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1980-10-15 第93回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十五年九月二十九日)(月 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の とおりである。    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 木村武千代君    理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君       井出一太郎君    今枝 敬雄君       上村千一郎君    大西 正男君       太田 誠一君    加藤 紘一君       亀井 静香君    高村 正彦君       佐藤 文生君    白川 勝彦君       小林  進君    下平 正一君       武藤 山治君    山花 貞夫君       大野  潔君    塚本 三郎君       安藤  巖君    野間 友一君       田中伊三次君    中川 秀直君 ————————————————————— 昭和五十五年十月十五日(水曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 木村武千代君    理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君       今枝 敬雄君    上村千一郎君       大西 正男君    太田 誠一君       高村 正彦君    佐藤 文生君       白川 勝彦君    森   清君       小林  進君    武藤 山治君       大野  潔君    塚本 三郎君       安藤  巖君    野間 友一君       田中伊三次君    中川 秀直君  出席国務大臣        法 務 大 臣  奥野 誠亮君  出席政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        警察庁刑事局長  中平 和水君        法務大臣官房長  筧  榮一君        法務省民事局長  貞家 克己君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省矯正局長  豊島英次郎君        法務省入国管理        局長       小杉 照夫君  委員外出席者        警察庁刑事局保        安部公害課長   斉藤 明範君        労働省労働基準        局監督課長    岡部 晃三君        労働省職業安定        局業務指導課長  若林 之矩君        自治省行政局選        挙部選挙課長   岩田  脩君        最高裁判所事務        総長       矢口 洪一君        最高裁判所事務        総局人事局長   勝見 嘉美君        法務委員会調査        室長       清水 達雄君     ————————————— 委員の異動 十月三日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     森   清君 同月八日  辞任         補欠選任   山花 貞夫君     伊賀 定盛君 同月十一日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     澁谷 直藏君   上村千一郎君     原田  憲君   太田 誠一君     藤田 義光君   小林  進君     大原  亨君 同日  辞任         補欠選任   澁谷 直藏君     今枝 敬雄君   原田  憲君     上村千一郎君   藤田 義光君     太田 誠一君   大原  亨君     小林  進君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関  する件      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政等の適正を期するため、本会期中  裁判所司法行政に関する事項  法務行政及び検察行政に関する事項 並びに  国内治安及び人権擁護に関する事項について、小委員会の設置、関係方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所矢口事務総長勝見人事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  7. 稲葉誠一

    稲葉委員 法務大臣お尋ねをするわけですが、これは八日の参議院会議質問があって、それに対する法務大臣の御答弁があったのですが、これは議事録がまだできておりませんで、必ずしも正確なあれはよくわからぬものですから、あるいはちょっと間違っておるところがあれば御訂正願いたい、こう思うのです。  結局、さき戦争についての認識、反省を聞きたいというふうな質問があったらしいのですが、そういう質問に対してあなたがお答えをされる必要があるかどうか、これはよくわかりませんけれども、いずれにしても、参議院会議お答えになったときに、何か戦争に追い込まれた当時の日本事情を残念至極に感ずる云々というふうな言葉があったように書いてあるわけですね。この辺のところよくわからないものですから、そのときの事実関係というか、それなりあなたのお気持ちなりをお話し願えれば、こういうふうに思うわけです。
  8. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 戦争性格をどう思うかという質問であったように思います。  そこで、戦争性格というものを一言のもとに断定するということは、なかなか人によって意見の違うこと、私自身、当時戦争日本が追い込まれた、こういう感じを持っておるものでございますので、追い込まれた当時の日本事情を残念至極に感じております、こう答えさせていただいたわけでございました。
  9. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、戦争に追い込まれた当時の日本事情を残念至極に感ずるというのは、具体的に言うとどういうことをおっしゃるのでしょうか。特にアメリカとの関係ですか。
  10. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、明治維新政府になって徳川時代鎖国政策を断ち切って近代国家への歩みを始めた、そして十年ごとに戦争が続いておったように記憶いたしておるわけでございます。同時に、帝国憲法の中に統帥権独立という条項がございました。私は、この統帥権独立というものが日本を大変災いしたなという心配を持ってきたものでございました。同時に、国際社会黄色人種に対しまして必ずしも温かい受け入れをしていなかったように思うのでございまして、日本移民政策に対しましても冷たい政策があちらこちらでとられておったわけでございました。  私は、そういう全体のことを頭に置きながら、戦争に追い込まれた日本事情を残念至極に感じております、こう答えさせていただいたのでございました。
  11. 稲葉誠一

    稲葉委員 戦争と言って、抽象的に明治以来の日清日露戦争のことを言っているわけではなくて、さき戦争というふうな質問ではなかったのですか。そうでないと何か話がやけに広がっちゃうわけですね。だから、この前の大東亜戦争のときのことを言われて戦争に追い込まれたというふうなことを大臣が言われたのじゃないでしょうか。議事録ができてないものですからちょっとあれですけれども。
  12. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、さきの第二次世界大戦、それだけを切り離して考えられないのじゃないかな、こういう認識を持っておるものでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、大東亜戦争についても、日本戦争に追い込まれた、どこから追い込まれたかということは常識的に判断できますが、大東亜戦争というものは日本にとってはいわゆる聖戦だった、こういうような理解の仕方に決着するわけでしょうか。
  14. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そんなことは全然考えておりません。
  15. 稲葉誠一

    稲葉委員 だって、戦争に追い込まれたというのならばやむを得ず行ったのであって、まあいたし方なかった、こういうふうなことになるので、聖戦と言うのはちょっと言い過ぎかもわかりませんけれども、とにかく日本には非はなかった、こういうふうなことになるのじゃないでしょうか。
  16. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 日本にも非はございましたでしょうし、国際社会にも非があった、こういう認識に私自身は立っております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉委員 これはこんなことをここで聞いても議事録ができてないので、ちょっと私もこれ以上聞いても余り意味がない質問だ、こう思うのですね。だから、あなたの考え方では、大東亜戦争というものはことに中国との関係は別としてアメリカや何かに対しては日本聖戦だった、こういう理解の仕方があるわけでしょう。そういうふうな考え方の上に立って、そして戦争に負けて憲法、こういうふうな一つの筋書きになるのではなかろうかというふうに私は思っておったのです。議事録ができてないので、これ以上議論しても余り意味がないと思いますが。  そこで、この前の予算委員会で、あなたの日本主権がないというかなかったという御発言がありましたね。それは後で訂正されたのでしょうけれども、主権がないという考え方もあるのじゃないですか。ポツダム宣言関係から言うと、統治権というものは連合国に所属するという考え方ポツダム宣言にもありますね。だから、主権がないというふうなことを考えたのは、あなたの一つ体験からきてそういうふうに当時日本には主権がなかったという発言がそこに出てきた、こういうふうなことでしょうか。
  18. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 主権の問題をどう理解するのか私もこれからよく勉強したい、こう思っておるところでございます。  先日の問題につきましては、一応統一見解が示されて、最高性占領軍に属しておったということになっておるわけでございますので、そのとおり御理解いただきたいと思うのです。
  19. 稲葉誠一

    稲葉委員 最高性占領軍に属していたという言い方ではなかったように思いますね。日本主権の属性、最高性が制限されておった、統一見解では制限されておったという……(奥野国務大臣「いやいや、最高性は失われておった」と呼ぶ)失われておったという理解の仕方ですか。じゃそれはそれでいいでしょう。  そこでお聞きしたいのは、自由民主党の憲法関係の「独立体制整備」というのがありますね。これは自主憲法をつくるとは言ってないようですね、この文章は。「現行憲法自主的改正を図り、」こういうふうになっておるのじゃないですか。自主的改正を図るということと、自主憲法をつくるということと同じふうに理解してよろしいのでしょうかね。
  20. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまおっしゃった点、ちょっと正確に覚えておりません。
  21. 稲葉誠一

    稲葉委員 自民党の政綱というのがあるでしょう。六に「独立体制整備」というのがあって「平和主義民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法自主的改正を図り、また、占領諸法制を再検討し、国情に即してこれの改廃を行う。」こういうふうになっているわけですね。これはそのとおりなっていることなら間違いありませんが、「現行憲法自主的改正を図り、」ということと自主憲法をつくるということが同じなんでしょうかね、ちょっとこの文章がよくわからないのですよ。どういうふうに理解したらいいのでしょうか。
  22. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 表現が違うわけでございますから、厳格に言うと意味が違うのだろうと思いますけれども、自主的に改正を図るということを多くの人たち自主憲法をつくるんだ、こう受け取られているという言い方もできるんじゃないかと思います。表現が違いますから、厳格にはもとよりいろいろ突き詰めていけば意味が違ってくることも当然あり得ると思います。
  23. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、奥野さんは自主憲法制定議員連盟でしたか、これには入っていらっしゃるわけですね。入っていらっしゃるのはどういう趣旨で入っていらっしゃるのでしょうか。
  24. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法は国の基本に係る法規でございますので、私たちは絶えずこれを研究していかなければならない、勉強していかなければならない、こういう気持ちが非常に強うございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉委員 研究し勉強することは、これはあたりまえのことだと私思うのですね。そのことをかれこれ言うのは私も間違いだと思うのです。そんなことはあたりまえの話ですからね。  ただ、そこで研究検討するのはいいんだけれども、その具体的な憲法改正運動というのは、これはあなたとしてはやらないということなんですか、あるいは党員としてやるのはあたりまえだ、こういう考え方なんでしょうか、どちらなんでしょうかね、大変失礼なことをお聞きするかもわかりませんけれども。
  26. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、憲法改正考え憲法改正運動をすること、それを理想に考えられる人があっても不適当だと思っておりませんけれども、私自身、いま具体の憲法改正条項をもってその実現を図るというような考えにまで至っておりませんので、したがって改正運動に突っ走っていくという考え方はございません。
  27. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、ちょっとはっきりしなかったのですが、研究検討、これは私も問題ないと思うのですが、あなたとしては、運動することはいいことだと思っておるけれども、いまの段階ではそこまで十分研究ができてないからそういう方面には走らない、こういうことですか。
  28. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 稲葉さんのお尋ねが、議員一般姿勢お尋ねになっているのか、国務大臣としての法務大臣姿勢お尋ねになっているのかよくわからないのですが、法務大臣姿勢お尋ねになっているといたしますならば、私は鈴木内閣の閣僚である、鈴木内閣憲法改正は全く考えないとおっしゃっているわけでございますから、当然憲法改正運動などに携わることはあり得ないわけでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉委員 憲法改正についていろいろあなたが発言を外部でされるということは一つ運動と見られるんじゃないか、こう思うのですがね。  そうすると、そういうことについてはしないというのでしょうか。それはされてもいいんじゃないでしょうか。あなたの政治家としての信念を発露されるのは当然のことなんで、それをされて、それが鈴木内閣のあれと合わなければ政治家としての信念を貫かれる方が私は政治家としてはりっぱだというふうに思うのですが、立ち入ったことをお聞きして本当に失礼ですけれども。
  30. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 稲葉さんの御激励ありがたく承っておきたいと思います。同時に鈴木内閣姿勢、非常に強く憲法改正考えない、こうおっしゃっておるわけでございますので、私は憲法改正に関しましてはその姿勢を疑われるような言動は慎まなければならない、こう思っております。
  31. 稲葉誠一

    稲葉委員 いままで憲法改正に対する姿勢で疑われるようなことがあなた自身にあったというのですか。これはどうなんでしょうか。
  32. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 これは人の御批判にまたなければならないと思いますけれども、鈴木内閣が発足したときから憲法改正は全く考えないといういまの強い姿勢がとられておったとは思っておりません。憲法改正考えることはないとは理解しておりますけれども、いまのような強い姿勢国会における討議を通じまして明確になってきておるわけでございますので、その姿勢を疑われるような私の姿勢はあるべきではない、こう自戒しているわけであります。
  33. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、憲法を遵守するとかなんとかという鈴木内閣姿勢は初めは余りなかったけれども、途中からあるようになったという話に聞こえましたけれども、それは国会対策上の話が中心なんでしょうかね。それはどういうふうに理解したらよろしいでしょうか。
  34. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法尊重擁護するという問題とは別でございまして、これはいかなる内閣でありましても尊重擁護に欠くるところがあってはならない、こう思います。  問題はどのような政治路線をとるかということでございまして、憲法改正政治路線もとれるし、憲法改正は絶対に考えないという政治路線もとれるし、また、憲法改正考えないけれども論議は深めていったらいいじゃないか、こういう政治姿勢もとれる、こう思うわけでございまして、そのいずれの政治路線かということがだんだんはっきりしてきておる、こう私は思うわけでございまして、全く考えない、こうおっしゃっておるわけでございますから、その政治姿勢を疑われるような言動は当然慎んでいかなければならない、こう思っておるわけであります。
  35. 稲葉誠一

    稲葉委員 八月二十七日に委員会がございました。  そこで、これは私の質問ではないのですが、同僚議員質問に対して、恐らくそこまでの質問議員からあったのかどうかはっきりしないのですが、あなたの方から積極的にお答えになったようにもとれるのですが、国を愛するということが日本教科書の中にない、こういう話がありましたね。それはあたかも、憲法前文に「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」このことからして国を愛するということが日本教育というか社会一般からなくなったように何かあなたはお答えになっておるようにとれるのですが、この憲法前文があるから、国を愛するということが教育や何かの中では言えなくなった、こういうふうな理解の仕方、あるいは言えなくなったというか少なくともセーブされておる、こういうような理解の仕方を大臣はされておるわけでしょうか。
  36. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 当時のことを正確に覚えておるわけじゃありませんけれども、タカとかハトとか右とか左とか一方的に決めつけるようなことなしに、ひとつみんなでこれからの日本の行く道を話し合おう、心配し合おう、論議し合っていくということにしたいものです、こんな気持ちで私は申し上げたように思うのです。その中で、国を守るというような言葉教科書にはない、憲法の中にそういう表現がない、やはりそれが原因になっているのじゃないだろうかなという話がございましたという話を私は御披露したように思っております。そういう意味合いでございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉委員 確かに文部省事務次官があなたを訪ねてこられて「法務大臣の言われるように教科書の中には国を守るということはどこにもありません、こうおっしゃるのです。それはいろいろせんさくしてみると、憲法前文に「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こう書かれているのですよと言うのです。」こういうふうに文部省事務次官が言ったというのがあなたのお答えなんですね。  あなたが言ったというお答えではないわけですけれども、いずれにしてもあなた自身としては、憲法前文にいま私が読んだような文章がある、あることは間違いありませんね、そのことから国を愛するということが教育や何かの中に出てこなくなっているのだ、だから憲法前文にこういうようなことが書いてあることがいかにも障害になっておるというようにとれるのです。何も発言者がそんなことを聞いたわけでも何でもないのですよ。聞いたわけでも何でもないのに、あなたの方からそういうことをずっと言われておるわけですね。言って悪いというのじゃございませんよ。これは言論の自由ですから幾らでも言うのはあたりまえで、フリーにトーキングできるのが私は国会だと思うので、そういうことをお聞きしているわけですが、憲法前文にいまのようなことがあること、「諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」ということが日本の国を愛するという気持ちを明らかにすることを妨げておるのだ、こういうような理解の仕方ではないでしょうか。
  38. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国を愛するという問題よりも国を守るという言葉のせんさくから始まっていると思うのでございまして、憲法前文の中に書かれておるところが、自分の国は自分で守るのだという表現ではなくて、他国の公正と信義に信頼して、われらの生命と安全を維持しようと決意したというのですか、そういうニュアンスの言葉が書かれているということでございまして、いいとか悪いとかいうことじゃなしに、やはり教科書というものはさかのぼれば憲法にまでたどるわけでございますので、そういう一連の流れからこうなっているのじゃないかなという話があったということを御披露したわけでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉委員 話があったということを御披露したというのは、あなた自身一つ考え方を持っていらっしゃる。憲法前文日本の愛国心というか国を愛するという気持ちを醸成することの妨げになっている、こういうふうにあなた自身はお考えになっているのじゃないでしょうか。だからこそういうような話を、ここでそんな話を聞かれているわけじゃないでしょう、それをわざわざ紹介されたのじゃないでしょうか、こう言っているわけなんです。
  40. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 理想的に考えてまいりまして、自主憲法がつくられるという場合には、やはりそういう個所がそのままでいいかということを検討されてしかるべきだ、私はこう思います。
  41. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、いわゆる自主憲法というものがつくられる、つくられるかどうかわかりませんが、そういうときには、いま言ったように前文については十分検討の要があるというふうなことのようですね。  そうすると、あれですか、あなた自身のお考えは、国を守ろうということは自分の国だけでやらなければならないという考えに帰着するのでしょうか、そこはどうなんでしょうか。
  42. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 それほどばかな考え方は持っていないつもりでございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉委員 それから「国を愛すると言うとすぐ戦争につながる、こうおどしてかかるようないまの風潮云々と言っていますね。しかし、国を愛すると言うとすぐ戦争につながるなどという、こんなことはだれも言っていないんじゃないでしょうか。だれがそんなことを言っているのですか。私はそんなことを言っていないと思いますがね。あなたはそういうふうに言っておられるけれども、そんなことをだれが言っているのですか。
  44. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 戦争の苦い体験を経てきているわけでございますので、いろいろな言葉戦争につながると言われてまいったことは事実だ、こう思っておるわけでございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の聞いているのは、国を愛するということを言ったら、すぐそれが戦争につながるというふうに、あなたはそういう風潮がいまあると言うのでしょう。そんな風潮がありますかと聞いているのです。そんなことはないと思いますが、あるとすれば、だれがどういうようなことを言って、どこからどういうふうな風潮が出ているのでしょうか。
  46. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 グループによってはそういう考え方をされる方もある、こう理解しておるわけでございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、あなたのお話を聞いていますと、いろいろ出てきますが、「占領諸法制を再検討し、」ということがありますね。これは政綱にあるわけでしょう。そうすると、それは具体的にあなたとしては何を意味されるとお考えなんでしょうか。占領諸法制を再検討するというのでしょう。これは具体的にはどんなことを意味されて、それはすでに占領諸法制の再検討というのは終わったのでしょうか。まだこれからなんでしょうか。
  48. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 独立いたしましたときに、占領下の諸法制を再検討する機会が持たれた、こう理解しています。
  49. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の言うのは、具体的に言うと、ことにあなたのおっしゃっているのを聞くと、どうも教育の問題らしい。そういうように思うのです。そうすると、六・三制なら六・三制というふうなものを再検討しなければいけないとか、国を守るという教育をもっと広げなければいけないとか、こういうのが占領政策の再検討の中に入るんだ、こういう理解をあなた自身がしておられるのではないでしょうか。
  50. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 占領諸政策の再検討ということじゃなしに、世の中がどんどん動いていっているのですから、過去に戻すことがいいとは私は一つも思っていません。世の中が変わっていけば、変わった姿において対応できるような考え方の発展もわれわれは努力していかなければいけないのではないか、こういう気持ちは強く持っているわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはだれだって持っていますよ。あたりまえの話です。だから私の聞いているのは具体的に聞いているわけです。  あなたの占領政策の再検討という中には、盛んに言われていることは、国を愛するということが何か教育の中に出てこないのはけしからぬ、どうもそういうのは不本意だということを中心に言われているように、全体を見ますととれるわけです。それならそれでもいいんじゃないでしょうか。それはあなたのお考えだし、そういう考え方を持っている方はたくさんいらっしゃるわけですから、それならそれで別に悪いことはないんだ、こう思うのです。だから、それならそういうことだとお答えになれば、私はそれで一つの意見だと思うわけです。
  52. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 占領諸政策の反省とか検討とか、私はそういうことを言うたことはないように思うのです。ただ現在の情勢は、国際社会の情勢にいたしましても国内社会の情勢にいたしましても、あるいはもろもろの価値観にいたしましても、どんどん発展していっているわけでございますから、そういうことを考えますと、いまのままでいいのかというときに、よくないと思われるものもいろいろあるじゃないか、それは自由濶達に論議し合ったらどうだろうか。  何か憲法の問題を言いますと帝国憲法考えているとか、あるいは改正を言うと軍事強化を考えているとかいうような一方的なきめつけがしばしばあるものだから、そういう風潮だけは避けていきたいな、自由濶達に論議していきたいな、こういう気持ちを深く持っているものですから、いま御指摘になっているのは沖本さんのお尋ねに対するお答えだったんじゃないかと思うのですけれども、私のそういう気持ちを率直に申し上げさせていただいたのが本心でございます。
  53. 稲葉誠一

    稲葉委員 占領政策を再検討しというのはあなたのおっしゃったことじゃございません。これは自民党の政綱に出ている言葉です。それをいま私が読んだわけです。自由濶達に論議することは決して悪いことじゃありません。私もそういうふうに思いますよ。何か言うとすぐきめつけるというような風潮、これは私よくないと思います。私はそういうことはしません。だけれども、外部の者がそういうことをすることは自由ですけれども。  そこで、あなたがいろいろなことを言われている中で「日本戦争に負けて占領軍政策のもとに置かれてきた。」これはそうですね。「また左翼の方の強い影響も受けてきた。そういうこともあって国とか国を愛するとかいうことがタブー視されてきたきらいがあって、」こういうふうに言われていますね。ここら辺のところがよくわからないのですがね。占領政策でもう国を愛するということは言わないようにする、左翼の強い影響があって国を愛するということは言えないようになった、そこら辺のところをもう少し説明を願えないでしょうか。
  54. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 日本戦争に負けましたときに、それまでは日本は非常に国家主義に偏った政策が進められてきたと思うのです。反対に占領軍は、国家主義的な主張をした者は追放をしてまいりました。逆にまた、共産主義運動などで刑務所に入れられた方々を解放いたしますばかりではなしに、そういうことで教職から追われておったような人たちは優先的に教職に復帰させるというような措置もとられたわけでございました。  当時のそういうことを私自身頭に置きながら、国家主義的な見解が極度に抑圧されて、逆に反対の考え方がむしろ積極的に支えられたという傾向があった、こういう事実を踏まえてそういうことを言ったのだろうと思います。
  55. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたは、占領軍の強い指示でというかな、指示と言いましたかね、強いと言ったかどうか知りませんが、日本憲法がつくられたというようなお話ですね。そういう一つの見解も確かにありますね、指示というのか強いというのかわかりませんが。  そうすると占領軍は、あなたのおっしゃることが事実だとすると、日本憲法をつくるに当たっては何を考えてつくったのでしょうか。結局、アメリカが勝った、日本は負けた、だから日本自身が再びアメリカに刃向かうような強い力を持たないようにさせたいというのがアメリカのねらいであって、そういう観点から日本憲法をつくらせた、こういうような理解をあなたはされておるわけでしょうか。
  56. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 当時の占領軍の最大の政策は、軍国主義の排除と日本の民主化の徹底ということではなかっただろうかなと思っております。
  57. 稲葉誠一

    稲葉委員 結論的にいろいろ出てきたわけですが、そうすると、あなたの言われた中で「戦争に負けました直後に、修身と歴史と地理の授業の停止をまず命ぜられた」ということを言われていますね。これが一体何に、どこに結びつくのですか、いまあなたの言われたことと。
  58. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 やはり民主化の徹底ということが大きな課題でございましょうし、あるいは軍国主義の排除ということも大事な課題でございましょうから、教育の面におきましても、そういう意味合いにおいていろいろな政策占領軍から日本に向けて進められてきたという一つの例として申し上げたつもりであります。
  59. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたは、この前の予算委員会以後非常に憲法に対する発言も慎重になったというか、何か余り物を言われなくなったような感じがするのですよ。それは鈴木内閣法務大臣としている間あなたのお考えを抑えていかれる、結局はこういうことですな。あたりまえのことですけれども、そういうことでしょう。あなた自身が本心を抑えてとにかく鈴木内閣に協力していこう、こういうことですか。
  60. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私の本心を抑えるということじゃなしに、鈴木内閣政治路線、これには忠実でなければならない、その範囲において私の憲法に関します発言考えていくべきだと思っているわけであります。
  61. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまおっしゃいましたように、結局その範囲においてということですね。だから、あなた自身の実際に考えておられることをセーブして制限をして、鈴木内閣憲法遵守ということを守っていく、こういうことでしょう。それでなくては政治家としておかしいですね。そういうことでしょうか。
  62. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法尊重擁護の義務と改憲論議とは矛盾しない。しかし、その改憲論議に当たっては、鈴木内閣の一員である以上はその政治路線を疑わせるような言動をしてはならない、こう思っております。
  63. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたの憲法に対する態度は変わってはいない、だけれども表現は変わってきた、こういうことでしょう。
  64. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 変わっているか変わっていないかは稲葉さんの御判断にお任せします。
  65. 稲葉誠一

    稲葉委員 では、あなたの基本的な態度は変わってはいない、ただ表現については多少変わってきたのだ、こういうふうに私は理解をします。それは当然政治家としてあなたが信念を吐露されているのですから、そのとおりだというふうに思います。  いろいろなことがありますけれども、こればかりやっていてもあれですし、同僚、先輩もお聞きになられるでしょうからね。結局そのことは、いろいろあると思うのですけれども、これ以上論議しても、率直な話、あなた自身がたがをはめられているようなものだから、それ以上言えないでしょう。言ったら大変なことになっちゃうからね。だから言えないから、あなたもなかなか苦しい立場だと思うのですけれども、これ以上質問しても同じことになりますね。  では別のことをお聞きしましょう。お聞きしたいのは富士見病院のことになるのですがね。ここで、いままでの捜査の経過と現在の段階について概略御説明を願いたい。どこが問題点なのかね。どこが問題点かということは法務省の方からお話し願いたいと思います。
  66. 斉藤明範

