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1980-10-22 第93回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月二十二日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 木村武千代君    理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君       今枝 敬雄君    上村千一郎君       大西 正男君    太田 誠一君       高村 正彦君    佐藤 文生君       白川 勝彦君    森   清君       伊賀 定盛君    小林  進君       下平 正一君    武藤 山治君       大野  潔君    安藤  巖君       野間 友一君    田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         法務大臣官房司         法法制調査部長 枇杷田泰助君         法務省民事局長 貞家 克己君         法務省刑事局長 前田  宏君         国税庁直税部長 小幡 俊介君  委員外出席者         法務大臣官房参         事官      吉野  衛君         通商産業省産業         政策局商務・サ         ービス産業室長 江崎  格君         自治省行政局選         挙部選挙課長  岩田  脩君         最高裁判所事務         総局人事局長  勝見 嘉美君         最高裁判所事務         総局刑事局長  柳瀬 隆次君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十六日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     中野 四郎君   上村千一郎君     葉梨 信行君   太田 誠一君     八田 貞義君   亀井 静香君     牧野 隆守君 同日  辞任         補欠選任   中野 四郎君     今枝 敬雄君   葉梨 信行君     上村千一郎君   八田 貞義君     太田 誠一君   牧野 隆守君     亀井 静香君     ――――――――――――― 十月十八日  在日インドシナ国留学生及び元留学生の在留  条件改善等に関する請願河上民雄紹介)(第  二三三号)  昭和五十六年度法務省所管保護司関係費増額に  関する請願松野幸泰紹介)(第三五三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月十六日  スパイ防止法制定促進に関する陳情書  (第二号)  代用監獄の廃止に関する陳情書  (第一三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関  する件      ――――◇―――――
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所勝見人事局長柳瀬刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
  5. 太田誠一

    太田委員 私は、本日は安川判事の問題及びそれに続いて起こりました水沼判事事件などにつきまして、裁判官懲戒罷免などの制度について御質問をいたしたいと思います。  実は安川氏は私の選挙区であります福岡一区に在住をしておられまして、また立候補されました久山町も私の選挙区でございます。そういう関係で地元でも大変に関心の強い問題でして、再三この法務委員会あるいは決算委員会質疑が行われたことはよく承知しておりますけれども、私は改めて関係各位の御所見をただしておきたいということでございます。  まず安川判事の問題につきまして、いまの弾劾裁判所制度そして公職選挙法を含む法体系の中に一つの盲点があった、あるいは法体系不備があったということが明らかになったわけでございますけれども、それにもかかわらず関係省庁の一部に法改正に対して必ずしも積極的でない、私、質疑を通じましてそういうふうな印象を持っております。そしてこの際、法体系の中に明らかに不備があるということがわかっているわけですから、関係官庁におきましても法改正に対してぜひとも前向きに対処をしていただきたいという気持ちでございます。  ただ一方、十五日の決算委員会で、政府を代表する形でもって宮澤官房長官は、この法改正に積極的に取り組む意思があるというふうにその意思を表明しておられます。それに対して、たとえば公職選挙法改正については自治省の方で余りさわりたくないというふうな御意向であるようにも承っておりますので、この際法改正に携わるお考えがあるのかないのかというところをまず奥野法務大臣にお伺いをしたいわけでございます。  そして、もう少し現状私が感じておりますところをお話し申し上げますと、弾劾裁判所法というのが立法府議員立法でなされたということから、これは実際行政府の仕事ではないんだというふうな感想を持っておられる向きが一部にございますけれども、事実上立法府でもってこれを改正する作業をするとなりますと、恐らく大変にむずかしいいろいろな作業をするだけの能力がいまあるのかどうかというところも問題があると思いますし、この所管が、衆議院規則九十二条によれば議院運営委員会所管とされておりますけれども、その前に具体的なその検討作業というのは、いずれかの関係省庁で行われることが望ましいというふうに私は考えております。このままほうっておきますと、各官庁がそれぞれ自分所管外であると判断をいたしまして、法改正手続作業そのものが宙に浮いてしまうおそれがあると思いますので、ぜひともここで法務大臣の積極的な姿勢をお聞きしたいと思うわけでございます。
  6. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 安川判事の問題は、俗に言いますと脱法的な行動によって罷免を免れたということになっておるわけでございますから、やり切れない気持ちを多くの国民が抱いておるのじゃないか、こう思うわけでございます。  そういうような脱法的な行動によって罷免を免れるということを阻止しようといたしますならば、いまおっしゃいました裁判官弾劾法公職選挙法とをかみ合わせてそれを防止するということになろうかと思います。裁判官弾劾法議員立法で成立したものでございますし、御指摘のように議院運営委員会でそれを取り上げていただかなければなりませんし、また具体の内容になってまいりますと、当法務委員会が重要な役割りをなすんじゃないか、こう思うわけであります。私といたしましても、やはりそういう脱法的な行動は許されないように、またとあることとは思いませんけれども、いまの国民感情から言いますと、何らかの措置はとられなければならないのじゃないか、少なくとも措置をとるかとらないかということをお互いに相談しなければならないのじゃないか、こんな考え方を持っておるわけでございまして、裁判所側考え方もあるかと思いますけれども、そういうことでひとつ相談機会を持ちたいものだな、こう考えておるわけでございます。
  7. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 安川簡裁判事の問題につきましては、大臣が仰せられましたように将来あってはならないことだと私ども考えております。このたびの不祥事が起きましたことが仮に立法上の問題であるとすれば、この改正をされることについては私どもとしても異存はございません。  ただ、申し上げておきたいと思いますことは、裁判所当局法律提案権がございませんので、その点積極的に私どもの方から御提案申し上げるということはできない立場にございます。その点を御理解いただきたいと存じます。ただ、私どもといたしましては、裁判官弾劾法に関する限り裁判官身分の得喪に関する非常に重要なことでありますので、当然のことでございますけれども重大な関心を持っておりまして、事務当局の中でどのように具体的に改正したらいいかということを検討している段階でございます。
  8. 太田誠一

    太田委員 最高裁判所の方にお伺いしたいのですけれども安川判事事件の後再びまた水沼判事暴力事件を起こされたということがありました。これに対して本日最高裁でもって分限裁判にかけるかどうかという協議がなされるというふうに伺っております。分限裁判懲戒手続というものと弾劾裁判所罷免という一つ制裁の間にかなり距離があるように私思っておりますけれども、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  9. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 まず申し上げなければならないことは、さらに御指摘のような不祥事が起きまして、私どもといたしましては、国民の皆様に対し重ね重ねの不祥事が起きたことについて深くおわび申し上げる次第でございます。  裁判官に対する懲戒制度の問題は、ただいま御指摘のとおり分限法裁判官弾劾法にいわば分かれているわけであります。制度論といたしましてはいろいろな御議論があるところと存じます。この点につきましても改正すべきところがあれば当然改正しなければならないというふうに思っております。現在のところ私ども事務当局といたしましては、裁判官分限法について特に改正具体案ということはまだ検討はしておりません。  それから申し落としましたけれども、旭川の水沼判事事件につきましては先週の事件でございまして、きょうの裁判官会議で初めて御報告申し上げる予定になっております。それから、具体的に水沼判事に対する措置をどうするかということにつきましては、現在のところよく考えさしていただいている段階でございますので、その点もひとつお含みおきいただきたいと存じます。
  10. 太田誠一

    太田委員 少し先走り過ぎるかもしれませんけれども、この裁判官不祥事に対して何らかの制裁措置をとるという場合の法改正方向としては、たとえば裁判官弾劾法の四十一条「免官の留保」あるいは公職選挙法九十条の手直しということが考えられると思いますけれども、この場合にあくまでも大切なことは、公務員であった者の被選挙権というものが侵されないような十分な配慮が必要であると思うわけでございます。  公務員被選挙権を侵さないように、しかも制裁措置が有効に行われるというためには、これは実際に現在の法律考え方でそういうことが可能かどうかということは私もよくわかりませんけれども、たとえば弾劾法の場合には四十一条で罷免訴追を受けているという裁判官人格と、それから立候補するという権利を有している人格というものを分離せざるを得ないというふうに考えるわけであります。そして罷免訴追を受けているというその人格に限っては、実際に立候補した後もまだ公務員としての立場が持続をしている、継続をしているというふうにみなすというふうな規定が必要であるというふうに私はたとえば考えるわけであります。  もし公職選挙法の方を手直しするとすれば、公務員辞表を提出して、たとえばそれが受理されるというふうな手続を一応踏むとして、立候補した途端に身分が自動的に消滅するということではなくて、辞表を提出してそれが受理されるまでの間という一つ手続考えて、辞表を提出した段階ですでに立候補をしてもよろしいという一つ改正を行って、それが裁判官の場合に、実際に終局裁判が終わるまでは公務員としての立場というものは継続しているというふうにみなすというか、どちらかの改正方向が必要だと思うわけでございます。  そしていま私お伺いしたいのは、その二つ人格に分離するというふうなことが可能かどうか。つまり、いま私の考えていることにつきましてちょっと御感想をお伺いしたいと思うのですけれども法務大臣よろしく。
  11. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、公職選挙法の場合にはだれでも自由に立候補できますよ、これを大原則に振りかざしているものですから、立候補できないような方が届け出をすれば自動的にその職を失います、こう書いていると思うのです。裁判官弾劾法の場合には、裁判官身分保障裁判官というものは裁判官弾劾法によらなければ罷免されないのですよと、強固にその職を守っているわけであります。  そこに今度のような問題が起こったわけでございますから、届け出れば自動的に身分を失うというのを、裁判官弾劾法による手続が進められている間はそこに若干の例外をつくることになるのではないかなと思いますけれども、そういう手続立法をすることがいいか悪いかという問題も含めて相談し合うような機会を私の方でも努力をしていかなければいけないのではないかなと思っているわけであります。
  12. 太田誠一

    太田委員 もう一回申し上げますと、たとえば裁判官の場合について、立候補した途端に裁判官たる人格が消滅するということに対して、法改正をするのに、裁判官がやめる意思を表明しなければならない、あるいは辞表を出してそれが受理されねばならない、そうしなければ立候補できないということになりますと、それが何らかの形で公務員被選挙権を制限するような方向に乱用されるおそれもあると思いますので、私はそのような措置は望ましくないと考えるわけであります。  それで、先ほどから申し上げておりますのは、人格二つに分離して、片一方は立候補はできるのだ、だけれども依願退職なのか懲戒免職なのかということははっきりさせる、結論を後になってもはっきりさせるような法改正ができないかということをいま考えているわけであります。この点について、公職選挙法については自治省の御所管でありますし、また裁判官弾劾法については法務省の御所管でありますので、再度お考えをお聞きしたいと思うわけであります。
  13. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいま御指摘のように、だれでも自由に立候補できるという状態を維持しながら、なお裁判官弾劾手続がうまくいくという、両立をさせる観点から事柄を解決していかなければならないことは御指摘のとおりだと思います。  ただ、この問題を解決するにはいろいろな方向からのアプローチの仕方があろうかと思います。公職選挙法の面から何か手直しをするというふうなことも考えられなくはないでございましょうし、また、弾劾手続の中でいわば一種の倫理的な処分をするという手続を設けることも考えられますでしょうし、また、訴追を受けた場合には公職選挙法の九十条の適用がないというふうに規定をするという方法考えられようかと思うわけでございます。そのいずれについてもいろいろと長所、短所があるわけでございますので、その点を何か一番うまい方法で解決するということを関係機関とも相談の上研究してまいりたいと思っております。
  14. 岩田脩

    岩田説明員 お答えを申し上げます。  ただいま、ある方法つまり人格を二分したらというような具体的な例を挙げて検討方法について御示唆があったわけでございますけれども、ただいま法務省の方からもお答えがございましたように、いろいろな方法があり、いろいろ一長一短もあろうかと思います。私ども立場からしますと、先ほど先生からの御指摘もございましたように、立候補の自由の原則の尊重というものはやはり忘れてはいけない問題で、これは踏まえてかからなければいけないと思いますが、そういう立場に立った上でどういう方法があるのか、法務省の方のお考えともあわせていろいろ研究はしてみたいと思っております。
  15. 太田誠一

    太田委員 これは最後に申し上げておきたいことでありますけれども法体系不備があった、そうしてまた司法制度に対して裁判官不祥事が相次いでいるという場合には、国民裁判制度に対する信頼感を得るためにはぜひとも関係省庁が積極的な姿勢法改正に取り組んでいただきたいという気持ちでございます。そして、法務大臣に特にこの点に御留意をいただきまして、今後できれば法改正のリーダーシップをとっていただきたいという気持ちでございます。そういう考えを述べまして私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  16. 高鳥修

  17. 白川勝彦

    白川委員 時間がないので私の意見をずっと述べて、後でまとめてお答えをいただきたいと思うのでございます。  安川裁判官一連の言動、行動、特に今回の立候補というようなことについては、国民の間からさらに恥の上塗りというような感を持たれているわけでございます。しかし、それは安川裁判官が今後個人的に社会的にいろいろな形で評価をされていくと思うのでございますが、私は、安川裁判官に対して支払われると言われている約一千万余の退職金の今後の帰属につきまして、最高裁の方のお考えをただしたいと思うのでございます。  これは、ああいう行動をしたわけでございまして、これに対して退職金が一千万余支払われるというのは国民感情的にとうてい耐え切れないというのが実情だと思います。しかし、一連予算委員会あるいはその他の委員会を通じての答弁を聞いておりますと、いろいろ考えてみたんだけれどもいかんともしがたいというような感を法務大臣以下が述べられておる。私は、それはおかしいのではないかという気がするわけでございます。現に、いまもおっしゃられたとおり脱法行為という言葉が出てくるわけでございまして、脱法行為というのは、逆の面で言うと、法律的には一見適法のようだけれどもそれはおかしいというようなときにも脱法行為という言葉を使うわけでございます。そして、今回の国民感情なりあるいはわれわれがおかしいと考えているのは、実質的にも理由があると思うのでございます。  一つは、安川裁判官最高裁から訴追請求がなされ、訴追委員会の方でその準備がすでに始まっていたわけでございます。そこで安川裁判官町長選立候補した。しかし、その言によりますと、小さいころから政治への夢を持っていたというようなことをぬけぬけしく述べております。それは人の心でございますから、みんなそう思っておるかもわからぬ。私などもそういうものを持っていたからこういうところに立っているわけでございます。しかし政治を志す者としたならば、逆の面で言うならば、訴追委員会訴追されたという立場にある者の場合、いろいろ政治に対してはやる気持ちがあったとしても、それにけりをつけてから政治世界に出ていくということを守ることは当然必要なんじゃないかと私は思うのでございます。裁判官といえども参政権は与えられているんだ、立候補するのは自由なんだ、まさにそのことを敵は使っているわけでございますが、政治を志す者としたならば、いやしくも訴追請求されている時点で、しかもこれは裁判官にとって決してぬれぎぬを着せられるというのではなくて、一般の懲戒手続よりはさらに厳格な手続が与えられている手続でございますから、そこで堂々と、自分が無実であるならばみずからの身の潔白を証明した上で、その疑いを晴らした上で政治世界へ出るのがあたりまえのことであろうと思うわけでございます。  そんなことで、私はこれを法律論的に考えた場合、彼が政治世界に志していたと言っているわけでございますが、通常流れに従って訴追請求され、そして弾劾裁判所に出され、そこの判断を待つというような手続通常流れというわけですが、通常流れに従ったならば——彼の場合は通常流れに従う義務があったと私は思うのでございます。裁判官としてまた政治を志す者として従うべきであったと私は思うわけでございます。ところが、みずからその通常流れから外れてしまったわけでございます。御承知のとおり、もし弾劾裁判所罷免という裁判がなされたとしたならば、当然のことながら退職金受給資格を失うわけでございます。そういう意味で私は、彼の場合、通常流れが終わるまでは、裁判官としてはもちろんでございますが、政治家としてもその流れが終わる時点まで行動を慎むべき法律上並びに道義上の義務があったと考えていいと思うのでございます。そこからみずから離れられたわけでございます。こういう考え方をいたしますと、安川裁判官の場合、退職金を受給する資格法律上も道義上もないと断言して差し支えないのではないかと私は思うわけでございます。  ところが、これまでの答弁を聞いておりますと、先ほども申し上げましたとおり、どうもうまい知恵はない、したがって、一千三十万だったか何だったか、一千万余の退職金はあたかも支払わざるを得ない、しかも日銀から出たぴかぴかの新品の金で耳をそろえて支払うのではないかというような感がいささかするわけでございます。  そこで私は、それはおかしい。おかしいのは、それは理屈がつくのでございます。私の意見を述べて、最高裁の方に、いまどういう考え方でしておられるのか、後で答弁していただきたいと思います。  第一に、いまの時点では多分請求されておらないと思うのでございます。安川裁判官の方から退職金を支払ってくれという請求はないと思うのでございます。請求もないのにわざわざこちらから、あなたは幾ら幾ら退職金があって、どうぞ受け取りに来てくださいということをまず言う必要はないだろう、これが第一点であります。向こうも、自分政治世界に出たいからやむを得ず急いで出る必要があったから出たんだけれども、当然のことながら裁判所に御迷惑をかけたんだし国民にも迷惑をかげたんだから請求しないというつもりかもわかりません。したがいまして、請求もしないのに、こちらの方からどうぞあなたは受給資格がありますから取りにいらっしゃい、最低限このラブコールはする必要がないのじゃないかと思います。  第二番目として、まあああいう人でございますから、ぬけぬけしく請求するかもわかりません。しかし、請求して、したがって義務があっても、支払うかどうかというのは任意支払い義務者考えていいわけでございます。裁判を起こすというようなことについては国民はいろいろな考え方を持っておりますが、任意に支払わないのは御存じのとおり刑法上の罪になるわけでもございませんし、ましてや、こういうふうに非常に疑義が多い場合、支払いを留保されること自体、私は不当だとは思いません。そうすると、彼は裁判官でございますから、訴訟ぐらい自分で起こせるかもしれない。多分弁護士に依頼しても日弁連加入弁護士はだれ一人受けないと思いますが、本人は自分訴訟を提起するかもわからぬ。それくらいはまたきっとできるでしょう。だから裁判官に任命されたと思うのでございます。訴訟を提起されたら、そこで素直に払うかどうか。これもまた一考を要する。私どもなんかは、かなりだめそうな事件でも一年間ぐらい延ばしてほしいというときに、じゃわかりましたということで延ばすこともあるわけでございますから、ここで訴訟を受けるかどうかということも十分考えていいことでございます。  しかも本件の場合、形式上から見るとなるほど退職金請求権があるように見受けられますけれども、いま言ったように、法律上もそして同時に実質上もまた道義的にも本件の場合は疑義があるわけでございまして、果たして退職金受給資格があるかどうか、請求権があるかどうかということについては、十分司法裁判所において御審判いただく価値のある事件だと私は思うのでございます。全然理由がないのにあえて任意に支払わないで訴訟を起こす、起こすというか受けるというのとは、全然性質が違うわけだと思うのでございます。そういう意味でぜひ、訴訟を相手が提起してもそこで払わないで、なおかつこれは裁判所の御判断をいただくのだという立場で私はいっていただきたいと思うのでございます。  裁判所でございます、あるいは国が被告になるわけでございますから、勝つか負けるか、負けるような訴訟をしてはならぬということを、裁判官でございますからちょっと先に考えるようですが、弁護士的な発想で言うと、裁判官判断してくれるのだから、余り当事者が勝つか負けるか裁判官的に判断をすると事件の筋を見間違うということがありますから、この辺はよく考えていただきたいと思うのです。よしんば、その退職金支払い請求事件の判決が出たとします。結果は必ずしも国によくない結果が出たとしても、私は、それはそれとしていいのではないだろうか、こう思います。  いま太田先生の方からもいろいろと御質問がございました。この脱法行為を機に弾劾裁判所法もしくは公職選挙法を若干手直しする必要があるんじゃないだろうか、それはそれでいいでしょう。私は別に反対するものじゃございません。しかし、とんちんかんな裁判官は何も今回のこの場合だけとは限らぬと思います。そうしたら、また別のいい方法があるかもわかりません。なるほど法律を朝から晩までやっている者ですから、法律の裏をかくということは幾らでもできるわけでございます。  そういう意味で、今回の場合は立法論を構えるのも大事でしょうが、いまのところだと一見だめそうだと思っているわけでございますが、ここでとり得るあらゆる法的手段をとって、そういう脱法行為をした者は最終的にはわれわれは許さないのだ、それは司法上も許されないのだという個別解決にやはり全力を尽くしていくことが、今後こういう脱法行為考える者に対する最高の警世あるいは警告の態度だろうと私は思うわけでございます。一言に言うならば、裁判官身分保障も、あるいは国民参政権の自由の問題、それを守っているからこそこういう不都合が出てきたのですが、これは両方とも大事にしなければならぬと思うのでございます。ただ、違法は許してはならない。この違法を許さないという意味で、ここで最高裁判所が、また国が訴訟を受けた場合は当然ながら法務省がここに関与するわけでございますが、今回の個別的事件の処理いかんによって日本の将来がかかっているんだというような立場で全知全能を傾けたならば、必ず私が申し上げたような大筋の線に沿って本件が解決する、私はこう考えているわけでございます。いままでの、何となく新品の新札を一千何百万円耳をそろえてわざわざ持っていくというような事件処理はぜひ改めて、私は、しかるべき筋を通していただきたい、こう思うわけでございます。  最高裁の御見解をお伺いいたしまして、御質問にかえたいと思います。
  18. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 まず、安川簡裁判事行動につきましては全く白川委員指摘のとおりだと思います。私どもといたしましても、ああいうことをやったからには、しかも最高裁判所長官から訴追の申し立てを受けているわけでありますので、出るべきところに出て、堂々と弁解があるなら弁解してほしかったというふうに思います。それにもかかわりませず、あのような挙に出まして、白川委員おっしゃったようなことに代表される国民感情というものがいたく刺激されまして、裁判官としてのあるまじき行為、まさに恥の上塗りというような批評も確かにそのとおりだと私どもは思います。  それを踏まえまして、具体的な退職手当の支給の問題でございますが、御承知のとおり退職手当法には支給しない条項というのがはっきりうたってございます。これがこのたびのことに当たるというふうに解釈できるかどうか、それから一連の彼の行動にかんがみて、あるいは権利乱用論というものが果たしてそこに適用といいますか解釈上そういうことが言えるかどうか、この点につきまして、私ども司法行政を預かる者といたしまして十分に慎重に検討いたしたいというふうに考えております。ただ、司法行政に携わる者として、やはり行政でございますので、法による行政という一つの理念もございますので、非常にむずかしいかと思っておりますけれども先ほど申し上げましたように慎重に検討いたしたいというふうに考えております。
  19. 白川勝彦

