考えるのですけれども、大蔵大臣、これをお出しになった、しかもきょうという日を何か当てにされたわけだとは思いませんけれども、お出しになったその真意について、簡単でよろしいから御説明をいただきたいと思います。
  28. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 お答えをいたします。  これは御承知のとおり国家財政が非常に厳しいということをまず御認識をいただく、そのための一つの材料として出したわけです。  御承知のとおり来年の予算編成をこれから始めるわけですが、来年はそんなに景気がよくなると、世界じゅう思っている人は余りありません。したがって、大体ことし並みにいけばいいじゃないかということになると、大ざっぱな話で、しかも確たる根拠はないんだが、四兆円くらいのもし自然増収を仮定してみても、それは要するに国債は二兆円減額しようという、大体これはコンセンサスは党内でも得られておりますから、これに余り反対する人はいない。それで二兆円引くと、あと二兆円しか残らない。そのうち国債の利息だけで一兆五千億ふえる。地方交付税が五、六千億ふえるということになれば、一般の歳出というものはことしと同じ予算規模になります。もしそうなった場合は、そのままの状態であればどうなるかということを言ってみてもなかなかぴんとこない。実は公共事業は二年間ゼロなんです。去年とことしとゼロ、これは大体わかっているわけです。そのほかのところでよくわからない。だからどういうようなことになるかというものをひとつ例示的に出してみてはどうかということで各省にお願いをいたしまして、非常に一般に関係のあるようなものについて試算を出したという意味であります。
  29. 海部俊樹

    海部委員 このことにつきましては、きょうは時間の関係で詳しく議論をしておる時間がありませんので別の場でさせていただきたいとも思いますが、一つだけ大蔵大臣、聞いておきたいことは、私は、もう一つここで、民間の国民経済研究協会というのがごく最近出した中期経済予測というものを詳しく調べたのでありますけれども、大蔵大臣が大前提にいまおっしゃった税の自然増収四兆円を見込んでもという四兆円という大前提に対して、民間の方の予測は、税の自然増収は五兆二千億円と見込むわけです。われわれにとってみると、なるべく国民皆さん協力を得ながら、税金で埋めるという方向に向かわないようにできるだけ努力をしていきたい、政治の取り組む姿勢としてはそう考えておるわけであります。  最近の政治情勢経済情勢を見ておりますと、いろいろな面で日本経済の力というものはだんだんとついてきたのではないか。そうしてまた、この民間の予測、国民経済研究協会も昨年の税収の五兆円というのをいち早く予測して、強気の研究所だと言われながら結果が当たったという前歴もあるわけであります。こういうような民間の予測、自然増収というものが四兆円なのかあるいはプラスアルファをうんと期待できるかによって考えもまた変わってくるわけでありますから、どうぞそういった面で、伸び率をゼロというようなことを余り前提にして物をおっしゃらないように。  そして、私は財政再建というのは非常に大切だと思いますけれども、しかし財政再建も結局はそれ自体が目的じゃなくて、人間の生活を豊かに充実したものにしていく、人間生活が主人で財政再建はそれに従っていくものである、私は、そういう角度から必要なものと必要でないものとの区別だけはひとつ温かいきめの細かい配慮を持っておやりいただきたい、こう思うわけであります。  そこで、この大前提となっておる自然増収の問題についてちょっとお尋ねしますけれども、私は、最近の日本経済の実力を見ておりますと、景気の回復、物価の安定ということに全力を挙げてやっていけば自然増収が期待できるのではないか、国民皆さんもまた、民間の活力信頼しての自然増収の向上ということを大変に期待をしていらっしゃる、こう思うのです。私は、そういう意味で最近何に一番手を入れていただいたらいいかということは、物価の安定だと思います。どうしても物価の安定をしてもらわなきゃならぬ。それは景気向上政策にもつながり、民間の活力にもなっていくのです。そういう意味から私は、これは一つの提言といいますか、物価安定のために全力を挙げるという姿勢をまず持っていただきたい。最近の労働省の発表によっても、実質賃金は、ボーナスの月にちょっと上がったけれども、あとみんなこの半年ばかり下がっております。実質賃金マイナス三・五、物価は政府見通しは六・四でありますが、いま残念ながら八%台というところで推移しておる。私は、物価の安定ということは景気政策に通じ、それがまた税の自然増収にも結果としてはね返っていく、こう思っております。  物価安定というものに取り組まなきゃならぬ姿勢というものは所信表明でも明らかになっておりますが、具体的に申しましょう。物価安定のために、予算編成のときに五百億円のお金が用意されておるはずでありますけれども、そういったものをこの際思い切って使って、目標である六・四%一以下に抑えて、民間の個人消費も伸ばして、を回復するために、ひとつここで一むち入れようというお考え方はないのかどうか、お尋ねをいたします。
  30. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 物価の安定は非常に重要なことでございます。したがいまして、物価を安定させるという観点から、内閣としては九月五日にも、景気、物価両にらみという形で、自然増収のことをもちろん考え、雇用のことも考え、また物価はこれを悪化させない、鎮静させなきゃならぬということで、もろもろの施策をとっておるわけであります。  それから、先ほど公共事業を二年ゼロと申しましたが、五十五年度でゼロだということで、訂正をいたしておきます。
  31. 海部俊樹

    海部委員 もう一点問題を提起したいのですが、私は、財政再建、きわめて大事だと思いますし、重要な時期でありますから、ぜひともこれをなし遂げなきゃならない。終着年も五十九年、それは理解できるのですけれども、そのためにむだを省く努力、たとえば財政投融資というものを見てみますと、何か繰越金とか不用金というものがやたらに目につく。第二の予算とも言われる財政投融資の方が、こんなに不用金や繰越金が出てきておる。私は不用金が出てきておることがいけないと言っておるのじゃありません。不用金が出てきてはいけないと言うと、それじゃ使っちまえというので余り関係のない方へ使われても困るのでいけませんが、政策金融というものももう一回ここで根本的に見直してみる必要があるのではないか。必要なところへはどんどん使ってもいいのですが、必要でないものはカットをしていく。財政投融資の問題というものは変えていかなきゃならぬ。私は、これについてはひとつ根本的に勇気を持って取り組んでいただきたい、こう思いますが、どう考えますか。
  32. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御趣旨のとおりであります。
  33. 海部俊樹

    海部委員 時間もありませんので、いろいろと詳しいことをお聞きするわけにいきませんので、私の質問は、財政投融資についてはできるだけ考え直してほしいということだけを提起いたします。特に、大蔵省のこの前出されたこの資料、「財政再建を考える」、これによりましても、国債の大量発行を続ける、そうするとこういう高い代償を払うことにもなるという中に、五十四年度の都市銀行の預金増加額に対して国債の引き受け額は八〇%を超えておって、大変これは民間を圧迫しておるというようなこと等も出ております。そうすると、最近の郵便貯金の増加額というものは当初の目標を超えてずいぶん増加をしてきておる、こう思っております。それなれば、ここまで民間を圧迫しておるなれば、この圧迫になっておる国債というものについてもう少し郵便貯金の方にそんなに予想以上の預金が流れるなれば、その問題の根本の是非、善悪の議論は別の問題としてやるとしても、当面は、民間金融を圧迫しておる国債の引き受けをもっとふやしたらどうかという気がいたしますが、このことについてお考えがあったらお答えをいただきたいと思います。
  34. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十五年度におきましても、当初計画から国債の運用部引き受けということについては、前年度当初計画の一兆円、それよりも一兆円ふやして二兆五千億円をよけいに引き受けるというようなことをやっております。また本年五月の国債の管理政策によってさらに七千億円の追加引き受けということもやっておりますから、これらはそういうようなことも検討を十分してまいりたいと考えております。
  35. 海部俊樹

    海部委員 検討をしていただくということでありますから問題提起にとどめさしていただきます。  なお、通産大臣、本会議の御答弁で、イラン・イラク紛争によってわが国国民経済生活に及ぼす影響はどうかということは大体御答弁をいただいて理解いたしました。当面はないということでありますが、中長期でながめると心配があるということでした。その中長期というのはいつごろから先のことを想定して話されたのか、その点だけで結構ですからちょっと答えてください。
  36. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  本会議場でもしばしば述べましたように、日本のいま現在備蓄が、政府備蓄、民間備蓄を合わせまして、七月末、八月初め現在で百十一日分あるわけでございます。イランはもうすでに七月から来ておりません。イラクは九月の二十三日からストップしておるわけでございます。ちょうどイラクからの輸入が一日三十九万バレルでございますが、それでございますので、それが全くないということが当然言えるわけでございまして、そういう場合に百十一日分から三十日分を取り崩しますと一年分もてるわけです。倍の六十日分取り崩しますと二年ということでございますので、少なくとも私ども現在二年は大丈夫だということを申し上げておきたいと思います。
  37. 海部俊樹

    海部委員 私は、エネルギーは長期に見ると、石油の需給の関係からやはり代替エネルギーに頼っていかなければならない、そのことについても原子力委員長のお考えもただしたかったのですが、残念ながら時間がありませんので、日本が原子爆弾の唯一の被爆国である、特別な国民感情があるということを十分理解をされて、安全性確保には慎重の上にも慎重な態度をとりながらこの開発に力を入れていただかなければならない、この希望を申し上げさせていただきます。  最後に、ことし冷災害が起こって、農家には非常に厳しい状況になっております。先ほど来いろいろと対策が講ぜられておるようでありますけれども、農林省、労働省を中心にしてのいろいろな問題については、それこそきめの細かい思いやりのある対策をお立ていただきますように。  さらに、もう終わりでありますけれども、八〇年代の終わり、八八年に名古屋がオリンピックを招致しようと一生懸命いま努力しております。地元では、超党派で国会議員連盟もできて、政府に対しても、閣議了解等で早く支援体制をとってもらいたい。これは国際相互理解を深める上にも、あるいは人間の体位向上、スポーツ振興、いろいろな意味からいっても大変明るい話題だと思いますので、前向きの姿勢で取り組んでいただきたいと思いますが、これに対する総理大臣の御所見を承って、質問を終わりにいたしたいと思います。
  38. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘の問題につきましても、御案内のとおりに八年後のオリンピックの問題でもありますし、国民に明るい希望を持たせるという立場からも御趣旨のごとく推進してまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  39. 海部俊樹

    海部委員 時間が参りましたので、終了いたします。
  40. 小山長規

    小山委員長 これにて海部君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君。
  41. 大出俊

    大出委員 質問に入るに当たりまして、一つ明らかにしておきたいことがあります。  けさの新聞を読みますと、これは渡辺君、あなたの考え方かどうか知らぬけれども、これは国民に対する恫喝だ。しかも、予算を審議する冒頭にいきなりこれを配る。中身は何だ。「歳出の伸び率ゼロなら 福祉・教育の後退必至 大蔵省リスト増税論の浮上促す」「「一般歳出の伸びをゼロとした場合の問題点」(通称ゼロリスト)」これは一体――われわれは、鈴木内閣ができて初めての国会なんだから、大蔵大臣が財政方針に関する演説をするのはあたりまえじゃないかと何遍も言ってきたじゃないか。とうとうあなた方はこれをけ飛ばして応じないでおいて、いきなり予算の審議の冒頭にこれをぶつけるというのはどういうわけだ。国民に対する恫喝じゃないですか。  ここに書いてあるじゃないか。「増税抜きで、国債の二兆円減額を達成しようとすれば、来年度の国債費などを除いた一般歳出が今年度並みになることを示した歳出事前点検作業」、この試算によると六十九項目出したが、いいですか、「例えば人件費を例にとると、今年度の当初予算額二兆六千三百十二億円と来年度も同額にするには1今年度の人事院勧告の完全実施を見送り、」実施しない。まだ、人事院勧告に関する給与法改正法案を国会に出してないでしょう。出してないじゃないですか。議運でもめている。ほかの退手減額だとか定年制法案を先に出す。わざわざ引っ込めているじゃないですか。出さないじゃないですか。ちゃんと関係しているじゃないか、これと。「今年度の人事院勧告の完全実施を見送り、」地方公務員だけだって三百余万もいる。こんなたくさんの方々の生活にかかわるものを法案を抑えて出さないでしょう、あなた方は。そしてこれをぶつけたでしょう。しかも「来年度も給与改定しない」、何ですか、これは。人事院勧告が来年度は出ているわけじゃない。  「2国家公務員の約六%、約三万五千人を削減する、」一人単価五百万ですよ。一万人削減すれば五百億だ。三万人で千五百億。ただしかし、これは社会問題が起こりますよ、三万六千人も生首切ったら。そうでしょう。  次、警察車両購入費を据え置き。警察の車両購入費を据え置きにすると、「パトカーの稼働台数が減って犯罪現場への到着時間が遅れ、検挙率が下がる」……(「漫画だな」と呼ぶ者あり)漫画じゃないですか、いまそこに声があったが。「刑務所等被収容者対策経費が増えなければ、収容人員の増加に対応できない、」刑務所に入っていく人員に対応できない。できなければどうする。刑務所に入れないの。そんなべらぼうな話がありますか。「などの問題点が指摘されている。」  また、来年度「すでに決められた教科書を配付しようとすれば、」小学校、中学校の児童生徒千七百六十万人のうち約三百七十万人は無償配付にならない。こんな片手落ちできますか。千三百万人は無償で配付しておいて、あとの皆さんには有償で配付する、三百七十万人だけは有償だ、そんなことができますか。実際全くけしからぬ。  財政方針を明らかにしろ、新内閣じゃないか、そう言っている。あれだけ長く議論したじゃないですか。総理の施政方針だけであなた方は事を済ませておいて――鈴木内閣の初めての国会でしょう。そうしておいていきなり、予算審議をやろうという、野党質問が始まろうという直前にばらばら何を配ったんだと言ったら、これじゃないですか。新聞見たらこう書いてある。さっきの与党質問に答えた、予算編成等の方針の一つだ。ふざけなさんな。やり直してください、施政方針を。財政方針をやり直してください。やってください。総理、答えてください。――鈴木内閣の性格だ。総理、答えなさい。国民に迷惑をかける。おどかすことになる。だめだ。
  42. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実はこの提出をいたしました時期につきましては、いろいろ御議論があろうかと存じます。しかしながら、これにつきましては、実は、もし自然増収がその程度であった場合は、結局は予算の規模は前年並みになります。もし前年並みに一律になったとすると、結果的にどこに問題点があるかという問題について、財政審議会からもひとつ参考といいますか、そういうものを出してくれという話がありまして、それでたまたまきのう財政審議会が開かれた、そこに提出をしたということでございます。
  43. 大出俊

    大出委員 たまたま予算が始まる、しかも与党質問が終わる直前にばらばら配る。けさの新聞には一斉に載せている。中身はいま私が読み上げたとおりだ。国民皆さんのどこの家庭にも直接的に大きなかかわりを持つ内容じゃないですか。本来、これだけで予算委員会を三日なら三日やらなければいかぬじゃないですか。これは予算委員会の最大のテーマじゃないですか。総理鈴木内閣初めての国会でしょう。初めての予算委員会でしょう。予算編成のさなかでしょう。財政再建の課題に触れても何ら方針を明らかにしない。そういうことにしておいて、いきなりこれをぶつけるとは何だ。あなたは総裁でもある。こんなものを出すなら、改めて予算委員会を三日なら三日開いて、本当にこれを審議してくれと、総理の方がむしろ言うべきだ。総理、いかがでございますか。
  44. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま大蔵当局から配付いたしました資料につきましては、大蔵大臣から他意がないということで御説明があったところでございますが、私は所信表明演説でも、また本会議でもるるお話を申し上げましたように、財政事情はきわめて厳しい状況にある、したがって、五十六年度予算編成に当たりましては、歳入、歳出ともに厳しくこれを見直しをしなければいけない、そして昭和六十年までに何とか特例公債の発行をゼロにしたい、そういう財政再建の目標に向かって厳しい状況の中で予算の編成をしなければならないということをるる申し上げて、国民各位の御協力を要請したところでございます。今後皆さん方の御意見も伺いながら、五十六年度予算の編成をこれから詰めてまいる段階でございますので、十分御意見を拝聴させていただきたい、こう思っております。
  45. 大出俊

    大出委員 偶然じゃないですよ。ねらい撃ちじゃないですか。あなた方の最近やることはすべてこれだ。鈴木内閣がいかに多数の上に乗ったにしても、ルールがおのずからある。こういう人の横っ面を張り飛ばすようなやり方をなぜなさるのだ。憲法問題にしても何でも、やることすべてみんなそうじゃないですか。国会が開かれない間に靖国神社にぞろぞろ皆さんがおいでになってみたり、やることすべてそうじゃないですか。いまお話の中に、何とかゼロにしたい。われわれだってそう思っていますよ。だが、物の考え方の問題。だから、前回だって、法人税を何とかもう少し考えなさいと言ってきたじゃないですか。一%上げれば、当時のベースで二千二百億でしょう。三%上げれば六千六百億でしょう、全部国庫に入るわけじゃないが。財界が物を言ったら一遍でやめたでしょう。つまり、ここに書いてあるこのやり方は、増税しないとすればこんなことになると国民をおどかしておいて、初めから増税に持っていこうというのじゃないですか。税制調査会の先月二十六日の総会で、十一月に答申を出すことを決めているでしょう。大蔵省、自分のところでしょう。何やっているの、いまそんなこと言ったら。来年度税制、ぞろぞろみんな大衆課税、増税じゃないですか。石油関連各税制の見直し、ここから始まりまして酒の税金ももう一遍上げる。検討しているじゃないですか、あなた方は。物品税も上げる、所得税まで手をつけようというんでしょう。そこへ持ってきて、一般消費税一〇%ぐらい入れたい。これは五兆六千億ぐらいだ。あなた方は検討しているじゃないですか。その伏線をいきなり予算を審議する冒頭にぶつけられて黙って引き下がれますか。そうでしょう、そういうやり方は認めがたい。  予算委員長予算委員会をもう一遍やり直してもらいたい。委員長の御意見をまず承っておきたい。
  46. 小山長規

    小山委員長 この問題、お昼の理事会でひとつ相談していただきます。続けてください。
  47. 大出俊

    大出委員 それでは、理事会でひとつ御検討願います。  憲法に関する本会議論議が続けられてまいりました。私も、戦後この憲法を守る意味で一生懸命やってきた一人でございますので、非常に今回の憲法改正の雰囲気、しかも法務大臣が先頭に立って言い続ける、三日に上げず新聞の記事になる、この情勢、大きな責任を感じています。  そこで、まず総理に承りたいのですが、あなたは厚生大臣もおやりになっておられたから御存じだと思うのでございますが、改めて聞いておきたいのですが、第二次大戦でわが国国民皆さんの大変な犠牲が払われています。私は、その上に成り立ち、定着をしている今日の平和憲法である、そう思っているわけであります。私は、改めて厚生省に資料要求もしてみた。第二次大戦というのは日本国民にどのくらいの犠牲を強いた戦いだったか。ここに数字を持っておりますが、総理もそれは御存じのはずだと思いますから、どのくらいの被害を日本国民が第二次大戦で受けておるのか、総理のお考えをとりあえずお答えいただきたいわけであります。いかがでございましょう。
  48. 持永和見

    ○持永政府委員 第二次大戦で死亡した方の数でございますが、総数で三百十万人おられます。内訳といたしましては、外地で亡くなられた軍人軍属が二百十万人でございます。内地及びその周辺で亡くなられた方が二十万人でございます。一般の邦人が、外地で亡くなられた方が三十万人、戦災で亡くなられた方が五十万人でございまして、合計で三百十万人、およそ三百十万人の方が太平洋戦争で亡くなられておられます。以上でございます。
  49. 大出俊

    大出委員 ここに数字がありますが、約三百十万人、軍人軍属の方が二百十万人、これは外地です。内地及び周辺で二十万人、それから邦人つまり日本人という意味でありますが、外地戦没者が三十万人、これは兵隊でない方であります。戦災死没者が五十万人、実は大変な犠牲でございまして、私なども豊橋の予備士官学校出身でございますから、同期ほとんどが沖繩に行っておりますから、たくさんの同僚が死んでいます。それだけに私は、戦後の憲法というものはどうしても守り抜きたい、こう思ってきているわけであります。  そこで承りたいのでありますけれども、自民党の皆さんの全国研修会で総理が基調演説をなさっておる。それによりますと、日本憲法平和主義民主主義基本的人権尊重、これは世界各国の憲法に比べてすぐれており、りっぱな法典であると言い切っておられますね。この点は御確認願えますか。
  50. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおり申し上げましたし、いまもそう信じております。
  51. 大出俊

    大出委員 この際もう一つ承りますが、あわせて平和憲法のもとで国情にふさわしい自衛力を整備する必要があるが、軍事大国にはならない、これが一。二、非核三原則の堅持。三、シビリアンコントロール、これは文民統制とわざわざ言っておりますが、その厳守。この三点は絶対に守る、こう強調なさっておりますが、これも御確認いただけますな。
  52. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  53. 大出俊

    大出委員 私は、これが総理の当面の基本的なお考えなんだろう、こう確認をさせていただいておきます。  次に、今回の施政方針の演説の中で、憲法遵守を草稿にお入れになっていたというのですね。これを、奥野法務大臣もおいでになるが、何人かの方々の御発言で取った。それで後から理念を入れる、こういうわけでありますが、草案に憲法遵守をお入れになろうとした総理のお考えは一体那辺にあるわけでございますか。いかがでございますか。
  54. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 所信表明を最終的に閣議で決定いたします間におきましては、推敲の段階で幾つかございました。私が最終的に閣議で決定をし、国会で表明いたしたものを私の信念とお受け取りいただきたい。
  55. 大出俊

    大出委員 もう一つ承っておきたいのでありますが、私はそれでもなおかつ、総理にいささか不満を持っている。なぜかといいますと、総理は、大平さんの政治姿勢を忠実に踏襲していくのだということを本会議でもおっしゃっている。いろいろな場面でおっしゃっている。  ここに実は三木さん、福田さん、大平さんの、それぞれ憲法問題が大きな問題になってお答えになっている答弁がございます。大平さんのところから申し上げますと、大平さんが一番はっきりしている。いま憲法の問題がいろいろ議論されているということで、「当面それでは国民の世論の支持があるかというと、そのようにはいま受け取っていないわけでございまして、基本法の改正などということは慎重の上にも慎重でなければならぬと考え憲法改正するような方向でものを考えるというようなことは一切慎んでいかなければならぬと思っております。」これは昭和五十四年六月五日の参議院の内閣委員会に御出席で、この憲法問題が論議されまして、最終的におっしゃっている中身ですね。はっきり「憲法改正するような方向でものを考えるというようなことは一切慎んでいかなければならぬと思っております。」これが大平さんの基本姿勢ですね。だから、その意味で言うと、大平内閣の時代に、閣内で法務大臣がとんでもないことを言ったとか、それはないですね。はっきり総理の方針が決まっている。そういう意味で、私は非常に残念です。  ところで、御参考までに申し上げておきたい。福田さんもずいぶんはっきり物をおっしゃっている。福田さんは「ただ、私、今度は福田内閣の立場として申し上げますが、」というところから始まります。これは昭和五十三年五月十二日。「手続から言いますると、三分の二の議員の発議を要する、こういうようなことで、いまそういう発議はなかなかできるような状態でもありませんし、また発議をいたしましても、さあ国民投票だということになる。国民投票をどういうふうにするか、これは大変な精力、エネルギーを消耗する問題だろう、こういうふうに思うのです。そのようなエネルギーを消耗するその前に、いろいろ懸案があるのですからね。私は、そんな大変なエネルギーを消耗する憲法改正なんかやるというようなことは考えたこともありませんが、現実の問題として憲法改正、これは考えておらぬ、このように御理解願います。」こう答えておられますね。考え合わすと似たようなことです。  時間の関係もありますから、もう三木さんのところまで触れませんが、三木さんは、日本国の憲法というのは国民の間に定着をしていると強調されていますよ。三木さんの御発言もここにありますが、これはいままでずっと、ここのところ何代かの内閣が憲法というものに対する考え方を国民に明らかにしてきているわけであります。ところが、今回はからずも奥野法務大臣の発言等によって大きな騒ぎが起こっている。  そこで、いまの大平さんのおっしゃっていることを踏襲なさる鈴木総理も同じお考えだと考えてよろしゅうございますね。
  56. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 憲法問題につきましては、私が機会あるごとに明らかにいたしておるところでございますが、憲法をあくまで擁護し、遵守をしていく、これが鈴木内閣基本的な姿勢である。それから、九十六条に改正手続ということがうたわれておりますが、しかし憲法改正については慎重の上にも慎重でなければならないということも、繰り返し私は申し上げております。また、国民世論が憲法改正すべしという方向に形成されておるとは私は見ていない。したがって、鈴木内閣においては、憲法改正政治日程に取り上げる意思は毛頭ない、こういうことも申し上げておるところでございます。したがいまして、大平総理あるいは福田総理等々のお考えと全く同じものであると御理解をいただきたい。
  57. 大出俊