    ○斉藤説明員 埼玉県警察におきましては、かねてから富士見病院の乱診ぶりに関する情報を聞知いたしまして、以来、病院内における事件でございますので慎重に内偵を継続しておりましたが、理事長に対する容疑を確認するに至りましたので、本年九月十日事件検挙に着手いたしまして、同病院の理事長北野早苗を医師法及び保健婦助産婦看護婦法違反の疑いで逮捕し、浦和地検川越支部へ事件を送致いたしております。  北野に対する逮捕の直接の容疑は、医師や看護士の資格を有しない北野が、同病院におきまして昭和五十三年九月ごろから同五十五年五月ごろまでの間、主婦等十二名に対し超音波診断装置を操作し、患者等に対して子宮筋腫、卵巣嚢腫等の病名を告知するなどの診断行為をし、無免許で医師及び看護士の業務を行っていた疑いによるものでございます。なお浦和地検は、本年十月一日、北野を医師法違反で起訴いたしております。  今後の捜査方針等でございますが、現在引き続きこれら医師法関連の裏づけ捜査を行っておるところでございますが、今後の捜査方針といたしましては、事件着手後、警察あるいは保健所等に対しまして口頭あるいは電話で被害の申告をする患者が相当多数に達しております。これらの患者からも事情聴取を行いまして医師法違反等の裏づけをしていく方針でございますが、また、九月二十九日ときのう十月十四日二回にわたりまして、富士見病院で手術を受けた患者から傷害罪で告訴状が出ておりますので、これに関する所要の措置を行っておるところでございます。
  67. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは法務省の刑事局長お尋ねをするのですが、医療行政を監督するのはもちろん厚生大臣ですね。それから警察問題になってきますと国家公安委員長——国家公安委員長にも監督権があるかどうかはちょっと疑問があるわけです、いずれにしても。  そうすると、たとえば齋藤前厚生大臣に対して最初に五百万、五百万ですか、大臣の就任祝いで五百万円の小切手を上げた。何の目的で北野が五百万円の小切手を大臣の就任祝いで大臣室でやったのだろうか、こういうふうなことですね。それから国家公安委員長に対して、これが警察問題になっておることがわかっていたのかわかっていないのか、その点はっきりしませんが、いずれにしても、そういう人に対して献金をしておるということに対して、どういう目的でそういう献金をしたのだろうかということですね。こういうことに対しては法務省としては全然関心がないのですか、あるいは関心を持っておられるわけですか。
  68. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいまの事件の捜査状況は警察の方からお答えがあったとおりでございまして、現在検察当局といたしましても、警察と緊密な連絡をとりながら、医師法違反等につきまして引き続き捜査を進めているところでございます。  お尋ねの点につきましては、いまいろいろと御指摘もございましたし、また新聞報道等でも取り上げられているところでございますから、そういう意味において理解しております。
  69. 稲葉誠一

    稲葉委員 そういう意味において理解しておりますというのは何だかわからないですね。何ですか、それは。私は、法務省当局というか刑事局長としては関心を持っていますか持っていませんかというふうに聞いたので、関心を持っていますという答弁だというふうに私なりに理解してもよろしいですか。
  70. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 関心を持っているか持っていないかということでございますが、これまでいろいろな事件のことにつきましてお尋ねを受けることが多いわけでございますけれども、その場合に、関心を持っていると申しますと、直ちに次の日でも何か逮捕でもするような報道がされるようなこともございますので、そういう意味で、関心という言葉はなるべく使わない方がよろしいのではないかというふうに思っておるわけでございます。  先ほど申し上げましたのは、いろいろと問題にされておることはそのとおりに理解しておる、こういうことでございます。
  71. 稲葉誠一

    稲葉委員 関心を持っていると言ったって、そのことと逮捕——そんなことありましたかな。それはちょっと話が飛躍し過ぎていますね。そういう意味ではなくて、これはやった方からすれば何らかの目的があってやっているという、ことに大臣室まで行って五百万円の小切手を渡しているということですから、何らかの目的があって渡していると常識的には理解ができるのではないでしょうか。こういう質問に対してはどういうことでしょうか。
  72. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 それなりの額の金を渡されるわけでございますから、全く意味がないというわけではなかろうと思います。
  73. 稲葉誠一

    稲葉委員 これからの捜査ですから、北野の方からどういう理由で、どういうふうな目的で両者に対して出したのだろうか、これは当然調べなければいけない、私はこう思うのですね。ただ、そのことが直ちに犯罪になるとかなんとか、そんなことを私は言っているのではございませんよ。そんなふうに誤解されると私も困るし、御両人も困られると思いますから、そういう意味で言っているのではありませんが、やった方はどういうつもりでやったのだろうかということの捜査は当然しなければならない、私はこういうふうに考えております。その点については捜査当局にお任せを願いたい、こういう答弁でしょうか。
  74. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 稲葉委員の方が先に言っていただきましたので、そのように御理解いただきたいと思います。
  75. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうなると、これは川越支部でやっておるということ、支部ですから、甲号支部ですけれども浦和の検察庁からも行ってやっていますが、単に医師法の十七条違反でしょう。これだけでも率直に言うとなかなかむずかしいようですね。一部起訴だけでしょう。医師の指示を受けてやっているということになれば免責の問題になってくるということも考えられて、なかなかむずかしい事件のようですが、この検察庁の臨む体制というものがきわめて不備なんじゃないでしょうか。  ということは、浦和は何人いるか知りませんが、部制をしいているから十四、五人おるのかな、もっと地検はおるのかな。それから刑事部長が川越支部へ行って指揮しているというような話も聞きますけれども、今後の事件の進展によっては、立ち入ったことを聞いては悪いのですけれども、これは当然東京高検で検事を手配して応援にやるという形をとらなければ、この事件のあれは国民が納得しないんじゃないでしょうか。そういう体制も将来とる必要があるのではなかろうかと私は思っているのですが、そういうこともこれはあり得ますか。
  76. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 現在のところ、川越支部では支部長以下検事が三名と副検事が一名これに従事しておりますほかに、浦和の本庁から検事が二名、副検事が二名と多少の事務官という応援が出ておるわけでございます。もちろん、いまお話にもございましたように、捜査体制といたしまして不十分な場合には他の地検からの応援ということも十分考えられるところでございます。
  77. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、この問題については捜査の進展を見守っていきたいと思います。やはり医学的な事件ですから、率直に言うと検事もなれていませんし、むずかしいことがあるし、ことに片一方は医師の免許を持っている人もいますから、なかなかむずかしい事件だと思いますが、いま言ったような形で国民が納得いくように捜査をしてもらいたい。そのためには、なぜこんな金を出したんだろうか、その理由、目的、それから受け取った方もまたどの程度の認識があって受け取ったのだろうかということを含めて、これは当然捜査を進めてもらいたい、こういうふうに私は考えでおる次第です。それは捜査当局を信頼していますから、かれこれここで答弁を求めるということはいたしません。  そこで、もう一つの問題は、いまやかましくなっています、これはいまの段階では安川元簡裁判事と言っていいのでしょうね、これについての事件の概要を御説明願いたいわけです。ただ、訴追委員会が十七日に最終決定するからということで、最高裁側としてはお話しにくいという点があるいはあるのかもわからぬけれども、しかし事実上法律的には結論が出てしまったことですから、その点は遠慮されなくてもいいんじゃないでしょうか。これは新聞を見ますと、安川判事、安川判事と書いている新聞がずいぶんあるのですね。安川判事じゃないでしょう。これは簡裁判事でしょう。簡裁判事と判事とは違うので、そんなこと声言ってはあれだけれども、そこら辺、初歩的なことからひとつ説明をしてもらわないとわからぬですね。よく説明してください。
  78. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 冒頭に、このたびの安川簡裁判事の事判につきましては、国民の方々に司法に対する信頼というものを損なったことについてきわめて遺憾に存じます。  このたびの事件につきましては、事実につきましては大体新聞報道に詳しく報道されたとおりでありますが、私どもの知り得た事実を簡単に申し上げますと、九月六日に第一回の事情聴取を行いました。その際に、担当しております刑事事件の女性被告人と七月十一日、七月十五日、八月四日の三回にわたって喫茶店で面会したことは認めましたけれども、一緒に旅館に行ったこと、それから金五万円を手交したことについては否認しておったわけでありますが、九月八日の第二回の事情聴取におきまして、女性の被告人と二回目に会いました七月十五日に、その女性と旅館に行って情交関係を持った、それで別れた際に金五万円を手渡したということを認めたわけであります。その後の経過は、御承知かと思いますが、最高裁判所長官から訴追委員会に対しまして罷免の訴追の要求をいたしたという経過でございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、これは現在の法律では、公務員ですから、選挙に立候補すると資格を失うわけですね。だから現在は、もうこれは元簡裁判事ということになって、その資格を失っている、こういうことになるわけですか。
  80. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 私どもといたしましても、いま稲葉委員おっしゃるとおりと考えております。
  81. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで簡裁判事のあり方の問題なんですが、これは本来の裁判所法案ができたときのあれから言いますと、その当時の国務大臣の説明は、これは木村篤太郎さんですが、「簡易裁判所判事につきましては、いわゆる法曹の経歴のない者でも、選考委員会の選考を経まして、これに任命し得る途を開きまして、広く人格識見のすぐれた徳望のある人を、簡易裁判所の裁判官に迎えまして、これによつて、この制度の妙味を一層発揮することを期待いたしておる次第であります。」こうありますね。広くというふうにあるわけですね。  ところが、これまた政府委員の説明によりますと、奥野健一さんですか、これは裁判所法の四十五条に、多年司法事務に携わり、その他簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者は、簡易裁判所の判事に任命せられるという、多年司法事務に携わるというふうな要件を特に設けたのは、いまは書記官になっていますが、長らく書記等によって司法事務の経験を積んだ者から簡易裁判所の裁判官に任命し得る道を特に開くという意味でこういう文字を入れたわけでありまして、その点も十分考慮した案をつくったわけだ、こう言っているんですね。  一方においては広く人材を求めるのだということを言っておりながら、一方においては書記官の優遇、優遇策というと語弊がありますが、そういうふうな意味にとれるんですね。これは実際にはどういうふうになって、どういう規則によって、どういう人を任命しておるんですか。どの程度の応募というようなものがあるわけですか。
  82. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 新裁判所法ができまして簡易裁判所という新しい裁判所が設けられたわけでありますが、その制度の趣旨につきましてはただいま御指摘のとおりでございます。なお簡裁判事の任用の件につきましても、法律案の説明の際の帝国議会における質疑は、いま稲葉委員お読みになっていただいたとおりでございます。  当時の政府側の答弁の食い違いという御指摘かもしれませんが、必ずしも食い違いがあるというふうには私どもは考えておりません。と申しますのは、簡易裁判所もやはり裁判所でございまして訴訟事件も取り扱いますから、法律の素養のあることは最低必要条件だろうと思います。  裁判所法は四十四条で、いわゆる法曹資格のある者、三年以上の経験のある者について、簡易裁判所判事の資格を規定してございます。それで、先ほどお読みいただきました趣旨で、さらに広く民間からも任用をすべきであるということで四十五条が設けられたと思います。それから多年司法事務云々という文言でございますが、先ほど申し上げましたように簡裁判事ももちろん法律の素養が必要でありますので、それの一つの例示といたしまして、そのような裁判所法四十五条の文言になったものというふうに考えます。  なお、現在の簡裁判事の選考がどうなっているかというお尋ねでございますが、最高裁判所の規則に簡易裁判所判事選考規則というのがございます。簡易裁判所判事選考委員会という委員会が設けられておりまして、具体的な構成を申し上げますと、最高裁判事三名、弁護士二名、東京高裁長官それから次長検事、法務省の法務総合研究所の所長、それに私どもの事務総長、これで構成されている委員会でございます。  この選考の際には筆記試験と口述試験、面接試験がございます。選考の前提といたしまして、各地方裁判所に簡易裁判所判事推薦委員会というものが設けられております。その推薦を経た者につきまして試験を課しているわけであります。部内の推薦基準というものを最高裁判所裁判官会議で決めていただいておりますが、実は年齢三十五歳以上、在官年数、司法行政事務に携わった年数が十三年以上ということになっておりましたけれども、このたびの事件にかんがみまして、これを年齢を四十歳以上、それから在官年数を十八年以上というふうに引き上げることにいたしました。なお受験資格につきましては、いわゆる多年司法事務に従事した者のほか、簡裁の判事として必要な学識経験のある方について広く含まれておるというふうに考えております。  この点の試験の応募の方法といいますか募集方法でございますが、官報等に公告はいたしておりません。裁判所以外の方からの申し出がありますと、先ほど申し上げました各地方裁判所に行っていただきまして、推薦委員会の推薦を受けていただいて試験を受けていただくというのが現状でございます。それから応募者の数でございますけれども、大体三百名くらいでございます。ことしの任命は三十名でございますので、大体十倍くらいの競争率に相なっております。  任用のあり方につきましては以上のとおりでございます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉委員 さっき人事局長が言ったので、何か政府の答弁が食い違っているのではないかという質問だというふうにとられましたけれども、広く人格識見のすぐれた云々というのは提案理由の説明ですね。ですからそれはどうでもいいのですが。  そこで、この安川という人は幾つで簡裁判事になられたのですか。
  84. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 三十六歳で任命されております。
  85. 稲葉誠一

    稲葉委員 司法試験を受かっている人でも、大体四十歳になっておりますと、判事にしないで簡裁判事にするのが普通ではないですか。いま言ったように三十五、六歳で簡裁判事になるというのは、本来の趣旨とは違っているのではないでしょうか。率直に言うと、この人はどうか知りませんけれども、司法試験を二回、三回あるいはもっと受けても受からない人がいる。そういう人は簡裁判事の内部試験を受けて、受かって簡裁判事になるというケースがこの三十歳代の人には相当あるんではないでしょうか。これは本来の筋とは違うのではないですか。
  86. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 安川元簡裁判事が司法試験を受けておったかどうかにつきましては確認しておりません。  それから先ほど申し上げましたように、簡裁判事の任命資格要件というのは、いわば普通の有資格の法曹よりもやはり一段低くてもいいということであろうかと思います。その意味で、ざっくばらんに申し上げますれば、司法試験に受からない人が簡裁判事の試験を受けているというのは恐らく御指摘のとおり実情であろうかと思います。私どもそこまで正確なデータは持っておりませんが、稲葉委員御指摘のとおりだと思います。であるからといって、本来の簡裁判事の任命のねらいといいますか目的と違っているかどうかということになりますと、いささかそうであるというふうに断定し切ることはできないのではないかと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように推薦基準を、年齢の問題でございますが、三十五歳でありますと、御承知のように定年が七十歳でございますので三十五年間おやりいただけるということに相なりますけれども、やはり社会的な経験あるいは法律事務の経験というものをもう少し重視すべきではないかということで、その推薦基準を年齢を引き上げ、かつ司法事務に携わった年限も引き上げた、こういうような次第でございます。
  87. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまの事件については何か職権乱用罪に当たるとかなんとかということで告発が出ておるというふうに聞いておるわけです。これは福岡地検でやっているのか小倉支部でやっているのか知りませんけれども、それに対しては、一部ではすでにある程度参考人かなんかの事情聴取も行われているというようなことも聞いておるのですが、これに対してはいまどういう状況になって、将来どういうふうに進めるということになるわけですか。これは法務省ですね。
  88. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま稲葉委員が仰せになりましたようなことですが、その事件にどう取り組むかということにつきましては現在福岡地検で慎重に検討している、かように承知しております。
  89. 稲葉誠一

    稲葉委員 慎重に検討しているのはいいのですが、告発があって捜査に入っているわけですか。
  90. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 具体的にどういうふうにやっているかということになりますと、捜査の内容でもございますし、またいま問題になっている選挙等の関係もございますので、そういう点を御理解いただきたいわけでございます。
  91. 稲葉誠一

    稲葉委員 きょうは私の時間はこれで終わりですから時間を守って終わりにします。  いまの安川元簡裁判事の問題は職権乱用というふうなことで告発が出ていますけれども、それがどういうふうになるのか私は見解を申し上げません、申し上げる筋でもございませんので。いずれにしても慎重にやってほしいと思います。  特にさっきの富士見病院の件については、くどいのですが、北野という被告人がどういう目的でどういうチャンスに何を考えてこの金をやったのか、献金したのか、受け取った方はどういう趣旨でそれを受け取ったのか、こういう点についてもやはり調べるべきものは調べる必要があるのではないか、私はそういうふうに考えておりますので、そういう点についてもしっかり調べてもらいたい。こういうことを法務当局に希望を申し述べて、私の質問を終わります。
  92. 高鳥修

  93. 横山利秋

    横山委員 憲法問題についていまの質疑応答を伺っておりまして、法務大臣が何といいますか異常な執心とも言える立場で自分のお考えを述べられたことについて、大変関心を深めたわけであります。ただ、いまの質疑応答の中で、どうしても私といたしましてもお伺いをしておきたい二、三の点につきまして質問をいたしたいと思います。  先ほど大臣は、占領軍日本に来て軍国主義の排除の目的をもっていろいろな仕事をした、こうおっしゃいましたね。あなたは日本に軍国主義が存在しておったという認識については占領軍認識と同じでございますか。
  94. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 占領軍認識は別にいたしまして、私は、軍事が政治、経済その他において優先するのを軍国主義、こう思っておるわけでございまして、そういう事実は存在しておったと自覚いたしております。
  95. 横山利秋

    横山委員 軍が政治を追い落として政治を握った、そして軍国主義が前面へ出て戦争に招いていったという認識と、あなたの先ほどの冒頭の話の戦争日本が追い込まれたという認識とは矛盾するじゃありませんか。
  96. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 戦争に追い込まれた原因はいろいろあろうと思うのでございまして、私はその一つとして帝国憲法統帥権独立ということも挙げたわけでございます。
  97. 横山利秋

    横山委員 はっきり私にお答え願わないのでありますが、軍国主義が存在して政治を超越して戦争の方向へ持っていったという認識と、日本戦争に追い込まれた——追い込まれたというのは自衛上戦争せざるを得なかったということなんではありますまいか。そこにあなたのお考えに矛盾があるとは思いませんか。
  98. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 追い込まれた原因の中には、当時の帝国議会が無力であった、政治家は反省しなければならない、こういう気持ちを私は非常に深く持っておるわけでございまして、そういう意味合いも追い込まれたという気持ちの中には入っていることも御理解いただきたいと思います。
  99. 横山利秋

    横山委員 しかし客観的に言えば、帝国議会が軍に勝てなかったということがあっても、対外的、国際的には軍が戦争へ持っていったという認識なんでしょう。そうすると、日本戦争に追い込まれたという認識はおかしいじゃありませんか。
  100. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 どういう表現を使うか、いろいろな批判があろうかと思いますが、私が追い込まれたと言いますのは、国内的にも国際的にも日本戦争に追い込まれた、こう考え、そういう意味合いでこの言葉を使わせていただいたわけでございます。
  101. 横山利秋

    横山委員 追い込まれた以上は、それは自衛権の発動をせざるを得ない、だから追い込まれた以上は自衛上戦争をせざるを得なかった、そういう認識に通ずるわけでありますか。
  102. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど申し上げましたように、共産党の方から、戦争性格、こういうお尋ねをいただいたわけであります。なかなかこれは一口で答えられるものではない。私自身いろいろな問題があの戦争には災いしてきている、こう思っておるわけでございまして、そういう意味合いで戦争に追い込まれた当時の日本事情は残念至極でありました、こういう答え方をさせていただいたように思うわけでございます。単純な一言で片づけられる性格のものではない、こう私は思っております。
  103. 横山利秋

    横山委員 単純なことで片づけられるわけではないが、しかし、この戦争性格をあなたがずばり追い込まれた戦争であるとおっしゃったということはきわめて重大なことであります。追い込まれた以上は自衛をせざるを得ない、だから戦争性格が自衛の戦争であるという定義に直結をするということは理の当然ではありませんか。  私は、いま追い込まれた戦争であるということについて非常に重大に感ずるわけです。しかもあなたは、日本に軍国主義が存在しておった、政治が軍に負けた、軍国主義に負けた、軍国主義が戦争へ駆り立てた、そういう論理と、だれが聞いておっても矛盾すると思うのであります。したがって、どういうことなのでしょうか。あなたのその矛盾をどういうふうに私ども理解したらいいか。これは憲法が出てくる一つの導入部でございますからね。  だからもっと端的に言えば、戦争は自衛戦争であったか侵略戦争であったか、そういうことになります。軍事裁判は侵略戦争だと定義している。あなたの追い込まれたというのは自衛戦争であるという定義になる。その点ずばりとお答え願いたい。
  104. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いろいろな性格を持っておったと思うのでございまして、自衛のための戦争であったとも言い切れないし、侵略戦争であったとも言い切れない。いろいろなものが災いしている。それらの原因を一つ一つ謙虚に反省しながら今後の日本の進むべき道を考えなければならない。一言できめつけてどうこうというような国の政治のあり方であってはいけない。国会というところは、いろいろな角度から真剣に討議していかなければならない。あのときも軍の批判をした人たちはみんなつぶされたのじゃないか、こういう気がするのでございまして、帝国議会が無力になってしまったということも、私は追い込まれていった一つの原因になっている、こうも思っておるわけでございます。
  105. 横山利秋

    横山委員 それは明らかにあなたが自家撞着に陥っておると思うのですよ。あっちからも答えられる、こっちからも答えられるという逃げ口上ならいざ知らず、あなたが追い込まれた戦争であると言うことと、軍国主義が政治を超越した、そして軍国主義が戦争へ引っ張ったということは、あなた自身がどう考えても矛盾しておる論理をここで発展させておるわけであります。  物事は白か黒かと必ずしも私は問い詰めるわけではありません。しかし、戦争性格というものが大局的に見て自衛戦争であったか侵略戦争であったか、日本の狭い国土から軍隊が数百万、インドネシアからあるいは満州から、インドから、全アジアへ展開したこの戦争性格というものが、追い込まれた戦争であったか、それとも日本が、とにかく軍国主義が発展した戦争であったかという大局的な判断をあなたがなさらないということはおかしいじゃありませんか。
  106. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 横山さんのお考え方と私の考え方と食い違ってもいいのじゃないでしょうか。もっといろいろな角度から議論したらいいのじゃないでしょうか。  私は先ほど来申し上げますように、まず帝国憲法の中に統帥権独立という条項があった。これがやはり政治が国の方向をリードしていけない大きな障害になったのじゃないか、こう思っておるわけでございます。事実あの当時の帝国議会を振り返ってみますと、軍部に対して大変無力な存在にだんだんと落ち込んでいったなという反省をしておるわけでございまして、そういう反省も込めて私は申し上げさせていただいているつもりでございます。  また同時に、国際社会において日本の置かれておった事情もいろいろあろうと思うのでございます。同時に、私も申し上げましたように、あの戦争だけ切り離して考えていいものだろうか。明治新政府になりましてから国際社会日本が大きく出ていったわけでございまして、残念なことでございますけれども十年ごとに戦争を繰り返していったことも事実でございまして、その発展の路線上にあったのじゃないだろうか、こう私は思うわけでございまして、その路線を切り離して、あの第二次世界大戦日本の行動だけを究明できないのじゃないだろうか。ずっと一連のものとしてとらえていって、今後われわれはどう反省していかなければならないかということを考えるべきじゃないか、こういう気持ちも持っておるものでございますので、ああいう表現をさせていただいたわけでございました。
  107. 横山利秋

    横山委員 議会が無力であって、そして軍部の指導に任せたという反省について、あなたと私とコンセンサスがあります。ただしかし、私の意見とあなたの意見と食い違ってもいいではないか、それもいいです。けれども、きょうは私はあなたに聞いているのですからね。私は、大局的には侵略戦争であって自衛戦争ではないという判断に立ってはいるけれども、あなたがおっしゃっていることが矛盾があるから聞いているのですよ。議会は能力を失った、で、軍が日本の政治をも含めて軍国主義が発展していった、そして軍国主義が戦争へ突入していった、そういうことならば大局的に筋が通る。しかしあなたは追い込まれた戦争だと言うが、追い込まれたということは、どこかの国が日本戦争にせざるを得ないように追い込んでいった、だから追い込まれたとお答えになると思うのです。  それじゃ聞きますが、その追い込んだ人間、追い込んだ国はどこであったのですか、追い込まれたというのはどういう意味ですか、国際的な立場で説明してください。
  108. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 追い込んだのが軍部でもございましょうし、帝国憲法統帥権独立条項もそうでございましょうし、あるいは日本に対して輸出禁止を行ってきた国々の政治姿勢もそうでございましょうし、輸出禁止を行った中には油の問題、いろいろな問題があっただろうと思います。私は、総合的にそういう情勢を判断して、追い込まれた、こう申し上げているつもりであります。
  109. 横山利秋

    横山委員 われわれは議会人でありますから、議会としての反省はそれはいいです。けれども、日本全体が議会人を含めて戦争に参加をしたわけですね、よくもあしくも。そうすると、日本全体として語るときに、議会が無力であったということだけでは理由になりません。日本全体が戦争をしたという性格を追い込まれた戦争として定義をなさるということは、とにかくそれは自衛戦争であるという論理に発展をするのは当然ではありませんか。私のその追い込まれた即自衛戦争という考え方、定義の仕方に間違いがあれば指摘してください。
  110. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 追い込まれた戦争だから自衛の戦争であって侵略戦争でない、これは私は別な次元の言葉だ、こう思うわけでございます。  国内にもいろいろな勢力があったわけであります。戦争を抑止しようという力もあっただろうと思います。そういう人たちから見ますと、まさに戦争にとうとう追い込まれてしまったという判断をしておかしくはないと思いますし、また外国の圧力があったことも事実でございますし、いまのような国際社会における日本の地位じゃございません。われわれは黄色人種として白色人種からかなりの迫害を受けておったことも事実でございましょうし、あるいはまた日本のとった行動につきまして、満州事変につきましては当時の国際連盟からの調査もございました。そのことをめぐりましてもいろいろな抗争があったわけでございまして、昭和十六年以後の時代だけを切り離して判断はできないのじゃないだろうかなという、私はこういう気持ちが強うございますので、追い込まれた、こう申し上げているわけでございます。追い込まれたと言うと、自衛の戦争だとかそういう、これはちょっと別の次元の話じゃないだろうかな、こう思っておるわけでございます。
  111. 横山利秋

    横山委員 それでは聞きますが、議会人が無力であったということですね、あなたの考え方は。議会人が軍部をきちんと掌握下に置いてシビリアンコントロールが確立しておればこういう戦争にはならなかった、こういうことになりますね。  そうすると、議会人の考えておったことは正しいという立場に立つのですね。そうではないのですか。議会人の立場、議会が軍部に対してシビリアンコントロールがしっかりしておれば、これは軍部を制圧して戦争にはならなかった、こういうことだと思うのですよ。そうすると、議会人が正しくて軍部、軍国主義が悪かったんだ、こういう判断をしてもよろしいのでしょう。そこまではいいのでしょう。
  112. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私はそんな単純なことを言うてないつもりでございます。議会も責任がございましょう。マスコミにも原因がございましょう。マスコミに対しまして報道の検閲をやっておったということにも原因がございましょう。あるいは教育にも原因がございましょう。また教育の指導方針がどういう形でとられておったか。いまのような、すべて国会の中で決めるわけじゃございませんで、大権命令というものがございまして、教育国会でその方針を決めるのじゃなかったわけでございます。私はいろいろなことが原因していると思うのでございまして、私は帝国議会を一つ例に挙げましたけれども、これはもうほんの一つの例にすぎない、こう思っているわけでございます。
  113. 横山利秋