    白川委員 一点だけ。いまの御発言からすると、いろいろ検討はするので、私の誤解かもわかりませんが、請求もされてないのにわざわざこちらからどうぞお取りに来てくださいということはしない、少なくともいまはそう考えておらぬということはよろしいのですか。そこだけ……。
  20. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 現在のところ、福岡地裁の方へ安川簡裁判事からどのような手続がとられているか、私どもまだ確認はいたしておりませんが、この際この時点で、特にどうぞお取りにいらしてくださいという形で事務的にももちろん運びませんので、きょうの時点でそのようなことはいたさないつもりでおります。
  21. 高鳥修

    高鳥委員長 横山利秋君。
  22. 横山利秋

    ○横山委員 刑事局長にまずお伺いをいたします。  「初めに五億円あり」これは、伊藤刑事局長が発言したかどうかわかりませんが、きわめて有名な言葉でありますが、あなたも御記憶でありましょうね。
  23. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 そういう表現の答弁をしたことは私も承知しております。
  24. 横山利秋

    ○横山委員 最近、日商岩井に関する判決がございました。これだけの膨大なものでございます。また最近、十月十六日の各紙にいわゆる海部書簡なるものが掲載されました。その内容も御存じでございましょうね。
  25. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 いずれも承知いたしております。
  26. 横山利秋

    ○横山委員 この海部書簡によりますと、海部八郎元日商岩井副社長が昭和四十四年五月二十日付でハリー・カーン氏に送った文書の全文が掲載されています。その中によりますと、「自衛隊向けのE2A売り込みに関し、帰国後、私の友達であるミスターXと話し合った結果、X氏はこの商談を成功させるため協力する意思のあることを再確認した。双方とも以下の条件に合意した。日商、X氏ともに報酬を得る。報酬は双方合わせて、総契約額の一・五%とする。」等々の文章であります。  また、判決書の松野頼三氏に対する供与の点が出ております。百十八ページには「同被告人は、政治家に願いごとをしている以上、いずれ相当の謝礼はしなければならないと考えていたが、当時、念頭にはせいぜい一、二億円の額を浮べていたところ、そのころ、ホテル・ニュージャパンの松野事務所を訪れた際、松野から五億円の大金を所望された。同被告人は、到底一存では決定しかね、松野には「会社に戻って社長と相談のうえ御連絡しましょう」と返答し、帰社後早速西川社長に報告した。西川社長は「五億円か。それまた大きいな。」と言ったので、同被告人は「とりあえず半分だけでどうでしょうか。いずれ将来の収益状況をにらみながら考えたいと思いますが。」と提案し、同社長の了承を得、松野に電話し、「いずれまた考えさせていただくことにして、とりあえず半分だけでも」と返事して同人の了解を得たうえ、金の受渡時期、場所、方法等については、島田と連絡をとって取計らっていただきたいと申し向け、島田に対してもその旨の指示をした。」  この判決書は、検察庁として出しました数々の証拠資料、また告訴内容等を含めて裁判官判断をしたところだと思いますが、この点について、検察庁としては同意というか事実関係を確認をいたしますか。
  27. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま仰せになりましたように、その公判の立証がいろいろ行われまして、その結果、いまお読み上げになりましたような判決になったもの、かように承知いたしております。
  28. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、松野代議士が航空機輸入に関する調査特別委員会で、衆議院において五月二十四日証人として出席、五月二十八日参議院の同特別委員会において証人として出席いたしまして、証人として宣誓をした上陳述いたしました事実関係とかなりの相違があることをお認めになりますか。
  29. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 かなりの相違ということの方が当たるかどうかと思いますけれども、いろいろな点で相違があると言えばあるというふうに考えております。
  30. 横山利秋

    ○横山委員 まず、衆議院のかなりという内容について若干触れたいと思います。  衆議院の議事録第六号の二ページ「○松野証人 昭和四十二年から四、五年の間、四、五億の金を日商岩井から政治献金として受領をいたしました。目的は政治献金でございますから、その趣旨に沿って、私の責任でこれを使いました。」「私の方から要求したこともありません。したがって、金額を私が明快に覚えておりません。」  同四ページ「金銭の授受の際にそういう趣旨というものはありませんでした。」  同八ページ「松野頼三個人に対するものでありまして、どこにどうしてくれという条件も、またそういうひもも一切ありません。」  同十六ページ「税金の五億円と言われましたけれども、私が政治献金をもらったときは、日商岩井からは政治献金としてでありまして、」  同十七ページ「高畑氏とか海部氏が政治献金という言葉を使ったとおっしゃるのでしょうか。」「○松野証人 松野頼三を育てるための政治献金、明らかにそう言っております。」  五月二十八日の参議院における記録第五号三ページ「ヨーロッパでそういう授受があったことはありませんか。」との質問に対し、松野証人「それは私じゃなしに、私の家族がロンドンで千ドル、みやげ代か何かをいただいたという話を聞いておりますから、そのことじゃないんでしょうか。」これは判決において金額に驚くべき違いがございます。  同三ページ「法務省の報告では、事前に約束があって、その約束が四十二年から四十六年にかけて果たされた、こういうことになっておりますが、このことは証人は否定をなさるわけですか。」松野証人「そういう記憶は全然ありません。」  同五ページ「私は政治献金と思っております。」  同八ページ「工作の依頼を受けたことはありません。」  同十一ページ「日商としては民間利益を政治献金として出すということなんですよ。それがその当時の前提なんですよ、民間資金の利益を政治献金にすると。それが高畑さんと海部さんとの三人の話で、話なんです。結果がどうだったかというと、結果のことは私もいまになってわかることで、その当時は明らかに日商の利益の中から私は献金をいただいたと私は確信します。」  同十二ページ、質問「いやいや、四十二年ごろから接触が始まったわけです。その四十二年ごろから接触が始まってから、そういう話は全くお聞きになったことはありませんかと言っているんですが。」証人「私はそれは聞いたことありません。今回のこの書類を見て驚いたぐらいなんです。衆議院で大出さんがお出しになった書類を見ましてね。だから私は前に聞いてなかったと思いますね。」  同十七ページ、質問「あなたは海部氏との五億円の約束を初めに、便宜を供与するというようなことでお約束になったかどうか、念のためにちょっと伺っておきます。」証人「そういう記憶はございません。」  等々の国会の議事録に掲載されました松野証人の証言とこの日商岩井判決、時間の関係で判決書の事例の文章を朗読するのを避けますが、数々の点で実に重大な食い違いがある。この点について法務大臣はどうお考えになりますか。
  31. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、食い違いがあるといえば食い違いがあるわけでございますが、そのことはこれまでも、たとえば検察官の冒頭陳述にあらわれている事実と松野氏の証言とに食い違いがあるではないかというような形で取り上げられたことがあったと思うわけでございます。  その際にも申し上げたことでございますが、いまの御指摘が、これは偽証ではないか、こういう御趣旨でございますと、このことは私から改めて申し上げるまでもございませんけれども、告発権限をお持ちになっております国会で第一次的にお考えになることであろうというふうに思いますし、また、仮に告発がありました場合でも、捜査をしなければ偽証かどうかということは事実の確定ができないわけでございますので、そういうことで、私からいずれが正しいかというようなことをお答えするのは適当ではないのではないかというふうに思うわけでございます。  ただ、いままでも申し上げておりましたように、いろいろと客観的な食い違い的なことがございましても、やはり偽証ということになります場合には、一般論といたしまして、その証言された方が事実と違うことを十分知りながらあえて反することを述べたということでないといかぬわけでございますので、その場合には、記憶の問題とか本人の認識の問題とかいろいろな問題があろうかと思うわけでございます。
  32. 横山利秋

    ○横山委員 検察官が法廷で冒頭陳述をするあるいはまた証拠を出す、そういう段階においては、まだ確定していなかったときの話であります。いま日商岩井事件は判決がおりて確定をしてしまったわけであります。そして海部を初め関係者は罪に服したわけで、これで事件は完結をしたことになります。  そういう意味合いにおいて、検察官の法廷における陳述と本人の食い違いの問題と今日時点における食い違いの問題は、事案の性質が違うのであります。あなたがおっしゃいましたように、その違いは明らかであるけれども、それは本人がどういうつもりで証言をしたのかという問題が残る、それは私も認めます。認めますが、少なくとも証人として宣誓を行い事実と相違をしたことを証言をしたということは、いまや歴然たるものがあるわけであります。この点について法務大臣の見解を伺いたいと言っておるのです。
  33. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま伺っていまして、大きな食い違いがあるなということは私も理解いたしました。それらに関します今後の問題につきましては、いま刑事局長が述べたところによって御理解をいただきたいと思います。
  34. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると、問題が二つございます。  私は、明らかに国会の権威を侵して松野頼三氏が偽証をしたということを客観的事実として委員長に申し上げたいと思います。  それからもう一つは、いま刑事局長がおっしゃったように、松野頼三氏はいかなる気持ちをもって偽証をしたのか、それはやはり聞く必要もあろうかと思います。しかし、それを聞いたところで偽証をしたという事実は免るべくもないと思うのです。いまロッキード特別委員会が存在をいたしませんが、国会において証言をした、それが偽証の疑いがあるという事実は残りました。ロッキード特別委員会がございませんので、これらを担当する委員会として、私は当法務委員会が妥当だと信じます。しかし、これは私の一存で決まることでもございませんので、委員長二つのことをお願いをいたします。  私の偽証の疑いありというこの主張に対しまして、一体当法務委員会がこの問題を扱って告発をするか否かを決定する委員会であるかどうか、委員長のお手元で衆議院議長と議院運営委員会と御相談を願いたいと思います。  第二番目の問題として、刑事局長の言われるように松野頼三氏がいかなる意味でそれを言ったのか、そのことについて私どもとしては承知をいたしたいと思います。したがいまして、改めて松野頼三氏を証人として喚問を要求いたします。  この二点について、委員長の見解を伺いたいと思います。
  35. 高鳥修

    高鳥委員長 ただいま横山委員からお話のございました件につきましては、議院運営委員会でいろいろ協議をされておるように承知をいたしております。その結果に基づきまして、当委員会としては理事会に諮って措置したい、このように考えます。
  36. 横山利秋

    ○横山委員 第一点はそれでよろしゅうございます。委員長からも議院運営委員会に、私の発言があって速やかにその所属、告発云々を担当する委員会を決めてほしいという要望があったことをお伝え願いたい。  第二点についてはいかがでございましょうか、証人として喚問をいたしたいということでございます。
  37. 高鳥修

    高鳥委員長 第二点の、証人としてこの委員会に喚問いたしたいという御意見につきましては、他の証人あるいは参考人等の招致につきましてはそれぞれ理事会でお諮りいたしておりますので、同様の扱いにいたしたいと存じます。
  38. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。それでは後刻理事会で御協議をお願いいたします。  第二番目の問題として、先ほど以来、安川簡裁判事につきましていろいろと議論が続出いたしております。私も先般当委員会において申し上げたところでございまして、まあ政府側としてはこれが議員提案のものであったから発言について遠慮をする、こういうふうなお話がございました。その後も私検討を進めておるわけでありますが、結論を先に申しますが、結論としては、委員長のお手元でひとつ関係セクション、つまり法務省最高裁意見を聞く、あるいはまた弾劾裁判所相談をする、訴追委員会とも相談をする、そして委員長のお手元で、恐縮ではございますが必要な法改正検討をしていただきたいと思います。それが、私は何も政府の言うように議員提案だから政府が提案しなくてもいいということは考えないのでありますが、それにしても仮にその趣旨をくむとしてやるならば、当法務委員長また弾劾裁判所訴追委員会等の意見調整についてのイニシアを委員長にとっていただきたい、そういうことを希望いたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  39. 高鳥修