    大出委員 はっきりお答えをいただきましてありがとうございました。重ねて申し上げますが、大平さんは「憲法改正するような方向でものを考えるというようなことは一切慎んでいかなければならぬと思っております。」とはっきりお答えになっているわけであります。  そこで、法務大臣に承りたいのでありますけれども、ここに八月二十七日の議事録がございます。法務委員会の議事録でございます。この議事録を沈んでみます限りは、あなたがおっしゃっていることにうそがある。端的に申し上げます。あなたはずいぶんたくさん言っておられますから、新聞記事だらけでございまして、どれを取っつかまえていいのかわからぬぐらいあるのですけれどもね。こんなに改正改正だということを――ずばり言っておるのもあれば、遠回しに言っておるのもあれば、いろいろありますけれども、おっしゃる法務大臣に初めて私はお目にかかるわけでありますが、これはこんな大きな記事になっております。サンケイ新聞でございます。サンケイ新聞の九月四日でございますが、一面トップにこんな大きな写真入り、これは二面全部に引き続いている。ここで、憲法改正をするなら九条を避けて通るのはナンセンスだとおっしゃっているのですけれども、はっきりしております。この中で「「政治家個人としての意見を求めているのか」とダメ押しをした。」法務大臣は初めからしきりに政治家個人の意見――議事録では政治家個人と言ってないのですよ。  念のためにちょっと申し上げておきます。これは昭和五十五年八月二十七日の議事録であります。質問者が「そこで、別のことになりますが、法務大臣というか国務大臣というか、お尋ねをしたいわけですが、自主憲法ということがよく言われますね。大臣のお考えになる自主憲法というのは、日本の場合に当てはめてどういうことを言われるのでしょうか。」いいですか、前段で「法務大臣というか国務大臣というか、お尋ねをしたいわけですが、」と念を押して、「自主憲法ということがよく言われますね。大臣のお考えになる自主憲法というのは、」と聞いている。そうでしょう。個人の意見を聞いたのじゃないでしょう。ところがあなたは、個人の意見を求められた、だから「「政治家個人としての意見を求めているのか」とダメ押しをした。」こういうふうに言っておられる。しかも、「同時に私もダメ押ししたわけ」ですが、まだ言っている。「私は何も一私人として答えたわけじゃない」。だめ押しをして個人で答えたと片方で言っていながら、また別のことも言っているのですけれども、とりあえず――私は議事録を信用しているのです。あなたはわざわざ個人の意見でよろしいかとだめ押しをした、こう言っている。そんなことは議事録にないでしょう。ない。どうしてこういううそをおっしゃるのですか。世の中、あなたに同情しますよ。あなたが個人の意見でよろしいかとだめ押しをした、そうしたら、よろしい。こんな、うなずいたか何か知らぬけれども言ったというので、あなたは、私の個人の意見でよろしゅうございますか、こう念を押した。そうしたら、それでいいから言ってくれと言ったから言ったということなのですけれども、それは、ぼくも方々で言われましたよ、その討論で。大出さん、それは奥野さんが気の毒じゃないか、個人の意見でいいかと言われて質問者がいいと言って言ってもらった、それをたたくとは何だ。そうじゃないじゃないですか。あなたに同情を引き寄せるためのうそを言う。法務大臣がこんなうそを言っては法務大臣の価値がないですよ。お答えください。勝手なうそは許しませんよ。やめてもらわなければいかぬ。
  58. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 この席に質問者の稲葉さんもいらっしゃるわけでございますから、私の申し上げておりますことを後で稲葉さんにお確かめもいただきたいと思います。  自主憲法ないし憲法一般論、私の所管でもございませんので、私がお尋ねを聞いてそして見解を述べる筋合いのものではないと思うのです。稲葉さんもそれがわかっているから「法務大臣というか国務大臣というか」という疑問符を呈しながらお尋ねをいただいたわけであります。私もまた政治家個人としてということで、稲葉さんの方を見まして、うなずいておられる姿も拝見して私なりにお答えをさせていただいたという経過でございます。
  59. 大出俊

    大出委員 それはあなた、得手勝手な解釈じゃないですか。だめ押しをした、こうおっしゃっているじゃないですか。だめ押しをしたということなら、ここに、稲葉さん、個人の意見でよろしゅうございますかとだめ押しをしなければ、だめ押しにならぬじゃないですか。稲葉氏の方はきっちり――それはあたりまえでしょう。法務大臣という立場があり、国務大臣という立場があるのだから「法務大臣というか国務大臣というか、お尋ねをしたいわけですが、自主憲法ということがよく言われますね。大臣のお考えになる自主憲法というのは、日本の場合に」当てはめるとどういうことになるのでしょうかと聞いているのじゃないですか。「大臣の」とちゃんと聞いているじゃないですか。そうでしょう。あたりまえじゃないですか。あなたはなぜこういうことを言うのですか。  しかも、これはこれだけじゃないのですよ。法務大臣としてあなたは談話をお出しになっていますでしょう。この談話の冒頭にまた出てくる。あなたは、何か好きなことをおっしゃっていて、そのたびに言いわけをしているのですね。少しどうかと思うようなことがあるのですよ。私は、ずばずばおっしゃるから、まさに信念で、何があっても言うという強い姿勢かと思うと、一生懸命今度は、引っかからぬように引っかからぬように言っている。言うだけ言っておいて、この内閣で改正などというのはどうもなどというようなことをおっしゃっておいて、後で新聞に言うときには、私はこの内閣でというのは適当でないと言ったのだということを今度は言うのですね。いいですか。あなたの法相談話。これは二日の日ですよ、連日のように言っておられるのだから。「法相の談話は次の通り。」朝日新聞。衆院法務委員会の答弁は、個人的見解でもいいから聞きたいという質問者の趣旨であり――個人的見解でいいから聞きたいなんということは一言半句もないではないですか。大臣の考えと言っているじゃないですか。法務大臣が公式に出す談話で何でこういううそを言うのですか。けしからぬ。
  60. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いま申し上げたとおりでありますけれども、文字にあらわしますとおっしゃるとおりになるわけでございます。もしその関係が映像にあらわれてまいりますと、お互いの呼吸というものが私はわかるはずじゃないだろうか、こう考えるわけでございます。答えないのも一つだと思います。答えないと思うのも一つでございますけれども、できる限り率直に意見の交換をし合った方が私は国政の審議に役立つじゃないか、こう思っておりますので、あえて私の見解じゃございませんとお断りをしませんで、政治家個人の考えとして申し上げるという気持ちで、そういうことを断ってお答えをしたわけであります。同時に、稲葉さんの御様子も私は拝見していながらお答えをしておったつもりでございます。
  61. 大出俊

    大出委員 物事を、国会で起こったことを議論するに当たって、いずれの場合でも議事録が基礎になるでしょう。ここで争いが起こったって、すぐ速記、議事録を起こしてみてくれと、こうなるでしょう。そうでしょう。ある人の話によれば、こういうふうに談話をお書きになって、どうも議事録と合わぬというので、ちょっと後でいろいろあったようであります。そうでしょう。後になって議事録を大臣はお読みになっているようです。そうでしょう。議事録は正直ですよ。それは、あなたがわあっとこう言われて言いたくなる気持ちはわかる。わかるけれども、本人は何にも個人の意見など求めていないじゃないですか。あなたの正式な談話で、個人の意見でもいいと言われたから答えたと正式な談話で出ているじゃないですか。個人の意見でもいいと一つも言ってないじゃないですか。だから、こういうやり方はいけませんよ。  しかも、四日の方の、この新聞のあなたがるる述べておられる中には、そう言っていながら、こうなんです。いいですか。いまあなたがここでお述べになったことの繰り返しになりますけれども、「私は何も一私人として答えたわけじゃないし、私の所管であればその答弁政府見解になる。」いいですか。「私の所管でないから政府見解じゃないが、衆院議員であり、法務大臣である奥野誠亮答弁であることは間違いない。」こう言い切っているじゃないですか、今度逆に。一体どうなんですか。こんな大きな新聞記事を全国の国民が見ているのですよ。そうでしょう。これはどうなっているのですか。支離滅裂じゃないですか。これはどういうことなの。
  62. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 速記録をごらんいただきますと、後のくだりでは、個人の見解としてお尋ねをいただきまして、それじゃ政府としてどうする考えかというお話がございましたので、いまの状態で政府がそういう動きをすることは適当でないと考える、こういうことを申し上げたわけでございます。  事は、私は、こういう混乱が起こってまいりますのは、憲法論、憲法解釈というものと政治姿勢というものとを一つにして考えられる傾向があるからこういう混乱が起こってくるのじゃないだろうかなと思っておるわけであります。総理大臣もたびたび答えておられますように、憲法擁護の義務と、また、憲法改正について議論をするということは別だ。憲法改正について国務大臣が考え、また議論をしていく、これは差し支えないのだ。しかし、内閣として政治姿勢憲法改正考えるのか考えないのか、これは私は政治路線の選択の問題だと思うわけでございまして、政治路線としてこの内閣は憲法考えない、こう言い切っておられるわけでございますから、それに誤解を与えるような行動は政治姿勢としては避けなければならない。しかし、国務大臣が憲法論議をすることは私は差し支えはない、こういうたてまえで、その誤解ができる限り解決されるようにしなければならない、そういう気持ちで後もずっと議論していたことを御了解いただきたいと思います。
  63. 大出俊

    大出委員 ゴカイもロッカイもないでしょう。私はそんなこと聞いてない。いいですか。あなたは法務大臣としての談話を正式にお出しになっている。この冒頭に、さっき読み上げたように、個人の意見でもいいから言ってくれと言われたから答えたと書いてあるじゃないですか。議事録で言ってないじゃないですか。あなたはひとり合点でうなずいたと言うのだが、仮に百歩下がってうなずいたとしても、あなたの談話の冒頭には、個人の意見でもいいから言うてくれと言うから、あなた、答えたと言う。そうでしょう。なぜそんなことをおっしゃるか。議事録がちゃんとあるじゃないかと言っている。しかも個人で聞いたのじゃない。大臣、あなたの意見と聞いているでしょう。  そこで今度は、この新聞の方には、サンケイで対談している方には、個人と言ってないでしょう。私人として答えたわけじゃない。「私の所管であればその答弁政府見解になる。私の所管でないから政府見解じゃないが、衆院議員であり、法務大臣である奥野誠亮答弁であることは間違いない。」と、こう言っている。そうでしょう。そうなれば、いみじくも語るに落つる。あなたは個人だ個人だと言うけれども、少なくともサンケイ新聞の一面にこんな大きく出ている。「野党との論戦受けて立つ 憲法問題で奥野法相語る」そうでしょう。その中で、衆議院議員奥野誠亮であり、いずれにしても法務大臣奥野誠亮であることは間違いないと言い切っているのだから、あなた、逃げることないじゃないですか、どうなんですか。それを聞いているんだ、そうしなければ論議は平行線をたどるから。
  64. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 国会におきまして、単なる一私人が国会議員の質問を受けてお答えをするということは、私はないと思うのです。したがって、その意見は、法務大臣としての意見であるか、政治家個人としての意見であるかという使い分けは、私は起こってくると思うのであります。その場合に、私が政府見解を述べる立場ではございませんので、政治家個人としての意見を申し上げさせていただく、こういう意味合いで言っているわけであります。その人間が法務大臣であり衆議院議員であることには間違いないと思うのであります。しかし、政府見解を述べる立場ではない、そういうことであれば、私はお断りをしなければならぬと思うのです。やはりお断りをするのじゃなくて、できる限り、国会でございますから、率直にお互いに言い合って、はつらつとした国会にしていかなければならない。でありますから、私は、あえて率直にお答えを申し上げたわけでございまして、当時も、全体としては、私は、率直な質疑応答を評価してくださった方々も多かったと、こう思っているわけでございます。その意味合いは、ひとつぜひ私の誠意を御理解いただきたいものだなと、こう思います。
  65. 大出俊

    大出委員 つまり、いずれにしても法務大臣、あなたは政治家と言っているが、議院内閣制なんだから政治家でなければ法務大臣になれないでしょう。あなたは憲法憲法とおっしゃっているのだから憲法のことにお詳しいのだろうと思うけれども改正改正とも言っておられるのだから。憲法に書いてあるじゃないですか。議院内閣制、半数以上は議員でなければいけないでしょう。そうでしょう。この条項には、任意に罷免できる総理の罷免権もついているけれども。だから、私個人なんということはあり得ないでしょう、本来。あなたが自分でおっしゃっているとおり、いずれにしても、衆議院議員であり法務大臣である奥野誠亮答弁であることに間違いない、こういうことじゃないですか。にもかかわらず、談話や何かの中で一生懸命逃げる、いけませんよ、そういうのは。  そこで、ここに書いてあるからついでに承りたいのだが、「憲法問題奥野法相語る」国民合意で改正する、九条がポイント、はっきりあなたは九条改正とおっしゃっている。しかもこの中では、「その中には九条もあり、」――改正の中にはですよ。「これを素通りして改正論議を進めることはナンセンスだと思う。」「私は九条を改正するなら、こういう改正の仕方もあるという考えを持っている」――どういう考えなのですか、おっしゃってください。どういう九条改正をお考えなのですか。
  66. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 稲葉さんとの話の過程で、自主憲法国民の間で、同じものであっても、合意が生まれてつくり直してみたいということであるならば好ましいということを答えました。そのときに、それじゃ一体どこをとこうおっしゃいましたから、やはり有力な政党の間で百八十度も解釈が食い違っている、できることならそういう解釈の食い違いがなくなるようにしたいものだということで、初めて私は、九条のところに問題があるということは申し上げておるわけでございますし、また、その改正の中身を論議するということになりますと、せっかく憲法改正しないという方針を鈴木内閣としては堅持する、こうおっしゃっているわけでございますので、この段階において、私がさらにこういう場所でその内容を議論してまいりますことは、鈴木内閣姿勢に反するということにもなってまいりますので、その点は控えさせていただいた方がいいのじゃないだろうかな、こう思っているわけでございます。
  67. 大出俊

    大出委員 あなた、大変にどうも歯切れが悪いですな。卑俗な言葉で言えばひきょう未練だということになる。私のところに手紙も何もいっぱい来ていますが、やはりはっきりさせてくれ、国民立場からすれば、がまんがならぬ人もたくさんいるんですよ。そうでしょう、九条改正、こうなるというと。九条というのはここにある。これはあなた、後で申し上げますけれども、フジテレビの小川宏さんのショーにお出になってずいぶんしゃべっていますよ。あそこでもおっしゃっている。それから九州、鹿児島でもおっしゃっている。「第二章 戦争の放棄」というのは、第九条、念のために読み上げてみますが、戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認、これが第九条でしょう。「日本國民は、正義と秩序を基調とする國際平和を誠實に希求し、國権の發動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、國際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」これを改正するとすれば、永久に放棄しないのでしょう。これは戦争放棄か戦争放棄しない、どっちかしかないんだから、するような、しないようななんて、改正のしようがないじゃないか。二項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。國の交戦権は、これを認めない。」これが憲法九条です。ここであなたの言っているのは、後から指摘しますが、「陸海空」三軍「その他の戦力は、これを保持しない。」保持するとしろというふうにあなた言っていますよ。何でここであなたはお答えにならないのですか。  それならもう少し指摘しておきましょう。あなた、これを九州、鹿児島で言っているんだ。至るところでしゃべっているものだから、たくさんあり過ぎて困っているんだけれども、「奥野法相は十三日」――九月十四日の東京新聞です。金丸さんという方、ですから参議院議員の方の委員長におなりになったお祝いがあった。そこへあなたはお祝いにお出かけになっている。何と言ったかというと、憲法九条に触れたことについて、つまり国会委員会でですね、ここでお述べになっている。「戦後の一時期は米国が軍事的に世界をリードしていたが、ソ連が台頭して日本は米国に頼っていられなくなった。国民みんなが自衛隊など自由活発に憲法論議をすること」が必要だ。だから憲法九条に触れたんだ、こう言っている、九条改正について。アメリカが弱くなってソビエトが強くなった、大変だ、頼っちゃいられない、そうなると憲法九条改正、あなたの言っているのはそこじゃないですか。お答えになれませんか、どうですか。憲法九条改正、どういうふうに改正するのですか。あなた、案があると言うのだから、考えを持っていると言うのだから。
  68. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は、いろいろな論議を聞きながら、自主憲法制定というとすぐ明治憲法を頭に描いている、こういう反論が出てくる世の中、大変残念だなあという気がいたします。総理大臣もまた、憲法基本理念であります平和主義、これは堅持していくんだ、こうおっしゃっているわけでございます。自民党が自主憲法を綱領にうたっているわけでありますけれども、そこでも平和主義を堅持するという姿勢を出しているわけでございます。その中でどういうような自主憲法かということになりますと、さらにそれを前進させることもありましょうし、後退させることもあるだろうと思うのでございまして、みんなで議論し合っていけばいいものを、自主憲法といいますと、一つの型を勝手に想定して、それを相手に押しはめていく、私は、これは避けた方がいいのじゃないかな、お互いに本当に自由濶達に論議しながら、日本の将来を安泰に導く努力をすべきじゃないだろうかな、こう考えているわけでございます。
  69. 大出俊

    大出委員 だから、あなたは非常にひきょうだと言うんだ。みんな逃げる。あなた、ここではっきり言っているじゃないですか。言わないとは言わせませんよ。十月二日の朝刊、朝日新聞。これはなぜ明らかになっているかというと、すぐその後の十月三日、一日後の新聞でまたこれは出ているんですよ。あなた、原さんに、きのうの新聞に閣議の中身がみんな出ちゃっているけれども、君、一体どういうことなんだと言われて、いや、私が新聞記者に突き上げられてしゃべっちゃって申しわけないとあなたは謝ったと、ここに書いてある。謝った後で、帰ってきて側近の方々に何をおっしゃったかというと、自民党は安定多数を得た責任を果たすべきときが来た、タブー視されていたことを自由に討議しなければならぬ、あなた、こうおっしゃっている。これは話になるぬ。いいですか。  そこで、一日の閣議で何をおっしゃっているかというと、ここに組かく書いてある。これは新聞のニュースソースもいろいろ調べてみた。「一方、法相はこの席で、自らの発言を補足する形で1沖繩で自衛隊員が国体の選抜競技会で優勝したのに、代表になれなかった」これが一つ。「2沖繩では大学入試に合格しても、自衛隊員であるために入学できないケースがあった3市町村の自衛隊員募集事務に対する抵抗運動が続けられている――などをあげて自衛隊が“認知”されていないことを強調」なさった。認知するようにするには、一体どうするのですか。認知されていないというのは、それでは、いまの憲法違反だということなのですか。いいですか。いまの憲法に違反するから直せというなら、いま言ったように、陸海空三軍はこれを保持する、こうしなければいかぬじゃないですか。そうでしょう。  それから、「こうした現状では自衛隊の装備をいくら充実しても役に立たない」それでは、予算特別枠で九・七%はやめてくださいよ。そうでしょう。はっきりあなたは言っているじゃないですか。「こうした現状では自衛隊の装備をいくら充実しても役に立たない」と述べ、「そのうえで憲法九条があるから自衛隊が違憲という解釈が出てくる。」こう言っているじゃないですか。言っているじゃないか。これは後で翌日の新聞で解説しているじゃないですか。あなたは、原さんその他の方に言われて、突き上げられて私が実はしゃべってしまったんだと言っているじゃないですか。どういうことになるのですか。憲法九条があるから違憲という解釈が出てくるんだとあなたは言っているじゃないですか。ポイントは九条改正だとも言っているじゃないですか、さっきの新聞に。法務大臣がどだいこんなに端から改正改正、自民党安定多数になってやらなければならぬ、責任を果たさなければならぬ、改正。それじゃあなた、九十九条なんかどこにも出てこないじゃないですか。憲法の遵守、擁護義務なんてものは一言もあなたは言っていないじゃないか。九条があるから。そんなばかなことがありますか、あなた。これを手直ししたいという意見はあり得ると、これまでの改憲論議が九条に中心が置かれていたことを明らかにした。しかし、鈴木内閣考えないことにしているので、鈴木さんの、総理の方針には賛成をしたい、そうしなければあなたは閣内にいられないから。そうでしょう。そして、一日の憲法論議、つまり閣議で憲法論議をした後奥野法相は記者会見して、「自衛隊が違憲といわれる存在では、いくら装備を充実しても役に立たない。」いいですか。「国際環境が厳しければ、それに対応して期待できる自衛隊にならなければならない、ということだ」と、こう説明をなさって、さらに「鈴木内閣は防衛費の増額・自衛力の増強と取りくんでいるが、それが本来の機能を発揮しようとしても、第九条の存在はその足かせになっている、との認識をはっきり打ち出した」、これは足かせになっているというところを悪くとると、これは私はここを記者の方に確認してないからこの意味責任は問いませんが、足かせになっているなんと言うと欠陥憲法よりなお悪いですよ。足かせ憲法になってしまう。そうでしょう。あなた、憲法軽視ですよ。  八月二十九日の新聞、これは東京新聞。幾らでもある。この中で何を言っているかというと、法相によると、二十七日の法務委員会で憲法問題に関する質問が出ることを知ったのは当日の朝であったと言っている。このため、憲法問題に関しては事務当局からの答弁資料はなかった。そこで法相は、初めは現在の憲法は占領軍の翻訳憲法だと言おうと思ったが、誤解されてはいけないからやめたというのですね。いまの憲法というのは占領軍の翻訳憲法だ、こう言おうと思った。あなた言わないで、最後まで黙っているならいいですよ。稲葉質問に対してあなたいろいろしゃべっておいて、占領軍の指示だとあなたはおっしゃっておいて、後になって新聞に、いまの憲法は翻訳憲法だ、占領軍の翻訳憲法、そんなことをなぜ言うのですか。合わせて一本になってしまうじゃないですか、それでは。欠陥憲法よりなお悪い、翻訳憲法だの足かせ憲法だのと言ったら。そうでしょう。そういう法務大臣を私は認めるわけにいきませんよ。ひとつお答えになってください。九条をどう改正なさるのですか、言ってください。  ここまであなたは言って、いいですか、十三日の鹿児島では、社会党は罷免だ何だと言う前に私と議論すべきだとあなたは言っているじゃないか。議論すべきだと言っておいて、新聞にも載せておいて、九条を改正という案を持っているというなら、私があなた一体どうなんだと言ったら、言わないとは何だ。
  70. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私のしゃべったことがいろいろ新聞に掲載されている。私の本意どおりに伝えられているのもございますし、本意と食い違っているものもいろいろあるわけでございまして、私は、翻訳憲法などと憲法軽視と受け取られるような発言は厳に慎んでおるつもりでございまして、これからもそういう姿勢で進まなければならない。しかし、憲法論議だけは大いにやってもらいたいものだな、こう思っているわけでございまして、不幸にして国会政府と政党との間の質疑応答が中心になっております。もっと政党間においても論議をしながら、私は、憲法の問題についても論議を深めていくことが大切だな、こんな希望も持っているものでございます。  私がここで私の憲法改正の方向をお答えをするということは、これまで院外でお話をしておりましたこととは性格が異なってくるわけでございますし、また総理大臣憲法改正する考えは全くない、こうおっしゃっておりますのに、違ったことをもくろんでいるんじゃないかという誤解を与えたりするわけでもございますので、そういう意味で控えさせていただきたい、こう先ほど来申し上げているわけであります。
  71. 大出俊

    大出委員 そんなふざけた話がありますか。いいですか。あなたがそういうことを言うなら、私の方から一言言いましょう。  自主憲法制定国民会議というのがございますね。あなたも入っておった。この自主憲法制定国民会議は次々に通達を出していますよ。こういうふうに考え改正すべきだというのを出している。いいですか。たくさんございますが、この中で一枚だけあなたの件に触れて読み上げます。昭和五十五年八月二十一日、自主憲・議第三八五号「憲法改正問題についての論拠 その2-現憲法のいかなる点に欠陥があるか」この論議は欠陥憲法ですよ。いいですか。この中のまず第一、あなたの最初の、占領軍の指示による憲法、占領軍の翻訳憲法、押しつけ憲法、ここにくる。いいですか。「占領中に新憲法を押し付けたことは、国際儀礼を無視した屈辱であり、この点現憲法は国際法違反」である。あなたの言う占領軍の指示というのは、自主憲法制定国民会議からすれば国際法違反だ、占領軍が押しつけたんだ。だから、国民の正式に認知を受けていない憲法。あなたはその趣旨で言っておられる。  それから戦争放棄の九条。第七、「第九条戦争放棄の規定については、憲法学者の数ほど見解が分かれるといわれるほど多義であるが、本来、国家基本法たる憲法の条項については、誰が読んでも素直に分かるというものでなければならない。政府や政党が解釈で補ってそれぞれに結論を出すようになると、国民も税金の支払等で、法文を解釈で補って脱法行為をして何故悪いといった論理を」生み出す。陸海空三軍はこれを保持しないと書いてあるんだが、自衛隊と言っている、こう言う。解釈で補っている。そういうことをやると、国民が税金を支払わないで、法文を解釈で補って脱法行為をやってなぜ悪いと開き直る、そういう論理を生むというのです。「国民の遵法精神を低下させる点で疑義の多い規定は速かに改正する必要がある。」こう書いてある。そうでしょう。つまり、そこを読んでみると、奥野さんのおっしゃっているのと相通ずる。だから聞いている。どうですか。あなたが持っている九条の案というのは何ですか。もう一遍聞きますが、おっしゃってください。
  72. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いまおっしゃったことは私の関係するところじゃございませんし、また、私が押しつけ憲法などというような言葉をいまだかつて使ったことはございません。私が占領軍の指示に基づいたと、こう申し上げましたが、日本は全面降伏をいたしまして、昭和二十七年に独立するまでは主権は日本になかったのです。占領軍にあったのです。そのときに、憲法には主権は国民にあると書いてありますが、二十六年までの独立を回復するまでは主権は占領軍にあったことは、これは大出さんも御理解いただけると思うのであります。その占領軍の施政のもとにおいて国会もございましたし、日本政府もあった、そういうことでございますから、私が指示に基づいたという言葉を使いますことは御理解いただけるんじゃないだろうかな、こう思っております。(発言する者あり)
  73. 小山長規

