○武部
委員 政府の五十五
年度の
見通しは六・四であります。一体この六・四という
数字はどんな
数字だろうか。これにはいろいろと問題があると私は思うのです。私は、高過ぎると思うのです。かつて、この
委員会に参考人としておいでになりました方から、私
どもは
日本の
物価の
水準はいかにあるべきか、どの程度が大体正しい
水準だろうかということをやりとりしたことをいま思い出すのでありますが、中山伊知郎さんはそのときにこうおっしゃった。
わが国のいろいろな
状態、
経済状態、
国民生活、そういう点から見て
消費者物価の
上昇は五%以内が最も理想的だ、五%以内でなければならぬと思う、こういう
答弁があったのです。もちろんこの
数字につきましてはいろいろと異論、意見もあるでしょうけれ
ども、この六・四という
数字は、今日の
国民の生活
水準、これから後で申し上げますが、勤労者の生活
水準あるいは老齢化社会の中における年金の
水準、そういうものから見て決して低い
数字じゃない、むしろ高過ぎるのじゃないか、この目標は高過ぎると思うのですが、この六・四すら現在非常にむずかしい
状態になっている。したがって、私は、この六・四にするために今日この高い
物価をこれからどのようにして
政府が下げようとしておるのかという具体的なことをお聞きしたいのですが、その前に、いま申し上げたような点から若干の問題を提起したいのであります。
ことし春闘が行われましたが、五十四年は四・八%、五十五年は六・四%という
消費者物価、この中で最低八%を目標にして春闘が行われたわけです。結果は七%弱という
数字になっております。現在までの実質賃金の
上昇率を調べてみると、昭和四十九年以来全産業でほぼ二%台、昭和五十二年には〇・五%という実質賃金に低下しておるのであります。賃金の
上昇、賃上げが労働生産性を上回ると
物価が上がるのだ、そういう意見があります。したがって、
物価が上がるのだといって賃上げを抑制する、そういう傾向があったことは否定できないのであります。先ほどから申し上げておりますように、実質賃金の
上昇というものは、ここ数カ年はほとんど問題にならぬ
数字になっておる。昭和五十年を一〇〇として、五十四年、昨年名目賃金では全産業で一三九・九です。製造業で一四〇・八。この
数字に対して労働生産性の方は一四七・六、はるかに高いのであります。労働生産性を名目賃金がはるかに下回っておる、こういう
状況が出ておるのであります。したがって賃金コストはだんだん下がってまいりまして、五十年を一〇〇とすると九五・四という賃金コストになっておるのであります。そこで、この結果から見るならば、勤労者の賃金が現在の
物価を抑制する上で非常に大きな功績を上げた、このように結果としては見ることが間違いないことではないだろうか、私はこのように思うのであります。二%台の実質賃金をそれでも保っておったのですが、ことしに入ってからずっと実質賃金はマイナスが続いています。ここに具体的な資料を持っていますが、時間の
関係で一々読み上げることはできません。ことしの二月以降実質賃金はマイナスがずっと続いておるのであります。しかも八月には三・五%という大幅ダウンであります。こういう実質賃金の減少が
現実に出ておるのであります。
さらに総理府統計局の家計
調査、これを見ましても、同様に勤労世帯の実収入は、一月と七月をはねまして、七月はボーナスが入りますから除いて、全部マイナスであります。そういうふうに実収入もマイナス、可処分所得、いわゆる手取り、これもマイナスが続いておるのであります。こういう中で四月には何と可処分所得は五・四%もマイナス、こんな
数字が出ておるのであります。
なぜこのようなことになったのでしょうか。賃金はろくに上がらぬのに
物価だけがどんどんどんどん上がっていく。八%台で
上昇する、こういうことであっては、賃上げをじっと耐え忍んできた大衆が大変大きな不満を持つことは当然だと思うのです。したがってこういう
状態の中でこれ以上実質賃金をマイナスにさせて、そして
物価の
上昇が続くということは大変なことだと思うのです。一体
政府が約束したところの六・四、この
数字をどうして守っていくのか、これが守られなかったということになるならば、これは勤労者に対して大変な裏切りだと思うのです。賃上げを耐え忍んできた勤労者、マイナス、こういう
状態がどんどん続いておる、こういう中で六・四すら守り切れないということになるならば、これは勤労者に対する大変な裏切りだ、こう言って差し支えないと私は思うのですが、その原因が、いまおっしゃるように、ただ単に季節物の値段が上がっておるからというようなことで、その
対策のみに目を奪われていくというようなことでは、私は六・四という
数字は決して守れない、このように思います。すでに新聞紙上ではバス運賃の値上げの申請が行われるのではないか、こう言われております。郵便料金の値上げ問題もすでに国会にかかっております。先ほど来
石油の問題がありますが、すでにタンカーの保険料は三倍に値上がりになっておる。スポットの値段だってすでに、先ほ
どもお話がございましたけれ
ども、私はそんな
数字ではなくて、すでに三十八、九ドルぐらいになっておるのじゃないか、こういうふうに思いますから、そういう
物価値上げの火種がほかにもまだある。こういう中で一体六・四%という
数字をどうして実現するか、この点について企画庁
長官の見解をひとつ聞いておきたい。