    高鳥委員長 横山委員の御意見につきましては、十分承りまして考えてみたいと思います。
  40. 横山利秋

    ○横山委員 そこで、その内容でございますけれども、いろいろな意見がございます。私は先般、訴追委員会訴追請求を受理し、決定し、そして弾劾裁判所へ送付したら立候補できないという趣旨のことを申し上げましたが、こもごも考えてみますといろいろな意見があり得ると思うのであります。  たとえば、訴追で受理をして審査に時間がかかる場合には、弾劾裁判所へいわゆる仮処分的な請求をする。つまり、その内容は身分を失うような行為をしてはならないとの仮処分を求める。弾劾裁判所が至急会議を開いてそれを決定するというような仮処分的なことが一つ考えられると思います。それから、最高裁裁判官会議訴追請求があった場合には立候補はできない、こういう法改正をすることも一つ考えられるわけであります。そのほか、いろいろ知恵を出し合いたいと思うのでありますが、法務省並びに最高裁として率直に、この種の法改正をするとしたならばどんな考えがあり得るかという点を参考のために聞かせていただきたいと思います。
  41. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 まだ十分な検討を済ませておりませんけれども、今回の事件といいましょうか、今回のような事態を防ぐというだけの観点で考えますといろいろな考え方があろうかと思います。また、それに一つ一つについて一長一短があるわけでございますが、たとえて申しますと、公職選挙法改正という面で公職選挙法の九十条の規定裁判官には適用しないというようなこともありましょうし、また立候補すれば直ちに退職したということではなくて、いわば退職の申し出をしたというだけの推定規定にしてしまうということも方法だろうと思います。それからまた、弾劾裁判手続の中でいま御指摘がございましたような観点からの改正もあろうかとは思います。それにもいろいろな形があろうと思いますけれども裁判官弾劾法の四十一条の規定に準じまして、訴追の申し立てがあって弾劾裁判所事件が係属すれば、公職選挙法第九十条の規定は適用しないというような決め方もあるでございましょうし、また三十九条のような考え方、職務停止の規定でございますけれども、それと同じように、訴追委員会の申し立てあるいは弾劾裁判所の職権でいま委員の御指摘になったような何かの仮の処分をするというような方法もございましょう。それからまた、訴追委員会の手が離れるまでに時間がかなりかかるということが避けられない、その間に何かがあってはいけないというふうなことがありますと、もう少し早い時期に何かの手を打つというふうなことも考えられるわけでございまして、その場合には、いまお話がございましたように、訴追委員会の手元にある間に何かの仮処分的な方法をとるというふうな措置一つ検討の対象にはなろうかと思うわけでございます。  まだ、いろいろな点につきまして検討を十分尽くしておりませんし、またそれの利害得失、いろいろ波及する問題もそれぞれについてあるわけでございますので、また今後ともいろいろな角度から検討を進めてみたいと思っております。
  42. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 先ほど太田委員の御質問に対してお答え申し上げましたように、このたびの事案にかんがみまして法改正をされることにつきましては、裁判所といたしましても特に異存のあるはずはございません。なお、裁判官身分に関することでございますので、私どもも、事務当局段階限りでございますけれども、いろいろ検討しておるところでございます。  具体的な内容でございますけれども、全く試案といたしまして、先ほど横山委員御提案のような仮の処分的な制度、これも考えてみました。この点につきましては、この仮の処分の制度法律的な性質をどう考えるかあるいは要件をどうするか、それから現実の問題といたしまして、国会の休会中のような場合にはどう対処するかというような問題点があろうかと思います。なお私ども事務当局限りで考えております一つの試案といたしましては、これも横山委員先ほどおっしゃったとおりでございますが、現在最高裁長官になっておりますが、これを最高裁判所に改めていただきまして、最高裁判所から罷免訴追の申し立てがあったとき、それから訴追委員会から弾劾裁判所罷免訴追がされている裁判官については、公選法の九十条の適用がないというような改正方法もあるいはあり得るのではないかというふうに考えておるようなところでございます。  後段の一つの試みの案にいたしましても、いろいろな問題があるかと存じます。特に、最高裁から申し立てをしたときだけそういう効果を生じさせるのはどういう理由なのかというような問題もあろうかと思います。私どもなりにこれからもいろいろ検討いたしたいと存じますが、これも太田委員の御質問に申し上げましたとおり、最高裁といたしましては積極的にこの立法の方にいわば乗り出すというような立場にございませんので、しかしながら、御意見を申し上げる機会を逆に与えていただきたいという希望もございますので、これからもいろいろなことを検討いたしたいというふうに考えております。
  43. 横山利秋

    ○横山委員 私どももこれらの審議をするに当たって、角をためて牛を殺すというような、憲法に基づく裁判官身分保障の大原則を侵さないようにしなければならぬということは常に念頭にあるわけであります。しかし、それにもかかわらず鬼頭判事補が出て弾劾裁判所法改正が生まれ、今度また安川簡裁判事が出て選挙法の改正にもなるような問題が生まれることはまことに遺憾千万ではございます。けれども裁判官は頭がいいものですから、法の穴をくぐってやることについては卓抜した知識をお持ちになる。まことにこれも遺憾千万なことでございます。  しかし、いずれにしても、先ほど退職金の話、私もこの間やりましたけれども、これらの問題につきましては、このままでは国民が納得しない。その納得しない国民の声にわれわれはこたえる義務があると思います。ですから、なし得る限りの努力をしなければなりませんが、私も訴追委員を長らくやっておりましたから、弾劾裁判所訴追委員会と協力して法改正検討はしておりますものの、鬼頭判事補が出てから今日まで、慎重な作業でありますだけになかなか進んでおりません。それでは国民の要請にこたえることができません。  ですから、先ほど冒頭委員長にお願いしましたように、委員長が少し促進剤になっていただきまして、関係機関の調整促進について格段の御努力を願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  44. 高鳥修

    高鳥委員長 ただいまの横山委員の御意見につきましては、先ほど申し上げましたように、委員長におきましても十分考えてみたいと存じます。
  45. 横山利秋

    ○横山委員 次に、石川裁判について伺います。  この裁判は今日、最高裁で五十二年に棄却をされ、再審申し立てが五十二年の八月、申し立て棄却が五十五年の二月、異議申し立てが五十五年の二月、即時抗告がされておる条件下にございます。この係属中に、弁護人から四回にわたって証拠の開示の請求がされました。そこで、最高検においても五十一年八月と五十二年八月にその要求の一部について開示をされました。ところが、残余の要求物件については要求に応じられておりません。先般その事情をお伺いいたしますと、現在、その開示請求のあったもので開示をした以外のものは存在しない、要求項目は検察庁に存在しないというお話が非公式にございました。そのとおりでございますか。
  46. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいまお話にございましたように、私ども調べたわけでございますけれども、いまおっしゃいましたように、開示請求があって、開示できるものはすべて開示をいたしまして、結局開示していない残余という形になりますけれども、その物は、その物自体が存在しないというふうに聞いているわけでございます。
  47. 横山利秋

    ○横山委員 いま最も重要に弁護人が要求いたしておりますものが三点ございます。それは、一つは足跡の写真であります。この足跡の写真の寸法が、地下たびと足跡写真とが寸法が違うという問題から発する問題であります。  次は、石川の着衣の血痕鑑定書であります。この問題もきわめて重要なものでございまして、当時石川が着ておった着物に対して血痕が付着しておったに相違ない。それは当然鑑定をされたものであろう。この鑑定書であります。  その次は、ボールペンの鑑定書であります。一体どういう万年筆かボールペンか、ボールペンだと大体なっておるそうでありますが、そのボールペンで書かれたのか別な筆記用具で書いたのか、ボールペンでもいろいろございますが、それらについての鑑定書が開示を求められております。  この三つの問題は、証拠としてはきわめて重要な価値のある問題であります。ほかにもたくさんございますが、少なくともこの三つが開示請求があっても現物がないというのは、どうにも私納得できないのであります。あったのかなかったのか、あったけれどもそれはどこかへ棄却してしまったのか、なぜいまないのか、その点について御説明を願います。
  48. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 私どもの聞いておりますところでは、ただいま横山委員も仰せになりましたように、そういうものは当然鑑定がなされたはずであるから、そういうものがあるはずである、こういうような御主張になっているようでございますが、そういうことからいたしましてもおわかりだと思いますけれども、結局のところは、あってそれがなくなったという意味じゃなくて、もともとないというふうに聞いておるところでございます。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 不思議なことを承るものであります。犯行現場に足跡があったということはもうきわめて常識的なものである。それが足跡が問題になって、足跡があればそれは写真に写したのは当然のことではないか。石川が着ておったものは審査されたのは当然のことではないか、その血痕の鑑定が行われたのは当然のことではないか。ボールペンについてもしかりであります。本来、その足跡写真や血痕鑑定書やボールペンの鑑定書がなかったということについては、私は検察陣の常識上考えられないことでありますが、本当になかったと考えてよろしいのですか。  私の質問通告は大分前にしてあるのでありますから、あなたは十分お調べになりましたか。検察庁の話をうのみにして、この非常識とも思われる答弁、あなたは納得をされて返事をしていらっしゃるのですか。あなた自身はどうなんですか。
  50. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 いま仰せになりましたように、大分前にお話もございましたわけでございますから、検察庁の方によくよく確かめたつもりでございます。またそのときの話で、最高検に係属中にいろいろと開示請求がございまして、その当時もいろいろと検討して、出すべきものは全部出したということでございまして、その後事情も変わっていないということでございまして、結局お答えといたしましては先ほど申し上げたとおりになるわけでございます。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 これはもう押し問答になりますから時間の関係でやめますけれども、私は納得できません。  どなたがお聞きになっておっても、これらの重要な写真や鑑定書が本来存在しなかったということは、後になってきわめて物議を醸す問題だと思うのです。法廷におけるこの一審から最高裁に至りますまでの間に、これらの話が出ておるはずですよ。写真とか鑑定書というものが出ておるはずでございますよ。もし出ておったらどうしますか。本来なかったということで済みますか。もしそうなったらどうしますか。あったけれどもいまどうかしてしまったとかいうなら、まだけしからぬことだけれども説明はできる。けれども本来的にそれがなかったという答弁をなさって、後で裁判記録の中からそれがあったんだとなったらどうしますか。これは重大なことですよ、いいんですか。
  52. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 足跡でございますとかボールペンの問題でありますとか、それぞれ争点になっていたことは事実でございまして、それなりの証拠があったということは聞いておるわけでございますけれども、いま御指摘のような形で、そういう鑑定書というような形で存在したかということになりますと、請求のあったような形でのものはなかったということに聞いておるわけでございます。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 改めて裁判記録を調べまして、再質問をいたすことといたします。  法務大臣にお伺いいたしますが、金大中氏の問題であります。  巷間伝えられる、しかもきわめて信憑性のある判断として、金大中氏は恐らく死刑になるであろうということがうわさをされておるわけであります。私は、いまの全斗煥体制というものを、全斗煥氏の立場に立ってと言ってはおかしいのでありますけれども、あのやり方でいけば軍事法廷の二審も三審もこれを覆すことはあり得ないであろう。いまの大韓民国の政治情勢から言うならば、問題の根を断つ、将来にわたって韓国における民主主義革命の根を断つ、全斗煥体制の権力を維持するためには軍事法廷の決定どおりに行うということになるであろうということが次第に関係者、国民の中でもうわさをされております。福田さんが行かれた、そして全斗煥氏が何か判断の余地があるようなことを言われたと伝えられる。あるいは春日一幸氏が行かれてそういう雰囲気を受けたように伝えられておる。けれども事実は刻一刻しかもきわめて敏速に進んで、それらの甘い期待はことごとく裏切られておる、そう私は思うのであります。  それで、かねがね申しましたように田中伊三次元法務大臣、当時のいきさつからいって法務大臣がそれを予見し——予見しというのはおかしな話でありますが、そういう前途を展望して一働きしてもらわなければいかぬときではないか。このままでいけば、これらの予想が当たって金大中氏が事実死刑になる可能性というのはきわめて濃いと私は思うのでありますが、いまから法務大臣として、この際何かの政治的な方法もあるだろう、憲法に基づく人権のとりでとしての法務大臣としての何か働く余地があるのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  54. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 金大中氏のことにつきましては日本政府としても深い関心を持っていることを表明しているわけでございます。裁判につきましては三審制がとられているということも承知しておるわけでございまして、法務大臣としてこのことにとかくの論をはさむことは、この際としては控えさせていただきたいと思います。
  55. 横山利秋

    ○横山委員 場合によれば政治決着を見直すということになっておる。その政治決着を見直す条件というものがいろいろある。いろいろ詭弁を弄しましても、軍事法廷の第一審の判決が政治決着のあり方について矛盾をするということは、いろいろな言い方はあるけれども日本国民はばかにするなと思っているわけですよ。あなたは金大中氏の問題について法務大臣としては一切何もしない、こうおっしゃるわけですか。
  56. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本政府としては深い関心を持っていることを表明しておりますし、また所管の役所としては外務省がその責任を負っていることでございます。したがいまして、私からこの席でとかくの議論を言うことは、かえって穏当を欠くことになるのじゃないかなという心配をいたしているわけであります。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 残念ながら失望をいたします。ただあなたが深い関心を持っておる。何と言うか冷酷な言い方をすれば、推理小説だとかあるいは対岸の火事だとか、そういう点で深い関心を持っておるとかいうようなことでは、私は大変遺憾千万だと思います。深い関心というものが、政治家として脳裏によぎるものが、いざというときには自分も一働きするという意味でもあるならばともかくとして、あなたのところからは毛頭その片りんもうかがい知れない。対岸の火事はおもしろいなとか推理小説的に推理をするとか、そういうようなことだとしたならば私は大変残念しごくであると思いますが、もうおっしゃることはありませんね。ありませんか。——では、次に金取引について伺います。  時間がございませんので、私は、金取引のブラックマーケット問題について何回も本委員会で取り上げたのでありますから、結論だけ少し申し上げたいと思います。  ブラックマーケットによる消費者被害は形の上では若干落ちてはおります。また通産省が昨年の暮れ流通協会を発足させました。これは通産省としては鋭意流通協会を発足させたのでありますが、業界を全面的に網羅することができませんでした。また、加入しておる人たちの中からも流通協会のあり方について不満が出ています。しかも流通協会は先物取引をしないという状況でございます。先物ができないということが一般的な通説になっておりましたところ、この四月二十六日内閣法制局は、この先物取引をしても商取法違反にならないと解釈を下しました。きわめて重要な解釈であったと私は思います。  そこで、ブラックマーケットは自由になりました。だれが金の先物をやってもよろしいということになったわけでありますが、流通協会は先物をやりませんから、ブラックマーケットは自由となり平然として先物をやるようになりました。今後も金の売買額や金の売買頻度は増加すると思いますし、為替変動によっても金の売買による利益というものがあると思われます。  ここに日本貴金属交易所が設立されることになりました。日本貴金属交易所はこの流通協会と違いまして現物も先物もやるということであります。要するに、いままで存在しておりましたブラックマーケットにかわってもっと性格のよい、社会的責任を甘受する総合的な交易所を設立するということであると思われます。  この間政府は、たびたびの私の質問に対しまして、まあいろいろと検討しておる、検討しておると言うのでありますけれども、通産省、大蔵省、警察庁それぞれ所管が違い立場が違い、一向この問題の解決の法改正を含むいろんな問題について何らの具体案がないのであります。  一方、香港での金の取引所の開設についてずいぶんここで議論いたしましたし、心配もいたしましたが、いまのところは香港の金取引所の開設によってわれわれが心配したことはそんなには起こってはおりませんが、しかし、これからこの問題についての被害が出る可能性があると思われます。  こういう条件下で私は政府に伺いたいと思うのでありますが、一体金の取引の今後のあり方について、この流通協会と日本貴金属交易所の設立というちまたの動きについて、どういうお考えをお持ちでございましょうか。
  58. 江崎格

    ○江崎説明員 お答えいたします。  現時点におきましては、金の流通量等から見まして、現物、先物問わず金市場の設置というのは、われわれといたしましてはまだ時期が早いというふうに思っておりますけれども先ほどお話に出ましたような私設の交易所が成立した場合に、金の流通に与える影響ですとかあるいは一般投資家保護の観点から、今後の動きを十分ウォッチしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 伝え聞くところによりますと、通産省は日本貴金属交易所が発足することについてきわめて冷淡あるいは警戒、そういう念があると伝えられておるわけであります。もちろん自分たちが一生懸命になってつくった流通協会があるのにかかわらずというお気持ちがあるかもしれませんが、これは私はどうかと思うのであります。  一番基本的には金の取引所を設置した方が社会的にも最も責任を持つと私は信ずるわけでありますが、その金の取引所を設置するまでの間、流通協会がある、それは現物を扱う、交易所は先物も現物もやるということであるならば、むしろそれぞれの特徴を生かして、そして健全な発展を願うべきではないか。交易所は民間で何するかわからぬ、またブラックマーケットの二の舞をしやせぬかという話があるわけでありますが、それなら流通協会はうまくいっているかと言えば不満を持っている人がある。それなら監督している農林省はいいかと言えば、この間大阪で汚職騒ぎが出る。何をつくったって悪いやつは悪いやつなんで、だから交易所が民間の自力でやろうというのに、これは間違いかもしれませんが、何か伝え聞くところによれば余りいい顔しないというお話があるそうでありますが、それは本当のことでありますか。交易所に対する基本的理念を伺いたいと思います。
  60. 江崎格

    ○江崎説明員 私設市場に商品取引員が参加することにつきましては、われわれといたしましては、金相場の動きいかんによりましては、商品取引員の財務基盤が悪くなりまして本来の業務であります商品取引業が十分できなくなるというようなおそれもございますし、それから私設市場で仮にトラブルというようなことが起こるといたしますと、商品取引業そのものの社会的な評価も悪くなるというようなおそれもあるわけでございまして、こういう観点からわれわれとしては危惧の念を抱いているということでございます。  なお、商品取引所法によりますと商品取引員が兼業をいたします場合には届け出義務がございまして、受託業の健全な遂行を確保するためにそれが非常に問題があるというような場合には、われわれといたしましては勧告をすることができるようになっております。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 要するに、あなたの最後によって立つ観点は、商品取引所法による取引員が交易所に関与することによって取引会社の財政基礎、運営基礎、社会的責任、そういうものに対して危惧を持つということですね。そうですね。そうであれば、それは届け出義務でできることでございますし、その間においては健全にそれが行われるならば、これは別にいかぬとかいう筋合いの問題ではない。その点は十分注意をしなければならぬというところにとどまっておるわけですね。——はい、わかりました。いまうなずかれたから、そうだと承知をいたします。  最後に、商法について伺います。時間がございませんから大まかに伺いたいと思いますが、簡単に答えてください。  すでに私どもが承知しております商法の改正のうちの大会社の定義について三つの定義がされております。一つの定義は十億を五億にするということなんでありますが、あとの問題は、年によって変動が生ずる問題については大会社の定義は年によって変わるということなのか。監査をすべき対象会社が年によって変わることについてどういうふうに考えているのですか、それを端的にお答えください。
  62. 吉野衛

    ○吉野説明員 会計監査人の監査を受ける会社の範囲といたしまして、資本金五億円以上という要件のほかに、年間の営業収入を二百億円以上あるいは年間の負債の総額、合計額が百億円以上、こういうもののいずれかを満たす会社をその会社に含めるべきかどうかということを検討しておるわけでございます。ただいまの問題は、営業収入とか負債総額というものを会社の定義に含めるということになりますと、確かに年ごとによって変動するのではないかという疑問が生ずるわけでございます。  しかし私ども調査したところによりますと、この要件を加えましても実際ふえる会社の数は千百社くらいではないか。そういう会社の従来の営業実績を見てまいりますと、年ごとに変動するということは余りないのじゃないかということが考えられるわけであります。仮に年ごとの変動は好ましくないということになりますと、一つの案としまして、一たん会計監査人の監査を受けることになった会社につきましては一定の期間引き続き監査を受けるべきものとする、こういうことも実は考えられるわけでございます。しかしこの点は、先ほどの問題も含めまして、大会社の定義としまして年間営業収入とか負債総額を持ち込むかどうかということは法制審議会の商法部会において慎重に検討中でございまして、まだ確定的に決まったというわけではございません。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。最後に二つだけお答えください。  一つは、私どもが商法を問題にいたしますのは、大会社の社会的責任ということを一貫して言っておるわけであります。大会社についての問題が今日的課題である。しかし商法の改正の中身は、大会社であろうとうどん屋株式会社であろうと同族会社であろうと普遍的に適用される、この点について中小企業関係でずいぶん問題があるわけであります。むしろ社会的責任が強く求められておる大会社に関する改正にしぼったらどうか。これは私は政治的にあえて言うのでありますが、それに問題を限定した方が現在の政治情勢からいって商法が通過する可能性があり得るのではないか。そこをなぜ考えないかというのが一つ。  それから二つ目は、公認会計士会と税理士会との意見の重大な相克がいつもあるわけであります。問題のポイントになります、理論的には大会社の税務と監査は同一人ができないという規定が実際に効果を上げていないのではないか。効果を上げていないから、税理士会等の反対理由一つとして職域が荒らされる——理論的にはいろいろありますけれども、そういう職域問題から言うと、大会社の税務と監査を同一人ができないという規定が完璧に法律をもって行われたならば、かなり抵抗が少なくなるのではないかという二点についてお答えを願いたい。
  64. 吉野衛

    ○吉野説明員 今回の商法の改正は、昭和四十九年の秋以来商法の全面改正を目的として始められたものであります。しかしながら、その途中におきまして大企業による非行防止という問題が取り上げられ、それに対する法改正を早急に行うべきであるという社会的要求が強くなってまいりましたので、実は昨年、従来の方針を変更いたしまして、大企業の非行防止という観点に焦点を合わせまして改正の方針を変えたわけでございます。ただ、従来の改正審議の過程でほぼ了解に達している事項もございますので、そういう事項につきましてはそれも取り上げて改正する方が望ましいであろう、こういう判断を商法部会では行いまして、それをも取り込んだ改正検討中でございます。  これは私ども事務当局の予想でございますけれども、商法部会の結論は年内あたりに出るのではないかということになりまして、その法制審議会の答申があれば速やかに法律案を作成いたしまして、できれば次の通常国会に提案したいというふうな段取りになっております。  それから、次の会計監査人と税理士との関係でございますが、証券取引法の百九十三条の規定によりますと、証券取引法の適用会社は会社と特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければならないということにしておりまして、この特別の利害関係というのは大蔵省令で定めるものといたしております。そういうことで、こういう規定は、実際は公認会計士と親密な関係にある税理士がその会社の税理業務を担当しておるから実際は骨抜きになっておるのではないか、こういうふうなことでございますが、聞くところによりますと、実際はそういうことではございませんで、大会社の税理業務はその会社に雇用されている税務に精通している社員が実際は行っておる。したがって、そういうことはないと伺っております。もともとこの問題は、公認会計士の独立性ということが主眼になるわけでございまして、その選任の方法とか調査権限の強化ということで法制審議会の商法部会では検討中でございますが、そのような改正によりましてこの種問題も解決を見るのではないかと私ども考えております。
  65. 横山利秋

    ○横山委員大臣 むずかしいお話であなたの頭に入らぬかもわからぬけれども、私の言う意見は、政治的にこうしたらどうかという提案なんです。ですから、最終的に審議会の答申がございまして政府案をおつくりになるときに、私の提案の二点を念頭に入れて政府案をおつくりになったらどうかという提案なんです。どうお考えになりますか。
  66. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 大変大事な御意見だと思っております。よく考えていきます。
  67. 高鳥修

    高鳥委員長 稲葉誠一君。
  68. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 ここに「東郷民安に対する所得税法違反被告事件控訴審判決書、東京高等裁判所第一刑事部」これはことしの七月十八日に行われた判決ですが、これは刑事局長にお尋ねをするわけですが、その中に中曽根康弘氏の名前がいろいろ出てくるわけです。  その中で、私は重要な点は三つあろうというふうに考えるわけですが、これは七十一ページですね。「被告人は、旧制静岡高校時代の同級生であり旧知の間柄にある代議士の中曽根康弘から「総裁選に出馬するためには二五億円位必要になると思うので、殖産住宅の株の公開の機会を利用させてほしい。」旨の依頼を受けていたところ」これが一つあります。それから七十四ページの途中から、「被告人は」というのは東郷ですね。「同月六日に」同月というのは十月ですね。四十七年の十月六日に「社内の誰とも相談せずに、中曽根に対して、五億円くらいお渡しできそうだ、と話し、その後同人の指示で、同人の秘書である上和田義彦名義で三井銀行に普通預金口座を設定して五億円を入金し」云々というのがありますね。それから第三のところで、「ところが被告人は一一月一三日ころ、同月一八日号の週刊新潮に「絶対騰る要素がないのに騰っている黒い政治銘柄リスト」と題して、殖産住宅の上場にからんで一日で二五億円をP代議士が儲けた旨の記事が掲載されたことを知り、中曽根と話合いのうえ、同人との話は白紙に戻すこととしたこと、右預金は、翌四八年一月八日に解約され、元利合計五億〇二二〇万一九九八円が被告人の三井銀行の口座に戻されたこと、の各事実が認められる。」こういうふうにありますね。  主な点三つだけ指摘しましたが、そういうふうに判決書にあることは、これは間違いありませんか。
  69. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御引用の判決の中にそういう判示部分があることは承知しております。
  70. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで私は、第一の点は法律的にはそう重要なことではないと思う、これは発端です。  ちょっと法務大臣、これは政治倫理の問題としてお尋ねをいたしたいと思うのですが、実は私、政治家選挙資金なり政治資金をつくるのは政治献金、大会社やその他からの献金によるんだというふうに大体聞いておったわけですね。そうしたら、ある人、名前を言いませんけれども、名前を言えばすぐわかる人ですけれども、その人は自民党のあれですが、いや違うぞ、それもあるけれども実際は株だぞ、株の操作で各派閥の親方がみんな金をつくっているんだ、これが政治資金になっている、これの方がずっと大きいんだという話を聞かされたわけです。  そうすると、ここの中にも「二五億円位必要になると思うので、殖産住宅の株の公開の機会を利用させてほしい。」というようなことを言っていますね。一体こういうあり方が——中曽根さんの場合は別としてですよ。中曽根さんというふうに限定するとあなたも答えにくいと思いますが、一体こういうふうに株の操作というか何といいますか、こういう機会を利用して政治資金なり何なりを獲得するというやり方が政治倫理の上から言って一体どうなんでしょうかね。聞きますと、どうも盛んにやっているらしいですね。各派閥の親方はみんなそうだと言うんですね。われわれは一体どういうふうに理解したらいいのでしょうかね。こんなことはいいことなんでしょうかね。
  71. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 正規の株式の売買によって利益が生じてくるのなら問題はないと思うのですけれども、株式の公募に当たってことさらに低い価格で割り当てをして、それを高くさばいていくというようなことになりますと、不当な利益にもなっていくわけでございます。そういうこともございまして、大蔵省でも公募の価格につきましていろいろな指図をしてまいるようになってきていると考えます。いずれにいたしましても、特定の者が不当な利益を占めるというようなことで財源を確保することは不穏当なことだ、こう思っております。
  72. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いまの一の点は、法律的に言うと——集まったときにいた、木部という人の経済企画庁の政務次官の就任祝いか何かですね、そこで末席にいる東郷氏を中曽根氏が自分のところに呼んで頼んだというのが東郷氏の言い分だし、中曽根氏はその辺のところは答えていません。いずれにしてもその点は大したことではございませんので、この程度にしておきます。  そこで第二の点ですが、結局いろいろな曲折があるわけですね。百万株のいろいろな問題などが出てきて、そこへ小佐野賢治が出てきたり戸栗亨という人が出てきたり、いろいろなことがあるわけですよ。いずれにいたしましても、そこででき上がった五億円というものを中曽根さんの指示で中曽根さんの秘書である上和田義彦名義で、これは三井銀座と書いてあるけれども三井銀行ですが、判決のミスですね。判決は直さなくちゃだめだよ。その新橋支店だと思いますが、普通預金口座を設定したのです。  ところが、これの議事録は昭和五十二年四月十三日のロッキード特別委員会における中曽根さんの証人としての証言、これを読みますと、公明党の池田議員が質問しているのですが、「つまり十月の六日に五億円という金がイリワダさんという証人の秘書と言われる方のところに一たん入っている。」中曽根さんが「イリワダではなくて上和田と言うのです。そういうことは聞いております。」と言っているのですね。それで、株のできた経過を言っておって、「私の上和田秘書も東郷君に呼ばれて、こういうわけでみんな同級生も名前を貸しておるのだから、おまえのおやじというわけにはいかぬからおまえ貸してくれ、そう言うので、ほかの旧制静高やそのほかの同級生の名前、みんな使ったというので、結構でしょうとそう言って、彼は承知して帰ってきたそうです。しかし、それで判こも見なければ通帳も見たことはない。そういう了承を得たので、東郷君が自分の所存でいろいろ操作をし、取り扱いをしたのではないか、そういうように思います。」これが中曽根さんの答えであるわけですね。  ところが、昭和五十二年五月十一日のロ特における東郷証人の答えは、これはここにいらっしゃる小林進先生の質問に対する答えでございます。途中からですが、「したがいまして、十三億幾らかできましたが、法人十社を使いましたその税金関係、法人十社に対する謝礼関係等、お渡ししても絶対大丈夫な数字というものが五億円という数字でございます。したがいまして、五億円について、その処置方について御指示を得に参りましたら、秘書の上和田義彦氏の名前で預金しておいてくれということで、その御指示どおり、陽室長にその御指示を実行させたわけでございます。」これが東郷民安氏の証人としての供述ですね。判決も大体そのようになって、中曽根さんの指示で上和田名義にした、こういうふうになっておるわけです。  ところが、いま私が読みましたように、中曽根さんはそのことについて、そういうことは聞いておるんだ、しかし、その上和田が呼ばれて、上和田が貸してくれという話があって、そしてそういうふうになったんだ、だから判こも見なければ通帳も見たことがない、こう言っています。判こも見たこともなければ通帳も見たことがないというのは事実です。なぜ事実かと言うと、中曽根さんの方で東郷が指示を得に来たときに指示をして、おまえの方で取り計らってくれ、こういうことでありますから、上和田義彦の名前で預金しておいてくれということですから、東郷の方では上和田義彦名義で預金をして、それで印鑑と通帳は陽秘書室長が預っているのですから、中曽根さんが通帳も見たことがない、判こも見たことがない、これは間違いありません。間違いありませんけれども、その前提である、自分はそういう話を聞いているんだ、だから貸してくれというように言われたのは、上和田が貸してくれと言われたので、上和田からそういうことを承知して帰ってきたそうですという言葉ですね、これは明らかに違っておりますね。直接五億円をどうするかということについて指示を得に行ったのです。東郷民安が中曽根さんのところに行ったら、中曽根さんが上和田の名義にしておいてくれということなんで、それを受けて陽秘書室長に判こや通帳を渡してそういう名義にしておいた、こういうことですから、これは中曽根さんの言うのが明らかに違っております。  判決も、いま私が読み上げましたように「中曽根に対して、五億円くらいお渡しできそうだ、と話し、その後同人」中曽根さんですが、「同人の指示で、同人の秘書である上和田義彦名義で三井銀行に普通預金口座を設定して五億円を入金し、殖産住宅の秘書室長である陽真也に右通帳と印鑑を保管させたこと、」こういうふうに判決はなっていますね。この判決の書き方がよくわからないので、「同人の指示」というのが上和田名義で普通預金口座を設定することだけを含んでおるのか、それにプラス、秘書室長である陽真也にその通帳と印鑑を保管させたことまで含んでおるのかということは、ちょっとこの判決ではわかりにくい。判決の書き方がだらだら書いていますから、ちょっとわかりにくいのですが、いずれにいたしましても、中曽根さんがここで証言をしたことと判決とそれから東郷民安の国会での証言と非常に大きな食い違いがある。こういうことについては私は認めざるを得ない、こういうふうに思いますね。これが偽証になるとかなんとかということをすぐ私は言っているのじゃないのですよ。とにかくそういう点についての証言に食い違いがある、そういうことは刑事局長もお認めになりますか。
  73. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 いささか違っておるということであろうかと思います。
  74. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 あなたに聞くのは本当はおかしいので、ぼくもあなたに聞くのはやめようかと思ったのですが、わざわざお答え願ったので、いささかと言うだけでもずいぶん勇気が要ったんではなかろうかと私は思うのです。  そこでもう一つ、第三のところがありますね。「殖産住宅の上場にからんで一日で二五億円をP代議士が儲けた旨の記事が掲載されたことを知り、中曽根と話合いのうえ、同人との話は白紙に戻すこととしたこと、」こういうふうに判決では言っております。それから東郷さんの証言、これは五十二年五月十一日ですが、ここではもっと詳しく言っておりますね。それから前の、いまの五億円の点についてももっと詳しく言っております。これは坂井委員質問に対して「十月四日、五日の両日にわたりまして公開に値つけ株として出したものが金となりました。それで十月五日の夕刻、私はこれだけのものができたということについて御報告に参りました。」どこへ行ったかといったら「私が中曽根代議士とお会いするのは砂防会館の事務所が多かったように記憶しておりますので」云々、そして「五億は完全に中曽根氏がお使いになれる金であるということを御説明申し上げ、その五億の金をどうしたらいいかという御指示を仰ぎに参ったわけであります。」いまのところをこういうふうに言っているわけですから、いささかではなくて非常に食い違っておる。特に指示をしたかしないかという点について大きな食い違いがある、こう私は考えるわけです。  それから、いま申し上げた中曽根さんと話し合いの上解約したということについては、同じ日の五十二年五月十一日、これは正森委員質問に対して東郷証人は「たしか昭和四十八年の十一月十八日号でございますから、発行されたのはそれより前ということになります。たしか十三日くらいから発売されたのじゃなかろうかと思いますが、私がその記事を見ましたのは十三日くらいであったと記憶しております。そして、直ちに中曽根代議士に御連絡申し上げて、たしか十一月の十七日に私は中曽根代議士のところにお伺いいたしまして、「週刊新潮」の記事をお見せいたしまして、このようなことであなたに御迷惑かけることはいかぬし、また、殖産住宅もこのようなことで迷惑をこうむるのは困るので、この件はなかったものにしていただきたいということにおきまして、上和田義彦名義の預金の解除を申し入れまして、この件がなかったことにしてくれということで、できた金は全部会社の簿外資金ということで処理させていただきました。」こういうふうに東郷さんは述べておるわけです。それから判決では私が最初に読んだように書いてある。こういうことは間違いありませんね。
  75. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 議事録を御引用のことでございますから、そのとおりであろうと思います。
  76. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 ところが、池田委員が五十二年四月十三日に質問をいたしておるのですが、こういう質問をしておるわけです。  「この殖産住宅の裁判が三月三十一日に公判を迎えたわけであります。この中で中曽根証人のことについて幾つかの指摘が出たわけであります。私は、いろいろと表をつくって時間的なつながりぐあいを調べてみたわけでありますが、昭和四十七年の十月の五日、いわゆるコーチャンが電話をかけた、コーチャンの依頼を受けて児玉被告が電話をかけたと言われるその明くる日、つまり十月の六日に五億円という金がイリワダさん」これは間違いで上和田さんですね。「イリワダさんという証人の秘書と言われる方のところに一たん入っている。この金は後に出されたそうでありますが、そういうようなことはありましたでしょうか。」こういう質問をしていますね、議事録の引用、一番最後のところ。「この金は後に出されたそうでありますが、そういうようなことはありましたでしょうか。」こういう質問をしていますね。この質問に対して中曽根さんは全然答えておりませんね。答えはないですね。この点はどうですか。
  77. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 そのやりとりはいま具体的に記憶しておりませんけれども、御引用のことでございますからそのとおりであろうと思います。
  78. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いやいや、具体的にやりとりしているのではなくて、議事録を調べてみてくれと言ったでしょう。この二つの議事録と判決を調べてくれとぼくは言っておいたでしょう。だから、それは答えてないでしょう。答えてないんならないでいいですよ。その点だけはっきりさせてください。
  79. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 そのとおりであろうと思います。
  80. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これ以上刑事局長にお聞きするのは筋ではないと私は思いますので、これ以上お聞きいたしません、あとはこちらが判断することですから。  問題は、なぜ中曽根さんは「この金は後に出されたそうでありますが、そういうようなことはありましたでしょうか。」という質問に対して答えなかったかということです。ただ残念ながら、これは詰めが足りないですよ。そんなこと言っては悪いけれども、詰めてないんだな。だから、その点はちょっとあれがありますけれども。  その点について答えてないのは、最初から自分はまるで知らないようなことを言っているわけですね。上和田とそれから東郷さんとの間の話のようなことを言っているから、結局その後の金を解約したということについては答えられなくなってしまって、それで意識的に答えなかったのじゃなかろうか、私はこういうふうに思うのですが、判決でははっきりと、中曽根と話し合いの上白紙に戻すことにした、こういうふうに書いてありますね。それから、いま私が読んだ議事録でもはっきり答えておるのですね。  これらを総合いたしますと、これは最初の、いま答えなかったという点については、結局そういう質問があったのに答えなかったのですから、宣誓は「良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います」こういうふうに宣誓しているわけですから、「何事もかくさず」の中に入るのじゃないか、こういうふうに思うのです。これは刑事局長に聞きたいのだけれども、あなたも答えにくいだろうから、それはこっちの判断にしましょう。私は「何事もかくさず」の中にはっきり入ると思いますよ。こういうふうに考えてみると、私は、これは質問の詰めも確かに足りない点があったと思うのですけれども、これは意識的にいまの点は答弁してないか、前の点は意識的にごまかしている。違った事実を言って、自分が指示してそういうふうに名義や口座やなんかつくらせたことについて、まるで自分は知らないかのようなことを言っておる。  こういうふうなことを考えますと、中曽根証人の証言というものは、主観的意図がはっきりいたしませんから、主観的意図がはっきりすれば偽証の疑いがあるということが言えると思うのですけれども、あるいはそれ以上の偽証だということも言えると思いますが、現在においてもいま言ったような対比をした中で大きな違いがある。刑事局長はいささかと言いましたが、いささかじゃない。この判決を見てもうんと違う。このことから見ると、いま言った二つの点だけでも私は偽証の疑いがあるというふうに考えざるを得ない。  そこで委員長にお願いをいたしたいのですが、私は、もう一遍中曽根康弘氏と東郷民安氏、一方だけ呼ぶといけませんから両方を当委員会に呼んでいただいて、そして真意を尋ねる、そういうふうな手段を講じていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。なぜかといいますと、このロッキードの委員会というのは特別委員会で、いまはなくなりました。議論としては、特別委員会というのはその会期中に設立されて会期が終わるとなくなってしまうのだ、だからそこで偽証の問題は切れてしまうのだという意見も一部にはあります。ありますけれども、きのうの議運で私の方から持ち出しまして、これは結局衆議院の法制局長の見解では、そういう場合には偽証の告発をするなり何なりの権限というものはハウスにある、だからハウスがどこの委員会にその権限を移すか、認めるかということがこれから問題になってくるということで、それについては自民党の方で研究をするということできのうの議運は別れておるようですね。結局私どもの方では、法務委員会がいままでの慣例その他取り扱いの内容から言って正しいのではなかろうかということになってくる可能性がございます。  そこで、いま言ったような大きく分かれておる二つの点をはっきりさせるためにも、偽証の疑いがあると考えられますそれをさらに明らかにするためにも、中曽根康弘、東郷民安両氏を当委員会に証人として喚問を願いたい。私は、それがやはり国会の大きな役割りであろう、こういうふうに考えるわけです。そういう真偽を国民の前にはっきりさせる、これは中曽根さんのためにもいいことではなかろうか、私はこういうふうに考えますので、その二人を証人としてぜひお呼びを願いたい、こういうふうに考えるわけでございます。委員長の御意見を承りたく存じます。
  81. 高鳥修

    高鳥委員長 ただいまの稲葉委員の御意見につきましては、稲葉委員も御指摘のように、当委員会において行われた証言ではございませんので、したがいまして、院において御検討の上当委員会措置するような御指示でもあれば改めて御相談をすることにいたしたいと思います。
  82. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 偽証の告発をするというならば、当委員会でやるかどうかということについては議運の方の決定がなければいけないと私は思いますけれども、当委員会に呼んでさらにその関係をもう一遍調べるというか、そういうことは法務委員会でできることであって、これは問題がないんだというふうに私は考えておりますが、いずれにしても理事会において御検討のほどをお願いいたしたい、こういうふうに考えます。  そこで、もう一つの問題は、この前私予算委員会でやったのですけれども、二階堂進さんの人権の問題なんです。これは二階堂さんの人権を私もぜひお守りをしたいというふうに考えておるのです。  法務大臣にお尋ねをしたいのですが、この前お聞きになっておられたと思いまするが、これは三木内閣のときですが、政府が議会に対して、委員会に対して「元内閣官房長官二階堂進」として報告書を出しておられますね。この前の予算委員会でやりましたからおわかりのことと思います。この報告書は意識的に時期と場所をぼやかしています。これはいろいろな立場があったのでしょうが、ぼやかしております。四十七年十一月一日ごろというのが本当ですね。場所は官房長官公邸、こういうふうになっておるようです。ということは、昭和五十三年四月三日の東京地裁の刑事一部の橋本登美三郎さんたちの公判廷における伊藤宏の証言、その中にそういうふうになっているわけですね。この二階堂さんが伊藤宏を訴えた民事裁判、これは損害一億に該当するけれども、とりあえず一千万請求するというやつですが、大分日にちや何かの間違いが中にあるのですが、いずれにいたしましても、いま言ったように政府の報告書を出しておるんです。この報告書の中では、昭和四十七年十一月初旬ころ東京都内にとなっておりますが、若狭らより依頼を受けた伊藤宏から、ロッキード社から流入したいわゆる三十ユニットの領収証に見合う三千万円の一部である現金五百万円を謝礼の趣旨のもとに受領した、一〇一一の航空機導入の謝礼として認められるが、右金員は内閣官房長官としての職務に関する対価であることが認定できないために、収賄罪の成立は認められない、こういうふうになっているんですね。  これは法務大臣御案内のことと思いますが、そうすると、政府が国会に責任を持って提出をしたこの報告書を法務大臣は信用なさいますか、あるいは信用しないんでしょうか。
  83. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 政府の報告書というのは、たしか秘密会で法務省当局からお話をした、そのことを当時の委員長が公報に掲載せられたという経緯をたどった資料のことをおっしゃっているのかどうか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  84. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 昭和五十一年十一月四日の議事録に出ておるんですね。報告書とは書いていない、報告と書いてあります。これは田中委員長が「二階堂進君に関して寄せられた政府の報告を朗読いたします。」と言って朗読したものですね。
  85. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そうしますと、秘密会で述べられたことが特別な経緯で議事録に掲載される経過をたどったものだと思います。  当時のことを私詳しくは知りませんけれども法務省としては起訴しなかった事件でございますから、特別な政治道義的責任を追及するについて政府として最大限の努力、協力をしろというようなことからお話しをした、こう伺っております。したがいまして、起訴か不起訴かしかないわけでありますけれども、不起訴にした事案についてお話ししたということだと思います。  それに対しまして御本人は、そういう事実はないと否定されているということも国会でいろいろ議論されているようでございます。また起訴しなかった事件でございますから、法務当局といたしましては一応そういう推定をしたということだろうと思います。同時にまた、裁判で判決が下されたわけのものでもないわけでございますので、それらの事実関係は客観的には必ずしも正確でないということになってくるのだろうと思います。法務当局としても起訴しなかった事柄に係るものであるということ、また本人が否定されているということ、これも事実でございます。同時に、両者の意見を踏まえて本来裁判所が客観的な判決を下すわけでございますけれども、そういう事実もなかったということも明確なわけでございますので、そういう関係にあるものと御理解をいただきたいと思います。
  86. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 よくわからないですね。私が聞いているのは、政府の報告書が出たことは間違いないでしょう。報告書というか報告があったことは間違いないわけですね。それをあなたは信用されるのですかと聞いているのです。これは法務省がというか三木内閣か責任を持って、院の決議や何かもあり、積極的にこの問題に取り組む、こういう姿勢のもとでいろいろ決議がありましたね、それに基づいて国会に提出したのでしょう。  私が聞いているのは、それを信用するのですかしないのですかと聞いている。あなたのお話を聞いていると信用しないようにお聞きできますね。信用しないなら信用しない」これでも結構ですよ。信用するなら信用する、信用しないならしない。あなたは非常に明快にお話される方ですから、どっちでも構いませんよ。どうも聞いてみるとわかったようなわからないような話で、そういう話はあなたはいつもされないわけですよ。よくわかりません。信用するならする、しないならしない、どっちかお答え願いたいと思います。
  87. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 公式的な言い方をしますならば、秘密会で議論されたことだ、当時刑事局長が忘れましたというような表現で答えておったことを私も承知しておるわけでございます。しかし秘密会で話されたことがいまおっしゃったような議事録になっているのだろう、そう私も想像しているわけであります。
  88. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私はそんなことを聞いているのではなくて、議事録を見てくださいと言ってこの前もあれしたのだが、議事録を見てください。そこにあるんじゃないですか。これに対しては二階堂さんは否認していますよ。そういう事実はないと言っています。それは二回にわたって言っていますね。最初のときはもらってないと言って、それかな後は何か次席検事が勝手に新聞記者にしゃべったのはけしからぬとかなんとか言っていますが、それはあります。  私の聞いているのは、政府の報告を朗読しますと書いてあって、ちゃんと議事録に載っているんですよ。それをあなたの話を聞くと、どうもよくわからぬな。最初のは秘密会かもわかりませんが、後のは秘密会じゃなくて弁明を許したんですからね。ちゃんと許して、私もあそこで聞いていましたけれども、これは報告書ですよ。「去る二日、政府より、ロッキード事件に関し」云々、二階堂進君、何々の「報告書が寄せられております。本日は、四君各人別に政府から寄せられた報告書を御披露申し上げ、同時に、御本人の弁明を十分以内に限り許すことにいたしたいと存じます。」こういうふうに言っているのですね。これは田中伊三次さんが委員長ですけれども昭和五十一年十一月四日、やはり報告書ですね。  そうすると、政府が国会に出した報告書は、これは本人が否定しているとしても、本人の否定を覆して事実がこういうふうに認められる、認められるけれども法律的には犯罪にならない、こういう関係で事実そのものは認められるということを断定して、そうして出したのじゃないのですか。そうでなければ国会軽視ですよ。国会をばかにするにもほどがあるというふうに言わざるを得なくなってきますよ。だから、あなたの立場もよくわかりますよ。ことに刑事局長なんかなかなか苦しい立場だと思うのです。あなたじゃない、前の刑事局長かな、安原さんかだれかのときだと思います。  だけど私の聞いているのは、政府の報告書として出して議事録にも載っておる、この事実を一体認めるのか認めないのか、信用するかしないかと聞いておるのに、どうもだんだんよくわからなくなってきて、いま大臣の話は、ちょっとくどいのですけれども、信用せざるを得ない、こういうような答えのようにも聞こえるのですね。そういうような答えでよろしいでしょうか。秘密会だからということは理由にならないですよ。秘密会なら、じゃうそ八百並べていいのですか。そんなばかなことはないでしょう。そんなばかな話はないですよ。これは刑訴法の四十七条でしたか五十四条でしたかちょっと条文忘れましたが、公益上の必要があれば出すことになっているのですから、不起訴のあれでも。そのことにも関連して、不起訴の記録でもそのまま出すというのが、国会の要請があった場合というのがコンメンタールにみんな書いてあるわけですから。四十七条でしたね、ちょっとぼくもそらであれしているのですが。  だから、このことを信用しておるというふうに、信用しているというか遺憾だけれども信用せざるを得ない、こういうふうにあなたからお答え願えれば、これはやむを得ないですよ。何だかわかったかわからないようなことを言っていると、三木内閣自身に対するあなたの不信感というか、三木内閣というものを信任しないのだという意味にもとれるんですね。どうもよくわかりませんな。信用するのかしないのか、やむを得ないけれども信用せざるを得ない、こういう結論として承ってよろしいですか。どうもよくわからぬ。
  89. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 正確を期する上から刑事局長から御答弁申し上げます。
  90. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 刑事局長では無理ですよ。刑事局長にそこまで言わせるのはかわいそうですよ。あなた、それはいかぬ。天下の奥野誠亮さんともあろうものが刑事局長なんかに責任を負わしてはかわいそうだよ。(「憲法のときは前に出て」と呼ぶ者あり)いや、そんなことはないけれども、いつでも前に出ているけど。これは刑事局長の答弁決まっているのよ。秘密会でございますからこれ以上のことを申し上げられませんと、こう言うだけなんです。それなら秘密会ならでたらめでも何でもいいのかということを言えば、いやそういうわけにはいかぬということになるでしょう。だって議事録に載っているんですよ、ちゃんと報告書として。  だから事実なら事実で、片一方は争っているけれども、事実は事実だということでこの報告書を私は信用します、こういうようにお答え願えればいいのじゃないですか。私もくどいことを言うのはいやだけれども、しょうがない。やむを得ない、残念だけれども信用せざるを得ません、それでいいじゃないですか、それだけで。
  91. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 信用するとか信用しないということじゃなくて、秘密会で話が出た、それを当時の委員長が議事録に掲載しろとおっしゃった、それが議事録になっているという経過をたどったのじゃないかなという私なりの推測をしているわけであります。
  92. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それは経過よ。経過はわかった。秘密会にしろ申し上げたということは、事実に基づいて事実だと思うから申し上げた、あたりまえのことですね。あなた、こんなところで刑事局長にやらせてはかわいそうだよ。天下の奥野誠亮さんがそんな刑事局長にやらしてはかわいそうよ。刑事局長いいよ、あなたの答弁わかっているのだから。  だから、結局これ以上あなたの口からは言いづらいでしょう。言いづらいけれども政府の報告だから認めざるを得ない、こういうことになるのじゃないですか、答えとしては。それを言ったらあなた困るんでしょう。それを言ったら、鈴木内閣の中で鈴木さんが二階堂さんを総務会長に任命したのだから、鈴木総理の責任問題にも発展してくるからということで非常に困るということなので、あなたとしても言いづらいんでしょう。そうじゃないですか。だから言えないんじゃない。言いづらいから勘弁してくれというなら、私もこれでこの問題はやめますよ。別の方向に入りますけれどもね。言いづらいから勘弁してくれ、あるいはその他についてはあなたの方で推測してください、こういうことなら、それで私も答えとして承っておきますがね。
  93. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 信用するとか信用しないとかいうことじゃなくて、そういうお話が秘密会で述べられた。その述べられたものは起訴をされなかった事案に係るもの、いまおっしゃったように、刑訴法四十七条のただし書きに基づいて協力をしますということで起訴しなかった事案に係るものだ、これを私は申し上げているわけであります。  したがって、一応の推定をしたということであって、同時に、そのことについては本人は否認をしておられる。同時にまた、そういうものについては裁判所が両者の意見を聞いて判決をする、その判決もなかったことだ、こういうことを申し上げているわけでございまして、信用するとか信用しないとかいうことになりますと、そういうことを飛び離れて客観的事実だ、こういう賛否の両論を飛び越えて客観的な事実だ、こう受け取られかねないものでございますから、あえて私がこういうことをお話しさせていただいているわけでございます。
  94. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 この前のときの話はわかりました。  そうすると、裁判でシロクロつけるというんでしょう。シロクロつけるといって訴えを起こした二階堂さんは、いいですか、裁判を十何回とやったけれども、その間はほとんど延期ですよ、それから休止ですよ。休止のまま今度は取り下げちゃったじゃないですか。十月十四日に取り下げて、その取り下げ書は相手方の弁護士のところへ送達されています。やっていて、裁判を取り下げちゃったのです。やっていたって向こうは争っているんですよ。二階堂さんの方では、虚偽のことを言われて約一億円の損害を受けた、とりあえず一千万円請求する、こう言っているわけですよ。片一方の方は、そんなことない、本当のことを言ったのだ、こう言ってがんばっているわけだ。それで裁判を十何回やった。五十三年からやっている。五十三年ワの三〇四〇号、東京地裁の民事二十三部、全然これは進んでいやしないですよ。何もしない。それは証拠書類といって書類を出しましたよ、新聞記事。内容証明出したですよ。読売新聞の記事を内容証明とかなんとか出しましたよ。ただそれだけの話でね。それならば裁判の中で伊藤宏を証人として呼び、自分も出ていって、そこで黒白をつけたらいいじゃないですか。黒白をつけると言っていたじゃないですか。それを何もしないでばっと取り下げちゃって、何のことやらわけがわからぬ。結局みんな忘れっぽい人は忘れちゃうだろうということでやっているのは、私は、政治家としてはいかがなものか、こういうふうに考えるわけですね。  この前、鈴木総理はこういうことを言いましたよね。選挙の洗礼を受けている、選挙の洗礼を二回か三回受けていると言いましたね。もう一つは、裁判所で黒白を争っているのだからということを言われましたね。二つのことを言われたわけですね。裁判所で黒白を争わないのです、自分の方からやめちゃったのですから。自分の方からやめるということはどういうことかよくわかりませんが、普通の場合では自分の方が不利だからやめるというのが多いわけですね。相手方の言うことが正しいので、もうこれ以上争っても勝ちみがないというので取り下げる場合が普通の場合ですね。必ずしもそうでない場合もありますけれどもね、民事で。  そういうふうなことから考えると、これはいまの裁判所でシロクロつけるというのはなくなっちゃったのですから、消えちゃったのですから。告訴でもすればいいけれども、告訴も何もしないわけですから。初めは告訴する、刑事、民事の手続をちゃんととると言っていたところで、刑事の手続は全然やらない、民事の手続はやった。やったけれども何もしないで、結局新聞だけ証拠に出して、内容証明を出してそれで終わり。証人調べもやらないで取り下げてしまった。こういうふうなことで一体政治家としての倫理というか、国民の間では政治家というものはもういいかげんなものだ、結局そのときはわあわあ言ってシロクロつける、シロクロつけると言っていて、裁判になったら取り下げちゃった、何だ、何をやっているのだ、そのうちみんな忘れちゃうだろうということをねらっているのだ、こういうふうにとるのがあたりまえのことではないでしょうか。  それで二階堂さんは、シロクロつけたいからこの委員会に呼んでくれと言っているんですよ。ちゃんと議事録に載っていますから。呼んでくれ、それで伊藤宏とあれさせてくれてもいいという意味のことを言っているのですから。自分の方から積極的にその当時言っていたのですから。法務委員会で三十分間質問したのですから。これは議事録ありますよ。事実ですから、私も聞いていたのですから。だから私は、この前その点を明らかにするためにも、二階堂さんの名誉のためにも、ことに裁判をやっているうちなら裁判で黒白がつくから、無理にここで調べるのはあれかと思いますけれども、そうじゃないのですから、もう裁判やめちゃったのですから。やめた理由についてもさっぱりはっきりしない。わけわからぬですね。何だかわからないでやめてしまったということは、国民に対する信頼、政治に対する信頼を失わせるものであって、その間の事実を明らかにするためにも二階堂さんと伊藤宏さんをここでお調べ願いたいということを私はこの前申し上げた。それで理事会で協議をするということになっておるのですけれども、これは前に申し上げておりますが、あえて二階堂さんの人権と同時に政治家としての倫理を国民にさらに一層徹底させるためにも、二階堂進、伊藤宏両氏を当委員会においてお調べ願いたい。そのことが政治の信頼を回復する一つの大きな道である、こういうふうに私は考えておるわけでございます。  いろいろ申し上げたいことがあるのですけれども、実は私ちょっと調べたのです。本当にこれは裁判を愚弄しているというか、利用しているというか、悪用しているというか、訴えを起こしたきり延期延期で何もやっていないのですよ。ちょっとひど過ぎます。延期延期ならまだいいけれども、代理人が両方出てこないのです。出てこないと事件流れてしまうのです。民事訴訟法では流れて三カ月たつと取り下げになるのです。それを二回やっているのです。とうとう最後の七月二十一日も出てこない。それでぼくがここで質問したら、三カ月以上たつと取り下げになりますよということを言って、期日指定の申し立てをするのかと思ったら、しないで急遽取り下げてしまった。こういうやり方は二階堂さんの名誉のためにもよくないとぼくは思いますので、ぜひここへ呼んでお調べ願いたいというふうに考えるわけです。いまの問題については、あなた方の問題というよりも委員会の問題ですから、委員会の中で十分扱わしていただきたい、こういうふうに考えておる次第です。  それからあなたが雑誌で——雑誌を取り上げては悪いのですけれども、TKCの飯塚毅君。彼は同郷ですからよく知っている男ですが、あれの中で商法の改正についていろいろ触れておられますね。それはそれでなかなか見識のある御見解だと思うのですが、先ほど横山さんからも商法の改正の中での問題点の御質問がありましたが、それはどういう点であって、それをどうやって解決していくのかということについて大臣なり民事局当局からお答えを願いたい、こういうふうに思うのです。それから、大体の目安として来年の通常国会に出せるようなことを言っておるけれども、そういう状況になっておるわけですか。
  95. 吉野衛