    小山委員長 静粛に願います。
  74. 大出俊

    大出委員 とんでもないことを言っちゃいけません。とんでもないことを言っちゃいけませんよ。主権は日本になかったとおっしゃるが、アメリカは日本人じゃないのですよ。主権はあくまでも日本ですよ。そうでしょう。主権が制限されたり、抑えられたりしても、主権者はあくまでも日本。  そこで、私は最後に、いいですか、あなたどうしても九条を、あなた案を持っていると言っていながらおっしゃらない。(発言する者あり)主権が日本になかったというのはどういうわけですか。
  75. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 日本における施政権は占領軍が持っておった、こう申し上げることが一番御理解いただきやすいんじゃないかと思います。
  76. 大出俊

    大出委員 あなた、あわてていま言い直して施政権だと。さっきあなた、主権が日本になかったと言ったじゃないですか。国が敗れたって国はあるんだ。それが法務大臣の解釈か。ふざけなさんな。
  77. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 施政権といま申し上げさしていただきましたが、そのように訂正さしていただきます。
  78. 小山長規

    小山委員長 大出俊君。続けてください。――法務大臣奥野誠亮君。
  79. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 主権であれば制限されておったという大出さんのお話がございまして、私の表現、的確じゃなかった。施政権がなかったと、こう申し上げるのが正しいと思いますので、そう訂正さしていただきます。
  80. 大出俊

    大出委員 もう一言私申し上げて、ひとつ御判断をいただきたい。ちょっとお待ちください。  もう一つだけ申し上げますが、いま私は了解しませんよ、主権がないなんてとんでもない、日本の国がなくなっちゃったことになるじゃないですか、そんなことを言ったら。絶対了解しない。  そこで、最後にもう一つだけ。民放テレビにあなたお出になった、九月二日に。いいですか、九月二日にお出になった。これは私、社会党の立場で、天下の公党社会党の立場で、また社会党を支持なさる皆さん立場で、何が間違っても後に引けない、これだけは。これは九月二日の朝のフジテレビの小川宏さんのショーだ。私は、ここにありますのは、VTRと対照して一字一句間違っていないものをここに持っている。一字一句間違っていません。いけなければ報道センターへ行ってお調べください。この中で、これほど私は護憲連合というものを、中心は社会党ですよ、こんなに侮辱されて、私は社会党員として、社会党の議員として、後に引けません。いいですか。露木さんという方が当時の司会者でしょう。あなたに質問をする。小川宏さんのショー。憲法九条の条文をさっき私が読み上げたように読み上げられた、冒頭に。そして自主憲法をつくろうというのは政治家奥野としての前からのつまり持論であろうが、今回の発言は個人的な立場と断って発言しているのか、法務委員会で法務大臣として指名を受けて発言をしているのか、その辺からどうぞと、こういうふうに入っているわけですね。全語対照していますが。  そこで、この中でこういうことがあるのですね。社会党のやっております護憲連合について、護憲運動をやっておられる方々は、おれたちの考えは一〇〇%正しくて相手の考えは一〇〇%間違っているという立場に立っておられる人たちではないのかと思う。――これはあなたの見解だから構わぬが、護憲じゃなくて憲法固定化運動ですよと……。ある意味においては、日本憲法は、学問、思想、言論、出版などについての一切の自由を保障している。にもかかわらず護憲運動というのは、憲法基本姿勢、護憲、護憲と言われる方方は憲法固定化運動をやっている、そして憲法を守るんじゃなくて憲法基本姿勢を崩そうとしてやっているんじゃないか。憲法基本姿勢を崩そうというのはどういうわけですか、護憲連合が。  昭和三十年に自民党は自主憲法制定を党綱領でお決めになった。昭和三十年ですよ、これは。いいですか、あなた方の党は。護憲連合というものは昭和二十九年の一月の十五日につくったんだ。昭和二十九年の一月の十五日につくった。なぜか。いち早く、憲法改正の風潮がうんと大きくなって、この後鳩山さんが率いる政党は、憲法改正を明確にうたって衆議院選挙をおやりになった、大敗をしたが。そうでしょう。だから、戦後間もない二十九年の一月の十五日だが、われわれは、まずもって平和憲法の理念、趣旨は、一体精神はどこにあるのか、基本姿勢は何なのかということを列記して、懸命に国民に訴えて歩いた、全国で。当時は片山さんの党首の時代ですよ。この後、片山内閣ができるんだが。そうでしょう。片山さんだって懸命にこの護憲運動をおやりになった。鈴木茂三郎さんだっておやりになった。そして今日この護憲運動の中心は、何も総評だけじゃない、中立労連傘下の方がいっぱい入っている。そしていまは勝間田清一前委員長議長ですよ。自由世界を何とかしようなんてあなたは言っているけれども、護憲運動は、あなたがいま言われる、いまの世の中をわれわれ認めている、そんなものをぶっ壊そうなんて思っちゃいませんよ、ひとつも。勝間田さんが議長ですよ。おわかりでしょう、そんなことは。それを護憲連合というのは、いまの憲法基本姿勢を崩そうとしている。全国の皆さんに向かって憲法固定化運動をやっていて、自由社会を守ろうという憲法、その憲法基本姿勢を崩そうとしてやっている、そんなことをぬけぬけと言われて黙っていられる筋合ですか。  総理に申し上げたい。次から次と改正改正改正と言って歩いて、ここにも二つだけ例を挙げますけれども、これは毎日新聞。――待ってください。「憲法は国務大臣や国会議員の擁護義務と同時に改憲発議を認めている。しかし、法相という資格が切り離せない以上、改正が実現するその日まで、現憲法を忠実に順守する義務の方が法相としては優先することは当然」である、これは毎日新聞の社説だ。  もう一つ憲法は国の最高法規だから、みんなでこれを守りなさいというのが九十八条。「法を執行し、国民の先頭に立って守る立場にある国務大臣、しかも法相が「実は私は反対なんです」といい出したら、いくら「個人的」といったって、だれも憲法を大事にしようと思わなくなる。法相と法相個人は両立するだろうか、しかも衆院法務委員会は正式な委員会である。」これは読売新聞。  どこの新聞論調を見ても、あなたのやっていることは、法務大臣としてはあり得べき姿でないと明確にしている。だから、主権がない日本だなんて言う法務大臣がいてみたり、冗談じゃないですよ。自分で社会党は議論しなさいなんて言っておいて、九条の改正案を持っていると言っておいて、言わない。そうしておいてテレビで全国にこんなことを言われて黙っているわけにいかない。やめさしてください、総理。やめさしてください。
  81. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いまお話の中に、護憲連合というお話を言っておられましたが、私は護憲団体ということでの応答じゃなかったかなという気がするんです。護憲を標榜する団体にはいろんな団体が私はあると承知いたしております。私は、憲法改正する運動も自由であるし、憲法改正に反対する運動も自由だ、こう心得ておるわけでございます。ところが、護憲を名のっておる憲法改正反対運動の中には、憲法改正を認めない、そういう姿勢をとっておられる団体もあるわけでございまして、それはやっぱり憲法が自由な体制を守っていこうとすることを基本姿勢といたしておりますところから見ますと若干問題があるじゃないか、こう考えるわけでございまして、そういう意味合いで申し上げているわけでございまして、私は護憲連合を批判した覚えはないように思うのですけれども、ちょっと私、どういう言葉遣いであったか、正確でございません。ただ、護憲を名のる団体にはいろいろな団体がある、これは御理解いただけるのじゃないかと思うのです。護憲を名のる団体が憲法基本理念を国民に定着さしてきた、その功績は私は高く評価していいと思っているわけであります。そのいろんな護憲団体の中には、私が申し上げますように、改正運動も改正反対運動も自由でありますけれども改正運動は認めないという姿勢の団体もあること、これは御理解いただけるのじゃないかと思うのです。それはやっぱり憲法基本姿勢からいいますと若干問題が起こってくるんじゃないかな、こう思っているわけであります。
  82. 大出俊

    大出委員 そんな詭弁はないでしょう。護憲連合が法相の罷免を決めた、脅迫だとか言っているじゃないですか、方々で。それで護憲運動はと言えば護憲連合も入っちゃうじゃないですか。そういう詭弁を弄しなさんな。腹の中ははっきりしているじゃないですか。  だめだ。やめさしてください。認めがたい。(発言する者あり)  総括的にひとつ申し上げますが、先ほど問題になりました、日本国に主権がないという問題ですね。昭和二十七年まで主権がなかった、こういう御発言なんですね、速記を調べていただきたいのでありますが。そうなると、この立論ならば、昭和二十七年まで日本国に主権がなかった、この間にできた平和憲法というのは、だから押しつけ憲法、欠陥憲法だということになる。そうならば一歩も後へ引けない、こういうことです。したがいまして、この点についてひとつ速記を調べるなら調べて、そういうふうにおっしゃっているのなら、単に取り消したからといって事は済むものじゃない。政府の明確な統一見解なり何なりを要求します。
  83. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 主権についての私の発言が多少舌足らずであったのじゃないかと思いますし、またそのために大出さんから主権の制限というお話もあったわけでございます。(発言する者あり)
  84. 小山長規

    小山委員長 答弁を許しました。
  85. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 より正確に申し上げますと、日本国の主権の上に連合国最高司令官の権力が存在していたわけでございます。したがって、主権の属性であります最高性が失われていたわけでございまして、正確に申し上げるならばそういうことじゃなかろうか、こう思います。大出さんは制限と、こうおっしゃいましたし、最高性が失われておったことも事実でございまして、そういう意味で、的確に言いますためには、施政権がなかったと後で訂正させていただいたわけでございます。そういう経緯を御理解いただいておきたいと思います。(発言する者あり)
  86. 大出俊

    大出委員 だめですよ。これをはっきりしないというと、まさにこの国の憲法基本にかかわりますから。二十七年まで主権がなかった、そこでできた憲法だとおっしゃるなら対決をしなければならぬ。お調べください。(発言する者あり)
  87. 小山長規

  88. 川俣健二郎

    ○川俣委員 議事進行について委員長にようやく取り上げていただいたのですが、けさから理事会でいろいろと運営について与野党全部一致の上で委員会に入ったわけですが、早々の大蔵大臣からの財政方針なり、あるいは私も、この委員会を続けるということについて、これは不当だと思ってあえて委員長に発言を求めたわけです。特に、いまの奥野発言の一貫した答弁を聞いておりますと、単に主権と施政権との言い違いでは済まされない問題があるんだと思います。これは大変な問題だと思います。この思想、理念というか、基本的な問題があるんだと思います。  そこで私は、どうしても委員長にお願いしたいのは、ここで休憩をいたしまして、先ほどの奥野発言の正確なる訂正と、それから鈴木内閣の……(「訂正じゃないよ」と呼ぶ者あり)正確なる議事録を私たちが確認の上でこの相談をさせていただいて、後ほど統一見解をわれわれは求めたいと思いますので、休憩をお願いしたいと思います。
  89. 小山長規

    小山委員長 このままの状態で暫時休憩いたします。     午前十一時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十九分開議
  90. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、鈴木内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。内閣総理大臣鈴木善幸君。
  91. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 法務大臣の憲法改正に関する発言は、適切を欠くものであり、遺憾に存じます。私が所信表明で申し上げたとおり、鈴木内閣として憲法はこれを尊重し、これを擁護するとともに、改正の意思はありません。
  92. 小山長規

    小山委員長 次に、内閣官房長官宮澤喜一君。
  93. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 午前中の予算委員会における法務大臣の終戦から昭和二十七年までのわが国の主権または施政権の所在云々の発言は適切を欠き、かつ、重大な問題でございますので、この際、政府の見解を申し上げます。  占領下のわが国は、日本国の主権の上に連合国最高司令官の権力が存在しており、したがって、主権の属性である最高性が損なわれていた状態であると政府考えております。
  94. 小山長規

    小山委員長 次に、法務大臣奥野誠亮君。
  95. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 午前の私の主権等に関する表現には適切を欠くものがあり、遺憾に存じます。鈴木内閣の法務大臣として、憲法問題に関する鈴木内閣の方針に即してまいる決意であります。
  96. 小山長規

    小山委員長 この際、稲葉君より関連質疑の申し出があります。大出君の持ち時間の範囲内でこれを許します。稲葉誠一君。
  97. 稲葉誠一

    稲葉委員 時間の関係もありまして、総理以下に率直にお尋ねをしますので、また率直にお答えを願いたいというふうに思います。  一つは、自民党の政綱ですか、昭和三十年十一月十五日にできた政綱の六に「独立体制の整備」という項がございます。これに関連をして、いいですか、よく聞いてください、総理及び総裁としての見解を承りたい。総理というのと総裁というのと両方の見解を承りたい、こういうふうに思います。  「平和主義民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ」ここまではいいのですが、「現行憲法の自主的改正を図り」云々とありますね。これはまず、自民党の総裁としては、「現行憲法の自主的改正を図り」ということはあなたは支持されるわけですね。
  98. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は自由民主党の党員でもございます。党の政綱にありますところのただいま御指摘になりました点につきましては、私も賛意を表して加盟をいたしたものでございます。現在でも私は、前段にございますように、平和主義民主主義基本的人権尊重という三原則を堅持して、憲法の問題を勉強し、検討していくということには賛意を表しておるものでございます。
  99. 稲葉誠一

    稲葉委員 自民党の党員としてというよりも、党員には違いないでしょうけれども、総裁として現行憲法の自主的改正を図るということにあなたは賛成だ、こういうふうに言われるわけですね。そうすると、総理大臣としては、「現行憲法の自主的改正を図り」というところはどういうふうになるのですか。
  100. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私が申し上げたのは党員として申し上げましたが、党総裁としては、この政綱を変更するということは考えておりません。  なお、内閣総理大臣としての見解をお求めになりましたが、内閣総理大臣としては、本会議その他、先ほど午前中の憲法に対する私の見解そのとおりでございます。
  101. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、総裁としては憲法改正に賛成だと言ってお話をされて、演説なんかをされるわけですね。総理大臣としては憲法改正いたしませんと言ってお話をされるのですか。鈴木善幸という人は二人いるのですか。一人じゃないのですか。同じ人が、こっちへ行っては賛成だ、こっちへ行っては反対だ、あなたはこういう使い分けをされるわけですか。そういうことになりますね。
  102. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、自由民主党の政綱は、先ほど申し上げたとおり三原則を堅持しながら憲法の問題を自主的に検討もし、いろいろ研究もし、これに当たっていく、こういうことでございますし、内閣総理大臣としては、鈴木内閣においては憲法改正いたしません、こういうことを明確に申し上げておるわけでございます。これは私になって初めてそういう立場をとっておるのではございませんで、自民党の歴代総理、総裁がそのような立場においてやっておることでございまして、特に私になりまして変わったということはございません。
  103. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたはいまの総裁としての話の中で、憲法を検討をするとか研究を進めるということを言われたわけでしょう。だけど、政綱はそうではないんじゃないですか。改正を図れとはっきりなっているんじゃないですか。だから、自民党総裁としては改正を図る、総理大臣としては改正に反対だ、こういう二つの面を持ってこれからの政治に当たっていくんだ、こういうことでしょう。(「反対だなんて言ってないじゃないか」と呼ぶ者あり)いやいや、それならそれでも。反対、言い違えたですか、じゃ逆かもわからないかな。  いずれにしても、片方の総裁としては憲法改正を図るということでしょう。総理大臣としてはやらないというのでしょう。それであなたは矛盾がないのですか。それでどこかへ行ってそういう話をしても、一々聞かれますわね。この発言は総理大臣としてですか、この発言は総裁としてですかと聞かれるたびに、話が賛成になったり反対になったり、こうくるくる変わっていくのですか。そういうことであなた、国民信頼というものが日本政治に一体与えられるでしょうか。だから、あなたが総理大臣としてということは、総裁である総理大臣として憲法改正をあなたの在任中やらないというのならば、あなた自身もこの憲法改正の自民党の政綱をその間はストップさせる、こういうことでなければ筋が通らないんじゃないでしょうか。私はそういうふうに思いますよ。
  104. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 自由民主党の政綱は長い歴史と伝統を持って一貫してきておるわけでございます。私が申し上げたのは、自由民主党として、この三原則を堅持しながらどういう点をどう改正するかという段階にまだ来ておりません。先ほど申し上げたとおり研究をし、勉強し、調査もし、いろいろやっておるということでございますから、私は自主憲法としてこのように改正するんだということを申し上げる段階ではない。
  105. 稲葉誠一

    稲葉委員 ここに平和主義ということを堅持しつつということがありますね。そうすると、平和主義を堅持しつつということは、あれですか、憲法九条を変えないというふうに承ってよろしいでしょうか。
  106. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 鈴木内閣においては憲法改正考えておりません。
  107. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、だから言ったでしょうが。自民党総裁としては憲法改正考えるのだと言うからには、現実問題として総裁というものと総理というものは一体ではないですか。だから、平和主義を守ると言うなら、憲法九条を改正しないとあなたははっきり断言されたらどうですか。それを断言しないから国民は疑惑を持ってくるんじゃないでしょうか。平和主義を守ると言うならば、憲法九条を改正しないということをあなたはなぜ言えないのですか。平和主義を守るということについてなぜ言えないのですか。どうして言えないのですか、それを。だから、どうして言えないのですか、私どもにはわかりませんね。平和主義の中には憲法九条を含んでいるのですか、含んでいないのですか。
  108. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 鈴木内閣といたしましては、憲法九条を含めて改正いたしません。
  109. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、あなたの所信表明、あれは演説じゃない、朗読ですね。あの中であなたは、将来にわたってもこれを堅持するということを言われていますね。そうすると、憲法九条を改正しないという原則を将来にわたっても堅持をするという意味は、自民党内閣がいつまで続くか知りませんけれども、続く限りは憲法九条を改正しない、こういう御意見として、将来にわたってとあなたは言っているのだからそういうことじゃないのですか。そうじゃなくてはおかしいじゃないの、話が。平和主義憲法九条を改正しないということだ、それを将来にわたって堅持するというのならば、自民党内閣が続く限り、内閣継続の原則があるのだから、この九条を改正しないということでなければ私は筋が通らない、こういうふうに思うのですが、将来にわたってということはどういうことです。
  110. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、現行憲法平和主義民主主義基本的人権、この理念は将来にわたっても堅持さるべきものと考えておる。そして鈴木内閣においては憲法改正する意思はございませんということを明確に申し上げておる次第でございます。
  111. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたは、この平和主義というのは憲法九条を含むのだ、それについては憲法九条を鈴木内閣改正する意思はないということをいま言われた。そうすると、将来にわたっても平和主義を守るとはあなたは言わない。その理念を堅持するということを言っているわけですね。理念を堅持するということは、将来にわたって自民党内閣が続いても憲法九条を改正する考えが起きる可能性がある、こういうふうに承ってよろしいですか。
  112. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 これは稲葉さんがいろいろあれこれ考えて、そしてああではないか、こうではないかということをおっしゃっておるのでありますが、私が先ほど明確に申し上げたとおりでございます。あとはあなたの御判断、あなたの御見解をひとつ承ります。
  113. 稲葉誠一

    稲葉委員 私はあなたの言葉じりなんかとらえる、そういうことはしませんから遠慮なく話してください。  そこで問題といいますか、閣僚の方いらっしゃいますね。その方の選挙の公約があるのですよ、ことしの選挙の公約。これは公明党の正木さんが集められたのですけれども、ぼくはちょっとお借りしたのですが、了解を得て借りたのですよ。その中で憲法改正ということをうたっておられるのは中川一郎さん一人ですよ。やはり中川さんは大したものだとぼくは思ったんだが、偉いわ。中川さんはちゃんと憲法改正をうたった公報を出しておられる。だから、政治家としての中川一郎さんの憲法改正に対する考え方、いろいろな毀誉褒貶、そんなものにあなたはこだわってはだめですよ。そんなことにこだわらないで、あなたは遠慮なく本心を明らかにして私はお答え願いたいと思う。どうして憲法改正ということを――あなただけしているのですよ。どういうわけなのか、現在の憲法に対する考え方も含めて遠慮なく言っていただきたいと思います。
  114. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私は、改憲政党である自由民主党の政策に共鳴をして自民党員となって立候補し、国民の支持を得て議席を持ったものでございます。したがって、政治家としては改憲論であることには、もう正真正銘間違いありません。ただ、世の中なかなか思うようにはいかないな。鈴木内閣においては改正しないということであれば、閣僚としておるうちは改正はしないということに賛同して内閣に列してございます。しかし、政治家としては改憲論である。中身はどうかこうかということになると、これはまたいま言う時期ではありませんが、自民党が改憲をしようという精神そのものが中川一郎の改憲論でございます。
  115. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、さっき奥野さんの、これはフジテレビですか何かの言葉が問題になったわけですね。その中であなたが憲法に対して言及されておる。憲法にもいいところがあるということを言われていると新聞に出ていたので、ぼくはそれをそのままあれしてはいけませんから、VTRで全部調べてここに持ってきているわけですがね。そうすると、あなたの言う話を聞くと、日本憲法いいことたくさん書いてある、こう言っていますね。いいことたくさん書いてあるという前提は、日本憲法はよくないという前提の上に立っていいこともたくさんある、こういう前提でなければ話が通じないのだ、こういうふうに思うのです。いいですか。それについてはまた後であなたからお答え願うこととします。  そこで私がお尋ねをしたいのは、この前におった稻葉修法務大臣、あの人と奥野さんのケースとは何か全く事情が違うと思うが、どういう点が違うかというのが想定問答集に出ているのですが、想定問答集は別として、どういうふうにこれは違うのか、また同じなのか、その点について総理から御説明を願いたい、こういうふうに思います。
  116. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 想定問答は官庁の内部文書でございますので、それを前提として申し上げるということは差し控えさせていただきますが、御指摘の問題につきまして直接お答えをいたしたいと思います。  稻葉法相の場合は、憲法に欠陥が多いという御発言をなさいました。その発言が問題になりまして、三木総理が本会議において、本人にも十分注意した、今後本人も慎むと言っているということを言われたわけでございます。  それからもう一つは、稲葉法相の場合は、個人と公人との立場を明確にしないままに自主憲法制定国民会議総会に出席をされたわけでございます。御本人は個人としてのお気持ちで出席されたと言われましたけれども、三木総理は、いろいろな背景があったわけでございますが、そのことが憲法改正を行わないとする三木内閣の方針に閣僚が反していると誤解されるおそれがあるとして、これも本会議で、そういう点については今後閣僚は一切出席させないということを言われたわけであります。  そういう二つの問題と比べますと奥野法相のケースは違う、こういうことでございます。
  117. 稲葉誠一

    稲葉委員 そのいまの憲法に欠陥が多いという発言が、これはあれですか、誤解をされるようだ、憲法尊重、擁護する精神がないと疑いを持たれる、そういうところに問題がある、そういうことですか。
  118. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 委員会におきまして御本人もそのことを認められて取り消しをされ、それから三木総理も本会議でそのことを言われたわけでありますが、そういう発言が――失礼しました、三木総理は結論だけ言われたわけですが、御本人が委員会において言われたところによりますと、そういう欠陥が多いという言葉は憲法に対する軽侮と申しますか侮べつ的な意味にとられるおそれがある、こういうことであったと記憶しております。
  119. 稲葉誠一

    稲葉委員 すると、憲法に欠陥が多いということは、具体的にそれは事実として――いいですか総理憲法に欠陥が多いということは、あなたは事実として認められるのですか。法制局長官じゃない、総理に聞いておるのだ。事実として認められるのですか、認められないのですか。総理、あなたはどうなんです。
  120. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、憲法の中身を欠陥があるとかないとか、そういう議論をする前に、私の内閣では、現在の憲法はこれをあくまで堅持してまいります、改正する考えを持っておりませんということでございますから、内容にわたって論議することは慎みます。
  121. 稲葉誠一

    稲葉委員 それがおかしいと私は思うんですがね。それはあなた、憲法の内容にわたって論議することは自由じゃないんですか。これは奥野さんもそう言っておるし、皆さん方もそういうふうに言っていらっしゃるのじゃないですか。あなたが憲法改正しないというその趣旨は、両院で三分の二を得ていないから、憲法改正ができないからしないというのですか。あるいはそうじゃない、いまの憲法はりっぱな憲法なんだ、だから、仮に三分の二を得られたところで、これは改正しないのだ、守っていくのだという後の方の意味なんですか、どっちの意味であなたは言われておるのですか。
  122. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほどの私の答弁に対して、また再度御質問がございましたが、私の内閣では憲法改正をしない、こう言っておることであるから、現行憲法に欠陥があるとかないとかいうことをこの場で私が申し上げることは差し控える、こういうことを明快に申し上げたわけでございます。  それから、次のお尋ねでございますが、三分の二以上とった場合には発議するのかというお話、あるいは逆の表現で、三分の二以上とれないから憲法改正しないのだ、こういう考えであるのかと、その辺をお尋ねでございましたが、私は、現行憲法改正すべしという国民世論は成熟をしていない、このように認識をしておるわけでございます。憲法改正、九十六条で手続をうたっておりますけれども憲法改正というようなことは慎重の上にも慎重でなければならない、このような考えを持っておりまして、たとえ三分の二とりましても、この国民世論が成熟をし、やるべきであるということでなければ、三分の二をとったからといって、そう直ちに憲法改正の発議をするとかというようなことであってはいけない、あくまで慎重の上にも慎重な態度で臨むべきだ、これが私の認識でございます。
  123. 稲葉誠一

    稲葉委員 国民の世論が成熟しているとか成熟するとか、こういうことに対して、そうすると鈴木内閣としては、国民の世論が成熟するようにしむけていく、あるいはそういう運動をするということね、このことは自民党の党の綱領にもあることですし、そのことは構わないのですか、その点はどうなんですか。
  124. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 この憲法の問題については、現行憲法を守るという団体、運動もございます。また、憲法改正した方がいい、こういう運動、団体もございます。私は、それはあってよろしい、憲法が十分国民的な立場でもいろいろ研究をされる、調査をされるということは、憲法尊重するというその旨に反する行為ではない、こう思っております。
  125. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の聞いているのは、憲法を研究することや何かを言っているわけではなくて、鈴木内閣としては、国民の世論が憲法改正に向けて成熟するのを醸成するような運動をするのですか、しないのですか。そのことは、あなたの鈴木内閣では憲法改正しないということとどう結びつくのか、こういうことですよ、聞いているのは。
  126. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 鈴木内閣としては憲法改正しない、こういう基本的な方針を堅持しておりますから、憲法改正するということを助長するようなそういう運動を内閣として展開をするということはいたしません。
  127. 稲葉誠一

    稲葉委員 それは内閣としてですね。一方、あなたは、政党政治で自民党の総裁でもあるわけですね。自民党総裁としては、その国民世論を憲法改正に向けるように助長する、こういうふうに承ってよろしいでしょうか。(「大きなお世話だ」と呼ぶ者あり)大きなお世話ではなくて、国民皆さんは、そこのところを一番聞きたがっているわけですよ。それはそうですよ。あなた、一人の人間が二つに分かれて、こっちはやらないと言う、こっちはやると言っているのですから、一体どっちが本当なんだろうと、こういうふうにだれだって思うのはあたりまえじゃないですか。そうですよ、それは。そう思いませんか、あなたは。私どもはそう思いますよ。だから私は聞いているわけです。
  128. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、党内にもいろいろの意見がある、こう思っております。でありますから、私としては、私の内閣の方針に従ってこれに臨んでおります。
  129. 稲葉誠一

    稲葉委員 だけれども、実質的には、何かいまあなたの言われたのはちょっとよくわからなかったのですが、自民党総裁としても、あなたの鈴木内閣の方針に従って党内に臨んでいる、こういうふうにちょっとお聞きしたのですが、そうなれば、自民党の中で憲法改正運動がどんどん起きてくるということについては、鈴木内閣の存続する限りは、それをとめるというのがあなたの役割りでなければならないということになるのじゃないですか。それでなければ国民は納得しないのじゃないですか。(発言する者あり)いや、そんなことはないですよ。一方において、やらない、やらないと言っていて、一方においては、やる、やると言っていて、国民は一体何だかわけがわからないじゃないですか。いまのあなたの話を聞くと、鈴木内閣ではやらない、そのことを受けて、それを党内にも浸透させるというように聞こえた。だから、党内はそうじゃないんじゃないですか。逆の方向にどんどん動き出しているでしょうが。それをあなたはとめられないのじゃないですか。それじゃちっとも総裁としての資格というか総理としての資格はないのだ、こういうふうに第三者から思われても仕方がないのじゃないでしょうか。だから、そこをはっきりしてくださいよ。
  130. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 自民党の議員が多数参加しておりますところの議員連盟、これがいろいろ護憲運動をなさる方々と同じような立場で運動を展開されておる。自民党そのものというよりも、自民党の議員で結成しておりますところの団体、それがいろいろやっておられる、こういうことでございます。私は、憲法を堅持していくという鈴木内閣の首班として、積極的にこれに参加するつもりはございません。
  131. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、積極的に参加するつもりはない、これはあたりまえですね、総理大臣として憲法改正しないと言っているのですから。だけれども、自民党の中で憲法改正運動がどんどん起きてくるということについては、私は知らぬ、私は総裁だけれども関係しません、それが和の政治だ、こういうことですか。それは余りやかましく言うと自民党の中がごたごたするから、そういうことのないようにしようというので、それをやらないようにしよう……(発言する者あり)いや、そうじゃないのよ。自民党の中でも、憲法改正をしないのだ、ああいうふうに新聞や何かに出ることについては不本意だということを言っている人がいるんですから、わざわざ私どもに対して。あれを、憲法改正が自民党の全部の意思だと思われては困ると言う人もいるのですから。だから聞いているのだ。あなたの言っていることは、一人の人間が二つに分かれて、片っ方は片っ方、片っ方は片っ方で、どうも分裂と言っちゃおかしいけれども、分裂と言うと変な言葉になるから、おかしくなってくるから、不統一という言葉にかえますが、そういうふうに考えざるを得ない、こういうふうに私は思うわけですね。どうもあなたの言うことはよくわかりません。  私は、いずれにいたしましても、いろいろ聞きたいことがあるのですが、さっき奥野さんは、日本憲法はいいことたくさん書いてあるということを言われましたね。これはビデオで出ているのです。新聞では、日本憲法にもいいところがあると書いてあるのだけれども、それは間違いか何かで、いま私が後から言ったことがあれなんですね。そうすると、いいことがたくさんあるということの前提はどういうことなんですかね。日本憲法は全体としてはよくないのだ、だけれども、いいこともあるのだ、こういう意味じゃないのですか。それはあなた、それでなくちゃ理屈に合わないんじゃないでしょうか。
  132. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いつか国会お尋ねをいただいてお答えをしたことがあるわけでございますけれども日本憲法に流れております基本的な理念、平和主義でありますとか、民主主義でありますとか、基本的な人権の尊重でありますとか、そういうような理念、大変りっぱな理念だと考えているわけでございまして、そういうような理念に基づきますいろいろな規定、これはやはり戦後の日本の発展をもたらすのに大きな効果があった、こう考えておるものであります。
  133. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたが言うように、平和主義、それから基本的人権、それから国民主権ですか、こういうことを堅持する、理念を堅持すると言うなら、総理憲法改正の余地は、あなたの内閣だけではなくて、ほかの内閣になったところでその余地はないのじゃないですか。この三つが基本なんで、この三つを変えないと言うのなら、あなた、ほかで変えられるところなんかありゃせぬのじゃないですか。そういうふうに考えるのが正しいのじゃないですか。そういうふうに総理思いませんか。どうです。
  134. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、後代において憲法改正等のことが仮にありましても、この三原則というものは堅持さるべきものである、こういうことを申し上げておるのでありまして、それ以上のことを私がいま後代にわたって申し上げるということはいかがか。私は、鈴木内閣においては憲法改正する意思はないということを明確にしておきます。
  135. 稲葉誠一

    稲葉委員 同じことを繰り返しても始まりませんけれども、あなたは、理念、理念ということを盛んに言われるんですね。理念ということは、あれですか、その三つに流れておるものというか、その三つそのものが変わることはある、条文そのものは変わることがあるということを前提にして理念を堅持する、こういうことを言われているわけですか。そうでないと、理念という言葉は出てこないですね。その三つの条文、条項を堅持するということと理念を堅持するということとは非常に段落がありますよ。理念という言葉は非常に薄ぼんやりしてくるわけですよ。そのものを直接的に堅持するということとは違いますわね。そういうようにあなたお考えになりませんか。
  136. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、稲葉さんが私から何を引き出そうとしておるのか、先ほどから実は頭をかしげておるのでございます。憲法に対する私の信念というものはいささかも変わっておりませんから御安心願いたい。
  137. 稲葉誠一

    稲葉委員 別に引き出すことを私が考えてやっているわけでは決してありません。私は率直に、国民の疑問に思っていること、私どもが疑問に思っていることを聞いているだけの話です。それをあなたの方で余り考え過ぎるのじゃないですか。  では、内容に入っていきますが、たとえば憲法九条の問題で、安保条約の問題に関連してくると、安保条約はいま片務条約ですね、これを双務条約に仮にするということになると、これは憲法のどこに違反をするということになるのですか。
  138. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 私ども憲法九条の解釈としては、これまで繰り返して申し上げておりますが、いわゆる集団的自衛権はわが憲法においては認めていないと解釈しております。御指摘の双務的なものにするという意味が集団的自衛権の行使という意味でございましたら、そういうことは憲法九条に反するということになろうと思います。
  139. 稲葉誠一

    稲葉委員 しかし、自民党の国防部会では、安保条約を日本がまたアメリカを守るようにするというふうに変えるのは、国連の安保理事会の要請か何かがある場合には自衛隊法の改正だけでできる、こういうふうな議論を提起しているのじゃないですか。そうすると、いまのあなたの見解だと、それは間違いで、憲法の九条の改正なしに日米安保条約が双務協定になることはない、自衛隊法の改正だけではできない、こういうふうにはっきり承ってよろしいですね。
  140. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 私の聞き間違いでなければ、日米安保条約だけの問題でございますか。(稲葉委員「そうそう」と呼ぶ)そういうことであれば、先ほど申し上げたとおりでございます。
  141. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまあなたは、どうして日米安保条約だけではと聞き返したのですか。どういう理由ですか、それは。
  142. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 大変失礼いたしました。何か国連軍の話のように、何か通告の中に国連軍の話と集団的自衛権の話があったように私ちょっといま誤解したものですから、大変失礼いたしました。
  143. 稲葉誠一

    稲葉委員 国連軍の問題は、私は書面で、質問主意書で出したわけです。だめですよ、そんなことを勘違いしていては。それはまだあなたの方で延ばしてくれと言うから延ばしているだけなんですね。それは別なんですが、そうすると、憲法の問題でいろいろな問題がたくさんあるわけですが、あなたのお考えは大体わかりました。そうすると、くどいようですけれども、官民党総裁として、あれですか、あなたも自主憲法期成同盟に入っておられるわけですね。あなたも入っておられるのですか。それを、どうなんですか、脱退するのですか、しないのですか。まず、入っておられるかどうか、それを脱退するのかしないのか。いや、それはおれの向山だから、そんなことは干渉されないというならば、そういう答えならばそういう答えでも結構ですよ。
  144. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 議員連盟には私もずっと入党以来入っております。いまそれを脱退するとか、そういうように特に考えておりません。
  145. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、あなたは、総理大臣として憲法改正をしないけれども、自民党の議員あるいは一鈴木善幸、政治家個人としては憲法改正論者だ、こういうことになりますね。そういうことですね。くどいようだけれども、そういうふうになりますね。それはカメレオンみたいなものですね。そういうことですか。何回も念を押しますけれども、そういうことですね。
  146. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほども同じ御質問がございまして、お答えをしたのでありますが、私は、三原則というものを堅持しながら、憲法改正についていろいろ研究をする、調査をするという立場におきましてこれに加盟しておることは差し支えない、こう思っております。
  147. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、研究し、調査するということじゃないんですよ。もう一つ先の改正そのものに対することについてあなたはどういうことなのか。それは自主憲法期成同盟の性格じゃないんですか。だから、あなたが鈴木内閣として憲法改正をやらないと言うならば、私としてはもう自主憲法期成同盟も脱退します、そういうことをして、そして態度を明らかにしていかなければ、国民は、あなたに対する疑惑を全然抜きにしないんじゃないでしょうか。そういうふうにあなたは思いませんか。
  148. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 稲葉さんに大変御心配をかけておりますが、私の判断でやってまいります。
  149. 稲葉誠一

    稲葉委員 ここに昭和五十五年九月三十日の自主憲法制定国民会議というものの決議があるのですがね。そうすると、この自主憲法制定国民会議というのと、自主憲法期成議員同盟というのですか、これが両方、会長が岸信介さんで同じところにあるのですかね。何か衆議院の第一議員会館にありますね。鈴木内閣憲法改正をしないというのに、なぜ憲法改正をする団体が衆議院の第一議員会館の中にあるのですかね。どうしてなの。ちゃんと電話番号も書いてありますよ。これはおかしいじゃないですか。  それは一つの問題として、「奥野法相発言の正当性を擁護する」という中で、第三で「今後は、国会における自由なる憲法論議を活発に展開して、政府・与党みずから自主憲法制定についての機運を醸成されるよう要望する。」こうなっておるのですね。そうすると、この自主憲法制定国民会議というのは、自主憲法何とかの期成同盟というのと同一体みたいなようにも見えるのですが、そこでは、あなたも中に入っているメンバーが、あなた方に対して、その機運を醸成されるよう要望しているわけです。  だから、あなたは総理大臣としてはやらないけれども、一方においては自主憲法制定――自主憲法という言葉はいいか悪いか問題ですけれども、とにかく醸成してくれ醸成してくれということに対して、あなたとしては、それに対して明確に、そういうことはやらないんだと言わないでしょう。調査研究するんだということばかり言っていて、あなたは、やらないんだということをはっきり言いませんね。どうもそういう点が納得いかないですよ。だから、あなたは、鈴木内閣憲法改正をやらないと言うならば、自主憲法の期成同盟も脱退するし、それに対して憲法改正の機運が醸成されるような運動というものは、自由民主党では私が総裁である以上やらせません、こういうふうにあなたは言えないのですか。それは言えないの。あなたにそれだけの指導力がないのかもしらぬけれども、言えなければおかしいじゃないですか。それはおかしいよ。それでなければ内閣の姿勢と一致しないですよ。政党政治のもとにおいては、それはやられるのはあたりまえの話ですよと私は思いますがね。あなたはどういうふうにお考えですか。
  150. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そういう団体が議員会館に存在するとかどうとかいうことは内閣とは関係ございません。  それから、私は自由民主党の総裁でございますが、党員が参加しておりますそういう団体にまで指揮指導をして推進するというようなことはいたしません。
  151. 稲葉誠一

    稲葉委員 自由民主党の人が入っている団体に対しては、あなたが指揮指導することはできないかもわかりませんね。だけれども、内山民主党に対してはあなたはできる立場にある、こういうわけでしょう。これはあたりまえの話。そうなれば、そういうようなことについて、その自民党に対してあなたが総裁としてのリーダーシップを発揮して、私の在任中は鈴木内閣憲法改正しないというかたい決意なんだから、それに反するようなことは一切慎んでくれ、こういうことを全自民党員に対して言えないのですか言えるのですか、どうなんですか。
  152. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 自由民主党には憲法調査会というものがございまして、党独自で憲法の問題を調査検討いたしております。あとは党員の諸君が個人的なそれぞれのお考えで団体をつくっておる、こういうことでございますから、私は、その団体に対してまで、いろいろ指導したり、また発言をしたり、介入したりということはいたしません。
  153. 稲葉誠一

    稲葉委員 自由民主党、あなたの方の幹事長櫻内さんですか、あの人は、あなたの言うことと違うようなことを次から次へ言っているのじゃないですか。憲法改正するとかいろいろなことを言っているでしょう。それに対して、あなたは自民党の総裁として注意をするようなことは全然しないわけですか。それは構わないのですか、それは自由なんですか。それはおかしいじゃないですか。自民党からできている鈴木内閣でしょう。だから、鈴木内閣憲法改正しないということを言うならば、自民党の主要幹部なり何なりがそれに従った行動をしなければならないのはあたりまえのことじゃないですか。そうでないことを堂々と言ってのけているということについて、あなたは総裁としての責任を感じないわけですか、それはどうなんですか。
  154. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 もう最初に申し上げておりますように、憲法尊重、擁護するということと、憲法の問題について研究調査を進め、また、いろいろの意見を述べる、論議をするということは、これは相矛盾しない、容認されておるところでございます。したがって、党員の方がそういう発言をするということに対して、私は閣僚に対しては誤解を招かないようにということで、その慎重な言動を求めておりますけれども、党員の各位に対して一人一人に、憲法で容認されておりますいろいろな憲法に対する発言、これを抑えるというような非民主的なことは私はいたしません。
  155. 稲葉誠一

    稲葉委員 鈴木内閣憲法改正しないということ、それはわかった。それは、あなたが自民党の総裁としての総理大臣という立場鈴木内閣憲法改正しないということなんでしょう。それに相反するようなことを次から次へと幹事長その他の者が言っていても、それはあなたとしては、むしろ歓迎するのですか。それはどうなんです。
  156. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 歓迎するともしないとも――私は先ほど来申し上げておるわけでございます。それは政治家に対して認められておる憲法に対する意見等を述べ合うということは差し支えない、こういう認識でございます。
  157. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、私の聞いているのは、あなたは最初から憲法調査研究ということで逃げているわけですよ。憲法調査研究をすることを決して悪いとは言わない、そんなことは自由ですから。そうじゃなくて、鈴木内閣憲法改正しないと言っているならば、それに基づいて、それに相反するような運動は、思想の自由に入るようなことじゃなく運動というものについては、これは憲法改正運動ですね、これはあなたが総裁である以上、当然抑えるのが筋ではありませんかということを再三聞いているのです。  だけれども、あなたはその運動に関してのことは言わない。調査研究そればかり。あるいは意見の発表そればかり。だから、そういう憲法改正の自民党での運動ということに対しては、これは私の関知しないところで、それは自民党全体としてやろうがやるまいが、そんなことは鈴木内閣憲法改正の方針とは関係ないことだ、こういうことですか。それならそれでいいですよ。私は憲法改正の運動のことを聞いているのですよ。
  158. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 運動は自由民主党自体がやっているのではなしに、自由民主党の諸君が参加しておりますところの議員連盟、それが中心になってやっておるというように私承知をいたしております。したがいまして私は、自由民主党の党員として、政治家として憲法に対していろいろの所見を述べておる、発言をしておるということまで抑えたりするようなことは適当でない、こう思っております。
  159. 稲葉誠一

    稲葉委員 話はわかりました。政党政治というのはそういうものなんですかね。政党政治というのはもちろん自由はありますよ、それはあるけれども、その内閣が規定している方針と相反するようなことを公然とやっても、それについて総理大臣なり何なりというものは何らくちばしを入れられないんだ、入れればまた党内がごたごたするから入れられないんだという形で放任をしておる、むしろ歓迎をしておる、こういうふうなことで果たしていいかどうかということについては、私は非常な疑問を持ちます。  同時に、いまあなたが、鈴木内閣憲法改正をしないと言いながら、一方において政党というものを使って、と言っては言葉は悪いけれども、それによって憲法改正をどんどんやらせるということについては目をつぶっておる、こういうふうなこと。しかも、あなたが総裁である、こういう段階の中で目をつぶっているということは、一人の鈴木善幸は憲法改正に反対だ、やらない、一人の鈴木善幸は憲法改正賛成、これでやるんだ、こういうようなことで、そういうように一人の人間が二つの面を取り持ちながら、そして器用に使い分けてやっていくということが日本政治の混乱というものを招いているんじゃないでしょうか。私はそういうふうに思いますね。  だから、あなたもそういうようなことを言わないで、まあ言ってもいいですけれども、自分の本心というものをもっともっと明らかに出して、そして国会の中で論議したらどうですか。ぼくは奥野さんはむしろ正直だと思うのですよ。むしろ正直だと思う。この人は、たてまえと本音というもの、そんなことなしに言っているんだ。本当のことを言っているんだ。本当のことを言っていますよ。それだけ私は人間として正直だと思う。あなたの方は、そこら辺のところを適当にごまかしている。そういうところに鈴木内閣の和の精神があるんだということなら、これはもう国民は納得しないというふうに思いますよ。私は、だから、どうもあなたの答弁については納得いきません。しかし、時間が来ましたので、ほかの人の質問にかわって、きょうはこれでやめます。また別の、十一日かな、土曜日にまたやりますが、いまのあなたの答弁では私は納得しない、このことだけははっきり申し上げて、私の質問を終わらせていただきたい、こういうふうに思います。
  160. 小山長規

    小山委員長 この際、大出君の残余の質疑については次回に行うことといたします。  次に、川俣健二郎君。
  161. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一時間しかございませんので、私の質問の主題は政治倫理、盛んに鈴木総理はお題目のように申しておりますが、鈴木さんの政治倫理というのはどの程度のことを指すのか、まあ例を挙げて、ちょっとただしたいと思うのです。  その前に、せっかく質問通告しておりますから、鈴木さんも十分御承知のように、今回の冷害問題というのは単に東北、北海道だけではなくて全国的に、しかもちょっと最近例を見ないひどい状態であります。近くは五十一年の冷害を経験しておるわけですが、はるかにあの冷害度というものを超しておるわけでして、そこで私は、これを一々取り上げると時間がございませんので、冷害対策は大体大なり小なり項目が決まっていますけれども、ただ、この点だけ正確に確認しておきたいと思います。  というのは、一番先に金融対策として天災融資法、激甚災害法、この発動は、これは与野党ともにそれぞれ調査の中で提示をしておるわけですが、問題は、これから冬になるわけです。冬になれば、御承知のように雪国の方は大量に遠出して働きに出る、いわゆる出かせぎに出るわけです。したがって、この現状にかんがみて、いつごろまでにこれが実現するかということを特にひとつ聞きたい。  それから、自作農維持資金の災害もそのとおりでありますが、その辺のことも金額も含めて伺いたい。  それから、共済制度が当然発動されるわけですが、この共済金の問題にしろ、とにかく時期が遅くて大変に困っておるという状態。  それから公共事業の問題でも、これは自治省になるか、大臣でなくても結構ですから、町村単位のいわゆる小回りの工事というか、こういったものを十分に、いわゆる特別交付金の留保額の四千八百億のうち、これを取り崩して使うという意思があるのかどうかということを聞きたい。  それから、私の聞きたい点だけ確認しておきたいのですが、いわゆる来年度のための種子ですが、五十一年の際は三分の一助成をしておるわけです。それを今回やる意思があるかどうかということ。  それから、御承知のように米の予約概算金の仮払いがあるわけですが、これを一切――皆無作がかなり出てきているわけですから、六十キロ当たり三千円というものを返さなければならないということになるわけです。これをどのように取り扱おうとしておるのか。  それから規格外の米の買い入れ処理、こういった問題をひとつ的確に、個条的に、担当者で結構ですから、ここで確認しておきたいと思います。
  162. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 川俣委員にお答えいたします。  天災融資法、激甚災法の発動はいつごろになるかという御質問でございますが、五十一年災のときには十一月二十九日に閣議決定をいたしておりますが、今回は十一月十日から十五日、少しでも早く、そのころに閣議決定に持ち込めるように諸般の準備を進めろと、こう指示を与えております。  自作農維持資金等につきましては、仰せのとおり五十一年に準じて、五十一年災で借り受けておる分もまだ残っておりますので、その分等も考慮して枠の積み上げ等も十分考慮して折衝しております。  さらに、共済金の仮払いでございますが、これは何といっても農家に一番先にキャッシュで届く災害対策の中心でございますので、できるだけ早く仮払いができるようにという通達をすでに出してございます。全国的に共済団体がいま全力を挙げて損害評価をやっておりまして、近く仮払いという手続に取りかかれる組合もあるというふうに報告を受けております。  それから種もみの件につきましては、これは収穫皆無のところ等においては、来年の再生産の最大の問題でありますので、農林水産省といたしましても重大問題として、五十一年度に準じまして各県の調整、あっせんを初め、助成等の措置につきましても現在財政当局と折衝をいたしておる最中でございます。  それから概算金の問題でございますが、これも農家は、もう米がとれるものとして概算金を受け取っておるわけでありますが、その米が全くとれないわけでありますから、これは払いようがございませんので、これは五十一年に準じて延納をして、来年の秋の収穫の時期に支払いをしていただく、こういう処置をとりたいと思っております。  飯米確保につきましては、私も現地に行ってびっくりしたわけでございますが、集まった被災者の方々に、飯米がもう十月いっぱいで切れるような方は手を挙げてごらんと言って手を挙げてもらいましたら、二百人ほどおった方々のほとんど全部が手を挙げた、こういうような状態でございまして、これも五十一年度に速やかに処置をした例がございますので、できるだけ安く被災農家のところに交付できるようにしてまいりたい。この際も、米代金は秋の収穫時期に支払えるように処置をいたしていきたい、こういう指導をいたしておるわけでございます。  大体以上で。落ちた点がございましたら……。
  163. 川俣健二郎