    横山委員 おっしゃるからそこを聞いておくと、また間口を広げて問題をぼやかしてしまうような気がしてならないのであります。私もそう単純に物事を考えるわけではありませんが、問題の中心というものをつかまえて、そこであなたの御意見を伺いたいと思っているのですから、自分の言ったことをぼかすようなことをなるべく避けてもらいたいと思います。  別の角度でお伺いをいたしますが、あなたは予算委員会でもこういうところでも、自分法務大臣であるから、内閣総理大臣、閣議で決まったことについて従いますから、こうおっしゃっておる。そうすると、こういうことになりますか。法務大臣でなければ憲法改正運動自分の信ずるところによってどんどんやるけれども、いまは法務大臣であるからみずからを慎んでおる、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  114. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 法務大臣憲法論議に関しまして他の国務大臣とは別な地位にあるんだというニュアンスを込めてお話しになっているといたしますならば、私はそれには反対であります。あらゆる大臣と全く同じ立場だと思います。自由に改憲論議して差し支えないと思うのであります。憲法論としては何ら差し支えないと思います。ただ政治姿勢としては、その内閣の一員である以上は、その内閣政治路線、これは忠実に守っていかなければならない、こういう考え方でございます。
  115. 横山利秋

    横山委員 私はちょっと違うのです。法務大臣というのは法秩序の維持ということがきわめて重大な任務である、そういう法秩序の基本にあるものは憲法である、そう私は考えておるわけです。  それは別といたしまして、自分が論議をするのは差し支えはないけれども、しかし閣僚の一員であるから閣議の決定に従っているんだ、したがって、閣議の一員として自分発言を差し控えたい、こういうわけでございますね。それならば、先ほどお伺いしたように、もしあなたが閣僚をやめて、そして自由な身になったならば、自分の思うところ、信ずるところの行動を憲法問題についてする、こういうふうに理解をしてよろしいかと聞いているのです。
  116. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は鈴木内閣の一員であります限りにおいては、鈴木内閣政治路線を忠実に守っていきます。しかし鈴木内閣の一員でない場合には、また政治家として自由に行動をしてまいります。
  117. 横山利秋

    横山委員 若干感想を述べますと、あなたの血潮の中は憲法改正したくてうずうずしておる、そういう感じがいたしますね。けれども、いまは法務大臣だから総理大臣の指示に従って言うことも言わずに、しかし余り言わずにおるわけには——どんどん言っていらっしゃるような気がするけれども、みずからの内臓を取り出して、おれの信念はこれだ、こうしたいと言うこともためらっているんだ、こういうふうに理解されるわけでありますが、私は非常にそういう点が、あなたの奥の手がいつ出るか、法務大臣であるんだけれども、あなたの洋服をとって裸にしたら、あなたの身内にたぎるそういう信念というものが、それがあなたの本質なんだというふうに考えられて大変危惧を感ずるわけであります。この点につきましては、時間もございませんから、また他日に譲ることにいたします。  ただ、私はもう一つあなたに申し上げたいのは、憲法改正といい、先般私が質問いたしました刑法改正といい、まあ率直に言って、あなたの在任中にどうこうできるものではないわけですね。しかし、奥野法務大臣といえば憲法改正あるいは刑法改正。あなたの在任中にできもせぬことをあなたが血道を上げて閣議を騒がし、国民を騒がし、マスコミを騒がしているということを痛感するわけです。法務大臣としてやるべきことは、あなたの在任中にできそうなことは山ほどあるではないか。あなたが日がな一日憲法問題を法務省やどこかで騒がしているとは思いませんけれども、法務大臣の在任中にやらなければならぬ法務省の法務行政は山ほどあるではないか。それだけあなたの信念なりあるいは行動力なり何なりがあるならば、いま目前にある法務行政の中で、在任中にどうしてもこれだけはおれがやってみせるという気持ちにもう少し転化をしたらどうか。できもせぬことをわあわあ言っておって、それでやらなければならぬことが滞っているんじゃないか、こういうことを私は思わざるを得ないのであります。  これは、私は純粋にあなたに勧めたいのであります。あなたが自分信念なり行動力を自負していらっしゃるならば、もっともっと法務行政の中でこの機会に自分の在任中にやろうということを選択をされて、必死になってやられなければおかしいと思うのです。ここに法務省の皆さんいらっしゃるけれども、奥野法務大臣憲法問題で、法務省に直接行政に関係のないことで血道を上げてしまっている、みんなそう思ってますよ。どうですかね。
  118. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 横山さんの御意見として承っておくだけでいいのかもしれませんけれども、二つお挙げになったわけでございますから、その二つについて私なりに経過をお話しさしていただきたいのです。  一つ憲法の問題。これは御承知のように稲葉さんから私に対しまして御質問があって答えたのです。答えましたら、その党の責任者から法務大臣罷免という声が上がったんです。これは、国会で私がお答えをした論議に反対なら、論議をもってこたえる、論議を深めるのが国会の姿じゃないだろうか。だから国会を空疎なものにしないようにしようじゃありませんか。これはやはり私がその場面に遭遇したんだから、政治家として私はこれを強く訴えていかなければならない、これが一つでした。  もう一つは、罷免要求になった原因は憲法の論議であり、特に憲法九条に触れたことがそういう意見になったんじゃないかな、こう思ったのです。国の基本にかかわる法規ですから、憲法論議こそ深めていかなければならない。国会というところは国の運命を背負っておるところじゃないか。国の運命を背負っておるところで国の基本にかかわる法規の検討ができない、いわんやタブーがその中にある。どうして運命を背負っていけるんだろうか。やはり憲法論議も深めていかなければならない。  この二つは、私がそういう場面にぶつかったんだから、政治家としてこれを打開するのは私の責任だ、こんな感じを持ったことは事実でございます。私は憲法改正で突っ走ったわけではございませんで、この二つをぜひみんなに理解してもらわなければならない、理解してもらうように努力するのが私の責任だと自覚を深めたことは事実でございます。  もう一つ、刑法の問題がございました。刑法は、御承知のように昭和四十九年に法制審議会から刑法改正草案の答申をいただいたのです。答申をいただいたんですけれども、六年間たなざらしになっている。たなざらしになっている最大の原因は、横山さんよく御承知の保安処分が大きな原因でございます。たまたま精神障害者による新宿西口における事件が起こった。こういう方々がまた再犯をしては大変だ。となると、この機会に私としては日本弁護士会などともひとつ話をしていきたい。話をするについては、六年間たなざらしになっておるわけですから、やはり閣議の御了解を得る必要があるだろう。私としては、関係者と協議を重ねてこの問題の推進を図っていきたい、こういうお許しを得て、日本弁護士会等との話し合いを始めたわけでございました。  いままで話し合いのテーブルに着くことを拒否しておられた日本弁護士会も、反対の態度は崩さぬけれども協議のテーブルには着きましょう、こう言っていただけるようになったわけでございまして、刑法の問題につきましても、せっかく答申が出ておるわけでございますから、六年間たなざらしにしたままにしないで、やはり論議をしながら、これをどうするかという結論を得るようにしていかなければならないと思うのであります。  私がそういう議論を起こしますと、一つの結論を突きつけていくんだ、こう御理解いただかないようにしていただきたいと思うのです。議論を積み重ねながら、その中で結論を得るようにしていかなければならない。憲法でも同じだと思うのでありまして、憲法改正反対と憲法改正と二つの結論だけ出し合って、硬直的な対決をしておったんじゃ前進をしない。議論を積み重ねながら、その上に立って結論を得る努力をしていかなければならない、こういう気持ちを持ったわけでございまして、刑法の問題も、ただしゃにむにあの刑法改正草案どおりに実現しなければならないんだ、こんなことは一つも思っておりません。論議を重ねながらよい結論を得たい、私はその努力をしていきたい、こう思っておるわけでございますので、この気持ちはぜひ横山さんにはわかっていただきたいなとお願いを申し上げておきます。
  119. 横山利秋

    横山委員 言わずもがなのことをおっしゃいましたから、このままにほうっておくわけにいきません。  あなたは少しも反省がないように思いますね。おれが今日までやったことは何が悪いかと開き直るような姿勢をお見せになる。それならば、なぜあなたの発言について閣議で問題になり、内閣総理大臣から事実上の注意があったのか。あなたは護憲運動を非難なさった。自分の言っていることはいいけれども、憲法を守る運動に対して批判をなさった。それについてあなたは反省をなさったはずだ。あなたがいまそういう釈明をなさるなら、なぜそれが出てこないか。あなたは戦争性格について追い込まれた戦争だとおっしゃった。いろいろな逃げ隠れをなさるけれども、明らかにそれは自衛戦争性格を定義づけたようなものだ。時の法務大臣、閣僚の一人がこの大東亜戦争を侵略でなくて自衛だ、原則的にはそういう立場をおとりになるということは事重大でありますから、あなたは私にもわかってもらいたいとおっしゃるけれども、あなたが少しも自分の今日までの経緯について何の反省もないということ、大変遺憾千万だと私は思います。これはこれ以上やりますと水かけ論になりそうでございますが、かたく私は、あなたは非難さるべきだという立場を堅持しておることを申し上げておきます。  そこで、先ほど申し上げました直面する法務行政の問題ですが、きょうは時間が余りございませんから多く申しませんが、先般委員長を筆頭にいたしまして、中国、山陰地方を国政調査に参りました。そこで私どもはたくさんの勉強をまじめにしたわけでありますが、数多くの陳情の中でどうしても看過することのできないのが登記所の問題なんです。  民事局長もおいでになっておるし、法務大臣もおわかりになっておると思うのだけれども、登記所の現状というのはまことに憂うべき状況にあると私は思われます。年々歳々国会で附帯決議をつけました。それから大蔵省の了解もあって若干の増員もできました。しかし、一法務局にせいぜいプラス・マイナスをして一人か二人くらい、よくいって二人、そういうような状況なんでございます。しかも甲号、乙号、登記所の仕事は激増しておる。山陰地方におきましては、都市と違いまして甲号の方が三倍、十倍という状況にもなっておる、そして機械化がなかなか進まない。こういう状況ですから、国民の権利、財産、生命を守るという法務局の登記事務というものがきわめて危殆に瀕しておると私は思うのであります。  これは先般も法務省の諸君と話し合いをいたしたわけですが、尋常普通の方法ではとても解決できないだろう。理事会でも委員長初め理事諸君と相談をいたしましたが、何らかの落差の立つ方法をしなければ、とてもこれは年々歳々微増、まさに微増であって話がつかないのではないか。いろいろそれは入管の問題もございましょう。ほかのところもございましょうけれども、いまあなたが一番最大の政治力を発揮なさるべきことは、登記所の登記事務について飛躍的改善を図ることだ。これならばあなたは任期中にできる。任期中にどんなことがあっても結論がつく。つかせようと思えばつけられる。ほかを捨ててもとは言いません。ほかもやらなければならぬけれども、せめてこの登記所の改善について全力を注ぐべきではないか。早いところもありますが、遅いところは登記を願い出て二十日くらいかかる、こういう状況である。そして、それが渋滞をいたしておりますために、土地台帳だとかいろいろな書類の改ざんが行われている場合がある。そういうことについて監視の方法もない。ある登記所へ行きましたら鏡がある。何でこんなところに大きな鏡を置くのかと言ったら、監視ができないから後ろの方にだれかおって悪いことをするやつがないか調べるんだ。ところが、やってみたけれども監視する人間がないから、鏡が邪魔になったら、そこへ取り扱いは厳重にいたしますと書いて張ってあって、これは何もならない。こういう状況でございますが、一体法務大臣として登記所の現状を本当に熟知していらっしゃるかどうか伺いたい。
  120. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 横山さんが法務省の所管であります登記事務について大変御心配いただいておりますこと、感謝申し上げておきたいと思います。  登記事務が激増しておりますさなかに、他方では行政改革等でしばしば人員を全体として減らしていくというような方向をとられるものですから、増員が必ずしも意のままにはなっていない、そのために、いまおっしゃっているようなことも登記所によって出てまいってきておるわけでございます。やはり人の問題もございますし、あるいはいろいろな施設を整備していって能率よく事を運べるようにするための努力も大切なことだし、いま法務行政の中では一番欠陥になっている点だ、こう思っておりますので、これからも最善の努力を払っていきたいと思います。
  121. 横山利秋

    横山委員 先般、登記所に関係いたします司法書士会からわれわれのところへ要望がございました。それによりますと、五十四年度における登記事件は、事件数が甲号で二千百七十四万六千件、謄抄本及び証明手続事件が三億七千六百四十三万二千件、これに対して登記所職員は五十五年度で九千五百四十六人、申請事件について納付した登録税、登録免許税は四千三百五十五億七千一百万円と、まことに税務署——私も大蔵委員をやったことがあるわけですからよくわかっておるわけでありますが、これだけの職員でこれだけの税収を上げ、そしてこれだけの仕事を処理するということは、まだ激増するわけでありますから、容易なことではありませんよ。  あなたはいまいろいろおっしゃったけれども、どうして一体この難関を突破なさるのか。あなたは最近、法務大臣になってから登記所をごらんになったことありますか。
  122. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 拝見したことあります。
  123. 横山利秋

    横山委員 それで、登記所の機械化、増員、その業務の改善について具体的にどうなさるおつもりでありますか。
  124. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 登記所の統廃合の問題から始まっておりますし、また機械類の整備の問題もありましょうし、具体的なことは事務当局からお答えをさせていただきます。
  125. 貞家克己

    貞家政府委員 横山委員御指摘のとおり、法務局の取り扱い事件数、ことに登記事件につきましては激増を続けているところでございまして、昭和四十二年から五十三年までの数字をとりましても、事件数は約二・五倍になっておるのに対しまして、登記事務従事職員は一・一六倍というような状況でございます。これをさらに昔にさかのぼりまして比率をとりますと、その事務量と人員のアンバランスは飛躍的に大きくなっているというのが現状でございます。  したがいまして、こういった事件増と人員増の不均衡な状態が原因となりまして、人員の不足が深刻な問題になっておりまして、事務処理の遅滞でございますとか、あるいは事務処理がどうしても粗雑化するきらいがある、あるいは多数の部外応援者を求めなければならない、さらには一般利用者に対する接遇が低下する、果ては監視が不十分でありますために外部から登記簿の抜き取り、改ざんといういまわしい事故も数多く起こっているという実情にございまして、これは横山委員すでに十分御承知のとおりだと思うのでございます。  ただ、政府全体といたしまして人員の増加を抑制するという方針がございます。したがいまして、その点は私どもといたしても十分考慮はいたしているわけでございますが、今後一方では増員を要求し、あわせて事務の合理化、機械化ということに極力努力いたすつもりでございます。幸いにいたしまして、財政当局その他関係当局の御理解を得まして、第一次の人員削減計画が発足いたしましてから、登記事務に関しましては約千三百人の増加を見ているわけでございまして、法務局全体といたしましては千四百数十人ということでございますが、こういった増員が年々わずかではございますけれども認められているということでございまして、これは他の職種には余り見られないところでありますので、私どもは、今後といえども増員ということを強力に推し進めると同時に、事務の合理化、機械化その他につきましても極力努力して、そういった方面での予算の確保に努めたいというふうに考えております。
  126. 横山利秋

    横山委員 重ねて申しますが、大臣憲法問題で国会、世間を騒がせておるために、議会におけるあなたと私どもとのコンセンサスというのがなかなかうまくいかないという感じがいたします。大変私は残念なことだと思うのです。直面いたしますこの登記所の強化を含めて、司法行政の問題についてあなたの全力を傾注されるように私は忠告をいたしたい、そう思います。  さて、先ほど安川簡裁判事についての質疑応答がございましたから、簡単に私の聞きたいことだけ申しますと、庶民的な立場で見れば、なるほど公職選挙法があって届け出たら自動的にやめる、裁判官分限法によって免職はできない、そういうことなのかな、しかしこれは本当におかしいなということが言われておるわけであります。私ども立法府におる者としていろいろ調べてみても、何らか知恵はないのかと思うのでありますけれども、恐らく最高裁としても法務省としてもいろいろお考えになっておるのでしょうが、このままで仕方がないのですか。そして安川簡裁判事はどういうことになるのですか。退職年金はどういうことになりますか。それをひとつお伺いいたしたい。
  127. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 公選法九十条と分限法あるいは弾劾法等の立法の問題でございますが、こういう結果を出来いたしましたことにつきましては私どもも非常に遺憾に存じます。  果たしてこれを立法的にどう措置するかというお尋ねでございますが、公職選挙法は自治省所管でございますし、弾劾法は議員立法でございますので、私ども現在のところ、打つ手だてといいますか、どうあってほしいかという具体的な方策は残念ながら持ち合わせておりません。  それから安川元簡裁判事の退職後の問題でありますが、公選法九十条により退官したわけでありますので、退職手当それから共済法による共済年金は法律に従って全額支払われるということに相なります。
  128. 横山利秋

    横山委員 どのくらいになりますか。
  129. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 退職手当は大体一千万円程度でございます。年金は、正確には覚えておりませんが、年間約二百万ちょっとだと思います。
  130. 横山利秋

    横山委員 法務省、本件について御意見ありませんか。法律は法律でございますから、議員立法だから手がつかぬということはおかしい。この種の法案について法務省は御検討はされておりませんか。
  131. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私も横山さんと同じように、全く脱法行為的な知恵が勝ちを占める、それは許してはいけないな、こんな気持ちを持っておるものでございます。  しかし、やはり公職選挙法は、届け出をしますと自動的に公務員の身分を失う、そこに問題がある。身分を失わせてはいけない者まで身分を失わせてしまう。ですから、将来立法論としてはそういう問題を考えなければならぬのではないかな、そう思うわけでございますので、いまさしあたってこうすればこの問題は解決できるという手は、ちょっと知恵が出ないなという話をお互いにしているところでございます。しかし、今後とも研究していかなければならない課題だと思います。
  132. 横山利秋

    横山委員 新聞の伝うるところによりますと、右翼が安川判事の自宅へ行ってやめろやめろ、こう言っているために本人は選挙活動ができなくて自宅におる、こういうことです。右翼のそういうやり方が功を奏して、そして安川簡裁判事が立候補を仮に取りやめるという事態が生じたら、これはゆゆしい問題だと私は思うのです。結果はいいにしても、右翼の力が日本の恥部といいますか法律上の恥部を救ったというような結果を招いたのでは、私はゆゆしいことだと思うのです。  それから高裁長官がいろいろステートメントか何か出してやっておりますが、一体最高裁が安川簡裁判事に何らの説得力もない。先輩、同僚が何らの説得力もないことについても不思議な気がするわけです。まさに不思議な気がする。そんなものかな、裁判官は独立しているんだからしようがないと言ってしまえばそれだけのものですけれども、そうなってまいりますと、鬼頭判事補あるいは安川簡裁判事を生んだ裁判所の体質というものは一体どういうものだろうか。頭さえよければ、試験さえ受かればどんなおかしな男でも裁判官になれるのか、そういう体質というものが裁判所の中にあるのだろうか、こう思うのです。  私は、この間国政調査に行ったときに、裁判官から検察庁から皆さんいらっしゃる前で、安川簡裁判事について何か御意見ありませんかと言ったら皆絶句してしまった。どんなふうにお感じになってみえますか、この安川簡裁判事事件について御感想なり何なりを伺いたい、このごろは裁判官もそうだし、あるいは刑務所の中にも不正があるし、それからいろいろなところで、法務行政検察行政あるいは裁判所行政の中にこの種の問題があちらこちらで新聞種になっていることはまことに遺憾だがと言ったら、皆さん絶句されて私にようお答えなさらなかった。  最高裁にお伺いをいたしたいと思うのですけれども、鬼頭判事補、安川を生んだこのことについてどういうふうに反省し、これからどうなさろうとしておるのか、基本的なお考えを伺いたいと思います。
  133. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 安川簡裁判事の事件につきましては何も申し上げることはございません。ただ深く国民の皆さまにおわびをいたすだけでございます。  裁判官は、実はその職務を行います上において良心と法律に従って事を処するということを身上とし、またそれを唯一の使命といたしておるわけでございまして、そういうことのために身分関係上は非常に手厚く保護をされております。その保護は、いまも申し上げましたように、全く職務遂行のための保護でございまして、恣意を許す、勝手を許すという趣旨のものでないことは御指摘のとおりでございます。  今回の事件は、そういった裁判官の手厚く保護されております身分の保障といったような間隙を縫った行為でございまして、私ども同僚、先輩といたしましてはきわめて残念なことでございます。ただ、たくさんの裁判官の中に、先ほど御指摘の鬼頭判事補の問題今回の安川簡裁判事の問題等が起こりまして、これまたいずれも特異なケースというふうには考えておりますが、しかし特異なケースであれ何であれ、そういう事件が一つでも起こってはならない、これは私も常日ごろから戒めておるところでございます。ただ、そういう問題が現に起こりましたので、何とも申しわけないと考えております。  どういう決意で今後臨むかというお尋ねでございますが、これは今後の問題に限らず、これまでもかたく戒めてきたところでございますが、法律の技術を習得する必要のあることはもちろんでございますが、その前に、人格の修養と申しますか、社会人として一人前であるということがより根底において大切な問題であろうと考えます。ではどういうふうにするかとおっしゃいましても、直ちにお答えをするだけの特効薬的なものは持っておりませんが、裁判官全員あらゆる機会に、まずそういった人格の修養ということが第一義であることを心がけまして、全員二度とこういう不祥事を起こさないように自粛自戒して国民の信頼にこたえたい、このように考えております。
  134. 横山利秋

    横山委員 当面安川簡裁判事が一千万もらって年に二百万の年金をもらう、そして政府は手も足も出ない、そういうばかげたことが国民の中ではとうてい納得ができないことであります。何としてもこれを防止する。少なくとも退職金なり年金を防ぎとめるということについてさらに訴追を出すべきことだ。それについては法務省も最高裁もあるいは訴追委員会も一遍合議をなさるべきだ。議員提案だから云々ということは理屈にならぬと私は思います。私は長らく訴追委員をやっておりますから、少なくとも訴追請求がされ、受理され、決定をされたら公職選挙法に基づく選挙に出ることはできない——今後の問題です。つまり弾劾裁判所へ訴追請求をした途端から公職選挙法に基づく立候補はできない、私はこういうふうに少なくともこれからの問題は改正さるべきだと思います。それらを含めて直面する問題あるいは今後の改正につきまして関係の個所の合議を願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  135. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 大変大事な御意見でございますから、政府部内においても十分検討するように努力したいと思います。
  136. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんから問題提起だけしておきますが、先般の国政調査の中で、これとは逆の問題でございますが、裁判所職員の問題であります。  裁判所職員の中で一号表彰、二号表彰、三号表彰というのがあるのですが、一号表彰の該当者、三十年以上勤続の者が全裁判所の職員ですでに七千名を超えるとあります。ところが表彰を受けるのは毎年百名。でありますから、七千名が表彰を受けるにはまさに日暮れて道遠し。そして二号表彰は高裁長官の表彰でありますが、これも二十五年以上または三十年未満という人でありますが、該当年限に達しても表彰ができない。これは退職時までには表彰するというのでありますから、一号表彰の七千名を毎年百人ぐらいやっておったのでは表彰を受けられる人はほとんどない。もちろん、この問題についていろいろ事情を聴取いたしますと、予算の問題あるいは最高裁長官の表彰であるからという論議があるそうでありますが、欠格事由に適合する人はやむを得ないけれども、ほとんどが適格であるけれども予算がないから、あるいは長官表彰であるからという理由をもって毎年七千人の該当者で百人ということは、他の省庁ではあり得ないことであります。表彰規程のいろいろな判断もありますけれども、ぜひ三十年以上働いておる七千名の人々のためにもう少しこの際基本的に考えるべきことはないかということを国政調査の段階でつくづく痛感をいたしたわけであります。簡単に御返事を願いたい。
  137. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 裁判所における表彰の実情につきましては、御指摘のとおりでございます。  裁判所におきます表彰が三つに分かれておりますことも御指摘のとおりでございますが、考え方といたしましては、長年勤続したことと成績が優良であるということが二つあろうかと思います。いわゆる三号表彰につきましては、その長年勤続したことに着目して全員、それから二号表彰につきましては、成績優秀という面を少し重く見ましてある程度セレクトしている。一号表彰につきましては長年勤続かつ非常に成績が優秀であるという考え方で現在の運用をやっているような次第でございます。なお、御指摘の各省庁の実情等もよく私ども調べさせていただきまして、この点に関する横山委員の御意見、貴重な御意見として承っておきたいと存じます。
  138. 横山利秋

    横山委員 次に、東本願寺の真宗大谷派に関する紛争についてお伺いをいたします。  本件につきましては、しばしば本委員会で取り上げてまいったわけでありますが、もうじんぜん日をむなしゅうしてと言うと検事局からそうではないとおっしゃるかもしれぬが、客観的に言っても、告訴があってからもう二年有半を経過をいたしておるわけであります。  聞きたい点を簡単に申しますと、たとえば聖護院別邸の移転登記、仮登記権者がすべて権利を放棄して本願寺に戻したかのように伝えられていると言われております。つまり、戻せば検察陣の手が抜ける、こういう判断で陽動作戦をされておる。しかし、その裏では聖護院別邸がすでに売却または売買契約がなされているとすれば、現時点では登記面にあらわれていないが、一件落着後に売買契約が存在した事実が表面に出る、そういう証拠を私は持っておるわけであります。昨年の十二月二十一日売買契約が一億円で行われた。京都市三条の麩屋町の宮本弘、豊中市の孫圭康、日本名は木本というのでありますが、それが大谷光暢氏との間に契約がなされ、さらに五十五年になって一億円が渡されたとされている。これが検察の示唆によって聖護院別邸、総長役宅、専修学院修練舎等の不当財産処分の登記簿上の白紙化、本願寺への返却資金として払われておると言われておる。そして売買契約に基づく内金であるともされている。合計二億円の金が大谷家側に支払い済みとのこれらの関係は検察当局は十分御存じで最終的な結論に行こうとしておるのか、これが一つであります。  それから、最近全国紙で和解の話が伝えられております。非常に大きなスペースで和解の話が伝えられております。私も、いろいろな角度でその和解なるものについての動向を承知をしたわけでありますが、結局これは法主側の報道で、いわゆる内局側に何らのアプローチもまだされていないと私は信じています。そうだとすれば、たびたび起こりますこの種の陽動作戦とでも申しましょうか、それによって検察陣の結論を延ばさせるという役割りしか働かないのではないか、そういうことではもう毎回毎回——私は想像するわけでありますが、暗に恐らく検察陣としてもまあまあ和解があれば結構なことだからもう少し、もう少しと言って延ばしておる傾向が看取をされるわけでありますが、また同じことになると思うのであります。  この際、私は明白に希望を申し上げておきたいと思うのでありまするが、たびたび申し上げますように、総理大臣であろうが御連枝であろうが、法に違反をし、背任横領をしたりなんかするということについては断じて筋を通さなければいかぬ。また、筋を通すことによって、問題解決の糸口が見える、それをまたずらし、またずらしをしておったら同じことが続く。そういう意味において検察陣の決断をこの際すべきである、そう考えますが、いかがでございますか。
  139. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘の事件につきまして捜査がおくれているという御批判を受けておるわけでございますが、その点は申しわけないと思いますけれども、前々から申しておりますように内容も複雑でございますわけで、最近も、この前も申し上げたと思いますけれども、体制も整えまして鋭意捜査を進めておるところでございます。  先ほど二点御指摘を受けたわけでございますが、第一点につきましては、御指摘の点も十分検察当局は承知していると思いますけれども、念のためにまた現地の方に伝えておきたいと思います。  また第二点といたしまして、和解の話も御指摘を受けたわけでございますが、結論的には、最終的に横山委員が仰せになりましたように、事件は事件として筋を通した処理をするということが大事であることは十分わかっておるつもりでございます。ただ、横山委員もいま仰せになりましたように、いわば形式的に処理すれば足りるということでもないわけでございまして、やはりそれがおのずから解決のために資するということも望ましいことであることは間違いないというふうに思うわけでございます。  それはそれといたしまして、御存じのように関係者を逮捕したりそれぞれの所要の措置をとっておるわけでございまして、いわゆる陽動作戦と申しますか、そういうのに惑わされて一層処理が延びるということはない、かように御理解いただきたいわけでございます。
  140. 横山利秋