    ○吉野説明員 法制審議会の商法部会におきましては、株式制度、会社の機関、それから計算の関係という三点につきまして、従来精力的な審議を続けておるところでございまして、ただ当初の予定としましては商法の全面改正という形で審議を続けておりましたものですから、そういう方針を堅持いたしますと遠い先になるおそれがあるわけでございます。そういうことを考えまして、また大企業による非行を防止する必要があるという社会的要求が大であるというようなことも考えまして、昨年従来の審議方針を変更しまして、できる限り速やかに問題点をまとめて法律案の改正をしたいというふうに考えまして、現在のところ審議を重ねているところであります。  これは審議会の審議でございますからはっきり申し上げることはできませんが、私ども事務当局の予想といたしましては、一応ことしの暮れあたりには何とか部会の結論ぐらいは出るのではなかろうか。そういたしますと、それに基づきまして法制審議会の総会をお願いいたしまして、そこで御審議をいただく。その答申が出れば、私ども事務当局としましては、速やかに法律案をまとめましてできる限り次期の通常国会に出したい、こういうような意気込みで目下作業を続けておるところでございます。
  96. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 その商法の改正の問題についてはなかなか重要な問題を含んでいますので、よく研究して別の機会質問をしたいと思います。  この雑誌で大臣が飯塚君とやっているのはなかなかおもしろいですよ。飯塚君というのはちょっとてんぐで、ぼくの郷里で、私も若いころをよく知っていますが、なかなか向こう気の強い男で、  あなたによく似ているとは言わないけれども、なかなかおもしろい男です。私もおもしろく読ませていただきましたが、そういうことで質問するのもちょっとあれですから質問しません。  きょうはこれで終わります。
  97. 高鳥修

    高鳥委員長 午後一時三十分再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  98. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林進君。
  99. 小林進

    ○小林(進)委員 法務大臣にお伺いいたしますが、先般の当委員会において、書面をもって御回答願いたいという問題を私は提起いたしてまいりました。それはほかでもございません、行政と検察の争いの問題、具体的に言えば、大橋法務大臣と当時の最高検の次長検事木内氏との理論闘争の問題について、法務省と検察庁との間に重大なる意思の相違がありました。それについて、ひとつ最終的な御回答を得たいということを私は注文いたしておきました。まだ書面は出てまいりませんが、どうなっているのか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  100. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 当時のこともいろいろと調べたいと思いまして時間がかかっておりましたので、御了承いただきたいわけでございますが、御指摘の検察庁法第二十五条には「検察官は、前三条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い」云々「ことはない。」という規定があるわけでございます。その規定の解釈といたしまして、たとえばいま御指摘になりましたように、次長検事を検事長に転出させることは検察官の身分そのものを失わせるものではない、こういう意味におきまして、同条つまり二十五条に言うところの官を失わせることにはならないという解釈も可能ではあろうというふうに思うわけでございます。  一方、検察庁法の第三条には「検察官は、検事総長、次長検事、検事長、検事及び副検事とする。」こういう規定がございます。そして、いま問題にされております二十五条の規定が検察官のいわゆる身分保障に関するものであることからいたしますと、三条に掲げておりますような検事総長、次長検事、検事長、検事及び副検事、このそれぞれが同条の官ということに当たって、先ほどの例で出ましたように、次長検事を検事長に転出させることも、次長検事という官を失わせるという解釈もまた十分可能であると思うわけでございますので、運用といたしましては、後者のような立場をとることがより適切ではなかろうかということで、実際の検察官の人事異動に当たりましては、このような趣旨を尊重いたしまして本人の意思に反するような異動は行わないということにいたしているわけでございます。
  101. 小林進

    ○小林(進)委員 法務大臣、それでよろしゅうございますか。
  102. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 法解釈は法解釈として、運用上はできる限り検察庁の皆さん方が一体になって努力していただける体制を守っていくことが大事でございますので、いま刑事局長が言いましたような方向で運用をすべきものであると心得ております。
  103. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、できる限りとかあるいは検察庁の意思を尊重してとか、そういう政治的な発言じゃなくて法解釈をお伺いいたしているのでございます。  法解釈としては、大橋元法務大臣のおやりになった行為は間違っている、やはり木内元次長検事を中心とする検察庁の考えは正しい、こういうふうに解釈するとおっしゃるのかどうか、まず明確に承っておきたい。
  104. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、法解釈といたしましてはいろいろあって、いわば両説あるというようなことになろうと思うわけでございます。  したがいまして、広い意味の官を失わないという解釈も全く間違いであるというわけにはまいらないのじゃないかと思いますけれども先ほども繰り返して申し上げましたように、検事総長、次長検事、検事長、検事、副検事それぞれが官に当たるというふうに考えて運用することの方が身分保障という観点から適当であろう、こういうことでございます。
  105. 小林進

    ○小林(進)委員 私は何でこんな問題にこだわっているかという私の立場もひとつ申し上げておきたいのでありますけれども、こういう犯罪捜査、犯罪検挙あるいは起訴、公判に持っていくというような問題につきましては、検事あるいは検事正、特に第一線の捜査の最高責任者である検事長の人柄あるいはその人間その他が影響すること甚大であるというのがいま世間の一般の物の見方なんですよ。  だから、一つ事件に遭遇した場合に検事長は腹を決めて、あるいは東京で言えば特捜部を督励して、この問題ひとつやろうじゃないか、こういうときに行政府法務省の干渉とか関与も入れない、その毅然たる姿勢があって初めて過去の大きな事件の解決も見たし、世人が納得するような問題にも検察陣営が手を染めることができた。ところが検事長、検事正にその人を得ないということ、言葉の使い方としては適当ではありませんけれども、立身出世第一主義で何でも法務大臣以下行政庁の鼻毛のちりでも払っていた方が出世の道に早い、そういう考え方が出てくると国民の期待するような検察陣営というものはできないが、最近はどうも、この特捜部と言って特捜部にだけこだわるのはまことに失礼でございますけれども、検事の異動というものが実に安易に頻繁に行われている、こういう見方。  私は、東京地検の特捜部の人事の異動が平均してどんなぐあいに行われているか、いま調査を依頼しているのでありますけれども、まだそこまで資料は出てまいりませんけれども、優秀な検事が特捜部へ入っていよいよ政界、財界癒着の問題もこれは本腰でやるのかなと思って、あるいはこれに関心を寄せている世人がこれを見ていると、二年あるいは一年半あるいは三年もたたぬうちにさっさっとかわっていってしまって、どこに一体重点があるのか。あれでは腰のすわった本当の事件の解決ができないではないかという心配事があるのです。あるから、私は、この検事等の異動あるいは転勤の問題に対して一体行政府がどれだけ関与しているのかということを知りたいと思ったから質問しているのですよ。これは奥野さん、この前もあなたにいやみを申し上げて申しわけないけれども、あなたは非常に性格の強い人だから、あなたはともするとこういう検察陣なんかにあなたの意思をさっと入れて、これはいいかげんにしておけとか、これは徹底的にやれとかいうようなことをやりかねない方だと思っているから、なおさら心配だから私はこれを言うのです。  私は演説に来たわけではありませんから余りくどいことは言いませんけれども、いまはわれわれの仲間の中では、いわゆる指揮権発動ということを言わないでやみ指揮と言う。やみ指揮権というものは、もはや検察陣営と法務省関係における通例だという言葉流れているのですよ。法務大臣やあるいは総理大臣やあるいは権力者が、検察庁それはやめろ、それはやるな、明確にはそんなことは言わないけれども、もみ手か何かして大臣が、そろそろどうだね、いいかげんにしたらというようなことで、やるともやらぬとも言わないが、まあ事をいい程度にしておさめたらなどというようなことを言われると、いわゆる立身出世を目途にしている検事さんの方も、生涯飯を食うといえば一ランクでも上に出世した方がいいから、大臣の意向がそこにあるならばやはりその程度にしておこうか、こういうような形がいまは通例ですよという、そういうたれ込みといいますか意見の陳情がわれわれのところに山ほど来ているのです。  もしそんなことであっては大変だと思うのでありますから、純然たる正対不正という一つの基本的な形の上に立って、正しからざるものはあくまでもやはり身命を賭して堂々と追及していく、私は、そういう姿勢と形が検察陣に欲しいと思うのでありまするから、その立場質問しているのですよ。どうですかいま一回、そっちの方が好ましいなんて言わないで、検事総長、次長検事あるいは検事長あるいは検事あるいは副検事、これはやはり一つ一つ独立した身分だから、それを異動、転勤せしめる場合にはちゃんと本人の承諾を要するんだ、この解釈が正当だというきちっとした物の言い方ができませんか、どうですか。
  106. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどお答えしたとおりでございまして、法解釈としてはいろいろな考え方があり得るだろうということで、その一方を一概に間違いだと言うまでにはまだいってないわけでございますけれども、そういう解釈を仮にとりましても、運用上、先ほど来大臣も仰せになりましたように、きちっと、そういうことのないように、心配のないようにしていただくということでございますので、御心配はないというふうに御理解を賜りたいわけでございます。
  107. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは、余りしつこいようですけれどもいま一回お伺いをしますが、大橋・木内論争といいますか、この争い以外に検察陣営の異動に対してこういうことがその後繰り返されたことはございませんか、一回もございませんか。
  108. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘のいわゆる木内問題と言われておりますのは昭和二十六年のことであったと思いますが、それ以来三十年をもう経ておるわけでございますけれども、その間似たような問題が起こったということは全然聞いておりませ  ん。
  109. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは次の問題に移りたいと思います。  何しろ三十分しかない時間でございますから、まとまった問題の質問はできませんが、この問題も、これは質問をいたしますとちょっともろ刃のやいばになる傾向があるのでやりたくもないのですが、いま平沢貞通さんの救援運動というものが大衆運動としてずっと続けられておりますが、私もその運動に参画している。いわば人道上の立場からも平沢さんを私はぜひ助けていただきたい、もう高齢でありまするし、生きたしかばねみたいなものでありまするから、むしろお助けした方がいいと思ってその救援運動には関係しているんだが、しかし私はその立場で物をいまここで言おうとしているのではないのでありまして、平沢さんの最高裁の判決が決定したのは一体何年何月でしょう。申し上げるまでもなく戦後間もないころ、いわゆる銀行において十三人を毒殺をしたという事件でございますが、最高裁までいって死刑が確定判決いたした。それから一体何年たっているのか何十年たっているのかわかりませんが、その間死刑は執行されない。  われわれ救援運動をやっている者から見れば非常に結構だと思いますけれども、されなかった理由の中には、再審の申請を彼がずっと続けていたということから、再審の申請が続いている限りは死刑の執行ができないということはわかっております。その後一体これがどうなっているのか、私はちょっとわからない点があるのでありますから、これをお伺いするわけであります。
  110. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 私からお答えするのが適当かどうかと思いますが、現在のところは、恩赦の出願がなされておりまして中央更生保護審査会においてその当否について検討がなされている、かように承知しております。
  111. 小林進

    ○小林(進)委員 もう一回お伺いしますが、いま恩赦の手続が行われているということでございますか。その恩赦は平沢個人に対する恩赦でございますね。
  112. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 恩赦のための手続と言うとまあ誤解があるかもしれませんが、恩赦の申し出があって、それを中央更生保護審査会で審査をしているということでございます。
  113. 小林進

    ○小林(進)委員 そういたしますと、恩赦の申請があって審査会でそれを審査しているという場合にはその判決の執行を停止せしめるというようなことは、どこか法律の根拠があるのでございましょうか。
  114. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど再審のことにもお触れになりましたけれども法律的には再審の申し立てがございましても直ちに執行停止ということではないわけでございます。  それと同じように、恩赦の申請がございましてもその審査中に当然に執行がとめられるというわけではございませんけれども、従来の扱いといたしまして、まあよほど極端に同じことを何回も何回もやって、それが全く同様の申し立てであるというような場合は別といたしまして、再審中であるとか恩赦の審査中であるということは十分勘案しながら手続を進めているということでございます。
  115. 小林進

    ○小林(進)委員 どうもこういうことの質問はやりづらいのですが、そうすると裁判所が、三権分立でありまするから立法、司法、行政ですが、その司法当局が最終的な判決を下した、それに対して本人の方から再審の申請があるあるいは恩赦の申請があったという場合に、それを無視といいますか、かかわりなしに裁判所の決定を執行する場合もあるし、あるいはいまのお話ではまあ執行しない場合もあるという、執行したりあるいはしなかったりする判断は、これは司法がやるのですか行政がやるのですか。どちらが一体その判断をするのでございましょうか。
  116. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、再審の審査中であるとかあるいは恩赦の申請があってその審査中であるという場合に、それを頭から無視してやるということはないわけでございますけれども、一般論として申し上げますと先ほども申し上げたようなことでございます。  なお、お尋ねのその判断はどうするかということでございますが、死刑の執行命令は刑事訴訟法に規定がございまして大臣が命令されるということになっております。
  117. 小林進

    ○小林(進)委員 そこを私は自分の頭の中でひとつ判断をしてみたいと思うのですが、どうもわからないのです。死刑の判決の執行は大臣がおやりになるということ、そうすると大臣は大臣の意向で——三権分立の一つでございますね、それぞれ独立しているけれども、司法の決定したことを行政がそれを左右することができるという、こういうことになるのですか、どうでしょう。
  118. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お言葉にありましたように左右するという言葉が当たるかどうかと思いますけれども、いま仰せになりましたように、裁判が確定をいたします。そうすると、それを執行するのは検察官になるわけでございます。ただ、死刑の場合には特に慎重な扱いということで、一線の検察官の判断だけではなくて、特に法務大臣の命令があって初めて刑の執行をする、こういう手続が決められておるということを申したわけでございます。
  119. 小林進

    ○小林(進)委員 私がお伺いしたいのはそこなんですね。死刑という言葉になりましたけれども、平沢さんという具体的な名前が出るとどうも支障があるので困るのでありますけれども、三権分立のたてまえの中で、司法が一つの結論を出したものを行政が左右することができるかということなんです。  そういうことが可能だということになると、三権は画然としたいわゆる独立体制ではなくて、何か行政が司法に優先する、そういう形にならざるを得ない、あるいは司法の決定を右にも左にも引っ張ったり伸ばしたり縮めたりできるということになるじゃないか、それを私は聞いているのです。おかしいじゃないですか。それならば裁判の尊厳というもの、昔の言葉で言えば天皇の裁判で、言うなれば神聖だ、そういうものがこれで一体守られるのかどうか、こういう問題が出てくるじゃないかと私はお伺いしているのですよ。あなたは私の言っていることが何か矛盾しているとお考えになりますか。結果的にはそうなっているんじゃありませんか。どうですか。
  120. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどもお断りしましたように、裁判が確定いたしますとそれを執行しなければならない、これは当然のことでございまして、執行の場合にはその指揮をするのは検察官ということになっております。  したがいまして、仰せになりましたように、裁判で決まったものを全然やらないで済ませるとかいうような意味で左右するということはないわけでございまして、当然決まったものは決まったとおりに執行する。ただその場合に法律上、たとえば病気で執行にたえないというような場合には執行を停止することもできるという明文の規定もあるわけでございますが、そういう理由があります場合には延期する場合もございますし、それぞれ法律に定まった手続によって執行がなされることになっているわけでございます。
  121. 小林進

    ○小林(進)委員 もう二時になって、私は次の会合に行かなくてはなりませんので、用意した質問は残念ながら一つもできません。  きょうはもうこれで終わりますが、誤解があるといけませんから申します。平沢さんは死刑の判決が何年前に下ったかわかりませんけれども、私どもがやっている救援運動に基づいてぜひ何とかこの人の命を助けてもらいたいと私は考えておりますから、これはひとつ誤解のないようにしていただきたい。ただ、それとこれとは別ですけれども、司法と行政というものは、画然と三権分立という憲法のたてまえができている限りは、司法の決定は決定、それは正しく行われなければならない、行政は行政に徹し司法の関与は許さない、そういうたてまえでいかなければならぬと私は思うのであります。いまも申し上げまするように検事行政、検察行政というものは準司法だ、これは普通の行政と違って行政庁、法務省の干渉は受けない、独立の体制で正対不正に立脚して堂々と正しさに向かって邁進していく、そこに国民の全幅の信頼があるわけでありますけれども、どうも最近はそれが、人事の面やらあるいはやみの指揮権発動等によってその尊厳が侵されているという心配が国民にあるから、この点はどうしても私どもは、これはまだまだ序の口で、幾つも例を出して、法務委員をやっている以上はこれからも執拗にこれを追及さしてもらいたいと思っております。  あわせて、これに関連していま司法と行政との関係も、平沢さんには悪かったけれども一つの例を出したのです。こういうところにもしかし何か割り切れないものがあるのではないかということを御質問をしたわけでございますが、ちょうど時間が来ましたから、まとまりのない質問になりましたけれども、これで私は一応終わります。また改めてやらしてもらうことを楽しみにいたしまして、きょうのところは終わります。ありがとうございました。
  122. 高鳥修