    ○川俣委員 特に、冷害の時期は大体いつも同じですが、年末を待たずに十一月の十日ないし十五日――大臣に言っておくが、十五日になってしまうと、ほとんどの農家の出かせぎは終わっちゃうということをひとつ念頭に置いて、十日ないし十五日というところで確認しておきます。  それから、時間があればもう少しあれですが、来年から第二期目の再編対策に入るわけですが、御承知のように農民は、あなたのところもそうでしょうが、えさ米というもの転作作さしてほしいということでかなり研究しておる。ところが、このえさ米の問題をめぐっていろいろと、民間は民間なり、役所は役所なりで、予算委員会でも取り上げられてきましたが、ただ、農林省の中で、とうてい理解ができないというか、ここで答弁したこととは違う。前の農林大臣の武藤さんはわざわざ秋田までお出かけになったのだが、そういう態度と違うものがあるような気がします。というのは、「えさ米 その将来性」、これは農政ジャーナリストの会というのがあるわけですが、それが編集しております。これは別に政府とかあるいは自民党側が書いているだけじゃなくて、農協の山口さんとか、あるいは日農の足鹿さんとか、あるいは例の小倉武一さんとか、みんなで書いておるんだが、どういうわけか「えさ米のほかにも「手」はある」という題名で、農林省の技術行政専門課長という名前で書いておる。ところが、これは非常に、何というか、一つ考え方をみんなで書いたというような文章ではない、その人の文章は。そこで、こういうのはだれだろうかと私は探しておるんですけれども、どなたかおりませんかね。それだけ聞きたいのです。
  164. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お考え申し上げます。  御指摘の論文は、農政ジャーナリストの会という民間団体の手によりまして編集されたものでございます。まあその記事が匿名で書かれておるわけでございます。したがいまして、匿名で書かれております以上、農林水産省といたしまして、この技術行政専門課長というものがだれであるかということにつきましては、知る立場にもございませんし、また、申し上げる立場にもない、かようにお答えを申し上げる次第でございます。
  165. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、これは決して週刊誌とか、おもしろおかしく、なじったりして書いている本じゃないのです。どっちかといったら、農業の指標、農民の教科書、こういった内容なんです。しかも、元農林省の役人さんが書いたというページなら私もとがめないのだが、せっかくえさ米というもので一つの考察を書いておるのに、いま局長に、教えなければならない筋ではないとか言われると、農民がその人に聞こうとしたって、これはどういうものですか、これ以上しゃべりませんが、農林大臣、その考え方だけちょっと……。できれば教えてあげた方がいいでしょうねという考え方なのか。
  166. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 匿名でございますので、いまここで、何という課長が論文を書いたかということはお話し申し上げることのできないのが残念でございますけれども、御指摘のえさ米、この問題は、農林省としても大変重大な問題として取り上げておる問題でございます。  現在、全国の農業試験場並びに筑波の試験場等において、品種固定のための試験研究を急がせておるところでございます。やはり農林省で奨励をいたしてまいります以上は、農家がそれを栽培いたしました際に、あらゆる面から信用を落とすようなことのないような品種にまで固定をした上で奨励をしてまいらなければならない、こういうことは川俣先生百も御承知のところでございます。しかし、農家としては、水田転作作目としてそういうものを将来やはり大きく再認識をしていかなければならないのではないかというような気持ちも持っておりますので、ここ数年、試験場で品種の固定化ということに全力を挙げさせておる次第でございます。
  167. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、私はこれ以上この問題は取り上げないのだが、いつか時期を改めて、これは政治姿勢というか農林省の――まあこういうことなんですよ。せっかく、えさ米だけが手じゃない、ほかにもあるよということを国民に教えておるんだよ。だから、みんな名前を書いて入れているわけだ。どういうわけか、えさ米のところだけ匿名にしなければならないという理由がわからないので、この内容をもっと教えてもらいたいわけだ。それを聞こうとしておるわけで、ですから、その点、私は決してえさ米の賛否のあれを問うているのじゃないのです。この問題は、時間がありませんから、そういう考え方をぜひひとつ次にまた聞かせてもらいたいと思います。  それから、いまの内閣は鈴木内閣にかわったわけだが、予算的には大平内閣で、この予算委員会でいろいろと審議してやったわけなんです。そこで、いろいろと修正問題をめぐってこの春四党合意というものができたというのは総理大臣御承知なんでしょうが、そこで、大平内閣の精神を継承して云々ということがよく言われるのですが、一体、四党合意という問題、これから年金、健保の審議に担当委員会は入るわけですが、この四党合意を尊重して、それこそ遵守していくという考え方なのか、その辺をお伺いしておきます。
  168. 園田直

    ○園田国務大臣 健保、年金、両法案の取り扱いについて、御案内のとおり現在社会労働委員会、各党で、与野党間の協議が進められていると承知しております。政府としてはこの合意を踏まえつつ適切に対処してまいる所存でございます。
  169. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま厚生大臣からお答えをいたしましたとおり、私も、内閣としてこの四党の話し合いを尊重してやってまいりたい、こう考えております。
  170. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは法案処理をめぐってさらに論議されると思うのですが、公党間の約束でもあるし、予算委員会の中で四党合意というのを国対委員長同士でやられたことですから、ぜひこれは、これを前提にして法案処理をすべきだと思います。  そこで、時間が大分流れてしまいましたが、さっきの政治倫理という、ただこれを抽象的に申し上げてもあれでしょうから、一つの例を出してここで論議に入っていただきたいと思うのは、いま大変な医療の荒廃というのが叫ばれておるんですが、これほどひどいことが過去にあっただろうか。言うなれば、所沢の例の富士見病院の事件でございます。もう一切合財、学歴、職歴という履歴はもちろんでたらめだし、それから無資格であるし、脱税もしておるし、これは大蔵省も調べておるようですが、それからこの間の選挙違反の大量地域ぐるみもやっておるし、それから建築違反で福高県から告発されておるし、農振法で。しかも、ああいう薬づけではなくて機械づけというか、そういうことで、病身でも何でもない者の健康な体から女の機能を取って、もう一切だめにしてしまう。これはもう大変な問題だと思うのでございます。その問題は、これはお笑いになっている方もおられるのですが、これは本当にリリーフ役の新しい厚生大臣も大訓示を出したように、えらい問題だろうと思うのでございます。  そこで、その内容に入る前に、これが新聞ざたになった。新聞ざたになったところへ、担当の厚生大臣が献金を受けておった。しかも、大臣の部屋へのこのこ、やあ、こう言って入ってきた。三十年来のつき合いだそうですから、御本人の表現によると。それじゃ一体幾らでしたかな。五百万円でした。小切手で持ってきました。小切手一枚持っていると、めんどうか、なくすと困るから自分で換金してきた。めんどうくさいから換金してきた、換金して返そうと思った、こういろいろおっしゃっておる。  ところが、この鈴木内閣が発足して二カ月、空白の間に起きた事件ですから、まだひな壇に一回も並ばないうちにもうさっさとやめちゃった。そこで、当然ながら委員会でも聞きようがないから、私らとしては、それじゃ取材を通して伺うしかない、こうなるわけです。  そこで、鈴木内閣を代表して宮澤長官に伺いたいのですが、どうでしょうか、この問題は。(発言する者あり)
  171. 小山長規

    小山委員長 だれかかわりの人でいいですか。
  172. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だめだよ。これから入らなければ順番が全然……。総理ではわからへんがな。わからぬだろう、総理。これは記者会見したことだからね。そこまではわかるかというんだ。――いま長官、ちょっと政治倫理の問題から、例の富士見病院の問題から当時の齋藤厚生大臣の問題に入って、国会が当然休会になっておったから内閣を代表して長官が記者会見をやったところから事が始まらないと、それでお待ちしていたんだが、こういうことなんだ。五百万という金額は、長官もちろん御承知だった。ただ、御承知でなかったのは、どういう人だったかわからないで受けたんじゃないかということなんだ。ところが、本人がおっしゃっているように、三十年前に三千円を上げた人だ、助けた人だ、三十年前というと労働省の事務次官をやっていた当時だ。そこで、私は政治倫理としてちょっと教えてもらいたいのは、請託なく――請託はないんだ、これは別に。これは献金には問題はない、こういうことをおっしゃっています、簡単に言うと。いまでもそう思っていますか。
  173. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうも失礼申し上げました。  齋藤前厚生大臣の問題が明らかになりましたときに記者会見で質問を受けました。その際、私は二点を申しましたわけでございまして、一つは金銭を受けられたことが職務権限に関係があるかどうかという点、もう一つは過去の、昨年受けられました政治資金についてそれが政治資金規正法との関連で法律の規定に合っておるか、また正しく届けられておるかどうかという、この二つが法律上の問題点であろうと思う、この二つについて問題がなければ法的には問題はない、ここに記者会見の記録がございますが、そう申したのでございまして、法律問題としてはという趣旨で答えをいたしましたつもりでございます。
  174. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、当の本人も、これは医療行政の監督大臣として自分でも不適当と思うと、さっさとやめちゃった。あなたは法律的にはならぬと言っているが、問題は、鈴木内閣のお題目の一つの大きな政治倫理というのがあるわけだ。ところが、この政治倫理というのは金額も当然これに入ってくるわけです。そこで、五百万というのは御承知のとおりなんだ。自分で銀行へ行って小切手を換金してきた。小切手を持っていればめんどうくさいから、こうおっしゃる。だから換金して返そうと思ったと、こうだ。大体こういうストーリーだ。したがって、政治倫理的にはこういうのはどういうものなんでしょうか。法律的に聞いているんじゃない。
  175. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政治倫理の問題といたしましては、齋藤前厚生大臣はその点を痛感をされて辞職をせられた、こう存じておりますので、齋藤厚生大臣としても政治倫理上疑いを受ける種類の問題があった、このように御判断をされたものというふうに私存じております。
  176. 川俣健二郎

    ○川俣委員 おつむがいいから、長官は。あなたは、さっきは法律的には問題がないと思う、請託もないんだから、こうおっしゃる。ところが本人は職務上不適当と思うから身を引いたんだ、こうおっしゃる。そこで、政治倫理として長官はどう思われますか、金額的にも。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 齋藤厚生大臣が政治倫理としての立場から問題ありと御判断をなされたと考えておりますが、その厚生大臣の御判断、私といたしましても、御本人がそう思われたということ、そのとおりと受け取っております。
  178. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これから政治倫理確立しようという鈴木内閣として、やめようがやめまいが本人次第、あなた任せだ、そんなことで政治倫理確立ができるんだろうかな。  それじゃ、さらに伺いますよ。社会的儀礼の範囲内というのはどういうことか。その判断基準は当然金額だ。せんべつやお祝いはもらうはずなんです、これはお祝いに持ってきたのだから。したがって、これは判例がある。大体KDDだとかその他のあれをずっと聞いてみると、その判例を生かして当局は答弁しておられる。これが給料の約一カ月。その地位とかによるので一カ月と、こういうことをうたっておる。ところが、これは五百万なんです。紛れもなく五百万なんだ。政治倫理的には、この五百万というのはどう思われますか。総理から伺いましょう。個人的に総理大臣どうですか。お祝い金に五百万もらうことが政治倫理上どうです。
  179. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 川俣さん御指摘のとおりでありまして、齋藤前厚生大臣も、後で開いてみて金額が非常に大きいということで、これを返さなければいけない、こういう判断を下されて、また、責任を痛感をされて、そして自分から厚生大臣の職にとどまることはできない、こういう判断で私に辞任の申し出があったわけでございます。私もまた、鈴木内閣政治倫理確立ということを第一に掲げておりますので、これを受理し、そして厚生大臣の更迭を行った、こういう経過に相なっておりまして、大変私この問題は遺憾にたえないところでございます。
  180. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これはやめてよかったというような、胸をなでおろすようなことを言っちゃいけない。しかも、もらって見たら多かったから現金にかえた、こんなこと、だれが信用する。小切手を見て五百万ということは初めからわかっているじゃないですか、あなた。お祝い金にしてはちょっと多いじゃないですか、こんなものもらわれないですよ、こう言うべきでしょう。ところが、めんどうくさいから、なくすかもしらぬから現金にかえてきたと、こうおっしゃるんじゃないですか。これは裏に富士見事件があるだけに、本当は根幹に入りたいのだけれども入り口でこうなる。  では、鈴木内閣皆さんどうですか、先輩の皆さん。副総理格の中曽根さん、どうです。五百万のお祝い金をもらうことが政治倫理的にどうです。社会的にどうです。
  181. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 本当にお祝い金としてもらえる金額であるかどうか疑問であります。友情とか、つき合いとか、いろいろな面から見まして、どうもあのケースは不適切であったと思います。
  182. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ新しい大臣にもちょっと伺ってみたいのだが、運輸大臣もいろいろとおつき合いがあるのだろうが、時間がありませんから、国家公安委員長、いかがですか。
  183. 石破二朗

    ○石破国務大臣 お答えいたします。川俣委員も御承知のとおり、お祝い金等の多寡は、お受け取りになる方、さらにそれをお渡しになる方、さらにお祝い事の程度いかんによって、一概にこれ以上はいかぬというふうに決めつけることはいかがかと思いますけれども、お話の具体的な件につきましては、御両人のおつき合いをよく知りませんからわかりませんけれども、少しどうだったかなという感じはいたしております。
  184. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから、その辺を鈴木内閣に伺いたいのだが、大変に大量の支持票を得た、国民の大半の支持を得たと言って胸を張るのだが、どうです宮澤長官、いまの五百万というのは少し多い、こういう感じですか。  しかも、この機会に伺いたいのですが、お祝い金をぽっと持ってきたのじゃなくて、その後どういうように受けておったかということを知っておるかどうか。当時の国家公安委員長がもらっておったかどうか、この事実も御存じですか。
  185. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当時の国家公安委員長のことにつきましては、そのときといたしましては私存じませんでした。  なお、五百万円の就任祝い、私の倫理観としては大変に多いという感じがいたします。
  186. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大変に多いというどころではないのだ。五百万、五百万、そして五百万、国家公安委員長に五百万、五百万。そこで、富士見事件とどう関係があるか。かなり県警としては捜査が進んでおるように伺っております。内偵から始まっておるのですが、いまもうほとんど捜査が、まあ終わってはいないのだろうが、その辺を聞かせていただけませんか。
  187. 石破二朗

    ○石破国務大臣 お答えいたします。  個々の刑事事件の捜査等に関しましては、公安委員会は直接関与いたしておりませんので、警察庁の担当官からお答えいたします。
  188. 谷口守正

    ○谷口(守)政府委員 お答え申し上げます。  埼玉県警察におきましては、かねてから、この所沢市にございます富士見病院の乱診ぶりについての風評を聞き込んでおったわけでございますけれども、何分病院内の事件であるというようなことで慎重に内偵を続けてまいりました。その結果、理事長北野に対する容疑がきわめて濃くなったということで、九月の十日に理事長北野早苗を医師法などの容疑で逮捕いたしまして、浦和地検川越支部に送検したわけでございます。その結果、十月一日にこの北野が医師法違反で起訴されておるわけでございます。現在は、医師法違反の関係で被害者の方が多数おられますので、そういった被害の裏づけ捜査などを中心にしまして鋭意捜査を継続中でございます。
  189. 川俣健二郎

    ○川俣委員 厚生大臣、よく聞いたと思うのだが、被害者が多数いるのだ。一人や二人じゃないのだ。被害者が多数いる。  そこで、最初は内偵を進めてきたが、あれを見ると、突如内偵を打ち切っているのだ。そこで、いまのあれをもうちょっと聞きたいのだが、元の所沢警察署長が、事件が起きたころ定年になっているわけですが、定年になってからこの富士見病院の、理事ではないが、理事制はとっていないが、顧問というか友の会というか、友の会というのは会長は代議士で、その当時の国家公安委員長、厚生大臣、この人方もその顧問に入っています。その一人に元の警察署長が入っておるが、これを御存じですか。
  190. 谷口守正

    ○谷口(守)政府委員 お答え申し上げます。  埼玉県の元所沢警察署長が問題の病院の芙蓉会友の会ですかの顧問をしているという報道につきましては、私ども十分承知しておりますけれども、私どもとしましては、そういったことにはかかわらず、先ほど申し上げましたように、逮捕本件でございます医師法等の違反容疑につきまして鋭意捜査をしておるということでございます。
  191. 川俣健二郎

    ○川俣委員 顧問をやっておると報道しておるというような言い回しだが、否定はできないと思うのだが、顧問はしておるのだ。  そこで、この間あわてふためいて、叙勲しておったものを取り消しの閣議決定をしたようです。それで、一体何回、大体どういうような理由で褒賞したのか、ちょっと聞かしてください。
  192. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  北野早笛に対しまする紺綬褒賞の賜与の推薦及び発令が同氏の罰金刑確定後に行われたという問題でございます。関係村長の説明によりますと、第一回の申請時には、刑罰の確定に関する関係官庁からの書類が到着していなかったことによるものでありますが、第二回目以降につきましてはその確認を怠っていたもので、まことに遺憾であります。今後こういうことがないようにいたしますが、いまの度数の問題でありまして、四十八年十一月八日の寄付、これが県から申請がございましたのが四十八年十二月の二十日、総理府の方へ申請が来ましたのが四十九年の二月十五日、それから大信村の方の分が、四十九年の七月六日に受け付けまして発令が四十九年の八月十一日。第一回分の寄付の受領、それから申請日、それから総理府への申請、その間にこの地裁の判決が行われておる。そういうことで、発令が起こったときにはすでに判決があったわけであります。この点につきまして、後から刑罰等の調書の作成で取り消しの問題が出てくるのでありますが、その後、五十一年の七月に二回目、五十二年の九月に三回目、五十三年の七月に四回目、五十三年の九月に五回目、それから五十四年の七月に六回目、こういうふうにその後ずっと、第一回目が確定判決がありましたにもかかわりませず大信村の方からの報告が何らないままにずっと行われておった。そこで、この問題につきましてはさかのぼりましてこれを廃棄する、こういう処置をとったわけでございます。
  193. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、いま大事なのは、一人の人に九回褒章しておる。結論を出す前にもう少しデータを集めたいのだが、問題は、百万以上寄付すれば紺綬褒章というのは受けられるのだそうだ。この間閣議で、百万じゃ足りないから五百万ぐらい積ませるかという話になったそうだが。そこで百万、五百万、二百万、四百四十万――物品の場合は換算しておりますから。それから二百万、三百九十万、七百五十万、二百万、九百二十五万、九回。問題は、いま時間がないから、褒章した日付が大事というよりも、申請した日付、厚生省と文部省に入ってきたときが肝心なんです。これは本当は読み上げたいのだけれども、資料を皆さんに配りたいのだけれども、後からやりたいのだが。  そこで、さらに今後はそういうのを踏まえて伺いたいのですが、不正請求なんというのはでたらめなものだ、これは大変なものだ、厚生大臣、伺っていると思うのだが。これはいつか渡辺現大臣もよく説明しておったのだが、これを言ったんじゃないかと思うぐらいの膨大な不正請求である。そこで、ときどき被害者が騒ぎ出す。そうすると褒章申請、国家公安委員長の部屋、厚生大臣の部屋、後で言うけれども日にちがある。さらに接近しているのは、武見さんが、本当かどうか知らぬけれども五年前に注意した。ちょっと騒ぎがおかしいから注意した。なぜ注意したかと言ったら、医師会が騒ぎ出した、なぜ医師会がわかったかと言ったら、皆さん知っているように、北野のところに行ったら、何でもないのをやられちゃったよ、またやられようとしています、これは問題だよ、ビデオ撮りまでやっているのだから。そこで医師会が騒ぎ出した。ところが、その病院の近くに大きな病院と防衛医大がある。皆さん、防衛医大というのは優秀なお医者さん方が、しかもパブリックで、不正なんというのはないだろう。大変に好評な病院がある。そこへ行ったら、何だ、こんなのは何でもないじゃないか、こうなった。そこで、いろいろとなって、武見さんの耳に入った。武見さんが保健所へ、注意しろ、危ないよ、こう言った。それで、保健所がその被害者を呼んでいろいろと聞いた。そして保健所に被害者が、事実はこれこれだと言って聞かせる。そうすると、元警察署長がちゃんとスパイに入っているものだから、あなた、あんなことを言ったそうだがということを次の日、家庭訪問をして言われる。  こういう地域ぐるみの大変な暗黒の中で強制的に手術をされておったというその機械は、MEという機械だ。そのMEの機械を取り入れた。このMEの機械というのは、どうですか、厚生省、ちょっと説明してくれませんか。一体日本にどのぐらいあるのだろうか、いつごろ入り出したのか。まあドル減らしに乗ったようなんだが、世界にどのぐらいあるのか。その辺をちょっと端的に聞かしてください。
  194. 田中明夫

    田中(明)政府委員 お答え申し上げます。  MEと申しますのは、メディカルエレクトロニクス、すなわち医療用電子工学機械のことでございまして、その代表的なものはいわゆるCTスキャナーでございますが、これは、昭和五十三年の厚生省の調査によりますと、日本で四百五十四台配置されております。外国におきます数字は、アメリカの数字をとっておりますが、アメリカでは千五百二十五台のCTスキャナーがあるというような状態でございます。
  195. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いま現在はどうなんです、資料を持っているんだから。何も五十三年のことを言わなくたっていいじゃないか。
  196. 田中明夫

    田中(明)政府委員 厚生省の調査といたしましては、昭和五十三年十月末の医療機関の調査が一番新しいものでございます。
  197. 川俣健二郎

    ○川俣委員 しかし、情けないですね。MEという機械はいわば全く超音波の新しい機械でしょう。局長は下から知らされてないか、知らないふりをしているか、どっちかだよ、それは。冗談じゃないよ。これを兵器にしてやったわけだから。じゃ防衛医大にあるかね。
  198. 大村襄治

    ○大村国務大臣 防衛医大にその機械があるかどうか、政府委員に答えさせます。
  199. 本田正

    ○本田政府委員 防衛医科大学におきましてメディカルエレクトロニクスというのは幾つか機械がございますけれども、現在問題になっている機械は所持いたしております。
  200. 川俣健二郎

    ○川俣委員 現在持っているんだろう。五十三年ごろにはなかった。あなたの上が知らないであなたが知っているんだ。  それから保健所に非常に接近し出した。いいですか、政界への接近は皆さん、それから捜査当局への接近は国家公安委員長初め……。保健所との接近は、一つの例ですが、母子手帳というのが皆さんあります。ところが市役所の担当者が、この母子健康手帳を交付していた職員によると――これは取材ですから勘弁してください。所沢保健所へ母子健康手帳をとりに行ったら、カバーも一緒に渡された。これは保健所から渡されたのだが、妊婦に渡した。これは現物をいま持っていません。「妊婦は富士見病院」へ、こういう見出しで大変なほめようなんです、保健所といたしまして。これは一つの勘ぐりだから、さらにそれ以上調べていませんけれども。  そこで問題は、いままでずっとやってきたところによると、まず一番不思議なのは、厚生省、この外来患者と入院患者というのを比較してみると、どっちが多いものですか。
  201. 田中明夫

    田中(明)政府委員 お答え申し上げます。  病院の性質によりまして一概には申し上げられませんけれども、普通の病院の場合は外来患者の方が多うございます。
  202. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一概に言われないとおっしゃるが、たとえば順天堂病院の言によると、あそこは産婦人科医者は三十人、ここは五人。常駐三十人ですよ。外来十人に対し、入院はせいぜい五人、半分。入院が外来より上回るなんというのはとんでもない。理解できない。手術件数も、三十人で三百件。ここは五人で五百件、年間ですよ。論外。  そこで問題は、ここにグラフがあります。このグリーンのやつは外来なんです。それからこの青いやつは入院なんです、総理。ところが、突如外来の方が多くなって、入院の方が――失礼しました、突如少なくなった。(「よく整理して言え」と呼ぶ者あり)私は逆のことを言ったものですから、失礼しました。やじるのも結構だが、大変な問題なんで、これはなぜ入院の方が――最初はこの病院は入院患者で食っておった。何も入院しなくたっていいやつを、入院患者で食っておった。ところが、突如ここからぐっとあたりまえの病院になろうとしておる、これのあれだと。まだあたりまえじゃないんだが。ここでちょうどMEという機械が入ってきた。このMEという機械が入ってきたのはこういうことなんです。この赤は、MEの機械で手術した実数です。これからかせぎ出した。それまでは入院患者でかせいでおった。これから機械でかせぎ出した。何もかも全部手術しておる。ところが、ここでぽこんと極端に患者数が減っておる。これは余りにも減り過ぎている。これはいつかというと、五十三年の十月から十二月、一月、二月にかけてなんです。  そこで私が申し上げたいのは、内偵を受けたのは、これはもう時間がないから、五十三年の十月なんです。捜査当局の内偵を打ち切ったのが五十四年の四月なんです。そこで、国家公安委員長の部屋へ入ってきて、ぽんと五百万円、これが五十三年の十二月なんです。大平内閣発足、五十三年、五百万。それからある代議士に百万、四、五日置いて五十万、百五十万。これはお返ししたということがこの間新聞に出ていた。それから、私はこういうのを見ると、これはどういうことを意味しておるかというと、叙勲を受けたのと元警察署長を顧問にしたのと、それから国家公安委員長に入ってきたのと時期が非常に合うんだ。そこで、またこれが打ち切りということでだあっと上がってきた。そこで被害者が騒ぎ出したのがこれなんです。それでまた上がってきた。それで現在に至っている。これは厚生省から取った実数だから。  そこで厚生省、これはこれからどうするつもりですか。問題は、これからどうするつもりですか。何で医療法を適用しないのだ。これだけ騒がれているのに何で適用しないのだ。これはどうです。
  203. 園田直

    ○園田国務大臣 この病院の事件は御指摘のとおりに犯罪以上の犯罪でありまして、恐るべき事件であります。そこで、これは医療制度、診療制度等の徹底的の見直しも必要でありますが、しかし、私の調査したところ、いまあなたの御意見を聞いたところによりましても、緊張して見ておったらこの事件は少なくとも今日以前にわかったのではなかろうかと、後のことでございますが、私は残念ながら推察するわけであります。そこで、まず私は、大臣以下、医療その他に対する監査、取り締まり、指導、こういうものの心構えを、この際厳しくみずからの反省の必要があると考えております。  先ほど献金の問題がありましたが、私はお答えはしませんでしたが、ほかの閣僚と私の場合は立場が違うと存じます。少なくとも、相手がいいか悪いかは別として、金額の多寡は別として、所管、指導すべき者から献金を受けるところから心の緩みが出てくる、こう考えまして、私は就任して直ちに所管の方々には、いままで献金を受けているところは丁重に断って、一切これをお断りをし、これから緊張して始めていこうと思っているところであります。  なお、当面の問題に対する処分は断固たる決意を持って臨むつもりでありますが、御承知のとおり医療法二十九条においては、開設者に犯罪行為があった場合には、病院について閉鎖命令を出すことができる。法人としての犯罪行為等がある場合には、法人の開設者であるので、法人等の犯罪行為等があったという認定が必要であります。法人の代表者の犯罪行為をもって直ちに法人の犯罪行為と考えることは困難であります。しかしながら、お尋ねの富士見病院の場合においては、理事長と並んで法人の理事会の主力メンバーであり、かつ病院の管理者でもある院長に北野理事長の犯罪行為と密接不可分の関係にある犯罪があることが明らかになった場合には、法人ぐるみの犯罪行為であったものと認定される可能性がきわめて強くなってまいります。このような観点から、ただいま取り調べ中でありますから、この推移を見守りながら、なるべく早い時期に直接の処分権限者である埼玉県当局と、法律解釈、運用その他処分について適切な相談、指導を行いたいと考えておるところであります。
  204. 川俣健二郎

    ○川俣委員 せっかく厚生大臣は立場が違うところからお話しされて、リリーフを受けた人ですから、やった人ですから……。  それでは、いいですか、「開設者」になっているでしょう。開設者は北野じゃないですか。それじゃ病院長はだれか、妻でしょう。これだって聞きたいですよ、どういう人なのか、時間があれば。もしあれならお話ししてもいい。どういう身分の人なのか。聞きたいですよ、北野夫人のことを。副院長というのはだれか。東京都から医籍を剥奪された人でしょう。違反を起こして厚生省から剥奪された人でしょう。これは五人の中の三人でしょう。これでまだ閉鎖命令を下せないというのかな、厚生省。厚生大臣、これはおかしいよ。決意はわかる、訓示もわかる。問題は、被害者がこのように騒いでおる、これで何で閉鎖できないのです。無資格でしょう。
  205. 小山長規

    小山委員長 川俣君、持ち時間が経過しております。
  206. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうでしょう、これは。
  207. 園田直

    ○園田国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、断固たる決意と見通しをもって臨んでおりますけれども、取り調べ中でありまして、なかなかまだ微妙な段階もございますので、その結果を見通しつつ早急に対処したいと考えております。
  208. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうも時間をオーバーして……。
  209. 小山長規

    小山委員長 川俣君の残余の質疑につきましては、次回に行うことといたします。  次に、正木良明君。
  210. 正木良明

    正木委員 今回の予算委員会は非常に時間的な制約を受けておりまして、持ち時間も少のうございますので、率直にお尋ねをいたしますから、閣僚皆さん方も簡明にひとつ要領よくお答えをいただきたいと思います。  まず、憲法の問題についてお伺いをいたします。  これは再三再四にわたって本会議答弁、また午前中の答弁等で、鈴木総理鈴木内閣の方針として、現行憲法を擁護し、遵守し、少なくとも鈴木内閣においては憲法改正しないという方針を明確にされました。それはそれなりに、私もその意とするところを了解するものではございますが、さらに突っ込んでその御決意のほどを承っておきたいと思います。  まず第一に、鈴木総理が、現在は改正の時期ではないんだ、国民のコンセンサスができ上がっていないんだ――それじゃ総理のお考えとして、国民のコンセンサスというものは、どういう形をとったときにそれが形成されたというふうにお考えになるのか、まずお伺いしたいと思います。
  211. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 これは国民の世論調査並びに言論機関その他各方面の盛り上がり、世論の集約というようなものを客観的に正しく把握しなければならない問題だと思います。慎重にこれを判断をし、改正に要する諸条件を整備をして、そして国会においてこれを発議する、こういうことでございますから、私は、先ほども申し上げましたように、憲法改正ということは慎重の上にも慎重を期すべきである、こう考えております。
  212. 正木良明

    正木委員 午前中の質疑応答の中で、かつまた午後の質疑の中で、議院内閣制ですから、これは避けがたいことではありますけれども総理は、内閣総理大臣として内閣の首班であると同時に政権政党の総裁であるという二面性が同居しているわけですね。しかし、党においては総裁という立場にいらっしゃいますから、私は、少なくとも自民党の幹事長というのは党においては総裁と一体のものとして考えていかなければならぬと思っているのですがね。そうなりますと、櫻内幹事長が、国会において憲法改正を発議するに足る勢力、すなわち全議席の三分の二以上を自民党が確保するか、ないしは自民党以外の政党においてそれに協力をするという形で三分の二以上の議席を得たときには、憲法改正の発議をするのだということを再三再四にわたっておっしゃっているわけですね。  そうすると、片方で、総裁である総理が、幾らこの憲法改正する国民の合意の形成の時期というものをきわめて抽象的におっしゃっても、国民が感じておるところは、まさに鈴木内閣が現在の憲法を擁護し、遵守し、かつまた改正しないのは、三分の二以上の議席が自民党にないからであって、三分の二以上の議席を自民党が確保したときにはこの改憲に手をつけるのである、私はこういう考え方をするのは無理からぬものがあろうと思うのですがね。したがって、鈴木内閣が、改憲について考えていない、憲法を擁護し、遵守するのだと言うのは、まさに現行憲法平和主義民主主義基本的人権尊重という世界にまれなる三大原理を持っておって、それをどうしても維持していかなければならぬ、それがあの大きな犠牲を払って有史以来初めて敗戦した日本国民の総意である、だから、あくまでも現行憲法を擁護していくのだという姿勢と、いま憲法改正するだけの勢力がないから憲法擁護と言っているだけなのだというのと、これは非常に極端な言い方かもわかりませんが、二つの立場がある。総理、どっちですか。
  213. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、国会の場で正式にこの憲法問題につきまして政府考えをお示しをする前に、総裁就任以来あらゆる場所で、この憲法問題につきましては、わが国憲法の掲げております平和主義民主主義基本的人権尊重、こういう原理はすばらしいものである、将来において仮に憲法改正等が行われるようなことがあっても、この理念、原則というものは堅持されなければならないものと考えておる、こういうことを申し上げてきたわけでございます。したがいまして、三分の二の改憲を発議するに足る議席が整いましても、国民世論がこの三大原則の堅持につきまして、これはやはり大事にしなければならないということで慎重な態度をとっておる、こういうことで、憲法改正をすべしという世論が国民の中で圧倒的に形成をされてきた場合、そういうときでなければ、軽々に私は三分の二とったからといってこれをやるべきものではない。また、現実にわが党におきましても、どの部分をどういうぐあいにしなければならないかということにつきましても、まだ党としての結論が得られておりません。憲法調査会等におきましていろいろ勉強もし、検討も進めておる、こういう段階でございます。
  214. 正木良明

    正木委員 国民の合意が形成されたかどうかということについていろいろ知る方法というのをいま総理がお述べになりました。これも一つの方法でしょう。しかし、議会制民主主義わが国において、やはり何といっても、その国民合意が形成されているのかどうか、もっと言葉をかえて言うならば、国民は改憲に賛成であるのか改憲について反対であるのか、いわゆる憲法を改めるということに賛成なのか反対なのかということは、やはり国会選挙においてそれを争点として闘われ、その結果というものが、私は民意を知る上において一番的確なものであろうと思うのです。そうなってまいりますと、鈴木総裁はいつまで総裁をおやりになるかよくわかりませんが、どうでしょうか、余り長い先のことをお聞きしてもお答えになれないと思いますが、少なくとも三年後には参議院の選挙が行われるわけでございます。それまでに衆議院の選挙があるかもわかりませんが、それは未確定のものでありますから、少なくとも三年後には参議院の選挙がある。この参議院の選挙において自民党は、改憲すべきかすべきでないかということを選挙の争点として掲げるというおつもりはありますか。
  215. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 正木さんから、国民合意が形成をされたかどうかという判断は国政選挙の場で知るほかはないだろう、こういう具体的な一つの御意見が出ました。私は、確かにそれは一つの方法であろうかと思います。と同時に、それを諮りますためには、抽象的に改憲か改憲をせざるか、こういうようなことでなしに、具体的に改憲の条項等を示して、そして国民世論に聞く、問う、こういうことでなければならない、このように思うわけでございます。私は、この両三年、私が政権をいつまで担当するかわかりませんが、私は私の政権担当、自由民主党総裁、こういう地位におります場合におきましては、そのような改憲の具体的な行動、措置をとるようなことはございません。
  216. 正木良明

    正木委員 そういたしますと、自民党の基本政策といいますか、政綱の中にある自主憲法の制定、すなわち憲法を改めるということは、いつの日かこういうことはあるであろうが、当分そういうことはあり得ないということではあるけれども、掲げているということと解釈してよろしいですか。
  217. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 誤解を生まないように御理解を賜りたいと思うのでありますが、憲法国民のものである、国民とともにあるべきものである。また、国民の大多数がこの部分をこう改正すべきだ、こういう具体的なコンセンサスが形成された場合、そういう情勢が生まれた場合、これを提議し、国民の御判断を求める、これが民主主義であり民主憲法である、こういうぐあいに私考えるものでございますが、こういう国家基本の法典でございますから、慎重の上にも慎重に取り組まなければならない問題である、こう考えています。
  218. 正木良明

    正木委員 これは総理、ちょっと矛盾があると思いますよ。少なくとも政党というものは世論に対して、私たちはこう考えているから賛成してくださいということを訴えなければいけないと思うのです。それが政策です。少なくとも自民党の政綱、基本政策の中では、国民皆さん方に向かって、いまの憲法は自主的に定められた憲法ではなくて――こういう言葉を使っていらっしゃいませんけれども、その裏に隠れているのは、占領軍から押しつけられた憲法であるから、自主的な憲法をつくろうじゃありませんか。これは政策としては国民に訴えられていることでありますから、そうすると、少なくとも私に言わせれば、次の選挙においてそういうことが争点にならないとするならば、これはやはりそういう時期が来るまでこの政綱というものはお蔵へお入れにならなければ、どうも理屈が合わないと思うのですが、いかがでしょう。
  219. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 自由民主党の立党以来の政綱、これには平和主義民主主義基本的人権尊重、この三つの原則を堅持しながら、こういう大前提があるわけでございます。したがいまして、ただ、そういうことを堅持して自主憲法をつくるのだということだけでは、私は国民に親切ではない。やはりこの三原則を堅持しながら、どういう点をどう改正するかという具体的な案を示しながらこれを国民に訴えていく、そしてその御承認を得る、賛成を得る、こういうことでなければならぬと思うわけでございまして、いまだ自由民主党憲法調査会におきましては、調査、検討、論議の段階でございまして、この部分をこうという具体的な成案を得るに至っておりません。
  220. 正木良明

    正木委員 これで新しくまた二つ質問をしなければならないことが起こったのですが、いみじくも総裁が、自民党のこの部分に関する政策については、きわめて不親切な政策であるということをおっしゃっておるわけです。もう一つは、この三原理というべきか三原則というべきものは堅持する。しからば、どうなんでしょうか。自民党のおっしゃっておる自主憲法というのは、占領軍から押しつけられた憲法だから困るのであって、同じ条文であってもいいから、自分たちの手でつくったという憲法なら自主憲法なんだからそれでいいというのか。それともこの三原理のほかにどこか改正しなければならないところがあるとお思いになってあれを掲げられたのか、どっちでしょう。
  221. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、あの立党当時政綱を打ち出しました際におきましては、まさに前段でお話がございましたように、これは占領下においてつくられたものである、そこを自主的にひとつ憲法改正をしなければならない、こういうことであったと思うのでございますが、しかし今日では、この現行憲法のすばらしい点、三原則というようなものは国民に評価をされ、また定着をしておる、私はこう思っております。でありますから、現行憲法をそのままただ自主的にやればそれでいいんだというような問題ではない。やはりこの三原則を初め憲法のいい点というものはあくまでこれを守っていく。したがって、この改正につきましては相当具体的に国民皆さん改正点をお示しをして、そして大多数の国民の御賛同を得る、こういう慎重な態度というものが必要である、こう考えています。
  222. 正木良明

    正木委員 自民党が次の選挙では改憲の問題は争点にしないということ、これはしっかりと覚えておきます。  それから、三原理以外に変えるところというのは私は余りないように思うのですけれども、まず三原理以外の問題で手をつけるということになってきても、私はこんなに国会が大騒ぎするようなことにはならぬだろうとも思うのです。  そこで、奥野法務大臣にちょっとお伺いしたいのですが、一番最初この問題の発端になった稲葉質問のときの御答弁の中に、やはり第九条のことにお触れになっている。これは個人的見解としてですよ、それで結構だと思いますが。要するに有力な政党との間で議論が二つに分かれるような閥出題があるので、この第九条というものをそういうことのないようにしたいと思うという意味のことをおっしゃる。私は私なりにわかるのです。そうすると、この憲法第九条という、いわゆる戦争放棄、戦力不保持と言われておるこの条項、これは自民党は合憲だと思っていますね。そういういわゆる自衛隊は合憲だという立場で貫いていらっしゃいますね。議論が分かれるということをお認めになっているということは、この第九条は自衛隊が違憲の存在であるという論拠もお認めにならなければ、この問題が起こってこないのです。この点どうですか。
  223. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 そういう合憲、違憲の議論が起こってくるような複雑な経過をたどっておる、私はこう考えております。憲法草案を総司令部の中でつくりますときに、マッカーサー元帥がホイットニー民政局長示しました三原則というのもございますし、あるいは芦田修正、「前項の目的を達するため、」という言葉を二項の前に入れたわけであります。これも、芦田さんの考え方も明らかになっているわけでございまして、複雑な経過をたどっておりますだけに、混乱が起きるのは当然じゃないか、私はこう思っておるわけでございます。しかし、自主憲法がもしつくられるような場合にはそういう解釈の食い違いができるようなことはなくしてほしい、こういう気持ちが出てくるのも私は御理解いただける、こう思うのでございます。
  224. 正木良明

    正木委員 ですから、端的なお答えの解釈といたしますと、あの第九条から自衛隊は違憲であるという主張をなさる政党があるわけですね。その政党は、それはそれなりに違憲の論拠があの九条の中には存在しているということをお認めになったということにならざるを得ないのです、いまのお答えは。それでよろしゅうございますか。
  225. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私たちは自衛隊を合憲だ、こう考えております。同時にまた、自衛隊が違憲だと主張しておられる方々の論拠も承知しております。どちらの論拠が正しいかということになりますと、私たちは自衛隊を合憲だ、こう確信しておるわけであります。
  226. 正木良明

    正木委員 そういうことで総理平和主義民主主義基本的人権尊重三原則を堅持しつつと言うけれども、やはり自民党の中には、これにさわらないで何が自主憲法だ、何が憲法改正だという御意見があるということ、これをよく覚えておいてください。これでまた騒ぎを起こそうと思ったら騒ぎを起こせないことありませんけれども、あとの質問ができなくなりますから、これは騒ぎにいたしません。これはまた、騒ぎにする人はこれをつかまえてやってくれるでしょう。  これはいささか、閣内としてはなお検討してもらわなければならぬ問題が残ると思います。これはひとつ御認識をいただきたいと思います。  それから、財政民主主義というのは非常に広い範疇でありますし、抽象的にとられがちなこともあるのですが、防衛費の先取りの問題は、大蔵大臣それから防衛庁長官、これは全くよくないと思うのです。よくない。といいますのは、大体従来は、予算編成方針というのはまだ出ておりませんが、とりあえず各省の概算要求をしていく方針というものを閣内で決めまして、それからだっと出てくるんですよ。そうして最後に大臣折衝というので大体確定しますね。そうじゃありませんか、従来。そういう慣例がいいのか悪いのかということは別の問題として、これは完全にいわゆる大蔵大臣と防衛庁長官の間で予算の枠の伸び率を九・七%ということの合意をいたしましたね。これはことしの七月の二十八日です。そうしてこの明くる日に、五十五年七月二十九日に昭和五十六年度の概算要求についての閣議了解というのをやっているのですよ。これは一日ぐらいなんて言えばそれっきりかもわかりませんけれども、少なくとも閣議が概算要求の枠を決める前に、すでに大蔵大臣と防衛庁長官の間において大臣折衝が行われて、その予算の伸び枠というものが確定した。こんなの、いいと思いますか。どうです、総理
  227. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 この問題は、いわゆるシーリングの問題でございますが、(正木委員「何のもの」と呼ぶ)シーリング、これは概算要求をいたします場合の上限をひとつつくろう、枠組みをつくろうというものでございます。五十五年度予算編成の際におきましては前年度対比一〇%、こういうことでやったわけでございますが、五十六年度予算編成におきましてはもっと厳しい水準にこれを置きまして、そしてその枠内で概算要求を各省庁に求める、こういうことでございまして、それに基づきまして概算要求がなされ、ただいま大蔵当局においてそれを具体的にチェックをしておる、こういう段階でございまして、すでに防衛費については九・七%というようなものが確定をした、こういうものではございません。これから予算の最終的な段階においてどういうぐあいにおさまるか、こういうものでございますので御了承を賜りたい、こう思います。
  228. 正木良明

    正木委員 大蔵大臣と防衛庁長官の間で――要するに大体七・九ないし七・五となっていますね、閣議了解では。伸び枠は七・五%にしよう、そういうものを、特別に防衛予算だけは九・七%という合意があったでしょう。それはないのですか。ないのですね。
  229. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり最初から閣議にばかっと案件を出すんじゃなくして、閣議になってもけんけんがくがくになっては困るわけですから、したがって、やはり……(正木委員「正しくはかんかんがくがくですよ」と呼ぶ)かんかんがくがくになっては困るわけですから、したがいまして、いろいろ問題のあるようなものにつきましては、それは各省大臣とも事前に打ち合わせをすることは再々ございます。
  230. 正木良明

    正木委員 そうすると、防衛庁長官と大蔵大臣との大臣折衝と言えるようなものではないというわけですね。私は閣議の中に入ったこともないし、あなた方が折衝している現場に立ち会ったことではありませんが、しかし、これの報道が、一つの新聞だけでそう言っているならいいですよ。これはまた引っ張ったとかなんとかという言葉があるらしいが、全紙そうじゃありませんか。そういうことはちゃんと情報として何らかの形で漏れているのですよ。だから、私に言わせれば、大蔵大臣と防衛庁長官の合意が七月の二十八日に行われて、これじゃ新聞ががあがあ言うし、これは閣議了解でちゃんとしておかなければいかぬからというので、明くる日概算要求の閣議了解をしている。あの中に出てくる数字は七・五%でしょう。ただ、防衛費なんということは書けないから、条約上の何とかかんとかで――これはあるんだけれども、どこへいっちゃったかわからない。そういうふうに逃げている。条約上というのは、恐らく日米安保条約でしょう。日米安保条約の義務上、アメリカの要求を聞かなければならぬから、その場合には枠外にすることがあるというような意味のことが書かれている。これはどう見たって、そのしりぬぐいを閣議了解でやったとしか見られません。その場合、大蔵大臣、いや大蔵大臣というよりも防衛庁長官、あなたのところは、そうすると概算要求はどの程度で出すのですか、昨年度の伸びから言って。
  231. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします。  五十六年度の概算要求の金額は二兆四千億円を少し上回っております。
  232. 正木良明

    正木委員 去年に比べて何ぼの伸びですか。
  233. 大村襄治

    ○大村国務大臣 五十五年度の予算額に対比いたしまして九・七%の伸びです。
  234. 正木良明

    正木委員 そうじゃありませんか。九・七%と了解したから、防衛庁がちゃんと九・七%の枠内において概算要求しているじゃありませんか。そういう形で逃げちゃいけないと私は思うのです。それならそれで率直に、こうこうこういう事情があって、これだけは枠外として認めざるを得ないのですということを説明すべきでしょう。どうでしょうか、大蔵大臣。やはり逃げないでちゃんと認めたらどうですか。あれだけは枠外にしなければならぬこういう理由があるのですということをちゃんと……。
  235. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 お答えをいたします。  要求につきましては、外国との条約に基づいて国庫債務負担行為としてすでに決定したものあるいは継続費のようなもの、こういうものについては別枠で認めるということをいたしました。しかし、だからといってこれはそのまま全部予算に決定をされるかどうかということは今後の問題であります。
  236. 正木良明

    正木委員 私は、この情勢からいってされると思いますね。それはやはり私も長いこと政治家を、あなたほど長くないけれどもやっているので、勘というものがありましてな、これはやはり通るだろうと思います。しかし、私はこれは正しいことであると思いません。まずこのような閣議了解というものがきちんとあって、予算の編成方針と言わないけれども概算要求の方針というものが明確に閣議で決まって、そうして後にやるべき性質のものであろうと私は思いますね。  総理、どうですか。こういうことはこれからもおやりになりますか。  また、これができるとするならば、私は、ほかの省の大臣だってやりたいというのは山ほどあると思いますよ。科学技術なんてこれから大変な時期なんだから、中川長官なんというのは、もう北海道のヒグマが乗り込んできて大蔵大臣とやり出すかもしれない。どうでしょう、こういうことはなくしてくれますか。
  237. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 これは、いま大蔵大臣がお話を申し上げたほかに、年金でありますとか、あるいは社会福祉関係予算におきまして、前年度の改正を年度途中から実施に移したということになりますと、五十六年度におきましては四月一日から実施に移るということで、相当の伸びになるわけでございます。したがいまして、そういうようなものも、これは七・五%の水準にはなかなかまいりません。こういうものも合わせまして、特別な事情にありますものはシーリングにおいて配慮した、こういうことでございまして、予算編成の実態上やむを得ない措置である、このように考えます。
  238. 正木良明

    正木委員 要するに総理、あなたも本当言ったら怒らなければいけませんよ。あなた、つんぼさじきに置かれて、大蔵大臣と防衛庁長官とこそこそと話をして話を決めて、それで閣議に持ち出しているというのは、あなたが本当は怒り心頭に発しなければいかぬのであって、それと同時に、やはりこういう特別な枠を認めて、いまいみじくもおっしゃいましたけれども、いわゆる福祉予算の後退ということも予想されるということであるならば、これはこれだけの、手続だけの問題ではなくて、これからやはり大きな問題にしていかなければならぬ問題だと私は思いますので、その点、念を押しておきたいと思います。  それから、先ほど川俣さんから冷害対策の問題がございました。  農林大臣、申しわけありませんけれども、この冷害対策について、もう一度政府の方針と、それからいつやるかということ、これが一つ。  それからもう一つは、いわゆる救農土木事業というようなものがありますね。要するに、現金収入がないから何か土木事業でも起こして、そしてお百姓さんがその仕事に参加をするということで臨時に収入を得ようとする。ところが、どうもいろいろ現地の話なんかを聞いてまいりますと、従来の救農土木事業などといったって、もう機械化が進んでしまって人手が要らぬのだそうです。ですから、本当に救農というところに重点を置くところの土木事業であるとするならば、たとえば植林をするとか、これはもう人手がなければできない、こういう公共事業にやはり重点を移さないと本当の救農にならないと私は思うのですが、この二点についてお答えください。
  239. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 今回の冷害まことに激甚をきわめておるわけでございます。したがいまして、先ほども川俣委員にお答えいたしましたように、まず一番先に処置できますことは農業共済金の支払いでございます。これはすでに九月半ばに準備を命じまして、収穫皆無の農家に対しては、もう共済組合でそれぞれ概算払いの準備がぼちぼち完了して、今月中にも支払い得るという組合が十幾つか報告が来ております。これはもう今月中、遅くとも本払いが全部年内中に共済金は支払いができるようにいたしております。これがための政府の再保険に要する経費等、これは莫大なものになるわけでありますけれども、財政当局と話し合いをつけておるところでございます。  次に、天災融資法並びに激甚災法、自作農維持資金等の金融措置でございます。自作農維持資金は生活資金、天災融資法に基づく融資は来年の農業経営の資金、こういうことでございまして、これを現在、各市町村を通じて被害農家の希望額を集計をいたしておる最中でございます。これも今月の六日に最終的な被害高調査をさらに統計情報部でやっておりますので、それに基づきまして、五十一年災害の際には十一月二十九日に天災融資法、激甚法の政令の閣議決定をいたしたわけでございますが、今回は十一月の十日から十五日の間にこれをやりたいということで準備をさしております。  そのほか、大事な種もみの手配、さらには飯米の手配等につきましては、先ほど申し上げたような線で各県の調整、助成の措置等を検討、折衝をいたしておる最中でございます。  さらに、御指摘のありました救農事業、これにつきましては、二百四十億円の前倒しの昭和五十五年度予算、これがもう一番手っ取り早く仕事を起こせるわけでございますので、しかも仰せのとおりの人件費として率の高い事業、造林でありますとか下刈りでありますとか枝おろし、間伐、これは国有林については十数億の処置をそれぞれ営林局長に命じて準備を進めて、市町村から要求のありました際にはそれに応じて被害農家の雇用をするという手はずを進めさしております。  さらに、民有林等につきましては農林漁業金融公庫から造林資金を融資をいたしまして、さらに小規模につきましては、非補助事業ということで三分五厘の融資で、これまた小さな農道あるいは側溝の修繕といったよう点についての事業もあわせまして、できるだけ人件費の高い率の仕事を集中的にやるように手配をいたしておりますので、私は、遅くとも十一月末になれば被害地の農家の皆さんも来年の再生産のめどをつけてほっと一息つけるというように施策を進めていきたい、こういうふうにいたしておる次第でございます。
  240. 正木良明