    横山委員 告訴されたのは大谷光暢、大谷暢道、三池新二、松本裕夫の四人でございますが、検察陣が逮捕しましたのは武内兄弟ほかでありまして、告訴された人間にはいわゆる強制捜査が行われていないわけであります。  私は重ねて申し上げますが、もうじんぜん日をむなしゅうすることはできない、本当の和解をさせようとするならば、この際待つべきではない。私の長年の判断から言いまして、あうんの呼吸で、もし条件が熟したならばあなたの方としても判断すべき点があろうとは申し上げてまいりましたけれども、いよいよ最高検の御相談もあったようだし、そして捜査もほとんど終了しているようだ。このときになってまた手心を加えるようなことがあるとするならば、これは絶対に和解の方へはいかない。むしろこの際は英断をもって真一文字に決断をすべきときである。それによって、その決断の上に立ってこそ和解があり得る、私はかたくそう信じておりますから、この点を十分お考えの上処置を願いたいと強く要望をいたしておきます。  以上でございます。
  141. 高鳥修

    高鳥委員長 小林進君。
  142. 小林進

    小林(進)委員 限られた時間でございますから、簡略に質問したいと思います。  第一問は、やはりあなたの憲法問題に関連する発言について私自身が腑に落ちない問題の一、二について御質問をいたしたいと思うのであります。わが党の稲葉委員質問に答えた八月二十七日のあなたの御答弁ですが、これを見ますると、至るところに、私個人の考え方としてはとかあるいは政治家個人として私は云々という、こういうまくら言葉がついている。一体これをつけた場合とつけない場合の効果はどう違うのでありますか、ちょっとお教えいただきたいと思います。
  143. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、所管の国務大臣ではございませんので、あえて私の所管ではございませんと言って答弁をお断りするのも一つかと思います。しかし、せっかくのお尋ねでございますし、また国会は自由に虚心に論議を交わすべき場所だ、こう心得ておりますので、政府所見、政府見解ではありませんけれども、私の個人の考え方を申し上げましょうというつもりでお答えをしたわけであります。
  144. 小林進

    小林(進)委員 結論から申し上げますと、公人が公式の場所において発言したものは、私個人の考え方あるいは政治家個人としてというようなまくら言葉を入れようと入れまいと、これは当然公的な発言とみなさなければならない、これが私の意見でありまするけれども、いかがでございましようか。
  145. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 公的な発言という意味がよくわかりませんけれども、私は政府見解であるか政府見解でないかという違いだと思っております。
  146. 小林進

    小林(進)委員 政府見解であるかどうかということはこれまた後で質問いたしましょうが、私は、法務大臣としてあるいは国務大臣として正式に設定せられたその場所で、公人が、公にその地位にある、職にある人が発言をしておいて、それはいかにも個人の発言であり私人の発言であるということで何か責任を逃れようとするようなその姿勢は、むしろ私はひきょうなことだと思う。私人と断ろうとあるいは個人と言おうと、法務大臣としてあなたが公の席で発言されたものは、それは法務大臣発言だ、こういうことをやはりきちっと位置づけておく必要がある。  日本憲法の九十九条で国務大臣、国会議員がこの憲法を尊重し擁護する義務を負うことが規定されておる。一般国民もまた憲法を尊重する義務を負うことは当然であるが、公権力を行使する立場にある者に対しては、特に明文をもってこれが義務づけられている。これが一般人と違うところです。それを国務大臣が、その職務に属する公的な場所で、私個人としてはというまくら言葉を置いて、あれをこれを改正することの必要性や、その成立にさかのぼって独立性、自主性を否定するような発言をすることは、私は尊重の義務に違反するものと考えるが、一体これはいかがでございましょうか。
  147. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法尊重擁護する義務と改憲論議とは両立する、こう考えているわけであります。  たとえば、法の性格は大きく違いますけれども、法務省所管の法律に刑法がございます。刑法も尊重擁護しなければなりません。しかし刑法につきましても私自身いろいろ改正論議をいたしております。また、改正します場合には国民に大きく理解を求める努力をしてもらわなければならないと思います。その努力をしたからといって私が刑法尊重擁護姿勢に欠けるとだれも非難されないと思うのです。  同じように、憲法尊重擁護義務と改憲論議とは両立するのだ、こう考えるわけでございまして、憲法論としてあるいは憲法解釈として申し上げる場合にはそのとおりだと思いますし、また鈴木総理もたびたび国会でそうお答えになっているわけでございます。
  148. 小林進

    小林(進)委員 まああなたの答弁はひとつ聞き流して先にいきましょう。  私の尊敬する篠原一教授はこういうことを言われております。公人が、公人という言葉があいまいであれば法務大臣と言ってもいいし国務大臣と言ってもよろしいですが、公的な場所であるいは職務範囲内に属する会合で発言したものは、私的な見解と言ってもそれは公的な発言とみなされるものである、遵守義務に違反する者は罷免に値する、こういうことを明確に言っておられるが、これに対するあなたの所感はいかがですか。
  149. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 公的な発言という意味が私にはよく理解できないものですから、小林さんが何を頭に置いて言っておられるのかわかりませんので、そのとおりでございますと言い切れないだけなのです。私が申し上げますのは、政府見解を述べる立場にはなかった、だから政治家個人としての意見を申し上げますということで申し上げたわけでございます。
  150. 小林進

    小林(進)委員 法務大臣が法務委員会で速記をつけて国会議員の質問に答えた。これはどういうまくら言葉をつけようとも、いわゆる国務大臣としての責任ある発言だ。私はこれを公人と言っているわけです。それに対して責任のないようなことは許されない。ちゃんと責任を持たなければだめだぞということを私は申し上げているのであって、それがいまあなたのお答えを聞いていると、内閣の見解ではない、だから私はそういうふうにまくら言葉を入れたんだと言われたが、これは大変重大な発言だと私は思うのですよ。  あなたが公人として、また公人という言葉に問題があるならば国務大臣として、内閣の方針や見解と異なることを公の場所で発言することが一体許されるのか、これは憲法九十六条の問題にも関連するが、許されるかどうか、私は重大問題だと思っている。あなたのいまのお話じゃ、そんなことはいつでも言ってよろしいような、そういう雰囲気の中で論じていられるが、これは大変なことだ。  問題を次に移しますが、それが奥野発言内閣の方針が違った場合は一体どうなるかという問題なんです。  鈴木首相は、十月九日の衆議院の予算委員会において、法相の改憲発言は適切を欠くものであり、遺憾であると言われた。いま一回申し上げますよ。法相の改憲発言は適切を欠くもので遺憾であると陳謝されているんですよ。これは明らかに政府の方針なり総理大臣の方針と法務大臣のあなたの見解が違っていることを明らかにされたものだ。明々白々なんだ。これに対して、あなたは物欲しげに、これは新聞の報道ですから、あるいは事実が間違っているかどうか知りませんけれども、その晩ですか、十日の日ですか、電話か何かで総理大臣に確かめられた。適切を欠くものであり遺憾であるということは、一体法相の一連の発言を指しているのか、言いかえれば、八月二十七日の衆議院法務委員会における発言をも含めて遺憾であると言っておられるのか、九日の午前中の発言だけに限って不適正であるということを意味されているのか、どちらなんです、それをあなたは総理に確かめられた。その先は何かもやもやしておりますけれども、何か九日の発言のみに限られるような意味合いにとれる総理の発言であったらしいということで、あなたが了承されたとかしないとかというふうに報道されておるが、私自身もあの予算委員会に出席した。だれが聞いても明らかです。  あのときの総理の発言は、あなたの一連の発言はいわゆる不適正である、適正を欠くものであり遺憾であると言っている。明確なんです。いま一度速記録を見直してもよろしい。しかもあの原案は、原案と言っては悪いですけれども、草案は私どもも参加してつくったのです。そしてそれを与党に回した。与党から総理に回った。私はその草案作成の一員として、実に内容は微に入り細に入りわかっている。あれはあなたの一連の発言を全部指したのです。それを総理に了承を得て、総理が公の場所で発言された。九日の日の午前中の発言について、それが適正を欠くものであるということは、それはその後に立たれた宮澤官房長官が発言をされている。宮澤官房長官が、これは特にまた総理とは別途の立場に立って、すなわち九日の午前中の発言の不適正については、日本占領下にあったときには主権がなかった云々発言については、主権発言はいわゆる適切を欠くものである、しかも重大であって、これを以下云々ということで訂正をされている。  同じことを、同じ午前中のあなたの発言を訂正をされるならば、何も総理大臣と宮澤官房長官と二人がおのおの立って別々の発言をする必要はない。くどいようでありますが、総理大臣はあなたの一連の憲法発言に対して遺憾の意を表明された。宮澤さんが九日の午前中のあなたのいわゆる主権発言に対してそれを訂正をされた。明確であります。どうですか。私の言うことは間違っておりますか。
  151. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私が政治家個人の考えとして申し上げておりますことにつきましても、私は当然全責任を負ってまいります。責任を負わないとはいまだかつて言ったことはありません。ただ申し上げていますのは、政府の見解ではありませんということでございますから、政府の見解と食い違ったって許されることだ、私はこう考えるわけでございます。そういう意味合いで申し上げているのだと御理解いただきたいと思います。  なお、不適切発言の問題につきましてはさき予算委員会でもう決着のついていることでございますので、私はそれ以上言う考えは持っておりません。
  152. 小林進

    小林(進)委員 予算委員会におけるそういうふうな総理の発言を再び繰り返すとあなたは不利になりますからね。だから世間の人は言っております。当然奥野法務大臣はあの席上において辞表を出すべきであった、あの人は自分信念を曲げてもやはり法務大臣のいすが欲しいのだろう、恋々としてあれにぶら下がっているのだろう、こういうふうに批判をいたしております。これも国民の声ですから、そういう批判にもちゃんとあなたはこたえるだけの姿勢を示されたらいかがと思いますけれども、それはそれとしておいて、政府の見解とあなたの個人の見解が違うなどということを平気で言われるが、それはそれでいいのですか。  国務大臣発言というものは内閣全体に対しての責任になるのじゃありませんか。内閣というものは連帯じゃありませんか。一体じゃありませんか。内閣というものの中にあって、各国務大臣は個人の見解と称して自分の勝手な発言をしていいものですか。これは憲法の問題でもあり内閣の存立の問題でもある。私どもはいままでもささやかではありますが憲法を勉強してきましたけれども、内閣というものは連帯であり一体であり、そして各国務大臣発言はそれぞれ内閣に対して責任を負うものであると私は解釈をしているのでありますが、いかがでございましょう。これはいかがでございますか。
  153. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 政治姿勢として、閣僚であります以上はその内閣政治姿勢に反する言動は避けるべきだと思います。  私が申し上げていますのは、政府見解であります以上は当然同じものでなければならない。しかし私が当面のその所管大臣でございませんのにあえてお尋ねがあった。私の答える問題ではありませんとお断りするのも一つなんです。しかし、あえて私は個人的な見解と断ってまで率直にお答えしたのでございまして、小林さんのそういう姿勢でございますならば、小林さんの質問に対しましては私の所管でないことはお答えをしないようにいたします。
  154. 小林進

    小林(進)委員 いまさらここにきて取り返そうとしても取り返しはつきませんよ。所管であろうとなかろうと、それぞれ内閣の中に一体的な連帯をし責任を負うべき閣僚が、個人個人で、個人の見解でございますと言って勝手なことを皆しゃべり回っていいのですか。それが許されるとあなたはお考えになるのですか。たまたまそれが総理の見解と異なっている、内閣の方針と異なっているけれども、それは個人の見解と断れば構わないんだ、公の場所で言ってもいいんだとおっしゃるのですか、あなたは。
  155. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、閣僚それぞれ個人的にいろいろな考え方を持っております、自由民主党というものはいろいろな考え方があるからこそ発展していくんだと考えておるわけでございまして、考え方まで一色に塗りつぶさなければならない、こんな考え方は、私は自民党の本旨ではないと考えておるわけでございます。
  156. 小林進

    小林(進)委員 私は、自由民主党のことを聞いているのではないのです。あなたに、いま私は立法府の国会議員としての立場で物を聞いているのではないのです。行政府の長官として、法律なり憲法なりを正しく執行するその責任者の地位にあるあなた。内閣というものは法律を正しく執行する最高の責任がある。しかも連帯だ。一体となって一つの方針に向かって動くのが内閣だ。その内閣の中において、てんでんばらばらだ、右と左だ、北海道と京都だ、そういう別々の発言をすることが一体許されるか。そして発言をしておいても、個人の見解と銘打てば責任を問われることがないのか、私はそれを言っているのです。
  157. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、先ほどもお答えをいたしましたように、内閣の一員である以上は、その内閣のとっている政治路線政治姿勢、それを疑わせるような言動は避けなければならない、こういうことを申し上げているわけでございます。個人の考え方が二十一人全く一つでなければならない、そんなことは私は必要はないと思うのでございます。しかし、言動においてその内閣姿勢を疑わせるようなことは個人の見解といえども避けていかなければならない、それは当然のことだと思うのでございます。限界がおのずからそこにあろうかと思います。
  158. 小林進

    小林(進)委員 私は、一から十まで一つでなければならぬということを言っているのではない。憲法等国の基本に関する発言ですよ。そういうような重大なものについては、内閣の一体性、連帯性というものは、常にそれを示していく責任は各閣僚にある。その責任をあなたはないとおっしゃるのですか。憲法第六十六条であります。「内閣は、行政権の行使について、國會に對し、連帶して責任を負ふ。」あなた方は皆連帯して責任を持っておられる。その連帯責任を持っているのが、てんでんばらばらなことを言って個人の見解を述べる自由はある、それは余りにも乱暴過ぎる言い方じゃないですか。あなた、自分の言ったことが正しいとお考えになりますか。もし、あなたの主張が正しいということになると、これはもう内閣なんというものは実に単なる個人の集合体であって、国民に対して一体で責任をとるなんという責任は一つもないということになる。あなたは大変な発言をしておられるのですよ。いいですか。それでいいですか。
  159. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 内閣は一体として責任を負ってまいりますこと、そのとおりでございます。同時にまた、たびたび申し上げますように、閣僚がその内閣政治路線政治姿勢を疑わせるような、疑問を持たせるような言動は避けていかなければならない、これも当然でございます。  しかし、それぞれ人間でございますから、いろいろな考え方があろうかと考えるわけでございまして、その考え方が違うから内閣の言貝にはなれない、そんなことはないと思うのです。しかし、内閣の一員である以上は疑わせるような言動は避けていかなければならないと考えるわけでございます。憲法もまた「國民は、個人として尊重される。」という言葉まで置いているわけでございまして、一人一人の人権を尊重する、最大限にこれを尊重する規定を憲法の特色にしているわけでもございますので、私は、違った考え方を持っているから許されないんだというわけのものではない、しかし、その内閣の百貝であります限りにおいては、姿勢を疑わせないようにしなければならない、こう思っております。
  160. 小林進

    小林(進)委員 こんなことだけやっておりますと、これはきょうだけで事柄が片づく問題ではありませんから、これは私は留保しておきますが、これはどこまでもやりますよ。これは国の基本に関する問題ですからね。内閣基本に関する問題ですから、私の言っていることが間違っているか、あなたの言っていることが間違っているか、これはとことんまでやってみましょうよ。私は、断じて私の言うことが、内閣は連帯して責任を負う、一体でなければならないという私の主張が間違っていると思わない、行政に対しても。  しかも憲法の遵守などという、その連帯性、一体性などというものは、これは最も重要なる行政の一つであります。それを総理大臣と全く異なる見解を述べておいて、それくらいの自由は許されるなどというようなことは、乱暴きわまる発言だと私は思っていますので了承はできません。できませんが、残念ながら時間がありません。きょうは三、四時間ゆっくりやらしてもらうつもりで楽しみにして来ましたけれども、残念ながら、おまえには一時間だというさびしい時間しか割り当てられませんでしたから、この問題は後日に延ばすことにいたします。  次に、私はKDDの問題についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、どういう方面質問をやっていけばよろしいのか、質問の技術もあるのでございましょうが、いずれにいたしましても巷間は、このKDD事件の追及が内閣に対する不信任案となり、それが一年もたたないうちに二回も国会を解散するという、信を国民に問うという、そこまで発展していった。これは国会側からも、国民の側からも、重大な問題です。政財界が絡んだ重大なる汚職事件である。  でありますから、国民の側からすれば、当然これは検察庁、検察の主力をなす東京地検の特捜あたりが担当して、この問題を国民の納得する方向まで追及されるものと期待していた。ところが、特捜部がこれを担当せられないで警視庁にこの問題の捜査をお任せになった。ここら辺の経緯については、わが稲葉委員から、これは解散前に一応ここで質問が行われておる。私もその速記録は読んでまいりましたけれども、どうしても腑に落ちない。これは私が腑に落ちないのではないのです。国民の側も腑に落ちない。これほどの大事件をどうして一体検察庁が第一線の捜査を担当せられなかったのかということについて、いま一度お聞かせを願いたいと思う。
  161. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの点につきましては、ただいま小林委員も仰せになりましたように、前回と言いますか前にお尋ねを受けましてお答えしたところでございますが、まず形式的なことを申して恐縮でございますけれども、犯罪捜査は検察庁だけの専権ではございませんで、むしろたてまえからいたしますと、警察が第一次的な捜査権を持っておるというのが刑事訴訟法のたてまえでございます。ただ、いろいろと、ケース・バイ・ケースということが言えるかどうかと思いますけれども、事案によりまして検察官も捜査権を持っておるということから検察庁独自で捜査をする場合もございますが、要はその事案、事案に応じてのことでございます。  お尋ねのKDD事件につきましては、当初成田空港における密輸事件というところから事が始まったわけでございます。そういうことから大変関係者も多い、また、取り調べるべき場所も多いというようなこともございまして、警視庁と東京地検とで十分な協議を遂げまして、まず第一次的には警視庁で捜査をやっていただくのがこの事案に即して適当であろうということで捜査が始まったわけでございますが、前に稲葉委員にもお答えいたしましたように、警視庁に任せっきりというわけでももちろんございませんで、東京地検といたしまして随時連絡をとり相談をしながら捜査を進めたわけでございます。また、地検におきましても分担といたしましては特別捜査部が担当いたしまして、警視庁との連絡をとりながらやったわけでございますし、起訴するに当たりましては、地検の検察官といたしましてまた特捜部の検察官といたしましてそれなりの捜査も遂げて、そして処理すべきものは処理した、かような経過になっているわけでございます。
  162. 小林進

    小林(進)委員 私は、後藤田代議士とは親しく口を交す仲ですから、たまには冗談も言い合いますよ。最近、私は二人の間でこういう冗談を言いました。  後藤田君、君が警察庁長官出の経験を持ちながらも自治大臣、公安委員長で直接KDD事件の指揮をする最頂点に立ったということから、これはぼくが言うんじゃない、世間の人が言ったのだが、これはもう問題は火を噴かないね。穏やかにこれは幕を引かれる。何しろ君の警察内部における手腕力量の鋭さ、いままでの経験と、しかも大平、福田の総裁選挙における大平派の票集めにおけるあのらつ腕の見せ方その他から見て、大平内閣の屋台骨を揺すぶるような政治家の汚職事件をあからさまに天下にさらすことはなかろう。百九十二名の国会議員が関係しているというような大がかりな汚職事件を勧進帳でも開くように出したんじゃ、これは大平内閣の屋台骨を揺すぶるから、君の手腕力量でこっそりと陰に隠されるだろうと世間の人が言っていたが、後藤田君、やはり世間のうわさどおりだね。おかげさんで、このKDDには与党だけではない、野党の議員さんも関係したのだから、与野党ともに一人も出さないできれいに幕を引いてくれて大変御苦労さまでございましたと私は言ったのですが、彼答えていわく、いや、確かにけしからぬことがあるが、しかし法のたてまえからいわゆる公判や公で争うほどの資料が整わなかったからやむを得なかったんだ、こういうことを言われておりましたが、実際そのとおりなものかどうか。  そこには一つの大きなやみの指揮権、私もこういう言葉を皆さん方の仲間の人から聞いたのですが、やみの指揮権が発動されてこういうふうに事件を葬ってしまったということを言われている人もあるのでありますが、これが世間一般の良識と言っていいのでありますから、そうでないならばない、そうであるならばあるとひとつ明確にお答えをいただきたいと思う。
  163. 中平和水

    ○中平政府委員 ただいま、この事件の捜査について後藤田公安委員長の個人的な影響力が非常に強く出ておったではないか、こういう趣旨の御指摘だろうと存ずるわけでございますが、結論から申し上げまして、そうしたことはいささかもございません。  公安委員会制度等についても御案内のことと存じますが、公安委員長というのは公安委員会の構成員の一員でございまして、具体的な事件について指揮する権限は法制上もございませんし、公安委員会制度の運用におきましてもそういうことで運用されております。今回の事件につきましても、警視庁は東京地検と協力いたしまして全力を挙げてその真相の解明に当たったわけでございまして、最終的には逓信委員会でも御報告を申し上げましたように、KDDのいわゆる交際費の使途の行方につきましては、相当の額が多数の政治家に渡っておった疑いが多分に持たれたわけでございます。しかしながら、これはやはり職務に関する対価、違法な報酬というのが立証できないと贈収賄にならないわけでございます。したがいまして、あのような形で収束を遂げた次第でございます。
  164. 小林進

    小林(進)委員 お伺いいたしますが、警視庁あるいは警察庁と言ってもよろしいかもしれませんが、こういう政治家の絡んだ汚職事件をお取り扱いになりまして、二十年以来、一体政治家の一人でもそういう汚職や贈収賄に該当するといって起訴された事件がありますか。  これも巷間人の言うところ、政治家が絡んだ政財界の事件が警察へ移った場合には、政治家や官僚を含めてせいぜい課長どまりで、それ以上はまず行かない。行った例があるならばひとつ例証を示してもらいたい。たしか二十年以来それは一つもないはずだよということを私はその道の専門家から聞いているのでありますが、いかがでございましょう。
  165. 中平和水

    ○中平政府委員 お答えします。  警察が第一次的な形で捜査したケースについては政治家の検挙がないではないか、こういう御指摘だと思いますが、その政治家の範囲をまずどの範囲で御指摘いただいておりますか、政治家の範囲を国会議員に限定せずに地方議会の議員あるいは知事、市町村長等になりますと、当然これは入っているわけです。(小林(進)委員「国会議員」と呼ぶ)国会議員につきましては、いま厳密に汚職とおっしゃいましたが、要するに広い意味での犯罪ということになりますと、昭和五十二年でございましたか、これは恐喝でございますが、ある代議士を警視庁において処理している事件もあるわけでございます。
  166. 小林進

    小林(進)委員 いま恐喝とおっしゃったが、恐喝とか単純な詐欺、その程度のものは国会議員の関係者もいるかもしれませんが、構造的な汚職とか疑獄とか称するような根深いものになりますと何も出てきやしないという、これも一般の風評ですから、私は何も警視庁や警察を弾劾をして非難する意味において申し上げているのではない。そういうことが世間一般の通説になって流れているということを私はこの席上で申し上げた。こういう国民の疑惑にこたえるためにも、ひとつ問題を処理していただけないか。  その具体的な処理として、もう時間もありませんから申し上げまするけれども、このKDD事件というものは、とにかくそこで流れた総額が五十八億円、関係した国会議員が百九十二名と言われている。それが国会議員に関する限りでは一億二千万円だと縮小されてきた。縮小されてきたが、その一億二千万円が百九十二名に一体どういうふうに流れていったのかそれもわからない。あとの五十何億円は一体どこへどう流れたのかこれもわからない。単なる数と金額だけをお示しになったわけだ。  まあこの次は、情報公開法やらオンブズマンやらいろいろな問題について議論する場合に申し上げましょう。いまここではそれはつまびらかに申し上げませんが、少なくとも主権者が国民である、国民に二度も選挙をやらせて大騒ぎされた問題であるにしては、いま少しこれを具体的に国民に提示をするだけの親切さはあってもいいのではないかと私は思いますが、いかがでございましょう。せめて百九十二名の関係議員の名前でも発表するとか、あるいは一億二千万円の金額がどうなって、残りの五十数億円の金がどうなった、これを個々に示して、国民の知りたい、知る権利にある程度こたえるという姿勢が必要なのではないか、私はこれをお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  167. 中平和水

    ○中平政府委員 お答えします。  私どもは犯罪捜査機関でございます。したがいまして、犯罪ありと思料いたしますときに捜査を行いまして、刑事責任を問うべき事実がある場合には、これを証拠によって明らかにいたしまして立件送致する職務を持っているわけでございます。したがいまして、捜査の過程で刑事責任を問い得なかったものにつきましては、それに関連する事実を公表するということにおきましては、基本的には私どもは、犯罪捜査機関としての警察の職責の外にある、こう理解をしている次第でございます。  KDD事件につきましては、先般の国会におきましても、いろいろ国政調査という立場で御論議もございましたし、国民の方にも非常に強い関心の持たれておった事件でございますので、捜査がおおむね終結に近づいた段階で、その捜査の経過、政界に流れた金の概要、そういうものを御報告を申し上げた次第でございまして、あれが私どもといたしまして捜査機関として公表し得る限界である、こういうふうに理解しておるわけでございまして、よろしくお願いいたします。
  168. 小林進

    小林(進)委員 職務上知り得た問題を秘守するという、こういう慣行が長い日本の官僚機関の中に生まれてしまって、言葉だけは民主主義国家だ、国民は主権者だと言うけれども、国の根幹に関するようなこういう重大な問題を国民は一つも知らされていないというのがいまのわが日本の実情です。これがまた官僚国家の官僚の力をますます強めている唯一のよりどころでもあるのでありますが、これはきょうここで論じてもしようがない。これはやがて時間をかけてじっくり切り崩していかなければならぬ問題だと思っております。  これに関連して法務当局にお伺いいたしたいのでありますが、いまKDDの問題は、結局落ちつくところは、板野何がしという社長それから佐藤何がしという室長、それに二、三の者を加えて五十八億の中からわずか一千数百万円、二千万円足らずを社長の身分で法人の金を背任横領したというような形に実に小さく縮められて、いま裁判を行っているわけだ。この裁判をやっておるその対象は、東京地検の特捜部が担当者になっているわけでしょうね。
  169. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの対象というのがちょっとはっきりいたしませんけれども、起訴しました者につきましては、先ほども申し上げましたように、警視庁から送致を受けました事件につきまして、東京地検の特捜部の検事がさらに捜査をして起訴したということでございます。公判はまた公判部というのがございますので、公判部の検事が主体となって立ち会っているわけでございます。
  170. 小林進

    小林(進)委員 稲葉委員発言ではありませんけれども、こういうKDDの社長や室長がともかく一千万円か二千万円の金を自分の私物のように使ったなどということは、東京地検だか公判部だか特捜部だかわかりませんが、そういうりっぱな検事さんが血みどろになって争っていただくような事件ではない、副検事で間に合うじゃないかと言われればそう思う。それこそさっきの安川君あたりで間に合う問題なんじゃないか。そういうところまで落ちこぼれているところに国民というものはどうしても納得できない。  そこで、限られた時間でございますけれども、私は、この特捜部というもののあり方についてちょっとお聞かせをいただきたいと思うのでございますが、特捜部の概要について、簡単でよろしゅうございます。
  171. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの趣旨を十分理解していないかもしれませんが、現在、全国の検察庁では東京と大阪に特別捜査部というものを部として設けております。ただ、特捜部と申しましても一般の刑事事件を扱うことにおいてはほかの庁とも同様でございます。したがいまして、ほかの東京、大阪の庁におきましても、東京、大阪の特捜部で扱っているような事件もございますわけで、そういうものはそれぞれのまた検察官が扱っておる、かように御理解いただきたいわけでございますが、たとえば東京の例で申しますと、やはりいろいろと知能犯事件でありますとか脱税事件でありますとか、そういう関係の事件が多いわけでございます。したがいまして、そういう事件を処理するのに適当な検察官の養成という問題がございます。  そういうこともございまして、またその補助機構というものもあるわけでございますが、そういうことから、そういうものに習熟した検察官、これを何人か集めまして、一般の刑事事件を扱う刑事部とは別に特別捜査部というものを設けて、そういう事件を主体に扱っているわけでございます。その中では、警視庁から特に捜査二課から送られてきますものを処理するものもございますし、また、特捜部自体で認知をした事件を扱うものもございますし、そういう内容を扱っているのが東京地検の特捜部でございます。
  172. 小林進

    小林(進)委員 特捜部というのは、検察庁事務章程別表第二というところに規定をせられていて、これは検察庁の中でも東京と大阪の検察庁の二つだけに設置されているのじゃありませんか。二つだけじゃないですか。  それで、特捜部の仕事の内容は一体どうか。その事務章程別表第二によれば、特捜部とは、これは東京と大阪になりましょうが、「検事正があらかじめ指定する事件の捜査及び処分の決定に関する事項」「前号の事件に関する資料の収集整備に関する事項」「前各号に関連する事項」、この三点について特捜部というものが動くように規定せられておるようでございますが、これでよろしゅうございますか。
  173. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどもお答えをしたつもりでございますが、いま御引用のようなことで御理解をいただいて結構でございます。
  174. 小林進

    小林(進)委員 現在、東京地検では特捜部でやっている事件はどのくらいお持ちになっておりますか。
  175. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 数的には正確な資料をいま手元に持っておりませんけれども、相当数の事件、先ほど申しましたように、警察から送られてくる事件の中で、東京で申しますと、警視庁の捜査二課から送られてくる事件、また東京地検に直接告訴、告発等があります事件、また検察官がみずからいろいろな資料から認知した事件と、大ざっぱに分けまして三種類の事件を特捜部が扱っているわけでございます。
  176. 小林進

    小林(進)委員 私がざっと調べたところでは、かつての特捜部、これは「日本の特捜」と称する朝日の野村二郎という人の著書を私はさっと読んだだけでありまするけれども、地検の特捜部というものが、歴史的には財界、政界の汚職を特にやってきた。年二回もこういう政界の汚職事件を摘発したこともあれば、いろいろ輝ける成績を残してきたが、造船疑獄の指揮権発動以来、その士気、能力が落ちた云々というふうな表現があったり、現在東京地検の特捜部は年間二千件くらいの事件があるというふうなこともある。二千件も現在特捜部が事件をお持ちになれば、これは過去の歴史にさかのぼって、そういう政財界の汚職事件を特徴に輝かしい実績をお上げになったなどというような特質を発揮するわけにはいかないだろう。それは言っては悪いけれども、何もかにもごったに扱っていられるということになれば、われわれの常識で考えている特捜部の存在というものは、もう意味がなくなってくるのではないかという感じを持たざるを得ないのです。  こんなことを言ったって、これは時間がありませんが、いかがでございましょう。昔の特捜と、昔の特捜と言っては失礼でございましょうけれども、いわゆるロッキード事件ならロッキード事件までいかないでも、造船疑獄を一つの境にして、その前の特捜と昭和五十五年度を前後とする特捜とのあり方に何か本質的な違いがありますか。
  177. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 外からの見方、いろいろあろうかと思いますけれども、私どもの理解しております限りでは、東京地検の特捜部というものは、昔からいまに至るまで変わらない姿勢で事に当たっているもの、かように理解しております。
  178. 小林進

    小林(進)委員 もう時間がありませんから……。  私は、実はきょうの質問のメーンを、検察庁法第十四条のこの指揮権発動に中心を置いて、法務省、法務大臣と検事総長、検察庁との関係を時間をかけて御質問したかったのです。ですから、私は私なりに大変資料を集めてきたのです。残念ながら時間がありませんからこれは後日に譲りまするが、私の言いたいことは、このロッキード事件でも、稻葉法務大臣といわゆる行政庁、法務省というものは君臨すれども統治せずだ。それは確かに君臨はしているが捜査は独自性があって、それに干渉したり、あるいは手を出したり、あるいはやれとかやらないとか、そういうようなことは絶対ない。だからロッキード事件に関しても、これは検事総長を頂点にする検察庁が独自性を持ってやったことであって、法務大臣以下法務省行政官は何らそれにはタッチしていないということをしばしば言われた。  私はそうかと思いまして、時間があれば一つ一つお伺いしたのだけれども、明治年代からずっと調べてみた。まず日糖疑獄と指揮権発動、これは桂首相の時代。第二番目はシーメンス事件、第三番目が陸軍をめぐる汚職事件、第四番目は帝人事件、第五番目は天皇機関説に対するもの、これに一体当時の司法省、司法大臣がどう関係したかというと、みんな指揮権発動だ。第六番目は血盟団事件の井上日召の取り扱いについて。第七番目には、いよいよこれは終戦後へ入りますが昭和電工事件。それから第八では政治と検察との争いの問題。それから第九番目はいわゆる造船疑獄と指揮権発動。  これまでずっと私は問題を整理してまいりましたが、私の調査によりますると、君臨すれども統治せずというのは真っ赤なうそだ。あらゆるこういう大きな事件には時の総理大臣、時の司法大臣というものが実に大きな役割りを演じて、すべての問題の処理に非常に関係しているということを私は明らかにして唖然としたわけです。司法大臣というものの力は大変だわい、そう私は実は慄然としたのですよ。そして頭に浮かんだのは、奥野さん、あなたなんだ。いや、とんでもない司法大臣が出てきたぞと。この人の政治力をもってしたら検察の独立などというものは言葉だけで、たてまえだけで、これはあり得ないぞということを私は身にしみて感じたのです。そこで、この問題をそういうことのないようにあなたに歯どめをかける意味においても、問題を一つ一つ具体例を挙げて私はゆっくり質問する構えで来たのです。残念ながらできませんが。そういうことについては、奥野さん、あなたはお忘れになっているだろうけれども、私には経験があるのですよ。あなたに対して苦い経験が一つあるのです。  ぼくは昭和二十四年に初めて国会議員に当選してきた。二十四年、二十五年、二十六年、その間にまだあなたは自治省にいられた。あなたはたしか財政局長をおやりになっているときだ。次官になられる前だと私は思っている。一つの問題で、予算づくりの問題で私はあなたのところへずいぶん懇切丁寧にお願いに伺った。けんもほろろにはねつけられた。この人は行政に対しては公平な人だと思った。冷たいが、しかし行政に対しては非常に厳正中立な人だと思った。ところが、同じ問題をいまは亡くなられた高知から出ている佐竹晴記という人、あなたはおわかりになりますでしょう。あなたは高知県で勤務されたこともある。その佐竹晴記代議士があなたのところにお願いに行ったら、一潟千里でさっとそれを許可されて想像以上に予算をたくさんつけていただいた。私はびっくりした。謹厳実直だが、この人は裏へ回れば何でもやる人だ、これぐらい幅のある人はないということをそのときに私は痛切に感じた。表面はあなたは実に謹厳りっぱだ。けれども、裏へ回れば、人によってそういう手のひらを返すようなこともやり得る人だということを痛感した。自来歳月を経ること三十有余年でありまするが、その経験はまだきのうの日のごとく私の胸の中にちゃんと残っておるのであります。  そこで私は、この指揮権の発動と検察の問題で非常におそれをなした。しかし、いま申し上げた問題を全部聞いているわけにはいきませんから、たった一つの問題だけあなたに申し上げまして、法務大臣としてのあなたの御意見と、検察庁を代表した検事総長の御見解、ところがきょうはおいでになりませんから検察庁の御見解を一つだけ聞いておきたい。  それはいわゆる法務大臣と検察庁が激突した一つの問題です。この問題について見解をお聞きいたしておきます。  それは法務大臣が大橋武夫という人、これは昭和二十四年に私と同じ国会議員に出てきた人ですから私は非常に親しくしている人です。個人的には私の尊敬している人なんです。この大橋さんが法務大臣のときです。こういう問題があったのです。昭和二十六年三月六日、木内という最高検の次長が吉田内閣のときに辞表を出された問題ですが、そのときの法務総裁、そのときは法務大臣と言わないで法務総裁と言ったが、法務総裁が大橋武夫氏、検事総長佐藤藤佐氏、それから木内次長、その時代なんです。そのときに検察庁法第二十五条の解釈の問題について法務大臣と検察庁の意見が分かれた。それは検察庁法第二十五条に「検察官は、前三条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。」と規定している。これは大橋さんが木内次長を転任させて札幌の高検の検事長にしようとしたときに検察陣が抵抗して争った問題なんです。  これに対して木内次長は、さらに同法が検察官とは検事総長、次長検事、検事長、検事、副検事の五種類であると規定していることを重要な理論構成の基礎として、最高検次長から高等検察庁の検事長へ転任されることは次長検事という官を失うことである、検察庁法第二十五条に違反する、それだから大橋法務総裁の転勤命令に服するわけにいかない、動かない、こう言って抵抗した。  これに対して大橋法務総裁は、官とは検察官という意味で、総長、次長、検事長、検事、副検事というような個々の身分を指すものではない、だから検察官をやめろというのなら同意を要するが、次長から検事長への異動はその同意を必要とするものではない、だから司法大臣の命令どおりおまえは札幌の検事長へ転出していけ、これが佐藤藤佐検事総長を頂点とする検察庁と司法省との争いの中心であった。  これは皆さん方も御存じだと思いますが、この見解はいまでも生きている。私は、特捜問題に絡んで、検事の異動がだんだん安易に行われているという昨今の風潮は決して好ましいとは思っていない。検事もだんだん司法行政官の下に出て、あなたの鼻毛を取るようになったら検察行政はもう終わりですわ。そうなることを恐れている。だから、この問題はいまでも生きていると思いますが、これに対する法務大臣の見解と検察庁の見解をひとつ承っておきたい。
  179. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまのようなことを何かで読んだ記憶が私にもございます。伝統のある法務また検察の組織でございますので、人事につきましては私はその伝統にゆだねておきたい、何もよけいなくちばしは入れる必要はない、これからも入れないでいきたい、お任せしていきたい、こう思っております。
  180. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 検察庁といたしましても、ただいま大臣お答えになったとおり理解していると思います。
  181. 小林進

    小林(進)委員 私は法律の解釈を聞いているのですよ。政治的発言を聞いているのじゃないのですよ。政治的発言じゃない。これはあなた、法務省と検察庁と血みどろになって争った問題ですから、いまでもまだこれに対する統一した見解は出ていないのですから、その統一見解をお伺いしている。  いま一体、この検事、検察官に対していわゆる異動を行うときに、個々の検事の承諾を要するか。それは必要じゃないんだ、やはり一般の行政官と同じように法務大臣の人事権で自由に異動ができるのだという、これは今後の特捜行政、検事行政の上において、準司法などという言葉、だれが言うのか知りませんが、検察官は準司法官だなどというような言葉まで出ているのでありまするけれども、こういうふうにこの大橋武夫さんがおやりになった。これはその後に、話は別でありますけれども、大阪で大きな違反事件を起こして亡くなられた広島の検事長をやっておられました岸本さんを次長に持ってきて、そして木内派を追い出すための検察の派閥争いの一つのあらわれだったのであります。最後には木内さんはついに辞表を投げ出して潔く検察庁を去って、その後へ岸本さんが堂々乗り込んできた、聞くも涙の物語がございます。  それはひとつ別にいたしましても、重大問題ですから、この解釈は統一しておかなくてはいけない。どうお考えになりますか、ひとつ伺いたい。
  182. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘の事例は、次長検事と検事長という非常にむずかしい問題と申しますか、解釈が二様に出るような問題でございます。  ただ、小林委員の実質的なお尋ねは、むしろ特捜部の一般の検察官の異動ではないかと思いますが、一般の検察官の異動については、そういう特殊な場合でございませんで、官を失うとかいうような問題が起こらない問題であろうと思います。そうしますと、一般的に検察官の異動につきましては、それぞれ、いわば官側といいますか人事管理者側のいろいるな配慮によりまして異動することも起こるわけでございますけれども、それはやはり同じ庁に長年おってはいかぬとか、あるいは地方ばかりにおってはまずいじゃないかとか、そういういろいろ一般的な配慮からのことでございまして、何か特別な意図を持って特定の人をどこかに移しかえるというようなことは毛頭ないわけでございます。
  183. 小林進

    小林(進)委員 もう時間が参りましたからこれでやめますが、いまのお話は、私がお尋ねしている問題に対する回答になっておりません。どうも恐れ入りますが、次長から高検の検事長にいわゆる異動をする場合、やはり本人の承諾を必要とするか、同じ検察庁の中だから大臣の一存でよろしいと解釈すべきか、その統一見解は後でも文書で、委員長よろしいですか、重大問題ですから、ひとつ文書で回答していただくことを強く要望いたしまして、残念ながら時間が参りましたので、私の質問は一応これで終わりたいと思います。
  184. 高鳥修

    高鳥委員長 午後二時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————     午後二時七分開議
  185. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沖本泰幸君。
  186. 沖本泰幸

    沖本委員 最初に、各委員が御質問した憲法問題について少しまだ触れておきたいと思いますが、せんだっての法務委員会のときに大臣が、質問議員質問に答える形でお答えになったわけですけれども、それ以来この臨時国会で大きな議論をいろいろ呼んでおるわけです。  ある一定の角度から見ると、結局憲法議論をするのは自由であるということであり、総理がひたすら憲法を守るという姿勢をおとりになった、こういうところで、むしろかえって改憲議論を活発にしていく一つの免罪符をつくったのではないかという意見もあるわけですけれども、それを発端に戻しますと、大臣は、結論からいくと、憲法九条を含めて変えた方がいい、時期的な問題は別にして、法務大臣個人の考えとしては憲法を変えるべきである、こういう見解をずっと以前からお持ちである、こういうふうに私たち理解しておるわけですけれども、それはいまも変わらないし、条件さえ整えば憲法改正しなければならぬ、こういうお考えであるというふうに理解してよろしいですか。
  187. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 八月の末に御指摘のような議論があったわけでございまして、そのとき私が申し上げました考え方政治家個人としてはこう思っておりますと申し上げました。それはそのとおりでございます。
  188. 沖本泰幸

    沖本委員 ただ私が申し上げたいことは、国家国民のために憲法はあるわけであり、国家の安全のためにも憲法があるわけであり、国民の生命財産を守っていき、治安を維持していくためにも憲法が一番根本になっていくわけですから、当然主権在民である以上は国民の最終的な同意を得なければならない、こういうことになり、いろいろの御意見はあるわけですけれども、いわゆる発議するしないということは別にしても、公平な国民の判断ができるような場をつくって、そこでいろいろな角度から憲法が議論されていき、憲法を変えていくというような形がとられていくということの方が大事であるという考え方を私は持つわけです。  ですが、靖国神社に各閣僚が個人の資格でお越しになった、閣僚でない時代には靖国神社にお越しになっていない、そういうこと、あるいはそれとその時期を余り違えない時期に、けさほどの御質問にありました、生徒や学生に十分祖国を考えたり愛国心を持ってもらうような教科書の内容もないというような点、あるいは占領当時どうすることもできなかった中で憲法がつくられた、こういうふうなお考え方というものを並べていくと、どうも偏ったところへ国民の目を向けたり国民の考えを引っ張っていった中で憲法を変えていくというような議論ができていくような形に私たちはとるわけですけれども、その点大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  189. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私自身は右でもなければ左でもない、こう思っておるわけでございまして、いろいろな考え方があるわけでございますから、できる限り論議を深めていくべきではないか、その論議の深まった中で、憲法で言いますと改憲という結論が出てもいいし改憲反対という結論が出てもいいじゃないか、最初から結論を出し合って硬直的な対決をしておったのでは物事が前進しない、国民にとっても不幸なことじゃないだろうか、こういう気持ちを深く持っております。
  190. 沖本泰幸

    沖本委員 そこで、すでに憲法はあるわけですし、特に大臣の御発言の中に、憲法九条を含めて変えるという考えだというような個人のお考えも述べられたように聞いておるわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  191. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 八月の末の質疑の中で、変えるとすればどこなのかとたっての御質問があったわけでございます。その際に私は、憲法九条が有力な政党の間で百八十度の違いがある、だから変える場合にはその違いがないようにしてもらいたいものですねという意味合いで申し上げたわけでございます。
  192. 沖本泰幸

    沖本委員 あくまでも大臣憲法を変えるという個人的なお考えをずっと、これは自由ですから、見解をお持ちであるということになりますと、憲法九条はどういうふうに変えたらいいようにお考えになっていらっしゃるわけですか。
  193. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 予算委員会でもそういう御質問がありまして、私がそれを答えていくと、また、鈴木内閣憲法改正を全く考えないと言っているにもかかわらず、その政治路線に疑いを持たせるじゃないか、こういうことで、率直に申し上げますと発言は遠慮させていただいたわけであります。  私は少なくとも、平和主義を徹底させながら、自衛隊は合憲だ、いや自衛隊は違憲だというような解釈の食い違いが出ないようにはぜひしたいな、自主憲法ということが本当に現実の問題になります場合にはそれはすべきじゃないかな、こういうふうに思っているわけでございます。
  194. 沖本泰幸

    沖本委員 これは以前から自衛隊が合憲であるか違憲であるかという議論はずっとあってきたわけでございますが、最近になってとみに防衛費の増額であるとか、アメリカからのいろいろな要求であるとか、あるいはイラン・イラク戦争がもとでホルムズ海峡の通過が非常に困難になってきた、アメリカがあの辺を守るための連合艦隊をつくろうじゃないかという話もあるし、それに乗るとか乗らないとか、そのためには憲法を変えなければならないとか、いろいろな議論が沸騰しているわけですね。  そういう中で、結局自衛隊を一応合憲というところまでに持っていくためには憲法を変えなければならない、中の九条を改めなければどうしても自衛隊合憲というところまで持っていけない、こういうふうな話が改憲の話の中に多く出てきておる。これは大臣も御理解になっていらっしゃるわけですね。
  195. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 改憲論者の中にも、憲法は一切いじらぬでもいいのだ、ただ九条の解釈をめぐって自衛隊が違憲だというような解釈が生まれないようにだけはしてほしいよ、こういう改憲論者もあるわけでございまして、どちらかといいますと、そういう改憲論には耳を傾けたい人間でございます。しかし、それ以上またこれを申し上げていきますと、やはり鈴木内閣政治路線と違った考え方を持っているのじゃないか、こんな論議を生むものですから、私としてはできる限りそういう疑惑を持たれるような答弁は避けさせてもらいたいな、こう思っております。
  196. 沖本泰幸

    沖本委員 そこで、大臣のお話をよく伺っていると、現在の憲法の発足当時がやはり問題であったということははっきりおっしゃっているわけです。  日本の国として、主権論にひっかかったわけですけれども、主権があるかないかわからないような状況の中で憲法を押しつけられた、あるいは憲法をつくらなければならなかったというふうなお考えでいらっしゃるわけですから、そういう形の中からいくと、いい憲法ではなかった、こうお考えなんですか、どうでしょうか。
  197. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国民の中で十分に論議を尽くされた後にでき上がったものではない、これは言えると思うのです。そういう意味で、同じものであってもいいからもう一遍自分たち憲法をつくり直そうじゃないか、こういう意見もあることは御承知だと思います。  私は、何もここで憲法改正論を申し上げる意思はありませんし、またそれは慎しむべき私の立場だ、こう思っているわけでございます。ただ、論議を尽くした上で納得づくで憲法が制定されると、より以上に尊重擁護されるじゃないか、こういう気持ちもあるわけでございまして、憲法改正するとすぐ改悪という一方の言葉が飛び出てくるわけでございますけれども、だれも改悪を考える者はいないと思うのです。それぞれに改善を考えているのですけれども、その改善が人によっては改悪と見られるし、あるいは改善と見られるということになるのかもしれません。いずれにしましても、私は、自由に論議を深めていくことが大切じゃないかな、国の基本にかかわる法規じゃないかな、こういう希望は非常に強く抱いているわけでございます。
  198. 沖本泰幸

    沖本委員 そこで、いままで憲法の九条が果たしてきた役割り、アメリカからいろいろな軍備の要求があるけれども、この九条が歯どめになって、いろいろな要求に対して日本がちゃんとした立場をとっていける、これはもう九条が働いたからということは言える。あるいはソ連とか中国はいままでしばしば日本の軍備問題をいろいろ批判してくるときに、その批判の歯どめになるのはこの九条であった。あるいは日本が経済成長をどんどん遂げていく中で、アジアの国々あるいは開発途上国等々の国々が、日本が再び戦前、戦時中の軍備を持って覇を唱えていくんじゃないかというおそれを抑えてきて、あくまで日本は平和に徹していく考え憲法をつくってそれに従って軍隊を持たないのだ、だから安心してつき合っていけるというふうな形で日本を見ていくような形で、この憲法九条というものが大きな役割りを果たしたという点については、大臣はどういうふうにお考えですか。
  199. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法九条も平和主義をとっている一つのあらわれだと思うのでございまして、自民党の綱領の中におきましても、憲法改正すると言いますけれども平和主義は堅持していく、こう言っているわけであります。だから、九条を改正するということになると平和主義じゃなくなるのじゃないか、こういうお考えはちょっと先走り過ぎられているのじゃないかなと思うのです。  たとえば憲法九条の中に「武力の行使は、國際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と書いてあるのです。「國際紛争を解決する手段としては」ということは、私たちは侵略戦争を放棄するのだと考えているのです。不戦条約にその言葉を使っているから私たちはこれは侵略戦争だ、こう考えているわけでございますけれども、自衛隊違憲だという方々はそうはお考えにならないわけでございまして、自衛の戦争も放棄するのだ、こういうふうにお読みになるわけでございまして、そういういろいろな問題があるわけですから、私は、誤解のないようなことになれば一番幸せだな、こう思っているわけでございます。
  200. 沖本泰幸

    沖本委員 ですから、申し上げたとおり、いままでの九条というものは国際的に徹底されたものであり評価されているというふうにお考えでしょうか。  私はこの前も申し上げたとおり、厳しい悲惨な戦争の洗礼を受けてきた一人でもありますし、目の前で大ぜいの人たちが餓死していった中でおったわけですから、悲惨だということは一番多く体験している方の一人でもあるわけです。再びあの苦しみはみんなに味わわせたくないし、子々孫々までああいうことは御免だというふうな立場で考えておりましたから、憲法九条で完全に戦争を放棄して、われわれは戦争で世界のつき合いはしないのだということは画期的なものであって、世界に冠たる憲法であるというふうに当時も思いましたし、いまも思っておるわけです。  ですから、これが果たす役割りというもの、あるいは日本がこの憲法を持ったというところは非常に誇りであったし、憲法ができた当時はお互いに礼賛したと私は見ておるわけですけれども、大臣はそうではなかったのですか。
  201. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 沖本さんがおっしゃるような成果を堅持しながらも、あわせて自衛隊の士気を阻喪しないような工夫を講じていきたいというのが私の考えでございます。
  202. 沖本泰幸

    沖本委員 そうすると、自民党の中まで言葉をはめ込ますようなことになりますけれども、ともすれば新聞とかいろいろな角度、議論をされているところ、伝えられるところからいくと、激しい点では敵国に伍してホルムズ海峡を守るだけの十分な艦隊を持たなければならない、それに合ったような軍備をしていかなければならない、激しいところでは核も持たなければならない、こういう議論もあるわけですけれども、奥野大臣個人の御見解は、十分いままでのものを生かさなければならないし、そういう形の憲法考えておるのだ、こう理解していいわけですか。
  203. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 自民党の綱領もうたっておりますし、鈴木総理もしばしばおっしゃっておりますように、憲法基本理念であります平和主義民主主義基本的人権の尊重、これは堅持しなければならない、これはみんなそれを前提にしていろいろ考えているということの御理解だけは得ておきたいと思います。
  204. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、大臣は先ほど、これ以上踏み込んで物を言うと誤解される動きが十分にあるからとおっしゃっておりましたけれども、むしろそういう御趣旨であるなれば、おっしゃった方が誤解を解いていくというふうに私は考えるわけですけれども、いかがですか。
  205. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私も本当にそう思います。本当に国会は腹を割って自由自在に話ができる、揚げ足をとったりしないように国会の論議を本当に深めていく日本国会にしていきたいものだなということを心から念願しております。
  206. 沖本泰幸

    沖本委員 いや私が申し上げた意味は、そういう議論の面もあるのはあるでしょうけれども、いままで述べられた点について、先ほどのお話のとおり、私の意見を言うと誤解をされていくから控えているのだということをおっしゃっていましたが、いまやりとりしました中で、現在までの憲法のいいところは生かさなければならない、そういうお考えをどんどん述べられた方がむしろ誤解を招かないことになるのじゃないかと考えるわけです。
  207. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いろいろな御意見よくわかるわけでございます。鈴木内閣としては憲法改正は全く考えない、その姿勢憲法論議はできる限り慎みたい、こういう方針になっておりますので、お許しをいただいておきたいと思います。
  208. 沖本泰幸

    沖本委員 憲法問題はこれくらいにいたしまして、自民党のAA研の皆さん方が先日朝鮮民主主義人民共和国を訪問なさって、お話し合いなり何なりいろいろな点で交流を深めてこられたということでありますが、その中で「よど号」の犯人とも会って話し合いをして、本人たちは本国へ帰りたいということを述べており、朝鮮民主主義人民共和国の方も逮捕しないなら帰してもいいということを言っておるわけでございます。  このことについて、政府ともかけ合ってみたいというようなお話があったというふうに報道もされておるわけですけれども、その点について政府にAA研の方からの申し入れなり何なりというものがあったわけでしょうか、どうでしょうか。
  209. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘のような新聞報道がなされたことは私も承知しておりますが、政府といいましてもほかのところのことはよく存じませんけれども、私どもにとりましてはそういうお話はじかに承っておりません。
  210. 沖本泰幸

    沖本委員 たとえばそういうお話し合いがあり、政府としてはいままでおつき合いを断っているお国でございますから、帰らすにしてもこちらから帰らしてほしいということを言わなければ帰すはずもないと思いますし、そうなれば逮捕しないのだという条件を出さなければならないということにもなるわけですけれども、そういう話が持ち上がってきたとき、あるいは帰るようになったときに政府としての考え方をお述べいただきたいのです。
  211. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 いまもお話がありましたように外交関係のない相手方とのことでございますから、そこに一つの問題があろうかと思いますが、私どもの所管に関して申しますと、あの事件は刑事事件としてりっぱに成り立つものであろうというふうに考えておるわけでございますので、仮にどういう手続になりますかわかりませんけれども帰ってきたといたしました場合に、それをそのまま放置しておくというわけにはまいらないのではないか、かように考えております。
  212. 沖本泰幸

    沖本委員 あの事件以来しばしばハイジャック問題が起こってきて、それに関する法律もできてきたわけですけれども、この人たちはあの法律が適用されるのでしょうか、しないのでしょうか。
  213. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ああいう事件が起こりましてから、いまも御指摘のようにいろいろと法制整備されたわけでございますので、例の「よど号」事件そのものにつきましては、その法制定前のことになろうかと思います。すでに共犯者ということで国内におります者につきましても裁判が行われて判決があった者もあるわけでございます。
  214. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、政府の方針としては、帰ってきて日本の本土を踏めば、もう完全に逮捕して再び事件として扱っていくというふうに理解していいわけですね。
  215. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 まだ仮定のことでございますので、明確なことを申し上げるのは適当でないと思いますけれども、先ほど申しましたように、ほうっておいていいことにはならぬじゃないかという程度に御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  216. 沖本泰幸

    沖本委員 人事局長お越しですから、午前中も御質問があったわけですけれども、安川簡裁判事の問題につきまして、裁判所の方としては人事局長の談話がいろいろ発表されたりしましたが、そのことについて裁判所の方の考えなり、これに対する処置なりというものを聞かしていただきたいのです。
  217. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 このたびの安川簡裁判事の事件につきましては、午前中に事務総長から申し上げましたとおり、国民の皆様に対して深くおわび申し上げたいと思います。なお、こういうことによりまして国民からの司法に対する信頼が損なわれたことははかり知るべからざるものがあろうかと思います。この棄損された信頼を回復すべく大いに努力いたしたいというふうに考えます。  事務総長から申し上げたことの繰り返しになりますけれども、裁判官としての法律的な素養はもちろん必要でありますけれども、やはり裁判官としての人格、教養、良識というものを完全に身につけていかなければならないと思います。まあ具体的な方策となりますといろいろむずかしいと思いますけれども、お互いの切磋琢磨、自粛自戒ということが第一になろうかと思います。
  218. 沖本泰幸

    沖本委員 裁判所の方の立場なり、今後の問題に対する厳しい考え方あるいは対応がいろいろ考えられるわけですけれども、この安川裁判官が処理した事件はどれぐらいあるのでしょうか。概略で結構です。その中で敗訴になった人たちがどういう考えを持っておるかというのが私一番心配なのですけれども、その偏見あるいは予断なり違った内容で判決を受けたのではないだろうか、だから、自分の判決については正確ではないというような考えを持つなり何なりというのが出てくると思うのですけれども、そういう問題に対して裁判所としてはどういうふうなお考えをお持ちなのですか。
  219. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 安川元簡裁判事が処理いたしました具体的な事件につきましては、現在のところフォローしておりません。しかし、ただいま沖本委員御指摘のように、安川簡裁判事から裁判を受けた当事者の立場になって考えてみますと、ああいう人からの裁判ということで、先ほど申し上げました司法全体に対する信頼というものが非常に損なわれたと思います。  このたびの具体的な刑事事件に関しましては、すでに御承知のとおり検察官の方から控訴されておるところでございます。まさに御指摘のとおり、このようなことがあれば、彼自身が処理した事件だけでなくて、司法全体に対する信頼というところで私どもは最も痛切に大変なことになったというところでございます。
  220. 沖本泰幸

    沖本委員 この事件について検察庁側の方は、職権乱用とか刑事事件について具体的に御検討をしていらっしゃる点はあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  221. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘のように刑事事件という問題もないわけではございませんので、現在福岡の地検におきまして慎重に検討しておるということでございます。
  222. 沖本泰幸

    沖本委員 この辺も午前中質問があったのですけれども、富士見病院の事件について、先に医師の診断をしてもらってから検査に回したという順序があったりして非常にむずかしい面があるというふうに聞いているわけですけれども、そういう点について検察庁の方としてはどの程度問題解明に御努力なさっていらっしゃるか、その辺を伺いたいわけですね。
  223. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの事件の捜査の状況でございますが、年前中の御質問にも警察の方からお答えがございましたが、さしあたっては被告人につきまして医師法違反の疑いということで起訴しておるわけでございます。合計三十人の患者の方に対します診断ということが医師法違反になるということで起訴しておるわけでございます。  その後も、さらにそれ以外の患者の方についても同様なことがあったのではないかということで、余罪と申しますか、法律的に申しますと訴因の追加ということになろうかと思いますけれども、そういうことで捜査を続けておるわけでございます。その間に、いろいろの傷害の疑いもあるというようなことも言われておるわけでございますので、捜査の過程におきましてそういう点も明らかになるというふうに考えております。
  224. 沖本泰幸

    沖本委員 この事件の起きる前後から埼玉の県警は内偵を進めておったというふうな点も聞いているわけですけれども、内偵の結果なり今後展開しそうな捜査の内容、立件の問題もあるわけですから、漏らしていただける点といただけない点とあるかもわかりませんが、わかりやすい点を御発表いただきたいと思うのです。
  225. 斉藤明範

    ○斉藤説明員 埼玉県警がそういう風評を聞きましたのは五十三年の暮れでございます。事柄が正規の病院内のことでございますし、そこには正規の医者も数人いるわけでございまして、そういう犯罪が行われたということを立証するためにはそれ相当の時日を要するわけでございまして、大変苦労をして今日まで来たわけでございますが、午前中申し上げましたような経過をたどりまして現在起訴されておるわけでございます。  今後どういう展開ということにつきましては、私ども考えられる範囲で現在捜査を進めておりますが、個々具体的なことにつきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  226. 沖本泰幸

    沖本委員 お伺いしたい内容はほとんど午前中にもう出たわけです。それから勝見人事局長も結構でございます。  大蔵省がゼロリストを発表なさったわけですけれども、いろいろな議論を呼んでいるわけですが、率直に言いますと、予算の獲得については法務省と裁判所が一番下手だというふうに言われたり、また一番予算面で収入のない省庁であるという点もありますし、私も、犯罪被害者の補償法をいろいろ検討するに当たってなかなか大蔵省が認めなかったといういきさつ、いろいろな点もあるわけですけれども、実際にこのゼロリストの内容からいきますと、けさほどもありました登記所の問題だとかいろいろな点について相当カットが起こってくるんじゃないかということになると、裁判所の業務についていろいろな支障が起こってくるんじゃないか、こういう心配があるわけですけれども、来年度のいろいろな予算の点でもう折衝が始まっているわけですし、このゼロリストがどの程度影響してきておるのか、あるいは法務省の方としてはこれに関連してどういうお考えを持っておるのか、その点をお伺いしたいわけです。
  227. 筧榮一

    ○筧政府委員 お答え申し上げます。  ゼロリストにつきましては、大蔵省の方で各省庁からいろいろな資料を求めましてそれを取りまとめたものでございます。先生御承知のように、昭和五十六年度の予算におきまして、前年度五十五年度の当該事項に関する額をそのまま据え置いた場合に、業務上どういう問題点が生ずるかということを整理したものと理解いたしております。  私ども法務省の関係では、ゼロリストには、登記事務処理経費とそれから刑務所等の被収容者対策経費、この二つについて掲げられておるわけでございます。そこに掲げられてございますように、登記事務処理経費について前年同額ということになりました場合には、まず御案内のように登記が甲号、乙号を通じまして大幅な増加を続けております。これに対しまして前年同額ということになりますと、昭和五十六年度に増加いたします登記事務に対応できなくなるばかりでなく、たとえば登記用紙も要りますし、それから謄写等の光熱水料も相当額必要でございます。そういうのが全部同額ということになりますと、前年度と同じ数の事件を同じように処理するということもなかなか困難になってまいります。そういたしますと、その結果といたしましては、登記簿への記入あるいは謄抄本の交付というものが現在若干遅延いたしておるわけでございますが、その遅延がさらに大きくなってまいる。そういたしますと、土地等の取引あるいはその裏に抵当権等にあらわれます経済取引等に大きな問題を生じてくるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから被収容者の対策経費でございますが、これも最近ここ数年来刑務所等の被収容者が増加の一途をたどっております。それに加えまして、最近では暴力団員あるいは覚せい剤等処遇困難な被収容者の数がふえております。これに対応いたしますためには、いろいろの企画を立て所要の経費をもって対策を立てなくてはいかぬわけでございますが、数においてふえ質においてむずかしくなっておるというのに対応することが非常に困難になるというふうに考えております。また、入っております人たちといいますか被収容者の生活の面で申し上げますと、これも年々若干ながら改善をしてきておるわけでございますが、前年同額ということになりますと、物価増等を考えますと実質的な生活の程度がダウンせざるを得ない。そうなりますと、衆情と申しますか、いろいろな点で問題が生ずるおそれがあると考えております。  そこで、これらの点につきましては、そのほかにも問題があるわけではございますけれども、現在実情を財政当局に御説明を申し上げまして、所要経費の確保に最善を尽くしておるつもりでございますし、今後とも力を尽くして所要経費の確保に努力をいたしたい、このように考えております。
  228. 沖本泰幸

    沖本委員 今度の財政問題について大蔵大臣は総論賛成、各論反対ということを盛んに言われているわけですけれども、いま私が御質問したりお答えになった点は、各論の方では困るという内容がここへあらわれてきているわけです。そういうことで登記所の統廃合なり何なりいろいろな点がいままで起こってきておるわけですけれども、現在の段階では官房長がおっしゃったとおり非常に登記事務が繁雑になってきておる。そういう関係から外へ仕事を多くやらしてしまうという面もいろいろな問題点で浮き彫りにされてきておるわけですけれども、そういう問題を少しでも解消するという点では、いままで以上のものを確保しなければならないというはっきりしたものが出てくるわけですね。  そういう点で、大蔵省との間に何らかの話し合いなり交渉なりあるいは予備交渉的なものをお持ちになっているのかどうか。
  229. 筧榮一

    ○筧政府委員 お答え申し上げます。  登記所の実情につきましては、目で見るのが一番早いと考えております。そういう観点から、大蔵省の担当主計官等に近郊の登記所等を御案内いたしまして、登記がいかにおくれておるか、あるいはいま先生おっしゃいました外部の者の手助けをやむを得ずしておるというような実情まで見ていただきまして、その上で所要経費の要求を説明いたしておる次第でございます。
  230. 沖本泰幸

    沖本委員 まあちょうちん持ちの質問をしているわけじゃないので、多分にゼロリストというものの実際そのものが果たして大蔵省が言うがごとくちゃんとした内容のものであるのかないのかという点を聞きたいと思って御質問したわけです。  そういうことですから、最初に大蔵省が期待しているとおり、こういうものを発表してわいわい騒がして所期の目的を達成しようというふうなねらいもあるのだということは聞いておりますけれども、こういう点について大臣はどんなお考えでいらっしゃいますか。
  231. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 財政の厳しいこともよくわかりますし、またそれなりの理解を求めたいために大蔵省がいろいろ苦労されていることもよくわかると思います。  法務省としては法務行政の責任を負っておるわけでございますから、責任を果たすためにはある程度の財源がなければできません。私の方といたしましても責任を果たすための最小限度の財源はどうしても必要だ。御指摘の登記所の問題、事務が非常にふくそうしてきておる、これも国民多数の方々に御迷惑をかけないようにしていかなければなりませんから、機械化の問題なども進めていかなければならない、必要な人員も確保していかなければならない、こう考えておるわけでございますので、そういう方向で努力をするつもりでございます。
  232. 沖本泰幸

    沖本委員 大体きょう持ってきたのは終わったわけですけれども、いま申し上げたような内容で、これもリラックスした話としてですけれども、大分大臣はかみしも着ちゃ話にならぬような話が出ていましたけれども、とにかく憲法論議に関してはかみしも着たみたいなかっこうになっておるのですね。ですから、ある時期に一遍、これは理事会で話すべきことじゃないかと思いますけれども、リラックスした話ができるような場を大臣つくっていただいて、いろいろな角度から十分懇談ができるような面を持っていただきたい、これをお願いしておきたいと思います。  以上で終わります。
  233. 高鳥修

  234. 岡田正勝

    岡田(正)委員 是は是、非は非とその主張を明らかにする民社党でございますから、大臣の耳には少々痛いことがあるかもしれませんが、まあこれも職務の中の一つと心得ていただきまして、よろしくお願いしたいと思います。  まず冒頭に、私は奥野さんにお礼を申し上げなければならぬと思うのであります。それは、行きずり殺人など犯罪被害者等給付金のことについてでありますが、去る八月二十七日のこの委員会におきまして、私は、あのむごい、痛ましい新宿バス放火事件の被害者救済につきまして御質問をいたしました。そして、この法律は一月一日からということになっておるけれども、それにこだわらないで、むしろその法を遡及してでも救済してあげるべきではないでしょうかということを要望いたしました。そのときに大臣は、その対策につきまして力強い約束をしていただきました。ところが、失礼でありますが、昨今は約束を守らぬというのがあたりまえのような風潮の時代であります。困ったものでありますけれども、さすがは好漢奥野さんです。困った人たちを見過ごすことができないで、早速に九月十六日の閣議で積極的に発言をしていただきました。九月十九日の閣議で、特別支給金として死亡者に二百万円、障害者に百万円以内、しかも五月一日にさかのぼって支給をするということを決定していただきました。やはり奥野さんは誠実で実行力のある人だなと、実は大変失礼でありますけれども私は再認識をしたような次第でございます。この機会に心から敬意と感謝の意を表明させていただきます。ありがとうございました。  さて、最初の質問でありますが、矯正行政についてお尋ねをいたします。いま全国で五カ所の刑務所が収容者の開放的処遇と称しまして、これは刑務所から外へ出て働くことでありますが、合計五カ所で百四十九名の人を就労させています。  そこでお尋ねをするのでありますが、外へ出ていくのでありますから、そして一般人の中に交わるわけでありますから、その監視の状況、中でも対外的な安全的は確保されているのでしょうか。また作業場の安全性は大丈夫か、お聞かせをいただきたいと思うのであります。  さらにその次は、この外部の就労は矯正政策上どんな効果があるのでしょうか。あるとするならば、全国で七十四カ所の矯正施設があるそうでありますが、未決の人を除きましてもその収容者の数は四万二千七百二名と聞いております。なぜこんな少人数でとどめておかれるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  235. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 岡田さんからありがたいお言葉をちょうだいして恐縮に存じております。御注意をいただいたから政策に実ったわけでございまして、閣内の取りまとめは宮澤官房長官が積極的にやってくれました。御報告をしておきます。
  236. 豊島英次郎

    ○豊島政府委員 お答えいたします。  御質問は三点あったようでございますが、第一点の構外に受刑者を出す点についての私どもの留意点と申しますか、これを第一にお答え申し上げます。  社会人と接触することのある場面へ収容者を出していくということでございますので、私どもはまず第一に、それにふさわしい適格者の選定に留意いたしております。選定に当たりましては、本人の社会での経歴、家族の関係、それから受刑するに至りました罪質と申しますか、それから刑務所内での受刑の状況、行状がどうであるかという点でございます。それから刑務所内でも刑務作業をやらせておりますが、その刑務所内での作業の成績がどうであるかというようなこと、それから将来釈放になりまして社会へ出ました場合の保護の関係、身元引き受けの関係がどうであるかというようなこと、当該受刑者の出身地あるいは出ました場合の帰住地がどこであるかというようなこと、場合によりますと、そういう自分と身近な構外作業場が適当でない場合があるわけでございます。そこで出身地とか帰住地を勘案いたします。そういたしまして、刑期もある程度経過いたしまして、つまり施設内で、刑務所内で服役をいたしまして仮釈放期間がすでに参っており、かつ仮釈放の見込みのあるような者、そういう者の中から選ぶわけであります。選びます場合に、外へ出まして逃走するとかあるいは一般社会人と抗争を起こすとか、そういった事故を起こすおそれのない者ということも選定する場合の重要な基準になるわけであります。そういたしまして外へ出します前に一定期間必要な訓練を施します。そして外へ出すということになるわけであります。  実際に構外の作業場で労役につかせます場合にも、構外作業場といいましてもその場は刑の執行の場であることには変わりはございませんので、職員の監視を厳にいたしましてこれを怠らないようにし、逃走やあるいは規律違反、たとえばたばこを吸うというようなことあるいは人の物を盗むというような規律違反の行為のないように十分注意をいたしております。そのような形で、現在まで先ほど御指摘の構外作業場で構外作業をやらせておりますが、現在まで事故はほとんど何もないという状況になっております。  それから第二のお尋ねでございますが、作業に従事する場合の安全性の確保がどうなっておるかという点でございます。  受刑者には労働安全衛生法の適用は実は除外されておるのでありますけれども、私どもは、実際問題といたしまして労働安全衛生法に準拠した規定を設けまして安全管理をいたしております。これは刑務所内の刑務作業の場合も同様でございます。安全装置とか保護具とかの物的な整備に十分注意いたしますとともに、刑務所に入りましたとき、それからもちろん作業につくとき、あるいは新たな機械を取り扱うとき、そういったあらゆる機会をとらえまして安全教育を実施いたしております。そして絶えず安全遵守の意識向上に努めるということをいたしております。構外作業場に出る場合には特に十分な安全教育を実施いたしますとともに、契約業者との間で綿密な協議を遂げまして、使用いたします機械の安全性であるとか、その他先ほど申した安全装置とか保護具とか、安全上のそういったものが完備しておるかどうかという点とか、そういった点も含めまして十分な取り決めをいたした上、作業につかせるということをいたしております。現在までに大きな災害事故は起こしておりません。  それから三つ目のお尋ねでございますが、こういう構外作業にメリットといいますか効果があるならば、もっと大幅にこういう作業を活用したらどうかというお尋ねのように伺いました。  この構外作業のメリットでございますけれども、私は二つあるのだろうというふうに思います。  その第一は、しょせんは将来施設から外へ出ていく、社会に復帰していくという人たちであります。そこで、社会へ復帰する場合に順次足ならしをしていくということがかなり必要なわけでありまして、そういう社会適応性を付与するというのが第一に必要なことであります。その場合に、こういう構外作業場というのは現実に社会の空気に触れ社会の人たちとともに働くということに相なりますので、社会適応性付与のために大変メリットのあることだというふうに考えております。  それから第二に、こういう外で労役に服するということは、みずからの自立精神を養うという上で大変大きな効果がございます。閉じられた施設の中で生活をいたします場合には、いわば管理する側の役人にもたれて生活をすればいいという気になりやすいのでありますけれども、外へ出て、極端に言えば逃げるチャンスもあるあるいは人の持っておる物をとろうと思えばとれる、そういったような状況の中でみずからにかつ、誘惑に負けずにそこ外働くということは、自立精神涵養上非常に大きな意味があるわけであります。そういたしまして、自分は信頼されて外へ出してもらえたのだという信頼されておるという自覚、これが本人の更生のために大きな作用を持つというふうに私どもは考えております。こういった社会適応性という面から、自立精神の涵養という面から、構外作業場の持つ意味というのは大変大きいのだというふうに考えておるわけであります。  しかしながら、考えてみますと、犯罪を犯して、しかも実刑を受けて刑務所に入ってくるという者たちにはかなり再犯の危険性を秘めておる者が多いわけでございます。私どもは施設内、刑務所内で処遇します場合に、やはり犯罪性の進んでおる者と進んでない者と分けて処遇をいたしましたり、それから犯罪性が進んでない者の中にもすぐに外へ出すことの危険な者というのがあるわけでございます。いろいろな要素を勘案いたしましてセレクトして、そして外へ出しても安全な者を順次足ならしさせながら外へ出していくというやり方をいたしております。そのために、構外作業に適する者というのはおのずと限度があるだろうというふうに思います。私どもが構外作業につかせる場合の基準といたしましては、先ほど申し上げたような本人の資質、それから施設内における教育の成果というようなものを見ながらセレクトするわけでございますので、おのずと数に限度がある。限度があるわけでございますけれども、私どもはできるだけ前向きに物を考えようというふうに思っております。  それから、これは受刑者の側の問題でありますけれども、もう一つは近傍にそういう適当な協力を願える企業があるかどうかということも問題でございまして、当該企業の業務がどういう業務であるかということとともに、そういう刑務作業につきまして御理解をくださるような民間企業があるかどうかということ、そういう施設内の受刑者の問題と、それから外の働きに出る企業の問題と両面ございまして、この二つの前提条件がうまく満たされる場合に初めて構外作業が成り立つということでございますので、おのずと数に限度があって、効果は確かにあるのでございますけれども、着実な前進を図っておるという実情でございます。
  237. 岡田正勝

    岡田(正)委員 次の質問をします前に、ひとつ勝手なお願いをしておきますが、ちょっと答弁をいま少し要領よくまとめていただきたいと思います。  非常に効果があるということでありますが、外へ出したいのだけれども、外へ出せるだけの条件のできた人間の数というものにおのずから限界があるし、いま一つは外の企業で理解のある企業が、よし来い、来てもらいたいというところがないと、また出すことができません。もっともなお話であります。  そこで、これに関連してお尋ねしますが、ある会社が尾道の刑務支所に就労引き受けの話をいたしましたが、何ゆえか知りませんが断られたということをうわさに聞いております。この開放的処遇に対しましては、当局としてはいまのような説明がありましたけれども余り力を入れたくないなという事情もあるのではありませんか。気が進まぬというような理由があるのだったらお聞かせいただきたいと思います。
  238. 豊島英次郎

    ○豊島政府委員 基本的な物の考え方といたしましては、特に制限するというような気持ちは持っておりません。ただ尾道支所の場合には現在有井の作業場という構外作業場がございまして、そこに出役しておるという事情一つはあるように思います。それから、一般的に申しますと適格者の数というのがふえておるのだろうかといいますと、全国的に見ますとかなり質の悪化がこのごろ憂えられておりまして、受刑者に適格者がない場合があり得るということは念頭に置かなければいかぬだろうと思います。
  239. 岡田正勝

    岡田(正)委員 次に、労働省にお尋ねをいたします。  前回三県ほど視察をしてまいりましたが、中における生産作業あるいは外における生産作業、こういうものによりまして、後で伺ってみますと年間百五十億円ぐらい収入があるというようなお話を聞くのであります。その内部の作業についての問題はきょうお尋ねいたしませんが、外部に出ておる問題について労働省にお尋ねするのですけれども、ここ三カ年間の全国の失業者数と失業率、簡単に数字だけ、それと求人倍率、この三つの数字をお聞かせいただきたいと思います。  さらに労働省としては、この刑務所の開放的な処遇を知っておられるかどうか。それから、全体から見ましたらわずか百五十名足らずの人数で大したことはないではないかと思うかもわかりませんが、ごく一部の地域に密集しておるのでありまして、しかもそれが造船産業の特定不況地域というようなところへ大変集約されておるようでありますが、こういう場合、地域的に一般の雇用の窓というものを狭くしておるということはないのでありましょうか。  それから、一緒くたに質問をさせていただきますが、こういう外部に就労に出られる刑務所の収容者の賃金であります。この賃金や安全等の問題で、先ほど労働安全規則にはこれは触れないのだということをおっしゃいましたが、最賃法には触れるのか触れぬのかということをお尋ねしておきたいと思います。  それから、これは労働省と矯正局の方と両方でお答えをいただきたいと思いますが、この開放的処遇という問題につきまして、先ほどは雇用の窓口のことを労働省に聞いておりますが、今度の問題は一般の労働雇用政策との矛盾は起きてこないかどうか、あるとすれば調和点を一体どの辺で求めようとしておるのか、簡単にお答えください。
  240. 若林之矩

    ○若林説明員 まず第一に、過去三年間の失業者数、失業率、求人倍率の数字を申し上げさせていただきます。  失業者数から申し上げますが、五十二年度が百十三万人、五十三年度が百二十二万人、五十四年度が百十四万人でございます。次に完全失業率でございますが、五十二年度は二・一%、五十三年度が二・二%、五十四年度が二・〇%でございます。それから有効求人倍率でございますが、五十二年度は〇・五四倍、五十三年度が〇・五九倍、五十四年度が〇・七四倍と改善を見ております。  次にお尋ねの、労働省としてこういうような処遇をどう考えるか、また一般雇用情勢にどういう問題があるかというお話でございますが、受刑者の中の一定の者に構外の民間企業で仕事をさせる制度につきましては、技能の習得、通常の職業生活への順応性の向上というようなものを図りまして円滑な社会復帰を促進するという意味で、一つの効果的な方法であるというふうに存じております。この制度と雇用との関係につきましては、いま先生御指摘のように構外作業者の人数もまだ少のうございますし、作業の質もやはり職場適応訓練的な性格を持つものでございまして、これが一般の雇用情勢に悪影響を及ぼしているとは考えておりません。おっしゃいますように、不況地域等である程度人数がまとまると問題になるのではないかというお話でございますが、現時点におきましては、現地安定所からそういったような報告はございません。  以上でございます。
  241. 岡部晃三