    高鳥委員長 安藤巖君。
  123. 安藤巖

    ○安藤委員 この前、八月二十七日の当委員会におきまして私は法務大臣に、大臣が七月の二十八日に検察合同庁舎あるいは最高検、ここへお出かけになったことについて質問をさせていただきました。あのときはほかにもいろいろありましたので、ちょっと触れただけですので、きょうはその続きをちょっとお尋ねしたいと思います。  この七月二十八日に辻検事総長とお会いになったわけですか。
  124. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 日は覚えておりませんが、安藤さん御承知でございますからそのとおりだと思います。
  125. 安藤巖

    ○安藤委員 辻検事総長にお会いになったのはこの七月二十八日だということですが、前に私の方が新聞の記事を引用しましてお尋ねしましたし、七月二十八日ということは間違いないと思うのですが、これは検事総長の方から大臣に対して会いたいからというような要請があってお会いになったのか、あるいは大臣の方から積極的にお会いに行かれたのか、どちらでしょうか。
  126. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私が検察庁を視察したい、そういうことで参ったわけであります。
  127. 安藤巖

    ○安藤委員 検事総長にお会いになって、どういうような話をなさった御記憶ですか。
  128. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 正確に覚えておりませんけれども、雑談の程度を出ないと思います。
  129. 安藤巖

    ○安藤委員 この前もこの東京新聞の記事を引用してお尋ねしたと思うのですが、辻検事総長と話をした際、あと五年ぐらいかかるという報道があるがというふうに尋ねた。これはロッキード裁判のことについて東京新聞の記者が大臣に尋ねたことに対する答弁になっているのです。だから、この七月二十八日のときに辻検事総長と話をされて、いまのロッキード裁判の審理期間の問題についてお話しになったのかどうか。いかがですか。
  130. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そのころ、どこの新聞でございましたか覚えておりませんけれども、ロッキード裁判が五年かかるとかいうような式の記事が出ておったように思います。したがいまして、雑談の中でそういうことも一つの話題になっただろうと思います。
  131. 安藤巖

    ○安藤委員 まあ一つの話として、雑談の中でお話をなさったというようなことですか。あと五年ぐらいかかるというようなことを言う報道もあるがというふうにお尋ねになったという御記憶はありますか。
  132. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は常日ごろ、日本の裁判は長くかかり過ぎるなということを思い続けておりますので、そういう意味で私から、裁判は長くかかる、何とか短くいかないものでしょうかな、こんなことは恐らく言うただろうと思います。
  133. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、一般的にこれはいろいろ言われておりますように、早く済むのもありますけれども裁判が長くかかるのもあるので、その関係については裁判が長いという意見がいろいろ出ている。こういうことを踏まえて、一般的に大臣が検事総長に対してそういうお話をなさった、大体いまの御答弁はそういうことだと思うのですが、ロッキード裁判について、審理期間の問題についてお話しになったというようなことではないのですか。
  134. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま申し上げましたように、どこの新聞でございましたか、ロッキード裁判が五年かかるとか何年かかるとか、ちょうどそのころに出たと思います。ですから雑談の中にそれも触れたと思います。しかし私の頭の中にありましたのは、率直に申し上げますと、選挙の争訟ですね、これが百日裁判と書いているにかかわらず何年もかかっている、これでいいんだろうかなという気持ちがございますので、裁判が長くかかりますねという話の発想になっていると思います。  私の聞いております範囲では、刑事裁判が一審で一年以上かかるような国は余りないように伺っております。ところが、日本の場合は刑事事件裁判はずいぶん長いようでございますし、選挙争訟につきましては、いま申し上げましたような規定が置かれているにかかわらず、それでもなおかつ何年もかかっている。どこに原因があるかは別にいたしまして、好ましくない傾向だなと思っているわけでございます。
  135. 安藤巖

    ○安藤委員 私は一般的な問題として質問をいたしておるわけではなくて、最初にお尋ねいたしましたように、この東京新聞の記事によると、ロッキード事件裁判の審理の経過あるいは審理期間について辻検事総長と話をして、先ほど答弁の中にありましたように、まだあと五年ぐらいかかるというような新聞記事もあるがということをお踏まえになってのことだろうと思うのですが、五年ぐらいかかるというような報道もあるけれどもどうだということをお尋ねになった、そうしたらそんなにかからぬだろうということだったというのが新聞の記事なんですが、だからそういうようなロッキード裁判の審理期間についてお話をなさった、その話の中身にはそういうものもあったということはお認めになるわけですか。
  136. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま伺いますと、朝日新聞にその記事が出ていたようでございます、五年というのが。だから、雑談の中でそういう記事もあったがというようなことを私恐らく言っただろうと、こう思うわけでございます。
  137. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、一般的な事件も含めて、ロッキード事件裁判ももっと審理を早めてほしいという希望というのか、お気持ちというのか、期待というのか、そういうようなお考えを大臣としては持っておられるわけですか。
  138. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そのときにそういう端的な希望を言ったかどうか知りませんけれども、私としては、すべて刑事事件に係る裁判はもっと早く済ませられないものかなという希望は持っているわけでございます。
  139. 安藤巖

    ○安藤委員 私がお尋ねしておるのは、辻検事総長とお話しになったときに、ロッキード事件裁判の審理の期間のこともお話しになった、そのことは大臣は否定をしておみえにならないわけですね。どうですか。
  140. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 一般的な雑談の中で、繰り返し申し上げますように、新聞記事がございましたから、それは話題になっただろうと思います。しかし、特にロッキード事件だけを取り上げて、どうこうしろ、どういうふうにしてもらいたいというようなことは申しておりません。
  141. 安藤巖

    ○安藤委員 一般的な話の中でロッキード事件裁判の審理の期間の問題についても話をしたというふうにいま答弁になったのですが、そうしますと、それは一般的な話の中でそういう話をしたんだというようなふうに一見とられるようですが、やはりロッキード事件裁判についてという一つ事件、あと一般の事件は一般なんですからその他大ぜいの中に入るわけです。そして、その中でロッキード事件裁判というのが出てくるということになると、ほかの三つ四つの事件も挙げられて、そしてその中の一つのロッキード事件裁判というのでなくて、ほかは幾つかある一般の事件、そしてロッキード事件裁判についての審理期間ということになりますと、受け取る側としましては、この新聞の報道を見た側としましては、私どもとしましても、やはりこのロッキード事件裁判の審理期間について法務大臣として検事総長に対してお尋ねになったというようなことになるのではないかと思うのですね。  だから、これは検察庁法の第十四条、この前も言いましたけれども、これで審理促進ということについて、いわゆる指揮権発動ですか、そういうことをなさったのかなというような疑念も持たざるを得ないのですが、どうなんですか。
  142. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 検察庁の視察に行ったときの雑談でございますし、ほんの二、三分のものじゃなかったかな、こう思うわけでございまして、特定のことについて私が要請するとか立ち入っていろいろな議論をするとか、そんな時間はございませんでした。そんな話でもありませんでした。  同時にまた、私は、検察が国民の信頼を得るということが日本の政治の信頼を得る基礎になる、こうも思っておるわけでございますし、したがいまして、自由濶達に検察の皆さん方がその職務を執行できるようにその環境を守っていかなければならない、そういう気持ちを非常に強く抱いておりますし、これからもそういう姿勢で私なりの職責を果たしたい、個々の事案について干渉がましい姿勢はとるべきではない、こう思っております。
  143. 安藤巖

    ○安藤委員 私がこういうことをお尋ねするのは、最近ロッキード裁判の特に丸紅ルートの公判におきまして、最近と言いますと具体的には九月二十四日の公判期日における法廷で、田中角榮弁護団がこれまでの戦術から一転して審理の促進を求めた、こういうふうに聞いておりますし、そういうふうに戦術の転換を図ったというような記事もあるわけですね。こういうような事実は大臣は御存じでしょうか。
  144. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 承知しておりません。
  145. 安藤巖

    ○安藤委員 大臣としては、ロッキード事件裁判の行方あるいはその進行については、一般論としてでなくて相当重大な関心は持っておられるのではないかと思うのですが、そういうことは御存じないのですかね。  これはサンケイ新聞、ことしの十月十五日。サンケイ新聞なんかは自民党の方は一生懸命読んでおられるというふうに聞いておるのですが、こういうふうな大きな特集記事です。これに先ほど言いました「九月二十四日の法廷で、これまでの戦術から一転、裁判所側に審理促進を求めた。」そして「検察側請求の職務権限に関する書証の採用にも同意した。」こういうような記事が載っているわけです。それからこれは朝日新聞、同じ十月十五日の日付、これは社説です。これにも、全日空ルートでの若狭得治被告に対する求刑が行われたということと関連をして、田中弁護団が審理促進の動きを見せ始めたという指摘もあるのです。  私、ほかの新聞までまだ目を通しておりませんけれども、いま挙げました範囲でも二つの新聞がこういうふうに書いているわけですね。全くそういうようなことはお気づきにならなかったのでしょうか。
  146. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 申しわけありません。
  147. 安藤巖

    ○安藤委員 先ほどもちょっとお尋ねしたのですが、ロッキード事件裁判の行方についてあるいは審理の促進の問題について、大臣としては全く関心は持っておられないのでしょうか。
  148. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 重大な事件でございますから関心を持っております。
  149. 安藤巖

    ○安藤委員 これは大臣が知らぬとおっしゃるから何ともしょうがないのですが、辻検事総長に対する審理の促進の問題について、先ほどから言いますように、ロッキード事件裁判ということを一般の事件の中から取り出してきての雑談の中の話だとおっしゃるのですが、審理の促進について、指揮権の発動というふうに言われないまでも、注文をつけたとかあるいは口をはさんだとかというようなことになるのではないかと思うわけなんです。だから、その点は相当慎重に構えていただかなければならぬのじゃないかというふうに思うのです。  特に私が言いたいのは、先ほどの検察庁法の十四条で、一般の検察官に対してはいわゆる一般の指揮権、一般の指揮としか規定がない。個別事件については検事総長のみを指揮することができる。だから法務大臣と検事総長とは、個別な事件について指揮することができる、こういう関係にあるわけなんです。そういう関係にある法務大臣と検事総長が、雑談の中だとおっしゃいますけれども一つの特定の事件を持ち出してきて、その事件の審理の促進の問題についてお話をなさったというようなことになると、これは重大問題じゃないかと思うのです。だから、その辺のところha厳に戒めるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  150. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまおっしゃいましたような底意を持って私が話題に供したといたしますならば、記者会見でそんなことは口にもしなかっただろうと思います。同時にまた、当時新聞にそのロッキード裁判が何年かかるというようなことがなければ、話題にもならなかったんじゃなかろうかな、こう思っております。
  151. 安藤巖

    ○安藤委員 その辺のところは全く気にとめていなかったから新聞記者の人にも話をしたんだとおっしゃるのですが、そこが問題じゃないかと思うのです。  その辺のところは大いに気にしていただかないと、辻検事総長と法務大臣との関係先ほど申し上げましたような関係なんですから、法の明文で規定されておる関係なんですから、そういう関係の方々が、雑談の中とはいえ一つの特定の事件について、まさに個別事件についてその審理期間の促進の関係について話をされるということになると、やはり一般的には審理の促進となると、大臣もおっしゃったように、このロッキード事件裁判でも審理を促進してほしい、何とかならぬものだろうか、五年間もかかるというがどうだ、こういうことでしょう。そうすると、この個別事件であるロッキード事件裁判について法務大臣が指揮されるというようなことがあったのかなという疑念を持たれることになるわけです。だから、これはいまおっしゃったように、もともとそういうような問題は考えていないから新聞記者の人にもそういうふうに話をしたんで、別に何ということではないということではなくて、やはりその辺のところは慎重に構えていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  152. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 安藤さんの御意見、よく心にとめておきます。
  153. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、このロッキード事件裁判について、法務大臣として、検察側に対してどういうことを期待しておられるのでしょうか。
  154. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 検察側は検察側として信ずるところに従って公正にその職務を遂行してもらいたい、こう思っております。
  155. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、いま公判の真っ最中でありまして、検察側としては一生懸命訴訟活動をしておられるわけですね。先ほど言いました東京新聞でも大臣は、「この事件では」——もちろんロッキード事件裁判のことですが、「検察庁は自信を持って立証している。」というふうに言っておられる。これは当然のことだと思うのですね。  ところが検察官が法廷で起訴状を朗読、冒頭陳述から始まって立証活動をいましているところなんですが、この立証活動は、当然これは罪となるべきものである、罰せられるべきものであるということで起訴をして、現在も公訴を維持しておられるわけですね。ということになると、有罪判決の宣告を目指して努力しておられると思うのです。その点は間違いないのでしょうね。
  156. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そのとおりだと思います。
  157. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、大臣としては、このロッキード裁判で被告人らが有罪になるということを期待しておられるということになりますか。
  158. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 被告人は真っ向からそれを否定しておられるわけでございまして、それはまたそれなりに所信を貫かれたらいいことじゃないか、こう思います。それらの上に立って裁判所がまた公正に判決を下してくれるものだ、こう期待しております。
  159. 安藤巖

    ○安藤委員 いま大臣がおっしゃったお話は、一般の国民あるいは評論家としての立場の話だったら、それでもいいと思うのです。  そこで私は最初にお尋ねして、検察側に対してどういうようなことを大臣として期待しておられるか——公正に任務を遂行でしょう。その任務の遂行というのは、いまも公訴を維持しておる、ということは、罪となるべきものだ、罰せられるべきものだということで起訴をして、そのために有罪の宣告を裁判所に出してもらいたいと思ってやっておるわけなんですよ。そのことを法務大臣としては期待してなくて、片一方は否認している、片一方は有罪だということでやっているからという第三者の立場ではないのではないかと思うのですが、どうですか。
  160. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま私が申し上げたとおりに考えております。
  161. 安藤巖

    ○安藤委員 そうなると、これは公判廷はもちろん攻撃と防御の立場ですね。検察側の方は攻撃する方ですよ、有罪だということで。弁護側は、いやそうではないということで反証を挙げるなり否認して防御する方ですよ。その間に立って裁判所が厳正公正な判断をお示しになる。  法務大臣は、その検察側の国の訴追権に基づいて訴追をしている、その訴追権の行使を担当している政府機関の長なんですよ。その人が、片一方は否認している、片一方は有罪だと言っている、裁判所判断をしてくださるでしょうという立場では通らぬのじゃないですか。
  162. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 検察庁もその所信に従って公正に職務を執行する、それを私は守っていかなければならないと思います。同時にまた、被告人もその所信に従って無罪と信じているところを堂々とお述べになったらいいと思うのでございまして、その結果両者を踏まえて裁判所が公正な判断を下すわけでございますから、私は、その裁判が公正を欠いてくれるように期待するなんということを思うべきではない、公正な判断裁判所が下してくれるということを期待をすべきだ、こう思います。
  163. 安藤巖

    ○安藤委員 余りくどいことを言いたくないのですが、裁判所が公正な判断を下すということを御期待になる、これは当然だと思うのです。これはすべての国民皆そうだと思うのですが、先ほどから私が言いましたように、法務大臣としての立場は、とにかく検事総長を通じて、直接ではありませんが個別の事件について指揮することができるという立場にある。そして先ほどから言いましたように、検察官がこのロッキード事件について公訴を提起して、そして訴訟活動を遂行して公訴を維持しておるというのは、国の持っておる訴追権に基づいてやっておると思うのです。その訴追権を担当するのは法務省ですよ。その長が法務大臣です。  そういうことになりますと、裁判所が公正な判断をしてくれるでしょうということではなくて、先ほどから大臣も検察官が公正にその職務を遂行してくれることを期待しているとおっしゃっているわけですから、いまこのロッキード事件の公判を担当している検察官は、法廷でその職務を遂行して裁判所に公正な判決としての有罪判決を宣告してもらうために努力しているのです。職務を遂行しているのですよ。そのときに法務大臣が、いやこれは裁判所が公正な判断をしてくれるだろうから、被告の方は否認しているのだろうからということで何も明快な態度をおとりにならない、あるいは考えもお示しにならないということであれば、公判で一生懸命職務を遂行して有罪判決の宣告を受けようと思って努力している検察官の士気にも影響するじゃないですか。その辺のところはどうなのですか。
  164. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私がいまお答えをしたとおりでございます。同時に、私のお答えしたところによって、検察庁の皆さんたちは疑うことなく所信に向かって努力を続けてくれるものと考えております。
  165. 安藤巖