    正木委員 せっかくひとつ御努力のほどをよろしくお願いいたします。  さて、河本長官、物価ですが、憲法の問題も非常に大事な問題でありますが、それに負けず劣らず、いま国民関心は物価の趨勢というところにあります。事実上、実質賃金が大幅にマイナスになってきておるというような状況もございますし、物価の安定、これはまた景気の後退局面に対してもやはり非常に効果的なものであろうと思うが、政府経済見通しで消費者物価の上昇率を六・四%。この間の九月五日の新しい経済見通しの修正においても、卸売物価は上方修正されたけれども消費者物価は修正されておりません。六・四%。さて、消費者物価六・四%、長官、自信ございますか。
  241. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 消費者物価は、御案内のように、新年度に入りましてから、七月は七%台でございましたけれども、他の月は大体八%で推移しております。したがいまして、ことしの後半平均五%弱、こういうところまで持ってまいりませんと、いまお述べになりました六・四%という数字は達成することができません。しかし、幸いに物価に悪い影響を及ぼしておりました生鮮食料品などの出回りも大分よくなってまいりました。  そういうことで、今月末以降順次下がっていくのではないか、このように思っておりますが、しかし、それにはやはりいろいろ積極的な工夫と努力、これがぜひ必要だ、このままほっておいたのではなかなかむずかしい、やはりいろいろな工夫、努力を絶えず加えていくということがぜひ必要だ、このように考えております。
  242. 正木良明

    正木委員 これはちょっと口で言っていてもわかりにくいので、私ここへグラフを書いてきましたが、別な言い方をいたしますと、五十年を一〇〇といたしますと、五十五年、ことしは昨年に比べて六・四%の消費者物価の上昇率というふうにおさめるためには平均指数が一三七・五にならなければだめです。これをちょっと見てください。これが五十五年の四月です。これが六・四%の線です。五月、六月、七月、こういうふうになっている。いわゆるこの六・四%の線は六月にもう早くも超えたのです。そうして、いまや九月は、これは九月の統計が東京都区部しか出ておりませんので全部東京都区部でずっと書いておりますが、これを六・四%にするためにはこれくらい下げなければいけませんね、ででででっと。これをこう下げなければいけないのです。これが横ばいでずっとまいりますと、いわゆる消費者物価指数は七・八%になります。じわじわじわっと上がっていくと八になる。六・四%というのは大変な難事業ですわ。そこで、何とかとおっしゃいますが、六・四におさめるためのどんな方策がありますか。
  243. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先月五日、政府では当面の経済対策を決めましたが、その中で特に物価対策を重視いたしまして六項目の対策を決定しております。現在では、この六項目の対策を強力に、かつ、きめ細かく実行していく、これを中心に物価政策を進めてまいりたいと考えております。
  244. 正木良明

    正木委員 もっと具体的に聞きましょう。この物価の問題は国民にとっては最優先課題であるというので、昭和五十五年度の予算審議に当たって――審議中であったわけですが、自民党と社会党と公明党と民社党との間で政審会長が集まって予算修正の問題があって、五百億円の緊急物価対策資金という枠がとってあるのです。これはもちろん四党の合意があってゴーが出ないと経済企画庁は動けないかわかりませんが、どうも参議院の答弁なんかを聞いておりますと、河本長官にとってはこの五百円をきわめて有効に駆使をして六・四%に抑え込むための方途を考えてみたいというような意欲が動いていらっしゃるように拝見いたします。したがって、ここでその五百円を……(「五百億円だよ」と呼ぶ者あり)すみません。そんな大きな金持ったことがないものだから。すみません。五百億円をどのように効果的に使うというような方策をお持ちになっているか。一応四党の政審会長というか四党の合意でこれを使えというゴーのサインが出たとしておっしゃっていただけませんか。
  245. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この五百億円につきましてはいろいろな経過があるようでございまして、去る四月にも野党三党から、五百億円をこのように使え、こういう申し入れがございました。それに対する自民党の答えを見ますと、現状では必ずしも使えない、こういう感じに見受けられました。そういたしますと、四党の間で、これをどのように使うのか、使わないのかということにつきまして至急打ち合わせをしていただくことが肝心ではないか、私はこう思っておりますが、お聞きいたしますと、昨日、四党の政策担当者の間で至急この問題について相談をしよう、こういうことになったように聞いております。もしゴーのサインが出ますならば、これは一日あれば強力な対策を私ども考えることが可能だ、こう思っておりますけれども、現在は、使っていいのか使って悪いのか、それがはっきりいたしませんので、いまの段階で内容を申し上げるというのはいかがか、このように思いまして、ちょっとその点は差し控えさせていただきますけれども、何といいましても物価政策を進めます上におきましては、やはり相当な資金も必要であります。無手勝流でやれと言われてもなかなかむずかしゅうございますし、経済企画庁でも物価安定のための準備費を約三十億用意しておりましたけれども、これも緊急の生鮮食料品対策等にほとんど使ってしまいまして、残余もございません。そこで、四党のお話し合いの結果を見まして、私どもも寄り寄りいま準備をしておるところでございますが、まだそれができませんのに、それに先立ちまして内容等を申し上げるというのはいかがかと思いますので、これはちょっとお許しをいただきたいと思います。
  246. 正木良明

    正木委員 野党三党から要求をした内容というものは、これは参考にしていただいたらいいと思いますが、しかし、あの当時の情勢から申しますと、私の個人的な考え方でございまして、これは三党の合意ではありませんが、少なくともあの時期、公共事業の後ろ倒しの問題等もあり、また公定歩合の引き上げの問題等もあって、この物価情勢に対して、政府も比較的機動的に対処をしておる、だからもう少し様子を見ようかという気分もあったわけです。しかし、もはやここまで参りますと、来年の三月まで六・四%の消費者物価上昇率におさめることはほとんど不可能である、よほど適確な手を打っていかなければならぬということになるわけです。したがいまして、もちろん公共料金等の問題もあるのですよ。これはちょっと時間がないから、郵政大臣と運輸大臣にも国鉄の料金値上げと郵便料金の値上げも遠慮してもらうようにぼくは言おうと思っておったけれども、これはもちろんやめたわけではありませんよ。やめてもらわなければいかぬですよ、値上げは。ですから、そういうことではありますので、われわれも滞り寄り政審の、いわゆる政策の責任者で相談はいたしますけれども経済企画庁としても、その五百億円をどのように使って、またどのような時期に、何のために使って六・四%に抑えるかということについての研究を早急にやっていただきたい、このように思います。よろしくお願いします。  それと大蔵大臣、この五百億円を使うというのには文句をつけぬようにしてくれますな、これは公党の間の約束ですから。お二方どうぞ。
  247. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在の消費者物価の水準は八%台で推移をしておる。そのために、六・四%にするためには相当な手を打たなければなりませんが、それに対して至急準備をせよ、こういうお話でございますが、これは内々研究もしておりますので、至急にまとめてみたいと考えております。
  248. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私どもの方といたしましては、この五百億円については申し合わせがありまして、「今後の物価動向に細心の注意を払い事態の進展に即応して適切な対策を講ずる。」こういうことで五百億円が四党合意になった。この文章からも明らかなように、仮に物価が著しく高騰するおそれがある、こういうような場合に事態の進展に即応した効果的な使途が検討される、こういう性格のものじゃないか。ただ問題は、現在の時点で物価は総体的に落ちついて降下傾向にあるわけでありますから、機動的にうまくいくかどうか。仮にそれを使うことによって物価が急激に下がるというような妙案があれば、決して私は――この趣旨は尊重していかなければならぬわけですから、そういう点は、ただ使ってしまったけれども余り御利益なかったということは困るわけでして、何かうまい手をひとつ考えてもらって、それで私は、うまくそれが活用して効果があるというようなときには、与野党の合意を踏まえて遺憾なきを期したいと思っております。
  249. 正木良明

    正木委員 こんな財政困難なときですから、五百億円むだ遣いしようなんて気持ちは私の方も毛頭ありませんよ。ですから、経済企画庁でこれが効果的に使えるというめどが立って、それができるというならば、これはやはり快く協力をしてもらわなければいかぬと思うのです。そういう意味で、このまとめとして、総理、よろしくお願いします。
  250. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 正木さん御指摘のように、消費者物価を何とかひとつ目標値におさめるようにしたい、こういうことで政府としても頭を悩ましておるわけであります。今日まで、実は生鮮食料品がやはり一番消費者物価に影響がございますので、農林省におきましても野菜の出荷対策、流通問題等に対して重点的にやっております。実は暮れから正月等にかけましての野菜確保のために、すでに西南暖地方面等に対しまして手を打っておるわけでございます。先ほど経企庁長官からもお話しいたしましたように、経企庁が持っておりますところの物価対策費、そういうものも使っております。でありますから、政府としては全力を挙げてこの消費者物価の安定を図りたいという考えでございますので、四党の政調会長、政審会長等におきまして適切な、効果的な案がございますれば、私は内閣の責任者として、予算等の面につきましてはこれを支出するにやぶさかでございません。最善を尽くします。
  251. 正木良明

    正木委員 もちろん、その参考になることはどんどん申し上げますが、やはり主体は経済企画庁ないしは内閣で決めてもらわなければなりません。何でもこっちで決めたらそっちが取り上げてくれるならほかのものでも全部決めますけれども、そうはいかぬでしょう。その点やはり主体性というものはきちんとしていただきたいと思います。  それから公取委員長。すみません。長い間お待たせいたしました。  そこで、野菜の問題だけが値上がりの原因のように総理がおっしゃった。それは言葉のあやでそうおっしゃったのであって、それだけとはまさか思っていらっしゃらないと思いますが、いま素材産業関係での減産が相当はびこってきているのです。これはざっとした言い方をいたしますと、急にそういう素材製品がどんどん値下がりをしたので何とか下落をとめるために減産をしてということではなくて、むしろ値下がりするかもしれないというので事前に減産が行われてきているわけですね。したがって、自主的に減産をするということについては別に独禁法上それはどうということはないのだけれども、たとえば普通の場合ですと、あるメーカーが減産をしますと、そこが持っておったシェアに食い込むためにほかのところが増産をしてぐっと食い込んでくるということが、実際この自由経済の市場においては起こってこなければならぬが、そんなことは全然起こってきていませんね。明らかに協調的な減産であるとは断定できないものがあるとは思うが、しかし、この減産というのが、常に品薄状態を市場につくってそれで価格を維持しようとする意図が十分に働いているし、そこに協調的なものがあるのではないかという疑いを私は持ちますので、そういう点、公正取引委員会委員長さん、何か調査を始められたということも仄聞いたしておりますが、これらの業界というのはどういう業界が多いのか、それから不況カルテルだとかやみカルテルだとか、こういうことを従来しばしば行ってきた業界であるのかどうか、こうした減産を行っている業界のうち独禁法上問題のあるものがあるのかないのか、もしあるとするならばどういうふうな対処をなさるのか、これだけちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  252. 橋口收

    ○橋口政府委員 いま正木先生からお話がございましたように、ことしの第一・四半期のおしまいごろから第二・四半期にかけまして、産業界の一部でほうはいとして減産の動きが生じてまいったわけでございます。これは新聞紙等にも報道されましたし、また一部のユーザーからは、西を向いても東を向いても減産だ、日本経済は一体どうなっているんだろうかというような一般的な御注意もちょうだいいたしておったわけでございまして、私ども関心を持っておったわけでございますが、九月五日の経済対策会議では、行き過ぎた減産によって需給に逼迫を来さないように配慮するということを政府全体としてもお決めになったわけでございまして、私どもとしましても、そういう政府の御方針に沿い、また公正取引委員会独自の立場におきましても何らかの意味で実態の把握をする必要があるということで、現在減産が行われております五つの品目につきまして調査を開始したわけでございます。品目を申し上げますと、粗鋼、紙パルプ、エチレン、塩化ビニール樹脂及び小形棒鋼の五品目でございまして、これらはいずれも昭和四十六年の不況時あるいは昭和四十八年の第一次石油ショック以降、昭和四十九年以降の大不況時におきまして、ほぼ例外なしに不況カルテルを結成いたしておるものでございまして、またその中には、かつて公正取引委員会によりまして立入検査を受け、また審決を受けたものもございます。そういう点から申しまして、協調的な体質を持っているものにつきまして特に重点を置いて調査をしたいというふうに考えております。
  253. 正木良明

    正木委員 これはやはり需給の逼迫から物価問題について少なからざる影響を与えるものでありますから、これはひとつよろしくお願いを申し上げます。  時間がありませんので、ちょっとぽんぽんぽんと行きますが、厚生大臣、あなたの非常に力強いお言葉を本会議で承りまして、私はいい人が厚生大臣になったなと思うて喜んでおったわけでありますが、ここでその感激を再現したいと思いますので、ひとつ。  児童手当、これはまあ大蔵大国に聞くべきであろうかと思うけれども、まずあなたに、児童手当の問題、老人医療の無料化の問題、これらについてひとつ五十六年度どうするかということについての御決意のほどを承りたいと思います。
  254. 園田直

    ○園田国務大臣 児童手当制度についてはただいま検討中ではございますけれども、しかしながら、高齢化社会を迎えるに当たって、その柱となるべきものは世代間の緊密な信頼と連帯が不可欠であると考えております。かつまた、日本は今日出生率が非常に低下をしておりまして、民族の力という問題から非常に憂慮をいたしております。何にいたしましても子供は未来を背負うべきものであって、健全な子供が育ち、そして優秀な大人になっていくということはきわめて大事でありまして、どこの国でもそうでありますが、つらいときでも児童に対する問題だけは特典を与えるべきである、こういう考え方から現行制度は維持、存続すべきものであって、その現行制度から将来への改革の足がかりにすべきである、こういう考え方でおります。  次に、老人の医療の問題でありますが、これは本格的な高齢化社会が到来をする、こういうことで、国民が健康な老後を迎えることができるようにし、しかも必要な費用は国民皆が公平に負担するという制度を確立することはきわめて重要であると考えております。そのため、現在厚生省では老人保健医療制度の基本的見直しを進めており、その中で老人医療費の負担のあり方について検討してまいりたいと考えております。
  255. 正木良明

    正木委員 これはぜひ継続していただきたいと思うのです。確かにいま大臣のお話の中にもありましたが、統計上、合計特殊出生率というこれはむずかしい言葉なのですが、これは総理、十五歳から四十九歳までの女性が生涯何人子供を産むかという統計の率なのですよ。  ここでは二・一人以下になるといわゆる再生産率の一を割ってくるのです。人口が減ってくるのです。ところが、日本は物すごう減っておりますね。昭和四十八年には二・一四人だったものが昭和五十三年では一・七九人、昭和五十四年、去年は一・七七人、このままずっとこの調子で下がっていって一・六五人ということになったら、要するに十五から四十九歳までの女性が平均一・六五人しか生涯子供を産まぬということになりますと、大体七十年後には日本の人口が九千万人になるやろうと言われております。生まれてきたのはなかなか死なぬわけです、いま。いわゆる老齢化社会になって。後、続かなんだらどないなるかいうたら、これはほんのわずかな人で年寄り養のうていかないけません。それと同時に、やはり人口がどんどん落ちてくるという国は衰微しますわ。  そうすると、ほな、なぜ子を産まぬのかということを調べたら――えらい大阪弁になって済みません。一つは、女性の社会的進出が進み、家庭生活における子育ての比重がそれだけ下がってきたということもある。子供中心から夫婦中心の生活になったというので、若い世代の価値観の変化がある。大都市などの住宅事情の――もう一つごついのがある。これは教育費と生活費の増大によって子供を産まなくなってきたというのがある。これが実はこの児童手当に関連してきます。  だから、どう考えても、ここで日本の将来を考えたときに、もう赤字やから赤字やからこれも切ってしまえ、あれも切ってしまえじゃいかぬのであって、単なるそろばん勘定で、赤字を減らすためにはこれも切れあれも切れというのは、これはだれでもできることで、これは政治じゃありませんよ。大事なものはちゃんと日本の将来を考えてそれを維持し、そして発展させ、充実させていく、そしてむだを切っていく、そういうことでなければならぬと私は思うのですよ。そういう点では、私はこの児童手当制度というのは、五十六年度やはりあの六者覚書というか、あれにかかわらずどうかひとつ維持をしてもらいたいと思う。  それともう一つは、老人医療の無償の問題は審議会に何かやっているらしい。諮問をしているようですね。公明党も、この老人医療の問題については別建て保険の案を出しております。私はこれは一〇〇%完全のものと思っておりませんが、一つのたたき台として提出をしております。厚生省も、それをいままで白紙委任だったのを何か案をつくって審議会へ答申を求めていらっしゃいますから、これはこれなりにやはり審議され、結論が恐らく出てくるでしょう。しかし、五十六年度の予算編成には間に合いませんので、やはり老人の医療無料化という問題は、このまま維持して凍結したままで五十六年度はいってもらいたい、このように思うのですが、総理どうですか。
  256. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 児童手当の継続の問題、老人医療の問題、いずれもわが国の今後の社会構造の上に、また民族の活力の上に重要な問題でございます。これをただ財政的な観点ということでなしに、いまお話もございましたが、十分私ども配慮いたしまして検討してまいりたいと思っております。
  257. 正木良明

    正木委員 時間がありませんので、さらに突っ込んでというわけにまいりませんのが残念ですが、そこでお年寄りだとか心身障害者や障害児の問題、これもちょっとお願いをしておきたいと思うのです。  障害ということに関係して一つだけ先に聞いておきたいのですが、法務大臣、あの新宿のバスの放火事件がありまして、あれが精神病者であったということから、刑法を改正して保安処分というものを考え出すべきであるということをおっしゃいましたね。これは人権問題等いろいろな理由で反対論もずいぶんたくさんあるわけなんですが、現在大臣としては、この保安処分問題というのはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  258. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 精神障害者が凶悪犯罪を犯す、殺人とか放火、大体一〇%ぐらいに及んでいるようでございます。そういう方々は責任能力がございませんので、無罪になりましたり、不起訴になったりしていくわけでございます。また、そういう方が犯罪を犯すおそれが出てくる。  そこで、六年前に法制審議会から刑法改正の草案をいただいている。その中で、裁判所が再犯のおそれがあると考えた者につきましては保安処分に処する、こういう考え方が出ているわけであります。保安処分という言葉がどうも私余りいい感じを持たない言葉じゃないかと思うものでございますので、率直に私なりに言わせてもらいますと、いままでは精神障害者だということで、またそのまま社会に帰してしまった。しかし、やはり犯罪を犯すおそれがないわけではない。お医者さんに任せるだけで後は知りませんよというわけにもいかない。だから、一たん社会から隔離させてもらう。社会から隔離させてもらうけれども、後は全部お医者さんに任せますよ、治療してもらいますよ、ほかの犯罪人のように懲役に処するわけじゃありませんよというのが治安処分と言われているものでございまして、あるいは刑事治療処分と言う方が私はいいのじゃないかな、この辺はまた考えていかなければならぬのじゃないかなと思います。  しかし、いずれにしましても、この問題が日本弁護士会等から強い反対がございまして、六年前に草案をいただきながらたなざらしになっているわけであります。そこで私は、こういう問題もとにかく話し合いを始めようじゃないか、そういうことで閣議で関係者と協議を重ねてこの問題の推進を図っていきたいという御了解をいただきまして、日本弁護士会等と話し合いをいたしました結果、日本弁護士会は、今日ではなお反対の態度は崩さぬけれども、それじゃ協議の座に着きましょうということになってきたわけでございまして、話し合いの中でよい結論を見つけていきたいというのがいまの私の立場でございます。
  259. 正木良明

    正木委員 これはよほど慎重に扱ってもらわないといかぬと思いますし、この後また法務委員会の問題に移したいと思いますから、きょうの質問はこれで終わりたいと思います。  そこで、ぼくのところへぎょうさん相談に見えるのです。それは寝たきりの老人だとか、有吉佐和子さんの小説から言うと恍惚の人ですね、こういう人を抱えた一家の主婦の皆さん方からの訴えが物すごくあるわけですね。実は私も、うちのおふくろがちょっとそんな傾向でございまして、いま入院しておりますけれども、これはずいぶん高うつきますわ。だから養護老人ホームへ行きますと、それはそれなりの手当てはしていただけるのですが、とてもじゃないが足りまへん。在宅の寝たきり老人が、いま報告されているところでは四十万人以上いると言われているのですね。恐らく昭和七十年になると八十万人を超えるだろうと言われておる。  ところが、特別養護老人ホーム、こういうお年寄りを世話してくださるところは七百九十九カ所しかありませんで、六万一千五百十五人しか定員はないのです。そうしますとほとんど在宅です。これは全部だれにかかっているかというと、その主人公はやはり勤めがありますから出るでしょう、あと全部奥さんなんですね。要するに脳軟化というか老人性痴呆というかそういう状況になって、しかも動けない、こういう状況のお年寄りをお持ちの皆さん方から相談を受けるのですけれども、これは相談に乗りようがないのです。それで、その人たちは決してぜいたくなことは言ってないのです。うちの年寄りを特別養護老人ホームへ全部入れてくれとかなんとか――できればそうしてもらいたいけれども、もしそれができないなら、一カ月に三日でいいから、三日間だけ引き取ってくれるところないか。大変な世話らしいです、精神的にも肉体的にも。もしこの三日間自分たちがそれから解放されたらほっとするでしょう。いわゆるもうノイローゼが高じて自殺したくなるというような状況に追い込まれておるのを、それで何とか切り抜けることができますから。三日です。それだと回転がきくわけですから、そういう病院をつくってくれませんか。同時にまた、もしそれが不可能ならば、家庭奉仕員というのがあるのですが、これは全国で一万三千二百二十人です、厚生省の報告で。七万世帯しかカバーされておりません。この家庭奉仕員の人が一週間に一遍でもいい、十日に一遍でもいいからその年寄りの世話のために来てくれれば、私はそこでほっとできるのです、これは切実な訴えですな。  ある本にこう書いてありました。女は三遍老後を迎えると書いてある。一遍はいわゆる親です。親の老後のめんどうを見ないかぬ。二回目は、大体おやじの方が先にぼけますねん。大体定年で一人で家にいますとぼけ方が早うなる。なぜかと言うたら、人使いが荒うなるから。おい、たばこ持ってこい、茶持ってこい。動くのは奥さんでしょう。動く方はぼけよらぬ。使うてるやつはぼけるから、大体おやじの方が先にぼける。そうすると、これは奥さんがその御主人の世話をせないかぬ。大体おやじの方が早う死ぬことになっていますわ。これはもう平均寿命からいったってそうなる。それでようやく今度は自分の老後を迎えるのです。  ですから、この問題は厚生省の管轄であるのか労働省の問題であるのかようわからぬが、これは同時に、すぐれて婦人問題であるわけです。全部、九〇%まで家庭の主婦の肩にかかっているんです。こういう問題をやはりきちんとしてもらわないと。  もう一つ訴えが多いのは、心身障害児を持った親ですわ。正木さん、おれは自分のその子を生きている間はめんどうを見る、国の世話にはならぬ、おれが死んだらどないなるねん、それを国はどうしてくれるんや。それは清潔、公平、自由も結構やけれども、これをやってもらわな公明党と違うぜと言われて、私はいつも困る。それはもう真剣な訴えです。  だから、こういう心身障害児の問題についても、やはりこれはもういろいろなことがあるでしょう。まず第一に、そういう子供がたくさん生まれぬようにしてもらわないけませんわ。これはやはり母子保健法の関係があります、八〇%まで出産時ですから、出産時の障害でそういう障害の人が生まれるんだから。この問題を解決せないかぬ。それから育ての問題、お母さんと子供の関係の問題ですから、それを問題とせないかぬ。生まれてしまったら、後その人たちが、重度と軽度とありますけれども、それはそれなり社会生活ができるような形での手というものをやはり打ってもらわないと、本当の意味の福祉にはならぬと私は思うのですが、こういう問題、厚生大臣、何とかなりませんかな。
  260. 園田直