    ○岡部説明員 受刑者の構外作業に最賃法の適用があるかどうかというお尋ねでございますが、これは先ほども法務省の方から答弁がございましたけれども、監獄内であれ監獄外であれ、刑の執行の一環として受刑者の矯正を目的として監獄職員の管理下において行われる作業でございますので、これは労働基準法あるいは最賃法にいうところの労働者と見てはいないわけでございます。したがいまして、それらの法律の適用はないという状況でございます。
  242. 豊島英次郎

    ○豊島政府委員 先ほどの民間企業との調和の問題でございますが、私どもは、有効な作業がなければいかぬということと、それからそれに相応の作業量を確保しなければいかぬという問題があるわけでございます。  一方、民間企業におかれましても、企業の圧迫を惹起するようなことではぐあいが悪うございますので、現実には契約をいたします場合に当該地域の民間企業と緊密な協議、連携をとります。必要な場合には、その連合組織とも緊密な連絡調整を図ります。そういたしまして、労働監督官庁ほか関係諸官庁の監督に服して実施するという形をとっております。もし問題が起こりましたときには、その都度関係者と話し合って適正な解決をするというやり方で現在まで事故なくやっております。  それから、先ほどの最賃法の関係にちょっと絡むのでありますが、私どもの方で企業から入ります収入はすべて一般会計へ歳入予算として国庫に収納されていくという形になります。一方、受刑者に対しましては、構外作業をしております受刑者も含めまして作業賞与金というものが歳出予算の中から出ておるという形でございまして、企業の支払い即受刑者の収入という形に対等の関係ではなっていない、いわゆる賃金ではないということでございます。
  243. 岡田正勝

    岡田(正)委員 そこで参考までにお尋ねをしておきたいと思いますが、これは矯正局の方にお尋ねいたします。  この就労に従事する者の賃金は、賃金と言ったらおかしいのでありますけれども、刑務所がもらうのか国がもらうのか知りませんが、個人には渡らぬのでしょうけれども、その世間相場と比べて一体どのくらいにしていらっしゃるのかどうか。極端に低い請負賃金みたいなことになっているのかどうか、それを教えていただきたいのです。  それから、その払ってもらった金というのは、いまのお答えで一部答えが出ておるようでありますが、個人に対して何かいま賞与金を払うんだというようなお話がありましたが、参考までに賞与金というのは、いろいろな種類があるのでしょうが、がばっとつかんで言ってどのくらい、たとえば一時間にどのくらい差し上げているのかどうか、それをちょっと参考に教えてください。  それから、約三万人の人が生産作業をしていると聞きますが、国庫収入として入っていくと言われている金は年間一体どのくらいのものであるか。  それからいま一つは、行刑のいわゆる全収容施設の運営費、ですから看守さんなんかの人件費もみな含めた運営費は年間どのくらいになるのか。以上です。
  244. 豊島英次郎

    ○豊島政府委員 企業が払いますところのいわゆる一般賃金と、それから刑務所側に支払われますところの支払い金額との比較でございますが、これは一般的にどの程度という比較はちょっとしにくうございますので、抽象的にお答えいたしますが、結局、個々の企業と契約を締結いたします際に、当該企業の労務者の賃金等を参考にいたしまして、いわば需要と供給の関係で決まってくるということでございます。  それから、個々の受刑者に支払いますいわゆる作業賞与金でございますけれども、これは五十五年度の予算で総予算額が十億四千万円ぐらいでございます。一人一月当たりの平均計算額にいたしますと二千七百十六円という金額に相なっております。したがいまして一年六カ月、十八カ月でありますが、服役いたしまして支払われるところの標準給与額を見ますと三万七千百三十四円というような金額になっております。  それから最後にお尋ねの刑務所の作業収入額でありますが、五十四年度におきまして百五十七億九千八百万円でございました。それから同じ年度の全国矯正施設の運営費を見ますと千五十六億四千九百万円という数字になっております。この矯正施設の運営費の中に少年院と少年鑑別所、婦人補導院が入っていると思いますので、行刑だけ見ますと恐らくこの中の九割だというふうにお考えいただいていいと思います。
  245. 岡田正勝

    岡田(正)委員 それでは、どうもいろいろとありがとうございました。山口、島根、鳥取、三県だけを拝見させていただいた限りの私の感想でありますが、最近は暴力団の関係者あるいは麻薬中毒関係関係者の収容者というものがその中において五〇%を確実に超えておるというような状態であり、大変な世の中になったなという驚きと、それから皆さん方がこの対応に大変苦労しておるということを各場所で聞いてまいりました。気苦労の多い大変なお仕事でございますけれども、社会全体のためにもひとつがんばっていただきますようお願いをいたしまして、次に移らしていただきます。  次は安川事件についてでございますが、最高裁にお尋ねをいたします。それは、担当刑事事件の女性被告とねんごろなるおつき合いをしたという、この小倉簡易裁判所の安川輝夫前簡裁判事についてでありますが、この安川はこのことで最高裁から罷免訴追を請求されていながら、福岡県久山町の町長選に立候補し、公職選挙法の定めによりまして自動的に退職となり、訴追委員会の方では裁判官にあらざる者の訴追はできないということで、正式の審査打ち切りは十月十七日の御予定だそうでありますが、もうすでに打ち切りが決定したようなかっこうでございます。したがいまして、本人は依願退職と全く同じ取り扱いで、聞いてみますと、退職金の金額は千四十二万円になるということであります。しかも年金もこれがまるまるいただけることになりまして、年間約二百万円毎年毎年受け取ることができる。日ごろ聖職として庶民の尊敬を受けていた立場の人でありますだけに、国民の受けたショックもまことに大きなものがあります。  そこで最高裁にお尋ねをするのでありますが、このことで私は全体を律するわけではありませんけれども、裁判官の教育というのは一体どうなっているんだろうか。調べてみますると、昭和二十三年以降大体平均いたしまして六年に一人の割合で裁判官が訴追を受け罷免をされておりますね。人格の向上の問題があるのではないかと思うのであります。また、だんだんと、法の精神を尊重するというよりも、技術面に流れ過ぎているという風潮があるのではないかと思うのでありますが、そのことについてお尋ねをいたします。
  246. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 午前中からたびたび申し上げておりますとおり、このたびの安川元簡裁判事の事件につきましてはまことに申しわけなく思っております。なお岡田委員御指摘のとおり、事後処置につきましても現行法上国民の感情からいって納得できないような形で処理をせざるを得ないということも実情でございます。  裁判官の教育といいますか任官後の教育の問題でありますが、戦後、司法研修所というところがありまして、裁判官の職務についての研究及び修養について所管することになっております。それから、裁判官が会同あるいは協議会という形で年間何回か集まりまして、お互いの研さんに励んでおります。  現実に簡易裁判所判事に限って具体的に簡単に申し上げさせていただきたいと思いますが、まず簡易裁判所判事が新たに任命されますと、約三カ月間にわたりまして、先ほど申し上げました司法研修所におきまして研修所の教官等の指導によって実務の研修を行います。それから、毎年一回高等裁判所管内ごとで簡易裁判所の判事の実務研究というのを行っております。それから、二年目の簡裁判事、五年目の簡裁判事を対象といたしまして、司法研修所におきまして研修所の教官の指導によって法律の勉強をさせております。それから毎年一回、これも高等裁判所管内ごとでありますが、全体の約三分の一に相当する簡裁判事を集めまして会同を行っております。  ただ、この研修及び会同に際しまして、御指摘のようにあるいは法律実務の研究、研修にややウエートが置かれ過ぎているのではなかったかというふうな反省をいたしているところでありまして、このたびの事件を契機に、先ほど最後に申し上げましたが、ことしの高等裁判所管内別の簡裁判事の会同におきましては、高等裁判所長官から、本来の裁判官のあるべき姿というものにつきましても十分訓辞していただくことにしております。なお、大変弁解がましく申し上げて恐縮でございますが、このたびの安川簡裁判事の非行そのことにつきまして申し上げますれば、裁判官の仕事としてのイロハのイ以前の問題でございまして、私どもといたしましては、最初こういうことがあるという情報をいただきました際に思いましたのは全く思いも寄らぬこと、言語道断なことだというふうに私も談話を発表させていただきましたけれども、全くあってはならないことが出来いたしまして、冒頭に申し上げましたように、まことに申しわけなく存じておる次第であります。御指摘の裁判官の研修、修養につきましてはさらに一層充実して、こんなことが絶対にないようにしていきたいというふうに考えております。
  247. 岡田正勝

    岡田(正)委員 次に、自治省の方にお尋ねいたします。  公務員の人が立候補すれば自動的に職を失う、これはこれで納得のできる公選法第九十条でありますが、今回のように、国民から言ったらうまくやりやがったなというような感じを受けるようなことが二度とないように、私は法律の専門家でありませんが、何かただし書きをつけるとか、ほかのことで対処できるようなことがないのでしょうか。とにかく国民の方から言えば、うまく立ち回ったなということでいっぱいだと思うのです。ですから自治省の方も、うまくやりやがったな、しようがないなということだけではなくて、何か二度とこういうことがあり得ないようにしなければならぬという用意はないかどうか、これは自治省の関係お答えいただきます。
  248. 岩田脩

    ○岩田説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、今回の事件はわれわれも大変割り切れないものを感じているわけでございますが、前段お話がございましたように、被選挙権を持っておる限り、その者の立候補の自由と申しますか、これを最大限度に尊重していくということも選挙の大きな基本原則の一つであろうと思っております。そういうわけで、現在、公務員は現職として立候補することを禁止するけれども、いざ立候補した場合には、立候補願を受け付けないのではなくて身分を失うというかっこうでその調整を図っているところでございまして、今回のような事例が将来にわたって生じないようにするためにつきましてはいろいろお考えもあろうかと思いますが、さりとて、そういう方に限って一定範囲の方がかえって現職のままで立候補していいというわけにもいきませんし、片や立候補の自由に対して新しい制限をかけるのかという問題もございます。反面、今回のことはいわば裁判官弾劾制度という特別な手続のあるもとで起こった特例的な事情でもございますし、そういったことを合わせまして、他省庁との関係もございましょうが、われわれとしても何かよい方法はないか、今後慎重に検討、対応させていただきたいと考えております。
  249. 岡田正勝

    岡田(正)委員 その答弁もよくわかります。よくわかりますが、一つ考えておいていただきたいと思いますのは、公職選挙法はあらゆる人、どんな立場の人、どんな経歴のある人であっても日本人である限り立候補が自由にできるのだというものではありませんね。欠格条件もたくさん並べてあるはずでございます。こういう者は立候補できないよ、受け付けないよという制限がたくさんあるはずであります。だれもが自由に立てるという選挙法ではありません。  したがいまして、私が思うのは、ただ単に公務員の自由を奪うようなことはできないという、そんな表面的なお答えではなくて、少なくとも裁判官弾劾裁判所へ訴追されてくる前のいわゆる訴追委員会、その訴追委員会には一般の人からだれでも勝手に訴追請求というものができる仕掛けになっております。ですから、そこの段階でとめては立候補を妨害することは幾らでもたやすくできるわけですから、そんなことをしてはいけません。訴追委員会が訴追の請求を受けて、なるほどこれは裁判官弾劾裁判所へ訴追しなければならぬと考えて、委員会そのものが弾劾裁判所へ訴追をしたそのときからは立候補できない、受け付けられないというぐらいの制限があってもいいんじゃありませんか。私は十分に御研究いただきたいと思うのであります。ただ単なる人間の自由を保障するというような通り一遍のお答えでは納得できません。  次に、大臣お尋ねをするのでありますが、安川はうまくやったなと言っているだけでほうっておくということは、社会正義の上からもまことに残念なことではありませんか。天道からも人道からも政道の上からも私は許されないことと思いますが、大臣はいかが思われますか。  私は、悪いことをする方法は知っていても悪いことをしないというのがあたりまえの人間であり、善良な人であろうと思うのであります。私は安川の場合はまた立場が特別ではないかと思うのであります。法を知らず、また過って罪を犯したという人なら、その罪を憎んで人を憎まずという論も結構でございます。私もそのとおりに思います。しかし、この安川の行為というのは、法の裏の裏まで知り尽くして事の善悪の判断もつくまともな人である。否まともな人どころではない、人を裁く立場にいた安川さんの行為でありますよ。それだけに国民の怒りは大きなものがあります。この問題をこのままほうっておいていいのでしょうか。昔で言うたら、奥野さんもおわかりだと思いますが、まさにこれは切腹ものですよ。大臣の本件に対するお考えをお聞かせください。
  250. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 きのう閣議でも問題になったわけでございます。しかし、さしあたりいい知恵は出ない、ほうってもおけない、なお引き続いて考えていこう、こういうことでございまして、何か立法論としても考えるべき性格を持っているのじゃないかな、こう思っております。
  251. 岡田正勝

    岡田(正)委員 よくわかりました。  昨今は法の精神を忘れ技術面に流れる風潮が多い中で、犯罪被害者救済法の実施期限前でありますのに、この法律の基本精神をくんで、新宿バス放火事件などの被害者に死亡者二百万、障害者百万円を限度といたしまして特別支出金を出すということを決定されましたが、このようなことがまさに善政ではないのでしょうか、生きた政治ではないのでしょうか、血の通った政治ではないかと思うのであります。これが法を守るべき立場に立った人々の、なかんずく公務員など行政に携わる人たちのとるべき道であり、公務員は法律の基本精神をよく理解して守るべき責任があると思うのでありますが、大臣のお考えはいかがですか。
  252. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そのとおりに考えております。岡田さんの御注意でそれが実ったわけでございます。
  253. 岡田正勝

    岡田(正)委員 それでは、最後に大臣に苦言を呈したいと思うのであります。これはずっと続いております一連の憲法改正発言問題についてであります。この際、大臣の決意についてお尋ねをしておきたいと思うのであります。  まず第一に、行政というものは憲法や法律に基づいて行われているものですね。私は、あなた個人が改憲の意思を持っているということをとがめたり、持ってはいけませんというようなことを言おうとは思っていません。むしろ、それはそれで一つの見識ではないかと思っております。しかしながら、あなたは国務大臣です。立法府に席を持ちながら、しかも法務行政のトップに立っておられるわけです。ほかの者とは全く重みが違うと私は思うのです。憲法の中に国会議員を含めてずらずらと並べてありますけれども、その中でも特に法務大臣というものの立場は重みが違うと思うのであります。ということを考えましたならば、憲法第九十九条の憲法の尊重と擁護の義務ということにつきましては、だれよりも重く忠実に守るべきではないのでありましょうか。この点はいかがでございますか。国民には、日本は法治国だ、法律を守れ、守らぬ者は承知しないぞとにらみをきかしておるのがあなたです。法務大臣という立場であります。  その立場から考えましても、公式的にもあるいは非公式であろうとも、その言動に対してはおのずから節度が必要ではないのでしょうか。どうしても自分の思ったとおりに勝手気ままに発言をしたいというのなら、国務大臣の職を退いて、身軽になって発言をされるのがたてまえではないのでしょうか。あなたが改憲思想をお持ちになりながら憲法遵守を誓う内閣に身を置いておられるそのつらさは私にはよくわかります。しかしながら鈴木内閣の一員として、なかんずく法務大臣としての職責をあなたが担う限りにおいては遺憾のないように慎んでいただきたいと思いますが、大臣の現在の御心境、決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  254. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 テレビ討論を伺っていましても、いまとちょっと似たような意見を拝聴しながら、これはおかしいなと思うことがたびたびございました。  それは、法務大臣なるがゆえに他の大臣よりも特に憲法尊重擁護の義務は大きいのだ、憲法論としては私はよくわからないのです。いかなる者であっても憲法は厳格に守っていかなければならない。国務大臣との間においても議員との間においても何の差もない。法務大臣なるがゆえに他の大臣よりも特に尊重擁護の義務は大きいのだ、これは私は憲法論としてわからないのです。解釈論としてわからないのです。みんな厳格に憲法尊重擁護していかなければならないと思います。  同時に、改憲論議もまた国務大臣も何ら禁ぜられているものではない、こう考えているわけであります。何ら禁ぜられているものではない。また、どんどん議論していかなければよりよい方向に改善していくことができない、発展させていくことができない、こう考えているわけであります。  憲法論、憲法解釈の議論と政治姿勢、これは分けて考えなければいけないと思うのです。内閣が、改憲路線を歩もうと改憲反対の路線を歩もうと、改憲反対だけれども改憲論はおのおの自由にやってよろしいよという路線を歩もうと、これはまた私は内閣政治路線選択の問題だと思うのです。その内閣一つ政治路線を選択しました場合には、その内閣におります閣僚はその政治路線を忠実に守っていく、これは大事なことだと思うのです。鈴木内閣憲法改正全く考えない、こう言っているわけでありますから、鈴木内閣の閣僚は、この政治路線を疑わせるような言動、これは厳に避けていかなければならない、こう考えるわけでございます。  私が八月の未にお尋ねをいただきましたころは、いまの鈴木内閣の全く考えないという厳しい姿勢はまだ打ち出されておらなかったと思います。私なりに個人的な考え方を申し上げました。同時にまた、政府としてどうするのかというお尋ねもいただきました。これも政治家個人としての考えを申し上げたわけでありますけれども、政府はそのような動きをすべきではない、動きをすることは適当ではない、こう答えたことも御理解いただいていると思います。それは鈴木内閣、総理の考え方と同じだった、こう思うわけでございます。でございますから、憲法論、憲法解釈としては、法務大臣であろうと何大臣であろうと、自由に改憲論議を私はしていけると思います。法務大臣だからそれはしてはいけないとか、尊重擁護の義務を強く考えなければならないということは、これはそれぞれの方々の感じの問題ではないだろうか、こう思うのです。それはそれぞれのお方がどうお感じになろうと、これは自由なことだと思います。しかし憲法論、憲法解釈としては何の差もないはずだ、私はこうお答え申し上げたいのであります。政治姿勢としては、その内閣政治路線をどう選択していくかという問題にかかってくる。選ばれた政治路線についてはその内閣の閣僚は疑惑を与えるような行動はしてはならない、これはまた大事なことだ、こう考えております。
  255. 岡田正勝

    岡田(正)委員 時間が切れましたので、これで最後にさせていただきます。  もう一度念のために、簡単にお答えいただきたいと思いますが、法務大臣だから憲法あるいは法律問題について特に重みがあるということは私は憲法解釈上わからぬとおっしゃいます。これはまた後日の論議に譲るといたしまして、わからぬから私は何を言ってもいいんだ、鈴木内閣政治路線として憲法を遵守するということを言ったから、内閣の一員におる限り私はその路線を守ります、遵守します、しかし遵守するということと論議するということとは別だというふうに聞こえるのです。だから、憲法改正しないということは遵守しますけれども、改憲論議については今後もいままでと同じように、国会の中であろうと委員会の中であろうと外であろうと、たとえば改憲運動等があればそこへ出ていって法務大臣として堂々と演説をやり抜いていく覚悟でありますというふうに私には受け取れるのです。  だから私が期待したのは、午前中からずっと問題を聞いてみて、あなたが法務大臣におる間は憲法改正の問題については特に言動を慎みたいというお気持ちを持っておられたんじゃないかなというふうに思ったから聞いたのでありますが、どうもいま聞いてみると、私の聞き方が悪いのかもしれぬが全然逆反対で、憲法を遵守することは内閣の一員として守ります、だけれども改憲論議は差し支えないから、どこでも大いにやるというように考えていらっしゃるように聞こえたのです。その点だけ、違うなら違うとおっしゃってください。
  256. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法解釈、憲法論としては尊重擁護の義務と改憲論議とは両立します、こう考えている、こう答えたわけであります。  政治姿勢としては、その内閣がどういう政治路線を歩むか、その選択された政治路線には忠実に従っていかなければならない。鈴木内閣憲法改正は全く考えないとおっしゃっているわけでありますから、おのずから私の憲法論議は制約されてまいる、こういうことになってくるわけであります。
  257. 岡田正勝

    岡田(正)委員 終わります。
  258. 高鳥修

    高鳥委員長 安藤巖君。
  259. 安藤巖

    安藤委員 私も奥野法務大臣憲法に対する姿勢の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、その前に一点確かめさせていただきたいのです。  去る九月二十六日参議院の決算委員会でわが党の安武洋子議員が、かつて大臣が鹿児島県の特高課長をしておられた昭和十八年当時のいわゆる「きりしま」事件という弾圧事件についてお尋ねしたことは御記憶があると思うのですが、そのときに安武議員が特高月報というのを取り上げまして、その月報が昭和十八年十二月というふうに言いましたところから、大臣は在任期間が同年の一月から八月の半ばごろまでであったので若干ずれがありますという答弁をしておられますね。これは私は、どうも大臣がごまかしの答弁をしておられるのじゃないか、責任逃れをしておられるのじゃないかというふうに疑わざるを得ないので改めて確認をさせていただくわけです。  きょうも私はその特高月報を持ってきておりますけれども、確かにそのことが載っておる特高月報は昭和十八年十二月分になっております。ところが「同人雑誌「きりしま」左翼集団中心分子の取調状況」と題する部分は、鹿児島県において六月の三日に検挙、そして鋭意取り調べ中であったがというふうに記載してあるわけなんです。そうしますと、これは大臣が特高課長として御在任中のことであったということは実にはっきりしているわけです。だから若干も何もないずれも何もないわけなんですね。だから、これは大臣が特高課長当時におやりになったことだということをはっきりさせていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  260. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 八カ月ほどの在任中にそういう事件、私は一人しかなかったんじゃないかなと思っておりましたが、赤旗を見まして三人であることも、またその結末、起訴された人、されない人、いろいろあったことを承知いたしました。でありますから、私の在任中に一つあった事件、一人だったと思っておったが、そうでもなかった、その記憶はございます。それがいま御指摘になっておる事件に発展しているんだろう、こう思います。
  261. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、この「きりしま」事件なるものは大臣が特高課長として鹿児島県に在任されておったときの、そして大臣が手がけた事件であるということははっきりしておるわけですね。
  262. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま六月とおっしゃいましたが、ちょっと私、正確じゃないのですけれども、そういう一人について調査をしたいという報告を受け取ったことを承知しておりますので、それから発展していっているんだろう、こう思います。
  263. 安藤巖

    安藤委員 いまの人数の関係についても、いま私が読み上げました「取調状況」という中にはきちっと三人の名前があって「三名を検挙鋭意取調中」こういうふうに記載してあるわけなんです。そして十月二十六日に送局、当時検事局と言っておりましたから検事局へ送局、いまで言うと送検だと思うのですが、こういうふうに三人の名前がちゃんとあるわけですね。  そうしますと、一人だけを取り調べて後からそういうふうに発展をしていったという問題ではなくて、まさにそのとき三人検挙されて鋭意取り調べをした、こういう記載になっておるわけです。だから、それ以後発展したのではなくて、大臣が御在任中にこの三人を検挙された、こういうことをはっきりさせていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  264. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま申し上げましたように、私のときにそういう報告を受けておったことを覚えておるわけでございまして、ただ正確には記憶いたしておりませんで、どういう範囲のものであったかもいまは記憶してないわけでございます。しかし、そこに載っているようでございますから、うそをおっしゃるわけじゃありませんから、また私の記憶にもおぼろげながらそういう程度のことは残っておるわけでございますので、そのとおりだろうと思っております。
  265. 安藤巖

    安藤委員 そこで、最初に申し上げました憲法の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  大臣は、現在自主憲法期成議員同盟に入っておられることははっきりしておると思うのですが、これはいつお入りになったのでしょうか。
  266. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 記憶いたしておりませんけれども、憲法検討していくことは非常に大事なものだと考えておりますので、当初から入っているんじゃないだろうかなと思います。いつそれが発足したのかも承知しておりませんので、したがって、いつ入ったか、いまちょっと記憶にございません。
  267. 安藤巖

    安藤委員 入っておられるけれども、いつできたかということは記憶にないとおっしゃるのですが、これは一九五五年、昭和三十年に結成されたそうであります。私はもちろん入っておりませんから、そうでありますとしか言いようがないのであります。  そこで、自主憲法制定国民会議というのがございますね。これには入っておられるわけですか。
  268. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 入っていないのじゃないかと思います。ちょっとどういう団体か知りませんが、名前だけじゃよくわかりにくいのですけれども、自民党の国会議員でつくっている自主憲法制定のための研究団体、これには入っております。それ以外には私は入っている記憶はございません。
  269. 安藤巖

    安藤委員 自主憲法制定国民会議というのは一九六九年、昭和四十四年に結成をされておるようです。  ところで、期成議員同盟の方には入っておられることははっきりおっしゃってみえるのですが、この期成議員同盟と自主憲法制定国民会議とはどういう関係にあるのかということも御存じないのでしょうか。
  270. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 存じておりません。
  271. 安藤巖

    安藤委員 私の方からそれを大臣にお知らせするというのもおかしなものですけれども、御存じないということですから説明を申し上げますけれども、これは自主憲法新聞という新聞なんです。自主憲法制定国民会議の機関紙、後にこれは「憲法」というふうに改題をされておりますけれども、この昭和五十二年五月三日号によりますと、自主憲法制定国民会議の主な参加団体として自主憲法期成議員同盟というのが入っているのです。ごらんになってください。(奥野国務大臣「思い出しました」と呼ぶ)思い出しましたか。ということになりますと、議員同盟は自主憲法制定国民会議の構成団体ということになるのですが、御理解できますか。
  272. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 はい、その団体でしたらりっぱに毎年大会を開いて会合も持っておられる団体ですから、よく承知しておりました。同時に、議員同盟が入っているということはいまお教えいただいたわけでございますが、そのとおりだろうと思います。
  273. 安藤巖

    安藤委員 国民会議がどういうようないきさつで結成をされたかということは御存じでしょうか。
  274. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 ちょっといますぐには承知いたしておりません。
  275. 安藤巖

    安藤委員 それでは、またまた私の方からちょっと記憶を喚起していただくために申し上げるのですが、先ほど言いましたように、自主憲法新聞、改題をして「憲法」ですね、これは番号、号数をずっと追っておりますから、私は改題したのだと思うのですが、やはり自主憲法制定国民会議の機関紙です。その昭和五十四年、一九七九年、これはちゃんと西暦もうたってあるのですが、その五月三日号によりますと、これはちょっと前の話、記事が載っておるのです。昭和四十四年五月二日、日本武道館において自主憲法議員連盟が主催した憲法の集い、この集いで緊急動議が可決をされて、そして自主憲法制定国民会議が発足した、こういう記事が載っておるのです。だからこれからすると、議員同盟の集会の中でこの制定国民会議なるものが結成されていった、こういうふうに理解するのですが、記憶を喚起されましたか。
  276. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 率直に申し上げまして、余り詳しいことを承知しておりませんでした。
  277. 安藤巖