    ○安藤委員 余り押し問答はしたくありませんが、念のためにさらにお尋ねしておきます。  そうしますと、いま東京地検の検察官の人たちが公判廷で公訴を維持して立証活動を一生懸命やって、被告人の人たちを裁判所の公正な判決によって有罪判決にしようとして努力しておられる、これはお認めになりますね。
  166. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 検察庁がクロだと考えるから起訴してきておるわけでございますから、その目的が達成されるように努力しておることには間違いないと考えます。
  167. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで最後に一つお尋ねするのですが、その検察官の訴訟活動について成果が上がることを法務大臣としては全く期待していないのですか。
  168. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私はどこに真実があるのかはよくわかりませんけれども、それは裁判所が公正な判断を下すものだ、こう考えておるわけであります。
  169. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が来ましたから野間委員に譲りますけれども、ちょっとくどいようですが、いまの大臣の御答弁法務大臣答弁じゃないと私は思うのですよ。  検察官がクロと認定したから公訴を提起している、そのことはいまお認めになったわけですね。となると、その訴追権を遂行している検察官の行動が効果あるようにというふうに期待するのが、訴追権の行使を担当している政府の機関の長である法務大臣として当然のことだと思うのですが、その当然のことも期待されないというようなことでは、これは問題だと思うのです。そのことだけ最後にお尋ねして私の質問を終わります。どうですか。
  170. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 相反する意見の対立になっているわけでございまして、まげてまで裁判所が検察庁の主張に同意しなければならないというわけのものではない。やはり国民全体の立場に立ちまして真実がどこにあるかということを究明していただいて、その結果に基づく判決をなされる、法務大臣としても公正な裁判所の活動を期待する、こう申し上げたいと思います。
  171. 安藤巖

    ○安藤委員 私はこれで終わります。
  172. 高鳥修

    高鳥委員長 野間友一君。
  173. 野間友一

    ○野間委員 いま安藤委員質問したことに関連して一言聞きたいと思うのです。  刑事局長、ちょうどあのロッキード事件のころ、私は安原刑事局長に対してあれこれ質疑をしたわけでありますが、その中でも、確信があるから起訴し訴追をする、こういう明確な答弁があったわけですけれども、現に起訴されていま訴訟は進行しておるわけであります。そこで、起訴後の公判の進行について順調にいっておるというふうに刑事局長は考えておるのかどうか、まずその点。
  174. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 順調という言葉をどういうふうにとっていいかむずかしい問題だと思いますけれども、検察官といたしましては最大の努力を尽くして立証活動を行っている、かように理解しております。
  175. 野間友一

    ○野間委員 それでは、当然に有罪の立証を済まして有罪の判決を期待していま懸命に努力をしておる、こういうことですね。
  176. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど大臣もお答えになりましたように、検察官といたしましては有罪であるという考えで起訴し、公判の維持に当たっているわけでございます。
  177. 野間友一

    ○野間委員 いま検察官が、まあ検察庁特に東京地検が一生懸命訴追活動をやっているわけですけれども法務大臣はそれを叱咤激励して検察官が職務を忠実に執行するということを期待し、そのための督励をするということは当然でしょう。
  178. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 検察庁が公正にその職務を執行できますように体制を守っていかなければならないと思っています。
  179. 野間友一

    ○野間委員 それでは質問を変えます。いまちょうど予算編成の時期に当たりますので、私は国選弁護人の報酬等に関して若干の質問をいたしたいと思います。  まず初めにお聞きしたいのは、わが国における国選弁護制度をどう認識し考えておられるのか。最高裁もお越しなので、法務大臣最高裁両方にお聞きしたいと思います。
  180. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 国選弁護人と申しますのは、もう十分御案内のとおり、憲法三十七条三項が保障しております刑事被告人に対する権利保障の非常に重要なものの一つであるというように考えております。  現実の刑事裁判の中におきましても、第一審の通常事件においては、昭和五十四年において国選弁護人の占める比率が約五四%ほどになっております。そういたしますと、国選弁護人の刑事裁判における地位というのは非常に大事なことで、刑事裁判が公正に行われるためには、国選弁護人の適正な活動というものは非常に重要なものであると考えております。
  181. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 最高裁判所からお話しになったとおりでございまして、刑事被告人を守っていくために重要な制度だ、こう思っています。
  182. 野間友一

    ○野間委員 確かに憲法上保障された権利であるわけですが、この運用については形式的なものではだめだというふうに私は考えておるわけですね。刑事裁判の適正手続に関する保障、一つは有効かつ十分な防御権を行使し得る弁護人を付する義務、それから二つ目は有効かつ十分な防御権を行使し得る諸条件あるいは諸制度の完備というものが当然必要になってくると思うのですが、いかがでしょうか。
  183. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございまして、ただ形式的に国選弁護人を付すればよろしいということではなくて、それが適切有効な弁護を確保するというものでなければならぬ、またそのためには、それに必要な諸条件を整えるということに努力をすべきであるというように考えます。
  184. 野間友一

    ○野間委員 刑事裁判における弁護、先ほど最高裁の方から言われたわけですが、私選と国選ですね、これは約半数ということになろうかと思いますけれども、この私選弁護あるいは国選弁護のいずれを問わず、その役割りとか地位については同一であるいうふうに私は理解しておりますが、いかがでしょう。
  185. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 仰せのとおりに考えております。
  186. 野間友一

    ○野間委員 さて、その報酬等について入るわけですが、国選弁護人に対して支給すべきものにはどういうものがあるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  187. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 これも十分御案内のとおりでございますけれども、刑事訴訟費用等に関する法律で、そのもとは刑事訴訟法にあるわけでございますけれども、弁護人に給付すべきものとしては報酬それから旅費、日当、宿泊料、こういう項目が定められております。
  188. 野間友一

    ○野間委員 すでに御案内のとおり日弁連等からも毎年要請をしておるわけですが、記録謄写とか交通費、通信費、これの実費支払いは一体どういうことになっておるのか。
  189. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 交通費などにつきましては、先ほど申し上げました旅費の中に入るかと思いますけれども、これは刑事訴訟費用等に関する法律が定めている範囲のものでございまして、つまり実際の公判期日あるいは公判準備等に出頭なさった場合の交通費、それ以外の、たとえば訴訟準備活動のために被告人等と面会をするための交通費、こういったものはいわゆる交通費には入りませんで、報酬の中にその一部として繰り入れる。交通費につきましてもそうでございますし、通信費あるいは記録謄写料、こういった刑事訴訟費用法の定める以外のいわゆる実費的なものは報酬の中に含めてお支払いする、こういうことになっております。
  190. 野間友一

    ○野間委員 従前から当委員会における論議の中でも、たとえば記録謄写が膨大なもので費用がかかったという場合には、特別に申請をすればその分を配慮して報酬額を決めるというような答弁が実はあるわけですけれども、いま実務についておる弁護士で、国選弁護をやる中で、記録謄写あるいはいま言われた訴訟準備活動における交通費、タクシー代等々ですね、あるいは通信費がずいぶんかさみまして、いまでは報酬の一割を上回っている、したがってこれは報酬とは別に実費として請求すれば支払いをするように、特別の場合に対する処置でなくて、請求すればこれを支払うというふうにぜひ別枠の予算を組んでくれという要求があるのは御案内のとおりだと思います。これに対する考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  191. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 ただいま仰せになりましたような実費については別枠で支給できるようにすべきではないかという御要望、たとえば本年も日弁連の御要望にその趣旨のものがございました。ただ現行法上は、ただいま申し上げましたように、訴訟活動等に要した実費は報酬の中に入れてお支払いをするというふうな仕組みになっておりますので、これを報酬とは別個に実費としてお支払いするということは、現行法のたてまえ上はできないことと考えます。  ただ、先ほどおっしゃいました非常に多額の記録謄写料等を必要とした場合には、所得税の源泉徴収からの除外をするというふうな扱いをいたして、特に実費を報酬の中に十分に含めてお支払いをするような運用をしておるところでございます。
  192. 野間友一

    ○野間委員 刑訴法の三十八条だと思うのですが、これの運用によって、いま現に特別にかかった謄写料については報酬の中に含まれておるわけですから、これは、たとえば交通費にしたって通信費にしたって、一つの報酬の枠の中で三十八条によって当然操作できると私は考えておるわけです。ですから、法のたてまえ上許されないのではなくて、運用上できるというふうに私は考えておりますが、いかがですか。
  193. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 国選弁護人に報酬をお支払いする場合に、仰せになりましたような実費について弁護人の方から疎明の資料などをお出しいただいて、その点も十分に考慮した上で報酬を定めるというふうな運用は可能であると思いますし、現実にそのような運用は相当行われておるというふうに考えます。
  194. 野間友一

    ○野間委員 これはやはり別枠で予算要求をぜひしてほしい、これは懸案の宿題にして、私の方も今後も引き続いて論議をして、ぜひその要求を満たしてほしい、こういうふうに思います。  そこで報酬についてお聞きするわけですが、報酬とは、法律的な性格は一体何なのか、だれが決めるのか、どういう基準によって決めるのか、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。
  195. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 報酬の性格ということでございますけれども、これはやはり国選弁護人の訴訟活動について、それにふさわしい対価と申しますとちょっと語弊があるかとも思いますけれども、そういうものであろうかというふうに思います。  だれが決めるかということでございますけれども、これは刑事訴訟費用等の法律によって受訴裁判所が相当と認める額を判定して定める、こういうことになっております。
  196. 野間友一

    ○野間委員 決める基準ですが、最高裁では一応の基準額をつくっておられるわけですけれども、これはそうなのかどうか、そして現在どのようになっておるのか、具体的にお答え願いたいと思います。
  197. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 報酬を最終的にはただいま申し上げましたように受訴裁判所が定めることになりますが、その受訴裁判所の支給決定をなさるについての一応の参考ということのために、最高裁判所として支給の基準を毎年予算が改まるに応じて通達として出しております。  その通達の内容でございますけれども、本年、昭和五十五年の分につきましては、各審級ごとの裁判所について定めておるわけですけれども、代表的なものとして、地方裁判所の実質審理が三開廷あったという分については四万九百円、こういう基準を各裁判所にお示ししております。
  198. 野間友一

    ○野間委員 簡裁が二万九千三百円、家裁が四万円、高裁が四万四千二百円、最高裁が四万七千六百円、これはいずれも三開廷ということを基準にして一定の基準を決められておるわけですね。いま地裁の場合を言われましたけれども、そうじゃないでしょうか。
  199. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 昭和五十五年の分につきまして申しますと、簡易裁判所が一件の開廷回数三回の場合に二万九千三百円、家庭裁判所が一件の開廷回数三回の場合につきまして四万円、先ほど申し上げましたが地方裁判所が一件の開廷回数三回につきまして四万九百円、高等裁判所は同様一件の開廷回数三回につきまして四万四千二百円、最高裁判所は一件の開廷回数二回につきまして四万七千六百円、このような基準を定めております。
  200. 野間友一

    ○野間委員 私が指摘したとおりですね。これは最近では毎年若干の手直しをされておることは私も承知しておるわけであります。ただ問題は、要するにこの報酬額が適正かどうかということについて言いますと、これは相当安いと言わざるを得ないと思うのですね。先ほど刑事局長も言われましたけれども、私選であれ国選であれ仕事の中身には変わりがない。被告人の防御権の行使を十分全うさせることあるいは憲法上の具体的な法廷手続、適正な手続を保障しなければならぬという観点からの報酬を決めなければならぬということになろうかと思います。  しかもこの決め方について、一応最高裁判所はいまのような基準額を決められておるわけでありますけれども、日弁連の報酬等基準規程というのがありますね、これとの関係で言いますと、当初に比べてずいぶんといま開きが目立つわけですね。いま出ております日弁連の要求は最低十万円、標準的な事件の処理についてそういう要求が出ておるわけでありますけれども、この日弁連の報酬等基準規程といわゆる国選弁護人の報酬との関係ですね。これは決め方そのものに関係するわけでありますが、決める基準額といま申し上げました日弁連の規程、これとの関係ではどのように理解されておるか。
  201. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 本年度の予算要求に当たって日弁連から要望がありましたのは、仰せのとおり地方裁判所の標準事件一件当たり金十万円以上という御要望が出ております。最高裁判所といたしましては、こういった日弁連の要望あるいは各地の弁護士会等でいろいろな協議会等の折にお出しになられる御要望等も十分に承って、それを頭に置きながら基準額といいますか予算要求の枠を考えていくということでございます。  最高裁判所の基準額と日弁連の要望なさる額とがかけ離れ過ぎているのではないかということでございますけれども、それにつきましては、日弁連の基準額というものが過去かなりの上げ幅をもって上げられたというふうないきさつとか、実際問題として私選弁護人の方々がこの日弁連の基準額どおりの報酬を受けておられるのかどうか、その辺の実態も十分把握できないということもございまして、現在国選弁護人の報酬支給基準を直ちに日弁連の要望なさるような額に近づけるべきであるとまでは言いがたいのではないかというように考えております。
  202. 野間友一

    ○野間委員 四十七年六月十二日、参議院の法務委員会の中で当時の牧さんがこういうふうに言っておりますね。「私どもが一応考えておりますのは、日本弁護士連合会で報酬等基準規程というのをお定めになっております。その報酬等基準規程を一応の基準といたしまして、できるだけそれに近づけた報酬を支給できるようにいたしたい」その後「できるだけ私選弁護人の分が十といたしますれば十に近づけたいと考えている」というような答弁がされております。これはいまでもそのまま維持されるわけですね。
  203. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 当時の牧局長がそのようなお答えをしておるわけであります。当時におきましては、最高裁としても日弁連の報酬基準額にできる限り近づくように努力しておったということは間違いないことだと思います。  ただ、その後この基準額が昭和四十八年に従来の基準額の三倍に引き上げられた。さらに昭和五十年に再び従来のおよそ三倍に引き上げられて現在に至っておる。具体的に申しますと、地裁事件について手数料が昭和三十九年以降二万円以上とあったところが、昭和四十八年に六万円以上と引き上げられた、さらに昭和五十年に合議二十万円以上、単独十五万円以上と引き上げられておる、こういった経過でございます。  先ほど申し上げましたけれども、再度の引き上げの根拠が必ずしも明らかではない。また実際問題として私選弁護人のお受けになっておる報酬がどういうものであるのか、その実態も十分には承知しておらないというふうな状況もありますので、現在最高裁といたしましては、国選弁護人の報酬基準額を直ちに日弁連の報酬基準額に近づけるべきであるということはできないというように考えております。ただ最高裁としては、先ほども申し上げましたけれども、日弁連の御要望等も十分頭に置いて報酬増額については今後とも努力したい、このような姿勢には変わりはございません。
  204. 野間友一

    ○野間委員 最高裁がきちっと要求してもらわなければ、これは通りませんぞ。五十六年度の概算要求、この中で、この間聞きますと、いまの地裁の三開廷の標準事件ですが、あれが四万九百円から今度は四万六千百円、これに増額してほしいという要求をしておるというふうに聞いておりますが、間違いありませんね。
  205. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございます。
  206. 野間友一

    ○野間委員 いままでの値上げの経過をずっと見てみましても非常に微々として、これは大蔵から削られるならともかくとして、どうも最高裁判所自身の予算要求そのものが大変遠慮されておる。  これは冒頭に戻りますけれども、国選弁護人の大変重要な役割りからして、いま基準がわかっても実態がよくわからないというお話がありましたけれども、これはやはりたとえば学識経験者とかあるいは日弁連と、実態もアンケートをとったり調査しておりますから十分協議をされて、その上でこういうつつましいものでなくて、もっと謙虚に話を聞いて、そして要望に沿えるようにひとつ努力をしてほしい、こう思いますが、いかがですか。
  207. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 最高裁判所として、仰せの趣旨を十分頭に置いて国選弁護人の報酬予算の増額について努力すべきである、努力したい、こういうように考えております。  なお、謙虚に日弁連その他の御意見を聞くようにということですが、それはもとよりそのようなつもりでおります。ただ予算を要求するに当たって、日弁連あるいは学識経験者等と協議をすることを要件とする、そこまではちょっと言いがたい。ただ御意見は十分にお聞きした上で、それを念頭に置いて予算の要求をいたしたい、このように考えます。
  208. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたけれども政府のこの報酬についての考え方について法務大臣に一言お聞きします。  これは四十七年六月六日衆議院の法務委員会で、当時法務次官をやっておられた村山さんが答えておられますが、それによると、一般の弁護士報酬がどの程度になっているかという平均的なものによる以外にないのだ、こういうふうに答えておられるわけですね。つまり、かつて牧最高裁刑事局長が答弁したように、弁護士会の私選の場合の一般的な基準規程、これにできるだけ近づけたいということとほぼ答弁の趣旨は同一だと思うのです。  これは、法務大臣であり国務大臣の一人としてこの予算を決められるわけですから、いまの弁護人の報酬、特に国選弁護人の報酬は私はるる安いということを申し上げておるわけですけれども、これについての見解なり、かつての村山政務次官が言われたあるいは最高裁判所の方から答弁があった、それに対してどういうふうに考えられるのか、答えていただきたいと思います。
  209. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国選弁護人の方は最高裁判所所管でございますし、また民事に関しまして法律扶助協会、法務省も同じような種類のものを抱えておるわけでございます。国選弁護人の場合であれば私選弁護人に準じて処遇できる、できる限り国選の弁護に当たった方々がその職責に精いっぱいの努力をしてもらえるような処遇を確保することは大事なことだ、こう思っております。
  210. 野間友一

    ○野間委員 最後に、外国の例ですけれども、諸外国の例として、日本の憲法上保障された国選弁護人の制度というものはちょっと私も寡聞にして知らないわけですが、これも四十七年当時の国会でも法務省の方からも若干披露はされておりますけれども、たとえばドイツの場合、民事ではいわゆる救助弁護士制度というものがあります。これはかってのわが国の旧刑事訴訟法当時の官選弁護人に似たような制度で、この場合の弁護士の報酬は法律によって基準が定められておりますけれども、この官選の弁護人の報酬、これも法律によって定められた基準よりやや下回った基準で決められておるというようなことも答弁にあります。  これは果たして適切な例かどうか別にしても、このようにして自主的にいろいろな事態の中で決めた日弁連の報酬規程というものを基準にして、できるだけ謙虚に、いま最高裁の方で日弁連や学識経験者から、これは要件としてもらっては困るけれども、その要望は十分聞きたいというふうにおっしゃるわけですが、こういうような外国の例も参考にしながら、要望に沿うように全力を挙げて御奮闘、御努力いただきたい。その点について再度の答弁を求めて質問を終わりたいと思います。
  211. 柳瀬隆次

    柳瀬最高裁判所長官代理者 仰せの趣旨を十分念頭に置いて努力をしたいと存じます。
  212. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  213. 高鳥修

    高鳥委員長 次回は、来る十一月五日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十二分散会