    ○園田国務大臣 寝たきり老人の問題は御指摘のとおりでありまして、特に都会のサラリーマンでも農村でも非常な深刻な問題を起こしております。一方、主婦並びに家族はそのために負担にたえかね、これを見た寝たきり老人がはっていって農薬を飲んで自殺するなどという事件が起こっております。  そこで、御承知のとおりに家庭奉仕員であるとかデーサービスであるとかいろいろやっておりますが、いまおっしゃいました短期保護の施策というのはきわめて大事であると思いますので、そういう点に留意をしながらこの施設を拡充していきたい、強化をしていきたいと考えております。  恍惚の人もこれまたそうでありまして、一つには、こういう恍惚の人をつくらないような老人の健康づくりというものを積極的に進めることも大事でありますが、この恍惚の人も三種類ありまして、精神的に老人性の痴呆症になって、ひとりで置いておくと危ない人、これはまあ精神病院に入院をせなければならぬわけでありまして、軽度の方は町を歩いてもちょっと人が援助をすればいいという人、それから余り動けない人、こういう三種類ありますが、それぞれの施設に応じて、やはりこれも大変な問題でありますから、この施設対策を強化したいと考えております。  次に、障害児を持った親御さん、これは本当に悲惨でありまして、中には自分が死ぬるときに殺して死ぬなどということもあるわけであります。そこで厚生省の方では、この御心配を少しでも解消するように、障害者扶養保険制度、障害福祉年金及び特別児童扶養手当、施設整備などの充実に努めてまいっておりますけれども、これはなかなかまだ行き渡りませんので、これもさらに充実強化をしたいと考えております。
  261. 正木良明

    正木委員 もう時間がありませんので、せっかくひとつこれもよろしくお願いいたします。また社労のところでみっちりやらしてもらいます。  それで、もう一つだけぜひ聞いておかないかぬことがあるんです。これは総理が本部長になっていらっしゃるのですが、国際障害者年推進本部というものができましたね。それで推進方針というのを決定なさっているわけです。総務長官と厚生大臣が副本部長をなさっているわけですが、これは大体推進方針を拝見いたしましたから多くのことは聞きません。  ところで、この国連決議の中で行動計画があるわけなんですが、この中で、各国のとるべき措置の中に一九九一年までの長期計画の策定というのがあるのです。確かにこの中で示されているものは一年でできるようなものではありませんし、また国際障害者年といえども、来年お祭り騒ぎだけで終わってしまうのでは何の意味もありませんから、したがいまして、この長期計画の策定ということについてどのようにお考えになっているか、厚生大臣と総理大臣、ひとつよろしくお願いいたします。
  262. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおりに明年度が行事の年になりませんように、それぞれ具体的な行動及び長期の計画、こういう観点から身体障害者福祉審議会等の早急の御審議を願っているところでありますが、さらに中央心身障害者対策協議会の国際障害者年特別委員会においてもこの審議をお願いしているところでありますから、早急に関係各省と相談をして具体的な案を立てたいと考えております。
  263. 正木良明

    正木委員 坂井弘一君から関連の質問がございますので、よろしくお願いいたします。
  264. 小山長規

    小山委員長 この際、坂井君より関連質疑の申し出があります。正木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。坂井弘一君。
  265. 坂井弘一

    坂井委員 お答えはひとつ簡明にお願いしたいと思います。  さきの衆参同時選挙で自民党が政治倫理確立ということをまず第一の公約に掲げ、選挙が行われました。終わりますとこれが大きくさま変わりをしている、一変した感じを実は素朴に国民は抱いているのではなかろうか。そうであればあるほどに、私はやはりいま政治に問われている大きな基本として政治倫理、つまり政治家、公人がいかに倫理を確立していくか、このことが非常に大きな政治のまず第一の基本であろう、こう思います。そういう観点に立ちまして鈴木総理の見解、認識をお難ねしたいと思うわけでございますが、具体的に入りたいと思います。  政治資金規正法、政治献金について、私はこの政治献金は収入も支出も原則的にはガラス張り、公開をする、これが一番望ましいであろう、こう思うわけでございますが、総理はどう考えられますか。
  266. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御指摘のように、政治倫理確立して政治国民からの信頼を回復するということが民主政治の原点であるわけでございます。  私ども自由民主党は、先般の選挙でこのことを国民皆さんにお約束をして御支持を願ったわけでありますが、今後におきましてもそのことを肝に銘じて自戒、自省をいたしまして、国民の期待にこたえるようにやってまいりたい。  そこで、政治資金規正法の問題にお触れにたりましたが、当面、とりあえず、先般の国会に提出をいたしましたところの個人に対する献金の明朗化、こういうことであの法案をこの国会に提出して御審議を願うことにいたしたいと考えております。  なお、収支全般についての報告義務を厳正にしてガラス張りにするように、こういう御指摘でございますが、この点につきましても今後引き続き検討を進めてまいりたい、こう思っております。
  267. 坂井弘一

    坂井委員 総理は、実は的確にお答えにならないわけなんです。私が申し上げたのは、つまり収支をガラス張りにした方がよろしかろう。残念ながら、政府が提出されようとしております政治資金規正法改正案につきましては、とりわけ支出の部分について実は非常に不透明であるということを私は指摘せざるを得ないわけでございます。この議論につきまして、これに深く入ってまいりましてもなかなか時間がないかと思います。問題がそういうところにあるということを総理は御念頭に置いていただきたい。やはり収支を明らかにするということは、そこにはおのずから政治資金献金、この質の問題、さらには節度の問題、そういうところにまた着目をしながらお互いに自浄作用が働いていく、私はそう思うわけでございまして、そういう中から政治倫理確立ということに大きく資していくことができるのではなかろうか。  つまり、時間がございませんので端的に申し上げますが、現行政治資金規正法、これは非常に大きな盲点がある。その中で起こってきた一つの問題として、富士見病院の献金事件とあえて申しましょう。午前中も論議がございました。  総理に伺いたいのですが、あなたが総理に就任されまして、閣僚が決まった、齋藤厚生大臣がおやめになった。おやめになった理由は一体何だろうか。政府の、総理の、あるいは官房長官の御答弁を伺っておりますと、まさに政治倫理、その欠如と申しましょうか、非常に大きな今回の社会的な、あるいはまた道義的に見ましても、さらにはこれは医療機関としてあるまじきそういう相手から金を受け取った、政治家としてのモラルが一体どこにあるのだろうか、その大きな責任を感じられた、それがおやめになる最大の原因であったんだろうということはうかがい知れたわけでございます。  しからば、端的にお伺いいたしましょう。  政治資金規正法上からの問題は何らなかったのでしょうか。現行政治資金規正法に照らしても、今回おやめになる理由の中の一つとしてそれはあったのだ、こういうことでしょうか。
  268. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 齋藤前厚生大臣は、地元福島県人であり名誉村民であるという北野早苗なる人物を信用して、純粋な政治献金としてこれを受けたということでありますが、その後、北野という人物があのような事件を起こし、人道上も許されないような行為もあったということで、深くこれを反省をされまして直ちに全額を返金いたしますと同時に、職責上厚生大臣の職にとどまることができないということで、自発的にその職を去るという申し出が私にございました。私は、鈴木内閣政治の浄化、政治倫理確立ということを第一に掲げております立場からこれを受理いたしまして、厚生大臣の更迭を図ったわけでございます。これは単にそれで済む問題ではございませんで、本当に残念な、政治倫理の面からいたしましても道義的な面からいたしましても遺憾にたえないことでございます。  この問題は、本来は本人一人一人の問題でございますけれども、今後におきましても私ども自粛自戒をいたしまして、このようなことが再び起こらないように努力してまいりたい、こう思っております。
  269. 坂井弘一

    坂井委員 総理、私がお尋ねした趣旨は、政治資金規正法に抵触する部分が全くなかったのでしょうか、いや、そうじゃない、少なくとも現行政治資金規正法上この献金の授受は問題がある、そういうことも、おやめになる一つの原因ではなかったのでしょうか、こうお尋ねしたわけです。
  270. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、そういう不明朗な金であったということで反省をし、全額返金をしたということで、政治資金規正法上届け出その他の問題は一応消滅をした、こう考えておりますが、しかし、根本問題として、この政治資金の明朗化という問題につきましては、今後本当に御指摘のように掘り下げた検討を要する問題である、こう思っております。
  271. 坂井弘一

    坂井委員 あえて総理はそういうようなお答えでありますと、私はここでやりとりしましても、どうも議論がかみ合わないように思います。ただ、個人をあげつらうというような気持ちは、私はさらさらございません。  問題の本質は、冒頭申し上げましたように、やはり政治倫理確立ということがきわめて大事なことである。とりわけ政治に対する国民信頼をつなぎとめることは、最大唯一まず心がけなければならぬ課題であるということです。したがって、同じ政治家として共通の問題として申し上げておるのでありまして、そういう意味で、これは自治大臣にお尋ねしても的確な御答弁は返らぬと思う。齋藤前厚生大臣それから澁谷さん、当時の自治大臣。私から結論を申しましょう。いずれにいたしましても、現行の政治資金規正法上に照らしてもこれはやはり問題がある。少なくとも私をして言わしめればずばり違反である。これもおやめになる一つの因ではあったであろう。小さいとおっしゃるかもわからぬ。しかし、この因はきわめて重大なのです。共通です。お互い国会議員、政治家です。ですからこそ、私はあえてその問題を提起したわけでございます。  園田厚生大臣、あなたは大変見識のある、また大臣として当然あるべき献金に対する態度を御自身が表明されました。私は敬意を表したいと思う。つまり、大臣が所管をする、みずからの指導監督下にある企業あるいは団体から献金を受け取るべきではありません。私はきっぱりやめます、そうあるべきだと思います。  総理お尋ねをいたしますが、各大臣は、自分の所管、職務権限の及ぶみずからの指導監督下にある企業、団体から献金は受け取るべきではないと私は思う。したがって、総理はそういう趣旨を閣僚に徹底をされる、閣議でお決めになるぐらいの御決断があってしかるべきだろうと思いますが、いかがでございましょう。
  272. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政治倫理確立の問題、また綱紀の粛正の問題、これは鈴木内閣成立の初閣議におきまして、私から各閣僚に強く要請をしたところでございます。また、ああいう事件が起こりましてから、一層閣僚各位のこの問題に対する姿勢を厳しく自省自戒してもらうようにお願いをしておるところでございます。
  273. 坂井弘一

    坂井委員 総理はお願いをしておる、厚生大臣みずからおやめになる。ほかの閣僚に私がお尋ねをすれば、皆さんは異論なくやめましょう、当然慎むべきだと思いますというお答えが返るだろうという前提でそういうようにお尋ねをした。総理は要請をしておる、それだけの話ではけじめがつきません。もし、私がいま御提案申し上げましたことに対して異論がある閣僚は、手を挙げていただきたい。その方が話が早い。私は常識だと言っている。閣僚たるべき者がまずみずからの姿勢を正していきましょうという、その一つとして御提案を申し上げる。私は強いてそうやれ、いやだと言うのをやりなさいよ、こんな無理難題を言っておるわけではないのです。そうでしょう、いかがですか。閣僚で、もし御異議があれば手を挙げてください。なければ、総理は閣議でお決めになったらいかがですか。せめてそれが総理のリーダーシップでしょう。総理の良識でしょう。総理政治倫理でしょう。それの実行がそうあるべきだということを申し上げているわけですから、御異論がないようでしたら、総理、もう一度お答えの中で、いまの私の提案に対して明確に御答弁をいただきたい。
  274. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 閣僚の各人が、閣議決定というような形式を踏まなくともみずから進んでそういう姿勢を実践に移していく、こういうことが必要であるし、このことは私からもうすでに要請をいたしておるところでございます。
  275. 坂井弘一

    坂井委員 わかりました。閣僚の自主性、主体性の問題ですね。閣僚は御異論ありませんね。そう受けとめておきたいと思います。あれば言ってください。――ないと理解いたします。  私は、いま一つの問題として申し上げたのでありまして、実は政治資金規正法については、冒頭申し上げましたようにガラス張りが好ましいと思います。思いますと同時に、規制を強化しながらも、できるだけ個人献金に移行していくということが望ましいでしょう。同時に罰則についても、これはしかるべき罰則規定をきちんと設けた方がよろしいと思いますね。そういうことを考えますと、来年になりますと五年後の見直しの時期に入るわけでございますけれども、十分その辺を考えながらやっていただきたいと思います。  この際、総理に聞いておきたいのですが、新聞報道等によりますと、ちらほらどうも、規制の枠を広げよう、総量規制、個別規制、これをもっと広げてたくさんいただけるようにしましょうかというような話があるようですけれども、そういう方向に向かうのですか、それはどう考えていらっしゃいますか。
  276. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、この政治資金の問題につきましては、いろいろな意見があるということも承知をいたしております。しかし、国民世論その他各方面の意見等に十分耳を傾けて、そして国民が納得できるような方向で措置しなければならないもの、このように考えております。
  277. 坂井弘一

    坂井委員 私の意見として、若干意見を申し上げておきたいと思います。  現在、大衆デモクラシー下における選挙、現実に相当な金がかかる、この現実は否定いたしません。そしてそのもう一方では、金のかからない選挙という理想、要請がございます。この両者にどういう橋をかけるか。つまり、そういうことになってまいりますと、そういう考え方からいたしますと、一つは党費の収入、一つ政治献金、一つは国庫支出、この三本の柱をどう調和させるかという問題であろう、こう私は思います。  そういう考え方からしますと、いま現実を無視して一挙に解決するというような特効薬、処方せん、そういうものはどうにも見当たらない。つまり着実に、具体的に前進させていくようなものを考えながら積み重ねていくという手法しかあり得ないだろうと思います。したがって、一方的に、政治献金は何もかも悪いんだからやめろやめろと私は言っているわけじゃない。少なくともいま富士見病院、この献金事件であらわれた政治献金、これを一つ大きな反省、教訓として、次への資金のあり方ということを考えなければいかぬという問題提起をしたわけでございます。そういう点を踏まえられまして、政府においてもひとつ十分前向きの御検討をいただきたい、こう思います。  時間がだんだんと少なくなってまいりますので、ただこの冨士見病院問題に関連いたしまして、朝も出ましたが、ME、この代表格といいますか、これはCTスキャナーと言われております。コンピューター断層撮影装置、まあ非常に最新鋭の医療機具、これを備えた病院、これは現在では恐らく一千台を超えているんだろうと思われます。たとえば西ドイツあたりに比べますと、日本は三倍から四倍ぐらいでしょう。アメリカは千五百二十四台だ、こういう説明がございましたが、アメリカは大体十万都市で一台、こういう感じですね。それからフランスに参りますと、フランスは病院改革法でもって大体病院の配置が決まりまして、そこに新しい医療機器を導入する場合には許可制をとっておる。日本は無制限でしょう。言うなれば野放しでしょう。この辺にも一つ問題がある。問題提起だけしておきましょう。  さらに問題は、この検査がこれまたずいぶんおかしいですね。衛生検査所、いま全国で六百四十三カ所あります。そのうち登録されていないのが二百十四件ありますね。これも野放しですね。しかも、御承知のとおり医療費に占める検査料というのは、五十三年次で大体九・一%。十兆を超えているわけですから、約一兆近くが検査料です。しかもこれは民間検査所ですよ。大体三五%が株式会社です。中には製薬メーカーあるいは繊維メーカーの子会社がある。会社です。病院がそこへ、安いところを追っかけて検査を依頼するわけです。この検査所が野放しであります。いいですか、野放しなんです。登録されたのが、五十四年で見ますと四百二十九、未登録が二百十四、合計六百四十三カ所。とりわけ未登録、こういうことに対してどうしますか、どういう手を打たれますか、厚生大臣。
  278. 園田直

    ○園田国務大臣 検査所の問題、御指摘のとおりに、任意登録制であるということが問題であると考えております。単に県、保健所等を指導して監督することでは、なかなか効果が上がりません。前々国会で、御承知のとおりに技師の資格、設置の規制あるいは検査、こういうものを主体とした議員立法を考えておられたわけでありますが、そういう趣旨で制度を確立して、この指導、規制を強化していきたいと考えております。  なお、近時、日本は特に御指摘のとおりでありますが、新しい電子機器がどんどん入ってきておりまして、これがまた野放しの状態。これから医療費がぐんと伸びておるばかりでなくて、やはり患者と医師の間の疎通が切れてくるというのは、この機器に頼り過ぎたということも一つの原因になっておると考えます。したがいまして、これの許可制、それから共同利用、こういうことを考えていきたいと考えております。
  279. 坂井弘一

    坂井委員 一定のそうしたルール、規律、許可制というようなことを取り入れていかないといけませんね。いま御答弁いただきましたが、これはそうした意味で前向きな検討、実行していこう、こう受けとめておきたいと思います。  それで私は、悪貨が良貨を駆逐する、こう言われますけれども、大方のお医者さんは皆りっぱなお医者さんだろうと思うのですよ。しかし、中に富士見病院に象徴されるごとく、非常に乱診乱療を超えて、医の倫理どころか人の命まで、健康まで食い物にするなんてとんでもない事件、こういうものが起こってきておる。したがって、そういう中で、いまのような日本の医療体制あるいはそういう監視機構等の中で、一つ御提案申し上げたいと思うのですが、このまま放置したのではこれはゆゆしき事態になりかねませんので、そういう前提で、たとえば国税不服審判所というのがありますね、これにならった形で医療不服審判所、こういうものをつくったらどうだろうか。ここで乱診乱療ということに対する自浄作用というものが期待できないものだろうか。いろいろな人たち、そういうような意見をお持ちの方が多いようであります。  つまり、この医療不服審判所の審判の目的というのは、直接的には、不服の原因でありますところの乱診とか乱療、それを明らかにして再びこのようなことを起こさせないという、そういう一つの目的があります。間接的に言えば、そういう審判の結果を医療の安全確保なり今後の健保、保険医療行政、これに寄与させるとができるのではないか。こういう二面性から、そのような一つの機関を設けるというぐらいの決断、これが必要なときじゃないでしょうか。
  280. 園田直

    ○園田国務大臣 国民から恐怖にも似た医療に対する不信頼が出てきておることは、重大な問題であります。特にこういう事件が起こっている時期でありまするから、尋常一様ではなかなか回復はできない。そこで、厚生省内で各局から職員を集めて、実情把握、広く意見を聞き、失われた医療に対する国民信頼を回復するという委員会をつくって、これで検討されておりますが、いまおっしゃいました不服申し立ての機関、こういうものを何かいろいろ御相談してつくる必要があるなと私も考えているところでありまして、今後十分検討したいと思います。
  281. 坂井弘一

    坂井委員 実は行政改革、柱だけ触れておきたいと思います。  総理お尋ねをしたいと思うのでございますが、実は行政改革と財政再建という関係について、私は次のように考えておるわけなんです。  確かに財政危機ということ、財政再建の必要性がある。しかし、財政危機の本質というものは、大量の国債発行をした、その国債発行をしたことそのこと自体にあるのではなくて、大量国債発行によって賄われる支出構造、これが今日的、現代的、社会的要求にマッチしなくなってきた。マッチしない。つまり高度成長期の財政支出構造、これがそのままに肥大化していった。ここに非常に大きな今日の解決しなければならぬ問題があるのでございまして、そういう歳出機構の肥大化、さらにそれに増分主義に基づく予算編成方式、こういうものの後遺症としての今日の財政危機、こういうとらまえ方をするのが本筋じゃなかろうか。そう考えてまいりますと、けさほど議論になりましたゼロリスト、これなんかは実は論外でございまして、そんな政府考え方からしますと、ますます安易な増税に走りまして、むしろこうした財政膨張を促進することになってしまう。したがって、問題の本質的、根本的な解決にはならぬ、こういう考え方を実は私はいたします。そこで、総理がまさに枝葉繁茂、根幹蟠錯と。けだし、この指摘、これは当を得ておると思う。このことは何かと言うと、機構の改革だ、私はそう受けとめるわけです。  中曽根長官、確かに、あなたがおっしゃっているような事務とか事業の中身を見直すんだ、そこで仕事を減らしてそれが人減らしにもつながる、こういう手法でとりあえずいきましょうということなんですね。それはそれなり理解します。理解いたしますが、本来、行政改革は機構の改革、これにメスを入れなければ本格的な改革にはならぬ。ましていわんや、いま申しましたような高度成長期のそうした肥大化したものがさまざまなニーズにこたえてきた。それが大きく行政の肥大化、複雑化を生んだ。それでいま、この時代にマッチしたそういう住民の要求とか時代の変化に対応する機構というのは当然考えなければいかぬ。これは中央省庁の機構の改革、ここまでメスを入れなければならない時期に到達したと私は思うのです。そういう考え方に立つならば、第二次臨調、臨時行政調査会、これを発足させるということですけれども、第二次臨調には中央省庁の機構の改革まで含めてここで検討してもらう、その諮問を尊重する、こういう趣旨が入っているのですか入っていないのですか。いかがですか、それは。
  282. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 第二次臨調がもしできましたならば、機構改革ももちろん御検討願うことになると思っております。しかし、当面いま考えておりますのは、中央の各省庁につきましては自主的な再編成を願おう、これが今度のわれわれの八項目の大きな一つに挙がっておるわけです。と申しますのは、これから八〇年代にかけまして新しい行政需要、さまざまな変化がいま御指摘のとおり出てきているわけです。しかし、それらの問題はほかの省ではよくわからないので、各省の人間が一番知っているわけであります。したがいまして、現有勢力の範囲内でスクラップ・アンド・ビルドで、自分たちで最もいいと思う改革案をつくってきなさい。情勢によっては非常に大事だと思うものはふやしてもいいですよ。各省が自主的にいま一番いいと思う改革案を各省順にローテーションで実はつくってもらおう。これは英国でマネジメントレビューというのをやりまして、八年間で各省庁一巡して実は改革案をつくってきたことがございます。いままさにそういう方法でやった方が効率的である、そういうことでこれを進めようと考えておる次第でございます。
  283. 坂井弘一

    坂井委員 各省庁で考えてと、それはそれなりに、それを私は反対したり否定したりはしませんけれども、なかなかそれではできないというまた事情があるのです。渡辺大蔵大臣の総論賛成、各論反対じゃないけれども、私は政府内においても一緒だと思うのです、いまの手法で行く限りは。したがって、大所高所から見て思い切ってやるのだという意識、こういうものを総理がつかまなければ、あるいは行管長官がそれをつかまなければできない。そのことのために第二次臨調を設置するのだというなら、私はそれなり設置意味があると思うのです、それはそれなりに。そうでなくて、またぞろ一次臨調の、私は大骨を抜いてしまったと思うのですけれども、目玉の部分を。それで大方八割までできたのだ、だから時代も変わったし、また第二次臨調だというならば、行政改革が実際にはなかなか進まぬということを見越して隠れみのにするんじゃないかということを言われる。そうじゃないのです。臨調を設けるのは、第二次臨調は大なたをふるうんですよ、それは中央省庁の改革まで含めてのことを第二次臨調で答申してもらいたい、政府にはそういう願望があります、総理にはそういう意思でもってお願いしているのです、こういうことになりませんか。また、そういう意思を表示すべきじゃありませんか。いかがですか、総理
  284. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 第二次臨調が時間かせぎの隠れみのということではございません。いま中曽根行管長官から申し上げましたように、新しい時代に対応する行政改革、こういうことを諮問をいたしたい。したがいまして、御指摘のような問題もその中に含めるわけでございます。と同時に、第二次臨調の答申を待たなくとも、できるものにつきましては逐次実行に移していく。たとえば府県単位の機構のごときは、これは地方行政とダブっておりますし、非常に競合しております。そういう点につきましても、やれるものは取り上げていく、こういうことでございまして、決して第二次臨調は時間かせぎの隠れみのではない、こういうことを御理解いただきたい、こう思います。
  285. 坂井弘一

    坂井委員 時間が参ったようでございますからやめますが、この第二次臨調の答申はいつごろまでに得たい、こういうことでございましょうか。あわせて一次臨調のときに行政改革白書、これを出すべしという臨調答申がございまして、四回ばかりやりまして、その後とだえました。やはり国民の知る権利なり、あるいはまたいまプライバシー、情報公開、いろいろなことが言われますが、せめてこれだけ大きな行政改革、行政改革の必要性、こういう中ですから、やはり私は親切な、かなり丁寧な克明な行政改革白書なるものを政府はお出しになった方がよろしいと思いますが、いかがでございましょう。それをお尋ねして終わりたいと思います。
  286. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 行政白書は来年の秋出す予定で指示を下しまして、いま準備を始めております。  それから、第二次臨調が成立した場合には、成立したときから二年以内にすべて結論を出していただく、もうできた分から総会を開いてどんどん決定していただきまして、そうして一年でもあるいは半年でも総会で決定したものはどしどし実行していく、こういう方針で臨みたいと思っております。
  287. 坂井弘一

    坂井委員 済みません、一言だけ総理、念を押しておきたい。  第二次臨調答申は、総理尊重されますね。
  288. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 これを尊重いたしまして、政府全体のものとして受けとめて実行に移してまいります。
  289. 坂井弘一

    坂井委員 終わります。
  290. 小山長規

    小山委員長 これにて正木君及び坂井君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十一日午前九時から開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会