    安藤委員 自主憲法期成議員同盟というのは何をする団体ですか。
  278. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法問題を深く掘り下げて研究していくということをねらいにしておる団体でございます。
  279. 安藤巖

    安藤委員 団体である以上は、何か基本政策とかあるいは行動綱領とかというものがあろうかと思うのですが、そういうようなものはごらんになったことがありますか。
  280. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 自民党の議員連盟をおっしゃっているといたしますならば、それは当然私たちその資料をいただいておるわけでございますし、またそれなりに会合も絶えず開かれておると理解しています。
  281. 安藤巖

    安藤委員 憲法問題について深く研究をする団体だという御理解なんですが、憲法改正問題について集会をしたりあるいは運動をしたりというようなことはするのかしないのか、どちらなんですか。
  282. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 それは議員連盟の考えることでありまして、私の考えることじゃない、こう思います。議員連盟としては集会をしたりいろいろされることは、何らその会の精神とはかけ離れた問題ではないと思います。議員連盟としていろいろおやりになることは当然だろうと思います。
  283. 安藤巖

    安藤委員 先ほど、最初は自主憲法制定国民会議のことはよくわからぬというふうにおっしゃったんですが、私が少し説明を申し上げましたら、わかったというふうにおっしゃったんですが、この自主憲法制定国民会議の方、これはどういうことをする団体だ、あるいはどういう種類の、あるいはどういう性格の、あるいはどういう趣旨の団体だというふうに理解をしてみえますか。
  284. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 自主憲法理解を持っておられる方々がお集まりになって国民会議を結成され、そしてまた、自主憲法に向けて努力をしていこうと考えておられる団体だ、こう思っております。
  285. 安藤巖

    安藤委員 この国民会議の方も憲法について先ほどおっしゃったようなことをやるんだ、やはり集会を開いたり、いわゆる改憲運動なるものをする団体だというふうに理解をしておられますか。
  286. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そういう機運を醸成していこうと努力しておられるものだ心得ております。
  287. 安藤巖

    安藤委員 憲法についていろいろ検討したり研究したりする団体だと国民会議の方についてもおっしゃったんですが、ところが、先ほどの「憲法」というふうに改題をされる前の自主憲法新聞、これは昭和五十二年五月三日号、ここにあるのですが、これを見ますと、この新聞の見出しを見ただけでも私はびっくりしたのですが、一番上に「諸悪の根源 押しつけ憲法」とある。それからその次に、これは凸版で括弧つきの「欠陥」、これは欠陥憲法という意味でしょうな。「欠陥の是正を急げ!!」感嘆符がついておる。それから「亡国憲法ヤリ玉に」こういうようなことまでこれは書いてあるのです。  そうすると、これはいまの憲法は諸悪の根源だ、欠陥だ、亡国憲法だというふうに、もう非常にあくどく強烈に主張しているわけなんですが、これは国民会議というのはこういうような種類の団体なんですか。こういうふうに理解しておられませんか。
  288. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法制定国民会議がいろいろな主張をされている、その団体のことを私が批判をするようなことは避けておきたいと思います。
  289. 安藤巖

    安藤委員 いや批判ではなくて、こういうふうな機関紙、こういう新聞なんですね、こういうふうにいまの憲法を「諸悪の根源 押しつけ憲法」だというふうにこれは主張しておるのですが、そういうような団体だというふうにあなたは理解しているかどうかということをお尋ねしておるのであって、これに対してあなたがどういうような批判を持っておられるかどうかという批判的な見解をお尋ねしているわけではないのです。どうですか。
  290. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまあなたからビラをお見せいただいたわけでございますから、うそを言っておられるわけではないと思いますので、それはそのとおりでございましょう。
  291. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、こういうようなことを主張している団体が自主憲法制定国民会議だろうというふうに認識はしておられるわけですね。
  292. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 動きの中の一つにそういうものもあるという理解はいたします。
  293. 安藤巖

    安藤委員 そこで、大臣自主憲法期成議員同盟あるいは先ほどからお尋ねしております国民会議、この集会に参加なさったことがございますか。
  294. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国民会議には出たことはないとはっきり言えると思うのです。自民党の議員連盟の方はいつ出ましたでしょうか、ちょっと私、定かではございません。しかし資料は絶えず勉強いたしております。
  295. 安藤巖

    安藤委員 どうもはっきりしておられぬようですが、一回も参加しなかったという記憶ですか。
  296. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 どうも忙しいものですから、参加した記憶、いまちょっと定かではないわけでございます。しかし自民党の側の、議員同盟の側の方は参加しなくても資料は絶えず私なりに勉強している、こう申し上げたわけであります。
  297. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、ことしの五月三日、いわゆる憲法記念の日なんですが、国民会議の方で第十一回の大会を開催しているわけなんですが、これにも参加はしておられないわけですか。
  298. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 どうもその暇はなかったようでございます。
  299. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、これは後からでもいいのですが、そこでどういうような発言がなされ、どういうようなことが決められたかというようなことは機関紙等でお知りになっているというようなことはございませんか。
  300. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 自主憲法制定国民会議のことをお尋ねになっているのですね。     〔安藤委員「そうです」と呼ぶ〕 私は残念ながら参加できなかった、こう申し上げているわけであります。
  301. 安藤巖

    安藤委員 先ほど確認をさしていただきましたように、自主憲法期成議員同盟と自主憲法制定国民会議との関係については、先ほど御答弁いただいたように御認識がおありなわけですね。自主憲法期成議員同盟が自主憲法制定国民会議の構成団体である、こういうような関係です。もう改めて聞かぬでもいいでしょう。     〔奥野国務大臣「あなたに教えてもらった」と呼ぶ〕 お教えして、そういうことはわかったということだったでしょう、いいですね、うなずいておみえになるから。  そこで、そういうような関係で、議員同盟の方には入っておられるという御認識はさらに明確に持っておられるわけですね。その議員同盟が構成団体になっている自主憲法制定国民会議のことをいまお尋ねしているわけですけれども、ことしの五月三日の大会で岸信介会長がどういうような演説をしたかということは機関紙等で御存じになってはおられませんか。
  302. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 記憶にございません。
  303. 安藤巖

    安藤委員 大分私の方から説明をしなければいかぬようですが、これは記憶を喚起していただくのと……(奥野国務大臣「国民会議に入ってないのだからだめじゃないですか」と呼ぶ)いや、だから先ほども確認したのです。議員同盟が構成団体になっているのは国民会議なんですよ。(奥野国務大臣議員同盟はなってないですよ」と呼ぶ)
  304. 高鳥修

    高鳥委員長 どうぞひとつきちっと聞いてください。
  305. 安藤巖

    安藤委員 大臣、先ほど私はこの自主憲法新聞というのをお見せして、ちゃんと構成団体に入っている、そうしましたら、ああそういうのならわかりましたとおっしゃったじゃないですか、どうです。
  306. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまお話を伺いまして、議員同盟が自主憲法制定国民会議に団体加入しているのだということを教わったところでございます。
  307. 安藤巖

    安藤委員 それでそういう前提でいいでしょう。  このことしの五月三日の大会で岸信介会長が、これはちょっと長いですから全部はもちろん紹介できませんが、こういうことを言っておられるのですよ。とにかく天皇に関する規定がきわめて不明確であるということも含めて欠陥憲法だというふうに言っておられるのです。それからさらに、いまやわが国は憲法改正が先か国家の滅亡が先かというような非常な危機に直面していると思うのであります、こう言っておるのです。
  308. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、あえてそういう言葉に対して批判する立場にはございません。
  309. 安藤巖

    安藤委員 そういうような岸信介会長の百葉に対して批判をしていただこうというつもりはありません。  私がお尋ねしたいのは、いま私が質問をしたことによってお知りになったということであるけれども、大臣が加盟しておられる期成議員同盟が構成団体になっている国民会議の大会においてこういう発言がなされている。それから先ほど自主憲法新聞というところで見出し等をお見せしましたようなことを主張しているそれが団体である。こうなると、鈴木内閣はこの憲法を遵守し擁護するというふうに言ってみえているわけですが、この国民会議の大会における会長の発言は、発言のとおりにいくと、憲法改正するのが先か国家の滅亡が先かというのですから、早く憲法改正しないと国家が滅亡してしまうのだというような言い分なんです。鈴木内閣憲法を遵守し擁護すると言っておられるのです。鈴木内閣の選択をしている路線でいくと滅亡しちゃうのですよ。そうすると、その内閣大臣はとどまっておられる。その大臣が加盟しておられる期成議員同盟が構成団体になっている国民会議でこういう発言がなされている。しかも会長さんの発言ですよ。これは矛盾すると思いませんか。
  310. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 鈴木内閣憲法改正全く考えない、こういう立場をとっているわけでございますから、憲法改正運動を行っているその運動に参加するということは避けるべきだ、こう思います。
  311. 安藤巖

    安藤委員 私が質問をいたしました点について明快に答弁をしていただけないのは残念ですけれども、もう一度言っておきますけれども、ここのところ一遍考えてほしいのですよ。  私これを見まして、どうなっているんだろうなと思ったのです。総理も議員同盟に加盟しておられるようなんです。その議員同盟が構成団体になっている国民会議が先ほど言いましたような憲法改正が先か国家の滅亡が先かというようなことを会長さんが言っておられる。そうしますと、憲法改正をしないと国家が滅亡するんだという論法でしょう。それが会長さんの言葉として言われている。いまの鈴木内閣憲法を遵守し擁護するのだと言っている。滅亡のために一生懸命鈴木内閣は努力しているみたいな話になってくる。それに総理を含めて、もちろん法務大臣も参加しておられるとなると、一体これはどうなっているのかと思いましてお尋ねしたのですけれども、これはとんでもない大きな矛盾だと思います。これは国民だって一体どうなっておるのかと思うと思いますがね。しかし、その問題はお尋ねしてもただいまのお答えのようなことしかないだろうと私は思いますので、次に移ります。  ところで、先ほどから申し上げておりますこの国民会議が、ことしの五月三日の大会で運動方針を決議しているんですが、そういうことは御存じないんでしょうか。
  312. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 自主憲法制定国民会議ですからいろんな決議をなさっているだろうと思います。
  313. 安藤巖

    安藤委員 そこでいろいろな決議がなされているだろうというふうに平然としておられるのですが、この国民会議理事長植竹春彦さんが従来の運動方針に加えて新しい運動方針を決定された。これは四月上旬の総会で決定されたという報告をなさって、そして全国の市区町村議会に働きかけて憲法改正すべき旨の決議なり請願なりを出してもらう、こういう方針を決めたということを言っておられるのですね。  こうなると、これは国民会議の方だから知っているとか知らぬとかということでなくて、こういう全国の市区町村議会に働きかけて憲法改正するような決議なり請願なりをしてもらう働きかけをするという行為は、これはいわゆる改憲運動をやるあるいはやっている、こういうことになりはせぬでしょうか。
  314. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 自主憲法制定国民会議が改憲に対して努力をしておられるというように受け取れます。
  315. 安藤巖

    安藤委員 それから、これは参議院の方でわが党の上田耕一郎議員がちょっと質問をしたのですけれども、大臣がいろいろ言っておられる自主憲法期成議員同盟の方から、議員同盟の名前でもっていま私が言いましたような全国の市区町村議会に改憲のための決議をしてもらうようにということで文書を送っているという事実があるのですが、そういうことは御存じないですか。
  316. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 議員同盟がそういう動きをしているかどうか、私承知しておりません。
  317. 安藤巖

    安藤委員 国民会議のときには、いま私が言いましたらいろいろそういう運動もしておられるだろうと思うというお話だったのですが、そういうことからすると、私がお尋ねいたしましたように、これは一つ運動だという認識はお持ちだと思うのです。これは参考までに申し上げますと、朝日新聞の記事ですが、たとえば宮崎県東臼杵郡門川町議会が三月二十八日に決議をしたそうですが、議員同盟が送った文書そのままの決議をしているというやゆ的な内容の指摘をした記事が載っておった。これは、こういうようなことが行われておるということであれば、明らかに議員同盟が改憲運動をしているということになると思うのですが、どうですか。
  318. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 議員同盟がそういう文書を送って地方議会に働きかけているとすれば、広い意味の改憲運動一つを担っているということは言えると思います。
  319. 安藤巖

    安藤委員 そこで、先ほどちょっと言いかけたのですが、この五月三日の国民会議の方の大会で先ほど言いました大会決議というのがなされておりまして、この決議の中には四つの項目があるのですが、一つの項目は「活溌なる国民運動を即時展開する」こういうような決議もなされておるわけです。これは国民会議の機関紙「憲法」のことしの六月十六日号です。だから、これは国民運動を即時展開するということなんですが、こういうような動きについて、大臣としてはそれは非常に結構なことだというふうに思われますか。
  320. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法改正運動も大いにおやりになったらいいし、憲法改正反対運動も大いにおやりになったらいい、こう思います。同時に、憲法は守ってもらわなければならない。共産党も例外ではない、こう思います。
  321. 安藤巖

    安藤委員 余分なことは言われなくとも、私はそんなことはお尋ねしてない。  私が問題にしておるのは、先ほどから言っておるように、いま私がこの質問の中でお話をしたことによってお知りになったというのですが、これは期成議員同盟が加盟している国民会議がやっておるのですよ。そしてその議員同盟に大臣は加盟しておられるのです。それがこういう改憲運動を展開するという決議までして、そして現実に、先ほど言いましたように改憲運動議員同盟もやっておるし国民会議もやっておるのです。そのことを私問題にして言っておるのですよ。その辺のところを頭に入れておいていただきたいのですよ。  そこで、この国民会議は、ときどきというか毎回のようですが、大会を開いた後デモ行進をしているようですが、そういうことは御存じですか。
  322. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 承知しております。
  323. 安藤巖

    安藤委員 デモ行進というのはもちろん改憲運動一つだ。これはあえてお尋ねしなくてもはっきりした公知の事実だからお尋ねしませんが、このデモ行進に参加されたことがありますか。
  324. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 残念でございますが、ありません。
  325. 安藤巖

    安藤委員 言葉じりをつかまえるわけではないのですが、残念だというふうにおっしゃるところを見ると、機会があったらそのデモ行進にも参加したいなというような気持ちは持っておられるのでしょうか。
  326. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御推察にお任せいたします。
  327. 安藤巖

    安藤委員 このように見てくると、先ほどからいろいろ申し上げてきておりますように、大臣が加盟しておられる議員同盟、さらにこの議員同盟が構成団体になっている国民会議、これは改憲の運動団体であるということが実ははっきりしてきておると思うのです。そこで私はお尋ねしたいのです。  きのうの参議院予算委員会におきまして、私どもの上田耕一郎議員が鈴木総理に対して質問をいたしたしたところ、大臣も御記憶だと思うのですが、議員同盟が積極的に改憲運動を展開する状態になったときは脱会するかどうか慎重に考える、こういうふうに答弁をしておられるわけなんです。いま私がいろいろ議員同盟あるいは国民会議の活動について質問をいたしましたが、その中には運動をしているということを申し上げ、そういうことは運動だということも大臣はお認めになった。これはもちろん国民会議なり議員同盟の方がだれかに言われたわけではなくて、とにかく積極的にそういう運動をしておられるというふうに思うのですが、いかがですか。
  328. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 鈴木内閣憲法改正は全く考えない、その政治路線を忠実に守っていかなければならない、議員同盟に入っているからそれを守っていないというような見解は生じてこない、私はこう思っておるわけでございます。  したがいまして、議員同盟が今後どういう活動をされていくか承知いたしませんけれども、もし疑われるような活動があります場合に、その活動にみずからも直接に参加していくということはしないようにしていきたいと思います。だからといって議員同盟から抜けるという考え方はございません。
  329. 安藤巖

    安藤委員 私のお尋ねしているのは、先ほどからるる質問をしてまいりまして、その中でお話をいたしましたように、議員同盟それから国民会議は積極的に改憲運動をやっている団体であるということがはっきりしてきたと思うのです。その議員同盟なり国民会議なりに、憲法を遵守し擁護するという政治路線を選択しておられる鈴木内閣の閣僚としてちっとも矛盾は感じないのかということなんです。
  330. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国務大臣憲法尊重擁護する義務がある。同時に改憲論議、改憲運動も両立する。しかし、鈴木内閣の一員でございますから、鈴木内閣政治路線を忠実に守っていかなければならない。その範囲において私の改憲論議、改憲運動は制約されてくる、こう思っておるわけであります。
  331. 安藤巖

    安藤委員 ちょっと角度を変えてお尋ねしますけれども、角田法制局長官来ていただいていますね。  法制局長官にお尋ねしたいのですが、きのうの参議院予算委員会で長官は、閣僚の憲法遵守義務の問題に関連をして、これは要旨ですけれども、大体間違っていないと思いますから新聞の方で言うのですが、憲法九十九条の尊重擁護義務と憲法について調査運動することは矛盾しないというふうに答弁をされた。ところが、きのうの夕方になって、内閣法制局の方でこれに対してもう一つの見解を明らかにされたと聞いておりますが、そのとおりかどうか、そしてその見解の中身はどういうものであるかお尋ねします。
  332. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 御質問お答えいたしますには、まず憲法解釈上の問題と、それから憲法改正考えていないという方針をとっている鈴木内閣の閣僚としての政治姿勢の問題、この二つの問題を分けてお答えすべきだと思います。  まず憲法解釈の問題につきましては、昨日私が参議院予算委員会で申し上げたところで御承知を願いたいと思います。ここではそれを繰り返すことはいたしません。  後の方の問題は憲法解釈の問題ではございません。したがって、これについて私どもが法制局の見解というような形で述べるのはもともと適当なことではないと思います。一部新聞紙上にはそのように伝えられておりますが、これは表現が不適切だと私は思います。しかし、新聞に報道されたことも事実でありますし、また安藤委員もその辺のところは十分御理解の上に御質問になっておられると思いますので、あえてお答えをいたしたいと思います。  これまで鈴木総理は、鈴木内閣憲法改正考えない、閣僚もこの方針について誤解を招くことのないように言動に慎重を期してほしいとしばしばこの国会において述べておられます。こういう内閣あるいは総理の御方針のもとで、閣僚として具体的にいかにあるべきかということになるわけでございます。そのことについては、総理のお考えなり各閣僚の政治的な判断によるべきことは申すまでもありませんけれども、ただ一例として、閣僚が改憲を推進する集会に出席するということについてどうかといえば、これは三木内閣のころ、稻葉法務大臣自主憲法制定国民会議に出席をしたことが問題になりました際に、三木総理は、三木内閣の閣僚は憲法改正を推進する会合には今後は出席させないということを、衆議院及び参議院の本会議におきましてはっきり答弁されておられます。また、ことしになりまして大平内閣のころ伊東官房長官も、参議院予算委員会で、この三木内閣の態度を踏襲する旨の答弁をされておられます。そういうところから、おのずからいまの問題については結論が出るのではないかと思います。そういう意味のことを法制局におきまして新聞からの質問に対してお答えした、そのことは事実でございます。ただ最初に申し上げましたとおり、こういう問題は憲法解釈の問題ではございませんから、法制局見解と銘打つようなものでないことは御理解をいただけると思います。  以上でございます。
  333. 安藤巖

    安藤委員 法制局の見解ではないということはわかりました。考え方を述べたという程度かもしれませんが、そうしますと、こういうことですか。いまの鈴木内閣の閣僚としては改憲の集会に参加しても構わないのかどうか、あるいはそういうことはできないのかどうか、そういう点はどうですか。
  334. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 先ほどの私の答弁でまだ御理解がいただけなかったような気がいたしますが、憲法解釈の問題はお尋ねになっておられないので、具体的な政治姿勢の問題として御質問になっておられるのだと思います。そのことについては私どもがお答えすべき問題ではないと思います。  そこで、こういうことになっておると過去の事実、それからまた常識的に考えれば、その方針は憲法改正をしないということをあれほど強く言っておられる鈴木総理のもとにおける内閣の閣僚としてどうあるだろうかということを考えたときには当然常識的な結論が出るであろう、こういうことを申し上げているので、本来そういうことを、出るべきでないとか出たらいいとか悪いとかいうことを申し上げたつもりもありませんし、またそういうことは私どもが申し上げるべきことではないと思います。
  335. 安藤巖

    安藤委員 申し上げるべきではないとおっしゃるから、これ以上お尋ねしてもと思うのですが、これはきょうのサンケイ新聞です。  これは見解ではないとおっしゃるから、見解というふうにはお尋ねしませんけれども、この鈴木内閣の路線選択のもとでは「閣僚が具体的な改憲運動をすることは事実上できない」ということだという説明を法制局の方がしたという報道になっておるのですが、そういうことはないのですか。
  336. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 事実上できるとかできないとかいうことは非常に不正確な表現だろうと思います。私どもはそういうことを言った覚えはありません。ただ、過去の例及び現在の鈴木内閣の態度から見れば、おのずから常識的な結論はわかってくるじゃないかということは申し上げたと思います。
  337. 安藤巖

    安藤委員 そこで大臣お尋ねしたいのですが、事実上わかってくるだろう、わかっていただけるだろうということですね。それは前に稻葉法務大臣がそういう集会に出席したことが問題の発端になっているようですが、いまのような考え方ですね。見解は述べられないというお話ですから、そういうふうに申し上げるわけなんですが、それを踏まえて期成議員同盟それから国民会議、これに大臣としては今後、閣僚としての地位にある間のことで結構ですが、参加なさるおつもりなのか、そういうことはしないおつもりなのか、どちらですか。
  338. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 議員同盟に入っておりますし、今後も入っているつもりでございます。憲法論としては国務大臣も自由に改憲論議、改憲運動をして差し支えない。ただ内閣の一員である場合に、その内閣がどういう政治路線を歩んでいるか、その政治路線には忠実でなければなりませんから、憲法改正運動をデモ行進等を通じて推進していく自主憲法制定国民会議のそういう行事に参加することは、鈴木内閣国務大臣である限りは避けるべきだろう、こう思っております。
  339. 安藤巖

    安藤委員 集会に参加するのは避けるべきだろう。そうすると、当然運動に参加することも避けるべきだろう。うなづいておみえになるからそうだろうと思うのですが、そういうことだったら、そういうような団体から閣僚であられる間は抜けられたらどうなんでしょうか。
  340. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほどは自主憲法制定国民会議の話でございまして、今度はまた自民党の議員連盟を言っておられるようでございます。  議員連盟につきましては、私はたびたび申し上げますように、憲法問題について一緒に勉強させていただいている、こういう気持ちでおるわけでございます。その議員連盟が今後積極的に街頭に出ていくという場合には、鈴木内閣国務大臣であります限り、それに自分も参加することは差し控えた方がいいと思います。しかし議員連盟から抜ける意思はございません。
  341. 安藤巖

    安藤委員 鈴木総理が、先ほど私がちょっと紹介しましたように、議員同盟が積極的に改憲運動するというような状態になったときは、脱会するかどうか慎重に考えるというふうに答弁しておられるのですが、そういうことはあるいはそういうことも考えられませんか。
  342. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そういう時点になれば、またそういう時点においてよく考えていきたいと思います。
  343. 安藤巖

    安藤委員 時間が残り少なくなりましたので、ほかのことについてお尋ねしたいのですが、金大中事件について最後にお尋ねをいたします。  これはもうすでに大臣御承知のように、十月十一日の衆議院の予算委員会でわが党の正森議員質問をいたしまして、これは金大中氏拉致事件当時の法務大臣でありました田中伊三次議員が、金大中氏拉致事件がテレビに報道される前に、法務省に関係の深い政府高官から韓国の公権力の犯行だという報告を受けたという話を紹介いたしまして、田中伊三次議員事情聴取をしたらどうかという提案をしました。  御承知のように、鈴木総理の方から、関係官庁の方でやることを検討する、それから警察庁の方でやっていると思うというような答弁もあったように私は記憶しておるのですが、そうしますと、これは大臣としては、まあよその省庁がやっていることだから、法務大臣としての私はあるいは法務省としては全く関係ない、こういうことですか。
  344. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 当初から一貫して警察当局が捜査に当たっておられるわけでございますから、その結論を待った方がいい、こう申し上げたわけでございまして、もちろん警察当局は検察当局とも連絡をとっておられると思います。警察当局からまた検察に対しまして要請があれば、その要請に従って御協力していくのは当然のことだと思います。私が申し上げましたのは、一貫して警察当局が捜査に当たってきておられるわけでございますから、警察当局の御努力にまっていきたいのだ、こう申し上げたわけでございます。
  345. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、大臣として全く無関係で関心は持ってないということではなくて、大いに関心は持っておられるということになりますか。
  346. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 大事なことだと思っています。
  347. 安藤巖

    安藤委員 そこで、関係当局がやっておられるからというお話ですが、田中伊三次議員と同じように大臣法務大臣であられるわけです。田中元法務大臣といまの奥野法務大臣との間に数人の法務大臣がおられるわけです。それはそうですが、この問題が改めていま国会で論議をされて問題になっているわけなので、間におられますけれども、一体どういうことだったか、一種の事務引き継ぎみたいなことで田中議員に直接聞いてみよう、そしてその事実を国会に明らかにしようというようなお気持ちは持っておられませんか。
  348. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 捜査当局がそれぞれの判断に基づきまして最善の努力をしているものだ、こう心得ております。
  349. 安藤巖

    安藤委員 これからお尋ねしてもそういう答弁をお繰り返しになられるだろうと思うのですが、先ほどから申し上げておりますように、そしていろいろ当院の予算委員会等々でも明らかになっておりますように、田中元法務大臣に対して先ほど言いましたような報告がなされている事実もあるわけでございます。  そして、これは私ども共産党の機関紙赤旗の記事ですけれども、田中伊三次議員は「私は捜査当局の事情聴取であれ、国会の証人喚問であれ、真実をありのままのべるという気持ちに変わりはない。」こういうふうに言うておられるわけです。ここにお見えになっておられますけれども、先ほど私は、田中議員がおられるのを承知でこのことを突如として申し上げては失礼になるかと思いまして、一言そのことを田中先生にごあいさつを申し上げてあります。そのときにも、そのことはいやだなんということはもちろん言っておられません。ですから、この問題をはっきりさせるということのために、田中伊三次議員を当委員会に証人もしくは参考人として喚問をしていただきますよう委員長に要望いたします。
  350. 高鳥修

    高鳥委員長 ただいまの御要望につきましては理事会において協議いたします。
  351. 安藤巖

    安藤委員 これで質問を終わります。
  352. 高鳥修

    高鳥委員長 ちょっと速記をとめておいてください。     〔速記中止〕
  353. 高鳥修

    高鳥委員長 速記を始めてください。  次回は、十月二十二日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十一分散会