○
国務大臣(
渡辺美智雄君) お答え申し上げます。
まず、
財政再建をやるに当たって不公平税制の是正をやれと。これは御承知のとおり、
昭和五十一
年度から特別
措置法についてはその整理合理化を続けてきたところであります。したがって、
昭和四十七
年度法人税収に対する
企業関係租税特別
措置の減収割合というものを見ますと、当時九%もそれによって減税になっておった。ところが、五十五
年度は二・二%ということでございまして、しかもその中身は、特別
措置法不公正と一概に言われますが、約一兆円近い減税がございます。しかしながら、その中の約八千億円、七千九百数十億というものは、これはもう個人
関係の零細なマル優とか生命保険料控除とか、住宅取得
促進措置とか利子配当の分離課税というようなもので、
国民に直接
関係のあるものばかりであります。
したがって、これも全部切ってしまえ、どうせこの際だから、金がないなら一切やめてしまえという議論になりますと、それも一つの考え方だと私も思っているのです。しかし、そういうことはどうかなという反対
意見もある。
また、法人税の方は千九百億円ありますが、これは中小
企業対策向けが八百億円で、あとは公害とか資源対策費などが大部分でございます。
したがって、世間で言われるほど不公正な税制というものは私はそんなに、物の考え方の違いはありますが、ないんじゃないか。しかしながら、物の考え方でこういうものをなくすんだというのは一つのりっぱな考え方なわけでありますから、それはどういうふうにとっていくか、慎重に
検討させていただきたい、かように考えております。
ただ、執行面での脱税その他がよく問題になるわけでございますが、これらにつきましては、極力税の執行面において落ちこぼれのないように、厳重に、厳格にやってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
法人税の仕組みの見直しや高額所得者に対する課税、財産課税、そういうものをやれ、富の不平等な分配を直せ、具体的に
検討しているかというようなお話でございます。
いつでもいろいろなことは研究はしておるわけでございますが、法人税の問題につきましては、国際的な動向も注意しながら
政府の税調等においても
検討してもらっておるので、現在の法人税の負担調整に関する仕組みの骨格は、これは維持することがいいのではないかなんと言う人もございますが、しかし法人税は、こういうときでありますから、もう少し負担をいただいてはどうかというような議論等もあり、いま
検討しているわけです。
高額所得者に対する課税強化については、
わが国の高額所得者階層の実効税率は最高九三%、八千万円以上は九三%取るわけですから、スウェーデンとともに
世界で一番ずば抜けて高いわけであります。したがって、一〇〇%取ってしまえということになれば話は別でありますけれども、高額所得者については、これ以上強化をするということは
世界に余り例がございませんし、私は問題があるんじゃないかなというような気がいたします。
資産課税の問題については、これは分離課税で、ともかく高額所得者の人で七〇%も八〇%も取られるべきものが三五%で済んでいるじゃないか、けしからぬ、これは広く言われてきたことでございますので、五十九
年度から利子、配当すべてを総合課税にする。そのためには、グリーンカードというものもこしらえるということで、目下、
法案も成立しておるし、その準備を着々やっておるところでございます。
富裕税等の問題につきましては、いろいろ問題がございますが、目下のところ、これはそのわりに効果が少ないというような点から、九〇%も取ったほかに、また残っているものを取るというのは、相続税のときに取るわけですから、これはどういうものか、非常にむずかしいんじゃないか、簡潔に言うと、むずかしいんじゃないかということであります。
それから、情報の公開につきましては、これはシーリング枠とか各省の要求、大蔵省の内示、いずれも公開しておりまして、これは実は諸外国では例を見ないのです。日本はその点は非常によく公開をしておるわけであって、たとえばいろいろな公開
制度の問題についても、シーリング枠の公開とかあるいは
予算の一次内示の公開とか、そういうようなものは、ほとんど大部分の国でやっておりません。日本だけであります。要求
内容も党の部会等で全部中身も公開いたしております。したがって、
一般にもこれは全部出ておるわけであります。したがって、これらについては私は、
世界の主要国と比べると、一番公開しているんじゃないかというように思っておる次第でございます。
それから、
財政の特別法の制定の
検討につきましては、これは
歳出削減等の諸施策の
検討結果を踏まえた上で、これらの諸施策のうち、法的
措置が必要なものについて
所要の
法律改正を行うこととなるかもしれませんが、その立法形式につきましては、非常に法技術的な問題もあろうかと思われますので、いまここで私が断言できる段階ではない、もう少し慎重に
検討させていただきたい、かように考えております。
それから中期
財政計画の策定の問題につきましても、後
年度負担額推計を基本として、毎年のローリングを前提とした
財政計画の策定は
検討はいたしておりますが、非常にいろいろむずかしい問題が実はたくさんあるわけでありまして、策定のめどはまだ立っておらないというのが、正直に申し上げまして実情でございます。
世界の例を見ましても、
財政計画を立てるところでは
経済計画を持っておりません。
経済計画を持っておるところは
財政計画を持っておりません。日本で二つ持つということが果たしてどういうことなのか。ここらの問題も含めまして、さらに一層詰めて、できるまでのことはひとつやってみようということで、目下
努力いたしておる最中でございます。(
発言する者あり)実際のところがそういうことなんです。
ところが、
財政再建に関する基本的な方針につきましては、
総理大臣も不退転の
決意でこれはやろうということを言っておるわけでございますから……(
発言する者あり)それはいまからやるわけですから。それは確かに不退転の
決意でなければ実際はできないのです、それは御承知のとおり。たとえば来年当然増が一兆五千億円ございますよと、当然増というものは当然増なんだから、必然的にふやすんだという考えではとても——それだけでも二兆円以上の増税をしなければやれないということになるわけですし、そのほかに、仮に
政策経費というものについて全部がスクラップ・アンド・ビルドという中でおさまればいいが、おさまらない場合にはどうするのか。これも増収をしなければできないのですよ。
ですから、これは命がけでやる仕事であるということを言っておるのでありまして、われわれといたしましては、いままでのような考え方で、当然増は当然伸びるんだということは、ちょっとこの際は考え直さなければならないんじゃないかということも含めて、非常に厳しいことをやらなければならない。そういう意味で命がけでやらなければならぬという点は
総理大臣と同じでございます。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇〕